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1972-06-06 第68回国会 参議院 商工委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月六日(火曜日)    午前十時三十三分開会     —————————————    委員異動  六月三日     辞任         補欠選任      浅井  亨君     中尾 辰義君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大森 久司君     理 事                 川上 為治君                 剱木 亨弘君                 竹田 現照君                 藤井 恒男君     委 員                 赤間 文三君                 小笠 公韶君                 大谷藤之助君                 矢野  登君                 山本敬三郎君                 渡辺一太郎君                 阿具根 登君                 大矢  正君                 林  虎雄君                 中尾 辰義君                 原田  立君                柴田利右エ門君                 須藤 五郎君    国務大臣        通商産業大臣   田中 角榮君    政府委員        通商産業政務次        官        林田悠紀夫君        通商産業大臣官        房参事官     増田  実君        通商産業省企業        局長       本田 早苗君        通商産業省企業        局参事官     田中 芳秋君        通商産業省鉱山        石炭局長     莊   清君        通商産業省鉱山        石炭局参事官   飯塚 史郎君        通商産業省鉱山        石炭局石炭部長  青木 慎三君        労働省職業安定        局審議官     中原  晁君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    参考人        中央公害対策審        議会会長     和達 清夫君        日本工業立地セ        ンター常務理事  飯島 貞一君        北海道知事    堂垣内尚弘君        全国鉱業市町村        連合会会長   吉田  久君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○工業配置促進法案内閣提出衆議院送付) ○産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  去る三日、浅井亨君が委員を辞任され、その補欠として中尾辰義君が選任されました。     —————————————
  3. 大森久司

    委員長大森久司君) 工業配置促進法案及び産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  本日は、両案について、参考人から御意見を承ることになっております。  なお、参考人として、中央公害対策審議会会長和達清夫君、日本工業立地センター常務理事飯島貞一君、北海道知事堂垣内尚弘君、全国鉱業市町村連合会会長吉田久君、以上四名の方々の御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位におかれましては、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本日は、ただいま審議中の工業配置促進法案及び産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案の両案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承り、もって本委員会における審査の参考にいたしたいと存じておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  なお、各参考人にはそれぞれ二十分程度の陳述をお願いし、その後、委員からの質疑にお答えいただくことになっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、まず和達参考人にお願いいたします。
  4. 和達清夫

    参考人和達清夫君) 私は、主として環境公害問題との関連において本法案について申し上げます。  まず、全般的に申しまして、この工業配置促進法案は、法律自身産業発展経済の伸長を目的としているものと思われますが、それを行なうにあたって、公害環境問題を十分配慮してこれを行なおうとするものであること、また、現在、緊急を告げている環境問題の一面にプラスをするものであることにより、現在のわが国環境状態にもかんがみて、けっこうであると思います。  そこで、本法案の冒頭の目的について述べるところで、「環境整備その他環境保全」に配慮しつつ推進する措置を講ずると明記されていますが、私が申し上げたいのは一にかかってこのことにあり、これが実際に間違いなく行なわれることが、本案に賛意を表するにあたっての基本的条件であることを重ねて申し上げたく存じます。  言うまでもなく、現在の過密した地域、特に大都会における環境を是正するため、工場等がその地域から移転することはきわめて望ましいところと存じます。ただ問題は、一にかかって行った先の環境保全がどうなるかということであります。このことは提案理由にいわれているところの「工業生産全国的な平準化促進」というものが、いわゆる公害全国的ばらまきになっては何もならないどころか、国として大きなマイナスになることは言うまでもありません。何とかして密集地帯環境をよくしたいが、それは無考えに、いまなおよい環境、特に自然環境を保持している地域の犠牲、あるいは破壊において行なってはいけないという、そのところが、私が本案に対して申し述べたい全部とも言えると思います。したがって、工業配置にあたって、どのようにむずかしいことがあろうとも、骨が折れようとも、適切な道をさがし求め、環境悪化を防ぎ得るめどをつけてこれを行ない、その達成に最大努力を払われんことが大切と存じます。  元来、公害対策基本法において、「(土地利用及び施設設置に関する規制)」の条項で、「政府は、公害防止するため、土地利用に関し、必要な規制措置を講ずるとともに、公害が著しく、又は著しくなるおそれがある地域について、公害の原因となる施設設置規制する措置を講じなければならない。」とあります。公害防止にはこのことが基本と思います。この政府立地規制がまだ明確にできていない現段階において、現法案工業の再配置計画は、東京大阪など大都会のよりよい環境づくりに一歩前進しようとする現下の問題にプラスとなることは十分認めつつも、これは規制でなく工場誘導の問題であり、誘導地域への誘導にあたっては都道府県単位に行なわれ、それらの立地指導を行なうという行政的措置において環境をそこなわないように配慮しようというものであります。しかし、根本的にはやはり環境保全指導面だけでなく、規制の面から考えていかねばならないものと思われます。したがって、この法案とは別に、公害対策基本法でいう立地規制はこれで要らなくなったというのでなく、大いに進められるべきものと考えます。  本法案とともに示された通産大臣工業開発指標によりますと、基本的考え方として、「全国地域開発ポテンシャルに応じて安全快適かつ効率的な生活環境を創造し、国土全体を均衡のとれた高能率な姿に再編成。」とあり、趣旨はけっこうでありますが、この際言うまでもなく、工業開発というよりも地域住民福祉が最も優先して考えられる再配置であるべきと思います。そして国土均衡という姿は、国土がどこでも同じようにというのでなく、国土相当部分には、人工的でない本来の自然がよく保存された地域を十分に残されるようにされたいと願うものであります。すなわち、工場誘導地域において植樹とか下水道とか、いわゆる人工的の環境整備に最善を尽くされることについては、この法案の実施にあたって当然配慮されるものと信じますが、しかもなおその際に、全国いずこをも人工的の環境にならないように、本来の自然というものは少なくとも相当地域にわたって残すことが大切と存ずるのであります。  要するに、環境問題としてはよい環境保全し、公害を起こさないような産業のあり方を求め、基礎となる科学技術開発し、発達させるなどの根本的の施策のもと、一つ一つ工場公害を起こさない努力を続けるべきもので、それは工場移転がたとえ行なわれなくても、これによってよい環境がつくられなければなりません。したがって、工場などの移転はその根本に立ってさらにそれをよくするために行なわれるということで、これによって環境問題の根本的推進に対し事終われりということでないようにありたいものであります。しかし、当面においてこの法案は、それ自身目的産業発展のためであるにせよ、その実行において公害防止の面において十分なる配慮がなされるならば、環境の現状、特に密集地帯におけるそれによき面を与えることになるのであります。ことに、この法案において衆議院における修正部分、そして附帯決議を拝見し、すでに国会において本法案をよりよきものとするため、特に本法案の運用にあたって誘導地域環境を悪くしないように鋭意配慮されたあとを知り、ここに敬意を払うものであることをつけ加えさせていただきます。  したがって、私の申し上げますことは簡単でありましたが、以上をもって終わることにいたします。
  5. 大森久司

    委員長大森久司君) どうもありがとうございました。  次に、飯島参考人にお願いいたします。
  6. 飯島貞一

    参考人飯島貞一君) 私、財団法人日本工業立地センター常務理事をいたしております飯島でございます。  ただいま本委員会におきまして審議をいたされております工業配置促進法案について、意見を述べるようにと御指示がございましたので、私、過去二十年ほど工業立地並びに地域開発につきまして一時は直接行政にも携わり、現在ではこの問題に関しまして具体的な調査研究に携わっております立場から、簡単に所見を述べさせていただきたいと思うわけでございます。  これからの日本地域開発というものが、国民福祉向上に結びつくものであって、自然を保護し、公害防止し、りっぱな町づくりというものを目ざすものであるためには、この法律成立は私の経験から申しまして非常に望ましいものであり、むしろおそすぎたという感を私は持っておるわけでございます。  過去の日本工業立地政策を振り返ってみますと、二つの大きな柱で進められてきたと思っております。一つは、大都市地域工業をどうするか、こういう問題でございまして、もう一つ地方工業開発をどうするか。若年労働力大都市へ集中をし、老齢化していく過疎地域に対して、いかにすれば工場分散をしていくかと、この二つ政策があったと思います。  第一番目の大都市地域工業に対する立地政策につきましては、もうすでに昭和三十四年に首都圏既成市街地における工業等制限という法律ができておりまして、工場の新増設の制限がすでに行なわれておるところでございます。しかし現在では、大都市における工業というものをさらに基本的に考え直す必要があるんではないか、こういわれております。これにつきましては、大都市に限らず都市の持つ機能というものを少し機能論的な考え方から根本的に考え直す必要があるのじゃないか。大都市の中での生産機能というものをどう考えていくのか、これが非常に重要な問題になっております。  一つの例を申し上げますと、東京中心部におきまして現在三十六階の霞が関ビルがございますけれども、同じ大きさのものがあと十年間に百も要るんだという一部の見通しもあると私は聞いております。そうしますと、このような大きなビルが百も建って、その中に何が入ってくるのかということを考えてみますと、それは決して工業ではないわけでございます。この中にはこれから必要な新しい情報機能と申しますか、それから中枢管理機能と申しますか、こういうもの、いわゆる最近のことばで申しますとソフトウエアというものを扱う機能がこれから非常ににたくさん東京へも入ろうとしておるわけでございます。ところが、限られたこの地域の中に新しい機能を受け入れるためにどうすればよろしいかということを考えますと、やはり現在必要でない機能が出ていって、そのあとにこういうものが入ってくるという、いわゆる都市開発基本ともなるような考え方をやはりここで真剣に考える必要があるんではないか。いわゆるる機能交代と申しますか、これがない限り大都市問題は解決をしないであろう、このように私は考えております。  ここで、それでは大都市生産機能をどうするか。これは明らかに工業大都市地域から、交代でございますから、外へ追い出していく、この政策がここで必要になってきております。で、このために現在でも、既成市街地の中の工場あと地地方公共団体が買い上げ措置をとっております。こういう公共団体工場あと地を買い上げて、そこに新しい機能を入れていく、こういった交代ということを進めることが非常に大事だというふうに考えられるわけでございます。  第二番目に、それでは、地方への工業分散立地という問題でございますけれども、先ほどの大都市地域工業立地政策といわゆるうらはらの関係にあるといえまして、大都市地域への工場立地が制約され、さらにそこから外へ追い出される、こう考えられますと、それだけ地方への分散は、これは物理的に進んでいくわけでございます。しかし、自然のままに放置をいたしまして、無政策に置きますと、この分散立地大都市に近いところから順次に分散をいたしまして、大都市周辺で、すでに昭和三十年代に見られますように、いわゆるスプロール状態、順次虫食い状態工場住宅が外へ出ていく、こういう形で、いわゆる過密地域と同じものが大都市周辺にできてしまう。これでは全く意味がないわけでございまして、こういう悪い例がすでに東京とか大阪周辺にはたくさん出現をしておることから見ても明らかだと考えられるわけでございます。  したがいまして、今後の日本工業をどう考えていくか、これにつきましては、幸い、交通ネットワークというものが順次整備をされておりまして、全国的に鉄道新幹線高速自動車道路地方空港、カーフェリー、こういった新しい交通網が完備をされようとしております。この交通ネットワークを前向きに活用をして、これが逆に大都市への人口の流入の促進にならないように、前向きに工業地方分散大都市人口抑制に役に立つように活用をするということが必要でございます。このためには、単に交通ネットワークだけではなくて地方都市都市機能整備地方労働力活用、これを一体とした活用が必要であると考えております。  で、私どもでは、こういう高速自動車道の、たとえばインターチェンジの持つポテンシャルというものを利用した大規模内陸工業団地造成というようなものは一つ解決方法であるということを、過去数年の調査研究並びに海外事例等から見て、私どもは導き出しておるところでございます。で、内陸に中核的な工業団地をつくっていく。これは海外ではインダストリアルパークという、いわゆるパークということばを使っておりまして、公害を完全に防止をして、緑で環境を守りながら工業地域自体がきれいになる。ただそれだけではなくて、その周辺住宅地域商業業務地域、こういったものと一体となった環境が守られる方式でございます。  で、もう一つ工業地方分散というものを、先ほど和達参考人から申されましたように、公害地方分散ではないだろうかという考え方がございます。しかし、私は、それは方法論によって解決できるんだと、方法論並びにみんなの決意解決できるんだということを確信をしております。で、よく公害型産業ということばが使われておりますけれども、過去においてはそのとおりであったかもしれませんけれども、これからの工業というものは、排出物は完全に処理しない限り立地ができないというきびしい制約のもとで立地が許される、こういう状況に全国的になりつつあります。国もそういう方向で行政を進められております。企業社会的責任について順次目ざめてきておるところでございまして、私ども工業地方分散公害分散にならない、これはわれわれの決意一つ方法論政策によるものであるというふうに考えております。  次に、産業構造が非常にこれから変わっていきまして、この法案とも少し関連がございますが、御承知のように、戦後一ドル三百六十円で固定したレートで日本経済が進んでまいりましたが、これからは円の強さが変わるという中で、日本産業構造がどうなっていくか、こういうことを真剣に私ども考えておるわけでございます。円の力が強くなるにつれて、日本国民所得が上がるにつれて、次第にわが国産業構造というものはますます高度化をされていかなければなりません。で、この高度化は高い賃金を払い、公害防止の費用を十分に負担をし、企業社会的責任を十分果たせる工業というものだけが生き残れるような産業構造の変化というものになっていくと思います。  このような産業というのはほとんど内陸性工業でございます。で、戦後の日本地域開発は主として臨海工業中心政策が進められてまいりました。新産業都市工業整備特別地域を見ましても、全体二十五の中で内陸地域はわずか一カ所ということを見てもおわかりのように、非常に臨海性工業立地中心日本地域開発が進められてまいったわけであります。しかし、これからは先ほど申しました産業高度化、こういうものを考えますと、次第に内陸性工業に重点が移ってまいります。一部の推計によりますと、わが国産業構造はいまのままでいっても、たとえば内陸工業中心である機械工業昭和六十年には三割を占めるだろう。で、最近の情勢では四割、もっと五割もいくんではないかということがいわれております。機械工業に限らず、内陸にもっと高度の産業がこれからどんどん立地をしていく。この場合には、先ほど申し上げましたように、交通ネットワーク地方都市都市機能並びに労働力と、この三つの要素を中心にいたしまして、地方に大規模インダストリアルパークというものをつくって受け入れていく。これでないと、工業にとっても地域にとってもいい姿にはならないというふうに考えております。で、このようなインダストリアルパーク方式拠点団地開発というものが、すでに成立を見ております農村地域工業導入促進法産炭地域振興法、こういった法律による地域開発、これをますます効果あらしめるような力を持っていくだろう、こう私どもは考えておる次第でございます。  で、以上のような視点から見ましても、本法律の意図しておられますところがこれからのわが国地域開発、真に国民福祉を考えた地域開発に合致していると私どもは考えておるわけでございます。さらに工業団地だけをつくるということではなくて、工業団地一つ起動力というふうに考えて一つ町づくりとしていく、こういう考え方に私どもは意義を持っておると思うわけでございます。  この法案で、私ども最初に聞いておりましたのが最近衆議院のほうでいろいろ変わりまして、附帯決議もつけておられますけれども、私の意見として、今後もう少し大都市地域工場の追い出し策と申しますか、大都市地域工業に対してのもう少し強力な分散策というものをさらに望んでおる次第でございます。  それから、いままでにない資金的な援助がございまして、この点は政策をさらに強力に進めていく手段になっておりますが、工業団地をつくりますときに今後私どもが希望をいたしますのは、行政指導によりまして団地をつくる一つの基準と申しますか、こういうものを行政指導でやっていかれる。もう一つは、入ってくる企業に対して一つの守るべき条件というものをはっきり示す、こういうことも必要でございますし、さらにいままでの日本工業団地というのは、売ってしまえば終わりというのが全国的に多いわけでございます。これではきれいな工業団地が守れないので、団地維持管理、これを地方公共団体ないしこの団地造成主体者について十分やっていくように、これは継続的に維持管理をなされる、こういうことが非常に必要であると思います。  以上、意見を申し上げましたけれども、この法案はいままでの工業立地政策にさらに強力な力を持っておるということを私ども十分この法案並びにいままでの経過を見て考えておりまして、この成立がさらに強力な日本地域開発のきめ手になるというふうに信じておる次第でございます。
  7. 大森久司

    委員長大森久司君) どうもありがとうございました。  次に、堂垣内参考人にお願いいたします。
  8. 堂垣内尚弘

    参考人堂垣内尚弘君) 堂垣内でございます。  私は、現在、工業化促進を急務としております北海道、さらにまた、石炭鉱業の相次ぐ閉山に見舞われております産炭地域振興緊急課題とする産炭地域知事といたしまして、ただいま御審議中の工業配置促進法案について意見を申し上げたいと存じます。  この工業配置促進法案は、従来政府が実施してまいりました低開発地域工業開発促進法をはじめとする一連の地域開発法律に基づく政府地域開発政策からさらに大きく前進しまして、過密地域から誘導地域へ強力に工業分散し、全国土にわたって工業を適正に配置しようとするきわめて有効な政策として理解し、この法律成立を強く期待するものであります。  北海道は、広大な用地と豊富な用水、さらには良質な労働力に恵まれ、開発可能性のきわめて高い地域でありますが、過去におきましては道路鉄道通信網等整備の立ちおくれと、先進地域から遠隔地に存在するという地理条件のゆえに、本州と比べまして工業化が遅々として進まなかったのであります。しかし、昭和二十五年に制定されました北海道開発法に基づく北海道総合開発計画によりまして、国の一貫した開発政策が進められ、次第に産業生活の基盤は整備されつつあります。さらに、道内幹線道路除雪体制整備され、冬期間の積雪による隘路が克服され、現在わが国に残されたきわめて魅力ある工業適地としての条件を備えるに至っておるものと考えます。したがいまして、この工業配置促進法案が施行された暁には、北海道は当然全域が誘導地域に指定され、わが国国土利用の再編成に大きく貢献し、さらには工業化の進展によりまして北海道経済発展し、わが国経済の成長に大きな役割りをになうものと確信いたします。  また、北海道本州におけるがごとき大きな過密公害の弊をいまだ受けておりません。したがって、むしろ過去の本州における急激な経済発展によるひずみを反省の材料といたしまして、これを後発の利益として受けとめまして、総合的な計画的土地利用によって生産生活の調和した公害のない、いわゆる緑の中の工業地帯を形成することが可能であります。したがって、北海道誘導地域に指定されましたならば、現在国の手によって進められております第三期北海道総合開発計画を達成するきわめて有力な施策としてこれを受け入れ、国の企図する工業配置促進に積極的に協力し得るものと考える次第であります。このためには、青函トンネル新幹線鉄道早期完成及び全道にわたる高速自動車道早期建設など、輸送体系整備並び苫小牧東部における大規模工業基地建設石狩湾新港建設どもあわせて進めていただくことが必要と考える次第であります。  これらの政策が総合的に進められますならば、北海道日本列島交通体系の中に一体的に組み入れられ、苫小牧東部臨海工業基地わが国における最大臨海工業基地としての役割りを果たすとともに、これと相関連しまして、北海道内陸部におきましても工業が飛躍的に振興することになります。北海道内陸部は、広大にして大規模内陸工業団地を形成する工地条件に恵まれております上に、道央地域はもちろんのこと、道南、道北、道東におきましても、二十万人から三十万人の人口を有する中核的都市がそれぞれ配置されまして、これらの都市はすべて札幌市を中心としまして放射線的な交通体系によって連絡しております。また、これらの中核的地方都市には十万人以下の都市がそれぞれ連絡いたしまして、広域的生活圏域を形成しております。したがって、北海道におきましては、これらの均衡的に配置されました都市機能を十分に発揚させ得る大規模内陸工業団地の形成が可能でありますので、工業配置産炭地域振興公団の造成する中核工業団地は、道内の各圏域にそれぞれ配置され得る条件を有していることを御理解賜わりたいと存じます。  また、第三期北海道総合開発におきましては、北海道がカナダ、アラスカ、シベリア等の北方圏の要衝に位置していることにかんがみまして、北方圏の開発に必要な技術や資材並びに北方圏の需要に見合った消費物資などの輸出拠点としまして、さらには豊富な北方圏資源を利用する工業基地としての役割りを十分に果たし得るものと考えております。  次に、北海道は冒頭に申し上げましたとおり、相次ぐ炭鉱閉山に伴いまして多くの離職者が発生し、さらにまた、産炭地域における地域社会が崩壊の危機にさらされているのであります。したがいまして、移転計画の認定は、産炭地域移転するものを優先的に配慮するなどの優遇措置を特に強化して、大きな不安におののく本道の産炭地域の道民に希望を与えていただきたいと存ずる次第であります。  以上、北海道知事といたしまして、北海道の実情と開発可能性の点からこの法律成立を強く期待するものでありますが、この機会に、数点につきましてやや具体的に御要望を申し上げたいと存じます。  その第一点は、当然のことでありますが、この法律が、現在進められておりますところの第三期北海道総合開発計画との調和を十分に保持されるよう運用されることを御要望申し上げます。言いかえますならば、第三期北海道総合開発計画の中での工業開発施策として、他部門の産業開発と調和を保ちながら計画され、推進されることを願うものであります。  第二点は、産業基盤、生活環境施設など、産業活動上必要な公共施設整備についての国の配慮措置の強化であります。具体的には、工業団地造成関連して生ずる道県並びに市町村の実施すべき産業生活基盤整備事業に必要な財政措置につきましても、特別の優遇措置を配慮していただくことを御要望申し上げます。この措置によりまして、十分な環境保全公害の未然防止対策がきめこまかに徹底して行なわれることになりますので、特に御配慮を賜わりたいと存じます。  第三点は、産炭地域に対する配慮についてでありますが、この点につきましては、産炭地道県、市町村並びに議会等で構成する産炭地域六団体連絡協議会としましても、これまで関係方面に対し強く御要望申し上げているところであります。  その第一は、産炭地域は、法案第二条の第一項におきます政令で定める要件によって誘導地域から除外されることはないものと確信しておりますが、具体的な企業誘導につきましては、重点的かつ優先的な施策として確立していただきたいと存じます。  第二は、法案の中にあります工業配置計画審議する工場立地及び工業用水審議会の構成員の中に、産炭地域の代表者を加えていただき、産炭地域の実態とその振興施策を十分反映した工業配置計画を樹立していただきたく存じます。  第三は、産炭地域の振興施策は、今後かなり長期にわたって実施を必要とする実情にかんがみまして、この法律の施行に伴って従来の産炭地域振興事業が工業配置の中に埋没してしまうことのないように、配慮をしていただきたいと存じます。具体的には、産炭地域振興事業団が公団に移行される段階においても、従来以上に組織と事業予算の拡充強化をはかっていただくなど、産炭地域対策の一そうの強化を願うものでございます。  以上、やや具体的な要望を加えまして私の意見開陳といたしますが、何とぞよろしくお願い申し上げます。
  9. 大森久司

