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1972-03-14 第68回国会 参議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月十四日(火曜日)    午前十時七分開会     —————————————    委員異動  三月十日     辞任         補欠選任      原田  立君     鈴木 一弘君  三月十三日     辞任         補欠選任      吉田忠三郎君     和田 静夫君  三月十四日     辞任         補欠選任      和田 静夫君     吉田忠三郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         前田佳都男君     理 事                 柴田  栄君                 嶋崎  均君                 戸田 菊雄君                 多田 省吾君                 栗林 卓司君     委 員                 青木 一男君                 伊藤 五郎君                 大竹平八郎君                 河本嘉久蔵君                 棚辺 四郎君                 津島 文治君                 西田 信一君                 桧垣徳太郎君                 竹田 四郎君                 成瀬 幡治君                 松井  誠君                 松永 忠二君                 横川 正市君                 和田 静夫君                 渡辺  武君                 野末 和彦君    政府委員        警察庁刑事局長  高松 敬治君        法務省民事局長  川島 一郎君        大蔵政務次官   船田  譲君        大蔵省理財局長  橋口  收君        大蔵省証券局長  坂野 常和君        大蔵省銀行局長  近藤 道生君        大藤省国際金融        局長       稲村 光一君    説明員        大蔵省銀行局中        小金融課長    貝塚敬次郎君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君        全国銀行協会連        合会会長     小山 五郎君        全国信用金庫協        会会長      小原鉄五郎君        生命保険協会会        長        関  好美君        東京大学教授   館 龍一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○準備預金制度に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出) ○租税及び金融等に関する調査  (当面の財政及び金融等に関する件)     —————————————
  2. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  三月十日、原田立君が委員辞任され、その補欠として鈴木一弘君が選任されました。  また、昨十三日、吉田忠三郎君が委員辞任され、その補欠として和田静夫君が選任されました。     —————————————
  3. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) まず、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  準備預金制度に関する法律の一部を改正する法律案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁佐々木直君の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 前回に引き続き、準備預金制度に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、御多忙中のところ、本案審査のため本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  これからの会議の進め方につきましては、まず、小山参考人小原参考人関参考人館参考人の順で、お一人約十五分程度意見をお述べいただきまして、その後委員方々からの質問にお答えいただくという方法で進めてまいりたいと存じますので、各位の御協力をお願い申し上げます。  それでは、小山参考人にお願いいたします。
  6. 小山五郎

    参考人小山五郎君) 全国銀行協会連合会会長をつとめております、三井銀行小山でございます。  ただいまのお話のとおり、今回の準備預金制度に関する法律の一部を改正する件につきまして意見を申し述べるようにとのことでございましたので、改正法案内容及び法律改正に伴います準備預金制度運用面の問題につきまして幾つかの意見を申し述べさしていただきたいと思います。  まず、今回の制度改正の趣旨についてでございますが、法案提出理由の中にもございますように、今後の新しい金融環境に対処して有効適切な金融政策を実施していくためには、準備預金制度機能を強化し、その活用をはかることが必要であるということでございます。  御案内のように、最近の国際収支大幅黒字と、国内経済活動の停滞によりまして、金融は顕著な緩和基調をたどっており、いまこそ金融正常化を推進する絶好機会であると存ぜられるのであります。  一方、対外的な面におきましては、当面の外貨準備増加状況にかんがみまして、海外からの短資流入に対し何らかの有効な対策を講ずることが必要と思うのであります。  このときにあたりまして、準備預金制度機能活用することにより、金融政策手段を整備し、その効果的な運営をはかりますことは、きわめて意義のあることであり時宜にかなった措置と考えております。  すでに御存じのように、金融政策には公定歩合操作オペレーション政策、そうしてこの準備預金制度の三つがあるのでありますが、わが国では従来、経済の高成長に伴う資金需要の急増のあまり、わが国特有の、いわゆる日銀の窓口指導なる直接的貸し付け管理政策が主流をなしておりまして、これはそれなりにその時期に応じた効果をあげてきたのであります。  ところで、最近における金融緩和の進行に伴いまして、日本銀行の対市中貸し出しは大幅な減少を見ておりまして、一般貸し出しはほとんどないような状態でございます。また現在はかつてないほどの多額の国債が発行されておりますが、なかんずく四十七年度予算案におきましても、四十六年度を大幅に上回る一兆九千五百億円の国債発行が見込まれておりまして、これからは金融市場におきまして、本来最も市場性流通性の高い投資手段であるべきはずでありますところの国債が、大量に出回ることになるわけでございます。  このような新しい金融情勢の展開に伴いまして、今後は金融界が戦後絶えず課題として掲げながらも、十分果たし得なかった金融正常化を促進すべき絶好機会が到来したと考えられるのであります。  申し上げるまでもないことではございますが、準備預金制度活用することのねらいは、金融機関預金などの債務一定割合日本銀行預け金として積み上げることを義務づけることによりまして、金融機関資金ポジション変化を通じて、貸し出しとか、投資に対しまして影響を与えることでございます。預金準備率の変更は、今後は金融情勢に応じて従来よりも機動的に行なわれ、特に引き締め時には効果を発揮することになると存じます。  また準備預金制度運営は、他の金融政策手段、すなわち先ほど申し上げましたようなオペレーション政策と、公定歩合操作と相互補完的な効果を発揮するように行なわれることが期待されるのでございまして、この制度運営は他の二つ政策手段効果を高めるところにも、そのねらいがあるのだと考えられるのでございます。  このように考えますと、準備預金制度活用することによって、金融政策有効性を高めていくにあたって、その基本的な前提となりますことは、金融正常化、すなわち金利の自由な変動によりまして、資金需給が調整されるような金融市場状態を保つということであります。そしてこ  の金利メカニズムが十分に働くような金融市場の整備をはかりますためには、金融政策運営におきましてその効果が普遍的であるような、オーソドックスな政策手段活用が必要であるというこ  とにもなるのであります。  言いかえますと、これからの金融政策の望ましいあり方としては、これまでのような、金融機関に対する窓口指導などのような直接的な規制を廃止いたしまして、それにかわる手段として、公定歩合操作オペレーション政策並びにこの準備預金制度という、効果が普遍的な、そしてオーソドックスな政策手段活用することが肝要ではないかと存じます。  当局におかれましては、金融政策の今後の運営にあたりまして、今回改正される準備預金制度活用とあわせまして、金融市場におきます金利機能を十分に発揮せしめるような環境づくりの御配慮をぜひともお願い申し上げる次第でございます。  次いで、準備預金制度に関する法律改正案具体的内容につきまして、若干の意見と御要望を申し上げたいと存じます。  第一に、この制度適用対象となります金融機関範囲が拡大されたということ、これが一つ。  それから適用対象となる債務勘定としまして、預金以外の債務をも一対象に加えられたというこの二つの点につきましては、本制度支払い準備的の性格から、一般的金融調節手段に転化したことを意味するものでありまして、また従来引き締め期における整合性に欠けた点、すなわち引き締め対象外金融機関がとかく引き締めにもかかわらず、貸し出しが増加したというような、そういったうらみがあったわけでございますが、かような整合性に欠けた点を是正するものでも一あり、金融政策普遍化として適切な改正であると考えます。  第二に限度引き上げの点でございますが、その最高限度は百分の十から百分の二十に引き上げることになったのでございます。諸外国の前例に徴したことと存じますがもちろんこれは最高限度でありますから、実際に適用される準備率はこれよりずっと低い率になるわけでありましょうが、残高基準として適用される準備率を変更する場合におきましては、金融機関経営に急激な変化を与えることのないように御配慮願いたいと思うのでございます。  この点に関連いたしまして、運用上の問題として一つ申し上げておきたいのでございますが、準備率現行の水準よりも引き上げて、制度機能を高めていこうという場合に、日本銀行への預け金に利息をつけることを、ぜひとも一考慮していただきたいのでございます。これは通常の日本銀行預け金の場合におきましては、日常の決済のための支払い準備資金でございますので、無利息が当然でございますが、準備率をかなりの幅で引き上げることによって、金融政策有効性を高めようとします場合におきましては、預け金付利することによって、金融機関経営に対する圧迫を小幅にとどめることが考慮されてしかるべきではないかと思うからでございます。  第三に、準備預金計算方法でございますが、残高基準とする方式に加えまして、今回増加額基準とする式を新しく設けましたことにつきましては、限界的な貸し出し増加を抑制しようとする場合等におきましては、残高方式よりも一合理的であると存ぜられます。  第四でございますが、これは目下最も一緊要な問題であると思うのでありますが、すなわち非居住者自由円預金等の非居住者に対しての債務につきまして、準備率最高一〇〇%とするということであります。これは為替管理を補うべき海外短資流入抑制策といたしまして、きわめて有効適切な措置と存じます。ただし非居住者資金流入を抑制するために、著しく高い準備率設定するような場合には、対象債務増加額基準とする方式のみを適用することが適切であると存じます。  またこの非居住者勘定に対しまして、特別の準備率を設けますことに伴いまして、今後の銀行に対しましての為替管理方法は、直接規制をできる限り回避いたしまして、かような準備率操作の機動的な運営を主体とすることが望ましいと存ぜられるのであります。  以上をもちまして、私の公述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
  7. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ありがとうございました。  次に小原参考人にお願いいたします。
  8. 小原鉄五郎

    参考人小原鉄五郎君) ただいま御紹介をいただきました全国信用金庫協会会長で、城南信用金庫理事長小原でございます。  平素、私たち信用金庫は、諸先生方にいろいろお世話に相なっておりますことを、この機会を拝借いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  本日はただいま本委員会で御審議中の準備預金制度に関する法律の一部を改正する法律案について、意見を申し述べるようにということでございまするが、結論を先に申し上げますれば、本改正案賛成の者でございます。  しかしながら本制度預金通貨の創出を直接に規制する効果を持っておりまする点では、より強力な政策であると言われております。それだけに個々の金融機関経営に及ぼす影響が大きいので、その運用にあたりましては慎重なお取り扱いが必要であります。一般民間金融機関の中で、中小企業専門金融機関と、国民大衆対象とした金融機関必要性はいまさら申し上げるまでもございません。現行金融制度のもとで準備預金制度改正するにあたりまして特に重要な問題は、この専門金融機関立場を十分御認識いただいて、その専門性を阻害することのないよう、特に慎重な御配慮をお願い申し上げる次第であります。  この意味におきまして、これからの準備預金制度改正案と、その運営につき、二、三の問題点を申し述べさせていただきます。  第一の問題点は、対象金融機関範囲についてでございます。現行制度におきましては、準備預金適用金融機関の保有する預金は、全金融機関の保有する預金の六五%程度にとどまっておりまする関係上、本制度有効性確保という観点からすれば、対象金融機関範囲を拡大することはやむを得ないものと思われます。  第二の問題点は、準備預金準備率設定基準についてでございます。準備率最高限度現行百分の十から百分の二十に引き上げる案につきましては、最近の経済金融の動向と国際化の進展に伴い、本制度の弾力的な活用をはかるという事情から適切な処置と思います。しかし、現行制度におきましては、預金種類及び指定金融機関別にそれぞれ準備率格差が設けられております。これは、預金種類によって信用創造力格差があり、指定金融機関日本銀行との信用取引のあるなし、経営規模によるコスト高低等を考慮されたものであり、基本的にはこの方針を維持することが金融機関の実態に即応するものでございます。全金融機関に一律に準備率適用することはむしろ公平を欠き適当ではないと存じます。  日本銀行より信用取引適用を受けられない中小企業専門金融機関に比して、日本銀行より豊富な信用取引適用を受けておられるところと同じ条件でこの適用を受けるということになりますると、非常に無理が生じますので、適用の比率について十分な御配慮が必要であります。  信用金庫は、中小企業庶民大衆対象として金融事業を行なっておりまする関係上、個人の貯蓄性預金が多いのが特色で、預金の八〇%が定期性預金でございます。このほか預金貸し出しとも一非常に小口のものを多数取り扱っておりまする関係上、金融に伴う経費の節約につとめましても一高コストになるのでございます。  こうしたことを勘案せられて、準備率設定にあたりましては、中小企業金融特殊性を十分御配慮の上、一般金融機関に比べ、従来も一低率に設定していただいておりまするが、今後ともこの点を継承していただくことを特にお願い申し上げます。  第三の問題点は、準備預金に対する付利の問題でございます。現在は日本銀行に対する当座預金として無利息扱いになっておりまするが、金融政策有効性を確保する手段としての準備預金制度を円滑に運用するためには、むしろ付利することが望ましいのであります。金融調節をするという本制度目的と、付利するという問題とはおのずから相違いたしておりまして、付利するから調節機能を失うということにはならないと思うのであります。  先ほども申し上げましたとおり、われわれ中小企業専門金融機関は、高いコスト資金をもって無利息準備預金をするということは、それだけ資金コストを引き上げる結果となり、大衆に対する貸し出し金利に響くおそれがありますので、準備預金に対し、利子をつけることが必要であると存じます。この点につき、格別な御配慮をお願い申し上げます。  そのほか非居住者自由円勘定等に対する特別措置は、急いで実施に移す必要があると考えられますので賛成であります。  以上で私の意見を終らせていただきます。御清聴ありがとうございました。
  9. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ありがとうございました。  次に、関参考人にお願いいたします。
  10. 関好美

    参考人関好美君) 御紹介いただきました生保協会会長明治生命社長、関でございます。  ただいま御審議願っている準備預金制度に関する法律の一部改正について、生命保険会社立場から意見を申し述べる機会を与えられましたことを光栄に存じます。  まず、国際短期資金流出入規制するための措置として、非居住者預金等に対して準備率設定適用することは、過剰流動性を収束することでございますので、まことに適切な施策と考えられるのでありますが、一方、この制度対象の拡大をはかることについては、対象機関によって慎重に審議されることが望ましいと存じます。特に生命保険会社への適用ということについては、商業銀行資金などと異なる生命保険資金特異性なり、生命保険会社特殊性などについて、十分考慮を払う必要があると思いますので、それについて時間の関係上次の二つの点をあげて要点だけを申し述べたいと存じます。  まず第一点は、生保資金特異性についてであります。  生保資金は、将来の保険金支払いに充てるため保険会社大衆契約者から払い込まれた保険料を積み立て、二十年、三十年の長期にわたって運用するもので、その量は毎年安定して増加していく性質のも一のですが、これは申すまでもなく、単純な貯蓄性資金であり本源的な蓄積資金でございます。したがって、銀行資金のように、信用を創造する機能は本来持っていないのであります。金融面からの景気調整策は、信用創造がもたらす貸し出しの増幅を規制することをもってほぼその目的を達すると思われますので、その方面を十分に規制さえすれば、信用創造機能を欠いている生命保険会社をその対象に入れるには及ばないという考え方もあり得ようかと思うのでございます。  第二点は、生命保険会社特殊性についてであります。  準備預金制度について、商業銀行の場合ですと、中央銀行との間に経常取引がございまして、オペレーション資金借り入れなどを通じて信用の供与を受ける利益があるわけでございますが、生命保険会社の場合は、中央銀行との取引は一切ございませんので、中央銀行信用に全く依存しないのでございます。したがって、生命保険会社の場合、かりに準備率がゼロでなくて、わずかの率でもかけられたといたしますと、その資金の凍結によるマイナスの不利益は、現在はほとんどの生命保険会社相互組織でありますので、直接契約者へ全部はね返るのでございます。中央銀行金融政策の及ぶ範囲が狭いからといって、信用創造機能のない生命保険会社にまでその対象を広げ、その資金の一部を凍結することは、契約者への利益の還元を阻止する結果となり、契約者への負託にこたえることを第一義の責任としている生命保険会社としては、慎重を期せざるを得ないところでございます。  以上、準備預金制度に関連して、生命保険会社立場からいろいろ申し述べましたが、このような生命保険資金特異性と、生命保険会社特殊性があるため、諸外国におきましても資金運用内容に多少の相違はありますが、生命保険会社はこの準備預金制度対象に入っておらないと聞いておるのでございます。  次に、今回、金融制度調査会答申で、生命保険会社準備預金制度対象に入れられることになった動機の一つとして、生命保険会社資金が近来順調に伸び、しかもそれが貸し付け中心運用になっている点を指摘されますので、それについてのことを少し申し述べて御参考に供したいと存じます。  生命保険会社資金は、長期契約貯蓄型であるために、毎年安定して増加してまいることは自然の結果でございます。それでも昭和四十五年度末で五兆五千億という数字でございまして、全国銀行資金量は同時点でたしか四十六兆円でございますので、ウエートはかなり小さいのでございまして、金融機関としての地位を見ましても、戦前は一〇%、一割でございましたが、これを現状でははるかに下回る五・八%の状況でございます。  またその運用にあたっては、当然長期にわたり安定した、しかも利回りのよいものを選んで運用せねばなりませんが、同時に公共性の強い事業でございますので、国策に正しく沿って運用していくことも大切でございます。ことにこれからの国策として、社会資本生活環境施設の充実など、国民福祉優先への方向に次第に転換されてまいることと存じますので、その役割りは一そう大きくなるものと考えておるのでございます。  ところで、戦後最近に至るまで、わが国高度成長政策の推進にあたり、企業資金調達借り入れ金中心でまかなわれ、一方これに対して生命保険会社のサイドでも、低利で固定的な発行条件の公社債や、利回り採算の薄い株式投資などの方面より、投資収益の多い中期あるいは長期貸し付け中心へと運用重点が置かれるようになりました。現在でも一生保会社資金貸し付け金の占める割合は七〇%近くになっている状態でございます。また過去において、たとえば昭和四十二年当時の金融引き締め期において、元来信用創造につながらない生命保険会社資金ではありますが、生保貸し付けがふえたため、引き締め効果が減殺したのではないかというような見方をされたこともございます。  今日の生命保険会社貸し付け重点運用は、高度経済成長期における日本的な特殊の事情に基づくもあとも存じますが、今後は時勢も転換しつつある様子でございますので、こういった時期に金利体系資本市場の正常な発展など、いわゆる環境づくりの実現に私どもも協力して、長期金融の定着に努力するはもちろんのこと、今後金融引き締め時における生保資金貸し出しなどについては、国の金融政策方向に沿って施策を講じ、十分慎重を期してまいりたいと考えているものでございます。  最後に、先般の準備預金制度に関する金融制度調査会結論についてでありますが、この答申は、それぞれの金融機関資金の特質は別といたしまして、ともかく金融引き締め時に、金融機関資金供給がある限り、経済活動を刺激するとの判断に立って、対象範囲を拡大する方向に決定を見た様子でございますが、同時に生命保険資金についてはその特異性を認め、生命保険会社への適用にあたっては適用の時期、方法などについて十分検討することが適当であると答申されているのでございます。一国の金融制度をつくろうとする際には、制度論としてこのような答申が出ることはやむを得ないのではないかと理解いたしまして、私どもとしては必ずしも全般にわたって同意見とは言えないのでございますが、金融政策に協力するという意味で、法律生命保険会社がこの準備預金制度対象となった場合も同様やむを得ないことと了承いたしておる次第でございます。  同時に、金融制度調査会答申に特に盛られた生命保険会社に対する具体的な適用の時期なり方法については、今後の法律運用に全面的に期待いたしたいと思います。ことに、この運用の点について、ただいま大蔵大臣の諮問機関である保険審議会で検討もされております。同審議会はおそらく金融制度調査会の趣旨を体し、また私どもがただいま申し述べました生命保険会社の特質をいろいろくんで、適切な結論を出されることを心から期待いたしているものでございます。どうか準備預金制度生命保険会社への適用にあたっては、この保険審議会の意向について十分御考慮いただければはなはだしあわせに存ずる次第でございます。  以上、簡単でございますが、準備預金制度に対し、生命保険会社立場からの意見を申し述べさせていただきました。御清聴まことにありがとうございました。
  11. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ありがとうございました。  次に、館参考人にお願いいたします。
  12. 館龍一郎

    参考人(館龍一郎君) 御紹介にあずかりました館でございます。私の意見をごく簡単に申し上げたいと思います。  準備預金制度活用必要性につきましては、金融制度調査会の「準備預金制度活用に関する答申」の中に、最近における内外金融情勢の推移にかんがみ今後金融政策有効性を確保するという観点から準備預金制度活用をはかるべきであるといたしまして、具体的にその理由を四つあげておるわけでございますが、この四つの理由をさらに若干ふえんいたしまして、なぜ今日準備預金制度活用が必要であると考えられるかという点についての私の見解を申し述べてみたいというように思います。  まず第一は、短期的にはともかくといたしまして、今後為替管理が次第に緩和されざるを得ないというように思いますし、資本についてもますます自由化が進まざるを得ないというように考えられるわけでございます。そういう状況のもとで、国内均衡を達成するための金融政策というのを考えてみる、特に金融政策の中でも金利政策というのを考えてみますと、この金利政策活用には、どうしてもある制約が加わってくることにならざるを得ないというように思われるわけでございます。  どういう点かと申しますと、従来のように、厳重な為替管理が行なわれておるという場合には、国内のインフレ圧力を取り除くために、金利を引き上げれば、それによって国内のインフレ圧力を取り除くということができたわけでございますが、先ほども申しましたように、為替管理が緩和され、資本の自由化が行なわれたという状況のもとで、国内均衡達成のために金利を引き上げますと、短資が大量に流入してきて、それが金融引き締め政策効果を相殺してしまうということが起こるわけでございます。特に金利が、国際金利を離れて上昇するというような場合には、短資が大量に流入してきて、効果が相殺されるという可能性が出てくるわけでございます。同じように、景気刺激のために低金利政策をとりますと、短資が大規模に海外に流出していってしまって、その結果国内ではかえって金融が逼迫するというような状況が起こってくることになるわけです。  で、これは単に抽象的にそういう事態が考えられるだけではなくて、事実すでに西独などではそういう矛盾に悩んできておったわけでございます。つまり、このことを別の観点から申しますと、為替管理が緩和され、資本の自由化が行なわれるという状況のもとでは各国の金利水準はどうしても国際金利水準にさや寄せされざるを得ないという面があるわけであります。二国の金利水準が、世界的な金利水準と大幅に乖離するということはできないということになってくるわけであります。金利政策についてはそういう制約が加わってくるということをこの際認識しておくことが重要であるというように思うわけであります。したがいまして、国内の均衡を達成維持していくためには、金利政策以外の金融調整手段というのをどうしても整備しなければならないということになってくるわけであります。で、それが金融制度調査会答申が、金融政策手段の整備、多様化が必要であるというように述べていることの背景であるというように申してよろしいと思うわけであります。  で、そういう金利政策にかわる金融調整の手段といたしまして、準備預金制度活用ということが重視されるわけであります。ところで、こういう主張に対しましては、準備領金制度のような量的な金融政策も結局は金利水準に影響を与えるのであって、したがって、量的な金融政策と、何といいますか、金利政策との間には本質的な違いがないんではないかという反論が予想されるわけでございますが、しかし、実はこの二つの間には違いがあるわけでございます。と申しますのは、もし貸し付け資金市場が完全市場であるならば、金利のほうで調整しても、量のほうで調整しても全く同じことになるわけでございますが、実際の金融市場というのは、教科書の中で考えられているような完全市場ではありませんから、したがって、量的な金融調整と金利による調整とではその結果が違ってくるわけでございまして、したがって、この際必要なことは量的な金融政策を整備していくということ、金利にはあまり影響を与えない形で金融調整を行なっていく、量的金融政策手段を整備していくということが望まれるというように思うわけでございます。第二は国内の金融環境といいますか、金融情勢変化してきておるということであります。  御承知のように、戦後の日本の金融の重要な特徴の一つはいわゆる過少流動性という状況があったということでございます。つまり企業は絶えずオーバーボローイングと呼ばれる状態にあり、銀行はオーバーローンという状態にあって、恒常的に銀行日本銀行から借り入れを行なっておるという状況にあったわけであります。そういう状況のもとでは、日本銀行の行ないます貸し出し増加規制その他の直接的な規制がきわめて有効に働くというように考えられます。事実窓口規制、ポジション指導等の直接的な規制が従来の日本の金融政策の中心的な手段であったというように言ってよろしいと思うわけであります。  ところで、こういう過少流動性という状況が最近急速に変化しつつあるわけでございます。お手元に提出されております参考資料を見ていただきましても、日本銀行からの一般貸し出しというのは、急速に減少してきてほぼゼロという水準に近づきつつあるという状態になっておるわけでございます。もちろん最近のような、ときとして過剰流動性と呼ばれるような状態が将来も継続するものであるかどうかという点については意見が分かれております。しかし、従来のような民間投資主導型の経済から、財政主導型の経済経済が変わっていくとするならば、そしてそういうように変わっていくことが望ましいというように思うわけでございますが、経済が財政主導型に変わっていって、成長通貨が日本銀行オペレーションによって供給されるというようになっていけば、従来のように銀行が恒常的に日本銀行から借り入れを行なっておるという状況はなくなっていくというように考えてよろしいのではないかと思うわけであります。またそういう状態が生じないということが望ましいというように考えるわけでございます。  で、状況がいま申しましたように変わってきますと、日本銀行の行なう窓口指導というものの効果は当然減退してくることになりますから、したがって、これにかわる政策が必要になってくるわけであります。これにかわる政策手段として、金利政策を今日以上に活用していくということは、それ自体望ましいことであるというように思いますが、しかし、先ほども一申し述べましたように、金利政策については国際的な制約が一方にあるということを考えますと、金利政策以外のやはり金融調整の手段を整備しておかなければならないということに、この面からもなってくるというように思うわけでございます。これが第二の点であります。  それから第三は、準備預金制度適用外の金融機関貸し出しの量が最近急速に増大してきておる。これがしばしば金融引き締め期に、金融引き締め政策効果を弱める働きをしておるという問題があるわけでございます。したがって、これらの機関に対しても準備預金制度適用する余地を開いておくということはこの際ぜひとも望まれる点ではないかというように考えるわけでございます。  非常に古い話になりますが、昔、英蘭銀行制度改正が行なわれまして、ピール銀行条例が制定されましたときに、人々は現金通貨だけをコントロールしておけばそれで十分金融調整の目的は達せられるというように考えた時期があったわけでございますが、しかし、そういう制度を実際に採用し、運営してみますと、現金通貨以外の預金通貨であるとか手形というのがふえてきまして、それが金融政策効果を弱めるという結果が出たということがよく知られておるわけであります。それと同じことでありまして、新しい金融資産が次々に生み出されてまいりますと、従来のように現金預金だけを調整していたのでは十分な金融政策効果をあげていくことができないということになってきておるというように言ってよろしいかと思います。これが第三の点でございます。  それから最後に第四といたしまして、第一のところでも述べましたように、為替管理が緩和され、資本の自由化が行なわれますと、当然浮動的な短資流出入が活発になるということが予想され、これが国内金融政策に対して撹乱的に作用する可能性が出てくるわけであります。したがって、そういう浮動的な短資流出入が国内経済に対して撹乱的な影響を与えるのを遮断すると申しますか、中立化するというための政策手段としても準備預金制度活用していくことがぜひとも必要であるというように思うわけであります。  もちろんこの場合に、もう一つ手段として為替管理を強化するという形で短資に対応するということが考えられるわけでありますが、しかし、そういう直接的な調整手段よりは、非居住者預金に対する準備率を引き上げるというような形でこの問題に対処していくほうが、対処のしかたとしてははるかにすぐれておるというように考えるわけでありまして、そういう意味でぜひともこの制度を採用すべきであるというように思うわけであります。  以上四つの点を申し上げましたが、要するに政策手段が多様化されれば、それによっていろいろのポリシーミックス、いろいろの政策手段の組み合わせを選んで、そして最もスムーズに金融調整を行なっていくことができるようになるということが、この準備預金制度の整備活用ということの一つのポイントであるというように申してよろしいと思います。  なお、以上とやや論点が離れますが、信用創造能力という問題につきまして、まあ対象金融機関対象勘定を拡大するという問題をめぐって、銀行には信用創造能力があるが、ほかの金融機関には信用創造能力がないという決定的な違いがあるのであるという主張がしばしばなされることがあります。しかし、これは誤りであるというように私は考えておるわけであります。  信用創造能力というのを通貨の創造という狭い意味に限定すれば、確かに銀行以外の金融機関信用創造能力がないわけでありますが、しかし、どの金融機関も何らかの方法資金を集めて、それを貸し出しなり、証券投資に向けていくという点では全く同じ役割りを果たしておるわけであります。そして、それによって一国全体の資金のアベイラビリティーを高めていくという点では、どの金融機関も違いがないわけでありまして、違いがあるといたしますと、どの点であるかというと、先ほども申しましたように、銀行は通貨を創造することができる、預金通貨を創造することができるという点と、それから資金のアベイラビリティーを高めるというように申しましたが、その資金のアベイラビリティーを高める程度に多少の違いがあるということでありまして、その本質には違いがないということを最後に申し添えまして私の意見を終わることにしたいと思います。
  13. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ありがとうございました。  それでは、参考人に対し質疑のある方は順次御発言を願います。
  14. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 最初に、準備預金に利子をつけてほしいという御意見が出ましたですけれども、どのくらいつけたらいいだろうというふうにお考えになっておるのか、どのぐらい利子をつけてほしいというお気持ちでしょうか。それは小山さん、小原さんお二人から出ておりましたが、どちらでもいいですが。
  15. 小山五郎

    参考人小山五郎君) 準備預金に利息をつけることを運用上の問題としてぜひお考え願いたいということは、政策についてなだらかな運用ということを望むからでございます。  ところで、その利息の範囲内ということは、なかなかこれはむずかしいことだと存じますが、諸外国の例やなんかをもってしますというと、政府の短期大蔵証券の金利ぐらいをつけているところが、準備預金に対して付利性を採用している国ではあるようでございます。  以上、御参考までに、そういうような点で御考慮願えればよろしいんじゃないかと思うわけでございます。
  16. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 館さんその点どうでしょうかね。
  17. 館龍一郎

    参考人(館龍一郎君) 私は準備預金制度適用される金融機関範囲が限定されておるという場合には、これは金融機関ごとに差別がなされるということになりますから、そういう場合には、金利を付するというのは一つ政策であるというように考えておりますが、対象機関がほぼすべての金融機関を網羅するというような状況になったときには、原則としては、付利するというのは適当でないというように思うわけです。ただ、実際の政策適用の問題としては、急激な変化というようなことは、これは避けなければならないというように思いますから、したがって、そういうショックをやわらげるという意味において、絶対に付利すべきではないとまでは考えておりません。
  18. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 もう一度館さんにお伺いしますが、過去一〇%、大体最高にどのくらいいったかというと、一丁五%くらいまでだと、こう言っておりますですね。これが二〇%と、こうなりますと、運用でどうなるか、どこまでいくかわかりませんけれども、かりに想像としてどういうふうになってくるかわかりませんが、一〇%をこすような場合も想像してもいいと思います。そういうような場合でも、原則は原則としてつけるべきではない、片方のほうで範囲のほうに制限がある以上はですと、こういうことでございましょうか、どうでしょうか。そこら辺のところは私らにはちょっとわかりませんから、率直なひとつ御意見が承りたいと思います。
  19. 館龍一郎

