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国務大臣(
田中角榮君)
生産第一主義から生活第一主義に転換をしなければならない
状態にあるということも事実でございます。また、重化学工業
中心のものから、知識集約的な産業に移らなければならないということも事実でございます。重化学工業から知識集約的な産業に移るとすれば、これは電力の需用も変わってくるわけでございますから、その燃料である
石油の
消費量も変わってまいります。
石油そのものもさることながら、
日本の経済の実態をどうしようかという問題は、量から質への転換の
段階にあるということだけは事実でございます。また、
石油そのものも、六十年までにエネルギーの中に占める割合が一〇%
程度を目途とされておる原子力というものが、二〇%ということになるとすると、
石油の
消費量も減るわけでございます。公害の問題でもって、自動車が
石油を使っているものが電気自動車に移るとすれば、これは確かに
石油は減ります。まあしかし
石油だけではなくて、現に
石油をたいているものがかなり天然ガスを使うということになれば、これもまた変わってまいります。
ただ一〇%経済というものが長い間続いてまいりました。
昭和二十九年から十六、七
年間一〇%経済というものが続いてまいったわけです。これが四%台に総
生産が落ちたのが四十六年でございます。今年は七・二%ないし七・五%にしなければならないといわれております。いまの
日本の国民所得や、国民総
生産の
状態を見ますと、やはり、あなたがいみじくも述べられたうんと低い成長率まで下げられるかどうかというと、これにはいろいろな問題があるようでございます。まだ、
アメリカの四・四%、拡大EC十カ国の平均六%という数字に対応する一次産業比率は一七・四%でございます。これまた
沖繩が返ってまいりましたから、もう少し上がるわけでございます。そういう面からいって、やはりまだ二次産業や三次産業に移らなければならないものが、一〇%くらい人口比率からいいますとある。それは、言うならば、潜在失業者ともいえるわけであります。そういう
意味で、やはり経済というものがノーマルな
状態で拡大をしていかなければならない。国民所得そのものも、いずれも野党の皆さん申されておる、国民総
生産が大きくなったと言うけれども、国民所得はまだ十何番目じゃないか。いま十三番目くらいだと思います。一けたにしたい、こういうこともありますので、やはりその
前提になるものは経済の拡大である。だから、経済の拡大ということを押えるのではなく、公害を伴わない経済、これはスイスのように精巧な高度なものに転化でき、付加価値の高いものに転化できれば、経済がもっと拡大することが国民所得の増大につながるわけでありますから、そういう
意味では、ただ端的に成長率を引き下げるということではないわけであります。
それから、東京、大阪、名古屋ということをいつも例に引きますが、東京と大阪と名古屋で五十キロ圏をつくりまして、三つ合わせると全国土の一%で、三千二百万人住んでいる。これをまた五千万人にしようと、そんな無
計画な過度集中を是認し、促進するような
政策をとっておっては、これはだめですが、しかし、今度の国会で御
審議をいただいております工場再配置というようなものが行なわれて、そうして理想的な姿における
日本の将来ということを考えますと、私は、少なくともいまの六十年展望に立った七%ないし一〇%の成長というものは可能であり、それに必要な労働力も、土地も、水も、すべてのものが
供給可能であって、われわれが知恵を出せば公害も除去できる、こういう
考え方に立っておるわけでございます。だから、六十年に
石油が七億キロリットルということを、私も計算をしてみたんです。去年が二億二千万キロリットルというと、やはり七億キロリットルというものを六億キロリットルに下げるよりも、このまま使いまして、これは六十年で自動車は三千七百万台くらいになると見ているわけです。これが四千百万台というところまで伸びると、七億キロリットルが八億キロリットルくらいになるはずです。もっと大きくなるはずです。だから、必ずしも七億キロリットルというものは大きくもないのです。ただ、先ほど申し上げましたように、七億キロリットルでも、六十年には、
自由世界で運搬する
石油の三〇%をこすということでありますから、これは確保するにもたいへんであるということは事実でございます。だから、そういうことを想定をしながら緊急に、低廉、良質、長期安定的なエネルギーの確保ということで、いろいろな施策をお願いしておるわけでございますから、端的にいまあなたが述べられたとおりにはいきませんが、しかし、六十年展望の数字を一ぺんきめたから、それでもって六十年まで押すんだということではないわけです。一応の
目標を立てて、それに対する施策を行ないながら、より合理的、効率的な方法を絶えず検討してまいるということで、
石油に対しても勉強してまいらなければならないと思います。