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1972-03-23 第68回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十三日(木曜日)     午前十時三分開議  出席分科員    主査 植木庚子郎君       笹山茂太郎君    渡辺  肇君       阿部喜男君    小林  進君       原   茂君    山口 鶴男君       林  孝矩君    兼務 川崎 秀二君 兼務 阿部 昭吾君    兼務 斉藤 正男君 兼務 島本 虎三君    兼務 楢崎弥之助君 兼務 相沢 武彦君    兼務 大橋 敏雄君 兼務 岡本 富夫君    兼務 和田 一郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 角榮君  出席政府委員         防衛庁装備局長 黒部  穰君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         通商産業政務次         官      稻村左近四郎君         通商産業大臣官         房長      小松勇五郎君         通商産業大臣官         房参事官    増田  実君         通商産業大臣官         房会計課長   北村 昌敏君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         通商産業省企業         局長      本田 早苗君         通商産業省企業         局参事官    田中 芳秋君         通商産業省公害         保安局長    久良知章悟君         通商産業省重工         業局長     矢島 嗣郎君         通商産業省化学         工業局長    山形 栄治君         通商産業省繊維         雑貨局長    佐々木 敏君         通商産業省鉱山         石炭局長    莊   清君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部長 青木 慎三君         通商産業省公益         事業局長    三宅 幸夫君         工業技術院長  太田 暢人君         中小企業庁長官 高橋 淑郎君  分科員外出席者         大蔵省主計局主         計官      徳田 博美君         大蔵省主税局税         制第一課長   高橋  元君         農林省農地局参         事官      住吉 勇三君     ————————————— 分科員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   原   茂君     山口 鶴男君   林  孝矩君     古寺  宏君 同日  辞任         補欠選任   山口 鶴男君     阿部喜男君   古寺  宏君     林  孝矩君 同日  辞任         補欠選任   阿部喜男君     原   茂君 同日  第一分科員斉藤正男君、島本虎三君、第二分科  員川崎秀二君、楢崎弥之助君、岡本富夫君、和  田一郎君、第三分科員大橋敏雄君、第五分科員  阿部昭吾君及び相沢武彦君が本分科兼務となっ  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計予算通商産業省所管  昭和四十七年度特別会計予算通商産業省所管      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    植木主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  昭和四十七年度一般会計予算及び昭和四十七年度特別会計予算通商産業省所管を議題といたします。  まず、政府から説明を求めます。田中通商産業大臣
  3. 田中角榮

    田中国務大臣 昭和四十七年度通商産業省関係予算案及び財政投融資計画につきまして、御説明申し上げます。  まず、昭和四十七年度の通商産業省一般会計予定経費要求額は、千六百三十二億五千七百万円でありまして、前年度予算に対しまして四百九十六億三千五百万円、四三・七%の増となっております。  次に、重点事項別予算の内容を御説明申し上げます。  第一の柱として掲げました適正な産業配置環境保全促進につきましては、まず、過密、過疎の弊害を是正するとともに、工業立地円滑化をはかるため、新たに、工業配置促進対策推進することとし、一般会計五億円を計上し、工業配置促進補助金工業団地造成利子補給金等に充てることにしております。また、産炭地域振興事業団を改組拡充して、工業配置・産炭地域振興公団とし、同公団に対し、産投出資四十五億円、財政投融資等百億円を計上して、あと地融資、買い上げ、移転資金融資及び中核団地造成資金に充てることといたしております。  また、工業用水道事業建設と先行的な水源確保に対する助成を大幅に拡大することとし、前年度比二六%増の百五十八億五千三百万円を計上しております。  公害防止対策といたしましては、体廃止鉱山鉱害対策公害管理者国家試験製革業公害対策等既存事業の大幅な拡充をはかるほか、新たに、産業系廃プラスチック有効利用促進するため、民間出絹により設立される公益法人廃プラスチック有効利用促進協会基金として、七千五百万円の補助を行なうことといたしておるのでございます。  また、公害計測機器及び防止機器につき、その性能の確保をはかるため、検定制度実施することといたしまして、新たに千九百万円を計上しておるのでございます。  第二の資源エネルギー対策総合的展開につきましては、まず、石油の安定的かつ低廉な供給確保するため、石油対策特別会計を改組拡充して、石炭及び石油対策特別会計とし、石油探鉱開発備蓄等施策を抜本的に強化いたすこととし、四十七年度は、特別会計石油対策分として、二百五十八億百万円を計上いたしておるのであります。  また、非鉄金属鉱物につきましては、国内及び海外地質構造調査及び探鉱に必要な経費拡充をはかることとしております。  第三に、産業構造知識集約化推進に関しましては、電子計算機産業の資本及び輸入の自由化問題に対処し、急速にその国際競争力強化をはかるため、昭和四十七年度から電子計算機産業振興対策推進することといたしまして、そのための経費五十二億一千三百万円を計上いたしております。  また、次期民間輸送機開発のため、二億円を計上し、所要調査実施することといたしております。YS11量産事業赤字対策につきましては、官民分担赤字解消をはかることといたしておりまして、昭和四十七年度におきましては、その経費の一部として、四十八億九千三百万円を計上いたしております。  このほか、情報化促進新規産業の育成につきましても、引き続き推進することといたしておるのでございます。  第四の経済国際的展開につきましては、まず、ジェトロについて、総合的な調査情報収集提供事業実施、わが国諸施策PR事業拡充重点を置いて五十六億二千三百万円を計上いたしておるのでございます。  また、中国をめぐる国際情勢の推移にかんがみ、日本日中覚書貿易事務所が行なう中国市場調査に対する助成を大幅に拡充いたしますとともに、中国経済に関し、総合的に調査、研究するための経費二千万円を新たに計上しておるのでございます。  経済協力推進につきましては、アジア貿易開発協会の行なう発展途上国一次産品開発輸入促進事業を一そう拡充することとし、そのための経費十二億五千万円を計上しておるのでございます。  また、発展途上国開発計画の策定のための調査開発コンサルタント養成等技術協力の量的、質的充実をはかっております。  第五の柱として掲げました中小企業対策拡充につきましては、従来に引き続き、特に重点を置いているところでありまして、臨時繊維産業特別対策費のうち、中小企業対策に相当する経費を含めまして、前年度比五三%増の六百九十一億四千百万円を計上しておるのでございます。  まず、中小企業振興事業団につきましては、高度化資金融資のための出資拡充重点を置き、三百五十四億二千六百万円を計上いたしております。  また、小規模事業対策費といたしまして、前年度比二五%増の五十九億六千六百万円を計上いたしまして、経営指導員大幅増員待遇改善商工会指導施設増加等経営改善普及事業拡充をはかることといたしておるのでございます。  さらに、円切り上げ等国際経済調整措置実施による影響を打開するための諸施策を講ずることといたしております。  中小企業公害防止対策推進につきましては、技術改善費補助金の中に公害ワクを設け四分の三の高率補助を行なうなど、技術指導面重点を置いて、拡充をはかることとしておるのでございます。  繊維産業対策につきましては、従来に引き続き構造改善対策推進してまいるほか、最近における繊維産業の状況にかんがみ、臨時繊維産業特別対策費二百三十五億五千万円を計上いたしまして、織布業等過剰設備の買い上げに必要な資金補助及び新商品、新技術開発促進等のため、繊維工業構造改善事業協会に設けられる振興基金に対する出資等を行なうこととしておるのでございます。  第六の消費者利益増進流通部門近代化につきましては、まず、商品試買検査拡充商品テスト網整備消費者教育拡充等消費生活改善のための諸施策を大幅に拡充いたしますほか、各種安全対策推進及び物価安定対策強化をはかってまいることとしております。  また、流通部門近代化合理化をはかるため流通システム化事業推進することといたしまして、そのための経費の大幅な拡充をはかっております。  第七に、技術開発促進をはかるため、大型プロジェクトについて、電気自動車パターン情報処理システムなど継続七テーマを引き続き推進することとし、前年度比二四%増の六十六億七千七百万円を計上しておるのでございます。  また、重要技術研究開発費につきましては、総額二十三億二千三百万円を計上しておりますが、その中で今回は新たに、生産工程の無公害化のためのクローズドプロセス技術開発特ワクを設け、高率補助を行なうとともに、緊急に開発要請されている特定の公害防止技術開発につきましても、一そうの拡充をはかることとしておるのであります。  さらに、特許行政につきましても、その強化拡充をはかることとしておりまして、このため、前年度比二九%増の五十三億五千八百万円を計上しております。  第八に、沖繩復帰対策に関しましては、沖繩経済発展をはかるため、まず、沖繩工業用水道事業に対する十三億五千百万円の事業費補助金沖繩開発庁要求に計上いたしております。  また、中小企業対策につきましては、本土のきめこまかい中小企業施策を適用いたしますが、特に、小規模零細企業の多い沖繩の現状にかんがみ、指導組織化近代化重点を置きまして、二億五千五百万円を計上しておるのでございます。  さらに、昭和五十年に開催予定されております沖繩国際海洋博覧会開催準備費として、三億二千六百万円を計上いたしております。  以上の一般会計のほか、特別会計といたしまして、アルコール専売事業特別会計は、歳入百二十億七千五百万円、歳出九十八億一千四百万円、輸出保険特別会計歳入歳出とも四百六十八億八千二百万円、機械類信用保険特別会計歳入歳出とも十五億九千二百万円を計上しておるのでございます。  また、石炭対策特別会計につきましては、すでに御説明申し上げましたように、昭和四十七年度からこれを改組拡充いたしまして、石炭及び石油対策特別会計といたしまして、新たに石油対策分として、二百五十八億一百万円を計上しております。  石炭対策につきましては、歳入歳出とも一千一億五千一百万円を計上いたしておりますが、このうち、通商産業省関係歳出は八百四十九億九千四百万円でありまして、これにより、引き続き、石炭鉱業合理化再建保安確保終閉山円滑化鉱害処理促進産炭地域振興等の施薬を推進することといたしております。  引き続きまして、通商産業省関係財政投融資計画について、御説明申し上げます。  昭和四十七年度の通商産業省関係財政投融資計画は、総額一兆七千二群八十三億円でありまして、前年度当初計画一兆三千六百五十四億円に比べ、二六・六%の伸びとなっておるのでございます。  以下、新規政策及び重点施策の概要を御説明いたします。  まず第一に適正な産業配置環境保全促進でありますが、工業配置促進対策につきましては、すでに御説明申し上げましたとおり、工業配置滝炭地域振興公団に対して、百四十五億円の事業費確保することとしております。  公害止対策につきましては、開銀公害防止ワクを前年度の百億円から三百五十億円へと飛躍的に拡充するとともに、融資対象拡大をはかることといたしております。また、中小企業金融公庫、国民金融公庫につきましても、公害防止貸し付けワクを大幅に拡充することとしておるのでございます。  第二は、資源エネルギー対策であります。石油対策につきましては、石油開発公団に対して、石炭及び石油対策特別会計から大幅な出資を行なうこととしているほか、探鉱のための財政融資、及び備蓄原油購入資金のための政府保証つき市中借り入れ確保することとしております。また民族系石油業を育成するため、引き続き、開銀から融資を行なうこととしておりますほか、原油備蓄値没石油パイプライン建設に対しても、同行から所要融資を行なうこととしておるのであります。  次に、鉱物資源開発につきましては、金属鉱物探鉱促進事業団について、海外探鉱融資事業の分野で、新たにウランに関し、成功払い方式を導入するとともに、地質調査船の建造に着手することにいたしておるのであります。  そのほか、原子力発冠熱供給専業等につきましても、積極的に助成することといたしております。  第三は、産業構造知識集約化推進であります。電子計算機産業につきましては、国産電子計算機レンタル資金確保するため、日本電子計算機株式会社に対する所要開銀融資確保するとともに、同行から新たに、オンライン情報処理振興及び国産電子計算機メーカー集約化に対して融資を行なうこととしておるのであります。  これらのほか、住宅産業海洋開発産業等新規産業につきましても、引き続き、開銀から所要融資を行なうことといたしております。  第四は、経済国際的展開でありますが、日本輸出入銀行につきましては、資源開発要請に対処して、輸入投資分重点的に増額する等により貸し付け規模拡大をはかることとしております。  また、国際化に伴う廃業体制を確立するため、繊維工業電子工業機械工業等に対しましても、開銀及び中小公庫から所要融資を行なうこととしております。  第五は、中小企業対策拡充であります。中小企業金融機関につきましては、前年度当初計画に比べまして一八%増の普通貸し付け規模確保するとともに、中小公庫につきましては、構造改善等特別貸し付け拡充するほか、新たに事業転換貸し付け及び貿易取引高度化貸し付けを創設することとしております。また国民公庫につきましても既存特別貸し付け拡充するほか、事業転換貸し付けを創設する方針であります。  第六は、消費者利益増進流通部門近代化の問題であります。流通部門近代化につきましては、開銀流通近代化ワクから、引き続き流通システム化拠点施設等整備を行なうこととしております。  また、中小公庫国民公庫につきましても、流通近代化のための貸し付けワクを大幅に拡充する  こととしておるのであります。  第七は、技術開発促進でありますが、技術開発促進策といたしましては、開銀国産技術振興ワクを大幅に拡充するとともに、中小公庫国産技術企業化等貸し付けも増額することとしております。  最後に、沖繩復帰対策について申し上げます。  沖繩本土復帰に伴い、同地域における産業振興社会開発をはかるため、沖縄振興開発金融公庫を設立し、同公庫から進出企業及び地場産業に対し、所要資金融資することとしておるのであります。  また、琉球電力公社の業務を継承して設立される沖繩電力株式会社に対して、産投出資十億円を確保するとともに、沖繩振興開発金融公庫から低利融資を行なうこととしておるのでございます。  以上、通商産業省関係予算案及び財政投融資計画につきまして、簡単に御説明申し上げた次第でございます。何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  4. 植木庚子郎

    植木主査 これにて説明は終わりました。     —————————————
  5. 植木庚子郎

    植木主査 この際、分科員各位に申し上げますが、質疑の持ち時間は、一応本務員は一時間程度兼務員もしくは交代して分科員となられました方は三十分程度にとどめ、議事進行に御協力をお願いしたいと思います。  なお、政府当局におかれましては、答弁はでき得る限り簡潔にお願い申し上げます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林進君。
  6. 小林進

    小林(進)分科員 通産大臣にお伺いをいたしますが、限られた時間でございますので、問題を三つにしぼりましてお伺いいたします。  第一は、近くチリサンチアゴで行なわれる国連貿易開発会議に関することですが、それに対する政府態度、それから第二番目は、対中国貿易に対する通産大臣のお考え、それから三番目は、例のシベリア開発に関する問題でございます。  まず第一問からお伺いいたしますけれども、この四月十三日から五週間にわたりましてチリ古都サンチアゴ国連貿易開発会議が行なわれる、百四十一国でございますか、千五百人くらいが参加をするたいへんな会議だと思うのです。日本政府におきましても、通産大臣首席になられて、各省からそれぞれ代表が出て、百五十名でございますか、たいへん大型の団を編成されて行かれるのでございますが、私はこれに関連いたしまして、一つは、この会議に臨む各省間の意見の統一がまだできていないのではないかというふうな風評が立っております。この点が一体どうなっているのか。  それから第二番目には、どうも開発途上国といいましょうか、そういう国々がリマ憲章——コロンビアですか、リマというのは——等に集まられて、先進国に対して相当統一した要求を持って臨まれるのではないか。そういうリマ憲章の中にも、特にやはり経済成長率、世界で二番ないし三番になった日本が、どうも後進国といいますか、開発国に対する援助のしかたが少ないということで、むしろ日本が攻撃の焦点になるのではないかというふうな風評も出ておるようであります。その中心は、私は金融の面はわかりませんけれども、IMFとかあるいはドルの交換比率の変更の問題等に対して、開発途上国はさっぱりどうもその会議の中に入れてもらえない、そういう問題が出てきたり、あるいは日本援助率が少ない、またその援助ひもつき援助で、贈与とか長期低利貸し付けとか、そういう政府間のベースにおける貸し付け態度が好ましくない、そういう問題がいろいろ論議の対象になっているように承りまして、この会議に臨む首席団長でありますか、代表としての通産大臣もたいへん私は御苦労だと思いますけれども、それだけまた日本の、エコノミックアニマルだとか、とにかく日本の評判は国際的に悪いのであります。そのイメージをチェンジするたいへんいいチャンスではないかと私は思うのでありまして、願わくは、通産大臣のこの会議に臨む御所見等をまず承っておきたいと思います。
  7. 田中角榮

    田中国務大臣 国連貿易開発会議は、来月の十日過ぎから十日間余の予定をもちまして、一応私が出席をすることに通告済みでございます。しかし、国会状態がございますので、来月の初めになりまして国会審議状態を見て、衆参両院政府側から要請を申し上げ、両院許可が得られるならば出席をしなければならないだろう。外務当局からは強く出席方要請されておりますし、そういう考えでおります。  それから政府間の話し合いはぽつぽつ始めておりますが、これは相手国の出方の問題もあります。情報収集の問題もございますので、来週から今月一ぱいくらいには日本政府としての基本的な態度をきめたい、こういう考えでございます。御指摘がありましたように、非常に重要な会議でございます。この会議は、いま南北問題の一番重要な会議ということでありますし、また日本開発途上国に対する援助の問題とか、日本がいまいろいろ原材料輸入しておりますが、国内が不況のために原材料を引き取ることができないで、いろいろトラブルも起こっておりますし、そういう意味でこの会議は非常に重要である、こういう気持ちでおりますが、やはり衆参両院許可が得られるならば出席をして、国益を守りながらも国際的な中における日本の新しい方針を述べ、各国の理解を求めてまいりたい、こう考えております。
  8. 小林進

    小林(進)分科員 私は、衆参両院許可を得るというのはいま大臣のお話で初めてわかったのでありますが、こういう重大会議でございますから、これは野党立場でも反対をする理由はないと思いますので、よっぽど政府の側に重大な異変でもない限りは、野党は私は無条件に賛成するのではないかと思います。また総裁候補といわるる通産大臣が国を代表して行かれるということに対しても、むしろ私は野党立場でも非常にけっこうではないかというふうに考えられるわけでございますが、ともかくこの会議に臨む私どもの——私個人でございますけれども、今度はもちろんアメリカ日本との間にも、私は若干意見の食い違いも出てくるのではないかというような予感もするわけでございます。特に日本経済は、それは大臣の前でこんなことはおこがましい言い分でございますけれども、開発途上国から石油等中心に、四八%、五〇%近くも依存をしておる。依存度においては、おそらくイギリスやアメリカに比較しまして日本は非常に多いわけであります。それだけやはり開発途上国に対しても相互援助といいますか、親身になって日本考えてやらなければならない立場にあると思います。同時に、いま申し上げましたように、エコノミックアニマルなどという好ましからざる汚名を返上いたしまして、日本後進国のために非常に親身に考えているという、そういう姿勢を示す私はいい時期だと思っている。またそういう姿勢を示す適任者として、通産大臣が一番適任者だと私は思っております。それだけまた御期待申し上げるわけでございますが、それに関連をいたしまして、実は中国も初めてこの会議に参画をするわけでございます。中国の参画するメンバー等は、政府のほうでもお知りになっておるのでございますか。
  9. 田中角榮

    田中国務大臣 国連下部機構中国も加入をいたし、今度はこの大きな会議にも代表団を送るということは報道されておりますが、現在まだ中国側派遣代表団陣容等はきまっておらないようでございます。しかし、中国が初めて経済会議正式メンバーを送るということでありますので、その意味でもこの会議は意義あるものだ、こう理解をいたしております。
  10. 小林進

    小林(進)分科員 これは事務当局にお尋ねするのでありますが、この中国開発途上国におけるいわゆる南北といいますか、いわゆる先進国に属するのか開発途上国に属するのか、これをひとつ……。
  11. 田中角榮

    田中国務大臣 これは中国というよりも、第二次大戦が終わった一九四五年から、国連下部機構としてIMF世銀、第二世銀、ガット、いろいろなものができたわけであります。そういう機構国際貿易経済、また財政国際流動性等確保して、平和に寄与してまいったわけでありますが、ソ連は上部機関であるところの国連には加盟しておりますが、IMF等には加盟しておらぬわけであります。しかし、中国が今度いろいろな会議加盟をせられるであろう、そういうふうに考えております。その中で加盟国は百何カ国という非常に大きなものでありますが、やはり主要国といえばアメリカ拡大EC日本、こういうことであります。それにソ連と中国を加えて五つの結晶の核、これは世界的に認められておる考え方でございますから、経済指数とか国民所得とか国民総生産とかいうもので中国を律するわけにはまいりません。中国の持つ底力、いろいろなエネルギーというものを考えて、これがいままでいわれておったような南北、持てる国の代表、主要工業国としての北、それから開発途上国、中進国としての南というような大別した中で中国というものを、これが南である、北であるということは正当な言い方ではないと思います。これはやはり持てる国中国、こういう理解でございまして、いままで俗に言われたものというよりも指導的勢力をなす一つの大国である、こういうふうに理解いたしております。
  12. 小林進

    小林(進)分科員 いまの大臣中国の位置づけは私もそのとおりだと思っているわけでありますが、ところで私どもも中華人民共和国へ数度訪問いたしておりますけれども、それも大臣御承知のとおりであります。向こうには周八原則というものがございまして、アフリカ等の開発途上国に相当の援助をいたしておるのでございまするけれども、その援助のやり方は無利息であったり非常に長期のものであったり、われわれには想像もつかないような非常に手厚い援助方法を講じているわけでございますが、それはそれにいたしましても、今度このサンチャゴの会議中国が初乗りをやってくることになりますと、国連へ喬冠華代表が乗り込んできて格調の高いといいますか、大臣はどうお考えになるか知りませんが、われわれに言わせれば、非常に格調の高い演説をぶっているわけでございます。今度も入ってまいりましたら、中国が原則論としてあげている、中小国といいますか開発途上国開発途上国の中においても特に貧困国が二十五あるそうでございますけれども、そういう国の立場に立って、従来の開発会議とは相当異なった、一つのイデオロギーに基づいた論争を展開するのではないか、私はそれを非常に心配しているわけでございます。いま日中の国交回復等が盛んに叫ばれておるときに、たまたまその援助方式とか金融措置等について、またそこで日本中国が、思想的違いといいますかやり方の違いで対立するようなことは、あまり好ましくないというふうに私は考えておるわけです。その意味においても非常に進歩的な通産大臣がおいでになるのは、私は期待するのでありますけれども、そういうふうな中国の出方とか中国等の考え方に対して、あらかじめもし大臣のほうに何か腹がまえがおありになったら、私はこの際承っておきたいと思います。
  13. 田中角榮

    田中国務大臣 御心配のような状態は全然ないというふうに考えております。これは国連の上部機構で議論をし、討議をされる場があるわけでございまして、下部機構は専門的な問題を議題として、延べ払いの額及び条件等援助の量及び質をどうするかということとなります。先進国は国民総生産の一%を開発途上国に拠出をしようということになっておりますが、わが国の場合はすでに〇・九三%ということでございますから、GNPに対する援助額については各国には全然負けておらないわけでございます。しかし政府ベースの援助については、DACの平均数字が〇・三四%でございますが、わが国の政府援助というものは幾らあるかといえば、〇・二三%でございますから、これは非常に小さいわけでございます。総ワクは大きいけれども、つまり量はいいけれども質が悪い、こういうことでございます。ですから、この質を〇・二三を〇・三四に上げなければいかぬという問題が一つあります。それに対して私は、日本は基本的にはそうしなければいけないと考えておりますし、それよりも以上にすることが望ましいということも事実でございます。政府ベースの援助という場合、軍事援助に付帯する政府援助というのがアメリカなどにはあるわけです。ヨーロッパの拡大EC、西ドイツ、イギリス、フランス等はかつて植民地だった国との特殊な関係がある。それでスターリング地区に対してイギリスが無関税で出したり入れたりという特殊な関係がありますが、日本は領土権とかそういう植民地を全然もっておりませんから、やはりコマーシャルベースが先行する。特に前には賠償に付随する援助がありましたから、そのときにはこのウエートは高かったわけですが、賠償がだんだん償還されると、これは少なくなっていく。そういう特性ということをやはり事実をもととして述べなければならない。これは理解を求める、事実を認めてもらうということが必要だと思います。  もう一つは、四五年から四分の一世紀以上やってまいった経済機構としてはIMF世銀、第二世銀があるわけでございますが、先進工業国になれば、IMFのスタンドバイとかSDRの制度等でもって、ポンドの暴落が防げたりフランの暴落をささえたりしておるわけです。中進国というのは、第一世銀、これは七・二五%だと思いますが、こういう条件で出している。七、八年前には五・七五%だったと思います。第二世銀は無利息、五十年であります。これは、開発途上国向けの機構であります。ですから、日本のコマーシャルバンク、それから開発銀行、輸出入銀行、中小企業金融公庫、商工中金というふうなのと同じような制度が国際的にもできているのでございまして、それを抱き合わせれば、無利息、五十年と第一世銀の金をフィフティ・フィフティでやれば、少なくとも三%台に利息はなるわけでありますから、国とプロジェクトの内容によって組み合わせをいろいろ考えておるわけであります。ですから、非常に専門的なものですから、イデオロギーが先行して国連の場で討議をするようなものにはならないと思うのです。  ただ中国も、御指摘のとおり、六〇年代までは、無利息、五年ないし十年据え置き後十カ年返済というのが普通の条件で、ものによっては二十年ないし三十年の長期返済、こういうことをやっておるわけですから、こういうものでばらばらにいくところに問題があるわけです。中国とソ連がぶつかると、アスワンハイダム一つ考えてみれもいろんな問題がありますから、特にアジア地域において日本が少なくともイエロー・ヤンキーといわれないようなことをするには、日中というものが計画的な投資や計画的な援助ができるとすれば、平和のためにも寄与しますし、経済開発のためにも大きな貢献をすることができる、そう思っておりまして、国連の場で議論するようなことは杞憂にすぎない、私はそんな前提を持っておをわけでございます。
  14. 小林進

    小林(進)分科員 この問題ばかりにこだわっているわけにいきませんから、これはそろそろ結論に近づけたいと思うのでありますけれども、いまの大臣のお話を承りまして、私も一つの杞憂がなくなったような気もするわけでございますけれども、これは新聞でございますが、この中には、援助資金に何か大蔵省と外務省と通産省の間に若干の意見の違いがあって、通産省は日本からの商品とかサービスの購入に援助資金を充てたい。   〔主査退席、渡辺(肇)主査代理着席〕 そういうことでないと、国際競争力が弱いプラント輸出がどうも将来減る懸念があるというようなことで、若干通産省は商業ベースを中心にお考えになっているような記事があるものでございますから、心配して聞いたわけでありますけれども、いま大臣の御答弁でその点は明確になりましたが、ともかくアジア開発問題等について特に中国と手を握って、計画的に開発融資援助ができればというふうなおことばは、これは私はたいへん重大な御発言だと思うのでございまして、そういうことはぜひひとつ進めていただきたいと考えております。  そこで、これは最後の結論ですが、サンチアゴ大臣の御滞在がどのくらいになるか、先ほども衆参両院許可ということになりますれば、明確にお答えを得るわけにもいかないと思いますけれども、その滞在の期間に、できれば中国代表等と話し合いをしていただきますと、これが政府間交渉の側面ということになるわけでございます。中国代表がどの程度のランクの方がお見えになるかわかりませんが、単なる事務屋程度であれば、団長が、通産大臣が直接お会いになるということも、国と国との関係になりますからあるいは困難かもしれませんけれども、私どもは全然情報もとっておりませんけれども、ともすれば日本貿易あたりのキャップであります劉希文氏あたりがあるいは出てこられるのではないかということも考えておるわけであります。まだわかりません。そうなれば政府間交渉といいますか、大臣がお会いになっても決してこちらの、大臣のこけんに関するというような問題にもならないのでありますから、ひとつそこで会っていただいて一そうしていま日中国交のどうも正面の窓口が開けない、もたもたしている、どうも台湾のほうへ半分顔を向けて、北京のほうへ半分顔を向けようなどというような外務省、政府考え方では、これからの日中問題は解決いたしません。しかし、大臣政府の一員でありますから、通産大臣だけはこっちの顔をやめて北京のほうへ向きなさいということも私は無理だと思いますけれども、こういうチャンスを生かして、ひとつ貿易面からの日中の国交問題を促進をしていただけないか。特に大臣は、国会におけるそれぞれの委員会で対中国の問題については相当勇敢な発言をされているのでございますから、これをひとつ実施に移すという機会にしてもらえないかどうか、これは半分お願いを兼ねて御所見を承りたいと思います。
  15. 田中角榮

    田中国務大臣 私はまだ会議出席許可を得られるかどうかもわからないのでございますが、出席ができれば、中国側の代表も来られますので接触の機会はあると思います。しかし、それはこちらのほうから押しつけがましくそういう先入観を持ったり、そういう工作をしたりということではなく、すなおな気持ちで接触が可能であればそれはもう当然接触はある、こう思います。向こうはいま、代表団というよりも、この重要な会議の副議長を出していただきたいというような要請もあるようでありますから、副議長、議長になれば当然こちらから表敬にも参らなければならないわけでございます。これはもう自然に向こうからお呼びがあればもう幾らでも接触いたしますし、こちらも会う機会はあると思いますが、何かこれをチャンスだと心得て、また日本人的なたくましさを発揮するような、そういうことを前提には私はいたしておらないわけでございまして、まさに水の流れるがごとくということでひとつお考えをいただきたい、こう思うわけでございます。
  16. 小林進

    小林(進)分科員 確かにおっしゃるとおりでございますので、水が流れるが、その流れを変えることもまたたいへんでございますので、ひとつサンチアゴで水の流れを変えていただくような政府間交渉が行なわれる、それが実現したとすれば、私は日本国内にほんとうにさあっと太陽が差し込んだような明るい気分を日本国民全部に与えると思いますので、ひとつ御建闘をお祈りをいたしまして、次の問題に移りたいと思います。  いま中国の化合繊ですか、工業視察団が、団長が李正光さん、お見えになっているようでございますが、何か繊維の視察においでになったのが化学繊維のほうにどうも目的が変わったようでございまして、これも私どは詳しいことはわかっておりません。わかっておりませんが、何か向こうのほうでは二百億円程度のプラントを買い入れたいというくらいな御希望もひそかに持っていられるかということでございますが、中国側に希望を持たすについても、問題は日本政府だ、例の吉田書簡でございます。そういうことで、関係業者あるいは関係の金融機関は、どうも日本政府のほうで輸銀の融資というようなところまでまだ踏み切れないならば、何か民間の銀行ローン等でも、シンジケートといいますか、そういうものをつくっても中国の要望に応じたい、そういう動きも私はあるやに聞いているわけでございます。もちろん私どもは確かな情報源を持っているわけではございませんから、詳しいことはわかりません。こういうことについて、主管大臣としてどのようにお考えになっているか、伺いたいと思います。
  17. 田中角榮

    田中国務大臣 いま李正光氏を代表とする十名余の方々が来日をされて、各工場また産業界と接触を続けておられることは承知をいたしております。いま御指摘の商談の成約がどのような状態になっているか、まだ正確にきまってはおらないようでありますが、プラントの問題、幾つかあるようでありますし、また貨物船その他の商談も進んでおるようでございます。幾つかはキャッシュでもって支払うというようなことを言っておられるようでございますが、いまあなたが述べられたとおり、これは民間金融機間のシンジケートをつくれば幾らでもできる話でございますが、そんな回り道をしなくても、輸銀という制度があるわけでございまして、輸銀は申請があればこれを認めます、こういう政府機関に対する運用に対して政府は明確な姿勢を示しておるわけでございますので、要請を受ければ事は直ちに進むわけでございます。民間もいろいろな問題に対して説明をしておるようでございますし、私はこの機会を契機として相当な商談がまとまるものだ、こう期待をいたしておるわけでございます。
  18. 小林進

    小林(進)分科員 この問題に関しまして、私も、ぜひとも輸銀を通じて中国側に貿易の再開ができるような方式に何とか進まないものかという、実は祈るような気持ちで見ているわけであります。問題はやはり吉田書簡でございまして、これも私どもは外務大臣通産大臣の御発言を非常に関心を持ちながら聞いているわでございます。十五日の予算委員会でも、外務大臣通産大臣が同じ吉田書簡の問題に対してお答えになっている。外務大臣はこういうことを言っておられるのですね。一個人の手紙を政府として廃棄する理由も方法もない、しかし吉田書簡は私信であり、すでに死滅している、それで十分ではないか、これが外務大臣の言い分ですね。通産大臣は、政府がある時期に吉田書簡に拘束されるとの態度をとったのは事実だ、国際情勢の変化に対応して現在は拘束されないのだから、前との比較で態度変更というならばそうとってもよい、こういうふうにお答えになっているわけでございます。これは通産大臣のほうが明確なんです。私信だということは、何もいま外務大臣がおっしゃったことではない。前から政府は言っている。私信だから拘束されない、こう言いながら、その私信が実は公文書よりも非常に強くて、実際上にはこれが拘束して一切の貿易を阻害していたわけでございます。だから、いまここへまいりまして、またこれは私信だから、それはもう死んだものと同じじゃないかというふうなことを言われても、相手方はまともに受けないわけであります、私信だというのは十年一日のことばでございますから。しかし、その点通産大臣は率直に、確かに前には拘束した、この私信によって拘束したこともある、けれどもいまは国際情勢の変化によってこれは変わったととってよろしい、だからいまは拘束しないのだ、こういうふうにとれるわけであります。とれるわけでございまするが、ただ私はここでお願したいことは、ここまで通産大臣が踏み切られたのであれば、いま一歩踏み込んでそれは廃棄するという明確な御返答がいただけないものかどうかということでございまして、こういうことは大臣に言っては失礼でございまするけれども、ちょっと説明さしていただきますと、日本人は、これは民族性といたしまして名誉心が非常に強いのでごいます。主はずかしめられれば臣死す、私どもははずかしめられれば死するくらいなもので、さむらいの魂を持っております。悪く言えばやくざ魂でございましょうが、これは日本人の本質だと思う。ところが中国人は、この日本の名誉とはちょっと違うかもしれませんが、メンツというものを非常に重んじまして、メンツの国です。メンツがそこなわれれば利害得失は言わぬ。どんなに痛かろうとも、損がまともにわかっても、一たん失われたメンツが回復するまでは手を出さない。これは東洋的民族性でございます。そこへ来ると、アメリカをはじめヨーロッパというものは、ヨーロッパの合理主義といいますか、その点は損得、欲得といいまするか感情は非常に明らかでございまして、ニクソンさんを例にとって悪いのですけれども、きのうまでは反共の巨頭であった。口を開けば中国罵倒論、これがアメリカの損得、そろばんが合わないとなれば、さっさと日本の頭越にし北京へ飛んでいく。これはヨーロッパ的合理主義。こういう合理主義はヨーロッパに通っても中国には通用しないのでございまして、やはり吉田書簡というものに対して、一たんメンツを失ったというこの中国の民族性というものは、なかなかこれは深刻でございまして、これは損得以上のものであります。しかし、これから日中の親善を深めていこうというような場合には、そういう相手国の民族性といいまするか、一番大切な国民感情というものはよく察知をしながら、私は進めていかなければならないと思うのでございます。通産大臣の御意図が、事実上これは廃棄にひとしいじゃないか、そういうお気持ちで発言されているのであっても、明確に相手国の気持ちに触れるような発言でなければ、なかなか応じてこないのではないか。これだけの発言では、まだ中国は、それなら輸銀をひとつ活用してくれというような申し出はしてこないと思います、失われたメンツの回復になりませんから。私はその意味においても、通産大臣は思い切って、吉田書簡は私は廃棄をするというツルの一声を出してもらえないものかどうか、これは私のお願いでございますがね。
  19. 田中角榮

    田中国務大臣 小林さんの言われること、よくわかります。よくわかりますし、また中国側が考えておられることもよくわかります。それは私も日本人の一人でございますし、日本中国文化の中に今日を築いておるのでございますから、案外、中国人と日本人が違うようなことを言われましたけれども、多少は違いますけれども、流れとしては、東洋思想の中で、ずっと東洋文化の中で生きてきておりますから、これは私は大筋においては同じ考えを持ち、お互いが理解できると思うのであります。私は吉田書簡などというのはなるべく触れたくない、こう思っているんですが、どこへ行っても吉田書簡の質問が出るから、答えていわくということにならざるを得ません。吉田書簡というのは、御承知のとおり、三十八年八月——三十八年は私は大蔵大臣でございましたが、クラレのビニロンプラント輸銀融資が行なわれたわけでございます。ところが国府との関係が悪化して、三十九年二月に吉田元総理の訪台が行なわれて、三十九年の夏ごろ書簡が出たわけでございます。ちょうどそのころ、ニチボーのビニロンプラント、日立造船の貨物船の輸出契約があったにもかかわらず、これが破棄されたという歴史を持っているわけでございます。そういうものでございますから、歴史的な事実を追っていきますと、それはなかなかめんどうな問題であることはよく理解できます。  私は、この間も商工委員会で答えたのですが、通産省は、商売を促進する立場でございますから、これは体制が違おうと何であろうと、商売するのです。案外民間ベースの契約などというものは破棄でも何でもします。たとえばA社と契約します、こう契約をしておきながら、ネゴシエーションが合わないからB社に契約します、A社とは契約を破棄します、こういうことは商工為として簡単にやれるのですが、どうも吉田書簡は通産省の所管よりも、同じ佐藤内閣でございますが、外務省の所管に近いということで、やはり佐藤内閣、いろいろな議論をしながら、今日、吉田書簡は私信でございまして、政府がこれを取り消すとかなどいう筋合いのものではございません、こういう統一見解になっておるわけでございますので、閣員の一人としてはそれをやはりオウム返しにお答えする以外にないということは、ひとつ御了解いただきたいと思います。  しかし、何かもっとわかりやすいことばはないかという御質問がありましたので、あまりいいたとえ話じゃございませんが、そのときは公明党の代表の質問でございましたから、公明党さんとも言えないので民社党の名前をおかりしまして、民社党は、自由民主党と対決をして、彼らは敵だ、こういうことを前委員長が述べられた、しかし今度は民社党さんと仲よくなることになって、いよいよ手を握ろうというときに、ではあの前委員長の公式発言を取り消せと言っても、委員長はいまはこの世にいないという場合とひとしいのでございまして、これは社会党さんにもみんな通ずる問題でございます。しかし、それは相手国にとっては相当な大きな問題であることはわかりますが、時の流れの中にこれを消化する以外に、いますぐこれを解決しなさい、明確な、世界じゅうがわかるようなことでもって言いなさい、それは破棄だ、こう言われてもなかなか言いがたいのでございます。こう述べましたら、まあ時間がないのでということで、ごかんべんをいただきましたが、きょうも時間もあまりありませんから、どうぞひとつその程度のことで御了承のほどいただきたいと思います。
  20. 小林進

