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1972-06-02 第68回国会 参議院 交通安全対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月二日(金曜日)    午後一時十二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤原 道子君     理 事                 岡本  悟君                 二木 謙吾君                 阿具根 登君                 原田  立君                柴田利右エ門君     委 員                 今泉 正二君                 鬼丸 勝之君                 黒住 忠行君                 中村 禎二君                 橋本 繁蔵君                 矢野  登君                 山崎 竜男君                 神沢  浄君                 中村 波男君                 阿部 憲一君    政府委員        運輸政務次官   佐藤 孝行君        海上保安庁長官  手塚 良成君        海上保安庁次長  須賀貞之助君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田善次郎君    参考人        全国漁業協同組        合連合会常務理        事        池尻 文二君        日本船主協会専        務理事      吉田 俊朗君        三重漁業協同        組合連合会会長  宮原 九一君        全日本海員組合        中央執行委員   斉藤 吉平君        東京商船大学教        授        谷  初蔵君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○委員派遣承認要求に関する件 ○海上交通安全法案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 藤原道子

    委員長藤原道子君) それではただいまから交通安全対策特別委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求についておはかりいたします。  海上交通安全法案審議のため、本日の委員会に  全国漁業協同組合連合会常務理事池尻文二君  日本船主協会専務理事吉田俊朗君  三重漁業協同組合連合会会長宮原九一君  全日本海員組合中央執行委員斉藤吉平君  及び  東京商船大学教授谷初蔵君を参考人として御出席を求め、御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についておはかりいたします。  海上交通安全法案審議のため、委員派遣を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員派遣地派遣期間等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 藤原道子

    委員長藤原道子君) それでは、海上交通安全法案を議題といたします。  先ほど決定されました五名の参考人方々から御意見を承ることにいたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  それでは、これより御意見をお伺いいたしたいと存じますが、議事の都合上お一人約十分程度で御意見を述べていただき、参考人方々の御意見開陳が終わりましたところで委員からの質疑がございますので、お答えを願いたいと思います。  それでは、まず池尻参考人にお願いいたします。
  8. 池尻文二

    参考人池尻文二君) 私は全漁連池尻でございます。政府提案になる海上交通安全法案に対して意見を述べさせていただきたいと思います。  御承知のとおり、全漁連は過去五ヵ年にわたり関係漁民とともにこの法案反対をいたしてまいりました。今回法案が提案されるまでにはいろいろと紆余曲折をたどり、法案はすでに衆議院を通過し、目下参議院審議に移された現段階におきましても、これに対しまして、残念ながら賛成を申すことができないのでございます。  その理由は、法案適用対象海域はいずれも沿岸漁場として価値の高い内湾であり、その航路筋の狭水道は古来からの優良な漁場であって、昭和四十五年度の漁獲高統計を見ましても、内湾全体で約八十万トン、金額にして一千三百二十億円に達しております。しかも、この漁場は、御案内のとおり、近年わが国経済高度成長政策による工業立地都市化のため、直接にその犠牲をしいられつつあり、埋め立てをはじめ、想像を絶する都市排水、屎尿、産業並びに生活廃棄物の投棄、果ては油による油濁、赤潮等のあらゆる公害により次第次第に漁場としての価値を減じつつあり、漁業者はこの悪条件の中にわずかに価値の高い魚の価格に助けられて必死に生産に励んでおる現状でございます。  このような公害に対する漁民の強い不安感に追い打ちをかけるように、今度は年々ふくそうの激しさを加えてくる船舶航行の安全を目的として、さらに直接間接漁業操業規制を加えんとする海上交通安全法案の準備が進められてまいりましたが、漁民は、以上のような背景のもとに将来をさらに希望のない状態に追い込む性格を持った法案として絶対反対を叫んできたのが過去五ヵ年の経緯でございます。  私は、法案に対してと申し上げるよりは、狭水道等における海上交通安全制度の全般について全漁連としての基本態度を申してみたいと思います。  過去五ヵ年間、上述のように関係漁民とともに反対立場をとってまいりましたが、私どもとて、狭い水道における逐年ふくそうの度合いを増しておりまする船舶航行の安全を確保する政策趣旨そのものに何が何でも反対であると考えているのではございません。ましてや、昨今におきまするように、全日空機自衛隊機衝突事故、あるいは近鉄事故の惨事、さらには昨年末の新潟におけるタンカージュリアナ号座礁事故の例のように、まさに海に陸に空に相次いで大きな事故が想定される今日、万が一、内湾において巨大タンカー事故発生いたしたといたしますれば、このような場合、想像に絶する被害をストレートにこうむるのもまたわれわれ漁業者であることも事実でございます。さらにまた、逐年増大し激化していく船舶航行ふくそうをこのまま黙って放任いたしましても、航行の頻度と船舶交通量の増大によって実質的に漁場を狭められ、操業の不自由を忍ばなければならないのもまた漁業者であるという実態であってみますれば、私としては、ただ法案反対すればよいという考え方ではなくて、何とか漁業操業のしわ寄せを最小限度に食いとめ、漁業の維持と航行安全との調和がはかられるような線で漁民納得が得られるような制度の実現を主張して努力を払ってまいりましたが、不幸にして現時点では遺憾ながらこのたびの法案だけでは全国漁民了解を取りつけるに至っていないのが実情でございます。  私は、基本的に海上交通安全対策は、国民の一人として、また国家的見地に立ってみましても、緊急を要することであり、かつ、その公共性も著しく高いものであるとの認識に変わりはございません。これは漁民立場に立っても否定できないことでございます。それだけに、この制度確立にあたっては、単に海上保安庁水産庁だけの問題でなく、必要最小限度政府全体としては次の三つの点についての政策展望を同時に明確に用意しなければならないと考えております。  第一点は、狭水道におけるふくそうする船舶航行をいかに整理し秩序づけるかという、いわゆる交通整理秩序づけを内容とする法制、つまり、警察法規としての今回の海上交通安全法案制定が一つでございます。  第二点は、同時に、外海ならいざ知らず、これだけ狭い限られた内湾水道については、単にふくそうする船舶通行ルール交通整理だけの法制だけではおのずから限界があることは自明の理でありまして、同時に、今後いかにしてその交通量全体を抑制し緩和することができるかの視点に立って、少なくとも今後内湾航行する巨大船の規模の上限制限はもちろんのこと、全体としての交通量を適正なる限度に押えてゆく長期計画の方向と展望を持って国民に示さなければならないと考えます。無計画とも思われる産業立地計画のまま、内湾沿岸にやたらに工場配置を行ない、保税タンクを増設し、いわば、単にそこに企業があるからだという理由だけで加速度的に年々交通量がふえてゆく状態を野放しにしておいて、この制度の持つ公共性理由漁民了解を求めても、割り切れない感情が残るのはむしろ当然のことと考えられるからでございます。衆議院段階附帯決議として採択されたこの点、すなわち、巨大船上限規制措置等を強く要望するゆえんでございます。  第三の点は、このような国家的要請から来る制度確立に際しては、よって余儀なくされる漁業の受ける直接間接の損失に対しては政府がいかに対処するかという点であります。これはまさに法律片々たる論議ではなくて、それこそがまさしく政治の核心をなす問題であるからであります。  以上の三点は、この制度を実現するにあたって欠けてはならない主軸とも言うべき制度の根幹であります。  今回の法案は、この三点の中で、前述の第一点の、交通整理に関する法制措置だけが先行したものでございまして、いまもって漁民の強い不信を払拭できない根本の原因であると考えております。率直に申し上げて、この提出されている法案だけの内容から申し上げれば、過去五ヵ年の運動の結果、海上保安庁当局も相当にわれわれの要望をいれられており、また、法案だけではいかないこれらの法律全体の運用にあたりましても、水産庁海上保安庁両者間の覚書等をあらかじめ準備されまして、こまかい配慮も講ぜられており、この法案内容そのものは、私どもも参画していろいろと内容にタッチした経緯から見まして、大綱的には賛成できるものでありますが、遺憾ながら、政府の全体の姿勢の消極さのために漁民納得を得られていない現状でございます。この点は、法案提案まで、与党である自民党の水産部会におきましても、また衆議院におきましても、白熱の論議が戦わされたところであります。私は、この漁民対策につきましては、これまでの過程で、たとえば五年前の第一次海上保安庁原案には、漁業との関係制度的に取り上げられておりました。つまり、航路筋における漁業航行安全の調和という名目は実態はむしろごまかしであって、むしろあるべき制度の姿は、航路確保のための漁業制限禁止措置であります。私ども漁業者サイドから見て、漁業制限、禁止してくれと主張するのは、まことに立場をはずれた議論かと思いますけれども、その点の論議は一応たな上げにいたしまして、政府の第一次原案には、この法制は絶対に漁業との問題を避けて通ることができないという基本認識の点において、この一点だけは最初原案の正しさをいまもって確信している次第であります。たとえ法律議論で、航路筋避航義務であるとか、あるいは交通ルールであるとか、つまり警察法規制内容社会的受忍限度であるというような片々たる法律論によって安上がりで通ろうとすることでは絶対に済ますことができない。いずれ法律施行しても、日ならず現在の航路筋は、単なる交通ルールだけでは解決のできない、つまり、船舶航行ふくそうにより、漁民操業しようにも事実上操業ができなくなり、また航行船舶の側からも危険が増大してきてどうにもならなくなるということは、いまからもう見通しておかなければならないと思います。そういう展望に立てば、この法案が絶対に漁民対策の一点を避けて通ることは許されないと、いまもって考えるからでございます。この点については衆議院段階においても議論が集中した点でありまして、この重要なポイントにつきましては、貴委員会におかれても十分に御審議を願いたいと思う次第であります。  最後に私は、漁民対策に何らの措置も講じていない政府にかわりまして、船舶関係業界からある程度の協力金支出の動きがあることを承っております。業界方々のとうといお気持ちについては感謝こそすれ、これについてとやかく批判がましいことを申す筋合いではありません。ただ、きわめて遺憾なことは、このような関係業界措置だけでこのような大切な制度を押し通していこうとする政府姿勢そのものであります。すでに最終的に参議院段階にこの法案審議が移された今日、私は全国関係漁民のぎりぎりの気持ちを代表して、この問題は関係業界まかせではなくて、政府みずからが海上交通確保のために犠牲を負わされる漁業者に対する救済方策確立をはかるべきであろうと考えますので、この一点について、良識の府といわれる参議院超党派的審議により、少なくともこのことが実現されるよう御努力をお願いいたしまして公述にかえたいと思います。
  9. 藤原道子

