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1972-06-08 第68回国会 参議院 商工委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月八日(木曜日)    午前十時三十六分開会     —————————————    委員の異動  六月七日     辞任         補欠選任      阿具根 登君     鶴園 哲夫君  六月八日     辞任         補欠選任      鶴園 哲夫君     阿具根 登君      中山 太郎君     金井 元彦君      山本敬三郎君     梶木 又三君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大森 久司君     理 事                 川上 為治君                 剱木 亨弘君                 竹田 現照君                 藤井 恒男君     委 員                 赤間 文三君                 植木 光教君                 小笠 公韶君                 大谷藤之助君                 梶木 又三君                 金井 元彦君                 矢野  登君                 山本敬三郎君                 渡辺一太郎君                 小野  明君                 大矢  正君                 鶴園 哲夫君                 林  虎雄君                 中尾 辰義君                 須藤 五郎君    衆議院議員        修正案提出者  小宮山重四郎君    国務大臣        通商産業大臣   田中 角榮君    政府委員        経済企画庁総合        開発局長     岡部  保君        環境庁自然保護        局長       首尾木 一君        通商産業政務次        官        林田悠紀夫君        通商産業大臣官        房長       小松勇五郎君        通商産業大臣官        房参事官     増田  実君        通商産業省企業        局長       本田 早苗君        通商産業省企業        局参事官     田中 芳秋君        通商産業省鉱山        石炭局長     莊   清君        通商産業省鉱山        石炭局参事官   飯塚 史郎君        通商産業省鉱山        石炭局石炭部長  青木 慎三君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○工業配置促進法案内閣提出衆議院送付) ○産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○石油パイプライン事業法案内閣提出衆議院  送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員移動について報告いたします。  昨七日、阿具根登君が委員辞任され、その補欠として鶴園哲夫君が選任されました。  ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止
  3. 大森久司

    委員長大森久司君) 速記を起こしてください。     —————————————
  4. 大森久司

    委員長大森久司君) 工業配置促進法案及び産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 まずお伺いいたしたいのは、昨年の秋十月に出ましたいわゆる工業配置田中構想というものと、それからいま法案で出ております再配置法というものとの間には、たいへん重要な問題について大きな変化があるわけですが、その問題についてまずお伺いをいたしたいわけです。  で、一つは、初め出ました田中構想と俗に言われましたときには、その背景として経済成長率を約一〇%、そして六十年にGNPが三百四兆円という、こういうような大規模経済成長を維持しながら過密の問題を解決し、過疎を救済をしていくという、そういう工業配置を行なう、こういうことだったのですが、この一〇%について、後ほどにも関係をいたしますので、まずお尋ねをいたしたいと思います。
  6. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、間違いがあるといけませんので、率直に申し上げておきますが、一〇%は、一〇%成長を行なうという前提試算をした数字ではないと思うのでございます。これは一〇%の潜在成長率を持っておるということで試算をした数字でございます。昭和二十九年から三十九年までの十カ年は一〇・四%の平均成長率でございました。三十五年から四十五年までの十カ年は一一・一%の高い成長率でございました。そして去年が五%以下というようなものになったわけでございますが、きょうあたりの経企庁の数字をまとめてみますと、五%をこしたというような数字も出ておりますが、いずれにしても半分ぐらいの成長率であったことは事実でございます。でございますので、二十九年から四十五年までを申し上べますと、十六年間の長きにわたって高い成長率を続けてまいったわけです。そういう意味で一〇%成長ということは、潜在成長力というものが存在をする、こういうことを想定をしたわけでございます。  もう一つは、農業人口——いま農業人口中心にして考えますと、総合農政が進められております。一次産業比率は百年前の九〇%から一七・四%というところまで落ち込んでまいりました。しかし、アメリカの四・四%に比べてまだ非常に高い水準にあります。また、拡大ECの六%に比べても一〇%以上高いわけでございます。そういう意味から考えますと、一次産業比率がもう一〇%程度下がるということは、これはどうも考えざるを得ないのであります。下げないで二次産業、三次産業と同じ国民所得を得るとしたならば非常に一次産業収益率を上げなければならない。一次産業の製品の価格がうんと上がらなければとてもそうならないわけでごがいますから、そういう意味では一〇%以上のまだ人口移動ということが考えられる。そういうことを考えてずっと計算してみますと 一〇%の潜在成長率——成長はやろうとすれば可能である。一〇%にすると四十五年価格で三百四兆円である、八・五%にしますと二百四十八兆円である、七・五%にしますと二百十六兆円である、五%にしますと百五十二兆円である。こういうふうに申し上げた数字でございまして、三百四兆円を実行しようとして立案したものではないということだけはお間違いいただかないように正確に申し上げておきたい、御理解いただきたいと思います。
  7. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 移転工場に対しまして固定資産税を二十五年間免除する、地方自治体に対してはこれを補てんをする措置をとるというのが出まして、二十五年間ということはたいへん画期的だということで、したがって再配置ということについての期待を持たせる面があったのですが、これが三年になったということ。それから、過密地帯から工場を移すための付加税というものをつくった、そしてこの付加税を再配転の財源にしていくんだと、こういうことであったわけです。工場分散する場合に移転先でいろいろな奨励政策をとる。しかしながら、過密地帯からこれを出していくという、そういう政策的な力がない。それに対してこの付加税というのがそういう力を持つというところから、これもたいへん画期的だということだったのですけれども、これが消滅するということだと思うのです。ですから、再配置田中構想というもので画期的だといわれた二十五年、それから付加税という二つとも非常に期待に反することになった。これからもこの問題は尾を引くのではないかというふうに思いますから、この二つがこうなった原因について伺いたいと思います。
  8. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘のとおりでございまして、この面からは非常に後退をしたわけでございます。後退をしたのですが、これはスタートのときの後退でございまして、将来、来年度にも当初企図したこれらの政策は実現をいたしたい、また、いたさなければ実効をあげることができない、こういう考え方でございます。  まず、この工業の再配置というのはなかなかむずかしい仕事でございます。ですから、これを行なわなければならないということは、もう何人にも理解をいただけるところでございますが、これを促進するためには相当な政策を行なわなければならないということでございます。その中には、いま御指摘のございましたように税制でもって傾斜をつけるということが一つのポイントでございます。それは地域を三段階に分けまして、過密なところからは追い出し税、それから中間地帯現行税制のまま、誘導地域には税の減免をする、こういうことでなければならない。そうすれば、これは傾斜がつきますから、水は低きに流れると同じように過密過疎との調整が行なわれるはずでございます。そのためには税制上の措置をしなければならなかったわけでございますが、もう一つ固定資産税減免というときに現行地方財政の中でもって操作をするだけではとてもたいへんでございます。そういう意味減免をする固定資産税その他の税は補てんをしなければならないという問題がございます。これは補てんをするには相当な財源が必要である。その二つの問題を解決するために考えましたのが特別会計の創設でございます。特別会計には何を入れようかというのは、これはいまちょうど法人税の一・七五という暫定税率がございます。これはことしの三月でもって廃止をするものでございましたが、暫定とはいえそのままになりました。四十七年度財源の見通しが暗かったという問題が一つございます。景気が悪かったということもございまして、まず、この千五百億に及ぶこの税を整理をすることができなかったということに大きな原因がございます。私が企図いたしましたのは、この税額が千五百億でございますから——去年は千四百億、ことしは千五百億とラウンドに見れるわけでございます。千五百億と同じ額を一般会計から財源を入れれば合わせて三千億——三千億くらいでスタートすれば、昭和六十年にこれが二兆円から三兆円になる。こうなると、この法律が企図しておる政策効果は大体上がっていく、こういう考え方スタートを三千億と見たわけでございますが、その結果はその十分の一、三百億でスタートする。しかも十月一日施行でございますから、平年度三百億でございますが、スタートは百五十億というので、どうもほんとうに御指摘のとおり後退をしたといわれてもしようがないわけでございます。しかし、入れものと制度スタートさせないと計画もすぐできるわけではありませんし、いろいろPRもしなければなりませんし、青写真もかかなければならないということで、制度スタートさせることに重点を置こうということで、平年度三百億、初年度は半年間の予算百五十億ということでスタートをすることにいたしたわけでございます。ですから、来年度になれば特別会計の問題も、特別財源の問題も、また補てんの問題も片づけたい、片づけなければならない、こう考えております。  それから税の問題も、自治省過密地帯における自治体の財源確保のために事務所税ということを考えておったわけであります。私たちが考えておったその追い出し税というものと自治省考え事務所税と、それからもう一つ公害税という問題が世の中で議論をされておりました。これらの問題はもう少し調査を必要とする。ことしのこの制度スタートの中で全部解決するわけにはまいらないというようなことで、表面的に非常に後退したようなことでございます。二十五年が三年になったわけでございます。この三年は、恒久的なもの、すなわち二十五年を実現するための結論というものを出して、三年から二十五年に切りかえていこうと、こういう考え方でございますので、当初企図しておった政策をすべてあきらめたというものではないのでございます。これを実現するためには暫定的にこのような状態スタートしなければならない。最終的にはロンドンで行なったようなニュータウン法というようなものに近い、相当強い政策を並べたてないと、真に実効をあげることはできないということを前提にいたしておりますので、これからひとつ私は前にも申し上げましたが、本法ができましたならば、来年度までにはこれはもう各党でひとつ議論をしていただいて、この修正案はやっぱり超党派議員立法をもって行なうというくらいのお力添えをいただければ、これはりっぱなものになる、また国内政策の基幹になる、言うならば行財政制度の改革もこの法律から出てくるということを考える、そのぐらいな考え方を持って推進をしなければならないとさえ考えておるわけでございます。
  9. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 スタートはしたと、まあまず制度をつくりスタートすることが大切なんだと。そしてまあ来年になってこれをひとつ実現していく、これなくしては再配の問題は進めることができないんだというようなお話ですが、そのとおりだと思うのです。ですが、制度はつくった、発足させよう、あとあとだという感じがしないでもないわけなんです。まずその二十五年という年限ですね、まあたいへん長期償還期限になると思うのですが、とにかく昭和六十年を一応めどにして、二十五年の長期——二十五年を考えられた。そこら辺、どうもいま私の受け取っている感じでは、大臣アトモスフィア——雰囲気かたいへんあるような気がするのですが、どうですか。違いますか。
  10. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 六十年展望というのは、六十年を展望しますとこのようになりますので、いまにして政策を展開せずんばということで六十年——ちょうど六十年は新経済五カ年計画目標年次が六十年になっておりますので、これはまた六十年ということは西暦にしますと八五年になりますから、六十年という展望数字がいいのです。これは西暦に直すか、どっちかに直さないと、どうも統計が取りにくくて困るようです。外国との折衝でもって説得力がなくて非常に困るのですが、いずれにしても六十年は八五年である。八五年というと、世界石油論争目標年次が八五年でございます。八五年になるとアメリカ石油産出国から石油消費国に転化するのではないかという議論も全部八五年でありますので、六十年ということで計算をしてみるということは説得力あるだろうということでございます。しかし、十年までで全部やってしまって、六十一年からはかまわんでいいというものではないわけで、これは長く続くわけでございます。そうすると、分散ということを進めていく——まあ分散になってはいますが、いまはその面から見ると工業分散でございますが、これは通産省が四十二年につくった工場立地適正化法とも似たようなものでございます。もう一つ言えば、全国二次産業平準化政策とも言えるわけでございます。もっと言えば国土総合開発総合利用計画法とも言えるわけです。まあそういう意味で六十年を展望しての政策スタートさせるわけでありますが、これから——いままでは集中のメリットかあるということでもって集中してきたけれども、今度新しい投資は別なところでおやりなさいよ、いまあるものでさえも移転を促進します。というのは、相当長期投資になりますので、これはまあ税でもって固定資産税などでやるとすれば、やはり世界にある例を踏襲しなければいかぬ。これはいつも申し上げておりますが、イタリアの労働者住宅法などは簡単な法律になっているわけです。国有地を無償で提供して生保及び損保の剰余金労働者住宅以外には使ってはならないそのかわりに固定資産税は二十五年免ずる。だれが見てもわかる法律であります。日本法律専門家でなければわからぬ。立案者自体でも条文がどこにあったかなというようなめんどうなものでございますから、あまりそういう法律は望ましいことではないと私は考えております。だから、他国でそういう成功をしていることから考えると、固定資産税の免税は二十五年、四半世紀ということがやはり一つ目標になるということで、私は概念的に二十五年と言ったわけです。しかしこれは皆さんお互いに話し合って、二十年でいいのか、十五年にしてスタートさせるべきものかは、これからの固定資産税問題——たくさん法制上の問題か残っておりますから、こういう問題を整理する段階において、固定資産税の評価がどうなるのか、固定資産税率というものがどうなるのかというような、いろいろな制度上の変革がいま行なわれつつあります。だから私が二十五年と原案で言ったのは、それなりの理由をもって申し上げたわけでございますが、これはまあ三年では困ることは事実なんです。三年ではいきません、こんなことでは。ですから、三年と二十五年との間をどのくらいにするのか。日本は二十五年なんてはんちくなことを言わないで、三十年にしたほうがいい。十進法で十年、二十年、三十年としたほうがいいという議論も生まれるでしょうし、やはり二十年がしかるべしだとかいう議論は、これは来年の税制改正までにはどうしても詰めなければならない問題である。これは地方自治との問題もありましたので、どうもこれを合理的に詰めることはできなかったということでございます。
  11. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 初めこの再配置構想が出ましたときに、コミュニティーの形成というのが出ていますね。つまり工業配置をして、そうしてコミュティー形成を非常に大きな眼目にしておられるという構想があったのですが、まあ新産都市といい、旧全総あるいは新全総、そういう中で新産都市というのは何かそういうような都市をつくるのだという考えは出ているのですけれども、実際はそういうことには全然なっていない。一体新全総、旧全総というのは、だれのために何のためにあるのだというような、住民の意見もはっきり出てくるくらいになっている。その意味でこれは工業配置一つの大きなねらいとして、そういう新しい工業都市をつくるのだ、コミュティー形成していくのだという考え方は非常に重要だと思っておったのですけれども、そういう考え方がまた再配置構想の中からはなくなっているように思えますし、まあ地域開発、あるいは新全総、旧全総を見てみまししても、確かに目的というのは、これは健康で豊かで、そうして、いい生活環境をつくるということが目的だと思うのですけれども、そういうものがどうも通産省ワク外だということではずれるんじゃないか。最も大切なものがそういう政治の中あるいは行政機構の中から抜ける。あるいは抜けなくてもどうも力が弱い。自然を守る、環境を守るということだって、これはこれからたいへん大きな政治課題と思うのですけれども——また現実の課題なんですけれども、どうもそういうものに対する行政機構というものがどうも弱いという感じを持っているわけですけれども、この新しいインダストリアルニュータウンというコミュティーをつくるんだという構想がなくなったということとについて、また私がいま申し上げたようなことについて、大臣はどういうお考えを持っていらっしゃるか、簡単にお伺いします。
  12. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは工場の再配置、言うなれば工業立地適正化ということをうたっておる法律でございますが、実行していく場合に、ただばらばらに農村地域工業導入促進法のように、農村工場を入れるんだということだけではないわけでございます。これは全国的に六十年を展望して二次産業比率平準化がはかられるという一つ理想図というものを頭に描いておりますから、その実態をずっと詰めてまいりますと、産炭地に下請だけが行った、だから国際経済の波動には非常に弱い、ちょうど産炭地に進出をしたその直後にまた廃業しなければならないというようなことでは困ると。だから経済的に見てもメリットがなければなりません。そういう意味では経済単位というものをやっぱり考えて、そうして投資を進めなければならないと、こう思います。まあ初めに、百万都市がいいのか五十万都市がいいのか、二十五万都市がいいのかというような問題を考えてまいりますと、大体二十五万ぐらいの都市ということが想定されるということで、一つ青写真をかくために二十五万都市ということで考えられないかと、こういうことでいま計算をしておるわけでございます。二十五万都市というと経済法則にも大体合いそうでございます。それで、そういうような都市というものが中核都市ということで考えられないかということで考えると、全国四十七都道府県の中からいえば五十ぐらいのものが六十年を展望した一つの理想的な姿としてかけるわけです。もう一つは、労働の問題からいってどうなるかと思ってやってみますと、そうすると四十年対六十年で生産規模は非常に大きくなりますけれども、若年労働力というものは明らかに二十年間で三〇%しか拡大しないわけでございます。三〇%の労働人口というものをどういうように調整するかという問題が起こってまいります。そうすると、いまの状態からいうと、全部都会にやっぱり移ってくる。都会に移ってくると、一人の労働者労働力というものに扶養家族——夫婦・子供三人とすると、四人の扶養家族がこう移ってくる。それだけではなく扶養家族として老人までもついてくる。こういうことから考えますと、労働力というものは都市にだけ、もうこれ以上集めても、実際地価の高騰とか、物価の上昇とか、水の不足とか、交通機関の拡充に欠けるとか、投資が非常に非効率的になるとかいう計算をしますと、これは分散をした状態において——いうなれば、いまの生まれ育った家から工場まで通えるとするならば、これは非常にいいことである。特に農業人口を見てみますと、農業人口農業所得以外の所得というものが非常に大きくなっております、六五%にもなっているわけですから。そういうことを考えると、一次産業との調整可能な理想図というものかということを考えると、ちょうど人口七十万ないし八十万の地域——エリアから中心都市に通えるとしたならば、これはもう非常に国民経済全体に裨益することが大きいということで、そういう例をいろんな点から計算しましたら、たとえば山梨県のようなものが考えられるわけなんです。山梨県というものは甲府市、全部が働きに出て全部うちへ帰れるということは、交通網が整備されれば可能であるということになる。こういうものをずっと六十年展望に立って全国配置をすると、一次産業との労働力調整経済調整というようなものが可能であるということで中核都市構想があるわけです。それから適正規模というものを七十万ないし八十万ぐらいに置こうというようなものをこの論文状態においては考え、これからの青写真をかくときには府県知事とも十分相談をし、市町村とも相談をしなけりゃなりませんから、そういうひとつ相談をしながらやりたい。そうでなく自然発生でもってやっていきますと、労働者奪い合いになり、水の奪い合いになり、公害複合公害になるという問題になりまして、そういう意味中核都市構想とか、いろいろなものを想定をしなければ、この政策効果はあがらない。そうでなければまたアンバランスになって非常に不規則なものができるということで、論文としては中核都市構想とか、経済単位とか、いろんなことを想定してございまして、これからこの事業を進め、基本計画を策定する過程においては、まあ現在おぼろげでございますが、そうういうもので地方との調整も全部やって六十年展望青写真を確定したい。確定するときには、いま申し上げた中核都市構想やこれからの新しい六十年展望地方状態——工場分布とか、いろいろなもの、その中で今度知識集約型の産業というものになってきますから、ここは繊維が中心だ、ここは陶器が中心になる、ここはどうだというような、一つのまあさだかなものはできませんが、いままでなかった計画的な青写真というものをかきたいということを当初から考え、いまも考えております。これはこの法律が実行されていく過程において、基本計画を策定する状態においていままで考えられ、検討しておったものが実行されていくと、このように考えていただいてけっこうだと思います。
  13. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまの再配置法、そしていま大臣のおっしゃった構想ですね。まあちょっと言い直しまして、いまの再配置法というものと、それから現在国土開発の基本をなしております新全総との関係ですね、これを簡単に御説明していただけませんか。私の感じとしましては、どうも新全総はだめだということでこの再配置法というものが出てきているのではないかという感じを強く持つものですから、その関係について——ただ新全総工業部面を担当しているのだ、あるいはそれを推進していくのだということではないのではないかという感じがするのですが、伺います。
