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1972-04-13 第68回国会 参議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月十三日(木曜日)    午前十時十一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大森 久司君     理 事                 川上 為治君                 剱木 亨弘君                 竹田 現照君     委 員                 赤間 文三君                 植木 光教君                 小笠 公韶君                 大谷藤之助君                久次米健太郎君                 矢野  登君                 阿具根 登君                 大矢  正君                 林  虎雄君                 中尾 辰義君                柴田利右エ門君                 須藤 五郎君    国務大臣        通商産業大臣   田中 角榮君    政府委員        通商産業政務次        官        林田悠紀夫君        通商産業大臣官        房長       小松勇五郎君        通商産業大臣官        房参事官     増田  実君        通商産業省通商        局長       山下 英明君        通商産業省企業        局長       本田 早苗君        通商産業省重工        業局長      矢島 嗣郎君        通商産業省化学        工業局長     山形 栄治君        通商産業省公益        事業局長     三宅 幸夫君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (昭和四十七年度通商産業省施策に関する  件)     —————————————
  2. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題とし、昭和四十七年度通商産業省施策に関する件について質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 竹田現照

    竹田現照君 最初に、昨年の五月に産構審から答申がありましたが、   〔委員長退席理事川上為治君着席〕 この産構審の七〇年代の通産政策のあり方に関連をしてまずお尋ねをいたしたいと思います。  この産構審答申は、重化学工業から知識集約産業への転換をうたっておりますが、しかし、これは本州の既成工業地帯中心考えているものでありまして、北海道東北九州などの遠隔地帯は新しい重化学工業基地として開発する必要があると一面ではいっています。  そこで、国民生活質的向上と美しい国土の形成のため、公害をまき散らす重化学工業をできるだけ抑制し、知識集約産業に移行しなければならないと提唱する一方で、   〔理事川上為治君退席委員長着席〕 いま申し上げました北海道東北九州などを別扱いにする国の産業政策自体について、私は納得できないものが一画ではあります。この点について、最初大臣の御所見を伺いたいと思います。
  4. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 産業構造審答申は、いま御指摘になったような方向でございますが、産業構造審議会答申後もいろいろな問題が急テンポに進展しております。それからその後、この国会で御審議をいただく工業配置法律等も出てまいったわけでございますし、それから公害問題、特に複合公害の問題とか、無過失賠償責任の問題とかいろいろな新事態が起こってまいりました。また、そういう意味から産業構造審議会答申そのものは尊重もいたしますし、方向としては一つ方向を指示したものだと思います。しかし、これから七〇年展望というような状態から考えますと、実際の計画を立てるまでにはもっとこまかい具体的な問題まで洗い直して実施計画というものをつくるべきだと考えております。  いま御指摘がございました北海道等は、私は個人的な考え方から言いますと、長い間重化学工業中心にやってまいった日本工業そのものが知識集約的な産業に移行しなければならないということは、これは原材料や資源再配分の面から考えてみても当然のことではございますが、北海道等に対しましては必ずしもこのような考え方だけではなく、公害というものの除去を前提としたやはりある程度の重化学工業というものも考えなければならない。これは全国画一、一律的に考えられるものではないわけでございます。ですから、あとからまた御質問があれば申し上げますが、全国的に考えられる中核的工業基地、それから内陸部の軽工業基地、まあ労働配分の問題とかいろんな問題がございますので、一つ考え方方向としてはこの種の答申を当然踏襲してまいりますし、尊重してまいらなければならぬわけでございますが、やはりこれから長期的展望に立った国土全体の中に占める工業配置というものに対しては、もっと慎重な検討を必要とするという考え方でございます。
  5. 竹田現照

    竹田現照君 いま大臣、お答えがありましたけれども、京浜、京阪神、あるいは中京地区等現状から、北海道九州等がある程度重化学工業基地役割りを果たさなければならない面もあるかもしれません。しかし、だからといって、こういうこの新たに指向される地域住民公害等の危険にさらされていいというわけでもないわけですけれども、しかし現実に、たとえば、私の選挙区である北海道苫小牧等現状から見ましても、深刻な公害問題等がいま出ていろいろと問題になっております。  そこで、この産構審答申といままでの各地域開発計画北海道開発計画であるとか、あるいは東北開発計画であるとか、あるいはその他の開発計画、あるいは新全総、こういう開発計画とのかみ合わせというのは一体どういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、この点を伺います。
  6. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 各地域開発法、それから新産業都市建設促進法離島振興法山村振興法農村地域工業導入促進法工業整備特別地域整備促進法等々があるわけでございますが、こういう問題は個々ばらばらにつくられたわけでございます。そういう意味では、新々全総ともいうべき今度の改定全総の策定に際しましては、いま御指摘ございましたような洗い直したもの、また、これらのものを統合するのか、また、有機的にどういうつながりを持たせるのかという問題を全部洗い直して新全総というものはつくるべきものだと思います。なぜかといいますと、今度の新全総といわれておるものは新々全総でございます。一番初めの全国総合開発計画改定総合計画、これの改定計画現行のものでございます。それを全部洗い直して新しい新全総をつくろうということでございますから、これは、言うなれば三回目の全国総合開発ということでございます。これは第一と第二は自然発生主義をとっておるわけであります。それに対して人為的に幾ばくか手を加えるということでございますが、この中の一番大きな問題は、社会資本の不足を補うために計上された公共投資、第一回目は二十七兆五千億であります。改定計画は倍の五十五兆円であります。それを今度どうするのか。これはしかし、自然発生というものを前提にして考えておりますので、公害問題その他が起こってきて、新しい国土の再編成ということを、国土高度利用ということを考える場合には、自然発生の中に行政主導型の、言うなれば政策主導型の国土の再開発ということ——高度利用ということになるわけでありますので、そういう意味では、新しい全総計画の中でいままでの自然発生だけを是認したものではなく、政策主導型の国土の将来図というものをかかなければならない。そういう意味では、いままで五十五兆円の答申の中でも、極端に申し上げますと、そのほとんど大宗は都市中心投資をされるということであったわけであります。東京のまん中を一本道路を通すだけの費用をかければ、九州全県の道路を倍に拡幅して全部舗装ができるというような例さえあるわけでありますから、それは、これから新しく国土利用計画がきまれば、そういうものの配分投資効率というものはおのずから全く変わってくるわけであります。ですから、新々全総、新しい全総計画をつくるときには、私たちがいま御審議を願っておる工業配置、これはまあ再配置というよりも国土高度利用ということでございますが、そういうものと全くマッチしたものにしなければならない。その中には新しい国土の、昭和六十年を展望した図面がかかれるわけでありまして、これに合わせた投資が行なえるというふうに、図面そのものを一応かき改める、また、そうならなければならないということを考えております。  それから、公害をばらまくということでございますが、これは公害を全く除去するということでございますから、その意味で、複合公害の問題とか、それから無過失賠償責任の問題とか、いろいろなものをやっておるわけでございまして、これは重化学工業といえども、いままでのような公害を是認した配置計画ではないということを前提にすべきだと思います。  もう一つは、無制限な過密というところに問題があるんです。現行の全総計画の中でもって考えられたところのものは、いまの第一苫小牧とか、いまの鹿島港とか、水島とか、それから三重県の四日市とか、それから大分湾とか、こういうものは小さい東京をつくったようになってしまったわけです。こういうことをやってはならないということが新々全総の中における工業基地である、こういう立場から、いままでのものさしということを前提にしないで、新しく合理的な工業基地工業の実態ということを前提にして議論をすべきだと思います。
  7. 竹田現照

    竹田現照君 まあ、そういうことをかき直すというようなことになりますと、しかし、現実に進んでいる地域開発計画ですね、これは閣議でも決定をされてやっているわけですけれども、これは一方を進めておいて、新全総でまたかきかえると、またそっちのほうもかきかえるということになると、それぞれの地域開発計画というものは大きな影響があるんではないか、そう思うんですけれども、そういう点はどうなのか。これがまた工業配置にしても何にしても、中央のコントロールというものは依然としてそのまま残されるという形になる場合ですね、はたして、志向するようなかっこうにおいて、地域においてその地方工業の再配置というようなものが可能であるのかどうなのか、これも問題になるんじゃないかと思いますが、これは法律審議のときにいろいろとお尋ねしますけれども、大綱だけひとつ……。
  8. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘のとおりでございまして、まず申し上げると、東京大阪名古屋というような過度集中地帯公害問題を除去するために、環境整備のためにやらなければならぬ仕事があります。これは、まあ過去のアフターケア的な仕事でございます。  それからもう一つは、高度成長の中に、一〇%以上の経済成長を続けてきた中に、いまの第一苫小牧とか鹿島とか、いろいろの指摘をした問題がございます。まあ、これだけの問題を提起しておるわけでありますから、第一、第二の問題から新しく始める第三の工業化ということに対しては、少なくとも指摘されるような前提条件は解決していかなければならないということでございます。第三の六十年展望というような日本工業配置考えるときには、いろいろいままでの既存の東京や、また新しく工業地帯となったもののマイナス面を除去した理想的な姿で推進されるべきものであるということをまず申し上げておきます。  それからもう一つは、むつ小川原とか志布志とかの開発がございます。また、これから石油の備蓄をやれば、全国十五、六個所ぐらいの地点で五百万トンずつでも五千万トン程度のものが簡単に言っても想定されることになる。こういうものは、法律をもって事業主体を公団や事業団政府が一方的にやるというような考えではなく、地元の県、市町村と合意のもとでなければ、その地域開発計画の中に含まれるものでなければ手をつけることはできないということは原則でございます。ですから、政府や法制というものは大きな方向を示す、それに対して金融の道、税制の道等考えてやればいいわけであります。ある場合においては誘導政策、ある場合においては金利政策を明らかにすればいいわけでありまして、あくまでもそれを造成し、誘致をし、将来の事業を行なうものは、主体は都道府県であり、市町村である、こういうことに考えを置きかえておりますので、まあここらが発想転換だと思うんです。実際においていままで政府がやっておったものなら、民間がやればこれは逆でありますから、これは発想転換であり、実行の手段であります。そういう意味で、いままで指摘され、露呈されておるような原則を除去した後の新しい考え方による国土総合開発と、こういうふうに理解していただきたいと思います。
  9. 竹田現照

    竹田現照君 まあ、新しい法律も一番関心のあるのは、これはやはり公害の問題だとかあるいは労働力の問題だとか、そういうことだろうと思いますが、これは大臣幹事長のときに去年名古屋——まあ真意はどうかわかりませんけれども、公害なんか騒ぐやつは北海道でも移住したほうがいいんだというような発言をしたということが地元の、現地の新聞なんかに出まして、だいぶ——ちょうど地方選挙の最中でしたけれども、問題になりまして、これは真意はわかりませんが……。
  10. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、明確にしておきます。
  11. 竹田現照

    竹田現照君 いずれにしても、それじゃ、公害というものは北海道にでも九州にでも持っていけばいいんだ、というようなことを天下の自民党の幹事長が言ったんだということになると、問題にならないほうがおかしいので、これは真意はお答えいただきますけれども、まあ現実九州あるいは中国地方の問題、東海大学の海洋研究グループが海水の交流と拡散等について予測研究をしておりますが、これも九州周防灘西部に、もし大阪湾に流されている工場排水や下水、廃油などと同じものが流されてくれば、大阪湾の二倍は汚染をされるだろうと、そういうことを警告しているわけですね。これは周防灘ばかりじゃなくて、工場が持っていかれる各地域で同じようなことがやはり出てくるのではないか。この結果、海だとか何とかがものすごくよごされる、それによって住民生活について非常に大きな影響がある、こういうところに騒ぎの問題があるわけです。それから、公害防止のためにたとえば緑の遮断林をつくるといっても、これはかなりな幅の遮断林をずっとやらなくちゃいかぬ。そうすると、これは工場を建てるわけでないから、木を植えて遊ばしておく——遊ばしておくというのが妥当かどうかわかりませんけれども、そういうような土地を確保するということが事実上むずかしいんじゃないか、土地を確保しても、その土地から再生産の何か価値が直接的には生まれてこないから。そういうようないろいろな問題があって実際問題としてできないのではないかへまあそういうようないろいろな危惧が実際はあるわけです。しかし、コンビナートということになると、公害なり、そういうことを一切排除して、そうして住民の納得をさせるようなかっこうにおいてやらなければならないのではないかと、そういうことが想定されるわけですけれども、一応この七〇年代の通産政策の一片だけ触れておいて、私は、大臣の御見解を聞いて、この問題についての質問を終わりたいと思います。
  12. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私が自由民主党の幹事長のときに名古屋演説をしたことを御引例になりましたが、これは、私はそのときに告発しようと思ったんです。告発しようと思いましたけれども、これは政党の機関紙だと思いました、書いたのが。
  13. 竹田現照