    委員長藤原道子君) どうもありがとうございました。  次に、吉田参考人にお願いいたします。
  10. 吉田俊朗

    参考人吉田俊朗君) それでは、船主を代表いたしまして、本法案に対します意見ないし要望を申し上げたいと存じます。  現在、日本船主協会に加盟しております会社数は二百六十社、その所有船舶隻数は千八百二十隻であります。これをその保有トン数合計で見ますと、日本全体の商船の八十数%に当たっておるわけでございます。この商船隊の中で、船主協会のたくさんの船の中で、この法律によりまして特別な扱いをされている、すなわち二百メーター以上のいわゆる巨大船、この巨大船を保有している会社はこの中で四十二社、その巨大船隻数合計は二百七十二隻でございます。  このように、当協会所属会員の中には、大は三十七万トンの大型タンカーを保有している会社もありますれば、小は数百トンの小型船を運航している会社もあるわけでございまして、本法案に関連しまして、会員の中でも、その利害といいますか、意見必ずしも同一でないのでございまして、私がこれから申し上げる意見も若干歯切れが悪いものがあることをあらかじめ御了承願いたいと思います。  私からいまさら申し上げるまでもないことでございますが、わが国周辺海域、特に主要港湾附近及びこれに通じます狭水道におきます海上交通の様相はますます悪化しており、このまま放置することは許されない差し迫った現状と言うことができると思います。  この要因の第一は、もちろん通航する船舶隻数の増加でございますが、一方におきまして、近年船舶大型化高速化あるいは専用船化など急速に技術革新が進捗いたしまして、従来の船舶に比べまして操船性能並びに運航形態などが著しく異なっております船舶が多数出現しておりますこともその大きな原因と言うことができると思います。  また、これらの船に積みます積み荷に関しましても、原油、各種石油製品化学製品などの危険物輸送量が近年大幅に増大しております。  以上のような点を総合いたしますと、沿岸水域、狭水道などにおける海上交通は年を追いまして複雑かつ困難なものとなりまして、主要港湾周辺におきましては、潜在的に重大海難発生が常時懸念されるような状態であります。このような状態は、現在の海上衝突予防法あるいは特定水域航行令港則法等法律ではもはや十分に律し切れないのでありまして、われわれといたしましては、十年以上も前から適切な法規制実施を御当局要望し続けてきた経緯があるのでございます。  すなわち、当初におきましては、浦賀水道その他の危険水域特定水域航行令によります特定水域に指定すべきであるという強い要望関係方面に申し上げたのでございますが、これも漁業との調整がつかず解決を見るに至りませんできたのでございますが、その後におきましても、われわれといたしましては、海上安全のための法規制の緊急なことを訴え続けてきたのであります。したがいまして、船主協会といたしましては、この法案内容必ずしも満足すべきものではなく、また最初に述べましたような巨大船関係船主とその他の船主との間で当初若干の見解の相違がありましたものの、究極におきまして、この法律制定によりまして海上安全のための施策が大きく前進することを期待いたしまして、この法案制定の一日も早いことを念願するものでございます。  いま申し上げましたように、法案内容そのものにはかなり問題点があると考えております。この機会をかりまして、法律の円滑な実施と今後の交通規制のあり方をお考えいただく上での御参考にと思いまして、おもな点につきましてわれわれの意見を申し上げたいと存じます。  申すまでもなく、この法案における最大の焦点は、航路における漁労船とその他の一般船舶との航法関係でございます。  この法案対象となるような狭水道あるいは特定海域では漁労船が密集していることが多く、このため一般船舶にとって操船や通航がはなはだしく困難になるような状態がしばしば現出するのでございます。このようなことはわが国におきます特殊事情とも言うべきものでございまして、特に外国船の船長にとっては非常に危険視されているのでございます。法案によりますと、いわゆる巨大船については一応漁労船避航義務が規定されておりますが、その他の一般船舶漁労船との航法関係は、従来と同じように現行の海上衝突予防法にまかせられておりまして、結果的に見ますと、これらの関係現状を改善することが期待できないと言うことができると思います。このようなことが潜在的に海難事故発生につながるものでございまして、このために、去る昭和四十二年の、運輸大臣諮問機関でございます海上安全審議会答申におきましても、特にこの点に触れまして、「狭水道等については、漁ろう中の船舶避航義務を課するとともに、必要やむを得ない場合には一定の漁ろう制限し、又は禁止することができることとする」という答申になっておるわけでございます。今回の法律案がこの答申の線から大幅に後退していることは、諸般事情によりやむを得ないものとは思いますが、問題を将来に残すものと言わざるを得ません。  要するに、わが国産業経済をささえる一般船舶航行の安全と沿岸漁民生活をささえる漁業との調整をいかにはかるかがこの問題解決のキーポイントでございまして、今後国家的見地に立った抜本的解決策を切にお願い申し上げたいと存じます。すなわち、先にも申し述べましたように、われわれといたしましては、第一段階としてこの法律制定を希望するものでございますが、今後、より高い次元から海上交通のあるべき姿を十分に検討していただきまして、適切な施策がなされることをこの機会に切にお願い申し上げる次第でございます。  その他、法案具体的規定に関してかなり問題点がございますが、本法施行に際しての政令、省令の段階におきまして十分にわれわれの意見を述べさしていただきたいと考えております。ただ、この法律は、その内容から見まして、操船者に対するマニアル的な性格を持っておりますので、漁労船その他の各種国内船はもとよりのこと、外国船を含めまして大小の全船舶に十分周知させ、かつ、十分に理解されなければ、かえって混乱を招く結果となるのでございまして、この点、本法案の条文の表現や用語におきまして、運航者にとって難解な個所が相当多いように思われますので、法律趣旨周知徹底と、今後におきます関係官署によりますところの適切な御指導をお願い申し上げます。  最後に、この法律施行にあたっては航路標識の改善、水路の拡幅、しゅんせつ等船舶運航環境の整備と現場におきますところの適切な指導取り締まり実施が不可欠の前提条件でございますので、この点、十分な御配慮をお願いしたいと考えます。  船主協会といたしましては、本法律案が一日も早く制定の運びとなることを期待しておりますことを重ねて申し上げまして、私の意見を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  11. 藤原道子

