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1972-05-11 第68回国会 参議院 商工委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十一日(木曜日)    午前十時三十三分開会     —————————————    委員異動  五月九日     辞任         補欠選任      矢野  登君     林田悠紀夫君      川上 為治君     重宗 雄三君      中尾 辰義君     鈴木 一弘君  五月十日     辞任         補欠選任       重宗 雄三君    川上 為治君       林田悠紀夫君    矢野  登君      久次米健太郎君    中山 太郎君       鈴木 一弘君    中尾 辰義君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大森 久司君     理 事                 川上 為治君                 剱木 亨弘君                 竹田 現照君                 藤井 恒男君     委 員                 植木 光教君                 小笠 公韶君                 大谷藤之助君                 矢野  登君                 山本敬三郎君                 渡辺一太郎君                 小野  明君                 大矢  正君                 中尾 辰義君                 原田  立君                柴田利右エ門君                 須藤 五郎君    国務大臣        通商産業大臣   田中 角榮君    政府委員        通商産業政務次        官        林田悠紀夫君        通商産業大臣官        房参事官     増田  実君        通商産業省企業        局長       本田 早苗君        通商産業省公害        保安局長     久良知章悟君        通商産業省鉱山        石炭局長     莊   清君        通商産業省鉱山        石炭局参事官   飯塚 史郎君        通商産業省鉱山        石炭局石炭部長  青木 慎三君        中小企業庁長官  高橋 淑郎君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        通商産業省鉱山        石炭局石炭部鉱        害課長      後藤  宏君        建設省住宅局住        宅計画課長    丸山 良仁君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○臨時石炭鉱害復旧法等の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○小規模企業共済法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○割賦販売法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  速記をとめてください。   〔速記中止
  3. 大森久司

    委員長大森久司君) 速記を起こしてください。  委員異動について報告いたします。  昨十日、久次米健太郎君が委員辞任され、その補欠として中山太郎君が選任されました。     —————————————
  4. 大森久司

    委員長大森久司君) 理事川上為治君が委員を一たん辞任されたため、理事に一名の欠員が生じておりますので、この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大森久司

    委員長大森久司君) 御異議ないと認めます。  それでは理事川上為治君を指名いたします。     —————————————
  6. 大森久司

    委員長大森久司君) 臨時石炭鉱害復旧法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本法案についての趣旨説明はすでに聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 大矢正

    大矢正君 大臣が来られるまでの間、具体的な問題についてお尋ねをいたしますが、先般、石炭鉱業審議会総会におきまして、昭和五十年度において二千万トンを下らない程度需要確保ということが決議されておるようであります。二千万トンという数字がいいか悪いか、そのことはおくといたしまして、その決議をどのように政府としては受けとめているのか。そしてその際、それを実行しようとするにあたりましては、原料炭一般炭比率をどういうように考えておられるのか。で、御存じのとおり、これはこまかく二千万トンという数字原料炭一般炭に分類をし、あわせて原料炭産出によって生ずるところの一般炭数字等もございますので、そういうこまかい計算をしていきますと、日本の石炭産業にとって非常に重大な時点想定されますので、できる限り詳細に、二千万トンという需要確保をした際における原料炭一般炭、そうしてその一般炭の中には、原料炭に随伴して出てくる一般炭がどの程度あるのか、それをひとつお答えいただきたいと思うのであります。これは私が申すまでもなく、この数字というものが石炭産業を運命づけるといっても過言ではない状態に私はあると思いますし、おおむねこれを検討することによって、言わずもがな、どういう炭鉱が残り、どういう炭鉱がつぶれるということも推測し得るほど重大な内応を持つものだと私は思いますので、お答え願いたいと思います。
  8. 莊清

    政府委員莊清君) 三月末の石炭鉱業審議会の、二千万トンを下回らない需要規模を五十年度において確保すべきである、これを前提として、今後万全の対策検討を行なうべきであるという、中間的な御決定があったわけでありまするが、通産省といたしまして、需要業界からのいわゆる需要予測では千五百万トン程度で実はあったわけでございます。千五百万トン程度需要規模昭和五十年において予想するというふうな石炭産業規模では、現状から考えまして、これはもう明らかになだれ閉山的な現象をいかにしても避けることができない。そういう前提のもとでは石炭対策というものも、したがって、立てることが不可能であるというふうな審議会委員全員の御認識で、こういう中間的な決定がなされた次第でございまして、その点の重大性は、十分私ども事務当局としても認識しておりまするし、大臣からも、しばしば二千万トンということについては決意が述べられておるわけでございます。  なお、この二千万トンという数字意味でございますけれども、私どもといたしましては、五十年において単に二千万トンであるだけでなくて、その後におきましても、資源産業のやむを得ない事情といたしまして、資源が枯渇してくる、あるいはやむを得ない不測の事故が起こるというようなことによります減少ということは、将来の問題として避け得ないかと存じまするが、そういう事態がない場合においては、やはり国内のエネルギーとしてこの水準というものをその以後においても確保すべきである、こういうふうに基本的に受けとめております。それにふさわしい対策というものを今後樹立するということが、いわゆる石炭第五次答申の基本であると、こういう基本的な姿勢を持って、これから体制委員会の場で、具体的な対策について御検討いただく、こういうつもりでおるわけであります。  それから、二千万トンの問題につきましては、その後省内におきましても、私どもの局と、それから需要産業をかかえております関係の各局と十分打ち合わせの上、需要業界とも鋭意個別的な折衝、説得、これを強力に行なってまいったわけでございまするが、現在のところ、大体鉄鋼関係で当初の業界見通しに対しまして、五十年時点で約三百万トン程度、それから、電力関係では同じく百三十万トン程度需要の増加という点について、事務的にこれがやっといま需要としての見通しを持ち得るに至っておるわけであります。全体で大体二千九十万トン程度ぐらいの数字をやっといま通産省総力をあげまして、積み上げてきているという現状でございます。その場合におきまして、ちょっと詳しくまた申し上げたいと思いますが、原料炭一般炭との五十年度での比率というものは、原料炭が若干多いわけでございますが、大体半々という程度出炭の構造に相なるわけでございます。実はこの問題は、体制委員会山別検討もある程度やっていただいておりますので、内部の感じとしては、山別のある程度めどというものが実はないわけではございませんが、まだその点につきましては、対策とのからみ合いもございまして、明確なものというものは実は事務的にもまだ持つに至っておりません。ある程度の事務的な感触というものは、いままでの検討の結果ではございます。そういうところから、原料炭一般炭との生産比率というふうなものにも実はなお若干の幅がございます。ただし、申すまでもなく、今後原料炭に伴います一般炭というものが一般炭としては主力になってくる。現在よりもさらにウエートが上がってくるということは、これは明確な事実でございます。したがいまして、やはり一般炭市場確保ということが原料炭をも含めました石炭全体のコストの低下、したがって、需要確保というふうな点についても、今後ますます重要な意義をもってくる、こう存じます。  簡単でございますが、概要だけとりあえず御報告いたしました。
  9. 大矢正

    大矢正君 ただいま局長から五十年度における需要の見込みと申しましょうか、もちろんこれは政策需要を含むというわけでありましょうが、二千万トンとした際において、一般炭原料炭の率はおおむね五〇、五〇と、こういうことのようであります。そこで、原料炭五〇ですから、一千万トンと仮定いたしますと、その一千万トンの原料炭に随伴する一般炭というものをどういうふうに想定をされるのか。
  10. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) 具体的に山別にはじいておりませんけれども、大体のことを申しますと、原料炭が約一千万トン出ますと、私ども感じで申し上げますが、三百万トンないし四百万トンが随伴の一般炭であるというふうに考えられると思います。
  11. 大矢正

    大矢正君 そこで石炭部長お尋ねしますが、需要の二千万トンというものを基礎にして石炭政策を立てようといたします際に、五〇%の一般炭ということをまず一つのベースにして考えるということではなくて、やはり原料炭の一千万トン、それを基準にして、そこから随伴して一般炭がいまお話のとおり三百万トンないし四百万トン、まあ四百万トンというものが出るといたしますと、一千万トンの一般炭の中からその随伴される三、四百万トンの一般炭というものは、当然これは除いていくということになりますと、一般炭だけしか産出をしないという山は、規模としては六百万トン——七百万トンという数字にあるいはなるかもしれぬ。しかし、御承知のとおり、昔は五〇、五〇。原料炭が一千万トン出せば、一般炭も一千万トン出るような状態であったが、最近は徐々に比率が下がってきておりますから、おっしゃられるとおり三、四百万トン一般炭産出されるとすれば、それを除けば六百万トン程度の純粋の一般炭の山しか残り得ないという数字になりますね。そういたしますと、これは非常にむずかしいことを質問するようでたいへん恐縮なんですが、たとえば、われわれが一般論としていわれているコストの安い炭鉱、それから、ある程度採炭量ももちろんあるということを前提にすれば、四十七年度で資料分析をすると、たとえば太平洋炭礦の純粋な一般炭二百五十万トン、あるいは同じくコストの安い三池一般炭百八十万トンというようなところがあげられてくるわけでありますが、この二社だけですでにもう四百三十万トンぐらいの数字になってしまいますね。そういたしますと、現実にはこの一般炭山というのは、山の名前をあげて恐縮だが、三池とか太平洋というコスト中心主義で山の個別の選択をしていきますると、それに上積みされる一般炭山というのは非常に限定をされるという感じが、これは出てきますね。この辺はどういうふうに受けとめたらよろしいのでしょうかね。
  12. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) ただいま先生指摘のとおり、一般炭のみを生産している山というのは、太平洋三池という大どころを除きますと、だいぶ減ってまいるわけでございますが、私どもの、これはこまかい計算はしておりませんけれども予測をいたしますところによりますと、いま一般炭生産しております中小の山がたくさんございます。が、中小の山の炭量が非常に少なくなってきておりまして、そういうところの閉山がある程度出てくるという見通しでございますので、コストを無視した一般炭の山を全部生かすということにはならぬと思いますけれども大手一般炭生産しております山が非常に大きく打撃を受けるということはむしろないので、炭量枯渇による中小中心の山が減ってくるというふうにほぼ予測いたしております。
  13. 大矢正

    大矢正君 数字の上でそういう結果になりますでしょうかな。たとえば、四十七年度の合理化計画でまいりますと、一般炭だけを考えた場合に、中小積算をいたしますと、これは四百十六万トンですか、という数字になっておりますね。そうして、全体の一般炭産出が千三百六十一万トンということになります。これは中小だけで原料炭百二十八万トンですか、四十七年度で。これに随伴する一般炭がかりに七、八十万トンと仮定して、二百トン程度のものは中小一般炭ということになりますね。それを差し引いて詳細に分析をしていくと、あなたがおっしゃっておられるように、なるほど一般炭山としては、中小には終掘も含めてかなりの変化は見られるが、俗に大手と呼ばれる中においての一般炭山にはさほどの影響がないというようなことには、数字の上で結果論としてならないのじゃないでしょうかね、いかがですか。
  14. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) いま先生指摘数字と、私どもの手持ちの資料と必ずしもぴったり合っておりませんので、後刻調べさしていただきますけれども、私どもが大きな山で見まして、一般炭山を現在の時点でいろいろ判断いたしますと、それほど大きな一般炭山閉山ということにはならないような一応積み上げになっております。
  15. 大矢正

    大矢正君 そうすると、もう一回お尋ねしますが、四十七年度の一体生産計画というのは、あなたのほうの数字はどうなっているのですか。私は、これはあなたのほうからいただいた資料を私自身が書きとめて、二千七百六十三万トンという四十七年度計画前提に立っていま御議論をしているわけで、その際における原料炭は一千四百万トン、それから一般炭が千三百六十一万トン、これはもちろん中小大手全部含めてですが、それを積算基礎にして私はいま質問しているのですが、そんな大きな違いがあるはずはないし、私自身自分資料をつくれるはずはないし、あなたのほうから資料もらわなければ出てこないんだから。
  16. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) 私ども資料で申しますと、四十七年度の生産は、トータルが二千七百五十万トンでございまして、先生数字とほぼ同じでございます。そのうち一般炭が千三百五十万トンでございます。で、原料炭が一千四百万トンという数字が概数でございます。それが五十年度にまいりますと、私どものほうの生産は、トータルで二千百六十万トンでございます。そのうち原料炭が千百八十五万トンでございまして、ほかに若干雑炭がございますけれども精炭としてはそういうことでございます。それで一般炭のほうは、これを差し引きますと、約九百七十五万トンでございます。
  17. 大矢正

    大矢正君 さっきから前提として二千万トンがいいということで質問しているんじゃなくて、二千万トンというものを下らない形で需要確保し、もちろん生産確保もやりなさいということを議論前提にしておるだけでありますから、私どもがこれでいいとかなんとかいう立場にないことだけはひとつ御了承賜わりたいと思いますが、二千万トン、まあ二千百六十万トンですか、いまお話があった二千百六十万トン五十年度というものを具体的に生産計画として立てる場合に、これはどういう立て方をするつもりでおりますか。何も前提条件がなくて二千百六十万トンという数字は出てこないと思う。たとえて言いますとすれば、Aという会社はどのくらいの出炭規模になる、Bという会社はどのくらいになるというような積算基礎、と同時にそれはある意味では、生産原価との比較なり、それから自然条件内容なり、可採年数なり、そういうものを含めて当然積み上げられるものではないのかと、私はそう思うのですが、何とはなしにこの二千百六十万トンというものはふわっと出てくるものじゃないので、やはりそれにはそれ相応の積み上げがあって、出てくるのだと思うのですが、その積み上げをする際の、何か基礎的な考え方というものがおありになるのかどうか。
  18. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) いまちょっと数字を私、読み違えたかもしれませんが、二千百六十万トンではございませんで、二千六十万トンでございます。このもとの数字は、大体需要見通しが、先ほど局長から申し上げましたように二千九十万トンでございますので、その辺をめど生産をはじいたわけでございます。  この生産のはじき方でございますが、これは事務当局の全くの試算でございまして、どの山がどれくらい生産するか、どういう会社の山がどれくらい生産するかという問題につきましては、今後の対策のからみもございますので、私どもはさしあたりは一応の想定を置きまして、大体こういうかっこうになるだろうという計算は一応いたしておりますが、これは体制委員会議論していただいた問題ではなくて、体制委員会議論基礎になるべき、大体どれくらいの資金量が要るのだという数字をはじくための便宜の試算でございます。したがいまして、会社側資料に基づきまして、主としてコスト中心に一応の試算をしてみたというのがこの数字でございます。で、この数字を一応はじきまして、必要国家資金量をはじきまして、それを政策にはね返すという作業を今後体制委員会を通じて議論してまいりたいと、こう考えておりますので、その材料としての試算数字でございます。
  19. 大矢正

    大矢正君 これはまあ、自然条件がいいというか、可採年数があるとかというだけじゃなしに、やはりコストが高いか安いかということも、これから残し得るか残し得ないかという場合を判断する際の大きな考え方基礎になるかと思いますが、結果論的には一応こういうことになるんじゃないですか。将来当分の間採掘できる条件にあるといたしますれば、あとはコストが高いか安いかということ以外に全然ないとは申しませんが、まあコスト中心になると、そうするとコストの安い山から積み上げていって、そしてそれを原料炭一般炭トータルをして、二千万トンになったところで線をひいて、悪いけれどもこれから上のほうは、まあ一年後にか、二年後にか、三年後にかはわからぬが、五十年までの間に漸次撤退をしてもらうんだと、こういうこと以外にないでしょう、事実上の問題として。出るだけ認めるというなら別だけれども、二千六十万トンということであくまでも押えるということであれば、そういう方法しかないんでしょう。どうですか。
  20. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) ただいま先生指摘自然条件炭量のほかに、大体コストであるラインは引かなきゃならないということは御指摘のとおりでございますが、それに加えまして、コストだけでなくて、それに要する資金量と申しますか、会社資金繰りの問題もございますので、その資金繰りもある程度考慮に入れまして、実際その山の一トン当たりの資金不足量というものも同時に計算いたしまして、この二つを勘案してある線を引いて、それより高くかかるものは一応脱落するという想定で私ども作業上の試算はいたしております。ただ問題は、どういう政策かによりまして、若干条件が変わってまいりますので、それは政策をつくります過程におきまして、若干の入れかえは生じてくるかと思いますが、基本的にはそういう線で非常に資金をたくさん要する山につきましては、ある程度閉山をしていくという考え方に立たざるを得ないと考えております。
  21. 大矢正

    大矢正君 これはあんまり詰めると、個別の山の名前が出たりしてもまずいし、先ほど私は例として申し上げただけで、こういう場でもって個別の山の名前が出て、これがいいか悪いか、生きるか死ぬかという議論になるとたいへんですから、私も控えますが、まあおおむね石炭局がどういうことを考えておるのかということは、おぼろげながらつかみ得たと思うんであります。  石炭局長お尋ねをしますが、大臣来てから大臣お尋ねしようとは思いましたが、まあこれはある程度実務的な判断とも考えられる面がありますので、お答えをいただきたいと思いますが、いませっかく審議会答申作成のために努力をなさっておる中で、私がかようなことを申し上げることは、ある意味では不謹慎かもわかりませんが、まあしかし、石炭企業産業というものはかなりきびしい情勢にいま置かれておりますから、できることならば、一日も早く答申を出していただいて措置すべきであると思うわけでありますが、だからといって、これまた最後の政策ではないかと世上言われるほどの内容でありますから、適当なものでというわけにもまいりません。やはり石炭産業として残り得る内容のものでなければ、これは意味のないことになるわけでありますから、そういう意味では、これまた拙速を避けなければならぬということになると思いますが、見通しとして、行政府としていついつと、こう期限を切って、それまでに絶対答申してもらわなければならぬというふうに言うことは多少問題があるでしょうが、しかし、だからといっていつまでも放任できないという、いま申し上げたような情勢があるわけですが、おおむね私ども心づもりとして、審議会答申はいろいろな情勢を踏まえていつごろというふうに判断をしておいたらよろしいでしょうか。
  22. 莊清

    政府委員莊清君) 予算編成期までにはぜひとも第五次の対策というものの答申をいただく必要があるわけでございまするが、事務的には今後大体体制委員会の全体委員会、もしくは体制委員会の中の小委員会というものを毎週一回程度のテンポでお開きいただきまして、実質的に答申の重要な内容が固まるのを大体六月いっぱい、そして審議会総会もございますので、そういう場で確定的なものとしていただくのをやはり七月の上旬、これをめどにスケジュールを組みまして、委員先生方にも実はお願いを最近したわけでございます。六月末までに実質を固め、七月上旬には公式のものにしたい、これが予定でございます。
  23. 大矢正