  14. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 新全総、新全国総合開発計画がございまして、それを改定して今度は新新全総ともいうべきものになると、こういうことでございます。やはり新全総全国総合開発というものは過去の線をずっと引き延ばすと大体こうなったということが主体になっております。ところが去年一年間を考えてみても、とても過去の線だけを引き延ばしているわけにはまいらない、新しくものを考えなければいかぬということになると思うのです。新全総の中でもって一番いい例は、関東地方の例を引くとすぐわかるんです。いま東京で、東京を中心にした半径百キロの円をかく広域首都圏、この首都圏には二千八百万という人が住んでいるわけであります。これが十二、三年後の昭和六十年には四千万人をこすであろう、こういうのが想定される数字でございます。四千万をこしたら、これはたいへんになる。——なぜか。そうでなくても水はない、地価は上がる、物価は上がる、住宅は不足である、こういっているのに、四千万人になったらたいへんであるということは、だれが考えてもわかる。それだけでなく、コンピューターの出しておる数字からいうと、そのときには東京二十三区の中では呼吸できなくなるかもしれぬと。呼吸ができなくなるだけではない、東京の緑はみんななくなってしまうといういま大問題が起きている。それだけじゃない。同時に現時点において毎日の論争になっているのは、環状七号線から中へ車を入れてもいいか、入れてはいけないかということを東京都知事と警視総監が争っているわけです。これは、とめても代替交通機関がいま整備されておりません。地下鉄が整備されておらないときに車をとめれば、国会議員だけ車で入ってくるわけにはまいりませんから、歩かなければいかぬということになる。そんなことは可能でない。だから、やむを得ず乗り入れは禁止できない、こういう次第であります。ですが、それを歯どめをしたらどうなるか。単なる歯どめをしても、二千八百万人——三千八百万人にはなるだろう。そうすると、二十八分の十だけふえるわけでありますが、単に二十八分の十じゃない、これは技術的な計算をすると、えらいことになる。公害とか交通困難とかという問題は、もうとても算術計算ではまいらない。公害については二乗計算になるということでありますから、そんなことば許されるはずがない。そうすれば、新しい立場で六十年展望に立てば、全国の二次産業平準化のような——平準化と言わなくても、もっとやっぱり水も土地も労働力も一次産業との調整も完全に行なわれるという状態における経済発展を考えなければいかぬだろう。これはもう当然のことです。不可避なことです。ですから、そういう意味で新全総というものは、一番初めつくられた全国総合開発計画と比べると、相当合理的な面をもってきた。また自然発生を是認して調整権を幾らか及ぼすというふうなものでなく、これはもう相当計画的に進めなければならぬということであります。私は、なぜかというと、新全総というものに——全総計画に相当関係してまいりましたから、そういう立場で見ておるのでございますが、その中で公害問題だ、労働問題だ、いろいろな関係を一番するのが通産省でございます。二次産業適正化をはかれば自動的に三次産業調整も行なわれるわけであります。都市もそれによって形成をされるわけであります。そういう意味で、まあ通産省がみずからの責任であるところの工場の再配置工場の適正配置というものに対しては、責任ある政策をやらなければならない、こういうことを考えて今日出したわけでございます。ですから、これが新全総計画と完全に一体のものであるということまではいま申し上げられませんが、この法律ができて基本計画がきまるというときには新全総計画の中とぴったり合うように、これはそういうふうに連係は密にして、政府全体が責任を持てるようなものにしたいと思います。経済企画庁が中心になって新全総計画を定めておるのだし、これは通産省が主体になっておるものですから、その間に関連性はありませんなどということであるなら、これはえらいことでございますから、これは確実に新全総計画も内閣の責任である、これも内閣が国会に提案したものでございますので、これが青写真をかくときにはぴたりと二重写しになるように、これはもう私たちも責任を持ってそうしなければならない、こう考えております。
  15. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、こう思っているのであります。産業の立地政策としまして、三十六年の初めに通産省工業適正配置構想を出しまして、これが三十七年から発足する旧全総——私は旧全総と言っているのですが、旧全総の中にそのままはまってしまう。それの基礎をなしてきた。続いて四十三年に同じく適正工場配置構想というのがあって、これが四十四年から発足しました新全総のその中に入ってきた、そういう状況になっておるわけですね。そしてその二つの、旧全総にいたしましても、新全総にいたしましても、これは工場分散して、そして過密過疎を解決するのだ。そして、所得の格差ですね、そういうものを是正していくということだったんですけれども、それが全然逆になっている。過疎はますます過疎になるし、過密はますます過密になるし、格差はいよいよ拡大している。そこで公害は深刻になっているという状態にいまきておるのではないか。その場合に、いま大臣からいろいろ非常に大きな構想を拝見したように、再配置促進法というものが出てきましたから、これは先ほど大臣もちょっと言われましたが、新々全総ということば——いま新全総の再点検というものが始まっておるわけですが、それだけじゃなくて、各方面から新全総についてはいろんな意見が出ておるわけです。ですから、私はこの再配置構想というものは、そういう意味で新々全総というものになっていくのかなという気もしておったわけです。なお、私は、この新全総と、それからいま大臣が出しております工場配置法地域別の生産出荷額の私案を出しておりますね。あれを見ますと、新全総は、結局関東でいいますと、関東は大体現状維持という、昭和五十年を目標にした場合ですね。発足から昭和五十年を目標にした場合、シェアはほぼ同じ。九州にいたしましても、シェアはほぼ同じという構想をとっておるわけですね。ところが、いまのこの大臣の出された構想、これはどういう意味をもっておるのか知らないのですが、通商産業大臣田中角榮という名前で……。
  16. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私案ですから……計算すね。
  17. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 工業配置関係指標というので、数字が並べてあるわけです。この私案を見ますというと、ぐっと引き下がる。つまり関東はうんと引き下げていく、いわゆる過密をうんと解決していくんだと。過疎の代表である九州を言いますと、これはまたぐっと上がる。こういう点からいいますと、いままでの新全総とは基本において違う面があるという印象を強くしているものですから、私は、新全総の今日における失敗——これからの見通しが失敗であるというような立場に立って、新しくこういうような再配置構想というものが出たのではないかという感じを持っておるわけですが、そうでないですか。
  18. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘もございましたように、新全総計画を、全国総合開発計画をやるときには、これは確かに工業配置工場の適正な配置を夢見ながら——夢見るというよりも想定をしながらつくることは事実なんです。ところが、つくったものよりも現実は非常に違ってきたんです。それはいい姿を描いてやってきたんですが——一五%の設備投資か行なわれると思っても、あけてみたら二五%になっておった、三〇%になっておったということで、高度成長が続く過程において、過度集中の速度が当初政府が考えたよりもはるかにスピードアップされておったわけです。ですから全国総合開発計画の中で——このような経済発展の規模の中で、公共投資は二十七兆五千億でよろしいと、こういうふうに見て御説明申し上げたわけです。ところが過度集中をして、われわれが考えたよりも経済がうんと大きくなってしまったものですから、二十七兆五千億のものを五十五兆円、倍に改定しなければならないということになったわけです。倍に改定したけれども、さっぱり交通は緩和されないということで、自然発生状態は政府が全国総合開発計画考えたよりも、もっとこう、アンバランスが大きくなったのです。ですから、全総計画の改定版が必要である、こういうことになっているわけです。そのときには通産省も、新全総にあわせて工場立地適正化法というものを出そうとしたのですが、通産省案は日の目を見なかったわけです。法律案にならない過程において、各省か反対——というよりも各省の意見が熟さなかった。ざっくばらんに言うと、調整ができなかったのです。それで出さなかった。出さなかったうちに、当初政府が皆さんに御説明したときよりもはるかに違う数字になってしまったのです。ですから、いま全国総合開発計画というものをもう一ぺん新しい全国総合開発計画にしたいということで、経済企画庁、各省の意見をまとめておるわけでございます。夏一ぱいにはまとめたいということを考えているわけです。いま御審議をいただいているものは、あまり過密過疎が激しくなっておりますし、いまのままでいけば水も足らなくなる、公害もたいへんである。それだけではなくて、公害投資をこのまま現状においてやると、隣接土地を買わなければ工場進出ができない。ますます土地は値上がりをする。いろいろな現実問題にぶつかっているわけです。水もない、労働者を集めるには全部住宅を提供しなければいかぬ。ますます過度集中になる。それでは先ほど言ったように、関東に全人口の四〇%以上も集まるということを是認してはおれない。それは、おれないということよりも、工場のほうから見ると、コストアップになって、ペイラィンに乗らないようになりますから、どうしても工業の立場からいうと、工業の再配置をはからなければならない。これはまあしかし、通産省は国土の利用というよりも、工業という面からだけ責任を果さなければならないわけでございます。それだからといって、生産第一主義ではならないということになっているわけですから、まあこういう法律を出して理想的な状態で進めていくと、六十年には通産省がかつて計画をした工場立地適正化法に近い効果というものをあげ得るだろう。それはすなわち新全総計画ともマッチさせなければいかぬ、こういう考え方を持っておるわけでございまして、これはこの制度をつくっていただくと、五十年——五十五年ごろになりますと、今度は全国総合開発計画とぴたりと数字が合う。各地における工業指数との間にぴたっと合った——ぴたっと合ったということにもならぬと思いますが、いまのように、こんな違う数字にはならない、こう思います。  いまのままですと、例をあげて言いますと、北海道は新全総ではシェアが三になっております。こっちは五・八に見ているわけです。ところが東北の六は一三・三に見ているわけでございます。そのかわりに関東の二九は二四・九と、五%ばかり落としてあります。東海は一九%一三・七と落としてあります。それはいまの八十兆円が三倍になれば二百四十兆円なんですから、ですから関東もふえないのじゃない、このシェアはいまの三倍になり四倍になったときのシェアですから、関東は少なくともいまの倍とか三倍とかにはなるわけです。ですから、まあ一体この倍になっただけでも、ほんとうに都市機能というものが維持されるのか。トラックは一体動くのかという問題がすぐ計算されるわけです。ですから、そういう意味で、まあ新全総計画よりも東京、大阪、各古屋というような太平洋ベルト地帯の鉱工業生産というものを落とさなければいかぬ、押えなければいかぬ。水もあり労働力もあり、産炭地をかかえているようなところをちゃんと整備をして、どうぞいらっしゃいと待っているのですから——炭住があいているというのですから、そういうところの二次産業比率を高めることがのぞましい。そうすると、その中ではそんなことを言っても、経済計算をして合うのかというと、国が助成すれば合います。じゃ国は社会保障と同じように助成するのかといえば、そうじゃないんだと。これは工場が各地に出てくるために国が負担しなければならない公共負担というものはべらぼうもない大きな数字になっております。全国平均で、車が一台ふえると五十万円の道路の維持補修費で済むものが、東京と大阪は三十倍の千五百万円をこしておる。そういうことになると、これはこのまま無制限に過度集中を許すわけにはいかない。その差額を政策経費として導入することによって環境の保全もし、生活環境も保持できるような二次産業産業比率平準化政策、すなわち工業適正化政策が実現できる、こう考えたわけでございます。
  19. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 どうも私、少しばかり期待を持ち過ぎたような感じですね。いまの大臣のお話をずっと聞いてみますと、なかなか広い雰囲気ですから——ここにあります、ことし出たやつですね。「通商産業大臣田中角榮」という名前で、「工業配置関係指標」、これは一種の大臣の演説材料みたいなもんだね、さっきから聞いていますと。そうじゃないですか。何か少し私は再配置法というものと、それから大臣のしゃべっておられることとの間には大きなズレがあるように思うのですけれどもね。
  20. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはいままで政策を出しますときに、どうも六十年展望のときの数字を明確に説明をしなかったので、そごがあるわけです。あなたが申されるように、全国総合開発計画をずっと進めてきながら、九州や北海道はどんどんと人口が減るようになったじゃないか。それをこんな法律だけを出して全国総合開発計画と同じことにならないかと、こういうことになります。そうなっちゃいけないんですという数字というものを、六十年展望を一〇%成長試算をしてみたんです。ですから、こういうふうになりますので、こういうふうに調整をしなきゃなりません。そのためには工業の再配置が必要でございますと、こういうことですから、いま御指摘を受けるとすれば、これだけ大きな、これだけどうしてもやらなきゃならない状態にありながら、この程度の法律で一体実効があげられるかどうかという問題は確かにあります。それだけだと思うんです。やらなきゃならぬということはだれだって反対できないんです、呼吸もできなくなるというものをそのまま是認しておるわけにはいかないのですから。そういう意味からいうと政府は施策を提出しなきゃならない、こういうことになります。ですから、まあ詰められますと、このいま政府が出してきたものだけでは——こういう数字、これは一〇%で見ておりますから、試算数字ですが、これは八%になっても理想的な姿になるのかならないのかという問題が一点だけ残ります。それは来年から政策を付加してまいります。必ず理想は実現をいたしたいと思います、こう申しあげておる。
  21. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 さっき大臣もちょっと説明をされたんですが、新全総地域別の出荷額のシェアですね。これは関東の場合は、ほほ率はシェアとしては同じなんですね。大臣がここに出しておられますね、ぐっと減るんですよ。つまりいま三分の一をこえていますね、全国の中で関東のシェアは三分の一をこえている。このままいくと、これは半分近くになるという状況ですね。四〇%——四五%ぐらいになっちまう。したがって、それを二十何%に下げる。九州でいいますと、これは五くらい、新全総の場合も大体五%、しかし大臣のこれでいいますと一一%というふうに二倍にふくらましていく。ですから、新全総考え方とは基本的には違うんですよ、数が。だから、私は新全総がいま総点検されつつあるから——全総の総点検じゃなくて、再検討の基礎になりつつあるのではないかという考えを持ったわけです。その点を伺っているわけですから簡単にひとつ……。
  22. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは実際新全総をつくるときに、われわれがいま試算している数字と全然同じではなくとも、やっぱり合うような計算をしなければならないと思います。これはいまの九州で考えますと、九州の四十五年実績見込みのシェアは五%であります、今国に対して。で、従来の立地性向を延長した場合、ずっと暫定試算をやると三・七%になるのです。これは九州の人口がまた二、三割も減るわけです。それでは困るじゃありませんか、そんなことじゃ困るということで、新全総では八%ぐらいに上げたい、こういうことです。私は、この政策——この工業配置のような政策前提としないで新全総は八%という数字を出しているわけですから、これにこういうふうな過度集中排除の政策を付加していけば一一・四%という数字にできるんじゃないか、こういうことを言っているわけです、そう申し上げておる。
  23. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 じゃもう一つ大臣に私は伺いたいんですけれどもね、こういう再配置構想というものを——昭和六十年を一つのめどにした再配置構想というものを書かれた。これはだれしもいまの状況の中では再配置しなければならぬという意見は一致すると思うんですよ。その場合、どういうような方法で再配置するんだと、つまり再配置の中に産業構造というものがないということは非常な欠点じゃないかと私は思っているのですけれども、大臣はいま、あらゆる立場からいまの産業構造では困るじゃないかと盛んに言っておられるわけですね。知識集約型の産業構想に移行していかなければいかぬとおっしゃっている。だれしもこれは考えているのですけれども、せっかく昭和六十年を目標にしたこういうものをつくるときに、いま最もやかましい、これから問題にしなければならぬ、取り上げていかなければならない産業構造の問題が全然顔を出さない。また大臣のこの構想の中にも——背景といいますか、法律とは別に構想の中にもそういうものがはっきりと姿をあらわさないということは非常に大きな問題じゃないか。そこで私は結論といたしまして、若干私の感じとは違った感じを受けたわけですがね。いま申し上げたような点からいいますと、何としてもやらなければならぬ問題じゃないかと思う。しかしながらいま出ておりますこの再配置法というものでは、どうもまた看板倒れじゃないか。これがダウンしております。産業構造の展望というものが姿を出していない。これは税制の問題にいたしましても、あるいは二十五年の問題にいたしましても、付加税の問題にいたしましても、これはいま見た場合にはこれはどうも看板倒れだ。これから三年、四年というものを見なければならぬでしょうと、そういう印象を強く持つんですけれども、大臣のお考えを若干伺っておきたい。
  24. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 生産第一主義であってはいけない、これは生活第一主義にならなければいけない——ということは重化学工業中心であってはいけない。これは知識集約産業でなければならない。知識集約産業とは何ぞや。研究集約産業とか、高度組み立て産業とか、ファッション産業とか、情報産業とか、まあいろいろ考えられる。しかし、それを全部いま六十年を展望して青写真にして出すというような状態には至っておりません。これは産業構造審議会でもっていま検討しているわけで、全国日本人の英知を集約してやっているわけです。ですから、またこれは国会の意見も聞かなければいけませんし、政府のいままでの意見も述べなければいかぬし、産業界や学界や、いろんな意見を集約して結論を出さなければならないという状態にあることは事実です。ですから、そういう方向はもうだれでも考えております。しかし、六十年にその状態地域的にどうであるということの青写真は、これからかいていかなきゃならぬ問題でございます。まあ、これと一緒に参考資料として提案できれば非常にいいことでありますが、ここら辺はまだ産業構造審議会でいまやっていることでありますから、進行期にあるということでありますから、まだ皆さんのところに提案するに至っておらない。しかし、このままでもって工場を過度集中さしておったら困るんだ、これを排除しなきゃならぬということも、あなたがいま言うとおりなんで、そのとき残ってくるのは、これではなまぬるいということが一つだけ残ってくるんです。なまぬるいというのは、先ほどから私がるる申し述べておりますとおり、ことし完ぺきなものにはできなかったんです、それは税の問題も、自治省との問題も、またいろんな問題がありますから。ですからこれでもってスタートいたします。しかしまあ大蔵省から言わせますと、初年度三百億ということで踏み切ったこともまあたいへんなわけですから、ひとつ制度の新設としてそれなりの理由もあるし、メリットもある、だからこれをやっていきます。十月一日からスタートですから、いま通産省としてはこの法律を成立さしていただけるものとして各省庁ともいろいろ連絡をとりながら、十月一日スタートのときには各府県は何を考えておるか。各府県は新産業都市建設、工業地帯整備法、低開発地帯開発促進法、東北北海道開発もみんなあるわけです、産炭地振興も。ですから今度こういう法律ができたって、六十年展望には何々県に水は幾らある、土地は幾らある、労働人口の余剰労働力は幾らある、そして一体どういう理想像をかきたいんだということを、まず大ざっぱに九月三十日までにはつくりたいと、こう考えておるのです。そうすると、いままでは産炭地域でもって幾ら工場を持ってこようといってもなかなか行かなかったのは、全国的に工場移転したいという情報を集めるところもなかったんです、受け入れるところもなかった。ばらばらでもってお互いに請願、陳情し合うというようなものだったんですが、今度は少なくともこの公団にすれば全国の図面は全部ある。全国の出たいという企業のあれも全部あるわけですから、少なくとも産炭地でもってどこへ行かないか、将来はこういうふうな政策的展開がありますという説明ができるのです。で、まあ坪当たり一万五千円じゃ安いといいますと、確かに安い。けれどもいま何もないよりも非常に促進になるじゃないかということは言えるわけです。だから、そういうことでこの政策は、私が考えておったようなものよりも、通産省が初め考えたものよりも確かに弱いんです。弱いんですが、まあこれから制度をまず発足さしていただいておいて、それで、そのうち新全総、りっぱな新全総の最終案を、ことしの秋までには政府はつくらなきゃならないということでございますから、つくってまいります。そうすれば、これも来年、再来年と、こうだんだんと理想的な制度に拡充をしてまいるということ以外にはないわけでございますので、その間の事情はひとつ御了解いただきたいと思います。
  25. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣、私は少なくともこの構想の中には、これはやはり産業構造の、知識集約型に移行するんだという産業構造の変化を、展望といいますか、それをやはり中に入れておくべきだと思いますね、いろんな話を聞いておりますと。これを見ましてもたいへんいろんなものが出ているんですけれども、しかし、その最も大切な肝心なポイントが抜けている。それは、私はこの産業構造の問題だと思うんです。これは、その六十年を目標にして再配置をやるという、非常なこれは魅力ですよ。その場合に産業構造の目標が、展望がないというんじゃこれは話にならない。しかも、これは大臣がいままで盛んに言っておられた資源型の、あるいは公害型の産業構造から知識集約型のそういう産業構造へ移行していかなきゃならぬのだということを言っておられたわけですね。それはまた大臣も御存じのように、通産省の諮問機関である産業構造審議会、これも中間答申で七〇年代の通産省政策の基本として、この産業構造を知識集約型の方向へ移行さしていくんだということも、七〇年代の展望としてはっきり出ている。さらにまたいま国土開発について経済審議会でも、これはいまや日本産業構造というものを立地論からいうならば、これは資源型の産業構造から知識集約型の方向へ移行していく必要があるじゃないかという指摘までしているわけですね。ですから、全体としていま一番私は、この点がこれからの日本の国土開発、あるいは産業工業の再配置、あらゆる問題を考える場合に、ここに一番大きなポイントがあるんじゃないかと。それがいまの工業を取り扱う通産省昭和六十年を目標にした構想の中に出てこないということは、大きな私は欠陥だと、こういうように思うんですけれども、簡単に一つだけ。
  26. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはあなたがいま述べられておりますとおり、知識集約産業にいかなければならないという産業構造審の答申もあるんです。この答申は一次答申をしておりまして、その内訳その他は現に進行形で、産構審の中で研究しているわけです、部会をつくりながら。石炭はどうする、何はどうする、いろんな問題を研究しているわけですから、これはこれから出てくることである。出てくることでございまして、この工業配置というのは六十年にはこうなると、それで、このままの状態でいけば都市は爆発的になりますので、こういうふうな図面のように全国的に再配置をしたいと思いますと、こういう計画書も数字がついておればこれはいいにきまっておるんです。あなたの言うとおりなんです。そうすることが望ましいじゃないかと。望ましいですが、その全部ができるまでこの法律を待っていられないんです。ですから、この法律はちゃんとつくっておいて、そうしていまもう中小企業の二六%は移転したいと言っているんです。条件が整えば五〇%は移転したいと、こう言っているわけです。そういうものに対して一つ一つの方向をきめられるような、通産省において誘導政策やその他の将来が明らかになれば、われわれは移転の準備をいたします、移転の準備だって一年間も二年間もかかるのです。労働組合の中でどうしても行けない人は一体幾らいるんだと、条件はどうなんだということを詰めるにも一年も二年もかかるんです。政府が再配置政策を明らかにしてくれないのでなかなかやりにくいんですと、こういうことですから、やっぱり政策の方向だけははっきりしなきゃいかぬ。ですから、その間にこれからだんだんと六十年展望産業の実態はこうあるべきだということは産業構造審議会の答申もありますから、そのつど皆さんにも御報告申し上げていくということになります。  で、結局今度はあとはどうかというと、第三条に書いてございますように、「工業配置計画は、目標年度における工業の業種別及び地域別の配置目標移転促進地域から誘導地域への工場移転に関する事項」と、これはいろいろな省庁とも話し合いをしながらこういうものを定めていかなければならない、こういうふうに規定してございますから、六十年展望産業のあるべき姿は産業構造審議会から答申をいただく。まあこれは受け皿はちゃんとこうしてございますと、それで、それを土台にしながら地方自治体との間に意見の調整を行なって、それで理想的なものができてくる。ですから、十月のスタートまでには大きなアウトラインだけつくりたいと思っておるんです。けれども、それで強行するわけにもまいりません。来年の予算編成期になれば、もっと明確なものをつくって予算要求や税制上の要求をしなきゃならない、こういうことでございますから、あなたの言うことよくわかります。これだけのことをするわけですから、今年度からこうこうしなきゃいかぬのだ、こうするべきだということよくわかりますけれども、これは産業構造審議会に預けておる問題でございまして、この答申が出てきたら御報告を申し上げるということで御理解いただきたい。
  27. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 さっき大臣から、新全総の検討が始まっておって、まあ夏ごろまでの間には新しい新全総がひとつ——新しいというか新々全総というものができるのだというような話があったのですけれども、これはひとつ経済企画庁、そういう状況なのかどうか。大臣何かちょっと勘違いしておられる点かあるのじゃないか。——そうですか。
  28. 岡部保

