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参考人(
水野肇君)
水野肇です。
十分間ということでございますので、総括的なことしか申し上げられないとは思うのでありますが、率直に申しまして、私はこの
法案というのは、もしも三年前にこの場に出ておりましたのでございましたならばもろ手をあげて大賛成したい、そういう気持ちでございます。ただ時期としましてはいささかおそかったという
感じは持っておりますけれ
ども、出ました
法案につきましては比較的たとえば、
先ほど来、
高田さんからもお話の出ました
食品問題等懇談会の
答申をきわめて尊重しているという点において、私は評価すべき点が多々あるのではないかと思われるわけであります。で、私も幾つかの
懇談会とか
審議会等に出さしていただいておりますが、
答申案がこれだけ尊重されましたのは、少なくとも私の知っております
範囲ではこれが初めてであるというふうな印象を持っておりまして、その点は確かに評価できるわけでございます。しかもそこに盛られました
思想というものは、でき得れば今後の
厚生行政全体が、
最低この線で進んでいただければ
国民も非常にしあわせになるのではないかというふうなぐあいにも思っております。まあ、評価すべき点につきましては、
先生方もそれぞれごらんになっておりますとおりではないかと思いますが、要するに、疑わしきは使用せずということを表に出してきたということ、まあ当然だと言ってしまえばそれまでですけれ
ども、それがやはりかっちりした形で出てきたという点がまず
一つあげられるのではないか。
それから、これからサイエンスの発達によってどういう
食品が出てくるかもわからないということに対しての、いわばひょっとすればひょっとするような、危険な
食品についての予防線も
幾らかは張られたと、こういう点、あるいは
検査体制、これはいろいろ問題があるとは思いますけれ
ども、これはまあ半歩前進しておる。それから
業者の
責任の
強化とか、あるいは
調査会の
意見を聞くことを明文化しておる、あるいは
調査会のメンバーについては、
学識経験者以外は入れないというふうなことがはっきりさせられたということにつきましては、それぞれにやはり前進ではないかと思われます。
しかし、そうは申しますものの、やはり
問題点がないことはないわけでございまして、まず第一番に
問題点として指摘できる点は、これは
厚生当局にそういうことを申し上げるのはちょっと無理かとは思うんでございますけれ
ども、やはり私は、
食品行政というものは単に
厚生省一局だけでやれるものではないという点が非常に重要なのではないかと思っておるわけであります。御承知のように、これは
厚生省はもとよりでございますが、
公正取引委員会、
経済企画庁、通産省、
農林省、そしてまたこまかい点では運輸省あるいは大蔵、自治、それに法務といったところが全部関連しておるわけでございます。で、こういう問題を
ほんとうにやるためには、私はやはり少なくとも、たとえば
アメリカのFDAがやっておりますような
食品・
医薬品庁というふうな、
最低そういう形にしなければ、やはり
ほんとうの
行政の妙味というものは出ないのではないか。しかしそれをつくりますためには、
環境庁がつくられましたときのいきさつと同じように、総理が決断するというふうなことがない限りは、ちょっと今日の
行政ではむずかしいかとは思うのでございますけれ
ども、お願いいたしたい点としてはやはりそういう
言い方もできようかと思うわけであります。と申しますのは、やはり
縦割りの問題と
横割りの問題というものは、今日あらゆる
行政において全部引っかかるところがあるわけであります。それが単に
システム化ということだけでそういう問題が解決できるのかというと、現実にはそうはいかないことが多々あると、そういった点において、私はやはりそういうことが言い得るのではないかと思うのであります。
それから、こまかい点につきましては、
高田先生がおっしゃいましたことと私も大体同じように思うわけでありますが、おっしゃらなかった点だけを時間もないのでまず一番に申し上げますと、私はやはり、
国民がなぜ
食品について不安を持っておるか、あるいは
食品行政というものについてどういうふうに考えていくかということの中で、一番大きな問題というのは、不安を持っておるということではないかと思うのであります。きわめて率直な
言い方をいたしましたならば、それは、何かを食べるときに、これはだいじょうぶかしらと思うということ、これがやはり非常に私は
一つの不安につながっておるんではないかと思うんであります。その点につきましては、このような
改正法案が出て、かっちりとした
姿勢を
