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1972-03-23 第68回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十三日(木曜日)    午前十時二分開議  出席分科員    主査 森田重次郎君       荒木萬壽夫君    大村 襄治君       井上 普方君    川崎 寛治君       斉藤 正男君    島本 虎三君       内藤 良平君    安井 吉典君       沖本 泰幸君    貝沼 次郎君       瀬野栄次郎君    栗山 礼行君       和田 春生君    渡辺 武三君    兼務 石川 次夫君 兼務 小林  進君    兼務 原   茂君 兼務 細谷 治嘉君    兼務 相沢 武彦君 兼務 近江巳記夫君    兼務 樋上 新一君 兼務 山原健二郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 高見 三郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君         環境庁長官官房         長       城戸 謙次君         環境庁長官官房         会計課長    稲本  年君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁自然保護         局長      首尾木 一君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         文部政務次官  渡辺 栄一君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部大臣官房会         計課長     須田 八郎君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         文部省社会教育         局長      今村 武俊君         文部省体育局長 澁谷 敬三君         文部省管理局長 安嶋  彌君         文化庁次長   安達 健二君  分科員外出席者         大蔵省主計局主         計官      海原 公輝君         大蔵省主計局主         計官      青木 英世君         林野庁指導部長 松形 祐堯君         水産庁調査研究         部長      松下 友成君         自治省財政局財         政課長     近藤 隆之君         自治省財政局交         付税課長    潮田 康夫君         日本国有鉄道施         設局長     篠原 良男君     ――――――――――――― 分科員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   辻原 弘市君     島本 虎三君   安井 吉典君     斉藤 正男君   沖本 泰幸君     貝沼 次郎君   和田 春生君     渡辺 武三君 同日  辞任         補欠選任   貝沼 次郎君     渡部 通子君 同日  辞任         補欠選任   渡部 通子君     瀬野栄次郎君   渡辺 武三君     栗山 礼行君 同日  辞任         補欠選任   瀬野栄次郎君     小川新一郎君   栗山 礼行君     曽祢  益君 同日  辞任         補欠選任   斉藤 正男君     内藤 良平君 同日  辞任         補欠選任   内藤 良平君     川崎 寛治君 同日  辞任         補欠選任   川崎 寛治君     井上 普方君 同日  辞任         補欠選任   井上 普方君     安井 吉典君   島本 虎三君     辻原 弘市君   小川新一郎君     沖本 泰幸君   曽祢  益君     和田 春生君 同日  第二分科員山原健二郎君、第三分科員細谷治嘉  君、近江巳記夫君、樋上新一君、第四分科員小  林進君、原茂君、第五分科員石川次夫君及び相  沢武彦君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計予算内閣総理府  (防衛庁及び経済企画庁を除く)及び文部省所管  昭和四十七年度特別会計予算文部省所管      ――――◇―――――
  2. 森田重次郎

    森田主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和四十七年度一般会計予算中、内閣総理府、ただし、防衛庁及び経済企画庁を除く所管を議題とし、環境庁に関する事項について政府から説明を求めます。大石環境庁長官
  3. 大石武一

    大石国務大臣 昭和四十七年度の環境庁関係予算案につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和四十七年度の総理府所管一般会計歳出予算のうち環境庁予算の総額は、八十億一千五百五十五万八千円であります。  このほかに、建設省所管予算として計上されております国立公害研究所及び公害研修所施設整備の経費がありますので、これを合わせますと、昭和四十七年度の環境庁関係予算は八十二億八千五百五十五万八千円となり、前年度の予算に比べ四十三億九百九十六万九千円の増加となっております。  なお、建設省所管予算国庫債務負担行為として官庁営繕に十億七千百万円を予定いたしております。  この予算案の詳細につきましては、別に配付いたしました昭和四十七年度総理府所管一般会計環境庁予算案についての説明のとおりでございますので、分科員各位のお許しを得て説明を省略させていただきたいと存じます。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  4. 森田重次郎

    森田主査 この際、おはかりいたします。  ただいま大石環境庁長官から申し出がありました環境庁関係予算の主要な事項につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 森田重次郎

    森田主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ―――――――――――――     ―――――――――――――
  6. 森田重次郎

    森田主査 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島本虎三君。
  7. 島本虎三

    島本分科員 ただいま昭和四十七年度の総理府所管一般会計のうち、環境庁予算案についての説明が行なわれたわけです。私は、この環境庁所管の諸案件のうちで、まず政府姿勢を通じまして若干の問題について伺いたい、こういうふうに思う次第です。  たぶん三月の九日だったと思いますが、大石長官から、政治生命をかけても無過失損害賠償法の成立にはこれはもう責任を持つという貴重な発言があったわけであります。国民の期待はそれの一点に集中した、こう言っても差しつかえないのであります。しかし、今度出されるいろいろな立法のその本質を見ますと、民法特例法としての大ワクのものではなくて、普通立法のこの中の一部改正法案として出された、こういうふうな経過を伺いました。もしそうだとすると、一つ一つ取り上げても、これは共同不法行為については、大審院判例で全共同不法行為者連帯責任を認める、こういうふうなことが判例になっているのに、分割責任を認めるということになる。また、今度は賠償しんしゃく規定、こういうようなのも同じく設ける。不遡及の原則、これもあえて明文化しようとする。そういうふうになると、一般法の中でこういう後退した部分だけを載せた。そして肝心の目玉である因果関係推定、これを削除したということは、これは考え方によっては、前進法ではなくて重大なる後退法だ、こういうふうなことになるおそれがまあ心配されておるわけであります。したがって、むしろ加害者保護法になり終わったのじゃないか、こういうふうに見る向きもあるのですが、これに対して、大臣政治生命をかけて出すと国民に誓約をした手前、これは重大じゃないかと思うのです。この辺のいきさつについて解明を求めたいと思います。
  8. 大石武一

    大石国務大臣 およそ政治家政治的生命をかけるなんということは、あんまり簡単には発言してはならないと考えております。私もこの法案につきましては、いろいろと心中期するものがございましたけれども、そのような軽々しい発言はする意思はございませんでしたが、たまたまそのようなあなたからの御発言によって、私の意思をただされましたので、ついそのような信念を申し上げたのでございますが、それは発言するしないは別として、そのとおりの信念であることは間違いございません。したがいまして、今度の場合にも、私どもは初め、現在国会に提案いたしました内容とは多少違うものを考えておりましたが、現段階においては、今回国会に提出いたしました内容のものが一番妥当であると判断いたしまして、そのようなわれわれの決定をしたわけでございます。  したがいまして、これからわれわれの考えを申し上げますが、われわれの考え政治的生命をかけるに値しないのだという御判断でございますれば、また私は別にいろいろ考え直しますが、われわれはわれわれの政治的生命を全うするために、そのような自分の信念を捨ててもつくったのだという考えではございませんので、ひとつその御判断をお聞きいたしたいと思うのであります。  一つは、御承知のように、なるほど無過失責任制度のようなものの考え方は、現在のいろいろな公害裁判においてもその判例であらわれております。しかし、はっきりとこれを法律で、このような賠償責任制度を認めたものはまだございません。したがって、そのようなものの考え方、そのような行政態度をはっきりとあらわすことは、一つの重大な政治姿勢であると私は考えます。そういう意味で、私はこの無過失責任制度というものをはっきり明文化いたしたいと考えております。それが今回のいわゆる二つの法律改正案となって形ではあらわれたわけでございます。  それから、御承知のように、複合汚染物質をはっきりときめるということが、私は大事だと思います。そういう意味では、やはり皆様の御希望のように、多くの方の御希望のように、複合汚染、ことに硫黄酸化物ばかりではない窒素酸化物やあるいは粉じんであるとかそういうものも入れまして、これを規制すべき物質の中に加えたということも、私は一つの進歩であると考えております。  そういうことで、ただ問題は、いわゆる因果関係推定考え方を変えたということに御非難があるようでございます。私は、この推定規定につきましても、そう幅広いものを考えておったわけではございません。問題は、御承知のように、現在のイタイイタイ病とかあるいは水俣病、そのようなものにしても、あるいはその他のいわゆる四日市ぜんそくにいたしましても、これははっきりその被害を与える物質というものはきまっております。それで、患者の発生とその間の因果関係というのは明確に、これは行政上はっきりされております。したがいまして、私ども因果関係推定という考え方は、この排出される有害物質被害者との間に、どのような汚染経路を通ってそのような被害を与えたかという汚染経路についての推定考え方、これをわれわは考えておったわけでございます。  一つはそのような考え因果関係推定規定考えておりましたし、また、われわれがこの法律案を作成いたしております段階におきまして、各方面の御意見をいろいろ伺ってまいったのでありますが、大体、このような因果関係推定というものは、そのような規定があってもなくても実際の裁判には変わりなかろう、いままでの裁判方向からいえば、必ずしも、それがなくてもけっこうであるという御意見が多かったわけでございます。したがいまして、そのようなことならば、あってもなくてもいい――というのは失礼でございますが、あってもなくてもいいようなものであるならばなお入れたほうがいいだろう、行政官庁の強い姿勢をはっきりと示すことに非常に有意義であろうという判断も加わりまして、私はぜひこれを入れてまいりたいと願って努力してまいったのでございます。しかし、その後、このような考え方が表に出るにつれまして、各方面からいろいろな御意見反対が出てまいりました。  そのうちのいろいろな御意見の中には、このような推定規定はそのような限定されたものであるならばけっこうであるけれども、それが法律として表へ出てまいりますと、それがだんだんひとり歩きをして、われわれが想像もできなかったようなあらゆる場合に拡大解釈されるおそれがある。ことに公害というものはきわめて千差万別の態様がございます。それについて、あらゆる拡大解釈をされたのでは将来どのような事態が起こるかわからない、そのことが日本発展を害して、大きな悪い不安を与えるというような見解が出てまいりまして、なるほど、それもそうだと私は思うようになりました。そして、そのような不安が日本企業全体に及んでおります。それは大企業ばかりではありません、中小企業においてもそのような不安に包まれております。したがいまして、現段階においては、そのような無用な――私は無用であると思いますけれども、無用な不安を与えるということは日本の正しい発展のためにはいいとは思いません。同時にまた、そのようないろいろな拡大解釈をされて、あるいはわれわれが予想もしなかったような事態に立ち至るおそれもあるとするならば、この際は一歩譲って、この規定を削っても、裁判あり方には別にそう影響はないとするならば、これを削っても、必ずしも、われわれの考えている制度に対してはそれほど大きな後退ではないと判断いたしまして、そういう考えで、あえて私は、このような無過失責任制度をはっきりと行政面に確立させることが一番大事なことであり、同時に、それに対しても複合汚染その他あるいは中小企業に対するいろいろなしんしゃく度、こういうものがあることは決してむだではないと私は判断いたいまして――もちろんこれで完全であると思っておりません。近い将来にはいろいろな、たとえば赤潮の問題であるとか、農業被害であるとか、そういうものについてもわれわれ十分考慮しなければならないと思います。そのようなものをつけ加える一つの橋頭堡として、この制度を打ち立てることがいま一番必要である、そう判断いたしまして、このような態度に出たわけでございます。
  9. 島本虎三

    島本分科員 もう一点だけここにただしておきたいと思います。  それは、複合汚染その他の物質を入れたことは前向きであります。それはもういいのでございます。ただ形態そのものから見れば、逆に一般法の中で後退した部分だけ入れて、それによって、推定規定がないとその分だけマイナスになるおそれがないかということを承りたい。これは運用の面で重大だから、出た上でこれは堂々と討論をしてまいりたい、こう思います。  一昨年の暮れに公害関係の十四法案が提出され、基本法をはじめとしてこれが通過いたしました。公害罪処罰法、これも出たことは御存じのとおりなんです。ところが、人権尊重のたてまえから厳格な立証を当然要求される刑罰法規推定規定がありながら、民事法の分野で、因果関係推定のこの規定法体系では削除されておる。本来、条理が転倒しているのではないかということは、当局者からもこれはちょいちょい問い合わせがあるのであります。私どもはそういうような面から、真に被害者救済のためである、そうして複雑な裁判、こういうようなことに対して、推定によってこれを簡素化するのだ、こういうようなことであるならば、逆にこれは、もう公害罪処罰法にはちゃんとこれが載っていながら、民法のほうにはそれがないということは手落ちになる、こういうようなことを心配するからなんであります。この点、運営の面において確信ございますか。
  10. 大石武一

    大石国務大臣 私も、いまの島本分科員のお考えになったことについては、それは妥当であると考えておりますが、いま申しましたように、また、この因果関係推定規定を入れますことによって、将来にいろいろの大きな混乱を与えるというおそれがある場合には、もう少し慎重にしなければならないということと、もう一つは、いま言うように、これはやはり日本全体として、われわれもいろいろ考えなくてはなりませんから、やはり日本の正しい発展あり方のためにも、もちろん被害者を救済することがわれわれの最大の目標でありますけれども、同時にやはり、日本全体の正しい発展ということに対してわれわれも十分思いを及ぼさなければなりません。そういう意味で、これは杞憂であるかもしれませんけれども、このようないたずらに非常な不安を与えておるこの段階においてこれを強行することは、やはりはたしてどうであろうかという考え方もございます。そういう意味で、やはりもう少し慎重にいきたいということで、このような態度に出たわけでございます。このことによって、私はそれほど裁判が遅延されるとも思いませんし、裁判のいままでの判例を変えるようなことも決してないと思います。方角を変えるようなことはないと思いますので、これで十分に効果をあげ得るものと考えておる次第でございます。
  11. 島本虎三

    島本分科員 いずれ提案されましてから、これはゆっくりその点について討論をいたしたいと思います。きょうは基本的な考え方について二点だけ伺った、こういうようなことであります。  それで、次に私がぜひお伺いいたしたいことは、この国立公害研究所であります。これも建設費六億九千万円のうち、四十七年度分としては設計と工事費七千万円が認められてあるようでございます。今後やはり、この公害データセンターまたは監視測定技術、医学、生物学環境、気象、システムの分析、それから企画調整、こういうような面を踏まえて、四百名の大世帯を持つ、本庁と同じぐらいの規模である、研究職員の数も二百五十名にのぼる、こういうようなことがいわれておるのであります。私は、今後やはりこれに期待することが大きい。したがって、この基本的な性格をはっきりさせておかないといけないのではないか。長官は、当然これに対しての基本的な計画や考え方があるとこういうように思いますが、政府行政がほしいままにこういうような機関に介入しない中立的原則、これをやはり明らかにしておいたほうが今後のためにもいいのではなかろうか。それと同時に、研究調査の結果、これを公表するように、これも考えては当然ではなかろうか。第三番目には、民主的運営原則をはっきり保障するようにしておいたらいいのではないか。  この考えについて、長官のいわば進歩的な考えをはっきり伺っておきたい、こういうように思うわけなのでありますが、この三点についていかがですか。
  12. 大石武一

    大石国務大臣 いまのお話しの三点とも、私は同感でございます。当然、この国立公害研究所ができ上がれば、その運営は所長以下の正しい運営にまかせまして、われわれはその内容についていたずらに干渉すべきではない、こう考えております。  それからデータ公開でございますが、公開ということばがちょっとまあ広く解釈されますけれども、それがだれにも十分利用され得るように、だれもが知りたいものは知り得るような形においてすべきだとこう考えます。  最後の、第三番目の御説におきましても賛成でございます。
  13. 島本虎三

