運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1972-06-12 第68回国会 参議院 交通安全対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月十二日(月曜日)    午後一時十四分開会     —————————————    委員異動  六月十日     辞任         補欠選任      中村 波男君     川村 清一君      野上  元君     前川  旦君  六月十二日     辞任         補欠選任      橘  直治君     中村 登美君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤原 道子君     理 事                 岡本  悟君                 二木 謙吾君                 阿具根 登君                 原田  立君                柴田利右エ門君     委 員                 岩本 政一君                 鬼丸 勝之君                 黒住 忠行君                 中村 禎二君                 中村 登美君                 橋本 繁蔵君                 矢野  登君                 川村 清一君                 前川  旦君                 阿部 憲一君    国務大臣        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君    政府委員        運輸政務次官   佐藤 孝行君        運輸省海運局長  鈴木 珊吉君        運輸省船員局長  佐原  亨君        海上保安庁長官  手塚 良成君        海上保安庁次長  須賀貞之助君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田善次郎君    説明員        水産庁漁政部長  田中 慶二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○海上交通安全法案内閣提出衆議院送付) ○交通安全対策樹立に関する調査  (派遣委員報告)     —————————————
  2. 藤原道子

    委員長藤原道子君) ただいまから交通安全対策特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告をいたします。  去る十日中村波男君及び野上元君が委員辞任され、その補欠として川村清一君及び前川旦君が選任されました。     —————————————
  3. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 次に、海上交通安全法案を議題といたします。  まず派遣委員報告を聴取いたします。阿具根君。
  4. 阿具根登

    ○阿具根登君 本法案の審査に資するための委員派遣の御報告をいたします。  派遣委員は、藤原委員長二木委員原田委員柴田委員橋本委員及び私の六人で、去る六月七日から二日間にわたり兵庫県並びに愛知県に調査を行なってまいりました。  現地におきましては、海上保安庁地方機関等における管内事情と、兵庫愛知三重の各県、漁業並びに海難防止協会関係者から要望を聴取したほか、本法案において予定されている明石海峡航路及び伊良湖水道航路を視察いたしましたので、その概要について申し上げます。  まず、第五管区海上保安本部管内における四十六年の海難事故は、船位不確認、操船不適切等に原因する衝突、乗揚げ等の事故多発により、全国の海難事故件数の約一六%を占めており、特に港内及び明石海峡等の狭水道海上交通のふくそうしている海域において最も多く発生しております。  また、明石海峡航路における一日平均船舶通航量は一千五百四十四隻に達し、このうち、巨大船が六ないし七隻の多きを数え、加えて水路が屈曲し、潮流が速いことなどのため、海難多発海域となっておりますが、このため同海峡附近に常時、巡視船艇を配備するとともに航法指導を行なっておるとのことであります。  次に、関係方面からの要望あるいは意見について申し上げます。  まず、兵庫県から、  (一) 明石海峡航路設定に反対しないが、漁業   が制約されるため漁業振興について特別の施   策を講ずること、  (二) 原因不明の流出油あて逃げ等による被害   漁業者に対する救済措置を講ずること、  (三) 政省令制定に際して関係者意見を反映   させること等について、  次に、明石瀬戸漁業協議会及び淡路島の岩屋漁業協同組合から、  (一) 内湾漁業振興対策を確立するとともに、漁   業と船舶航行区域の調整をはかること、  (二) 巨大船避航による漁業操業の制約に伴い新   漁場の開発等の恒久的な制度を検討すること   等について、  次に、神戸海難防止研究会から、  (一) 巨大船以外の船舶については、特水令を廃   止することにより混乱を生ずるため、本法の   運用において十分配慮すること、  (二) 航路標識の増設をすすめる等交通環境を整   備すること、  (三) 本法のPRを徹底させること等についてそ   れぞれ説明がありました。  次に、第四管区海上保安本部管内における海難事故は、前年と比較して増加しており、しかもこれが主として名古屋港及び伊勢湾口附近に集中しております。このため、同湾口附近に常時、巡視船艇を配備する等の救難即応体制整備しておるとのことであります。  また、伊良湖水道航路における一日平均船舶通航量は四百五十八隻に達し、このうち巨大船が二ないし三隻を占めておりますが、一方、同航路は、地形的に直接外洋に接しているため、強風波浪等の気象、海象条件がきびしいので、巡視船艇による重点的な警戒を行なっておるとのことであります。  次に、各関係方面からの要望あるいは意見について申し上げます。  まず、愛知県及び三重県から、兵庫県と同趣旨説明がありましたが、特に、伊勢湾内における漁業は、伊良潮水道に集中しているので交通規制必要最低限度とするとともに十分な漁業振興対策を講ずること、  次に、愛知県の豊浜漁業協同組合から、現在、大型船通航に際してはすでに自主的に操業規制を行ない海難事故防止につとめ多大の成果をあげているので法の制定は不要であること、  次に、三重県の菅島及び神島漁業協同組合から、本法制定は、沿岸漁民の生活に大きな影響を及ぼすものであり、むしろ臨海部工業開発を抑制し、あるいは巨大船の入湾規制を行なうべきものであること、  次に、伊勢湾海難防止協会から、巨大船の入湾を制限するため、パイプラインの整備を促進すること、  最後に、名古屋海運懇話会から、本法案において、漁ろう船等は、一般船舶に対しては進航義務を有しないこととされているが、これについては不満であること等についてそれぞれ説明がありました。  以上御報告を終わります。
  5. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 別に御発言もなければ、派遣委員報告はこれをもって終了いたします。  これより本案に対する質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  6. 前川旦

    前川旦君 きょうは先ほどの理事会で社会党に与えられました時間が短うございますので、できるだけ時間の中に入るように簡潔に質問をしてまいりたいと思います。  まずこの法案を作成するにあたりまして、漁業に対して運輸省はどういう態度で作成に臨まれましたか。御承知のように、数年前からこの法案は問題になっていた法案であります。一部の特定の大きな企業の経済に奉仕するために零細な漁民を犠牲にする、こういう批判が非常に強く上がっていることは大臣承知のとおりであります。したがって、この法案そのものも、最初の原案国会提案されました案とではだいぶ内容も変わっております。そういうことを通じまして零細漁業というものに対してどのような姿勢態度で取り組まれたか、まず、この点をお尋ねしたいと思います。
  7. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいまの当然の御指摘をいただきまして、実は御承知のとおり、この海上の安全を確保するというために現在の諸法制におきましてはどうしても不満である、何とか法制の整備をしたいということが運輸省のこの四、五年間の念願でございまして、それをいかにしてやるかということでございますが、やはり一番の大きな問題は、漁業との間の、漁業に従事する皆さま権益をいかにして守るかということの調和の問題が非常に難関でございまして、それがために再三苦闘いたしましたけれども、ついに国会提案に至らなかったということが御承知のとおりの実情でございます。しかしながら、御承知のとおり海上の輸送は非常に重大になってまいりましたので、何とかこれをしなくちゃいかぬということで、私、就任以来交通安全対策ということを運輸行政の一番の根本と心得ておりましてそれらの整備をしておりますので、これを何とかしなくちゃいかぬ。しかしながら、これをするのにはどうしても漁民皆さまとの調和をはからなければいかぬ、これが一番の問題でございますので、私ごとを申し上げてはなはだ恐縮でございますが、私のほうの佐藤政務次官、この方は御承知のとおり長年漁民代表としていままでずっと漁業方面で活躍をなされまして、そして国会に御選出になりましてからもそっちの水産漁民代表として漁民権益のためにずっと奮闘されてこられた方でございます。ちょうどいい方を得たものでございますので、この方に実は私お願いをいたしまして、漁民立場を十分に考え、しかも調和のとれる案をつくっていただきたいということで、事務当局そして佐藤政務次官とで勘案をしてもらいまして、まず第一番目にそれをつかさどる農林省、水産庁と十分に協議をいたしまして、この程度ならば——それはいろいろ問題がございましょうけれども——ある程度漁民の方も御納得をいただけるのじゃないかということ、そして原案をつくりましたけれども、そのことは、漁民サイドに立って譲ると申しますか、「譲る」と申しますとはなはだ恐縮でございますが、初めから、これは当然のことでございますが、漁民サイドで十分勘案しようということで、修正すべきところは十分修正させまして、そして今回提案を見た次第でございます。しかしながら、この点につきましてもやはり見方によりましてはまだまだいろいろ問題があろうかと思う次第でございますが、実は私ども与党自民党の党内においては非常にこれは問題でございまして、それから衆議院の論議におきましてもいろいろございました。私ども誠意をもってそういう将来の問題につきましてもいろいろ勘案をするというようなことを申し上げまして御了解を得た次第でございますので、いろいろ御審議を通じましてそういう点を指摘していただきまして、漁民皆さま利益もそこなわないように将来の行政として処置してまいりたいと思う次第でございますので、十分ひとつ御審議を尽くしていただきたい、こういうふうに思う次第でございます。
  8. 前川旦

    前川旦君 運輸大臣も連日でお疲れでしょうからどうぞすわったままで御答弁いただきたい。  この法案と別に従来特定水域航行令というのがありましたが、この関連はどうなりましょうか。特定水域航行令は、もしこの法案が成立するとなるともう全部廃止されるということになりましょうか。
  9. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) この点は御承知のとおり特定水域航行令瀬戸内だけを目標としてつくられたものでございまして、ただいま御承知のとおり船舶のふくそうは瀬戸内だけじゃございません。東京湾伊勢湾に及んでいる次第でございますからこういうふうな法案を出した次第でございまするので、これができますれば直ちにこれを廃止するということになると思う次第でございます。
  10. 前川旦

    前川旦君 事務当局にお尋ねをいたします。水産庁見えていますが、私どもの計算では、この法律によって影響を受ける漁業関係者八県百八十七漁港、漁民にして四万七千九百人、水揚げにして八十万トン、金額にして千三百十七億という数字を得ておりまするけれども、大体こういうことでありましょうか。
  11. 田中慶二

    説明員田中慶二君) この法律に関連いたしまして漁業にどういうふうな影響があるかということははなはだもって特定しがたいのでございますけれども、たとえばこの東京湾伊勢湾瀬戸内海というところでどの程度漁獲量があるかということを申しますと、大体いまお話しのような、漁獲量にいたしまして八十万トン、金額にいたしまして百三十一億というふうなことになっております。操業隻数にいたしまして十二万隻、従業者数二万五千というふうな数字に相なっております。
  12. 前川旦

    前川旦君 私は一つけたを間違ったのかもしれませんが、いまの金額、読み間違えましたが、続いてこの法案の中身に入ってまいりたいと思います。政府委員の方に一つ一つお尋ねしていきます。  まず第一条の第二項一、二、三、四号と四つあります。この第四号を、水産庁合意でこれをこの法律の第一条の中に入れたということを伺いましたが、これはどういう意味を持っているのか、水産庁にお尋ねいたします。
  13. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 初め、この海上交通安全法適用になります海域は、東京湾伊勢湾瀬戸内海という中で一号から三号まで除いたところ全部だというお話がございました。しかしながら、そういうように全域を広げる必要がないんじゃないか。特に大体漁船だけが航行をしている——この四号には「漁船以外の船舶が通常航行していない海域」ということですが、裏返してみれば、大体漁船だけが航行している海域はこれを適用しなくてもいいんではないかというふうなことを申し上げておるわけでございます。したがいまして、大体私どもといたしましては、現在の漁業権が存在をいたしておりますような海域を考慮をしてこういう除外海域をきめていくというふうなお話し合いをしているところでございます。
  14. 前川旦

    前川旦君 「政令で定める海域」とありますが、この政令は、運輸省でおきめになるときに水産庁合意決定されるということになりますか。
  15. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) おっしゃるとおりでございます。なおその上に、これは法案にも書いてございますように、審議会の議を経る重要な事項と考えておりまして、この審議会のメンバーには水産関係の方も従来以上に入っていただくことにして、そこでも審議をしていただくことになっております。
  16. 前川旦

    前川旦君 この法律で、航路、これも「政令で定める」ということになっておりますが、これは一体何メートルの幅を予定しておられるのか。またこれも、一応水産業の側に立つ水産庁合意の上でおきめになるのかお伺いしたいと思います。
  17. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 航路につきましては、これもやはり「政令で定める」ということになっておりますので、この政令決定につきましては、当然水産庁とも話をいたしますし、また地元の皆さんの御意見も尊重をしなければならないと考えておりますので、場所と内容によりましては、関係公共団体等とのお話も十分いたす、こういうつもりでおります。現在、この幅をどうするかということにつきましては、内々で、いろいろこの法案審議の過程におきまして、全漁連その他と打ち合わした線はございますけれども、これはまだ正式のものではありません。今後地元水産業界等々と打ち合わせの上で決定していきたいと考えております。
  18. 前川旦

    前川旦君 漁民の心配しておりますのは、航路がきまった場合に、航路内での漁業禁止がいつかされるのではないかということを非常に心配しております。したがって、これは航路内では漁業禁止をするつもりはないということをはっきり私は言い切っていただきたいと思いますが、いかがですか。
  19. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 本法制定の基本的な姿勢といたしまして、先ほど大臣からも御説明ございましたが、私ども事務当局がいろいろ法案を検討いたしますにつきましても、漁ろう一般船舶航行の安全という問題の共存共栄をはかる、こういうことを基本にいたしてまいっております。したがいまして、一部には、これでは航行安全のためにはなまぬるいというようなことがございまして、これを徹底させるためには漁ろうを少なくとも航路内においては全面禁止すべきじゃないか、そういうような方策をとるべきではないかというような御意見がございますけれども、冒頭申し上げましたような趣旨によりまして、私ども漁ろう禁止するという意図はございません。
  20. 前川旦

    前川旦君 そうしますと、当然かりに航路内に漁業権があるような場合には、これを消滅させるというような考えもないということですか。これは当然出てくる結論だと思いますがよろしゅうございますか。
  21. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) よろしゅうございます。そのとおりでございます。
  22. 前川旦

    前川旦君 第三条の第二項でしょうか、この文章の中に「航路をこれに沿わないで航行している漁ろう船等」という字があります。それから「航路で停留している船舶」、それ自体、「漁ろう船等」あるいは「航路で停留している船舶」、これはたとえばどういうものをさしますか。たとえば瀬戸内海一本釣りあるいはタコ釣り、マテ突き、こういったような船がたくさんあるわけですけれども一本釣りのような漁船、これは「漁ろう船」の中に入りませんでしたか、解釈の中に。ここで「停留している船舶」あるいは「漁ろう船等」の中に含まれるのかどうか、お尋ねいたします。
  23. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 「漁ろう船等」という定義につきましては、この法律案の第二条二項の二号にございます。つまり「漁ろうに従事している船舶」、それからロで「工事又は作業を行なっているため接近してくる他の船舶の進路を避けることが容易ではない」云々とございまして、一定の「燈火又は標識を表示しているもの」いわゆる法でいう工事船あるいは作業船、そういったものとの二種類を「漁ろう船等」ということでいっております。そして「漁ろうに従事している船舶」というのは、海上衝突予防法におきます第一条第三項の規定によるというように次の第二条の第三項に書いてございまして、この予防法定義によりますと、「網、なわ又はトロールにより漁ろうをしている」、こういうことになっております。したがいまして、いま先生の御指摘ございますところの一本釣り、タコ釣り、マテ突きなどという漁ろう種類のものについては、ここでいうところの「漁ろうに従事している船舶」というものには、それぞれのやり方から見まして、該当はいたさないというふうに解釈いたします。しかしながら、これらの船が実際に作業いたしますについては、一応みな停留しているというかっこうを事実問題としてとることになります。したがいまして、「航路で停留している船舶」、こういう中に、いまおっしゃいました一本釣り以下の漁ろう種類のものが含まれる、かように考えるわけでございます。  この点は、実は漁業ができるだけ現状に近くやり得るようにということでこの停留船というのを実は第一項のほうに当初原案は含めておりましたけれども水産庁当局との話し合いの結果、この二項の中にこれを入れる、かようにいたした次第でございます。
  24. 前川旦

    前川旦君 第四条と第五条の「航路航行義務」、それから「速力制限」、この二つ漁業の側から、水産庁のほうから要請をして入ったということを聞いておりますが、水産庁としてはどういう立場で、どういう効果をねらってこの二つを入れさしたのか、御説明をいただきたいと思います。
  25. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 私どもといたしましては、漁業の面から、こういう内湾等にできるだけ船が入ってこないのが一番漁業立場からは望ましいわけでございますが、そういうことを直接規定をいたしますについては、いろいろと問題があるところでございます。しかし、そういう現在乱雑に、と申しますか、いろいろなところでそういう船が乗り込んでくるということになりますと、漁業立場からはそれぞれ迷惑を受けますので、せっかくこういう航路等整備をされたら、できるだけそこに秩序立って航行をしていただく。そういうことに相なりますれば漁業の面にもそれなりの利益があろうかということで、この第四条の「航路航行義務」の規定を入れるということをお願い申し上げました。  また速力の問題についても、非常にスピードのあります船が漁船のそばを通過するということ等につきまして非常に不安を感ずる向きが多いわけでございます。そういう意味において、必要な船舶につきましては、できるだけ速力制限等お願いをいたしまして、これも実情に沿って今後おきめをいただくことになるわけでございますが、そういうことによって漁業者が受ける不安をできるだけ緩和をいたしたいというふうに考えた次第でございます。
  26. 前川旦

    前川旦君 そういうことでありますと、航路航行義務のある二つの地点の間、これは運輸省令で定めることになっています。それから速力制限も、「運輸省令で定める区間」となっていますから、航路全部に適用されることはないと思いますね。しかし、いまのようなお話でございますと、できるだけこれを広くとっていくということが望ましいと思います。で、これも将来、「運輸省令」と出ておりますが、やはり水産庁との間で協議決定ということで、できるだけ広くこれをとるということが望ましいと思いますが、その点についていかがですか。
  27. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 航路航行義務設定必要性はただいまお話があったとおりでございますが、私ども船舶安全航行という面とのかね合いにおきまして、この義務をできるだけ多数の船、できるだけ広くということは当然考えていきたいというふうに思っております。  速力制限につきましても、これは漁業との関係において、漁業からの御要望もございますので、できるだけそういうふうにしたい。ただ一般の船につきましても、たとえば旅客船、国鉄連絡船というような定時性とやはりある種のスピードを持たなければならないという船の種類もございますので、その辺、相当具体的なことで具体的にきめていきたい。そのためには水産庁とも十分御連絡をとり、関係方面との御了承も得て、この内容を実行いたしたい、かように考えております。
  28. 前川旦

    前川旦君 国鉄連絡船の話が出ましたからついでにここでお伺いしておきますが、当初の案に比べまして、宇高航路、東または西を横断する国鉄連絡船避航義務巨大船のみに限られるということになったようですが、どうでしょう。かなり過密なダイヤといいますか、連絡船が宇野から高松へ着く、人をおろす、それから船に積んでおります貨車あるいは客車をおろす、そしてまた出帆する、その間の時間がかなり短い窮屈な時間になっているようなんですね。うしろにこの宇高航路のことが出ていますけれども国鉄連絡船ダイヤ影響ないと判断できますか。
  29. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 今度のこの交通法適用によりまして宇高航路関係ができますのは、直接的にはこの十六条、十七条ということになるかと思います。そこでこの十六、十七条で一番の眼目は、備讃瀬戸を通ります船に対して、これを横断といいますか、縦断するような宇高航路を通る国鉄連絡船、これは巨大船のみを一応避航する、それ以外については従来どおり、こういうふうな原則をとっております。これはやや、水島航路と備讃が接続する場合と少し違っておりますが、これも従来の国鉄の実績、あるいは技量、あるいは船の構造、つまり安全性関係する構造、そういったものを考えまして、こういった原則をとることにいたしました。この原則で通りますと、従来との時間的な問題についてはまず影響はない。この点も国鉄当局と十分突き合わせをやった結果でございます。
  30. 前川旦

    前川旦君 影響がないと言い切られましたので、これはせっかくスピード・アップをしようとしておるのに、いまの一時間の航路が、早いもので五十七分、三分スピード・アップされて四国ダイヤが組まれております。もしこれに影響を与えるということになりますと、四国ダイヤはずいぶんずたずたになってやり直しをしなければならないという面も出てまいりますので、これはもう影響がないとおっしゃいましたので、どうかひとつ影響のないようにそのようにお取り計らいいただきたいと、こう思います。  それから第十条で「びよう泊禁止」、びょう泊というのはいかりを使用してとどまっているということであろうと思いますが、たとえばうお流し網といったようなものはいかりを使用いたします。ただ、船にいかりをつけるのでなくて、網にいかりをつけて、船はその網に係留してあるというようなやり方だと思いますが、網にいかりをつける、こういう漁法はこの「びよう泊禁止」には該当しないと考えてよろしいですか。
  31. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) びょう泊は、船自身のいかりで、その船を固定するということをびょう泊と考えておりますので、小ます網は、いま先生がおっしゃるように、網をいかりで固定して、船をいかりで固定されるわけではないので、これはびょう泊には該当しない、かように解釈いたします。
  32. 前川旦