    委員長大森久司君) どうもありがとうございました。  最後に、吉田参考人にお願いいたします。
  10. 吉田久

    参考人吉田久君) ただいま御紹介をいただきました、北海道の鉱業市町村会長並びに全国鉱業市町村連合会の副会長をさせていただいております夕張市長の吉田でございます。  本日は工業配置促進法案並びに産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案について、産炭地市町村の立場から意見を申し上げる機会を与えられましたことは、まことに光栄に存ずる次第でございます。  まず、私どもは、第五次石炭政策の答申を目前に控え、このたびの新石炭政策がどのようにきまるか、すなわちいままでのように閉山が強行されるか、または安定するのかと、全国産炭地域二百二十万人の住民がひとしく不安と焦燥感の中にあって、私ども産炭地の自治行政を預かるものとしては、石炭産業の長期安定なくして産炭地域の将来の発展どころか、現在の住民生活をすら守り切れるものでないことを申し上げ、これまでの第四次にわたる石炭政策については諸先生と関係各省の皆さまに多大の御配慮をいただいておりますが、最終といわれる第五次石炭政策産炭地域の将来に真に明るい希望の持てるものとなるよう最後の射願いとして、ぜひ国内資源の優先利用を基本とした石炭の位置づけなど、手厚い御配慮をお願い申し上げる次第であります。  さて、ただいまから意見を申し述べます二法案については、昨年十二月、石炭問題で通商産業大臣に陳情の際、大臣から直接法案の骨子について方針を承りましたが、過密工業地帯から過疎地帯に工業の再配置促進して、国土均衡ある発展をはかり、過密、過疎の諸弊害を是正する方策ともなり、さらには産炭地域への企業進出の一助ともなるとのお話がありましたが、ただ、工業配置という国土利用の再編成を進め、均衡ある国土発展を期す、この画期的一大事業を遂行するためには、新たに堂々と官公署を設けてこの政策を実施しても当然と考えられ、何ゆえに地域対策である産炭地域振興事業団を改組してまでこれと並列させるのか理解に苦しむとともに、工業配置という国家的に見てきわめて重要かつ難事業の陰になって、産炭地域振興事業が後退するのではないかとの疑心があって、産炭地域振興事業団の改組については了承しがたい一時期があったのでございました。その後法案の国会提出時ころから種々説明を承りまして、むしろこれらの法律の適切な運用によっては産炭地域振興の強化にもなると考えますので、以下申し上げる諸点について、諸先生をはじめ関係各省の皆さまに御高配を賜わりたいと思います。  第一は、工業配置促進法案第二条第二項の「誘導地域」の指定についてでありますが、従来の産炭地域振興計画と、さらに本年改定されました十カ年の振興計画による産業基盤の整備交通、運輸、通信の新ネットワークの形成など、蓄積された社会資本を有効に利用するためにも、他の地域に比べて受け入れ態勢の整っている全国産炭地市町村の全部を優先指定されることが私どもの希望であり、単に人口等による画一的に指定するのではなく、個々の実態を十分勘案していただきたいものと存じます。  第二に、法案第三条第二項の「工業配置計画」については、昭和四十七年四月現在における産炭地域振興事業団が造成した工業団地は、完成団地八十二団地、面積一千三百一万平方メートル、目下造成中の団地十二団地、面積三百七十一万平方メートル、着工準備中のもの九団地、面積千百七十七万平方メートル、計百三団地、二千八百四十九万平方メートルであり、この広大な団地活用を最優先に取り扱うことが有効にして得策と考えますので、ぜひ産炭地域に優先的に工業移転をされるようお願いする次第であります。なお、現在石炭を生産している産炭地市町村については、労働力がかなりありますので、この労働力が流出しない時期までになるべく産炭地域に進出移転措置をお願いいたします。  また、企業の受け入れ側として、環境保全対策はきわめて重要であり、一般も公害環境問題には神経質でありますので、進出工業公害問題あるいは団地造成にあたっては、公害防止はもとより生活環境自然環境保全に万全を期するよう政府の十分な措置をお願いいたします。  第三に、誘導地域に対する工場移転に際し、移転先の労働力を吸収する場合と、移転工場が持っている多数の労働力とともにそのまま移転する場合とがあり、後者は、短時日の間に誘導地域人口増を来たすことになりますので、これが財政需要に対し建物一平方メートルの五千円補助のみでは低額に失するものであり、ぜひ転入人口当たりの補助を別に考慮されたくお願いいたします。  なお、移転工場に対する助成でありますが、仄聞するところによりますと、北関東を誘導地域に指定する方針と承りましたが、北関東に移転しても、北海道移転しても同じ条件の助成では、北関東に移転希望が集中しますので、北海道産炭地域移転する工場については特別の優遇措置をお願いいたします。  第四に、地元負担の軽減についてでありますが、産炭地域はおしなべて財政力が弱く、六条地域の平均は三二となっており全国平均六〇に対して二分の一の財政力に落ち込んでおり、一割自治ともいわれ、六条市町村の約八割が過疎地域の指定を受けている現況であり、さらに閉山に関連する特殊な財政支出は多額となり、特に高年齢の炭鉱離職者は就職の機会に乏しく、生活保護者として、地元に滞留いたしまして、保護率は昭和四十六年において全国平均一三に対し六条地域平均は六四・四と、約五倍となっております。このほか離職者対策事業、閉山地区の水道事業、炭鉱住宅改良事業など財政支出が多いので、企業は誘致したいが多額の地元負担にたえるだけの財政力が乏しいので、地元負担の軽減措置を講じていただきたいのであります。  第五に、工業配置促進法案第三条第一項の工場立地審議会など、工業配置関連する審議会の委員には北海道、九州ごとに産炭地域関係者をでき得る限り多数任命をしていただくよう強く要望いたします。  第六に、最初に申し上げたとおり、従来どおり産炭地振興が工業配置促進の陰にならないためには、毎年度産炭地域振興予算については、従来の額以上に年度ごとに逐次増加するようお願いする次第であります。  第七としては、産炭地振興事業団の改組についででありますが、同事業団は昭和三十七年、私ども産炭地域市町村が一致して強力な運動の結果、政府、国会の認めるところにより発足して十年、この間数々の実績を持つ事業団で、現地市町村の緊密な連携を保ちつつ現在まで経過してまいりましたが、さらに同事業団の強化充実を希望しておりましたところ、今回工業配置促進業務とあわせて公団となりますが、万一にも産炭地振興業務が弱体化することのないよう、たとえば工業配置促進業務に配置する職員が、当初は少ないとは思いますが、これを加えて二で割るような職員配置とならないよう、あくまでも産炭地振興業務については従来どおり別個のものとお考え願いたいし、公団の首脳部には産炭地域に理解の深い人材を用いていただくよう、これも重要な事項としてお願いいたします。  第八として、最後に、私ども産炭地関係者にとって最も憂慮される問題は、工業配置企業局、産炭地域振興は鉱山石炭局で、所管部局の異なるため、連絡の不十分、対策の基本的な方針が相違し、これらの調整に時間がかかり一番迷惑をこうむるのが私どもでありますので、他の官庁間に見られるとおり、平素の有機的連携の不十分から、政策の決定、予算の要求など意見の対立、あるいは施行段階に入ってから意見の相違からその調整に時間を要することのないように、新発足の公団と私どもに対し協力一致して業務遂行の迅速化のために特段の御配慮を要望申し上げる次第であります。  以上、八項目についてそれぞれ意見を申し述べましたが、最初に申し上げましたとおり、私ども産炭地域市町村の実情を御理解をくださいまして、この二法案の施行が過疎化と不安に悩む産炭地域将来の振興と安定のために最大の効果が発揮できるよう心から御期待を申し上げて、私の公述を終わります。
  11. 大森久司

    委員長大森久司君) どうもありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりましたので、参考人の方々に対して質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 竹田現照

    ○竹田現照君 時間の関係もありますから、一括お伺いをいたしたいと思います。  最初に和達先生にお願いしますが、この法案では、自然保護との関連、あるいは自然と人の調和というような点についてはあまり明確でないような気がするんです。そういう意味で、自然環境保全、あるいは公害防止の見地から、工場立地というのは無制限に行なわるべきではない、そう思いますが、公害なきコンビナートをつくるというようなことが常に言われていますが、現実は御案内のとおりの状況であります。先日の質疑の中で田中通産大臣も、いままでの愚を繰り返さない工業立地をということで、繰り返し確信を持ってお答えになったんですけれども、しかし、地域住民はそのことを必ずしもすなおにまだ信じられない状態にあると思うんです。そういう意味で、公害のない工業配置を行なうために具体的なその対策というものは、たとえばどういうようなことを行なうべきであるのか、そういう点どうお考えになっていらっしゃるか、お尋ねをいたしたいと思います。  それから、堂垣内さんと吉田さんにお伺いいたしますが、産炭地域で工配法に非常に大きな期待と関心をお持ちになっていらっしゃるようですし、通産大臣も三菱美唄の関係で、工配法の第一号は美唄にというようなことを産炭地の方にお話があったように新聞にも伝えられておりますけれども、この法律が産炭地振興にどのようなプラスをもたらすというようにお考えになっていらっしゃるのか、この点が第一点。  それから、産炭地の中でも、工場進出等の立地条件というものが必ずしも恵まれないところがたくさんあるということは、これは否定できないと思うのですけれども、そのような地域について、適地適産主義の見地から、この工場配置ばかりじゃなくて、農業振興等の対策も具体的に考えらるべきではないかと思いますが、この点もひとつあわせお願いいたします。  それから、いままで産炭地域に進出をした企業の現実を見ますと、中核的な企業の進出というものはきわめて少ない。しかし、産炭地域の振興ということを考えますと、どうしても中核的な企業進出というものをはからなければならないと思いますけれども、これには、いろいろと進出に対する条件が必ずしも十分満たされておらない面も多々あるんではないかと思いますが、いままでの経験等からも徴し、将来の展望の上に立って、どんな政策的手段を講ずるならばこの中核的企業の進出に実効があがるとお考えになっていらっしゃるか。  それから、産炭地域における労働力の年齢がきわめて高くなっている。そうなりますと、先ほどもお話ありましたけれども企業進出にとって労働力の確保が大きな問題であります。これが中高年齢層ということにだんだんなってまいりますと、その点に非常に大きな隘路があると思うんですけれども、いまの産炭地の現状からこの中高年齢層の就労を考えた場合に、どのような産業の進出が適当であるとお考えなのか。  以上の点について、それぞれのお立場からお答えをいただければ幸いだと存じます。
  13. 和達清夫

    参考人和達清夫君) 工場等を過疎地帯、あるいは内陸地帯等に移転するにあたりまして、極力人工的によい環境をつくらなければならないことは言うまでもありません。先ほどインダストリアルパークということばもありましたが、人間が自然に近いものを極力そこでつくり上げるわけでありまして、従来そういうことが費用、労力その他思い切ってやらなかったところに地域住民の不信感をかり起こし、現在においてもそういうことがむずかしい地域もあると聞いております。もちろん根本において、地域住民福祉が最も土台になることは言うまでもないことであります。それらを考えまして、そうして従来と変わったもっと根本的な完備してある人工的自然をつくって、その中に工業移転するというのが基本だろうと思います。もちろん人工的の自然環境といいますか、そういうものは純粋の自然環境とは違っております。今日、日本では純粋な自然環境がはたしてあるかといえば、それは多少疑問でありますが、この人工の加わり方の多い少ないによってこれは自然であり、これは人工的の環境であるというわけでありますが、その程度の違いがありますから、まず、人工的の手の入り方の少ないいわゆる自然環境というものはあくまで残さなくちゃいけない。全国にこういうことをしまして、人間のつくった環境で、もう日本じゅうが箱庭のようでいいのだということは、あくまでも考えなければいけないと私は思うのであります。  なお最後に、しかし根本においては、やはりこの産業のあり方、そして科学技術の進歩等におきまして、こういうようなことを行なう以前において、公害を少なくするということは根本的に進めていかなくちゃいけないと思います。
  14. 堂垣内尚弘

    参考人堂垣内尚弘君) 私に対する御質問は、産炭地振興がこの工配法によってどのようにプラスになっていくか。それから二番目が、立地条件に恵まれない地域に対しては農業振興も必要ではないか。三番目には、いままで進出した企業、これらの経験から見て今後どういう政策をやればいいかというようなこと。また、労働力について、中高年齢層についての考え方についての四点と思いましたが、最初に一と三番目のことを一緒に申し上げたいと思うのであります。  北海道で指定されております産炭地域の市町村の数が四十ございます。全体が二百十三でございますが、四十でございます。二百十三のうち市が三十三でございまして、   〔委員長退席、理事川上為治君着席〕 その三十三のうち、十三の市が産炭地であります。こういうことでございまして、面積から申しますと、全道の約二〇%が産炭地域の市町村でありまして、人口も大体同じ程度でございます。大体四十五年度の国勢調査では百三万人であり、北海道が約五百二十万でございますから、大体二〇%。そうしまして、これらの地域が、もとはもっともっと多かったのでありますが、炭鉱の相次ぐ閉山などによりまして、昭和三十五年以来減少の一途をたどっております。特に六条地域、これは石炭ずばりの町村でありますが、これなどはもう三十五年から四十五年までには三二%、こういうことの激減であります。また、このような地域はおおむね山間部にございます。内陸部の山間部に多いわけで、そして地域住民の炭鉱依存度が非常に高いものでありますから、閉山による炭鉱離職者の移住とか、また、地元の商工業者にとりましてはほんとうに気の毒なことでございまして、地域社会が絶滅、崩壊してしまうわけであります。こういう例としまして、雄別炭鉱の閉山による阿寒町とか音別町、また明治鉱業の閉山による沼田町とか、これらの町におきましては、人口の減少は六〇%をこえる、こういう悲惨なところもあるわけであります。  このために道といたしましても、代替産業を導入するようにつとめておりまして、御参考までに申し上げますと、昭和三十八年以降産炭地域に新たに立地した企業の数は百四十ございまして、雇用された人員が七千六百人でございます。しかしながら、先ほども御指摘ありましたように、その七〇%が資本金一億円以下の企業でございまして、設備投資額も五千万円以下の中小規模企業が大半を占めておりまして、いまだに石炭にかわりまして地域の中核となっている企業というものは進出していないのが実情でございます。したがいまして、この一の御回答になりますが、この産炭地域の振興対策が従来どおり実施継続されることに加えまして、今度の工配法ができますと、そうして運営上に重点的に配慮されるということになりますれば、非常にこの上乗せになりまして、大きなプラスになる。北海道の振興につきまして、また全国の過疎で悩んでおる地域にとりまして大きなプラスになるものと考えるわけであります。そうしてこの政策そのものにつきましては、いまのこの法律プラスになることと、陳述のときに申しましたが、財政的に国がまず市町村、あるいは地方自治体を通じていろいろと基盤整備その他につきまして援助していただかなければなりませんし、また生活環境の浄化というようなことについてもさらに強めていただかなければなりませんし、私はこれらも含めまして、道路など交通体系を抜本的に促進しようと思っていま努力しておるわけであります。いろいろなそういう政策を入れまして、もちろん、この付近にある産業をいかに振興するかというようなことはもちろんでありまして、これらを興しながら、この道政に対しまして馬力をかけていきたい、こう思っております。  それから二番目の、立地条件に恵まれない地域が多いので、付近が農業地が多いから農業振興ということについて、これにつきましては、同感でございまして、大体内陸工業地帯で考えますことは、電気とか、電子部品、いわゆる付加価値の高いものとか、あるいは機械工業というようなもの、また北海道は木材の産地でもあり、木工の問題、さらには御指摘ございました、付近の一時産業を生かした農業振興ということを大いにやりまして、またそれらと関連づけた産業工業というものを振興していきたい、このように思っております。  それから、四番目の中高年齢層につきましては、去年から実は無料の中高年齢層の相談所を設けまして、逐次拡充していく予定でございます。また、炭鉱の閉山が、私、知事になりましてから大きなのが二度ございまして、その間、中以下のが相次いでおるわけでありますが、そのための離職者対策につきましても、離職者対策の中で職業訓練、この機会を与えるということで希望者を募りまして、たとえば道立の職業訓練校を二十校北海道で持っております。これらに対しまして、普通は若年労働力の訓練でありますが、これに加えまして職業転換される方も逐次中に入れておる。そうしまして、やはり機械の基礎的なこととか、あるいは建材関係とか、こういうものが大体こうわれわれの指導面、あるいは訓練を受けるそういう人たちの希望などを聞きましても、機械関係とか建材関係、あるいは自動車関係とか、こういうものが強いようでありまして、これらも逐次趣向を考えながら助成していきたい、こう思っております。
  15. 吉田久

    参考人吉田久君) いま知事からお答えを申し上げました中で、重複する点につきましては避けたいと思います。  この法律を施行することによりまして、まあ十分なプラスになるかどうかというふうなお話でございますが、現在の大体予定されている助成措置、金融措置、これだけでまあ直ちに工業移転するかということは、おそらく大都市の付近であればそういうことは可能だろうと思いますが、先ほども申し上げましたとおり、北海道のようにかなり遠隔の地にありますところに移転をさせるというふうな場合には、相当なやはり助成措置をとらなければまず行かないんじゃないだろうかと考えております。  それから産炭地域は、御承知のような北海道の場合はもう内陸地帯がほとんどでございまして、釧路を除いては全部内陸地帯でございますから、したがって、決して工業立地条件というのがいいわけではございません。しかし、先ほども知事からお話がありましたとおり、そういう悪条件の中にありましても、将来の産業基盤を整備するために、市町村長は一生懸命になりまして道路交通網整備をしております。しかし、全部が全部それでは理想的な状態になっているかと申し上げますと、そうなってはおりませんので、まあしたがって、道路交通網整備には十分努力をして、そうして受け入れ態勢を整えなければなりません。そういう意味におきまして、条件の整ってない地帯につきましては、あるいはこの工業の再配置誘導地域が受け入れが十分にできないんじゃないかというふうなことになります。  それから、中核企業の誘致の問題につきましても、これも同様、立地条件との関係がございます。まあ産炭地はおしなべて大企業的なもの、中企業的なものを持ってくるにつきましても、まだまだ団地造成が全部できているわけではございません。それぞれ面積の大きいところももちろんありますけれども、おしなべて小さい面積のところもございますので、したがって、私どもは中核的な企業をぜひこれは呼びたいと考えておりますけれども、全部が全部その態勢が整っているとは申し上げられません。もちろん、この相当工場団地を持っている市町村も中にはあるわけでございますから、そういう点におきましてはそういう準備がまずできておりますし、また中核的企業を誘致するためには、何といってもやはり労働力の拡充の問題とか、労働力の確保の問題とか、それから先ほど申し上げましたこのいろいろな融資、あるいは助成の条件、こういうものを今後、逐次手厚い方向に拡大をしてもらいたいものだと思っております。  それから、中高年齢層のことにつきましては、どういう産業がよいかという御質問でございますが、これは先ほど知事からお答え申し上げましたとおりのような内容でございます。しかし、一定の人口を持っております産炭地域につきましては、たとえば夕張のようなところは七万ぐらいの人口ですけれども、地元に産業がないために、毎年七百名近い中学校あるいは高等学校を卒業した人間がよそへ出ていっております。でありますから、こういう企業の誘致とタイミングを合わせますと、まあ一年間で五百や三百ぐらいの若い労働力はよそへ出ないで押えることができるところがあるわけでございまして、現に、私どもにも額ぶち工場が進出いたしましたところ、よそへ出ていった若い労働者、若い労働力がさらに夕張に帰ってきたという例もあります。大体一割近い人間が帰ってきております。そういうようなことで、企業があれば若い労働力の流出も押えられますし、むしろ呼び返すこともできるというふうなことでございまして、これはどちらにしても、どっちが先かというふうな問題になろうかと思いますけれども、そんなような状況でございます。  以上で私のお答えを終わります。
  16. 阿具根登