    小林(進)分科員 なかなか明快に廃棄論が出なくて、やはり閣僚の一人として私信論に立たざるを得ないという大臣のおことばもわかりました。ひとつ将来も御善処を心からお願いをいたしまして、次に移りたいと思います。  第三問の、シベリア開発の問題でございますが、第五回の日ソ経済合同委員会が二月の二十一日から二十四日まで持たれて、その中でチュメニの石油開発の問題が取り上げられたということでございますが、これに対して五月の上旬に政府民間の合同の調査団をソ連に派遣をして、そして具体的な調査をおやりになる。通産大臣もこれには積極的な御意見も発表せられて、非常に強力な団を編成したらどうかというふうな御意見もあるというふうに聞いているのでございまするが、しかし一方には、やはり何か外務省等にもまだ消極的な意見があったりして固まっていないようでということも聞いておりますが、これに対する政府の御意見解をひとつ承っておきたいと思います。
  21. 田中角榮

    田中国務大臣 チュメニの問題につきましては、去年あたりからずっと日ソの間において民間同士で話が出ておるわけでございますが、チュメニ問題は非常に大きな問題でございます。これはイルクーツクからナホトカまで四千二百キロにわたってパイプラインを敷設し、また、日本に持ってくるためにはナホトカの港もつくらなければならないということでございます。開発総額は三十億ドル、日本の負担すべきもの十億ドル程度といわれております。七六年でございますから、五年後くらいから二十年間にわたって年間二千五百万トンないし四千万トン供給しようという計画であります。去年わが国は二億二千万トンの石油輸入しましたが、今後毎年一〇%ないし二〇%ずつ伸びれば、ソ連原油が入ってくるころには、その輸入量は総消費量の五%から、どんなに大きくなっても一〇%以下と考えられます。そういう意味では、搬入地の多様化という意味では非常にいい一つのプロジェクトであるということでございます。ただソ連側としても、石油というのは戦略物資でございまして、これはなかなかめんどうな問題でございます。そういう意味で慎重にやってきたわけでありますが、十億ドルの金を出してということになると、ソ連側が考えておるように、日本が長期的に引き取りを保証するかどうかという問題は、全く問題ないのです。もうすでに三億三千万トン去年搬入しておるのでございますから問題はない。これは政府で幾らでも保証いたします、こういうことでありましたが、これは民間をどうするのか、政府がどうかむのかという問題もありますし、それから外国がどうかむかという問題もありますので、そういう意味で、アメリカでも石油は非常にうるさいのです。これは商務省の所管ではなく、国家安全保障会議の議題であるということで、サンクレメンテ会談でも話題になりました。アメリカ政府がこのプロジェクトに介入するということは当方としても初めから予想してなくて、日本が共同開発を行なうような場合には、アメリカ民間商社がこれにかんでも異議はないかと言ったわけです。それは異議ありません、こういうことでありますので、これは東西の緊張緩和のためにも大きなことだと思うのです。そういう意味で私が議題としてこれを提案したわけでございます。その意味で、いままでは三十億ドルのうち十億ドルといわれておったのですが、十億ドル出すには計画の中身をわれわれが確認しなければいかぬ。しかしこれはソ連としてもなかなか国内的にめんどうな問題だと思うのです。これは石油のすべての計画を全部ほかの第三国に公表するということになりますから。公表しなければ話はつきませんよ、こういうことで、グロムイコ外務大臣が来ましたときに、詳細な資料を提出せられたいという要請をいたしましたら、提出をしようということでありまして、五月ないし六月の現地調査というものがおおむね固まってきたわけでございます。向こうはバンクローンを希望しておりますが、バンクローンという形で日本が金を出してどこからでも物を買うというのでは問題もありますので、国債を出したらどうですかという案を提案したのです。ソ連の国債をお出しになったらどうですか、こう言ったら、国債を出すということをいま決定をしておらぬが、参考資料があれば提供を求めたいというので、では幾らでも国債に関する参考資料を出しましょうというところまでいっております。この問題は考えればなかなかたいへんな問題です。しかし私はそこまで話が進んでおる、しかもそのほかまだチュメニだけではなく、すでにもう長いこと森林の開発だとかいろいろなことをやっておりますから、その問題に対しては五月、六月の現地調査というものが終われば展開をするのではないか、こういう感じでございます。
  22. 小林進

    小林(進)分科員 私は、いまの大臣のお話で戦略物資だなどということはいま初めて聞いて、なるほどこれはわれわれが考えるような簡単な問題じゃないと思うのですが、ただ金額だけ見ますれば、十億ドルといったところで向こうから四千万トンくらい買うとしますれば、二十ドルといたしましても八億ドルです。十億ドルの投資はほとんど元金がとれるというくらいで、特にドルが余って始末に困っておられるような日本の現状でございますから、私は大いに積極的にひとつ進めてもらいたいという気持ちがあるわけなんです。なおいま新聞など見ておりますと、マラッカ海峡がなかなか通過も困難だという。また海上汚染の問題があったりして、中近東あたりから石油を購入してくるのも将来だんだん困難になるのじゃないか。それを考えてもこのシベリアの石油を買うというのは、実に私は将来のためにけっこうだというふうに考えて、実は大臣が積極的にこれをひとつ推進していただきたいという気持ちで質問をしているわけでございます。ただアメリカ民間会社もこれにのせるかどうか、これは私は別といたしましてやっていただきたい。  それに関連をいたしまして、この民間の中にはなおかつ、今度はレナ川の近くのヤクートあたりの石炭開発の問題も出ておるようでございまして、これも何か三億の投資で、十年後には三百万トン上質の石炭を購入できるかという問題もあるようでございますし、なおこれに加えてサハリンの天然ガスあるいは大陸ガス等の計画も出ておるようであります。これらについても簡単に大臣の御所見を伺いたい。
  23. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘がございましたように、南ヤクート炭田の開発プロジェクト、これは一九八七年ごろからでございますが、ずっと長期的に輸入ができるものでございまして、こちらの投資というのは三億二千万ドル程度というものでございます。なおまたサハリンの大陸だなの地下資源開発の問題、オハ地区の天然ガスの問題等もございますが、約二億ドル程度のプロジェクトがございます。こういう問題も相当程度実態調査も進んでおりますし、日ソ間の貿易拡大という中で消化できる問題だと考えております。
  24. 小林進

    小林(進)分科員 時間も迫ってきましたけれども、私は以上の問題はぜひすぐやっていただきたい。ときには対中国との関係もどうかなどということも出ておりますれども、それはそれ、これはこれで、私は何もこだわっている必要はないと思うのでございまして、やっていただきたい。先ほどの大臣の御答弁の中にも、四千何百キロのパイプを敷設して、ナホトカの港に持ってきて積み出すという問題もあるし、港の改築等のお話も事実あったと思います。その港の問題であります。これはナホトカ港の近くのウランゲル港も日本の投資で、たしか去年あたりからおやりになっているはずでございますが、そのウランゲル港の新築状況、一体日本がどれくらい投資をしているのか。それと加えて、その相手方の、対岸の港に投資をされて、日本が非常に援助されることは、私は非常にけっこうだと思うのです。けれども、これを受け入れる裏日本のほうの態勢が一体どうなっているのか。これもほんの情報程度でございますけれども、やれ新富山港がもはや名乗りをあげたとか、伏木港が名乗りをあげたとか、秋田の小畑知事が先取りでもって、いま特別契約を結ぶために奔走しているとか、あるいは岡山の振興開発のため、岡山知事と鳥取知事が一緒になって、鳥取の何とかというところにいまやっているとか、非常に大騒ぎをしているようでございますが、私は、その大騒ぎ非常にけっこうだと思うのです。これを受け入れる裏日本の港もこの際やはり考えていただかぬと、私は仏つくって魂入れずになると思います。そういう面も全部含めて、大臣から御所見を承っておきたいと思います。
  25. 田中角榮

    田中国務大臣 ウランゲル港につきましては、七〇年の十二月に契約をいたしまして、協定が成立をいたしまして、来年一ぱいに完成をするということでございます。これの協力資金は八千万ドルでございます。  いま対岸貿易ということで、日本海側のお話がございましたが、これは秋田、酒田、新潟、それから金沢新工業港、敦賀、ずっとございます。これはもうあってけっこうでございます。お互い新潟県人でございますが、新潟港も新潟東港が完成間近でございますし、東京−新潟間三百キロ、六千億の巨費を投じて上越新幹線も着工するわけでございますので、これも広域行政とか、新潟−東京間が天然ガスのパイプラインでつながれておりますように、これらの事業というものが一つのパイプラインの方式でもある、こういうふうな考えも当然考えてしかるべき問題でありますので、こういう対ソ貿易、沿岸貿易の拡大ということと、これを受ける側の整備も当然考えておくべき問題だと思い、政府でもしかるべく対処してまいります。
  26. 小林進

    小林(進)分科員 いみじくも大臣、君も新潟じゃないかとおっしゃったのでありますが、私は郷土の関係は離れましても、ナホトカとかウランゲルのほんとうの近道は新潟港でございますし、そこへまたいま新幹線が入り、関越高速道路が入り、表日本とも近距離でございますから、裏日本の中でも中心港というものをこの際ひとつつくり上げて、これをきちっと受け入れる。新潟港からパイプを入れて石油を自由に輸送できるようにするという構想が必要だと思うのです。先ほど言いましたように、新潟であるということを離れましても、地理的にも環境的にも一番重大なんじゃないか。そういう構想で——相手の港は八千万ドルと言いましたが、ほんのわずかな金ですね。もっといっているのかと思いましたが、八千万ドルで対岸の港をおつくりになった。受け入れる日本側の基本港というものができ上がっていない。どうも手おくれじゃないか。そのときになって騒いでもおそ過ぎるじゃないか。ひとつ大臣の遠大な理想で関係知事等も督励をしていただいて、こういうものの規模を改めて、もっと大きな基本港をつくり上げるような構想にもっていくように御指導いただきたいというふうに考えているわけでございます。  時間がなくなりましたので最後の一問でございます。裏日本の沿岸貿易に関係をいたしまして、裏日本というのも実はおかしいので、大陸に臨んでいるから、ほんとうの表はむしろ日本海だということを私はしばしば言うのでありますけれども、それに対しましてソ連も非常に力を入れておりまして、四年後か何かに裏日本のどこかに事務所を設けたい、そして裏日本貿易を円滑にしたいという希望が出ている。ソ連側はきっとナホトカかウランゲルかになりましょう。それに対応する事務所を新潟かどこかに設けたい、こういう希望があるのでございますが、どうもそれに対して通産省の御態度と外務省の御意見がまだ一致をしていない。むしろ外務省は反対をしているんではないかというふうなことを聞いておりますので、ここら辺の事情をお尋ねしておきたいと思うのであります。
  27. 田中角榮

    田中国務大臣 通商代表部の増員とか、主要ソ連鉱山の日本における事務所の認可とか、それから大阪に通商代表部の支所を設置したいとかいう二、三の要請日本政府側に出されておりますことは事実でございます。その中で、通商代表部の増員というのは、本月の二十二日に決定をいたしました。あとは、私とソ連側代表とが会いましたときも、新潟にも公団の支所か代表部か何か置きたいという意思もはっきりしておりました。例の新潟−ハバロフスク間の航空路がすでに開設をしておりますので、そういう意味で、特に六十五億円もかけていま新潟空港の整備をしております、こういう話をしましたら、こちらもぜひつくりたいのだというようなこともございましたが、新潟の前に、大阪というのを一つ出しておるのでしょう。そういうような問題もございまして、この中で、こちらからも要請しているのがございますから、外交上そちらも認めてくれればこちらもというような、いろいろなことはあると思います。そういうことで、まだ解決しないものもございますが、徐々に解決しつつある、こういうことで、外務省が猛烈に反対しているというようなことはないのでございますから、その間は政府は一体でやっておりますから、どうぞひとつ御了解のほどをお願いします。
  28. 小林進

    小林(進)分科員 そういたしますと、代表部を置くことは決定をしましたけれども、場所はまだきまらない、こういうことでございましょうが、設置する期日とか場所はどうなっているのですか。
  29. 田中角榮

    田中国務大臣 ソ連の通商代表部は東京にあるのでございまして、増員の要求がまず第一に出ておったわけです。人をもっとふやしなさい、こういうことでありまして、こちらもモスクワにおけるジェトロの人員を伸ばしてもらいたい——ジェトロはまだその設置が認められてないようでございますが、あとは主要公団日本における事務所をいろいろなところにつくりたいとか、東京だけでなくて大阪に通商代表部をつくりたいというような問題があるのですが、これはまだ未解決でございます。未解決でございますが、いろいろな要求が出ておる中で、東京の代表部の増員だけは実現をした、こういうことでございます。
  30. 小林進

    小林(進)分科員 私の言うのは、その大阪の代表部、東京の代表部は別にいたしまして、そのほかに、裏日本に、小さな連絡所といいましょか、沿岸貿易を主体にした事務所を設けたいという要望が出ているのでございます。それで、向こうはそれをナホトカかウランゲルに置きたい。これに対して日本の外務省が反対をしている、こういう問題であります。
  31. 田中角榮

    田中国務大臣 そういうものもございます。先ほど申し上げました主要公団日本における事務所をつくりたいとか、大阪をつくりたいとか、沿岸貿易のために裏日本の一県に何かつくりたいというのはございます。ございますが、それは順位からいっても三番目、四番目であるということでもございまして、これは私とソ連代表と話したときも、つくりたいということを言っておりましたから、そういうことはよく理解しておりますが、まあ先に申し入れておるものから順々と解決の方向にということで、いますぐどうこうという問題にはなっておらないようでございます。
  32. 小林進

    小林(進)分科員 裏日本にとってはソ連貿易はたいへんな問題でございますので、順序、序列があることは大臣の御答弁でわかりましたが、どうかひとの今後ともぜひ実現するように御奮闘賜わることをお願いいたしまして、時間が参りましたので私の質問を終わりたいと思います。
  33. 渡辺肇

    ○渡辺(肇)主査代理 川崎秀二君。
  34. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 きょうは日中国交回復への通産大臣の心がまえとか、その他日中問題について、経済問題よりは、将来わが党の重要人物として、また次期政局への展望を兼ねて、田中通産大臣のお考えをいろいろ伺ってみたいということであります。もう佐藤内閣も終わりになりますので、むしろ通産大臣の将来を激励するという意味での質問でありますが、少々アップツーデートの問題もありますので、あるいはそちらの政府委員から最初にお答えいただきたい。  一、二ありますのですが、けさのある新聞によると、世界的な経済人の集まりであります世界貿易センター連合というのがあるそうですね。急なことで、あるいは答えられないかもしれませんけれども、たぶん、私の想像では、河野とかいう二世がつくった世界一の建物ですね、百十何階ですか、親子建物、それが世界貿易センター連合のように思うのですね。それは、各国の商工会議所や各重要商社がだんだん加わりまして、いまでは八十数カ国になっている。これが、六月十二日からオランダのロッテルダムで開く貿易センターの総会に中国を招請する、これは私は、あまり看過のできない世界経済発展の重要なモメントになるというふうに思うのです。というのは、モスクワでも近く数十階の建物、ソビエトの貿易センターというものを建てる。日本ではあそこの浜松町のがそうですね。ですからそういう意味での横断的な連携ができれば、将来の国連経済統計やその他にも大きく影響してくる、いいことだと思うのであります。あれはけさの新聞によると松本学さんが会長で、こういう提議を日本が主導権をとって出すということで、たいへんけっこうだと思っているのですが、こういうものがありました際には、民間人の集まりでございますが、政府も支持するのですか。いきなりで恐縮かと思いますけれども、政府委員の方でお答えが願えれば……。
  35. 山下英明

    ○山下政府委員 世界貿易センター連合で中国を招請するというお話は正式にまだ聞いておりませんで、いま先生から伺った新聞情報でございますが、世界貿易センターは御承知のように通産省の認可団体として数年前から日本にございまして、浜松町のビルを建設し、そもそもはニューヨークから発生してアメリカで西海岸に及び、いまは御指摘のとおり八十数カ国になっております。港湾、それから関税、その他貿易、それから経済情報の交換、こういう仕事を世界的にやろうといっておりまして、もし中国がそういうものに加盟されれば世界貿易センターの仕事は強化されると思います。いまのお話は正式に伺いましてからまた部内で相談したい、こう思います。
  36. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 ということは、そういうことが正式に招請されれば望ましいということになりますか。それだけでけっこうです。
  37. 田中角榮

    田中国務大臣 もう中国国連加盟しておるのでございますし、日本も日中間に対しては国交の正常化をはかろとしております、貿易は大いに拡大するという考えでございますから。また先ほどの質問者にも申し述べたとおり、世界の経済問題とかいろいろな問題を国際的に論ずるときに、日本アメリカ拡大EC、それに中国、ソ連というものを加えないならば、とても議論ができないという現実でございますので、これは加盟されることは望ましいし、政府としても国際機関に入られることは望ましいという考えであります。
  38. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 それでけっこうなんですが、私はいろいろなことを少しずつ研究していて思いますのには、国連の統計のうち一番あやふやなのは共産圏の中の国民総生産、あるいは一人当たりの国民所得、さらに二国間の相互貿易の統計というものがないわけですね。これが貿易センターに加盟をするというようなことになりますれば、自然に類推の統計がだんだん基礎ができてファンダメンタルな要素が非常に加わってくるというふうに希望しておりますので、これはぜひ実現をしたいものだということで、通産省もそういう民間的な動きがありました際にはぜひ協力、かつ支持してあげてもらいたいということであります。この質問はそれだけでございます。  その次は、すでに御承知と思いますけれども、目下中国から化合繊の工業を視察する団体が参っておりまして、李正光という人が団長で先般来、倉敷それから四日市等の石油コンビナート、あるいは化学繊維工場を視察中でありますが、今度私は中国も非常に変わったなという印象を受けましたのは、新聞を見まして、タラップをおりてくるのにせびろで来ています。ネクタイを締めて、人民服でない。これはどういうことか知りませんが、やはり国連加盟後、ことに純経済分野の活動に対しては、世界各国と調子を合わせようという意図もあるかと思うのですね。そういう純粋の技術研究団が来ましたにもかかわらず、来ました翌日には恵比寿の日中備忘録東京事務所の前に右翼と見られるところの者がトラック二台に便乗しまして、中国代表団などは帰れ、あるいは岡山の駅では相当にいやがらせをやったそうであります。  私は、これは警察当局への質問が当然でございますが、すでに分科会で終わっておるということでございまして、関連として、これを受け入れたるものは民間の日中覚書貿易事務所並びに関西の国貿促事務所ではございましょうが、ようやく日中国交機運が高まってきておるときに、こういう経済交流がひんぱんに行なわれようというやさきに、非常ないやがらせがある。ことにその中には。岡山の駅頭では暴力は振るわなかったが、寸前の騒ぎもあったということで、非常にこれ残念なことだと思うのであります。これはひとつ田中通産大臣が広い通産行政の中での一環のこととして、やはり閣議でも御発言をいただいて、そして警察の取り締まり強化並びに事前の、何といいますか摘発といってもなんでございますから、そういうものが起こらないような措置を講ずるように御配慮いただきたいという意味での質問でございます。通産大臣の御所信を承っておきたい。
  39. 田中角榮

    田中国務大臣 中国のみならず、外国から日本を訪れた人に対していろいろな問題を起こすということ自体、はなはだ遺憾なことでございます。また、今度はそのようなことはないように警備当局にも要請をいたしておるわけでございますし、警備当局も相当万全な体制をとっておったわけでございますが、車を普通の外交団ならば提供するといってもバスに乗って見られるとか、いろいろな市中の機関を使われるというようなことで、やはり警護にもむずかしいところもあったようでございますが、その後はバスにも同乗するとか、警備にも万全を期しておるようでございます。これはもうほんとうにこういう問題が起こるということは日本全体の問題として考えなければならない問題でございますし、警備当局も万全の手配をいたしておりますということでございますが、少なくとも日本と貿易をしょう、日本の品物を買おう、こういって来られるお客さんでございますし、非礼なことがないように、遺憾なことがほんとうにないように、万全の体制をとってもらうように将来もいたしてまいりたい、こう考えます。
  40. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 ただいまの御答弁で大体私の問わんとするところはもう大かたはお答えいただいたわけでございますが、実はいろいろな政治情勢を見越しまして中国側もまあ段落をつける、という意味ではございませんが、だんだん日中国交のテンポと合わせていこうという動きが非常に高まってきておるわけであります。近く自動車工業の視察団、これはトヨタグループが行きましたことに対する働きかけのお返しというような意味もありましょう。あるいはその他の技術視察団が相次いで来るような計画でありましたが、今回の化合繊工業視察団は全く純粋な技術の方だったものでびっくりしたのか——たいへん北京との連絡もよろしいようであります。田中通産大臣のことでございますから早耳で全部御承知かと思いますが、約一カ月ほど前から日本と北京との間の電話が非常によくなりまして、いままでは一日に二時間くらいしか連絡がとれなかった、朝夕一時間、一日二時間だったのが、いまはかけますと、かけて十五分くらいたって出るようなことになりましたので、それで覚書事務所間、備忘録事務所間は非常に連絡が早いわけなんです。そういうことで、こんななら今後はしばらく差し控えたらどうだろうというような意見も出ておりまして、非常に残念なことだと私は思っておるわけでございますが、とにかくそういう意味で、今度のことはぜひ閣議でも御発言をいただきまして、そして警察当局の取り締まりを厳重にするとともに、まあ先般来ああいう連合赤軍ののような大リンチ事件、殺人事件があって、またこれに対して右翼方面が違う行動に出るというようなことがずっと続きますと、非常に憂うべき時勢に到達するのではないかということで、私いま心配をいたしております。こういう点についていま一度大臣の最後の御答弁をお願いしたい。
  41. 田中角榮

    田中国務大臣 自動車それから造船等の調査団が四月ごろ来日をされる計画があるようでございます、未確認の情報でございますが。しかし、日中間のこのような交流がどんどん進むということは非常に望ましいことでございます。それがあのような事件でまた道が閉ざされるというようなことでは、これはもう非常に遺憾なことでございます。われわれ閣内におきまして、また関係省と十分な連絡をとって万全な体制をとっておるつもりでございますが、せっかくの御発言でもございますし、政府部内でしかるべく万全の体制がとり得るよう措置いたすつもりでございます。
  42. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 日中国交回復は、先ほど小林分科員からいろいろお尋ねでございました。小林さんは日中議員連盟の事実上の幹事長役として非常に御活動であり、裏のことも知っておられるので、吉田書簡の廃棄ということについて正面から、からめ手から、何とか答弁を引き出そうと努力をされておるのを拝見して、ずいぶん御苦労なことだと思っておりますが、これに対応する田中通産大臣の御答弁も、佐藤内閣という重しもございまして、非常に御苦心の御発言であるというふうに私は思うのであります。  ただ、私はこの際田中通産大臣にぜひ知っていただきたいことは、やはり経済上の問題は政治の原則よりはあと回しである、何ぼ努力してみましても、たとえば吉田書簡を廃棄してみましても、これはそうでございますね、ニクソンが昨年の七月十六日に訪中するということを決定する前でありましたら、いささか効果のあることだと私は思っておるのでございます。その後はもうすっかり向こうの考え方も、次期内閣を相手にして処理をするということに一切の方針をきめておりますので、したがって何といっても政治三原則、政治三原則の中の台湾条項というものに対する割り切った考え方がなければ日中国交回復というものは成立しない、それが第一である。その先行として平和五原則、平和五原則と政治三原則の台湾条項のからみ合いというようなものが重要でございます。これは御答弁をわずらわすのは、非常に苦しい立場のことでございますから、ただ、政治三原則と平和五原則のほうがはるかに重要であるという私の所説に対して、田中通産大臣はどう考えられておるか。これは現在のポイントである、というよりは少し時局を——写真機ではございませんが、フォーカスは時局の方向に合わせてでもかまいませんから、御答弁をいただきたい。
  43. 田中角榮

    田中国務大臣 日中間の国交正常化をはかりたいという、もう自民党内閣としては決定をいたしております。また、この中国の敵視政策をやめろということは、敵視政策をとっておりません。これは全く友好親善でまいりたいということでございます。二つの中国をつくる陰謀には加わらない、これはもう全く台湾独立運動なんというものはやりません。政府は、このような動きには関与いたしませんし、一切支援などいたしません、こう言っております。日中両国間の正常関係の回復を妨げないこと、これはもう当然のことだと思います。だからいろいろな問題の中で、過去の長い歴史の中にあるこの国民政府との問題、台湾の問題、俗に言う領土の問題、これが一番大きな問題であろうと思いますが、これはもう日中国交正常化の時点でなにしていく、またそうするということ以外にはないのじゃないかということは、佐藤内閣もいろいろの御質問に対して申し上げておるところであります。  これは二年ぐらいかかったカナダと中国との問題のときも、中国と国交回復をすること、すれば、唯一の政府と認めるというのは国交回復ということでございますし、台湾政府というものはどうだと言ったときには、これは正常化ができれば消滅をした問題であるということでございます。第三の問題の領土はどうかという問題、これが二年のうちの十分の八ぐらいかかったようでございます。しかしテークノートしますということで、世に言うテークノート方式がとられたわけでございます。今度は、ニクソン訪中によるニクソン・周総理の声明に対しては、これはもう一歩進めたような大きな字で、テークノートをするというくらいに前進をしたわけでございます。日本は「理解しうる」ですからもっと前進しているわけで、これはもうお隣でございますから、そういうことで、これはなかなか、いまこれをどうこうするといっても、どなたが政権をとられても日本人全体の問題としてやはりこれを議論していかなければならないし、日中両国、二千年の歴史の上に立つ日中をもとに戻そう、もとよりももっとよくしよう、こういう考えが前提になっておりますから、そういう中で消化していくということでないと、私がどんなことを言っても、どういたしますという明確なお答えがなかなかできない、そのくらいむずかしい問題だ、あなたもいまここでおすわりになっておると思って、実は御理解を願いたいと思います。
  44. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 私は、ただいまの御答弁の上に、さらに時期の問題もございますが、やはり台湾問題、日華平和条約の廃棄という姿勢を明確にとるということでなければ、日本の場合はなかなか困難である。カナダとかその他とは、日本中国との関係は違うということを御認識をいただいて、その御答弁は今日はいただかないことにします。私が、次期政局を見通して、田中通産大臣にもたいへん大きな期待を抱いておりますることは、いつか古井君が中国へ参ります際に、党内におきましていろいろ議論があった。その際に、ちょうど私が幹事長室へ参りましたら、雑談の中における田中幹事長のお話の中に、日中国交回復まではやはりわれわれはひけ目がある、土下座外交は困るけれども、中国に対してはやはりこちらは戦争の責任について贖罪をしておらぬ、こういうことを明快に言われたことです。これは当時は、現在の次期総裁候補者と見られる者のうち、十分な認識をしておらぬ者も散見されるように思っておりますが、これはおそらく戦争中召集兵士として非常に苦惨もなめられ、その中において今度の日中国交にあたっては、何としてもやはりあのいまわしい戦争における日本の大陸進出、向こうから言わせれば侵略ということに対しての償いというものをしなければならぬという考え方があなたにあられるということを私は看取したわけであります。そういう心がまえで今後臨まれるならば、日中国交の第一の難関というものは乗り越えられるのではないかという感じが非常にいたしております。まあ現在の内閣がどうなるか、まだ私は知りません。しかし、すでに常識的な世論の大勢がもうあるわけでございますから、その中において、自局党の従来の体質を脱皮するためにも、庶民的なカラーを持つ党人的な内閣というものが生まれてほしいというのが、私の非常な強い念願でございます。そういう意味での期待感も持っておりますので、この日中国交にあたっての贖罪意識というものがこの機会に明快に公にされることはたいへんいいことではないか。私の質問はこれで終わりますから、ぜひ明快な御答弁をいただきたいと思います。
  45. 田中角榮

    田中国務大臣 私も昭和十四年から昭和十五年一ぱい、一年有半にわたって満ソ国境へ一兵隊として行って勤務したことがございます。しかしその中で、私は人を傷つけたり殺傷することがなかったことは、それなりに心の底でかすかに喜んでおるわけでございますが、しかし私は、中国大陸に対してはやはり大きな迷惑をかけたという表現を絶えずしております。これは公の席でも公の文章にもそう表現をしております。迷惑をかけたことは事実である、やはり日中国交正常化の第一番目に、たいへん御迷惑をかけました、心からおわびをしますという気持ち、やはりこれが大前提になければならないという気持ちは、いまも将来も変わらないと思います。日中間二千年の歴史、もっともっと古いかもしれません。しかも日本文化は中国文化によって育ったということでありますし、同じ基盤に立つ東洋民族でもございますし、恩讐を越えて、新しい視野と立場と角度から日中間の国交の正常化というものをはかっていかなければならないのだ、そういううしろ向きなものに対してはやはり明確なピリオドを打って、そこで新しいスタートということを考えていかなければならないだろう、私はすなおにそう理解しておりますし、これが中国問題に対する一つの信念でもあります。
  46. 渡辺肇

    ○渡辺(肇)主査代理 山口鶴男君。
  47. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 ただいま、党は違いますが、同じ国会の大先輩として尊敬をしております川崎先生が、日本中国との数千年の歴史的な関係を踏まえまして、日中国交回復に臨むきわめて次元の高い御質問をされておりますのを拝聴いたしておりました。  私が取り上げようと思いますのは、これも歴史的には古い問題であります。いまわが国が産業公害に悩まされ、わが国の環境をいかに保全をするか。われわれの子孫に対していかにすぐれた環境を譲り渡すことができるのかという意味では、公害の問題は当面する大きな課題でありますが、その中でも、これからお尋ねしようといたします渡良瀬川の公害は、公害の原点といわれ、戸年公害といわれた問題であります。この渡良瀬川公害につきましては、昭和四十三年三月に、経企庁が中心となりまして、水質審議会渡良瀬川部会におきまして、銅の環境基準は〇・〇六PPMというものを一応決定いたしました。銅によって汚染された水田の客土事業を行なう。また〇・〇六PPMの環境基準を守るための治山工事あるいはその企業においてとりますところの事業、こういうものを一応決定いたしたのであります。  しかるに、その後この地域におきまして、昭和四十五年度産米から、最高〇・九三PPMのカドミウム汚染米が検出されました。次いで昭和四十六年度産米におきましては、最高一・五三PPMのきわめて高濃度のカドミウム汚染米が検出され、国の安全基準であります一・〇PPMをこえる汚染田が三十ヘクタール、一応国がカドミウムの要観察地域として指定をいたしまするところの基準である〇・四PPM以上のいわゆる準汚染米が検出をされましたたんぽが百四十一ヘクタール、合計いたしまして百七十一ヘクタールにのぼるカドミウムの汚染地区、カドミウムの汚染米が検出をされた、こういう状況であります。銅による百年公害がいまだもって解決されていない、その上このカドミウムの汚染がさらに追い打ちをかけた、こういう状況です。  そこで問題なのは、当然この銅の汚染の原因者はだれかということになれば、これはずばり古河鉱業足尾銅山であるということはもう明確になっています。ところが、そのカドミウムの原因者は一体だれかということがいまだに明らかにされていない。しかし状況を見ますと、銅の汚染の激甚地域が約千ヘクタールにのぼっているわけでありますが、この千ヘクタールの中に、カドミウムのいわば一PPMをこえる汚染地区三十ヘクタール、〇・四PPMをこえる準汚染地区というものはいずれも銅の激甚地の中にぴしゃっとおさまっているわけです。とすれば、これは常識的に考えましても、このカドミウム汚染の原因者は当然古河鉱業足尾銅山ではないかということが当然だと思うのでありますけれども、この問題、私、何回か国会でも議論をいたしましたが、結局通産省のお役人の方々の御答弁は、白とはいえないが黒ともいえない、こういったきわめてあいまいもことした、灰色である、それならその灰色は黒いほうに近いのか、白いほうに近いのかといえば、それもはっきりせぬというような、きわめて非科学的な、また地域住民から見ればきわめて納得しがたい御答弁に終始をいたしておるのであります。  まず大臣、お尋ねをしたいと思うのですが、とにかく公害の原点といわれたこの古河鉱業足尾銅山、百年にわたる地域住民の悩みというものは非常に深いわけです。かつて本院におられました田中正造翁が、生涯をかけて、この問題の解決のために身を投じて健闘されたということは大臣もよく御存じだと思います。これだけ現代の科学の進歩した世の中です。その世の中で、このカドミウムの原因者がわからぬというようなことは、私はあり得ぬと思うのです。この点、原因者究明は当然なさるべき課題だと思うのでありますが、一応大臣としての御所見を承りたいと思うのです。
  48. 田中角榮

    田中国務大臣 法律のたてまえ上、明確な証拠がなければ原因者と断定をするということはできないわけでございます。しかし、鉱業法というものは無過失責任さえも明確に、あの古い法律に明確になっているのでございまして、それだけ鉱山業からくる鉱害というものを未然に防止をしよう、それをしなければならないと考えたことは当然のことでございます。ですから、いま問題として考えられるのは、まず政府がこういう問題にどう対処すべきか。PCBの問題とか新しい洗剤の問題とか、いままで現行法では考えられなかったような新しい化学製品とか、いろいろなものが出ておるわけでございます。そういう意味で、過去にそういうものが原因でと思っておったものが、いま研究をすると別な物質による被害だったというものも幾多ございます。私は理化学研究所に関係しておりましたので、比較的そういう問題はもう三十四、五年前からいろいろなことを聞いておりますし、自分でも承知をしておるものがございます。ですから、紛争が起こるようなものに対してはやはり明確にこれを判断するような機関、少なくともそういう機関をつくらなければいけない。大学が一つの研究室で専門にその地域のものだけやっておるといっても、これが一般的なものにはならないわけでございますので、やはりまず政府機関が組織としてこの原因を究明できるようなもの、私は世界的にも連絡をとりながらもそういう一つの基準をきめるということが一番必要だと思います。  足尾銅山の問題も、もう田中正造先生の問題を出すまでもなく、慶長年間からでございますから、三百五十年間の長きにわたって銅の採掘をやっておるわけでございます。ですから、これに対しては、明確な法律的根拠はないにしても、鉱業法の条文の精神に徴して、古河鉱業は長いこと地元の人たちと協定をしまして寄付金のような名義でいろいろな補償をやってきておるわけでございますが、今日は群馬県、埼玉県、栃木県というあの合流点から、局限された地域ではございますが、相当高いカドミウムの集積がある。たんぽでも、水口があの地域は非常に多いということがございます。これは、新潟の昭電問題が下級審で結審をしまして片づいたわけでありますが、何かそういうものに対して科学的にもちゃんと理解ができるというものをどうしてもつくらなければいけないだろうと思います。今度の無過失賠償責任ということで、金銭賠償の場合はそれでも済むのですが、体罰を受けるという公害罪のような条文をつくる場合には、どうしても明確な因果関係ができなければなりません。そういう意味で、因果関係の推定ということは削除されたわけでございますが、そういう問題で国や地方公共団体と鉱業権者——これは古いことでも全部現在の鉱業権者がやるのだということではなくて、やはり公の立場から、人体に影響するもの、特に健康被害のあるものに対しては早急に結論を出すように努力をしなければならない、そう考えております。
  49. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 実は私も学校は応用化学のほうを出ておりまして、一応化学の問題につきましては関心も深いわけでありますが、銅につきましては明らかになっている。しかし、銅の場合は御案内のように直ちに有毒物質ということではなしに、収穫がいわば減少する。今日まで足尾銅山が地域住民の方々にいろいろな形で補償ないしは補償に類する行為をやってまいりましたのは、銅の汚染によるところの収穫の減少、これについて措置をしてきたわけですが、カドミウムの場合はイタイイタイ病等の例を見るまでもなく明らかに人体に有害な物質である。したがって、厚生省も米の中に含まれるカドミウム一・〇PPM、これをこえるものは有毒物質であるという指定を現に行なっているわけですね。さらに農林省、食糧庁におきましても、〇・四PPM以上のカドミウム汚染米については、これは有害物質とは現行法令ではいえないけれども、しかし、一般消費者の感情も考慮して、現在これは凍結をするという措置をとっております。また、そればかりではなしに、当該農家の保有米についても〇・四PPM以上のカドミウム汚染米については交換をするという措置にも、私ども何回か食糧庁にも参ったわけでありますが、踏み切っていただいて、そのような措置もいただいております。ですから、銅の汚染とカドミウム汚染とは質が違うわけですね。しかも、その質の違う、人体に非常に危険なカドミウムの汚染の原因追及がまだなされていない。しかも、これは大臣も言われましたが、三百数十年にわたる銅の採掘の歴史もあり、いわば公害ということが問題になってからすでに百年もたつ、こういうことであるだけに、カドミウムの原因追及がまだ明確でないということについて、地域住民は非常な割り切れない気持ちでおることは大臣も御理解いただけると思うのです。どうでしょうか。局長もおられますけれども、一体今日までどのような調査をやって、現在一体どこまでこの調査が進んでおり、大体いつごろには原因者というものが明らかになるのか、見通しをお答えいただきたいと思うのです。
  50. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 カドミウムのいろいろな問題につきましては、先生御承知のように昭和四十年代になりまして表に出てきたわけでございまして、昭和四十三年にイタイイタイ病とカドミウムの関係が明らかにされたわけでございます。私どもその前後から、鉱山の排出いたします坑廃水の中のカドミウムの量につきましては厳重な監督をしてきておるわけでございます。足尾鉱山につきましても、昭和四十三年からのデータというものは明らかになっておりまして、御承知のように、排出基準としては〇・一PPMというものがきめられておるわけでございますが、私ども調べましたところでは、現状では大体〇・〇〇二PPMというくらいのところでございまして、現在の排出については問題がない、そういうふうに考えておるわけでございます。  それから、先生御指摘のように、渡良瀬川の沿岸におきましてカドミウム汚染があるということはこれもまた事実でございまして、足尾鉱山が三百年来稼行をいたしておるわけでございますし、銅山の鉱床の状況その他から考えまして、渡良瀬川の汚染に対して無関係であるということはもちろんないわけでございます。  問題はやはり、汚染に対する寄与の程度がどうかということが問題になるわけでございまして、この点につきましては、栃木県、群馬県それから通産省三者で共同で調査をいたしております。現在分析も大体出そろっておるわけでございますが、その状況等を勘案いたしまして、さらにいまの寄与の程度と申しますか、汚染の責任等も含めました調査というものについての結論が近く出るわけでございますが、なかなかむずかしい問題——と申しますのは、銅についての場合も同様でございますが、自然汚染と鉱山との割合というふうなものはある程度明らかにされておるわけでございます。その銅山の分と申しますか鉱山の分の中で、長い歴史の上から、古河鉱業とそれ以前の稼行との寄与の程度はどうであるかというふうな問題につきましては、これは非常にむずかしい技術的な問題もございますので、今回の調査だけではっきりとした結論が出るかどうかという点について若干の疑問が残るわけでございますが、私どもといたしましては、三者で共同の調査を続けてまいったわけでございますので、一応の結論を得るようになお努力をしていきたいと現在考えておるところでございます。
  51. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 農林省からもお見えをいただいておるわけですが、農林省は昭和四十六年度四百万円の予算を計上いたしまして群馬県にこれを補助いたしまして、これまた土壌汚染の状況、原因者の究明等について鋭意努力しておられることを聞いておるわけでありますが、農林省のサイドから、今日まで調査がどのように進み、原因者については一体いつごろまでに明らかになるお見通しでありますか、お答えをいただきたいと思います。
  52. 住吉勇三

