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参考人(
森田定市君) 私、東海大学の
森田でございます。
私の専門は土木工学でございまして、現在担当いたしております土木工学の中の専門分野は土質、基礎工学でございます。先ほど
平田参考人から、私がここで御説明申し上げたいと思ったことの大部分は申されたのでございますけれども、私の専門の
立場に立ちまして、少し御
参考までに
意見を述べさしていただきたいと思います。私は、突然非常にこの重要な席で、ひとつ
参考人として
石油パイプラインの
安全性、それからその施工と、そういった方面について説明をしてくれと、こういう依頼を受けたのでありますが、つい二日ほど前のことでございまして、十分な資料の整備もできておりませんけれども、一応私が感じたままのことをこの席で申し上げさしていただいて、何らかの御
参考にでもなれば幸いかと考えるわけでございます。
ところで、現在考えられておる最も安全な、しかも、最も高能率の
石油輸送方式は何かということを私、第一番に考えてみました。御
承知のように、
石油の使用量は
昭和四十六年度で二億キロリットルに達しておると、五十年度では三億と、六十年度では七億というような予想さえついておるのでございますが、その間にありまして、一方、
交通事情は御
承知のように非常に錯綜しております。現在
わが国で用いられておる
タンク車による
輸送方式、あるいはまたタンクローリーによる
輸送方式は最も安全であるかといいますと、これについてはわれわれとしても反省せなければならぬ段階にきておるのじゃないかと考えるわけであります。
米国では、
石油パイプラインの
輸送方式はすでに百年の歴史を持っております。
欧米におきましても二十数年の歴史を持っておるわけでございますが、その間
米国におきましても、
欧米におきましてもいろいろな事故にもあっております。そのたくさんの事故の例を取り上げましてこれに対する対策を考えてやることが、現在われわれとして考えられるやはり一番安全な
方法の
一つではなかろうかと考えるわけであります。
次に、
石油パイプラインの
輸送方式は絶対に安全であるかということでございますが、これはもう先ほど
笹生先生から話がございましたように、私は、絶対に安全であるということを断言することはとてもできないと思うのでございます。しかし、今日の科学
技術、われわれの土木
技術も長足の進歩をしておりまして、また
一般の科学
技術も、御
承知のように非常な進歩をしておる。それで私らとしては、過去に起こった数々の事例を取り上げまして、その原因を究明し、そしてそれに対する対処をしてやるならば、少なくとも現在と比較して問題にならないほどの、被害を小さくすることができるのじゃないかと、そういうふうに考えておるわけでございます。
まず、前置きはそのぐらいにいたしまして、それでは事故防止と対策についてまずどういうことをやるべきかということでございますが、私は、
敷設地域に対する地質学的な
調査を十分にやってほしいと、こう思うわけでございます。すなわち断層地帯を避けろ、地すべり地帯を避けろ、極端な軟弱
地盤は避けるべきだ、こういうふうに考えております。幸いにしてこの関東地区は、大きな断層が起こりそうなところも地すべり地帯もあまりありません。で、私は、そういう地質学的な
調査によってほとんど関東地区においてはそういう地域をある程度は避けることができるのじゃなかろうか。しかも、小さな地すべりと小さな断層というのは日本全国至るところにございまして、とてもとてもその小さな断層を避けることはできませんが、それに対しては小さな断層だったならば、いわゆる岩石工学的にも土質工学的にも十分な、そういう危険が起こらないようにする
方法はございます。そういう
方法をとるべきだ。しかし、地すべり地帯についてはなかなかたいへんでございますので、なるべくこれは避けたい。それから極端な軟弱
地盤における
沈下というものは、決して極端に急速に起こるものではございません。しかし、これはしろうと目にはわかりませんが、非常に長い年月の間に徐々に起こってくるのが軟弱
地盤のいわゆる圧密
沈下でございます。
この
沈下は極力避けるということになりますと、どうしてももうすでにその圧密
沈下の大部分が終了しておるところの
鉄道の線路沿いとか、
道路の
道路沿いとか、こういう地域を選ぶことによってその
沈下の大部分は避けることができます。ただし、あとでこれは申し上げたいと思いますが、その近所に大きなビルディングをおつくりになる。そしてそこへビルディングの地下の深いような
工事をおやりになる。そういう場合にはよほど
注意をしてやらないと急激な圧密
沈下が起こりまして、そして東京都内において所々かしこに起こっておるような、ああいう惨事が繰り返されるおそれもないとは断言できないわけでございます。で、要するに、私はこの項では、
敷設地域の地質学的な
調査を十分にしろと、こういうことでございます。その
内容は断層、地すべり、極端な軟弱