    大矢正君 これはある程度私の意見もありますから、大臣が来られてからも質問いたしたいと思いますが、その前に、石炭局としてどういう判断をされておるかという実務者立場からのお答えを私いただきたいと思うのですが、いま申し上げたように、早く早くといってせき立てますれば、それなりのものしか出てこないということもこれ常識的には考えられる。それから、石炭政策だから通産省が方針をきめればいいと、表向きはそうだが、実際は金にまつわる問題ですから大蔵省とのせり合わせもあるだろうし、その他もいろいろおありになると思うのですが、そういう回りの了承なりオーケーがある程度固まってからでなければ、正式な答申と申しますか、石炭政策としては形をなさないというのが従来もそうであったし、今後もなおさらそうだろうと私は思いますね。そういたしますと、あまり日にちにこだわって早く早くということになりますと、やはり不満足なものができ上がっても困るのじゃないかという心配もいたしますが、しかし、石炭企業が非常にきびしい情勢にあり、しかも、これは近々どこの企業筋でもそうでありますが、すでに新しい賃金の決定というものが労使間においてきまっておりますが、いずれ石炭企業においても労使間で賃金の問題をきめなければならぬとすると、もちろんだれが考えてもゼロなんていうことはあり得ないのであって、それ相応の一応の相場を加味した形でベースアップをすれば、これがまたかなり一面ではコスト上昇要因になり、金繰りに困難を来たすという問題になると思うのでありますので、私は拙速を避ける意味で、多少時間のことについては先に延びても——もちろん限界はありますが、延びてもその間の措置を講じておいて、やはり確実なというか、ほんとうに産業として生き残れるような内容のものをこの際つくるべきではないかという実は考えを持っておるわけであります。しかし一方においては、当然これは石炭企業は金繰りでどうにもならなくなるということも想定されますので、制度としては従来から残っております、まあ私流に解釈させれば、いまの合理化事業団に新たに予算措置を設けて、年度の途中ではありますが、ある程度運転資金を供与できるような措置をつくっておいて、そうして新政策というものに取り組むのが全体としていいんではないかという感じがいたしまするし、その手段を先に講じないでおいて、すべてを新政策ということになりますると、非常な危険が伴うんじゃないかという感じがいたしまするがね。これは、対大蔵省との関係その他非常にむずかしいことがあることを私も十分認めますが、最後の機会、最後の政策でもありまするし、それだけの慎重な配慮をした上での新政策樹立の道を講じられたらいかがかと思いますが、もちろんこれは、先ほど申し上げましたように、大臣が参りましたら大臣にそのことをお尋ねをいたしたいと思いますが、実務の担当者としてこの面についてどういう御判断を持っておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  24. 莊清

    政府委員莊清君) 実務的な面から率直に申しますと、石炭の予算というのは特別会計になって、翌年度の財源というものが前もって大体見当がつきますので、従来の経緯では、年末に至るまで財政当局といろいろ折衝が続けられ、場合によっては予算の差しかえ等の措置というものも行なわれたということもあるわけでございまするけれども、何ぶん今回の対策というものは、単に四十八年度一年間のことじゃなくて、長期的な対策でございますのと、一方やはり現状横すべりではなくて、五十年以降二千万トン程度というふうな線もすでに出ておる関係から、関係者の間でやはり極力早い時期に第五次対策の柱というものを政府として明確にしていくべきである。そうでないと、やはり一部になだれ閉山的なムードというものを醸成しかねないというふうな要請もかねがねあるわけでございます。したがいまして、御指摘のとおり、拙速ということではこれは全く何にもならないわけでございまするけれども、その点については、これはもう今回の対策非常に重要な対策でございまするから、その点には十分注意をしておるつもりでございます。急ぐからといって、それによって中身が非常にいいかげんなものということは絶対にないことにするというつもりで、これから体制委員会でも十分なる御審議をいただくつもりにいたしております。それで、やはり時期といたしましては、先ほど申し上げましたような時期を事務的な目標時期にいたしまして、若干前後の動きは、それはやってみて、問題のむずかしさいかんによりまして、生ずるかもしれませんが、極力ただいま申し上げましたような時期でおさめるということで、私どもは事務的に現在考えております。  運転資金の問題が当面、今年度中の問題として重要だという御指摘がございました。私どももその点は全くそのとおりだと思っております。当然四十八年以降の第五次策の中でも、運転資金の問題をどうするか。特にこの運転資金の圧迫要因になっております重要な原因であるところの累積債務的なもの、これを一体どうするのかというふうな問題が大きな柱になろうと思います。したがいまして、やはり運転資金対策については、基本的には第五次策の中で方策をきめざるを得なかろうと現在考えております。四十七年度中だけのとりあえずの繰り上げ措置というふうな形で、五次策の中から運転資金の問題だけをある程度抜き出して、具体的な措置を年度中にも講じていくということが、なかなか実際問題として、他の施策とも非常に有機的にからみますので、事務的には非常にむずかしい問題であろうというふうに、この点は悩んでおる大きな問題でございます。ただ、やはりこの問題非常に重要でございまするから、今年度予算で安定補給金の増額とか、坑道掘進補助金等に対する実質的な増額等も実は行なってはおりまするけれども、それだけでは十分ではございませんので、さらに行政上の措置として、すでに肩がわりが済んだにもかかわらず、担保が依然金融機関で凍結されておるというふうなものについては、現在企業と個別の金融機関の間で話し合いをさせ、政府としてもそれが円滑に担保がはずれるように、個別の問題でございまするけれども、実際の指導に入っておるというふうなことを講じておるわけでございます。運転資金対策そのものについては、やはり合理化事業団等にそういう制度を設けたらどうかというふうな御要望もかねがね業界等からもございまするし、私どもも今度の五次策の中の非常に大きな項目の一つとして、他の施策と非常にからみますので、なかなかこれだけ切り離して早急にやれないという悩みがございまするが、御趣旨は体しまして、今後検討さしていただきたいと思います。
  25. 大矢正

    大矢正君 いまあなたの御発言の中に、たとえば一次、二次の肩がわりをしてきたが、新しく肩がわりをすることによって負担の軽減をし、それで将来生き残れる道の展望をはかっていける会社というか、山もあるという御発言がございましたが、私もそうだと思うのであります。いまの石炭企業というのは、私の認識が多少誤まっている面もあるかもしれませんが、たとえば合理化をやって、非能率あるいは高コストの山を逐次撤退してきた、しかし、結果としては、それぞれの山の持っていた借金というものが全部残った山に集中的にかぶさったがゆえに、それで身動きができないという炭鉱もあるでしょうし、それでまた一面においては、一次、二次の肩がわりでおおむね大きな借金をほとんど解決をしたと、その後は金融機関から特別の融資を得ようとしても、現実には融資を受けられなかったから、あらためて肩がわりをしてもらうといたしましても、肩がわりをする対象がない——ゼロだとは申しませんが——という企業もあるでありましょう。それから、なるほど肩がわりの対象には入っておるんだけれども、なかなか銀行が担保を抜いてくれない、したがって金繰り上困る、それを抜いてくれれば企業としてはやりやすいということもある。その際は、そうすると、肩がわりをしたものをもう一回また抜く部分だけ肩がわりしてやらなければならぬ、極端のことを言うと。同じ原資を二度肩がわりするというようなことも起こり得るというか、そうしなきゃ実際問題として担保抜きが成立しない。長年担保抜きを政府も金融機関に対して指導してこられたが、一向に残念ながら効果があがってないですな、これは。いよいよせっぱ詰まって、この段階で考えられる方向とすれば、担保に見合う分をもう一回ひとつ、その部分は二分の一じゃなくて一〇〇%とか、あるいはまた早期に肩がわりを返還するとかいうような、何らかの措置を講じてやらないと、担保抜きはおおむね困難だということはお互いに認識しておると思います。そういたしますと、そういうことをやって、そのことで将来の展望が開ける企業もあるでしょうし、数少ない石炭企業とはいいながら、なかなか政策というものは、一つで全部の企業に有効に作用するというような政策というのは出てこないんじゃないかという感じがするわけですね。そこで、石炭経営の立場からいけば、最大公約数というか、お互いが大体一致できる限度において政策的な要望はありますが、しかし、個別企業の要望なり意見なり生き延びれる道なりということになると、おのおの違う道がそこに出てくるんじゃないかという感じがいたしますが、その辺のことは局長でも部長でもけっこうでございますから、これをどう受けとめておられるか。答弁しずらい面もおありになるかと思いますが、特定の企業の名前をあげて私、質問しているわけじゃないので、ひとつそういう私の懸念というか、判断というか、というものに対しての認識なり、御意見があったらお答えをいただきたいと思います。
  26. 莊清

    政府委員莊清君) 肩がわりの問題ないしその制度の改善の問題ということ、実はこれは、今後の第五次策でももう中心的な一つの課題でございまするし、事務的にはいろいろな案について利害得失その他勉強はいたしておりまするけれども、まだ委員先生方の御意見も本格的にこれからという段階で、こういう公の場で私、事務当局としてちょっと申し上げにくいことが多いわけでございまするが、そこのところはひとつ御了承賜わりたいと思いまするが、運転資金の問題、先ほど来のお話になっておるわけでございまするけれども、やはり財政というものによって全部をささえるというだけでは、なかなか今後の石炭対策というものも実は成り立たない面もこれはございます、正直申しまして。したがいまして、やはり今後五次策のもう一方の柱として、通産省でいまいろいろ検討いたしておりますのは、やはり競合燃料であるところの輸入炭とかあるいは輸入重油等との関係で、石炭とそういう競合燃料との間の価格について一定の何とかルールのようなもの、これが政府及び生産者、ユーザーを含めたコンセンサスとして何か確立をしていくというふうな方策、別のことばで端的に申しますと、石炭の単価の今後の引き上げについての関係者の合意のあるようなルールというふうなものについても、やはり今後真剣な検討が要るだろうというふうに考えておる点がございます。運転資金、日銭の問題でございまして、やはり単価がどうあるかという点は、財政措置と並びまして生きた産業でありまするから、当然重大な問題でございます。こういう問題も含めて五次策の中で検討いたしたいと考えておるという点を申し上げておきたいと思います。  それから、山ごとに格差がいろいろある。これは自然条件もありますし、過去からいろいろ背負ってきておる経理の実態も洗ってみますれば、たいへんな格差がいろいろとございます。で、その事情というのは、やはり簡単に変更できないなかなか根強いものがある場合が多いわけでございます。そこで、今度の五次策の中の大きな問題点の一つとして御検討いただきたいと思っております点は、従来のいろんな施策の内容について検討し、それの改善を当然考えるわけでございますが、そのときに、それらの施策が最も一定の限られた財源の中で効果があがる、効果あらしめるというためにこの格差のある現実を踏まえまして、一体どういう助成の仕組み、政府施策の仕組みというものを考えるのが一番手段として効果が高いであろうかというふうな点も考えて、従来の平均値でやっておった施策といわれておりまするこれの運用面において相当くふうする余地がないかということもございまして、初めてのことになるかと思いまするが、突っ込んで検討をぜひしなければならない段階に現在来ておるんではないか、こういうふうに実は考えております。こういういろいろなことを含めまして、先生指摘になっておる問題の本質なり重要性は、私ども痛いほどよくわかるのでございますが、こういういろいろな検討を通じまして、何とか総合的に少しでも解決する、こういう努力をいたしたいと考えております。
  27. 大矢正

    大矢正君 石炭局長、いま行なわれている政策を振り返ってみますると、確かに個別対策としてはずいぶんまあ局も苦労されて、そのつどいろいろな措置もおやりになったし、できるだけ一つの多くの山でも残れるような配慮をされたことは、私もよく存じておりますが、ただ、にもかかわらず、なお現実に急速に出炭規模が下がったということも、これもまあ事実ですわね。  で、まあいま行なわれている施策が当初立てられた当時は、四十七年度で二千六、七百万トンの生産規模しか持てなくなるような想定は全然なかったと思うのですね。でありますから、エネルギーの長期見通し等の中でも四十七年、四十八年あるいは九年度になって三千五百万トンやその程度石炭はある程度使えるのではないかという前提があったが、それがくずれた、と言うとあなたのほうは気分が悪いかもしれぬが、実際上くずれてしまった。どうして二千七百万トン——来年おそらくこれでいけば二千五百万トンあるいはそれを下回るということも起こり得るかもしれない。それほど急激にこの石炭生産規模というものを縮小せざるを得なかったかということになりますと、これはもうこういう政策、こういう政策、こういう政策というものをやれば、まあ大体この程度生産規模は維持できるのではないかという一つの想定判断に基づいておやりになったわけですね。ところが、それはきびしい経済社会の情勢の中で適合しなくなって、結局のところ持ちこたえられなかったというのが今日の実態だと思いますね。  そこで私がお尋ねをしたいことは、審議会それ自身そうでありますし、もちろん審議会の以前で私自身田中大臣と会ったときも、自分としては何とかして二千万トン程度生産は維持をしたい、下らないものを維持したいというような趣旨の御発言がありましたが、それをそのまま受け取れるかどうかは別にしても、まあやむを得ないものとかりに仮定をいたしたといたしましても、従来のようにこれとこれとこれをやっておけばまあそのくらいはいくであろうということでは、これはもう問題にならぬわけですね、現に一ぺん失敗しておるわけですから。とすると、今度二千万トンということをかりに前提として政策を立てるといたしましても、やり方を変えなければいかぬわけですね。どうして二千万トンが残せるかということに重点を置くと同時に、これはまあ残れないような危険な事態がかりに出てきた場合には、それをどうするかということも含めてやはり考えないと、またこれは二千万トンのものが千五百万トン、一千万トンというふうなこともないとは、これはまあいままでの経過からいうとあり得ますね。  で、私は、たとえば電力については、まあ電力会社の言うなりに、言うなりにと言えば誤弊があるが、希望、意見はそれは認めてやろうというような事態になれば、これはもうそれこそ千五百万トン、一千万トンというような事態が起こり得ますね、そのトータルにおいて。これでは結局いけない。やはり二千万トンといいますと、もうこれ以下の規模なんというものは産業政策として成り立つものじゃないわけですよ。だから私は、皆さんとも昔ですが議論したときに、三千万トンを割るような石炭であれば、産業として政策が成り立たなくなるのではないかということを一度申し上げた記憶がありますけれども、とは言いながら、現に二千七百万トンになった時点で考えてみますると、せめてこれが減ったとしても、最小限度二千万トン以上のものは少なくともここ五年先、あるいはできれば、欲を言えば、その先くらいまではこれは平均して維持していきたいものだという前提に立つとすれば、これとこれとこれをやれば何とか生き残れるだろうというような簡単なものではなしに、それを維持しなきゃならぬ、残さなきゃならぬという前提に立った政策立案ということは当然考えられてしかるべきではないか、こう思いますね。そこで、かりに審議会答申が出、政府が新政策をつくられる際に、私どもとしては、従来のようなそういう残るであろうというような単なる想定なり、推測なり、計画なりということで、そいつを認めるわけにはいかない。少なくとも二千万トンはもう絶対に下らない対策を立てるという前提なり、基本的な考え方がないと、私どもとしては認めるわけにはまいらない。したがって、むしろこうなってまいりますと、生産の量ではなくて、山と企業の持続的な安定ということが、やはり今度の石炭政策の柱でなきゃならない。もう三千万トンがいいとか、二千五百万トンでは足らぬとか多いとか、二千万トンじゃけしからぬという生産量の問題は、もちろん私は皆無とは申しませんが、そこにこだわる段階から、すでに安定をどうして求めるかという段階に政策の基本は大きく転換しなきゃならぬ時期にきているんではないかという感じがいたしますが、いかがでしょうか。
  28. 莊清

    政府委員莊清君) 今回の体制委員会の中間報告の趣旨も、いま先生がおっしゃいましたことと全く同じ基本的なお考えに立ってなされたものと私たちは考えております。二千万トンという数字は、いっときいわれておった出炭目標三千六百万トンというものに比べますと、まことに予想外に早い時期にこれを大幅に下回ったというふうに言わざるを得ないわけでございまするけれども、わが国のエネルギー消費の伸びというのは非常に大きゅうございますし、絶対量の伸びも非常に大きい。その中で二千万トンというものを考えましたときには、政策対象があまり小さくなれば不安もあるかもしれないという端的な御指摘もございましたけれども、私どもはむしろ逆に、全体が非常に大きいわけでございまするから、しかも、国内にエネルギーはないわけでございまするから、小さくなったとはいっても、せめてそれくらいのものは絶対に確保する。これは、資源の備蓄というふうな新しい国民経済的に非常に重要な性格を石炭というものは持ってきたんじゃないか。掘っておらなければ水没して、備蓄にもならないわけでございまするから、そういう意味で、従来の個々の山対策とか従業員対策というだけの観点じゃなくて、エネルギー政策全体として何としてでもこの水準というものは資源としてキープをするという新しい判断というものが、どうしても今後石炭対策としてなければならぬ、こう思います。私どもは、そういうことをやはり財政当局等にも十分わかってもらわなければ、ほんとうの第五次策というのは、口で言ってもなかなかほんとうに実現しない、かように思うわけでございます。やはりエネルギー政策としての立場から、石炭というものが国内資源としてきわめて重要な意義を世界のエネルギー情勢の中ではっきり持ってきたということ、これを踏まえて私どもは今後の行政をやらなきゃならぬ、かように考えております。
  29. 大矢正

    大矢正君 石炭局長のただいまの御発言ですがね、ちょっと私ひっかかるところがあるのです。それは、まああなたは油と石炭という二足のわらじをはいておるわけですね。なかなかこれは私はむずかしい立場にあると思うのですよ。特に今度の場合には、やはりかなり特別会計も油と石炭とどんぶり勘定ではないが、込みにしてやるとかいうことになってきますと、油と石炭の区切りを一体どこに引いたらいいのか。たとえば、金の面で政策的にという問題が出てくるでしょうし、それから、いま一つ言わしていただければ、二千万トンという数字が一体日本のエネルギーの中で、エネルギーの安定供給という形においての役割りや使命がもう考えられるかどうかということになりますと、なかなか議論があるんで、私、事実そんなこと言いたくないんだが、たとえば三%の位置しか占めない石炭が、このエネルギーの安定供給の中でそんな役割りを果たしたとか果たさなかったとかという議論は、もう現実過去のものになってしまっておって、むしろそういう意味よりも、集中して起こってくる地域社会の混乱なり、そういうものをどうやっていくかということなんで、声を大にしてエネルギーの安定確保なんということを叫んでみても無理があるし、あなたが油と離れていて、石炭オンリーで局長でもおやりになっているなら、その議論も私、すなおに聞くんだけれども、どうも二足のわらじをはいているあなたの発言は、何かあまり大矢の前でおかしなことを言うと、あとでまた文句を言われても困るという配慮があって言われるなら、私は、それはそれなりに受け取れるが、そんなものじゃないんじゃないかという感じがいたします。そこで大臣がお見えになりましたので、私はひとつ大臣にぜひ、いま直ちにとは申しませんけれども、いろいろひとつお気持ちの披瀝を願いたいと思うのです。  まず第一点は、非常に石炭行政が緊急を要する時期になってまいりまして、しかも、政治的にはいろいろとこの国会が終わったあとにはどうのこうのというような政治情勢もございますので、大臣におせじを使うわけじゃないが、大臣の任期のうちに何とか、この審議会との関連もあるでしょうけれども、新政策の骨格と申しますか、骨というんですか、柱といいますか、そういうものの示唆だけでも固めておいてもらいたいなというのが、私の偽らざる気持ちでございます。これはほんとうにおせじを申し上げるわけではなくて、やはり政治的に混乱をしたさなかにこの問題が直面するとなかなか路線の出にくいものなんで、何か大臣の政治的な方向が変化をされて前に審議会とも話し合って、荒筋というか、骨というか、柱というか、そこらのところを何とかできぬものかなというのが、私の率直な希望の表明です。
  30. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 石炭に対しましては、三月の末に答申をいただきたいということであったのが、答申は延びて決議だけをいただいたわけでございます。しかし、決議は二千万トンを下らないということになったわけでございます。二千万トンというものに対しては、大体その後、千五百万トンくらいしか需要がなかったものを、二千万トンまでは大体の見通しをつけたわけであります。で、そのあと、具体的な方針、政策も含めた答申をいつごろまでということでありますが、これは五月の半ばから体制委員会を再開してもらって検討してもらうということになっておりますので、五月一ぱいということにはいきませんでしょうが、六月中には何とかしてもらいたい、そういうふうに願えるんじゃないかと思います。そうすれば、国会は五月の末まででございますが、しかし、まだいろいろの問題もあるでしょうから、六月ということになれば、それまでには通産省としても石炭問題に対しては、もう勉強するということよりも、具体的な問題を詰めて、答申をもらうそのときには、通産省も並行して勉強していくということで、六月中くらいには石炭に対する一応のめどというものをつけられるんじゃないか、こう思っております。これは答申をもらってから答申に対して通産省が受けてやるべきでありますが、そういう四角ばった考えだけではなくて、答申というのも、過程においては通産省と十分連絡をとりながらお勉強を願うわけでありますから、そういう意味でできるだけ早い時期に、将来的責任の持てる結論というものを出したい、これが私の現在の心境でございます。
  31. 大矢正

