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1972-05-11 第68回国会 参議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十一日(木曜日)    午前十時三十八分開会     ―――――――――――――    委員の異動  五月九日     辞任         補欠選任      星野  力君     春日 正一君  五月十日     辞任         補欠選任      春日 正一君     星野  力君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         八木 一郎君     理 事                 石原慎太郎君                 佐藤 一郎君                 山本 利壽君                 森 元治郎君     委 員                 杉原 荒太君                 塚田十一郎君                 増原 恵吉君                 加藤シヅエ君                 田  英夫君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 渋谷 邦彦君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  福田 赳夫君    政府委員        外務省条約局外        務参事官     穂崎  巧君        外務省情報文化        局文化事業部長  加川 隆明君    事務局側        常任委員会専門        員        小倉  満君    説明員        文部省大学学術        局留学生課長   植木  浩君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○世界保健機関憲章第二十四条及び第二十五条の  改正受諾について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○北西大西洋漁業に関する国際条約改正に関  する議定書締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○国際交流基金法案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 八木一郎

    委員長八木一郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  北西大西洋漁業に関する国際条約改正に関する議定書締結について承認を求めるの件  世界保健機関憲章第二十四条及び第二十五条の改正受諾について承認を求めるの件  以上二件を便宜一括して議題といたします。  まず政府から順次趣旨説明を聴取いたします。福田外務大臣
  3. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま議題となりました世界保健機関憲章第二十四条及び第二十五条の改正受諾について承認を求める件及び北西大西洋漁業に関する国際条約改正に関する議定書締結について承認を求めるの件の二件につきまして提案理由を御説明いたします。  まず、世界保健機関は、一九四六年の世界保健機関憲章に基づいて設立された国際連合専門機関一つでありまして、世界保健衛生の向上に重要な役割りを果たしており、現在、わが国を含む百三十二カ国がこれに加盟しております。  同機関執行理事会は、世界保健総会の決定及び政策を実施すること等の重要な任務を有するものでありますが、その構成につきましては、世界保健機関憲章の新加盟国増加により同機関加盟国全体を衡平かつ適切に反映しがたいものとなっております。そのため、一九六七年五月二十三日、第二十回世界保健総会は、本件憲章第二十四条及び第二十五条の改正を採択し、執行理事会構成員の数を二十四から三十に増加することとしました。  この改正により、従来同理事会に十分に代表されていない地域からも理事派遣され、世界の各地域が衡平かつ適切に代表されることとなります。  わが国は、一九五一年五月に同機関に加盟して以来、同機関活動に積極的に参加してまいりましたが、本件改正は、同機関の円滑な運営をはかる見地から妥当かつ有意義なものでありまして、わが国がこの改正受諾することは、同機関を通じて保健衛生分野における国際協力を推進する上に有益であると考えられます。  よって、ここに、この改正受諾について御承認を求める次第であります。     ―――――――――――――  次に、北西大西洋漁業に関する国際条約は、北西大西洋水域において国際的な資源保存措置をとるため一九四九年に作成されたものでありまして、現在、わが国を含む十五カ国がこれに参加いたしておりますが、同条約には条約改正手続を定める規定がないことから、条約改正する議定書は、条約のすべての締約国による批准、承認または加入が行なわれない限り効力を生じないため、条約改正が長い期間にわたって効力を生じないという事態が生じておりました。この議定書は、このような事態を是正するため、一九七〇年の北西大西洋漁業国際委員会の第二十回年次通常会議において採択されたものでありまして、条約改正が、条約のすべての締約国の四分の三によって承認されれば、他の締約国から異議の通告がない限り、すべての締約国について効力を生ずるとの趣旨改正手続を定める新たな一条を条約に置きますことを主たる内容といたしているものであります。  この議定書は、条約改正効力発生促進するものでありまして、わが国がこれを締結いたしますことは、条約を通ずる国際協力を推進するとの見地から妥当であると考えられます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 引き続き補足説明を聴取いたします。穂崎条約局参事官
  5. 穂崎巧

    政府委員穂崎巧君) ただいま提案理由説明のございました二件につきまして、若干補足説明を申し上げます。  最初に、世界保健機関憲章第二十四条及び第二十五条の改正につき若干補足説明を申し上げます。  世界保健機関は、保健事業の強化について各国政府援助すること、保健衛生に関する技術的援助の実施、伝染病、風土病及び他の疾病の撲滅事業促進環境衛生状態の改善の促進保健分野における情報、助言及び援助提供等をその主たる任務としております。  同機関執行理事会は、現在は二十四の加盟国が任命した二十四人で構成されておりますが、その後の加盟国増加、特に、アフリカ地域加盟国増加に伴い理事会構成員地域的配分に不均衡が生じたため、この改正が採択されたわけでございます。  わが国は、一九五一年五月に同機関に加盟して以来、同機関活動に積極的に参加し、WHO研修生研修受け入れ医療専門家派遣等を通じ協力につとめております。  なお、お手元にございます説明書及び加盟国一覧表につきまして、その後、アラブ首長国連邦が加盟いたしましたので、加盟国は百三十三カ国に、また、ルーマニアが本件改正受諾いたしましたので、改正受諾国は六十四カ国となりましたので申し添えます。  次に、北西大西洋漁業に関する国際条約改正に関する議定書につきまして補足説明を申し上げます。  北西大西洋漁業に関する国際条約は、一九四九年に作成されたものでありまして、漁業資源保存に関する条約としては、最も古いものの一つであります。この条約に基づきまして、北西大西洋水域における漁業資源調査が行なわれております一方、漁業資源保存のために必要な規制措置が講ぜられております。わが国は、北西大西洋水域におけるわが国漁獲量が比較的少量ずつではありますが増加傾向にありますので、漁業分野における国際協力を行なうべきであること及び北西大西洋漁業国際委員会の講ずる規制措置わが国の立場を反映させる必要があるとの見地から、一九七〇年七月にこの条約加入いたしました。わが国は、条約加入以来、北西大西洋漁業国際委員会会議委員専門家等派遣し、同委員会事業、特に、漁業資源の現状の分析及び規制措置の設定につきまして、積極的な協力を行なってまいっております。なお、北西大西洋水域におきます漁獲状況につきましては、最近の統計を参考資料として提出いたしてございますが、一九六九年におきまして全体の漁獲量が約三百五十万トン、国別では、カナダが一番多く、次いでソ連、スペイン、米国の順であり、漁種別ではタラが圧倒的に多く、ついでニシンとなっております。わが国漁獲漁種は、ヤリイカ、ニギス、アカウオ、イボダイ、ニシン中心であります。
  6. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 以上をもって二件についての説明は終了いたしました。  ただいまの二件に対する質疑は、後日に譲ることといたします。
  7. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 次に、国際交流基金法案議題といたします。  本案につきましては、前回趣旨説明、及び補足説明を聴取してありますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  8. 森元治郎

    森元治郎君 これから何回もやるでしょうから、きょうは一わたり全体の構想を伺うだけでとどめたいと思います。  この種の国際交流、けっこうなことですが、一番の根本は、やっぱり理解してもらう本体の日本が、この文化国家内容がないと、理解してもらってとんでもない国だというふうに理解をされて帰られても困る。やはりわれわれが新しい戦後の憲法でスタートした、あの目標に向かって、日本がそういう政治をやっていかぬと、せっかく金使っても反対の効果になると思うんです。大臣いかがですか。
  9. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この交流基金目的は、これは一つわが国状態海外に知ってもらうということと同時に、わが国海外事情をよく知ると、こういう両面を持っておるわけでございます。森さんからお話しのように、まず、私どもの目的とする日本理解者世界じゅうに持つ、こういう点につきましては、よき理解をされるに足る日本国というものが存在しなければならぬ、これはもうそのとおりだと思います。それにはやはりわが日本というものが物的に見ましても、あるいは精神文化面から見ましても、これは世界から注目され、尊敬されるような国でなければならない。まず物的の面から言いますと、わが国は非常に国づくりがおくれてきておる国だと。これだけの経済力はありまするけれども、さて社会環境が十分に整っておるかといいますると、これは十分どころじゃない、たいへんな立ちおくれをしておる国である、こういうふうに思うのです。これはわが国がいわゆる近代国家を形成したのは明治維新でありまするが、自来百年、その間の前の七十年間というものがこれは軍国日本というか、そういう体質をとっておった。そういうところで軍事国民経済のエネルギーが傾注されるということで、われわれの国の整いというものにほとんど顧みるところの余裕がなかったということが原因になっておるというふうに思いますが、戦後は平和日本ということになって、そうして自衛隊ありまするけれども、それにさく部分というものは、きわめて国民経済の一部分ということになるわけであります。ごく小部分になるわけであります。あげてわれわれの国づくり、そういうものに傾注をしておるというのでありますから、そのおくれの取り戻しは、いまその過程にあるわけでありまして、今日この時点から見ますると、外国から見ますると、日本という国はずいぶんごみごみした国だというような印象になろうかと思いまするが、すみやかにこれを整備いたしまして、そうしてそういう見た目、つまり物的な面から見ましても日本は尊敬すべき国を建設したと評価されるような国にしたい、こういうふうに考えます。同時に、もう一方の非物的部面、これは一つ政治の姿勢もあろうと思いますが、経済大国ではありますけれども、軍事大国にはならぬ、そういう方向によって世界の平和、文化に貢献をするという国柄というものをよくわかってもらいたいし、また同時に、日本は行き届いたカルチュアを持っておる、非常に連帯心の高い国民であるというような評価もしてもらいたいし、そういう方面での努力、つまり国際感覚も十分身につけた世界の中の日本人であるということを理解してもらう、そういうための基盤づくり、そういうことに努力していかなくちゃならぬ、さように考えております。
  10. 森元治郎