    政府委員(岡部保君) いま大臣のおっしゃいましたのは、私どもの総点検の成果というものをなるべく早く出しますということをおっしゃったのだと私は理解しておりましたので、御承知のように、確かに新全総の問題点でございます。  新全総の私どもの考え方で申しますれば、この考え方とそれから実施という問題、現実の姿という問題に明らかに食い違いがある。考え方はよくても実際にできなきゃこれは意味がないという点をわれわれ大いに反省しなきゃいかぬという点がある。そういう点で現実の問題として点検をいたしまして、これをことしじゅうになるべく早い機会にまとめようということで、その成果によりまして、確かに御指摘のあるような問題点を計画即変更するべきかどうかという点に、その作業に入らなきゃいかぬのじゃないかという考え方でございます。
  29. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまちょっと話がございましたですけれども、まあ新全総の総点検が始まっているのですけれども、どうもこれはまあことばが悪いのです。総点検というような形になっておるのですね。しかも、いま非常に問題になってきている環境、自然、その関係で総点検が始まっている。どうも点検であって再検討ではないような感じですね。私は、いま局長の話ですと、どうも少し深く突っ込んだような検討もあるようですけれども、私は新全総というのはやはりもっと根本的に再検討する段階にきているというふうに考えるわけですけれども……。  次に伺いたいのは、この経済審議会の立地交通研究委員会、これがことしの二月二十九日に中間報告を出しまして、そうしてその基幹資源型産業まあ石油とか鉄鋼というやつだと思うのですが、基幹資源型産業の立地については公害、それから過密化の激化、自然景観の破壊、こういうものが進んで、現状では公害型のこの基幹資源型産業の比重の高い産業構造というのを維持していくことは立地の面から制約を受けている、こういう言い方をいたしまして、したがって、その立地の立場からいうならばこれはいまの産業構造、つまり、資源型の産業を基礎にしたそういう産業構造ではなくて、知識集約型の脱公害型といいますか、脱資源型の産業構造を基礎にしたそういうものへ移行していく必要があるのじゃないかと、こういう言い方をしておるわけですね。そうして、具体的に昨年の八月現在で、これから昭和四十五年から昭和五十五年までのその開発の候補地ですね。三百二十一カ所。全国にわたりまして、北海道、鹿児島まで開発の候補地を調査して——調査したのはこれは港湾管理者が調査したのです。全国三百二十一調査したところが、約半数近いものは住民の反対を受けてきておるというのですけれども、で、何にもない、まずまず問題のないところというのは四二%ぐらいだと、面積にしましてですね。面積にすれば半分以上というものはどうも反対を受けてきておる。これからも非常に激しい反対があるのではないか、こういう言い方をしているわけですね。その中で、この候補地が自然公園に含まれているもの、あるいはこれがごく接近しているものというのがその三百二十一の候補地の中で面積にして一六%ある、こういう数字を出しております。で、私は、どういうところがあるのかということで三百二十一という候補地と自然公園との関係を見てみますというと、相当自然公園の中が新しく工場開発のたのに破壊される、そういう状況になってきているのではないか。  そこで、ちょっと環境庁に伺いたいのですけれども、昨年の六月三十日、つまり環境庁が発足する前夜に、こういう工場の関係で自然公園、国立公園、国定公園で地域の解除をしたものが三カ所あった。環境庁が発足いたしましてから、工場開発のために国定公園あるいは国立公園をこわしたり解除してくれというところが、いまのところ鹿児島の志布志、これ一カ所、こうなっておるわけですね。それで、これからもこの三百二十一の調査の結果からいいますと、どうも何か次々に国定公園あるいは国立公園の解除を申し込んでくるところがあるのではないかという気がするわけなんです。どういうような考え方を持っていらっしゃるか、環境庁に伺いたいと思います。
  30. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 先生のお話のように、昨年の六月に解除になりましたものは福井の三里浜地区、それから秋田県の酒田地区につきまして解除がなされております。現在申請といいますか、そういうような問題が起こっておりますのが、これがおっしゃいましたように志布志地区でございますが、そのほか現在、私どものほうにそういう要望というものは具体的には出てまいっておりません。私どもといたしましては、国立公園地区あるいは国定公園地区というものにつきましては、この指定にあたりまして十分産業面との調整もはかりつつ慎重に指定をいたしてまいっておるわけでございまして、基本的にはそういったような良好な自然というものを守っていくべき地域として指定されておるのでございますから、基本的に簡単に解除をするというような考え方は持っておらないわけでございまして、かりにそういったようなことを検討いたします際にも、十分自然に対する影響、そういったようなことにつきまして、あるいは環境に対する影響といったようなことにつきまして、事前に各種の調査を行なっていきたい。そうして、どのような開発が行なわれるか、あるいはどのようなその地域の利用が適当かというようなことにつきまして十分に各省の協力を得まして、そういうところの環境保全ということを基本的には考えてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  31. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 企画庁に——これは企画庁の局長にあれなるのかな。次から次に国定公園あるいは国立公園が、工場開発のために解除したいというようなところがどうも私は見ますと出ているわけですね。つまり、経済審議会の立地交通研究委員会がいっていることは、これからほんとうに自然を守っていかなきゃならない、破壊してばならないのに、とにかく、地域にして一六%というのが国立公園、国定公園、そういうものに関係をしている、こういう言い方ですから、そういたしますと何か出てくるんじゃないかという気がするわけなんです。あるいは国定公園の中でつぶしてもかまわぬようなところもあるだろうと思うんです。非常に広い範囲で、つぶしたりこわしたりして工場用地にしてみても差しつかえないというところもあるんだろうと思いますけれども、経済企画庁としてはどういうふうに考えていらっしゃるか。
  32. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 経済審議会、所管は計画局でございますので、私、これの作業を行なう段階でのこまかい事情を知っておりません。したがって、具体的な点についてはちょっと申し上げにくいのでございますけれども、考え方といたしましては、いま先生のおっしゃったとおりで、いわゆるそれこそ先ほどからいろいろもうお話のございました新全総でも考えておりますが、いわゆる自然保護というものを大事にしなきゃいかぬという考え方を持っております。いわゆる国立公園あるいは国定公園をむげにこういうものに解除して転用していくということは極力避けるべきだ。ただ確かに、非常に、それはど影響がないんじゃないかというようなところはあると存じます。そういうときにケース・バイ・ケースで考えるべきであって、なるべく自然は保護すべきだという考え方で基本的に考えておるわけでございます。
  33. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 通産大臣に、時間がなくなりましたので、若干集約をして伺いたいのですけれども、経済審議会の立地交通研究委員会は、ことしの二月に立地の観点からこれから日本が確保していかなきゃならない自然というもの、自然公園というものを、それをやってくにはこれは産業構造を変えるということを考える必要があると、もちろん産業構造というものは、これは産業全体、あるいは国際的な立場、あるいはこれからの日本経済成長の基礎にどういうふうに据えるかと、いろんな立場もあるだろうけれども、立地の観点から言うならば、いまこういう公害型、資源型基幹産業というものは非常に立地の立場からいえば反対と、こういっている。しかも、これは非常に守っていかなきゃならぬ、確保していかなきゃならぬ自然公園、あるいは環境というものを破壊をしていっておる。そこでそういう立場からでも、立地の立場からでもこれらの産業構造というものを変えていく必要があるのではないか、こういうことをいっておるわけですね。これはまあ大臣の、通産省の感覚とは別の問題ですけれども、しかし、通産省の立場としましても、先ほど以来私が申し上げておりますように、産業構造審議会でも七〇年代の通産省政策として、基本方向として産業構造の変革、移行というものを主張している、変えていかなきゃならぬということを主張している。これは大臣自身も資源型産業から知識集約型にやっぱり移行していかなくちゃならぬということをおっしゃっているということからいいますと、これは明確にそういう意味で進めていくべきじゃないかと私は思うんです。  そこで、志布志の問題出ましたけれども、志布志というのは鹿児島にあります。私もあそこのすぐ近くで小学校時代ずっと過ごしました。いままではずっと全国区だったんですが、去年から地方区に回りまして、初めてあそこの海ばたを四十年ぶりぐらいに回ってみましたが、あそこには非常に明確な一望でおさまる、非常に珍しい、ないでしょう、おそらくああいう国定公園というのは。非常に大きな、十七キロぐらいですね。海、その海岸線から沖へ一キロ、こっちのほう、陸地のほうへ一キロ、二キロ、これが国定公園なんです。そしてその間の海と白い砂浜と、そして幅七百メートルぐらいの松林、一望におさまる非常に明確な国定公園ですね。これがぽっかり埋まって、ここへ石油コンビナートができるという、いまの四日市の約四倍ぐらいの石油コンビナートができようというわけなんです。ところが、ここも先ほどの中間報告にありましたように、自然を守るという——公害だけではなくて自然を守っていかなきゃならぬという立場から非常な反対運動もあるわけなんです。ですから私は、これは新全総を進めていくと、あるいは工場の再配置を進めていくと、あるいは工業用地を確保していくということもこれは重要な政策だと思うんです。しかしながら、同時にこれは破壊していってはならない、確保していかなきゃならない。そういう自然、あるいは国立公園なり国定公園というものを守っていかなきゃならぬということも非常に重要な問題だと思うんです。また、その地域に住んでいる住民が一体どういうふうに考えているのかということも、これは施策の上においては最も尊重しなければならぬことだと思うのです。  そういう立場からいいますと、志布志の、いま昭和六十年を目標にして進められております、いろいろ論議されているあそこの石油基地化、石油コンビナート化という問題については、これは政治家としては、何か飛びついたような言い方はおかしいのではないか。もっと広い立場から、住民がどう考えているのか、あるいはこの自然というものを、国立公園というものを、国定公園というものをどう考えるのか、あるいは再開発をどう考えるかというようなことを慎重に配慮して進めていくべき性質のものだと私は思うのです。そういう問題について、大臣考え方を簡単に承りたいと思います。ただ、私は、日本がこれから国立公園なり国定公園を守っていくという場合に、これほど私は明媚な国定公園はない、こんなきれいなものはない、こう思っておるものですから、何としてもこれはやはり確保していくべきじゃないか、日本が確保すべきものなんじゃないかというふうに考えておるわけなんです。そういう総合的な考え方に立って慎重に考えるべき問題だと思いますから、その点について大臣考え方を伺いたい。
  34. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 自然環境を守らなければならない、そのとおりでございます。日本知識集約型の産業に移行しなければならない、これもまたそのとおりでございます。志布志湾を含めた天然の景勝、白砂青松という、とにかく珍しいところでございます。水深四十メートルもありますから、これは水も青く、もうほんとうに言うところなしというところでございます。そういうところの自然を守りたい、これは全くそうでございますが、それはまあそれでもってそのとおりです。しかし、二次産業化をしたいという県民感情もまたございます。  とにかく鹿児島県などは、確かに人材を百年間輩出をしておりまして、日本も非常に経済発展をしましたけれども、鹿児島県は県民所得からいうとそんなに高い状態でありません。人口はどんどんと減っていくということでございまして、また鹿児島県の工業化というもの、県民総生産をあげ、県民所得全国の平均にしなければならないということを考えておることもまた事実なんです。だからそういう意味で、問題は県民、それから地元住民の意向次第である。これはもうほんとうにそのとおりです。ですから、白砂青松でもございますが、しかし、残された宝庫でもあることは事実なんです。水深四十メートル、連合艦隊が全部入った港でございますし、タンカーにすれば五十万トンタンカーが接岸できる。これは全国に四つか五つしかないわけです。志布志湾、橘湾、宿毛湾、奥州の陸奥湾と四つしかないわけです。実際はこういういいところでありますので——百年間使わなくてもさすがに鹿児島県。これは鹿児島県とちょっと宮崎県にまたがっておりますが、両県の計画に入るわけですが、非常に条件はいい。だけど、条件がいいからといって経済オンリーでやるべき問題じゃない。これは言うまでもありません。宿毛湾でも非常にいいところですが、これはまた漁業の宝庫である。ということでもあるし、非常にいいところである。  その次にもあったのですが、いまの和歌浦湾、あそこも連合艦隊が入ったのですが、水深はそんな深くない。しかし、あそこに工場を持っていくということで、自然の景観がおかされるということでいろんな問題がございました。だから、そういうような調整はすべて住民本意でいくべきである、こういうことでして、政府が政府の事業として法律でもって強行する、そういう性質のものじゃありません。これはもうあくまでも住民が認めれば、その自然の景観を保護をしながら、汚染をしないように万全の措置を講ずる。そして政府もお力添えするのであります。こういうことでなければならない。そういう意味で、開発を進めることが予定されている地域については、開発協議会のようなものでも近くつくったらどうだ、そしていろいろな方々が政府の中に入って意思の疎通を十分はかって、開発をするについても間違いのない開発をしなければならぬ。  同じ問題が橘湾にあります。CTSの基地として六、七十万トンの石油を備蓄したらどうか。もう大阪湾に入ってこれないということでございまして、そういう一つの案があります。しかし、橘湾もほんとうに景勝の地でありますから、いろいろなことを考えても、ただ橘湾は除こう。しかし、隣接地域——小笠さんなどの県でございますから、私ども小笠さんにお聞きもしないでこう答弁するのはいけないかもしれませんが、私の知る限りにおいては、近くに川がございまして、川の近くに、埋め立てて工場用地として県が用意しているものがある。そこの地元住民が納得するならば一つの候補地であるということです。地元でもっていろいろな協議が行なわれているというものもございます。通産省にこれは持ち込まれておりますから、通産省はこれは非常にいい計画であると言いたいのですが、しかし、地元住民優先でありますので、地元のお話がどうなるか、話し合いの推移に待つということにしております。ですから、まあ志布志湾などはほんとうに日本として残された宝庫であると。日本は恵まれておって海岸線が長いですから、そういう意味でこれから計画をきちっとやって、そして長期的な展望保全ということを前提にしてやっていけば、恵まれた国だと思います。これはもうヨーロッパなどでもって、海岸線はわずかしかない、そのわずかの海岸線は全部船の通路になっておるという国がほとんどでございますから、そういう国に比べて日本は自然というものに恵まれ過ぎておるのです。恵まれ過ぎておるのでどうも自然の汚染ということには案外注意をしないという面もあるんでしょう。ですから、環境問題とか国土保全ということがこれだけいわれているときでありますので、子孫のために経済を発展せしめなければならない。高い生産性は求めなければならぬのですが、やっぱり自然環境を守っていくことに対してはこまかい配慮を必要とすると、こう思います。
  35. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これで終わりたいと思いますが、お話のように、確かに工業開発をしていく、地域を開発していくということもこれからのたいへんな大きな問題であり、また守るべき自然というものを、そういうものを守っていくということ、これまたこれからの大きな政治課題であるし、また地域の開発においてはそこに住んでおる住民が大きな問題だと思います。そういう問題を含めて、大臣に慎重な配慮でこういった問題について取り組まれるようにひとつ要望したいと思います。ありがとうございました。
  36. 大森久司

