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参考人(
中野光雄君)
松山の問題について
組合側の
立場から意見を若干申し述べたいと思います。
まず
最初に、
松山日赤問題の今次
争議の基本的な性格について申したいと思います。
それは、
人事部長その他の方も
院長も触れたと思いますけれ
ども、要するに
労働組合と
病院側とで
昭和三十四年以降十年間にわたって話し合って取りきめてきた
労働条件について、それを取り上げる。言いかえますと、そうした労使が円満に話し合って取りきめてきた
労働条件を取り上げることが使命である。そのために前
院長、
事務部長を
更迭したんだ。こういうふうに
本社は言っておりますが、
組合から申しますならば、
労働条件の
改善というものは、今日日本のGNPの
伸びからいたしましても、あるいはまた物価上昇の
状態から申しましても、当然
労働条件が日々積み重ねられて
改善される方向を目ざすことは当然のことだと思うのです。それを逆に取り上げることが使命であるということは、一体、特に人間の命と健康を守る
職場において、
患者を持つ
職場において、円満な運営が期待されるかどうかというような点から考えましても、非常に問題があるところでございます。そういう
状態の中で
松山日赤労組は、
昭和四十四年の年末一時金においては、
本社が支給しておる、あるいは指示をしておる年末一時金より約一カ月少ない一時金で妥結をいたしました。
昭和四十五年の年末一時金においては、さらに当時の
本社の一応指示ワクと称する規定よりも〇・六カ月分低い一時金でがまんをしたわけです。にもかかわらず
病院側は
昭和四十六年の年末諸
要求に対しましてはほとんどの日赤
関係の
病院が三・一カ月
プラス二千五百円以上という線で解決しておるにもかかわらず、
松山だけは一・二カ月
プラス二千五百円しか払えない、こういう態度で終始一貫をしてきておるわけでございます。そうして、いま新
病棟が建設されておりますけれ
ども、そういう
状況の中で
労働組合の
労働条件を引き下げ、そうして
労働強化をはかる、言うなればそういう
組合と結んだ諸権利を奪うことによって
病院経営の方向を考えるといううしろ向きの姿勢を示してきておるわけでございます。
団体交渉の
経過についてはいま
病院長が触れましたけれ
ども、この中で特に重要なのは、
団体交渉に対する
病院側の態度は終始一貫して、そうした一・二カ月以上は出せないのだ、
本社規程外と称するものを返すならば三・一払う用意がある。
本社規程外十四
項目とは一体何ぞやという点については二、三
説明はされておりますけれ
ども、十四
項目全体については明らかにされておらない。こうした態度をとりながら十日の
団体交渉では途中で退席をする、そういう態度に出ております。さらにまた十六日の
団体交渉では、
組合が、もしほんとうに
病院が
赤字で困るというならば、その
内容を明らかにしてほしい。そうしないと、
組合の
立場から言うならば、
組合員に理解を深めるためにも
赤字の
理由を詳細に出してほしいと言いますと、それは
管理権の侵害だ。
団体交渉は拒否する。
組合がそれは
団体交渉を拒否するのかと追及いたしますと、
団交拒否と受け取ってもよろしい。こういうふうにして全員退席をする。そうして、同日付をもって十年間の
労働協約全部を破棄をするというような
通告が十六日付で、十七日に
内容証明づきで速達で
組合並びに
組合三役に送られてくる。こういうような態度でございます。したがって、ここにはもはや公的医療機関という使命を放棄して、
団体交渉で労使が対等の原則に立って話し合って問題を解決しようとする態度は見られませんでした。
団体交渉は単なる形式である。こういうようなことでほんとうに円満に解決することができるかどうかという点が非常に問題だと思うところでございます。しかしながら、
組合は、そういう
病院側の態度でございましたけれ
ども、年末を控えまして、どうして年越しをするかというような問題もございましたので、再度、
病院が
団体交渉拒否の態度に出ておったけれ
ども、二十五日に
団体交渉を持つようにということで申し入れをしたわけです。そうして、この
団体交渉でさらに年末一時金等について前進するように再考を促しましたけれ
ども、回答は依然として変わらない、こういう態度を示されるに至ったわけです。そうして十二月二十七日には年末一時金一・二
プラス一律二千五百円を一方的に支給する、こういう態度が出てまいりました。
松山においてはかつて
昭和四十三年の夏期一時金をめぐる
争議がございまして、その際
愛媛地方労働委員会のあっせんによりまして、十月三十日にあっせん案が提示された際、
院長は、今後医療の
公共性を考える場合に、労使が円満な運営をしていくためには、一方的支給というような
組合を無視するような態度は今後はいたしません。こういうことを第三者機関の前で言っておきながら、さらに一・二カ月という形で一方支給をする、こういう態度に出てきたわけです。したがって、
組合は、憲法二十八条並びに労組法で保障されておるいわゆる
争議権を行使する。こういうことを十二月の十五日に
通告をしました。しかしながら、私
どもは
争議行為をし、
ストライキをすることが目的ではございません。問題は、どう労使が円満に解決するかということが目的でございます。したがって、実際には二十五日以降
ストライキができる
状態でありましたけれ
ども、そういう一方支給というような無謀な仕打ち、あるいは
労働協約を全部破棄するというような予想もできないような