    参考人(館龍一郎君) 私自身は、準備率が非常に高くなったからといって、原則が変わるというようには考えておりません。ある程度の負担がかかることによって、初めて調整の目的が達せられるという性質のものだと。どこにも負担がかからないで調整が行なわれるというような政策はあり得ないというように考えております。
  20. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 関連して。  館先生にお伺いしたいと思うのですけれども、先ほど金利政策には制約がある。したがって、量的な規制手段として準備預金制度を考える必要がある。その際、反論として、量的な規制は並行的かどうかは別にして、金利に及ぶはずだ。これに対しては、金融市場は完全市場ではないんでそういったことはないと、あっさりお答えになったのですけれども、ほかの参考人方々の御意見、それぞれ資金コストということを、経営の責任者ですから当然のこととして主張されます。その意味で、量的規制金利関係を一応分けてお考えでございましたから、当然のこととして、付利をするんだということが前提にあるのかと思ったんですが、いまの御発言では、原則は付利すべきではないのだということになると、結局、金利への実質的な波及効果ということは無視できなくなるのではないでしょうか。その点お伺いしたいと思います。
  21. 館龍一郎

    参考人(館龍一郎君) 準備率をたとえば引き上げるというような場合に、それが経営の負担になるということは、非常に明らかでありますが、その負担を必ず、ほかに転嫁し得るかといえば、必ずしも転嫁し得ない場合もあるわけです。私が申しましたのは、貸し付け資金市場、特に金融機関を中心とした貸し付け資金市場をとって考えてみますと、これは完全市場ではありませんから、したがって、かりに資金コストが上がっても、それをすぐに資金の借り手なり貸し手なりに転嫁し得るかといえば転嫁し得ないというのが実情ではないだろうかというように思います。  そこで、そういう場合に何が行なわれるかといいますと、結局、量的な規制がその面で行なわれてくることになるんではないか——つまり、貸し付けが抑制されるとか、そういうことになるんではないだろうかというように思います。
  22. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私も、意見を言えばいろいろとあると思いますけれども、館さんの御意見、急速な変化を求めてはいかないというところにウェートがある御発言、原則は原則としてと、そういうふうに理解をしておきます。  次にお伺いしたい点は、株が非常に異常な値上がりを示しております。それに対して、これは法人買いなんだから個人は手を出しちゃいけませんよ、というようなことで済まされないと思います。  それからもう一つ、株のほうでそういうことになれば、この次はそういうだぶついておる金がどこへ流れていくかというと、土地その他へ流れてしまう。それじゃそういうようなことをチェックすることはできぬぞよと、こう言えば、これはたいへんなことなんです。それかといって、じゃあチェックしなさいというと、なかなかこれはできる問題じゃないと思うんですね。そういうようなことについて、何かいい案が、実務として金を動かしておみえになるので、どんなことか、何かお考えがあるなら、この際教えていただきたいと思います。
  23. 小山五郎

    参考人小山五郎君) たいへんこれはむずかしい御質問でございまして、実際の運用面におきまして、一律にしかじかかくかくというような方策はないかと存じます。と申しますのは、最近におきましては、御案内のような、いつの時期までございましたか、ちょっと私的確に覚えておりませんが、丙種事業というようなことで基準一つきめられておりまして、その丙種事業に対しては、これは貸し出しはやっちゃいけないんだというような時代がございました。そういった規制というものは、現在はすべて取り払われておりますので、なかなかどれが、社会的の基準に照らし合わせて適切なりやいなや、公共的の考え方から金融が立って、どの程度にそれをセーブし得るのかというようなことになりますというと、非常にこれはむずかしいことだと思うんでございますが、ただ、常識的には、一応御個人の株の場合やなんか、これは、御相談を金融に対してなさる場合、これはなかなか、どの株がもうかるとか、もうからないとかというような御相談を窓口でときとして受ける場合があるんでございますけれども、なかなかそれに対して、われわれ銀行員といたしまして、株価の上下というものに対する判断はきわめてむずかしいものでございますから、そういう点について、この株はだいじょうぶでしょうというようなことは一応申し上げないことにしているわけでございます。ただ、これは安全であるかどうかという点だったらば何ですが、これは上がるか上がらないかというような点についての一応これはまあ常識的なお答えをお得意さんにしておるわけでございますが、しかし、どうしてもそのお得意さまが、御自身の御預金もあって、お取引もあって、そいつをお使いになって株をお買いになるんだということであったら、これはチェックはとてもできないことでございます。  それからまた、同時に、いわゆる土地や何かの、レジャーの対象ということになるかと思うんでございますが、このレジャーのまた観念と申しますのがだいぶわれわれ明治の観念と違ってまいりまして、いわゆるレジャー産業というものが、ただ遊びほうけるための遊びの対象、それをつくるための施設産業ということだけではない、もっともっと広い意味の、第三次産業的な、また厚生的な意味合いも含まれているかと思いますので、おのずからそれに対する観念は違うと思うんですが、まあ極端なことを言いますというと、非常な当て込みをある土地に対してやる——あんまりお取引もないような方が来て、土地を買うんだから金を貸してくれ、これはこれこれこういうわけだというようなことを持ってまいります場合は、たいていどうも信用の点でもって非常にあいまいな点が出てまいりますので、そういう場合には回収その他の点から申しましてお取り上げがチェックできるということになると思いますが、しかし御自身でお金をお持ちになっていてそしてお使いになるということになりますと、ちょっと道義的にこれはおやめなさいというわけにも、よほどまあその取引関係が密接であって、そういうことも言える人には言うかもしれませんが、なかなか言いにくいと思いますので、先生のいまの御質問、非常に大事な御質問と存じますんですけれども、実際運用面におきまして一律、画一的にしかじかかくかくというふうな窓口の応待に対してのお答えということはできかねるわけでございますが、常識的にやっていくというよりほかないと思います。
  24. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 過般、株とそれから土地の問題が出まして、何か金融に若干の制限と申しましょうか、いろいろなものを加えたらどうだというような意見もあるわけなんです。ところが、おっしゃるように、なかなかどこまでそれじゃあそういうことができるかというとなかなかないわけです。じゃあ金融でいかぬということになるなら税制でどうだろうということで、土地の値上がり等の問題についてやってまいった。まあ優遇税制をやってみたわけです。それから今度の、地域で線引きをやりましていろいろとやりましたけれども、ああいうようなことになった。そこで優遇税制じゃどうにもならぬから、今度は懲罰税制みたいなことを考えるかどうかということですが、そういう金融面でどうにもならぬとおっしゃるなら、何かほかの方法で見つけなくちゃならぬということになれば、いま言う税のほうに逃げるかどうかという問題になってくるわけですが、非常にこういうような問題について私は実務を扱っておみえになる皆さんが、いや実はこんなことがある、こういうようなことをやったらいいじゃないかということがあればと思ったんですが、どうもないぞよと、こうおっしゃるならたいへんなことと思っているわけですが、こういうような点について館先生どうでございましょうか。
  25. 館龍一郎

    参考人(館龍一郎君) たいへんむずかしい問題でありまして、さらに学校教師というのは、前の晩必死になって準備して講義をするという習慣、習性を持っておりまして、準備なしに発言するというのはたいへんむずかしいわけでございます。ただ、いまの御質問、たとえば土地みたいな問題になりますと、私はまあ土地の利用という観点に立って金融をつけたり何かするということは、結局その価格を高めていく方向にしか力は働かない、基本の力関係はそういうものであるというように思っております。ただ、もし全く抽象的に土地の価格だけを下げたいということがねらいであれば、それを達成する手段は幾らもある。ただ、それが現実性をどれだけ持っておるか、そのことがただ土地の値段を下げさえすればそれでいいということが言えるのかどうかという、それから派生してきますサイド・エフェクトまで考えてみますと、なかなかむずかしくて、いまここでにわかに決定的なことを申し上げにくいというようにお答えしておきます。
  26. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 円の切り上げが、いろいろと言っておりますが、やはり再切り上げ必至だということになると、これは根本的に言えば生産性の問題になってくると思いますんですけれども、こういうときに片方じゃインフレ傾向で管理通貨体制の中で、そして行き先も、まあ社会保障制度その他ずっとやってまいりまして、消費型になってくると思うのです。ですけれども、いまのような、たとえば配当が、株で配当を二割やっておる。それから中小企業でお金を借りればやはり一割前後になってくる。で、金のある人は金利で、相当持っておればもう遊んで食っていけるという時代ですね。ですから、金利というものが、私は、国際均衡からいうと、館さんの御意見を引けば、下げれば逃げていきますよということになる。まあ、ある程度ぐらい逃げたっていいか知らぬと思っておるぐらいですよ、いま外貨準備高がこんなに高いわけですから。そこで、金利というものを下げるくふうというものが、こういう緩和時代が非常にいいチャンスじゃないか。そこで、銀行の合理化ですね、簡単に言えば統合、合併、そういうようなことについて銀行協会としてなり、あるいは金融界全体として、いまのこういうときに銀行として、あるいは金融機関として何をなすべきかといえば、私は、そういうようなことについてお考えいただいたほうがいいじゃないだろうか。統合、合理化で金利が下がれば今度はコストも安く輸出ドライブがかかるのじゃないかという議論もあるかもしれませんですけれども、とにかくいろんな意味から見て、円の切り上げは必至だ、切り上げられたときにそれじゃ耐えれる体質も必要じゃないかと思っておりますから、そういうようなことについてはどんなふうにお考えになっておりますか。
  27. 小山五郎

    参考人小山五郎君) これまた非常に大きなむずかしい問題で、短時間でお答えできかねる問題でもあろうし、私自身の力量以上の問題かと存じますが、円の再切り上げということと、銀行の態度というふうな直接的な結びつきはちょっとお答えしかねる問題かと思うのでございます。ただ、いまの非常に金融緩慢——これはまあ超緩慢ということばがございますが、私は、超ということばは現実的には少し言い過ぎであって、いままでの流動過少性がここのところで確かに緩和したということは事実ですが、超ということになると、あらゆる銀行のポジションというものが、これはもうリザーブ・ポジションになってなきゃ超ということは使えないかと思うのでございますが、いずれにしましても、いま緩慢期でございますので、おっしゃる意味での、私も公述に申し上げ、参考人の皆さま方も申し上げたように、ちょうど正常化する一番いいときだと思いますので、その正常化正常化ということばはよく使われるわけですが、正常化って一体何だろうかということなんで、これまた的確な判断は——判断というか、基準はないかと思うのでございますが、要するにいまの金利の問題に関する限り、金融市場における金利というものの機能が自由に働いて、借りて貸しておのずからそこのところの需給関係金利の値段というものがきまる、そういう完全な状況はございませんが、できるだけ他からの制約分子がない状況というのが私は正常化と言えるのじゃなかろうかと思うわけでございます。そういう意味合いにおきまして、ただいまの流動性が非常に多く豊富になってきている現状では、当然のことながら金利はこれは下がりましょうし、その下がることに対して金融機関というものは、利ざやはよしや狭小になりましても、狭くなりましても、経理は苦しくなりましても、そこにおいて初めて真の合理化ということができるのじゃなかろうか。そこで、口先だけの合理化ということでなく、私思うのでございますが、人間というものはほんとうの羽目にぶつからないというと、なかなかいろいろな意味での真剣な態度というものは、施策というものはとりにくい。そういうような意味合いで、だんだんこういう時期においてこそ金融機関の真の意味の合理化が行なわれ得るはずだと、また行なわねばいかぬと、これがわれわれのいまのような状況における心がまえでございます。ただ、それにつきまして、私の一つのこれは持論でもございますけれども金融だけがそういうふうな心がまえをしておりましても、なかなかいわゆる金融環境、日本の生んできた、つちかわれてきた明治以来のこの風土、体質に基づいた金融環境というものはなかなか——ただいまも口では合理性、合理化ということを私申し上げますけれども、なかなかそれがことばどおりには透徹し得ないような環境と申しますか、慣習が行なわれているわけでございます。その慣習ということが過剰サービスということをともすれば金融機関に醸成させてくるということが、過剰サービスということを一体どこにはけ口を持ってくるかというと、結局これはコストにかかることでございますから、いま申し上げるところの真の意味での合理化の効果というものをはばむものである、かように思うわけでございます。  そこで端的に申し上げますというと、金融の真のサービス、そしてまた、こういう正常化であるべきときの真のサービスは、商品がお金である限り、まず第一に金利におけるところの、預金、貸し金、金利におけるところのサービスということがまず第一義であろうかと思うわけでございます。したがいまして、その金利観念というものを透徹するためには、いただくところのものはいただく、つまり手数料としていただけるものははっきりいただく、そのかわり、よくいわれるマッチをサービスしてみたり——マッチだけじゃない、いろいろなことが摘発されるわけでございますが、そういった余剰、過剰サービス、ことに金融に従事しているところの職員のモラルまでも下げんばかりの過剰サービスというようなことがいま慣習的に行なわれているわけでございますが、そういったものを、これは慣習でございますが、なかなかむずかしいわけでございますが、やはり逐次お互いが努力をし合って、いわゆるこの国際化という線がここに大きく出たのならば、国際的なセンスに合い得るような形にまで合理性を持っていく、つまり手数料としていただくものはいただく、そのかわりサービスできるものははっきり金利の形においてまずサービスするというようなことが基本的の観念であろうかと、かように思うわけでございます。
  28. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 この出されておる法律案内容の問題については、参考人全部の方が大体異議なしと、こうおっしゃるし、それから各委員も、大筋としてはいいじゃないかというような意見がございますですが、しかし、調査会の中では少し異論あったためか、若干準備期間というものを与えているわけです。やはりそういう意見はございますですが、そこで一つだけ伺っておきますが、契約が、いまおっしゃったのを聞いていると、やはり二十年−三十年ぐらいのものが一番多いのか、それとも、最近五年ものをやっておみえになるわけですね、どれが一番多いのか、実績でいえばそれは二十−三十年が多いかもしれぬが、まだ始められてから新しいと思うのですが、いまの傾向として、やはりそういう長期ものが多いのか、短期ものが多いのか、実態はどんなふうになっていますか。
  29. 関好美

    参考人関好美君) お答え申し上げます。生命保険の新しい契約あるいはいままでの契約、これ両方あるわけでございますが、大体におきまして二十五年から三十年の養老保険が主力でございます。そこへ集中いたしております。  それから、ついでに申し上げますが、加入、お客さまの、つまり契約者の年齢でございますが、これが最近は非常に低くなりまして、以前は二十九歳ぐらいのところでございます、平均年齢が。それが現在では二十、早いのは十八歳ぐらいから二十二歳、四歳その辺にかなりの契約が集中いたしております。全般的に若い人が非常に加入する、したがいまして保険の種類の選択も長くなってきておる、こういうような状況でございます。
  30. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 関参考人にお伺いしたいと思うんですが、いま成瀬委員からもお話がありましたのですが、私は生保資金というのは若干違うのじゃないか、銀行資金より若干違うのじゃないのか。いうならば、国が社会保障を徹底してやれば、おたくのほうは、そう言っちゃあ悪いけれども、なくてもいいというようなことも私は言えると思うんです。そういう意味で、一種の老後保障といいますか、社会保障の一環の金であるし、しかもこれはかなり各個人の金だ。こういうふうな立場で考えますと、どうも準備金というものが、他の、まあ先ほど館先生は、あまり信用創造については変わりがないんだというふうにおっしゃられたのですけれども、私はかなり違うのじゃないかと思う。そういう点で、どうも同じような準備金に対する不利の問題にいたしましても、同じような形でやるのはちょっと国民的にも抵抗が大きいのじゃないかという感じがしますが、それと同時に、私は生命保険会社というのは、貸し付け金という形で運用されることよりも、やっぱり機関投資家として、公社債なり、あるいは株式なり、そうした面に私はむしろ投資をしていって、まあ運転資金なり設備資金への貸し付けというようなものはむしろ控えるべきじゃないか、こういうふうに思いますけれども、それは運用益の関係もあろうと思います、私はむしろそういうふうな方向に持っていくべきだと思うのですけれども生命保険会社としては、そういう方向をどう考えておるか。もし、そういう方向にいけないということは、一体どういう点にあるのか。その辺についてひとつ御解明いただきたい。
  31. 関好美

    参考人関好美君) 御回答申し上げます。  たいへん保険会社の機微に触れた御質問でございますが、御理解のある御質問だと存じます。  生命保険会社経営につきましては、これはまあ銀行のほうも同じでございますが、預貯金や生命保険、これは御承知のとおり税制上の非常な優遇を受けております。これはまあ利用者が大衆であるということから、大衆の、大ぜいの方々利益につながると、また一方そういった意味資金蓄積の奨励をやると、こういうようなお考えもありまして、現在はそのために会社の業績も非常に伸長しておるというようなことでございます。  ただ、社会保障の一環で、社会保障が拡充されれば必要がなくなるじゃないかという率直な御意見でございますが、これはまあ理論としてはそうかもしれませんけれども、まあ実際には財政面の限界がございまして、社会保障で全部がまかなえるというようなこともむずかしいかと思います。その意味におきまして、私どもは、社会保障と生命保険とはもちろん一貫と申しますか、お互いに補完し合って、そうして大衆の生活を、あるいは老後の問題、こういったものの解決に当たると、こういうような見方ができるんじゃないかと思うのでございます。  その意味で、私はいつも、ちょっと余談になりますが、日本の生命保険料に対する現在の租税上の優遇措置が非常に低いのじゃないのか。それで老人問題一つにいたしましても、これを社会保障でやるということになりますと、非常に大きな財政上の負担に将来なっていくわけでございます。諸外国の例を見ますと、国家にできるだけたよらさないようにして、そして個人が自分の問題、ことに老後問題なんかは自分の力でできるだけそういった準備もすると、そのためには準備をさせるような手段として、たとえば生命保険の税制上の優遇もかなり高く引き上げて、そして自力でやらしていって、まずできるだけ国家の力にたよらないというようなこと、まあじょうずにこれは使っておられるのだろうと思いますが、そういうような行き方がかなりはっきりいたしておりますので、その意味で私は生命保険の税制上の優遇なんかももっと引き上げていただきたいと考えておるのでございます。まあ、しかしながら、そういうような意味合いで集まります資金でございますので、先ほども申し上げましたように、かなり公共性ということを私は強く考えて運用面でも考えていかなければならぬ。たとえば利率は非常に低くとも公共投資方面へはこれは積極的に協力していくべきじゃないかと、かように考えております。  まあ、その例といたしまして、日本住宅公団に対する融資でございますが、これはもう十年以上も融資いたしておりますが、現在三千億円でございましたか、新しい年度を入れると三千五百億円ぐらいの残になっております。この金額は日本住宅公団の使っております金の約三割ぐらいに当たるんじゃないか、以前は半分生命保険の資金でやっておりましたが、信託会社がその後参加いたしましたので、現在はそれでも三割程度は生命保険の資金を使ってつくられておるというようなことでございます。  まあ、財投に限らず、国の基幹産業である電力とか、あるいはガスとか、交通関係、鉄鋼、そういったいわゆる公益的な性質を持った企業へもこれは大きく投融資いたしておるのでございまして、まあ、たとえば、その意味におきまして、若い人が近ごろ結婚して公団のアパートへ入りますと、それが生命保険の資金ででき、ガスをひねったり、電灯のスイッチをひねったりする、それも全部生命保険会社の金がお役に立っておるというような状況でございます。私どもは、そういう意味で公共的ないし公益的な方面に今後も、ことに福祉国家の建設を目ざす時代となってまいりましたので、こういった方面について十分に考えて資金運用をしてまいりたいと、こう思っておるのでございます。  ただ、その問題と、それから、まあ、さっき申しましたが、相互会社でございまして、私どもは直接契約者に対して責任を持たされておるのでございます。この相互会社というのは、社員の相互の保険を目的としてできた社団法人でございますので、この事業責任とか損益の帰属というようなことは、すぐ契約者——社員であると同時に一体でございますが、契約者に帰属する、その間に何にもございませんで、いきなりそこへはね返っていくということでございます。そんな意味で、できるだけ、極力相互会社の社員の契約者に、最も効率的な経営をやりまして、そして保険料の負担を軽くするということが私たちの第一義的な責任でございます。その辺と、先ほど申しました利回りの低いものへの投資と、このかね合いが非常にむずかしいのでございます。本来であれば、長期資金運営でございますので、できるだけ公社債とかあるいは優良な株式、こういったものに投資をいたしまして、まあ貸し付け、ことに短かい期間の貸し付けというようなことが、これは分野が多少違います。私どもはそういうものからは転換して、お説のようにやっていかなければならぬと思うのでございますが、御承知のとおり、ただいま、そういった金利体系とかあるいは資本市場のあり方について、そういうことが非常にできにくいような状況でございますので、先ほども公述の際申し上げましたが、今後の私ども方向といたしましては、申されるまでもなく、御指摘のような方向へ当然持っていかなければならぬということを十分に考えておるような次第でございます。
  32. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ただ生保だけで問題が解決するとは私は思いませんけれども、この際でありますから、これは長期資金でありますから、特に日本のようなインフレ的な性向が強い場合には、非常に減価をするということもありますので、ひとつこの点は特に御配慮をいただいて、保険料の引き下げとか、あるいは契約者への還元とか、こういうことを特にこの際お願いをしておきたいと思います。  次に、小原参考人にお伺いしたいと思うのですが、こういう形でやっていきますと、私が心配するのは、先ほどもお話が出ましたんですけれども準備率が低いときはいいだろうと思いますけれども、これが高くなるに従って、おそらく中小金融機関コストというものは非常に上がってくるだろう。それで、都市銀行なり、あるいは地方銀行なりの再編成ということは、先ほど成瀬委員からもお話があって、そういう意味の再編成というのは当然これも起こるだろう。私はむしろそうじゃなくて、都市銀行と中小金融機関との再編成、どちらかというと、縦的な再編成、こういうようなものが実は起こるんじゃないだろうか。そうしてその結果は、中小企業金融というのは、やっぱり資金コストが高くかかっていくわけですから、そういう面での中小企業金融をやるべき機関が、中小企業分野への金融というものからはずれていく心配が出てくるんじゃないか。これは準備率との関係が、高さの関係が当然出てくると思うんです。今日行なわれているような低い準備率なら、私はそういう関係は出てこないだろうと思いますけれども、どのくらいでそれが出てくるのか、私もよくわかりませんけれども、まあある限度にいきますと、そうしたものが出てくるのじゃないだろうかという疑問を持っているわけですが、いかがでしょうか。
  33. 小原鉄五郎

    参考人小原鉄五郎君) お答え申し上げます。  先ほど第一の問題点の合理化に伴う縦の合併のようなお話でございますが、これは私は、縦の合併をするということにつきましては、業界の者に、縦の合併はすべきでないということを強く指導しております。と申しますることは、私ども中小企業なり一般国民大衆金融機関としまして、現在百万円以下の貸し付けも、百五十六万人以上に達しております。こういう面で、私よく申し上げておりますように、私どもは、日本の国民経済の中で、いわゆる富士のすそ野の金融を行なう、一番底辺の金融をやっているというのがわれわれなんです。それで、われわれ信用金庫なら信用金庫としてやっておりまするうちは、この金は、いま申し上げましたような、底辺の、いわゆる富士のすそ野の金融の金になっているわけです。ところが——お隣に小山さんがおいでになって恐縮なんですが、大きい都市銀行さんにこれを合併したとしますね。そういたしますというと、どうしても都市銀行さんのほうは、最近の金融効率化というような面もございまして、大体、中心が大企業中心でございます。同じ金は金でございますが、われわれのほうにあるときには中小企業なり大衆が利用できる金、ところが銀行さんへ行きますというと、どうしても大企業中心になります。そういう面からいきまして、この合併はすべきでない。同じ合併するならば、やはりわれわれのような地域金融機関——と申しまして、私ども地域がきまっておりますので、地域金融機関同士でやっぱり、信用金庫信用金庫同士で合併なり合理化をはかる、こういうふうに指導しております。  それからもう一つは何ですか……。
  34. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 中小企業への金融というものは、準備率がある限界まで達すると預金コストが高くなってきますから、非常に困難になってくるんじゃないだろうかということ。
  35. 小原鉄五郎

    参考人小原鉄五郎君) その面につきましては、先ほどもお願い申し上げましたように、現在では一般銀行の五〇%ということになっております。それで、五〇%以内でございますが、今度二〇%というふうに引き上げられまして、もしもこれが二〇%フルに運用されたということになりまして、かりに五〇%、五〇%としましても、私どものいま資金量が大体九兆円に達しております。九兆円に達しておりまする面が、九千億円を無利息日本銀行当座預金として預けなきゃならぬということになりますと、信用金庫の数は現在四百八十ばかりございます、それはかなりの負担になるわけなんで、そういう面からいきまして、先ほどお話があって、金利をつけなくてもよくはないかということでございますが、私どものほうで九千億円もかりに準備預金をしたとします、無利息で。これはかなりコストを引き上げるということは、私ども貸し付けなりまた預金なりというものが、数は非常に多いのでございますが、非常にみんな小口でございますので、そういう意味からいきまして、これはどうしてもやっぱり金利をつけていただくということが望ましいんではないかというふうに考えます。
  36. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ありがとうございました。  それから、小山参考人と、館先生にお伺いしたいのですけれども、いまやはり国際金融という立場を考えてみて、国内国外の均衡を考えるということになりますと、いまは確かに金利を下げろという話が非常にあるわけなんですが、金利を引き上げなくちゃならぬ事態も逆にある。そうしますと、金利の自由化ということがスムーズに行なわれるということが私はむしろ実際の主眼じゃないのか。その面からやるのがオーソドックスのような気がしますが、そういうことがあまりうまくいかない、館先生のおことばで言いますと、完全市場ではないということから、ポリシーミックスという形でこういうものも二つやっていくんだということですが、金利の自由化というのは一体どの辺まで進められるもんですか、現在のところでいきますと。何か、私なんか、金利の自由化なんかはほとんどできていないような気がするんですが、金利の自由化というのはやっぱりやっていかなくちゃならぬ問題、日本の金融国際化されればされるほど金利の自由化というのは私はやっていかなくちゃならぬ問題だと思うのですが、どうなんでしょうか。
  37. 小山五郎

    参考人小山五郎君) お答えいたします。  先生のおっしゃるとおり、金利の自由化ということが本来の金融市場正常化ということにつながることだと存じます。ただ、自由化と申しましても、これまた御明察のとおり、本当の意味での自由化というようなことはこの現実の社会にはあり得ませんので、まず弾力化から始めていくよりほかいたしかたがないと、ある程度、段階の問題になりますんですけれども、そういうふうに存じているわけでございます。
  38. 館龍一郎

    参考人(館龍一郎君) いまの小山参考人がおっしゃったとおりで、金利の自由化そのものはできるだけ進めなければならないというように思っております。ただ、金利を自由化した場合でも、それではいわゆる完全市場的な形に、特に金融機関を中心とした貸し付け資金市場がなるのかと言えば、それはそういうものではないんじゃないかというように思います。特に、先ほどからお話が出ておりましたように、もし金融機関の集中合併が非常に急速に進めばますますそれは、そういう状態からは離れた姿になっていってしまうというように思います。ただ私が金利の自由化に反対しているんではなくて、ある意味から言えば金利の自由化は当然行なわれるべきである、それを前提としておりまして、そういう状態のもとで考えて、なお金利政策というのには、国際均衡と国内均衡の同時達成を考えるときには、ある制約があるということを認識しておくことがこの際重要なのではないだろうかということを申し上げております。
  39. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 館先生にお伺いするんですが、やはりそういう意味では、金利の自由化はある程度やらなくちゃならぬということは先生も同じ意見ではなかろうかと私思うんですけれども、それをやっていく手だてといいますか、そういうものについて御解明いただきたいんですが。
  40. 館龍一郎

    参考人(館龍一郎君) これも非常にむずかしい問題でどこから手をつけるかというのは非常にむずかしいと思うんですが、私ども十年ほど前に金利の自由化が必要であるということを非常に強く主張したことがあったわけでございますが、その当時の日本の金融情勢と、今日の日本の金融状況とを比べてみますと、格段に金利は弾力化されてきておるというように言ってよろしいんではないかと思います。そして現在のように金融がゆるんできますと、おそらくおのずから金利の弾力化、自由化というのは進められていくことになるんではないだろうか。具体的な政策としてどこから手をつけたらいいか、これは非常にむずかしいと思うんですけれども、まあ趨勢的にもうそういう方向に向かっておるというようにある面では言ってよろしいのではないだろうか、そう思うわけです。
  41. 松井誠

    ○松井誠君 二、三点お尋ねをしたいんですが、最初に小山参考人と、館参考人にお尋ねをしたいんですが、準備預金の利息の問題、制度の問題になりましたが、小山参考人から金融政策有効性を確保する上からもというおことばを使われましたけれども館参考人も言われましたように、犠牲がなければ調整というものができない、調整というものはやはり犠牲があるから調整と言える。ですから、利息をつけて、それならばたいしたことないからやっぱり貸し出しうんとやろうということになったのでは、金融政策有効性というものが発揮できない。だからそれじゃ貸し出しを抑制しようということになるのがほんとうのわけだと思うのですけれども、むしろ利息をつけるとか、金融政策有効性を確保する意味という理由がよくわからなかったので、それをひとつ説明してもらいたい。  それから急激な変化は困るというお話でしたけれども、確かに急激な変化は好ましいものではありませんけれども、急激な変化を避けるためには準備率の変更を急激にしないようにするという配慮で足りるんではないか、利息をつけるという制度をとらなくても、準備率の上げ、下げに急激な変化を起こさないようにすれば足りるんではないか。そういう意味で急激の変化ということを避けるという大義名分、ちょっと私にはわからない、それが一つですね。  それから、これは館先生にお尋ねしたいんですが、先ほど栗林委員からお話、御質問がありまして、私と同じ質問の趣旨だとすると、先生のお答えよくわからなかったのですが、結局資金コストが上がる、この準備率を高くすることによって上がる。そうすると金利に響いてきやしないか。また館先生が、金利というものを動かさないでやろうという、そういう本来の仕組みというものと矛盾してこざるを得ないんじゃないか。その点をどうお考えかどうかという趣旨でもしあったとすると、先生のお答えよくわかるのですが、結局金利に響くということがないかどうか。それで金利が上がってきてそれが短資を呼ぶということに、これはまあこの問題ばかりでなしに、金利、いまの現在の金利政策の持っている矛盾ですけれども、そういう問題にやっぱりぶつかってきやしないか。  それからもう一つの利息のことですけれども、先ほども信用金庫の方のお話がありましたが、中小金融機関のそういうふうな資金コストの高いところ、かりにまあ利息をつけると、そういうところと、そうでない普通の銀行との間に利息の率、そういうものの差というものを考えるべきものかどうか。  それから最後に、館先生にお尋ねしたいのですが、先ほども金利の自由化という話が出まして、確かにいいことに違いないけれども、これからまあこの預金準備率金融政策について有効になっていくための環境の整備ということを答申でも言われておりますね。その中で市場メカニズムの改革ということを言われているわけです。しかし、金利の問題ひとつ考えてみても、これから国債発行する、それの発行条件との関連で金利の自由化というものはなかなかやはりめんどうな条件にぶち当たるのじゃないか。それより私がお尋ねしたいのは、これがほんとうに有効に動く前提としては、いままでの過少流動性が、過少とまではいかなくても、過少流動性が緩和されるという前提がなければ意味がないわけですね。そういう前提が先生はこれから先財政主導型になるであろうし、それは好ましいことだと言われましたけれども、私どもは好ましいとは思いますけれども、なるであろうという保証が一体あるのかどうかということですね。特にあの四十年不況のあとも財政新時代といって財政主導型かのような姿勢が一時見られましたけれども、景気が回復してくると、やはり結局民間主導型に返っちゃった。そういうことになると、今度だいぶ外貨事情が違いますけれども、財政主導型になって、そういう環境整備というようなものが、好ましい環境整備というようなものに一体なり得るのかどうか、そういう保証と言ってはきついのですけれども、そういう見通しをもう少し具体的に教えていただきたい。これだけです。
  42. 小山五郎