    島本分科員 長官が以前私どもの質問にあるいは答え、あるいはまた直接当事者と会って解決した問題に、国立公園の付近に建設しようとする火力発電所の問題がございました。これは自然色豊かな場所環境明媚な場所北海道湘南地方とさえいわれる保養所の多いその場所、まさにそういうような場所に、公害大気汚染元凶であるといわれるこういうような発電所をつくるということに対しては、場所的な配慮を欠いたものである、こういうように思っておりました。当時、この点についても、十分な調書その他同意書をつけて法的な手続を具備しておるならば、こう思いましたところが、その後の経過によりますと、これは長官考えたとおり、すべて漁業家も――総会においてその数を満たすに足らないだけの投票であった。そしてもちろんこれは反対にきまり、いまやこれは白紙になった、こういうことを聞いておるのであります。一つ考え一つポイント長官としても現在の立場はまことに重要なんであります。  私は、そういうような点からしても、今後大気汚染元凶といわれる火力発電のこういうような認可等については慎重にしなければならない。もちろんきびしい協定も必要であり、公害防止設備の完備してあることは基本的な条件でありますが、そのほかに、住民もこれに十分同意し得るような協定も必要であり、そういうようなものを全部具備したものでなければ、これはいけないのじゃないか、こう思っているのです。幸いにして、北海道伊達火力発電白紙になりました。これは、一つポイントであり、この点では長官の英知をほめるのに私はやぶさかじゃないのであります。しかし、今後再び三たびこういうようなものが出てくるとすると、これはいよいよ問題になりますので、地元の住民同意が必ず必要である。それから関係住民の納得がなければ許可しないのだ。この方針をはっきりさせたほかに、協定なり防止設備が完備しているかどうかなりを十分見きわめた上で、これを指導しないといけないと思いますが、これについて長官考えをただしておきたいと思います。
  14. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまのお話でございますが、幸いに伊達火力発電所は一度白紙に返しまして、そして環境保全中心として、地域住民のしあわせを守るための新しい考え方をするということになりましたことは、まことにけっこうなことでございます。  すべての火力発電所設置につきましても、このような方針をとったらどうかという御意見でございますが、大体それには私賛成でございます。ただ、地域住民了解を得ない限りはつくってはいけないというのは、法律で私どもが規制すべきものでもございませんで、いわゆるいまの政治思想からいえばそうなるのが当然のあり方であると思います。これは、別に私ども法律で規制するとかなんとかいう問題ではないと考えておりますが、やはり方向はできるだけ地域住民の大多数の人々の了解を得てその建設をするのでなければ、建設もうまくまいりませんし、うまくないと思いますから、そのような姿であることが望ましいと私も考えております。  ただ、環境庁というのは電源開発と申しますか、発電所設置につきましては大きな権限はございません。もし、われわれの所管しております国立公園国定公園の内部の問題ならば、いろいろそのような自然公園を守るための見地から、何らかのわれわれの意見というものをそこにはつけ加えることができますけれども一般の、そういう普通の地域火力発電所がつくられます場合には、必ずしもわれわれは権限はございません。ただ一つだけ、権限に近いものは、電源開発調整審議会というものがございまして、この審議会委員の一人として環境庁長官が入っておりますので、この立場を利用といえば利用いたしまして、そうして地域住民環境保全ということを中心にしてその考え方を進めてまいりたい。これがただ一つの現在われわれの持ち得る権限でございます。そういうことで、できるだけこのような権限を十分に活用いたしまして、地域住民生活環境がりっぱに保全されるように、そのような条件のもとに電源開発が進められますように、協力してまいりたいと考えております。
  15. 島本虎三

    島本分科員 長官のその考え、私も意を強くいたしますが、ただ単に、これは反対するだけの問題ではない。これは私もそう思うのです。それならば、閣僚の一人として大臣は――北海道では、かつて石炭は、全部で五千五百万トンのあの線で、いろいろ足りない、多いでもって大もんちゃく、いまや二千万トンを割るような状態になってきた。しかし、そのそばには大きい川があり、まして水利の便のたいへんいいところであります。そういうようなところが閉山、廃山、これがあとを断たないわけであります。それほど必要なのであるならば、なぜ一番便利な環境のいい、一番採算のとりやすいようなこういう風光明媚な場所をねらわないで、こういうようないまでもつくってもらいたいという場所がたくさんあるのに、協力する場所がたくさんあるのに、原料もたくさんあるのに、これを使わせるように閣議ではからないのですか。それは、現在の政治の指向する一つの欠陥じゃないか、私はこう思っておるわけです。火力発電を海岸のそばの一番風光明媚なところを選んで、石炭の多い、それも二千万トンを割って、そしてその復興のためにどうすればいいのかと頭を悩め、こういうようないつでも来てくださいと手を差し伸べておるところを見向きもしない。それは採算が合わないからである。むしろ公益事業、公共的な見地から見るならば、こういうものは一番指導すべきであって、こういうようなのは忘れてならない見地じゃないかと思うのです。閣僚の一員として、国務大臣として、大臣の見解をお伺いしておきたいと思うのであります。
  16. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまの島本さんの御意見の中には、非常に耳を傾けるべきものがあると私も考えております。もちろん政府としても、いろいろな日本全体のあり方考えまして、いまお話したような考え方も取り入れるべきだと思います。のだ、これは政府だけの仕事ではできません。民間のそのような企業、あるいは電力会社も、そのような日本国民全体の環境保全なり幸福ということを考えて、ただ自分の利益にのみ終始しないで、目先だけの採算に終始しないで、そのような正しい考え方をしてもらうことも必要でございます。われわれは、そのような方向の指導にも努力してまいりたいと考えております。
  17. 島本虎三

    島本分科員 昨日、長官の個人的意見である、こういうような付録がついてございましたが、どこかで格調の高い講演をなすったようであります。そしてその中で、公害税の問題についていろいろ議論なすった、ただしこれは私的意見である、こういうようなことをつけ加えておった。それはいずれはっきりさせてもらいたいと思いますが、気になるのはその最後、原子力発電についてはきれいなものであって、今後これを推進したい、こういうようなことをを環境庁長官としてか、大石個人としてかいずれかわかりませんが、これははっきり言っておるようであります。現在原子力発電の問題でだいぶ問題を起こしつつあることは御存じのとおりなんです。そして、日本でいま計画されておる容器型の軽水炉、これに対しても八十万キロ、あるいはまた大飯では百十七万六千キロワット、こういうような大型のものをやろうとしておるのですが、これが稼働の実績さえもいまだないのであります。一九七一年、これは危険だというのでアメリカで一回禁止されておる。そのままのものを、日本で大型のものをやろうとしておるのであります。これは、考えようによっては環境保全になるかもしれません。しかし、公害の防除ということには、うらはらでありますけれども、これはならないおそれがあるのではないか。大型化すると、その運転中に原子炉の容器や大口径パイプに欠陥が形成されやすくなるのだということは、三十年間もこの研究をしてきたソ連関係のデータで明らかになっておるわけです。したがって、ソ連では二十五万キロワット、こういうものを四つ合わせて百万キロにする、こういうようなやり方をとっておるのでありますが、政府のほうでは、大型炉があたかもアメリカで実績を持っておるかのようにこれを考えておられるようであります。これはもう運転していると予測できない形で欠陥が形成されるのでありますから、当然安全である、こういうような前提は仮想なんです。架空なんです。すべてこれに対する安全性というものは、まだ実績がない。仮想に見積もって――これは安全だというのは仮定なんです。この仮定をもって、もうすでに安全だと思い込ませるのも、これは少し早過ぎる。賢明な長官ですから、これはおわかりのとおりなんですが、アメリカにおいてでさえも、十五年から二十年ぐらい稼働したあとでないと安全性ははっきりいえないはずでありますから、そういうようなものをこっちに持ってきて、安全だからやってもよろしいと軽々に御発言なさることはどうかと思うのです。  私は不敏にして、この原子力発電はよくわからない、実際は。しかしながら、手元にあるこのデータによってでも、大型化すればするほど容器の中の燃料棒も大きくなるし、二十五万キロワットでは一万本、五十万キロワットでは二万本、百万キロワットでは四万本、そして緊急冷却装置も五秒から十秒稼動していないと、これは手おくれになって重大なことになるんだ、こういうようなことをいわれておるわけです。そういう点、緊急冷却装置が故障して噴出した場合には、四万本にものぼるところの燃料棒、これは中心部の燃料棒に水がいきませんから、とんでもないことになるということははっきりしているわけです。これはあぶないということを念頭に置かないで、きれいだから進めてもよろしいという考え方は、私も研究しますが、これは大臣も、この容器そのものも現在の大型化の場合には、いわゆる容器型の軽水炉の場合には、大型化すればするほど危険なものであって、実績はいまだないのだということで、軽々にこれはよろしいのだということをあまり発言なさらぬほうがいいのじゃないか。きょうの新聞を見て、私は少しあ然としたわけでありますが、これについて御高見を賜わっておきたい、こう思うわけであります。
  18. 大石武一

    大石国務大臣 私は、日本全体の電力需要から考えまして、やはりこれは早急に供給をふやす必要があると考えております。そのことが、やはり日本の正しい将来の繁栄のためにも必要であると考えておる次第でございます。  その場合に、この電力供給源は、いままでの水力発電はだめでございます。これは自然を破壊する元凶でありますから、これはだめであります。火力発電中心になっておるようでございますが、残念ながら現段階におきましては、先ほどお話しのとおり、火力発電はやはり日本公害発生の大きな元凶一つでございます。いま鋭意その対策について努力は続けられておりますけれども、おそらく今後五年や十年の間には、完全に火力発電公害発生源をなくすことは不可能であろうと考えます。そうしますと、窮迫する電力需要について、やはり電力源を増設しなければなりませんから、考えますれば、火力発電か原子力発電ということになるわけでございますが、私のいままで得ました知識におきましては、原子力発電のほうは、ある一部の温排水その他のものを除きましては、火力よりははるかに公害発生が少ないと判断いたしております。そういう意味で、私は、原子力発電のほうが現段階においては火力発電より望ましいので、いろいろな注意すべき事項、たとえば温排水の処理をどうするか、対策をどうするか、いろいろなこまかい――たとえば日本における位置の問題です。どのような地域にどのようにつくるかといういろいろなもの、そういうものを十分に考究して努力してもらわなければだめである。そういうことを十分に努力してほしいということを、一般論を申したまででございまして、その技術的な問題は私はわかりません、しろうとでありますから。しかし、私は科学技術庁にいろいろと話を聞きまして、その考えどおり、一応これは安全性がある。日本のいろいろな安全性を確かめる、幾重にも安全を守るための努力というものが認められますし、安全であると考え判断しておるからでございます。  しかし、技術的にだれが見てもあぶないものは、日本の国の政府企業がやるはずはないと思います。だれが判断しても危険のあるもの、あぶないものをやるはずはないと私は思います。個々の場合にはわかりませんが、一般論として申し上げたまででございます。  そういう意味で、私は、原子力発電をやる場合には地域住民了解を得てから――十分に了解を得るような努力をしなければならぬとか、それからたとえば温排水の問題は、必ず漁業に影響があるから、温排水とはどのようなもので、どのような影響があるかということをもっともっと共同で十分に研究してほしいということ、そのような基礎的な研究がなければ漁業補償もいいかげんなことになる、こういうことも十分努力しなければならぬということを申したまででございまして、どのような危険性があるかということについてははっきりお答えができませんが、ただ、私の一政治家としての判断からすれば、そのような多くの人がこんな危険なものはだめであると判断されるようなことは、実行に移さないだろうと私は考えるまででございます。そういう考え発言したわけでございます。
  19. 島本虎三

    島本分科員 わかりました。  もう時間が来てしまいました。これで終わりなんですが、最後に一つだけ、一分間でやります。  二月の上旬に、これはあなたの部下である運輸省から来た一自動車公害関係課長が失踪されておるようであります。いろいろな業界からの圧力、またいろいろな自分が出向してきた――出向じゃございませんが、出てきた方面との関係の板ばさみになった、こういうようなことさえも報道されてございますが、こんなことは環境庁にあっちゃいけない。やはりあなたのもとに、全部長官の意を体して実務に当たるようにしておかないとだめだ。こういうようなことを聞いてやはり心配しておる向きもあろうかと思いますが、その後の経過並びに、そういうような体制じゃだめでありますから、心配ないかどうか、簡単にひとつお答え願いたい。
  20. 大石武一

    大石国務大臣 お話しのように、一月二十八日でございましたか、運輸省から来た課長が欠勤をいたしております。どうした理由か、どこにおるか、その生死さえ現在まだ判明いたしておりません。いろいろなうわさがございますが、それは全部まだうわさでありまして、わからない段階であります。しかし、何らかの原因があると思います。これはいずれ将来に判明する時期もあるかもしれませんが、いまのところはどうにもなりません。御本人にはまだ生きておってほしいと思いますが、まだわかりません。しかし、われわれ職制上、この地位を空席にしておくわけにはまいりませんので、今月の上旬でありましたか、その後任を発令いたしまして、いま仕事をしてもらっております。この御本人には、たとえうわさであるようなことが事実としても、そのようなことが今後起こらないように、りっぱに自分の信念で安心して仕事ができるようにみんなでこれに協力し、本人もそのような自覚のもとに努力してもらうことにいたしておりまして、その方向で進んで、お説のとおり、りっぱに仕事をやることができるような方向でわれわれこの行政を進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  21. 島本虎三

    島本分科員 終わります。
  22. 森田重次郎

    森田主査 次に貝沼次郎君。
  23. 貝沼次郎

    貝沼分科員 私は、瀬戸内海の汚染の問題につきまして二、三お伺いしたいと思います。  環境庁では瀬戸内海環境保全対策推進会議というものを持ちまして、各分科会の中間報告が去年の暮れ出たようでありますけれども、これをずっと私も何回か読んでみました。しかしながら、確かに問題があるところは指摘はしておるようでありますけれども、具体的にどうするかという段になりますと非常にたよりないという感じがするわけであります。この報告を読まれまして、長官はどういうお考をお持ちでしょうか。
  24. 大石武一

    大石国務大臣 いまのあなたのお考えと同じように、これは一応問題点は拾い上げてありますけれども、今後どうするか、どのような見地から対策を立てていくという点においては、まだまだ何もいいものが出ておりません。したがいまして、やはり私どもは問題点の拾い上げだけではだめでありまして、今後どのような対策を講ずべきか、あるいはどのような行政機構をつくるべきか、いろんなことがあると思います。そういうものにつきましては、はたして各省の役人だけで構成されておりますこの推進会議でそれが可能であるかどうか、よく考えてみまして、さらに別な組織、たとえば日本のいろんなこれに対する権威者あるいは見識を持っている方にお集まりを願いまして、そういう人方に一つの対策を考えていただくとか、いろんな方法があると思いますが、そういうことを何か考えていかなければならない段階に来ておるといま考えておるわけでございます。ただ、御承知のようにいま予算の時期でありますので、この予算の忙しいところを切り抜けたならば、さっそく次の段階に移るような準備をいたしたいといま考えております。
  25. 貝沼次郎

    貝沼分科員 また具体的な問題につきましてはお尋ねいたしますけれども、この瀬戸内海はいわば日本の重要な財産でもありますし、環境庁長官としてもこの瀬戸内海を残すということはいろいろな意味でお考えだと思うのです。ことに最近は工場があまりにも進出をして、せっかくの瀬戸内海をだめにしてしまうというようなところから、もうちょっと考えろというふうな思い切った発言もなさったようでありますので、私はその点は同感であります。しかしながら、また話に聞きますと、長官は、水島を中心とするあの公害地帯にいろいろ思いはめぐらすのでありますけれども、まだごらんになってないというようなことも聞いておりますが、これにつきましては、一度ぜひとも目で見ていただいて、そしてまた具体的な計画を立てられたほうが私はよろしいのではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  26. 大石武一

    大石国務大臣 お話しのとおり、われわれが行って一日、二日見ましても、どれだけのことがわかるか、それはわかりませんけれども、やはり現地に足を運んで見ることは、行政をやる上に非常に大事なことだと痛感いたしております。したがいまして、私もぜひ近いうちに水島に出てまいりまして、その状態をお知らせいたしたいと考えております。ことに昨年から、岡山県知事にもそのようなお約束をしておるわけなんです。昨年も、お伺いする日にちもきめておりましたが、急に委員会の開催等がございまして果たしかねておりますので、何としても近いうちに、できるだけ時間をつくりまして、ぜひ視察に参りたいと考えております。
  27. 貝沼次郎

    貝沼分科員 ぜひともお願いいたします。  それから次に、幾つかの項目がありますけれども、簡単にお尋ねしてまいりたいと思います。  一つは海洋投棄の問題であります。これはもう御存じだと思いますけれども、先般、たしか三月の十五日、午前五時四十五分ごろ、高知県の足摺岬沖において、アクリロニトリルの途中で発生するシアンのガスによって、船長以下三人の人がなくなって、そしてその船がそのまま漂流しておったという事件がございました。これは非常に重大な問題を私は含んでおると思うのですけれども、このような有害毒物があるにもかかわらず、現在まで、ことに昨年の九月施行の廃棄物処理法にはこれが含まれておらないわけでありますので、こういうところが非常に問題だと思うのです。  そこで、このような毒物を今後どういうふうに扱うのかということですね。特に、海にこれを投棄するということは、ほかのものと違いまして非常に影響が大きいわけでありますから、今度六月の二十六日ですか、政令等がきまるようでありますけれども、この中にこれが入るのかどうか。いろいろ報道によりますと、六種類しか入らないような報道でありますが、こういうものが入るのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  28. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまのお話につきましては、まず、いま、どのような毒物であるか、実態を分析中でございますが、そのような経過につきまして、最初に水質保全局長からお答えさせたいと思います。
  29. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いま長官からお話がございましたとおり、現に捨てられました物質につきましての分析は現在実施中でございまして、内容必ずしも明らかでないわけでございます。アクリロニトリルが含まれているということを仮定いたしまして、現在の法関係を申し上げますと、アクリロニトリルというのは、現在毒劇法の対象物質でございまして、その規制を受けているということになっております。廃棄物の関係では、大体毒劇物につきましては毒劇法によって規制をされるというたてまえのもとに、現在廃棄物の法律並びにその政令におきましては、先ほどお話ございましたとおり、水質汚濁法関係の健康有害七物質の中で、シアンを除きましたほかの六物質につきまして、現在規制をいたしております。問題は、アクリロニトリルもシアン系でございますけれども、シアンにつきまして今後さらに廃棄物法のほうで規制をしたほうがいいかどうかという問題がございます。私どもは現在、シアンにつきましてこれを海中に投棄した場合、魚族その他に対します影響等につきまして、水産庁等とも連絡いたしまして調査中でございますが、もし海洋投棄した場合に環境汚染をするということが明らかになりました場合におきましては、私どもは廃棄物法の政令のほうに追加指定をいたしましてこれを規制をする考えでございますが、目下その方向で検討中でございます。  海洋汚染防止法との関係におきましては、廃棄物法のほうで海洋投棄を禁止しなければ、海洋汚染防止法のほうでは措置ができないという関係がございます。もう一回申し上げますと、海洋汚染防止法のほうでは、廃棄物法のほうで海洋に投棄をし得る物質についてさらに海域その他排出方法の規制を定めるということになっております。したがって、お話しの問題につきましては、廃棄物法のほうの政令の改正という方向で現在検討中ということを申し上げたいと思います。
  30. 貝沼次郎

