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1972-03-02 第68回国会 参議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二日(木曜日)    午前十時十二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         前田佳都男君     理 事                 柴田  栄君                 嶋崎  均君                 戸田 菊雄君                 多田 省吾君                 栗林 卓司君     委 員                 青木 一男君                 伊藤 五郎君                 棚辺 四郎君                 津島 文治君                 桧垣徳太郎君                 竹田 四郎君                 成瀬 幡治君                 松井  誠君                 松永 忠二君                 横川 正市君                 渡辺  武君                 野末 和彦君    政府委員        大蔵政務次官   船田  譲君        大蔵省銀行局長  近藤 道生君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○準備預金制度に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出)     —————————————
  2. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  準備預金制度に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、前回に趣旨説明及び補足説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 竹田四郎

    竹田四郎君 公定歩合引き下げというのは、かなり、ここ一年半くらいに行なわれまして、四・七五という形になっております。コールレートも、日本金融のあり方の一番批判されていた問題でありますが、これも大体五%くらいに下がっておりますが、市中銀行一般貸し出し金利というのはなかなか下がらない。公定歩合は下がり、コールレートは下がって、まあ一般的な引き下げ方向にあるにもかかわらず、市中貸し出し金利が下がらないのは一体どういうところに原因があるか、この点を御説明いただきたい。
  4. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいま御指摘のございましたように、市中金利は、たびたびの公定歩合引き下げにもかかわりませず、今回の場合比較的下げ足が鈍かったわけでございますが、その一つ原因といたしましては、預金金利水準がある程度ささえになっていたということはあろうかと存じます。ただ、その場合に、預金金利というものの動きにつきまして、最近の一種のコンシューマリズムと申しますか、預金者大衆反応等を慎重に配慮いたしまして、いままでの公定歩合引き下げのときのように、預金金利にすぐに手をつけるということをいたさなかった関係もございまして、それが下ささえになったという点は確かにあったろうと存じます。ただ、御高承のように、大体、昨年の夏ごろまでは、毎月〇・〇一とか、〇・〇二程度下げ幅でございましたのが、秋口から暮れにかけまして〇・〇三程度になり、一月になりまして〇・〇五という下げ幅になってきております。そして、金融全般情勢から申しますと、いまや非常に大きな特色は、年明け後は企業段階にまで金融緩和が浸透した。そしてまた手元厚味が非常に厚くなっております。昭和四十年当時の計数よりもはるかに上回る手元流動性企業段階において保有しております。さらに昨年、これも御高承のように、債券を非常にたくさん持ち始めております。そういうことから申しますと、企業手元流動性が非常に高くなってきておりまして、企業もいままでの借りたものを返すという動きが活発になってきておりますので、こういう点からみまして、おそらくは金利低下は今後はかなり急速に進んでいくのではあるまいか。その場合、もちろん預金の下ささえという問題はございます。ございますが、今後の趨勢としては相当すみやかに下がっていくのではないかという感じを持っております。
  5. 竹田四郎

    竹田四郎君 まあ、預金資金コスト関係から、預金金利引き下げということが当然、それが下がっていかなければ資金コストが下がっていかないから、貸し出し金利も下がらないということはわかるのですが、預金金利水準が下がらないという原因は一体どこにあるんですか。その辺を少し明快にしてほしいと思います。
  6. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) これは、方向としてはやはり引き下げということで十分検討しなければならない問題であろうかと存じます。ことに最近の情勢から申しますと、国際的にもかなり金利水準は下がってきておりますし、それからまた国内の金融構造から申しましても、次第に社会福祉もしくは社会投資、そういった方面資金需要が主流をなしてまいりますので、そういう付加価値の低いものに対する金融ということから、当然金利水準低下ということがはかられなければならない。したがって、またそれの下ささえとしての預金金利水準というものに再検討が加えられなければならないということは当然のことであろうかと思いますが、ただ、その場合に非常に慎重を要しますのは、先ほどもちょっと申し上げましたように、預貯金というものが、国民の最も一般的な貯蓄形態である。これに対して物価との関係その他から言いまして、これを引き下げることにつきましてかなり社会心理的な、もしくは広い意味での政治的と申しますか、そういう意味での抵抗感もございますだけに、その時期、幅等につきましては慎重に検討を要する問題であろうというふうに考えているわけでございます。
  7. 竹田四郎

    竹田四郎君 これから準備預金制度等を進めていくにしても、あるいはまあ日本の最近の状況として、外国為替の流入によるところの円資金供給ということが、非常に金融市場をだぶつかせている一つ原因であろうと思いますが、そういうことをやるにしても、金利水準というものを下げていかない限りは、かなり為替管理の規制をするにいたしましても、やはり金利水準を下げておかないと、外資は流れていきやすい状況になるわけですから、いろいろな問題で摩擦はあろうと思いますけれども、やはり預金金利引き下げていくか、あるいは銀行内部経営合理化が一体どれだけ進んでいるかということを考えますと、どうも私はこの点銀行内部経営合理化というものはあまり進んでいないのじゃないか。依然たる状況じゃないのかという気がするわけです。たとえば、まあこれは支店等が、あまりたくさん許可をしませんから、あまり目立たないわけでありますけれども、しかしたとえば、一番地価の高いところをわざわざ買って、そういう資本利子を結局高めていく、あるいは過大な貯蓄奨励をやるとか、そういう面の銀行内部合理化というようなものがあまり進まないで、むしろ最近でも若干私は見られると思うのですけれども、歩積み両建てのようなことを慫慂してみたり、そういうことによってむしろほんとう合理化をサボっているのじゃないか。もっと、殿様商売じゃなくて——金利国際化あるいは金利自由化という方向にあることは間違いないと思うのです。そういう形で銀行経営合理化というものを、もっと徹底的に進めていくという、そういう方向は一体どうなっているのですか。
  8. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) いま御指摘になりましたこと、一々実は全く同感でございます。その方向でここ三、四年来効率化行政のねらいといたしましたのもそういうところでございます。ただそれが遅々としてなかなか進まないというおしかりをこうむるかと存じますが、その点につきましては従来の日本経済金融状況、つまりマネー・タイトな状況と申しますか、そういう状況がある程度ハンディキャップとして働いておったわけでございますが、昨年来、先ほども御指摘になりましたような外為の四兆四千億にのぼる大散超を契機といたしまして、金融環境もまことにさま変わりになってきております。したがいまして、従来からただいま一々御指摘のございましたような方向で進めてまいりました行政が、いよいよ正念場と申しますか、実を結ぶ段階に入ってきている、またこういう好機をできるだけものにいたしたいということが私どもの念願でございます。
  9. 竹田四郎

    竹田四郎君 こういう状態で、財政のほうから景気浮揚をやろうということで、十一兆といういままでにない膨大な予算を組んで、財政主導によって景気回復というスローガンで出発しているわけですが、こういう貸し出し金利が下がらないというような状況であって、一体景気浮揚ということを考えてみますと、金利が下がっていかないということになりますと、ますます民間関係景気浮揚というようなものがもっとおくれていくんじゃないかという気もしますけれども、それとの関連はどういうふうにお考えですか。
  10. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 先ほど申し上げましたように、年明け後の金融情勢の一番大きな特色一つは、企業段階における金融が非常に緩和してまいった、したがって、また一段と金利引き下げ雰囲気が醸成されつつあるということでございますが、そういう状況景気との関連を申し上げますと、まず従来のパターンでまいりますと、設備投資ということがすぐ考えられるわけでございますが、今回は企業設備投資というものは非常に御承知のように鎮静化しております。したがいまして、こういう金融情勢金利情勢設備投資との関連景気が回復してくるということはまず考えられないことで、ございます。  そこで、しからばこういう情勢景気にどういう影響があるかという御質疑でございますが、私の考えておりますのは、三つぐらいの面でいまの金融情勢景気に対してプラスになる面はあろうかと存じております。  一つは、企業倒産がこういう景気のさなかにおきまして金融緩和ということから比較的少ない数字でとどまっているということ、したがいまして、その面からいわゆる不況感深刻化がある程度防がれているんではないかということが第一点でございます。  それから第二点は、国債の相当量の発行、消化が可能になるような雰囲気になっておるということが第二点でございます。  それから第三点といたしましては、民間金融機関が新しい分野、つまり住宅ローンであるとか個人ローンであるとか、いわゆる消費者金融に向かって懸命に体質を改造しつつあるという点、その三つの点につきまして景気との関連、比較的——必ずしも十分に明るいとは申し得ないかと存じますが、明るい面があるのではないかというふうに考えております。
  11. 竹田四郎

    竹田四郎君 最近の銀行あるいは商社もそうでありますけれども、余った金を株式なんかにたいへん投資しているようであります。東京市場の、何かダウ平均が三千円を上回ったなどということでありますが、おそらくそういう形で株価を上げている。一方、おそらく銀行商社あるいは、先ほどお話がありましたように民間企業手元流動性が豊かになっていますから、そういう形で投資をしている。こうなると、結局その反動というのはやがて出てくるのではないか。株価も、景気が少し上向いてきて、資金需要が出てくるということになると、おそらく暴落をするということで、これが一般の庶民の投資家に非常に損失を与えるということになりましょうし、また土地への投資というのは、かなり地価高騰を、それでなくてもことしは、地価高騰ということをいわれておるのに一そう地価高騰を呼び起こしてしまう。こういう形で余分な資金が動くということは、国民経済全体にとっても私はたいへん大きな問題であろうと思います。この辺に対して一体大蔵省は、そうしたところに投資するのがいいのか、何かこれの予防措置というものを考えていかないと、私は、大きな社会問題を将来引き起こす原因になりつつあると思います。これに対してどういう一体処置をお考えになっていますか。
  12. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 確かにいま御指摘になりましたように、株式市場状況、それから土地問題等金融面からそういう現象を生じている面が非常に強いかと思います。特に先ほど来申し上げております年明け後の企業手元流動性の増加の原因の非常に大きな特色は、資金供給という面で、外為散超に基づく供給量がふえたというのが昨年の主たる状況でございますが、ことしに入りましてからは、需要面が一段と落ち込んだ、資金需要が落ち込んだということが一つの大きな背景となっております。そういうことからこのギャップが広がりまして、銀行金利もいままでよりは格段と下がるし、また公社債の市場利回り年明け下げ足を速めておりますし、さらには株式市場にも非常な活況があらわれておるというようなことでございます。  しからば、当面すぐにこれが、こういう情勢が基本的に変わってくるかどうかという判断でございますが、私どもといたしましては、もちろんはっきりした見通しを申し上げるほどの自信はございませんが、大体の感じといたしましては、こういう情勢金融緩和情勢というものは、今回はかなり長く続くのではないか、したがいまして、急にこれが再び激変をするというようなことはいまのところは予想はいたしておりません。かなり長くこういう情勢が続くのではあるまいかという感じを持っております。ただ、それが変わりました際にどういったようなことが出てくるか、それらについては今後の研究課題といたしまして、十分御指摘のとおり研究をいたしていかなければならないと考えております。
  13. 竹田四郎

    竹田四郎君 私、それ、何か政府として対策を打たないと、せっかくの財政投融資も、そういう形で企業商社銀行地価の値上げをやるということになりますと、公共事業に占めるところの、おそらく現在建設省が考えている用地費率というのは大体二割前後だということでありますが、それもきっと大きくなると思うわけですね。それは財政効率引き下げていくだけではないと思う。一般的な大衆住宅建設あるいは家賃、こうしたものにも押し及んでいくでありましょうし、同時にそれは商店等物価にもこれはおそらく及んでいくだろうと思うのですが、こうした意味地価高騰というものを、何とか抑制を一方ではしなくちゃいかぬというのに、片っ方ではそういうものに野方図投資を許しておくということはどうも納得できないわけですね。これは大蔵省なり政府なりの手段として何らかそういう方面への投資を抑制していく。必要やむを得ないものもあるかもしれぬけれども、単なる余裕資金運用という、ただそういうことだけでそういうものをやらしていくということになれば、私は、これは大問題だと思う。これはできたら政務次官のほうで何らかの形でそれに対する措置をすべきだと思うのです。その点についてどうですか。
  14. 船田譲

    政府委員船田譲君) 地価の問題につきましては、いま竹田委員の言われましたように、実は物価対策の上からいいましても、あるいは新年度の予算社会福祉並びに社会資本の充実ということを重点に置いておる。それをその目的どおりに実行する上からいたしましても非常に大きな問題でございます。いま御指摘の点は一々ごもっともでございますが、これは単なる一大蔵省だけの問題でございませんで、政府全体が総合的に取り組んでいかなければならない問題と考えております。  なお、余裕資金運用の対象として地価をつり上げるような形での投資のしかたにつきましては、これは大蔵当局といたしましても十分考えてまいりたいと思います。
  15. 竹田四郎

    竹田四郎君 それひとつ、いまの次官お話を聞いていると、非常に抽象的で、いまの政府のスピードでは、それが実施されるときにはおそらく買うべき土地は全部買っちゃっている。地価は上がっちゃって、あとでそういうことをしたって、これは意味ないというようなことになりやすいわけですけれども、具体的にひとつお調べいただきたいのですが、調べることができるのかどうかわかりませんけれども、一月末現在なら一月末現在、十二月末現在あたりがいいと思うのですけれども、一体一般銀行商社等がそういう形で土地への投資をどのくらいしているのか、私はそのぐらい調べる義務があるのじゃないかと思うのですけれども、そういう資料、調べられますか、どうですか。調べられたらひとつ出していただきたい。
  16. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいまの土地への投資、非常に直接的な狭義のものと、間接に会社等に対する融資が回り回って土地に向かっておりますものといろいろございますと思いますが、何らかの範囲を確定いたしまして、いずれ資料をお手元に差し上げたいと存じます。
  17. 竹田四郎