    ○阿具根登君 飯島参考人一つお尋ね申し上げますが、先ほどのお話の中で、東京の三十六階の大きなビルが今後十年の間に百ぐらいできるだろうと、こういうお話でしたが、これに対しては一体どう考えればいいのか。それは工業じゃないんですよ。情報その他中枢機関が中央部に集まっている。全くそうだと思うんです。たとえば、工場工業配置分散さしても、その本社というものは依然として東京に陣どられる。工場はまあいなかへ出ていった。しかし、これから先の工場というものは、工場の大きいわりに人は非常に少ない。そしてそれを監督し、指令しておる本社というものは依然東京に集まる、大阪に集まる、こういうことになってくるんだと思うんです。だから、そういう点に対しては一体どうしたならばいいのか。  それからもう一つ。私たちはもう一つほかの委員会で海上交通というのをいま審議しておるわけなんです。それを見てみましても、まず政府が手を出す前に、企業が手を出していく。企業はあくまでも利潤追求でございますから、一番自分の都合のいいところに企業は持っていく。だから、瀬戸内海、東京湾等はもうこれは一般の漁船なんか仕事ができない。それで、二十万トンも二十五万トンもあるタンカーがどんどん入ってくる。だから、そこのけそこのけということでもう漁業はできない。それで、今度それを規制して、大きな船が通るときは小さい船はちゃんともう横へどけ、こういうような法律が他の委員会でやられておるわけなんです。ちょうどこれと逆なんです。だから考えてみますと、都市をつくっていくのは政治でなくて企業である。企業は自分の一番いいところに、利潤の追求に一番いいところに企業を持っていく。そうして公害も何も、これはもう今後はそういうことは許されないと思うんですけれども、いまもヘドロ一つでもどこにやっていいか、もうしようがないようなことになっている。こういうことでございますので、一体、どういうふうにこれに対して対処していったらいいだろうか。もうすでに、いま、御承知のように、年間二億トンからの油が入っておりますが、これが十年後には六億トンになる。そうすると、大企業はちゃんとその準備はもうでき上がってしまう、ちゃんと土地も何も買い込んでしまってある。そうして今度は政治があとからそれに道を開いてやっている。だから、住民は全部犠牲になっていく、こういう形がずっと繰り返されておると思う。こういうことに対するひとつ飯島参考人の御意見を承らさしていただきたいと思います。  それから、知事さんと市長さん、産炭地からお見えになっておりますので、いま竹田さんから御質問ありましたが、知事さんも、また市長さんもいまおっしゃいましたように、産炭地域振興事事団がこれで工業配置に埋没してしまいはせぬか。確かに私どもも一番それを心配いたしております。ですから、衆議院でも産炭地というのがわざわざ挿入されて修正されてまいりましたが、参議院でもそういう考え方を持っていますし、主張されておるわけです。ところが、いままで山がつぶれて職を失った人が二十数万人おります。そのうち労働省が訓練をして職を与えたのは十八万八千人です。十八万八千人のうち産炭地で残って仕事をしておるのは八千人です。そうすると、十八万という人は外に出ていった。八千人という人はこの産炭地で残った。それ以外の人は何しているか。それ以外の人は夕張市長さんが言われたように、これは生活保護です。こういう状態が繰り返されておる。で、先ほど堂垣知事さんもおっしゃいましたが、雄別の例をとりますと、あの雄別の炭鉱が閉山になった場合に、四棟から五棟あるあの住宅が一万円で売られた。だから、周囲の農家の人がどうしようもないけれども、豚小屋か牛小屋をつくるには、材料それくらいかかるから、その家を買おうかいということで、トラックで持っていかれたと、こういうことも聞いておるわけなんです。さらに、雄別はまだ新しいほうなんですけれども、ここでは千人からの失業者が出ておると聞いております。で、この雄別のあと地にどういう企業が来たのかですね。  それから、先ほどの市長さんの説明では、産炭地域振興事業団が非常に力を入れてくれまして、百三の団地、二千八百四十九万平方メートルの団地をつくりつつある、こういうことなんですけれども、最初申し上げましたように、さあ団地をつくって、そうしてここに来いということで非常に地元でも協力されておるし、産炭地域事業団も必死にやられておる。まあ政府も力を入れておると思うんですけれども、実際の大企業というのは、そういう、まあここでおぜん立てしたから、ここに来なさいというところに来るよりも、自分自身で一番自分のいいところに住宅から何からつくっていくわけなんです。だから、大きな企業は私は非常に困難だと思う。そうすると、そういうふうに優遇して土地もつくってやる、団地もつくってやるから来てくれ、行きなさいといって、来るのは中小企業だけになってしまう、こう思うわけなんです。だから、この大企業に対して一体どういう考えを持っていったらいいのか。大企業政府の援助ももちろん相当あっておりますけれども、資金を豊富に動かすことができるから、自分の一番条件のいい、一番利潤のあがるところに工場もつくるが、その周囲にその工場で使う従業員の団地もつくっていく、これが私は現在の行き方じゃなかろうか。そうすると、せっかくこの法律は、まあやがて通るでしょうけれども、この種の法律が四本、五本ばかりあるんです。おんなじ目的のやつがあって、大臣がかわるたびに、これじゃいかぬ、これじゃいかぬ。これは都市均衡上いけない、過疎地ができるとか、過密地だとか、いろんな問題で非常に心配されておることはわかるんだけれども、結局、また私がいま申し上げましたように、大企業は自分の都合のいいところにどんどんつくっていく。そうして地方からは、何とか企業来てもらいたい、企業来てもらいたいと言っておられても、その来る企業はいままでのやつは竹田さんも触れておりましたけれども、ほとんど縫製工場です。くつ下をつくるとか、メリヤスを編むとか、そういうやつで二百人か百五十人ぐらいの娘さんたちが一生懸命仕事されておる、そういうのが大体いままでの産炭地の企業の大体の姿だと思うのです。知事さんも心配されておりますように、私たちも非常に産炭地の問題では心配いたしておりまして、もう今度の工業配置では産炭地を最優先的にしてもらいたいということを強く全議員の方が要望されておられるわけなんです。しかし、問題は企業なんです。その企業が、極端な例を言いますと、私たちは社会奉仕しているのじゃありません、企業というものは金を生まなければならないのだと、そのためにはなるべく労働力の安いところに、便利のいいところに行くのが企業、あたりまえじゃないか、こういうことも言っておられますし、企業側から見ればそうだと思うのです。まあ誘導地に北海道をやってもらいたいという話でしたけれども、それは当然のことで、もちろんそれは質問の中でそういう答え出ておりますし、北海道が一番これは今後伸びてもらわねばならぬところだし、一番土地から見ても私は、人の少ないところだし、まだまだいまの倍、三倍ぐらいにならなければならぬところだと私も思っておりますが、そういう見地から見て、地元でどういう一番隘路があるだろうか。確かに資金の面でもあるでしょう。いろいろな面でもありますけれども、産炭地を最優先にしても、産炭地にそれじゃどういう大企業を持ってくればいいのか。雄別のあとはどうなったか、美唄のあとはどうなったか、美唄にはどういうものを持ってきたいと思っておられるのか、雄別のあとにはどういう企業が向くと思っておられるのか、その点お答え願えたらばありがたいと思います。  以上でございます。
  17. 飯島貞一

    参考人飯島貞一君) 工業立地政策というよりも、大都市政策をどうするかという最初は御質問かと思います。私申し上げましたように、新しい機能大都市へ入ってこようとしている。これはもうほんとうに事実でございまして、そういう機能が入りますと、問題はそこに働く人の住宅をどうするか、レジャーをどうするか、非常に関連をした機能まで必要になるから、ますます大都市問題が出てくる、こういうことでございまして、すでに、本社の問題が出ましたけれども、事務所の過密地域における規制という問題を首都圏整備委員会なんかではすでに考えておられる、こういう時代に現実に入ってきておるわけでございます。工業につきましては、大工業は自分の力ですでに一部、大部分出ていっておるわけでございます。問題は、中以下の企業がなかなか移転をするにもお金がない。その間を休んだときの補償はどうするか、それから労働力が一緒に出ていってくれるか、こういう非常に心配がございまして、これからの大都市の中での工業移転というのは中小企業にしぼられてくるというふうに考えられるわけでございます。こういうことで、先ほど私が申し上げましたように、生産機能としての工業が全部出ていっても、また次に入ってくるもののために用意しなければいかぬ。そこで大都市問題解決するかというと、まだまだ問題があるので、次は事務所であり、さらにまあ行政機関まで入れれば、こういうことに世界的になってくるわけでございまして、この法案でいまねらっておられますのは、まず生産機能だけでも早く出すということが必要だという関係かと思います。  それから、海上交通その他企業がまずいいところをたくさん取るじゃないかということでございますが、すでに通産省で数年前から、たとえば工場立地調整法とかそういう立地制限に関する、この法案の前の段階で幾度かこういう法案が出ておって、しかし、それは残念ながら成立をしていないわけでございます。なかなかこういう法律でも政策でもあと追いになっていく、こういう御批判が非常にあると思いますけれども、いまここでやはりこの法案が通らなければ、またこの問題をあとに繰り越してしまう、こういう問題でございまして、たとえば先ほどタンカーのお話が出ましたけれども、大きなタンカーが東京湾の中へ入ってくる、瀬戸内へ入るとか、こういうことは海上交通問題からきびしい制限がこれからは当然行なわれてくるだろう。これにかわって、たとえばパイプラインの法案がたしか国会に出ておると思いますけれども、次々そういう手は打たれておると思いますけれども、この法案は非常にきびしい。一面では、大都市工場に当初は課徴金をかけるとか、相当きびしい案まで出ており、工場を外へ出していく、こういうことについては非常に統制的なにおいまであるのじゃないかというふうに考えられる向きもあるかと思いますけれども、たとえば都市計画とかそういうものは、みんなのために役に立つ法案は決してそれは統制ではないわけでございまして、こういう工場立地というものを適正に配置をしていく、これはいま最も緊急に必要だと私ども考えておるわけでございます。
  18. 堂垣内尚弘

    参考人堂垣内尚弘君) ただいまの阿具根委員の御質問でございますが、最初に、産炭地域に対しまして各委員の先生方にはたいへん御配慮いただいておりまして、この席から厚く御礼申し上げます。  大企業のことにつきましては、私たちといたしましても通産大臣をはじめいろいろな方に、政府機関にお願いしており、また、議員の方にもお願いしておりますのは、やはり中核となる大企業が来ていただいて五年や十年でしまってしまうというようなことでは困るわけでありまして、やはり一度行なえば地元の労働力相当生かして、少なくも数十年は続けていただく。そして、この大企業そのものは何と申しましても地場産業、私のほうで申し上げれば北海道の地元の産業を鼓舞して、そしてこれを誘導して、そしてこれを盛んにしてくれるものを望んでおるわけであります。また、公害を未然に防げるものとかそのほかいろいろ条件ございますが、こういうようなことで私どものほうとしましてもしっかりした大規模のものに来ていただきたいということで、たとえば奔別、住友系の炭山の閉山、あるいは美唄をはじめとする三菱系統、こういうようなときにはグループで、住友グループあるいは三菱グループ、このグループからもう必ず一人は出していただきましてそのあとを見ていただいて、われわれといろいろ具体的な相談もしているのが現状でございます。現状でございますが、なかなかうまくいきません。そういうことでございますので、先ほど御指摘もいただきましたように、ほかの法律が四つも五つもあるじゃないか、これはもうその御指摘のとおりでありますが、私は今度の工業配置によりましてこれに筋が入るのではなかろうか、こう思っております。そういうことで、われわれとしては今度一そうたよれるものができる。また、私は過去におきまして、四十年から四十二年末まで二年半、北海道開発庁の事務次官をしておりましたが、そのときも、四十年ごろもう私たちは通産省と相はかって、特に過疎地帯における問題でもございますから、いろいろと何とかこういう法律をつくっていただいて、そうして地方をもっと鼓舞していただきたい、こういうことを望んでおったのが、今度あらためてはっきり審議していただくことになりましたので、私としましては何とかこれを通していただきたい、こう思うわけであります。  それから、御指摘ございました雄別炭鉱のあと地でありますが、残念ながらつけもの工場、それから木彫、木彫りでございます、おみやげやなんかの。つけもの工場、木彫り工場程度でございまして、大部分は釧路市、道内外に再就職しておるわけであります。そこで、今後の雄別をどう考えるかと、また美唄をどう考えるかと、これにつきましてお答えいたしたいのでありますが、現在北海道におきましては、臨海工業としましてまず太平洋沿岸の苫小牧東部というもの、これを相当強めるようにいま努力して、国にも要請しておるわけであります。これが終わりますと、十勝のほうでまた計画をしております。これは相当あとになりますが、それから流通港湾を日本海で、石狩湾振興という名でございますが、これで内陸航運を強めようと、本州とも連絡を強めようと、また将来日本海の小樽とか、あるいは留萌とか、函館とか、こういうところをさらに拡充しまして、ソビエトはじめ北方圏に対する中継基地ということ、こういうことも考えて整備しておるわけであります。  そのほかに、先ほど竹田委員にお答えいたしましたように、内陸工業では先ほど申し上げたとおりでありまして、特に雄別につきましては、まず農林資源、農産物とか木材の利用の工業を考えたいと思っております。したがいまして、何としましても一次産業の振興、育成ということがあの付近ではたいへん大事だと思っております。  それから石狩地区で、たとえば美唄が御指摘ございましたが、あの地域は国道の十二号線の周辺地区でございまして、これらを考えてみますと、労働力を利用した機械系統とかあるいは消費財、札幌などを背景とした消費財工業の提供とか、あるいは苫小牧とか小樽経由で輸出も考えておりますが、部品関係、こういうようなものを主として考えております。  そういうことでいま作業をやっておりますのは、北海道全域を二十のブロックに分けまして、第三期計画でも広域生活圏ということで示してあるわけでありますが、本年は第三期総合開発計画の二年目でございまして、この一年間かけまして現地の二十ブロックからそれぞれ、二百十三市町村あるわけでありますが、いままでの自分の市、自分の町だけの計画じゃだめで、このブロックの振興策、また全道的にこれを適正に案分しようということで、現地の作業をいま終わったところであります。これをまた開発の学識経験者などにも見ていただきまして、さきに閣議決定いただいたものと比較いたしまして、ある程度調整いたしたい、こう思っております。これによりまして工業団地工業の振興策についても具体的な面を浮き彫りにいたそう、こう思っております。
  19. 吉田久

    参考人吉田久君) 阿具根先生から知事と私に御質問ありましたので、お答えを申し上げたいと思いますが、確かに産炭地に進出しておるのは、もう中小企業というよりもむしろ小企業、零細企業だけが進出しておることは事実でございます。私どもも大企業にぜひ進出していただきまして、その地帯の産業のやっぱり発展のために貢献をしてもらいたいという気持ちは、もう前々から持っておりますが、何ぶんにもやはり産炭地のいろいろな条件というものが必ずしも満たされていることでもございませんし、やはり企業はどうしても利潤追求ですから、結果的にその会社がいい経営をしていく見通しが立たないのに、その産炭地市町村を助けるために進出するという企業は、まず大企業はないんじゃないだろうか、こういうように考えております。  私は、今回の工業配置促進法のこの目的、精神というものを何とか大企業の方々にもぜひ御理解を願って、国土均衡ある発展ということを目標にした法律でございますから、何といってもやはり中小企業よりも大企業の方々にぜひその点を御理解を願い、われわれはこの法律目的に向かって政府に協力するんだというふうなことで、ぜひそういう情勢をつくっていただきたいものだと、それによって法律目的も徐々に達成できるものだと思います。  衆議院でも問題になったようでございますが、私は、工業配置促進法と直接関係がないかと思いますが、以前から国のたばこ工場とか、あるいは国鉄の車両工場とか、そういうものをぜひ産炭地域あるいは過疎地帯に進出していただきたいということは、再三再四お願いしておるわけでございますので、まあせっかく工業配置促進法が、こうやってやがて成立するわけでございますので、国もひとつ模範を示して、そういう施設をぜひ産炭地域に進出してもらうように、あわせてお願いをしたいと思います。いずれ大企業誘致の問題につきましては、困難はありますけれども、私どもまあこの促進法の趣旨にのっとって御理解をいただければ、十分に、及ばずながら少しでも条件をよくするように努力をしたいと思います。  以上でお答えといたします。
  20. 山本敬三郎

    山本敬三郎君 飯島先生にお伺いするんですけれども、この法律が大きく言えば過疎、過密を解決するささやかな一歩にすぎないわけです。私のひっかかるのは、先生は組織の交代ということを言われておりますが、日本の将来を考えまして、工場を追い出したあと中枢管理機能を持ってくると、一体、そんなことを考えておってよろしいんでしょうか。中枢管理機能というのは、一眼レフとか——都市立地ですね——一眼レフとかいろいろいわれておりますが、はたして一点に集中しなければできないものか。私は、そうではないんじゃなかろうか。これは考えようによれば、中枢管理機能情報機能ですね、そういうものさえも分散していかない限り、この都市の混乱というものは防ぎ切れないんだ。そこで先生は、工業立地センターの立場ですから、これは工業だけ言われるかと思うんですけれども、私は機能交代ではなしに、やっぱりいまあります、たとえば第一生命が出てまいりましたね。これは必ず成功しておるかどうかは別として、中枢管理機能の一部が出ても、出れば出得るということを立証しておる。金融機関も私は、本店業務なんというものは出れば出得る性質のものだと思いますし、その他いろいろ出得るものがあり得るわけなんです。そういったものを交代で入れてくるというような考え方は、私は非常に古い考え方で、もっと新しい発想で考えなければならぬのではないかということが一つ。  それからもう一つは、どうしてもこのためにはニンジンだけではなしにむちが要るのではないか。ですから、それぞれ追い出すべき機能については、税金をいただくとか何とかということをやらない限り簡単には出ていかないだろう。それは非常に重要な要素になるんではないか。  それから第三番目には、いままでの工業分散というのは思うようにいかなかった。臨海工業地帯は別として内陸型の場合、最大の問題は何かといいますと、やはり労働力が出ていこうとしない。今度の場合も私は、あめだけくれてもそう簡単には出ていかないのじゃないかと思うのですが、そのもとは何かといいますと、やはり地方に、日常生活圏、広域生活圏の中に単に工場の必要とする道路とかそういうものだけではなしに、やはり人間として文化的生活というのか、そういうものを享受して、東京やその他におけると同じような生活環境が味わえる、そういう政策がついていかない限り、工場だけを追い出そうとしても、私は非常に無理なんではないかと思う。したがって、これは単に通産省などで考えるべき問題ではなしに、やはり国策として、あるいは各省を連ねた形か、あるいは企画庁等で各省を連ねた形でやっていかない限り、単なる工場だけ私はなかなか出ていかないと思う。むしろ現地の労働力を吸収してやっていく程度であって、ほんとうの意味での過疎の解消にはならないのではないか、そう思うのですが、そういった点についてひとつ大胆に、忌憚のない御意見を聞かしてください。
  21. 飯島貞一

    参考人飯島貞一君) 第一番目の、都市機能交代ということばを私使いましたのですが、都市のある機能の中で交代をまず必要としてくるものが工業とほかのものである。それからその次に、管理中枢機能として一括お話がございましたけれども、管理中枢機能の中にも古いもの、新しいものがあって、その次に問題になるのは、そういう中でも古いものがさらに出ていく。先ほどお話のございました第一生命とかほかの本社機能が出ていったというのは、まず、やはり工業分散といいますか、工業交代をしていく、この次の段階とわれわれは考えておるわけです。ただし、それを待ち切れずに、その一部の中では第一生命のように先走って、先走ってといっちゃ悪いのですけれども、一番先に出ていったものもございますけれども、逆に入ってこようとしているものはたくさんございます。特に、情報を必要とするような機能、これはもう東京でなければどうしようもないというようなものがまだまだふえるだろうという見通しがある。そういうものに対して、やはり古くて東京にいまの段階では必要でないものは、次々に交代をしていかない限り大都市問題は解決をしていかない、こういうふうに考えておるわけでございます。この場合の中枢機能というのは東京に必要な中枢機能、それから地方中心都市、たとえば札幌とか、仙台とか、福岡とか、こういうところに必要な中枢機能、それからもう少し今度は県庁の所在地、それから地方都市、それぞれの都市にもそれぞれ必要な管理中枢機能があるわけでございます。たとえば札幌——道知事いらっしゃいますけれども北海道の札幌市というものは、やはりこれからは生産機能をつけるのは間違いだろう、こういうふうに私ども考えておるわけでございます。  それから次の、むちを与えなければいけない、これは賛成でございまして、最初私御意見申し上げましたように、まあ私どもいままで聞いておりましたところによりますと、大都市工場に対して課徴金までということもこの法案の中で考えておられたと思いますけれども、それはぜひ今後やっていただきたい。これはもうたいへん賛成な問題でございまして、やはりそれだけのことをしなければ、もう出ていかない。しかし、出ていく場合に、いま申した、この法案に盛り込まれておるような優遇策が相当あると、こういう両方うらはらの問題についてはたいへん賛成な問題でございます。  それから第三番目の、労働力がなかなか地方へ帰らない、いままで日本国民所得が五百ドル、千ドルと、この程度のときにはなかなかこのような労働力地方へのUターンと申しますか、これが進まなかったわけでございます。このころ問題になりましたのが、所得の格差というものが非常に問題になりました。で、所得の格差をなくそうということが一つのいままでの政策の目標だったと思います。しかし、数字上の所得格差、これはどこの国でもなくすことができないわけでございます。これは不可能でございます。これをはっきり認識をいたしますと、それではどういう格差をなくせばいいかと申しますと、これは国民生活上の格差がなくなっていく、大都市でも地方でもだんだん。昔は、東京でなければたとえばいい美術が見れないとか、音楽が聞けないとか、非常にそういう国民の何といいますか、情操教育的な欲求を満たす機能地方に行かない、これが生活上の格差でございます。しかし、最近は皆さん所得が上がってまいりまして、日本国民交通移動といいますか、移動というのは非常に自由になってまいりました。この辺でいつでも東京へ出れるという安心感とか、地方にもそういうものがやってきてくれる、こういう安心感が生活格差ではないかと私は思っておるわけでございます。で、この生活上での格差をなくしてやるということがやはり若い労働力地方へ戻していく非常に大きな効果になっている。私は、その辺を一番重点として考えるべきで、数字上の地域格差、県民一人当たりの所得格差、これを問題にするよりも、目に見えて、はだで感ずる生活面での格差をなくしていく、これが一番いい政策だろうと私は思っておる次第でございます。
  22. 原田立

