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1972-03-25 第68回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十五日(土曜日)     午前十時二分開議  出席分科員    主査 植木庚子郎君       佐々木義武君    渡辺  肇君       木原  実君    小林  進君       中谷 鉄也君    原   茂君       横路 孝弘君    林  孝矩君       栗山 礼行君    塚本 三郎君    兼務 上原 康助君 兼務 西宮  弘君    兼務 米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 角榮君  出席政府委員         行政管理庁行政         管理局長    平井 廸郎君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         通商産業政務次         官      稻村左近四郎君         通商産業大臣官         房長      小松勇五郎君         通商産業大臣官         房参事官    増田  実君         通商産業大臣官         房会計課長   北村 昌敏君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         通商産業省企業         局長      本田 早苗君         通商産業省企業         局参事官    田中 芳秋君         通商産業省公害         保安局長    久良知章悟君         通商産業省重工         業局長     矢島 嗣郎君         通商産業省化学         工業局長    山形 栄治君         通商産業省繊維         雑貨局長    佐々木 敏君         通商産業省鉱山         石炭局長    莊   清君         通商産業省公益         事業局長    三宅 幸夫君         工業技術院長  太田 暢人君  分科員外出席者         警察庁長官官房         能率管理課長  轟   秀君         警察庁刑事局捜         査第二課長   小林  朴君         外務省アメリカ         局外務参事官  伊達 邦美君         外務省経済局国         際貿易課長   片山 俊武君         大蔵省主計局主         計官      徳田 博美君         日本輸出入銀行         総裁      石田  正君     ————————————— 分科員の異動 三月二十五日  辞任         補欠選任   小林  進君     木原  実君   原   茂君     中谷 鉄也君   塚本 三郎君     栗山 礼行君 同日  辞任         補欠選任   木原  実君     横路 孝弘君   中谷 鉄也君     原   茂君   栗山 礼行君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君     小林  進君 同日  第三分科員西宮弘君、米原昶君及び第五分科員  上原康助君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計予算農林省通商産  業省及び労働省所管  昭和四十七年度特別会計予算農林省通商産  業省及び労働省所管      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    ○植木主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  昭和四十七年度一般会計予算及び昭和四十七年度特別会計予算中、通産省所管を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塚本三郎君。
  3. 塚本三郎

    塚本分科員 私は田中通産大臣に対しまして、航空機の問題につきましてお尋ねをいたしたいと思います。  わが国産業は、戦後雑貨繊維を経て電気器具自動車造船等、飛躍的な発展をしてまいりました。そして世界市場における輸出の実力もたいへんな力になってまいりました。しかしあまりにもその力が強過ぎて、それを受け入れる相手国から逆に迷惑がられ、あるいは敵意ある態度も示されるような状態になってまいったこと、御承知のとおりでございます。したがいまして、次期戦略産業、こういう表現はいかがかと思いますけれども、わが国産業としては、これからはコンピューター航空機が最も主要なものだと私たち判断いたしております。その点、大臣のお考えをまずお伺いしたいと思います。
  4. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘のとおり、戦後急速に経済復興をなし遂げてまいったわけでございますし、また輸出産業多様化をしてまいりました。十五年前にはアメリカから入れなければならなかった家電製品テレビ等は、アメリカに洪水のように、アメリカ表現を借りると輸出がされておりますし、また電卓、電子計算機のようなものもアメリカにどんどん入っております。今昔の感にたえないというくらいに輸出は伸びておるわけでございます。しかし公害問題、都市の過度集中、また国内に持ち込む外国からの旅材料が非常に膨大な量になったというような意味から、過去百年間続いてまいりました重化学工業中心から、知識集約型の産業に移らなければならないということは当然のことでございます。そういう意味で、御指摘のような航空機電算機にまた家電製品等が、これからの輸出難業を目ざして、成長産業として育成をしなければならないということは仰せのとおりでございます。
  5. 塚本三郎

    塚本分科員 かつて萱野通産大臣は、商工委員会におきまして、次の時代の戦略産業コンピューター航空機であるというように数年前に御答弁をいただいたことを私は記憶いたしております。その考え方に基づいて、わが国産業のうち、コンピューター航空機保護育成に力を注がれたことは、記憶に新たなところでございます。したがって、その点、ただいま大臣から御答弁をいただきましたような考え方でありますが、コンピューターに対しましては相当保護せられておる。育成はいかがかと思いますけれども、保護せられておって、このことが保護が行き過ぎだということでアメリカなどから苦情が持ち込まれておることも伝えられております。しかし、航空機に対しましては、その点、保護育成という点では、いまだきわめて足りないのではなかろうかというふうに判断されますが、その点いかがでしょう。
  6. 田中角榮

    田中国務大臣 コンピューターにつきましては、完全自由化を強く要請されておるのでございますから、これは短い間に相当政策を行なって国際競争力に耐え得るようにしなければならないということ当然でございます。特にアメリカのIBMのシェアが全世界的でございますので、まごまごすると全世界を席巻されるという状態ともなることとなりますので、日本はそういう意味コンピューター育成強化をやっております。  航空機に対しては、相当やっておるのです。相当ということは、YS11をつくります過程においては二百四億の赤字というものもございますが、これは当然民間にも一部負担をしてもらいますけれども、国がその大半を税金でまかなうということをやっているわけでありますし、日本航空機製造には出資もいたしておりまして、これから新機種の開発その他、できればエンジンなども外国から入れなければならないということではなく、これからも高性能のエンジン開発には全力をあげなければいかぬ、こう思っております。特に発電機に対しても、大型発電機外国から入れておったのが、このごろは外国にも輸出ができるようになりつつあるわけでありますから、日本人の能力を前提として考えれば、施策のよろしきを得れば、大型高性能エンジン開発も可能である、こういう考えで、基本的にはコンピューターと何ら差異をつけない、こういう考えでございます。
  7. 塚本三郎

    塚本分科員 大臣のお気持ちはわかっておりますから、ことばじりをつかまえるわけではございませんが、つい先日の商工委員会で私は大臣の御発言を聞いておっておやと思ったことがございます。日米経済会議の席上で、国際分業という話の質問に対しまして、アメリカに言ってやったことがあります。アメリカから、コンピューター及び航空機アメリカにまかせよという発言があったので、ようございます、そのかわり電気器具自動車日本にまかせるかというふうに言ったら、相手方は黙ってしまった。こういうふうな御発言を先日の商工委員会でなさっておりました。しかく国際分業はむずかしいものでございますという御答弁であったと私は記憶いたしております。だから、ことばじりをつかまえるわけではございませんが、その点アメリカに、向こうで万が一自動車やあるいは電気器具造船等まかせろと言えば、飛行機アメリカにまかせるという意思万が一にもおありになるとは思いませんが、その点、御意見を伺いたいと思います。
  8. 田中角榮

    田中国務大臣 それは高度の政治的発言であることをひとつ御理解いただきたい。これはイフがついておるわけでございます。もしも航空機電子計算機というものをアメリカにまかせるということが事実であるならば、また皆さんの言うように国際分業も不可避であるというならば、では家電製品やその他自動車も全部日本にまかしますかというと、ビッグ三がまかすわけはないのです。ところが、まかせないということを——やはり政治でありますから、相当きわどい発言をしないとその効果をあげることができない。これは政治の要諦でもございますので、そういう意味で述べたのであって、私がコンピューター飛行機アメリカにゆだねようなどという考えはごうもないということをあらためて申し上げておきますから御理解願いたいと思います。
  9. 塚本三郎

    塚本分科員 田中大臣が高度な政治発言をなさる御意思は私も十分承知しておりますから、疑ってはおりません。しかし、実は当日、航空機の問題でもっと力を入れてほしいという要請を申し上げようとして部屋へ乗り込んだときそんな発言を聞いたので、私は実はあ然といたしました。しかしそのことはイフがついておるということであらためて確認をいただきましたので、安心をいたしております。  ところで、政府は、その航空機産業育成必要性を痛感せられて、民間航空機工業育成のために航空機工業振興法をおつくりになり、昭和三十四年にYSの生産のために日本航空機製造株式会社を設立せられました。この日本航空機製造株式会社に対しましては、世上におきましてきびしい批判のみが非常に強く残されておるやに私たちは察知いたしております。しかしその半面が忘れ去られておるという、航空機製造に携わっておる者の立場からあるいは日本産業の将来を憂うる者の立場からは、心配をいたしております。したがいまして、日本航空機製造株式会社に対するただいまの大臣評価をここでお聞かせいただきたいと思います。
  10. 田中角榮

    田中国務大臣 日本航空機製造株式会社がたいへん苦労して日本で新しい花形産業の基礎をつくるために日夜努力を続けておることに対しては高く評価をいたしております。この会社の設立の当時の気持ちと、私の気持ちは全然変わっておりません。でございますので、YS11の製作最終段階になったときには、引き続いてYX開発を行ないたいということで、それは私も求めておったわけでございます。ところが結果的には三十三億の要求をしたYX開発は現時点においてはこの予算案においては一年間見送られて、二億という幾ばくかの調査費を継続して計上しておるということでありますので、航空機製造に働く人たちとしては心外な、また不安な気持ちがあるかもわかりません。しかし航空機というものは、日本はそんなに負けるようなところはないと思う。私も昔関係したことがあるのです。戦争中、レーダーを通す飛行機レーダーにつかまらない飛行機というのはないかということで合成樹脂のプロペラをつくったりいろいろなことをやりましたから、そういう意味で私自身航空機に対してもかなりの知識を持っているつもりでございます。そうして戦前の日本航空機工業というものの水準は高かったわけでございます。上がったきりでおりてこれないということはございましたけれども、当時、時速千キロの飛行機があったわけでございますから、千キロの特攻機ミグ戦闘機を上回るものも日本でつくられたわけでございます。ですから、航空機産業としての水準が低いとは思っておりません。ただ戦後十四、五年間全くのブランクがあったわけでございます。そういう意味で、いまのT2を採用するときも国産にするかアメリカから買うか、アメリカから買えば半分の価格で入ります。半分で入るがやはり日本航空機産業というものの将来を考えれば日本でやるべきだということで、YSに引き続いてYXはちょっと中断の形になりましたが、引き続いてT2の製作をやらなければいかぬ、これは国内産業としての航空機産業を伸ばしていこうという考え方であることは間違いありません。ですから日本航空機製造そのものが主体になってこれからずっとやっていかなければならない。またせっかくあそこまでつくった技術というものは無形の資産であります。これは評価できないくらいの非常に高いものだと思います。私も初級技術者でございますから、そういう意味では技術の温存ということはとても数字では評価できないことだと思います。そういう意味日本航空機製造というものに対しては、私自身がこれから通商産業省政策の中で重点を置いたものとして見てまいりたい、こういう基本的な考えでございます。
  11. 塚本三郎

    塚本分科員 通産省が最近手がけたそういう新しい分野における半官半民の会社というものは、最近におきましてほとんどが成功しておるのです。日本瓦斯化学もあるいはまた日本合成ゴムも、私はこの両社とも委員会から視察に参りました。みごとに成長いたしまして、その株も民間に高い価格払い下げをされておる。日本合成ゴム等におきましても、すばらしい価格でもって払い下げをして、いまやその製品世界に向かって飛び立つような力になっておる。にもかかわらず日航製だけはこういうふうな形で、実は言ってみるならば政府に対しても重荷になっておるような形で、大臣の御意思はいかがであろうとも、扱われ方としてはいわゆる政府重荷になっておるようなあるいは手足まといになっておるかのごとき扱われ方をされておるというふうに私は判断をいたしております。田中大臣におなりになってからもっと力を入れていただき得るものなりというふうに、私たち日本航空機製造の将来のために期待を申し上げておった。ところが現実にはそうではないという形に判断をされるわけでございます。これは日本の将来にとって、あるいは大臣の将来の展望にとっても、いわゆる好ましくない形にいまされておると判断をされます。その原因がどこにあるかは、いま大臣が御説明になりましたとおり、日本航空業界というものが他国に比してあまりにもおくれ過ぎておる。だからそれに見合うだけの、他の産業と比べては決定的に大きな助成をしていただかなければならないと私は判断をいたしております。にもかかわらず、相当に大きな助成ではありますけれども、その穴を埋めるには値しないのではなかったか。その点私はなお遺憾な点があったというふうに判断いたしますが、いかがでしょうか。
  12. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘を受ければそのとおりだと申し上げてけっこうです。私は二十五年の代議士生活の中で科学振興技術振興というものに対しては相当推進力になってきたと思います。いまになってようやく「第二日竜号」などの問題が大きな問題になっておりますが、私は三千メートル以上の深度掘さく機アメリカから輸入して国産化しなければいけないということで、それを行なうためにみずから石油資源開発法議員立法提案者になったわけであります。また商工委員長の当時には科学研究所、いまの理化学研究所法議員立法を行なったわけでありますし、そういうことに対しては私自身理化学研究所に関係してまいりましたから、比較的に先取りをするような——こういうものの技術開発に対してはどんなにしても先取りではないという感じを持っているわけです。まして資源のない、原材料のほとんどを海外から輸入しなければならない国としては、時計をつくったり、精巧なコンピューターをつくったり、飛行機のような精密なものをつくらなければならない。言うならば東欧のチェコスロバキアチェコ銃をつくった当時のような産業形態に移らなければならない、こういう考え方をずっと持ち続けてきております。  しかし、そういいながらなぜことしの予算は不満足なものになったかというと、ちょうどYSの百八十機の製造過程における赤字処理という問題は今年と来年の二年間においてやらなければならないということが一つあったのです。もう一つは、あとから御質問があると思いますが、YSのときに、一億円でもいいから民間が出さないか、全額国が出すべきであるという考えには立っておりますが、これは決算委員会もあるし、国民税金を使うときにはやはり全部が政府だという考え方よりも、民間幾ばくかでも出したほうがよい。私は最後に、フィフティー・フィフティーから、一億でも出さないか、まず今年さしあたりスタートに対しては一億でも出しませんか、そうすれば私は三十三億のうち三十億程度で大蔵省を説得したいと思うのだというところまで言ったのですが、一億に対しても踏み切れませんということでした。まあドルショックやいろいろな問題がありましたからやむを得ないにしても、そういう状態の中で、私が理想を追うにきゅうきゅうとして——私は国会でもって責められてもけっこうです。真にやむを得ないといえば日米繊維協定のイニシアルも行なうのでありますから、おこられてもかまいませんけれども、やはり国論というものがそれを受け入れ、消化をしてくれるような状態というものを民主政治前提とするということでございまして、あなたのような発言がこれから毎日出てこなければ、少なくとも来年の予算はことしよりも前進をしたということにならないわけでございまして、私自身航空機というものは政府がやらなければならない問題だと思っております。航空機とか宇宙工学とか電子工学、ある意味における医学の一面もそうでございますが、これらは国が税金をもととして考えないとなかなかできないのです。これは航空機の発達が全部軍の力で、日本が非常に高性能な飛行機をつくったときも、臨時軍事費という無制限に近い研究開発費が与えられるという背景のもとで高度の技術開発が行なわれたわけでありますから、そういう意味では、いまの制度の中でほんとうにできるのかどうかという問題は私自身も危惧の念を持っておるのです。ですから私は、これからはそういう方面に全力をあげよう、こう思っておるのでございますが、将来の問題は別として、いま御審議をいただいておる予算は不満である、こう言われれば、まことに恐縮ですと、こう言わざるを得ないわけでございます。   〔主査退席渡辺(肇)主査代理滑席
  13. 塚本三郎

    塚本分科員 大臣先回りをして言ってしまわれるので全く私の判断もわかったと言わざるを得ないわけでございますが、しかし、それにしても、一億でもということばは私はいま初めてお伺いするので、会社側やあるいはまた従業員立場からするならば、もし一億でもということばをお使いいただいたとするならば、それは数字の一億というよりも、おそらく会社側やあるいはまた製造の側からいたしますと、いわゆる割合の意味における一億と受け取ったのではないかというふうに、私はいま判断をいたしておるわけです。  YXに対する開発費が約二千五百億、わが国が半分背負うとして千数百億、その一割と見ても百億をこえる、こういう意味会社側はびびってしまったということで、おそらく大臣のおっしゃることばが文字どおり一億あるいは一億という数字にとどまるならば、会社は喜んでこれに応じたのではなかろうか。それは大臣、一割の間違いじゃございませんか。
  14. 田中角榮

    田中国務大臣 開発費は全部国が負担をしてもらわなければならない、それはよくわかる。よくわかるが、一年間のブランクというのは非常に大きいというようなことが一つある。もう一つは、アメリカ政府が対象ではなく、日本日本政府であるが、アメリカボーイング社という民間飛行機製造会社である。一社と日本政府とがフィフティー・フィフティー出資を行なって開発をし、しかも千億円以上の債務負担をここで明らかにするということになると、必ずこの性質を理解されるにしてもいろいろな非難、いろいろな問題が起こると思うから、だから、明年度以降のことはわかる。これはまず先になってみなければ経済の見通しもつかないし、ドルショックがあり、円平価の切り上げがあり、またその当時は為替差損の問題が全然未解決だったのです。そういう三つの大きな問題があるときに、負担の区分を明らかにすることができないということはわかるが、スタートに関して、ことしの予算に関してはせめて十億でも五億でも一億でもいいのだということを、私は三菱以下全部の航空機メーカー代表者大臣室に押しかけて来ましたときに言いました。つまり、一億でも出さないか、来年から以後のことは来年の話としてペンディングにしておこう、こう言ったことは間違いないのです。一〇%と言ったんじゃないのです。一億でも出さないか、一億も出さないとしたら、これは、それでもやってはみるが、なかなか困難ですよということは、私は何でも言うほうでございますから、そこまで言ったのですが、あの当時の状態において、それは一億と言っても、来年は十億になり再来年は二十億になるというのは、ちょうど、赤字の二百四億というYS11の処理のときに、これは出資金全額たな上げだけれども、実際はこれは補てんをしてしまう、ゼロになってしまう、これには民間が応分の出資をしております。同時に、民間はその上に二十億を出しなさい、そうすれば百六億円を出します、こういうことで話をつけたときでございますので、どうも来年になれば一億が少なくとも十億になり再来年は二十億になると考えたかもしれません。私を信頼しなさいと言ったのですが、いまの私なら信頼されるかもしれませんが、あの時点においては、遺憾ながら民間幾ばくかの負担をするということに対しては受諾いたしかねます、こういうことで、これはやむを得ざるものとして判断したのです。これは事実であります。
  15. 塚本三郎

    塚本分科員 大臣が違ったことをおっしゃるはずはないと思いますので、私はいまその話をお聞きしまして日本航空機の将来に対してきわめて残念な事態であった、もちろん客観情勢も、また大臣が申されたとおり会社側にとっても混乱の一番底にあったときだと判断されます。ならば、もう少し詰めてやはりその点を前に進むような御指導をいただきたかったなというのが、いまお聞きしての私の判断でございます。  それは過ぎ去ったことでありますが、いずれにいたしましても、これからの問題といたしまして、私はやはりこの航究機に対する開発費は国が全額持つ、そして量産は、これは金もうけでございますから、会社が設備から一切を、金利等の問題は別にいたしましても、持つという形で、開発費大臣おっしゃったように外国民間との合弁会社の場合は、取り組みようの関係もあってそのような御配慮をなさったと私は想定いたしますけれども、これからの取り組む基本的な姿勢としては、やはり開発費だけは政府全額負担をしていただくということが前提でなければ前に進まないし、それでなければ無理ではないか、きわめてリスクの大きい問題であり、しかも国家にとっては不可欠の重要な産業でもありますので、そういう意味から私はそういうふうに判断をいたしますが、いかがでしょうか。
  16. 田中角榮

    田中国務大臣 言われるお考え方はよく理解できますが、しかし、何ぶん国の投資というものは国民の血税を使うわけでございますから、やはり国民の理解というものも必要であります。同時に、審議会の答申というものも尊重しなければならぬということでございますので、国会の考え方、それから国民の企業に対する、技術開発に対する評価のしかた、審議会の答申等を十分考えながら結論を出していくということだと思います。  私は先ほど来申し上げておりますように、現実的にこういう高性能なものはみな国費でもってやられているのです。アメリカ等の場合は軍事費という一括のワクの中でまかなわれておりますからあまり批判はないのですが、しかしそうでなければなかなか開発できないものである。ですから、先ほどここで申し上げましたが、日本が戦後の急速な、二十九年から三十九年まで一〇・四%という平均成長率の背景にあったものは、一つにはアメリカの非常に大きな開発費をかけた兵器等が日本に持ち込まれ、これを分解する、同じものをつくる、合弁会社でもって同種のものを製造するということが民間に波及効果を及ぼしたことは事実なのであります。   〔渡辺(肇)主査代理退席、主査着席〕 ですから、航空機というものだけで考えられないで、高性能の航空機ができれば計器の発達になります。同時に高速鉄道の事両の発達にもなりますし、それからモーターの改良にもなりますし、船の建造にも非常に波及効果があるわけでございます。そういう意味でこれを考えてみると、飛行機という一つのワク内だけで評価をさるべきものじゃありません。そういう意味で、科学技術庁はとにかく全額国が役人に給与を払っているわけでございますし、また理化学研究所も国の機関として存立をしているわけでございますし、ほかの工業技術院やそういうものも全額国でやっているのです。そういう意味で、航空機というような高性能なもの、高いレベルなものに対しては国が相当なウエートを持たなければいかぬということはお説のとおりでありまして、私もあなたと個人的には大体同じ考えなのですが、あれもやれ、これもやれという問題は一ぱい御要求がございますから、そういう中で、やはり国民的合意というものを求めつつこの問題に結論を出していくということで御理解いただきたいと思います。
  17. 塚本三郎

    塚本分科員 米国だけは、聞くところによりますると、独立採算でやっておりますけれども、ほかの国は大臣御承知のとおり、ほとんど開発費は国がまかなっておる。そのかわり量産できて、採算が合ってもうかった部分は、それを国に出世払いで返すという形でほとんどやっておるように聞いております。そしてアメリカといえども、いまお話の中にありましたように、軍との協力の中で、大幅に、戦争中における軍の設備等をそのまま譲り受けたり、いろいろな形で恩恵を受けておるというふうな形で、先ほどの、私が触れました瓦斯化学や、あるいは合成ゴムのように、世界じゅうが同時に用意ドンで出発するときには日本は負けないと思うのです。だけれども、すでに、先にアメリカあるいは英仏のように走ってしまっておる、その規模たるやアメリカとは百対一、あるいは英仏とは十対一という決定的な差をつけられた中で出発する産業、しかも日本がこれに対して年間一千億くらいずつお金を出して、日本の需要のためにも買っておるという、これは日本産業できわめて特徴ある姿だ。しかも先ほどから再三大臣が申されておりまするように、戦前におきます日本技術とその能力がすばらしいものであったことは歴史が示しております。ならば、この差を縮めるために、少なくとも世界各国がやっておるような形で、開発費はやはり国でまかなうべきだ。むろん議会における、あるいは世間における理解が不十分であるかもしれません。しかし、率直に申し上げて、田中大臣大臣のときにこれをぶち破って、やはり大胆におやりいただかないと前に進まないのじゃないかというふうに私どもは判断もし、期待も大きいものだから、再度この点大幅に、そういう世論を押しのけて、この必要性予算の中でやはり示していただくということが必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  18. 田中角榮

    田中国務大臣 懸命な努力をいたします。
  19. 塚本三郎

    塚本分科員 日航製の問題につきましては、いろいろと販売に対する二、三の手違いが、失敗らしきものも大きく宣伝をされておりますけれども、しかし最初お尋ねいたしましたように、百数十機が販売されたということ、これはやはりその欠点を補って、初めてこれが国産でできて、しかも他国に売れたということ——私ども議会から南米視察に行ったときに、ブラジルで、おお、サムライ、と言ってYS11をサムライと名づけて、そしてわざわざ優先的にわれわれ国会議員団をブラジリアに運んでくれた。そのときの日本に対するいわゆる信頼度というものはたいへんなものでありまして、これは党派を越えて議会から参りました議員団が、政府が力を込めて日航製に投資したことの意義というものを痛感をして帰ってまいりました。そういう点で、やはりパイオニアとしての評価を彼らに与えて、そうしてこれに対する将来ある施策をとっていくということが必要ではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。そのときYXさえうまくいわゆる橋渡しができておれば、こんなぐちにならずに済んだというふうに思うわけでありまするが、当面、そのYX自身がうまくいかなかったというようなことではありますけれども、しかし、そうかといって、大臣お話しのように、軍事と一緒に飛行機をごっちゃにして論じてまいったり、あるいは相乗せをして進めていこうといたしますると、日本政治情勢はきわめて微妙だと思います。だから私は大胆に、やはりむだであっても、政治判断からいいましても、この際は、民間航空機製造としてこのままでなくして、何らかの特別な手をお考えになる必要があると思いますが、いかがでしょう。
  20. 田中角榮

