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参考人(
下山佳雄君) 私、ただいま御
指名がございました
化学繊維協会の
専務理事をいたしております
下山でございます。
日ごろ諸
先生方に一方ならぬ
お世話さまに相なっておりまして、まことにありがたく、厚く御礼を申し上げます。また、本日は、この
特繊法の一部
改正法律案が
審議されるにあたりまして、われわれ
業界の
意見を御聴取いただく機会を得ましたこと、またこれも厚く御礼申し上げます。
さて、御高承のとおり、織
布業の
構造改善につきましては、一昨年の十二月、また
紡績業の
構造改善につきましては昨年の九月、それぞれ、
繊維工業審議会、
産業構造審議会の
答申がございまして、これに基づいて主としてこの法案が作成されておるわけでございます。特に、この紡績織布の
構造改善の期限が六月末で切れるわけでございますので、ぜひとも今
国会におきましてこの法案を
成立きせていただきたい、まずもってこれを
お願いを申し上げる次第でございます。
ただ、この
繊維工業審議会におきまして
審議されました当時と比較いたしますと、その当時の想像以上に、その後この繊維工業を取り巻く
環境がきわめて悪化しておるわけでございます。まず第一に、対米繊維の
輸出規制につきまして
政府間
協定が結ばれたわけでございまするが、その後、これがいろいろな形におきまして、たとえばカナダ、豪州、その他の地域におきまして、連鎖反応を起こし始めております。また、この日米繊維
協定が、極東諸国からの対米の
輸出規制に関する
協定、これが同時に結ばれたわけでございます。そして、この極東諸国への
輸出というものがまた非常に打撃を受けておるという実情がございます。さらにまた、こういう対
米輸出というはけ口がなくなりました極東諸国から
日本に対しまする
輸入が、漸次激化してまいるという事情もございます。最後にまた、これが将来多国間
協定に進むのではないかという不安が非常に強く
業界人の中に不安として残っておるわけでございます。で、このような問題のほかに、また昨年末に一六・八八%という円切り上げが行なわれたわけでございます。で、この率自体が想像以上に高かったわけでございまするけれ
ども、しかも、今日外貨は、その後もどうもたまる一方のようでございまして、この為替レートにつきまして絶えざるこれがまた不安にさらされている、こういう状況でございます。どうも私
ども業界から拝見しておりますと、こういう為替レートの問題、外貨のたまり方の問題に対する
政府の動きが、全体としてどうもきわめて遅々としているのではないかと、こういう感じを非常に強く持っておるわけでございます。
で、新聞によりますと、この外貨減らし
対策というものもまた進められておるようでございますけれ
ども、おそらくこれで十分だとは言えないだろうと思います。まあ
業界としては、こういう動きをやきもきしながらながめておるというのが実情でございます。従来、
繊維産業というものは
輸出産業として非常に高く評価されてまいったわけでございます。
輸出の
割合も繊維全体といたしまして三割強、化合繊にとってみますと四割をこえております。
繊維産業というのは、今日までそういう構造ででき上がっておるわけでございます。その構造自体が、現在大きくゆらいでおるという実情にございます。平価調整とそれに続きまする円高の基調によりまして、
輸出採算は極度に悪化しております。しかも、量的な圧力が
輸出価格の引き上げを困難にしておるという事情もございます。いまこういうような
影響を真っ正面に受けておりますのが、いわゆる化合繊メーカーでございまするけれ
ども、これは当然化合繊メーカーだけで済むものではないと思います。今後これがどうも全
繊維産業に
影響が波及することを私はおそれるものでございます。このように、日米の繊維
協定に端を発しました多国間
協定の動き、あるいはまた通貨不安と、こういうような将来に控えております大きな不安が解消してくれないことには、どうも実のところどうにもならないかもしれないのでございまするけれ
ども、いずれにいたしましても、このような激変後の今日におきまして、この辺で将来の
繊維産業のあり方というものをもう一度じっくり検討してみる必要があるんではなかろうか。あるいはまた、ことばをかえて申しまするならば、
繊維産業の長期ビジョンというものをこの際お役所が中心になって立ててみていただく必要があるのではなかろうか。
繊維産業にとりまして、問題が終わったのではなく、むしろまさにこれから非常にむずかしい問題が出てくるかと思うわけでございます。で、こういうような将来の
繊維産業のあり方につきます全般的な見直しと申しますか、そういうものをいたしましたときに、あるいはもう少し
施策の重点の置き方を変えるとか、あるいはまた新しい何らかの
施策を打ち出すとかいうことがやっぱり必要なのではなかろうかという感じがするわけでございまするけれ
ども、じゃそれまで、そういう
繊維産業のあり方を検討し直すまで、当分この
構造改善をストップしたらどうか、こういうようなあるいはお考えをもし持たれるとすれば、これはたいへんな誤解でございまして、今日まで
政府がおとりいただきました繊維に対します緊急
措置、これを含めまして考えてみますると、
過剰設備の
買い上げとか、あるいはまた
設備の
近代化融資とか、あるいはつなぎの運転
資金融資とか、とにかく今日において考えられるものは全部一応そろえてやっていただいておるわけでございます。現在の段階では、まずせっかく
政府がこれだけの
努力をして進めようとしておられまするところを着実に実行するということが何よりもまず必要かと思うわけでございまして、その意味におきまして、今後まあ何を考えるにいたしましても、まずただいま上程されておりますこの法律が早く
国会において
成立していただきまして、そしてこの
構造改善を進めていただくということが必要かと思うわけでございます。どうぞよろしく
お願い申し上げます。