    ○住吉説明員 ただいま先生御質問のございました農林省が四十六年度実施しておりますカドミウムの原因追跡調査のことでございますが、多少こまかくなりますが、本年度の調査といたしまして、五十五カ所の水をとりまして分析をするということとあわせまして、このうちの四十一カ所につきまして河床のどろをとりまして、河床のどろとの関連、そういうような調査を群馬県に助成をして実施しておるわけでございますが、県からの報告によりますと、採水しましたものの分析は大体終わっておりますが、あとの河床のどろとの関連、この解析を現在実施中でございまして、早急に結論を出し、県内でまた内容を検討いたしまして農林省のほうにも報告するというふうに承っております。現在県のほうに督促中というところでございます。
  53. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 通産省並びに農林省とも、鋭意検討中であって近くその調査の結果も云々、こういうお話でありますが、それぞれにお伺いしたいのですが、調査結果が判明しその結果について公表できるのは、大体本年のいつごろの段階か、お答えをいただきたいと思います。
  54. 住吉勇三

    ○住吉説明員 ただいまお答えしました私のほうの追跡調査につきましては、おそくとも四月中には結果を出すように強く要求しております。
  55. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 先ほどお話し申し上げましたように、栃木県、群馬県との共同調査でございますので、県のほうの作業の進みぐあいとも関連をするわけでございますが、やはり私どももなるべく四月中には一応の目鼻をつけたいというふうに考えております。
  56. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 四月中にぜひとも正確な結果を取りまとめて公表いただくように要請をいたしておきます。  さてそこで、いろいろむずかしい点がある。確かに、通産省から昭和四十六年四月の資料としていただきましたものを拝見いたしましても、カドミウムの濃度は相当低い。お話のありましたように〇・〇〇二PPMというような状況だ。それから、私の住んでおります群馬県で安中・高崎地区に同じくカドミウムの汚染がございます。これは原因者が東邦亜鉛であることはもう明らかになっておるわけでありますが、この地域の土壌の汚染濃度を見ますと相当高いわけでありまして、それに比較いたしますと渡良瀬川地区の土壌中に含まれるカドミウムの濃度は、安中・高崎地域に比べまして三分の一とかというような状態であることも私は承知をいたしております。しかし、大体銅と砒素と亜鉛とカドミウムというのは、化学的な性質もきわめて似ているわけですね。したがいまして、銅の鉱石があるところ大体砒素もある、亜鉛もある、カドミウムもあるというのが常識だと思うのです。現に足尾銅山が採掘をして製錬いたしております白山鉱、それからまたあそこはいま輸入鉱石のほうが多いわけでありますけれども、輸入鉱石について見ましても若干ではありますがカドミウムが含まれている。特に通産省の資料を見ますと、白山鉱のほうがカドミウムの汚染度が高いようであります。そういたしますと、先ほどのお話ではありませんが、三百数十年にわたって銅の鉱石を処理してきた、現に輸入鉱よりもこの足尾の白山鉱のカドミウムの濃度が高いということになりますと、それが三百数十年蓄積してまいったわけでありますから、現在の排水中に含まれるカドミウムの量は少なくても、農林省がお調べになっておりますように、川底のどろなりあるいは土壌等にカドミウムが相当蓄積をした可能性というのは、当然考えられるはずだと思うのであります。  そこでお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、いま足尾銅山は、かつて処理いたしました鉱石を再び掘りまして処理をいたしておるわけですね。結局、昔の技術が低かったから、むしろ処理をいたしました鉱滓の中に相当銅が含まれている、こういう状況なんですが、その鉱滓を分析する等をやれば、おのずから過去の傾向がどうであったかということはわかり得るはずじゃないかと私は思うのです。そのような調査をいま通産省なり農林省はやっておられますか、この点お伺いいたします。
  57. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 足尾鉱山について申し上げますと、先ほど話が出ましたように三百数十年稼行をいたしておりますが、鉱山自身の鉱床といいますのも非常に複雑でございまして、数字で申し上げますと、鉱脈で申しますと千本以上の鉱脈がございますし、それから鉱脈のほかに塊状と申しますか、かたまりになっております鉱床が百以上あるわけでございまして、その鉱床によりまして中の組成の鉱物というものが違っております。全部総合いたしますと四十種以上の鉱石が鉱床の中に存在しておるというふうな事情でございますので、各時代時代におきまして稼行した鉱床も違うわけでございます。大きく申し上げますと、銅、砒素、鉛、亜鉛、カドミウムというふうなものは随伴をしてくるわけでございますけれども、その間の組成と申しますか、量の割合というものは非常にバラエティーが多いわけでございます。現在の鉱石、それから堆積をされておりますいろいろな廃滓等の成分から昔の状況を類推するというふうなことはかなりむずかしいのではないか、そういうふうに私どもは考えております。
  58. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 農林省のほうはどうでしょうか。
  59. 住吉勇三

    ○住吉説明員 農林省といたしましても、先ほどお話ありました原因追跡調査の一環といたしまして、堆積場の調査を四十六年度十五カ所予定いたしまして、調査実施中でございます。
  60. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 そこで大臣、お尋ねしたいと思うのですが、わが国の国民総生産が非常な伸びを示した、これはやはりわが国の科学技術海外からある程度移植をするものが多かったわけでありますが、それはともかくとしてもそういう技術をこなして、そうして生産性の高い工業開発に成功していったという日本人のやはり素質の高さですね、それが今日のわが国の経済的な繁栄を来たしたことは間違いないと思います。しかし、わが国の技術を見ますと、どうも外国からパテントを買ってきてロイアルティーを払って、何といいますか安直に施設をする。たしかわが国がロイアルティーで外国に払いますのは五百億くらい。それに対してわが国が外国から受け取るロイアルティーは約一割の五十億円くらいだと私聞いておりますが、そういう状況で基礎技術が非常にわが国は低い。それから、生産に対する技術は進んでも、公害防止のための技術開発、あるいは原因究明の技術開発というものがややおくれているのではないかというような感を深くするわけであります。しかし、そういうことでは、これから世界各国の中で日本が立っていけないことは明らかです。したがって、しかもこれだけの技術水準もあるわけですから、この問題について私は原因の究明ができぬということでは、これはもうまさに日本技術なり日本の通産省の体制が世界からもの笑いの種にもなるだろうと思うのですね。したがってひとつこれは通産省、それから農林省、総力を結集してこの原因追及については必ずりっぱな成果をあげる、必ず原因を追及してみせる、こういった意気込みで私は対処していただきたいと思うわけであります。その点のお考えをひとつお伺いいたしまして、時間でもありますから質問を終わっておきたいと思います。
  61. 田中角榮

    田中国務大臣 まあ日本にも基礎的な学問だけではなくいろいろな高い学問があったことは事実でございますが、産業面につきますとやはり重化学工業がもとでございますし、特に生産性を上げるということに非常に力を入れてまいりました。だから結局明治から百年間たちまして、その集積というもので公害問題が、いま渡良瀬川のように非常に顕著な例として顕在化してきたという問題が一つございます。  もう一つは、戦後の二十五年のうち十四、五年くらいでございますか、三十年後でございますけれども、各種工業が非常に急速な発展をしたというところで、いまのPCBの問題その他というものが起こってきておるわけでございます。しかしこれは製造禁止してもこれに代替するものも必ずすぐできるというくらいな高度なレベルを持っていることも事実でございますが、まあやはり特に日本は過密な都市に集中をしておるというようなことで、産業公害もほかの国よりも急速に大きくなっておるという面もございます。こういうものに対して私は考えておるのですが、その薬の公害などもそうでありますが、やはりかつて理化学研究所がございましたように、本多光太郎、鈴木梅太郎さんとか斯界の泰斗がおられて、当初も民間でも全部これが総合的に系統的な勉強ができたわけですが、このごろは大学もみんなばらばらになっているという感じがしないでもないのです。ですから私は、無過失公害という法律をつくる過程において一番の問題は、統一的に国が、半官半民でもいいし、国が主体でもかまわないのですが、日本が持てる高い水準の学問というものを全部総合できるような形態が一番必要である。そうすれば、特に新潟で水溶性ガスの採掘を禁止するという問題で、私や小林議員は相当やったことがございますし、あの昭電の問題もわれわれとしては地元としては非常にめんどうな問題として関心を持ってきたわけであります。そういうことで、やはり機構の統一ということが一番結論を出すことには早いのであるし、しかもある場合は無過失の推定さえも行なわなければならないとすらいわれておる状態に徴しては、最終的には裁判所の鑑定を必要とするように、一つの機構で、この時点における裁定に対しては、これは裁判所の判定と同じような効果を得るというような判定でもって、いまの段階においては日本が持つあらゆる高い水準が全部総合して出した結論に対しては従うというような、そういう制度というものを早くつくらなければならないだろう。私は公害税というものが言われたときには、一番初めつくられるべきものはこれだという考え方でございまして、そういう問題、環境庁、厚生省、通産省等連絡を緊密にして、これらの問題が根本的に解決されるように努力をしてまいりたい、こう考えております。
  62. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 大臣がいろいろ言われましたから一言申し上げておきたいと思うのですが、私はそういった、かつての理化学研究所のようなものを構想される、その点確かに意義はあるだろうと思いますが、ただわが国の場合、往々にして、半官半民であって国が金を出しても、金も出すかわりに口も出すというような点がややあり得るというところが、非常に問題だと思うのです。そういう意味では、私は、大臣せっかくそういう話をされたわけでありますから、特に西ドイツの基礎科学研究の中心になっておりますマックス・プランク研究所、この機構とそのあり方というものを十分ひとつ御検討をいただきたいというふうに要請をいたしておきます。  それから大臣、せっかくいろいろお話しいただいたのですが、原因究明に対して断固たる御決意についてはどうもお触れにならなかったので、その点だけ最後にお答えをいただきまして、質問を終わっておきたいと思います。
  63. 田中角榮

    田中国務大臣 公害の原因究明は、当然公の任務としてなすべきでございまして、これが実効をあげ得るように全力を傾けてまいります。
  64. 渡辺肇

    ○渡辺(肇)主査代理 この際、午後一時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十分休憩      ————◇—————    午後一時八分開議
  65. 渡辺肇

    ○渡辺(肇)主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商産業省所管について質疑を続行いたします。阿部喜男君。
  66. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 大臣にお伺いしますが、航空機工業振興の目的をもって昭和三十三年に航空機工業振興法が制定をされまして、翌昭和三十四年には輸送用の航空機の国産化を進めるために日本航空機製造株式会社を設立するように法の改正が行なわれまして、この会社は政府が四十二億円の出資をし、通商産業大臣のきわめて大きい権限のもとに監督されて運営されてき、航空機の産業開発に当たってきたようでございます。  ところで、この日航製、いわゆる日本航空機製造株式会社がYS11の開発をずっと行なってまいりまして、おおむね百八十機を生産してきたようでございますが、この間に膨大な赤字を発生させておる、こういうふうに承っておりますが、この赤字の額、それからその原因等について、ひとつ大臣から御説明願いたいと思います。
  67. 田中角榮

    田中国務大臣 昭和四十七年度末、日本航空機製造株式会社の赤字は二百四億円でございます。これは百八十機分をつくって、二百四億ということになるわけでございます。この二百四億に対しましては、政府民間でこれを補てんしなければならないということでございまして、昭和四十七年度予算案には四十八億九千三百万円計上し、御審議をいただいておるわけでございます。これには資本金が七十八億円ございますから、民間負担約二十億円、政府負担百六億円ということで、大体においてこの二百四億円というものは消すことができるという考え方でございます。  なぜこのようなものができたかということでございますが、戦後初めての民間航空機製造である、相当ブランクがあった上に、こういう高性能なものをつくらなければならないということ。大体飛行機というものは、これはどこの国でも軍が軍事費でもって相当開発を行なって、そして民間技術がそれを導入をして、ベイラインに乗るわけでございます。ところが日本はそういう意味で、戦前臨時軍事費が多量に消費されたときには、零戦のような高性能なものも日本で十分製造可能だったわけでございます。そういう意味で、私はすなおな意味から見まして、新しいYS11百八十機の製造の過程において二百億余円の赤字が出たということは、他の国のこの種の技術開発に対して多いものではない。私も技術者の一員でございますので、そういう意味から見ますと開発費を含めての赤字というものは、これは赤字というべきかどうかというような感じでございまして、出るべくして出たんだろう。しかし長いことYS11のようなものが、これが千機も二千機も製造されるということになれば、当然吸収できるものだと考えます。
  68. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 四十六年度末までに確定をされる赤字は二百四億ということでございましたが、さらにまだこのYS11の取引は続いておるわけでありますから、この赤字はもう少し累積するのではないかという気がしますし、いま大臣は、何千機という生産になれば、この赤字は開発のために使った赤字だから計算の上では今後取り返すことができるのではないかというお話でございますが、YS11についてはこれは伸びない、ここで打ち切るという考え方じゃないでしょうか、その二点について……。
  69. 田中角榮

    田中国務大臣 四十七年度末の欠損金の想定が二百四億円になる、こういうことでございます。YS11に対しては百八十機で大体生産打ち切りということでございますが、しかしこれは新しい機種の開発もいま考えておりますし、航空機工業の推移を待って、これは継続するかどうかという問題になるかと思います。これは御承知のとおり、国内で六十六機、国内官需でもって二十七機、輸出が七十三機で百六十六機、現在まで製造された中では輸出は相当高く評価されているわけでございます。そういう意味で、一応百八十機で製造は打ちどめということになっておりますが、これからの推移に徴して、どうするかという問題がきまるわけでございます。いまの段階においては、百八十機で一応打ちどめにしようということでございます。
  70. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 開発ですから、確かに大臣のおっしゃるようにある程度のものは見なきゃならぬと思います。ただ私は、監督官庁として、たとえば機体メーカー等、三菱や川崎、富士重工等が機体メーカーとして発注をこの会社から受けてやっておるんですけれども、ここらに一体開発についての協力姿勢がどれくらいあったんだろうか。むしろこういう機体メーカーでは損をしないような、損はすべて日航製にかぶせてしまう、そういう運営がなされておったような気がしてならないんです。これは大臣でなくてけっこうですが、監督の立場にあった方からこういう点について少し御説明願いたいと思うのです。
  71. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 先ほど先生もおっしゃいましたように、資本金七十八億のうち四十二億は政府ですが、あとの三十六億はこれは民間でございまして、相当部分は機体各社になっておるわけでございます。先ほど申し上げました二百四億円の赤字を消すためには、まずその七十八億、政府民間も含めて減資もしくは凍結ということでこの分が消えるわけで、その意味においてまず三十六億に当たる部分は民間がこれを負担する。それからそれだけでは足りないものでございます。あと残り全部政府というわけにも参らないので、さらに二十億円民間で負担をするということになっておるわけで、そういう赤字対策という面だけから見ましても民間は相当な負担をしている、こういうことが言えると思います。
  72. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 資本について、あるいは赤字の解消について民間がある程度の負担をする、そのことは理解ができるのですけれども、それでは政府が四十二億と、民間出資はどういうところの会社がやっておるわけですか。
  73. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 機体をつくっているメーカーが六社ばかりございます。それが一番中心でございまして、それ以外に機体に載せる搭載品あるいは飛行機の部品、そういうものを納めている会社ですね、そういうものがそれぞれ持っている。さらに一部商社も少し持っている、こういうような状況でございますが、大体その六社、さらには六社のうちのメインである三社が一番大きい負担をしているわけでございます。
  74. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 そうすると大体三菱、川崎重工、富士重工というところが大きい出資をしておる、こう理解をしていいわけですね。
  75. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 そのとおりでございます。
  76. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 そうしますと、民間会社の場合には確かに開発に資本を出して協力をしたかわりに——かわりというとおかしいですが、機体メーカーとして受注をして、そして生産をして、ここではいわゆる原価積み上げ方式がとられて、少なくとも機体製造の過程においてこのメーカーは損はしない、もうかるというシステムになっておるようでございます。それ以外の機体メーカーでないところの産業については、これはそれだけのこの会社ができたための恩恵はない。さらにもう一つ大きいところは、開発に向かって将来問題の展望が立つとするならば、将来に向かっても利益を得る可能性があるわけですけれども、そういう点から考えますと、この負担については、政府もあるいはこの出資をしておる機体メーカー等も同じ割合で負担をすべきではないかという気がするんですが、いまのお話でも政府負担は非常に大きいようでございますけれども、そういう点はどうお考えですか。
  77. 田中角榮

    田中国務大臣 飛行機というような知識集約型産業に移っていかなければならないというものであって、開発のために非常に多額なものがかかるというものに対しては、何らかの施策中心でなければなかなか技術開発が行なわれないわけでございます。そういう意味で税制上、金融上、財政上の優遇をやっておるわけでございます。そういう意味からいって、航空機製造という新しい——ちょっとブランクがあったにしろ、つくるとすれば、これは政府の総体的な出資をしないと、なかなか民間は稼働しないということになるわけでございまして、いまの公害産業などもそうでございますが、やはり政府の主導型、ある経済規模になるまでは、政府重点的な立場をとらなければならない、こういうことでございますし、またその波及する効果というものは、船舶とかそれから高速車両とかいろいろなものに影響を受けるわけでありますから、国が技術開発を行なうということによって、国全体が恩恵を受けるわけでございます。会社や私企業がもうければ、税法でもってちゃんと徴収するという道が開かれておるわけでございますし、やはり民間主体にということで進めると、こういう事業は進まないということがあります。しかしあなたと同じような立場で今度YXの開発のときには、これは千億という開発費をかけるときに、民間が全然出さないというようなことではちょっとスタートできませんよという、あなたと同じ考えを持ったわけですが、そうすると開発がとんざをするということにもなりますので、やはりかね合いの問題だと思います。
  78. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 YXはいまからお聞きしたいと思っておったんですが、そこで、航空機工業審議会の答申が四十六年の九月に大臣のもとに出ておると思うんですけれども、これによりますと、民間輸送機の開発生産の必要性が述べられております。それから、国際共同開発政府助成についてもこの答申の中で述べられておるようですが、政府は、この審議会の答申をどのように受けとめて、これから具体的にどういうふうに航空機産業開発をやっていこうとなさっておるのか、これからの課題としてひとつ大臣のお考えを承りたいと思います。
  79. 田中角榮

    田中国務大臣 新しい企業が発展する過程における答申でございますから、現在、政府はその答申を尊重していかなければならないという立場であることは申すまでもございません。そういう意味で、YSに引き続きまして新機種等を続けてまいろうという姿勢であることは事実でございますが、非常にテンポも速いし、これからの航空機産業に対して、いま御質問がございましたように、政府民間がどういう体制をつくったほうがいいのか、また制度上どう整備をしなければならぬのかという問題がたくさんございます。その意味で、アメリカから買えば非常に安いといわれておったT2の問題も、日本で量産体制に入ろうということで、やはり日本では国内において航空機産業を育てるというメリットがありますので、そういう面を十分考えながら、やはり比較の上結論を出さなければいかぬのだということでございまして、原則的には答申を尊重してまいるということはもう申すまでもありません。
  80. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 それで大臣のお考えはわかったのですけれども、さてそれでは具体的に、たとえば昭和四十七年度においてこの国内の航空機産業開発について、たとえば通産省のほうから三十三億円の予算要求を出したけれどもこれがもう大幅に削られて二億円程度しか承認されなかった。しかも、大臣がおっしゃるように、片方においては非常にテンポの早い産業でございます。一年間のブランクというものはたいへんなものだというふうな気がするのですけれども、そういう点はどうなっているのですか。
  81. 田中角榮

    田中国務大臣 確かにYXの開発をやりたいということで私も前向きの姿勢で対処をしたわけでございますが、ちょうどそのぶつかりましたのが、YS11のあと始末がことしと来年かかるということにぶつかったわけでございます。もう一つは、T2の量産という問題が、国内産業として方針をきめて予算措置をしたわけでございます。第三の問題として、YXの問題があるわけでございます。YXに対しては、あなたが前の前の御質問でもお述べになったように、やはり国民の税金を使うのでございますから、助成はしなければならない、開発促進は必要である、しかし、民間が厘毫も負担をしないということではちょっとめんどうなことが政治的にも考えられたわけでございます。もう一つは、相手がボーイング社というアメリカ民間企業であり、一社である。ボーイング社に対して日本政府がまるまる半分持ってやるということをやるには、そういう結論になるにしても、いまのような御質問とか、いろいろ国民が納得する状態がなければ、政府としても、いかにいいことであっても踏み切れるわけがないわけです。そのためには二千万円くらいでどうだと、こう大蔵省はいっていましたが、それはやらないということである、そういう費用は要らない。だから、少なくとも二億ということであれば継続する姿勢というものは明確にしておるわけでございますし、しかも、諸外国のいろいろな例も検討する必要もございますし、その間に日本国内産業の、負担に対して腹をきめてもらうということもありますので、中途はんぱだといわれればそのとおりでございましょうが、私としては、それなりに合理的な予算、まあ予算の合理性を求めたつもりでございます。
  82. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 昨年の十一月に、これは大臣のところからお出しになったのですが、この民間輸送機YXの開発についてたいへんなキャンペーンを張っておられるようでございますが、これだけの意欲を持って取り組んだ通産省が、なぜ昭和四十七年度においてこの民間航空機産業開発について挫折をしたのか、そこのところをちょっと……。
  83. 田中角榮

    田中国務大臣 挫折はいたしておりません。挫折はいたしておりませんが、私が最後のどたんばで、一億円でもいいから、来年以後の問題は来年以後できめればいいじゃないか、一億円でも出さないかと、こう言ったら、いまのところ出しませんと、こういうことでございましたので、民間から一億円も拠出せしめられないでボーイング社と政府でもってやるということになれば別の意味からの御批判もあるわけでございますので、かかるものは国民的合意の成熟を待つ必要がある、こういうことで慎重に対処したわけでございまして、基本的に、通産省は基本的な姿勢は変えておりません。
  84. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 私は、大臣と同じように、民間が応分の負担をすべきだという点については大臣と全く同じ意見です。しかしこういうことになってきますと、民間の輸送機の開発が非常におくれてくる。ところで問題は、一方第四次防等を含めて、軍需産業の飛行機が非常に発注が多くなっておる。そのことが日本の航空機産業をして、必ずしも新しい開発をしなくても、政府のお金で防衛庁の受注開発をやっておればそれで済むんだと、そういう考えがどうもあるように思われますし、どの新聞を見ましても、やはり民間機がしりすぼみで防衛庁に押されてしまった、こういうふうにいっておるようです。大体昭和四十七年度において防衛庁の発注は航空機の八〇%を占めるんじゃないかと、こういうようになってきますと、私は、政府がかねて唱えてきた国民優先ということから、国民があとに残されて、軍需優先という形の産業の姿が出てくるんじゃないか、そういう気がするんですが、防衛産業、特に防衛庁の受注と民間開発の関係をさっきちょっと大臣申されましたがされましたが、大体外国では軍隊がやっておるんだという、そういう思想がおありになるんじゃないかという気がするんですが、どうでしょうか。
  85. 田中角榮

    田中国務大臣 高度の性能を持つもの、高度の精密機械工業というものは、大体宇宙科学もそうでありますし、電子工業もそうでございますが、これはみんな軍の費用でもって開発をせられることが非常に多いんです。そういう意味では、総合力を必要とするというものはどうしてもそうなるんです。一つのものを発明するということは、一つの企業でも間々見られるところでありますが、知識集約的なものであってその国のすべての頭脳が結集されなければならないというようなものは、やはり世界の歴史として、日本のかつての歴史を見てもわかるとおり、軍の力が非常に多いことは、これはもう間違いありません。しかも、日本が二十九年から三十九年までの高度成長を行なった過程におけるものを見ましても、やはりアメリカ日本との、兵器とかいろいろなものを分解して、それに対してすぐメンテナンス工場をやるとか、いろいろなものが日本民間技術水準を高めたことは否定し得ないことでございます。そういう意味で私は、T2問題のときに私自身も相当な関心を持ったんです。これは防衛庁とも相談をしたり大蔵省とも相談をしたときに、アメリカから買ったほうが安い——安いことは事実なんですが、T2というようなものまで国産化できないような状態で一体いいのか。その限りにおいてはだんだんと国際競争力が培養されていくだろうということで、T2の国産化というものがいいだろうと私も賛成をしたわけです。しかし民間航空機会社が、T2をやっておるとか自衛隊の問題だけをやっておるので自分で金を出してまで開発をしないほうがいいんだという感じじゃないんです。民間も、非常にわれわれがもうかって外国に売れるようになれば、税金という形で国庫に納付するんですから、知識集約産業といったってあまりないじゃありませんかと、家電なり電子計算機なり航空機工業になれば、電子計算機に対しては五十億も六十億も計上しておるじゃありませんかと、そういう意味からいっても、航空機産業というものはもっと総合的なものですからこれは三十億出してくださいということでした。ですから、熱意がないわけじゃないんですが、そこらがさっき申し上げたかね合いでございますということであって、それは民間の航空機会社がもう少し力がつけば開発費は自前でも出すし、政府との協調によって必ず開発をさせられる、それがやはり将来の知識集約型産業等の製品として国益を増すものだ、こう考えておりまして、ことし一年は、ひとつ来年度の予算を組むまでにはこの問題には必ず合理的な結論を出したい。合理的な結論とはやめるほうではなく、継続したいという私の考え方で説得をしてみたい、こう思っております。
  86. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 大臣のお考えはわかりましたが、何といってもやはり随一の実力者ですから、あなたが本気になってやれば三十億や五十億の金が取れるも取れないもないと私は思うのですが、民間事業とのかね合いもあったのではないかと思います。  さて大臣そこで、防衛用のいわゆる自衛隊の使う航空機の開発と輸送用の航空機の開発ではやはり基本的に違いがある。片方はスピードとかいろいろなものを考えなければならぬし、民間の輸送用の場合には安全性というものを第一に置くから、これは共通する分野もたくさんありましょうけれども、また別におのずから違った観点からの開発が必要であるという気がいたします。幸い大臣が、来年度からは本腰でひとつやってみたいのだ。これにはもちろん大臣をして産業界の協力は得られるも得られないもないという気が私はするのですが、大体今年においては大臣はあまり本気ではなかったのではないですか。
  87. 田中角榮

    田中国務大臣 本気だったのです。目玉商品としておったのです。ですからT2の国産化をやるならばこの開発費はゼロです。つけるとすれば気は心でもって二千万円程度ですと言ったものを、そういった姿勢ではもう絶対に容認することはできないということで、国民の血税を二億円計上したのでございますから、相当前向きであるということはひとつ御了解をいただきたいと思います。私は大体こういう新しい開発が非常に好きなんです。日本が膨大な原材料を持ってきてこれを粗鋼にしたりして外国に輸出をするというようなことは、公害とかいろいろな問題でむずかくなってくると思うのです。やはり知識集約型産業に移らなければいけない。これは各種機械工業とか精密機械工業とかコンピューター工業とかそういうものに持っていかなければいかぬと思うのです。私は十五年前に郵政大臣としてテレビの大量免許を得たときには、テレビは十四万円台でした。十四万円のものを十万円切って四万円のテレビをつくってくれ、そのためにはテレビ放送局三十四社の大量免許を行なう、こう言ったのです。そしたら、とてもできないと言っておりましたが、テレビは四万円ではなく、いま御徒町では二万円で白黒がありますから、そのくらいの知識を持っておる日本人が飛行機をつくれぬという、そんなばかなことは絶対にない。私はそういう意味で非常に前向きであるということだけはひとつ理解していただきたい。
  88. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 時間がなくなりましたから、そこで大臣の監督をされておる日航製のことしの運営をどうするか、特にそこに働いておる従業員はもうこの先は望みがないのではないかというようなことで、いろいろアンケート等もとっておるようでございますけれども、ここでせっかく体験のある従業員が雲散霧消してしまうようなことになっては、大臣がせっかくお考えの次のプロジェクトについていろいろ問題が起こると思います。したがって、そういう意味では若干今年度人件費等の赤字が出たとしても、この陣容を残して来年に備えてもらいたいと思うのですが、どうでしょう。
  89. 田中角榮

    田中国務大臣 まだ四十七年度の引き渡し機数が十一機ありますし、四十八年度が三機、それをやって百八十機になるわけでございますから、まだ仕事はございます。それに引き続けるように新しい開発を行ないたい、こう考えております。せっかくつくった、日本には全く必要な、しかもばらばらにしたくない人たちでございます。そういう意味で、御本人がどうしても先行き不安であるというならば、先行き不安でないことを十分PRいたしますし、目先の赤字などということだけではなく、これはやはり温存しこれを活用するという方向でやっていきたいと思います。もっともっと財政が乏しいときに電源開発会社をやめよという勧告を受けましたが、日本の電源開発会社には日本の電源開発の特に大陸派と内地派とのほんとうに集約されたものがあそこにあるのであって、九電力などが追いつくべきはずがない、そういう人たちをばらばらにしたくないということで、電源開発会社を与野党で話し合いをして残そう、こういうこともやったわけですし、鉄道にいろいろな技術屋がおりますが、あなたも御承知のとおり、鉄道建設公団が二百名でやっていた。国鉄は二千三百人もおる。しかしこれは鉄道技術屋としてはどうしても必要なものである。こういうことでこれは温存しておるわけでありますから、いままでYS11の開発の過程において今日まで知識を向上せしめた、能力をつちかった人たちをばらばらにする——使い道は幾らでもあります。使い道は幾らでもありますが、しかしやはりこれは温存して次の日本の航空機産業を背負わせるということが一番効率的な考え方ではないか。私は通産省の中でもそういう指導をやっておりますし、また大蔵省にもあまりみみっちいことを言いなさんな、こういうことを言っておるわけでありますから、そういう心配はないようにいたしたい、こう思います。
  90. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 大臣の力強いお話で私も非常に安心をいたしましたけれども、現実に日航製の従業員の中で非常に先行きを不安に考えて、出向会社に戻ったらどうかとか他に転職したらどうかというような、アンケートの数の上では圧倒的多数がいまのところ非常に不安を持っていることは間違いないようでございます。したがっていま大臣のお話にもありましたように、この従業員の方方が雲散霧消することなく、将来の日本の航空機産業開発に向かって、落ちついて、たとえばこの一年間じっくり勉強させてもらってもいいと私は思うのです。そのくらいの金をかけてもかまわないのじゃないかという気もいたしますので、ひとつ通産省の皆さん方を督励していただいて、この日航製についてはぜひそういう方向で従業員の不安を取り除き、来年以降の日本の航空機産業開発に備えるという姿勢を明らかにしていただくことを最後にお願いしまして、質問を終わりたいと思います。
  91. 渡辺肇

    ○渡辺(肇)主査代理 相沢武彦君。
  92. 相沢武彦

    相沢分科員 現在のわが国の電力を供給している発電形態を見ますと、火力、水力、原子力とありますけれども、その大半が石油燃料を中心とする火力によって占められて、いわゆる火主水従となっております。将来は原子力発電が大きな比重を占めるということは予想はされておりますけれども、これも公害防止の技術開発など解決されなくてはならない多くの問題が残っております。さらに火力、原子力にしてもそのエネルギー資源はほとんど諸外国からの輸入にたよっておる現状でございますし、一昨年来の石油攻勢から見て、わが国はエネルギー資源の自主開発供給源の分散化、国内資源の有効活用、こういった幾つかの必要性が叫ばれていることなどから、この発電方式においても多様化をはかる必要がある、こういうことが現在言われております。その意味において現在まだあまり知られていないようでありますが、有望な国内資源として地熱があります。それを発電に利用する地熱発電が考えられるわけでありますが、政府はこれに対してどのような認識に立ち、把握されているかお伺いしたいと思うわけであります。  御承知のように、わが国は世界でも有数な火山地帯を持っている国でありながら、特に現在第四のエネルギーとして国際的にも注目をされ始めましたこの地熱開発、地熱利用の面ではなはだ立ちおくれておると思うわけですが、現在わが国が有する地熱を発電に利用すると、将来水力発電量に相当する電力を供給することが可能である、こういわれておりますし、こうした貴重な資源政府はもっと有効に活用する必要があるのではないか、こう思いますが、この点の御所見をお伺いいたします。
  93. 田中角榮

    田中国務大臣 電力は昭和二十年、終戦時には九百万キロワットという小規模のものでございましたが、現在五千二百万キロワットの発電をやっておるわけでございます。この中で地熱発電というものは三万一千キロくらいでございますから、そのウエートは非常に小さいものではございますが、御指摘のように電力そのもので、五千九百万キロの発電の中の火力発電は三千八百万キロ、それに使われている原重油が四千万トンということでございますから、非常に大きいものでございます。二億二千万トンの消費量の中で燃料用の原重油は一億一千万トン、そのうちの四千二百万トンを使うわけでございますから。まあ公害その他が出てくると、火力というものに対してもいろいろな問題が起こってまいります。いま御指摘のように天然の地形、地勢上の優利さはあるわけですから、この地熱発電というものに対しては、これを育成強化するということは当然考えていかなければならない、こう思います。
  94. 相沢武彦

    相沢分科員 国際的に地熱開発が注目されているという点で、大臣も御承知と思いますが、国連が地熱開発の利点を取り上げまして、特に発展途上国の発電設備の開発に値するものとして、すでに資金面あるいは技術面からの積極的な援助を行なっておりますし、また一九七一年初めですか、前事務総長のウ・タント氏が、公害防止の面からもこの地熱開発をすべきことを強調されております。いま大臣もお述べになりましたように、これまでは政府の取り組み方が非常に手ぬるかったと思うわけでありますが、さきの質問者に対して、大臣は、新しい開発は私は大好きで、非常に前向きに取り組んでいるということでありましたので、この地熱開発にもひとつ積極的な取り組みをお願いしたいと思うわけです。  それで、現在わが国で稼働している地熱発電所は岩手県の松川、これは二万キロです。それから九州の大岳、この二カ所でありますが、その他数カ所で開発中のものがございます。現在のわが国の地熱発電を見ますと、一部のパイオニア的な企業によってのみ開発がこれまで行なわれてきているにすぎなくて、イタリアあるいはアメリカ、ニュージーランドなどでは、国がかなり力を入れて開発を進めているようでございますし、わが国においても、資源利用の観点から政府自身が取り組むべき時期がいよいよ到来した、こう思うわけであります。  そこで、今後の問題点として次の三点があげられているわけでありますが、一つには地熱資源の完全な基礎調査がないということ。これにつきましては、火力開発における河川調査と同様の政府施策が必要だ。二点目には、探査技術の確立として、試験井戸の掘さくまでの探査におけるところの測定計器の改良を、もっともっとはからなければならないということがあげられております。三点目には、資金調達が非常に困難だという点、これは不成功の危険性が伴うということが原因になっておりますが、しかしながら石油ボーリングに比べると成功率は高い。松川、大岳ともに八〇%という数字が出ております。  そこで、以上の三点を技術開発助成のほか、既成プロジェクトに対しても、また新規プロジュクトに対しても、補助金あるいは低利長期の融資あるいは税制上の優遇措置等の特別措置を講ずべきだと思うのですが、これらの問題点について、政府としては具体策をお考えになっておるかどうか、ちょっとお尋ねいたします。
  95. 田中角榮

