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1972-05-30 第68回国会 参議院 商工委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月三十日(火曜日)    午前十時三十分開会     —————————————    委員異動  五月二十五日     辞任         補欠選任      辻  一彦君     小野  明君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大森 久司君     理 事                 川上 為治君                 剱木 亨弘君                 竹田 現照君                 藤井 恒男君     委 員                 赤間 文三君                 植木 光教君                 小笠 公韶君                 大谷藤之助君                 矢野  登君                 山本敬三郎君                 阿具根 登君                 小野  明君                 大矢  正君                 林  虎雄君                 中尾 辰義君                 原田  立君                柴田利右エ門君                 須藤 五郎君    国務大臣        通商産業大臣   田中 角榮君    政府委員        通商産業政務次        官        林田悠紀夫君        通商産業大臣官        房参事官     増田  実君        通商産業省繊維        雑貨局長     佐々木 敏君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        労働省職業安定        局業務指導課長  加藤  孝君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正  する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  去る二十五日、辻一彦君が委員を辞任され、その補欠として小野明君が選任されました。     —————————————
  3. 大森久司

    委員長大森久司君) 特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。  ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止
  4. 大森久司

    委員長大森久司君) 速記を起こしてください。
  5. 中尾辰義

    中尾辰義君 最初にお伺いしますが、今度の法案は、四十二年から始まりましたこの特定繊維工業構造改善、これまあ五カ年間の目標でやったわけでございますけれども、あまり成績が芳しくないのであと二年延ばしてくれと、こういうような趣旨でありますけれども、まず、過去五カ年間における構造改善実績というものを、最初に私はお伺いをしたいと思うんです。
  6. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 構造改善対象業種は、申し上げるまでもなく、紡績と織布とメリヤスと染色でありますが、そのうち紡績と織布につきまして、四十六年度までの構造改善進捗を申し上げます。  まず紡績でありますが、構造改善の三本柱であります過剰設備処理につきましては、昭和四十三年度に百十二万錘を設備処理いたしました。ほぼ目的を達成しておる次第であります。  次に、設備近代化でありますけれども、これにつきましては、近代化設備実施率は四十六年度までにおきまして、約全体の七〇%程度につきまして近代化が実施された次第であります。しかしながら、設備近代化の実質的な効果を示しております生産能率コリ当たり何人という生産能率につきましては、当初の目標は、四十六年までにおきましてコリ当たり二・七人という目標でございましたけれども、四十五年度までにおきまして三・五人、四十六年度、まだ明確な実績が出ておりませんけれども、三二人という程度でありまして、相当進捗率はおくれているわけでございます。  なお、生産経営規模グループ化につきましては、現在三十五企業が参加いたしまして、九グループ結成されておる次第でございます。  次に、織布業進捗状況を申し上げますと、当初の全体計画織機ビルドは十八万一千台ばかりでありまして、それが四十六年度までの累積の実績はほぼ八万台でございます。したがいまして、進捗率は二七%という非常に低い数字でありますけれども、これは台数でありまして、能力ベースに換算いたしますと、当初の計画は二十七億九千万平方メートルに相当する台数ビルドを予定したわけでございますけれども、一台当たり能力は非常に大きくなっておりますから、四十六年度までの実績では十四億平方メートル、したがいまして、五〇%強の進捗率でございます。なお、金額的に申し上げますと、当初計画は千二百八十七億円の投資額目標を組んでおった次第でありますが、四十六年度までの実績は八百九十六億円、したがいまして、七〇%程度進捗率でございます。
  7. 中尾辰義

    中尾辰義君 いま実績をお伺いしたわけでありますけれども、非常に最初の意気込みと比べまして、緊急政策として五カ年でやらなきゃならないということであったのですけれども、結果はいま私がお伺いしたように、どうもあまり芳しくないということですが、問題は、これはうまくいかなかったというのはどういうところにあるのですか。  その前にもう一つお伺いしたいのは、いまのは総体的な進捗状況を発表してもらったわけですけれども、あなたのほうの資料をちょっと私見ておりますけれども、特に、産地別に見て非常に悪いところでは進捗率が二〇%だとか、あるいはひどいのは一五、六%、何をやっておったのだと、この数字だけ見ればそういう感じもするわけですがね。その産地別に見て、特に悪いような点はどういう事情があったのでしょうか。その二つだけお聞きしておきたい。
  8. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 紡績業、織布業、いずれも先生指摘のように、進捗率は芳しくなかったのでありますが、まず、この一般的原因といたしましては、一つには、計画をつくりました昭和四十二年当時に比べまして、予想外の大きな内外の経済環境変化があったのであります。もちろん、あらゆる点を想定いたしまして計画はつくったのでありますけれども、やはり大幅な国際情勢国内情勢変化があったという点であります。特に、四十二年以降の不況におきまして、業界では投資意欲が非常に減退したということが大きな原因一つにあげられるであろうと、かように考える次第であります。  それともう一つは、この構造改善期間中におきまして、紡機織機もいずれも高性能設備が開発され始めた時期でありまして、したがいまして、こういった新しい設備の開発が終了するまで企業としては新しい投資を差し控えたというような事情があったかと存ずる次第でございます。  それともう一つ、織布業につきまして、産地によって構造改善進捗が非常に違う、非常に進捗率の低い産地があるというような御指摘でございます。私ども幾つかの産地を調べてみますと、先ほど申し上げましたように、設備ビルドでは大体全産地平均は七〇%でありますけれども、たとえば新潟産地につきましては、綿、スフ、絹、人絹ともにほぼ一〇〇%達成しておるわけであります。非常に構造改善進捗した地域もございます。しかしながら、逆に青梅とか米沢とかいう産地につきましては、青梅は一二%、米沢は二一%というように非常に低い産地であります。これにつきましては、一つには産地によりまして構造改善を開始いたしました時期が、四十二年ではなく四十四年から始めたというような産地もございます。また、青梅産地のように計画策定後におきまして市街地化の急激な進行等がございまして、転廃業者がふえて構造改善意欲が非常に薄れたというような事情もあろうかと存ずる次第であります。
  9. 中尾辰義

    中尾辰義君 それで、今度は二年延長されるわけですがね、二年間延長したら構造改善計画目標を達成できると、こういう自信のもとに法案を提出なさったと私は思うんですが、その辺のところはですな、どうも私はいまの五カ年間の過去の成績を見て、織布の場合は過剰設備処理が二七%、設備近代化七一%、こういったような数字を見て、あと二年延長したらこの目標を達成できるんだろうか、いろんな疑問を抱かざるを得ないですがね。それとまた、二年というふうにしたのはどういうわけなのかですな。二年済んだら、また残念ながら七五%くらいしか達成できなかったんで、あとまた二年と、こういうようなふうになるような気配も私もしますが、その辺はいかがですか。あとでこれは大臣にも答えてもらいたい。
  10. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 私ども、昨年開催されました産業構造審議会、あるいは繊維工業審議会におきまして御審議をいただきまして、今後の繊維産業構造改善紡績織布におきまして、もう二年延長すれば構造改善を達成できるというような御答申に基づきまして、二年延長を考えている次第であります。二年たてば構造改善ができるかというような御指摘につきましては、私ども先ほど申し上げました設備の高能率の近代的な新鋭紡機織機の導入が昨年あたりから出そろいましたから、したがって、そういった近代化合理化のための企業投資意欲が非常に高まってきておるのであります。また、織布業につきましては、四十四年から開始をいたしました産地につきましては、これまで二年間でございましたから進捗率は低かったのでありますけれども、もう二年やれば構造改善は軌道に乗るであろうと考えた次第であります。しかしながら、それ以上に、私ども日米繊維協定に関連いたしまして、昨年来、自主規制対策、あるいは今回の政府間協定に基づく救済対策によりまして、大幅な設備買い上げを実施しておる次第であります。したがいまして、この設備買い上げが本年度、来年度にかけまして完了するわけでありますが、この設備買い上げと並行的に特繊法構造改善を実施するならば、二年間で量的な構造改善事業というものは完了すると、かように考えておる次第であります。
  11. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま局長述べましたとおり、審議会から、二年間延長して、この間に構造改善完成するべきであると、こういう御答申をいただいておりますので、もう二年間延長しようというのでございますし、もう一つは、国際的な状態から見ましても、繊維企業というものはなかなかたいへんな時代を迎えつつございます。そういう意味で、いま、機業地にはそれなりの理由もありましたし、また、当初企図した期間内に構造改善事業が行なえなかった理由は、るる申し述べておるような面もございますが、しかし、やっぱりこれは一日も早く構造改善事業完成をして国際経済波濤にも耐えなければなりませんし、また、繊維企業が新しい国際的な情勢に対応できるような体質ができなければならないわけでありますので、この二年間でできなかったらまた延ばすのかということではなく、二年間で完成をするために通産省は全力を傾けるということでひとつ御理解を賜わりたい、こう思います。
  12. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ、二年間で何とかやりたいというお考えのようですけれども、過去五ヵ年間やった計画と、さらに今後また二年間延ばしてこれからやろうという計画、この計画の中には多少前進した点があるのかですな。構造改善の三つの柱、これは過剰設備処理設備近代化企業集約化と、こうなっておりますけれども、その辺はどうなのか。どうもあなた方のお話を聞きますというと、過剰設備買い上げ、あるいは設備近代化、こういうようなことは声を大にしてよくおっしゃるんですけれども、古いやつを買い上げて新しいやつを入れると、それだけでは構造改善の当初の趣旨に合致しないんじゃないか。そういうようなことを考えてみますと、五カ年間の失敗に伴って、その失敗そのもの国際情勢等いろいろな問題があってうまくいかなかった、こういうこともありましょうけれども、私はそれだけではないような気もするわけですがね、その辺はいかがですか。
  13. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 今後、延長の二年間におきましても、構造改善の柱は先生おっしゃいましたように、三本の柱でありまして、過剰設備処理設備近代化生産規模適正化、三本の柱を従来どおり踏襲することはもちろんであります。しかしながら、新しい繊維産業の置かれた環境変化がございますから、おのずから三本柱のやり方のきめこまかい方法は変わってくるわけであります。特に、私ども過剰設備処理につきましては、別途救済対策のほうで大幅な処理をいたすわけであります。したがいまして、むしろ設備近代化生産規模適正化に中心を置きまして特繊法の運用を実施してまいりたい、かように考えております。さらに今後における繊維産業方向高級化ファッション化、あるいは多様化という方向にいくべきでございまして、それにつきましては、今回の法律の大きな部分といたしまして、事業協会内部振興基金を設けまして、そういった繊維産業質的向上をはかることを大きな眼目として考えておる次第であります。したがいまして、先生指摘のように、従来の三本柱を踏襲するわけでありますけれども、おのずから新しい繊維産業方向に重点を置いた構造改善になろうと考えた次第であります。
  14. 中尾辰義

    中尾辰義君 私がお伺いしたいのは、過剰設備買い上げ設備近代化、こういうものは大体金で片づく問題でありますから、金さえ出せば——それは金額にもよりますけれども、金の問題である程度解決をする。ところが、この繊維工業審議会答申にもありますように「構造改善事業具体的内容については、以下に指摘する点を重視しつつ従来の経験を踏まえてこれを強力に実施する必要がある。」と、一番目は「企業集約化設備近代化」、二番目が「過剰設備処理転廃業円滑化」、それからここに書いてあるこの三番目が「取引構造改善自主的生産取引体制確立」というふうに書いてある。それで、私はむしろこの三番目の「取引構造改善自主的生産取引体制確立」、この辺のところが過去の、先ほどあなたが発表なさった五カ年間の実績を見ましても、あまりうまくないですね。しかも、構造改善の当初の目的というものは、産地企業があるいは大企業原糸メーカー、あるいは商社、その中間に立って、そして安い賃金でうまい汁は、こういう表現はよくないかもしれませんが、大企業に吸われていって、産地企業が非常に低賃金に甘んじて生活がうまくない、そういうふうなことで、この産地中小企業自主的生産取引体制を整えるということが、これはもう構造改善の大きな柱ではなかったかと、こう思うんですがね。ですから、この点をこれはもうあなた方はほんとうに力を入れてやらなければ、幾ら設備改善、新しいのを入れたからそれで構造改善というわけにはまいらない。いつまでたっても大企業の低賃金下請をやるだけのことで、いわば夜中の一時、二時ごろまでガチャガチャ機を織って苦しい生活していかなけりゃならぬと、そういうことになるんでしょう、大臣。その辺のところを今後二カ年間で——あなた方も御存じでしょうと思います。ですから、そういう点今後どうおやりになるのかお伺いしたい。
  15. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) コストの引き下げ、国際競争力を培養するという面からだけの構造改善だけではなく、御承知のとおり、これからは量から質へという輸出の問題、その他もだんだんと内官が変わってきております。いままではいい品物を安くということでありましたが、このごろはいい品物を適正な価格で、場合によれば輸出価格を引き上げなければならないという状態でもあります。まあ自主規制をするとかいろいろな面であまり量を、一〇%ずつも毎年ふやしていくということよりも、やっぱり高級化ファッション化とかいろんな内容的に質の面で向上していかなければならない。  いつも述べるのでありますが、陶器等については、陶器として輸出をする場合には非常に抵抗がありますが、絵ざらにして、装飾品として輸出をする場合には、幾ら出たって競合相手がないのであまり抵抗がない。まあ輸出全体の、輸出入の二国間のバランスという面から見るといろいろな問題があるにしても、やはり美術品とかその他の輸出入に対してあまり問題はない。それは国内における競合がないということだと思うのです。そういう意味で、特殊な製品というものは比較的に輸出が伸びるわけでございます。だからそういう意味で、繊維企業に対してもだんだんと特殊なもの、内容価値の高いもの、付加価値の高いものというものにならざるを得ないわけでございます。ところが、現時点においては円平価の調整があって、しかも、もう先を見通して二百七十円だ、二百八十円だというような値段でもって円が切り上げられるような状態下請がたたかれておるということでは、これはなかなか構造改善をやるにしてもたいへんだと思います。  私自身新潟県の出身でございまして、石川、福井、新潟というところ、今度日米繊維交渉などの対象としては三大機業地一つであるということで、大手メーカーからの下請をやっておったり、系列化が進んでおったり、この事情は比較的よく承知しておるわけでございますが、やはりどんな場合でも国際競争力に耐えるということのために構造改善を行なうということは、これはもう当然でございますが、それだけではなく、やはり元請と下請との間とかいろいろな問題に対して、繊維企業全体の構造適正化というものをはからなければならないということは御承知のとおりでございまして、私自身通産省として、利潤は、このくらい輸出が伸びておって、日米繊維協定などあったにしても、一九・一%も去年は伸びておるんです。そうして一体、輸出価格を引き上げなさいといっておるにもかかわらず、産地中小企業はどうして潤わないのだろう。これはどこに利潤が片寄っておるのかひとり追跡調査をやってごらんなさいということで、いまその分析をさしておるのです。なかなか的確なものをつかむわけにはまいりませんが、しかし、系列別におよそどうであるということは通産省でわかるのです。だから、そういうことはいままでやらなかったのですが、これはもう繊維局はそういうことをやるべきである。それで中間マージンあまりにも大き過ぎるなら、そこらでひとつ三分の一担保——新しい設備投資をやっているものに、三分の一は親企業が出しており、生産者の会社が三分の一、それで地元のかつての個人企業であった経営者が自分の田地田畑や家屋まで担保にしておって三分の一という、そういう形態がとれておるのだから、そんなもうけのあるところには親企業の出しておる三分の一を償却してしまえばいいのじゃないかと、そういうこと自体繊維企業自体構造改善なんだと、まあ相当こまかく私もこう勉強もしておりますし、メスも入れておるということでありますので、形だけの公式論からくる構造改善ではなく、実態に合う、真に新しい国際情勢の、国際経済の波動に対応できるような、場合によったら日米繊維交渉などは災いを転じて福となす、こういう面でもひとつ構造改善を進めてまいろうということで、きめこまかな指導調査を続けておるわけでございます。
  16. 中尾辰義

    中尾辰義君 大臣答弁を聞いておっても結論らしいものは何も出てこないので、わかったようなわからぬような話ですけれどもね。いまもあんたおっしゃったように、大企業原糸メーカー系列下云々といいましたけれども、産地中小企業というのは、ああいう大きな原糸メーカー系列下に入っておるのかどうなのか、その辺はどうですか。
  17. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 申し上げるまでもなく、織布業産地単位で糸売り、糸買い、布売りと、要するに産地主義分野と、それと先生指摘の、原糸メーカー系列下に入っております賃織りといいますか、原糸から製品までの製造工程が一貫しておる分野二つに分かれておるわけであります。そこで、いわゆる産地主義に属する独立した形態といいますものは、ただ四割程度でございます。六割がいわゆる原糸メーカーからの一貫系列の賃織りである分野でございます。
  18. 中尾辰義