    前川旦君 航路の幅をできるだけ狭くしてもらいたいという漁民要望が強いのですね。そうすると、ここにある追い越しの禁止、あるいは並航の禁止、こういうものを取り入れることによって航路の幅はできるだけ狭くすることができるのではないだろうかと素朴に思いますけれども、そういうお考えはありませんか。
  33. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 航路の幅につきましては、冒頭申し上げました漁ろうの円滑な運営と船の航行の安全という両面から具体的な地形、海象等を考慮して関係方面と打ち合わせてきめる、かように考えておりますが、原則的にはいま先生おっしゃるような方向でこれをきめていきたいというように考えております。  追い越しの禁止をやれば幅が狭くなるかという点は、ある意味ではそういうことも考えられるかと思います。しかしながら、また一方では、それなりにある種の渋滞を来たすというようなことも考え得るのじゃないか。特に今度の航路航行義務のごとく、できるだけ航路の附近を航行して行くものは、航路の中に入れということも強制もいたします関係上、そういったふくそう度合いが増す場合、船の構造のいかんにかかわらず全部追い越しを禁止する、これがはたして安全上、あるいはふくそうの緩和、特に漁ろうとの関係でいいかどうか、いろいろ議論があったところでございますが、結論といたしましては、法律にきめてありますような行き先の表示等の信号等をやって、ある程度これを認めるほうがむしろ安全上適当ではないか、かように考えた次第でございます。
  34. 前川旦

    前川旦君 少しはしょりまして、三十条に「ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で運輸省令で定めるものについては、この限りではない」、この「通常の管理行為、軽易な行為その他の行為」というのはどういうものを予定していらっしゃるのか、どういうように考えていらっしゃるのか、お尋ねしたいと思います。
  35. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) ここでいいます「通常の管理行為」と申しますのは、たとえばブイの電池の交換等、設置をすでに許可いたしました工作物をその現状において維持するために行なうような行為、たとえばそういったものを考えております。「軽易な行為」とは、漁ろうのように航路の状態に特段の影響を及ぼさないもの、あるいは海水の採取等、きわめて短時間に行なわれるようなもの、このようなものを「軽易な行為」と考えております。「その他の行為」とは、たとえば送電線のように船舶交通には全く関係のない高さの空中で架設される工作物を維持する行為、こういうものは船舶交通の安全をはかるという見地からは規制をする必要はないと考えられる行為でございますので、こういうものは規制の対象外というように考えたわけでございます。
  36. 前川旦

    前川旦君 そうしますと、くどいようですけれども、通常漁業をする、普通漁業をする、これは「軽易な行為その他の行為」に入るということで、普通、通常漁業をやるというものは除外される、こういうように考えてよろしいですか。
  37. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 漁具の設置、あるいは漁業を行なうため必要な行為、たとえば水深、水温の測定等を含みますけれども、そういった行為については、これは「軽易な行為」というふうに考えて、省令の際にそういうものを具体的にきめるというふうに考えております。ただ、よくここで問題になりますのは、魚礁の設置という問題がございます。この魚礁も内容、対象はいろいろございますけれども、これが航路及びその周辺海域で設置をされるという場合につきましては、本条の規制対象ということでこのただし書きには該当しないというふうに考えていきたいと思っております。ただし、この問題につきましても、なお今後具体的にどういう対象のものをどういうふうな扱いにするかということについて十分水産御当局と打ち合わせの上実施をいたしたいと考えております。
  38. 前川旦

    前川旦君 魚礁の設置は、いまの「軽易な行為その他の行為」には入らない、これはその条文に一と二とありますが、二号の「工作物の設置」に魚礁の設置は該当することになるんでしょうか、どうなんですか。
  39. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) そのとおりでございます。
  40. 前川旦

    前川旦君 そこで一つ問題になるのは、「航路及びその周辺」、この「周辺」という考え方ですけれども、この「周辺」は当然狭くとってもらいたいわけですけれども、これも水産庁協議の上決定するということにしていただきたいんですが、どれくらいのことを考えているのか。たとえば広い面でいうのでなくて、航路から何メートルか両はたへ出るのか、そういう考え方をしていらっしゃるのか。あるいは、航路によって、同じ一本の航路を通っても、場所によっては「周辺」というものをうんと狭く見たりするというようなこともあり得るのかどうか、その辺、いかがですか。
  41. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 航路につきましては、大体これは長方形のものになるというふうに、簡単に一言でいいますと、考えております。その長方形の航路に対しまして、その外側にさらに一定の幅でもって矩形型にくっつく、こういうふうにお考え願ったらどうかと思っております。で、これの必要性はやはり短辺、短辺のほうで航路に入ってくるという船に対して、この船が、ある一定の間隔については、やはりぜひそこで入りやすいような自由な区間といいますか、障害物の少ない区間が必要である。あるいは長方形の横のほうにつきましては、第三条等による避航義務関係の避航をやる。あるいは横断船が出るという場合に航路航行しておる船との関連において、そういった範囲を活用して航路航行船を優先させるというような関係がございますので、言うならば、航路航行の円滑化をはかるためのバッファーであるというふうに考えます。しかし、このバッファーの範囲というものにつきましては、やはりこれは航路で申し上げましたと同様な意味合いにおきましては、これは船のいまのような目的に合う範囲における最小限にすべきであるというふうに考えておりまして、これにつきましても十分御相談、協議の上きめていきたい、かように考えております。
  42. 前川旦

    前川旦君 漁礁の設置に一々海上保安庁長官の許可を受けなければいけないというのは、たいへんこれは不便なことなんです。そこで、行政の実際の実施の面でどういうふうに配慮していくのか。このあとに第二項に「許可をしなければならない」ということでいろいろ書いてありますが、実際の行政面で、たとえば水深二十五メートル以上であればもう無条件で許可しますとか、いろいろあると思いますけれども、その点での実施面での配慮はどうお考えですか。
  43. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) これは先ほどの御説明でもある程度御理解いただけると思いますが、やはりいま言いましたような範囲の場所につきましては、無制限ではやはり安全上に問題があろうかということで、一応許可の対象ということに考えますが、やはり地形なり水深なりあるいは海象事情なりあるいはそこを航行します船舶の形態なんというようなことで、いまおっしゃったような水深等の問題も含めまして、それぞれの航路についてそれぞれの特殊性があろうかと思います。したがって、形式的に一から十まで全部これを許可の対象にするという考えはございませんで、やはり何らか実施面におきまして一定のルールといいますか、パターンがきめられればきめて、それについては技術上そういう必要はないというふうな扱いができればということで、いま寄り寄り協議をいたしておる最中でございます。
  44. 前川旦

    前川旦君 どうかその協議の中で零細な漁業を守るという立場を貫いていただきたい。実施の面で一々これの許可を得るというようなことはたいへんわずらわしいことなんです。ですから、実施の面でそういうわずらわしさのないように考えを持っていただきたいと思います。  それから第二十一条、これは届け出義務ですが、これは「通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で運輸省令で定める」というのが出てまいります。この解釈は、これはどうなんでしょう。さっきと同じなんでしょうか。
  45. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 先ほど申し上げましたのと大綱は同じでございますが、魚礁の設置につきましては、これは届け出が不要になるという、この点だけが前と違う点でございます。
  46. 前川旦

    前川旦君 三十五条航路標識、これをかってに入れられるとずいぶん漁業影響を与えるのです。そういう実例があります。ですから、これは従来航路標識を入れるのに地元漁業団体の同意を得るということに法律上はなっていますけれども、実施の運用面で、航路標識を入れるのは地元漁業団体と協議の上きめるのだ、こういうことに今後していただきたいと思いますが、その点、いかがですか。
  47. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) この問題は、私ども毎度申し上げておるこれ以外の問題同様に、できるだけ地元の御意見を尊重するという考えで進みたいと思っておりますが、当面、やはりこれについては、関係都府県知事の御意見は一応必ず聞いてこの設置を進める、かようにいたしたいと考えております。私ども漁業のきわめてこまかいこと、あるいは魚礁等の関係等につきましてなお十分よくわからないところもございますので、そういう面についてやはりこれを知事にまとめていただく。この浮標なんか、漁業の微細なるところに関係があるようでございますので、これをやはり知事さんあたりにまとめていただくということから知事の御意見を聞くということを現在われわれの心組みといたしております。
  48. 前川旦

    前川旦君 それでは大臣にお伺いをいたしますが、加害者不明の当て逃げあるいは油害等については、国の責任で損害補償をしてもらいたいという要望が非常に強く出ております。実際こういう例はたくさんあります、加害者不明という例が。泣き寝入りですね。これに対して、これの強い要望に対して将来どう取り組んでいかれるおつもりなのか、御意見を伺いたいと思います。
  49. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) その点はさきの衆議院委員会におきましても種々御論議を呼んだ次第でございまして、また最近におきましても、御承知のとおり、東京湾におきましてそういう事態がございました。いま海上保安庁で取り調べをやっておりますが、なかなかにその原因が究明できません。しかもまた、実際の油の汚濁によりまして漁業が非常に被実をこうむったという実例もございます。ただいまでは御承知のとおり一般船舶につきましてはあるいはPI保険であるとかあるいはタンカーにつきましてはクリスタルであるとか、いろいろの保険制度がございまして、そういったような原因の明瞭なものにつきましては十分保険制度がございまして、私どももその保険に必ず加入することを勧奨しております。そういう点につきましては十分にやっていくと思う次第でございますが、いま言った原因不明の点につきましてはそういった制度がございませんので、これはどうしてもやはり解決をしなくちゃならぬ。保険制度によってこれをやらせるか、また、その他の方法によりましてやるかというようなことにつきましては、早急に私ども前向きで検討してまいりまして、必ず何かの方策をとってまいりたい、こういうふうに思っている次第でございます。
  50. 前川旦

    前川旦君 もう一つは、自動車には自賠責という強制保険がありますね。あれと似たような制度で、全船舶の強制加入による海上損害賠償保険制度を設けてほしいという要望も強く出ておりますが、これについてはどのように検討されますか。
  51. 鈴木珊吉

    政府委員(鈴木珊吉君) お答え申し上げます。  引き逃げと同じような制度をという御要望がございますのですが、船から出たのか、あるいは沿岸の工場等から出たのかという点で、そういう差別は非常に困難だというようなこともあるかと存じますけれども、そういう点は何か技術的な方法を考えまして、いま大臣がおっしゃいましたよううな、前向きに今後検討していきたい。ただ、問題は、強制保険にいたしました場合に、たとえば外国の船との関係はどうなるかとか、そういったようなまた別の問題も起こると存じます。したがいまして、こういう点も十分考えて持ってまいりたい。それからなお、ただいま条約がございまして、まだどの国も批准しておりませんけれども、一九六九年と七一年の両方の条約がございまして、その条約によりますると、二千トンの油を輸送できるタンカー——大体千トンぐらいの総トン数の船と存じますけれども、それ以上の船につきましては、その条約では強制の付保を義務づけております。したがいまして、千トン以上の船につきましてはそういうように義務づけられるものでございますから、そういった自動車の自賠責と同じようなぐあいの仕組みがあるいはできるかもしれませんですが、その点につきましても十分検討していきたい。それから千トン以下の船につきましては、これは全くそういった義務がございませんので、そういう船はどうなるだろうかという点もございますが、いずれにいたしましても、先ほど大臣が御答弁なさいましたような方向で、可能かどうか、十分検討したいというふうに考える次第でございます。現状はかようなことでございます。
  52. 前川旦

    前川旦君 技術的な問題もあろうと思いますけれども、どうかひとつこれは前向きに、将来の問題として真剣に取り組んでいただきたいということを強く要望をしておきます。  そこで、ついでと言ってはなんですが、海商法の六百九十条ですが、免責委付という制度がありますね。将来、この制度を、あるいは商法を改正して直していくという考えはおありでしょうか、どうでしょうか。
  53. 鈴木珊吉

    政府委員(鈴木珊吉君) ただいま御指摘のように、船が第三者に与える損害につきましては、現行では、海商法の六百九十条でいわゆる委付主義というのがございます。これは非常に古い規定でございまして、昨今のような油を積む船がたくさんできてくるという時代に沿わないものでございます。したがいまして、これにつきましては、現在、これは法務省の所管でございますけれども、法務大臣の諮問機関でございます法制審議会におきまして、この海商法の改正の準備を進めております。私が聞いております範囲におきましては、この次の通常国会には商法海商法の改正法案を提出すると聞いておりまして、その場合には、現在のような船を委付するという物的責任主義をやめまして、たとえば、条約できまっておりますようなトン当たり千フラン——五万二千円の限度で船主さんが責任を負うと、そういった金額主義のほうに乗りかえるような規定に改正するということで準備を進めております。なお、それ以外にさらに、先ほど申しましたけれども、新しい条約が現在できておりまして、これの批准もまた検討途中でございます。
  54. 前川旦

    前川旦君 もしこのこの法案がかりに通ったとすれば漁業補償の問題はどうなるかということが問題になると思いますが、聞くところによりますと、この法案を作成する段階で漁業補償の義務というものは直接的に法的には出てこないという解釈であったというふうに聞いておりますが、私も、実は法律なんかいろいろ見てみましたけれども、直接的に出てくるのはあるいはむずかしいかもしれませんが、しかし、航路設定されて、漁船巨大船に対して避航義務ということになりますと、場合によると、ほとんど自分の生活の基盤を失うという場合も出てくるんです。これは例があるわけですね。そういう場合も法律上ちょっと問題があるから漁業補償の義務はないんだという突っぱね方を私はすべきではないと思いますが、その点について大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  55. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいま前川先生から御指摘がございましたように、これは非常にむずかしい問題でございまして、御承知のとおり、漁業権の侵害にはならぬという解釈が一般の解釈でございます。それゆえに、国家の補償の対象にはなりにくいということが現実の問題でございますが、しかしながら、ある程度避航義務を課しておる、その程度におきまして、漁業に従事なさる方も航行の安全から調和をはかっておる次第でございますが、やはり不利益を受ける場合もあるんではないかということが予想される次第でございますが、法制のたてまえからいいますると、国がそれの補償の責任を負わぬ、こういうことでございまして、私どもは非常にその点を苦慮をした次第でございますが、国といたしましては、そういった避航を完全ならしむるために、ある程度の組織につきまして、その指導、助成のために年間一億、五年間で五億円という金は出している次第でございます。実際の問題といたしまして、漁業のそれらの不便に対しましてどうしたらいいかということが非常に問題でございます。それらの点の御不便をかける、また、それがためにいろいろな万一の事故があるというような点におきまして、救済措置をどうするかということにつきましては、せっかく、民間ベースでいろいろ勘案をいたしまして、ある程度の民間ベースにおきましてこれを拠出をいたしまして、それを全漁連等、そういった団体の協議の上、何らかの措置を講じてまいりまして、幾分でもそれらの御不便に対するいろいろな施策の指針にいたしたい、こういうことでせっかくいま検討中でございますので御了承願いたい、こう申し上げたいと思います。
  56. 前川旦

    前川旦君 国の行為によって生活権が不十分になるという程度と違って、根本からゆるがされるというような場合には、私は、当然これは補償を考えなきゃいけないと思うんですよ。しかし、これは並行線の議論になると思いますから、私は意見だけを申し上げておきます。  そこで、これは海上保安庁に伺いますが、巨大船、これは実際問題としてどうやって通すんですか。巨大船が通るという場合にどういう手当を保安庁としてはするのか。野放しで、いつでも自由自在に通すということになるのか。どういう方針で臨まれるのか、伺いたいと思います。
  57. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 巨大船には巨大船としての識別記号というのをまずつけまして、避航関係における巨大船の認識を明確にさせるようにまずもってやりますが、この巨大船の運航につきましては、おそらく先生も御指摘になろうかと思いますが、特に漁船との、漁ろうとの調和をどういうふうにさしていくかということを考えなければならないと思っております。そういう意味で、本法第二十二条におきまして巨大船航行にあたって航行予定時刻その他運輸省令で定める事項を保安庁長官に通報させるということを、まず巨大船に対する義務としてこれに課すことにしております。そしてその時刻につきまして、特に夜間であるとか、あるいは一定の漁港の盛漁期で非常にそういうものとの避航の関係からむずかしい問題があるというような時間、こういうものにつきましては二十三条によりますところの指示権によりまして航行予定時刻の変更を指示する。あるいはまた進路を警戒する船舶——警戒船をその巨大船から配備をさせる、そういったこと、そのほか「巨大船等の運航に関し必要な事項を指示することができる」ということになっておりますが、こういう条項をつけまして、ただいまのような漁ろうとの調整ができるだけ円滑にはかれる——巨大船だけがゆうゆうとまかり通るというようなことではなしに、そういった海の共同の利用、共存共栄というたてまえをこういった条文から具体化をしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  58. 前川旦

    前川旦君 大臣にお伺いいたしますが、巨大船瀬戸内海へ入れるということ自身がこれは大きな問題なんですね。ですから、この巨大船の上限をきめよという要望がずいぶんあったと思いますけれども、私はむしろ巨大船は絶対瀬戸内海やこういったむずかしいところに入れるな。特に巨大船事故を起こすという場合があるとしたら、それに対する防衛措置といいますか、油の広がりを防いだり、あるいは被害を食いとめたりする設備が非常に不十分であります。これは予算の範囲で海上保安庁も努力しておられると思いますけれども、客観的に見た場合にはなはだ心もとなく不十分ですから、もし万一事故が起きたときに十分な対策がとれる、これで十分だという範囲を越えたものは一切入れない。これが私は政治の常道だと思います。そういう意味で、巨大船は入れるべきでない。これは正論だと思いますけれども大臣としてお考えはいかがですか。
  59. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) まことにごもっともな御議論でございまして、実は私も、海上交通安全の見地からいたしまして、ことに先般新潟沖合いにおきますジュリアナ号のああいったような事故等にかんがみまして、もし万一巨大船東京湾瀬戸内、あるいは伊勢湾におきましてああいったような事故を起こしましたら、これはえらいことであるということを痛感いたしまして、でき得れば直ちに巨大船の入航制限をしなきゃならぬというふうに考えた次第でございます。御承知のとおり、ただいま申しました瀬戸内東京湾、また伊勢湾、この三つでもって日本の輸入原油の約九一%、これがみな各港に入ってきている。こういうふうな実情でございます。御承知のとおり、燃料の大部分が、燃料革命によりまして、ほとんど油にたよっている。日本のあらゆる生活機能というものの一番もとになっております。これは工場のいままでの配置が悪かったといえば悪いのでございまして、これは将来の問題といたしまして、私ども、これを内海方面にのみ工場を配置するということは早急に改めなくちゃいかぬ。工場再配置、いわゆる立地条件を再開発するということが一番大きな問題でございますが、ただいまのところ、それをいたしますと、直ちにあらゆる生活、あらゆる産業に非常に支障を来たすということで、やむを得ず、ただいま大体大きいのは二十三万トンくらいでございますか——のものを許している次第でございますが、将来に向かいましてはこれを早く何とかいたしたい。そして、そういったような航路のふくそうしておりますところには巨大船をなるべく入れないようにする。その制限をするということは当然のことでございまして、これをひとつ実行に移さなくちゃいかぬというふうに思っている次第でございます。現に、先般四十七万トンの巨大船の許可をいたしましたが、これは鹿児島湾の喜入(きいれ)、御承知のとおり、あらゆる安全装置を喜入のバースにおいては持っております。消火せんあるいは集油施設その他もすっかりできております。しかも、もうほとんど外海に近いところでございます。ここへの寄港だけを唯一の条件といたしまして許可をした次第でございます。それ以外の港にはこれは寄港せしめぬという強いあれでもってこれを許可した次第でございますが、将来ともそれは当然やらなくちゃいかぬことでございます。ただいまの問題といたしましては、できるだけ早い機会にあのパイプラインによる、あるいはもう小型タンカーによりましてそうして内海のほうに持っていく。そのもとといたしましては、やはり工場の再配置というものを行なうということをやらなくちゃならない次第でございますが、御承知のとおり、いま問題は、巨大船と申しましても、そのうちのタンクのサイズが非常に問題になっている。御存じのとおりでございます。先般IMCOの会議におきまして、私とものほうの船舶局長が参りまして——承知のとおり船舶技術につきましては日本が世界をリードしております。タンク・サイズというので、一応リードもしてきた次第でございますが、そのタンクの構造の問題、タンクのサイズの問題ということが非常に問題になってきている問題でございます。要は、この考え方は、いまも問題になっております巨大船が安全であるか、小さな船が安全であるかという問題は、普通の飛行機とジェット機との関係にも私はなってくるのじゃないかと思う次第でございます。どちらがほんとうに安全航行ができるかどうかということが非常に問題になってくる。その船舶構造ということも非常に私は影響がある。十万トンの船が五隻行くのと三十万トンの船が一隻半行くのとどっちが安全になるかというような問題でございます。それらも勘案いたしますとともに、しかし、根本はやはり内海方面に工場が、そこに集約する。バースもそこに集約するということが問題でございまして、どうしてもやはり外海方面にそのバースを持っていく。御存じのとおりいま国土再開発、均衡のある発展ということが問題でございますが、さらに東海道を中心として瀬戸内、こういった方面にばかり人口が集中して工場が集中する。裏日本はだめだ。東北はだめだ。こういうようなことでございましたら、これはやはりいつまでたちましても、運輸行政というものは、あと追いあと追いという御叱責を受けている次第でございますが、そうなってくる。やはりそういう面におきまして、ほんとうの均衡のある港湾、均衡のある輸送体系ということが一番必要になってくると思う次第でございまして、そっちのほうでもせっかく私ども努力をする次第でございます。いろいろまた御指導をいただきまして、その方面におきまして交通安全につきましても強くやってまいりたいと思っている次第でございます。  日本の港湾技術も進んでおりますが、外港のバースをつくる場合におきますると、波のエネルギーが波高の二乗になってくるのでございまして、バースをつくる場合におきましては二乗のやはり堅牢にしてあるところのバースをつくらなければならぬというような点、技術的に非常に問題がある次第でございますが、しかしながら、これはどうしても私どもやり遂げなくちゃならぬというので、せっかくいま指導している次第でございます。そういった面にかんがみまして、非常に問題は山積している次第でございますが、ぜひともそれをしなければ、ただいま御指摘になりましたような安全というものはなかなかにはかっていくことができぬ。先般のジュリアナ号におきましても、わずか一万数千トンの船でございました。流れた油がわずか六千トン足らずでございます。しかも、あれだけの流出になっている。幸いにいたしまして、あすこは日本海でございまして、波濤が激しいところでございますので、自然的浄化によりまして事なきを得たのでありますが、瀬戸内あるいは東京湾みたいな非常に穏やかなところで起こったら、非常にそこにずっと永久にあることになる。私どもはそこを非常に心配しているのでございますが、そういうことのないように、それにはまず安全——何と申しますか、衝突をしない、座礁をしないということをはかることがいま一番の緊急のところだと思います。せっかく海上保安庁におきましてもそれらの対策を十分にひとつやるということでやっておる次第でございます。いま御指摘をいただきました、ほんとうに内港に入らないことは当然じゃないか、そのとおりでございますが、現状はそういうことでございますので、この事故防止につきまして懸命に努力をいたしますとともに、また、そういったような根本策につきましても早急にこれをやっていくということで、少なくとも現在以上のものは許されないということはかたい決意、決心を持ってやっておりますので、それ以下のものにつきましても、これをどんどん縮小していくという方向に向かってやるつもりでございますので、一そうのひとつまた御指導を賜わりたいと、こう思う次第でございます。
  60. 前川旦