    森元治郎君 いまおっしゃったように、何といってもその根本日本自身文化平和国家として、日本国民が見ても、外から見ても、いい国だということを中心にこれを進めなければ何にもならないと思う。外国の例を見ても、イギリスフランス西ドイツアメリカなどを見ても、従来の領土拡張、十九世紀あたりのどんどん伸びていった、そして海外に自治領、領土を拡張する、その先兵にこの文化もついていって、学校もできる、語学の普及をやる、フランスがごときは、アルジェリアから撤退しインドネジアから撤退しても、なおかつフランス影響というものが隠然としてこれらの地域に残っている。イギリスも戦後たくさんの領土独立国に解放したけれども、今日ではかつての関係を維持するために文化が働いているような形、アメリカは終戦後は共産主義に対するアメリカンデモクラシーをしっかり植えつけようというので、その文化交流、みんな国策に従ったような影響ドイツの場合は、もちろん国策もあるけれども、ドイツ人特有ドイツ民族団結というようなことが文化活動の底に強く流れている特徴がある。日本戦前はやらなかったから問題はありませんけれども、これからやる新しい日本の行き方というのは、やはり国策の裏表になって進むんだということであってはならない。非常に別な特徴があると思うんですね、文化活動については。この点をしっかり腹に置いてもらなければいかぬと思うんです。それは情勢の認識で大臣も同じだと思うので御答弁は要りません。  そこで、その内容に入りますが、五十億、来年度予算五十億、今年度十月一日発足を目標に五十億でスタートし、来年五十億をプラスして百億でいくと、それで福田構想は少なくとも千億ぐらいなくてはということで、千億構想、三億ドル余りを最終目標にしていこうというように聞いておるわけです。そこで伺うのは、今年度は運用益から、計算すれば、五十億の利子で計算すれば一億七千五百万ですか、足す外務省補助金が三億一千幾らだか、足す幾らだか、スタートする今年度の金は合計幾らになるんですか。
  11. 加川隆明

    政府委員加川隆明君) お答えいたします。  ただいまおっしゃったように、五十億の運用益十月から一億七千五百万円、それから外務省から補助金の形で三億ちょっと出しまして、おおむね五億円、国際交流基金事業といたしましては五億円ということを考えております。
  12. 森元治郎

    森元治郎君 大臣、これは百億になって、運用益でいくという構想なんですね。これは政府委員に伺いたいんですが、こういうファンドの形式で、運用益でいく方式も、予算方式もあるでしょう。それの可否という、いずれが活動的、自由に動けるのかということが一つ。  それから今度は数字ですが、実際にアメリカイギリスフランスイタリア西ドイツというような、まあ文化関係先進国が一年にほんとうに出す金は一体どのくらいになるか、ほんとに出す金。日本はたいへん、百億というと百億毎年使うような印象を持つ人もなきにしもあらずなんですが、いよいよ日本はやるなと。聞いたところは百億は減らないでその利息だけでいこうというのを聞くと、何だかうんと金が少なくなると思うんですがね。だから本年の場合約五億、来年の場合は七億プラス補助金ということになるんでしょう。などなどで十一、二億になりますか、来年度は。あるいはそれが、各国ファンドで出しているところは、一体、ファンド予算か、いずれでもいい、一年にどのくらい現実に金を出すのか。ファンドで出すやつもあるだろうし、予算として出す、たいへんな違いじゃないかと思うんですが。
  13. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはまさに御指摘のとおりであります。大体日本円に直しまして、特別の国、まあフランスドイツ、これがまあかなりの額を出しておる。フランスのごときは五百二十七億円、一九七一年、こういうふうにいわれております。それから次いでドイツでありますが、ドイツが三百十六億円、これも一九七一年、同じくアメリカにおきましては百十億円、これは一九七〇年であります。あと英国にせよ、イタリアにせよ、カナダにせよ、いわゆる先進諸国は百億をきるので、英国が七十三億、それからイタリアが六十二億、カナダが十三億というふうになっておるわけであります。わが日本は、ただいま申し上げましたように、今度の基金は百億円ファンドでありますから、まあどのくらいになるか、六億か七億、その程度のものになるわけですが、そのほかに文部省とか文化庁とか、そういうようなところで若干のこの種のことをやっておりますので、それを加えますと幾らになりますか、いま政府委員のほうから聞きますと約二十億円くらいになると、こういう話でありますが、いずれにしても、経済的には非常に力の強くなった日本であり、かつ、他のただいま申し上げました国々に比べますと、軍事力というものについては自衛隊というものしか持たない、こういう国でありますので、おのずからそこに財政上の余裕も他の国と比べますると大きい、こういう状態でありますので、それで、実はことしはその初年度というので百億円の基金ということにしたわけなんです。分けて半年、十月一日から実施されますので、半年分五十億でありますが、これはどういう事業を具体的に今度やるかということ、これが非常に大事だと思うんです。ばっと店を大きく広げまして、このやり方を間違えますととんでもないことになる。まあどちらかといえば、ことしは新しいそういう構想準備過程の年であるという性格になりますので、金額も少なくしたわけでありますが、大体こういう方向でまあその種のことをやろうということが定着いたしますれば、これは急速に拡大する必要があると、こういうふうに考えておりますので、まあ二、三年、三、四年の間には、ただいま申し上げましたアメリカ程度のところには持っていく必要があると、またそうしたい、こういうふうに考え、したがって、基金の量も百億というところから、まあさしあたり二、三年、三、四年の間には千億というところに持っていきたとい、まあそれをどういうふうにするかということも、今日すでに考えつつあるわけであります。
  14. 森元治郎

    森元治郎君 始めは千億くらいの案も出たと聞くんですね。ところが大蔵省で、外務省の本予算と匹敵するような大きな金は困るじゃないかとか言われたという裏話はどうなんですか、大臣
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は初めから千億基金という考え方なんです。考え方でありますが、千億基金は千億基金で、これは変わりないんです。ないんですけれども、千億ことし基金をつくると、そうすれば、年額にすれば六、七十億円の金になる。これをどう使うかというと、ことしはとても消化できませんし、また、むやみに消化しようとすると、かえって弊害を残すということで、準備過程としての性格づけ、それがことしになるわけです。  そこで、この法律が成立いたすということになると、いろいろまあ国の権威ある人々にも知恵をしぼってもらいまして、具体的にどういうふうなことをするかということがだんだんと固まっていく。固まっていくに従って、私の前から考えておりました千億基金構想、これを実現する、こういう段取りにしたいと思っております。
  16. 森元治郎

    森元治郎君 まあアメリカ百十億、イギリス七十億、ドイツ三百億とか、これはもう過去の歴史が古いんですから、いろいろ海外に定着した事実があるから多いんで、いずれにしても日本はやはり七十億や百億をこの二、三年にやっていかなきゃならぬと思うんです。それがために、いまおっしゃいましたように、何のためにという、これを消化するのはたいへんな頭が要ります。そういうやわらかい頭を持っている人をさがす、これはたいへんむずかしいことだと思う。これはあとで触れますが、目的はいろいろあります。ここにちょうだいした基金法案の要綱には、人物の派遣と招聘――出たり呼んだり派遣したりということ、あとのほうは国際文化振興会目的を書いたみたいに、催しもののあっせんとか国際的な必要な調査文化紹介用資料がくっついてるんですが、このポイントは人の交流だと思うんですが、どうですか。
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 具体的に考えまするときに、やっぱり人がまず先行することかと思うんです。今日、まあ日本状態というものを考えまするときに、やはりフルブライト学徒ガリオア学徒あるいは生産性本部によるところの研修員、こういうものが戦後主としてまあアメリカの負担においてわが国知識アメリカから吸収すると、その当時の若い人たちが今日中堅的な役割りを果たしておる、各界においてしかりと思うんですが、これらの人々がまあいま曲がりなりにも世界の中でのわが国としての活動をなし得る状態になったことにつきましてかなり大きな役割りをになっておるということを痛感するわけであります。今日、日本がこういう経済状態になってきたという時点になりますと、もうそういうようなことはわが国がみずからの責任においてやらなきゃならぬことであると同時に、また、日本知識外国から吸収する、外国知識を持つということだけじゃなくて、また世界じゅう日本について関心を持つ国々がふえてきております。そういう国々に対しまして、われわれが経験した同じことをやってやる必要がわが日本責任として出てきておるのじゃあるまいか、そういうふうに考えるわけですが、まあ何としても人の交流、これが大事なことになるであろうということにつきましては、私もそのとおりに思います。
  18. 森元治郎