    大矢正君 具体的な結論まで出すというのは、私は簡単でないと思うんです。それだけに、大臣はいま通産省所管ですが、日本の国全部を所管するようになってしまうと、これは、案外、心変わりとは申しませんが、やっぱり圧力団体もこれあり、通産大臣と同じような気持ちでやっていただけるかどうかということになると、なかなか微妙なものも感じられるので、私はできることならば、ここで結論を得ようとは申しませんが、重ねて希望を表明さしていただくならば、まあできる限り早い機会に、審議会の関連もありますが、ひとつ骨だけでも示唆をしてもらいたいもんだと。そうすれば、まあまあ倒れかかったのも傾いたままで、完全に倒れないで何とかいけるということもあり得ますし、ぜひひとつあらためて私は、公式の場であるかないかは別にして、大臣お話をいただきたいと思うので、ぜひ御配慮をいただきたい。  それから、さっきもちょっと実務当利者としてどう考えるかという若干の御意見は承っておきましたが、こまかい話で恐縮ですが、第五次政策というものがかりに完全なものになって、それが動き出すとか——動き出すのは来年の予算からですが、きまることによってある程度石炭産業というものが楽になる以前の段階で、放置できないほどきびしい情勢があるわけですね。特に、いま賃金の引き上げ等もやらなきゃなりませんし、かなりのコスト高になるでしょうし、そういう意味でも、かなり資金面では困難を来たすので、実は、従来、これはいつときでありますが、何と申しますか、運転資金の緊急な場合における貸し付けということを当面何とかこれは考えるべきではないかと。で、合理化事業団という一つの、極端なことを言えば、金融機関に近いような性格のものがあるわけでありますが、しかしこの中では、従来ともに合理化資金、近代化資金とか、あるいは整理資金とかというようなものしかないんでありますが、もちろん予算との関連もありますが、たとえば具体的に言えば、財投等から一時的に借り入れをして、当面の緊急を乗り切り、そして第五次政策が出るまでのつなぎとして、金額はどの程度かということは、これは局としても十分検討しなければならぬ面があるんですが、そういう金融上の制度を何とか大蔵省との間に話し合いをつけて、一時的な、あくまでもこれは五次政策が出るまでの当座の政策として方針を出してもらえないもんかどうかという感じがいたしますが、いかがなものでしょうか。
  32. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 貯炭融資その他の緊急的なものについての融資のワクを取らなきゃならないということでございます。これは、特に中小炭鉱にそういう例が多いわけであります。これは担保の掛け目をどう見るかという問題もありますし、いままでとは逆な考え方1いままでは政府機関のほうががっちり押えておって、そして民間の市中銀行のほうが第二次、第三次担保というようなものになっておるわけですが、これは、こういう制度の中の石炭というものを見ますと、ある一定のワクに限られるということはやむを得ないと思いますが、やはり緊急やむを得ない資金ということになれば、政府金融機関の担保ワクというものをあけるという以外にはなかなかないわけでございます。ですから、そういうことで政府機関——まあ返済したものに対して担保を抜けとか、これは前からあることでありますが、それでは間に合わないということになれば、掛け目をもっと多く見るということにもなるでしょう。そうでなければ、政府金融機関の担保を抜けないかという問題もあります。で、民間金融機関というのはなかなかもうむずかしいからといえば、あなたがいま端的に述べられたように、逆に政府機関でもって一定のワクを見る以外にないということになるわけであります。この問題も、私自身も具体的に承知をしております。おりますので、中に二、三カ月、四、五カ月という貯炭のためにどうにもならないといって通産省に持ち込んできているものもあります。そういう具体的な問題を承知しておりますので、何らかのことをしなければならないだろう。特に、これは二千万トンという数量が、大まかでありますが出ましたので、年次別的に二千万トンまで減っていくという状態もおおむね想定できます。それとこれとあわせて、山別にどうなるかということも一つの計画が出るわけでありますので、無制限に私企業が恣意によって石炭をうんと掘って貯炭をして、その資金が足らないというものではないわけでありますから、一時的なつなぎ融資をどうするかという問題に対しては、何か考えなければならないということで、事務当局と大蔵当局との間にいま話を進めております。どういうふうな結論が出るかは別にしまして、何らかの措置をしなければならないという立場で折衝しておるということで御理解をいただきたい。
  33. 大矢正

    大矢正君 あと一点だけ。  基本的な問題でございますので、大臣お尋ねをしておきたいと思いますが、さっきも私、実は石炭局長にいろいろと申し述べたわけですが、いままでは、これはこれだけの施策をすれば、たとえば三千五、六百万トンの出炭は維持できるという前提でやってきたわけですね。ところが、もうそれがすっかりはずれてしまって、途中何回か応急の措置は講じてはまいりましたが、当初想定もつかないような四十七年度二千七百万トンというような低い生産規模になってしまったわけです。そこで、せっかく大臣需要想定というか、これは政策需要を十分織り込んだ上での話ですが、二千万トンを下らないということで、かりに新しい石炭政策の柱をおきめになられるような感じがいたしますが、この際のそのための施策というのは、従来のように、こういうようなことをやればおおむね二千万トンが維持できるというようなやり方では、従来と同じことになってしまう。そういうことではなくて、二千万トンを維持するための具体的な施策というものをこれはやはりきちっと積み上げてもらわなければならぬわけです。それにはいかに自由経済とはいいながら、経済社会の情勢の流れにまかしておいたのでは、あるいは単なる私企業の創意なり、くふうなり、努力なりということだけでまかせでおいたのでは、とてもじゃないが五十年度二千万トンを下らない出炭規模、あるいはそれ以降もできるだけそれに近いような規模といっても、現実にはそうならぬ。過去の例がそのことを示しておるわけです。ですから、まあ表現は悪いが、国有、国管とか、そういうことまでは申しませんが、何らかの政府が直接介入できるような組織体制、機構、機能というものもこの際考慮しなければ、これはもう従来と同じ結果になってしまうと思うんで、私はこの際、他の産業なりあるいは同じ行政官庁の中からどのような抵抗が生じようとも、やはり政府が直接介入できるような組織、機能というものを私は、新しく持つべきだし、その主張というものはやはり取り下げるべきじゃないんじゃないか、こう思うんです。  何をさしておるかということは、おおむね御理解をいただけると思うんでありますが、大臣も御存じのとおりに、これは私どもに言わせれば、明らかに国家管理なんです。そうですね。これは公式にはこういうことは申し上げられませんが、おそらく各社とも、たとえば社長が交代するとか、重役が交代するという人事面にわたっても、まあ悪いが、通産省に報告をして、今度こういうことでいくからよろしくお願いしますということまで私、はやっているんだろうと想定しているわけです。といたしますれば、何をか言わんやだし、金を借りるにしても、市中の金融機関は一時的に一カ月とか二カ月とか、つなぎの金融はあったとしても、一年とか二年とかという長期の金融というものは、どの会社も困難な情勢にある。ひたすら合理化事業団の融資、あるいは政府関係機関の融資を中心とした形で企業が経営されているわけでありますから、これはどう考えて見ても、生産計画からあらゆる全部通産省にはじき出して、極端に言えば伝票の一枚一枚まではじき出して経営をやっているわけです。これは明らかに国家管理と言っても言い得るような状態になっているわけです。そいつをそうではないと言っているだけにすぎないので、実態はそういうところまできてしまっているんで、私は、それを何らかの形で組織的にといいましょうか、機能的に表明できるようなものをこの機会につくるべきだという考え方を持っておりますし、この柱を通産省がはずしてしまったら私は、これからの通産省の路線というものが大きく変化しなきゃならないようになってしまうと考えているのが第一点です。  第二点目の問題は、皮肉なことを言うようでありますが、私は石炭の法律と、これから油を掘ろうとする公団の法律とを両方をやっているわけでありますが、非常に相矛盾する議論に発展しかねないわけですね。特別会計の中を二つに仕切って片や油、片や石炭ということにしまして、あくまでも前提としては、原油関税の歳入の範囲内において石炭と石油と両方やろうとすれば、そこにやはりどっちが幾らという取り合いが始まることははっきりしているわけで、そういう面から懸念をされることは、今年、明年までは一応たとえば十二分の十という金額のワクというものを設定して、その上で政策の立案ができるんだが、四十九年度以降はそれが確定をしておりませんから、一体どの金を持ってきて石炭政策を立てるのかということになりますると、非常に不明確なものがございますね。もっと具体的に言えば、二千万トン維持するんだといったところで、それじゃ、二千万トン維持するための財源はどの程度使うのか、使えるのかということがないわけでしょう。なくて、政策だけ出そうというわけですから、それは非常に無理な話だと思うんですよ。とすれば、これは金は幾らかかっても二千万トン維持するんだというようなお考でやっていただけるならば、これはありがたい話だけれども、そうもいけない。おのずから、そこに金の限界というのは出てくる。そうすると、それはどこが限界なのかということになると、十二分の十なのか、九なのか、あるいは十二分の十二までやってくれるのか。あるいは油のほうは一般会計から入れて、あるいは財投から入れてやるのかということが、不明確なままに推移しているというのが、遺憾ながら私はいまの状態ではないかと思いますね。したがって大臣から、四十七、八、四十九年度以降の石炭財源の確保問題に関連をして、どういう御判断を持っておられるか、この二点をお答えいただきたい。私一人で質問をしていても何ですから、これで終わりたいと思います。
  34. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 石炭問題に対して、突き詰めて言えば、いま大矢さんが言われた問題そのとおりだと思います。思いますが、いま体制委員会にお願いをしておりますのは、三千八百万トンも採炭をしておったものを、計算をしてみますと、五十年度には千五百万トンしか需要がない。これでは結局、石炭鉱業というのは全部店じまいをしなければならないことになってしまうということで、それはとてもいままで長い歴史のある石炭鉱業であり、また特に現行制度をつくりながら石炭をささえてきた石炭鉱業であるし、同時にまあ国内資源ということになると、ほとんど国内に資源を持たない日本が、石炭だけは国内に資源があると、こういうような面でも、せめて二千万トン——こういうものについて千五百万トンなどということは、それは店じまいということだから、そういうことじゃなくて、二千万トンということにかんぬきを入れようということで、入れてはございました。私が二千万トンを下らない一これは二千万トン程度と言っておけば、千五百万トンになってしまう。千五百万トンはゼロになってしまうということにつながりやすいので、二千万トンというところにまずかんぬきを入れておこう。そのかわり通産省の責任も重くなるわけであります。だから、そういう意味では、ただ石炭を火力に使わせると言ったって、使えるものではないかもしれぬということで、政府自体が責任を持てる石炭専焼火力を電源開発会社にやらしても、二千万トン以上は確保いたします、こういうような非常に熱意のあるところを述べておるわけであります。しかし、それだけではいけないので、きっと御説明したと思いますが、その後火力との話し会いで九電力で百三十万トン、鉄鋼業その他で三百万トン上乗せをして、二千万トンはいただきますということに一応いたしました。いたしましたから、この決議に基づく二千万トンというのは五十年まではちゃんとやっていきます。ところが、五十年後二千万トンをきめて、そのままずっと確実に行けるのか。それから、五十年は二千万トンを確保するが、五十一年からだんだん減るかげんにするのか、二千万トンからだんだん幾らかずつでも上向くようにするのかということが、二千万トンに対する具体的な政策として今後出てこなければならぬわけです。その中にはいまあなたが述べられたとおり、つなぎ融資もありますし、それから、五年間も賃金をそのままにストップしておくわけにはいかんじゃないかと、賃金をどの程度上げなければならぬのか、上げながら二千万トンを維持できるのか、二千万トン以上にできるのか、それを実行するためにどういうふうにしなければいかぬのかという制度上の問題がたくさん出ているわけであります。そういうものも含めて六月一ぱいぐらいには答申がいただけると思いますから、それまでこちらも勉強しながら、しかも五十年までは漸減してまいる。今年は二千七百万トンぐらいでありますから、だんだんとこれは減っていきます、五十年までは。三千七百万トンぐらいから二千万トンに減るまでの間、いずれにしても混乱を起こさないようにしなければならない。これは今度山別にきちっとしまして、少なくとも今度の住友や三菱のように、半年前には絶対やります、つぶしませんなどと言ってたって、半年たったら音を立ててつぶれてしまったというようなことでは、これはどうにもならないわけでありますから、二千万トンというものは山別計算もいたしまして、そうしていまあなたが述べられたように、具体的な問題を直ちに六月、七月までに結論が出るかどうかは別にしまして、審議会とか、いろいろの英知を集めながら、日本のこれからの開発、新全総もつくっているわけでありますから、そういう中で石炭の位置というものをきめて、それに合うような具体的な政策を積み重ねる、そういうことだけはどうしてもやらなければいかぬだろう。それができなければどうなるかといったら、これはつぶすということになってしまうのです。好むと好まざるとにかかわらずそうなります。そうすると、つぶし方だけが残るわけです。あとは安楽死にするか、安楽死しないで、いずれにしても経済ベースで進めるかという問題が残るわけでありますが、いま二千万トンのかんぬきを入れて、そうして少なくとも三、四年間で半分になるわけですから、非常にたいへんなことであります。そういう意味で二千万トンにかんぬきを入れたのでありますから、二千万トンに対する責任ぐらい政府が絶対に負えるという体制は最低限とるべきだということは考えておるわけでございます。  しかし、石油の問題その他、いま石油なども国際情勢変わってきておりますし、石炭の合理化をやって非常にうまくいく、何とかめどがつくなと思っておったら、円の切り上げということですべての努力が飛んでしまう。こういうものは悪いものが積み重なってきておりますが、しかし、そういう国際的な波動も十分受けとめながら石炭というもの、石炭政策、こじんまりとしても合理的であり、また一年先は全くやみだ、こういうことではなく、相当具体的なものをつくらなきゃならない。特に、二千万トンに対してはそういう政策が必要であるということが、いま通産大臣として考えておることでございます。
  35. 大森久司

    委員長大森久司君) 次に原田君。  ちょっと申し上げますが、大臣がスハルト大統領との話し合いの関係もありますので、十二時三十分で大臣が退席されるので、次は午後再開のときからまたやっていただくということにしてください。
  36. 原田立

    ○原田立君 いま大矢委員から石炭政策ということで基本的なお話もあり、また大臣から今後の見通しについてお話があったわけですが、ぼくら非常に思うことは、日本は島国であるし、結局燃料政策立場からいっても石油の輸入を促進しなければならない、こういうようなことがあるわけですが、その中でただ唯一の国内の燃料というのは石炭だけしかない。ところが、その石炭がもうだんだん減ってきて、昭和二十七年に八百五十鉱もあったものが現在わずか七十鉱である。非常な激減があるわけですが、今後のわが国の燃料政策という大きな観点からいっても、ただ一つある石炭をいま大臣の言い方で言えば、経済ベースであるか安楽死かと、こういうようなことで、何か話は死あるのみだというような意味に受け取れるわけでありますけれども、そういうことではなかろうと思うのです。そこらのところで、今後の燃料政策の面からいっての石炭の位置づけそこら辺を一体今後どういうふうに考えているのか、その点をまず一つお伺いしたい。
  37. 莊清

    政府委員莊清君) 先ほども大矢先生の御質問の際にはっきりお答えいたしましたように、また先生からいまお話のございましたように、わが国全体としてのエネルギーの消費量及びその伸びというものは、これはもうアメリカに次いで大きな量になっておるわけでございます。特に石油のウエートが非常に高まっておりまするが、これはほとんど全部輸入でございます。原子力もまだほとんど一パーセントにも達しない状況でございます。これは非常に長期の問題でございます。したがいまして、国内の石炭というものは現在二千七、八百万トン程度、五十年にはこれが二千万トン程度というふうに落ちてはまいりますけれども、やはり非常に重要な国内エネルギーであるということは、これはもう明らかな事実でございます。  ちなみに、国内エネルギーとはっきり言えるほかのものとして水力発電というのがございまするけれども、これが四十五年の実績でエネルギー全体の中で六・三%、現在通産省事務当局で暫定的にはじいております五十年の見通しで申しますと、水力の発電というのは、五十年で五%を切りまして四・七%くらいになってしまう。もっとも五十年の見通しでは、二千万トンという石炭も三%程度に国内炭はなり、同じ石炭も輸入炭が四倍の一二%、石炭全部で一五%、こういう状況に相なるわけでございますけれども、やはり水力発電もこれはもう完全に水の開発がほとんど行き渡っておるようでございまして、ふえない、こういう状況でございまするから、国内炭というものは絶対量は減っても、したがって、エネルギー全体に占める比率はじりじり下がりましても、これを極力重要な国内に備蓄された資源として維持し、活用するということが大切だろうと思います。この点はたとえば、ヨーロッパのドイツとかフランスでも、四、五年間の見通しでも石炭の国内生産量そのものは漸減をせざるを得ない。非常に古くなった炭鉱の閉鎖等もあるようでございまして、したがって、エネルギーに対するウエートも現在よりはヨーロッパの諸国も下がっていくわけでございまするけれども、やはり石炭に対しては、極力これを国内資源として活用するという政策を変えておらないのでございます。わが国としても、石油のウエートが非常に上がっていきますだけに、かつまたそれが非常に遠い海外に依存せざるを得ないということを考えます場合に、石炭というものは極力これを国内資源として活用するということに変わりはございません。
  38. 原田立

    ○原田立君 どうも局長の言うことさっぱりよくわからぬ。それで大臣に、局長の答弁ではなしに大臣、もう時間がないからあなたに聞いている。今後の安定的な出炭、あるいはむしろ現状よりも増強していくような政策、そういうことが必要ではないか、こう私思うのです。いまの説明の中では国内石炭は三%、輸入が一二%というような見通しのようですけれども、むしろそれをもう一%でも、二%でも、五%でも伸ばし得るような、そういうふうなことは考えられないのかどうか。
  39. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 長いこと朝野の有識者が考えてきた結果いま五次答申をやろうと、こう言っておるわけでございます。国会においてももう戦後二十七年間引き続いて石炭問題は最重要な問題として議論され、また、政策を積み重ねられてきたわけでありますが、どうもいかんせんまきを使わなくなった。それが石炭になり、石炭が石油になりということでだんだん転化してきたわけです。こういうことでございまして、まあ国内資源という面から一つの重要性があります。  もう一つは、同じ石炭でもヨーロッパではうまくたいているじゃありませんかという問題があるのです。この問題を検討してみますと、ヨーロッパでもやはり日本よりも一歩おくれておりまするが、いろいろ石炭に対する問題が起こってきたということは事実であります。これは、資本系統からいっても電力や石炭がみな同一系統に属しておったということで、日本とは違うという面もありますが、しかし、日本はそれよりも財閥系でもって石炭を掘っておるのだから電力どころではなく、自分の系統でもって掘ったものを使えばいいじゃないかと言えば、考えてみれば案外変わりもなかったわけでありますが、その住友、三菱、三井という、自分で掘り、自分の系統でもって消費できるようなものでさえも倒産をする、終閉山をしなければいかぬという状態まで追い込まれておるというのが現状なんです。ですから、まあ二千万トンを二千五百万トンにしたいという気持ちはよくわかりますが、どうもよほどのことのない限りなかなか二千五百万トン、三千万トンに拡大していくということは、ちょっとどうも無理なようであります。少なくとも三千八百万トンから急激に五十年には千五百万トンになる、半分以下になる。これではとても安楽死とも言えないということで、そんなことにしたならば、これはとても鉱山は五十年までもたないと私は思ったんです。いま三千八百万トンから四千万トン採炭ができるものを、一挙に五十年に千五百万トンなんて言えば、これは助からぬからと、ばたばたとみんなやめてしまうということになっちゃって、四、五年間で日本の石炭というものは全部閉山をしなければならないようになるだろう。それではあまりにも能のない話であるということで、千五百万トンの要求に対して、二千万トンを下らないように最後の努力をいたしましょうと、通産省として少なくともかんぬきを入れましょうということで、私からも私の意思も通じて五十年度二千万トンを下らないというふうに、消費先を二千万トンというものに押えたわけでございます。押えるということは、消費先を二千万トンに拡大するということは、出炭を二千万トン以上にする。ただし、いま質問がございますとおり、五十年はそうだが、五十一年から五十五年、六十年と展望するとどうか、こういうことでありますが、それはもう五十年でもって二千万トンにかんぬきを入れたら、少なくともそのベースを守るように政府も施策を講じなければならぬと思います。これは政府だけじゃなく、今度は正式な答申をいただく間に、審議会の専門家の御意見というものを十分積み重ねていただいて、万遺憾なき政策答申していただきたいと思います。その答申を待つだけでは能がないので、通産省も一生懸命で並行して勉強いたします、こういうことでありまして、いま二千万トン以上確保する、二千万トンは最低下らない額を確保するということがまず第一番目であって、よほどの状況が変わらない以上、いまのように、鉱害復旧はある、十二分の十ではなく、十二分の十二にもしなきゃいかぬ。それでもなおまだ月給は上がらない。月給が上がる分をどこで一体消化させるのだ、こういうめんどうな問題が一ぱいあるわけでありますから、その上景気のいいことを言うことは、私も言いたいわけでございますけれども、どうも二千万トンを二千三百万トン、二千五百万トン、三千万トン、三千八百万トン維持します、こう言うことは、どうも少し無責任なことにもなりますし、私だけではとても申し上げられない。やはり朝野の意見を十分積み重ねていただいて、遺憾なき石炭政策というものをつくらなければいかぬだろうと、こう思います。
  40. 原田立