    田中国務大臣 いま地熱発電は、御指摘にございました松川、九州電力の大岳、三菱金属の大沼、日本重化学工業の葛根田、それから九州電力の八丁原というようなところで計画しております。これに対しては従来から工業技術院から補助金等を出しておるわけでございますし、また委託研究費も出しております。特に松川につきましては三十五年千三百万円、四十年には三億五百万円というふうに、科学技術庁その他いろいろなところから委託研究費を出しておるわけでございますが、いま言われましたように、調査等はもっと国が積極的になさなければならない、これはそのとおりでございます。工業技術院とか地質調査所とか、いろいろなところでもって調査も行なっておりますし、開発可能かどうかの資料もいまそろえておるわけでございますが、私も電源開発会社を再建——これを残そうと言ったときに、やはり本州縦断の送電幹線をつくったり、それから石炭問題でもって研究しましたときには、北海道でもって石炭専焼の火力をつくっても山元発電としては十分ペイするじゃないかというような問題、地熱発電等の問題があるわけでございます。温泉法とかいろいろな法律があるわけでございますが、やはり何かこういうものに対しては、研究テーマを明確にして、そして手をつける一つのプロジェクトだろう、こういうふうに考えております。きょうまでには、明確に来年度の予算はこういたします、こういう制度をつくりたいと思いますというようなことにはならないと思いますが、電源開発会社の問題、九電力の問題もあるのです。いまいろいろな企画をしておるものもありますし、電力を将来どうするかという——静岡のように水主火従にしたいという人もありますし、経済的に見れば火主水従になります。そういうものを総合的に検討して、地熱発電——地熱発電だけでないのです。私は電源開発促進法の提案者でありますから、そういう意味では比較的に専門家なんです。専門家と自負しておるわけでございます、議員立法をやったときから二十年間こんな問題を手がけておりますから。この中では、海岸から離れた海上で沖合い発電をしようというのもありますし、落差のある河川のある二地点をトンネルで結んで揚水発電を行なうという方式も考えておりますし、いろいろな問題があるわけでありますので、そういう問題の一環として総合的にひとつ結論を出してまいりたい、こう思います。
  96. 相沢武彦

    相沢分科員 総合的な見地から検討されることは当然だと思いますが、この地熱開発が現在企業努力によって行なわれておりますが、それを困難にしている要因として、法制上の不備の問題があると思います。地熱開発は、現行法制においては、いま大臣がおっしゃいましたように温泉法によるものがありますが、都道府県知事の許可を必要といたします。これは温泉法の立法趣旨からして温泉の保護が優先されるわけで、許可を得ることはなかなか容易でないことはわかります。また許可を受けても、これが地熱開発として保護されるものでは現行法制上なってない。また、鉱業権との関係におきましても、鉱区内の地熱開発はほとんど必ず鉱業権者との調整を必要といたしますわけで、何ら法制上の制度はないわけでございます。また、地熱開発地域の多くは、自然公園法の適用地区内ということになりますので、環境庁長官または都道府県知事の許可を必要とする。この点も、これまでどちらかというと、地熱発電に関する理解がまだまだ乏しかったという点で容易でないというのが実情であろうかと思います。  そのほか、国有林野法との関係から考えましても、地熱発電の開発の前には多くの制約があるわけです。したがって、これらの法制上の不備をここで改めて、地熱発電に関する何らかの立法上の措置を講ずる必要があると思うのですが、この点についてお尋ねをいたします。  さらに、地熱発電の場合は当然電気事業法の規制を受けるわけでありますけれども、この関係においては水力と同様に国がその開発調査を行なうべきだと思います。この点についても御答弁いただきたい。  また、発電水力を目的とする河川法の許可申請があった場合、都道府県知事は通産大臣意見を求めて、通産大臣は勧告することもできますが、現行温泉法にはこれらの規定は全くございません。こういった点も改める必要があると思います。  以上述べた点についての御答弁をお願いいたします。
  97. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどからるる申し上げておりますように、地熱発電というものは社会的にも長い歴史を持っておるものでございます。私たちも、戦後の電源開発促進を行なう過程においては、これを素材として十分検討したものでございますが、長いことかかったにしては九百万キロから五千二百万キロに二十四年間でなっておって、まだ予備電力は一〇%にも満たない、五%にも満たないというような状態から考えますと、やはり発電方式に対しても多様化を考えていかなければならぬと思います。特に日本は国土の状況がこれに適しておる。火山爆発のエネルギーをいつでもあれを何かに利用できないかということは素朴な民衆の考えでもあります。そういう意味で、ここで明確な御答弁ができないことは、はなはだ不勉強で遺憾と思いますが、きょうの御発言を契機といたしまして、ひとつ一体制度上どうすればいいのか、また企業形態はどうあるべきか、いまの法制上の問題等、通産省で検討してまいります。また、必要なら科学技術庁その他とも協議をしてまいるようにいたしたい、こう思います。  それから、開発地点の調査とか地形、地質上の調査とかそういうものを電気事業法等、水力発電と同じように、建設省が河川法に基づいてやるとか、ダムサイト等はどことどこにあるというようなことは、みんなもうほとんど全国千カ所以上にわたって調査が済んでおるわけでございますが、そういうものに近いことができるのかどうか、またやろうとすればどうするかという問題。私は基本的には日本としては非常におもしろいテーマでもあり、これは学問的にもおもしろいし、実際においてもコストは二円とか三円とかというものでありますから、大きいものになれば非常におもしろいものでありますし、経済的にも採算に合うものであると思います。そういうものに対してはこういう質問があまりいままではなかったんです。しかしきょうはこういう新しい観点からの御質問でございますので、通産省もひとつ目をさましてそういうこともあわせて検討しますから、それでひとつ御了承いただきたいと思います。
  98. 相沢武彦

    相沢分科員 大臣先に結論を急がれてしまって、質問しづらくなってきてしまうのですが、特に北海道の場合、現在伊達の火力発電所あるいは岩内の原子力発電所の建設計画をめぐって、温排水の問題、あるいは特に伊達の場合は農業関係者その他住民から大気汚染の問題で現状のままでは承諾できないということで建設予定よりも相当おくれております。こういったことを考えますと、今後の電源開発の新しい方向として、公害のほとんど心配の要らない、また特に北海道の場合、北海道の大自然をそのまま活用できる地熱発電に特に力を入れて開発をしてはどうか、こう思うのですが、大臣開発が好きだ、特に北海道は好きだとよく北海道へ来るたびにおっしゃっておるようでございますが、大臣、特に北海道の地熱発電について、開発についてもどうお考えになるか。北海道の地下資源調査所の調査報告によりますと、すでに大雪山の層雲峡地区と亀田半島鹿部地区において地熱調査がなされておりまして、そのほか洞爺、登別、ニセコ地域、また阿寒、屈斜路地域あるいは知床半島地域などでも地熱の徴候が見られているということでありまして、特に開発促進していただきたい、こう思うのですが、この点いかがですか。
  99. 田中角榮

    田中国務大臣 北海道の工業化というものはもう必要でございますし、北海道の電源開発は必要でございます。また伊達火力発電所については、これは北海道道議会と地元がまとまれば何とかして開発工事を始めたいという考えは私も北海道の工業化とかいろいろなことをやってまいりましたので、そういう考えは前提に持っております。同時に北海道が地熱発電のよき地域であるということも承知をしております。いまの御指摘のところは、層雲峡の地点は公園法がございまして、真に風光は明媚なりというところでございますので、真に風光は明媚なりというところの調整の問題が一つあるわけでございます。  もう一つ私がいま困っているのは炭鉱の問題があるのです。炭鉱に何とかして石炭専焼火力をつくりたいというのでいま通産省で検討しておるのですが、北海道はいま幾春別や芽登の開発が行なわれてから、北海道の電力は現在のところ比較的に予備電力があるわけであります。しかしこれを本州に縦断送電幹線で送れるとすれば、石炭専焼でも先ほど申し上げたようにピーク用発電には十分使える、ペイする、こういう問題もあるので、いまの火力の問題、北海道産の石炭専焼火力の問題、もう一つは地熱発電の問題等総合して検討したいと思いますから、そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  100. 相沢武彦

    相沢分科員 問題点いろいろだと思いますが、先ほど大臣おっしゃったように発電原価はきわめて安いし、また年間の稼働率というものは火力、水力よりも高いという点、公害がないという利点、あるいは小規模でも採算が可能、特に副産物としての温水の利用ができるという点は、寒冷地の北海道にとっては非常に大きな特性になると思うわけであります。ですから地域暖房あるいは農業、酪農、産業方面の熱源の利用ということで地域開発には非常に大きな利点があると思います。大臣前向きに御答弁いただきましたので、ぜひともこれを行政面で実現をはかるようにお願いしたいと思います。  以上で終わります。
  101. 渡辺肇

    ○渡辺(肇)主査代理 和田一郎君。
  102. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 私は繊維問題でちょっとお聞きしたいのですが、去年から繊維業界たいへんなショックの連続で、たいへんな状態なんです。国際的な問題であるとかそういう問題は抜きにしまして、政府が去年来とられたいろいろな融資の措置だとか機械の買い上げの問題、そういったことで現状はどうなっているかということをまずかいつまんで御報告願いたいのです。
  103. 田中角榮

    田中国務大臣 繊維問題につきましては、先国会でいろいろな法律の制定等をお願いしたわけでございます。また予算的、資金的な措置も相当程度実現いたしておるわけでございまして、市中の金融の緩和の状態もございまして、表向き見た状態におきましては、四十五−六年、また四十四年−五年の倒産件数よりも半分以下になっておることは事実でございます。しかもアメリカに対しても対前年度比一九%も伸びておりますので、そういう意味では小康を保っておるということでございますが、現実問題からしますと私はそうではないと思うのであります。いろいろの問題はこれからであります。対米繊維調整というようなものではなく、鉄鋼が不況カルテルをやらなければならないような状態と同じように設備過剰でもあるし、いろいろな問題、新興国との競合も出てきたしということで、めんどうな問題はありますが、去年の上期において決定した自主規制による措置はみな終わりました。大体織機の買い上げ三万台余も終わりましたし、これは措置をしたものは大体効果をあげておるわけでございます。いまの状態では、その後行なおうとした財投、金融等含めまして約二千億をこすものでございますが、この中で相当程度は実行いたしております。おりますが、いろいろな問題が新しく起こっております。織機だけではなくて、紡績機をどうするかとか機械メーカーをどうするかとか、そういう問題もございまして、繊維は実態を注目しながら適切なる措置をその時点その時点でタイムリーにとっていかなければならない、こういう状態であると思います。なお、こまかい数字その他必要があれば、事務当局から説明いたします。
  104. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 いろいろな問題があるということを大臣みずから申されましたので、私も、製造業者の立場と言っては語弊があるかもしれませんが、そういう立場で、こまかい点ですけれども一々質問していきたい、こう思います。  私、ここへ持ってきたのは、これはトリコットなんですけれども、輸出専門業者がやっております。実は広幅というのですが、二メートル三十の一メートルですね。これは以前は二百三十円で製造屋から問屋へ納めておった。現在百三十円だというのです。これが現状である。これはちょっと質が悪いのです。これは上等のほうなんですけれども、やはり二メートル三十の一メートルで、二百五十円のものが現在百七十円なんです。ですから、工賃の半分にもならないというのが現状なんですね。確かに融資もいただいたし、そういったことで融資をもらっても、市中銀行から借りておったのがありまして、肩がわりしたのが多いらしいのです。いずれにいたしましてもこれがトリコットの現状です。そのほかにたて編みであるとかよこ編みであるとか、いろいろ業種がありますけれども、私、ずっときのう聞いて歩いたのですけれども、彼らは実際問題としてどうしていいかわからないというのが現状ですね。その点について、製造業者のほうと販売業者のほうとを縦分けまして、製造業者もほんとうにたいへんである。それで、販売業者の実態はどうか、その点についてひとつ教えていただきたい。
  105. 田中角榮

    田中国務大臣 確かにあなたの御指摘になるようなものはございます。私は新潟県の選出でございますが、いま新潟、石川、福井といえば、今度の日米繊維交渉等の一番当面する地域でございます。そういう意味で私も実態をつまびらかにしておるわけでございますが、確かに機械はみんな広幅の織機にかわっておるわけであります。しかし、それは現時点において五年後ぐらいになればこれは全部かわるということでございますが、いますべてが稼働しないというところもありますから、設備負担というものが製造業者にかかっております。  もう一つ、何で二百円のものを百三十円で、これはそのとおりなんです。私もけさ憤慨したのです。これは私も商工委員会で答弁をして、繊維局にも注意をし、また通商局にも言っておるのですが、これは輸出割り当てというような実績中心主義で出ておりますから、輸出の窓口というのはさまっているということで、もうこれだけしか輸出できないのだから、君のところでもっと安くしなければ別なところから買いますよと言われると、どんどんたたかれてしまう。しかも、いま三百八円ベースで平価調整で困っておるのに、それを二百七十円でもってたたいておるのだ。そういうことに通商産業大臣は目をおおってはならないということで、けさも、近く手を入れるから、こう言っておきました。そんな日本の特にその窓口でなければ輸出ができないような大手商社が、二百七十円ベースで買いたたくということになれば、ますますアンチダンピングといわれるのでして、これは日米交渉を幾らやってもだめなんです。よき品物を適正な価格で、適正な利潤で、製造業者から輸出業者等のマージンも再検討をしたいというくらいに内容調査を進めておるときに、それ以上に、二百数十円のものを百何十円にするというようなこと自体、それは背に腹はかえられないから機械を回しておく、モーターを回しておくという自転車操業もやむを得ない、こういうことが行なわれておるという事態、私は、そういう事態ありとすれば、これは通商産業省指導に乗り出さざるを得ない、そう思いまして、これから私自身も福井とか石川とか新潟県とか、また一宮とか、そういうところから縫製まで、みんな関係者がおりますから、実態の数字を明らかに調査をしよう、こう思っております。
  106. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 ぜひひとつそれは早急にお願いしたいと思うのです。実態調査をして、大体どのくらいまでかかるかという問題もあるのです。期間が迫っておるわけですね、夏物だとか冬物だとか、これはいろいろあるそうですけれども。  もう一つ、ではどういうふうな手を打たれるかという問題なんですけれども、これは結局、いまおっしゃったいわゆる商社のほうから買いたたかれておるのですから。
  107. 田中角榮

    田中国務大臣 なかなかむずかしい問題なんです。私自身も内容を調べてみますと、私が日米繊維交渉の過程においていろいろ業界の実態を調査しましたときには、まず、新しい機械を入れるときには、三千万円の機械を入れるということになると、その会社が三分の一の担保を出す、それからもう三分の一はその実際の中小企業の経営者が自分の田地田畑を出して、あとの三分の一は親企業という商社が出しておるのです。これは税金と同じことでございまして、一番初めからこっちからこう担保を取られておって、一番最後にこの債権だけ確保できるようになっておることは、これは苛斂誅求である。そういうことはできぬ。もう一番最後にどんなに会社が整理されたところが、田地田畑は残さなければならぬ、出資金がゼロになったときには担保権は残さなければならぬということで、相当強い指導をやってきたわけでございます。今度はその窓口が一つだから、輸出の量がきまっておるから、そうすれば、そこが製造が非常に多いので、需要が少なくて供給が多いものだから、アンバランスですから買いたたけるわけであります。それをさせないためには、そんなあこぎなことを続けるとしたならば、通産省の通達さえも聞かないし、相談にも応じないなら輸出の自由化をやりますよ、私のほうはこう言っているのです。輸出権というものを認めないようにしなければいかぬ。輸入もまたしかりです。輸入してきて、それを値上がりまで持って売らないでおれば、これはどうしようもないことでありますから、これは自由に輸入すれば、台湾バナナは三分の一になるのですから、やはりそういう自由化というものを窓口行政にも及ぼさなければいかぬ。これはかっていろいろなことをやった人もあるのですが、なかなか成功しなかった。しかし、今日の段階においては、政府が税金をもって最後はまかなわなければならないというときであるならば、私はやはり実績中心ということにこだわってはおれないということで、この間から通商局で輸出輸入の実績とその内容の調査をさしておりますが、打てば響くように一週間のうちにというわけにはまいりません。いずれにしても非常にむずかしい問題ではありますが、やはり実態の究明をしなければいかぬ。私も、そういう実態を知っておりながら、これに対して調整ができないということでは、その責めを果たすことにはなりませんから、その意味で、通産省もあげてこれが合理化ということに努力してまいりたいと思います。
  108. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 それはひとつぜひよろしくお願いしたいと思います。輸出だけでなくて、国内向けのいろいろな製品にこういうものが出ているのです。現在のところは、繊維というのは浮き沈みが激しい業界である。その従事している製造業者の方も、結局自分の腕だという一つの過信がある。実際あると思うのです。そういうことで、必ず好調のときもあるだろう、それまで何とか持ちこたえようということでがんばっておるのですけれども、以前なら多少きいたのですが、現在の体制に入っているからそうはいかない。  それで、たとえば原価を割ったような商品に対して、農産物のような最低価格補償というのがありますね、うまくいくかどうかわかりませんが、共済制度のようなそういうのを考えていらっしゃるのはございませんか。
  109. 田中角榮

    田中国務大臣 なかなかむずかしいのです。そこまでやると、もうすべての余ったものを買い上げなければならぬ、なべかままでみんな買い上げなければならぬということで、なかなかむずかしい。ですから、織機を買う、織機を買うだけでなくて、織機をいままでたくさんつくっておった繊維の機械メーカーに対しても何らかの措置をとる、こう言っておるわけです。登録織機だけではなく、やみがあるわけです。これがまたやみまで買うといったら、またつくってもやみにする。なかなかむずかしい問題がありまして、やっぱり自然に政府施策というものの限界を示して、ある一定の限度、ノーマルな状態を招来するまでの政策はきちんとやります、こう言って、そしてやっぱりそういうことでタイムリーに問題を片づけて、それからはみ出したものはどうするか。社会保障の制度もあるし他の政策融資もある、転業資金もあるし誘導政策もあるしということで解決しないと、価格補償までやる、余剰生産は全部買い上げる——石炭は一番やらなければならぬのですから、少なくとも石炭の貯炭融資をしろということまでは言っておりますが、余っている石炭に対して何カ月分ずつ全部事業団をつくって買い上げる、これは昭和三十年以前はやったことがあります。これは必要な量を確保するためにやむを得ざる措置でございましたからやったのでございますが、余ったものをみんな買えということになると、なかなかいまの体制ではむずかしい。余り物が出ないように大いに指導していくということが限度だろうと思います。
  110. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 いま大臣がおっしゃったいわゆる無籍の織機ですね。いまの織機の買い上げは、相当恩恵をこうむっているということはいいのですけれども、無籍というのはどういうわけで出てきちゃったのですか。
  111. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 申し上げるまでもなく、織機につきましては、現在中小企業団体法に基づいて各業種組合が設備制限をやっております。通産大臣がそれに対してアウトサイダー令を出しておりますが、それがいわゆる登録織機であります。しかし、いろいろな景気の変動とかまた零細企業等がございまして、そのような登録でない設備をつくっておるというような事態が過去数年続いております。
  112. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 昭和三十六年から登録制が始まったのでしょう。
  113. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 そうであります。
  114. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 それでは結局設備規制命令ですか、それは通産省が出された。結局はそちらのほうが監督官庁ということですが、実際問題としまして、現在、繊維の生、産は無籍織機が半分くらい占めているのじゃないかといわれておるわけですね。私、あるところで調べてさましたら、大体半分くらい無籍だ。その点どうでしょうかね。
  115. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 現在のところ、通産省といたしまして真剣に無籍の取り締まりを実施いたしております。その過程におきまして無籍織機の実態把握もいたしております。ただいまのところ正確な数字はまだつかんでおりません。しかし、業界等の推計からいたしますと、綿、スフ、人絹、絹につきましてはほぼ登録織機に対しまして一割程度、毛の織機につきましてはほぼ三、四割というような程度であろうと推計いたします。
  116. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 私の地元が足利市にあるわけですけれども、そこで組合の方であるとかそういう関係の方、それから業者の方、これは勘ですけれども、大体いいときは別にしまして半分ぐらいあるだろう。これは昭和三十六年からの命令が満足に履行されていないのですから、そちらにも責任があるわけです。それで繊維の生産は、現実にそういう無登録織機さえも生産しているわけなんです。それが過剰になっておるわけなんです。しかも今度は、繊維の業界の姿を見ますと、製造業者があってそれから下請へ出すわけですよ。下請がほとんど無籍が多いのですね。家内工業的にやっている、それしか生活のかてがないという場合。そして今回のようないろいろな問題があって、上のほう、いわゆるメーカーのほうから下請へもらうのにどんどん賃機織りの単価を締められる。何か転業したい人だって、織機があるわけですから、売りたくたって売れないというのが現実なんです。確かに無籍だからいけないといっても、昭和三十六年から十年間というものそのまま来られたのですから、何らかの、この間皆さん方手を打たなければならなかったのに、無籍は買わないと言うが、どうでしょう、ここで大急ぎで無籍を調査して、把握した上で何とかこれはできませんか。
  117. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 三十六年以降通産省としては、常時無籍の取り締まりについては努力しておる次第でありますが、特に昨年八月、自主規制対策で設備の買い上げを実施いたしますに際しまして、特段の取り締まり強化を行なっておる次第であります。通産局ごとに監視委員会を置きまして、その下部機構として産地組合の数百人もしくは数千人の監視員が現在現場を回りまして、実態確認並びに無籍の排除等につとめておる次第であります。実は今年一月ぐらいから本格的に動いておる次第であります。
  118. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 そうしますと、無籍を調べに行く。無籍がつかまった場合にどうなるのですか。皆さん方が発見した場合は営業停止ですか。
  119. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 織機は新設制限と登録織機でなければ織れない織物という規定があります。したがいまして、たとえば合成繊維織物は織れるわけであります、登録でなくとも。したがいまして、そういうものを織るべく指導をいたしております。
  120. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 そうすると、これから自分がいままで手がけておった仕事を変えなければならない。そうしますと、無籍を持っておるのは、さっきも言ったように家内工業ですよ。いままでは、よく見ますと農家の片手間にやっておりましたけれども、農業いまだめでしょう。全部一本でなければならないということが多いわけですよ。そうして自分のいままでの、何十年もの製造業者からのつながりがあるのですよ。それをまたさがさなければならない。そんなことをしたら——それよりも無籍を救済できませんか。有籍にして転廃も自由にできるようにしなければ、幾ら有無の人たちに対して、融資措置であるとか転廃のいろいろな指導であるとかまたいろいろなワクをはめても、はみ出しているほうでどんどん生産していくということもあるわけです。ここでもう一ぺん御破算というのはおかしいけれども、全部包括してあげて、それから新しい道を選んでいく。実際問題として繊維は過剰なんでしょう。そういう面から考えて一体どうなんでしょう。
  121. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 たいへんむずかしい問題でございまして、私ども非常に苦慮いたしておるのでありますが、現在登録織機の転売は自由になっております。したがいまして、登録織機をできるだけ過剰になりました業者から無籍の業者に移す、いわばその結果、無籍織機を登録化するというような方向の指導はいたしております。
  122. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 ということは、権利を売るということでしょう。権利を売れば、いま権利一台五万から十万と言っておりましたよ。せっかく自分たちが一生懸命やったのに、またそれを買わなければならないというそういう小手先よりも、一ぺんここでそういう方々を救済できないかということを私聞いているのですけれども、大臣どうでしょう。
  123. 田中角榮

    田中国務大臣 いまの状態における政府の方向は、無籍は無籍である、こう答弁せざるを得ないのです。国会でいま審議を願っております予算措置は、これは国民の血税をもってやるわけでございますし、税制措置は国の恩典を与えるわけでございますので、これは日米繊維協定という一つの現象に対してそういうものもまたある影響を受けるであろうということに対して国内的な措置として行なうわけでございますから、無限大に行なうというわけにはまいらないわけです。ですから、現時点においてはまず登録織機の買い上げを行なう、そうして縮小や転廃業を徐々にはかってまいるということでございますが、しかし第二、第三段の問題になって、これはことしの暮れとか来年になって非常に不況感がまだ直らない。少なくとも一般的には不況感はかなりの水準まで戻るとしても、繊維企業というものはもう事業としてどうにもならない状態になる。これは石炭日本のエネルギーの大宗をなしたような非常に重要な地位を占めておっただけに、石炭に対しては年間千億の金をつぎ込んでおっても国民はこれを理解します。と同時に繊維は明治から百年の日本の輸出の大宗であったということを考えてみれば、繊維企業に対しても私はこれだけの政策をしても国民はやはり理解を示すと思うのです。国民の理解のないところの政策は私はできないと思うのです。だから、それはある時期になって無籍を買わなければならぬという世論が起こってき、また現実がそうなれば私はそういう措置が必要だと思います。しかし、そういうときには無制限ではだめだ、以後一切繊維企業に対する特別対策は行なわない、行なうことができないというくらいな法律的処置がなければ、私は無制限にやみ織機を拡大をして悪循環を続けていく、それを国民が税金でもって絶えずしりぬぐいをしなければならぬというわけにはいかない、おのずから際限があると私は思うのです。そういう意味で、これから起こり得る問題として政治がどういうふうに対処するか、これは与野党意見がおもむくところで国論というものを察知して解決の道が生まれるのであって、これはやはりいまここで無籍を買えと幾ら言われても、それは無籍じゃなくて有籍でもって買わなければならない予算の措置をやっているわけでありますから、そういう意味でひとつ理解をしていただきたいと思います。
  124. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 この点についてはわかりましたけれども、昭和三十六年から監督しなければならないのがどんどんふえちゃったという責任は一部あるわけですから、その点ひとつ覚えておいていただきたい。
  125. 田中角榮

    田中国務大臣 そういう責任は感じておりますが、これも全部買うということを前提にして無籍ででもつくれば買うんだぞという法制にはなっていないわけですから、そんなにふやしたってあなた方は苦しみますよと注意をすればよかったと思うのですが——注意もしてきたのです、してきても、景気のいいときにはばっとふえてしまったのでありまして、なかなか国民の爆発的エネルギーを調整することはでできなかったということで、はなはだ遺憾でございますが、こういうことでございます。
  126. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 融資措置の金利の問題なんですけれども、いままでのドル・ショックの緊急融資であるとか、これからまた政府間協定に対する融資があるそうですね。これは一つ確認したいんですけれども、六分五厘というのが政府側の金利であると、こういうわけですね、これ間違いありませんか。
  127. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 七年間の融資期間のうち当初の三年間は六分五厘でございます。
  128. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 そこへ各組合が五厘の手数料を取る、それから県の保証協会が大体一分二厘の歩合いを取る、プラスしますとその三年間が八分二厘です。市中銀行に借りたほうが七分七厘五毛くらいで借りられるというわけです。この点はどうなんですか、どういうふうな形態になっているのですか。時間がありませんから、ひとつ簡潔に答弁をしていただきたい。
  129. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 信用保証協会あるいは組合は若干の実務がございますから若干の手数料的のものを取っておるということは聞いておりますけれども、それが多額になり非常な負担にならないように私どものほうで指導はいたしております。
  130. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 それで、その指導されているのはわかるのですけれども、現実にこうなんですね。この点もう少し実際的にやっていただきたいと思うのですよ。どうでしょう。
  131. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 それぞれの地域の実態を調べまして必ず指導いたします。
  132. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 それから大蔵省の方にお聞きしたいのですが、織機を買い上げた方、それから転廃業の方といろいろありますけれども、そういうような方に対しての税制上の措置というのはどうなっていますか。
  133. 高橋元

    高橋説明員 お答えいたします。  織機を買い上げられました方につきましては、昨年五月に自主規制に伴います買い上げ、これに対します閣議決定がございまして、この処置につきまして昨年の十二月の暮れに国税庁の取り扱いといたしまして方針を定めました。それによりますと大体一台二十五万円というふうに承知しております。二十五万円の中で、構造改善として国から出ます分が二十万円、その他のものが五万円というふうに承知しておりますが、五万円の分につきましては、譲渡と考えられる機械の原価を越える分につきましては譲渡所得、国から交付を受けます補助金につきましてはこれは一時所得といたしまして、約一年間の間に転廃業に必要な施設を取得なさった場合にはいわゆる圧縮記帳という手法を用いましてその分は課税いたしません。一年たちましてなお必要な施設を買ってない場合は一時所得として課税するということにいたしております。  その後、八月の変動相場制移行に伴いまして、中小企業者がいろいろと打撃を受けられましたことも考えまして、昨年の暮れに国際経済上の調整措置の実施に伴う臨時措置法を受けまして、租税特別措置法の中で甚大な被害を受けられたというふうに主務大臣に認定される事業者につきましては、特例といたしまして三年間の欠損の繰り戻しを認めております。それから事業を転廃業なさるということで、ほかの事業に転換なさる計画をお持ちの方は、都道府県知事の認定を受けられました場合、受けられました期間内に現有設備の加速償却を認める、こういう措置を講じたわけでございます。  その後、政府間協定によりまして三百七十七億の買い上げが行なわれるわけでございますが、その買い上げが行なわれます部分につきましては、現在御審議願っております租税特別措置法の一部改正法の中に条文を設けまして、国から受けられます、補助金につきましては、これは事業用の固定資産、つまり他の事業を新しく営まれるに必要な固定資産を取得されました部分につきましては、二年間の猶予期間をもって、その期間内に施設を取得されれば圧縮記帳をいたしますということに考えておるわけでございます。
  134. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 時間がありませんからあと一間だけですけれども、いまの織機の買い上げですね。五%ですか五分の一ですか残存業者の負担がありますね。五分の一だったですね、どうでしょう。
  135. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 今回の政府間協定に伴う対策につきましては全額政府負担になっております。
  136. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 わかりました。いままでは五分の一が残存業者の負担ですね。
  137. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 自主規制の場合には二〇%が業者負担でありますが、事実上は一〇%はその府県が出しておりますので、業者の負担は一〇%であります。
  138. 和田一郎

    ○和田(一)分科員 わかりました。時間がありませんので終わります。
  139. 渡辺肇

    ○渡辺(肇)主査代理 斉藤正男君。
  140. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 私は中小企業対策について中小企業庁長官並びに通産大臣に伺いたいと思います。  わが党の横山利秋議員が昭和四十六年十一月四日、質問第一号として衆議院議長あてに所定の手続をとり質問をいたしました。それは「中小企業向け官公需の確保に関する質問」でございまして、これに対しまして、「昭和四十六年十一月十二日受領」「内閣衆質六七第一号」という形で「昭和四十六年十一月十二日、内閣総理大臣佐藤榮作、衆議院議長船田中殿」ということで答弁書が出されておりますが、これは通告してございませんのでどうかと思いますけれども、中小企業庁長官並びに田中通産大臣、この横山議員の質問の内容と、佐藤内閣の答弁内容について知悉をされておりましょうか。御両所から御答弁を願いたい。
  141. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 よく存じております。
  142. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 田中大臣、いかがですか。
  143. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、商工委員会で中小企業の官需の必要性等については質問を受けております。また、予算委員会でも質問に対して答えておりますし、私もかつて商工委員長の職にもございました当時からの問題でございます。そういう意味で、横山議員の質問書の内容その他はつまびらかにはしませんが、私の考えておることと大体同種のものと理解いたしております。
  144. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 昭和三十八年法律第百五十四号で中小企業基本法が発令され、さらに「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」ということで、昭和四十一年六月三十日に公布施行されております。この中小企業基本法並びにいわゆる官公需法につきましては、長官も大臣も御承知のとおりでございまして、特に国あるいは公社公団は、中小企業に対し請負をさせるように、そしてまた物品を買いつけるように、役務を提供させるようにということで特段の規制がなされていることは御承知のとおりであります。しかし、四十五年の閣議決定に基づく年度の官公需を中小企業者にどう要請をするかという目標、同時に実績というものを比較検討してみますと、閣議決定に基づく目標は九千四百億円でありましたが、実績は七千六百五十億円でございまして、はるかに実績は目標を下回っているのであります。どういうわけで目標と実績のズレがこのようなことになるのか。私は、法律はある、政府は口を開けば中小企業を育成強化をする、制度、運用、十分気をつけますというような態度に終始はしておるわけです。おるけれども、実績は残念ながら、政府のおっしゃることとほど遠い、かけ離れている、こういうようにしかこの目標は、九千四百億に対する実績七千六百五十億を見て言わざるを得ないというように思うんでありますけれども、これは目標の立て方が過大に過ぎたのか、あるいは努力が足りなくて目標まで及ばなかったのか、どちらかだと思うわけであります。中小企業はあげて官公需を望んでおります。   〔渡辺(肇)主査代理退席、主査着席〕 中小企業はあげて官公需を望んでおります。しかし、せっかくの立法にもかかわらず、このような実績はまことに遺憾でありますけれども、なぜそういう結果になったのか、長官から御回答をいただきたい。
  145. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 御指摘のとおりでございまして、はなはだ残念なことでございますが、当初の目標に比べまして実績はほど遠いものがございます。原因といたしましては、各省庁それから公社、公団、調達する主体がたくさんございまして、また調達する物資も多様でございまして、比較的中小企業者に対してなじみにくい物品調達あるいは役務の提供ということから、なかなか目標に達しないという点もあろうかと存じますし、またこういう法律がありながら、また私たちが担当者としておりながら、まだ努力が足りないがために目標に達しないという点もあろうかと思いますが、個別、具体的に原因をはっきりさせることはなかなかむずかしい点もあろうかと存じまが、しかし私たちは、いろいろこの調達を中小企業向けに確保するために体制の整備をするとか、あるいはいろいろ施策を講じまして、四十一年度以来やってきておる状況でございます。
  146. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 どうも私のお尋ねに対して的確な答弁ではないのでありますけれども、私は目標に対して実績が悪い原因は何であるか。しいて言うならば、目標の設定が高過ぎたのか、それとも各省庁、公社公団の努力が足らなかったのかどっちか、こういうお尋ねをしたわけであります。二つに一つです。両方なら両方、一方なら一方というようにお答えをいただけばいいのですけれども、まあよろしい。  そこで、四十六年度における閣議決定は、四十六年八月二十四日に行なわれました。大臣御承知かどうか知りませんけれども、中小企業向け契約目標として、昭和四十六年度における国等の契約のうち、中小企業向け契約の金額が約一兆四百億円となるようつとめるものとする、この金額は国については約五千四百億円、公社及び公団等については約五千億円とするということで、総額一兆四百億円の目標設定をしているわけであります。前年度の実績が、先ほど申し上げましたように七千六百五十億であるにもかかわらず、一兆四百億を目標としてきめたことは、それは目標だ、それに向かって努力をするんだという言いわけをするのか、年々ふやしてきているんだから、予算総額の増もあるのでこの程度にふやしたのだというのか、私は昭和四十五年度の実績が七千六百五十億であるのに、四十六年度に一挙に一兆四百億までにふやしたことは、やはり水増しじゃないかというようにしか思えないのですけれども、この点は大臣からひとつお答えを願いたい。
  147. 田中角榮