    田中国務大臣 民間航空機製造というものを伸長するべく助成の措置を講じていかなければならぬことは、もう私も先ほどから述べているとおりであります。YXに順調に乗り継ぎができなかったということにいろいろな問題が起こっておりますが、私も在職中、この問題に対しては前向きにめどをつける——前向きということばはどうも東洋的なことばでいろいろとれますから、積極的、合理的かつ効率的にこの問題に対してはひとつ方向をきめようという意欲を持っていることを申し上げたいと思います。
  21. 塚本三郎

    塚本分科員 私ども、特に革新政党の立場から、しかも日本産業の将来ということから考えてみまするときに、何としてもやはり、特に一部の方面からは産軍合体というようないわれ方でいわゆる非難を受ける心配もございますし、そうでなくても、日本を取り巻く周囲の国々からは——大臣は御心外だとお思いでしょうけれども、やはり経済が強いばかりに、あるいはまた、スピリットが鋭いがためにいわゆる軍国主義というような非難を受けてしまうわけでございます。このことは事実がそうじゃないのだから心配しなくてもいいという御判断でしょうけれども、やはり周囲がそうであるならば配慮をしてまいらなければならぬと思っております。そういう意味で、やはり大幅に民間航空機製造を大胆に進めるという形で、軍から持ってくるのではなくして、むしろ民間から軍が利用する。かつて四次防で問題になりましたCIのごときも、日航製の力があずかって力があったと私たちは想像いたしております。だから、アメリカのように軍の力から民間が借りて伸びてきたというよりも、日航製を中心にするかどうかは別にいたしましても、民間機を中心にして育成して、その力が国防の力に及んでいくという形が正常な形として日本のあるべき姿だというふうに私は受け取っておりますが、いかがでしょう。
  22. 田中角榮

    田中国務大臣 産軍複合とか、これはことばとしてあるのであって、日本にそういうものが起こるとは私は思っておりません。また、まわりでもっていろいろ日本の軍国主義化がいわれておりますが、それは富国強兵という国是に近いものを持った政治からまだ四分の一世紀ちょっとしかたってない、まだ記憶がなまなましいということで、日本人の優秀性、日本人の積極性というものに対する被害感というものは当然あると思います。しかし、新しい憲法施行後もう二十四年余、もうそういうことは日本にないんだ。大体兵隊に行ったわれわれにないのですから実際あるわけはないと思うのです。そういうふうに兵器の増強によって版図を拡大したり自国の利益をはかったりすることがもう不可能であるということ。これは民族の滅亡を意味するものであって、もう全面戦争というものなど考えてもいないし、そういうことはないんだ。局地的紛争に対して国民の生命、財産を守る、これが政治の第一の要諦である、そういう面からだけしか考えておらない専守防衛という立場のものが産軍複合というような、アメリカやよその国のように軍隊の経費が歳出の三〇%から五〇%も占めるような国に生まれたことば日本にそのまま当てはまるのだと考えるというのは私は錯覚だと実際思っている。私は民間飛行機をつくることによって、日本が自衛隊の飛行機もみなまかなうということよりも、飛行機をつくったという技術の積み上げが戦後の重化学工業の非常に長足な近代化に貢献した、造船の輸出のシェアを世界に拡大した、これは抜きがたい事実であります。そういう意味知識集約型の産業に移るとしたならば、飛行機とか電算機とかそういうものをやらないと知識集約型の産業に移行できない。そういう意味日本の企業形態、産業形態というものを高度化していく。少ない原材料でもって高度な輸出を持続していくというようなことを考えるためにも、飛行機製造というようなものはそういうものを開発する一つの起爆剤になる、リーディング産業になる、私はこういう立場から考えておる。だから私たちも戦前いろんなことをやりまして、合成樹脂は初めはレーダーにつかまらないということを考えて、鉄にかわる合成樹脂の潜水艦ができないかということをまじめに研究したことがあります。ありますが、いまはそれがポリエステル工業になり、とにかく生産を不況カルテルによって抑えなければならないようなビニール工業を派生的に発達をせしめた。私はそういう非常に大きな波及効果というものを考えるときには、飛行機産業というようなものの伸長は国力増進のためにも非常に重大なポイントである、こういう評価をしておるんです。
  23. 塚本三郎

    塚本分科員 私はその点は大臣評価というものを理解しておるつもりです。しかし蛇足かもしれませんけれども、大臣おこりなさんな。たとえば今度の予算の中でT2、RF4E、CI、これらが二次の査定の中で浮かび上がってきた。にもかかわらず民間YXが落ちた。この結果を見ていわゆる軍事優先というふうに——事情はもういま大臣のお話でよくわかりました。私はこれを非難したり批判しようと思って申し上げるわけでございません。あるいは外からの、日本の軍国主義という心配やらあるいは悪意ある非難かもしれません。しかし事情は違っておりましても、いわゆる一次になかったけれども軍用機のほうは二次でぽっと出てくる。そして五年も計画を進めてまいりましたYXが落ちるというふうな、しろうとの判断からまいりますといかにもまずい、こういう結果になっておるわけです。だから、大臣御承知のような国際環境下における日本産業と軍事というものが、アメリカでさえも最近は意識的に警戒の声が日本に向けられておるというときに、こう航空機だけを並べてみるといわゆるこういう形が出てきてしまった。私はむしろそういうときに大臣のような深い政治的配慮をなされる方ならば、これを押えてでもYXのほうを何とか民間を説得して浮上させておいていただきたかったというふうな私の気持ちがあります、が、この点はいかがでしょう。
  24. 田中角榮

    田中国務大臣 そういうふうにお考えになられても、結果がそうですからこれは私はあえて申し上げませんが、事実はそういうことでもないんです。T2やそういうものはもう試作機としていま試乗して非常に調子がいい、こういう評価がなされておるわけです。ところが前からの飛行機が非常に古いので、輸送機でも練習機でもみなこのままにすれば欠落を生ずるという状態になっているわけです。それは今度の予算でもって国産化ということを進めなければ、アメリカから買ったほうが安いということだったわけです。半分の値段で買えるんだからアメリカから買おうという方向だったわけです。ところがそれはいまYS11が完成間近になって、そうしてこれの製作は一応百八十機でとめるんだ、そうしてYXに対してはまださだかに計上できるような目標もできていないという時点においてどうするかということになって、それはもう国産をやるべきであるということでT2は国産に踏み切ったわけでありますから、これは軍事優先というんじゃなくて、民間機のちょうど段落のある一年の間民間機のつなぎにはなるんじゃないか、こういう考え方で、ものは見方、角度によれば、あなたの立場からいえばいま御指摘のとおりだと思いますが、政府側から申し述べますと別な理由もあったのです。T2の国産をするということ、アメリカから買わないということで少なくとも飛行機産業というものに穴をつくらないようにした。これだけでも関係の関連会社が三百社もありますから、この不況下において将来継続的に開発をしなければならないものに一年のブランクをつくるというようなことを考えることよりもそれは当然つなぐべきである、こういう考え方政府政府なりに配慮をしたつもりでございますが、万全ではない。それはT2をやるならT2よりも多い機種のYX考えたほうがどこからも文句を言われないし野党からもおほめをいただく。それはそうなんです。私も積極論者ですから大体それを望んで最後まで粘ったんです。粘ったんですが、まあこういう状態で四十七年度予算に閣議決定をいたそうということでありましたので、あえて閣員の一人として最終的共同責任を負わなければならないことでございますのでそうなったわけでございまして、別な角度からもいろいろ政府は熟慮の結果今日の予算案になったのだ、こういうことをひとつ御理解いただきたい。
  25. 塚本三郎

    塚本分科員 T2の点で例の三機種の軍用機の問題等につきましてはきわめて私たちも遺憾の点だと思いましたけれども、大臣が御説明になったように、やはりそれとともに私たちもまた次期の航空機産業のためにということで積極的に議長の裁定を春月委員長みずからのむべきだという党の態度で、野党の中でもわが党が先がけて議長裁定を受けてきた音加味もそこにあるというふうに私たち判断をいたしております。  そこで、実はこの二億を足がかりにしてこれからどうしようかということでございますが、言ってみまするならYS11ももうこれでずっと縮小の段階に入ってアフターケアの段階に入ろうといたしております。そうして次期の開発についても失速状態になってしまって墜落寸前ということになっておるわけですが、これで具体的にこれからの問題ですけれども、はっきりとしたものではないと思いますが、おおよそ大臣どういうふうに御指導なさろうとせられるのか、方向を示していただきたいと思います。
  26. 田中角榮

    田中国務大臣 YXは御承知のとおり二億円の調査費を計上いたしておりますから、これから各国の航空事情も調査いたしますし、またアメリカ側との折衝も続けなければならぬと思います。私は白米経済閣僚協議会、またサンクレメンテ会談におきましても、この問題に対しては言及いたしております。ただアメリカ民間一つ——日本航空機製造という一つ会社技術開発を手がけ政府がこれを正面から助成していくという体制にあるということはわかるが、アメリカにおいてはいろいろな航空機製造会社があって一つのものに肩入れをするわけにはいかぬので、これは日本政府アメリカの当該航空機製造会社との話でございまして、アメリカ政府がこれに対して意見を申し述べることはできません、こういうことだったのです。そういう意味で、アメリカがそれは大いにやってくださいということならばいいのですが、アメリカはいまある飛行機を買ってもらうほうが手っとり早い話でございまして、まあそういう立場、国情の違いからもそうでございましょうが、そういう意味で、この問題は日本政府だけの考えで処置しなければならないということになったわけであります。しかし一年間の間には、四十八年度予算編成までの間にはこの問題はやはり結末をつけなければなりません。で、高性能の飛行機というもの、これに対してはできるだけこれを継続して開発ができるように具体的な道を見出したいという一つの方向で努力をいたしておるわけでございますが、もう一つの問題は、これは具体的な問題となっておるわけではありませんが、まあよしんばこのYXの問題が話がまとまらないような場合ありましても、これもイフがついておるわけでありますが、これも全くのイフですが、仮定の問題でありますが、しかし、日本航空機製造を主体にする航空機製造というものを投げ出してしまうというようなばかなことはできないと思う。ここまで開発をしてきた技術陣というのは無形の資産であります。これは電源開発会社が廃止の勧告を受けたときにも、日本の水力発電を行なった日本電源開発技術者は温存すべきである−−これらの技術者には内地の電源開発の主力技術陣と大陸でもって鴨緑江の発電所とか、最後に戦争の過程においては宜昌のダムをつくろうとした技術者を含んでいるが、世界水準の高い技術陣を一堂に集めた電発の技術陣というものはこれを温存すべきである、こういうことで温存してきたわけです。今度全国縦断幹線送電線の建設にしても、これらの人たちの力というものは評価されるべきであります。また、新幹線の建設に関する技術陣も長いこと——戦前昭和十七年ぐらいからずっと新幹線計画をする間、約二十年近く温存しておったわけです。それによって新幹線はみごとに完成をしておる。これから外国に新幹線技術を出すとすれば、それはもうアメリカにも出せるほどの力を持っている。この日航製もそうだと私は思うのです。やはり何らか、日本航空機産業一つのメッカとしてこれを温存し、拡大をしていって、やはり開発の核たらしめるような任務を遂行させるという考え方は、私はいま捨てておりませんし、まあ捨てておるということではなく、そういうふうにするにはどうするのかということについて、いま具体的に検討し、調査を行なう、こういうことでございますので、いい知恵がございましたらどんどんとお寄せいただいて、これは国民的合意において、まあ少なくとも国会においては航空機製造というものを大きくしていこうというような方向にまとまればまとまるように、われわれも理解を求めてまいるつもりでありますし、そういうことで、航空機製造がなくなるというようなことは考えておりません。
  27. 塚本三郎

    塚本分科員 まあ業界自身が失速状態でございますから、直接それの専門ではない大臣にこのことをお聞きしてもそれはいまのところ無理だから、いい知恵を借りたいとおっしゃるのも無理がないと思いますが、大体いつごろまでにはこのめどをつけたいというふうな、おおよそのめどの時期の明示ぐらいはどうでしょうか。
  28. 田中角榮

    田中国務大臣 四十八年度の予算編成までにはこの問題に対するめどをつけるべきだと思います。
  29. 塚本三郎

    塚本分科員 そういたしますと、それまでの人員の確保と申しますか、これはたいへん優秀な技術者ばかりで、約四百名というこの技術者を確保するということがやはりたいへんな問題だと思います。たとえばある航空機会社に一時預かってくれといいましても、やめるならば受け取りましょう、ところがまた戻さなければならぬというとはんぱになってしまいますから、会社としても困りますというようなことで、心ならずもその技術者を一応解雇して、いわゆるそれに向く会社に振り当てるというような、涙をのんで日航製ではそういう処置も進んでおるようでございます。これはやはりその分野では生かされるとはいっても、開発にとってあるいは製造にとってはきわめて大きな打撃になると心配をいたしております。したがって会社自身で直接に、たとえばこれを宇宙開発事業団のほうにお預けをするとかいうような苦肉の策も考えておられるようでありますけれども、もっと積極的にこの技術者確保のために、いわゆるただ二十億の金をこれに使うわけにはまいらぬと思いますので、具体的に何らか、これは大臣直接御相談に乗ってあげる必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  30. 田中角榮

    田中国務大臣 日本航空機製造の職員は三百八十七名で、うち出向者が六十二名、直用者が三百二十五名でございます。まあ先行き不安等を感じる方が、もしくは自分の持っておる技術、修得した技術を直ちに使いたいということで、他の会社に移ろうという人をとめるわけにはまいらぬと思います。しかし、私もいまあなたの御質問に答えて公式の発言をしたわけです。それで、四十八年度予算編成の時期までには、それまではめどをつけなければならぬと思います、こういう一言を申し上げましたから、これで一年間待とうという人は確かにあると思います。それを意識して申し上げたのです。それから、御本人がみずからの判断において出ようというものをとめる道はないわけでございますが、しかし会社の計画によって整理をしたりという考えは持っておりません。ですから、そういう場合には一体ことし一年どうするのかという問題は当然出てくる問題でありますから、あなたの御質問のように御相談に応じたり、また重工業局をして航空機製造との間、また関連会社との間において検討を進めてまいりますし、もし来年から相当の金額を民間が出すということであるならば、人のめんどうを見たっていいじゃありませんかという話もあるわけでありますから、これは法律でもってどうしろというものではないのですから、話し合いでありますので、各航空機会社との話し合いも私のほうで進めてまいるつもりでございます。
  31. 塚本三郎

    塚本分科員 むしろ、もうどちらにしても日航製赤字ですから、会社の資本もたな上げにして、いま大臣お話しのように二十億のあと始末の金も会社が出さなければならぬという形になっているのですから、いっそのことこれを会社でなくして、いわゆる宇宙開発事業団というような、宇宙航空開発事業団とでもして、そうしてもう、いわゆる大型エンジン政府が全責任をもってその開発をおやりになっているのだから、日航製もそういうような形で、いわゆる事業団方式で宇宙開発の中に入れてしまうというのが簡単に思いますけれども、いずれにしてもそういう形で、まあヨーロッパの国々がやっておるような形で、開発政府が責任をもってやる——答申もそこまでは言い切っておりませんけれども、審議会も決定的に大部分をという言い方をしておりますから、エンジンもそういうふうになさったのですから、日航製もそういうふうな形で、思い切って吸収してしまうという考え方にまで踏み切るわけにはまいりませんか。
  32. 田中角榮

    田中国務大臣 ちょっとめんどうだと思います。これは飛行機製造を行なう実際の製造技術屋が多いわけでありまして、これを国でもってやる場合には委員会のような組織で非常に小さたもの、大学の先生とかいろいろな方を集めるということになって、これは機構が小さいものになります。ここにたくさん役所の諸君もおられますが、物をつくるということは役所では非常に不向きなのです。これは民間の英知というものでなければ、たとえば新聞というものを官報をつくるようにつくらせたら無味乾燥なものになることは当然でございまして、これはやはり民間でもってこういうものはしないと、これだけはなかなかうまくいかない。これはやはり管理能力もありますし、これは必要なものであるし、権威あるものだし——私も政府職口の一人でございますから、いまそういう考えでございますが、物をつくるということは民間になるべく近いように、電気通信関係でも電電公社の下請の大宗は民間会社、そういうことでないと、製造のメリットを追求するわけにいかない。これを完全に研究機関としてやるなら、理化学研究所航空機研究部としてくっつければできると思います。これは工業技術院の中に飛行機研究班でもつくればできますが、三百二十五名全部入れるというわけにはまいらぬ。そんなことなら、こういうものはほんとうに製造しておるところへ政府が補助をしながら、ある一定期間人を預けるということだって法律をつくればできると思いますし、いろいろなこともできると思いますが、ことし一年間は日本航空機製造会社はそのままにしておいて、これを拡大するか継続せしめるか、どういう機種をやらせるというようなことと、民間航空機製造会社との有機的なつながりをどうつけるかということでもっていくべきであって、これもいまだんだん、政府機関が多くて困っておって行政整理しなければいかぬというときですから、製造部門まで政府に持ち込むということは、どう御質問があっても、私がそれはけっこうですということはちょっといま申し上げかねます。
  33. 塚本三郎

    塚本分科員 いままでの大臣発言は、まさにすばらしい先を見た政治家の御発言だと思ったか、直ちに官僚政治家に戻ったような御発言でございまして、申し上げるまでもなく日航製といってみたってほとんどつくらないことは先刻御承知のとおり。いわゆる三菱をはじめとする四社がその決定的部分までつくっておって、日航製はほとんど開発部門なんですよ。ですから、このときだけお役人的ないわゆる大臣という発言をなさって一ほんとうに将来性のある政治的な見通しから申し上げるならば、まさに日航製三百数十名も、その四社から集めてきた人なんだから、そういうような者は戻してあげて、そしていわゆる開発部門は開発部門だけでというふうな形で受け取って、そしてここで大型に政府全力投球の開発をなさって、そして発注、製造はいわゆるいままでのメーカーにまかすというふうに、それこそ大臣の先の見えた政治的な御発言をなさっていただいてもいいのではないか。しかし、そのことを会社が希望しているとか従業員が希望しておるということで申し上げるわけでは決してございません。時間が参りましたので私はこれくらいでやめさせていただきますが、いずれにいたしましても、この一年間のブランク日本航空機業界における将来にとって、決定的な打撃にならぬように、強く希望を申し上げ、大臣の御決意だけ承って、私の質問を終わります。
  34. 田中角榮

    田中国務大臣 開発部門が企業ベースに乗らないものである、これは当然のことでございまして、審議会の答申でも事業団方式が望ましいということもいっておりますから、いまの航空機製造会社というものを新しい機構として編成がえしたほうがいいのか、その場合は政府関係機関の中でどういうふうに位置せしめるのか、あとの開発部門と製造部門の中間にあるもの、これは製造にくっつけたほうがいいか、どうするのかいう問題があります。そういう問題に対しては、ことしはどうせ航空機製造をどうするかという問題、引き続いてYXをどうするか、ことに新機種の開発をどうするかという問題に当面しておりますから、いまの御発言等十分しんしゃくしながら、可及的すみやかにというより、四十八年度予算編成までにはできるだけ政府として検討いたします。私個人としてもこの問題に対しては非常に興味を持っておりますから、検討を進めてまいります。
  35. 塚本三郎

    塚本分科員 終わります。
  36. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は西宮弘君。
  37. 西宮弘

    西宮分科員 私は共産圏貿易についてお尋ねをしたいということで通告をしておったのでありますが、主としてキューバの問題について、これはたまたま私が昨年現地に行ってまいりましたので、あそから拾った問題等についてお尋ねしたいと思うのですが、冒頭にいわゆる共産圏貿易というものに対する大臣の一般的な御所見をお聞きしておたきいと思います。  要するに、最近の国際情勢はだいぶ変わってまいりまして、緊張緩和のムードにある。もちろんムードだけで戦争の火種が全部なくなってしまうということはあり得ないことで、われわれもそんな甘い考えをもちろん持っておりませんけれども、数年前には全く夢想もできなかったというようなことが現実となってあらわれておる、こういう事態がある今日であります。したがって、いわゆる共産圏貿易も従来とは違った姿勢で臨んでよろしいのじゃないかというふうに私どもは考えるわけですが、まず一般的な問題についてお尋ねいたします。
  38. 田中角榮

    田中国務大臣 共産圏貿易につきましては大きな規制はないわけでございます。ココムの制限等一部ございますが、これもだんだんはずれていくということでございますし、日本としては全廃をしたいという提案をいたしておるわけでございますから、これは制約はないわけでございます。しかし、いままでの状態からいいますと、共産圏貿易は日本が行なっております他の国との貿易額に比べては小さなシェアであります。七〇年ベースで大体五・一%くらいだと思います。七一年で申し上げますとソ連の輸出一・六%、輸入二・五%、東欧は輸出が〇・七%、輸入が〇・四%、中華人民共和国の輸出が二・四%、輸入が一・六%、こういうことでございまして、北朝鮮は〇・一%、輸入が〇・二%、北ベトナムは〇・〇二%、〇・〇六%の輸入ということでございますから、合わせると五%くらいでございますので、たいした金額ではないわけでございます。  しかし、これはいままで制約はないといいながら制約があったわけです。なぜかというと、共産圏諸国は特に輸出入のバランスをとる。中国大陸を除きましては大体バランスがとれておるわけです。輸出、輸入のバランスをとるということで金額的な制限がある、こういうことでございました。しかし、アメリカに三〇%のシェアを持っておるということ自体、こんなことが長く続くわけがありません。そういう意味で、アメリカ向けにつくっておった品物を共産圏向けに直ちにというわけでにはまいりませんが、これは一年、二年の月日をかげながらも、アメリカ中心というようなものからだんだんと輸出、輸入の多様化をはからなければならない、こういうことでありまして、石油なども、マラッカを通っておるものが九〇%以上ということでは、マラッカの問題が起きればびくびくしなければならぬ、だからソ連のチュメニ油田の開発という考え方がおのずから出てくるわけでありますので、これからは拡大の方向にどんどんと行くだろう、こういう方向だけは間違いないわけでございます。
  39. 西宮弘

    西宮分科員 そういう方向にあるということをお聞きをして、われわれも非常に喜んでいるわけです。  時間がありませんので、さっそく私、キューバの問題についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、実は昨年初めて参ったのでありますが、いま大臣が述べられたココムはキューバも対象国になっているんですか。どなたでもけっこうですが……。
  40. 田中角榮

    田中国務大臣 キューバはココムの制限対象国となっておりません。
  41. 西宮弘

    西宮分科員 なっておらないならば、キューバに関する限り問題はないわけでございますが、さっき大臣も言われたように、これは全廃する、こういうことで政府も提案しているというお話でありましたが、ぜひそれを貫徹してもらいたい。見通しはいかがでしょうか。
  42. 田中角榮

    田中国務大臣 全廃の方針を私ども持っていますが、これは一年間ですぐ全廃というわけにもまいりません。兵器その他もございますから、そういうわけにはまいりませんが、百六十七品目のうち六十七品目はもう当然、撤廃ないし緩和ということでいま交渉しております。パリで二月からリストレビューをやっているわけでありますが、しかもその後、アメリカも訪中によって、電子工業製品の非常に精巧なものである宇宙中継基地を上海に置いておこう、これはココム加盟国はみな承認をいたしました。そういうことでございますので、ココムの制限というものは和音小さくなっていく、これは可及的すみやかにそういう方向をたどっていく、こういうふうに理解していただいてけっこうだと思います。
  43. 西宮弘

    西宮分科員 私はたまたま昨年キューバに行ったわけでありますが、キューバは御承知のように非常に小さい国ですね。人口から申しますと、八百五十五万三千三百九十五人というのが最近の統計でありますが、面積から申しますと、ちょうど日本の本州の半分くらいに相当するというので、小さい国ではありますが、しかし本州の半分に相当する国土の中の四分の三は平たん地、しかも気候は亜熱帯だ、こういうことで、私はかなり大きな未来の可能性を秘めている国だというふうに見ても差しつかえないのじゃないかと思います。そういう意味で将来に大いに期待できる国だ。  私どもが参りますと、実際想像以上に日本に対する感情がいいわけであります。これは一つには、南米諸国が全部そうであると同じように、日本から非常に遠い。したがって、日本経済進出というものも東南アジアに見るような非常などぎつさがない。あるいはまた、いわゆる軍事的な圧力というものも感ずることはほとんどない。そういうのが一つの理由だと思いますが、もう一つは、何と申しましてもキューバは日本が砂糖を買ってもらっているたいへんなお得意だということで、そういう点についての特殊な親近感があると思うのであります。  私がそこでいろいろ受けてまいりました要請の中に、もちろん、もっと向こうのものも買ってもらいたいし、同時に日本から物を買いたい、買わしてくれ、こういう要求が非常に強いわけです。御承知のように、あそこは日本から見るとたいへんな入超になっているわけですから、たいへん片貿易になっているわけですから、それを改善したい。その分を、現在はヨーロッパから買っておるのだけれども、それを日本から買いたいというのが向こうの希望なんです。ここで非常に順調にそういう取引ができるということになると——さっき大臣が言われたように、バランスがとれないという点を共産圏の各国は問題にしている。その場合はおそらく逆だろうと思うのですけれども、キューバの場合は日本のほうが入超なんだという点でバランスを失しているわけです。私は、ここでうまくバランスがとれると、遠い、ちょうど地球の裏側にある国でありますが、そこに安定した日本との経済関係が樹立をするということは、日本にとっても大いに国益に合致すると思うのですけれども、そういう点についていかがでしょうか。要するに、もっと日本のものを買わしてほしい。物で申しますと、たとえば自動車とかトラックとかバスとか、あるいは建設機械とか船とか、ずいぶん種類は多いようでありますが、そういう点についてのお考えはいかがですか。
  44. 田中角榮