    ○原田立君 法案に入るのでありますが、その前に、残存鉱害量は四十六年末で千四百七十一億円ということが衆議院で答弁されておりますが、資料でもらったのは千三百八億と、こういうふうになっていて、若干数字の食い違いがあるようで去りますが、この表に出ているようなぐあいにおける千四百七十一億の割合は一体どうなりますか。
  41. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) ただいま御指摘の千四百七十一億円は、昭和四十六年度末における今後十年間の要処理鉱害量でございます。このうち残存鉱害量は、四十六年度末価格で千三百七十億円でございます。で、この千三百七十億円は、昭和四十四年度末の鉱害量、いま先生指摘ございました千三百八億円を基礎としまして、その後二年間にわたりまして鉱害処理をやっておりますので、その処理した量を引きまして、さらに新規発生を調整した上で昭和四十六年度末価格に修正したわけでございます。それが数字の食い違いの原因でございますが、残りました百億円と申しますのは、今後予期しない鉱害量の増大に備えまして、全体の鉱害量の数%程度のアローアンスを織り込んで将来発生すべき鉱害量を加えたということで、総計いたしますと千四百七十一億円、こういう数字になるわけでございます。
  42. 原田立

    ○原田立君 この表によると、福岡県が全体の七八%、千百四十三億円と非常に多いのでありますが、そのほか仙台、平、名古屋、宇部と、こういうようになっておるのですが、北海道においてはこういう鉱害はないのですか。
  43. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) 北海道の石炭鉱山は大体山岳地にございまして、その付近に畑とか、道とかそういう公共施設もございませんし、住宅もございませんので、この鉱害の法律の対象となるような鉱害は現実にはないわけでございます。
  44. 原田立

    ○原田立君 まだ北海道のほうから直接聞いたわけではありませんけれども、その出炭量等からいけば、以前の九州全体の量とほほ匹敵するような多量の量になっております。いろいろあるんじゃなかろうかと実は心配しているわけなんですが、全然ないということは、どうもなかなか納得がいかないところでありますが、今後北海道方面でも起きるような場合には、当然計画の中に入れるであろう、こう思います。そういうふうなことで理解するのでありますが、そのほかに、この鉱害の解消は民生の安定のためにも大切なことでありますし、法律にも、残存鉱害量については科学認定調査もするとのことでありますが、これは当然な話だろうと思います。地区市町村及び県段階からの申請をも重視し、かつ用いていく姿勢、これも必要ではないかと思うのであります。そこで国と地方公共団体が意見の対立等があってはならないと思うわけであります。よく調査することでありますが、これはあくまでも合意されたものでなければならない。国の一方的押しつけというようなことは絶対あってはならないというふうに思うのでありますが、そういうふうな姿勢で今後臨まれるかどうか、その点はどうですか。
  45. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) この鉱害の調査につきましては、いま現在考え得る一番正確な科学的方法で調査しておるわけでございます。もちろん地方庁との間では、十分連絡をとりまして、意見は十分聞きまして、客観的公正な鉱害量の算定をいたしてまいりたい、こういうように考えております。
  46. 原田立

    ○原田立君 その姿勢はひとつ十分持っていただきたいと思うのでありますが、実は、この北九州市から昭和四十七年一月に「要望書」として出ているその中の数字に、若松鉱区が今回閉山になった被害総額は百十億円以上と推定されておると、こういうふうに現地で言っているのであります。過日、課長に来てもらってそこら辺のところの事情をお聞きしたわけでありますが、どうも数字に食い違いがあるのではないかとたいへん心配しているわけでありますが、その辺はどうですか。
  47. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) ただいま御指摘の北九州市の鉱害量の食い違いでございますが、これは現在北九州市に照会中でございます。国として鉱害量の把握は、航空測量なり、河川解析という科学的方法による精度の高い客観的な基本調査の数字でございますので、鉱害量を意識的に低く押えるというような意図は毛頭持っておらないわけでございます。なお、法律が改正されますと、その後作成されますところの鉱害復旧長期計画におきまして、あらためて鉱害量の確定を行なうことになりますので、その際、北九州市との間で十分意見を調整しまして、食い違いのないように処理してまいるつもりであります。
  48. 原田立

    ○原田立君 食い違いのないように、ぜひここのところはしていくべきだと思います。ただ、私が思うのは、国のほうの一方的な押しつけだとか、あるいは地方のほうは予算をよけい取るために鉱害量のよけいな数字を出すというような、そういうようなことは非常にいやらしい話でありまして、そういうようなことがあってはならないと、こう思うのであえて申し上げているわけでありますが、合意を得て行なうと、こういうような説明で了解したいと思います。そういう姿勢であってほしい。  なお、残存鉱害量の復旧計画を立てることになっておりますが、この復旧を十年間としているわけでありますが、これは被害を受けたほうの人たちは、過去何十年にわたってそういう被害を受けて、一日だって早くやってもらいたい、こういうふうな要望が強いわけであります。従来法律的には十年、十年と、こういうふうに二十年区切ってきたわけでありますけれども、今回の場合も何も十分で計画しなきゃならない、そういう筋はないと思います。五年で計画するとか、三年で計画するとか、そういう姿勢があってしかるべきじゃないかと思う。どうですか、そこいら辺のところ。大蔵省待ちで、通産省が押えられているんだなどという、そういうような姿勢でなしに、その地域の浮上策というような面からいっても、十年というようなことでなしに、むしろ法律は十年になって変えられないかもしれないけれども、これを七年とか、あるいは五年とか、こういうふうに早期に復旧していくんだという、こういう強い姿勢があるかないか、その点はどうですか。
  49. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) 鉱害の復旧に対しまして、被害者の方々から非常に早期復旧を要望されていることは御指摘のとおりでございます。ただいま申されましたように、財源の問題もございますけれども、そのほかにやはり鉱害というのは、ある一定の年月がたちませんと安定した姿にならないという理由もございます。ある程度時間をおいて復旧するほうが非常に効率的であるという面もございますし、地域開発その他との関係もにらみ合わせてしなければなりませんので、この期間は十年間で、この十年間に確実に、残っております鉱害を完全に復旧するという決意で臨んでいるわけでございますので、十年というのは長いようでございますけれども、確実に実施してまいるという点から、こういう年限を定めたわけでございます。
  50. 原田立

    ○原田立君 そんなことを聞いてないんですよ。要するに、七年でも八年でも早期にやるという、そういう決意がありますかということを聞いている。だから、これは部長じゃ無理でしょう。大臣どうですか。
  51. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) これは、予算を伴う法律で御審議をいただいておるわけでございますから、計画書は当然なければならない。その計画は十年でございまして、こういう内訳でございますと、こういうことであって、国会審議の平仄はちゃんと合っているわけでございますが、またこういうことがなければ、これは御審議いただけないということでございます。しかし、これは最も長くても十年でこうしておりますと、しかし、この法律を出さなければならない原因は、鉱害復旧が急がれるということであります。ですから、もう予算さえ許せば、鉱害復旧は十年ということで計画書は出しておりますけれども、これは九年、八年、七年でも、できるだけ財政当局とも折衝しながら、早急に、これを繰り上げても繰り延べるようなことはない、最もかかっても十年である。しかし、これは繰り上げて積極的にやるということが前提であることをひとつ御理解いただきたい。特に景気浮揚とか、それから工業再配置を行なうために、三年も五年も待ってないで早く復旧して新しい工場の指定地にしたいというような問題、あるいは要請が起こってまいりますから、そういうことになれば、地方と国との間に合意を求めながら繰り上げて施行するということになりますし、景気浮揚ということでもって何か公共事業をやらなければならぬという事態がくれば、こういうものも繰り上げ施行を行なうという対象にしてまいりたい。ですから、姿勢的には非常に積極的であるということを御理解いただきたいと思います。
  52. 原田立

    ○原田立君 ちょっと筋道がそれて、ほかの局になるかなと思うんですけれども、旧三菱鉱古賀山地区の住宅を、炭鉱不良住宅地区の整備改善事業対象事業として、いわゆる不良住宅地区に採択してほしいという要望が私の手元にあるのでありますが、こういう閉廃山になった鉱山の所有している炭住を、地元市町村が払い下げをしてほしい、こういうようなケースは何もこの問題ばかりでなしにほかにも多々あるであろうと思うのであります。で、その際に土地、家屋、施設等は地域の発展のためにも払い下げをして、いわゆる低家賃住宅に利用すべきであろう、このように考えているわけであります。いま私お伺いするのは、佐賀県多久市にある三菱鉱古賀山地区でありますが、すでに閉山したのでありますが、同社のつくった鉄筋住宅が多久市の市役所のまん前、市のどまん中に建っております。町の中心地であります。三菱がこれは住宅金融公庫から融資を受けて建築したものでありまして、そのために抵当権が設定されております。このような炭住の払い下げは、法律的にいろいろと問題があると、こういうふうにいわれておるのでありますが、閉山になったあとの市としては、この住宅は非常に鉄筋住宅でりっぱなものであります、ぜひ払い下げしてほしいと、こういうふうな要望があるわけであります。これは法律的なこと等で、私が調べたところによると、地方公共団体の行政財産は抵当権を設定することを禁じられていると、そういうわけで抵当権を設定しても無効となるので、公庫としては地方公共団体が引き受けることはできない、こんなふうなことを言っているんだそうでありますけれども、ここら辺は何か特別なものを考えてやるべきではないだろうか。現地としては四十六年から始まった炭鉱不良住宅地区の整備改善事業、この対象事業として、いわゆる不良住宅地区に採択してもらいたいと、こういうふうなことを言ってもおります。この三菱古賀山住宅アパートを改良し、公営住宅として低家賃のものが確保されることにぜひしたい、こういう要望です。こういうケースはぼくは多々あるだろうと思うのでありますが、やっぱり炭鉱閉山になった場合には、借金がたくさんできてそれを投げ出す、こういうふうなケースがあるんでしょう。ところが地方自治法によってそういう壁ができている。こうなるとどうしても引き受けられない。それは高い金を出して買おうと思えば幾らでも買えるんでしょうけれども、そういう産炭市町村はそんな金はありませんし、結局みすみす目の前にりっぱな鉄筋アパートがありながらそれが手に入らない。これは五年来、十年来悩んでいる、そういう現地の問題であります。これはひとつ、いろいろな障害があるだろうけれども、ぜひ地元の低家賃住宅として活用したいという、そういう要望が強いのでありますから、十分検討してもらってその実現方に努力してもらいたい、こう思うんですが、いかがですか。
  53. 丸山良仁

    説明員(丸山良仁君) ただいま先生お話のあったとおりでございまして、三菱鉱業が昭和三十一年から昭和三十四年にかけまして、鉄筋住宅十五棟、百九十六戸を公庫の融資でつくっているわけでございますが、それが四十三年から閉山されたためにあき家になっているということは、きのう調査いたしましてわかっておるわけであります。ただしこの場合に、公営住宅に払い下げるということは公営住宅法の規定によりまして、公営住宅は新設する場合にのみ政府の二分の一ないし三分の二の補助が出る、こういう規定になっておりまして、現行法のもとにおきましてはどうにもならない問題でございます。  なお、法律を改正いたしました場合にどうなるかということでございますが、本日佐賀県当局の意見を聞きましたところ、御承知のように多久市は昭和四十年に三万六千人の人口があったわけでございますが、四十五年には二万六千八百人と一万人近くの人口減を来たしておるようでございます。そういう点から住宅事情はそれほど悪くないわけでございまして、そういう点で県当局といたしましては、やはりこれを買収してもそれを埋めることが困難ではないか、こういうようなことを申しておるわけでございまして、現在の段階におきましては、法律の規定でできない。法律を直したにいたしましても、そういう問題が残っているという段階でございます。
  54. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) いま建設当局がお答えをしたとおりだと思いますが、とにかくそういう問題は政治的に片づけなけりゃならない問題でございます。それは制度上はお答えをしたとおりでございますが、しかし、現に空家である、しかも、家の需要はある、地方公共団体がこれを買収をして低家賃住宅として提供の意思がある、こういうことであるならば、これを阻害しておる要因ありとすれば、これを取り除かなきゃいかぬと思います。そういう問題は通産省と建設省との間でもって合議をいたします。合議をいたして、じゃ、このまま腐らせるのかということになれば、もうそこには全く政治も政策も存在しないことになるわけでありますから、これは場合によれば、そういう特殊なものに対しては条例をつくって補助する道もあるし、いろいろなことがあるわけでありまして、現行制度の中で消化できないというだけのものだと思いますし、国損を来たす問題でもありますから、これはせっかくの御指摘でありますので、国会におけるお答えお答えといたしまして、それだけのものを住宅金融公庫の対象物件として融資をして——現に建物が存在し、あき家であるということが処理できないはずはありません。これはひとつ特に終閉山等において炭住問題等が起こっておりますから、法制局とも二省で話をして、必要があれば財政当局とも話をし、何らかの方法を考える。立ち腐れをするというふうには絶対にしないということでひとつ検討いたします。
  55. 大森久司

    委員長大森久司君) 午前の質疑はこの程度とし、午後二時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      —————・—————    午後二時五十分開会
  56. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  午前に引き続き臨時石炭鉱害復旧法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  57. 原田立

    ○原田立君 午前中に引き続き、またお伺いするわけでありますが、先ほどの説明によりますと、昭和四十年でしたか、そのときには千三百八億、四十六年のときは千四百七十一億というような説明がありました。これは当然、諸物価の値上がり等により残存鉱害復旧費用が上昇するということでスライドしているのであろうと思うのでありますけれども、それは当然そういう措置を講じなければならないと思うのです。しかし、いわゆる十年間をめどになし遂げようと、こうするにはその千三百八億がそのままの費用というわけにはいかぬだろうと思うのですが、そこいら辺のところは見通しはどうなっていますか。
  58. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) 今後十年間に行なわあるべき復旧事業の総量は、十年間の年々の値上がりを見込みますと、私ども試算によりますと、二千五百四十九億になるというふうに想定しております。
  59. 原田立

    ○原田立君 この問題は、無資力鉱害の処理で去ろうと思うのでありますが、法案の提案の説明の中にもその点は十分盛り込まれていると思いますが、産炭地域市町村は財政負担能力がすこぶる弱い。無資力鉱害が多いところは、その地方財政はまた非常にその負担の場合困るわけであります。費用の負担区分をきめているようでございますけれども、それでもなおかつ負担が苦しい市町村の場合は、たいへん困った状況が起きるわけでありますが、そのときには起債を認めるような処置を講じてあるというようなことでありまするが、それだけではなしに、利子補給をするとか、あるいは国からの補助率をもう少し引き上げるとか、こういうふうなこと等は考えられませんでしょうか。
  60. 莊清

    政府委員莊清君) 御指摘ございましたように、鉱害復旧費用の特に市町村の負担という問題が従来から大きな問題でございますが、いま部長から申し上げました今後の復旧費、十年間の復旧費全体の中で市町村の負担になるであろうと私ども考えております金額は、大体一%前後ではないかとみております。と申しますのは、市町村に鉱害復旧関係で負担をお願いいたしますのは、市町村が所有管理いたしておりますところの公共施設の復旧に関してのみでございまして、他の農地でございますとか、住宅の復旧につきましては、賠償義務者が払えないというときには全部国と県とで持つということになっておりまして、市町村は公共施設のみということにいたしております。それで、先生からお話ございましたように、現在公共施設についての市町村の負担につきましては、八割までは地方債の発行が認められておりまして、普通交付税の補てん措置がございます。また地方債が二〇%については発行できませんが、これも特別交付税の補てんがございまして、この結果、市町村が負担すべき額の約六割というものは国の手によって財政上の補てんがあるということでございます。なお、この実負担そのもの、県の負担そのものを小さくするということが根本的に必要でございます。それを小さくしておいて、さらに地方税等で補てんをしてやるということがなければなりませんので、四十七年度から、市町村が持っておる公共施設の復旧の場合に、市町村に負担させる割合を減らしまして、国の補助金をふやしまして、大体四十七年度からは、いろいろな種類の公共施設ございますが、平均いたしますと二割程度、二〇%程度が市町村の負担になるというわけでございます。その二〇%に対しまして、先ほど申し上げましたように、またその六割程度は地方債及びそれの補てんのための地方税という形でめんどうを見る。現在のところ四十七年度の改正を含めまして、そういうことで鋭意努力をしておるわけでございます。今後もこの方向でさらに努力をいたす所存でございます。
  61. 原田立

    ○原田立君 まあ軽減されているようでありますけれども、そういうふうに軽減してあるから、利子補給などは考える必要はないというようなことで御説明がないのだろうと思うのだけれども、私は、その点もひとつお聞きしたのだけれどもお答えがなかった。どうでしょう。
  62. 莊清

    政府委員莊清君) 私、ちょっと、地方債の発行を認められた場合、普通交付税で大部分補てんするというふうに申し上げましたのですが、この場合、当然にその地方債の利子がございます。これは元利含めましてそれの五七%を普通交付税で補てんしておる、こういうことでございますから、市町村の負担すべき額を一〇〇といたしましたときに、それの八割については地方債が出せる。その八割の部分の金利というものは、その五七%が交付税で補てんされる、こういう非常にややこしいことになっておりまするが、部分的ではございまするけれども、利子の補給も行なわれておる。全部が実は行なわれていない実情にございまするが、そういう状況に相なっております。
  63. 原田立