    前川旦君 現在の段階ではいま直ちにということはむずかしいというふうに言われたと思います。将来はそれを指向する。しかし、いまの段階でも、次善の策はあると思うんです。それは何かというと、たとえば巨大船は夜間通航は一切禁止する。これなどやってやれないことはありませんね。しかし、漁業は夜出る漁業が多いわけですが、昼よりも、現に瀬戸内海備讃瀬戸では水島へ入るタンカーを小豆島の沖で時間待ちをさして、夜はなるべく通さないという方針をとっておるところもあるわけです。ですから、次善の策として巨大船は夜は通さないということぐらいはいますぐでも私はやれると思うのですが、そのおつもりはどうですか、ありますか。
  61. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 巨大船の夜間運航につきましてはこれを禁止したい、このつもりでいまやっております。ぜひこれをそのまま実行したいと思っておるわけでございます。ただ、御承知のとおり、備讃瀬戸におきましては、やはり満潮時が夜間のときがある。その点におきまして払暁にたしか何か一カ月のうちに五日ございますか、詳しいことは知りませんが、ごく少数の、五日に一日ぐらいの割りでその点を通らざるを得ないというような実情に聞いた次第でございますが、漸次それらも縮小してまいりたい、こういうふうに思ってせっかく指導させておる次第でございます。
  62. 前川旦

    前川旦君 海上交通の安全をはからなければいけないということはこれはもう当然のことで、われわれも理解できるのです。しかし、この法案によると、やはり漁民が規制をずいぶん受けることになります。これはどうしたっていなむことはできません。それじゃ巨大船を一切禁止すると、これはわれわれとしては当然のことだと思いますが、世論調査を見ても、経済成長のスピードを落としても環境保全をしてくれるほうが望ましいというのが五割をこえているわけです。ですから、巨大船禁止するといまの日本の経済に影響を及ぼすと先ほど言われたと思いますけれども、この際蛮勇をふるうときではないか。経済成長よりも人間の環境だというふうに政治が転換をしていかなければいけない時期なんですから、この巨大船の問題は、巨大船を通すために漁民はしんぼうせいというのではなくて、この際、すぱっと蛮勇をふるって巨大船を入れないほうが私は理想的な姿であろうというふうに実は思います。そういう意味で、この法案は、なるほど水産庁はずいぶん海上保安庁と折衝されて、最初の原案に比べるとかなり漁業のサイドに変わった面があるのは認めます。認めますけれども、やはり基本的な考え方として、どうしても賛成をするわけにはまいらないということを私は強く最後に自分の意見として申し上げまして、時間が参りましたので、質問を終わりたいと思います。     —————————————
  63. 藤原道子

    委員長藤原道子君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日橘直治君が委員辞任され、その補欠として中村登美君が選任されました。     —————————————
  64. 川村清一

    川村清一君 私は漁業のサイドからおもに御質問を申し上げたいと思ってまいったわけでありますが、何せ割り当てられました時間がごくわずかでございますので十分質疑をするわけにいきませんが、できるだけしぼって端的に申し上げます。前置きの説明は省略してお聞きいたしますので、御答弁のほうもひとつ簡単明瞭にしていただきたいと思います。  一番先に水産庁のほうにお尋ねしますが、本法制定されますと、これは東京湾伊勢湾瀬戸内海、三つの内湾・内海に適用されるわけであります。そこで、この三水域には漁業法上の漁業権、すなわち定置漁業権、区画漁業権、共同漁業権、こういうような漁業権設定されておらないのか、存在しておらないのかどうか、これをまずお聞きいたします。
  65. 田中慶二

    説明員田中慶二君) いまお話しの、東京湾伊勢湾瀬戸内海等について漁業権設定されておらないかという御質問でございますが、それぞれ沿岸部位にはただいまお話しのような漁業権設定されております。
  66. 川村清一

    川村清一君 そこで、この法律が成立いたしますと、第二条で航路政令によって定められることになっております。私はどういう政令内容になっているか承知しておらないわけでございますが、その航路上に、航路と予定されておるところに漁業権、ここは定置だとか区画漁業権はないと思いますが、共同漁業権設定されておるところがないのかどうか、これをお聞きします。
  67. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 現在、航路につきましては、これは政令で指定をするということになっておりまして、おおよその航路の位置等がわれわれ検討の材料になっておるわけでございます。今後航路の区域は政令できめられることになっておるわけでございますが、現在、おおよそ大体こんなところにということがお話が出ておりますが、そういう中でも大体七航路について漁業権の区域にかかるんではないかというふうに思われるところがございます。
  68. 川村清一

    川村清一君 漁業法上の漁業権ではございませんけれども、許可漁業はその航路の中で行使されておりませんか。
  69. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 現在、おおむね都道府県知事の許可によります漁業についてでございますが、そういう許可漁業がかなり航路上においても漁業を営んでおります。
  70. 川村清一

    川村清一君 そうしますと、当然、この法律ができまして航路設定されます。そうすると、法律によって巨大船が参りますれば漁船避航義務を負わせられます。そうしますと、これは当然許可漁業による操業は中止、停止しなければならないと、こういうことになりますると、あるいはその航路上に共同漁業権設定されておるものとすれば、共同漁業権の行使については漁業協同組合がそれぞれ協同組合の共同漁業権の行使規定をつくっておりますが、その行使規定に基づいて漁業権を行使しておる。そうしますと、そこに航路上に巨大船が参りますれば、この法律制定によって、その漁業権というものは一時的においても停止あるいはそれを中止しなければならない、こういうことになろうかと思うわけでありますが、これはいかがでございますか。
  71. 田中慶二

    説明員田中慶二君) お話しのとおり、そういう航路の上におきましては、漁ろう船といえども巨大船に対して避航義務が発生することになりますので、お話しのとおり、一時的には避航のために漁船が操業を中止をするという事態はあろうと思います。
  72. 川村清一

    川村清一君 私は衆議院本法がいろいろ審議されておりましたころの会議録というものを、まあざっとでございますけれども、一応読ましていただいたわけでありますが、この審議の過程の中において丹羽運輸大臣あるいは佐藤政務次官は、本法ができましても、その航路上にはいわゆる漁業法第三十九条に基づいていろいろ補償というような問題があるわけでございますが、三十九条に該当する漁業権は存在しないんだということを何度もおっしゃっていらっしゃるわけでありますが、私がいま水産庁の漁政部長に質問いたしました結果、漁業法に基づくところの漁業権、特に共同漁業権でございますが、その共同漁業権等はこの航路上に存在するという御答弁があったわけでございますが、大臣や政務次官はその漁業権は存在しないということをおっしゃっておられるわけでありますが、その点はどういうような御見解でこういうような御答弁をなさっておられるわけでございますか。
  73. 佐藤孝行

    政府委員佐藤孝行君) 漁業法第三十九条の解釈の問題ではなかろうかと思いますが、同法の規定は、県知事が公益上の必要から漁業権の変更または取り消し、あるいはその行使を停止する場合、漁業者に補償を行なうべきであると、こういうことを明記してあるのであります。つまり、言いかえれば、漁業権そのものを、公益の目的達成のために、海面を排他的に使用することを制限しあるいは収用することから、これを補償しなければならない、こういう規定になっておりますが、現在考えているこの海上交通法が幸いにして成立した場合を予想したときには、この漁業法三十九条にはいずれも該当しない、こういうことを申し上げたつもりでございます。
  74. 川村清一

    川村清一君 会議録にははっきり大臣なんかもおっしゃっているわけです。ここには三十九条に基づく漁業権は存在をしないと聞いておりますとはっきりおっしゃっておるわけです。ただいまの政務次官の御答弁によりますれば、漁業権はあるんだと思うけれどもいわゆる三十九条の適用には該当しないんだと、こういうように受け取っておりますが、この点はどうですか。漁業権設定されておる、存在していることはお認めになられるわけですか。
  75. 佐藤孝行

    政府委員佐藤孝行君) 漁業権でも、先ほど水産庁田中漁政部長から答弁があったように、いわゆる一般の許認可漁業、これは当然あろうかと思いますが、いわゆる漁業法によるところの共同漁業権、これはまだ航路をはっきり確定しておりませんが、あるいは現在予想されるところでは、伊良湖水道に多少該当する海域があるんじゃなかろうかと、そんなふうに判断しております。
  76. 川村清一

    川村清一君 それで私は前もって水産庁にお聞きしまして、共同漁業権は存在するかと言うと、もちろんまだ第二条に基づいて政令決定されるところだから明らかではないけれども、いまの状態においては七カ所ぐらい共同漁業権にぶつかるところがあるんじゃないかというような御答弁をいまいただいたわけなんでございます。それでいまあなたに御質問申し上げたわけなんですが、それじゃはっきりここでいたしますが、いま運輸省が、二条に基づく政令によって決定される航路上には共同漁業権は存在しない、共同漁業権航路とぶつからないと、こういうふうな御答弁ですか、そこ、はっきりしておいてください。
  77. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 先ほど政務次官からお答えもありましたが、まだ航路を確定しておるわけではございません。これは今後水産庁あるいは関係漁民の方々とも御相談の上きめていくことになると思いますが、従来いろいろ御相談の過程において、そういうものを出した際に、たとえば伊良湖水道、これは御承知かとも思いますが、非常に岩礁が周辺に切迫しておりまして、航路の幅そのものが非常に狭い現状でありますが、われわれはなるべくそういう漁業権との調整をはかった航路設定を考えたいと思いますが、この伊良湖水道などの例はこれはなかなか困難であるというふうに考えられます。したがいまして、そういう点については漁業権が一部入る航路もできるというふうに考えられます。
  78. 川村清一

    川村清一君 それじゃ伊良湖水道以外のいわゆる内海、内湾には共同漁業権上に航路は絶対とらないと、こういうようなことはいまこの委員会でお約束できますね。
  79. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) できるだけいまおっしゃるような趣旨の方向でやっていきたい。ただし、前の御質問にもありましたように、この漁業権を取り消したり、あるいは行使の停止をさせると、そういうようなことは毛頭考えておりません。そこに共存共栄ということをはかっていきたいと考えておりますし、一方、まあ巨大船自体につきましても、先ほど申し上げますように、ある種の制約をかけて、その両方との調整をはかるというふうなことにしてまいろうというふうに思っておるわけでございますので、この漁業権の絶対性というものにつきましては、まあ船舶航行の安全ということとの両方のかね合いを十分に考慮して進めていきたいと考えております。
  80. 川村清一

    川村清一君 ただいまの保安庁長官の御答弁によりますれば、将来航路設定するにつきましては漁業権を侵害するようなことは極力避けると、まあいまの伊良湖水道だけにあるかもしれないというふうに受け取ったのですが、とにかく伊良湖水道だけでも共同漁業権を侵害する場所があるということを、これは一点確認しておきます。  その次に、だからといって、その漁業権を取り消しあるいは行使の停止を命ずるようなことは絶対にないという御答弁でしたが、これは漁業法三十九条に明らかなように、先ほど佐藤政務次官がおっしゃったように、これは運輸大臣がやることではなくて、この本件につきましては都道府県知事がそれを命ずることになっておるわけでございまして、ちょっと長官の御答弁としては私は受け取れないわけであります。それから佐藤政務次官は、漁業権取り消しの問題につきましては、その都道府県知事が行なうのだということだけをここで答弁されまして、その前段のほうの御答弁がないわけであります。これは御承知のように、三十九条は、「漁業調整、船舶航行、てい泊、けい留、水底電線の敷設その他公益上必要があると認めるときは」ということになっておるわけでございまして、いわゆる「船舶航行」という問題もここに入っておるわけであります。船舶航行によって都道府県知事が漁業権を変更し、取り消しまたはその行使の停止を命ずることができるというのが三十九条の条文でありますから、ですから、この船舶航行によってこれはあぶないという場合には、都道府県知事は海区漁業調整委員会の意見を聞いてこれを発動することができる。その場合には当然国がその漁業権者に対して損害を補償しなければならない義務が生じてくるわけでございます。  そこで、私はいま明らかになりましたことは、共同漁業権を侵害する、これは極力避ける、これはわかりました。そこで、水産庁にお尋ねしますが、許可漁業が相当存在するということは、これは法律上の補償や何かの対象にはならないかもしれないけれども、やはり漁業者の操業権というものは認められるでしょう。どうですか。
  81. 田中慶二

    説明員田中慶二君) ちょっといま御質問の趣旨がよくわからなかったのですが、漁業者の何権ですか。
  82. 川村清一

    川村清一君 操業権。
  83. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 適法に従来ともそういう操業を営んできた者でございます。それを侵害をするというようなことになれば、それはそれなりの回復を主張するという権利はあろうと思います。
  84. 川村清一

    川村清一君 田中漁政部長にお尋ねしますがね、佐藤政務次官はそのほうの専門家でございますので、ベテランでございますので十分御案内なんでありますが、たとえばことし北洋におけるサケ・マス漁業が一割減船されたと、その場合に、これは許可漁業の範囲の漁業でございますので、国がこれを補償するということは相ならないわけです。そこで、相互補償といったようなことで、いわゆる廃業する者に対して残る業者がいろいろ金を出してやって補償しておる。それから、南のほうでありますれば以西底びきあるいはカツオ・マグロ漁業、これがいわゆる構造改善、合理化をはかりまして、そうしてやはり減船措置をとっておる。この減船の場合も残った人たちが金を出し合って補償しておると、こういうことになりますね。それとおんなじ問題ではございませんけれども、内湾、内海において許可漁業を行なっておると、ところが、巨大船あるいは船舶航行がふくそうしてまいりまして漁業が行なわれないと、やむなく漁業を廃業しなければならないということも出てくると思うんです。また本法施行によって、巨大船航行によって避航をすると、その間漁業が行なわれない。それは多い少ないの違いはあっても損害を受けていることは確実なんですね。そうしますれば、これをやはり何らかの形でその損害を見てやらなきゃならぬ。しかし、北洋のサケ・マス漁業や南方のカツオ・マグロ漁業と違って、同業者同士でもってそれを見てやれといったってむずかしいし、同業者みんながこの損害を受けておるわけでありますから、たとえ許可漁業といえども国が何らかの形でめんどうを見てやるということがこれは当然の措置として考えられなければならないと私は思うわけであります。特に共同漁業権がこのことによって行使できないと、共同漁業権上に航路設定されるために漁業権、いわゆる漁業協同組合が共同漁業権行使規則というものをつくって法的権限を持って漁業者漁業を経営しておる。それを本法の施行によって漁業権を完全に行使することができないとするならば、当然これは国がそれを補償しなければならないと私は思うわけです。それを、第三十九条には該当しない、これが政府の統一見解だということを衆議院の段階で大臣や政務次官は再三おっしゃっておるわけでありますが、ここが私は納得できないんであります。もし三十九条でできないとするならば、別な法律をつくってでもこれは見てやらなければならないと思うんであります。たとえば自衛隊法百五条にははっきりしているでしょう。自衛隊の演習等によって沿岸漁業者漁業権を完全に行使できないと、自衛隊の演習期間中、漁業権の行使を一時停止しなければならなくなった場合においては、国はその損害を補償する。これは自衛隊法第百五条にはっきり規定されておるわけでしょう。このように、この法律をつくる以上は、この法律にかけられないなら別な法律をつくってその漁業者の損害を補てんしてやる、補償してやる措置を講ずるのがこれが正しい行き方ではないかと私は思うんです。水産庁、農林大臣のお考えを聞きたいんですが、水産庁代表する漁政部長、あなたは私と同じように漁民のサイドに立って漁民漁業権を守り生活権を守る立場にある人として、私のこういう意見に対してどういう見解を持たれますか、はっきり申し述べてください。
  85. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 今回のこの法案海上保安庁から協議を受けました場合に私どもいろいろ検討をいたしたわけでございますが、この航路設定をするにあたりまして、漁業権漁業なりあるいは許可漁業なりをその航路の区域において禁止をしてしまうか、あるいはまた、漁業の操業は操業としてできるだけそれを支障のないような形で操業をさせていくかという二つ立場のどちらをとるかということをいろいろ検討したわけでございますが、現在の航路としての海面の利用の状況等から考えまして、私どもとしてはこういう航路であっても漁業にできるだけ支障のないような形の規制にとどめることにして、漁業はあくまでも従前どおり操業ができるというような形でこの法案の規制関係規定を取りまとめていきたい、そういうことで海上保安庁とも折衝いたしまして現在のような法案に相なった次第でございます。したがいまして、私どもといたしましては、やはり漁業においては、お話しのように巨大船に対する避航義務というふうな関係で、多少規制の面においては影響はあるということは申さざるを得ないわけでありますけれども、一方、事実問題といたしまして、そういう巨大船が来ればこれはもう必然的に進航をせざるを得ない実態もあるわけでございます。そういう点も考え合わせまして、私どもといたしましては、やはり特に航路が指定をされても、ここで漁業権なり許可漁業のこれを変更したりあるいは停止をしたりそういうことはしない、やはり従来どおりの内容でやっていけるというふうに考えておるわけございます。
  86. 川村清一

    川村清一君 漁業法第三十九条に基づいて東京湾伊勢湾瀬戸内海、この区域に行政を行なっておりますところの知事が、やはりこう船がふえては、こう船が航行されては非常に危険であると、あるいはまた、とても漁業はできないといったようなことから、漁業権を取り消したりまたは行使の停止を命ずるといったような処置を講じたいとしたときに、この漁業法を所管しておる水産庁としてはこれを認められますか。今後の問題です。
  87. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 船舶航行等の理由によりまして、漁業権あるいはまた操業海区の一部で事実上どうしても漁業ができないという場合におきましては、私どもとしてはこの三十九条の適用を考えざるを得ないというふうに考えております。
  88. 川村清一

    川村清一君 もう一点お聞きしますが、漁業権の免許の更新期になっておりますね。その免許の更新期のときに、いまは漁業権がある、そこへ航路をつくると、今度は更新のときにいわゆる航路に存在しているところの現存の漁業権を、これを取り消してしまう、いわゆる免許しない、こういうふうな行政措置をとられることはないですか。
  89. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 先ほど来海上保安庁のほうからもお話がございましたように、この航路の指定によって現実の、現在行なわれております漁業権内容を変えるつもりはないというお話もございます。今後の協議の問題でございますけれども、私どもといたしましては、来年度行なわれます一斉更新に際しましては、この航路を指定したということによって、そのことのみの理由によって漁業権内容を変えるということはないというふうに考えております。
  90. 川村清一