    森元治郎君 人の問題で、衆議院のほうの上がったときの附帯決議には、こちらから大いに人を出して海外事情をよく目を開かせろ、蒙を開かせろということがわりに強く出ているんですね。私はそれもさることながら、ほんとう交流するためには、向こうから日本に来たいという人が、ことに東南アジア方面にたくさんおる。東南アジアあるいはアメリカでも最近日本に来たいという人がだいぶいる。来させる、来て見ろと、そうすれば変な講座とか何とかと言わなくても、からだで日本というものをわかってくれるのじゃないか。ところが、呼んだ人に対して、長期、短期の別はあっても、学生などでもあんまりいい待遇は受けない。国際学友会でけんかなんかよくやっている。呼んでかえっていやな印象を持ってみんなが帰ってしまうというなら、戦前ちょうど中国の人が日本に来ていやになって、全部それがアメリカに行って昔の米支間関係が非常によくなったという、もう歴然たる前歴があるんですね。ですから、私は、交流の前に、金づかいの道がたくさんあって使い切れないなら、思い切っていま来ている者にも応援をし、これから来る人にも十分満足してやれるだけの金を投入する、これが日本交流に一番早い効果的な方法。これに反して、日本語の普及だの勉強したい人というのは、これはごく一部の高い大学の先生、あるいは特殊なような人などがあるんです。文化交流マス――大衆を通じてやるということが新しい動きではないかと思うんです。従来は特殊な関係者、学問の従事者、インテリ、教養のある人が文化交流というもののレールに乗っかったんですが、そうじゃない一般のマスを相手に交流することがほんとうに底力のある、長く続く文化交流の基礎になるんだと思うので、ぜひともこれをやってもらいたいと思う。  たとえば、小さい子供が行くパリのシテというところ、大臣も行かれたと思うんですが、パリの南のほうにある大学都市、あそこなんかは六千人くらいいるでしょう。三十何カ国のメゾン――館があります。日本館スウェーデン館アメリカ館メキシコ館など山ほどある。六千人いる。それでフランス政府が思い切ってこれに金を出し、それぞれの館を持っている国も拠出して、あそこに大きな六千人の学生がりっぱなうちに住んでいる。一食一フラン、当時六十五円くらいですから、まあ百円ぐらいでともかく五品という数えられる品物が出る。お客さんのわれわれおやじが行ったら五フラン取られちゃったけれども、学生が行けば一フラン。うまくできているね、これ。その間にいろいろな段階がある。なかなかいいところがあるが、この学友会あたり、外務省の所管だ。あそこなんかはどうも幾らくれているんだか知らないが、年じゅうごたごたが起きている。愛情がない。あれではもうやらないほうがいいくらいですから、やる以上はやはり大学都市ぐらいの思い切ったものをつくって、そうして収容するという大きな構想、これにやはり若い者、一般の者、こういう者を抱き込むというために主眼を置くべきだと私は思うんですが、いかがですか。
  19. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まさに私もそのとおりであると思います。やる以上は厚みのあることをやりたい、こういうふうに思うわけです。現在の各地における日本館というか、日本文化館等々、いろいろな名前の日本の施設がある。あるいは日本美術館というようなものがありますが、まことに、私どもたずねてみましてもお粗末きわまるものである。つくる以上は、もうほんとうに誇るに足るものをつくっていかなきゃならぬし、そしてそれを通じて日本というものも理解してもらう、ほんとう理解してもらうという内容のものでなけりゃならぬと、こういうふうに思いますし、また、受け入れをいたしておる外国の青年学徒、また、よそに出しておる日本の青年学徒、そういうものにつきましてもおっしゃるような点があるんじゃないかと、こういうふうに思いますが、そういう点もこの機会に是正をはかりたいと、こういうふうに考えております。
  20. 森元治郎

    森元治郎君 これは新しい事業ですから、どうですかね、大体、年度内五億、来年七億から十億ぐらいの金が使えるんなら、各国の、もうすでに歴史を持って文化交流をやっておられる財団あるいは基金、あるいは各国予算を出している状況を視察するために、そのような調査団――いままではただ役所が、おそらく外務省なら在外公館から、書類としてどんどん、どんなのだといって取って、文化事業部で集めて、それで国会から言われると出すというだけではこれはちょっとできないので、ほんとうに行ってみて、当たって、そして大きな案を立てないと、これは金をむだづかいするしか意味のないことになると思うので、じっくりやるためには、まあ、これでも発足したら、設立委員といいますか、それにもう現場視察ということはぜひやらしたらいいと思うんですね。いかがでしょう。
  21. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話しのようなことは事務当局でも考えておるんです。これは、何というか、そういうためのシンポジウムを開催するとか、あるいは視察をある特定の人々にお願いをするとか、いずれにしても、十月一日発足でありまするが、運営審議会にはかりまして、まあ基金がきめる問題ではございまするけれども、政府としてはそういうサゼストをするということを考えておるわけであります。
  22. 森元治郎

    森元治郎君 私は、この基金法要綱に書いてある「人物の派遣及び招へい」、この「人物」というのが、どうもある特定の人というようなことに限られておるような感じを受けるので、やはりこれは、外務省がいまやっている文化事業部の管轄下に入っている学生などにも広げていいんじゃないかという感じがするんですがね。そこで大学都市みたいなのをぜひやってもらいたいと思います。形が残りますし、そして学生も安心して、喜んで帰る。  そこで、文化交流関係をやっているのは、日本政府機関でも、私は詳しくは知りませんが、ちょっと思い出してみても、総理府で青少年の交流ですか、科学技術でも学術交流計画をやっている。外務省でもやっておる。文部省がやっている。で、ある場合には重なることもあるだろうし、この整理は一体どうするのか。一ぺんしっかりやらぬと、ちょっと見た感じでは、国際文化振興会がやってきたことをただ大げさにやるんだということだけに、へたすると追い込まれると思うんですがね。役所ですから、手を出せば、文部省あたりは渡すまいとするだろうし、みんな、おれだ、おれだとなれば、みんな国際文化振興会の焼き直しに終わってしまうおそれがある。これ見ると非常に狭いですから。へたにすれば、千億の基金でもつくったらこなし切れないと思うので、やむを得ず印刷物ばかり出してみたり、歌舞伎だの能だのを出すくらいに終わっちまうと思うんだな。これではほんとうに生きた交流というものはできないので、各政府機関のそういう交流というものをよく調整する必要がある。何でも一本にまとめて命令一下いけばいいということでもないと思う、行政は。ばらばらでも、中心がしっかりして、大国務大臣が上にいてリードすれば、分かれたままでも生きてワークすると思うんですね。それをひとつぜひやってもらいたいことと、これは政府委員に伺うんだが、各省別にやっている交流の金の計算できていますか。科学技術でどのくらい使い、文部省でどのくらいという。
  23. 加川隆明

    政府委員加川隆明君) これはなかなか――たとえば私のほうで経済協力のほうで教育協力をやっておりますけれども、これをどういうふうに国際交流基金等の目的の人物交流等に入れるべきかという計算が非常にむずかしいのでございます。たとえば文部省の問題でも、留学生、これは全体として四億ぐらいでやっておる国費留学生、こういうものも含めまして、全体の、何といいますか、人物交流総計というのがなかなか統計的には出てまいりません。先ほど申し上げました二十億というような数字がおおまかな数字でございますけれども、リミットをどこに置くかというのが非常にむずかしいので、こまかい数字、確定数字というのは実は私たち持ってないというのが現状でございます。
  24. 森元治郎

    森元治郎君 この次の機会でいいですから、各省でやっているこの種の趣旨にのっとった交流計画に対する政府の金の出し方の各省別のトータル、そしてその内容の主たる項目をちょっと簡単に書いていただけば理解がしやすいと思います。  そこで、国際文化振興会というものは発展的に解消して吸い込むんだが、振り返ってみるとどんな印象を持ちますか、加川さん。あなたはパリにもいたし文化は得意なんだが、あれのやっていることは、かおり高い人々の集まりで、読んだって何を言っているかわからないですよ。あれを読んでごらんなさい。お茶にしろ何にしろ幽玄であり哲学的である。「国際文化」という本が出ているでしょう。読んでごらんなさい。あれが国際文化なんということでやっていたんですから、外務省芸術的と言うんです。あれじゃだめだから全く頭を切りかえなきゃならない。それには人だと思う。  ところで、これには設立準備委員というのはあるんですか。
  25. 加川隆明

    政府委員加川隆明君) 法律では設立準備委員というのはありますけれども、これは、特殊法人ができますときには各省次官がその委員になりまして、学識経験者二、三名で形式的に設立準備をするという委員会がございますが、これはまだできておりません。それからいま、福田大臣の諮問機関という形で設立準備会議というのを考えております。これは各界各層の方にお願いして、われわれ外務省としてもたたき台を出して、御意見を伺って、交流基金がどういうふうにあるべきかということを御相談したいと寄り寄り準備いたしております。これが、いま森先生のおっしゃった準備委員会といいますか、そういうものに当たると思います。現在、この人選その他を進めております。参議院の御審議を経て法案が成立いたしますれば、そういうところで十分に御意見を賜わりたいと、こういうことを考えております。
  26. 森元治郎