    ○原田立君 地方のほうの声として、無資力認定には実情に即して行なえとか、あるいは条件緩和をしてくれという、こういう要望が強いことを聞いておりますけれども、そこいら辺のところはいかがですか。
  64. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) お答えいたします。  いま先生の御質問にございました無資力の認定につきましては、私ども復旧対象物件を基本計画にあげる際に、実はその賠償義務者が有資力であるか、無資力であるかという認定を具体的にしております。その場合の要件といたしましては、賠償義務者がこの鉱害復旧についての負担金を負担し得る能力があるかどうかということを基準にいたしまして判定をいたします。具体的には、たとえば法人でございます場合には、その企業は解散しておるか、あるいは清算中であるといった場合、あるいは非常に、資金の負担が全然できないような、それに準ずるようなケースの場合には無資力にしておりますし、また、個人の場合につきましては、破産とかそういった場合には無資力の認定をしております。
  65. 原田立

    ○原田立君 みなす復旧工事を積極的に奨励する方針と、こういうふうに説明されておるわけでありますが、その際は被害鉱害農民の意思というものも十分尊重されなければならないと思うのですけれども、ばっと頭から全体的なことをおっかぶせるなんということはおそらくしないだろうと思うのですけれども、その点はどうですか。
  66. 莊清

    政府委員莊清君) そういうみなす復旧工事につきましては、従来から法律上も鉱害復旧の計画を組む際に、農地の所有者、つまり被害者の同意を得て行なわなければならないということに相なっております。法律上そうなっておりまするので、実際の運用上もこれは市町村等を通じまして事業団が計画を組みます際に、十分にそのあたりは被害者に事前の連絡を行ないまして、やはりみなす復旧工事を行なうには行なうだけの理由がなければならないわけでございまして、本来は農地は農地で復旧をするというのがあくまで法の精神でございます。ただ、近所が非常に市街化しておる、あるいは工場団地等ができておるという場合には、しいて農地にして、またそれに被害者が金を出せば宅地にして売らせるというむだなことをせずに、宅地にして差し上げるということが本来の趣旨でございますから、そういう観点に立ちまして、必ず被害者の同意を得てやるということで、今後も十分配慮いたします。
  67. 原田立

    ○原田立君 工業再配置促進法、これはまだ通っておりませんけれども、その中に誘導地域の指定ということがきめられておりますが、産炭地域をこれに含めるようにしてくれという、そういうふうな声も聞いておるのでありますが、そんな点の考え方はどうか。あるいは企業の誘致を産炭地域市町村長は積極的に考えているわけでありますが、この援助策はどうなっているか、この二つについてお伺いしたいと思います。
  68. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 産炭地は、工業再配置法が通れば、その誘導地域にまっ先に指定をしたい、こういう考えでございます。  それから、第二点は……。
  69. 原田立

    ○原田立君 企業誘致を産炭地域市町村長は積極的に考えている。
  70. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) これは、産炭地域振興法によっても考えておるわけですが、しかし、実際においてはなかなか実効をあげ得ないというところでございますが、今度の工業再配置と産炭地域振興法というものが二つ重なってくると、非常にいままでとは違って、工場誘致というものに対しては実効があげられると、こういう考えでございます。
  71. 原田立

    ○原田立君 説明を読んでおりますと、有資力の場合の賠償義務者負担金を、無資力の場合は何ですか、計算上折半して、国と県で負担しているように見えるわけでありますが、これは基本的に国の政策石炭をしっかり掘って、国に御奉公してきたというような被害ですから、本来ならば、この分については国が大半を負担してしかるべきだと思うんですが、その点についての考え方はいかがですか。  要するに、私言いたいのは、農地の場合には国が七二・二五、県が一二・七五、会社が一五——企業賠償責任者ですか、これが一五と、こういうふうなことになっておりますが、無資力の場合には、この賠償義務者の一五を折半して、なおかつ県のほうの負担が少ないにしても——これはこれでいいんだろうと思うんでありますが、そのほかの家屋あるいはみなし復旧工事、この点についでは、まさしく半分ぴったりと切って、それを国と県で上乗せしている、こういうのは少し酷なんではないだろうか。もう少し県のほうに薄くすべきじゃないか、こういうふうに思うんですが、どうですか。
  72. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) お答えいたします。  いま先生指摘のとおりでございまして、農地の場合につきましては、有資力の場合には賠償義務者が一五%を負担いたしまして、残りの八五%部分につきまして、国と県とが八五対一五の割合で負担をしております。これが無資力になりました場合に、賠償義務者の負担すべき一五%部分につきまして、国と県が八五対一五の割合でこれを持ち合う関係になっております。これに対しまして、家屋等の復旧あるいはみなし復旧工事の場合につきましては、かりに宅地の場合の例を取り上げて申し上げますと、宅地の場合は、賠償義務者の負担割合は三五%でございまして、残り六五を国と県とが八三対一七の割合で持っております。これが無資力になりました際には、いまの賠償義務者の負担分につきましては折半ということになっております。確かにこの点、かなり補助体系上いろんな差異がございますが、実は、いろいろこの補助を設けました際に、これは国対地方公共団体、特に府県の負担の能力といったことを、十分実は実情を見た上で、そういう現状のような割合になったわけであります。確かに二つの補助体系には変更はございますが、これは従来の補助の経緯によるものでございます。
  73. 原田立

    ○原田立君 要するに、私が言いたいのは、農地の場合、無資力は国が八五、家屋の場合は七一・四五、みなし復旧工事は七四・五七、こうなっているわけです。これは少なくとも農地並みのような制度、仕組みにならないものかどうか、またそうすべきではないか、こういう私の考えなんです。その点はどうですか。
  74. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) お答えいたします。  実は今回の制度改正、あるいは法律改正の際におきましては、農地あるいは宅地等につきましての補助率につきましては、十分補助率について高さを検討してみたわけでございますが、現状では、同種の実は補助事業に比しまして、農地の場合も宅地の場合もかなり高率な補助になっております。この補助の仕組みを今回は、特に変更せよという強い府県サイドの要請もございませんでしたので、今回は原則としては、従来の補助体系をそのまま踏襲したのが実態でございます。
  75. 原田立

    ○原田立君 強い意見がなかったから踏襲したと、じゃ、それは県のほうもこの点で了解であると、こう理解をしたというわけですね。福岡のような場合は非常に額も多いし、その点、県知事あたりも非常に苦慮しているということは前に何度も聞いたことがあるんです。意見がなかったからそのままにしたなどというのではなしに、家屋及びみなし復旧工事等も農地並みにやはりすべきではないかというのが基本的な考え方であろうと思うんです。が、まあ意見がなかったというなら、それはそれでけっこうだと思うけれど、もう少し手厚くすべきじゃないかということを基本的に思っております。  それから次に、この石炭鉱業審議会からの答申の中に、「(家屋対策の強化)」として「国民生活優先の原則に立って、その処理の促進を図るとともに、家屋復旧工事の能率を高めるため、その計画的かつ集約的な実施に一層留意するものとする。」、こういうふうなうたい文句で、同じ文中10の(1)というところに、「移転復旧を可能ならしめるため家屋等の復旧について所要の改善を図るものとする。」、こういうふうに出ているわけでありますが、この移転復旧については、従来の住民の意思を無視したような施策では何にもならぬと思うんであります。鉱害復旧をしよう、その際に、こういうふうにしてくれ、こういうふうな地元の要望がある、住民の要望がある。それを一方的な国のほうの押しつけで、ここのところはこういう法律になっているからこれ以外はだめだと、こういう押えつけでは心のこもった復旧にならぬと思う。それで今回、移転復旧というものが入ったんだろうと思うんでありますが、この移転復旧については住民の意思を十分尊重すべきである、その申し出によって行なわれるべきである、かように思うんでございますけれども、そこら辺はどういうふうに考えられているのか。これが一つ。  それから、答申中10の(3)で、「無資力鉱害家屋の自己復旧の奨励」をあげておりますが、これは一体どういうふうに今回法令化されているのか。あるいはまた、住民が移転復旧を強く希望している今日、そういうふうな場合、補修工事だけで終わりにするのか。あるいは金銭補償をするのかどうか、この基本的な考え。  以上、三点についてお伺いします。
  76. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) 第一点について、私から御答弁申し上げます。  移転復旧につきましては、本来、家屋の復旧はもとの姿に返すのがこの法律のたてまえでございますけれども、地盤の状態が非常に軟弱であるとか、あるいは浅所陥没、活断層状なものであるというふうな、非常に復旧をすることが困難な場合には、移転復旧をすることが望ましいということで、今回こういう制度を採用することにいたしたわけでございます。従来は、このような家屋についても移転復旧が認められなかったために、効用の回復が実際できないという弊害があったわけでございますが、今般、運用を改善いたしまして、被害者が代替地を有している、あるいは市町村のあっせん等によって代替地があるような場合には、被害者の希望によってこの移転復旧ができるように、制度上の運用を本年度より改善いたすことになっております。
  77. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) お答えいたします。  第二点の無資力家屋自己復旧奨励金についてお答えいたしたいと思います。  無資力家屋自己復旧奨励金と申しますのは、実は予算措置として現在実施につき検討を進めておる制度でございます。本件につきましては、大体鉱害現象と申しますのは、採掘をした直下が一番著しい状態がございまして、だんだん周辺部に沈下の状態が薄くなってまいります。いわば円錐状の形態になるというのが全体の姿でございます。こういった際でございますので、中心部の鉱害家屋は非常に大きな被害を受けるわけでございますが、周辺にまいりますに従って、その被害は非常に薄らぐわけでございます。従来、有資力鉱害権者が存在しております際には、そういった周辺部の被害軽微な家屋につきましては、復旧という手続をとりませんで、主として金銭賠償といった形でこれを処理しておりますのが通例でございます。ところが、これが無資力ということになりますと、残念ながらそういったところにつきましても、一々復旧の手数をわずらわさなければ処理ができない。被害者自身のサイドからも、そういった場合、自分である程度の処理をするので、損害分だけを補償してくれればいい、こういう申し出もございましたので、今回、事業団の団予算の一項目といたしまして、そういう希望のある被害者から申し出があった場合、軽微な家屋につきましては、自分で復旧するに必要な経費を交付しよう、そういう趣旨でこの制度を設けることにつきまして、現在財政当局と具体化につきまして折衝を進めております。団予算でありますので、実は少し一般予算と比較しまして決定がおくれておりますが、目下大蔵省サイドでは非常にあたたかくこれを検討していただいております。  それから、第三点の御質問でございますが、鉱害復旧をいたします際には、家屋の場合は、復旧をいたしますれば、復旧だけでございまして、特に金銭補償は随伴いたしません。
  78. 原田立

    ○原田立君  そうじゃなくて、いまのあなたの説明の中にもあったように、被害額が軽微なものについては金銭賠償をするというようになったと、こういうことをいま検討中であるということですが、私が言いたいのは、移転復旧をしたい、その場合に、軽微であるので、自分の場合には代替地を持っているし、工事をやってもらうというのじゃなくて、金銭賠償してくれれば、それに自己資金を加えて、それで直していきたいと、このような場合のケースがあるだろうと思うのです、現実問題として。そういう場合はどうなるかということを聞いているのです。
  79. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) お答えいたします。  原則といたしまして、一般的に申し上げますと、移転復旧を要するような家屋というのは、非常な重鉱害の家屋とわれわれは考えております。したがいまして、私どもがここで考えております無資力自己復旧奨励金というのは軽微な家屋の対策でございますので、一般的に申し上げれば、これが交差することはないと思いますが、特定な非常にレアなケースの場合に、あるいは両方の制度をどちらか使えるといったケースも起こり得るのではないかと思います。われわれといたしましては、そういった場合には、被害者の要望、意向等も十分考慮して実態に即応して解決してまいりたい、こう考えております。
  80. 原田立

    ○原田立君 ちょっとよくわからないから、詳細はまた後ほどお伺いいたします。  時間がありませんから、次に進みたいと思うのですが、ボタ山処理のことについて最後にお伺いしたい。  危険ボタ山の防止対策は、重要な施策であろうと思うのであります。もし一度崩壊するならば、家屋、公共施設の被害は相当ばく大になってくる。だから、その未然防止策としての危険ボタ山の防災対策というものは、非常に重大であろうと思うのであります。一つには、全国的に見て、こういう危険ボタ山は一体どのくらいの量になっているのか、二つには、それらに対してどのような防災工事を施しているのか、三番目に、過去の防災予算はどのくらいあったのか、これからの見込みはどうなのか、もしわかれば答えてください。わからなければけっこうですから。
  81. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) ボタ山の数でございますが、現在全国で見ますと約九百三十ほどのボタ山がございまして、その集積量と申しますか、ボタの量は約四億二千万立方メートルでございます。この中で現在鉱山保安法の対象となっておりますのは約四百五十でございますが、この四百五十につきましては、鉱務監督官の検査要領というものをつくりまして、計画的に監督検査を行なっておるわけでございます。鉱業権者のはっきりしておりますものにつきましては、これは権者の責任において、いろいろな防災対策に必要な工事を施行をさしておるわけでございます。鉱業権者の不明なもの、それから鉱業権者がはっきりいたしておりましても、無資力で所要の工事ができないというふうなものもあるわけでございます。そういうボタ山につきまして所要の防災工事を実施いたしますために、ボタ山災害防止工事費補助金制度というものをつくりまして、実際の防災工事というものは、これは県にやっていただきます。その場合に、その必要工事費の中の三分の二を国が補助をするという制度を三十九年から始めておるわけでございまして、現在このボ夕山の問題というものは、おもに九州、特に佐賀、長崎、福岡の三県に存在をするわけでございますので、現在までにこの三県の二十五のボタ山につきまして、総額にいたしまして約十四億八千万に相当する防災工事を実施をいたしたわけでございます。そのうちの九億四千万については国庫補助を行なってきたわけでございます。
  82. 原田立

    ○原田立君 佐賀県の多久市内の旧明治鉱業株式会社立山炭鉱のボタ山が非常に危険状態になって、地元住民がたいへん困っておるという状況が私の耳に入っております。この山はもう三十八年二月閉山時に防災工事が一度行なわれ、その後、風化作用がはなはだしく、家屋等の危険性が増大したために、特別閉山した四十四年に応急対策として再び防災工事が行なわれたわけでありますが、しかし、その防災工事が中途半端、あいまいであったのか、最近このボタの流出が多く、八十ミリから九十ミリぐらいの程度の雨でも、水田二ヘクタールが冠水したり、あるいは民家七戸が非常に危険にさらされている状態であります。また、西南側の防壁にボタが堆積するのは時間の問題であり、もしこれがおおいかぶさってくると、その付近にある旧社宅十二棟約五十戸が危険状態である。こういうようなことで、地元では、鉱業権者がどういうふうなことであろうと、早急にこの危険状態を除去してくれという強い要請があります。法律的には、地元では早急に危険ボタ山に認定してもらいたい、あるいは災害防止工事を早急に促進してくれと、こんなふうなことを言っているわけでありますが、先ほども局長に若干お話ししておいたのでありますが、それらの今後の見通し、指導、今後の推進はどんなふうになりますか、お答え願います。
  83. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 佐賀県の立山炭鉱は、昭和三十八年の初めに閉山をいたしました。同年の二月に鉱業権を消滅いたしておるわけでございます。問題の立山ボタ山と申しますのは、約六万五千平米の敷地に、大正八年から閉山いたしました昭和三十八年までの間に、約百二十万立方メートルのボタを堆積をしたわけでございます。  このボタ山につきましては、先生指摘でございましたように、私どもの記録では、昭和二十八年、それから昭和三十年、この二回ボタ山が崩壊をいたしておりまして、そのために、この昭和三十一年から三十八年までの間にかなりの防災工事を鉱業権者をして実施をさしたわけでございます。閉山後、四十年の六月にこのボタ山は、地元の古川勝といわれる方ほか六名の方に土地とボタ山をつけまして、譲渡をされておるわけでございまして、現在ではこの方々の私有財産になっておるわけでございます。  それから、一方鉱業権の消滅が三十八年でございますので、法律的に申しますと、ボタ山の管理責任というものは前の鉱業権者でありました明治鉱業ではなくて、むしろこのボタ山の譲渡を受けました古川さんほか六名の方にあるわけでございます。まあしかしながら、これはボタ山でございますし、やはり終閉山に伴う問題であろうかと思いますので、福岡の監督局長に指示をいたしまして、この問題の調査をいたしますと同時に、所在の自治体とも相談をいたしまして、現実的な解決策があるかどうか、慎重に検討さしたいと考えております。
  84. 大森久司

