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参考人(前田義徳君) はなはだむずかしい御質問です。しかし、第一、第二、第三の御質問は
NHKの将来にとっては相関的な
関係に立つと思いますけれ
ども、結論的にはしかし、御質問の順序に従って
お答え申し上げたいと思います。
この、現在の御審議いただいている昭和四十七
年度予算でのカラー契約の数というものは今後五カ年間の帰趨を見ますと、大体まだ五〇%ぐらいのものだということが言えると思います。五カ年構想でわれわれが
考えている時代の
日本は、契約可能の
世帯数として三千三百万
世帯があるわけです。それで、私
どもの
計画としては、そのうち二千四百万
世帯がカラー契約者になるだろうという想定をいたしております。四十七
年度計画の二倍強でございます。そういう点から申しますと、
NHKの将来というものは、大ざっぱに言っていろいろな方がいろいろな面でお
考えになるほど私は悲観的ではないという
考え方を持つわけです。
徹底的合理化につきましては、この
計画を立てる当初から、まあ簡単な
ことばで言いますと、機械化をやっております。この機械化は
日本の中ではもちろんのこと、
放送事業者の中では一部イタリア
放送協会等が聴視料の
関係で、一部実施しておりましたが、全面的な機械化というのは世界で初めてでございます。この機械化の結果として、評価のしかたはいろいろあるかと思いますし、御批判の点も幾つかあるかと思いますが、少なくとも、昭和三十五年の第一次長期
計画の
計画の内容と今日の結果を
考えますと、私
どもは少なくとも第三次
計画が
——実は四十七
年度は第五年目、最終
年度になるわけですが、この時点に立って振り返ってみて、これはもう徹底的な基本的合理化を達成していると私は
考えております。まあそれとの関連で、簡単に例を申し上げますと、私
どもは第一次五カ年
計画の終わりに、したがって、昭和三十五年から計算して五年目に、もしその機械化をしなかった場合の需要量の増加と人員の必要性を
考えると、少なくとも三十五年に想定した機械化をしない場合の総人員は、一万八千五百名内外という想定をいたしております。機械化によって明
年度予算の御審議でもお願いしているその人員は、現時点では一万六千五百名でございます。このことは明らかに昭和三十五年からスタートした機械化による合理化は相当な効果をあげている、私はそのように
考えております。そういう
意味では、少なくとも今後五カ年間を想定するときに、第一の問題と第二の問題は、かなり重要なポイントになるということを申し上げたいと思います。
で、これと関連して個々の問題について御
説明申し上げますと、
放送センターの完成、特に御
指摘になりましたホールですね、これとの
関係はどうかという問題でございますが、あの
計画は、御承知のように東京オリンピックを前にして、
NHKの責任を果たすためには、当時の内幸町だけではできなかった。したがって、大蔵
当局その他にもお願いして、第一回目の構想は、竜土町で一万五千坪の土地を獲得するということでした。で、これは一応大蔵省の
承認を経ましたが、その後この土地には東大を中心とする生産科学の部門が入ってまいりまして、土地は半分に削られました。したがって、その後の方策として代々木の二万五千坪を獲得いたしたわけです。そういう環境は、しかし
長期構想の中で消化するという
考え方をその当時すでに持っておりまして、当時のオリンピックに利用されたすべての機器は、長期
計画に基づいて
NHKのネットワークを充実させる機器以外のものは
一つもございません。したがって、オリンピック終了と同時にこれが
全国に戻ってまいりまして、そして今日のネットワークの基礎をなしているわけでございます。で、この
放送センターは、したがいまして、オリンピックから数えて十年ほど経過して明年八月にようやくでき上がろうとしている。ですからそういうスピードと社会的必要性と、
NHKの昭和三十五年から発足した
計画というものをあわせお
考えいただければ、これは単なるアイデアの結果ではないということが御理解いただけるかと思います。
それで、現在内幸町にあるホールは固定席六百席でございます。これに対して補助席を入れたマキシマムは八百席にすぎません。ところが、いろいろな公開
番組を行ないましても、おそらく要望の十分の一にもこたえられないという実情でございます。もし
NHKが
国民のものであるならば、理想的には入りたいという方々を全部入れるべきだと、私はまあ純粋理論的には
考えるわけですが、しかし、同時にこういうことはやはり
計画との
関係で財政的な可能性、建設的な可能性というものを
考えなきゃならぬと思います。この点について最終決定は四千席でございます。問題はこれをどういうふうに使うかという問題にかかってくると思いますが、こういう点でも、
NHKが
全国的な組織であり、ただ
一つのネットワークであり、そして
NHKが
国民のものであるとするならば、技術的なマキシマムあるいは経済的なマキシマムの観点から、建設されるこれらのホールについても私は意義があるというように
