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1972-05-10 第68回国会 参議院 議院運営委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十日(水曜日)    午前九時四十四分開会     —————————————    委員の異動  五月十日     辞任         補欠選任      棚辺 四郎君     古賀雷四郎君      園田 清充君     高橋 邦雄君      高田 浩運君     山崎 竜男君     —————————————   出席者は次のとおり。     委員長         鍋島 直紹君     理 事                 栗原 祐幸君                 藤田 正明君                 山崎 五郎君                 瀬谷 英行君                 山崎  昇君                 峯山 昭範君                 田渕 哲也君                 須藤 五郎君     委 員 植木 光教久次米健太郎古賀雷四郎柴立 芳文君 植木 光教君                 嶋崎  均君                 大松 博文君 高橋 邦雄君                 玉置 猛夫君                 桧垣徳太郎山崎 竜男君 小野 明君 村田 秀三君 森 勝治君 内田 善利君         —————        議     長  河野 謙三君        副  議  長  森 八三一君         —————    国務大臣        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        国 務 大 臣  竹下  登君    事務局側        事 務 総 長  宮坂 完孝君        事 務 次 長  岸田  実君        議 事 部 長  海保 勇三君        委 員 部 長  若江 幾造君        記 録 部 長  西村 健一君        警 務 部 長  植木 正張君        庶 務 部 長  上野山正輝君        管 理 部 長  前川  清君        渉 外 部 長  武田  実君    法務局側        法 制 局 長  今枝 常男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○本会議における国務大臣報告及びこれに対する質疑に関する件 ○決議案委員会審査省略要求取り扱いに関する件     —————————————
  2. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 議院運営委員会開会いたします。  本会議における国務大臣報告及びこれに対する質疑に関する件を議題といたします。  事務総長報告を求ます。
  3. 宮坂完孝

    事務総長宮坂完孝君) 昨九日、内閣から、本日の本院の会議において、水田大蔵大臣が、昭和四十五年度決算の概要について発言いたしたい旨の通告に接しました。
  4. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいま事務総長から報告いたしました国務大臣報告に対しましては、理事会において協議いたしました結果、日本社会党一人十五分、公明党一人十分の質疑を順次行なうことに意見が一致いたしました。 右理事会申し合わせのとおり決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 暫時休憩いたします。    午前九時四十五分休憩     —————————————    午後零時三十五分開会
  6. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 議院運営委員会を再開いたします。 決議案委員会審査省略要求取り扱いに関する件を議題といたします。 事務総長報告を求めます。
  7. 宮坂完孝

    事務総長宮坂完孝君) 去る四月二十二日、議員鈴木強君外四名から、沖縄恩赦から選挙違反者を除外することを求める決議案が提出されました。本件決議には、発議者全員から、委員会審査を省略されたい旨の要求書が付されております。 この要求につきまして御審議をお願いいたします。
  8. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 本件に関し、ご意見のおありの方は、順次御発言を願います。 なお、政府側から、法務大臣前尾繁三郎君、内閣官房長官竹下登君、法務省刑事局長辻辰三郎君、法務省保護局長笛吹亨三君が出席いたしております。 御発言をお願いいたします。
  9. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この問題は、きわめて単純かつ簡単な問題なんですけれども、政府側の腹次第ですぐにでもまとまることですから、でき得るならば、自民党側の同意を得たいと、こう思います。 で、まず端的にお伺いしたいと思うのですけれども、恩赦に便乗して選挙違反がみんなパーになるといったようなことは、これは国民気持ちからいっても許しがたいと思うのでありますけれども、政府側として、伝え聞くところによると、今回は、選挙違反を除外するように閣議で決定するかのように聞いておりますけれども、そういうことがあるのかどうか、そういう腹があるのかどうか。まず官房長官からお伺いしたいと思います。
  10. 竹下登