    竹田現照君 いや、北海道新聞にも出ていた。
  14. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ああそうですか。  これは私は、新聞が真実を伝えないなどということを言うものではございません。そういう論者ではございませんから。これは間違いなく聞いていただきたいと思います。大体そういうことを言うはずはないんです。言うはずがないことをいかにも言ったがごとく書くということになると、これはやはり一言なかるべしということで、私は当時公式な発言をしております。発言をしておりますだけではなく、一党の幹事長が遊説したわけでありますから、二十人近くの人がついて行っているわけでありますので、そんなことを言うわけがありませんし——こういうことを言ったのです。はっきり申し上げておきます。この際、ちょうどいい質問がございましたから、公式に記録を残して冤をそそごう、こういうことでございます。  これはこういうことなんです。都市というものは過密と公害にあえいでおる、裸でふろに入っているところに、ダンプが無警告に飛び込んでくるじゃないか、必ずしも人間が生存するために適当な環境ではない、環境ではないから、では、北海道にでも九州にでも郷里に帰れと言っても、帰る人は一人もないじゃありませんか、そのためには、いながらにして改造することは——私は専門家でございますからこういう表現を使ったのです。新しくつくることは非常にやすい、しかし、大改造することは新設をする倍もかかる、しかし、都市改造がいかに必要であるかということは生体解剖にもひとしい、いながらの改造都市政策の推進こそ焦眉の急である、こう述べたのであって、そうでなければ選挙演説になるわけがありません。いかに何でもそれを、北海道に行ってしまえばいい、行ったらいいじゃございませんか——確かにそういう断面だけとれば、あります。いいじゃありませんか、山紫水明の心のふるさとは——ちゃんと前提がついているのです。魂の安息所もあるのだと、なぜ行かないのだ、学校を出た人は全部都会に定着をしてわが墳墓の地に帰らないじゃないか、そうすれば生体解剖のむずかしさと同じことだ、都市改造焦眉の問題、こう答えておるのでありまして、論理は整然としておるわけでありますので、それはこの際ひとつ御認識をいただきたい、こういうことであります。  それからもう一つ国土開発の問題は、全部企業にまかしておけないということを言ったのです。行政主導型、政策主導型ということに、どうしても入らざるを得ない。  もう一つは、あなた方の言っている計画経済というものでありませんが、計画的な国土総合開発を行なわなければならない、それには基準がなければならないというのが私の思想であります。ですから、今度の工業配置も、産業界にはまかせないのです。なぜならば、浦賀水道には、大型タンカーが入ってこれないというにもかかわらず、いま川崎地区には大きな精油所がつくられている。こういうことが一体いいのかどうかという問題は、これは私が申し上げるまでもないと思うんです。  もう一つは、グリーンベルトの問題とか、遮断緑地の問題がござ一ましたが、これは工場地帯指定をすればできるわけであります。工場地帯指定をすれば、いまの法律でもできます。この国会の周辺は全部官衛地区指定しております。宿衛地区として、官衛以外のものを建ててはならない。したがって、その地区の地主が、官庁に対して土地を買いなさいと言っても、予算がないから買わないという場合には、官衛に利用されるまで待つこととなります。これは現行法で認められておるわけであります。多摩川地区緑地帯である。皇居のまわりは全部美観地区である。そこには二〇%までしか建てさせない。住宅専用地区は十メートル以上の高さの建物を建てさせない。これはちゃんときまっているのですから、いま県が条例をつくって、指定地域工業地帯であって、工業以外の用に供しないということにすれば、現行法でできるわけであります。これはやらないだけであります。そうすれば、ちゃんと地区は固定するわけであります。しかも、それだけではなく、今度は住宅地域にあっては、建蔽率は六〇%であるというなら、四〇%は緑地をつくらなければならないのです。現在のものを条例で押えて、北海道は広いんですから、工場地帯といえども建物建蔽率は五〇%であると押えれば、残りの五〇%は緑地帯になります。そういう制度を条例でやればいいといっても、条例でやれない場合には法律をつくって基準を示すという政策主導型の国土改造を行なうべきである、こういう考えでございますから、そういう意味では、生産地消費地が直結していることが望ましいということで、個別企業バランスでは、黒字が計上されても、全体の公共投資という観点から考えてみると、必ずしも効率投資とは言えない。そういう意味では、現在活動している工場や町について建蔽率を四割にしなさい、あと緑地にしなさいということは無理な面もありますが、新しい町づくりにおいては、あらかじめ住居専用地域工業地域商業地域等の区分を明らかにし、計画的な地域整備を進めることによって理想的な新しい工場地帯ができるし、つくらなければならない、こういう考え方通産省考え方であります。
  15. 竹田現照

    竹田現照君 前段のは他党の機関紙にも出ていましたけれども、そのことを取り上げているわけです。私の地元代表的新聞に出ておったことですから。通産大臣に弁明の機会を与えて、総裁選に力を貸したわけじゃないですから。  参議院の商工委員会は、なかなか一般質問する機会がありませんので、今度も法律がうんと詰まっているので、この機会に聞かざるを得ませんので、ガス事業あるいは電気事業関係をして頻発する事故の問題についてきょうはお尋ねしたいと思うのです。  これは、私が前段お尋ねをした七〇年代の通産政策答申の中にも出ておりますけれども、いまのガスあるいは電力等に対する事故防止というものは、かかって利用するわれわれの注意力に依存して確保されている面が非常に多いんですね。非常に多いというより、ほとんどですね。こういうことはやめなければならぬ、そのためにはかくかくしなければならぬということは、この答申にも書いてあります。  そこでまず電力電気の問題についてお尋ねしますが、具体的な例でお尋ねします。  最近、都市の電灯の裸線に基づく感電死かなりの数にのぼっています。これについて、死んだ者がどうも死に損というかっこうのものが多いような気がするんです。これは、大きな工事をやっている企業に直接雇用されている労働者というのは労災その他の措置もあると思いますが、たとえば、親子でやっているような看板屋、こういうのが都市に張りめぐらされている高圧線に看板がひっかかることによっていわゆる感電死をする。あるいはビルの清掃をやっている——これは国会でもずいぶんアルバイトの人が来てやっていますね。そういうのが電線にひっかかって死んでしまう。こういうような事故がずいぶんあります。事故年度別の推移の統計を見ましても、かなりな数ありますけれども、私のほうの北海道でも、これだけで四十一年度から五年間で五十八人も死んでいるわけです。ところが、そういう死んだ人に対する実際の補償というものが、たとえば北電等からは何もないわけですね。これは、北電に直接事故責任がないといえばないんですけれども、さわったやつが悪いと言われればそうなんですが、そういうような問題について通産省は一体どういうふうにお考えになっているのか、本来はああいうものは全部地下に埋没すれば一番いいんでしょうけれども、これは事実上一%ぐらいしか地下埋設というのはないんです。ですから、被覆すればいいのかといったら、北電会社見解によりますと、被覆したから必ずしも安全だ、こういうことにもならないようなんですね。そうすると、一面では、ビル関係者なんかこれは都市公害だとまで言って再三抗議をしているけれども、さっぱりらちがあかないという現状もありますけれども、こういうふうなことについてはどういうふうに通産省としてはお考えですか。
  16. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 特に高圧電線の問題につきましては、電気事業法で規制をしておるわけでございますし、事故絶滅に対しての制度は完備をしておるわけでございます。しかし、いま御指摘ございましたように、被覆をすることが一番望ましい、こう言っておりますけれども、技術的に被覆の問題についても問題があります。でありますので、高圧電線が通過する下部の地域に対しては、できるだけこれを電力会社が賠償をするようにいたしております。賠償をしなくとも、それなりの補償料を払って送電線を架設しておる、こういうことにしておるわけでございます。また、この高圧電線の被害というものは、まず、作業上の不注意でもって事故が起こるものがございますが、これは会社の職員でございますから、それなりの補償はされるわけでございます。もう一つは、風水害等の災害によって送電線が、架線が切れた場合の問題がございます。これは火災を起こしたり、その他の問題でいろんなところで事故が起こる。これは、補償問題は当事者間で片づいております。  それからあとは、いまあなたが御指摘になったように、看板屋とか、そういう高いところで作業をしておる人が不注意ということで事故を起こす。これは電力会社側から言うと、入ってはなりません、さわってはなりませんと言っておるのにさわるのだから、電力会社側としてはしごく迷惑でございますというようなケースもあります。ところが、やはり電線にはたれがございますし、そういう意味で風等によっていろいろ事故が起こるので、必ずしも、危害予防というものに対しては、ちゃんとした立て札なども立ててあります、金網もちゃんとしてある、防護さくもありますと、こう言っても、事故として実際避けがたい事故があります。そういうものの見舞い金というような問題に対して、当事者間で円満に片づけるようにという、これは法律に基づくというよりも、通産省はそういうことを各電力会社側に言っておって——いろんな問題を起こさないようにと、こういう程度でございますが、確かに、被害を受けられた、災害を受けられた家庭や、その人を考えますと、何か救済の方法はないのか、もっと別な方法を考えられないのかという御意見が起こることは当然でございます。私の選挙区にもございます。ですから、そういうような事情はよく知っておりましたが、施設が非常に多くなっておるという、その数に比べますと、事故数は減っているのです。だから、統計数字上から出しますと、これだけ電線の架設数はふえておりますし、設備も大きくなっておりますが、年々これらの災害人員は減っておりますと、こう数字的には述べられるわけでございますが、しかし、具体的な問題になると、御指摘のようなものが多々あります。そういう意味で、これはできるだけ行政指導、いい意味の行政指導というので、これは大電力会社共通、九つしかない電力会社ですから、文句言われないようにちゃんとしなさいよということは言っておるわけです。大体、話はうまくっいているようでございますが、しかし、公の話として、一体制度上どうなのかといえば、これからやはり考えていかなければならぬ問題も存在するようでございます。  こまかい具体的な問題は、公益事業局長来ておりますから、御質問があればお答えいたします。
  17. 竹田現照

    竹田現照君 大臣、お答えになっておりますが、現実は必ずしもそうではない。これは通産省の統計でも、四十三、四十四、四十五年見ると、死亡だけで三百六十一、三百六十八、三百六十七と、大体これは同じようなものですね。それで、私が提起した、たとえば看板屋等の感電死の問題は、町に張っている電線というのは地上五メートルということになっておりますね、法的には。それから建物と電線との間が一・二メートルだと。それからいろいろと条例等にゆだねられている面もありますけれども、私も、実際に死んだ人のことを言いますと、この間が一・二メートルなのかとこう思っておったら、具体的に死んだ人のことを聞くと、ところが、こういう電線があって、こうなっていても、これとこれと、何か数字的にやるとこれでいいのだと。そうすると、極端に言えば、こういうふうに最近の町はだんだん家が高くなっていますから、だから地上五メートルが必ずしも妥当かどうかだって問題なんですね。それから、かりに低い家だとしても、これから電線に持っていってこうなると、斜めの中に一・二メートル以上あっても、そうすると、ぐっと縮まってもいいということになるわけですよ。ですから、そういうようなことが、これが狭ければ、狭い場合は窓の掃除なんかやるアルバイトの人はあぶなくてしょうがない、ゴンドラがずっと行くわけですから——具体的になるけれども。そういう人たちは大企業でも何でもないから、死んでしまえばそれまでだと。電力会社は弔問にも行かない。現実なんですよ。私は具体的な実例でお話しをしているのです。うんと身近な場合ならば、私の札幌における事務所で感電死した人もあります、おととしですが。そういうことが、非常に次から次へとあります。ですから、ビル関係の業界等も北電に申し入れている。法律論争でいくと、大きな会社では弁護士を立てれば太刀打ちできるでしょうけれども、小さな看板屋等は、やっぱり言いくるめられてそれまでですよ。ついこの間、そこの赤坂でも感電死して死んでいるのです。ですから、そういうような問題で、具体的に都市公害といわれるような高圧裸線、こういうことについて——死亡事故、しかも全体が注意をしながらも、看板等では、長いものなんか、先にちょっとさわっただけでも感電死するわけですから、全部が全部被害者の責めに帰すべき状態でないことがたくさんあると思うんですよ。だからこういうことについて、もう少し電気事業者に対する措置なり、あるいは法律的に防止措置ができるのであれば、そういうことも考えていいんじゃないか、考えるべきではないのか。そうして死に損だというようなことでないことを、これも労働基準法等々の関係が出てくるでしょうけれども、考えてあげていいんじゃないか、そう思うんです。具体的な例が通産省でもたくさん出ていると思いますけれども、お調べになったことがありますか。
  18. 三宅幸夫

    政府委員(三宅幸夫君) ただいまの事故の件数でございますが、いわゆる看板屋等を含めました公衆の被害件数は、四十一年が三百件台、以降、四十四年から四十五年にかけて二百件台に下がっております。ただ、ただいま御指摘のございました距離、間隔等のあり方につきましては、都市の構造の変化その他を考えまして、もう一度再検討さしていただきたいと考えております。  なお、見舞い金の問題につきましては、従来法律の扱いがございませんし、むしろ、会社側が善意をもってこの問題に対処するよう指導してまいりたいと、かように考えます。
  19. 竹田現照

    竹田現照君 そういう答弁だけでは私は実際納得しないんですよ、死ぬ者が続いているわけですから。それで、これは長い間にわたって電力会社といろんな折衝があったとしても現実には解決していない。ですから、たとえば高さ五メートルというような基準について再考する余地がないのか、あるいは建物と電線との間の一・二メートル、あるいは一・何メートルというようなものは再考の余地がないのか、そういうことについてはっきりしたお答えを出していただきたい、そう思うんですよ。あなたのほうで出しているいろいろなあれがあるんですね、「高圧架空電線と他の工作物との隔離」というような、「公益事業週報」にも出ていますけれども。ですから、これは現実に必ずしも当てはまってない、このまま見ると。私がいま例であげたように、建物と電線との間が一・二メートルかと思うけれども、必ずしもそうでない。電線がこういうふうになっていれば、これで一・二メートルですから、その間はもっと短くてもいいというようなわけになって実情にそぐわない。そういうことも、ひとつ検討の余地がないのか、そういうことを聞いているわけです。
  20. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 五メートルというものが必ずしも十メートルになっても、建物の高さというものは、これはだんだんと都市においては高くなっていくわけであります。特に、いままでは前面道路関係で、前面道路の倍半というような、建物の高さを制限しておりましたが、これから都市改造やれば、低さを制限しなければならないようになります。これはもう当然の帰結だと思います。四階、十一メートル以上というような、もう世界の先進工業国でやっているわけです、そうしなかったら地価も下がらないし、植樹もできなくなるわけですから。そうすれば、緑地があれば、隣地との間隔が確保されれば超高層が建つわけでありますから、これは高さをもってやるわけにはいかないのです、高さでは。これは、京王プラザだとか、何百メートルというようなものが建っております。広告塔も建っておりますし、塔やタワーの例をもってやれば幾らでも建つわけでありますので、高さはなかなかむずかしい。そうすると、被覆をするかという技術上の問題がありますが、被覆は、海底さえも高圧電線を通そうという時代でありますから、被覆ということは不可能ではありません。これはパリの下水道でもって、この中を高圧電線を通そう——高圧電線以外は全部通っておりますので、下水道の中を高圧電線が通れば、都市の美観も危害の予防も完全に行なわれるというのですが、まだこれについては、経済上の問題もありますし、完全に結論が出ておらない。そういうことになると、建造物との両者間の距離ということが問題になります。これは、高圧電線に対しては相当厳密な規定がございます。ございますが、なかなか建物は、一メートルでも五十センチでも境界線のほうに寄せて空地をつくろうとしますから、だんだんと実際はその制限距離いっぱいというところに建物が建つ。構造物が建つ。構造物は柱という基準がありますから、基準上はいいんですが、軒が出れば、一メートルとか一メートル五十というものは軒が出ます。そういう意味で、いまの構造からいうと非常にめんどうな問題があって、やはり制限距離というものはこれは倍にするとか、いろいろな問題があるわけですけれども、そこでは今度既得権との問題が出てくるわけです。ですから、長い間にそういう危害予防の基準というものは拡大をする。それで、もう一つは技術的な改革によってカバーしていく。第三番目は、そうして起こった事故に対しての補償を完備していくということしかないのです。  ところが、まあ、ざっくばらんな話を申し上げますと、電力会社側が見ますと、これは風水害による災害を起こすとか作業上の問題は別ですが、これは制限距離を守ってくれというのを守らないで事故を起こす。この場合は、電力会社のほうは被害者なわけであります、実際なら。これは、これだけの法律的な要件を満たしておるにもかかわらず、電力会社に迷惑をかける。電力会社側から見ると、これは被害者であって、賠償をもらわなければいかぬのだから、私のほうは出せません——まあ、それでは味もそっけもないじゃないか。そういう意味で、私もけさ通産省に、そういう場合に北電は文句は言っても、幾らか出しておるんだろうなと聞いたら、それは出しておりません、一銭も出していません。見舞いには行っているのか——見舞いには行っているでしょうけれどもと、そういうことです。あなたの看板の問題もよく知っています。そういうことがこれから過密の都市の中におけるものとして、通産省自体も災害を未然に防止するためにはどうしなければならぬか。省令による基準を拡大しなければならないなら許可をする、こういうことも当然考えていかなければならない問題だと思っております。
  21. 竹田現照