    森元治郎君 大臣の諮問機関ですから、運営委員ですか理事か、二十名、こういう人の人選については、衆議院の話を聞いても、世間の話を聞いても、民間人を多くしなさいという意見が強いんですね。大臣もそういうおつもりのようだが、その点、民間人なら何でもいいとは限らない。年寄りもあるし若者もある。この人選はむずかしいですよ。これがやれたらたいへん偉い人だね。たいへんむずかしい。どんな人をあなた選び出すか。雑誌「世界」に名の載るような人もおるだろうし、朝から晩まで、何か、文化問題というと出てくるような偉い大学教授なんかいますよ。あれが必ずしも文化人ではない。むずかしい仕事です。それならおまえやってみろといわれても、たいへんだ。よほどお互いに広く意見を徴して、きめるまでにはじっくりやる。そうして、第一回の任期は二年ですか、理事は。審議会の委員は何年ですか――二年か。もう第一回は、その次まで延長しない。変えてしまうというくらいにきめていかないと、偉くてぼけちゃったような人がずっとすわってたんじゃ、感覚はどうしても明治、大正から第一次大戦後くらいの感覚ですから、いまテンポは早いですから、これはよほどむずかしい。どうかひとつわれわれみんなの意見を聞いて、民間を主としてほしい。次官会議で検討すると言うが、外務大臣のもとにりっぱな構想のもとに動く事務当局であって、これがポリシーまできめちゃ困るので、どうぞ、また次回御質問しますが、きょうは意見を交えながら伺って、私の質問を終わります。
  27. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま私どもが考えておりますのは、これは設立準備会議です。これはかなりの人数になると思うのですが、これは民間人ばかりで構成する。こういう問題に関心があり知識がある、こういう人をよりすぐって構成をしたい、こういうふうに考えております。これは法律上の機構ではございませんのですが、私の任意の相談相手であるという性格のものです。それから、この機構ができますと二十名、二年の任期を持った運営審議会が構成されるわけです。この運営審議会の構成、この二十名の人選は、お話のように非常にむずかしいと思います。まあ皆さんの御意見等も伺いまして、法案成立後選考にかかりたい、こういうふうに考えておりますが、これはもちろん役人は入れない考えです。全部民間の、ほんとう日本的な、まあ一流の学識経験のある方々によって構成する、そういうことを考えておるということだけをお答え申し上げます。
  28. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 この国際基金について、基本的なことを少しお聞きしたいのですが、先ほど森委員の最初の質問に封ずるお答えでも、まあいままでの文化交流というものが日本の国家社会のていさいといいますか、柄に非常に見合わないものだったということは、大臣もお認めになったと思うのです。社会自身の非常に未熟さ、政治の未熟さというものがそういう形になって出てきたと思うのですけれども、国際文化交流というのは非常にむずかしくて、アメリカなんかそれでも一生懸命にやっていますが、なかなかアメリカならアメリカの最もビビッドな文化というものを、特にそれが官庁がコントロールすると、完全にそれが交流の素材になっていないようなうらみがあるようです。  私、日生劇場をつくりますときに、「ウエストサイド・ストーリー」を実は招待しょうと思ってアメリカの国務省にその援助を交渉に行きました。そのときに、たしかロスという局長がおりまして、これは何か博士号を持ったりっぱな学者なんですけれども、この人が非常にアメリカのミュージカルに偏見を持っていて、ニューヨーク・シティー・バレーなら出すけれども、「ウエストサイド・ストーリー」は困る。特に、人種偏見が盛られているし、あなたが「ウエストサイド・ストーリー」をアメリカ文化の象徴と考えるなら自分も一セントも出さぬと言って非常に強い態度だった。同行したのは小沢征爾君――バーンスタインは「ウエストサイド・ストーリー」の作曲家ですけれども、彼はバーンスタインの高弟として非常に不本意で、激論をしたのです。あとで、ロバート・ケネディが日本に来たときに、どうも事態がなかなか進まないので、彼の援助を依頼してその話をしたら、ロバート・ケネディは非常に激怒しまして、そういう間違った考えを持った役人が文化交流をすることでアメリカが迷惑すると言って、これはすぐその人は更迭されました。そういう経験があるのですけれども、日本の社会を見ても、経済が非常にむずかしい状態にあるようですが、いずれにしても、これだけの新しい構想大臣が打ち出されて、積極的に文化交流しようという際に、まずお願いしたいことは、外務省なら外務省、あるいは文部省が考えている文化というものの概念をやはり修正していただかぬと非常にいろいろな弊害がある。  この間、施政方針演説で私は一つだけ印象を持って聞いたことばがあるのですが、日本政治家というものは大事なことはたいてい無意識で言われますので、総理も無意識で言われたのじゃないかと思うのですが、発想の転換ということを総理は言われた。これはすべての問題に必要なことで、特にこれだけの大きな基金をつくられるというときに、文化というものの発想の転換といいますか、文化に対する概念の修正というものをされませんと、どうもいままでの外務者がハンドルとって行なってきた、交流せしめてきた文化というものに対する非常に固定観念といいますか、一種のアプリオリがあって、何か要するに政治が保護する客体としての文化というような感じが非常に強い。私はこれは非常に間違いだと思いますし、大体文化というものが、日本でいままでどれだけの価値観を占めていたかということが非常に問題で、とにかく百年間で西洋に追いつき、追い越すために無理してきた日本の社会の中で、はたして文化なり芸術なりというものがどれだけ価値として認められたかということは、非常に心もとない問題じゃないかと思うのです。たとえば、あとでも触れますけれども、日本のつまり風土というものにのっとった文化一つの表象であるお茶とかいけ花というものが、今日の官庁の考え方では、文部省のカテゴリーの中では遊芸に入っているという、そういう識別を見ても、何かぼくは非常に心もとないものを感ずるのですが、私ここで決して講釈するわけではないのですけれども、私は文化というものは形而上的な素材というものが、日本あるいは日本人が持っている左右することのできない基本的な風土というものにろ過されて出てきた形而下的な表示だと思うのです。その限りで、つまり政治が簡単にこれを左右することはできないし、これはボルジア家の専制くらいの政治ならばルネサンスをつくることができるかもしれないけれども、千億の基金をつくって、そこで新しい文化が生まれてくるわけはない。その国のあるものの中から何を文化としてえりすぐって交流せしめるかということが問題になってくると思うのです。そういう点で私はやはりこの際外務省なり政府全体が、文化というものに関心を持たれるならば、文化というものに対する概念の修正というものをする、発想の転換をする必要があるのではないかという気がするのですが、非常に抽象的な質問ですが、この外務委員会というものは国会の中で、特に参議院の場合の外務委員会はソフィスティケーテッドな委員会でございますので、気楽に御答弁願いたいのです。
  29. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは第一章の総則に書いてあるとおり、この基金は、「わが国に対する諸外国理解を深め、国際相互理解を増進するとともに、国際友好親善を促進するため、国際文化交流事業を効率的に行ない、もって世界文化の向上及び人類の福祉に貢献することを目的とする。」これは、私どもはこの総則に書いてあるような目標を持っているのです。その手段として文化交流事業を効率的に行なう、こういうとらえ方をしているわけですが、初めのいきさつを申し上げますと、国際文化交流基金という名前にするという考え方があったわけです。私はその文化というところを取ってくれ、こういう話をしたのです。文化というと、どうも国際文化振興会、ああいうもののやってきた事業、これを連想させる、あるいはいまお話のお茶だとかあるいは歌舞伎だとか、そういうようなことばかりを連想させるようなことになるわけです。今度の考え方はそうじゃないんだ。いま日本世界の中で経済協力を雄大に行なっておるわけです。物と物との交流を通ずる世界との連帯性、これはだんだん、だんだんと高まってきておるわけです。ところが、これが逆に作用する場合もあるわけでありまして、あるいはひがみを相手に与える、あるいは経済的な侵略行為であるというような誤解を与えるとか、そういうデメリットの面もまた警戒しなければならぬような状態である。やはり物と物との交流によるそういう面はたいへん盛んになってきておるわけでありまするが、この交流というものは、ややもすればどうも不幸な結果にならないとも限らない。やはりお互いを正しく理解し、お互いを正しく評価する、こういう心と心との触れ合いの問題、こういうことが並行して必要じゃないか。わが国は、しばしば申し上げまするとおり、経済大国ではありまするけれども、軍事大国にはならない、こういう決意をしておる。そこに余裕が生ずる。その余力をもって安全保障の武力面においては世界の平和に貢献はできませんけれども、これは経済の面では余裕をもって世界の平和に貢献し得る、こういう立場にあるわけでありまするが、その考え方を延ばしながら、世界の中における日本役割りということを尽くすということを考えますと、どうしてもやはり物の交流だけではこれは足らないし、またそれだけでは反作用もおそれられる。そこで相並行いたしまして日本人を正しく理解してもらう、そういうことが必要である、こういうふうに考えますので、文化というのは日本の伝統的なお茶だのいけ花だの歌舞伎だのというものを、そんなことは私の頭の中の片隅のほうにしかないんです。問題の中核はそうじゃなくて、相手を知り、また相手におのれを知っていただく。そしてその前提としては、また国際的な面もありまするけれども、同時にそれを通じまして一億日本人全部に国際感覚を持ってもらう。そこで初めて私は正しい外交、国の姿勢というものが打ち出される、こういう考え方なんで、そういう意味合いを包含しての文化ということに御理解を願いたい。
  30. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 それはそのとおりで、私もその文化というと、日本の古典芸能という連想ではこれはやはり非常に陳腐で、貧しいものでしかないと思います。ただ、大臣がいま言われました経済交流というものが高まれば高まるほど出てくる弊害というものを、心と心の触れ合いで相殺するとい非常に高度の目的を持たれる限り、やはりお茶、いけ花等ということでなしに、ほんとうの意味の文化というものを正しく交流させる必要があると思う。たとえば、あとでも触れますが、川端康成氏がこの間自殺をされた。これはいろんな論評がありますが、私はそのときに外国の評論家が日本文化一つのひよわさというものを示すものであるという評論をして、それが非常に大きく扱われた。これは全く僭越な西洋人の誤解でしかない。こういったものが非常に日本人的で高揚的で、非常におそらく日本の高度の文化というものを象徴する事件だということです。やはりこれ自身が国際交流のどういうアイテムになるか知りませんけれども、しかし、やはりそういったものを強く相手に知らせるべきであるということで、日本というものの持っている文化というものの実態がわかる。その上に乗っかった日本の独特の経済なら経済という認識ができてくる。それがなかったら私はやはり経済というものを文化一つの要因として考えることにはならぬと思うんですが、ただ科学技術だとか学問であるとかいうものは、それ自身の一つの本質的な機能から、ほうっておいても交流するものですが、精神性とかあるいは情念とか情操というものの要素の強い文化というものは非常になかなか交流しにくい。つまり逆に非常に疎外しやすいものである。死んだ三島由紀夫氏も言っておりましたが、私は外国文化というものはそういったものを輸入する、あるいは見せつけられる外国人にとっては一つの毒だと思う。これはやはり文化というものの本質がそうで、精神性、情念性、心理性というものが、強い文化というものは、これはそれこそが実は学問とか科学技術以上に各民族の個性であって、それは非常に互いに反発し合い疎外し合うものですが、だからここにうたっているように、「国際相互理解」というものも、決してにこにこ笑って、相手の文化はけっこうなものであるということではなしに、実はやはり自分たちの持っているそういうものを入れたような存在があるということに対する、あるいは畏怖感なりを伴った一つの敬意という形でなかったら、私は日本文化というものは、日本のディグニティをもって外国に伝わらない。そういう文化の認識の上に日本の経済というものを理解させてこなければならないと思うのです。そういう点で私は、どうも日本文化、西欧の文化というものに対する日本人自身の非常に大きな誤謬がいまでもあると思いますし、一番いい例が、これは外務省の当事者にとってはいやな例かもしれませんが、河崎大使という非常に愚かな大使がございました。この人が要するに、アンマスクド何とかという本を書きましたね。いろいろ風評がありましたけれども、その責任をとってやめられた。これは外務省は実にき然たる処置をとられたと思いますし、全く間違った発想でああいう本を書かれた。日本人ががにまたである、背が低いということはけっこうですが、あの中でまことに一国の代表たる外交官として許しがたい誤謬を一カ所河崎氏が書かれている。その誤謬を彼が犯しているから、すべて日本人のそういう屈辱的な要件というものを、これは彼は彼なりに客観的に書いたつもりで、実はこれが彼の主観でしかなかったということが証明されたと思うのです。  あの中で彼は、日本文化というものは一つの特性を持っているけれども、しかし、ミケランジョロとかラファエルを生んだ西欧文化に比べると偉大さという点で劣るという表述なんです。全く愚かな認識なんです。たとえば川端氏が持っている生と死が常に混在した存在感、日本人独特のもののあわれというものを持っておって、西洋人には理解できないおそろしい文化性というものを外務省の大使が理解しなくちゃいかぬということで、どういう方か知りませんけれども、西欧に長くい過ぎてそういった理解というものをふっ飛ばした。そういう河崎大使を外務省は暗黙に批判はされましたが、しかし私は考えてみると、外務省に限らず、特に外務省が、河崎さんが犯したと同じ誤謬というものを無意識に犯しているんじゃないかという気がするのです。  たとえば川端康成氏がノーベル賞をもらわれたときにストックホルムでされた演説というものは、これは実にみごとな演説で、聞けば聞くほど、西洋人にはおれたちのやっていることはわからないんだという講演でしかなかった。これは非常に象徴であるということであればそれでしかないのですけれども、しかし、ただ単に象徴ではなしに、その中に西洋人と違った文化性というものを持って、存在感を持った、生命感を持ったそういうつまり日本独特の文化というものを彼はその中で話をしたし、書いてきたし、しかしいまああやって非常にふっと死んでいく、ああいう自殺の姿の中に、実は西洋人に理解できない日本人の持っている文化の一番コアにあるもののおそろしさがあったわけです。そういうものをわれわれは伝えなくちゃいけない。それを伝えなかったら日本というものの理解というものは決して本質的にはされないと思う。そういう存在があるということのおそろしさ――おそろしさということばも非常に誤解を受けますが――そういったものを、つまりこれだけのお金をかけるなら、私たちは執拗に西洋人に向かって、外国に向かってデモンストレートしなくちゃいけない。理解してくれという前に、われわれが持っている一番大事なものをはっきり示さなくちゃいけない。  そのために、この交流の中でどういうアイテムをどういう形で取り上げていくかということが問題になっていくと思うんですけれども、まあ基金の額もふえたことですし、非常に多角的なことができると思いますが、とにかく私たちがこれだけの基金を使って、これだけの努力をして交流をはかろうとするならば、やっぱり経済に限らず、芸術に限らず、すべて日本文化、文明の一番コアになるものを伝えるという努力をするという、その発想の転換をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。いかがでしょうかという言い方はまずいのですが……。
  31. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これから、私どもは準備会議を持って、いろいろこの運営を、スタートをどういうふうにずるか、衆知を集めてみたいと、こういうふうに思っておりますが、やっぱり、この問題を皆さん御審議願うに至ったゆえんのものは、その発想の転換というか、そういう問題が根底にあるのです。やはり、物的な日本、これを理解されるだけではこれはまずいんだ。やはり日本人の本質というもの、これをよく理解してもらう。そうして、そういう理解があってこそ、初めていろいろそのケース・バイ・ケースの問題が起こり、その問題の片づき方が適正にいくんだ、こういうふうに考えられます。そういうような――これはもう基金というものは、ただ単に基金をつくる、そうして国際交流という現象的なことをやっていくということじゃなくて、やはり日本の国のこれからのあり方というものを踏んまえまして、その中の大きな役割りを持たせるんだという発想の転換というか、そういうものに根拠を置いている問題である、こういうふうに考えるわけです。いまの御所見、感銘深く拝聴いたしました。
  32. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 そこで、具体的なことをお伺いしたいんですが、私自身が小説を書いてきた人間なんですけれども、日本の文学というものは、かなりそういった点で質度の高い、非常に独特なものを持っている。やはり音楽とか、絵画とかありますけれども、文学も、つまり日本文化といいますか、文明といいますか、そういう心髄にあるものは、それが日本の経済に反映し、日本の科学、エレクトロニクスにまで反映している、日本の本体というものを一番説明しやすい素材と思いますけれども、しかし、これは言語の障害の問題があって、日本の文学というものは、翻訳に恵まれていない。しかし、これは、これだけの基金を使うときに、人間の交流も必要でしょうが、つまりそういう交流も含めて、アメリカにいて日本語を勉強し、アメリカにいて日本の文学を翻訳するのじゃなしに、つまり翻訳というものを完ぺきにするために、学生の招待もけっこうですけれども、外国人の翻訳というものを、日本の中での外国人の日本文学の翻訳家というものを日本の中で育成するというような、そういう一つの機能というか、施設というものをぜひひとつ積極的にお考えを願いたい。これは文学に限らず、翻訳というものに、一番日本の各分野の素材が非常に障害を受けているわけですけれども、私は、そういう問題はやっぱり日本の国家何十年の大計につながるものであると思いますし、これはひとつぜひ大きなファンクションの一つとしてお考えを願いたいと思いますが、いかがでしょうか。そういう御構想がおありでしょうか。
  33. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国が国際社会の中で交流を行なうという際に一番問題になるのは、やはり言語、それから人種、そういうようなところにあるように思うんです。しかし、それを乗り越え、克服して国際交流が行なわれなきゃならぬ、こういう立場にあるわが日本でありますから、ことばの問題をどういうふうに克服するか。特に、このことばの問題をどういうふうに克服するか。この間、衆議院のほうでは非常に雄大な構想をぶたれる人がおりまして、エスペラントを大いに推進せい――これもなかなかむずかしいんで、さればといって、日本語と言うような人もありますが、私は、とてもそれは現実的でない、こういうふうに思うんです。やっぱり、世界語といえば大体もう英語、これが主たるものになってきておる。それにどういうふうになじませるかという問題が現実的なことじゃないか。そういうふうに考えますが、しかし、いま石原さんのおっしゃるように、この翻訳の問題ですね、どういうふうに解決するか。これは、まあ一つの大きな問題だろうと、こういうふうに思うんです。ひとつ、交流基金のほうでも、この問題をどういうふうに克服するか、運営委員会あたりでも大いに検討してもらうということにしたらどうかと、かように考えております。
  34. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 たとえば文部省が、各芸術ジャンルで毎年の最優秀作品というものを芸術選奨という形で表彰をしていることは御存じだと思います。私も去年もらったのですが、そういうものが、ただ要するに文化庁長官、今さんの話じゃないですが、もらってみても、もらったほうが恥ずかしいくらいの要するに賞金でしかない。それはそれでいいですけれども、つまりこういった基金ができるならば、その辺は文学なり、小説なり、詩歌なり、そういったもので、文部省が国家として表彰するような作品は、やはりその賞を授賞した限り、英、仏一独ぐらいには文部省の、あるいは外務省の便宜で必ず翻訳されて、何かの機関を通じて海外に送られる。そういったやはり他の省との有機的なそういう機能というものをぜひお考え願いたいと思うのです。
  35. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) はい。
  36. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 それからこの二十三条の一の文化交流目的、人物の派遣という項がありますけれども、これはいろいろな形の人が派遣されるでしょうが、スポーツはこの中に入り得るのでしょうか。
  37. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはもちろん入るわけです。
  38. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 大臣は御存じかどうか知りませんけれども、私、一人非常に興味深い人物がいろのです。それは生沢徹という人物ですけれども、御存じですか。――これは日本の代表的な自動車競走のドライバーなんですけれども、私は個人的にも知っているのですけれども、彼が要するにヨーロッパで転戦しているこの戦いというものは、実にもう涙ぐましいのです。自分の奥さんと二人きりで、メカニックもやり、マネージャーもやり、すべてのことをし、とにかく車とヘルメットと、自分の自動車を積んで歩くワゴンに日の丸を書いて、ほんとうに孤軍奮闘しておると思うのです。たとえば彼なんかと同じランクか、あるいはそれ以上のロドリゲス兄弟や、マリオ、アンドレティとか、有名なレーサーがアメリカやヨーロッパで転戦して戦っている。これはイタリアの選手であり、メキシコの選手であり、あるいはアルゼンチンの選手ですけれども、こういった選手に、まあこれは国によって事情は違いますでしょうけれども、政府援助しているわけです。それが文化かと言われれば、それはいろいろ異論があると思いますけれども、しかし外務省の何か入り口に積んであるパンフレット以上に、やっぱりはるかに強く日本文化を伝える一つの素材であるわけです。こういったものに対する配慮がいままで要するに日本政府外務省といったら全くない。あるいは白石加代子という人の名前を御存じですか。――御存じないと思う。この間国際演劇祭に行った早稲田小劇場の女優です。私は日本の新劇というのは大体くだらぬものが多いし、一種のスノビズムでしかないと思うけれども、そういうものを淘汰をされて、日本の社会のほんとうのマチュリティの中から、アンダーグラウンドですけれども、その中に非常にすぐれた、実に演劇的な演劇というものが育ってきているわけです。こういうものは新聞の批評の対象にやっとなりだしたくらいで、ほとんど観衆の文化というもののカテゴリーの中には入らないわけです。これは白い装束を着た女がたくあんをかじりながら、せりふなしに日本の気違いを演ずるのです。それは非常におそろしい、日本にしかない、西洋にはない日本の気違いです。きわめて日本的なものをことばなくして伝える、全くおそろしい芸術なわけです。そういったものをせめて名前だけでも知ってもらいたい。あるいはキッドブラザーズとか、天井桟敷とか、いろいろいってます。それはそれなりに評価はあるでしょうが、もう少し要するに野に遺賢があるということを認識されて、それを拾い得る準備委員なり、運営委員なり、理事というものをぜひつくっていただきたい。先ほど森さんもおっしゃいましたけれども、運営委員とか、理事とか、こういう構想だけでは、意味ございませんから、私は自分が比較的若いから言うわけじゃありませんけれども、どうか若いみずみずしい委員というものを登用していただきたいし、あるいはすでにその委員に内定とか、御内意があれば、そういう人物の名前について、いまわかっている限りお知らせを願いたいと思います。いかがですか。
  39. 加川隆明