    田中国務大臣 一兆四百億円という目標数字を出したならば、一兆四百億に達するように、一兆四百億を十億でもこす、これが違いますと誠意を疑われるわけでございます。しかもこれは腰だめの数字ではなく、各省庁からあがってきたものを調整したものだと思いますから、実行させなければならぬと思います。私ども、なぜ目標に達しなかったのかといいますと、これはいろいろ理由があると思います。周知徹底しておらないということ、それから事情としては、いまの中小企業のワクが、中小企業として長いこと納めているもの、印刷物など、私も例を知っておりますが、そういう印刷物などは、資本金が一億円になっておる、それをそのまま続けざるを得ない、そういうものもあります。  それからもう一つは、いままでの計算機が電子計算機になったとか、途中でかわったものがあります。自動車もそういうことでありますし、トラックなどもそうです。そういう意味で、中には無理をして中小企業のディーラーを通じて買わなきゃいかぬのかというようなことをやっても、それは入札だし、公入札だというたてまえから、実際に聞いてみると、私も、通産省の中でも何でこうだというような問題で聞いてみても、いろいろ理由はあります。ありますが、政府中小企業対策、零細企業対策として出した数字というものを達成するかしないかということは、政治的にも大きな責任があると思います。そういう意味で、もう三月の三十一日を間近にしておりますから、これはまたおしかりを受けるかもしれません。受けないことを心で祈っておるわけでございますが、受けるかもしれません。そのときは、四十八年度からはほんとうにやりますから、こういうことでやはりだんだんと馴致していく、なれさせていくということでないと、その中でほんとうに出入り業者とかそういうものが、資本金が大きくなった、合併をしたということで全部落ちてしまうというものが実際あると思うのです。ですから、そういうようないろいいろな理由があるということを御承知をいただきたいと思いますが、大筋において、天下に公表した政府の数字が、自分で発注しながら実効をあげ得なかったということに対しては、いささか責任を感じております。
  148. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 実力者の田中さんからそういう答弁をいただいたわけで、やがてあなたの天下になるかもしれない。中小企業を救わずしてあなたの天下は来ないと私は確信をいたしておるわけでございまして、ぜひひとつ、せっかくの閣議決定です、しかも何か思わせぶりにこの決定は書いていまして、あれもやる、これもやるというような施策が述べられておるにもかかわらず、四十五年度の実績がいま言ったような状態であるということから、いまの大臣の答弁で責任は感じておられるというように理解はいたしましたけれども、承服できるものではありません。現実に昭和四十五年度の各省庁あるいは公社、公団の実績を仄聞すれば、ある省庁は一五〇%も消化をしている、目標をオーバーしている。ある省庁については、半分もいってないというようなところがあるやに聞きます。なぜそういう結果になったのかということを聞きますと、特に目標をはるかにオーバーした役所は、担当官がきわめてこの問題に熱心であり、寝食を忘れてこの問題と取り組み、発注となればまず中小企業というようなことを念頭に置いて仕事をされた、その結果がこういう結果を生んだというようにも聞いているわけであります。したがいまして、その衝に当たる方の心がまえ一つでたいへん違うものだということを感じました。したがいまして、上は総理、総裁、通産大臣中小企業庁長官あるいは担当部長、課長の心がけ一つで目標を突破できることは、容易だとは言いませんけれども、可能だというように思うわけでございまして、ぜひこの点はがんばっていただかなければならぬというように思うわけでございます。  そこで、具体的なお尋ねをいたしたいわけでありますけれども、残念ながらというか、幸いなことにというか、私がいまやり玉に上げようとしている専売公社は、実は四十五年度の実績は、目標三百七十八億に対しまして三百九十一億を消化いたしまして、三・四%目標額を突破いたしておるのであります。したがいまして、中小企業向け官公需の発注につきまして、私は専売公社を具体的に、大まかな線で責めるものではありませんが、この専売公社ですら、実はあの製品の配送をこの四月一日から全国的に直属の子会社をつくって、零細企業からたばこ配送事業を取り上げるのであります。取り上げるというと語弊がございまして、いろいろ問題はありますけれども、わずかに九州、福岡においてのみ、二地区ほどを中小企業庁が認定している適格な協同組合に下請をさせるけれども、あとは全部子会社とおぼしきたばこ配送会社が関西、名古屋、東京そして今度は北海道と新しくできて、一手にやるわけであります。もちろん大蔵の指導、専売の自主的な合理化、たばこの特殊性といったようなことから、だれでも運べる、だれでも配れるという筋合いのものでないことは私も理解をするものであります。しかし、いままで大手である日通が大部分を請け負い、日通の系列下にある地区の通運が大部分をやっていたのを、なぜ専売の子会社である直属のわずか五つの会社が全国の配送を担当しなければならないのか、私は理解に苦しむわけであります。もちろん、このことは長官や大臣には初めて申し上げますので、大蔵省なり専売公社に聞かなければわからないことであって、私はいままで専売、大蔵によその分科会で伺ってきて、ものは言いようだな、どろぼうにも三分の理があるというが、なるほど大蔵や専売の言うことにも理があるというようには思って、何割かは納得いたしましたけれども、しかし、事中小企業に関する官公需の発注ということになりますと、どうしても合点がいかぬ。  そこで御指導を願いたいと思うわけでありますが、初めて聞かれたと思いますのでどうかと思うのでありますが、新たに運賃も特に申請をして値上げをされて——御承知のようにたばこの配送でございますので、大きな車ではだめです。二トン車を購入されて、離島とか辺地とかは下請にやらせるにしても、通常の地域は全部たばこ配送会社がこれを担当する。しいて下請をやらせるというのは、いままでやっていた日通の系列である地区通運にやらせる、こういう形でございまして、わずかに福岡で久留米地区、甘木地区だけを適格組合である北九州の運送会社にやらせる、こういうことであります。私は、北九州にわずかでもその例の残っていることを、専売の理解あるいは業者の努力を高く評価するものでありますけれども、全国で割りのいい、間違いのないこのたばこ配送事業については、通運業者としては垂涎の的であります。非常にいい仕事なんです。下の下の下でもいいからやらしてほしい。これは五%、三%、七%というようなピンはねをされて手数料をとられて仕事をして、なお余りある運賃だというのであります。したがって、多くの運送会社がこれをやりたいのでありますけれども、がんとして受け付けない。しかも支所や支局では全く話にならなくて、これは全部専売公社の本社で扱っているのであります。したがって九州から、久留米から、高松から、札幌から本社へ来てお願いをしなければ、通り一ぺんの文書要請等ではとうてい実現もできないし、支局や支所では全く相手にしないという現状であります。先ほども触れましたように、たばこの特殊性からいって、あるいは専売の合理化の一環としてわからぬわけでもありませんけれども、官公需の中小企業向け発注という立場に立ったときには、中小企業庁なり通産省は事をよく調べていただいて、指導をいただくべきものではなかろうかというように思うのですが、長官、こういう事実を御存じでございましょうか。
  149. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 大筋につきまして話を伺いました。それでいま先生から詳細にお話を承りました。いまお話しのように、官公需法の精神にのっとりまして、本件につきましては専売公社の方と十分話をして、そしてこの中小企業者に対する扱い方をいかにするかということについて協議をしたい、このように考えております。
  150. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 大臣からはまた後ほど伺いたいと思うのですが、御承知のように、事業協同組合に対しまして昭和四十二年から適格証明制度が生まれて、私の調査したところでは四十二年に八組合、受注額は七千四百万、四十三年に二十八組合になり十四億一千七百万、四十四年に三十八組合になり十六億七千八百万、四十五年は五十四組合になり三十億五千二百万、適格証明をとった協同組合が官公需の仕事をしていたというように記憶いたしますけれども、そのとおりでございますか。
  151. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 そのとおりでございます。
  152. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 この数字からだけ見ますとなるほど倍増であります。たいへんな伸びをいたしておりますから、中小企業庁の努力、通産省の努力といったようなものもこの適格組合に関しましてはわかるわけであります。問題は、適格証明制度があるということを全く知らない中小企業が多いのであります。よほど業界の団体がしっかりしている、そして事務所もある、常駐役員もいるというようなところは別でありますけれども、中小企業協同組合の多くは、名実伴っていない協同組合が残念ながら多いわけであります。せっかくこういう適格証明制度があるにもかかわらず、申請をしなかったり、あるいは申請してもなかなかきびしいようでございまして、このお墨つきをもらうには容易なことではない。なるほどめちゃくちゃに適格証明を出すわけにはまいりますまい。資本金、業績、役員構成、事務所、事務能率等等、いろいろ条件はあると思いますけれども、中小企業基本法並びにいわゆる官公需法の立場からいけば、この適格証明制度というのはもっと十分PRし、もっと門戸を開いて、多くの組合を適格組合にすべきだし、もしまた適格組合でないとするならば、それを育成強化するというのが中小企業庁の仕事であり、通産省の仕事でもあろうというように私は思うわけでございますけれども、きびし過ぎはしないか、あるいはその制度をまだまだ十分業界で知悉していないではないか、宣伝が不足ではないかというように思うのですが、長官、いかがでございますか。
  153. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 実は三月の下旬に、各省中小企業官公需担当官に対しまして、中小企業庁長官名をもちまして、中小業者に対する官公需の受注の確保についてより一そうの御協力をお願いした次第でございますが、その中におきましても幾つかある事項の中で、特に事業協同組合の活用について一そう徹底を期されるようにということを要請いたしました。また、適格組合に対する証明制度ということについて、確かに十分周知徹底はまだされていないということでございますので、テレビによりましてPRをはかっております。このようにして、より一そうこの制度の周知徹底について引き続き努力をいたしてまいりたいと考えております。
  154. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 通り一ぺんの答弁がございまして、努力が足りない、一生懸命やりますということでありますけれども、答弁は簡単なんですよ。何とでもお答えいただけるが、実際問題として中小企業を育成し、中小企業に対し、各省庁、公社、公団がこれはと思うものを発注するというのは、いままでいわゆるお出入り、御用商人というような形で、実績がなければどうにもならない。新たに食い込むといいますか、新たに指定をされるということは、容易なことでないことは大臣も御理解いただけると思うわけであります。  そうした意味でもう一度お尋ねいたしますけれども、目標の設定が甘い、そうしてまた各省庁の実績が不十分だというようなことを含めて、大臣、ただ各省庁、公社、公団要求の数字を出させて中小企業庁でトータルをする、そうして閣議決定をするということでなくて、むしろ前年度の実績を閣議で検討し、省内で検討し、そうして科学的根拠のある中で新しい年度の目標をきめていくということにしないと、何か絵にかいたもちで、形の上では喜ばせて実際は何にもならなかったという結果になるおそれがあると思うのであります。私は担当官とお話をいたしましたけれども、その点は十分自分の任期中に勉強したい、そうして実のあるものにしたい、こういうことを真摯に言われております。長官や大臣の決意がそうでなければ担当官としてもやりにくいので、ぜひ担当官の意思をくんでいていただきたいというように思うのですが、大臣から見解を聞きたい。
  155. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたがいま御指摘になりましたとおり、御用商人、官庁御用達というようなことで、なかなか中小企業で新しいものが入れないということは確かでございます。それからもう一つは、公入札制度をやりながらも、事実は随意契約のようになっておる。それは最低入札ということが制度でありながら、この最低入札というものにも弊害があるわけであります。そういう意味で、私たちも、官公需ということで商売を始めて、なかなか入りにくかった実態を非常に身にしみて知っておりますが、確かにまだ制度上の欠陥があります。そういうものに対して、いまこれはやはり公表するというよりも、ある程度、官公需ですから義務づけるということも必要だと思います。義務づけるなら、その実態を報告せしむるとか、御注文がなければ報告しないということではなくて、やはりそうしなければいかぬ。これに対して実態調査をする係官を置くとか、いろいろなことをやらなければならぬと思います。私もこの問題はよく知っております。私もきのうの晩、ちょっとテレビを見まして、ちょうど同じことがあったのです。幕府の何か鑑札をもらうためにたいへんな、ちょうどそこを見たのであります。そういうことで、実際そういうことがあるんだろう。私自身が小さな官庁営繕工事に入るために、非常に苦労しましたから、そういう実態は身にしみているだけに、二回、三回同じことでもっておしかりを受けないように、これは中小企業庁、法律までつくってもらっているわけでありますし、中小企業庁の責任でもあると思いますから、これはなお中小企業庁との間で十分検討して、貴意に沿うように努力をいたします。
  156. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 大臣かつては中小企業の経営者だったそうでありますけれども、いまや時めく田中角榮であります。あなたが大資本に対する奉仕の姿勢をとるか、中小企業に対する愛情の姿勢をとるかで、あなたの将来はきまると私は思う。ぜひひとつ乾坤一てきがんばって、私のきょうの質問の趣旨を実際生かしていただくように努力をお願いして、終わります。
  157. 植木庚子郎

    植木主査 次は楢崎弥之助君。
  158. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 兵器禁輸三原則というのはいまも生きておりますか。その三原則が生きておれば、もう一度明確にしていただきたい。
  159. 田中角榮

    田中国務大臣 武器輸出三原則は十分生きております。
  160. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 内容をひとつ……。
  161. 田中角榮

    田中国務大臣 武器輸出承認の基準というのがございます。その一つは、輸出貿易管理令によります通産大臣の承認を要するもの、それの判断に対しての原則的承認をしないものいうこと。三つございます。共産圏諸国向けの場合、二は国連決議により武器等の輸出を禁じられている国向け等の場合。三、国際紛争の当事国またはそのおそれのある国向けの場合。以上三点が一つの基準として存在いたします。
  162. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 武器というのは日本の企業はつくっておるのですか。
  163. 田中角榮

    田中国務大臣 武器というのは、御承知のとおり、これは戦争に使うものを武器という、こういうことで、法律的に武器というのは、法律には一つしかありません。武器等製造法という、その法律だけでございまして、武器という法律上の明文は、この法律以外にはないわけでございます。ですから、日本でつくっております、鉄砲のたまもつくっておりますし銃もつくっておりますし、これは自衛隊が使っておればやはり武器だと思います。これは何か攻めてでも来て、これでやるときには武器となるわけでございます。
  164. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 これは憲法上武器をつくっていいんですかね。通産大臣はやがて指導者になられる方ですから、この辺はきちっとひとつしておいていただきたいと思いますね。
  165. 田中角榮

    田中国務大臣 憲法できめられておりますものは、国際紛争を武力で解決しない、それから軍隊は持たない、こういうことでございます。しかし武器というものは、武器の定義そのものに対してもう少し勉強する必要があるかもしれませんが、武器はお互いがやり合えば武器であります。例の軽井沢の山荘でもって警官を撃ったのは武器であります。凶器というか武器、そういうことでありまして、武器を使ってはならない、国際紛争を武力解決してはならない、これは平和憲法の精神でございまして、私は武器をつくる——武器というものは日本で使っておる戦車、特車といいますか、これが外国へ出れば、戦争しておるときにはこれは武器になるわけでありますが、こういうものを輸出をするときには制限を受けるというようなことはございますが、それを製造してはならないということにはならないと思います。
  166. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 事務当局は、いまの御答弁でよろしゅうございますか。
  167. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 一つだけ補足させていただきますが、最初の先生の御質問はいわゆる武器輸出三原則ということのお話がございまして、そこで武器とは何か、どういう定義なのかという御質問でございましたので、その点ちゃんと、補足でございますが、説明させていただきますと、武器輸出三原則、そこでの武器というのは、軍隊が使用し直接戦闘に供するものということにしておりまして、国会においてもそういう答弁をしておりますが、これは私ども、輸出貿易管理令を運用するにあたりまして、武器はこういうふうに観念いたしまして、さっき大臣が申し上げました三つのカテゴリーの中にございますが、そこに輸出するものはこれを認めないという、こういう方針をとっております。  以上、補足して……。
  168. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、大臣がいま言われました三つの地域を一応制限と申しますか輸出を規制しておる。そうすると、その三つの地域以外だったら武器を輸出してもいいという解釈でございますか。
  169. 田中角榮

    田中国務大臣 武器を輸出してはならないという法律が明定はございませんが、これは憲法の精神にのっとりまして、国際紛争は武力をもって解決をしないという精神で、日本から輸出をされた武器が国際紛争で使われるということになれば、これは間接的なものにもなると思いますので、武器というものの輸出ということに対しては、非常に慎重でなければならないということは当然だと思います。
  170. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、一応地域を三つあげておられますけれども、三つ以外ならば輸出していいという、そういう考えではない、行政指導としては必ずしも三つの地域に限らないのだ、いわゆる輸出についてはそういう行政指導でやる、そういうことでございますね。
  171. 田中角榮

    田中国務大臣 端的に武器ということばは、法律上制定をしておるものは武器等製造法第二条第一項でございますが、そのように明定されておるような武器というもの、俗に言う大砲をつくったり何かして、外国に輸出するということは、きめられた共産国その他の国以外でも、日本の現状では武器の輸出は慎むべきだと思います。
  172. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 この四十六年会計年度内で、航空機関係で他国の軍隊用として輸出をされた実績あるいは現在引き合いがあっているものがあったら御報告をいただきたい。
  173. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 いま四十六年度における航空機の輸出という御質問でございますが、四十六年度における航空機の輸出実績は三千三百万ドルでございまして、簡単に申しますと三つの機種でございます。一つは、御承知のYS11。それから二番目と三番目は、小さい飛行機でございますが、具体的に申し上げますと、FA200、これは四人乗りの軽飛行機、それからMU2、これは七、八人ぐらい乗れます。この三機種が相当数出ておりまして、金額にいたしまして三千三百万ドルということに相なるわけでございます。  あと、引き合いのお話がございましたけれども、この種のものは随時引き合いがございますので、現状においても、いま申しました三つの機種についてはこの程度の輸出は絶えずあるかと、YSのほうはだいぶ終わりに近づきましたけれども、あとFA200、MU2、これは随時現状ベースで引き合いがあるものと理解をいたしております。
  174. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いまの三つの機種ですね。もう少しどこの軍隊に何機と具体的に御報告いただきたいのです。
  175. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 最初に、先ほど御説明した三つの機種に、一つだけ申し忘れましたけれども、KV107というのがございますが、だから結局四十六年度において四機種輸出されたわけでございます。先生の御質問はどこの軍隊にということでございますが、先ほど申し上げました三つの機種は、これは需要者をここに正確に覚えておりませんけれども、すべて軍隊ではなくて、YS11であれば外国のエアライン・カンパニー、それからFA200、MU2であれば、これは小型機でございますから、個人もしくは会社のビジネス用、こういうふうなものでございます。最後の一つだけ申し上げましたKV107というのは、スウェーデンの海軍でございます。
  176. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 MU2、これは現在日本の自衛隊では、陸のほうでは連絡機、空のほうは救難機に使っておりますね。
  177. 黒部穰

    ○黒部政府委員 MU2は陸のほうではLRと申しまして、連絡観測機として使用いたしております。なお、航空自衛隊のほうでは単なる多用途連絡機に使っております。
  178. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 救難機じゃないですか、これから使うのは。
  179. 黒部穰

    ○黒部政府委員 救難のための捜索のほうには使っております。
  180. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 お聞きのとおり、これは現在陸上自衛隊、航空自衛隊で使っておるものです。これの輸出先はスウェーデンではありませんか、スウェーデンの空軍から十機、これはすでに送っておるのか、もしくは現在申請中で、許可はまだおろしてないのかどうか。
  181. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 ただいま先生のスウェーデンというお話でございましたが、スウェーデンに対する輸出承認を与えたのは、先ほど申し上げましたKV107という救難用のヘリコプターでございまして、MU2等はスウェーデンには輸出しておりませんです。
  182. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それではスウェーデンの空軍が標的機として買いたい、いま申請出ておりませんか、十機。
  183. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 先生の御質問は、スウェーデンの空軍から標的機としてMU2のようなもので出ていないかということでございますか。
  184. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私のことばがわからないのでしょうかね。わりかし大きな声で言っておると思うのです。
  185. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 機種は何でしょうか。
  186. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 MU2。標的機としてスウェーデン空軍が十機輸入申請、これは三菱ですね。これはありませんか。
  187. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 ございません。
  188. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 全然ありませんですね。  次に、FA200ですか、これは自衛隊は使っておりませんですね、使っていますか。
  189. 黒部穰

    ○黒部政府委員 使っておりません。
  190. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 エアロスバルという名で呼んでおるようです。富士重工が国産しておる小型であります。韓国の空軍士官学校で訓練用として五機、十一万ドル輸出するのではありませんか。
  191. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 申請はございません。話も聞いておりません。
  192. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 これは許可済みと私は思いますが、間違いありませんか。
  193. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 間違いございません。
  194. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私はいま申し上げた二つの点、MU2を標的機としてスウェーデン空軍が十機ほしがっておる、三菱から申請がありはしないかという問題、FA200、韓国の空軍士官学校で訓練用として五機、十一万ドル、これは出していやしませんか。まことにおそれ入りますが、もう一度お調べになって確かめて、ひとつ明確にしてもらいたい。
  195. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 もう一度調べさせていただくことにいたします。
  196. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それで平時の場合は、武器というものは訓練に使いますね、戦時にそれがどのように戦争に協力するか、また別の問題です。したがって、相手が軍隊で使うというような目的の場合は、私はこれを慎重にする必要があると思うのですが、大臣どうでしょうか。
  197. 田中角榮

    田中国務大臣 広範囲の意味で慎重にということは、これはそういうことだと思います。しかしこれからの将来の見通しはさだかではありませんが、武器というものは、これは明確な定義をしておかなければならないと思うのです。武器は、人間を殺傷する目的をもって使うものが武器であります。この武器の論争で、中国にトラックを送れるかどうかということが問題になっておった、私は武器ではない、こういう定義で、銃座を持たないトラックが武器であるはずがない、銃座をつけたら、銃座から上のものが武器であって、銃座の土台になるものは武器ではない、もしそうなら、ざんごうも砲台の台も全部武器ということになる、そんなことはないというので、私はトラック輸出というものはこれは問題にならない、こういうことを述べたことがございます。武器というのは凶器と結びつくもの、厳密にいえば議論があるはずでありますが、やはり内戦で戦えば竹やりも武器であるということになりますし、武器の定義というものは、これを法律に求めれば、私が先ほど申し上げた武器等製造法にあります。だから何でもが武器である、軍隊で使うものは全部武器であるか、先ほどあなたが申された標的機というものは武器であるかといえば、これは爆撃機とか、そういうものは当然武器であると思いますが、兵隊、軍隊の使うものすべて武器であるということはないと私は思うのです。ですから、将来この問題はお互い与野党立場をこえて考えなければならない問題だと思うのです。これは軍隊が使うトラックも送れないのか、しかしこれは救恤品として送るものが、これは使われれば、軍隊が使うわけであります。徴発を受ければ、軍隊が使うわけでありますから、そういう体制の国に、いつも徴発が可能な国に送るものはそれは軍隊が使用可能性を持つものであります。そういうようなことで、武器の定義というものは、人間を殺傷せしむる目的をもってつくられるもの、またそう使われるものを武器と言うというふうにやはり考えていいのじゃないですか。
  198. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私は、田中大臣は非常に常識的にものごとを判断されるという点で敬服しておるのですよ、ある点では。官僚的でない面。ところが、いまのお答えのうちに、トラックに大砲を積めば、それは台座から上が武器であって、下はそうじゃない、そんなことはおっしゃられないほうがいいのじゃないでしょうか。そうしたら、軍艦は大砲の部分が武器であって、それから下のものはというような議論になりやすいのです。だから私は、そして今日の段階では、いわゆる戦争の形態というものは、システムとして全部が動いておるのですよ、これは。標的機といえども、戦争のための訓練をするのに必要なものですからね。だから、その兵器の定義というものをもう少し明確にする必要がある。まさに私もそれを言いたいのであります。それで輸出に対するあれはある程度厳密に行政指導すると言うが、兵器に対する考え方があいまいであれば、何にもなりません、輸出原則をつくっても。  そこで、私はこの兵器の定義について明確なひとつ考え方をお示し願いたい、統一的な解釈を。非常にあいまいです、この点についてはどのように思いますか。
  199. 田中角榮

    田中国務大臣 これは、統一見解を示せと言えば、これは政府で法制局長官とも十分相談の上統一見解を示さなければならない問題でございますが、武器とは軍隊が使用し、直接戦闘の用に供するものということが、武器と言われておるようであります。定義としてはそういうことであります。  私たちが、軍隊として二年ばかり辛酸をなめたわけでございますが、これは兵器は大事にしろ、命より大事にしなさいと言って、言われたもの、それがやはり兵器であると思います。それは銃であり、弾丸であり、直接人命殺傷の目的をもってつくられたものであって、そういう効力を持つもの、それ以外にはあまりたいして名目のないもの、これはもう明確に武器だと思います。しかし、平時は何にでも使われておるものが、軍隊が使えば武器になるというようなものは、いまの標的機もそうでありますし、それから、YS11でも、これは騒乱が起これば、軍隊が徴発をして輸送機に使うという場合に対する、いまYS11が武器になるのかというと、それはやはり広義の解釈に過ぎると思います。私はそう思います。武器とば、軍艦とかこれはもう戦闘行為を目的としている武器であります。大砲ももちろん武器だし、軍艦も武器だし、しかし掃海艇のようなものとか、それからいまの商船が軍隊に徴発されて輸送船に使われます。そういう定義というものは、やはり法律でいう軍隊が使用し、直接戦闘の用に供するもの、これはもう初めからそういう定義でつくられ、そういうところに納入されている、そういうところで使用される、こういうものが武器であるということを、私はこれは常識論でございまして、不満足なものかもしれませんが、いままで知り得た知識をもってすれば、大体そういうものに局限されるものではないか、こう思います。
  200. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 掃海艇は兵器ではないといま言いましたが、そうですか。
  201. 田中角榮

    田中国務大臣 掃海艇は取り消します。掃海艇ではなく、普通の商船だと言おうと思っておりましたが、掃海艇と——商船が軍隊に徴発をされて掃海艇になったり、いろいろな輸送船になったりした場合ということを申し上げて、ちょっと私はいま台湾沖で沈んだ船を思い出したものですから、そう申し上げたのですが、これは取り消しておきます。
  202. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いまのお話のとおり、いろいろ思い出しながら大臣お話をされておるわけですね。私はこれを明確にする時期が来た。なぜ私が申し上げるかというと、もう日本の防衛産業は得意先が自衛隊だけのそれでは足らなくなってきているのですね、設備維持の点から。だから、経団連の防衛生産委員会からも強い要請がこの輸出について何回かあっておる。もうこれは具体的な日程にのぼる段階であると、私はそのように危険視するわけです。それで、今日のように産軍癒着の状態が続き、防衛産業が一つの戦略産業としてこれからの位置づけを明らかにしていく、そういう段階で、私はこの兵器輸出に関する考え方を、もう一へん、あいまいでなくて、きちんとひとつ出してもらいたい。それで、これはおそらく二十八日にもう一ぺん総括で私ども時間があると思いますから、そのときにひとつ通産大臣から明確なこの段階における、そうして将来の防衛産業の見通しをつけた上でのシビアな御見解をお示しいただきたい。  以上で終わります。よろしゅうございますか。
  203. 田中角榮

    田中国務大臣 いずれ総括質問が終わるまでにはお答えできるようにいたします。
  204. 植木庚子郎

    植木主査 次は、原茂君。
  205. 原茂

    ○原(茂)分科員 きょうは大胆と多国籍企業の現状について少しく検討させてもらいまして、現在アメリカ中心の多国籍企業の非常な世界的な進出をバックにしまして、やがて日本にもこの種の影響が、もうすでにある程度来ていますが、これからまた重大な影響が与えられると思います。わが国もおそらくこの多国籍企業化する方向がすでに出てきつつありますし、将来これが大きく発展するだろうと思います。で、多国籍企業に関してやはり大臣としての現状の認識というようなものをお聞きして、私の意見も申し上げるという、これにしぼってひとつ検討を願いたい、こう思うのですが、最初に半年前のあのドル・ショック以来、あのときにわが国の円の切り上げが行なわれるあの前後、水田大蔵大臣が今回の円の切り上げ、多国間調整の過程でどうも日本海外における経済的なマーケッティングというのでしょうか、アメリカその他各国の経済の事情をよく把握して、そうしてああいう通貨問題が起きるときにわが国の参考にしようとする適切な材料の掌握というのができていないで、非常に困難をした。で、大使館は大使館で各省から出向している経済専門家らしい者がいる。しかしながら大使の指揮下に入ってこれが十分活動できていない。あるいはまた専門分野にあるはずの経済家、専門家が行っていましても、どうもこれもある種の制約を受けて十分な活動ができていない。そういう意味ではわが国も何らかの措置をひとつ加えて適切な経済外交といいますか、海外における各国の経済の動向の調査あるいは実情の把握というようなものを的確に行なうような措置を施す必要があるということを大蔵大臣が痛感したような口吻で、あるところで話をされました。当時大臣もこれに関係して苦心をされたお一人でございますが、その後、一体わが国のいわゆる経済外交というものを、あの柏木さんを臨時に使ったような形で今後もやっていくのか。やはりどこかしっかりした中心的な海外経済というものを把握するための機関を設け、あるいは通産省かあるいは外務省かあるいは大蔵省か知りませんが、これが統一的に全世界の経済動向の把握を行ない——いまはそうでなくても最近のドル不安、金価格の不安というようなものを通じて、英国の経済不安になりまたドイツも動揺している。円もまた再切り上げが近いのではないかというようなことすらいわれるような状況でございますから、そういったものをきちっと国家的な立場で一カ所で十二分に把握できるような、そういうものをお設けになるような相談ができたのか、大蔵大臣がこぼしただけで終わっているのか、その後の経過といいますか、大臣からひとつ……。
  206. 田中角榮

    田中国務大臣 いまの御質問に明確に答えるだけの結論は遺憾ながらまだ出ておりません。しかしながら私は、去年の七月に通商産業大臣になりましてから、まず国際経済調整法の必要性を説いておりまして、約半歳を過ぎましたけれども、今日は通産、大蔵、外務の間でこれは必要であるというような機運が急速に盛り上がってきつつあることも事実でございます。できるだけ早い機会に、場合によればこの国会にでも御審議を願うぐらいのことをしませんと、ことしに間に合わないという機運が醸成されつつあることは事実でございます。しかし情報収集とか何かという問題に対しては、これは全く日本立場は合理的でない。大体において外務省の出先在外公館というものは商売にはタッチしない、商売人は関係がないのだ、こういうやり方、こういうコマーシャルベースのものは官がタッチしないという明治憲法以来の考え方は間違いだ。どこの国の人に会っても一番最後になると、飛行機買ってくださいよ、何台買ってくださいますかと必ず言うし、私の損害保険のこういう会社の支店を認めてください、銀行の支店をぜひ認めなさい、こう必ず言ってくるのです。これは国益を守る最高のものだと思うのですが、そういう意味では通産、農林、大蔵省、そういう人たちも出向しておりますし、もっと出向人員をうんとふやしたい。私は百四十カ国に近い国が存在するのですから、少なくとも三百人ぐらい通産省から出したいということをこの間から答弁も申し上げておりますし、そういうことをことしの予算でもって決定しなかったのははなはだ遺憾だが、来年の予算ではほんとうにまじめに考えなさい、そういうことを言っております。いましかしIMFとか世銀、DAC、OECD、そういうところで比較的に自由圏の数字は的確につかんでおりまして、日本が外国のことをよく知っておるなというぐらいなデータは持っておりますが、共産圏に関しては全く公表されておらない。ですから私は、国民総生産や国民所得の問題等も明らかにされるように国際経済機構にこれらの国々が加盟されることは非常にいいことであるし、事前調整もできることだ、こういうことでソ連のIMFに対する加盟などもわれわれは大いに慫慂しようということであったわけでございます。だから、あなたがいま御指摘になったように、そういうことを考える段階でございまして、まだこれに対する人材の布陣とか機構をどうするとかいうことはできておりませんが、これから外交というものの大宗が経済を前提としない外交は存在しなくなると思うのです、実際において。だからそういう意味からいって、グロムイコ外務大臣が来ても、日本は北方領土の問題をまっ先に言おうとしても、とにかくチュメニをどうするのですか、帰るまでに少なくとも御答弁を得たい、こういうものが訪日の主目的になっておるという事実を考えれば、経済問題に重点を置かない外交というものは存在しないようになると私は思うのです。ましてや東西問題から南北問題に焦点が移ってきている事実に徴すれば、そうだと思います。そういう意味で、とにかく健在武官を置くような昔とは全く違うのですから、駐在武官の何倍かの数の財務官とか経済、通商の専門家というものを送らなければならない。私はそういうことで、今度公害問題などありますから、公害問題とか労働問題の専門家も在外公館のメンバーとして常置すべきであるという考え方をいま進めたいという考えでございます。
  207. 原茂

    ○原(茂)分科員 大臣のおっしゃるとおりだと思います。いつも政府はそうなんですが、考えている、相談をしている、何とかしょうと思う、半年たち一年たつが具体化しない。この問題だけはいま焦眉の急だと思うのです。ですから、人材の養成も特に必要ですから、もう一日も早く閣議の議にのせて大至急決定して実施に移す。そうして適切な機関の設置を行なうということをぜひおやりいただきたい。また苦汁を飲むおそれがあると思うのです。  前段の二つ目にまたお伺いしておきたいのは、半年前のドル・ショックもそうなんですが、現在円の再切り上げの心配がそろそろ出てくるのではないか、こういうようにいわれておるような状況を判断しましても、ただいわれるように、日本の外貨の手持ちが年末二百億になると再切り上げがもう一度行われるのではないかというばかりでなくて、そういうのは見方が少し皮相だと思うのでありまして、もっと突っ込んで幾つかの理由があるが、中でも非常に重要なのはアメリカ経済が安定しないということが一番大きな問題だと思うので、したがってドル不安の根源であるアメリカ経済が安定するように、日本立場からアメリカに対して十分な監視というと語弊がありますが、注文をつけるくらいのことをしませんと、ただアメリカに振り回されていく通貨情勢が生まれてくるだろうと思う。したがって、やはりアメリカ経済のいわゆる安定化が中心でなければいけないというたてまえで、アメリカに対しては大胆にアメリカ経済の欠陥を指摘し——そういうチャンスが幾らでもあるのですから、注意を喚起して、アメリカ経済の立て直しに対する注文づけを政府としても堂々と行なうということが必要だと思うのですが、どうでしょう。
  208. 田中角榮

    田中国務大臣 全くそのとおりでございまして、九月の日米経済閣僚会議のときに激論をしたのもそれでございます。まず第二次戦争が終わってからアメリカは四分の一世紀以上にわたってIMF世銀や第二世銀、ガットの中心的勢力となって世界の平和に寄与してきたじゃないか。それを今度のように二国間交渉というようなものだけでものが片づくと思っておるとアメリカモンローに閉じこもるという第一次大戦後と同じ結果をもたらすにすぎない。そういう意味ではドルの交換性を維持確保するようにまず考えなければならない、また経済機構をこのまま存続、拡大存置するということを考えなければならない。アメリカが従来唯一の中心勢力であったのですが、これからは拡大EC日本協力をして、アメリカがいままで持っておった持ち分を分担すればある程度解決のつく話である。アメリカのドルの交換性を確保するということはアメリカ経済がよくならなければならないんで、そのためにニクソン政策をやっておるということはわかりますが、その中で一つ欠けてるものは、外国に七百億ドルも投資をしておるということ、だから日本アメリカとの貿易は片貿易になっておるというけれども、アメリカ系外資から日本が搬入しておる石油等を計算すればまだバランスは逆だ、だからそういう意味で、かつて外資規制を行なったように外資規制を行なわないで、アメリカ国内需要だけを喚起することによって五百万の失業者を吸収しようとしても、それはできるものではない。年率平均六・二%にもなっておるという五百万をこす失業者を平均二%に下げるには外国投資を引き揚げる以外にないんじゃないか、それが注文つけてる日本側から逆に注文つけられるということで激論と映ったわけでございますが、私は当然のことを述べてるつもりであります。ですからサンクレメンテ会談でもそういう姿勢は依然としてくずしておりませんし、いまでもアメリカ代表者が私に面会を求めれば、まずそれを言います。アメリカ経済自体が強固になることが世界の平和の維持にも貢献するのだし、みんなよくなるんだということをひとつ考えてもらいたい、私はそういう注文をしております。注文だけではなく、それは全くそうでなければならない、そのためにこそわれわれはアメリカの財務省証券というものを多額に買い入れたり世銀の市中調達に対しても無制限というくらいに引き受けますと言っているじゃありませんか。  こういうことですから、日米間でもそういう根本的な問題が議論されておる、またそういう体制がつくられつつあるということをひとつ理解いただきたいと思います。
  209. 原茂

    ○原(茂)分科員 そういう点からいいましても、昨年のニクソン声明、対内、対外合わせて八項目ですか、その声明の中で、いま大臣がおっしゃったように、ニクソンになって大事な課徴金だとか交換停止だとか、いろいろなことを言いながら、海外投資に対する規制を何らしなかったところが特徴だと思うんですよ。歴代大統領もやはりあの種のアメリカ経済考えたときにはいつも外資に対する何かの規制を必ず打ち出したわけです。今度はそれを打ち出していないどころか、最近の傾向を見ますと、多国籍企業に対しては、ドノヒュー、特別補佐官ですかが政府代表して言っているのですが、とにかく多国籍企業というものは非常にアメリカに貢献している、そして雇用の面でも六十万人ぐらいの雇用に寄与している、入ってくる資本投下の利戻りを考えても八十億ドルくらいのものは貢献をしている、あるいは輸出の八十億ドルに相当するぐらいのものは多国籍企業によって寄与されているというようなことを最近、二月幾日かに堂々と言っていますね。それほどニクソンが、海外投資に規制を行なうどころか、大胆に擁護をする立場を明瞭に最近になればなるほど打ち出しているように思うのですが、こういう点どうでしょう。
  210. 田中角榮

    田中国務大臣 アメリカ政府部内にも一部そういう考え方が存在していることは承知しております。アメリカの企業が巨大化しておって政治のコントロールがきかないということも一つあると思います。八十億ドルではないと思いますが、七百億ドルに近い投資の配当その他送金されるもの五、六十億ドルということは、確かにそうでございます。しかしそれにしても雇用は全然問題にならない、しかも海外において米国が投資をした恩恵に対して感謝を持っておるかというと、それがないのです。そこで私はこういうことを言ったのです。東洋には貧者の一灯ということがある。一日一わんのかゆを節約することによって一灯を献ずるりやくと富者の千灯万灯——富者が千灯万灯を献じても、どうもある者はあたりまえだというのだ、そういう意味で、アメリカは、アメリカ自身が投資をして吸い上げることしか考えないで、三角貿易を考えなさい。アメリカ日本に投資をしなさい、アメリカは低開発国援助をしなさい、日本はそれを代金として低開発国に物を売ります、そしてその代金でアメリカから高度の物を買います、そうなると回り回ってあなたのところへ返るのですがね、二国間の貿易調整だけを考えないで四国、五国のバランスでもってすればアメリカはそんなに憎まれないで利益を得ることができるのだし、外資に幾らかの制限をすることによって国内の就業人口が拡大するということをやはり考えてもらわなければ困る、こう言ったのですが、アメリカ考えているような考え方がいま日本にもありまして、日本はハワイで土地を買い、アメリカで土地を買い、ビルを買い、多国籍でもってやらなければいかぬ——確かに現地合弁も必要でありますが、無制限ないまのようなとうとうたる流れを進めていくと、いま日本アメリカにかわってイエローヤンキー、こういわれるのでございますが、ここはよほど慎重な配慮が必要である、こういま考えておるわけであります。
  211. 原茂