    川村清一君 ないということを確認しておきます。  それから、とにかく現在、法律制定されるということによってどれだけ漁獲高に影響し、どれだけいわゆる漁獲金額影響を与えるものか、的確な数字はつかんでいらっしゃらないでしょう。ちょっと予想されないでしょう。時間がないから私、先に言いますが、そういうことを知りたいのです。そこでほんとうは聞きながら質疑をしたいのですが、時間がございませんので、私の申し上げることを資料として出していただきたい。この三つの内湾なり、内海の中に存在している、設置されておる漁業協同組合の数、   〔委員長退席、理事阿具根登君着席〕 それから所属の組合員数、それから年間漁獲高、これは伊勢湾東京湾瀬戸内海別に。それから所属する漁船の数、これはトン数別に。それから漁業別の隻数——船の数です。これをひとつ出してください。  それから、これはいろいろ問題があるんですが、時間がないからかためて運輸省のほうにお尋ねしますが、これは聞くところによりますれば、本法制定に伴いまして、いわゆる船舶業界、船主協会、それから石油等の荷主団体等が約三十五億円に及ぶ寄付金を供出して漁民の受ける損害を補償するということになっておるといったような話が伝わっておるわけであります。それがもし事実だとするならば、いろいろな疑問を私としては持たざるを得ないわけであります。大資本から三十五億という巨額の金を供出するということは、それ自体、本法律制定されることが沿岸漁民に損害を与える、迷惑をかけるということをこの業界の方々が認めていることではないか。これは明らかに漁民に損害を与えるのだと、このことが明らかである以上、その損害を補償することは国の当然な義務ではないか。それを漁業法三十九条が適用されないとか何とか言って国の責任を逃げられますが、三十九条はどうしても適用されないとするならば、これは私は法律専門家でないからよくわかりませんが、法制局のほうはそういう見解であり政府の統一見解だなんと言うんだからまさか法律違反をしているわけじゃないでしょう。三十九条を適用されないとするならば、何らかの方法によって法制化すべきではないかと私は考えるわけですが、これについてこの法律制定された責任者である運輸大臣の御見解を承りたい。
  91. 佐藤孝行

    政府委員佐藤孝行君) 私も川村委員と同じように、気持ちの上では三十九条の何とか適用をしないものかということで法制局といろいろ詰めましたが、結果的に、先ほど来御答弁申し上げておるような結果になったわけでございます。  それから、先ほどお話しになった北洋漁業あるいは以西底びきその他において、ともに補償されているという点を御指摘されましたが、本海上交通法が制定されることによって損害を受ける関係漁民には、ともに補償するほどの能力もないと判断いたします。かような考え方から、今回の海上交通法の制定にあたりまして、船舶関係、荷主関係、これらの関係者が集まりまして、今回の漁ろう性への影響について社会的慣行により関係方面において何らかの処置が講ぜられ、その結果漁ろう船と巨大船との避航関係の円滑化がはかられ、海上の安全の確保が増進されることはたいへん望ましいことであると、かような観点から、政府といたしましても当事者間の自主性を尊重いたしながら今日まで何ぶんの協力をいたしてきたところでございます。御指摘のように、船舶、荷主関係合わせて約三十五億円を海難防止協会——法人格を持った海難防止協会に寄付をされてそれをしかるべき使途に用いたい、そのように話し合いが進んでいるようでございます。なお、この三十五億円の資金の使途については、さらに対象漁業者との協議にまつべきものでありますが、私どもとしては、これを基金に積み立ててその運用益によって、たとえば漁業者等の海上交通事故による休業に対する見舞い金とか、あるいは漁業者海上交通事故において相手方に対する損害の賠償取り立ての経費の立てかえ、さらにはコンサルタントに対する謝礼金とか、そういうものにこの運用益を利用すべきものじゃなかろうか、かように考えておりますが、最終的には対象漁業者水産庁海上保安庁、供出する船舶、荷主業界と協議の上で恒久的な対策を踏まえて何ぶんの協力をする所存でございます。
  92. 川村清一

    川村清一君 私は率直に言って、この法律をぜひつくってくれということで三十五億円という巨額の金を出す船主協会や石油業界、資本家側の考え方というものは納得できない。それから、これを一体何でもらうのか、そのもらうほうの気持ちもわからないわけです。これは出すほうも、もらうほうも、何でこんなことをするのかわからないわけです。出さなければならないだけの損害を与えておるのは、これは国がこんな法律をつくって与えるわけでありますから、その分の金を国が当然出さなければならない。これが原則でなければならないと思うのです。何で資本家が金を出さなければならないのか。それであなた方はそれを何でもらわなければならないのか。両方の気持ちがわからない。もう少ししっかり権利義務ということをわきまえてやればこんなばかなことはないと思うのです。それから、かりに今度は迷惑を受ける貧乏な沿岸漁民の方々がこのお金をもらったあと、またいろいろな問題が出てきて、そうして船舶側あるいは荷主側にいろいろな苦情を言わなければならない場合に、こんな金をもらっておったらなかなか言えないのですよ。自分の権利を主張することができなくなるんじゃないかということを非常におそれるわけです。  これは議論する時間がありませんから、そこで一点お聞きいたしておきたいことは、この衆議院の会議録を読むというと、「受忍の義務」ということがある。私、浅学にして法律の特に専門家でございませんので、「受忍」なんということばは会議録を読んで初めて覚えたわけです。何のことか考えてみたら、常識的にいえば、お互いにがまんしようということらしいのです。そこで、これは運輸大臣もおっしゃっているわけでありますが、水面は共有のものである、船舶漁ろう船は共存共栄すべきものである、したがって、お互いに力を合わせて協力し合って海上の安全交通を守りましょう——せんじ詰めればこのことになろうと思うわけであります。このことに私は決して反対するものではない。これは当然であります。しかし、さらに深く考えてみれば、この法律制定の基本姿勢、思想は決して共存共栄ではないんです。巨大船優先、すなわち大資本優先、沿岸漁民切り捨ての思想がこの法律の根底になっておる、こう私は申し上げざるを得ないのであります。でありますから、巨大船の上限規定もなければ、一体将来何トンまでふえていくのか。先ほど前川委員に対する御答弁でちょっとわかりましたが、巨大船とは二百メートル以上の長さの船というわけですね。そして何トンかというと、この会議録によれば、資料でわかったんですが、大体二万トンくらいから三万トンくらいの船だそうです。これが三十万トン、四十万トンになれば長さは一体何メートルになるのか。ずいぶん長いものになると思うのですね。それで、いまや六十万トン、七十万トンあるいは百万トンの建造といったようなことも石油業界では考えておるといったようなことをちょっと承るわけでありますが、そんなでかい船をこういうところに入れるのか、入れないのか。内海、内湾に入れないとしても、これは外航船であっても危険はあると私は思うわけです。こういう上限規定はちっとも考えられておらない。それから隻数も考えておらない。現在は何か二十四時間に平均六・六隻とか、一番多い東京湾で一〇・四隻とかいうようなことが書かれておりますが、しかし、これは二、三年前から比べればずいぶんふえてきているんじゃないかと思うのです。これが四年たち、五年たったときにどれくらいふえていくか予想もつかないわけですね。それから巨大船以外に一般船舶がどんどんふえていくでしょう。そういうことになりますれば、この内湾、内海、狭水道のごときは船舶がふくそうしまして、本法では巨大船にのみ漁船避航義務というものを負わせておりますけれども、そうふえてまいりますれば、避航義務を負わせているとか負わせていないとか問題でなく、もうそこにいることがあぶないんですから、これはもう全部船は逃げていくんです。たとえば陸上で考えてごらんなさい。ここは歩行者の道路だと規定されている法律、そこで、これは歩行者の道路であるからといってゆうゆうと歩いておったときにはね飛ばされる。こういうことが海上ではもっとひんぱんに行なわれるのではないかと思うのです。そういうことになりますれば、もはや避航義務とかなんとかでなくて、もう漁ろうそのものが完全にできなくなっていくでしょう。たとえば漁ろう中の船はそのままいてもいいんだ、巨大船の場合にだけ避航するんだ、一般船の場合はそのままいてもいいんだと、こういったって、どんどん船が来ましたならば、波は受けるし、船はこうなっちゃうし、しまいには船もひっくり返ってしまうこともあるわけです。そういう危険等を考えれば、そこで漁ろうをやっていることはできないですよ、はっきりいって。それから、たとえばトロールあるいは刺し網、さあ船が来たら揚げる、また網を入れるとか、間断なく船が来られたならば、そういう漁ろう作業もできないでしょう。釣り漁業も不可能になってくるでしょう。こういうことが将来はっきりしているんです。これがはっきりしておるにもかかわらず、今度は取り締まり法規だけをつくっておる。これは陸上の道路交通規則ですね。もちろん、海の警察は海上保安庁ですから、水産庁のほうは、あなたのほうは漁業者の生活を守る、漁業者のいわゆる漁業権を守るという立場からこれに対抗して何をつくっていらっしゃいますか。何もつくってないじゃないですか。これが内海のこちらだけの取り締まり法規だけをつくるというのはまことに片手落ちですよ。そうでしょう。だから私は、いま端的にいえば、この法律は大資本優先、巨大船優先であって、そうして貧乏な漁民の切り捨て、こういう思想につながっておるということを言わざるを得ないわけです。将来この漁業者に対してどういう措置を水産庁はなされようとしているのか、ここをはっきり言ってください。
  93. 田中慶二

    説明員田中慶二君) いまお話しのように、内湾等におきます漁業を今後とも維持し発展をさしていきますためには、私どもとしては、そういう一般船舶がふえないということが一番望ましいわけでございます。現在の産業の発展に伴いまして、お話しのように船がふえてくる、また巨大船も出てくるというふうなことでございまして、これとの調整につきましては、私どもとしては、そういう内湾におきますそういう巨大船、特に巨大船につきましての入域を制限をするようにということを、この法律を立案いたします際にも強く要望をいたしたわけでございます。しかしながら、いま直ちにはそういうことはできない、できるだけ早い機会にそういう規定を設けることを考慮するというお話でございましたので、今回の法案の中にはそういう規定がないままに提出を見たわけでございます。私どもといたしましては、できるだけ早くそういうふうな規定が設けられ、この内湾における巨大船その他一般船舶の入域が一定量に制限されるということが、もとより望ましいことでございまして、今後とも強く要望をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  94. 川村清一

    川村清一君 もう私に与えられた時間が過ぎたのです。ですから、あと三、四分で最後の質問にします。  私は先ほど申し上げましたが、この法律に基本的に反対はしていないのですよ。しかし、取り締まり規則だけつくって、これによって迷惑を受ける、損害を受ける漁民に対して救済措置なり将来の内湾、内海における漁業振興、こういうものを具体的に示したものなくしてこういう法律だけを制定しようとすることに反対だと言うんですよ。だから、これをつくる以上は、水産庁ははっきりとそういうものを打ち出さなければならないということを申し上げているんですから、この点、誤解なく、早急にそういう地帯における漁業者に対する救済措置なり漁業の振興策というものを具体的につくっていただきたい、このことを強く要望しておきます。  次に、この問題も含めて大臣から御答弁をいただきたいのですが、これは運輸省にお尋ねすることは、本法の第二十二条、先ほどもちょっと御答弁ありましたが、この航路に入ってくる巨大船は、その航行予定時刻等を海上保安庁長官に通報しなければならないということで、通報の義務を課しております。この点はわかるわけでありますが、その船長から通報を受けた海上保安庁長官は、これをいわゆる漁ろう中の船舶に通報する規定がないわけですね。船長は、この航路へ入りますよと言って保安庁のほうに知らせた。保安庁は、今度は、そこで漁業を営んでいる漁船等にそれを知らせるということが法律規定されていない。これは少しおかしいと思うのですが、何らかの方法でやるんだと思いますが、運輸省、どうなっておるのか、当然本文に書くべきじゃないかと私は思うわけですが、これに対する御見解を伺います。
  95. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) この通報内容の伝達の方法が一つ問題かと思いますが、巨大船から通報を海上保安部署関係——航路の附近にあります保安部、保安署というところでこれを受けることになりますが、それでその通報を受けましたときは、直ちに関係漁業協同組合にまず伝達をしたいと思います。関係漁業協同組合から当該日、当該時刻等に出漁する漁船に一応の伝達方をお願いする。さらにまた、それだけでは事が足りませんので、この通知がまず十二時間前に最初のものをやりますが、さらに航路の入口に到達する三時間前にも再度通報をさせるということになっておりまして、この三時間前に通報を受けたものにつきましても、同様なルートを通りますと同時に、こういう巨大船には必ず前路警戒船という船をつけさせたいと思っておりまして、前路警戒船からさらにその旨を一般に通報をさせる、こういうふうな周知のさせ方をとりたい。なお、その間に海上保安庁の巡視船艇等もこれに加わりまして、こういった警戒船の行動あるいは周知のしかたというものについても徹底をはかるような措置をとっていくつもりであります。  なお、これらにつきまして、やはりどういう具体的方法がいいかは、今後関係の皆さん方とも十分打ち合わせをいたしまして、この周知方については万全を期したいと思っております。  この問題を法案の上に組み込んだらという御意見もあるようでございますけれども、きわめて事が具体的な内容でございますので、やはりそういった具体的な方策を具体的にきめていくということは、法律という立場ではなしにやったほうが、さらに丁寧に、あるいはさらに詳細に航路の場所別に具体的なものをきめる得るのではないか、かように考えておりますので、法案にはあげませんでしたが、ただいま申し上げたようなことについては、これまで漁民の皆さんと法案をつくります際のお互いの打ち合わせの中にこういう話を出して今日まで進めてまいっております。
  96. 川村清一

    川村清一君 最後にお尋ねします。  ただいまの長官の御答弁はそれなりに了解できますが、きわめて具体的な問題であるからこれは法律に載せなかった、こういう御答弁は、これは少しあなたのほうはかって過ぎるのであって、この法律そのものが非常に抽象的な法律である。これについては政令できめるとか運輸省令できめることになっているのです。ですから、私は法文の上にその海上保安庁のやるべきことを具体的に書けなんてことを要求しておるのではないですよ。それは船長が海上保安庁に対して通報の義務を持っていると同じように、それを受けた海上保安庁は、あくまでも危険防止という立場からそれを漁船に対して通報の義務を持つ、海上保安庁も通報の義務を持つということを法律に私は規定すべきではないかと言っているのです。具体的な問題は運輸省令等できめていいんですが、法案の上にはそれを載せるべきではないかと主張しているんです。非常に具体的なものだから法律に書かないでやるという、そのやることをあとで答弁してください。  それから、いまちょっと触れましたが、この法律の特徴は、漁船にとってはきわめて大事な点、最も聞きたい点、また漁民意見を述べたい点、こういう点がみんな、政令できめるとか運輸省令できめるとか、ぼやかされている。  そこで、どう政令できめるか、どう省令できめるかということが漁業者にとっては大きな問題になってくるのです。そこで私は提起をいたしたいのは、これは例をとります。  たとえば第一条、これは適用海域と他の海域との境界線をどうするか。これは政令事項になっております。  第二条、航路政令できめる。したがって航路漁業権を侵害するかしないか、漁業権設定されているところに航路がきめられないかどうか、これは重大な問題でしょう。  第五条、航路の区間における船舶の速度は省令できめる。いわゆるどういう速度で巨大船航行するか、これは重大な問題である。これは省令できめることになっている。  第二十三条の巨大船に対する指示権、これは運輸省令によってやる。  これは一つの点なんですが、こういうふうに大事なことは全部政省令で具体的内容がきまることになっておることであります。これは漁業者にとって重大なかかわりのある問題であり、関心を持つ問題でございますので、したがって、これをきめるに際しましては、十分漁業者意見を聞き、また漁業者とも協議する、こういう経過を経てこの政省令をきめていただきたいというのが私の強い要望なんです。また指摘なんです。こういうことをしていただけるかどうか。先ほど前川委員にもそういうお答えがあったようですが、ここでもう一度お答えをいただきたいし、大臣からは、一方的に取り締まりばかり考えるのでなしに、この法律が成立した反面、漁業者がこういう迷惑をこうむるんだという立場に立ってこれらの漁民対策というものを十分とっていただきたい、その用意があるかどうかということをお聞きしたい。私のところには関係漁業協同組合から電報が来ておるわけですよ。これは社会党の漁民部に来ておるわけですよ。ですから、これは披露するのは省略しますが、これは私の最後の質問ですから、これについて大臣から責任ある明確な御答弁をいただいて終わりたいと思います。
  97. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 先ほどの巨大船運航の予定時刻の伝達義務、これを海上保安庁に義務ありということを法定したらどうかという御意見、私どももそういうものがあってもしかるべきではなかろうかとも考えますが、これは保安庁自体といたしまして、まあ間接的ではあろうかと思いますけれども海上保安庁法ということにおきまして、船舶の安全一般ということに重大な責任を負わされておるたてまえ上、法文にいまここで指示権なり通報権なり、それを受けることが書いてあれば、これを趣旨として運用するということは当然かと考えておりますので、私どもは全く疑義を抱いておりません。もしこれで不都合なことが起こりますようなことがあれば、皆さん方とさらに十分お話し合いの上で最も適切な方法をとる。これはお約束をしていいかと考えております。  政省令が非常に多くて中身がよくわからない、というお話はある程度ごもっともかとも思います。しかし、また一方、この中で非常に具体的な航法の条文などがたくさん書いてございまして、これなどは政省令ものではないかというような、また一方の御意見もございまして、この法律の性質上、かような状態になったわけでございます。きめていきます政省令内容につきましては、非常に関係の皆さん方の御関心の深い点がたくさんございます。先ほど来前川委員からの御指摘もあったとおりでございます。これらにつきましては、くどいようでございますけれども、私どもは、法令の円滑な適用というたてまえ上からも、関係の皆さんと十分協議をいたして進めます。こういうことをこの席でお約束申し上げたいと思います。
  98. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいまほんとうにごもっともな御指摘をいただいた次第でございます。ただ、私どもといたしましては、御心配をいただきました今日の非常にふくそうしているところの海上水域、いかにしてこの海上交通の安全を保つか。港則法に規定をされておるのは港湾の部分だけでございまして、あと浦賀水道にいたしましても、本日御審議を願っております三海域一般路につきまして、これらの巨大船その他の船舶に対します国の指示権がないことは、すでに先生御承知のとおりでございます。それらの狭水道につきまして緩行を命ずる、一方通行を命ずる、そういうようなことが今日できないというような状況でございます。万一このままに放てきしておきましたならば、いかなる事態になるかということを心配をいたしまして今回御審議を願っておる次第でございますが、その根本におきましては、ただいま先生がお述べになりましたますます船舶がふくそうして、巨大船が入ってきたらどうなるか。それを早くやはり適当な配置がえをすることが一番の問題で、これをどうしても早く国策としなければならぬ。これは一例でございますが、今度シベリア開発が行なわれるというようになるかもわからない。その場合に、どこから輸送するかというと、日本海沿岸でなくして、やはり瀬戸内である、あるいは東京湾から持ってくると、こういうような実情であるということでございます。こういうようなことではほんとうに均斉のある国土開発ができるか。また、過密過疎の問題。これがもう陸上だけじゃございません。海上におきましても過密過疎の現象ができてくる。私どもカーフェリーの認可をいたします場合におきましても、それらの点をやはり勘案してやらなくちゃいかぬということで、いま海運局長にもせっかく命じておりまして、ふくそう地帯におきましては、非常に需要がございましても、その点をある程度考えなければいかぬというような問題がございます。いま先生が御指摘になりました漁業補償の問題、これらにつきましても、そういったような避航義務だけであるといっても、あらゆる船舶が通ってまいりまして、そしてもう漁業なんかできなくなったらどうするかという心配もあるかと思う次第でございます。私どもは、そういうことがないように、現在以上にそういったような船舶の入港頻度がふえないように、あらゆる面で勘案をしてまいる。万一そういう場合においては、十分やはり漁業補償の道を責任をもって政府として考えていかなきゃならぬということを実は私ははっきり申し上げる次第でございまして、この点は、衆議院の段階におきましても、私も政府の一員としてはっきりと申し上げた次第でございますが、それらの点も勘案をいたしまして、ぜひともこれから先生方の御協力を願いまして、交通の安全と国土の均衡ある発展に向かって進んでいかなくちゃならぬと、こういうふうに考えておる次第でございます。ただ私、一言申し上げておくことは、決してこれは一部大企業、あるいはそれらのものの要請でできたことじゃございません。いまのままでも大企業はやっていけるということで、むしろ平然たるものでございまして、私どもといたしましては、そういうことであっては困る。万一衝突でもあったら漁船のほうにも御迷惑がかかる。そういうことをなくして、国家的におきましても、またその交通海上災害が起こったらどうなるかということで今回この法案を出した次第でございまして、趣旨を御了承をいただきまして、何とぞひとつそういう点につきまして御協力をお願いをしたいと、こう思う次第でございます。
  99. 原田立