    中尾辰義君 ですから、要するに構造改善というのは、まあ基準ですけれどもね、あなたが最初おっしゃった産地主義、ここが大きな問題になってくるんじゃないですか。何べんも言いますけれども、いつまでも大企業下請ばかり安い賃金でやらされておる、かなわない、何とかひとつ産地で独立して生産から販売まで一貫して、そして大きな利潤をあげて、生活改善してみたいと。そうするならば、あなたがいまおっしゃった原糸メーカー系列下にあるのは、あと六割も残っておる。こういうものをこれは何とかせぬことには、このままじゃやはり二年後においても進捗率はたいしたことはない。まあ設備近代化というのはある程度進んだけれども、依然として原糸メーカー系列下で安い賃金でやらされている、そういうことになる。私は、そういう点聞いているんですよ、大臣。この辺が非常にむずかしいところでしょうけれども、ほんとう構造改善趣旨というものは、そういうところにあるんでしょう。
  19. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) ただいま申し上げましたように、おおむね織布の分野につきましては、それぞれ独立した産地主義をとるか、あるいは原糸メーカー等の系列下に入るかという分野に分かれておるのでありますが、これはいわば歴史的、慣行的ないろいろな事情からのほかに、製品の少品種大量生産に適する製品か、あるいは多品種少量生産に適する品種か、そういった品種によりましてそれぞれ有利な点が両方にあろうかと思うのであります。したがいまして、一がいに原糸メーカー商社系列から産地主義に移すべきであるということにはならないかと思うのであります。しかしながら、産地主義分野におきましては、やはり独立企業でありますから、なかなか運転資金その他たいへんな事情にあろうかと思うのであります。私ども、このような産地主義に属する分野企業に対しましては、その糸買い等運転資金の調達につきましては、事業協会振興基金によりまして債務保証を行なう等、しかるべき対策を講じておる次第であります。
  20. 中尾辰義

    中尾辰義君 だけれども、それならばこの二年間における計画目標というものは、この企業集約化というところはどういうような目標になるのか、そこはどうなんですか。この目標というものを、あなたがいま答弁をなさったような、一部においてはやはり現状の原糸メーカー系列下にあったほうがいい面もあると、そういうようなこともおっしゃったようですけれども、それならば、構造改善の三本目の柱の企業集約化という、そういう点はこれは計画目標というものをどの辺に置くのですか。それは一〇〇%やらなければならないのか。あるいは自主生産体制を整えるのが何割と、あと系列下におるのが四割でもやむを得ないと、そういうように私はなるように思いますがね。それで、この三本目の柱の企業集約化の二年間の、いわゆる目標というものはどこに置いてあるのですか。
  21. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 織布業構造改善企業集約化につきましては、いろいろな形でそれぞれの機屋グループ化するということを目標に実施しておるわけでございます。当初は、一つグループ平均台数が五十六台ということを目標にしておったのでありますが、四十六年度末までにおきましては、まだグループ化いたしましたグループ平均台数が四十台程度でございまして、なお中小機屋グループによる集約化ということを進めたいと、かように考えておる次第であります。
  22. 中尾辰義

    中尾辰義君 私は、このグループの五十六台、これを目標に全部グループにはいれ、こういうことになるんですかね。どうも答弁がはっきりしませんが、私が聞いておるのは、あなたがさつき答弁なさったように、産地自主体制確立ということを考えると、いつまでも原糸メーカー系列下にあったのでは、低賃金で押しつけられるようなこともあるので、この点は何とか改善しなければならぬ。ところが、あなたの答弁は、しかし、いろいろな問題も含まれておるしと、繊維工業には。ですから、そういう大企業系列下にあるのも一部はやむを得ないと、そういうようなことをおっしゃったわけですな。そこで、それならばこの三本目の柱の企業集約化ですか、企業規模の適正化といいますか、この目標というものはどこに置かれるのかということですよ。大企業系列下におるのもやむを得ない、そういうものはどの程度で、ほんとう生産から販売まで一貫して現地中小企業がそういうような体制を整えていかなきゃならぬ、それは大体何%ぐらいを目標にしておるとか、そういうような目標がなければならないと私は思うんだな。私がなぜこういう質問をしているかというと、新聞等にもいろいろ報じられておりますけれども、たとえば構造改善資金というものを、資金を、これは商工中金を通じて金を借りる。そんな場合でも、どうしても大企業が保証人というようなことになってくる。そして、その系列下のものが幾ら幾ら、あとほんとう自主体制で地元の人の保証人というようなものは幾らもない、こういうようなこともこういうように書いてある。私、参考資料読んでみますけれども、これは福井県の場合ですね。わかりやすく読みますよ。この「構造改善の資金は、政府関係のものも商工中金を通じて融資という形で流されたから、金融機関の側は債権保全のための安全弁として系列原糸メーカーの保証を求めた。こうして、最初産地中小企業の自立をめざして出発したはずの計画は、結果としては原糸メーカーへの従属を深める仕掛けになってしまった。福井の構造改善組合が四十六年度第一次分までに受け取った百五十七億七千五百八十万円の資金のうち、四  一%にあたる六十四億五千八百六十万円が東レの系列に、一五%の二十四億百十五万円が帝人系列にというふうに配分され、原糸メーカー系列以外の機屋にまわったのは、」全体のわずか一〇%程度十六億三千万である、こういうようなものなんですな。こういうような記事が出ているんです。そうしますと、やっぱりこういうようなことが出れば、どうしても大きな企業に牛耳られてしまって、そういうことでほんとう構造改善をやって、産地自主体制を整えるには、こういう大企業原糸メーカーからくされ縁を切って、そしてほんとうに技術からデザインから注文から、どういう需要に応じて、どういうような流通機構で販売をするか、そこまでいかないというと、ほんとうのこれは構造改善にならないと、ただもう、機械を古いのをかえて新しいのにした、それだけでは構造改善の当初の目的は達成できぬのではないか、こういうような批判もあるんで、それで私は聞いておるんですよ。こういう点いかがでしょうか。これは大臣答弁を。
  23. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中尾さんの言われるのもわかりますけれども、なかなか機というものは、産地別にもう企業形態も非常にむずかしい複雑な状態になっているのです。ですから、独立するもの、各産地別で協業化をやっていくもの、それから系列で整備をしていくもの、これはまあおおよそこれから勉強していかなければなりませんし、通産省それくらいの目標をつけてやるのが望ましいことでありますが、なかなか簡単に、二年たってこうなりますということを言えるような状態でもないのでございます。ですから、先ほど申し上げましたように、様態はそうであっても、やはり大企業系列の中にあって、今度構造改善をやる過程においてやれば、国際波動に耐えられるような状態にしなければならない。これは制度そのものやいろいろのものを考えなければならないと、こう申し上げているわけであります。だから、大企業がちょっと締めると、そのまま将棋倒しになってしまうということでは困るので、やはりこれに耐え得るような制度というようなものもあわせて考えていくと、こういうことであります。  機業種別、県別、また機の内容、種類別にいろいろ問題が存在いたします。ですから、機械の性能をあげる、コストを引き下げるということだけでは済まない問題がありますが、いまあなたが述べられたように、理想的なんでありますが、どうもそこまでの青写真を全部いますぐかくわけにはまいらないということが実情であります。そういう方向で努力はいたしますということで、その実態を披瀝申し上げ、御了解を得たいと、こう思います。
  24. 中尾辰義

    中尾辰義君 大臣のおっしゃるとおりですよ。だから、私がそういうむずかしいことが二年でできるのかどうかと聞いておるのです。できますと言っているでしょう。だから、二年を目標に最大の努力をする、私はこういう意味にとっているわけです。別にこれは取り上げて追及しようとも思っておりませんが、ただ、ああいうジャーナリストの批判、あるいはいろいろのものを見てみると、結局いま言ったような自主体制確立というものも、これはやろうと思えばそれはできぬこともないでしょうけれども、非常に困難である。そういうように、生産から販売まで一貫した体制を整える、それには相当の金が要る、設備が要る、技術が要る、人が要る。そうして、その借りた金を今度は返すのに首が回らぬようになってくる。だから、あまり手がつけられない。それでずるずるずるといって、大企業原糸メーカーの過剰生産の糸を機屋に回して、とっとことっとこ低賃金でやらされている。それで、機屋は借金をかかえてふうふういっている。そこに膨大な国家資金をつぎ込んでいる、まあこういうようなかっこうなんですね。ですからこれは、非常にこの構造改善というものは、まあ相当の批判の声もある。全部とは言わなくても、できるだけ構造改善をしたい、こういうふうに私は考えますけれどね。ですから、そういうような批判ですね、いまちょっと私は読んでみますが、構造改善に対する批判、構造改善は「産地中小企業の体質改善を名目として、膨大な国家資金をつぎこみ、結果として原糸メーカーの過剰生産のしりぬぐいをさせ、あげくの果てに首のまわらないほどの借金を中小企業に残した」、このようなきびしい批判、これはどういうふうにお答えしますか、この批判に対して。いろいろと出ていますよ。まあ答弁はよろしいわ、大体わかりましたから。そうしますと、大体あなた方の手のうちもわかった、こういうことになるので、私はこれ以上は追及しませんけれども、やはり趣旨はそうですからね。非常に現地の方も安い賃金で困っておられる、それはがんばってくださいよ。  それから、こまかいことになりますが、この過剰設備処理が、この特定織機の場合、さっきおっしゃった二七%ですな、これはどういうわけで低いのですか。五カ年で二七%、何かいろいろの制度的な欠陥があったのかどうか。
  25. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 先ほど申し上げました二七%という数字は、織機ビルド台数、新しく近代化設備ビルドする当初の目標に対しまして、台数としては四十六年度まで累積の進捗率は二七%と申し上げたわけであります。ただ、能力ベースでは五〇%程度まで達成しておる次第であります。したがいまして、過剰設備の廃棄という数字ではございません。廃棄につきましては、実は、当初の目標は十二万六千台を廃棄の予定で計画を進めてまいったわけでありますけれども、この特繊法に基づきます転廃業者の廃棄あるいは上乗せ廃棄——近代化のために新しくビルドするためには、従来のものを余分に廃棄するといういわゆる上乗せ廃棄を含めまして、ほぼ三万台程度しか実績はございません。このことは、実は、昨年来から日米政府間協定に伴う買い上げを並行的に実施をいたしておりまして、その買い上げ台数自主規制分といたしまして四万六千台、政府間協定に基づく救済対策といたしまして、ほぼ織機全体で今後十万台程度と考えておる次第であります。したがいまして、政府買い上げに伴う織機の廃棄台数を合わせますと、必ずしも当初の目標が達成しておらないということではございません。
  26. 中尾辰義

    中尾辰義君 それから、やみ織機がいまふえていますね。あなた方通産省のほうでも調査しているということですが、ところが北陸の方面では、日米繊維協定によって糸の輸出が規制をされて、それが北陸方面へずいぶん回ってきておる。それで北陸方面はかなり、かなりというんですか、思ったほど不景気でないというようなことが新聞報道にも出ております。仕事はかなりあるらしいですな。仕事はあるんだけれども、忙しくてやみ織機がどんどんふえている。そうしますと、これはむしろ、織機買い上げ希望数を最初とりましたけれども、その当時よりかだんだん減ってまいりまして、そして逆にやみのほうがあふれておる、こういうような状況、まあ御存じでしょうけれども、新聞にも出ていますね。これは買い上げの希望台数よりかやみ織機がふえておる。処分してこわす分よりか未登録のやつがふえておるというのは妙な現象ですよ。まあ御存じでしょうけれども、われわれが見るとどうもこれは頭隠してしり隠さず、これは妙なぐあいじゃないか。片方はつぶして、片方はふえている。どういうふうに通産省は考えておるのか。こういうことがどんどんどんどんいろんな新聞等にも書かれ、また実際そういうふうになってくると、どうもあなた方のメンツは立ちませんよ、これじゃ。まあこの前からもいろいろありましたけれども、これはどういうふうにおやりになるつもりですか、大臣。相当の金をつぎ込んでいるんでしょう。大臣がんばっていただいて、膨大な金を注ぎ込んでおる。みんな国民の税金じゃないですか。それで片方、ふえておるのはこれは黙認しておるというようなことでは、いろいろな問題があると思うんですよね。一ぺん大臣の御見解をお聞きしたい。
  27. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) やみ織機というのは全くやみでございまして、つかみにくいものでございます。団体法の違法織機ということでございまして、これはまあ実態をつかむ必要があります。そういうことで、これは徹底的にこの実態把握ということで調査を始めております。調査を始めまして、これはやっぱりあると、七万台とか八万台とかいうことでございますが、何しろやみでございますから、これをやっぱりまず明確にしなければいかぬ。  それで、これはいまあなたが御発言になっておる中に問題があるんですが、これはやっぱりここでどこかけじめをつけなければならぬわけです。そうでないと、無制限に織機はいつでも買い上げます、つぶします——税金でやるわけでありますから、またちょっと景気がいいということになって、織機をつぶすんではなくてどんどんやみでつくるということでは、これは際限がなくなるわけでございますから、これはやっぱり業界とも十分話し合いをしながら、今度はもう構造改善によってやらなければならないということです。法律まで出しておるわけでございますから、織機などは今度はこれ以後一切買わないようになりますよと、だからほんとうに登録と。やみというものがないように、制度上ちゃんとやるように、やっぱりこの際けじめをつけなければならぬときだと私は思います。そうでなければ、さいの川原の石積みのようになって、日米繊維協定をやって十四万台、十五万台に近い織機買い上げて、これを破砕してたいへんだなどと言っておりながら、その半面では対米貿易も一九・一%もふえておりますし、また景気はいいと、景気がいいから、こわすよりも新しい織機のほうをよけいふやすほうが多いということでは、これは国民の皆さんに対しても説明のしょうがないわけでありますから、これはもう今度は十余万台という大きな織機の破砕を前提としての繊維対策を進めておる過程にあることでございますので、これはやっぱりやみ織機の実態というものを全部つかんで、それに対して処置をする、何らか処置をしなければならぬと思うのです。これは、では、組合全体でやってくださいということになるかもしれませんし、やらなければその人に対しては未来永劫織機のめんどうは見ませんよということにも通ずることだと思いますし、これはやはり事態やむを得ませんでは通らぬと思うんです。いまとにかく、第一回目のやつが終わって、今度第二回目の織機の破砕、買い上げということを現に続けておるわけでありますから、そういう意味ではこのやみ織機というものは、地域別、業種別、企業所別に明確に調査をいたして措置をいたします。これはもうどういう措置かといったら、これはこれから相談をして措置をしなければならぬことであって、とてもいま通産省はそれをどうしますということを言えるわけではありません。まず、無籍ものを明るみに出して実態を把握して、それに対して措置をするということで国民の理解を得たい。もうイージーに、とにかく何とかやっておればまたそのうちに何とかなるだろうと、そしてそのときの責任は全部政府だと言われても、それはとてもだめです。私もいま裁判を受けているのでございますから、そこらはひとつしゃんとけじめをつけたいと、こう思います。
  28. 中尾辰義