    国務大臣竹下登君) このたびの沖縄復帰が、国家的慶事であるという観点から、この際、恩赦を行うべきかいなかという点については、検討を重ねてまいったところでありますが、きょう沖縄米民政府から法務省保護局に対しまして、沖縄現地において、本日一時に減刑令を公布するという通告を受けました。そこで、政府といたしましては、この性質にかんがみ、恩赦を行なうという方向で、その内容については、これから検討するということを前尾法務大臣にお伝えをしたばかりのところであります。したがいまして、公職選挙法違反を除くとか、入れるとか、そうしたことはまだ検討したことはありませんし、閣議でそのようなことが議論されたことも、ただいまの段階では全くない、このような実情であります。
  11. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 要するに、恩赦を行なうという方向である。で、内容はこれから検討する、法務大臣検討するということなんでありますけれども、それでは今度、法務大臣にお伺いしたいと思うのですが、法務大臣としては、端的に言って、選挙違反を今回の恩赦の中に入れるつもりがあるのかないのか。まあ、もっとも閣議では、まだきまっていないということでありますが、きめようと思えばすぐにでもきまってしまうことなんですから、まずは法務大臣の腹をここで明らかにしていただきたい。
  12. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これから、ただいまお話しのとおり検討する段階でありまして、いま、私がここで含めるとか、含めないとか、そういうような考え方ではなしに、いろいろ皆さんの御意見を伺って正しい結論を出したい、かように考えておる次第であります。
  13. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 皆さんの御意見を伺って正しい結論を出したいということであれば、きょうの、ここに委員会の席上で出された意見というものを尊重するというふうに受け取れるわけです。 そこで、私のほうから具体的な問題について申し上げたいと思うのですけれども、これは昨日の朝日新聞埼玉版です。これには富士見というところの市長が逮捕されたということが大きく載っております。これだけ大きく載っているわけです。「ツラよごしだ許すな」ということですね。これが毎日だし、こっちの方は朝日で、「黒い履歴書にまた汚点」と、こういうふうに載っておりますね。これは県民のだれもが見ているわけです。この人は、去年の選挙の際に悪質な選挙違反をやって、市長のいすにすわるより先に留置場のほうにすわってしまった。そしてイモづる式にぞろぞろ逮捕者が出た。で、逮捕されてその素性がよくわかったのだけれども、詐欺や傷害等前科何犯である。いままで八回逮捕された。こういう経歴の人ですね。たまたま選挙違反でつかまったけれども、今度は道路の汚職が発覚をしてまたつかまったというのです。それで、地元の市民とすれば、自分たち市長前科何犯であるということも許しがたいのに、選挙違反で一回つかまっており、出てきてから、今度は汚職でまたつかまる、やり切れない気持ちだというのですね。ところが今度、こういう前歴を持っておっても、恩赦でもって全部が、これはもうきれいになるということを計算に入れてやっているわけです。もし、選挙違反を今回の恩赦に入れる——恩赦の幅がどのくらいのものかわかりませんけれども、恩赦のやり方によっては、こういうような人がみんな助かっちまうということになるわけですね。一体、住民の気持ちがそれで済むかどうかというわけです。これは埼玉版ですから、あるいは大臣官房長官ごらんになっていないかもしれませんけれども、これだけ大きく載っているんですから、あとでよくごらんになっていただきたいと思います。総理にもお伝え願いたいと思います。具体的に言うと、こういうことをやった人がみんな助かるようなことをやるのかどうか。これは国民のだれもが関心を持たざるを得ないと思うのですけれども、その点について、法務大臣としてどういうふうにお考えになるか。具体的な一つの例を昨日の新聞から私は取り上げたのですが、どうでしょう。
  14. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 恩赦制度というものを考えます場合に、これは率直に言って、具体的な事実があるから、これをどうしようということを考えては私はいけないんで、もっと、抽象的にというよりは、法の前に平等であるということで、公平に考えていくべき問題でありまして、具体的の問題でこれを救おうとか、あるいはこれをのけるべきだというような考え方にあまりとらわれますと、これは恩赦の本質に反するものじゃないか、こういうような考え方は持っておりますが、まだ、別に確たる考えを持っておるわけではありません。いままで、いろいろの方面からお話は伺っておりますが、もう大体お話がありましたから、これから最終の詰めをしたいと思っております。
  15. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私がここでお見せしたのは、最も具体的な最近の例だけなんです。もっともっとたくさんあるんです。この富士見市長以外にも、去年の統一地方選挙でもって、市議会議長室でもって、市会議員に現ナマを分配して、それが発覚して市会議員がぞろぞろ逮捕されてしまった。そういうところもある。留置場の中で市議会が開かれるのじゃないか、こういうふうに陰口をたたかれるほど市会議員が大量に逮捕された。それでもなおかつ当選した。市会議員自民党の党籍を離れただけで、今日までともかく議員としての地位を保っている。それはなぜじっとしているかというと、恩赦でもって、これが全部シロになるということを期待して待っておるわけですね。こういう実例があるわけです。そのような実例は、私自身自分のところの具体的な例を幾つか出すだけじゃなくて、日本全国に一ぱいあると思う。これは許しがたいと思うのですがね。 官房長官にお伺いしたいのですけれども、こういう悪質選挙違反といったようなものを、もし許すならば、一体どのくらい全国該当者がいるかわかりませんけれども、国民気持ちとしては、これはどうにも救いがたいものになるということですね。だから、まあ佐藤内閣最後のと言っちゃ何だけれども、佐藤内閣最後の仕事として、せめて、こういう毒を食らわば皿までといったようなことをやらずに、選挙違反は、恩赦をやるにしても入れないということくらいは、それこそ、総理最後のツルの一声で決定できないものかどうか。これは、官房長官として総理を補佐する重要な責任があると思いますが、その点はどうでしょうか。
  16. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいまの瀬谷委員の御意見は御意見として、私は承ることにはやぶさかではありませんが、私自身、まあ当委員会でだいぶ御質疑をいただくということで、恩赦法等々勉強いたしてみておりますものの法律的知識はいささか乏しい限りでございますので、一般論といたしまして、御意見は御意見として承るとともに、やはり恩赦そのものは、個々のケースをとらえての角度から論議するのではなくて、前尾法務大臣からの御答弁にもございましたごとく、法の前に平等であるという一般論としての検討を加えるべきだ、このように考えております。
  17. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いまのようなお話だと、私は、これはもう幾らやったって平行線になっちまうわけですけれども、法律的知識が乏しいとか乏しくないとかいう問題じゃないと思うのです。で、これは道義的な問題であるし、常識的な問題ですからね。要するに悪質選挙違反——幾らも例があるのですが、先般も、選挙違反恩赦の中に含めてもらうということを期待しているために、たとえば、求刑抜き判決が出るといったようなおかしな例もありましたね。こういうことは、どう考えてみても許せないと思うのですよ。これは、もう法律知識の問題じゃなくて、道義的にも、当然選挙違反というものは、この際、恩赦に便乗させないという決断を下すべきではないかというふうに私は思うのですがね。これは、もうこれ以上どうにも答えが出ないものかどうかですね。ごく簡単で明瞭な問題なんですけれども、その点、法務大臣に再度お伺いしたいと思うのですが、どうですか。しごく簡単な問題だと思うんですよ。
  18. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 恩赦制度というのは、本質的に予期せざる喜びという問題であります。したがって、恩赦のきまるまでは絶対に発表しないというのが常道でありますし、またそうでなければならぬと思います。したがって、いろいろ御意見は御意見として承っておきますが、いま私の考えを申し上げるような段階ではございません。
  19. 山崎昇

    山崎昇君 いま瀬谷委員のほうから恩赦についての質問がありましたが、重ねて私から、まず確認しておきますが、官房長官、この恩赦をやるんですね。政府としてはやるんですね。
  20. 竹下登

    国務大臣竹下登君) やる方向検討に入った、こういう段階でございます。
  21. 山崎昇

    山崎昇君 ことばのやりとりは別として、政府としてはやるというふうに私は確認していいですね。これは簡単ですからはっきりしていただかないと……。
  22. 竹下登

    国務大臣竹下登君) けっこうです。
  23. 山崎昇

    山崎昇君 恩赦政府がやるとするならば、今度の沖縄復帰に伴う恩赦というのは、一体どういう目的で、どういう理由政府恩赦をやろうとしておるのか。これは法務大臣でもいいのですが、明確にしてもらいたい。
  24. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 恩赦制度は二つありますが、政令恩赦というのは一律にやるわけでありまして、これは当然、要するに国家的慶事といいますか、国家的行事、みんなが喜びを分かつ、そうして将来再犯を起こさぬというのが趣旨でありまして、これはもう憲法上も認められておりますし、当然ただいま申しましたような趣旨で行なわれるわけであります。
  25. 山崎昇