    原田立君 いろいろお伺いしていて、大きい課題が二つあると思うんです。きょうは水産庁のほうも来ていただきましたので特にお伺いしたいんでありますが、やっぱり内湾漁業あるいは沿岸漁業、これが今日及び近い将来にわたってどういうふうな姿で進んでいくのが理想なのかもうお考えだろうと思いますが、水産庁のほうからお伺いしたいと思います。
  100. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 最近わが国産業の発展に伴ないまして、いろいろと、臨海地帯の工業化でございますとか、また都市化に伴ないます埋め立て、公害の増加というふうな問題、また、ただいまずっとお話が出ておりますように、一般船舶航行の増加というふうな点、非常に環境がきびしいものがあるわけでございます。それで、私どもといたしましては、この沿岸漁業といいますものが国民の食生活において一番食ぜんをにぎわす魚を供給をしておるものでございます。そしてまた、それに従事をしておる漁民の数は、総体の比率から見ますとそれほどではございませんけれども、やはり私どもといたしましては、そういう方々の福祉の向上、所得の増大というふうな点から見まして、やはりいろいろそういうきびしい条件がございますけれども、何とかこの沿岸漁業を発展をさしていきたいというふうに考えておるわけでございます。  一方、そういうふうなことで沿岸の漁場が狭められていくというふうな問題があるわけでございますけれども、私どもといたしましては、できるだけ集約的にいい漁場を確保いたしまして、そこにおきまして、従来よりも密度の濃い漁業生産をはかっていくということを重点にいたしまして、たとえば最近におきまして栽培漁業というふうな技術的な開発も出てまいる、そういうことのために、昨年成立をいたしました海岸水産資源開発促進法に基づきます沿岸におきます開発区域の指定というふうなことで漁場を確保いたしまして、そういう栽培漁業の技術と合わせまして水産資源の保護培養というふうなことを進めてまいりたい。その手段といたしましては、四十六年度から出発いたしました第二次沿岸構造改善事業ということでこれを強力に推進をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  101. 原田立

    原田立君 それで今回の海上交通安全法案ですね、これは漁業者代表の人たちは大反対と、こう言っているわけですね。これはあなた方のほうでは、この法案をどんなふうに受け取っているんですか、いまと将来の展望と合わせて。
  102. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 海上交通安全法案は、御案内のとおり、東京湾伊勢湾瀬戸内海におきます船舶交通の安全をはかるということを目的にしておるわけでございます。まあ、そういう点で、私ども漁船操業の安全確保というふうな面におきましてこれに協力をせざるを得ないという面もあるわけでございますが、一方におきまして、漁業に対して海上交通安全の面から新たな規制が加えられるということになりますと、やはり漁業の生産活動について影響があるということも認めざるを得ないわけでございますが、その必要最小限度の規制にとどめたいということで、この海上交通安全法案国会提出につきましては、海上保安庁と所要の調整を行ないまして現在提出をしております法案の形になったわけでございます。それで、まあこの結果、本法案内容につきましては、大体従来の漁業がこういう海面についてもやっていけるというふうな形のものでございます。しかしながら、巨大船に対する避航義務など、そういうふうな規制も加わるということになっているわけでございます。漁業者の反対のおもな点は、こういうふうなこととのかかわりもあるわけでございますけれども、主として、最近におきます大型タンカーが内海、内湾に乗り入れるために漁業上支障となる事例が発生している、そういうことで、本法制定と同時に一定規模以上の巨大船の入域制限を行なうと、そういう規定をつくるべきだ、それがないというふうな点にあろうかというふうに考えているわけでございます。この点につきましては、先ほど申し上げましたように、いま直ちにそういう入域制限の措置がとれないということでございますので、私どもとしてはできるだけ早い機会にそういうような規定制定していただきますように強く関係官庁の面において御要望申し上げるとともに推進をしていきたいというふうに思っているわけでございます。
  103. 原田立

    原田立君 海上保安庁のほうにお伺いしますけれども、本法案が成立した場合、特水令はどういう扱いになるのか。先ほどの質問には、廃止すると、こういうふうなことでありましたけれども特水令はいままで瀬戸内海のみにあってそうしていままでの航行安全を確保していたんだろうと思うけれども、これをなくなすと混乱しないのかどうか、その点の心配はないのかどうか、その点はいかがですか。
  104. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 特定水域航行令、これは瀬戸内海に終戦後から施行されているものでございますが、この中身といたしましては、漁船一般船に対する避航義務というのが第四条できめられておりまして、これの廃止云々ということは、その避航義務がなくなるという問題についての議論になるわけでございます。その際にこの特水令の中身は二つございまして、終戦直後のいわゆる掃海水域というものに対して、これはその水路の外に出るためには、出る船としてはやはり漁船のような平底で木製のものでないと危険であるということで、避航義務を課そうという意味できめられた内容が一つでございます。一つのものは、現段階におきましてはすでにその使命は終わっておるというふうに思います。しかしながら、もう一つ、やはりむしろ戦前から引き継がれた、この海上交通法がねらっておるような問題の内容を含んでおるわけでございます。その内容につきまして、一つは対象になります航路というのが今度の交通法におきます十一航路瀬戸内では八つでございますが、その中に包摂されないものがあるということが一つ。それから、避航義務の範囲がむしろ今度の法律では少なくなる。つまり、従来は巨大船のみならずそれ以外の一般船をも漁船は避航しなければならないということになっておりました点が、今度の法律では巨大船のみである、こういうことになった。この二つの点において、むしろ一般船舶の安全確保という見地から弱体化されるのではないか。こういうような御議論があるわけでございます。形式的に見ますと、まことにそのとおりだと思うわけでございますが、基本的には、やはり先ほど来御議論がありますように、漁ろう船と一般船とのやはり共存共栄という基本線に基づきますところの両者の調整というものがどうしても必要であるということが一つあるかと思います。  それから、対象水域につきましては、そういった見地も含めまして、その後の海難の実績、運航船舶のふくそうの度合いあるいは航路の地形、海象上の条件、そういうものを検討いたしますときに、まあ若干今回のものは狭くなるということもやむを得なかろう。そういう状態になっても安全は確保できる。御承知一般船舶についての性能の向上というような問題、あるいは航路標識等の改善という、環境の改善という問題も、特水令が施行された当時よりも相当に進歩いたしておりますので、そういう立場から考えました場合にも、まあいわゆる対象範囲が狭くなる。あるいは先ほどの避航関係が少なくなる。こういうようなこともあわせて、今度の交通法になっても一般船舶に対する安全は十分確保できると、まあそのように私どもは考えておる次第でございます。
  105. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 関連。  いまも海上保安庁長官から承りましたけれども、まあ、何と申しましても、いままでこの特定水域航行令で守られたといいますか、安全を確保されていた地域が、今度の法律の施行によってはずされてしまいますと、いまおっしゃるようないろいろな対策をお考えになっていらっしゃるようでありますが、まあ、何となくまだ私ども不安を感じざるを得ないわけでございます。したがいまして、この上とも、特にはっきり言うならば釣島水域ですね、このような釣島水道のようなところに対してどのような特別措置をおとりになるのか。まあ、極端にいうならば、特水令のようなものをこの地域だけ残されるというようなことをお考えになっておられないかどうか、その辺についてもう一度御所見を伺いたいと思います。   〔理事阿具根登君退席、委員長着席〕
  106. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) いま具体的御指摘がありました釣島水道というのが、特水令と今度の法律との対象の違いでございまして、今回の法律には釣島水道航路の対象にしてないということでございます。この釣島水道につきましては、やはり相当な船が航行をいたしますが、先ほど来申し上げておりますような地理的、地形的、あるいは一日の通行船舶隻数、従来の海難状況、こういった状況は、他の水路に比べますとずっと少ないというふうに私どもは判断をいたしておりますので、対象からはずすことに考えておるわけです。これはやはり従来の経緯から、やはり一般船舶の通行上の不安感というようなもの等もございますので、そういう意味の関連として、いま特水令の一部を残すかという御質問がございますが、そういうことは私どもは考えておりません。おりませんが、たとえば、まだこれは決定はいたしておりませんけれども、本法律におきます第二十五条「狭い水道における航法」ということで、航路というほどのことではございませんけれども、「当該水道をこれに沿つて航行する船舶航行に適する経路(当該水道への出入の経路を含む。)を指定することができる」となっている。右側通行、右寄り通行などということを、海上衝突予防法だけのそれぞれの船長の判断によるということだけではあるいは危険があるかということで、これを一定の指定をすることによって、必ず右側通行であるというようなことにし得るようになっておりますが、こういった法の運用をはかり、あるいは実際上の漁ろうの皆さんあるいは関係公共団体等お話等も加えまして、そういった面についての具体的な配慮が払われないものか。今後、特に水産関係の皆さん方とのお話し合いによることと思いますが、何らかそういうような措置をとっていってはいかがかと、目下検討いたしておるところでございます。
  107. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 そうすると、今度の行政指導等によっても、これを補完するといいますか、安全を期していくと、そういうお考えでございますね。
  108. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) そういうことでございます。
  109. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 大臣に一言お尋ねしますが、長官に御質問しましたように、私どもこのような法律が施行されることは、もとより、より一歩海上交通法の前進だとは思います。しかし、やはりこの沿岸の船舶航行につきましては、やはり漁業との調和ということは非常に困難な、また同時に、漁業とのいわゆる共存共栄といいますか、それを保持していかなければならぬと思いますし、また一方、漁業関係漁船との、を引っくるめての海上交通の安全ということは期さなければならないと思います。したがいまして、いま私、特に今度の法律からはずされた——と申しましょうか——地域についての航行安全ということに対して長官にお尋ねしましたのですが、今後のこれらに対する対策でございますが、これに対する御所見を伺いたいと思います。
  110. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいま御指摘がございましたが、特水令を廃止してそれで安全を保てるかという御指摘でございますが、ごもっともな御指摘と思う次第であります。私ども、今回この御審議を願っております交通安全法、これは御承知のとおり、非常に過密化してまいりました狭い水域におきまして、このままに放置しておきましたならば万一の不測の事態を起こしかねない、非常などろなわ式だと、はなはだ恐縮でございますが、とりあえず交通安全の面からひとつぜひこれだけの規制はさしてもらいたいということでやった次第でございますが、いま阿部先生から御指摘がございましたように、水面の共同使用、船舶漁業との共存共栄をはかるというのが一番の趣旨でございますので、したがいまして、これを三海域、十一航路に指定をいたしましたのは、やはり漁業との調和の問題をはかった次第でございまして、したがいまして、そういう点につきまして、やはり幾分いろいろの問題はございますが、特水令を当然やはり廃止するのが筋道ではないか。いまの時点ではそう思っておる次第でございます。  いま、お話がございましたように、それにいたしましても、いまの現存の法規を十分に生かしまして、この海上交通安全法とも、あの行政指導に基づいて、また行政指導を十分勘案いたしまして、そうして船舶航行安全をぜひともはかっていかなければならない。それがためにはあらゆる方策を講じていかなければならないというふうに思っておる次第でございます。まあ根本におきましては、いろいろふくそう海域における規制の問題その他ございます。これが根本でございますが、これはどうしてもやはり将来の問題として解決をしなくちゃいかぬ、これが一番根本の問題でございますが、これらにつきましては諸先生のまたいろいろの御指導、御意見を承りつつ、早急に何とか実現をしてまいりたい、こういうふうに思っている次第でございます。
  111. 原田立

    原田立君 水産庁にお伺いしますけれども、先ほどのいわゆる内湾漁業ですね、これのある程度規模の縮小はやむを得ないというような話が先ほどちょっとあったけれども、そこいら辺が、いわゆる漁業関係者の既得権の侵害であるというようなことで非常に心配もしているし反対もしているゆえんだと思うんです。また、わかりのいい人の話ですと、こうやって公害——油とか都市下水等によって非常に海が汚染されている、だから別途いい漁場を養成していきたいと、そこへ移っていくには、国の施策でそういうふうに移らざるを得ないのだから、国のほうでもっとしっかりそこをめんどう見てくれと、そうするならば自分たちの生活も安定できるし、何もこの法律にことさら反対じゃないんだ、こういうふうな御意見もあったわけです。だから、沿岸漁業の人たちが安心して仕事ができるようなそういう施策をここに強力に打ち出す必要があると思う。先ほどから他の委員発言もありましたように、海上交通安全ばかりが先行しちゃって、そういう漁業権を守ってやるという、そっちのほうがあとになってずれ込んでいる。そこに非常に大きな不満がある。そこいら辺、どう考えておられるのか。また、今回またこうやって法律が提出されておりますから、海上交通安全法案はおそらく通るでしょう、通るかどうかこれからの話だけれども。そうすると、やっぱりこの法律だけ先行しちゃって、漁業権の確保があと回しになっちゃう。漁業権を確保するためにこうしますという、たとえば来国会なら来国会に出しますとか、臨時国会に出すとか、そこいら辺ははっきりしたこと言えますか。
  112. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 私ども、沿岸漁業につきまして、先ほど規模が縮小するのはやむを得ないというようにおとりになったようでございますけれども、私どもとしては、やはり沿岸漁業も発展をさしていきたい。ただ、一部におきましては、そういう臨海地帯の埋め立てというようなことが進行し漁場が失われているというふうな実態はこれはあるわけでございますから、それにかわりまして、やはり私どもといたしましてはいい漁場を確保いたしまして、そこについて、最近ようやく芽を出してまいりました増養殖の技術を駆使をいたしまして、従来よりも生産密度の高い沿岸漁業というふうなものを発展さしていきたいというふうに考えておるわけでございます。そのためには、先ほども申し上げましたが、水産資源開発促進法によりまして、沿岸海域におきましてそういう水産の増養殖をはかるような漁場を開発区域として指定をいたしまして、そういうところには、いま申し上げましたような増養殖技術をできるだけ駆使をいたしまして、いい漁場をつくっていきたいというふうにしておるわけでございます。現在開発区域の指定はまだ進行中でございまして、指定は行なわれていないわけでございますけれども、これを急速にそういう作業を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。そこで、第二次沿岸構造改善事業によります補助体制の中にそういう区域を取り入れまして、そういう区域で沿岸の漁場の増養殖を確保していきたいというふうに考えておるところでございます。
  113. 原田立

    原田立君 何年先にどういうふうに具体的になるのですか。
  114. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 沿岸におきますその増養殖の目標でございますが、やはり昨年できました水産資源開発促進法に基づきまして、その開発の基本方針というのを私どもで策定をいたしたわけでございますが、目標年次昭和五十年におきまして大体三十一万トンほどの生産の増大をその開発区域においてやっていきたいというふうに考えているわけでございます。
  115. 原田立

    原田立君 昭和五十年というとまだ三年先ですね。この法案、一年間猶予があって四十八年に施行ということになるんだから二年おくれるわけですね。そこら辺、もう少し早くならないんですか。
  116. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 私ども、水産生物と申しますか、いわゆる魚介類、それから海藻のたぐい、そういうものを含めて、いろいろ生産と申しますか、海からの生産を収穫しているわけでございますけれども、なかなか増養殖の技術で、たとえばクルマエビ等によりますと六カ月程度で大きくなるというのがございますし、貝類等におきましては、アワビ等におきましては、いま種をまいても五年先の話になるというふうなもの等もございまして、なかなかそう急速にどうこうするというわけにはまいらぬものでございます。ただ、私どもといたしましては、当面五十年目標で、先ほど申し上げましたような基本方針を出しておりますが、これはまあ大体五年ごとに更新をしていきまして、将来の需要に対応して、できるだけ国内での生産、ことに沿岸における生産を増大をしていきたいというふうに考えておるところでございます。
  117. 原田立

    原田立君 具体的に伊良湖水道ですね、あすこに今度は視察で行ってきました。航路漁業権が入り込んでいるんで非常に制限される。非常に心配しておりました。あそこいら辺なんかはいわゆる天然の漁場として、だんだんだんだん三河湾あるいは伊勢湾から南下してきて、結局あそこに来た、あそこのところをまた航路設定漁業の操業に不自由させられたんではたまったもんではない、絶対反対だと、こう言っておりました。ああいう人たちを、なるほど今回の制定はやむを得ません、納得しましたっていうふうにさせるには、説明するには、あなたのいまの説明では納得しませんよ。納得をさせ得るような御答弁をしてもらいたい。
  118. 田中慶二

    説明員田中慶二君) いまお話しのように、伊良湖水道のところは、いい瀬がありまして、一本釣りという釣りのいい漁場になっているわけでございます。まあわれわれといたしましては、そういう漁場はできるだけやはり確保していきたいというのを基本方針にしております。と申しますのは、なかなかそれに見返る、たとえば魚礁設置というふうなことも極力進めておるわけでございますけれども、これがそれにかわるような瀬になる、天然のそういう生産力と申しますか、それに見合うだけの生産をあげるというのは、人工的にやってまいりますとなかなか容易ではございません。それに、いま申し上げましたように、かなりの時日を要することも実際でございますので、私どもとしましては、いま、さあそこのところはやめてこちらへ移れというような、開拓におきます入植というふうなことは、漁業の場合はなかなかできません。やはり従来の漁場の上にできるだけいろいろな手を加えてさらにそこの生産密度を高めていくというよりほかに方法はないんではないかというふうに考えております。
  119. 原田立

    原田立君 もう一ぺん言ってください。
  120. 田中慶二

    説明員田中慶二君) それでは要約して申し上げますが、天然のそういういい瀬にかわるようなものが新しく別のところにできるとかいうことは、天然のものに対抗するようなことは、魚礁設置はやっておりますけれども、それにかわるようなものはなかなか急速にできるというわけにはまいりません。したがいまして、農業におきまする開拓地へ入植するというふうなこともできません。ですから、私どもとしてはもしそういうある一部の漁場が埋め立て等により消滅をするということになりますれば、残ったところをさらに手を加えて従来よりも生産があがるようにしていくということを進めていくよりほかに方法がないというふうに考えております。
  121. 原田立

    原田立君 水産庁としては、だんだん時勢の波に押されて湾内漁業、沿岸漁業が縮小されていくのはやむを得ないのだと、こういう理解のしかたですね。
  122. 田中慶二

    説明員田中慶二君) まあ、産業の発展に伴いまして、ある程度の埋め立て等が進行するということにつきましては、私どもとしては、いい漁場をやはり確保していきたいということで、できるだけそういう点の調整をはかっていくというふうにいたしておりますが、こういう埋め立てで漁場が消失をするというのもまた事実でございます。しかし、それだからといって、私どもとしては内湾の漁業をあきらめたということではなしに、残されたといいますか、ほかの漁場をさらに手を加えて優良な漁場にしてここで生産の増大をはかっていく。言ってみますれば、残った漁場における生産密度をあげるように優良漁場を確保しあるいは造成をし改良をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  123. 原田立

    原田立君 埋め立てと言ったけれども、私は埋め立てのことは何も言っていない。伊良湖水道の話をしている。航路設定によって起きる損害でしょう。そこのところを言っているんですから、埋め立てによって漁場が少なくなるという、そのことを前提ではなしに、伊良湖水道航路設定するために漁場が縮小される、こういうことはやむを得ない、こう理解していいんですか。
  124. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 航路設定によりまして、私どもとしては、その航路にはやはり船が集中をいたしますから、航路上における漁業は、これは避航の義務のあるなしにかかわらず、やはり多少の影響はあるだろうというふうに思います。しかしながら、やはり私どものこの法案制定をいたしますときのたてまえもそうでございましたし、今後の運用についてもできるだけ漁業には従来どおり影響を与えない、少なくとも法規上の制限漁業には巨大船に対する避航義務のほかは課さないということで調整をしてまいったわけでございます。そして、私どもとしましては、伊良湖におきます航路がどのように設定されますかは、今後政令をつくる場合の問題でございますけれども、できるだけ漁業影響の及ばないような区域に航路をきめてまいりたいということで海上保安庁と折衝してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  125. 原田立

    原田立君 伊良湖水道では、何か現在自主水路というのをつくってやっているそうです。お聞きですか。
  126. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 十分には承知しておらないわけでございますけれども、そういう話をお聞きしたことがございます。
  127. 原田立

    原田立君 幅千二百五十メートル、長さ四千メートルの自主航路、いわゆる推薦航路というのを設定して現在やっておりますと今回のような法制定は不必要だ、こういうふうな意見が非常に強うございました。それで、こういうふうなことによって、この要望書では、お互いの互譲の精神によってやっていけば、何も法制定しなくたって十分共存共栄はできるのだ、こう言っているわけです。まことにそのとおりじゃないかと私は思うわけです。その点でどういうふうに理解しているかが一つ。  それから、このとき現地で非常に強く言われたのは、朝日礁、それからコズカミ礁、ここいら辺のところを何か爆破物によって上のほうをさっとさらってやるような計画があった、今度は五年計画の中には入れてないけれども、そんなことをされたんじゃたまったものじゃない、こういう一般漁民のほうの側の要望もありました。それで、そこいら辺のところを今後どういうふうにしていくのか、はっきりしておったらばお示し願いたい。
  128. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 現在伊良湖で推薦航路ということで関係漁業協同組合あるいはまた船舶の運航の関係者でそういう協議会をつくって運用しているというお話はちょっとお聞きしたことがあるわけでございますが、私どもといたしましては、そういうふうな自主的な運営ということは望ましいことでございますし、そういうことで事が足りればそれはそれでよろしいのじゃないかというふうに思うわけでございますが、運輸省のほうでは今回、そういうような事態も押えて、少なくともこの程度の法規によるいろいろ海上交通の規制をしたい、そうしてそういう根拠法規によってやりたいというふうなお話でございます。実態の運営として現在の政策とさして変らなければ、それもやむを得なかろうというふうに判断をしている次第でございます。  なお、伊良湖水道の朝日礁、コズカミ礁の岩礁爆破のことでございますけれども運輸省からのお話では、まだ計画の段階で具体的な内容の検討には至っていないというお話でございます。一方愛知三重両県からの報告によりますと、関係魚協はこれらの水域が根つき魚の一本釣りの好漁場である、しかも、沿岸漁民として非常に依存度が高いということで調査そのものにも反対をしているというふうなお話がございます。私どもとしては、運輸省が今後どういうふうにお取り扱いになるのか、これを見守っていく必要があると思いますけれども、基本的にはそういうふうな好漁場でもございますので、関係漁民の意向を十分にしんしゃくをして、漁業に重大な影響を及ぼすことのないように、今後運輸省とも、そういうお話が出てまいりますれば、いろいろと話を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  129. 原田立