    委員長藤原道子君) どうもありがとうございました。  次に、宮原参考人にお願いいたします。
  12. 宮原九一

    参考人宮原九一君) 私は、先般の衆議院におきます公聴会でも、今回の海上交通安全法案に対しまして、法案並びにその法案を取り巻く諸般背景を含めまして関係地域漁民を代表する立場反対の意思を表明させていただいたわけでございまして、すでにそれらの内容につきましては衆議院議事録にもありますので重複は避けねばならぬと思いますが、二、三の問題について整理をいたしてみたいと思います。  まず第一に、この法案漁業権を侵害するのではないかという点でございます。私ども関係地域の伊良湖水道に例をとってみました場合に、今回設定されようとしております航路筋は、神島という漁業協同組合の保有いたしております共同漁業権三十八号、三十九号漁場に相当部分重なっておるわけでございまして、お手元図面でもごらんいただくような状態でございますが、これらの免許漁場内におきましては、御案内のように、それぞれ漁民は各自自由に漁業を営む権利が保障されておるわけでございます。今回の航路設定によりましてこの漁業権行使に重大な制限が加えられるということは明瞭でございますので、どのような公権力であっても決してそれは許されていいものではない、こういうように考えます。したがいまして、そういう一点から見ましても、この法律制定そのものは、大げさにいいますと、憲法に違反する疑いがあるのではないか、こういった感じすらございます。御案内のように、漁業権はみなす物権としての性格が与えられておりますから、通常の損害を予防し、排除し、あるいは補償を要求するという一連の物権的性格を持っておるわけでございます。したがいまして、漁民が正当にその権利を行使するというためには、この法律制定をされたあとにおきましても、行政訴訟等の件で争わねばならぬのじゃないかといったような考え方すらできるわけでございます。そういう点で、衆議院におきましてもいろいろ申し上げたわけでございまするが、残念ながら、その審議過程におきましては、この問題については一顧も与えられなかったというような事情にございます点が第一点でございます。  また、漁業権漁場行使制限といったようないまの問題ですらそのようでございますので、お手元図面にございますように、この水道周辺にはたくさんの許可漁業操業されておりまするけれども、こういうものに対しましては何ら積極的に国が配慮をするというような点がございませんので、このことになりますと、漁民に対する重大な生活権の侵害ではないか、こういうように考えております。これらの点につきまして、船主協会等業界の皆さんが、安全航行を確保するというような観点から、自発的に協力金を拠出願うといったようなこともお伺いしておるわけでございますけれども政府当局の答弁といたしましては、それらを適切にあるいは十分指導するといった面の御回答しか得られていないというのが実情でございます。  また次に、巨大船トン数制限についての問題でございますが、内湾におきます、あるいは内海におきます不測の事態というものが、もろに漁業に影響を与えるということを踏まえまして、私どもとしては、この法案に対する最大修正要望点といたしまして、何らかの巨大船に対する歯どめ施策というものを法律上に明文化していただきたいという点について指摘してまいったのでございまするけれども、この点についても御案内のとおりでございます。私どもは、総体を通じて、国の交通安全に対する取り締まり法規であるからして、漁民生活権、あるいは将来内湾、内海に不測の大損害が発生するかもわからないといったようなことはこの際考えなくてもいいのだということでこの法律がもし通っていくということについてはどうもおかしいのではないかという主張をいままで続けたわけでございます。  ここでさらに一言申し上げたいと存じますのは、私ども海に生活する者といたしましては、だれよりも海上における交通の安全を願うということは申し上げるまでもございません。したがいまして、この法案の成立の過程におきまして、過去数年間にわたって海上保安庁当局と激しく対立をしながらも、漁業者側としては積極的にかつ前向きにこの法案に対する意見を開陳いたしましたし、当局側におかれましても、技術的には相当の部分について漁業操業実態をしんしゃくされた配慮が加えられた。その点は事実でございまして、私どもといたしましては、そのことについては率直に敬意をあらわす次第でございまするけれども、国の産業立地政策のひずみというものが内湾、内海、あるいは狭水道における船舶ふくそうと無法を助長している、そうして漁民に対して一方的に各種のしわ寄せを与えておるという現状の中で、海上交通取り締まり法規だけで当面の問題全部を解決しようという政府全体の姿勢にがまんがならないということでございます。  また第三に、漁民対策について申し上げたいと存じますが、この法案の中身を見ますと、巨大船に対してのみ漁船に避航義務を課している程度であるにもかかわらず、どうしてこんなに漁民反対が強いのであろうか、こういう陸上の皆さんの意見がたくさんあることも承知をしております。このことは漁業操業実態なり、海上におきます漁船の置かれております立場なり、あるいは船舶ふくそう実態といったようなものを詳しく説明を申し上げないとなかなかおわかりにくいのでございまして、ただいまその時間もないわけでございまするが、要するに、航路あるいはその周辺の相当広い範囲の海域では、事実上密度の高い漁業操業は現在全く不可能であるという形に追い込まれておることを銘記いただきたいと存ずるわけでございます。したがいまして、私たち漁業関係者は、この法案とのうらはらに、政府自身による積極的な漁民対策、すなわち、国の責任による緊急施策やそれの財源措置というものの確立がない限りにおきましては、この法案には賛成しがたいという基本的な態度を貫いてまいった次第でございます。しかしながら、衆議院におきます審議結果はもう御案内のようなことでございまして、私ども要望しておりましたことは附帯決議という形でお認めいただいております。もちろん、それはそれなりにありがたいのでございますけれども、たいへん失礼な言い分ではございますが、附帯決議というのは、直ちに政府を拘束して新しい法律制定につながるとか、あるいは政府施策の急速な展開に結びつくというような状態にはなかなかまいらない。まあ、国会方面におきましても、法案成立後におきましては非常にお忙しいという関係もあって、附帯決議についてのアフター・ケアが十分お願いすることができないというような事情もございまするので、どうしても法律だけが一人歩きしていきまして、そうして取り締まりの面だけが強化されるという形で、関連の施策が置き去りにされるということがいままでにも多かったわけでございます。今回の海上交通安全法案には、漁民に対する操業権の確保とかあるいは生活権についての保障とかといったようなものが明確に規定をされておりませんだけに、私どもとしてはたいへん大きな不安を抱いております。したがいまして、この法案衆議院を通過した現時点におきましても、やはり基本的な反対姿勢というものをくずすわけにはいかないわけでございます。  すなわち、第一番目に、狭水道におきます巨大船上限制限、二番目には、政府による積極的な漁民対策実施、さらに三番目として、政省令制定時点における漁民意思の反映といったような漁民の基本的なお願いが本院におきまして正当に評価され、具体的な施策について政府当局の明快な御方針がお引き出しいただけるならば、私どもといたしましては非常に幸いであると存じておるような次第でございます。  なおまた、この機会に申し上げたいと思いまするのは、民間の企業からの協力によって拠出される三十数億円の資金についての点でございまするけれども、私どもは、従来は、こういう対策は政府自身において漁民対策として当然実施さるべきであるということで、口にすることすらはばかってまいったような状況でございますけれども、いよいよ大詰めの段階に立ち至っておりまするので、私どもといたしましては、いま、先ほどからお願いをいたしております政府自身の手による救済措置あるいは漁民対策というものの上にこの資金が上積みされるという条件で、この法案成立以前において、この点についてももう少し御明確に中身のことをしておいていただきたい、このように考えておる次第でございます。  以上は、いろいろ問題でありました漁民考え方をようやく整理をしました最後のお願いでございますので、この漁民の集約されたお願いにつきまして、本院におきましても十分の御検討をいただければありがたいと思うわけでございまするが、ただ、これをまとめるにあたりましては、やはり全航路関係筋の漁民代表が集まりまして全国統一の行動をとろう、そして航路前面の海域においてわれわれが法律で許されておる状況の中で斉々と集団的に操業を始めたら、はたして現在の海上における交通がどうなるのかということを現実に見てもらうことによって、漁民の正しい主張というものを裏づけていこうではないか、そういう用意もしておくべきではないかといったような申し合わせもしておりますことを最後につけ加えさしていただきまして、一応の公述を終わりたいと存じます。
  13. 藤原道子

    委員長藤原道子君) どうもありがとうございました。  次に、斉藤参考人にお願いいたします。
  14. 斉藤吉平

    参考人斉藤吉平君) 私、全日本海員組合中央執行委員をいたしております斉藤でございます。船を運航する乗り組み員の立場から、海上交通安全法について申し述べさしていただきたいというように考えます。  この海上交通安全法の制定につきましては、私ども、海上の安全を守る重要な項目であるといたしまして、数年前からわれわれの運動方針の中の重要なポイントを占めて運動を継続してまいったものでございまして、これは原則的にすみやかに成立されるよう強く望んでいるものでございます。  なぜ私どもはこの海上交通安全法を強く望んでいるかということにつきまして、大きく分けまして二つほど問題点があろうかと思います。  第一は、いままで一般社会におきましても、海は広いものという概念でとらえられておりました。確かに海は広うございまして、われわれ船を運航する者にとりましては、一隻対一隻という関係でとらえれば、たとえば衝突予防という問題等は、いままで解決ができていたものでございます。しかし、最近、御存じのように、船舶の数が激増をしている。で、その激増した船がさらに大型化高速化をしているということは、相対的に数をさらにふやしているということにも相なろうかと思いますけれども、海はもう広いということではなくして、海ははなはだ狭くなったということが現実であろうかと思います。で、その狭い海の中でどうわれわれは安全な航行を確保するかということになるわけでございますが、そこにはもう一定のルールをしくしか方法はないということでございまして、すでにヨーロッパ等では、ドーバー海峡等で始められておりますいわゆる分離航路方式——行き会いということをなくして一方の流れにするという考え方、これをすみやかに導入することによって交通の安全をはからなければならないということで私ども意見の一致をしていたわけでございます。  で、昔は、大洋を航行いたしまして日本に帰ってまいりますと、瀬戸内海に入りますとほっとしたものでございます。それは、非常に静かな海で風光明媚であるということで、瀬戸内海はほんとうにのんびりと航海ができました。ところが、最近は逆でございまして、瀬戸内海に入るとほんとうの航海のむずかしさが来る。船は高速化しておりますから、たくさんの船の中を見張りを続けながら、それを避けながら航行をする、そして安全を保つということでございまして、いま、船を運航する乗り組み員の立場からは神経のぎりぎりの限界であるというような苦情等も私どもに上がってきておりまして、これ以上この問題は放置はできないというところに差し迫っているというように私ども考えられます。  第二の問題は、海難の社会化ということでございます。以前は、海難といいますのは乗り組み員の命の問題あるいは船舶の喪失の問題ということだけにつながっておりました。しかし、御高承のとおり、危険物の大量輸送、たとえば原油を運びますタンカーというようなもので大量に運んでまいりますと、それは、海難を起こした場合に、ただ単にその乗り組み員並びに船の問題だけではなくって、たとえば、あふれ出た、あるいはこぼれ出た油というものが沿岸に流れつくといったような問題等を考えますと、これは社会に非常に大きな問題を及ぼすということで、これは単に船乗りだけの問題ではなくなってきたということ、あるいは現在、道路の延長であるといわれておりますカーフェリー、これには、長距離等におきましては二千名までの大量の不特定多数の人が乗りまして航行しているわけでございますが、これが二十ノット以上のスピードで走るということで、もし、これに何か災害等が発生したと考えますと、非常に多数の人に悲惨な情景が出てくるということでございまして、いろいろ、それらの点から、海難というのは、単に海上だけの問題ではなくって、一般社会とのつながりにおいて非常に大きく社会化をしたというふうに私ども言えるかと思います。その意味におきまして、それらの大きな責任というのが船乗りの肩にかかってきております。船員自身ではこれは負い切れるものではない。ただ単に船だけで考えて解決をしようということだけでなくって、これは全日本、あるいは国全体として考えるべき範疇に入ってきたと。その意味におきましても、どうしても海難というものは防止をしていかなくちゃならない。その一つの具体的な方法としまして海上に一つのルールを設定をする。ルールを設定することによって航行の安全を確保するというこの法案趣旨というものは、先ほど申し上げましたように、私ども非常に渇望しておる点でございまして、早急に成立を望んでいる点でございます。  これらの海上交通法を設定をしていただくにあたりまして、私ども必ずしもこれが全国的に満足すべき内容であるというふうには考えておりませんので、これらに対しまして、私ども、以下、これらの点についてはこのように要望したいという点等も持っておりますので、それをつけ加えさしていただきたいと思います。  この海上交通安全法をうまく運営をするというために欠かせない一つの条項がございます。それは環境の整備ということに尽きるかと思います。たとえば、航路の整備。浅瀬等々があります。浅瀬を除去して航路を満足に通行できるような整備の方法、あるいは航路の標識——そこが航路であるということを示す標識あるいはそこが水路の曲がりかどであるということを示すいわゆる航路標識の完備といった問題。それから、船に与えていきますところの情報の問題。さらに航行を管理する問題等々、非常にあろうかと思いますが、それらを含めましての環境の整備ということ、これは非常に欠くべからざる問題でございまして、私どもは、まず、この海上交通法がスムーズに進行するためには、この環境整備ということに国の施策の焦点を当てていただきたいというように考えております。  さらに、陸上の道路と比較するまでもございませんけれども航路というものは、ただ単に自然にあるものだけを航路とするというのではなくって、もっと積極的に航路自体の開発ということまでも国として大いに乗り出していただきたいというように私ども考えているところでございます。  それから第二番目の問題は、この海上交通安全法は、いわゆる警察法規といわれる陸上の交通法と並んで、取り締まり的な意味が非常に強化されております。うしろのほうにもありますように、罰則が非常に強く出てきているわけでございますが、私ども、この交通安全というのを確保する意味におきましては、罰則でもって指導をする、罰則でもってこの実施をするということは必ずしも妥当ではない。むしろ、行政指導というところにポイントを置きまして、罰則というのはむしろないにこしたことはないと、ないほうがよろしいというようにも考えているわけでございます。これは、陸上の道路におきましても、道路の交通安全ということを指導する場合に行政指導が非常に効果をあげておりまして、罰則そのものは必ずしも効果をあげていない点等々もございます。特に、海上における交通といいますのは、ただ単に本人の意思だけできまるものではございませんで、海象、気象その他自然の要素がたくさんにかたまって来るものでございまして、その意味におきましても、何といっても、第一に必要なのは指導である、行政指導であるという点を強調いたしたいというように考えます。  それから第三番目には、この中には、さらに具体的海域等におきまして、航法の設定ということが、将来、省令その他によって行なわれようかというように考えられるわけでございますが、航法の決定にあたりましては、やはり地元の方々、特に船を運航する方、あるいは海事関係者の地元意見というのを十分に参酌していただいて、民主的にこれをきめるということをぜひ実行していただきたいというように考えます。と申しますのは、この航法、これは日本の沿岸には外国船がたくさんに参りまして、日本の沿岸そのものは、むしろこれは国際航路であるというふうに考えられるわけですが、その意味におきましては、外国船員にもだれにもわかるように、簡単明瞭である、しかも単純であるということが当然原則であろうかと思います。しかし、その中で、現在まですでにこの海上交通安全法の成立が待ち切れずに、みずからの中で自主的に航法をきめているといったこと等々もございまして、それがすでに身についた、慣習化したというように考えられるところもございます。そういう点につきましては、それらの慣習化された点というのは、これは重く見ていただきまして、身についたものは大事にする、そのことが、航法自身を安全にするということの一つの原則ともなろうかと思いますので、新たに航法等を設定する場合には、地元の御意見というものを十分に尊重されて決定をしていっていただきたい。少なくとも、押しつけというようなことはぜひ避けていただきたいというように感ずるわけでございます。  それからその次の問題先ほどもういろいろ御意見が出ておりましたけれども、沿岸漁船員の生活、これは私どもにとりましても重要な問題でございます。同じ、海に生活するということはもちろんでございますが、私ども組合にとりましても、汽船の乗り組み員、漁船の乗り組み員、ともに傘下にある組合でございますが、生活を奪われるということは、組合にとりましても、重大なことでございます。この海上交通安全法が制定されることによりまして、生活のかてを失うということは、これは絶対許すことはできない問題でございまして、私どもは、これはこの法規とは別に、別の角度から国として十分な保障、十分な生活を見るという点についての配慮ということをぜひお願いを申し上げたいというふうに考えます。  以上の点を、私ども、この施行するにあたりましてぜひお願いしたいと思うわけでございますが、さらに、附帯的に申し上げたい点がございます。  それは、第一は、巨大船の問題でございます。私ども考え方では、巨大船ということが、野方図に巨大化されていくことを許してはならないというように考えております。巨大船というものが、経済ということだけを中心にいままで伸びてきているように考えられますが、これはあらためて安全という見地から見直していかなければならないというように考えます。巨大船、先ほど申し上げました大型タンカー等で代表されますけれども、こういう大型船が、たとえば東京湾、伊勢湾あるいは瀬戸内海といった閉塞されました海面に入るということ、これも私どもはぜひ今後規制をしていかなければならない。といいますのは、もし、それに事故が出た場合、たとえば新潟沖のジュリアナ号事件で、六千ないし七千トンの油が流れ出たということがいわれます。あれは、日本海の流れによりまして拡散をされたわけでございますが、もし、あれと同じことが東京湾の中で起きたら、しかも、東京湾の中に入ります船は、現在二十六、七万トンまで入っているわけでございまして、こういう船に災害があった場合に、この東京湾のまわりに二千万の人口が生活をしているということから考えますと、これは取り返しのつかない災害をもたらすという点を考えまして、これらの巨大船というものにつきましては、安全という面からさらにお考えをいただきまして、大型の規制、あるいはタンクの大きさの規制、さらに閉塞された海面への入航の制限というものを合わせ、含め、この交通安全法と一緒に、ぜひお考えをお願いをしたいというように考えます。  もう一点、港の問題がございます。現在、日本の海岸はこれはほとんど港になるのではないかと思われるほど港の新設が行なわれております。これも私どもの見地からいいますと、経済ということを主にした考えで、安全という面から、さらに港のつくり方について再考されていないというように考えられます。地域の開発等々、これはたいへん必要なことかとも思いますけれども、その港ができ上がった結果として海上の交通にどういう変化があるかというような点につきましても、いままで私ども考慮されたということを聞いておりません。これもやはり国という全体的な立場から、港の新設と申しますか、新築と申しますか、それらにつきましても、安全の立場からさらにあわせて御配慮をぜひお願いすべきことであるというように考えております。  最後に、この点は私どもさらに強調をしておかなければならないと思いますのは、先ほども申し上げました大型カーフェリーの安全ということでございます。現在、二千人程度まで、物見遊山の婦人を中心とするようなお客を乗せまして二十ノット以上で走り回っておりますが、これがもし何かがありました場合に、この人命千名を単位とするような大災害を防ぐということについて、設備の点、あるいは乗り組み員の訓練の点、いろいろな点におきまして必ずしも安心すべきところに至っておりません。これは発生をいたしましたら、これはほんとうに手のつけようのない大災害になるということでございまして、このカーフェリーの安全対策等々につきましても、海上交通安全法が施行の成立と同時に、その点も合わせ、含めて御検討をぜひお願いをしたいというように考えます。  たいへんざっぱくで、散らばった意見等になった点、申しわけなく思いますが、一応私の意見として閉じさせていただきます。
  15. 藤原道子