    山崎昇君 いや、私の聞いておるのは、恩赦行政権でやることは承知しております。今度沖縄が復帰するというので恩赦をやるのですが、一体その目的は何で、どういう理由恩赦をやらなければならぬのか、そのことについてあなたに明確な答えをしてほしいと思うのです。いろいろ世間では、恩赦というものは刑事政策的に考えるべきものだとか、たくさんの意見が述べられておりますが、法務大臣としてはどういう理由でやるのですか。これはこの機会ですから明確にしてもらいたい。
  26. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 恩赦という制度が、ただいま申しましたように国家的慶事、みんなが喜びを分かち合う、そうして将来に向かって犯罪を犯さないようにというような意味合いで行なわれるわけでありまして、もとより刑事政策を中心に考えていかなければなりませんが、また、思わざる喜びということによって更正の目的を達する、こういうことだと思います。
  27. 山崎昇

    山崎昇君 ここで目的論争なんかやっておったのではとても時間がありませんが、いま法務大臣の言われる思わざる喜びなんというのは、これは法務大臣として考えるべきことじゃないじゃないですか。少なくとも、具体的な事実に基づいてあらゆる証拠を集めて下された判決を修正するということでしょう。思わざる喜びなんぞでやるべき筋合いのものではありません。ですから、法務大臣のいまの見識としては私は不適当だと思います。沖縄恩赦をやるならやるらしく、もう少しきちっとした目的があって、そうして、やる内容についても相当厳格にこれは私はやらなければならぬ問題じゃないか、こう思うのですが、重ねてあなたの意見を聞きたい。
  28. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 何らの戦争なしに領土が返ってくるということは国家的な喜びであります。それはほんとうに、思わざる喜びと申し上げたのはそういうわけでありまして、したがって、その喜びを分かつということであります。もとより刑事政策的にも考えていかなければなりませんから、それはもちろん慎重にやらなければならぬことは事実でありますが、慎重に考え恩赦というものを行なうべきでありますが、私は十分、沖縄返還ということは国家的な慶事であり、恩赦を行なうにふさわしい、かように考えております。
  29. 山崎昇

    山崎昇君 そこで、これはちょっとほこ先が違いますが、自民党を代表する人に聞きたいのだが、きのうのニュースによると、自民党大赦をやれということを申し入れたというのですね、それは事実かどうか。それは党議としてきまって、そうやられたのかどうかお伺いしたい。
  30. 栗原祐幸

    栗原祐幸君 私も党の正式の機関を通じて聞いたわけではございません。新聞でそのようなニュース承知しております。そういう程度であります。
  31. 山崎昇

    山崎昇君 いま公式の答弁があったのですけれども、自民党としては党議できめたのではない。じゃ、だれがどういうかっこうできめて政府申し入れしたのか、この場でひとつ明らかにしていただきたい。そうしませんと、何かニュースでは自民党申し入れということでやっておりまして、自民党は全部こぞって大赦でやれということになっておるのじゃないだろうかと、こう思いますから、この機会にひとつ明らかにしていただきたい。もしそれが違うというなら、だれがやって——あなたのほうの政党のことですから、どういう機関でそういうことがやられて政府申し入れされたのか明らかにしてもらいたい。
  32. 栗原祐幸

    栗原祐幸君 ただいま申し上げましたとおり、私も新聞承知をしておる、ニュースとして承知をしておる、こういうことであります。これが正式に党議としてきまって政府申し入れたのかどうかということは明らかでありません。いま関係者に問いただしてみますから、これについての答弁は後ほどに保留さしていただきたいと思います。
  33. 山崎昇

    山崎昇君 それじゃ法務大臣に聞きますが、自民党の正式の答弁はまたあとで聞きますが、いまお聞きのように、ニュースでは、政府に対して大赦でやれという申し入れがあったと、こう報道されております。そこで法務省としてはそれを受けたのか受けないのか、受けたとすれば、それに対して法務省はどういう見解をお持ちなのか、それを聞いておきたいと思います。
  34. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私のほうとしてはまだ正式な通知はありません。ただ、従来から法務委員会等においていろいろな意見が出ております。それ以外には正式な話はありません。
  35. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、きのう報道されたテレビのニュースは誤りですか。法務大臣、まだあなたのほうには、いっていないということですね。
  36. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私のほうにはまいっておりません。
  37. 山崎昇

    山崎昇君 これはあと自民党から答弁があるそうですから保留しますが、そこで重ねて、新聞報道では、すでに法務省でかなり検討が進んでおって、あと総理大臣法務大臣の話し合いで、十二日の閣議できまるのではないかとすら報道されています。あなたはこれから検討すると言うが、私はもうこの問題はかなり進んでおるのではないだろうか、こう思うのです。そこで、進んでおるとすれば、その経過を聞きたいし、進んでいないとすれば、あなたの考えとして、いま報道されておるような大赦でやられるつもりなのか。あるいは明治百年でやられましたように、復権とか減刑とか、そういう形でやられるのか、あなたの見解でもいいですから、聞いておきたいと思います。
  38. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 先ほど来申しておりますように、官房長官を通じてただいまお話があったのでありまして、大赦をやるとかやらぬとか、そういうことについてまだ具体的に申しあげるような段階ではありません。
  39. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、巷間、新聞等で伝わっておりますように、あなたと総理大臣と打ち合わせをやって、今週中にもきまりそうな報道でありますが、法務大臣としてはこれは事実ではないのだ、こう私ども確認していいですか。
  40. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) とにかく十五日が基準日になることでありますから、早急にきめなければなりませんが、ただいままで何らそういうような話はなかったわけであります。われわれとしましては、いろいろ検討はもちろんいたしておりますけれども、いまそれを申し上げるような段階ではありません。
  41. 山崎昇

    山崎昇君 じゃ、重ねてあなたにききますが、十五日に返ってきます。十五日を基準としてやるというなら、きょうは十日ですから、あと四日しかありませんね。そうすると、十四日までにはあなたはきめるという考えでおられるわけですね。これだけ確認しておきます。
  42. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 当然そうです。
  43. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、十二日の金曜日は定例閣議ですね。そうすると、新聞の伝える十二日の閣議が最も早い期間だということは、ある程度これは信用しなければならぬのじゃないでしょうか。あなたの腹の中では、相当私はでき上がっているのじゃないかと思いますが、どうですか。
  44. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これから手続としましてはいろいろ打ち合わせたいと思っております。したがって、ただいまのところは、何日にどういう手続をとるかというところまではきまっておりません。
  45. 山崎昇