    中尾辰義君 これは大臣、いろいろとほかの業界から横やりが入るかもしれませんですよ。大体、繊維業界相当がんばっていただいて、一部に、あまりに繊維は過保護じゃないかというような声さえあるのです。おれたちの業界にはさっぱり金を出してくれぬじゃないかと、こういうような声も起こってきますと、非常にこれはまずいと思うのですな。それで、せっかくこれだけしてもらったのを、いい調子になってとっとことっとこやみばかりふやして、片方はつぶして片方はふやす、どうもこれは予算編成の場合でもまだまだ問題があるでしょうね。これをどうするかということは、私はいまここで聞きませんが、しかるべく結論を出してうまくいくようにお願いします。  時間がありませんので、振興基金、今度新しくできたわけですけれども、運用方針あるいは成果の活用、これをどういうようにお考えになっているのか。  それから、振興基金が本法が廃止をされても五十七年の六月まで存続する、こういうことになっておりますが、どういう形でこれは残っていくのか。  それから、振興基金の新設で事業協会の業務内容、これは相当大きな資金を扱うようになるわけですけれども、協会のスタッフの充実、こういうことはどういうように対策をとられておるのか。  それからもう一つ、沖縄が五月十五日に復帰したのですが、沖縄の繊維産業の現状はどうなのか。  さらに、沖縄の構造改善、こういうのを今後どのように進めていくのか。それだけまとめて質問をいたしまして終わります。
  29. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 振興基金につきましては、事業協会の中に振興基金を置きまして、政府出資の十億円と今後民間からの出捐金を合わせまして、その利子並びに元本から、業界の、特に産地の組合が行ないます新しい商品の開発とか、新しい技術の開発とか、もしくは新市場の開拓等につきまして、産地組合等が事業をいたしますものにつきまして補助をするということになっておる次第であります。この運営につきましては、プロジェクトの選定のため委員会を設けて、通産大臣が一々プロジェクトにつきましては承認をするというような方式を現在考えておる次第であります。  それと、五十七年にどうするかということでありますが、この法律が四十九年六月三十日までで廃止になっておりますが、その廃止の段階におきまして、五十七年までのことをしかるべく措置するという法律になっております。したがいまして、四十九年六月のこの法律の廃止のときに、あらためて振興基金だけにつきまして法的な措置をすることになろうかと思う次第であります。  また、振興基金を運用いたします場合の事業協会のスタッフでありますが、すでに四十七年度におきまして、数名の事業協会の増員を決定をしておる次第であります。  次に沖縄の繊維産業でありますが、沖縄の繊維産業はほとんどが縫製加工業でございます。紡績業につきましても一社、沖縄紡績というのがございますし、その他織布業、メリヤス業等も若干ございますけれども、主体は縫製業であります。現在は、縫製業以外の繊維産業といたしましては、宮古上布とか琉球かすりとか、そういった沖縄の特産品がございまして、私どもはこういった特産品を中心にいたしましてできるだけ地場産業の育成につとめたい、かように考えておる次第であります。  なお、先生御質問の沖縄の繊維産業構造改善あるいは救済対策等につきまして、従来の本土と同じような取り扱いをするかどうかにつきましては、近く繊維局といたしまして再度担当官を沖縄に出しまして、沖縄の繊維産業の実態をさらに把握いたしまして、今後の施策につきましては検討してまいりたい、かように考えておる次第であります。
  30. 中尾辰義

    中尾辰義君 大臣振興基金ですね、これは政府が十億と民間出資が四十億、この民間出資の四十億というものは、これは大蔵省は税金をかけるのですか、どうなんですか。これは非常に心配をされておるようですが、その辺大臣に、ちょっとこの前聞いたのですけれども、大臣から聞いておかないと安心できぬので。
  31. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 民間が拠出する基金でございます。これに対しては、政府の出資も十億あるのでありますから、政府出資と同じように税金をかけないということでなければならないわけです。これはそういう方向で大蔵省と強力に折衝いたします。
  32. 中尾辰義