    竹田現照君 風水害等で電線が切れてたれ下がったものに人間がさわったり、物がさわったりしたというのは、それはいま大臣がおっしゃるように、電力会社が逆にいえば被害者かもしれませんけれども、私が聞いているのは、現実都市の真ん中に——まあ、いなかだってないわけじゃないですけれども——線が引かれているわけでしょう。それについて、そういう状態の中で看板等を設置する労務者が、その看板等が電線にさわる。さわるということは、建物と配線との間がきわめて近いということですよ。ゴンドラに乗っているアルバイトの学生が死ぬということは、ゴンドラというのはある程度大きさがありますからね、それが感電死をするということは、配線が近いということなんです。だから、そういういま言ったプラザとかそういう大きなところには電線がないですけれどもね。普通の商店街なんかはざらですよ、それは。そういうようなところにはそういう配線その他の規制措置というものをもう少し強める必要があるのではないか、そういう点。だから、高さが五メートルでだめだったら、逆に電線をたれ下げなくちゃならぬ場合もあるわけだから、そういう現実の問題をどう処理するのか、こういうことなんです。それから、電力会社が逆に被害者になってしまうという面もそれはわかるのだ、さっき言ったように風水害等々。しかし、そうでない場合がある。そうでない場合で、現実に起きている事故等について何らかの対処策がなければ、死んだ者は浮かばれない、こういうことを言っているのです。
  22. 三宅幸夫

    政府委員(三宅幸夫君) ただいまの配電線につきましては、電気設備の技術上の基準がございますけれども、都市あるいは農村等におきまして建物の状況、あるいはそれの距離関係から、最大公約数的な基準はできますけれども、それをもって完ぺきを期することはできないわけでございますので、通産省といたしましては、極力裸電線を、危険な地域につきましては絶縁電線に切りかえてほしい、あるいは電力会社も作業現場の巡視点検等を極力励行してほしいという要請をしております。さらに必要があればカバーをつけるといったような、新しい手法を採用すべきではないかと現在考えております。また現に、電力会社におきましても配電線の安全性の向上のために、保守点検の充実とか、あるいは公衆に対するPR等をやっております。先ほど大臣からもお話がありましたように、非常に複雑な都市の距離間隔の中をどう調整するかという問題でございますので、技術上の基準につきましても絶えず検討は続けてまいってきたわけでございますけれども、それで十分ではない点もございますので、先ほど申しましたような点につきまして、電力会社に対する指導行政の強化並びに新しい防御技術の開発等につきまして今後努力をしてまいりたい、かように考えております。
  23. 竹田現照

    竹田現照君 これはさしむき、今後努力するといったところで、いつ実現するかわからぬですからね。これは、さしむきはどういうふうな措置をおとりになりますか。現実には先ほどから私が何回も言っているように、電力会社は、われ責任なしとして、さわったやつが悪いのだという、こういう結論、そういうかっこうになりまして、救われない人がたくさんいるわけです。たとえば、先ほどのいわゆる地中化方式という、あれも全体で一%くらいだ、こう言っているわけだ。ですから、地下ケーブル等々の問題ということだって考えられますから、ある程度の過密地帯には——地中化方式というのは、それはコストその他の問題がすぐ頭に出てくると思いますけれども、これはなかなかむずかしいでしょうけれども、そうかといって野方図に線を張っておられたのでは、これはなかなか困るわけである。その辺しかしながら、鹿児島から北海道の稚内の果てまで同じ規制というのもおかしな話です。ですから、たとえば札幌等では雪が降ってくると、屋根の雪おろしというのもあぶなくてできないということもあります、裸線に引っかかるものですから。何か雪おろしをやるとあぶない。看板屋や何かでなくても、私たち市井の市民がそういうあぶない目にあう面もある。ですから、地域によって一つ基準というものを変えなくちゃいかぬ。積雪地帯はこんな大きなつららが下がる場合もあるのです。これをつるはしか何かでたたくというような場合だって、これは配線とつららがぶつかっている点なんかが寒冷地ではいつもあるでしょう。長い線とつららが重なってしまっているというようなことだって珍しくないわけです。ですから、雪の降らないところも降るところも全国一律の規制というような、いまの法律なり規定なりというものも一考を要する必要が当然に私はあると思うが、こういう点がはっきりしていない。ですから、そういう問題だって早急に手をつけてもらわなければいかぬわけです。それはどうですか。
  24. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘のとおりでございまして、事態が変わっているのでございますから、これに適応するような基準をある意味においては厳にし、あるいは、ある意味においては緩にするということは当然考えなければならない。実態に即応するべく検討を進めるということは当然のことでございます。  それから技術的な問題、これは世界的な問題でございまして、都市の中に電柱というものがなければ、まあ小学時代、図画をかくときには電柱をかかないと絵にならないと思っておりましたが、このごろは電柱というものがあるために都市の美観がどれくらい害されるか、しかも、危害予防の面からいってたいへんな問題であるということです。赤坂見附から大宮御所まで地下共同溝をつくったのです。このときに高圧電線を入れようとしまして、相当技術的にやったのですが、これはやっぱり地下共同溝というものも、下水と同等という意味ではなくて、地下共同溝を二重にするとかそういうことでなければなかなかむずかしい。それで、いまの地下高速鉄道をつくりますときにも、その中に電力それからガス、それから電電公社のマイクロウエーブ、こういうものを入れようと思って研究したのですが、しかしなかなか話が技術的に解決しないで今日に至っているわけです。ですから、そういう技術的な問題は、コストアップの問題もございますので直ちに片づく問題ではありません。しかし、都市の中の危害予防という問題からは当然考えるべき問題であるということだけは、基本的姿勢は明らかにしておきます。  しかし、いまやるべきことはやはり電線なんです。一メートル五十離すといっても、実際に軒が出ておったり、さおが出ておったりしまして、これはなかなかうまくいかないということと、もう一つは、鉄骨工事などをやっているときに、ケーブルがさわったりして事故を起こすという問題が起こっているのです。だから実際点検を行なう。点検を行なって、基準が拡大せられるまでの間は、どうしてもいま送電線の下を全部変えろといっても、それをやったら、電力料金を倍にしなければならないくらいな大きな問題になりましょうし、やはりそういう実態に合うような、まず危害予防の面から現状を点検するということも必要だと思います。それで正常な基準底では確保する。それで裸電線、非常に高いボルトの高圧電線がいま通っておりますから、そういうものにはビニールでもって袋をかぶせたらどうか、それには漏電がございまして送電ロスが多くなってできない。私もそういうことを専門的に研究したこともあるのです。ですから、そういう意味都市改造の場合などでも、専門的に私も議論を詰めて、各省を呼んでみんなでやってみたのです。しかし、なかなかいまの電線でもうまくいかぬのに、袋をつけた電線ということで、共同溝でなかなかうまくいかないということでございまして、これは技術的に解決しなければならない問題であると同時に、事故が起こらないように総点検をするということだと思います。  それでもう一つは、あなたの言うこと、よくわかるのです。事故が起こって、しかも意思なき行為であり、全くそういう状態において事故が起こったときには、四角四面ではなくて、幾らか北電が出せばいいじゃないかということもわかるわけです。北電側というわけじゃありませんが。電力業者に言わせると、そういう道を開くと、子供が電線引っ張って感電して死んでしまったものもみな払わなきゃいかぬ、なかなかめんどうで、個別のケースはなかなかめんどうなんですということも私も理解できます。だから、まあはたして実情調査して事故の状態がわからぬことはないんですから、これは全く法律的に責任がなくとも、これは起こり得べき災害であったならば、私は幾らか出せばいいと思うのです。そんなものをなぜ通産省は出させなかったのか、こういうことをけさ言ったわけでありますから、こういう問題もこれから検討いたします。誠意をもって検討いたします。これはおざなりで言う検討しますということではないのですから、ひとつ御理解のほどをお願いいたします。
  25. 竹田現照

    竹田現照君 だいぶ専門家大臣が言うのですから、誠意を持ってやってもらいたいと思う。ぼくはここであえてこういうようなことを持ち出したのも、人柱が立つと電力会社はやはり電柱を動かしたりなんかするのです。道路の両端に歩道ができた。歩道ができることによって電柱の移転ということを住民の側から言っても、なかなか移転をさせないのですね。それでだれかが死ぬと電柱を移転するのです。死んでから電柱動かしている。動かしているということは明らかに非があるのでしょう。だから、子供が電線引っぱったのに出せないからあれも出せない、これも出せないというのは、これはちょっとおかしい話です。だから、おかしくないように早急にやっていただきたい、こう思います。  電線のほうは、一応それだけでやめておきますが、今度はガス事故ガスの点もたいへんなことです。北海道だけでも昨年三千件ばかりあったと新聞は伝えています、大小さまざまの事故。それで、いま日本ガス事業者というのは総体どのくらいあるのですか。
  26. 三宅幸夫

    政府委員(三宅幸夫君) 私の記憶ではたしか二百三十件ばかりでございまして、そのうちでいわゆる地方公共団体が経営しているのが約七十件、それからいわゆる民営が百数十件だと記憶しております。
  27. 竹田現照

    竹田現照君 大小さまざま二百四十三私の調べた三月末ではあることになっていますけれども、これの工事の新増設あるいは取りかえの工事等の下請構造というのはどういうふうに把握しておりますか。
  28. 三宅幸夫

    政府委員(三宅幸夫君) 一般的にガス事業者は工事を特定の業者に外注しております。これは第一次下請と言っております。その業者が、さらに必要な専門的な工事につきましては第二次下請に外注しておりまして、それ以上重層的な下請関係原則としてはないと承知しております。ただ、いずれにいたしましても、工事に関連する保安上の責任等は一切ガス会社がこれを負うというたてまえになっております。
  29. 竹田現照

    竹田現照君 東京瓦斯のような世界でも一番大きいようなガス会社の系列会社で詳しくはわかりませんけれども、去年一年間で、私が指摘をしましたように、大小合わせて三千件も事故があったということは、たとえば北海道瓦斯等の下請というものは、これはいま私がお尋ねをした新増設あるいは取りかえ工事等の一切の工事は全部外注ですね、三十一年以来いわゆる合理化のために全部外注です。それが孫から曾孫からさらにその下、こういうことになりまして重層的下請になっているのです。ですから、ガス事業者が責任を負え負えといっても、下にいけばいくほどその点があいまいで、結果的に大きな事故が起きると、一番下つばの零細なのが刑事責任に問われて、いろいろなことを突き詰められているというのが現状なんですけれども、わりあい北海道瓦斯というのは道内でも大きいのです。これは東京瓦斯の社長が社長ですから、これは小さいほうではないですけれども、そういう会社にしてそうなんですから、それ以外の群小のガス会社推してしかるべしだと思うのです。こういうガス会社の下請構造、そういうものについてどういうことになっているのか。大阪瓦斯の事故のああいうようなことばかりでなく、ほんとうに小さなガス会社のそういう下請構造というものについてぴしっと把握しておく必要があると思うのですけれども、この点ははっきり把握されているのですか。
  30. 三宅幸夫

    政府委員(三宅幸夫君) ガス事業法は先生御承知のとおり、下請企業については、直接的な法規制を加えておりませんけれども、ガス工作物の施設等に関しまして手を加え得る者は、ガス事業者及びガス事業者の承諾を受けた者に限られるという立法になっております。ガス工作物の保安責任というのは、先ほど申し上げましたように、一元的にガス事業者が負うことになっておりますために、かりに下請業者が行なった工事につきましても、ガス事業法上の責任は一元的にガス事業者が負う、こういう仕組みになっております。そういう立法を背景にいたしまして、ガス事業者は、その下請企業の選択あるいは運営につきましては厳重に管理をし、監督をしておるとわれわれは了解しております。各ガス事業者が法令に基づきまして通産大臣に届け出る保安規程におきましても、それぞれ下請の企業の厳重な義務づけを規定しておるケースが多いのでございます。またその工事の検修にあたりましても、あるいはまた従業員の教育につきましても、特に大手のガス会社等におきましては、相当熱心にこれを行なっておるのが多いと存じております。
  31. 竹田現照