    委員長藤原道子君) どうもありがとうございました。  最後に、谷参考人にお願いをいたします。
  16. 谷初蔵

    参考人(谷初蔵君) 私は大学におきまして船舶の操縦性それから運動性といったような、力学的な研究を専攻しておりますので、主としてこの面から、この法律案を見まして私見を申し述べます。  最近における船舶交通ふくそうという問題それから船舶の著しい大型化という問題、この二つの問題は、船舶の運航技術の研究に従事しております私にとりましても、絶えず直接間接に研究の面に立ちふさがる問題でございますので、この今回提案されております法律案がまさにこの二つの点に対処することをねらいとしているという意味に私は理解いたしまして、この法案を高く評価いたしたいと思います。  この法律案の特色といたしましては、先ほどお話が出ましたいわゆる分離航路方式の思想に基づいた十一の航路の設定ということをあげることができると思います。交通がどんなにふくそうしましても、これをさばくために陸上にありますような立体交差という方法をとることが海上ではできませんので、この点から申しまして、航路の分離あるいは一方通行という方法にまさる交通整理は海上では考えられないわけでございます。しかし、この法律案におきましては、この十一航路のすべてで一方通行が確立されたというわけではございませんので、今後の問題としまして一方通行を徹底させることの検討をまず初めに要望いたしたいと思います。  なお、これに関連いたしまして、今回提案されております十一の航路以外にも航路を設定してしかるべきではないかと考えられます狭水道がございますが、これについてはすでに所管の官庁で御検討中とは想像いたしますけれども、その早い実現を期待したいと思います。  それから、船舶大型化という問題に対処する方法としまして、この法律案では巨大船優先という考え方を打ち出しておりますが、これにつきましても、私は基本的には妥当であると考えます。おそらくこれについての問題は、巨大船巨大船でない船、つまり巨大船と非巨大船をこの法案で全長二百メートルという非常に明確な数字で区別したところあたりに生じはしないか、このように考えます。船舶大型化いたしますと、ごく大まかにいいまして、船の長さの平方根に比例して運動に必要な時間が長引きます。それから、船の長さの二乗にほぼ比例いたしましてその船の運動に必要な水面の面積が広くなってまいります。その意味では、この法案が船の大きさをあらわすのに長さで言いあらわしているという点はきわめて妥当だと考えます。しかし、いま申しました運動の所要時間であるとかあるいは所要面積というようなものが、全長二百メートルというところを境にして急に大きくなるというわけのものでもございませんので、私としてもこの数字の正当性を明確には判断いたしかねている、こういうところでございます。私考えますのに、おそらくこの数字は、多くの経験を積んだ操船者の通念によっておるのではないかと想像いたしております。船舶大型化が急速に進み始めました時分から、運航経験者の間では、載貨重量で大体四万トンあるいは満載排水量でおよそ五万トンくらいから先になるとにわかに船が鈍重になるということが言われてまいりましたが、排水量五万トンあるいは載貨重量四万トンと申しますと、タンカーでいえば全長がほぼ二百メートル前後、こういうところになっております。これはいわば経験的なものさしと言っていいかもわかりませんが、一面、この経験的なものさしが、なるほどなとうなずける理由もないことはない、かように考えます。と申しますのは、巨大船になりますと、船の大きさのわりにエンジンの馬力が相対的に小さいという事実がございます。少しこまかい数字が入って恐縮なんですけれども、排水量で一万トンとか二万トンというような在来型——いままで主として大型船といわれてきた在来型の貨物船でございますと、一トン当たりに〇.三馬力とか〇・四馬力、こういったような数字が平均的なものでございます。ところが、たとえば二十万トンのタンカーということになってきますと、これが一トン当たり〇・一五馬力というようなぐあいに、貨物船のほとんど半分になってしまいます。こういうようにトン当たりの馬力は船が大きくなるにつれて減少しているのですが、その減り方が、ちょうど排水量五万トンとか六万トンあたりから目立って減っております。これはつまり船を操縦する原動力と申しますか、これが目立って小さくなっておるということでございますから、おそらくこれを経験に富んだ船長さんたちは、船の動きがきわ立って鈍くなるというようにぴんとはだで感じておるのであろうと、こういうように想像しております。そういう意味から申しますと、全長二百メートルもなるほどなと考えられるわけでございます。  以上申し上げましたのは、この法案が二つの点を大きなねらいにしておると私は理解いたしまして、その点について私見を申し上げたわけでございますが、このねらいを現実の狭水道に具体化するという段階になりますと、当然大きな困難あるいは問題点が派生してくると私も考えます。それで、この法案で特にそういった問題点の一つとして私に考えられますのは、いま申しました全長二百メートルという長さには満たないけれども、しかし、鈍重な大型船の部類であるというような船舶と、先ほど来しばしばお話に出ました漁労中の漁船との避航関係、これが一つの大きな問題点ではないか、かように考えます。この点については、なぜそれが問題点かと申しますと、海上交通ルールというのは元来非常に国際的な性格の濃厚なものでございまして、それにもかかわらず、具体的に申しますと、この法案の第二十四条第二項というのがそれに当たりますけれども、いささか国際的な通念に反しているのではないか。同時に、そのためにかえって交通混乱を引き起こしはしないか、そういうように私は懸念しておる次第でございます。こういう混乱がひいては漁船自身の危険を予想させるということも考えられます。  以上、はなはだ限られた専門の観点から私見を申し述べましたが、研究者としての立場から現在の海上交通ふくそうを憂慮しておる者といたしましては、一日も早くこの法案が成立されることを望んでおります。  以上でございます。
  17. 藤原道子

