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1972-03-30 第68回国会 参議院 運輸委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月三十日(木曜日)    午後一時四十八分開会     —————————————    委員異動  三月二十一日     辞任         補欠選任      森中 守義君     野上  元君  三月二十三日     辞任         補欠選任      野上  元君     森中 守義君     ————————————— 出席者は左のとおり。   委員長           木村 睦男君   理 事                 鬼丸 勝之君                 山崎 竜男君                 森中 守義君   委 員                 岩本 政一君                 江藤  智君                 岡本  悟君                 橘  直治君                 平島 敏夫君                 伊部  真君                 瀬谷 英行君    政府委員        運輸政務次官   佐藤 孝行君        運輸大臣官房長  高林 康一君        運輸省鉄道監督        局長       山口 真弘君        運輸省自動車局        長        野村 一彦君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田善次郎君    説明員        日本国有鉄道総        裁        磯崎  叡君        日本国有鉄道電        気局電力課長   大槻 国秋君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○運輸事情等に関する調査  (白ナンバートラックの取締りに関する件)  (総武本線の追突事故に関する件)  (国鉄ダイヤ改正に関する件)     —————————————
  2. 木村睦男

    委員長木村睦男君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  理事補欠選任についておはかりいたします。  委員異動に伴い、理事一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行ないます。選任方法は、先例により、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事森中守義君を指名いたします。     —————————————
  4. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 次に、運輸事情等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 伊部真

    伊部真君 運輸省に質問いたしますが、自家用トラック営業行為について、これはかなり前から問題になっている事項でありますが、いま、その状態について運輸省として掌握されておる範囲内をお聞かせいただきたいと思います。
  6. 野村一彦

    政府委員野村一彦君) いわゆる自家用自動車営業用に供する俗に白トラといわれておりますが、そういう自家用自動車営業行為をやっておるという例は、実は非常にこれは不都合なことでございますけれどもかなりといいますか、ある程度あるという実情を私ども承知いたしております。ただ、この全貌につきましては、私ども、地方の陸運局におきましてある程度街頭取り締まりを行なっておりますし、また、各県の警察に、道路交通法取り締まりに関連をして道路運送法取り締まりをやっていただくようにお願いをして、これまたかなりの成果をあげておりますけれども自動車の普及に伴いまして自家用車というものは非常に数も多くございまして、これが取り締まりについては私ども必ずしも十分でない、というよりむしろ非常に不十分な点が多いということは、これはもう率直に認めざるを得ないと思います。どのくらいのものがあるかというお尋ねでございますが、私ども残念ながら、ただいま的確に、どの程度違反があって、それをどの程度のパーセンテージで私どもなりあるいは警察で取り締まっているかという数字は持っておりません。ただ、これはまあこういう席で申し上げるのはなんでございますが、先般、先生現地調査においでになって一部その事情を実地にごらんになったというふうに承っておりますし、また、私どももその現地調査をした団体方々からいろんなお話を聞いておりますので、そういう意味で、この対策は今後ともさらに強力にやっていかなければならない、これは私どもだけでできない面が非常に多うございますので、一そう警察協力を得てまた荷主さんの協力を得て、これを絶滅するように少しでも努力したい、かように思っております。
  7. 伊部真

    伊部真君 いま話の中にも出ましたが、私もある部分では現地へ行ってまいりました。これは私が直接行ったところではありませんけれども、しかし、衆議院の先生方あるいは主婦方々協力を得て、一つ東京深川、俗にいう木場のほうに一グループが参りまして、その報告を私が受けたものでありますが、そのときに、営業ナンバー車両は三割で七割が白トラだといわれておるわけです。これはここだけではなしに、巷間伝えられておるのは、東京市場関係はたいへんに白トラが多い。しかも、運輸省のある人に聞いたら、いまのところはもうこれが戦力になっておるというようなことを言れておるわけです。現実営業車が三割で白トラが七割にもなっているという事情について——しかも、これらはほとんどが過積みをしているわけですよね。で、この材木原木のほうの運搬で聞きますと、過積み状況は、十トン車に対して二十トンないしは三十トンというのが普通だというふうに言われておるわけですよ。これは契約内容を見るとそれがもう明らかになりますが、契約内容では、ここらあたりの百キロぐらいの距離といたしますと、一石で三百円という契約です。そうすると、これは三十石で九千。で、これは材木の場合は、ほとんどいわゆる木場から栃木だとか群馬だとか山梨だとかいう製材所へ行って帰るわけですね。大体これが百キロといたしますと、これで一日に水揚げが九千なり一万円。ということになったら、ほとんどの白トラは車の償却だけで大体四百五十万から五百万、それが二年間の償却ということになると、一日当たり計算していくと一万円そこそこだと。そうすると、これは車の償却だけで一万円で、あと燃料費がなくて人件費がない。ということは、これがどこから出てくるのかといったら、ほとんどこれはあとの過積み分の十五トンないし二十トン——十トン引いたものですね、これで行なっているというんです。これは安全面からいっても、あるいは輸送秩序の面からいっても、こんなことが放任されておってこれで事故が起こったらどうするのだろうか。過去にも何回かこれが問題になりまして、材木の場合、ロープが切れて下敷きになった主婦がおられるわけですね。だから、こういう状態が歴然と——契約事項でも過積みをされておるということが明らかだし、七割も白トラがおるということが明らかなのに、私はどこに問題があるのか知らぬが、運輸省のほうの取り締まりというのは不十分なように思います。その点について、過去において何らかの取り締まりというのをやられたかかどうかお聞きします。
  8. 野村一彦

    政府委員野村一彦君) 取り締りは、御指摘のように、私どもも非常に不十分であると率直に認めざると得ないと思います。しかし、私どものほうでやりました例を申し上げますと、これは四十五年度の件数でございますが、無免許営業につきまして私どものほうで対象として把握いたしましたのが六百六十件、それからいわゆる自家用自動車有償運送としてやりましたのが千五百二十七件でございます。この中で、使用禁止、つまりそういう違法な行為をした車の使用を停止いたしました件数でございますが、千六百一件、それから訓戒を与えましたのが六百四十六件でございます。それをやりますにつきまして、私ども陸運局あるいは陸運事務所街頭検査をやりました回数は、同じく四十五年でございますが、全国で六百十三回いたしております。大体、これが私どもの直接やりました取り締まり状況であります。
  9. 伊部真

    伊部真君 いまの局長お話ですと、かなり件数としてあるように思うのですけれども、私は、現地で、市場なり木場なりでやられたということをあまり聞かないのですけれども、この深川木場のほうではやられましたか。
  10. 野村一彦

    政府委員野村一彦君) これは全国的な例でございまして、各陸運局別は、いま申し上げました数字の内訳として持っておりますが、深川木場対象になっておるかどうか、ちょっと、ただいまではわかりかねますので、調べまして後ほどお答えいたします。
  11. 伊部真

    伊部真君 それから、いま私は原木のほうを中心に言いましたのですけれども、もう一つグループは、新潟の小牛田へ行きましたが、米の輸送について、これも、いわゆる白トラ白ナンバーというのは半分だそうです。営業車が半分で、自家用営業行為が半分。しかも重量の積載状態を見ますと、営業車は、全然ないとは言いませんが、十一トンあるいは十トン半の車でせいぜいあっても二トンかそこらである。ほとんどの過積みは、倍くらい積んでおるのは明らかに白トラなんです。これは、こまかい雑貨を扱っておるところをつかまえる、というか検査をするのは非常に困難かもわかりませんが、私がいま言ったように、毎日、台数でも何十台という原木あるいは自主流通米を扱っておるところ、何十トンというような大きな扱いをしておるところで公然と白トラがあることを見て、それを見のがしているというのは私は問題だと思うのですよ。これは重要なところで、それは当然に道路運送法によっても一応対象になるわけですし、これは当然に厳格に取り締まる必要があるのじゃないか、それができないというのは私はどうもわからぬので、そのできない理由をお伺いしたい。
  12. 野村一彦

    政府委員野村一彦君) この白トラを追放するための施策として私どももいろいろ考えておりますが、まず第一番に、現場で現に白トラ行為をやっておる事業車といいますか、その違反車を押えるということはむろん必要でございますが、抜本的に考えますと、いろいろな対策が考えられると思います。まず一つは、なぜ白トラが多いかという基本的な理由といたしましては、この白トラをやっております、その白トラ営業——営業といいますか、輸送行為実態を見てみますと、いわゆる営業車につきましては、これは区域トラックと類似の行為をやっておるわけでございます。区域トラックにつきましては従来、現在もそうでございますが、事業の開始は免許、それから運賃認可ということで、数年前までは申請をしてもなかなか区域トラック免許がおりない、したがって正規営業をすることができないという事情があったわけでございますが、私どもいわゆるいろいろな経済情勢変化ということを考えまして、ここ数年来、特に区域トラック、これには先生も御案内のように、昨年の十二月に許認可整理法の中で区域トラックの中に小型トラックを含めましたので、現在では小型トラック区域トラックと一本になっておりますが、これの免許については路線トラックのようなきびしい審査というものをしないで、大体安全の面、それから経営者経営能力、そういう面を考慮して比較的、従来に比べればたやすく免許ができるというような指導をいたしております。これをさらに徹底をさせ、運送事業をやりたいという者につきましてはそういう方針の転換をして、区域トラックについては基準の緩和といいますか、運用面における緩和をして、免許を受けたい者についてはできるだけ実情に応じた免許をするということによって、無免許営業をするということをなくしていきたい。これは従来もやっておりますけれども、必ずしもその方針一般方々徹底していないということで、さらにこれを徹底させて、運送行為をやる人は免許を受けて堂々とやりなさい、その免許は従来のようにきびしいものではないということをさらに徹底させることが必要と思います。  もう一つは、これは運賃にからむわけでございますが、御指摘のようにもちろん白トラは、これは無免許営業でございますから認可運賃があるわけではございませんが、昨年行なわれました区域トラック運賃制度改正におきまして、一つ幅運賃制度、これは上下それぞれ五%ずつであったものを一〇%ずつに上げた、つまり上下合わせて二〇%の幅運賃という制度改正をしたということは、それだけ競争原理運賃の面に導入して、きちっとした確定の認可運賃ではなくて、幅運賃の幅を広げて商売上の、営業上の競争原理を導入した、そういうことによってもっと商売をやりやすくするという改正をいたしました。これもまだ十分一般の方には必ずしもPRが行き届いておりませんが、こういうことをPRをして、商売上、免許の面とそれから運賃の面からも、従来よりももっとその区域トラックについては営業がしやすい形態になっているということを周知徹底をさせて、そしてそれを何といいますか、運送行為をやりたい人は堂々と免許を受けて、運賃認可を受けてやりなさいということをもっと一般徹底さすべきだと思います。  それから、次の第三の点といたしましては、臨時的な措置をとるということが可能でございます。たとえば先生の御指摘材木運送あるいは米の運送というようなことに関しまして、これは特に米の運送等につきましては季節と非常に関係があると思いますが、現在私どもがやっておりますのは、区域トラックにつきましてはいろいろと事業区域の制限その他がございます。しかしながら、たとえば一つ養蜂業ハチでございますが、ハチ輸送をする場合には臨時事業区域の変更といいますか、そういうものをやりまして、ミツバチの運送計画的にやるためにはある一定の臨時措置を講じて、普通は禁止されております区域外営業当該期間に限ってその必要な区域拡張をするという臨時措置を講じております。したがいまして、米などの輸送の場合でも一時に輸送需要がどっと出てきます場合には、あらかじめ、そういうこれは季節のものでございますので、計画的に荷主団体トラック協会とが話をして、そういう必要に応じて、たとえば現在の区域外営業を認めるような臨時的な区域拡張を行なう、そういうような抜本的な措置、これは講じようと思えば私はある程度講じることができると思いますので、いま申し上げました三つの点をさらに今後推進していくということでございます。   〔委員長退席理事鬼丸勝之君着席〕  それからもう一つは、やはり警察と私どもが一体となって街頭取り締まりを強化する、こういうことであろうと思います。それからさらに一般的な方向といたしましては各荷主団体お願いをして、そういう無免許営業白トラを利用しないようにお願いしなければならないと思っております。私ども調査したところによりますと、現在トラック台数におきまして、自家用トラックのほうは営業トラックの十数倍の台数になっております。しかしながら運んでおるトンキロからいきますと、ほぼフィフティー・フィフティーであります。そういう意味からも、総計上から申しましても、自家用車で運ぶことのほうがコスト高となることは歴然としておりますので、もちはもち屋といいますか、そういう意味輸送秩序を保つ上からも、安全性の上からも正規免許を受けたトラック業者が運ぶように、いま私が申し上げましたようなことをさらに徹底していかなければならない。現在遺憾ながらそういう措置は必ずしも十分でないということは御指摘のとおりでありますので、その点をさらに強化してまいりたい、かように考えております。
  13. 伊部真

    伊部真君 いま言われた内容について私かなり異論があるんですけれども、これの議論は差し控えたいと思いますけれども、いずれにしても最近の営業車保有率というものは過去十年間から見ると非常に落ちておりますね、輸送量からいきますとそんなに落ちておりませんけれども日本の場合には現在はもう六・七%といわれておりますね、たしか四十五年ですか。一時は八%程度でありました。この数字は欧米の各国を見ましても非常に低いわけです。これは営業面にも問題がありましょう、営業車のほうにも欠陥がありましょう、いろいろな原因がありましょうけれども一つには、やっぱり形の上では営業車が少なくなって自家用車がふえておるということだけれども、見ようによっては白トラのほうを放任しているから、名目上の営業車が減っていって、事実上あまり変わっていないということになるのじゃないか、私はそんな気がするわけです。いまのような状態に置いておきますと、ますますその傾向が強くなってくる。私はもっと端的に言いますと、いまの取り締まりの問題については道路運送法上からいってもいろいろ罰則規定があるけれども罰則の適用が具体的に行なわれたということはあまり聞かないし、その効果はあまりこの面では、いわゆる輸送秩序の面では効果をあらわしていない、この面では、明らかに運輸省輸送秩序という面では形としてはないのではないか。そういう状態の中で、いま局長が言われたように、これは自家用が出てくるのは免許制度について窮屈だからそれが多いのだということ、その免許制度について幅を広げればなくなるということは私は間違いだと思う。それなら増車とか、もっとむしろ指導を強めていけばいい。指導も、あるいは誘導もないという状態なんです。いま秩序の面では、現実白トラがあれだけはびこっておって、七割が白トラで三割が営業車ということです。聞くところによれば、取り締まる人間がおらないからということです。おらないからやらないということは、ないということです。ない状態の中で免許制度を拡大していくということによってなくなるというよりも、むしろそのことによって運輸行政の手のつかないところを合法化するのではないんですか。われわれは手がつかないからやむを得ないんだと、それはどんどん免許を与えていくことによって一台一台のものを自由にやらせるということは、白トラをなくして営業車ナンバープレートにかえるということと同じで、実態は何にもならないことになるんじゃないですか。だから私は、いま言ったような問題について免許自由化、あるいはゆるやかにすることによって白トラの問題について何らかの寄与をするなんということは、私は間違いだと思うんです。むしろ、これはいわば、ことばは悪いですけれども運輸行政が足らぬところは、それは自分のほうの責任ということがそこにおって救われると、責任がそこにおって、形では合法化されるというようなことが考えられるんじゃないかというふうに思えてしかたがないんですがね。その点、もうひとつ明らかにしてください。
  14. 野村一彦