    山崎昇君 そこで本題の選挙違反の問題ですが、法務省から私どもいろいろ聞いた資料によりますと、大体昭和の初めごろから今日まで十四回ぐらい恩赦というのはやられているようですね。そして戦後になりましてからも、八回ぐらいやられているようです。ずっと古いものは別として、最近で、ここ十年ぐらいの間に三回ほどやられていますが、昭和三十一年の国連加盟のときには、あなたのほうの法務省資料で六万九千六百二十七名が恩赦になっておる。そしてそのうち、驚くなかれ、選挙違反者というのは六万九千五百二十五名というから、九割九分までは、言うならば選挙違反者恩赦の恩恵に浴しておる。その他のものについてはほとんどない。また、昭和三十四年の四月の皇太子の結婚の際にも恩赦が行なわれておる。これも四万五千名のうち一万二千名は選挙違反者だ。さらに昭和四十三年の明治百年のときを調べてみますというと、十四万八千人ぐらいの該当者のうち六万七千人は選挙違反者だ。このときには約半分ですね。こういうことを考えてみますというと、恩赦をやるたびに、だれが一番その対象者として救済されておるのか。この数字の示すところはほとんどこれは選挙違反者になる。こういうことを考えてみますと、今度の沖縄の問題でも、私は沖縄の諸君はああいう不当な状態の中でいろいろ裁判が行なわれているわけですから、それを救済するということについては、私どももそう異議はない。しかし、少なくともそれに便乗して、本土における選挙違反者が大半になるような恩赦ということは、やるべき筋合いのものではないんではないだろうか、こう私ども考えるわけです。そういう意味で、野党は第二院クラブまでこぞって実はこの決議案を出しているわけなんです。 そこで官房長官法務大臣にお聞きしますが、こういう過去の数字から見て、今度のこの恩赦の場合には、われわれが主張しておりますように選挙違反者を除外するということが正しいのではないかと私は思うんだが、どうですか。それに対してあなた方はどういうふうにお考えになりますか。
  46. 竹下登

    国務大臣竹下登君) やはり私も、政府という立場から、いわゆる恩赦を実施するという前提だけが決定をし、その内容について今後検討をするという段階でありますだけに、内容についての御議論は十分承るつもりでありますが、私からの見解を申し述べる段階ではない、このようにご了解を賜りたいと思います。
  47. 山崎昇

    山崎昇君 法務大臣どうですか、あなたのお考えとして。
  48. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 従来の恩赦につきましては、それぞれのそのときそのときの刑事政策というものがあったと思います。で、その批評は差し控えたいと思いますが、いずれにいたしましても、先ほど来申しておりますとおり、十分慎重に考え結論を出すべきものでありまして、ただいまのところ、いろいろなことを申し上げる段階ではないと思います。
  49. 山崎昇

    山崎昇君 私は、担当が法務大臣でありますだけに、あなたの見解を聞いているのですよ。恩赦をやることがはっきりした、それも十四日までにやりますと言う。そうして、うそかほんとうかわからぬけれども、自民党からは大赦をやれという申し入れがなされたとも報道されている。また、一部では、さっきも申し上げたように、あなたと総理大臣でもう最終段階だと、こう言われている。そういうときに、なおかつ、あなたがそういうあいまいな態度をとるということは国民に対して私は不遜ではないかと思う。やるならやる、こういう目的大赦はやらないならやらない、そういうことをもうすでに明確にして、そうして反対する野党であっても、あなた方が野党の理解を求めて、国民的な行事としてやるなら、それくらいのコンセンサスを求める態度があっていいのではないか。あなた方は一切極秘にして、全くやみくもにまた十二日か十三日ごろに、検討が終わりました、そうして何かわからぬ諸般の事情何ということばをおそらく使うでありましょうが、大赦でありますと。中身見たら、ほとんどが選挙違反者が入っておる。こういうやり方になるのではないだろうか、そう私ども心配するのです。それじゃ、そういう抜き打ち的なやりませんね、法務大臣。 それから、私どもがこれだけ申し上げたら、過去の例等でほとんどが選挙違反者だけが利益をこうむるような恩赦はやりません、こうあなたは思っているんではないかと私どもは思うんですが、どうですか。そのくらいのことはこの委員会で約束できませんか。
  50. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 恩赦内閣が責任を持ってやりますものであります。したがって、それがきまるまでは、わきからいろいろなことを申し上げるわけにまいりませんし、本質的に基準日に発表すべき問題でありまして、それが恩赦制度の本質だと思います。もちろん、世論の動向なり、それは洞察してやらなければなりませんが、あくまで内閣が責任を持ってやるべき問題だと思います。
  51. 山崎昇