    ○原田立君 和達参考人にお伺いいたしたいのですが、先ほど、今度のこの工業配置促進法が全国的な公害ばらまきではいけない、こういうお話ございました。私もぜひそうあるべきだと、全国的な公害ばらまきであってはならない、こう強く思っておるわけです。これについてどうしたならばそれがそうならないかというお考えがありましたらばお教え願いたい。  それから、知事さんにお伺いしたいのですけれども、同じようなことで、公害地方分散であってはならない、そのためには、中央では環境庁、あるいは地方では自治体等の意見、きびしい規制の必要、そういうものが重大であろうと、こう思うわけなんです。工場の誘致はしてはほしいけれども公害の発生はおそれるというようなところでたいへんお悩みだろうと実は思うのです。規制をきびしくすれば企業は来ないだろうし、ゆるくしてしまうとまた公害の多発ということにもなるであろう、そこら辺どんなふうにお考えであるのか、これが一つです。  それから、この法案の中に、固定資産税を三年間減免するところにおいては地方交付税で手厚くする、こういうふうなことが第七条に出ているわけでありますけれども、私は、地方交付税で処置するというようなことは、ワクのきまった中でお金をあっちこっちやるだけのことであって、そんなことじゃいかぬだろうと、地方財政の充実という面からもまた別なワクでやるべきじゃないだろうかと、こんなふうに考えているわけですけれども、そこいら辺の御意見をお聞かせ願いたい。
  23. 和達清夫

    参考人和達清夫君) 大都会には工場が密集しているから、そのために大きな公害を起こす。これを一つ一つ分けて持っていけば薄くなるからよかろうという考えでは、全国的に公害をばらまくことになる。やはり一つになっても、それが許容限度からはるかに低いというようなことになろうとも、公害を起こす原因の絶対量が同じであっては私は何にもならない。つまり、根本的にどこにそういう公害の原因があろうとも、その一つ一つを小さくしていかなくていけない、これが基本的の姿勢であると私は思うのです。それにしても、工場は、移転していきますその先において人工的につくられる自然的の環境、つまり緑をふやすとか、下水道を完備するとかいうことによる、いわゆる美しいインダストリアルパークといわれるようなものをつくるということは、先ほどもお話しになりました方法と決意、もうこれにかかっていると申さなければならないと思います。まあ結局において、再度申し上げますが、ただその汚染の原因を分けて薄くすればよいというのは、非常に国全体としてとらないところです。
  24. 堂垣内尚弘

    参考人堂垣内尚弘君) 第一点の公害のばらつきでございますが、いま和達参考人のおっしゃったとおりでございます。北海道といたしましては、公害防止条例を昨年つくりまして、今度の法律ができましたので、それに準じましてさらにきびしく改正をいたしたのであります。それから、全国で一番最初と思いますが、四十五年に自然保護条例をつくりまして、現在二年目で、四十六、四十七と地域指定を行なっています。これは、たとえば木なら木で、これは学術上残さなければならない地帯とか、あるいは景観上残すべき地帯と、国土保全上残すべき地帯といろいろ種類ございますけれども、こういうものを、いま終わりましたのは、去年道央地区が一応指定を終わりまして、ことしは道南地区、来年、再来年と道東、道北と、こういうようにして網を全部かけようと思っております。それによりまして、自然保護意識の向上と、あるいは何かその中で事業をいたす場合、仕事をする場合の認可とか届け出義務とかこういうのをやっております。また川などにつきましても、国の法律に基づいて、道としましてことし七大河川について水質汚濁の上乗せ基準を示している。まあいろんなことの施策は尽くしておるわけであります。しかしながら、私はいまの公害というものは、いままで国全体がやっぱりうかつであったと思っております。そして、まあものをつくることだけと申しちゃちょっど過言でありますけれども、そちらが主であって、この途中でできるものとか、あるいは残滓物とか人体への影響など、確かに私はいま反省すべき大事な時期にあると思いますので、これはおくればせながらやはり公害技術の振興とか、あるいは世論の喚起とか、いろいろな面でやらなければなりませんし、またもう一つは、私、いろいろ問題が起きたときよく考えるのでありますが、住民の方々に対するPRと申しますか、たとえば工場などがどっかへ移転する。一般の方は、前と同じ古い施設を持ってくる、まずそう考えます。したがいまして、こういう新しい公害防止の機械も据えつけるとか、そのほかいろいろなことを住民により早く知らせる必要もある。こういうふうにしまして、どこでこの接点を求めるかということが私はやはりむずかしい問題でありまして、これはもうお互いに研究しながらやっていかざるを得ない、こう思っておるのであります。  ただ、北海道知事といたしまして、自分のところばかり申し上げて恐縮でございますが、北海道としましては、いままでこちらの先進地区の過密地帯におけるようなひどい公害はないのであります。これは公害ございますけれども、いまこちらで騒がれておるような大きなのはまだ起きておらない。そこにわれわれが反省して、前車のわだちを踏まないでいける、北海道だからいけるということで、いまいろいろとやっておりまして、調査なども、たとえば苫小牧工業地区などにつきましては、三年前から大気あるいは水質汚濁その他生活条件いろいろなことで調査をしまして、現在ではたとえば公害監視センターというようなもの、公害防止センターでありますか、これを苫小牧地区にいまつくろうとしていますし、また公害監視員四百五十人、ことしこれから指定するわけでありますが、こういうようなこと。それから企業者に対しての監督指導を強めるということで、たとえば何か出ようとする場合に、町村と企業との中における立ち会い人というような、これらは環境庁と打ち合わしてやっております。いずれにしましても、工場地帯でありましても職住分離というようなこと。また先ほどもお話いただきましたように、緑を十分取り入れるということでインダストリアルパークということ、これを大いに強調しているわけであります。こういうようなことで、何とか公害のばらつかないようにひとつやっていきたいと、こう思っております。  それから第二点の、固定資産税などについての御質問でございましたが、これは実際ははっきりうたっていただきまして、先生のおっしゃるように何か補助金でもはっきり出してもらえればいいのでございましょうけれども、これはちょっと私現在の税制上から無理だと思うのであります。したがいまして、この固定資産税を減免した場合に地方交付税でめんどうを見るということは、いまのこの現行の制度ではやはりこれしかないのじゃなかろうかと私は思うのであります。別な方法ではっきり明記していただければ、これは私らはもうもろ手を上げて賛成いたすのでありますが、そうしていただければいいと思いますが、やはり全体としては地方交付税になると思っております。
  25. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 それぞれの方から御質問がございまして、たいへん貴重な意見を聞かしていただいたのですが、私、まず第一に和達参考人にお伺いをしたいと思いますが、おことばの中に環境整備の問題、それといわゆる工場なり工業分散をするということとの関係で、本来の自然というのは大切にしてこれを保存していくことが、環境整備なり公害防止という面で十分考えていかなければならぬと、しかし、一方には開発というような命題もあるわけで、新全総によるところの青森のむつの地域、あるいは周防灘の問題等いろいろ、まあほかにも宿毛湾だとか志布志だとかあるわけなんですが、それぞれいろいろ住民の大きな反対にあって足踏みをしておるというのが実情ではないかと思います。したがって、開発環境の調和ということは、将来を考えてみまして、やはりビジョンといいますか、方針といいますか、そういうようなことが非常に大切ではないかと思うのですが、先生のお立場中央公害対策審議会というお立場での御出席でありますので、まあ大きくは環境庁がやるということなんでしょうけれども、そういう面について国としての、まあこの審議会等に関連をしてもいいのですが、そういうところで審議をする何といいますか、大きな立場審議をするような場所が必要ではないかというふうにも思うわけなんですが、同時にまた先生のお立場で、そういう点についてどのようなお考えがあるのか、ひとつお聞かせをいただきたい、こう思います。  それから次に、飯島参考人に御質問を申し上げたいと思いますが、これは先ほど工業配置について、出ていくところについてはいろいろ税制面その他で好遇、いわゆる優遇される面があるわけですが、大都市における集積の利益をこうむって、交通渋滞だとかいろいろな障害はあるのですが、それをしも補って余りあるといいますか、表現は適切でないかもしれませんが、集積の利益を享受するために残っておられるところを、工業配置促進をするという意味で、分散策をとるための強力な措置、これは先ほど御質問があったんではないかと思いますが、さらにお考えがあれば具体的にお示しをいただきたいということです。  それから、産炭地も含めまして、その地域開発というようないろいろな法律がありまして、従来もそれに対する推進策がとられてきたわけなんですが、これはその地域開発を、今回の場合は工業配置をすることによってそれを起爆剤として一つの新しい都市づくりをしようという、こういう計画もあるわけなんですけれども、実際は新しい都市づくりは、数えあげれば、上下水道だとか、公園だとか、道路だとか、文化施設だとか、いろいろなものがあると思いますけれども、それらの問題についてはこの法案の中には必ずしも明確に手当てといいますか、はっきりしないと。先ほどのおことば吉田さんでしたか、誘致のためにはできるだけ努力をするというふうにおっしゃってみえたのですが、これも努力をするといっても、なかなかやっぱりそういう過疎地帯における対策というのはむずかしい面があろうと思うわけなんですが、促進をするという意味で、そういう面についてもかなり手厚い配慮ということが必要ではないかというふうに思うわけなんです。で、工業立地センターでこういう問題、いろいろ手がけて努力をしてみえました経験等からいって、こういう面について、特に今回の場合は、新しい都市づくりを工業配置によってその起爆剤としてやろうというかなり積極的な姿勢もあるわけですから、そういうものとの関連でどのようにお考えになっておられるのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  26. 和達清夫

    参考人和達清夫君) 開発環境の調和ということについてのお尋ねと思いますが、開発環境とはある意味において対立しておるものでございます。まあ私個人は、人類の長い将来の福祉につながるという意味では環境のほうを優先に考えたい気持ちを持っております。しかし、開発は現在の社会に必要なものであるとも思いますので、これが環境をそこなわない、つまり、人工的にいろいろすることが自然の循環、あるいは自然の浄化作用の中に取り込まれるならばそれは調和したということになり、そのために極力開発に当たっての努力が必要であろうと思います。これが実際には非常に困難でありますので、実際的には人間の行なっておる範囲内だけで一つの人工的循環を考える。端的に申せば、廃棄物を再生産するというようなことで人工的循環を考えまして、そして自然の循環をできるだけ阻害しないようにするという方法において、開発環境との調和を保つということがまあ現在考えられることではないかと思っております。
  27. 飯島貞一

    参考人飯島貞一君) 第一番目の私に対する御質問、過密地域でも、その過密を補って余りある利益がまだ残っておるのではないかという御質問が一つございました。で、いままでは企業の合理性から過密を補って余りある利益があったかと思います。しかし、現在ではもうほとんどそれは、私どもではなくなってきておるというふうに考えております。明治、大正の初めから、当時の東京市できちんと都市計画をつくり、城南地区、それから江東地区、あの地域はきちんとした工業地区として指定をされております。しかしそういう地域の中でも、だんだん集積の不利益が出てまいります。すでに中小企業ですら、たとえばおもちゃ屋さんが栃木県におもちゃの団地をつくる、くつ下屋さんが千葉県の土気に団地をつくる。配電盤の中小企業の方々が茨城県に出ていくとか、中小企業ですらそういう集まることによってそれだけのことをすでにやっておる方々もおられるわけでございます。で、いま交通なりいろいろな技術が進んでまいりまして、市民生活に直接結びつく工業というものが非常に少なくなってまいりました。首都圏の制限法のときには、たとえば、アイスクリームはすぐ解けるから大都市の中にあっていいのじゃないかということで、制限の除外をされておりました。しかし、いまの冷凍技術でいえば、決してアイスクリームは都内でつくって市民に渡す、こういうことではなくて、栃木県とか、もっと、福島県でつくっても非常に技術革新による冷凍設備、冷凍車ができております、自動車でも。そういうもので運んでくる。これはもう十分できてまいります。こういう技術の進歩によりまして、ほんとうに東京になくてはならない工業というものは、もうほとんどなくなってきております。  で、しかし、そういう工業がなぜ出ないかという問題につきましては、やはりきっかけをどうやってつくってやるか。やはり政策とか、先ほど私申し上げましたように、たとえば課徴金をかけるとか、税金が高くなるとか。で、最近では公害の問題から自動車の制限の問題も出てまいっております。こういうことからやはり分散ということは非常にやりやすくなっておる。しかし、もう一歩そのきっかけをつくってやる政策として、この法案で強力な政策というのが必要で、まあこのために先ほどから私、課徴金なんかは賛成であると申し上げておる次第でございます。  それから、工業を起爆剤として地域開発をやっていかれる場合に、工業が行けばいろいろな都市機能が要る、こういうものに対する配慮ということをどう考えるかというお話でございます。で、工業団地化と申しますか、工業団地の問題は決して日本のような先進国へ仲間入りをしかけておる国とか、そういう日本だけの問題ではなくて、発展途上国、東南アジア諸国で一生懸命工業団地をつくろうとしておりまして、私どもその指導に行っておるわけでございますが、これは工業化そのものを目ざした工業団地づくつりでございます。それでは、先進国はどうか、先進国も一生懸命工業団地をつくっております。で、先進国が工業団地をつくるのは、決して工業化を目ざしていると私どもは思っていないわけであります。やはり先進国ではある程度の経済成長があります。それを工業というものを団地化をするということは、それは都市づくりの一環であるという考え方工業工業で集まって、次第に町の中に溶けていく、これが市民の結局しあわせになるんだという考え方で、一生懸命アメリカでもイギリスでも団地をつくっております。で、やはり日本工業団地づくりも、先進国のような一つ町づくりの中の機能として考えていく必要があると思います。その場合に、工業団地をつくったときに、近くに住宅とか、行政機能とか、交通とか、通信とか、そういうもののたよれる機能のある都市があれば、これは工業だけの団地をつくってもいいわけでございますけれども、最近では、やや都市から離れてその機能に依存できない、非常に大規模工業団地をつくるときには、海外でも工業団地住宅団地、それからレクリエーション並びにショッピング、それから銀行、金融機関、そういうものをきれいに配置をした一つの複合的な工業団地、インダストリアルニュータウンという形で進められております。で、こういう形で進みますと、新しい町づくりというものになってまいるわけでございますが、日本でも工業団地がだんだん大型化してまいります。それから住宅団地もだんだん大型化してまいります。多摩ニュータウンとか、千里ニュータウンとか、非常に大規模住宅団地をつくって、三十万の住宅ニュータウンをつくりながら、そこに働く場所が全然ない。永久にベッドタウン、通勤をするという形の住宅団地ができておりまして、一方、工業工業団地だけつくって住宅はつくってない、こういうかたわなと申しますか、こういうことでは非常に将来を考えたときには、やはり機能的に欠けていくんではないか。やはり都市機能整備ということを十分これからは考えた団地づくりでなければいけないし、それはその団地をつくる場所がどこか、こういうこと、それからその大きさはどうかということに関連をしてくると私どもは考えておるわけであります。
  28. 川上為治

    ○理事(川上為治君) 参考人に対する質疑はこの程度にいたします。  参考人各位には、御多用中、長時間にわたり御出席いただき、また、貴重な御意見を拝聴さしていただき、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  午前の審査はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      —————・—————    午後二時九分開会
  29. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  午前に引き続き工業配置促進法案及び産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  30. 原田立

    ○原田立君 今度のこの法律によって一応考えられる臨海区域ですね、内陸じゃなくて臨海区域、これはどこいら辺が計画の中に入ってるんですか。
  31. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 前回大臣がお答えいたしましたように、今回の工業配置の構想でまいりますと、太平洋ベルト地帯から日本周辺部に工業を再配置していこうという構想でございます。その際、臨海の大規模工業基地というものの建設も必要であろうと思いますが、地域的に考えられますのは、日本列島の北東部、南西部というのが一応の地域として想定されるというふうに考えるわけでございます。
  32. 原田立

    ○原田立君 いま問題になっておる青森県のむつ小川原とか、あるいはまた苫小牧の臨海地域ですね、先ほども知事のお話もあったけれども、それらも計画の中に入っておると、入れるようなことになっておりますか。
  33. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 日本の北東部として考えられる地域といたしましては、一応それらの地域は、臨海工業の地帯として考え得る地域だというふうに考えます。
  34. 原田立

    ○原田立君 いわゆる臨海地域に——私公害一本でお聞きするのでありますけれども——公害が多発しておると、そこにまた、新しく工業配置法によってできる臨海地域公害が多発するようであってはならない、こういう心配をしているわけなんです。その点どうですか。
  35. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 御指摘のとおり、先ほど和達参考人の御意見にもありましたが、工業分散公害分散であってはならないということは大臣も前回お答えいたしておりますが、われわれとしても、その点きわめて重要だと思うわけでございます。したがいまして、環境保全に配慮しながら計画的にやっていくことが必要だ。その意味で、臨海の工業基地の構想を具体化する場合には、その点を特に重視してやる必要があろうと思います。したがいまして、工業基地の建設計画を考える際に、生産規模に見合った排出物の量、あるいは排出物の除去の技術、あるいは自然の浄化能力というものを十分把握して、生産規模なり、あるいは設備の配置を考えるということをまず考える必要があろうと思います。  それから第二点といたしましては、技術が進んでまいっておりますが、公害防止設備の促進設置促進するにあたりまして、これを十分最新の設備を設置せしめると同時に、これも先ほど和達参考人の御意見がありましたが、排出物をできるだけ生産過程の中で回収処理する、いわゆるクローズドシステムの導入という技術の採用を進めていくことが必要だというふうに存じます。それからまた、厳格な公害防止の監視体制も整備しておく必要があろうと思います。  それからもう一点、午前中も出ておりましたが、用地につきましては、余裕のある用地を確保いたしまして、十分な緑地あるいは福祉施設等、生活に潤いのある工場用地という形で形成することが必要だというふうに思うわけでございまして、御指摘のように、臨海工業基地建設にあたりましては、公害の発生を事前に防止できるような配慮というものを十分やる必要があるというふうに考えます。
  36. 原田立

    ○原田立君 いままでのような、あとを追っかけていって規制するというようなやり方ではなしに、新規設立でありますから、やはり出ないように前もってやらなければならぬと思うのです。この前も具体的な名前を言って申し上げたように、北九州市の洞海湾、あるいはまた大牟田の空、海はきたならしい、あれは終戦後の過去二十数年間、いやもっと昔からのことでしょう、累積されたもので、いまそれをやっとこさっとこ除去しようということになっているわけですけれども、これは過去のことをいまさら言ってもしようがないと思うのです。まあそれはもうほったらかしにしておったということが大きな原因でありますから、今度新しくやるところはもうほったらかしにしておいたのじゃ、またあの二の舞いをしでかすことになると思う。そういうことがないように、通産当局も厳重な監視をしていってほしいと思うのであります。過密地帯に工場が密集している、それを分散させる、それはそれで私も賛成であります、そういうことは。ただ何といっても公害地方分散、こればかりを心配するわけです。そういうことのないように、十分手当てをしていただきたいと思います。  それから計画の中に、いわゆる田中構想とでもいうのでしょうか、その中で昭和六十年代の展望ということで、GNPを米国のように近づけることを大臣は言っておるわけでありますが、円切り上げ後も一〇%の成長がほんとうに可能なのかどうか。その施策を講じるにあたっては、重化学工業ももっと伸びるであろうし、公害の発生が心配になるわけですけれども、そこら辺関連づけて、今後一〇%の成長が見込まれるのかどうか。また、そのときの重化学工業の伸びぐあいはどうなっているのか、公害の心配はないのかと、こう続けてお願いしたいと思います。
  37. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 一〇%の成長につきましては、前回の当委員会におきまして大臣から答えましたように、五%の場合の成長の場合、あるいは七%の場合、八%の場合、あるいは潜在成長率として過去に一〇%、あるいは一一%強の成長があったということを頭に置いて、一〇%の成長率の場合というふうにいろいろ試算をして、その中で適当なものを考えよう。ただ、一〇%というものが潜在的には成長力として日本経済にあるということも考える必要があるという意味で、一 〇%成長の試算をしておるということであるという点につきましては、前回大臣から答弁したとおりでございます。  一〇%やることが現実にいいかどうかという点については、工業配置計画の作成を通じて十分検討して、適当な比率を算定してまいりたい。前回大臣は、その際、おそらく七ないし八%程度のところがあるいは適当でなかろうかと思うというふうに申し上げたわけでございます。  かりにその程度の成長が行なわれるとした場合に、御指摘のように、重化学工業、特に基幹資源型の工業についてどの程度考えることになるかという点でございますが、この点については、やはりこれからの産業構造としては知識集約型の産業に移っていくことが必要である。そういう意味で産業構造審議会の答申では、研究開発集約型の産業、あるいは高度組み立て型の産業、あるいはファッション産業、情報産業といったような知識集約度の高い産業に移って、エネルギーを節約し、資源を節約できる型の産業に重点を移して育成することが必要だというふうにいわれておりまして、われわれとしてもその方向がいいというふうに思うわけでございますが、それはそうだとしても、やはり基幹資源型の業種の今後の生産の見通しといたしましては、高度化する国民生活、あるいは社会資本の充実、あるいは新しい産業、業種が伸びていくということをささえる意味では、やはりエネルギーとかあるいは基礎資材の生産の量は、やはり拡張をある程度続けざるを得ないと思います。前の試算で見ますると、大体工業出荷額が四倍程度になる場合にでも、基幹資源型の産業のシニアは三倍程度の成長で足るという形にたるのがいいのでなかろうかという試算もしたわけでございますが、ウェートとしては基幹資源型の産業の出荷額の増加テンポは落ちるというふうに考えるわけでございます。
  38. 原田立