    政府委員野村一彦君) 先ほどの免許の点で、あるいは私のことばが足らなかったと思いますが、これは無秩序にもちろんどんどん免許するという意味ではございませんで、区域トラックにつきましては路線トラックに比較して、この免許と同じ免許制認可運賃制をとっておりますけれども、その運用面において、その緩和といいますか、従来これを緩和をしてまいった。このことによってだけでもちろん白トラがなくなるなどとは私どもは思っておりませんけれども、いろいろ各陸運局聴聞をいたしまして、実情調査いたしますと、白トラ違反聴聞をいたしますと、なかなか免許がおりない、したがってこれはやったんだというようなケースかなり多うございます。したがいまして、これの指導といたしましては、私どもは過去において無免許営業をした者については、聴聞でわかれば、それは車両使用停止等行政処分をやった上で却下して、そしてさらにあらためて免許申請を出さして、そして次の機会にこれが適当であれば免許をするということによって、かなりそういうケースを何といいますか、カバーをしておる実例がございます。もちろんこれは全体から見ればそう多い数ではございません。したがいまして、ただ免許を乱発するという考えではもちろんございませんで、ともすれば新免を抑制をしてきた、極端なことばで言いますと、従来、区域トラックについても、あるいは小型トラックについても、非常に新免を制限してきたということは、そういう面では社会変化の要請によって、これは運用上、路線トラックに比べれば、同じ免許といいましてもこれを許可的に運用していくということによって、ある程度そういう無免許を、営業に走るものをカバーすることができるんではないかということでございます。もちろん免許をする業者につきましては、これは現在の制度のもとにトラック事業者としての何といいますか、経営能力を見ますし、それから資金計画を見ますし、それから労務管理も見ますし、それから営業所といいますか、そういう計画も見た上で審査をするわけでございまして、そういう意味では、これは私ども行き過ぎにならないようには十分注意をしなければなりませんが、そういう意味で申し上げたわけでございます。したがいまして、この白トラというものに対する私どもの考え方は、取り締まりはもちろん必要でございますし、お説のように今後もっと強化しなければならないと思いますが、やはり取り締まりだけでは、これはなかなか根絶しきれませんので、やはりこれは荷主団体とそれからトラック協会等協力を得て、荷主団体運送を託する貨物というものは正規トラック事業者で運ぶというふうな方法をもっと組織的に考えていくという基本的対策がなければならないことは当然でございます。そういう趣旨で私ども考えておりますので、御了承いただきたいと思います。
  15. 伊部真

    伊部真君 私は、実際問題としては免許がおりないから自家用が、あるいは白トラがあるというのは、これは全くナンセンスの言いわけにすぎないのであって、白トラが起きるというのは何かと言ったら、ちゃんとしたやはり営業免許を持ち、そして設備を持ち、信用を持っている企業ならばいわゆる法的な制裁というものがあるので、その問題をおそれるからやはり過積みがなくなる、過積みが少ないのだと思うんですよ。あるいは、極端な話をすれば車の構造まで変えているわけでしょう、白トラの場合。そういうことが営業車の場合は、行なったときあと制裁というものがあるから、これはやはり自重をするだろうと思うのですよ。それが白トラの場合は取り締まりがないから、したがって、過積みで十トン車に三十トンも載せるというようなことが平気で行なわれている。極端なことを言えば、いま東海道をストップしたら、あの中で空車は別にして実入りの車だったら、雑貨以外はもう八割までは超過をしているのじゃないか。調べてみたことはありませんが、一ぺん私はぜひ協力を願って、陸運局なりあるいは警察庁に御協力願って一ぺんやってみたいと思う。車が走っていて、法の秩序というものが確立されている中で、それをやるのが八割もあるということがあるとすれば、これは、そのことについて取り締まりをしていくというのは私は当然のことだと思う。それが陸運局のほうの人員が不足だからといって、そのことが理由で放任されてどんどんこんなことが大きくなってくると、輸送秩序というものはどこによって守られるのかというふうに思えるわけです。  もっと突き詰めていけば、今日まあ国鉄運賃の問題が議論になりました。これはそのときに当然議論しなければなりません。国鉄運賃、特に貨物料金をあげたからといって、いまのような無秩序な過積みがどんどん行なわれて、自動車のほうにそういう大きな穴があるときに国鉄貨物料金を上げたからといって、国鉄のほうの収入がふえるというようなことは、これはちょっと疑問だと思うのですよ。それはここに問題がある。自動車の場合には認可料金もあるし、あるいは過積みに対する制裁規定もあるのに、その辺が全く底抜けだから、私はそこに全体の輸送秩序が乱れ、そしていまの貨物秩序というものに非常に大きな乱れがきていると思うのですよ。したがって、過積みの問題なんかも、これは安全の面から議論がございますけれども、きめられた十トン車に三十トン載せるということは三分の一の料金で運ぶというのですわね。だから、そういうことになってきたら、貨物認可料金というものの体系がくずれてしまっているし、それから安全面からいってもこれはくずれているのですよ。そのくずれている大きな原因は何かといえば、それは業者の小さいこともありましょう。二万からの地域だとか、あるいは木場や小牛田の業者を入れると一万六千とか二万といわれるその業者の分断ということもありますが、同時に、それと同じような形態で、いわゆる白トラがあるために、運輸省指導も、業者がある程度かたまっておれば誘導もでき指導もできる、あるいは罰則の適用もできるけれども、いまのような二万からの分断された単位になったら、そこに問題があるのじゃないですか。そうだとするならば、やはりむしろ免許制度の問題については、中身について企業統合だとか、そういうことに重点を置かれるのがあたりまえで、免許をゆるやかにしたら、これは白トラがなくなったり秩序が回復できるということは、私は間違いじゃないかと思う。これは横道にそれますけれども、そう考えるので、白トラ問題というのは、私は単に、いま原木にこれだけある、米のところにこれだけあるという問題だけでなしに、やはり日本輸送秩序の問題に大きな影響を与えるわけですから、具体的に白トラ取り締まりをする方法についてひとつ明らかにしてもらいたい。いままでどおりなら私はだめだと思うのです。いままでどおりなら、いままでと同じですからますますふえます。これじゃいかぬと思うのです。だから輸送秩序全体から見ても、あるいは安全面から見ても事故が起きてからではおそいのですから、その点の方法について見解があるなら聞かせていただきたい。
  16. 野村一彦

    政府委員野村一彦君) 先生指摘のように、いわゆる白トラの中には——一般営業車にもかなりあるわけですが、白トラの中には特に過積みが多いということは御指摘のとおりでございます。で、私どもは過積みの問題白トラであろうと営業トラックであろうとこれは安全上問題がありますので、これを有効に防止する方法、また、これを取り締まる方法についてはいろいろ検討をいたしております。  まず第一番に、先生御案内のように、ダンプカー等の一定の大型車には自重計というものの装着を義務づけておりますけれども、なかなか自重計の精度というものが現在必ずしも正確ではない、かなり誤差があるということでございます。したがいまして、これにつきましては、通産省、それから警察、それから自動車メーカー、私どもの技術者、そういう者が集まりまして、昨年来数回会合を開きまして、自重計の今後の、何といいますか——大型貨物自動車過積防止装置研究委員会というものを、これは法律に基づく正規団体じゃございませんが、こういうものをつくって自重計精度の向上というものをいろいろ研究しております。まだこれは最終的な結論が出ておりませんし、いろいろ技術的に問題がございますが、まあこういうものを、有効なものを研究開発して、自重計の装着ということによって過積みを客観的に発見できるというような措置を講ずるようにしたい、これをさらに強化していきたいということが過積み防止でございます。  それから、先ほど先生おっしゃいました白トラについては、行政処分がないというふうに私お聞きしましたけれども、これはそういうことじゃございませんで、私どもが、先ほど申し上げましたいわゆる白トラ行為をやった自家用車については行政処分をやっております。ただこれは発見をして現場を押えたもの、あるいは証拠をつかんでこういう事実を確認したものについて車両使用停止ということで、そのナンバープレートを取り上げて一定期間その自家用車というものが動けないように、法的に動けないようにするという措置はやっております。ただこれはその発見率が非常に少ないというので非常に不十分でございます。で、これにつきましては今後どうするかというお問いでございますが、私どもはさらに一般の市民あるいは荷主団体あるいはトラック協会——営業車をやっておりますトラック協会、そういうところの御協力を得て、たとえば通報制というようなことを考えて、営業行為をやっておる白トラにつきましてはその実態を少しでも多く把握するというような体制を組織的に考えていかなければならないということでございまして、この点について私どもさらに今後そういう協力体制、白トラを防止しあるいは発見するというような広範な組織的な協力体制をつくるということを考えたいと思っております。  それから、この免許の問題になって恐縮でございますが、多数の免許した業者がおって非常に輸送秩序が乱れるのではないかという御懸念に対しましては、もちろん私どもは、免許をした事業者につきましては、それがそれぞれの地域のトラック協会に加盟をしてやるということのほかに、現在やっております中小企業対策として特に小規模の業者に対しては共同化あるいは協業化ということを進めております。まだ残念ながら構造改善事業までは至っておりませんけれども、近代化対策は一応五カ年計画でやったこともございまして、そういう意味の既存業者の組織化あるいは共同化というようなことはこれからさらに進めたいと思います。そういう意味でこれは対処していきたいと思います。  それから、いわゆる白トラの現場取り締まりにつきましては、御指摘のように私どもきわめて不十分である、これはもう冒頭申し上げましたように認めざるを得ません。ただ私どもとしては非常にこれは弁解になりませんけれども、各県の陸運事務所輸送課の職員というものは非常に少のうございますし、ほかの課の職員を動員いたしましても非常に少ないものでございますが、これはさらに時期、時期に応じまして街頭指導を強化する。もちろん定員の要求もこれはいたしますが、そういう意味でもっと指導体制を強化しなければならないというふうには考えております。ただ私どもの役所の性質上、これはどうしても指導ということが唯一の仕事ではございませんので、そういう意味でやはり警察の機関の御協力お願いをして、従来よりも一そう有効に相互の通報体制なりあるいは街頭の現場の管理体制というものを強化するということは、従来以上に警察協力を得たい、かように思っております。いずれにしても、いままで先生が御指摘になりました白トラ行為については、私ども最も頭の痛いことでございますので、これはひとつあらゆる方法を講じてこれの違反の防止及び発見という体制をさらに強化したいと思っておりますので、よろしくお願いします。
  17. 伊部真

    伊部真君 それでは具体的に聞きますが、私の報告を受けている範囲内というのは非常に限定されているので少しはへんぱになるかわかりませんが、たとえば木場の問題だとか、あるいは小牛田に限りませんが、米の運搬業務をやっているところ、こういうところで直接監査をする、もちろん警察庁と相談をしてそういうことはおやりになりますか。内容的にいきますと、夜、過積みをしているということもありましょう、あるいは車体を改造しているということもありましょう、あるいは白トラであるということもありましょうが、いずれにしても、これらの営業類似行為の車は本来、夜間運行をやっているんですね。ですから、昼間ちょこっと行かれて見たからといってわかるもんじゃない。特に夜間運行を隠れてやっていて、それが七割もあるということについては、私はむしろやり方として悪質だと思うのですよ。したがって、こういう問題については、少しは輸送上問題になるかもわかりませんが、深川のあの木場のところなんかとか、そういう重要な点で、たとえ二、三カ所でも押えて、やはり運輸の行政というものが、あるいは秩序維持のために陸運局陸運局としてやっているのだということをはっきりしないと、今後のほかのほうに影響を与えることも大きいのじゃないか。したがって、私はそういうことをすべきではないかと思うのですが、おやりになりますか。
  18. 野村一彦

    政府委員野村一彦君) 具体的な、その監査取り締まり方法でございますが、自家用自動車といえども検査対象でございます。もちろん登録の対象でございます。そういう意味から、私どもが、陸運局としてあるいは各県の陸運事務所として車そのものの検査あるいは登録の面から必要に応じて監査をするということはできるわけでございますが、事業場に立ち入り検査をするということは、これは一般的にはなかなか私は法的にむずかしいと思います。しかしながら、御指摘のように、そういう御調査の結果、特に問題が多いと思われるような事業場につきましては具体的にどういう調査をするか、詳細な、現場に即した監査と申しますか調査をするかということにつきましては、これはいろいろ法的にも検討しなければならない問題があると思いますので、その具体的な方法はこれから検討いたしますけれども、御指摘のような特に大量の、大規模なそういう白トラ行為が行なわれているような事業場につきましては、何らかの有効な調査をするということで具体的な措置を今後検討していきたいと、かように考えております。
  19. 伊部真

    伊部真君 道路運送法の百一条からいくと、当然「自家用自動車は、有償で運送の用に供してはならない。」ということであって、これに対する罰則規定があるわけですがね。したがって、いま局長は、立ち入りが非常にむずかしいと言われたけれども営業類似行為だとか、あるいはこういう有償で営業行為をやっているというふうに目されるものに対して、やはり警察庁等とも連絡をしてやられることは、私は法律的にも問題がないのじゃないかと思いますが、その点はどうですか。そうでないと、この百条から百二条までの間の条文は事実上無意味になりますからね。
  20. 野村一彦

    政府委員野村一彦君) ここに規定があることは御指摘のとおりでございます。これは、たとえば百一条の有償運送の禁止の規定違反をしたという証拠がはっきりしている場合に、百二条にございますような車両使用の停止というようなことをやっております。したがいまして、まあ何といいますか、そういう風評なり、あるいはどうもそういう疑いがかなり濃厚だというだけで事業場に立ち入って、いわゆる現場をつかむということは、これは向こうが任意に承諾すればいいわけでございますけれども、なかなかできませんし、先生御案内のように、各種の法令につきましても、事業場等に立ち入りする場合には、その所定の法律の規定に基づいて立ち入りをする、しかもその行為は犯罪を捜査するものと解してはならないという規定があるように、非常にむずかしいことでございます。もちろん、証拠があれば、これは特に警察の御協力を得れば私はできると思いますけれども、そういう意味でなかなか法律的にむずかしい面があると思います。しかしながら、はっきりした具体的な証拠というものがあれば、たとえばその車のナンバーとその使用者を押えて、それがいつ幾日どこでどういう百四条違反あるいは百  一条違反をやっておったということがわかれば、これはもう当然できることでございます。私が先ほど申し上げたのは、そういう態様に応じて、法律上許される範囲の調査と申しますか監査と申しますか、そういうことをやりたい。  それからもう一つは、自家用自動車につきまして私どもが一番問題があると思いますのは、自家用自動車使用の届け出、特に貨物自家用車使用の届け出ということは、行政上これは指導をして届け出をさしております。そして陸運局でその点は把握しておりますのと、それからもう一つは、自家用自動車協会なり組合なり、これは加盟、脱退は自由でございますから、そういう意味において強制力はございませんが、そういう団体協力を求めて、そういう自家用車営業行為をしないようにということは現在やっておりますが、問題は、そういう組合にも入っていないような自家用車に、あるいはそういうものが多いのじゃなかろうか。その点の実態をもう少し調査をしながら何らかの手段で調査はいたしたいと思いますけれども、いま言いました法律上の問題について手落ちがないようにしなければなりませんこともありまして、具体的には今後すみやかに研究をしたいと思っております。
  21. 伊部真