    竹田四郎君 それと同時に、資料調べていただくとともに、そういう土地への投資目的なしに、要するに運用益を得るという目的でやっているものの防止の方法というのはございませんか。
  18. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) それは企業段階の問題となりますと、私どもの力の及ばない事例があるわけでございますが、金融機関を通じまして、あまり土地が投機的な意味土地保有資金が流れるということにつきましては、かねがね機会あるごとに注意いたしておるところでございます。したがいまして、検査等を通じて非常に顕著にそういう事例がある場合にはもちろん是正をする、あるいは警告を発するというような事例はすでにございます。しかし、なかなか徹底をしにくい面もございますので、今後ともそういうことで検査等のつどに、明らかに投機を目的とした土地の取得であるということを知りながら、そういうための融資というような場合には、もちろんこれはきつく警告を発するということをやってまいりたいと考えています。
  19. 竹田四郎

    竹田四郎君 この前の八月ですか、ニクソンのいわゆるドル・ショックのあとには、ある程度これは外国為替銀行検査しましたね。そういう形で今度そういうおそれのある銀行商社あるいはそういうふうに回っていったという可能性のあるものをある程度抽出して調査することができませんか、緊急に。私はこれは一つの大きな警告になると思うのですけれども、これは外為関係じゃなくて、内部余裕資金がそういうふうな運用益目的として土地投資されているというものを臨時検査をするということによって、大きな警告を発するというようなことは私はできるだろうと思う。そういうこと、できないですか。特定な二、三の都市銀行資金運用のしかたを臨時検査をするということによって明確にしていくということも、私は、一つのそういうことをやめさせる大きな作用になると思うのですけれども、そういうことをやることによって、そういうようなむだな投資をやめさせていくということはできないのですか。
  20. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 銀行検査の主たるねらいは、そのときどきでいろいろ変わってまいるわけでございますが、最近における検査のねらいの一つは、実はただいま先生が御指摘になりましたような土地との関係、これを一つのねらいといたしております。したがいまして、金融検査を抜き打ちでやっておりますが、その際にその関係は特に十分に調べてまいるようにいっているわけでございます。
  21. 竹田四郎

    竹田四郎君 それは公表しますか。公表しないと、あまり意味がないと思いますが、公表しますか、どうですか。
  22. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 実は検査の結果は一切公表もいたしませんし、また犯罪捜査のためにも使わないということで、往々司直のほうからの御要望の場合にも、検査の結果は特に提出を申し上げないという慣行にいたしておりますのは、そういうことにいたしませんと、金融検査の限界がございますために、と申しますのは、反面調査権限がございません、相手側土地会社とか、そういうところに参りまして、調査をする権限を持ちませんために、金融機関との間だけの検査になりますので、その意味で次からほんとうのことを言わないようになっては困るというような点もございまして、金融検査につきましては、一切公表もいたしませんし、また司直の問題があるような場合でも御提出をまあ申し上げないというようなことに慣行上なっております。しかし、もちろんそれらについて十分警告をいたしまして、まあ特にあまりひどいというようなことがありますれば、そのあまりひどいところにつきましては、あるいは何らかの方法制裁を加えるようなことを別途考えるべきであろうというふうに考えております。
  23. 竹田四郎

    竹田四郎君 まあこの前もそうでありましたけれども、私はあくまでもそれはひとつ公表をして、国民全体にそういう余裕資金が、そういうような間違った方向に使われているということは、これは預金者としても、また一方納税者としても、耐えられないことだと思うのです。当然そういういまの土地問題というのは、もう国民大衆地価引き下げる、地価を引き上げないようにということは大きな願いなわけです。これを上げられてきているということが、私は、国民政治不信にもつながっている一つの大きなポイントだろうと思うのです。当然私は、金を持っているやつは何をしてもいいというようなモラルというものをぶち破っていく必要があると思うのですよ。これは確かに一般的にはあまり外部に発表すべきものではなかろうと思うのですがね、こういうものについては私は、どんどん発表すべきだと思うのですよ、これは次官、どうですか。
  24. 船田譲

    政府委員船田譲君) 外為のときにも私、御答弁申し上げたと思いますが、こういうものは慣行といたしまして、相手側に自発的にと申しますか、ある程度の強制をいたしますけれども、さらけ出して調査に応ずるようにという勧誘を行ないまして、それで調査をいたしておりますから、これを細大漏らさず公表をするということによりまして、今後の調査に協力を得られなくなるというその副作用があるわけでございます。しかし先ほど局長が申しましたように、はなはだしく非違の度合いの強いものにつきましては、これは別途制裁考えるべきであるということは当然でございますが、その限度の問題も考えながら進めてまいるべき問題だと思っております。
  25. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ちょっと関連して。  これは次官に御意見を申し上げ、検討してもらいたいと思いますが、たとえば土地の問題については、税で一ぺんやったらどうだという考え方が一つありましたですね。これがよかったか、悪かったかというと、どうも失敗のように終わった。それでやめられた。それからその次に考えられたことは、今度、御案内の市街化地域と、そうじゃない地域と分けて、それで市街化地域固定資産税の問題が出てまいりました。これも地価対策として私はお考えになったことだと思うのです。そういうふうに地価対策としていろんなことをお考えになるなら、いま指摘されておる金融の面でも何らか考えられてしかるべきではないかというのが、竹田君の意見だと思うわけです。ですから、地価対策として何をやるか。少なくともいろんなことで上がってくるのを適当に押える方法というのは何があるのだろうかという、その一環としての意見だと思うのです。ですから、当然政府として税を議論される、あるいは市街化地域を指定されるとき、それは当然固定資産税にはね返ってくるような、そういうことをお考えになって——それが散発的に出たり、いろんなことをするから私は効果がなかったと思うのです。ですから、一度地価対策をどうするかということを置いて、そしてそれについていろいろな方途をお考えになったらどうだろうか。その一つ提案として金融の問題はいかがでしょうかと、こういう提案だと思うのです。ですから、金融そのもの原則論から言えば、私は、いまやりとりの議論になると思うのですが、そうじゃなくて、地価対策をどうするのだという大きなものを踏まえて、その一環としてこの議論をしてもらうなら非常にいいんじゃないかと思うのですが、そういうものについてはどういうふうにお考えですか。
  26. 松永忠二

    松永忠二君 関連。  いまお話しの点だと思うのですよ。それでその銀行調査の結果を公表できないとか、いろいろある。そういうお話はわかるのですが、そういう調査を通じて、どういうことをいまのように帰納して考えられるかということを言ってると思うのです。  それからまた、そうかといって地価対策は、いまお話しのように、単に金融の面から言うには限界があると思うのだけれども、しかし金融面からいろいろ調査をしてみて、たとえばもっと効果のあるのはこういう方法のほうが効果があるというようなことに気がついていると、そういう面を聞かしてくれと言ってると思うのです。そしてまた金融的な面からいって、特に将来こういうふうな面で検討していく必要があるのではないかということに気がついているとか、そういうことを聞いてると思うので、ただ調査の結果が公表できないとか、限界があるとか、そんなことを言ってるのではないと思うのです。  それで従来いろいろ言ってきたわけで、お話しのように、いま問題になってる農地の宅地並みの課税であるとか、あるいは譲渡所得の際の税の問題について法人を抜いているじゃないかというのが、社会党が予算委員会等で、衆議院等で常に主張しているところなんです。それは税の面からのことだが、いまお話しのように、金融の面からいろいろ調査をし検討をしてみたが、こういうところに難関があって、こういうことを前進していけばいいということに気がついているのかどうか。かいもくこれはできないというふうに考えられているのか。そういうことを正直に話してもらいたいということでいろいろ議論がされているので、いまのような角度でただ答弁をされていたのでは、禅問答のようなことをやっても何も前進はしないと思うのです。  だから、専門的に金融をやられている方がそういう点について、いま公共事業なり公共投資の場合の用地費に非常な金が食われていく、そういう面から効果が非常に減退しているのでないかという気持ちもあるし、そういう面から言えば、今度の予算なんかでも土地対策のない公共投資の拡大というのには効果の限界があるだろうと言ってるわけなんで、そういう点について、たとえばいま言ったような、明らかに土地投資の対象にしながら、それで利益をはかろうとしているような者に対する、いわゆる金融的なチェックのしかたというものはあるのかないのか。できないのか。非常に困難な点がこういうふうにある。しかし将来こういう面を考えていったならばできないことはないのではないかというような、そういうもう少し具体的な面に触れて聞かしていただかないと、私たちも話を聞いていても、何の役にも立たぬというような感じがするので、私も、実は聞いていることに対して、もう少し的確に、的確というか、もっと具体性を持って答えてもらいたいというような感じを持っておりますので、一緒にお願いをしておきたいと思います。  何かそういう点で銀行局長がいろいろ実務をやられてきてみて、調査もやられてみた結果、具体的な問題点としてどういうことがあって、少しでも前進をする方向としてどういう方向があるのかないのか、この点を専門の立場で実際やられているわけですから、そういう点をひとつ率直に聞かしていただきたい、そう思うのです。
  27. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 確かにただいまおっしゃいましたように非常にむずかしい問題でございますが、個々のケースをよく洗うことによりまして大体の感じはわかると思います。もちろん一つ一つの場合に、それぞれこういう目的のために土地を取得するのだというジャスティフィケーションはつくわけでございますから、それらについて一がいにこれはいいとか、これは悪いとかという判断を下すことは非常にむずかしいことでございますが、検査の際に、土地関係融資につきまして特に念入りに、その意図、目的、影響等について洗うということを指示いたしておりますゆえんのものは、その個々の件について十分にそういう目で調べておるということでございます。その結果、たとえば一律の基準としてこういうことを銀行に今後要求したらいいとか悪いとかという、具体的な基準でもないかというのが、ただいまの先生のお話かと存じますが、実はいままでのところでは、それほどはっきりした一律の基準、これにしたがって今後銀行融資は行なえということのはっきりした基準というものは、現在のところまだ残念ながら私どもつかんでおりません。もしそういう基準がつかみ得たならば、その際にはぜひ御報告させていただきたいと存じますが、現在までのところでは個々のケースについて、いろいろこういう点があって、こういう注意を与えたという事件の集積は、かなり集まっておりますが、その中から抽出いたしまして、それを行政面に通達なり何なりの形で出すというほどのケースの集積は、まだ現在までのところ残念ながらないというのが実情でございます。
  28. 松永忠二

    松永忠二君 前に、レジャー産業に対する融資は規制しようというようなことで、特に融資の場合にそういうものについてチェックをして融資をするのだということはやったことがあるわけです。それからまた現に、たとえば私たちはこの非常な地価の抑制をしなければならないときに、非常に大規模な工場敷地を買収するというような場合に、設備投資の計画性から考えあわせてみて、はたしてそれが妥当であるかどうかという点に非常に疑念を持たれるような、法人の広大な地域のあれがあるわけです。また、現に数年あるいは十年くらいに設備投資が予定より非常に減退していて、ほとんど遊地として遊んでいるような地域もあるわけです。こういうような点を考えてみると、たとえばそういう際の法人の非常な大規模な土地取得に対する資金というものは、はたしてスムーズに貸しているものなのかどうなのか。こういう際には投資の予定計画と、その資金の計画とを兼ね合わせて、土地の取得に対しては抑制をしなさい、そういう計画がない限り取得をしちゃいかぬというような、これはできると思うんですよ、私は。だから、たとえば法人税の、法人の過大な土地取得に対して税的な面でもっとつけるという点もあるけれども、同時に法人の非常な大きな取得に対して、その資金が設備の資金計画と見合っているものかどうなのか。特にいまそういう土地の取得に対しては、非常に、特に工場の敷地、産業基盤整備のための、そういう見解からくる土地取得に対しては、こういう抑制方法考えて十分慎重にいわゆる融資をすべきだぐらいのことは、何もそんなにむずかしいことじゃないと思うんですね。だからできないとは言っても、現にたとえば日本が高度な経済成長をどうしてもやらなければいかぬと同時に、レジャー産業に対する資金抑制というようなものはやっていいわけです。いまや私たちはこういう際に、ただ国民消費をふやせばいいんだというようなことで、レジャー産業に過大な投資をしていることに問題があると思うんですよ、そういうことがいいんだという考え方については。そういうことを一方でやらせておいて、そうして青少年の精神なり、その他道徳だとかそんなことを言ってみたって、さんざん遊ぶものを過大につくらせておいて、そして片方ではそういうことをすることを規制をしてみたって、そんなものは効果ないと思うんですよね。だからそういう面でも問題はあるけれども、かつてはそういうことをやったこともあるんですよ。  だからいま竹田君が言っているのは、もうそれが問題になっているわけですよ。土地政策全然なしにこんなことをやってもだめだと、結果的にはそこにもうけさせるだけだ。ただ金を使う、財政的にももうけさしておいて、今度はそして金融の面でも貸しておいてもうけさせるという、そんなばかなことをするなという考えは素朴に持っているわけですよね。あなたは規制はできないようなお話だけれども、そういう点になると規制はできるじゃないですか。そういう融資なんかを十分に慎重に検討すべきだと言って、金融面からチェックをするくらいな方法はあると思うのです。ないじゃないと思うのです。そんなものは具体的にやっていると思うんですよ、そういう過大なものを。だからそういう点について野放しにしておかないでもいいんじゃないかというのが竹田君の議論であり、ただそれを抽象的に、いや調査してみたって発表できないし、調査の結果はまだわからぬと言っていたんじゃ、ちっとも議論も進まないし、私たちは具体的にそういうことはやれると思うのですがね。何かそういう点について、あれですか、指導されたり、何かそういう点に前進した具体策を考えては全然いないんですか。
  29. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいま御指摘の点は、まさに銀行経営者として一番基本的な心がまえとして要求される点でございまして、要するに個々の融資が公共性に合致するかどうかということの判断、これが非常に大事なことであろうかと思いますし、時勢とともにいまレジャー産業の中身、あるいは何がよく、何が悪いかということの標準は変わってまいりますので、まあ昔のような丙種の資金というようなことはいまは廃止いたしておりますけれども、ただおっしゃいますように、たとえば投機というようなことに向かう、特に土地の投機というようなことに向かいます場合には、これは明らかに反社会的なことでございますので、そういうものに対しまして、これはこういう融資はしないという選別をするのは、まさに経営者の存在意義であり、まさにそこを始終考えていなければならないというように考えますが、同時にこれをチェックする方法といたしましては、ケース・バイ・ケースでいく以外にどうもいい方法がないというのが私ども感じでございまして、たとえばいまの設備投資などにいたしましても、新鋭設備が結果において非常にたくさん遊んでいるというような場合に、それの初めの融資の際に、はたしてそういう結果を考えてやったかどうか、そういう見込みの問題、見込み違いという問題も一つございます。それから土地の場合にも、ほんとうに反社会的なものではないというふうな判断で貸したものが、実は結果において非常に反社会的な面を持つに至ったというようなことも間々ございますので、まあそれらすべてにつきまして、ケース・バイ・ケースで結果から調べていって、悪いものについては十分指摘し反省を求めるということは、やはり検査を通じての個々の調べ、こういうものが一番ものを言うのではないかというのが、いま私ども考えている点でございますが、ただいま御指摘がありましたように、何かこれを統一的な観点からすくい上げて、拾い上げて、特にその点について有効なチェックを行ない得るようないい御意見でもございますれば、十分拝聴いたしました上で取り入れてまいりたいと申しますか、そういう方法を講じさせていただきたいというふうに考えているわけでございます。
  30. 竹田四郎