    ○原田立君 新全総が百六十兆円、工配法によりますと三百兆円、約二倍ということになっておるわけですね。この前の大臣の答弁では、何か新全総を改正するような、そんなふうな意味の話もありましたけれども、そういうことになるのですか。
  39. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 現在ありますいわゆる新全総は四十四年に策定されたものでございますが、その後の実績の動き等を考えてみまして、四十五年価格で見ますると、五%の成長でも百五十二兆円になりますし、それから七・五%で二百十六兆、八・五%で二百四十八兆と、そして一〇%の成長した場合には三百四兆円という試算があるということでございまして、おそらく新全総総点検ということを企画庁のほうでもやられるようでございますが、計画策定時以降の実績が出てまいりますから、それをベースにすると、数字としてはいま申し上げたような成長率とGNPとの関係が出てまいろうと思います。そういう意味で総点検が行なわれ、見直しがある場合には、数字は改定されるだろうというふうに考えるわけでございます。
  40. 原田立

    ○原田立君 この法律によって、集積度の低い過疎誘導地域へほんとうに工場移転——まあできる自信があるからあなた方は法案提出したんだろうと思うのだけれども、ほんとうにできますか。
  41. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 前回、大臣が答弁申し上げましたように、現在過密地域立地した企業の当初の立地理由は、やはり集積の利益を享受するという経済的な判断に基づいて立地したものであろうと思いますが、最近の状況では、集積利益を享受し得る状況でなくなってまいったという事情でございますが、朝の参考人意見にもあったとおりでございます。昨年の五月に、通産省として移転の意向につきましてアンケート調査をいたしたわけでございますが、八百八十九の企業から回答が出ておりまして、そのうち八十九企業移転計画を持っているというふうに答えております。それから、条件さえ整えば移転をしたいという回答があったものが九十九企業ございまして、合わせて百九十八企業、約二一%が移転を考えておるということでございますし、また昨年十一月、中小企業庁で大都市中心地域立地しておる中小企業につきまして、やはり調査をいたしましたところ、移転の必要があるというふうに答えたのが二百三十企業、二六%でございます。現状のまま、あるいは増改築で対処したいと言いつつも、条件さえよければ移転したいと答えたのが二百四十六企業、二八%でございまして、合わせて、できれば移転したいというところまで入れますと、五四%の企業移転を考えておるということでございます。このような移転希望の企業がかなりふえてまいっておるという事情の調査は、この工業配置の対策というものが必ずしも前提になって判断を求めたものではございませんでした。そういう意味で、今回この工業配置促進法案成立して、いろいろ助成策が講ぜられるということになりますと、こうした希望が具体化する、あるいはさらに増加する傾向も推測できるわけでございまして、われわれとしてはこの法律成立によりまして、企業移転が現実のものとなって実現してまいろうというふうに考えております。その対策としては、前回もお答えいたしましたように、必ずしも十分でないかもしれませんけれども、これは追って補強していくということを考えたいというふうに考えるわけでございます。
  42. 原田立

    ○原田立君 六十年にいわゆる必要な工業用地面積は、四十年を基礎にすると約三倍、鉄鋼関係は四倍、石油関係は五倍、石油化学については実に十三倍と、それぞれ生産規模が拡大すると、こういっているわけでありますが、これでこの用地確保に自信がほんとうにあるのかどうか。まあ何度も繰り返しになりますけれども、こういうように大きな工場用地、工業用地の必要ということになると、どうしても公害の発生ということをおそれるわけであります。で、その地域において、企業と自治体ときびしい公害防止協定等を結んでやってはいくんだろうと思いますけれども、こういうような地域拡大ということで公害の発生を強くおそれるわけであります。それは心配ないかどうか。先ほど前段の質問は、用地確保に自信があるのかどうか。
  43. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) われわれの試算では、御指摘のように、昭和六十年度には二十八万ヘクタール程度の工業用地が要るだろうというふうに考えるわけでございますが、そのうち内陸工業用地が十八万、臨海が十万程度要るのではなかろうかというふうに考えております。これらの工業用地につきましては、二十八万ヘクタールということでありまして 、広さとしては国土の〇・八%程度でございまして、各種地域立法等で地方公共団体等がいろいろ工業用地の造成を進めるという体制でいきますので、用地そのものについての確保は、御指摘のように公害防止、あるいは住民との融和等の条件を満たすならばそれほどむずかしくはなかろう、見通しとしては確保できるのではないかと思います。ただ御指摘のように、公害問題等とからみまして、住民の納得を得るという体制を整えていくことが必要だろうというふうに思います。そういう意味で、今回の工業配置促進法案では、工場移転の認定にあたりましては、移転先の知事意見書を添付してもらう、あるいは地方公共団体造成する工業導入地区へ移転するものを認定するというふうにして、公害問題、それに基づく住民との相互の理解、融和等を前提にして進める体制でまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  それから、先ほど御指摘のありました臨海の工業基地につきましては、十分事前調査、あるいは新技術の導入、あるいは公害防止施設も最新式の施設設置等を行なわしめまして、公害発生については十分防止できる体制をとることを進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  44. 原田立

    ○原田立君 工場誘導地域といっても、むやみやたらに工場が行ったんでは、その点は困るわけです。で、いろんな法律によって規制もされるだろうと思いますが、要するに、観光面であるとか、要するに、地元でこういうところは工場来てくれ、こういうところは来てもらっちゃ困りますよと、こういうことになるだろうと思うんですけれども、そこいら辺のところがすっきりいくかどうか。  なぜこんなことを言うかというと、志布志湾ですね、志布志湾の何か計画があるように聞いておりますが、あれを、国定公園を解消して、それであそこに工場つくるというようなことで、地元民が非常に強い反対をしているわけです。そういうようなケースが今後もあるのかどうか、その点はどうですか。
  45. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 志布志湾の問題は後ほど申し上げることにいたしまして、誘導地域工場移転あるいは新増設する場合には、御指摘のように、地元の地方公共団体が、平たい言い方をいたしますれば、来てくれというところに出るという体制で進めたいと思います。と申しますのは、税法上の恩典を受られる認定につきましては、県知事意見書を添付してもらうことにいたします。で、県知事は、不適当だと思う場合には、その意見書において適当でないという判断をつけられれば、われわれとしては認定できないことに相なるわけでございます。それから、農村地域工業導入促進法に基づく工業導入地区への進出につきましては、地方公共団体が自分でつくる団地でございますから、これにつきましては、公害防止等については事前に計画に組み入れて造成された団地でございますので、農村地域への進出については、この団地に入る場合に認定しようということにいたしておりますので、これも地元の意見を尊重して入れるという形になるわけでございますから、そういう形で、来てほしいというととろに入れるという形で運用してまいりたいと思います。  志布志の場合につきましては、これは現在、県が大隅開発計画ということで、工業のみならず、農業も含めて大きな開発計画を出しておるわけでございますが、現在のところ、まだ地元との調整が終わっておりません。前回の委員会において大臣が申し上げましたように、やはり地元の地域住民の了承を得た上で計画を進めるというのが前提でございますので、そうした手続を現在県としていろいろ話し合いを進めておる段階でございます。
  46. 原田立

    ○原田立君 事務所税、事業所税、いわゆる過密税、こういうのをぜひ設けるべきだという最初の構想が田中大臣のほうからもあったと思うんでありますが、これ、いつの間にかなくなっちゃったんですけれども、前回の田中通産大臣の説明では、そういう禁止条項等については次の国会で考えていくんだと、こういうような意味の答弁もあったんですけれども、どうしてこれがなくなっちゃったのか、もう一ぺんお話し願いたいと思います。
  47. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 事務所税は、自治省が、地方財政が逼迫をしておるという角度から新しい財源として考えたわけでございますが、これに対しては、私どものほうでもただ単なる財源ということではなくて、事務所税というようなものを新たにつくろうとするならば、この追い出し税との関係もあるので、もう少し調整をする必要があるということが一つございました。  それから、もう一つの追い出し税というものは、まあ三段階に地域を分けまして、追い出さなければならないところ、誘導しなければならないところ、そうしてまん中の地域ということで三つにいたしまして、で、まん中の地域は現行法どおり。それから誘導地域は税を安くする。それで、その穴のあいた部分は追い出し税で、過密の地域から取るということになると、ちょうどバランスがとれるわけでございまして、傾斜がつくわけでございます。まあ傾斜を相当つけなければ、なかなか工場分散とか誘導政策はうまくいかないわけでございます。  それで、それがやっぱりこの法律一つの重要な部分でもあったわけでございますが、しかし、法人の暫定税率としておりました一・七五というものがことしで計算しますと、千五百億ぐらいになったと思います。この税が、まあことしは財源がないので、不景気——景気が浮揚しないということもありまして、どうしても財源確保の観点からこの一・七五は一年間現行法のままで進みたいという財政当局の強い意向もございました。そういうこともございましたので、税に関する問題の最も合理的な面は引き続いて実現をはかろう、こういうことにいたしたわけでございます。  そういうわけで、この法律は、入れものをつくっていただく、制度をスタートさしていただくということで、まだまだ付加しなければならない施策がたくさん存在するわけでございます。その中で、いま御指摘になったような新しい税によって調整を行なう、またこの法律目的の推進を行ないたいという考えは変わっておらないわけでございますから、引き続き財政当局とも協議をし、当初考えておったような制度が完ぺきなものになるように努力を続けてまいりたいと、こう考えております。
  48. 原田立

    ○原田立君 局長でけっこうですけれどもね、今後、過密地帯のいわゆるいま大臣からお話があった過密税ですね、過密税をかける業種というのは全部ですか。それとも何かこういうのは、特殊なものはかけないようにするとか、そういう考えはあるんですか。
  49. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 事務的に検討をいろいろしておったわけでございますが、その際、都市工業のようなのはかけずにおくべきではなかろうかというような意見等も出ておりましたが、これはまだ技術的にいろいろ問題がございまして、所得基準でかけるのがいいか、あるいは外形基準でかけるのがいいか等々もございまして、その辺を詰めに入る前に財源問題等とからみまして、一応見送っておりますが、引き続いて検討いたしたいという現状でございます。
  50. 原田立

    ○原田立君 そうすると、そこら辺まだ煮詰まっていないということなんですか。
  51. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) そのとおりでございます。
  52. 原田立

    ○原田立君 煮詰まっていなければ、また聞くのもおかしいと思うんですけれども、いまちょっと局長の話の中にあった都市工業ですね。それは業種を明確になさるんだろうと思うんだけど、いつごろきまるんですか。
  53. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 都市工業というものが特に定説があるというわけではないわけでございますが、首都圏の工業等制限法等におきましては、新聞印刷業とか、一定範囲の食料品の製造業とかが都市機能と密接に関連しておる業種だということで例外扱いにされております。しかしながら、けさほどの参考人意見にもありましたように、技術革新、あるいはネットワーク整備等とからみまして、必ずしも従来の都市工業都市に残っておらねばならないという現状でなくなりつつあるということもございます。したがいまして、都市工業を今後地方分散する際には、あまり限定して考える必要がないんじゃないかという、分散助成の点につきましては、そういう考え方を持っておる次第でございます。外へ出ていく場合には助成していいと、こういう考え方でおるわけでございます。
  54. 原田立

    ○原田立君 外へ出ていく場合は助成する、あと残ったものはそのままにしておくというのは、それはおかしいのだと、そういうことはしないのだと、残っておるものはがばっとかけるのだと、こういうようなさっき大臣の答弁だった。それで、課税のときに対象からはずすものがあるのだろうと、こう思うわけですよ。それが衆議院、あるいは当委員会でもあなたの説明の中では都市工業とか、あるいは市場指向型の工業とか、こういうふうなことばで説明されているのだけれども、それがいまのところきまっていない、厳格に規定する必要があるのじゃないか、こう思っておるのです。じゃないと、また便乗的に政策的配慮だということで次から次と乗っかってきたのでは、それは出ていく者がばかを見る、といってはおかしいけれども、出ていく者が、ほんとうからいえば正直者はばかを見て、ずうずうしく残っているほうがもうかると、こういうことになってしまう。これは早くきめる必要があるだろうと思う。いつごろになるのですか。
  55. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 御指摘のような問題がありますので、できるだけ最近の条件のもとで都市型業種というものを判断すべきだと、そういう意味では、けさほどの参考人意見にありましたように、都市工業というものがそもそもあるのかないのかという問題も出てまいっておるわけでございますので、できるだけ早くその点は整備したいと思いますが、少なくとも、出ていく場合には、これは都市工業だから出ていくなということはせずに、助成して出ていってもらうと、こういう判断にはもうすでになっているわけでございます。
  56. 原田立

    ○原田立君 出ていった場合の生活環境の改善事業、これは当然やらなければいけないと思うのですね。いわゆる公共的に国のほうでがっちりとそれは指針を示していかなければならないのじゃないかと、こう思うのでありますけれども、ただ単に、それを独立採算制をたてまえとする民間デベロッパーにまかせて、はたして十分な整備ができるかどうか、私は疑問に思うのですが、その点は一体どうか。それから、こういう生活環境の改善に具体的な資金計画は現在どうなっておるのか、その点はいかがでしょうか。
  57. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 御指摘のように、分散していく先の工業立地する環境というものが、十分な条件を備えないようなままで移転していくということでは、適当でないというふうに存じます。そういう意味で、移転していく先の工業団地といいますか、工業用地の条件というものは、ある程度備えるべき要件を考えねばならないというふうに思うわけでございます。それに伴う資金の計画等につきましては、具体的にどの地点で何をつくるというのがこれからつくる問題でございますので、いま申し上げられる状態にはなっておらないので、その点は御容赦賜わりたいと存じます。
  58. 原田立

    ○原田立君 ほんとうは容赦しないところなんだけれども、できていないのだからやむを得ないでしょう、そこら辺が一番問題なわけですから。  それから、流通体制の確立なんでありますが、いわゆる田中構想による六十年の総貨物量というのは一兆三千二百億トンキロと、こういうふうにいわれているわけでありますが、これが陸上輸送においてはその約八〇%が自動車輸送、こうなってくると道路の混雑、運転手の不足などの問題がたちどころに表面化してくるわけであります。まず、このような輸送体制の問題をどう解決するのか。
  59. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 六十年一兆三千二百億トンキロというのは、それはちょっと数字が大きいのでございます。これは三百四兆円計画のときの数字でございますから。それはもっと小さくなると思いますけれども、しかし、いまから考えると非常に大きなものである。それでやりますと、とてもこの程度の法律ではそれに対応できないということでございますが、まあその後五%の場合には百五十二兆円、七・五%の場合には二百十六兆円、八・五%の場合には二百四十八兆円というような計算で申し上げておるわけでございます。そういう国民生産の数字が小さくなると、その荷物も貨物量も幾らか減ってくるわけでございます。それでもいまから計算しますとたいへん大きな数字でございます。その数字でまいりますと、いまの四〇%シェアである内国海運で運ぶものを五〇%に上げなければならない。五〇%に上げてなお、逆算をしてまいりますと、その数字を基礎に計算をしますと、六十年までに九千キロ程度の新幹線を建設をしなければならない、そういう方向で新幹線建設促進法というものができたわけでございます。その建設を行なうための費用をどうするのかというので自動車トン税法というのがすでに国会を通過しておるわけでございます。しかし、別表は、九千キロの別表がついておったわけでございますが、この法律を提出する過程において、六十年を展望してまだ青写真がさだかにできておらないのに九千キロの別表を全部つけることは、現行鉄道敷設法による別表と同じくなるおそれがあるので別表は除こうということで、あの建設促進法には別表はなくなっておるわけでございますが、いずれにしても、新幹線九千キロを必要とするということになります。それだけでは荷物はまだ片づかないので、近距離通勤、近距離輸送というような面を受け持つためには、現行の鉄道二万五千キロぐらいあると思いますが、この鉄道の主要部分の複線電化をして貨物を輸送をするということにならなければならないという計算が出ております。それが可能であるという前提に立ちますと、いまの二千万台の車が三千九百万台ないし四千百万台になると推定をされるわけでございますが、この車がようやく運行することができるだろうという数字になります。そうでないと車は制限をせざるを得ないわけでございます。これは道路計画もいまの十兆円計画ではなく、六十年まで六十兆円ぐらいの道路投資を行なって初めて運行ができるというような数字が、逆算すると出てくるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、一兆三千二百億トンキロの数字そのものが少し大きいということでありまして、三百四兆円を二百五十兆円にすれば五十兆円分は貨物が減ってくるということでございますが、いずれにしても、相当な公共投資をやらなければ問題にならぬ。その面からいうと、工業配置を実行しないでいまのままで自然発生でやっていくと、東京とか、大阪とか、太平洋ベルト地帯は乗用車の運行は全く不可能になるという程度の数字は出るわけでございます。
  60. 原田立

    ○原田立君 だから大臣ね、そうなっちゃならないから、輸送体制の確立ということが必要なわけですよね。いま新幹線計画と、それから道路計画については六十兆円ぐらいでまた新規につくると、そういうふうなちょっと御答弁だったけれども、そういうことですか。
  61. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) いまの一〇%成長でもってまいるとすれば、貨物がそれだけ動くわけでございますから、いつも申し上げておりますように、石油は七億トンも入ってくるわけですし、鉄鉱石も全世界で最大の輸入国になるわけでございますし、ですから、そういうことは数字はもうきちんと出るわけです。いまの八十三兆円でもって四十六年度には幾ら国内貨物が動いておるという現実的な数字があるわけでございますから、これを基礎にして計算をすればすぐ出るわけです。ですから、もう拠点中心主義ではどうにもならないというわけであります。これは東京大阪の町の中を、道路を全部三倍にしなければならないといっても、これはとても六十年までにできるわけありません。そうすると、やはり分散をせざるを得ないということになるわけです。分散をしても動く量というものは局地的に動くのではなく、これはほとんど全国的な状態において動くのでございますから、内国海運の四〇%のシェアを五〇、半分には上げられるわけです。一兆三千二百億トンキロのうち六千六百億トンキロは海でやるということになる。六千六百億トンキロのうち六百億トンキロというのは、いま国有鉄道がフル運転をして一年間で運べる荷物の限界は六百億トンキロでございますから、六千六百億トンキロから六百億トンキロを引けば六千億トンキロ、いま鉄道で運ぶ十倍の荷物が残るわけです。これは道路で運ぶか新幹線で運ぶか、どっちか考えなきゃ運べないわけでございます。いままでは飛行機輸送などということをいっておりましたが、鉄道全部がフル運転をして運べる年間貨物の十倍ということになれば、これは飛行機で運べるはずはありません。そうなるとどうなるかというと、道路をうんと拡幅しなければいかぬ。拡幅しても——貨物だけでもって運ぶとどうなるかというと、貨物ではとても運べないということでございます——これは二千七百万台の車が必要であるというふうになっていると思います。二千七百万台というと二千七百万人の運転手が必要ということになるんですが、それは六十年における交通労働者は五百五十万人である。その中から運転手に配置できるのは三百五十万人が限度だろうということになれば、二千七百万台の車を三百五十万人で動かせるわけはない。そうすると、新幹線に人間を移し、そしていまの鉄道を複線電化をして、少なくとも残りの半分くらいのものを動かさなければならない。動かさないとすれば、乗用車の運行は三分の二以上禁止をしなければ貨物の自動車が動かないということは、これはもう計算上出てくるわけでございます。ですから、まあ、その意味で新幹線も九千キロやらなきゃいかぬ。だから分散をしなきゃならぬし、鉄道も九千キロつくらなきゃならぬし、在来線の複線電化も行なわなきゃならぬし、その上なお道路は、計算によると六十兆円くらいの投資をしなければ、一兆三千二百億トンキロ運行はできないということになるわけです。ですから、一兆三千二百億トンキロを一〇%経済で見ておりますので、これを七・五%経済にもし押さえるとすれば、もう二五%は減るわけでありますから、その投資も少なくなるわけであります。その数字から見ますと、新全総などの公共投資は逆算してつくらなければほんとうは合わないのです。これはもう七・五%でも、いま申し上げましたように膨大もない貨物が動くわけでございますから、それをこの程度だろうということでもって積み重ねてまいりますと、社会資本の不足はうんと開いて現状のような状態になる、こういうことでございます。ですからこのままでいくと、ほんとうに五%経済もむずかしいような状態ということに、現状のままで押し進めていけばそうなるわけでございます。ですから、まあ見込み数は一〇%ということで計算をしてございますが、七・五%から八・五%で計算をしても、相当膨大もない交通に対する投資が必要であるということは事実でございます。
  62. 原田立

    ○原田立君 問題は、陸上輸送にしても、海上輸送の強化にしても、一番問題になるのは安全性の問題だろうと思う。パイプライン事業法案も出ておりますけれども、われわれ当初は当然こういう石油、重油の輸送の方法いいんじゃないかと、こういう気持ちでおったわけですけれども、現実問題になってみると、その安全性、保安のあり方、非常に疑問を感じている。これでは危険が増大するのではないか、こういう心配をしているわけであります。間違っても事故など起きないように、間違っても安全という考え方に立脚した十分な保安体制の確立をしなければいけない、こう思うわけであります。まあ現在工配法の審議でありますから、パイプの質問してはおかしい話ですけれども、要するに、安全性という面についてもっと強固にしてもらいたい、こう思うのですが、どうですか。
  63. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) それは全く御指摘のとおりでございまして、安全性というものの確保ということが第一でなければならない、だから生産第一主義から生活へと転換をしなければならないと、こう申し上げておるわけでございます。で、安全というと、やはり公害論争をずっと詰めてまいりますとよくわかるのですが、局地的なところでもって——同じ排出物でも、局地的に出るために空気が汚染されること、水が汚濁されること、複合公害を起こすことということは、これは局地的に小さいところでやっておると、特に、公害は驚くべき結果をもたらすわけでございます。いろいろなものが混合してまいるために、考えられなかったような化学反応を起こすということもございます。そういう意味で、全国の一%というようなところよりも二%、二%というところよりも一〇%、一〇%よりも二〇%というようなことで、これからの工業はどんなに少なくてもいまよりも規模が大きくなっていくわけです。大きくなってまいりますから、公害の排出基準というものはこれから厳重にチェックされますから、だんだんとよくなる。それにしても、企業規模そのものが大きくなってまいりますから、これはやっぱり公害防除という面からいっても工場分散工業分散ということは公害防除の一つの手段にもなるわけでございます。が、まあいまのパイプラインの問題でも新幹線でも同じことでありますが、騒音もありますし、いろいろなものがありますから、そういう新しい面からも公害の排除に対しては知恵を働かしたり、また制度を完ぺきな制度にしなければならない、こう思います。
  64. 原田立