    委員長大森久司君) 次に、柴田君。
  85. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 法案の質疑に入る前に、大臣に御要請を申し上げ、さらに決意をお聞かせをいただきたいというふうに思います。  現在の石炭業界の非常にむずかしい情勢に対しまして、ある人は風前のともしびだとこれを表現をし、さらに石炭協会の最高幹部の方は、葬式屋にはなりたくないというような発言もされておるんですが、これはまあ葬式屋になりたくないというのは、みずからの決意をそういうふうなことばで表明をされておるんだろうというふうに思いますけれども、午前中にも今後の石炭政策の基本姿勢といいますか、位置づけというものについて論議がございました。これに対して大臣からも所信の表明があったわけでありますが、その中で先回もお話のありましたように、五十年度二千万トンを下回らないという石炭鉱業審議会の決議をなされるまでの決議の経緯、さらに、石炭業界の将来を十分に考えあわせましてこの決議がなされるというのは、石炭鉱業審議会の各委員のそれぞれの真剣な御討議ということもさることながら、きょう午前中のいろいろお話を聞いておりますと、将来を考えあわせて、大臣の決意を反映というよりもむしろそのことが決議になったではないかというふうに私は判断をするわけであります。いままでも石炭対策につきましては、一次から四次までということでいろんな対策が打ち出され、実行されて御努力をいただいたわけでありますが、いかんせん、今日のような非運を招いておるわけであります。今回第五次の答申というのが先ほどの御説明によりますと、六年の末に一応骨格ができて、さらに総会にかけて、七月の末には公式に提示をされるんではないかというふうなお話もあったわけですけれども、この答申というのは、巷間、最後の石炭対策だと、こういうふうにいわれておるわけであります。したがいまして、関係者は複雑な思いで注目をしながら、深い関心を持ってこれをながめておるであろうというふうに想像するわけでありますが、私は、ここでその石炭鉱業審議会の決議が行なわれる過程とあわせまして、これからの答申が行なわれる過程におきまし七、決議の内容をさらに骨格として答申の中に盛り込むと、審議会の性格からいけば、そこで答申をされたものによって、はじめて政府政策というのが樹立をされ、確立をされていくんではないかというふうに思いますが、冒頭に申しましたように、審議会の決議の過程を考えてみますと、やはりそういうものは実際の形では、審議会の中でかなりそういう面が織り込まれなければならぬだろうというふうに思います。午前中の大臣の答弁の中で、これからは朝野の石炭関係の有識者がお集まりになって、十分御審議をいただくんで、それに期待をすると、こういうふうなお話もありましたけれども、まあこれはことばのあやだろうというふうに思います。性格からいってそうだと思います。それで私は、その答申の中に盛られる骨格について、ぜひ大臣の手でひとつその内容を最後の仕上げとして盛り込んでいただきたいというふうに思います。  私、聞くところによると、大臣はかなり前からこの石炭には御関係いただいて、大いに意欲を燃やして取り組んでこられたというふうに聞いておりますし、そういう意味では、ある意味では最後の仕上げということになろうかというふうに思います。またさらに私、会議録を読んでおりまして、ある人が大臣のことばを一これは田中大臣という意味ではありません、ほかの大臣ですが、石炭対策ということを言っても、ユーザーあっての石炭だというふうなことを言われておるのを読みました。もちろん前後の文章を正確に読みませんと、そういうことばだけとらえてあれこれ言うのは差し控えなければならぬというふうに思いますけれども、現在の石炭の状況というのは、午前中にもいろいろお話がありましたように、そういうなまやさしい段階ではないんではないか、こういうふうに思いますので、私の要請というのは、ぜひその答申の中に大臣としての決意を十分に反映をするといいますか、盛り込んでいただくようにお願いをしたいと御要請を申し上げると同時に、そのことに対しまして、これからの五十年までの移りかわりの問題、もちろん五十年度に二千万トンという数字につきましては、いろいろ意見もあるところであろうと思いますけれども、やはり石炭鉱業審議会として五十年度二千万トンという数字が出たのは事実でありますので、そういう上に立ってひとつ要請し、御決意のほどをお聞かせ願いたい、こう思います。
  86. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) いまも御指摘がございましたように、これが最後の答申になるだろうという見通し、これはいままでの経緯の上に立って考えますと、そういう見方、そういう判断ということがおのずから出てくるわけでございます。私もまあそういう意味で、この答申というものが少しぐらい時間がかかっても——一日も早く答申はもらいたいという考えではありますが、しかし、そうかといって中途はんぱなものを出してもらっても困るということで、できるだけ多角的に検討し、しかも、具体的なものを盛った答申がいただきたいということでございます。まあ、石炭鉱業審議会の名における衆知を集めたものでありましても、これですべての処分せんが全部盛られるとは考えておりません。なかなかむずかしい問題がまだたくさんございますが、まだまだ通産省でも、また業界とも連絡をしながら事態に対処をしていかなければならない具体的な問題は幾多残ると思います。思いますが、やはり疑問を残さないように、五十年度二千万トンを下らないように、五十年度以降はどうなるのかという問題とか、五十年に至るまでの問題、先ほど申し上げました各山別にもうきちっとしたことを検討しなければならないと思いますということまで述べてございますが、まあ完全に納得できなくとも、いまの段階において石炭に対してとれるものは大体盛られておると、この程度のものしかできないだろうと、これが最善を尽くしたものだろうというようなものをいただきたい、そういうためには少しこの三月三十一日というものがおくれておるわけでございます。その間通産省自体も連絡も十分いたしますし、そして通産省の意見も述べるということで、答申待ちということよりももっと積極的な姿勢をとっておるわけでございます。でございますので、三月三十一日の決議に二千万トン程度というのは、千五百万トンを意味する二千万トン程度という数字が出るときに、二千万トンを下回らない、二千万トン以上にウエートを置いた御決議をしていただいたということでありますので、これからも、六月末を目途にして答申をされる予定である審議会の審議には通産省の意向も十分反映できるように連絡をいたしたいと、このように考えております。
  87. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 いま御見解をお聞かせいただいたんですが、非常に端的なことばで言えば、今度出てくる第五次の答申石炭対策というのはこれからの歯どめだと、石炭産業に対して。そういうような気持ちで受け取っておると、私なんかそのように考えておりますし、そういう人が多いんではないかというように思いますが、いま大臣の御答弁をお聞きをいたしておりまして、別に片言隻語をとらえてどうこう言うつもりはございませんけれども、そういう気持ちでおりますし、そういう気持ちで大臣なり通産省としてのこれからの作業は進んでいくというふうに理解をして、これから法案に対する具体的な質問をしていきたいと思いますが、よろしゅうございますか、そういうふうに考えまして。
  88. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 精神的にはそうでなければなりません。そのように立ち割って、もうこれがかんぬきでございまして、これからは下がらないんですと、これは私、精神的にそうでございますが、しかし、実態的な問題から考えるとそこまで完ぺきな答申が得られるかどうか、これは問題があります。私自身も、先ほども円城寺さんにちょっとお会いしまして、お会いしたときに、とにかくりっぱなものを、完ぺきなものをひとつお願いしますよ、勉強してください、私どもも勉強しますからと、こう申し上げておるわけでありまして、精神的にはそのとおりであります。精神的にはそのとおりでございますので、そういう立場で、こちらもおりますので御了解をいただきたいと思います。
  89. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 それでは、石炭鉱害復旧法案についてお尋ねを申し上げたいと存じます。  この法案は、法案の中にも書いてありますように、この後十年間に残っております鉱害を確実に処理をすると、こういうことを明らかにしておるわけでありますが、従来の経緯その他を振り返ってみまして、もちろんこれ出された以上、非常に強い決意でやり抜かなければならぬというような決意が裏づけられてこの法案が出されているというふうには理解をいたしますけれども、はたして先のことだからわからぬと、そういうことは別にいたしまして、十年間で処理ができるのかどうか。あるいは残った場合、今後の石炭産業のいろんなあり方等を考えてみまして、新しい鉱害というものが発生をするというようなことは考えられないかどうか。そういうような点について御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  90. 莊清

    政府委員莊清君) 鉱害の復旧に千三百八億円ぐらい四十四年度の物価で考えて、今後必要であるというふうに申し上げておるわけでありますけれども、四十四年まで二年ほどかけまして、全国的に非常に詳細な鉱害状況の調査をしたわけでございます。その後補足調査等も行なっておりますし、今後もまたそういう方針を変えておりません。それで、全国の鉱害の状況というものは、常時政府として的確にまず把握をいたしまして、計画的に地域別の復旧基本計画というのを組みまして、それで処理をいたすわけでございますけれども、どんどん鉱害がふえていって、とどまるところを知らないのではないかという御心配も一部には確かにあろうかと存じます。ただ、北海道に相当石炭生産の主力が移ってまいりまして、これは深い山の中で、しかも、深いところを掘っておるというような事情でございますので、九州の、かつて石炭が掘られておって、いま閉山しておろというふうな、村の下を掘ったとか、たんぼの下を掘ったとかいうような、そういうふうな事態がきわめて減っていくわけでございます。それで過去において九州で大規模石炭生産が行なわれ、それがまた閉山をしたと、そうして鉱害のみがあとに残ったというような地帯が九州に非常に多いわけでございますので、鉱害復旧の重点は当然九州でございまするが、最近のところ、ようやく地盤沈下等も相当の地域におきまして下げどまりと申しますか、安定の時期に入ってまいりました。したがいまして、鉱害状況の把握、それにどれだけの金が要るかというふうな、調査の面でも目安が立つようになってまいりました。これを基礎といたしまして私ども千三百というふうな数字も実は申し上げておる。今後は追跡調査等も十分行ないまするが、大体は把握しておるつもりでございまするので、復旧の基本計画というものを地区別にしっかりつくりまして、それで必ず十年たてば全部なくすと、早くやれる地域はもちろん早くやりまするし、九州等でも、従来立ちおくれになっておりました住宅の復旧というふうなものは、極力これは前半で繰り上げてやると、こういうつもりで今後地域別の計画というものを組もうと、かように考えておるわけでございます。
  91. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 いまの御答弁で大体わかる。将来のことを考えても、新しい鉱害というのはまず出てこないのじゃないかと、そうして、そういう心配は、これは先のことですから、絶無というようなことばは使えぬでしょうけれども、まず心配はないんだと、不安はないんだと、だから十年でできるんだと、こういうふうに理解していいわけですか。
  92. 莊清

    政府委員莊清君) 数字のこまかい点で恐縮でございますけれども、千三百八億の中には、よくはわからないけれども、今後復旧すべき、起こるかもしれないというふうな将来の分もある程度先回りをして実は織り込んでございます。で、今後北海道ではあまり起こらないと思いますけれども、九州でもまだ掘っておる山もございまするし、今後どうなるかわかりません。北海道でも、安心はしておっても、それだけでどうか、確実ではございませんから、追跡調査というものは十分いたします。そうして計画の中にはっきりしてくれば全部織り込んでいく、こういうかまえでございます。
  93. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 次に、この法案の中にもあります復旧不適農地及び家屋の復旧の措置について、これは被害者の同意を求めると、こういう精神なり運用というのは十分お考えになっておられるでしょうけれども、被害者の同意を求める、同意を得るというような明確な条文がないように思います。これらは被害者にとりまして大きな不安の種ではないかというふうに思いますが、この不安を解消するためにどのように考えられ、対処されようとしておるのか。あるいは条文に書いてないと私の言ったのが誤りで、どこかにそれに類似したものがあるのか。あるいはそれがどうして書けなかったのかというようなことについても御説明をいただきたいと思います。
  94. 莊清

    政府委員莊清君) 復旧基本計画というものをつくります際に、お話のございました復旧不適地、これは補償金を払いまして済ませるわけでございますけれども、どの地域というのは、どうしても復旧が不可能、あるいはきわめて不適当であるというふうなことを鉱害事業団のほうで十分調査いたしまして、計画に組み入れるわけでございます。これは計画に明示しなければならないというふうにいたしております。そして、それを必ずあらかじめ関係市町村長の意見を聞いた上でしなければならない——計画に入れまして、これを関係市町村長に示しまして、その計画で主務大臣の認可を得てよろしいかという相談をしろ、ここまでは法律で強制をしてございます。ただ、普通の農地を農地として復旧するとか、あるいは農地を、周囲の事情が家がふえてきたからというふうなことで、宅地という形で、いわゆるみなし復旧工事というふうにきちんと復旧をいたします際には、一人一人の土地の所有者、被害者の同意を得なければならないということがこの法律に実は以前からございます。その点は今度も変わっておりません。それと比較いたしますと、たしか先生指摘のように、復旧できないからお金で済ませるという制度はなるほどできたけれども、そのときには市町村長どまりで、なぜその人の意見を聞かないのかという御疑問がわくのは、私、まことにやむを得ないところかと存じまするが、非常にかたいことを申し上げまして恐縮なんでございますけれども、実は、一つのこの法律上の権利義務関係をきめた非常に厳密な法律構成に、被害の復旧の法律であるだけに、この法律はなっておりまして、農地を農地として復旧するとか、農地を宅地にみなし復旧するというときには、その土地の所有権者に対しまして、その土地を持っている人の土地の状況を変えるわけでございますから、どういうふうな内容の工事をしますということを計画をきめまして、これでよろしいですねということを所有権者に対しましてやはり意見を聞いて、その上でやるべきだという法律構成になっております。ただしそれと違いまして、補償金を払って復旧せずに済ますという不適地の場合には、結局客観的に見まして、たとえば塩水が入って非常に深く陥没したたんぼが取り残されておるというふうな場合でございますとか、昔は畑がずっとあったんだが、いまでは市街化いたしまして、都市計画の上でも市街化区域に指定されてしまっておる。そこに取り残された非常に深く陥没した畑があって、それを直しましても、結局水も得られないというふうな状態、あるいは土も運ぶ場所が非常に見当たらないというふうなことで、直したくても直すわけにもいかないという場合に、実はこれはもう手当てのしようがなかったわけでございますから、従来は全く手当てのしようがなく放置してあった。そこでその鉱山会社が、石炭会社が金がある場合には相対で金を取れたと思いますが、ほとんど無資力になっておりますから、裁判に訴えても金を取れないということで、全く泣き寝入りになっておる。そういう場合を救うために今回の制度を実はつくりました。そういう場合は、四囲の情勢がどうなっておるのか、そこの土地というものは技術的にほんとうにどうにもならないものであるかどうかというふうな客観的な状態の認定の問題でございますので、これは専門家である事業団で誠意を持って、できれば復旧するという基本姿勢に立ちながら、十分検討いたしまして、やむを得ない、しかし、放置しておくよりは被害者保護であるという判断のときにのみ、念のため市町村長の公の立場の御意見も十分徴した上で計画に組みたい。補償金を払います場合にも、その額についても、あらかじめ市町村長の意見を聞かなければならないというふうな実は法律構成にもいたしております。で、法律上の扱いはちょっと異なりますので、そこまで同意を必ず得なければ無効であるというところまでは、制度としてはいたしておりません。ただ、先生指摘もございましたように、非常に重要な点であり、現地のほうでもいろいろ御心配なさった向きもあるようでございまするが、運用上は市町村長を通じて必ず事前に十分事情を説明をして、その土地の所有者の方の納得のもとに補償金制度というものは必ず動かせるというふうにはっきりお答えをいたしたいと思いまするし、運用上もまた、私どもそういう通牒など出すという考えでおります。
  95. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 不適農地のことでいま御説明がありましたように、町の中で陥没して、もうそこだけ水利の便も悪くて、何とも農地として回復できないとか、いろいろな状況から見て、大体万人が首肯するような不適農地の選定というのは、それはわかるのですけれども、従来の不適農地の選定というのはそういうケースだけですか、ほかにはございませんか。
  96. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) お答えいたします。  従来は、実は現行法の七十九条に復旧不適地の要件が定められております。その要件に従いますと、その収穫が七割以上減収している農地であって、かつ技術上これを復旧することは困難な地域のみが復旧不適地の対象となるわけでございますが、具体的な運用につきましては、実は復旧すべき地域が非常に多い実態から見まして、不適農地につきましては、何ら処理されないままに現状に至っております。今回の法律改正におきましては、いまの技術的に復旧が著しく困難な場合に加えまして、要件上著しく不適当な場合も処理できるようにいたしたわけであります。  その具体的な事例につきましては、たとえば都市計画のいわば広域都市計画が定められております地域、北九州市といったような中で、市街化区域の中に指定されました農地であって、しかも、周囲の水当てが困難であるというような農地につきましては、現今社会経済事情から見まして、これを復旧することは、著しく国の施策として斉合性を欠きますために、復旧することにかわりまして適正な補償をしたい、こう考えておる次第でございます。
  97. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 その不適農地の選定といいますか、指定をする場合に、私聞いたのは、一反歩の復旧費が八十万円をこす分については、これはもういまおっしゃったような条件もあるでしょうけれども、何か不適農地とするのだと、その八十万円というのが四十年以来一向に上がっていない、変化がない。そういう意味では、それがいまもなお踏襲をされておるとすれば、不適農地というのはそういう面からかなり拡大をするのではないかというふうにも考えられるのですが、その辺について私の聞いたのが誤りであるのか、実際そういうことがなされておるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  98. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) お答えいたします。  先生指摘のとおり、農地の復旧につきましては、一応国の復旧事業の基準といたしまして、反当で八十万円をこえるところは復旧しないという一つの基準を設けております。この基準につきましては、実は相当常時変えてきておりまして、たとえば、昭和二十九年から三十一年にかけましては反当制限が十七万九千円であり、三十二年から三十四年については十九万一千円、三十五年から三十七年については二十五万円であるというような形で、順次八十万円まで引き上げてきたわけでございまして、現行の八十万円が設定されましたのは四十五年度からでございます。したがいまして、今年度含めまして三カ年度を迎えております。先生指摘のとおり、実はこれを引き上げていきましたのは、他の一般の復旧事業としてやっております復旧事業、一般的な価格上昇要因を織り込みまして、二年あるいは三年おきにこれを引き上げておるというのが実態でございます。
  99. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 この復旧をする場合に、農地としてある地域、この一つの大きな地域の中で、あるところはこれを区画すれば、A、B、C、Dに分けて、Aというところは八十万円以上かかる、Cというところはそうでもなくて、かなり少額で済むという場合が出てくるのじゃないかと思いますが、そういう場合には、八十万円なら八十万円ということでかなり弾力を持った運用というのはなされるんですか。
  100. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) お答えいたします。  実は、私ども現実にこの八十万円を運用するに当たりましては、御指摘のとおりできるだけ復旧すべき対象地域を一個所につきましては広くとりまして、平均費用が八十万円以下になるような運用、いわば弾力的な運用をしておりますし、また農地につきましては、場合によりまして農耕施設、たとえば水利施設といったものを省きまして、田面だけの復旧費を計算することによって、八十万円の適用範囲をふやすといった努力をしております。なお、それをもちましてもなおかつ復旧ができないような、たとえば、反当二百五十万円もかかるような農地につきましては、他の事業との連携によってこれを復旧することを配慮しておりまして、たとえばボタ山災害防止工事といったような工事で、先に沈下したところに土を入れてもらいまして、その上の田面を復旧することによって、私どもは八十万円以内におさめまして復旧につとめるといったような事業もあわせて施行しております。
  101. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 わかりました。  これは、質問が前後するかもわかりませんけれども、この法案の資料の中にもあります「完全復旧の達成」について、「政府が復旧長期計画を定め、」これに基づいて、「主要な鉱害発生地域について多年度・多工種にまたがる大型基本計画を順次策定し、残存鉱害を復旧の軌道にのせる。」と、こういうふうにありますが、これは具体的な手順で言うと、どういうようなことになるんでしょうか。
  102. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) 「多年度・多工種」にわたりますということを特に申し上げておりますのは、従来は、大体、復旧基本計画で単年度で単工種と申しますか、一つの工種というような運用をいたしておりましたので、そういうことよりも、少し長い計画的な処理をしたほうがよろしいということで多年度にいたしまして、それから工種の範囲も多工種に広げまして、総合的に鉱害復旧の処理をしてまいるというふうに運用を改めたいと思いまして、そういう表現を使っておるわけでございます。
  103. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 この政府が定める復旧長期計画というのは、この法案に定めておる十年なら十年というのを大まかに、ぱっと青写真が出てくるんですか。そしてそれに基づいて一定の期間をきめて、その主要鉱害発生地域についての具体的な復旧工事というのが行なわれるのですか。
  104. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) 長期計画と申しますのは、年次別を考慮しまして、十年間の一本の長期計画をこしらえるわけであります。それに基づきまして、各地区に基本計画をつくって、それは地区ごとの計画というふうなことになってまいることになっております。
  105. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 次に、みなし工事の問題で御質問申し上げたいと思います。  みなし工事というのは、地域開発のために、国の土地の有効な利用、そしてまた補助金の効率化ということにもつながるんだろうと思いますが、この場合に、従来は受益者負担金といいますか、被害者が受益者になるという、ことばだけ見ると、何か転倒したようなかっこうになりますけれども、そういう受益者負担金というものが、実際は何か返すのがあるということなんだそうですけれども、そういうことがございましょうか。
  106. 莊清