    ○原(茂)分科員 そういう状況であるのになおかついまアメリカ中心とした多国籍企業化というのがどんどん増進されていくわけですね。世界の子会社活動を含めた対外投資全体を見ると、六割以上はやはりアメリカ系の多国籍企業がいま活躍をしていると思うのですが、一体いうところの多国籍企業全体の地球上における一年間の活動というのは、価額的に表示するならどのくらいの額になっておるとお思いになるか。その中で、六割以上を占めるアメリカの多国籍企業といわれるものがどの程度活動をし、価額でどのくらいになっているかという点をひとつ……。
  212. 田中角榮

    田中国務大臣 つまびらかな数字は後ほど調査の上申し上げますが、アメリカの多国籍企業の年間における売り上げ高二千百億ドルといま発表されておるということでございます。
  213. 原茂

    ○原(茂)分科員 国際全体で……。
  214. 田中角榮

    田中国務大臣 いま手元に数字がございませんので、調べて御報告申し上げます。
  215. 原茂

    ○原(茂)分科員 こういうことを一応認識する必中要があると思うので私調べているのですが、代表的なアメリカの多国籍企業の一つGM、ゼネラール・モータース、この売り上げ高がちょうどスウェーデン、ベルギー、オランダ、この三カ国のGNPを上回っているんですよ。それで米国のどの州の収入よりもGMの収入のほうが大きいのです。この多国籍企業の上位五十社の全部を集めますと、全米五十州の収入総額より大きい。多国籍企業というのはどんなに巨大な帝国を形成しているかというのを全部数字であらわしてみますと、現在世界のGNPの総額が約三兆ドルなんです、そのうち米国がその三分の一、一兆ドルを占めている。次の三分の一を欧州、カナダ、中に日本が入り、それからオーストラリア、残りの三分の一がソ連、東欧諸国、中国あるいは開発途上国という分布になっている。総額でいくと三兆ドルになる。これに対して世界のGNPの一五%は、いわゆる多国籍企業によって生み出されている一五%、その生産額は約四千五百億ドルです。このうち米国企業が全体の約六〇%を占めている。英国が二〇%、欧州、カナダ、日本などが合わせて二〇%、こういう割合になっている。これを計算しますと、米国の多国籍企業だけで約二千億ドル以上、これはいま大臣がおっしゃったとおりの生産を海外であげているという数字の系列になっていく。実はこの二千億ドル以上の米多国籍企業のいわゆる生産活動というのは、日本のGNPに匹敵しているわけです。わが国のGNPと全く同じなんです。これほど巨大なものであるという認識が一つ必要なんです。  それから一九八〇年までには、多国籍企業の上位二百社が西側世界の資本の七五%を支配するだろうとわが国の調査する学者、専門家が指摘をしておるわけです。これではいかぬというので、OECDもこの調査をする必要があるというので、主要資本主義国十カ国の海外における生産高の価格というのを調べた。そうすると、一九六七年に英国の国民総生産額の二・五倍に達しているんだ。英国全体の国民総生産の二倍半に達している。こういうように、多国籍企業の活動がまさに現代のマンモスのような動きを示しているのが現状なんです。で、通産省の皆さんの御調査によっても日本にある外資系の企業、いわゆる外資率が九五%以上ですかの売り上げ高や成長率ですね、だんだん売り上げが伸びていく成長率というのは、一九六六年度で三六・六%の成長率を示している。それが一九六七年、翌年になりますと三一・六%に達して、また八年、九年とずっと上昇カーブにいることが、現在調べの途中ですが、あげられております。これに対してわが国のいわゆる製造業の売り上げ高、それの成長率は一体どのくらいかといいますと、六六年で一六・六%なんです。そして六七年には二一・九%、これは横ばいにいまなりつつあります。ということを考えますと、多国籍企業というものが日本に与えつつある影響というものも非常に大きなものがすでにある。したがって、これに対してわれわれが適切な手当てを——手当てと言っちゃおかしいのですが、加えるためにも、もう少し多国籍企業というものを系列的に調査をし、先ほどの海外経済調査を基幹として、十二分にやるという一つの仕事にこれも加えまして、もっと的確にその方向をとらえておきませんと、たいへんなことに、手おくれという意味でたいへんなことになるんじゃないかということが考えられますので、多国籍企業と簡単に言いますけれども、在外子会社が一ぱいあるわけです、この多国籍企業には。GMが直接世界に出ていくわけじゃない。多国籍企業というのは御存じのようにセクションなくして地球全体が働く場所だ、こう考えて、企業活動を行なうわけでありますから、そういう場合にGMなり何なりが直接出ていかないで、子会社がまた子会社を、孫会社までつくって、これが非常に大きく出ていく分を調べていくと、もっと拡大していく。それがすでに日本にも相当程度あらわれているんですが、わが国に直接投資でなくて、いわゆる多国籍企業といわれるもののいわゆる子会社活動が行なわれている分野がどの程度金額であるとお思いになりますか。それをひとつ……。
  216. 本田早苗

    ○本田政府委員 米国の鉱工業の上位二百社の中で日本に出ておるのは九十社でございまして、これらの子会社または合弁会社等入れますと、百九十五社の企業が出ているわけであります。この売り上げにつきましては、石油を除きまして三千百二十四億円、これは米系の多国籍企業の関連企業の売り上げです。米系外資系の企業では八千四百九十八億になっております。その中で多国籍関係のものが三千百二十四億、これは四十五年六月の調査です。
  217. 原茂

    ○原(茂)分科員 冒頭に申し上げたように、大臣、これは質問というよりは多国籍企業というものの現状の認識をあらためて検討したいというたてまえですから、数字が合っているとか合わないとかいうことはあまり問題にしません。しませんが、いまの数字もちょっと少な過ぎるように思うんですがね。これは通産省のお調べですから的確なんでしょう。そこでそこまでお調べになっていましたら、米国の多国籍企業が世界じゅうに持っている工場、プラント、そういうものがどのくらいあるとお思いになりますか。
  218. 本田早苗

    ○本田政府委員 いま手元にその資料は持ち合わせておりません。
  219. 原茂

    ○原(茂)分科員 もうちょっと的確に専門にお調べにならないと、多国籍企業に対する基本的な方針が出てこないと私は思います。工場、プラントは世界に約八千、ブランチ、出張所、営業所を含めますと二万三千に達しているんですね。先ほどお示しになったわが国にある数字というのは、少し小さ過ぎるというのは年代が違うんじゃないかという感じがいまいたしますから、もう少し正確にお調べになると非常に数が多くなります。そうしてこの分布図と系統図をずっとやはり通産省持ってないといけませんね。そうして非常に巨大な意思をもって、とんでもないところから強烈な意思というものが、何でもないような会社の中からぐっと日本に対する影響力を示してこようとしている。私なんか仕事をするのが専門ですから、そういうほういやに神経とがらして見ているんですけれども、ある意味では非常におそるべき手が伸びてきているという指摘もできます。これはきょうの目的ではありませんから、そういう指摘をしようというのではありませんが、数字をお聞きしただけでも、もうちょっとアメリカの多国籍企業というものが世界にどの程度あるんだ、それがどういうプラントなり工場を持っているんだ、営業所がどこにあるということを数をよく掌握して、それがどういう系列のやつが日本でどういうふうにいま活動を開始したか、その意図は何だということまで系統図を示していきますと、よくわかるのです。特にいまは電算機中心の国際市場で激しい競争が行なわれているわけですが、IBMなどが示している意欲なんというのはちょっとおそるべきものかありますね。したがってそういう数字、的確な系列の把握というものを前提にしませんと、国としての、通産省としての多国籍企業対策は生まれてこない、そういうことを指摘したいわけなんです。シュレーベルですか、「アメリカの挑戦」という本を書きましたね。あの中に、これから十五年もすると、米国、ソビエトに次ぐ第三の経済力を持つのはヨーロッパではない、ヨーロッパを出し抜いたヨーロッパにおける米国企業がその地位につくであろう、第三の地位につくであろうということをシュレーベルが「アメリカの挑戦」の中で指摘をしました。これがヨーロッパを刺激して大騒ぎになったことは御存じのとおりです。事実私もそういう状況になりそうだ、多国籍企業の現状を見ると、たいへんなショックをわれわれ感ぜざるを得ないというふうに実は考えているわけです。  それで、もう少し数字をお調べになっていただく材料として申し上げてみたいのですが、一九六六年末でいわゆる先進工業諸国の海外直接投資の累積残額は約九百億ドルになっているのですが、そのうち米国系の多国籍企業の所有に属しているのは約三百五十億ドルに達しています。またこれら多国籍企業の海外直接投資、投下資本によって生産される額——まあ在外子会社生産額といっていいのかもしれませんが、それは一九六六年末において約千八億ドルの巨額に達していることが事実となって指摘をされているわけであります。アメリカの商務省が発行しています商業活動の現状調査という定期的に出している書類がございますが、それによりますと、六九年末における直接投資残高は七百八億ドルに達している。また直接投資の活発化によって在外子会社の売り上げ高も急増し、七〇年の全売り上げ高は二千百億ドルを突破したといわれる。七〇年の輸出が四百二十億ドルであることを考えますと、いかにこれが巨額なものであるかということが私たちにもよくわかるわけであります。非常にたいへんな力をもって海外活動が行なわれている。  その上にもう一つ注目しなければいけないのは、この多国籍企業による直接投資の性格なんです。これが地域的にもいわゆる産業別の変化を非常に来たしている。たとえば、ついこの間までは鉱業とか石油、そういうものを中心にウエートをかけていたのですが、最近では製造業にウエートをかけてきた。このことが日本にとっては重要なんです。製造業に非常に大きな比重をかけてきました。そうすると、わが国は資源のない国で、加工、製造というものにこれからも貿易活動の主体を置かざるを得ない。ところがこの製造業にどんどん主体を置いてこれの支配権を確立してきますと、日本の企業の将来というものを憂えなければいけないだろうというふうに思いますから、この点は非常に重要なこととして、こういう面での調査もしていただく必要がある、こういうふうに思うわけです。一口にいいますと市場指向型であるといってもいいのかもしれませんが、とにかく日本なりその他の諸外国に向かって米国流の経営管理あるいは販売技術、こういうものを押しつけていくだけじゃなくて、海外に保有する工場への恒久的な支配体制をつくってどんどん、いわゆる一国の経済の支配権の確立までねらっているとすら見なければいけないというように、これはもう朝日ジャーナルの山崎清さんが書いた論文に指摘されていますが、私も同感なんですね。非常に警戒をしなければいけないというように実は考えています。  このことはアメリカの労働界にとっても、先ほど大臣が言われたように、とにかく安い賃金で外国でつくったやつをどんどんアメリカに持ってこられたんじゃアメリカの失業率は増大する一方なんですから、これは当然進歩的だった労働組合が保護貿易派に回ってみたり、いまアメリカは大転換みたいな大騒ぎを国内でもしているわけですが、そういうことを見ますと日本のほうがまだ少し安閑とし過ぎる。多国籍企業というものの日本に対する影響がいまどの程度あらわれているか、あしたはどうなる、来年はどこを指向しているということを、これは時間がありませんから全部申し上げることはちょっとできないのですが、通産省としてはもっと的確に調べていただいて、次の機会には私も普通の委員会でひとつ所見をお伺いしたいと思うのですが、もうちょっと的確な多国籍企業の動向、その指し示す方向と彼らの意図というものを的確につかみ切るまで、海外でも調査をなさるし、どんどん出張してお調べになるし、それから皆さんの力を動員して、ひとつ見取り図をおつくりいただきたい。そういうものがありませんと、ほんとうの日本のこれからのいわゆる経済活動の指針というものは生まれてこないだろうということを非常におそれているので、いまのような数字を申し上げたわけであります。  そこで、いわゆるこのような多国籍企業、ことに米系の多国籍企業がこれからどっちの方向を向いて力を入れてくるだろうか、日本もその中に入っているんじゃないかと思うのですが、いままでの経緯をずっと見ますと、ヨーロッパを席巻するほどに上陸していって、ヨーロッパが刺激されて今度アメリカに逆上陸を始めた。これはたいへんだというので、南アフリカ、西ドイツ、日本という方向にいま方向転換をやっておるわけですね。   〔主査退席、渡辺(肇)主査代理着席〕 もう間違いなくいまは西ドイツ。西ドイツは大体三年ぐらい前から横ばい状態になって、これ以上ふえていない。南アフリカは少し下降線をたどってきた。日本はどうかというと、日本は三年前からずっと多国籍企業の活動というのが上昇線をたどっているのですよ。だから、アメリカが意図しているかどうかは別にして、いまはこのいわゆる三大市場とアメリカが言っている中の日本というものは非常に有望だというので、全力を日本に投入している、多国籍企業のいわゆる方向づけがされているというように考えるのですが、そういう点もそんなふうにお考えになりますか。
  220. 本田早苗

    ○本田政府委員 御指摘のようにアメリカ地域別投資残額の傾向を見てみますると、一九五〇年に西ヨーロッパに一四・二%であったものが、一九七〇年には三一・四%を占めるというふうに、欧州に対する投資が非常に増加しております。その反面、カナダに対する投資は大体横ばいで、若干減っておるという状況でありまして、ラテンアメリカに対する比率は三七%であった一九五〇年の実績が、七〇年におきましては一五・六%、非常に減っておる。またその他の地域では一八・二%であったものが二三・八%に上がっておるという状況で、御指摘のようにラテンアメリカに向かっておった投資先が西欧その他の地域に振り向いておる、こういうことは御指摘のとおりだと思います。  また、ヨーロッパの対米投資も最近とみに増加をしておりまして、一九六五年には六十一億ドルであったものが七〇年には九十五億ドルに増加しておる。しかも海外直接投資の収益率は欧州の対米投資のほうが逐次上がってまいっており、米国の対欧投資の収益率はむしろ低くなっておるという状況でございます。しかも最近の日本に対する進出についての希望の強さというものを考えますと、われわれ日本に対する進出の意図も非常に強いものがあるというふうに考えておる次第でございます。またこの点につきましては、現在五〇、五〇対等で、共存共栄の原則に基づいて外資の進出を見ていこうということにいたしておるのでございまして、共存共栄の原則に沿った外資の進出を認めるという姿勢でこれらの案件の処理を行なおうという考え方でおるわけでございます。
  221. 原茂

    ○原(茂)分科員 いまお示しになった数字、大体そのとおりだと思うのですが、そのうちのカナダは横ばいだとおっしゃったのですが、カナダは全企業の約七五%が全部米系資本ですからね。したがって、ある程度までいきますと横ばいになるのはあたりまえなんです。だからこれは例外であると考えていいと思うのです。  そこで、いまおっしゃるように、大体日本を指向して大胆な上陸を開始してくるだろう。敵前上陸でございませんが、そういう前提を一応立てて対策を考える必要があるのですが、これは大臣アメリカのニクソン声明を出さざるを得なくなるほどの経済の悪化の大きな原因の一つとして、海外投資の規制がなかったからだという理由をあげることができるわけです。アメリカからそう来ると、日本の企業もこれから、あとでまた申し上げますが、どんどん多国籍化していかざるを得ないからいくということになりますと、日本も野放図もなくほうっておきますと、ちょうどアメリカ経済を悪化させたと同じように、海外投資を通じて逆に日本へいわゆる失業者を増大せしめるような影響を与えてくる、経済に悪い影響を与えるということが考えられるのです。したがって、入ってくるほうはもちろんですが、日本がこれから多国籍企業化してどんどん出ていこうとする、これに対してアメリカの轍を踏まないことを十分配慮しながら何らかの規制といいますか、何らかの措置をいまから考えておく必要があると思うのですが、何か構想がありましたら……。
  222. 田中角榮

    田中国務大臣 この問題に対しては、その国その国でもってみんな違うわけであります。アメリカは多国籍企業という、国外に資本が流通し過ぎてしまった。ですから政府は、第一次大戦が終わってから第二次大戦の始まる前までは世界の金保有高の六〇%から七〇%も持っておったというのが、二十七、八年たてば金保有高が百億ドルを割るという状態であります。しかし、百億ドルに近いくらいの利息が入ってくるほど海外に投資をしておる、こういうことでありますから、結局企業が大きくなり過ぎた。しかもアメリカの中は高賃金である。鉄鋼があのような状態でありながら五〇%、六〇%の賃上げをしなければならないような状態であるということになると、外国のほうが効率的であるということで、なかなか外資を引き揚げるということをしないわけであります。政治もその相手が巨大になってくると、これに対するコントロールがなかなかきかなくなる。そこでもって結局アメリカ考えておるのは、OECDのいっておる資本の自由化である。そして、今度日本人も出ていくのだから日本の企業が投資をしなさい、料理屋でも何でもいいから投資をしなさい、ここまで言っているのですから、アメリカもこの問題については手を焼いているというのが実相だと思います。しかしこんなことをやっておれば、日本も確かに第二のアメリカになるおそれがある。それはなぜかというと、先ほどから御指摘がありますように、日本は国民消費が減ったといいながら、消費支出が年率一三%も一五%もあるわけであります。こんな国はいずれにしても世界にないわけであります。不景気のときでも一三%から一五%あるというのですから、そういう国というもの、特に二十五年間で日本に投資をした企業がみな好成績をあげておりますから、日本にはまだ一つの目標地点としてアメリカの企業は入ってきたい。だからもう資本の自由化に対してひどく言っておるわけであります。ですから、日本市場において四五%以上のシェアを持つIBMが何を一体考えておるのだということを私が指摘をしても、いずれにしても自由化をしなければならぬのだ、こういうことでありますから、アメリカからは入ってくる。日本はシェアとしてはまだ非常に低いから入ってくる。日本は出ていく。そうするとアメリカと同じ道をたどるおそれがあるので、日本アメリカと違って原材料輸入国ですから、原材料の提供の国々と合弁会社をつくらざるを得ない。これはしようがないと思うのです。石油とか鉄鉱石とかマンガンとか、いろいろな問題に対しては、こういうものはある程度節度ある合弁会社というものをつくらなきゃならぬと思いますが、アメリカのように利潤を求めて——日本もだんだんと労働問題もたいへんになってくる。公害問題がいま拍車をかけているのです。公害問題が、こんなことを言うならまだ日本には九九%もあいているところがあるのですから、そこへ行けばいいじゃないかといって工業配置計画を出しておるにもかかわらず、どうも外国好きでもって外国にすぐ手を出す、こういう傾向にあるので、二十年前のアメリカ式な傾向にあるということは事実でございます。ですから、国際的にはケネディラウンドの推進、新国際ラウンド、そして資本の自由化——日本は外貨を持っておる、外貨減らしをしなければいけない。大蔵省までが、外国でもって土地を買うなら金を貸しましょう。こういう考えは、十年、十五年後を考えるとここでひとつ考え直さなければいかぬ、こう考えることはほんとうでございます。ですから、通産省でもむやみやたらにどこへでも合弁会社をつくればいいのだということではないのだ。長期的な原材料供給国との調整と、それから開発途上国に対する国際基準における一定規模の投資を行なわなければならない、こういうことを考えながら、将来日本が困ってしまって、失業で困るということにはしたくない。私はいまほんとうに工業配置考えているのは、二年や三年ではなくて、二十四年の長きにわたって法律もつくりながらやっているのですが、いままだ地方制度を改革すれば完全に登録失業者となる人がうんとおるのです。これは、地方税を国税の付加税にすれば八万人すぐ浮くわけです。それから農業人口がいま一七・四%が、欧州並みの六%になれば八百万人以上も潜在失業者が出るわけであります。こういう潜在失業者を持ちながら、現在の状態において完全雇用だからといって海外投資をしたらたいへんなことになる。私もサンクレメンテでこれを指摘した。完全雇用で五%の成長をして、何で一体日本は自由化できないかというから、そうじゃないのだ、事実は千万人以上も登録失業者になる可能性のある人をいまかかえているのだ、こういうことを非常に議論してきたわけでありますが、日本がいま野放図で百七十億ドルぐらいの外貨を持っていて、これを使うために外国にみな出ていってしまうのだ。こんなことをやっておったら内政上非常に大きな問題が起こる、私はそう思っておりますから、これは外務省、大蔵省、経済企画庁、新全総をつくるときにはこの問題は特に検討しなければならない問題だと思います。
  223. 原茂

    ○原(茂)分科員 おっしゃることには同感ですが、そこで結論めいたものが必要になってくるわけですが、私は直接的な規制の方法を一つ考える。間接的な規制に値するような効果を発揮するような何らかの対策、間接対策と直接的な対策を入ってくるほうと出ていくほうに、両者に歯どめをいまから考えておく必要があるのではないか、いま大臣のおっしゃったようなことも含めて。入ってくるほうで一つ心配なのは、そうでなくてもわれわれの立場からいうと日米安保を通じて軍事的な支配をされているような日本状態、それが多国籍企業のこういう大胆な上陸を野放図もなく放任しておきますと、経済的にも、先ほど大臣が言うように経済が支配されると政治的な支配も及んでくるわけですから、経済的にすらアメリカの多国籍企業を通じての日本における支配が確立されてしまう心配がある。カナダなんか、実際に人の国ですから悪いことを言えませんが、そういう目で見ますと、完全にアメリカ経済的に従属し、支配下にあるといっても過言ではない代表的な国なんだ。だから、政治的にも非常な影響を受けている。いま脱却するのに苦労しています。日本も、この多国籍企業の日本における大胆な上陸が放任されていくと、私は四、五年たったときの日本のいわゆる経済的な支配権が間接的にアメリカに握られる危険があるのではないかという一面を実はおそれなければならない。そういう面である程度の対策を考える必要がある。それから、日本から多国籍企業化して外へ出ていくというものに対する、これも一つの例なんですが、いま外貨減らしとおっしゃったのですが、たとえば四次防等いろいろ問題になりましたが、あの種の兵器の国産化をいま政府考えているのですが、私は将来国産化していきますと、軍事産業拡大していくやつに歯どめをかけるのがむずかしいと思うのですよ。どんどんどんどん拡大していかざるを得ない。したがって、ついに余剰な武器を持つ国になり、それを使う方法をどうしても考えなければいけない、消耗を考えるというような悪い歴史を繰り返すおそれもあるしするから、やはり兵器は輸入に仰ぐべきだ、兵器の国産化はしないほうがいいというたてまえをとっているわけですが、外貨減らしなどということも考えれば、思い切って大胆に——将来の日本の軍事産業の歯どめをどこでかけるのか、兵器というようなこともどんどん輸入でやっていいじゃないか、外国に注文したらいいじゃないか、間接的な多国籍企業の利用としてはかまわないから、どこかでつくればいい、日本でやらないほうがいいというくらいに私は思うのです。いずれにしても、いま言ったことに対する大臣の見解も聞かしていただきますが、ひとつ直接と間接と、入っていくほうと出ていくほうに対する歯どめを何らか講じなければいけないと思いますが、その構想をひとつ聞かせてください。
  224. 田中角榮

    田中国務大臣 これは、国際的には自由化をしなければどうしても縮小均衡の道をたどるという意味で、ケネディラウンドが前提であり、しかもOECDの資本の自由化が前提でありますから、入ってくるものはとめにくいのです。特に明治初年から日本は、外資によって電力の開発をし、鉄道を敷き、鉄鋼の生産もやってきましたから、特に戦後はマーシャルプランによって息をついたり、それから世銀IMFのお世話になって八条国に移行してきたという、鮮烈な外資というものの効果を知っておりますから、いまの経済人も学者も、どうも自由化政策に対する反対ということはむずかしいのです。特に物価を下げろという面からいいますと、どうしても自由化政策というもの、外資が入ってくるものをとめるということはむずかしい。そうすると、結局反対的にこちらから多国籍企業に出ていくということですが、これは何でもいいから外貨減らしに投資をするというんじゃなく、日本が将来長期的に原材料確保しなければならないというものに対しては、アメリカが持っている持ち株の半分を買ってもいいし、まとまった投資をすべきだと私は思うのです。こまごまとしたものをやるよりも、かりに一つの天燃ガスの鉱区を全部買うとか、そういうことは必要だと思うのです。それで長期投資も行なうということでいくべきであって、将来、日本でつくるようなものを外国でつくって、それが逆上陸をしてくるために、日本アメリカと同じ国内情勢をつくるというようなことは絶対に避けるということで、やはり基準をきめていかなければならないだろうということは考えています。ですから、入ってくるものを押えるというよりも——入ってくるものはいま五〇%企業とか、みんなこうしてまた制限をしておりますから、これ以上とめるということはできないと思います。  それからもう一つは兵器の問題、これはいつでも問題になるのです。これはもうサンクレメンテ会談でもどこでも、お茶の場所になると、日本で何で倍もする兵器をつくるんだ、こっちから行けば半値じゃないか、しかもそのほうが国際分業になるんだ、こういうことがありますから、確かにあなたが言うように、こっちで兵器産業的なものが大きくなれば、産軍複合とはいえぬまでも、これを売りさばく場所を考えなければならないじゃないかということになるから、安いものを買うということが望ましいことだと思います。  もう一つ、国内的な問題があるのです。そこらの調整がむずかしいのです。飛行機一台つくると、もう高速鉄道の車両とか高速の船舶とか、そういうものが一挙に高くなるわけです。だから昭和二十九年くらいからずっとこまかい経済統計を見ていきますと、これは私は安保条約の効果を言うわけじゃございませんが、あのアメリカでもって非常に大きな投資をして開発したものがロイアルティーなしで入ってきた、それでもって民間産業のコストが非常に下がって、近代化ができたということもあるのです。ですから、先ほどの御質問にもありましたとおり、技術開発を行なうと、電子工学なんていう分野は急速に上昇するわけです。一様に高いレベルの製品はアメリカから買ってというわけにもいかぬのです。ですから、今度はIBMに、三年間でもって電子計算機を対抗させるということをお願いしてあるわけですから、そういうものは、他の前車のくつがえるを見て後車の戒めとなすということは当然考えなければいけないと思いますが、画一、一律的にどうするということよりも、やはりこうして議論しながら一つずつ適切な政策を立てていくということだと思います。私もせっかく通産大臣になったのですから、そういうものに対しては、私が議員の議席を持つ限りめどをつけたいという、そういう非常に意欲的な気持ちを持っておることは事実であります。
  225. 原茂

    ○原(茂)分科員 時間がないようですから、最後に意見だけ申し上げておきます。  いまの多国籍企業を利用してというのは、兵器なら兵器はアメリカへストレートに注文しろという意味ではないわけです。そういったことも一つの手段として考える必要もあるだろうということです。いまの貿易の自由化あるいはいままでの歴史からいって、ロイアルティーなしで日本技術が発達したことは御指摘があった。確かにそのとおり。しかし、しょせんはどこの国といえども、最後は国益を考えていいと思うのです。日本の国だっていま大騒ぎされていますが、どんどん物をつくって、どんどん売って、どんどんもうけるということは基本としてはずしてはいかぬと思う。それを国際的にどう関連させて協力するかということが大事なんで、うっかりすると国益を無視して何か考えるような風潮すら生まれやすい。私はそういう観点から、多国籍企業というものに対しては十分なる関心を持って、もっと系統的に調査をしていただいてこれに対する対策を大綱としてでも早急におつくりいただいて、われわれもそれを見て協力すべきは協力していく、こういうふうにしたいという意思できょうはお尋ねしました。  どうもありがとうございました。
  226. 渡辺肇

    ○渡辺(肇)主査代理 岡本富夫君。
  227. 岡本富夫

    岡本分科員 通産大臣ちょっとおりませんので、環境庁から先に聞きましょう。  環境庁に率直にお聞きしますけれども、全国の休廃止鉱山の中で亜砒酸鉱害が問題になりました。公害委員会でもずいぶんやかましく言ったわけであります。そこで宮崎県の土呂久の鉱山が第一の土呂久、それから今度わが党で調べました岐阜県の遠ケ根鉱山、これが第二の土呂久、大分県の木浦鉱山、これが第三の土呂久といわれておるのであります。  そこできょうお聞きしたいのは、岐阜県の遠ケ根のほうの被害者の状態、これをまずお聞きしたいと思います。
  228. 船後正道

    ○船後政府委員 岐阜県の遠ケ根鉱山地域におきまして、砒素による健康被害の疑いがあるということでございますので、岐阜県におきましても今月二十一日でございますか、小中学生を中心といたしまして検診を実施し、さらに三月末には該当地区の全住民を対象として健康調査実施したい、こういう計画を持っている旨報告に接しております。どの程度の被害があるかという点の詳細につきましては、まだ承知いたしておりません。
  229. 岡本富夫

    岡本分科員 こういった公害によるところの被害の救済につきましては、これを決定するのは環境庁の企画調整局ですか、あなたのところ以外にないわけですよ。前は厚生省やっておりましたがね。ところが、あなたのほうでこれを把握しなければ、いつまでたっても被害者の救済はできないわけです。公害委員会のときもあなたのほうに質問すると、いつも県のほうに聞き合わせておりますとか、あるいはまた報告がありませんとか、もう少し私は、環境庁ができたのですから、環境庁主導型の救済というものを考えなければならないと思うのです。  まず、岐阜県の遠ケ根鉱山というのは昭和三十二年に閉鎖しました。この閉鎖は経営不振によるといわれておるが、その当時の鉱業権者は竹内さんという人らしいのですが、この人が当時の施設やあるいは鉱滓、そういうものを放置したまま山を離れておる。そして山積されたところの粗製亜砒酸が風に舞い上がり、周囲に一ぱいまっ白になって付着しておる。これがやはり問題になりまして、当時の従業員やあるいはこの間私どもの調べた中では、小学校の子供さんの中にそういった人がいる。中には背中に一ぱい斑点のある方もいる。こういった状態が出ておる。また、宮崎県のほうの土呂久の問題も、やはりそういった被害の人たちが出ておる。これに対してあなたのほうでは、いつも県のほうに聞き合わしてから、これではいつまでたっても救済はできないし、いま苦しんでおる人たちが非常に気の毒だと私は思うのですよね。いま調べている最中だからあなたに聞いてもしかたがないとして、土呂久のほうでは数十人の人が病状を訴えている。それから遠ケ根鉱山のほうには従業員の死亡者が出て、二十三名が私ども調べただけでも死んでいる。大分県のほうはまだ犠牲者を調べておりませんけれども、こうした人たちが亜砒酸によってそういう病気になっているということになれば、当然公審病として救済するのがあたりまえでありますが、今後公害病に認定をして救済していくという考えはあるかどうか、これをまずひとつ聞きたい。
  230. 船後正道

    ○船後政府委員 宮崎県の土呂久につきましては、現在要注意者につきまして精密検診その他の調査をいたしておることは、先生も御承知のとおりでございます。これらの調査の結果によりまして、現に発生しております疾病が公害に基因するものであるかどうかというところから公害病の認定の問題、法律的には被害者救済の特別措置法の適用の問題に移るわけでございますが、その前段階といたしまして、これらの疾病が元従業員であって職業歴によるというふうなケースには、労災あるいは基準法等の対象になるということも考えられるわけでございます。いずれにいたしましてもそういう職業病でない方、一般の住民につきまして、明らかに特別措置法に規定いたしておりますような大気汚染または水質の汚濁というものに基因いたしました疾病ということになりますれば、特別措置法の適用を検討することになるわけでございます。
  231. 岡本富夫

    岡本分科員 いままでの環境庁においての公害病の指定については、その指定地域というものを必ずきめておった、その中から認定をしておったように私は記憶しておるわけですが、そういった指定地域にしなくとも、これがはっきり判明すれば公害病として救済していく考えなんですね。その点はっきりしておいてもらいたい。
  232. 船後正道

    ○船後政府委員 公害に係る健康被害者救済の特別措置法は、御承知のとおり、いわばつなぎの措置と申しますか経過的な措置でございます。本来、こういう損害につきましては原因者において負担すべきものでございますが、公害事案につきましてはその因果関係の究明その他に非常に長時日を要する場合が多く、一方お気の毒な被害者を放置し得ないというような点にかんがみましてこの特別措置法がつくられておりますので、そういった社会的にかなり深刻な広範な被害というものを法の対象といたしております関係上、その地域指定にかかわらず認定をするということはできないわけでございますが、ただ救済の必要が生じますれば、当然救済すべき疾病と適用されるべき地域というものを同時に政令で指定するという仕組みになっておるわけでございます。
  233. 岡本富夫

    岡本分科員 この救済法は、確かにあなたの言うように原因者が払うべきだけれども、その間の救済である。しかし、全国の休廃止鉱山を調べますともう鉱業権者はいない。そういうことになれば、これは原因者はもういないわけですから、この点は積極的に公害病として早く救ってあげるというあたたかい配慮がなければならない。したがって、この点はひとつ早急によく調査をして、そしていま苦しんでおる人たちを救っていこうという前向きの姿勢を示していただきたい。  この点については次の公害の委員会でまたやりますけれども、ここで、大臣がお戻りになりましたので伺いますが、実は全国の休廃止鉱山の公害問題、これにつきましては、公害環境委員会においては、参考人も入れてたしかもう三回か四回の論議があったわけであります。しかし結局結論としまして、商工委員会との連合審査でもやらなければ、これはどうしても解決しないというような時点になってきておるわけです。そこで、そこにすわっておる公害保安局長の久良知さんはやせるくらい一生懸命にがんばっておるわけですけれども、全国の全部の休廃止鉱山についての実態というものはとてもつかめない。それで、私どものほうへ地元からいろんなものが出てきて、また私たち調査に行ったりして次々と出てくる。また公明党さんさがしてきよったなと言われますけれども、これは別にさがすわけではない。現にあるわけですね。出てくるわけですね。この休廃止鉱山に対して通産省のほうではどういうように対処をしようとしておるのか。まずその点からお聞きしたいと思うのです。
  234. 田中角榮

    田中国務大臣 休廃止鉱山というのは五千から六千あるわけでありまして、その中で問題になるようなものは、まあ精密な調査を必要とするものは千五十鉱山ぐらいある。こういうのでございますから、膨大もないものでございます。いま通産局で全部やれ、こう言ってもなかなかむずかしいものです。これは膨大もない人員を必要とします。しかし、これはあなた方が御調査になるように私たちもみんな代議士が出ておるわけでございますし、やはり町村とかそういうものが一番歴史的にも被害の実態というものに対してはよくわかっておるわけでございますから、環境庁ともまた府県とも十分意思を通じながら、早急にこの休廃止鉱山というものの実態白書というようなものでもつくって、これに対してやはりやらなければだめだと思います。私自身も山形県の休廃止鉱山の問題がございまして、井戸をつくって何か埋めるということなんです。それで予算を見たら年間一億円にも足らないということで、こんなことじゃどうにもならぬというので、大蔵省は率でばかり言うものだから、率で言えば確かに二倍半以上になっておるわけでございます。ことしの予算は、しかし金額にすれば二億数千万円というので、こんなことで問題になるかということでありまして、こういう問題、地域のほんとうにたいへんな問題でございますので、通産省でも石炭もございますし、いろいろな爆発は起こるし、たいへんではございますが、これは通産省の任務でもありますから、鉱業法の主管官庁ということでその責めを免れるわけにいかぬ官庁でございます。ですから、ひとつこれから白書をつくる——白書をつくることが目的ではございません。それに対して処方せんを書く、休廃止鉱山の対処を行なう、制度をつくる、こういうことになるわけでございますので、そういう問題に対して積極的に取り組んでまいるということで御了解をいただきたいと思います。  なお、いままで考えておる具体的な問題に対しては、公害保安局長からお答えさせます。
  235. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 休廃止鉱山対策につきましては、この両三年来かなり力を入れてやってきておるわけでございますが、やはりいろいろ問題の深さからむずかしいことが起こってまいっておりまして、さらに強化をしなければならない事情についてはいま大臣からお話があったとおりでございます。私どもこの両年やってまいりましたこと、三つ大きなことがあるわけでございます。  一つは監督体制というものの整備をいたしまして、鉱害防止を主管いたします鉱害防止課というものを、全国の八つの監督局、部があるわけでございます、そのうちの七つにまで明年度設置をするということが第一点。それから、担当をいたします監督官についてもかなりな増強をいたしたわけでございます。  それから第二番目は鉱害防止のためのいろいろな工事をしなければならないわけでございますが、先ほど先生御指摘ありましたように、鉱山、特に中小鉱山の中には鉱業権者の資力の弱いものが多いわけでございます。稼行鉱山が休廃止鉱山に変わる、それから休廃止鉱山の中でも無資力になり、鉱業権者が行くえ不明になるというような山も少なくないわけでございます。そういう鉱山について、鉱害防止のための対策工事をいかにしてやるかということにつきまして、今年度から新しい制度を設けたわけでございます。休廃止鉱山鉱害防止工事費補助金制度といたしまして、国が三分の二、地方公共団体が三分の一の負担をいたしまして、緊急なものから工事をやっていくということを始めたわけでございます。本年度約九千万の予算に対しまして明年度は二億四千万の予算を組みまして、いま御審議をお願いいたしておるわけでございます。  それからその次には、金属鉱業鉱害基金でございまして、やはり休廃止鉱山対策というものは、いま現に生きて稼行をしておる山、ないしは経営が行き詰まりかけまして終閉山の直前にある山、そういう山について、むずかしい点もあるわけですが、できるだけの鉱害防止工事をやらせるということが要諦であろうかと私ども存じております。それに努力をいたしておるわけでございますが、それに必要な基金資金というものをやはり平生から準備をして積み立てておくということが必要になるわけでございます。昨年の十月に業界を指導いたしまして、金属鉱業鉱害基金というものを設立させたのでございます。この基金には五年間毎年二億ずつ積み立てまして、将来の鉱害防止のための工事費に充当させたい、そういうように考えておるわけでございます。
  236. 岡本富夫