状態の中にもかかわらず、私
どもは隠忍を重ねてまいりました。そうして、何とか事態を打開しようという
立場から一カ月以上も待ってきましたけれ
ども、すでに私たちは一・二カ月という点についてはそういう一方支給は受け取りかねるということで拒否をして、
組合はいまでもこの年末一時金を受け取っておらないという
状態が続いております。そういう
状態の中ですから、一月二十八日に私たちは
ストライキを決意して、そういう
状態の中で何とか打開の道を講じようといたしましたが、
病院側はその前日からすでに約四十名の
患者を退院させ、一月二十八日の
ストライキに入るや、入院の受付を拒否する。そうして、まだ入院加療をしなければならない人を半強制的に、約四十名
程度退院させる。こういうような態度に出てまいりましたので、
組合は医療と
患者を守るために一時間で
ストライキを打ち切ったわけです。そうして、
外来部門においては、
保安協定こそできませんでしたけれ
ども、
外来各科の
看護婦を配置し、そうして、小児科、救急、予約、そういう人々に対しては無条件に診療を受けさせる。そうして、
病院で診療を受けたいという希望のある人はやはり診療を受けさせる。こういう行動をとりました。
病院の中には保安要員を、
病棟には当日の深夜
勤務者をそのまま残して、万全の人道的
立場から私
どもは
争議行為、いわゆる
ストライキという効果からは、そういう保安要員については、先ほ
ども院長が申しましたように、五十名の
医師や非
組合員がたくさんおりますから、したがって、置く必要はございませんけれ
ども、人道的
立場から私たちは当日の夜勤
勤務者を
病棟に残して、そうして、場合によっては
患者の処置も
組合の指示でさせる。こういうことを行なってまいったわけです。そうして、
病院側に対して反省を促してきましたけれ
ども、何ら反省の色が見えませんでした。そこで、二月の二十六日から深夜勤の
ストライキに入りました。しかし、このときも当日の深夜
勤務者を全員保安要員として各
病棟に残しました。ところが
病院側は
保安協定がないんだからおまえたちは
病棟から出ていけ、こういうような態度を示しました。しかし、
組合といたしましては、やはり人道的
立場からできるだけ
病棟に残して、そうして
病院側が配置しました当日の夜間
勤務者が処置をしない場合には、確認をして
組合の指示に従って処置した
部分もありたわけです。
そのような
状態で私たちは今日に至っておりますが、その間、
病院は、十二月の二十六日に労調法三十七条に基づきまして
争議行為の予告申請を行ない、十日間の
期限が切れるや、
病棟閉鎖、ロックアウトといういわゆる違法な行為に出てまいったわけです。そういう
状態の中で今日に至りましたが、そうしたことで、今日では
愛媛地労委の職権あっせんによって一応土俵の上に乗る、こういうような
状態になっております。
ここで
一つ問題なのは、なぜ
病院側はそういう態度に出るのか、これに対して
本社は一体どのように
指導をし、どのようないわゆる公的医療機関の使命について考えてしたのであろうか、私たちはその点について疑わざるを得ません。
例を申し上げますならば、
本社と本部間で昨年の
賃金を取りきめました。そうして十月から新しい
賃金に切りかえ、そうして
実施は八月ということでございますけれ
ども、実際には、
松山においては、十二月の末までそういう
本社、本部間できめたことすら
実施されない。これは一体当事者能力というものを
本社はどう考えておるのか。
独立採算というたてまえ上、
病院側にそういう当事者能力を移しておるのかどうか、こういう点にも非常に問題があると思うのです。そうして、一方において、
労働条件において私
どもが通常考えます場合は、何といっても労使できめたものが
労働条件だと思うし、
協定だと思うのです。いわゆる
本社がかってに一方的に規程を定めたことが
労働者を拘束する。そういうことであってはならないのではないかと思うと同時に、いまの日赤は、先ほ
ども初任給なんかもばらばらとおっしゃっておるように、いろいろな手当その他につきましてもそれぞれの
地域の
病院の環境及び
歴史、実態、そういうような点で、
松山に限らず、各所の
病院、
組合間において円満な運営をはかるためにいろんな取りきめが当然なされておるわけでございます。したがって、今日の社会において私
どもはいまの医療保険制度そのものに大きな問題点があるというふうに理解をいたしております。したがって、日赤
病院に限らず、公的医療機関は軒並みに、大体あたりまえの看護をやるとするならば
赤字の傾向をたどっておるのは、単に
松山だけではなく、日赤だけではなく、各種の公的医療機関はそういう傾向をたどっておると思うのです。したがって、そういう点に対する解決は、そこに働いている医療
労働者にしわ寄せをし、そこに入院している
患者にしわ寄せをする。そういうことによって解決するのではなくて、大きく保険制度のあり方、そういう欠陥、矛盾をついて、
政府なり何なりに
病院経営の責任ある
立場から
要求して解決していくことこそ本筋ではないかと、私はそう思うわけです。したがって、十年間築き上げられてきた
労働条件が、それを一方的に破棄
通告をする。なぜ、
病院長はそういうことをやったのかというと、先ほ
ども、
本社そのものが言ったように、現場における労使
関係に
本社がうしろから、その
歴史と環境と
事情を考慮せずして、それを取り上げさせることが
病院長の使命である、こういうような押しつけ方では、現場の労使が円満にいくはずはないと思うのです。私
どもはそういう点について……。