    政府委員莊清君) 従来から、この法律の第五十二条に、受益者負担金を取り戻すという規定がございます。これは工事をいたしまして、前の状態に戻す以上に効用の高いような状態に戻しました場合に、その一部というものを返還をしてもらうという趣旨に出たもんでございます。ただ、みなし復旧工事というのが今後も相当実はふえてまいります。それで、運用上の問題でございますけれども、昨年度からみなし復旧工事の場合に、たとえば、従来はたんぼの高さがこの高さであると、ところが、これをみなし工事で宅地にいたしますので、かなり高い状態に土盛りをしてりっぱなものにしたという場合に、そこから上の部分は全部取っておった、返還を命じておった。工事費のその部分は返還をさせておったのを、その部分の大体三〇%程度は負担させるけれども、あとの部分は運用によりまして徴収をしないで済むというように、一歩実は前進をいたしております。  それから、今年度からでございますけれども、受益者負担と申しますか、とにかく国の負担、補助の割合というものを、みなし復旧工事について全体として引き上げるということもいたしておりますので、また、それに応じて、その問題もスライドして小さく実はなってきておる面がございます。そういうふうなことで、必ずしも実際の運用としては、法律の第五十二条に書いてある精神は体しておりますけれども、あまり支障のないような運用を心がけておるわけでございます。
  107. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 いまの御説明でいきますと、いままでは、昨年度ですか、土を上に盛った分については三〇%ぐらいは負担をしてもらっておったと、こういうことなんですが、それも順次できるだけそういうことのないようにというふうに理解をしますが、よろしゅうございますか。——まあ、もっとも、それはみなし復旧工事というのを積極的に奨励をするということがいわれておりますので、これを被害者——これはまあ、かりに土地は土盛りして多少価値は上がったにしても、有形無形に鉱害をこうむった被害というのはなかなか金では換算できないわけですから、心情的にはそれはなかなか理解しにくいのではないか。一方では、そういうみなし復旧工事を奨励しようということからいけば、先ほどの御答弁をさらに進めていただいて、これはもう廃止するんだというくらいに言ってもらったほうがむしろいいんではないかと思いますがね。
  108. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) 御質問のとおりでございまして、実は、昨年度からみなし復旧工事の大幅奨励を運用上講じてきたわけでございますが、その一環といたしまして、昨年度は、御説明いたしましたように、従来、取らなければならないケースのうち、七〇%程度のケースが取らないで済むように実質的軽減措置を講じたわけでございます。  本年度につきましては、国の補助率を七五%に上げましたために、そのはね返りとして、残り取らなければならなかったケースの三〇%のうちの二〇%が取らなくて済むような形になります。したがいまして、ほとんどのものは取らないで済むような方向にはなってまいります。ただし、工事の内容いかんによりまして、場合によっては被害者の方が希望されるようなケースもございまして、若干従来の復旧の通常の工事には含まれないような要素を希望されるような場合には、被害者の意向を尊重しまして、工事の内容に加えることになる、この場合に受益が生じますので、その場合には受益を取るということは残さざるを得まい、こう考えております。
  109. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 次に、農地を復旧した場合に、これはいろいろな復旧をする場合に方法が私はあると思うんですが、詳細は私はつまびらかに知りませんけれども、何か旧の何条かの条文でもって、農地の場合は、復旧後も効用未回復の部分があれば、あとでそれについてはさらに認定をした結果、処置を講ずるということになっておるんですが、まあ土地と家屋と多少違うのかもしれませんけれども、家屋は復旧をして、これまたいろいろなケースがあると思いますけれども、一応しかるべく所定の検査が終わってオーケーということになれば、あとはどういうふうになろうとも、農地のようなわけにはいかぬというふうに聞いておりますが、そのような形になっておるんでしょうか。
  110. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) お答えいたします。  御指摘のとおりの事実でございまして、農地につきましては、いかように復旧いたしましても、たとえば復旧に使いました土の性質によって、必ずしも直ちに収穫量が従前と同じ——鉱害を受ける前の、以前の収穫と同じような収穫が得られるような農地には実は直りませんので、それが通常の農地としての機能を発揮いたしますには、三年ないし七年の期間を要します。そういった際には、いわば土の性質をよくする期間、あるいはその必要な経費といったようなものを暫定補償という形で、現行法の七十三条以降の条文で実は支給をしておるわけであります。ただ、家屋等の復旧工事につきましては、一応復旧しました段階で、鉱害を受ける以前の家屋並みの状態には戻ったというのがわれわれの解釈でございます。したがいまして、家屋等の工事につきましては、その補償金は出しておらないのが実態でございます。
  111. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 鉱害復旧ですから、家屋といっても、下の土台も鉱害によって何か侵食されたり、災害をこうむっておる場合は、それはそれで当然やられると思います。その上に家が建って復旧をするわけですから、普通でいえば、所定の復旧ができて検査が終わればいいようなものですが、実際は必ずしもそういうケースばかりでなくて、いろいろ土台が何かの都合で傾斜をしたとか、沈下をしたとかというようなこともあり得ると思いますが、家の場合は、こんりんざいこれは検査をしたあとについては何もしないと、こういうことなんですか。それともそれは、何かほかに非常に顕著な例でもあれば、それに対しては措置がある、こういうことなんでしょうか。
  112. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) お答えいたします。  家屋の場合につきましても、もし復旧後、地盤が再び沈下する、再鉱害を受けるといった場合には、当然再復旧の手続を講じます。また、工事自身が非常にミスがございまして、そうして明らかに工事施工者側にミスがあることがわかれば、それに応じまして手直しといったことはいたすつもりでございます。
  113. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 次に、産炭地域の振興対策についてお尋ねをいたしたいと思います。  今回、従来の不動産取得税、固定資産税のほかに、新たに事業税の減免ということが加えられておるのですが、これはこれなりに評価をしなければならぬと思います。まあ、従来企業の誘致と、こういうことについて、産炭地振興のたてまえに立って、それぞれ関係の方が大いに努力をされておられると思いますが、大体その中核——中核という抽象的なことばではなかなかわかりにくいと思いますけれども、一つの常識的なカテゴリーがあると思いますが、そういうようなところが、大体予定どおりに誘致をされておるのか、全体的にはどの程度の産炭地振興のための企業誘致という実績があるのか、お知らせをいただきたいと思います。
  114. 莊清

    政府委員莊清君) 産炭地域振興臨時措置法が施行されて十年に相なっておりますが、その間、産炭地域に進出いたしましたものは企業数で約八百ございますが、その中で、先生の仰せになっております中核的企業、これは概念が明確にはもちろんなっておりませんが、中小企業でないようないわゆる中堅企業以上の企業、あるいは天下の大企業といわれるものの地方への工場進出、これは両方含めまして、私どもの調査の結果、現在わかっておりますのは、二十程度のものが八百企業の中に入っておるということでございまして、数からいいますと、その他の地域的な中小企業のようなものが非常に多い、こういうことでございます。
  115. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 これは私ども、中堅企業というのが八百のうちで二十というのは、御努力はもちろん大いにされたと思いますが、数としては必ずしも多くないんじゃないかと思います。今回、事業税の減免によりまして、いうところの中小企業の誘致、こういうようなものが、最初お考えになっておられたような形で自信を持って誘致ができるというふうにお考えになられるのか。あるいはもっとそれは、多々ますます弁ずでしょうけれども、きめ手として何かお考えになっておられるような事柄があれば、お知らせをいただくと同時に、このあと、工業再配置との関係もございましょうけれども、それはまたあとで御質問することにしまして、そういうような点につきまして、御見解があればお聞かせをいただきたいと思います。
  116. 莊清

    政府委員莊清君) 今回産炭地域振興臨時措置法の改正として御提案申し上げております、地方税の減免をした場合に補てんをするという措置でございますが、これで大体四十七年の見込みで五億円ぐらいの減税効果があるであろうと予測しております。従来からこの法律では、固定資産税の軽減と不動産取得税の免除というのがございますが、最近一年間の実績では、大体この両方合わせまして三億円程度の減税効果でございます。したがいまして減税効果としては、その三億に対して五億ふえてくるというふうに見ておりますので、それなりの効果があろうと思います。特に、事業税でございますから、収益の大きいものに対しては累進的に刻みがございましてかかっておりますので、事業税につきましては、数工場持っている場合には、従業員の数等基準にして案分することが行なわれておるというような税制の特性もあるようでございますから、相当収益性の高い大企業が分工場を地方に持っていくという場合には、この効果があるかないかということは、仰せのように簡単に予測は立ちませんが、これは必ず相当の効果が税制措置としてはあるはずでございまして、私どもも実はそれを念願してこれの実現に努力したわけでございます。  そのほか、先生からお話がございましたが、先ほど大臣から御答弁申し上げておりますように、新しい工業再配置公団法の運用によりまして、産炭地域については、両方の法律でダブル指定をするということで、新しい公団法のほうに相当思い切ったいろいろな助成措置が盛り込まれておりまするので、大規模に事業をやる中核企業以上のものにとっては、そのメリットもまた当然大きいということで、両々相まって相当効果があるんじゃないかというふうに考えております。  また、何かきめ手というおことばございましたけれども、そういう制度上の誘道策というふうなものがやはり基本だろうと存じますけれども、最近、北海道で大規模閉山が相次いだというふうなことで、しかも、現在の経済情勢のもとでは、中核企業といえどもなかなか進出しにくい。中小企業などはもっとしにくいというふうな事情もございますので、これは通産省といたしましても、関係いたしました住友でございますとか、三菱であるとか、そういうグループのトップのほうに対しまして、特に強い要請をいたしまして、グループとしての自主努力で、ひとつ近い将来必ずかなりな工場を持っていってくれ、ぜひやってくれというふうに要請いたしまして、グループといたしましても、趣旨を体しまして最大限の努力をいたしましょうというふうなことでやっております。いろいろなそういうマクロ、ミクロの施策を積み上げまして、じみちではございますが、中堅企業の進出ということに一そう努力をいたしたいと考えております。
  117. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 時間が来たからやめておけという紙をもらったが、一つだけやります。  これで終わりたいと思いますが、産炭地域振興事業団では、用地の造成をやってお見えになっておりますね。その規模が何か二万平方メートルというのですか、大体大きさが。そういうふうに承知しておるのですが、石炭鉱害事業団のほうで行なう復旧作業との関連で、有機的にこの問題がつながれば非常に効果があるように思いますけれども、片方は用地の大きさに一つの規制が設けられており、片方は必ずしもそれに合致したところばかりではない。むしろそれに合致しないところのほうが多いのではないかというような気がするのですが、こういう両者の関連について、何かお考えがあったらお聞かせをいただきたいということと、それから工場再配置の、これはこれから出てくる法案でありますが、これについて御質問しようと思いましたけれども、これについては産炭地振興というのを最重点にするという先ほどの御見解もございましたので、これはもう私質問いたしません。先ほどの件について御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  118. 莊清

    政府委員莊清君) 産炭地域振興事業団の団地造成は従前からやっておりますが、そう特に二万平方メーターというふうな運用上の制限はございません。
  119. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 ないのですか。
  120. 莊清

    政府委員莊清君) はい。十万、二十万、三十万平方メーターというのをどんどんやっております。
  121. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 もちろん、それは一つの一番小さい範囲という意味で、それより小さいものはいかぬというふうに私は理解しておるのですが。
  122. 莊清

    政府委員莊清君) 最近では、百万平方メーターに近いような相当な大きなものも取り上げております。今後やはりかなりまとまった団地をつくるということが、何としても企業誘致には大切であろうと考えております。それで、鉱害事業団と産炭地域振興事業団とがうまくコンビを組んでやれる仕事があるのじゃないかという御指摘でございますが、全く御指摘のとおりだろうと思います。鉱害地で荒れ果てておるようなところを一応産炭地域振興事業団が団地造成用地として買い上げをいたしまして、そして、それを鉱害事業団のほうが復旧工事としてやるというふうなコンビネーションをうまくやる、これはみなし復旧工事になるかと思います。そういうことで問題が相当前向きに解決できそうな地域というものが、実は九州あたりないわけじゃございませんので、調査を進めております。これはもう一年以上調査しておりまして、ことし中くらいには何とか計画を立てて、よしとなれば来年度から実行に移したいというふうな研究をしているのがございます。
  123. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 終わります。
  124. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、石炭関係の法案が審議されるたびに思うのですが、政府石炭対策というのは全く人質対策のような感じがするのですね。ハイジャックにも似た対策じゃないかといつも私は思うのです。というのは、石炭を掘ったあとに起こる鉱害は当然私は、石炭会社が償うべきものだ、これが本筋じゃないかと思うのです。ところが、石炭掘ってもうけて、そして逃げてしまつて、無資力鉱害というものを起こしておる。そうすると、政府のほうでは、これはもうだれも補償する人がないからどうしても政府の力でこれをせざるを得ないということなんですね。そうすると、その石炭屋の起こした鉱害で被害を受けた人は農民であり、市民でありするわけですね、鉱害に関しては。閉山の場合は、やはりそれから受ける商店街とか、そこで働く労働者が困るということ、自治体が困る。そういうことで私は、いつもそういう人質をとっておいて、そうして、この法案を出してきて、この法案を通してもらわないと、こうこうこういう人たちが困るのだというふうに、いつも私たちが押しつけられている感じがするのですよ。それで私は、政府石炭対策は人質対策にすぎないなと、こういうふうにいつも思っておるのですが、この前、植村さんが第四次石炭対策のときに、もうこれで石炭対策は終わりでございますとはっきり言ったのです、あの人は。いや、そんなことを言ったって、またじきにやらなくちゃならぬのと違いますか、いや、これで最後でございますと彼は大みえを切った。そして、いま聞くと、やはり第五次の対策をやらなければならぬと言っている。これはやはり私は、いま申しましたように全く人質とられて、そして、いやいやながらそのために被害を受ける人たちに同情をするあまり、政府の出した法案に賛成をしなきゃならぬというようなところに立たされているわけですね。今度のこれでも私はそういう感じがするのですがね、どうですか。私は、もう結論から質問にしたいと思うのですが、この今度の一千億金をかけて十年間でこの鉱害を処置するというのですが、もう今後は、この一千億で十年かかったらあとは絶対こういう法案は出さぬ、こういうことはしないということを大臣はっきりここで約束できますか。それによって私たちも考えがある。
  125. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) あなたのように割り切って議論されれば一番けっこうなんです。実際そうなんです。鉱害というのは原因者負担が原則である、世界的にそういうことをいっているわけですが、ですから、もう政府がやらないで、これは鉱業権者にやらしたらいい、また鉱業権者の負担であるべきである、これはあなたが言うとおりなんです。言うとおりでございますが、現実というものはなかなかそうはいかぬ。これは鉱業法というものが——確かに鉱害というものに対しては、無過失賠償の責任を確立しているのは鉱業法だけであるというぐらいに、強く鉱業権者に対しては責任を負わせているわけであります。ですから、もう当然鉱業権が存在する限りこの鉱業権者が鉱害に対する負担を行なう、これは当然のことであります。制度上は非常に明確であって、もう考慮の余地はないくらいはっきりしている。が、しかし、無資力になってしまった……。
  126. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 なぜしたか、無資力に。
  127. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) いや、なぜって、無資力になってしまうのです、それは。そういう現実というものに対して議論をやっておってほうり出しておけば、迷惑をするのは国民や市民であり……。
  128. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そこがハイジャックだというのです。
  129. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) そういうことになりますと、これは鉱業法というものの中で制度をつくって、もう将来起き得るものに対しては、自動車や何かの損害賠償保険のようにして保険制度をつくるか、税金を控除しておいて積み立てを行なうか、また鉱害復旧に対する資金を平常、留保できるように制度上しておかないとなかなかできないわけであります。一般の企業と同じように所得税、法人税を徴収しておいて、そして、ある時期になって終閉山のやむなきに至るということになりますと、やはり現実あるところの姿を理論だけで放置しておけないということで、こういう問題が起こるわけです。ですから、将来いろいろなことが考えられると思いますが、しかし、いまの石炭に対して十年間一千億出して復旧いたします、いたしましたら、あとは一切こういう法律は出しませんということを私が申し上げられるかというと、もしそこでもってまた起こったら、あとはもう法律も出さない、何もしませんというわけにはやはりいかないのです。それと石炭とかいろいろな問題を考えますと、やはり世界各国にある石炭鉱山というものとは条件が違うというものもあります。それから、急速心世界のエネルギー革命という大波でもって、どうも避けがたい現象であるということもございます。まあほっておけるかというと、繊維と同じように、戦後の復興や明治から百年間の日本の国民の総生産拡大の中に占めた石炭の功績もあり、まあいろいろなことを勘案いたしまして、国会の御意思が決定されるならば政府はこういうことをいたしたいと存じますというのでございますから、あまりあなたのように、今後一切出しません、全部鉱業権者にやらせます、鉱業権者がいなくなったらやりません、こういうことはちょっと申し上げられないわけでありまして、そこはひとつ政府は先ほどからこまかく述べておりますように、千億というのは、もうこれから起こるであろう百億もみな加算をして、相当万全の配意のもとに御審議をお願いしているのだというやはり実態と政府の誠意のあるところはひとつ御理解いただきまして、あと絶対出すなと、こういっても、絶対出しませんというのは無責任な発言になりますので、まあひとつ御発言の御趣旨は十分理解いたしましたので、政府現状もひとつ十分御理解いただきたい。
  130. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まあ田中通産大臣も、ハイジャックでおどかされているような答弁しかできないわけですが、あなたの部下のある人は、私が、今度が終わりで、今後は絶対にこういうことはしないのかと言ったら、絶対にいたしませんと、私にはっきり言い切りましたよ。あなたの部下です。ところが、部下ははっきりそう言っているのに、大臣はふらふらというところを見ると……。
  131. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) じゃ申し上げましょう。
  132. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 了承しますね。
  133. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 現時点においては最善を尽くした処置だと思っておりますので、再びかかる法律案を提案しないつもりでございます。
  134. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 はなはだたよりない答弁ですがね。  それじゃ、続けて質問しますがね。この法案ができてから今日まで、この法案ができたときは、今後ずうっと無資力鉱害にはこういう処置をしていくということは考えていなかったと思うんですな。もういつも、この法案ができて、これからはもうそういうふらちなことは炭鉱にはやらさせない、会社にはやらさせないというたてまえで私は、この法律をつくったと思うんです。この法律ができてから今日まで、無資力鉱害、一体金額にして幾らぐらいの鉱害が起こっておるんですか。
  135. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) 実は、この法律ができましたのは昭和二十七年でございまして、それ以降四十六年度末までに復旧しました鉱害量を申し上げますと、全体で四十六年度末価格に換算いたしまして約千九百億程度の金額になります。この間、実は無資力がどれだけであるかということでありますが、これは非常に、成立いたしました二十七年直後は有資力がほとんど一〇〇%でございまして、その後四十年以降急速に無資力がふえてきておりまして、ちょっと資料を持ち合わせておりませんので正確な数字は申し上げられません。最近の四十六年度末の時点では、無資力鉱害が六〇%に達しております。残念ながら過去のデータにつきましては、ここでは私どもちょっと持ち合わせておりませんので、あとで別途にお届けしたいと思います。
  136. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、この法案ができてから千九百億の鉱害が起こっていると、そのうちの六〇%が無資力だと。——そうじゃないんですか。
  137. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) 申し上げましたのは、むしろこの法律ができまして、四十六年度まで二十年間にわたりまして処理しました鉱害量を四十六年度末の価格で換算いたしますと、約千九百億に近いものをやっております。しかしながら、それだけのうちどれだけのものが無資力であるかということは、資料がございませんので、ちょっとこの場でお答えできません。
  138. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、この法案ができてからそれだけの鉱害が起こっていると見れば、今日一千億の鉱害復旧費を組んでも、おそらく今後十年間の間に一千億、またはそれにプラスどれだけという鉱害が起こってくると思うんですね。それはどういうふうな見積もりでいらっしゃるんですか。これからどんどん閉山が起こり、無資力鉱害がふえていくと見なきゃならぬと思うんですが、そこはどういうふうにそろばんをはじいていらっしゃいますか。
  139. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) お答えいたします。  先ほど御説明しております全国の残存鉱害量で千三百八億と申しますのは、昭和四十四年度末に把握しました全国の鉱害量でございます。その後四十五年度から五十三年度までに至る九年間に、新規発生いたします鉱害量は、われわれの推定では、当時の価格表示で三十八億円と評価しております。その理由は、実は最近の採掘が、九州のほうでは三池が海底の下を掘っております。あるいは離島地域でやはり海底の下を掘っております。したがって、新規に地上物件にそう大きな影響はない。また、北海道のほうの生産につきましては、すべて原野部の下を採掘しておりまして、これまた地上物件の家屋あるいは農地といったものの存在するところは極力採掘制限をしておりますので、新規発生は非常に限られたものでございます。
  140. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この十年間に一千三百億という金をどういうふうにお使いになる考えですか、一千億の金の使い方ですね。
  141. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) お答えいたします。  実は私ども千三百八億という四十四年度末の鉱害量を基礎にいたしまして、その後四十六年度に至るまでの二年間におきます鉱害の処理量と発生量との調整をいたしまして、さらに将来の予期しない鉱害量に対するアローアンスというものを百億程度考えまして、十年間で処理いたします鉱害量は、四十六年度末の価格表示で千四百七十一億でございます。これを今後は、実は復旧費が年率一〇%以上のスピードで上昇していくという前提をとりまして、なお、予算といたしましては、引き続き等差級数としてこれを伸ばしていくという前提をとりまして、千四百七十一億を完全に処理いたしますための費用を計算いたしますと、約二千五百四十八億になります。これにつきましては、四十七年度の予算事業量でございますが、百六十五億、これを以降二十億ずつふやしていけば、マクロ的には十年で鉱害を完全に処理できるというのが実態でございます。
  142. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いま、鉱害処理のために各炭鉱出炭一トンについてどれだけという積み立て金をしておりますね。これは今日一体どれだけなのか。それでは私は、とても足りないことだと思いますので、将来、国がこういう費用は負担しないでも済むように、もっと積み立て金を私はふやすべきだと思うんですね。というのは、これはみんな国民の税金ですからね。何ぼ石炭がかわいいからといって、国民の税金を際限なくこんなものにつぎ込むわけにいきませんよ。だからもうこれをぎりぎりでもやめると、それで今後は自分たちで処置していくと、そういうたてまえに立って、積み立て金をもっとふやして、ちゃんとできるような方針を立てるのが私は政府のつとめだと思うんですが、そこはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  143. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 住民の福祉向上のためにやむを得ざる処置として無資力鉱の鉱害復旧を政府、地方公共団体が主体になってやらなきゃならないということは、真にやむを得ずやっているものでございまして、あなたが御指摘になりましたように、こういうものは無制限にやるべきものじゃありません。これはもう十年間も延ばしてこれだけ膨大もない事業量を計上するのでございますから、これ以上、国費をもって、国民の税金をもってまかなうというようなものは、ほんとうにおしまいにするという基本的な姿勢でなければならないということは、もう当然のことでございます。で、そのためにはいまの積み立て金をどうすればいいのか、またそれだけの余力があるのか、そういうことをすれば直ちに困るような炭鉱はどうなのか。いまいろいろな問題がございますから、これだけの御審議をお願いするわけでございますので、その後に起こるおそれのあるものに対しては、事前に政策的な面から十分検討し、配慮しなければならないものだと考えております。
  144. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 どうですか、その積み立て金をどういうふうに処置していくかということですよ。私は、もう十年前に、すでにこの法案ができたときに、積み立て金で自力でちゃんといけるような方針を立てていくのが、政府のつとめだと思うんですよ。それをほったらかしているから、いつまでたってもこういうことをしなければならない。炭鉱はもうけていて掘っていたしりぬぐいに国民の税金をつぎ込んでいかなければならない。こんなことに税金をつぎ込んでいくことは、国民に対して申しわけないですよ。どういう方針を立てているのかですよ。
  145. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) お答えいたします。先生の御質問は、石炭鉱害賠償等臨時措置法に基づく積み立て金の徴収についての御質問じゃないかと思います。賠償等臨時措置法におきます積み立て金は、鉱害被害者の保護に充てるため、施業案の認可にあたりまして、その採掘によって将来発生する鉱害、それに対する損害賠償の費用の二分の一を保護権者に事前に積み立てさせるという制度になっておりますけれども、現行この積み立て金の額は、四十六年度におきましては二十二億五千万くらいになっております。本件につきましては、そのような計算方式でございますので、現実に鉱害がこれから起こるということが予想されます地域における施業案の認可の際、その認可した施業案がどれだけ将来の予想鉱害量を発生するか、それに対してどれだけ損害賠償費用が必要か、その二分の一を積み立てさせる、そういう制度の仕組みになっております。したがいまして、私ども最近の時点におきましては、この制度を相当厳格運用しておりまして、新たに施業案を認可する際には相当な積み立て金を実は徴収しております。しかしながら、残念ながら、先ほど申し上げておりますように、現在新たに鉱害を発生するような地域におきます山は非常に減少しておりまして、もはや、たとえば先ほど申し上げましたように、三池のように海底を掘る場合は新たな積み立て金は取らないで済みますので、現実にこういう積み立て金を取ってするケースは非常に少なくなっております。
  146. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたの話を聞いていると、もう今後はそういうような方針を立てていくから、絶対今後起こる鉱害は国民に負担をかけなくても自分たちで、自力で処理していけるんだと、こういうふうに聞こえますがね。そういうふうに聞こえますが、ほんとうにそういう方針でいくならば、再びこういうことはしないということがここではっきり明言できるはずなんですね。しかし、大臣に言わせると、すこぶる自信がない。だから私はそういうことじゃなしに、もっと万全の策を立てて、いまの積み立て金をもっと多額に、倍増するなら倍増するくらいの度胸をひとつつけてやったらどうかということです。それでないと、二分の一やったって、あとの二分の一をどうするか。これは地方自治体などの負担もかさんでくる。そうすると、炭鉱地帯の自治体なんというのは非常に貧乏な自治体が多いのですよ。だからそういうものに負担をさせるのじゃなしに、石炭でもうける本人が全額を負担するという方針をここで確立していく必要があるということを私は申し上げているのですね。どうですか、そういう方針でいってもらいたい。
  147. 後藤宏

