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説明員(磯崎叡君) 昨晩の新幹線の事故はたいへん影響が大きく、非常に
関係の多数の方々に御迷惑をおかけいたしまして、まことに申しわけないと思います。
ただいま御質問でございますので、概略につきましてなるべく簡単に御
説明申し上げますが、ただいまちょうど現地へ昨晩から派遣いたしました技術者が戻ってまいりまして、パンタグラフあるいは架線の切断面等を持って帰っております。いまの時間、本社でもって電気
関係担当の
山口常務理事並びに技師長を中心といたしまして、架線・パンタグラフ事故対策
委員会というものをつくりまして、現在究明中でございますので、ただいまの段階で私から具体的な原因につきまして申し上げる段階ではございませんが、まず事故のあらましにつきまして申し上げて、その後の復旧
状況並びに本日の
状況について御報告さしていただきます。
昨日・五月十七日十七時四十三分、新幹線の静岡−三島間におきまして、岡山発の東京行の第68A、ひかり68号、現車十六両をもちまして静岡駅を定時に通過いたしまして、時速約二百キロの力行運転中に、東京起点百三十キロ五百メートル、静岡から三十七キロ東京に寄ったほうでございまして、行政区画は静岡県吉原市内でございます。その付近で突如電気がとまりまして、非常ブレーキが作用いたしまして、そして百二十八キロゼロメートルでもって停止いたしました。運転士はすぐ無線によりましてCTCに連絡いたしますとともに、運転士二人、車掌四人乗っておりまして、合計六名の乗務員が乗っておりまして、協力いたしまして
車両の
状態を調査いたしましたところ、十六両編成の八個のパンタグラフが全部破損しておりました。とてもこれは応急処理ができないということでCTCにその
状況を連絡し、また万が一の事故もおもんばかりまして、電気
関係では付近のセクションの停電をいたしました。また架線が約一・四キロメートルの間でたれ下がっておりました。そして、その他碍子あるいはブラケット等が相当破損をいたしております。また電車の架線の柱一本が曲がって損傷しておりました。パンタグラフは合計八個ついておりましたが、パンタグラフの第一、第二が小破、第三、第四、第五、第六の四つが大破、それから第七、これがこわれて落ちております。第八が大破いたしまして、二両目から一両目
——最終の車の上に乗っております。こういう事故でございました。
実はパンタグラフの事故は、御承知のとおり昭和三十九年に新幹線が開業いたしました直後、非常に続発いたしたことは御記憶のことかと存じますが、その後いろいろパンタグラフ自身並びに架線のほうもいろいろ研究いたしまして、四十年にはほぼ修理を終了いたしました。四十三年に一回でございましたとれども、その後今日までパンタグラフの事故は一ぺんもなしに過ぎておったわけでございますが、突如としてこういう大事故が起こりまして、非常に実は純粋に技術的な問題としていま検討し、いろいろ対策を考えている次第でございます。
先ほど申しましたとおり、目下まだ現物を目の前にいたしましていろいろ検討しておるところでございますが、いまのところ結局は、パンタグラフ自体、すなわち第一位のパンタグラフ自体に何らかの破損が起きて、そしてそれが小破しまして、それによって架線が波を打って次々とパンタグラフがこわれたという原因か、あるいは何らかの事情によりまして架線のほうに故障があって、そして、それにパンタグラフが引っかかってこわれた。結局架線側か、パンタグラフ側か、どちらかの原因であろうということだけは推定されますけれども、いまのところ打痕すなわち打ったあと、あるいは油等がいろいろついておりまして、これを物理的に、技術的に検討すれば、おおよそのことは結論が出るというふうに考えておりますが、何といたしましてもここ数年間、ほとんどこの種事故がなくて過ぎて安心いたしておりましたが
——また十六両編成になりましたときにも約一カ月間現車のテストをいたしまして、十二両の場合と十六両の場合と、パンタグラフの、架線の何と申しますか、振動に対する影響等もずいぶん検討いたした結果、十六両運転をしたわけでございますが、その後初めてこういう事故が起こりまして、どちらかに原因があることは、これはもう明白でございます。したがいまして、パンタグラフ自身の問題だとすれば、これの強度の強化あるいは取りかえ等を行なう。現時点におきましては正規の期間内の修繕、検査等は全部規則どおりやっている、また架線のほうもちょうど昨日見回りをした直後であるということでございますが、現物を見た上で物理的に検討するということに相なると思います。いままでの
——昨日の例ではございませんが、いままでの例で申しますと、大体第三位並びに第四位のパンタグラフの故障が一番大きいというようなことが過去の実態から出ております。これは、三、四、五、六と大破いたしまして、七位が落ちているということでございまして、若干いままでの経過とは違った点もございますけれども、これはやはりそのときの事情によりまして、あるいは架線の