    原田立君 ということは、そういうことはやってもらいたくない、近い将来においても、遠い将来においてもそういうことをやってもらいたくない、こういう基本姿勢水産庁ではある、こういうことでいいですか。
  130. 田中慶二

    説明員田中慶二君) そのとおりでございます。
  131. 原田立

    原田立君 じゃ、そこいら辺を受けて長官、どうですか。自主規制でやっている。それ以上の規制が今回伊良湖の場合には加えられるのかどうか、まずその一点。
  132. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 私も現地に御一緒いたしたわけでありますが、現地における自主規制というものの内容そのものについては、さほど詳しい説明があったように記憶をいたしておりません。その後、私ども帰りましてよくいろいろ聞いてみましたところが、おっしゃるような航路幅を設けまして、そこで何をやるかといいますと、四日市関係の代理店から大型船舶の通航予定を豊浜漁協無線局を通じて受けて、それをその無線局から出漁船にその時刻を通報すると、こういうことだけのようでございます。なお、それに、中部電力渥美シーバース関係の入港船についても同様なことを始めたと。これは昨年からのようでありますが、そういうようなことが自主規制の内容であるようであります。私どもがこの法律で考えておりますことは、もちろん、いまのようないわゆる巨大船通航予定時刻の通報という問題も含んでおりますが、それ以外に、やはりこの法案がなければできないことは、そういう通報を受けた際に、その通航時刻によって漁ろうとの調整をとらせる、通航時刻を変更させたりしてその調整をはからせるというようなことは、新たな法律がないとできません。さらに警戒船を配備をさしたりして、より一そう漁業との密接な連絡関係をとらせるというようなこともまた必要ではないかというふうに考えております。あるいはまた、航路におきますいろんな、むしろ漁民側からの御要望であるところの航路航行義務を課する、あるいはスピード制限をする、こういったような問題は、現在の自主規制内容には含まれていないようでありまして、そういったようなものを含めまして、私どものほうでは今度の交通法がぜひとも必要ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  133. 原田立

    原田立君 要するに、現在行なわれている自主規制以上の、漁民保護という面から見て、よりプラスな措置が講じられると、こういうことですか。
  134. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) そういう調整が可能になりますので、漁民サイドの方にはむしろなお一そうプラスの面が多いんではないか、かように考えます。
  135. 原田立

    原田立君 私は、この海上交通安全法というようなのはもう当然あってしかるべきだという基本的な思想は持ってはおりますけれども、やっぱり、沿岸漁業すなわち湾内漁業、これをどういうふうに将来持っていかれるのかというこの点がはっきりしないがゆえに、全面的にこの法律に賛成しがたいわけなんです。それは水産庁のほうがよくないんですよ、もう少し早く計画を出さないことから起きる混乱なんですから。それはせっかく努力してもらいたいと思います。  それと、長官、第二番目の朝日礁あるいはコズカミ礁の爆破の計画ですけれども水産庁としては、近い将来においても遠い将来においてもそういうことをやってもらっちゃ困ると、そういう強い御姿勢のようですけれども海上保安庁は、そういう反対をもあえて押し通して爆破する計画を、近い将来、考えているのかどうか。
  136. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) この問題は、実は私どもの直接の所管ではございませんで港湾局のほうの所管でございますが、私どもが聞き及び、また、現地の第三港湾建設局長等の説明からそんたくいたしますと、やはり漁民の皆さんとの調整、話し合いがつかない限り実行はしないということを言っておったと思います。で、私ども自体の立場からいきますると、あそこがもう少し幅が広くなって船が通りやすくなるということは、安全の観点からして望ましいことではあろうと思います。しかし、先ほど来、この法律の精神からも申し上げておりますように、漁民との共存共栄ということを前提としてこの法律を考えておりますので、そういう観点からいきますと、現地の局長の話しておるような、両者の協議が成立すればということを前提にしてそういうことを望むと申し上げておるわけでございます。
  137. 原田立

    原田立君 今度の航路設定について、私、伊良湖水道と西明石しか行ってこないんですけれども、伊良湖のほうも漁業権の範囲とぶつかっているということを言っておりました。それは先ほどあなたも納得していた点でありますけれども、幅のきめ方によっていろいろ違ってくるだろうと思いますけれども、西明石海峡のほうもぶつかっているようなんですよ。それはおわかりですか。
  138. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 明石海峡航路におきましては、これはきめ方いかんによるわけでございますが、現在では、漁業権区域と大体すれすれと申しますか、そういうふうな一応の図面がございます。これはきめ方によりまして、もう少し幅を広げれば漁業権区域にも入ってくるというようなことに相なるわけでございます。
  139. 原田立

    原田立君 すれすれじゃないんですよ。岩屋漁協の組合長が言っておりましたけれども、だいぶ入り込むんですよ。ここに陳情の書類があるんですけれども、もう少しそこをはっきりしてもらいたいと思うんです。
  140. 田中慶二

    説明員田中慶二君) これはまだ、航路の図面と申しますか、航路の境界が確定をいたしておりませんので、どうも、その程度では、入っているとかいないとか、何とも申し上げられないところでございます。しかし、いずれにしても、大体、漁業権区域にすれすれになるか、あるいはもう少し広げて漁業権区域の中に入れてくれというようなお話海上保安庁のほうから出ますか、これは今後の折衝の問題でございます。
  141. 原田立

    原田立君 長官、この西明石のほうですね、現在、航路航路幅については千四百メートルを考えているというお話は前にお聞きしましたけれども、千四百メートルの航路幅ですと、共四〇一三号ですか、これはもろにぶつかることになるんですけれども、そこいら辺、そういうふうに認識していますか。
  142. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 私も、正確な図面が、どれを見てお話し申し上げればいいかよくわからないのですが、現地における漁協の要望書並びにその説明にもあったかと思いますが、私どもでいままで地元とのお話し合いに使っておりました航路予定区域というのを少しずらすというようなことをしてこの共同四〇一三漁業区域と重ならないようにしてもらいたいというお話があったと思います。私どもは、できるだけそういうようなことをはかりながら、設定にあたっては地元の皆さんとよくお話し合いをしたい、かように思っておりますので、この明石に関しましてはある程度調整が可能なのではないかというふうに現在考えております。
  143. 原田立

    原田立君 先ほどの答弁の中にありましたんですが、来年一斉に漁業権の更新があると、航路に入っているものでもこれは従来どおりとしますよと、こういうお話でありましたけれども、それは間違いないでしょうか、再度確認をしておきたいんですが。
  144. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 航路の指定があったという理由のみではその漁業権の区域を変更するということはいたしませんというふうに申し上げたのでございます。
  145. 原田立

    原田立君 そうすると、他の理由で漁業権がなくなっちゃうという場合もあるわけですか。
  146. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 漁業権につきましては、都道府県知事が漁場利用計画を定めて漁業権区域を定めるということになるわけでございますが、そういう場合には、漁業調整その他いろいろの関係を考慮をしてきめていくということになっておるわけでございます。
  147. 原田立

    原田立君 こういう時期ですので、みんな地元漁民の人は不安に思っているのですよね。航路に食い込むと、こうなると、そういうことを理由にして将来また一斉に取り上げられちゃうのではないだろうかとたいへん心配しているわけです。ところが、あなたの答え方も非常に微妙なんですよね。航路ができるということによってのみそういう召し上げなんかはしないのだと、何かほかに他の理由があれば取り消しにする場合もあるのだと、こういうふうなことなんだけれども、いまこの海上交通安全法案によって航路設定されるこのことによって取り消しされるんじゃないかという非常に不安を持っているのが現実なんです。だから、その他の理由というのだったら、これは現地の人たちも説明すればやむを得ないという理解のしかたをするかもしれないけれども航路設定したからやらないということだけははっきりしますね。
  148. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 現在、来年度の一斉更新に備えまして、各都道府県におきましては現地のそういう漁場の調査等をいたしておるわけでございます。したがいまして、この関係漁業権のところについてこれは全然変えないということをまだ申し上げられるような時期ではないのでございますが、先ほど来から申し上げておりますように、この法律の施行に伴いまして航路が指定をされたと、その航路が指定をされたという理由だけでは変更はいたしませんというふうに申し上げているわけでございます。
  149. 原田立

    原田立君 先ほども質問があったんですけれども明石瀬戸漁業協議会の山田さんの要望書の中に、「今後ますます航行船舶輻輳の増大が予想され、いかにしても船舶航行安全と漁業操業とが実態的に両立しがたい場合には、国の責任において漁業者に対する補償の制度を確立されたい。このため「自衛隊法第一〇五条」のような補償条項を考慮されたい」と、こういう要望が実は来ているわけです。そういうような補償措置を考えるというふうに御答弁がいただけますかどうか、その点、どうですか。
  150. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) こういった御陳情の趣旨と同様なことが衆議院の附帯決議にもついております。ここに書いてございますとおり、船舶航行安全と漁業の操業とがいかにしても両立しがたいという状態になったという場合においては、国の責任で補償の制度を確立する必要はあろうかと考えます。
  151. 原田立

    原田立君 衆議院のほうに附帯決議が六項目ついているわけですね。その第二番目にいまぼくが申し上げたような意味のことも出ているわけです。大臣、この附帯決議は委員会で尊重しますと、この精神は尊重しますと、こういう御答弁はいつも形式的におやりになるのだけれども、この六項目の附帯決議ですね、この具体化を各項目ごとにひとつ御答弁願いたい。
  152. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 外海の適地に中継基地を設けたりパイプライン網を整備しますこのことは、私、海上保安法の御審議を願う前から私は運輸委員会で常にこれを言っている次第でございまして、どうしても将来におきましてはそういったような外海に中継基地を設ける。喜入なんかは外海ではございませんが、外海に近い一つの例でございます。これをいま私は港湾局長に命じておりまして、具体的に外海にそういったようなバースができるかどうか。御承知のとおり、先ほど申しましたとおり、外海におけるところの波濤の圧力というものは波の高さの二乗でございますので、したがいまして、その点でバースを建設することは非常にむずかしい。しかし、鹿島港のごときはああいったような掘り割り式を使っておる、こういうようなこともございます。日本の港湾技術は相当に世界的水準を抜いている次第でございますから、ぜひひとつこれをあれするということで、いませっかく努力さしておる次第でございます。どうしてもこれをしませんと、海外におきまして原材料物資というものを輸入に仰ぐという日本の事情でございますので、どうしてもこれをやらなければならないというふうに考えている次第でございます。それとともに、この太平洋岸だけでなく、やはり日本海側におきましても適当なそういったものをつくるということによりまして、国土の均衡あるところの開発を行ないたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  それから第二の点につきましては、この海域汚染、漁場の減少及び漁業操業の制約、これは御承知のとおり、船舶航行のふくそうということもございますが、やはり油によるところの汚濁、また工場汚水によるところの汚濁、これらの問題が非常に大きな問題でございまして、今月の二十五日から海洋汚染防止法が全面的にこれが実施になりまして、私ども前からこれは非常に言っている次第でございますが、バラスト水の投棄につきましてはロード・オン・トップ方式、これらの装置をし、外航タンカーにつきましては、ほとんど一〇〇%もうすでに見ている次第でございますが、内航船につきましてもそれの設置を慫慂しておりまして、すでに五割程度できておるということでございますが、それも促進いたしましてこれをやっていく。またビルジその他につきましては、廃油処理施設その他を通じましてこれらの投棄の規制をする。それから、一番の問題は工場汚水、工場排水がいま通産省におきましてせっかく規制を強くしておりまして、最近におきましては幾分ずつその実効があがっておる次第でございますが、これらが一番大きな問題で、これら等を勘案いたしまして、また船舶の方面の、先ほど申しましたふくそうにつきましては、これは十分に私ども考えてまいらなければならない。それとともに、それらによりまして漁業の保護がいまよりも必要になってくるというような場合には、それに対する抜本的な方策を講じなければいかぬ。私も実ははなはだ恐縮でございますが、漁業方面は非常にうといほうでございましたが、今回の機会によりまして、相当私、漁業のほうもいろいろ先生方からも教えをいただき、また海国日本のことでございますので、どうしてもそれら沿岸漁業につきましての保護育成も必要と思っている次第でございまして、将来とも私は運輸大臣としてもまた政治家といたしましても、これらにつきまして先生方の御指導をいただきまして強くこれを推進してまいりたい、こういうふうに思っている次第でございます。
  153. 原田立

    原田立君 漁民立場からのいろいろ意見を聞いたところによると、いまいろいろと説明、答弁してもらいましたけれども、第二項の国の責任において漁業者に対する補償の制度を確立してくれという最低線ぎりぎりの場合だけれども、これが確立するならばあえてこの法案に反対しないのだ、こういうことを私、意見として聞きました。いま大臣の御答弁ですと、鋭意検討中であると、こういうまことに抽象的なんですけれども、もう少し具体的に、こういうふうに諮問してつくるとか、あるいは一年後、二年後とか、そういうふうなことで言うとか、具体的答弁はできませんか。
  154. 佐藤孝行

    政府委員佐藤孝行君) 衆議院の附帯決議の第二項の問題ですが、ふくそうする海域の汚染等による漁場の減少、これは直接この部門は本法案関係ございませんが、その次の「操業の制約に伴い関係漁民のこうむる影響にかんがみ、内湾漁業の保護並びに振興に関する基本的水産政策を早急に確立すること」、先ほど田中漁政部長からお話がありましたが、先ほどのお話のように、漁業の振興については、私ども水産庁と話し合っているのは、先ほどもお話にあったように、海洋水産資源開発促進法という昨年成立した法律に基づきましていろいろ施策を講じているところでございますが、この法律二つの柱があり、一つは新しい漁場を発見、開発するということ。もう一つは沿岸の栽培漁業を極力推進するということ。これが二本の柱でございます。主として関係あるのは後者の沿岸漁業を振興させるということですが、瀬戸内海を主体として約六カ所国立の栽培センターがございます。先ほどもお話にあったように、クルマエビ等においてはすでに計画生産ができておる。これを新しい日本の漁業分野として私はより積極的にその推進をはかっていく。たとえば北海道なんかにも道立の栽培センター等ができております。これが一点と、もう一つは海洋汚染防止のことですが……。
  155. 原田立

    原田立君 私はそんなことを聞いているんじゃないんですよ。附帯決議の二に、「将来法指定航路におけるふくそうの増大化によりいかにしても船舶航行安全と漁業操業とが実態的に両立しがたい場合においては、国の責任において漁業者に対する補償の制度を確立すること」という附帯決議があった。二項にあるわけですが、先ほどちょっと紹介したように、これが確立されればあえてこの海上交通安全法案には反対しませんと、こういう漁民意見を私は聞いたというのです。だから、ここのところの「国の責任において漁業者に対する補償の制度の確立」が具体的にいつごろ、どういうめどで作業していくのかと、こういう具体性のことを聞いているんですよ。
  156. 佐藤孝行

    政府委員佐藤孝行君) 水産政策については、先ほど漁政部長からお答えあったとおりだと思いますが、その次の油濁による被害等は、これは当て逃げと同様に加害者不明で、非常に漁民にとって迷惑になる問題でなかろうかと思います。したがいまして、私どもとせば、陸上の自賠法とは多少性格が異なりますが、方向としては基金制度を設けて、国も何がしかのこれに対する助成なり資金を支出をして新しい制度を確立していくことがこれからの漁業に対する基本政策として、これを早急に確立しなきゃならぬという考え方から、現在運輸省においてはすでに検討に入っておりますが、御承知のとおり、これはただ単に運輸省だけの問題でございません。他の役所とも関連した問題ですが、できるだけ早い機会に成案を得て国会審議の場に供したい、かようなことを考え、同様の答弁を先般の衆議院委員会においてもしてきたつもりでございます。
  157. 原田立

    原田立君 これで終わりにしますけれども、できるだけ早い時期にという、そのぐらいのことしか言えないだろうとは最初から予想しているんですけれども、それではあまりにも抽象的なんですね。この交通法案は即時実施になっちゃっていくわけですから、だから、あまり抽象的な答弁では私ども納得しないし、多くの漁民の人も納得しなかろうと、こう思うのですよ。より具体的に、たとえば年次計画ぐらいのことで、こういうふうにいま計画——まあメモ程度でいいから、こんなふうな考え方がありますというようなことを言ってもらいたい。
  158. 佐藤孝行

    政府委員佐藤孝行君) 特に汚染のひどい東京湾等においては、これは産業立地政策の根幹に触れる問題でもございますので、簡単に運輸省だけでは結論を出すことは私は不可能じゃなかろうか。したがって、関係庁と協議の上、政府全体として成案を見るべきものと判断いたします。かような考え方から、まず運輸省が一歩前進すべしということで現在検討させて、先般の衆議院委員会にもお答えしたように、すみやかに成案を得て、できることなら次の通常国会提案したい、そういう心がまえで準備をしているということをひとつ御理解いただきたいと存じます。
  159. 原田立

    原田立君 次官ね、あなた汚染等云々と言ったけれども、私は汚染のことを言っているのじゃないのですよ、これ。ここで「航行安全と漁業操業とが」云々という、それを前提にしているのですよ。その場合に国の責任において漁業者に対する補償制度を確立しろと、こういう附帯決議になっている。汚染のことを言っているのじゃないのですよ。そこを間違わないでもらいたい。  それじゃあ、この附帯決議に盛られているようなその内容において来国会に提出をすると、そこまでいま作業をしておりますと、こういう理解でいいですか。
  160. 佐藤孝行