    竹田四郎君 いま局長、その基準がない、基準なんてできないのだ、まあケース・バイ・ケースでいくんだ。こういうふうに言っているんですがね。これは過去の問題ですからおそらくそうだろうと思うのです。また線引きがおととしから去年にかけてずっと行なわれてきているわけです。そうした線引きをやった場合に、調整地域などで大きな不動産屋がそういうところの山林を大がかりに買っている。二十ヘクタール以上ならば単独で買うことができるということで、山林などを大まかにほとんどもう買ってしまっているという実態が、神奈川県あたりの実態ですが、そういう実態ですね。たとえば松田のインター周辺の山林などはほとんど買っておる。これが一体いつになって住宅地として着工するかというと、住宅着工の見通しというのは全然ないわけですね。こういうのはおそらく、これは神奈川県の実例でありますけれども、そういう各地域の都市がずっとふくれていくような周辺では、おそらくそういうことがどんどん行なわれておると思うのですよ。すぐ着工するならば、あるいは住宅緩和という意味でメリットがあるわけでありますが、一体いつになってそれをやるかわからない。とてもそんなものを開発していくだけの余裕のないものを買っているというのが私は実態だろうと思う。こういうものは明らかにもう土地の価格の値上がりを待つための買収なわけですね。私はこういうものについてはチェックができると思うのです、一般に。  たとえば買った一年後にまだ着工できないものというようなものは、チェックして引き揚げていいと思うのです、そういうものは。だから全然その基準がないということにはならないと思うのですね。こういうものを洗っていけば、現実にずいぶんある、こう思うのですが、少なくともそういう面ぐらいの基準というものはつくってもいいだろう。そういう面はどんどん洗って、それでなければ一般国民だけが地価を上げちゃいかぬ、しかし大企業はどんどんその地価の利益でもうけている。銀行はまたそれによってもうけている。これじゃ全く反社会的な行為だと言わざるを得ないと思う。それぐらいのことはできるでしょう。
  31. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいま地価の問題につきまして、一つの有力な御示唆をいただきました。十分研究いたします。
  32. 竹田四郎

    竹田四郎君 ひとつこれは次官にもお願いをしておきたいんですけれども、まあ率直に言って、金融面からの地価対策はほとんどしり抜けといっていいんじゃないかと思うのです。私は、一番ここで問題になっている土地政策というものをやっていくにも、やはり金融面からそういう金を、むだな金を出させない。地価高騰させるような、あるいは地価の値上がりを待っているようなところには、融資をさせていかないというきびしい方針というものを、地価対策の中にもひとつ入れていただいて、地価の抑制をしていかなければ、財政の規模だけは大きくして、国債はうんと発行するけれども、実際上にはあとに残ったものは地価が上がってしまって、特定なところに金が片寄ったということになれば、金融政策も何もありゃしない。政治も何もありゃしないと思うので、その辺ひとつ次官からお答えをいただきたいと思う。
  33. 船田譲

    政府委員船田譲君) 先ほどから竹田委員指摘をせられております地価に関する問題につきましては、これはわが国の、何と申しますか財政金融の運営上、あるいは国民生活の向上の上からいいましても根本をついておられるところでございます。実は新都市計画法を制定し、施行いたしました趣旨そのものが、国土の無秩序な、何と申しますか、乱用と申しますか、一面からいえば都市周辺のスプロールを当然防いでいかなければならないと同時に、安価な、低廉な価格の住宅用地を供給していくという二つの大きな目的のもとにつくられたものと私は理解しております。したがって、それを実際に実行していく上におきましては、強い政治力のもとに国土のいわば利用区分的なことまでも考えていかなければならない。したがってある一面では、私権の制限もある場合にはやらなければならない。そのかわりその私権の制限をした場合におきましては、それが人権の損害にならぬように十分税制上、財政上の措置考えていかなければいかぬということになってくるかと思っております。いまお話しのございました市街化調整区域内における大手のデベロッパーによりますところの住宅団地と申しますか、開発の問題等につきましても、それを取得しておきながら、十分なる社会施設を、何と申しますか生活環境を整えた住宅団地として開発することをサボっておるような、そして地価の時間的な値上がりを待っておるような、そういうデベロッパーにつきましては、当然そこに融資に対する借りかえという問題が出てきましょうから、その借りかえのときにおいてはその規制を十分に強くしておくということも、先ほど銀行局長の言いました規制の一つの具体策的な措置であろうと思っております。  しかしそれだけではまだ、金融だけの問題では解決しない問題でございまして、要は先ほど申し上げましたように、せっかく新都市計画法をつくったのでございますから、それに基づく市街化区域、市街化調整区域のそれぞれの土地の利用区分、あるいは私権の制限をも含めたところの全体のための運用ということに万全を期していく必要があると私は考えております。
  34. 竹田四郎

    竹田四郎君 十分ではないと思いますけれども承っておきたいと思います。  それからもう一つ株式への投資ですね、これも私は、都市銀行が無制限に株式投資をやるべきではないと思う。これに対する抑制の措置というものを考えるべきだと思いますが、どうですか。
  35. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいま都市銀行による株式投資は、比率といたしましても非常に低いものでございます。ただもちろん金融機関の本質からまいりまして、株式に対する投資ということにつきましては、安定的な投資はもちろん例外でございますが、そうでなく、いささかでも投機的なねらいを持ったような投資株式の購入ということは、これは一切よろしくないということで指導をいたしております。
  36. 竹田四郎

    竹田四郎君 それから、まあその点はひとつきびしくやっていかないと、おそらくあとこの反動というのが必ずあるのじゃないか。常識的に考えて、いまの日本ダウ平均が三千円をこすなんということ、これは一般市民の感覚としては全然考えられないことですよ。実体のない、ほんとうに投機を目的としたものであるということだけじゃなくて、まあおそらくこれにつれられて、大衆投資家がやはり幾らかついていると思う。これは必ず反動であとやられる、そしてあとで社会問題起こすのですから、この点は厳重にやってもらわないと困ると思うのです。  それからもう一つ都市銀行資金が余っているということで、この中小企業金融機関の分野までいま割り込んで、自分のシェアを拡大するということで割り込んでいるようでありますけれども、これも私は、これがほんとうに将来までそういう形で中小企業金融をやっていくということはちょっと考えられないわけですよ。これも運用益目的とするその中小企業への貸し付けということで、おそらくこれによって中小企業金融機関というのはかなりな危機に私は追い込められるのではないか。この辺もある程度分野をはっきりさせて、この分野は中小企業金融機関の貸し付けの分野だというような形でやらないと、いまは貸した、今度は景気が上昇して金が窮屈になったならば、その中小企業からそれを取り上げるというような形になるおそれが十分あるし、一方では中小企業の専門の金融機関としても経営が成り立たなくなってしまうということで、今後の中小企業に対する金融の貸し付ける力というものがもう弱まっていくのではないか、こういう心配が今後あらわれてくるのではないか。この辺でも中小企業金融機関の分野と、それから都市銀行の分野というようなものを分けて、この影響があとに残らないような形にしなければいけないのではないか、こう思いますがどうでしょう。
  37. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 昨年夏以来の都市銀行の中小企業に対する金融のしぶりを分析いたしてみますと二種類あるように考えられます。一つは、今後相当長期間にわたりまして金融構造が基本的に変わっていく、いまの金融緩和は相当長く続き、かつそのあとにまいりますタイトな状況というものも、いままでよりはソフトであるというような基本認識に立ちまして、中堅企業あるいは中小企業にできるだけ継続的な足がかりをつくっていこうというやり方。  それからもう一つは、ただいま先生の御指摘もございましたように、とりあえず運用しても、先がなくなって、非常に急激な局面転換と申しますか、融資先転換をはかるというようなやり方。大ざっぱに分けまして両方あろうかと存じますが、前のほうでございますと、今後かりに情勢が変わりましても、相当永続的に中堅企業、中小企業に対して都市銀行もめんどうを見ていこうということでございますから、そのこと自体について私どもとして特にとやかく申すというつもりはございません。ただあとのほうにつきまして、今後かりに情勢が変わった場合に、またすぐに引き揚げられるというふうな形でございますのは非常にぐあいが悪いわけでございますので、その点につきましては、特に確固たる方針のもとにやるのなら別として、そのときどきの情勢で右に左に動くような形での中小企業進出ということはおもしろくない。むしろ都市銀行としては、たとえば国際化というような方面に伸びていくということがいいのではないかというような指導をいたしております。  ただ、全体といたしまして、昨年来大衆化ということと、国際化ということと、その二つを大きな柱として銀行行政の運営を行なっております場合の大衆化と申しますのは、大衆から金を集めるというだけの意味大衆化ではなくて、大衆に対して金を還元するという意味でもございますので、いまの中小企業を飛び越えましてさらに国民大衆に対する金融、そういう方面にも出るべきであるという指導をもあわせ行なっているわけでございます。いろいろ勘案いたしまして、ただいま御指摘のような、いたずらに分野を乱すようなもの、これは厳に監視をいたしてまいりたいと考えております。
  38. 竹田四郎

    竹田四郎君 局長局長のおっしゃることはわかるわけですがね、具体的にそういうような一つの制度というか、規定というか、そういうものがないというと、おそらくいま都市銀行さん、それは、お貸ししますよ、お貸ししますよ、ひとつ借りてくださいということを言うと思うのです。私のほうはもうこれからも大衆のための銀行だというのがいまの大体銀行のスローガンですよね。ところが実際上はたいして貸してくれないわけです。現実にこの間私も、友人が金を借りたいということで銀行に行ったら、それじゃあ竹田さんひとつ預金をしてくださいよ、それでなければ貸しませんよということですね。それはいろいろ担保の問題はあるだろう、こういう形で口だけはなるほどお貸ししますよと、いま局長の言ったとおりのことをおっしゃるわけです。これはやっぱりはっきりした制度とか何かにしないと、私はそれはやっぱり金融逼迫してくれば当然引き揚げてくる。これは利潤を確保するという立場でいくと当然そうだろうと思う。もう少し口で言うだけじゃなくて、単なる精神規定ではなしに、具体的にそういうものを制度化していかなければ、結局中小企業金融機関も、安定的な金融機関にはなり得ないし、また中小企業も自分たちの営業という立場で安定した方向というものは考えられないと思うのですね。もう少しそれを制度化していく必要がある。  それから、庶民金融、小口金融なんかにしても、感じとしては、郵政省のほうで小口貸し付け制度をいったら、ひとつ対抗的にいわないと困るというような、出おくれですね、はっきりこれは。こういうことを考えてみると、どうも精神規定程度にすぎないと思うのです。それじゃ困ると思うのです。だから、さっきの方向ほんとう意味で投機的なものを押えていけば、そうしてそれを制度的にしていけば、庶民金融、庶民の銀行として市民にほんとうに愛せられる銀行というものになるでありましょうし、あるいは中小企業金融についても安定的な将来の融資先ということになると思うのですが、ただ、いまのような歯どめのない精神規定だけじゃ、これは情勢が変わってくれば引き揚げる、金が忙しくなってくれば庶民金融はしない、こういうことになると思うのです。だから、たとえば都市銀行の多くの預金というものは、個人の零細な預金も相当あるわけです。だから、そこの預金額の何%、何割とかは、これは庶民金融の原資として充てるというくらい、あるいは中小企業の原資としてこれだけは必ず充てなさいというような形にしなければ、それは資金コストの安い大口のほうに金を貸していく、また担保力もあるし、返済能力があるというところにいくのはあたりまえでありまして、これでは困るのじゃないか。その辺をもう少しはっきり制度化していくということが考えられないですか。
  39. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) たとえば消費者信用ということでまいりますと、ただいまおっしゃいますように、まだ構成比は五・九%くらい、全金融機関でそんなものでございます。金額にしまして三兆三十四億、これが三年前に比べますと、一兆一千億ぐらいでございましたのが、今日三兆三十四億になっているわけで、伸び率としてはかなり多いわけでございますが、まだ構成比といたしましては、当時は二・八%であったかと思いますが、それが三年間で五・九%ということでございまして、低いわけであります。ただ、先ほども申し上げましたように、こういう金融の基本的な情勢の変化に乗りまして、去年からことし、特にことしはかなりシェアを拡大できるのではあるまいか、そしてそのための制度も各行別にいろいろ創意くふうをこらしてやっているようでございますので、このシェアの拡大はことし、来年にかけましてかなり急速に進展するのではないか。御承知のように、諸外国、たとえばアメリカあたりでは、すでに消費者信用がほとんど五〇%に近い水準、四七、八%に乗っております。日本の場合には、したがいましてシェアからまいりましてまだはるかに低いわけでございますが、これを急速に伸ばすように私どもといたしましてもできるだけの指導をいたしてまいりたいと考えているわけでございます。
  40. 竹田四郎