    田中国務大臣 七一年を見ますと、日本から輸出したものは五千四百万ドル、向こうから輸入したものは一億二千八百万ドルということですから、相当な片貿易になっておるということは事実であります。キューバとか、羊毛を輸入する豪州とか、石油を輸入する中近東とか、そういう特殊な国ぐらいしかないのでありまして、非常にアンバランスがある。しかし、一億二千八百万ドルのキューバからの輸入の中で、砂糖が一億二千三百万ドルになるということで、キューバには物を売りたい、キューバ側も買いたい、こういうことは事実でありまして、拡大していく傾向にあると思います。  特にあなたがいま指摘されたように、この間キューバから代表が来まして、トラックを売ってくれ、こういうことでした。トラックはアメリカから買ってもいいじゃないか——アメリカは売らぬからということでしょう。隣の国ら買えないというのと、砂糖を持ってきて、から船で帰っているわけです。から船で帰るぐらいならトラックぐらい積んでいける。お得意としてはいいお得意だと思っておりますから、キューバとの貿易はそう何億ドルという規模にまで大きくなるわけではありませんけれども、少なくとも砂糖を買うのと、バランスをとるということは、やりようによっては可能なわけでございます。  しかし日本の商社が少し考えておるというのはあるのです。これは台湾とやっているものは中国大陸に入れないということで、中国側とやるためには台湾に対する投資を幾らか控えようという業者がありますように、中国大陸と同じ立場アメリカがとっている。アメリカ外国資産管理規則で、米国市場への制限というのは、キューバと取引した会社及び商社に対しては、この管理規則によりまして制限されることがある。こういうことで、アメリカにたくさん買ってもらっておる商社は、キューバに一千万ドル買ってもらって、アメリカから一億ドル輸出をとめられてはかなわぬからということで、そういう商売上の利害得失から多少セーブしているものはございますが、国が、通産省がセーブしておるということはないわけでございます。
  45. 西宮弘

    西宮分科員 私もその点は十分承知いたしておりますが、私がお尋ねし、また政府に要請したいと思いますことは、政府の手でやれることは大いにやってもらいたい、要するに輸銀の問題をぜひこれにつけてほしい、こういうことなんであります。  きょうはわざわざ輸銀からは総裁もお見えになっておるようでありますので、今日キューバ貿易についてどういう実績をお持ちか。これは輸銀の御当局から伺って、さらにこれに対しまして、今後輸銀については全く他の自由主義の国と同じような扱いをする、こういう方針で臨んでほしいというのが私の言いたい点でありますが、その点についての御意見を伺いたいと思います。  この点はいま大臣も言われたように、アメリカに対する気がねというようなものが業者側にもあるし、同時に日本政府も同じようなことを考えるのではないか。そこで私がぜひお尋ねしたいのは、輸銀について一切差別しないということであるかどうかということと、それから日本政府としてはアメリカに気がねはしない、こういうことがいえるかどうかということです。まず輸銀のほうはいかがでしょうか。
  46. 石田正

    ○石田説明員 キューバに対しますところの関係におきましては、わがほうといたしましては、いままで取り扱った実績が非常に少のうございます。私のほうでもって貸しましたものは、昭和三十二年度に船が一隻と、それから昭和三十五年に繊維機械が一組出ましただけでございまして、これらはいずれもすでに貸し出しは完済されておりまして、わがほうといたしましては、キューバに関しましては残高は全然ございません。その後全然わがほうに対しましてキューバ関係の融資につきまして業者のほうからアプローチはございません。これはおそらく、先ほど先生からもお話がございましたようなぐあいに、対米関係が非常にぐあいが悪くなったということが基本ではないのだろうかと思うのでありまするが、その後借り入れの申し込みはございません。最近新聞等におきまして輸銀で融資をしてキューバへ出すとかなんとかということがございますけれども、実際におきまして輸銀といたしましては出しておりません。これは事実でございます。  なお、輸銀はどういうふうに考えておるかという問題でございますが、輸銀は御承知のとおり政府機関でございますから、政府の御意向に従ってやるというのが基本方針でございます。輸銀自身といたしましては、共産圏の国であるから出さないとか、共産圏の国でなければ出すのだとか、そういうふうな態度はとっておりません。これは共産圏の国に対しましても、わがほうといたしましては実績がございます。相当実績がございます。これらにつきましては政府の御意向を一件ごとに伺いまして、別に差しつかえないということの御承認を得てやっておるという事情でございます。キューバにつきましては、まだ政府のほう全体といたしまして、おまえのほうから出したほうが適当であるというようなことになっておらないような状況でございますので、いまのところ実績がないわけでございますが、私たち考え方から申しますと、共産圏というものに対しまして絶対出さないというような方針はわれわれとっておりませんので、大体国際関係が変わっていくにつきまして、わがほうもキューバをはじめといたしまして、いままで出していないところへも出すようなことになっていくのではないだろうか、かように思っております。
  47. 西宮弘

    西宮分科員 ただいま総裁から申し込み等が一切ないというお話がありましたけれども、これは実は私もいろいろな業者に当たってみたわけであります。あっちへ行って大使館を調べてみますと、ずいぶん日本の業者がたくさん来ておるのですね。それで、そういう向こうのリストを借りて、日本へ帰ってからそういう業者にそれぞれ当たってみたわけであります。そうすると、その途中の行政相談といいますか、そういう段階で、これは輸銀は無理だとか、あるいは遠慮してくれというようなことで、途中でチェックされてしまうのだという話を私はだいぶ聞いたわけです。ですから、現実はほんとうは輸銀を利用させてもらいたいのだという人がたくさんあるわけです。だから、その点は十分認識を改めるようにしていただきたいと思う。  ただ考えようによっては、日本は砂糧はキャッシュで買っているわけですから、それを今度は日本が向こうへ売るやつは延べ払いにしてくれというようなことは虫がよ過ぎるというような考え方もないわけではないと思いますけれども、しかし、いわゆる発展途上国としてそれを援助するというならば、普通のいわゆる経済援助というような形よりは、そういう実際の貿易面で自立を助けていくというほうが私は望ましいと思うのです。ぜひそういう点でいままでの態度をもっと検討してもらいたいと思うのですが、大臣、さっきお尋ねをいたしましたが、政府としてたとえばアメリカに気がねをするとかそういうことで——業者はあるかもしれませんよ、だけれども、政府はそういうことをしてもらっては困ると思うのですが、その点についてはいかがですか。
  48. 田中角榮

    田中国務大臣 政府はキューバに対して輸銀を使用しないという考え方は持っておりません。ケース・バイ・ケースでやるということでございます。ただ問題は、キューバの実際の外貨事情等が問題になるわけです。これに一説においては二十億ドル赤字があるとか、二十五億ドル赤字があるとか、いろいろなことが報道されておりますが、さだかな数字ではございません。ですから、いまあなたがいみじくも述べられたとおり、一億三千万ドル近く買っておるのでございますから、この差額というものが七、八千万ドルございます。五千万ドルしか売っておらぬのでございますから、七、八千万ドル分はキャッシュで払う。それを品物で払えば非常にバランスがとれるわけです。そういう問題が一つあります。  それから、向こうはトラックを買いたいというのでありますから、トラックを延べ払いにしてくれというわけはないのでありますから、こういう問題は片づく問題だと思っております。民間では、いま民間で延べ払い投資をやっているわけです。これは相当ございます。電気機材とか自動車とか産業機械、こういうものをやっております。そういうものでもって、金額としては大きなものではございませんが、五百十八万ドル、千二百万ドル、三百六十万ドル、四百三十万ドル、四百十八万ドル、四百四十万ドル、五十六万ドルというようなものをやっておるわけです。ですから、これは一つには経済ベースとしてこっちが支払い超過であるだけに、日本とキューバとの間にバランスをとりながら考えていくということだと思います。  それからもう一つは、これは国際情勢の問題もあるのです。これは全然かんぬきになっているわけじゃないのですが、キューバは日本とはばかに調子がいいのですが、まわりの国とはみな悪いのです。アメリカとも大体悪いし、ラテンアメリカなんて全部悪いし、南米とも悪いし、ヨーロッパとも悪い、こういうことですから、必然的に日本と仲よくなる、こういうことだと思いますが、そんなことでキューバとだけ特別な交渉をやることによってほかの連中をみな敵にもできない、そういうバランスも外交上はあるわけです。しかし、砂糖をキューバの生産の大半を日本が引き取っておる、また日本もほしいのであるということから考えると、日本とキューバの間はそれほど問題にするような状態ではなく、だんだんと拡大をしていく、こういうことであって、政府もすなおな気持ちで応待しておるわけでございます。自動車を買ってくれれば非常にいいことであります。アメリカではチキン戦争以来トラックに二五%の税金をかけており、対米トラック輸出は困難な状況にあるので、キューバへ売りましょうかと言ったら、売ってくれますかということで、いずれ相談をしようということで別れておるわけでございますので、問題になるようなことはない、こう理解していいと思います。
  49. 西宮弘

    西宮分科員 大臣言われたように、キューバがアメリカと非常に悪いということはまことに実際だし、それからラテンアメリカと悪い。ラテンアメリカと悪いというのか、あるいはラテンアメリカの各国がアメリカに追随してキューバを締め出したというのか、OASという機構の中では完全にキューバを締め出してしまったわけですね。単にあそこでキューバを締め出しただけではなくて、あの当時は日本政府に対しても、日本もキューバと断交しろというようなことを強く要請してきた。大臣、御承知でないかもしれないが、記録を見るとすぐわかります。それは非常に強く日本にも要請してきた。あれはペルーでしたか、もし日本がそれに応じないならばわが国日本との経済取引をやめるというようなことまで発言をするというような事態までもあったわけです。それは要するにことごとくアメリカの指導のもとに、アメリカの号令のままに中南米の国々が動いたという時代だと思うのでありますが、そういう点は最近はずいぶん変わっているようですよ。これは要するにアメリカの指導力の低下ということだと思いますけれども、この前の国連の決議などを見てもわかるように、ずいぶん変わってきています。ですから、そういう懸念はあまりないんじゃないか。われわれも新聞で見るきわめて乏しい知識でありますが、アメリカ自身もキューバに対する態度を変えなくちゃならない、そういう議論が出ているというふうなことを報道しております。私は、ああいう大きな国が小さい国を締めつけてしまって、それで世界の秩序を維持するというようなものも一つの方法ではありましょうけれども、もうそういうことは許されない時代になってきたのだと思うのですね。むしろそうではなしに、大きい国も小さい国もみんなそれぞれ自分の立場を守りながら、それで世界の秩序を維持していくということのほうが大事なんだ、適切なんだ、そういう時代が今日来たと思うのです。ですから、そういうことを十分踏まえて対処をしていただきたいと思うのですが、きょうは外務省からもそういうことを伺いたいと思って来ていただいたのでありまするが、時間がありませんから、ゆっくり御意見をお聞きすることができません。  いま、大臣自動車の話を盛んにされましたけれども、私、行ってみますると、日本から船を買いたいという希望がずいぶんあるのですよ。現実はまだ業者との折衝にはなっていない。私もその事実を確かめておりませんけれども、この間、新聞を見たら、イギリスが大きな船を契約をして、六千万ドルという船でありますが、船と、新設の機械を契約をして、これはイギリスの政府か後援をする、こういう形で政府が保証をいたしまして調印したという新聞記事を見たのでありますが、私ども現場でああいう話を聞いてくると、まことに残念だ、日本がやればいいんだがという感じがしたわけであります。  では、外務省に一つだけお伺いしましょう。昭和四十五年の八月二十八日の日本経済に載った記事でありますが、アメリカから日本の業者に対して、あまりキューバと接触をするな、そういう勧告みたいなものがあったという記事が載っておるのですが、そういう事実があったかなかったのか、ちょっと簡単に聞かしてください。
  50. 伊達邦美

    ○伊達説明員 直接にはわれわれのほうとしては伺っておりません。
  51. 西宮弘

    西宮分科員 大臣、さっきは日本から売るものについてお話をいたしましたが、買うものについて、砂糖、できれば砂糖ももっと買ってもらいたいという注文、これは当然でしょうが、ニッケルを買ってほしいという希望が大いにあるわけです。日本のニッケルはほとんど全部ニューカレドニアから買っておるわけですね。これはほとんど大半がそうなんです。ところが、これは非常に価格が不安定で、ニッケルの価格は国際大資本によって簡単に左右されるというような状況にあるわけですね。ですから、買い入れ先を分散するということが必要ではないかと思うのですが、ニッケルを買うという点について見通しは持てませんか。
  52. 田中角榮

    田中国務大臣 ニッケルというものはなかなかめんどうな問題があるのです。これもアメリカなんです。アメリカがキューバから買ったニッケルを含有しておるものを持ち込むと取引を停止する、こういうことがございまして、フランスでございますか、えらい被害を受けて、キューバからもう買わなくなったことがございます。わが国が米国向けに出しておりますニッケルを含有しておる商品の輸出総額、これは四年前の試算でございますが、約十五億ドル、いまはもっと大きくなって、二十億ドルにもなっておるかもしれません。そういうことがございますので、キューバからニッケルを買ったために、外から買ったニッケルまで全部停止になってしまうということは非常に困る。こういう制限があること自体が望ましくないことでございますが、どうもアメリカがとっておるのでございまして、そういう意味で、これはいま政府の関与している問題じゃないのです。これは業者が、ちょうど台湾と中国の問題と同じことなんです、台湾に納入すると中国では買わぬぞ、こういうことで、同じことでございまして、業者自身一つずつ取捨選択をしているということでございますので、こういう問題も、アメリカとキューバの問題もそんなに長いこと仇敵同士ということでございませんでしょうが、現時点における状態は以上のとおりでございます。
  53. 西宮弘

    西宮分科員 その話は実は私も現地でも聞いてまいりました。したがって、そういう問題は非常にむずかしい問題だと思うのですが、やはり基本的に、そうなりまするとアメリカの姿勢に問題があるということになるわけです。さっきも申しましたけれども、アメリカももう少しおとなになって、ことに相手は小さな国なんですから、一緒に共存共栄するというような気持ちになってほしい。これはやはり日本アメリカのパートナーとして、アメリカにそういうことをアドバイスするということも必要ではないかと思うのです。キューバはずいぶん長い間いろんな国からいじめられてきて、それと戦っては敗れ、戦っては敗れということを繰り返してきて、ようやく十三年前ですか、いまの政権ができ上がって、それで初めて自分の足で立ち上がったという国なんでありまして、そういう意味では、共産陣営の中でも、できるだけ独自の道を歩もうという気がまえを持って、非常に民主主義に徹している国だというようなことを、私、現場で感じてきたわけですけれども、世界全体が緊張緩和に当たっているという時期でありますから、できるだけアメリカのそういうかたくなな態度も改めてもらうように、大臣などにもひとつ御努力を願いたいということを申し上げ、外務省でもそういうお気持ちで望んでほしいと思いますけれども、御意見があったらお聞かせを願って、最後に大臣のお考えを聞いて終わりにいたします。
  54. 田中角榮

    田中国務大臣 砂糖は二百二十五万トンのうち百五十万トンもキューバ糖を買っているわけです。つまり日本の消費量の四五%。四五%の人がキューバの砂糖をなめておるわけでございますから、そんなにアメリカがキューバに対して考えているほど、日本ははるか向こうのことでございますし、やわらかい気持ちを持っておることは事実でございます。しかし、これは国際的な流れの中で、やはり自然と解決されていく問題でございます。ですから、日本においてもいろいろな国々とも差別をしないで、何でも仲よくしていくつもりでございますという国是をきめておるわけでございますので、キューバの問題、これはとにかくいま日本からうんと出ているなら別でございますが、キューバからうんと物を買っておるのだ。いま、増産するならもっと買ってもいいということでありますが、キューバの状態が減産みたいな状態でございますので、あまりキューバ糖がふえないというのが実態でございまして、エビなども買っておりますし、キューバのエビでてんぷらをあげておるわけでございますから、そういう意味で、これからそんなに角突き合うような状態じゃないので、やはりおのずからこういう問題は解決していく問題だ。共産国としては、南米ではチリのサンチアゴでUNCTADの会議も聞かれる、こういうような状態でもございますので、私は、そういう意味では日本とキューバとの間というのは、トラックを売れないような状態はもう解決されて、だんだんとバランスがとれるようになる、こういう考えでございます。アメリカでも、それは鼻先の話でございますから、日本がはるかなキューバなんというのと違って、アメリカはキューバの問題では全国に非常ベルを押したという緊張等もあったわけでございますが、まあしかし、大国であるので、世界の平和のためにはというようなことはおりがあれば申し上げてもけっこうです。
  55. 西宮弘

    西宮分科員 大臣、サンチアゴに行かれるという話でありますが……(田中国務大臣「いや、まだわからないです」と呼ぶ)行かれたら、ひとつハバナも見てきてください。日本の通産大臣が来られたなんといったら、これはもててもてて、もて過ぎて、たいへんなことだと思いますので、ぜひおいでになってください。それほど日本に対する期待が大きいのです。ですから、現地を見て新しいキューバについてよく御認識を深めてください。  時間が超過したので、これで終わります。
  56. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は中谷鉄也君。
  57. 中谷鉄也

    中谷分科員 公害防止対策に関連をいたしまして、無過失責任の問題について、きょうは通産大臣の率直な御見解を私は承りたいと思うのであります。  環境庁の局長さんのほうに、昨日第一分科会でお尋ねをした点について、私の認識に間違いがあってはいけませんので、一応私なりに確認をさしていただきたいと思います。要するに、昨日お尋ねいたしましたのは、無過失責任法案の中から、要綱にあった推定規定が欠落をした問題についてお尋ねをいたしました。推定規定を置いたのは、まず被害者感情を尊重しての政治の姿勢の問題、そしていま一つは推定規定を置くことによって、因果関係におけるところの立証が、弱い立場にある被害者が容易になるであろうというふうな点、そういう点が推定規定を要綱に置いた理由である。しかるところ、その規定を欠落させたのは、共同不法行為の問題、拡大解釈のおそれ、そうして企業がそのことについて懸念をしておる、こういう点を配慮した、こういうふうにお聞きしたわけであります。十分に会議録を検討しておりませんので、正確でないかもしれませんけれども、従来の環境庁の御答弁でありますので、おおむね間違いがないと思います。まずこの点についてそういうふうな整理をさしていただいてよろしいかどうか、局長、お答えいただきたい。
  58. 船後正道

    ○船後政府委員 昨日の質疑は非常に短時間でございましたので、なかなか議論を尽くすことができませんでしたが、要旨につきましては先生がおっしゃいましたとおりであるとわれわれも解しております。
  59. 中谷鉄也

    中谷分科員 そこで大臣にお尋ねをいたしたいと思うのです。無過失責任の問題についてはずいぶん問題点が多いと思うのです。この法案については非常に不十分で、ことに推定規定が欠落をしたことについての論議が非常にされているわけですけれども、そこで、環境庁長官の昨日の御答弁は次のようなものであったわけです。企業が推定規定を置くことについて非常に懸念をしている。しかしそれは環境庁の立場から見て、法案をしさいに検討してもらえば、それは単なる杞憂、それは全く心配しなくてもいいことを心配しているにすぎないのだ。こういうふうなお答えであったと思うのです。法律論として大臣にお尋ねするつもりはないわけですけれども、そこで、たとえば経団連のほうから三月四日付で公害の無過失損害賠償責任法案に対する意見というのが出ておりますが、その意見によりますと、「無過失責任のもとで因果関係の推定を行なうことは絶対に避けるべきである。無過失責任のもとで因果関係の推定を行なうことは、公害問題における企業の立場を不当に無視するもの」だ、こういうような意見が出ているわけなんです。ところが、そういうふうな産業界の意見というものを通産省としては一体どのように把握されるでしょうか。また、その点についてどういうふうにお考えになるでしょうかという点であります。因果関係の推定と申しましても、これは環境庁が発表した法案要綱における因果関係の推定に対する意見であろうと思うのです。大同小異のものが中小企業団体中央会あるいは日本商工会議所、全国商工会連合会等からも出ておりまするけれども、環境庁長官は杞憂だと言われましたけれども、要綱に関してこういうふうな意見が出てくるとするならば、まさに誤解もいいところであるし、杞憂もいいところであるし、心配の度が過ぎているというふうに私は思うわけなんです。そういうような点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  60. 田中角榮

    田中国務大臣 非常に新しい形態の法律でありますから、立法に慎重を期さなければならないことは当然であります。そしてやはり法律というものは目的が達せられるものでなければならないと同時に、付随して起こる弊害というものは完全に除去できることが望ましいということは当然であります。ですから法律をつくる場合にいろいろな民間の声、また学者の声、その法律によって影響を受ける者の声というものを聞かなければならないということは、これは当然だと思うのです。これはいまの外国の問題であっても、援助を受ける国は無利息百年にしなさい、こういう要求が出ますから、無利息百年といえば、これはもう投資でなくて寄付である、こういう議論が国際的にも行なわれておりますように、新しい形態の問題についていろいろな議論が起こることはこれはやむを得ないことであって、最終的に政府が法律をまとめる場合に、それらの議論も十分判断をしながら、現時点において最良な道を選ばなければならない、こう私は考えております。無過失という問題に対して日本政府の中でもって一番無過失公害ということに対する勉強をしておったのは通産省と思うのです。これは古い法律でございますが、鉱業法には無過失の規定がございます。これはあなたは専門家ですから釈迦に説法でございますが、刑法三十八条には「意ナキ行為ハ之ヲ罰セス」とあるのも、これも一つの大法則だと思うのです。しかし現実的には処理しなければならないものが想定されれば当然法律的に要綱としてこれをつくらなければならないと思います。だから公害問題いま非常に重大な問題になっているけれども、いまの公害を除去しなければならぬと同時に、これ以上これからの公害が人体被害に及ばないように事前に絶対的な処置をしなければならないというときで、当初の案に環境庁が推定までを盛ったこともゆえなしとしないと私は思うのです。しかしいろいろな議論があったにしろ最終的には推定事項だけが削られたということは、いまの段階において政府自体はそれが一番いい道であろうということを判断してやったのは、この推定でもって一番問題を感じたのは中小企業なんです。推定をされ、これをやったら中小企業という日本の特殊的な企業は成り立つのかという非常な強い意見がありました。だから法律というものはなるべく法律が思わざる結果、思わざる弊害を起こさないことが望ましいことでございますし、通産省が反対したり、経団連が言ったからまるのみにして抵抗したというのではありません。これはあとから環境庁側の意見を聞いていただけばわかるとおり、全く通産省は案外ものわかりがいいといわれたくらいにすんなり、最終案をきめるときには政府決定ではございますが、環境庁が主体をなし、環境庁の判断においてきめられたということだけは事実でございます。
  61. 中谷鉄也