    中尾辰義君 まだきまっていないのですか。
  33. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) きまっておりません。
  34. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 最初大臣にお伺いいたしますが、日米繊維協定が締結されて、繊維業界に多くの波紋を起こしておるわけでございますが、これに関連して、繊維業界と繊維で働く労働者の団体である労働組合双方から訴訟が起きておるわけです。まあ新聞などでも報ぜられておるところでございますが、所管大臣として訴訟の現状について御報告をいただきたいと思います。
  35. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 訴訟を受けておりますことは、承知をいたしております。しかし、この訴訟の内容、その他送達があったかどうかというような事務的な問題は、政府委員からお答えをいたします。  私は、日米間の問題、これは日米間で締結をした繊維協定、これに対して訴訟をやっておられる方々も、この協定を無効にするということではないと思います。また、無効にできると考えておるとも考えません。私は、少なくとも繊維業界の中にも専門家がたくさんおられるので、これでもって二国間で行なわれた協定が無効になるとか、これに対して損害賠償ができるということではないと思います。何を企図しておられるのか——自身も全然全く五里霧中だというのじゃありません。何を企図しておられるのかは、おぼろげながらわかるような気がいたしますが、判例を求めるというケースにしても、なかなかむずかしい問題だと思います。だから、そういう意味で、こういう何かもっと別にやられちゃ困るという面もあるでしょうし、いろいろあるでしょうけれども、この訴訟というものはなるべく早く取り下げられることが望ましいと、こう考えておる、私自身は。私は、もう当事者でありますから、なるべく慎重に答えているわけでありますが、まあ国際的にはもっともっといろんな微妙な問題というものが出てくると思います、これからは。いろいろなことをなさなければならない。多国間、二国間いろいろな問題があると思いますが、この種のものに対しての法制上の問題ということは、私は、やっぱりけじめはついておると思うのです。そういう意味で、私は一生懸命——私は前から申し上げておりますとおり、二国間協定というのは望ましいということでやったのではなく、真にやむを得ざる二国の状態であって行なったものだ。だから、その影響はなるべく少ないように、できれば災いを転じて福となすように、国内的な政策は可能な限り最大の努力をいたします。日米間の協定に対しても、これは輸出を規制するというのではなく、長期にわたって日米両国において正常な貿易を拡大していくために設けられた協定だというように名実ともにするためには、日米間のコンサルテーションを通じまして理解を深めてまいろう、こういうことで、こういう態度を明らかにいたしております。そういう意味で、協定を行ないました直後から、繊維対策に対しては精力的な行動をいたしたわけでございます。まあ一部いま中尾さん述べられたように、どうも織機買い上げるというのじゃなく、織機は、またやみ織機がふえるというような、一時的な現象にしろ、そういうような状態ではないかというところまでいっております。  それから、日米の貿易の問題も、四十四年対四十五年といったのは四%から五%しかふえておらないのです。日米繊維交渉があったにもかかわらず、去年、四十五年対四十六年度の伸びは一九・一%である。第二の問題も、まあまあで済んでおります。  第三の問題は、四十七年の貿易の問題ですが、これは専門家会議において、そんなことを、もう繊維交渉の経緯から見ますと、アメリカが何ものむわけがないと議論されておった。言うならば、そういうためにも訴訟が必要なんだ、こういうことを言っておりましたが、私が国会で述べておりますとおり、よくのんだなというくらい、これはこの協定の前文、多極化の精神に徴して両国間で合意をしようということで、第三の問題も合理的に解決をしておるということでありますので一これで日米間が全部済んだなどとは考えておりません。まだまだ困難な問題もたくさんあると思いますが、とにかく日米繊維交渉を行ない、協定を締結する半歳の経過を見ておる限りにおいては、マイナス面というものは露呈しないで、何とか対応する政策というものは行なわれた、このように理解しておるわけでございます。  ですから、まあそういう意味では、どうもこの裁判というものは私にとっては心苦しいのです、実際。しかし、通商産業大臣なるがゆえに受けざるを得ないので、私が通商産業大臣の職を去れば、私のあとを襲う通商産業大臣が継続して受ける裁判でございますから、なるべくこれは私の在職中に片をつけたいと、こう思っておるのが真情でございます。
  36. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 五月十五日に、日本繊維産業連盟に加盟の帝人以下二十四会社個別に、アメリカ向けの毛・化合繊維製品輸出注意事項の取り消しという請求が提訴されたのでございます。これは昨年、繊産連が提訴いたしましたことに加えまして新しい提訴でございますけれども、これは実は、前回の繊産連の提訴が、繊産連は直接影響を受けない法人であって、原告適格性がないとされるおそれがあるという判断を繊産連加盟の方々がされたのであろうと思うのであります。それともう一つは、前回の繊産連の提訴の内容であります輸出数量ワクの設定ということにつきましては、実はその後、本年二月に新しく輸出数量ワクは設定をしてしまった次第であります。したがいまして、通産省において輸出注意事項としてすでに発表済みでありますから、請求内容としてはいわば無意味になったというような判断をされたものであろうと考える次第であります。  いずれにいたしましても、当方としては、この五月十五日の提訴につきましては、現段階における原告側の事務的な処理でもって、すでに予想されておった事務的な処理である、かように考えている次第であります。今後私ども、この提訴内容につきましては慎重に検討してまいりたい、かように考える次第であります。
  37. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 いま大臣からざっくばらんに心情の開陳があったわけですが、まあ大臣が、当然のことだけれども、責任を継承するこれは義務があるわけです。が、しかし、心情として、私の代に起きたものは私の代で処理したい、だからでき得べくんば取り下げて、きれいな形にして次の大臣に継承したい、そう言ったって、あと国会は二十日ぐらいしかないし、大臣は、次は総理に就任されるという非常に呼び声が高い。まあそうあとのことを考えずに、総理としてこの問題はやっぱり処理してもらわなければいかぬ。いまお話あった中で、大臣も御存じのように、欧米の習慣と日本の習慣は非常に違う。欧米の場合なら、争いごとというものはわりあい安易に裁判所に持ち込んで、裁判所の機関を通じてこれは解決していく、こういうことだけれども、わが国の場合ですと、どういうわけか裁判所に出頭するということは、これは命がけ、ほんとうにせっぱ詰まったという段階が普通だと私は思うのです。事ほどさように、この問題について労使双方が裁判ざたにするということは、それだけのやはりバックグラウンドがあるはずです。大臣のいまのお話ですと、おそらくこの裁判のねらいは判例を残す、あるいはこれによって損害賠償を取り立てるということじゃなくて、まあ副次的なものがあるだろうということであったわけですが、もしできれば、大臣がひそかに考えておること、あるいはそれをどういうふうにすれば、大臣の心情として述べられたように、この問題が落着していくかということについて、もう少し聞かしてもらいたい。  さらに、これは相手のあることだ、二国間で起きた日米繊維協定に基づく問題なんです。日本側のこの訴訟というものがアメリカ側にどのように作用していくか。これはまあ一カ月、あるいは隔月ごとに専門家会議というものが持たれておるわけですから、アメリカの担当者とこちらの担当者とこれはしょっちゅう出会って、具体的な事務処理なども行なっておるのが現状なんで、その辺の感触もお持ちだろうと思いますが、できればその辺の感触をお聞かせいただきたい。
  38. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私が裁判を受けておるんだということは、アメリカ側には事ごとに述べておるのです。それは実際、通産大臣はえらい被害を受けているんだと。これは日米間両国の大きな友好、経済交流、長期にわたる経済の交流ということを考えておるのでこの協定はできたのであるが、しかし、綿製品協定のように、ほんとうにもうきめたら、これは税関と主務省の役人がこの条文どおり読んで規制をするというようなものであってはならない。これは前文に意味があるのだと、これは規制の協定ではないんだと、これは日米間の正常な貿易を長きにわたって拡大、継続するための友好的な協定なんだというところにウエートを置いてもらわなければ困るのだということは、向こうもよく理解をしております。まあとにかく、二つも受けておるということですから、非常に理解をしておりますし、私も、なぜそういうことなのかということも説明はしてあります。だから協定というもの、それによって実際的に規制効果をあげるという協定は、日本の現行法制上は無理があるんだというような見方や読み方もあるんですと。これは・政府はそういろいろなことを考えておりませんし、適法な法律上のワク内で協定を行なったものであるということを考えておりますが、日本の繊維業界というものは、そのくらいこの協定による被害がある、この協定によって日本の繊維産業は大きな被害を受けるんだという前提に立っておるので、日本の繊維企業の実態も十分把握して、日米間でこの協定によるトラブルは未然に防ぎたい、こういうことを言っておりますから、向こうも。その意味で、非常にすなおな交渉が行なわれておることは事実でございます。まあ私は、業界というものが訴訟提起をしたものは、この種のものが起こってきては困るとか、それから三年が五年になっては困るとか、まあいろいろなものもあると思うのです。できれば自主規制というものでもってやっていくことが一番望ましいという考え方が訴訟提起ということになったわけだと思います。しかし、もう協定は締結してございますし、自主規制というものが望ましいことではあるが、これはいまあなたがいみじくも述べられたように、相手があることであって、相手が両国間でもって協定を結びましょうと、こういうことになりますと、かまわぬでおけば一方通行になる。昔ならば戦争になるということであるけれども、いまは戦争にはならぬけれども、いずれにしても、相殺関税をかけられたり、それから一時的な規制になったり、何月何日付対前年度実績の三%増し、こうなったんじゃあこれは身もふたもないことであります。それで、政府も実態を十分考えながら協定に踏み切ったわけでありますので、まあ協定に踏み切られ、協定は締結し、発効しておりますし、もうすでに半年間の歳月も経ましたし、業界が非常に心配をしたような状態もだんだんなくなりつつあるしということでありますから、どうすれば引き下げてくれるかということを言ったって、なかなかこれどうも……。私も、まあ二千億もあるあの措置をしたのですから、お取り下げになったらどうですか、こういうところまでいったんですが、業界は返事もしない、黙して語らずということでございますので、いまのところ私は、どうすれば取り下げるのかという、どうもさだかな見通しがないわけです。ないわけですが、まあ業界の提訴いかんにかかわらず、政府は日本の繊維企業のための必要な政策は行なう、誠意をもって行政を行なう、こういうことであると思うのです。そうすれば、やがてこれにこたえるだろうという気持ちもひそかにはありますが、もうどうしてくれなきゃいかぬというような突き詰めた考えは持っておらぬわけです。
  39. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは私、蒸し返しをするつもりは全然ないので、いま大臣もおっしゃったように、これは前二代の大臣が未処理事項、まあ佐藤さんの荷物を大臣が買って出たと、大臣自身も、一番国と国との交わりの中でいいのは自主規制だということはおっしゃっておった。協定を結ぶことはそれはよくないということをおっしゃっておった立場の人ですから、そのことは私も、よく大臣の口から聞いて知っておるわけなんです。  そこで、まあしばしば大臣の口から出ることだけれども、今度の政府間協定というものは、前文に意味がある。要するに、いままでの日米の繊維に関する貿易量をストップさせるものでもなければ、凍結するものでもない、友好の中に日米の繊維というものを安定的に拡大していこうというものなんだと、しかも、二国間協定を結ぶことによって、それまでいろいろな問題が派生しておったけれども、それがこれで全部もう相済みだ、それであとは正常な形で発展していくんだ、総ワクも伸びるじゃないか、こういうことだったわけです。まあ私は、正直にそう受け取っておったわけなんです。ところが、まさに突如としてこれを否定するものが出てきた。それが毛・ポリエステル混紡織物の関税差しとめだと思います。これはもう私がくどくど言うまでもなく、四十六年の三月に、これはアメリカの業界から提訴された非常に古いもんです。その後に、日米繊維協定というものが締結され、しかも、この関税差しとめになった品目というものはその中に包含されておる。そして、現に日本からのアメリカヘの輸出量というものも、その意味において激減している。したがって、アメリカにおいて、この業者が市場を混乱せしめたり、あるいはアメリカの業界を不当に圧迫しておるという事実は全くない。にもかかわらず、五月十日には、財務省の関税評価差しとめという、私に言わせれば、暴挙なんです。それをあえてしているという現状、これは大臣、先ほど言った日米繊維協定の前文に背馳する行為である、挑戦であるというふうにとっても差しつかえない。だから、繊維協定のワクにはめられた者から見るなら、大臣はそのように言ってなだめておるが、現実にこれはどういうことだと。しかも、これが三カ月後に結論が出るとするなら、いまのアメリカの姿勢でいくなら、それは合繊に及ぶ、あるいは他の繊維以外の品目にも波及しかねないという危惧すら抱いておるわけです。大臣は三カ月後に結論が出るであろうから、しばらく様子をながめるというふうにおっしゃっておるように私は聞いておるんですけれども、そういった甘い態度でいいかどうか、この辺の事情や聞かしてもらいたいと思います。
  40. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 米国のアンチダンピング法の運用は、国際コードに対して種々問題があります。また、最近問題になっておるいろいろな問題は、どうも日米繊維協定をやったような精神からいうとおかしいじゃないかという感じがいたします。そういう意味で、私はサンクレメンテ会談において、あなたがさつきいみじくも述べられたように、アメリカはぼんぼんと提訴するけれども、日本は非常に慎重なんだと。東洋人というものは裁判をするとかたき同士になるからということで、非常に慎重なんだと。そういう意味で、事前に調整できるような機構をつくろうということで、専門家会議の設置を私のほうが提案をしまして、向こうはあっさりのんだわけです。財務省としては、確かにそうですと。自動的に受け付けなきゃならぬようになっておりますから、この運用に対しては両国が事前に調整をするように専門家会議の設置に応じますと、こういうことになったわけです。ですから、現に専門家会議はあります。ありますから、この専門家会議の場を通じて、日米間のいろいろな事情、情報交換等をやっておるわけです。やっておりますが、いま関税評価の差しとめの問題は、これは前に出しておったものを受け付けておるわけです。ちょうど裁判提起をしておるいまの繊維裁判みたいなものなんです。これ出しておれば、取り下げない限り、ずっと進めなきゃならないということなんです。ですから、もうそれは済んだんじゃないかと、こういうことであって、実害がない、そういう問題でありますから、もうこれは業者が取り下げてしかるべきケースのものであります。ところが、業者がずっとこれは取り下げないものですから、法律的に処置されておるということで、あと三カ月の間には結論が出るわけです。向こうの制度がそうなっておりますから、制度に乗っておりますから、重大な関心を持ちながら、事態の推移を見守っておりますと、こう公式には述べております。しかし、毛織物等のダンピングにつきましては、ワシントンの大使館に対しまして、お互いの話し合いがあるんだし、こういう協定をあとで結んでいるじゃないかという事情を説明するまでもなく、にもかかわらず、適法な提訴でありますから、適法に処理はしなければなりませんという四角定木なことでは困るじゃないかということを、強硬に申し入れるようにということを大使館を通じて申し入れております。向こうも日本側の考え方はよく知っておるはずなんです、日米間の接触はありますから。そのつどこのようなことをやりますと、日米間の、また反米熱をあおるようになりますから、そういうところはうまくやっぱり処理してもらわなければ困りますよというような状態でございまして、この問題、結果的には実害はないと思うんです、こちらに対しては。ただ、あなたが言うように、もう協定前のものを四角定木に審議しなければならぬということもないじゃないかと。もう一つは、これをやると、次にもまたいろんなものに及ばないという保証がないということでありますから、本件に対しては、日米間十分ひとつ意思の疎通をはかって、こちら側の意向は十分アメリカ政府側に伝えたいと思う。