    委員長大森久司君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時八分休憩      —————・—————    午後一時二十六分開会
  37. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  委員の異動について報告いたします。  本日、鶴園哲夫君が委員辞任され、その補欠として阿具根登君が選任されました。     —————————————
  38. 大森久司

    委員長大森久司君) 午前に引き続き、工業配置促進法案及び産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  39. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 六月一日、それから六日、本日と、この工配法についての質疑が続けられたわけですが、大臣の熱烈なる演説を終始聞かされまして、いささかあてられたような感じでございますが、私は、同僚議員、それから多くの議員からかなり重複した質問が続出しておりますので、それを避けまして、数点の具体的な問題についてお伺いいたしたいと思います。  まず最初に、促進地域、これはまあ大都市であって、しかも、超過密都市であるわけですが、その促進地域工業のあり方というものを示さなければいけないのじゃないか。実は、せんだって飯島参考人の意見にもございましたが、十年後には東京に霞が関ビルが百個ほど建つくらいのことになるんじゃなかろうかというような発言もありました。これはどういうことかといいますと、今後情報機能、中枢機能というものがますます必要になってくるし、それが都市を埋めていくのじゃないだろうか、したがって、現在ある大都市に群集しておるところの工場群は、当然これは地方分散することになるけれども、それにかわって新しい形のそういったスタイルのものが都市に今後は必要になってくる、こういうまあ発言がありまして、そういった意味で、都市の再開発のための機能転換をはからなければならない、そいつを促進し、しかも、その青写真を示すことが必要であろう、ただ、追い出し税を課して追い出すんだ、そして受け皿をつくって優遇策を持つんだというだけじゃなくて、それも大切だけれども、都市機能をどのように見詰め直していくのか、このことのほうがむしろ必要じゃなかろうかというような発言がありました。私もそのとおりだと思うわけです。本法案の第十二条には「工場跡地」についての規定がございますが、これを見てみましても、そういった内容のものじゃなくて、むしろ公共の団体に優先的に処置しようというような意味のことが盛られておるわけでございまして、この辺のところを、もう少し長期的な構想なども含めて、大臣のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  40. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 都市状態がどうなるだろうか、それはいま御指摘になったような方向でまいると思います。それは都市政策大綱の中にも、方向としてはそのように示しておるわけでございます。いままでは政治も文化も産業も一緒のものが拠点中心に集まってまいった。それはやはり一つには、長い政治中心地として、産業中心や文化の中心として公共投資が集中的に行なわれてまいったことも一つの利点でございました。それから、人はたくさんおるし、職も求めやすい。同時に、産業などは生産と消費が直結をしており、下請などを使う場合は、電話一本でもって部品の取りかえから、下請の選択から、取り引きから全部できるわけでありますから、都市機能というものが、その意味ではたいへん重要であります。いま通産省の関係とか、いろんな研究機関を筑波へ移す、非常に環境がよくなるわけです。それで、いわゆる全部住宅も与えます、学校もつくります、幼稚園もつくります、緑がある、公害がない。いいはずでございますが、しかし、表向きは別として、さてということになると、東京におると内職ができるのに、内職ができない。家族ぐるみの労働ができない。これはほんとうにそういうことからいっても、都市機能というものが相当にあるのでございます。しかし、情報化が非常に進んでまいりますと、いままでのように、やっぱり工場と頭脳が一緒でなければならなぬということはないわけです。また、大体データ通信なども、ことしから採用しておりますのは、この情報化というものにマッチさせるために、制度的に採用しておるわけでございますから、朝、常務会というものを行なうとすれば、ボタン一つ押せば北海道の工場が出る、次のボタン押せば九州の工場が出る、もう一つ押せば北陸の工場が出るというようなことで、人が集まってこないで済むようになりますから、遠隔操作というものによりまして、本社機能というものが小さくなると思います。ある意味では、いまの企業で取締役が三十人おると、二十五人が東京におって、あとの五人が工場におるというような状態は全然私はなくなると思う。少なくとも五人は本社におっても二十五人もし必要とすれば、それは工場におるのか、そんなに要らなくなるのか、これは要らなくなるのじゃないかと思います。アメリカなどはテレビで見ておっても、物語見ておっても、非常に少ない人でやっておるし、相当な企業でも少ない人でやっております。社長と秘書と非常に少ない人でやっておるわけです。これは西ドイツでもそのとおりでございます。日本もそうならなければいかぬと思います。いまは管理機構を見ておりますと、工場の人員よりも管理機構や中間機構を全部入れると、管理機構のほうが多い会社はたくさんあります。こんなことで、それでもなお国際経済競争に勝ってドルがたまり過ぎるというのですから、ある意味においては、人は多いけれども低賃金なんだろう、こういうことを国際会議で指摘をされるようになりかねない。そういう意味でだんだんとというより、急速に様態は変わってくる、こう思います。  都市の中で重い荷物を持って、大きなトラックでもって運ぶというようなものは、これはそれなりの環境を整備したところに立地をすることが望ましいことは言うまでもありません。それは工場の二階でもって管理機能が動いておると同じように、産業の情報化によって解決される問題でございますから、都市の様態というものは変わると思います。そういう意味で、都市には一日も早く都市の再開発というような方向ではなく、都市政策大綱案には、人口五万以上の都市に対しては全面的な都市区画整理事業の指定をする、道路は全部三倍にしてしまう、小さい道路は全部移動せしめて都市改造を行なう、そうしなければ道路用地を税金で買うなどということはできるわけがない。特に三倍に道路をする計画ができるわけがない。緑地というものは一平米しか一人当たり持っておらない日本都市生活者というものは、とてもこんなことでは呼吸ができるはずがないということで、完全な都市改造だから、小さな、新しい規格にはまらないようなビルも全部スクラップ化して、もう十分間に合うわけであります。それでたくさん不燃化建築ができる。いまマンションがどんどんできておりますが、こんなことをこのままに野放しにしておくと、ローマの都市のように、石造建築なるがゆえに都市改造できないという経緯を踏むわけでありますから、いまにして五万以上の都市というものは、都市計画というより都市改良計画というものを出して、それを十年でするか十五年でするかお互い検討して、十五年なら十五年の間に高層建築にして、建蔽率をいまの何分の一になし得る。ちょうどワシントンの都市計画を初めてやったように、六割は緑地とか、一割が公共用地とか、あとは三〇%の中に立体的におさめてしまう、高さも一定のものに制限をするというような都市改造がいまならできる。いまなら固定資産税でもって全部評価がわかっておりますから、全部税法上除却を認めるようにすればできるわけでありますから、そういうふうにすべきであるということは、一つ都市政策大綱としては非常に明らかにされております。だから、そういうものをつくりながら、住居専用地域の中では工場はつくらない、もうそれをつくらないということではなくて、それを許さない。地下水のくみ上げを禁止するというのはよくないんで、十五年以内に住居専用地区の中からの工場は追い出すということに、はっきりしなければいかぬわけであります。追い出す場合にはどうするかという場合には、東京湾を埋め立ててそこに工場団地をつくって、そこへいらっしゃいと。そこへいらっしゃいというよりも、それでは芸がないから、工場配置でもっと、有利に参加し得るようにするということが親切だと思います。そういう意味では、政策的に都市青写真を完璧なものとして、市民に問うておらないということは不親切でもある。不親切というより責任を果たしているとはいえないと思います。そういう意味で、この工場配置というものとうらはらの都市改造というものは、当然同時にはかられるべきものである、こう考えます。
  41. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 この問題に限らず、大臣のいままでのずっと答弁を聞いておりますと、大臣が頭の中に描いているところの最終的な姿というのが、絶えず前面に出るわけですよ。これはわれわれ聞いておっても非常に愉快だし、非常にこれはけっこうなことなんです。これには賛成であるし、そうありたいものだと思うわけなんだけれども、しかし、現実は過程というものがあるわけですね。せんだっても商工委員会で計量法のおりに見学に行けば、通産省管轄の検査所が、われわれ行くからというわけじゃないかもしらぬけれども、壁という壁、階段、それから廊下、全部張り紙で筑波移転絶対反対、びらびらもう書いておるわけですね。これは普通の工場じゃないわけです。研究所なんです。研究所にしてしかり。工場ということになると全くこれは別な意味の、中高年齢層のところの人間が一ぱいおるわけなんです。そうなってくるし、また人数も非常に多い。最終の姿、いまおっしゃったようにおそらくワシントンならワシントンという、あるいはホワイトハウスの前のあの公園を夢見て東京を描いていられるのかわからぬけれども、しかし、具体的に私は、親切に完結された都市の姿、あるいはその機能を描くのも必要であるが、同時に移行するための機能の変化、そいつはやっぱり追ってやらなければ私は、動きがとれぬのじゃないだろうかという気がするんですよ。そういった意味から、あと地利用の問題にしても、もちろんこの文章の中に、法文の中にたくさんのことは書けぬかもわからぬけれども、こういった審議の過程を通じてでももう少し具体的に、当面はこう考えておるんだぞというようなものが示されなければならぬのじゃないかと思うわけです。どうですか。
  42. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは第十二条で、「国及び地方公共団体は、移転促進地域における工場移転に係る工場跡地が公共の用途その他住民の福祉の増進に資する用途に利用されるよう努めなければならない。」、こういうふうに修正になりました。これは法律でございますからこれでいいと思うんです。これは工場移転を促進をしようということにウエートを置いた法律でございますから、この十二条の実態というものは、これはそのまま——工場移転したらまた別な工場がそれを買って入ったということではどうにもならないわけです。ですから、都市改造に資する用途以外に使わないようにしなければならない。これはそれしか書きょうがないんです。そうでないと、もっと広範な都市改造の面から、あと地を担保にして金を貸したり、そしてそれを処分したときには利益でもって、利益の分配をどうするとかいろんなこまかい問題が起こってくるんです。それは別の法律の中でつくるべきであって、この法律はまず出ることを考えておるわけです、出ることを。出ることを考えて、もう一つは、このままにしておくとまだ、百年間も東京へ東京へという慣性の理屈がありますから、とめても、これは入るなといったってまだまだ東京へ集中してくる、求心力がありますから。そういうものに壁をつくってストップしようと。ですから、これから十五年に三倍か四倍になるような——四倍にはならぬけれども三倍にはなる。七%でいけば三倍以上になるんですから、その生産を他のところに定着させなきゃというのがこの法律目的ですから、これは十二条の修正を、修正以上にこまかく規定するということちょっと、体系が違う問題でございますし、それはやっぱり都市工場あと地利用に関する法律というものができるとすれば、それはそれでいいと思うんです。だから、これがもっと大規模になれば、当然そういうものと一緒にならなければだめです。この対策は百五十億でもって半年スタートしたみたいなものですし、産炭地などにもこれを使用していけば、工場あと地の活用による都市改造まではなかなかできないということになるかもしませんので、そういう意味で、この十二条ぐらい——十二条の原文はまだもっと簡単なものだったわけです。しかし、あなたと同じように、これだけの政策を行なって、あと地にまた工場つくったらどうなるんだと、それは金を貸すときに条件をつけて、他に転売してはならないという方法もあるが、こういっても、法律の条文よりも弱いですから、十二条のように修正を受けたわけでございますので、それでひとつ御理解いただきたい。最終的には、大きくなればこれは都市改造によってこの法律工業配置促進法案第十二条の規定にかかる地域として特にこういうものに使いますと、緑地帯に使います、公共用地に使いますというような問題は、当然別な法律の中でこの条文が引用されて処理ができる、こう考えております。
  43. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 ぜひまた、これはどうせ長期にかかる問題ですから、その辺のところをよく考えてやっていただきたいと思うわけです。  その次に、誘導地域の問題なんですが、この誘導地域については、いままでのいろいろな御説明ではいろんなおことばを述べておられますが、要するに、開発ポテンシャルを調査してきめるということにつづまるだろうと思うんです。第二条第二項にいろいろ書かれておりますが、言ってしまえばそういうことだと思う。しかし、現実にこれは六月四日の日経新聞に記載されておることですが、東京通産局のまあこれはおそらく意思であろうと思うんだけれども、北関東を誘導地域に、茨城、栃木、群馬この三県に工場ラッシュを呼び起こすんじゃないかという危惧を持った記事が出ております。そうなるとこの法案でも一番危惧している、俗にいうスプロール現象というのがこれはもう起こるわけなんです。これを起こすのであればあまりにも高邁な理想というか、この旗に対して全くけちをつけるようなことになる。ここで掲げておりますのは産炭地であり、北海道であり、内陸部なんですが、その辺のところがすでに、まだこの法案が成立する以前にもう東京通産局は調査を始めて、しかも、これにいろんな思惑がからんで動きが現に出ておる。こういうことになると、東京通産局だからといってもこれはもう通産省の管轄の中なんだから、あるいは地元からこういう動きが現に出ておるということについては、やはりこれは重大だと思う。工場それ自体も遊んでおるわけじゃないんだから、それぞれ生産を上げてもうけなきゃいかぬわけだから移動するについてもいろいろコスト計算もあるだろうし、あるいは人の問題もあるし、長期プランのもとに行動を起こさなきゃならぬ、そういうようないろいろな思惑のある中でこういうものが現に新聞記事に大きく出てくるという背景は、やっぱり大臣としても重要視しなきゃ私はいかぬと思う。そういう意味からも私は、この問題についてどうお考になっておるかということと、誘導地域についてのやはりもう少し明確な青写真を示すべきだ。それが人口十万だとか、あるいは集積度の云々というような抽象的な形でずっと流れていくものですから、中間にあるところからは、おれのところはどうなんだろうという陳情がきておる。いろんなことが錯綜しておると思うので、その辺もう少し整理する意味ではっきりしたお考えを示してもらいたいと思います。
  44. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはまあ誘導地域は、工業の集積の度合いが、程度が非常に低いというようなもの。人口の増加の割合が低い道県といいますか、これはまあどんどん減っていくというような地域でございますから、北海道とか東北、日本海岸の地域、九州、四国、これはもう間違いなく入ると思います。入らなきゃならないことでございます。しかし、ただ明確にできないのは、これはこれから都道府県知事とも十分その地域と話をしながら、あなたの県の理想的な姿はどういうものですかということも考えなきゃいかぬし、しかし、県が考えていることだけではいけないのであって、それに対して政府が調整をする。しかし、そんなにしてはならないんですと、こういうものもありますから、そういうことで調整をしなきゃならぬと思います。ただ、そういう意味で、法律ができる前に全国的な地域を、ここは誘導地域でございますというふうに明定はできないものであるし、またそんなに急ぐことでもなく、慎重に将来のひとつ青写真というものは政府も、それから地方も全部納得できるものでなきゃいかぬし、水もございますし、土地も、港湾とか、それから先ほど御指摘がありました公園とか、自然の景観美との調整もありますので、簡単に上から押しつけるわけにはまいらぬと思います。だから慎重に、しかし、スピーディに合理的なものをきめるということがいいんだ。  ただ、北関東というのは、この法律にいっているだけじゃなく、東京や千葉、埼玉、神奈川は非常に過密でありながら、そこから高速鉄道か高速道路で行けば三十分以内といえるようなところが過疎でがらがらである。おかしいじゃないかということで、茨城、栃木、群馬、この三県が北関東地区の開発ということの構想を明らかにしていく、もう相当長い期間勉強しているはずでございます。だからまあ普通からいうと、東京や大阪を見ますと、背後地がまだ一次産業比率が相当高くて、背後地を持っておったということがほんとうにありがたいことであって、ここを合理的に開発をし、開発の過程において過密地帯との調整が行なわれる、こういうことであれば望ましいことだというふうに考えておったことは事実でございます。しかし、鹿島工業港のようなものをつくったら、これは東京と同じような過密の拠点ができたということでありますので、まあ鹿島とか苫小牧とか、いつでも申し上げますが四日市とか水島とか、大分湾とか、そういうことでございます。もっと大きな地域の中に位置づけて、理想的なものとしてつくるべきであったというような声もございますので、やはり北関東などというものはどういうものであるべきかということは、これは県全体として工業集積度が低いからなどというようなことだけで簡単に考えられる問題ではない。現に、京浜地区の状態というものを十分勘案しながら計画をつくっていかなければならない問題であって、工業集積度が低いから直ちに誘導地域に指定いたしますということであってはいけないと思います。  これは阪神地区は非常にたいへんです。ですから、兵庫県は、県から見ると工業集積度は非常に高いけれども、丹波篠山、丹波地域——あなたはよく御存じでありましょう。兵庫県というのは瀬戸内海から日本海に面しているわけです。日本海に面している京都と鳥取県との間は、過疎地域の雄でございます。日本で一番票数が少なくて当選できるということで、いつでも問題になりておるのですから。しかし、これを兵庫県だけで律するわけにはいかないと思うのです。これは内陸の軽工業地帯としてはりっぱなものになると思うのでございます。丹波とか但馬とかいうところの牛を育てたところでございます。よく皆さん御存じだ。行政区画であるから、行政区画によって画一、一律的にやるというわけには絶対いかないのです。ですからそういう意味で、阪神地区の方が高速道路で結べば三十分のところにそのような自然の景観が保たれているということは、ある意味において救いかもしれません。ですから、そういうことはやはり非常に地域的に特殊な事情もありますから、慎重に考え誘導地域にして、ただ画一、一律的に机上でもってきめていくというようなことは避けなきゃいかぬ。これはやはりこの法律の中で一番慎重に考えなきゃならない問題だと思います。
  45. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 まあそうはおっしゃいますが、現実の問題としてもうこの法案がまさに通過しようとしておるわけだし、十月一日から発足するわけだ。そうなりますと、午前中にも大臣お答えになっておりましたが、都道府県等の自治体の意向、それから住民の意向をやはり本旨としなきゃいけないというふうにおっしゃいますが、事務当局としては大体いまのデータに基づいて、誘導地域とはかくかくだというものはあると思うのです。それを出してもらいたい。
  46. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 法律案の中では、「工業の集積の程度が低く、かつ、人口の増加の割合が低い道県で政令で定めるもの」、この「道県」は、先ほど大臣が申し上げました道県が該当すると思います。人口の増加の割合、あるいは特に工業の集積度につきましては、可住地面積に対する出荷額の比率、人口一人当たりの付加価値額の比率、これで平均に対してどうなのかということで判断し得る問題であるというふうに考えております。  いま御指摘のあった点は、北関東については第二号のそうした道県に連接しておって、かつ工業の集積度が低く、人口の増加の割合がそうした地域に類する地域、こういうことで判断をしてまいるということが原則的な考えてございますので、この原則によって地域の整理をすることを基本的に考えてきめたいというふうに考えている次第でございます。
  47. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 なかなかいまの段階で具体的にお話しになると問題も起きることであろうと思いますから、これ以上申しませんけれども、先ほど来大臣のおっしゃったこと、一々もっともな点もございます。誘導地域については、これからもいまの北関東のような問題が方々に出てくると思う。十分対処していただきたいと思います。  それからもう一つ誘導地域に当然造成されるこの工場地についてですが、実は居住地のそばに、京都の——大阪府になりますか、枚方に縫製服の団地というのがあるわけです。これは五年ほど前に既製服団地というのができまして、まあ非常に脚光を浴びたところで、紳士服のメーカーが結成時には三十ほど集まって、一つのモデルになっておった。その後いろんな御存じの繊維の事情などもあって、それも原因したのでありましょう。現在企業数は二十ほどに減っているし、ここしばらくたつとさらにこれが減ってくるだろうというふうに見られる。私もせんだってそこに理事者などといろいろ話したのだけれども、せっかくできたこの工場団地がゴーストタウンになることを一番心配するということを言っておりました。たいへんりっぱな工場団地であります。これらは、考えてみますと、団地を造成して、そしてそれが売りに出る。売りに出る間は笛や太鼓でいろんな宣伝もするし、そうして工場誘致する、工場が入る。工場が入ったあと、やはり団地の運用管理というものについて、私は、アフターケアがないのじゃないかという気がするのです。もちろん、各自治体が自治体でやれる範囲のものはありましょうけれども、しかし、たとえば採用の問題、人を集めてくる問題特にいま言ったような既製服団地であれば若干労働者、しかも、女子をたくさん雇わなければならない業種であるために、しかも、新陣代謝が激しい。だから人を絶えず呼び込まなければいかぬけれども、枚方という特殊性から、大阪に非常に隣接しているために、せっかくやってきた労働力が全部流出する。もう一つの方程式みたいになっている。せっかく連れてきたら、一、二年たって仕事に習熟すると、全部都会に出て第三次産業に移ってしまう。こういうようなことも大きな原因だろうし、それからやはり、団地から都市部への製品輸送の問題、これにコストがかかる。こういうようなことで、来てみたは、実際問題として思っておった土地も、土地というか、さあ道路もできないし、どうにもならぬ。  これははっきり土浦の工場団地にいっても言えるわけです。団地はなるほどいまだに道路ができていない。工場団地に工場が入った。しかし、製品、原料の輸送その他にかかる。そのためにみな困っている。しかし、地元ではバイパスを通そうとするとバイパス絶対反対、りっぱだけれども、道路が全然なっていない。二十キロほどのところが、四十分、一時間。非常に困難している。こういったぐあいに団地はせっかくでき、工場が入ったものの、入ったところが、もう来るなよ、たいへんなことだということで、ある程度工場が集まってもそれ以上完ぺきなものにはならない。こういう点をよく考えなければいかぬのじゃないだろうかというふうに思うわけです。いまの制度では、その工場団地を形成した後の、あとあとまでの継続したサービスというものについての何のきめもないわけです。この辺のところをもう一ぺん考えてもらいたいと思うのですけれども、そのお考えをお聞きしたいと思います。
  48. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 御指摘のように、日本におきまする工場団地の造成が地方公共団体が中心になってやられておるということとからみまして、これのアフターケアについては地方公共団体が行なっておるというのが例になっておりますが、そういう点では、いま御指摘のような経済上の条件につきまして、これを改善することについて必ずしも十分に行なわれがたい。そういう意味では、アメリカにおいては民間のデベロッパーが造成するということが多いわけでございますが、この際には、入った企業が委員会をつくりまして、そうして貨物輸送の交通の整備であるとか、調整であるとか、あるいはグリーンベルトの緑地の維持管理であるとか、あるいは工場の形状や色彩の感じ、あるいは用水、電力のユーティリティーの管理等もやっておるわけでございます。こうした考え方一つの方法であろうと思います。現に厚木団地では、組合が——これは入居企業で構成しておる組合でございますが——組合か管理するという方式もこれは例外的に一つまだ出たところでございます。出てまいったということでございますが、われわれといたしましても、今後は団地の自後の管理等について各国の例、あるいは効率的な方法を検討する必要があるというふうに考える次第でございます。
  49. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これはもう具体的な問題で例をあげて申し上げたので、正直に申し上げて、せっかく団地ができても実際活用されないという面が、こういったモデルをやはり一つの手本にしてそれからそれへと伝わって、そのために工場進出がはかばかしくないという原因になっておると思います。これは九州の産炭地に縫製工場が移って、その縫製工場に私も行ってその人からも聞いたわけなんです。来てしまったと、だから他の企業が来るのをわれわれ同業者としてやはり忠告して、なるべく来るなと、たいへんなことだということを言っておるわけなんです。どうも困ったことなんです。だから現実の問題として、この構想ができてどんどん造成されていっても、いままでのような管理運営ではこれはだめです。そのことをよく考えないといけないと思います。
  50. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それもこの中には、法律的には書いてはあるんです。あるんですが、ここはこれからこの法律ができないとなかなか書けないのですが、この種の修正としては、もう修正というよりも、これはこの法律を完備していく過程においては、当然いま御発言になったところはポイントとして、条文として追加さるべきものだと考えております。それは工業用水は提供しなければならない、それから交通網は整備しなければならない。いままでは、考え方によっては、既存都市で乗降客があるから新幹線の駅をつくったのです。今度はそうではなく、工場が、工場団地という大きな中核都市のような計画が県でできたらそこへ駅をつくってあげる、こういうことにならないければ地価はもう無限大に上がるのです。そうすれば地価は下がるわけです。ですから、工場団地をつくったら学校もつくってやらなければいかぬし、下水もつくってやらなければいかぬし、工業用水もつくってやらなければいかぬし、これはあたりまえのことなんです。そうしなければならない。そうしなければならないという規定を明確にするためには財源補てんを明確にしなければだめだ。財源補てんを明確にするためには特別会計をつくらなければだめだということで、もとができなかったらだんだんだんだんとそういうことになっておるということで、御指摘になったようなそこらがこの法律の目だと思うんです。どうしても必要なことである。これはやはりお互いがこれを発展させるためには、どうしてもそういう制度を付加していく。だから、そのためには補てんをする。補てんをする場合には、財源は、特定財源をどうしますかということでございましたので、将来必ずそうなる、そうしなければならないということでひとつ御了承いただきたいと思います。
  51. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 その次の問題として、この移動のための優遇策がいろいろとられておるわけだけれども、今回とられておるこの優遇策は、私はどう見てもこれは画一的だと思うのです。と申しますのは、御承知のように、かりにそれじゃ出ようじゃないかということになっても、出ていく先の遠近によってこれはやはり経費が非常に違う。北海道に出ていくのと岩手に出ていくのではおのずから経費も違うわけです。そういった遠近による問題ももちろんありますが、まあ先ほども言ったように、青森に行くぐらいなら群馬に行こうかということになる、これは当然だろうと思う。それと同時に、もう一つ大切なことは、労働集約型の産業と資本集約型の産業の違いがやはりあると思うのですよ この床面積坪当たり三万五千円ですか、一万五千円ですか、ということだけれども、この労働集約型の産業は、どちらかといえば床面積がこれは広いわけです。資本集約型の産業は、床面積が少ない。しかも、資本集約型の産業のほうが設備費が多いわけですよ。労働集約型の産業は設備費が非常に少ない。それが画一的に床面積によって律せられる、優遇策が。ということになれば、しかも、過疎地帯に誘導しようとする工場は基幹産業でなければならないとするならば、やはり資本集約型の産業が動かぬとその系列が全部動かぬわけですよ。縫製工場を動かすというのは簡単なことですよ。機械を動かせばそれでいいわけです。倉庫にしたってスレートの建屋でいいわけですから。こういう点をもうちょっと、何といいますか、実態に即した優遇策というものを——これは追い出すと言えばことばが悪いが、実際は追い出すのですね。というものを考えなければ、これは実体が伴わないと思います。これはやはり受ける企業として見れば、それぞれコストも計算してやるわけですからね。いまのままで全部並列的にぱっといったのではこれはなかなか動くものではない。そこらのところを、これは法律案はこれとして、これから考えることがあればそれもお示しいただきたいと思います。
  52. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) まあ御指摘の問題点としては、そのような問題のとり方もあるわけでございますが、われわれの考えましたのは、工業配置促進補助金を出そういうことにつきまして、ともかく、もう公害のない、しかも、地域住民の歓迎する形で移転が行なわれるということが必要だと、その意味工場等も、地域社会の間で相互の理解が生じ、融和が生ずると、そして円滑に生産活動が行なわれるということが必要だということで、この資金は、環境の保全施設あるいは福祉施設に限って使えるということにいたしたわけでございます、そういう意味で、企業投資の一部を国が補助をするという思想ではなくて、工場が出ていくことに伴って環境を整備し、あるいはそれに伴って必要なる福祉施設を整備するということをこのねらいにいたしましたので、業種の投資の内容等とは一応関係せずに、床面積で簡明な基準によりまして決定するのが妥当じゃなかろうか、こういうふうに考えたわけでございますので、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  53. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 言われる意味はわかるのですけれどもね、実際出ていってもらいたい企業を考えると、それは重化学工業でしょう、資本集約型の産業ですがね。これは公害もあるわけです。そして労働集約型の産業ということになれば大体無煙工場公害のない工場と見てまず間違いない。だから、大阪からずっと京都までの間の阪急電車、国電に乗ってもらったらわかるんだけれども、あすこは昔から無煙工場ですよ。公害がないんですよ。ビール工場だとか、軽機械工場であるとか、食品工場であるとか、あるいは縫製工場であるとか、だからあすこには煙がないし、いつも青空が理想的な立場になっておる。だから、そういうことを考えていくと、私はいまおっしゃる意味はよくわかりますよ、しかし、現実にもう持ちも下げもならぬこの状態、しかも、ほっておけばこれが三倍にふくれて爆発するというものを間引こうとするわけでしょう、いってみれば、間引こうとするには追い出しが要る。そして受ける側の優遇策があって、それが相乗効果をあらわして形が整っていくと思うんだけれども、そのことを考えると、どうせやるならもっと徹底して出ていけるような素地をつくる必要があると思うんですよ。だから、大臣がいつも言われるように、いまのままでいったら八・五%のGNPであれば三倍になる、これ以上三倍になったらどうするんだ、人間も住めぬじゃないか、だからこれは間をおけぬ問題だ、だから強引にでも何とかしなけりゃならぬ問題だというわけだけれども、これでは、ふたを開いてもなかなかそれは思うような、先ほど言ったような東京がワシントンになるようなことは、とてもじゃないが私はできぬのだろうと思う。そこでやはりあと追い施策で次から次にまた法律を変えて、そして先取りのない形の、調整機能しか果たせない政策しかできない、こういうようなことを繰り返すだろうという気がしてならないので、私はお伺いしたわけです。どうですかその辺。
  54. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 工場を移すということ、入ってくるものを入ってこないようにするためには、補助金を出すとかいうことだけではだめだと思うんですね。いろんなことでやらなきゃいかぬと思う。これは誘導政策として補助政策一つとっているわけです。ところが、これが今度できますと工場分散することになっておりますから、これができると禁止政策もあわせて今度できるわけです。いままで禁止政策をやりますと、憲法上憲法違反じゃないかと言われることもあったわけですね。選択の自由ということを全然できないんじゃないかと。こちらのほうに出ていくならは税金も安くしてあげます、固定資産税も免税してあげますと。免税するだけじゃありません。それは、いまの都市にあるものを売ったら帳簿価格はほとんどゼロになっているはずです。三百坪を中小企業が三十万円ずつといえば一億円であります。そうすればその一億円のものは帳簿価格は百万円になっているかもしれません。もう十万円になっているかもしれません。明治からずっと親子三代やっているならば一万円から五千円になっているかもしれません。それまでの圧縮記帳を認めて、そして行けば、三百坪が一万坪の土地になって、設備は全部新しくなる。こういう政策があわせて行なわれるわけです。それで、それだけではなく、まだそれでも居すわろうというなら地下水のくみ上げは禁止しますと、増力は許しませんと、ガスと電気もこれ以上は増設は許しませんと、そして防音装置は厳密に要求しますと、それでもだめなら事務所税を新たに課しますと、こういうことになると傾斜がつくわけでありますから、そうなるとだんだんとこの政策は非常にはっきりするわけです。だから、ただ高い税金を払っても東京のまん中に父祖伝来の土地におりますと、こう言われればもうこれはしようがありません。そうすれば、今度何年か以内には、住居専用地区の中における工場は許さないということでもって禁止してしまうということになるんですが、それをやるためにはこういう政策スタートしなきゃならぬということでスタートをさしたわけでありまして、禁止税、誘導税、禁止政策、誘導政策、いろんなことがかみ合わされて都会から出ていかないほうが得だと、せめて火事が起こったら、うんと大きな補償をしなければならないということになると、火事が起こりそうなところへは新たに自分の財産として投資はしないことにしよう、こういうことにやっぱりなるから、入ってくる人はそこで押えられてこれが壁になる。だからいまこの法律に書いてある条文だけでは完ぺきなものではありません。あなたから指摘されると、まだまだいいところがあるじゃないかという点も考えられますが、しかし、スタートさしておきまして、それでこの法律目的というものはこれはもういますぐでもやらなければならない施策なものですから、スタートさして完ぺきなものに、抵抗なくこの法律の精神が実行されるように、いろいろなものをこれから付加してまいるということでございます。
  55. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これで私やめますが、いままで冒頭に申したように、ずっと大臣の演説を聞いておりますと、非常にバラ色でまことに大したものなんだけれども、しかし、実際問題として、これまでの政府がとってこられた経済運営のための政策というのは、まあいってみれば失礼かもわからぬけれども、どちらかといえば先取り政策じゃなくて調整機能であって、やはりもっといえばそれは自由放任、あるいは自然発生にまかすというものであったと私思うので、それが産業の面に出てまいりますと、設備競争が起き、それが過剰生産を引き起こし、それではということで、今度はカルテルを結成する。これがいままでのパターンであるし、輸出市場を見ても生産第一主義、それから輸出マインドの振興、そうすると外圧がかかる。したがって、業界に対して指導してオーダリーマーケティングでいかなくちゃだめだ。それを一生懸命やれば公取が入ってきて、おまえのところ国際カルテルだぞ、これは困ったことだといって、今度やるのはガイドラインを設定しなければならぬ。これは全部見てみると調整機能しかない、先取り政策というものがないわけですね。今度の法案を見ても、目玉商品というのは集中排除の追い出し法と、それから受け入れる側の私は優遇策とが相まっていかなければならないけれども、これも当初の話が三百億に削られて、実に振りあげた手は大きいけれども、実際なかなか——空を切っておるということになる。したがって、非常に緊急を要するいい発想によるものなんだから、もう少し大胆に、次からこれを補完する意味でも十分なる施策を私、講じてもらいたいと思うわけです。これがあと追い調整機能しか果たせないようなものであれば、私は何のためにということになろうと思うので、その辺のひとつ決意を聞かしていただいて、質問を終わりたいと思います。
  56. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ほんとうにただいま御指摘ございましたように、いままでの行政政治というのはあと追いでございました。これはそれなりの理由があるのです。財政というものに対しての基本的な考え方があったわけです。国民の税金を使うのだから、投資効率が高くなければいけない。ですから投資をしたらすぐそれが経済的に返ってこなければいかぬと、こういうことでございました。そうするとやっぱり、車が三千台以上通るものを国道というと、一年間に何十万トンの荷揚げがあるから重要港湾に指定する、一万人ずつの乗降客があるから急行をとめる、こういうわけだったのです。急行をとめればその町は大きくなるのです、実際。これは荒舩国務大臣がやってたいへん問題になりましたが、しかし、ある意味から考えれば、これからは先取り政策というのはそういうものだと思うのです、これは。道路をつくれば、道路の両側はあっという間に家ができるじゃありませんか。誘導政策というのはそういうものであったのですが、いままでの財政とか、政治の基本になる考え方はそうじゃなかったのです。これはもうこんなことをやると、新産業都市やいろんなことは全部選挙運動だと、このごろ工業配置という問題は選挙運動だとは言わなくなったというのは、このままにしておったら呼吸できなくなってしまう。このままで人を寄せてきて、関東大地震と同じものが東京を襲ったならば、東京下町のある区の人間の生存可能率を言わなきゃいかぬようになってくる。被害者は一体何%ではなくて、東京都防災会議が研究した結果は、御承知のとおり、生存可能率は三%をこえないであろうということは、一〇〇%助からないということであります。そういうことからいうと、これはもう議論なく分散をしなきゃいかぬ。せめて分散ができなくても、これ以上入ってきては困る。いまいる人の利益は守らなきゃいかぬということになっているから、これはまさか地方開発法であるとは言わないわけです。ですから、そういう意味で、いままではあと追い投資でありました。あと追い投資であって、もうどうにもならないから、車が多くなるから端を広げるということでありましたが、そうではないと私は思うんです。新幹線などというものはこれはやっぱり新幹線計画をすれば今度は東京と一時間なんだから、そこへ工場団地を持っていっても東京とあえて経済的に劣らないということになるわけです。そういう意味で、先行投資ということにほんとうに踏み切る、踏み切らなきゃならないということを口々に言われながら、制度が全部あと追い投資だったんです。これはやはり北海道開拓の歴史のように、第二の先行投資であるということだけは——これはもう考え方はそうなんです。ですから、そうしなければ均衡ある発展ということではない。ある一定の、コンスタントな成長というものを遂げながら国民所得を上げ、国民生活を向上させ、実際において成長メリットを国民が享受できないじゃないかということで、おそまきながら先行投資に踏み切ったと、こういうことでございますので、この法律立法の動機、精神、目的ということをひとつ御理解いただければ幸いだと思います。
  57. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 計画経済でいかにゃいかぬですね。
  58. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まだそこまではいかない。計画性を持った自由経済、こういうことです。
  59. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 はい、わかりました。
  60. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まあ田中通産大臣の答弁聞いていると、非常な経綸が出てきまして、もう総理の話を聞いているようです。
  61. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、そういうつまらぬこと言わぬで。(笑声)
  62. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私も少し質問したいと思いますが、まず最初、産炭地域振興事業団法についてちょっとお尋ねしたいんですが、この法が成立してもう十年を経過したと思うんですが、この十年間に産炭地域振興事業団は一体どれだけの金をお使いになっておるか、ちょっと知らせていただきたいんですが……。
  63. 青木慎三

    政府委員(青木慎三君) 産炭地域振興事業団が産炭地振興対策の中核的実施機関としまして、昭和三十七年度に設立されて以来どれくらいの事業をしたかということでございますが、まず、事業で申し上げますと、土地造成事業におきましては、百三団地、二千八百五十六万平米の造成を計画いたしまして、そのうち八十二団地、千三百一万平米の団地が完成しております。そのうち九百五十九万平米約七四%を譲渡いたしまして、三百七十五社が新たに立地しております。  それから融資事業でございますが、産炭地に進出してまいります企業に対する設備資金を融資しておりますが、これは約五百十四億円に達しております。で、この融資対象企業数は全部で千百六十七社でございます。  この進出してまいりました企業が雇用しました総数は約六万三千人、そのうち炭鉱離職者あるいはその子弟を含めて計算いたしますと三万一千人、五〇%が炭鉱関係者でございます。これらの企業の生産額は約年間五千億円に達しております。  その他工業用水道事業工場建物貸与事業及び出資事業の業務も円滑に推進されております。  事業の概要は以上のとおりでございます。
  64. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ここ過去十年間に相当の金をこれにつぎ込んでおるわけですね、産炭地振興ということによって。ところが、私が聞いているところによりますと、九州並びに常盤、北海道の炭鉱地帯、あまり産炭地振興の名に値するような事業が行なわれていない、そういうことを私はまあ聞いておるわけなんですが、それだけの金とこれだけの年月を費やして一体九州ではどういうことが実際になされておるのか、常盤ではどうか、北海道ではどうか、日本全国的に見て地域別でどういうことが行なわれておるのか、その点ちょっと知らしていただきたいんです。
  65. 青木慎三