    中谷分科員 やはり何を推定するのか。ある事実を立証して、その事実が立証された場合に、どの事実が、どのことが推定の対象になるかということが企業において理解されていなかったと思うのです。そこで、大臣の御答弁も、何か推定されておったのか、この法案要綱は。私、率直に申し上げますけれども、要綱案におけるその因果関係の推定というものを何か非常にたいへんなもののように理解されておる向きがあると思うのです。  そこでもう一度お尋ねいたしたいと思いますけれども、これは昨日も私——ちょっと大臣にお尋ねすることが、話がこまかくなりますけれども、こういうことなんです。まず「公害に関し因果関係の推定を行なうこと、」これは商工会議所の関係ですが、「とくに多数の原因者による複雑な複合汚染の場合に関してまでもそれを及ぼすことは、事実誤認を伴うおそれが極めて大」、こういうことをいっておるわけですね。要するに、環境庁の案というものは、その三つの事実を企業が立証しなければいけませんよ。そういうものがあったら、結局それが前提として推定をするんですよということですね。ですから、推定といったって、もうほとんど事実誤認のおそれということが起きる余地があり得ないわけなんです。人によれば、その因果関係の三つを立証してしまえば、もう立証することがないじゃないかということなんですね。それを経団連の主張のように、「無過失責任のもとで因果関係の推定を行なうことは絶対に避けるべきである。」これは企業の立場を不当に無視するものだというふうな意見というものが肯綮に値するのかどうか。ことに中小企業だといって——ちょっと私は理屈っぽいことを申し上げますけれども、共同不法行為としては、推定規定の有無にかかわらず、中小企業もとにかく複合公害の場合の責任を問われるわけなんです。ただ、あとは、今度の法案によると損害賠償の額についてしんしゃくをするということなんですから、この推定規定というものに産業自身一つの誤解の上に立って非常な懸念を持った。  では、ひとつ私はこういう聞き方をいたしたいと思いますけれども、環境庁長官は、中小企業が推定規定について非常に心配をしているというのは杞憂なんだ。杞憂というのは、とにかく心配しなくてもいいことを心配しているということですね。通産大臣は杞憂だとは思われませんか。なるほど心配していることはもっともなことだというふうに思われますか、これは。事は推定というものの訴訟、そうして実体法に関連してくる問題ですけれども、片一方では、とにかく政府の中で、それは杞憂なんだ、心配をしているという向きもあるけれども、それは杞憂だと思います。——杞憂というのは、心配しなくてもいいことを心配するということですね。そうすると、大臣は、そういうふうなことを業界が心配することは杞憂じゃないんだ、まさに肯綮に当たっているんだというふうに思われるのか、こうなると、通産大臣の御見解と環境庁長官の見解とは違うことになってくると思うのです。法務大臣は、こういうふうに言っておりますね。推定規定があってもなくても実際は、事実上は同じことなんですというふうに法務大臣は言っているわけなんです。だから、推定規定というものを産業界のように重く見るのか、それともとにかくそのことが政治の姿勢を示すものとして残しておいたほうがいいという考え方をとるのかという問題だと思うのです。経過はともかくとして、推定規定というものについての大臣の御見解をひとつ承りたい。
  62. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、産業に従事する者、企業、産業代表者がみずからの利益を守るために推定規定には反対であるという立場は、私もかつて産業人でありましたから、それは産業立場からは理解しております。私自身がいま国務大臣としてどう考えるのかということを問われれば、私は通岸大臣という立場から離れていまの立場で申し上げれば、この種の新しい立法という、いまの過程において推定規定を除いた環境庁の配慮は、これは配慮あるものだ。こういうものに対しては、新しい過程において法は完備されていくべきものであって、初めから理想を追って、反対があるにもかかわらず、これは理想だということで押しつけて実効をあげられるものではないという考え方から立ちますと、最終的にこれは私たちが主導権をとってやったものではありません。これは環境庁がみずからの判断でこの無過失賠償の法案をまとめられたわけでありますが、私自身としては、今度提案をしているものが、いまの段階においてはいいのだという考え方に立っております。
  63. 中谷鉄也

    中谷分科員 率直に答えていただいたらいいのです。  要するに、長官は杞憂だと言っているわけですね。それは産業界は懸念しているけれども、とにかく誤解に基づいてそういう心配をしているのですよ、こう長官は言っているわけです。しかし、そういう反対があるからとにかく欠落をさせた理由の一つなんです、こう言っているのです。そうしたら、結局大臣の御見解は、企業の持っている社会的な責任、そうして企業と住民との立場、そういうものの中で、この法案要綱の推定規定というものの意味、それから価値、効果、何を推定するかということ——法案要綱に従って、とにかく全部の因果関係を推定しちゃうんだというふうに理解しておられる向きが非常に強いわけですよ。
  64. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたは法律的な専門家でありますから、私よりもはるかに専門家であるということは、これはもう私も理解しております。私も国務大臣として、法律をつくる場合には慎重でなければならないという立場をとっております。ですから、この経団連が出してきた問題に制約されたり、こんなものにウエートを置いて削られたものではありません。新しい法律をつくる場合において、立法者が、起案者が配慮しなければならない最小限度のものというのは守らなければならないという立場で私は解釈しておったのです。  そういう意味において、推定というようなものを——これは前に売春防止法などで予防検束を行なうとか、そういうものを業とするおそれのある者とか、やるおそれがある者と推定して逮捕するという法律案ができたときに、私は反対をしてそういうものは立法すべきではないという主張をいたしました。私は当時審議会の委員でございましたから、これは私一人が反対をしたためにそのものは立法をすることができなかったわけでありますが、推定という条文をつくる場合には、それなりに非常に慎重に配慮をしなければならないということで、私は、この問題に対して、このような経済団体が出したものをもとにして主張したことはありません。
  65. 中谷鉄也

    中谷分科員 時間がないようですから、質問を別の機会に譲りますけれども、大臣の御答弁というのは、もう刑事と民事とごっちゃにされておる点にまず問題点があるわけですよ。刑事の推定と民事の推定とごちゃごちゃにされたような御答弁ですから、これはこれ以上お尋ねをしても、そのあたりを整理をしていただかないと論議がかなり——こちらは何をということの法案の立場に立ってのお尋ねをしていることに対して、大臣は因果関係の推定一般論で議論していますから、とにかくかみ合わないわけです。ですから、私が貫いたかったのは、経団連も一つの団体ならよく法案を見た上で意見を出すべきであったと思う。長官が言っている杞憂というのは当然のことだと思うんです。これは大臣自身も、あるいは御所管じゃありませんから、そのあたりについての御見解が一般論を述べられて、私から言わせると、非常に素朴な一つの御意見を述べられ、また非常に政治的な御発言をされたということで、これ以上この問題についてのお尋ねはいたしませんが、しかし私は、今度の国会では、この問題をあらゆる機会に質問いたします。当然大臣にもお尋ねいたしたいと思いますので御準備をいただきたいと思います。  そこで、次に、被害者救済のためのいろいろな方途、あるいは企業が公害防止のための設備投資というふうなことを法のもとにおいて行なわなければならない、また、そういうようなことについて努力が傾注されなければならないということは言うまでもないことですけれども、無過失責任という法律問題を質問したあとで、私は最近、こういう点について、われわれ自身の問題意識というものが若干欠けているのではないかという点についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  それは、やはり公害防止技術開発、その点について私はやはり一つ問題を提起をしておきたいと思うのです。要するに、無過失責任の法律をつくったとしても、被害が発生することをまず予防できればそれにこしたことはないわけなんです。そういうふうな点についての公害防止技術という問題について、時間もないようですからまとめてお尋ねをいたします。これは整理をして質問をいたします。  公害防止について、企業が、たとえば鉄鋼については何%公害防止についての設備投資をしているか、たとえば伸び率は四十五年と四十六年と比べてみるとずいぶん伸びているとかいうふうなことがよくいわれます。たとえば和歌山の住友金属の製鉄所は一〇%を上回る公害防止設備投資をするということが巷間よくいわれるわけですけれども、問題は、公害防止技術開発という点が注目され、その点についての努力が傾注されなければならないと思うのです。  そういう質問前提にして、お答えをいただきたいのは次の点なんです。  わが国の公害防止技術というのは、一体どの程度のレベルにあるというふうに大臣はお考えになられるだろうかという点、これが一点。特に生産技術の進歩というか、開発というものには非常に各企業とも力を入れておる。しかし公害防止技術開発というものは、私は率直に言ってかなりおくれていると思うのです。それの技術水準というものはどの程度のレベルに達しているかということをわれわれはひとつ見直す必要があるんじゃないか。ことにこれは諸外国との関係においてひとつ十分にこの点を見直す、この点についての大臣の御所見を承りたい。そうすれば当然、たとえば大型脱硫装置の問題だとか電気自動車の問題だとか、こういう点についてお答えがいただけると思うのですが、この点について御所見を承りたい。
  66. 田中角榮

    田中国務大臣 技術的な問題は工業技術院長が参っておりますからお答えをいたしますが、私は公害防止技術そのものに対しては日本は、世界的に最高レベルに行なおうという意思があれば、またそういう強制力を持てば十分でき得る技術的な水準にあるという考え方に立っております。ただ日本がやはり生産重点ということでやってまいりましたので、公害というものに対しても、いま労働省に移った戦前の工場法、危害予防というふうに、みんな労働者を中心にしたものであって、労働省に移ってしまったというようなことです。それが現在は複合公害という、推定規定を必要とするような状態になっておる。これは過密であるということ、とにかく東京、大阪、名古屋の五十キロ圏を合わせれば、全国の一%に三千二百万人が集中しておるという事実、これは世界にない例であります。そういうところで、中小企業が非常に多いということで、公害としては世界で一番めんどうな状態であり、一番公害除去に真剣にならなければならない状態にあると思います。そういう意味で、ロサンゼルスの公害のように自動車を電気自動車にすれば直ちに片づくというほどの単純なものではないわけです。私は去年の七月通産省に参りましてから、新工場法の立案を考えなさい——なかなかめんどうな問題ですからだれもやりたがらないのですが、電気事業法を持っているように、また原子力に対して単独法がありますように、工場法という新しい観点からのものを考え、基準を明らかにすべきである。明らかにしないでおりますと、どうしても推定とか、複合公害に対しては公害の面からだけ規制をしなければならないようなものが起こる。その場合、国民の納得ということを得るために、合意を得るためにはいろいろな過程を通るので、やはり工場というものに対しては、人間を焼く焼き場に対しては人家から何百メートル離れなければならないという規定があるのですから、そういうことをまず考えなければならないということさえもいま討議をしておるような状態でございまして、技術の問題、制度の問題、法制の問題、三つあると思います。そういう認識に立っておるわけでございまして、技術のこまかい問題に対しては工業技術院長から答えます。
  67. 中谷鉄也

    中谷分科員 それでは技術院の院長さんにお尋ねをいたしたいと思います。あるいは公益事業局長さんに一部お答えいただくことになるのかもしれませんけれども、従来からいわれております大型排煙脱硫装置、脱硫技術ですね。この実用化のめど、これは一体どういうことに相なっているのでしょうか。これが質問の第一点であります。  第二点は、電気自動車の点についての大臣のお答えがありました。そこで、電気自動車開発の現状と将来の見通しは一体どういうことなんだろうか。これをひとつお答えください。これはもうすでに工業技術院のほうで、あるいは通産省のほうでこの点については技術開発をやっているということは私も承知いたしておりますけれども、その電気自動車によって現在の自動車がどこまで代替できるという見通しをお持ちになっているのだろうか。これは一つ興味のある問題だと私は思うのです。それをひとつお答えいただきたいと思います。  要するに代替がどこまでできるのかということです。代替の可能性といいますか、どの程度までということになってくると、代替できない分についてのガソリン自動車の排気ガス対策というものは、これはもう従来から何べんも質問されている点ですから、簡単に、それは一体どういうふうに対策を立案するかという問題、これが電気自動車に関しての質問でございます。  それから電気自動車自体が新しい公害を発生するというおそれはないのだろうか、こういうふうな問題も心配をしておいていい問題だと思うわけです。  時間切れになってまいりましたのでこれで質問を終わりますので、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  68. 太田暢人

    ○太田(暢)政府委員 それでは簡単に、いま御質問いただきました点について順を迫って説明いたします。  最初に排煙脱硫の問題でございますが、排煙脱硫の方法は非常にたくさんございまして、現在、たとえば国産の技術といたしましては大型プロジェクトで二つの排煙脱硫法をやりまして、これはもうすでに完成いたしておりまして、かなりのコマーシャルスケールに近い、あるいはコマーシャルプラントとみなし得るような排煙脱硫設備がすでに中電及び東電において建設あるいは建設をほとんど完了いたしております。したがいまして、技術的には大体やり得るところにきておる、かように考えております。  それから電気自動車でございますが、これは従来からたとえば万博その他でいろいろなものがありましたけれども、これは経済車という意味ではございませんで、経済的にはもっと飛躍的な技術革新が要求されるものでございます。したがいましてこの電気自動車は、特に大都市内の大気汚染の防止ということと関連いたしまして、昨年度から大型プロジェクトに取り上げております。これは五年計画でやっておりまして、大体来年までに第一次の試作車というものを完成いたしまして、五十年までには、現在ありますような電気自動車から見ますとはるかに高い目標の、経済車としての電気自動車開発させることで鋭意努力いたしております。  それからこの目標が達成いたされますと、大体大都市で動いております自動車の三分の一くらいは、技術的な面から見ますと置きかわり得るものであるというぐあいに私どもは考えております。したがいまして、大体対象といたしましてはあまり高速を要しないもの、それから一日の走行距離のあまり、長くないような自動車、たとえば都市内のバスでございますとかあるいは配達車とかその他の運搬車、そういったようなものを考えておりまして、かなりのものは代替できないわけでございますが、このものに対しましては、現在ガソリンエンジンの改良、あるいはガソリンを使わないエンジンの改良その他でいろいろの努力がなされております。工業技術院でも、傘下の研究所におきましてガソリンエンジンの改良を研究いたしておりますし、また補助金制度の中でも同じような考え方エンジンの改良を取り上げて、鋭意これの解決に努力をいたしておるのでございます。  それから電気自動車を取り入れたら新しい公害が出ないかということでございますが、新しい技術が生まれますと、やはりそれに付随いたしましてかなりそういったマイナスの点が出てまいるかと思います。たとえば電気自動車でいいますと、電波障害の問題が一つ考えられます。これは蓄電池から出てまいります電波障害でございます。それからまた、鉛蓄電池をもし使いますと、これを廃棄いたしますときに鉛の公害が出てくる可能性が考えられます。その他にもいろいろございますが、これらのものは、あわせまして大型プロジェクトの中にこういったソフトの面に関してのアセスメントを十分やりまして、完成いたしましたときにはそういう問題の絶対ないような形でやっていきたいと思っております。
  69. 中谷鉄也

    中谷分科員 終わります。
  70. 植木庚子郎

    ○植木主査 この際、午後一時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十三分休憩      ————◇—————    午後一時五分開議
  71. 渡辺肇

    渡辺(肇)主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  通省産業省所管について質疑を続行いたします。木原実君。
  72. 木原実

    木原分科員 大臣、きょうはパイプラインの問題を少し聞きたいと思うのですが、ちょっとその前に、幾つか私ども気になることがありますので、大臣の御見解をお尋ねしておきたいと思うのです。  例の尖閣列島、いろいろ問題になっているわけなんですが、あの尖閣列島周辺の、たとえば鉱区の設定とかあるいは資源の試掘の問題とか、そういう状況はどういうことになっているんですか、おわかりになりましたらひとつどうぞ……。
  73. 莊清

    ○莊政府委員 現在の状況についてまず御説明をさせていただきます。  尖閣列島周辺の大陸だなにつきましては、わが国の企業で出願を琉球政府に対してすでにいたしておるものが数件ございます。他方、外国系の企業で、台湾政府から同国の鉱業法に基づきまして一部の海区につきましてすでに鉱業権の許可を受けた、こういうふうに称しているものも実はございます。ございますけれども、御案内のように、いろいろ国際的に同海域が問題がありますので、双方とも、実際の海底の探鉱をするとか調査をするという活動は、現在までのところ実は行なわれておりません。こういう状況に実はございます。
  74. 木原実

    木原分科員 そうしますと、五月十五日が参りますと当然領有権に基づいて返ってくるわけでありますから、特に国内の企業が数件出願をしておる、こういうことは当然日本政府が引き継ぐということに相なるわけですね。その際にどうするつもりですか。
  75. 田中角榮

    田中国務大臣 尖閣列島は、沖繩に付随する島嶼として当然返還になるものでございます。でございますので、返ってまいりましたら、法律に基づきまして先願権が確定をするわけでございますので、琉球政府に出しておるものはそのまま日本政府が引き継ぐということになります。ただし、現実の問題としては、いま中華民国政府の名で許可をされているようなものもございますし、それから中華人民共和国との調整もございますので、この大陸だな海洋開発というものに対しては、それらの事態を十分踏まえながら、最終的にはやはり日本と中国とか協議をするということが円満な解決方法だ、こういうことだといま政治的には考えております。
  76. 木原実

    木原分科員 政治的な話が出たのですが、御承知のように、きょうも何かアメリカ政府の高官筋が、あの問題は施政権ということで沖繩と一緒にアメリカが預かったけれども、しかし返っていくことであるから、これはわれわれの関知した以前の問題だから、日本と関係筋が話し合いをするのが望ましいんだ、政府筋でいう中立的な発言が相次いでいるわけですね。  そうしますと、通産大臣のお考えでは、いずれにしましても、いままでのいきさつを踏まえて、日本政府としては中国との間に何らかの形で話し合いを求める、こういうことでおやりになるわけですか。
  77. 田中角榮

    田中国務大臣 明確にしてきおますが、尖閣列島はわが国の領有であるということはもう事実でございます。これはいろいろな文献その他歴史的にも明確に証明があるものでございますし、植物学的にもいろいろな面から異論のないところでございます。  そうではなく、第二の御質問にございました石油鉱区の問題は、やはり尖閣列島周辺の問題は、わが国が、返還がきまったから新潟沖を掘るようなつもりで直ちに掘るということには配慮が必要である、こういうことでございまして、やはり関係国との話し合いということは政治的には必要である、私はこういう考えであります。
  78. 木原実

    木原分科員 そうしますと、鉱区について、あるいは資源について、その調査とかなんとかについては中国との間の話し合いをする、領有権の問題については別に何も話しすることはないんだ、こういう御見解ですね。
  79. 田中角榮

    田中国務大臣 領有権は、これは沖繩に付随する島嶼として日本のものである。これはもう返還が行なわれれば当然そうである。この考えは全く政府としては変わりません。
  80. 木原実

    木原分科員 ただ、鉱区の問題について話をするということになれば、その前に当然やはりその問題に、ぶつかりますけれども、どうですか。
  81. 田中角榮

    田中国務大臣 鉱区の問題というよりも領海の問題があります。領海の問題がありまして、ともかく返ってきたから直ちに尖閣列島周辺を、日本の専管権によってどんどん掘りますという問題だけで片がつかない問題があります。それは、中華民国政府からアメリカの石油業者に対して与えられておる採掘権もあるのです。そういう問題がありますから、だから現実的には、法律どおり日本がばたばたとやれるんだということよりも、外交上の配慮は当然必要である、こう常識的にお答えをしたわけです。
  82. 木原実

    木原分科員 この機会だから、何か話が横にそれて恐縮なんですけれども、御承知のように、返還になる、このままいけば自衛隊が配備される。そうしますと当然自衛隊のパトロール圏内に尖閣列島は入る。ある意味では、私は、これは自衛隊の一つの防衛線というよりも直接前線を形成するようなかっこうになって、しかもお互いに、台湾問題もさることながら、中国のほうも領有権をあらためて主張してきている。われわれは既定の事実だ、こういう関係になって、しかもかなり深刻に、あるいはまっこうから領有権をめぐって意見の対立があるところ、そこに今度は日本の武力が一つのパトロールを始める。われわれあたりとしては、五月戦争とまでは言いたくありませんが、非常に危険な様相をはらんでいる事態が少なくともこの五月十五日以降始まるような情勢にあります。そこにもってきて、私の提議しましたのは鉱区や資源の問題なんですけれども、なかなかこれは外交的にも——しかも中国との関係は御承知のとおり、話し合いをするといったところで、いまだに十分なパイプがない姿にあるというようなことが相重なりますと、なかなか中国の問題、あるいは沖繩での自衛隊の行動の問題、いろいろな問題を全部合わせまして、政治的にはたいへん大きな課題が振りかかってきている。しかも日本政府があるいは頼みとするところのアメリカでさえも、おれは知らない、おまえのほうでやれというような姿もあるということになると、これは初めてこの辺で、ある意味では日本外交の真価が問われる、よほど腹を据えてかかりませんとたいへんな問題だと思うのです。そこに私どもの鉱区の問題もひっかかってくるわけですが、その点について田中さんの御見解をひとつ再度承っておきたいと思うのです。
  83. 田中角榮

    田中国務大臣 まあ現実が現実でございますから、慎重な配慮ということは当然でございます。しかし、自衛隊の自衛権の範囲である。それは当然のことでございますが、それは法律上の問題でございまして、現実を無視して紛争を起こすということは一切ございません。それは法律のもっと根本である憲法に、国際紛争は武力をもって解決をしない。ましてや中国との間にそういう考えは全くないということが一つございます。  もう一つ、もっと困難な問題は、台湾との問題がございます。ですから、これはもう紛争が起こるような、紛争の端緒になるような試掘や採掘という問題に対しても慎重にいたします。法律的にいっても、国際法上いっても、歴史の上からいっても琉球諸島に属するものであるということは当然と考えておりますし、それは事実そうであります。しかし、現実的にいま返還をしてほしいという歯舞、色丹、国後、択捉につきましても議論があるわけでございますから、これをというわけにはまいらないわけです。ですから、これらの問題はこれから前向きに国交の調整を行なおうとする中国、また日本、台湾との間に大きな紛争の種にになる、火種になるというようなことは、日本政策からも、国民的な基本的な立場からもそういうおそれはないというふうにお考えいただいていいと思います。
  84. 木原実

    木原分科員 これは局長さんにお尋ねしたいのですが、この方面に対する日本の出願が数件出ているという話ですけれども、御承知のように新潟の油が吹き出したりしまして、国内資源開発ということで業界は非常に熱心なように私ども聞いているのですが、この地域について出願をしておるような企業ないしは、それに関連するような業界でこの方面に対する企業意欲といいますか、そういうものはどうなんですか、非常に旺盛なんですか、まあまあというところなんですか。
  85. 莊清

    ○莊政府委員 一言で申し上げますと、非常に旺盛であるというふうに私どもは見ております。  この海域は、昭和四十三年にエカフェが国際的な立場で調査をして、非常に有望ではなかろうかという報告がなされました。それ以来、わが国企業としても非常に前向きに考えておる次第でございます。
  86. 木原実

    木原分科員 そうしますと、意欲が旺盛だというのですが、日本の企業では台湾に出願をしておるところはないのですね。
  87. 莊清

    ○莊政府委員 ございません。それぞれ自国民あるいは自国法人にのみ出願権を認めておりますので、ございません。
  88. 木原実

    木原分科員 くどいようですが、もうちょっとお聞きしますけれども、じゃ台湾の政府外国系の企業が出願をしている、これは大臣がおっしゃいましたようにたいへんやっかいな問題で、処理するということになるのですが、われわれの側からすれば、その出願権の扱い方はどういうことになるのですかね。話し合いがつけば、日本政府に出願をする権利が向こう側にはあるわけですね。その辺の処理のしかた、考え方をひとつ教えてください。
  89. 莊清

    ○莊政府委員 わが国及び琉球政府の鉱業法では、申し上げましたように、内国民あるいは内国法人にしか鉱業権の出願権を認めておりません。台湾でも同様であると思います。台湾に外国系の企業が川瀬をして権利を取得しておると称されておりまするが、もちろん現地法人の名におきまして出願をしたというケースでございます。でございますから、今後とも、現在琉球政府に対して出願をしておりますわが国の個人あるいは法人というものが、外国に対しましてその鉱区について出願をするということは法律上ございませんし、またわが国の企業や個人の考え方から申しましても当然日本政府に出願すべきだ、こういう姿勢でおるわけでございます。
  90. 木原実

    木原分科員 この問題これで打ち切りますけれども、大臣、なかなか業界の意欲が旺盛で、しかもかなり豊富な資源がある、こういう状況が明らかにされておる中で、一方では、ある意味では軍事的にも外交的にもたいへん大きな背景を持つ問題だと思うのです。慎重にとおっしゃるわけなんですけれども、おのずからタイミングやそれからいろいろな条件があると思うのですが、何か、この問題について有効な解決の方法はやはりここにあるんだ、こういうお考えがありましたら、再度お示しを願えませんか。
  91. 田中角榮

    田中国務大臣 まあ具体的に有効なということはございませんが、常識的に法律的な面からお答えをするわけでございますが、これは中国政府、台湾政府等には直接関係なく、台湾政府、琉球政府から鉱業権を取得し、または取得しようとしている法人等の問題であります。これは日本の法律によって処理をすればいいわけでございます。ただ微妙なところ、議論の存すところ、国際的に解決したほうが妥当であるというようなところ、特にいま日中問題、日本と台湾との問題、そういう現実面から配慮しなければならない問題等に分けられるわけでありまして、その順位でもってものを進めてまいればいいことでございます。調査をした結果では、なかなか自然というものは意地が悪くできており、むずかしい地区に資源がよけいあるというようなものもあります。しかし、それはやはり順序よくやることだと思いますし、また台湾政府外国系の企業に認めたとしても、これは日本に対する石油の搬入の上で非常に関係の深い会社ばかりでありますから、これらの会社が利害の上で適切な相談ができないということは全然考えておりません。通産省にもいろいろ陳情もございますが、いずれ適当な処理ができるでございましょうから御考慮をいただきたい、こういうことでございます。したがって、そんなに問題にしなくてもいいのではないか。これは問題が起こってくればたいへんな問題だと思いますけれども、いまの状態ではそんな感じを持っております。
  92. 木原実