  41. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは大臣ね、非常に私は重要な問題だと思うんですよ。なるほど毛・ポリエステル、この問題それ自体については、さして輸出量の現状から見て実害がないということは、これは語弊があることばだと思うけれども、そういうふうに近いことだと私も思う。だけれども、このダンピングを持ち出したアメリカ側の背景ですね。要するに、彼らがわが国に来て、そうして店頭で売りさばかれている商品を見て、そうして強い意思をもってこの問題を取り上げた。どういうことかといえば、国内価格より安いものはダンピングだと、これはまさにナンセンスでね、こんなばかげた話ないでしょう。これは世界各国どこへ行ったってあたりまえのことなんです、こういうことは。この手で、これはダンピングという形になれば、それはアメリカに輸出している品物の全部が適用されますよ。文句言えないですよ。しかも、アメリカの慣習、ものの見方、考え方というものを他の国に押しつけてくるということはけしからぬことだと思う。だから、私はじっとながめておるということじゃなく、現に四月二十七、八日にも専門家会議が開かれておるわけですわね。サンクレメンテがあった、そこで大臣が約束した、それもほごにされ、四月二十七、八日になるほどアンチダンピングの専門家会議を開いた。しかも、それもほごにされた、五月十日に。こういうことになっておるんでしょう。だから、向こうは聞く耳を持たないということじゃないですか。だからね、大臣はアメリカに一番強く言っておるし、折衝の過程ではっきりものを言っておるということも私も知っておる。しかし、この問題は日米繊維協定そのものにもまさるとも劣らぬような私は波及的な効果が出てくると思うので、やはり強く抗議すべきだと思うんですよ。
  42. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 強く抗議をするようにいたしておるんです。そうして私のほうからもこの問題に対しては述べております。しかも、アメリカに対する輸出価格、アメリカ国内における販売価格は、日本の国内価格よりも安い、これはあたりまえのことだと。日本人がスイスへ行って時計を買えば、スイスの国民よりも二割余り安く買えるんです。それはあたりまえのことなんです。物品税や消費税が、国内税が適用されていないから、その税だけ安いにきまっておる。そんなことをわからないで、一体ダンピングを言っているんですかと、こう言っておるんですから、ですから相当強いことを言っているんです。だから、結果は、私は思うようになると思うんです。  ただ、これほどやっておるんだから、アメリカ政府もこれを取り上げて財務省に送ってしまうということはおかしいじゃないかということがあるんですが、これは法律上の制度になっておる。ちょうど私のほうでいま話はわかっておっても、やっぱり提訴をすれば、取り下げない限り、公判もやらなければいかぬと、これと同じことなんです。これはやっぱり訴状の送達も行なわなければならぬ。行なえば、それに対して答弁書は自動的に出さなければならぬ、こういうことになっておりまして、財務省はこれを受け付けると、当然処理しなければならぬ、何らかの結論を出さなければいかぬと、制度上そうなっておるようでございます。それにしてもというところまで述べておるわけですが、いまのところ通産省でも、一体、途中なかでもって、提訴に関しては、もうすでに提訴を却下するというようなことができるのか、途中なかにおいて行政権がそういうことができるのか、何らかの結末をつけなければならぬのか、そういう制度上の問題も検討させるようにしておりますし、それまでの間、政府間においては接触を続けながら、日本側の立場や考え方、これはもう終わっている問題じゃないかというような問題は強く申し入れておるというのが実情でございます。だから、これは政府が、これはもう済んでおるのだから、提訴当時の状態とは変わったので、このまま返却をするという手があれば別でありますが、いずれにしても、判決を出さなければならないということであれば、これは制度上のものでありますので、いかんともなしがたいので、日本人に不利益にならないような裁定をするように働きかける以外にはないわけであります。
  43. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これはひとつそういった意味で、私強く、どこに出したって恥ずかしくないわけだから、やっていただきたいと思います。  その次に、LTAの延長問題について、前回大臣お見えじゃなかったので、政務次官からLTAの再々延長については反対である、このことを文書をもって通知済みだというお話があったと思うのであります。さように理解してよろしいわけですね。
  44. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 綿製品協定の延長ということに反対をいたしております。だから、延長を前提とする会議には出ない、こうまで私も言っておるのです。ですから、お互いが意見交換をするとか、勉強をするとかという会議ならいいが、いずれにしても、基本的に延長するということに対しては反対でございますということは、明確に述べてございます。
  45. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 その後、十六日にジュネーブで非公式なアメリカとイギリス、EC、日本との四大国会議があって、たしか通産省からも繊維雑貨輸出課長が出席されたと思うのです。その後、二十九日にガットの理事会が開かれておるはずなんです。そこで、六月の初旬に開催されるガットの綿製品委員会、あるいはいま非常に取りざたされております毛・化合繊の多国間取りきめ、WPの問題これらについての話は当然出ておると思う。その会議の経過と、それから一連の見通しについてお聞かせいただきたいと思います。
  46. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) ジュネーブにおきまして、五月十七日に主要国の非公式な会合が開催されました。その非公式な会合の席上、先生指摘の繊維のWPの問題につきましても、議題として取り上げられております。日本からはそのときに、繊維雑貨局の輸出課長も陪席いたしておりますが、十分に日本の立場というものを説明をしてございます。なお、五月の二十三日にガットの事務局が中心になりまして、繊維貿易に関心の深い数十カ国が集まりまして、これまた一つの議題といたしまして、ガットの繊維WPの問題が討議されたのであります。このときも各国からそれぞれ意見が出たのでございますけれども、わがほうは北原大使から強く日本の立場を説明してございます。なお、五月二十九日にそのガットの理事会がございまして、ここでもWPの問題がその他の議題として取り上げられておるわけであります。来月の初めにLTAの機関でありますCTCが開催されるわけでありますが、これは本件、WPとは関係がございません。  私は、以上申し上げました三つの会議におきまして、わが国といたしましては、ガットのWPで、それが世界の繊維貿易の実情を深く勉強する会合であるならば、日本としてはあえて反対ではない、しかしながら、そのWPが将来国際的な繊維貿易の規制に発展するようなおそれがあるならば、日本としてはそのWPの設置については反対である、かような意見を明確に表明いたしております。現在までのところは、WPの性格はファクトファインディング、事実の勉強であるということに各国の意見もおおむね同調を得ておるというような段階であります。
  47. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 いままでの非公式会談、あるいは理事会の経過で、いま主としてわが国のLTAに対する問題、それからCTCに臨む態度、WPについてのものの考え方が説明されたわけだけれども、その経過は他国も了承して、そして当初取りざたされていたように、今度開かれるもろもろの会議は、あくまでも勉強会にとどめる、それが発展していくということはないというふうに理解していいものかどうか。要するに、LTAの再々延長はもうやらないということ、もう一つ心配されるのがWPでしょう。それは一応、いまの段階で他国も了承して消えたというふうに見ていいものかどうか、もう一ぺん聞かせていただきたい。
  48. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 先生指摘のように、問題が二つございまして、ただいま申し上げましたのは、ガットの場における繊維全体の勉強会をやろうというWPの経緯について御説明申し上げた次第であります。これにつきましては、繰り返しますけれども、日本としては、繊維に関する世界貿易あるいは各国の繊維産業政策、実態というものを単に勉強するという会合であるならば、WP設置について反対ではないという態度をはっきり言っておるわけであります。WPの性格はファクトファインディングであるということについておおむねの同調を得ております。まだ設置についての最終決定はなされておりません。したがいまして、私ども今後ともそういった性格に限定して賛成であるという保証を極力取りつけるべく、ただいまその努力をしておる次第であります。  それともう一つ、LTAにつきましては、それとは別に、LTAの条文上、LTAの切れる一年以上前に会合すること、というふうになっております。したがいまして、その第一回の綿製品委員——CTCが六月の初めに開かれることになっております。これは実は従来の慣行からいたしますと、これまでのLTAの実行状況をレビューするということがまず第一の議題であります。来年九月三十日に切れますLTAの再々延長ということも、もちろん話題としては出ようかと思うのでありますけれども、今回のCTCはまず過去のレビューであるということでございます。私ども、かりに再々延長の問題が出ました場合には、大臣おっしゃいましたように、従来とも文書で出しておるわけでございますから、筋として再々延長は反対だという態度を表明するつもりでございます。
  49. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 LTA、もちろん過去の実績をレビューするというのは、それは一つのセレモニーだろうと思うので、これはLTA自体がちゃんと法できめられて、期限切れ前に開催されなければならない。その主要議題は何かということであれば、さらにこれを延長するか、あるいはやめるかということになるのは、これは当然なんだから、文書で出すだけじゃなく、やはり声を大にして、延長反対を絶えず打ち出してほしいと思うんです。  それから、WPそれ自体についても、これは直訳すればやはり作業部会でしょう、これ、本来勉強会じゃないですね。作業部会なんだから、作業部会ということになれば、必然的に現在の世界の趨勢というものは、先ほど大臣のお話の中に、繊維産業というものはきわめて複雑なものであり、しかも、それはわが国の繊維産業だけじゃなくて、国際間においてもう網の目のようになっておる、何とかこれをほぐして整理しなければならない、まあこれが国際的な通念だろうと思う。そうだとすれば勢いのおもむくところ、日本を除く他の国は繊維全体についての多国間協定というものを腹の中に持っていると見なきゃならないわけだ。だから、それでLTAの延長そのこと自体われわれ反対であるが、それがさらに多国間協定へ毛も合繊も含めた形で移行する形があるぞということで、われわれは反対だぞと、政府もそうだぞということを前々から確認し合ってきているわけだ。だから、それを私は非常に危惧するわけなんで、それはもうだいじょうぶだと言われればそれを信用する以外ないんだけれども、最初、勉強会なら出る、しかし、目的を持ったものなら出ない、そういう姿勢も一つの方法かとも思うし、よその国とのつき合いというものもあるかもしれぬけれども、それは勉強会なら勉強会で終わるなら、それは先ほどおっしゃったように、繊維に関心のある輸出国の五十数カ国が集まった、こういった会合があるからWPとして招集されるからには、それは私はやはりもちろん勉強もする。しかし、同時にそれが一つ方向づけをたえず導くものであろうと思うのです。ただ行って勉強してきたということだったら、どこの国の代表も行くわけはない。そんなものは資料は幾らでもあるのだから、ここでもわかっているのだから、だから、その辺の見通しがもっと明確に答えられなければ、私が決算委員会で質問しても、勉強だからとおっしゃるが、衆議院の会議録見ても勉強会だと、勉強だから出ます、しかし、延長には反対です、それだけではやはり関係するところは不安でならないだろうと思う。だから、もうちょっとはっきり答えてもらいたいと思う。
  50. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日本は再々延長には反対であるという基本的な考え方は述べてあります。そしてこれを延長するということを目的にした会合なら出ません、こう言っている。そして、勉強会なら出ます——それはお互いに主要国でもあるし、日本の参加しない国際会議ということももうこのごろはおかしいようにもなっておりますし、日本自体の利益を守る意味においても、やはり主要国の意向というものをお互いが語り合い、話し合い、意思の疎通をはかる、これは必要なことであります。そうしなかったら国益は守れない。出ないというだけで済むものでもありませんから、そう言っておるのです。その中にはやはりあなたが危惧するようなことがあるのです。それは二つばかりあるのです。それは、ガットの事務局の代表は、何かやっぱり延長問題を全然話をしないということじゃ困る、それもやはり当然みなひっくるめて議論すべきである、こういう意向を、公式ではありませんが、間々述べていることは事実です。私も、会うとそういうことを言うものですから、それならもう出ません、こう言っているのですが、向こうはもう出ませんと言って、日本が出ない会議は困るからということで、執拗に言っているわけです。アメリカ側の代表は、やはりそれは全然勉強会であって、これは一体延長すべきかすべからざるべきかという問題は全然考えないという会議はあり得ないのじゃないかと、だから日本のように、全くの勉強であって延長に対しては余地がないのだ、そういう話がその片りんでも出たら退席いたしますという考えはかたくなではないかというような話が一部にあるようであります。これはしかし、通産省に言ってきているということではなく、これは外務省ベースで、何でも話し合うというのが勉強じゃないか。また日本の外務省も、それは全然そういう問題になったら直ちに退席いたしますということではなく、勉強はするが延長はしませんよ、延長には同意しないですよということさえ明確にしておれば、会議には出席すべきである、そしてそんな問題を各国が話したら黙って聞いておればいいのだ、そうでなければ国際会議というものは成り立たないじゃないかというような非公式な話はあります。ありますが、そこらを出先と通産省は十分に連絡をとって日本の立場というものを明らかにしておくようにということを、いま私からも注意をしておるのが実情です。
  51. 大森久司