地盤をクロスする場合には、そこをなるべく避けたい。避けられない場合には、それに対応する
措置を講じろ、こういうことでございます。
次に、
設計の問題でございますが、
設計は先ほど
平田参考人からの話では、四〇%、安全率を二・五と、こういうふうにおっしゃっておりましたが、けっこうなことだと思います。
欧米その他におきましては、一・四から一・七ぐらいの安全・率をとっておりますし、これは二・五という安全率だったならば十分じゃないかと私は考えております。
次に、使用
材料でございますが、使用
材料はこれも私らが若いころと違いまして、
材料の品度というものは非常に高品位の
材料が盛んにできております。なるべく弾性係数の大きな
材料を選びたい。聞くところによりますと、API5LX−X52というのが約四十六キログラム・パー・ミリメーター・スクエアでございますが、それからSTP・G−38、これは三十八キログラム・パー・ミリメーター・スクエアでございますか、こういった良質の
材料をお選びになる。やはり一番事故の起こりやすいのは、弾性係数の小さな、いわゆる昔の鋳鉄管、水道管等に使っておる鋳鉄管、ああいうものが一番フレキシブルでなく、こわれやすい
材料でございますので、なるべく弾性係数の大きな
材料を選ぶということも
一つの
方法ではないか。
材料選定上の重要な
条件の
一つであるというふうに考えております。いわゆるフレキシブルな、なるべく弾性係数に富んだ
材料を選ぶ。
次に、
材料の加工
検査という問題でございます。いかに良質の
材料を選んでも加工の
方法が悪かったならば問題になりません。したがって、いわゆる
材料の加工
検査、そういうものに十分
注意してほしい。
第一に、その
パイプの中を流す
石油でございますが、できるだけ腐食成分を除去されるならば除去してほしい。それから
材料の内外面は、先ほど
平田参考人からの話もありましたように、十分塗装してほしい。そして最近非常に発達しておりまする
電気防食装置をできるだけ採用してほしいということでございます。過去におきまして、
欧米並びに
米国における事故の全体の六三%というのが大体
材料の腐食による事故によって起こっておるということは、いろいろの資料にも示してあるとおりでございますので、なるべく
材料の腐食を避ける。特に
地下埋設物につきましては、一々の
検査というのはなかなか困難でございますので、そういう腐食をしないような
防食方法を十分考慮してほしい、こういうことでございます。また、場合によってはビニール等のカバーをしてほしい、こういうことによって腐食を防ぐ。
それから
溶接でございますが、先ほども非常に詳しい説明がございましたが、
溶接は私らの若いころは、
溶接といえば
溶接工の
技術にたよる以外になかったわけでございます。インスペクションの
方法もほとんどありませんでした。しかし、現代における
溶接技術は非常に進歩しております。そしてまた、
溶接個所に対するエックス線等のインスペクションの
方法も非常に進歩しております。したがいまして、
溶接は自動
溶接によって裏波が生じるような、ていねいな
溶接をやってほしい。それから
溶接部のいわゆる
検査——インスペクション、そういう問題につきましては十分エックス線等の写真
検査等をやっていただきたい。そしてそういうちょっとした
欠陥がないようにしてほしいとこういうことでございます。そして最もしろうと目にはわかりやすい、高圧による水圧実験等も各区間別に切りましてやっていただいたほうが私はいいのじゃなかろうかと考えております。そして先ほど申し上げましたように、
パイプの故障による事故というのが非常に多くありますので、この点については
材料の
選定とともに、
材料の加工
検査という面に十分重点を注いでやっていただきたい、こういうふうに考えております。
次に、施工の問題でございますが、先ほど
原則として地中
埋設物とするという話がございました。これは非常にけっこうなことだと思います。耐震的に考えましても非常にけっこうなことであります。しかし、
埋設部の深さでございますが、これはあまり深いとどうかすると
地盤と一緒に動きますから、そうなりますと
地盤の弾性係数と
パイプの弾性係数が合わない場合は、事故の起こる原因をかもし出すおそれがあります。それかといってむき出しにしておきますと、たとえば列車が転覆したり、あるいは自動車が衝突した、そして
道路のわきにころがった、そのためにむき出しの
パイプはこわれるおそれがあります。どうしてもある深さだけはいけないわけにいかない。私は、最近やりましたコールゲート
パイプの実験によりますと、コルゲート
パイプの上にトラックを通しますと、これはもうたちまちぺしゃんこになっちゃうんです。ところが、良質の砂で一メートルほどカバーいたしてやりますと、カバーした砂のいわゆる突き固めの
状態を十分よくさえしておけば、どんな大きなトラックでも平気で通ることができるわけです。それで、ただ地中に埋め込むというんじゃなくて、その埋め込みの