    木原分科員 これは場所が少し違いますので、これぐらいにしておきますけれども、きょうひとつお伺いしたがったのは、新しく法律が出るということを聞いておりますけれども、例の石油パイプラインの問題です。これは、この国会に法案は間に合うのでしょう。
  93. 田中角榮

    田中国務大臣 もう二、三日ぐらいで結論を出したいということでございます。
  94. 木原実

    木原分科員 いずれその法案が出た上で、別の機会に少しばかり詰めた話を聞きたいと思うので、概要だけ聞いておきたいと思うのです。  パイプライン時代来たるということで、輸送の形態の変化あるいはコスト安とか、いろいろな要件で、すでに民間の企業の中では石油パイプライン会社が設立されるような動きもありますし、何かパイプライン時代だということで、たいへん大きなあれがあるわけで、パイプラインの法律をつくる段階まで来たわけですが、これからどれくらいの規模、どれくらいの見通しでこういうものが全国的に敷設をされていくのか、おおむねの見通しがありましたら、前提になる問題ですから、ひとつ聞かしてください。
  95. 莊清

    ○莊政府委員 通産省で昨年来予算措置も講ぜられまして、全国的に将来のパイプラインの問題につきまして、学識者を集めまして検討を行なってまいりました。その中で、非常に計画が具体化をしておるというものが、実は関東地方でございます。関東地方では、神奈川県の各製油所から埼玉県まで、国鉄のパイプライン計画というものが非常に内容的に具体化してございます。別途、千葉の関係の製油所が埼玉を通りまして栃木方面に長距離輸送するという関係で、これはすでに民間の関東パイプライン株式会社というものが組織されまして、工事の内容その他について、いま非常に細部にわたりまして詳細な検討がなされておるというふうな熟し方でございます。別途、千葉から成田までのパイプラインの問題、御案内のとおりでございます。この三本の大きなパイプラインが関東地方で具体化しつつあるわけでございますが、その他の地区については、現在のところ、この程度にまで熟した計画というのはまだ実はございません。ただ、ほかの地区につきましても、今後、たとえば近畿地区あるいは東海地区というふうな、石油の消費量が非常に大きくて、しかも土地が過密であるというような地帯では、いずれ計画的な整備が必要であるという見地から、それぞれ検討がなされておるわけでございますが、それほどまだ具体的なアイデアはございません。  なお、北海道につきましても、相当長距離でございますし、将来のあの地区の発展に備えるという意味からも製油所の計画等もございますし、今後はやはりパイプラインが必要だということで、関係方面において寄り寄り検討がなされつつある、こういう段階でございます。
  96. 木原実

    木原分科員 その場合に、たとえば敷設をする場所なんですが、原則として道路ですか。鉄道敷とかあるいは道路敷とか、いろんなケースがあるわけですけれども、原則としてやはり道路ですか。
  97. 莊清

    ○莊政府委員 国鉄が公社の事業として行なうという場合は鉄道敷に相なりますが、民間が行ないます場合には、これは原則としてすべて道路の下に埋設をして、タンクローリーで運んでおったものを今後はパイプラインの輸送形態に積極的にかえていく、こういう形態になるわけでございます。
  98. 木原実

    木原分科員 鉄道敷の場合は、そうしますと、今度の新しく出る法案は、たとえばそのすべてを規制するわけですね。かりに将来、鉄道か何かそういうことをやろうといったような場合は、当然このほうの規制のもとにあるわけですね、どうですか。
  99. 莊清

    ○莊政府委員 法律上はさようでございます。
  100. 木原実

    木原分科員 問題は、これはおそらく輸送の形態としましても、コストの面、タンクローリーによっていたものを振りかえる、いろいろな面でメリットの多い輸送形態だと思うのです。しかし、御承知のように、やはりそれに伴う安全性の問題が、特に住民サイドからは従来にも増してきびしい形のものが出てくると思うのです。またわれわれも、新しい、あるいはコストが安い、有効な形態だからといって、ただそれだけのメリットでやるというわけにはいかないと思うのです。だから、安全性については、この法案の中にも安全上の規制の問題が当然入ってくると思うのですが、法案を立案する過程の中で、安全性についてはどういう検討をなさいましたか。
  101. 莊清

    ○莊政府委員 基本的な点についてまず申し上げたいと思いますが、安全の問題は最も重視するという見地から、通産省、運輸省、建設省及び消防関係の自治省という四省で検討いたしたつもりでございます。  それで、法律の骨格に即して申し上げますと、まずこの事業は許可制にするということにいたしておりまして、それから許可を受けても、具体的な工事を行なう前に、四省で定めておきまする安全基準というものに適合しておるかどうかを一件別に厳重に全部をチェックいたしまして、そのチェックに合格したものだけ工事着工の認可をするということにいたしております。それから工事が終わりましたならば完成検査を実施する。完成検査に合格しなければ運転することを禁止しております。  なお、平常の保安面の配慮でございますけれども、企業に、事業を開始する前に内部の保安規程というものを法律上つくらせまして、それについても認可を受けなければ油を通せない、事業に着手できないというような法律構成にいたしております。別途自主保安の見地から、法律で企業ごとに保安管理者というものの設置を義務づけまして、先ほどの保安規程及び保安管理者に関しましても、監督官庁が必要に応じて改善命令その他の指貫がとられるというふうにいたしております。  なお、パイプラインの運営につきまして、事故発生のおそれありとか適正でないという場合には、事業の改善命令あるいは事業の停止命令あるいは許可の取り消しというふうな最もきびしい保安監督面の制度をすべて盛り込みまして、万全を期することにいたしておる次第でございます。
  102. 木原実

    木原分科員 法律上の手続はいいのですけれども、たとえばわが国の場合はまだ幾つかのガスの輸送管とかいろんなあれがありますけれども、過去のいろんな、たとえば事故例だとか、そういうものに乏しいと思うのですね。しかもいまおあげになりましたけれども、これはたまたま私の選挙区になるのですが、たいへん過密になってきているわけです。そこへいま局長がおあげになりました線だけでも三本入る。そのほかにもおそらくガスの系統、いろいろ入ってくる可能性があると思いますが、少なくともあの過密なところに大量のものが入ってくる、しかもわが国の特殊な条件としては、地震の問題だとか、あるいはほかの地下の妙な埋蔵物がかなりあるというような面が実はこの安全性の問題で一番心配なわけなんです。道路敷の下を通してだいじょうぶだというあれがありましても、特に住民の側からすれば、事故というのは一〇〇%のうちのほんの〇・何%かの事故が問題なので、しかも今度の場合はそれぞれかなり高圧のものが通っていくということになりますと、万一の場合というのはたいへんなことだと思うのです。そこで、外国等の事故の事例というのは十分にお調べになりましたか。
  103. 莊清

    ○莊政府委員 通産省が中心になりまして、過去二年間に四回ほど官民合同で、あるいは官側だけのパイプライン調査団というものを欧米に派遣いたしまして、うち二回はもっぱら保安専門の調査団でございまして、これには消防庁の専門家、各県の消防の専門家にも入っていただくというようなことで実は調査をいたしております。いろいろ技術的、専門的なレポート、報告書も実は提出されておりますが、一言でまず申し上げますと、欧米ではもう百年近いパイプラインの経験がございまして、四通八達いたしておるわけでございますが、事故としては非常に少ないようでございます。アメリカの一九六六年一年間の数字が、これはOECDでも発表したことがあるようでございますが、タンクローリーの事故の数を一にいたしますと、パイプラインはそれの一万分の六程度であるというふうなことが報ぜられております。もっとも、ヨーロッパ全体でどのくらいそれでは事故があるか、今度はヨーロッパを見ますと、一九六六年から六九年までの間でございますが、やはり大きいもの小さいもの全部ひっくるめまして二十件くらいあったようでございます。古いパイプラインの外面が腐食をして漏洩をしていくというふうな事故、あるいは他の道路等の工事を行ないます場合に誤ってひっかけて穴をあけたというふうなことがおもな原因のようでございます。最近におきましては、御案内のように、石油パイプラインにはすべて継ぎ日なしのスチールパイプが使われるというようなこととか、電算機を使って事故時に弁を自動的に締めるというふうな高度の装置がどんどん発達してきているということでございます。わが国でもこういう経験を見まして、今度の法律に基づきます安全基準、保安基準というものが、最も進んだスチールパイプを必ず使うというような材質の面あるいは敷設のやり方の面、安全装置の面で、世界で最高水準のものに絶対にしなければならないと思いまして、関係四省の間で昨年来かなりこまかい点まで実は検討いたしております。
  104. 木原実

    木原分科員 時間がありませんのでこれで終わりますけれども、たとえばロサアンゼルスの地震のときには二カ所ばかり折れたというような話を聞いておりますし、それから外国の事例等は、局長おっしゃいましたように、歴史が古いものですから腐食の問題等で事故が起こっておるという話も聞いておるわけなんです。ただ問題は、それにもかかわらず、やはりわが国の特殊な軟弱な地盤、千葉なんかの場合には地盤沈下がしょっちゅう問題になっておるわけです。軟弱な地盤、そこにもってきてかなり多様な、地震があるとか非常に過密なところを通る、いろいろな、諸外国の例とやや異なった特殊な条件もあると思うのです。それだけに、これはお願いなんですが、いずれ法案が出てまいりまして審議過程の中で、議会側の問題ですけれども、私は広くそれぞれ役所関係、政府関係の専門家多数の知識を吸収したと思いますけれども、かりにも学会の中にもかなりのいろいろな議論があるやに聞いております。したがいましてあぶないと主張されるような学者の人たちの意見もこれはひとつ十分聞いて、ことばは悪いのですけれども、役所の御用をつとめられる専門家筋よりも、もう少し異論を唱えられる学者の人たちの声を積極的に聞いて、これは政府のメンツや何かではないわけです、万全の上にも万全を期してもらいたい、こういうことが私の申し上げたかったことなんです。いずれ法案の審議過程の中で議会側のほうとも相談をいたしまして、議会としても十分その点に焦点を合わせて審議をいたしたいと思いますけれども、その点についての御配慮をお願いをいたしたいと思います。  終わります。
  105. 渡辺肇

    渡辺(肇)主査代理 上原康助君。
  106. 上原康助

    上原分科員 私は、施政権返還に伴う沖繩の特に中小企業対策の問題と海洋博の件について、大臣並びに担当関係者にお尋ねをしたいと思います。  復帰後通産省が取り扱わねばならない問題は、すでに明らかにされておりますように、非常に幅広い分野にわたっております。工業開発とそれに関連する工業用水の確保や電力問題また沖繩の伝統ある工業、民芸品等の保護あるいはそういった関連産業の振興、さらに中小企業対策など、また先ほどもございましたが、尖閣列島の大陸だな資源開発の問題等々、また七五年の海洋博覧会の開催、こういう沖繩県民が非常に関心のある諸問題をかかえておるし、私たちとしても今後の沖繩の経済社会開発、総合的な面で、ぜひともまた政府のお力添え等も得て、単に企業サイドだけでなくして、県民の意見なりあるいは公害問題を含めて、当初から万全の対策をとってやらなければいけない、こう考えているわけですが、まずいま申し上げた関連の諸問題について、大臣の基本的な考え方といいますか、こういうふうにこれから復帰に伴う沖繩の問題を解決していきたい、そういうお考えを聞かしていただきたいと思います。
  107. 田中角榮

    田中国務大臣 沖繩は、戦後四分の一世紀以上、たいへんな御苦労をしていただいたわけでございます。ようやく祖国に返還をされるということでございまして、私たちの基本的な考え方は、この二十五年余にわたる沖繩の特殊な状況下におけるマイナス、この高度な日本経済成長の恩恵を受け得なかったようなそういうマイナス面は、やはりわれわれ日本人全体が沖繩復帰というときにあたって、われわれの責任でこれらの埋め合わせをしなければならないだろうというのが、沖繩に対する基本的な考え方でございます。万博条約による海洋博を行なおうとしておるのも、沖繩の経済発展とかいろいろな理由はございます。しかし、大阪万博のようにほんとうに企業単位でもって行なうというのではなく、祖国復帰の記念事業として行なおう、こういうことでありますので、当然政府が主体になりつつ、県民及び全国民の理解と協力を得ながら沖繩復興に役立つように、世界的に沖繩を理解をして沖繩の経済発展ということに寄与できる目的を持ってということでこれが実施を考えておるわけでございます。ですから、復帰後の沖繩に対するいろいろな施策も、四十七都道府県の一つとして画一、一律的にという考えではなく、ほんとうに、かつて太政官布告時代、北海道開拓のために国の直轄でもって公共事業が行なわれて、今日の発展をもたらしたように、沖繩に対しては、やはり精神的にも物質的にも、沖繩の本土水準化というものを目標とした、沖繩住民の福祉の向上ということ、それに慰謝という面もございます。そういうようなものの考え方ですべての政策を立案をし、遂行してまいるという基本的な姿勢であることを明らかにいたしておきます。
  108. 上原康助

    上原分科員 そこで、いろいろ問題ございますが、おもに中小企業の対策についてお尋ねをしたいのですが、開発金融公庫に対しての資金融資の中で、すべて中小企業、中小零細企業を含めての資金の投資という形になっておるわけです。しかし、われわれの一般的な常識からしますと、込みで金を流したにしても、やはり資本の大きい方向に資金というものが投資をされる危険性が十分あると思うのです。次年度の予算で二百四億程度ですか組まれているわけです、が、この九八%まあ一〇〇%近い中小零細企業、しかも基地経済という脆弱性の産業基盤ですから、そういった面を本土の水準に引き上げていく、あるいは格差を埋めていくという場合に、もっと積極的な資金投資等をやらなければ、とても中小零細企業というものが復帰後本土業者に太刀打ちできない、倒産そのものも出てくるのじゃないかという気がするわけなんです。この点について、企業局なり、そういう面でどういう具体的な対策をおとりになろうとしておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  109. 田中角榮

    田中国務大臣 沖繩中小企業対策だけではなく、ほかの問題も本土と画一、一律的という考え方だけでは沖繩の生活を本土水準に引き上げるということはむずかしいわけでありますから、やっぱりその意味においては、離島振興法や山村振興法のように、個別的なものを前提としなければならないということには私も基本的にはそう考えておりまして、沖繩復帰対策として、いろいろな法律が立案されたときも主張を続けてきたわけでございます。政府関係金融機関でありますから、平仄を合わせてという答弁のしかたもありますけれども、これはこれからの過程において順次解決していきたいと思います。沖繩——実際申し上げると、沖繩の新しい理想図というものがまだかかれておられないわけです。これは基地経済から脱却をして、新しい沖繩児の年次計画というものをいま策定をされておりますが、これは復帰に際してどうしてもつくらなければならないということでつくったものであって、住民感情がそのままこれに完全に表現をされているとも考えられないわけです。内地自体でも、全国総合開発計画の中で沖繩をどう位置づければいいのかという問題もございますから、そういう意味で私はこの沖繩海洋博というものを進めている間には、沖繩というものの新しい理想図というものが従来の計画の上に付加されていくべきだと思っているのです。四月から政府関係機関の利率を〇・二%引き下げるというようなことを検討されておりますが、すでにドイツは三%の公定歩合になっているのでありますから、政府関係機関の利息引き下げよりも民間資金のほうがだぶつくという現象もあります。ですから、金利や資金の量というだけではなく、無担保の問題とか信用保証の問題とか、まだ他に考えなければならぬ問題もたくさんあるわけです。そういう意味で、私は本土と平仄を合わせるということではなく、本土の水準に引き上げるためにはどうしなければならぬのかということが、沖繩におけるいろいろな施策を考える場合の基本になる問題だと思うのです。山中総務長官も、その意味では相当な努力を続けてきました。しかし、これをもって万全としておるものではありません。実態が明らかになるにつれて、そういう問題は皆さんとも相談をしながら解決をしてまいろう。今日の日本の力でこんな問題の解決ができないはずはありません。そういう意味で、いま提出しておる予算や沖繩関係費などに対しては御不満もあると思います。しかし、これからは当然そういう問題が一つ一つ解決をしていくべきものだという基本的な、精神的な立場だけは明らかにしておきたいと思います。
  110. 上原康助

    上原分科員 いま大臣の意欲のある御答弁があったわけですが、これまで伺うところによりますと、中小企業近代化促進法に基づいて業者、業種等を指定をし、復帰後五カ年の金融措置をするというようなことも、通産省から行かれた方の現地での記者発表等もあるわけですが、ここでただ中小企業近代化促進法に基づいただけでは、いま大臣がおっしゃるほんとうに格差を埋め、さらに本土水準に引き上げる、また沖繩の中小零細産業全体と思いますが、これを基盤整備をしていくということにはならないと思うのです。そこで大蔵委員会等でもいろいろ検討されているようですが、開発金融公庫法案の中で特に中小企業対策という面で二十年の資金融資で十年据え置き、そうして十年後均等払いをしていくということで、年利二%ぐらいの積極的な対策を考えていこうというお考えもあるようです。これに対してぜひまたそういう方向で実現をさせていただきたいし、大臣としてもいろいろお力添えを得たいわけですが、どうお考えなのか伺いたい。
  111. 田中角榮

    田中国務大臣 私は沖繩復帰の前提になるいろいろな制度等を検討せられたときには、ある程度沖繩に対する進出企業及び沖繩でもって建設をせられるものに対しては、法人税の全廃を行なうべしとさえ提案をしたことがございます。これはいろいろな制度の中で、この復帰対策の中では実現をすることができなかったわけでございますが、やはりそういう太政官布告で北海道を開発したような、傾斜をつけて思い切った措置をしなければ、なかなか企業は進出をいたしません。それだけではなく、沖繩はいま低賃金であるということですが、本土並みになることは当然であります。そういうことになれば、沖繩に対して一つもメリットがないということでは、企業の進出はできないわけです。企業が進出しないと、若年労働者は全部本州に、本州にということで、沖繩の在住の県民が少なくなれば、中小企業は活動する余地はありません。だからまず原則的には沖繩に企業が定着することを考えなければならない。  それからもう一つは、今度中小企業があの狭い経済単位の中でやっていくためには、本土よりも、ある年限、本土の水準に引き上げられるまでの間は、適切な措置をしなければならないということで、具体策が検討せられております。いま国会で御審議を願っておるような法律もそうですが、前国会でも沖繩関係法案、いろいろ通過をせしめていただきましたが、これはやはりいまお述べになったように必ずしも——それが二%になるのか三%になるのか、これは国際金利や政府関係機関の金利との問題もございます。そういうものとの関連においてきめられるわけでございますが、やはり十年とか二十年とか二十五年とか、まあそういう単位でないと、なかなか三年や五年でもって体質改善も行なおうということはむずかしく思うのです。今度の工業再配置促進法案では、私の原案では、固定資産税の減免は最低二十五年ということでございましたが、現行の制度が三年でありますので、三年にしてスタートをしながら、法人税一・七五%等が財源になるとすれば、そのときに二十五年にしようということでやっているわけであります。スタートの時点においてはいろいろな問題があると思いますけれども、これから具体的な問題としては検討せられるべき問題である。そういう方向の実現に対して私も尽力をいたしてまいろうというつもりでございます。
  112. 上原康助

    上原分科員 この点はいろいろ専門的な立場で検討すべき面もあると思います。また金融金利の問題でございますから、ほかの面との関係もあるでしょうが、一応の意見が出ておりますから、ぜひ長期の低利融資をやって、中小企業のみならず、沖繩の産業開発、基盤整備をやっていくという基本的な方向づけをやっていただいて、実現をするように一そうの御努力をお願いしたいと思います。  そこで、先ほど大臣の御答弁にもありましたように、これまで沖繩の十カ年開発計画とか、いろいろ構想なり案はある程度出たわけですが、理想図がまだ描かれていない。確かにそうかと思うのです。振興開発法案の中でも、いろいろ出てはいるわけですが、マスタープランなり具体的な計画というものはまだ出されていない。その場合にやはり考えなければいかないことは、企業誘致、企業進出させしめるにあたって、どうしても公害問題というのと関連がいたします。もちろん、いかなる企業もいかないという立場は私たちとりません。しかし、臨海工業地帯とかあるいは住宅地域、そういうものを当初の計画の中で十分立案をしてやらないと、沖繩のきれいな海と空が本土の二の舞いを踏むということにもなろうかと思うのです。そういう面で、当面どういう企業の進出なり、あるいは産業を興したのがいいのか、これらの点についても御検討をし、あるいはまた関係業者との話し合い等もあるやに聞いているのですが、その点はどうなのかお聞かせをいただきたいと思います。
  113. 田中角榮

    田中国務大臣 公害の問題は深刻であります。戦後非常にスピーディーに本土の工業化が行なわれましたし、しかも明治初年から百年間続いてきた拠点中心主義、文化も経済も工業も一切のものが東京や大阪や名古屋に集中しておる、県庁所在地に集中しておる、こういうことで、公害問題は特に過密地帯における公害の形で大きく取り上げられ、複合公害という問題を前面に押し出さざるを得ないということになっているわけです。世界にもないほどの、複雑多岐にわたる公害問題については、公害防止技術開発、燃料対策、立地対策等を通じて適切な解決策を見出していかねばならない。だから、日本の本土における公害問題に対する適切な処方せんができたら、これは世界でもって最も新しいものができるといってもいいと思うのです。しかし、沖繩には幸いに、そういう意味ではこれから計画的なものを進めていけるということで、環境の整備ということを前提にして企業進出が行なえる、二次産業化が行なえる。これはいま考えてみても、一次産業比率を人口比率で見ると、本土では一七・四%なんです。この一七・四%は十年間に七・四%以下になるだろうというのを私は常に言っておるのです。これはアメリカが四・四%であり、拡大ECは六%でありますから、これはどうしてもそうなる。総合農政を続けていけばそうなります。そうすると、六百万人から七百万人、多くすれば八百万人もの余剰人口が出るわけであります。ところが、沖繩の一次産業比率は三八・九%であります。三八・九%の人口比率でありながら、一次産業の所得比率は八・八%であります。四〇%近い人が一〇%以下の収入しか持てないということを考えれば、二次産業比率を上げる以外に経済発展の方向はありません。二次産業比率が上がれば三次産業比率が上がっていく。基地経済というものは三次産業比率が非常に高いわけです。にもかかわらず、一次産業比率がかくも高いということになると、本土のスピードの三倍くらいのスピードで沖繩の工業化をやらなければならないわけです。そういうことで、沖繩をまかなう基礎産業として必要なものはどうしても必要なんです。幾ら公害問題が全然解決しない、公害は絶対出ませんということでなくとも、自然の浄化作用やいろいろなものを勘案しながら、沖繩で必要な基礎産業は必要だと思います。同時に、これからはこういう一次産業比率が非常に大きいだけに、知識集約産業への指向は当然として、当面、縫製工場が従来沖繩に進出しておりましたように、家電製品の組み立て工場とか電子工学のハンダづけ工場とか、そういういろいろな業種が考えられるわけです。だから、これからは公害論争もしながらも沖繩に対してどういう業種を進出させるか——これは下請ばかりになりますと経済の影響を非常に受けてしまって、一年間くらいのもうけはすぐ飛んでしまうということになると、やはり中核産業というものの進出をはかりながらやってまいらなければならない。私は沖繩に対してだけは相当なきれいな図面、六十年の沖繩はこうだという図面はかけると思うのです。そういう意味でまだ施策がはっきりしておりませんので、電力の料金をどうしてくれる、安定的にどうするか、政府融資をどうするか、償還期限をどうするかということで、アルミの進出までもおくれておるという状態でありますので、できるだけ早い時期に皆さんとも、地元の意見等も聞きながら、沖繩の二次産業の実態というものを明らかにしてまいりたい、こう思います。
  114. 上原康助

    上原分科員 時間がありませんので、一次産業を急速に減らしていくのがいいかどうかということも、またいろいろ意見もあると思いますが、いずれにいたしましても当初から十分な公害問題を含めての対策を立てた企業、産業の進出あるいは誘致、開発ということを考えなければいけないという点を、強く念を押しておきたいと思うのです。  そこで、海洋博の件についてお尋ねをしたいわけですが、基本的に反対をするものではありません。ただ、これも公害問題との関係あるいは道路その他との関連事業等の件で、相当沖繩の自然環境が荒らされるのではなかろうかという意見等もございます。そういう面もあわせて考えなければいけない問題ですが、一応法律も出され、あるいは協会等もできて準備が進められているわけですが、まず資金の調達はどうするお考えなのか。大阪万博みたいに地元で資金調達ができるという段階では沖繩はないと思うのです。協会はできたにしましても、やはり政府の相応の補助金なり資金投資というものをやらないと、七五年という、昭和五十年ですか、時期的なタイムリミットもありますし、そういう面から考えて、資金調達はどうやっていかれるかということ。もう一つは、協会と政府の役割り分担ですね、そういう面はどういうふうに位置づけ、またお考えになっておられるか。さらに海洋博に展示をする国の出展の役割り、内容の問題はどうなるのか。主催国でありますので、出展にしても当然日本が中心にならなければならないと思うし、そこいらについてお聞かせをいただきたいと思うのです。
  115. 田中角榮