    参考人小山五郎君) 準備預金に対する付利の問題でございますが、有効性と、それから急激な変化を避けるというその意味はいかん、また先生のおっしゃる視点は、もともとこれは調整なんだから、その効果があるためには利息をつけたほうがより量の不胎化を完全に遂行できるのだから、よりはっきりするのではないかという御趣旨のようにとれるのでございますが、まさにそのとおりだと思うのでございます。量の規制と同時にそれを不胎化、当然のことながらさせた場合には、量と、それと量によるところの資金圧迫と、それとコストの面からいって原資調達のコストというものは、これはゼロになるわけですから、量の面と二つになって効果はきわめて激烈だろうと思うのでございます。あまりに激烈であることを避けるために、なだらかな線をいたしていただけませんかということが第二の私の御要望であったわけでございます。  本来、準備制度というものは、量調整が主体で、どっちを主体にするかといえばやはり量調整が主体でございましょうと思いますので、その量の調整がいまのところ平均一・五%のところを、ある必要の場合にいきなり一〇とかなんとかいうことにかりにするようなことがあったならば、その場合に、それをたしか五なり四なりにしておく場合と、一〇にしておいて、そうして預金に対する利息をつける場合と、おのずからその施策二つあると思うのでございますが、要は、まあ現状においてはこの後段の財政主導型と申しますか、いまの資金緩慢状況というものはいつまで続くのかという問題ともからむことと思いますが、現状においては外資の流入対策以外に、さまでこの準備預金制度というものは早急には、これは用いられないんじゃなかろうかと思いますので、現状の場合の一つの仮想、想定というものはなかなか困難かとは存じますが、いかなる場合におきましてもお願いいたしたいと思いますこと、私の申し上げました論旨の真意は、急激な変化というものはいかなる場合においても、よしやそれが調整であろうとなかろうと、なるべくは避けていただきたいと、運用において。なだらかな線をもっていたしませんというと、なかんずくこの準備預金のごときは、これは半強制的な、はっきり言えば強制的な一つ資金の不胎化手段でございますので、きわめてこれは強烈な効果を持つことと存じますので、まだ日本として、いままで、先ほどもお話ございましたように、せいぜい三%ぐらい、まあそれは環境が環境であったからですが、しか採用されなかったものが、今度新しくこういう制度金融調整の三つの方策の一つとして、有力な一つとして取り上げられていけば、まあ日本としてみたら未踏の一つの世界、そういったような状態でございますので、十分な御考案、御勘案をこの際運用についてお願いしたいというのが私の真意でございます。
  43. 館龍一郎

    参考人(館龍一郎君) お答えいたします。  まず最初に、調整をなだらかにするといいますか、ショックを緩和するために付利をするということでございますが、この点につきまして、もちろん準備預金制度は量的な面と、コストの面と両面から効果が働いていくという点に一つの特徴があるわけだと思うのですが、そこで付利をしますと、コスト効果のほうが弱められてしまうという意味では、確かに効果が弱くなってしまって、したがって、調整をするのは、もっぱら準備率の幅とか、それから金融機関ごとの格差というようなところで調整をすれば足りるという考え方もあり得るわけだと思うのですが、しかし、この制度であまりに、たとえば金融機関別の準備率をこまかく変えるというような複雑な制度をとるのがいいのかどうかということが一つの実際政策の問題としてはあり得ると思うのです。そういうことを考えてみますと、新たに準備制度を導入してくるというような場合に、そういう金融機関に対してショックを緩和するという意味付利をたとえば考えるというようなことが一つの方策になり得るのではないだろうかというように私は考えておるわけでございます。ですから、すべての金融機関に対して準備預金付利をするというようには、私は実は考えておらないわけでございます。それが第一の点です。  それから、第二の御質問でありますが、準備率を変更すれば、必ず貸し出し金利影響があるはずではないかという御指摘でございましたが、それは確かにそのとおりですね。全く金利影響がないということはないと思うんです。ただ、金利政策の場合ほどに、もともと金利を動かすことによって調整をするという考え方ではございませんので、したがって、準備率を引き上げたときに、それがすぐに金利に非常に大きな影響を与えてくるのか、それとも貸し出し量に影響を与えてくるのかということ、その違いでありまして、私はもちろん、長期的には徐々に金利影響を与えてきますけれども、しかし、さしあたりは量的な調整のほうに影響を及ぼしてくるというように考えられるのではないだろうかというように思っておるわけでございまして、全く金利影響がないというようには考えておりませんので、先ほど御答弁いたしましたときに、そういう印象を与えたとすれば、私の説明が不十分であったためでございます。  それから三番目に、今後また前と同じような過少流動性のような状況が起こることになるのではないかという、したがって、将来財政主導型になって、従来のような過少流動性の状況は解消していくということを、まあ強いことばで言えば断言できるのかという御質問、あるいは御批判でございますが、この点は確かにそのことを確言するというようなことはできないわけでございますけれども、しかし、国債が従来よりも出ていって、日本銀行金融政策の調整手段としてオペレーションをもっと活用していくという方向に向かっていくならば、前のような状況というのは変わってくるのではないだろうかというのが一つの点でございます。  それからもう一つの点は、まあやはり成長率そのものを、現在のような低い成長では困るわけですけれども、しかし、何といいましても、労働の面でも制約が出てきておるという状況をとって考えてみますと、今後高い成長を維持していくためには、従来のような民間投資主導では高い成長を維持していくことはむしろむずかしいという状況になってきているのではないだろうかというように思うわけですが、成長を維持していくためにも、どうしても財政主導でやっていかなければならないという状況になってきているのじゃないかというのが私の考えでございます。
  44. 松井誠

    ○松井誠君 最後の問題についてちょっとお尋ねしたいんですが、この答申に書いてあるんですけれども、「準備預金制度活用をはばんでいた過少流動性の状態が現状ではかなり変化していると考えられること、今後におけるわが国経済成長形態の推移等を考えると、」、まあこういう書き方になっているわけです。この答申をいつ、どういう状況のもとでお出しになったのか、ちょっと私つまびらかにしないんですが、それが現在のような状況ですね、不況、まあ大量の国債発行というような状況をいわば頭に画いてこのことばがあるのか、もしそうでないとすれば、そのときの「経済成長形態の推移等」というのは、具体的にはどういう状況をお考えになってのことであったのかどうか、この点について。
  45. 館龍一郎

    参考人(館龍一郎君) 私がお答えするのが適当かどうかわかりませんが、私などはやはり従来の民間投資主導型の成長というのが徐々に変わっていくんではないだろうかということを念頭に置いておりまして、もちろん、現在のような状況になるということを正確に予想していたかと言われれば、必ずしも初めからそうであったということは言えないと思いますが、しかし、ほぼそういう状況になってくるだろうということを考えておりました。
  46. 多田省吾

    ○多田省吾君 時間もだいぶ過ぎましたので、一問ずつちょっとお尋ねしたいと思います。  まず、小原参考人にお尋ねしたいんでございますが、現在の金融緩和基調のもとにおいては非常に中小企業金融機関の経営が困難になっていると思います。それについて数年来体質強化も行なわれていると存じますが、それに対してどういうお考えで、どういう御希望があるのか。また今回の準備預金制度の拡大に伴いまして、先ほどのお答えの中にも、預金コストが非常に高くなるんで、そのためにはもし準備率を高くした場合に付利をさしてもらいたい。  それからもう一つは、準備率の問題も、大体現在は一・五%あるいは〇・七五%、〇・五%、〇・二五%というような段階があるわけでございますけれども、約五〇%となっておりますが、それももう少し引き下げてほしいということなのかどうかですね。その辺をひとつお伺いしたいと思います。
  47. 小原鉄五郎

    参考人小原鉄五郎君) 第一の問題を申し上げますというと、最近は御案内のように、まあ先ほど小山さんから超緩和ではないというようなお話でございましたが、私どもから見ますというと、かなり超緩和でございます。私どもが仕事をやっておりまする面から言いますというと、いままで中小企業なり一般大衆に対する金融の面につきましてはわれわれのほうが担当しておったわけなんです。最近金が余り切っちゃっているものですから、いままでそういうところへ全然やらなかった人たちも、最近非常に意欲的に出てきておるということで、われわれ中小企業金融機関としましては、貸し出し金利もかなりそれらに対しまして、やはり競争をいたしますので安くしなければならぬというふうな、貸し出し金利をかなり低く貸さなきゃならぬというふうな面がございます。一方、またいままでは若干の余裕金がありましても、その余裕金につきましても、コストよりも若干の収益があがったというふうな運用益があったわけなんですが、この面も最近のように金が余ってまいりますというと、投資の道も少なくなったということで、この面からもかなりわれわれのほうとしても影響かあるわけなんです。そこで私ども信用金庫には信用金庫の連合会というものがございまして、現在この連合会が、こうしたような超緩和が急にきたものですから、全国の信用金庫が行き詰まってはいけないということで、まずこの連合会が現在各信用金庫から預かっておりまする資金につきまして、幾分ほかの金を回すよりも有利に預かっております。これも信用金庫にできるだけ合理化をはかって経営コストを下げてもらうように努力はお願いしてございます。努力はお願いしてございまするけれども、いずれにしましても、先ほどのような収益は減ってきたと、ことに金融が緩和になりますというと、東京とか大阪というふうな都市では比較的資金需要がいまでも相当多いものですから、これはけっこう貸し出しのほうに回すことができる。ところがそれ以外の地域、ことに北海道だ、それからまた東北、北陸とか四国、九州あるいは中国といったような地域にまいりますというと、資金需要が非常にここのところ急激に減ったというよりも、ほかの金融機関うほうとの競争上かなり低下しておるというふうなことで、貸し出しの面につきましても幾分低調であるというふうなぐあいから、余裕金がどうしても余ってくると、こういうことです。余裕金が余りましても、いままでは非常に有利に回ったんですが、最近はこれが場合によりますと逆になってしまうというふうなことでございますので、その調整を連合会がいたしております。そういう関係上、連合会のほうに集まりました資金も最近では一兆四千億も連合会に集まったと、こういうことなんです。連合会としましては、これを集中運用いたしましてやっておるというふうなことで、いまの面につきましては非常に最近はむずかしい段階に入っていますが、このむずかしい段階をひとつ何とかみんなで乗り切るように努力さしておるというのが現状でございます。  それからその次の、この準備預金をやりまして、いままで一般の金融機関に比較しまして五〇%ということでございました。けれども、今度は御案内のように一〇%から二〇%に今度は幅を広げてございますので、そういう面から見まして急にここでもって率を高くされますというと非常に影響がございますので、いままでの五〇%というふうな面につきましても、今度は——現状では五〇%でけっこうなんですが、どうしてもこれから準備率をふやすという場合には、五〇%の半分の二五%くらいまで御考慮をお願いしたいというのが私どもの希望でございます。  以上でございます。
  48. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、関参考人にお尋ねしたいのでありますが、先ほど生命保険並びに生命保険会社特殊性にかんがみまして運用に留意していただきたいという御希望がございました。昭和四十二年あるいは三十年代における引き締め期のときに生命保険会社のいわゆる貸し出し金利の率が少し上がったというようなことで、今度の金融制度調査会答申にもなったのじゃないかと思いますけれども、先ほどは、今後は引き締め期においては慎重に対処したいとおっしゃいましたが、結局、そういう引き締め期においては政府のそういう政策に協力して、貸し出しのいわゆる率は上げないような方向でいきたいと、だから結局運用にも留意していただきたいと、こういうことだと思いますが、それでよろしゅうございますか。
  49. 関好美

    参考人関好美君) お答えいたします。  ただいま御指摘がございましたように、四十二年のときの事例が今回かなりいろいろと皆さんから御批判を受けたわけでございます。これにつきましては、私どもは私どもなりのまた見方もございまして、四十二年の引き締め時の前の金融情勢、非常に緩慢でございまして、その当時、貸し付けよりもむしろ株式投資というほうへ重点があったわけでございます。そのときの貸し付け金基準にされまして、引き締め時の四十二年の貸し出し額が率としては分母が小さいものでございますから非常に大きく見えましたので、そんなようなことでえらい貸し出しがふえたじゃないかと、引き締めておるにもかかわらずふえておるじゃないかと、こんなようなお話もございました。また生命保険会社貸し付け金の特色といたしまして、都市銀行さんよりもずっと半年ぐらいおくれまして貸し付けが実際には行なわれると、ズレがございます。したがいまして、当時のことをあまり詳しく申し上げる必要ありませんが、すでに一般にそういう非常に過熱化されたあとズレがございますために、こちらに順番が回ってきたというようなことで出てしまったということでございますが、そんなような事情もございますが、ともかくそういう引き締め時に貸し付け自体がふえることが問題だということでございますので、その点を今後は十分にかみしめまして、そういう引き締め時にあたりましては、今回の準備預金制度の御趣旨もございますし、また、実際の適用にあたって時期、方法は別に考えようというようなことにもなっておりますので、そういうことがあるなしにかかわらず、生命保険業界といたしましての、引き締め時における貸し付け、これにつきましてはそういう時期には政策当局とも十分にお打ち合わせもいたしますし、またその指導も受けまして国の金融政策の向かうところに正しく沿ってやってまいりたい。具体的には、いろいろとそういうようなことに対応した施策をそのときになってやってみたいと、こう考えております。
  50. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、小山参考人並びに館先生に同じ質問を一問お願いしたいと思います。  といいますのは、今回の改正で非居住者の自由円預金につきましては一〇〇%準備率を高めるということで、この運用につきましては、すぐにでもやれるでしょうし、これは反対がないわけでございます。  ただ、問題なのは、その他の準備預金率の引き上げ、あるいは対象の拡大ということでございますが、わが国はまあ恒常的な過少流動性にあったので、いままで昭和三十八年に最大三%の準備率になったにとどまりまして、欧米諸国が現在一五%前後の準備率運用しているのに対して、非常にわが国の場合は適用がされなかったのです。今度はいろいろな金融政策等もミックスして行なっていきたいということでございますが、当然この準備率を高めるときは、国内景気の過熱を防止する、金融引き締めのときだと思いますが、現在はその段階にきていないわけです。で、金利も非常に引き下がっておりまして、引き上げはできないというものがある。そして、総合収支、国際収支等も黒字であるというような場合に、今回きりだと思いますけれども、そういうわが国がいままであまりこの準備預金制度活用していなかった、また活用できる環境がなかったという点。それから今後もそういう環境がくるだろうかということを考えますと、私は、非常に期待薄じゃないかと思いますが、この一年、二年ぐらいにこういう準備預金率を一〇%以上ぐらいに引き上げれるような環境がくるのかどうか。そういう環境はどういう環境かですね。予測できる範囲でひとつ教えていただきたい。
  51. 小山五郎

    参考人小山五郎君) 将来の日本の経済金融予測でございますが、先ほども館先生が大体おっしゃられたとおりの傾向線じゃなかろうかと思うんでございます。  と申しますのは、現状、確かにいままでなかったような過剰流動性というような状況になりましたが、その主たるゆえんは、御案内のとおり昨年の外貨の流入、これは四兆以上も急激に一年でやってきたわけですから、これもまるでさま変わってしまったのは当然のことでございますが、今後そういった外貨の流入というものがそうどんどんどんどんやってくるのかと申しますというと、その点は、私は、さまで、昨年あったような過剰外貨流入というものが日本に引き続きあるとは思いません。すでに昨年末の円切り上げというものの真の効果もこれから実はあらわれてくるんじゃなかろうかと、かように思っております。しかしながら、やはりことし一ぱいぐらいは、いま先生の、ことし一ぱいぐらいにどうなのかと、ことし一ぱいというか、この一年くらいにどうなのかということでございますが、まだ日本の内地の景気もさまで上昇しておりませんので、やはり輸入の減少、予想以上に輸入が減少するというような形でもって輸出、輸入、つまり国際収支バランスというものはどうしても黒字が増加してくると。そういう意味での外貨流入はまだまだ避けがたいと、かように思うわけでございます。  それから、同時に、根本的な問題としましては、景気の浮揚というものが非常に遅々としていると。そしてまた、かりに来年初めあたりからややこれが好転してきたにせよ、館先生も御指摘なさいましたとおり、日本の経済成長というものが従来あったような成長率で今後も、一つの休息後回復して今後継続できるかどうかという点では、私は全然そういうことはあり得ないと、かように思うわけでございます。また、いままであったような形であってはならないんだと、かように思うわけでございます。その理由は、時間も何でございますから、省略いたしますが、かような意味合いからいたしまして、当分の間、まだまだ国内的にも、それからまた外資の流入の点から見ましても、ただいまの流動性の豊富というような問題は続く可能性があるんじゃなかろうかと、かように予測いたしております。
  52. 館龍一郎

    参考人(館龍一郎君) お答えいたします。  まず、最初に、従来日本が過少流動性であったから、準備預金制度が使えなかったという事実判断については、私は必ずしもそう思っておりません。従来でも金融引き締め手段として準備率を引き上げてもよかった。それから同時に、また違う方法として、準備率を引き上げると同時に、一方で思い切った買いオペレーションを行なうという調整のしかたもあり得たと思いますし、今後もあり得るというように考えておるわけでありまして、従来過少流動性であったから使えなかったんではなくて、日本銀行なり金融政策当局がそういう判断に立たなかったということでありまして、その点で、私は必ずしも従来の日本の金融政策がすべてよかったという判断には立っておりません。したがいまして、将来も状況によっては、そういう政策、組み合わせをとることが、かえって、有利な場合も大いにあり得るというように考えております。ただ、たいへんな引き締め政策を近い将来において、日本がとらなければならないかという問題についてであれば、ここ一、二年ほどの間に、そういう状況が生ずるということは、為替レートが、何かのことでとんでもなく引き上げられるというようなことがない限りあり得ないというように思っております。
  53. 渡辺武

    ○渡辺武君 最初に館先生に四つばかり、時間もありませんので、まとめて伺いたいと思います。  この準備預金制度改正の問題が問題になっておるわけですが、この準備預金制度という制度の根本的な趣旨、これが提案理由の説明などでは、金融調整の手段というふうにされておりますけれども、私は、これはただ、単純な金融調整の手段ではなくして、むしろ根本の趣旨は、預金者の保護、それからまた、通貨の健全性を維持する。別言すればインフレの抑制という点にこそ根本の趣旨が置かれなければならぬじゃないかというふうに考えております。国民の預金を預っているわけですから、その点に立って、いわばまあ支払い準備というような性格のものが、この準備預金制度の根本の趣旨ではないだろうかというふうに思っています。したがって、今回の改正案提案の政府の趣旨そのものについては、その点からはずれているんじゃないかというふうに思いますが、その点はどんなふうにお考えなのか、第一点として伺いたいんです。  第二点として伺いたいことは、そういうインフレ抑制、預金者保護という立場に立って考えてみますと、従来の金融情勢が流動性不足の状態であったということは、若干認識にズレがあるのじゃないかという感じがするんです。それは高度成長を続けようとする大企業立場からすれば、確かに資本の不足ということで、過少流動性という意見も出てくるでしょうが、国民の立場からすれば、従来の消費者物価の急騰などに明確にあらわれておりますように、まさしくインフレの高進の状態であったと思うんですね。で、そういう状態でありまして、その原因として考えられるのは、やはり大企業がオーバーボローイングをやって、そして成長通貨をまかなった、それに対応して、大銀行を中心とする都市銀行がオーバーローンをやった。またそれを日本銀行貸し出し金融制度がささえてきたというところに、根本の原因があるんじゃないかと思うんですね。で、現在、外貨の流入などを中心として金融情勢が明らかに変わっております。変わっておりますけれども、ただその金融情勢過剰流動性に近い状態になりつつあるというようなことで、それを調整する手段として準備預金制度を考えるのではなくして、従来過少流動性といわれていた時代でもインフレが高進し、健全通貨のくずれてきているという状態をどう是正するかという見地に立って、この準備預金制度活用すべきじゃないかというふうに思います。その点の御意見を伺いたいと思います。  それから第三点として、昭和三十二年この準備預金制度が創設された当時の議論の中では、通貨調整をやる上で欠くことのできないものとして、財政の健全性ということが非常に強調されたと思います。ところが、今回の改正案の提案の中では、この財政の健全性ということが一言も触れられていないんですね。私はこれ非常に不満です。特に四十七年度一兆九千五百億円というようなばく大な事実上の赤字公債が発行され、財政の健全性が著しく破れるというような状態のもとで、私はいまこそ財政の健全性ということが、健全通貨の一つの重要な条件であるということを強調すべきであると思います。その点についての先生の御意見を伺いたいと思います。  それから第四点として、外貨の流入について、短期資金流入ということが非常に強調されております。しかし、この点について二つ問題点がある。  一つは、昨年八月のあの為替スペキュレーションのとき、その主要な原因となったのは、非居住者の短期資金流入ではなくして、まさしく居住者、たとえば輸出前受け制度による前受け金の流入、あるいはまた為替銀行の外銀からの預金の取り入れというようなことこそが一番大きな原因になったと思う。ですから非居住者自由円預金などについてもちろん規制することは必要ですけれども居住者の短期資金の取り入れこそきびしく規制する必要があるんじゃないか。  それからもう一つは、ただ単に短期資金だけではなくして、長期資金の取り入れについても一定の規制措置を講ずべきだと。すでに西ドイツでもそういう点で預託制度などが、現金預託制度ですか、などが採用されたということを聞きますけれども、そういうことが必要ではないだろうかと思いますが、その点についての先生の御意見を伺いたいと思います。  なお、時間を節約する都合上、ほかの参考人にも一括して伺ってよろしゅうございますか。
  54. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) どうぞ。
  55. 渡辺武

    ○渡辺武君 じゃ失礼ですけれども小山参考人に一、二点伺いたいと思うんですけれども準備預金に対して利子をつけてほしいという御要望がありましたけれども、私の根本の趣旨は、先ほど申し上げましたとおり、この準備預金制度というのは、預金者保護、通貨の健全性維持というところにこそ置かれなきゃならぬわけでして、そういう意味準備預金に利子をつけるということは根本の趣旨に反するんじゃないだろうか。ただ単純に資金運用という見地からだけでは見ることは趣旨に反するんじゃないだろうかと思いますが、その点についての御意見を伺いたいと思います。  それからもう一点は、従来、先ほども申しましたが、銀行のオーバーローンなどが高度成長をささえ、逆に言えば消費者物価の急騰の一つの大きな原因になったんじゃないかというふうに思われますが、この銀行のオーバーローンについて銀行立場でどのような規制措置を考えていらっしゃるのか、この点を伺いたいと思います。  それからもう一つは、中小企業などに対する歩積み両建てなどの制限的な制度ですね、さらにはまた大企業同士の特に都市銀行からの系列下の大企業に対する系列金融ですね、これもいろいろ問題になっているわけですが、その点について皆さんの立場からどのような規制措置をお考えになっていらっしゃるのか。これは準備預金準備率が大幅に引き上げられる、最高限度ではありますが、実際の準備率も引き上げられるということになりますとますます歩積み両建てどころか、あるいはまた系列金融などが強化されるんじゃないかということを心配しているわけであります。その点の規制がなければ、私はこれはかえってよろしくない効果を生んでくるんじゃないかというふうに思います。その点の規制措置をどうお考えなさっておられるのか、これが第二点であります。  それから第三点として伺いたいのは、先ほども申しましたが、従来日本銀行貸し出し金融政策、これにささえられて銀行がオーバーローンをやってきたこと、これは明らかなんですね。ところが最近は日銀貸し出しが急減して、これにかわって公開市場操作が新たな金融調整政策として大きな役割りを演ずるというふうにいわれております。銀行立場からして、どちらが有利とお考えなさっておられるか、その点第三点として伺いたいと思います。  それから小原参考人に二点ばかり伺いたいんですが、現行準備預金制度が創設されたのは昭和三十二年でございますが、そのときに、二百億円以上の金融機関ですね、これに準備預金制度適用されるということになっておりました。ところがその後貨幣価値が下がっているんですね。ですから同じ二百億円の預金額でも、従来に比べればこれは効果は非常に少ないと思いますね。ところが今度の改正案ではやはり同じように二百億円超ということが限界になっております。これでは中小金融機関にはちょっときびし過ぎるのじゃないかというふうに案ぜられますが、その点についての御意見を伺いたいと思います。  それからもう一つ、従来も都市銀行とそれからまあ信用金庫、相互銀行などには準備率格差がございました、従来の格差でいいのか、これから先。もう少し格差をつけて、そうして中小企業関係金融機関に対する多少の保護措置として準備率を低くすると、相対的にですね、ということが必要じゃないかと思いますが、その点についての御意見を伺いたいと思います。  それから最後に、関参考人に伺いたいんですが、準備預金制度対象機関として生命保険が加えられたことについて御不満があるようでございますが、私にもそれはある程度わからないことはない。と申しますのは、やっぱり従来は都市銀行が何といっても大きな役割りを演じてきた、いわば責任者といえば都市銀行だと私は思うのです。その責任を生命保険に転嫁するということはできないんじゃないか、という気がします。しかし対象に加えていいかどうかという点については意見は申しませんけれども、そういう感じがします。そこで私考えますのは、やはり生命保険は、先ほども関参考人がおっしゃられましたように、加入者の負託にこたえるということが非常に大事じゃないかと思うんですね。その意味で加入者保護をどのように今後改善されるのか、特にいま加入者が一番心に思っておりますのは、貨幣価値が下がる、物価が上がる、ところがその物価に保険金がスライドをされていない、というところが非常に大きな問題点になっておりますけれども、この辺も解決されることがあなた方の主張の合理性を明らかにする上でも非常に大事じゃないかと思いますが、その点についての御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  56. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) これから参考人に御意見をお述べいただくんですが、時間の関係上できるだけ要領よく簡潔にひとつお願いをいたしたいと思います。まず最初に館参考人にお願いいたします。
  57. 館龍一郎

    参考人(館龍一郎君) それでは簡単に、時間がございませんのでお答えいたします。  まず第一に、準備預金制度は本来預金者保護の目的のために設けられるべきではないだろうかという御主張でございます。もともと一番最初にアメリカで準備預金制度が導入されましたときには、もっぱら預金者保護という観点で導入されたわけでございますが、しかし預金者保護という観点からは、準備預金制度よりははるかに預金保険制度その他の制度のほうが有効であるということがわかり、そしてこの準備預金制度金融調整の手段としてきわめて有効に働くということが知られるにつれて、今日では準備預金制度はもっぱら量的な調整手段として使われるようになってきておるわけでございまして、そういう観点でこの問題を考えていいのではないかというように考えております。預金者保護についてはほかの保険制度のようなもので足りるというように思うわけでございます。  それから二番目に従来の過少流動性という認識は間違っているのではないかという点の御指摘でございますが、この点について意見を申し上げますとたいへん長くなりますので、意見は差し控えさしていただきまして、いずれにしてもインフレを抑制しなければならないという事態が生じました場合には、当然この制度活用されるということになるわけだというように思っております。  それから三番目の、財政の健全性に触れていないという問題でございますが、何と申しましても、金融制度調査会でございまして、財政審が別にあるということもありまして、もっぱら金融面の議論をしたわけでございます。なお、財政の健全性という点につきましては、何を財政の健全性というかという点についても、いろいろな見解があり得ると思います。単に年々予算が均衡しておるということが、健全であるのかどうかという点についても問題があるように思いますが、その健全性ということについて、私の理解しておるような健全性であるならば財政は健全でなければならないものというように考えております。  それから四番目に、短資流入規制について非居住者預金規制するだけでは足りないのではないかというお話でございますが、確かにそのとおりでございまして、居住者についてもそういう撹乱的な短資流入というような形になる場合には、それに同じような規制措置がとられるべきであるというように思います。  なお長期資金取り入れの問題についても、これも議論をいたしますと非常に長くなります。何でも自由化すればそれでいいというようになるかどうかということにつきましては、私ももちろん疑問を持っております。
  58. 小山五郎

    参考人小山五郎君) お答えいたします。  まず、不利の点でございますが、先生おっしゃるように、これが支払い準備というような形だけでございましたならば、私も公述の中で当初に申し上げましたが、これは利息がつかなくてもよろしいんじゃなかろうか、かように思うわけでございます。ところで、現在ではその支払い準備以上の、提案理由にもございますように、金融調整全般というような形になって非常に高い率がここに適用されるというような段階に立ち至りまして、先ほど来申し上げますように、なだらかな運用の見合いでしていただきたいということを御要望した次第でございます。  それからその次のオーバーローンと高度成長の結びつき、そしてそれが歩積み両建てにも及ぶということでございましたが、これも長くなるわけでございますが、一言にいたしまして、終戦という時期、つまり日本の経済状態がマイナスの状態から現在まで立ち至る場合におきまして、何を主眼にするかという点で、まず国民経済の復興ということを第一義とせねば相ならぬ、あの立場においてこの国民経済の復興は何によってまたささえられたかというと、結局民間経済の復興という形をたどってきたと思うんでございます。その場合に、蓄積その他がゼロ、マイナスというような状況であります限りにおいて、オーバーローン、オーバーボローイングという形は一つの過渡的のあり方としてやむを得ざる姿ではなかったろうかと、かように思うわけでございます。いろいろな面から見ましての毀誉褒敗はございましょうが、長いラインから見ますと、かような形になって国民経済の充実がある程度行なわれて初めて個人的の生活の向上、いわゆる各可処分所得の充実というようなことも得られるんではなかったかと、かように思うわけでございますが、それにしてもこの二十五年間の間にあまりにも燃え過ぎた時代があったわけでございまして、それがいわゆる金融の抑制という姿で、われわれ都市銀行におきましても、オーバーローンのポジション規制というものが非常に厳重に行なわれておりまして、また後段の御質問の日銀貸し出し政策によってまかなわれたということでございますが、この貸し出し政策、これは窓口規制窓口指導という日本特有の形で、御存じのように手っとり早い形で行なわれまして、したがいまして、ある場合そのポジションをオーバーして日銀の規制している、お前のところの世帯だったらこの程度以上は、これはもうとんでもないことだという形になりますというと、これまた日本特有のあれですが、罰則的な高率適用というので、非常に高い、高率の利息を課せられた、それ以上になると、もう貸さないということになって、こういう規制をとられていたわけでございます。そうして歩積み両建ての問題というのは、私は必ずしもオーバーローンからまいりまして、歩積み両建てとなったのではなかろうと思うのでございますが、それ一つには規模の、形における規模の大きさというものを、ジャーナリズムその他でもって盛んに唱えられますもので、そこで最近はそういうばかげたことばないのでございますが、御記憶にもございましょうが、ウインドードレッシングというようなかっこうをつくったりなにかいたしました。そういうような形が、形式的な、預金の規模を誇るというような形が歩積み両建てというようなことをまず誘導してきた一つの形式的の形ではなかろうかと思います。それと同時に、歩積み両建てというような形、つまり拘束預金というような形は、先ほど来の日本の資金が、つまり大衆からの資金が民間の企業のほうに流れるというような形にございましたので、そこで預金をある程度とどめ置かなければならぬというような気持ちも、それは率直のことを言って入っていたと思います。というようなことでございますが、これは三十二年来、拘束預金というものの問題はだいぶ世上に論議いたされまして、ひところ三六%程度ございました拘束預金のあり方というものは、現状ではたしか三・八%程度に縮減したというふうに私記憶しております。いずれにいたしましても、歩積み両建てというような不合理な形は逐次粛正されていることは事実でございます。ただし欧米におきましてもコンペンセーションアカウントというような形であるのだということはもう御存じのとおりでございましょうから、それについては付言はいたしませんが、そういうような形で歩積み両建てというようなものも逐次縮減しているということをここで申し上げておきます。  なお最後の日銀貸し出し政策と、いまのオペレーションのあり方とどっちが有利かという御質問でございましたが、都市銀行といたしますというと、窓口規制によってこれはぎりぎり締めつけられますよりは、まず気分的にもオペレーションでやっていただいたほうが、つまりオーソドックスのあり方でやっていただいたほうが気分的にも余裕がございますし、同時にやむにやまれなかった当時の事情とは申せ、非常にオーバーローン過剰であった場合の高率適用というようなあり方は決して都市銀行の経理的にもこれは有利ではなかったということを申し添えておきます。現状ようやく正常な姿におけるところの金融調整というものが、いまは逐次整いつつある状態かと、かように思うわけでございます。
  59. 小原鉄五郎