    竹田四郎君 局長にもう少し私は大きい立場からものを考えてもらいたいと思うのですが、まあ少なくともことしの四大臣の施政方針演説の中で、三人の大臣まで発想の転換ということを言っておられたのですね。外務大臣だけが発想の転換ということをお使いになっていない。あと三人の大臣は全部お使いになっておられるわけですね。そのくらいに政府首脳部としては発想の転換という方向で動こうとしておるわけですね。ところが、過去の金融というものを見ますと、これはまさに企業金融都市銀行は中心としてやってきておる。そのほかは、融資はそれはやっておりますけれども、ほとんど主流はそこだということでありますし、金融情勢も戦後おそらくこういう情勢になったということは初めてだろうと思うのです。しかも、長期化が望まれる、長期にそういうことが行なわれるであろうと望まれるというならば、やはりこの辺で日本金融制度全体のあり方というものを考えて、いままでの輸出とか、あるいは生産第一、そちらの方面にだけ庶民の預けた金がいつも回っているというような金融の機構というものを、私は、この辺ではっきりした新しい方向に踏み出すべきだと思うのです。それでないと、景気がよくなると、また過去の二の舞いということになると思うのです。ですから、幸いこういう時期でありますから、またいつの時期が、私が言ったような形で制度化できるような時期がいつがいいかということは、いろいろな判断があろうと思うのですが、少なくとも一番そういう意味で、金融のゆるんだことしの時期に、そうした意味での、大衆に金を返していく、あるいは中小企業に、預けた金を返していくということを制度化して、いままでの形に戻っていかないように、そういう歯どめをするためにも、私は一つのそういう制度化という問題が必要だと思うのです。これはぜひ考えてもらいたいと思うのですが、どんなものでしょうか。
  41. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 消費者信用の制度は、各行別には、古いところでは、都市銀行で申しますと昭和三十五年につくりております。それから、新しいところでは大体四十三、四年くらいまでに各行別の制度をつくっております。そして、多いところは相当な金額に達しておりますが、それをこの際全部統一するかどうかということでございますが、いまの段階でございますと、各行ごとに特色あるような制度で、それぞれ競争をするということによって、大衆に対するサービスがよくなるかもしれないという感じで、ただいますぐにこの制度を横に全部右へならえさせて一本にするということは考えておりませんが、将来そういう必要がもしございますれば、これは統一的な制度として取り上げていってもいい。あるいはそういう機運が中から盛り上がるかもしれません。ただ、現在のところは、ただいま申しましたような、いろいろな制度が大体似たようなものでございますけれども、それぞれなるたけ特色を発揮するという形で併存をいたしておるわけでございます。
  42. 松永忠二

    松永忠二君 ちょっと。  私、少し資料を要求しておきますが、いまの議論をされたような金融情勢ですね、一般的な、何というのですか、これはまだ私この委員会に所属して間がありませんけれども、こういう問題をやっておるときに、政府側の資料が何にも出ないのです。これはほかの委員会ではめずらしいことなんですよ。調査室の資料も出るけれども政府側の相当な資料というものがいつも出てくるわけですよね。金融情勢について、特に庶民金融であるとか、消費者金融の問題、中小企業金融の問題に視点を合わせた金融情勢に対して資料をまとめて出してもらいたいと思うのです。特に、いま例の庶民金融の問題については、銀行側から非常に反対が出ている、農協側にも反対が出ているのですけれども、一面、また非常にこれを推進しようという動きもあるわけです。したがって、そういう問題についても、われわれが判断できるような、いわゆる銀行側としての、大蔵省側の金融を担当している面から考えられる資料を提示をしてもらわないと、われわれよくわからないのですよ。だから、いま言ったようなものを中心にして、いまの金融、特に庶民金融、中小企業金融消費者金融などに視点を合わせて資料をひとつまとめて出していただきたい。それをお願いしておきます。
  43. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 承知いたしました。
  44. 竹田四郎

    竹田四郎君 いま局長の話を聞きますと、いままでの消費者金融、たとえば住宅ローンとか、自動車のローンとか非常に限度が限られていると思いますね。庶民の必要な金というものは、何もそういう新しいものを購買するための消費だけじゃないわけです。いろいろな今日の段階でいえば、新入学に伴うところの金というものも要るだろうし、あるいは病気のときの金も要るだろうし、いろんな要素があるわけですね。そういう意味で十分に消費者信用が利用できるというような状況じゃないと思う。だからぜひそういう意味ではもっと庶民の金融というものを広げていただく。少なくともある一定限度は庶民に返す、庶民から集めた金は庶民に返していくということをもっと制度化していくべきだと思うんですよ、全体的に。それをしていかなければ、銀行に金を預けて、借りたいときには貸してくれないというのでは、郵便局のほうでほんのちょっと三十万円ぐらい貸してくれることで銀行は大あわてしなければならないことになる。それがちゃんと行なわれていれば私はそういうことはないと思うんですよ。郵便局もやってくださいということになると思うんです。そういうことをやっておらないから、おそらくここで大あわてしなければならないということだと思うんです。そういう意味で、特にこの際庶民金融というものに対してもっと借りやすい、もっとワクが大きい、そういうものをつくっていただかなければならぬと思います。   〔委員長退席、理事柴田栄君着席〕 それを要望だけ、ぜひ実現をさせていただきたいと思います。  それから今日の過剰流動性ということの大きな原因というのは、やはり外貨が入ってくる、外為資金会計からの散超ということがこれはやはり一番大きいことだと思います。そこで国際金融局長にお尋ねするんですが、現在のところ百六十四、五億ですか外貨の保有高がある。これは四十七年度末ということになると、おそらく現在のままの情勢が続いていくということになりますと、二百億ドルをオーバーするということになると思うんです。いまでさへ為替相場を見ますと、三百一円台なんというのがそろそろ出ているわけですね。しかもそれにもかかわらず、どうもドルが高くなるという方向というのは一向に出てきていない。ますます日本にドルが蓄積されていくということになる。それはやがて再切り上げの道ということにまたなってくるんじゃないかということなんですが、四十七年度末で大体どのくらいのドルの蓄積、準備高になるか、どのくらい予想されていらっしゃいますか。
  45. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 今後の国際収支の状況にかんがみまして、四十七年度末にどのくらいの外準の高になるかという御質問でございますが、実は新年度の来年度の国際収支の見通しといたしましては、御案内のとおり政府といたしましては、基礎的収支におきまして二十七億ドルの黒字というものを見込んでおります。これは基礎的収支でございますから、御承知のとおり、経常収支と長期資本収支のしりでございまして、これがそのまま外貨準備の増加にはつながらないわけでございまして、このほかに短期資本収支がどうなるか、短資の移動の状況銀行の長期資本がどうなるか、金融勘定のほうがどうなるかということによって外準がどうなるかということでございますが、これはまあこういうような情勢でございまして、年度間を通じまして、短期資本収支が一体どちらへどのように動くのか、それから金融勘定がどう動くかということは、実は今後の国際金融情勢、内外金利差、その他いろいろと不安定な状況のもとに全く予見しがたいものでございますので、われわれといたしましては、一体どのくらいになるだろうということにつきましては、これは見込みを立てがたいわけでございます。  ただ、申し上げられますことは、十二月十八日のワシントンの会議におきまして、通貨の多角的調整が実現いたしましたが、これの各国の国際収支、ことに貿易収支に及ぼします影響は、これはいまの各国の通念でございますけれども、効果が出てくるまでには、大体早くて一年あるいは二年くらいかかる、したがいまして、調整前に黒字であった国は相変わらずことしは黒字で続く、それから赤字であった国はやはり相変わらず赤字が続く、こういうことでいくであろうということは通念でございます。まさにそのとおりで、わが国といたしましても、先ほど申し上げましたとおり、基礎的収支におきまして二十七億ドルくらいの黒字が相変わらず出るであろう。こういう状況でございますので、したがいまして、短資あるいは銀行部門の変化のいかんにかかわらず、やはり相当程度今後も外準の増加というのは起こるのではないかというふうに考えておりますが、計数的にはどのくらいということは、先ほど申し上げましたような状況で非常に算定がむずかしいわけでございます。
  46. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、再切り上げをやっていくか、あるいは何か別途の方法で外貨減らしをやっていくか、大まかに分けてこの二つに私はなると思うのです。これはおそらく大蔵大臣も国際通貨調整の効果があらわれるのは、一年から二年後だと言っているわけでありますが、現実にはこの二月あたりも外貨はかなりたまったわけですが、それが百六十四億ドルになっていくといった現実だろうと思うのです。外貨減らしということをやるのか、あるいは円再切り上げもやむを得ない、もう一回やらざるを得ない、こういうお考えであるのか、あるいはいまのような形でなくて、変動相場制に移行するというのも一つの将来のあり方としては方向だろうと思うのですが、どういう方向をお選びになるつもりでいまおやりになっているのか。
  47. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 外貨準備が少なくもここあと一年くらい、来年度におきましてはむしろさらにふえていくという傾向にあるであろうということにつきましては、先ほど御答弁申し上げたわけでございますが、これと再切り上げの関係と申しますのは、実はあまり直接に関係をつけてわれわれといたしましては考えるべきではないというふうに考えております。と申しますのは、外貨準備の高がどのくらいになったかということによって、それが直ちに現在のレートが基礎的にやはり切り上げ不十分であったかどうかということと、実はあまり直接の関係はございません。と申しますのは、先ほど申し上げましたとおり、十二月のワシントン会議によりまして、各国の調整につきましては各国とも大体適正な調整幅であったということで、これは各国ともそれを維持していくべきであるという感じでございます。これは私が出席いたしました約一カ月前のOECDの第三作業部会におきましても同じような結論でございます。これは何といいましても、先ほど申し上げましたとおり、レートに関係する部分はやはり経常収支、貿易収支のほうでございます。これが少なくとも効果が出てくるのには一年あるいは二年かかるということでございますので、いま直ちに、通貨調整後まだ二カ月くらいのところで再切り上げ云々を問題にするということは全く論外ではなかろうかというふうにわれわれとしては考えております。  他方、それでは外貨準備が百六十四億幾らということに二月末なっておりますけれども、これを一体どうするかという問題につきましては、これはいろいろと問題はございますけれども、われわれといたしましても、やはりいろんな意味で今後とも流入圧力を押えまして、先ほど申しましたとおり、最近外準がふえております。流入がございますのは、また同じことを繰り返すようでございますが、輸出前受けというような形で入っております短資のあれがございます。そのほかに、むろん基礎的には経常収支、貿易収支がやはり強いという状態が続いておりますということは先ほどから申し上げておるとおりでございますが、この両方が重なりまして、外準の増加がことしに入っても見られておるということでございます。したがいまして、こういう状況におきましては、一つの理由が、内外金利差に基づく短資の流入の圧力、これに対しましては、われわれといたしましては、いろいろと経済界等からの御要望がございますけれども、短資の流入についてのコントロールを現段階でははずすわけにはいかないという考えを持っておりますが、そのプレッシャーとしてどうしてもあるわけでございます。そういう意味で、御審議願っております準備預金制度の改正が一つの有力なそれを押えるための武器になるのではないか、非常に有力な武器ということでわれわれも考えておるわけでございますが、やはりこれは実は日本だけの状況ではございません。御案内のとおり欧州各国におきましても、この資本の流入ということがただいまの大きな問題でございます。先般ドイツでは公定歩合引き下げをいたしましたし、それからまたベルギー、オランダも昨日でございますか、やったようでございます。いずれも内外金利差、ことにアメリカとヨーロッパ及び日本との金利差と申しますか、アメリカの短期金利が非常に下がり過ぎておるという状況が、資金がなかなかアメリカに還流しないという一つ原因のようでございます。この点は先ほど申しましたOECDの会議におきましてもいろいろと議論があったわけでございますが、そういうことで、各国ともいかにしてそういう現在の情勢を乗り切るための措置をとるかということに苦心をいたしておるというのが現状であろうかと存じます。
  48. 竹田四郎