    田中国務大臣 大阪万博、千七百五十六億円もかかったわけでありますが、沖繩は大体ラウンド五百億、こういっておるわけであります。四百四、五十億から五百四、五十億くらいかかるだろう。大阪万博の協会の会場建設収支バランスはおおむね五百億くらいであり、いま大略計算すれば、国庫補助金二百五十億、地元の補助金百二、三十億、競輪とか競艇で十四、五億、三公社、電電、専売、国鉄でもって七、八億というようなことでもって、施設参加、財界等の寄付が六、七十億、こういうもので、とにかくまだあと不足すれば借り入れ金を五十億くらい考えようということでやりましたが、五百億くらいの見通しは立てておるわけであります。立てなければ法律を出して審議できないわけでありますから、そういうこともちゃんとやっております。ただ大阪万博のようにして金が余ったからというようなことは考えておりません。沖繩復帰記念事業という目的で行なうということであるし、沖繩の経済復興一つの資にしたいということを考えておりますので、民間に拠金を求めるということは大阪万博のようにはまいらないということであります。  以上申し上げたようなことを見ても、沖繩に投下される公共投資というものが相当大幅なものになるということは推定できるわけでございます。しかし、これは政府限りで全部やるわけじゃございませんから、法律に基づく協会でこの海洋博を運営するという基本的な姿勢は貫くべきであります。それで政府がお手伝いをするということであります。これは国際法に基づく海洋博でありますから、政府は各国に対して出展要請を行なうとか、日本の出展の要請を行なうとか、また外国人が来る場合の接待を行なうとかいろいろな問題がございますし、その中で一番大きいものは、海洋博が無事に行なわれて沖繩県民にも全国民にも、ああ、よかったと評価されるための公共投資その他に万全を期さなければならないというのが大体政府の責任であり、任務である、こういう考えであります。
  116. 上原康助

    上原分科員 確かに沖繩の経済復興一つの指標という立場でこの問題は成功させなければいけない。それだけにまた政府の役割りといいますか、果たさねばならない点も大きいかと思うのです。先ほど申し上げた点等も含めて、ぜひ積極的な御配慮をいただきたい。  そこで、昭和五十年に開催をするということでありまして、会場が北部にきまった。そういう面の交通機関をどうするのかということ、あるいは道路工事、港湾、空港等の整備をはからなければいけない。これは建設省あるいは運輸省とも関係があるわけですが、七五年までにはたして間に合うかというような意見もかなりあるわけです。そこら辺についてはどう進めていかれるのか。  さらにいま一つは、単に海洋博といういうことで一時的なものであってはいかぬと私たちは思うわけです。何としても将来の沖繩の経済開発なり、ほんとうに学術的に考えても海洋博が開催をされてメリットがあった、また開発につながった恒久的なものでなければいけない。そういう面からしますと、あと利用の問題というものも当初の計画で十分考えなければいけない。そういう面について、やはり現段階、当初計画を立てる段階から十分対処していかなければいけない問題だと思うのですが、これらについてはどうお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  117. 田中角榮

    田中国務大臣 そこが一番の問題でございまして、山中長官とも私も個人的にまた公の立場で十分話し合っております。特に協会長が沖繩復帰に対して努力をされた沖繩の出身者でございます。だから協会のメンバーも沖繩を代表するような人たちに入ってもらおうということで配慮をしておるわけであります。  道路の問題は建設省で十分できる、いまは金さえ出せば。用地の問題が一番めんどうなんですが、一部用地を除いては道路の用地の問題はないようでありますので、これは機械設備を持っておれば十分できるという見通しをつけております。  あとはあそこに小さな空港があります。空港整備の必要があるのかどうかという問題点、これも検討しております。  それから、本土から船で行く場合の港湾整備はどうするのか、それから那覇港から船でどれだけ送れるのかというようなこともやっておりますが、ことしは空港整備二十八億、それから港湾整備二十五億、これはこの計画の中の一つとしてやったわけではありませんけれども、こういうものを配分する場合にも、これが継続して沖繩海洋博遂行に寄与できるような形で建設省や運輸省も考えてくれということで、この問題に関しては政府機関は完全に一体になっております。一体になっておりまして、短い時間だけにただ海洋博だけを目標にしてこれをやってしまうということのないように地元の意見も聞きながらやろう、こういうことでありますので、御説に沿えると思います。  そして宿泊施設やその他もこれを取り払ってしまうということでなくて、宿泊施設などがあとでどう利用できるのかということに対しても山中長官ともいま検討を進めております。私はこの間案を出しまして、鉄筋コンクリートの大きなものを建てて、あたたかいところだからベニヤで間仕切りをやっておけば使えるのだから、その後は間仕切りを取っ払えば何にでもなるじゃないか。そういうことで、ただ収容する人間が宿泊できればいい、そんな狭い視野で投資を行なわないように、われわれ自体もそういう意味ではこまかい配慮をしてまいる。これは短い時間ですが、五十年開催には支障がない、いまのところそう考えております。
  118. 上原康助

    上原分科員 時間が参りましたので。  以上いろいろ申し上げましたが、そういった沖繩側の要求もぜひ十分入れてやっていただきたいということ。さらに一点加えますと、これとの関係で地元のほうでも、観光開発を含めていわゆる瀬底畠の大橋をかけるべきだという強い要望もありますので、いろいろ御検討いただいていると思いますが、その点もぜひ計画の中に織り込んでいただきたいということを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  119. 渡辺肇

    渡辺(肇)主査代理 栗山礼行君。
  120. 栗山礼行

    栗山分科員 大臣はひとつ集約をいたしまして御所見を承ることにいたしまして、関係当局の局長さんにお伺いを申し上げていきたい、かように考えております。私も十分な説明をいたしまして、理解をいたします御答弁をちょうだいいたしたいと思いますが、時間の制約がございましてとうていそういうことはなし得ません。  二点の問題についてお尋ねを申し上げたいのでありますが、その一つは、PCBの環境汚染に関する問題でございます。特にこの問題の実態と問題点をいろいろお伺いをいたしまして、通産省といたしましてこれに対処する方策についてお尋ねを申し上げる、こういうことでございます。  PCBの環境汚染の深刻な内容、複雑多岐にわたる環境汚染の問題等につきましては、私の若干調べましたところによりますと、世界的な問題になっておるようでございます。わが国でも昨年からようやく取り上げられまして、一部で当局にこれの規制処置の方向に進展をしておるという、こういう一面も承知をいたしておるわけであります。四十三年でございますか、福岡を中心にいたしまして西日本でこの種の問題が起きました。御案内のように、PCBの混入による米ぬか油の中毒事件が四十三年の秋に西日本一帯に起きてまいりまして、いろんな障害が出てまいりましたこと、私も頭に記憶するところでございます。非常に深刻なな環境汚染の弊害が次々に及んでまいった。肝臓障害であるとか皮膚の障害でございますとか、あるいはまた手や足のしびれを訴えるというようなさまざまな身体の障害を招いた内容であろうか、かように考えておるわけでありまして、私は、これらの観点に立ちまして順序を追いましてひとつお尋ねを申し上げて、それにずばりお答えをいただくということに願いたいと思います。  わが国でPCBを主産しております会社は三菱モンサントと陸淵化学、この三社が行なっておる、こういうふうに承知をいたしておるのでありますが、さようでございますかどうか、お尋ねをまず一点いたしてみたいと考えます。
  121. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘の二社でございます。
  122. 栗山礼行

    栗山分科員 先ほど大臣に申し上げましたが、担当当局にお答えいただいて、それで総括は一応ひとつあなたからちょうだいしたい、かように考えておりますから、それでけっこうでございます。  何か伝えられるところによりますと、三菱モンサントは四十七年の四月で製造中止する腹を持っておるやに伝えられておるのでありますが、通産省はその点の見解をどのように持っていただいておるか、それから鐘淵が現在の状況でどのような態度を表明されておるか、こういうことと、それから三菱モンサントが月産何トンでございまして、鐘淵が月産何トンか、私も若干の資料を持っておるのでありますけれども、それの適応を明確にいたしておきたいと思いますので、お尋ねを申し上げます。要点だけでけっこうです。
  123. 山形栄治

    ○山形(栄)政府委員 PCBにつきましては、いま大臣の申し上げましたように二社つくっておるわけでございますが、そのうちの三菱モンサントにつきましては、四月中に生産を中止するということに、これは正式にわれわれのほうに連絡しておるわけでございます。  それから鐘淵化学につきましては、何ぶんにも鐘淵化学のほうは非常に生産数量が多いものでございますので、先般三月の二十一日に電気機器等につきます使用禁止が通産省から通達されまして、現在関係業界と鐘淵化学は折衝中でございますが、われわれのほうには六月中に原則として生産を中止したいということの申し入れが現在参っておる次第でございます。  それから、両社の生産の実績でございますが、(栗山分科員「ずばり要点だけでけっこうです」と呼ぶ)現在大体六千トンくらい全部で生産されておるわけでございますけれども、(栗山分科員「年間ですか」と呼ぶ)はい。その内訳といたしまして、鐘淵化学のほうが八割くらい、三菱モンサントが二割くらいの生産の比率になっております。
  124. 栗山礼行

    栗山分科員 前段の製造中止の三菱モンサントの問題につきましては、報道されておる内容とやや一にいたしておりまして、たいへんけっこうでございます。鐘淵化学につきましての関係機関との連絡や協議の過程と、こういうことで、四十七年六月にたぶん中止するであろう、こういう観測をいたしておる、こういうふうな御説明と理解をいたしましてよろしゅうございますね。  それで月産の問題でありますが、私の資料によりますと、三菱モンサントのほうは月産四百トン、鐘淵化学が月産一千トン。一カ月一千四百トンがこの三社によって行なわれておった、私の資料に若干基づきますとこういうようになっておるのでありますが、その点局長と私の食い違いがございませんか。
  125. 山形栄治

    ○山形(栄)政府委員 ただいま先生のおっしゃいますのは両社の生産能力だと思います。現在鐘淵化学は年間一万トンの生産能力を持っておりまして、それから三菱モンサントが四千五百トンの能力を持っておるわけでございますけれども、実際は生産が非常に落ちまして、現在年間で約六千トンくらいでございます。したがいまして、実際の生産の実績といたしますと、月々の生産実績は、先ほど申し上げましたように相当落ちることに相なろうかと思います。
  126. 栗山礼行

    栗山分科員 一応御意見は御意見としてひとつ承っておきます。  そうすると、別の角度から局長ちょっとお伺いするのでありますが、わが国でPCBが生産されましたのは一九五四年と記録をされておるやに承知をするのであります。国内で生産されたPCBの生産総量は、そうすると総トン数を何トンと把握されておるか、この点をお伺い申し上げたい。
  127. 山形栄治

    ○山形(栄)政府委員 PCBにつきましては昭和二十九年から生産をいたしておるわけでございまして、四十六年までの全合計が五万七千トンに相なろうかと思います。
  128. 栗山礼行

    栗山分科員 いま一点は、外国からも輸入されておるということを漏れ承っておるのでありますが、わが国に輸入をされまして以来、輸入総量が何トンになっておるかということが一点でございます。  第二点は、その輸入の相手国でございます、そしてそのメーカーをお知らせいただきたい。
  129. 山形栄治

    ○山形(栄)政府委員 輸入の総量でございますが、四十二年から四十六年までの合計で五百九十トンでございます。この輸入先といいますか、相手はフランスのユージンクールマンという会社製造したものでございます。
  130. 栗山礼行

    栗山分科員 愛媛大学の助教授の立川先生のほうから出ております資料等を見ますと、ちょっと違うようでございますね。ドイツからも入っておりませんか。
  131. 山形栄治

    ○山形(栄)政府委員 われわれのほうの調べでございますと、ドイツからは入ってない、現在そう考えておる次第でございます。
  132. 栗山礼行

    栗山分科員 そういたしますと、一部輸入、そして二社メーカーによって今日までPCBを製造されてまいったのでありますが、大まかにこれの用途別使用状況、たとえば電機関係あるいは熱媒体関係、感圧紙関係といろいろ用途別が多岐にわたっておりますが、こまかいことは別でありますけれども、ひとつオーソドックスに用途別使用量をお聞かせいただきたい。
  133. 山形栄治

    ○山形(栄)政府委員 PCBの用途別につきましては、いわゆる電気用が大体五割ぐらい。それから熱媒体用が二割近くございます。その他感圧紙、ノーカーボン紙に使いますもの、それからその他の塗料、接着剤等の開放系、これが少量ございます。ちょっと数字が不正確かもしれませんが、電気用と熱媒体用で大部分を占めておるような使用状況に相なっております。
  134. 栗山礼行

    栗山分科員 一部の規制内容について、私も若干の内容は伺っておるのでありますが、承りますと、トランスの絶縁油などの回収分野での使用は認めるやのことが載っておったわけでありますが、この点はいかがなお考えでございますか。
  135. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 三日前にメーカー及びユーザーに通達を出して本件に遺憾なきを期したわけでございますが、その通達の内容は、先生のおっしゃるように回収可能な体制のできるものにつきましては使用を認める、こういうことでございます。
  136. 栗山礼行

    栗山分科員 したがって、いまトランスの絶縁油の回収について一〇〇%回収ができるというお考えのもとにおける一つの協議でございますが、時間がありませんから私が申し上げますと、いろいろ学者なりあるいは調査資料なんかによりますと、トランスの一〇%というものが必ず残りまして、それが環境汚染の内容、条件、これを否定し去ることはできないのだ、こういうふうな学説でありますが、いろいろ研究課題を提起されておるということも御承知のとおりだと思うのでありますが、お伺いを申し上げると、それは一〇〇%そういう環境汚染の心配はない、こういう内容のものであるか、その点をひとつイエスかノーで簡単にお答え願いたい。
  137. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 環境汚染の心配がないということでなくて全部回収させる、そういうことで使わせております。
  138. 栗山礼行

    栗山分科員 その根拠ですね。できないという説が非常に強いようであります。それができるという科学的あるいは実際的根拠というものを何か専門分野において御検討なさったのかどうか。非常に重大な問題でございます。
  139. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 物理的に回収できるという場合にそれを認めるわけでございます。先生の御質問は、それが残って汚染のおそれがあるかないかというような御質問のようでございますが、われわれはそういうことを言っているのではなくて、これは汚染のおそれがあるという判断のもとに、それを物理的に全部回収すべきである、回収可能な体制ができるユーザー向けにはそれを生産さして出荷させる、こういうことでございます。
  140. 栗山礼行

    栗山分科員 だいぶかみ違いがあるようでございます。私はトランスの油は一〇〇%回収するということが不能なんだ、その中の一〇%が残りましても、そのことが環境汚染の大きな要因になって残存するんだ、こういう説を立てる学者やあるいは科学者の意見等があるので、その点についての見解をお尋ね申し上げる。したがって、一〇〇%回収されるという一つの内容が自信がおありになるのか、あるいはそれが不可能だという見解のもとにおやりになっておるか、こういう点が私のお尋ねする要点の中心でございます。
  141. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 私ども通牒では、回収できるかできないか十分検討することになっておりますから、先生の御指摘のように、あるいは回収できない部面があるかもしれません。検討の結果、回収できない部面があるということになれば、それについての出荷は認めない、こういうふうにやろうと思っております。
  142. 栗山礼行

    栗山分科員 二、三点問題点を提起をいたしましてお尋ねをいたしたい。  これまでPCBを使用して生産され、現に使用されておる各種製品がございますね。これの回収をお考えになっていらっしゃるかどうかということが第一点。  第二点は、PCBは廃棄の段階できわめて大きな問題を残すといろいろ学者及び科学者が説明され、あるいは実験の成果を発表されておるのであります。そこでこれまでPCBを使用している製品は、通産省でもすでに調査されておると思うのでございますけれども、これらの製品の廃棄段階におけるその処理をメーカーに義務づけるという方向でお考えになっておるのか、たとえばその製品をメーカーに回収させて安全処理をさす、こういうような一つの方向でものを進めていこうというお考えであるか、あるいはノーズロで放任をいたしていこうということで現下の状況に置かれておるのか、その点を明確にお答え願いたい。
  143. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 われわれの通達におきましては、メーカーとユーザーの間に回収に関する取りきめをはっきり結ばせるということになるわけでございます。したがいまして、ある場合におきましてはユーザーたとえば大口の電力会社、この場合にれいてはおそらく電力会社がユーザーとして回収する、場合によってはこれは取りきめでもってメーカーのほうが回収をやる、ところがこれは取りきめによるわけでございまして、われわれとしてはその取りきめが満足すべきものである、こういうことを確認することになっております。
  144. 栗山礼行

    栗山分科員 そういたしますと、メーカーとユーザーの間における一つの協議の方向を、回収をはかる一つの行政指導をされ、かつそれの成果を見守っておるというのが今日の段階だ、こういう御説明と理解いたしたらいいのでありますか。その点がちょっと不明確でございます。
  145. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 見守ると申しますか、それを確認するということでございます。
  146. 栗山礼行

    栗山分科員 そういたしますと、確認するということは、行政指導ということじゃなくて、ことばをかえますと、推移をながめるということであると思うのです。そうすると、行政指導とはいかにあるべきだという方向が不明確な姿において、とにかく問題を提起されている事態について、業界の動きやそういう方向を静観、しばらく稚移を見ようじゃないか、こういうような受けとめ方をせざるを得ないような御答弁をいただくことになるのでございますか。これは大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  147. 田中角榮

    田中国務大臣 そうお考えになっていただかないほうがいいと思うのです。これは行政指導ではございますが、協定に基づいた帳簿を当然整備をいたします。どこに配備したか、どこから入ってきたか、これは耐用年数が幾らであるか、これに対してはどこで回収してどこで処理をするということまでちゃんといたします。これは外国でも言っておりますように、日本の一番こわいのは通産省の行政指導だ、こういうふうに列国で指摘しているわけでございまして、それくらい威力があるわけでございます。そうでなければ、帳簿どおりやらなければ禁止をしますから、そういう意味では、法律に基づくものと同じく通商産業行政の中で処理ができるし、実効をあげ得る。これはそうでありますから、法律によらなくても三菱モンサントも製造を中止いたします、こう言って製造を中止しても、別のものを使われては困るから、一体代替品をつくっているのかということまで提示を求めて中止をしておるのでありますから、実効は確実にあがる、こう理解をいただいていいと思います。
  148. 栗山礼行

    栗山分科員 たいへん大臣の自信のほどをお伺いいたしたのでありますが、いろいろ規制のプロセスと内容があろうかと思います。したがって、私はあらゆる手段、方法をもって、今日的な最も深刻な問題の一つとして通産行政の中にこれを取り込んでいただかなければならぬということであります。したがって、私は、最終的には輸入におきましてもこれを禁止する、あるいは製造を禁止するという大きな勇断をもって、こういう深刻な人体及び環境汚染の様相を通産行政の中から排除してまいることは、将来のわが国における通産行政の一つの方向の最も正しい路線である、こういう確信を抱くのでありますが、こういう点について期待を深めております国民に向かって、通産大臣としてかく決意を論ずるという点をひとつお伺い申し上げたい。
  149. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘のとおり、いかに効率的なものであっても人体に影響があり、生命に危険をもたらすようなものに対しては、これはまず製造を禁止していくということはもう当然でございます。同時に、いまの日本の科学水準技術水準をもってこれに代替するものが見つからないはずはありません。これは進歩の中で解決ができる問題だと確信をいたしております。どうしても必要であるというものは、人体に影響があってたいへんな青酸カリでも、管理をきちっとして使わしておるものもあります。これは青酸カリ自体はたいへんなものであっても、その保管や使用に対しては非常に厳密な規制をしておるわけでございますから、それにかわるものがない場合には、人体に影響のないように万全の体制をとるべきでございますし、とれないとしたら禁止をしなければならない。これは物をつくることが主ではなく、人間が生きることが主であるという考えに対しては、通産省も全くそのとおりに考えております。
  150. 栗山礼行

    栗山分科員 あと三、四分しかか与えられておりませんので、残りのパレットプールの問題について、すでに通産省のほうではお運びをいただいておるわけでありまして、これの合理的な運用について、いろいろ今後の流通機構の輸送体系の合理的な一つの推進の方策としてクローズアップをされておる問題であろうか、かように理解をいたしておるわけでありますが、端的に申し上げまして、通産省のほうは、東京、大阪、名古屋というような大都市におきまして、いろいろこの機構に対する積極的な行政指導等も願っておるようでございますけれども、根本的にこれを洗い直しまして、一つの規格の基準をきめてまいりまして、そうしてひとつ相互間にこれを合理的に運用できるという処置をとってまいらなければ、効率的な構造改善の活用性が不十分だ、こういうふうな理解をされまして、御案内のとおり規格基準をひとつ策定して、全国的な視野における構造改善の一端として推進をしてもらいたい。それには少なくとも金融上の問題あるいは財政上の問題、税制上の問題も、政府が口をすっぱくしてお進めになっておる構造改善の一環としてこれをはかってもらうというような内容の意思がおありであるかどうか、こういうことについてお伺いを申し上げたいと思います。
  151. 本田早苗

    ○本田政府委員 御指摘のように、流通の近代化、物流の合理化という意味で、パレットプールの確立ということ、がきわめて有効だということは、四十一年の審議会以来指摘されておりまして、特に、その際規格の統一が必要であるということでございましたので、工業技術院におきましては、四十五年九月に千百ミリメートルと八百ミリメートルの二種類をJIS規格としてきめております。現在JIS規格の需要度は十数%程度でございますが、これを全国一円に、御指摘のように相互で円滑に使えるような体制を整える意味のパレットプールを推進していくことが必要だということで、金融につきましては、本年度十億円の長期低利融資を行なうことといたしまして、今後これを拡大してまいる方針でございます。税制その他につきましてはさらに検討を続けたい、こういうように思っております。
  152. 栗山礼行

    栗山分科員 ちょうど時間が参りましたので、残された一分ほどで……。ただいまの問題もひとつ前向きに検討願うということでございますが、もう構造改善は、口がすっぱくなるほど、流通部門の構造改善の問題が物価問題その他に大きな影響を及ぼしているということが、議論の段階でなくて政策の段階に突入いたしておりますことは御承知のとおりであります。これはひとつよき通産大臣のもとにおいて、可及的すみやかにこの実現への方途をお願い申し上げたい。  先ほどの問題は、実は通産大臣——私もPCB汚染の広範囲にわたります東京都あるいは大阪の上水道の水質汚染の問題についてのいろいろな資料等を持ってまいりましたが、こういうふうな限られた時間で、これがいかに深刻な現下の重大な問題であるかということについてはもう説明の段階ではない。要は、この問題は、通産省が勇断をもってこれの回収と環境汚染の絶滅方策の通産行政を新たに展開されるかどうかというところに問題の方途がある、こういう意味でお尋ねを申し上げたわけでございまして、ひとつ田中通産大臣もこの問題について、ほんとうに生命をいかに健全化するかという重大な問題であることを痛感されまして、私がそういう深刻な立場において御質問申し上げておることを御了承いただいて、ひとつお願いを申し上げたい。ありがとうございました。   〔渡辺(肇)主査代理退席、主査着席〕
  153. 植木庚子郎

    ○植木主査 横路孝弘君。
  154. 横路孝弘

    横路分科員 きょうは、国民総背番号制の問題と、それから官庁におけるコンピューターの導入、その技術的な開発の問題について少しお尋ねをしたいと思うのですが、各官庁にも相当コンピューターが入りまして、四十六年度末で百八十五台、一番多いのは防衛庁で四十四台、通産省もかなり入っておりまして、二十一台入っておるようでありますけれども、情報化社会の進展によって、大量の情報というのがどんどん生産されて流通するということになりますと、情報の管理というのかある意味では非常に重要な意味を持ってくるのじゃないかというように思うのです。これからもそういう意味で急速な情報化というのが日本においても予想されるわけですけれども、この分野の法体系というものはまだまだ非常に未整備でありますし、技術開発もまだ十分でない要素というものがたくさんあるわけであります。これは何も行政情報ばかりではなくて、民間の一般の情報に関しても同じように言えるのであって、官庁や民間企業での個人情報、一般情報の蓄積が非常に拡大をしていく、そしてまた一方で通信回線とコンピューターがオンラインの普及でもって情報の流通を促進されるということになりますと、秘密の保持という問題が情報管理という側面から出てくるだろうと思うのです。  きょうは、そういう意味国民総背番号制の問題、つまり官庁におけるコンピューターの導入の問題についておもに議論をしていきたいと思うのですが、その前に、通産省のほうでは、情報産業というのをいわば戦略産業として位置づけて、これからの日本経済の中で非常に重要な位置づけをなさっている。いまはまだ育成強化の段階で、コンピューター製造会社に若干補助金を出したりしている程度でありますけれども、これからの日本産業における位置づけと基本的な方向といったようなものについて、大臣のほうから初めに御見解を承りたいと思います。
  155. 田中角榮