厚生省が見せる、あるいは国会が示していただけるということが、何よりもその不安を除去することであることは申すまでもないのでありますが、もう
一つの点といたしましては、私はやはり
情報というものが今日
食品公害につきましては必ずしも十分ではないということが指摘できるのではないかと思うんであります。つまり、これがかりに不安、これはだいじょうぶかしらと思ったときに、どこに聞いていっていいかということについては、ほとんどわからないわけであります。それは
法律の
改正ということとは
関係がないかもわかりませんけれ
ども、私はやはり
情報をどういうふうに提供していくか、つまり、
情報をとってくることと、それからその
情報をどういう形で
行政ルートで流すかという、この二つの点において今後大いなる努力をお願いしたいと思うわけであります。まあこまかいことでございますけれ
ども、たとえば
各省から出ております
アタッシェというのは、非常に各国にたくさん出ております。しかし
厚生省から出ております
アタッシェというのは
アメリカにたった一人、それもほんの一年半ぐらいだったと思いますが、前から置かれておるにすぎないわけであります。しかし、何でも
アメリカということではございませんで、たとえばこういう問題、あるいは薬に対する問題なんかを見ますと、
イギリスの行き方というものについてはかなり学者の間では評価されている面もあるわけであります。まあ、これはほんの一例でございますけれ
ども、やはりとってくる側にもいろいろと問題がありはしないかということが
一つと、それから、さて、その
情報をどういうふうにやっていくか、この点につきましては、確かに
厚生省から県、県から保健所というものについては一本のルートが、
公衆衛生行政の中では、あるいは環境
衛生行政の中では、世界に比類を見ないぐらい数多くあるわけでございますけれ
ども、はたしてこういうものが
情報について完全に対応
姿勢をとっておるかと申しますと、そうではないというふうに私は思うわけであります。その点につきましては保健所問題
懇談会等がただいま審議中でございますけれ
ども、やはり保健所がいいか悪いかは別といたしまして、そういうような
情報提供ルートというものがきっちりした形でなされなければならないのではないかと思うんであります。現に幾つかの県では、県の段階でそういう
情報センターをつくっておるところもございます。それは、やはり県民の要望というものに対して、知事がそれにこたえておるという形をとっておるわけでございますけれ
ども、これは私はやはり、
ほんとうは国がおやりいただいたほうが、
国民としては、より一そうの安心感が出てくるのではないかと思います。
それから、もう一点申し上げてみたいと思いますことは、私は、これは
高田さんがおっしゃいましたからあんまり詳しくは申し上げませんが、やはり五千五百人では足らない、
最低一万人要るというのが常識になっております、これは
検査体制でございますが。そういうようなことをはじめ、いろいろなものがあるということが
一つと、それから私は、この
法律が実際にかりに可決されまして運用される段階になりまして、やはり残る問題というのは、
業者の自覚と
責任ということがかなり重要なんではないかと思うんであります。いろいろ御
意見、見方等はあるかもわかりませんけれ
ども、私は、やはり口から入るものをおつくりになる
業者と申しますか生産者というのは、それ相応のやはり
検査能力を持ち、かつまた、その、もしもというときについては対応
姿勢がとれるだけの能力があるということが
ほんとうは前提なんではないかと思うんであります。そういう点で、きわめて
業者の自覚と
責任は強く要望されるわけなんでありますけれ
ども、これが明文化される、されないは別といたしまして、ただ罰則を強めるということだけではなくて、より一そうの
行政指導というものが期待されなければ、この問題というのは、やはり
ほんとうにはホール・ストーリーの解決とはならないのではないかと、まあそんなように私は考えております。
まあそのほか、要するに総合
行政という
見地から見ましても、
高田先生の御指摘になりましたように、
食品統一法というものは私たちの望むべき点でございます。
それから
懇談会の
答申、若干それがネグられたというのではないと思いますけれ
ども、いろいろ
理由はあるんだと思いますが、救済措置というものについて、やはり公害等に準じたやり方をしていただきたいということが
答申案では出ておるわけでございますけれ
ども、この辺について、まあ、もう少し明確であったほうがより一そう
国民も安心したんではないか、そんなようなぐあいに思っておるわけであります。
まあ大体十分になりましたので、この程度でとりあえず失礼します。