    政府委員加川隆明君) いま石原委員の御質問で白石さんの話が出ましたが、私は存じないと申したんですが、実は存じておりました。  この間バローのあれで、私のほうは実は渡辺盛章君に行ってもらいまして、これは私どものほうで費用を出しまして行ってもらいまして、説明してもらったという経緯もございました。私どももそういう点は一生懸命やっております。御了承いただきたいと思います。  それからただいまお話のありました準備会議委員のお話でございますが、いま寄り寄り選考中でございますので、また大臣とも御相談して、石原委員のほうに御連絡したい、このように思います。
  40. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 質問を終わります。
  41. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっといまのことに関連して、この案は福田大臣福田構想なるものか、あるいは外務省にあったものを福田さんが取り上げたのか、どういうことなのか。
  42. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 率直に言いますと、私は大蔵大臣時代から、もう大蔵大臣やっておって、ものの交流はずいぶん進んだが、これだけじゃいかぬ。もう少し、形而上の問題というか、そういう問題についての角度から交流を考えなきゃならない。それにはいままでそういう面で外国のお世話になっておったが、もう世話になっちゃいかぬ、わが国もみずからの発意でみずからのことをやらなきゃならぬし、なおさらに進んで、資力のない国々のために、そういうこともやるというところまで進まなきゃいかぬ。こういうので、前々から私は千億円国際交流基金といっておったんです。たまたま私が外務大臣に就任いたしましたのでこれを実現する、こういうことにいたしたわけでございます。
  43. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この国際交流基金という名称の問題については、いまもいろいろ話のやりとりがあったわけですが、文化というたいへん幅の広い、また奥行きの深い問題で、いまそれをあらためて議論しようとは思わない。ただ、いままで、決して忘れていたわけではないでしょうけれども、外国との交流をひんぱんにやりながら、そしてお互いの国のいい文化事業を、またそれを通じて世界平和の足がかりというような考え方にもつながるだろう。その意味においては、むしろおそきに失したんじゃないかという印象すら受けるわけです。ともあれ、そういう突破口としての足がかりができた。これからせっかくできたこの基金をどう運営するか、これがやはり先ほど来から論議されておりますように、たいへんな大きな問題になるであろう。願わくば、ともすると、いままで諮問機関であるといわれております審議会のメンバー、つい最近ですか、私もずっと調べてみますと、五つ以上ぐらいの審議会の役職を兼務している人がいるんですね。何かというとそこへ集中しちゃうようです。代表的な人は十以上も審議会のメンバーの肩書きを持っておるんです。それが一つの系統化された内容の、ただ名前だけが違うという審議会なら、まだまだいいんですけれども、全然その目的もそれから方向も違うという、その審議会なら審議会の肩書きを持っておやりになっていらっしゃる。どんなタフな人でも、これはとても言うべくしてできないことではないだろうか。あまりみみっちい話もしたくはありませんけれども、審議会のメンバーの一員として、しかも、高額をもらっておる、二カ所からも三カ所からも。そういうことになった場合に、これはまたやっぱり批判の対象になり得るという問題が最近ずっとあるわけですよ。したがって、少なくともこれから任命をされるであろう運営委員のメンバーにいたしましても、本格的に本気になって取り組んでもらうためには、他にそういうような兼職を持たないということを前提として人選をされるべきではないだろうか。これはやはり、あえて私もつけ加えたいわけでありますけれども、特にいままでの何といいますか、世間に知られているという人にとどまらず、若い世代の方々の中でも、相当シャープな感覚を持って、今後の日本の新しい文化の創造というものをどうやっていくべきかということを真剣に取り組んでいらっしゃる人も相当いるはずであります。そういう幅広い層から人物を採用するということが非常に望ましいと思いますが、私がいままで答えられた以外の答弁を求めたいのは、要するに、本格的に本気になって取り組んでもらうためには兼職をしない、そういうような人を、しかもできるだけ若い人をと思いますが、この点についていかがです。
  44. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 内閣にはまあたくさんな審議会がありまして、その内閣の審議会を同一人が多数占めるということで、これが国会でもずいぶん御議論のあったことは、御承知のとおりであります。そこで内閣にそういうことを規制する準則をつくりまして、幾つ以上の兼職は認めない、いま具体的に幾つですか、覚えておりませんけれども、ごく少数に限っちゃった、そういうような仕組みにいたしまして、万々問題があるという際には相談をして、そうして合意を得て、そうして任命をする、こういうふうにいたしておるわけであります。もちろん今度の新設の審議会におきましても、その制約を受けるわけでありますから、それと同時に、この審議会はやや従来の政府の中にある審議会とはその目的が非常にユニークなものでありますから、おのずからユニークな人が選ばれるんだということになると思いますが、しかし、全然兼職はいけないんだというわけにもまたいかぬだろうと思います。御趣旨のほどはよく私どもわかりまするから、そのように運営をいたす、つまり新委員の人選につきましてはなるべく兼職を避け、かつ、この目的に沿った新進有為な人にこれを求める、こういうふうにいたしたいと思います。
  45. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ぜひそう願いたいと思いますし、それに加えて外務大臣の任命にかかわる理事長、いわゆる基金ができた場合に就任するであろう役員等についても、これは厳格にいまの方程式に従っておきめをいただくことが望ましいのではないだろうか。ただいままでやってきた人を横のほうから持ってくる、あるいは上から下へ持ってくるというふうな、いわゆる天下り式みたいなそういうことを避けて、しきりに衆議院あたりでも強い要望がありましたように、できることならば民間人の起用ということが望ましいのじゃないだろうか、こう思いますけれども、すでに福田さんの頭の中には、この法律が成立すれば、どういう人に理事長として委嘱をするかということを描いていらっしゃるんじゃないかと思いますが、その辺いかがですか。
  46. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだ法律案も御審議中の段階で、理事長以下の選考を行なう、これは僭越みたいでありまするから、さようなことはいたしておりません。ただ、この間おなくなりになりました川端先生、ああいう方にでもなっていただきますれば非常にいいなと、こういうふうにも思っておったんですが、川端さんがおなくなりになりましたので、そういうよすがもございませんけれども、とにかくいわゆる役人の天下りということは、これは全然考えておりません。日本じゅうをさがしまして、これはやはり皆さんに御理解いただけるような人を選びたいと、かように考えております。
  47. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次に、この基金目的にいろんな項目が並べられておりますけれども、とりわけわが国に対する諸外国理解を深めるというところに相当の力点が置かれているように思われますし、とりわけ日本語の普及というものについては項目も非常に上のほうにランクされているということで、これまた非常に重点的な考え方一つになっているのではないかということでありますが、この日本理解させるという、むしろいままで閉鎖的な状態に置かれていた日本が、戦後急速に海外に目を向けるという、そういう時代的な転換がいまなされているわけでありますし、それだけに正確にやはり日本の姿というものをとらまえて理解を深めるということが、一番何といってもこの基金趣旨からいっても重要な要素を持つのではなかろうかと、こう思われます。そこで、先ほどの御質問にも指摘されていたものがあるんですが、特にこの留学生に対する問題ですね。私どもがいままで調べた範囲では、きわめて受け入れ態勢が完備されていない、いわゆる場当たり的にやっている傾向が非常に強いじゃないか、特に東南アジア地域においては日本に対するそういう希望が強い。けれども、なかなかいま申し上げたような態勢ができていないために、民間の方々が自発的にむしろその面を補完的に、あるいは国がやるべき仕事の一環をになってやっていらっしゃる。けれどもやはりこちらに来てからたいへん失望したりして国へ帰るというような例がありまして、それがあとを絶たない現状でしょう。特に、やはりこの留学生問題についてはこれから根本的にもう一ぺんいままでの、従来の考え方というものを洗い直して取り組む必要があるんじゃないだろうかと、文部省文部省としての一つの窓口を設けておやりになっていらっしゃる、外務省も今度新たにそういう問題を考えようとしていらっしゃる。あるいは文化庁においてもいままでそういうことをなさってきたかもしれない。そういうことで、この辺で窓口を一本化して、むしろ強力に推進するという、そういう新たな方法を見出しながら一つ根本的な留学生に対する対策というものができないもんだろうかと、こういうふうに疑問を抱いているわけなんです。どうしてもやはり機能的に最高の結果をここに出そうという場合に、これはあっちだこっちだと窓口が幾つもあったんでは金は使う、金は使うけれども、使っただけの効果は何にもないということでは、一体何のために一それは一つの学問的な追求ということもあるでしょうが、それに付随して、より深く日本理解してもらいたいという問題があるわけですから、この機会に何とかそういう方法がとれないもんだろうか、まず最初にそういう基本的な考えを伺って、文部省なんかも来ておられますから伺ってみたいと思うのでございます。
  48. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 渋谷さんのおっしゃる問題点ですね、これは確かにその問題はあると思うんです。たとえば、いまの文部省が長期の留学生について扱っており、短期の留学生につきましては、これは外務省がこれを扱っておる、こういうふうに窓口が分かれております。私もどういう事情でこういうふうないきさつになってきたのか、その根源まではつまびらかにいたしませんけれども、その辺はそう短期、長期に分ける必要があるのかないのか、問題があろうと思います。ただそれから留学生の問題ばかりじゃありませんで、ほかの交流分野におきましても、あるいは文化庁が、あるいは文部省が、あるいはこれから交流基金だというような分かれ方をしておる、そういう面もある。それを調整をどうするかという問題もあろうかと思います。ただ、今度新しいこういう機構を設ける際に、そこまでタッチしますと、これは容易に、御承知のような状況でございまするからまとまりません。そこで、まあスタートはこれでやる、やりますが、これの動きの本格化に従いまして調整を要するという諸問題が生まれる。明らかにだんだんだんだんとやってくる、こういうふうに思うんです。その機会に、これが御指摘のような問題の調整をひとつやってみたい、こういうふうに考えておるんです。いまこれは外務省の所管の交流基金を、これをかりに中心としてそういう調整が行なわれるんだということになりますれば、何も外務省の所管だというようなこだわり方をする必要もない問題だ。これは政府全体がどうこうだというような性格のものになってくる、こういうふうに思いますが、まあとにかくこれでスタートいたしまして、これからの問題はひとつこれの育ち方と、それと見合いをとりながら実行してみたい、そういう考えでございます。
  49. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこで、文部省のほうにお尋ねしたいのですけれども、戦後現在に至るまで、といってもたいへん膨大なことになりましょうから、最近の例から、これはこまかい数字はもちろん必要ございません。大体いままでやってこられた受け入れ態勢の現伏、そして現在大きく分けてアジア地域というものとその他の地域、現在どういう受け入れ方をしておるのか、今後その留学生に対して文部省としての基本的な考え方はどういうふうに進めていく方向なのか、その点のあらましでけっこうですから、お知らせをいただきたいと思います。
  50. 植木浩