    委員長藤原道子君) どうもありがとうございました。  以上で参考人方々からの御意見の開陳を終わります。  これより参考人に対する質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  18. 阿具根登

    ○阿具根登君 参考人方々、いろいろとありがとうございました。  一つ、二つ質問さしていただきたいと思いますが、これは池尻さんでもいいし、斉藤さんでもいいですが、その他宮原さんでもいいですが、おっしゃっておることの内容の中で、トン数の制限、このことが強く言われておるようにお聞きいたしました。実際お触れになっておりますのは二百メートルだとか、大体三万五千トンぐらいから五万トンぐらいであると思っております。だから、これをどのくらいと大体お考えになっておるか、どなたからかひとつ教えていただきたいと思います。  それから吉田参考人に御質問申し上げますが、二百メーター以上の巨大船を持っておるのが四十二社ですか、ある。その中で二百七十二隻巨大船がある、こういうことだったと思うんです。問題は、私はタンカーが一番問題になるんだと思っておりますが、現在大体二億キロリッターぐらいの油が入ってきておるはずなんです。そうすると、これが十年後に大体三倍になる、こういうように私たちは考えておるわけなんです。そういうことを聞いたこともございますし、六十年には六億の重油を持ってこなければならぬ、こういうことになるとしますと、大体この三倍からの大型船が入ってくるんだ、こう考えなければならぬと思うんです。そうすると、こういう規制をやって間に合うんだろうか。今後の日本の経済の伸びから考えてみますと、一体こういう規制をやってもやっていけるだろうかどうだろうか、こういうように考えるわけです。その点をひとつお答え願いたいと思いますのと、谷先生の最後に言われました二十四条の二項が海上航行の国際ルールに違反しておるんじゃないか、こういうことじゃなかったかと思うんですが、私、聞き間違いでしたならば二十四条二項が国際的な海上航行ルールにどうなっておるのか御説明をいただきたい、かように思います。  以上でございます。
  19. 宮原九一

    参考人宮原九一君) 最初巨大船の内海航行制限トン数をどの程度に考えておるかという御質問でございますが、漁業関係者としてもまとまったトン数の相談をしたことはございませんが、通念的に現状を見て五万トン以上の船は内海、内湾には入ることを制限してほしいという程度のことでございます。
  20. 吉田俊朗

    参考人吉田俊朗君) 今後の原油の輸送の増大に伴って船舶隻数がふえ、それが交通現状をますます悪化させて、この法律でも将来律していけないのではないかという御質問だと思いますが、二百メーター以上の巨大船と申しますと大体二万総トン、デッドウエートで三万トン程度でございまして、かつては巨大船でございましたが、いまや二十万トン、三十万トンの大型タンカーから比べれば群小の船でありまして、海上交通の安全をはかるという見地からひとつ違った考え方が存在しておるのでございますが、それを御披露しますと、隻数がふえるよりは、大型船を厳重な規制のもとに、あるいは完全な運航環境のもとに秩序立って通航さしたほうが安全ではないかという有力な意見があるのでございまして、われわれも若干そういう気がするのでございますが、この法律内容だけではなく、承りますと、いろいろ海上保安庁その他におきまして法律上権限も与えられることになりますが、整然とした通航が将来期待されるということと、また、原油を受け入れる側におきましても、たとえば鹿児島の喜入(きいれ)におきますCTS構想とか、狭水道をなるべく避けようというような将来の計画を持っておりますので、これは今後そういうことも考えて、みんなが一致してやって、いけば何とかなるのではないかと現段階では考えております。
  21. 斉藤吉平

    参考人斉藤吉平君) トン数の問題、根拠になるものは何かという御質問かと思いますが、これはなかなかむずかしい問題でございまして、開放された海面、閉塞された海面、いろいろトン数の根拠というのは考え方が違ってくるかと思いますが、少なくとも私のほうの立場から申し上げますと、もしタンカー等が災害、たとえば油がこぼれる、あるいは火災を起こす、爆発を起こすといった問題が出たときに、それに対応できる施設とのバランスの上からトン数というものはきめられなければいけないというようにいま考えているわけでございますが、私ども立場からは、現在は二十五万トンというような船が現存するわけでございますが、二十五万トン以上の船については反対であるということ、並びに、将来におきましては、たとえば東京湾等、閉塞された海面からは外航のタンカーは入らないように規制をするという点で考え方を進めております。
  22. 谷初蔵

    参考人(谷初蔵君) 国際的な考え方と申しましたのは、現在、現行法規として日本では海上衝突予防法、これは国際的なルールとしましては、国際海上衝突予防規則ということになりますが、これにおきましても、こんどの法律案におきましても、巨大船巨大船以外の一般船舶について申しますと、漁労に従事しておる船舶があったならばそれを避けなさいということで、これは同じでございます。ただ問題は、近くこれに関する国際的な衝突予防規則が改正される予定になっておりまして、その改正案が現在出ておる段階でございますが、それによりますと、「この規定は、漁ろうに従事している船舶が、狭い水道航路筋、通航路又は深喫水船用航路において、他の船舶航行を妨げることができることとするものではない」、たいへんややこしい文章なんですけれども、要するに、一般船舶は漁労に従事している船を避けなければならないけれども、その規定は逆に、漁船が、漁労に従事している船が航路筋一般船舶の妨害をしてはいけないのだということをはっきりと言っておるわけであります。それがこの法律案では、逆に二十四条二項におきまして大幅に漁船に対しまして、一般船舶には課している規制を、ここで解いている、免除しているというかっこうになっております。その点を比較して申し上げた意味でございます。
  23. 阿具根登

    ○阿具根登君 もう一問だけ谷先生にお願いしたいんですが、私ども別の委員会でこれと全く逆の法律案審議しておるわけなんです。それは御承知のように、東京、大阪、名古屋周辺日本の国土の十数%のところで四〇%以上の人口が密集してしまった、工場が乱立してしまった、だから今度はこの工場をほかのところに持っていかなければならないという、こういう工業再配置促進法案というのをいま審議しているわけです。そうすると、それをとってまいりますと、いわゆる石油基地なんかが一番自分の都合のいいところにどんどん建ってくれば、いやでもそこにタンカーは入ってくる。そうすると、今度はそこではこのように漁場の補償とかなんとかいう前に、実際作業ができないようになってしまう。だから、今度はそのあとは基地をまたどこかに移してくれという、こういうようなまたつまらぬことをしなければならぬ。いわゆるあと追い、あと追いの政治がいま行なわれていることを、きのうも通産大臣に質問したのですが、今後の日本の経済をささえていくのに、こういうことだったら、もう一回何か大きな修正をしなければならなくなってくるのではないか。極端にいえば、貨客船は別といたしましても、タンカー等は当然大きな船になってくるでしょうし、やっぱりこれは基地を海上につくって、船は入らずにパイプででも引くようにしなければ、当然これはそうなってくるのではなかろうか。こういうことについては相当金も要りますし、いま急にということもできぬかもしれませんけれども、当然いま陸上で私たちが心配しておる、せっかくつくったものをよそにやらなければ公害が多い、また物価は高くなる、土地は高くなる、また自動車は多くなる、道路もつくらなければならぬ、さんざんな目にいまあっているわけなんです。だから、ちょうど私たち別な委員会審議しておるものですから、いまのうちならば、海上は何とか大きな手を打てばできるのではなかろうかと、こういう考えも持って、先生の御意見と、船主協会吉田参考人の御意見を承っておきたいと思います。それで私の質問は終わります。   〔委員長退席、理事阿具根登君着席〕
  24. 吉田俊朗

    参考人吉田俊朗君) 質問の御趣旨をあるいははき違えておるかもしれませんが、海上輸送の面だけでは、とてもいまの輸送形態の将来を考えて抜本的に改正するというようなことはできないのでございまして、いわゆる日本産業あるいは石油事業の要請に従いまして、こういう危険をある面でおかしながら狭水道を通って入っているというのが現状でございまして、本来ならば、先生のおっしゃるとおり鹿児島の喜入にございます集中輸送形式、CTS構想といわれておりますが、そういうような形式によりまして、船主も船員も安んじて運べるという状態が望ましいのでございますが、現段階ではやむを得ずそういう状況になっておるのでございまして、これを将来どうするかというのは、まあ政治の問題なり日本経済全体の問題でございまして、われわれ答える力もございませんが、ただ、そういう安全のためにいろいろな施策を高度の政治力をもってやっていただくことにつきましては非常に賛成でございまして、お願いしたいと思うのでございます。
  25. 谷初蔵

    参考人(谷初蔵君) 日ごろ専門にしておりますこととちょっと離れておりますので、何と答えていいかわかりませんが、広い意味で安全という立場からいいますと、あぶないものはその近くにないのが一番いいわけですから、タンカーにしましても、石油基地にしましても、人間からなるべく離れたところに置くのがいいということになりまして、その点で、たとえば東京湾にしても、瀬戸内海にしても、タンカーをなるべく入れないということについては基本的には私は賛成いたします。ただ、私の専門になりますと、そういう問題について私の専門にはね返ってくるのは、それならば、小型のタンカーでも何でもみな危険物を持ったものは全部締め出すのかということになってくるわけです。したがって、具体的にいえば、長さがどのくらい、タンカーで何トンぐらいから先は締め出したらいいのかという問題になります。これは非常に大きな船になりますと鈍重になり緩慢になるということを申しますけれども、鈍重とそれから軽快と申しますか、あるいは緩慢と敏捷あたりにきちっと一線を画すということが技術的にはなかなかむずかしいのでありまして、とても私どもの手には負えない、そういうわけであります。
  26. 神沢浄