    竹田四郎君 聞いていてどうもわからない。ますますふえていくと、こういうことしか具体的にわからないわけですがね。しかし、外貨減らしをやっていかない限りは、おそらく再切り上げの圧力というものはますます強まってくると思うのです。この前と同じだと思うのです。この前だって当時の水田さんは、片すみにも円切り上げなんということは考えていないと言っていたと思っているうちに、切り上げざるを得ないという国際情勢になったわけです。これは今後も同じだと思うのですね。まあおそらく一番何ですか、期待はずれだったのが、おそらく短資が流出していくであろうということだったと思うのですね。それが一向に流出するどころか、流入してくるというのは、やはり円の再切り上げがまたあるんではないだろうか、こういう期待があるから流出していかないのじゃないか、こういうふうに思うのですがね、それはどうですか。その流出ということがなぜ行なわれないのか、これはアメリカがおそらく金利が非常に低かったということが流出のじゃまをしていたのじゃないかと思うのですがね。それならどうしてアメリカがもっと金利を引き上げてくれないか。日本と真に友好関係を今後続けていくというならば、アメリカは金利を上げてくれなければ、おれたちのところはどうにもしょうがない、こういうことになると思うのですがね。そういうことも何らおっしゃられない、主張されない。一体具体的にどういうふうに外貨減らしをやっていくつもりか、どうも私、聞いていてわからないのですがね。
  49. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいま、なぜ通貨調整後資金の還流がアメリカに対して起こらなかったかという点は、実は先ほど申し上げましたOECDの第三作業部会でも非常に深く論議をいたしたわけでございますが、これは大体二つ理由があると思われます。  一つは、ただいま御指摘のとおりの金利差の関係、アメリカの金利が、アメリカの景気浮揚策と申しますか、景気刺激策のために財政金融の両面から景気を刺激しなければいけないということで、金利を非常に低く押える政策をとっておるということ、そのためにアメリカ及び日本との関係で、アメリカの短期金利が非常に低くなっている、それが一つ原因である。  もう一つは、ドルの信認と申しますか、コンフィデンスでございます。これは裏を返して申せば、いま先生のおっしゃいましたとおり、各国のレートが再び変わるんじゃないかと、これだと思いますが、その当時はまだ例のドルの金価格の引き上げ法案につきまして、まだ提出の見通しが必ずしも立っていなかったわけでございます。そういうこともございまして、ドルに対するコンフィデンスというものがなかなか回復しないということが一つのあれでございまして、これは御案内のとおり、アメリカの議会におきましてすでに上院の銀行委員会は通ったようでございまして、これは近いうちにおそらく通るのではなかろうかというふうに期待をされておるわけでございますが、このような世界的な全体の傾向でございますが、このような外貨がさらにふえるという状況に対しまして、われわれといたしましてどういうふうに対処すべきかと申しますと、これは何といいましても、一番の問題は、これをいかにして回復するかということは、まさに一つ日本状況で申しますと、景気浮揚がなかなか乗ってこないということでございます。  これは御案内のとおり、新年度予算財政投融資計画その他におきまして、経済の拡大を早急にはかっていきたいという、そちらのほうを通じまして、景気の回復を通じまして基本的な経常収支の大幅な黒字というものを是正していかなければならない、これがおそらく基本であろうと存じます。それを片方でやりながら、その他この資本流入について、これは心理的な要因あるいは内外金利差、そういうものによって起こりますが、資本の流入圧力に対して、それではこれにどう対処していくかということであろうかと存じます。これにつきましては、先ほども申し上げましたように、各国とも協調していかなければならないと存じますけれども、いろいろな手段を通じまして今後の流入圧力を押えると同時に、またいかにして流出のほうを促進していくかということにつきまして、いま実はいろいろと方策を検討いたしておるところでございます。
  50. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうも具体的にどうするのかさっぱりわからぬわけですね、おっしゃることは。これでは具体的に、私でもわからないですから、国民はますますわからぬと思うのですね、いまの局長お話は。いろいろなことをして流入圧力に対処しますと言われても、私どもがわからぬのですから、全然わからぬのですがね。これではますます外貨減らしということではなく、外貨がふえて、あのくらいしか言えないのだから、やがて円の再切り上げがあるから、もう少しやっておいたほうが得だと、こういうことにならざるを得ないと思うのですね。いまのお話では再切り上げ必至と、こういうふうな理解以外ないですね。その辺どうなんですか。どうもおっしゃっていることがよくわからない、何をおっしゃっているのか。先ほど、一番最初申しました経済の拡大といっても、経済の拡大とはどうなのか、さっぱり——財界のほうではどうもことし一年だめだという話も強いということになるならば、どうも経済の拡大もそれほど予想されたほどではないということになれば、ますますその外貨はたまっていく。これは必然的に円の再切り上げ必至だというふうにあなたの御答弁を私どもは理解せざるを得ないと思うのです。もう少し具体的に何か方策を教えてくれなければ困るわけです。
  51. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 具体的に何を検討しているかという御質問でございますが、実はこれはまあいろいろと検討をやっておりますけれども、具体的にはなかなかいろいろと問題がございますので、どうも、おそらく中には法律改正等をお願いいたさないとできないという部面もたくさんございますので、そういうものを総合いたしまして、実はいろいろと検討いたしておるところでございますが、もうちょっと申し上げますと、外貨準備が幾らになったから、まあレートも直さなければいかぬと、また直さなければいかぬということ自体が実はそうではないというふうにわれわれは考えておりますので、これは実は国際的にもそういうことでございまして、当面は各国ともドルがたまっていくという状況は、これはまあやむを得ないんだという感じでございます。だからいいというわけではございませんけれども、そういう意味でこの調整後まだ二カ月というようなところで、これはまたすぐこの次のというふうな感じでは各国当局ともございませんので、その点を特に申し上げておきたいと存じます。  それからもう一つは、ひとつぼつぼつ始めております点は、何と申しますか、各省関係がございますので、まあいろいろ非鉄金属の引き取り等につきまして、通産省のほうからも御要望がございます。まあそういう点につきましてもいろいろと検討いたしまして、ただいま通産省と話し合いをやっておる最中でございます。  それからまた外準がふえておりました一つの理由が、やはり銀行部門の借り入れ、貿易金融に基づく貿易金融のための外からの借り入れがふえたということもございますので、こういうものにつきましては、若干銀行に外貨を預託いたしまして、そういうものを返してもらうということで、日本全体としては外貨の持ちが減るように、そういうことで先般二億ドルの預託を追加していたしたわけでございますが、こういうようなことも状況を見ながら実施してまいりたい。これはそうそれによって多額の外貨の過大な積み増しを防ぐということにはならないかと思いますけれども、まあいろいろとできますことから実施してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  52. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 国際金融局長、いま竹田委員の言っていることは、端的に言えば、どうも最近日本の円がまた非常に強いと言われるような状況になったので、いま局長が言われるように、大体外貨準備がいま百六十九億ドルですかね。これが近く二百億ドル程度になるんじゃないか。ドル・ショック以来もう二十数億ドルもふえているじゃないか。ですから当然、この前百四十億ドル程度、やはり三百六十円レートでもって、これは円が強いということが各国で問題になって円切り上げに追い込まれたんじゃないか。今回また二百億ドル程度まで近い将来において外貨準備高がふえてくると、これは当然円が強いのじゃないかということで各国から追い込められるのじゃないか。だからそういう面で、内容的には金利差とかいろいろ問題があるけれども日本の外貨準備高というものは、日々ドル・ショック以降も非常に増加の傾向にある。これは円が強いということに必ずなってくる。必ず再切り上げに追い込まれるのじゃないか。ですから、いろいろな風潮がいま出ていますけれども、ひょっとしたら二百六十円台レートに押し込められる可能性があるのじゃないか。そのくらい緊迫した情勢がいま出てきている。  だから、それに対してどういう関係当局として検討されているのか。通産大臣は二つ対策を言っておるようでありますけれども、これはしかし私は、当面のそういう円切り上げが要請される、円が強いという、そういうものの対応策にはなっていかないのじゃないかと思うのですけれども、国際金融局長、一体どういう対策をそれに対してやろうとしているのですか。いろいろ検討しているというのですが、その検討の内容は一体どういうことか。そういうことを与えてもらわないと、これは論議にならぬと思うのですね。確かにそういう傾向にあるわけでしょう。いま外貨準備高はますますふえてきていることは間違いないのですから、ですから、円が強いということは、そういうことで各国が見ておるし、また再切り上げということが国民世論としてもいろいろ出てきている。だから、それに対してどういう一体検討策の内容があるのか。この辺をやはり明確に知らしてもらわなければ安心できないというのがわれわれの考えですから、その辺ひとつ検討の内容の具体的なものがあれば、たとえばこうしますとか、ああします——準備預金制度もその一つと、こう手がかりを言っておりますけれども、しからば、これによって一体どのくらいの予防措置ができていくか。そういう内容が全然明らかにされていないから、いまの問題については私は理解しかねるということになるわけですね。その辺明確にひとつわかっておったら答弁をしてもらいたいと思います。
  53. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 外貨準備が今後どのくらい——だんだんふえていくという傾向にありますことはそのとおりであろうと存じますが、これは先ほどから申し上げておりますとおり、外貨準備がふえると、ことに現在のような情勢におきましては、各国とも軒並みにふえておりまして、だから円がどうということはございません。
  54. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 西ドイツと日本くらいではないか。
  55. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) それからレートでございますけれども、いま新しい通貨調整後のレートにつきまして、二・二五%のマージンが御承知のとおりあるわけでございますが、これにおきまして一番ドルが底と申しますか、その通貨が一番強くなっておるというのはいまどこであるかと申しますと、ベルギーとオランダでございます。日本はまだそういう比較におきましてはそれほど強くなってはおりませんでございます。  それから基本的に申し上げますと、先ほどから申し上げておりますとおり、当面日本の経常収支の黒字が大幅にことしは続くということは、実はもう世界的には通念になっているわけでございまして、したがって、だから、さしあたってレートがおかしい、あるいはレートをまた直すべきだということにはならないわけでございます。その意味でむしろわれわれのほうの感じを申し上げさせていただければ、日本の少なくとも今後一年ぐらいのところはむしろ外貨準備がふえるということは、経常収支が相変わらずことしは大幅の黒字になるわけでございますから、むしろ当然のことでございまして、これとレートの再調整の要否ということは全く関係がないというふうにわれわれとしては考えております。  他方、同時に外貨準備がふえるということが心理的にいろいろと思惑を生ずるとか、いろいろな点でマイナスであるということも当然でございますので、   〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕 これは基本的には先ほどから申し上げておりますとおりに、経済の拡大を一日も早く実現するという、その基本的なほうの政策を進めることによりまして、経常収支のほうが異常な大幅の黒字というのをなるべく早くわれわれの国際収支目標といいますか、経常収支は、御案内のとおり、日本ではむしろ黒字が生ずるのがパターンでございますから、これを均衡させるということはおかしいわけでございますが、少なくともこれをわれわれの大体国際収支の目標としております程度の黒字の幅に持っていきたい、これは一日も早くそういうふうに持っていきたいということが政策の基本になろうかと存じます。同時にその資本取引の面につきましては、いろいろと、資本の移動、資金の移動につきましては、そういうような黒字をさらに増幅するような流入が起こって、それがまた心理的に悪循環を生ずるということになってはいけませんので、その点の対策はとっていきたいということでございます。
  56. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 これはあとで……。
  57. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうもおっしゃったことよくわからない、全然わからないのですよ。いまのおことばの中でも、外貨準備がふえるということはかまわない、こういうふうなおっしゃり方をしているわけですが、私はこれは国際的な責任としてたいへんな問題だと思うのですよ。全体の国際貿易の縮小にもつながっていくわけですから、やはりこんなに持っているというのは、世界的に考えて責任を感じなくてはいかぬと思うのですよ。そういう意味で、どうもあなたの言っていることはよくわからないのですがね。もう少しまとめて、この次には、これはこうします、ああしますという具体的なものを出してくれなければ、幾らあなたと議論をしていても、どうもこのままでは私ども確信が持てるようなものは出てきませんし、あなたが幾ら円の再切り上げはいたしませんと言ったって、この前もそうなんですよ。この前だって、円の切り上げは一切いたしませんと大蔵大臣自身が言っている。私の頭の片すみにもございませんというふうに、こう言った。それでも具体的にはやっちゃっている。それは外圧もあったでしょう。そういうふうな形で、どうも日本経済にしても、政治にしても、外圧なんですね。自分から自主的にこれをこう解決していくという気持ちというのは全然ないというふうに言っていいと思います。ですからこれは、この次の委員会までにもう少し整理してひとつ出してきてくださいよ。どうもあなたのお話を聞いていたんじゃ、私ども確信が持てません。それで円の再切り上げ必至だというのが経済雑誌にも出ますし、新聞にも出ます。そのほうが、あなたの言うのよりずっと説得力があるわけです。ですから、その辺を明確に打ち消すなら打ち消すような確信の持てる方策というのを、この次ひとつ出してきてください。それに基づいてまた私の考え方も申し上げたいと思います。  私の質問はこれで一応終わりたいと思います。
  58. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 稲村局長、よろしゅうございますか……。
  59. 多田省吾