    岡本分科員 そういうことはこの前の委員会で聞いておりますよ。そこでいまの大臣がお答えになった五千から六千ですか、これはこの鉱業法ができてから登録された分でありまして、その前のはもっとたくさんあるのです。一万くらいあるかもしれぬ。要するに何ぼあるかわからぬというのが現在の姿であろうと思う。それに対して現在、鉱山の検査あるいはいろいろなことを取り締まることができる人数というのは、全国で一体何人ですか。
  237. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 全国の地方の監督局、部で約二百四十名の監督官でございます。
  238. 岡本富夫

    岡本分科員 その二百四十名、全部行けぬわけですよ。約三分の二くらい。私この間、大阪の鉱山監督部と一緒にこの亜砒酸の問題で兵庫の山を回ったことがありますが、八人来ましたがそれで全部だと言っていました。非常に熱心にやってくれた。しかし、それはそれとしまして、そういうことでありますから、非常に人数が少なくて山は非常に多い。しかも通産省ではどこにどういう山があるかも全然わからない。わかっていたのであれば、この一つの例をとりまして、岐阜県の遠ケ根鉱山が三十二年に閉鎖して十五年間放置されておって、ことしの二月に、ここに八トンの亜砒酸のくずがあったやつを何とか移動している。土呂久においてはこちらが騒いで四トンの、何といいますか亜砒酸を輸送している。こういうふうなことをしたのはことしなんです。そういうことを考えますと、とても私はいまの人員といまの予算と、いま通産省が取り組んでおるところのこの力では、ぼくは無理だと思うのです。  そこで一つ提案ですけれども、都道府県にこの調査を依頼し、そして総点検をして、あぶないところからどんどん手をつけていって、そしてこういう、大臣ごらんなさい、これが鉱滓の写真なんです。この亜砒酸というのは、白い粉となっておるやつ、これが水に溶けると亜砒酸と言うらしいのですが、六十ミリグラムで人を殺すのです。三ないし四十ミリグラムを飲みますと中毒、あるいはまた慢性のときは皮膚のただれあるいは内臓の障害あるいは神経麻痺、非常に猛毒なんですね。そういうものがあちこちにあるわけですよ。したがって、これは強力な手を打って全国の総点検をやらなければならないと思うのです。それには都道府県にひとつお力をかしていただいて——なぜかなれば、鉱業法というのは、都道府県でいいますと、これは通産省の管轄だからわれわれが立ち入ってやれないんだ、こういうようなことも言っているわけですから、ひとつこの際は、緊急な問題として、都道府県にも力をかしていただいて、全国的な総点検をやって、そして対策を立てていく、これは確約していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  239. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 砒素の鉱山につきましては、土呂久の問題が起こりましてから、全国で一斉に調査をいたしました。五十九鉱山を洗い上げたわけでございますが、先生御指摘のとおり、私どもの帳簿に載っておる山については一応終了したと考えておるわけでございますが、やはり鉱山そのものにつきましては、これはずっと歴史的に長いものがあるわけでございまして、漏れておるのもあるやというおそれがあるわけでございますので、県、それから所在市町村とは連絡をとりながら、その発見につとめておるわけでございますが、御指摘のとおり、やはり一番そういう問題につきまして情報を持っておりますのは末端の市町村でございますので、なお連絡を密にいたしまして、共同で調査をし、必要なものについては監督を加えていく、そういうふうにいたしたいと思います。
  240. 岡本富夫

    岡本分科員 非常に時間が短いので、それにつきまして、この亜砒酸の鉱山だけでなくして、カドミの問題もあるし、あるいは銅の問題もあるし、いろいろな鉱山の鉱毒というものが出ておる。ですから、いまあなたの答弁では、亜砒酸の分だけのように答えられた。亜砒酸の鉱山の廃坑のことだけを答えられたように思う。だから、全部のやつを大臣、ここで英断をもって総点検をして、そして適切な対策をとられる。それにつきましては、やはり若干、法改正をしなければならぬ場合もあるんじゃないか。あるいはまた、これは相当な資金が要ります。一つの山くずれを防災するというにしましても、すぐ一億近いところの大きな金が要るところもあるのです。したがって、いまの二億何千万なんていうようなものはほんとうのスズメの涙です。ですから、これは経済のためにどんどん金を使っていくということもあるでしょうけれども、経済成長のあとの始末というものは、やはりここらでやらなければならぬ時代に入ったのではないかと思いますので、きょうは時間がないから、もっとこまかいことを言いたいけれども、ひとつ次の連合審査なんかでまたしますから、十分頭に入れていただいて、それに対する所信を……。
  241. 田中角榮

    田中国務大臣 休廃止の鉱山の数は、先ほど申し上げたとおり膨大なものになっておりますが、いままでは、やはり地元から要請があって、要請によってこちらが出かけるということしかできなかったわけです、事業上も。しかし、土呂久の問題が起こったり亜砒酸の問題、いろいろな問題が起こってまいりましたので、そんなところはどんなに人員をさいても総がかりでやらなければならないということで、先ほど局長が答弁しましたのは、さしあたり問題になっておる亜砒酸の鉱山に対してはいろいろ調査を進めております、こういうことを申し上げたわけでございまして、亜砒酸だけでもってやめるというのではなくて、これは全鉱山に対して、私が先ほど申し上げたように、白書をつくるようなつもりで、長い千年の昔からのものもありますから、これはもう数としてもあなたの言われる一万を越すかもしれません、しかし、そういうものでもって、これはもう何も鉱毒はありません、こういうものはこういう処置をしましたけれども、現に不満足でございますという、まず実態調査を行なって、その中から必要な処置をしていくということだと思います。だから、まず府県、町村から求めがなくとも、陳情、請願がなくとも、こちらからひとつそういうものに対して協力をしてやってもらいたいということを依頼し、専門的なものがあれば大学に調査を依頼しても済むわけでございますし、やはり休廃止鉱山の実態をまずつかむ、そうして処置を必要とするものから処置をしていくということ、これは人間を何千人ふやすといったってそれはできるものじゃありませんから、そういうものよりもやはりある人を活用する、ある機構を活用する、こういうことで、通産省が指導的勢力をなしながら、休廃止鉱山というものに対して、これは鉱業権者が行なうべきもの、これは無資力だから地方公共団体に補助してやらせるもの、これは政府がやりますというものが当然区別されるわけでありますので、そういう実態調査の上、適切な処置がとれるようなことをやってまいりたいということを基本的に申し上げておきます。
  242. 岡本富夫

    岡本分科員 最後に、環境庁、この通産省の実態調査に即して、今度はあなたのほうでは、被害者の救済、健康被害をひとつ被害者の実態というものをまずつかむということ、そうして適切な救済に当たらなければならぬ、こう思うのですが、それもきちっと総点検に応じてやっていくかどうか、これをひとつ……。
  243. 船後正道

    ○船後政府委員 土尾久問題以後、砒素鉱山が大きく浮び上がってまいりまして、先ほど通産省の局長から御答弁いたしましたように、通産省では現在、休廃止の鉱山の調査をやっております。(岡本分科員「いや、あなたたちのほうだ」と呼ぶ)私どものほうも、当然、この過程におきまして、通産省と協力いたしましてやろう。環境庁の分担する分野といたしましては、水質なり土壌の客観的な汚染状況、さらにそれが済みますれば、住民の健康状態というふうに順を追って進んでまいるわけでありますが、どのような手順を追って進んでいくか詳細にきめました上、御趣旨の線に沿った調査を進めてまいりたい、かように考えます。
  244. 岡本富夫

    岡本分科員 時間で、終わります。   〔渡辺(肇)主査代理退席、主査着席〕
  245. 植木庚子郎

  246. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 私は、きょうは、ある意味の喜びといいますか、期待を持っていまこの場に立っているわけでございます。と申しますのは、日ごろ田中通産大臣のお人柄等につきまして、私は深い思いで見詰めてきた一人でございます。実は、私の選挙区の中には、産炭地域といいまして、一時代は黒ダイヤということでどえらい景気がよく、しかもわが国の経済をささえたといわれるほどの場所にあったわけでございますけれども、現在は非常に落ちぶれたといいますか、エネルギー革命の影響とそれから政府石炭政策のいわゆる後手後手政策といいますかおくれのために、犠牲を余儀なくされているというのが筑豊の皆さん方である。私は、あの筑豊に参りますたびに胸の痛む思いがするわけです。何としてもそこに希望と勇気を与えていただきたい。それには、きょうの通産大臣田中大臣にお願いするのが一番早かろうと、常々私はこうほんとうに思っておりました。そういう意味で、きょうは期待を持ってここに立ったというわけでございます。真剣なお願いでございますので、実情をじっと聞いていただきたいと思います。  私が先般、筑豊地方の山田市というところがあるのですけれども、その山田行のバスに乗ったわけでございますが、かつて炭鉱の鉱夫をやったという一老人が深く沈んだ表情で、しかも吐くような言い方でこう言っておりました。田川は休んどる、直方は眠っとる、山田はな、もう死んじまったよ、こう言っているわけです。田川というのは田川市のことでありますし、直方は直方市、山田は山田市のことでございますが、私はこういうことばを実際耳にしましたときに、これは筑豊地方の皆さま方の偽らざる心境ではなかろうかと思うとともに、私も政治家の一人といたしまして、重大な責任を感じずにはおれなかったわけであります。とにかくあの全盛時代の姿がいまは見る影もなく落ちぶれているわけでございますが、その典型の市が山田市に当たるわけです。ちょっと聞いてください。山田市は、市民の唯一のたよりでありました大手炭鉱も昨年一月閉山してしまいました。そして、そこに働いていた労働者はほんとうに路頭に迷いまして、若くて健康な方々はその山を去っていったわけでございますけれども、いわゆる半生を採炭一筋にかけてきた中高年齢層といいますか、そういう人たちはこれといった技能も、失礼ではございますけれども持っていらっしゃらない、新しい仕事にも自信がないということで、結局たどりつくのは生活保護ということになるわけです。現在人口は一万五千余人です。それこそ日本一小さな市になってしまいました。そして、四千七百五十六世帯中千四百五十一世帯がもう保護家庭であるわけです。毎年毎年人口は減っていく。逆に保護世帯はぐんぐんとふくれ上がっていく。また県立高校も一つしかありません。それから中学校は二校です。小学校は四校ございますが、中学校などは木造校舎ですね。小学校などは、プールがある学校は一つもないわけです。やっと鉄筋で立っているのが高校一校だけです。市庁舎もいまにも倒れそうな、老朽した二階建てでございますが、これは木造です。ほんとうに山田市の実情を象徴しているような感じを私は受けるわけでございますが、これがいわゆる産炭地域の市の姿でございます。  そこで私が通産大臣にお願いしたいことは、このような産炭地域の起死回生策はただ一つなんです。つまり産業誘致といいますか企業誘致、これにかけているわけでございまして、先ほど申し上げました山田市も、昭和四十五年六月に企業開発課という課を設けまして、優秀な職員を集めましてマスタープランを練っております。もうそろそろでき上がっているころだと思いますけれども、その柱は三つでございました。その一つは住宅団地の造成だとか、あるいは農業振興だとかいっておりますけれども、最大のウエートを占めているのが、何といっても軽工業中心としたいわゆる工場誘致、これが基本になっているわけです。そこでまず、通産大臣のこうした産炭地域に対する企業誘致等の御見解を承りたいと思う次第でございます。
  247. 田中角榮

    田中国務大臣 石炭は戦後の日本経済復興の原動力ともなった産業でございます。一時は数十万人といわれたものがわずかに三万人ということでございます。これほど石油、エネルギー革命に影響を受けたものはないと思われます。石炭に対してはいろいろな施策を行なっております。年間千億の金を出しておるわけでございますから、これを一つ申し上げても御納得を得られるということでありますが、こういう千億の金を使っても国民が理解をするというのは、石炭のそれなりの功績が評価をされるわけでございます。私は、やはり石炭鉱山というもの、これはかつて昭和二十年の敗戦直後に、石油を掘っておった労働者が、ボルネオなどに行ったのですが、これはほかに全然転用ができない。ですから、中高年層の石炭鉱山労働者というのは転用ができないわけであります。再就職はできないという問題が一番大きな問題でございます。ですから、石炭鉱山に対しては、一つはこれから五年後を考えると、二千八百万トンの石炭に対して千五百万トンしか需要がないというようなことではいけないので、とにかく需要を相当確保する、そのためには、先ほども御質問に答えて申し上げましたが、北海道と本州縦断の送電線をつくって、産炭地で石炭専焼の火力をつくって、ピーク用の発電にこれを利用するということも一つの手でございますから、そういう石炭というものに対して、まずなし得る対策はすべてやるということが一つでございます。  それから、中高年層といえども職業訓練を行なえる者に対しては、万全の対策を行なうということが私は一つだと思います。しかし、抜本的な対策は、就職の場所をそこで与えるということが一番いいのです。それは、石炭労働者が相当多数東京や大阪に出てまいりましたが、それがみな住宅の不足になり物価を押し上げる問題になり、いろいろな問題につながっておるわけですから、やはり私は本来の産業政策に帰らなければいかぬ、こう思っておるのです。日本は逆でございまして、自然発生を中心にしてきましたから、全部農業地帯に工場をつくったわけです。太平洋ベルト地帯に工場をつくる、これは世界にないことであります。水の豊かな、日照時間の多い南の地帯は全部一次産品地帯であって、そうして寒いところとか農業に向かないところが工業地帯であるべきであったのを、日本は明治から百年間、農業の適地に全部工業を集中せしめて、太平洋ベルト地帯ということになったわけでありますが、それが公害を生み、過密を生み、過疎の原因になっているわけです。ですから私は、いまからでもおそくはないということで、産炭地ばかりではなく、農業の集約化が進めば、十年間に農業だけでも八百万人という人が排出されることになります。これは避けがたい事実である。そうなれば、内側の土地のあるところに事業場を持っていくのが一番適切な政策でなければならない。おそまきながら工業再配賦法を御審議をいただくことになっております。これは私の思想よりもはるかに遠いものでありますが、しかし、新しくこれを制度化するという過程においては、皆さんに御審議をいただいて、適切な結論を得る以外にはないということでお願いをしたわけです。  もう一つは、やはりこれから知識集約的な産業になりますから、俗に言う軽工業、これは日本人はどこででもできるのです。電子工業製品のハンダづけなら、日本だったらどこでもできるのです。そういうものは重いものではありませんから、港の近くでなくていいのです。そういうことで、いま松下電器などは山村の中に工場をつくっておりますが、制度の上で産炭地などにそういう制度を推し進めたいというので、今度の工業配置と産炭地事業団を一緒にして、そうして産炭地を目標にしてやろうということを考えたわけであります。  もう一つは、やはり東京のまん中や大阪のまん中に明治からの造幣局などを置く必要が一体あるのかどうかという感じで、議論をしながらも実行されない。これは私は、硬貨をつくる仕事なら、何もそんな局限された町のどまん中にある必要はない。私は、北海道などに対して、そういう問題をなぜお互いが踏み切らないのか、政府が悪いんだ、そう言われればそのとおりでございますし、政府自体がやらなければならない仕事でありますが、やはり皆さん方にも応援してもらって、国論がそういうふうに向かないと、なかなか新しい政策はできないのです。いまも教育大学一つ筑波に移るといってもあれだけ反対をしているのです。ですから、産炭地などに実際就業の場所を持っていかないと、あの人たちは全部社会保障の対象人口にせざるを得ない。これはもう日本が幾ら働いても社会保障費が拡大をして、名目成長になる。私は真に考えて、今度おそまきながら工業配置法を提案しておる。だから皆さんともほんとうに超党派でこういう問題の結論をひとつ出していただく、こういうことでお願いをしたい。  私自身は、石炭問題に二十年以上も妙な因縁でずっと関係しておるわけでございます。私が商工委員長のときには、石炭廃山法をつくるとともに重油ボイラーの規制法をみずから審議しなければならなかった歴史を持つものでありまして、私は産炭地の出身ではありませんが、やはり産炭地というものを何とかして、いま残った一万五千人の山田市の人を、東京や大阪や県庁の所在地に出すようでは、政策不在といわれてもやむを得ない、こういう感じです。
  248. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 私が心に描いていたような、熱意のある通産大臣であったような思いがします。  ただ、ここでたたみかけるようでございますけれども、もう筑豊には石炭はないわけです。掘るものがない。ですから、要するにそのあとの整理なんです。いわゆる産炭地域振興にあるわけです。その振興のことが、いままであらゆる通産大臣が、口では振興します、振興しますと言ってきたけれども、現実には行なわれない。そして、具体的に何かといえば、産業、いわゆる企業が誘致されるんだ、されるんだと言いながらできないわけですね。私、田中大臣に期待しているのは、それが口先だけではない、現実に今度は企業が行くだろう、こういう思いを込めて実はいま言っているわけです。先ほど申し上げました山田市のマスタープランもりっぱにでき上がってきた。きましたものの、山田市だけではないのですけれども、炭抗を掘っているものですから、市内の地底をおびただしい数の廃坑といいますか、その地盤沈下によって、あそこではというようなことで非常に企業が遠慮するわけです。だけれども、先ほどおっしゃるような造幣とかなんとかだったら、地盤が多少狂おうと何しようとたいした問題ではないわけです。ですから、私は、あらゆる立場から検討は済んでいると思うのです。あと、いかに政府がその企業をあと押ししてそこにやるかということです。実はついこの前、四十四年の十月のことになりますけれども、県の手引きで、ある弱電会社が山田市にやってきたわけです。山田市は、市長はじめ市の神部、市会議員全部総出で、それこそ総理大臣を迎えるような思いで弱電会社の幹部を迎えておりまして、至れり尽くせりで御説明申し上げまして、また工場用地としては、それまで市営グランドに予定していたところを急遽変えてまで、ここへどうぞと言ったわけですよ。ああ、これできまるだろうと山田市は思ったわけです。ところが一週間後決定したのは隣の町なんです。このときはみんなで、大げさな言い方になりますけれども、抱き合わんばかりに泣きそうな心境だったと言っておりました。くどいようでありますけれども、山田市はいままで石炭だけで生きていたといっても過言でないところなんです。ですから、全面閉山というのは極端に市の財政を圧迫しておりまして、いま私が調べたところでは、市税の収入は全歳入のわずか七%までに落ち込んでいるわけです。一方歳出のほうは、全歳出の五七%までがいわゆる生活保護などの民生費に使われてるという、先ほど言いました人口も日本一少ないし、生活保護世帯は日本一多いという、きわめてアンバランスな市の状態にあるわけです。そこで工場誘致、それだけにかけているわけです。ところが、先ほど言いましたように、工場誘致に対する基盤整備等の問題になってきますと、金もかかりますし、どうしても手が出ない。そこで田中通産大臣にどうしてもこういうところの事情を知っていただいて、特段の配慮のもとに企業誘致を現実にやっていただきたいということの私の気持ちでございます。先ほどもるるお話はいただきましたものの、工業配置の法案はできた、それが前向きの姿勢であるということまではわかるんですけれども、もう一歩、まかしてくれ、わしはそれじゃ乗り出そうという、地元の人が聞いて、ああ、これで何とかなるんじゃなかろうかという勇気を与えられることばをいただきたいですね。
  249. 田中角榮

    田中国務大臣 私もそういう気持ちでございます。これは産炭地だけではなくて——ほんとうに産炭地の中では特に美唄炭鉱のようなところは、人口が八万もあったものが四万になり、すでに二万になろうとしている。そういうことを考えると、ここには炭住もあるし、学校もあるし、全部ある。土地も安い。水もある。八万人の施設があるのですから、そういうところをなぜ二万にしなければならぬのかということは、政治家としては、私も国務大臣の職にありますから、こんなものを片づけられないで責任を果たすゆえんではない、そういうことで工業配置法を出しておる。あの法律は、いまの制度の中で、私が固定資産税の減免期間二十五年と言ったものを、財源を補てんされるまでは三年、現行の制度でスタートしよう。しかし、スタートするときに三年というのでは企業にとってはあまり魅力がないと思われます。そういうことで、とにかくあの工業配置法を通していただく。そして審議の過程においてはいろいろ御注文があると思うのです。工業配置、こういうものを一体どうするんだ、これは方法があるのです。これは労働者住宅を建てなければならないというたった一つの政策目的を達成するためには、イタリア政府は、労働者住宅建設のための資金一般会計から出すなんていうことを言っていません。政保及び損保の剰余金は労働者住宅以外には使ってはならない、そのかわり国有地は無償で提供する、固定資産税は二十五年間免税にするという、たった三カ条であります。それだから労働者の住宅も建つのです。やはりそういう鮮烈な政策をやらないとなかなかできない。私は通商産業大臣の職にありながら、かつて大蔵大臣の職にも三年もおったのですが、それでなお三年間の免税というふうな中途はんぱな法律を出さなければならぬ自分の非力を嘆いてはおりますが、しかし姿勢は非常に強い姿勢を持っております。そうしなかったら、物価問題も公害問題も過度集中の問題も解決しないのです。あなたの言う山田市の五十何%は社会保障費である、これは無制限な都市集中を許せば、イギリスがそうなったんですから、これは今日転換せざるを得ない。局地的な振興政策ではなく、国の基本政策でなければならぬと考えておるのですから、そういうことは政府の力だけでなく、超党派で合意を願えれば必ずできるはずであります。
  250. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 それじゃちょっとこまかいことになって恐縮でございますけれども、実は山田市は、先ほど言いましたように、企業誘致こそが起死回生の最大条件だ、町づくりにかける、企業誘致にかける、こうプランを組んでいるわけです。ところが福岡県のほうでは、筑豊南部地域に、この山田も含んでいるわけですけれども、農業振興地域として計画を立てているわけですね。だから福岡県と地元の山田市はプランの面でもちぐはぐになっているわけです。これは福岡県の中の問題だとおっしゃればそれでおしまいかもしれませんけれども、これは決して私はおせじを言っているわけではございませんが、田中通産大臣は近い将来非常に重要なポストにすわられるであろう、私はそう思っております。また、実はそれを願っているわけでございますけれども、そういう立場からも、福岡県独自の問題ではなくて、いまおっしゃるように国全体の大きな政策の問題であるということで、お忙しいでしょうけれども是が非でも、このように落ちぶれ果てている、山田市だけでなくて産炭地域、筑豊全体を一ぺんつぶさに視察していただきたい、こう思うのですね。いままで視察なさった大臣はいらしゃいますけれども、さっと通る程度であったり何かで、むしろ批判が出るようなものでした。けれども、いまおっしゃるように日本全体の政策問題として、将来重要なポストにすわられるであろう田中通産大臣に、是が非でも近い将来現地に視察に行っていただけないだろうか。これは私の心からのお願いでございますし、訴えでございますが、いかがでございましょうか。
  251. 田中角榮

    田中国務大臣 私は通産大臣でございますから、緊急なところには、どんな状態でも視察にも、また出張もしなければならないということは当然のことでございます。いま国会開会中でございますから、いますぐ、いつ伺うということはできないと思いますが、機会が与えられるならば現地を視察するということを申し上げて一向差しつかえございません。
  252. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 一日も早く行っていただくことを強く要望いたします。私はきょうはそのことばを聞いて非常に喜びを感じております。そして、いままでにない現実的な対策が打たれるであろうということを期待します。  それでは、時間の関係もございますので次に移りますけれども、地元から、産炭地域地元全体の気持ちとしてこのような要望書が来ているわけです。「鉱害二法の延長と完全実施について」ということで、とにかくこの二法の有効期限の十年延長をお願いしたい。これは私の知る限りにおいては、今度の法案の中に十年延長が盛り込まれていると思うのでございますが、まず確認の意味でお尋ねいたします。
  253. 田中角榮

    田中国務大臣 残存しております仕事がまだ千三百億ぐらいあるということで、この七月末で期限切れになる法律は十年間延長するように御審議をお願いしております。
  254. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 そのほかいろいろあるのですけれども、その中で特に鉱害復旧にあたりましては、いま有資力、無資力という立場でいろいろ問題があるわけでございますけれども、地元の皆さまの心境は、有資力、無資力の別なく、国の責任において復旧を促進していただきたい、こういう気持ちなんですね。有資力のほうは何とか話がついて進んでいくけれども、無資力になるとどうもなんということになりますと、これはなかなか問題でございます。いずれにせよ、国の責任において復旧を促進していただきたい。これに対してはどのような御見解をお持ちでございましょうか。
  255. 田中角榮

    田中国務大臣 無資力の鉱害に対しても国が全面的な責任をもって復旧すべしというような思想でもって、いまの法制、制度もできておるわけでございますが、有資力のものは、これはやっぱり国民の税金を使うというわけにはまいりません。そういう意味で、通産行政の中で、有資力のものには当然果たすべき責任を果たすように、また、有資力というけれども、実際はいま石炭鉱山で、帳簿の上では幾らか残ってもおりますし、それから貯炭も何カ月分持っておるというものはあります。ありますが、なかなか金繰りが完全につくというところも少ないことも実態でございます。そういうものはやはり国民の税金を使うということでありますので、区別をしなければなりません。ものにはおのずから区別があります。しかし、そうかといって、有資力の炭鉱が全然鉱害復旧ができないとすれば、それは通産省の責任でもありますから、これはひとつ事情を調査しながら、住民の皆さまに迷惑をかけないように、実効のあがるような行政をやってまいりたいと思います。
  256. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 時間もきたようでございますが、もう一間だけお願いいたします。  過去において鉱害打ち切り金銭賠償受給者というのがいるわけでございますが、これに対しても救済措置を講ぜられるようにお願いしたいということです。実際鉱害にあって、ある程度のところで打ち切り金で話がついているわけですけれども、その後さらにもっとひどい状態が出ているわけです。そういう人に対しても何とか救済措置を考えてもらいたいということでございますが、いかがなものでございましょう。
  257. 莊清

    ○莊政府委員 現在の法制でございますが、一応賠償義務者であります石炭鉱山等と被害者の間で打ち切り補償について円満に話がついたという場合には、鉱業法に定められております無過失賠償責任というものが法律上は一応切れたというふうな形に相なるわけでございますが、実際の産炭地の実情でございますけれども、そういう場合でも、またその後石炭が掘られて災害を受ける、再び被害を受けるというふうな場合も実は間々ございます。それから、農地等を復旧するという復旧工事をしたのはいいのでございますが、耕地についてかさ上げをしたために、結局、打ち切り補償で一応片づいておったはずの家屋のほうが、今度は雨の水がどんどん流れてきてたまる、こういう複雑な関係が生じておるという実態が相当ございます。こういうものにつきましては、すべて現在の鉱害賠償臨時措置法の体系にのせましてやっていく。私どもとしては、こういうものが落ちこぼれがないように、今回の鉱害関係二法の十年延長という場合に、全国的に鉱害も調査しておりますし、また、鉱害地区別のそういう、実施計画というものも再検討して練り直しをいたしますので、そういう過程で十分配慮してまいりたい、こういうふうに考えております。
  258. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 それでは最後に一言、きょう通産大臣産炭地域の問題でいろいろお願いしたわけでございますが、幸いに、大臣そのものは産炭地域の出身ではなくても、石炭に非常に関係の深い方であったということでもありますし、またきょうは、そのうちに視察もしてあげようというようなお話も伺いましたし、私はほんとうに希望を持って質問を終わるわけでございますが、とにかく疲弊し切った産炭地域は、これは外国ではございません、日本でございますので、どうかこれを蘇生させていただきたいことを最後にお願い申し上げまして終わりたいと思うのでございます。
  259. 植木庚子郎

    植木主査 次は島本虎三君。
  260. 島本虎三

    島本分科員 いろいろ含蓄のある質疑並びにその応答を聞いておりまして、私も質問の機会があまりございませんので、ひとつ大臣に、要請すべきは要請し、また、いろいろ教示を受くべきは受ける、こういう態度で、エネルギー政策についてお伺いしてみたい、こう思うのです。それと最後に、残留しておりますあのPCBの措置の問題についてお伺いしたい。この二つでございます。  まず、大臣もいまいろいろ申されましたが、若干それに関連いたします。日本の今後のエネルギー対策については、日本国内の電力需要は十年後には現在の三倍になるといわれておりますが、二十年後には六倍になるのだ、また、八千八百億キロワットというような額にものぼるのだということをいわれておるわけであります。しかし、今後これを満たすためには、まず、原子力による、火力による、水力による、これらの方法が当然考えられるわけでありますけれども、今後このエネルギー対策について大臣としてはどのようにお考えでありますか、まずそれをお伺い申し上げたいと思うわけであります。
  261. 田中角榮

    田中国務大臣 日本は先ほども御答弁申し上げましたが、戦争が終わった直後は九百万キロワットというふうに非常に電力供給状況は悪かったわけでございますが、その後電源開発促進法をつくったり、また石油をたくようになったり、原子力発電所が建設せられるということで、現在五千二百万キロという大きな電力供給力になったわけでございますが、しかしこれは一〇・一%という政府の見通しで四十六年度の経済が推移すれば予備電力はもう全然なくなって、関西電力などは送電ができないような状態考えられたわけでございますが、幸いなるかなというか、ほんとうにこの面だけはそうなんですが、四%ぐらいの成長だったということで、電力はようやくまかなえたということであります。予備電力は九%ないし一〇%というわけでありますから、それだけでも五、六百万キロというものは直ちに必要なわけでございます。しかし公害問題もございますので、なかなか都市において火力発電所を建設することもできない。ナフサをたく、ナフサをたけばコストが上がるということで、税制上の優遇をこの国会でお願いしておるわけであります。  電力というのは四つ考えられます。水力発電所、それから石炭や重油をたく火力発電所、それから原子力発電所、もう一つは地熱発電所ということになるわけでございますが、これから経済が成長するだけではなく、国民生活がだんだんと電力消費量と水の消費量を上げるわけでありますので、どうしてもつくらなければならぬということになれば、やはりこれからは大型な原子力発電所の建設というものは不可避になるというふうに考えておるわけでございます。  しかし、一面には石炭の消費量を安定的に確保するために、石炭専焼火力というものがどう配置できるか、それから地熱発電所がどのくらい大きくなるのか、低硫黄の石油をどう確保できるのかという問題もあわせて長期的な発電計画を進めてまいりたい、こう考えます。
  262. 島本虎三

    島本分科員 わかりました。  また、いまの状態から北海道のいわゆる産炭地のこの状況をずっと見ます場合には、大臣のもとへ知事をはじめとして陳情が参り、そしていろいろ具体策についての打ち合わせがあったことだと思うのです。まさに美唄のみではございませんで、大きい都市といわれておりました各都市が町や村の形態にまで小さくなってしまうというのが現状であります。この実態は、この石炭が閉山、廃山になってしまう。それも資本が引き揚げますから当然そういうふうになってしまうわけです。ただ、いま石炭専焼の火力をつくる、この計画を承って、私どももそれには大いに賛成したいと思います。この計画を具体的に進めるのでなければこれはだめだと思うのです。現にそれを大臣に要望しておきまして、そしてこれを各民間のほうにやれと言ってもやりません。山がそういうふうになりまして、石炭がそばにあっても都市の近くの、海岸のそばの景勝豊かな土地を選ぶのです。そして公害の問題でまた住民の反対にあってにっちもさっちもいかなくなってしまう、こういうような現状なんです。黙っておるとそういうふうになってしまう。いま大臣が言った石炭専焼の火力をつくれ、こういうようなことは刮目をしてみんな待っておる問題ですが、それを具体的な策として、対策としてこれを示し、それを強力にやらせるのでなければ、これはたなの上のぼたもち、何にもならない、こういうふうなことになるわけであります。これはやはり錦上花を添えるというか、画竜点睛を欠くことがないように完全にする、またさせなければならないし、そういうようなところに今回の意義があるのじゃないかと思うのであります。私はその具体策について聞きたい。なぜならば、やはりその場所へ工業を誘致する。行くんです。行くのは低賃金を目的にして安い賃金でやって利潤をあげるために行くんです。ところがそれが許されなくなるとまた引き揚げて返ってくるからそういう企業は成り立たない。行くのは大企業でなく中小企業である、こういうようなことになる。そういうようなことを繰り返し陳情しいろいろやるよりも、いまの石炭野焼火力をつくってそれを具体的に計画を進める、これを通産省としても大いにやって推進してもらわなければだめだと思います。大臣の御高見をひとつ御拝聴申し上げたい。
  263. 田中角榮

    田中国務大臣 いますぐ間に合うものは何かというと、電力会社に石炭を相当強制的にたかせるというとことが一つございますが、これはしかし大口需要者というのはみな大都市のまん中にありますから石炭をたけない、こういう皮肉な状態でございますが、しかし一つだけ現に石炭専焼火力をやっておりますものは電源開発会社であります。電源開発会社はちゃんと地元と話し合いをつけてやっておるのでございますから、これはちゃんとたけるわけであります。それでまた立地も十分考慮をしてやっておりますからたけるわけです。ただ現実的にすぐ工場が来ないということでありますから、これがアルミ工場でもあってすぐ使えるというならば、これはもう二十万キロでも三十万キロでも直ちに使えるわけでございますが、なかなかそうでないということで問題があるわけですが、これはやはり長い間の懸案でありながらついに実現を見なかったんですが、やはりこれから過密過疎の調整を行なうとしてもすぐできるわけありません。そのためにはどうしても大都市の電力需要の多いところは電源立地に因るわけでありますから、これは北海道−本州縦断の送電線をやはりつくらなければいかぬ。これは電源開発会社をつくった当時からの——私たちは議員立法でこれを行なったわけでございますから、私も提案者の一人でありますが、そのときは二千億くらいかければ本州縦断の送電線ができる。いま計算してみても比較的に安い、三倍くらいの六千億くらいかければということでございます。しかし北海道と青森との間に海峡がありますので、これは中を通せないかということでいま鉄道建設公団の海峡隧道とも話をしておるわけでございますが、これは将来の問題にしてはビジョンとしていまきちっとできる問題であります。それで、これは石炭を使えばコストが上がるといってもピーク用の発電に使えばちゃんとペイするという計算も成り立つわけでありますから、そういう意味石炭野焼火力というものをこれからほんとうにひとつ計画をしてみなければいかぬ。今度三月の三十一日に体制委員会から石炭の長期的な答申があるわけであります。それは答申が出なくとも私も大体数字が読めるんですが、しかし二千八百万トン五十年に掘って千五百万トンしか需要がないなどと言ったら石炭はたいへんなことになると思うのです。だからそういうことの具体策を立てるとすれば、それは電力料金も押えておる、石炭たきなさいと言ったってとてもできるわけはありません。それはやはり政府考えなければならないベースの問題だろう、こういうことでありまして、いま公益事業局、また鉱山石炭局にも合同してとにかく石炭を使うんだということを前提にして計画をすればどうなるかということでひとつ計画を立てさせておるわけでございまして、いますぐにというわけにはまいりませんが、いずれにしても四月に引き続いて長期的な石炭の問題は審議会から答申が出るわけであります。それと平仄を合わせるようにして、通産省としても独自な考え方で需要者を拡大したり、石炭専焼火力がどういう位置づけで長期的に行なわれるのかということは考究してまいりたい、こう思います。
  264. 島本虎三

    島本分科員 もう少し具体的に開きたかったんですが、大臣としては将来のことも考えてその程度でとめておいたんでないかと思うのです。たとえば水のある場所、それから川の水、石狩川なんかございますが、川の水のあるところは往々にしてそのままやってできる個所なんです。小さいこまかい水しかないというところは困難性もございましょうけれども、北海道の場合わりあい水に恵まれている。その場合にやはり企業ベースによると油を持ってくる、採算を先に考えるから。船が着く場所でないとだめだ。それなら海岸でなければならないということでほとんど海岸近くに持ってくる。山のそういうような水のあるところでも毛ぎらいして行かない。もちろん石炭であれば若干高くなりますけれども、そういうようなことは問題じゃないと思いますから、今後そういうような具体的な配置計画をしてそれを示して、そして政府としては強力にこれを推進してもらいたい、こういうように思うのです。この点だけはひとつ……。
  265. 田中角榮

    田中国務大臣 四月の末ごろを目途にいたしまして、私は、いま、工業配置計画の内容、工業配置法というものは何を意図しておるのか、六十年展望で日本列島をどう改造するのかという本を執筆しているわけでございます。この中には六十年展望の図面を入れるつもりであります。北海道に対しても二次産業比率が全国平準化できるような図面をいま計算いたしております。これは御承知のとおり三十万トンないし五十万トン船舶の入港可能な掘り込み港ができるとすれば北海道には適地があります。まあ反対はありますけれども、釧路の湿原の掘り込み港の建設は直ちにできるわけであります。第二苫小牧も現在進められておりますし、これはもう北海道の電力を倍にするくらいのことはそんなむずかしい問題じゃないのです。そういう問題を、全国的に二次産業の平準化をするという理想図ができるとすればどうだかということが書いてあります。これは政府の原案とするには少し荒っぽいということで、私人である私の名前ということでございますが、私はそういうたたき台ができて早急に、さっきの山田市の問題のように、もう全く足もとまで火が来ておるという問題でありますから——これは私は、かつて道路三法が議員立法で行なわれたように、そういう非常なスピードアップがされるだろう、またされなければならない、この国会が終わったら。工業配置公団は十月一日発足でございますから、十月一日発足までにはその国民的合意を何とか得たい、こう考えておるのであって、青写真を持たないわけではないということだけ申し上げておきます。
  266. 島本虎三