    参考人小原鉄五郎君) お答え申し上げます。  最初の御質問の現行準備預金制度信用金庫の場合は二百億円以上の金庫に適用しておるということでございますが、これを、貨幣価値が変わったのだから、もう引き上げたほうがよくはないかという御意見かと思います。この問題につきましては、私のほうの立場から言いますというと、ちょうど二百億円以上くらいになりますというと、歳入代理店というふうな、信用金庫には全部歳入代理店ではないのでございまして、大体日本銀行との取引ができておるというふうな範囲だけきり扱ってないと、こういうことです。これ二百億円というふうな限界で現在こういったような金庫は全部歳入代理店を取り扱っている。歳入代理店はやはり各全国の地区地区の納税者が非常に私のほうが扱っているということが便利であるということなんで、これを幾分引き上げていただくのはけっこうなんですが、そうしますというと日銀取引が幾らか減るというようなことになりますというと、歳入代理店に影響すると、こういうことでございますから、そういう面に影響しなければ若干考えていただくということが必要ではないかと、こういうふうに考えております。  それから二番目の問題ですが、準備率格差でございますが、これは先ほども冒頭に申し上げましたように、まあわれわれ信用金庫のは、中小企業と一般大衆相手で、ほんとうに小口預金、小口貸し出しが非常に多い。数においては決してどちらの金融機関にも負けないくらい数を扱っておる、こういうことなんです。したがいまして、どうしてもコストはやはり高くなるということはいなめない事実でございます。先ほど来準備預金に利息をつけなくてもコスト影響ないじゃないかというような御意見ございますが、直接の影響はないとしましても、どうしてもこれによってやっぱりコスト引き上げということはいなめない事実でございまして、こういう面からいきまして、自然まあ目に見えない金利を若干上げなければ、貸し出し金利を上げなければならぬということになりますというと、そういったような一般大衆に対する貸しつけの面に響くというふうに私ども考えます。そういう面からいきまして、今度二〇%ということになりました場合、現行では一般の金融機関に比較しまして五〇%でございますけれども、今度は現行以上の準備預金ということになりまして一〇%以上もやるということになると、かなりこれがきつくなる。ことに規模が大きなところと違いまして、われわれのは規模が小さいですから、それだけに影響するところが大きいというふうに考えまして、先ほどもお願いしましたように、今度これ以上になりましたときには、五〇%というものを、まあその半分の二五%くらいまで御考慮願いたいというのが私どもの願いでございます。
  60. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 関参考人お願いいたします。
  61. 関好美

    参考人関好美君) お答えいたします。  生命保険は長期の契約の性格上、通貨の安定が一番大切なことは当然のことでございます。しかしながら、貨幣価値の問題は、すでに世界的な現象としてクリーピングインフレーションが定着したというように私ども見ておるのであります。これに対して先ほど御指摘の加入者の保護という点につきましては、いろいろと施策を講じておるのでございますが、最近は契約者の奉仕といたしまして、契約者に対する保証機能を拡大いたしまして、これは非常に歓迎せられておるわけでございますが、お話のこの直接インフレに対しての生命保険とインフレと、こういう問題になりますと、なかなかこれはむずかしい問題でございますが、私どもといたしましては、現在の契約者配当のしかたをさらに充実させることを年々実行に移しておりまして、この面でできるだけ補ってまいりたいと、かように考えておるのでございます。よく生命保険は受け取るときはほとんど無価値だというような、一つの庶民的な感情があるわけでございますが、言いわけではございませんが、現行のいろいろ配当を計算に入れまして、また受け取るときはかなり実質価値は下がっておりますけれども、掛け込む保険料自体も長年にわたってお掛けになる関係上、実質価値の非常に下がった金で掛け込んでおられるのでございますが、とかく受け取るほうだけを言われますので、たいへん言いわけになってしまうのでございます。現在の私どもの御契約いたしております保険につきましても、掛け込みと、それから受け取りの実質的な価値、これをいま申し上げましたような観点でこまかく計算いたしますと、まあ大体バランスは、そう大きくかけ離れておらぬということでございますが、これは言いわけになるわけでございまして、大ぜいの大象のお客さん方はそれじゃあ得心されないのでございます。したがいましてインフレに対する前向きの施策にまあこれは欠けておるわけでございます。国が行ないます年金等につきましては、これは財政でおやりになりますので、スライドできるのでございますが、私どものほうはそうはまいりませんので、この御指摘のような点を解決すべく新しく保険種類、保険商品の改善をはかってまいりたい。で、現にいま開会いたしております保険審議会では、この問題を取り上げまして、そうして御期待に沿うような保険商品をつくっていきたい、近くいろいろと聞いていただけるような保険商品ができるのではないか、かように考えておりますのでお答えいたします。
  62. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 参考人方々に申し上げます。長時間にわたり貴重な御意見を拝聴いたしましてまことにありがとうございました。  ただいまお述べいただきました御意見は、本案の審査を通じて十分に役立てさせたいと存じます。ありがとうございました。  午後一時三十分から再開することにし、暫時休憩いたします。    午後零時四十八分休憩      —————・—————    午後一時四十四分開会
  63. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  租税及び金融等に関する調査中、当面の財政及び金融等に関する件を議題といたします。質疑のある方は順次御発言を願います。
  64. 和田静夫

    和田静夫君 まず大蔵省内の財政金融法規研究委員会編「財政金融法規解説全集」、これを出しています大成出版社という会社がありますが、これと大蔵省との関係を御説明願います。
  65. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) 実は初めて聞きます名前でございまして、あまりよく存じませんが、特に何か関係とおっしゃいますと、大蔵省の人々があるいは執筆などをしていることはあろうかと思います。
  66. 和田静夫

    和田静夫君 昭和四十六年の十月二十三日付で各金融機関あてに大蔵省の関東財務局の理財部金融課長関康夫さんの名前で、「「財政金融法規解説全集」の推せんについて」という文書これがまあ出ているわけですね。ここにありますが。この文書の法的性格を教えていただきたい。
  67. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) その文書についても実は存じないのでございますが、特に……おそれ入ります、どうも。  財政金融法規の解説の全集を推薦するという趣旨の文書でございますが、関東財務局の理財部金融課長という肩書きをつけまして推薦をして、片方に申し込み書という欄などがありますのは、たいへん非常識だと考えております。
  68. 和田静夫

    和田静夫君 推薦までは私もあり得ることだと思うのです。たとえば自治省の推薦というようなものはたくさんあるわけですが、ところがいまも言われましたように、申し込み先が明確に関東財務局理財部金融課になっていますね。そしてこの申し込み用紙までつけてある。これではまあ関東財務局の理財部金融課が大成出版社という私企業の代理店に成り下がっているという感を深くするわけです。  さらにこの文書には「別添案内書をご一覧のうえ、ご希望の向きは添付申込書により当課あてお申込み下さい。」と、こうなっているわけです。  申し込み用紙には、ごらんになっておわかりのとおり、担当者名まで記載事項になっているわけです。これは集金をしやすくするためだろうと思うのですが、関東財務局がなぜ一体こうした配慮までしなければならないのか。こうした文書が二度にわたって各金融機関に配られて、そして注文がないと電話で催促までいく。そして買わせている。こうなりますとね、関東財務局というのは、大成出版社からマージンを取っているんじゃないかというふうに疑いを持たざるを得ないような状態です。この辺のことを一体どういうふうに処理をされるおつもりですか。
  69. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) 明らかに行き過ぎの文書と存じます。そのマージンの問題その他、至急調査をさせていただきたいと思います。
  70. 和田静夫

    和田静夫君 この種のことは実はほかにもあるのでありまして、昨年の暮れに株式会社弘報通信社というところの係員が、千代田記者クラブという、まあ大蔵省詰めクラブなんでしょうが、これを偽称しながらです、関東財務局長の添え状をもって、国際グラフという雑誌への広告依頼を各金融機関にして歩いているわけです。どうも仄聞をすると、本省からの指示があったと、こう言うんですね、こんなことありましたか。
  71. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) そういう事実はなかったと存じます。
  72. 和田静夫

    和田静夫君 これら一連の問題というのは、何といっても大蔵省が監督をしている金融機関に対して行なわれていることですから、受けている側は非常にそれは重荷に感ずる。したがって、義理にもつき合わなければならぬというような状態が出ていましてね、たいへん苦情が私のところに寄せられています。したがって、これらのことについては十分今後注意あってしかるべきだと思うのですが、次官いかがですか。
  73. 船田譲

    政府委員(船田譲君) ただいま和田委員からの御指摘のありました点につきましては、私もいままで不敏にしてつまびらかではございませんでしたけれども、承っておりまして、またそのひな形を拝見いたしまして、いずれの場合におきましてもきわめて不適当な行為であろうと思います。いま銀行局長申しましたように、先ほどのマージン云々等の問題については十分調査もいたしますし、同時に監督の任にある者として今後十分気をつけてまいりたいと思っております。
  74. 和田静夫

    和田静夫君 次に、大蔵省は大手銀行の白紙手形用紙が一枚大体三万円から五万円ぐらいで売買をされている、そういう事実について、御存じですか。
  75. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) いろいろと風評その他は聞いておりますが、現実のものをつかんだことはまだございません。
  76. 和田静夫

    和田静夫君 私はここにナンバーD二四四八四七という約束手形を持っているわけです。これは東京都墨田区東駒形二丁目十四番十一号、日東興業株式会社代表取締役神田陽一が発行人の約束手形です。大体これは額面約七十万円ぐらいのようです。これは私あるところで数日前に四万五千円ぐらいで買ったのでありますが、ある金融機関を通して住友銀行の上野支店にこの日東興業の信用照会をいたしましたところ、口座はある、こういうことでした。しかるに日東興業というのは実体のない、いわゆる幽霊会社であります。この手形が取引に用いられますと−私はしろうとですが、専門家の皆さんおわかりのとおり、善意の第三者に犠牲が出ることは明確であります。こうした手形が出回っている実態というのを大蔵省はどのようにいま把握されているのですか。
  77. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) その点は、実は大蔵省の金融検査でもたいへん遺憾ながら最も把握のむずかしい部面でございまして、御承知のように金融検査は反面調査−相手方のほうにまいりまして捜査をするという、いわゆる犯罪捜査の権限を持ちませんものでございますから、金融機関の協力のもとに、金融機関自体だけを検査するということをたてまえといたしております。したがいまして、相手方にどのくらいの幽霊会社があるか、それから手形の発行、流通過程においてどのような不備、欠陥があるか、そのようなことについてなかなか把握し切れないのが現状でございます。ただ手形のそのような問題がいろいろとございましたために、これはもうよく御承知のとおり、昭和四十年から統一手形用紙制度を採用いたしまして、それによりまして少しでもそのような不祥事を少なくするということを考えたわけでございます。そして確かに昭和四十年以後におきまして不渡り手形自体の件数、金額の比率ははっきり下がってきてはおりますが、御指摘のように、かえってその統一手形用紙の信用を逆用いたしますような悪質の犯罪、そのような犯罪が最近かなり多いということは事実でございまして、この点は今後ともいろいろと研究を要する課題であると考えております。
  78. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと教えてもらいたいのですが、そもそも統一手形用紙制度というのは、どういう趣旨で発足をしたものですか。
  79. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) それまでは手形用紙を文房具屋で簡単に買ってきて使えたということでございますので、そういうことではまずいということで、統一手形用紙を昭和四十年の十二月一日に発足させまして、四十三年七月一日から全面実施を見たわけでございます。  趣旨といたしましては、手形の授受による信用取引が乱脈に流れまして、商取引の秩序と安全が脅かされる状態を改善いたしまして、信用取引の純化をはかるという目的で、全国銀行協会連合会を中心といたしまして、とりあえず金融機関側の自主的な申し合わせといたしまして、できる範囲措置として決定を見たわけでございます。金融機関支払い場所といたします手形用紙は、全銀協制定の統一した規格、様式の横書きの手形用紙、これをいわゆる統一手形用紙と言うわけでございますが、これを使いまして金融機関が交付をするということ。それから用紙の交付先は、金融機関信用調査をした上で当座預金口座の開設を認めている取引先に限るということ。それから金融機関は手形用紙の交付簿を備えつけまして、用紙の交付状況を明らかにしておるということ。  これらが統一手形用紙制度の要点でございます。
  80. 和田静夫

    和田静夫君 そこで新聞紙上に白紙手形犯罪が報道されて、われわれ一般人の目に触れ出したのは、この統一手形用紙制度が、いま言われたとおり、全面的に安全実施をされた昭和四十三年七月一日、その以後間もない昭和四十四年ごろから累増している。そして四十五年、四十六年と年とともに多発化、大型化をしているのではないか。で、それに関連をする暴力団数とでもいいますかね、そういうようなもの、また関連金融機関数、そういうものもかなり多数にのぼってくる。例の三共鋼鉄をめぐるところの事件では、二十九の金融機関が関連しているというふうに報道された状況がありました。  そういうことを考えてみますと、こうした事件の発生状況に照合してみて、統一手形用紙制度の趣旨は生かされていないのではないか、こういうふうに考えられる向きがありますね。これらについてはどう判断をされているか。
  81. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) 先ほど申し上げましたように、統一手形制度の採用とともに、全体といたしましての不渡りの件数、金額の比率、これは明らかに低下いたしてきておりまして、その限りにおいては統一手形用紙の制度効果は確かにあったかと存じますが、ただ同時に、この統一手形用紙自体の権威と申しますか、この用紙の価値がいままでより上がった、重みがついたということをまさに逆用いたしました悪質な犯罪が出てきているということは、これはもう御指摘のとおりでございまして、   〔委員長退席、理事柴田栄君着席〕 この点につきまして何らか改善の方法がないか。私どもも研究を、全国銀行協会を中心に研究をしてもらうように要請をいたしているところでございますが、現在までのところ、まだあまりいい知恵が出ていないというのが実情でございます。
  82. 和田静夫

    和田静夫君 この現状の把握というのはたいへんむずかしいのでしょうけれども、たとえば、まあ法務局に聞くことでしょうけれども、東京法務局の墨田出張所が受け付けたものを、昭和四十五年の五月十九日から四十六年の六月二十四日までの間にわたって調べてみた。そうすると百十三の会社を一人の男が登記をしている、こういう事実がある。この辺のことはいま取り上げている問題いわゆる白紙手形の問題と大きくからむのですが、大蔵省はこういう事実について御存じですか。
  83. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) その事実は存じません。存じませんが、実は、ただいま御指摘の点には非常に重大な示唆が含まれていると思うのでございますが、それは、たとえば戦前とただいまとを比べまして、口座開設の態度に、金融機関側の態度にかなりの違いがある。非常に慎重に戦前はやっておったように考えますが、最近におきまして、口座開設の際の態度が安易に流れているのではあるまいかということは、私どもも常に感じているところであります。相手の会社の信用状況その他についてもうちょっと突っ込んだ調査ができないかということ、そしてその調査をしようとしないという気持ちがあるのではなかろうかということ、そして、さらにその根本におきましては、金融機関同士の業容拡大の競争心、そういうものが根底をなしているのではなかろうかというような点、それらの点が基本的な問題としてたえず反省を要する点であろうかと考えております。
  84. 和田静夫

    和田静夫君 法務省は先ほど私が述べたことを御存じですか。
  85. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) たくさんの幽霊会社がつくられたという事件を聞きまして、東京法務局でも一登記所の受け付けた事件について調査を行なったと、こういう事実がございます。その限度で知っております。
  86. 和田静夫

    和田静夫君 私は、次のことをちょっと述べてみますが、法務省、墨田出張所で起こった次のような事実をそれでは御存じですか。  登録月日昭和四十五年五月十九日、栄高実業有限会社、代表取締役荒牧勝利、大正十三年十二月二十五日生。登録月日昭和四十五年五月二十五日、有限会社菱利工業、代表取締役邦光明知、大正十三年十二月二十五日生。登録月日昭和四十五年五月二十五日、有限会社城西工務店、代表取締役鹿島昭夫、大正十一年十二月二十三日生。登録月日昭和四十五年五月二十七日、有限会社美和商会、代表取締役浅利友紀、大正十二年四月三日生。登録月日昭和四十五年五月二十七日、誠恒通商有限会社、代表取締役塩谷善男、大正十年五月十五日生。この生年月日をずっと調べて、ちょっと見ただけで、大正十三年十二月二十五日は、十三プラス十二月の十二イコール二十五。次が十三プラス十二イコール二十五。大正十一年十二月二十三日は、十一プラス十二イコール二十三。大正十二年四月三日、十二割る四はイコール三。大正十年五月十五日、十プラス五イコール十五。こういうふうに、生年月日が足し算や割り算で形成をされています。何か偶然じゃないということがすぐわかる状態だと思うんです。これがずっと一年近く墨田出張所で続くわけですね。そうすると、東京法務局墨田出張所がこうした事実に気がつかないのはどうもおかしいのじゃないだろうか、あるいはこれが気がつかないようなシステムというのは一体どういうことなんだろうか、内部に手形ブローカーに通ずる者がいるのではないだろうかと疑いを持たざるを得ないような状態、こういう事実についていかが御判断になっていますか。
  87. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 御指摘になりましたような事実、おそらくあったんだろうと思いますが、私そこまで詳しい事情は承知しておりません。まあ、御承知のように、登記は申請人の出してきた書類を検査いたしまして、形式上その書類が適法と認められるという場合にはこれを受理して所定の登記をするという手続になっておりますので、受け付けの際にそういう点を疑ってみるということはおそらくしなかったのではなかろうか、このように思います。
  88. 和田静夫

    和田静夫君 形式的な様式行為が満足させられておればそれで疑いを持たない、こういう立場だと。まあそれはそうでしょう、いまの立場。しかし、この辺のことはやはりもう少し改善をすることをお考えになる必要があるだろうという感じがする。  というのは、もっとおもしろいのがあるんです。登録月日四十五年八月十三日、これは調べてもらえばすぐわかりますが、私は調べた。有限会社秋田工務店、代表取締役秋田佳男。同じく四十五年八月十三日、山形合板有限会社、代表取締役山形忠志。登録月日四十五年八月十三日、同日ですね、長野家具有限会社、代表取締役長野英俊。同じ日に登録された会社が、秋田県であり、山形県であり、長野県でありと、県名の頭をとったものですよ。こういうのはたいへんふざけていますね。そしてこのことによって白紙手形を使ういわゆる幽霊会社としての操作が、先ほど来の手形で明らかにしましたとおり、行なわれる、こういう状態になっているのですがね。これらについて今後何らかの措置が必要だろうと思うのですが、そういう検討はされるつもりですか。
  89. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) まあ、仰せのような事案、非常に不自然であるということは私もそのように感ずるわけでございますが、まあ東京法務局の墨田出張所、かなり法人登記の多い登記所でございまして、係も何人か分かれておりまして、必ずしもそれが同一人のところで処理されるとは限っていないわけでございます。それから、これをかりにおかしいと思いました場合に、しからば登記官としてどういう措置をとるべきであったかということになりますと、非常にむずかしいことであろうかと思いますので、まあ、こういった事例が起こりましたことを契機といたしまして、こういう不自然な事例があったから今後取り扱いに注意せよということは、登記所に対してよく徹底させるという必要はあろうかと思いますけれども、それ以上進んでどういう措置をとるかと、法的な措置というようなことになりますと、これはなかなかむずかしい問題で、ちょっといま直ちにお答えを申し上げるわけにはいかないかと存じます。
  90. 和田静夫

    和田静夫君 この問題私ももっと考えてみなければならぬところで、ですから、別の機会に今後の問題として論議をしてみたいと思います。  そこで、大蔵省ですが、白紙手形をめぐる現状をもっと私は深刻に把握をする必要があるのではないだろうか、制度改正を考えるべきじゃないかというふうに実はしろうとなりに思うのですが、いかがですか。
  91. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) 確かにこれだけ犯罪事実がたくさん出てまいりますと、制度を基本的に研究する必要がございます。そこで、銀行協会を中心としてさらに研究をしてもらうようにいたしたいと思っておりますが、その際に、非常にむずかしい問題は二つございまして、一つは、まさに統一手形用紙という制度ができました結果、この用紙自体に非常に重みがつきまして、そのためにこれを、この信用を逆用するという犯罪が出てきているということから見まして、さらにこの手形用紙自体に何らかの形で重みをつける、たとえば銀行が、それを特に金融機関が手形の発行に際して承認の判をつくとかいったような制度、そういうものによって重みをつけることがさらに逆用されることになるおそれはないかどうか、その辺が一つの考慮すべき問題点であろうかと存じます。  もう一つは、新しい何らかの制度的補強を考えますことによりまして取引の便利さを阻害する、一部の犯罪のために全体の取引の便利さ、円滑さを阻害する、その程度をどう考えるか。その二点に着目いたしながら、しかし、何らかの改善の方法があればできるだけすみやかに研究をいたしたいと念願いたしております。
  92. 和田静夫

    和田静夫君 最近起こりました、興産信金で起こった白紙手形の横流し事件ですね、これの概要は一体どういうことですか。
  93. 貝塚敬次郎

    説明員貝塚敬次郎君) 御質問の興産信用金庫に対しまして、当局が調査いたしましたところ、次のような回答が参りました。興産信金の元本店の預金課長でございました高橋某が、その地位を利用いたしまして手形、小切手の用紙を乱発いたしまして、その手形用紙等が暴力団に横流しされてるという事実が警察に察知されまして、同人は四十七年の一月の三十一日に詐欺容疑で蒲田警察署に逮捕されております。当人は四十四年の六月から四十五年の五月まで預金課長のポストにありまして、その間大体十社ぐらいに対しまして手形用紙約千百枚、小切手用紙約一千二百枚を交付いたしまして、そのうち不渡りとなりました手形は大体一千百枚、小切手は大体三百枚、不渡り金額は約八億六千万円というような報告を受けております。  以上でございます。
  94. 和田静夫

    和田静夫君 これは、いま言われたように高橋個人の犯罪と断定をしてよろしいですか。
  95. 貝塚敬次郎

    説明員貝塚敬次郎君) ただいま申し上げましたように、四十七年の一月三十一日に警察に逮捕されておりまして、目下司直の手で調べられておりますので、その結果を待ってわれわれも判断すべきだと思います。
  96. 和田静夫

    和田静夫君 いま言われたとおり、高橋本人は事件が発覚をしてことしの一月五日に本店人事課に引き揚げられた。しかし、私の調査によりますと、一月の八日から一月の三十日までの間に、幽霊会社愛知電機に興産の手形用紙が大体百五十枚手渡されています。さらには、高橋は一月三十一日に首になったわけですけれども、その後にも同じ手形が百枚程度渡されています。これはどうした事態でしょう。
  97. 貝塚敬次郎

    説明員貝塚敬次郎君) 信用金庫からの報告によりますと、逮捕後に交付されてる事実は報告されておりません。
  98. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、この辺の事実関係を、私の主張が正しいか、それを裏づけるものがあるかないか、どういう形で一体調査したらいいですかね。
  99. 貝塚敬次郎

    説明員貝塚敬次郎君) ちょっと御参考に申し上げますと、高橋はいま申しましたように四十四年の六月から四十五年の五月まで預金課長のポストにおりました。彼が異動してから手形の交付された事実はございます。
  100. 和田静夫

    和田静夫君 ありますね。
  101. 貝塚敬次郎

    説明員貝塚敬次郎君) はい。
  102. 和田静夫

    和田静夫君 で、したがって、私はどうもその高橋個人の犯罪と断定するわけにはいかなくて、彼がその責任者であった場合のあとでも、同じような形でのものが行なわれたのではないだろうか。したがって、前段で白紙手形一般論について申し上げてきたのは、この辺についてたいへんに疑義を持つからであります。  で、こうなりますと、たとえば、興産の内部に高橋以外にも同じようなことをしている人間がいるということなのか、あるいは興産が外部からでもゆすられているということなのか、どちらかだということになろうと思うのですが、警察庁いかがでしょう。
  103. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 高橋につきましては、一月三十一日詐欺で逮捕いたしまして、さらに二月の十九日に経済罰則整備に関する法律の違反ということで再逮捕をいたしております。で、現在この経済罰則整備に関する法律の違反——贈収賄ですが、それについて起訴になっている状態でございます。それで、さらに内部の関係、あるいは暴力団に興産信金がいたぶられているとか、あるいは恐喝をされているというような事態については、まだそういうところまでは、そういう点については私どもも明らかにいたしておりません、そのように聞いております。
  104. 和田静夫

    和田静夫君 その手形交換の黒幕と言われている胡上某に高橋を紹介したのは岡田という元得意先係だということです。ということは、高橋以前にも興産には疑いを持たれる人間がいたということであろうと思うのですね。で、大蔵省はこの興産のこうした経営体質を一体どのようにお考えになっていますか。
  105. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) 経営体質に今回の事件にはしなくも出ておりましような問題点があることは十分認められます。従来の検査の際におきましても、特に預金関係の事務等につきまして注意を喚起しているところでございまして、そのような点、今後さらに改善を要する点が多々あろうかと存じます。
  106. 和田静夫

    和田静夫君 警察庁にお尋ねしますが、警視庁では昨年の夏に、従来は刑事責任追及が不可能とまあされていた手形売買に賦物故買を適用するという新しい方法を見つけられました。これは捜査当局の私は大きな努力の成果だと思うし、その部分については非常に結果を尊敬もしているのですが、しかし、そこにはまた一つの問題が出てきているような気がするのです。  賦物罪というのは、相手が——私の考え方間違っていればあれですが、詐欺、横領、恐喝、背任、窃盗などの財産犯によって取得した財産を、その状況を知りながら買ったり保管したりしたとき初めて成立する。そうすると、警視庁のこの捜査方法というのは、当座屋、すなわち手形ブローカーが幽霊会社をつくって、そして金融機関にこの会社を実在するもののように見せかけて、そして手形用紙を詐取したと、言いかえれば金融機関が詐欺の被害届けを出した場合にしか通用しないのではないかということを、今度の事件を新聞で読みながら思うのですが、いかがです。
  107. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) この問題、法律的にはいろいろむずかしい問題がございます。先ほど銀行局長から答弁がございましたが、やはり従来の手形用紙というものは文房具屋でも買えた。そういう意味では財物性というものはほとんどないものである。統一手形用紙制度になってきましても、その点についてはあまり変わりはない。だから口座を設けてそこで手形用紙をもらうということが直ちに詐欺になるかどうかということが一つの問題でございます。いま御指摘のような臓物故買になるためには、まずその前提に詐欺が成立しなければいけない。ところが先ほども銀行局長の御説明もございましたように、次第に統一手形用紙というものは重みを持ってきた。それから一万、二万とか三万とかいうふうな価格で売買されるようになってきた。そうなってまいりますと、やはりこれは財物性を持ってきたというふうなことで、昨年の八月ごろだったと思いますが、そのころからこれについて不正の申告をして幽霊会社をつくる、それからさらに銀行を欺いて、あるいは銀行信用調査が十分でないところにつけ込んで口座を設けて、それを手形用紙なり小切手の用紙をもらう。それを売る。こういうふうな行為を詐欺である。それをさらに今度は手形屋に一括して流したり、ばらばらに一枚ずつ流すというふうなやり方をしているものを、これを賦物故買であるというとらえ方をして、検挙をやり始めましたのは昨年の半ばころ以降からのことでございます。そういう点でいま御指摘のように、確かにこれは詐欺になるということには銀行のほうの被害が確定しなければいかぬ。これにつきましては、現在までいろんな三グループばかりの事件を警視庁がやっておりますが、大体全部二十何社ですか、全部について被害届けを受けているという状況でございます。
  108. 和田静夫

    和田静夫君 そこでいま問題になっているあれですね、蒲田署で摘発をした興産、この元預金課長と手形ブローカーの手形用紙の詐取事件、これは手形ブローカーが課長と通謀して幽霊会社に手形用紙を交付するというようなあれは事件だったですね。そこで預金課長と手形ブローカーが結託をした、すなわち何か金融機関がだまされたという状況というものが出ていないような感じに、いま答弁がありましたけれども、するんですね。  〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕 したがって、検察当局も詐欺の処分を見合わせて、「経済関係罰則ノ整備二関スル法律」を二人に適用する、先ほど言われたとおりになったわけですが、としますと、この二人が共謀をしたあげくつくり出した手形用紙ですね。これは財産犯によって取得されたものではないから、幾ら個人に売っても臓物罪の適用はむずかしいのではないかと、しろうとなりに思うんですが、その辺はどうですか。
  109. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 経済罰則整備に関する法律の違反で逮捕いたしました事実は、二十数万の金をもらってこの預金課長がそういう手形用紙を売り渡した。この点をとらえて贈収賄で検挙したわけでございます。  そこで、いまの問題の本来そういう、何といいますか、口座の開設あるいは手形用紙の交付の権限を有しない一般の金庫の職員であっても、そういう権限を有しない者が支店長をごまかして口座を開設さしたというふうな場合には、これは詐欺の共犯でございます。ところがそれでなしに、そういう口座の開設あるいは手形用紙の交付について実質的な権限を持っている支店長であるとか、あるいはそういう権限をまかされている支店長代理というような役職員が、そういう口座を開設して手形用紙を交付した、こういう場合には、いわゆるそこに欺罔行為がない。人を欺罔して財物を騙取するというのが詐欺の構成要因でございますから、そこに欺罔行為がない。そうなると、この場合には詐欺罪は成立しない、こういうことになろうかと思います。
  110. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと一つ伺いますが、こういうことを一体、実は法律改正をしなければどうにもならないと思ったので、わざわざ大蔵委員会に出てきたのですが、幽霊会社の手形用紙を売り買いしますと、一方では詐取された手形用紙だからその売買あるいは流通の過程にあるものが臓物罪でひとしく刑事責任を追及される。しかし他方、信金職員に手形ブローカーが金を握らせて、そうして手形用紙を獲得をすれば、このこと自体は罪となっても、その手形が流通する過程で同じぬれ手にアワのもうけをした手形ブローカー、これは生き延びることになりましょうか。これは現行法上非常に大きな盲点じゃないかと思うのですが、これは大蔵省に聞くのですか、どちらですか……。
  111. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) お説のように、この点は確かにまことに妙な結果になる。預金課長というのは一体口座を設けることについての権限はどうであったかというようなことになると、本件の場合はむしろ支店長、支店長代理という形になっておりまして、預金課長が金をもらってそうやっても、やはりこれについては贓物性は失わないであろうというふうに感じますけれども、やはり何といっても預金の主務の課長であるということになると、支店長なり支店長代理と非常に形が近くなってくる。この点はまだ捜査が十分いっていないせいもございますけれども、実は処分留保になっておる、詐欺になるかどうかということについて。経済罰則の整備に関する法律違反では起訴になっている、こういう形になっておりまして、法律問題としては非常に微妙なところがある。そういうことから、いま御指摘のように、一方の場合は臓物罪でやられるけれども、一方の場合はそうでない、流れてくるものは妙な手形用紙だ、こういうことになってきますので、確かにその辺は法律的な問題はあろうかと私は考えます。
  112. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、この辺は検討されるということですか。
  113. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 一つはこういうものについて特別の罰則をつくるかという問題もございましょうが、やはり問題としては、たとえば幽霊会社というものは何とかならぬものだろうかという感じの問題あるいは先ほども御答弁がありましたような、統一手形用紙制度自身についての検討という問題もありましょう。いろいろあわせて考えていかなければ、ただこれについて罰則だけつくればいいというふうなことでは問題の解決にならないのじゃないかというふうに考えております。
  114. 和田静夫