    伊部真君 いまの問題につきましては、やはり入り方としてはいろいろあると私は思うんですよ。明らかに、だれが見ても十トン車に三十トン載っておればわかることなんですから、過積みをしているということで、そこからも入れるだろうと思います。いずれにしても、堂々と白トラが七割も動いているという実態をほうっておくということは、これは全体に及ぼす影響からいってもよくないと思います、しかも東京の玄関口ですから。これは早急にやはり手を打っていただいて、できればわれわれもこれは別な委員会でもひとつ提起したいと思っておったのですが、われわれのほうも陸運局のほうも、あるいは警察庁も一緒になって、そういう何も木場に片寄ったことはございませんけれども、やはり過積み問題というのは出していかないと、いろいろな意味で私は輸送秩序が立っていかぬと思うんです。したがって、これはぜひひとつ考えていただいて、当面、木場の問題だとか米の問題なんかについて明らかである部分については、さっそくに何らかの処置をして取り締まりをしていただきたいというふうに思います。そうでなければ、これはそこに穴があれば、国鉄にいかに貨物を誘導しようと思っても、三分の一の料金で、しかもそれは普通に安いのならいいですよ、しかしそうではなくて、人命に影響するような、想像以上の過積みによってその競争原理に立たされているということは、明らかに不当な競争原理に立つわけです。そこで国鉄貨物の問題にひっかかってくるわけです。これはそっちに穴があいておったのでは、どんなに国鉄側の問題を議議してもどうにもならぬと思います。ですから、輸送秩序の面からいっても、あるいは安全面からいっても、どうしてもこの白トラ問題は真剣に取り組んでいただきたい。  それから、もしも人手がないなら、よくこれは私自身でもわかりませんが、タクシーなんかで業者が人を出し合って、金を出し合って、そして定期的に自主的に、そういうものについて点検をしている。もちろんこれは警察権はありませんから、警察庁の協力を得て一緒にやらなければいかぬこともあるでしょう。そういう意味で、陸運局の人員が不十分だとするならば、それはそれなりの方法をぜひ考えていただきたい。人手が足らぬから、これは取り締まれないのだということでほうっておきますと、これはもうどんな規定があっても何にもならぬということになります。ぜひひとつそういうふうに考えてもらいたいと思います。その点について見解を伺いたいと思います。
  22. 野村一彦

    政府委員野村一彦君) 先ほど申しましたように、現場についての取り締まりについては、さらに具体的な方法を研究いたしたいと思います。その際、私どもの一番大きな制限は、自動車の所有者あるいは使用者に対しては、これは立ち入り検査かなり、と申しますか、いろんな理由によってできますけれども荷主事業場に行けないということが一つの大きな法律的なネックでございますので、この点はどういうふうにして解決するかということを研究さしていただきたい。しかし前向きに研究いたしまして、何とか御指摘のような例によって示されております白トラの問題については取り締まり体制を強化したいと思います。  それから現場の街頭取り締まりにつきましては、私ども全力をあげて現場にやるように指示をいたしておりますが、これはなかなか陸運局のあるいは陸運事務所の手だけではできませんけれども、幸い各県の警察が非常に協力をしていただいておりますので、そういう意味では私ども人数が少ないなどということは言えませんので、これは今後ともさらに警察との連携を密にしてやりたい。ただ、先生御設例になりましたタクシーなどで、いろいろお互いに取り締まりをしているということは、これは実はタクシー事業者が相互に取り締まりをしているわけでございまして、取り締  まりといいますか、もちろん法に基づくものではございませんが指導をやっている態勢でございますが、いまの問題の場合は、トラック業者自家用車を取り締まるというのはちょっと法律からいいましても問題がありますので、これはタクシーの場合とは一様にいかないと思います。しかしながら、この点につきましても何らかの、警察との通報制度とか、いろんなことをもっとくふうをいたしまして、有効にするような方法、それも先ほど申しました立ち入りの問題と並行してぜひ具体的な措置を至急に検討いたしたい、かように考え  ております。
  23. 伊部真

    伊部真君 私は最後に具体的なことでひとつ注文をつけておきたいと思いますが、先ほど申し上げたような木場だとか、そういった例が明らかなところでは、いつとは申しませんが、ひとつ早急に取り締まりをしていただきたいということです。それから現場での問題が、先ほど言われたように問題があろうと思います。相互にやはり人を出し合うか、物を出し合うか、金を出し合うか、しかし業者がお金を出し合って警察協力するということも私はあり得るのではないか。これは人間が相互にということになるのか、新しく雇用するのか、協力会というような形で——私はよくわかりませんが、いずれにしても人手がないからということなら、それは人手を何らかの形で補てんをするような方法というものを考えていただく。そうでなければ行政というものなど全く、平易に言えば、なめられたような形になってしまう。秩序が乱れてしまう。  それからもう一つは、これはまた別な委員会、別な機会に私からもお願いをしたいと思っているわけですが、過積み問題については別に論議をさしてもらいたいと思いますけれども、いずれにしても、計量器の問題だとか、あるいは車の構造上、過積みをしたときに明らかに電気がつくとかというような、いろんなことがあるわけです。そういう点についての研究もひとつやっていただきたいんです。  それからもう一つ、最後になりましたが、これはトラックに限らず貨車の輸送の場合も問題になっておるんですけれども、われわれのほうで聞いておるのでは、六十キロなら六十キロの荷の米麦が、これが事実何キロか荷増しをされておる、何かよけいに入れられておるということが出ておるわけです。これはなぜかといいますと、たとえば宮城のササニシキのように非常に好評な米と、そうでない米とは、その面で、サービスの面で何か荷増しをされているというふうに聞いておるわけです。そうしますと、これは国鉄の場合でも六十キロとして計算しますし、トラックの場合でも六十キロとして積まれるわけですね。これはいまここでそのことを文句を言っているわけじゃなくて、その点をひとつ考慮をされて——自然な形でいつの間にかトラックでは過積みになったり、あるいは貨車の場合の輸送でも非常に重量的に超過になったために不測の事態が起きたというようなことになってはならぬ。したがってそういう実態について調査をしていただきたい。値段でサービスができないから量でサービスをしてやっているというのを、私は北陸なんかの余升米では聞くわけでありますが、そういう実態についてもひとつお調べを願って、そうしてやはり国鉄輸送の面でも、あるいはそのほかの面でも、ひとつ安全面で留意していただきたい。以上、白トラの問題についての質問を終わります。
  24. 鬼丸勝之

    理事鬼丸勝之君) この際、総武線の追突事故について政府から発言を求められておりますので、これを許します。
  25. 佐藤孝行

    政府委員(佐藤孝行君) 総武線船橋駅構内における列車衝突事故について、その概要を御報告申し上げます。  去る三月二十八日午前七時二十一分、総武本線船橋駅構内において停止、客扱い中の十両編成の電車に後続の十両編成電車が衝突し、多数の乗客に負傷者を出しましたことはまことに遺憾であります。ただいままでの調査によりますと、先行の第六一一C電車は、船橋駅に二分おくれで到着し、客扱い中であり、後続の第七一一C電車は一分おくれで船橋駅上り場内信号機の停止信号によるATSの警報表示を受け、確認扱いを行なったが、警報が鳴りやまないため確認扱いを繰り返すほか、電源スイッチの操作等をしているうち、制動時期を失し、先行電車の十ないし十五メートル地点で非常ブレーキをかけたが及ばず、十五ないし二十キロの速度で追突したものと推定されます。原因は、前述のように、後続電車の運転士の運転取り扱いの不適切により制動時期を失したものと推定されますが、詳細については目下調査中であります。  なお、ATSの警報が鳴りやまなかったのは、当該時分に蕨変電所の故障により、常磐・総武線において約二分間の停電があったためであると推定されます。いずれにしましても、今回の事故は、運転士の運転取り扱いの不適切による人為的事故でありまして、当日、私が現地に派遣されて状況調査に当たったほか、国鉄総裁に対して、運転取り扱い、車両、施設、電気等について安全総点検を実施するよう警告をいたしたところであり、今後このような事故の絶滅について、さらに指導を強化してまいりたいと思います。  なお、負傷者の数は七百五十八名であり、うち入院されている方は三十五名、そのうち二十一名が一カ月以上の重傷でありますが、これらの方々に対しましては、医療、お見舞い、その他について誠意をもって当たるよう指導してまいる所存であります。  以上、ご報告いたします。
  26. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ただいま政務次官から御報告がございましたけれども、一言おわび申し上げます。  去る三月二十八日、総武本線船橋駅構内におきまして、私どもの不注意によりまして多数の乗客に御迷惑をかけ、昨日までにお申し出のあった方全部を含めまして七百五十八名という、非常に多くの負傷者を出しましたことは、まことに申しわけなく、私は責任者として国民に対して深くおわびを申し上げます。  以下詳細につきましては、御質問によってお答えを申し上げます。
  27. 森中守義

    森中守義君 一昨日、実は委員会を開きまして、事のしさいをお尋ねする段取りでしたが、院の諸般の都合で機会を失ったわけであります。そこで、いま政務次官並びに総裁からのこまかなお話がありましたが、これはあと理事会で少し相談をしてみたいと思うのですが、これからひとつ、特に政務次官に申し上げておきますが、いまお話しになりましたような内容は、委員会の慣例として、おおむね原稿をあらかじめちょうだいをするというのが大体、院の慣習になっておるわけですから、自後、そういうことをお守りいただきたい。  総裁どうなんですか、これはちょうど総裁に就任されて間もなく満三年がまいりますね。この間に何回、委員会でこの種の釈明というのか、あるいは陳謝というのが行なわれましたか。数年前にたしか競合脱線か何かが非常に頻発しまして、その当時もちろん私もしたが、大方の委員諸君の質問に対して、神に祈るような気持ちだと、こういうお話があったことをつい先ごろのように、まだ私は記憶になまなましい。むろんそれからはかなりの時間、幸いにしてそういうことがありませんでした。まあそういう神に祈りたいというお気持ちが天に通じたのか、地に通じたのか、幸いにしてなかった。そこで、たいへん酷な質問のようですけれども、総裁在任三カ年の間に件数としてどのくらいありましたか。
  28. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 私は総裁に就任いたしましたのが昭和四十四年でございます。で、その就任いたしました直後、いま先生のおっしゃいました非常に競合脱線が頻発いたしまして、ちょっと件数は正確に覚えでおりませんけれども、年間に十件ぐらい起きたと思います。そしてその後、競合脱線につきましては——私のほうの中に鶴見事故以来の脱線調査委員会というのがございます。それがもっぱら競合脱線の検討をするということで、その後約三年間、部外の先生方にも入っていただきまして、そして北海道の狩勝峠の実験線などを使いまして相当な勉強をいたしました。ごく最近大体事態について解明を終わりまして、そして競合脱線につきましてはいろいろ手を打ちまして、たとえばガードレールをつくるとか、あるいはレールの踏面——踏面と申しますか、レールと車輪との接触面、その踏面の角度を変えるとかあるいは機関車の側のすき間を広げるとか、いろいろこまかいことになりますけれども、おおむね線路、車両についての対策を終わりまして、おかげさまで最近、競合脱線の事故はほとんどなくなった次第でございます。  その後、昨年すなわち昭和四十六年のたしか二月の十日ごろだったと思いますけれども、御記憶のとおり、東北線の西那須野の付近で機関車乗務員がめいていいたして、寝てしまいまして、そして列車が逆行いたしたことがございます。そして後続の列車にぶつかりましてけが人を相当出しました。それはその後、ちょうど去年の二月十五日に緊急に管理局長会議を開きまして、列車の自然後退についてどういうことをするかということについていろいろ具体策をつくりました。これは各列車の二両に一両ずつ非常弁を急遽設置いたしまして、これは全部設置を終わった次第でございます。その後、昨年の十二月でございますが、岐阜でもって停車中の団体臨時列車に入れかえ機関車歩数愛いたしまして、やはり二百人くらいのお客さまの負傷を出しました。その後、今日の事態でございまして、すなわち私が就任いたしましてから非常に大きな事故は、四十四年の競合脱線の連続、これは幸いあまり人命には——貨物列車がおもでございまして人命には支障はございませんでしたが、昨年の那須あるいは岐阜、今回というようにいずれも幸い死者はございませんでしたけれども、相当多数の負傷者を出し、特に昨年の那須の事件につきましては非常に原因がおもしろくない原因でございまして、やはり国会におきましても今日と同様陳謝いたした次第でございます。
  29. 森中守義

    森中守義君 他にそれぞれ関連質問その他がありますので一人があまり時間をいただけませんが、ここ船橋事件に至るまでおおむね二週間くらいの間にかなり注目すべき事故というのが十件くらい起こっているようですね。それら事故内容というものは、起こるべくして起こった、不始末によって起きた、こういうものがほとんどその内容になっておるようです。そこで一体これは何を象徴しているのか。私ども運輸委員会といたしましてもその辺には非常に慎重な検討を必要とする。まあ、いわば国鉄への苦言ということにもなろうかと思いますが、それは一応あとにしまして、これはやっぱり政務次官、考えてみなきゃなりませんのは、総合交通政策、総合交通体系というものが長年叫ばれておりながら、常々この委員会でこの種問題が議論されるたびごとに私も主張してきましたが、つまり現在の交通手段として国鉄の受け持つべき分野はどういうところにあるのか、海はどうか空はどうか、あるいは自動車はどうか、こういうそれぞれの持ち分というものは政策的に確立していない。そのことを要約していけば、やはり大量輸送手段としての国鉄かなり大きな問題がある。そういう新しい都市化輸送に対する対応策にいま一歩足らないのじゃないか、こういうことが政策的には大きな私は問題点だと思う。  むろん国鉄の体質それ自体にももっともっとこれはメスを入れなければなりません。けれども、政策次元として考える場合には、むしろそのことが先行さるべきである。そのことが確立をして、国鉄の受け持つべき分野はこれだけである、飛行機はこれだけである、こういうふうに非常に分野がきちっと政策的に定められ、その上でこういう事故が起きたというならば、これはもっと過酷に国鉄は責められていいと、私はそういうふうに思う。ところが、国の政策としてそういうものが非常にあいまいである。この辺のことから、やはりこういう事故が発生するたびごとに政策のほうに注文をつけざるを得ない。そういう意味で政務次官、いわば内閣一体の責任としてどういうふうにこういう事故を機会にお考えになりますか。
  30. 佐藤孝行