    竹田現照君 これは時間がありませんから、はっきり聞きますがね。三月の十六日に札幌市内で起きたガス事故通産省も把握していると思いますけれども、簡単に言うならば、使ってない水道管にガス管をつないだというんだね。これで親子四人も死んでいるんです。ところが、なくなった坊やが前からくさいくさいと言っていたというんだ、どうもにおいがすると。ところが北瓦斯が来て、何か隣の家の窓をあけて、またくさくなったら知らせろと、こういうことだという。隣の家は新幸園とかいう朝鮮料理、焼き肉屋だった。それはいまプロパンを使っている。だから、いまガス供給の義務はないから、そこは調べなかったという。ところで、前の人はそれまで都市ガスを使っていたわけですね。ところが水道管にガス管をつながれておったんでは、これはもうどうにもならないわけですよ。こういうようなことについてへ一体何をガス事業者は検査をしたりしているのか全然わからないのじゃないですか。安心して眠れませんよ。これは極端な例です。今月の六日に、やはり札幌のそばの江別で、これも一人重態三人他界という、これはちょうど私が選挙区に帰ったときですけれども、これもまた、地下を通っている都市ガスの支管からガスが漏れて室内に充満して死んだというんです。次から次へと、私はことしの一月から三月の十六日までの北海道におけるガス事故の問題についての、新聞に出ているものの全部ではありませんけれども、この間、北海道の議会で調べさせました。たいへんな数ですよ。そうして現実に、もうなくなった人がくさいくさいと言っているにもかかわらず、具体的に検修もしない、検査もしない。そうして殺してしまう。まあ結局殺してしまうわけですね。水道管にガスつなぐなんという工事が野方図に行なわれておったんでは、たいへんですね。こういうことについて、どういうふうにガス会社の責任なり、あるいは保安教育なり、あるいはいろいろなガス布設工事なりに対して指導されるのか、もう少しはっきりしたお答をいただきたい。
  32. 三宅幸夫

    政府委員(三宅幸夫君) ただいま御指摘の三月十六日の札幌におけるガス事故は、まことに私どもも遺憾に存ずるわけでございまして、水道管をガス管と誤認したというのは、全く申しわけない事故であると考えております。さっそくに北海道瓦斯の幹部を呼びまして、支管と供給管との結びかえ工事及び気密試験の実施要領を明確に定めてほしい、また気密試験の実施記録——気密試験といいますのは、ガスを放出いたしまして漏れるおそれはないかどうかということのチェックの試験でございますが、その記録を十分保存してもらいたい、それから、下請会社に発注する際の工事について、図面、検修についてのチェック体制を十分に整備してほしいということを厳重に指示いたしますと同時に、全ガス事業者について、このような北海道瓦斯のケースがない.ように厳重に警告を行なっております。北海道瓦斯の社長にも直接、私から厳重な警告を発した次第でございます。
  33. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ガス問題に対して、いま申し上げたような事故以外に考えますのは、どうしても有毒ガスを使わなければならない場合は、悪臭あるいは色をつけなさいということもやっておるわけです。まあ大阪とか東京とかというところ、これはなかなかめんどうな問題があります。とにかく、爆撃を受けた後の東京瓦斯の仕事というのは、腐食しておる既設管というものを使えるのかどうか、埋設管は全部新しくしなきゃいかぬのか、ここで、まあ東京瓦斯は非常な困難をしたわけでございますが、東京のような猛爆を受けて、あのような状態の中でガス事故というものが比較的起こらなかったというのは、これはそれなりの努力は続けてきた結果ではあります。どうしても、個人の家でも改造しておる家はとにかくガス漏れが多いのです。これは、古い管というものは腐食をしておったり、さっき言ったように水道管に結ぶというのは言語道断でございますし、これはまた教育をしなきゃいかぬし、処置もしなきゃなりませんが、これは未熟な配管工が高圧管と普通の管と間違ったり、いろんな問題が起こっております。そういう意味で、有毒でなく無毒なものということで天然ガスをたくということで、東京瓦斯などはこれから天然ガスにかえていこうと、こういう考え方もしておるわけでございます。私は新潟でございますが、新潟は可燃性天然ガス、水溶性ガスでございますので、これは全部使っているわけでございます。
  34. 竹田現照

    竹田現照君 爆発するから同じことだ。
  35. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういうことで、爆発は、爆発しないように、それから有毒のものは注意ができるように、あとは技術的に不完備なことがないようにというように、各面から、特に都市ガスや地盤沈下の激しいところのガス事業に対しては、新しい角度から検討を進めるということでございます。
  36. 竹田現照

    竹田現照君 北海道瓦斯というのは東京瓦斯なんですよ。言うなら現地東京瓦斯ですよ。ですから、これは日本一の大きな会社がやっておることですよ。これが三十一年以来一切の工事は外注にする、これは合理化だ、こういう結果がこういう事故が出て、しかも、この北海道瓦斯だけで年間三千件ものあれが出て、あれですか、こういう北海道瓦斯には何人保安検修をする者がいると思っているんですか。わずかに、全社四百六十五人のうち、ガス漏れや換管工事に従事する工事係、供給課員というのは五十五人なんです。そうすると、三千件というと一日当たり八件も持たなければならぬですよ。これで工事の万全が期せられると思うほうがおかしい。ですから合理化、合理化ということをやることもけっこうですけれども、そのあおりを食らって水道管にまでガス管がつながれて、しかもわからないでないんだ、くさい、くさいと坊やが言っておりながら、現に見に来ておりながら、窓をあけてガスのにおいをはずしてしまって、またくさくなったら知らせてくださいなんて言って帰るだけで、それで結果的にはもう殺されてしまったんじゃかなわぬですよ。それで、こういうような、たとえばガス管を水道管につないだというような、こういう下請関係等の、さらに、まあいま警察が調べているのはほんとの零細な下請業者ですけれども、こういうものの責任というのは、やっぱりそこに集中をされて、北瓦斯にはないのか。こういうものの下請業者に対する保安教育だとか、保安訓練とかというものの責任はどこにあるか。非常に下っぱの会社の社長にやっぱりあるのか。私は、やっぱりガス事業者であるところの北海道瓦斯の社長が責任を持つべきだけれども、そこまでやってないですね。やってないからこんなことになるのです。つまり、穴を掘りかけたら管があったからここにつないでおけと、結果的に水道管だった、これじゃ話にもならぬですよ。ですから、そういう責任体制というものはどうするんです、はっきりしてください。
  37. 三宅幸夫

    政府委員(三宅幸夫君) 先ほど申し上げましたように、下請規制についてのガス事業法の規制はかかっておりません、直接的には。一元的にガスの保安責任はかる事業者が負うことになっておりますので、北海道瓦斯については、その点も厳重な申し入れをしてございます。
  38. 竹田現照

    竹田現照君 これは局長、何かさっぱりわけのわからない答弁ばかりしていますが、時間もまだあとこれは引き続いてやりますけれども、大臣現実にそういう事態が次から次に起きて、一社年間三千件もあると、しかもこれは、日本一のガス会社が経営しているところでこういうようなことになってくるとこれはたいへんですから、こういう重層的な下請機構、しかも、毎日毎日市民生活に絶対欠かすことができないような問題について、こういう頻発する事故についてはこれから検討して、半年後に行政指導をするなんということじゃなく、死んだから、社長を呼んで直接注意をしたから解決するというものじゃないんですね。早急に何らかの措置をしなければこれはならぬことだと思うのですよ。この点について大臣、さしむきどうするんですか。
  39. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 本日御指摘がございましたので、ひとつ大臣の命によりということで、依命通達を出すことにいたします。  重層的というのはほんとうにそうなんです。私たちのところでもガスがくさいからちょっと来てくれと言ってもなかなか来ない。そうすると、いろいろ調べてみると、複雑多岐にわたっているのだなということがよくわかります。それはもう下請というのは手持ち何件ということでやりますから、数が膨大なものになるわけでありますから、そういう意味でサービスをよくするということになれば、補修の下請——補修は全部下請にしてやるということでありますから、実際の工事までそれでやられているということで、まあ水道管につなぐということは、それは異例なことであります。これは特殊なものとして厳重に申し入れますが、しかし、ガス事故を撲滅するために措置をとられたい、そうでなければ制度上の規制をいたしますという程度の強い規制を行ないます。通達を行ないます。同時に、これは認可業者でありますから、数は地方公共団体、公益事業者を入れると百七十一事業者もあるわけでございます。そういう意味でこれは通達を出すことにします。通達を出せば出したでいいわけではありませんから、これは公益事業局でどうすればいいのか、電気事業者のように下請を少なくとも届け出制にするのか。それから下請というのは労働基準法やいろんな面で非常に規制を受けているわけなんです。全面的に下請になってはならない、こういうことで、いろいろ規制を受けているわけですが、重層的というのは痛いところなんです。こんなに下請、下請、下請、あるじゃないか、それならもっと合理的にやれるじゃないか、直営になぜできないんだという問題もありますから、そういう面に対しては事務当局にしかるべく検討を命じます。
  40. 竹田現照

    竹田現照君 その点は厳重にこれは申し入れて……。相当時間的に制約がありますので、私はちょっと遠慮して、もう一人私のほうの質問者がありますから……。
  41. 大矢正

    ○大矢正君 時間が十分までない。五、六分しかないようですから、集中的にお尋ねいたしますが、官房長、私は問題点だけを指摘をして、私の考え方が間違っているかどうかということをお尋ねをしたいと思いますし、それから、政府の行政のあり方についてそれが現状で十分なし得る状態にあるかどうかということも含めて、ひとつお答えをいただきたいと思うのです。それは、非常に抽象的な議論をするようでありますけれども、通産省の行政組織の編成のしかた、あるいはまたその権限、それからその具体的な行政内容、こういうことについてお尋ねをしたいと思います。  たとえば、ごく最近ですが、UNCTADの会議が行なわれることになって、通産省からは外山貿振局長がたしか随行していったと思うのです。皮肉なことを言うわけじゃないのですが、国連の貿易開発会議に通産省から貿易振興局長が出ていって、もちろん、貿易振興局の中には経済協力部という部もあることは私も存じております。存じておりますが、行くのは貿易振興局長ですよ。彼の会合に出ていって——個人的な意味で申し上げるのじゃないんですが、彼が出ていって、かりに外国の人と会った場合に、おまえさん、何という役職かと聞かれたら、私は貿易振興局長であります、日本の国の輸出を伸ばすための局長でございます、その人が国連の貿易開発会議に出ていってそうあいさつしたら、相手はどういう感じを受けますか。私は一つの例としてそういうことを申し上げる。なぜ申し上げるかというと、いままで通産省の組織する法律に基づいて局あり、部あり、課あり、長い間の伝統があったと思うのであります。もう二千年も前の孔子の時代から、話はさかのぼるわけだけれども、行政というのはなるたけ変化のないほうがいいんだと、これは二千年前の中国の思想です。どうも私に言わせると、二千年前の中国の、そういう行政は変化がないほうがいいんだという思想が、今日の行政組織をあずかる人々の頭の中にあるのではないかという感じがしてならないのですよ。これだけ世の中が急激に変化をし、通商産業行政をあずかる通産省自体においても、やはり組織的にも、また組織が行なう機能的な問題にしても、相当変革をしなければならない時期に直面をしているのじゃないかという、私は感じがするんですよ。  たとえば一次エネルギーの問題を考えてみますと、公益事業局の中に水力があり、ガスがある。が、しかし、これは主としてエネルギー政策というよりも、そういう企業なり、そういう会社なりというものの監督なり、指導なりということに力点がおかれて、国全体のエネルギーという立場からの判断というものにおいては非常に欠けるものがある。一方、一今度は鉱山局には石炭部があり、そして油を担当する参事官がおりということで、私に言わせると、こういう行政組織のあり方というものは統一性を欠くと、それから、効果的な行政をする上においてはどうも支障を来たすんではないかという感じがしてならないわけですね。たとえば、官房の中に総合エネルギー政策課という課があることは私も存じております。これは官房長の下にあることでありますから、あなたが一番よく存じておる。しかし、エネルギー政策課というものがわが国全体のエネルギーの問題についての政策的な検討なり、あるいは立案なり、まあ法律上の措置も含めてでありますが、研究をされることは私も存じておりますが、これはあくまでも課でありますし、官房の中の一つの課。わが国の非常に膨大なエネルギーを扱う行政組織が各部局に分かれていて、それを統一的かつ機能的に行政をしようとしてもできないという事態が、たとえばそういう中にあらわれてくるのじゃないか。だから、どういう結果があらわれるかといえば、私に言わせれば、エネルギー調査会がかりに昭和五十年度、あるいは六十年度というような年度の将来を見越しての見通しなり、あるいは計画なりというものを立ててみても、まあ現実と全くそぐわないような状態になる。午後かち石炭委員会があるから、その席でも私は話をしようと思っておりましたが、たとえば石炭のこと一つ考えてみますると、一次エネルギーの中に占める石炭というのは、私の記憶に間違いなければ、昭和五十年度で大体一六%程度は維持できるという、そういう調査会の結論、見通しがあったはずです。ところが、昭和五十年度が幾らになるかということをいまおたくの石炭部で計算をしていけば、三%しかないんですよ。そういうふうにして、これは見通しだから狂うのはあたりまえじゃないかと言われればそれまでだけれども、そういうような結果が出てくるところにも、私は行政の組織の上における問題点があるんじゃないかという感じがしてならないわけですよ。まだまだ列挙すれば、非常に多くの問題がありますが、三十分で社会党の質問時間が終わりだという話でございますから、私はこれでやめて、いずれかの機会にもっと具体的な資料をもって、一つ一つやりたいと思っております。  とにかく私は、通産省というものは、田中通産大臣がよく言われるように、二百億ドル近い外貨がたまるような今日の情勢の中で、行政の組織のあり方なり、それから人の配置の問題も含めて、個人の能力とか何とかの問題じゃなくて、そういうものについて、慎重に検討しなきゃならない時期に直面しているんじゃないか。悪口を言うわけじゃないが、たとえば、官房長にしてもそうだし、他の局長にしてもそうだけれども、大体一年か一年半でかわる。そうすると、長い目で見て通産行政はどうあるべきかとか、それからどうしなければならぬ、どういう組織にすることが、一番効率的な行政ができるかということを考えているひまや、それは、考えようとしても着任期間も短いということもあって、いままでのことやら、将来のことなりということをつなぎ合わせて検討するような機能的なものも、もちろんあらわれてこない。大臣も、これは申しにくいことだけれども、一年か一年半でかわる、事務次官も一年か一年半でかわる、官房長もかわる。こういうようにして、実際にそういう行政組織の問題について検討しなきゃならない、しようとする立場にあるものは、他の局長も含めてでありますけれども、せいぜい一年か一年半でかわってしまう。あるいはやめてしまうということになれば、いつまでたったって、行政組織というものは、これは変わらぬということになる。これじゃ効率的な行政というものを行なうことはできない。したがって、結果的には、実際に困った問題だけに対処しようとするような、つけ焼き刃的な方向しかやっておらない。公害保安局という局も一つありますけれども、これだって公害問題がやかましくなってきましたから、保安局でもひとつくっつけて、局にしておいたら都合よかろうというようなことで、全体的な立場でなされたものでもないように、私は設立の当初から感じているわけです。そういう面で別に悪口を言うわけじゃないし、それから、個人的な問題でどうこうというのじゃなくて、根本的に私は、もっと行政組織のあり方について抜本的に考え直して、そしてたとえば、これは行政組織を改革するについては法律を要するし、しかも、内閣委員会に出さなきゃならんから、とてもじゃないが通るか通らぬかわからないからというような、そういう考え方じゃなしに、それからまた、行政組織をふくらませるという意味ではなくて、それから人間をふくらませるとか、そういう意味ではなくて、現在の人員なり、現在の中身でもって、いかに効率的な行政能率なり合理的な行政を行なうかということについて、私は十分検討すべき時期にあると思うので、官房長並びにできることならば、この際、大臣から一言私の考えていること、申し上げたことが必要のないことであるかどうかという点も含めてお答えをいただければ幸いです。
  42. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 非常に示唆に富んだ御発言でございまして、行政機構そのものは一大改革を必要とするときにきておるということは、これは申すまでもありません。行政組織法は、二十四年に占領軍メモランダムケースとして制定をされたわけでございますが、これも中途はんぱに終わったわけです。これは大蔵省が財務省に、建設部が建設省に等々となっていたわけですが、当時つくられたものは郵政省、日本電信電話公社、日本国有鉄道の三つでありまして、その設置を定めている法律を読めば、直ちに英文から翻訳したものであることがわかるのでございます。あとは手がつかないうちに、今日のものになってしまった。ですから、日本の行政機構を見ておりますと、縦割り行政を意味する名前もございますが、また横割り行政を意味するものもございます。貿易振興局長というものがあると同時に、アメリカ局というのが外務省にあったり、これは省の中で縦割り、横割りがばらばらにできておる。これはまあ実効さえあげられればそれも一つの手だろうと思いますけれども、これはほんとうに手をつけなければならない。そういう意味で商工省が通商産業省に変わったわけであります。私が大蔵省におりましたときには、管財局とか主計局とか為替局とかおかしいということで、為替局を国際金融局に、管財局を国有財産局に変更した経験もございます。  通産省に参りましても、結局管理行政だけをやっている通産省役割りは終わってしまったのだ。これからは、少なくとも行政指導型より政策指導を行なわなければならない通産省としては、やはり通産省の機構そのものも考えなければならない。実際、いま集めるだけ集めたんですが、百七十億ドルの外貨のうち幾ら一体使う、使うためにはどう使うかということ、ただ金を使うわけじゃありません。そういう新しい通産省の職務というものを考えたら、通産省自体が通産省の名に値する新しい機構に脱皮をするように検討を進めるべきだということで、いま官房を中心にしていろいろな検討いたしております。成案ができれば、行政管理庁とも大蔵省とも相談しながらということでございますが、通産省だけではなくて、やはり太政官時代からの主計官、主計局をなぜ予算局にしないのか、歳入局、歳出局にしないのか、歳出調整局にしないのかという議論は、二十数年来続いておって、依然として大蔵省主計官というのが存在するのでありますから、なかなかいいところもあり、悪いところもあるわけであります。そういう意味通商産業省の名に値するような部局というものにしたい。私は、行政管理庁にも強く意見を申し述べておるんですが、日本には欠陥があるのであります。課にするには、何名おらなければ課にならない、それから局になるには二百名にならなければ局にならない、私はそんなことはないと思います。西ドイツの住宅省は二百名であります。ほんとうに必要であれば、二十人の局があってもいいんじゃないか。政治責任を明らかにすればいい。ガスというものが、百七十もあってこれだけ事故が起きるなら、ガス局と電気局に分ければ一番わかりやすい。官房なんということ、一体官房ということ自体が国民がわからない。そういう事態は御指摘のとおりであって、これは自民党でも検討いたしておりますけれども、私もやっております。政府自体でもやっておるし、行政審議会の方にも検討していただいておる。これはひとついずれ成案を得まして、中間報告をいたしますから、お知恵をかしていただきたい。
  43. 小松勇五郎