    山崎昇君 官房長官、いま私どもいろいろ述べているんですが、おそらく政府は二、三日のうちに態度をきめるんだと思うんです。その際に、きょうのこういう空気を反映してあなたは野党の意見を十分入れて恩赦というのはやるんだ、——こうしてもらいたいと私は思うんですが、内閣のスポークスマンとしておられる官房長官見解最後に聞いて私の質問を終わっておきます。
  52. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは山崎委員の御指摘でありますが、私は当委員会において御議論をなさった、その意見意見として十分拝聴いたしますが、それに対応して私の見解を申し述べるということは、やはり恩赦のたてまえからは差し控えることを御了解を賜りたいと、このように考えます。
  53. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 今回の沖縄恩赦から選挙違反者を除外するこの決議案ですが、もう趣旨等は明確であります。すでに同僚議員からも質問がございましたが、私たちも実はことしの三月の八日の日に、官房長官に竹入委員長の名前で二つの申し入れをやっております。一つは政治資金規正法の問題だったと思うんですが、もう一つは、沖縄恩赦から選挙違反とか、あるいは悪質な買収とか、そういうような犯罪者を除けという要望だったと思うのですが、こういうふうな趣旨というのは、私どもはいまいろいろ聞いておりまして感ずることでありますが、官房長官もおっしゃいましたし、また法務大臣も先ほどから何回か発言をしていらっしゃいますが、その中が、皆さんの御意見を聞いて、また国民の声を聞いて恩赦を決定する、そういうような話があったわけです。先ほど同僚議員のほうから、きょうのこの委員会趣旨を聞いてそして恩赦をやれということを言いましたら、そのことについては官房長官から御意見はございませんでした。 しかしながら、私はこの恩赦につきましては、少なくとも国民の声というものがあると思うんです。これに対しては、官房長官なりあるいは法務大臣はどういうふうにお考えになっているのか。初めに、そういう点についての所見をお伺いしておきたいと思います。
  54. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 沖縄恩赦を行なうということは先ほど決定し、これが内容について今後検討するという段階ではございますものの、従来、国家的慶事として行なうべきかいなかというような検討を続けてきたことは事実であります。したがって、その間、各方面からいろいろな御意見を私もお聞きいたしております。公明党竹入委員長名をもちまして大野国対委員長が私のほうへ申し入れにいらしたことも事実であります。したがって、各方面の意見を十分聞くという姿勢は私は大切である、しかし、恩赦そのものは最終的に内閣の責任において行なうことでありますので、本日いろいろお述べになりました意見等も、重要な意見であるという認識は私も持っているつもりであります。
  55. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいま竹下君から御答弁しました。そのとおり、いままでいろいろ私も各方面の意見を聞いております。しかし、これは両の側があるわけであります。それを慎重にわれわれが判をし、最終的な責任を持ってきめるということであります。その点はただいま竹下君の言ったとおりであります。
  56. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私たちは、今回の恩赦につきましては全面的に反対しているわけじゃないんです。今回の恩赦につきましては、少なくとも、先ほどもちょっとありましたように、沖縄の県民の皆さんが、長い間米施政権下で行なわれた裁判というものがほんとうに不当な裁判を受けているのじゃないかということを私たちは案ずるわけです。そういうような面から考えてみて、泣き寝入りの問題もありますし、いろいろな面が一ぱいあります。そういうものから考えてみれば、少なくとも沖縄県民が対象とされて、そして今回の恩赦が行なわれるということについては賛成なんです。しかしながら、それと付随して、今回悪質ないろいろな人たちが、先ほど具体的な数字もあがりましたけれども、確かに過去の恩赦のいろいろな事例を調べてみますと、悪質な選挙違反者というのが次から次へ恩赦で、何といいますか、免除されて、また再びそういうところに出てきておる。そして、同じ人が同じように罪を犯すということがたびたびあるわけです。そういう点から考えても、私は非常に恩赦のあり方自体が遺憾だと思うのです。 そこで、いま大臣官房長官は各方面の意見を聞いている。法務大臣のほうは、両論があるとおっしゃいましたけれども、両論の意味はちょっといろいろな意味があると思うのですが、私は各方面の意見の中に、恩赦の中に——恩赦をやれということについての意見はいろいろあったと思うのですが、また恩赦をやめろという意見もあったと私は思うのですが、恩赦の中に今回私たちが出しているところの決議案のような、選挙違反者を含めて恩赦をやれというような意見がありましたか。私は、少なくとも皆さん方のところへ、いろいろな陳情なり要望なりが一ぱい来ていると思うのです。一ぱいいろいろ来ているけれども、そういうふうな各方面の意見の中に少なくとも選挙違反者を含めてもいい、こういうふうな意見がありましたかどうか、一ぺん聞いておきたい。
  57. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 法務委員会等におきましては、選挙違反も一つの国事犯と同様に考えるべきだと、私の見解からは多少違いますけれども、そういうような議論もあったように、いろいろあるわけであります。
  58. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私のところへ各方面からまいりますのは、それぞれ各党あるいはいろいろな団体の申し入れ、そういう私が接点の役割りをいたしておりますので、毎日いろいろな意見を承っております。ただ選挙違反というものは、いま前尾大臣からの御答弁にもございましたが、国事犯であるという見解を承ったことは、もとより私もございます。ただ、選挙違反を含めるべきだという表現のものは、一般論としての恩赦の中に、個々のケースとしてとらまえた申し入れ書というようなものはございません。 立ったついででございますので申し上げますが、先ほど来、自民党側に対して、瀬谷委員からの質問等がございましたが、私が、党からの要望ということがニュースに伝えられているということにつきましては、これまた私が対与野党それぞれ政党の接点におりますので、昨日私が受けました内容というものは、沖縄返還というものは国家的慶事であり、そして講和条約発効、また国連加盟にまさるとも劣らない慶事であると認識をいたしている、よって恩赦は実施さるべきであるが、その内容等々については行政権の、内閣の責任においてやられることであるから、内容等について一々意見を申し述べることは差し控えるというふうな、私に対する申し入れがあっております。
  59. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いずれにしましても、私は、マスコミを含めまして各方面の意見としてはもう一致していると思うんですよ、私は。こういうふうな悪質な人たちを除くということは、もうこれは国民のコンセンサスになりつつあると思う、私は。そういう点からは、ぜひともこの点は考慮をしていただきたいと思うわけです。 それから、法務大臣、先ほど予期しない喜び、あるいは思わざる喜びというようなことをおっしゃいましたが、これは法務大臣、非常におかしいと私は思うんですよ。現在の選挙違反者やそういう人たちは、予期しない喜びじゃなくて予期しておるわけです。現実に予期していますよ。先ほど瀬谷委員から例にあげられた求刑抜き判決をしたというような話がありましたですね。ここの担当の弁護士がちゃんと言っているんだ、ちゃんと。あの中でどんなことを言っているかと申しますと、われわれはあくまでも被告人の利益を考えるのがたてまえだ。これは当然だと私は思います。弁護士の立場からすればそうだと思う。その次に、恩赦の可能性を考えて分離判決をお願いした、こう、ちゃんと言っておりますから、これは現実に、思わざるじゃなくて、もう予期しておるわけです。こういうふうな予期したいわゆるこの恩赦というのは、非常に法務大臣考えとも全く反すると私は思うんですが、これはどうですか。
  60. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 本質論を言ったわけでありまして、恩赦というのは思わざる喜びといいますか、もちろん恩赦令が出るまではわからないことなんです。予期しておった人も予期がはずれるでありましょうし、そう的確にわかるものじゃもちろんないわけであります。いわんやこれからやるわけでありますから、その点は予期せざるという表現が本質論過ぎてあるいは適当でなかったかと思います。
  61. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、それじゃ最後に、もう一点お伺いして質問を終わりたいと思うんですけれども、いろんなことを言いましても、これはもう平行線ですから、なかなか決着がつきませんけれども、現実に恩赦そのものについては、いろんな学者の意見等も出ております。すでに法務大臣法務委員会等でもいろんな答弁をしていらっしゃいますから、きょうは重ねて言いませんけれども、恩赦そのものの問題についてもいろんな学者の意見も一ぱいあるわけです。そういうふうな恩赦の必要性、意義、こういうことについては、もう重ねてお伺いいたしませんけれども、そういう点から考えてみても、こういうふうな悪質な選挙違反者、あるいは買収とか、そういうような者を含めるということは、結局はこの恩赦の乱用といいますか、そういうことになるんじゃないかということをしみじみと私は感じるわけでありますが、そういう点も考慮の上、今回の恩赦をやっていただきたいと思うんですが、大臣の御答弁をお伺いして終わりたいと思います。