    政府委員(佐藤孝行君) 国鉄を監督する運輸省の立場としてもまことに申しわけない次第だと思っております。  それから総合交通体系のお話しでございますが、政務次官という立場より政治家という立場に立って考えたとき、やはり時代を先取りして国民にビジョンを与える、そしてビジョンを徐々に実現する、これが政治のあり方だろうと思います。そう判断したときに、最近になってようやく総合交通体系の骨格的なものができてきたんじゃないだろうか。時代を先取りではなく、むしろたいへん時代におくれておるんじゃないか、私もその事実は率直に認めます。国鉄は、御案内のとおり、私企業ならばもうとっくに倒産している企業だと私は思います。国鉄なるがゆえにその使命感なり目的があって今日でも存在するわけです。この国鉄をいかに再建するかということで、当委員会にも間もなく国鉄財政再建整備十カ年計画というものを一部運賃値上げを含めて皆さんに御審議いただくことになっております。私どもは、大量輸送機関としての国鉄をいかに国民の同意を得て再建をして時代の要請にこたえていくか、これに全力を尽くしているつもりでございます。  今回の事故は、端的に言うと、取り扱い運転士の気持ちのゆるみといいますか、初歩的なATSに対する認識の不足がこういう大きな事故を招いたものと思います。もちろん背景にはいろいろな問題があろうかと存じます。先ほど来申し上げたように、国民の同意を得て国鉄の再建をはかろうとする現在このような事故が起きたということは、何と国民に申しわけしていいのか、まことに運輸省の立場としても心苦しく感じております。また、けさほどの朝刊を見ると、品川で急行があまり適切な配慮がなされないために一時間ほどおくれるような結果になったという各社の社会面の記事を見て、さらに胸を痛めた次第でございます。同じことを繰り返すようですが、再びこのような事故がないようにえりを正して問題の本質を究明すると同時に、また国鉄と私どもと一体となって安全輸送の使命に徹して国民の負託にこたえたい、かように考えております。
  31. 森中守義

    森中守義君 それはいままで同じようなことを何回も承ってきしましから別段フレッシュなことは感じません。同時に、私が指摘をする総合交通体系あるいは政策というものは、これはまた別な機会にいたしましょう。けれども、いまのお答えではもちろん釈然としない。持ち分、持ち分というものが明らかにされない。したがって、そういうある意味では放漫政策の結果こういう事故が起きたという、非常に抽象的であるけれども、その責任の一端を政府も免れない。この事実は率直に認識をしてもらわなくちゃ困ると、こう思う。それを私は前置きにおいて少しく具体的にお尋ねをいたします。  いま磯崎総裁、はしなくも政務次官が、もし私企業であるとするならばとっくの昔に倒産をしておるだろう、こういうお話しがありましたね。この裏返しをするならば、強い社会性を持っている、強い国民性を持っている、そのことが国鉄をささえているんだ、俗な言い方をするならば、親方日の丸という、決して耳ざわりのいい話ではないけれども、つまり因習と惰性の中に国鉄は生き続けておる、こういうことじゃないんでしょうか。まあATSの具体的な技術的な問題等は、むろんそういう専門家じゃありませんから、それぞれ質問もありましょうけれども、私はそういう角度から考えた場合に、諸外国でこれに類似したような事故というのはあまり聞かないんです。もちろん、これは教えてほしい。いやアメリカにもありますよ、イギリスだって、フランスだって、西ドイツだってどこだってありますよということになるのかどうか。しかし私の聞く範囲では、日本国鉄事故というものはたわいないと言っていいかどうかわからぬけれども、不可抗力じゃない。これを回避しようとすればできないことはないんですよ。しかし、それが避けられないというようなことに注目すべきだと思うんですね。  それで、総裁在任満三年の問に何を信条として、何を中心としておやりになったのか。それはいままで何回もいろいろ聞いてきましたけれども、磯崎総裁のやられんとする中心というのはあまりない。あったのはマル生だけですよ。これはあなた、国鉄総裁としてのある種の使命であるかもしらぬ。あと何があります。これは端的に申し上げれば、いまこの種国家企業というものが、中央集権を排除して地方分権に移行する時代、地方分権に移行することによってきめのこまかな、より細分化された事業の運営、運行、いわんや事故の防止というものが考えられると思うんですね。ところが、先般のダイヤ改正などを一つの問題に提起した場合、一定の方針を本社が示す、それに従って地方がダイヤを組み上げる。さてそのことが、政務次官が言われるような、国民的なはたしてコンセンサスにそれが達するかどうか。今回のダイヤ改正なんというのは国民の同意を得たものですか。国民が共鳴を覚えたものでしょうか。総スカンであり、総反対じゃないですか。だからこの際は、いままで国鉄が採用してきた中央集権ということから、地方分権、さらにそのことが現場第一線に重点が移っていく考えがあるかどうか。少なくとも在来の経営の形態からいくならば、ないしは実態からいけば、みんな上を見ている。総裁の顔色をうかがって、末端の管理者に至るまで、みずからの栄達を、みずからの立身を求めておる。これが精神的な弛緩と放漫をもたらしている。私はそういうように極論します。したがって、この際、本社が持っている総裁権限というものを、大幅に地方に権限を委譲する、現場第一線主義に移していく、こういうお考えがあるかどうか。しかも、そのことは単なる議論でなくて、具体的に国鉄の運営の中へ生かされる、検討されるかどうか、このことを総裁にお尋ねしたい。
  32. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ただいま森中先生お話しの中のまず第一に、私企業であった場合にはとっくに破産しているという話がございました。まあ、政務次官もそうおっしゃいました……。
  33. 森中守義

    森中守義君 政務次官がそう言ったんで、私が言ったんじゃない。
  34. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) もし私企業であればやはり私企業らしい経営にならなきゃいけない。だから、総合交通体系で、先生がおっしゃったように、鉄道として最も得意な面だけるやるということにして私企業らしく生きるというふうなやり方にしたいと存じます。いまのように、公企業でありながら、しかも財政はやはりり独立採算制でやるというところに非常にむずかしい点がある、私はそういうふうに思っております。ですから、いまのような企業形態のスケールでもって私企業であれば、これはもう完全につぶれていると思いますが、私企業ならば、たとえばこの辺の私鉄がやっているようないろいろなやり方をする、あるいは地方の私鉄はほとんど鉄道をやめてしまってバスに転換している、いろいろなやり方があると思います。しかし、私どもは公共企業なるがゆえにそういう事業を持たない。しかし、経営的には独立採算でなければいけないというところに非常に私はむずかしさがあるというふうに存じます。しかし、これは私も一たん総裁をお引き受けした以上、泣き言、繰り言を言うのじゃございませんで、ただ客観的な事実を申し上げている。私企業ということの前提には、私企業ならばもっと思い切ったいろいろな非公共的なこともできたかもしれません。しかし、それをしないで、しかも私企業らしい、私企業と同じような企業採算をとるというところに非常にむずかしさがあるという事実だけを申し上げておきます。  それから二番目の、いわゆる地方分権の問題でございます。これは先年、四十四年のときも先生からそのお話しがございました。その後、私どもも、たしかこの委員会にも御報告いたしたと存じますけれども、思い切って百年来の組織を変えたわけでございます。そうして日本を構成する四つの島に分けてしまいました。北海道と九州と四国にはほとんど独立権限に近い権限——いわゆる給料のベースアップ問題その他は別といたしまして、大体の業務遂行上の問題をもう総局長にまかせるということで、九州総局長、北海道総局長理事を充てております。四国は理事じゃございませんが、やはり同じような権限を与えておる。で、九州は五百億の赤を出す、四国は五百億の赤を出す、北海道も五百億の赤を出す、しかし、できるだけ赤字を減らすための実情に即した経営をするというような意味で、四つの島のうち三つはもうほとんど半独立の形に改めたのが一昨年でございます。もちろん、まだ改めたばかりでございまして、まだまる二年たっておりませんので、いま先生のおっしゃったように、必ずしも所期の目的どおり現在動いていると私ども一〇〇%申しませんが、方向といたしましてはそういう方向に動き出しつつある。いままでのような官僚的な画一的な全国組織をやめて、そうして三つの島は独立していきなさい、本州は本社が直轄しようという非常に異例の何といいますか、地方分権と中央集権とを一度にやるということに機構改正をしたのがおととしの九月でございます。経理のやり方その他も全部そういうふうなやり方に変えておりますが、今後ともそういう方向で私ども進んでまいりたい。そうして本社直轄の本州の中の管理局、それから三つの総局、これとの関係を、なるべく中間に置かないで、何にも置かないで簡単なものにするということで、先生御承知の支社というものを全部全廃いたしたわけでございます。今後私はそういう方向で、ちょうどことしは百年のいいチャンスでございますから、一世紀のあかを洗い落とすのに非常にいいチャンスでございますから、単にお祭りやセレモニーじゃなくて、仕事のやり方を思い切って変えて、そうして第二世紀を迎えるということの具体的なやり方について、いま中に委員会をつくりまして、そういう方向に進めてまいりたいというふうに思っている次第でございます。おととしやりました機構改正もそのつもりでやったわけでございますが、私は徐々にその所期の目的に近づきつつあるというふうに思っておる次第でございます。
  35. 森中守義

    森中守義君 これは個々的に具体的に、まあどういう点が中央集権的であるか、どういう点が地方分権的であるか、国鉄の内部の全貌を私知りませんから一々指摘はできませんけれども、いまお話しになった大綱的な機構改革、そのことが方向づけとしてはまあそうらしい。けれども、ここで考えなくちゃならぬのは、たとえば地方総局長あるいは地方局長が、あれもしたいこれもしたいということが幾つもあると思うのですね。で、そういったものも先立つものは何であるということに通ずるものかもわかりませんけれども、まあ相なるべくは、いま総裁の言われる方向づけというものがより充実をしていく、もう一回見直していく、こういうことを検討してもらいたいと思うんですね。  それと、たとえば現場第一主義という問題ですが、このことは、具体的に言うならば人事の問題だろうと思いますね。さて、この人事の問題が、いわば三十年、四十年という国鉄一筋に歩いてきた人たちが、いまどういう地位に置かれているか、将来置かれようとするか、あるいは若い学士諸君がどういう地位に置かれ、どういう地位を歩いていくか。結局、たとえば地方の局長、まあそこまではいかないにしても、地方局の課長に一年半おってみたり二年おってみたり、次から次にはしご段を上がっていく、いずれは本社へくる、本社からまた下がっていくという、この辺が現場第一主義なのか、あるいは中央集権と名のつく中枢部中心主義なのか。この側面からもやっぱり見ていかなくちゃいかぬのじゃないか。いま、私は電電公社あたりの例を引き合いに出すわけじゃありませんけれども国鉄のそういう人事の扱いと電電公社の扱いとだいぶ違うんですね。電電公社は非常に具体的ですよ。本社の課長をやったかと思うと、思い切ってこれを通信局の部長ぐらいに出す。むろん待遇もほとんど同様にしておりますね。だから、何としても現場あっての国鉄ですよ。むろん、それは本社も必要でしょうけれども、そういう意味で、この際は人事、一切がっさいを含めて、現場第一線というものをもっともっと尊重し、もっともっとこれに重点を置く、このことが実現をしないと、幾ら機構をいじってみようと、方向が地方分権に移ったと言われてみても、裏と表が必ずしも一致しない。その辺にも、官僚主義じゃございません、極力そういうことがないようにというせっかくの御意見ではございますけれども、私は全面的にそのことが肯定できない。相なるべくは、そういう人の問題を含めて、若い学士諸君でも現場第一線でしごき上げる、ここで何から何までやらしてみる、しかも相当長期にわたりまして定着させていく、そういったようなやり方が名実ともにいう現場第一線主義であり、あるいは特殊企業としての一つの新たなケースじゃないだろうか、こういうように思う。しかし、そのことは採用されておりませんね。おやりになりますか。
  36. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) いまいみじくも先生がおっしゃったことが、私が先ほど申し上げたことの裏づけでなければいけないと私は思います。ですから、形だけつくっても中身がいまのとおりでは、これはしかたがないということで、これはきょうの御説明でそういうことを申し上げるのが適当かどうかは別といたしましても、私は、いわゆる計量化されない、計数化されない近代化、合理化をやらなければいけないということをいま部内で提唱いたしております。それはどういうことかというと、やはり、いま申しますます人事の問題、あくまでも実力主義でやり、あくまでも実力主義である。学士であろうと、一般の人であろうと、実力主義だ。もちろん、刺激の意味で、あるいは技術の開発の意味で、もちろん大学を出た人もとらなければいけない。しかも、一たん入ったならばエスカレーターで上にのぼるということはない、あくまでも実力主義であるというプリンシプルを立てること、それから先生がおっしゃった野に遺賢なからしめると申しますか、人材簡抜の方法と申しますか、これをもっと私は組織的に、しかも科学的にしなければいけないと思っております。ただそのときの思いつきで、あいつがいいからこっちへ持ってこいということではいけないと思います。やはり長年見るべき人が見てりっぱな人だということになれば、ある年齢に達した人を組織的に育てていくということをいたしませんと、非常に面が広いものでございますから、とかく埋もれがちになってしまうということで、私は何とか野に遺賢なからしめるための具体的な方策、それをいま見出すように、実はこれはほかの民間のいろいろな会社の仕事のやり方、あるいは官庁の人材の簡抜のしかた、もちろん電電公社も含めまして、そういうことをいま私どもの秘書課でもって、ほとんどおもなところをずっと網羅いたしまして、そして、どの銀行はどういうふうなことをやって人材を登用しておる、あるいはどの官庁はどういうやり方をしているということをいま具体的に検討して、それを何とか国鉄式なものにつくり上げたいというふうに思っておる次第でありまして、やはり実力主義、それからそれの人材簡抜の組織化ということが、私はこれから進むべき国鉄の第二世紀の一番大事なことだ、その裏づけがなければ、単に組織をいじったって何もならぬということは、全く先生のおっしゃったことと同感でございます。
  37. 森中守義