    貝沼分科員 くどいようでありますけれども、その検討の結果はいつごろ出るわけでありますか。
  31. 岡安誠

    ○岡安政府委員 先ほども申し上げましたとおり、シアン系の物質を海中に投棄した場合におきます環境汚染の影響の調査というものを現在急いでおります。その結果を待ちまして、できるだけ早く結論を出したいというふうに考えております。
  32. 貝沼次郎

    貝沼分科員 水産庁の方はいらっしゃいますか。こういう事件が起きますと漁民のほうは非常に神経質になりまして、心配しておるわけでありますが、水産庁としては、漁民を守るという立場から、これについて何らかの意見とかあるいは考えとかはお持ちですか。
  33. 松下友成

    ○松下説明員 水産庁といたしましても、この問題につきましては非常に重大な関心を持っているわけでございます。この物質その他につきましての検討といったものは現在進められておるわけでございますが、そういう結果を待ちまして、その結果に基づきまして、どのような具体的な影響が漁業に生じてまいるのか、そういった点につきまして、さらに検討を重ねてまいりたいというふうに思っております。
  34. 貝沼次郎

    貝沼分科員 長官、水産庁でもずいぶん関心を持っておるようでありますので、その検討の際は水産庁の意見どもよく考慮に入れて、あるいは会議等にも出席をしていただいて議論をなさったほうがよろしいのではないかと思いますが、この点について一言お伺いします。
  35. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまのお話はごもっともでございます。われわれは以前からも、水産庁、それからもう一つは海上保安庁ともいろいろと連携をとりまして、十分に、漁民なり地域住民なりの保護あるいは海洋の汚染の防止のために、いろいろとお互いに協力しておりますので、今後ともそのような方向行政を進めてまいりたいと考えます。
  36. 貝沼次郎

    貝沼分科員 関連いたしまして、先月調印されました欧州十二カ国の北東大西洋の汚染防止協定というものがございますが、これでは、広範な有毒物質の海洋投棄を禁じておるわけであります。したがって、環境庁は有毒物質をこれから総点検をして、絶えず排出基準の見直しというものをすべきではないかと思うのでありますが、この点はいかがでしょうか。
  37. 大石武一

    大石国務大臣 お説のとおり、これは十分に総点検いたしまして、見直してまいりたいと、いま努力いたしております。
  38. 貝沼次郎

    貝沼分科員 これはいつごろ結論を出すめどでやっておるわけでしょうか。
  39. 岡安誠

    ○岡安政府委員 先ほどお話しのとおり、オスロ条約というのが一応できまして、現在各国で批准が進んでおるという状態でございます。あそこの条約におきましても、海に投棄してはならない物質と、それから量その他を制限いたしまして投棄を認めておる物質その他がございます。  わが国の廃棄物の法律、また政令によりましては、私ども原則として有害物質は海に捨ててはならないという相当きびしい姿勢をとっております。ただ、現状におきましては、お話しのとおり、有害物質につきましては毒物質というものだけを規制をいたしておるわけでございまして、今後やはりその他の有害物質につきましての環境汚染の状況等が明らかになりますれば、随時政令を改正いたしまして、追加をするというような方向で私どもは対処していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  40. 貝沼次郎

    貝沼分科員 それから、この六月の二十六日ごろ出されるといわれる政令のことにつきましてお伺いしたいのでありますけれども、これによりますと、専用投棄船の建造が非常にむずかしいというような理由から、法の全面適用にはいままで一年間の猶予をもってきたわけでありますが、さらに自然の浄化力で還元が容易な屎尿の場合と同じように、五十年度まで基準適用を見送っているというふうになっておるようでありますけれども、これは間違いございませんか。
  41. 岡安誠

    ○岡安政府委員 海洋汚染防止法の政令につきましては、中央公害対策審議会の廃棄物部会の答申がございまして、現在政令を準備中でございます。答申の内容を私ども拝見いたしますと、相当きびしい内容になっております。たとえば、従来屎尿の投棄につきましては、清掃法等によりまして、特定の海域につきまして大体距岸一万メートル以遠ならば捨ててよろしいというようなことになっておりましたのを、私どもは、全国すべての距岸から五十海里、大体十万メートルでございますけれども、その以遠でなければ、また処理をしなければ投棄してはならないというようなきびしい規制を考えております。  屎尿との関係について申し上げますと、私ども現在厚生省とも連絡中でございますけれども、大体厚生省は、先般の廃棄物の処理の五カ年計画によりまして、昭和五十年までには屎尿はほとんど全部、九五%以上につきましては陸上処理をするという計画になっております。私どもは、それが好ましい方向であるというふうに考えておりますので、その陸上処理の方向を推進していただくというふうに考えております。その陸上処理の方向を確保するということが第一でございまして、その間におきましては、やむを得ずある程度現状は認めざるを得ないんではなかろうか。ただし、瀬戸内海のように内湾、その他非常に汚染がはなはだしいところにつきましては、早急にこれは禁止をする。たとえば瀬戸内海につきましては、四十七年度一ぱいでもって全面的にこの投棄を禁止するという措置はとりますが、それ以外の地域につきましては、陸上処理第一というふうに考えてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  42. 貝沼次郎

    貝沼分科員 その点はわかりました。  それから、先ほど政府が五十年度までの五カ年計画として発表した廃棄物処理施設整備計画というものがあるわけでありますけれども、こういうようなものは場所によってずいぶん逢うと私は思うのです。というのは、瀬戸内海のように水がほとんど太平洋と変わらない、いわばよごれればよごれっばなしというような場所と、それから海流が激しくて変わっていく場所といろいろ違うわけでありますが、しかし、日本の国は一つでありますから、やはり法律となりますと一ぺんで適用とかどうとかということになるわけであります。しかし、この際、やはり瀬戸内海が汚染しないということが目的でございますから、あるいは海洋が汚染しないということが目的でございますから、汚染が進んで、さらにそれがあとどうしようもなくなってしまうようなところについては、これは早く手をつけないとおくれてしまうのではないかと思うのです。こういうようなところから、この瀬戸内海地域に限って、むしろ重点的にこういうものは下水道も含めて早く実施すべきではないか、こういうふうに思うわけでありますが、この点はいかがでしょうか。
  43. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いまお話しのように、内水面と非常に停滞性の水域につきましては、特にその汚染に注意しなければならない。瀬戸内海につきましては、先ほど長官からお答えいたしましたとおり、特別の対策会議を設けましてその対策に取り組んでおります。  規制の方向といたしましては、やはりまず汚水を排出するのを規制する、それから下水道その他の整備を促進をする、屎尿投棄等もこれをやらないようにするというような方向で現在やっております。特に下水道の整備につきましては、先ほどお話がございましたとおり、下水道整備の五カ年計画もできておりますので、その計画の中で、瀬戸内海につきましては重点的に事業を実施するように、関係各省とも相談をして進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  44. 貝沼次郎

    貝沼分科員 それから、このような政令で、先ほどお話がありましたようにかなりきびしくきまっておるわけでありますが、これはこれでけっこうだと私は思うのです。しかしながら、はたしてそれを守ったかどうか、守られているかどうかということを見るためには、やはり行政体制というものが問題になると私は思うのです。  二、三の例もあげる時間がありませんので、一つ、二つあげてみますと、いよいよことしに入ってから、瀬戸内海で黙って油を流しておるものがすでに三十七件も二月末で発見されておるわけですね。こういうようなのは、やはり監視体制というものが問題になるだろうと私は思います。先日、決算委員会と一緒になりましていろいろと話を現地で聞きました。そのときに、やはり監視体制というものはずいぶん力が弱いなという感じがしたわけでありますけれども、こういうような体制の強化、こういうことにつきまして環境庁ではどういうふうにお考えですか。
  45. 大石武一

    大石国務大臣 海洋汚染を防止するための監視体制というものは、大体が海上保安庁が中心となって努力をいたしております。しかし、これはどのように海上保安庁が船を用意して人員を入れて監視体制を強化しましても、とうていこれを絶滅することはそれだけでは不可能だと思います。やはりいろいろなそのほかの手段、たとえば、いまの海洋汚染防止法にいたしましても、完全に発効するのはことしの六月から発効でございますが、それさえまだ、そんなことを言うとしかられますけれども、だいぶ内容にざる法的なものがございます。これはしかし、国際間でそのような考え方しかまとまらない、まことにこれはむずかしい問題でございます。したがいまして、何といってもやはり法律的にもっともっと強力なものをつくり上げまして、そして油を海洋に捨てさせないような手段を講ずることが必要であろうと思います。そういう点から、この六月に人間環境会議がストックホルムでございますが、それにもし出てまいりますならば、そのおりに、海洋汚染防止につきましていろいろなかっこうの協力体制をつくり上げるような方向で、私はその意見を進めてまいりたいと考えておりますし、また国内におきましても、たとえば各港に船が入港する場合には、その港において廃油なりあるいはバラスト水なり、そういうものを全部処理をさせて、したあとでなければ出港ができないようなことにするとか、いろいろ国内的にも打つ手が今後たくさんあると思いますので、そういうものをどんどん進めてまいりたいと考えております。
  46. 貝沼次郎

    貝沼分科員 環境庁長官立場は非常にたいへんな立場でありますので、私どもはさらに期待を強くしておるわけでありますが、よろしくお願いいたします。  それからもう一つの問題は、先般長官にも私どもが申し入れをいたしましたが、瀬戸内海沿岸のマツクイムシの異常な発生が問題になっております。これは何も岡山県だけではなく、瀬戸内海全般にわたって起こっている問題であります。因果関係とか、そういうことを言いますと、なかなかまたややこしくなってしまいまして仕事が進みませんので、私は、やはりマツクイムシで確かに松が枯れていくことは事実なのでありますから、これに対してちゃんと対処する必要があると思うわけであります。これにつきまして、まず長官考え方をお願いいたします。
  47. 大石武一

    大石国務大臣 瀬戸内海沿岸ばかりでなく、関西から近ごろは千葉県まで来ているそうでございますが、マツクイムシが非常に広がりまして各地で松が枯れておるのは非常に残念でございます。私も先般屋島へ参りましたが、屋島の松の木がほんとうに遠くから見るとモミジしたようにみんな赤くなっている。それがほとんどみんなマツクイムシでございます。その他水俣へ参りました場合には、九州の各地で松がやられている姿を見て非常に残念に思いました。何とかしなければならないと思いますが、いま、ことに林野庁が中心となりまして、国有林ばかりでなく民有林にもそのような指導をし、たとえば、現在でいえば、早期に木を切って焼く以外にないということで、その費用の補助金まで出して努力いたしておりますけれども、なかなか思うような実効があがっておりません。残念なことでございます。去年は林野庁と相談いたしまして、防衛庁に依頼いたしまして、何万本か松の木を切ってもらったこともございますが、とうてい追いつけませんが、何とかして、これはできるだけ、国有林はもちろんですが、民有林についても、その所有者にいろいろと協力を願いまして、やはり当面、早期に木を切って処理するということ、これが一番大事なことでございますし、さらに、このためにどのような対策が一体必要か、たとえば、天敵をどのように利用したらいいのか、どのような薬品を使ったらいいのかということをやはり早急に研究を進めまして、これの対策を立てることが必要ではないかと思いまして、そのように努力してまいりたいと思います。
  48. 貝沼次郎

    貝沼分科員 林野庁のほうでは、どういうお考えですか。
  49. 松形祐堯

    松形説明員 お答え申し上げます。  ただいま長官からお答えございましたように、瀬戸内海を中心といたしまして相当量の被害が出ておりますことは事実でございまして、私どもの調査によりますと、瀬戸内海だけで約十万立方という大量に出ておるわけでございます。  ただいまお答えがございましたように、伐倒いたしまして剥皮焼却という方法もございますし、伐倒いたしまして直ちに薬剤処理をやる方法と二通りございます。もう一つは、立っておる木にこれ以上蔓延しないように予防措置として薬剤を散布する場合と三通りをやっておるわけでございます。現在、私どものほうで四十七年度で予定いたしております予算は、全国で、民有林といたしまして三億四千万円ほど用意いたしておりますし、国有林にいたしましても二億円ほど用意しながら、大体現在発生いたしておりますものの九割程度を処理してまいりたい、かように準備いたしておるところでございます。  以上でございます。
  50. 貝沼次郎

    貝沼分科員 環境庁長官、そうすると、このマツクイムシの対策というものは環境庁中心になってやられますか、それともほかの省でやられますか。
  51. 大石武一

    大石国務大臣 よく御存じのように、環境庁というのは来年度予算が四十六年度の倍になって八十億でございます。このように予算も少ない、人員も少ない、結局は仕事の大部分というものは、現場を持っておりませんので、各現場を持っております各省庁と十分に意見あるいは行政あり方を調整いたしまして、お互いの相談によって方向をきめて、現場の仕事は各省庁にやってもらうということになるわけでございます。したがいまして、マツクイムシの対策にいたしましても、ただいま林野庁の指導部長の話がございましたが、予算は全部林野庁で持っております。その実施も林野庁でいたしております。ですから、われわれは、できるだけその意見の調整をするということが中心となっておるわけでございます。
  52. 貝沼次郎

    貝沼分科員 林野庁のほうにしっかりお願いいたします。  それで、意見の調整ということは、たとえば専門委員会みたいなものをつくるというお考え長官はお持ちですか、そういうことではないのですか。
  53. 大石武一

    大石国務大臣 それはいろいろな形で、お互いにことしはこういう方針でやりたい、この問題は  このようにわれわれはいきたいのだがどうだろうかというお互いの話し合いを、率直にいろいろな機会にいろいろな会合を通じてやるわけでございます。
  54. 貝沼次郎

    貝沼分科員 時間があと三分でありますので、長官に二、三項目的にお尋ねいたします。まとめてお尋ねいたしますから、お願いいたします。  一つは、最近四日市ぜんそくデータが正確に出ておるといわれておりますが、これはよく聞いてみますと、電算機と連動して肺活量を調べて気管障害を発見するスパイロコンピューターが完備しておる、こういうふうにいわれておりますが、これが大体値段にして二百三十万円ぐらいらしいのです。そうすると、これはものすごく高いものではないので、現在大気汚染をしておるような地域ですね、公害監視センターもありますけれども、こういう地域は、やはり健康に非常に心配を持っているわけでありますから、こういうような設備をして、そして病気が出てしまってからつかまえるというのではなくて、むしろ健康を管理するというような意味から、こういうようなものを、あるいは地元の大学病院でもけっこうですし、保健所でもいいですけれども、こういうものを私は備えたほうがいいのではないか、こう思うのですけれども、この辺はいかがでしょうか。これが一点であります。  それからもう一つは、この公害監視センターの問題でありますけれども、これは現在岡山県の倉敷市ではすでにあるわけでありますが、しかし、実際に出ておるガス、汚染をしておるガス、これなどは、調べておる亜硫酸ガスとかあるいはオキシダントとかということもありますが、私が実際に現地をずっと歩いたりあるいは空気を吸ったりして感じられることは、どうもアルデヒドのような、そういうものがかなり出ておるような気がいたします。これは私は、実験室でいろいろかいだにおいから推測して言っているわけでございまして、計器を持って調べにいったところが、すでにもう出ておりませんので、これは大体夜中に出しているようでありますけれども、こういうようなところから、せっかくの公害監視センターが昼も夜も稼働しておるわけでありますけれども、この調べるガスの種類があまりにも少ないのでほんとうの効果をあげていないのではないか、こういうようなところから、むしろ国のほうからさらに補助を出して、そしてしっかりしたデータが出るような対策が必要ではないかと思います。  そういうようなところから、今回この公害監視センターは各地方からの要望が非常に強かったそうでありますけれども、国としては、ことしは幾つぐらいつくる予定になっておるのか。それで、もしそれが削られたのであれば、どういうような意味なのかということであります。  また、これについては、大蔵省からも、今回大蔵委員会のほうに、公害対策ということで特別措置の問題や何か出ておりますけれども、この辺が抜け道になっておったのでは、幾ら税制の問題ばかりやっても私は問題があると思うので、やはり環境庁は新しい庁であり、そして国民の健康を守るところでもありますから、もっと積極的に予算をつけるという態勢が私はなければならないと思うのです。  それから、大蔵省についでですからもう一言申し上げておきますが、今度原油、重油の関税ですね、これの使い方につきまして、石油の資源の開発というようなところが考えられておりますけれども、このコンビナートのあるところは実は公害が発生しておるわけでありますが、この公害の対策のための費用に回すという考えはどうもなかったようでありますが、大蔵省は、そういう考えは全然なかったのか、考えたけれどもネグられたのか、あるいは必要ないのか、その点の考え方をお願いいたします。
  55. 大石武一