    政府委員小松勇五郎君) 大臣の御趣旨を若干補足させていただきます。  大臣の御指示に基づきまして、具体的にはことしの初めから、各局の総務課長クラスを官房に集めまして、官房参事官を長といたしまして、機構改革の案をつくるべく鋭意努力中でございます。できるだけ六月の終わりまでには何とか事務的に成案を得て、大臣の御判断を仰ぎたいというふうに考えております。  なお、先ほど貿易振興局長のことにつきまして、大矢先生から御心配いただきましたが、この問題につきましては昨年、現在のありますような日本語の名前が確かに行政の実態と変わってきておりますので、英語の名前のほうは外人になるべく誤解を与えないように変更いたしまして、貿易振興局の英訳はトレイド・アンド・デベロップメント・ビューロー、つまり貿易開発局というふうに変えてございます。したがいまして、今回は誤解はまず起こらないのではないかというふうに考えております。  たとえば、企業局でございますが、昭和二十四年でございましたか、できました当時はエンタープライズ・ビューローという英訳でございましたが、いまではインダストリアル・ポリシー・ビューローというふうに変えておりますが、実態にやや近くなっております。これは、機構改革にとりましては小手先の問題でございますので、根本的な機構改革はいかにあるべきかということにつきまして、こまかいことだけではなくて、せめて基本的な方向も打ち出したいということで、鋭意検討を続けておる最中でございます。
  44. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私は、最近の外貨の急増に対して、今後輸出入対策あるいは外貨対策をどうするのか、この辺に焦点を合わせて、時間がありませんので、要点だけお伺いします、大体のことは新聞報道で存じておりますから。  昨年の円の切り上げ後、予想に反して輸出が減るどころかだんだんふえてきた。そして、三月末は外貨も百六十八億ドルと、こういうことであります。通産当局もいろいろ考えていらっしゃるわけですが、今後の対策、どうお考えか。
  45. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 昨年来から申し上げておるわけでございますが、日本の貿易収支というものは、四十六年一ぱい約八十億ドルの貿易収支の黒字でございます。そういう意味では、いまになると、先進工業国間で貿易収支の黒字なのは日本だけだといわれるくらいの指摘を受けるほどの状態であるということでございます。これは、普通ならばはなはだけっこうなことであると言うべきでございますが、その反面、いろいろなところから支障が述べられておる、日本が注目されておると。これが事前に調整が行なわれないということになると、日本の中小企業日本経済そのものに与える甚大な影響がありますので、やはり各般の政策を行なってまいらなければならない状態であるということは事実でございます。対米貿易も二十億ドルの赤字といっておったものが、二十七、八億ドル、三十億ドル近い黒字ということになるわけでございますが、まあ円平価調整からは、既契約分がありましたので、それを消化をしておるので輸出は伸びるのですということを述べてまいりました。  それで、まあ大蔵省当局も通産省事務当局も、この二、三日来やはり輸出は減少の傾向にあり、輸入は拡大の方向にございますと、こう言うんですが、これはどうも二、三日の問題でございまして、長期的に見て輸入がうんとふえて輸出が減るような情勢、ほんとうをいってあるのかと、こう言うと、やはり問題が存在するということでございます。特に拡大EC十カ国からも、対前年度比五〇%以上の輸出の伸びた商品に対して、規制問題を公式へ非公式に持ち出されておるという実態から考えてみると、ただそのうちによくなるんです、そのうちに、というわけにはまいらないので、やはり具体的な政策を行なわなければならないという考え方を持っておるわけでございます。
  46. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 その具体的な対策につきまして、通産大臣はずいぶんアドバルーンを上げていらっしゃるようなんですけれども、アドバルーンはよく出ているんですけれども、どうも中身が出ていないじゃないかと、こういうふうな気がするので、それであなたの確信ある今後の対策を私はお伺いしたいわけです。
  47. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) その一つは、やっぱり外貨の実態、それから、これからの一年間くらいの輸出入の実態というものを的確に把握しなければならぬと思うのであります。  外貨は、三月末日現在で百六十七億ドルということでございます。しかし、これは相当大きなものであるということは、これは地球上におけるその保有、ドル保有国としては、西ドイツの百八十五億ドルに次ぐものである。しかも、アメリカは金保有高百億ドルを割っておる、こういうのでございますから、これはやはり注目し、いろいろなことを要求をされる実態であることは間違いないんです。  ただ、私は率直に考えると、どうも外貨というもの、百七十億ドルが二百億ドルになっても、実態というものが固定的なものなのかどうかということを考えて、私も過去三年間を大蔵省にごやっかいになりましたので、いろいろな数字をひっくり返して見ますと、まあ実質的な外貨準備高というのは、この半分くらいと見るのが適当じゃないかという、私個人としてはそう考えております。
  48. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 幾ら……。
  49. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 半分。半分だというと、八、九十億ドルから、正確に言うと百億ドル以下であると、これがやっぱり日本の外貨準備の実態だと思います。これは、昨年の一月が四十五億ドルでございますから、その意味で年間に倍以上になったということは確かであります。あとは一体どういうことかというので、ここらで事務当局との意見がまだまとまらないところでございます。まとまらないところでございますが、私自身は、これはやはり金利が高いという感じがいたします。西ドイツが公定歩合が三%に対して、こちらが四・七五%である、そんな状態でですな、私は、やはり外貨流入というものを避けるわけにはいかない。そういう意味でまず第一の問題は、外貨の実態から見まして低金利政策というものはどうしてもとらざるを得ないという考え方で、公定歩合などは引き下げるほうが望ましいという、これは私が自発的に言ったんじゃなく、衆議院で質問がございましたから、これは必ず下げるべきである、こういうことを申しました。そうすればどうなるかというと、一つには、もう国際取引において円金融によって輸出入ができる。いまの外為法によりまして、その円の収縮を伴なわない外貨の直接貸しは行なわないという、大蔵省が、その法律の改正を絶対にしないという考え方をとっている以上、いまの状態においては、一つには、円で直接輸出入ができるということが可能であります。それには金利を引き下げる以外にはないということが一つあります。  もう一つは、手持ち外貨を直接貸し付けるということでございます。手持ち外貨を貸し付けるには二つの方法があります。一つは、外為法の改正を行なって、直接外貨を貸し付けるという方法です。これがいやだということになれば、第二特別会計をつくるということになるわけであります。その問題は基本の問題ではない。私が通産大臣になる前に、政府は八項目をきめているのです。その中には、外貨の直接貸しを行なうと書いてあります。いままで七項目はできたけれども、一項目だけ残っている。それは外為法がそのネックになっているからであります。ですから、この問題に対しては大蔵大臣も、それはそのとおりであるから、事務当局同士で話がつかなかったら、二人できめよう。二人でこれだけの大きなものをきめられるわけじゃありませんから、二人で案をつくったら、事務当局にも流すと同時に、閣議にもはかるということになるわけであります。そうしなかったら間に合わないということまで話し合いをしまして、私も公式に発言をするようになりました。そうしたら、事務当局も動くようになったということでございまして、通産当局にきのうちょっとの間でもってこれを話したわけでありますが、大臣だけでまとめなくとも、近く成案を得る見込みでございますということでありますので、これは立法を必要としますので、この国会にどうしてもお願いをしたい、こういう考え方をしているわけであります。金が余ったから土地を買ったり何かする、これほど拙劣な施策は私はないと思うのです。その意味では、いまは鉄鉱石にしろ、マンガンにしろ、いろいろな問題が全部現地でトラブルを起こしているわけでありますから、そういうものに合弁会社を行なうとか、石油の長期的な開発輸入を行なう道をつけるとか、政府ベースの援助の拡大に合わせて、抱き合わせでもって開発輸入を行なう。これは、いまの状態が永久に続くとは思いません。どうしても日本は原材料を輸入するというこの状態は続くわけでありますから、そういう有効な投資というものに踏み切らなければならない。二百億ドルになんなんとするときに、非鉄金属の探鉱と開発に三億五千万ドル出したからということで、この場を乗り切れるわけはない。私は通産省だけの立場を主張しておるわけではありません。これは、こんな状態が続けば、いろんな困難な問題が起こってくる、こういう考え方でありますので、災いを転じて福になすような具体的な方向で、いま検討を進めておる次第であります。
  50. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 外貨の貸し付け制度につきましては、大蔵省事務当局あたり、かなり批判的らしいですが、大体、この外貨の制度そのもののよくその意味知らぬのじゃないか。大体外貨というのは、かってに外貨だけ貸すものじゃなくて、円の裏づけがなければ出されないのだ、そういうようなことも言っているようですがね。その辺のところはどういうふうに調整されていくのか、いま答弁がありましたけれども、これはそれじゃ、大臣同士で話し合いがついて立法化の予定と、こういうことですか、その内容をちょっと大まかでもいいですけれども、聞かしてください。
  51. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは大臣同士でもうて成案を得よう、提案をしよう、御審議を仰ごうということは合意をしているわけでございます。なかなか予算が成立するまでなどと考えていたのでは間に合わなくなりますので、その責任は今度政府が負わなければならぬということで、じりじりしておりましたら、事務当局間でまとまる、うまくすれば今週中にもまとまる、こういうことでありますので、うまくいくなあと思っているわけです。ですから、事務当局からその内容は上がってきておりませんから、私がここでその内容を述べることは差し控えなければならぬと思いますが、私と大蔵大臣との間の話では、結局外貨の直接貸しは行なわなければならぬ。恒久法にするか、臨時法にするかは別として、少なくともとにかく外貨の直接貸しをやる。外貨の直接貸しをやるということは、かつてあったわけであります。戦前は、日銀が横浜正金銀行に無利息で金を支出しておったという話でありますから、そういう例もあるのであって、これだけの外貨を財務省証券だけでもって運用していくということはできるわけないから、そういう意味では直接貸しを行なう。直接貸しを行なうと、いまの外為法はそのままにしておって臨時的な便法をつくるわけでございますから、だから、そのためにはどうするか、これは金利問題がかかってくるわけであります。これはいまの金利ではだめなので、これは安い金利になる。その金利を幾らにするかという問題、これは大蔵省当局が最後に折れなければ、両大臣の意見、両省の意見はまとまらぬわけです。そうは言いますが、これは世界各国の例がありますので、いまのその外貨直接貸しを行なう場合、これは政府主体になってやるのか、事業団をつくってやるのか、その利息は国が持つのか、民間とフィフティー・フィフティーにするのか、それは価格に転嫁するのかという原則をきめなきゃならぬわけであります。いままでの利息であるならば不安定であって、それに業者はリスクをかぶりますから、当然道を開いても、直接外貨投資はしないということになります。そういう意味で、まあやっぱり民間を主体にすることをいま考えております。あるものは事業団、あるものは——ということで考えなければ、個別に考えなきゃいかぬと思うのです。いまのウランの問題にしても、九電力にまかして、特別の処置をしなければならないのか、事業団にまかせなければならないのか、それはケースによって違いますが、いずれにしても外貨の直接貸しを行なう。直接行なう場合は、そのリスクは現行のものよりも少なくとも政府が応分の負担をしなければならぬ。それは、現実には貸し出し金利が下がっていく。それは輸入ユーザンスでやる場合より、有利で安定でなければならぬという条件を提供しなければならぬということになるわけであります。ですから、第二特別会計というか、少なくとも新しい立法を必要とする。外貨を直接有効に使う、これは国益を守ることであり、物価にも寄与することであるし、国際的な変動にも対応できるようにという考え方前提にいたしておりますので、条件は近く詰めたいということで、詰めたらすぐ御報告しますから、それでひとつ御了承願いたい。
  52. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それでは、第二特別会計にどの程度に金を出すのですか。  それと、外貨減らしにどの程度のメリットがあるのか、その辺。
  53. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そこらをいま両省で詰めているわけでありますが、先ほど申し上げたように、鉄鋼を除いて三億五千万ドル程度の預託ではきめ手にならないでしょうということを私自身が——私が了承してきめた新しい政策に対して、その程度ではどうにもなりませんということを申し上げておるわけですから、私は、質問に答えて言うわけでございますから、そういうふうに御理解をいただきたいのですが、私は、五十億ドルもやらなければだめだということを言っておるのです。  とても、五十億ドルというと大蔵当局はもっと条件を詰めてくるでしょうから、それは五十億ドルとか三十億ドルとかいうことではなく、適正な外貨準備というものが幾らであるといえば、いま大体輸入は月間二十億ドルくらいに見ればいいわけですから、二カ月ぐらいでは六十億ドル、これに対して固定的なものがありますので、四カ月にしても八十億ドルであります。だから、百億ドル程度が日本の必要とする外貨準備を越しておるということであり、このことは先ほどから申し上げておるわけです。ですから、百億ドルの上積みのものは、これは金利が引き下げられれば私は流出するものが相当あると思うのです。日本がこんなに外貨の積み増しでもって批判をされているときに、長い習慣でありますけれども、輸入業者や輸出業者はいま銀行からドルを借りてそれで貿易をし、その勘定はみんな日本のMOF勘定に振りかえてきておるという実態もあるわけですから、この金額も六十億ドルないし八十億ドルあると思います。その意味で私は、大体実体は百億ドルあるだろうということを——貸し借り差し引きして実質資産というふうに考えれば百億ドルだろうということを言っているわけです。そうすれば、その七、八十億ドルというものが金利政策によってどの程度一体収縮するのか、それで残りで使えるものは一体どうなるのかという問題が起こってきますし、金だけ用意しても投資先がなければ困るわけでありますので、そこらはひとりよく皆さんの御意見も承って、しかるべく適切な処置だったと言われるようにしたいと思いますので、しばらくかすに時をもってしていただきたい。
  54. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 時間がありませんのでもう一つ、今度輸出の対策ですね、いろいろオーダリーマーケティングの確立とか、どうのこうの言われておりますが、もう少しその辺具体的にひとつ。
  55. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま各業界と話をしております。行政指導ということではなく話をしておるのは、アメリカ側からももう提示を受けておるわけです。特に大きなものは、去年は電算機の自由化、それから自動車、それからテレビと電卓、卓上会計機というものが出ておったわけです。ところが今度は、もう抜き打ちに自主規制を求めるといってきたのが陶磁器です。陶磁器業者は非常に困っておるわけです。これは自主規制をやっておるにもかかわらず、自主規制とは何ぞやと、こう言って巻き返しておるわけであります。これはなかなか、そういうふうにいろいろな面から自主規制問題が持ち出されております。そうして自動車はビックスリーの関係もあるでしょうし、いろいろな問題もありましょうけれども、テレビに関しては非常に強い関心を寄せております。自動車は対前年度比二一六でありますから、倍以上出たということでございまして、倍以上も出るほど日本のものが品物がいいのだと、これは品物がいいだけではなくて、よかろう安かろうで——安かろうはダンピングであって、それで措置をしなければダンピング規制にかける、こういうことでございます。私もサンクレメンテでいろいろ個別に交渉してまいったわけでありますが、自動車も一五%ないし二〇%価格を引き上げております。その他いろいろ引き上げておりますが、円平価の調整分を完全に調整するにはまだ時間がかかるという問題がございます。下請に対して一ドル二百七十円だ、二百八十円だといってたたいている業界に対しては、輸出価格は円平価調整分を含めて自動的に上げなければならぬへその上にプラスアルファをつけて上げなければならない、それを実行しなければ、繊維規制ではないけれども、いろいろな困難な問題が提起されてきますよ、業界でしかるべく処置なさいというところまで言っているのです。ですから、もう相当、それでもまだやらないでかけ込み輸出をやるような状態であるなら、これはもう私のほうでは規制に踏み切らざるを得ないかもしれませんよというくらいな、そうなっても困るのでというくらいな調子で業界の指導をいたしているわけでございます。ですから、規制をしてもやむを得ないよと言えばこれは意地になりますから、これは規制をしてもやむを得ませんと言っているのじゃなくて、規制を受けないような、その前でひとつ何とか輸出調整、自主規制というようなものをやってもらいたい、自主規制というよりもオーダリーマーケティング——輸出秩序を確立されたいと各業界に望んでおるのでございます。
  56. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 実際的には、自主規制ということは非常にむずかしい問題です、過去のいろいろな繊維の問題等考慮いたしましても。  そこで私、輸出調整金につきまして大臣にお伺いします。
  57. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いかに何でも、値上げをすればいいのでございまして、輸出税を取ったり輸出課徴金を取ったりというような考え方は、これは大蔵省の一部にございます。そして、通産省に対してもそういう話が持ち込まれておりますが、私は事務当局には、通産省が輸出税に賛成をするようなことがあってはいかぬ、輸出税に賛成することがあるなら、通産省が輸出のもとになる長期的な原材料等輸入に対してしかるべき措置がとられることが前提である、これはもう輸出をうんと押えるということはよくないんです。輸出はうんと出て、輸出代金はうんとよけいためて、それをため込まないで、それを全部出して国際流動性を確保して、お互いが拡大均衡による利益を享受するということでなければ日本は生きられない。その意味においては、輸出を制限するような考えには反対だと私は強い姿勢を出しております。
  58. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まあ通産大臣ですから、そういうような答弁だろうと予想はしておりましたけれども、もう一つ、時間がありませんので……。いま財界の一部あたりで、赤字公債をもう少し大量に発行して国内景気を刺激したらどうだと、輸入量をふやしたらどうだ、こういう意見があるようです。この点につきましては、どういうお考えですか。
  59. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 財政法四条の規定によりまして公債は制限をされております。確かに公債の一人当たりの保有量、それから国民総生産、国民所得に対する比率等は先進各国に比べ非常に低いわけです。非常に低いけれども、できるだけ公債というものは後代の日本人が負担するものでありますので、やはり財政法四条の規定というものは厳密に解すべきだと思います。しかし私は、ただ景気浮揚のために公共投資だけをやるということではなく、景気浮揚のやり方はいろいろあるわけであります。これは社会保障を完ぺきにしたり、減税をやったりして国内消費を向上させる方法があります。ですから、簡単に赤字公債、減税補てん債を法律でやるとか、それから四条を改正して拡大をしていくんだとか、これは軍事費に使うんじゃありませんから、生産に少なくとも直結をするものでありますから、戦前の公債論とは比較になりませんけれども、やはり財政法四条の規定というものは相当厳密に解釈すべきだ。だから私は、ほんとうに政策主導型ということであって、ほんとうに地方開発を行なうとか、それから完全に何年間で日本の交通輸送コストを下げるためにはどういうふうに新幹線をつくらなきゃならないとか、高速道路をつくらなきゃならぬとか、それから、都市災害を起こさないためにタンカー基地をつくるとか、そういう国民総生産や国民所得の向上に必ず返ってくるということがはっきりするものであるならば、これはある時期に私は、単行法という臨時立法で行なうことはあり得ると思います。これは少なくとも四十八年度以後だと思います。四十七年のうちで財政法四条を拡大したり改正をして赤字公債ということは考えるべきではない。考えるよりも、それならば公定歩合をうんと引き下げてまだやる方法はあります。そういう意味では、四条の解釈に関しては厳密な態度をとる。
  60. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 質問を申し上げたいと思いますが、いま外貨のたまる問題で御説明もございましたし、見解の表明もございました。現在の輸出の問題につきましては、まあ外貨がたまるというようなことから、円の再切り上げの問題等も巷間いろいろいわれておるようでありますが、そういう中で輸出の採算を確保しながら、さらに輸出を強行してまいりました産業界にとりましてはまことに重要な事態だと、こういうことに判断をいたします。したがって、現に引き渡しが相当先になる輸出では、先約について一部で警戒も出されておるようでありますけれども、一ドル三百円を割るというような自主レートで商談を進めざるを得ないというようなところに追い込まれておるわけでありますが、これに対しまして、さらにこのふえる外貨の活用の方法等につきまして御見解を聞こうと思ったんですが、それについてはある程度お話があったように思いますので、実際にいまの不況の中で景気の見通しということに対しまして、企業では大幅な操短で過剰在庫の調整につとめて、また、不況カルテル等の認可も受けて繊維価格の値下がりの防止に努力をしておるわけでありますけれども、輸出採算の悪化と円の再切り上げの不安と、こういうことによって業績の回復がなかなか見込みは立ちがたいというのが実情であろうというように思います。一部には在庫調整が進み、卸売り物価も下げどまりになったから景気は底入れ段階になったと、やがて企業の設備投資も増加をして、景気は回復に向かうであろうというような、従来と変わりない見通しを述べておられる人もあるようでありますが、このような見方がはたして妥当な見方なのかどうか、こういう点について御見解をお聞かせ願いたい。
  61. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 当初一〇・一%という高い成長率を予期しておったものが七%に下げ、五%に下げ、四%台に下げたわけでございますが、その意味では三月三十一日、年度間を通じまして成長率は、最終的段階における政府見通しどおり四.五%程度にはなっております。これは、実質的な数字を申し上げると四・七くらいになっております。それから、鉱工業生産も三%アップとなっておる。在庫は一巡した。その意味で景気は底入れであるということを言っているわけであります。私も予算委員会ではそのとおり述べておるのです。述べてはおるのですが、まあ商工委員会でそういうふうに御質問をいただきますとね、これは私、通産大臣としての考え方原則的には予算委員会で述べたと同じ政府統一見解、すなわち底入れ後なだらかな上昇過程に入ったと思いますと、こう言っておりますが、私は予算委員会でも述べておるのですが、過程における議論としては、また長期的見通しに対しては立場によって違います。立場の違いであります。これは、経済企画庁や大蔵省当局は過去のパターンをそのまま当てはめて、景気は上昇過程に入り、年率を通じて七・二%ないし七・五%になりますと、こう答えておりますから、私もそうは答えます。  しかし、いままでのパターンとは違う。なぜならば官需が旺盛になり、これだけ大きな公共投資が先行するのでありますから、少なくとも四月−六月、七月−九月の夏季の第二四半期までは景気は上がると思いますと、しかし、その後に付随してくる民間の設備投資というものは底冷えというような状態であって、底冷えだけではなく、鉄綱と同じようにみな設備の稼動率が八〇%、七〇%というような状況にあるということから考えますと、設備過重であり、減反政策を必要とする農村と同じことであるという意味で、いまのままの政策では後半の十月−十二月、一月−三月というものがうんと上がって、年率七・五%になるかどうかということは非常に困難だと思いますと、こう私はまあ控え目に申し上げておるわけです。これは、通産省の指数を見ますとね、どうしてもむずかしいです。それは、公共投資というものをずっと続けてまいりますと、景気は確かに上がります。しかし、本年における成長率が五−六%であるとすると、一月−三月は少なくとも一〇%にならなければ、年間を通じて七・二%ないし七・五%にならないわけでありますから、そういう数字はどう考えてみてもむずかしいという、通産省の具体的数字を見ると考えざるを得ないのであります。  ところが、これは先行きの見通しでございますが、一月、二月、三月の具体的な数字としては、景気は底入れしているという見方がある。しかし、底のままずっといくということだって実際的には考えられるわけでありますので、私はそういう意味で、いまここにこう新しい景気見通しを私自分でつくってみたのです。現実の国内消費をふやしていくためには、相当思い切った減税をやらなければならないものを自分で書いてみておるのですが、これはまだ、政府部内でも十分慎重な検討がなされておりません。まあ大蔵省当局とも、経済企画庁当局とも詰めはしてみようと思っております。そういうことから考えますと、まあ底入れはしたとは思いますが、しかし、施策を必要とする、またその施策を行なわなければならない立場にある私でございますから、政府の統一見解が実行できるようにいろいろな施策を行なうということで御了承願います。
  62. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 私がこれから質問をしようとするのが、先ほどの質問との関連ですでにお答えを、御見解をいただいたようなかっこうになっておるのですが、実は私は、ここで日本の経済は強いんだ、円は強いんだ、こういうことが言われておりますけれども、経済のにない手である企業かなり苦しい段階にきておるのではないか。そういう点はいま大臣のほうも、いわゆる民間の企業の稼働率等も含めて御見解の表明があったわけでありますが、こういう中で、円の切り上げを契機にいたしまして、産業優先政策から社会資本の充実とか、あるいは国民福祉優先への転換ということが叫ばれ、また、事実それをなされなければならぬと思いますけれども、非常にむずかしい段階にきておるのではないかというふうに思います。いずれにいたしましても、先ほどお話のありましたように、企業は、従来のような投資にはかなり慎重でありまして、事実、製造業等におきましても、なかなか量産のための投資というのは実施がされていない。新しい製品を開発するための投資というのはこれはやられておりますけれども、そういう意味では、景気の回復のための見通しなり方途というものが非常に大事になってくるのではないか、こういうことを考えておるわけですが、先ほどの御見解で大体わかったような気もいたしますけれども、いまのことについて何か御見解があればお聞かせをいただきたい。