    ○多田省吾君 私も、今回の準備預金制度に関する法律の一部改正問題、本論につきましては、歩調を合わせまして次回に譲ることにいたしまして、いま議論されております金融環境の問題について若干引き続いて質問したいと思います。  いまもお話がございましたけれども、いま稲村金融局長から、西ドイツに続いてベルギーも公定歩合引き下げをしたと。しかし、きのうあたり、日銀総裁は、日本公定歩合引き下げは新たには考えていない、こういう発表をしているようでございます。現在、アメリカまたは西ドイツ、ベルギー、オランダ等の公定歩合がどうなっているのか。また、日銀総裁の言うように、公定歩合引き下げをしないでおいて、そうしてドルがまた日本に流入する加速度がつくおそれがないのかどうか。もう現在は、ドルが還流するどころか、かえってますます、いま話がありましたように、円の再切り上げという思惑が強まっているわけでございます。これに対抗するためにも、金利引き下げの必要がないのかどうか、その辺をまずお伺いいたします。
  60. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 諸外国の公定歩合——あるいは国際金融局長からお答え申し上げるべきかもしれませんが、御高承のように、アメリカが四.五、西独が三、イギリスが五等でございます。そこで、日本公定歩合につきましては、日本銀行で決定されるたてまえでございます。まあ、きょう、西ドイツとの比較において実質上の金利水準はまだ日本のほうが低いというような趣旨を申されましたゆえんのものは、日本の場合にいわゆるプライムレート、標準金利が五%でございます。それに対しまして西ドイツは、公定歩合は三%でございますが、市中の手形割引の平均が大体六・七一%ぐらいでございます。その辺のことをさして言われたことと思います。要するに、各国の金利体系がそれぞれの金融構造を反映いたしましていろいろニュアンスを異にいたしておりますので、必ずしも公定歩合の比較をもって直ちに短資の流出入を論ずるわけにはまいらないということを言われたわけでございまして、日本公定歩合は四・七五、西独は三・〇でありましても、市中の実際上の金利はいまのように西独のほうがやや高いというようなことを言われたことであろうかと存じます。
  61. 多田省吾

    ○多田省吾君 アメリカの金価格引き上げ法案がやっと上院を通ったというのは聞きましたけれども、この法案審議の見通しですね。また、その交換の可能性の結論はどうなると思っておられるのか。その辺を当局はどのように思っておられるのか、ひとつ見通しをお聞きしておきたい。
  62. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 金価格の引き上げ法案につきましては、先ほど申し上げましたとおり、上院のほうの銀行委員会の満場一致の議決がございまして、本会議にこれからかかるところであろうと存じます。それから、下院のほうにつきましては、おそらく予定では、昨日の銀行通貨委員会で公聴会が行なわれると、こういう予定になっておるし、おそらくそういう順序で進んでおるのであろうと存じますが、大体これは、当初は、いろいろと金価格法案に関連いたしまして保護貿易的な付帯条項その他の修正案の動議が出るのではないかということをおそれておったわけでございますが、いままでのところは、そういうこともございませんで、ほぼ順調に進んでおるというふうに存ぜられます。これはアメリカの国会の審議のことでございますので、われわれが具体的にいつごろには成立するだろうかということをなかなか申し上げにくい点でございますが、いま一般考えられておりますのは、おそらくそう遠くないうちに、まあ具体的にはいろいろの報道がございますけれども、今月一ぱい、あるいは来月の初めとかいうこともごさいますが——そういうことにつきまして、具体的にそのころには成立するであろうということをなかなか申し上げる材料は特に持っておるわけではございませんけれども、大体そういうような見当でいまのところ順調に審議が進んでおるということであろうと存じます。  それから第二の、ドルの交換性の問題でございますが、これは非常にいろいろとむずかしい問題を含んでおりまして、先ほど申し上げましたとおり、ドルの交換性がない、いま停止されておるということが、ドルに対する不安、ドルの信認をなくしております一つの重要な要素でございますので、これはわれわれといたしましては、一日も早くその交換性の回復をやってもらいたい、それがドルの信認の上で非常に重要であるというふうに考えておりますけれども、具体的にいまのアメリカの国際収支の状況、それからことにアメリカの金準備その他の外貨準備と短期債務との関係等を考えますと、これはなかなか早急に交換性の回復、ことに金への交換性の回復は非常にむずかしいのではなかろうか。同時に、この交換性回復の問題は、今後の新しい国際通貨制度をどういうふうに考えるかということにつきましての論議と関連をいたしてまいりますので、そういうものとの関連でこれからいろいろと各国間の議論が行なわれていくことと存じますが、いずれにいたしましても、われわれといたしましては、早急にこの交換性の、少なくも部分的な回復でもやってほしいというふうに思っておりますけれども、具体的にはなかなかいろいろと問題があって、早急になかなか解決しないのではないかというふうに感じております。
  63. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほど日本のドルがいま二月末で百六十四億ドルですか、そのようにお聞きしましたけれども、通産大臣も、ことしの十二月までには二百億ドルに達するのではないかという見通しを述べたことがございます。国際金融局長はあれですか、ことしの十二月までに経常収支の増加というものは、現在の基調を続けていけば、やはり通産大臣と同じようにことしの十二月には二百億ドルぐらいに達するのではないかと、こういうようにお考えですか。
  64. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 先ほども御答弁申し上げましたとおり、この経常収支の来年度の見通しにつきましては、基礎的収支の見通しでございますが、二十七億ドル程度の黒字というふうに見ております。経常収支で申しますと四十七億ドルというところだったかと思いますが、ただ、これはこのまま外貨準備の増加あるいは減少とはちょっと直接の関係でございません。大体大まかに申し上げますと、ほかのほうの項目が動かなければ、そのまま外貨準備の増加になるわけでございますけれども先ほども申しましたように短期資本、短資の移動の問題、それから銀行部門の移動の問題等によりまして、これが外貨準備にどう反映いたしますかは実は全く計算しがたいわけでございますので、今後さらに、こういうような基礎的に国際収支の強い状況でございますから、今後とも外貨準備はふえる傾向にあるであろうということは申せるわけでございますけれども、まあ二百億ドルになるかどうかということにつきましては、実はわれわれといたしましてはなかなか計算しにくいということでございます。
  65. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ責任者としては答えにくい問題であろうと思いますけれども、大体いまのお答えから見ても、二百億ドル以上になるような傾向にあることはもうわれわれも感じておるところです。で、この前輸出前受け金の規制を一ぺんゆるめて、最近また規制を強化しましたけれども、その辺もやはり短期資本の移動が最近強まっているということだろうと思いますが、その一たんゆるめてまた再び強化した理由は何ですか。
  66. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 輸出前受けの規制に関しましては、ワシントンの会議によりまして、各国の通貨調整が妥決をいたしまして各国の通貨調整が行なわれましたので、その後日本といたしましては、ニクソン声明のありまして以後変動相場制に移りまして、この十二月に至るまでいろいろと為替市場の短資の流人を阻止するという関係でいろいろの緊急的な措置をとってまいったわけでございますが、これは一応通貨調整が決着を見ましたので、そういうような臨時的にとりました措置は一応撤廃してもだいじょうぶであろうということで撤廃をいたしました。しかし、その後の情勢を見ますと、この二月に入りましてから、先ほどから申し上げておりますように、いろいろとヨーロッパ各国ともドルの流入の圧力というのが続いておりまして、日本についても同様でございまして、それで、この二月の下旬に入りまして再び輸出前受けというようなかっこうで短資の流入圧力が強くなってまいりましたので、それで、二月の二十五日でございましたか、この輸出前受けを再び規制するという措置をとったわけでございます。で、その規制措置をとります前には、レートは三百一円台にまで一時下がったことがございますが、規制措置をとりましてからは逆に反騰をいたしまして、ただいま、きょうは三百三円二十銭ぐらいに反騰いたしております。
  67. 多田省吾

    ○多田省吾君 一月、二月で、輸出前受け金等による短期資本の流入は大体どのくらいですか。
  68. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) この国際収支の統計が、速報はすぐ出てまいりますけれども、確報はちょっと出るのがおくれたものでございますから、確たることは現在の段階では申し上げられませんが、大体一月におきましては、外貨準備がほぼ七億ドル程度ふえたわけでございます。この中にはSDRの配分がございまして、一億二千七百万ドルございまして、それから今度の通貨調整に基づきますIMF関係の資産の評価がえ等をいたしておりますので、そういう評価がえによる増が、やはり一億余りございまして、そういうものを除きましたあとが、いわば、この普通の意味の、全体としての外準の増というふうに考えられますが、一月につきましては、その相当部分はこの輸出前受けであったと思われます。この輸出前受けは、一月は規制を撤廃いたしました翌日に多額に入ってまいりまして、その後は落ち着いて、一日半ぐらいで終わったわけでございます。その後は落ち着いておりますが、全体といたしましては、相当程度、まあ、あるいは五億ドルぐらいと申してもよろしいかと思いますが、ございました。二月に入りましてからは、これはなおさらはっきりまだ計数がわかりませんのでございますが、大体二月の全体の外準の増がほぼ五億ドルでございますが、ほぼまあ大体その半分以上が、やはりこの前受けによるのではなかろうかと、これはじりじりと起こっておったわけでございますけれども、特にこの二十日過ぎになって大幅に出てまいりました。
  69. 多田省吾

    ○多田省吾君 それに、欧州の為替市場でも金相場が非常に高騰しまして、ドルが急落しております。また東京の外為市場でも円高ドル安の一連の動揺というものが続いておりますけれども、まあ大蔵大臣は、この前通貨調整の効果は二年ぐらいたたないとわからないと、二年間のうちに波立ちがあっても心配ないんだというようなことを言っておりましたけれども、まあ先ほど国際金融局長の答弁にもありましたように、通貨調整後初めて開かれたOECDの第三作業部会でも、短資移動の政策について論議が集中したと、また金利差の関係とか、ドルに対する不信とか、そういうものがあって、どうしても短資の移動というものが今後繰り返すんじゃないかと、こういう見通しでございますけれども、そういうことを考えますと、先ほどから話が出てますように、ほんとうに円の再切り上げというものが二年間は絶対だいじょうぶだということは言い切れないんじゃないかと、このように思いますけれども、最近の国際金融情勢から考えまして、まだこの大蔵大臣の二年間ぐらいはだいじょうぶじゃないかということはお考えになっているのかどうかですね、その辺をひとつ明確にお示しいただきたい。
  70. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 先般も御答弁申し上げましたとおりでございまして、通貨調整後まだ二、三カ月という段階でございまして、しかもその調整の効果が出てまいりますのには、まあ一、二年という期間を要するということも、これもいわば国際常識になっておるわけでございます。したがいまして、そういう段階で通貨のレートの再調整というようなことを、これは全く考えるべき時期ではないというふうにわれわれは考えております。
  71. 多田省吾

    ○多田省吾君 この前ですね、いろいろ新聞にも出たのですけれども、アメリカの大幅な金利低下を背景にして、アメリカの銀行がわが国の商社やメーカーに非常に激しい貸し出し攻勢をかけている。まあ在日アメリカ銀行もそうだし、またニューヨーク市場もそういうことが非常に行なわれているということでございますが、この現状を局長はどのようにお考えになっていますか。
  72. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) これは、全体といたしまして、国際化と申しますか、いろいろな意味国際化が進んでまいっております。今後さらに進むであろうと思われますので、その間におきまして、日本銀行と外国の銀行との競争が起こるということは、まあある程度自然と申しますか、一つ状況であろうと存じますが、そこで問題は、アメリカのほうでたいへん金利が下がっておれば、米銀のほうとしてはその競争上非常に有利になるということでございますので、その上もう一つの問題は、従来は日本商社その他やはり国際的信用が十分でなかったために、なかなか外銀、米銀は貸さなかった、ところが、その後非常に日本商社その他の信用が上がってまいりましたために、外銀もどんどん貸すようになったという状況は、ただいま御指摘のとおりでございます。そういうことからいたしまして、やはりそういう意味の貸し出し競争といいますか、シェアの拡大と申しますか、そういう状況が起こってきておったということは御指摘のとおりでございます。われわれのほうといたしましても、この点は元来、自由競争という原則でございますので、特にこれを国が何かしてそれを阻止するというようなことはなかなかやりにくい点もございますが、いずれにいたしましても、そういう状況であることであったことは事実でございますので、もしそれが非常に行き過ぎるというようなことでございましたならば、われわれといたしましても、そういうような状況に対しては十分に対処する措置検討してまいりたいと思っております。
  73. 多田省吾

