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国務大臣(
廣瀬正雄君)
庶民金融、いわゆるそういうことばを使っておりますわけでございますが、正確に申しますと、
郵便貯金者の
郵便貯金を
担保といたしましての
小口貸し付けの
創設、並びに
郵便貯金の
金利引き下げは、あくまで
反対すべきであるという御激励を賜わりまして、まことにありがたく存じております。いろいろ最近、
新聞あるいは
週刊誌等で、私が
庶民金融の
創設と、
金利の
引き下げを取引の具にいたしましておるというような
報道があっておりますけれ
ども、これは全く事実に相違いたしておりますわけでございまして、さような
お話しも、私は現在まで全く受けておりません。そういう
相談も全然いたしていないわけでございます。私は、
庶民金融と
郵便貯金金利引き下げの問題は、これはもう全然別個の問題であるというように確信をいたしておるわけでございまして、この
考えも変わっていないわけでございます。
庶民金融につきましては、もうすでに御
承知のように、
郵政省といたしましては、もう長年の懸案であったわけでございますから、
庶民の
福祉増進という時勢、このときに、ぜひ実現さしたいということで、
努力を続けておりますわけでございますが、まことに残念ながら、今度の
国会に
政府提案で出すというような目途、そういうような見込みというものが、非常に最近薄らいできておりますわけでございまして、これはしょせん私の
努力が足らないということになるかもしれませんけれ
ども、
関係の省庁が理解してくださらないわけでございます。
事務段階におきましても、私
どもの
段階におきましても、かなり
努力をいたしておりますわけでございますけれ
ども、微力で、まだこの
国会に
政府提案で出すという域にまで達してないということを、
ほんとうに恥ずかしく思っておりますわけでございますが、幸いに、御
承知のように、
与野党とも、
議員の
サイドにおきまして、これはきわめていい
制度だから、ぜひ
創設すべきであるという強い御
意見が出ておりまして、そのような
動きが
与野党とも非常に活発でございます。
与党のことを申し上げて恐縮でございますけれ
ども、
自民党の中におきましては、衆参合わせまして半数というのが二百十七名
程度のようでございますけれ
ども、すでに三百名近くぜひやるべきだという意図を持って、この
郵便貯金個人貸し付けの
推進議員連盟というものが建設されておりますわけでございますが、こういう方が
推進力になりまして、いま
議員の
サイドで話が進められておりますようでございまして、
自民党ではせんだって党の
政調会にかかり、また、その際その道を開くということを
前提といたしまして、
政調会長に一任をされたようでございます。その
政調会の
段階で、
大蔵省あるいは
農林省サイドに立っております
国会議員のほうから、いろいろな御
意見が出たようでございまして、それも
政調会長としては参酌されて、調整などをとられるということになろうかと思っておりますけれ
ども、それは党の御意向でございまして、私のほうには、全然そういうふうな話は
政調会長からもございません。そういうことになりましても、私といたしましては、ただいま申しましたように、
庶民金融と
金利の引さ
下げということは全然別個の問題であると、こういう観点に立って
郵便貯金の
金利の
引き下げについては、応ずべきではないという現在
考え方を持っておりますわけでございます。
と申しますのは、ただいま
日銀の
渡辺参考人からも
お話がございましたけれ
ども、私は、
政府の中におきまして、重ねて
公定歩合の
引き下げをしなければならない、それには、
預貯金の
金利を
引き下げなくちゃならないという
意見があったにかかわりませず、
日本銀行としては、
意見を異にしておる、そういうような必要はない、
公定歩合の
引き下げもいま
考える必要はない、また、
預貯金の
金利を
引き下げるべきではないという
考え方を最近まで持っていらっしゃったように、私は
考えておりまして、非常にりっぱであると思っておったわけでございますけれ
ども、にわかに最近御態度が変わって、ただいま
渡辺さんのような御発言があったわけでございます。その間の事情について、どうしてそういうことになったかということを、私としては承りたいわけでございます。まあとにかく豹変ということばは、非常に失礼なことばでございますけれ
ども、態度が変わったということは事実だと、こういうように
考えております。
そこで、私といたしましては、
郵便貯金は、
銀行預金とは異質のものである、いわば
銀行預金というのは、短期に例をとっていいますと、七割までが法人、会社の
預金でございます。
長期を含めましてもまあ大半と申しますか、五割ちょっと上が会社、法人の
預金でございまして、しかも短期のごときは、預託の期間が、わずかに〇・四カ月、きわめて短期でございます。ところが、
郵便貯金は、
国民大衆、
庶民の粒々辛苦によって積み立てられましたところの、
ほんとうに生活資金である。その
郵便貯金の大部分、九割九分六厘が、こうした
国民の
庶民の一人一人の貯金の累積である。しかも、預託の期間は、短期に例をとりましても、一方がO・四カ月であるに対しまして、七カ月という
長期のものでございます。そういうようなことを
考えますと、非常に性質の違う
預貯金であるというように言わざるを得ないわけでございます。
また、別のことばをもっていたしますれば、
銀行預金は
産業資金でございます。
郵便貯金は生活資金、貯蓄性のきわめて高い生活資金でございます。しかもまた消費者の資金である、こういうふうに
考えられますわけでございます。したがって、現在のように、消費者物価がどんどん高騰してまいっております際に、この
郵便貯金の利率を、この上さらに
下げるということになりますと、
国民は貯蓄心をなくしてしまうわけでございまして、絶望におちいる、こんなことであれば、お金をたくわえておっても、何にもならない、むしろ使ってしまえということになりますわけでございます。それが消費者物価を刺激いたしまして、ますます事情が悪くなるというようなことも
考えられるわけでございますから、そういうような
意味におきましても、いまの消費者物価が高騰しております時節には、どうしても
郵便貯金の利率を
引き下げることはできないということを主張して、現在に至っておりますわけでございます。その信念は、たびたび申しますけれ
ども、現在も変わっていないわけでございますが、
ただ、昨年十二月ごろ、私はそういう主張を申しまして、現在まで引き続き申しておりますわけでございますが、
日本の全体の
金融、全体の
経済あるいは外貨事情というようなことが、どうしても
郵便貯金を
引き下げなくちゃならないというようなことに、私が
ほんとうに心から理解するということになれば、
考えなくちゃならぬと思っておりますけれ
ども、そういう
意味で、私は、いま各方面の知識を吸収いたしたいということで、強勉を続けておりますわけでございます。現在までのところ、そのような信念に変わりはないということを申し上げたいわけでございます。また、この郵便貯はすべて私の管理下にありますわけでございます。私の方針によってきまるわけでございます。その責任を全うするには、郵政審議会の御
意見も聞かなくちゃならぬことになっておりますわけでございますが、軽々と
大蔵省、
日銀が御要請をされましても、そう簡単に同調するというわけにはいかない性質のものであると、こういうふうに
考えておりますわけでございます。
いろいろ
委員長さん、また
鈴木委員から御鞭撻をいただきまして、
ほんとうにありがとう存じますが、そういうことを十分踏まえまして、今後あやまちのない態度をとりたいと、
庶民の
福祉の
増進と国益が、どういうふうなつながりがあるかということを検討することは必要であるかと思っておりますけれ
ども、現在のところ、まだ従来の信念が変わっていないということをお答え申し上げたいと思います。