    和田静夫君 さらに「経済関係罰則ノ整備二関スル法律」ですが、これは大蔵省にお聞きをしますが、この法律は戦時経済統制時代にできた、ほとんど死文化されていたといわれてきたわけですね。こんな法律があるのかと思って実はあれしたのですが、それをあえて適用して悪質な犯罪を検挙した警察当局の苦労は多とするに値するのじゃないかと私は思うのですが、しかしこれにも大きな矛盾があるのじゃないかという気がするのですが、やはり信用組合と同じ企業形態の銀行が同法の対象からすでに削除されているわけですね、これは。そうすると信金職員が手形ブローカーに金をもらって、インチキ会社に手形用紙を交付することは詐欺にならないけれども、「経済関係罰則ノ整備二関スル法律」の贈収賄になる。しかし、すでに同法から削除をされた銀行の行員がブローカーに金をもらって、インチキ会社に手形用紙を交付することは詐欺にもならないばかりか、この「経済関係罰則ノ整備二関スル法律」の贈収賄も適用できない。これは銀行局長たいへんおかしいじゃないかと思うのですがね。この辺はどうしても私は法律をもっと大蔵省の側が検討する必要があるところじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  115. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) ただいま御指摘の点いろいろ問題もございますので、今後関係各省と連絡をいたしまして検討いたしたいと思います。
  116. 和田静夫

    和田静夫君 まあ二、三あと残されたわずかの時間ですが、雑件です。いまのところに入るわけですが、いま局長答弁になったように、われわれもしろうとなりにいろいろ考えてみますが、ぜひやっぱり納得できるような方途というものが講ぜられるように期待をしておきたいと思います。  金融二法の施行後、中でも合併転換法に基づいて同種異種の合併転換が進んでいますが、大蔵省はどういう基本的な考え方の上に立ってこの合併転換への行政指導を進めているのか、まず承りたいと思います。
  117. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) まず同種、異種の問題でございますが、その点につきましては、原則として同種が望ましい。異種の場合はケース・バイ・ケースで認めることもあり得ますが、なるたけなら同種のほうが望ましいということが一つの基本方針でございます。それからもう一つは、合併転換の際の基本的な姿勢といたしまして、役所のほうから積極的にどことどこを合併しろというような形での強制的と申しますか、天下り的と申しますか、そういう合併をさせない。当事者同士で自発的に合併の話がございました場合、それに対して役所といたしましては極力側面的にそれを援助するということ、その二つが基本的な姿勢でございます。
  118. 和田静夫

    和田静夫君 合併の中でもとりわけ相互銀行による信用組合の吸収合併ですが、これによって信用組合の零細な取引者がふるいにかけられて、そして選別融資となって、零細企業向けの融資に過疎化現象が起こる傾向があります。さきにも長野県であった信用組合の相互銀行への転換あるいは名古屋地方にあった相銀による信用組合の合併、こうしたケースで、はたして合併法の趣旨である地区金融の円滑化がはかられたかどうか、あるいは働く従業員が犠牲になっていたりはしないか、いかがですか。
  119. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) ただいまの点につきましては、先ほど基本的な姿勢として申し上げましたように、原則といたしまして、縦の吸収合併、これはただいままさに御指摘になりましたような趣旨から、私どももあまり積極的にはこれを取り上げないという姿勢をとっております。しかしながら、ケース・バイ・ケースでこれを認める場合ももちろんあるわけでございます。たとえば長野県の場合でございますと、これは御承知のように相互銀行が存在しないわけでございます。そこで信用組合から相互銀行への転換ということが行なわれたわけでございます。そのようなことで地区金融の円滑化あるいは働く従業員の問題、それらを総合的に勘案をいたしまして、ケース・バイ・ケースでなるたけなら同種の合併、どうしても必要の場合にだけ異種の合併を認めるということにしております。
  120. 和田静夫

    和田静夫君 信用組合から信用金庫への転換が大阪に一件あった。先ごろ地元の信用金庫から次のような陳情があったのですがね。信用組合は信用金庫よりもいわゆる業務区域あるいは店舗の新設にあたっての基準がゆるいために、信用金庫よりも業域が広くて店舗数も多い。それが認可基準のきびしい信金にそのままの業域と、そして店舗数で転換されたのでは困る。一見そうだろうと思うのですが、大阪の不動信用組合が信用金庫への転換を申請をしているわけでしょう。そうすると業務区域、店舗数についてこれは何らかの検討を加えるべきだというふうに考えられますが、それはどうなんですか。
  121. 貝塚敬次郎

    説明員貝塚敬次郎君) 大阪の不動信用組合の転換につきましては、四十六年十二月十七日付で認可申請がございました。その内容を調べてみますと、店舗は十二店舗でございまして、大体大阪府下の二十九の信金を比べますと平均して十一店舗ございますので、十二店舗と十一店舗でございますからそれほど多くない。  それから営業区域も大阪市、堺市、守口市、東大阪市でございまして、まあ四つございますので、大体同じような仕組みを持っておるものは、その一・五倍から二倍くらいの市の営業区域でございますので、バランスはとれていると思います。
  122. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) ちょっと補足をして申し上げますと、ただいま先生御指摘の信用組合を合併するという場合におきまして、店の問題につきましては確かに御指摘のような問題がございます。店舗を認める者が信用組合の場合は都道府県であり、信用金庫その他の場合は大蔵省財務局であるということで、その店舗の初めの設置の基準に若干の違いがあるという点、その点はまさに御指摘のとおりでございまして、私ども信用組合の合併を議論します場合には、当然のことながらその点は一番注意深く検討いたす点でございます。  それから先ほどの問題に返りまして恐縮でございますが、ちょっと蛇足をつけ加えさせていただきますが、興産信用金庫の体質改善には多々検討すべき問題があると申し上げましたが、同時に同金庫全体の信用上は何ら問題はございませんので、その点は特につけ加えさせていただきます。
  123. 和田静夫

    和田静夫君 最後に、名古屋不動信用組合の件で若干お尋ねいたしますが、この業務停止後和議が確定して、そして債権譲渡による資産の肩がわりで東海銀行預金者に対する支払いをほぼ完了したと聞いておりますが、それはそうでしょうか。
  124. 貝塚敬次郎

    説明員貝塚敬次郎君) 和議債務が十五億八千万ありまして、四十六年四月から本年の三月まで支払うことになっておりますが、一月末現在で十五億三千八百万。したがいまして九八・三%の支払いを完了しております。
  125. 和田静夫

    和田静夫君 その際に名古屋不動信用組合の持っていた債権は金額を確定しないで無条件に東海銀行に譲渡されているのでしょう。その後の回収状況は一体どうなっておるのですか。
  126. 貝塚敬次郎

    説明員貝塚敬次郎君) ちょっと事実関係でございますけれども、無条件の譲渡でございませんで、信託的譲渡担保でございます。したがいまして東海銀行が担保権者になります。そして譲り受けました担保を処分いたしまして、いまの御質問にお答えいたしますと、五〇%ぐらい回収しております。
  127. 和田静夫

    和田静夫君 そこで名古屋不動は今後一体どういうふうに処理をされるわけですか。
  128. 貝塚敬次郎

    説明員貝塚敬次郎君) 信用組合は大蔵省が直接監督しておりませんので、監督官庁はこの場合は愛知県でございます。愛知県の意向でございますのでよくわかりませんが、仄聞するところによりますと、再建が非常にむずかしいんじゃないかというふうなうわさを聞いておりますが、県としては目下慎重に検討をしております。
  129. 和田静夫

    和田静夫君 東海銀行が譲渡を受けて、そして回収したいわゆる債権と、同行が肩がわりした金額との間に生じたいわゆる差額、これは一体どう処理されるわけですか。組合に返すのですか、あるいは東海銀行利益になるんですか。
  130. 貝塚敬次郎

    説明員貝塚敬次郎君) 組合員でありますところの債権者に返すわけでございます、組合員でございます。
  131. 和田静夫

    和田静夫君 全国信用組合連合会が担保としている名古屋不動の不動産などの資産、これはどういうふうに処分されるわけですか。
  132. 貝塚敬次郎

    説明員貝塚敬次郎君) いわゆる全信連とそれからこの不動信用組合と目下いろいろと話し合っておりまして、その結果によって処分がきまっていくと思います。未定でございます。
  133. 和田静夫

    和田静夫君 これは、端的に言って、組合に決定権があるのか、いわゆる担保権者の意思によるのか、県がきめるのかその辺はどうなんですか。
  134. 貝塚敬次郎

    説明員貝塚敬次郎君) 決定権は、いずれもございません。
  135. 和田静夫

    和田静夫君 ありません。名古屋不動信用組合にしても、あるいは信用組合の不祥事件の裏には、導入預金、員外預金が介在をしています。導入、員外に対する大蔵省の見解ですね。これは、信用組合の問題だからということじゃなくて、——そういうふうに片づけられる筋合いのものではないと思うんで、導入、員外がふえていっている状況ね、こういうものに対処する大蔵省の方針というものをお聞かせをいただきたいと思います。
  136. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) 導入預金につきましては、法律もございますし、私どもといたしましても監視を怠らないでまいりたいと存じます。特に経営者の資質がこの問題についてはかなり決定的な要素となりますので、その点につきましても改善の方策を検討してまいりたいと思います。  員外預金に対しましては、なかなか把握しがたい点もきざいますが、これも本来のワクのうちで健全な業務を推進いたしますように、組合金融自体の特色を十分に生かすように指導をしてまいりたいと存じております。
  137. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  138. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 次に、準備預金制度に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  139. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 きょうの参考人意見を聞いておりまして、それから新聞の論調その他見ておってね、金融界があんまり抵抗せずに例の金融制度調査会でああいう答申をつくることについては、まあそうやらぬだろうと、非居住者のものはあるいはやるかもしれぬけれども、その他のものは、一〇%を二〇%に上げてみてもすぐやらぬだろうと、だからまああっさりのんだわけだというような新聞論調もあるわけですがね。そこで、この法律案がかりに通ったとすると、やらなければならぬことだと思うのですね。そのためには、貸し倒れ準備金なり、あるいはいま現に日銀がやっておる振り出し手形なり、いろいろな関連もあるかと思いますが、一体、通ったらやるといってみても、たとえばいままでの実績は三・五が最高だった。ですから、どんなことになるのか、その辺のところをひとつ心がまえをお聞かせいただきたい。
  140. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) 実際の適用の時期、態様、どんなことになるのかという御質問でございますが、私どもいま考えておりますのは、現在の金融緩和基調というのはある程度続くのではあるまいかと思っております。そうしてまた、それが、緩和基調が変わる時期にどの程度にタイトな状況に移るかということにつきましても、以前ほどきびしい資金需要超過という状況にはなかなか移りにくいのではあるまいかというふうに考えております。そういう観点からいたしますと、準備預金制度の国内面における機能の発動、これはかなり先になるかもしれないという感じを持っております。ただ、先々におきましていろいろな組み合わせが想定されるわけでございますが、たとえば先ほどちょっとお参考人の方からお話がございましたように、オペレーション政策との併用というようなことがございますれば、準備預金の率というものはかなり高い水準になるかもしれない。そういうことも考えられますので、天井だけは二〇%にしたものの、実際の運用はずっと低いところでやるのではあるまいかという予測がもしあるとすれば、それはそうではない。やはり天井に近い、もしくは天井ぎりぎり一ぱいの運用ということは十分に現実の問題として考え得ることではあるまいかというふうに考えております。
  141. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、緩和基調のときにはやりませんよと、まあ引き締め一つ手段なんだからと。  非居住者のほうはどうですか。
  142. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) 短資対策としての、たとえば非居住者預金に対する一〇〇%の準備率適用、あるいは一〇〇%までいきませんでも準備率適用、これは、いますぐの問題といたしまして、御審議を願ってもし法律が制定されました暁には直ちに発動することに相なるかと思います。
  143. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 きょうも参考人の御意見に出たのですが、準備預金へ利子をつけてくれと。これは、主張されておるいろいろなことを勘案すると、結局貸し出し金利への影響だということになっていますね。そこで大蔵省は、いままでのうちでは、つけるつもりはないだろうと思っておりますが、そうじゃないですか。
  144. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) これは、先ほで参考人の御意見にもございましたように、あまり急激な変化金融機関経営に与えないという意味におきまして、——本来は、ただいま御指摘のようにコスト効果をもフルに発揮させるという意味におきましては付利しないほうがきき目は強いわけでございますか、ただいまの、急激な変化を与えないという趣旨からまいりますと、ある程度付利をする場合も十分考えられるということでございます。
  145. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、量的規制ですね、この率で。量的規制と、それから金利をつける、利息をつけるのと、両方を活用しながら、何というんですか、急激な変化を与えないように、まあ全く混乱の起こらないように、その辺のところはひとつ大蔵省にまかしてくれと、わしのほうでひとつ、つけるべきだと、いやこの際はつけませんよと、このときは一〇%ですよと、こちらのほうは五%でいきますよというようなことは、まあこれは運用でとことんまでやっていくんだと、そういうことなんですか。
  146. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) 日本銀行及び大蔵省で、運用上その辺のところは相談をしながらやってまいるというたてまえでございます。
  147. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そのときに、日銀と大蔵省とが相談されるというのだが、形式的にはそれは総裁と大臣ということになるかもしれませんが、何か定期的なというんですか、恒久的な、何かそういうようなもので相談されるような機関と申しましょうか、——お互いに窓口を持っておることはわかりますが、窓口ぐらいじゃいけなくて、もう少しそのスタッフ等まである程度きまったような何かの委員会式のものがございましょうか。
  148. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) 日本銀行の場合には、政策委員会の議題として本問題が議論をされます。  それから、日本銀行と大蔵省との間の連絡でございますが、これは毎月原則として一回ずつ定例懇談会におきまして、全般的な金融情勢につきましての意見交換を行ないまして、その結果にさらにこまかく議論すべき問題がございますれば、担当者同士の会合を随時開くことにいたしております。そのようなことを通じまして、現実の活動の態様をきめてまいりたいということになろうかと存じます。
  149. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 貸し倒れ準備金のほうはどれだけ——切り下げられたわけだな。これは、率はどれだけですかね。
  150. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) 千分の十五から千分の十二に税法上下げられたわけでございます。
  151. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これはそうすると、いつからですか。
  152. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) この三月期決算からでございます。中小金融機関につきましては一年延期でございます。来年の三月期から適用になります。
  153. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それからきょうの参考人意見をお聞きしながらやっておると、まああの人たちの受け取り方でいえば、信金関係でいえばシェアを荒らされておる問題、超緩和だとおっしゃる。荒らすほうの側は緩和だとおっしゃっておられるわけですが、この受け取り方なんですが、これはいまも合併で、縦の合併ではなくて、地域金融を円滑にするいわゆる横のほうがいいのじゃないかという御意見もあった。そういうところ。  それからもう一つは、資金コストの問題がありましたが、何といったってあの人たちは高いわけなんですね。そこでこの際歩積み両建てですね、まあなくなった、なくなったというが、あなたのほうのいままでの指導というための一つのものさしがございますね。ですからこの際、その歩積み両建てについてものさしを何か検討されますか、どうですか。いままでとっておられる資料あるいは行政指導されるときのものさしがございますね。そのものさしというものについてはどんなふうにお考えですか。
  154. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) いままで歩積み両建てのものさしといたしましては、大蔵省調査と公正取引委員会調査と二本立ての数字を比較検討いたしまして、それをもって判断をいたしてまいったわけでございます。毎年五月と十一月の数字が発表されるわけでございますが、ここ三、四年来御高承のように大体一%内外ずつ公正取引委員会の数字も大蔵省の数字も下がってきております。公正取引委員会のほうの数字は、借り入れ先のほうから調査をいたしております。この点はかなり信憑性のある数字でございますが、大体それとスライドいたしまして、大蔵省側の数字も下がってきております。ただ何ぶんにも歩積み両建ての問題は基礎的な金融機関と、借り手側との力関係の問題でございますので、いままでのような万年資金需要超過というような時期におきましては、絶えずこれを当局といたしましてチェックいたしておりませんと、すぐにまた歩積み両建てがふえるというような関係にございましたので、いまの五月、十一月の数字を見ますほかに随時特別に歩積み両建てのための検査を行ないましたり、あるいは通常の一般検査の際に、歩積み両建てを特別に重点を置いて見ていくということで検査をいたしております。前十一月期の数字がまだ、もうしばらくたちませんと出ないのでございますが、最近の検査の結果を報告を聞いております私の感じを申し上げましてたいへん恐縮でございますが、感じでは相互銀行あたりを中心にしてかなりの下げ幅というふうに判断をしております。
  155. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 いや私は、局長すわっておってひとつ御答弁を願ってけっこうですが、行政指導をされるときに、大蔵省銀行局として一つのものさしを持っておられて、これよりかもはみ出したのはいけませんよと、こういう行政指導をされてきたと思うのです。この際、力関係だということも考慮して私は、ものさしをつくっている、あるいは担保の若干性格も起きておるというような意味もあって私はひとつのものさしをつくっておみえになったと思うのですが、そのものさしというものをなぶられる、そういう御気持ちがあるかないかということなんです。
  156. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) いままでのものさし、これも御承知のとおり第一ラウンド、第二ラウンドということでやっております。そのものさしをこの際いじるということは、実は考えておりません。いま金融情勢全般が転換期を迎えておりまして、もう少し歩積み両建ての実態の推移を見ましたあとで、ただいまのものさしを変える必要が出てまいりますれば、その点を措置をいたしたいというふうに考えております。
  157. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 話はまた前に戻りますが、中小企業が借りる期間なり、資金コストが高くなってはいけないから、預金準備率等も低くしてめんどうを見ましょうよということ等があり、中小企業に対する人たちの資金コストが安くつくようにいろいろ苦労しておみえになると思うのです。  それから、公定歩合の引き下がったのが、じゃ、どのくらいこうなってくるのかというようなのを勘案しながらやっていかれるときに、いま言ったように片方ではこういうときですから、地銀なり都銀が出てきてシェアを荒らすのだ、そうすると全く中小企業のめんどうを見ておられる信金なり相銀なりそういう人たちの立場というものはたいへんだし、借りるほうの側でいえば、資金コストが少しでも安いほうがいいわけなんですから、その辺のところをどういうかね合いでバランスをとっていかれようとするのか。これはいまの金利というものは中小企業の人が借りれば、確かに八分なりあるいはもっといけば七分ぐらいのところで借りる人もあるわけなんです。と、片方では資金コストが大体六分ぐらいにつくといわれているわけですね。そんなことで一分ぐらいの幅で経営ができていくのかどうか、いろいろなことがあるわけですが、どういうふうに、どのくらいの金利がいいものなのか、妥当なのか、いまどき。そして、どこを目標にしてそういう調整をしていったらいいのか、どんなふうにお考えになっているのかね。
  158. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) その点につきましては、ただいまの一番大きな問題の一つでございまして、こういう金融の本格的な緩和基調の時期を迎えました場合には、各種の金融機関が、それぞれの経営の特性をフルに発揮しないといけない時期であろうかと存じております。言いかえれば、従来、とかく量の競争が前面に押し出されておりましたのに対しまして、いよいよ質がものをいう時代に入ってきているという感じがいたします。たとえば大銀行が中小金融に乗り出してくる、この場合に中小金融機関が同質の金融サービスをしております場合には、非常に苦しい競争になり、劣勢に立たされる。本質的に資金コストはただいまも御指摘がございましたように、どうしてもやや高いということでございますから、そういう同質のサービスをいたしておりますと、負けるという問題が生じます。そこで、中小金融機関といたしましては、こういうときにこそ従来からつちかってまいりましたきめのこまかな、地域に密着した金融サービスにいよいよ精を出す、そのことによりまして、都市銀行なり他の種類金融機関の及ばないような金融サービスをますます与えることにつとめていくということが何よりも大事な時期にきているのではないか。その意味で、俗なことばで恐縮でございますが、もちはもち屋式のそれぞれの金融機関の特殊の特色を十二分に生かす、そういう競争の必要な時期にきているのではないかというふうに考えております。
  159. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私も、それはこうだということは、なかなか銀行局長として言いにくい、また言える問題ではないかと思いますけれども、たとえば預金準備率をどうこうするというような場合、いろいろなことありますが、結局預金のほうの利息はいろいろなところがあって、ある程度郵貯もきまっておるとか、定期はどうだとか、こうなっておる。貸し出し金利というものは力関係だといえばそれまでで、安く借りる人と、高く借りる人とあると思います。だけれども、そうは言うものの、どっかにぼくは一つの目標みたいのものが、このくらいの金利が適正な金利水準じゃなかろうか、たとえば、国民金融公庫が出しておる金利というものが適正なのか、どうなんだ、あるいは信金がいまやっておるようなこのぐらいのものが妥当なのか、その辺のところについてどんなふうにお考えになっておるのかね。それはなぜそういうことを言うかというと、片方じゃ歩積み両建てがありまして、貸し出し金利はこうだけれども、実は歩積み両建てを考えると、あるわけですね。そういうものがこうずっとなってきますね。片方ではまた歩積み両建てなしで貸しておるところがある。それですから、単に金利ということだけではいかぬかもしれませんけれども、しかし、そうは言うけれども金利というものがある程度あっていいじゃないか、目標金利水準というものがあっていいじゃないかという感じがしますから、そういう意味でお尋ねしているわけです。
  160. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) 確かに御指摘のようにむずかしい問題でございまして、問題のむずかしさが大きく分けて二つあろうかと存じます。  一つは、ただいまも御指摘のありました実質金利と約定金利との関係、これをどう見るかということ、これは今後歩積み両建てがだんだん減ってまいりますれば、その点の差は非常に小さく縮まってまいるとは思いますけれども、その点をどう見るかということが一つございます。  それからもう一つの問題として、金利水準全体がいま激変の時期にきているのではないかというふうに考えます。そしてその大きな方向といたしましては、やはり当分は低下の方向をたどるのではあるまいかということ。そしてその理由といたしましては、海外金利との関連が一つございます。それから国内的に付加価値率の低い部面が、従来の設備投資中心の金融から、次第に社会福祉、社会投資というようなことが中心になってまいりますと、付加価値率の低い方面への融資というもののウエートがふえますので、どうしても金利の低下というものは必要になるし、必然の勢いになってまいるということが一つ。それから当面はやはり金融緩和による景気の進行という問題がもう一つ加わってまいりますと、ここしばらくは金利水準全般としてどんどん下がってこざるを得ない。したがいまして、たとえば国民公庫の金利基準としてと申します場合の、国民公庫の金利もまた動く、下のほうに動いていくということになりますので、相関連し合いまして、当分の間は相当の金利低下の趨勢にあるのではあるまいかというふうに判断をいたしております。
  161. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 実はクリープインフレということを関さんは使ってみえますね。政府なり大蔵省が、クリープでも、ギャラップでなくっても、とにかくインフレということばは禁句だと思うんですよ。だから傾向にあるとかなんとか言っていますが、それはそれでいいですが、とにかくこれだけインフレの中でいろんなことがあるわけですが、これもちょっとした問題が指摘されたわけですが、たとえば生保なんかでいきますと、配当なりいろんなことで還元しておるようですが、これはノーマルな姿ではなくて、元来なら元金が動かなければいいわけですけれども、大体ベースアップが毎年毎年あるということは、完全なインフレを一番よく私は示しておるものだと思うんですよ。まあしかしそういうインフレ論争じゃなくて、何か、インフレを阻止するというんですか、拍車をかけるというふうにもなるかもしれませんけれども、どう言ったらいいですかね、預金の元金をどうするとか、それから、年金をもらう人が全くこういうときにはばかみてくるわけですね。ですから、貯蓄奨励という意味じゃないですけれども、そういう人たちがばかをみるようなことを何か救済する方途というものは考えられぬでしょうか。
  162. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) これはどうも一大蔵大臣か企画庁長官がお答えになる問題でございますけれども……。
  163. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 まあ政治論じゃなくてですね。
  164. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) たとえば、先ほど関参考人が御答弁いたしておりましたクリーピングインフレーションの問題について、ただいま保険会社としての取り組み方の一つは、保険審議会でも議題になりつつございますが、エクイティー商品と申しますか、関参考人のいわゆるクリーピングインフレーションに対応して価値が変わるような保険商品が開発できないかどうか、そういうことを研究をいたすことになっております。  技術的な問題としてはそういったような問題がございますが、全般の方策をどういうふうに持っていくか、これは、これだけ国際化が進みまして各国の経済が密接にお互いに関連し合ってまいりますと、なかなか一国だけでいろいろと施策を講ずるということもむずかしくなろうかと存じますが、対応策としての技術的な方法は、ただいまの新種の保険商品の開発であるとか、あるいはそれに似たようなものを保険以外のことについても考えるかどうかというようなことにつきましては、まだまだ研究の余地があろうかと存じます。
  165. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ですから、それは大蔵大臣ですよと言われればそれまでですが、私は、行政の立場で実際大蔵省でいえば大臣と局長がどうというわけではないと思うんですから。  年金受給者というもののベースアップありますよ。大体三分の一ぐらいか、四分の一ぐらいあるわけですね。とても格差が出てしようがないわけです。ところが、まだこれは一つあるでいいですが、今度は、預金をしておくと利子がつくけれども、元金は全然スライドがないわけですね。元金もスライド制をやっているところがあるわけです。ですからこういうもののバランスをとることが——とればかえってインフレを認め、インフレを拍車かけることになるからやらぬというのか。全くそうじゃなくて、こういうものは一ぺん検討してみる対象になるものかならないものか。そこら辺から議論してみる必要があると思うんですが、局長はどんなふうにお考えですか。
  166. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) その点につきましては、やはりインフレーションを肯定したような形での施策というものは私どもといたしましては避けたいという感じでございます。ただ、たとえば、世界各国のうちでは、比較的そういう方向での経済政策に踏み切ったところも御高承のようにすでに出ております。南米あたりでその実例がすでに出ているわけでございますが、その辺の今後の動向、結果、それも私どもといたしましては十分に参考にいたしてまいりたいと考えております。
  167. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 次に、これは実は日銀総裁が来たら総裁にもお尋ねしようとしたが、これも大臣だと、こうおっしゃればそれまでですが、国際金融局長にちょっとお尋ねしますが、日本は一体ドルを基軸通貨と認めておるのか。そうじゃなくて、もう基軸通貨として崩壊してしまったんだという認識に立っていろんな施策をやられようとしておるのか。その辺はどういう認識なんでしょうか。
  168. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 基軸通貨という意味でございますが、これが現在の国際通貨制度におきまする準備通貨と申しますか、当局が準備資産として保有する通貨まあこういう意味で申し上げますれば、やはりドルは当面は準備通貨としての機能を持ち続けるのではないか。これはある意味では昨年の八月十五日のニクソン新政策以来、金との交換性が停止をされましたので、準備通貨としてのドルの意味につきましては、まあ非常に基本的な変化があったわけでございます。これはもう御承知のとおりと存じます。  といいましても、他方、それじゃドルにかわる準備通貨——準備資産があるかと申しますと、これは御承知のとおり、IMFポジションでございますとか、あるいはSDR、あるいは金というようなことが従来からも一つの準備資産としてあったわけでございますが、そういうものは、量的に申しますと、それほどたくさんはございませんで、やはり量的にはドルが準備資産の大きなウエートを占めておったわけでございます。それは将来の新しい国際通貨制度、これから各国といろいろと議論をしていかなくてはならない問題でございますが、それにおきまして、終局的にどういうふうにしていったらいいかという点は今後の議論でございますけれども、現在の段階でドルは準備資産であるということをやめ得るかと申しますと、これは量的にいいましても、直ちにそれにかわり得るものがない。それから為替市場に対する介入でございますか、これもやはりドルをもってやるということにならざるを得ない。と申しますのは、現在で申しますれば、SDRをそういう意味一つの準備通貨なりの中心的なものとして今後考えていくといたしましても、当面はSDRの保有が当局に限られておるわけでございますので、それで介入をするというわけにもまいりません。まあそういう意味で、当面のところはやはりドルが準備資産の大きな一つの要素として採用せざるを得ないということは事実であろうかと存じます。
  169. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 この認識が、私は次のいろんな施策を生み出してくる、対応策を生み出してくることになると思います。したがって、ドルが当面基軸通貨ですよと、準備資産としてはドルが最適なんだという認識で、今後いろんなたとえばIMFの蔵相会議、いろいろなことが行なわれてくると思いますけれども、そのときにいわゆる日本が臨む態度は、そうすると、アメリカさん、あなたは早く金交換性になりなさいよと、ドルの交換性を回復してくださいと、そういうことを中心にしてやっていこうとしておるのか、それとも何か新しい国際通貨体制というものを生み出していこうという方途、法則をとろうとするのか、そこが一つの分かれ道になるのでそれをお尋ねしておるわけですが、そこのところがなかなか、いやこうですよと、こういうふうに言い切っちまうと次々と責めたてられてどうにもならぬから、ここら辺のところだというようなお答えなのか、その辺のところが私の判断でいまの御答弁ではちょっと受け取りにくいんですが、それはどうなんですか、そこは。
  170. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) お尋ねの点が、そういう将来の方向と申しますか、新通貨体制の上での問題でございますと、ややニュアンスと申しますか、やや違ったトーンになるかと存じますが、と申しますのは、御承知のとおり、最近までドルが基軸通貨あるいは準備資産の中の最も一中心的な役割りを演じておったということは、御承知のとおり、いろいろと不都合と申しますか、問題を生じてきておりまして、それがいわゆる去年の八月十五日のニクソン声明に至ったわけでございますから、今後この将来の新しい通貨体制をどう考えるかという点につきましては、いま申しましたようなドルというような一つの国の国内通貨か、同時に世界の基軸通貨と申しますか、準備通貨の大宗を占めるという体制自体の反省に立って行なわれなければならない問題であろうかと存じます。そういたしますと、これはそれでは具体的に一体どういう方向をとるべきかという点につきましては、これは必ずしもまだ議論がわれわれの中におきましても煮詰まっておるわけではございませんが、大体の方向といたしましては、やはり一つの国の国内通貨であるものに過度に依頼する、基軸通貨のファンクションを過度にそういうものに依頼するということはやはり適当ではない。そこに一種の国際的な合意によって、国際的な管理のもとに行なわれるようなものを将来の準備資産の中心としては考えるべきではなかろうか。その場合、現在IMFのもとにSDRというものが創造されて運用されておるわけでございますけれども、これはまあSDR自体がそういう意味では国際的な管理のもとにある準備資産でございますので、そのいま申し上げましたような意味の特性を備えてはおりますけれども、ただ、現在のSDRの制度自体、これがやはりいろいろな意味で将来の国際通貨制度における中心的な存在として考えていくためには、SDRの制度自体やはり見直さなくてはいけないという問題もございます。そういうものを合わせまして、やはり将来の方向としては、大蔵大臣もIMF総会の演説等で言っておられまする、SDRのようなものという表現で言っておられますが、やはりそういうような国際的な管理のもとに損失その他を考えていける、一つの国の政策に左右されない、そういうものが準備資産として中心的役割りを演じていくべきではなかろうかということが、まあいまのところのわれわれの考えております大体の方向でございますが、これは今後やはりいろいろ、これは各国ともそれぞれまだ考え方なり方向が固まっておる問題ではございませんので、今後各国との間の討議にも一積極的に参加をいたしまして、日本にとって最も日本の利益に合するような方向で、全体の新しい国際通貨制度を考えていくという方向で進むべきではなかろうかというふうに存じております。
  171. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大蔵大臣が出てこられていろいろなことをやられるのが私も大歓迎なんですけれども、大蔵大臣は出てみえない。これはもうどうも政治で、政治も入ってきて、どうも行政部門を越えたいろいろなことの政策の問題になってくる、だから局長じゃ答弁の範囲外であると、こうなっちまうと、これはもう大蔵委員会一つも前進せないわけなんだね。だから、少々は範囲を越えるかもしらぬが、大蔵省の中で十分討議してみえることだったら、ぼくは大臣の口を通さなくてもざっくばらんにひとつ聞かしてもらいたいと思うのですよ。  そこで、いま御答弁になったようなことですが、これからも準備資産としてドルはどんどんためていきますよと、こういう形になってくると、ドルはたまる。いま経済のことで一番関心のあるのは何かというと、景気はどうなるだろうということがまず第一。二つ目には、円のもう一ぺん切り上げがあるだろう、デノミはどうなるだろうと、これが三つの大きな関心事ですよね。この三つの関心事について、みんな聞こうと思うが、これはどうも大臣でなければいかぬわいと言われると、これはどうにもならぬわけなんですよね。そこで、私は、ドルがどんどんたまっていくと、円の再切り上げになってくる、また大損をせなくちゃならぬということになるんですね。そうすると、この損を、国が損をするのをどうやって防いだらいいかというようなことについて、円は再切り上げはしませんよという方針だけじゃ、ちょっと納得はできないわけですよね。何かその方途だけじゃなくて、二段、三段がまえとか、いろいろなやり方というものがあると思うのですがね。そういうようなことについては何ぞ討議されておりませんか、考えておみえになりませんか。
  172. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 先生の御指摘の点は、このまま置いておけばドルがどんどんたまっていくであろう、そうすればまたレートの問題になるであろう、こういう御質問のように思います。その点は、従来からもいろいろと御議論をいただいておりまして、われわれのほうも答弁申し上げておりますが、したがいましてまた再び繰り返すということはあれかと存じますが、一番当面国際収支の問題でドルがたまってきておりますのは、国際収支がことしは少なくとも相変わらず経常収支が非常に強いと申しますか、黒字が大きい、これは昨年の十二月の通貨の再調整をいたしました効果が出てくるまでには時間がかかりますので、各国ともやはり黒字国は相変わらず黒字が大きい、赤字国は赤字が直らない。アメリカの赤字はことしは直らないで、むしろ去年と同じように経常収支についていえば、相当な赤字が続くであろう。これは通貨調整のいわば当然の効果と申しますか、なかなかすぐには効果が出てこないというのが当然のことでございますので、その意味でこれはまあ効果がなかなか、効果が出てくるのを待つよりほかはないわけでございまして、ことしの経常収支の黒字が大きいから、したがって通貨のレートのほうが十分な切り上げではなかったというふうに結論づけますのは、非常に正しくないことではないかというふうに存じております。  他方、その経常収支がなかなか回復をいたしません、均衡回復いたしません一つの理由はまさに御指摘のような景気の問題がございます。これは、したがいまして景気を一日も早く回復をするように財政金融その他全体の施策を通じまして、努力をいたしておるわけでございます。両々相まちまして、経常収支のほうの黒字基調と申しますか、それを修正をしてまいりたい。  他方、最近相変わらずドルが、外貨がたまっておりますもう一つの理由は、資本取引でございます。これは御承知のとおり内外金利差、それからドルに対するコンフィデンスの問題等のいわば心理的な問題と、それから金利差の問題、これは日本に限らない問題でございまして、ヨーロッパ諸国におきましても、同様資金移動のほうからいたします流入プレッシャーというものが非常に強いわけでございます。こういうものは、各国とも御承知のとおりに、最近次々と為替管理制度あるいは金利政策その他によりまして、資本の流入を押えるという手を次々ととっております。で、これはやはりヨーロッパ諸国及び日本と同じような状況にあるわけでございます。われわれのほうといたしましても、いまのような資本移動に基づきます流入プレッシャーについては、従来からのいろいろな抑制措置を維持いたしますとともに、場合によっては、さらに追加をするということで対処してまいりたい。二月の二十五日に輸出前受けを再び規制をいたしましたけれども、これは、その前にやはり輸出前受けという形で短資が非常に流入をし始める徴候が出てまいりましたので、その点について手を打ったわけでございますが、こういうようなことでございまして、資本移動に関しましては、そういうことで流入を押える。これがたとえば内外金利差というのが一つの理由でございますが、そういう意味からいたしまして、いま御審議を願っております法案をぜひ早急に上げていただきたいということになるわけでございますが、同時に経常収支のほうにつきましては、これはやや長いちょっと時間のかかる話でございます。その間はやはり若干とも外貨は、今後もふえるということはやむを得ない。これは新年度の経常収支と長期資本収支とを合わせました基礎収支におきまして二十七億ドルの黒字を見込んでおりますので、そういう点からいたしましても、今後ともそういう意味での外準の増というのは、ある程度はやむを得ないというふうにわれわれは考えております。
  173. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 たまらぬような御努力されるということについては私も賛成ですが、大体八項目というものを対策を講ぜられたわけだ、発表をされましたけれども、やっぱし円の切り上げはやらざるを得なかったということになります。これはひとつお互いに銘記しておくべきことであって、どれだけの努力、いろんなことをおやりになることについては、反対するものじゃございません。努力はしてもらわなければなりません。しかし、再切り上げというものは必至じゃないかとみんな言っているわけです。そのときにまた損をしたわいだけではどうも済まされぬから、私は別な道ということも前向きなというか、これはうしろ向きの対策になるかもしれませんが、そういう対策というものもひとつ考えておいていただきたい。  そこで、局長、時間もないし、ざっくばらんに聞きますが、生産性の問題とからんできますから、銀行が週五日制になったら、他の産業に及ぼす影響がございますからね、銀行が週五日制の問題について行政指導として、相談があった場合に、推進されますか。それともどういうふうにお考えになるのかというのが一つ。  それからもう一つ伺っておきたい点は貯蓄やれば、銀行はやっぱり金を貸さんならぬ。その金がまた回ってくると、投資になってこうぐうっときますね、そこでしかし、金は消費傾向のほうがいいと思うのです。社会保障制度——幾ら貯蓄といってもやっぱり消費になる。宵越しの金を持たぬぞよということになるかもしれぬ。理想社会がくると、竹田君は生命保険が要らぬというところぐらいまでくるというのですから。そういうことになれば、そういうことになってきますが、そのときに私は、昭和六年ころから民間の金輸入が禁止されて、麻薬取り扱いになってしまって、麻薬と一緒の取り扱いですが、金を少し解禁をしてみて、もう少しみんなが金をというようなことに考えるということは考えられぬかどうか、この二点、ひとつ。
  174. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) まず最初のほうの週休二日制でございますが、これは労働省から御相談がございまして、直ちに銀行協会に意見具申をたのんだわけでございます。銀行協会ではかなり積極的な意見、前向きな意見が多かったわけでございますが、最終的な結論と申しますか、中間的な報告を先日持ってまいりましたところでは、週休二日制は前向きに検討はいたしたいけれども、ほかの多くの企業が週休二日制をとる前に、銀行がまず先に週休二日制をとるということはいかがであろうかというのが銀行協会の態度でございます。なお、これは中間的な報告でございまして、さらに検討を継続するようでございますが、私どもといたしましても、基本的には前向きで検討いたしますが、タイミングをどうするかということにつきましては、ほかの企業との関係、あるいはそのほかの問題を総合的に勘案してまいりたいと考えております。  それから金の問題は……。
  175. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 金の自由化の問題でございます。これは金につきましては、従来は御承知のとおり、外貨準備が非常に少なくて国際収支の赤字に悩んでおるということで、金の輸入についてなかなか十分にできないということが一つございまして、もう一つは、これは貨幣用の金ではございませんで、産業用の金でございますから、したがいまして、貨幣用の金におきますほどの国際金融上の問題というのはないわけでございますが、しかしやはり同じ金でございますから、そこでやはりそちらのほうも全く無視するというわけにはまいらない、この二つの理由がございまして、この金の輸入は政府が一手で行なうということをやっております。ただし、最近におきましては、御承知のとおり、外貨面ではむしろ状況が逆になってきているわけでございます。国内の産業用の需要に合う限りはこの金をどんどん輸入をするという方針で毎年やっております。ただこの場合、それでは今後は自由化してもいいじゃないかという御意見でございます。これは確かに方向といたしましてはまさにそういう方向でよろしい問題であろうかと存じますが、当面の問題といたしましては、先ほど申しました一つの、やはり金は通貨用の金ではないにいたしましても、やはり同じ金であるということの問題がひとつ、国際通貨問題全体に与える影響、これはたいしたことはないと存じますが、この点も全く無視するというわけにはまいりません。一番問題は、やはり国内産金業に対する影響でございます。これをどうするか、どう考えるかというような問題がございます。こういうような問題がございますので、直ちにというわけにはまいらないかと存じますが、われわれのほうといたしましても方向としては御指摘のような方向で、何といいましても外貨の民間保有をどんどんふやしていく、同じようなことで金も民間の保有をふやしていくというのが当然の方向でございます。それが今後の取るべき方向であることは十分承知いたしておりますので、そういうような、先ほど申しましたようないろいろの問題点を考えながら今後どういうふうに運んでいくかということを前向きに検討をしてまいりたい、こういうふうに存じます。
  176. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これで最後ですが、これは意見だけ言っておきますが、農産物と一緒で、チャンスを私は逸せずにいまやるほうがいいと思うんです。いろんな理屈はありますが。国内産金のあんなことでやっていたらそれはだめですよ。三つか四つしかやらないような会社のことを頭に描いて、そして産金価格がどうだ、国際価格がどうだというようなことで、農産物のような取り扱いをしてもらいたい。だけどまあいまお答えは、前向きにやるぞと、こういうお話ですからそれでいいと思います。  それから、五日制はいま交代で休んでおるんです、実際銀行は。ですからあなたの言う五日制はどんぴしゃり二日間休んじまう。五日間で土、日は休むと、そういう意味の五日制なのか。どうかなんです、銀行協会が言っているのは。銀行はみんな五日制でやってるんです。交代制で。
  177. 近藤道生