    委員長大森久司君) 午前の質疑はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      —————・—————    午後二時七分開会
  52. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  午前に引き続き特定繊維工業構造改善事業臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  53. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 次の質問に移る前に、実は、先ほど私がLTAの問題で質問したわけでございますが、その中で略語でございますが、CTCとWPの二つ委員会がガットの場で持たれておるわけでございまして、それぞれについてそれぞれの案件があるわけで、それに対する政府の御所信と、そしてそれが持つ機能についていろいろお伺いしました。御答弁の中で多少両者の委員会が混同しておるような聞き取れ方もできるようなものもございましたので、この際、大臣のほうから二つに分けて、その機能と、それに対する政府の態度というものについて、もう一度説明していただきたいと思います。
  54. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) LTAの問題につきましては、延長しないというように、基本的にはわが国の態度は明らかにせられております。でありますので、LTAに基づいて、CTCにおきましては延長問題には反対するということになっておるわけでございます。  それからもう一つは、先ほど申し上げましたように、ガットのWPにおきましては、これはLTAの問題とか、それからCTCで議論すべき延長の問題等は、これは全然別の会議でありますから入ってこないはずでございます。はずでございますが、同じガットの会議でありますので、ここで綿製品を含めた多国間協定とかが議題にされるなら、その会にも出ませんと、こう私のほうでは言っておったわけであります。ですから、いや、それはあくまで勉強会である、勉強会であれば勉強することは当然でございますので、私のほうは出ます、こういうふうに言って出ておりますと、ところが、あなたから先ほどまた質問がございましたので、しかし、ここではもう全然性格も違う会議でございますし、議題にはならないはずの会議ではございます。しかし、ヨーロッパのある国、またはアメリカの代表などは、やっぱりここで勉強するのだから、勉強の過程において多国間協定の問題とかが全然出てこないというのもおかしいので、出てきても、それは勉強の過程であって、あらかじめ予測を持って議題としてやるのじゃないからいいじゃありませんかというような発言はありました。発言はありましたが、いずれにしても、CTCにおいても、WPにおいても、日本は綿製品協定の延長問題や繊維の多国間協定問題は一切述べませんという原則をくずしておりませんというのが、この二つの会議における日本の基本的態度でありますので、明確に申し上げておきます。
  55. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 その態度でひとつ、午前中申し上げましたように、しっかりやっていただきたいと思います。なお、午前中の議事録の面で、もしあとで読み返してみて、そういったものが錯綜する面があったら、いまのような形で訂正していただきたいと思います。委員長、その点お含みおき願いたいと思います。  その次の問題で、多くの委員からもうすでに述べられたことでありますが、やはり確認の意味で触れておかなければならないと思いますのは、無籍織機の問題でございます。決算委員会のおりにも私、取り上げて申し上げたわけでございますが、いずれにいたしましても、現有織機が六十四万五千台あるわけでございますが、それに対応して八万台に及ぶ無籍織機が現存する。しかも、これが十数年にわたって、減るどころか、漸増の傾向にあるということ、しかも、昨年の八月二十五日に無籍設備取締り要項という、かなり通達としてはシビアな通達を策定いたしまして、全国にこの無籍織機というものを取り締まる体制を整えたわけでございます。これには、明らかに無籍織機であるということは法違反を犯すことになるわけでございますから、罰則規定として告発などの措置もとれるようになっておるわけです。何といいましても、この無籍織機というのは、きつい言い方をすれば、これはやはり無法者でありまして、法違反、そうして通産省においても、やはり取り締まりの所管としてその責めが問われなければならない問題でございます。しかし、しばしば大臣も答えておられるように、あくまでもやみなんだと、やみだからやみだと、わからないというのも、繊維の実情というものをよく調べれば、やむを得ぬと言ったら語弊がありますけれども、そうかなという面もあるわけなんです。ただ、この際、構革を二年延長するということになりますれば、やはりこのやみ織機というものが非常に問題になる。先ほど中尾先生もおっしゃったように、一つには二千億からの金をつぎ込んで構革によって設備近代化し、適正な競争力をつけていこうとしておる中で、なおやみ織機が現存するということは、やはり何といってもこれは国民の血税を使うわけですから、他の団体に対しても申し開きができない、私はそう思うわけです。そういう意味で、やみ織機問題をただ単に、いまやみだから明るくするんだと、とにかく、それが先じゃないかというだけでは私は済まされないと思う。やはり今後のこともあるわけですから、過去にそういう例が現にあるわけですからね。だから、そういう延長をたどるということは想像されるわけですが、やはりペナルティーを科すべきだと、私はそう思います。科してもらいたい。やはり行政というものは公平でなければならない。だから、いままでまじめにやっておった人たちに負担をかけておることは事実なんです。そういう意味から、私はペナルティーを科してもらいたい。そのことがえりを正す方向であると思うのです。そういう意味で、どういう方策を現在とっておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  56. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) やみ織機が違法の物件である、これは当然団体法によれば違法のものでございます。やみでありますから、その実態を捕捉しがたいということでございますが、国民の血税をもって買収、破砕をしておるわけでございますので、このままやみ織機を見のがすというわけにはまいりません。そういう意味で、やみ織機、やみというものを明るみに出すということで、実態を調査をするということで、全国的に実態調査を開始いたしたわけでございます。七万台ともいい八万台ともいうのでございますが、とにかく、御指摘になりましたとおり、六十四万台の一〇%強も存在するわけでございます。これを明るみに出して、以後やみ織機が絶対に存在しないようにしなければならないわけでございます。これは将来の問題というよりも、今度やっぱり税金を使って処置するのでありますから、少なくともこういうふうにいたしました、あとは絶対にありませんということにしなければ、これは予算の執行もできないという問題にもなるわけであります。そういう意味で、やみ織機を明確に捕捉して、把握して、そしてそこで処置をするわけであります。凍結にするのか封印をしてしまうのか、破砕処分にするのか、いろいろな問題ございますが、破砕処分にせよ何にしても、登録織機と同じに扱うわけにはまいりません。そういうことは全然できないことでございます。ですから、ペナルティーといいますが、ペナルティーということは、いずれにしてもスコアは認めるということでございますから、認めるかどうか。ちょっとまだ実態をつかんで——それは買い上げるということを前提にしてはおりません。おりませんが、何かしなければいかぬ、封印にするかどうするかということなんですから。そして、このやみ織機というものに対するペナルティーは確かに科すということは、これは絶対的になると思います。それは相当過酷なものになるかどうかは別にしまして、いずれにしても、これを機会に、以後無籍織機が存在しないようにしなければならぬと思います。もう一つは、登録だけあって機械のないものもあるようであります。だから、そういうところを全部ひとつ明るみに出して、国民がやっぱり納得することをなさなければならぬと思います。  それで、あとは組合とかいろいろな産業組織との問題になりますが、なおまだ無籍が出る、出ないとは保証しがたいということになれば、それは今度援助を打ち切らなければならぬということにもつながってくるわけでありますから、そういう意味では、ひとつ国民の前に国会を通じて明らかに——現在の処置と将来の処置をつなげて、国会でもって明らかに政府の考え方を申し上げられるような措置をいたしたい、しなければならないだろう。困難な話なんです。話なんですが、やっぱりやらなければいかぬだろう、いけない、こう思っております。
  57. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 局長に再度お尋ねしますが、いままでもこれ、十数年かかって関係書類、これは局長が就任される以前からの問題なんだろうけれども、いままでのやみ織機調査するための関係書類が二百ほどあるというようなことを私聞いておる。それなりに努力なさったんであろうけれども、その努力のしかた、方法がやっぱり間違っておったと私は思うのです。それが証拠に、これだけのものが現に出ておるということ。だから、ただ単にいままでのやったことと同じような方法を講じて、たとえば、人を単にふやすというようなことでは、私はなかなかこの実態というのは把握できないと思う。現に八万台の織機というけれども、八万台を所有しておる企業主が二万人おるということは、一軒に四台の織機ということです。一軒に四台の織機ということは、倉庫なんです。倉庫に置いておって、そして百姓片手間にガチャガチャ動かす。これだってできるわけです。しかもそういったものが、完全な自分が企業としていまやっておるのじゃなくて、いろいろなつながりの中から、原糸をもらってきて賃加工しておるというような複雑な問題もあるわけです。しかし、同時にまた、一割強の織機がやみで動いておるというが、それは現に流通しておることも事実なんです。ですから、波及効果ということも非常に大きいわけです。そういう意味で、これは団体法に違反しておる無籍ものだ、正直者がばかを見る処置はいけない。それも当然だけれども、この品物が現に動いて価格構成をして、原糸原綿をそこで消化しておる、そうしてさらにその下請に、何というか、仕事を持たしておる、これも事実ですね。こういう点、非常に私は複雑だとは思うんです。だから、明るみに出す方法と、明るみに出してそれをかりに、まあ第二登録ということばは語弊がありますけれども、凍結する凍結のしかた、そしてそれの期限、それからそれを優先的に処置していく方法、そうした場合のその仕事を持っている人たちの生活の転換、これはいろいろの問題があるんです。だから、ペナルティーのかけ方もその辺の旗振りによって非常に混乱をする。しかし、これを認可するわけにいかぬし、ペナルティーを科すべきだ。まあややこしい仕事をしょい込んでいると思うんです。先ほど大臣もおっしゃったように、構革をここでぱちっと十億も出資していくならば、これをはっきりしなければ、ここで申し開きは立たぬと思う。その辺をよくひとつ考えて処置してほしいと思うんです。私の気持ちとしてはペナルティーを科すべきだという前提に立って申し上げておるんです。その辺のひとつ局長としてのお考えをお聞きしておきたいと思うんです。
  58. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 先生がおっしゃいましたように、現在のやみ織機は、言うまでもなく、違法の設備でございます。したがいまして、従来十数年間やみ織機の措置につきまして努力してまいったのでありますけれども、問題は、八万台以上、あるいは二万企業とも言われるこれを一律に、一時に処理することは、言うべくしてきわめてむずかしい問題がございます。しかしながら、これを従来方式でもって処理するということでありますと、やはり現在なおかつふえつつあると言われておりますやみ織機、これについても同じような状態になってしまうわけでありまして、したがいまして、大臣が申されましたように、ただいまやみ織機の全面的な実態把握ということをいたしておる次第でありますが、その実態把握ができました暁におきまして、やみ織機の台帳を整備いたしまして、現時点までの現存するやみ織機についての今後の措置につきまして、適切なる方途を考究したいと思います。それと同時に、これから発生するものにつきましては、厳重な取り締まりをして、少なくとも現在以上にやみ織機を増加しないように、そのような方向でもって措置をするつもりでございます。もちろん申し上げるまでもなく、いずれも違法の行為でありますから、法律的なしかるべき措置はしておるつもりでございます。
  59. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 それでは、次の質問に移りますが、今度新しい措置として振興基金が設定されるわけでございまして、政府からの出資金が十億、業界からの出捐金が大体買い上げの一割ということでございますから、かっちり言って三十六億、トータルにして四十六億から五十億をめどにされておる模様ですが、しかし、現実には出資金十億は出るとしても、出捐金についてはこれは七年がかりで、七年先に資金が大体三十六億と十億という形になるわけです。そうなると構革それ自体の期限が二年間、基金はそれからさらに八年延ばしていくということになっておるんだけれども、まあ大臣の先ほどの御答弁も、二年間で実際できるのかといえば、やりますということだけれども、それはやると言わざるを得ないわけです。ぶちまけたところは二年間でできっこないわけです。さらに二年も三年もかけて繊維産業というものはやっぱり立て直していかぬと、ここで求めている姿には私は到達しないと思う。そうなってくると、基金設定ということが一つのうたい文句になっておるけれども、あまりにも小額ですね。で、この基金の益金を運用していろいろ助成措置を講じていこうというねらいもあるわけですが、これも非常に微々たるもので、これで実際問題として、ここに網羅しておる、趣旨提案説明の中にあるような事業ができるのかどうかですね。しかも、当初の二年間というものは何がしもないわけでしょう、金が。現実にはどういうふうにこれを運用しようとしておるのか、その辺のところを聞かしてもらいたい。
  60. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) ただいまの私どもの計画におきましては、四十七年度におきまして十億の政府出資、それと業界からの出捐金は先生お話しのように、ほぼ買い上げ代金の一割相当額を七年間で分割出捐するというふうなことを考えております。しかしながら、業界におきましては、一割相当以上出そうというような意欲のある業界もございます。したがいまして、七年間の均等分割では必ずしもなくて、場合によっては、それ以前により多額なものを出すというような業界もございます。しかし、いずれにいたしましても、初年度は十数億円程度であろうかと思います。ただ私ども、振興基金の今後の運用につきましては、これは繊維産業のいわば大きな質的向上、質的な繊維産業の体質向上という大きな流れは、非常に長期にわたる施策の一つであります。したがいまして、むしろこの基金を火種にいたしまして、業界がまたみずから質的ないろいろな研究開発をしていく火種というような意味合いもございます。したがいまして、当面初年度、次年度は十数億もしくは二十億程度で、私どもはこの基金の性格としてはほぼ目的を達成するであろうと、かように考えておる次第であります。
  61. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは法律の中にも、そして提案趣旨の中にもあるように、いまおっしゃったように業界全体の、いわば繊維産業の体質を強化するというのが目的だと思う。私、仄聞するところによれば、個々の企業がこれを出していくわけではなくて、業界ごとに出指していくわけだから、その出捐金についてややもすればひもがつきかねない。で、いろいろなばらつきが出てくると思うんですよ、出捐金について。そうして、繊維産業というのは全部有機的につながっているというものの、それぞれにやっぱり村としての特性がある。だから村々で出した出捐金を村のために持って帰るということであれば、私は基金の意味がなくなると思う。だから出捐される多寡に応じて発言力が強くなる、そうしてその村の運用に充てるというようなことがあってはならない。これは私当然、お答えになるならばそれはそのとおりだと、繊維産業全体に使わなければならないというふうにおっしゃるだろうけれども、現実には非常に私、むずかしい問題だと思うんですよ。で、現にそういった動きがあるやに聞く。で、この辺について、私は、少なくとも今後の基金については、繊維産業全体のものとして、ただばらまくんではなくて、効率的に、しかも重点的にこれを運用しなければならない。たとえて言うなら、繊維産業で何が一番足りないか、それは流通部門だと、流通部門が一番おくれている。あるいは加工のもっと体質を強めなければならないというなら、他の村には全然顧みなくても、そこに重点的に使うというような、私はどちらかと言えば、もっとドラスチックな方法を考えなければ死に金になるというふうに思うので、その辺の考えをひとつ聞かしてもらいたい。
  62. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 先生おっしゃいますように、この振興基金繊維産業全体のためのものでございます。したがいまして、基金の使用につきましては、効率的にあるいは重点的に使うことは、これは当然でありますが、私ども基金の運用方法につきまして、それを担保にできるような一つのやり方を考えている次第であります。現在考えておりますことは、事業協会内にプロジェクト選定のための委員会を、要するに、学識経験者あるいは通産省の私どもが参加いたしまして、プロジェクト選定のための委員会を設置する予定になっております。その委員会で決定されましたプロジェクトにつきまして、通産大臣がさらに承認をするという方式でもって、先生おっしゃいますように、繊維産業全体のために効率的、重点的な配分ができるような仕組みを考えている次第でございます。
  63. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 それはひとつ大臣、思い切って重点的に私、全体のために使ってもらいたいと思います。大臣の承認事項ですからよろしくお願いしたいと思います。  時間がありませんから次に移りますが、検査機関についてお尋ねしたいと思うのです。  現在、国の検査機関とそれから各業界が持っている検査機関とがあるわけです。いまわが国に検査機関が幾つあるか、それから国の検査機関と各業界が持っているところの検査機関の機能ですね、具体的な仕事をどういうふうに分類しておるのか。私非常にこれ複雑だと思うのです。たとえば輸出縫製の検査協会というのがある、その前段階に染色の検査協会があり、合繊の検査協会がある。たとえば服を一着持ってきても、この中にある素材ということになれば、毛もあれば、綿もあれば、羊毛もあるといったごとく、繊維というのは複合されておるわけですから、そういう意味で私、お聞きしておるので、いま検査協会というものが幾つあって、国の検査協会と事業協会との関係、そして、事業協会相互の検査機能、それについて聞かしてもらいたいと思います。
  64. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 現在、国の検査所は全国で十カ所本所がございます。その十カ所の本所の下に、八つの支所と十一の出張所がございます。また、民間の検査機関、輸出検査法で指定されております指定検査機関は、現在十五の協会がございます。事業所は約二百八十程度でございます。  次に、国検と指定検査機関の業務の区別でありますけれども、国検は、法律上のたてまえからは指定されております全繊維製品について検査ができるたてまえになっております。しかしながら、現実には民間検査機関が検査をいたしておりません整理後の絹、人絹織物、この二品目を国が検査を実施いたしております。そのほか国検の業務といたしましては、当然でありますけれども、民間検査機関の指導、監督、あるいは品質表示法の試買テスト等の分析、または工業標準化法によるJISの審査等の業務をいたしております。  民間検査機関のほうは、ただいま申し上げました絹、人絹織物以外の指定繊維製品全部を十五の協会がそれぞれ分担をし合いまして、輸出検査を実施いたしておるわけでありますが、輸出検査のほかに民間検査協会の仕事は、最近の内需の依頼検査、試験鑑定業務等々の仕事もあわせて実施をしておる次第であります。
  65. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 実態は私、国と民間の検査協会との関係は一応そういうふうに分けられると思うのだけれども、民間の検査協会ということになると、実際はなかなかそう厳密に民間相互間の検査機能というのは私、分けられないというふうに思うのです。  もう一つ、検査義務を課しておるわけだけれども、検査して、そして製品輸出しますね。輸出先からクレームがくる、クレームがくると、クレーム処理は検査協会というものを通さずにそれぞれの輸出業界に返ってくるわけですね。そうなってくると、出口ではこれ法に基づいて検査しなきゃならない義務づけがあるし、検査しておるわけだけれども、その検査の実行の実態面ですね。検査を受ける者はそれぞれ金を拠出して検査を受けているわけだ。なおかつ向こうへいってクレームがついて返ってきたら、検査協会は何も関係ないのだということになると、はたして、検査というものの意味するものが何であるかということになるわけだ。  それともう一つは輸入品ですね。現在、繊維の製品輸入というものは激増しておるわけです。この輸入品については一体、検査という面から見たらどういうふうになっておるのか、この辺を聞かしてもらいたい。
  66. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) まず、検査機関のクレーム処理の問題でありますが、現在実施をいたしております検査は、品質面につきまして最低基準の検査であります。したがいまして、クレームの態様が、たとえば品質につきましても、最低基準以上の段階におけるクレームであるといった場合には、検査協会としては十分にその検査をして合格したものでございましても、クレームの対象はあり得るということであります。ましてや、品質以外のもろもろのクレーム等々がございますが、これにつきましては、検査協会の機能の範囲外であるというような問題がございます。さらにクレーム処理の、かりにクレーム処理を検査機関が実施をするということになりました場合には、相当のクレーム処理に対する財政的な裏づけが当然必要であろうかと思うわけであります。その財政的な裏づけを業界、メーカー、商社がどう考えるかということも非常にむずかしい問題でございまして、一つの考えであろうかとは存じますけれども、非常に多くの問題をかかえておると、かように判断しております。  それともう一つ、輸入品につきましては、ただいま輸入の段階では検査はございません。しかし、輸入業者の依頼がございました場合には、先ほど申し上げましたような内需の依頼検査と同じように検査機関が実施しているものもございます。
  67. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 輸入品が激増してくると、たとえば、わかりやすくいいますとカッターシャツ、わが国のメーカーがカッターシャツをつくって市販する、外国からカッターシャツの製品が輸入されて市販される。店頭に並ぶわけです。そうなると私は、輸入品については依頼があればということだけれども、依頼がなければ放任しておるわけですかね。自由に入ってきておるわけです。そうなってまいりますと、製品それ自体はやはり市場で競合しておるわけでしょう。この辺のところを考えると、何らかの品質保証というものを消費者保護の立場からも私は、やはり必要があるだろう、また適正競争をせしめるためにも私は、やはり産業を保護するという意味から、適正競争をやるという意味からも、何らかの検査機能というものがなければ、いまのままじゃいけないのじゃないかという気がするのです。  で、もう一つ別な問題をお尋ねしますが、第二点は、外国での輸入規制の制度が顕著になって輸入品がかなり減ってきている。そうすると、いまの機構であれば国検はともかくとして、民間の検査協会は仕事がなくなるわけですよ。これは仕事をたくさんすれば金が入るのであって、仕事がなくなればお手上げということになり、業界も、検査協会に対して自分が検査を依頼する品種と数量に応じて金を出しているわけですから、立ち枯れになる。非常に浮き沈みが多い状態なんで、しかも、事業所が全国に二百八十カ所もある。全部人が働いておるわけですかね、専業で。そのようなことを考えると私は、オール繊維という立場から、この検査機能というものを一カ所に集中してしまう、そして、そこでたとえば、それは国検と合併するのかその形はともかくとして、いま十五の検査協会を持ち、二百八十カ所に事業所があるという形を、それを一つの形に整理して、そして、それにかなりな権限を付与する。たとえばクレーム処理をやらす、あるいは外国からの製品の検査をやらす。さらに、国内消費する繊維製品であっても、それがJIS規格のように品質表示、品質保証を消費者保護のためにやらす、こういう形にすれば、検査員も浮き沈みがない。いまの検査員というのは浮き草稼業ですからね。仕事がなければ生活があがっちまうのだから、これはいかにも私はお粗末な組織だというふうに思うのです。そういう意味で、いま申したように今後の問題として検査体系を抜本的に一ぺん洗い直して見て、そして機構を一元化してしまう、一元化すると同時に検査機能ももっと多角的にやらす。クレーム処理をやらす、外国からの輸入品の検査もやらす、あるいは内需の検査によって品質表示を行なう、どういうような措置を講ずるべきだ。この辺の問題については、いままでかなり構革の問題で設備の問題についての論議がありますが、検査機構については何ら触れておらない。したがって、早急にそういった方面についての検討もしていただきたいと思うわけです。補足的につけ加えますと、輸出品が減ったために財政的に成り立たないので、ある検査協会では人員整理をやりたい、こういうような問題が現に出ておるわけです。そういうところからも、どうしたものだろう、このままでは検査協会が立ち枯れになってしまうということもございますので、ひとつまとめてお答えをいただきたいと思います。
  68. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 先生指摘のように、わが国の輸出検査制度は、昭和三十二年以来輸出検査法に基づきまして実施をしておるわけでございます。特に繊維につきましては、その間の輸出事情は非常に変わっておるわけでございます。さらにまた、繊維製品国内メーカーの品質管理というような面からいたしましても、自己のブランド等々の普及もございまして、検査制度全般についての再検討の時期に立ち至っておるのではないかと存ずる次第であります。したがいまして私ども、昨年の夏ごろから十五の検査協会を一堂に集めまして、今後の繊維製品の検査のあり方、検査協会のあり方、検査のやり方等々につきまして随時協議をいたしておる次第であります。昨年暮れまでに各検査協会とメーカーとの懇談会を十数回にわたりまして開いた次第であります。近く統合的な一つの方針を作成しようと考えている次第であります。先生おっしゃいましたように、検査品目の統合整理、あるいは検査協会の統合等のことも含めまして、ただいま最終結論を急いでおる状況であります。先生のおっしゃいましたことも一つの大きな方向といたしまして、私ども十分参考にして最後の結論を出したいと、かように考えておる次第であります。
  69. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これはひとつぜひ、検査というものが、輸出環境も変わっておるし、そして製品というものもずいぶんこれ多種多様になり、しかも、進んでいろいろな形で複合化されてきておるわけですから、そういう面で検査機構というものを一ぺん洗い直していただきたいと思うのです。できればそれは統合した形で機能を発揮さすような方向づけがよかろうというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  それからその次に、労働省がお見えになっておると思うのですが、せんだって私、決算委員会で大臣にお願いして了解を得たわけですが、今度の日米繊維協定に伴って設備買い上げが行なわれる。設備買い上げが行なわれると、これは人員整理を伴う。したがって、そこで働く労働者を救済するという意味から一時金を交付する、同時に失業者の手帳を交対するという措置のための予算がつけられた。現実には、予備費からの設備買い上げなどがずれ込んできて、四十七年度の買い上げ実施というのがかなり先にずれている。過去にも設備買い上げに伴う余剰人員というものが発生しておるわけであります。労働省のほうできめたところの条件が、設備買い上げの契約前後一カ月に離職した者という一つのきまりがあって、その者に一時金を交付するということになっておるために、実態は設備買い上げに伴う失業であっても、その条件に合致しなければ一時金交付が受けられないというようなことになりかねないわけであります。したがって、せっかくできた労働者を保護しようといういい法律なんだから、それが立ち枯れにならないように何とかうまい運用方法はないだろうかということでお願いして、ひとつまあ労働省とよく連絡をとって法をうまく運用するようなことを考えなければならない、一ぺん検討しましょうというお話だったわけです。その後、通産省と労働省でいろいろお話し合いがあったことと思うし、いま言ったような趣旨から何かうまい便法が編み出されたかどうか、その辺の事情を両方からお聞きしたいと思います。
  70. 加藤孝