    大石国務大臣 技術的な問題でございますので、前の問題はひとつ局長からお答えさせたいと思います。
  56. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 お答えいたします。  初めのスパイロコンピューターとおっしゃったのは、スパイロメーターという器械かと思いますが、肺機能診断の器械かと存じます。この器械について私詳細に存じておりませんが、おそらく国のほうで、いま大気汚染監視測定体制の整備の中には、二項でお話が出ました種々の測定器械のほうに力が入っておりまして、この診断機器については、私どものほうでは、実はいま補助対象になってなくて、各都道府県で整備しておるというふうに承知しております。  二番目の測定機器の問題に関しましては、環境庁におきましては一番力を入れておるところでございまして、現在国の全般的ないろいろな基準を測定する根拠にしておる国設の施設は十五ございますが、都道府県立の監視測定網を整備するために、いままでのところ約五百の測定点を持っておりますが、それらについても、来年度はさらにもっとふやして、しかも御指摘のとおり、金属成分その他のいろいろな分析ができるように精度の高い器械を補助していく方針で、いま鋭意努力している最中でございます。
  57. 海原公輝

    ○海原説明員 お答え申し上げます。  測定器に関しましては、環境庁のほうからお答えしたところでございまして、若干補足いたしますと、四十七年度におきましては、いわゆる地方の公害センターでございますが、それに分析器械といたしまして前年度のほぼ倍に当たる国費ベースで一億五百万を計上したほか、既設の大気汚染監視施設整備費補助金といたしまして、これは主として監視のために使う計測の機器が主体でございますが、これにつきまして四億五千九百万というふうに、前年度に対比しまして相当大幅な予算計上を行なっている次第でございます。  それから特定財源、たとえば重油を特定財源として公害の財源を捻出すべきではないかという御質問かと思いますが、これにつきましては、財政当局といたしましては、特定財源化するということは財政の硬直化につながるということで、いまのところあれしておらないわけでございます。要は、公害予算というものを拡充する方法としてそういったやり方もあるのではないかという御指摘かと思いますが、それにつきましては、四十七年度におきましては一般会計、特別会計を合わせまして、全体で千五百六億四千四百万円、対前年に比しまして約五〇%の伸びを確保したということで、先生御指摘の公害に対する前向きの姿勢というものがあらわれているのではないか、かように考えているわけでございます。
  58. 森田重次郎

  59. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 環境の七〇年代といわれております昨今、去る十六日、国連の人間環境会議事務局が地球環境計画を発表いたしました。かけがえのない地球を守るために、今後国際協力によって人類が取り組むべき問題とその方向について示唆をいたしております。わが国におきましても、環境庁が新たに発足をいたしまして、大石長官もきわめて積極的な姿勢で人間環境の整備に対処をしておられますことについて、まずもって敬意を表しておきたいと思います。  本日は、時間の関係もございますので、私は、主として自動車の排気ガスによる大気汚染についての御質問を申し上げたいと思います。  国連の人間環境会議も指摘をいたしておりますように、現在何をなすべきかをきめる基礎となる研究あるいは観察、特定の事象についてのデータを集めるためのモニターの仕事あるいは情報の交換、こういうものの必要性を強調いたしております。つまり、政府のつくる基準というものは、現在あるいは将来を見通しまして、大気汚染の状況だとか生態的観察だとか、あるいは技術水準等の上に立った科学的な結論でなければならない、こういうふうに考えるわけでございますが、この基本的な問題について、まず長官のお考えをお聞きしたいと思います。
  60. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまのお説のとおり、私も全くそのとおりだと考えておる次第でございます。
  61. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 私が、あえていまのような基礎的な問題について御質問を申し上げましたのは、御承知のように、先年、自動車の排気ガス公害でいろいろ世論をわかしました牛込の柳町交差点ですか、あそこで起こりました鉛公害事件、引き続いて起きております光化学スモッグ、これらの問題点を考察いたしますに、私は、やはりその真の原因を追及する必要があるということを非常に痛感をいたしたわけでございます。     〔主査退席、大村主査代理着席〕 当時、そのいずれもが自動車がその元凶だというふうにいわれておったわけでございますが、その後の調査によりますと、やはり車の元凶説に疑いを持たれておるということもまた事実でございます。つまり、鉛の含有量というものは、われわれが日々口から食べております食品の中にも相当ございます。あるいは飲料水の中にもある。あるいは塗料の中にもございます。ことに子供の玩具等、おしゃぶり玩具ですね、この中にも鉛が入っておるということで、最近米国ではこれが規制に乗り出したというようなこともございます。したがいまして、ほんとうに自動車の排気ガスから排出をされる鉛分、こういうものが現在、医学的に世界的ないわゆる確定に基づくデータというものがまだまだはっきりしていない、こういう段階であろうかと思います。  一説によれば、自動車燃料のガソリン加鉛量がガロン当たり〇・二㏄程度であるならば、むしろわれわれが日常口にいたしております食べものの中から摂取をされる鉛の影響度、これよりもやはり少ないのではないかとさえいわれております。そういう関係があろうかと思います。  さらに光化学スモッグ、当時騒がれましたこの問題点も、これは硫酸ミストではなかろうかという説もございました。最近では、夜間においてもこのオキシダントが発生をするというようなことで警報が出されたこともございます。ところが、それも、いろいろ調査をされますと、どうも計測器のいたずらであったというようなことを最近東京都が発表いたしておったと思います。そのように、一回発表されるごとに国民が非常に不安を感じておるのです。したがって、私は、これは相当慎重にやっていかなければいけないし、当時環境庁はまだございませんでしたけれども、厚生省の公害課長に来ていただきまして、ほんとうの原因は何でしょうかとお尋ねしたわけですが、どうもはっきりしなかったわけです。したがって、つくづく、ほんとうに真の原因探求の必要性というものを私は痛感いたしておるからでございます。したがって、ほんとうに現在何が一体大気汚染の真の原因であろうか、いろいろ要因としては数え上げられますけれども、何が一番寄与率が高いであろうか、こういうふうに一つの現象に対して要因分析をして、パレート展開をして、そして一番大きな要因のものからアクションを起こしていくという方向をとらないと、いたずらに起こってまいりました現象に対して、ただそのものだけを見て内張りこう薬的な対策、これをやることによってほんとうに大気汚染が解決できるであろうかというふうに疑問に思うわけでございますが、この辺について、長官はどのようにお考えでしょうか。
  62. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまの御見解は私全く同感でございます。現在環境庁としては、環境基準なり排出基準というものをつくりまして、いろいろな規制をいたしておりますが、この基準の根拠となるものが、はたしてどれだけ一体われわれが努力してつくったものかというと、いろいろな疑問が出てまいります。しかし、何らかの基準をつくって規制しなければ公害を防ぐことができません。そういうことで、世界的ないろいろなデータを集めたり、われわれの持っている、いままでの乏しいいろいろな実験の成果を集めたりして、基準をつくっているわけでございます。これがみんな不当だろうとは申しませんけれども、必ずしも全部が一番必要にして一番効率的ないわゆる最小限度のものであるかどうかというと、非常に問題があると思います。したがいまして、やはりおっしゃるとおり、私どもは、この基準というものをもっともっと突き詰めまして、いろいろな実験なりいろいろな努力をいたしまして、いま申しましたような、われわれが考えておるような必要にして最小限度の合理的な基準を早く数字をつくり出すということが一番大事であろう。そのことが、一つ国立公害研究所の大きな使命でもあると考えておるわけでございます。  そういうことで、世論で鉛公害とか、いろいろなことが出てまいりましたけれども、これも実際は正確な――測定方法も幼稚であったり、あるいはいいかげんな測定もあったのでしょう、そういうことがすぐ不見識に取り上げられたこと、そういうことから問題が起こったと思います。あるいは夜の光化学スモッグにしても、これは分析の方法に多少間違いがあったということがはっきり表明されておりますので、今後はこのようないろいろな矛盾なり失敗というものの積み重ねの上に立って、正しい数字なり判断が下されていかなければならないと考えておるわけでございます。  そういうことで、そのような基準を早くつくらなければなりませんが、同時に、おっしゃるように、これからどのような物質大気汚染元凶であるかということをわれわれ十分に判断いたしまして、そういうものの根本的な対策を立てていくということ、そういうことがやはり一番大事じゃなかろうかと考える次第でございます。
  63. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 真の原因を追及するともに、やはり長官おっしゃいますように、疑いのあるものを規制をしていく、こういうことは私も必要であろうというふうに考えます。そのときに、いわゆる規制基準値というものが設けられるわけでございますが、その規制基準値の制定にあたりましては、これはいまもいろいろ申し上げておりますように、いろいろな要素を考えていかなければならないと思います。  特に大気汚染というような問題は、この測定をすることが非常にむずかしいというふうにいわれております。計測濃度というものが大気レベルと同じオーダーになる、そのくらいのいわゆる低濃度でありますので、正確に測定をするということが困難でございますし、さらに現在ある測定器では、たとえば同じメーカーの測定器を数台並べて、同じ時間、同じ個所で測定をしても、その測定値には非常に大きなばらつきがあるというふうにいわれております。そのくらいまだ測定技術といいますか、それがおくれておるわけなんです。  そういう現状というものを十分認識をしていないと、けさのテレビを私見ておりましたけれども、鹿島工業地帯で、茨城県当局が大気汚染測定をして、ある数値を出した。ところが、片っ方のほうが測定をして出した数値と非常に違う。そこで住民の間で問題になっておる。これではいかぬからひとつ鹿島町自身でやろうではないかということで、鹿島町がわざわざ測定器を買い入れて測定をするのだ、こういうふうに言っておられるのです。だから、そういう測定器自身に非常にまだ問題がある。さらに、計測技術そのものがいろいろまだ問題があるわけですね。したがって、こういう数値を発表なさるとかいろいろなことについては相当やはり慎重にやっていただかないと、いたずら国民に不安を巻き起こしてしまうということが私はあろうかと思います。したがって、その辺の要素というものを十分に長官のほうも考えていただいて、一体現時点ではどうなんだ、あるいは測定器に誤りなかりしや、あるいは測定方法に誤りなかりしや、この辺の基礎的な問題については、もっともっと慎重に私は扱っていただかなければいけないのではないだろうか、こういうふうに考えるわけでございます。  そういう基礎的な問題について、環境庁としてはいまどのようにお考えになっているか、お聞かせを願いたい。
  64. 大石武一

    大石国務大臣 いまお話しのとおり、私も全くそのとおりだと思います。ことに世間に無用な心配をかけたり、いろいろな混乱を起こしているのも、やはりその正確な実態をとらえ得ないということ、あるいは技術が非常に不安定であるということ、そんなことやいろいろな原因があろうと思います。ですから、われわれは、やはり近い将来には、ここの調査ならば間違いないのだ、ここの数字ならば間違いないのだという、そのような権威のある測定なり数字を出し得るようなものをつくらなければならないと考えております。どこでもけっこうでありますが、できるならば、われわれの国立公害研修所でそのような人物を十分に養成いたしまして、あるいは国立公害研究所がそのような中心になるならば、それでもけっこうでございますが、そのような方法で進めてまいりたいと思います。  それから、いまおっしゃいましたように、いろいろな原因を深く掘り下げまして、いろいろな原因の一つ一つを拾い上げて、それから全部を総合していくというようなことが絶対必要でございます。そういうことはいまの段階ではなかなかむずかしいのでございますが、そのような基礎をつくるためにいま中公審というものがございまして、ここに日本の見識ある専門家にお集まり願いまして、そこでいろいろと判断の基準なり判断のしかたというものを検討していただいているわけでございますが、これを十分に活用して、早く混乱を防いでまいりたいと考えております。
  65. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 長官は、昨年の十月八日の委員会だったと思いますが、現在米国でいろいろ騒がれておりますマスキー法案、この日本版マスキー法案の制定の方針というものを明らかにされておると思います。ところが、現在このマスキー法案に対しまして、アメリカでもこれは非常に流動的でございまして、いろいろな経過を経てまいっております。特に最近ではアメリカの環境保護局、EPAが、全世界主要メーカー、これは自動車メーカーですが、これの十一社を対象にヒヤリングを行なおう、ことしの四月十日ごろから行ないたいというような方針を出しておるようでございます。  そのときのおもな論点はどういうことかといいますと、技術的達成可能性の概要ですね。それから七五年の規制というもの、このマスキー法案をいま一年延期をしてもらいたいということが、諸般の技術開発の過程からそういう要望が出ておるわけでございますが、この七五年規制が一年延期になったときの七五年規制の代替案といいますか、それは一体どうすべきであろうか、こういうような問題ですね、こういう問題についてヒヤリングを行ないたい、こういうことのようでございます。それからさらに、各メーカーが、この排気ガス浄化の装置の研究に鋭意取り組んでおるわけでございますが、なかなかマスキー法案に示されております基準値を満足させることが現時点では困難性がある。したがって、総体的にこれを一年間延期をしてもらいたいという意見もございます。  このように、きわめてアメリカ自身でも、マスキー法というものに対する姿勢というものが流動的でございます。こういう情勢の中で、長官が昨年十月八日の委員会で明らかにされました方針というものは、こういう情勢を踏まえてお変わりになっていないかどうか、ひとつお聞きをしておきたいと思います。
  66. 大石武一

    大石国務大臣 私は、昨年の十月八日でございましたか、忘れましたが、日本でもマスキー法に準ずるような方法を考えなければならぬということは確かに申しておりますし、いまでもやはりそのように考えておるわけでございます。  御承知のように、日本では自動車のいろいろな排気ガスの規制のためにも努力いたしておりまして、昭和四十五年でございましたか、自動車技術なんかの審議会かどこかで、四十八年と五十年度の二段階に分けまして排気ガスの規制のことをきめておるわけでございます。その後、それに準じてやっておるわけでございますが、アメリカのマスキー法のようなきびしいものの考え方が自動車の、ことに排気ガスの規制に出てまいりましたので、この日本の二段階考え方もだんだん変わってきまして、四十八年度に規制すべきものも四十七年度に規制するとか、いろいろ繰り上げたり、努力しておるような現状でございます。私は、マスキー法のような、やはり排気ガスを大量に押えるような技術は何としても早く開発してもらわなければならぬと考えております。それはもちろんアメリカでそのようなことをやる以上は、日本でもやらなければ国民がおさまりません。また、国民環境保全もなかなかできません。同時に、日本の産業の発展からも、輸出産業がとまります。そういうことまで考えて、やはり何としてもやらなければならない宿命があると思うのでございます。  そうしますと、われわれやはり日本としても技術的にそう外国と劣ると思いませんから、やはりあるタイムリミットを設けまして、そこで背水の陣といいますか、そういうことで努力してもらうということにしておかなければ、私は、いつまでたっても――いつまでたってもとは申しませんが、簡単にはそのような努力というものはなさりにくいと思うのです。そういうことで、いま鋭意中公審に依頼いたしまして、そのようなマスキー法に準ずる規制のあり方を検討してもらっておりますけれども、近いうちにその答申が出ることになっております。その答申によって、おそらくやはりそれはマスキー法に準ずるものだろうと考えておりますけれども、やはりそのようなタイムリミットを設けまして、そのような努力を業界にしてもらわなければならないと考えております。  同時に、しかし、その場合には業界にただ努力をしいるだけではなくて、やはり国としてもできるだけのいろいろな、たとえば研究費の一部を負担するとか、何かそういう努力はもちろん必要だ、しなければならぬと考えておりますけれども、結論的には、やはりそのような規制をする時期が五年か六年先に参ると思います。ただし、アメリカでいま一年延期とかなんとか議論されておりますけれども日本の業界も、何かアメリカにそのような、何か頼もうとかなんとかということがありますけれども日本の国内でも、もしできなければ、それはそのときになって考えてみればいい、いまから五年じゃ無理だから六年にせい、七年にせいというのもおかしいと思いまして、五年なら五年という期間を置いて一生懸命やってもらう。努力してもどうしてもできなければしようがないことで、そのときはそのときで対策を考えるということになりますので、まずタイムリミットをつくりまして、そこで一生懸命やってもらうということが必要だろうとも考えておる次第でございます。
  67. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 固定的に考えるのではなくて、いわゆる技術的達成の可能性を見ながら考慮していくのだ、こういうふうにおっしゃっておるのだと思います。基本的には、もちろんこの大気汚染を浄化するためにアメリカがやることは日本でも当然やらなければならぬ、こういうことは当然であろうと思いますが、しかし、私があえて申し上げましたのは、そのアメリカですら非常に――自動車産業としては先発産業を持った国ですね。そこでもまだまだ完全な装置というものが開発をされていない。したがって、一年延期とかいろいろ問題が出てきておると思います。そういう現状を踏まえて日本ではどうするかという問題、これは基本的には長官のおっしゃるとおりだと思います、現にそういう現実があるのだから。だから私は、そういう固定的に考えずに、そういう技術開発能力のタイムスケジュール等も十分考えながらこれに対処をしていくのだ、こういうふうにおっしゃっておるのだろうと思います。  そこで、これは環境庁自身は技術屋さんではありませんからなかなかむずかしい質問になろうかと思いますが、この大気汚染を浄化するために新しい動力源が必要だ。国もこれについては補助を出しておられますね。ガスタービンだとかいろいろないまのレシプロエンジン以外の新動力源を一つ求めようということについてやっておられるようでございますが、現在のレシプロエンジンについての排気ガス浄化装置、このものも、これは世界的にまだ開発が完全なものができておりません。こういう現状の中で、わが国のそういう技術開発の見通しといいますか、これについては、環境庁はどのように把握をなさっておられるでしょうか。
  68. 大石武一