    ○原田立君 次に工業用水の問題、水資源の問題でありますが、工業用水等の地域的な需要構成は現在と大きく変わってくるであろうと。これは地方工業分散ですから、当然そうなるだろうと思うんでありますが、現在工業用水の料金は、政策料金として全国的にあまり差がつかないように決定されているんですが、もし地方で安い工業用水が得られるようなところがあれば、この工業用水料金の弾力的な運用ということが取り上げられなければならないんだろうと思うんですが、その点のお考えはいかがですか。
  65. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) これも、分散をするメリットというものは、一律的であっては全く分散のメリットがないわけであります。ですから新幹線、それから港湾の整備、空港の整備等で、距離的には地方分散も非常に合理的に解決はされますが、それにしても、東京の中にあった工場北海道に移すという場合になると、やはり企業として経済ベースで考えた場合には有利ではないと思うんです。雪が降るというだけでも有利でないわけですし、冬季の燃料費を出さなきゃいかぬというだけでも負担が多くなるわけですから、それに見合うものが必ずあるはずです。それは電力が安いとか、それから土地がうんと安いとか、工業用水が低廉であるとかいうことでなけりゃならない。それは水の不足の東京と、雪の降る新潟や東北といえば、雪は水ですから、水は最大の財源なりでもって、安いにきまってるわけです。ですから、それが開発費が新しくかかるというようなことで、全国一律であるということでは、地方分散のメリットがないわけです。だから九電力なども、九電力にやっておくというのは、やっぱり北海道とか東北とかいうものは電力料金が安くてしかるべきであります。だから、そういう意味で工業用水というものは、当然分散先の地方というものは工業用水が安くなけりゃいかぬ。私は電力料金も言ったんですが、なかなか抵抗があるようです。抵抗があるなら何で一体九電力に分割する必要があるんだという問題にすぐつながるんですが、私も通産大臣で、そんな荒っぽい議論をするつもりはありません。ありませんが、九電力というものの存在を必要としておきながら、それは広域運営というものは必要です。必要ですが、やっぱり九電力というものがある限りにおいては、電力料金というものは当然差が起こるわけであります。それをおおむね全国一律にしておるわけでございますが、やっぱり電力料金も、それから将来水もみんな差がつくべきだと、そこで初めて逆な傾斜ができて、工場は自動的に誘導されるということになるわけであります。
  66. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 工業用水の料金につきましては、御承知のとおりであろうと思いますが、四大工業地帯とその他の地域では、料金として二円五十銭の差を設けておる次第でございます。
  67. 原田立

    ○原田立君 局長、変なことを言うと話がわかんなくなっちゃうから……。大臣が言っているように、その地方地方において当然差がついてしかるべきだという考え方ね、これはぼくはいいと思っているわけなんです。政策的にきちんとワクをはめたようなことではいけないだろうと、こう言っているわけなんだから、あまり変なことを言うと話がわかんなくなってくる。  それから、労働力の問題ですけれども、さて、こうやって工場地方分散するそのときに、はたして、現在地方から大都市に来ている若年労働力がUターンしていくかどうかというのが、実ははなはだ疑問に思っているわけなんです。また、だけども、当然そうしなければいけないだろうと、そうするには、地方都市を充実させ、若年者に魅力あるものにすることがまず先決だろうと思うんです。工業配置にあたって、具体的にそういう地方都市の魅力化、労働力の再配置というようなことについて、基本的にどういうお考えでしょうか。
  68. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) いま、四十五年度の実績で、中卒一人当たりの募集費が四十万円くらいの実績だと思います。きっとことしあたり五十万円になっているのかもしれません。そういうような状態でございます。しかし、その五十万円に近いもの、四十万円のときに計算をしてみても、五〇%がUターンしているわけです。一応出てくるけれども、Uターンする。一人当たり八十万円最低かかっているわけです。いまですと百万円ぐらいかかっていると思います。だから、そういう問題あまり経済問題として議論されないということは、まだ日本経済論争甘いなということも一面言われるわけでございます。実際、中卒一人に百万円近く募集費がかかっておるということは事実でございます。そういう意味で、半分Uターンすると、こういうことでございまするから、これはやっぱり働くところがないのでまた出てくるということにもなります。ですから、働くところがあれば、環境のいいところに必ず質のいい労働力は定着をする。特に、実族と一緒におれる家がある。それで、そこでもってほんとうに働けるならば、まだ東京大阪や県庁の所在地で住宅を買うよりも、建設するよりも、はるかに安く持ち家もできるわけです。だから、そういう状態で魅力はあります。ですから、大都会のように、絶対つぶれない会社というもの、つぶれない職場が望ましいということでございます。  もう一つは、工場というものが公害公害といわれておりますから、緑地があったり、遮断緑地があったり、いまのナショナルの地方工場などを見ておりますと、これは非常に、白砂青松という中にまつ白い建物をつくって、病院か工場か研究所か何かわからないという、そういうものにやっぱり魅力を感じていく、これは当然だと思います。色も問題です。カラーというものも非常に問題なんでして、工場はやっぱり赤い屋根、青い屋根というようなものを——私は、近代経営者というのはそんな感覚がなければ若年労働力なんか集められないと思うんです。いままでのように、賃金さえ上げれば集まりますと、そんなものでは集まりません。私は、そういう意味で、そういうカラフルな工場等もつくる。もう一つは、社会環境整備しなければいかぬ。都会には都会のよさがある。夜、電気がついておる。これは女子工員にアンケートをとってみるとすぐわかるんです。いなかは暗い。だから、二十四時間明るいということは、若い人には非常に魅力なんです。都会の持つ魅力というものを分析してみると、たいしてそんなめんどうなことじゃないと思うんです。そういうやっぱり社会環境整備されるということが、社会環境整備をされたところでないと若年労働力は定着をしない。  私は一つの例を申し上げますと、入広瀬という、五メートルから六メートル雪の降る福島と新潟の県境は過疎でどうにもならなくなっている。そこに小さな、まあ百人くらいの工場をつくった。誘致をして、私も応援をしてやったんですが、非常に成績がいい。これは、若い中卒の女子工員が定着をしたら、出かけていって、村を捨てた若い男子がみんな帰ってきたんです。それは事実なんです。そういうことを考えないでもって地方開発とか、若年労働力を定着させようといってもそれは無理です。ですから、そういう社会環境をちゃんと整備をして、そうして若い人たちに魅力を持たせる。ここで育ち、ここで働き、ここで死ねるんだというようなやはり魅力があるものにしなきゃいかぬ。これがやはり今度の地方開発を行なうときに、経済べースだけではなく、やはりそういうものをひとつほんとうにまじめに考えて実行していくということになれば、若年労働力はもう十分定着させることができる、こう思います。
  69. 原田立

    ○原田立君 工場地方分散の一番大きなネックになるのは、土地収得の問題ではないかと思います。土地を、工業用地を確保すること。で、田中大臣の話を聞いていると、もういまにも工場地方分散は軌道に乗ってさあっとこういってしまうような感じを持つわけでありますけれども、やはり土地収得この問題がなかなか大きな課題ではないかと思うんであります。現に、最近における地方工業用地の価格も非常に上昇してきている。こうなると、そんなに考えているほどなまやさしい問題ではないんではないか。これはある一説として聞いたことで、公共事業をするのに多額の予算を組んでいるけれども、その八割ぐらいは土地収用、土地を確保するために使われてしまう金だこういうふうにもいわれております。で、この工業用地の価格の上昇、それが大きい壁になって、大臣が考えているように簡単に進むようには私は思えないんですけれども、その点はどうですか。
  70. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) これは、この法律をつくりますときに、土地の地価の抑制ということを入れるべきだと思ったんですが、この法律ですぐそういうものまで入れることは少しなじまないということで、別な法律に譲ろうということになったわけであります。土地の価格というものはどういうことかというと、これは釈迦に説法でございますがちょっと申し上げますと、土地の価格がいままで坪十万円しておったものが五万円になれば、これは下がったということになります。しかしもう一つ、十万円のものが五万円には絶対にできない。十万円のものは十一万円になると、十二万円にやがてなっていくという場合でも、いままで二階しか建っておらないものが二十階建てば、実質的に土地は、地価は十分の一になったことになるわけであります。ですから地価は、地上の利用度によって東京の地価はきまっていきます。だから住居専用地区は十メートルしか建てられません、十メートルしか建ってはならないということであります。十メートルというと三階建てしか建ちません。三階しか建たないから三十万円しかしないんです。これは東京のまん中でも三十万円しかしない、住居専用地区ならば。住居地区は今度倍の二十メートルの制限ですからこれ七階まで建つわけです。七階まで建つから六十万円もするわけです。路線商業地区は三十一メートルまで建つから百万円するわけです。そうではなく、ほんとうの商業地区は超高層でもって、建蔽率十割でもって一ぱい建つというから、銀座は坪三百万円もするわけであります、五百万円もするわけであります。しかしそれと同じように、建築基準法や都市計画法のように、国土の利用制限を明確にすれば地価を押え得るんです。押えられ得るだけじゃない、それしか地価は上がらないんです。だから工場地域として指定をして、しかも、緑地は九割でなければならない、一万坪の土地に対して一千坪しか延べ建ってはならないということになれば、これは土地というもの、うんと安いわけですな。いまのニューオータニのところが緑地帯で美観地区であり、一割地区でございましたから、あのニューオータニができるまではあそこは坪十万円以上しなかったわけです。あそこを解除をして超高層建ったから坪百万円になったということでございまして、これはもう明確に制限をすればできるんです。いまこのまわりは全部官衙地区であります。官庁以外のものを建ててはならないということになっております。それで予算がないから買えもしない。しかし、官庁以外のものは建てられないから地価はちゃんと安定しているわけです。このまわりだけは安定しているわけです。これは売れない。売っても建てることができない。それをちゃんと現行法でやっているわけであります。ですから、この法律に付随をして国土総合開発法でもけっこうでありますから、都道府県知事は土地の利用計画をきめなければならない、条例で定めることができるという制度を必ず必要といたします。そうすれば、いまのあの下北のように五十円もしなかったものが何で五千円になるのかというと、あれは野放しにしておくからでございます。あれは工場地域として延べ一〇%の制限を行なうとすれば、あの地価は不変であるはずであります。だからこの法律を出す場合には、やはりうらはらの制度としてそういう工場地域としての指定を県条例でもって行なえるような法制措置を抱き合わせで行なうべきである。これは、次の国会には当然そういう処置を考えなければならぬと思います。現行法であるんですから、東京都内とか都市計画地域だけは全部あって、全国ほかのところができないはずはない。そうすれば、下北半島などは五千円や一万円に上がるはずはない。だからそういう意味で、土地の利用制限というものを他の法律で当然つくらなければならないということで、地価というものは抑制できる。それで工場地帯として指定をすれば、工場以外には条例でもって指定を解除しない限り使えませんから、これは工場用地の取得は全く容易である。これはもうできないはずはないんです。ですから、いまの産炭地でつくった工場、産炭地で造成をした相当数の土地は上がらないじゃありませんか。これは工場以外に売らないから上がらない。これは自由に買いあさらせるから幾らでも上がるのであって、これは日本全国を買いあさるほどの力はありませんから、そんなに工場用地は必要としないのです。ですからこれは、法律でワクをかけることによって工場用地はもう問題なく入手ができるということだけは、これは申し上げられる事実でございます。
  71. 原田立

    ○原田立君 きょう午前中参考人意見を聞いた中で、私、堂垣北海道知事に聞いたのでありますが、固定資産税の課税免除をされたような場合には、三カ年度に限り減免するものについては地方交付税で措置する、こうなっている、これをどう思うかと、むしろこういうことよりか他の特別な会計をきちっと設けてやったほうが、そのほうが地方としては、地方財源の充実という面から考えても歓迎するのじゃないのかと、こう聞きましたら、もうもろ手を上げてそういうふうにしてくれれば大賛成だ、だけれども、現状ではなかなかできないのでしょうからと、こうまことに理解あるような返事だった。  それで、どうですか大臣、そこのところ特別に会計を設けて、ただ地方交付税でぶすぶすゆするだけじゃなくて別につくること、これはおやりになるような話もあったけれども、きょうまた堂垣知事もぜひそうやってくれとこういうことでありました。いかがですか。
  72. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) これは先ほどもちょっと申し上げましたが、暫定税率である法人税の税収が千五百億円くらいになるということでございまして、この税収に見合う金額、一般会計から千五百億、合わせれば三千億、三千億でスタートしようとこう考えたわけであります。ところが、先ほど申し上げましたように、暫定税率に手をつけられないという現実でその十分の一でスタートするということになったわけであります。三千億が三百億になったわけです。三百億も十月一日スタートということでありますから、平年度三百億でありますが、初年度は現実的に百五十億、十分の一になったわけでございますが、こうまあ話半分というのが、話は十分の一になったわけであります。そういう意味で、いまのような税による誘導政策というものがスタートしなかったということで、現行制度のままで三年ということにしたわけでございます。これは二十五年間は最低免税をしなきゃならないということだった。これは、分散ということはむずかしい仕事でありますから、どうしてもやらなきゃならぬということで、一番、御承知の税制は、第二次大戦でもってひどく困ったイギリスのロンドンが、八百五十万のロンドン市民を百五十万強制的に移転をしようとして考えたのが、ニュータウン法であります。これはひどくものすごい法律でございます。これは政府の予算編成権も拘束をしておりますし、裁判所の換地権や土地収用権もこの法律によって全部公社の総裁に与えておるわけでありますが、そのくらいにしてもなかなかほんとうに成功しなかったというのでございますし、ブラジリアの制度を考えてみても、こんななまぬるいものではないわけであります。ただ、誘導税制と禁止税制とあわせるときには相当な効果を持つわけであります。一方のところではさっき言うように、過密地帯においては高い税を取る、そして今度は誘導するような地方には税はまけてやるということになればやっきになりますから、そういうことを目的にしてこの法律案の立法作業を行なったわけです。それは二十五年——二十五年というのは何かというと、工場でばく大もない投資をするときに、二十五年ぐらいの国定資産税の免税というのは当然考えなきゃだめです。世界各国でみな研究されて、例のイタリアの労働者住宅法案というのは三つからなっております。その一つは、国は国有地は無償で提供する。それから損保、生保の剰余金は労働者住宅以外に使ってはならない、これは明確な禁止があります、使ってはならない。それから、そのかわりに労働者住宅をつくったものには固定資産税を二十五年免ずるという、このぐらい鮮烈な政策でございます。これは日本でもこういう住宅をつくったときに、同じ条文を書こうとして——議員立法でありましたから、書こうとしてやったら、損保と生保は驚いて住宅公団の出資金を持ったり、投資をするから法律条文には書かんでくれということになって、現行制度になったわけでございますから、二十五年間ぐらい固定資産税の免税ということは、当然誘導政策としては考えなきゃならない問題じゃないか、これは私は、来年度にはこの問題をどうしても解決しなきゃならない、こう思います。そうでなければ、三年間ぐらいまけてもらったからといって、もう一年くらい済んでしまいますから、それではもう工場ができ上がらぬうちに、稼働しないうちに恩典はやめになっちまう。そんなことではこの法律目的は達成できない。私はやはり産炭地などに工場を持てたら、二十五年最低固定資産税を免ずる、当然のことであります。そういうことをしないところに、産炭地でも、新産業都市でも、低開発促進法でもみんな実効があがらない。政策が中途半端であると言わざるを得ません。だから、そういう意味で、これは固定資産税の減免ということは当然考え、そうすれば補てんということを考えなきゃならないわけであります。補てんはやはり新しい財源を創設しない限り、これはとてもいまの中でもって分け取りをするというわけにはいかないのです。それが同じ思想を貫いたのが二十年前のガソリン税を目的税に、ガソリン税を目的税にちゃんと議員立法でやったじゃないですか。第二には、自動車から税金を取って、あれだけ一部反対がありましたが、話をしてみればなるほどそれしかないというので、新幹線の建設のために自動車トン税という新税を創設いたしました。第三は、必ずこれはこの新税を創設しない限り、私はほんとうに補てん財源というものはそう合理的には解決しないと思います。ですから、自治省とも十分相談をしたり、税制調査会の御意見も聞いたりして、補てん財源を十分考え、実行しなきゃいけない、こう考えております。
  73. 原田立