  62. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) りっぱなご意見だと伺っておきます。これから検討するわけでありますから、どうぞ……。
  63. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 まず法務大臣にお伺いしますが、先ほどからも言われておりますように、昨日、自民党の保利幹事長が、沖縄返還国連加盟、講和条約と並ぶ国家的慶事であるから、当然この二つの前例にならって恩赦が行なわれるべきだ、これは当然大赦を指し示していると思います。ところが、法務大臣は、去年就任長後の記者会見では、沖縄返還は講和や国連加盟など日本全体の事業とはちょと違うと思う、こういう見解を述べられております。また、四月二十一日の衆議院の法務委員会におきましても、政令恩赦よりも個別恩赦中心に行なうことが望ましい、こういうことを述べておられるわけですけれども、現在もこの見解は変わっておられませんか、お伺いしたいと思います。
  64. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 国連加盟沖縄返還ということをてんびんにかけたときに多少事業が違うということは、私、いまでも考え方は変わっておりません。 それから個別恩赦に重点をおいて行くべきだということは、私これからはむしろ常時恩赦というものに重点を置いて刑事政策考えていくべきだという点でありまして、これは何も政令恩赦とは関係のない問題でありまして、それだからといって政令恩赦が意味がないとわれわれ考えておるわけじゃなしに、むしろできるだけ個別に、その人に適応した処遇をして社会に復帰させるのを早くしたほうがいいという考え方恩赦を活用していきたいというのが、私の従来からの考えでありまして、その点も変わっておりません。
  65. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 法務大臣が先ほどのように言われたことを総合して考えますと、今回の沖縄恩赦において、特にこの大赦のような政令で非常に大規模な恩赦を行なうことは望ましくないというふうにとれるわけですけれども、そう理解していいわけですか。
  66. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) そうおとりになると困るんで、まだ検討中でありますから、その点はどうぞよろしくお願いいたします。
  67. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 恩赦の意義について、先ほどから大臣は、思わざる喜びを分かち与えるというようなことを言われましたけれども、民主主義というのは三権分立というのが基本になっております。それで恩赦は言うまでもなく、司法権に基づく裁判の決定を行政権が変えるものですから、私はこれは軽率にやってはならないと思うんです。そして単に思わざる喜びを分かち合うというような抽象的、文学的なものではなくて、やっぱり恩赦の意義を見出すならば、現在の法律自体がやっぱり現状から見てそぐわない面が出てくる。これは固定されておる法律なら時代の変化で出てくるのは当然だと思うんです。こういう法の自己規正をやる、自己矯正をやる、あるいは安全弁としてそういうものを設ける、こういう意味で恩赦というものの存在価値があると思うんです。そういう面から言いますと、私は過去において、先ほどから山崎委員の指摘にもありましたように、選挙違反者は大量に恩赦で救われておる。これは一体この恩赦の意義から言うならば何を意味するか、私が判断しますと、現在の選挙法自体にもちょっと問題がある。だからこれを恩赦で救済するというような意義が含まれてなされたのか、あるいはた単に党利党略上選挙違反を救済したのか、どちらだと思われますか。
  68. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 以前の考え方からいたしますと、国事犯という観念が強かったというふうに見るべきじゃないかと私は思っておりますが、だんだん刑事政策とのバランスということも考えられつつある傾向である、かようには思っております。
  69. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、過去もうすでに二十年、三十年、この長い間にわたって恩赦のたびに選挙違反者が大量に救済されておるという点は、やはり現在の選挙法自体にも問題あると思うのです。だから、私はこういう恩赦がずっと継続して常習的に選挙違反を救済するよりも、選挙法に改正を当然これは考えなければならなかったと思うのです。この点は怠慢で、サボっておって、そうして恩赦のたびに選挙違反者を大量に救済するからいろいろな弊害が出てきておると思うんですよ。この点どう思われますか。
  70. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 選挙法の問題について、私ここでいろいろな意見を申し上げるのはどうかと思いますが、それは当然関連しておる問題だとは思います。
  71. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私はそういう点で、この恩赦選挙違反者を救済するというのがもう過去二十年以上にわたってずっと常習的に行なわれておる。これは、まず選挙法の改正を行なうべきである、こういうふうに考えるわけです。それはさておいて、今回の沖縄恩赦の意義というのは、やはり中心には沖縄県民の救済を置くべきだと思うのです。これは、政府沖縄返還協定の中でアメリカの施政権下の刑事裁判の効力を引き継ぐことを約束しております。しかし、これは憲法第十四条から見ても非常に疑義のある点です。これを恩赦によって是正するするというのは、私は非常に意義のあることだと思うのです。ところが、これに便乗してあまりほかのものに拡大適用すべきではないのではないか。だから、今回の沖縄恩赦はあくまでも沖縄県民の救済を中心に置くべきだと思うのですけれども、この点について法務大臣見解をお伺いしたいと思います。
  72. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 沖縄県民の救済は当然行なわれるべきだと私も思っております。しかし、沖縄返還、領土返還ということは、やはり国家的な慶事でありまして、その点については私はだれも沖縄返還が国家的な慶事でないということはないと思います。
  73. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私はほかのものは全然やるなんとは言っておりません。ただ中心はそこに置くべきだと思うんですけれども、この点はいかがですか。
  74. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 当然沖縄県民の救済については、私も十分なことをいたしたいと思っております。
  75. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから、特にこの大赦の場合問題になるというのは、選挙違反者大赦でやった場合、現在係争中のものが、一ぱいあります。各地方自治体においても、選挙違反で引っかかって間もなく執行する、こういう該当者も一ぱいおるわけですね。これが一挙に全部救われるとなれば、やっぱり先ほどから各委員が指摘をされておりますように、国民の政治不信が増大するばかりではないか。だから、特に選挙違反者大赦で救うというようなことは絶対にやるべきじゃないと思うのですが、この点はいかがですか。
  76. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ご意見として伺っておきます。
  77. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 終わります。
  78. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 須藤君。  ちょっと申し上げますが、前尾法務大臣は衆議院の委員会にも呼ばれておりますので、その点ご考慮願いたい思います。
  79. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう各委員が相当質問なさいましたから、私はダブらないように別の角度でちょっと質問をやろうと思うのですが、この恩赦法ができましたのは昭和二十二年だと聞いております。私は、そのころまだ国会に来ておりませんでしたので、この恩赦法の審議には参加をしていなかったわけですが、この恩赦法が国会で審議されたときに今日のような事態を予測して大赦法がつくられたのか、そのときの審議の状況がわかっておるならばですね、ちょっと伺っておきたいと思うのです。
  80. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) どなたかおわかりでございませんか、法務省
  81. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 実は私、ここに来る前に議事録をさがして、その点をずっと読んでこようと思ったんですが、時間がなくてそれをすることができなかったんです。だから政府当局は、前の二十二年に恩赦法が審議されたときにですね、このような問題も含めるというふうに、いわゆる贈賄、汚職というような悪質な選挙違反もこの中に含むということを予測してつくられたものか、どうだということを私は伺っているのです。
  82. 笛吹亨三

