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国務大臣(
大石武一君) 何と御返事していいかわかりませんが、私も、このチッソの
——ことに認定ということばはおきらいだとのお話でございますが、なるほどこれはあまりあたたかいことばではございません。でございますが、やはり
行政というものは法律を
基礎としてやらなきゃならぬのでございますので、やはり一応認定ということばを使わなければなりませんので、これはひとつかんべんしていただきたいと思いますが、御承知のように、水俣病の認定ということにつきましては、かなりきびしい
基準がございまして、それに合格した者のみが認定されてまいったわけでございます。認定されますと、いわゆる
公害病患者としてのいろいろな手当その他を受けることになるわけでございます。それは御承知のことでございますが、私が
環境庁に参りましてから、九名の方々の、ことにこの認定をめぐっての提訴というのか、不認定に対する不服の申請があったわけでございます。認定に変えてほしいという。それでいろいろ
検討しました結果、御承知のいきさつによりまして新しくいろいろな患者がさらに認定されたわけでございます。
そのおり、私どもは、要するに患者
救済法という法律がございますが、その法律の精神は、できるだけ患者を広く
救済せいと、少し疑わしい、多少疑わしい
——疑わしいというのは、われわれが普通一般に言う、あの人は怪しい人だ、疑わしい人という意味でなくて、医学的に疑わしいということばは大体その病気を指すのでございますが、ちょっと普通われわれが日常生活で使うことばと医学的に使う疑わしいというのは、意味、考え方が違うのでございます。疑わしいというのは、
基礎がある、根拠があってもなくても疑わしいということばを使いますけれども、医学的の疑わしい、この病気の疑いというのは、大体病気であって、それからはっきりきめるのには多少まだ疑問があるという程度のものが疑わしいというのでございますから、相当の
基礎があるのでございます。そのような疑わしい患者につきましては、できるだけ広く
救済したらよかろうという精神であるという解釈をいたしまして、そのような認定のしかた、患者の見方について、熊本県当局にそのような話をしたわけでございます。その結果、やはりその範囲が広くなりまして、医学的にいわゆる水俣病の疑いのある患者がその後だいぶ認定されまして、だいぶ
救済の手が広がってまいりました。今後とも、私は、このような方針で、やはり自分が何も落ち度がなくてもそのような不幸な目にあわれる人のためには、できるだけ広く
救済の手を広げることが必要であるという考えのもとに、この方針を続けてまいりたいと思います。
ただ、その場合に、もちろん
公害患者としての認定を受けますと、いろんな手当なり、
医療手当その他の手当を受けますけれども、問題は、生活なり、病気の補償の問題がございます。これにつきましては、一応われわれとしては、いまのところ、何としても手をつけるわけにはまいりませんので、やはり責任は企業にあるということになっておりますから、企業とその患者さんの間の話し合いにおいて、その責任を持ってもらうような直接の交渉になっておるわけでございます。そのためには、御承知のような、以前には千種
委員会という
委員会がつくられまして、その
委員会の
判断によりまして補償の問題の一部が解決しておるわけでございます。しかし、これに不服の方は、いわゆる裁判を起こされまして、訴訟されておるわけでございます。ところが、御承知のように、総理府の中に、この
公害問題に関連しまして
公害審査
委員会というものがございまして、いろいろと補償の問題だとか、そういう問題につきましては審査
委員会にこれを持ち込めば、そこでいろいろと審査をして
判断をしてくれる。いまのところは裁判上の根拠ありませんから、これの法的な強制的な権限はありませんけれども、
判断をしてくれるという
委員会がございます。そこに提訴しまして、そこで
判断をしてもらうことも
一つの方法でございます。いろんな方法があるわけでございます。
いま、御承知のように、千種
委員会に従って補償を受けられた方と、それに不満で訴訟されている方と、それから
会社側が希望して、患者さんも同意されて審査
委員会に申し出られた方と、もう
一つは、いま問題になっておりますようなすわり込みの患者の方々ですね、
会社側と直接交渉によって補償をきめたいと。この四つの行き方があるのでございます。私どもは、すべてとにかくこういうものは円満に解決して、安心して療養しながらりっぱな生活が、りっぱと申しても人間的なりっぱな生活ができるような補償であることを心から願っているわけでございます。
ただ、今度のすわり込みにつきましては、この
会社との交渉がうまくいきませんで、あのような寒空にすわり込みの問題を起こしたことは、非常に残念でございます。こういう問題は非常に憂慮すべきことでございますので、何としてもこういう問題を一日も早く解決してほしいと心から願っておりました。しかし、私どもがそこの中に、いわゆるとめ役に入っていいのかどうかわかりません。権限があるかどうかわかりませんけれども、とにかく人間としてとういうものは早くやめてほしいという希望がございまして、そういう考えを持っておりましたが、幸いに多くの方々からも、たとえばここにおられる小平芳平先生はじめ公明党の方々や、総評の方々や、あるいはわが党の議員の方々でございますが、そういう方々に、おまえ、ぜひ中に入ってあのすわり込みをやめさせるようにして、ほしいという、いろいろな御希望がございました。ようやく、そういうことで、皆さんの
協力によりまして大体話し合いがつきまして、今度はお互いにいままでの主張を捨てて、白紙の立場で土俵に上がってお互い直接折衝することになってまいりましたので、私としましても、非常に喜んでいるわけでございます。私としては、自分の立場もございますので、この両者が土俵に上がって、お互いに率直な立場で、考え方で、いままでのこだわりを捨てて、行きがかりを捨てて話し合いをして、できるだけりっぱな解決をされるように
努力いたしますが、その土俵づくりまでは私はいたしますけれども、それ以上はできません。しかし、やはりだれかがそこに仲人がいて、仲介役がいなければ話がスムーズにいかないと思います。そういうことで、幸いに地元の沢田熊本県知事が自分がやろうという意欲を、情熱を持っておられますので、患者さんのほうも
会社側のほうも、沢田さんでけっこうであると認めましたので、ひとつ沢田さんに仲介を進めてもらって、この問題をできるだけりっぱに、患者側の補償がうまくいきますように心から願っているわけでございます。
もちろん、私としては、そこから逃げる気はありません。私は、ずいぶん水俣のことについては知っているつもりでおりましたが、やはり患者の代表の方々にお会いして話を聞きますと、それはなるほどお話を聞いてよかったと思いました。さらに、私はいままで水俣に
調査に行くことまでやっておりませんでしたが、その話を聞いて、やはりこれは何としても水俣に行って実態を見、患者さんの話を聞くことが一番大事であると考えます。そういう意味で、今月中にはぜひ一度行ってまいる方針でおりますが、そういうことで、私は、やはり何としてもこの土俵に入っていただくように自分が乗り出したのでございますから、何としても逃げる気はありません。
最後までも、もちろん公の立場とか、そういうのは別として、
最後までできるだけ
協力してこれを解決するように
努力してまいる決意でございます。