    大石国務大臣 これは技術的な問題でございますので、担当係官からお答えいたさせます。
  69. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 たいへんむずかしい御質問でございますので、的確な御答弁にならないと思いますが、環境庁といたしましては、一昨年の七月あるいは八月運技審あるいは産業構造審議会から運輸大臣、通産大臣に出されまして、その関係省庁の試験研究機関及び民間において重要なテーマとしてやっておられるものに重大な関心を持っております。私たちのほうにおきましても、試験研究機関等の公害防止に関する試験研究費にかかる予算につきましては、一括計上を行なうなどをやって、その研究開発の促進をはかっていこうという基本方針は変わりございませんが、先生の御質問の現在のエンジンの構造とか浄化装置の開発、それから燃料組成の改良というような総合的な問題になってまいりますと、現在の中公審の専門委員の先生方にお願いして、各メーカー及び国立機関等を現在視察をしておる最中でございますが、それらを総合して御意見をいただくことになっております。私ども行政当局の考え方からすると、いまの先生の御質問に関しては、はっきり申しますとわかりません。見通しがあるかということもはっきり申し上げられませんが、ともかくこの研究課題に関しましては、実験室内的なものと、それをプラクティスにやるものと分けて考えてまいりますと非常にむずかしい問題が出てまいりますので、いま専門の先生方の御意見をいただいて総合的に判断していこう、こういう体制でございます。
  70. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 まあ環境庁としてはなかなか技術的な問題に入るとおわかりにくいと思いますが、しかし、私は、そういう問題を十分に把握をされた上で、さらに逆の立場で大気の汚染浄化をしなければならぬ。そのためにはどうしなければならないかということが出てくるはずですから、そのどうしなければならないかという方向がわからぬ、けれども、まあ基準値だけは示していくのだという方向では、これはやはり問題がございますので、そういう点に至るまでひとつ十分に把握をなされて、そしてどうしてもやらなければいけない問題は、これは世界的な問題ですから、国として今度はどうするのだという方針をやはり環境庁としては十分に固めていかなければいけないのじゃないか。そして関係各省庁にブッシュをしていかなくちゃいかぬ、こういうことがあろうかと思いますので、ひとつ十分その辺も、その面に至るまで把握をされて、そして業務を遂行していただきたい、これについては強く要望をしておきたいと思います。  それから、時間がございませんので結論を急ぎますが、大気汚染の規制というものは、つまりいろいろな化学物質を量的に規制をしよう、こういうふうにしておられるのではなかろうかと思いますが、私はその量的な規制もさることながら、いわゆる化学物質の毒性、これを十分に見ないといけないのではないだろうか。いたずらに量的な規制だけをしておっても、毒性というものを見のがしてしまうと、これはほんとうに人間環境をよくすることにはならない、私はこういうことだと思います。つまり、いま硫黄酸化物というものがございます。SOxといっておりますが、これの毒性というものはいわゆる一酸化炭素、COの大体二百二十倍だというふうにいわれております。さらにNOx、これは窒素酸化物ですね。これの毒性というものは、このCOの十倍はあるだろう、こういうふうにいわれております。したがいまして、大気汚染に寄与をいたしておりますその寄与率といいますか、そういうものは、確かに自動車の排気ガスというものが数十%寄与しておるのだ、こういうふうにいわれておりますけれども、その有毒性、毒性という点からは一体どうであろうか、大気を汚染をしておるものは、一体自動車はどの程度であろうか、こういうふうに見ていきますと、いまの数値から見ると大体一〇%内外ではなかろうか、こういうふうにいわれておるわけでございます。この辺に強く注目をしていかなければいけないのではないか。  したがって、大気汚染を浄化するために、いわゆる人間環境を守るために、まずは有毒性の物質は一体何だろうか、この一番強いものを一番早く強い規制をしていく、こういうことがほんとうの人間環境を守ることになってくるのではないだろうか。いろいろな化学物質を量的に規制しておるだけでは人間環境というのはなかなかよくならない。ほんとうに汚染をしておる化学物質の中で、何が一番毒性が強いであろうか。それをやはり私は規制をしていかなければならないと思うわけでございます。したがいまして、いまの自動車の排気ガスのみを日本版マスキー法案とかなんとかいろいろ言いまして量的に規制しても、これはやはり大気汚染全体の浄化にはつながらないのではないか。そういう毒性の観点から見ましても、一〇%内外になる、こういうふうにいわれておりますが、そうすると九〇%あるほかの毒性物質、これをどうするのだ。これがまず早く考えられていかなければならない問題ではないか。いろいろ考えられております。工場の排煙だとか、発電所の排煙だとか、あるいはビルの冷暖房の排煙だとか、こういうような大気汚染をいたしております物質を量的に把握すると同時に、毒性別に十分に把握をして、そして規制というものをやっていかないといけないの はないか、こういうふうに考えるわけでございますが、そういう考え方についてはいかがでしょうか。
  71. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまの渡辺委員のお考えは私も妥当だと思います。当然そういう方向で、やはりわれわれの行政の順序をつくっていかなければならないと考えております。
  72. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 それでは時間がございませんので、あとは、私は要望をしておきたいと思います。  いままでいろいろ申し上げてまいりましたように、最近になって起こっておりますこれら一連の環境汚染の問題は、きわめてデータ不足でございます。さらに測定の方法、測定器そのものにもいろいろな問題がございます。したがいまして、これらの実態調査というものを、さらには研究の促進というものを、十分ひとつ環境庁は促進をしていただきたい。そうして、一日も早く正確なデータ把握につとめていただきたい。そして先ほどから申し上げておりますように、関係諸官庁、こういうものに対しても、きめこまかい環境庁自身の要望というものを積極的に出していかなければいけないのではないかと思います。  そこで、現在もしわかっておるならば、あとで資料をいただきたいと思いますが、わかっていなければひとつ具体的に調査をお願いをしたいと思うわけでございます。  現在の環境汚染度と汚染源の詳細な把握データ、これがありましたらひとつお出しを願いたい。これには先ほど言いましたように、量的な面と毒性の面、この両面にわたってひとつお願いしたいと思います。  それから二番目といたしまして、規制の基準と試験方法の関連です。これについても、もしきまっておりましたならばデータをお出し願いたいと思います。  それから三つ目に、あらゆる必要性と可能性を考慮した環境保全に対する長期ビジョン、これがございましたらひとつお出しを願いたいと思います。  それから四つ目に、大気汚染防止の観点から、自動車による都市交通の効率化を目的とした交通環境の整備、システム化、これについて、もしもすでにございますならばお出しを願いたいし、なければひとつ早急に調査検討をされて、資料を提出くださるようにお願いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  73. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまの件は十分に調査いたしまして、できるだけの資料をそろえて提出いたしたいと思います。
  74. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 終わります。
  75. 大村襄治

    ○大村主査代理 次に斉藤正男君。
  76. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 私は、国鉄新幹線の騒音規制につきまして、前半若干の時間を具体的な問題として国鉄当局に質疑をいたします。長官に聞いていていただいて、基礎知識を十分すでにお持ちでありますけれども、さらに認識を深めた中で環境庁の見解を伺いたいと思います。  昭和三十九年、東京-大阪間が開通をいたしました。また、本年三月十五日には大阪-岡山間の新幹線が開通をいたしましたが、残念なことに騒音公害なるものが各地に発生をいたしております。現実に大きな問題となっているところとしては、東京都内、浜松市内、岐阜羽島付近、名古屋等が東京-大阪間の主要な地点でございまして、その件数百二十件にのぼっている。これは騒音だけでなくて振動も含まれております。国鉄に伺いますと、国鉄の新幹線騒音振動対策専門委員会は、当面の基準として、大阪-岡山間は八十ホンに押えたい、東京-大阪間は百ホンに押えたい、そしてなるべく早い機会に全線にわたって七十ホンに規制をいたしたいというように聞いておるわけであります。  ここで問題なのは、騒音対策の意味も含めて、大阪-岡山間は、たとえば架道橋のはりを鉄でなくてコンクリートにするとか、あるいはなるべく市街地を離れて山の中を通すとか、あるいはトンネルをたくさんつくってそうした騒音を軽減するというような措置をとったことは私もわかるわけでありますけれども、まず第一に国鉄に伺いたいのは、同じ新幹線でありながら、なぜ大阪-岡山間を八十ホン、東京-大阪間は百ホンでがまんしてほしいというような言い方をするのか、同じ新幹線騒音とするならば不公平きわまりない、こういうように思うのですが、私のあげた数字、間違いないかどうか、あるいは騒音に対する国鉄の考え方を最初に伺いたい。
  77. 篠原良男

    ○篠原説明員 いまの先生の御質問にお答えいたします。  山陽新幹線は鉄げたを全然使いませんでコンクリートげたに主力を置きましたので、物理的に騒音の絶対値が低くなっております。東海道新幹線は、東京-大阪間をつくりましたときに鉄げたも併用いたしましたので、鉄げたの騒音が百ホンを出しておるというのが実情でございます。現在あらゆる防音材あるいはそういうものを開発いたしまして、今後東海道新幹線につきましても騒音を下げるように技術的開発を急ぎ、できる限りの処置はいま講じつつあります。  以上です。
  78. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 お答えになっていないんですね。大阪-岡山間はそういう施設をやったが、東京-大阪間は早かったので、そういうことになっていない。しかし、同じ新幹線でありながら、大阪-岡山間を八十ホン、東京-大阪間は百ホンでがまんせいというのは不公平じゃないか。数字に八十と百というのが出ているのですから、そしてなるべく早い機会に全線にわたって七十ホンにしたいという基本的な方針だということを聞いているが、そのとおりかということなんです。
  79. 篠原良男

    ○篠原説明員 東海道新幹線につきましては鉄げたを使いましたので、現在けたの下のほうから音が出ないような防護壁をつくりまして、十ないし十五ホン下げたい、今後あらゆる技術を開発しまして七十ホンに持っていくように努力したいというのが国鉄の騒音に対する態度でございます。
  80. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 不公平だとか、残念だとか、申しわけないとかということばは一つも出ませんから、それはそれでいいのですけれども、具体的に伺います。  静岡県浜松市内に森田架道橋なるものがございまして、すでに昭和四十二年に、約二千万円の巨費を投じて第一次の防音対策をやっていただきました。しかし、若干の効果は認めますけれども、なお非常な騒音を発生しているということで、三月末完成を目標に今日また大々的な防音工事をやっております。  そこで伺いたいのですが、この国道一号線をまたぐ森田跨道橋は、「こだま」は、停車寸前であり発車直後でございますからたいした騒音はありませんけれども、通過する「ひかり」が問題であります。「ひかり」は、一体上りは朝一番早いのが何時なのか、下りは「ひかり」が一番早いのは朝何時なのか。終車の「ひかり」上りは何時なのか、下りは何時なのか。これは本職ですからすぐわかると思いますから、ちょっとお答え願いたい。
  81. 篠原良男

    ○篠原説明員 お答えいたします。  「ひかり」の上りの始発は七時四十二分であります。下りの始発は七時二十六分三十秒であります。終車、いわゆる終列車でございますが、「ひかり」の上りの終車は二十二時十二分であります。下りの終車は二十一時五十五分であります。
  82. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 いまお答えをいただきましたように、七時台から十時台まで数十本の「ひかり」が東西に走っておるわけでございまして、この騒音は、二月三日、県の公害センターと浜松市の公害課の調査によりますれば、午後二時、国道一号線を走るトラックその他の騒音も入ったでありましょうけれども、百十三ホンを記録したのであります。決して低い数字ではございません。国の騒音規制によりますれば、この地帯は準工業地域でございますが、昼間六十五ホンまでは許される、夜間は五十五ホンという規制になっているわけでありますが、十五時間にわたって百ホンないし百十ホン、最高百十三ホンを記録しているこの姿というのは、私は尋常ではない、こういうように思うわけでありますが、国鉄当局も、それぞれの機関を通じて調査をされ、事情を聴取されていると思いますけれども、私がいま申し上げた数字は認識されておられましょうか。
  83. 篠原良男

    ○篠原説明員 承知しております。いま先生の御指摘のありました浜松周辺の森田架道橋、これは鉄げたでございます。したがいまして、その鉄げたの真下が一番ホンが高うございます。私たちの調査によりますと、鉄げた、線路中心から二十メートル前後離れますと百ホン。それで、これをいかにして下げるか。現在の技術で下げ得る方法といいますのは、鉄げたの下におおいをすることでございます。おおいをいたしましてこれに防音材を張りつけまして、三月末には工事が竣工する予定でございます。あわせまして、その鉄げたの前後の高架橋には二メートルの高さに防音壁を施工中でございます。これも三月末竣工の予定でございます。過去における実績から推定いたしますと、この措置によって大体十ないし十五ホンは下がる、かように技術的に判断しております。
  84. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 現状の百ないし百十ホン、最高百十三ホンを八十五ないし九十ホンに下げたい――八十五ホンにする自信がありますか。
  85. 篠原良男

    ○篠原説明員 これは過去において実験した場所がございまして、その結果によりますと十ないし十五ホン下がっております。まず十ホンは確実に下がると思いますが、その周辺の立地条件あるいは工法といいますか、それによりましては若干の数値の変動がございますが、過去のデータから判断いたしますと十ないし十五ホンとお答え申し上げます。
  86. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 だいぶ内輪な見積もりでございまして、百十を十下げれば百、十五下げれば九十五ということで、やはり八十五は無理だ。九十五ないし百と認識してよろしいか。
  87. 篠原良男

    ○篠原説明員 お答えいたします。  一番高い騒音の出るのは鉄げたの場合は真下でございます。真下の場合はこれは道路でございますので、その真下から若干離れたところから居住地になっております。これは距離とともに騒音というのは非常に下がります。したがいまして、私たちが標準で考えておりますのは、線路中心から二十メートル前後、こう考えております。そこで十ないし十五ホンは下がる、かように期待しております。先生のおっしゃった最高の百十三ホンというのは、けたの真下ではなかろうかと思います。  以上です。
  88. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 それは、理屈を言えばそういうことになってきますが、国道一号線のセンターではかるか、あるいは歩道ではかるか、歩道に沿った一番近い民家ではかるかということで若干の違いはありますけれども、もし十ないし十五下がらなかった場合、どういう責任をとられますか。
  89. 篠原良男

    ○篠原説明員 過去に同じ工法で施工した実例から判断いたしまして、最低十は下がるものと技術的に確信しております。
  90. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 責任はどうするか。
  91. 篠原良男