    政府委員(近藤道生君) 私のお答えを申し上げましたのは、いま先生のおっしゃいますどんぴしゃりのほうです。     —————————————
  178. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 委員異動について御報告いたします。  ただいま和田静夫君が委員辞任され、その補欠として吉田忠三郎君が選任されました。     —————————————
  179. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  180. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 速記を起こして。  日銀総裁がお見えになりました。質疑のある方は順次御発言を願います。
  181. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 総裁、こういう席ですからいろいろとざっくばらんにひとつお聞かせ願いたいんですが、先ほどもちょっとこの委員会で申し上げたんですが、いまみんなが知りたがっていることは、いろいろとございますけれども、景気は一体どうなるだろうということをみんな知りたがっておりますが、日銀、いろいろと調査をしておみえになって、それなりにいろいろレポートを出しておられることも承知しておりますが、景気はどうなるか、円の切り上げはもう一ぺんありはしないだろうかということを非常に心配しております。これはどんなものであるか。  それから、デノミはどうだろうか。  それから、円の切り上げの問題は、私もやる前まではやらぬ、やらぬと言ってやるというのが常識だろうというようなこともございますから、この点についちゃ私も、いや円の切り上げはございますよというようなことは総裁としてなかなか言えることではないと思われますが、一体これでいいだろうかどうだろうかというようなことについては総裁としていろいろお考えになっておると思いますから、もしそれについての何らかのお答えがいただけるなら非常に幸いだと思います。  それから、デノミの問題については、さあやりますよと言うのもどうかと思いますが、デノミの問題については、一体、みんなには黙っておって——これは準備というものが非常に必要なんですから、どこかから漏れてくると思いますが、黙ってやるというもんじゃなくて、性質上、私は事前に国民に準備期間というようなものを与えてやるほうがいいかどうかという問題が一つございますね。  それからもう一つは、やるとするならば、それではどういうような一体経済状態と申しましょうか、どういうときにやったらいいだろうかというような、時期がもし言えないとするならば、経済情勢はこういうような情勢のときにやったらいいじゃないだろうかとか、それから事前にそれは通告すべきものかいなかというようなことについて。  デノミの問題については、単位をどのくらいにしたらいいかといえば、千円がいいものか百円がいいものかいろいろとあると思いますけれども、もし、その辺のところまで踏み込んでお話しになると、これはやるつもりかなということになっちゃって、お答えができないというなら、その点は私はかまいません、お答えをしていただかなくてもいいと思いますが、まずこの三点について大づかみなひとつ御意見を聞かしていただければ非常に幸いじゃないかと思います。
  182. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 車が混んでおりまして遅刻いたしまして申しわけございません。  第一点の景気の問題でございますが、確かに昨年の八月十五日のニクソンの新しい政策以来、景気が停滞を続けております。いまから振り返りますと、六、七月ごろにやや日本の経済が上向く事情にあったのでございますが、その八月の時点から停滞をまた長くしておるという状況でございます。最近に至りましても、まだマクロで見ました生産、出荷、在庫、そういうようなものの点からはまだ上向きの傾向は見取れません。個々の仕事につきましては、ぼつぼつ注文がふえたというような話も聞かないではございませんが、大勢は依然として停滞を続けております。しかしながら、総体としての地合いはこれ以上落ち込むということではございませんで、まだ上昇のきっかけが具体的につかめないでいるという段階であると思います。  今後の問題でございますが、御承知のように四十六年度予算においては、補正予算が組まれておりますし、それからまた四十七年度予算においては、社会投資その他を含めまして、相当大規模な予算が編成されております。こういうものの需要はやがては出てまいりますし、また現実に建設関係では公共関係の注文がふえるという形も一部見えています。そういう点からきわめて徐々にではありましょうが、景気は回復すると思います。ただ民間の設備投資が急速に伸びて経済を引っ張り上げるのとは違いまして、やはり財政主導で景気が回復するときにはそのテンポはきわめて緩慢であろう。したがって、一般がこれで停滞が終わったと感じるまでには、相当まだ時間かかるのではないかというふうに考えております。  第二番目の円切り上げの問題でございますけれども、昨年の十二月十七、八日、ワシントンで各国通貨の多国間調整が行なわれました。このときにはおそらくそれまでの経緯からみまして、再調整が実行されれば、相当な額のドルが各国からアメリカへ返るものと予想をいたしておりました。そういうことで返っていけば、そこにまたドルの相場が強含みに転じて事情も落ちつくのではないかという、そういう見方でございました。ところが、現実にはなかなか返ってまいりません。返らないどころか、むしろまだドルの流出が続くというような状態でございます。なぜこういうようなことが起こったかという理由につきましては、いろいろあろうかと思いますが、何と申しましてもアメリカが国内経済の浮揚を第一の目的といたしまして、金融の面では低金利政策、財政の面では大幅な赤字財政というようなことをやっておりますので、そういう状態では国際収支にいい影響がありません。  そういう点を見ておりますことと、それから、やはりドルというものにまた返っていくという魅力がなくなって、ほかの通貨にかわりたいというような希望もだいぶ強くなってきたということも影響しておるかと思います。  日本にとってみますと、日本におきましても、一時ちょっとドルが出た時期もございましたが、一月に入りましてから、大体やっぱりドルがむしろ流入超過でございます。こういう点でせっかくあれだけ骨折って再調整——多国間調整をしたのにかかわらずその効果が出ないということから、また円の切り上げがあるのじゃないかというような想像が生まれてきたものだと思います。  しかしながら、今度の多国間調整に至りますまでの経緯を振り返ってみますと、アメリカの国際収支をよくする問題につきまして、OECDで昨年の秋検討いたしたときも、大体二年間にこういうアメリカの赤字を消すのにはどれくらいの為替調整をすればいいかといったような計算になっております。したがって、いままでのほかの国の為替相場を変更いたしましたときの実例から考えましても、実際に効果が出ますまでにはやはり相当の時間がかかる。したがって、いま十二月に変えましてからあと、まだ二、三カ月のところでまた次の為替相場の変更を考える、問題にするということは、これはあまりに気の早い話であると思います。おそらく日本の貿易収支に為替相場変更の影響が出ますのは、この四、五月以降であると思います。したがって、今後のそういう状況を十分見て問題を判断すべき性質のものではないか。ひとつ、この際ぜひ、十分調整の推移を慎重に見ていただきたい。これだけ大きな為替相場の変更がございました結果、効果と申しますか影響と申しますか、それは必ず出てまいるものだと、かように思います。  また、たとえば同じ五十億ドル、六十億ドルの黒字が一年間に出ます場合にも、最初たとえば一、二月ころの黒字の幅と、十月、十一月、十二月の黒字の幅が小さくなっているのとでは、同じ年間の金額でも、総体のものの考え方、あるいは受け取られ方というものも変わってくるわけでございますから、そういう点について今後の推移をぜひ見ていただきたいと思います。  それから、最後にデノミの問題でございますけれども、それは私どもの側からなかなか申し上げにくい問題でございますが、御質問の、事前に通知する必要があるかどうかということは、これはもう非常にいろんな意味での準備を必要とするものでございますから、いついつやるということをあらかじめ予告しなければできないことで、あしたからやるというような性質のものでは全然ございません。  それから、どういう環境の中でできるかということでございますが、これは政治、経済ともに非常に安定した状況にあることが望ましいわけでございます。特に物価が落ちついているということが大事でございます。とかくデノミをやりますときに、小さい、コンマ以下の数字の切り上げが行なわれるというような話、これはフランスのときにも、そういう点を非常に警戒しておりましたので、なるべく物価が落ちついたときを選ぶべきだと思います。  それから最後の切り上げと申しますか、そのパーセンテージが幾らかというお話でございますが、これはいろいろ今後も検討されるべき問題だと思います。ただ、いまほかの国の通貨たとえばマルクでございますとか、フランス・フラン、それからその他の欧州の通貨、それに比べますと、日本の場合にはゼロが二つ多くなっておりますので、その点は一つ参考になろうかと思います。
  183. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 第一の景気の動向なんですが、そうするとお話を承るとこういうふうに理解していいかどうかということですね。政府が言っておりますですね、政府はこの辺が底で、こう上がっていきますよという、政府のそのものよりも、なお相当な時間がかかると、こういう意味なのか、現時点から相当な時間がかかると、こういう意味なのか、その点をもう少し明確にしていただきたい。政府が景気回復時期というものを言っております。それよりかもなお相当かかる、いまから相当かかると、相当というのは、全く相当なもんで、幅があって見当がとれないわけですから、もしお差しつかえなければ、これは当たるとか当たらぬという、その八卦とはちょっと意味が違いますですけれども。私は、ここら辺ごろから上向くじゃないかというような資料があって、そして判断をされるならば、そういうことをおっしゃっていただくほうが、みんなが安心するじゃないかと思いますから、その点を聞きたいと思います。  それから二つ目に、円の問題について、まあアメリカがああいうことをやったときに、それから返ってくるじゃないかと、八百億ドルのものが少しぐらい、百億ドルぐらい戻ってくるだろう、これはみんなが期待しておったところが少しも返ってこない、むしろ出ていくというようなことがあり、それから日本とアメリカとの関係で申しますと、日本がもう少し輸入というものがふえていいわけであると。ところが日本の景気がこういう情勢ですから、なかなか輸入がふえてこずに、むしろ輸出のほうが盛んになっちまうと。で、これを長い目で見るとおっしゃる。かりに二年というようなことが言われたんだからとおっしゃる。二年ぐらい捨てておいたら、いまのままでいくとこれはドルがどの辺までぐらいたまってくるかということについては、どんなふうにお考えになっておるのか。二百億ドルはとっくに突破してしまって、三百億ドルというような数字にもなってこやしないか。どうだろうというような点が非常に心配でございますから、もう少しその辺のところ、政府が言っておる八項目の施策をいろいろと遂行をしていくんだということを言いましたけれども一、私はあまり効果というものはあがっていなかったと。それからアメリカの国内情勢から見ましても、なかなか容易じゃない。  それからもう一つは、世界があなたもおっしゃいましたように、基軸通貨としての認識ですね、そういうものについて、若干疑義を持っておるという点が大きな理由だとあげられておりますが、私もそういうふうだと思っております。ですからそういうような点について、どうもやはり心配でなりません。しかし、これはあんまりここで議論をしてみて、もこうですよというのは、それは言えぬ問題だと思いますから、感触の問題として、非常に私はドルがたまってくるじゃないかということを、みんなが心配をしておるわけですから、そういうことにはなかなかなりそうもないよと、もっと政府がこういうような点に、いま一番政府が足らない点、外貨がたまるということについて、一番足らぬ点は何なんだと、それはミックスされた政策なんだよと、こうおっしゃればそれまでですけれども、一番足らない問題は何とお考えになっておるのか、その点を一番大事なのをひとつ教えていただきたい。  それからデノミで予告だとこうおっしゃる。これは私もそうだと思っておりましたから、これで安心をみんながすると思います。当然すべきです。しかし、時期の問題は物価が安定だと、こうおっしゃいますが、クリープインフレなんですね、もう。ですからそのパーセントが二%がいいか、三%がいいか、五%がいいかというところだと思うのです。その辺のところが、もしおっしゃるのならばあなたがおっしゃる物価安定とは、どこら辺を具体的にさすのか、抽象論では私も物価の安定ということはわかるわけです。横ばいだと、こういうことはあり得ないと思っておるのです、私らは。少しずつ上がっていくだろう。そこでどの辺のところを物価の安定だとおっしゃるのか。二%ぐらいのことをおっしゃるのか。三%ぐらいのことをおっしゃっておるのか。その辺のところを、たいへん恐縮なんですが、あんまりこまかいことを聞いて恐縮なんですが、おっしゃっていただきたいと思います。
  184. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 最初の、景気回復の時期でございますが、なお時間がかかると申しましたのは、ただいまの時点からでございます。これは希望的な観測かもしれませんけれども、秋になりますれば、ある程度の回復が期待できるのではないかというふうに私は思っております。  それから、二番目のアメリカとの関係でございますけれども、これは確かに日本の経済活動が停滞しておりますために、原料の輸入が落ちておるということから、貿易の黒字幅が大きくなっておることは事実でございます。したがって、これは今後期待されます景気の回復に伴いまして、輸入はだんだんふえてくることと思います。ただ、しかしながら、先ほど申し上げましたように年間に相当な黒字はこれはもう予想せざるを得ない。そういう点から考えますと、やっぱりドルは今後ふえると考えなければなりません。したがって、このふえるドルに対してどういう対策を講ずるかということでございます。これに対しては、政府のほうでは日本の為替銀行に対する外貨預託をはじめといたしまして、いろんな方策を考えておられます。これをできるだけ早く実行するということが必要でございますし、それから、われわれとしては、こういう機会に後進国援助ということは相当やらなければなりませんし、それには国際的な援助機関を通じて、たとえば世界銀行でございますとか、アジア開発銀行とか、そういうところに資金を融通するという形でドルを使うということも必要だと思います。  何が足りないのかという御質問でございましたけれども、すでにわれわれが考えられるものは、みなやはり政府でも考えておいでになりまして、これが政府で見落としておられるというようなことを私が指摘する材料は持っておりません。  それから、最後の物価の問題でございますけれども、確かにいまの場合では消費者物価が完全に上昇率が、上昇がゼロになるということを期待するのは、いままでの歴史をずっと振り返ってみましてもなかなか困難ではございます。ただ、何%がいいかということになりますと、この点についてはいろいろ御議論もあろうかと思いますけれども、われわれの感じを率直に申し上げますと、二%台の上昇であればがまんせざるを得ないのではないかというふうに感じております。
  185. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 最後のほうから申しますと、政府も物価の安定ということはしばしば言うわけなんですよ。ところが、それじゃ何%かと、こうなりますと、安定に努力してそれで六%だと。いや、実質は七・五分上がっちゃったとかいろいろなことを言いますけれども、私たちも常識的な数字というものを出して、それが政策目標へ近づけるような努力をお互いにしなくちゃならぬと思います。ですから、そういうことをなかなか政府のほうじゃ言いにくいもので、総裁からそういう数字をお聞きしたわけです。  それはそれとしまして、総裁——そのことをいま一ぺんお尋ねします。いま金あるいは銀、そういう準備資産ドルにかわっての準備資産はいまどのくらい——金なりあるいは銀なり、SDRそのものを持っておみえになるものなのか。これはちょっと総裁そこで資料がなければ総裁からじゃなくても、どなたからでもいいですが……。  もう一つ、もし持っておみえになるとすれば、それは日銀の倉庫にあるのか、どこにあるのかということを一ぺん数字をちょっと教えていただけませんか。
  186. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまのお尋ねでございますが、昨年の十二月十八日現在で、円で換算いたしますと、SDRは九十一億円、金並びにこれに準ずるものは二千二百八十七億円ございます。  それから金の所在地でございますけれども、金の一部分は日本の国内にございますが、その他の一部分はアメリカのニューヨーク連邦準備銀行などの金庫の中に、イヤマークと申しますか、日本銀行のものであるという特別の表示をして、そこで保管してもらっております。
  187. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これをもう少し——わかりますが、あんまり、日銀の倉庫にこれだけ金があると言ったって、どろぼうが入るわけじゃないと私は思うから、これだけあるよと、それでアメリカにこれだけ預けてあるというのはどうでしょうか。
  188. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま海外にございますが、帳簿価額で千九百七十億円、ですからこれはずっと多うございます。国内の金地金が三百七億円でございます。それで、こういうふうに海外に寄託してありますものが多い理由は、これを現送して日本へ持ってまいりますと、相当な費用がかかります。そういうことで、まあこちらで、国内で必要な場合には持ってまいりますけれども、それまでは向こうに置いておくということに……。
  189. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ついでにそのことについて——これはずっとアメリカに大体置かれる、それは運賃かかるからと、あるいは輸送途中で沈んじまったり、いろんなことも心配なんだから預けておいたほうが安心だわということを——ずっとこのことを続けられるつもりなのか。ある時期を見たら、ひとつ日本へ引き取ろうと、こういうふうにお考えになっておるのか。当面は預けっぱなしだわい。——これはずっと初めからですね、終戦直後からと言っていいですよ、アメリカに預けてある数字というものは。何かこういうことについてお考えになったことはございませんですか。預けられた理由というものは私どもにはわかるわけですけれども
  190. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 向こうに預けてありますものは、向こうで手に入ったものをこちらに持ってこなかったということでございますから、いまのところ、これを国内に持ってこなければならないという必要は、ただいまのところはございません。さしあたって、ただいまの時点ではいまの、これを国内に輸送する計画というものは持っておりません。
  191. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これは保管していてもらうのですから、保管料というようなものは相当払っておみえになるのか、そうじゃないんですか。これはえらいこまかいことを聞いて悪いんですが。
  192. 佐々木直