  63. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 確かに、鉄鋼に見ましても、鉄鋼は生産能力は一億二千万トン以上ございます。ところが、八千八百三十万トンというのが去年の全生産量でございます。そういう意味で、鉄鋼に対しては四十五年対比九五%しか——一〇〇%稼働しておらぬ。稼働率は八五%程度となっているということであります。ですから住友の鹿島とか、いろいろ新設備をやらなければならないものがあります。ありますが、これは新設備を行なった場合には、旧設備はそのまま休止もしくは廃止をするという前提でございます。そういうものしかいま大きなプロジェクトとしてはないわけであります。あと公害防除施設がございます。これは投資としては相当なものでありますが、これはコストアップになるものであって、これは必ずしも生産コストを引き下げるものではないので、これはやりますけれども、これはいままで年率二四%も五%も設備投資が伸びたというような中にあっては、たいしたウエートを占めることにならないということであります。  中小企業などは超緩慢と言われておる金融事情によってささえられておる面があります。これは繊維などでも、繊維は広幅にしたり、いろいろ機械の設備を更新しなければならない態勢にあります。いまEC諸国に比べれば、設備は全部更新しなければならないというぐらいなものであります。繊維企業は比較的にいまいいのであります。好調であります。好調であるとはいいながら、この設備を全部更新するような先行き強気のものというものは考えられない。これはどうしても転廃業さえ一部考えなければいけない。四十四年度対四十五年度は四十五年度対四十六年度に比べてみますと、倒産件数は半分以下に減って貼ります。減ってはおりますが、自転車操業という面もあるようであります。私は繊維雑貨局にも、強く実態を把握せよ、こう言っているのです。とにかく金沢あたりの紡織機を製造している機械メーカー、二カ月か三カ月は非常に悲鳴をあげておったのですが、このごろはもう稼働し始めたということでありますが、これが一年間を通じての民間設備投資として大きく計上されるような状態には私はならないと、こう思います。  ですから、その意味で私が急いでいるのは、工業の再配置の推進ということです。工業の再配置は必ずしもことし一ぱい内にはならないとしても、これは一つ方向として環境の整備にも通じますし、都市の地価問題の解決にも、通じます。政策主導型の設備投資というものは、やれば可能である、そういう意味考えますと、ことしじゅうを通じての設備投資生産意欲を前提とした設備投資というものが一〇%以上ふえるというようなことですね、どうもむずかしいのではないかという感じを持っております。これは率直な意見です。
  64. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 次に、七〇年代の通産政策と、こういうことで御質問を申し上げたいと思いますが、この政策というのは、これから四年ないし五年における産業構造のあり方を示したもので、言うならば通産政策の中期ビジョン、先ほど冒頭に出されました竹田委員の質問とも関連をするわけでありますが、この中で円切り上げ後の産業構造の大筋としては、知識集約の方向を進めていくことを言っておられるわけですが、その中核として社会開発関連産業、こういうのを前面に押し出しておられるわけですが、この社会開発産業というのは具体的に言うとどういうような業種産業を言っておられるのか。さらに強力に育成をしようと、こういうことでありますが、具体的にこういう問題につきましても、助成策について構想があればお聞かせをいただきたいと思います。
  65. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 社会開発政策の中で一番大きなもの、これは衣食住の中の住でございます。住——住宅産業ということであります。これはまあ、新しい産業の中の一つの目玉商品のように言われておりますが、なかなか日本というものは、これは自然条件というものがございまして、必ずしも西洋の先進工業国のシステムそのままを日本に持ってくるわけにはまいらぬわけであります。温暖ではありますが、非常に湿度が多い多湿な地帯であります。そういう意味で、木造平家建てが一番望ましいと、こう言っているのですが、こんなことを言っていれば、土地はウナギ登りに上がるということにもなります。そういう意味で、自然条件に適合する環境の整備ということになれば、これはまず、住宅政策ということで、住宅の高層化を行なわなければなりませんし、不燃化を行なわなければならないし、それによってマンションその他の関連産業が起こります。そういう意味で住宅産業というのが一つ産業であることは間違いありません。  それから、住宅政策というだけではなく、教育関係施設、これは、明治初年から建てられてきた義務教育施設は、教育ということだけを目標にしていたため、施設面では不十分なものが多々ありますから、そういうものを思い切って年度計画を立ててやれば、これはできるわけであります。その他託児所施設などもそうでありますが、社会保障の中の最も画一、一律的な社会保障制度というものにもう少し重点を置くということになれば、重度心身障害児とか、それから中高年齢層の再教育のための教育機関や職業訓練とか、また収容施設等々ほんとうに国が全額を持って引き取らねばならないものについては、けじめをつけて思い切ってやったほうがいいのじゃないか。とにかく若い人でも、みんな二十代でも失業保険をもらっておる。失業保険をもらっている間は他で働いてはならない、働けばすぐ受給が打ちとめになる——この制度は不合理だから打ち切りにしたほうがいいんじゃないかという議論もあります。これは結論ではありませんが、二十代は一カ月、三十代は二カ月というようにして、六十代ならそれは一年出してもいいじゃないかという議論も真剣に検討されておるわけであります。いままでは早く西洋に追いつけ追い越せというようなことで、追い越せばしないでしょうが、追いつけということだけで夢中になってやっておったのです。しかしこの際、一たん踏みとどまって、発想を新たにしていくという質的な問題として計画投資を行なっていくことは考えられるわけでございます。まあそういう意味で、社会開発——佐藤内閣で七年間やっておって、どういうことだということでありますから、これは新しい政策として、投資の中の社会開発と目されるもの、そういうものをひとつ列挙しよう、こういうことを考えておるわけでございます。
  66. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 いま住宅産業のお話が出たのでありますが、確かに住宅産業というのはとてつもない大きな市場で、非常に効果も大きいし、昨年度を見ましても膨大な金額になっておるわけなんですが、最近は、住宅産業かなりおやっと思うような大きな企業が新規に参加をしてくるというような点も見られるように思います。したがって、その住宅産業のあり方、これが何となくはっきりしない面があるように私は思います。大臣の所信表明の中にも、これはたしか一項目あったように思います。産業の育成振興ですか、そういう面と関連をして、住宅産業のあり方について、さらには今後どのようにお考えになっておられるか伺いたい。
  67. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は約二十年前、私自身が中心になりまして、現行公営住宅法の議員立法の立法者になったわけであります。衆参両院で説明者となったのでありますが、現行公営住宅法は議員立法でございます。まあそれはいろんな議論がございましたけれども、現在まで続いておるわけでございます。当時はいろんな議論がありました。学界でも公営住宅法は憲法違反だという意見が述べられました。これは特定な人の利益を守るために、特定の人に利益を提供するために国費を使ってはならない、こういう議論がありました。そんなことはない、とにかく日本人全体が戦災というもので、敗戦ということでもって災害を受けているのであって、公営住宅法は災害者応急住宅法に等しいものである、舞鶴につくられる引き揚げ者収容住宅に等しいものであるという答弁をして、法律の成立を見たわけでございますが、住宅というものは、やはり基本的には個人の自由の意思によるものであるということであります。政府はそれに対して誘導政策を行なう、住宅が建つためにどうするかという税制上、金融上、財政上の優遇を行なうということであります。それはただ量だけではなく、もう質の時代になったということで、都市における住宅と、それからその他の住宅の規格は当然つけなければならぬわけであります。そういう意味で、建築基準法その他都市計画法によって建蔽率を六〇%以下、五〇%以下、また緑地帯等においては三〇%以下というような、緑地保存のように環境整備基準がございます。それにはそれなりの財政、税制上の優遇をせざるを得ないわけであります。  私は、かつて大蔵大臣のときに、一つの政策を行ないました。都市の立体化を行なうために、四階以上の住居の用に供する部分に対する固定資産税を十年間半減をするという法律を行ないましたが、このくらいの法律はちゃちな法律だと私は思っておるんです。これはイタリーが労働者住宅をつくったとき、労働者住宅は国がやるよりも民間がやってくれたほうが国の負担が少なくて済む、つまり民間がやるのにしくはないのであります。そのかわり国有地は無料で提供する、しかも、損保や生保の剰余金は労働者住宅以外に使ってはならないという制限をする、他方、固定資産税は二十五年間徴収しない、このぐらいな鮮烈な政策をやってきたおかげで、労働者住宅はちゃんとできているわけであります。そういう政策をやはり私はやらなきゃいかぬと思うのです。ですから、都市においては、環境整備のために当然道路も広げなきゃなりませんし、空地もつくらなきゃいかぬしということで、立体的なものを要求せられる。そういうものに対しては税制上、財政上、金融上の優遇を行なう。  で、いま五%、二十年というような案が新聞に出ておりますが、これは、いまの公営住宅法の上から見まして画期的なものだと思いますけれども、公定歩合がすでに三%に下がっている西ドイツということを考えると、こういう住宅というものが国の財産であるということを考えれば、これは、相続のときの税率を上げれば全部国の財産になるわけでございます。これは極端な議論で、学問的な議論だけを申すわけでございますが、少なくとも百年ないし百五十年たつものは全部国の財産にするわけであります。こういうことを促進するための新しい政策ということを行なわなければならないのであります。また建材を構成する鋼材も骨材もどんどん日進月歩しておるわけであります。そういう技術開発に対する援助を行なうことも必要でしょう。それから、住宅産業というものを育てるには法律、制度の整備も必要でありますが、やはり集中的投資が行なわれるようにしていく必要があります。浪費に対して——浪費というよりも、一般的なレジャーなどに投資をされることによって国民総生産が上がるというような考え方、これは間違いだと私は思うのです。もちろん、全面的に否定するのではなく、ある部面では必要だと思いますが、やはり長期的には国の財産がふえる、国全体の財産がふえていくという立場で、その中で、社会的な恩恵を個人生活においても受け得るのだということをやはり前提にした住宅政策というものを掲ぐべきだということで、こういう問題に対しては新しくものを考えております。
  68. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 この質問で終わります。  これまでは社会資本のいわゆる建設、こういう問題については、すべて国あるいは地方団体など、こういうところで行なっておったわけでありますが、この通産政策を見ますと、民間の技術、資本及び経営能力、こういうものを活用する姿勢が重要だ、こういうことで、それによって社会開発も長期的、総合的な計画をもとにして推進をするんだ、これはいままでと確かに、私言いましたように、変わった考え方になっていると思いますが、こういうものを具体的にどのようにお進めになるのか、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  69. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、私たちの体質が自由経済論者でありますから、ということも一つでございますが、やはり、いまのすべてを官業でやるということは非能率である。これは戦後の経緯を見てもわかりますとおり、逓信省から分離された電電公社にしても、また逓信省が郵政省となり、五現業に転化していった例も、また特殊会社や公社、公団にだんだんと移しかえられている。これはやはり、民間というものは二十年、二十五年、同じ中で勉強している。行政庁というもの、政府地方公共団体というものはそれなりに勉強はしておりますが、テンポの速い技術革新という時代においては、民間の創意くふうはすばらしい発達をしておるわけでありますから、やはり民間のエネルギーというものを中心にして、政府は補完的な任務を行なうということが必要である。政府が何でもやるというのは、私は間違いだと思うのです。私は、いまでも備蓄を行なう。ウランがどうしても必要だから備蓄を行なう。ウランの備蓄を行なうなら、これは九電力に抱かして、その利息をどうするかということを法律考えるほうが合理的だと思うのであります。これは公社、公団をつくって、事業団をつくってこれを抱かしたり、石油の備蓄をやらせたら、この人たちの整理まで——困るんです。人間もたいへんであります。私はそういう意味で、やはりアメリカなどが非常にうまくいっていないことの一つとして、アメリカはあれだけ自由経済論の国でありながら、国がまかなっている人の数は日本よりもはるかに大きい。そういうところに多少、半身不随というようなことが起こっているんじゃないか。そういう意味で、社会開発というものは官費、公費というものが原則であるという考え方よりも、やはり政府は、現実的な面から言うと、実際はその八〇%まで、九〇%まで政府がまかなっておるにしても、民間のエネルギーを主体にすべきである、そういう考え方を前面に出そうという考え方でございます。私は、間違った考え方ではないと思います。
  70. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 通産大臣の御答弁は非常に丁寧でいいですが、時間が非常に少ないので、私はもう率直にお尋ねするし、率直に答えていただいたらいいと思うんです。  まず第一問は、沖繩密約と国民の知る権利の論議がずっとされてきましたが、その中で、密約で国民をだました政府の政治責任は重大だと思います。そもそも、国民に真実を隠さなければならない政治をやっておるほうこそ間違っていると私も思いますし、広範な世論もそういうふうにわき上がってきておるわけですが、十一日の参議院予算委員会へ参考人として出席されました伊達教授がいろいろ述べた中で、「政府が国民に疑惑を与える行動をしてはならないことは、民主主義社会における政府の基本的立場であり、政府がうそをつく一番大きな弊害は、国民の政府に対する信頼という民主主義社会の最も基本的な前提を裏切ることであり、大きな罪であり、非難されるべきだ」、こういう意見を述べておられます。これにつきまして、次期総理候補者の一人である田中通産大臣はどういうふうに考えていられるか、ひとつ信念を伺っておきたい。
  71. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 憲法の示すとおり、主権は国民にあるわけでございます。政府は、憲法の定めに従って、国民の利益を代表して行使しておるにすぎないわけでございます。そういう意味で、政府が国民に真実を述べなければならない責任は申すまでもないことであります。しかし、憲法で三権というものが規定されて、国民の利益を守るために、憲法及び法律制度によって、三権にはおのずからなる責務を課しておるわけであります。  そういう意味で、外交交渉という過程において、外国との信頼関係を確立をしながら国益を守らなければならないという趣意に出る行動、その一部に対して、私は秘密が存在するということは、これは当然のことだと思うんであります。判決に至る過程の事実のことを述べてはならない。これは国会といえども、判決過程における事実を、秘密会といえども求めたことはありません。捜査中の人権に関する問題、憲法の規定、他の規定において保護されているものを犯してはならない。こういう意味では、国会はちゃんとしております。国権の最高機関としてちゃんとしておりますから、そういう意味から、いろいろの過去の問題、今度の問題、議論があります。この議論は、最終的には国民が判断する問題だと思うんです。国民が判断する問題である。これは、四年ごとに衆議院議員は改選をちゃんとされるわけでありますし、騒ぎが大きくなればいつでも国民の審判を求めなければならないという、ちゃんとした制度があります。参議院議員も三年ごとにちゃんと通常選挙を行なうという制度があるんですから、だから、そういう意味で、政府が国益を守るという趣意に出て、そして秘匿しなければならないもの、これはあるんですから、だから、その限界というものが限界を越しておったか越しておらなかったかということは、これは、事件が起これば、その案件に対しては、裁判所が判決をするわけであります。ですから、過程においては議論が起こります。政府も静かに、毎日、あなたの議論のようなことを謙虚に聞いておるわけでございます。そして、その中からより合理的、より理想的な日本の三権というものが確立されると確信しておるわけであります。  過程においては、いろいろ議論がございますが、政府は、政府においても国のために——共産党の中にも門外に出してはならないという、こういうものもあるわけです。それも共産党のためだけでなく、日本の政党として、日本のあしたのためにということですから、これは政府にしても、すべてのものが公開されなければならないということなら、政府が果たさなければならない責任を果たすことができないとしたならば、それは国益の問題ですから、そこらは、ひとつ、時の推移に待ってもらいたい。
  72. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 きょうは国益論の問題について、私は論議する時間の余裕がありませんから、この問題は後日に譲りたいと思いますが、まあ政府の今回の答弁を聞いていると、ああいう秘密協定ですね、取引を、ありません、ありませんと言って答えてきた。それが国益だと、こういうふうに言っておりますが、私たちはそうじゃないと思うんです。ああいうやり方は、これは自民党政府の利益であって、国益というものじゃないと思うんですね。自民党政府の佐藤内閣の秘密にすぎないんですよ。国の秘密じゃないと思うんです、私たちは。だから、そこで見解は分かれます。その見解をきょう論議する時間はありませんから、私の意見だけ述べておきますが、私はそういうのじゃないと思うんです。それで、国民は必ず審判します、あなたもさっきおっしゃったように、次の選挙にはね。
  73. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一言だけ。  まあ須藤さんは著名な教育者でございまして、私たちも敬意を払っているわけです。教育者として知り得た秘密というものは、それは学校の生徒としていろいろな問題があると思うんですよ。しかし、それはね、教育のためには世間に公にすべきだという議論もあります。ありますけれども、あなたは教育者の信念に向かって、秘密はちゃんと守ってこられたと思うんです。いろいろな問題があっても、生徒をちゃんと結婚もさせ、成人もさせてこられたわけでして、あなたは著名な相当な教育者であるということをわれわれ自身も敬意を払っているわけですから、政府が外交でもって、とにかく七億五千万ドルという要求をアメリカがして、こっちはただで返してくださいと言っているものが三億二千万ドルで合意をしなければならない過程にはいろいろあるんです。  私も日韓交渉をやりましたから、あるんです。あるんですから、それを全部言ってしまえば、私は、それは外交にならないと思うんです。私も、七千万ドルしか大蔵省が持てないと言っているものを、なぜ、六億ドルも出すかということで、衆議院の予算委員会でやられたことがある。それで私は言ったんです。三十五億ドルでやっているんだと、その中には、百万人の戦争に行って死んだ人に対して、これだけのものを、補償費を払えというものを、そんなことを言わないで、六億ドルにしようということにきめるには、両方が譲歩して合意に達しなければならない。その中には秘密はある、国家機密は存在するということを答えたら、よくわかったと、皆さんは当時理解されたんですから、その程度の、ひとつ、理解はされたい。
  74. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたの言わんとすることはよくわかっていますがね、戦前の人たちは、国家機密と言われますとね、たいへんなことだというふうに思った習慣があるんですよ、これまで。そこで、今度のやり方はずるいと思うんです。すべて国家機密、国家機密と言う中で、自民党佐藤内閣の機密を国家機密にすりかえているんですよ。私ね、もう国民もそれほどばかではありません。戦前の日本の国民と違いますからね、その点はよく耳抜いています。それは次の総選挙で明らかにいたしましょう。きょうは、この論議は、時間がありませんから、これでとめておきます。  最近、わが国の外貨準備が二百億ドルをこえるのは時間の問題であり、そのときには、円の再切り上げのおそれもあるという見方が出されております。このようなときにあたりまして、四月から五月にかけて、アメリカからボルカー財務次官やキッシンジャー補佐官、エバリー通商特別代表等が相次いで来日する予定であります。再び、通貨問題や通商問題が持ち出されるのではないかという見方もあります。もし、アメリカ側が通商問題についての要求を出してきた場合、政府はどう対処されるつもりなのか。一月のサンクレメンテ会談での通商交渉一年休戦の約束があるので、その話には乗らないのかどうか、その点を伺っておきたいと思います。乗るか、乗らぬか、はっきりおっしゃってくだされば、けっこうです。
  75. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ここにもございますが、「自動車、テレビの輸入制限をせよ、米下院で議論」、こういう外電が入っております。そういう意味で、これからいろいろ要求があると思います。要求があっても、それは要求でございますから、こちらはこちらの国益を守り、事実を、真実をちゃんと述べて、数字でもって交渉するわけでございます。去年の、私が七月通産大臣になったころは、自動車もテレビも全部制限をされる、新聞にはもう電算機の自由化は不可避である、こんなでかい字で書いてあったが、そうじゃなく、それは、そのときにはやりたくない、これは願望であった。やらない、こう言っておったのです。日米繊維交渉はイニシアルをせざるを得ないところに追い込まれたことははなはだ遺憾でございますが、しかし、その他の問題に対しては一年休戦ということになったわけであります。ですから、政治レベルで決着をつけなければならないようなことは、この両国の申し合わせで私はやっていけると思います。ただ、専門家会議というのがございまして、いろいろな問題を、両国の利益を守り、正常な貿易を確保するために毎月やろうということになっておりますので、この問題はどうしても両国で、いろいろな事務的レベルで協議は行なう、これは両国の正常な貿易を確保するための手段であるということであって、その他の大きな問題に対しては、両国で理解をし得ないままやむを得ずというようなことは絶対に起こらないと確信をいたしております。
  76. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、サンクレメンテ会談の話し合いのとおり、閣僚間の会談はやらないと、そういうふうに理解していいんですか。
  77. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 具体的な案件のネゴシエーションを目的とした両国の正式な交渉は行なわない。しかし、よきパートナーでありますから、会ってやあやあというようなことは、それは当然あるわけでございますから、そういうことが私のさきの発言に触れるものだというふうには御理解いただかないようにお願いいたしたいと思います。
  78. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 次に、第四次貿易自由化によりますならば、小売り業は店舗数十一以上のものは個別審査、十一以下のものは外資比率五〇%まで自由化すると、こうきまっておりますね。ところが最近、ある新聞は「小売り外資の一〇〇%進出、単品扱い、実質認可、日米間ですでに合意」という見出しで、日米通商交渉での合意内容として次のように報じております。「「店舗総数十一店の範囲で取り扱い品を限定してもよいから一〇〇%の小売業の設立を認めてほしい」とのエバリー代表の要請に対し、牛場大使は「申請があれば好意的に配慮する」と答え、単品の外国品を扱う米国小売業の一〇〇%資本進出を事実上認めている。」、こういうふうに書いておるんです。しかも、その根拠は、政府あての公電であると、こういうふうに明記しております。これは事実かどうか、このような合意は存在するのか、お伺いいたしたい。  それから同時に、自動車販売業についても、外資一〇〇%の子会社の設立を認める、こういう合意があると言われておりますが、そのとおりかどうか、あわせてお尋ねいたしたいと思います。簡単に答えてください。
  79. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘のとおり、十一店舗まで単品を売るものであれば、五〇%まで外資進出は自由とするという原則は確立をされております。なお、五〇%をこえる一〇〇%のものということでございますが、これはひとつ読んでみます。「現行規制のもとでは、外資比率一〇〇%の小売業子会社設立は、自動的に認可しえないが、輸入単品を取り扱う外資比率一〇〇%の小売業子会社設立について、個別申請がなされた場合には、日本政府は当該事業の取扱品目を審査し、支障がないと認められる場合は、十一店舗の範囲内で当該申請の認可について十分に検討する用意がある。」、こういうことだけでございまして、これはいま読んだとおりでございまして、秘密も何もありません。これはもうこのとおり訳してございます。こういうことでございまして、御指摘のように、一〇〇%のものをいつでも入れます、などということはありません。
  80. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この自動車販売業のほかに、限定された品目を扱う小売り業の条件つきで小売り業全般を対象とすることは、流通業界に大きな影響を与えると予想されるにもかかわらず、公式文書である日米通商協議共同声明の中にはこれが出ていないんですね。少なくとも、普通の人が読んでも、このような合意のあることはわかりません。これらの合意はなぜ共同声明に書き込まれていないのか、その点を伺いたいと思います。
  81. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) こまかいこと、具体的な問題は事務当局から答えますが、五〇%までは自由化をします、こう言っておるわけです。五〇%以上の問題は日本政府が十分事情を検討し、申請があっても、検討して許可しない、許可するは日本政府がきめるという立場でございますから、これは、アメリカの問題に対しては無条件に許可をする、しかも、それは内諾を与えたというような事実は全くないということだけは御理解いただきたい。これを共同声明に盛らなかった——共同声明に盛るほどの実体を持つものではなかった。これは確実にこの基準は確定をしておるのでございますので、密約でもあれば、何とか共同声明の中に一応書くということがありますが、ないんですから、日本のきめた基準によってのみ決定されるということで御理解いただきたい。
  82. 山下英明