考えている次第でございます。
そこで、問題はこれらのものができたときに、一体さらに合理化の可能性があるかどうかという現実の問題に戻ってまいります。これについては御承知のように、先ほど申し述べたことと関連して、東京オリンピックの時期から
考えますと、一部ずつではありますけれ
ども二重の費用がかかっているわけです。内幸町の本館は依然として残っており、したがって、ある部分は
施設もダブるという部分もございますし、ことに局舎管理についてはダブる部分がはなはだ多いわけです。これが移転いたしますと、いま申し上げたような範囲のある
程度のダブリはなくなる。それと同時に新館の技術的
施設の問題がございますが、これはおおよそ九十億円がかかると思っております。そのうちの八十億円は減価償却費によるものでありまして、膨大な建物に比べて、機器を新しくする
——これは第一には技術の進歩に応ずる機器を備える、あるいはスペースの問題と関連して多少のプラスが出るという点で、純粋の支出部分は減価償却費八十億円を除きますと十億内外のものになるわけでございます。これも、結局は最終合理化の目標をたどるものであるというように私は
考えております。
で、そういう
関係で、少なくとも今後五カ年のわれわれの構想の最終
年度の数字から逆算してまいりますと、少なくとも聴視料においては五カ年間に約六千三百億内外、これが見込まれるわけでございます。したがって、これでやっていけるかどうかという問題は、
NHK以外の社会的経済状態がどのような変革を及ぼすかという問題と関連してまいるわけでございます。そういう
意味で、われわれが当委員会でもしばしば申し上げましたように、少なくとも明
年度はそういう
予算を御審議願っておるんですが、四十八
年度においても値上げの必要はないと。なぜかと申しますと、算術的に計算しましても、
放送センターの完成によって内幸町の土地を売却することができます。その使い方が会計的な規則によってどういう項目に入るかは別として、財政がそれによってささえられることは明らかであります。したがって、問題は四十九年以降どうなるか。これらについても私
どもは五十一年までの概算をいたしておりますれ
ども、しかし、しばしば申し上げるように、神さまではございませんから、五年後まで予言するわけにはまいりません。しかし、心がまえとしてはできるだけ値上げを避けていく。その理由は、まあ三千三百万
世帯が契約可能の
世帯と
考えた場合でも、
NHKの支持層は単なる金持ちであるとか、支払い可能の人ばかりでなくて、
全国的な庶民の支持の上に立つ経営でございますから、できれば、理論的にはきわめて安い値段ですけれ
ども、これをふやすべきではないという
考え方を持つからでございます。そういう
意味で、私は少なくとも今後五カ年間の構想については、しばしば申し上げましたように、きわめて楽観的でございます。
問題は新しい情報機器、あるいはいろいろな問題が出てくるわけです。御
指摘のように、カセットであるとか、いろんな種類のものが出てまいります。これについては私の
考え方は、そしておそらく私の同僚も支持してくださっている
考え方は、われわれは機器のメーカーではないという一点でございます。問題はソフトウェアに利用価値をどれだけ加算していくかという問題だと思います。これについては、私
どもは単に国内の需要ばかりでなく、海外の需要とも関連しまして、三年ほど、もう足かけ四年になりますか、一応サービスセンターの中に
NHKインターナショナルというものをつくっております。これは最近のドルショックによって、ドルの購買力が下がったために、まあ今
年度の下半期はかなりその収入が減っておりますけれ
ども、それでもこの金額はかなりのものになっております。私としてはいわゆる
番組の二次利用という点に、新しい情報化に備えるべきであるという
考え方であります。したがって、私は現在のいろいろな議論に対して、カセットその他CATVもございますが、これらは私として申し上げるならば第三の企業であって、
NHKがこれに混乱を起こさせてはならない企業であり、
NHKはそれのソフトウエアの供給者でなければならないという
考え方に立つわけです。この面で申しますと、われわれとしてはこの部門について新しい投資を行なうことは
考えておりません。これを、この一線を守らないと
NHKの
放送法上の性格がきわめてぼやけてくるおそれもあり、ことに毎年御質問をいただき、議論の中心となる
放送法七条の問題がきわめてぼやけてくるおそれがあると、私はこのように
考えているわけです。こういうことを総合的に
考えますと、
NHKが巨大化したのは逆に大衆の要望がこれを求めている。今後の問題としては、その限界をどこに置くべきかという問題だと
考えておりまして、これらについても鋭意
考え方を検討しているわけでございます。
以上の
お答えによって、きわめて不十分だとは思いますが、私としては、
NHKの前途は
国民が現在な限り、いろいろ個々の問題は起こりますけれ
ども、永遠の企業として、
国民の企業として
考える場合に前途は少しも悲観する必要はないという
考え方を持っております。