○原(茂)
分科員 もうちょっと的確に専門にお調べにならないと、多国籍企業に対する基本的な
方針が出てこないと私は思います。工場、プラントは世界に約八千、ブランチ、出張所、営業所を含めますと二万三千に達しているんですね。先ほどお示しになったわが国にある数字というのは、少し小さ過ぎるというのは年代が違うんじゃないかという感じがいまいたしますから、もう少し正確にお調べになると非常に数が多くなります。そうしてこの分布図と系統図をずっとやはり通産省持ってないといけませんね。そうして非常に巨大な意思をもって、とんでもないところから強烈な意思というものが、何でもないような会社の中からぐっと
日本に対する影響力を示してこようとしている。私なんか仕事をするのが専門ですから、そういうほういやに神経とがらして見ているんですけれども、ある
意味では非常におそるべき手が伸びてきているという指摘もできます。これはきょうの目的ではありませんから、そういう指摘をしようというのではありませんが、数字をお聞きしただけでも、もうちょっと
アメリカの多国籍企業というものが世界にどの
程度あるんだ、それがどういうプラントなり工場を持っているんだ、営業所がどこにあるということを数をよく掌握して、それがどういう系列のやつが
日本でどういうふうにいま活動を開始したか、その意図は何だということまで系統図を示していきますと、よくわかるのです。特にいまは電算機
中心の国際市場で激しい競争が行なわれているわけですが、IBMなどが示している意欲なんというのはちょっとおそるべきものかありますね。したがってそういう数字、的確な系列の把握というものを前提にしませんと、国としての、通産省としての多国籍企業対策は生まれてこない、そういうことを指摘したいわけなんです。シュレーベルですか、「
アメリカの挑戦」という本を書きましたね。あの中に、これから十五年もすると、米国、ソビエトに次ぐ第三の
経済力を持つのはヨーロッパではない、ヨーロッパを出し抜いたヨーロッパにおける米国企業がその地位につくであろう、第三の地位につくであろうということをシュレーベルが「
アメリカの挑戦」の中で指摘をしました。これがヨーロッパを刺激して大騒ぎになったことは御存じのとおりです。事実私もそういう状況になりそうだ、多国籍企業の現状を見ると、たいへんなショックをわれわれ感ぜざるを得ないというふうに実は
考えているわけです。
それで、もう少し数字をお調べになっていただく材料として申し上げてみたいのですが、一九六六年末でいわゆる先進
工業諸国の
海外直接投資の累積残額は約九百億ドルになっているのですが、そのうち米国系の多国籍企業の所有に属しているのは約三百五十億ドルに達しています。またこれら多国籍企業の
海外直接投資、投下資本によって生産される額
——まあ在外子会社生産額といっていいのかもしれませんが、それは一九六六年末において約千八億ドルの巨額に達していることが事実となって指摘をされているわけであります。
アメリカの商務省が発行しています商業活動の現状
調査という定期的に出している書類がございますが、それによりますと、六九年末における直接投資残高は七百八億ドルに達している。また直接投資の活発化によって在外子会社の売り上げ高も急増し、七〇年の全売り上げ高は二千百億ドルを突破したといわれる。七〇年の輸出が四百二十億ドルであることを
考えますと、いかにこれが巨額なものであるかということが私たちにもよくわかるわけであります。非常にたいへんな力をもって
海外活動が行なわれている。
その上にもう一つ注目しなければいけないのは、この多国籍企業による直接投資の性格なんです。これが
地域的にもいわゆる
産業別の変化を非常に来たしている。たとえば、ついこの間までは鉱業とか
石油、そういうものを
中心にウエートをかけていたのですが、最近では製造業にウエートをかけてきた。このことが
日本にとっては重要なんです。製造業に非常に大きな比重をかけてきました。そうすると、わが国は
資源のない国で、加工、製造というものにこれからも貿易活動の主体を置かざるを得ない。ところがこの製造業にどんどん主体を置いてこれの支配権を確立してきますと、
日本の企業の将来というものを憂えなければいけないだろうというふうに思いますから、この点は非常に重要なこととして、こういう面での
調査もしていただく必要がある、こういうふうに思うわけです。一口にいいますと市場指向型であるといってもいいのかもしれませんが、とにかく
日本なりその他の諸外国に向かって米国流の経営管理あるいは販売
技術、こういうものを押しつけていくだけじゃなくて、
海外に保有する工場への恒久的な支配体制をつくってどんどん、いわゆる一国の
経済の支配権の確立までねらっているとすら見なければいけないというように、これはもう朝日ジャーナルの山崎清さんが書いた論文に指摘されていますが、私も同感なんですね。非常に警戒をしなければいけないというように実は
考えています。
このことは
アメリカの労働界にとっても、先ほど
大臣が言われたように、とにかく安い賃金で外国でつくったやつをどんどん
アメリカに持ってこられたんじゃ
アメリカの失業率は増大する一方なんですから、これは当然進歩的だった労働組合が保護貿易派に回ってみたり、いま
アメリカは大転換みたいな大騒ぎを
国内でもしているわけですが、そういうことを見ますと
日本のほうがまだ少し安閑とし過ぎる。多国籍企業というものの
日本に対する影響がいまどの
程度あらわれているか、あしたはどうなる、来年はどこを指向しているということを、これは時間がありませんから全部申し上げることはちょっとできないのですが、通産省としてはもっと的確に調べていただいて、次の機会には私も普通の委員会でひとつ所見をお伺いしたいと思うのですが、もうちょっと的確な多国籍企業の動向、その指し示す方向と彼らの意図というものを的確につかみ切るまで、
海外でも
調査をなさるし、どんどん出張してお調べになるし、それから皆さんの力を動員して、ひとつ見取り図をおつくりいただきたい。そういうものがありませんと、ほんとうの
日本のこれからのいわゆる
経済活動の指針というものは生まれてこないだろうということを非常におそれているので、いまのような数字を申し上げたわけであります。
そこで、いわゆるこのような多国籍企業、ことに米系の多国籍企業がこれからどっちの方向を向いて力を入れてくるだろうか、
日本もその中に入っているんじゃないかと思うのですが、いままでの経緯をずっと見ますと、ヨーロッパを席巻するほどに上陸していって、ヨーロッパが刺激されて今度
アメリカに逆上陸を始めた。これはたいへんだというので、南アフリカ、西ドイツ、
日本という方向にいま方向転換をやっておるわけですね。
〔
主査退席、渡辺(肇)
主査代理着席〕
もう間違いなくいまは西ドイツ。西ドイツは大体三年ぐらい前から横ばい
状態になって、これ以上ふえていない。南アフリカは少し下降線をたどってきた。
日本はどうかというと、
日本は三年前からずっと多国籍企業の活動というのが上昇線をたどっているのですよ。だから、
アメリカが意図しているかどうかは別にして、いまはこのいわゆる三大市場と
アメリカが言っている中の
日本というものは非常に有望だというので、全力を
日本に投入している、多国籍企業のいわゆる方向づけがされているというように
考えるのですが、そういう点もそんなふうにお
考えになりますか。