    ○篠原説明員 いや、技術的に下がるものと確信しております。
  92. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 責任をとるとなかなか言えませんけれども、国鉄技術陣の粋をあげてやっていることでございますから、局長のおっしゃることを信用いたします。  もう一つ、ここには振動があるわけでございまして、これまた二月三日の調査によりますと、一秒間のゆれが四ミリメートルであります。これもまたたいへんな振動であって、きょう写真を持ってきておりませんけれども、たとえば仏壇の位はいが動いちゃうんですよ。仏さまが動くなんということは、これはあまり気味のいいものじゃない。一つの例でありますけれども、冷蔵庫のものはやはり動くし、戸だなの茶器類も動くし、それだけでなくて、この振動が心身に与える影響というのは騒音以上にきわめてデリケートなものがあるわけであります。今度の改良工事では騒音対策にはなっても振動対策にはならぬと思うのですが、自信のほどはいかがですか。
  93. 篠原良男

    ○篠原説明員 いまやっておる工法は、おっしゃるとおり騒音対策でございまして、振動対策ではございません。振動につきましては、非常にむずかしい問題がございますが、現に技術陣をあげていま処置を考えております。
  94. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 いずれにいたしましても、後手後手で、必ずしも自信のある御答弁でないことを残念に思いますが、長官、そういう実態であります。  そこで、中央公害対策審議会は、騒音振動部会を三月十三日開きまして、特殊騒音専門委員会を開き、環境基準づくりに取り組むことになった。大石長官は、四十七年度中に成案を得るよう強く指示をした。しかも、その基準の内容として、安眠できる音のレベルは何ほどであるのか、電話の受信や会話など、生活妨害が出ないレベルは何ほどであるのかということから、この二つの点に重点を置いて許容音量調査に乗り出す。そして一刻も早く新幹線騒音についても環境庁としての基準を出し、指導、規制に乗り出したい、こういうことをきめたということを聞いております。長官でなければできないことでございまして、私は非常に敬意を表するところであります。  長官、一に大石、二は丹羽で、三、四がなくて五が佐藤というのを知っていますか。これは変なことでありますけれども、悪評高い佐藤内閣で、あなたは一番いいのですよ。だから、一に大石と、こう言うのですよ。二は丹羽でというのは運輸大臣がいいのだそうですがね。運輸大臣長官がそろっていて、新幹線の騒音対策ができないなんというのは困るので、これはぜひひとつ、一は大石の本領を発揮してやってもらいたいと思うのですよ。  そこで伺いたいのですが、この安眠のできる音のレベル、これも人によって違いますよね。しかし、普通の音というものは大体常識的にもわかるわけでございまして、ぜひこういう方向で努力をいただきたいというように思うわけでありますけれども、先ほども国鉄へ聞いたのですが、大阪-岡山間は八十で、東京-大阪間は百だ、なるべく早い機会に全線を通じて七十にしたい。これからできる東北にしても信越にしても成田にしても、おそらくこういう基準で国鉄は取りかかると思いますけれども、これは環境庁としてはどうお考えになりますか。こういう不公平な基準のしかたというもの、まずそれから聞きたい。     〔大村主査代理退席、主査着席〕
  95. 大石武一

    大石国務大臣 とりあえずいまの国鉄の考え方について私も述べたいと思いますが、現実の段階としては、前につくった東海道新幹線は、これは現実には、環境保全というよりもまずスピードを速く出すとか、そういうことを中心にやられたと思うのです。ですから、やはり騒音とか振動ということに対してはそれほどの深い――深いというか、ずいぶん考慮したのでしょうけれども、対策がまだ不十分であった。そういう欠点に気づいて、今度の大阪-岡山間はそのような十分な配慮をして努力をした結果、現実には八十ホンの限度で押え得る。東京-大阪間はやはり百ホンで押えるという差が出ていると思うのです。これは、そのようなことを理想としているのではなくて、現実にそれ以外にできないのだということだと思うのでございます。  私は、今度ずいぶん岡山のほうはよくなりましたよという話を聞いておりましたが、やはりまだそのような八十ホンで押えなきゃならぬような現実では残念でございますが、こういう音響とか振動につきましては、なかなか日本環境問題というのは、ほとんど研究もありませんし、実際にいままであまり考慮が払われておりませんでした。そういうことで、やはりこのようないろいろな問題が山積していると思うのでございます。やはりこれはできるだけ早く七十ホンに、新幹線自体が七十ホンの音で押えられるような設備が早くできることを希望いたします。  ただし、この音というのは、近ごろわれわれのほうで考えが変わってまいりまして、ホンだけでは解決がつかない。いろいろな要素を入れまして、デシベルとかいろいろなことばを使っておりますが、いろいろな要素を入れたいわゆる音の基準といいますか標準、そういうものをいま考えておるわけでございますので、一応の一般的な七十ホンということをいま言っておりますが、これは多少そのような音の内容、呼び方が違いますが、そういうことで早く国鉄では音を押えてもらいたいと思います。ただ、われわれが言いますと、新幹線の音を減らすということは限度があります。それだけで騒音対策になりません、あるいは振動対策になりません。ですから、音が七十ホンまであるいは減らせないならば、さらにおっしゃるように夜安眠ができるように、あるいはいろいろな電話、日常の会話が十分にかわせるとか、あまり仏壇で位はいが踊らないようにするとか、いろいろなことをしなければならない。それは別な対策がございます。たとえばある程度補償して移転をさせるとか、距離を置くとか、その他防音施設をつくるとかいろいろな施設がございますから、そのようなものを合わせて、そうして沿線の住民が穏やかな生活環境でおられるようにいたしたいと考えるのでございます。  このような考え方から、中央公害対策審議会のほうで、ことに騒音振動部会に対しましては、さっきお話がありましたようなことを検討してもらうように頼んであるわけでございます。これはできるだけ早く、ことに生理的な問題もございますし、人間に与える生理的な現象とかいろいろな科学的な究明がございますので、時間がかかりまして、昭和四十七年度でもどうかというような考えが強いようでございますが、何としても昭和四十七年度内には出しなさい、それを基準にして早く環境基準をつくりまして、いま申しましたような七十ホンであるとかいろいろな対策を立てさせるような基準をつくりたい、こう考えておるわけでございます。
  96. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 そこで、これは両者に聞いていただきたいのですが、騒音に悩む住民は、まず第一に要求するのは全面移転であります。先祖代々墳墓の地としてここに住んでいたけれども、おそまきに新幹線ができて、騒音をまき散らす、振動を起こす、とてもじゃないが、乳飲み子、勉強中の学生生徒、年寄り、病人はここでは住めない。現にこの森田地区でもあのすぐ下の一軒はよそに土地を求め家を建てて移転をいたしました。全部が全部というわけではありますまいが、百ホン以上の音を一日十五時間も聞いているようなお宅では当然な要求だと思うし、また商売もどういうかげんか非常に衰退をして、砂漠のような地帯になっている。この全面移転補償を当然すべきだというように思いますけれども、どのようにお考えか。  第二として、住家の構造を改善をして、ちょうど基地周辺の学校や病院が防音対策をやっているように建てかえをして、すべてを防音、防振の建築に補償としてすべきだ。それができない場合は、最小限一部屋だけはいこいの部屋を音と振動から守るためにつくるぐらいのことは当然ではなかろうか。さらに、電話の受信が全く不可能であります。したがって、電話室だけは防音のできる部屋を設けて、電話の発信、受信に支障を起こさないような施設ぐらいは当然考えるべきではないか。さらにだんだん小さくなりますけれども、テレビ、ラジオの難視聴についても何とか国鉄の手によって補償をすべきではなかろうか。いますぐでもできることは、東京-大阪間、東京-岡山間が三分や五分おくれても、この騒音発生地帯においては特に「ひかり」はスピードを落とし、除行をすべきだ。こんなものが三分や五分おくれたって、ダイヤの組み方でどうにもなる。ほかのところでスピードを取り返すことも不可能ではない。いますぐにでも銭がかからずできるのは、騒音発生地帯、振動発生地帯でスピードを落とすことだというようにも考えられるわけであります。  私は、被害者住民が要求する大は全面移転補償、小はテレビ、ラジオの難視聴の解決に至るまでもっともな要求だというように思うのであります。当然環境庁のほうで四十七年度中に基準ができれば、国鉄は何とおっしゃったって何かやらなければならぬ。環境庁の指示、決定を待たずに、自主的に国鉄としてこういうことを行なうべきだというように思うのですけれども、いかがでございますか。
  97. 篠原良男

    ○篠原説明員 一問と二問につきましては、環境庁のよき御指導を得まして、今後検討していきたいと思っています。  新幹線は、やはり最高速度で走るというところのメリットが非常に多うございますので、除行については現在考えておりません。したがいまして、技術研究所あるいは新幹線をつくりました技術力を動員いたしまして、極力騒音防止の処置を講じ、そして新しい技術が開発されますと直ちに採用いたしまして、工法を適用してやっていきたいと思っています。  それからテレビ障害につきましては、現在NHKから技術的に指導を受けまして処置はいたしつつあります。
  98. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 電話はどうです。
  99. 篠原良男

    ○篠原説明員 電話につきましても、環境庁の御指導によって今後処置していきたいと思っています。
  100. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 大石さん、ああいう態度ですよ。まことにけしからぬ。環境庁が基準をつくり、指示を出せばいやおうなしにやらざるを得ないのに、出てからだと、こう言うのですね。全く前向きの姿勢がないのですよ。良心の一片が国鉄にあるならば、まことに申しわけないということで、少なくも一部屋、音と振動から守る部屋ぐらいは建てたいという答弁を私はほしいわけであります。ただテレビ、ラジオについてはNHKと相談をして難視聴の解決に当たりたい程度のことだ。新幹線は早いのが特徴だから除行する気持ちは毛頭ない。同じ政府機関でございますから、大石さんも施設局長の答弁を聞いて、間違いだとはなかなか言えないと思いますけれども国民立場に立ち、騒音や振動に悩む被害者立場に立ったときに、長官の見解いかがですか。
  101. 大石武一

    大石国務大臣 まあ局長立場においては、やはりあんまりはっきりした将来の大きな計画についてはいまここで断言できないと思うのでございます。ただ、環境庁と相談して努力いたしますということばがありましたとおり、やはりする意思は十分にあると思います。われわれとしても、国鉄ともいろいろ意見の調整をいたしまして――まあいろいろなこまかいところでは別に何とも申すこともありませんが、大体大筋においては御意見賛成でございます、そういう方向でできるだけ意見の調整をして、そして住民の苦しみをだんだんと緩和してまいりたい、こう考えている次第でございます。
  102. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 ぜひ長官のような考え方で、一刻も早い基準の設定と対策について国鉄を御指導いただきたいというように思うわけであります。  最後でありますけれども環境庁は二十八、二十九の両日、静岡県浜松市内で国鉄などとともに新幹線の騒音測定をやる。時宜を得た調査をいただけるわけであります。この二十八、二十九という設定は間違いないかどうか。  同時に、昼間ちょこちょこっと来て三十分や五十分あそこで見てお帰りになりますと、地元住民はすでにこのことを知っていますから、非常な反感を買いますよ。どこへお泊まりになるか知りませんけれども、おそらく浜松市あるいはその近くへお泊まりになるでありましょう。この森田架道橋のすぐそばにホテルがあるのですよ。そこへお泊まりになったら一番よくわかると思うのですが、私はそこまでは言いません。どこへお泊まりになってもぜひ夜の八時から九時、特に最終の「ひかり」が通る時間は、全部でなくてもけっこうですから、調査団は夜必ずここに行けという指示を長官からしていただきたい。
  103. 大石武一

    大石国務大臣 二十八、二十九日に調査いたすことは、そのとおり予定になっております。で、一晩泊まってこれは十分に検査するのでございますから、私からそのような指示なんかしなくても、りっぱな専門員の方々のそのような御見解でございますので、これに対して十分御援助いただきたいと思います。
  104. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 これは大臣が指示しなきゃやりませんよ。おそらく静かなところで早々寝ちまうと思うのですよ。もし、私がこれだけ要望して夜間、現地に来なかったということになりますれば、私は次の機会に長官と国鉄を糾弾いたしますから、ひとつ覚悟をして、ぜひ調査団長には厳命して夜も調査をいただくように御指示を願いたい。  以上要望を申し上げて、私の質問を終わります。
  105. 森田重次郎

    森田主査 次に瀬野栄次郎君。
  106. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 自然保護問題等について、環境庁長官並びに関係当局にお尋ねをしてまいりたいと思います。  昨年の十二月七日と思いましたが、自然公園審議会が環境庁で総会を開いて、北海道の日高山脈・えりも、青森の津軽、秋田の男鹿、新潟、福島の越後三山・只見、和歌山の熊野枯木灘、大分、宮崎にまたがる日豊海岸、熊本、宮崎両県の九州中央山地、奄美群島、こういったものを含めました八地域を新たに国定公園候補地に指定するとともに、金剛生駒、これは大阪から和歌山にありますが、それから新潟の佐渡弥彦両国定公園の区域拡張をきめて長官のほうへ答申しておるわけであります。  環境庁は、この答申に基づいて関係各省庁と協議をされて、具体的な公園計画がきまり次第八地域国定公園に正式指定する方針を出しておられるやに聞いておりますが、この指定はいつごろになるのか。一説によると三月ということも聞いておりますけれども、その見通しをまずお伺いいたしたい。
  107. 大石武一

    大石国務大臣 去年の末に、おっしゃるとおり数々の国定公園審議会の答申をもらいました。それで指定をいたすわけでございますが、それには御承知のように地域のいろいろな問題であるとか、中のいろいろな産業との関連の問題とか、そういうものの解決、話し合いをつけまして指定をすることになるわけでございます。ことに国定公園というのは、御承知のように環境庁長官と県知事との間のいろいろな相談で話がきまることになっております。そういうことで各地域につきましてはずいぶん話が進みまして、たとえば越後三山であるとかその他の地域におきましては県との話も全部つきまして、関係省庁と話もすでにだいぶ進み、近く指定になるところもございますが、熊本、宮崎の九州中央山地ですか、これはなかなかまだ話があまり進んでおりません、残念でございますが。  と申しますのは、林業の盛んな地帯でございます。したがいまして、森林の保護と企業性、公益性と企業性との調整の問題とかそういうことがたくさんございまして、また熊本県その他との話し合いもまだ十分に進んでおりません。この県知事との間の話し合いが済まない限りは関係省庁との話し合いに入るわけにもまいりませんので、いま鋭意努力いたしておりますけれども、ちょっとすぐ一月、二月でこれが認可になるという見通しはございません。なるべく早くいたしたいと思っておりますが、そのような状態であることを御報告いたします。
  108. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 九州中央山地の問題については、長官からいま、いろいろ県側との話し合いの問題等まだ問題があるようにお伺いしましたが、地元としても早く話が進むようにまた促進をしてまいりますが、いずれにしてもこの国定公園に指定されるということになりますと、この地域は熊本県、宮崎県にまたがる九州の脊梁山脈のいわゆる中央に位置しまして、総面積約九万八千ヘクタール、こういうふうにいわれておりますし、九州の連山を一望に展望できるところでもあります。さらに原生林、学術的にも貴重な動植物、名所旧跡なども全国で有数の自然の宝庫といわれるところにございます。熊本県側も約五万ヘクタール、人吉市をはじめ一市七町十一村、宮崎県側が二市二町三村にまたがっておりまして、ぜひこれは指定を急いでもらいたい、こういうふうに思っているわけでございまして、自然保護の上からも、かなり山も荒らされつつありますので、地元も督励してまいりますが、ひとつ環境庁のほうでも促進をはかっていただき、ぜひ進めていただきたい。  と同時に、いずれ指定が行なわれると思うのですが、かりに指定が行なわれました暁には、環境整備についてはいろいろと構想を練っておられると思いますけれども、どういうふうな環境整備をなさる考えであるか、その構想をひとつこの機会にお聞かせ願えれば幸いと思います。
  109. 大石武一

    大石国務大臣 御承知のように、国定公園国立公園というものはその自然的な価値を損じないように十分に保護しながらこれを国民に広く利用、活用させるというのが目的でございます。そういうことで、まずその自然の保護、できるだけ自然の状態に保っておきたい、できるだけ自然の景観をそこなわないで保ちたいということを前提としていろいろな努力をいたします。しかし、これはやはり十分に人間の生活にも利用、活用しなければなりませんから、そういう意味でいろいろな歩道をつくったり、そうしてあるいは十分にその中の自然に入り得るような道路をつくったりとか、あるいはいろいろな施設をつくったりいたします。あるいはまた、その入り口には駐車場をつくるとか、あるいはいろいろな宿泊施設をつくるとか、そういうものも必要でございますので、そのような施設類から小さいところは便所、ごみの捨て場とか、そういうものまでいろいろと手を加えまして、できるだけ清潔なきわめて自然な状況の中で、そこに訪れる人が十分にその自然を楽しみ得るような環境をつくることに努力いたしております。
  110. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 次に、阿蘇の問題で若干お尋ねをいたしたいと思います。  南阿蘇登山道ルートの建設問題でございますが、御承知のように国立公園阿蘇は世界的活火山としてその観光価値はきわめて大きく、観光客も年年増大しつつあるわけでございます。しかるに、これまで阿蘇に登る登山道は三つございまして、まず阿蘇坊中口より登る登山道と長陽村の赤水口から登る登山道、さらに一ノ宮古神よりの三本でございますが、南阿蘇、すなわち国道三百二十五号線の白水村吉田地点から池ノ窪、御窯門山の下をトンネルで抜けまして阿蘇山上へ至るところのいわゆる変化に富んだ南阿蘇登山道というルートが地元からもずいぶん要望があるわけでございまして、この建設についてぜひひとつ早く環境庁の認可もいただいて早期着工をしていただきたいという要望が強いわけであります。  環境庁独自でもいろいろと検討しておられるように聞き及んでおりますけれども、この南阿蘇ルートの道路の建設について長官は現時点でどのようにお考えであるか、ひとつ御見解を承っておきたいのであります。
  111. 大石武一