    政府委員(青木慎三君) ちょっといま手元に地域別の数字は持っておりませんが、先ほども申し上げましたような事業をやっております。先ほど若干省略いたしましたが、この産炭地振興対策としましては、総額で予算、財投合わせまして約八百四十億円の金をつぎ込んでおります。ただいま申し上げましたように、企業としましては団地に入りました企業が三百七十五社ございますし、そこに進出してまいりました企業に融資いたしました対象企業数は千百六十七社でございます。  ただ、産炭地あとと申しましてもいろいろ立地条件がございまして、こういうところに企業を誘致しますのに非常に困難を感じていることは御指摘のとおりでございます。ただ、九州におきましても十年間、ようやくこのごろは産炭地も復興のきざしを見せてきたというふうにわれわれは考えておりますが、これからなお一そう振興していくことによって、従来の産炭地の繁栄を取り戻すことができるのではないかと思います。非常に時間がかかっておりますのは、企業誘致が非常にむずかしいということと同時に、なかなかほんとうに企業が移るということはむずかしい事態にございますので、今度の新しい立法によりましてこういうささえができますと、なお一そう産炭地の振興は進むのじゃないかと、こういうふうに考えております。
  66. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そのあなたがあとで述べられた点を私は具体的に聞きたかったんですが、私たちは産炭地域振興事業団法を審議したときに、これではたして所期の目的達せられるのかどうかという点に大きな疑問を持ったわけなんです。で、一体その後産炭地の閉山地などがどういうふうにいっておるのかということで、まあ常に私も関心を持ってきたわけなんですが、どこへ行ってもあんまりりっぱなことになっていないわけなんですね。成果があがっていないということを私は感じるわけなんですね。そうすると、まあ立地条件が悪い。ある人は、九州の炭鉱地帯なんかはもう立地条件だめなんだ、立地的にむしろまだ北海道のほうはそういう面で希望が持てるけれども、ああいう九州の産炭地、閉山したようなところへ工場を持っていくとか何とかということを言ったって、そういうことは全然あり得ないんだと。水もない、あるいは道路もない、交通は不便だというようなところでどうしてそういう所期の目的を達することができますかということを言う人もあるわけなんですが、私は、確かにそのとおりじゃないかと思うのですね。そうすると、これまでの産炭地域振興事業団法というものは、所期の目的を達していないんじゃないかということが私は言えるように思うのですね。もっと私たちはあの法律で成果があがるものというふうに実は期待しておったわけなんですね。ところが、期待はずれなんです、私たちから見ますとね。そこで通産大臣は、今度の工業配置法産炭地域振興事業団法とを、これを結びつけて、これまでできなかったことがこの今度の法案でいくようにというふうに通産大臣考えていらっしゃるだろうと思うのですが、そういうところなんじゃないですか、通産大臣
  67. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 産炭地というのは、確かに困難な条件にあることは事実です。これは、石炭が出たということでもって工場ができ、村ができ、部落ができた次第でございますから、石炭が終閉山すれば石炭を掘ったものを出すというわけでございまして、これはすべての工業立地としての最優先的な条件をそろえているものではない。第一、港はないし、それはいいところがないんです。しかし、産炭地というのはそれなりの設備もあるし、地方自治体も存在しますし、これは終閉山ができましたときには相当部分がまだ高度成長の中にございました。ですから、東京や大阪その他県庁の所在地に出て働くことができたのです。だから社会的混乱もなかったわけです。ところが、今日のように五%くらいしか経済が伸びないということになると、なかなか東京や大阪に出てというわけにまいらないわけです。これは、出てくるというときに、いま追跡調査をやってみますと、いろいろな数字が出てくるのです。これは美唄炭鉱を一つとってみてもわかるのです。八万人が六万人になり、やがて四万になり二万になろうとしている。この人たちを追跡調査しますと、みんなほとんどが大きなところへ出ているわけです。東京とか大阪とかというところへ出ているわけです。家族全部で労働できる、就業の機会が多いということで。そのために地価が上がり、そのために住宅を幾らつくってもどうにもならない。そのために公共投資投資効率が非常に悪くなるということを考えると、これはたいへんなことなんです。先ほどもちょっと述べましたが、全国で車が一台ふえると五十万円の道路維持補修でできるものが、東京、大阪は三十倍の千五百万円かかる。これは事実なんです。千五百万以上なんです。そういうことから考えますと、やっぱり国の政策としては、産炭地の振興というようなことは当然考えなければならぬわけです。この町ぐるみ、家族ぐるみ出てくることによって、五分の一は社会保障対象人口がふえるわけですから、だから投資効率という面からだけ投資考えるというわけにいかない。  だから、先ほども石炭部長述べましたように、効能があったんです。六万三千人の人が雇用されたし、それだけではなく、昭和三十五年の出荷額を見ますと、名目で一兆円だったのです。ところが四十五年度は、産炭地域全体の工業出荷額は三倍の三兆円を名目こえているのです。ですからその意味では、産炭地域振興事業団のメリットはあったのです。その意味ではありました。三兆円の名目所得は、これはもし産炭地事業団がなかったらもう非常に低いものになったと思うのです。その計算は、私は大ざっぱでございますができるのであります。先ほど申し上げたように、団地はつくったけれども、まだ団地はつくったまま遊ばしているじゃないか、地方公共団体、利息払っているじゃないかというような面は確かにあります。ありますが、しかし、それなりに産炭地域振興事業団が投資をし鉱害復旧を行ない、整地をし、団地をつくって、さあいらっしゃいというところまでやった効果は、少なくとも三十五年、まだ産炭地が動いておったときの工業出荷額の三倍、現に四十五年度は計上しておりますから、それだけの理由はあったと、メリットはあったということは認めざるを得ないと思います。ただ、事業の誘致だとかいろんなものからいうと、もっと土地が売れて工場が来ると思ったら来なかったじゃないか。それはまだ、東京や大阪の県庁の所在地に集まるほうがメリットがあったのです。今度はそうじゃないのです。それは東京でもって石炭をたくといったら、これは公害でもって絶対だめだと、産炭地なら石炭をたいても、暖房用の石炭をたいてもよしということになりますし、案外見直しが行なわれてきたということです。  私は産炭地域振興事業団法でも、それから新産業都市建設促進法でもいろんなものを見ますと、どうももう少し、まあこれは財政的にもいろいろな制約がございますが、やはり外国でやっておるようなテネシーバレーにしても、いまのニュータウン法にしても、ブラジリアにしても、やるときはもっと自然に流れるのじゃなくて、急激に流れが変わるような政策的な段階があるんですな。そのためには少しゆるかったかなという気もしないではありません。しかし、それはそれなりに批判もあるが、実績もあったわけですから、今度はこれから大きくなる工場というものは新しい全国工場立地、工場適正化をはからなければいかぬ。政府はそのために、こういった法律を用意いたしました。それで一番初めは、産炭地の振興をはかっていくために二重写しになります。こういうことでありますから、これからは産炭地の振興も非常にはかられると思うんです。それで、いままでの例を見ますと、進出企業は一億円以上のものが一一%、九十企業にすぎない。大部分が中小企業である。北海道等立地条件に恵まれない地域については、必ずしも企業進出が円滑に行なわれない等の問題がございます、これはほんとうです。ですが、今度こそ北海道とかそういうところに水もつくってあげます、それから固定資産税もまけます、金も貸します、道路もつくります、鉄道の駅もつくります、こういう工場進出が可能なような誘導政策を行なうわけですし、大企業そのものも地方にいけば縫製工場だけが産炭地に行くということではなく、今度は軌道に乗ると思うのです。乗せなくちゃいかぬと思うのです。ただ、もう産炭地地域を永久にそこに閉じ込めておくために、いかなる犠牲を払ってもやるんだということではないのです。産炭地というものは、ある一つのレベルまでの政策を行なえばちゃんと社会的な活動ができ、日本経済発展に貢献できるという限度があるわけでありますから、そういう限度を考えながら、産炭地だからどこまででも社会保障と同じようにつぎ込むというのではない。そういうことではなく、いままで産炭地域振興事業団法等でもって産炭地の振興をはかってきた法律の精神を見守りながら産炭地振興をやってまいろう、こういうことでありますから、そのようにひとつ理解していただきたい。あなたの言われることはよくわかるのです。産炭地だからといって、どこまででも税金をつぎ込んでやるとか、そういう考えではないのです。しかし、この法律二つ合わせれば産炭地がりっぱになる。こういうことですので、御理解いただきたい。
  68. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これまでの産炭地域振興事業団法は、所期の成果をあげてなかったということだけは大臣も認められた。
  69. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや効果はあげた。
  70. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、その点をひとつはっきりしておかなければならぬ。これは大臣のおっしゃる、これからこの法案ができたらそういうことなしにりっぱにいくんだということにつきましては、これはもうまだ未来のことですから、宿題として残しておきましょう。大臣が幾らおっしゃっても、ああそのとおりりっぱにまいりますと、私も相づちを打つわけにはまいりません。大臣にひとつ大いにやって見せてもらおうということなんですが、いま大臣、石炭の産地だからどんどん石炭をたいても、もうやかましく言わぬだろうというのは、これは少し私は……。
  71. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) どうもあなたはそういうところばかり取り上げる。
  72. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そういうことじゃないのです。やはり石炭の産地というのは石炭をどんどんたいて、公害が起こればそれは文句が出ますよ。あなた、いまそういうふうな極論をしたのだと私は解さなければならぬのだが、そういうふうにとれることをおっしゃったのですが、そうじゃないということですね。やはり公害はどこでも起こしてはいかぬということだけは頭に置いていただきたい。  今度は工業配置法に移りますが、この法律が、過密地帯から工場移転させるのに効果があるのかどうかという点ですね。たとえましたならば、東京及び周辺のコンビナートにある鉄鋼や石油の工場移転するのかどうかという点が一つですね。過密を解消するというならば、こういうところを手をつけなかったならば、私は過密解消ということにはならないと思うのですが、大臣はどういうふうに考えていらっしゃるか。
  73. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 過密解消には二つあると思うんです。これは、いまあるものが分散をすれば過密解消になります。もう一つは、ほっておいたら驚くべき過密に拍車をかけるものを、歯どめをして現状で維持するということになれば、これも過密排除であります。そこが問題なんです。ですから、先ほどから申し上げておりますように、八十兆円の国民総生産が年率五%ずつふえていくか、七・五%ずつふえるか、八・五%ふえるかは別にしまして、一〇%になると六十年には三百四兆円になります。こういう計算が出るでしょう。四十五年比較で八・五%——木村経済企画庁長官が予算委員会で述べましたとおり、八・五%ないし九%だと思います。これは高いかもしれません、内容によって違いますから。八・五%で計算すると、六十年には二百四十八兆円、二百五十兆円になります。そうすれば、結局八十兆円の三倍になるわけでしょう、三、八、二十四ですから。三倍になれば、ほっておいて自然発生をすると、東京や大阪も三倍になるわけです。そうすると、この工場がこれから三倍になったらたいへんでありますから、東京や大阪はせめて一倍半でとどまってもらいたい。そのかわりに、あとの残りの一倍半というものを三倍になるところへ割り振れば、ある地域は四倍にも五倍にもなるわけです。ですから、平均して三倍か四倍にしないで、北海道は六倍にしたい、東京は一・五倍で押えたいということは、これは政策的に考えざるを得ないのです、どうしても。これはもう一番よくするのには、北海道には金もかけるし、土地も無償で提供するし、税金も取りませんし、法人税を免除すると言えば、これは行くんです。それだけじゃない。東京、大阪の一定の過密地帯には税金を五倍取る、こう言えば、一発できまってしまうけれども、それは政策ではないと思う。ですから、あるところは、過密地帯は入ってこないように抑制をする。出ていってくれる人には何か金も貸しますし、圧縮記帳制度も認めるし、あるいはあと地も買ってあげますということも申し上げなければなりません。出ていくなら、向こうに土地も提供します、道路もつくります、工業用水もつくりますということをやらなければ出ていかないじゃありませんか。そして新しく入ってこないように、これから当然に増大するであろう新しい設備は過密なところではなく、過疎の地帯につくってもらおう。そのかわりに、それなら経済的に合わなければいけませんから、経済的にペイするような、比較しても東京へ来ないほうが利益であるというような制度をつくろう、こう考えたわけでございます。  またそこでもって、さっきのようにあげ足をとられると困りますが、あなた、どうも私がるる申し述べていることの一%をとって議論されるので困るのですが、これはやはり知識集約産業にウエートを置かなければいかぬと思いますけれども、やはり経済は拡大するのですから、鉄鋼も石油化学も必要とする。それは十年前にむつ製鉄をやめたのです。あの規模のものではやめなければいかぬ。国会でむつ製鉄をやめたことは政策的に失敗だったと皆さんに言われたのです。しかし、十年後にはその二十倍の下北製鉄をつくらなければいかぬ、こういうことになっているわけですから、そこらが日本経済は拡大するのですから当然のことなんです。下北半島はとにかく、製鉄所でもって基地にしなければいかぬ。それだけじゃない。やはり苫小牧も、それから釧路の湿原地帯とか、秋田湾とか、中海干拓地とかいろいろなものが出ております。志布志もそのとおりだし、宿毛もそのとおりだし、橘もそうだ。有明干拓もそのとおりだというふうに見直しが行なわれているということでございます。そういうことによって、農業地帯として湖を埋めて米をつくろうとしたところが、泥炭地でどうにもならなかった。考えてみたら、一つの基地としてはこれは新しく考えると、米よりもはるかに国民総生産に寄与すると考えれば、それは工業基地としてもいいじゃありませんか。阪神や京浜地区に全部寄ってくるということになったら、それはもうどうにもならないような状態になりますから、せめてこれからは産業の内容もいいものにして公害を出さないという、絶対的にそういう条件にしながら、ある程度一定の成長メリットを国民お互いが受けて、子孫のためによりよき生活環境を残そう、こういうことでございます。そういう意味で、さっき、北海道でありますから石炭専焼火力もできますというようなのは、北海道という広いところですからということを言ったので、産炭地だからというふうにはおとりにならないように、念のため申し上げておきます。
  74. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いまあなたの意見聞いていますと、半分までは、三分の一くらいは私も賛成して、いい意見を持っていらっしゃるように思うのですがね。あとの三分の二はやはりちょっと考えが違うのですね。過密地帯をなくすということは、今日もう東京と大阪はすでに過密なんですよ。その過密を私は処理しなければならぬというのがまず第一の眼目でなければならぬと思うのです。ところがあなたの話を聞いていると、東京のような過密のところへ新しく工場を持ってこぬように、それか一つ——過密というものの考え方二つあるとあなたおっしゃった。だから、持ってきて、これ以上の過密にしないようにというのも一つ考え方、それから、これ以上持ってこないためには過疎地帯へ新しい工場は持っていくようにするのだ、こういうふうになってくると、過密地帯をなくす法案だと言いながら、実際は私は実効がないと思うのですね。そういうものの考え方でいくならば、東京と大阪にあるほんとうの公害をたくさん起こしている工場、この過密地帯でたくさんの迷惑をかけている工場をこの法律によって過疎地帯へ移すなり、あるいは公害の迷惑をかけないような方法でよそへ持っていくというなら私はいいと思うのですがね。東京と大阪はもうこのまま手をつけないというようなところに重点がいくというと、これはおかしいと思うのですよ。大臣、あなたの話を聞いていると、そんなふうな気がするのです。
  75. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 須藤さん、あなたは御自分の発言だけじゃなく、ずっと皆さんの御質問の間あなたも耳を傾けられておったと思うのです。そういうことをずっと聞いておらなかったというならこれは別です。しかし、私は毎度申し上げているのです。質疑応答が続けられております。これは過密の弊害ということはもう全くいまでもそのとおりです。ですから過密の中から追い出さなければいかぬ。追い出すということで、追い出し税やそういうものもやらなければ出ていきません。出ていきませんが、少なくてもいまあるものに追い出しをやる、禁止をするということだけでは解決になりませんから、まずスタートをする場合には、出てきてくださるならば、東京におるよりも、大阪におるよりも税金が安くなりますよ、土地も広くなりますと、こういう誘導政策が先行しなければならないということは当然じゃありませんか。そしてまず、出ていくほうに先行さして、そうすれば当然今度は工業用地のくみ取り禁止をし、住宅地域の中における工場は禁止をする。だんだんだんだんと禁止になっていく。事務所税は創設される、公害税も創設される。それだけでなく、禁止税として三段階税制をつくろう、こう言っておるわけですから。北海道は安く、それから中間地帯は現行のままで、過密地帯は高く、こうしなければだめです。この高くするという禁止税的な税は来年はつくりたいと思いますが、ことしはできなかったんですということを言っているわけです。  なぜかというと、千五百億に及ぶ一・七五の暫定税率がことしは手がつけられない状態でございました。そのかわりわずかでございますが、大蔵省が予算を税とは別に三百億の二分の一、百五十億出しますから、ことしは税とは関係なくこの制度を発足させましょうということで、これは閣員の一員としてしようがありませんから、理想的なものができなければやれぬということは言えない。そういう意味で、まず制度スタートさせようということを考えたわけです。ですから、東京から言うなれば集中排除です。これは集中排除法である。集中排除法ではありますが、それだけでは済まない。出たあとまた入ってきたら困るから、だから、入ってこないような歯どめになることも考えなければいけません。そういうことは当然のことじゃないですか。そうして工場は出なければならないようなまた情勢にあるんです。それはもう機械が耐用年数がきておるから、新しい機械に更新しなければならないような時期にもきているんです。もう一つは、公害防除施設を併設をしなければならないようになっているんです。だから過密地帯における企業は、大企業、中小企業たるを問わず相当膨大もない設備投資をしなければならない時期にきているんです。そうすると、隣に脱硫装置を一つつけるにしても、いまの土地の三分の一というような隣接に土地を求めなければならない。坪三十万円とか五十万円もするものを求められるはずがない。ですから何とかして適地があれば移動したい。新しいどうせもう公害税とか、事務所税とか、禁止税、追い出し税をかけられることはもう目の前にあるんですから、誘導税制をやっていろんな助勢の法ができたら腹をきめて移ろうとしていることは事実なんですよ。そういう好機を見のがしてこの法律を出さないとしたならば、政府は、責任を追及されるべきでありますが、ちゃんとした法律を出しているんですから。それは完ぺきじゃありませんですけれども、それはなさなければならないことをやるということにしているんです。だからあなたも私の真意を十分承知しながら、ちょっと何か引用すると、その部分だけを誇大に取り上げて真意を曲解されることだけは、これはひとつごかんべんをいただきたい。
  76. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 曲解しているか正解しているかは今後のあなたの手腕をながめることにいたしますが、いまある過密を早く解決せよというのが私たちの願いなんです。そこがちょっとニュアンスが違うんです、あなたのおっしゃっていることは。それで大臣も、いまある過密をなくするんだとおっしゃる。それならば大工場移転させるということが必要になってくるわけですよ。それはあなたもいまのお話でそう考えているんだ、そのためにはいろいろな税金面や、いたたまれないようなことにだんだんしていくんだ、そう言うとまた言い過ぎとおっしゃるかもしれないけれども、そういうことですよ、一口には。そうすると私は、その次にそれを言いたかったのですよ。もしもそれをおっしゃるならば、効果のある追い出し規定をつくらなければいかぬのじゃないかということを私は言おうとしているわけなんです。それはあなたも御賛成、そういう方針でいこうとおっしゃっていますから、もうこれはこれで置きますが、そういうふうにしてできるだけ私たちの考えている、今日困っている過密を早くなくしてほしい、こういうことですよ。  東京の通産局は、茨城、栃木、群馬の北関東三県のかなりの部分を誘導地域に指定すべきだ、こういうふうに考えているということが報道されております。これは日本経済新聞にもそういうことが出ておるわけですが、再配置は都心からせいぜい百キロラインにどどめるということになるわけですね。この案によりますと、過密地帯もドーナツの輪が広がるということに私はすぎないように思うのです。こういう方針でいくならたいした過密地帯の解消にならないんじゃないか、多少ちょっと輪が広がるにすぎないんじゃないかといえるのですが、大臣、どういうふうにこれをお考えになりますか。
  77. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 同じ御質問がございましたから、先ほど考え方を披瀝いたしておきました。これは北関東というのは、特に茨城、栃木、群馬の三県でございますが、東京や神奈川、千葉はこのように過密でありながらわずか半径百キロ、百キロを延ばし直線距離でいうと水戸でございます。水戸がちょうど百キロでございます。そういうようなところが全く東北と同じような状態では困るんじゃないか。そういう意味で、せめて東京にあって、住宅地域の中にある中小企業、しかも公害を伴うものは困るが、そういう内陸部で十分やっていけるような軽工業、住居専用地区の中でも動力の馬力制限をつけておれば現に操業しているものもあります。そういうものが北関東に団地をつくって、しかも、きちっと遮断緑地もあるようなそういうところに移ってもらったらどうか、それはちょうど筑波移転にもあります。筑波移転にも似たものであります。そういうことにすれば東京や神奈川や、日本橋の道路元標を中心に半径百キロの首都圏の中で、半径五十キロ圏という超過密状態都市改造もできるんじゃないかというようなことで、北関東の各府県が北関東開発ということを考えたことは事実です。私も承知しております。東京湾が全然どうにもならぬから、その場合には霞ヶ浦の先の湖をちょっと堀り込みますと、ここで関東の周辺を鉄道と道路を通すことによっていまの過密地帯との間には大きな遮断緑地というものをつくりながらできるんじゃないか。これは私は、その程度の理想的なものなら考えられると思う。  それで私は、東京湾を埋め立てて工場を誘致しようという案には反対なんです。大体そう考えるのですが、これ以上東京湾を埋め立てて大工場を持ってこられたら、空気が、第一呼吸できなくなるからさらに問題にはならないということで、私もあまり賛成しなかったのです。そういうことは、どうしても東京に現にある中小企業や軽工業が、あるいは自分の墳墓の地に帰るなら別でありますが、遠くは行けないということなら、関東周辺に理想的な団地をつくれば収容はできるんじゃないかという考え方。ただこれは、この法律による誘導地域にするのかしないのかということは、これは慎重に検討しなければならない。全国のあるべき姿、理想的姿の中で北関東をどうすべきかということでございます。これは事実そうなんです。さっき阪神の問題も申し上げましたけれども、それは姫路や神戸はたいへんな過密である。しかし、同じ兵庫県の中でも但馬のほうなどはこれは人口過疎地帯で、まだ土地も、水も、労働力もなかなかあるわけです。しかし、ここは軽工業地帯、精密機械工業などの地帯なら適地かもしれません。これはいつでも問題になっているところでしょう。一人の当選票が三万票だというので、いつでも問題になる地域が同じような……。
  78. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それは私たちも考えておりますよ。
  79. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ああそうですか。だから、やっぱりそういうことは背後地としてどういうふうに調整するのか。鳥取県とあの山陽地帯をどう結ぶのかということと同じことだと思うのであります。広島と島根県を結べば四、五十分、三、四十分で高速道路で結べるのですから、この水と、この土地と、この労働力をどう調整するかという問題は、これから考えていかなければならぬ問題であって、この誘導地域というものは、都道府県の意向も十分聞きながら、慎重に検討いたして決定したい、こういうことで理解をしてよろしゅうございます。
  80. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いま大臣もおっしゃったように、兵庫県の但馬地区、あの辺は、みんな都会農村の人たちが働きに出るわけですね。そのために過疎地帯になる。日本じゅうで一番の過疎地帯になってしまっている、あれから鳥取、島根にかけまして。だから、そういうところは公害を起こさないような企業を持っていって、農村の人たちが農業をしながらでも安心して働いて、家を離れなくても働けるようにしたらどうだという、私たちもそのことは党としても考えておるわけなんですがね。  それで、しかし、通産省のこの資料によりますと、工場用地は昭和四十五年十三万ヘクタール、これが昭和六十年には二十八万ヘクタール必要である、こういうふうになっていますね。これから十二、三年の間に十五万ヘクタールという膨大な用地が必要であることになりますが、どこにこの膨大な用地を見つけるのか。大規模工業基地で何万ヘクタールを一体見込んでいらっしゃるのか、その点。
  81. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) ただいま御指摘のありました工業用地は、六十年に一〇%の成長率成長した場合の鉱工業生産を行なうために必要な場  合に二十八万ヘクタールということでございます。そういう条件でお聞き取り願いたいと思いますが、その場合の増加分は十五万ヘクタール、われわれとしては、それを一応試算といたしましては内陸で十万ヘクタール、臨海で五万ヘクタールのうち、指摘の大規模工業基地としては一万五千ないし二万ヘクタールのものが必要ではなかろうか、こういうふうに試算をいたしております。
  82. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ちょっと……。  これは、二十八万ヘクタールということを、私も、事務当局の試算をこのまま一つ数字として、参考資料として提案しようということに賛成しておるわけですが、これは、計画がずっと詰まってまいりますと、これがもっと大きくなるかもしれません。それはなぜかといいますと、工場といっても、いままでのように敷地の五割建てられるというような工場では、これは困るんです。工場は敷地の一万坪に対して三千坪でなければならないというような、住宅制限と同じような制限が必要になってくる。道路も広くなり、遮断緑地も必要である。必ず木を植えなければならぬ、工場の中には。そういうことになりますし、まあ遠くから見ますと、特に海岸の自然環境などを守るということになりますと、建物の色とか、建物の高さとか、そういうものまで景観上も制限されてくるんです。美観地区や風致地区における建物というものは制限を受けるにきまっているのです。公害の問題、自然環境の保護の問題と景観上の問題から考えて、またほんとうにここまでくるともう利益追求型ではだめだ。破れたトタン屋根で、こんなに破れたトタン屋根でもってさえもやっておるのだから、配当はできないんだ、月給は上げられないというようなことではだめなんだ。これは、もうほんとうに理想的に、外から見て病院か、事務所か、研究所か、工場かわからないようなものにしなければ、私は六十年代の産業というものにはならぬと思うのです。そういう意味からいいますと、いまおっしゃいました二十八万ヘクタールというものに十五万へクタール足らないのだということは、これは立体化して、いままで平家だった工場が、軽工業は五階にも十階にもなりますから、いままでのような計算では申し上げられませんが、しかし、十五万ヘクタールというものはもっと大きくなっても小さくはならない。それは工場の生産量が上がるというのではなく、工場というものがもう少なくとも明治初年の小学校ぐらいの環境でなければならない。これは新しいものがみんなそうであって、もうすでにナショナルの南九州の工場は、白亜の、遠くから見れば青い松の中にまつ白い工場ができておる。そこで若い人たちが定着するように、もう優秀な経営者はちゃんと着目しているわけですから、そういうことで、公害調整意味からいっても、十五万ヘクタールというものは大きくなる。それを日本に求めることはむずかしくはない。それは十分、局地ではなく、内陸部もいろいろなことを考えてやるわけでございますし、総合農政をやるときに、例の休耕をやろうというときに、この計画が早く一緒にならないかとさえ考えたわけでございますから、そういう意味で無理な坪数ではないということだけ申し上げておきます。
  83. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それは私も、ソビエトや多くの工場を見てきました。あなたがいまおっしゃったような工場になっておるわけですね。工場の中に庭園があって、昼の休みは労働者がそこでベンチに腰をかけて本を読むことができるという、そういう工場か何かわからぬという工場になってますよ。日本工場と比べると大きさも違った形になっている。日本工場も早くそうならなければならぬと思いますよ。大臣がそういう工場を夢見てやっていこうという方針だから、私は大いにやられたらけっこうだと思います。  そこで、大規模工業基地開発は、むつ小川原株式会社や、苫小牧東部開発株式会社などの第三セクターと呼ばれるものの手で進められておりますね。その第三セクターに対しましていろいろな批判が今日あるわけですが、大阪市立大学助教授の宮本憲一さんはこういうように言っておりますが、大臣、これに対してどういうふうな御意見があるか。「住民の意思が結びつかないままでお金と権力が結びついた。住民の側からしたら一番都合の悪いセクターですね。六〇年代を通じて自治体が旗をふっておこなった開発が批判されたのは結局それが企業のためだったということでしょう。ところがこんどは企業そのものが前面にでてくる。失財したときの責任はどこが負うのでしょうか。責任のがれがいっそうひどくなるセクターです。」という意見を宮本憲一助教授は述べております。大臣どういうふうに……。
  84. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういう発言があることは承知しておりますし、これは謙虚に承るべきでございます。ただ、公害を除去するためには工場はやめたほうがいいのだというような感じでは、そういうものと一緒にしてはならぬと思うのです。これはやっぱし日本工業というものは、ある程度コンスタントに伸びなければいけない。伸びなければ国民生活の向上はないというわけですから、これは労働者の福祉のためにも、すべての日本人のためにも、やっぱしある程度の生産というものは伸びなければなりません。そうするとどこかで生産を続けなければいかぬ。そういう意味で大規模基地というものが必要である。これはただごま塩のように農村地域工業導入促進法や、離島振興法や、産炭地域振興法だけでやれるわけじゃありませんから、工業というものに対してちゃんとした年次計画で、長期的な展望に立ってやらなければならぬことは当然なんです。そうすると、いままででも産炭地でも下請の下請だけしか行かないし、どうも景気の波動に対して非常に弱い。もちろん国際的な景気波動に対しては耐えられない。行ってすぐ開店休業である、給料も未払いであると先ほどから御指摘がある。そのためにはある一定規模のものの基幹産業を移さなければだめだと、これは少なくともそうしなければならないということは事実なんです。そうすると、やはりある一定規模というものが、二十五万とかというものが地方中核都市だというように考えると、同じようにやっぱりワンセットのものをつくるとか、ある一定規模以上のものの開発を行なうということはこれはやっぱり避けがたいし、やっぱりそれが合理的なんです。そういう意味でつくったのが鹿島新工業港であり、それから御承知の四日市であり、それから水島であり、もっと言えるのは大分湾であります。これが四つとも日本工業力というのはすばらしいというくらいにさあっとできたんです。できたら、どうも計画がこんなにできるならば道路は倍にしておくべきだったと、先ほど申し上げたように工業団地の中には遮断緑地をつくるべきだ、工場敷地の三〇%は緑地として制限すべきだったというようにいろんな問題が出てきたわけです。  ですから今度第三セクターでやる場合には、そういうふうな基準を明確にして、そして今度はいま指摘をしたようなところで文句を言われたような、そういうことが起こらぬで、これはやっぱり七〇年代の日本工業基地として、工業とはやはりすばらしいんだというようなものをつくるには、やっぱりそれなりに全部民間の恣意にまかしてやらせるべきじゃない。これは政府も体制金融とかいろいろな制度もやりながら、こういう法律の中で調整権もあるようにして、少なくとも地元も納得をするようなものでなければならないと、こういうことでいま御説明申し上げている。ですから、志布志湾などでも先ほど申し上げましたようにいまはこれは開銀で、体制金融でもって貸せることになっております。さあおやりなさい、おやりになる意思があれば政府はちゃんと制度は用意してございますと、しかし、あくまでも地元が賛成をしなければなりません、地元の住民の意思が前提でございます、こう言っているのですから、政府はほぼ完ぺきな体制をとっている。こういうことでございますので、ちょっと私の発言も十分考えていただいて、ただ、こういうものはよくない、住民の意思の無視だ、こうきめつけないで、避けがたきものであったならば、政府は制度上こうしなさい、こうしてやるべきであるという建設的な意見を出すことが望ましい、こう考えております。しかし私も、そういう御意見があるので、政府は謙虚に考えております。
  85. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 おそらくこの宮本助教授も生産をとめてしまえと、こんなことで言っているんじゃないと思うのですよ。やはり工場を建てるならばそこに公害を起こさないようにちゃんと配慮をして、公害が起こらぬという結論を得てから工場な建てなさいと言っていることだと思うのですよ。四日市でもそれから大分湾でも鹿島でも、そういうことをしないでどんどん工場を建てるだけ建ててしまうから、今度は公害が起こって困るのでしょう。常にそれがあとを追っかけているような形、こういうやり方は私はいかぬと思うのですね、その点をはっきり大臣含んでおく必要があると思いますよ。  それで、政府は六日の閣議で、公共事業の施行に伴う環境保全対策をきめましたね。これは第三セクターの行なう大規模工業基地開発に対しても当然当てはめられるものだと私たちは思いますが、そこはどうなんですか。
  86. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほどから申し上げておりますとおり、環境の整備、自然の保護ということはもうすべてに優先をしてすべての政策前提にしょう、こういうことでございます。利益追求型ではいけない。これは全然利益追求を無視するわけにもまいりません。まいりませんが、生産第一主義はいけません。だから後代に、これからの投資はなかなか大きな投資になりますから、後代と言わなくても次代の国民のためになるようなものでなければならない。そういうことを公共投資の基本といたしておりますから、環境整備はすべての公共投資において原則となるというふうに御理解いただいてけっこうでございます。
  87. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 最近ストックホルムで国連の人間環境会議が行なわれておりますね。そこで大石環境庁長官が演説して、こういうふうに述べていらっしゃいますね。「GNP向上が人間幸福への努力の指標と考え——日本国民がですね、指標と考え、「これに最大の情熱を傾けてきたが、その考えが誤りであることに気がついた。」と、こういうふうに大石さんおっしゃっていらっしゃる。また、「日本国民の間に深刻な反省が生まれてきたことは当然で「だれのための、何のための経済成長か」との疑問が広く提起され、健康で明るく豊かな環境を求める声が高まり、経済成長優先から人間尊重へと政治の方向も大きく変わることになった。」という発言を大石さんがしていらっしゃるわけですが、今後の経済成長率を一〇%とする工業配置の思想は、深刻な環境破壊をもたらした高度経済成長、GNP至上の思想であり、人間尊重を唱える大石案と矛盾しておるように私は思いますが、このようなGNP至上的なものの考え方というものはもう改めるべきであると、こういうように私も思いますが、通産大臣も御同意でありましょうかどうでしょうか。
  88. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 間々申し上げておるのでございますが、一〇%成長をやろうというんじゃないということなんです。五%なら百五十二兆円、七・五%なら二百十六兆円、八・五%なら二百四十八兆円、一〇%なら三百四兆円でございますと、いままで低く低くばかり見ておりましたから、どうもやってみると二〇%ぐらいも私ども対前年度予算をふやして、その二〇%を公共投資に振り向けながら、今日になってくると社会資本のアンバランスはかくのごとき状態でございます、生活環境は破壊されているじゃありませんか、それじゃだめだ、そういうためにはどうするか。潜在成長力は一〇%でありますと、こう言っておるわけです。潜在成長力は一〇%であります。二十九年から四十五年まで十六年間、前半は一〇・四%、後半一一・一%という高い成長を続けてきたんですから、去年一年ぐらい五%台になったって、やろうとすればできます。一次産業の比率は一七・四%、アメリカの四・四%にしなくても、拡大ECの六%台にしても、一〇%のまだ余剰労働力が二次産業移動しなければならないものがあるじゃありませんか。そうなれば一〇%成長の力はあります。それで、しかし力があるといっても、一〇%といえばあなたが言うように高度成長の延長じゃないかということになりますから、八・五でいいのか七・五でいいのか、まあ五%でいいとは言えぬと思うのです。いますでに五・七%にいっているわけですから、それで不景気不景気といっておるんですから、またそれより多くなければならぬ。しかし、内容も違うでしょうし、国民総生産の内容そのものが質的に違ってまいりますから、いまここで申し上げられる問題じゃない。それは夏から秋にかけて成案を得ようとしている新経済計画というので大体の数字をはじき出す予定でございますと、こう非常に慎重にかまえているのです。  ですから過去のように、大石君が言っているように、日本人がすでに成長第一主義で今日公害がかくなることは全然予知しなかったというほどの民族じゃないのです。これはちゃんと予知しておったのですが、どうも明治百年間の拠点集中ということで、過度集中における公害の複合という計算に甘かったんでしょう。そういう面から、これは一年前から私がいま提案をしているような工場の適正配置という法律をもとにしてやればこんなことにはならなかったんです。ですから、そんなことは演説でもって報道された面だけで、政府や自民党は全部アウトだったと、こういうことじゃないんです。そこはひとつお間違えのないようにしていただきたい。しかし、指摘されるような面がないとは言えない。これは今日、公害問題はかかる世論になっておることを考えてみても、将来そういうことをやっちゃいかぬ。ですから、ある一定の高い成長は確保しなけりゃなりません。それで国民生活はよくならなけりゃいかぬ。しかし、それを追求する過程において、生命の安全さえも期しがたいということでは困るということで、その対案を出しておるわけでありますので、そういう意味でひとつこれからの、大石発言と私たちが考えておる産業政策というものは全く逆なものではないということをひとつ御理解いただきたいと思います。
  89. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、この大石発言に一つ言い分があるんですよ。というのは、大石さんは、「日本国民はGNP向上が人間幸福への努力の指標と考え、」ている——日本国民はそんなこと考えていないですよ。自民党内閣ですよ、そんなことを考えているのは。そうじゃないですか。池田さんの時代から高度成長を言い出した、そうでしょう。そのとき私は、池田さんの高度成長はだめだと批判していますよ。日本国民全部が言っているんじゃない。これは私は、大石さんが帰ったらおかしいぞと言ってやりたいところなんですが、それでいまあなたは、そういうことを考えないでこれから人間尊重の立場に立ってやるとおっしゃるから、まあすなおに伺っておきますけれども……。  そこで、次の質問に移りますが、むつ小川原の開発に対しまして、ある住民は素朴な疑問を持っておるんですね。こう言ってるんです。「ドラムかんを縦に並べると青森から静岡県の浜松までつながるほどの多量の原油を一日でたくような工場、何でこれで公害が出ないと言えるのか。」こういうような素朴な疑問を投げつけておるんですね。いま日本にある一番大きな製油所は出光興産千葉製油所、ここでの原油の処理能力は日産二十七万バーレル、これは四十六年末の計算ですが、それがむつ小川原に持ち込む計画の石油工場はその八倍近い日産二百万バーレル。それだけではありませんよ、石油化学が年産四百万トン、火力発電千万キロワット、このほか鉄鋼年産二千万トンの工場が保留されているわけですが、たとえてみますならば京葉工業地帯、三重四日市、岡山の水島ですね、この各コンビナートを一緒につくり上げるような、まさに国際級コンビナートができるというわけなんですが、こうしたとてつもない工業開発が、海も野も川も、そして人の暮らし、人間そのものをどれだけ痛めつけ、破壊し、荒廃させるかどうかは、私は、六〇年代の高度成長の結果を見れば非常に明らかになると思うんですね。七〇年代から八〇年代にたくさんの大規模工業基地の建設を促進するこの法案は、公害全国に広げ、自然破壊を全国に押し進めるものであるというふうに私たちは思っておりますが、どうでございましょうか。
  90. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この法案公害を推し進めるものであるということでなく、あなたも先ほどいみじくと述べられたとおり、いまの東京や大阪の過密は困るから、その中から工場を出したいということは、政府だけではなくてあなたも、自分もそう思っていると、こう言われたから、それはこの法律をやることによって入ってもこないように、いまあるのを出るようにするんですから、公害をばらまくようなことは絶対ない、これだけはちゃんと申し上げておきます。  もう一つは、工業というものは確かに高い成長、超高度成長であって、しかも、その内容が重工業中心であり、いままでのようなことをずっとこれから永久に続けるわけにはまいりません。それは六十年になれば石油が、世界の海洋を航行する石油の三〇%を日本に入れなければならない、こういうことでありますが、それはまだ六十年でしかない。日本民族の生命は悠久であります。六十年——あと十三年間でそうなろうということですから、それじゃ二十三年以後はどうなるのか。地球上の六割入ることになるのかと申しますとそれは不可能だから、知識集約的な産業にならなければいけません、こういうことを先ほどから申し上げているんです。ただいまあなたが述べられたむつ小川原、確かにそういう計画はあります。そういう計画はありますから、これはしかし、絶対に公害をもたらさないということを前提にした設備でなければならないんです。これは電力で一千万キロといえば、昭和二十年の戦争が終わったときに全日本の電力発生量が一千万キロでありますから、たいへんなことは事実であります。事実でありますが、それはただ利益追求だけではなく、日本産業として考えておる一つのプランであります。ですから、そのプランというものが過大であればもちろん修正しなければならぬ、それは当然のことであります。あそこであります。あそこだけで石油化学をやろうということじゃない。志布志でも計画もあるし、まだまだ一ぱい計画かあるんだから、そういう意味でむつ小川原だけで驚いておっちゃだめなんです。むつ小川原が拠点開発ということで、ほんとうに公害がまたまとまって起こるようなことであれば、これはもう公害防除ということで調整をしなければならないことは当然でございます。これは技術的にも科学的にも、またさっき言ったように、いままでの工場規模ではなく建蔽率を一割にする、二割にするということでもって工場の自然も守れるわけでございますし、排出基準、大気汚染、水を汚濁しないように基準を強めればいいわけでございますし、機械は公害を放出しないように、排出しないような機械設備、公害設備というものはお金さえかければできるわけであります。そういう意味で、新しい計画に対しては地方にだけまかすというのでなく、政府も地元も完全な合意に達するということでなければならぬ。いまあなたが指摘されたように、たいへん危惧しておられる住民の方がおるようでございますから、そういう人の納得を得るためにこれはちゃんとしたことをやらなければならぬと思うんです。あそこは日本の本州で猿が一番北に住んでいる、日本で一番自然が残されている一つの地点でございます、むつ小川原は。ですから、そういう自然というけれども、過疎地域であって、人のいなくなるところもまたたいへんなところでございます。それをどう調和するのかということか下北半島のむつ小川原開発ということにつながるわけでございますので、これは住民の多年の願いでもあったわけです。多年の願いであったのだが、さてやることになると、願いよりもっと大きなものが来たということであれば、それはちゃんと調整が可能だと思います。それは通産省も、あなたが指摘されたような公害のまき散らしになるんだというような工場計画はいたしません。これはもう企業と地元と通産省で共同して責任を負えるような状態でむつ小川原開発をやりたい、こう思います。
  91. 大森久司