    ○神沢浄君 三点ばかりお尋ねしたいと思うのですが、いまそれぞれお話を承りまして、私が受けとめる点では、やっぱり海運、海上交通というようなものを舞台にしまして、一方ではどんどん発展する可能性、片一方には既存の漁業者生活をかけた権利がある。この二つのものがどう調整調和をされているかというふうな点に一舞台は海上交通の問題ですけれども、やっぱり基本問題があるような受けとめ方をするわけであります。  そこでお話をお聞きしておる中でもって、四十二年以降この法案提出に至るまでに、国と漁業者のサイドでもって相当の接触が続けられている。しかも、国側の理解や善意ある努力というようなものは認められておる。にもかかわらず、これはどうも賛成しかねる、こういうことになりますと、これはもう合意に達しないままに国側が見切り発車をしてしまったと、こういうことであるのかどうなのかということが一点であります。  それからもう一点は、次の点ははたして今後の情勢を見通す上でもって、すさまじい勢いでもって経済成長が進んでおるそういう中で、いわば被害の立場にある漁業者の側との間に調整なり調和なりというようなことがはたしてあるのかどうなのかというふうな点について、これはひとつ漁業者サイドから、あるとするならば——先ほど三点池尻さんが言われておられましたけれども——あるとするならば、たとえば具体的にはどういうような施策がいまここで講じられるとすればそういう場面があるのではないかというような点でお考えがありましたらお聞きをしておきたいという点が一つであります。  それから、そういうような関係の中から生まれてきた問題、生じている問題であろうと思いますが、協力金といわれる問題であります。実はこれは委員会審議の中でもちょっとお尋ねしたのですが、どうもうまくつかみにくいのですが、協力金というものに対して船主側としてはどういうたてまえで考えられておるのか。それから、それを漁業者側としてはどういう意味合いでもって受けとめられているのか、これを第三点としまして、それぞれの関係でもって御説明をいただきたいと思います。
  27. 池尻文二

    参考人池尻文二君) 第一点の見切り発車かという御質問でございますが、先ほど公述いたしましたように、この制度をいろいろ分けて考えまして、現在出されておりまする警察法規としての海上交通法というものの内容というものは、これは漁業者もみんないろいろ注文をつけまして、ここまで五ヵ年、いろいろのトラブルがあったわけでございまするけれども、一部にまだ絶対反対というところを残しておりますけれども、趨勢といたしましては、たとえば、ほっておきますと、いまでもやたらに大型船タンカーが通って、そこで漁業しようにも困るではないか、むしろ若干整理をして、航路筋なら航路筋というものをきめてそこを通したほうがいいという漁業者も率直にいって、おりまして、そういう観点から海上交通安全法そのものの内容については十分私どももタッチをして審議をしたつもりでございます。しかし、やはり漁業者が口には言っておりませんけれども、この制度のいわゆる必要性というのは、私ども指導者の立場でいかに説きましても、最後に残るのは、国は何もわれわれに対してしないではないかという率直な感情を払拭できないままでございまして、この点におきましては、率直に申し上げまして、自由民主党の水産部会でも相当の議論をされまして、海上交通法そのもののルールだとか、こういう法制の必要性というのは大体のコンセンサスは得られましたが、漁民対策の一点につきましては、これは与党内部でも完全なる合意が得られないで、衆議院段階で、実は私は与党の先生から、かってに君は政府と手を結んだんではないかというおしかりを、実は与党の先生からおこられたぐらいの問題もございました。そういう意味においては、私はこれは見切り発車であると言わざるを得ない、こういうふうに考えます。  それから、どうしたら漁業者が救われるか。もちろん、経済高度成長の罪だとか、そのひずみだとか言う前に、現実上の制度として一体漁業者はどうなんだと申しますれば、私は漁業者操業実態からいたしまして、陸上の交通で、車と人、あるいは車の大型車と小型車の関係だとか自転車の関係ということではなくて、具体的に話しますと、航路筋で、少なくともイワシをとる巻き網というのは、タンカーを見てから網を揚げても三十分はかかる。そういうような漁業に一体避航義務だとか何か交通ルールを課しても、それはもう法律を厳正に実行することは、もう漁業操業のロスにつながるという立場から、ある程度、航路筋というものは排他的な航路の場であるというふうな制度の割り切り方を法律はすべきではないか。現状はそうなっていなくても、法律にはその制度のビジョンは書いてある必要はあるんではないか、これが私の趣旨でございます。そうしなければ、私は基本的な漁業対策にはならない、かように考えております。  それから協力金の問題でございますが、これは非常に言いにくい問題でございます。先ほど申し上げましたように、三十億、三十五億、この志は私どもも感謝をいたしております。しかしながら、これは分けて漁業者にやるわけにもまいりません。かりに、三万七千人あるいは四万人の関係漁業者がいたとしても、分けてやれば一人十万円ぐらいの金でございます。したがいまして、もしこれを受けるとしますれば、いわゆる財団法人かなんかつくりまして、その運用益で仕事を考えなければならない。ところが、御承知のとおりの金利低下の基調の世の中でございまして、その運用益で仕事をしてみましても、一体何をやるかということにつきましては、その趣旨は別にいたしまして、実は私どももいま非常に頭を悩ましておるところでございます。したがいまして、そういう意味も含めまして、私どもはあせりませんけれども、国がやっぱり前面に出て必要なる施策というものを講じてやるという姿勢に切りかえませんと、漁業者の完全な説得を私どももしかねておる実情でございます。
  28. 宮原九一

    参考人宮原九一君) 現場におる者といたしまして、二番目の、将来にわたって海上交通の安全確保と漁業操業との調和がとり得るのかどうかという問題につきまして、ちょっと私見を申し上げたいと思いますが、たくさんの海域でございまして、その海域ごとに依存する漁業実態というものが違っておりますので、全国漁民の統一的な意見という形にはなりにくいわけでございまするし、今回の問題につきましても、海域によっては賛成をしているところも反対をしているところもあるというのが実情でございますので、いまからお答えすることも漁業者全部の考え方ということにはなりにくいと思いますが、ただ将来にわたっては、やはり現在すでにもう漁業ができないのだと半分あきらめております。それと、巨大船については、非常に操船上の視界が狭くて、こちらからはよく見れるが、向こうからは小さい漁船が見れない。巨大船が、こちらには避航義務がないからということで、漁船が操業しておってもいいんだということでやれば、殺されるのは漁師なんだということで、ほとんどが操業を中止して避けているという状況でございます。それがきびしくなってくるならば、法律的にはある程度権利を認められて、漁業に対しては甘過ぎるではないかとほかの業界から言われながら、現場ではいつも漁業ができずに避けておるという、こんな誤った形はすっきりしたほうがいいのではないか。したがって、もうそこにおける漁業制限というものを甘んじて受けよう、しかし、今度はそれにかわる水産行政全体の問題として、代替の漁業とか代替の漁法とか権利とかいったようなものがどう与えられるか、また、別のところに別途の漁場開発というものができないのかというようなことを含めて、そういう被害を受ける漁業者に対する国の積極的な姿勢というものが出されてくるならば、漁師といえどもこの辺の問題については前向きに考えるという考え方を持っております。
  29. 原田立

    ○原田立君 いろいろお伺いしておりまして、船主のほうの側あるいは海員のほうの側でいえば、交通安全、安全に航行できるという、こういうことがねらいだろうと思うわけです。まあ、全漁連及び三重の漁協の方々でいえば生活権確立と、こういう大きい二つの対立点があると思うのです。  それで、吉田さんにお伺いしたいのですけれども、こういう内海に巨大船が入っていくこと、現在のシステムではどうしても入らざるを得ないわけですね。だけども、もしそういうふうなことでなくて、ああいう危険なところに入っていって、やっとこさっとこ荷物を届けるなんていうシステムよりか、もっと安全な方法で外のほうでやれるような方法があれば、それにこしたことはないんじゃないのか、この点が一つ。要するに、他に方法があればそちらのほうがいいのじゃないかと、こういうお考えはどうですか、これが一つ。  それから斉藤さんにお伺いしたいのですけれども、同じような意味合いで、航行するのに安全ならばそれは第一番である、こういう考えが基本のように思うわけですが、そうすると、こういう内海、内湾ですね、内湾航行などはむしろ大型の船舶が入らないほうがいいのじゃないだろうか、その点のお考えはどうか。  それから全漁連池尻さん及び宮原さんにちょっとお伺いしたいのですが、いまも斉藤さんでしたか、宮原さんでしたか、非常に大切な問題点についてのお話がありましたんで、ちょっとダブルだろうと思うのですけれども、私、思うのに、希望の持てる漁業、これを確立したい、将来の漁業は一体どうしたらいいのかと、こういうことで皆さん方漁民の方はたいへん悩んでおられるというお話が先ほどございました。それで宮原さんのお話の中に、いずれにしてもこの法が発効するだろう、そうすれば海上デモでもしてじゃんじゃんやってわれわれの力を見せるんだと、こういうような話がちょっとあったわけですけれども、ぼくは、そういうふうなことは将来にとってプラスにはならないだろう、何らかそこで現在の沿岸漁業の皆さん方が生きていけるような方向というものを見出す、そのことが重大な問題じゃないだろうか。なれたところを離れるとか、あるいは非常に制限される、この点については、なかなかたいへんなことであろうと思うけれども、こういう時代の趨勢ですから、そういう方向を考えざるを得ないだろうと私思うのであります。そこで、今後どうあるべきか。先ほどのお話の中では、国で補償せよということを池尻さんも宮原さんも強硬にお話がございました。それじゃ、それがあれば転換ということは考えられるのかどうか、また、その転換にあたっての何か具体的なお考えがあるのかどうか、その点、教えていただければ幸いだと思うのであります。
  30. 吉田俊朗