    ○多田省吾君 それが行き過ぎであったらば、十分対処する措置考えるということでございますが、わが国の外為銀行なんかでも、外貨預託を早く実施せよということを要求しているわけでございますが、そういった一連の対策はどのように考えていますか。
  74. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいま御指摘のとおり、外貨預託をふやしてほしいという希望があることは事実でございます。まあわれわれのほうといたしましても、いろいろな要素を勘案いたしつつ、そういう意味の米銀の競争に対しまして、やはり日本の為銀としても十分に太刀打ちできると申しますか、そういう措置考え一環といたしまして、おそらくいまやっております外貨預託、貿易金融に関する外貨預託を若干ふやすという方向措置を実はとったわけでございますが、今後も情勢を見ながらそういう点をさらに検討してまいりたいと思っております。
  75. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、ますます通貨不安とともに日本のいわゆるドルがたまる、これが心理的に大きな影響を及ぼしますし、円の再切り上げの不安というものもまた激しくなる。これも結局、先ほどから話がありますように、アメリカがドルと金の交換性をストップしながら、しかも、国内景気刺激のために非常な低金利政策をとる、そして国際収支改善の努力を全く怠っている、こういうところからきているわけでございます。まあいろいろなこういう通貨不安を除去するために、先ほどからその対策として何も具体的な話は出ておりませんけれども、たとえば、今回も準備預金制度運用ということもいわれておりますけれども、結局、準備預金制度にしましても、国内が非常に過熱してくる、そしてその上に国際収支が黒字になるという条件が整わなければ、準備預金制度だって活用できないのじゃないか、このように思いますので、そのためのいろいろな対策等になりますと、まず第一には、アメリカにやはり、国際収支改善のための強い要求をすべきことが第一でありましょうし、また国内においても、いろいろな対策考えられるわけでございますけれども先ほど竹田委員の質問に対して明確な答弁がなくて、この次ということになっておりますけれども、それはこの次に明確に答えていただきたいわけでございます。現在考えている対策として、具体的にひとつはっきりと、こういうことがあるのだということを言ってもらいたいと思うのです。どうです。
  76. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) アメリカに対して強く要求をすべきであるという点に関しましては、まさにそのとおりでございまして、実は、先般の第三作業部会におきまして、私出席をいたしましたけれども、やはり、アメリカの金利が低過ぎる、低くし過ぎるということが非常に問題であるという点については、十分に指摘をいたしまして、一応その点を考えてほしいということを申し入れをいたしております。これはむろん、日本だけのあれではございませんで、ヨーロッパの諸国も同様の申し入れといいますか、考え方を出しております。それに対しましてアメリカのほうは、ただいまやはり失業率がなかなか下がらないということから、経済を一日も早く完全雇用のほうの状態に持っていきたいということで、財政政策、金融政策両面からこの拡大政策をとる必要があるのじゃないか、いまの金利水準を上げていくということはなかなかむずかしいということを言っておりましたが、同時にしかし、これはやはりアメリカのほうの経済の拡大が次第に進んでいくにつれまして、また赤字予算——大幅な赤字予算は御案内のとおりでございますが、そのファイナンスのためにもやはり資金調達の必要がございますから、大蔵省証券等の短期金利というのは今後は、ことしの後半には上がっていくであろうということは言っております。  それから第二の御質問の、具体的に何を考えておるかという点でございますが、これは先ほどから答弁申し上げておりますとおり、さしあたりまして、従来行なっております貿易関係の貿易金融のための外貨預託をふやしていくということの措置をとっておりますが、それは今後もさらに事情の許す限り金額をふやしてまいりたい。それによりましてこの外銀からの借り入れを返していってもらいたい、こういうことをやっております。同時に、その他いろいろの方法考えられるわけでございますけれども、それは先ほど申しましたとおり、いずれも現行の法制上できるかいなか、いろいろな問題がございますので、その点につきましては、深くいろいろの考え方につきましていま慎重に検討をいたしておる段階でございまして、具体的にこういうものだということは、現在の段階におきましては差し控えさしていただきたいと思います。
  77. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、国内金融機関の問題につきまして二、三質問したいと思いますけれども、日銀は去年の十一月に、期間三カ月以上六カ月未満の銀行間の定期預金金利を五%に引き下げました。ところが、銀行預金の増勢というものは非常に加速化しておりまして、一月末で千二百億円強の超過となっております。このように千億円の大台を突破したわけでございますが、今後も大幅な金融緩和、それからコールレートの一そうの低下というものが見込まれております。さらにこの銀行間定期預金の増勢が強まるものと思いますけれども、この現象を銀行局としてどう理解されているのか。また、この対策をどう検討されているのか。お伺いしたいと思います。
  78. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいま御指摘のとおり、千二百億増加いたしまして、七千億をこえるに至っておるわけでございます。インターバンク預金一般的な問題といたしましては、確かに担保がないというような問題もございますので、あまり取り手側が取りあさるというような状況になりますと、確かに問題があるわけでございますが、きわめて最近の実際の取引の状況を見ておりますと、むしろ取り手側がやや渋り始めている。したがいまして、またインターバンク預金のレートも最高限にはりついておりましたものが、まあおそらくは、これは私の感じを申し上げまして恐縮でございますが、近い将来には下がってくるところも出てくるんではなかろうかというような感じもいたします。そういう状況でございますので、ただいますぐこれに対する対策というものは特別に考えておりません。
  79. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、一月末の金融市場の貸し出し状況を見ますと、大手の都銀を除きまして、中小の金融機関、それから下位の都銀に至るまで、月間の貸し出し金というものが非常に純然たるマイナスになっているわけです。で、一部の中小金融機関では担保の基準をゆるめた要注意の貸し出し、あるいは採算割れ覚悟の落ち込み貸し出し等も見られる反面、大手都銀は、先ほども申し上げましたように、四百億から五百億円の貸し出し増加を示していると、このように言われておりますけれども、このような異常事態を当局はどのように理解され、またごらんになっているのか。
  80. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) まずいまの状況は、まさに御指摘のような状況になっております。  そこで、中小金融機関につきましては、この際いわゆる貸し急ぎ、貸しあせり、そういうことがございませんように、審査には十二分に念を入れるということの指導をいたしております。  それから都市銀行は全体として、先ほども申し上げましたように、一月には対前年で八・九%のマイナスということになってはおるわけでございますが、ただいまもお示しありましたように、上位と言われます資金量の大きな都市銀行につきましては、むしろ増勢が見られるわけでございます。この中身は、これも先ほど御答弁申し上げましたように、大ざっぱに分けまして、二種類あろうかと存じます。一つは、構造的な金融情勢の変革に対応して中堅中小企業に進んでいこうという行き方と、それから、やや一時的な現象としてそちらに向かっているというものと、両方ございます。  前者につきましては、これは今後の金融情勢のいかんにかかわらず、しっかりと中堅中小企業のほうにサービスを拡充しようということでございますから、特にこれに対してどうこうと申すことはないかと思います。後者につきましては、一たび逼迫した場合にすぐに引き揚げるということになりますと、金融秩序の撹乱の要素になります。その辺については十分配意いたして、あまりそういう動きが出ませんように監視をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  81. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 日を改めて準備預金の問題を伺うとして、その背景にある問題二、三お伺いしたいと思います。その前にこれまでの質疑の中で疑問に思った点幾つかお伺いしたいのですが、国際金融局長にまず伺います。  先般の通貨調整なんですが、その結果円が切り上げられたということは、基礎的不均衡があったということを認めたことになるのでしょうか。まあそれまでは基礎的不均衡はないのだということが政府の一貫した御主張だった。結果として一六・八八を基準として対ドル基準相場が設定された。これは結果から見ると基礎的不均衡があったのである、そうしてそれは二八・八八%でおおむね評価されたのであるという理解になるのでしょうか、まず伺いたいと思います。
  82. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 日本に基礎的不均衡があったかいなかと、基礎的不均衡があったからそれを認めて二八・八八%の切り上げをしたのかという御質問でございますけれども、実はこの基礎的不均衡という観念自体が、御案内のとおり非常にはっきりいたしておりませんことでございまして、まあ率直に申しまして今回の多角的調整は、国際的なこの多角的な、まあ初めてこういう意味の多角的な討議が行なわれまして、その結果それぞれ満足すべき線に落ちついたということでございまして、まあこれは基礎的不均衡のあり方でございますけれども、前々からアメリカについては基礎的不均衡が——赤字のほうでございますけれどもあったのでございます。こういうことは、大体アメリカ自身も言っておりますし、その意味でアメリカもドルの切り下げということをやったということであろうと存じますが、それ以後につきましては、各国ともアメリカの国際収支の均衡をはかっていくというために、まあ応分の負担をしたということでございました。  まあ最初に申し上げましたとおり、基礎的不均衡という観念自体が非常にあいまいでございますので、見ようによっては基礎的不均衡はなかったとも言えると存じますし、あるいはあったのだということも言えると存じますが、どうもそういうことでございます。
  83. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 問題は、その基礎的不均衡の概念論じゃなくて、これからどういうように見ていったらいいのかということとからむので、前もってお伺いしたいのですが、そういうお答えですから、その点の概念論は問いませんけれども、大蔵大臣も含めて、二年間くらい見ないと通貨調整の結果というものはわからないものである。また同様趣旨のお答えが先ほどございました。さらにふえんして、一年くらいは経常収支の黒点が続くことは国際常識である。で、重ねてお伺いしたいのですが、そういうすでに国際常識なんだという心証なり、あるいは確認なりというものが、十カ国蔵相会議あるいはその他の通貨調整会議の中で明らかにされたということですか。
  84. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) この通貨調整の効果を生ずるには、まあ少なくも一年、おそらく二年ぐらいかかるであろうということは、国際会議等で明らかにされたかという点でございますが、この点につきましては、ワシントンの蔵相会議におきましては、まあそういうところまで議論がいかなかったことと存じますが、私が直接出席をいたしましたこの先般のOECDの第三作業部会、これは一月の三十一日から二月の一日にかけてあったわけでございます。これがワシントン会議以後最初の国際会議であったわけでございますが、これにおきましては、まあ私が先ほど御答弁申し上げましたとおり、各国ともこの通貨調整の効果というのは、少なくもまあ二年ぐらいはかかりそうだと、そうしてその当初の年におきましては、むしろ赤字の国がさらに赤字がふえるとか、あるいは黒字の国がさらに黒字がふえるというような状況さえも出るかもしれないということはほとんど一致した結論でございます。  と申しますのは、若干御説明をさしていただきますと、黒字の国におきましては、この通貨調整の結果、端的に日本の場合そうでございますけれども経済に対する切り上げの効果と申しますか、拡大をおくらせる、不況を長引かせる、こういう効果があるわけでございまして、その点からなかなか景気回復をおくらせるということが一つの要素であろうと存じます。  それからもう一つは、きわめて計数的なことでございますけれども、通貨の切り上げによりまして、輸出の面で見ましても、円建ての輸出のボリュームは、通貨調整によって減ってくるかもわかりませんが、これをドル建てに直しますとその一六・八八%はむしろ上がってしまう、こういう、表面的なことでございますけれども、そういう交易条件のほうの関係もございます。こういう意味で通貨調整のあった当初はむしろ逆に出てくる。これは逆の場合でございますけれども、ポンドの切り下げのときにも、これは一九六七年の秋でございましたけれども、このときもやはり、ポンドの切り下げというのは、それが効果を生ずるには二年ぐらいかかるであろうとOECDで議論が行なわれておりましたが、結果としてはまさにそのとおりになったわけでございまして、イギリスの国際収支が回復をした——これは赤字から均衡になった場合でございますけれども、回復を見せてまいりましたのは、やはり相当あとになってからのことであったわけでございまして、切り下げ当初はむしろ赤字が続いておったということでございます。そういうような経験、それからただいま申し上げましたような要素からいたしまして、各国ともやはり通貨調整の効果ということについてなかなかすぐには出てこないということについては、意見が一致しておるわけでございます。
  85. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いま言われた国際常識というのは、これまでの通貨調整のあと事例等を見て、一応経済的な常識として言えるということはそうかもしれませんけれども、今度の通貨調整にからんで、議論の過程の中で当座ということが、一年あるいは二年ぐらいだろうということが出たわけではない。したがって、一年なり二年なり、大蔵大臣の意見をかりれば、二年ぐらいはということは、あくまでも日本政府の見解であり、主張なんであって、その数字自体が今後の国際会議の中で根拠のある期間として出てくるわけではもちろんない、そう理解してよろしいですか。
  86. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいまの点は、そうではございませんのでございます。私が先ほど申し上げましたとおり、二年ぐらいはかかるのじゃないかという点は、むしろOECDの会議全体のことでございまして、日本について特にどうということが議論されたわけではございません。全体として、まあアメリカの国際収支の回復も二年ぐらいかかるだろう、黒字国のほうについても同じだろう、こういうことであったわけでございまして、特に日本についての議論があったとか、したがって、一般論としてそういうことでございますから、日本についても同様ということで、これはみんな疑問を持たなかった。日本がやはり今年度につきましては、今年度と申しますか、ここ一年ぐらいについては、むしろ黒字がやはり大幅に残るという点につきましては、だれも、それはおかしいとか、あるいはそれじゃ調整幅が少なかったのだろう、そういうようなことは全くなかったということでございます。
  87. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうしますと、今度は日本政府としての見解なんですけれども、変動相場制に移行し対ドル基準相場を設定する前後の状況というのは、一体輸出ワクが今後どうなるのかという不安が強かったと思うんですけれども、それがそのまま日本政府の判断にもちろんなりませんけれども、当時想定した以上に国際収支の黒字幅が大幅に続いてしまった、こういう印象を私たちは持つんですが、同じような印象を大蔵当局としてもお持ちなんでしょうか。予想以上に黒字がふえてしまった、あるいは大体想定したとおりだということになるのか、その辺の見方との見合いで御意見を伺います。