    政府委員(笛吹亨三君) 現在の恩赦法が制定されるときの国会の審議の内容につきまして、私現在まことに申しわけございませんが、つまびらかにしておりませんでございますが、恩赦法のたてまえから言いますと、特定の犯罪を特に除外するといったような規定にはなっていないわけでございます。
  83. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、何ですか、この選挙違反は政治犯罪だけというふうに認定をしていらっしゃるのか、政治犯と贈賄、汚職という選挙違反とは別個のものと考えていらっしゃるのか、そこをどういうふうに考えていらっしゃるのですか。法務大臣答えたらどうですか。
  84. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私もしろうと考えでありますが、純粋な国事犯ということでなくなりつつあるんじゃないかというふうには考えておりますが、まあ国事犯という観念そのものが、要するに世の中の推移が思想的に変わってきておることは私も認めたいと存じます。
  85. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 選挙に際しての贈賄、汚職を非常に簡単にやるように思うんですよ。それはわれわれのやっていることは政治犯だ、国事犯だというようなそういうものの考え方が底に流れているためにこういう犯罪が非常にふえると思うんです。私たちはそうは考えていない。選挙汚職、贈賄、買収などはこれは破廉恥罪だと私思っていますよ。ところが、そういうふうに受け取ってない人が多いと思うのです。法務大臣、その点はあなたどういうふうにお考えになりますか。
  86. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これは一がいには言えないわけでありまして、そういう破廉恥的なやり方をやっておる人があったり、いろいろ形式的な問題でひっかかっておる方もありますから、選挙違反だからすべてがどうだというわけにはいかないんじゃないかと思います。
  87. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 政治に対する良心といいますか、ものの考え方、そこには私は非常に問題があると思うんです。こういう状態が続いていくならば、国民から政治に対する不信が起こってくるのは当然だと思うんです。政治家である以上、政治を目標とする限り、やはり身を律することを厳重にして、そういうことはしないという立場が私は正しい態度だと思う。自分が政治家になるというよりも、自分が栄達の道を選ぶがために国会議員になって、営利を目標にするためにはどんな悪いことをしてもいいんだといって贈収賄が行なわれる、買収が行なわれる。これでは私は国民の前に政治家として大きな顔はできないし、私たちが最も大切にしなければ政治そのものがおおいに不信を招くということに私はなると思うんです。だからこの点を私は非常にはっきりと政治理念をはっきりさしていかなければいけないと思うんですが、前尾法務大臣は、こういう今日の風潮、選挙のたびごとに贈収賄がなされ、買収がなされるという、こういうことをいいことだと思うのですか、どうお考えですか。しようのないことだとお考えですか、どういうように考えられるのですか。
  88. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 買収といいましてもほんとの手数料で形式的にやるならという場合もありますし、全く買収的な問題もありますし、一がいになかなか言いにくいんじゃないか。これはしかし、もういいことでないことだけははっきりしております。
  89. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もしもいいことだとおっしゃるならあなた、法務大臣の席を離れなければならないことになるわけですよ。どうもあなたの考え方に政治理念、ぼくらの立場から言うと、非常にあいまいなものがあると思うのですよ。そこにこういう問題が起こる温床があると思うのですよ。  それでは自民党の諸君にお尋ねしますが、私たちがこの決議案を出すときに、なぜ自民党は反対をなさるのですか。選挙違反は悪いことだ、やるべきことじゃないとおっしゃるならば、私たちが出した決議案になぜ賛成をなさらないのか、なぜ反対なさるのか、反対の理由を言ってください。
  90. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ちょっと待ってください。法務大臣は時間がきて衆議院から、お呼び出しがきているのですが、よろしゅうございますか、いいですか、須藤さん。
  91. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 おるにこしたことはないですからね、もうじき済みますから、自民党答えを聞いて。
  92. 栗原祐幸