    田中国務大臣 日本は、御承知のとおり、明治から長足な工業化が行なわれてまいりました。特に先ほどの御質問者に御指摘を受けましたように、戦後の化学技術の発達というものは、PCBのようなものさえも起こすようになったわけであります。石油だけでも去年は二億二千万トンも輸入しておるわけでございます。これが六十年を展望しますと、驚くべきものでございます。五十年を展望しても、もうすでに世界の自由貿易量の三〇%も原材料として入れなければならないというような状態でございますので、このまま拡大してまいるわけにはまいりません。そういういろいろな制約から、特に公害問題の制約から、知識集約的な産業に移行しなければならないということもまた事実でございます。これは少ない原材料で付加価値の高いものをつくって輸出することだと思います。また国民生活も非常に高度化してまいりますと、高い製品を要求してまいるということになります。そういう意味で、やはり考えられるものは何かというと、また家電製品のように、十五年前に十五万円したものが現在は五万円であり、御徒町へ行けば二万円でも買えるということになります。アメリカはむしろもっと値段を上げろ、こういうことであります。そういうものも全世界的に見てまたシェアは拡大していくとは思いますが、アメリカ、西ドイツ、日本というような状態考えられるものは、やはりほんとうに知識集約的なものだと思います。そうすると、何が考えられるかといえば、飛行機であり、電算機であるというものになると思うのです。これはソ連なども高い技術力、科学力を持っておりますから、これが日本の平和産業に進出をしてくるということになれば、日本と競合するものがたくさん出てくると思います。そういう意味で、やはり電子工学製品飛行機、そういうもの、そうでなければ、まごまごすると日本は兵器をつくるようになるのではないかという心配さえもあるようでありますから、私たち相当な成長を続けなければならないということが前提であれば、やはりコンピューターとか、海洋工学もあります、そういうようなものとか、飛行機とか、そういうようなものがこれからの主体になる。カメラとか時計とか、もうスイスや西ドイツに匹敵する、それを越しつつあるというような状態から見ても、可能性というものはそういうものであろう、こういう考えでございます。
  156. 横路孝弘

    横路分科員 ちょっといまの発言で気になるのは、公害が出てきたから今度は知識集約産業だというその考え方の中に、軍化学、特に公害を出す重化学工業についてはよそへ持っていく、東南アジア等に持っていって、日本はひとつその公害を出さないような企業でこれからもうけていこうというような考え方が、ちょっといまの御答弁の中にうかがわれて気になるのですが、その点。
  157. 田中角榮

    田中国務大臣 そうではなくて、石炭をたこうとすれば、あなたも北海道の御出身でございますからよくおわかりと思いますが、石炭専焼火力をつくらなければならないということであっても、石炭はやはり粉じんの問題があります。重油を使うとすればローサルファの重油をたかなければならない、ナフサをたけば、税制でもって措置してもどうしてもコストが上がるから、電力料金にはねかえるという問題が当然起こってくるわけです。それでやはり鉄鉱石でもたくさん持ってきましても、これもただ粗鋼のように比較的付加価値の低いままの形でこれを出していくということに日本輸出産業日本産業のウエートの八〇%も七〇%も置くというような時代から、やはり無制限に原材料を入れてこれないのでありますから、そういう意味で、これからは付加価値の高いものをつくるようなものにならなければいかぬ、そうすれば付随的には公害の除去にもなるということでございます。しかし、それは必要な基礎産業というものは、当然日本が使うもの、また輸出する一部のものは、当然重化学工業もやらなければなりません。重化学工業に対しては脱硫装置をつけたり、いろんなことで、どんなにコストがかかっても公害を除去するということで進めなければならぬのでありますので、公害の出る工業は全部開発途上国に持っていくということは全然ありませんから、これはひとつそのように理解をしていただきたい。
  158. 横路孝弘

    横路分科員 その議論は、いま日本が転換期に来ているし、日本の外交なり防衛なりのそのあり方と一緒に、経済のあり方として、これから日本と東南アジアというものがどういうかかわり合いを持っていくかという点を、やはり非常に重要視して検討していかなければならない問題だろうと思うのですが、きょうはその議論じゃなくて、コンピューターのほうの議論ですから、次の質問に入りたいと思います。  行政レベルにコンピューターが入ってきたのは、昭和四十三年八月に「政府における電子計算機利用の今後の方策について」という閣議決定があり、四十四年七月十一日の「電子計算機利用に関する当面の重点検討項目」という閣議決定があって、四十五年二月に、七つの省庁、通産省も入っていますが、七省庁打ち合わせ会議で、「行政情報処理高度化に関する運営方針」というのが決定されて、四十五年三月に事務処理用統一個人コード、国民総背番号制というと皆さんはきらうようでありますが、事務処理用統一個人コード、何かわかったようなわからないような名前がついていますが、研究会議というものが行管中心に動き出したわけですね。また技術的な開発の面では、工業技術院を中心に二十七省庁参加をして、電算機利用技術研究会というものが行なわれているようです。そして国民総背番号制ですね、一応四十六年度の当初には、人口二十万程度の地方都市から五つを選んで実験を行なって、その結果を待って四十六年度中にこの問題についての政府の基本的な方針を閣議決定するのだというように承っていたわけですけれども、これは行管のほうになるかと思うのですけれども、現状はどういうことになっていますか。
  159. 平井廸郎

    ○平井政府委員 ただいま先生御指摘の問題が提起されたことは事実でございますが、予算措置もされておりませんし、そういう形での検討は現在まで進められておりません。
  160. 横路孝弘

    横路分科員 昨年の七月二十八日に、個人コード連絡会議が五項目にわたる申し合わせというのを行なっているでしょう。その五項目の申し合わせの中に、第五項目、「実施については、昭和四六年度研究結果をまって、政府としての基本方針を閣議により決定する。」というのがこの五項目の中に入っているのですけれども、この総背番号制の方向に向かっていろいろ検討されてきた、その現状はどうなっていますか。実験都市のほうはやめたというのだけれども、総背番号制に向かっての動きというのは、行管が中心になってやってきた連絡会議の中では、現状はどういう現状になっているのですか。
  161. 平井廸郎

    ○平井政府委員 この五項目の中にもございますように、当面の研究対象につきましては、社会保障、特に社会保険の体系における統一個人コードの問題を中心に検討を進めていきたいというのが基本的な考え方でございまして、基本的には、この問題自体が単に行政事務の効率化というだけでなしに、国民にとってもプラスになるものでなければならない、そういった部面からまず手をつけていくのが必要であろうという観点から、ただいま申し上げたようなやり方をいたしておるわけでございます。  なお、第五項目といたしまして、昭和四十六年の研究結果を待って基本方針を決定するという点も、当時事務的にはいろいろ議論されたようでございますが、現在の段階はまだそういうところには至っておりません。
  162. 横路孝弘

    横路分科員 そうすると、各行政官庁が持っているデータがあるわけですね、そのデータが各行政官庁ばらばらだと困るから、それを統一化していこうということで、たとえば閣議決定の内容を見ると、「各省庁間におけるデータの有機的多角的利用の推進」と、それから七省庁の打ち合わせ会議によると、「各省庁共通情報システムの調査研究」「事務処理用統一個人コード設定の推進」、こういうようにあるわけですけれども、そうすると、いわゆる国民総背番号制ということですね、各行政官庁が持っているデータを全部一本化して統一したコードをつくっていくという方向は、あきらめたわけですか。
  163. 平井廸郎

    ○平井政府委員 御承知のように、統一個人コードは、北欧四カ国においてはすでに実施に移されておる問題でありますし、電子計算機の高度利用という点から見れば、きわめて大きな問題になっていることは事実であります。ただ反面におきまして、わが国においてそういう統一個人コードが直ちに実施されるような基盤になっているかどうかということもいろいろ問題ございますし、また技術的にもいろいろ問題があるということは、プライバシーその他法律上の問題もございます。当面そういうことを直ちに考えるという段階ではない、むしろ私どもといたしましては、先ほども申し上げましたように、社会保険を中心にして、真に国民のプラスにもなり、かつ各省間の行政事務の統一なり簡素化がはかれる部門において推進していくということが、現実的なやり方であろうと考える次第でございます。
  164. 横路孝弘

    横路分科員 私は急いで統一個人コードをやるべきじゃない、まだ検討すべき余地がたくさんあるという意見なので、いまのお話ですと、結局初め住民台帳をもとにしてという考え方もあったようですけれども、これではなくて、社会保険のほうのコードを中心にしてやるという方向になった。これも全部一緒くたに、全部の行政官庁のデータをまとめるというのはまだまだ先のことだ、こういうふうに確認しておいてよろしいでしょうね。
  165. 平井廸郎

    ○平井政府委員 仰せのとおりでございます。
  166. 横路孝弘

    横路分科員 そこで、連絡コードの中で議論されたことと、いま各行政官庁にたくさんコンピューターが入って、それぞれかってにと言っては語弊があるかもわかりませんが、それぞれの官庁のレベルでどんどん進められていっているわけですね。これについての規制が、実は行管あたりでもあまり考えておられないのじゃなかろうかという気が非常にするわけなんです。  そこで二、三ちょっとお尋ねしたいのですが、現在相当われわれ自身いろいろな官庁のコンピューターの中に入っているだろうと思うのですけれども、行管のほうで何か調査されて、十三種以上の個人コードが現在国内に存在するというようなことがいわれているわけですが、いま延べ数でいくと国民は大体どのくらい官庁のコンピューターの中に入っていますか。
  167. 平井廸郎

    ○平井政府委員 御承知のように、一番全国民を網羅しているものとして考えられますのは、国勢調査による個人データというのが全部入っているわけでございます。そのほかで大きなものといたしましては、社会保険関係で約五千万程度、それから自動車運転免許関係で二千数百万程度と思っておりますが、その他ちょっとただいまのところこまかなデータを持ち合わせておりません。
  168. 横路孝弘

    横路分科員 その種類は何種類くらいですか。
  169. 平井廸郎

    ○平井政府委員 個人コードを用いているものは十三種類くらいあると伺っております。
  170. 横路孝弘

    横路分科員 民間企業でも、これは通産省になるかと思うのですが、コンピューターというのは相当導入されて、労務管理の面に利用されている面もありますし、あるいは需要なら需要、消費なら消費というものを、たとえばダイレクトメールならダイレクトメールという形で確保し、拡大していくという面で利用されている面もあると思うのですが、いま企業における利用の実態はどういうことになっているか、もしおわかりになりましたら通産省のほうからお答えいただきたいと思います。
  171. 太田暢人

    ○太田(暢)政府委員 まだちょっとよくわかりません。
  172. 横路孝弘

    横路分科員 じゃ一つだけお尋ねして、あとで問題点をまとめて大臣のほうにお尋ねしたいと思うのですが、警察庁の方、来られていますね。警察庁のほうは、運転免許とか犯罪の手口とか、あるいは前科、前歴の関係ですね、いろいろおやりになっているようですが、警察庁のほうのコンピューターに入っている国民の数というのはどのくらいになっていますか。
  173. 轟秀

    ○轟説明員 申し上げます。  大きなものは運転免許関係で、これが約二千八百万、あといろいろまぜまして百万程度だと思います。
  174. 横路孝弘

    横路分科員 そこで今度は四十六年度から開発中の全国情報処理システムというのがありますね。人に関する照会をやっていこう、たとえば指名手配とか犯罪経歴、暴力団、家出人の手配。たとえば暴力団などというのは、犯罪歴のない暴力団員で、警察で確認している人もやはり人に関する照会の中でコンピューターの中に入るわけでしょう。
  175. 小林朴

    小林説明員 お答えいたします。  これは現在暴力団でいろいろと捜査上出ました情報をカード化しておるわけでございます。これを今度は機械に入れるというだけのことでありまして、特別新しい問題はございません。
  176. 横路孝弘

    横路分科員 つまり犯罪を起こした者でなくてもコンピューターの中に入れられるわけでしょう、暴力団の団員だということで。そうすると、たとえば、暴力団で議論をするとちょっと議論がしづらいのですが、現実の問題としては、各警察署で暴力団のマル暴の名簿というものを持っていて、送検するときだって、ほかの人と違ってマル暴という判を押して検察庁のほうに送検する。検察庁のほうは、その判を押したやつはちょっときびしく取り扱って、普通なら起訴しないやつも起訴する、こういうことを実際やっているわけですね。これは、暴力団というのは一種の犯罪集団ですからやむを得ないだろうと思うのです。ただ、そうすると問題になるのは、たとえば抜けてしまった、更生をした人間が、一たん入れてしまうとこれはちょっとコンピューターの中から出なくなりますね。そういう問題点というのがあると思うのですよ。この問題は、実は警察ばかりでなくて、各官庁のデータについても、一たん入れられてしまってあとで変わった場合にどうなるかという問題として、アメリカあたりでも議論されているのです。  そこで私、行管のほうにお尋ねしたいのは、たとえばいまの暴力団を入れる、これは暴力団だけでなくて、赤軍派あたりも入っているでしょうし、破壊活動防止法あたりで指定されている団体の構成員なんかもコンピューターの中に入っているでしょうし、だんだんいろいろな人がたくさん入っていくだろうと思うのです。各官庁がコンピューターを導入する場合に、その辺のところを、たとえばどういうものを情報としてインプットするのかというような、基本的な方向について行管のほうでは議論されているのかされていないのか、全く各官庁にまかせて、そこの能率化を促進するためにかってにやらせておるという気がしてしようがないのですが、その辺はいかがですか。
  177. 平井廸郎

    ○平井政府委員 どういう業務に電算機を導入するのが適切であるかというのは、一つ技術的な問題もあります。一つは各官庁の行政需要の問題がございますから、技術的に乗り得るものであれば当然電子計算機に入るということは、観念的にはいえるわけでございますが、それ以上の段階については各官庁におまかせするのが基本であろう。ただ、先生ただいま御指摘の問題は、データを導入した場合の維持管理、メンテナンスの問題が入ってくるわけでございまして、これはあえてカードシステムをとるか、あるいは電算機による磁気テープの保管方式をとるかにかかわらず、常にいかなる場合でも、あらゆるデータについて起こってくる問題でございまして、これについては電算機利用にあたって十分配慮しなければならないということは常々議論されておる、私どもも注意しているところでございます。
  178. 横路孝弘

    横路分科員 ただそれを各行政官庁にまかせておくということではやはりこれは困るのでありまして、たとえば行政間相互の利用ですね。目的以外に使用しないというのは、たとえば西ドイツあたりも、ヘッセン州の法律では目的外使用というのを禁止をするということで、やはりこの規制というのを考えているわけです。アメリカあたりでもずいぶんいろいろと議論されているわけですけれども、FBIあたりで持っているコンピューターについて、その情報がはたしてどうなのかということで、これはまたあとでお尋ねしますけれども、いろいろな点で議論されているわけです。したがって、皆さんのほうで、行管で統一的にやっていくということが主体になっておられるのだから、やはりそこのところを各官庁にまかせるというのではなくて、もうちょっとその辺のところを、ほんとうにプライバシーを保護するという視点に立った、各官庁同士の統一というものが私は必要じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  179. 平井廸郎

    ○平井政府委員 率直に申し上げまして、各官庁の持っているデータが相互に利用され、目的外に使われるというケースは実はいまのところあまり起こっておりませんが、将来の問題としてかりにだんだんとそういうように問題が出てくるとすれば、当然いまから準備を進め、検討を進めなければならぬことは事実でございまして、広い意味でのプライバシーの保護の問題と関連して、私どもも各省庁と検討を進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  180. 横路孝弘

    横路分科員 そんなこと言ったって、たとえば労働省が失業保険のコンピューターを持っているでしょう、東京の練馬でしたか。あれは警察庁のほうで大いに利用してますね。もうそういうことになっているわけですよ。ですから、やはりプライバシーの保護という点で、行管庁のほうでプライバシーの研究というのを出しましたね。「情報社会におけるプライバシー保護に関する調査研究報告書」、これにいろいろ書いてありますけれども、皆さんのほうでほんとうにプライバシーの問題を考えているかどうかという点になると、一番最後のところの結論は「目下、問題になっている国民個人コード制度の適用上の問題点は、それを担当する政府機関の、国民に対する正しい適切なPRの不足であると言うことが出来る。」といって、新聞や何かが批判しているものに一々反論して、結論はPR不足だということになっているわけです。PRが不足かどうかという問題ではなくて、やはりこういうコンピューターを導入する場合に、たとえばアメリカあたりの状況を見ておって、非常な管理社会というものがいま進行しているわけですけれども、やはりその辺のところは、もうちょっとそういう視点に立って官庁のコンピューター導入は考えてもらいたいという気がするのですが、どうですか。
  181. 平井廸郎

    ○平井政府委員 ちょっと問題の視点があるいは違っているかもしれませんが、そもそもそういう個人データを官庁が持つか持たないか。それを持つ場合にコンピューターに入れて持つのかどうかという問題と、コンピューターに入れることによって、他へ流出する問題と二通りあろうかと思います。したがいまして、前者の、そういうデータを入れることがいいか悪いかという問題はコンピューター以前の問題でございまして、そういう問題として私ども検討を進めなければならぬだろう。ただ電子計算機に入れることによって、その結果端末機器を利用すればすべて各省庁のデータが使えるということになりますれば、確かに先生おっしゃるような問題が出てくるわけでございますから、そういうことにはならないように検討を進めなければならぬだろうと思います。そういう意味もありまして、個人統一コードの問題は先の問題であり、現段階で議論する問題ではなかろうと考えておるわけでございます。
  182. 横路孝弘

    横路分科員 そうすると、行管の例の連絡会議はもう解消したわけですか。
  183. 平井廸郎

    ○平井政府委員 先ほど来申し上げておりますように、連絡会議自体においては非公式な問題として、市町村住民基本台帳の問題から転換して、むしろ国民にとって非常に利益にもなる分野についてとりあえず進んでいこうという方向はきめておりますか、その場合においてなお検討すべき問題もいろいろあるようでございますから、さらに基本的に申しますれば世界的な傾向というものが一方にあるわけでございますから、そういうものを踏まえて、なお今後とも検討は続けてまいりたいと思っております。
  184. 横路孝弘

    横路分科員 そこで工業技術院のほうにちょっとお尋ねしたいのですが、主として技術的な側面の研究をおやりになっているんだろうと思いますけれども、ただ技術というのは技術がそれ自体独立してあるわけではなくて、やはりその利用目的というものと密接不可分になっているわけです。したがってこれはもうどのようにでも悪用されれば、あるいは非常にすばらしい成果をあげることもできるというのが科学とか技術の特徴だろうと思うのですが、そういう意味で、たとえば情報管理の面での技術開発、こういうようなことを工業技術院のほうでどのようにおやりになっているのか。
  185. 太田暢人

    ○太田(暢)政府委員 いま先生の御質問の面に関しましては、工業技術院でやっております電子計算機利用に関する技術研究会では取り上げておりません。
  186. 横路孝弘

    横路分科員 そういう面の技術開発ということになると、やはり工業技術院あたりがやるべきことなんじゃないでしょうか。どうなんですか。違いますか。科学技術庁のほうですか。  つまり問題は、たとえばよくいわれていることですけれども、個人情報の照会があった場合に照会目的を逆探知する方法とか、あるいはこれはまだ先のことですけれども、ともかくコンピューターが官庁にどんどん入っているわけですから、情報を管理するという面での研究開発を一緒にやっていかなければならない。あとでお尋ねしますけれども、法律的な整備もやっていかなければならないということになると、単に利用をどうするかという面だけではなくて、そのあたりもやはり技術開発としてやっていかなければならないんじゃないかというように私は考えますが、大臣、どうですか。
  187. 田中角榮

    田中国務大臣 それはやはり通産省とか工業技術院や科学技術庁の問題じゃないと思います。これは科学や技術開発を進めていくわけでございまして、その結果いろいろな問題で障害がある、人権の問題とか、利用されることによって他の面から考えて制約を受けるというような場合は、これは政府全体とか国会全体とか国民の声の中から生まれてきて、これが逆用されて基本的人権が侵されるというようなことになったら、コンピューターは左の用に供すべきじゃない、左の用に供してはならないというようなものがおのずから出てくる問題である。開発過程において工業技術院や通産省立場でこれは検討すべき問題というよりも、これが使用されるということでありますから、これは飛行機をつくるにはということではなく、飛行機をつくっても軍用機としてこれを売り出してはならない、外国輸出してはならないというようなときにはおのずからそうなるわけでありますから、原爆とか核兵器とかいうものをやる場合、これはつくるときに研究もしてはいかぬ、つくってもいかぬということが言えると思います、言わなければならぬと思いますが、使用の過程において起こる問題は、別な面から検討し、制約していくということだと思います。
  188. 横路孝弘

    横路分科員 私は、ちょっと認識が甘いんじゃないかと思います。工業技術院のほうでせっかく二十七省庁を集めていろいろな技術的な側面の研究会をやっておられるわけですから、その中へこういう情報管理をどうするかというのは当然入ってきてしかるべきだ。何もそこでもって金を投資して自分のところで開発研究を直接やるということではなくて、研究の対象として扱うべき問題だと私は思うのですよ。それだけはぜひ私の考えを申し上げておきたいと思います。  それで結局このコンピューター導入にからんで、データ通信等のときにも議論されているわけですけれども、基本的な人権を守るということで情報基本法というのが必要でなかろうかということで、たしか検討も若干進められているやに伺っているわけですけれども、これは基本的な権利を守るという立場からの情報基本法ですね。これについては行管のほうではどのようにお考えになっていますか。
  189. 平井廸郎

    ○平井政府委員 情報基本法の問題につきましては、たとえば自局党の中でもそういう御意見もございますし、いろいろな立場において情報基本法をつくるという議論があろうかと思いますが、確かに検討課題として今後進めていかなければならぬ問題だろうと考えております。
  190. 横路孝弘

    横路分科員 ドイツのヘッセン州の州法なんか見ると、目的外使用の禁止で、たとえば民間に対してはデータを提供してはだめだとか、インプットの規制なんか考えられておりますし、それからこれはアメリカだと思いますけれども、公正借用報告法、七〇年に成立したものは、不利な情報は七年後には破棄をする、パブリックレコードは現時点までファイルしなければならない、たとえば暴力団に入っていてもやめてしまったら、やめてしまったというデータを入れなければならぬということです。それから不利な情報というのは本人に確認をして作成を知らせなければならぬ、また情報によって、たとえば雇用が拒否されたときも本人に連絡する、あるいは本人の反論を百語以内にまとめてファイルしなければならないという規制が、現実に西ドイツやアメリカあたりで考えられているわけですね。わが国だって、これはそんなずっと十年も二十年も先の問題ではなくて、やはり現時点の問題として技術的なところから開発もやっておかなければならぬし、かつ研究しておかなければならぬし、それから個人の権利を守るという立場から法律的な整備も考えていなければならぬというように思うのです。通産省という立場になると、これはどうしても企業擁護という立場が出てくるだろうと思いますけれども、通産省としてもこれは基本的な人権を守るという観点から、ぜひ情報基本法というものを制定することを考えて、いまアメリカとか西ドイツあたりの立法例に見られるような点を配慮し、考慮をしていくことが必要じゃないかというように思いますが……。
  191. 田中角榮

    田中国務大臣 大いに勉強してまいります。これこそは新憲法にいうように国会は唯一の立法府である。いまは除外例によって政府が法律の大半を出しておりますが、これは国会が立法することになっております。政府もまた議案を提出することができる、こういうことが拡大解釈されて、今日は政府提案ばかりになっておりますが、そういう憲法上の問題とか基本的人権の問題とか、思わざる結果でもって国民の権利が制約されるというようなものについては、やはり国会でも勉強していただきたい。私たちも十分に勉強いたします。
  192. 横路孝弘