    ○原田立君 同じく吉田参考人意見の中に、大臣、こういうのがありました。短時日の間に人口が急膨張してしまうと、そうなると、なかなか社会施設をつくっていくにも非常に困難だ、それで編入の人口についても別に補助をしてくれ、こういうのが一つありました。  それから、たとえば東京移転促進地域から誘導地域にいわゆる北関東も入っておるということになると、北関東に行っても、また遠い北海道に行っても、その移転促進補助金は五千円で同じだと、こうなると遠い北海道なんかに来てくれないで、北関東あたりに定着してしまうんじゃないか、だから北海道については、もっと移転促進補助金をふやしてもらいたい、ふやしてくれ、こういう意見もありました。これについてどういうふうにお考えか。  それと、時間がないからもう一つまとめて言いますが、産炭地域、産炭地市町村はその八割はもう過疎地域の指定を受けておるところであるし、また、その財政能力からいっても、いわゆる一割自治といわれるように非常に力が弱い。ところが、いろいろそうやって工場が来る、公共施設等をつくる。そうなると地元の負担が多額になる、そうすると財政能力が応じられない、ごめんだと、だから多額な地元負担を軽減してくれないかと、こういう意見もありました。  以上三つお聞きしたのですが、その点についてのお考えをお聞きしたい。
  74. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 理想的にこの法律目的とするところは工場の再配置でありますから、再配置が実行されるためには、これは北海道に行く場合には北海道に行っただけのメリットを与えなければいけない、そういうことで、これは差がつくのがあたりまえだと思うんです。これは北海道なら五千円が七千五百円ということは考えられるわけですが、これはいますぐそれでスタートはなかなかできないんです。それで実際やるにしても、一つ法律で全部をやるということではなく、そこでいろいろな関連が出てくるのは、低開発地域工業開発促進法とか、離島振興法とか、山村振興法とか、いろいろなものがあるんです。これが今度工配法が出てきて、これで二重でダブるようになれば、その地域は厚い手当てを受けるようになります。これはもう当然そうならなければいかぬということで、この法律が各種地域立法と競合するものではないということは、そこに一番初めから申し上げておるのは、それなりの理由もあり、メリットもある、こういことでございます。  それから地方が、地方に人が来ると、たいへんなんだと、実際そうなんです。公有水道をつくったり、道路の負担金を出したり、全部が全部府県道にしてくれるわけありませんから、町村道、林道ということで、みな地元が負担しなければいけない。学校をつくらなければいかぬ、学校の先生の給料をどうするんだ、これは確かにそうなんです。地元負担がないなら別ですが、一割でも地元負担がある限りにおいては、ある一定期間、現在おる住民の負担が大きくなるじゃないかということ、これは当然なんです。ですから、東京付近におる人の住宅公団の建物が埼玉県や千葉県にどんどん来ることはごめんである、そのために学校をつくらなければいかぬ、先生を雇わなければいかぬから絶対ごめんであるといって、千葉県と埼玉県は住宅公団の団地が来ることを反対決議しておるでしょう。これと同じことですよ。同じことですが、この千葉県とか埼玉県は確かにそういう面もありますが、東北六県ですと、口ではそういう証人として呼ばれれば、参考人はそういうことを言いますが、しかし、工場が、君たちの要請に沿って行くんだぞと言うと、そうすると、がまんしても負担をいたしますから、負担してもいいから工場が来たほうがいい、とにかく、若い人がみないなくなって、じいさんとばあさんだけでは耐えがたい、こういうことが実態ではございます。しかし、実態であるからといって、国が制度の上で住民負担を過重せしめるような状態にしてはいけないということは当然であって、それはさっきも申し上げたように、これからの制度で、だんだんと特別交付税のこの法律をつくっていきますと、どうしても第二交付税制度が必要になってくるんです。第一交付税だけではなくて、新規財源、第二交付税制度が必要になるんですが、第二交付税をやる場合に特別財源をつくらなければならない。それで私も、いまの三二%の交付税率を簡単には引き上げない、こういう感じなんです。簡単には引き上げない。引き上げるなら、それよりも新規財源というものをつくってやって、目的税に使うというようなものでないと、人件費にだけみな食われてしまう。人件費はどんどんと上がってくる、地方公務員の定年制もできない。それから、国民何人当たりに一人という公務員の定数制限もできないような状態であって、その状態において特別財源を与えるということにはならないんです。ですから、こういう政策目的が非常にはっきりしておる特別財源ということは、これは交付税制度の中でも考えられる問題だし、新税を考えるときには、当然この問題は解決すべきである。やっぱり陳情、請願を受けておるようなところに工場をやるんだから地元は負担すべきであるということでは、この法律の大目的を達成することはできない。やっぱり太政官布告でもって明治四年、北海道開拓のため必要な公共投資は全額国が負担する、これは明治から百年の間。こんな法律がいまないじゃありませんか。しかし、この公共投資は全額国が負担するというたった一片の太政官布告によって、北海道三万人が九十年間に五百二十万人になった。北海道は担税力ができたといって、皮肉にもわが党内閣でございますが、北海道民に地元負担の制度を開いたその年から、皮肉にも北海道は減りかけてきた。非常に皮肉なことでございます。これは追及されると、北海道ではもう何も申し上げられないという現実がございます。ほんとうにそうです。ですから、やっぱりこういう問題は、制度上明確に補てんをするという制度上の完ぺきな制度をつくらなきゃいかぬと、こう思います。
  75. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 御質問を申し上げたいと思います。工業配置促進法、これは従来からわが国の過疎と過密の問題、それから地域の格差是正の問題こういうこととある意味ではうらはらの問題だというふうに判断をいたしております。したがって、この地域開発政策につきましては、先ほどもちょっと原田委員のお答えの中で触れられましたように、全国総合開発計画といいますか、その後新しい開発計画ができて、旧の一九六二年の場合には、これに伴って、新産業都市促進法というようなものができまして、さらには、これに伴って新産業都市というものができ、さらには工業整備特別地域、こういうものが指定をされて、それぞれ政策として促進をされてきたわけであります。  しかし、この法案の説明の中でもいわれておりますように、そのような政策、立法がいろいろと成立をし、それに基づいて政策が推進されてきたにもかかわらず、依然として出荷比率は、太平洋ベルト地帯に非常に大きな比重がかかっておる。まあ国土の面積の二〇%のところに、人口の五〇%の人が住み、工業生産は七〇%をこすというような数字になっているわけでありますが、この原因は一体どこにあるというふうにお考えになり、今度工業配置促進法というのが出たわけでございますが、この法案はそういうことと関連をしてどのような相違があり、どのような特徴があるというふうにお考えになっておられるのか、この点につきまして御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  76. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 通産省の説明に、太平洋ベルト地帯二〇%の地域に五〇%の人口と、七三%の生産額、こう申しておるのですが、これは正確ではないのです。これは千葉とか、埼玉とか、東京とか、神奈川とかの県全体が入っているわけです。ですから、愛知県のようなものを見ますと、工場をやっているところは非常に少ないわけです。小さい。それで県全体を計算して、全国土の二〇%と、こう言っておりますが、ほんとうの工場地帯ということの面積は非常に小さなところに七三%の生産があがっている、こういうふうに。ですから私は、この二〇%という数字をとりませんで、東京大阪、名古屋で半径五十キロの円を書いて、この円の面積の三つの総合計は、国土総面積の一%でございます。この一%の中に三千二百万の人が住んでいて、六〇%以上の工鉱業生産をあげているわけですから、そういう数字をいつでも引用して御説明申し上げるのですが、私はそのほうが正しいと思うのです。ですから、そこで交通の混雑とか、住宅の不足とか、通勤距離が長くなるとか、公害の複合公害とか、いろいろの問題が起こってきているわけでございます。  それはどうしてかというと、やはり簡単に言って、経済法則に乗っておると思います。政治の中心地である、文化の中心地である、人は集めやすい、それから生産と消費が直結している。特に太平洋沿岸というものは、外国から入ってくる原材料を運ぶには——冬季四カ月間というものは日本海岸や北海道はいろいろの航行上の問題がございますが、太平洋ベルト地帯というものは、これは三百六十五日船が着くということもあります。そういう意味で、どう計算しても合っておったわけでございます。ですから、集中のメリットというものでございます。これは一次産業比率の減少、一次産業から二次、三次産業への人口の移動、それは都市化現象を伴っている。しかも、都市東京とか、大阪とか、名古屋とか、大拠点。百年間やはり社会資本が集中されて投資をされたところというのは何でも寄るわけでございまして、ですからそういう意味で、それでいままではおかしなことだったんです。北海道、東北などは他に財源がないので、住民税は一番高いんです。東京大阪のように一番便利なところが一番住民税が安い。こんなことをしていれば、過密になるにきまっているということを考えればそのとおりでございまして、人口も、産業も、文化も処点に集中してまいりました。今度それが百年間たったら、ちょうど明治百年の時点で計算をしますと、これは都市集中のメリット、デメリットがちょうど一つになった。産業自体の単位計算でいいますと、まだ集中のメリットがあるようであります。ところが、国民全体の公共負担から見ますと、これ以上集中さしたら成長のメリットは全くない。それは全国平均で車が一台増車をされると、道路の維持補修費は五十万円でございます。東京大阪は千五百万円かかります。ですから、もう一台の車が増車をされて千五百万円ずつ国民道路の維持補修費を払っておったのでは、それは成長のメリットを国民が享受できるはずはない。そういう意味で、どうしても分散をしなければならないということにつながってまいります。このままでいくと、六十年には八五%に近いものが太平洋ベルト地帯に寄ってしまう。そんなことは許されるはずはないということ、歯どめしなければならないということで、各政党ともみんな都市対策というもので、国土統合計画の検討を進めたわけであります。政府もおそまきながらこういうものを分散せざるを得なかったということであります。  それから第三の、地域立法とどういう関係があるか。地域立法は産炭地振興法のように、一つ目的を持って、その地域の振興のためにつくられたものであります。言うならば、離島振興法と同じものであります。しかし、今度のものはそうではなくて、日本全体が六十年を展望すると、三百兆円になるか、二百六十兆円になるか、二百五十兆円になるかは別にして、これは不可避の状態でありますから、そうすると、いままでのような自然発生を是認しておっては爆発をしてしまうので、まあ社会党の皆さんなどは、じゃ計画経済でやればいいんじゃないかということになるかもしれませんが、そこまではっきりしなくても、六十年展望に立ってやはり計画的に分散を進めていかないと、これはもうどうにもならない状態になる。これはもう車を環状七号線から中へ入れるか入れないかというのがいま論争点になっておるんですから、車の乗り入れを禁止すればいいんですが、地下鉄もできていないところで乗り入れを禁止すれば、東京都市機能はなくなってしまうわけです。われわれの時間も十時には委員会に間に合わなくなってしまうわけでございますから、そういうことで乗り入れの禁止はできないというような状態でありますので、今度は地域立法ではなく、全体的に国のほうからバランスをとろうということですから、地域立法と二重になりますと、それだけ政策メリットは大きくなる、このように理解をしております。
  77. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 いまおっしゃることは、それはそのように理解をいたしますけれども、集中の利益といいますか、集積の面からの享受ということを考えてみますと、これはかりに移ることに対して逡巡をする人にしても、その人たち個々にはいまの都市の実情ということを御存じないはずないです。全体的に現在の集中をした都市のあり方についてどうしなければならぬかということになりますと、これはそれぞれの方がお答えを持っておられるし、そういうようなお考えだろうと思うんです。しかし、いまのような経済状態になりますと、新しい新鋭工場をつくるよりも、どちらかというと、償却も済んだようないまの古い工場で、操業できるうちは操業をすることによって利益を生み出そうというような考え方も出てくると思います。そこで、私どももこの法律の趣旨なりその他を考えてみますと、何としてもやっぱりそういう先ほどあった一%のところに、大きな工業力なり人口が集中しておるというのは、過疎、過密の問題その他からいって何とかしなければならぬという意味で、趣旨はよく十分理解できるんですが、個々の企業という面からいって、これはまた別の立場といいますか、命題をしょっておるわけですから、なかなか意図したようにいかないという面があるんではないかというようなことも考えられるんで、この出荷比率を、現在の七二%を目標年次には五〇%にするんだ、こういうふうに言っておられるわけなんですけれども、ぜひそうしてもらいたいと私は思います。しかし、決意だけでは現実の問題としてはなかなか事は運ばないというように思いますので、こういうことをするための達成可能なための具体的な措置なり決意といいますか、根拠といいますか、そういう点についてもひとつ御説明をいただきたいと思います。
  78. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 実質的には、いまある工場移転をするには非常にいい時期であるということが一つあるんです。いままでよりもいい時期である。それはそこから問題になるんですが、公害論争は非常に激しくなってまいりました。公害投資をせざるを得ないんです。ですから、姫路の火力というのは、姫路火力をあのまま使うならば、隣接地に大きな脱硫装置の土地を買わなければならない。土地は買えないんです、隣接地域は。買えないから、あの姫路の火力発電所はやめる以外にない。やめればどうするか。新しいものを、和歌山や京都府に原子力発電所をつくらなければならない、これはもう全部そうなっておるんです。そしてもう一つは、新しい工場、いまの工場はいいにしても、これから年率五%か、七%か、八%ずつ経済は大きくなりますから、新しい投資をやらなきゃならぬ。新しい投資はいまのところに併設をするか、新しいところに移転をするか、いまみんな迷っているんです。これは全部迷っています。なぜかというと、公害問題が非常にありますので、新しい施設をいまのところにやるよりも、できれば圧縮記帳制度がありますから、誘導政策さえうまくやってくれるならば新しいものは別なところにつくりたい。これは全部あるわけです。これは東京都や県庁の所在地で火力発電所が増設できないと同じことなんです。これはもうですからそういう意味で、移りたいという気持ちはあります。ですからむつ製鉄所、十年前にむつ製鉄をつぶすときに、もう十年たったらむつ製鉄の十倍の製鉄所をここにつくらざるを得なくなるんだがという論争が国会で行なわれたわけですが、あのときむつ製鉄をやめたんです、ペイしないからといって。むつよりももっと北の下北に現在の製鉄の何十倍のものをやらなければいかぬということになっておることは事実なんです。ですから、これはいまあるものは別にしても、これからの公害の発生源になるような新しいものはもうとにかく、絶対に分散方式をとらざるを得ないということであります。もう一つは、いま中小企業の二六%は移転したいという、それから条件が整えば五〇%も移転したいというのは、これは例としては非常に明確なんです。いま町工場さん、三百坪ございますと、三十万円で売ると一億円になるわけです。これはもう帳簿価格はゼロになっているはずであります。これは圧縮記帳を認めると三百坪の土地が三千坪、六千坪という環境のいいところに工場敷地が安く入手でき、設備は全部新しくでき、帳簿価格はゼロに近い圧縮記帳が制度上認められておるわけです。ですからあと地を買ってくれる——あと地を担保にして先買いをする金を貸してくれる、融資ができる。投資に対しては、圧縮記帳と税制上の優遇をしてもらうということになると、誘導政策がしっかりしておれば必ず分散はもうできます。ですから、美唄の話を出して申しわけありませんが、三菱は美唄を閉山すると、そうしたら三菱はとにかく工場を持ってきなさい、こう私は一生懸命やったわけです。しかし、いまの状態で一カ月一億ずつ損をするから、三十カ月分三十億を投資してやりなさい、こう言っても永続性がない。炭鉱の町というのは、炭鉱があって初めて開かれた町であって、他の工場立地として適切であるかどうかわからない。国が誘導政策をやってくださって、国がちゃんとやってくださるということになれば、われわれもそれに合わせて工場の進出を考えましょう。だからやっぱり制度をつくって、ちゃんと水が流れるようにしてやらなければだめなんです。だからそういう意味で、これからもう少し私は、まあいままで公害でもっていろいろ言ったり、それから税金をうんとかけるぞということは、私は必ずしも上策でなかったと思うのであります。そうでなければちゃんとこういう法律をつくっておいて、そうしてこちらのほうに行けば安くなりますよと、そうでなくとも、東京のまん中でもって石炭をたいておったらうんと高い税金を課しますよということでないとまずいと思うんです。ですから、都市における公害税などを徴収する限りにおいては、国民に選択の道を与えるべきであります。ただ黙って東京大阪にメリットを追及さしてきたものに、いま君はじゃまだから高い税金をかける。これは憲法の精神にも反する、私はそう思うんです。ですから、そういう場合にはちゃんと逃げ道というか、選択の道を与えるべきである。これはもう当然のことだと私は思うんです。そういう意味で、この法律ができれば、当然都市においては、まあこの次の国会になれば私は、好むと好まざるとにかかわらず公害税というものが出てくると思う。公害税の問題が出てくるか、公害負担金にするのか、公害課徴金にするのか、何か出てまいるだろうと思うんです。これは避けがたい現実だと思うんです。そういうものが、一方においては負担が高くなる、一方においては負担が軽くなるということになれば水は流れるということを意図してこの法律を御審議いただいておる、こういうことでございます。
  79. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 いま公害の問題が出たんですが、現在の新全総でいろいろ計画をされております大工業基地の問題につきましても、いまお話の出ましたむつ小川原にしても、周防灘にしても、あるいは秋田湾、宿毛、志布志、そういうところ、まあ苫小牧は必ずしもそうでもないという話を聞きますけれども、その他のところの大きな工業基地というのは軒並み足踏みをしておるということで、いろいろな解説めいた話が出ておるのですが、事実そうだろうというふうに思います。したがって、以前は、町の発展のためには工場誘致をしなければというようなのが一つの常識といいますか、そういうような形が出ておったのです。いまの場合は、産業開発よりも公害防止ということに非常に力が食われておるのです。いまおっしゃったようにこの法律ですべてのことを全部網羅するということは無理だと思います。これは一つのある意味では呼び水というようなことになって、次から次にこれをさらに補完するような意味で出てくるとは思いますけれども、しかし、公害の除去のためにいろいろな装置が要る。そのためにはまず土地がいまの状態では求めようにも求めようがないから、公害を排除するような脱硫、脱煙というような、そういう装置にしてもなかなか思うようにできない。しかし、移ることによってそういうものは土地も安く手に入り、そうして国の補助もあり、そういうことについても十分な公害防止の装置ができる、その辺の経済的な勘定というのも一つあるのではないかというように思います。  それで法的な規制というのは、先ほどお話のあったように、いろいろ指を折って法律の名前をおっしゃってみえたのですが、確かにあるわけなんです。現実の問題としては、いまやはり地域開発よりも公害防止するということのほうが非常に大きな命題になって、このこと自身がいろいろ工業基地でも問題になって、なかなか思うようにいかない。特にむつ小川原の場合では土地の問題なんかが、これは先ほども、話が飛びますけれども工場誘致をする場合の土地の高騰についても、十分規制すべき点を規制していないことによってこういう場面が現出をしたのだと、こういうことなんですけれども、実際はこれはいろいろな方がいろいろな思惑があって、あそこの場合でも、数十社の不動産会社が来ていろいろ工作をされる、地域住民の方もそれにいささか踊らされたようなかっこうでもって、まあ入ってくるだろうというようなことで借金して家を増築した。それが、計画が変更になって、とてもそういうことにはならぬというような、非常にいろいろな面で波及効果があるわけなんです。一方、きのうですか、一昨日ですかの新聞によりますと、東北並びに上越ですか、その新幹線の沿線も非常に土地の値上がりで、地域住民は、土地が動いておるというような表現でもってその状態を言っておるというようなこと、表現しておるというようなことなんですが、問題は公害の問題について、これはもうどなたも言及をされておりますので、ある意味では御説明もしていただいておるわけなんですけれども、いろいろな法的な規制があるにもかかわらず、これがなかなか思うにまかせないということと、それから移った場合に、そういういろいろな装置をすることによってできるだけ、きょうも和達先生に私お伺いしたのですが、開発環境との調和の問題、これはあくまでも、やはり非常にむずかしい問題だけれども、私個人としては、環境のほうをとって問題を処置しなければならぬと、いまの事態、確かに私そういうことだと思いますが、これらの問題につきまして、先ほども言いましたように、いろいろな面から御質問もし、御説明もいただいておるわけでありますが、御説明をいただきたいと思います。
  80. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 一次産業の比率が非常に高いときは、これは自然をもととしておるものでございます林業とか、漁業とか、農業とかいうものを主体にしておるときには、これは空気も清浄であるし、水も清浄である。二次産業になりますと、これは同じ自然なものであっても、化学肥料工場は空気から窒素をとってやっておるわけですから、これはもう二次産業になれば空気も汚染されるし、水もやはり一次産業の比率が九〇%であったときとは違うわけです。だから明治から百年間をずっと見てみますと、空気も水もみんな二次産業の比率が高くなっただけ汚染されておると思うのです。ただ、いままでは公害基準というものが多少甘かったと思うのであります。もう一つは、煙突も一本であれば何でもなかった。ふろ屋の煙突でも、十本かたまるとこれはもうたいへんになる。自動車は一台だったら自然の浄化力でもって空気が全部吸収をしてしまうということでございますが、これ自動車が全部混合すると光化学スモッグにもなると、こういうことであります。ですから、そういうことでこれからは基準が非常にきびしくなってまいります。  私も公害問題というのには長いこと勉強してまいりました、これは私は理化学研究所に関係をしておりましたので。高度の科学主義工業、高度の精密工業などをやっておる過程において公害問題というのは必ず問題になる。ですから、公の席上で公害問題が論じられてきたというのはここ三年くらいであります。都市政策の中で、牛込の柳町と大原町の実態を指摘して公害論争を展開したわけであります。で、私は学者との対立の解決点のときには——ある学者はこう言いました。国民が全部関東地方に集まりたいと思うならば、政治はこの人たちを集め得るように環境整備をすべきであるという、そういう発言に対して対抗するときにどうかというので、コンピューターに聞いたら、たとえば道路も三倍に広げるとか、三倍でなくても三階にすれば済むのであるし、また、全部地下鉄にすれば路面電車もなくなる、高層は一・七階を十七階にすれば緑地は全部世界的な緑地はできるし、東京もセントラルパークを持つニューヨークよりももっと自然環境整備されたところができるのだ、こういう結論が出たわけであります。そういう条項を書いたのですが、ただそのときにコンピューターが出した結論というのは、ただしそのようになると、東京二十三区の中の空気中に占める亜硫酸ガスは人間の生存許容量をこす、こういうことで対抗したわけです、私は。これにはもう学界も何もどうにもならなくなったのです、息ができなくなるというのですから。そこで初めて生産かどうかという問題になってきて、いままでのような暴論が世の中にまかり通らなくなったのです。全国民東京に集まるというなら集めたらいいじゃないか、メリットがあるから集まるのだと、それは暴論でしかない。経済論ではないということになったわけでありますから、だから、公害問題というのはその意味でここ二、三年急速に公害基準というものが強くなって、そして公害無過失賠償責任制度さえも創設されたわけであります。  いま一番困っているのはアメリカのロサンゼルスでございますが、ロサンゼルスよりももっとひどいところが出てまいりました。これはきのうきょうの公害会議でもって出てまいりましたが、メキシコシティーというのは高原でありますから、空気が非常に希薄である。そこで自動車の排気ガスが滞留しておるために驚くべき健康の害をなしておる。そういうことで、いまの基準は全く変えなければいかぬという論争が展開されておりますから、そういう意味で、今度新しい——昭和六十年にいまの日本生産が四倍になっても、それは内容が重化学工業から別なものになっていく。いままでの石炭をたいておったものを電気にする、それからガスは、石炭ガスを今度は天然ガスに変えていくということでもって、どんどん公害というものはなくなっていきますから、いまとは全然違うと思います。そういう意味で、集中して発生しておったものをとにかく全国的に分散をする。それで工場公害基準というのはいまのよりもううんと強い公害基準になるし、公害基準というものも、新しい技術や科学の発達において急速な進歩を遂げておるということで、私は、公害問題というのはいままでのものさしではかるべきではない。やっぱり六十年でもって終わるわけじゃありません。七十年にも、八十年にも、百年にもあるわけであります。公害というものは、ほんとうに歩いているよりもオートバイになれば音がしますから……。その程度の公害は別にしても、人命を損傷して、六十年か七十年になると日本人が四千万になってしまうというような、あのような公害基準は絶対許さないということでやっぱりいくべきだと思いますし、いまのやっぱり人口比率というものをずっと維持していけるという状態日本の新しい環境基準になけりゃならない。そう思いますと、集中のメリットがなくなった以上、これは合理的に分散しなきゃならないということになるのだと思います。
  81. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 この法案の説明の中で、工業を再配置することによって地域開発のために理想的——理想的というと少しことばが適切でないかもしれませんが、地方都市都市づくりの起爆剤にしたい、こういうことで御説明があるわけなんですが、先ほど原田さんの御質問の中でも、大臣のほうから新しい地方づくりのあり方、そういう青写真とでもいいますか、そういうものについて御説明を聞きました。全くそのとおりにできれば私も万万歳だと思うんですが、先ほど局長からの御説明の中にも、地方のほうから来てくださいというところへは行きますと、こういうことになると、地方のほうは、地方都市づくりについてやっぱり地方でかなりな投資なりなんなりをしなければいかぬことになるのではないかというふうに思います。そうすると、過疎地ですから、いまも御説明があったように、住民税にしたって話は逆で、東京のほうが安くて過疎地のほうが高いのだということになると、そうすると、負担はいろんな形でやっぱり思うんですね。  そこで、太政官布告の話が出まして、確かにそのことによって北海道は非常に急速な発展をしたということなんですが、これは、そういう意味では、この構想のためには、いまの太政官布告が何らかの形で出されないと、ほんとうの意味ではできないのじゃないかというように思います。それで、二十五万の都市をつくってやるということになれば上下水道も要るでしょうし、それに伴う学校だとか、公園だとか、いろんな施設が、先ほどもお話のあったように、一たん出ていった人をさらにUターンさして、これはまあ先ほどお話のあったように、女の子のかなり従事する工場、それがだんだん発展をしてくることによって、郷里を捨てた若い人たちも帰ってくる。そういう面もあるでしょう。そういう面もあると同時に、日常の生活の中で、おれたちの故郷はこういうふうに今度はよくなったんだ、どうせ骨を埋めるなら故郷へ行って骨を埋めよう、仕事もできる、賃金もかなりなあれができて、これから家庭を持っていってもそう心配はないんだというようなことにならなければ、新しい都市づくりということも非常にむずかしい。それで、肝心な点についてはどうもはっきりしないというふうに私は聞いておりますが、その点をひとつ。
  82. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 方向としては、もう地方自治体に迷惑をかけるような考え方では、これは大事業は進まないと思う。国がやっぱり責任を持ってやらなければいけない。そのためには、国は地方公共団体にだけ財源補てんなどしないで、地方公共団体がさなきだに困っているものを、新しい工場が来ることによって固定資産税の免税を負担したり、それから学校や道路をつくってやらなきゃいけなかったりということでは、この法律の効果を求めることはできないと思うのです。これは私、計算をしてまいりまして、この法律ができますと、いろんなものが付加されてまいるということをいま予想しているわけであります。それは、国全体が、もう成長のメリットというものを国民が享受できないという状態。  それはいま東京とか大阪とかいうようなものの街路を一つ考えますと、街路事業費の九四%というのが用地買収費でございます。ですから、百億円の道路、街路事業費を予算につけても、九十四億円、九十三億円というものが用地買収費である。これでは、地価が上がりますから、年率一〇%や二〇%の予算がふえたって事業はさっぱり進捗しないのは、そこに問題があります。ですから、そういうことを考えますと、例を言いますと、東京のまん中に一つ道路をつくるということを考えて計算をしますと、一つの例で申し上げますと、四国、九州というような一つ地方の現行道路を大体倍にして、拡幅して改良鋪装が全部できるというぐらいなものでございます。鉄道も、いま問題になっております大阪の五条坂本、それから新宮というあの断崖絶壁、十津川を通る鉄道でも、隧道が三分の一ありますが、キロ当たり三億円でできるわけです。それから熊本から延岡までのあの九州を横断する高千穂線でも、キロ当たり三億円でできる。しかし、東京大阪の地下鉄は、七十五億円から百億円かかるわけであります。しかも、二分の一建設費を税金によって補助しても、赤字じゃありませんか。そういう問題を計算しますと、国がこれから高度成長を一切やらないのだ、月給も一切現在のところでいいのだということなら別でございますが、そうではない。これからちゃんと何%、五%でも七・五%でもコンスタントな成長を続けて、その成長のメリットというもので国民生活の向上をはかるとしたならば、もうけよりもよけいに公害投資をしなければならないような、拠点中心主義、集中主義をとってはならないということになるわけです。これはもう言うなれば、ある意味における集中排除法であります。  これは通産省も、四十二年に工場立地の適正化法というのをつくったわけです。それで各省が皆反対して、時期尚早ということでもって流れました。これは形の変わった工場立地の適正化法でもあります。同時に国土の再開発法でもございますし、国土の総合開発法でもございますし、この法律がずっと進んでいくと、地方行財政制度そのものにもメスが入ると思うのであります。ですから、そういう意味からいって、これは国のやはり責任でやるべきであって、地方が免税や減税をされることによって負担をするということではないのであって、これはやはり新税をつくって政府が負担をする。先ほど申し上げたとおり、第二交付税の制度などをこういうもののためには当然私はやるべきことだと、こういうことでありまして、これは財政負担ができるような状態地方がなるまでは、社会施設をする投資などは全部国が持つべきである。ある意味の特別会計式なものである。だからこれは特別会計をつくろうと、こうしたわけでございますから、考え方としては、まあこの法律を通していただければ、その次その次に、私はある意味において、議員立法としてちょうどガソリン税を目的税にしたときでさえいろいろなものをやりましたから、有料道路制度をやったり、ガソリン税を目的税にしたり、しかも必要な場合は、道路法の中にはかなり思い切った措置を定めておる条文が一つあるのです。経済開発のため、地形、地勢上、地方負担ができない道路に関しては、全額国が負担して行なうことができるというのが、現行道路法にあります。そういう制度がこの法律の中にあるべきだと思うのです、ほんとうから言いますと。あれは、議員立法だったからそういうことができたんです。現行道路法は議員立法でございますから、そういう相当荒っぽい条文が現行法にはあります。大正八年制定の道路法全条改正をした法律の中にはそういう条文がありますけれども、これは政府立法でございますので、そこまでどうも、現行法を全部ひっくり返すような条文までなかなかいま入れるにはむずかしいということでございますが、だんだんと私はやはりそういうものになるだろう。またならなければ、これは大目的を達成することはできない、こう思います。
  83. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 ぜひそういう形でもってこれからも強力に推進をしていただきたいというふうに思いますが、実はこれ二、三日前の新聞で、「北関東も誘導地域に」ということで、東京の通産局が工業配置構想について、北関東も誘導地域に入れるんだという、これはまあ実際は省令なり政令なりできめられることだというふうに思いますが、こういうふうに東京通産局のほうで言われておると、これは先ほどもちょっと話が出ましたけれども北海道や東北に行くよりも、これは茨城だとか群馬ですか、ああいう北関東のほうへ行ったほうが、いろいろな交通その他の事情からいっても、いいというふうにしろうと考えでも考えられるので、なかなかやっぱり足が東北、北海道のほうへは向かぬのじゃないかというふうに思います。同時に、御説明の中では、誘導地域とそれから移転促進地域ですか、この二つ地域があって、白紙の地域があると。この白紙の地域というのはこういうところなり、東海のあの辺、名古屋の近辺だというふうに思いますが、名古屋は何か聞くところによると、工場が出るんでどうすべえかというようなことを考えてみえるというふうな話もちょっと聞きましたので、そうするとこういうのが出てくると、またやはりこれに似たような考え方が出てくるのじゃないか。これがどうなるか私は知りませんよ。これは新聞にかなり出てきて、実際はこの構想も、首都圏の場合は首都圏百キロ以内におさまってしまうのじゃないか。こうなると、東北も、北海道も大いに当てにして、今度こそはひとついままでお願いしておったやつが、これがてこになって大いに実現のチャンスがきたんだこいうふうに、きょうの参考人の御意見聞いておっても、そういう意欲はありありとわかるのですけれども、何かここでこうシャットアウトしたような感じがするのですけれども、この辺は実際この新聞記事というのはどうなのか。これによっていろいろまた連鎖反応が出てくるのじゃないか、こういうことを思いますが、いかがですか。
  84. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 北関東につきましては、北関東の地域開発の構想ということから、いろいろ御要望の向きもございますけれども、現在の法律案の二条の二項にありますように、工業の集積の程度が低くて、人口の増加率の割合が低い道県で、政令で定められた道県と区域がつながっていて、しかも、工業の集積の程度、あるいは人口の増加の割合が連接しておるその指定された地域に似通っておる地域の市町村、これは政令で指定する区域だというふうに二条二項二号に規定がございます。われわれはこれをにじみ出し地域というふうにいっておりまして、たとえば、茨城県の産炭地域等の地域はこういうものに該当してくる地域になろうかと思いますが、あるいは群馬県等で長野県と連接する地域等についてこうした何があろうかと思いますが、現在、その範囲については検討中でございまして、いまお話のありましたように、きわめて広範囲な地域を指定するということについては問題があろうというふうに考えております。
  85. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 いまのおことばの中で、いわゆる福島だとか茨城、そっちのほうの産炭地域のことですね。これは先ほどからも話が出ておりますように、産炭地域の問題につきましては、これは従来からの姿勢をこの法案によってさらに強力にしていただくということがわれわれとしても願いであります。そういうのも含めて、確かにおっしゃるようなかなり広い、いわゆる北関東ということになりますと、確かに法案の中では一つの県ということで指定をしても、岡山や、あっちの山陰とくっついておるようなところは、これは岡山県だということで一律にするというのはわりあいと問題があると思うのですね。そういうのと、私も、北関東必ずしも十分に詳細にやっておるわけではありませんのでなんですけれども、北関東というのは大きな範囲、概念的にね。そうすると、やっぱり北海道だとか東北へ行くというのは遠慮して、そこで所定の援助がくるということなら、何も遠いところへ行くことないじゃないかということになれば、この法案の趣旨自身もそこでやっぱり多少ひん曲げられるようなケースも出てくるのじゃないかというふうに思いますので、ぜひそういう点についても御配慮をいただきたいというふうに思います。  それから、これは局長にお尋ねをいたしますが、日本開発銀行がかつて工場分散できない理由ということで調査をしたときに、まあいろいろな理由があったと思いますが、この二つの理由として、本社と取引先との連絡が不備だ、不便だということと、従業員の移転が非常にむずかしいと、こういうようなことがいわれておるわけです。そうすると、この移転というのは、どうしても低労賃を当てにした軽工業か、あるいは公害反対でいろいろ地域で問題を起こしておるような企業が移るというようなケースが出てくるのではないかというふうに思いますが、一体新しく工業団地といいますか、基地をつくる場合に、できればその中核になるような企業が移りまして、それに関連するいろいろなバラエティーに富んだ工場なり産業が、業種がくっついていけば一番好ましいわけなんです。まあ、しかし、なかなかやっぱりそうもうまくはいかぬ面もあると思いますけれども、少なくともやはりそういう面で御努力をいただいておるというように思いますが、こういうようなことを考えてみますと、これはまあ開発銀行の調査を見るまでもなく、一応やっぱりこういうことが常識的には考えられるわけなんです。こういうことで、移る業種がある程度限定されるというようなことは私好ましくないと思いますので、そういう点についてのひとつお考えを承りたい。
  86. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 団地造成するような際、あるいは計画について御相談を受ける際等につきましては、やはり関連中小企業移転し得るスペースというものを用意するという考え方をとる必要があろうと思います。衆議院のほうにおきましては、附帯決議で、中小企業に対する配慮をせよという点を附帯決議いただいておりますが、そうした配慮はすべきであるというふうに考えております。
  87. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 この新しい地域開発工場地方分散をする場合に、いろいろなことを先ほどから私も申し上げておるのですが、一つにはこれがなかなかいままでの政策の推進の中では実現が遅々として進まなかったことに対して、やはりわが国産業構造を将来展望してどうするのだということに対する明確さが足りない面もあるのではないかということを考えます。それで、まあこのことに関しては、大臣からはやはりこれからの産業というのは国際分業ということも考えなければならぬと、そうすると労働集約型の産業というものは、先進国と開発途上国との関係、いろいろのことを考えてみると、知識集約的な産業でもって立つというようなことを考えていかなければならぬのではないかというように聞いておりますし、概念的には、私もそういうことについては理解ができるつもりでありますが、さて、実際各県で、地域でもってこの誘致をする場合に、具体的にはもう一つやっぱりぴんとこないところがあるのではないかというような気がいたします。それで、資源型の基幹産業というのは、これは先ほどから私も申し上げておりますように、いろいろなところでトラブルが起きておるわけであります。そうしますと、結局落ちつくものは、機械工業か流通基地というようなことになるケースが多いのではないかというように思いますが、こういう点についての御見解をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  88. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) いま申し上げたように、過去のような重化学工業中心工場ということでは、もう六十年展望、六十五年展望、七十年くらいまでは展望できるかもしれませんが、それ以上になると、もう石油が一体入ってくるのかというような問題もありますし、なかなか、原材料はそのぐらい一体輸入できるのかどうかという問題もございます。そういう意味で、知識集約型産業というものに移らなければならないということは、これはそのとおりでございます。ただ、何がどのようにということを明確に申し上げるまでには、いま、まだ至っておりません。これ、いままでは過去の数字の引き伸ばしということが、各国のデータもございましたので、そういうものを参考にしながら、過去のデータをずっと引き伸ばしていくとこうなるだろうということで、新全総——新全国総合開発計画ができたわけですが、今後は、やっぱり地域的にも、それから産業の内容も相当吟味をしたもので、ある程度の青写真をかかなければならないと、こう思います。だから、そういう意味で、お話を申し上げるときには、イギリス型の追求ではなく、できればスイスのような空気も水もきれいなものにしたい、付加価値の高いものをつくりたい、こう思いますが、全部が全部、付加価値が高いものをつくっても売れるかどうかの問題もございますし、それはそう簡単にはいかないと思うんです。ですから、これからは自然発生ということよりも、やっぱり政府一つの目標を掲げて、そして将来、日本の姿はこのようなものでありたいということで、そのためには全国工業配置はこうである、水や労働力や、いろいろなものの活用もこのようになる、日本国民生活もこの程度になりますと、こういうことをやっぱり国民に提示をしなければならないようになると思います。そういう意味で、新々全総というものは、いままでのように、こうなると思いますということだけでは済まないと思うんです。まあどんなものがどこでということは、なかなかいますぐ申し上げられないということでございます。ただ、過去の数字、昭和二十九年からずっと計算をしてまいりますと、一〇%以上の高い成長が十六、七年間続いておるわけでありますし、去年は、それが四・七%というところまで一年だけ落ち込んだということでありまするが、これは四・七%や五%じゃ、日本経済というのはやっていけないということでありますので、七・五%——ことしは七・二%ないし七・五%、これを長期的に見ると、六十年までには八%ないし八・五%、場合によれば九%になるかもしれませんと、こう経済企画庁長官は述べておるわけですが、これは内容によって、それは九%成長はできないかもしれません。そのときは七・五%で十分いいのかもしれません。そういうような問題、これから積み重ねていかなければいかぬと、こう思います。
  89. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 これは一応蛇足になるかもしれませんけれども、先ほども申しましたように、工場を再配置することによって、それを起爆剤にして新しい都市をつくるということになると、その団地にある、基地にある工場の消長というのが一斉にやられたのではやっぱり意味をなさぬわけですから、そういう意味では、バラエティーに富んだいろいろな業種なり、同時に、一番肝心なことは日本産業構造にマッチして、口で言えば、成長産業を持ってくるということ、非常に簡単なんですけれども、いまお話しのように、その点はなかなかそう簡単に、こういう変化の激しいときですし、先を見通しながら、先取りをしながら、やはりそういう点についての適切な指示といいますか、指導がなければいけないんじゃないかというふうに思いますので、せっかく御努力一つお願いを申し上げたいというふうに思います。  それから、先ほど私、北関東のことについてちょっと触れたんですが、最初にこの案をつくる当時に、何か調整地域というようなのがあったというふうに聞いております。先ほど言った北関東のことと関連をして、この調整地域の岡山県と鳥取県の境になっておるようなところは別にしまして、一つのいまでいう都市周辺について、やっぱり移動するということについては調整をするような考え方があったやに聞いておりますが、そういう点についてどのような経緯でこういう考え方がなくなったのか。あるいは法にはないけれども、そういう精神というのはいまも生きておるのか、それは生きておるとすればどのような形なのか。  それからこれと関連して、首都圏、近畿圏については、工場を増設したり建設したりすることに対する制限をする法律があるんですが、こういう問題も公害等の関係で何か強化をするとかというような話も聞いておりますが、そういう点についてのひとつ御見解もお聞かせをいただきたいと、こう思います。
  90. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 御指摘のように、移転促進地域と今回の法律で規定する地域周辺地域につきまして、やはり税制上の措置を考える際には、税による新増設の抑制を考えてしかるべきではないかというふうに考えました。これは先ほど大臣も申し上げましたように、今回の抑制措置についての税制の問題は、法人税の付加税の問題が二年延長という形になりまして、特別の財源として考慮しがたいような状態に相なりましたので、本年度は見送るということにいたしたわけでございます。したがいまして、今後、特別財源としての税制を活用するという考え方を引き続き検討する考え方でおりますので、その点につきましては、引き続き検討して成案を得るように努力いたしたいというふうに考えておる次第でございます。  それから、首都圏の工場制限につきましては、現在、若干の地域につきまして拡大をいたしました、対象地域を。それから、従来は建坪千平方メートル以上の工場について制限をするということになっておりましたのを、今回、五百平方メートル以上のものは制限の対象になるというふうに制限を強化する法案が現在審議されております。
  91. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 さて、移転をするということを考えた場合に、これはなかなか先頭を切って移転をするということは実際問題、いろいろ心理的な面その他からいって、多少問題が踏み切るためにはあるんではないかということを考えるんですが、その場合に、最初に移転をするところに対してはそれはそのように何か優遇をするとか、時間を切って。そういうようなきめのこまかい促進策というのもあっていいような気がするんですが、いかがでしょうか。
  92. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 今回の金融上あるいは税制上の優遇措置というのは、まず、出る人に最初の決断をしてもらうということのふん切りとして考えたわけでございまして、そういう意味では、特別の措置を考えておるということでございます。ただ、融資等の問題につきましては、なおある程度運用上の問題もあろうかと思いますので、それらの点については現実の運用の問題として配慮し得る可能性もあろうかと思いますが、制度としては一応一律のものでスタートをするということでございますが、それが先べんをつける配慮になったというふうに御理解をいただきたいと思います。
  93. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 労働省の方においでをいただくようにお願いをしておったんですが、お見えになっていますか。——質問をさしていただきます。二点御質問をいたします。  これは工業配置法案によって工場移転をする、こういうことになれば、まつ先にこの従業員の問題が出てくるわけなんですが、先回も大臣からの御説明もありましたように、やはり高年齢で相当子弟の教育をしておるというような働く人たちにとっては、この移転というのはしかく容易なことではないというように思うわけなんですが、こういう全部の人が移ればそれにこしたことはありませんけれども、必ずしもそうでない場合も出てくると思いますし、考え方によれば、かなりの人がやはりその企業と一緒に行けないというようなことになると思います。大都市の場合は、再就職も地方よりはある意味では容易だというように思いますけれども、現在のような情勢になってくると、それも必ずしもなまやさしい問題ではないかというふうに思います。同時にまた、新しく受け入れるほうの労働力につきましても、経済審議会の立地交通研究委員会でも労働力の問題については、若年人口大都市地域に集中をしたために今後人口の自然増加が、大都市での増加が主力になってくると、そこで、大都市に生まれ育った人をいかに地方に移動させるかと、先ほどこれは半分ぐらいは実際の移転——Uターンをしておるのだと、こういうような御説明もありましたけれども、事実はやはりこういうような面も私はあろうと思います。こういう問題に対する労働力の対策、同時にこれはすべての面で当てはまるのでありますが、いわゆるこの問題がスムーズに順調に推移をした場合には、目標年次の六十年におきまして工場分布、工業分布、こういう問題が水の問題から、電力の問題から、工場用地の問題から需給見通しというようなものをはっきりさせるということで、資料の中に一応こういう問題も出ておったかと思いますが、労働力の需給見通しについては、これは必ずしも明確になっていないというふうに思います。もちろん、かなり先のことでありますので、直ちに的確なお答えはと思いますけれども、しかし、順次こういう問題についても、この法案の推移に従って対応した形で答えを出していかなければ、これが一つの障害になっても困るわけなんで、そういう点についての御見解をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  94. 中原晁