    大石国務大臣 具体的な登山道につきましては自然保護局長よりお答えさせたいと思いますが、私どもは、やはりいま申しましたように、日本国立公園なり国定公園のそういうものをいろいろな角度から見ましていろいろな段階に分けて、もちろん自然保護が中心でございますが、その利用のしかたを考えて変えているわけでございます。  阿蘇のような地点は世界に誇るべきすばらしい地形であり、景観でありますが、すでにいろいろな方面から自動車道路あるいはリフトみたいなものがたくさんできまして、いわゆる純粋の自然景観から少し遠いものがあるように私感じております。しかし、やはりいままでにどのような道路がつくられ、どのような破壊がかりに行なわれたとしましても、これ以上破壊させないようにさらにこれをりっぱに守ってまいる義務がございます。そういう見地から、われわれはできるだけ、あまり自動車が走らないでも、歩くとかそういうことで十分に楽しめるような地帯をつくりたいと思いますし、それからまた、数多くの自然をこわすような自動車道路はそうたくさん認可いたしたいとは考えておりません。しかし、必要なものは、これはやはりつくるべきだと思います。その具体的なことにつきましては局長からお答えさせたいと思います。
  112. 首尾木一

    首尾木政府委員 先生御指摘の南阿蘇の道路につきましては、これは熊本県のほうからそれについて申請が参っております。この問題につきましては、その計画の路線はすでにこの阿蘇の公園計画がつくられた当時からこの公園計画の中にそれに近い路線が公園計画として織り込まれております。しかし、その公園計画がつくられました後における交通事情の変化、交通量も非常にふえておりますし、また、申請になっております企画も当時考えておりましたような企画よりは異なっております。そういう点でさらに慎重に検討をしなければならないと考えておるわけでございます。特に阿蘇国立公園の特徴といたしましては、やはり火山地形でありますので、道路計画にあたりましてはその特徴のある火山地形の保全をはじめとしまして、自然環境に及ぼす各般の影響というものについて十分調査をしなければならないと考えております。  私どもとしましても、資料を集めまして検討をいたしておりますが、必要資料をただいま熊本県に対しましても提出をするようにということを申し入れてありますので、それらを集めまして、これについては十分慎重に考えてまいりたい、ただいまそういう考え方でございまして、先ほど長官の言われましたような基本的な考え方に基づきながら、これについては慎重でありますが、なるべく早く結論を出していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  113. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 いま長官局長からいろいろ御答弁いただきましたが、南阿蘇登山道のルートについては、これは地元でもぜひつくっていただきたいということで、一方自然を破壊しないようにという、むずかしいことになりますけれども、多年要望も強いことでございますので、慎重に検討するということでございますが、ぜひ実現の方向で慎重に検討していただいて、ひとつ県側ともよく打ち合わせをしていただいて、早急に結論を出していただきますように重ねて要望いたしておく次第であります。  さらにもう一点、この阿蘇のスカイラインの問題でございますけれども、これも先般尾瀬の問題を発端に大きくクローズアップしてまいりました国立公園内の観光道路建設に対する環境庁の強い姿勢が示されて、われわれも敬意を表しておるわけでございまして、自然の破壊ということにたいへんいま国民の強い要請がなされておるときでありますので、われわれも十分承知しておりますし、私も昭和四十四年以来、国会に出ましてから自然保護を特に取り上げて今日までまいったわけですが、この阿蘇スカイラインも昨年十月でしたか、正式に認可していただき、十一月着工し、自然林を保護する観点から菊池水源を避けたコースでルートがきまって、いま着々工事ができております。地元では多年の念願であっただけに、たいへん期待をかけて喜んでいる次第でありますが、この沿線のかなりの部分が現在普通地域でありますために、この開発に伴うところの破壊がたいへん心配される。今後もまたその懸念がございます。したがって、ぜひひとつ特別地域にしてほしい、こういうふうに思うわけでありますが、特別地域が実現すれば、スカイラインが開通しても沿線の環境の破壊を防ぐことになる、環境破壊を防ぐことになるという意味からもぜひ特別地域にしていただきたい、かように思うわけです。その点、ひとつ長官の御見解を承っておきたい。
  114. 大石武一

    大石国務大臣 昨年、私が環境庁長官に就任をした直後にはだいぶ強いことを申しました。それは、日本の自然破壊があまりひど過ぎたために、この趨勢を何とかしてとめなきゃならぬという決意から一つ環境庁姿勢考え方を示すためにあのような総論的な発言をしたわけでございますが、これが全部が全部そういうわけにまいりませんので、やはり一つ一つ十分に検討いたしまして、必要なものはやはりこれは指定をしなければならないと考えておったわけでございます。  たまたまその一つがいま言いました阿蘇のスカイラインであったということでございますが、それをいろいろ検討しました結果、いま菊池水源地と申しますそこのところに林道ができまして、めちゃくちゃに自動車が通っている、これでは破壊がひどく行なわれるというので、その中を道路をとめてしまう、車を通させないという条件のもとに、あのような外側を通る道路の計画を認めたわけでございます。いま荒廃しておる菊池水源地をどうするかということにつきましては、いろいろ考えておりますが、お話しのとおりの方向に進めてまいりたいと思いますけれども、その具体的なことにつきましては、局長からお答えさせたいと思います。
  115. 首尾木一

    首尾木政府委員 ただいま先生のお話しになりました道路につきましては、これは全体の三十六キロのうち、約十五キロと記憶をいたしておりますが、十五キロにつきまして普通地域になっておるわけでございます。この問題につきましては、先ほど長官がお話しになりましたように、やはり普通地域部分につきましても、道路沿線の自然の景観を保全をするという意味におきまして、そこを特別地域にいたすように県にも話しまして、その点について調整を進めておるという段階でございます。  なお、先ほど私、南阿蘇の道路につきまして申請書が参っておるというように申し上げたわけでございますが、実は正式の申請書としてはまだ参っておりません。これは一応その計画段階におきまして、その計画について熊本県のほうと私どものほうでいろいろお話をしておるということでございまして、申請書としては上がっておりませんので、その点訂正を申し上げておきます。
  116. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 ただいまの申請書の件については了解いたします。いずれにしてもひとつ慎重に検討していただいて、実現に向かって対策を講じていただきたいと思うのです。  そこで、いまの阿蘇スカイラインの問題でもう一点お伺いしておきますが、本年三月、環境庁と熊本県で阿蘇スカイラインに伴う沿線利用計画ということで調査を進めておられるわけですが、その結果、沿線の利用計画はどういうふうに進める考えであるか。植物園をつくるとか、駐車場をつくるとか、いろいろ考えておられるようでありますが、その構想等ひとつ具体的にお示しいただきたいと思います。
  117. 首尾木一

    首尾木政府委員 菊池渓谷付近の公園利用計画によりますと、阿蘇スカイラインから分岐する支線道路、自然探勝のための歩道その他野営場等が決定をされておりますので、この菊池渓谷付近についての公園利用計画に基づきまして自然保護に十分配慮を加えながら施設の整備を積極的に進めたいというふうに考えておるわけでございます。
  118. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 最後に、白川ダム建設と自然保護との調整について、若干三、四点お伺いしたいと思います。  熊本県阿蘇郡長陽村立野は阿蘇国立公園の阿蘇外輪山の火口背に当たるところで、一級河川白川の上流に当たり、白川、黒川の合流点下流の地点に建設省が熊本県及び関係市町村の要望を受けて建設計画を樹立すべく調査を行なっているのが白川ダムでございます。この建設については、私も昭和三十九年国に初めて陳情いたしましてから、ここ二年有余数回当委員会等でも政府考えをただしてまいったところでありますが、御承知のように、いまからちょうど十九年前、白川、すなわちこの白川は熊本市を貫流している一級河川でありますが、この白川のはんらんで昭和二十八年六・二六の大水害によりまして熊本市は未曽有の大災害を受け、死者、行くえ不明三百三十一人、家屋全半壊六千七百戸、被災者約十九万を出したのでございます。  よって、この白川ダムの建設によりまして、白川沿線をはじめ熊本市民四十五万人の災害防止のための洪水調節並びに阿蘇郡西原村の大切畑溜池を経て新熊本空港西端の深迫ダムに分水するなど、ダム下流の白川河岸の水田約三千六百五十ヘクタールの農業開発、さらには熊本市と周辺の都市用水、ダム落差を利用した発電、既設発電所の出力増加など、ダム建設による建設効果は大きく、地元では一日も早い着工を望んでおるのであります。ところが、環境庁阿蘇国立公園管理事務所は、この計画に対し、ダム予定地は白川を境にして左岸の北向山が国立公園特別地域に指定されており、また水没地域の大部分は同公園の普通地域だが、阿蘇外輪山の火口背に当たるところで、国立公園の最大の特徴である火山地形の代表的なものであるから、いろいろとこれに批判をしておられるし、さらにはまた北向山という国有林がございますが、これが風致保護地区になっておりまして、公園内に残された唯一の広葉樹の貴重な原生林である。そうして中部九州でも代表的な植物の宝庫であるということで、学術的にも価値は大きいとされて、絶対保護すべきである、こういうような見解であるようであります。そういった意味から、ダムを建設すると、自然景観が破壊されるので、環境庁としては十分慎重に考えてほしいというような意見のようでございます。そこで、この点私たちも自然を守る、また特殊な地形であるから、十分そのことは理解できるのでありますが、かつて、先ほどるる申し上げましたように、熊本市が県庁所在地であり、四十五万の市民をかかえておる、この中央を流れている白川のはんらんによって、ちょうどことしで十九年目、災害は二十年周期ということもいわれる、あってはなりるせんけれども、またぞろこういった災害に見舞われると、たいへんな問題になる。いわゆる阿蘇の火口の中に降ったような水、雨等によって熊本市がたいへんな災害を受けることは将来も考えられることでありますので、自然保護、これももちろん当然でありますが、この場合はぜひともダムをつくって、人命尊重、災害防止という点から建設することが急務である、かように私たちは見解を持ち、今日までいろいろと政府にもお願いし、調査を進めてまいったわけであります。  こういった問題について、長官も耳に入っておられると思いますが、環境庁としてはどのように考えておられるか。この白川ダム建設と自然保護の調和という問題で、環境庁の御見解をまず承りたいのであります。
  119. 首尾木一

    首尾木政府委員 事実につきまして御報告を申し上げますが、阿蘇国立公園の特別地域に指定されております白川の立野地区に治水用のダムを建設するための調査ボーリングにつきまして、現在建設省から協議がなされております。  ところで、この地域の一帯でございますが、地形的には阿蘇外輪山の火口内に当たりまして、左岸には文化財にも指定されております自然状態のすぐれた北向山原生林が存在しておるところでございます。先生の仰せのとおりでございます。そういうような点から、環境庁といたしましては、やはりこの自然を保護することは大切なところだというふうに考えておるわけでございまして、事務的には、したがいましてそういうような点を頭に置きながら、もちろん先生のお話にもございますように、国土保全、治水ということは非常に重要な問題でございますので、この点も配慮をいたしまして、その施工方法でありますとかあるいはその規模でありますとか、そういったことにつきまして十分な検討を行ない、審議会にもはかりまして、これについての結論を出したいというように考えておるわけでございます。従前からダムの問題につきましては、自然保護の立場から十分検討をいたしておりますが、そういったような治水の目的でありますとか、そういうような目的につきましては十分に配慮をいたしまして取り扱っているところでございます。
  120. 大石武一

    大石国務大臣 いまのダムの問題についてはよく話を聞いておりませんので、いま局長からお答えした程度でございますが、私、環境庁といたしましては、やはり人命の尊重、これは一番大事でございます。したいがまして、もちろんわれわれは日本のすばらしいこの自然をりっぱに保存して、われわれの子孫に伝えるべき義務がございます。それも私は大きな意義があると思いますが、人命尊重と比べました場合には、どちらかということはおのずから明らかでございます。  したがいまして、このダムをどのようにつくったならばどのような人命の救助になるか、どのように技術的にやったならば自然の保護ができるかといういろんな技術、そういう問題を十分に検討いたしまして、できるならば両者が成立するような方向で進めたいと思いますが、基本的にはやはり人間の尊重ということはわれわれは考えなければならないということを申し上げる次第でございます。
  121. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 環境庁長官から、基本的には人間の尊重ということを中心ということでございますが、ぜひそういったことで慎重に早急に建設省側とも協議なさって、進めていただきたいと思います。  そこで、さっき局長から答弁の中にございました審議会にかけるということでございますが、自然公園審議会にはかるという意味だろうと思うのですけれども、どういう時点で自然公園審議会に意見を聞くということになるのですか。この機会にひとつお伺いしておきたいと思います。
  122. 首尾木一

    首尾木政府委員 私どもとしまして資料を整えまして、それにつきまして、事務的にこれは認めるべきであるかあるいは認められないかといったようなことにつきましてのおおよその私ども考え方がきまった段階におきまして、審議会におはかりをするというのが通例でございます。しかし、この許可の案件につきましては、これは審議会に一々許可についておかけをするということには法律上はなっておりません。従来の慣例を申し上げますと、大きな問題につきまして自然公園審議会の中の管理利用部会というのがございまして、その管理利用部会におはかりをする。これは事実上御相談を申し上げるということでございまして、先ほど申し上げましたように、それにつきましては結論が固まってしまってからおはかりをするというような形式的なそういう性質の問題ではございませんので、これは私どもとして適当な時期に審議会のほうにおはかりをする。ただし、いろいろ資料がまだ整いません段階でおはかりをいたしましても、御意見をいただくことが困難でございますので、資料を十分整えましておはかりをする、こういうような考え方でございます。
  123. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 それでは局長、簡単に若干またお尋ねしますが、現在九地建からボーリングの申請が出ておると思うのですが、この点についてはどういうふうに対処されますか。
  124. 首尾木一

    首尾木政府委員 もしこれの実施ということが初めからいけないということで結論がわかっておりますれば、これは調査をいたすという必要はないわけでございますので、もう少し内容につきまして、施工方法でありますとかあるいはダムの規模でありますとかその目的でありますとか、そういったようなことにつきまして建設省とただいま話をやっておりますので、それによりまして正式に、これについて大体結論として着工にかかれるという公算が大きいというようなことになりますれば、調査のためのボーリングというものについては、これはあまりたいした問題はないと思いますので、これについては許可をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  125. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 それでは最後に長官に一言お尋ねしておきますが、先般委員会で、土呂久の公害調査でぜひ現地を見ていただきたいということで、宮崎県の土呂久公害に対して、長官も、予算委員会が終わったら時間等を見て、ぜひ機会を見て調査をするという御返事をいただいたわけですが、土呂久とこことは背中合わせになっておりまして、ぜひひとつそういった機会に、これは阿蘇の大きな自然保護と熊本市の大きな災害防止という重大な意味を持つダムでもございますので、また日本でも鉄道沿線に近い原生林で、しかもこういうりっぱなものがあるというのは阿蘇ここ一カ所だといわれておりまして、得がたいものでありますから、ぜひこれも保護したい、最小限の破壊でダムをつくっていかねばならぬということも十分私承知しております。また、すぐそばに高森線もありまして、この高森線も若干つかるとなると、廃止になってはいけない、何としても高森線を廃止せずにダムを建設し、自然保護をできるだけ守りたいというようないろいろなむずかしい問題が重なっておりまして、長官みずからもぜひひとつここを土呂久公害とともに見ていただいて、いろいろと早く対策を講じ、住民が安心して生活ができるようにしていただきたい、かように思うわけです。  最後に長官の御所見を承って、質問を終わりたいと思います。
  126. 大石武一

    大石国務大臣 いつというお約束はできませんが、私もぜひ調査に参りまして、現地を目で確かめたい、そう考えております。
  127. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 以上で質問を終わります。
  128. 森田重次郎

