○嶋崎均君 時間がありませんので、最後に将来についての問題提起という形で御
質問をいたしたいと思いますが、今後のこの
財政運用の問題を
考えていく場合、
わが国の場合、過去の
経済の成長は、民間設備投資
中心の成長であるということが言われ、また
所得税の
減税がこの成長をささえるために非常に重要な役割りを果たしてきておるということが言えるかと思います。反面、私が非常に心配するのは、
所得税の
減税というのは、確かに
日本の成長には大きく寄与してきたけれ
ども、たとえば、最近いろいろ
経済企画庁あたりで
福祉指標というようなことがいろいろ問題になっておりますが、たとえば、
財政支出の中におけるところの移転支出の
割合がどういうことになるか。特にGNPの中における移転支出は、
日本の場合に非常に少ないのではないか、あるいは社会
福祉給付費がGNPに対して非常に少ないんじゃないか、こういう指摘が非常に多いわけでございます。ところが、反面ですね、租
税負担率というものを
考えてみますと、
日本の場合には一九%前後ということで、同じレベルの立場と比べられる四十五年という年をとってずっと比べてみますと、諸
外国から比べまして非常に
日本の
租税負担が低い。また振替所得の非常に大きなもとになるところの保険料の
負担というものを見ますと、これがまた諸
外国から見て著しく低いということになっております。それからまた
財政支出の中におけるところの、何というか消費的な支出と、それからまた資本的な支出の
割合を見ましても、諸
外国の場合には消費的な支出が非常に多いにかかわらず、社会的な支出の
割合が非常に小さい。ところが、
日本はどちらかというとフィフティー・フィフティーか、あるいはごく最近においては、社会的資本に対する支出がかえって大きいというような
数字であったと私は思っておるわけです。そういうようなことをいろいろ
考えてみますと、今後
わが国の
経済の政策あるいは
国民全体の、何というか社会の改造の
方向というのですか、そういうことから
考えますと、どこまでも
福祉社会の建設というようなことになる。そうすると、社会資本の充実と、社会
福祉政策あるいは社会保障政策の充実というものが柱にならなければならない。その場合に、社会資本の充実は、いまの
財政法の規定からいきますと、どちらかというと、公共事業
中心の公債発行財源というものをたよりにしたものを、社会
福祉政策を遂行していくための必要な財源というものは、一般財源すなわち
租税によらなければならない、こういうことになるわけです。ごく短期的な問題からいいまして、先ほど
福祉だけ
考えてみてもたいへんだ、長期にそういう
方向を
考えていく場合には、もう一度
日本の
経済がある
程度高い成長を遂げない場合には、社会
福祉にさかれる財源というのですか、それが非常に不足をしてくるという結果になって、社会保障の充実はやりたい、しかし、
租税の収入はなかなか得られないというジレンマに陥る可能性が非常に大きいのではないか。そうすると、今後
所得税の一般
減税がどれだけできていくかということが非常に大きな問題点であろうと思います。
それからもう
一つは、過去十年間たいへんな
減税政策をやってきたわけです。たとえばドイツなんかの例を見ますと、四十年以来ほとんど課税最低限はフィックスされたままになっております。よその国と比べまして、四十年当時は
わが国の課税最低限は
フランスなんかに比べれば半分くらいであったと思うし、よその国の半分近い
水準だったと思う。ところが、いま四十七年度の
予算の
段階で並べてみますと、
フランスを越えて、もう
アメリカの百三十万
程度の最低限を除けば、
日本が最も高い状態にある。それからまた、
税率の調整をやろうということになりますと、御承知のように、先般の国会でも野党のなかなかきびしい反対を受ける、こういうことになっている。そういうあれやこれやをいろいろ
考えてみますと、今後の
所得税の一般
減税というものは、国の大きな政策の中から、また諸
外国の国際
比較の中から、どういうぐあいに
考えていくかということが非常に大きな課題であり、またそういう
国民的なコンセンサスなくして、これ以上
減税をどうしてやるか。それから社会資本なり社会
福祉なりに、どれだけの資源を
財政の機能において分配をしていくかということが非常に大事な問題になり、それこそほんとうに
国民の合意が得られなければ、なかなかむずかしいような
段階に差しかかっている。そういう
意味で、
税制の
方向というものも、先般、
税制調査会の
答申がございました。今後できるだけ早い機会をとらえて
減税をやっていけという話がありますが、何らか別に財源を見つけるのでなければ、非常にむずかしいような
段階にきていると思っております。そういう
意味で私は、
租税全般が見直されなければならない
段階に来ているというふうに思っておりますけれ
ども、午前中の
同僚議員の
質問に対して、長期の
答申の線というものを
大臣は守っていかれるというような
方向を言っておられますが、もう一度長期の
税制問題についての検討が必要であるのではないかというふうに思うわけでございます。
非常に時間がないものですから、一方的にしゃべってしまいましたけれ
ども、そういう
長期税制の
あり方というものを、ここでもう一度検討していく気持ちがあるかどうかという一点だけお答えいただいて、あとこまかい問題の
質問は、後日に譲りたいと思います。