  88. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) その問題は特に部内で議論をいたしたわけじゃございませんけれども、したがいまして、私の個人的な感じでございますけれども、やはり一つの問題は、景気回復のテンポであろうかと思います。一つは、切り上げ幅が日本一般に予想されておりましたよりも大幅になったというようなことから、景気回復というのがおくれるというようなことがやはり大きく影響をしているのではないか。その意味では、非常におかしなことでございますけれども、切り上げ幅が少なかったらば、もっと早く均衡が回復というか、黒字が滅ってたかもしれないということになるのかと思いますけれども、そういうところは具体的に計数的にいろいろと詰めたわけでございませんが、ばく然とした感じを申し上げますと、そういうことであったろうと思っております。
  89. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 銀行局長にいまの問題の関連で伺いたいんですが、貿易収支が黒字だということは、円が強いということには決してなりません。これはもう御案内のとおりだと思います。問題は、その黒字を構成している中の採算がどうなのかということが、実は円が強い弱いという話になるのであって、単に出し入れの残高だけ見て黒字だから円が強いということは言えないと思います。その意味で対外貿易を考えると、よかれあしかれ一六・八八%、今日ではそれ以上のハンディをしょった商売をしている。本来だったら、輸出の四〇%は中小企業が占めているとよく言われますから、相当経営的に痛んで当然なんじゃないかと思うんだけれども、なかなか表に出てこない。  そこで、先ほど銀行局長が、現在の金融緩和というものを考え景気の面で三つプラス作用があると言えるとおっしゃいました。そこで、企業倒産が少ないということをプラス作用にあげたんですけれども、かつて黒字倒産ということがありましたけれども、最近は赤字倒産という状態になりつつある。これが健全なんだ。そこで中小企業に対して大手の市中銀行が貸し出しをしていく。したがって、中小企業金融機関、これがどうするかというと、比較して規模の大小だけで論ずるわけにいきませんけれども、より貸し出し条件の悪いところにやはり貸していかなければいかぬ。しかも、それが日本の場合、多かれ少なかれ輸出型企業、産業ですから、しかも、輸出の採算を見ていると、まずは採算割れを覚悟しなければいけない。大体二割近い利益率をしょってやっているところはまずないわけですから、採算割れと断定して間違いない。そこにしかし資金だけは流れていく。したがって、貸し出し内容そのものも、不良貸し出しがふえてきた。当然想像できる。こういう循環というのはいずれどっかでほころびてきはしないか。その辺の見通しと対策があったらお伺いしたい。
  90. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいまお示しのあったとおりの情勢であろうかと思います。したがいまして、私どもといたしましても、貸し出し内容がこの際ずさんにならないように特に審査については十分慎重を期するように、その点に最大の眼目を置いて指導もし検査もいたしているわけでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、非常に早い機会に金融が締まるかどうか、その点が一つ企業段階において——金融機関段階は別でございますけれども企業段階で非常にきびしい状態が金融面から起こるかどうかということは、今後緩和情勢がどのくらい続くかということに一つは大きくかかってまいるかと思います。その点につきましては私どもは、現在の資金供給側の、外為散超を主因といたします供給側の状況、それからまた設備投資を主因といたします資金需要状況、その両者をにらみ合わせまして、金融緩和情勢かなり長く続くのではあるまいかというふうに考えている次第でございます。
  91. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 金融緩和が続くということはお説のとおりだと思います。ただ、いずれほころびてくるんじゃないかという心配が出てくるのは——あともうちょっとお伺いたいんですが、大手都市銀行が、中堅中小企業にサービスを拡充していくのは今日の構造的変革の中ではけっこうなことだ。ほんとうにそう言えるのかどうか、これはあとで実際伺いたいんですが、かりにそうだとしますと、従来の中小企業に主として金融をしていたところというのは、ますますはみ出してくる。しかもおっしゃるように設備投資を基礎にした資金需要というのは今後あまり増勢は期待できない。そうなると、だんだん単名貸し出しをしていきますが、不良でかつ貸し出し企業と完全にくっついてしまったようなものですから、つぶれた場合には、もろに影響受けるような貸し出しになる。しかもそれがふえてくる。片方では数は少ないとは言いながら、インターバンクの貸し出しもふえてくる。そういうものというのは、金融のあり方としてきわめて不健全だと思う。ただ長期的に金融緩和が続くということになると、そういったものはそう大きな痛手にはならないかもしれませんけれども動きとして見るとたいへん不健全なあらわれみたいな気がします。したがって、貸し出しについて積極的に指導されるというんですけれども、これは実際問題としてはむずかしいところ。そうしていくと、その構造的変革なんだからいいんだよとおっしゃったことが、よほど具体的な政策の裏づけを持たないと、極端に言うと、中小企業金融機関は立ち枯れていく。なすにまかせて再編成をしたいんだというんなら、それなりの処置をされないと、どっちつかずでだんだんと金融の底辺がゆがみ始めてきている、こういう気がするんです。その貸し出しの指導だけでは済まない配慮が私は必要ではないかと思うのですが。
  92. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) たいへん鋭い御指摘でございますが、政策の方向といたしましては、私ども考えておりますことは、一つは、先ほど来申し上げておりますように、大衆化ということを、国際化と並んだ大きな柱としてここ二年ばかり言ってまいっておりますのは、本格的な金融緩和基調になってまいりますと、廃業金融中心だけではとてもやっていけない。現在アメリカの消費者信用なとは四割くらい——四割何分というところになっておりますが、日本金融機関の場合はこれが六%弱であるというようなことでございますので、この点をかなり拡充する。これは各金融機関を通じて共通に言えることでございます。それが一つと、それからもう一つは、こういう本格的金融緩和基調で政策的に最も重点を置くべきことは、各金融機関の、各種金融機関がそれぞれの特色を発揮するということであろうかと思います。中小金融機関は中小金融機関なりの特色を発揮するということによりまして、こういう金融機関としては非常にきびしい情勢を乗り切ることができるのではあるまいか。またそうする以外に生きていく道がないのではないか。と申しますのは、たとえば地域に密着した信用金庫というような存在にとりましては、その地域の人々の現状の把握について、都市銀行の支店などよりははるかにこまかにできる点があるわけでございます。そういう点の特色を十分に生かして、その特色のもとでの質的な競争が各種金融機関の間に行なわれるということが今後非常に大事なことではあるまいか。その辺に今後の政策の主眼は置かれるべきではあるまいかというふうに考えるわけでございます。
  93. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの問題が実は準備預金の制度を論ずる一つの面ではないかというような気がするんですが、競争を通じてというお話があったのでついでに伺いたいんですけれども、たとえば相互銀行、信用金庫がそうだと思うのです。そういう中小金融機関考えてみると、大手都市銀行と同じ競争条件かというと決してそうでない。たとえば財投資金、外為を扱えない云々という問題があるわけですね。したがって、競争を通じてということは、そういう競争条件を平等に整備をさせていくということなんでしょうか。
  94. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) そういう面もございますが、そうではなしに、本来の金融のタイプが違うという面もあろうと存じます。たいへんたとえを引きまして恐縮でございますけれども、たとえばまあ命をあずけますお医者さんにつきましても、大病院でなければならない、非常に精密な大きな機械があって、そこで見てもらわなければ安心できないという人々もたくさんおられますが、片方では、やはり町のお医者さんで、自分の親から兄弟までの持病まで全部知っているところで手当てをしてもらわないと安心できないという人々もまた多数存在いたします。その場合に、たとえば町のお医者さんのほうで大きなレントゲンの機械を購入するということは必要でもございませんし、またかえって同質的な競争をやろうとしても害があるだけだということになります。その意味におきまして、中小企業金融機関は、中小企業金融機関なりにその地域に密着するという方向での努力、それが必要でございまして、全部各種金融機関について同じような外形的な平等な条件を与えて、その上で競争させるということになりますと、これはむしろスケールリミットから申しましても、大きいほうが勝つということはまず当然のことでございます。したがいまして、質的な差異というものをむしろ生かす方向での競争、これがまず大事ではないかというふうに考えております。
  95. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまのお話でもう一つ伺いたいのですが、その地域との関係、質的な違い、そういったものを生かして競争していく、それはわかる議論だと思います。  そこで、中小企業を対象にした中小金融機関というものを考えてみると、中小企業は何かといえば、相当の量のところが輸出で仕事をしている。したがって、輸出型中小企業に対する、しかも地域との密着した、かゆいところに手が届いためんどうをどうやってみていくか、これが中小金融機関の最大の課題である。ところが輸出をする、外国為替を受け取る、これは中小金融機関では扱えないということになると、おっしゃった地域なりお客さんとの見合いで限っていくということになると、ことばじりを受けて考えてまいりますと、外国為替、これはもちろん質の問題ありますよ。それが中小金融機関で扱えるかという問題があっても、それは外銀でやればいいわけです。当然外国為替で扱って何のふしぎがあるという議論になってくると思うのですが、それもおっしゃったきめのごまかいサービスの中に入るならば出ていける。その辺の感触はどうなんですか。
  96. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) その点は将来必ず検討される問題だろうかと存じます。ただ現状からまいりますと、都市銀行でさえも為替管理の問題でかなりいろいろと問題が出ておりますことは御高承のとおりでございます。要員の訓練という面から見ましても、時間をかけてだんだんそういう方向に向かっていくべきだろうというふうに考えております。
  97. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 またあらためて準備金とからめながらお伺いしたいと思いますが、次の問題であと二つばかり伺わせてください。  金融のことで一つ伺いたいのですが、端的に聞きます。預金金利と連動しないと貸し出し金利引き下げはもうできないとお考えになっているのか、預金金利と連動しなくてもやれるとお考えになるのか、御判断はどうなんでしょう。
  98. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 後者のほうでございます。つまり預金金利というものがある程度の下ささえになっておりますことは事実でございますが、現在預金金利を動かさなくても貸し出し金利は現に下がりつつございますし、下げ幅も十二月に対しまして、ちょうど一月が倍になってきております。今後もさらに下がると思います。それからまた長期金利についても下げることができると思います。
  99. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そこで、実際に生きている金利ということで考えますと、約定金利何点何というのはほんとうは表づらの数字であって、実際には両建てがされて実効金利が幾らということになるのです。いまの金融緩和基調にもかかわらずその実態はなくなっていない。ただし当然大蔵省として常時御検討されていると思いますが、そういう実効金利について、これが預金金利ほんとう経営的に見合ってくるのですけれども、これも下げていく、下がっていく、またそのために従来とは変わってこういつたことをやっていく、そういう御検討はいまされておりますか。
  100. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) その点は金融緩和が一段と進んでおりますので、全体としての両建て歩積みの計数も、検査のつど、その点は非常に気をつけて見ておりますが、下がりつつあるわけでございます。ただこういう際に、両建て歩積みがさらに残るということは、悪質な両建て歩積みが残るということはたいへん困ることになるのでございます。ただいまでも検査の際に特にその点には非常に重点を置いて見るようにいたしております。
  101. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それでは最後に一つだけ伺います。  これは準備預金ともからむのですけれども、なぜ二〇%にきめたのかということの見合いで、外貨準備高がふえ、したがって、そちらから資金が散超によってふくらんでいくという面がある。それをどうしようか、こういった発想が今回準備預金を取り上げる大きな一つの理由だったと思います。そこで外貨準備高がふえていくということをどう見たらいいのか。で、基礎的不均衡があるかないか、これは議論があるところとしても、非常に単純に考えれば、貿易によって外貨がふえた、ふえたら使ってくれ、うちのものを買ってくれが国際交渉になってくると思います。そうなると、なるほどいま外貨準備高がふえて、国内は資金がだぶついてしまった。だぶついてしまったからこれを吸い上げるかではなくて、どうもその外貨準備高の性格を考えると、何とかそれを使ってしまいたい。景気はすでに引き締めではなくて、過熱とはいかないまでも、景気浮揚させるための政策ということが常に中心になっていく。したがって、外貨準備高がふえたということは、預金準備率という発想とはちょっと違った別の政策ということにつながってくる。その意味で、これは日をあらためて伺うのですけれども、もともと非居住者問題から出発して、何とか短資の流入攻勢から守ろう、その気持ちはわかるのですけれども、これを預金準備率全体として引き伸ばしてしまうと、それは一言で言って、引き締めに対する金融政策手段ですから、とにかく外貨準備高がふえたということは、どうやって外国の品物をうんと買おうかという話になっているものとはくっつかない。この辺で外貨準備高がふえたということを国際経済との見合いにおいて、どうとらえていったらいいのか、この点御意見だけ伺って質問を終わりたいと思います。
  102. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 確かに御指摘のように、これからは金融緩和ということを基調とする政策運営を行なわなければならない。その緩和をやらなければいけないときに、締め道具をつくるとは何事かという御指摘かと思います。その点は実は各国ともここ二、三年急いでこの準備預金制度を拡充強化いたしました理由は、まさに国際的に緩和をせざるを得ない状況になり、その国際的緩和というものは、主として金利手段によらざるを得ない。そこで金利緩和しておいて、それを締める道具が何にもないでは、今度は非常に困ることになる。そこで伝統的な三手段と呼ばれますオペレーション、公定歩合、準備預金という三つのうちで、直接金利をねらいとしておりませんのは準備預金だけでございます。したがいまして、この準備預金制度を急いで拡充いたしまして、国際的な金融緩和の要請、これに対する備えを急いでつくったというのが、まさにここ二、三年の各国の行き方でございますが、それと同時に、あわせまして短資の流入に対する対策ということも、ここ二、三年各国ともこの準備預金制度の拡充強化によってやりておりますが、その二つの目的がございますので、外貨準備が多くなるとか、金融緩和政策に移行せざるを得ないとかいう要請にまさに備える、そのための一つ対策として考えられているわけでございます。
  103. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。次回の委員会は、三月九日午前十時から開会いたすこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十六分散会