    説明員(後藤宏君) お答えいたします。  先ほどお答えしておりますように、賠償等臨時措置法につきましては、三十八年に成立した法律でございまして、したがいまして、先ほどのような積み立て金を徴収しましたのは、三十八年以降の施業案の認可につきまして徴収しております。しかし残念ながら、先ほど来申し上げております千三百八億に達します鉱害量の大部分は三十八年以前の採掘に起因する鉱害でございまして、私どもは、今後認可いたしますものにつきましては、かなり厳格に運営をいたしますが、そのウエートはきわめてわずかなものでございます。先ほど申し上げておりますように、本年から五十三年の間に発生する鉱害は三十八億円というわずかなものでございますので、そういった程度のものにかなり厳格に運用をいたしましても、全体に対してはどうも効果が少ないというのが実態でございます。
  148. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう一問だけ。  私は、工業再配置法案をずっと拝見していると、これと非常に関係があるように思うのですがね。工業再配置法案とこの法案との関係をどういうふうに政府のほうで考えておるのか。これで要するに、鉱害が起こったところをうまく地盤を整備をして、そして工場が持ってこれるようになったらそこへ工場を持ってこようというふうに考えていらっしゃるのか。それとも、どうにもしようがない場合は政府が買い取るわけでしょう、これね。そうしてそれを整地する。工場をそこへ持ってくるそのときに、工場を持ってくるについて、売る土地の値段との関係ですね、買うた値段と売るときの値段の関係とか、そういうものについて一ぺんこれ工業再配置法案の審議のときにまた詳しく私は質問したいと思いますが、とりあえずそれだけのことをちょっと関係を聞いておきたいと思います。
  149. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 産炭地域振興の法律も制度もみんなあったわけでございますが、なかなか産炭地には産炭地そのものが新しい工場の適地として選ばれないということで、どうも実効をあげなかったわけです。ところが、今度は工業の再配置という大きな問題が起こってまいりましたから、まずこの十月一日から施行をしたいと思っておりますこの法律が通過をすれば、一番初め指定するのに都合のいいところは産炭地が一番——第一号に指定されるわけであります。特に今度の三菱美唄などは八万人が四万人になり、二万人になろうと、こういうのでありますから、八万人が四万人になった跡追調査をやってみますと、これみんな大都会に出てきているわけであります。しかも、ほんとうに追跡調査をしますと、移動する人口の五分の四が社会保障の対象人口になるくらいな、生産には直接関連のない人が移動するわけであります。  ほんとうならそこに定着をしておってくれれば、相当な金を一人当たり出しても、そのほうが国民全体の負担からいうと合理的である。で、また炭住もある、施設もある、地方公共団体もあるのですから、そういう意味で、そこに新しい工場が理想的に誘致されるならば、炭鉱の終閉山もうまくいくし、移動もしないで済むしということであります。そうなれば、政府も誘導政策を制度上やってくれなければ、やはり相当山の中に、産炭地としては適地であっても、必ずしも工場の適地でないかもしれぬ、そういうところに相当な投資を行なうというには、誘導政策とやっぱり一体にならなければならないという事態がございます。三菱に対しては、一カ月一億ずつ損をするなら、三年分損をすれば三十五億投資できるのだから、美唄工場ができるはずである。三菱全体に対して三十五億を損しろと言うことの前に、やはり政府は制度として誘導政策をやるべきである、そうすればわれわれもこたえます、こういうところがまあ産炭地にはたくさんあるのです。ですから、この産炭地というもののほんとうに合理的な再建をやるには、この工業再配置というものをかぶせれば全く合理的になる、こういうことでございまして、もうほんとうに産炭地復興というものと工業再配置は同時に通していただきたいというのが実態でございます。
  150. 大森久司

    委員長大森久司君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  151. 大森久司

    委員長大森久司君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、討論はないものと認め、これより直ちに採決に入ります。  臨時石炭鉱害復旧法等の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  152. 大森久司

    委員長大森久司君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  153. 大森久司

    委員長大森久司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  154. 大森久司

    委員長大森久司君) 次に、小規模企業共済法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。田中通商産業大臣
  155. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 小規模企業共済法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  小規模企業共済制度は、小規模企業者が相互扶助の精神に基づいて、毎月掛け金を積み立て、廃業や死亡といった有事の事態に備えるという共済制度でありますが、経営や生活の不安定に悩まされがちな小規模企業者にとってその果たす役割りは大きく、昭和四十年十二月に制度発足以来すでに二十五万人の加入者を得ております。  現在、制度発足後六年余りを経過したわけでありますが、本制度は、本来、経済事情の変化に対応して見直していくべき性質のものであり、この法律自体におきましても、少なくとも五年ごとに制度の眼目である掛け金、共済金等の額の検討を行なうよう義務づけております。本年は、前回昭和四十二年にこの法律の一部改正が行なわれて以来五年目に当たるわけであります。  この改正法案は、最近における所得や物価の推移などの経済事情の変化、小規模企業者から本制度に対して常日頃から寄せられております要望などを勘案し、本制度の一そうの整備をはかろうとするものであります。  改正の内容は、まず第一に掛け金月額の口数の限度を現行の十口から二十口に引き上げ、最高月額を一万円とすることであります。これに伴いまして、共済金の最高額も現行の二倍に引き上げられることとなります。  なお、第一種共済契約の掛け金につきましては税法上その全額につき所得控除が認められることとなっておりますので、今回の改正により年額十二万円まで控除されることとなり、小規模企業者にとってたいへん魅力ある制度となると考えております。  第二は、現行法におきましても小規模企業共済事業団が本制度の加入者に対して融資ができることとなっておりますが、この改正法案で共済金等を引き当てにした少額資金の融資が行なえるようにするための必要な規定を整備することであります。すなわち、融資の償還が滞った場合に、共済金等からこれを控除することができるようにする等の規定を設けることといたしております。  このほか、現行法では、加入者が契約の途中で掛け金月額の変更を行ない、その変更後一年未満の間に共済事由等が発生したため掛け金納付月数が一年未満の部分が生じた場合、その部分につきましては、掛け捨てとなっておりますのを今後共済金に算入するようにするなど加入者の利益と本制度の円滑な実施を確保するための改正を盛り込んでおります。  これが、この法律案の提案理由及び要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同賜わりますようお願い申しあげます。
  156. 大森久司

    委員長大森久司君) 次に、補足説明を聴取いたします。高橋中小企業庁長官
  157. 高橋淑郎

    政府委員(高橋淑郎君) 小規模企業共済法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を補足して御説明申しあげます。  小規模企業共済制度は、小規模企業の事業主や役員が相互扶助の精神に基づいて、毎月掛け金を積み立て、廃業や死亡といった有事の事態に備えるという共済制度でありますが、これらの小規模企業は、一般にその経営基盤が脆弱で、経営力も弱体であり、経営や生活の不安定に悩まされがちなのが実情であります。  このため、政府としましては、かねてより経営の改善のための指導、相談や金融、税制面での助成など各般にわたる小規模企業対策を講じてまいったところでありますが、本共済制度は、このような小規模企業対策の重要な一環をなすものであります。  本制度は、発足後六年余りを経過したわけでありますが、この間所得水準の向上、消費者物価の上昇など全体として大きな経済事情の変化が見られます。  本制度の掛け金や共済金の額は、この法律自体にも規定しておりますように、こういった経済事情の変化に即応して改めていくべきものと考えられます。また、これまでの六年間の制度運営の実績に徴しながら、加入者をはじめとする各方面からの要望等もできるだけ取り上げ、制度内容をより一そう魅力あるものに充実させていく必要があります。  本改正法案は、以上御説明申しあげたような考えに基づき提案したものでありますが、次にその概要を補足して御説明いたします。  改正の内容は、まず第一に制度発足以来据え置かれたままとなっております掛け金月額の口数の限度を現行の十口から二十口に引き上げ、最高月額を一万円とすることであります。これに伴いまして共済金の最高額も現行の二倍に引き上げられることとなります。たとえば、改正後は、掛け金の最高額を掛けた場合、十五年で廃業あるいは死亡ということになりますと、三百五十万円、また、二十年では五百六十万円の共済金が支給されます。  なお、第一種共済契約の掛け金につきましては、税法上その全額につき所得控除が認められることとなっておりますので、今回の改正により、年額十二万円まで控除されることとなり、小規模企業者にとってたいへん魅力ある制度となると考えております。  第二は、現行法におきましても小規模企業共済事業団が、本制度の加入者に対して融資ができることとなっておりますが、事業団の資金量がかなり増大してきたのを機に、加入者の要望を勘案しまして、この際、共済金等を引き当てにした少額資金の融資を行なえるようにすることとしております。このため、この改正法案では、融資の償還が滞った場合に、共済金等からこれを控除することができるようにする等の規定を設けることとしております。  このほか、現行法では、加入者が契約の途中で掛け金月額の変更を行ない、その変更後一年未満の間に共済事由等が発生したため掛け金納付月齢が一年未満の部分が生じた場合、その部分につきましては、いわゆる掛け捨てということになっておりますが、今後はこれを共済金等に算入することとし、また、事業団がその業務の一部を団体に委託する場合の事務手続を簡素化するなど加入者の利益と本制度の円滑な実施を確保するための改正を盛り込んでおります。  以上、この法案につきまして、簡単でございますが補足説明をいたしました。何とぞよろしく御審議のほどお願い申しあげます。
  158. 大森久司

    委員長大森久司君) 以上で説明の聴取を終わります。  本法案に対する質疑は後日に譲ります。     —————————————
  159. 大森久司

    委員長大森久司君) 次に、割賦販売法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。田中通商産業大臣
  160. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 割賦販売法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  近年における国民所得の向上を背景といたしまして、割賦販売その他の消費者信用の多様化と量的拡大は著しいものがありますが、反面これにつれて金融知識や法律知識に乏しい一般消費者が不当に不利益を受ける事例が多々見られるに至っております。  このような状況にかんがみ、政府といたしましては、昨年八月から割賦販売審議会に消費者利益の増進策について審議をお願いし、本年一月に答申を得て以来、その趣旨に沿って慎重に検討いたしました結果、割賦販売等における一般消費者の利益を保護するため、割賦販売の規制を強化するとともに、消費者信用の多様化に即応した法制の整備をはかることとし、ここに、割賦販売法の一部を改正する法律案を提出することといたした次第であります。  次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一は、割賦販売における規制の強化であります。  割賦販売業者が表示すべき事項に割賦販売手数料の実質年率を追加し、割賦販売の広告にも規制を及ぼすとともに、訪問販売等の場合に購入者が一定期間割賦販売契約の申し込みの撤回等をすることができることとする等各般の規制を拡充、強化しようとするものであります。  第二は、前払い式割賦販売における前受け金保全措置の充実であります。  前払い式割賦販売につきましては、前受け金の保全を図るため、従来から前受け金の三分の一を供託させることとしておりますが、これを今回二分の一に引き上げるとともに、銀行等の金融機関または通商産業大臣の指定する機関との間で前受け業務保証金供託委託契約を締結することをもって供託にかえることができることとしようとするものであります。  第三は、消費者信用の多様化に即応した法制の整備であります。  金融機関等と提携して、いわゆるローン販売を行なうローン提携販売業者について、割賦販売業者と同様、条件の表示や書面の交付の義務を課することとし、また、前払い金を分割受領して役務の提供や商品売買の取り次ぎ等を行なう互助会や友の会等について、前払い式割賦販売業者と同様に、許可を要することとするとともに前受け金保全措置を講じさせることといたしました。  以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ、慎重御審議の上、御賛同賜わりますようお願い申し上げます。
  161. 大森久司

    委員長大森久司君) 次に、補足説明を聴取いたします。本田企業局長
  162. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 割賦販売法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由の順序に従って若干の補足説明を申し上げます。  第一に、割賦販売における規制の強化についてであります。割賦販売を行なう場合に相手方に示さなければならない事項として、現行法第三条に規定されております割賦販売価格等のほかに、割賦販売手数料の実質年率を追加するとともに、消費者の理解しやすい標準用語の使用等表示の方法を定め得ることとしております。また、割賦販売条件の広告をする場合にも表示の場合と同様の規制をすることとしております。さらに、割賦販売の契約を締結したときは、購入者に契約書面を交付することとし、その様式等について購入者にわかりやすいように定め得ることとしております。これらの改正によりまして、消費者に対して有効かつ十分な情報を与えることにより、比較や選択等を容易にし、また、契約締結後に紛争が生じることを防止しようとするものであります。  また、訪問販売等セールスマンによる割賦販売に関する紛争を未然に防止するため、訪問販売等の場合に、申し込み者に契約申し込みの内容を記載した書面を交付しなければならないこととし、特に、契約意思が不安定なまま契約してしまう訪問販売等の場合には、申し込み者はその申し込み書面を受領した日から起算して四日間は無条件で割賦販売契約の申し込みの撤回等をすることができることとしております。  なお、現行法では、訓示規定となっております割賦販売条件の表示や書面の交付義務について、その実行を担保するため罰則を科することとしております。  第二に、前払い式割賦販売における前受け金保全措置の充実についての改正であります。前払い式割賦販売につきましては、従来から年二回の基準日における前受金の三分の一を供託させることとしておりますが、これを今回二分の一に引き上げまして、消費者の債権の保全を一そう充実させることといたしました。また、銀行等の金融機関または通商産業大臣の指定する機関との間で前受け業務保証金供託委託契約を締結することをもって供託にかえることができることとしております。前受け業務保証金供託委託契約とは、前払い式割賦販売業者が倒産等に至った場合に、通商産業大臣の指示に基づき、受託者たる金融機関等が委託者たる前払い式割賦販売業者のために供託することを約する契約であります。  なお、通商産業大臣が指定する機関につきまして、指定基準及びその事業の運営、経理の内容等に関する所要の監督の規定を設けることとしております。  第三に、消費者信用の多様化に即応した法制の整備であります。ローン提携販売や友の会、互助会などのような割賦販売または前払い式割賦販売と同様の機能を営むものが近年増加しておりますが、これらを新たに法の適用対象とし、所要の規制を加えることにより、消費者利益の増進をはかろうとするものであります。  まずローン提携販売につきましては、販売業者等が銀行等の金融機関等と提携し、購入者の購入資金の借り入れ債務を保証して販売するものであり、形式的には割賦販売とは異なりますが、購入者にとっては金融機関等に借り入れ金を分割返済するので、実質的には割賦販売と同様の機能を有する販売方法であります。したがって、ローン提携販売業者について、割賦販売業者と同様、条件の表示や書面の交付の義務を課することとしております。  次に、いわゆる冠婚葬祭互助会等前払い金を分割受領して、役務の提供や商品売買の取り次ぎ等を業として営むものにつきましては、前払い式割賦販売と同様に許可制にし、前受け金保全措置を講じさせることにより、消費者利益の増進をはかるとともに当該事業の健全な発展に資することとしております。  以上、割賦販売法の一部を改正する法律案の提案理由につきまして補足的な説明をいたしました。何とぞよろしく御審議のほどお願い申しあげます。
  163. 大森久司

    委員長大森久司君) 以上で説明の聴取は終わりました。  本法案に対する質疑は後日に譲ります。     —————————————
  164. 大森久司

    委員長大森久司君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  割賦販売法の一部を改正する法律案の審議のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  165. 大森久司

    委員長大森久司君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 大森久司

    委員長大森久司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次回は、五月十六日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十五分散会      —————・—————