    参考人吉田俊朗君) いまの、巨大船が狭水道に入ってきてあぶないからこれを回避するために何かほかの方法が将来考えられないかという御質問かと思いますけれども、狭水道にこういう船が入らなければならぬというのは、先ほども申し上げましたように、経済が要請しておるのでございまして、たとえばペルシア湾から日本まで一トンの油を運ぶのに六百円くらいで運んでおる。それが日本の経済の成長安定につながっておるのでございまして、われわれのほうから言わしてもらいますならば、狭水道における漁業というようなものは、四十二年の答申にございますように、必要に応じて制限、禁止をしていただきまして、飛行場と同じように、国によって十分な補償、あるいは対策のもとにそういう交通の完全な安全というものがはかられれば、これが一番の理想だと考えております。しかし、現実なかなか困難でございますので、この法案によりまして大きく安全対策が一歩踏み出したということで大いに期待しておるわけでございますが、将来にわたっての安全に関しましては、先ほど申し上げましたとおり、大型船は内水なり狭水道に入れないで、大型船は鹿児島湾とか、そういう広い海域に入れて、そこに大きな貯蔵施設を持って、そこから小さなタンカーなりあるいはパイプラインなどを使って必要な工場に運ぶという構想は、将来とも関係者が考えておるわけでございまして、海運の側からだけやれるというような事柄でもございませんので、その点、先ほどの私の答弁と同じような答弁になりましたが、以上のようなことでよろしゅうございますでしょうか。
  31. 斉藤吉平

    参考人斉藤吉平君) 私のほうもこれは一貫して、危険物を大量に運ぶ巨大船は狭い閉塞された海面——瀬戸内海であるとか、伊勢湾であるとか、東京湾であるとか、そういう閉塞された海面には入るべきではないという態度をずっととってきております。その理由は、先ほども申し上げましたとおり、もし起きましたならば、その海難というものが社会とのつながりにおいて重大な災害に発展するということ。それからもう一つは、巨大船というものが狭い海域に入ったときに運動性能が悪いということが出てくるわけで、ことさらに性能の悪い状態を起こすべきではない。それから、乗り組み員にとりましても、狭い海域に入るということは非常に労務上たいへんな負担がかかってくる問題でございまして、私どもは一貫して入るべきではないという考え方でございます。
  32. 池尻文二

    参考人池尻文二君) 実は、内湾漁業をどう見るかというのは一つの見解がございまして、確かに公害だとかこういう海上交通、そういった問題で非常に漁場条件が悪化しつつあるということは事実でございます。しかしながら、十数年前みたいに、内湾漁業者というときわめてミゼラブルというような印象は現実にいまないわけでございまして、日本の沿岸漁業の中でも、瀬戸内海あるいは伊良湖水道、東京湾というのは、先ほども数字で説明しましたように、非常にバラエティーに富んだ高級魚だとか、そういった価値の高い生産をあげておるわけでございまして、沿岸漁業者の中では所得も決して低くもない連中でございます。もちろん、他産業に比べれば別でございます。したがいまして、漁場の喪失というものについて相当の抵抗を示すという私は理解を持っておるわけでございます。そういう漁業でございまするから、したがって私は、ただ金さえもらえばいいということではなくて、やはり制度として制限禁止即補償ということは、これは私は制度の論理の必然である、補償は補償であるというふうに考えております。したがって、各地域の条件によりまして、たとえば沿岸漁業の趨勢もだんだん変わってまいっておりまするから、たとえばノリならノリあるいは養殖業なら養殖業というようなものに転換できるところは転換できるでございましょうが、また、その他の条件のないところはこれはいたし方ないわけでございますけれども内湾漁業者を遠洋のカツオ・マグロに持っていくということはできないにいたしましても、やはり政府施策その他のくふうがよろしければ、可能性は私はあるというふうに考えます。したがいまして、補償は補償、それから転換は転換というふうに考えるべきではないか、かように考えております。
  33. 宮原九一

    参考人宮原九一君) 池尻常務がお答えしたのと重複することは避けたいと思いますが、先ほどの海上デモというような点でございますけれども、私、申し上げたのは、海上デモというようなことではございませんので、こういう狭水道航路が設定をされまして、航路内における諸般制限法制化されたとしましても、その入り口、出口から数キロ離れたところというものはこれは全く従来のままでございますので、そういうところで集団的に漁業操業を普通の状態でやるとしますと、立ちどころにこの法律は死んだものになってしまう。巨大船といえども避航しなければなりませんから、そうなると、安全航行ということが確保できるかという問題につながってくる。ですから、この法律をほんとうに生きたものとしていくためには、法文にないたくさんの犠牲漁民が甘受しなければこれは生きたものにはならぬであろう。私たちとしても、せっかくでございますので、大いに努力はしたいと思うが、せめて国の基本的な責任における対策というものがこういう法案審議過程で明らかにされてこないというのであるならば、そういう操業は、今後協力しないで、しますよ、こういうことでございまして、旗立ててデモをしようという意見ではありませんので、その辺はひとつお含みをいただきたいと思います。  それから特に伊良湖水道周辺の点を見ますと、ほとんどが島の住民でございます。したがって、漁業以外には転換ができません、これを島から外へ出してしまえば別問題ですが、全部漁業で生きておるわけですから、ここの内湾のいわゆる狭水道の範囲における漁業制限されるとするならば、別のところで何か漁業ができるということを、国自身が積極的に、補償とは別の問題として、考えられるということであるならば、将来にわたる調整というものは可能ではなかろうか、こういうことを申し上げたわけであります。
  34. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 それぞれの方からかなりの御質問、それによって解明がされましたので、できるだけ重複を避けて御質問を数点したいと思いますが、冒頭からあるいは重複するようになるかと思いますけれども船主協会の代表の方に、吉田さんですか、御質問申し上げたいのですが、それぞれの所属の船会社が持っておられる船については大は三十七万トンから小は数百トンのものまである。こういう大きな船の狭水道航行につきまして、斉藤さんのほうからは、船を運航する立場で、大体二十五万トン以上の船が狭水道に入るというのは好ましくないというお話があったわけですが、こういういわゆる二百メートルということで限定をされておりますけれども、まあ三十七万トンという大きな船を含めまして、大体今後、そういう大きな船の狭水道への入航といいますか、航行ということについて、将来を見ましてどのようにお考えになっておられるかということをひとつお尋ねをしたいというふうに思います。  それから、これは池尻さんになりますか宮原さんになりますか、御質問したいと思いますが、実は私、関連の県単位の漁連のほうから電報をもらっております。その電報の内容は、きょうは「漁業権」ということばが使われておったというふうに記憶をいたしておりますが、その電文の中では「操業権」「生活権」というふうなことばが使われております。これは、まあおっしゃることを聞いておりまして、ことばの用語にこだわる必要はないとは私、思いますけれども、実は私どもの仲間で調べた「漁業権」というのは、かつて、かなり以前に漁業権というのは国で買い上げて、そしてそれを各府県の県知事が許可権を与えると、こういうようなことも聞いておりますので、そういう意味では、漁船をあやつりながら魚をとって生活をするという意味からいえば、この「漁業権」ということにあえてこだわることはないと思いますけれども、これは一体どういうふうに解釈をするのかという点をひとつ参考のためにお聞かせをいただきたいと思います。  それから、これは宮原さんからお話のありました、現在の漁業というのは、巨大船、さらにはいろいろ船の交通ふくそうをして、密度の高い漁業が非常にできにくい状態になっておると、こういうお話がありました。確かに、まあ潮の関係だとか天候だとかいろんなことで、漁業というのは、四六時中いつでもできるというものもありましょうけれども、必ずしもそうでないものもあるわけですから、それはそれなりにわかるんですが、今回の法案できめられております巨大船というのは、実は私、このことについて委員会審議過程でも尋ねたわけなんですけれども、そういうことからいって、巨大船を避航するということによって漁労船が影響を受けると、こういうことに対しての質問に対しての御回答は、これはかなり——十二時間前ですか、十二時間前から通報をし、さらに漁労に支障があるとすれば、長官のほうで、しばらく入るのを待てと言うこともできるんだというようなことからいけば、これは何がしかの影響を——私は絶無だとは言いませんけれども、この辺のところはおっしゃるようなことはないんじゃないかというような気がいたしますので、その点についての御見解をお聞かせをいただきたいというふうに思います。  それから、これは先ほど原田さんのほうからの御質問の中でちょっと見解が示されたんですが、宮原さんの御意見の中で、この問題はひとり三重県の伊良湖水道の問題だけでなしに、全国的な問題として対処をしておるんだと、こういうふうにお話がございました。全国的には特定水域航行令ですか、こういうような——伊良湖水道にはこれはございませんが、瀬戸内なんかはかなりのところが新しい航路とこれが重複するところがあるんですが、ここの場合には、すべて漁労船が「避けなければならない」というような面からいけば、私は現在言われておる漁業との関係からいけば、この一点だけを見れば、いままでと変わった形が出てくるんではないか。もちろん、いまお話しのありましたように、伊良湖水道の場合はそういうのもありませんし、神島あたりは、住民の人がほとんど海からの漁業によって生活を立てておると、こういうことからいけば、全国的とはいいながら、そこの代表者の方であれば、その意を体しての見解が述べられるというのは当然だというふうには思いますけれども、たまたま全国的な考え方でこの問題に対処するということであれば、そういう面との関連もあるのではないかということを思います。  それから最後に谷先生にお尋ねをしたいというふうに思いますが、御意見の一番最後で、これは阿具根さんからもお尋ねがありましたが、例の国際通念からいって多少ちぐはぐといいますか、いままでと違った考え方が出てくるので、外国から入る船なんかの漁船を見る見方というようなことからいって懸念される面があると、こういうふうにおっしゃったのですが、こういう点は、今後の、何といいますか、PR、もちろんこの法案自身は十分いろいろな周知徹底方ということが、そういうことにこだわりなく十分にやられなければならぬと思いますけれども、そういう点との関連でかなり大きな危惧としてこの問題が法案との関係で御心配があるのかどうか。重ねてひとつお聞かせをいただきたい。  以上です。
  35. 吉田俊朗