    参考人佐々木直君) これはたしか払っておらないと思うのでございますが、どうもはっきりは、正確じゃございませんから、よく調べて御報告申し上げます。
  193. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これは私もそう目に角を立てれば切りのない話でございますからあれですが、何かこう気持ちとしては、パートナーシップのアメリカのことですし、アメリカへ預けといたほうがより安全だわいと言えばそれまでかもしれませんが、日本は金の少ない国ですが、何か日本へ持ってきたほうがいいような気がするんですがね。まあ一ぺん考えてみてください。保管料がかりにただだといたしましても、お持ちいただけば非常に幸いじゃないかと思っております。  それから、次にお尋ねしてまいりたい点なんですが、これは、アメリカと日本との関係で申しますと、何と言ったって日本の生産性というものが非常にいいわけですから、私はそれはダラーダンピングですよと、一口に言えばそういうこになとるかもしれませんけれども、今後国内政策として、いろんな点で考えていかなくちゃならぬ点は、週五日制の問題が非常に大切であろうとこう思っております。そこで銀行局長にお尋ねをしましたら、銀行がやってくれたら一番みんながなびきやすい、それで、銀行がやっていただくならばあとの企業が非常にやりやすくなってくるから、非常にいいと思います。ですから、五日制の問題については、前向きにやるわいと、こういうお話ですから、私もそれ以上のことは総裁に云々しない。ともかく総裁は、この週五日制の問題についてどうお考えになっているかということで、まあ銀行協会がいいわい、検討します、やるわいということですから、そういうことでどうかということについてお答え願いたいということが一つ。  それからもう一つは、私は、これから消費経済に向かうことにずっとなると思うんです。またそういう方向に向けていかなくちゃならぬわけです。ですから、社会保障制度その他がずっと完備してまいりまして、そうしますと、貯蓄もなるほど大事かもしれませんけれども、もっとそれよりも消費に大体みんな向かっていく、それがよりいい社会だろうと思います。人生も楽しいだろうと思います。そういうふうになってきたときに、何かしかしそれにかわって、若干精神的なよりどころというものが必要だろうと思いますが、それは何かというと、それはやっぱり、金がためておきたいということになるわけですよ。いま大体、海外旅行者はやみ円をもっていって、ユーローダラーじゃないがユーロー円ができそうなんですよ。アジア円になるかもしれないですね。で、そういうときの一番大きなものは何かというと、やっぱり私は、日本の海外旅行者が金、宝石を買ってきておるのが一番大きな問題だと思っております。で、金が、民間の金禁止になっておるのが昭和六年の十二月だということが、何かちょっと調べたら書いてあるんですね。ずっと続いているわけですね。で、その理由は何かといって聞くと、いまちょっと国際金融局長が言うところによると、日本の国内の産金者の保護というのも一つの理由になる。あるいはまた、IMFでみんな自由じゃいかぬといっておりますが、しかし医療なり、いろんな関係上、大体年間いまでは四十トンぐらい輸入しておるようでありますが、こういう金を麻薬並みから、自由に入ってくるようなことを考えるということが、大きな経済の、貯蓄と申しますか、得た賃金をどこに使っていくかというような大きな意味で、私は金解禁すべきだと、民間の金は持っていたほうがいいという意見を持っておりますが、総裁はこの意見に対してどういうふうにお考えになっているのか。
  194. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 最初の週五日制の問題につきましては、私も、長期の見通しとしてはそちらのほうへ進んでいくべきものと思っております。ただ、それをどういう段取りでやるかということについては、それぞれくふうの要ることでありまして、ことに金融機関のようなサービス・インダストリーの場合には、ほかの産業の模様などもよく勘案して、いつからやるかということを決定すべきものだというふうに思っております。  それから、第二番目の、金の個人の買い入れの問題でございますが、これは確かに、さきに、いまお話がございましたように、国内の産金業者の保護ということもございましたけれども、日本という国は、ここ四十年以上、いつも国際収支に悩んできたのでございまして、個人に自由に金を買ってもらうほどの、国際収支上のゆとりがなかったということも非常に大きな原因だったと思います。したがいまして、こういうような国際収支状況になってまいりましたときに、個人の金輸入を自由にするということも、一つ方向として考えられ得ることだと思いますが、ただ最近世界の自由金市場というものは、いまのドルの不安定などもございまして、非常に相場の動きが荒くなっております。ここで一ぺんに日本からプライベートな金の買い入れが市場に殺到いたしますと、これがまた金市場にいろいろな混乱を巻き起こすおそれもございます。したがって、ここで一ぺんに自由化することが適当であるかどうかということについては慎重に考えらるべきである。ただいま政府の手で計画的に金が輸入されておりますから、これを徐徐にふやしていくということも一つ方法ではないかというふうに考えます。
  195. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 最後に二点お尋ねしておきますが、いま振り出し手形をずっとやっておみえになりますですね。これはもうしばらく続けられようとしておるのか、どういうのか。まあ制度があって初めておやりになったことで、いろいろなことがありましたが、これについてどういうふうなお考えになっているのかというのが一点。  二つ目は、今度の預金準備率の引き上げの問題について、きょう参考人の方たちに来ていただきましたし、それから先ほど銀行局長からの答弁を承りますと、日銀と相談をして——これは利息をつけるかどうかという問題ですが、何もつけるとも固執はしないが、つけないというのも固執はしない。もちろんこれは金融引き締めのときにやられることなんだから、時期はもう相当ずれるだろうと、しかし日銀と大蔵省と十分相談をしてやっていこうという御意見がございました。ところが参考人の方たちは、利子をみんなつけてくれとおっしゃる、利子をつけてくれと。そういう面に対して量的に規制をやっていきさえすれば利子をつけなくても資金コストのほうには、貸し出し金利のほうには影響なくやっていけるのではないかというようなことも私は考えられると思うんです。ですから、そういうようなことについては日銀と大蔵省にまかしてほしいと、こういう御意見なんです。私たちも、それはそれで一番いいと思うんです。で、そういうことになるときに、ある時期は利子はつけたが、ある時期はつけなかった、あるときはこうという、今後の金融政策の中でこういうようなことを相当弾力をもって、あるときにはこれが一〇%ぐらいだと、あるいは一五%ぐらいだと、ある時期は五%ぐらいだと、こういう大きな山が、山と谷ですか、こういうようなことを想定されておるものなのか。あまり急激なことをやらずに、なだらかにいこうとしておられることを想定しておられるのか。二〇%という幅は相当な幅なんですから、そこでそのことをまずお聞きしておきたいと思います。  それからもう一つ、これは二つと言いましたが全く悪いですが、もう一つお尋ねしたい点は、今度政府、いろいろなことがありまして、郵政省を中心として郵政省が金を庶民金融としてやっていこうというようなことを言い、自民党もどうやらそれにこのぐらいならいいだろうというような踏み切りをされたようですが、これが大きな金融政策影響があるかないか。それから今後一ぺん窓口が開けますと、だんだんだんだんと大きくなっていくということはこれまた当然予測されることでございますが、そういうような郵貯の貸し出しについてはどんなふうにお考えになっておるか、三点お伺いしたいと思います。
  196. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 第一点の売り出し手形のことでございますけれども、これは金融が緩和いたしまして、過剰流動性が心配になりましたときに、その過剰流動性的な資金、過剰な資金を吸い上げるために選んだ手段でございまして、いままではこれを政府短期証券の売却でやっておったわけでございますが、政府短期証券の日本銀行の手持ちがだんだんなくなってまいりまして、それにかわるものとして、こういう手段を講じたわけでございます。したがって、これは金融が、いまのところは年度末を前に控えましてわりあいに季節的に締まっておりますので、新しい売り出しはやっておりませんけれども、これで四月に入りますとまた両年度の関係もございまして相当金融が緩和してまいります。そのときにはまたこの売り出し手形の制度を利用することになろうと思います。今後も過剰流動性を吸収するためにこういう手段をできるだけ使っていかざるを得ません。したがって、私どもとしては政府短期証券があれば政府短期証券、それが手持ちなければ売り出し手形、この両方をそのときの状況によって使ってまいりたい、こう思っております。  第二番目の、準備率につきましての利子の問題でございますが、まあ日本の現状では準備率が非常に低いわけでございまして、最近の国内の経済情勢等から考えますと、ここで近いうちに準備率を上げるというようなことは考えもいたしません。もう一番大事なことは景気を回復させることが国内的にも国際的にも必要でございます。したがって、当面利子を付さなければならぬような事態は起こらないと思いますし、それからまた準備率運用が、いままでの歴史から見ましてもそれほど大きくは動かしてはおりません。今後もし国内の過剰流動性が非常に強くなりまして、ことにいままでの都市銀行以外の金融機関に非常に余裕金がふえるというような状態がございましたら、そのときにはだんだん率を高くするということも考えられる。またそういうときに利率の問題が起こるかもしれませんが、当分われわれがいま予見し得る範囲内では、金利の問題が起こる可能性はまずない、こういうふうに考えております。  それから第三点の郵便局の貸し出しの問題でございますが、これは私ども立場から申しますと、やはり総体の金融調整のどうしてもワク外になってしまうおそれがあるのではないか。ですからほかのそういう金融調整のワクの中の金融機関でなるべくやってほしいというふうに金融調整の立場から考えております。
  197. 松井誠

    ○松井誠君 総裁にまず国債のことについてお尋ねをしたいのですが、今度大量な国債が発行され、それと日銀との関係は非常に深い関係があるわけですので、そのことを二、三お尋ねをいたしたいと思うのでありますが、私が一番心配をするのは、この国債を抱く財政じゃなくて、それこそ国債に抱かれる財政というような形になって、国債の大量発行が日本の財政の中に定着をしてしまう、そのことがインフレとどういう関係を持つだろうかということを一番心配をするわけです。なるほどことしのただいま現在のことを言えば資金が余っておるし、一ぺん吸い上げたその資金は、公共事業という形になってまた還付されるわけです。そういう意味では新しい通貨の増発というのが直接つながらない。しかしかりに総裁がさっき言われたように、景気がだんだん回復を秋からし出して、資金需要がだんだん旺盛になってくる、持っておる国債がやっぱりじゃまになるという段階になりますね。  そこで最初にお伺いをしたいのは、そういうことがあるものですから国債発行の、一年未満の国債は担保としてとらないという、それが非常にじゃまになる、あるいは日銀の直接引き受けというそういうものを禁止をしておるという制度がじゃまになる、そういうものをひとつ取っ払おうという意見が出始めておる。何か去年の秋総裁は一年未満云々という問題については、別に方針変更の予定はありませんということを言われたそうですけれども、ちょっと実は気になるのです。そのこと、と申しますのは、これまた大蔵省に実は確かめてないのでわからないのですけれども、ことしの国債発行のうち約二千億か二千五百億くらいを政府の資金運用部で直接引き受けをする、これはすでに発行されて、日銀なら日銀のかかえておる国債資金運用部が一時の余裕金で買うというのではなくて、直接の引き受けのようなもの、しかし財政投融資計画というのはちゃんとあって、年度内の資金の使い方というのはさまっておるわけですから、それを買ったって年度を越してまで持っておるわけにいかないと思う。財政投融資計画の中、つまり一時的には金は余るでしょうけれども、年度を越してまで持っておられる金というものはあるわけではない。あるとすれば長期運用の形で財政投融資計画の中に初めから組み入れていなければならぬ。どうもよく調べてみないのですけれども、どうもそれはなさそうなんですね。そうしますと年度内に一体買い受けた、引き受けた国債を一体どうして処分するのか。そうすると日銀がやっぱり買ってくれと言わなければ処分のしようがないじゃないか、そういう気もするわけです。そういうこともあわせて一年未満の国債、あるいは政保債について、いままでのそういう方針というものは変える必要はないということを、もし確認をできればあらためてしておきたいと思います。
  198. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 確かに四十七年度におきましては非常に多額の国債が発行されます。この大きな国債の発行には、それがインフレにつながる心配、その他いろいろされるのも無理がないと思いますが、ただいまもお話ございましたように、いまの日本の経済情勢ではこういう財政計画もやむを得ないと、こういうふうに私どもは考えております。ただしかし、御指摘がありましたように、これが一つのくせみたいになりまして、景気が立ち直ってきてもなお相当多額の国債が発行されるというようなことがありますと、そこに民間資金の需要と財政資金の需要とが競合いたしまして熱を生ずるというおそれがありますので、景気が回復してまいりましたら、できるだけ早くその国債発行計画をまた調整してもらうということが必要であると思います。  日本銀行国債の売買の条件につきましては、ただいまわれわれとしては一年未満のものは買い入れないという方針でやってきておりますが、私どもはこの方針は全然変える意思はございません。しかも、いま御承知のように日本銀行貸し出しは実質的にはほとんどゼロになっております。それからまた市中には発行後一年を経過いたしました国債がずいぶんたくさんございます。そういうことで、いまの日本の経済の回復を推進するための金融調整にはことを欠かない状況でございますし、そういう点から考えましてもこの原則は変える必要はないと考えております。  最後の資金運用部の点はちょっと私はお話よくわかりませんが、私のほうが資金運用部から年度内に買わなければならないという性質のものではないと、私は承知いたしております。
  199. 松井誠

    ○松井誠君 資金運用部の問題は別に総裁にお伺いするという意味で申し上げたのではございません。  いまこういう状況になって日銀の貸し出しというのはほとんどない、そういう状況ですから、いままでの取り扱いを変える必要はないというのはわかりますけれども、これがだんだん情勢が変わってきた場合に、いろいろな圧力の形になって出てきやしないかという心配をするわけです。最近は中央銀行の一体役割りというのは、単なる通貨価値の維持というだけでなしに、完全雇用もやらなければならないのだ、あれもやらなければならんのだ、そういうことに日銀というのは中立ではおれないんだという、そういう考え方がだんだん当然のようになってきて、本来の使命である中央銀行の通貨価値の維持という、そのことがだんだん忘れられてくるような、そういう危険性というものを感ずるだけに、いまの段階ならば、なるほど総裁が言われたように、景気調節方法にこと欠かないということはあるでしょうけれども、これがだんだん金融情勢が変わってきた場合に、あるいはこれから先、国債の大量発行というものをずっとやっていこうという、そういう政府の財政態度とぶつかってきた場合に、一体どうなるかという心配が依然として抜けない。で、現に私としてはそういう心配があると思うのです。つまり大蔵大臣は、今度の大量の国債発行というのは景気浮揚ということを盛んに言っておりますけれども、もう一つときどき忘れないでつけ加えるのは、社会資本の充実のために必要だという理屈なんですね。そういうように理屈をずらしてきますというと、社会資本の充実というのは言ってみればだんだん必要性が大きくなってくるわけです。したがって、そのためには国債が要るのだという理屈が依然として残ってくると定着をする危険性というのは非常に強いわけです。そうしますと、このように理解をしていいでしょうか。つまり今度の国債というのは最近のこういう景気動向にもっぱら起因をするものだ、したがって、それが上向いてきたときはそれなりに減額していかなきゃならぬ、そういう性格の国債であるというように日銀としてはとられておる。これはこのように理解をしてよろしゅうございますか。
  200. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまおっしゃったとおりに考えております。
  201. 松井誠

    ○松井誠君 ひとつそういう立場で、私はこれからあと輸出、いまの国際収支がどうなるか必ずしも一わかりませんけれども、しかしやっぱり海外に輸出ということで、その最終的な有効需要を輸出というものに向けておった、その部分がだんだん不可能になってくると、何か内需に求めなきゃならぬ。そのためにはここで大量の国債を発行して需要の喚起をするよりしょうがないじゃないかという、膨大になり過ぎた生産力をもてあまして。そうかといって輸出にもいけないというときに、この大量国債の発行という、そういう財政というものにたよってくる、そういう日本の財界の体質というものが私はあると思う。それが政府の態度につながって、国債の発行というものが定着をするという危険性があると思いますから、そのことを申し上げたわけですが、ぜひひとつ、やっぱり依然として通貨価値の維持は中央銀行の任務だ、そういう意味では、まさに中立性の堅持という、そういうものの重大性というのは依然として変わらない。そういう立場からぜひひとつこれからあと対処をしてもらいたいと思うんです。  そこで、多少これは資料的な問題になりますけれども、実は私は日銀と国債との関係についていろいろいままで資料をお願いをしてまいりました。その中に、一つはこういうことがあったんです。総裁御存じないでしょうけれども、たとえば日銀なら日銀で、四十六年の三月末なら三月末の国債の保有高の総額はこれだけというようなのは予算の参考書類にも出ておる。しかしそれの内訳がないわけです。何年度債が幾ら、何年度債が幾らというのがないわけです。そういうものについては私が四十年債、四十年度の国債発行のときの委員会の議論を読んでおった記憶の限りでは、そういう明細は発表できませんというような趣旨のことが実はあったんです。そこで、私はどうも意味がよくわからなくて、いろいろ資料要求のやりとりがございまして、最終的には、たとえば昨年、いままで年度末、三月末の銘柄別の保有の内訳、その資料はもらうようになりました。そこで、議事録にとどめたいという意味もありまして、つまりそういう意味での内訳の銘柄別の明細、これを発表することは別に日銀としては差しつかえないということに落ち着いたと思うのですが、そのように理解をしてよろしゅうございますか。
  202. 佐々木直

    参考人佐々木直君) これは日本銀行として発表することはちっとも差しつかえございません。  それから、おくれましたけれども、先ほど成瀬委員から御質問がございました保管料の点は、やはりただでございます。
  203. 松井誠

    ○松井誠君 それで一体日銀は、年度末といいますか、末の国債の保有高というものはわかるのですけれども、常時一体どれだけ、どの程度国債を持っておるのだろうかということを実は知りたいわけです。そこでいろいろ資料を求めましたけれども一つ出てまいりましたのは、年間どれくらい買いオペで、累積これだけの国債を買いました、その当時の国債の発行の累積額はこれだけでありますということはわかった。それによりますと、年度によって違いますけれども国債発行額、累積総額の三割あるいは四割ぐらいを買いオペで買っておるというようになるのですけれども、それはたとえば本日なら本日現在、国債全体の発行額のうち、日銀の保有高は幾ら、あるいは年間、季節によって繁閑の差があるでしょうけれども、大体平均して常時国債発行額の何割ぐらいを日銀は保有しておるのだろうかという、そういう数字にはならない。季節的な繁閑はあるでしょうけれども、大体、最近のこういう金融情勢になってきた場合は別です。別ですが、四十五年ぐらいまでの間、非常に、そういうときには資金需要が非常に強かったときには、一体どういう、発行された国債の大体何割ぐらいを常時日銀は保有をしておるというように見たらいいのか。季節的な繁閑の差はあるでしょう、あるでしょうけれども、それは大体どのくらいの比重なのか、つまり国債保有における日銀の比重というものは、一体どの程度に考えたらいいかということは……。
  204. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまの点は、実は日本銀行が市場に資金を供給する方法にはいろいろな方法がございます。最近は外貨が非常に入ってきて、外貨代金を日本銀行が政府の外為会計を通じてと申しますか、外部に出ております。そういうことで一種の買いオペ的な現象が起こっております。そういうことで、実は四十六年度中は、日本銀行は買いオペをほとんど、全然ゼロに、まああと四十六年度と申しましても少し日がございますけれども、いまの見通しでは買いオペはいたさない。そうしますと、四十六年度中に発行されました国債のうち、日本銀行の負担分といいますか、保有分はゼロということになるわけです。そういうことで、季節的に繁閑のほかに大きな金融の波というものがございますので、金融が詰まっているときには、非常に国債を買う率が上がりますけれども、ゆるんでくると、それが非常に下がってしまう。現に四十六年などはゼロになりました。どうもそこのところに何%ぐらいを目安に保有するといったような運営のしかたができない性質のものだ、こういうふうに考えておるのであります。
  205. 松井誠

    ○松井誠君 たいへんそういうこまかい話で恐縮ですが、私らもおよそのイメージがわいてこないものですからね。というのは、四十六年の買いオペはまあゼロだ。しかし四十六年の三月末の国債の保有高というのは一兆二千幾らというのがあるわけです。これは一兆二千三十二億ですか、これは前年度からの持ち越しが、全然ふえなくてもこれだけはあるわけですね。そして四十六年三月、これだけのものがあって、そして四十六年の末の国債の発行の累計が約四兆円、そうすると、四分の一ぐらい、ちょうどこのときには保有をしておった。およそこういう程度のものなのか。季節的な繁閑があって、それで平均的な数字を聞いてもあるいは意味がないのかもわかりません。その辺のことがわからないのですが、最近四十六年以降は確かに情勢が変わってきておることは変わってきております。しかしその前は大体同じような、多少のブレはありましても、四十二、三、四、五あたりはほぼ似たパーセンテージ、年度末当時の国債の発行の総額と、年度末当時の保有高の比率というのはそう違わないのです。四十三、四、五ぐらいですね。ですから、これから先の金融情勢どうなるかわかりませんし、景気の動向がどうなるかわかりませんけれども、もしこういう状態がまた再現されるという可能性があるいは全然絶無でないかもしれぬ。そのときに日銀の国債発行に対するこの比重というもののおよその重みを知りたいと思って実は聞いているのですが、大体四分の一、三分の一、多いときには約四割ぐらいの国債を保有をしておる。年度末のうちですよ、このときは季節的にどういう時期になるのかわかりませんけれども、大体そういうことであったというように理解をしていいでしょうかね。
  206. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 日本銀行が継続的に市場に資金を供給しなければならないのは、大体において毎年の日本銀行券の発行高の増加分でございます。これをよく成長通貨というような呼び方をしておりますけれども、したがって、この分は何らかの形で資金を供給しなければならない。ところが、その資金の供給のしかたには国債の買い入れもございますし、それからあるいはいまのような外貨の買い入れもございますし、それからまた貸し出し方法もあるわけでございまして、まあ昭和三十六年ぐらいまではそれを大体貸し出しで供給しておったわけです。で、三十七年からそのやり方を変えまして、債券の買い入れによってそういう通貨の供給を行なうということになってまいりました。したがって今後国債がどんどん累積されてまいりますと、一年間の日本銀行券の発行増を、たとえば、五、六千億というふうに考えますと、その分だけを考えますと総体の国債の発行残に比べる比率はぐんと落ちてくる性質のものだと思います。したがって、四十三、四、五年ごろは国債の発行額もまだ——四十年から始めましたし、少のうございましたし、そういう意味であるいは日本銀行で買うパーセンテージがわりあい高かったと思いますが、ことしのような特殊な経験もしてまいっておりますし、今後においての情勢を考えましても、総体の国債発行残高の中で、日本銀行が買う部分というものは非常に率としては低いものであるというふうに考えられますし、今後もその率はむしろ下がる方向ではないか、こういう考え方です。
  207. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 公定歩合関係を中心にお尋ねをいたしたいと思います。  まあ今日の公定歩合のあり方というのは、かつての公定歩合のあり方と、あり方がたいへん違ってきているように思うのですが、かつての公定歩合のあり方というのは、たいへん国内の金利に対して影響を与えてきた。あるいは国内における金融の量ですか、こういうものに大きな影響を与えてきたと思うのですが、いまは、そういう意味では公定歩合というものは、もちろん全然関係がないわけではありませんけれども、むしろ国内的影響よりも国外的影響という割合が高くなってきたんではないだろうか、まあこういうふうに私は思っておりますが、いかがでしょうか。
  208. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 確かに御指摘のように、かつてのオーバーローンが非常にひどいとき、日本銀行貸し出しによって金融市場資金不足がカバーされている、そういうようなときには公定歩合の変更というものは非常に直接的な影響がございました。現在のように実質的にほとんど日銀の貸し出しがゼロになっておる状態では、これではやはりそういった意味でのきき方は減ってきたと思います。したがって、これが国内の市中貸し出し金利影響いたします分は、公定歩合と直接連動いたすことにきめてありますきわめて一部の貸し出し金利に直接の影響を与えますけれども、それ以外は心理的な影響のほうが強くなってまいっておると思います。  それから国際的な関連は、おっしゃるように確かに強くなっておりまして、昨年の一月の公定歩合の変更のときには、国際金利の問題を念頭に置いてその金利の引き下げの率、その他を決定したことがございます。  ただ公定歩合を考えます場合に、海外との比較の問題でございますが、ただ公定歩合だけを海外と比較するということではなくて、各国の実際の金利、市場で働いている金利の比較で考えなければならない。で、国によりましては公定歩合とそういう市中の金利とが開いている国と、わりあいに近くなっている国とがございます。したがって、公定歩合の操作は国際的に考えましても、そういう点を考える必要がある、こういうふうに思っております。
  209. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そこで、日本の場合には、公定歩合と市中金利との関連というのは、非常に私ども考えても関連性が薄い。むしろ西欧あたり、特にイギリスあたりの場合には、公定歩合と市中金利との連動性というものはかなり高いように私ども思うのですが、日本の場合に、そういう意味で公定歩合と市中金利との連動性というようなものをもう少し強めていかないと、特に国際性が非常に高まった今日においては、何らかそういう措置を講じていかないといけないのではないか。最近の新聞報道等によっても、たとえば在庫投資等を見ましても、むしろ金利の安い外国の金を使って、しかも輸出した金額、金については前受けという形で国内に持ち込んでくるというようなことも報ぜられているわけでありまして、こうした形でいけば、先ほども外貨をふやさない、あるいは外貨を減らすという立場からいろいろな方針をお述べいただいたわけでありますけれども、こういう形では、特に短資はもちろんそうした金利と非常に敏感な影響がありますし、短資だけではなしに、そうした輸出のものまでもそういうような形で日本の国内に役響してくるのではないだろうか。そういう意味ではもう少し日本の金融制度そのものも公定歩合の操作によって動いていく、それが公定歩合を世界的に考えて、それと間接的に連動していく、こういうような形になっていかなくちゃならないだろうと私なんを考えますけれども、そういうことは日銀として何らかの形で改善をしていくべきではないかと思いますが、具体的に何かお考えになっていらっしゃいますか。
  210. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまのお話は、確かに公定歩合の変動の効果ができるだけ広く及ぶという観点からはおっしゃるとおりだと思うのでありますが、ただ最近の傾向といたしまして、金利の自由化傾向というものがございます。そしてそのそれぞれの金融機関の、それぞれの判断によって金利は自由に決定すべきであるというような考え方もございまして、ドイツとかなどは非常にそういう傾向が強いわけでございまして、こういう両者をどういうふうに考えるか、この点はなかなかかね合いのむずかしいところであろうと思います。かつて金融制度調査会預金金利について、公定歩合と直接には連動しなくても、公定歩合が二、三回動いたら一ぺんぐらいは動かすようにしたらどうだというような意見も出たこともございました。しかしこれも結局は実際化するには至りませんでした。したがいまして、現在の段階では、この連動性を強く出せるかどうか、私どもとしては今後相当研究を要する問題であるというふうに考えております。
  211. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 最後に、まあ去年の暮れでしたか、公定歩合四・七五%という形まで切り下げられたわけでありますが、その後はまた、いろいろ意見は、公定歩合をもう少し切り下げて西欧並みにしたらどうだろうか、こういう意見があるわけでございますけれども、現在のところでは、日本より高いのは西欧先進国ではおそらくフランスぐらいではなかろうかと私は思っております。そうした意味では、日本ももう少し公定歩合を下げていいのではないか。これはおっしゃるように、それが具体的な影響というよりも対外的な心理的な影響というもののほうが私はかなり多かろう、そういう立場で考えてみますと、西欧並みの公定歩合というふうにしたらどうだろうかという考え方でありますけれども、日銀としては今日公定歩合を動かすというお考えはないでしょうか。
  212. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 先般、西ドイツが公定歩合を四%から三%に下げました。それでドイツと非常に経済的に関係の深いベルギー、オランダ等がこれに追随しました。これは一つのグループだと思います。それから日本銀行の公定歩合の問題がいろいろ議論されておりますが、実はいま日本銀行として考えます場合に、外国金利で一番縁の深いのは何と申しましてもアメリカの金利でございます。アメリカの公定歩合は四・五でございまして、日本と〇・二五しか違いません。それからアメリカの短期金利は最近非常に下がってまいりましたが、ここにきてすでに反騰に移っておりまして、銀行引き受け手形のレートなどはこのところ五回ばかり上昇しております。それからプライムレートも上がっておるというような状況でございまして、われわれとしてはいまここで国際的な関連から公定歩合に手をつける必要は、感じておりません。  御参考までに一言申し上げておきたいんでございますが、ドイツの公定歩合は六〇年代の初めから六四年まで、それから六七年から六九年にかけましてずっと三%であったわけです。それで六九年の四月から翌年の三月までの一年間に四回公定歩合を上げまして、しかもそれが四回で四・五%引き上げました。七・五%までもっていったわけです。それが今回は徐々に下げてまいりまして三%に戻った、こういう歴史を持っておりますことを御承知おきいただきたいと思います。
  213. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間もありませんから要約をして三点ほどお伺いをしたいと思います。  その第一点は、数字的なものを聞いておると時間がかかりますから私の資料で申し上げますが、現在、公債の関係でありますが、先ほど松井委員も一応お伺いをしたわけですが、現在の公債の発行は今年度が一兆九千五百億円、さらに一般会計の歳入中の公債の収入の割合、公債依存度、これは一七%、大体日本の戦前経済とほぼ同様ですね。もちろんそれはいまの経済情勢と違いますから、この数字的なものを比較することはできないかもしれませんが、いずれにしてもそこまできておる。あるいは準公債といわれる政府保証債、これが四千億円。それからさらに地方債、これは一兆七千二百七十八億円、こういうことになって、さらに四十七年度中に先ほど言った一兆九千五百億円というふうなものが発行されておるわけです。こういった中で地方債のうちの九千六百億円、これは大体政府資金引き受け、それからさっき松井委員が質問されましたように二千五百億円が資金運用部引き受け、これはまだ大蔵省に確めておりませんが、大体そのようになっておるようであります。こういったものを前後差し引きいたしましても約三兆円の公債、これは金融市場にこれから全部流れていくわけですね。ですから私は大量な金額になっていくだろうと思うのです。したがってこれの消化は市中消化ということになるわけでありますけれども、ことに中小企業、相互銀行、こういったところがいろいろ日銀でもってそれらの引き受けを計画をしてやっていくわけでありましょうけれども、その無理がないのかどうか、その辺今回の準備預金制度でも相互銀行は一定の準備率を積み立てなければいけない。しかし金は積むが集めるのに非常に苦労してそれぞれ集めていかなければいけない。今回も相当いっているようでありますが、聞いてみますと、都市銀行資金量と比較いたしますと、非常にきつい状況で、相互銀行とかあるいは信金、こういった中小企業にいっておるというようなことを聞くのでありますが、その辺の無理な状況というものはないものかどうか、その辺が第一点であります。  それからもう一つは、インフレとの関係でありますけれども、大体四十六年九月段階で長期国債残高三兆八千四百億、四十六年度は一兆円の国債が上積みになりましたが、四十七年度はさらに上積みになっている。そういうことになりますと、四十六年度でGNP約八十兆円、これに対する比率は六%、四十七年度でGNP比が七・五%、おおむねフランス、西ドイツそういうものと匹敵するところまで上昇してまいりましたね。これは全部今後いろいろな形でばらまかれていくわけでありますから、そういう意味からいって、いろいろな諸説はありますけれども、インフレとの関係において大きく促進をしていくのではないだろうか、こういう心配が持たれるわけであります。そういう点について総裁はどういう見解を持っておられるのか、この点について第一点、ひとつお伺いしておきたいと思います。  それから最後に、相互銀行が日銀と信用取引、この制度的なものがあることは間違いないだろう、どうもしかし信用取引制度はあってもいまだかつてこの融資体制というものが行なわれたためしがない。かりにそういう融資をやれば、どうもあまりかんばしくないけれども銀行乗っ取りというようなことで日銀から何らかの圧力が加わってくる、こういうようなことをいろいろうわさとして聞くのであります。はたしてそういう実情というものが日銀の内部の運営指導その他の中であるのか、その辺について見解をお聞かせ願いたい。  それからもう一つ信用制度上どのくらい相銀との取引そういうものをやられておるか。全国的に七十二行相銀があると思いますが、そういう内容についてひとつお願いをしたい。  もう一つは、大体いまの日銀のそういう信用取引というものは、都市を中心にやられていると思うのでありますが、こういう各行別、いってみれば七種類ありますけれども、そういう内容について数字的に信用取引の総額がもし示されるならば、あとでひとつ資料として御提示願いたい。こういうふうに考えます。  以上三点について、時間もありませんから、私のほうから質問をしておきたいと思います。
  214. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 最初の相互銀行その他中小企業金融機関、こういうところの国債消化に無理はないかというお尋ねだったと思いますが、現状では実は国債がほしくても手に入らないというような債券市場の状況でございまして、いまは私は無理は全くないと思います。ただ問題は、今後もし金融が締まってまいりました場合に、そういうところがどういうふうにして国債を金にかえることができるか、あるいは国債を担保として金を借りることができるか、そういう点についての配慮が必要であろうと思います。その点につきましては一番大事なことは、公社債市場を発達させまして、これだけいろいろな債券が発行されておる中でございますから、相当大量の取引が公社債市場でできるように、そういう育成を強力に進めていくということが第一でございます。  もう一つは、いま第三点として御質問ございました日本銀行と相互銀行との関係をどう考えるかということかと思います。  第二番目の国債の発行額が非常にふえてまいりました。確かに四十七年度の発行額は財政総体の一七%、非常に高い率に達しております。先般財政制度審議会では、大体平常のときには五%以内にとどめるのがいいというような話も出ておりましたが、私どもも非常に国債が急速に累増してまいりましたことについては、十分警戒する必要があると考えております。四十七年度は、これは特別の年度であるということでこの発行を理解しておるのが実情でございます。  それから第三番目の相互銀行との取引でございますが、実はきょうここに参りますまで相互銀行の首脳部の方とお話をしてまいりました。われわれとしては相互銀行状況につきましていろいろ具体的に連絡も受け、地方銀行と同じように密接な関係を開いていく方向で考えておりまして、現実にはもうすでにある程度貸し出しを実行いたしております。ただ、まだ始めたばかりで金額は非常に少のうざごいますけれども、これは今後都市銀行の数も、貸し出し取引銀行の数もふやしてまいるつもりでございますし、今後の情勢次第で弾力的に運用してまいりたい。もうその道は開いて、まだ一歩ではございますけれども、踏み出しておるのが実情でございます。
  215. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 その点の資料はどうでしょうか。
  216. 佐々木直

    参考人佐々木直君) それでは、二月末の数字がございますので御報告いたしますが、ただこの中には貿易関係の特殊な貸し出しが入っておりますので、都市銀行割合が非常に高くなっております。  都市銀行に対する貸し出しが六千八百二十九億ございますが、しかしながら、この中に貿易関係の特殊なものが入っておりますので、それを除きますと、残高が千八百二十四億、非常に小さくなります。それから地方銀行が四百八十四億、信託銀行が二百億、長期信用銀行が百八十一億、それから組合金融機関が三十一億、相互銀行が三十億、ほかに短資会社その他で約四百億のものがございます。
  217. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 一点漏れまして申しわけございません。沖繩のいまの二行、いろいろあるわけですけれども、その二行に対して従来現地では、為替管理業務、それから各般の都市銀行と同じような性格で今日まで運営されてきたわけです。今後、返還をされますると、当然相互銀行的な性格に落ち込んでいくわけです。で、現地としては、従来どおり外為会計やそういうものの資金も扱わしてくれという希望が非常に強いのですけれども、日銀総裁としてはどう考えられますか。これは銀行局長のほうですか、どっちですかわかりませんが、その一点だけ総裁にひとつ……。
  218. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまの御質問が沖繩にありますいまの二つの普通銀行、この点でございますと、今度本土に復帰すれば、日本の普通銀行と全く同じ扱いになります。日本銀行取引を開きますし、それから外為業務につきましても日本の銀行と同じ扱いになります。
  219. 多田省吾