    委員長大森久司君) 委員の異動について報告いたします。  本日、中山太郎君、山本敬三郎君が委員辞任され、その補欠として金井元彦君、梶木又三君が選任されました。     —————————————
  92. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、大臣、いま申しましたむつ小川原の開発の計画ですね、これは通産省の資料によっているんですよ。私は自分でかってなことを言っているのではない。その通産省の資料によると、私がいま申しましたようなたいへんなことなんですよね。それじゃあ大臣は、こういうことは決定的なものじゃないので、これからのむつ小川原の開発の実態は住民たちと相談してそうしてやるというんですか。この通産省計画、資料というものは決定的なものじゃないという御意見なんですか、どうなんですか。
  93. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一つの案であるということでございまして、確定し、確定して動かせないというものではありません。これはこれから十分調整をしていかなければならぬ問題でございます。  いまあなたが述べられた、石油二百万バーレル、四百万トン、それから千万キロワット、これは七〇年代の目標数字として試算をしておるようでございます。それはもう実施計画とする場合には、もっともっと合理的であり、こまかいものであり、これは千万キロ使うというものでありますから、公害に対しては、二度とまた大石長官が国際会議でもって声を大にして述べるようなものであっては困るのであって、これは通産省も絶対責任をもって、七〇年代の産業の姿はこうあるべきだというようなものにすべく努力をいたします。
  94. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 通産省の今日われわれに示された計画が絶対的なものでなく、これは一ぺんちゃんと考え直すということですから、これ以上私は追及しませんが、やはりこういう問題は地域に住む住民の気持ちを尊重するということ、それがまず必要だと思いますので、その点もよくあれしてやっていってもらいたいと思います。  それから、これまで大臣、コンビナートで初めから、公害が起こりますよ、と言ったようなものはどこにもないのですね。鹿島にしましても、水島にしましても、四日市にしましても、いずれも最初は、公害はありません、起こしません、というようなことを言って始めたのですが、いざやってみると、実際はひどい公害が起こっておる。もう住民はたまらないというのでいま非常に問題を起こしてきているわけですが、この公害のない工業開発というのならば、その具体的な対策を示していただきたいのです。どういうふうにしたら公害のない工業開発というものができるのでしょうか。
  95. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 技術的に公害のない産業開発というのは、これはできないことはないのです。これは技術的開発、技術の向上によって解決ができるし、公害防除施設の投資を行なう、厳密な制限を行なう、規制を行なうということができます。これは煙突というものの高さをうんと高くしなさいとか、それから脱硫装置をつけなさいとか、これはもう石炭をたいてはならないとか、それから天然性ガスをたきなさい、ナフサをたきなさいということでもって、これは公害防止というものは可能であります。今度PCBの使用は禁止する、他に別なものを開発して代替せしめるということで、それは可能であります。  それともう一つは、これは石油精製工場のように、原油で持ってこないで現地精製をやったらどうか。そうすると、日本公害が起こるものを現地でやるのかというのだけれども、それは現地はもっと広いのです。人がいないというところもあるのです。現地政府がぜひここで精製をやれと、こうイランなどは言っておるわけです。現地精製をしなければ日本に石油を供給しないということを極言する国もあるのですから、これは精製を現地でやることもできます。それからアルミナなどでも、これはアルミナをつくるというようなところまでは現地でやってくる。こうしてその後の工程だけを日本でやる。今度はアルミナをつくるようなところの工場日本には許さぬ、こういうことをやっておりますので、公害というものは、いままでのように何でもかんでも全部日本に持ってきてやるということで、公害というのは避けられないのだというふうには考えないでいいと思うのです。ある一定の工程はより自然の浄化力のあるところ  自然の浄化力と言ったら、それはばらまくことだと言った人もおりまして、どうも私は困ったものだと思っておったのですが、この間テレビで一酸化炭素を食う土壌ということで、非常にわが意を得たり、こういうことであります。一酸化炭素を空気中にあるバクテリアがどんどんと炭酸ガスに変えていくということなんです。やっぱりいろいろとそういう化学的な問題がありますから、もう地球は終わりだ、日本は終わりだというような考えではなく、それはわれわれの英知で制度を完備することによって公害のない経済成長は可能であり、またしなければならない、こういうことでございます。
  96. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その考えはいいですよ。しかし、考えだけでとまっている。
  97. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) とまっていない。
  98. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 だって、鹿島で何で公害が起こったんですか。ないと言ったって、何で四日市で起こっているんですか。現在でも公害が起こっているじゃないですか。水島でも起こっているんですよ。あなたの考えを実際に移すということ、それが重要なんで、こういうことをやったらいいだろうという考えだけ述べられてもこれは問題にならないんですよ。だからやはり実行することですよ。一日も早く実行することですよ。脱硫装置を早くつけろと言う。脱硫装置、早くつけさしたらいいんです。ところが、日本には脱硫装置はなかなかつかないじゃないですか。アメリカへ売るやつは、きょうの新聞かきのうの新聞に出ていましたね、ガスを出さない車はアメリカに売るのだ。何で日本人にもその車を売らないのですか。そういうことをちゃんとやっていくべきだと思うのですね。だから、考えるだけじゃなしに実行に移すということを大臣、しっかりやってもらわなければならない。必ずつくるということを約束してくださいよ、実行に移すということを。
  99. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公害防除の施設を厳密にしなければならない、これは申すまでもありません。これはそういう意味では、脱硫装置をつけなければ工場の稼働さえ停止している面もあるのです。これはあれだけ電力が不足である関西電力が姫路の火力は停止をしております。やむを得ず京都府の新舞鶴に頼んでおるものは、それは受け付けないということでなかなかできない。それはどうするか。ナフサをどうこうというところまでいっておるわけですから、これは非常な努力をしておる。通産省そのものも業界に対しては、産業界に対して強く公害除去に対しては精力的な対策をとっているということだけは、これはひとつそうやっておるのですから、通産省何もしないのだというような考え方ではこれは思い違いでございますから、これは精力的にやっておる、この責任を負えるような体制で努力を重ねておるということをひとつ……。
  100. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたの話を聞いていると非常に勇ましいんですけれども、これは実際になかなかそれが出てこないんですね、形になって。ことばじゃ国民は承知しない。やはり形で——歌にも態度で示せという歌があるごとく、大臣が今度は態度ではっきり示してほしい。まずこれをやったらどうですか。いま排出基準があっても環境基準がないんですよ。一本の煙突から出る排出基準はあります。ところが、これが十本の煙突から出れば環境がうんと悪くなる。だから環境基準をきめることが第一に重要なんです。環境基準はきまってないじゃないですか。だから環境基準をまずきめてください。
  101. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は環境庁長官ではありませんから、さだかなことは申し上げられませんが、大気汚染防止法や水質汚濁防止法によって汚染防止という基準はちゃんときめておるわけでございます。ですから、今度は基準だけではなく無過失公害、無過失賠償責任制度さえもとったわけでございますので、いまあなたが指摘をされたような法制上の整備はできました。ですから基準もあるわけです。ただ、これを厳密に適用するということをしていかなければならないわけでございます。その意味では、一本ずつの排出基準では適法であっても複合公害というものが起こる。そういうことで工場分散をお願いしているわけです。
  102. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) ちょっと補足して御説明申し上げますが、硫黄酸化物について環境基準がきまっておりまして、それを守らすために排出基準を地域に応じたK値というものをきめておる。過密地域では厳重なK値をきめる、こういうふうになっております。
  103. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その問題はまた別のところでやりましょう。大臣が声を大にして必ずやるんだと、こうおっしゃいますから、私もすなおに受け取っておきますから、ひとつ私たちを裏切らないように、国民を裏切らないように大臣大いにやってもらいたいと思うのです。  最後になりますが、あと地融資の関係につきまして少し御質問したいと思うのですが、工場あと地になる価格は何を基準にしておきめになるんですか。
  104. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) いま考えておりますのは、不動産鑑定士の鑑定、評価によりまして買い上げ時点の時価で買い上げるのが妥当だというふうに考えております。
  105. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 公団は、企業に対しましてあと価格の八〇%を移転資金として融資する。三年たっても売却し得ない場合は公団が買い上げることができる、こういうふうになっています。そのとおりでございますね。
  106. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) そのとおりでございます。
  107. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その三年間の間に地価が値上がりをした場合、公団は当初価格で買い上げるのですか、値上がりした価格で買い上げるのですか。
  108. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 買い上げる時点でございますので、三年後の場合は三年後の時点の時価で買い上げることになります。
  109. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 公団が買い上げたあと地が手持ちしている間に値上がりしますね、公団が持っている間に土地の値が上がる。そのときの売却価格は、今度は公団が売るほうですね。それは値上がりの価格か、または買い上げの価格で売るのか。
  110. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) これは基本的な原則はございますので、公団のあと地を売る価格は、土地の取得後の管理に要した費用、それから譲渡事務に要する費用等のコストを基準にいたしまして、売却の時点の時価も勘案してきめるということに相なります。
  111. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その売却の時点のいわゆる価格といいますか、世間並みのそれで売るということなんですか、どうなんですか。それより安くなることもあるんですか、どうなんですか。
  112. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 売却時点の時価を勘案して定めるということでございます。
  113. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは政府機関でございますから、政府機関はすべてのものを購入してやるということになっているんです。これは時価が高くなったら、それでもって安く売ろうものなら決算委員会で問題になるんですから、これは高く売るのはあたりまえなんです。これは買ったときの価格も時価である。売るときも時価である。これは当然のことであります。ただし、地方公共団体に売る場合には国有財産は無償で譲与することもできる。相手によってこれは都であり、府県であり、市であり、児童公園にするとか、都市改造の換地にするとかいうことになれば、おのずからそこに価格のネゴシエーションが行なわれてしかるべきだ。だから画一一律ではありません。ただ、どんな場合でも非難されないということでなければいかぬし、これは相手方の公共性ということでやはり議論されるべきものであるので、これは原則はいま局長が述べましたように、時価を勘案して、少なくとも、時価の中にはその間の維持管理に要した費用とか利息はかかっているのですから、そういうものもやはり加味したものと時価とを勘案してきめられる、こう申し上げておきます。
  114. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、大臣、こういう質問をなぜするかといえば、国有財産が払い下げられるときにいろいろ問題が起こるでしょう。時価よりも安い値段で払い下げられておる。一たん公団が買えば国有財産と同じようなものです。だからそういうことをはっきりしておかぬと問題が起こりますよ。だから私はこういう質問をしているのですが、それでは公団の買い上げ対象となるあと地の面積はどのくらいの——すそですね。中小零細企業の小さい工場あと地も買い上げるようにすべきではないかというのが私たちの意見です。そうしないと中小零細工場はどうにもならないということになると思うのですが、そこはどうですか。
  115. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 都市開発資金による工場あと地買い上げの場合に、すそ切りの制度があって、工場の床面積が千平米以上で工場の用地面積がおおむね一ヘクタール以上ということがあるのでそういう御質問が出たと思うのですが、われわれといたしましては、この法律目的からいたしまして、そう硬直的な運用でなくて、もっと弾力的に中小企業の敷地も買えるように運用してまいりたいというふうに考えております。
  116. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 かりに五十坪の工場があってもそれは対象になる、三十坪であっても対象になるということですね。そこをはっきり言ってください。
  117. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 原則としてもそれは対象になるというふうに考えてやってまいりたいと思います。
  118. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それではもう一つ、民間企業があと地を買い取ってそこに流通関係の倉庫をつくることになれば、工場は建てないけれども、倉庫をつくるようになるとトラックの出入りが激しくなる。周辺に迷惑を及ぼす場合が考えられると思うのですね。たとえ民間企業であっても工場あと地の用途は、私は、何々とはっきり指定しておくべきではないか、どうでしょうか。
  119. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いまこまかく指定をするということはちょっとむずかしいと思うのです。しかし、将来これは大きく指定していきたいと思います。こういうものに使います、こういうもの以外は使えませんということは明示すべきだと思います。いま申し上げられることは、当該市町村、公共団体が土地計画都市改造の計画をいたしておりますから、まず地方公共団体でお買い取り願えませんかということをやるべきだと思います。私のほうは買いません、要りませんということになれば他に物色しなければ、土地屋ではありませんから、いつまでも持っているわけにはまいりません。しかしその場合でも、工場移転をして工場がまたできるということではこれは何にもなりませんから、少なくとも、そういうことにならないようにしなければならないということでございます。青空市場にしてくれとか、子供の幼稚園にしてくれとかいろいろなものがあるでしょう。しかし、絶対地元が反対だということがあると思うのです。地元の反対の場合は地元でお買いくださってもけっこうです。こういうものもあるわけです。地元は買わない、文句は言うということもあるでしょうが、これはしかし、ちゃんと話がつくと思います。あなたでも行って何か言われると話はつかない場合がありますが、そうでなければ大体……。そんなこと絶対ありません、話はつきます。
  120. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あと地へ工場を建ててはいかぬ、倉庫を建ててはいかぬというあれがないのですよ。だから倉庫を建てる場合が起こってくると思う。そうするとそこに自動車が出入りしてトラックも入ってくる。工場はいなくなったけれども、えらい外が騒々しくなって非常に子供の危険が増すというような状態が起こりかねないから、だから、工場あと地の用途はこの際はっきり指定しておくべきじゃないか。これこれのものは建ててはいけないということははっきりしておいたほうがいい、こういうように思うのですね。いま大臣は、公団、要するに、自治体が買うてくれれば一番いいということをおっしゃいました。私もそう思うんですね。公団のあと地の売却先は自治体や公社などに限定するのかどうか、その点を私は聞いておきたいんですが、そうじゃないんですね、大臣の答弁聞いていると。
  121. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは、あんまり厳密にやりますとだれも買ってくれないという場合は持ってなきゃいかぬのです。ですから、そういうことにも限界がございますから、基準というものは明確にいたします。これは法律に法定してないけれども、こう運用したい。公団が金を貸す場合の条件として契約するわけですから、これは処分する場合もあるんです。全部が全部公団で買い取るんではなく、三年間の間に権利者が売却をするという場合もありますから、そのときでも、どこへでも売っちゃいけませんよというのはむずかしい。あなたに八〇%前貸しするんだから、この法律の精神に沿うようなところに処分してもらわなきゃいけませんよと、そんな条件つけなければ売ってはいけませんと言えば、公団で買わざるを得ないということにだんだんなっていくわけです。ですから、公団は何でもいいということにはいたしません。これはやっぱり納得されるものでなければならないと、こういうことであって、何に売っちゃいかぬということは明定はちょっとむずかしい、いまの状態においては。これはいずれにしても、公団が引き取った土地をどういうところに売るのか、基準をつくるべきである。その基準については、あなた方が、わしがやってもこうだろうなあというようなものをちゃんとつくります。
  122. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そういうことを十分気をつけて、工場はなくなってせいせいしたと思ったらまた変なものがやってきたというふうに住民が受け取らないように、十分配慮をしていく必要があるということを申し添えまして、私、質問これで終わります。
  123. 大森久司