    説明員(加藤孝君) 現在の繊維産業離職者に対する一時金の支給状況について最初申し上げます。  三月に二百六十九人の方について支給をいたしております。四月になりまして五百八十九人の方について離職金をお支払いいたしておりまして、累計いたしますと八百五十八人、こういうことになっております。先生いま御指摘の、そういう制度の面から、制度がきびし過ぎるためにもらえないというような事情があるのではないか、こういうあれでございますが、私どもとしましては関係の労働組合などとも、その辺につきましてはよく事情を伺いながらこれを運用するということにつとめておるわけでございます。いま先生がおっしゃいましたその契約の締結という要件につきまして、通産省とも相談をいたしまして、必ずしもその契約の締結までには至っていないけれども、これを買い上げるという事情について、通産省がそういう申請が出ておるということで証明を出せば、私どもはその前後一ヵ月でもかまわないというような形の弾力的な措置をとりまして、現在そういう運用をしておるところでございまして、この辺につきましては関係の組合とも意見を聞きながらやっておるところでございます。
  71. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) ただいま労働省のほうから説明がございましたように、通産省といたしまして、先生指摘の点を解決するために、労働省と相談をいたしまして、通産大臣の承認した廃棄計画に盛り込まれた企業からの離職者である、または四十七年度予算で売買契約が締結される予定になっているというような、以上二点を私どもが証明いたしまして、証明いたした場合には労働省のほうから弾力的に運営していただくということになっている次第であります。現在、私どもが証明いたしました件数は十四件ばかりございます。
  72. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 そうしますと、いまのお話によりますと、当初定められた契約の前後一カ月ということは、弾力的にケース・バイ・ケースで運用しておると、したがって、通産省からの計画表に基づく証明を持って行けば、現にそれは廃棄されていなくとも、そこで失業した者には一時金の支給もあると、こういうふうに解釈していいわけですね。  それじゃ、その次に移ります。実は、合繊業界の問題についてお伺いするわけですが、現在、合繊の設備投資については官民協調懇談会、まあこれは俗称でございますが、化繊工業協調懇談会方式というのがありまして、そこで増設問題についての話がされておる現状でございます。いま合繊業界が設備投資も冷え切っているし、採算も非常に悪い。日米繊維交渉もあったでしょうし、通貨の改定もあったし、国内の不況、いろんな問題があって、合繊が一番打撃を受けておるわけだけれども、その一つの大きな原因の中に、昭和四十四年に協調懇談会で合繊の設備新設基準が拡大された。したがって、ここに多数の企業設備拡張計画を短期間に集中さした、そのための需給のギャップが現在非常に大きな問題になっておる。だから、合繊の不況の一因もここにあると言っても私は過言じゃないと思う。したがって、今後繊維全体、とりわけ、いままで輸出を基幹としていた合繊業界が、その環境が著しく変化しておるわけですから、これからの設備投資のあり方をいままでの協調懇談会方式で運営していっていいものかどうかですね。御承知のように、合繊それ自体も、やはり設備を設定すれば、一単位少なくとも日産三十トンのプラントを設定しなければ採算ベースに合わないということになれば、この新規事業に参入する意思を持つ者はどんどん参入さしていく。そうすると、五トンなり十トンなりのプラントを設定すれば、やがてそれは三十トンにふえていかなければならない。さらにスケールメリットを求めれば、それは五十トン、六十トンに伸びていくのはわかり切ったことです。そういうことが絶えず繰り返されて需給ギャップというものを生み、そして不況というものを周期的に呼び込むということにもなりかねないわけです。それが派生して押し込み輸出ということになるし、そうすると輸入規制という問題を引き起こす。この繰り返しはいいかげんにやめなければならない。そういう意味で、私、何かいい方法はないだろうかと思うわけなんです。そういった意味での協調懇談会方式というものについての見詰め方を聞かしてもらいたいと思います。
  73. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) まず、先生おっしゃいましたように、昭和四十四年度にこの協調懇談会の新増設の基準の幅を、従来の年間十五トンから三十トンに引き上げたのであります。これは当時業界は、私どもの判断といたしまして、技術の進歩によります、いわばスケールメリットといいますか、適正規模の範囲が大きくなったという判断をしたわけであります。十五トンでは、やはり最近における技術進歩の適正規模としては小さ過ぎるという判断をしたのが一つであります。それともう一つは、三十トンといい、あるいは十五トンといいましても、それは上限でありまして、その間において業者の自主的な判断で適当なるトン数をきめるということでございました。そういった業者の自主的判断の幅を大きくしたという二つ意味合いがあった次第であります。しかし、その後の状況の変化、特に西欧における合繊メーカーの非常な増設、あるいは日米政府間協定による輸出の減少というような事情がありまして、結果的にはこれが過剰設備原因になったかと思うのであります。ただ、こういった協調懇というものは、現在私ども、やはり業界が自主的な判断に基づいて、業界全体の需給見通しというようなものに基づきまして適正な基準をつくってしておるわけであります。もちろん個々の企業が自主的にそれぞれ需要予測の上に立って、企業の判断で新増設をすることが理想的ではございますけれども、現段階におきましては、やはり業界が集まって、政府も中に入って、こういった全体的な調整をしていくことが望ましいかと考えているわけであります。しかしながら、今後この協調懇の運用につきましては、特に私ども、これからきびしい繊維産業の見通しでありますから、需要見通しについては、きびしい一つの厳密な推定に基づいた基準を打ち出して、いたずらに過剰設備競争ということの起こらないように指導をしてまいりたいと、かように考えておる次第であります。
  74. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 非常に需給の見通しというものは、業界が立てる需給見通しと通産省が立てる需給見通しというものが必ずしも一致するとは私は思えない、これはあたりまえだろうと思うんです。しかし、需給見通しの狂いが、結局需給ギャップを生み出し、輸出ドライブをかけ、しかもそれは悪いことには、安値競争になるわけですね。そうなると、これは何をしておるかわからない。国内もむだなことだし、外国からはダンピングということで問題をかもし、さらに輸入抑制に迫車をかける。どうもこれは単に合繊だけでなくて、繊維全体に言えるこれは一貫した傾向なんです。繊維産業というものは、操短の歴史というものは、まさにここから来ておるだろうと思うのです。この辺をもうぼつぼつ整理していかなきゃならぬ。だから、この金に見合った、採算に合った需給見通しというものを立てさすこと。それと、全体的な構造改善を行なうにあたっても、それぞれの業種が全部やっぱり適合しなきゃならない。だから、これが片ちんばになると、ある部門は非常な混乱を招くことになる。ことに考えなきゃならないのは、輸入品が激増しておるということ。輸入品が激増しておるということについては、これはわれわれも門戸を開けと言っているからには、抑圧すべきじゃないと思うけれども、同時に国内の業界が混乱しないような配慮がやっぱり必要だろうと思うし、同時に輸入品の製品輸入ということになれば、日本の加工段階との見合いというものをよく見詰めなきゃいかぬと思うのですよ。  そういう面から私、最後に質問しておきたいことは、今度の二年間の延長というものがあるわけなんだけど、この二年間で、先ほど私ちょっと触れたように、必ずしもこの構革というものが実現するとは思っていません。だから、これは長期的に続けなければならないと思うわけなんです。だけど、いままでの構造改善というのがややもすれば設備中心、いわゆる繊維工業の構造改善であった。これは、局長もお答えになっていることだけれども、まあ構革に三つの柱がある。その三つ取り上げろと、過剰設備処理一つであり、それから二番目には設備近代化、三つ目が生産規模適正化、だから、過去四十二年から行なわれた構造改善、これから二年間延長しようという構造改善設備構造改善なんだ。しかし、環境がこれだけ変わり、輸出が対等になり、輸入量が増大する。しかも、いろんな新製品を開拓しなければならない、付加価値を高めなければならないとすれば、設備の問題ももちろんそれも大事だけれども、総体的な繊維産業、それは流通段階をも含めた繊維産業というものの構造改善が必要だと思うのです。それが残念ながら過去にもやられておらないし、今度の二年延長にもないわけだ。だからやっぱり私は、二年間で構革が終われば、何か抜本的な対策を立てなければならないとするなら、産業としてのやはり抜本策の設定が必要だろうと思います。したがって、そういった面で、最後にまとめて一ぺん局長からもお話を承りたいと思うわけです。同時にまた、そういった趣旨にのっとって大臣、ひとつ総合的な意味のことをつけ加えていただきたいと思います。  時間がきたので、以上で終わります。
  75. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 繊維産業構造改善は、まさに工業ではなくて産業という名前が示すごとく、流通段階を含んだ総合的な構造改善でなければなりません。私ども、繊維の流通の問題につきましては、非常に複雑でございますけれども、かねがねその実態調査を、国内、海外のこの繊維関係の流通部門の調査をいたしておりまして、近く産業構造審議会の繊維部会流通小委員会におきまして、繊維流通の近代化のための対策を検討していくことになっておる次第であります。  なお、特繊法に関係いたしまして、たとえば、四十七年度の紡績設備の資金につきましても、その対象企業を、紡績業から最終段階までのいわば垂直的なグループを持っておる企業に対しまして傾斜的な優遇措置を講ずるとか、あるいは今後の事業協会における信用基金におきましても、そういった繊維産業の全体の流通問題につきまして近代化合理化をはかっていく、かような考えで進めてまいりたいと思っておる次第であります。
  76. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 繊維産業、先ほどから述べておりますとおり、国際的にも非常に問題のたくさんある産業でございますし、日本も、新しい角度から日本の新しい繊維産業の再編成、また、そのためにも構造改善を進めてまいらなければなりません。  二年間この期間延長するということをお願いしているわけでございますが、繊維産業も非常に複雑多岐であり、むずかしい産業でございます。国際競争力をつけながら新しい繊維産業として育て上げていくために、政府としましても積極的な構造改善を進めてまいろうと、こういうことでございますので、政府だけでなく、これはもう国会の皆さんにも十分お力添え、また御注意等をいただきたい、こう思います。二年間で一体できるのかということに端的に表現されておりますとおり、ほんとうにむずかしい仕事でございますが、国会でお願いしておる以上、二年間でめどをつけたいという強いひとつ姿勢を御了解の上御鞭撻をいただきたいと、こう思います。
  77. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 終わります。
  78. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この紡績業と織布業構造改善事業目標を達成できなかった原因は一体何なのか、という点を答弁していただきたい。
  79. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 紡績業と織布業につきましては、四十六年度末におきまして構造改善がおくれたのでございますけれども、その原因といたしましては、まず、四十二年当時想定いたしました経済環境見通しが非常に変わってきた。もちろん、いろいろな角度から諸条件を勘案したのでございまするけれども、当初の見通しに対しまして、非常に経済環境が変わったということが一点でございます。  次に、それに基づきまして、やはり業界としては、その間における不況の時期におきましては、特に投資意欲が非常に減退してしまったというようなこともあげられるかと思います。  それと、さらにこの期間中におきまして、相次いで高性能の設備が開発、実用化されるに至ったのでありまして、その高性能設備の開発まで、実用化段階まで業界としては投資を見送ったというような事情もあろうかというふうに考えておる次第であります。
  80. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いま、目的達成ができなかった原因を政府は三つあげられたわけでございますが、次の質問に移りますが、紡績業グループ化、これは何でしょう。構造改善事業は、一は設備近代化、それからグループ化ですね、それから過剰設備の廃棄、この三本柱から成っていると思うのですが、目標紡績業で百十二万錘の精紡機の廃棄を達成しただけで、全体としても未達成となっておる、こう言わなければならないわけですね。その達成できなかった理由はいま政府がおっしゃった三つと、こういうふうに思いますが、紡績業グループ化は四十六年九月でわずか九グループ、三十五企業、七十二万一千錘で中小紡績全体の一一・八%、設備数で一六・七%にすぎないわけです。一万錘未満の企業が依然として過半数を占めておるということははっきり言えると思うんですが、過半数の企業が政府の構造改善に批判的であることを明らかに示しておる、こう私は思いますが、これは一体なぜでしょうか。
  81. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 先生おっしゃいますように、紡績業構造改善の三つの柱のうちで、生産規模適正化、すなわち中小紡績業につきましては、グループ化ということが掲げられておる次第であります。グループ化につきましては、紡績業の共同販売とか、あるいは伸子の交換とかその他でありますが、いままでのところは御指摘のように九グループ、三十五企業、錘数で七十二万錘ばかりでありまして、非常に低いわけであります。で、非常にこれは遺憾なことと考えている次第であります。  原因につきましては、一般的には先ほど申し上げたようなことがあろうかと思いますけれども、ただ、紡績業グループ化は、必ずしも中小紡全体に対してグループ化が必要であるということではございません。利益のある量産品種を主体に経営しておる中小紡につきましては必要でございますけれども、多品種少量生産というような糸を生産しておりますような中小紡につきましては、必ずしも必要でないというような面もあろうかと思うんであります。先生指摘のように、中小紡のグループ化が進まなかったことが、この構造改善について紡績業が批判的であるということでは私どもないと、かように確信している次第でございます。
  82. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 じゃ批判的でないというならば、なぜそういうことになっておるんですか。やはり批判的な立場をとっているから、そういう結果しかあらわれてこないと言えるんじゃないですか、どうですか。
  83. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) ただいま申し上げましたような、一般的にはそういう三つ程度事情もございますし、また、その後におけるファッション化高級化多様化というものが当時予想いたしました以上に繊維につきましては発展をしてまいったのであります。そういった高級化多様化というような場合には、必ずしも中小紡のグループ化というものが唯一絶対の対策ではない、かような実態もあろうかと思います。したがって、グループ化は一般論として必要でありますから、私ども遺憾ではございますけれども、もちろん、今後その必要のある分野につきましては、できるだけグループ化を進めていくつもりでございますけれども、実情はただいま申し上げたような実情であったかと、かように考えております。
  84. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 織布業の場合ですね、過剰設備の廃棄は十二万六千台の目標に対しまして、実際には二万九千台しかやられていないということですね。これは、目標そのものに私は無理があったのではないか、こういうように思いますが、なぜこういう結果になっておるか。
  85. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 先生指摘のように、過剰設備の廃棄は当初は十二万六千台を予定いたしまして考えておったのでございます。しかしながら、四十六年の末までにおきまして転廃業買い上げが三千台、上乗せ廃棄——新しくつくります場合に古いものを〇・五程度廃棄するという、その上乗せ廃棄が二万六千台、非常に少なかったわけでございます。  実は、これに対します私どもの反省といたしましては、この転廃業者買い上げにつきましては、一台当たり平均単価十万円であったのであります。その十万円がやはり少なかったのではなかろうかと反省をいたしております。しかし、それ以外に先生承知のように、昨年来から自主規制対策救済対策、これは政府間協定救済対策をいま別途実施をいたしておりまして、その買い上げは、実は、自主規制分といたしまして四万六千台買い上げをいたしております。また、政府間取りきめ分といたしましては本年度、来年度ほぼ十万台を予定して現在進捗中でありまして、ただいままでにきまりましたものは二万一千台であります。したがいまして、政府買い上げの合計六万七千台と、先生指摘の二万九千台、合計いたしましてその九万六千台がただいままで処理されておるというような実情でございます。
  86. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いまのあなたの話にもありますように、最初計画どおりいかなかったのは、価格の点やいろいろな点で反省をしておるということは、政府の計画が甘かったと、こういうことになるわけですよね。やはり相手のことを配慮しないで、こちらで一方的にものをきめて、そしてそれを押しつけた結果がこういうことになってきておると、こういうように言わなきゃならぬと思うのですがね。やはり政府の目標、また、やり方に無理な点があった結果がこういうことになってきたと、そういうふうに私は理解しておるわけですが、政府は、八万台、二万企業と推定される無登録機ですね、これを法律違反だ、取り締まると、こういうふうに言っておるわけですね、今度。しかし、無登録機が存在してきたのはそれなりの理由があったからです。生業的零細な企業がほとんどであるわけですね。昭和三十八年に織機の登録制度ができて、比較的大きな機屋はみな登録したわけですね、そうですね。しかし、その後の人手不足から大きな機屋は、登録した自分の織機を遊ばせておいて、仕事を零細な業者に発注してきた。これも先ほどからの質問にも出ておるように思うのですが、無籍を持つ零細業者が生産を行なってきたわけですね。こういう経過があるにもかかわらず、政府の買い上げ対象はほこりをかぶった遊休織機だけである。政府は、実際に生産を行なってきた零細業者をどう救うつもりか、この点をはっきりさせることが重要だと思います。もし政府が無登録機をなくす政策をとるのであれば、零細な業者が生きていける道を私は保障しなければならないと思うのです。このような業者が希望すれば、無登録機を買い上げるべきであると思いますが、その点はどういうふうに考えておるか。さもなければ、政府の構造改善事業はこれらの企業は情け容赦なく取りつぶすものであると、こう言わなければならないと思いますが、これでは人々の支持も共感も呼ぶことはできません。おそらく私は、成功しないと思いますが、無登録機に対する現在の政策は変更すべきである、希望に応じて買い上げるべきであると思いますが、政府はどういうふうに考えておりますか。大臣、答えてくださいよ。
  87. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 無登録織機につきましては、先ほどからるる申し述べておりますように、いま調査中でございます。実態を把握しなければなりません。把握をしたら、何らかの処置をしなければならない。処置をするということは、将来かかるものが起きないようにしなければならないということであります。また、無登録織機というものがどんどん出るということになれば、国民の税金をもって買い上げをすることはできません。国民の税金を支出をして買い上げをするとするならば、今度は再びかかることはいたしませんという、少なくとも保証を国民の前に申し上げなければならないわけでございますから、そういう意味では無登録織機の処置というものに対しては、国民のやっぱり理解を得られるような状態でなければならない、こう思います。公式に申し上げておるのはそこまでなんです。  ところが、いまあなたはなかなかいいことを御発言になった。それは、実際においては、ある時期においては登録織機を遊ばしておきながら、無登録織機で零細な下請生産せしめた、そういう実態はあります、確かに。が、そういうところの調整をどうするかということなんです。しかしまた、それもなかなかたくましいところもあるのです。実際はそれは本業ではなくて、ちゃんと別に農業をやっておりながら、ずっと長いこといいときだけは無登録織機を稼働せしむる、ある時期にはまたそれはもう納屋の二階に上げておく、こういうものもあるのです。私も幾ばくか知らないわけではありません。私の選挙区にそういうものが一ぱいありますから、だからそういう意味では、通産省の局長よりも私のほうがよく知っておるかもしらぬのです。ですからそういう意味で、まあ四角四面、ただ四角定木で無登録織機処理してしまうわけにはまいりません。まいりませんが、やはりもう十万台以上も三年間にわたって国民の税金をしてこれ買い上げ、破砕をする、こういうことになっておるわけです。これは場合によっては無登録織機の措置を誤ると、封印をしたことにして、そのままにしておくと同じことにもなりますし、買い上げて破砕をしないということにもつながるわけであります。同じことになるわけでありますので、これはまず実態をつかんで、七万台あるのか、八万台あるのかということにしまして、そうしてこれはまあ確実に破砕をするのがいいのか、一〇%というものを登録をして、それは封印をすることがいいのか、その封印に対してはだれが一体責任を負うのか、封印をする場合には一体何十%というものの補償が要るのか、これらのそういう問題をこまかくいま勉強しなければならないのです。いまあなたの御質問に、全部こういたします、こう答えられるほど簡単な問題じゃないのです。ですから、実態を十分に把握して、それからまた皆さんの御意見もあるし、中にはもう無登録織機のない地域もあるのです。ところが、山梨県のように無登録織機のうんとあるところもあるのです。ですから、地域によって違うのであるし、一様にこれを画一、一律的に措置するということもむずかしいのです。ですから、そういうことを十分勉強しまして、国民の税金を使うわけですから、私は、やっぱり石炭対策のように国民が理解をするということでなければならないということで、ひとつもう少し検討いたします。
  88. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 最初、前の質問で私は、織布業の場合、過剰設備の排除十二万六千台、こういう目標を立てたわけですね。ところが、それが実際には二万九千台しかできなかった。その十二万台で二万九千台しか進まなかったのが、いま九万六千台は買い上げたと、あとのほうであなたが答弁されているのですね。そうすると、いま八万台無登録織機が残っている。これは、買い上げたのは無登録織機じゃないのが入っているわけですね。
  89. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そうです。
  90. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そこ、ちょっとはっきりするために聞いておきますがね。そうすると大臣、八万台が残って、大体二万世帯ですよね、これ二万企業ですから。こういう膨大なものが、政府が努力したにもかかわらず残っておるというところには、残らざるを得なかったという事実が私はあるように思うのですね、これ。するとね、やはり大臣として考えてもらうために、私、変な例ですけれども、これは例にとっては当たらぬかもわかりませんが、かつて本院に売春禁止法がかかったことがありますよ。私は売春禁止法には賛成なんです。しかし、私はそのとき討論に立ちまして、まあその法案には賛成だと。しかし、こういう法律が通っても、売春というものはなくなりませんよと私はそのとき言ったんですよ。というのは、売春という行為をなくすためには、いわゆる本能的に性的要求ができてきた男子でも女子でも、やはり結婚ができるという生活条件を私はつくることが必要だと思うのですね。住居の点も報酬の点もですよ。そうして、自分たちが愛する異性と一緒の家庭をつくるという条件をつくらないで、ただ法律さえつくったら売春はなくなるのだという、そういうものの考え方は甘いと、こう私は言ったんですよ。そうして、なおそのとき私は、よけいなことだったかもわかりませんが、青年が何も好んで売春婦を買いに行くんでもないんだ、ただ自分たちの本能を満足さすためにそういうことになるんだから、そういうことをしないでもいいようにしなさい、それよりも、売春禁止法をつくる前に、二号さんを持っている、それを禁止したらどうですかと、私はそのとき言ったことがありますよ。そうしたら、そのときの委員長が、二号さんは恋人だから差しつかえないんだと、こう言うから、それはおかしい理論だといって私は笑ったことがあるのですが、それと同じように、これを私は例をあげることは不適当だと思いますけれども、法律はつくっても、それが守れる条件をつくってあげないと法律というものは守れないと、私はこういうふうに思うのですよね。  それで、田中通産大臣も、大いに手腕を発揮して、無登録織機法律で禁止するという前に、無登録織機使わなくてもちゃんと生きていけるという、そこをりっぱに守っていくということが政治として重要な点じゃないかと、私はそう思いますよ。そうでなかったら、幾ら法律をつくっても守れない。法律違反だといってそれを処罰するようなことになったら、これはたいへんなことになってくると思うのですがね。そのために私は、一つの例として無登録織機も、売りたいという人があったら政府は買いに行ったらどうだということを一つ提案をしておるわけなんですね。大臣、そういう点はあなたどういうふうにお考えになっているか。これからの方向として私は聞いておきたいのです。
