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政府委員(高木文雄君)
所得税法の一部を改正する
法律案外二法案につきまして、提案理由を補足して御
説明申し上げます。
まず、
所得税の一般減税につきましては、さきの臨時国会において年内減税として繰り上げて実施したところでありますが、その結果、給与
所得者の昭和四十七年分の課税最低限について申し上げますと、夫婦と子供二人の場合では百三万七千円となり、諸外国との比較においても、
アメリカの百三十二万四千円には及ばないものの、イギリスの七十九万九千円、
西ドイツの七十七万二千円、フランスの百三万六千円をこえて相当の水準に達していると言うことができるのでございます。
今回は、この年内減税に引き続きまして、老人扶養控除の創設と寡婦控除の適用範囲の拡大を行なっているのでありますが、まず老人扶養控除につきましては、これによって約百七十万人の方が老人扶養控除の適用を受けるものと見込まれます。また、寡婦控除につきましては、扶養親族のない未亡人についてはこれまで適用されておりませんでしたのを改め、年
所得が百五十万円以下であればこの控除を認めることといたしておりますが、この
所得制限を給与
所得の収入金額で見ますと約百九十万円ということになり、約十五万人の未亡人の方が新たに年十二万円の寡婦控除の適用を受けることになるものと見込まれます。
また、税制の整備といたしましては、源泉徴収の対象となる報酬、
料金等の範囲に工業所有権の使用料を加えたほか、確定申告の際に
提出する財産
債務明細書の
提出を要しない
所得限度につきまして、これが昭和三十三年以来据え置かれていることから、最近における
所得水準の
上昇によりましてその対象人員が急増している実情を
考慮し、従来の千万円から二千万円に引き上げることといたしております。
次に、
法人税法の
改正案でございます。
法人税法の改正は、同族会社の留保
所得課税について控除額を年二百万円から年三百五十万円に引き上げることにより
負担を軽減することを
内容といたしておりますが、この引き上げにより、同族会社のうち留保金課税を受ける会社数は、ほぼ八万社から五万社に、また、その税額も約二百億円から約百七十億円に減少することが見込まれます。
最後に、
相続税法の
改正案でございます。
今回の
相続税法の改正は、配偶者に対する相続税額の軽減
措置の拡充、障害者控除の創設及び不動産に関する物納
制度の整備の三点がおもな
内容となっております。
第一に配偶者に対する相続税額の軽減であります。従来の
制度では、法定相続分までの取得財産に対応するものを限度として非課税とされるため、配偶者はその組み合わされる相続人のいかんによって法定相続分が異なるので軽減される相続税額に差を生じ、また、遺産総額が三千万円の場合の相続税額を限度として軽減することとしているため、複雑な計算を必要とするなどの難点がありました。
今回の改正は、これらの点を是正し、相続人の間で意見が一致すれば、相続人の組み合わせに
関係なく、婚姻期間が二十年以上の配偶者については、取得額が三千万円までは相続税を課税しないこととして、
制度の拡充と簡素化をはかることとしております。
今回の改正の結果、たとえば遺産五千万円を婚姻期間が二十年以上の妻と子供四人が相続する場合、妻がその二分の一を取得したときは、妻の
負担は改正前の約三百四十八万円が無税に、妻がその全額を取得したときは、改正前の約八百五万円が約三百六十六万円に軽減されることとなっております。
なお、
改正案の方式は、遺産が現実に分割されていない場合や、婚姻期間が十年にならない場合には適用されませんが、そうした場合にも現行の軽減
措置がそのまま残されているので、これを利用することができます。
第二に障害者控除の創設であります。従来も心身障害者扶養共済
制度による受給権を非課税とする
措置を講じて心身障害者の相続税に配意してまいりましたが、今回さらに税額控除を設けることとしたわけであり、仕組みは現在の未成年者控除に準じております。
これにより、たとえば年齢二十歳の重度の心身障害者の場合は、相続税額が百五十万円軽減されることになりますから、財産額では約一千万円を非課税とすることに相当し、障害者につき大幅な
負担の軽減を実現できることとなります。
第三に物納
制度の整備であります。
相続税では、課税財産を物納できる
制度が設けられておりますが、賃借権等のある不動産については、財産の権利
関係が錯綜していることから、相続税の納期限において不動産の売り払いの見込みがつかず、やむを得ず物納を選択した者が、その後
関係者との間で話合いがつき、本来の納付方法である金納に変更することを希望する場合があります。このため、物納許可後もなお一年間物納の撤回を申請し、物納から金納に変更することができるよう規定の整備をはかることとしたわけであります。
以上、
所得税法の一部を改正する
法律案外二
法律案の提案理由を補足して
説明した次第であります。