    政府委員佐藤孝行君) 私の見た附帯決議が最初の原案で、多少変わったようでたいへん恐縮に存じます。漁業ができない場合補償するのは、これは当然でございます。
  161. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 実は私、これからの質問は、この前質問をいたしましたのに続いて御質問申し上げようと思ったのですが、大臣も御出席になっておられますし、この前の質問といささかダブるきいらはあるのですが、そしてまたきょうそれぞれの方が御質問になり、大臣の所見をただしておりますのと大体軌を一にすると思いますけれども、実はこの法案は五年越しの課題であって、ようやく今日日の目を見たと、そういうことを考えてみますと、この五年越し日の目を見なかった理由、そして今日この法案国会に上程をされておると、こういうことから考えますと、反対をしておられた漁民の方々との話し合いというのは、それぞれの立場がありますので、完全に十分に意思の疎通がついておるとは思いませんけれども、今日このような形で漁民の方々のことをこの国会審議の場で論議をしなければならぬというのはいささか私は意外の感をしておるわけです。同時に、私、先日皆さんと一緒に明石海峡とそれから伊良湖水道の視察に参加をさせてもらいました。これも先ほど原田さんのほうから出ておりましたのですが、伊良湖水道におきましては、愛知県の知多半島の豊浜の漁業組合は自主的に航路設定をして、安全のために——これはみずからの安全を含めまして——自主的な規制をし、さらにそれを推薦航路というふうな形でもって、これによって安全というのは保たれ、いままで事故はないのだと、こういうふうに強調をしておられたわけであります。もちろん、お互いに海の上で生活をするわけですから、これは安全ということは当然なことでありますが、みずからが自主的にそういう安全のことを考えていろいろな方策を講ずるというのと今回の法案趣旨というのは、私は考え方としてはあまり大きな違いはないと思いますけれども、みずからがやったということと、それと同じようなことであっても、法案として、ことばは適切でないかもしれませんが、上からおっかぶせられるということからいくと、これはやっぱり心理的にはかなり違うのではないかというふうに思います。同時に、これも先ほどから話がありましたが、伊良湖水道のおそらく今回の航路になるのも千二百メートル、四千メートルの矩形の形で出てくるのだろうと思いますが、それがいわゆる共同漁業権は地方自治体の長がお認めになったのに、私の見た図面からいけば、かなりその航路がその漁業権の上に乗っかっております。これは明石海峡のように航路を少しずらして、そういう重複するのを避けるというのはちょっとできかねるだろうというように思います。先ほどから、航行する者と海の上で漁業を営む者との共存共栄ということばが盛んに使われております。もちろん、ことばどおりいけば、共存共栄ということは私は望ましいことでありますし、そういう考え方でこういう問題は調和をはかりながら処置をしなければならぬと思いますが、聞いておりまして、共存共栄というのは、この避航との関係、そして漁業との関係からいきますと、「共存共栄」と言うにしては多少やっぱり傾斜があるのではないかというふうに思います。したがって、私のところへ来ております漁業組合の関係の電報の中にも、「漁業権」ということばでなくて、「操業権と生活権を侵害する」云々ということがあるのですが、まあ用語の選択はともかくとして、海でとれた魚によって生活をしておる人から見れば、このことによって多少ともやはり自分たちの生活というものが侵害されるとすれば、そこには何かの形で国としての配慮があってしかるべきではないかという気持ちは私は否定すべくもないというふうに思います。そこで、これはまあ先ほど大臣も、政府としての考え方のもとにこのように考えておるんだ、こういう御答弁がありましたので、それも私聞いておりますが、何としてもやっぱりこの辺のところに対しては何かもう少し前進した御答弁というか考え方、いわゆるそういう漁民の人たちに対するあたたかい思いやりが、ただことばでなくて、具体的に何かの形で、納得かできぬまでも、そこまで考えておるのかというような、心の琴線に触れるような御答弁というか考え方というものがあってほしいというふうに、前からの経緯なり今回視察をいたしまして、やはり漁民の人たちもそういうように考えておるわけですから、そういう点についての御所見をひとつお伺いをしたい、このように思います。
  162. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいまの漁民の方の不安につきましての御指摘でございますが、まことにごもっともに思う次第でございます。五年の間、私ども海上交通の危険を感じつつもついにこの法案をいままで出せなかったというのもやはりそこにあった次第でございます。今回それを提案するに至りましても、いろいろそういう点で問題がございました。今回はいろいろ関係各省また漁業組合等の御理解をいただいて、やっと提案の運びに来た次第でございますが、具体的に申しますると、まだ末端の現場の方々まで十分の御納得をいただいてないという点も私ども承知しておる次第でございます。まことに残念に思っておる次第でございます。私どもといたしましては、先ほども冒頭に御答弁を申し上げましたとおり、まず第一番にこの水面の共同使用、共同の利益のために調和をとったことをやるということが一番の根本でございます。それゆえに、その方面につきまして、先ほども申しましたとおり、漁業の方の利益の損失をできるだけ少なくするという方面でほんとうに最小限度の規制をするという方向で今日まで来た次第でございます。御承知のように、今日のただいま御審議を願っております三海面十一航路というものは、御承知のように非常にふくそうしておりまして、しかも、日本の船舶だけでございません。外国船舶も常に通航しておりまして、これらに対する規制というものも、港湾以外でございますのでほとんどできない。その速度を緩行させる命令もできない。それからまた一方通航を命ずることもできない。水先案内人を強制することができない。こういうことでございますので、どうしてもそれをしなくちゃいかぬということが主眼でございます。また一面におきましては、いままでやはり巨大船が通る。御承知のように、巨大船は非常にやはり運航につきまして動作が、ほかの船とは違いまして、のろいということもございますので、いままででもやはり漁船のほうでもって巡航していただいているというようなこともございますので、そういう点も勘案をいたしまして、またいろいろ大蔵省また法制局とも十分折衝した次第でございますが、やはり何と申しましても、今日法制上は代替の漁場は国家補償も非常にむずかしい、こういうことで、やむなくこういうことにした次第でございますが、いまも御指摘がございましたが、衆議院におきまして、またいろいろの先生方から御指摘をいただきました漁業補償の問題、無過失によるところの、原因不明の汚濁によるところの損害賠償につきましても、やはり保険制度を早急に樹立する。また、政務次官から御答弁を申し上げました、万一そういったような船舶がふくそうして漁業ができなくなるというような場合、これは当然のことでございますが、政府といたしましても、これの漁業救済の道を当然これは考えなくちゃならぬということも勘案をいたしまして、できるだけひとつ漁民立場というものを十分に勘案をしてやっていくということを、はっきりと国会の場でお約束をしている次第でございまして、その早急の実施につきましては、運輸省運輸省なりに全力投球をいたしまして、それらの実現に邁進をする次第でございますので、一そうのひとつ御指導を仰ぎたい、こう思う次第でございます。
  163. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 お話を承りまして、ぜひひとつ具体的な形でもって早急にそういう問題を解決するための実現ができるようにお願いを申し上げておきたいというふうに思います。  質問を進めます。航路についてでありますが、この航路設定については、この法案ではまん中にブイを置いて、そしてその両側を航路として規制をしよう、こういう考え方のように承知をいたしておりますが、この方法は、どうも航路の明確さという点では明確度を欠くように思います。したがって、航路の境界をブイによって囲うと、先ほどお話しのありましたように、航路というのはおそらく矩形な形になるだろうと、こういうような御説明もあったわけでありますが、境界をブイで囲うことによって非常に明確にもなりますし、漁船としても安心をして操業できるというようなふうにも考えられますが、この辺についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  164. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 原則的には、いま先生が理想としてお話しになったとおりのことを実は私どもは考えております。中央にだけブイを置くというやり方は、現在の浦賀あるいは明石等におきまして、いわゆる行政指導でやっておりますやり方として中央だけに置いております。しかし、今度この法律が施行されますと、たとえば航路航行義務であるとか、追い越しがどうであるとか、あるいはまた航路を横切るものは航路に沿って航行しているものの航路を避けなければならぬとかいうような、この面積でもっていろいろな規制なりが出てまいるわけでございますので、おっしゃるように、全体を囲うような、箱のようなことを考えなければならないというふうに思っております。まあ、具体的には原則としてブイとブイの間を二マイル間隔でずっと置いていくようなことにして囲うように考えておりますが、これがまたあんまりこまかくなりますと、それこそ漁ろうとの関係が出てまいるわけでございます。その辺も十分お話し合いの上で進めていきたいと思っております。
  165. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 次の質問に移りますが、いわゆる巨大船がまあ前方に漁船だとかあるいは小型船を発見をした場合の巨大船の停止だとか、まあ旋回あるいは死角、これは死角というのは、これはまあ釈迦に説法ですが、大体いまのタンカーあたりは船尾のほうにブリッジがあって、操舵室も当然そこにある。そこから見るということになりますので、大きければ大きいほど死角も大きくなるんではないかと、これはまあ、この間もちょっとお話を聞いたんですが、外国船の船長……船あたりが入港をして、いろいろ入港時の感想なんかを聞く中に、その死角から漁船を回避したつもりでおるんですが、やはりその死角をはずれてうしろで見るまでは何となく不安な気持ちだと。同時に、漁船のほうは、これはちっちゃな船から大きな船を見るんですから、一部始終見えるだけに、こちらのほうはもう大体勘といいますか、長年の修練でそれを、どれくらいの大きさはどれくらいの距離で避けられるということは大体わかるというようなことで、なかなかこの辺のところは双方の考え方も違いますし、船の構造も、当然のことではありますが違いますので、要するに、巨大船の操作の問題と死角の問題、そういういろんなことについてのそちらでの調査がありましたらひとつ教えていただきたい。
  166. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 巨大船の死点の問題でございますが、データといたしまして私どもの手元にありますもので一例をあげますと、たとえば重量トン、二十二万七千トン・クラスのものですと、船長が三百二十七メートルになります。この三百二十七メートルのものについて、いわゆる死角といいますか、操舵室内からながめて船の前方が見えないという長さは、それは船の一番先端からの距離でいきますが、二百十三・七メートルくらいの先が見えない。それまでが見えないというようなことになっております。こういったような実情が、実はわき道へそれますが、第三条でいう漁ろう船との避航関係におきまして、いわゆる巨大船のほうを漁船が避航しなければ困るということの私は一つの理由になるのではなかろうか。しかし、巨大船自体の安全の観点からいきますと、こういうことに対処してやはり見張りを前方に出す、後方に出すということは強く皆さん方実施をしておられます。私ども行政指導で強くお願いをしております。さらにはまた、前路の警戒船という特別な小型のものを、本法規定をいたしております十一航路等の非常に狭水道を通るような場合には、そういう船を前方に出して自分の目玉の足しにするというようなことなどもこの死角を広くする一つのやり方にとっております。そういった、船自体でやりますほかに、いま私どものほうで、さらに陸上におきましていろんなレーダーその他を使って船にいろいろなニュースを与えてやるというようなこともまた一つ考えております。東京湾で最初にやろうとしておりますが、まだ完成まであと二年ぐらいかかりますが、これらをほかの狭水道——瀬戸内海、伊熱湾、大阪湾等にも推し進めていきたいと考えております。さらにはまた、船自体におきましても、そういう死角をなくするような技術開発をしてもらえないかと、先般、一昨年コリントス号と第一新風丸とが浦賀で衝突いたしましたあとで、やはりこういった議論が出まして、その際に一つの安全対策という中でいまのような問題に対してテレビ・カメラまたはミリ波レーダーを船首部に設けてブリュジで監視することができると、そのレーダーをブリッジで見ておれば死角の範囲がわかると、そういうものが考えられないかということで、十分早急に検討して有効性が確認されたらば将来装備というものを義務づけたい、こういうような方針も打ち出しておるわけでございます。まあ、この巨大船につきましては、そういった死角の問題だけでもいまのような問題があります上に、運動性能といわれます逆転停止距離であるとか旋回縦距であるとか、いろんな面において運動性能が非常に悪うございます。これはむしろ漁船等との避航関係になりますと、こういう運動性能の悪いものを性能のいいものがよけると、これは国際的な一般の慣例でございまして、そういう面から、本法案第三条の避航義務を持たせるのを漁船にし巨大船を進航してもらう、こういうふうにきめたわけでございます。これで御答弁になっておりますかどうか。
  167. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 次に進みます。  いただいた資料の中で三海域大型船の、巨大船航行の総船舶数は数字が明らかになっておりますが、安全法案の二十二条でいうところの危険物を積載した船の航行ですね、これわかっておりましたら、明石海峡なり伊良湖水道で月間どのくらいあるのかということをひとつお示し願いたいと思います。   〔委員長退席、理事阿具根登君着席〕
  168. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 実はこの危険物積載船といいますものの約八二%に該当しますのがタンカーでございます。原油はこれは一番の危険物でございまして、八二%ほどがこの危険物積載船の中のタンカーになっております。それ以外のものがいわゆる薬品その他を積んで走る船でございます。これは航路別の通航隻数ということになりますと、実はタンカーとしての隻数はよくわかりますが、それ以外のものが実はデータ的に手元にございません。ただ、航路でなしに東京湾伊勢湾瀬戸内海という海域の別で申し上げますと、東京湾につきましては、四十五年度でございますが、タンカーが二万二千六百二十八隻、そのうち巨大船の隻数は千二十七隻、タンカー以外の船、これは千二百九十九隻、合計いたしまして二万三千九百二十七隻というのが東京湾内出入りの危険物積載船入湾の状態でございます。伊勢湾につきましては、タンカーが一万一千二百三十二、そのうち巨大船が二百八隻、その他の危険物積載船六百六十七隻、合計いたしまして一万一千八百九十九。瀬戸内海につきましては、これは一番数が多うございまして、タンカーは五万二千七百三十四、そのうち巨大船が千四百三十七、その他の危険物積載船一万六千三百二十七、合計して六万九千六十一。以上三海域を合計いたしますと約十万五千隻という危険物積載船で、そのうち約八二%、約八割に該当します八万六千五百九十四というのがタンカーであり、それ以外の一万八千隻余というのがそれ以外の危険物積載船の入湾状況、こういうことになりまして、タンカーが圧倒的に多いということでございます。
  169. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 先ほど川村委員の御質問の中で資料の要求がございまして、私がこれから聞こうと思うのもその資料をいただけばわかるわけですが、特にそのうちで水揚げが百三十一億だと。三海域といいますか、これが海域別にわかりますか。航路別でなしに、いわゆる東京湾伊勢湾瀬戸内というふうに三つに大きく分けた場合百三十一億……   〔理事阿具根登君退席、委員長着席〕
  170. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 先ほどこれは前川先生の御質問にお答えしたのですが、実は漁獲金額の単位が一けた違っておりまして、千三百十七億でございます。  それで東京湾でございますが、東京湾が百七十三億でございます。ちょっと端数は略します。伊勢湾が二百二十三億。それから瀬戸内海が九百二十億でございます。
  171. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 魚礁を、これを漁場の縮小と関連をして人工的に何とかつくっていこうというようなお話がありまして、それは二つの方法でやるんだということが先ほど御説明がありましたんですが、愛知県の場合、これは明石でもやっておるという話ですが、参考のためにちょっと簡潔にお聞かせをいただきたいと思います。  それで、市電なんか撤去した場合、海の中へ入れて、この間テレビで見ましたら、かなりの魚礁になっておるというようなことを言っておったんですが、あれは実際どうなんですか。
  172. 田中慶二

    説明員田中慶二君) 最近におきましてはそういう大型の廃棄物と申しますか、市電の古くなった車体、あるいは炭鉱におきます石炭を運びます炭車の古くなったものを一部の県でそういうものを入れた例がございますが、これはごく最近でございまして、現在魚がついているというふうな話は聞いておりますが、これがどのような耐用年数がありますものか、そういう点がまだ不十分でございます。もう少し経緯を見ませんことには、一体魚礁としてどういう価値があると申しますか、有効性があるか、もう少し経緯を見たいというふうに考えております。へたにがらがらとすぐこわれるようでございますとかえって海が荒らされるというようなことにもなります。現在、そのほかにはタイヤでございますとか、あるいはそのほかにいろいろ大型廃棄物を利用しようという試みがございますが、まだ水産庁といたしましてはそういうのを積極的に奨励するという段階ではございません。むしろ調査研究中ということでございます。
  173. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 私、衆議院のほうの会議録を読ましていただいておったんですが、その中で、いわゆる二十二条の「巨大船航行に関する通報」義務についていろいろやりとりがありました中で、たしか長官だと思いますが、この通報する時間は航路の入り口に到達する十二時間前とさらに同じ場所へ到達する三時間前、この二回を原則として考えておるというような御答弁があったんですが、これは実は私は「原則」という意味をお聞きしたいのですが、他意はなかったかと思いますが、ここで「原則」ということばが使われておりますので、原則というのはどういう意味なのかひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  174. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) そういうことばがあるいは適当でなかったかとも思いますが、最低限というくらいな意味でございまして、途中で時間が変更になるというようなときには、そのつどこれはまた連絡を受けそれをまた通報するというようなことになってまいります。十二時間前と三時間前には必ず通報してもらう、そういう意味で「原則」と申したのでございます。
  175. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 そうすると、まず正常な場合はとにかく十二時間前と三時間前、二回は必ず通報をすると、こういうことですね。ただ、変更があった場合はそのつど通報するということ、その意味も含めてのこの「原則」ということばだという話でわかりました。この通報を受けての漁船への通報、連絡の体制ということにつきましては、先ほどどなたか御質問になりましてお答えもありましたので、特にそれ以上足すこともなければお答えいただかなくてもけっこうであります。  二十三条の、「海上保安庁長官は、」巨大船「の航路における航行に伴い生ずるおそれのある船舶交通の危険を防止するため必要があると認めるときは、」その「巨大船等の船長」に「航行予定時刻の変更、」だとか「進路を警戒する船舶の配備」だとか、そういうことを指示されるのですが、この「航路における航行に伴い生ずるおそれのある船舶交通の危険を防止するため必要があると認めるときは、」と、これは読んでいけば、なるほどそのとおりだというような気がいたしますけれども、一体どういうことをこれは言っておられるのですか。
  176. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) まず航路における航行ということの場合に通報しろということであって、これはもちろん当然なことでありますが、航路以外で起こるということはないと、しかし、この通報の目的というのは、「船舶交通の危険を防止するため必要があると認め」たときにこういった指示をする。つまり、何が何でもどんな場合でも指示ができるというわけではございませんで、やはり非常に交通がふくそういたしまして一種の危険が考えられるという際に、「必要がある」というふうに考えて適当な指示ができるということでございます。この指示権をあまりに膨大にいたしますことは、またそれなりに巨大船に対してのはなはだしい制約にもなるわけでありますので、ある程度こういう目的を明確にしてしぼってあるということでございます。
  177. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 これは実際船が航行しておって錯綜をするという場合もこれは入るんですか。何か事故があったときのことを言うのですか、このここに書いてある条文というのは、具体的には。
  178. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 船舶交通の危険を防止するということでありますので、事故があったときには、事前にまたこういうことをさせることもできます。それからまた、その事故があった場合にはどういう措置を命ずることができるというまた別な条文もございます。しかし、これは単に事故を前提にしておるというよりも、一般的な船舶交通の危険を防止するということでございまして、やはり巨大船が通るというときにはこれはいろいろ問題が起こりがちであります。たとえば、毎々申し上げておりますこととしては、いわゆる避航が非常におそいような漁船が集団的にたくさん出ておるというような中へそのまま突っ込んでくるということは、やはり双方の船にとって危険があるというふうに考えられますので、そういう際には時間調整ということをこの条項により指示として行なう、こういうことでございます。
  179. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 これね、私こういうことを言うと何ですけれども、こういう条文だけで航路予定時刻の変更とか進路を云々ということは、ただ単にこういう条文を残すだけじゃないかという感じがするんですよ。これは私うまく言えませんけれどもね。  時間もありませんから先に進みます。これから御質問申し上げるのはパイロットのことなんですが、水先案内です。かりにこの法案が施行される場合には、海上衝突予防法とは違った形になるわけですね。そうすると、外国の船なんか入る場合には、まあ外国では、私の聞いたところによりますと、水先案内が三者あって、重要航路では、湾口に入るときにもうすでにパイロットが乗って港の入り口まで行く。港の入り口からはまた別な専門のパイロットが乗る。川は川でまた別にあるんだと。わが国の場合は大体港オンリーというふうに聞いておるんですが、さらにそれから先を言う人は、その辺は、非常に外国のほうが、俗なことばでいえば、がめつくって、日本のほうはそういう点は非常におおらかだというようなことを言われる人もあるのですが、それはともかくとして、船舶が多く航行するような、これから指定をされようとするようなこういう航路につきましては、やはりパイロットを乗せるというようなことも、もちろんこれが施行されれば、周知徹底というのはいろんな形で私はやられていくと思いますけれども、そういう面では、パイロットを乗せるようなことを何らかの形で、行政指導よりももっと強い形でやるということが好ましいのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  180. 佐原亨

    政府委員(佐原亨君) ただいま先生御指摘のパイロットの問題でございますけれども、非常に検討の価値ある問題であると思います。運輸省のつくりました浦賀水道安全緊急対策の中にも、浦賀水道を強制水先区にしたらどうかという一項目がございます。私どもも、関係のたとえば海難防止協会、船長協会それからパイロット協会、船主協会、いろんなところとその点につきましてすでに数回の打ち合わせの機会を持って検討いたしております。いろいろ議論がございまして、積極説ももちろんございます。それから消極説もございます。消極説と申しますのは、ただいま申しました浦賀水道の場合について申しますと、強制水先区にいたしますと水先人を乗せなければ入港できない。浦賀水道の場合ですと、東京湾に入れない。こういう制度を創設することになるわけでございます。先生御存じのように、浦賀水道、一日大小合わせますと七百五十隻、平均いたしますと二分間に一ぱいの船が出入りしておる。非常にふくそうしておる。その流れを、パイロットが乗下船するために、湾口の入り口で船を一度とめなければならないということが一つの問題でございます。しかも、天気が非常に悪いときに非常に乗下船に難渋いたしますと、東京湾の入り口に大型船がごろごろと渋滞してくることになる。一つの安全問題を解決するためにもう一つの安全阻害の問題が出る、こういった技術的な問題が実はあるようでございます。しかし、まあ、技術革新の時代でございますから、何らかの方向でこの問題を切り開いて前向きにやりたいということで、外国にも、先生おっしゃいましたように、確かにいろいろな例があるようでございますので、外国ではどのようにやっておるか、特に荒天の場合にどういうような措置をとってやっておるのかということを参考にしながらさらに一そう積極的に進めてまいりたいと思っております。  それから、ただいまのは強制水先区の問題でございますが、水先区といたしましては、浦賀水道あるいは瀬戸内海は水先区になっておりますが、ただし、任意区となっておりまして、船長なり船会社が水先人をとろうとすればとれる体制になっております。したがって、次善の方策といたしまして、外国の船会社あるいは船長に対しまして、極力パイロットを乗せるように行政指導はしまして、かなりの実績はあげつつあると思いますが、必ずしもこれでは十分と思いませんので、ただいま申しましたように、制度的にさらに一歩進んだ対策を考えつつあるわけでございます。
  181. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 小型船だとか漁船が当て逃げをされて泣き寝入りをしておるというような事例が、先ほどからもお話があったんですが、これはまあ夜間なんかの場合には、相手の船の確認というのは、実際問題としては、こういう場合ですからむずかしいとは思いますけれども、泣き寝入りになるというのは、相手がはっきりしないせいも一つあるんではないかと思うんですが、こういう場合の通報といいますか、これは相手の船が非常にはっきり確認できて特徴もつかめれば、海上保安庁あたりへ届け出をすれば、それに対する手当てというのはやられると思いますけれども、このような場合の海上保安庁に対する通報というようなもののパーセンテージ、さらにそれに基づいてそういうものをまあ賠償をさせるとか、双方話し合いをさせて、示談とでもいいますか、そういうことで解決した件数とかというようなものがあったらひとつお示しをいただきたいというふうに思います。私なぜこういう質問をするかというと、通報というのは比較的数がないというようなことを聞きましたものですから、同時にまた、こういう問題に対して保険等のことはどうなっているのか、これも先ほどちょっとお話があったように思いますけれども漁船の場合、いろいろな保険の種類があるようでありますが、それに該当するような保険というのがあるのかどうか。
  182. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) いまから当て逃げの件数を申し上げますけれども、要するに、これは私ども連絡があったということによってわかっておる数字ですから、これ以外、わからない数字というのは私どもにはわからないわけでございます。四十六年に発生いたしましたいわゆる当て逃げの件数、これは四十六年は九十一件ございました。そのうち検挙をいたしましたのは六十一件、六七%の検挙率と、こういうことになります。これはやはりできるだけ早いうちに届け出をしてもらうということが必須の要件でございまして、経過時間別に検挙率を見ますと、一時間以内の場合には八一・二%ということになっておりますが、五時間以上を経過いたしますと五〇%以下、こういうような検挙率になってまいっております。したがいまして、できるだけ早急に特徴をよく、ある程度記憶して届けていただくということが本件に対処する私どもとして、ぜひやっていただきたいことと考えておるわけでございます。これらのあと始末ということになりまして示談等が行なわれておりますものについては、件数的には私どものほうでも実はあまり的確な全体的な数字はわかっておりません。これは当事者同士で適当にお話し合いをされるということになっておりますので、検挙をしかかったものについての一、二が報告をされるというような状態でございます。  これに対する保険という問題については、これはまた漁政部長のほうから漁船自体についてのお話はあるかと思いますが、やはりこういう原因者不明というものについては、漁船以外の一般船の場合について保険の対象にはなりにくいというふうに一般的に聞いております。
  183. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 時間も来ましたから、これで終わります。
  184. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣に一、二点御質問申し上げます。  大臣の所管でいま頭を悩ましておられると思うんだけれど、運輸委員会で国鉄の運賃問題が審議されて非常に難航いたしておりますが、この運賃値上げの問題は、赤字を解消するために受益者負担が原則になっておると私は思うんですが、いかがですか、それをお伺いします。
  185. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 原則といたしまして、交通機関の料金というものは、受益者負担というものが一応の事業者別の原則になっておる次第でございます。しかし、個々の事業形態によりまして公共負担が非常に多い、公共性が強い、その他の問題につきましては、やはりある程度の、受益者負担だけでなく、国家助成も必要な面もそこに入ってくると、こう思っております。
  186. 阿具根登