    ○多田省吾君 総裁にまずお尋ねしたいのは、いわゆる金融機関事業会社等が、株式の法人買い、あるいは土地の買い占め等で非常に問題になっております。もちろんこれは大蔵省の証券局やその他の問題でもあろうかと思いますが、総裁の御見解をお聞きしたいのでございますが、特に株式においては、二月の二十六日にダウ平均が三千円の大台を突破しましてから、産業界の不況が一そう深刻になっているのに、経済の実勢を無視したような上昇相場を見せているわけであります。特に都市銀行や生命保険、損保だけの動きを見ましても、去年の十月から十二月までは、大体月四百億円程度、それから大蔵省からも資料も出ておりますが、ことしに入ると、さらに、一月は八百億円、二月になりますと一千億円を突破するような、そういうたいへんな資金量でございます。そういう金融機関等の法人買いに対しまして、日銀は、この実態を、金融政策上どのように理解しておられますか。また、低利率で受け取って、大手会社等も、資金にものをいわせて相当土地を買っている。大手商社の余裕資金はもう一兆円をこえるというようなことも伝えられておりますが、このだぶついた資金に対する金融政策上のお考えですね、この二点をまずお尋ねしたい。
  220. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 第一点の、最近の株式の状況でございますが、確かに最近の株式市況というものは非常に急速な変化を示しておりまして、いろいろ問題があろうと思います。金融機関の株の買い入れにつきましては、都市銀行の買い入れの金額は多少ふえておりますけれども、これにはそれほど急速な変化もございません。むしろ大きいのは、生命保険会社、損保というところだと思います。  それで都市銀行の株の買い入れにつきましていろいろわれわれも調査をいたしておりますが、大体においてやはり安定株工作ということで都市銀行に持ち込まれるケースが多くて、キャピタルゲインをねらって都市銀行が株の売買をしておるということは、われわれのいま調べでは見当たっておりません。生命保険会社などは、一時非常に資金貸し出し運用いたしまして、そして株式への運用が一時ずっと落ちてきておりましたが、最近の状況は、貸し出しの需要がだんだん落ちてくるに従って、また株へ戻っておるというような点もあろうかと思います。しかしながら、金融機関のそういうような方面への資金の流出につきましては、われわれ絶えず窓口を通じて数字もとっておりまして、それに対して警戒の手はゆるめておらないつもりでございます。ただ、商社等事業会社のそういう運用につきましては、なかなかわれわれの手が届きません。間接的にではありますけれども取引銀行を通じて、取引銀行資金の供給のしかたについて注意をしてもらうという間接的な段取りにとどまっております。  それから、こういうだぶつく資金をどういうふうにして吸収するかということでございますが、これが金融機関に戻ってまいりました分はこれは売り出し手形その他の方法で吸収できますけれども事業会社の手元にあります分、これはなかなか直接われわれも吸収ができない。ここに問題があろうと思います。ただ、商社などが輸出の前受け金を取りましてそれを余裕金としていろいろなものに使っている。その面は、先般実行いたしました輸出前受け金の規制によりまして、ずいぶんここでブレーキが、とめられておるように考えておるのでございます。
  221. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、ただいま質問のありました公定歩合の問題でございますが、まあ大体総裁のお答えがございましたので一点だけ御質問したいんですが、   〔委員長退席、理事柴田栄君着席〕  一つは、やはり海外との比較におきまして、西ドイツやベルギー、オランダの例もあるということ。それからもう一つは、今度は国内の問題で、企業金利負担を少しでも軽減するという問題もあろうかと思います。  その二点の問題で、この前、三月六日ですか、通産省の事務次官も、経団連の国際金融委員会で、貿易収支の黒字幅拡大の最大の原因は不況であると、だから景気回復に全力をあげるべきであって、そのためには具体策として公定歩合の引き下げ等、実効金利の引き下げが必要である、というようなことを通産省でも強調しているようでございますが、そういう両方の効果をねらって、現在の四・七五%の公定歩合をさらに引き下げれば、景気回復やあるいは海外の短期資金流入を防げると、こういう両方の意味があるんじゃないかという意見も強くありますけれども、それでもなおかつ現在の公定歩合でよろしいんだというそういうお考えでございますか。
  222. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 公定歩合というものはできるだけ弾力的に運用すべきものでございますので、そのときの情勢いかんによって、そのときそのときに判断さるべきものだと思います。ただ、ただいまの時点において考えます場合に、先ほども海外との関係を申し上げましたけれども海外ではむしろ、アメリカの短期金利などは反騰に移っているような状態でございます。それから、ドイツはドイツで特殊な歴史を持った公定歩合でもあるという点もございます。それから国内におきましては、去年の暮れに、押し迫りまして〇・五の公定歩合の引き下げを実行いたしまして、その効果が一月から出始めておりまして、一月、二月と銀行貸し出し金利はいままでよりもさらに相当大幅に下がってきております。それからまた長期金利につきましても来月以降動きがあるように聞いております。したがって、現在の時点におきましては、そういうような現実の市場における金利の推移を見守っておることが適当であるというふうに考えております。
  223. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは、今後の推移を見て引き下げなければならないような状況が出たら引き下げもあり得ると、こういうことでございますか。
  224. 佐々木直

    参考人佐々木直君) そのとおりでございます。
  225. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に私は、ドル安の問題でお尋ねしたいと思いますが、もう二月の末でわが国の外貨保有量は百六十四億ドルを突破しておりますが、円の再切り上げを回避するためには、どうしてもこのドルを減らさなくちゃいけないということは当然だろうと思います。その点に関連いたしまして、この前、今月の十日の衆議院の予算委員会の公聴会でも、国際通貨に関連いたしまして、まあ現行のIMF体制下で為替レートの再調整がもし実施されたような場合には、わが国企業におけるショックは非常に大きい、しかも調整効果はほとんど得られない、円再切り上げを避けるためにも、いわゆる機動的なクローリングペッグー小刻み平価調整というものの採用が必要であるという意見が述べられまして、まあわが国のいわゆるエコノミストといわれる人たちの間にはこのクローリングペッグの採用を強く主張する人もかなり多い、もちろん反対する人もおります。この点に関しまして総裁の見解はいかがであるか、お伺いしたいと思います。
  226. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまの御質問のクローリングペッグの問題は、実はだいぶ前にもそういうようなことが提言されたことを承知いたしております。確かに理論的には、これはなかなかこういうやり方というのは興味がある点があると思いますが、しかしながら、現実の問題として考えます場合に、ある予定をした為替相場の変更というものがスタートされますと、それは非常に投機的な動きを引き出しやすい傾向がございます。したがって、特殊な国、たとえばブラジルなどでは、これは一カ月ごとぐらいに為替相場を動かしておりますが、ああいう特殊な国は別といたしまして、いまのたとえば、この前ワシントンに集まりました十カ国、こういうようなものの中では、そういったような為替の動かし方というものは不適当だというふうなことが一般の通念になっておりまして、現実にはこのクローリングペッグ制というものはなかなか採用しにくいというふうに考えます。
  227. 多田省吾

    ○多田省吾君 それから先ほども質問がありましたけれども、結局いまEC諸国では相当——西ドイツ、ベルギー、オランダをはじめとしてドル安のために中央銀行が買いささえを行なっているようでありますけれども、このEC域内の相場は固定しておいて、域外に対して変動相場制を採用して、人気のない、ドルの買いささえをやめてしまおうという傾向が強いんじゃないかと、そういうことも最近はいわれております。昨年夏のドルショックのときには、ヨーロッパ諸国が変動相場制に踏み切ったあとも、わが国はドルを買いささえたわけでございますけれども、これは仮定の質問でございますが、もし、現在伝えられているような危機、EC諸国が変動相場制に踏み切る、フロートするというような場合には、わが国もそのあとを追ってすぐフロートするのかどうか、その辺の見解を伺っておきたいと思います。
  228. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ECの中の為替相場の開きをできるだけ狭くしようという動きは、これは八月十五日のニクソンの新政策以前からありました動きでございます。それがニクソンのそういう声明以後のいろいろな変動のために、ちょっと話がたな上げになっておる。しかし、今度また一応、再調整も済みましたので、またその話が出ておる。ことに変動幅が最初のIMFによってきまっておりました一%上下が、二・二五%に開きました。そのもとにおいてどうするかということの検討も必要であったのではないかと思います。したがって、私どもはECの相互間の変動幅が狭くなるということは、過去のECの理念からくる当然の帰結であり、それは今度の新しい問題とは考えておりません。したがいまして、このECの中の変動幅が狭くなることが、外との間に新しい事態を招くというふうには考えておらないのでございます。またこの今月の初めに、スイスのバーゼルで開かれました国際決済銀行中央銀行総裁会議におきましても、昨年の十二月、ワシントンでできましたこの体制をぜひ強く支持していきたいという話がまとまっております。そういうことで私どもは、ここに新しい変化が起こるとは思っていない状況でございます。
  229. 多田省吾

    ○多田省吾君 もし、EC諸国が変動相場制に走らない場合でも、EC諸国は通貨準備の多元化ということをはかっているわけですが、わが国も当然、通貨準備の多元化というものをはからなければならないと思います。このために何か実効性のある対策を総裁はお考えになっていらっしゃいますか。
  230. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 確かにいまの日本のように、ドルばかりがたくさんたまっておりますということは、いろいろリスクが一つにかたまっているということにもなりますし、できるだけ多元化することが望ましいと思います。しかし、現実には各国とも自分の国の通貨がよその国に準備として持たれることについては、非常に反対しております。と申しますことは、それが結局、自分以外の国の事情によって自分の国の国際収支その他が動かされるという点が非常に困るわけです。かつてはポンドがそういうことに使われまして、イギリスも非常に困りました。いままたドルがそういうことに使われて、結局はドル自身も非常に困っているわけでございます。そういうことで各国ともそういう点に防衛策を講じておりますものですから、日本といたしましても、これを多元化することにはなかなか具体的に実行はむずかしいという実情でございます。したがって、方向といたしましては、ドルも金もなかなかそういう準備として使えないということになれば、国際的に管理されている通貨、たとえば一例としてSDRのごときものに準備通貨を求めていくという方向しかとっていないのじゃないか。   〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕 特定の国の通貨にそれを求めるのは、現状ではなかなか困難であるというふうに存じております。
  231. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、二点質問いたしましてやめますが、一つは、外貨保有高が現在百六十五億ドル、このままいきますと二月の輸出の増大等を考えましても、来年三月とかことし一ぱいで二百億ドルに達するのではないかと思われていたような外貨保有量が、ことしの夏あたりに二百億ドルを突破するのじゃないかというような心配もございます。円再切り上げを防止するためにも、これは当然、そういう外貨は減らさなければいけないと思いますが、その方策でございますが、先ほどこれは大蔵省でもずいぶんやっているのだ、そのほかの別に目新しい対策というものはないのだという御答弁でございましたけれども、その中で、発展途上国に対する援助を国際的に開発銀行等を通じてどんどんやっていきたいという話でございますが、現在、これはあまり進んでいないのじゃないかと思います。私どもは、どうしてもこれは政治抜きで、自由主義国あるいは共産主義国を問わず、この発展途上国に対する援助はやっていくべきだと、このように考えますけれども、この実行のこれからの予想はどうであるか。  それからもう一点は、在日外銀の国内の金融政策に対する撹乱要因といたしまして、一流会社への貸し出し強化、あるいは一方ではアメリカのベンディックス社では、わが国の自動車機器の株式公開買い付け、いわゆるTOB等がふえる見通しが強まっておりますが、これら一連のわが国金融政策、産業政策に対する影響を日銀当局はどのように見ておられるか、この二点を最後に質問して終わります。
  232. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 最初の後進国援助の問題でございますけれども、後進国援助についてはいろんな形があります。ただ、先ほど私が申し上げましたのは、世界銀行とか、アジア開発銀行とか、そういういわゆるマルチラテラルな機関を通じてやることが適当であるというように——それだけがいいというわけじゃございませんが、そういうところを使うのがわりあいにいろいろな問題が処理しやすいという意味で申し上げたわけでございます。アジア開発銀行も、世界銀行も、最近日本の国内で起債もいたしております。それから世界銀行に対しては日銀から貸し出しもいたしております。今後こういうものはだんだんふえていくものだと思いますので、これは今後相当期待できるのではないか、こういうふうに思っております。  それからもう一つ、在日外銀の活動でございますが、いま在日外銀の活動につきましては、日本へ支店を出しております銀行の数は最近だいぶふえてまいりました。最近の在日外銀の資金運用状況を申し上げますと、自分の国から外貨を持ってきて、そして資金をつくっておりますものが、やはり金額的には多い。預金というのは、やはりなかなか外銀は日本の一般の預金者層にはそれほどなじみがございませんので、預金はそれほど大きく伸びておりません。  それから貸し出しが最近相当ふえておることも事実でございますが、しかし、このところになりまして金融がゆるんでまいりまして、日本の銀行の融資態度が相当積極的になりますと、そこで外銀に対しては、やはりそれほど強い資金需要がないというような状況でございまして、現状では在日外銀の日本の中の活動が特に目ざましくなって、それが全体の金融界のバランスに障害を与えておるという状況ではないように存じております。
  233. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 時間の制約もありますので、三点について簡単にお伺いしたいと思います。  これからの金融政策をどうしておいでになるかということなんですが、一つは物価の安定という点でお伺いしたいと思います。  先ほど、できれば二%台という御希望もございましたけれども、現実は、もちろんいろいろな原因があってですが、たいへん高率な消費者物価高が続いております。しかし、国の経済を見ると、不況ということですから、いわゆる引き締めを中心にした物価抑制策というのがもちろんとれる状況下ではございません。これからどうなるかといいますと、年度後半には景気も持ち直してくるだろうという御発言がございました。これは物価に対して抑制的には働かないと思います。といって、そこで、じゃ引き締めを中心にした金融政策がとれるかといいますと、外貨準備高の増加を考えればとてもできたものではない。とすると、物価の安定という点については手の打ちようがない——金融政策の面では、という意味です。そういう判断でよろしいでしょうか。
  234. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 具体的にいまの状況で直接物価安定に役に立つ手は、金融の面から打つことは確かに非常に困難でございます。ただ、私ども一といたしましては、先般来の金融引き締めが設備投資にある程度ブレーキをかけたことは事実でございますが、しかしながら、そういう過去の設備投資が生産力化してくる、この間のいわゆる供給余力が生じて、これが卸売り物価のいまの安定をもたらしたと思っております。ですから、いまの卸売り物価の安定というものを、金融政策の面からさらに推し進めるということは確かにむずかしゅうございますが、この卸し売り物価の安定が、消費者物価の上昇をある程度冷やす役は、このところある程度出てきておるように思います。そういう意味で、物価について直接的に金融政策の面から手が打てない状況であることはおっしゃるとおりでございます。  あと残る問題は、今度の為替平価の変更が輸入物価を通じてどれだけ消費者物価に影響を及ぼすか、これについてはいろんな問題がありますけれども、その方向は、これは金融政策直接ではございませんけれども、積極的に推進しなければいけない、こう考えております。
  235. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまのお答えとの関連で、実は先ほど来お話を伺っておりまして、総裁から直接伺ってたいへん実感を持って聞いたんですけれども、公定歩合を下げたからといって、直接もう連動する情勢にはないというお話がございましたし、短期政府証券も大体売り払ってしまった。準備預金制度は、これはいま審議中のものも含めて、かりにいまあったとしても発動できる情勢ではない。そうしますと、日本銀行としていまの前の情勢に手放れしてしまっている、影響力の及ぼし方が資産として乏しくなってきたような印象でお話をこれまで伺ってきたんですけれども、そういうことなんでしょうか。
  236. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまの金融情勢は、昨年からの非常に大きな外貨の流入によります政府の外国為替特別会計の払い超過が大幅にございまして、そのために非常に金融が緩慢になりまして、現在の日本銀行金融政策の中心は過剰流動性の吸収でございます。このために、先ほども申し上げましたが、政府短期証券の手持ちが減っておる状況では、日本銀行の売り出し手形でこれを吸収するということでやっておるわけであります。この日本銀行の売り出し手形は、そのときの金融情勢によって金額は幾らにでも調整できますから、そういう意味では当面の金融情勢に対する政策手段としては十分役立ち得るものと考えております。
  237. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの御質問と関連するかどうかわかりませんけれども、先ほど、市中銀行の代表の方も含めて、これから貸し出し方向社会資本投資あるいは消費者信用も含めて拡大していかなければいかぬという御説明がございました。そういった方向金融情勢が変わっていくとして、その具体的な姿というのはどうなっていくのかちょっと御説明いただきたいと思うんです。  お伺いしたい理由というのは、これまでは、各銀行経済計算で貸し出しをするということがそのまま輸出強化、生産力増強という国策にも見合ってきた。これから金利は自由化の傾向を迎える。そういう中で、各銀行はそれぞれの経済計算で貸し出しをしていく。そういう中で、消費者信用の問題にしても、あるいは社会資本を中心にした諸投資の問題にしても、銀行ベースの貸し出しということに直接つながってくるだろうか。もしつながってこないとすると、逆な意味での、従来とは全く違った意味での日本銀行からの窓口規制的な金融政策が必要になるのか。あるいは、先ほど来の御議論とは違った意味で、国債の使い方ということが出てくるだろうか。その辺について御見解を伺いたいと思います。
  238. 佐々木直

    参考人佐々木直君) いまの日本の市中金融機関として、その資金運用の目標をできるだけ国民生活の質的な向上、社会資本の充実あるいは消費者信用、そういった方向に向けたいという考え方は、これは私は正しいと思います。しかしながら、総体としての、日本全体の資金運用のしかた、資金の使い方ということにつきまして、それを社会資本の充実という点に重点を置くとすれば、やはりその場合の役割りは政府のほうが大きいんだと思います。おそらく四十七年度の総体の資金需要の中では、民間の在庫投資需要並びに設備投資需要の総額よりも、政府の財政需要のほうが大きくなるんではないか、こういうふうになってまいりますと、銀行資金運用のしかたはおのずから変わってくる、しかしそれにはあくまで財政が主導で変わってくるんだ、こういうふうに思います。したがいまして、銀行貸し出し資金運用は、一つは債券投資がふえてくる。国債の保有もふえてくると思います。これで一般の民間に対する資金の供給のウエートはいままでよりは落ちてくるべき筋合いのものだと思います。したがって、そういう点で窓口指導という問題はこれは今後金融政策の上で量的な調整が必要の場合は別といたしまして、質的な調整を、こういう問題について使うということは考えても無理でないかというふうに考えます。
  239. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それで財政主導型、財政主導型というただいまのお答えと、別にことばじりとらえているわけではなくて、お伺いしているんですけれども、景気がよくなってきたら一兆九千五百億円を含めて国債発行規模というのはやはり縮小してもらわなければ困るという御発言と、一部合わないような気もするんですけれども、その辺は含めてどう理解していけばよろしいんでしょうか。
  240. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 財政主導型と申しましても、それには伸び率にいろいろ変化があってよろしいものだと思います。したがって、四十七年度予算の四十六年度予算に対する伸び率、あの伸び率が絶対に必要ということではなくて、その伸び率についてはいろいろそのときの景気の状況によって調整が加えられてしかるべきである。また国債の発行額につきましては、やはりある程度景気が回復してまいりまして、税収がふえれば、財源としても国債にたよる必要がなくなるということでございまして、総体として私はどこの国にも見られる傾向でございますが、民間の製造業の資金需要というものは今後やはりそう伸びない、そういう質的な変化が産業の面でも起こりつつありますし、やはり今後の日本のウエートは財政にあるものだと、こう考えております。
  241. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 最後に、長くなって恐縮ですが、一点だけお伺いしたいと思いますが、これは新聞で拝見したことで事実かどうかわかりません。ある一部の商社で、先物輸出契約について自主レートを設定をしたという記事を拝見いたしました。三百円を大きく割ったレートなんだということを発表されたそうです。もし新聞報道ということで不可解、事実かどうか確かめ得ないのでということであれば、もしそういうことがあったらというお答えでもけっこうです。そういう輸出契約を進めていくということは裏づけとして貸し出しをしている銀行の存在がございます。今後の国際通貨問題のデリケートさということを考えてみたときに、なるほどその企業、商社にとっては先物二百七十円でも、二百八十円でもきめていいようなものですけれども、はたしてそうなんだろうか。こういう問題について、日本銀行として、あるいは金融政策——金融政策になりますか、金融として中立的な立場でおいていいんだろうか、この点の御意見伺って質問終わります。
  242. 佐々木直

    参考人佐々木直君) この問題については私も新聞を見ただけで確かめておりませんからどういうことをやっておるかわかりませんけれども、ああいうことが表へ出るということは国際的には非常にまずいことだと思います。その企業がどういうところで、原価計算をするかということはいろいろ企業立場があろうと思います。そこまでわれわれとして容喙するあれはございませんけれども、やっぱりああいう問題についてはぜひ慎重であってほしいというふうに考えております。
  243. 渡辺武

    ○渡辺武君 従来ですね、大企業が高度成長を続けるために、自己資本の数倍に及ぶ借り入れ資本の過剰、いわゆるオーバーボローイングが行なわれてきた。またそれをささえるものとして、都市銀行を中心とする銀行のオーバーローン、非常に激しかったと思うのです。残念ながら日本銀行の従来の通貨金融政策は、日本銀行貸し付け金制度などを通じて、この銀行のオーバーローンをむしろささえてきたというのが私は実情じゃないかと思います。このことがいままでの消費者物価の値上がり、インフレの高進ということの大きな要因となってきたというふうに私どもには考えられるわけです。ところがそれに加えて、昨年来外貨が急速に流入して、先ほど総裁もおっしゃいましたように外為会計の払い超四兆四千億円というようなことで、従来案ぜられていたいわゆる外貨インフレというのがこれにつけ加わってきているというのが現在の実情じゃないかと思います。したがいまして、日本銀行の通貨金融政策役割りというのが非常に私は重要になってきているというふうに思います。インフレ抑制をどうするかというような点で非常に重要になってきます。  そこで伺いたいのですけれども日本銀行の通貨金融政策の基本はどこに置かれているのか、まずそこをお答えいただきたい。
  244. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 日本銀行金融政策重点は、やはり私は通貨価値の維持にあると思います。この点につきまして、それではいままでどうして物価が上がってきたという御批判もございましょうが、しかしながら少なくともいままでの日本銀行がやってきました政策の努力は、やはり物価の安定をできるだけはかるということにあった、こう考えております。
  245. 渡辺武

    ○渡辺武君 通貨価値の安定ということは私も非常に賛成なんです。賛成なんですけれども、現実には消費者物価が値上がりする、逆にいえば通貨価値が下落してきているというのが実情だと思うのですね。いま物価の安定とおっしゃいましたけれども、物価にも私は国内で二とおりあると思います。一つは卸売り物価、一つは消費者物価です。そうしてこの二つの物価体系の動きが非常に乖離している。ほかの国に比べても日本は著しく乖離している。卸売り物価指数はまあほぼ横ばい状態で推移している。ところが卸売り物価指数の動きがどうあろうと、消費者物価指数のほうは急騰してきたというのが実情だと思うのですね。いま通貨の安定、物価の安定ということをおっしゃいましたが、日本銀行が通貨信用政策をやるにあたって最も重視するものは、この二つの物価体系のうちのどちらを重視なさっておられるわけでしょうか。
  246. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 私どもといたしましては、両方を重点と考えておるわけでございますが、ただ現実の問題といたしましては、金融政策が直接効果を及ぼし得る物価は、卸売り物価でございます。われわれとしては卸売り物価を通じて消費者物価に影響を及ぼす。こういう段取りになっております。したがって、消費者物価のほうは影響の及び方が間接的であるといううらみはございますけれども、われわれとしては、消費者物価を軽く見ておるという気持ちは全くございません。両方並べて考えておるつもりでございます。
  247. 渡辺武

    ○渡辺武君 私はいまの御答弁非常に重要だと思うのですね。端的に申しますと、卸売り物価指数の動向というのは、主としては企業の利害関係に非常に関係しているのです。ところが消費者物価のほうは、国民生活に非常に関係している。ですから、卸売り物価への影響を通じて消費者物価に影響を与えるということになれば、どうしてもこの卸売り物価指数が下がり気味になれば、金融を緩和する方向でやらざるを得ないし、卸売り物価が上昇するという気配が見えれば、若干引き締めということが念頭にあるというようなことになると思うのですね。ところが先ほども申しましたように、卸売り物価指数の動きいかんにかかわらず、消費者物価指数は上がっていくという状況です。ですから、結局のところ、いま総裁の御答弁の立場でいえば、大企業中心に企業の必要な資金を、ある場合はゆるめてまかなう、ある場合には多少引き締めるということに政策重点がならざるを得ないと思いますが、どうでしょうか。私は率直に言えば何よりも消費者物価指数の動きを、これを日銀の施策重点に置いてやるべきじゃないかというふうに思いますが、どうでしょう。
  248. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 消費者物価に対するわれわれの考え方、私はなかなか中央銀行として、直接手を触れられない面で上がっている点が多々あるということを頭に置いて申し上げたのでございますが、しかし、卸売り物価の関係で、日本銀行金融政策の調整が大企業に対する資金の需給ということで行なわれているとは私は考えておりません。
  249. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間もないので、その点の論争はまあいずれの機会に譲りまして、もう一つ伺いたいのは、日本銀行の通貨信用調整の手段として三つがあるというふうにいわれております。申し上げるまでもなく、金利政策とそれからまたオープン・マーケット・オペレーション、それからいま問題になっております準備預金制度であります。特にこの準備預金制度ですけれども、これはほかの二つの調整手段に比べますと、銀行のオーバーローンを抑制する、そうしてまた、したがって、それから起こるインフレを抑制し、あるいはまた預金者の保護という点でも、かなり有効な政策手段であるというふうに私は考えるわけです。ところが、従来のこの準備預金制度を見てみますと、最高限度は一〇%というふうに法定されております。ところが実際行なわれている準備率ですね、これは大銀行の特に要求払い預金の場合ですと、一・五%という状況ですね。先ほど申しましたように、銀行のオーバーローンが非常に進んで、インフレが高進しているという状態のときに、一〇%まで上げられるのに何で一・五%なんという低いところで準備率をきめられたのか、この辺が私はどうも疑問でしょうがない。どういうような基本政策のもとで一・五%となさったのか、また具体的に何を基準にして一・五%という数字がはじき出されるのか、その点をまず伺いたいと思います。
  250. 佐々木直

    参考人佐々木直君) いまの準備率が低かった理由でございますけれども、これは基本的には先ほどもちょっと御指摘がありましたように、日本の金融が非常なオーバーローンであったということでございます。それで特に都市銀行日本銀行からずいぶん金を借りておりまして、高い準備率を課しますと、結局日本銀行貸し出しにはね返ってくる、こういう実情でございましたので、非常にスタートが低かったのでございまして、これは三十四年の九月に初めて実行いたしましたが、そのとき定期性預金が〇・五、その他の要求払い預金等が一・五というようなパーセンテージがきまりました。このとき吸い上げました金額が三百四十九億円でございます。したがって、こういう制度ができましたけれども、日本の金融構造から考えまして、できるだけ低いところからスタートして、無理をしないようにということで、今日にきております。いまのように過剰流動性が問題になっております状況では、あるいはこの問題については、また新しい月で見直す必要がそのうちにくるかもしれませんが、ただいまのところは景気上昇ということを当面の目標としておりますために、いまここで準備率に手をつけるというところではないのであります。
  251. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 渡辺先生、もう三十五分になりましたけれども、一応よろしゅうございますか。
  252. 渡辺武

    ○渡辺武君 あと一つ二つ……。
  253. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 一つだけ……。
  254. 渡辺武

    ○渡辺武君 もう時間がきたようですから、私の意見も交えて一、二点伺いたいと思いますが、私は準備預金制度というのは、これはその根本の趣旨は通貨の健全性を維持する、さらにはまた預金者の保護というところに置かるべきであって、単なる金融調整の手段というだけでは、根本の趣旨にはずれるのじゃないかというように思います。ですから、最低準備率こそ法定して、そうしてこの銀行のオーバーローンなどの抑制につとめることが必要ではなかろうかというように思いますが、今後、外貨インフレが高進していくという可能性を持っている事態のもとで、一定の景気の変動というものはありますけれども、基本的には実際の準備率は従来よりも私は引き上げる方向にいくのが当然のことじゃなかろうかというふうに思いますが、その点についての総裁の御意見を伺いたい。これが第一点。  第二点は、今後、オペレーション政策が非常に重要視されるといわれる。しかし、昨年の春ごろからオペ種が市中にどうも不足しているという議論があって、そうして為替手形などもオペレーション対象に新たに繰り入れるというような措置がとられたと思うのですね。今後大規模にオペレーションをおやりになるとして、どういうものをオペ種として考えていらっしゃるのか。あるいは長期国債、あるいは政保債などが有力なオペ種として考えられているのではないかと思いますけれども、私は、こういうものは財政上の必要からその財源の不足をまかなうために出されるのであって、いわば正常な生産と再生産の外部から財政上の必要から通貨が注入されるというものであって、これこそインフレーションの一つの大きな原因になるというふうに思いますので、オペ種としては長期国債や政保債はすべきではないと思いますけれども、その点についての総裁の御意見を伺いたいと思います。  それからもう一つ、失礼します。外貨インフレの今後の高進について、この準備預金制度一つの防止手段ではあると思いますが、そのほかにどのような措置をお考えになっておられるか、あわせて伺いたいと思います。
  255. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 預金準備率の問題は、先ほどもお話しがございましたように、いま非常に低いわけでございまして、実は日本銀行にあります民間の銀行預金は、毎日のいろいろ手形決済、その他にも要る金でございますし、こういうものが、いまのお話しのように、預金準備という思想も入れて考えますと、非常にまあいまの率では低いと思います。したがって、今後だんだん金融が、こういう新しい外貨の代金の流入というようなことで正常化してまいりますと、やはり準備率は傾向としては上昇すべきものだと思います。今度最高限度を二〇%に上げられましたことの中にも、そういう思想は入っておるのではないかと思います。  それからもう一つのオペ種の問題でございますが、これは売りオペと買いオペで事情が違います。先般来、種が不足だと言われましたのは、日本銀行の売るほうの種がないのではないかということでございます。これは先ほどもちょっと触れましたように、政府短期証券の日本銀行の所有額が相当落ちてまいりまして、これがなかなか使えません。そのために日本銀行の振り出します手形を売却いたしまして、それにかえておるわけであります。したがって、この制度を利用いたします限りにおいてはオペ種の不足ということは防げると、こういうふうに考えております。  それから国債や政保債をオペ種にするのは適当でないというお話しの場合には、おそらく日本銀行の買いオペの問題だろうかと思います。買いオぺがどういう時期に必要になりますか、実はいまのお触れになりました外貨インフレといいますか、外貨の流入による過剰性の増加という点を考えますと、おそらく買いオペというものはしばらくはできない状況だと思います。また必要もないと思います。しかしながら、買いオペを実行いたしますときに、どういう証券がよろしいかということになりますと、この場合にはやはり信用度の最も高い証券ということで判断すべきでありまして、そういう意味で世界各国ともオペレーションには国債を使っておるわけでありまして、先生のお話しのように、国債の持つ、あるいは財政資金の持つ特殊な理由ということよりは、普通、金融の取り引きにおきましては、やはり最も信用度が高く、価格変動の少ない証券というところに重点を置くべきものと私どもは考えておるのでございます。
  256. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  次回の委員会は、三月十六日午前十時から開会いたすこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十九分散会      —————・—————