    参考人吉田俊朗君) 将来二十五万トン以上の船を狭水道に入れるとか、あるいは建造するつもりはあるかどうかという御質問でございますが、船主といたしましては、ごく例外を除きまして、これは先ほど御説明いたしました鹿児島湾におきますCTS喜入の基地に入る大型船の問題でございますが、これなどは大型でも全然心配なく入れるのでございまして、そういう例外を除きまして、大体二十五万トン程度のものを目安といたしまして、それ以上のものはつくらないということを、私の記憶に間違いがなければ、海員組合の申し入れに対しましてそういう答えをしたことが過去においてございます。これは単に経済性を追求してどんどんどんどん大きくしていくというふうに簡単に割り切れないのでございまして、船の喫水から申しまして、ペルシア湾からマラッカ海峡を通るためには大体この程度の船が限度でございまして、経済性もこの程度でとまるということでそういう答えになってあらわれておるわけでございまして、これ以上の大きな船を将来建造してそれを無理やりに狭水道に入れるというようなことは船主としては考えておりません。それから二十五万トン以下の船につきましても、きょう話題に出ませんでしたが、国際機関に、国連の機関におきまして、この安全をはかるためにたとえば大きな船の中のタンクのサイズを制限し、衝突したような場合の損害を小さくするというような、たとえば一つの例でございますが、そういう一連の大型船対策が国際機関で盛んに検討されておりまして、いろいろな条約案となってあらわれておりまして、船主といたしましても、この大型船の安全については今後とも十分対処していきたいと考えております。
  36. 宮原九一

    参考人宮原九一君) 二、三についてお答え申し上げます。  まず、漁業権についての問題でございますが、これは保安庁当局にも御質問いただいたほうがいいのではないかと思いますけれども、今回の航路設定海域は、漁業権としての共同漁業権ですか、それがないという前提に立たれて設定をされたのではないかという気がするのでございます。したがいまして、全漁連指導としましても、漁業権というものがないであろう、ほとんどのところに漁業権がないということで「操業権」とか「生活権」とかというようなことばを使っておりますが、あえて伊良湖水道三重県側といたしましては、三十八、三十九号の共同漁業権の免許がされておりまして、御案内のように、昭和二十五年に古い専用漁業権等の戦前の漁業権は全部補償によって政府が買い上げて新しく免許をされたことは事実でございます。が、しかし、この共同漁業権というのは十年更新になっておりまして、特別の事情がない限り、固有の権利として漁民に与えていくというような約束がなされております。したがいまして、現在各地の埋め立てその他の問題が出ておりますのも、漁業権補償ということでたくさん補償金が出されるわけでございますから、物権として漁業権が認められております以上、そこに航路が設定されて漁業操業制限されるということになるならば、当然これは漁業権の一部消滅ということにもなりまして、補償という問題が出てくるのではないか。これを無視して全国的に漁業権を軽視されておるという点について特に私は伊良湖水道立場で申し上げたようなわけでございますので、全国的には操業権、生活権というものは、いわゆる許可漁業であるとか自由漁業であるとか、この海域で多くの漁業者が生きていくということが制限されるということで問題を提起しているというふうに二本立てにお考えをいただきたいと、このように考えておるわけでございます。  それから、巨大船の避航だけであるならば、多少の迷惑はかかるであろうがそう大きな支障はないではないかというお問い合わせにつきましては、すらっと見ればまことにそのとおりでございまして、現時点における伊良湖水道の一日の航行船舶数二・六隻とかいうようなことでいきますと、いろいろそれに対する対策も考慮されておりますので、事実、伊良湖水道にしてもどこにしましても、この航路筋航行巨大船だけに避航して、ほかの船に避航しなくてもいいのだという現実ではないということでございます。したがいまして、相手方がよけてくれるんだからということで、横着に漁業操業をすると生命の危険に襲われるという状況で、たえず避航している。それが、逐次今度は巨大船がふえてくるであろうというはっきりした目安が立っておりますので、何とかその辺についてはもうがまんしましょうと。がまんしましょう。ですが、船主協会の皆さんから金をもらうというわけにもいかぬではないか、政府がもう少し責任のある立場で対処してほしいと、こういうことを申し上げておるわけでございます。  それから私は、特水令はなるほどございませんので、伊良湖については十分に発言できるわけでございますが、瀬戸内等についてはまず全体として特水令を廃止してほしいという強い願望のあることも事実でございます。しかし、昭和四十二年にこの問題が出ましてから、全国関係水路の代表首が集まって海上交通法対策特別委員会というものを私ども全漁連でつくりまして、全国立場意見調整をしております。非常にすっきりしない点では、片っ方で、この辺で賛成しようやという地域もあれば、絶対反対という地域もありますか、漁民の最終的なコンセンサスとしては、やはりこの法案施行によって漁業に重大な支障を及ぼすということについてはこれは一致した見解でございますので、そういう状態の中で国の前向きな漁民対策を望むということについては、これは全国的な漁民の希望として申し上げるということで御説明いたしたようなわけでございます。
  37. 谷初蔵

    参考人(谷初蔵君) 先ほどの問題でございますか、現在の海上衝突予防法、したがって、これは国際的なルールをベースにしてつくられたものでございますけれども、これには「漁ろうに従事している船舶航路筋において」という規定になっておりますが、近く行なわれる改正におきましてはそれをさらに強化しようという、そういう通念をさらに強化しようというのが国際的な動向でございます。そういう強い動向を見ますと、この規定が、法律案の提案が、方向がちょっと逆になります。むろん周知徹底のことは十分やらなければなりませんが、なお、そのための混乱が懸念されるというのが現在の気持ちでございます。
  38. 岡本悟

    ○岡本悟君 池尻参考人宮原参考人、どちらでもいいんですが、お尋ねいたしたいと思います。  先ほど来の御両所の御意見、私は十分理解しておるつもりでございますが、それを前提としてお聞き取り願いたいと思うのですが、私は自民党の所属でございまして、この海上交通安全法案には大賛成なんです。根本的に漁民立場から考えてみても、いまのような、相当船舶大型化して、特にタンカーの場合に万一のことがありますと、先ほど来御指摘になっておりますように、たとえば東京湾その他の内海で十万トンくらいのタンカー事故を起こしますと、おそらく漁業は全滅の被害にあうということなんですね。でありますから、漁業立場から見ても、第一義的に海上交通規制をやって事故防止をやってもらわなければいかぬ、自分たちの基本的な利益につながるんだと、こういう認識を持っていたわけです。それは御両所ともちょっとお触れになりましたね。だから、それは理解するというふうなお話がありました。しかし、何よりも一番の被害を受けるのは漁民立場だと。ところが、海上交通規制はいいが、しかし、漁労をする場合には船を使わなければなりませんから、やはり船対船の問題が起こってくるわけですね。その場合に、やはり漁業立場を考えて、巨大船のみに避航義務を課するという方法が今回の法案ではとられているわけです。船対船ですから、どっちか避けなければいけません。そこで、この法案の報道に当たりました新聞なんかの取り扱い方を見ますと、巨大船優先主義というのが出ているのです、見出しに大きく。それから、先ほど谷先生もそういうふうなことをおっしゃいまして、巨大船優先主義は私は肯定できるというふうなお話がありましたが、私は、むしろ巨大船優先主義ではなくて、船対船のお互いの規制を考える場合に、巨大船なるがゆえに不自由船だと考えて、それらの関係調整する場合には、やはり身軽なほうが不自由なほうを避けてやろうじゃないかという一つのルールが当然できると思うのですね。ですから、そういう観点から、基本的にはこれは漁業の安全につながる大きな問題がある。自分たちも海上交通規制には積極的に賛成すると、ただし同時に、それがかりに巨大船にいたしましても避航の関係、あるいは巨大船のみならず、これに準ずるものについても、相当現実の問題としては操業に支障があるというふうな御指摘でございます。これもよくわかります。しかし、その場合に生活権の問題が出てくるので、その点は政府が基本的な施策配慮するということはよくわかるのですが、そういうふうな、まず漁業立場からでも海上交通規制には大賛成だと、それからまた、これは巨大船優先主義じゃなくて、不自由船には優先権を与えるんだというふうなお考え方になれないものかというふうなことを思うわけです。でございますので、もし御意見があればお聞かせいただきたい、これが第一点であります。  それから次に谷先生にお伺いしたいのですが、先ほどのお話の中で、この海上交通安全法がとりあえず対象にしております規制航路は十一航路でございますね。しかし、現状並びに近い将来から見て、もっとこの規制対象にすべき航路があるように思うというふうなことを抽象的におっしゃいました。具体的に谷先生がお考えになっている必要な航路というのはどんな航路か、もしお漏らし願えればけっこうだと思うのです。これは、申し上げるまでもなく、先ほど柴田委員からもお触れになりましたが、特定水域航行令というのは、この法案が成立いたしますと同時にこれは廃止になるんだというふうに私は理解しておりますが、その水域航行令が規制しておりました航路を全部カバーしておりません。でありますから、船舶の側から見ますと相当大幅に後退しておるというふうな受け取り方もあるわけなんでありますが、それはともかくといたしまして、先ほどそういうことをおっしゃいましたので、十一航路以外になるべく早い機会規制対象航路として取り上げるべきだという航路はどんな航路をお考えになっているのか御教示願えればしあわせでございます。  以上でございます。
  39. 池尻文二

    参考人池尻文二君) 岡本先生の御指摘の点は私どもそのとおりであるということを公述で申し述べているわけでございます。ただ、漁業者も最近は非常に聡明になりまして、五ヵ年間の法案の動きというのをしさいに知っているわけです。それは第一次案等は、漁民対策は確かにありました。しかし、いわゆる特定水域航行令をそのまま法律に載せたような最初の案というものも漁業者は知っているわけでございます。それを五ヵ年間の漁業者の運動でここまでなってきたという認識を持っているわけです。したがって、すべて政府から何らかの対策についての確約がなければこの法律は、現在の海上保安庁長官の善意は十分認めますけれども、このままひとり歩きをさせますと、やがては次第に規制は強まってくるであろう、漁民対策展望はさらさらなくなってくる、この点は一体どうしてくれるんだという不信感というのは、私は非常にあると思うわけです。その点は私は最終的にこの規制法の一つの根本の問題点ではないだろうかと、いまもってそう考えております。
  40. 谷初蔵

    参考人(谷初蔵君) 私が気がつきましたのは、瀬戸内海の釣島水道でございます。
  41. 阿具根登

    ○理事(阿具根登君) ありがとうございました。  他に御発言もなければ、これにて参考人に対する質疑を終わります。  参考人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は御多忙中のところ貴重な御意見を拝聴し、まことにありがとうございました。この機会に厚くお礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十二分散会