    森中守義君 お話を伺っていて、少しやっぱり観念と現実が混淆していますね。まことにことばを返すようで恐縮ですが、つまり人材の登用、人材の開発、これは部分的であっちゃいけませんよ。ところが総裁のお考えの中には、どうもやはり部分的という感じがしてしょうがない。まだまだそれになりきっているだろうかどうだろうか、こういう疑問を私持つのです。それはどういうことかといいますと、いかなる人であろうと、関門をくぐって国鉄に入ってくる、入ったとたんに国鉄の人間ですよ。これはいい、これは悪いという区別をされては困ると思う。そこの実は方法論と手段の問題だと思うのですね。いま、ともすると、手段と方法に少し力点を置き過ぎる。この辺に少し間違いがあるのじゃないか。そういう意味では、大いにピューリタンであってほしいと思うし、フェミニストであってほしいと思いますよ。これは役に立つ、役に立たぬという、そういう選択、選別がまずよくない。その手段と方法には必ずしも同感じゃ私はありません。むしろある角度から見れば意識的に、意図的に、きびしい関門をくぐって入ってきた国鉄の諸君に、これはこう、これはこうというようにマークを張りつけ過ぎるのじゃないですか。そういうことじゃなくて、いま人間の組織的な運用、運営という、こういう意味のことを言われましたけれども、組織的であるということは差別はないと、こういうことですよ。だから手段と方法にあまり極端なことをやられると、関門をくぐって入ってきた者が、ある人は日の当たる場所、ある人は谷間、こういうことじゃ国鉄全体が回っていかぬ、こう思うのですね。そういう意味で、総裁の観念と実際の施策の中には混淆されたものがある。これは一ぺん整理してください。整理と同時に、一たび国鉄に入ったならば、みんなあなたの弟であり、あなたのむすこであるということで、区別がないように、全体を国鉄マンとしてつくり上げてほしい。手段、方法、あまり芸をこまかくやり過ぎると、結果的に人間を差別する。その差別が場合によると陰惨なものになる可能性もあるのですから、まあそういうことがないように、あなたの答弁から感ずるこれは私の意見ですけれども、検討に値するならば検討してほしい、こういうように私は思うのです。  そこでいま一つ具体的にお尋ねいたしますが、二分十秒間のたいへんなダイヤ編成ですね、これが一体適当であるのかどうか。むろん今日のように都内に一千万も一千二百万もいるわけですからなかなか簡単なことではないと思いますよ。けれども、二分十秒というあまりにも過密なこの状態、これでいいのかどうか。車両の編成が十両というけれどもあと二、三両追加できないのか。この前、私はここで定員の問題をちょっとやりましたが、その後少しく調べてみますと、だいぶやっぱり問題がありますね。守るべきものを守っていく、もし各種の法令等が現状に合わないなら、これは変えるべきですよ。皆さん方からよく言われる、悪法でも法だよ、これに従えということです。これは国鉄だから、総裁だからといって例外があってはならない、企業だからといって例外があってはならぬ、私はこう思う。鉄道営業法二十六条に何と書いてありますか、ちょっと教えてください。
  38. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 鉄道営業法二十六条「鉄道係員旅客ヲ強ヒテ定員ヲ超工車中ニ乗込マシメタルトキハ」、これは「三十円」でございますが、いま罰金等臨時措置法により二千円になっておりますが、「以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス」とございます。
  39. 森中守義

    森中守義君 この前、鉄監局長に非常に短い時間これをちょっとお尋ねしましたが、かなり具体的に法的根拠があるんだな。もう一度聞きますがね。鉄道建設規程の八十条に何と書いてあるか読んでみてください。
  40. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 日本国有建設規程でございますが、「客室ノ床面積ハ旅客定員一人ニ付〇・三平方米以上タルコトヲ要ス」とございます。
  41. 森中守義

    森中守義君 もっと詳しいはずだよ。もう少し詳しいはずだ。
  42. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 日本国有鉄道建設規程というのが運輸省令で定まっております。これが国鉄の設備の基準をつくっておりますが、その内容といたしまして、「客室ノ床面積ハ旅客定員一人二付〇・三平方米以上タルコトヲ要ス」という規定がございます。
  43. 森中守義

    森中守義君 それでも十分でない。私がちょっと引っぱり出してみたのでは、一九五八年刊による鉄道辞典によれば、きちっときめてありますよ。きちっときめてある。ところが、このきめてあるのは、一等、二等、三等という時代だから、これは全然改正されていない。これが変わっておれば、つまり定員とは、その程度は何なのか、これははっきりしなかったわけだ。よろしいですか、局長。御存じでありながらお答えにならなかったんだろうと思うけれども、肝心な総裁が——一体定員とはどのくらい積めばよいのか。しかも、この中には蒸気と電車ちゃんと区別してありますよ、あるんです、こういうのがね。こういうものが船橋で起きた事件といい、桜木町事件といい、三河島事件といい、はたして守られておったかどうか。そういう定員ということが、ダイヤ改正あるいは車両編成の中に、二分十秒という過密な運行の中に計画として入っているかどうか、少なくとも考慮されているかどうか、これはどうなんですか。
  44. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 定員と申しますのは、ただいま鉄監局長が読まれたようなことでございますけれども、私どもは、一応、座席の数とつり皮のことを定員というふうに考えております。もちろん、一人当たり〇・三平方米でございましたか、ちょっと正確な数字覚えておりませんが、それ以上乗せてはいけないということと、それから、一体、東京の過密都市のラッシュをどう解決するかという問題、この問題は現時点においては、ある場合には二律背反と言わざるを得ないかとも存じますが、したがいまして、私どもといたしましては、ばく大な金を投じまして、東京に対しまする五方面の輸送力増強の仕事をやっているわけでございます。おかげさまで、すでに東北線ができ、常磐線ができ、中央線ができ、問題のこの総武線は、実は先生御承知の複々線にしたわけです。そして東京駅に地下五階の駅をつくりました。ことしの七月十五日に、実は総武線の複々線運転が開始できる予定になっております。もちろん、だからといってラッシュの非常に短い時間帯に全部定員で輸送しろとおっしゃっても、これは改札どめをしてお客さんをとめる以外にございません。ですから、それは現実の問題として不可能であるとすると、それはできるだけの金を使って通勤輸送能力をふやすという以外にないと思います。現実に総武線は七月十五日から急行運転して東京駅へ直通させるという大工事がやっと完成して、そろそろ試運転に移るということで開業の期日まで七月十五日ときめたやさきでございまして、私はその点で、もちろん先生のおっしゃった御趣旨はよくわかりますけれども、やはりこの一千万という過密都市の輸送を一手に引き受けて全部定員輸送しろとおっしゃられれば、これはやはり時間的に見て、またラッシュ時間帯に送れる人間はごくわずかでございます。十万人運んでおりますが、約五分の一になります。それではたして日本の機能がいいかどうかということになりますれば、やはりほかに線路をつくって輸送をふやすということになると思います。そういう方針のもとに総武線は現在やっと複々線ができた。しかも、あそこは、あの辺の方々がこれは望んでおられる踏切除去という意味で全部高架にして、ちょうど高架の工事が終わったところでございます。切りかえたばかりでございます。そういう意味の根本的な輸送力増強をやらない限り、先生のおっしゃったことは私は解消しないであろうというふうに思いますし、解消させようと思えば、現実に実際不可能なことをしなければいかぬということになると思います。したがいまして、私は、総武線については、いまの複々線と数年前にやりました東西線の地下鉄への乗り入れという抜本的な輸送力の増強政策を講ずるということしかないと思います。また、現在湘南地帯の通勤がやはり非常に込んでおります。これは何とかあれを緩和するために貨物線を神奈川県の山奥に移して——横浜線と称しておりますが、いまの貨物線に横須賀線を走らせて、そうして横須賀線とたとえば湘南線を分離する、それによって輸送力をふやすという根本的な線路をふやす以外、単に車をふやすとかあるいはヘッドを詰めるということは限界にきております。これ以上のことは私はいたしません。できません。ですから、あとは線路をふやす以外にないという信念のもとに、数年前から、いわゆる五方面作戦と称しておりますが、それをやって、やっと五方面のうち四つが解決した次第でございます。根本的には、それをやらないとこの大東京の過密ラッシュは解消できないであろうというふうに思っております。
  45. 森中守義

    森中守義君 何も、きちんときまったとおり定員を守れ、そういうことを言うのじゃない。それは私だって、定員を規定どおり守ったらたいへんだ、それも承知ですよ。ただ、車両の編成をする、あるいは二分十秒おきに動かして、そういう計画の中にこういう現状というものを十分認識さるべきである、こういうことを強調したい。ただ、施策としてそういうものが早くも緒につこうとしている、七月から開始されようとしている。それは私も知っておりますよ。けれども、この状態車両の編成なども全然考慮されていないのじゃないか。そういうことが、船橋の事件が起きてあと回すだけ車両もなかった、こういうことまでもいわれているんですね。一体どの程度車両の保有があればいいのか、臨機応変の際にどうすればいいかということなどが、どうもその機に応じてあまり柔軟性を持ってない、すぐ順応できるような対策がないんじゃないか、こういうことを実は指摘をしたいわけです。それと蕨の変電所の問題等々もあとでいろいろあるでしょう。まあしかし、さっき総裁もお話しになったように、また新聞でも、一言もありませんと、こうおっしゃっているんですが、これで一言あったんじゃたまりませんからね。一言もないのがあたりまえ。  それと、最後に申し上げますが、官庁の閣僚と違いますね、総裁は。どういう意味かといえば、閣僚は何といっても一期、半期ですよ。一定の方針を大臣は持って、さあこれを徹底させようといっても、終わらないうちにもう閣僚はかわるんです。ところが、企業の総裁、そこの妙味、特徴というのは、かなり長期にその地位にとどまって指導ができる、方針徹底ができるというのが、これが総裁の特徴です。だから、計画されていることを、閣僚と違うわけですから、とことんまでひとつやってください。ただし、やるということは、さっきちょっと人の問題で申し上げたように、いろんなことをお考えになることはけっこうだけれども、差別があってみたり変なことにならないように少なくとも——先ほど次官が、交通関係は先取りが必要だ、こう言われるんですけれども、先取りなんというものではなくて、おそ過ぎますよ。けれども、こういう事故の機会等に、また少しく将来の展望をもう一回見直して、また、私どもこうしてお尋ねをする、答えてもらうという、こういう形だけのものでなく、一ぺん理事会で相談してみて自由に意見を聞きたい。そういう形式のものをできるだけ早く一ぺんやってみましょう。にわかづくりで専門家に答えてもらうわけですから、これじゃ私ども頭の整理ができませんから、与野党を問わず、円卓を囲みながら自由な立場で総裁もものを教えてもらう、しゃべってもらう、そういうことを数回重ねながら、あるべき国鉄の未来像、やるべき総合交通対策とは何かということを、新しい試みになるかどうかわかりませんけれどもやってみたい、そう思っております。  しかし、最後になりますが、たいへん運賃の問題がある、しかもダイヤ改正ではごうごうたる非難。これは少し余談で人間が悪いかわかりませんが、総裁どうなんです。このままひとつ締め上げておくと、何とかしてくれと国民が言うだろう、そのときにちょっとゆるめようじゃないか、そうなると国鉄はようサービスしたなということで運賃問題でもよろしいということになるんじゃなかろうかという、そういう高度な芸をやっておられるんじゃないですか。そうだとは思いませんけれども、どうも今度のやり方というのはあまりに手が込んでいるような気がするもんだから、そういうことまでも、いやみじゃありませんけれども、ちょっと言っておかざるを得ない、こういうふうに私は思います。これは御返事は要りません。とにかくひとつ一生懸命やってもらわぬと困りますね。
  46. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) たいへん森中先生からいろんな御支援の、また御理解の深いおことばを賜わりました。私といたしましても、昨年ちょうど、もう御承知のとおり衆議院の運輸委員会で、ほとんど一年かかって、これは超党派で国鉄問題の小委員会をやってもらいました。事の起こりは、参議院の先生方お話しになったということが事の起こりだと思います。いろいろな関係で衆議院が先になって、各党のフランクな御意見が一つになってまとまってできまして、非常に私どもはそれが今度の予算折衝の心のささえになり、また、ある意味でのバイブルの形となって大蔵省と折衝したつもりですけれども、あれの仕上げをぜひひとつお願いしたいと、かってなことを申し上げますけれども、この席を拝借して、今後とも私、全力投球をいたすつもりでおりますので、御支援賜わりたいと思います。いろいろありがとうございました。
  47. 伊部真