    ○阿具根登君 もちろんそれは国が負担することは当然でございますが、その意味からいって、いま審議しております海上交通安全法案について、そういう意味で見る場合に、だれが受益者でありだれが被害者であるかとお思いですか。
  187. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 交通の安全を確保するという問題につきましては、これは一般に全部が受益者で、全部がまたそういう点におきまして被害者と申しますか、の問題になってくる。もちろん、不当に、また過失におきましてそうして加害を及ぼした者は、これはもちろんあれでありますが、受益という点に関しましては海上交通そのもの全体が受益者、こういうふうに見るのが至当だと、こういうふうに思う次第であります。
  188. 阿具根登

    ○阿具根登君 そこが私と大臣の考えの違うところなんです。同じ海洋であっても、漁業権で生活を今日まで営んできておった人たちが、これが直ちに巨大船が通るようになったらここに海路を、水路を設ける、巨大船が通るまではお前たちは避けろと言って避ける場合に、一方は、その間漁獲量は全然減らないんだ、あるいは逆にふえるんだという場合には、私は大臣が言われるのはうなずけるかもしれません。しかし、どんなにこれを善意に解釈しても、当然漁ろうをやっておる方々の漁獲量が減るということは当然なんです。そうすると、水道を設けてもらってそうして自分が航行する場合には、漁ろう船はそこを避けなさいと言われるならば、受益者はその船であることは当然なんです。いままでは、そういうことがないならば、これはお互いが避けなければならぬ。避けなければならぬけれども、今度は避けるほうは小さい船だということになってくると、あなたのおっしゃるような両方が受益者じゃないじゃありませんか。一方は受益者になり一方は被害者になるでしょう。これはどうお考えになりますか。
  189. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 私が両方とも共通の受益者と申し上げましたのは、衝突という現象について私は申し上げたつもりでございます。衝突がございましたら、これは両方とも非常な被害を受けるということで、これを避けるための交通安全という法的規制によりまして両方が衝突という被害から脱却することができますれば、これが両方の利益である。一般的でございます。こういうことを申し上げたつもりでございますが、ただいまそういったような法制をつくることによりまして漁業者に幾ぶんでも被害があるといたしますれば、これは確かにいまお話がございましたように、漁業者におきましては、これは被害と申しますか、というふう言わざるを得ない、こういうふうに思います。
  190. 阿具根登

    ○阿具根登君 これが非常に広い海域でたとえば漁業権が設置されておったとするならば、これは巨大船はおそらくそこを避けて通らねばならない。逆な立場になってくると思う。もちろん、そうしなければならぬと思う。ところが、狭い海域だから、その中に水路をつくっていくということになると思うんです。そうすると、どう動かしても漁場を占領される、こうなってくると思うんです。だから、先ほど川村委員の御質問にもありましたように、政府はそれに対して何ら対策は立ててないけれども、受益者のほうが三十五億からの金を出す、こういうことを言っているわけですね。これは受益者だからなんです。——だと思うんです。気の毒だからということじゃないと思うんです。そういうことじゃなくて、国がこれだけの規制をするならば、水路をつくるならば、なぜ当然受益者から負担するものは負担させて、そして被害者のほうに対して補償しないのか。これは私はおかしいと思うんです。国が水路をつくるのに、企業が相手側に金を出すというのは、これはおかしいんです。なぜそうするのか、おかしいんです。国が水路をつくって衝突を避けると、こうおっしゃる。それならば、当然それによって利益を受ける人に対して何らかの措置をして政府がそれをやるならばいいけれども、お互い同士が何か裏で闇取り引きで三十五億の金をやる。その金を分けるの、分けないの、基金にしてどうするの、こうするの、と言ってもめているでしょう。そういうことがあっていいのか。これは運輸大臣、どう思いますか。
  191. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ここが一番のやはり問題の点でございまして、そういったようないままで行なわれてきた法的規制をすることによりまして、いままでも同じようなことではあるけれども漁業者にはっきりして、そういう点である程度の不利益をこうむるといった者に対して国家補償をすべきではないかということが非常に議論のもとでございました。それに今日まで、やはりこの法案は緊急必要な法案でございますが、制定がおくれてまいりましたことは、先生の御承知のとおりでございます。しかしながら、先ほど来からも御答弁申し上げましたとおり、はっきりした漁業権の侵害にはならぬと、こういうような法律上の解釈でございます。それゆえに、どうしても国家として正面からこれを補償するわけには現行の法制上できぬ、こういうことでございます。そういうことでございますが、しかし、何らかのことを考えなくちゃいかぬというようなことで、はなはだ過渡的で恐縮でございますが、いろいろのことを勘案いたしまして、今日の御審議を願う法律にした次第でございます。そういうことでございますので、いろいろやはりそこには御議論、また御指摘の点もわかるわけでございますが、今日の段階ではほんとうにやむを得ざる措置だと御審議を願っている次第でございます。
  192. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣が、漁業権の侵害にならない、こうおっしゃっている。これが私にはわからないのです。じゃあ、なぜ三十五億の金を出しますか。巨大船が通る場合に、こういう規制法律をつくるよりも、その巨大船が通報してきた場合には、いま漁船漁ろう中だから沖合で待ちなさいと言って、漁ろうが終わるまで待たせますか。それならば漁業権の侵害ということは私は強く叫びません。そうじゃなくて、通るから漁船は避けなさいと言うなら、漁業権の侵害です。侵害を極力食いとめようとされていることはわかる。しかし、これは漁業権の侵害じゃないと言うなら、この法律案を通すことはできません。はっきり私たちと違います。それなら、いま漁ろう中だから大型船は沖のほうでお待ちください、こういうふうに海上保安庁のほうから連絡しますか。
  193. 佐藤孝行

    政府委員佐藤孝行君) おっしゃるとおり、私は、大型船については確かに漁船避航義務がございますから、漁業権の侵害になると思います。大臣が申し上げたのはおそらく三十九条の国の補償の該当にはならない、こういうことを申し上げたように考えております。
  194. 阿具根登

    ○阿具根登君 それからもう一つ。こういう巨大船、たとえばカーフェリー、あるいは大きな貨物船でもいいですが、これを運航させ、就航させるためにはどこの許可を取ってやっておりますか、お尋ねいたします。
  195. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) カーフェリーのような旅客船につきましては、運送事業法というものがございまして、その事業法によってこれを許可をする、あるいは事業計画の認可をするということによって行なわれることになっております。それから大型タンカーにつきましては、まずこれは建造許可という問題にかかってまいりまして、造船所がそれをつくる場合に、まず建造許可が必要とされ、その許可の段階におきまして、非常に大型のものについては、安全性の面からこういうものも一応チェックされることになります。それから、それを使う一般の船会社等につきましては、これはいわゆる集約合併の利子補給対象会社については、この法律によるチェックが行なわれるというようなシステムになっております。その間におきまして、私ども海上保安庁の安全確保という現場を担当します者については、これらのチェック時における協議に参加して意見を述べて、その総合した見解で実施をされる。一応のパターンは以上のようなものでございます。
  196. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうしますと、タンカーにしろ、カーフェリーにしろ、一応政府の許可を受けてこれはやっているはずなんです。そうして、政府が許可をしておって、ふくそうするからこういう規制措置をするのである。そういうことになるとこれは元凶は政府じゃないですか。たとえば四日市なら四日市、名古屋なら名古屋を見てみますと、そうすると、すごい油の基地ですな。こういうものは通産省なら通産省が許可をしてしまって、そこにそういうタンクができるものだから、タンカーが持って運ばなければならぬということをやっておいて、そうして今度は、一昨日通りましたけれども、工場再配置と言って、今度は四日市や名古屋、大阪、東京の工場を、どっかに出て行ってくれと、こういうのである。許可したのは政府が許可しておいて、そうして動きのとれぬようになったからお前たちどっかへ出て行ってくれ、出て行く者には金やるぞ、財政の措置してやるぞ、税金をまけてやるぞ。一体一貫性がないからこういうことになってくると思うんです。だから、今後一体どうしようとするのか、四日市なら四日市、今後また私は船がふえると思うんです。タンカーは、いま二億トンの石油を使っております。これが六十年には六億トンになるというんです。三倍になる。そうした場合に、この海上交通法でこれは規制できるかどうか。とてもできないと思うのです。十二時間前に通報があっても、十二時間前のやつがずっと並べば同じことなんです。十二時間であろうと、一時間であろうと、十二時間がいま二隻か三隻だからいいけれども、これがずっと続いてくれば、これは同じことです。そうすると、この水路では全然漁業はできぬということになるのです。そういうことが対策を立てられずに、こういう自分たちが許可して、いまふくそうしているからと、目先だけのことをやられても、これは政治じゃないのです。これは大企業に振り回されておる政治なんです。政治の以前に大企業がやっておるのです。だから、川村議員も言っておりましたように、大企業に奉仕しているじゃないか。奉仕しているということよりも、大企業に振り回されておるじゃないか、大企業がやったあとじりをずっと政府は金を出してぬぐっているじゃないか、こういうことを私は言いたいのです。ならば、こういう場合に、受益者である大企業に、船なり油会社なりになぜ税金なら税金をたくさんかけませんか。三十五億も出すというんだから、相当な利益があるはずです。これで相当な利益もまた出るはずです。そういうところから取って、なぜ堂々と補償をしてやらないかと私は言いたいのです。裏のほうで三十五億の金を出さしておいて、そうして漁業組合とすったもんだやらしておるということよりも、大企業のあとじりばかりふいて、そうしてその被害者になるのは農民であり、漁民であります。現実、そうでしょう。これは一体どうお考えになりますか。
  197. 佐藤孝行

    政府委員佐藤孝行君) 御指摘のとおり、私も考え方の基本において阿具根先生と一緒でございます。これはただ単なる海上保安庁、運輸省だけの問題じゃなく、政府全体の私は責任の問題だろうと思います。先ほども質疑応答の中にございましたように、現在の輸入原油の九〇%が今回対象になっている三海域を利用しているという現実を踏まえたとき、急激にこれを変更させるということもいかがなものかと思います。かような考え方から私どもは、海上の安全、またもっと広義的には海洋の汚染防止、そういう問題を踏まえて考えたときに、政府全体の問題としてこれを取り上げて、均衡ある、しかも将来の日本のこういう臨海工業地帯のあるべき姿というものを、御指摘のように、政府は国民にビジョンを示して、そういうビジョンに基づいて改革なりまた前進すべきものと、かような考えを抱いているわけでございます。
  198. 阿具根登

    ○阿具根登君 これは、政務次官は私の考えを御支持していただいても、それはただこの場の答弁だけであって、何も法律にあらわすわけじゃないし、今後どうするかというお答えも聞いておりません。これに対しては大臣の答弁はあとで願います。  それから最後に、これも川村議員その他から意見も出ておりましたが、二十二条の船長の通報義務につきまして、これには罰則が加えられておるわけです。これは取り締まり法だから罰則もやむを得ないと思うのですけれども、このくらい罰則の多いやつはないですね。ほとんど各条これは罰則がついています、ほとんどですね。ところが、船から海上保安庁長官に通報するのは義務づけられておるし、これを怠った場合は「三万円以下の罰金」と、こうなっておるのですね。私はそこはやむを得ぬと思うのですよ。これは安全のためにはやむを得ぬと思うのですけれども、ならば、川村委員が言いましたように、一般の人には罰則までつけておるのに、どうして海上保安庁がそれを漁ろう船に対し、漁民に対し通報する義務をつけないのか。これはやらぬということじゃない。やられるということはわかっています。やられるということはわかっているけれども、一方には法律で、これをやらなかったら君たちは罰金だという罰則までついておるのに、どうして官庁だけは義務もつけないのか。官庁は怠ってもいいのか。忘れてもいいのか。こういうことになってくると思うのです。この二点、ひとつ大臣からお開きして質問を終わります。
  199. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 第一の点でございますが、私も、いま政務次官から御答弁いたしましたとおりでございまして、工場その他の再配置というものにつきまして、いままでは、便宜主義と申しますか、寄港しやすい非常に有利なところにやはり工業が集中し、したがいまして、今日のいろいろな、ただに海上だけでございません、あらゆる交通機関のふくそうを来たし、私も先般も申し述べましたとおり、やはり何と申しましても、過疎過密、この対策、工場におきましてもしかりでございます。そういう方面で、先見性がないと言われればほんとうにそのとおりでございまして、おそまきでございますが、先般工業再配置法案の御審議を願った次第でございますが、どうしてもわが国といたしましては、そういった方面で適当な再配置をいたしまして、このことがやはりほんとうに常に運輸機関のおくれにつきまして御叱正を受けておるわけでございますが、弁解するわけじゃありませんが、それと相まちまして、やはり運輸機関の総合的整合ができると私は確信をしておる次第でございます。政府の責任におきましてそれらの方策を早急に樹立をいたしますことが、これが一番の問題でございまして、沿岸漁業の問題にいたしましても、あらゆる問題、いま先生が御指摘のように、伊勢湾あたりも、いまのままでまいりますれば、船舶のふくそうというものが非常に多くなるということは当然のことでございまして、それを防止するためには、やはり再配置をできるだけ早くする。そしてわれわれといたしまして、港湾政策といたしましても、それらの点に勘案をいたしまして、そして適当な場所にバースその他の建設を急ぐということによりまして、そういったような方面の根本におきまして除去しなければならぬ、こういうふうに思っている次第でございます。したがいまして、先ほど御指摘をいただきましたが、具体的に申しますると、もうこの過密状態を、当面の問題といたしまして、最小限度、それらの対策があとになってほんとうに申しわけない次第でございますが、何とかいたしまして、いまの危険状態を何とかしたい、こういうことの法案でございます。  第二の点につきましては、これは確かに罰則は非常にある。具体的に申しまして、漁船その他に通報義務をちゃんと課してないじゃないか、御指摘のとおりと思う次第でございます。しかしながら、具体的におきましては、これは必ずそういった方面、先ほども海上保安庁長官から御答弁をいたしましたとおり、漁業組合その他に通報連絡を必ずする。具体的の方法もただいませっかく樹立をしておるというところでございますので、具体的には、漁業をなさる方に決して義務を忘れた次第でございません。これを法制にゆだねるということがほんとうに適当かどうか、これは法令の構成上の問題であろうと私は考える次第でございます。御趣旨は十分そのとおりでございますが、法令の構成上の問題として取り上げたことと思う次第でございますので、御趣旨の点は十分私も了承する次第でございますので、御了解願いたい、こう思う次第でございます。
  200. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、これは法制上の問題であって、当然官庁がその義務を負うことはこれはわかっております、そのために通報させるんだから。これはわかっております。しかし、その義務をこの法律案の中に入れて悪いということは私はないと思います。そうすると、一方には罰金を課しておる。これはもう完全に政府の法律の示すところによって通報しなければならぬ。もしもそれをしなかった場合は罰金だと、こういうことまできめつけておる。そうすると、当然、それを通報するのは、通報するためにそういう通報を受け取るということになるかもわからぬし、答弁ではわかるのです。答弁ではわかりますけれども、しかし、一方、この政府のほうには何も義務もこれはないわけです。かりにこれが漁船に対して通報が漏れておった、何かの事情で。そうした場合にも、これは政府に対する責任というものはあまりないわけなんです、法律に明記されていない以上は。それは精神的にはありますよ。それで法律上の、法制上の問題であって、当然だということになれば、これは修正可能だということですね、もしも法律上の手続さえ間違っていなかったならば。これは当然その義務づけをこれにうたってもいい、こういうことですね。
  201. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) ちょっと立法論でございまして、私のほうもあまり確信はございませんけれども、二十二条によります通報というのは、おっしゃるように、罰則がかかっておりますが、この通報を受けたらばそのつど必ず漁船その他にまた通報内容連絡しなければならないかどうかということ、その点は、たとえば非常に極端な例ではございますけれども一般漁船も出てない、通航船もその巨大船限りである、そこを一隻通るというような場合には、これはおそらく関係のところに通報する必要はないんじゃなかろうかというふうに思うんです。そして、やはり問題が起こりますのは、そういうのを連絡を受けて、第二十三条でしかるべき指示を出すというような必要性が起こってくる、そういう場合の連係において問題が起こるということでございますので、一般的に受けたらば必ず通報しなければならないというようなきめ方がいいかどうか。その辺はいささか問題があるのではなかろうかというふうに思います。ただ、やはりやり方等を特にきめれば、それはまた立法論にはなり得るか。たとえば一日、ある時間に必ず定時放送するというようなやり方をもしやるとして、そういうやり方を含めてここに規定をするようなことをやればあるいは立法論的には成り立ち得るかというふうに思いますが、非常に急なお話でございますので、的確な確定的な御答弁がちょっとできかねるわけでございます。
  202. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、それだからこういうことを言うわけなんです。十二時間前通報した、それで、たまたま漁船は全然いなかった、全然いないから通報せぬでいいのだと、こういうことだったらば、その前に漁船は知らずに出ていった、網を張った、一体どうなりますか。だから、私は義務づけしなければならぬ。漁船がおろうがおるまいが、ちゃんとその責任者はある、その組合はあるのです。その組合に何時間後には巨大船が通ります、ということは、漁船がおろうがおるまいが通報しなければならぬ義務を官庁に負わせなければならぬというのが私の考え方です。だから、いま長官が言われましたように、いま漁船がおらぬからということでこれは通知しなかったら、知らないからその通る直前にでも網を張るかもしれないし、出てくるかもしれません。だから、おるとかおらぬとかの問題じゃない。ここは何時何分に通りますよということを知らせる義務が官庁になけりゃならぬと思うのですよ。だから、いまのような答弁になるから私はこれを主張しているわけです。たとえ漁船がおらなくても、その組合に対してはいついつ何時何十分にどういう船が通りますよということを通知する義務があるはずですよ。そうじゃなくて、知らずに出ていったらどうなりますか。だから、いまの答弁は取り消してもらって、そしていかなる場合でもこれはその責任者には通報いたします、こういうことを言わなかったらこれはだめですよ。私はそういうのが海難の原因になると思うのです。わざと来よるのに突っ込んでいくばかはおりません。だから、そういうのが私は海難の原因になるから追及しているわけなんです。
  203. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいま先生の御指摘のとおりと私も思う次第でございます。やはり、そういう点につきましては政府が義務を負わなくちゃいかぬと私も思う次第でございます。したがいまして、政令におきましても——いま法律はございませんが——政令におきましてもはっきりとその点を規定いたしまして、政府の義務をはっきりいたしたいと思いますので、御了承願いたい。こう思う次第でございます。
  204. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 大臣のいまの御答弁を私もぜひ信頼したいと思いますので、政府の責任をひとつ十分にやっていただきたい。漁民のことが私たちはとても心配なのですから。  他に御発言もなければ本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  205. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十六分散会