    委員長大森久司君) 他に御発言もなければ、両案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 大森久司

    委員長大森久司君) 御異議ないと認めます。  工業配置促進法案について、竹田現照君から委員長の手元に修正案が提出されております。この際、本修正案を議題といたします。  竹田現照君から修正案の趣旨説明を願います。
  125. 竹田現照

    ○竹田現照君 私は、工業配置促進法案に対する自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同にかかる修正案を提出いたします。  修正案は、お手元にお配りいたしてあるとおりでありますので、案文の朗読は省略させていただき、その要旨について御説明申し上げます。  修正の要旨は、産炭地域及び農工法による工業導入地区等へ工場を特に誘導させることが急務でありますが、これらの地域の財政負担能力が必ずしも十分であるといえない現状にかんがみまして、国が財政上の措置等を講ずるにあたりましては、これらの地域を含む特定の地域につきましては、特に配慮するようつとめなければならないという規定を新たに設けるとともに、原案第五条に単に「法律の規定」とありましたのを、「産炭地域振興臨時措置法と農村地域工業導入促進法」を例示として加えたことであります。以上が本修正案の要旨であります。何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  126. 大森久司

    委員長大森久司君) それでは、ただいまの修正案に対し質疑のある方は御発言を願います。——別に御発言もないようですから、これより両案並びに竹田君提出の修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もなければ、討論はないものと認め、これより両案の採決に入ります。  それでは、まず工業配置促進法案の採決を行ないます。  竹田君提出の修正案を問題に供します。竹田君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  127. 大森久司

    委員長大森久司君) 多数と認めます。よって、竹田君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  128. 大森久司

    委員長大森久司君) 多数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。  以上の結果、工業配置促進法案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。  竹田君から発言を求められておりますので、これを許します。竹田君
  129. 竹田現照

    ○竹田現照君 ただいま可決されました工業配置促進法案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党の四党共同提案による附帯決議案を提出いたしたいと思いますので、御賛同願います。   工業配置促進法案に対する附帯決議(案)  政府は、本法施行にあたり、次の諸事項の実現につき努力すべきである。 一、産炭地域への企業誘致にあたつては、大規模機械工業等中核企業の導入をはかるとともに、炭鉱離職者の再就職のあつせんに努めること。 一、過密環境問題の改善に資するような産業構造に積極的に転換をはかるとともに、誘導地域工場移転させる場合には、公害の発生を未然に防止するための公害事前調査を十分に行ない、最新の公害防止施設をとり入れること。 一、工場団地の造成にあたっては、地域住民の経済・社会・文化生活の向上への配慮、用地提供者に対する生活再建等を考慮するとともに、地価の高騰をきたさないような抜本的な地価対策を講ずること。  右決議する。  以上であります。
  130. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいま竹田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  131. 大森久司

    委員長大森久司君) 全会一致と認めます。よって、竹田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会に決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し田中通産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。田中通商産業大臣
  132. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ただいま御決議をいただきました附帯決議に対しましては、政府といたしましてはその趣旨を尊重し、万遺憾なきを期する所存でございます。
  133. 大森久司

    委員長大森久司君) それでは次に、産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案の採決を行ないます。  産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  134. 大森久司

    委員長大森久司君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 大森久司

    委員長大森久司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  136. 大森久司

    委員長大森久司君) 石油パイプライン事業法案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。田中通商産業大臣
  137. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 石油パイプライン事業法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  石油はいまや国民経済及び国民生活にとって欠くことのできない基礎物資として年間約二億キロリットル消費されておりますが、今後も大幅な消費の増大が見込まれております。  これに伴い、石油の輸送量も増大することとなりますが、これを、従来の輸送手段である自動車、鉄道等にのみ依存するならば、交通の混雑、災害発生の危険を累増させるおそれがあるとともに、石油の流通コストの上昇をもたらすものと見込まれています。  政府におきましては、このような事態に対応していくためパイプラインによる輸送方式を早急にわが国に導入する必要があると考え、石油パイプライン事業に長年の経験を有する欧米諸国の実情を調査する一方、関係審議会における審議等を通じて、その経済的、社会的意義と必要な施策について検討を進めてまいりました。その結果、石油パイプライン事業については、第一に、これが石油の安定的かつ低廉な供給の確保に寄与するのはもとより、原油及び石油製品の輸送に関連する災害の発生の防止と道路等における交通事情の改善にも大きく貢献することから、国として適正かつ計画的にその設置の促進をはかっていく必要があること。第二に、これは公共的な性格を有する事業として適正に運営される必要があること。第三に、これは可燃性物質でもある石油を輸送するものであるため、その施設についての保安には万全を期する必要があることについて結論を得た次第であります。  本法案は、以上のような観点から、石油パイプライン事業について必要な事業規制及び保安規制を行なうとともに、道路占用の特例措置等の必要な措置を講ずることにより事業の健全な発達をはかろうとするものであります。  次に本法案の概要を御説明申し上げます。  その内容の第一は、国において石油パイプライン基本計画を策定することとしたことであります。基本計画におきましては、石油パイプラインの経路の概要や完成の目標年度等を定めることにしております。  第二は、石油。パイプライン事業を営むには、主務大臣の許可を要することとしたことであります。  第三は、工事の計画について、主務大臣の認可にかからしめることとし、また、工事の完成時には完成検査を受けなければならないこととしたことであります。  第四は、業務の監督について、石油輸送に関する料金その他の条件については、これを石油輸送規程に定め、主務大臣の認可を受けさせることとし、また、石油輸送については、引き受け義務を課することとしたことであります。  第五は、保安面に万全を期するため、事業者に施設の技術基準適合義務や保安技術者の選任義務を課するとともに、保安規程を認可制とし、必要によりその改善命令を発する等の措置を講ずることとしたことであります。  この他、石油パイプライン事業に対する道路占用の特例措置を講ずるとともに、土地収用権を付与することとしております。  なお、本法の主務大臣については、通商産業大臣、運輸大臣、建設大臣及び自治大臣がそれぞれの所掌事務に基づき、緊密な連絡のもとに各事項に応じて共同で所管することとなっております。  以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同賜わりますようお願い申し上げます。
  138. 大森久司

    委員長大森久司君) 次に、本法案衆議院において修正が加えられておりますので、この際、衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員小宮山重四郎君から説明を聴取いたします。小宮山衆議院議員
  139. 小宮山重四郎

    衆議院議員小宮山重四郎君) 石油パイプライン事業法案衆議院における修正点につきまして御説明申し上げます。  修正の第一点は、第一条の法律目的を改め、石油の輸送に関連する災害の発生の防止と道路等における交通事情の改善に資することを削り、公共の安全を確保することを加えたことであります。これは、法律目的の明確化をはかるものであります。  第二点は、石油パイプライン基本計画及び石油パイプライン事業の許可に関する関係市町村長の主務大臣に対する意見の申し出、主務大臣が工事計画の認可をしようとする場合の関係都道府県知事に対する通知及びこれに関する関係都道府県知事の主務大臣に対する意見の申し出について、新たに規定を設けたことであります。これは、基本計画の策定、事業の許可、工事計画の認可のそれぞれの段階において、関係地方公共団体の意見を十分反映させようとするものであります。  第三点は、石油パイプライン事業の許可申請書の記載事項として、事業用施設についての保安を確保するために必要な事項を追加するとともに、石油パイプライン事業の許可基準として、事業用施設の設置が周辺の建物との保安距離の確保等により災害の発生の防止がはかられるものであることを追加したことであります。  第四点は、石油パイプライン事業者は、事業用施設の設置及び石油パイプライン事業の運営に当っては、公共の安全の確保及び環境の保全のために必要な措置を講じなければならないこと、あらかじめ災害の発生に備え、危険時の措置について関係市町村長と協議しておかなければならないこと、事業用施設についての一定の保安作業については、その作業を行なうのに必要な保安教育を受けた者を従事させなければならないことを新たに規定したことであります。  第五点は、関係市町村長は、石油パイプラインに関し災害が発生するおそれがあると認めるときは、主務大臣に対し、必要な措置を講ずべきことを要請することができることとし、主務大臣は、要請があったときは、必要な調査を行ない、その結果必要があると認めるときは、保安規程の不認可又は変更命令等の措置を講じ、すみやかに関係市町村長に通知しなければならない旨を新たに規定したことであります。第三点、第四点及び第五点は、石油パイプラインの保安の確保、公共の安全の確保の徹底をはかるためのものであります。  以上が衆議院における修正点及びその趣旨であります。よろしく御審議をお願い申し上げます。
  140. 大森久司

    委員長大森久司君) 次に、補足説明を聴取いたします。荘鉱山石炭局長
  141. 莊清

    政府委員(莊清君) 石油パイプライン事業法案につきまして、その提案理由及び要旨を補足して御説明いたします。  わが国における石油の需要は、昭和四十六年度におきまして約二億キロリットルに達し、これが昭和五十年度には約三億キロリットル、昭和六十年度には約七億キロリットルにものぼるという予測もなされております。  このような膨大な石油の需要に対応して石油の安定的かつ低廉な供給を確保するためには、従来の輸送手段であるタンクローリーやタンク車による石油の輸送方式に依存するのみでなく石油パイプラインという新たな輸送方式を導入し、石油の輸送の安定化、合理化をはかることが緊要となってきております。  石油パイプライン事業につきましてはすでに関東地域において新東京国際空港公団、日本国有鉄道及び石油業界の共同出資会社による三つのラインが計画されており、これらをはじめ今後他地域にも計画が具体化することが予想されます。  しかしながら、石油パイプラインは長距離にわたって道路等に埋設されるものであるため、その設置は、適正かつ計画的に行なわれることが必要であり、また、石油パイプライン事業は公共的な性格を有する事業として適正な運営が確保されることが必要であります。さらに重要なことは、石油パイプラインは石油という可燃性物質を輸送するものでありますから、安全の確保については万全に万全を重ねることがぜひとも必要であるということであります。  このため、本法案により石油パイプライン事業に対し、事業規制及び保安規制を厳重に行ないまして石油の合理的かつ安全な輸送の実現をはかろうとするものであります。  次に、本法案の主な内容について御説明いたします。  第一は、石油パイプラインの設置経路の概要、完成の目標年度等を内容とする石油パイプライン基本計画を策定し、公表することとしていることであります。基本計画は石油パイプラインの設置について国が誘導指針を示すものであり、その策定にあたっては、災害の発生の防止に関し十分配慮しつつ、石油の需給事情及び輸送並びに土地利用の状況を勘案することとしております。  第二は、石油パイプライン事業については事業許可制を採用したことであります。  石油パイプライン事業を営むには、主務大臣の許可を要することとし、許可の基準としては、基本計画への適合性、事業用施設の設置の場所の適切性、事業計画の確実性等を審査することとしております。  第三は、石油パイプライン事業者が石油パイプラインについての工事を行なおうとするときは、あらかじめその工事の計画について、主務大臣の認可を受けなければならないこととし、また工事を完成したときは完成検査を受け、これに合格しなければ事業用施設を使用してはならないものとしたことであります。工事の計画の認可については、事業許可を受けたところに従っているものであること、及び保安基準として作成される技術上の基準に適合していることを認可基準といたしており、完成検査についても認可を受けた工事の計画への適合性と技術上の基準への適合性を合格基準といたしております。  第四は、業務の監督について石油パイプライン事業者に対し、石油輸送に関する料金その他の条件については、これを石油輸送規程に定め、主務大臣の認可を受けさせることとし、また、石油輸送については引き受け義務を課したことであります。  石油輸送規程は、石油輸送を行なうにあたっての料金その他の具体的な条件を定めるものであり、認可基準として料金が適正な原価に適正な利潤を加えたものの範囲内であること、特定の利用者に対して不当な差別的取り扱いをするものでないこと等を審査することとしております。また、石油輸送の申し込みがあれば石油パイプライン事業者は、正当な理由がない限り、その引き受けを拒んではならないことといたしております。  第五は、保安の確保について万全を期するため、石油パイプライン事業者に事業用施設の技術基準適合義務を課するとともに、自主保安体制を確立するために、保安規程を認可制とし、また保安技術者の選任義務を課する等の措置を講ずることとしたことであります。  技術基準に適合していないと認めるとき、あるいは緊急に必要な場合に主務大臣事業用施設の改善、使用停止等の命令をし、また、保安規程の変更命令、保安技術者の解任命令等によって保安についての必要な監督を行なうこととしております。  このほか、石油パイプライン事業に対しては、道路占用の許可の特例措置を講ずるとともに、土地収用権を付与することとしております。  また本法案の主務大臣につきましては通商産業大臣、運輸大臣、建設大臣及び自治大臣が各事項に応じて共同で所管することとなっておりますが、その施行にあたりましては連絡協議会的な組織を設けて相互の緊密な連絡をはかることとしたいと考えております。  簡単ではありますがこの法律案の提案理由及びその要旨につきまして補足御説明申し上げました。よろしく御審議賜わりたくお願い申し上げます。
  142. 大森久司

    委員長大森久司君) 以上で説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  143. 大矢正

    ○大矢正君 私は、法案の中身に入ります前に、先日の委員会でも若干質問をいたしましたが、先般の対インドネシアに対する借款にからむ問題について一、二点お尋ねをいたしたいと思います。  まず、最初にお尋ねをいたしたいのは、政府二億ドル、民間一億ドル、合わせて三億ドルの借款を供与するという内容のものでありますが、まあ民間の一億ドルの問題は別といたしまして、政府二億ドルの借款というものの与える目的と申しましょうか、これは石油開発にあるというように承っておりますが、目的がなくただ借款をさせるというようなことは通常考えられないことであって、どういう具体的な計画があり、どういう内容があるからしたがって二億ドルの政府借款を認める、こういう形に本来なるべきだと私は思うのでありますが、まず、その政府借款二億ドルというのは一体何なのか、それからお答えを願いたい。
  144. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ公害問題等もございまして、石油の搬入という問題に対しては非常に重要な問題として考えておるわけでございます。特にローサルファの石油というものが得がたい状態になっておることは御承知のとおりでございます。去年、私が通産大臣になったころだと思いますが、チュメニ油田の問題とこの問題がございました。これはどっちもローサルファということで日本としては非常に耳よりな話ということのようでございました。で、まあOPECの問題その他がたくさんあったときでございまして、石油の供給ということに対して非常に不安定な状態であったときに、インドネシア側が、従来日本に供給しておるもの以外に相当数量のローサルファの石油を供給できると、これは開発費を日本が協力をしてくれるということであるならば可能性がある、こういうことでございました。しかし、この問題実際に当たってみなければわからないということで、石油開発公団をしてこの問題に当たらしたわけでございます。で、十カ月くらいかかったわけでございますが、石油は可能であるということになりました。  まあそういうことを聞きつけてアメリカの石油資本その他からもいろいろな問題が今度起こってきたわけです。インドネシアのローサルファ石油というものは非常に注目をされておるようでございまして、そういうことでいろいろなところから口がかかったようでございますが、日本に対してもいろいろな経済援助も受けておりますし、それからまた日本は債権国でもございますし、年々の経済協力を行なっておることでございますので、日本がこれを希望するということであれば日本を最優先に考えると、こういうことになったのでございます。そしてこの間スハルト大統領が訪日をした機会に水田大蔵大臣、福田外務大臣、私も会談をいたしました。最終的には総理大臣と大統領との間に二億ドルの借款ということが決定をいたしました。これは石油は四十八年から、いままでのものにプラスして供給をする、十年間に五千八百万キロリットルの供給のようでございまして、非常にメリットのあるものである。こういうことでございます。  なお、一億ドルの供給というのは、民間が石油を引き取る、民間企業が供給をするということになっております。この詳細は事務当局から説明をいたします。
  145. 大矢正

    ○大矢正君 大臣のお答え、はぐらかされているのかどうかは別として、大臣、私の聞いていることと大臣の答弁、ちょっと違う点がある。私がお尋ねをしておりますのは、きのうの衆議院で福田外務大臣にこの問題についてお尋ねしたら、これは通産大臣がやったことでおれは知らないから、聞きたいことがあったら通産大臣に聞けと、こう答弁になっているわけです。それは、いまいろいろな政治情勢もあるからそういうことを言うのかどうかわからぬけれども、ともあれ、そういうことになるとあなたに聞かなければならぬということになるわけです、はっきり申し上げて。  そこで私が具体的にお尋ねをしたいのは、私どもがおぼろげながら聞いた話では、政府借款の二億ドルというものは、これからインドネシアが国営石油会社を中心にして新規にこれから油田開発をしようとするときの投資にこの二億ドルを使おうという考え方のようであるし、それから、あとの民間の借款の一億ドルというのは、民間から供与するわけでありますからどのように使おうが問題は私はないと思う。しかし、少なくともこの二億ドルの政府借款というものについては、どういう内容でどういう目的があるから、したがって、その面について経済協力なら経済協力の一環としてやるのだということがなければならぬでしょう。ところが、いまの通産大臣の答弁は、何に目的があるのか、主目的が何なのか、それから、たとえばもっと具体的に言えば、もし、かりに新規の石油開発というものに二億ドルを使うんだ、そのために政府借款をやるんだというならば、それじゃもしその原油に当ったならば、日本にどういう形でローサルファの日本もほしい油を供与するというような形の話でもでき上がっているのかどうか。そういうことが一切ないままに二億ドルの借款を認めるというのは、私はどうも従来の政府の対外経済協力のあり方から見てあまりにも政治的過ぎるんじゃないかという感じがするので、明確にしてもらいたい。
  146. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、きのうの衆議院でどういうような話があったかは存じませんが、いまちょっと聞いたところでは、引き取り会社をどうするのかという、引き取り会社の構成等について私は承知いたしておりません、通産省が窓口になってやっております、こういう答弁があったようでございます。  いまの御質問がございました二億ドルというのは、これはアンタイドのプロジェクト借款ということになっておりますが、石油開発は、いまのような状態では、日本に供給しておる以外にそう大量のものを供給できるということではないのであります。これはこれから開発をしなければならないということでございます。開発をしなければならないというので、二億ドルを供与するということでございますから、この二億ドルを供与するということによって、いま出しておるもの以外に石油が輸出できると。これは石油会社の、石油に関する状態を石油開発公団によって調べさせたわけであります。具体的にこれを調べないで借款供与をするわけにはまいりません。そういう意味で、どれだけ供与したらほんとうにローサルファの石油が供給できるのかということで、石油開発公団に調査をさせましたら、専門的な目から見て非常にいいものであります、これは二億ドル供与をすれば、これだけのものを確保できますと、こういう調査の報告があったということを前提にして、首脳会談が行なわれたということであります。
  147. 大矢正

    ○大矢正君 わかった。そうすると、通産大臣ね、私はこういうようにあなたのことばから解釈をせざるを得ませんね。五千七百万キロリッター、五千八百万キロリッター——約年間五百万キロリッター程度の油を向こう十年間継続的に——これはやってみなければわかりませんね。いずれにしても、いまの計画か何かわかりませんが、ともかく、そういう前提の話し合いがまとまったというのは、二億ドルの借款も含めた三億ドル全体の中でそれがきまったと、こういう解釈でいいですね。
  148. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 政府同士の借款としては二億ドルだけでございます。
  149. 大矢正

    ○大矢正君 それはわかっている。
  150. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これしか出ていないのです。ところが、その間においては一億ドルの石油の前払いということで、民間が一億ドルの借款を供与するということでなければ、この話はまとまらなかったということでございます。それは、二億ドルというのは、初めはスタンバイのようなかっこうで何とか援助してもらえないかということでございました。それは私どものほうではできませんということを前提にして調査をさせたわけです。石油の開発ということと結びついておらなければ、それで、それがそうすることによって確実に石油が入るということでなければ。ちょっと、チュメニ油田の問題と同じように、バンクローンでもってそれは石油には使えますが、しかし、バンクローンにしてもらいたいといういまソ連側の話があるわけですが、これは直結していなければだめです。同じことをやったわけでありまして、この二億ドルというものと一億ドルというものはつながっているということは、もう政府のほうでスタンバイではだめですと、こう言ったので、民間に一億ドルを持っていったと、こういうことと理解してもらってけっこうだと思います。
  151. 大矢正

    ○大矢正君 といたしますと、民間が一億ドル供与する。そうして、それによって年間五百万キロリッターですか、その程度の原油をわが国に輸入するという形においての話し合いが成立をし、そうして、そのことのためにそれを受け入れる、たとえば受け入れ会社というものがわが国にできるということならば、それなりに私は理解しないとは申しません。しかし、背景には二億ドルの政府借款があり、たまたま一億ドルの民間借款がついたとしても、その二億ドルの政府借款というものがついて、その上で初めて五千七、八百万キロリッターの油を十年間で入れようということでありまして、言ってみれば、国の金を使ってこれからやろうということなんだから、それが特定の企業や、特定の会社や、特定の個人の集団に、言ってみれば、利益になるような形でものを見られるということは、私は決していいことではないんじゃないか。そういうふうに考えますが、その点について大臣どう思いますか。
  152. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ちょっと、もっと明確な御質問がほしいのですが、これは政府の二億ドル借款というものが一緒になっておりますから、だから、これは石油開発公団か何かに引き取れば文句はない、こういうことだと思います。
  153. 大矢正

    ○大矢正君 そこまでは言っていないですよ。これから言うかもしれぬけれども。
  154. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そうですか。いまのお話では何かそういうような気がいたします。これはしかし、あのインドネシア側とこの間、一年間以上も折衝しておるものがあるわけです。インドネシア側と折衝しておる。それでインドネシア側の事情もありますから、インドネシア側の事情は事情でよく言ってください、私のほうの窓口は、それを承りながらきめます、こういうことで、通産省が窓口になって、この調整をやろうとしておるわけであります。だから、この受け取り機関というのは、確かにいまの状態では、石油開発公団がすぐ引き取るというわけにいかないそうです、何かそういうことで。
  155. 大矢正

    ○大矢正君 国会やっているんだから、法律改正すればいいじゃないか。
  156. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) だから、それはインドネシア側との話し合いがあるということで、経緯があるようでございまして、こちらの窓口をどうするのか——私は、いままでインドネシアとやっているものがあるわけです、会社も。だから、これに上乗せするものだから、それでやることが普通だろうということを考えておったわけです。インドネシア側の何か事情があるようです。インドネシア側の事情は、これだけのものを提供するなら、私たちの考えを入れてもらいたいということでございました。これは私がインドネシアの意向を聞いたときも、インドネシア側に、私が、何かありますかと言ったか、向こうのほうが先に言ったかわかりませんが、とにかく、引き取り会社に対してはインドネシア側の事情があります。それはこれだけの事業を行ない、両国の間でもって友好的な問題として解決をするのに、このインドネシアの国内において評価をされないような状態では困りますので、希望がありますと、こう述べたことを記憶しております。私はそのときに、その希望は、通産省は事務次官を窓口にいたしますから、通産省としては、そういうことで両国の立場を十分お話し合いを願いたい、こういうことにしてあります。
  157. 大矢正