    説明員(植木浩君) 従来から文部省外務省協力をいたしまして留学生の受け入れ、あるいは派遣というものをやってまいっております。戦後、いわゆる国費留学生制度というのは昭和二十九年に発足をいたしたわけでございまして、現在までに国費留学生は大体六十カ国くらいから二千五百人受け入れてきております。それから国費以外の私費留学生、これにつきましても、およそ一万人くらいが日本へ来て勉強をいままでにした、このように推定されておるわけでございますが、現状を申し上げますと、国費留学生が現在七百人、日本大学で勉強いたしております。それから私費留学生が約三千九百人日本で勉強いたしまして、合計現在日本では四千六百人の外国人留学生わが国の高等教育機関で勉強しておるわけでございます。それを地域別に見ますと、やはりアジア地域が圧倒的に多数でございまして、八三%がアジア地域であるということで、その他の地域はずっと数が少なくなっておりまして、たとえば北米地域が八・八%、ヨーロッパ地域が四%、その他と、こうなっておるわけでございます。  それで、ただいま先生からお話のございました受け入れ態勢でございますが、国費留学生と私費留学生、一応この二つに分けて御説明申し上げますと、国費留学生につきましては、もちろん奨学金、旅費、あるいは下宿料補助、医療補助、それから研究のために国内を旅行するための研究旅費、それから日本に参りました場合の日本語教育、そういったものの施策を講じております。昭和二十九年以来今日まで年々改善をしてきておりますが、まだまだ受け入れ態勢が十分というところまでいっておりませんが、私どもとしても、いろいろと努力をいたしております。たとえば例をとりますと、奨学金でございますが、これは現在学部の留学生は四万七千円、月額でございます。それから大学院の留学生は、昨年は六万六千円であったのが、現在では月額七万九千五百円ということでございまして、現在の時点でとらえますと、これは大体アメリカとかヨーロッパに比べまして奨学金の金額では欧米並みというところまで、やっとおかげさまでこぎつけたわけでございます。  なおそのほかに宿舎の問題、あるいは帰国後のアフターケアといいますか、フォローアップの問題、こういった点も私どもとしても及ばずながら努力をいたしておるわけでございます。私どもの外郭団体でございます日本国際教育協会というところから年間帰国留学生に七千冊、日本で専攻した分野のいろいろな学会誌とか専門誌を送っておりまして、非常に喜ばれておるわけでございます。アフターケア等につきましては、なお、さらに努力する必要があろうかと思います。なお、四十七年度の予算におきましてもいろいろと拡充策を講じておりまして、まず留学生の数の問題でございますが、これは受け入れ態勢の整備を勘案しながら数をふやしませんと、一気に数をふやしますとかえって十分な教育、世話がみられないままに帰国することになるということで、逆効果になりますので、日本大学の受け入れ態勢をみながら数をふやしておるわけでございますが、昭和四十六年度で受け入れ数が三百五になっております。四十七年度には大学院レベルをさらに六十五人ふやして三百七十人ということで、数をふやしております。奨学金の金額としても、大学院レベルの優秀な学生をさらに日本へ勉学に来てもらうということで、昨年度六万六千円を今年度は七万九千五百円に引き上げたわけです。さらに、新年一度の事業といたしましては、大学に入ったあと、やはり学力――日本語が不十分である等のために、とかく日本大学での教育についていけないという面もございますので、チューター制度というのをとりまして、マンツーマンで大学院の学生などをこれにつけまして、学力を補っていくという制度を新年度から予算で計上してございます。さらに、日本人の家庭との交流をはかるという意味で、日本人家庭との交流に要する経費も、若干ではございますが、新年度予算で計上してございます。  また、私費留学生についてでございますが、これはそれぞれ自分の希望する大学にあらかじめ入学希望を出して認められる。あるいは国際学友会などの日本語学校で一年程度勉強をした上、日本の志望する大学に受験をするという制度がございますが、この私費留学生につきましても、現在文部省関係では医療費補助――やはり、日本へ来て病気になった場合一番お困りになっているようで、医療費の補助というものを昨年度から五割補助を行なっておりまして、これも私費留学生の、いわゆる正規の学生だけに限られておったのでございますけれども、新年度からは研究生などのいわゆるノンレギュラー・スチューデントにまでこれを拡大するという方向で改善策を講じております。  以上でございます。
  51. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに、いまの御説明にもありましたとおり、受け入れ態勢が不備なために、あるいは要望に十分にこたえられない。その受け入れ態勢の持つ欠陥とされておるものはどういう問題がありますか。
  52. 植木浩