    政府委員(中原晁君) 先生御指摘のとおり、この工業配置促進法につきましては労働問題、特に労働力の問題が、雇用の問題が非常に大きなポイントとなるかと存じます。先生先ほどから御指摘の点は、私どもとしまして問題点としております一番大事な点をほとんど御指摘になったわけでございますけれども基本的には私どもとしましては、いまの雇用問題といいますか、労働力不足等もいわれておりますけれども、いろいろの面でアンバランスがございますが、そのアンバランスの一番大きな問題は三つございまして、一つは年齢的な問題、学卒には大ぜい会社が群がるけれども、中高年の雇用にはいろいろ問題がある。それからあとは職種的な問題としましては、やはりものをつくったり、あるいは国民福祉に役立つようなものについては特に人が足りない。それからもう一つが、ここにありますような地域別の求人求職のアンバランスでございますが、たとえば数字を申し上げますと、四十五年度の各地方別のアンバランスを見ますと、これは職業安定所に申し込んでありまする求人と求職のアンバランスでございますが、学卒は除いてあります。学卒はもう三倍とか五倍とかということで非常に人が足りないということでございます。学卒を除いた数字で四十五年度全国では、たとえば一・五というのが求人倍率でございます。これは要するに、人間が一人おりますと仕事が一・五あるということで、人が足りないということが学卒を除いても出ておるわけでございますが、特に関東、中部、近畿におきましてはいずれも二倍以上でございまして、関東が二・一、中部は二・五、近畿は二・〇というふうに非常に学卒を除きましても二倍以上の求人がある。ところが、東北におきましては〇・五、九州におきましては〇・七ということでございまして、こういうところは人も少ないけれども仕事はもっと少ないというようなことでございます。  したがいまして、私どものほうとしましては、この工業配置促進法に非常に期待しているわけでございまして、もちろん工場と同時に人間が行く場合、あるいは行かない場合、いろいろ出てくると思いますが、工場とともに行く人の場合には特に住宅問題、それから教育問題等が大きな問題になろうかと思いますが、雇用促進事業団というようなところで住宅とか福祉施設を現在つくっておりますが、今後こういうような工業配置の構想と見合いましてそういうような設備計画、あるいは運営につきましてそういう雇用促進事業団の住宅とか、それから福祉施設というものは大いに活用していきたい。  それから、残る人の場合でございますが、これは関東、中部、近畿等でございますので、先生御指摘のように、基本的には仕事がたくさんあることにはなっておりますが、やはりその人たちのいままでのやっている仕事と再就職する仕事がマッチしない場合には、いろいろ技能を覚えていただくために職業訓練をやっていただくようなこともございましょうし、中高年の方も多いと思いますので、こういう人たちのためには万全の職業あっせん、職業相談計画を計画的になるべく早目にやって万全を期したい、こういうふうに思っておるわけでございます。  いずれにしましても、こういう工業配置促進によりまして日本の雇用問題、先般、パリで各国の注目を浴びた日本的ないろいろな雇用慣行、賃金慣行というものが問題になったわけでございますが、基本的にはそういうアンバランスがある。なかんずく、そういう地域的なアンバランス、これはヨーロッパ各国も同じように悩んでおるそうでございますが、こういう点につきましては、大いにそういう離職者の就職に配意しつつ推進することによりましてそういうアンバランスの解消にも役立っていく、かように存ずるわけでございます。
  95. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 これで私の質問を終わりたいと思いますが、日本経済は言うまでもありませんが、いままで重化学工業中心にいたしまして目ざましい発展を遂げてまいったわけであります。しかし、一方では公害等の環境問題が発生をいたしまして、生態学的な観点からもいろいろな面で反省が迫られておるわけでありますが、この工業配置構想というのが全国公害をばらまくというようなものではなくて、ほんとうの意味で国土均衡した発展とそして豊かな国づくり、こういうことのためにぜひ役立つようにせっかくの御努力をお願いをしたいというふうに思っておりますが、そういう意味で、十分にいままでの私並びにほかの方の質問なり、それに対する御説明の中でもいろいろわかっておりますので、そのことを御要望申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  96. 大森久司

    委員長大森久司君) 他に御発言がなければ、両案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。  次回は、明後八日午前十時三十分から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十八分散