    政府委員(山下英明君) 補わしていただきますと、御承知のように六八年の閣議決定で、四段階の自由化作業をしてまいりまして、去年の秋にその第四次自由化を終えたわけでございます。資本自由化、その中では小売り業については十一店舗まで持って単品を扱う仕事を外国の会社がしたいと言った場合、五〇%までならば自由にいたしましょうと、こう自由化をきめたわけでございます。今回の日米通商にあたりまして、先方が、それはわかりましたが、五〇%以上、場合によっては一〇〇%で日本に進出したい会社があるが、その会社が日本政府に申請したならば、どういう認可方針もしくは認可しないとかいう基準で運用されますかという質問がありまして、その質問に対して、絶対に認可しないわけではない、先ほど大臣からお答えしましたように、支障がないと認められる場合はこれこれの範囲で検討する用意があると、こう大使が答える。それについては大使と東京政府の間で相談があったわけでございます。御指摘のとおりに、いろいろ問題がありますがゆえに、支障がないと認められる場合は、ということを先方に明確に申し述べてあります。
  83. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 では、この新聞の書いていることは事実で、「自動車について、外資一〇〇%の子会社の設置を前向きに認める。自動車以外の特定商品についても、検討の用意がある。」と、とうなっているのは、そのとおりなんですね。
  84. 山下英明