    説明員(植木浩君) いろいろございますけれども、まず、やはり日本の留学生制度は欧米先進諸国の留学生制度と比較いたしました場合に、そこに条件の違いがまずあるわけでございます。先生も先ほどおっしゃいましたように、日本語教育の問題がまずあると思います。アメリカフランスイギリスなどに留学する場合には、大体すでにそこの国のことばを日常使用しておるもの、あるいはすでに高等学校レベルからかなり勉強しておるもの、そういうものがそれぞれ留学するわけでございます。それでもことばの問題というのは最大の問題になっているようでございますが、日本の場合は御承知のように、それぞれの母国においては日本語を勉強する機会というものが、まあいろいろ努力はしてきておりますが、まだまだ十分でないということで、日本語教育の問題というのがまず受け入れ態勢の基本的な問題であろうと思います。  それから二番目には、やはり国によって教育制度が、特に後期中高等教育の制度がいろいろと異なっておりまして、たとえば日本で経済学を専攻するという場合に、数学を現地の国でやってこないまま来る者が多くおるわけでございまして、そういう場合に非常に日本で経済学を勉強する場合に負担がかかるというような、教育面での学力のギャップというものがございます。  それからさらに、日本へまいりました場合に、やはり生活環境といいますか、宿舎といいますか、そういう点で問題がある。  それからさらに日本大学がまだまだそういう留学生を大ぜい受け入れたという経験が浅いというような点があげられるかと存じます。
  53. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに日本語の理解というものが人によってもたいへんむずかしい。それがまず解決されることが大前提である。そういう意味を含めて、たしか文部省の四十七年度の予算では日本語教育の振興として一億一千万ですか、計上しているようでございますが、こうなると、この金の使途については、ともかくこうなりますと、基金のほうとダブリはしないかという問題があるわけです。その辺は別に調整をとらなくてもそれなりの各省でやってきた現在の方針に基づいて、やはりこれからも、先ほどの福田さんの御答弁のとおりに、いま直ちにということはたいへんむずかしいので、将来はこれがあるということで日本語の普及については、整理、あるいはその窓口を一本化するということも考えるというようなにおいのお話だったように思いますが、そういうように、予算がダブっても全然その運営について支障がないのか、その辺はいかがですか。
  54. 加川隆明