状態によってこういう結果が出たのではないかというふうに思われる次第でございます。
なお、この付近が公害地帯ということでもって、何か非常に架線の腐食がひどいというふうなことも新聞等に
見えておりましたけれども、けさの報告によりますと、架線の切断面は非常にきれいで新品と同様であって、そういう腐食の事実は認められなかったというふうに申しておりますが、これもけさの電話報告でございますので、まだ詳しく申し上げる段階になっておらないわけでございます。
次に、復旧の
状況でございますが、御承知のとおり三島には私どものほうの小さい
車両の基地がございますので、幸い三島に近かったために早くこの電車を三島の基地に収容してしまいたいということでいろいろ作業をやっておりました。何とかパンタグラフをゆわえつけて、そして、引っぱっていけないかということをやりましたけれども、それまでに三島から人が車で参りまして十九時二十八分から約一時間かかりまして八個のパンタグラフをしばりつける、あるいは落ちたものを拾い上げるという作業を終わりまして、そしてその区間だけ電気を通しまして、三島から持ってまいりました電車を、上り線を逆運転いたしまして、そして十六両の電車を引っぱりまして三島まで連れてまいりました。その間、実は下り
列車は運転できたわけでございますけれども、片一方で事故の復旧をやりながら運転をすることは非常に危険でございますので、二十二時まで下り線をとめておったわけでございます。上り線は二十二時十八分に一応開通いたしました。そして先ほど申しましたとおり十六両の電車をほかの電車で引っぱりまして、三島まで持ってまいり、そして三島の駅でもって
お客さんにおりていただきまして、二十三時五十八分に三島からほかの電車でもって東京まで帰っていただいた、こういう事情でございます。その後一ぺん電気を切りまして、そして再度上り線の復旧をいたしまして、結局けさの一時二十六分に復旧作業のため饋電を停止いたしまして、けさの午前二時二十五分に完全に上り線が復旧した、こういう次第でございます。このためにその付近で下り十五本、上り二十六本の電車が抑止と相なったわけでございますが、指令といたしましては極力駅にとめる。駅にとめませんと、いろいろ問題もございますので、極力その際には駅に
列車を停止させるという手配をとりましたが、この事故を起こしました電車及びその二個編成の電車は前の駅を出てしまったあとで、一編成はトンネルの中にとまったという事実もございまして、その後部分的に電気を通しまして、それをうしろに引き出すというような作業をいたしたわけでございます。その他、下り
列車につきましては、この下り電車からさらに北陸に行かれる方等もございますので、在来線につきましては北陸線あるいはもちろん東京都内の各国電、あるいは三島−静岡間、東京−大阪間等に臨時
列車を運転いたしまして乗客の収容につとめたわけでございますが、大部分の
お客さんはもう乗りかえはめんどうくさいと言われて、早く直せというようなお話でもって、あまり乗りかえた方はおられなかったようでございます。なお、食事その他の手配につきましても極力いたしましたけれども、大体
お客さまは十七日の分が約五万人、十八日の分が約一万人というふうに推定されておりましたが、このうち給食を差し上げた方が約一万人、
列車本数にいたしまして十三本という
状況でございます。そのほかに約四千人分のパン等を準備いたしたわけでございます。なお、払い戻しの金額は約五千万円でございます。
きょうの影響といたしましては、物理的な影響よりもむしろ東京駅上り電車が非常にとまっておりまして、東京駅の発着が非常に時間がかかるということで、結局東京駅のホームが二面しかございませんので、東京駅のホームの収容できる範囲で
列車を出しましたために、本日も若干まだ運休本数が残っております。きょうは一応の見込みで下り八本、上り七本の運休をする予定でございますが、実際は十本ずつぐらいの運休になってくる見込みでございます。しかし、これは先ほども申しましたとおり、事故、故障ではなくて東京駅の発着能力の問題でございますので、これは徐々に解消してまいるというふうに考え、おおむねきょうの夕刻からは平常ダイヤに復する。こういうような見込みでございますが、若干のおくれはあるかとも存じます。
以上簡単に申し上げましたけれども、冒頭に申し上げましたとおり、まだ原因その他については明確にいたす段階ではございませんが、極力あらゆる技術力を動員いたしましてこの種事故の絶滅、もし物理的に対策が立てられるものならば、もちろん物理的対策を立てるということをいたしまして、そうしてこの種の事故が一切起こらないようにいたしたいというふうに考えている次第でございます。
いずれにいたしましても、国会議員を含めまして多数の方々に御迷惑をおかけしたことを申しわけなく思っております。
以上たいへん簡単でございますが、御報告を終わります。