方法についても十分考えていただきたい。そうしたならば、おそらく自動車や列車転覆等による事故も、ほとんど大部分は避けることができるんじゃなかろうかと、こういうふうに考えております。あまり深くすること——深くすればいいじゃないかということは、ひとつ
地盤の
状態と、そういったことを考え合わせた上でその深度をきめてほしいと、こういうことを私は特に申し上げておきたいと思います。
それから、非常に住宅の密集地帯とか、こういうところにおきましては、
ケーシングとか防護壁、あるいは防護板等で保護すると、こういうことも
一つの
方法であろうと考えております。
それから、いかに
埋設とは申しましても、あの長いところを
敷設していきますと、途中に川もあります。橋梁もあります。その場合にどうしてもむき出しになっちゃう。そういう場合に、橋梁からブラケットを出して取りつけるわけですが、その橋梁が、いなかに行きますと、もうあしたにでもこわれそうな橋梁もたくさんある。そういうところについては十分ひとつ
検討していただいて、やはりフレキシブルな——弾性に富んだ施工の
方法を考慮することによって、その被害は避けられるんじゃないかと、かように考えておるわけでございます。先ほども申し上げましたように、とにかく関東地区は、地すべりとかそれから断層とかということよりも、むしろ軟弱
地盤地帯が非常に多くございますので、これに対しては先ほども申し上げましたように、
道路敷を利用するとか、
鉄道敷を利用するとか、そして
外部のそういう
交通事故に対する防護に対して十分考慮されて、そして
埋設されるけれども、その
埋設方法についても、十分な土質力学的見地から
注意してほしい、こういうことでございます。
次に、管理と
保安の問題でございますが、これも先ほど
平田参考人から十分御説明がありましたように、私はやはり自動
漏洩検知装置を必ずつけてほしい。これはもう簡単にできることでございます。結局、少しでも漏れますと管の内部の油圧が下がりますので、これがすぐわかるわけです。そういう自動
漏洩検知装置を必ずつけてほしい。それから、そういうことがあったならば緊急に自動的に遮断する緊急遮断
装置もつけるべきじゃないか。それから、これはまあどうせ
パトロールをされるようになるでしょうが、そういうときには
検知孔等によってその
漏洩の
状態を探知する、こういったことも——これはもう前の
二つがあればたいして心配はないと思いますけれども、一応念には念を入れてこういうことも考えておく必要もあるかと思います。
それから、
地震等に対する問題ですが、特に
地震のことについて話してくれという話もございましたが、関東地区は特に
地震は非常に、私が住んでおった九州なんかと比較して多くありますが、かといって、以上私が施工面において説明いたしましたようなこと、それから、地質学的のいわゆる
調査を十分やってそれに対処するようなことをやっておきますと、私は、そう
地震に対して、大きな、五メートルも六メートルもあるようなひび割れば、沖積層の非常に厚いこの関東地区にはおそらくそういうことはないと、私はそういうふうに考えております。また、大きな
地震がゆったならば、ある限度のマグニチュードに対しては自動的に全部とまるような、いわゆるコントロール室からの操作によって全部をとめるような
装置をやるべきである、こういうふうに考えておるわけでございます。
それから保守の問題でございますが、先ほど来話がありましたように、その場所の標識を十分明らかにしておくとか、それから火気厳禁の標識をつけておくとか、
パトロールをやらせるとか、こういうことも大切であります。しかし、私は、最もこれのいままでの事故の多い事実を調べてみますと、一番多いのは、先ほど申し上げましたように、いわゆる
パイプの腐食による事故と、それから他の
工事による事故、これはもう非常に多いかと思うんです。で、他の
工事による事故については十分
注意してほしい。
結局、先ほど申し上げましたように、
地盤沈下、
地盤沈下といっていますけれども、これは平常の
状態ではもうほとんど
沈下しないようなところに、圧密も終了しておるようなところに、たとえば大きなビルディングをつくってそこで水を揚げた、そうしますと、そこは急激に
沈下します。そういうときには他の
工事のいわゆる関連者、あるいは監督官庁等の横の
連絡を十分やってほしい。
鉄道敷はこれは国鉄のなにだと、
道路敷、
道路沿いのほうはこれは建設省
関係だと、こういうやはりセクショナリズム的な考え方で運営したならば、最も事故の多い他
工事による災害というものが起こり得るかもしれぬと思うわけです。そういう点については、ひとつ最高
責任者であられる通産省におきましては、十分な横の
連絡をとっていただいて、そうして他
工事によるこういう災害を防ぐように特に
注意をしていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
なお、時間がございましたならば、部分的の、
技術的のこまかな問題については、私の知れる、私の研究いたしておる範囲におきましては御回答申し上げるつもりでございます。
時間がだいぶん早くなりましたけれども、私の一応の御説明を終わらしていただきます。