    島本分科員 そういうような状態から、将来は火力が二〇%、水力が三〇%、原子力発電が五〇%。これはもうすでに将来性も、これによってエネルギー対策というものを考えられておるようでありますが現在もうすでに原子力のいろいろな問題も進められております。ただ大臣、これは進めておっても、またどこでも問題になるのはその安全性の問題だけです。それとまだ若干ありますけれども、安全性の問題に対してなぜ日本ではこれを解明しないうちに急ぐのか。これもやはりいろいろと問題の含まれるところであります。アメリカあたりではちゃんと距離の問題も解決する、低い人口密度の場所を選び、そして人口中心距離も選んでちゃんとやるのに、日本ではほとんど近い距離の場所に、人口過密の都市に、場所にこれをもう実施している。それも原子力発電に対しての安全性というようなことになると、ことしから検討してみたいという、こういうようなことでは少しむちゃくちゃじゃないか、こういうふうに思っているわけなんです。やはり放射能の危険性ということは、これは一たん触れた場合には、もう被害が出たら救いようがないものでありますから、これは慎重でなければならないはずであります。大飯の問題や福井の美浜の問題等、こういうようなものに対してはもう少し慎重性が必要でなかったか、こう思うのです。安全性の問題でこれはほんとうにだいじょうぶなんですか。成田原子力局長もきょうは来ておられると思いますが、これは何回言っても安全であるかのようで安全でないかのようではっきりしないのでありますが、この問題について解明を願います。
  267. 田中角榮

    田中国務大臣 電源開発につきましては、慎重を期しておることは御承知のとおりでございます。電源開発調整審議会にかけ、しかも原子炉の設置につきましては、わが国としては最高の権威であるところの原子炉安全専門審査会の議を経て非常に慎重な態度をとっておるということは、これは事実でございます。日本の学者のレベルというものは世界で低いものではないということは、これは世界全部が認めておるわけでございます。その中で最高のレベルを二十九人も集めてあらゆる角度から検討しておるのでありますから、私はいまの段階において原子炉というものの設置に対しては万全の上にも万全を講じなければならないと思います。が、しかし、いま日本の電力はもう生活のために必須なものであります。それがいまとまるかもしれないということを考えられるような状態において、私はやはり日本の最高権威が万全の対策をもってするものに対してはすなおにそれを評価すべきではないかと思うのです。私は、ただ少しPRが足りない、自民党は大体PRが足りないというのですが、そのとおりだと思うので、今度やはり科学技術庁とか通産省とかそういうものが原子力発電所に対してはあらゆる角度から、世界のあらゆるデータを収集して、そしてこれをこういう状態でございます——私も通産大臣になったときに原子力の問題を勉強しなさいよということで、なかなかひまがなくて勉強できませんが、原子力というものはほんとうにあなた安全ですか、安全だ、こう言ったときに、それは広島の大本営ができたときに電気をつけちゃいかぬ、火事が起こるかもしらぬといったたぐいですかねというから、それはぼくは高度の技術家ではないからそうだとは言えないが、いまの段階において日本が原子炉の設置というものに対してとっておる法制上の措置はやはり世界の最高レベルである。それはやはり信頼できるのじゃないか。なおその上に万全にも万全を重ねなければならないことは当然でございますが、いまの段階においてもう原子力でなければ不可避であるという世の趨勢でありますから、だから少なくとも国会では超党派でいまのやつはいいんだ、もし付加する制度があるならばこの制度をもう一回審査をすれば、きまったものは一年も二年も考えてないでやろうということにならないと、とても電力をまかなっていけない、こういうことを私は真に信じておるのであります。
  268. 島本虎三

    島本分科員 言った範囲ではよくわかりますが、それはまだ私の疑問を説得するところまでいかない。ですから、もうやれといえばやる、世界の最高級の学者だ、なるほどそうかもしれません。しかし日本ではまず稼動の実績がないということ。じゃあアメリカにあるかというと、アメリカでも一九七一年に稼動を一応停止したという問題もあったようです。そうするとこれはどうですか。大型化すると運転中に原子炉の容器や大口径パイプに欠陥が形成されやすくなってくる。したがって、ソ連のほうでは三十年にわたる研究の結果、これはもういよいよ二十五万キロワットのやつを四つやって百万キロワットにする。そしてそれもチャンネル型の黒鉛減速原子炉、これを開発して、安全性の問題は詳細にしつつこれを開発しているというのです。日本のほうでは二十五万キロワットはおろか、急に百十七万五千キロワットというやつを一気に大型化していく。それもいわゆる容器型軽水炉というのですか、これはアメリカでもまだ運転実績もないものを安全だと学者が言うからそのままだ。まあ大臣がそれを信じなさい——信ずる人もあるでしょう、大臣の力があるから。しかしいまのような状態で、片や同じような原子力を平和利用している国では三十年間もかかって、それをいま鋭意四ループの集合体として二十五万キロワットずつ寄って百万キロにしようとしている。片や日本では百十七万五千キロの大きいやつをやっている。その中には、大型化すると運転中に原子炉の容器や大口径パイプに欠陥が形成されやすくなるのだというようなことがあって、日本ではこれから研究するのだという。これも成田原子力局長が、これから研究するんだ。それだったら、学者が言っているから安心しなさい、学者が言っているのだから安心しなさいと大臣がいかにことばを大にして言っても、やはり国民はそうかな、こう思うのは当然じゃないですか。やはりこの点についてはっきりした見解をなぜお示しにならないのだ、科学技術庁。これをはっきりさせないでなぜ強行なさるのだ、通産省。こういうような声さえ聞くのでありますから、やはり大臣がいま言ったように、その権威を国民の前にはっきり示すならば、もっともっといまのような疑問を解明しなければならないはずなんです。  この点等については、やはりまだまだ私は不足のものが多いと思っているのです。それを強行するについては、やはり国民の納得の得られないままに政府がやるということになると反対運動は当然起こってくるんじゃないかと思うのです。この点についてはどうなんですか。——科学技術庁は……。
  269. 田中角榮

    田中国務大臣 一言だけ申し上げますと、通産省側は原子力発電所に対しては万全の体制をとってまいりたいということでございますが、通産省ではなく科学技術庁や学問の問題になってくれば、これは政府委員から正確な御答弁を申し上げたいと存じます。
  270. 島本虎三

    島本分科員 成田原子力局長はおられないのですか。——それなら時間が惜しいから……。  若狭湾には年間三百五十二万八千名の観光客が来る、美浜や大飯の近くの海岸に裸で遊んでいる子供もいる。アメリカあたりではそういうような点を考慮して低い人口密度の地帯にこれをやるということになっておるのですが、日本では北海道に予定されているところは岩内町付近にある、町からほんの三キロぐらいのところにある。美浜や大飯もやはり人口秘密な地帯からほんの九キロか八キロくらいしか離れていないところに設定しなさる。そしてその付近には三百五十二万八千名の観光客が来る。こういうような場所ですから、アメリカでさえ安全度を保ってやらないことを日本が、学者の解明があるからといってすぐこれをやっていなさるということになると、この点でも通産省はこれを進めてもやはり国民の納得は得られないんじゃないかと思うのですが、この辺については企業の機密に属するということで審査の内容の発表はどうしてもしてくれないのですか。質問として提案したいのですが、こういうようなことに対しての審査の内容は答弁によって出してもらいたいのですが、これはどのようにして審査なすっているのですか。
  271. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 原子力委員会の下部機構の原子炉安全専門審査会では、ただいま御指摘の若狭湾に集中的に原子炉が建つということをも踏まえまして、こういう原子力発電所から放出される放射性物質の相乗作用をも十分考慮して慎重な審査が行なわれた、かように伺っております。
  272. 島本虎三

    島本分科員 慎重な審査が行なわれた、その内容はと言ったら向こうが発表してくれない。質問してもそれは答えない。慎重に行なわれただけじゃわからない。これは資料を要求したならば出してもらえるものですかもらえないものですか。
  273. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 参議院の科技特の御質問に対して、科学技術庁は審議の経過を、どの程度に具体性を持っているか存じませんけれども、御説明したい、こういう意向であると承知しております。
  274. 島本虎三

    島本分科員 参議院のその議事録もあるのです。きょう手元にないのが残念ですが、その中で成田局長は、本年度その安全性に対して十分検討して、実験してまいりたい、こういうふうに言っているのです。ですから、それはちゃんと踏んまえての質問なんですが、アメリカでさえも重要視している人口密度の低い地帯というのは、日本では人口密度の点においては全部これが御破算になっているから、この点についての一つの審査の内容を示せといっても、示してもらえない。したがって、今後のために資料としてこの内容を出してもらいたい。よろしゅうございますね。
  275. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 科学技術庁のほうに、きょうは担当局長が参っておりませんので、そういう御要請があったということを十分伝達いたしたいと考えております。
  276. 島本虎三

    島本分科員 科学技術庁のほうではそういうような態度であるけれども、通産省ではやはりこれを進めていってよろしいとお考えですか。科学技術庁は非科学技術庁的なこういうような一つの見解をときどき示すのです。というのは、使用済みの燃料等増大する場合には最終廃棄はどういうふうにするんだと言ったら、大洋に持っていって投げてもよろしい、これも一つの方法だろうと言うのです。いま国際的な会議の中で——六月にはストックホルムで環境保全のための会議さえ開かれる。海洋投棄する場合は、全世界の各国々がこれをお互いに規制し合ってやらないようにしようじゃないか、やる場合にはお互いに相談し合ってやろうじゃないかということになっているのに、外洋へ投棄することも一つの方法、これを考えておられるようじゃ、通産大臣、ちょっと困るのです。いまにまた世界から公害ダンピングだ、こう言われかねないのですから、なお困るのです。これに対してはっきりした見解をアメリカではちゃんと持っているのです。地下の岩塩層に永久にこれを埋めるのです。日本にはそういうところがないから向こうへ持っていって入れてもらえるか、その納得さえもまだ得られていないでしょう。いまやっているのは、ドラムかんに入れて積み上げて置いているだけでしょう、構内へ。いつかこれを処理しなければならない、どういう処理をするかと言ったら、手をあげている、ないと言っている。大洋へ持っていって投げる、こう言う。そんなことはできませんよ。ですから、こういうような点ではまことに非科学庁ですから、この非科学庁の、たくさんの人の学者の言うことだからいい、こういうようなことで進めていくのも、これは大臣、少し考えたほうがよろしい、十分この点なんかに対しては検討してもらいたい、こういうように思うわけです。  そういうようなこと等からして、放射能の危険性の問題があります。それから燃料の再処理の問題等あります。温排水の問題ももちろんございます。しかしそれは今後また十分やることにして、通産省としては、こういうようなことがはっきりしない、またアメリカでさえ実験の結果がないのに、これをやれ、やれとただ進めるばかりのラッパを吹くということだけはあまりやらないほうがよろしい。すぐやるのは産炭地の石炭専焼の火力発電だってあるんじゃないか、私はそれを要望しているんです。こういうようなことで今後はひとつ大いに進めてもらいたいと思っているのです。いかがでございますか。
  277. 田中角榮

    田中国務大臣 原子力等を通じて膨大な発電を必要とすることも実態でございます。原子力発電所にたよらなければならないということも、また事実でございます。しかし原子力発電という大きな新しい試みに対しては、少なくともその時代の人たちが全部納得するものでなければならないし、後代においても批判を受けないような状態でなければなりません。そういう意味で、これだけ公害が問題になっておる現状にも徴しまして、通産省もいまの機構とか制度が不備であると思えば、それはもうできるだけ万全の体制をとりますし、私も原子物理の学者とは昔からこの問題を、教わったというんじゃありませんが、門前の小僧習わぬ経を読むでもって話を聞いておりました。戦争が終わった当時は仁科博士の持っておるサイクロトロンにアメリカはびっくりして、四つに切ってこれを海洋に投棄をしたという事実もあるわけでございまして、日本の原子物理学者というもののレベルは低いものではないということだけは、そういう現実的な立場からそう信じております。しかし行政的な立場からいうと国民が納得しなければならないし、国民の健康被害に対しては責任を持たなければならないという立場にありますから、非常に御勉強になっておる新しい角度からの御発言もございますので、これは通産省でも科学技術庁と十分相談をしながら万全を期してまいりたいと思います。ただ、非科学庁なんて申さないで、これも日本政府でございますし、権威ある役所でございますので、これは、そういう意味で通産省と科学技術庁や大学が万全の対策をとって相談するということでひとつ御了解をいただきたいと思います。
  278. 島本虎三

    島本分科員 最後でありますけれども、最近私どもが通産省に人物ありと思ったことの一つは、いろいろ問題になっておりますあのPCBの問題で、直ちにその処置をしたということでは最近にない一つのほめてもいい事柄になるのではないかと私は思っております。製造の中止をさせたようであります。しかし、三菱モンサントや鐘化でもうすでにいままで製造しておったものが今年だけで一万五千トンであって、使用が約六千トンですから、在庫が約一万トンくらいあるとさえいわれております。そのほかにもずっとまだ本年になって製造しておりますが、それがどう回っているのか。製造中止しても在庫のものを使用させるんでは、これまたいままでのようなPCBの被害がいろいろ出てくるのでありまして、この先一年延びるか二年延びるか、それをいま中止させたんだから在庫品を全部集めてそれを処理させるんだ、こういうようなところまではっきりさせないといけないんじゃないかと思います。こういう点で、せっかくそこまで踏み切った大臣でありますから、在庫は幾らあるのか、その処置はどうするのか、これだけはっきりさせて、国民を納得させてやっていただきたい、こういうふうに思う次第であります。
  279. 田中角榮

    田中国務大臣 いま残っておりますPCBの在庫は五百トンでございまして、この五百トンというものに対しては、あとは三菱モンサントも製造しないということで、もう製造はやめておるわけでございます。  なお、開放性のものに対してはPCBを使わないということ、これは当然でございますし、これの心配はありません。閉鎖性のものの中で回収のできるものとできないものがございます。この残った五百トンを使うものはもちろん閉鎖性に局限されるわけでございますが、それも国鉄とか電電公社とか、完全に回収の可能である、責任の持てるものという、大型トランスその他にだけしか使わないわけでございまして、コンデンサーに対しても使わないようにと、こういうことでございますので、この五百トンが公害を起こすということは絶無であると考えていただいていいと思いますし、また通産省もそのように的確なる行政指導をやってまいりたい、こう思うわけでございます。  あとに残るのはちり紙とかノーカーボン紙の問題とか、いろいろな問題がまだちょっと絶滅するまでには多少の時間がかかると思いますが、これを全部回収するというのは、それを再生の原料として使って別なちり紙になっておるので、これはなかなかむずかしいんです。できるだけコンデンサーなどの回収、そういうものを考えるわけでございますし、そのように要請もいたしますが、直ちにきょう現在、あした現在、できるだけの間に全部回収するといってもむずかしい問題もあります。それは技術でございますので、その間の事情はひとつお含みいただきたい、こう思います。
  280. 島本虎三

    島本分科員 残念ながら時間になりましたので、あとの残りはこの次にさせていただきます。
  281. 植木庚子郎

    植木主査 次は阿部昭吾君。
  282. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 私は、さっきの原子力の問題とは違って、いま当面のエネルギーの根本であります石油の問題でお尋ねをしたいのであります。  大臣、実は大臣の御郷里の新潟県、私の郷里の山形県、秋田県、この三県はわが国における石油産油地でありましたが、陸地のほうがだんだん細ってまいり、つい最近に至ってやっと阿賀野川沖で大陸だながどうやらうまくいきそうだ、こういう状態になっておるのです。そこでいま阿賀野川沖を掘さくいたしました「第二日竜号」、これは石油公団石油の掘さく船でありますが、わが国ではこういう大陸だな開発に対応できるような掘さく装置というものをほとんど持っておらない。いま通産省のほうでは、遠隔リモコン操作でやれるような掘さく装置の開発、研究に着手をされておる。お伺いいたしますと、これは第一次研究に五年間くらいを見ておる。実際に建造できるのかどうかということの研究にさらに第二次研究五カ年間、その先になってやっとそういうものをやるという段階に入っておる。そういたしますと、もう十年くらいあるいは十年以上たたぬと実際の用にはならぬ。そういういまの深度の深いところを遠隔操作、リモコン操作でやれるような、そのようなものも確かにやってもらうべきだと思う。問題は、「第二日竜号」のような装置をもっとたくさん整備をしていかなければ、これからの大陸だな開発というものは、ちょっと日本自体の手では、手が回らぬという状態が起こってくるのではないか。そういう面で、ぜひひとつ前向きに「第二日竜号」、あの白竜で現在約四十億以上かかったと聞いておるのであります。そういたしますと、あの船で大体三百メートルくらいの水深のところをやれる。そうすると、三百メートル以上のところまでやれるような船ということになりますと、「第二日竜号」よりはもうちょっと建造費がかかっていく、こういう船をもっとここ短期間の間にやらなければ、大陸だな開発に間に合わぬじゃないかという気がするのであります。と同時に、この船をやるのには民間資本だけではなかなかこれはうまくやれない。地下資源開発、特に大陸だな開発のようにギャンブル性を持つというか、そういう意味では国が相当本腰を入れたやり方での取り組みをしてもらわなければ、追いついていけないのではないかというふうに思うわけであります。私は、この新潟なり山形なり秋田なりといったあの地帯の、ある意味でいえば産業的な将来展望をいろいろ考えました場合でも、いまの大陸だな開発というものの持っておる意味は非常に大きいものだと思うわけであります。そういう意味で「第二日竜号」のような船を短期間の間に開発に適合できるような整備、これをやってほしい、こう思うのでありますが、大臣のお考えをお聞きしたいのであります。
  283. 田中角榮

    田中国務大臣 石油は深度掘さくを行なわなければならないということは、これはもう申すまでもないことでございます。内陸部よりも大陸だなに資源が存在するということも、もう世界的な問題になっております。日本には石油がないということであったわけでございますが、そんなことはないと思っておったら、石油はあるということが近年証明されたようでございます。私も、あなたと同じように石油地帯で生まれた者でございますし、大正の日本石油の歴史の発祥地である西山油田は私の出生の村でございます。そういう意味で、間違えば石油掘りの井戸掘りになろうと思ったということもございすから、非常に私は石油に対しては関心がいまもあります。そういう意味で日石から帝石になり、帝石が三千メートルの深度掘さく機を採用したのはもう二十年も前の話でございますが、それを使えないまま帝石が分離しなければならないようになりまして、私自身が中心になって現在の石油公団法の前身である石油資源開発法を議員立法を行なったわけでございます。そういう歴史を持つ私でございますが、またその後東大の的場博士と一緒になりまして日本石油を百万トン以上に上げたい、こういう夢を持ちながら、内陸部においてはわずか総量の二〇%ぐらいしか採油できないということで、現在八十万トンという百万トンにも満たない状態であることをはなはだ遺憾だと思っております。まあ秋田で掘ったものはだめだったんですが、しかし新潟沖で当たり、山形沖をやろうということでありますが、いま松江沖もシェルと共同してやっております。東シナ海においては相当有望な油田が現に確認をされております。中国大陸にも石油資源はあるということであります。尖閣列島の問題が問題になったのは、あそこに相当の石油資源があるというのも理由ではないかとも言われております。「第二日竜号」のような、二千メートルちょっとで出たわけであります。うまくすれば二百万トンぐらいは掘れるということでございます。もっと掘れるというデータも出ております。そういう意味で、「第二日竜号」のようなものをやはりたくさんつくらなければならないということは、もう御説のとおりであります。特に、この間ソ連と話をしまして、沿海州の大陸だなをやろうとすれば、これは当然遠くから船を持って来れない、日本から持っていかなければならない。「第二日竜号」そのものが引っぱりだこであって、帝石もそれを待たなければ掘れないという実態でありますから、こういう問題に対しては将来とも検討しながら、石油公団また大蔵省当局とも相談をしつつ、こういうものこそ財政金融でも、また公団をしてつくらせるということも必要であろうと思いますので、具体的に計画を申し述べられる段階ではありませんが、ひとつ早急に結論を得るように検討いたします。
  284. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 大臣は話が非常に早いのでありまして、前向きのお考えをお伺いしてたいへん心強く思うのであります。  そこで、わが国の石油探鉱あるいは開発、試掘、こういった事業に対する国のやり方、これが西ドイツなどと比較をするとたいへん弱いのじゃないかということがよく言われるのであります。何せ油掘りというのは、昔よりは相当科学的にいろいろありそうなところを正確につかんでやっていくんだと思うのですけれども、そうは言っても、なかなかやはりこれは相当ギャンブル性を持つということになるわけでありまして、西ドイツあたりでは成功払いなどといった融資制度、こういったものまで実はやられているわけであります。そういう意味では、いま私どもある一面では非常に心配な気もするのでありますが、いまの阿賀野川沖は、出光興産と石油開発との合作でやった。それから、今度の松江沖のほうになりますと、シェルと三菱の合作、それから、最近ちょっとおかしくなっているじゃないかといわれているんですが、常磐沖はエッソと帝石ですか、こういうぐあいに、全部外国資本との提携でやるという形、こうなりますと、日本にとってはもう唯一の、ある意味でいえばとらの子のようにしている大陸だなの開発というものが、外国資本と提携しなければできない、私はこういうあたりを考えますと、国の石油開発というものに対する援助の政策、こういうものももう数段前進させてもらわないと、大陸だな開発は進んだんだが、実際は全部外国資本とのかかわり合いでやらざるを得ない。その中からいろいろな問題が起こりそうな、あるいは起こらぬにしても、国民的感情としてはどうもすらっと入ってこない、そういう面では、今度の四十七年度の場合でも、懸案の問題、たとえば石油公団というものを強化するような問題とかいろいろ手を打っておられるわけでありますが、さらに進めて成功払いの融資制度といったような——西ドイツあたりだって日本と同じように油はなかなかない。したがって方々へいっていろいろなことをやっておるわけですが、あのあたりでやられておるような程度のことは、日本でもやはり大胆にやっていただきたいというような気がするのですが、このあたりはいかがでしょう。
  285. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたと同じ発言を、私は二十年前に大蔵省にさんざん言ったわけでございます。ガソリン税を目的税にした道路整備費の財源等に関する法律というような議員立法を行ないまして、道路整備にスタートしたわけでございます。そのときは、日本石油消費量は非常に小さなものでございましたから、百万トンの石油を掘れるということになったらたいへんなことだということでやってきたのですが、あなたと私は同じことを言ったのです。言ったのですが、なかなか言うことを聞かなかったのです。そして、その後石油資源というものをつくりましたが、ようやく半官半民であります。しかしあの石油資源もようやくやっとガスが出てベイラインに乗るというような状態で、ベイラインに乗らないうちに石油開発公団になったわけでございます。開発公団海外探鉱というものに対しては成功払いということであります。しかも今度は少し前向きになりまして、可燃性天然ガスの探鉱までやろうということになっていますが、どうも政府がつくりますと、毎年毎年の単年度のバランスばかり考えて、一本当たるとすぐ引き上げてしまう、こういうことになってしまう。これは百本掘って、そのときに一区切りをしようということでないと、試掘、探鉱というものはできないのであります。だから私が議員立法を行ないましたときは、全額国が補てんすべきである、そして利益が出れば高額な税でもって徴収すればいいのであって、いまのような、単年度でペイするような、バランスをとるような前提では、石油資源開発はできない、私は同じことを述べたわけでございますが、このごろは少し変わってまいりました。これは少し掘ればあるんだということ、これは世界的の風潮が変わったのですが、いま言ったように、南イタリアなどは、火山岩地帯には石油がないといっておったものが、石油が出るということがありましたし、ソ連でもそのとおりでございます。日本の大陸だなには石油はある。内陸部にあるのですからあるはずです。金も佐渡の金山などは掘り尽くしたというが、大陸だなには必ず金がある、これは科学的な裏づけも私はあるつもりです、地質学上からもいろいろな立場から長いこと考えてまいりましたから。制度上検討しなければならないということはもう承知いたしております。ただアメリカと合作で掘ることに感情的にはあれがありますが、しかしこれはアメリカ資本からほとんど二億二千万トンも石油を入れておるという実績、これがことしは二億五千万トンをこすでしょう。五億なり六億になるということを考えますと、日本政府が全額出してやるというような気持ちにならない限りにおいては、やはり合弁でやるということが一つの手だろうと思うのです。いま南シナ海に対しても出す。複数以上で考えなきゃいかぬだろうということでありまして、大蔵省はなかなかうんと言いません。言いませんが、新潟沖は当たりましたからやりましたね。しかし、海外のものはたたいて買うべきだという財政当局の気持ちは、依然として変わっておまりせん。変わっておりませんが、いまのOPECの問題とか、いまのマラッカの問題が出てきますと、国内資源という問題が当然問題となってくるわけです。私もこういう問題に長いこと関係をしてまいりましたので、きょうはまたそういう御発言で刺激をされて、財政当局とも、また石油公団等の意向も聞きながら勉強してまいりたい、こう思います。
  286. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 大臣が二十年前言っておったことを私はいまごろ言っておるのですから、なかなか大臣のようにはなれそうもないという感じを持つのですが、ぜひひとついまの問題は、幸い新潟沖が当たった、あれをつかまえて、大臣ほどの力のある大臣のおられる間に、せめていまの西独程度の取り組みのしかた、こういう方向での一歩前進をぜひお願い申し上げたい。  それから「第二日竜号」、この間私びっくりしたのですが、この一日の公団に支払っておる賃貸料が百八十万円なんです。海が荒れてよう掘れなかったというような場合でも、百八十万円ずつ毎日公団に払わなければいかぬのです。したがって民間会社では非常にやりずらいという問題が起こる。そこで、なぜそんなに高いリース料になるのかということで調査をしてみましたら、償却を七年で見ておるようなんであります。しかし実際は、いろいろ方々の部分品や何かをかえますと、二十年くらい使えるんだそうですね。二十年というような耐用年数で見ないとしても、十年や十五年くらいで見るということになりますと、リース料というものをもっと実情に即して軽減ができるのじゃないかという意見、そういう面での配慮もしていかないと、自前のそういうものは持っておらない、したがって公団からチャーターをするという場合に、いまの新潟沖のようにうまく当たればいいけれども、何本かの間に一本当たるといういき方が残念ながら石油開発というものの現状だと思うのです。そういう意味では、今後「第二日竜号」のような船は民間では無理で、公団のようなところで、当面一挙に十ばいもつくるというわけにはいかぬでしょうけれども、この一、二年の間に三ばいなら三ばい、五はいなら五はいつくるということになりました場合には、やはりこの賃借料の問題もある程度考えてあげないと、不安が先に立ってなかなかむずかしい。こういう問題が起こりそうな気がするのであります。  時間の関係で多くを申し上げることは困難でありますが、いまの大陸だな開発、私どもにとっては久しぶりの朗報だったと思うのです。先行きに対しても、これはいけるぞという感じをみんな、特に裏日本の暗い冬の海であれが出ましただけに、私どもにとってはたいへんな関心事であり、胸ふくらむ思いだったわけです。そういうわけで特に田中大臣は、大蔵省の話が出ましたけれども、田中大臣にかかったら大蔵省など目じゃないのじゃないか。したがって、かつて大蔵大臣として長くおられ、またポスト佐藤の最右翼にいらっしゃるお立場からすれば、「第二日竜号」の三ばいや五はいは何とかなるのじゃないかという期待を地元はみんな持っておるわけであります。そういう面でぜひお願いをいたしたい。  それからもう一つお願いいたしたいのは、いま秋田から象潟のあたりまでガスパイプラインが通っている。山形県の庄内は油田から鶴岡のちょっと南のあたりまでパイプラインが通っている。新潟も、私のお聞きしておるのでは、村上の近辺までずっとパイプラインが通っておる。したがって、将来大陸だな開発が行なわれれば、油が出ると同時に必ずガスが出る。ガスの問題は、大陸だなから出るというガスのみならず、たとえばあそこのマレーシアの領になっておるのかどうか存じませんが、あのあたりで最近相当液化ガスか何かでもって持ってこようという動きもある。そうなりますと、私は、将来、新潟、山形、秋田三県というのは、二十一世紀に向けての昔の薩長土肥くらいの役割りを果たさなければならぬと実は思っておるのであります。  そういう意味からいうと、あの三県のあたりに、当面点々と、あまりでかいパイプではありませんが、ガスパイプラインがとぎれとぎれではあるがつながっておる。これをひとつこの際何とか、全部国だけでやってくれというのは無理でしょうけれども、県段階等でもそういう強い希望があるようでありますので、したがって三県あたりが主体になり、地域産業会等もある程度動員して、国もこれにある程度のてこ入れをしていただいて、この三県の間をパイプラインを通しておく。いろいろお聞きいたしますと。安定供給とかいろんなむずかしい議論があるそうでありますが、将来の展望としては、この交通や何かのやかましい時期に、どえらいタンクローリーが走り回るという時代から、パイプラインの時代に全部変わっていくのではないか。そういう面から考えると、いまの三県の沿岸パイプラインをぜひ具体化してほしいという希望が、新潟や山形や秋田の関係者の中で、私ども寄り掛り伺っております限りでは、相当高いように思います。ぜひ大臣の政治的な力をもってこの問題を前進させてもらいたい、こういう希望であります。
  287. 田中角榮

    田中国務大臣 いま新潟から帝石が東京瓦斯にパイプラインでガスを供給しております。これがパイプラインの日本のはしりだったわけでございますが、この国会には石油パイプライン法を御審議いただくというふうに、世の中が変わっておることは事実です。秋山から新潟までのパイプラインの問題は、ずっと前から出ておるわけであります。これはサハリンの液化ガスを新潟にあげるならば新潟から福井まで、また新潟から秋田までということでありましたし、秋田にあげるということになれば当然新潟までということであります。いま水とか石油とかガスとかはパイプラインでなければならないことは言うまでもないのです。にもかかわらず、道路は道路でやるし、鉄道は鉄道でやるし、それから電電公社のケーブルはケーブルで全然別のたんぼの中を走っていく。こういうやり方そのものがまずい。いまでも東北新幹線に対してガスパイプや石油パイプを抱かせると危険だとか、それは原子力発電所が危険だなどというよりも、もっとレベルの低いものだと思うのであります。  この間私は本四連絡架橋で、阪神には五十万トン、三十万トンのタンカーが入るわけはない、そうすれば橘湾から引く以外にない、こう言っておっても、まだ構造上どうでございますなどと言っておるのであって、政治の指導性の問題だなと思っておるのですが、これは私はやはり時代の推移でもって早急に解決される問題だと思います。今度のパイプライン法が建設省、運輸省、通産省三省でもって御提案申し上げておるということから考えれば、この問題は必ず解決する問題だと思います。  だから私が先ほど申し上げたように、六十年展望の青写真、その実体法として今度工業配置法ができますから、そうすれば、五十年には、五十五年には、六十年にはそうなるんだ、そうしなかったら日本の実質的な成長のメリットはないということが断ぜられるならば、そういうこととあわせて、パイプラインとか、今度高速道路ができれば、その中に、ヨーロッパがやっているようなことはできなくても、小さな地下共同溝が併設されなければならぬことは、あたりまえのことだと思いますが、みんなばらばらに企画し研究されておるところに問題があると思いまして、いまの問題などはそう長い将来の問題ではなく実現の運びに至ると思います。
  288. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 そこで前後いたしますが、通産省のこの資料は四十五年のもののようでありますが、黒鉱とかいろんなものの探鉱、こういうものの補助率は五分の三なんです。ところが、天然ガス、石油、こういうものの補助金は二分の一ですね。私は、どう考えてみましても、天然ガス、石油——いま当たったからかさにかかって言うわけじゃないのですが、やはり再検討すべきではないか。  それからいま一つは、探鉱の場合、探鉱補助金というのがあるわけですが、単価が四十一年か二年あたりの単価そのままでずっと引きずっておる。したがって相当実情にそぐわぬ点が起こってきていると思う。したがって探鉱補助金積算の基礎になります単価、これはやはり早急に検討をしていただくべき時期ではないか、まあ、何でもかんでも当たったからといってかさにかかるようであれなんですが、私はそう思うのです。このことをぜひひとつお願いしたい。  時間がありませんのでもう一つ。これは大臣にお伺いしたいのですが、わが国の拠点開発、たとえば新産都とかいろいろなものがあるわけです。この新産都はやはり大都会、メガロポリスに集中することを抑制しよう、それからわが国全体がバランスある開発発展を遂げさせていこう、こういうねらいで、大臣も長い間たいへん努力されてああいう政策を進められたと思うわけです。現状はどうか。秋田の新産都にしても、新潟の新産都にしても、全国どこの拠点開発にしても、その拠点開発のテンポに比べて大都会、メガロポリスのそういう産業の暴発のスピードというのははるかにはるかに高い。そういう意味では従来の新産都なり拠点開発というもののあり方も、もう一ぺん根本的に洗い直さないといけない段階にきたのじゃないか。どうも青写真のとおりには動きませんので、やはり京阪神なり中京地帯なり京浜なり、こういう地域の企業の暴発というものがどんどんすごいボリュームで、大庭や政府考えられておるような拠点開発なり、そういったいろいろなものは、わが国全体の経済のものすごいボリュームから見た場合にはたいへんなハンディが至るところに起こっておる。したがってそのハンディはどこにしわが寄っていくかということになると、新産都市をやる場合はやはり自治体が相当の負担をする。そういうところに全部しわが寄っていっておる。だからこの場合もう一ぺん、わが国の開発のいわば青写真というものあるいは進め方というものについても、企業の恣意にゆだねるのじゃなくて、やはり政治が正確にリーダーシップをとって、ある意味でいえば企業を拠点開発する場所には責任をもってはめ込んでいく。誘導なんというなまぬるいことじゃなくて、やはり政治がどんどん引きずっていく。そのかわり、引きずるからには——経済合理性追求というこの原理の面からいえば、若干企業から見れば非常に迷惑な面も出るわけですから、そのことは、いま資本主義社会ですから若干のてこ入れなり税制の問題とかいろいろバックアップの問題があってよろしいと思うのです。しかしこのままでおったのではメガロポリスの暴発と拠点開発なりあるいは新産都なりのテンポというものは全然かみ合わずに、妙なぐあいのものが起こってくる。そういう意味では基本的な点で再検討の時期じゃないかと思われるのであります。
  289. 田中角榮

    田中国務大臣 新産業都市建設法をやったり離島振興法をやったり山村振興法をやったときは、地域開発といういわゆる請願的なものにこたえるという思想があったわけでございますが、今度はそうじゃないのです。明治百年を迎えまして、ほんとうなら農業地帯であって、しかも果樹もできるし園芸もできるし、何でもできるような、世界の国が農業をやっておるあたたかい水のある平野部の多いところに全部工場をつくったのですから、日本は逆なんです。アメリカ一つ見てみても、アメリカの南部諸州は全部一次産品地帯であり、アメリカの五大湖から北、北海道よりはるかに北の寒いところから膨大な工業生産がされておるのです。みなそうです。ソ連を含めた十カ国の工業地帯は全部北海道より北であります。それを憲法に定めるところ、人間を東京に集めたかったら全部集めればいいんだ、それには住めるように自然の環境を政府が提供すればいいんだ、そんなことを言っておって、うまいこといくわけはないのです。ですからいま東京、大阪、名古屋の五十キロ圏を合わせますと、総面積の一%でございます。そこに三千二百万の人が住んでおって、物価が下がったり地価が下がるわけがない。空気がよくなるわけがない。そんな簡単なことが何年間も何十年も言っていてもわからない。都市集中のメリットは確かにありました。ところが、いま東京にある一つの会社のバランスから見ると、それは相当高い税金を払ってもペイするのでございますが、その会社が一つあるために国民全体が負担する公共負担というものは耐えがたい状態でございます。山形県や新潟県で車が一台増車をされれば五十万円でもって道路の補修ができるが、東京、大阪では千五百万円もかかるのですから合うわけがないのです。したがって、そこで初めて地域振興、国土の総合開発というもの、これは地域の利益を守ることではなく、日本全体がそういうふうな政策に全く逆にいかなければ、発想の転換みたいに逆なことをやらなければこれはもうどうにもならない。しかしそれは、東京と同じようなメリットを与えなければいかぬから新幹線をつくる、高速道路をつくる、港は整備してやる、税制上の優遇をやるということでもって逆傾斜をつけなければいけるはずはございません。そういうことで工業配置をつくったのであって、これは私は新産業都市などというものよりもはるかに大きな状態においてそれを包含して、新産業都市の議員立法の精神がいまようやく軌道に乗る時期を迎えた、こう私は言えると思うのです。特に公害問題がたいへんな事態になりましたから、あの無過失公害がずっと進んでいくと過密地帯における重化学工業などは存在ができない。けさの新聞を見てもおわかりになるとおり、日本で最大の新日本製鉄が八分から六分に落とさなければならぬという事態でございますから、そういう状態から考えていきますと、七・五%ぐらいの成長を前提にして逆算をしていきますと、これはもう過密地帯におけるメリットはない。住宅問題でも、これからとにかく千万戸以上の家をつくって、九百五十万戸の家をこれから五年間でつくって、それでもなお住宅がないのは無制限に過密地帯に押し寄せるからであります。これを政治で解決せずしてどうして将来の国民総生産のメリットを国民が亨受することができましょうか。私は、そういう意味で新産業都市建設計画などというものはむだなものではなかった、これからほんとうにその芽が出るのだ、こういう感じであります。  最後に申し上げるのは、水がない、土地が上がる、物価が上がる、それを押えるにはどうするかといったら、国土の総合開発をする以外に地価は下がらない、これはもう申すまでもないことだと思っております。
  290. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 時間がありませんのでこれで終わります。  ただ大臣、さっきの補助率と、それから探鉱の単価基準、これの改定はぜひ善処をお願いいたします。
  291. 田中角榮

    田中国務大臣 これは十分検討いたします。
  292. 植木庚子郎

    植木主査 次回は、明二十四日午前十時より開会し、労働省所管について審査することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十八分散会