    伊部真君 今度の事故は、もちろん運転者の大きなミスということもありましょう。しかし、それだけでこの事故を見ていいのかどうかということになりますと、やはり、その背景として考えざるを得ないのは、国鉄が財政上に非常に大きな問題をかかえておるので、合理化を進める、それは赤字線の問題、駅の問題もありましょうが人員の問題もある。普通の場合でも、人間を節約をして合理化をした場合に、その人を安全面に持っていこうという、そういう姿勢があったかどうか。もちろん、企業でありますから、企業に貢献することをみなが考えるのはわかるのですけれども、しかし、少なくとも人命を預かる国鉄の場合は、まずその安全という面で不十分さがあればそれを補うというところに、その人員というものを考えていくということが必要ではないか。そういう点で、かつて、この合理化問題で国鉄安全面強化ということに配慮があったかどうか、どうも私はその点が不十分な気がいたします。そのことが、ひいては今度の事故、あるいは今後の問題にもっと影響が出てくるのではないかということが心配でありますので、その点を明らかにしていただきたいと思います。  それからもう一つは、最近、特に国鉄が合理性といいますか、採算面を非常にやかましく言い出したのではないか。その一つの例は、ダイヤ改正でもそうだと思うのです。今度のダイヤ改正というのは、いままでのダイヤ改正の性格とは全く違う。いままでは特急が、あるいは急行が入ったからということもありますけれども、少なくとも、やはり国鉄が近代化されて便利になっているという期待があって、その期待にこたえてきたというのがダイヤ改正ではなかろうか。今度の三・一五は明らかにこれはもう国鉄の採算ベースからいってやられたことである。そこに国民の非難があると思うのです。そういう、いわゆる国鉄としての採算にあまりにも片寄り過ぎたいわゆる政策の姿勢というものが、今度の事故との結びつきがあるのじゃないかという点が第二点。  第三点は、もちろん運転者の未熟さもありますけれども、しかし、どうも気になりますことは、いわゆる管理者、あるいは教育する者と教育される者との間がほんとうにしっくりいっているのかどうか。今日のマル生問題といわれるような状態の中で、ああいうことの雰囲気の中で現場があるわけです。その場合に、ほんとうにATSの操作の問題を見ても、実際にしっくりした管理者と現場との結びつき、教育、意思疎通というものがあったのかどうか。これがもしも欠けておって、こういう事故の遠因になったということになれば、私も、これは十分国鉄当局として反省しなければならぬし、かつまた、それに対する対策、いわゆる管理面においての対策というものは考えていかなければならない、こう思うのです。その点についてはいかがですか。
  48. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) いま先生のおっしゃった御質問の、まず第一の、いままでの合理化によって出た人間をどういうふうに使ったか、これを安全のほうにどういうふうに使ったか、こういう御質問だと思います。実は安全問題につきましては、もう国会におきましても、主として三河島事故以来、非常に当委員会でも論議されまして、やはりなるべく人間にたよらない安全、いわゆる機械による安全、これを確保しろというふうな強い御意見もございました。したがいまして、毎年約二百億以上の金を、安全問題、いわゆる保安対策と申しますか、に、つぎ込んでまいりました。したがって、安全装置をよくした上でそれに若干の人間の注意を加えるというふうな、安全の機械化と申しますか、あるいは電子技術化と申しますか、そういう方向に現在進んでおりまして、単に人をふやすということが即安全であるというふうな考え方でなくて、やはり相当のばく大な投資をして安全装置をつくって、そして人の注意力の面をなるベく減らしていくというふうなのがやはり現在のどの交通機関でもとられている安全対策の方向かというふうに思いまして、私のほうでも大体そういう方向で進めておるわけでございまして、たとえばATSにいたしましても、昭和三十八年からつけ始めまして五年間で完全に全部つけてしまったというふうな次第でございます。  それから採算の問題でございますが、御承知のとおり、国鉄状況が非常にきびしくて、四十六年度の予算は御承知のとおり実は償却前赤と同じ、借金をしなければ給料が払えないというふうな状態でございました。したがいまして、どうしてもやはり採算のことを考えませんと、よそ並みのベースアップさえやってやれないというふうな状況でございました。したがってやはりいままでの実績から見て乗る人の少ない列車を減らす、そしてそこで経費を節約するということもやっていかなくちゃいかぬ。しかし、かと申しまして、過疎地域でもって鉄道以外に何もない、あるいはマイカーも持ってないというふうな人に対して、どこまで、たとえば初列車とか終列車とかについてサービスすべきかというふうなことにつきましてもいろいろ論議いたしましたが、いまお話しのとおり、今度のダイヤ改正はそういう点で少し激し過ぎた点があったかということを私率直に考えております。したがって、この間も「国民の足を守る会」という会の方々とゆっくりお話もいたしましたが、そういう方のお話も聞きまして具体的にいま手直しをいたしております。ちょうど、いままでは学校が休みでございましたが、ぼつぼつ新学期も始まりますので、地域地域で各管理局が地方のお話を伺い、学校長といろいろ御相談をいたしました上で具体的に処置してまいりたいというふうに思っております。  それから三番目の、いわゆる管理者と職員の問題でございますが、これは、先ほど政務次官が今回の事故は全く人為的な事故であるというふうにおっしゃいましたが、現象的には明らかにそうでございますが、私はいま実はここへ参ります前に緊急に全国の管理局長を集めまして、一時から二時少し過ぎまで話をして、それで解散してまいったのでございますけれども、私はやはり安全の問題というものは労働問題以前の問題である、あるいは経営問題以前の問題であるというのが私の実は信念でございます。したがいまして、今度の事故にいたしましても、単にこの運転士が悪かったということだけでは私ども責任は済まされないというふうに私は思っております。それはやはりATSの操作に対する、ことに異常事態に対する指導のしかたが不徹底であった。一年も運転士見習いをさして電車に乗っていたのに、ほんとうにその場で教えたかどうかということもいまチェックしておりますけれども、そういう異常事態に出っくわした例のある指導者がないせいか、紙の上では書いてあるけれども何か実感としてぴんとこないというふうなことであったと思います。したがって、そういう意味で、管理者と職員との間に、事、事故防止については、やはりきちっとした筋を通す、そしてお互いに血の通った教育をするということがなければ、やはり単に紙に書いてこれを読んどけということでは私はだめだと思います。したがって、手を取り足を取りそして教えてやるという管理者としてのやさしさがなければいけないというふうに思います。これは、いわゆるどの組合がどうという問題じゃなくて、管理者と職員の問題として私はぜひやらなけりゃいかぬということをいま管理局長に言ってまいったのでございますけれども、とかく、こういう問題が起きますと、管理者は、私どものほうでは萎縮する傾向がございます。どうも、何と申しますか非常に自信がなくなってしまうということではいけない、ぜひ、ひとつ自信を持って仕事をやれということを言ってまいりましたけれども……。やはり、いま先生のおっしゃったとおり、管理者と職員の間にほんとうに血の通った教育ができなければ、結果的にはその人が、職員が責められてしまうと、こういう非常に気の毒な結果になりますので、そういう意味事故防止を中心とした教育をできるだけ徹底してまいりたいというふうに思っております。
  49. 伊部真

    伊部真君 いま総裁の言われたように、心の通ったというか血の通ったというか、その職場のムードなり職場環境というものは、こういう重要な人命を預かる仕事の上ではたいへん大きな影響を与える。この点は、ぜひひとつ、これからも御配慮いただきたいと思います。  それからもう一つは、国民の意思の入った国鉄、ダイヤ一つにしても、その地域の住民や、特に、そこの子供が、学校が終わってから家に帰るまでに二時間も三時間もどこかで費やさなければいかぬということは、私は、何ぼ、採算面といっても国有鉄道のすることではないと思います。ですから、国民の持ちものであり、国民の意思の入った運営というものをやってこそ私は国鉄の面目があると思います。そういう点で、これも一段と御配慮いただきたい。  それから最後に、一番最初に言ったことでありますが、機械の問題ですね。これは鉄監局長も御承知のように、近鉄事故一つの発端は、やっぱりATSにたよった、あるいはATSが事件の一つの原因をつくっておる。今度の場合にも、直接的ではありませんけれども、やはりATSが運転者の判断に非常に大きなあやまちを犯させた。こう考えると、ここで反省しなければいかぬのは、機械に対する見方、考え方ですね。私は総裁の言われることはわかるのですけれども、そうなら徹底した機械にすべきではなかろうか。ほんとうにたよれる機械にしないと、中途はんぱなATSのように、警鐘を鳴らす、運転者に注意を与えるというふうなことでやった場合には、機械が間違った注意を与えるという——今度の場合には間違いではないけれども、しかし、運転経歴六カ月やそこらの者から見れば、少し手間どる、まごつくということがあり得ると思うのです。そう考えると、過密問題もいろいろ原因が重なってはおりますけれども、少くとも、ATSよりもATCならATCを、あるいはオートマチックを——AT○というような形を早急に、特に人力の限界にあるような、東京、大阪のような非常に人間の能力のぎりぎりまでいっているところは優先的に取りつけるべきではなかろうか。新幹線やあるいは常磐線その他ATCがついているところもかなりあるようでありますけれども東京の山手、京浜、中央というところや大阪環状線のようなところは早急にやるべきでないか。そうでないと、このことについては、人間のすることですから私は万全だということは言えないと思う。そういう設備についての考え方をひとつ聞かしていただきたい。
  50. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ATSにつきましては、先生がおっしゃいますとおり、開発されたのはもう十年以上前でございますけれども、確かに、考え方に、不十分と申しますか不徹底な点がございます。これは、いまおっしゃったように、目ざまし時計的な役割りと、それから五秒たって何にもしなければとまっちゃうという非常に激しい力と両方持っておるわけでございます。両極端の力を持っておるわけでございます。たとえば、おとといの場合でも、運転士が何もしないで五秒たっていれば自然にとまってしまうわけであります。そういう非常に激しい力、それからもう一つは、単に、赤信号だぞ、気をつけなさいというめざまし時計的な力と、その二つの面の力を両方同時に持っておるものでございますから、とかく間違いやすいわけでございます。これは本来は、東京の電車は昔から警報だけつけておったわけでございます。ということは、赤信号を見のがして、しょっちゅうぶつかったりなんかするものですから警報だけつけておった。これは昭和三十年ごろからつけておった。警報だけでは、極端に申しまして、居眠りでもしてしまう、あるいは失心でもしてしまう場合には、五秒たったらぎりぎりとめてしまうというストッパーをつけておるわけでございます。これはB型と称しておりますが、そういうものをつくりましたが、いま申しましたように、それは運転士が自分で信号を見て動かすという前提になっております。  したがって、もしこれがほんとうにもう人間にたよれない、あるいはたよるべきでないということになれば、いま先生のおっしゃったATO——オートマチック・トレイン・オペレーションという全く自動的なもの、こういうものにかえなければならぬと思います。ATOはすでに東京の営団地下鉄でも一部使っております。使っておりましても、もちろんまだ人間がついておりますけれども、機械的にはできるようになっております。また、最近のアメリカの通勤鉄道なんかは完全にATOで、コンピューターシステムで、人間はただ単に乗っておるだけでございます。そういう新しい通勤電車ができておりますけれども、私どもも技術開発自体はそうむずかしいことはございませんが、ただ非常に大きな失業問題というのがございます。いわゆる乗務員が要らなくなるわけでございます。そういう問題等をあわせ考えませんと全然違った次元の問題を引き起こしますので、研究としては十分研究するけれども、実施につきましては、金の問題と労働問題、離職問題これを両方一緒に考えないといろいろな問題が起こると思います。しかし、よほどこれも過密になってまいりますと、人間の注意にたよるのは無理だということになれば、いまおっしゃったようにマン・マシン・システムの中から人間を取ってしまってマシン・システムだけにするということは、当然考え方としては持っていなければいけない。しかし、実施の問題は別として、研究の方向に実は進んでおるわけでございます。まあATCは中途はんぱでございますので、いくのなら私はATOまでいってしまう、そして人間の注意力にたよらない、全く機械で走るということを研究としてはしておかなければいけないというふうに考えております。
  51. 伊部真

    伊部真君 そこで、先ほど、少し技術的になりますけれども、五秒たったらとまるということですが、あの場合にとまったときに事故が防ぎ得たのか、これはあの場合には防げたかもわかりませんが、あの過密ダイヤの状態でとまるように指示するほうがいいのかどうかということになりますと、これは非常に問題があると思うんですよ。私が聞いたところによりましても、山手線でも三十四・五キロですかの間に二十九の駅があって、信号が外回り百三十七、内回りが百三十六、こういう状態で、列車の長さが二百、その間隔が二百五十メートルというふうなことで、信号と信号の間が二百五十メートルというふうな状態で、たいへんな過密状態なんですね。こういう場合に実際にとめることができたのか、とめる指導をすべきだったのか。聞くところによると、あの場合に一々とめたのでは、やはり後続の車との関係があってダイヤのたいへんな乱れがくるので、やはり徐行していくというのが普通だというので、その面では、私はそんなに運転者は間違った処置をしたとは思えないんですけれども、その場合の指導というのは、徐行すべきなのか、とまるべきなのか、その点はどうなんですか。
  52. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 非常にこまかいお尋ねで、私はかなり的確に御答弁申し上げられるかどうかわかりませんけれども、やはり五秒間たちまして自動的にATSが働いてとまります、自動制禦が働いてとまりますと、お客に非常に大きな衝撃を与えます。ですから、やはり五秒間ほうっておかないで、自分で確認ボタンを押して自分で運転せよ、それには確認ボタンを押す前に一たんブレーキを〇・六ですか、何か以上に上げて、それから後に確認ボタンを押す、これは非常に厳格にマニュアルに書いてある。ブレーキをとめなければ確認ボタンを押してはいけない、これは鉄則でございます。これは、おとといのあれは不幸にして本人が帰っておりませんのではっきりいたしませんが、その点がちょっと不明確で非常に残念だと思います。あるいは見方によっては——確認ボタン、あれは大体左手で押します、右手でハンドルを持っておりまして、目の前にあるわけです。確認ボタン、こちらのほうに重点がいってしまって、あるいは、ATSの電源は少し離してございます、その電源のほうに注意がいったかどうかということは、本人がおりませんので、私かってな推測はいたしませんが、全般の推測から見ればATSのほうに少し注意が行き過ぎてしまって——目の前に電力計があるわけです。停電すれば電力計はゼロになりますので、電力計を見る間もなくATSに関心がいったかと思うわけです。これは、これ以上は測推ですから申し上げませんが、その点、確認ボタンを押す前にブレーキをもう少し扱っていたら、少なくとも非常制動にかからないまでも、とめ得るような制動をかけておればたとえ前の電車が見えたときに非常制動をとりましてももう少し手前でとまったのではないかということ、これは推測でありますが、本人がおりませんのでとやかくのことは申し上げられませんけれども、そういう推測等を新聞等ではなされておるということでございます。
  53. 伊部真

    伊部真君 どうもそういうことになりますと、なかなかいろいろの判断を入れなければならないのでむずかしい問題だと思いますけれども、次に、最近、この事故が起こりましてさっそくに副総裁の前で「輸送安全総点検の実施について」という通達を出されましたね。この中に「運転取扱い」というのがあります。これは三つに分かれております。一つは、「動力車乗務員に、列車の運転は信号の指示する条件に従うという観念を徹底させること。」、これはもっともだと思いますが、二番目に、「動力車乗務員にATSの取扱い、特に停電時等におけるATS機能の概要について周知させ、かつ実際の取扱いについて訓練等を通じて十分習熟させること。」、こういう条項がありますね。この二番目のことですけれども、これはもっともな話でありますけれども、私が現場の諸君に聞いたのでは、いままでこういう訓練について、いわゆるそのための時間を与える、あるいはそれについての具体的な処置を伴っていないということを聞いているわけです。したがって、訓練は当然明け番のように自分の時間にやるならやりなさいという形になっている。これでは実際に通達をされても、指示されても、責任をもって業務としてあるいは当然の管理者としての対策が伴っていないではないか。したがって、通達しているだけであって、あとかってに自分たちで勉強せいというのでは精神訓話みたいなものだし、かつ、それでは本人に対する責任であって、管理者の責任として見たことにならないのではないかというふうに思うわけです。したがって、これは当然にその機会を勤務時間中に持つ、それは一斉に持つということは事実上、業務上むずかしいことがあろうかと思うのですけれども、具体的に何らかの計画を持って訓練をさせるというなら、あるいは習熟させるというのなら、やはりその時間と経費というものも伴った処置をしないと、極端に言えば管理者の責任を下に移管しただけだというふうに言われてもしようがないと思うが、その点はどうですか。
  54. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) その訓練の問題も非常にいままで何回も問題になりました点でございますが、私どものきちんとした規定で時間内訓練と時間外訓練と二種類ございます。時間内訓練は月二時間とっておりまして、これは勤務時間でございます。時間外訓練は、たとえば新しい車が入ったとか、全然別の必要があれば、あるいは時間外勤務の場合、超勤でやる、超勤手当を出してやる。したがって、超勤命令を出しまして、超勤手当をつけて時間外訓練をする、そうでないものは時間内訓練でございます。問題は、いま先生のおっしゃったおことばにもございましたが、実物訓練と申しますか実際の訓練よりも、講習と申しますか、そういうふうなほうに重点が置かれているのが率直な、お恥ずかしい話でございますが実情に近いと私は思っております。ですから、時間内訓練をもっと現物に即してやるというようなことをしなければいけない。ですから、図面を書いて、これは停電をすれば鳴りっぱなしになるのだぞというふうな紙の上の訓練、講習室の訓練がいま主になっておりますけれども、それではやはりいけないので、実物に乗せて実物の訓練をするという時間を考えなければならない。やはりこういう異常時でございますから、普通のことならそれでやれてまいりますし、電車運転士になる前に運転士見習いをこの人は一年間やっております、その前に四カ月半、学園で勉強しておりますから、ノーマルな状態ならば私間違いないと思うのでございますけれども、こういう異常事態、ATSが鳴って、停電したという状態を経験した人はほとんどないというくらいだと思いますけれども、そういったケースじゃないかと思います。やはり万に一つの事態も処置できるような異常時の取り扱いというものは、紙の上、頭の中だけではだめなんで、その点を私もう少しいろいろ組合と話し合いをいたしまして、実物の訓練と申しますか、シュミレーターでもよろしいのでございますが、何かそういう簡単なものをつくって万に一つしか起こらないことをやはりやってみせるということをしないと、やはりこういう異常時のとっさの処置ができないというふうに思いますので、訓練の内容その他につきましては十分これから考えていかなければいけない、先生のおっしゃったとおりに実際にあたって訓練しなければいけないというふうに思っております。
  55. 伊部真