    政府委員(山下英明君) 要旨はそのとおりでございます。
  85. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私たちふしぎに思ったのは、政府の公文であるこの共同声明の中から、特にその「資本自由化の促進」という項目について、一、二、三とずっとあるわけですが、その四が抜けているわけです。なぜこの四を入れなかったのかということ。これは大臣は、入れなくでもそんなことは当然のことだ、わかっていることだから入れなかったとおっしゃるんですが、これが入っていないという点で私は問題があると思うんです。この部分、とても記者がかってに書ける問題ではない。だから、この問題は事実だと、それを政府が隠しておるんだというふうに私は理解したわけですが、こういうふうにやはり事実は事実として一般国民に、自動車はこうなんだということを私は明らかにすべき問題だと思うのです。それをことさら一、二、三と書いて、四のその項目の自動車をぱっとはずしているというところに、私たちがそういう疑惑を持つわけなのですね。こういうことがありますと、これ以外には一切、日米通商交渉の中に国民に隠している問題がないのかどうかということが問題になってくる一わけなのですね。だから、もしもそういうことがあるならば、大臣、やはり一切国民の前にこういうことは明らかにすべきが、これが政府の責任だと私は思うのです。これから政府は、こういうことに対して一切公表するということをここで確約されますかどうかということです。
  86. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日米共同声明の中にないということは、隠す意思があって書かなかったものでは全然ない、そこに特記するような重要性を持たなかったということでございます。これはそのように理解していただきたい。何もそうしたことを全部共同声明に入れるわけではありません。そういう意味で、全くそういう意味で特記がなかったと理解されたい。  それからもう一つは、アメリカと日本との間に国民に隠しているような事実は、通商に関してはありません。国民に知らしめる必要があるものは全部知らせます。通商問題でありますので、これは話し合いがあっておって輸出ができなかったというのではたいへんなことになりますから、そういうようなことは一切いたしません。それから、これから全部出せということを言われましたが、いままでも全部出したのです。いままで出していないから今度は全部出せというふうにおとりにならないように、いままでも、国民の利益を守るために通商産業省はあるのだという考えですべての情報を提供いたしておりますし、隠しているものはない。これからも隠す意思はないということだけで御理解いただきたいと思います。
  87. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 最後に一言。やはり繊維交渉のときに、総理がニクソン大統領との間に繊維問題についてある取引を約束をしてきたということが業界の中でも言われて、それ事実明らかになってきていると思うのですよね。だからやはり政府は、こういう通商関係においても国民の前に明らかにしていない問題があるのじゃないかと、それで私は一つの例として、一、二、三とあって四が共同声明の中に、文章の中に抜けているのもそういうことではないかという点を指摘したのです。だから、今後はそういうことを一切なさらぬと、これからは通商関係の問題などは一切国民の前に明らかにしていくということをはっきりと確認していただきたい、そうしていただきたいと思うのです。
  88. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 過去もなかったということを前提にしていただきたい。これからも——いまもない、将来もそういうことは隠しごとはいたしませんということを申し上げます。
  89. 大森久司

    委員長大森久司君) ほかに御発言がなければ、本日の質疑はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十四分散会