    横路分科員 確かにおっしゃるとおりなんですね。いま役所のほうで、お役人の方のレベルでどんどん進んでいるわけですね。これに対してきちっと政治家が目標を設定してやるというコンピューターの導入についての目標設定というのは非常におくれているわけでありまして、それはわが党についても言えるわけでありますから、それはひとつこれから大いに議論していきたいというように思います。情報産業といっても、これはコンピューターのメーカーからいろいろありますけれども、去年の二月に例の日経のマグロウヒル社の磁気テープの問題が日本リーダーズダイジェスト社の手に渡った問題とか、最近ブローカーみたいなものがずっと動いておって、つい最近の投書にも、何か女性が妊娠をしたというので病院に行ったのですね。まだ、だんなさまにも何にも話してない先に、ミルクメーカーからダイレクトメールが送ってきたというので、その方は憤慨をされた。つまり病院だけが知っていることが、いつの間にかそういうメーカーに行っちゃっているわけですね。そういうのも情報産業という範疇に入れるかどうかは問題にして、あと盗聴器の問題にしても、やはりこの辺の問題というのはこれから考えていかなければならぬ問題だろうというように思います。  時間が来ましたので、あとは行管の関係が中心になりますので、内閣委員会のほうで議論させていただきたいと思います。
  193. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は米原昶君。
  194. 米原昶

    ○米原分科員 本日は非常に時間もありませんから、簡単に一点だけにしぼって通産大臣にお尋ねしたいと思うのです。それは今度の国会にも法案が出ていますが、工業再配置の計画の問題点についてです。これは田中通産大臣が特に力を入れておられるようなので、この問題点について質問いたします。  法案の中にもちょっと出ておりますが、最初にお聞きしたいのは、この工業再配置計画と、それから新全総その他の計画との関係といいますか、調整するというところが法案の中にもありますが、この点についてあまり詳しいことは要りませんが、政治的に重要な点、具体的な例でもあげて簡単にひとつお願いいたします。
  195. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、旧全総は必ずしもこの工業再配置とはマッチしておらぬところがあると思います。これは明治以来長い百年の歴史の中で、自然発生というものを是認しながら数字を積み重ねたものでございます。言うなれば、いままでの数字を引き伸ばした数字でもって社会資本の拡充をはかるために公共投資をやらなければならない。ところが、その公共投資などは二十七兆五千億で済んだものが、わずか一年か二年のうちに五十五兆円というふうに倍増しなければならない。倍増しても、アメリカ日本の社会資本の比率は四対一である。これはますます集中のメリットではなく、その意味ではデメリットが出てまいっておるということでございます。そうすると、工業再配置というのは、引き伸ばしていくと、公害も住宅も地価も物価も労働力も水も、すべて行き詰まってしまう。このままで六十年まで行きましたならば、それはもう成長のメリットというものは食われてしまって、全く効率投資などというものは行なえなくなる、こういう考え方、すべての公共投資を有料にしなければならないようになるおそれがあります。そこで、地方開発という名のもとに、ちょうど農村工業導入法をつくったり、新産業都市法をつくったり、それから山村振興法や離島振興法をやったときよりももう少し大きな立場日本全体の利益を守るためには、そしてまた、日本の水や土地やいろいろな質のいい労働力を確保していくためには、工業再配置、言うなれば、六十年を展望して二次産業の平準化対策を行なう外以に方法はないのだ、こういうことで提案をしておるわけでありますので、今度は新全総と工業地帯再配置の法律をマッチさせるような立場で新全総を改定してもらおう、またわれわれも新全総と合うような工業再配置を計画しよう、こういう考えであります。
  196. 米原昶

    ○米原分科員 大臣がおっしゃいましたような点は事実だと思うのです。それで新全総というものも出たのだと思いますが、はたしてそれで所期の目的が達成されるかどうかという点に私たちは疑問を持っておるのです。つまり、現在、日本の場合、資本主義的な経済ですが、経済法則、ほっておけばもちろんいまおっしゃったようなことが出てくるわけですね。そうして、このままでいくと、もう全く行き詰まってしまうという事態が出たために新開発計画に変わってきたのだろうと思うのです。しかし、はたしてこのやり方でいくかどうか。新全総の場合、いわゆる大規模な開発プロジェクト方式というものをとられておる。その第一が全国的な通信網、航空網、高速幹線鉄道網と海湾、そういうものの建設、整備ということが第一の点ですね。そういう意味で、日本列島全体に交通、通信のネットワークをつくっていく、これが全体の経済の基盤になっていく、これをひとつ計画的にやっていくということがありますね。そうして、それとの関連で、第二に、大規模的な産業開発をやる。工業、農業、流通、観光の開発をやっていく。そうして第三に、環境保全。あの中にも環境保全ということもかなり強調されているのは事実です。しかし、この環境保全という面でことにいろいろな問題が起こっているわけです。この三つのプロジェクトのうちの第一と第二は、ことに第一の点は、今度の予算の中にも実際に全国的な交通、通信のネットワークをつくっていくという点に現在力を入れられておることは事実だと思うのですが、もうそれ自体が環境保全とマッチする形で進められているかどうかという点を見ますと、どうもその点はまだ弱いのじゃないか。このままでいくと、やはり経済の自然法則のほうに引きずられていって、環境保全ということはできないのじゃないかと考えているところに今度の工業再配置計画というものが出てくる。工業再配置計画を見ますと、こっちにも、法案の中には環境保全ということを確かにうたっておられるのです。しかし、実際にそれができるかという点で若干疑問があるんですよ。たとえば、新全総の場合、計画を実施する場合、計画は閣議できまっていくのですが、実行される場合は地方の、たとえば府県なんかで具体的な案をつくって、そこで一応きめるわけでしょう。それをまた政府や財界で助ける。大体、新全総の場合にも県できめるのでしょう。ところが、今度の再配置促進法のほうを見ると、通産大臣が権限を持っておられますね。実際に新全総の問題になっている——たとえば、私は二月に例の鹿児島県の志布志湾のところの実地調査に行ったら、たいへんな反対運動が起こっておりますが、そこを見ますと、たとえば志布志溝の海岸から二千メートルの地域に埋め立てるというんですね。そうして石油コンビナートを起爆力にして、そうして石油コンビナートができれば、当然あそこにほかのいろいろな産業も誘致できるというような構想になっておると思うのですが、実際言いますと、地元の住民の反対はたいへんですね。それで、鹿児島県知事とも会っていろいろ聞きましたが、知事もこの点ではずいぶん動揺しているようです。というのは、実際行ってみて驚いたのですが、地元で反対している人というのが主として自由民主党の諸君ですわ。そういう点もありまして、非常に問題になっておるところを見ましたが、やはり環境保全ということが主として心配なんです。それが正面に出ないで、いきなり石油コンビナートを持ってくる、それがやっぱり中心になってくるのですね。しかし、知事がやるということになると、住民の意向が強い場合、地方自治体ですからこれはなかなかできないという問題が起こっておりますが、今度の再配置促進法を見ますと、これは通産大臣の権限でできますね。そうしますと、新全総ではなかなか簡単にできないところを、むしろ逆に、通産大臣の一存でどんどんやられるというふうになっていく。しかも地元のほうでは、環境保全ということが無視されているというので反対が強いときに、県知事のほうはまた動揺しているのに、通産大臣の権限でどんどん一方的にやられるのじゃないかということを、たとえば具体的に言うと心配するわけです。その点どう考えておられますか。
  197. 田中角榮

    田中国務大臣 これはもう審議会で調整を十分行なうつもりでございますし、もう東京や大阪や名古屋に集中したような愚をこれから繰り返したならば、明治以来の百年間でもって公害問題が出てきましたが、今度はもう十年間か五年間で解決困難な公害問題が出てくるのです。これは四日市の問題を見れば明らかであります。そういう意味で、この審議会では、立地の問題やそこに移る企業に対しては県や市町村が納得するものでなければならないということで、十分調整を行なうということでございます。  いままでの志布志でもどこでもそうなんですが、どうも古い法律をそのままにしてあるわけであります。工場を建てるにしても、道路の中心線から片側二メートル下がれば、建築線が自動的に設定される。そういうことになりますと、東京の小さいようなものがどんどんつくられるわけです。それが四日市になり複合公害という問題になったのですが、今度いま御指摘になったように無過失法案というのが出ておりますし、新全総計画とあわせてやっていただく。これは考えてみると、工業再配置とみんな同じものである。新全総が一番大きなものであって、その中の一つが工業再配置であり、無過失損害賠償のような法律もその中の一つであり、環境保全の法律も一つであり、農村の工業導入法も一つであり、新産業都市や離島振興法も一つである。離島振興法など、振興にウエートを置いておりましたが、結局これは、無過失というものが一緒になれば環境汚染をするようなものにはならない。また私は建設省や運輸省とも協力して進めておりますが、厚生省とも協力しておりますし、環境庁とも協力して進めております。  それで、いまの四国の橘湾の中で風光明媚なところは水深四十メートルありますから、五十万トンタンカーが横づけになる、それは全くいいところでありますが、結局それを三十万トンに下げ、二十五万トンに下げよう、そうしてあの風光明媚なところをはずして貯油基地をつくったらどうかというようなことまでただいま調整を考えております。しかも道路は四メートルを少なくとも十四メートル以上、四メートルの上に十をプラスしなければいかぬわけでして、これは建設省にもお願いして、道路構造令の改正を——新しいブロックはどういうものを使うかということまでひとつ考えてもらおう。遮断緑地をつくる、またそういうものだけではなく、必ず緑地帯を置くということを考えております。これはいままでちょうどロンドンでニュータウンをやった、あれよりももう少しスケールの大きなものを考えていく、こういうことでありますので、これから付加しなければならない法律はたくさんあります。また制度上も完備しなければならぬものはあると思いますが、東京や大阪をつくろうとしておるのではない。私は、その意味で第一苫小牧も多少規模が小さいという感じがしておるわけでございます。
  198. 米原昶

    ○米原分科員 おっしゃる主観的な意図はわかるし、私も再配置することは基本的に反対でも何でもないのです。それはけっこうなことです。しかし、いままでの実績からしましても、公害を押えるということはまだまだいまの状態では容易じゃありませんね。それで、へたをすると、これが逆に公害を全国にまき散らすということになりかねない。つまり、初期には日本の公害対策というものはほとんどないというか、そういうことだったと思うのです。だから、一つは汚染物を拡散させて、自然の浄化作用でやればいいという拡散の考え方ですね、これが初期にあったし、またあまりきたないところは隔離してしまうのだ、それだけで初期にはやっていた。それから基本的にまだ抜けてないのじゃないか、抜けてないままでいくとたいへんなことになるわけなんです。  いまもちょっとお話しになりましたが、昨日日刊工業新聞を読んでおりましたら、その問題が出ていて、関西電力が徳島県の辰巳地区に予定しているCTS用地の造成を、今国会で成立を予定されている工業再配置・産炭地域振興公団の手で実施されるよう希望していることが出ているのです。そうして、これに対して田中通産大臣は強い関心を示して、「通産省では政治判断の必要な問題としており慎重な態度をみせているが、できるだけ具体化できる方策を検討していきたい考えである。」こんなことが報道されているのです。ただ、今度の法律で見ますと、今回のこういう関西電力の希望は、法律の解釈上ちょっと問題があるのじゃないかと思うのですが、基本的な方向としては、申し出があれば認める方向に進みたいというのが通産大臣考えでしょうか。
  199. 田中角榮

    田中国務大臣 そういう事実はございます。これは関西電力だけではなく、四国電力等、いろいろなものが一つの案を持っております。これは長い間の懸案でございまして、五十万トンタンカーをつくるというときからの問題でございます。五十万トンタンカーといえば、志布志、宿毛、橘、陸奥湾という、四つの港にしか停泊できないわけでございます。そういうことで、阪神地区に対する石油を搬入するとすれば、どうしても橘湾を基地とせざるを得ないということでございまして、それはいま五十万トンタンカーがとても浦賀水道まで参れません。東京湾で一隻ひっくり返れば東京湾じゅうが火の海になるということでございますから、タンカーは大きくならなければいかぬし、すでに五十万トン建造は許可しておりますし、百万トンドックも建設が進められております。そうすると、いま東京湾、大阪湾とか瀬戸内海には、かかる大型タンカーは全然入ってこれないわけであります。そういう意味で、橘湾の開発構想について長いこと関係してまいりましたが、漁業補償の問題で、ここ四、五年来片づかないわけであります。だんだんと阪神地区は船がふくそうしてきております。それで最低限何とかつくれないかということで、地元の県へいろいろ応援を求めておりました。県がちょうど埋め立てております場所は、橘湾の風光明媚なところには全然手をつけないで、しかも少し掘り込めば三十万トン、四十万トンの船が着き得る地点があったわけであります。そこに五百万トンないし六百万トンの貯油をして、それを小型の船で第二次輸送をするようにすれば、海が汚染をすることもないし、そうすれば瀬戸内海もきれいになるということで、一つのテーマであることは事実であります。去年二億二千万トンの石油を入れたわけでありまして、今後毎年どうしても一〇%ないし一五%拡大された規模で輸入しなければなりません。しかもマラッカの問題を考えれば、いますぐあそこをとめられることは予想しておりませんが、とめられれはたいへんな問題でありますので、どうしてもある意味では半年分ぐらいの原油のストックは必要である。そうでないと、OPECから年率六%ずつ値上げを求められて、通貨調整によるメリットが全部吸い上げられるようなことになることを念頭に置いて考えると、やはり安定的な状態において貯油をしておかねばならない。そうでないと世界的な変動によっていつでも上げられる、上げられれば自動的に電力料金が上がるということになってはたいへんなことでありますので、やはり全国十カ所か十五カ所で半年ぐらいの貯油をしなければいかぬということで、長い検討を続けてきた橘湾周辺の、しかも地元や県が受け入れられる状態ということであれば、これは一つのプロジェクトとしては考えなければならぬじゃないかということでございます。  今度の再配置で、そのまま当てはまるかどうかという問題、全部が片づくとは思いません。これは、まだどういう機構でやるのかもきまっておりませんし、まあ、特別立法を必要とするかもしれませんが、いずれにしても、工業再配置とは別に石油政策としても考えなければならない問題だ、こう考えております。
  200. 米原昶

    ○米原分科員 それを今度の促進法でやろうとすると、法律的にちょっと問題があると思いますが、これは法案がかかるときにまた……。この問題、触れません。  その大臣の積極的な考え方はわかりますが、いろいろそこで問題が起こってくると思うのですよ。たとえば、御存じだと思いますが、沖繩のあの例のガルフが平安座島、あそこにCTSをつくった。それで、あそこでたいへんな問題を去年起こしましたね。シーバースからタンクに通ずるところで故障が起こったために、すっかりあの湾をよごす事件が起こりましたし、この前の新潟の事件もありますしね。とにかく、あの事件が起こったために、沖繩じゃ、もう石油産業ごめんだという空気がものすごく強まっておりますね。私、いろいろそういうことになると思うのですよ。だから、なかなかこのCTS、まあいままで火力発電所にはずいぶん方々で反対が起こりましたけれども、タンクをつくってもだいじょうぶだろうというのが、タンクでまた問題が起こってきているわけです。そういう意味で、まずそういう事件が起こらないようにする何かいろんな設備とか、保障とかをしないでこれをやるというところに問題があるんじゃないか。産業基地をつくるということには一番重点を置かれる、あるいは交通通信網をつくるということには重点を置かれるけれども、環境保全というところにはつけ足しになっているのですよ、いままでのやり方が。そこにかなり力を入れないと住民の納得が得られないということですよ。そういう点が十分にはまだ出ていないんじゃないかということを痛感するわけです。  もう一つの問題は、ある意味じゃ、こういう大都会のほうから地方に分散させるということは、それ自体としては別に反対することはないので、私もその考え方はけっこうだと思いますが、ただ、それが公害を広げることになっちゃならないという点では、やはりいままで以上に公害防止、環境保全ということを十分に保障できるような体制を見つけないと、ただ持っていって、いまは技術が進んでいるからだいじょうぶだというような抽象的なことを言ったって、現実にはそういっていません。鹿島などはその例だと思いますが、あとでたいへんな問題になると思います。  もう一つは、そういうことのために、まあ国が相当の費用を出してやるというこのやり方ですね。この点でちょっとお聞きしたいのですが、今度のOECDの環境委員会できまった、例のPPPの原則ですね。これがきまった。これは閣僚会議の決定をまだ受けておらないし、内容もまだ十分に検討されておらないという段階だそうですけれども、つまり、公害の原因者が費用を負担する、この原則は当然国際的にも高まってくるし、当然そういうようになってくる方向だと思うのです。そういう意味では、そういう企業に対する補助金は原則として禁止するということになってきますと、いま出されている工業再配置促進法も、そういう点でも、もう一つ問題になるんじゃないかという点を感ずるわけですが、大臣の意見どうですか。
  201. 田中角榮

    田中国務大臣 公害は原因者負担が原則であるというのは、私は相当早くから出しておったわけです。自由民主党の都市政策調査会の会長として都市政策大綱を出しましたときには、勇敢だと言われましたが、公害は原則として企業の負担である、こう書いてございます。ですから、今度の無過失公害防止の問題に対しても、そういう精神でつくられておることは事実でございます。しかしまあ、日本のように、この東京、大阪、名古屋のように雑多なものに対しては結局どうするかということになると、まず企業も責任を持たせる。そのためには公害防止施設というものを義務づける。もう一つは、それでもなお複合公害を起こした場合には、無過失賠償の責任をとらせる。それから、まだ研究されておるものは、まあ議論の段階でありますが、公害税というものがどうであるかという問題も検討されているわけです。ですから、まあ企業がやるとすれば、これは公害を発生しないように制度上完備をするというのが問題です。それでもなお公害が出た場合、一つの因をなしておると想定をされるときには、それなりの賠償責任を求めるということであります。しかし、これは、鉱山にもう鉱業権者がなくなった場合どうするか。これは国及び地方公共団体が引き継がざるを得ない。無資力の鉱害に対しては国がやる。これはまあそういうことだと思うのです。  ですから、ここで急速に公害防除の問題に対しては法制上も完備されつつある。私は、このスピードでいけば、公害というものは、新しくつくられる工業再配置の中から公害問題が起こるということではなく、いま現にある平面都市、百年間集積をしたものを片づけさえすれば、公害問題に対しては相当高い水準で、どこの国にも負けないような公害防除施設ができるというふうに考えておりますし、また、できなければいかぬ、こう思っております。  それで、もう一つは、いままでのは規模が小さ過ぎるという考えなんです、道路でも四メートルでもってやるとか。少なくとも工場をつくるならば、緑地帯をつくらしたり、それから共同でもって下水処理を行なったり、そういうものがまだ法が不完備なところがあると思います。私はやはり、いますぐは、現にもう長い集積の結果の公害に対しては、国も公共団体もそんな責任論を言っておれませんから、これはやはり人命保護のためには、環境保全のためには、国、地方公共団体が応分の責任を負う。これからできるものに対する公害というものは、これはもう原因者負担が原則である、こういう考え方を私自身は持っておるわけであります。
  202. 米原昶

    ○米原分科員 おっしゃることは、当然そうでなくちゃならぬと思うのだけれども、実際には、いま各地で起こっている公害の補償の問題にしましても、原因者負担の原則がちっとも貫かれていないどころか、大部分は国や地方自治体に出させるというような例はもう無数にあります。これはしかし、きょうここで議論しませんがね。それから、国際的にもそういう原則がきまってきますと、もう一つ言っておきたいのは、さっきのタンカーの話ですが、これは、百万トンなんておっしゃいましたけれども、タンカーはもうそんなものをつくることは国際的に禁止されましたよ。御存じですか。百万トンなんか、タンカー、五十万トンも許されませんよ、もうあとは。いまのところ、つくってしまいましたからそこまでは禁止してないけれども、もうそんなものできないのです。そういうふうに、公害の問題から国際的な制約もあって狭まってきているんですよ。よほどその点を考えられないと、国際的にも、こう実は世界で一番やるんだとおっしゃっても、現実には、それどころか、まだ日本はその点ではおくれていますよ。  最後に、さっきの問題ですが、工業再配置計画について通産大臣が決定権を持っておられる。そして、通産大臣が意見を聞かれる工場立地・工業用水審議会、これを見ますと、三十一名中、行政機関のメンバーが十五人、それから財界の代表が十二人、学識経験者が四名と、ちょっと見ただけで、これは大体政府と財界の意向ですべてが決定されるということになってきます。もちろん、当該地の自治体が承認しないとできないことには違いないけれども、大体計画の段階から、地域住民あるいは地方の自治体のそういう代表の意見も十分聞いてやるという審議会にしなければならないのじゃないか。ことに、環境保全という点で、おそらく、地域住民の意見をかなり反映しないと、いままでの轍を踏むことになるんじゃないかと思いますが、この審議会の構成というものはこの点どうも十分でない。変える必要があるように思いますが……。
  203. 田中角榮

    田中国務大臣 審議会の構成その他に対しては、一応の案をお出しいただくわけでございますが、しかし、これは納得するように拡大をして一向差しつかえない、こう思います。それで私たち考えておりますものは、やはりその地方その地方で住民の反対を受けてやるようなものではない。これは一つの地域、いまこの法律が出てきたところ、各県も地方も非常に喜んでおりますし、産炭地などはこれでもってやっとめどがついたという感激を持っております。だから、先ほども御質問に答えましたが、いま一七・四%の一次産業比率を持つものが、十年間で一〇%減るとすれば、これは六百万人、七百万人という人が、また六%台の拡大EC並みになれば、八百万人も九百万人もの人が移動するわけであります。そうしたら、この上東京、大阪や県庁所在地に集まったら、もう千万戸つくっても住宅は不足であります。これはまだまだ質よりも量的拡大政策を進めなければいけない。しかも一人出てくれば扶養家族を四人も五人もということになれば、やはり職を与えざるを得ない。そういう意味で、農村工業化政策も行なわれたわけです。ですから、地元の要請がない限りにおいて、地元の反対を押し切ってまで工業立地をやるというものではない。ですから、府県、市町村、その地域の関連の地帯が双手をあげて誘致を促進するというような状態であり、しかも長い目で見て理想的な環境をつくれるんだということが前提でなければ、この政策は実効をあげ得ないということでありますので、これは審議会のメンバーだけ見られてそういう御批判があるかもしれませんが、この法律の執行にあたっては万全の態勢を期し、理想的なものをつくろう、こういう考え方でございますので、これはひとつそういうふうに御理解いただきたいし、そういうふうに御協力いただきたいと思います。
  204. 米原昶

    ○米原分科員 時間がありませんからこれで終わりますけれども、もう一つ、自治体の問題で言うとすれば、今度の計画では企業を受け入れる側の自治体ですね。補助金の対象となる施設の建設、これは補助金が出るわけですけれども、おそらくそういうものを誘致するとなりますと、そのほかにも結局その自治体が、かなり費用がかかることになります。その点が出ていないのですよ。補助金だけは出す、その分の。これでは、おそらく現在自治体はむしろ企業誘致を望まぬような傾向が各地に出ておりますね。こういう中で、非常に不十分じゃないか、こう思うわけです。この点だけ、最後に……。
  205. 田中角榮

    田中国務大臣 これは十分だと思っておりません。二十五年の固定資産税の減免に対しましても、まだ現在の制度でもって三年間でもって、あとは財源補てんを考えてからやろうということになっております。いま交付税の中で地方自治体に泣きなさいということでは、私は問題は解決しないと思いますので、この初めの思想は特別財源をつくって、ちょうどガソリン税は目的税として道路整備を行なったように、特別財源をつくって財源を、補てんするという考え方前提になっております。これはしかし、いまの景気の状態で一・七五の法人税そのものを財源にすることもできなかったのでございますので、このままでスタートになりましたが、これはやはり地方自治体が恩恵を受けるということでなければならない。これは反対をするような状態ではだめだ。私は、あなたの鳥取県の中海干拓など、いま中海干拓をやって米をつくるということが一体いいのかといえば、あそこに理想的な工場地帯がつくられなければならないと思います。しかし、あの風光明媚な地帯が汚染されたり、地元民が反対するようでは、中海の工業化なんかできないと思います。そういう意味で、鳥取、島根両県が待望しておる工業比率を上げるということに対しても、やはり地元民が納得し、あそこに定着する人口が全国一律の平均した収入を得て、しかも環境が保全されるということを考えておるわけでありますので、そういう意味では未成熟な法律であるといわれればそのとおりでございます。しかし、これもこの国会に出しておかなかったらたいへんだ、こういうことで、ひとつこの立法のメリットもお考えいただきたいと思います。
  206. 植木庚子郎

    ○植木主査 以上をもちまして、本分科会所属の農林省所管、通商産業省所管及び労働省所管に対する質疑は全部終了いたしました。     —————————————
  207. 植木庚子郎

    ○植木主査 この際おはかりいたします。  昭和四十七年度一般会計予算及び昭和四十七年度特別会計予算農林省通商産業省及び労働省所管に対する討論採決は先例によりまして予算委員会に譲ることといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  208. 植木庚子郎

    ○植木主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  これにて本分科会の議事は全部終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の格段なる御協力によりまして、本分科会の議事が無事終了することができましたことを、ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて第四分科会を散会いたします。    午後三時四十六分散会