    伊部真君 私は一つ安心をしたのですが、いままで訓練をする場合には超勤とかあるいは時間内ということでやっているので、本人の負担においてやるということはないというふうに考えてよろしいですね。ぜひひとつそうお願いしたい。  それから訓練の問題につきましては、私、総裁の言われるとおりだと思いますが、私はこの前、運輸委員の皆さんと一緒に航空関係を見てまいりましたが、やはり内容的に立派なものだと思います。ぜひひとつそういうこともお考えいただいて、人命に関することですからお願いをいたしておきたいと思います。  最後に、先ほど話に出ておりましたけれども、蕨の変電所からの送電の問題でございますが、去年の十月に点検が行なわれたということですね。しかし、そのこと自体は昭和七年架設をされて、それ以来取りかえてない。私も現場の人に聞くと、大体国鉄は何年かたつと修理をやるというより取りかえるということで、そのほうが合理的だということで、かなり年数的に取りかえるということがやられておると聞いているわけですが、今度の場合に四十年間もかえてなかったということはどういうことなんですか。
  56. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 私のほうは送電線を千六百キロぐらい持っております。信濃川から持ってまいります送電線もございますし、約千六百キロぐらいの送電線を持っております。送電線は御承知のように、いま設置いたしておりますのは、私も実はあまり詳しいことは存じ上げませんが、七本の銅線、大体直径このくらいのものを七本でございますが、それをよりまして鉄塔にぶら下げるわけでございます。それは負荷もかかりませんし、銅でございますからほとんど腐食しないというふうなことで、これは税法は別でございます、税法でも耐用年数五十年になっております。ほかの電力会社その他に聞いてみましても、五十年くらいは、普通なんだというふうに聞いております。これは全然何と申しますか、負荷が減るものではございませんし、ただ電気が通るだけでございまして、老朽するということはほとんどないそうでございます。しかし、ただ例外が二つほどございまして、これはたとえば雷害でもって溶断、溶けて切れることがあります。これは夏によくございます。それから、雪が降りまして、ことにしめっぽい雪でございますと、雪が電線の上に凍りつきます。電線が非常に重くなりまして、それで切れることがあります。そういう場合には取りかえますけれどもあと状況を年一回点検するという程度の保守でもって送電に間違いないというのがいままでの例でございます。  ただ、御承知のとおり、非常に高いところでございまして、その点検そのものもなかなか私どものような年とった者が上へ上がって見るというわけにはまいりませんので、やはり点検そのものを何か機械化できないかということをいまいろいろやっておるようでございまして、今度の際は、ちょうど金具との継ぎ目のところが三本切れたらしいということが原因でございますが、そういうものを、単に高いところへ上がっていって見るというような原始的なやり方でなくて、何かもっと、たとえば電力の送電ロスがどれくらいになったらどうなんだとか、あるいは下から照射して見るとか、何かそういう方法はないのかということで、これは電力会社でもずいぶん研究していますけれども、なかなか名案がない。しかし、何か、いずれの機会には、送電——これだけ人が足りないときでございますから、ことにああいう高所作業のできる人はだんだん減ってまいります。したがって、それを機械的に何か見る方法がないか。単に人の目でもって見るという原始的なやり方でなくて、機械的に見て、そうして悪いところは直す、取りかえるというふうな方法をいまいろいろ検討いたしておりますが、この間の例で申しますと、あればその場ですぐ取りかえまして、ワン・スパン八十五メートルの電線でございますが、これはすぐに新品に取りかえましたけれども、四十年、五十年たっているのは、そう銅としては生命がないものではない。鉄とかアルミとか、ことにアルミは非常に腐食がひどいものでございますが、銅はほとんど腐食しないということで、きのう、実は、私はこの実物を見ましたけれども、腐食していないということで、もっと電力会社あたりの知恵をかりまして、何か人力によらないで機械力でもって送電線を検知するという方法はないかということをいまいろいろやっておるわけでございます。たとえば、線路なんかは目で見るよりも、サーッと車を走らせますと、どこに傷があるかすぐわかるようになっております。線路でさえああいうことをやっておるんですから、たとえ高くても、電線でもできるんじゃないかということで、いま各電力会社にいろいろお知恵を拝借しておる最中のように聞いておりますけれども、まあ、送電線の保守は専門家がたくさんいらっしゃいますので、そういう方面の知恵を拝借して、間違いのないようにしてまいりたいと思います。
  57. 伊部真

    伊部真君 私の聞きたいところはそこなんですが、三本切れておったと、しかも、新聞では、十月のテスト以前に切れておったのではないかと。点検それ自体に、もしやり方に問題があると、いま総裁が言われたように、目で見ただけなのか、そういう点検以外にないのかどうか。ラジオの配線なんかでもテスターで電気を流しますと、パッとわかるようになっているわけですがね。そうすると、いまのやり方ですと、ちょっと心配なのは、点検しておっても、その点検は無意味であった、点検の中身が十分じゃなかったということになると、これはだいぶ心配になりますので、この点はどうなんですか、点検前に切れておったのか、点検後であったのかということはわかりませんか。
  58. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) その点は、傷あとから申しますと、点検前じゃないかと、率直に申しまして、そういうふうに見ております。ただ、私も現物を見ますとちょうど登っていって金具の裏でもって非常に見にくいところであることは事実でございますが、しかし、高いところでございますから、目で見て、どこまで見られるのかということの問題だと思います。しかし、あれはどうも私どもから呈しても、去年の十月以前の——少し銅が黒くなっておりますから、傷じゃないかというふうな気がいたします。
  59. 伊部真

    伊部真君 そうなりますと、私は、どこの責任というよりも、たいへんこの事故の遠因というものは深いと思うんですよね。やはり点検をしてもああいうことが起こり得るんだと。送電線が切れる、停電というようなことが起こり得るんだということになりますと、よほどこれに重点というか、精力を注いでこっちの面を早急にやってもらわないと、再びこういうことが起きないということは言えないんじゃないか。そうなりますと、運転士の責任というもの、それは不注意を責めなきゃいけませんが、それに重なった、それをつくっていった幾つかの問題がありますね。ということを考えますと、やっぱりその面の責任というものも十分感じなきゃいけないのじゃないか。先ほど次官が、完全な人災だと、人の不注意によるものだと言われましたけれども、私はそういう個人の責任を免れるとかいう気持ちで言うのじゃありませんけれども、やっぱりこの事故の原因というものが折り重なっておる。送電線のそういう問題についても、いままでほんとうにそれが真剣に、もっと点検の方法が内部で議論されたかどうか。これは、あるいは教育の面でも、そういう非常事態が起きたときにどういう処置をするかということについて、コースというものが明らかであったかどうかという点についても、私はやっぱり全体を点検する必要があるのじゃないか。近鉄の場合でもやはり問題なのは、私があのときにも、しみじみと感じたのは、設備の問題もありますね。それからもう一つは、機能の問題があると思います。十年前の機能と今日の機能とは違っておるのに、車のスピードも違っておるのに、側線がそのままの設計であるという、そんな問題もあります。  それから一つ考えなければならぬのは、あのときにATSの故障が起きた節に点検順序がきちっと守られておったかどうか。その点検順序がほんとうに教育されておったかどうか。あるいは教育期間の人が乗っておったときに、その点検順序を横から見て監督するだけの教育と能力を持っておったかどうかということを考えますと、やっぱり総体的に教育訓練の問題あるいは設備の問題というものも全般的に点検をする必要があるのじゃないかというふうに思うわけです。したがって、これを単に運転士のミスということだけで片づけないで、やはり安全面のダイヤなり、機能なり、あるいは教育の課程なり、教典というものも一ぺん取り寄せていただいて、何か新聞によると、教典すらすぐになかったじゃないかといわれておりますけれども、そういうことについてすぐに当局のほうで反応を出していただけるような、そういうものをやっぱりつくっていただかないと国民が心配をされると思います。ぜひひとつそういうことをお願いしたいと思います。  以上で終わります。
  60. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) いま先生の御心配なすった点、確かにそのとおりでございまして、停電は、先ほど申し上げましたとおり夏などには避けがたい場合が相当ございます。したがって、やはり何と申しますか、すぐ切りかえるというふうなことになっておるわけでございますが、私も教育用のあれを見ますと、やはり書いてはございました。停電した場合には鳴動が継続すると書いてございましたけれども、そこを、先生がおっしゃったように、こういう場合があるんだから、こういう場合にはこうなるからと、そこまでほんとうに教えていたかどうかについては、先ほど申しましたように、ほんとうに血の通った教育ができていたかどうかは、私は管理者としての問題がいろいろあるということは先ほど申し上げたわけでございまして、その点はもっと丁寧な親切な、たとえほとんど起こり得ないことであっても、実質的に説明してやるということをしなければ、なかなかいざという場合には手当てができないと思いますので、十分気をつけてやってまいりたいと思います。
  61. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この事故の報告書ですけれども運転局三月二十八日、それから運輸省三月三十日、両方とも「第七一一C電車運転士が船橋駅上り場内信号機の停止信号を冒進したためと思われるが、詳細調査中である。」と書いてある。結局、運輸省のは、運転局のをそのまま、まる写ししてあるわけです。その「冒進」したことによる——両方ともこういう事実を書いてある。前後の文章を見れば意味が大体わかるようなものですけれども、じゃ、「冒進」というこの二字だけをとって、これはどういう意味だかわかるかと言って、たとえばここにいる人たちに見せた場合にわかるかどうか。調査室といえどもおそらく首をひねるのじゃないかと思う。国鉄ではこういうことばを使って教育に当っているのか。部内の通常の用語になっているのか。運輸省の監督する立場にある監督局でも、このことばをそのまま通常のことばとしてふしぎなく用いておるのかどうか。この点どうなんでしょう。これは公式報告の中に使われておる文句だから、その点をお聞きしたいと思います。
  62. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 私のほうの書類は、実はきょう御提出した書類ではございませんけれども、私どもは、部内では冒進ということばを使っております。運転局と申しますのは、これはうちの中の書類でございまして、先生のお手元にあるのはあれですけれども、私どもの部内では冒進、冒進というふうに言っております。それがたまたまお手元に入ったのかと思います。運輸省のほうの資料は、あるいは、私のほうの資料のことばを使っておりますので、そのままお使いになったのじゃないかというように思います。
  63. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 要するに、赤信号だったけれども、かまわずに進んでしまったという意味なんだろうと思いますよ、前後の文章から見ると。しかし、これは通常用語としてふしぎなく用いられておることばなのかどうか。
  64. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) この意味は、停止信号を見ないで進んだという意味でございますが、従来から事故報告等につきまして私どもとしては使っていることばでございます。
  65. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それから、「詳細調査中である。」と。二十八日も三十日も、両方とも「詳細調査中である。」、総裁の御答弁を聞くと、本人から聞いたわけじゃないのでわからない。というと、二十八日の事故の詳細が、なぜ本人から事情を聞くことができないのか。国会で委員会まで開いておるのに、本人がいない、本人から聞くことができないからわかりませんじゃ済まないでしょう。本人から事情を聞いて、なぜかということを委員会に明らかにすべきだと思う。なぜそういうことになるのですか。
  66. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) これは、こういう場合には、私どもなるべく早く、警察に連れていかれる前に本人から聞いておりますけれども、この際も電話口へ本人を呼びまして、そうして千葉の管理局の責任者が聞いた。その間に、警察から、もう過失傷害であるから来るようにというふうに言われました。そういうことで警察へ行ってしまいますと、私どもといたしましては、その間は面接ができませんので、本人から事情を聞くわけにまいりませんので、ほかの物的な面、あるいは乗っていたお客さんからのいろいろなお話、あるいは当時乗務しておりました車掌、あるいは前の電車の運転士、車掌、あるいは駅員という、ほかの職員からいろいろ事情を聞きまして、そうして推定するわけでございますけれども、先ほど私何べんもお答えいたしましたように、本人から直接聞けたのは、きわめて短時間でございますので、その点、本人がおりませんのでということを繰り返し申し上げたわけでございます。
  67. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そういうことはおかしいと思うのですよ。警察が連れていく、じゃ、警察のほうで本人から事情を聴取して、詳細報告が行なわれて、わかれば別ですよ。警察のほうだってちっとも詳細報告してないじゃないですか。ただ、あたためているだけです、留置場へ。こういうことがいいのかどうか。これは連合赤軍の犯人とわけが違う。まず国鉄が運転士から事情を聞いて、事故の原因というものを、少なくとも委員会に総裁なりあるいは大臣なりが呼ばれるような席上では報告できるようにしておくのがほんとうじゃないですか。ところが、当該運輸委員会において二日たった今日でも、本人から直接聞くことができませんからわからない、そんなばかなことはないと思うんです。これは政務次官に私お伺いしたいと思うんです。こういうことでいいのかどうかですね、詳細がわからないまんまですよ。
  68. 佐藤孝行

    政府委員(佐藤孝行君) 先ほど来、私の報告にも推定ということばを、表現のしかたをしているのも、本人に会って確認した上でないために推定という表現のしかたをしているわけでございます。  それから警察の捜査権、逮捕権については私どもの職務権限でないと思いますから、警察の御協力のない限り私のほうからどうこうすることは適当じゃなかろうと存じます。
  69. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 じゃ、警察協力しない限りこういう事故の真因を委員会で明らかにできないでもかまわないと、こうおっしゃるということですか、それは。
  70. 佐藤孝行

    政府委員(佐藤孝行君) 明らかに、なるたけ早期にしたいという考え方から連絡はとっておりますが、いまだ警察のほうで逮捕中でございますので、逮捕を解除して国鉄なり当方で事情聴取しない限り、現時点では本人に面会することは私どもの立場でできないということを申し上げております。
  71. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 これは、こういう大きな事故があった場合には、警察側がどういう権限を持っていようと、本人が死んでしまったとか、あるいは重傷を負って病院に入っておるという場合には別ですけれども、重傷というわけでもないし、あるいは死んだわけでもない、生きているわけです。それを本人から直接事情を聞いて原因を明らかにできないというばかなことはないですよ。そうまでして警察の留置場の中にあたためておかなければならないという理由はおかしいと思いませんか。警察の権限と違うからわしゃ知らぬと、それでいいもんじゃないですよ。この委員会には少なくとも本人から事情を聞いて原因というものを明らかにする義務があると思うんです。それをしないで、あれはなわ張りが違うんだからしようがない、こういう態度は私は解せないと思うんですが、それはどうですか。
  72. 佐藤孝行

