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国務大臣(
田中角榮君)
産炭地というのは、確かに困難な条件にあることは事実です。これは、石炭が出たということでもって
工場ができ、村ができ、部落ができた次第でございますから、石炭が終閉山すれば石炭を掘ったものを出すというわけでございまして、これはすべての
工業立地としての最優先的な条件をそろえているものではない。第一、港はないし、それはいいところがないんです。しかし、
産炭地というのはそれなりの設備もあるし、
地方自治体も存在しますし、これは終閉山ができましたときには相当部分がまだ高度
成長の中にございました。ですから、東京や大阪その他県庁の所在地に出て働くことができたのです。だから社会的混乱もなかったわけです。ところが、今日のように五%くらいしか
経済が伸びないということになると、なかなか東京や大阪に出てというわけにまいらないわけです。これは、出てくるというときに、いま追跡調査をやってみますと、いろいろな
数字が出てくるのです。これは美唄炭鉱を
一つとってみてもわかるのです。八万人が六万人になり、やがて四万になり二万になろうとしている。この人たちを追跡調査しますと、みんなほとんどが大きなところへ出ているわけです。東京とか大阪とかというところへ出ているわけです。家族全部で
労働できる、就業の機会が多いということで。そのために地価が上がり、そのために住宅を幾らつくってもどうにもならない。そのために公共
投資の
投資効率が非常に悪くなるということを
考えると、これはたいへんなことなんです。先ほどもちょっと述べましたが、
全国で車が一台ふえると五十万円の道路維持補修でできるものが、東京、大阪は三十倍の千五百万円かかる。これは事実なんです。千五百万以上なんです。そういうことから
考えますと、やっぱり国の
政策としては、
産炭地の振興というようなことは当然
考えなければならぬわけです。この町ぐるみ、家族ぐるみ出てくることによって、五分の一は社会保障対象
人口がふえるわけですから、だから
投資効率という面からだけ
投資を
考えるというわけにいかない。
だから、先ほども石炭部長述べましたように、効能があったんです。六万三千人の人が雇用されたし、それだけではなく、
昭和三十五年の出荷額を見ますと、名目で一兆円だったのです。ところが四十五
年度は、
産炭地域全体の
工業出荷額は三倍の三兆円を名目こえているのです。ですからその
意味では、
産炭地域振興
事業団の
メリットはあったのです。その
意味ではありました。三兆円の名目
所得は、これはもし
産炭地域
事業団がなかったらもう非常に低いものになったと思うのです。その
計算は、私は大ざっぱでございますができるのであります。先ほど申し上げたように、団地はつくったけれども、まだ団地はつくったまま遊ばしているじゃないか、
地方公共団体、利息払っているじゃないかというような面は確かにあります。ありますが、しかし、それなりに
産炭地域振興
事業団が
投資をし鉱害復旧を行ない、整地をし、団地をつくって、さあいらっしゃいというところまでやった効果は、少なくとも三十五年、まだ
産炭地が動いておったときの
工業出荷額の三倍、現に四十五
年度は計上しておりますから、それだけの理由はあったと、
メリットはあったということは認めざるを得ないと思います。ただ、
事業の誘致だとかいろんなものからいうと、もっと土地が売れて
工場が来ると思ったら来なかったじゃないか。それはまだ、東京や大阪の県庁の所在地に集まるほうが
メリットがあったのです。今度はそうじゃないのです。それは東京でもって石炭をたくといったら、これは
公害でもって絶対だめだと、
産炭地なら石炭をたいても、暖房用の石炭をたいてもよしということになりますし、案外見直しが行なわれてきたということです。
私は
産炭地域振興事業団法でも、それから新
産業都市建設促進法でもいろんなものを見ますと、どうももう少し、まあこれは財政的にもいろいろな制約がございますが、やはり外国でやっておるようなテネシーバレーにしても、いまの
ニュータウン法にしても、ブラジリアにしても、やるときはもっと自然に流れるのじゃなくて、急激に流れが変わるような
政策的な
段階があるんですな。そのためには少しゆるかったかなという気もしないではありません。しかし、それはそれなりに批判もあるが、実績もあったわけですから、今度はこれから大きくなる
工場というものは新しい
全国の
工場立地、
工場の
適正化をはからなければいかぬ。政府はそのために、こういった
法律を用意いたしました。それで一番初めは、
産炭地の振興をはかっていくために二重写しになります。こういうことでありますから、これからは
産炭地の振興も非常にはかられると思うんです。それで、いままでの例を見ますと、進出企業は一億円以上のものが一一%、九十企業にすぎない。大部分が中小企業である。北海道等立地条件に恵まれない
地域については、必ずしも企業進出が円滑に行なわれない等の問題がございます、これはほんとうです。ですが、今度こそ北海道とかそういうところに水もつくってあげます、それから
固定資産税もまけます、金も貸します、道路もつくります、鉄道の駅もつくります、こういう
工場進出が可能なような誘導
政策を行なうわけですし、大企業そのものも
地方にいけば縫製
工場だけが
産炭地に行くということではなく、今度は軌道に乗ると思うのです。乗せなくちゃいかぬと思うのです。ただ、もう
産炭地の
地域を永久にそこに閉じ込めておくために、いかなる犠牲を払ってもやるんだということではないのです。
産炭地というものは、ある
一つのレベルまでの
政策を行なえばちゃんと社会的な活動ができ、
日本の
経済発展に貢献できるという限度があるわけでありますから、そういう限度を
考えながら、
産炭地だからどこまででも社会保障と同じようにつぎ込むというのではない。そういうことではなく、いままで
産炭地域振興事業団法等でもって
産炭地の振興をはかってきた
法律の精神を見守りながら
産炭地振興をやってまいろう、こういうことでありますから、そのようにひとつ理解していただきたい。あなたの言われることはよくわかるのです。
産炭地だからといって、どこまででも税金をつぎ込んでやるとか、そういう
考えではないのです。しかし、この
法律は
二つ合わせれば
産炭地がりっぱになる。こういうことですので、御理解いただきたい。