    栗原祐幸君 それではいまの須藤委員の問題、質問に関連をいたしまして、先ほど山崎委員からの質問にまず最初に答えておきます。  ここにおりまする植木委員が、参議院自民党の党の国対副委員長をやっておりますので、保利幹事長に直接ただしましたところ、きのうの党役員会において沖縄恩赦についてどう考えていくかという質問 に対して、保利幹事長は、私の個人的見解ではあるが、今回の沖縄本土復帰は講和条約締結、国連加盟にまさるとも劣らない国家的慶事であるというので、恩赦はこれをバランスをとって行なうべきであると思う。具体的な措置については内閣の権限と責任において行なわれるものであるということを私の個人的見解として官房長官に伝えてあると答えたものであり、大赦云々については全然触れていない、こういうのがいま問い合わせた結果でございますので、お伝えしておきます。  それから須藤委員の、この決議案に対して自由民主党はなぜ賛成しないのかということでございますが、いま皆さん方の御議論のやりとりの中にもございましたし、また政府のほうからもお話がございましたが、この問題につきましては皆さん方も御承知のとおり、与野党の国会政策委員長会談でいろいろ議論した、その結果自民党として賛成できないということで、須藤議員は先刻御承知だと思いますが、せっかくのお尋ねでございますから重ねてお答えをいたしますが、私が言うまでもなく、憲法七十三条で、このいわゆる恩赦というものにつきましては、政府内閣の専権事項でございます。内閣が責任を持ってやる、これがもう恩赦の基本的な考え方、憲法上そういうふうに保障されているわけです。政府なり内閣が、この恩赦について適当でないという場合、その政治的責任というやつを何らかの形でとるでしょうから、政府が責任を持ってやられるわけであります。政府が各般の意見を聞いた上で、なおかつ政府の責任ににおいて高度の判断からこれを実施する、そういうふうになっておりますので、三権分立のたてまえから、われわれ立法府において政府の専権事項に関するものをいささかでも拘束するようなことは適当ではないんじゃないか、こういうふうに考える、これが反対の理由であります。  なお委員会において、これは提案されて委員会審査を省略をするということでございますけれども、委員会審査を省略をするというのには、ただいま申しましたような意味合いから言ってはなはだ適当でない。したがって、委員会審査省略によるこの決議につきましては自由民主党として賛成しかねる、こういうことでございます。
  93. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まことに巧みなる御答弁ですがね、やはり法務大臣内閣の一員である限り、やはり今度の恩赦に対しては責任を非常に感じなければならぬ点だと思うのです。いままで伺っているとどうも私たちの考えている政治に対する良心というものと皆さん考えている良心との間には相当の隔たりがあるような感じがするのです。そして、そういう私たちがまっこうから非難しているような行為をもって、まことにお気の毒なことですが、佐藤内閣は三百人を集めてそしてそこにあぐらをかいて、ずいぶん無理なことをこれまでやってこられた、これが実態だと思うのですね。そうしてそういうためにいろいろな贈賄や汚職がなされた。それに対して今度の恩赦法を適用して、その連中を救うということは、これは内閣としてはやっていきたいことだとは思いますけれども、われわれ国民の立場に立つとどうも割り切れぬ問題なんですよ。だから、そこの点は法務大臣もよく考えて、日本の政治を正すという立場に立って、私は今度のことは処置をされたい。私の意見でもあるししますが、私はこれで質問を終わりますが、最後法務大臣の所信をもう一度はっきりと聞いておきたいと思います。
  94. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) いろいろ皆さんのご意見を拝聴しましたので、慎重に検討して決定いたしたいと思っております。
  95. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは法務大臣官房長官は向こうで呼ばれておりますので、よろしゅうございますか。——それではどうぞ法務大臣官房長官。  ほかに発言ございませんか。
  96. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いま委員会審査を省略するということの決議案だから反対だと、こう言われた。では、審査をやるならば、委員会に付託をして審査をするならば賛成をするということがあり得るのかどうかということですがね。事はきわめて単純な問題ですから、これは委員会審査を省略しても当然これは本会議でもって決議をするのに何もいろいろむずかいい議論をする余地がないと、だからわれわれは委員会審査を省略して、ともかく満場一致で決議をしようじゃないか、公職選挙法違反の者を除外するように政府に勧告しようというのだから、これはちっとも、特に良識の府の参議院としておかしなことじゃないですよ。そこでもうその点を、もし少しでもわれわれの意見に同調しょうという気持ち自民党の側にあるならば、これはもう少し話し合いをしてもよろしいと思うのです。 そこで、念のためにもう一度申し上げておきますけれども、私がさっき具体的な例をあげたのは、これはもう卑近な例なんですよ。きのうの新聞に載っておったことなんですが、あまり地元の自慢にならないことだから言いたかないんだけれども、しかし、この市長は詐欺、傷害、おどしなどで逮捕歴が八回、いままで刑務所に五回入っておった。ところが、新興団地の人たちが、わりあいとまあ東京から流れ込んできた人たちが多いために関心を持たなかった。棄権率が多くて、団地の投票率が三割ぐらいしかなかった。そういう無関心が結局こういう結果を招いたのではないかというふうにいわれておりますけれども、ともかくまだ市にならないうちに、去年の統一地方選挙で町長に立候補して多くの金をばらまいて、そうして逮捕された。その結果、裁判では懲役一年執行猶予三年の判決を受けたが、沖縄恩赦をねらって高裁に控訴、現在公判中というんです。沖縄恩赦をねらってなんですよ。よく考えてもらいたいと思うのですよね。先ほども話がありましたが、求刑抜き判決を求めたというのも同じ例なんです。全部沖縄恩赦をねらっているんです。この種の、まあ許しがたいこの罪状が、沖縄恩赦でみんなパーになるということが、見のがしていいことかどうか、これはやはり慎重に考えてもらいたいと思うのですよ。これは自民党といえども、私は、これは許していいという気持ちにならないと思うのですがね。その点もあわせて再度御考慮願いたい。もし許されるならば、われわれと話し合いでこの決議案に同調してもらいたいと思うし、方法について再考の余地があるならば、考えを述べていただきたいと思います。
  97. 栗原祐幸

    栗原祐幸君 この決議案に同調してくれということにつきましては、先ほど簡単、率直に申し上げましたとおり、同調するわけにはまいりません。ただ、せっかく委員会を省略してということでこられましたので、委員会を設けて、これこれこういうような事例があるじゃないか、今後こういう問題についてどういうふうにすべきだ、このままでいいのか、決議については同調できないけれども、こういう問題について、今後何らか考えるべきじゃないか。たとえば議運の委員会でやることが適当でないならば、法務委員会のほうでこれをやってもらおうじゃないかとか、そういう御議論をされるという意味ならば、これはけっこうでございますけれども、結論は、先ほど申し上げましたとおり、こういう決議をすることには反対でございます。
  98. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ほかに御発言もありませんので、本件につき採決を行ないます。 本決議案委員会審査を省略することに賛成の諸君の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  99. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 少数と認めます。よって、委員会審査省略要求の件は否決されました。 本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十五分散会