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政府委員(小林忠雄君) 現在建設省では、昨年の建設政策懇談会の提言に基づきまして、国土建設の長期構想というのをことしの夏を目標に作業を進めております。
そこで、その中の第一の問題は、国土利用
構造の変革という問題でございます。これは先生御
指摘のように、明治以来の日本の国土の開発といいますものが、東京、大阪というような太平洋ベルト地帯を
中心に開発が進んでまいりましたが、特に昭和三十年代以降の高度成長期において、このベルト地帯への人口、産業の集中というのが非常に奇形的に肥大化しておるという問題があるわけです。従来そういうような過密の問題につきましては、公共投資を大量に投入することによって解決できるのではないかという考えがございました。自動車がふえれば道路をつくる、水が足りなくなればダムをつくって新たに水を引くというようないわば現状追随的な公共投資をやってきたわけでございますが、いまやこの巨大
都市地域におきまして、もちろん今後とも社会資本の投下はますます必要でございますが、しかし社会資本の投下を幾らやっても解決できない問題がやはり出てきている。これは特に環境の問題を
中心とした問題でございますが、これは公共投資を幾らやっても解決しない最も端的な例が、東京の都内における自動車交通の問題等でございます。こういうようなことを根本的に解決いたしますためには施設だけでは解決しない。しからば、何らかの大都市分散のための規制措置を一方において行なうというようなことがありますけれ
ども、根本的にはやはり人口、産業が大
都市地域へ集中し過ぎる。この条件をなくさない限り大都市の問題は片づかないし、また土地の地価高騰についても根本的には問題解決しない。しかし、大都市に人口、産業が集まってまいりますのは、集まってくるだけの理屈があって集まってきているわけでございます。現在はまあ資本主義の社会でございますから、より多くの利潤が集まるところへ資本が集まるのは当然でございます。ですから、これを
法律的に規制をするというのも
一つの方法でございますが、この条件を変えまして、
地方においてもより有利な雇用の場ができるという政策が必要なんではないか。そういたしますと、全体の人口の趨勢からいたしまして、一次産業人口が漸次減少するということはまず間違いない。そういうところの人口が都市へ集中してくることも、これまた趨勢として否定できないわけでございます。
問題は、その出てくる人口あるいは増加する人口をどこで受けとめるかということでございますが、過去の高度成長期におきますように、大
都市地域に集中をこれ以上させるということはもはや許されないと思いますので、できる限りこれを
地方都市において受けとめる必要がある、こういうように考えるわけでございます。そこで、大都市への人口集中の大きな原因といたしましては、従来第二次産業への就職者というものが非常に大きな原因をなしているというように考えられましたので、首都圏の
計画あるいは近畿圏の
計画等におきまして、東京、大阪等の大都市の工場の新増設の規制をいたしたわけであります。それにもかかわらず、なおかつ東京等の人口がふえてくる。この原因は何であるかと申しますと、これは第二次産業への就業者ではなくて、いわゆる中枢管理機能への就業者でございます。これは大学というのが非常に東京に全国の半分以上集まっている。
地方から出てまいりました青年が東京の大学を卒業いたしますと、これが
地方に戻らないでそのまま東京へ就職するというケースが非常に多いわけでございます。すなわち、ブルーカラーの人口はもうそれほど集まらないけれ
ども、サラリーマンの人口が集中をするということでございます。そこでサラリーマンの人口が集中いたしますにおいては、住宅問題、通勤問題というのは大都市としてはどうしても解決しなければならない。そこでこのサラリーマンの人口のうち、どうしても東京でなければ職場がないという種類のものもございます。たとえば、中央官庁の公務員でありますとか、あるいは全国的な都市銀行の本店というような種類のものは東京でなければいけないということがございますけれ
ども、必ずしも東京でなければそういう中枢管理業務ができないかと申しますと、そうでない種類のものもございますのでこういうものをできるだけ
地方都市に分散をすることが考えられないか。そういたしますと、あまり小さな都市にはそういう大学卒業生が職場を見つけることはできない。したがって、現在すでに相当の都市的な集積がありますところに、大学でございますとかあるいはその他の文化施設、あるいは中枢管理的な業務が入るようなそういう施策をひとつ考える必要がある。これは建設省だけではできませんので、たとえば国家機関の権力分散というふうなことも
一つの方法かと思いますけれ
ども、われわれ施設面から申しますと、そういう
地方の相当中枢的な都市に集中的な都市施設の投資をすることによりまして、大都市と同様な生活水準が享受できるような施策を講ずる、そういうことによりましてホワイトカラー人口というものを
地方の中枢都市に返すと、こういうことができるのじゃないかと
期待しております。
昭和四十五年に行ないました国勢
調査の人口の最終的な集計ができましたので、これについて若干の分析をいたしてみますと、人口十万以上の都市につきましては軒並みに人口がふえております。それから、仙台とかそういうようなブロック
中心都市等の人口を見てまいりますと、従来は大都市へ出て行くほうが多かったわけでございますが、大都市からそういう都市へ転入するという人口がかなりふえております。すなわち、大都市と
地方中枢都市の間の人口の相互交通という現象がそろそろ見えておりますので、こういう現象をさらに促進するような施策を講ずることによりまして、ある程度の中枢の管理機能も分散できるのじゃないか。そういうことを
中心にいたしまして全体的に、単に工場施設だけじゃなくて、その他の都市機能が全国的に均等に分散をする、こういうことが可能になるのじゃないかというような見当でいま
検討しております。まだ確定的な段階にはございませんけれ
ども、思想といたしまして、そういうことができるのじゃないか。これは建設省だけでできることではございませんので、
関係各省とも御相談いたしまして、何とかそういう政策を長期的に打ち出す必要があるのじゃないかと考えているわけでございます。