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政府委員(
魚本藤吉郎君) お答え申し上げます。
ザイールに関しましては、それほどの虐殺事件があったという報道はあまりないのでございますが、ブルンディに関しましては、ごく最近、先月末ですか、十万あるいは十五万の虐殺があった、そういう報道が流れております。これはわれわれ知っておりますところによりますと、六七年のクーデターによりまして現在のミコンベロ大統領が政権についたのでありますが、このときに国を追われました元国王ヌタレ五世、これは西ドイツに亡命しております。そして、その国王が三月二十一日ですか、突然、予告なしにウガンダのアミン大統領のところへやってまいりまして、実は自分はもとの国へ帰って平和に暮らしたい、あっせんしてくれという話をされたようであります。ミコンベロ大統領との和解あっせんということを頼まれたアミン大統領は、けっこうでしょうということで、ミコンベロ大統領に取り次ぎまして、そういう平和な一市民としての帰国はけっこうでしょう、こういう条件ができたようであります。そうして三月三十日でしたか、アミン将軍の専用ヘリコプターで帰国されたわけでありますが、帰国したとたんに直ちにいずれともなく連れ去られた。そういう報道が新聞に出ております。それからしばらくして、四月二十九日夜に、実はブルンディの国内各地で暴動が発生して、そうして暴徒は旧王宮のある軍のキャンプを襲いました。その際に、最近帰ってこられましたその国王もこれに巻き込まれて殺された、こういう報道があったのであります。ところが、それから実はその直後に
政府は外出の禁止あるいは外国人の出入国の禁止、外部との通信の禁止等の
措置をとりまして、その
関係で二十日から約一カ月にわたりまして全く外部から隔絶されたというような状況になっております。ところが、
外交官だけはある程度移動が許されておりまして、ベルギーの
大使が本国に帰りまして報告した。それからたまたまそれを目撃したというベルギーラジオの、テレビ放送の記者が帰りまして報告したのが五万から十万虐殺、こういう報道であったのであります。六月一日ベルギーの国会で
大使の報告に基づきまして
外務大臣がこれを報告いたしまして、事態はきわめて憂慮すべきものである、こういう声明を発せられたわけであります。
なお、脱出した宣教師の談話も一部新聞に報道されたようです。こういうことで初めて世界中は相当な虐殺事件が起きたのではないかということを知るに至ったわけであります。したがって、これでわれわれちょっとその背景を考えてみますと、これはおそらく
二つの部族間の殺し合いであったろうという感じを持っております。御承知のように、ブルンディの人口の八五%がフツ族と申しまして、大体体格はわれわれと同じくらいだそうでありますが、それが八五%、それから一四%を占めますのがツチ族といいます。これはジャイアント、長身族、それから一%のピグミ族となっております。この長身族のツチ族が大体国を押さえておる。もともとあの国は三百年前から王様はツチ族出身の王様だったそうでありますが、その王政の場合は部族間の対立はあまり先鋭にあらわれなかった。それは王様の王位継承といいますか、王族の中に四つの族があったようでありまして、そのうち今度だれが王様になるかというところに争いがあったので、異民族間ではほとんどなかったのでありますが、ところが共和制になりまして、ちょうど御承知のようにブルンディの北になりますが、ルワンダというところ、このルワンダの民族の対立問題が出まして、当時新聞報道のあったというのは、長身族のツチ族がだいぶ虐殺されていなくなったとまで言われたのでありますが、この逃亡したツチ族がブルンディのほうにやってきた、その辺から部族問題が非常に先鋭化したという状況があったようであります。そこに今回はこの王様というのはもともとツチ族でありますが、北部のツチ族といいますものを
代表するのが王族だそうでありまして、ミコンベロ大統領は南部のツチ族を
代表する。そこで前の王様のときには民族の対立があまりなかったということを考えると、あるいは現ミコンベロ大統領の政権に反対するフッ族の連中がいたんでしょう。そういう人たちが今回内乱を起こしたというようであります。ただ、内乱を起こした場合に、あそこは約三千名くらい兵隊がいるようでありますが、ザイールのほうからモブツ大統領が一個中隊を派遣したそうでありますが、これを派遣しまして大体中央部において直ちに鎮圧したようでありますが、しかし南部のほうにおきましては、そのフツ族の反乱に対する、逆に今度ツチ族が逆襲をやりまして、中学校以上全部殺すとか、いろんな報道が流されておる、そういう状況になったようであります。したがいましで、申し上げましたように、何しろそういう報告だけにいま基づいておるところですから、それ以上のところはなかなかわからないのでありますが、これはわれわれは、大きな部族間の対立問題が勃発したものと考えております。それで、ただしかし、先生も言われましたように、片方外国の何かが入っているんじゃないかと、こういう
情報が流れておりますが、その真偽のほどは全然わかりません。それは、外国といいますのは北京
政府のことでありまして、北京
政府がかつて六四年ですか、そこへ
大使館を置きましたときに、コンゴで内乱が起きた。コンゴの東部地区の内乱の場合に、北京
政府の指導によると言われたのですけれ
ども、まあツチ族の内乱があったと、それからここのツチ族に対して軍事教練を非常にやったとか、そういうようなことが言われまして、当時中共の
大使館は国外に退去いたしまして、
国交が断絶しておったのでありますが、ことしの一月になりまして、再び
国交が再開されまして、
外務大臣が北京を訪問し、それから
経済協力協定を
締結されまして、非常にいまや
関係がよくなっておるところでありまして、そのよくなっているところの
関係で、今回の報道というのは、ちょっとなかなか外部にはわかりにくいものですから、われわれそういう
情報があるということだけ感じておるしけでございます。
そういう状況でございますので、
国連でも非常に心配しまして、また赤十字のほうでも心配しまして、何か手を打つべきだという、目下対策が考えられております。なお旧宗主国のベルギーは直ちに、先ほど申し上げましたように、
外務大臣の声明の中で、声明の
あと、ミコンベロ大統領に対して、早急に事態を鎮圧されたい
——その
あとには鎮圧されないと
経済協力を進めませんという含みがあったようでありますが、そういうメッセージを出した。それからローマ法皇も特使を派遣しまして、これも約百六十万ばかりカトリックの信者がいまして、それで特使を派遣しまして、対策を早急に進めているということです。アメリカは十万ドル以上の食糧及び薬品その他を決定したようですが、
わが国に対しましても、キンシャサの
大使館を通じまして緊急
援助の要請がありまして、いろいろ聞きましたところ、薬がほしいという話ですから、約一万ドル相当の医薬品の緊急
援助方を検討いたしまして、目下準備中であります。
以上であります。