    政府委員(佐藤孝行君) 解せないかどうかは別といたしまして、現在の法体系では、私どもではいかに切歯扼腕してもいかんともできないという点を申し上げているわけでございます。
  73. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そんなばかなことはないですよ。これだけの事故が起きたにもかかわらず、本人から事情を聞くことができない、あれは警察に渡しちゃったんだからしようがない、それで済むことじゃないでしょう。先ほども言ったように、これは純粋に警察の手にゆだねるべき問題である、たとえば連合赤軍の犯人のように、あれなら、それは国鉄事情を聞く必要のないことだからしようがない。これ国鉄事故なんだから、国鉄なり運輸省なりがこの事故の原因をまず本人から聞いて明らかにする義務があると思うんです。義務があると思いませんか、思いますか、どうですか。
  74. 佐藤孝行

    政府委員(佐藤孝行君) 当然本人に会って実情を詳細に調査して、その調査の結果、何が原因でこういう事故が発生したのか、再び事故を防止する意味においても当然原因を明らかにするのが当委員会の目的であろうと存じます。しかしながら、再度申し上げたように、現時点では警察が逮捕権を行使している以上、私のほうはそれを何といいますか、警察と折衝して警察の同意を得ない限り、本人に面会して事情を聞くということは、これは私どもの立場ではできないということを申し上げております。
  75. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 しかしながら以下はあなたの弁解ですよ、それは。それでいいかどうかと言うのですよ。第一これは本人から事情を聞いて原因を明らかにする義務があると思ったならば、警察庁長官と運輸大臣が話し合って本人に事情を聞いて、少なくとも事情を明らかにするのがほんとうじゃないですか。そういう努力をしていないんでしょう。警察へ持っていかれたらそれきりだ、出てくるまでは知らぬ顔。そういうことじゃ、はたして、運輸委員会にこういう資料を提供する立場にある者としてつとめを果たしていたということになるかどうか、私ははなはだ遺憾だと思うんです。これは今後もこういう場合には、私はちゃんとしてもらいたいと思う。原因を明らかにしないまま、二十八日の事故が三十日になっても犯人が——犯人じゃなくて運転士が、犯人扱いですよねこれは、犯人扱いされて、警察に留置されているからわかりません、そんなばかなことはないですよ。はなはだけしからぬことだと思うのですね。これは十分考えてもらいたいと思う。  それから停電と事故の原因の関係なんですよ。停電中に起きた事故なんですね、これは。この報告書によると、「総武本線及び常磐線の停電が七時十九分から七時二十一分まで二分間」、こういうふうにあります。これは総武本線と常磐線だけの停電だったんですか。私は、当日七時二十六分熊谷発の上り電車に乗って、上野に八時三十九分に着く予定の電車に乗っていたのですよ。そうしたら大宮駅に着いたら、停電事故のために先行電車が詰まっておりますからしばらくお待ちください。そこでダイヤはそれから先めちゃめちゃになって、上野到着が十分か十五分くらいおくれました。総武線と常磐線だけの停電でもって東北・高崎線にもこういう影響が及ぶようになっているのかどうか。それとも東北・高崎線にも停電があったのかどうか、その点はどうなんでしょう。
  76. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 当日、東北・高崎線にあったかどうかちょっと私は聞いておりませんので、これは詳細に調べればすぐわかります。ただこれと同じ系列ではなかった、もしあったといたしましてもこれと同じ系列のものではないのじゃないかというふうに思いますが、当日、いま先生のおっしゃった時間帯に東北・高崎線に停電があったかどうか、これはすぐわかりますから調べます。
  77. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 ちょっとこの報告を見て、私自身が当日電車に乗っていて、そしてダイヤの混乱のために十五分ほどおくれたということを体験しているわけですからね、まことに奇異の感を受けたわけです。また、総武線なり常磐線なりにおける二分間の停電で東北・高崎線が十分も十五分もおくれるというような状態にあるのかどうか。これはもうその点では、東北・高崎線もこういう事故の危険があったということになると思うのです。その点はどうなんでしょう。
  78. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 私もちょっと専門家でございませんので詳しく正確に御答弁申し上げられませんが、いまちょっとここで聞きましたところによりますと、当日やはり東北・高崎線にも停電があったようでございます。ただ、それとこれとは——それが何か蕨変電所の事故が武蔵境の電源のほうに関係して、何かそちらのほうがあれしたというふうに聞いております。これちょっともう少し、私もよくわかりませんが、おそれ入りますが、課長に答弁さしてよろしゅうございましょうか。電力関係でございますけれども、ちょっと専門的でもって私間違った答弁をしてはいけませんので、お許しを得ますれば、電力課長でございますが、答弁をお許し願いたいと思います。
  79. 大槻国秋

    説明員(大槻国秋君) 当日、蕨変電所の断線事故のため、断線した電線が——蕨の直流変電所でございますが、これは東北線に送っております。この変電所が十五分程度停電しております。電線を除きまして、すぐ送りまして、その間だけ東北線が赤羽から浦和の間これは停電してございます。
  80. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それでは東北・高崎線も停電をしたということでしょう。それが同じころ合いに起きたということなんですから、当日停電があったならば小出しにしないで、あったところみんなここへ並べるべきじゃないのかな。何もこんなところ小出しにすることはないと思うのです。ありのままに私は報告してもらいたいと思うのですね。  で、運転局並びに運輸省のこの報告書はそういう意味でどうも不十分です、端的に言って。特にこの本人が留置中であって、事情を直接聞くことができないから詳細調査中である、こんなことは言語道断ですよ。これだけの事故が起きてから二日たっても関係委員会に事故の詳細が調査中のまま報告をされる、こんなばかなことはない。これは予算委員会にも総裁お出になるそうですけれども、予算委員会でもあるいは聞かれるかもしれませんが、このままでは、予算委員会に出てもやはり詳細調査中ということで、わかりませんという答えしかできないでしょう。新聞等でもって推定するだけなんです。ATSと停電の関係、これは伝えるところによると、本社運転局でもはっきりしなかった。統一見解というものは当日の午後になって運転局から出された。本社ですらわからないものが経験六カ月の現場の運転士にわからないということもこれは十分あり得る。だから一言でたるみ運転といわれるけれども、朝のラッシュに二、三分おきに走っている場合には、ぼんやりして運転することはできないと思うんですね。絶えず神経を針のようにとぎすまして運転しなければできないわけです。そこへもってきてATSが故障したのじゃないかということでそっちに気をとられる。前方の信号注意よりもATSに気をとられる。そこで追突するということはありそうなことなんです。酔っぱらって居眠りをして追突した、こういうようなことはあり得べからざることなんです。だけれども、今回の事件というものはありそうなことなんですね。人間としてありそうなことだけに、これは今後絶無を期すといっても、このままの状態で絶無を期すということは私は困難だと思う。十分に考えなければならぬ問題です。  そこで時間の関係で総括的に私は総裁にお伺いしたいと思うんですけれども、山陰地方のダイヤ改正も非常に評判が悪い。評判が悪いということは特急や急行を優先するけれども、そうでない一般の利用者は犠牲になるということが端的にあらわれているからなんです。こういう方針というものを変えなければ、これはいつまでたったって恨まれるばかりです。運賃値上げをする前にわざわざ国民の悪評を買うようなダイヤ改正をするという真意はどこにあるのかちょっと解せないのです。だから運賃運賃の問題として、これはこれから委員会で取り上げられることだと思うんです。ダイヤ改正の基本姿勢としては、もっと利用者のためのダイヤ改正を行なうべきじゃないかと思うんですが、その点どうでしょう。
  81. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ダイヤ改正につきましては全く先生のおっしゃるとおりでございます。ただ、今度ローカル線についての列車を削減いたしましたのは、実績から見まして非常に利用数が少なかったからということで切ったものが相当ございますが、その後のいろいろな状況によりまして、先ほど申しましたとおり逐次手直しをしていくというような方向で進みたいと思います。別にダイヤ改正をした上で運賃を云々というふうな気持ち、両方結びつけての気持ちでやったわけではございませんので、その点御了承願いたいと思います。
  82. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 問題は、ダイヤ改正をするにしても考え方がどこにあるかということにあるんです。今回のダイヤ改正を端的に言えば、一に観光、二にレジャー、三、四がなくて五に通勤、このくらいでしょう。このくらい一般の利用者、通勤者というものはそでにされているわけです。私自身がやはり実際に検討してみても、夕方の通勤電車が急行のために一駅に十分も十五分も待たされるという例が一ぱいあるんです。通勤者が超満員で詰まっているのが、特急や急行を先に通すために一駅に何分も待たされる。こういうばかなことは私は許しちゃならないと思うんです。そういう配慮というものかまるっきり欠けていますよ。そこでそういったような配慮というものをもう少し利用者本位——これは特急、急行のレジャー、観光の人たちだけでなくて、一般の毎日利用をしている通勤、通学生のためのダイヤということを基本において考える、そういう考え方をダイヤ作成面においてあらわさないと、いかに運賃の値上げをお願いしますといったって国民の側からすればよくわかりましたという気にはならない、なれないと思うんですよ。その辺のことを一体、総裁としてお考えになっているかどうか、最後にお伺いしたいと思うんです、総裁には。
  83. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 確かに今般のダイヤ改正につきましては、ローカル線について非常にお説のような点があったと思います。ただ、私どももできるだけ通勤、通学だけは確保しようという気持ちでやりましたけれども、しかし実際に無理な点があったことは率直に認めます。ですから、その点は先ほど森中先生に申し上げましたとおり、やはり必要に応じて修正してまいりたいというふうに思います。決して一たんきめたから絶対変えないということはございません。実情に応じて変えてまいりたいというふうに思っております。
  84. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 総裁、衆議院の関係があるそうですからけっこうです。  それから政務次官と鉄監局長見えておりますので、そちらに若干お伺いしますけれども、今回の事故について、こういう事故というのは、先ほども私申し上げたけれども、たとえば酔っぱらい運転とか、あるいは居眠り運転とか、そういう種類の不注意とはちょっと違うのですね、これは。人間の錯覚といいますか、そういうありそうな事柄。が停電とATSというものとからんで発生しておるのです。だとすると、今後もあり得るということを考えなければならぬと思うのですよ、人間のやることなんですからね。だから、そういうことを考えてみると、設備の面で根本的に考え直しをしなければならぬだろうという気がいたします。  それから過密ダイヤの問題にしたところで、これはしかたがないのだで済ますわけにいかないと思うのです。私は八時半ごろ上野に着く通勤電車を利用をしております、今日ちょくちょく。そこで、その通勤の実態というものを非常に知っておりますが、先般のように停電がありました、ダイヤが乱れましたということになると、いわゆる整理態勢というものが、上野駅なら上野駅の整理態勢というものがめちゃめちゃになってしまう、不規則に電車が着くものだから。そうすると大混乱になってしまう、たちまち。ああいう状態を四六時中繰り返しておるということはばかな話だと思うのです。問題を根本的に解決する必要があると思う。ところが、先般の委員会でも私お伺いいたしましたけれども、問題を根本的に解決をするという意欲を感ずることができませんでした。たとえば、現場の長はよくこういうことを言っておるのです。この輸送力をふやすためには尾久−王子間を線増すればいいじゃないかということを言います。あるいは、上野と東京の間にもう一本線路を敷設をして通し運転すればいいじゃないかということを言う。これは現場の当事者の知恵だと思うのです。ところが、そういう知恵を生かすということが国鉄には行なわれていない。なぜならば、金のかかること、つまり通勤者の便宜のために投資をするということはやらぬという考え方があるのです。技術的に不可能だからやらぬというのじゃないのです。もうけ仕事のためならば投資をしてもよろしい。しかし通勤、通学生のために投資をするのはばかげている、こんな考え方が根本的にあるのじゃないか。そういう考え方がある限り今日の殺人ラッシュを解消することは不可能だと思います。殺人ラッシュが解消されないとすれば、このような事故というものは絶無を期することはできない。だから、こういう大混雑を緩和するためにどうしたらいいか。たとえば、東京−上野間に線路をふやすことはできないといっても新幹線ならつくるというのです。新幹線だからつくるというのです。技術的にできないのじゃないのです。だから、こういうことを考えてみると、やはり国鉄方針というものがあくまでも観光客、長距離客、急行、特急のお客本位である。で、毎日のように何百万人の人間が通勤をしておっても通学をしておっても、そういう人たちのための便宜をはかるということは全く考えていないということになる。そういう基本的な考え方というものをこの際どうするか、考え方というものを根本的に改める必要がある。これはもう政治の問題だと思う。国鉄運転局とか、そういう技術的な問題じゃない、政治の問題だと思うのですが、その点はどうですか。
  85. 佐藤孝行

    政府委員(佐藤孝行君) 先ほど森中先生から御指摘になったとおり、国鉄がその国鉄としての使命を果たして、なおかつ大量輸送にたえるには国鉄のあり方がどのような方向で国鉄というものを考えなければならないか、そういういろいろ国鉄のあり方について、あるいは総合交通体系の中での国鉄という問題について御指摘がございました。いま先生のおっしゃるように、現状の二分十秒に一台の過密ダイヤではそういう危険性が全くないんだということは、御指摘のとおり私も否定はできないんじゃなかろうか。もしそのように過密ダイヤが避けられないものならば、ATSというような不安定なものにたよらず、もっと過密ダイヤの中でいかに安全運転ができるかというものも、国鉄並びに運輸省当局が一体となって考えて過密ダイヤの解消に少しでも役に立つような方向を見出さなきゃならない。かようなことで運輸省国鉄と双方一体となって現在検討している最中でございます。
  86. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 最後に、私は最初の問題に戻って申し上げたい思うのですが、運転士を逮捕してそのまま留置をして、そのために詳細調査中のまま、その原因というものはわからずじまいになっている、委員会になってもそれが報告できない、こういうことははなはだ遺憾だと思う。何のためにそうしなければならないのか。いわゆる凶悪犯なんかと事情が違うわけですね、これは。過失ということで逮捕したのだろうと思うけれども、これは逮捕権の乱用じゃないかという気もするわけです。これは殺人犯や窃盗、強盗とは事情が違う。本人が逃亡するおそれもない。かりにそういうおそれがあるとしても、少なくとも事故の原因というものは本人から事情を聞く、聞いて明らかにする、少なくとも公式な報告がちゃんとできるようにしておくのがほんとうだと思う。そこまで妨害をするというのは警察の行き過ぎだと思うのです。その点は、これはなわ張りが違うからおれの知ったことじゃないと、黙っていちゃいけないと思う。その点を私ははっきりさせてもらいたいと思う。そうして、なぜそういうふうにしなければならないのか、なぜ詳細調査中のまま何日も放置しなければならないのか、その点を、これは問題を明らかにする必要があると思うので、このことを当委員会として、重要な問題として取り上げてほしい、こういうふうに思うのです。
  87. 鬼丸勝之

    理事鬼丸勝之君) ただいまの瀬谷委員の発言につきましては、後刻理事会において打ち合わせをして処理したいと思っております。  他に御発言もなければ、本日の調査はこの程度にとどめておきます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十四分散会      —————・—————