    政府委員加川隆明君) いまの御指摘の点でございますけれども、私どものほうの日本語の普及というのは、むしろたとえばただいま東南アジア一つのティーチングチームというものを出しております。一人のプロフェッサーと二人のアシスタントを三人で一組にして出しておりますが、そういうような形で日本語の普及をやっていく。それから文部省でおやりになっているのは、私どもの了解するところでは、日本語をどういうふうに教えるかというメトーデ、そういうようなものもやっていただかないと困るわけで、そういう点に重点を置いていただく。そして文部省と私どものほうで日本語の先生を出すというような場合には、もちろん文部省にお願いをして、文部省で選定して出していただくというのが現状でございます。したがって、日本語教育に関しては、この基金に言う日本語の普及というものに関しては、先生のおっしゃるようなダブリは必ずしもない、こういうふうに考えております。
  55. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これに関連して考えられることは、いま海外において、私の知っている範囲では五つ六つ文化会館ですか、できているようでありますし、それに対してはいままで政府が若干の補助も行なってきたという経過があるように記憶しております。こうした海外日本普及という、これも見のがせない、留学生とやはり同じウエートを持つくらいの重要性があるのではないか。したがって、今後海外との交流をはかる場合に、いろいろ最初重点的に考えもして進められていくであろう、こういうふうに想像するわけですけれも、何といってもやはり日本先進国になった以上は、あらゆる面の機会をとらえて、日本理解というものを深めていかなければならぬということは、当然過ぎるほど当然であります。たとえば中南米あたりを見た場合でも、ブラジルでしたか、たいへんりっぱな文化会館ができている。こういうことで、日本人が管理運営している文化会館だけではなくして、あるいはニューヨークにあるジャパンソサエティですか、そういうものについても当然連携をとって、これからの交流についての役割りというものを果たしていくであろう、こう思うのですけれどもね。その文化会館等の施設を通じての日本語教育の普及といいますか、この点については、今後の構想としてどんなふうに考えていらっしゃるのか、承りたい。
  56. 加川隆明

    政府委員加川隆明君) ただいま御指摘の点は、私たちもいま文化会館を、この基金大臣のおっしゃるように、あるいは客先生方の御協力で千億ということになれば、七十億円程度の金がコンスタントに入りますので、そういう段階になればロジスティックスをふやしていく。それから海外文化会館あるいは文化センター、こういうものをふやして、そしてそれを拠点に日本文化、あるいはただいまおっしゃいました日本語をやっていくということを考えています。ただ、ただいまのところは、先ほど申し上げたとおり基金としては一億七千五百万円しかございませんので、まあ事業費としては結局五億になりますけれども、ちょっと文化会館を建てるというのにはお金が足りないので、この二、三年のうちにはそういうことで考えていきたい、こういうふうに考えております。
  57. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まあこの種の問題についてはこれからも、この法律案が成立した後に、その経過というものを見守りながら、そのつどそのつどお尋ねをしていかなければならない性格のものであろうと、こう思います。ただここ二、三年考えてみますと、一億数千万円じゃ何にもできないんじゃないか。職員五十五名というふうに私伺っていたのですが、おそらく人件費あたりにほとんど持っていかれちゃうのじゃないか。あと一体どういう事業ができるんだという、ちょっと心配が出てくるんです。ここに、海外日本の紹介をするためにいろんな資料等をそれなりのところへ送付をしてPR活動にもつとめるというふうに出ておりますね。はたしてそういうことが円滑に、出発早々から挫折感を味あわされるようなことであってはまずいんじゃないか。せめてどういう範囲からこの交流目的に沿うた事業が進められていくのか、この辺はどういうふうにお考えになっていらっしゃるのですか。
  58. 加川隆明

    政府委員加川隆明君) ただいま一億七千五百万円と申しましたが、これに先ほど申し上げましたとおり三億何がしの補助金を今年度は出しますので、事業費としては五億になります。それで、ただいま御指摘のありました管理経費、これは約一億、したがって、四億の事業費があるわけでございます。その四億でここにあげてあるような事業をやっていきたい、こういうふうに考えます。  なお、民間からの寄付も考えておりまして、お願いしているわけでございますが、そういうものがありますと、それがまた事業費の中に入ってくる、こういうことであります。
  59. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま民間からの寄付という話も伺ったのですけれども、当初何か百億ぐらいの寄付を目標にされていたのが、いつの間にかしりつぼみになっちゃって、最近は一億から五億ぐらい出してもらえばいいのではないかという話があるのですが、その辺は期待してよろしいのですか。
  60. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 民間の寄付につきましては、これは初めから民間はそんなことは言っておりません。なかなか渋いことを言っておるわけでありますが、しかし民間も関心を持つべきことである、こういうことで、ただいまお願いをいたしておりますので、何がしかはできると思いますが、これはもう数年前に民間のほうで千億円財団構想というものがあった。これが一向盛り上がらない、立ち消えになった。そういういきさつもありまして、まあ民間のほうではなかなかこの千億円なんというお金はとてもとてもというこういうふうな雰囲気でございますが、とにかくできる限りお願いいたしまして、不況下ではございますけれども、まあせいぜい奮発してもらいたいと、いま話をしているところであります。
  61. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 本案に対する質疑は本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十四分散会      ―――――・―――――