  91. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 無登録織機があることは、もう世間周知になっておりますが、その実態はつかんでおりませんから、これはいま調査中でございます。調査をすれば登録をするか、破砕をするかどうするかという問題、処置を考えなければいかぬのです。しかし、これは正規な登録織機と同一にするわけにはまいりません、いずれにしても。これは中小企業団体法による全く無籍ものであり、これは違法なものでございますから、同一な処分はできないにしても、何らかの処置をしなければ将来禍根を残すということであるならば、これはしなければならないのです。これは全然ないということになれば、買い上げはやめますということにならなきゃだめです。そうでなければ、国民の税金をもって幾らでも買いますというわけにはまいらないのです。一定の条件を具備するものであり、しかも、それが将来の政策的効果をあげることがなければ、国民の税金をみだりに使用するわけにはまいりません。そういう意味で、やはりこの処置に対しては大方納得するものでなければいかぬ。将来同じ轍を繰り返さないということで言えば、やはり歯どめが絶対必要であるということは当然でございます。ですから、あまり籍のなかったものを籍に入れるんだというようなことではいかないんです。そのくらいのことは百も承知しておられると思いますが、そんなわけにもまいりません。ですから、これはとにかく実態を把握して、国民の皆さまが理解を示される処置をしなきゃならない、こう思います。  しかし、無籍織機がどうして起こるのかということの事実は承知しております。これは、機屋というものはなかなか明治初年から長い歴史を持っていて、いいときだけではありませんから、これはお百姓と同じことで、親子三代も四代もやめられない仕事なんです、なかなか。ですから、もうさんざんまいってしまってどうにもならなくなると、まあ機を捨てて、織機だけでもどこかへ残しておこうという、こういう非常に農民がくわやすきに愛着を持つと同じように、織機に対して愛着があるんです。もう一つは、織機業者というのがあるわけです。織機という機械をつくっている専業の業者がありますが、それはコンスタントに売れない。景気に左右されて、全然製作や商売が落ちるときがありますから、そのときには、金はいつでもいいし、ひとつおつくりになっておいてくださいと、こういういろんな関係がありまして、簡単に需要供給の面だけでもって無籍織機ができるというわけでないということも、私も承知をいたしております。ですから、いまこわさなきゃならないというような、買い上げなきゃいかぬというようなときに、もうすでに五年後を考えながら大幅にどんどん変えて、注文をしたり、手付金をみんなパーにされたり、いろんな問題が起こっておるのは、これはこの業界自体が絶えず時代に即応していかなきゃならぬという苦悩の姿であるというわけでありますから、全く画一、一律的に見向きもしないのだというわけにもいかないのです。政策メリットをあげるためには、やはり万全の措置を講じなきゃならないということでありますが、とにかく、あなたがいま言う同情論だけで全部やるわけにもまいらないのです。通産省が公式にお答えをいたしておりますように、無籍でございますから処置はいたしません、これは違法のものでございますというわけにもいかないんです。ですから、そこらが大臣のやはり考えなきゃならぬところでしょう。ですから、いま実態を把握しておる、一生懸命でもって実態を調査をいたしておりまして、業界とも個別の二万軒の業者が納得するようなやはり処置をしなきゃいかぬ、こういうことでありますので、そこらはひとつ調査の推移に待っていただきたい、こう思います。
  92. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あまりくどくは申しませんけれども、やはり八万台、二万業者が今日まで無籍織機を持ってやっておるというところには、やはりそれ相当の理由があるわけなんですね。大臣も、昔からずっとやってきた執念もあるということを言っていらっしゃる。私はそのとおりだと思うのですね。大体こういう人たちはもう相当の年齢に達した人なんですね。そういう一城のあるじとしてそこで長い間やってきたものを、もうやめてしまって、おまえら職人になれといったって、そんなこと簡単にできるもんじゃないんですよ。そのくらいのことは大臣もおわかりのことだと思うのですね。だから、こういうやり方ではいかんのであり、やはりそこに業界が納得のいくやり方というものをひとつ検討して、そしてやっていくということが私は必要だということです。単なる人情論なんじゃないんですよ、私の言っているのは。そうしないとものはうまくいかぬという点ですね。  ところが、通産省は四月二十六日、繊維雑貨局長名で無籍織機実態確認調査についての通達を出して、六月十日までに無籍業者から誓約書をとるように指導しているわけです、ここにありますが。愛知県のあるところからの報告が参りました。その報告によりますと、この調査確認にあたって、監視委員が零細業者に対しまして、この調査は第二次登録のためのものだ、従来の登録のワクをふやすためのものだといって誓約書をとろうとしている事実があるわけなんですね。第二次登録ということを政府は方針として打ち出しているのかどうかですね。第二次登録を行なえば第一次登録のように買い上げ対象となるなど、第一次登録と同様の取り扱いを受けるのかどうかという点ですね、それをお答え願いたいと思います。
  93. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 先生のおっしゃいましたのは、先ほど大臣が申しました、やみ織機についてただいま全国的にその実態を確認しているその通牒でございまして、六月上旬までに全国の実態確認を終わるということでございます。ただ、先生のおっしゃいましたように、今回の実態調査、その調査対象設備を第二次登録とか、そういったことでもって説明はいたしておりません。ただ、実態調査漏れのないように、できるだけ全部確認をしたいという立場から、その確認でもって直ちに告発するものではないというような説明はいたしております。したがいまして、先ほど申し上げましたように、この実態調査が全部済みまして、やみ織機の実情というものを全部把握いたしまして、それによって今後の対策を考える方針でございまして、先生おっしゃいましたように、これでもって直ちに合法化するとか、あるいは買い上げ対象にするとかということは、現在考えておりません。
  94. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、監視委員が零細業者に対してこういうことを言って歩いているということは、とんでもない、間違いだと、そういうことは絶対に考えてないということですね。
  95. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) そうでございます。ただ、いま申し上げましたように、この調査によってこれが直ちに告発につながるものではないという説明はいたしております。
  96. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは、告発の意思もないし、また、そうかといって第二次登録をしようということでもないと、こういうことですね。実態を把握するためのものだと、こういうことですね。
  97. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) さようでございます。
  98. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 無籍の確認調査にあたりまして、零細な業者から誓約書をとるために、何の根拠も利益もない第二次登録などといううまい話で、素朴な業者を惑わせ、口車に乗せるようなやり方は、私はとるべきではないと思います。あなたはそうじゃないとおっしゃるが、しかし、地方に行くとこういうことが行なわれているということが、私のほうに報告がきているわけなんですね。だから、そういううまい話で零細業者を迷わしてはいかぬと思うんですね。通産省は、第二次登録などといって誓約書をとってはならないという通達を出したらどうでしょうか。そういうことがされているという事実がきているんです、地方から。愛知県です、これは。だから、あらためてそういうことはすべきでないということを、私は、通産省として通達を出されたらどうかと、こういうふうに思うのですが、どうですか。
  99. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) そのような第二次登録というようなことは、現在もちろんきまっているわけではございません。したがいまして、そのような言い方でもって現地の実態調査の職員が言っておるといたしますれば、私ども通産局、あるいは各工連を通じましてそのようなことのないように十分指導をするつもりでございます。
  100. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 政府の構造改善がうまくいかなかった原因は、くどいようでございますけれども、政府のあげたようなところにあるんではなく、いわゆるさっき三つ理由を申されましたが、そういうところにあるのではなく、構造改善政策そのものに私はあるんではないかというふうに考えます。上から計画を押しつける。一部の企業——大メーカーや大商社とつながる企業はよろしいけれども、そうでない中小零細企業は整理を促進するという政府の政策そのものに私はあるんじゃないかと思うんです。そのことは、これまでの答弁の中にもあらわれてきておると思うんですが、この構造改善そのものの目的は、中以上の大企業をうまくやっていくためで、要するに零細企業を切り捨てていくと。協業制とか何とかということばは使っているけれども、結果的に言えば、小さいところは切り捨てにあわなきゃならぬという、そこに、そういう政策そのものに私はあると思うんですが、業者の経営と生活を守ることを基本として、中小業者の自主的な近代化、自発的な協同化の機運をつくり、業者の自主性を尊重して、それらに対して必要な助成を行なうようにすべきであると思いますが、どうでしょうか。こうしたら私は、構造改善もうまくいくんじゃないかと、こういうふうに思っているんですが、大臣、どういうふうにお考えになりますか、その点は。
  101. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 構造改善——この繊維企業そのものの様態が非常に複雑多岐でもあるし、また、新しい繊維企業というものに対しても、さだかに、この企業はこういうものに転業しろ、この地域はこういうものに転業しろということを、全部を青写真にして、そのとおり進めるというには、やっぱりなかなかむずかしい企業でございます。まあ米の総合農政のようなものでございまして、もっと複雑かもわかりません、ずっと。そういう意味で、やっぱり政府がやってきたものは、第一段階としては、やはり方法としては正しいと思うんです。あなたお考えになっても、これ以上、そんなにいい話はないんじゃないですか。これは全くベストであり、ほんとにこれはそのように効力がなかったじゃないですかと言うけれども、では、何かありますかというと、そんなに別なものはないんです。ですから、やはり第一回には構造改善事業を進める。で、それなりの理由があっておくれましたから、二年間ひとつ延ばしていただく、こういうことでございまして、繊維企業というものの近代化、一口で近代化といっても、繊維企業には、しぼりなどはおばあさんが一人でやっておるというところもあるんです。ですから、全部が全部一定規模以上のグループ化中小企業の大企業化ということはできませんという面もございますと、こういうことを申し上げたんですが、やっぱり非常に複雑多様でございますので、それの実態に合うようなものは自然と積み重ねられてくるということで、私は、今度二年間延長することは、いままでの実績の上に立っておりますから、もっと効率的であり、投資効率もあがると、また、繊維企業そのものの構造改善近代化も十分進むと、また進まなければならぬと、こういう意欲的な考え方に立っておるわけでございます。ですから、まあ非常にどうもいままで何年間かかかって失敗だったじゃないかというところにだけウエートを置かないで、これからに希望を持って、ひとつ合理的な構造改善を進めるということでございます。
  102. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 田中さんに言わせれば、われ笛吹けども他踊らずということかもしれませんけれども、やはりまた逆に言えば、政府が幾らうまいことを言っても、政府は信用できないという不信感が国民の中にあるということ、こういう零細企業の中には、ああいうことを言っておっても、おれたちはつぶされるんだと、こうとしか受け取れないという点もあると思うんです。ですから、やはり零細企業の信頼を得るという点で、りっぱな政治をやっていかないと、そう簡単には信用しませんよ。やはり警戒が先に立つんですから、ですから、これからの政府のやり方をひとつ拝見しましょう。りっぱなことをやって、こういう人たちが喜んで政府の方針に従えるような政治をやってくださいよ。それでないとできませんよ。それがいままでの状態なんですね。  織布業における賃金上昇率見込みについて伺います。四十五年十二月八日の「特定織布業構造改善対策の今後の進め方」についての繊維工業審議会答申では、織布業の体質の強化が十分に実現されていない原因としまして、設備ビルドのおくれをあげ、さらに計画を上回る賃金の上昇をあげております。ここにありますが、今回の目標をつくるにあたっては、賃金上昇率を何%と見込んでいらっしゃるのか、お答えを願いたいと思います。
  103. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 構造改善の二年延長につきましては、新経済社会発展計画にございます年率一二・一%というものを想定数字として採用した次第でございます。
  104. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 振興基金についてちょっと質問したいと思いますが、国の費用十億円、民間から三十数億円、これらを合わせて約五十億円近い振興基金ができるわけでございますが、この利用が、実際には大メーカーや大商社につながる一部企業に片寄り、多くの中小零細企業は利益を受けることなく放置される心配があるわけですが、そういうことはないのか、それをどういうふうにしていくのか。
  105. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) 振興基金につきましては、これが全繊維産業の今後の発展につながる、そういったプロジェクトに対しまして補助するわけでございます。したがいまして、大企業中小企業の区別は考えておりません。  ただ、この基金の民間からの出捐金は、今回の設備買い上げ対象業者から出捐することになっております。その設備買い上げ対象業者には大企業は含まれておりません。したがいまして、出捐金の性格からいたしまして、むしろ中小企業関係に相当程度のウエートが置かれるだろう、かように考える次第であります。  なお、プロジェクトの選定につきましては、そのつど通産大臣の承認にかかわらしめておりますから、通産省としては、十分に指導、監督するつもりでございます。
  106. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まあ中小企業、零細業者を手厚くやってくださると、そういうことですね。大企業よりもむしろそういう方向にいくと。  この間、ここへ参考人が来ましてね、一ドル二百七十円のレートでこれからやっていくんだという発言があったわけですね。これは二十四日ですね。現在、一ドルを二百七十円で計算して取引しているんだと、現にやっておるという話がありました。それについて、まあ民社党の方もちょっと質問したことがありますがね。きょう二十九日の発表ですが、銀行の六カ月先の輸出予約相場ですね、それが、二十五日には二百九十七円から二百九十八円ぐらいだったわけです。それから、きょうのあれによりますと、二百九十八円から二百九十九円になっていますね、十月渡し。どう考えても、二百七十円は円が高過ぎるように私は思うんですが、大臣、そうすると、その分だけドル価格を高くしておるのかどうかという点ですね。円の再切り上げを見込んでいるんではないかと、こういう疑問が出てくるわけです。その点をひとつ大臣、責任のある答弁をしておいていただきたい。
  107. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、六カ月先の輸出ということを見越しておるんでしょうが、いま言ったとおり、いまの相場は二百九十八円、二百九十九円というところでございますから、二百七十円は安過ぎるという感じは、私もそう思っております。しかし、六カ月先という為替市場での取り引き例というのはほとんどありませんので、これはいまのが高いのかどうかということは、比較しては論じられない、例があまりないので。しかし、いずれにしても、二百七十円というのはどうも少したたき過ぎるような気がいたします。私はその面にそう思いをいたしまして、それだけたたく、円高で契約をするということは下請をいじめることになる。数量ではやっぱり自粛をしなければならない状態になっております。で、価値の高いもの、質のいいもの、同じものであっても輸出価格を上げてください、こう言われておるときでありますし、円は切り上げられておるのでありますから、だから、そういう意味ではもう少し考えなければならないのではないか。いまこそ輸出価格を引き上げたものの半分は、何といっても生産者に割り戻しをしなければならないし、そうするのにいいときである。量では規制をされるときでありますので、それと、やっぱり契約をしておる輸出業者は、大体メーカーに対しては、固定資産の投資をやるときには三分の一ぐらい、みな金を出してやっているわけです。そういうものを償却してやってもいいし、もっと設備改善とか構造改善に力をつけてやるためにも、どうも少し二百七十円は安いなということで、私は、もう二カ月前ぐらいから衆参両院で答弁をいたすときには、どうもこの五円になるか、十円になるか十五円になるかわかりませんが、どうもあなたが言うように、これは円の再切り上げを考えたものではないということはいま言えます。いま円の再切り上げをだれも考えておりませんから、これは言えますが、この二百七十円というのは、円の第二次の切り上げ、切り上げと騒いでおるころきまったレートに近いものでありますから、もう少し引き上げるようなことが望ましい。だから、そうでないとどのくらいのコストで——実は、繊維交渉が終わってからですが、輸出価格はどれだけ引き上げられる、その間どれだけのマージンがどこでもうかっておるのか、いま通産省が専門的に追跡調査を行ないます、こう言っているんです。場合によってはこれを公表いたします。まだ公表しなくても、ちゃんと分配されることでございますが、やっぱり中小企業を守らなきゃならない立場にある、構造改善を進めなきゃならない立場にある通産省でございますから、そう言って、正常な取り引きをやってもらうように、少なくともしわがメーカーや中小企業、雰細企業に寄らないようにということを考えておりますので、公には円の再切り上げなどを考えたものではありません。こう申し上げますが、少し何か円高のような感じがいたします。
  108. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 最後に、私たち冷静に国内繊維産業ずっと見ておるというと、そうすばらしい景気とは思えないんですね、現在。ところが、株価は、繊維産業ですね、ずいぶん上がってきておるように思うんですよ。一時、もう株価の額面まで下がったような株も、いまそれの三倍くらいにもうなってきているのですね。これは一体、どういうところにこういう原因があるのか、大臣は、この現在の繊維産業の株高ですね、どういうふうに受けとめていらっしゃるのか、ちょっと説明をお聞きしたいと思います。
  109. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは繊維産業だけではなくて、株式市場全部が好況であるということであります。しかも、もう配当性向などを考えておらない、含み解散価値ということで、堂々と論じられているのですから、どうもちょっと首肯しがたいところがございます。まあしかし、日本はいままで株価が安かったということは言えます。幾ら何でも年率一〇%ずつ成長をしておって、しかも、自己資本比率が一六・一%というのですから、世界で一番企業として収益率のいい企業であって、自己資本率が非常に低いから、資本の自由化をすれば、いつでも乗っ取られるようなあぶない体制にある。国際的に見たら、やっぱり株式市場としては非常におもしろい市場であることは事実であります。そういう意味で、一ドル株式になるなということは常識的にいわれておったわけでありますが、一ドル株価になってきつつあります。そういう意味からいって、国際的に見れば、ニューヨークの株式、そういうものに比べて日本の一株当たりの株価は高いとは言いにくい。しかし、いままでの日本の状態における株式から考えると、どうも日本最大の企業だといわれるところの東京電力や新日本製鉄の株価に比べて、ほかの株価が少しよ過ぎるという感じはこれはいなめないのであります。そういう意味で、繊維なども、これから非常に困難な前途を予想されるにもかかわらず、株価というものは、やはり繊維企業というものは大体百年間ぐらいの歴史を持っておりますから、土地でも売って清算でもすればという、清算価値にすれば、いまの株価ぐらいはあると思います、これは。しかし、繊維企業は清算するのではなくて、国際的な経済波動に対応しながら、これに耐えながら、商売をしていかなければならぬという面から考えなければならないと思いますので、まあ安いか高いかということは、これはもう議論の存在するところでございます。しかし、この株価にこたえられるような業績と構造改善を進めなければならぬ、こういうことです。
  110. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 えらい大みえを切られましたが、大臣、昔からこういうことがいわれているんですよ。株の値が上がってくればインフレーションは終息の時期になってくるんだ、こういうことが昔からいわれているんですがね。大臣、これに対してあなたのお考えをひとつ伺っておきたいのですが。日本のインフレーションですね。これと株価との関係がどういう関係にあるのか。
  111. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日本は、インフレーションが進行しているとは考えておらないんです。インフレーションということになると、一番の問題は卸売り物価が問題になります。世界に類例のないほど卸売り物価が安定しております。消費者物価というものは、これは消費者物価の内容もあります。質もあります。消費者物価にとっているのが、教育費だとか、レジャー費だとか、いろいろのものをとっておりますから、これは生活の量もあるし、質もあるということで、これが必ずしも日本がインフレ的な傾向の中にあって、歯どめのきかないような状態や、スタグフレーションの状態にあるとは私は考えておりません。おりませんが、株価高の一つにはデノミネーションをやれば不動産と株価が上がるとか、百分の一になれば五十円の株が何十銭になってしまうということで幾ら何でも安いなという感じがありますし、何かデノミネーションとデバリュエーションと同一に考えているという面もありますし、これはたんす預金も全部出して何かにしておかないとえらいことになるんだ、二十五年前新円交換をやった感じがまだある。そこにもってきて外貨インフレといわれておりますが、外貨と円価の関係がありますために、外貨が、きょうの閣議でございますが、去年一年間で対外債務と対外債権との差額は百億ドルであります。四十二年にはこれがパーであったわけでありますから、四年間で対外債権は百億ドルふえたわけであります。そういうことで、四年間で百億ドルの外貨がふえ、対外債務と債権との差額が百億ドル四年間でふえておれば、結局流通する円は非常に多いわけですから、そこに史上最低の金利政策を推進するというのでありますので、株価はやはり好調であるということであります。しかし、こんなときにはやはりインフレーションという懸念が起こるわけですが、大きな予算を執行しておりますし、みな条件はそろっておるようですけれども、景気が沈滞しておる。これがどうしてもなかなか浮揚しないという現実に徴して、インフレーションという議論は、私は、いま考えないでいいんだろうというふうに——こまかいしさいな配慮は必要でございますが、インフレーション傾向をこわがるよりも、やはり景気浮揚というもののほうにウエートを置いて考えて政策を進めて間違いないだろうと思います。
  112. 大森久司

    委員長大森久司君) 他に御発言がなければ、本法案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。  次回は、明後六月一日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時一分散会      —————・—————