    ○大矢正君 それで大臣、私は、これだけで肝心の法案の審議に入らないことは残念ですから、最後にだめ押しだけしておきます。  御承知のとおり、インドネシアというのは、石油会社は国営ですわね。ですから、その意味から考えてみても、向こうの会社というのはわが国の会社とは違うわけです、国営会社ですから。ですから、向こうの会社と政府との間で話をするというのには、何の障害もないはずです。本来的に何の障害もないはずです、私に言わせれば。  大臣に私は申し上げておきたいし、確答を得たいと思いますことは、いろんなうわさが出て、単に五千七百万キロリッター程度の石油を入れるだけのために、これはいろんな紛議を国内にかもし出す。疑惑もかもし出す。そうして場合によっては、もう個人——個人と言っては極端になるが、企業や、個人の救済を目的としているのではないかというようないろんなことが言われないようにするために、通産省が責任を持って、たとえば、この間も私は公団法の審議の際に、公団は外へ出て行って油を掘るだけが目的じゃなくて、もっと国内の輸入全体について、日本の需給調整の機能まで持たしたらどうだと、私はこの間も質問しているはずですから、少なくとも、そういうガラス張りの中で、公開の場の中で、できることならば政府みずから、公団その他でもしそれが限界があるならば、すぐにでも法律改正すればいいわけですから。しかも、あしたから入るというものじゃないのですから。だとするなら、それだけの措置を講じて、疑惑のない形でやってもらいたいと思いますが、お答えいただけますか。
  158. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 向こうの石油を掘る会社は、プルタミナ会社というのだそうでございますが、石油を入れるということに対しては、これは政府借款と民間借款が合わせられたものにしても、いま御指摘になったように、政府借款というものはあるのですから、これは石油の開発資金としてひもつきになっているということでございますから、これはひもつきでなければ、全然別のものとして、経済協力で二億ドル出すということでなかったんです。ひもつきでなかったら私は困りますよということにして、ひもつきになったわけです。そうすれば、これはもう結果的に見れば、民間が一億ドル、政府が二億ドルということでありますので、このひもつきその他に対しては、もうインドネシア側とも十分意思の疎通をはかりながらも、堂々と輸入していかなければならない。これはもう当然のことであります。ただ一ついま聞いたのでありますが、石油開発公団が輸入の窓口になるということは、民間が非常に反対であるというようなこともあるようであります。ですから、民間の状態も十分しんしゃくをしながら、通産省が十分お答えをできるような態勢で結論を出すということだと思います。
  159. 大矢正

    ○大矢正君 それで、これはインドネシアの油というのは、なるほどローサルファかもわかりませんけれども、しかし、これはどっちかというともう圧倒的な部分が軽質油で、アラビアとかペルシア湾沿岸のように重質油が中心の油質じゃないわけですね。だから、したがって、このインドネシアの油というのは、どちらかというと一番サルファが問題になる重油得率が非常に低いわけですよ。ですから、そんなに政府が宣伝するほどたいへんなわが国にとってはプラスになるような内容のしかけのものじゃないわけですよ。そこで、このような非常に政治的なことが新聞紙上で書かれるようになってまいりますと、これは通産相を心配するがゆえに私は申し上げているんです。ですから、この問題の結着のつけ方は、なるほど一億ドル民間から借款供与するわけでありますから、それはそれなりのことはあるでしょうけれども、しかし、最悪の場合はそれを政府が肩がわりすると、すっきりした形でもって受け入れるような形を私はぜひ整えてもらいたい。重ねてもう一回質問します。
  160. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は石油に対して専門家じゃありません。ですから、石油開発公団を窓口にして調査をせしめたということでございます。そして、この石油開発公団というものが調査をした結果、この話は進んでいったわけでありますから、これは私は石油の実態というのはよく承知しません。しませんが、いまあなたが言われたように、政府が二億ドル出しているものと無関係でこの油は入るんじゃないから、それに対して政府がとやかく言われないような状態で入れるようにしなさいということは十分理解いたします。
  161. 大矢正

    ○大矢正君 私は、実は自分で日本全国の精油工場というものが大体どこにどういう形で位置しているかという図面を引いて持ってきて、ここで質問するわけですが、一つには、まあたいへんなのは大阪から山口までの間の、いってみれば瀬戸内海一帯に非常に製油所が集中しているわけですね。そこでお尋ねをいたしますが、これらのたとえば工業基地のつくり方とか、あるいは地点とかいうものとも密接な関係も出てまいりまするし、それから、おおむね五割五分から六割近いといわれる重油をどこがたくかといえば、やはり中心は火力発電所になっておりますから、それとの関係ももちろん出てまいると思いますし、それやこれや考えますと、これからの製油所の建設といいますか、地点の設定といいますか、これは非常に重大な判断を持って当たらないと、ただいたずらに企業の希望意見だけで製油所を認めていくような形では、非常に政府の努力が、たとえば今度のように工業配置なんかをやっても無意味な結果になるわけです。  そこでお尋ねをいたしますが、ことしのところは期待以上の、設備能力以上の製品の需要がないというようなことがあって、新増設を見送っておりまするが、しかしながら五年後、八年後の将来展望考えてみた場合、政府自身が製油所の立地上どういう地点を考えておられるのか、それからお答え願いたいと思います。
  162. 莊清

    政府委員(莊清君) 現在四百万バーレル強の製油所が現に稼働しておりますが、その約八割というものが御指摘ございましたように大阪湾及び瀬戸内、それと東京湾沿岸というところに集中を実はいたしております。それ以外の地域は大体二割というのが現状でございます。それで、石油審議会という法律上の組織が石油業法でできております。通産省は石油業法によりまして設備の新増設の許可をすることになっておりまするが、その場合に、すべて一件一件石油審議会の意見を聞くということが義務づけられております。石油審議会では、近年地域分散ということを非常に各委員が御指摘になりまして、石油審議会において諮問を受けた際の査定基準と申しますか、答申をする場合、査定をされるわけでございますが、その場合の基準を審議会みずから御決議になっておるわけでございまするが、その冒頭にやはり、今後は新規立地を重点に考えるべきであるということが明確にうたわれておるわけでございます。なお、昨年、石油審議会で設備の許可の審議が最近の例として行なわれたわけでございまするが、その場合にも、四日市とかというところは完全に今後打ちどめすべきである、大阪湾についても原則的に今回の許可をもって一応頭打ちとすべきであるというふうな明確な御意見が出て、議事録にもとどめられておるというふうな事実がございます。  そこで現在石油の用地がどれぐらいあるかということでございまするが、埋め立て免許をすでに受けまして造成中であるというものまで全部含めまして、昭和五十年まで備蓄の増強もございます。そういうことも考えてみますると、すでに許可済みのものを引き戻し、さらに需要の増に伴う備蓄の増、それから六十日に引き上げることによる備蓄の増、これらに必要な用地を考えてみますと、大体昭和五十年を少しこえた時点で、現在手当て済みの用地というものは満ぱいであるということを私ども個別につかんでおるわけであります。したがいまして、今後におきましては、国の全体の工業配置構想の一環としまして、計画的に大規模工業団地造成をすることにいたしまして、その中に石油精製というものはこれは大型の港湾を離れては実はあり得ない産業でございますので、ぽつんと一つ港湾投資が行なわれるということは考えられません。そういう大型の工業基地の中に計画的に用地を造成いたしまして、そこに立地をさせていくということがきわめて必要でございます。それに伴いまして、輸送上もいろいろCTSでございますとか、パイプラインでございますとかということがいままでなかった地域において、新しい地域において今後は必要になってくるというふうに考えております。一つの例が北海道におきまする苫小枚の工業用地の拡張の計画がございます。これなどはすでに石油企業が具体的な候補地として計画にあげておるというふうな具体例がございます。今後やはり青森県とかいろいろいわれておりまするが、それの具体化に伴いまして国内での立地というのは可能な限度において考えてまいりたい。それから先は製品の輸入をふやすなり、あるいは現地で製油所を建てるなり、こういうことに相なるわけでございます。
  163. 大矢正

    ○大矢正君 いまの製油所の分布状況を見ますと、私もいま申し上げたとおりに、大阪湾から大分の製油所まで含めると、この瀬戸内に大体十六カ所の製油所が現にあります。それからもう一カ所の集中したのは東京湾、御存じのとおり十三カ所の製油所がございます。これ合わしたらほんとうに日本の製油所のもう大部分といっていいものがここに集中的に出ております。そうするとどういう問題が起こってくるかというと、単に私は、外航タンカーだけでなくて、この瀬戸内も東京湾もそうでありますが、船舶の航行というものはたいへんな量的なもので、ときたま衝突事故を起こしてたいへんな事態になっておるわけです。大型な三十万トン、あるいは将来五十万トンなんというタンカーがこういう瀬戸内のようなところを航行するような事態になってきたり、東京湾に入ってこなければならぬような、そういう事態になってきて、万一事故を起こした場合には、先般の新潟の事故の騒ぎのようなたいへんな事態になるというおそれを多分にわれわれは持っているわけです。  それからいま一つの問題は、これは、おまえはそうすればパイプラインに賛成かと言われれば、その辺ちょっとつらいところなんだけど、実際の製品の輸送の六割は政府統計の資料によりましても、内航タンカーによって製品を運んでおるというような実態でございますから、外航船と内航タンカーを合わせてみるとべらぼうな油の輸送が瀬戸内から東京湾周辺で行なわれるということは、非常にこれは一つとってみても大きな事故であります。特に瀬戸内海沿岸一帯あたりではもう恐怖心に似たようなものを持っているわけでございます。三十万トン、五十万トンなんという油が流れ出したらどうにもこうにもならぬという問題があります。したがって私は、今度の出されている法案の中には製品のパイプ輸送というか、パイプライン構想というものが出ておりますが、原油は明確に出ておりません。しかし、政令で定めるとなっておりますから、あるいは将来それは法律上からいけば原油を輸送いたしましても、さほど私は法律上問題にはならないとは思いますが、いまの現在の法律では、完全に原油はもう除かれて製品だけになっております。あとで政令で定めると、こうなっている。私は製品輸送もパイプラインによって必要であるが、それよりももっと大事なのは、やっぱりこれは原油をもっと外海で受け入れて、そして原油をパイプラインでもって運ぶような、たとえばヨーロッパ諸国では地中海からパイプラインでもってドイツなりフランスなりに運ぶことをやっております。こういうような形で特に狭い瀬戸内や東京湾における事故防止のことも、将来展望としては十分考えなければならぬ部面があるんではないかという感じがいたしますが、いかがなものでございましょうか。
  164. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘のように、この法律は原油もやれることになっております。原油ももちろん含まれるということでございます。実際的にはしかし、いまお話がございましたように、原油というのは、シーバースで原油を引き取って製油所まで送るというようなものがいまは考えられるわけでございます。これもチュメニの油田のように、またアラスカからカナダを通ってアメリカへの長距離パイプラインによるもののように、いま日本はそこまでは現実的には考えられないわけであります。これはもう製油所をつくる基地が幾らでもありますから、そういう意味では数は多くしていくということでございます。いまちょっと調べてみたのですが、ことし三十二社、四十二工場、これはまあずいぶんあるんだなということでございますが、しかし、四方全部海でございますから、外航タンカーが各地へ寄港できるようにすることのほうが危険分散は確かにされるわけであります。ただ、外航タンカーが五十万トンになって東京湾で一隻ひっくり返ったことを考えてみたら、東京じゅうが火の海になるという計算ができるわけでございまして、たいへんなことである。だから、将来、原油というものをどうするのかということは、これは厳密な計画のもとに行なわるべきであるということは論をまたないところでございます。特に、千葉県とか東京湾の中に、もう浦賀水道はほとんどどうにもならないような状態でありながら、東京湾岸ではなく、千葉県下だからいいだろうといってつくられているものもありますが、こういうものももうやはりほんとうに洗い直して考えなければならないということでございます。いま内航タンカーによるもの六三・三%、タンクロトリーによるもの二九・九%、鉄道タンク車六・八%、こういうもののようでございまして、あなたがいま御指摘になったように、阪神、東京湾というようなものの内航タンカーによる輸送というものが非常に危険な状態になっておるということは事実でございます。   〔委員長退席、理事川上為治君着席〕
  165. 大矢正

    ○大矢正君 大臣のおられるときにお尋ねをしておきたいことがありますので、若干質問が飛びますけれども、お許しいただきたいと思います。  次にお尋ねしますことは、主務大臣のあり方の問題についてであります。基本計画は通産大臣、運輸大臣、建設大臣事業の許可は通産大臣、建設大臣。航路の計画は建設大臣、運輸大臣、自治大臣。業務の監督は通産大臣、運輸大臣。保安の面については通産大臣、運輸大臣、自治大臣と、大体五つに分けるとそういうような主務大臣ということになっております。ずいぶん法律日本の国にもたくさんあるけれども、これだけ多くの大臣が主務大臣になっている法律案はまずないといって私は差しつかえないんじゃないかと思います。もちろんこの中には、たとえば国鉄パイプラインについては別途のまた主務大臣の規定がありまするし、それから、例の新東京国際空港公団における主務大臣の規定の仕方については、これまた別途なものがありますが、ともあれ、これだけのたくさんの主務大臣、言ってみれば、所管の省というかっこうになると思うのでありますが、衆議院ではこういうようなものは珍しいけれども、しかしながら、協議会をつくって十分ひとつ成果をあげるようにというか、効果をあげるようにというか、縄張り根性を捨ててやっていきたいというような御答弁のようでありますが、しかしこれは、たとえば経済協力基金が大蔵省と経済企画庁と両方が所管している。したがって、これはうまくいっているんじゃないかといっても、これは金貸しならそれで済むものかも知らぬが、実際の事業を実施するところの監督なり、指導なり、保安の立場、立ち入りなり現業関係になってまいりますと、そう簡単に私はいくものではないんじゃないかという感じがいたします。  それから大臣は、たとえば何か事故が起きたときに、それじゃ政治責任はだれがとるのだ、大臣みなやめなければならないかと言ったら、いや、おれは全部責任をとると言って、だいぶ衆議院で意気のあるところを示されたようだけれども、私は、気持ちはありがたいけれども、それほど簡単なものじゃないと思いますので重ねて大臣の所見を承っておきたい。
  166. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはもう官庁のセクショナリズムからできた法律と言われてもしようがないくらいに、長い歴史を持ってようやく成案を得たものでございます。これはしかし、結論的に申し上げますと、ここらでスタートさしていただきたい。こう言うのはそれなりの理由があってなんです。私もいろいろこういう法律ぶつかったわけですが、公営住宅法のときに厚生住宅は厚生省、労働大臣ということでありましたが、主務大臣は建設大臣にいたしました。そうして、厚生住宅に関する入居条件その他に関しては厚生大臣に協議し、労働者住宅に関しては労働大臣に協議する。その上に立って所管大臣は一人であるべきだと、こう思います。  しかし、そういう意味からいいますと、これは石油でございまして、輸送も販売もみな同一のものであります。輸送がなければ販売ができない。タンクローリーでもって輸送しているのは輸送であって、販売というわけにはいきませんから、これは新しい意味の販売である。石油ということになれば、これは通産大臣が専管であってしかるべきものだと。これは私は通産大臣だからそう言っているのじゃないのです。ところがこの鉄道敷をやるというので運輸大臣、それから道路の下を使うから建設大臣、それから消防があるから自治大臣、ここまであるわけです。もっと原案は、農地を通るから農林大臣もといったんだが、そうなったら全大臣が主管大臣になるので、共管になるので、いいかげんにしなさいということであったわけです。  最後に四省共管ということになりましたが、これはそれなりにこの問題考えてみたら理由がある。それは鉄道敷だけを使って他のところ全然使わないでパイプラインをやるということがございますので、これは通産大臣と運輸大臣でいいだろう。それから、道路の下を使うだけでなく、ほんとうからいいますと、河口からずっと続いておる上流までの川の堤防があるわけです。堤防の外小段を使えば一番いいところであります。上流まで持っていってしまって、上流から自然流下でパイプラインを流してくれば一番合理的であります。現在はまだそこまでの計画はないようでありますから、将来はこれは避けがたいことである。これはいろいろな公共的なものは堤防の外小段を使うということが考えられるということで、これからは町の中ということになると、なかなかパイプラインの埋設場所がないので、そんなに深く埋められないというので、やはり河川敷を使うということになる。そうすると、運輸大臣と建設大臣と通産大臣はやむを得ぬということも考えられたわけです。それで、あとは消防でありますからこれは自治大臣、自治大臣ということは、消防といえば、公営住宅法だってみな自治大臣がやっているわけですが、これはこの法律制定の経緯に関して、これはもう都市内において災害が起こったらどうするか。万全の上にも万全ということで自治大臣を加えたということでありますので、あまり各省がなわ張り争いによってやったということではなく、この事業は新しい事業である。事故を起こせばたいへんなことになる。万全の体制をとらなければいかぬ。そういう意味で、いままで鉄道敷に石油のパイプラインを敷設をするのはそれは危険であると全く敷くことにしなかったものが、ここでスタートすることになって工事が進められておるわけでございます。こうなると、赤字線などといわれておるローカル線の鉄道の敷地がパイプラインでもってルートになるということになると、これはえらい国鉄の含み財産ということにもなるわけであります。これはほんとうに工場災害などを考える場合に、ローカル線の鉄道敷というものの価値は非常に再評価されるわけであります。そういう意味で、通産大臣はこれはもう石油でございますから当然である。あとは運輸、建設、自治はそのような状態において主管大臣、四省共管になったわけでありますので、これはひとつそういう意味で御理解をいただいて、四人になったためにこの法律の生命を失うようなことのないように、四省協議というものは随時行なって、専管と同じような効果をあげるようにいたしますということで御了解願いたいと思います。
  167. 大矢正

    ○大矢正君 私は、最終的にはこの法律に反対しなければならぬ立場にはありますが、ただ、パイプラインというものはやはり私は、本来的にはあったほうがいいと思っておるんですよ。ただ、不安なことは、やはりほんとうに保安が維持できるかどうかということが一番問題なんであって、その面が絶対とは世の中のことですから言えないにいたしましても、これはやはりそこに一番ウエートがあるし、千葉とか神奈川とか一番身近なところの住民の反対もまた、パイプラインというものの設置自身の反対というよりも、危険性に関する反対ということが中心だという私は感じがするわけです。  そこで、これは大臣に質問するのもおかしいし、それから局長に質問するのもおかしい。という意味は、これは昔の話のことだからどなたもおいでにならないのに、おいでにならないことについて質問するのも変な話だが、昭和四十二年二月にパイプラインをやりなさいという答申をもらっているから、いままで五年以上も結局はやらなかったということは、もっと早く五年前に着手していれば、私は、今日のようなこういう住民の反対運動が出ないうちにきれいにパイプラインができたと思う。それがいま密集してしまってこうなってからやろうとするから、それは危険性がある、不安があるという問題が起こってきていると思うのです。これに答弁しろといってもなかなかむずかしかろうけれども、やはりそれなりにパイプラインの中心的な役割りを通産省が果たしておるんだとすれば、今後も果たそうとすれば、やはりその間の行政上における答申があるにもかかわらず、それを実行に移されなかったという責任は、私は免れないものがあるんじゃないかという感じがするのですが。
  168. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはそのとおりです。四十二年二月に答申をもらってからいままでやらなかった、これはいろいろ理屈はありますけれども、せっぱ詰まってから法律を出してきたということは、これはやはり責任を感じなければいけないと思います。こういうことこそ先取りをしてちゃんとやるべきです。その意味で、二億キロにもなるとは思わなかったということで電力、水、石油というものはどうも考えておった倍にも伸びて、あとは三億、五億、七億になる。一体タンクローリーで運べるのか、こういう事故があったらだれが責任を負うのか、こういうえらい問題になってまいりましたし、さきに言ったように、六三・三%も内国海運で運んでおりますから、これは事故寸前ということにもなって、業界が十分せっぱ詰まってやる気にもなったしということであって、これはほんとに政府が答申を受けたらもっと同時にやるべきだった。この国会には、ついおそくなって申しわけないというおわびの法案と、その轍を踏んではならないという熱供給事業というちゃんと二つ法案の御審議をいただいているわけです。これはしかし、これからちゃんと先見の明で御審議いただいているわけですから、これ二つあわせて政府もとにかく、二回も三回も失敗しないんだということをひとつどうぞ御理解を賜わりたい。しかし、ほんとに四十二年からこの国会まで法律ができなかったということに対する責任は感じます。
  169. 大矢正

    ○大矢正君 これは、大臣の御答弁ではなく事務当局の答弁になるかと思いますが、いまの新東京国際空港公団ですか、国際空港のパイプラインの敷設については、六月一ぱいで完成したいという当初の目標があったと思うのです。しかし、最近若干ずれましたけれども、公団側のごく最近の談話の発表によると、八月中には完全にできあがって送油できるような状態になるというような話がありますね。そこで、まことにこれは事務的な面で、同時にまた考えようによっては政治的な問題になるわけですが、これは一体どういうことになるのでしょうか。この法律がこの国会で通るのは非常にむずかしくなってきましたし、あとわずかしかないから、もし通らなかった場合にどうなるかということ。  それから、通ったとしても、これは今度はたいへんな問題点がありますね。たとえば、これは通産省だけでやるなら、通産省だけの政省令でやるならいいけれども、他省庁なら他省庁の省令になるかわからないけれども、やるのだったら技術基準も保安基準もありとあらゆるものをつくらなければならない。それには一カ月二カ月でできるしろものではないんじゃないか。そこまで技術的に煮詰まっているとは思われない。そうすると、その間に国際空港公団のパイプラインというのは現実に稼働しなければならない事態になってくると思われる。そうすると一体これはどうなるのか。しかも、これは猛反対が起こっているでしょう。これをどのように処理しようとされておられるかお尋ねをしたい。
  170. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはこの法律がなくてもできる事業でございます。ですからこれは、この法律が成立、未成立を問わずして事業は開始されます。実際のところ申し上げますと、これは危険物でありまして、いまのタンクローリーの基準や町かどにあるスタンドの基準よりももっと強い基準で、実際、内々に通産省とも連絡をとりながら、それは危険物として埋設するときの個別道路占用認可するときに、政府としてきびしい条件をつけておる。ですから、普通からいうと、いまのほうは合理的な許可基準よりもより強度を要求されておると言っても過言ではありません。そういう意味では個別認可でありますから、非常に強い要求をしております。ですから、この事業法律がなくてもできるわけです。強く個別にやられているわけです。そういう意味でこの法律ができた。基本計画の中にはそれが包含するということになるわけです。そういうことで法律、これは一本の空港公団のパイプラインとは別に、これからパイプライン幾つもやらなければいけませんから、そうしていま野放しにして民間の恣意によって計画されてもこれは困るから、たいへん混乱すると困るので、ここでもって基本計画もみなきめて悔いのないもの、おそまきながら四十二年にやっておればこんなことにならないわけです。民間も待てなくて、特に空港公団はどうにもならないで、工場の中のパイピングと同じような基準でいま埋設しているわけですので、問題はないと思います。
  171. 大矢正

    ○大矢正君 いや、大臣、あげ足とって言うんじゃなくて、法律は必要だから出すんでしょうから、それはわかっているんです。法律がなくてもパイプラインつくろうと思えば幾らでもつくれる、それもわかっている。だから私のお尋ねをしていることは、あなたがいまおっしゃっておられるのは、ちゃんと裏のほうから回っていってやれば法律があると同じ効果をちゃんと発揮できるんだと、こう言うから、それなら何のために法律があるのですかという点で、むしろあなたの立場から言うなら、保安面もその他の心配があるから、この際、法律でもってワクをかけてやっていきたいんだという強い意思があるということなんでしょう。そこをぼくは聞いているんです。
  172. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) もう法律がなくても、どんどんやりましたので、たいへんである。政府が責任を負えるような体制にしなきゃならないということで、法律の成立がどうしても必要である。政府が、事故が起こってから、法律がなかったからこれは民間の責任でございますなどと言えるものではない。これはさっき申し上げましたように、内国海運では処理できないような状態になっているわけです。好むと好まざるとにかかわらず、どんどん進む。そうすれば、法制を整備して国民生活を守るように政府は責任を負わなきゃならないということで、おそまきながらほんとうに申しわけないことでございますが、今度法案を御審議いただいておる。これはそういう意味法律が成立したならば、法律以前の事業に対しても適用して、改善命令を出すときには改善命令を出しまして、万全な体制にするということでございます。
  173. 莊清

    政府委員(莊清君) ただいまの大臣の御答弁の終わりの部分に、事務的な補足をさしていただきます。  政府提案の法案の附則第二条でございますが、経過措置という詳細な規定がございます。これは実は、成田の空港公団を念頭に置いての規定でございます。この法律が国会を通過いたしまして六カ以内に施行ということでございまするから、早くて年末ということになりますと、かりにその以前に成田の空港公団のパイプラインが現行法での単に道路使用許可制度及び、必ずしも十分ではございませんけれども、現行のそういう法による保安規制という規制のもとですでにでき上がっているという場合に、この法律が施行されますと、この附則第二条の経過措置の規定が働きまして、一定の手続のもとに本法によって許可事業というふうにみなされて、その日から発動されます。したがいまして、保安に関する監督上の必要な規定、保安に関しての事業者としての事業用施設の基準適用義務、その他すべてかかってまいりますと、それの違反があれば事業許可の取り消しというところまでパイプライン法で取り締まりをするということになります。このような措置は、現在の法制のもとではできないことであろうと存じます。
  174. 川上為治

    ○理事(川上為治君) 他に御発言がなければ、本法案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。     —————————————
  175. 川上為治

    ○理事(川上為治君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  石油パイプライン事業法案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  176. 川上為治

    ○理事(川上為治君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  177. 川上為治

    ○理事(川上為治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次回は、来たる十二日午前十時二十分から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時六分散会      —————・—————