    森田主査 次に、栗山礼行君。
  129. 栗山礼行

    栗山分科員 環境庁ができまして、私の尊敬いたしております大石先生が初代長官におなりであります。たいへん大きく敬意を表し、期待を寄せておるわけであります。このことはやはり現下の大きな社会問題であり、政治問題でございます。何か新聞によりますと、佐藤内閣で一番人気と期待を寄せられておるのは環境庁大石長官であるというような新聞の一面もまたゆえなるかなと理解をいたしておるわけであります。実は私も鳥類保護議員懇話会という超党派の会の一メンバーといたしまして、井出先生からの御勧誘に喜んで参加をいたしまして、それの驥尾に付しておる一人でございます。若干そういうことで経過を存じておるわけでありますが、まず今度の予算の問題をながめましても、四十六年度に比しまして七・一四倍、こういうふうな、それぞれの内容がございますけれども、一億二千三十八万五千と、こういうような一つ予算の裏づけを、たいへん長官はじめ関係者が御苦心をされまして、特に最後には大臣折衝を非常なかまえでお運びをいただいて、ともかくこの予算づけがなされた、こういうふうに御報告を受けておるわけでございます。非常にそういう御活躍にもう率直に敬意を表してまいり、大きな期待を寄せてまいりたい、かように考えております。  私は、この予算の中身の問題につきましては、それなりの大きな意味を持つものの項目でございますが、一々この内容についてお尋ねを申し上げるということは、限られた時間でございますから避けてまいりたい、かように考えておるわけでありますが、長官に、すでに御承知のとおりでありますが、一番大きな問題が残されておりはしないか、こういう感がするわけであります。通常関係者の認識といたしましては、全国禁猟区の制度を実施する構想をかねがね長官は抱いておられた、勇躍そういう方向に向かってひとつ御検討をされる、こういう大きな期待が寄せられたのでありますが、新聞の伝えるところによりますと、全国禁猟区制の問題についての十分なる認識あるいは理解の欠如というようなものが出てまいりましたり、また、たいへん他党を責めるようでありますけれども、与党の内部においても関係団体の意見及びそれらについての依存性が発展いたしてまいったというようなことで、まことに残念な経過であろうか、こういうふうに理解をいたしております。私の理解からいきますなれば、長官の全国禁猟区制度一つの問題は、自然環境を保持することと鳥獣の保護に重点を置かれておりますけれども、一部の愛好家の狩猟関係者を、これを否定する一つ内容を持つものではない、かように私は見ておるわけであります。  同時にまた、現在のような禁止区域を定めまして、そしてあと放任で解禁を一定の期限の限度つきで進めておるところに私はおそらく多くのこれの災害が――お伺いいたしませんが、悲劇が出ておる。間違って人間さまを撃つというような誤殺事件等もしばしば新聞等でおうかがいするような内容でございます。  さらに、これを放任いたしますとわが国の自然環境というものが破壊されますとともに、やはり自然の一形態が鳥獣類のあり方でございまして、今日の状態で放置いたしますなれば、おそらく近いうちに自然環境が破壊されまして鳥類それ自体が絶滅する、こういう方向発展をせざるを得ない、そこに問題の根源があるんじゃないか、私はこういうふうに考えておるわけでありますが、長官の伝えられる全国禁猟区制度の構想の問題あるいはその後の御就任されて今日までの経過方向というものについて、きわめて限られた時間において要点だけ承りたい、かように思います。
  130. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまの御質問に対してお答え申し上げますが、その前にちょっと御了解を得たいことがございます。それは全国禁猟区制度ということばでなくて、猟区狩猟制度というふうに私変えてまいりたいと思います。と申しますのは、やはりいろいろなことばの使い方によって誤解を与えたりあるいはあらぬ、要らぬ、必要のない反感を与えたりすることがございますので、禁猟区ということばを使わないで、猟区の中で狩猟するという制度に変えたいということにいまことばを変えてまいりたいと思います。  このような猟区狩猟制度の構想を持ちましてから、ずいぶんと各方面からいろいろと激励の手紙やらはがきをいただいております。だいぶたまりました。やはりそのような自然を何としても守りたい、豊かな日本の自然を残していきたいというあたたかい人々の気持ちが十分に私に伝わってまいります。元来日本のようにどこでも鉄砲撃ってよろしいという地域は世界であまりないようでございます。イギリスでもその他の国でもやはり猟区制度で、猟区で鉄砲を撃つという制度のようでございまして、私はやはり日本にこのような制度を用いることが日本の豊かな自然を残すことにもなりますし、またお話しのように、あやまった発砲によって生命を落とす、そのようなこともなくなると思うのでございます。残念ながらいま日本では毎年八百人前後の人々がこのあやまった発砲によりまして死んだりけがをしております。これはたいへんなことなんで、さらにいろいろな交通事故と違いまして、これは自分が趣味で鉄砲を撃つことなんです。その趣味で撃った鉄砲によってあたら人命を失うということは、一人だって許されないことだと思います。そういう意味では、そのような人命を尊重する立場からも、また、そのようないいかげんな鉄砲を撃たないで済むようなハンターの訓練なりあるいはこれのマナーをつくるためにも、やはりこのような制度が必要であろうと私考えます。ですから、私は何としてもこの国会でこの制度の基礎を打ち立てたいと願っていま鋭意努力いたしております。もちろん、このような猟区をつくって猟区で狩猟を楽しんで、それ以外の地区は鉄砲を撃たないで、農民でもあるいは児童でもあるいは山を歩く人でも、安心して山野を歩くことができるようにしたいということでございますが、そのような猟区をつくります場合に、その他の地域で鳥獣を保護することになりますとやはり時間がかかります。したがいまして、五年なり六年の期間は要ると思います。そういう期間内に各地で猟区をよく整えまして、その猟区は県でやってもよろしい、国でやるほどのこともありますまいが、県で経営してもよろしい、あるいは猟友会その他の団体で経営してもよろしい、あるいは個人で山持ちの人がそのような経営をしてもよろしい。そういう形態で自由に猟区に入り得る人はある程度の料金を出してそうして入る。そうしてそこでは一定の規制を守りながら狩猟、ハンティングを楽しむというようなことにしてまいりたい。各県にそのような猟区が十分に設定されたところからそのようなその他の地域を禁猟にしていきたい、こういうのが一応の考え方でございます。
  131. 栗山礼行

    栗山分科員 いま長官の構想をお伺いいたしまして、私もさような構想の中身であるということを文章で承知をいたしておったのでありますが、世上反対の関係団体等々というものについては、その長官の猟区制のシステムというものについて、あるいは方向というものについて十分理解をいたさずして反対意見を強く進めておる、こういう感がございましたので、これを明確に本委員会でしていただくということでございまして、私はもう全面的に賛意を表してまいりたい。  大きく申し上げまして、私はやはり都市化の問題や自然破壊の問題、それからやはり乱獲というものが今日の鳥類の減少傾向を招いておる一つの要因だ、特に禁止区域が私のことばで申しますなら主客転倒なんですね。禁猟区というものを定めておる、あとはもう野方図だ、こういう一つ条件に置かれておるところに今日の一つの問題がある、こういうふうに思うのです。私は位置の定義を変えていただいて、そしていまのような限られた猟区制度のもとにおいてひとつ自由にしてやっていただく、こういう方向の構想だ、こういうふうに理解をいたしておるわけでありますが、そのとおり理解いたしまして間違いございませんか。
  132. 大石武一

    大石国務大臣 御理解のそのとおりでございます。ありがとうございます。
  133. 栗山礼行

    栗山分科員 お話がございましたので、たいへん御熱心な財団法人日本鳥類保護連盟の理事長からもいろいろ陳情が参っておると思います。私どもこれのレクチュアを受けた一人でございます。まさに先見性のある卓見だ、かように考えておるわけでございます。いろいろのやり方があろうかと思うのでありますけれども日本のような条件では先進国はほとんどやっておらない。アメリカの各州におきましても、ドイツ、オランダ、イギリスにおきましてもすでに長官の構想が実現して、そしてそれが狩猟家自身の楽しいレクリエーション、こういう効果をあげておる、こういうふうに承っておるわけであります。ただ、先ほどの少し具体論に触れるのでありますけれども、この事柄を行なおうといたしますと、長官は国がやってもよろしい、地方自治体がやってもよろしい、またそれの関係団体がやってもよろしい、こういうふうな非常に柔軟性のある表現をされておるのでありますが、諸外国は主としてこれを自由競争の原理を入れて私企業的に自由な創意と発意をもってやっておる、こういうのが大体先進国の実情であるというようにひとつ勉強さしていただいたのであります。この点があいまいになりますと、具体的な一つの構想の上においてもいろいろ困難性が生じてまいるのではないか。私はやはり諸外国のイミテーションでありませんけれども、その創意と長所を取り入れまして、ひとつ日本に適応するような制度をやってまいろうということになりますと、やはり現行の法制上の問題を改正いたしまして、そして私企業的に限られた一つのキャパシティーで、そこで自然鳥を害することなく人工ふ化等を行ないまして、そしてその限りにおいてりっぱな環境とその内容の中でそういう狩猟を進めてもらう、こういうことが望ましいと感ずるのでありますが、若干ひとつ長官の御意見と私の意見とに――基本は一緒でございますけれども方向の具体的路線についてもう少し明確にひとつ構想をお聞かせ願えればけっこうだ、かように考えます。
  134. 大石武一

    大石国務大臣 だれがその猟区を経営するかということにつきましては、まだ具体的にそれは詰めておるわけではございませんが、大体基本的には私企業的なものでよろしいと考えておるわけでございます。外国でも大体がその土地の持ち主、山林、土地の所有者が経営者になりまして、利用する者はその土地の所有者に料金を払って使用するということになっておるようでございますから、栗山委員の御意見と大体同じだと思います。私も大体それでいいと思いますけれども、ただ日本の国では御承知のように大きな土地を持っている人が少のうございます。したがいまして、たとえば全部土地の所有者だけやらせるということになりますと、なかなか猟区は設定しにくいと思う。そういう意味でやはり県が県有地を使うとか、あるいは県が中に入って何人かの山林所有者に話をまとめてあげるとか、あるいは猟友会のような団体がやはり専門家ですから、こういう団体が中心となってある山林、土地をまとめて猟区をつくったらいいじゃないかというだけの考えでございまして、別にそのような、県でなければならぬとかというむずかしい問題ではございませんで、私企業で十分にけっこうだとは私は思っているわけでございますが、日本の狭隘な土地の状態から考えまして、そのように幅を持たしたほうがいいのではなかろうかと一応考えておるわけでございます。
  135. 栗山礼行

    栗山分科員 たいへん卓見をお聞かせをいただきまして、いい勉強をさしていただきました。要は、やはりいまのように法制上の問題がございますのと、立地条件がございます。いろいろなむずかしい諸条件を克服をいたしまして、そしてこれが自然環境を守り、自然を保持する一つの基本の原則である。そしてこれを長期計画でとり組んでまいらなくちゃ、なかなか拙速でいいというわけにはいかないということについても私は同感でございます。ただしかし、問題は今日的問題でございますので、できますなればひとつ計画性のある方向性を立案をしていただいて、そして年次別に漸次実現への方向に英知を傾倒していただいて、それの実現を特に御要望申し上げたい、かように考えております。  次の問題に移ります。時間が限られておりますが、水質保全の問題でございます。  過般、私は新聞で、私の近畿の淀川の水質汚濁についてみずから視察をいただいて、その記者会見の内容等もお伺いをいたしました。おそらく飲用水である上水道の根源である淀川の水質があのように汚濁をしておるということは想像もしなかったというような新たな感を実情を見てお抱きになった、こういう受けとめ方をいたしました。これは単に淀川だけではございません。東京におきます多摩川というような問題もございましょう。その他にもございましょうが、結局これはやはりたいへんな命の問題でございます。一つのいい水質ということでございます。このように私は大阪府の衛生部の調査の資料を持ってまいったのでありますが、上水道かで最低〇・〇六PPM、それから最高が一・二五PPMのPCBが出ております。しかも川底のどろから検出をされておる、こういうふうな大阪府の資料をちょうだいをいたしてまいりました。これはまさにたいへんな命と暮らしへの大きな危機感をひしひしと感ずる一つの問題でございまして、水質汚濁の問題の具体的な解消の方策をどのようにお運びをいただいておるか、またその構想をどのように練っていただいておるか、こういうことについてお尋ねを申し上げたい、かように思います。
  136. 大石武一

    大石国務大臣 私は、昨年の秋でございましたか、ヘリコプターで一度あの淀川の上を飛びまして、三川合流の地点まで、つまり水道の取水地でございますが、そこまで飛んで様子を見ましたり、その後大阪市の商工会議所の御要請によりまして現地を見てまいりました。あまりきたない川なので驚いてまいりました。どうしたらいいか私わかりませんが、とにかくこれは大事な生命の水であります。生命というのは水でございますから、何としてもこれはりっぱな水質を保っていかなければならないと感じてまいりました。結局、あの琵琶湖その他を水源としているのが一番多いわけなんです。琵琶湖の水を京都で利用して、あるいは京都の人、そういう人が自分の使った水その他を川に流して、それが淀川に合流してああいうことになっているわけでございますから、結局は琶琵湖なり、つまり滋賀県なり京都府なりあるいは大阪府の人々がお互いに十分に相談をして、そうしてお互いに対策、方針をきめて、総合的な基本的な水質の保全並びに利用の計画を立てることが一番肝要ではなかろうか、そういうことでぜひ県知事さん、市長さんが集まってしょっちゅうそのような会合をして対策なり方針をおつくりなさいということを、はなはだ恐縮でございましたが、知事さんにもお話ししてまいったのでございます。  御承知のように、いわゆる琵琶湖の水を中心とした総合開発の問題がいま起こっております。これはいろいろな観点からいままで長いこと論議されてまいりまして、おもにその水が工業用水に使われるような方向で論議が進められてまいったように聞いております。しかし、いま時代は変わっております。この水はぜひともやはり人間が存続するための大事な水でありますから、その人間の生命を尊重するような方向においてこの水の利用を論ぜられるが一番望ましいと思います。そういう意味では、私は、この琵琶湖の総合開発につきましては、やはり人間の環境保全という立場中心にして議論されるべきであろう。ことに、いま大阪その他は、あのような狭隘な地域に、あまりに工場、企業が多過ぎます。したがって、実にいま環境保全の上からは日本で一番悪い地域だと思うのです。その上に、もうあの辺では工場は疎開させるべきであって、一つの工場もふやす余地はないと思います。そういう見地から、いたずらに安価な工業用水をつくって、さらに不必要な――実際不必要なと私は思います、あそこに企業をたくさん集めて今後環境を悪化させることは忍びないと思いますので、どうかそのような総合開発も、やはり人間環境保全という立場中心として考えられるのが望ましいと考えておる次第でございます。
  137. 栗山礼行

    栗山分科員 あまり時間がございません。私、本来申し上げますと、PCBの問題につきましては、結論的に、それの処理の問題は環境庁に存する。しかし、それのプロセスを考えてみますと、製造の問題とかあるいは禁止の問題とか、それから廃棄物の処理の問題とかとなりますと、また役所はセクト主義でありますから、厚生省の所管上の問題とか、実に複雑な行政分野の内容で取りはかられるのであります。したがって、適正でございませんが、環境庁長官といたしまして、いわゆる大きな問題のPCBの使用を全面禁止すべきであるという意見を私は強く持つのでありますが、この程度の可否の問題は、所管長官としても率直な御回答をいただけるのではないかというのが一つでございます。もう一つ、これは厚生関係にわたりますけれども、現在使用中のPCBの廃棄処理についてどうするかということ、時期と具体的内容について、実は所管外だと仰せになりますとそれまででございますけれども、やはり環境行政をあずかる長官としての私見でけっこうでございます。それから先ほどお話がございましたが、やはりPCBの汚染地区の環境保全というものについてどのように進めてまいることが望ましいのか。  こういう三点にわたりましての御構想を承りたいと思います。
  138. 大石武一

    大石国務大臣 PCBの使用につきましては、お説のとおりやはりこれは禁止したいと私は思います。幸いに通産省でももちろんそのような見解でございまして、いろいろな開放系のPCBは使用禁止しておりますし、閉鎖系のものもことしじゅう、夏ごろには何か使用禁止するような方向にあるようでございまして、やはりこれは即刻にも禁止したいのでございますが、行政上簡単にまいりませんが、このような決断を通産省がしたということは、私は非常に高く評価すべきだと思います。そういうわけで、今後いずれ近い将来に、もう年内の夏ごろからは全面的な使用禁止になると思いますけれども、それまでに使用しているものをやはりある程度回収したり、あるいは廃棄されるものを回収したりすることがしばらく残りますから、やはり今後もいろいろなPCBの対策については、ことにその回収努力を大いにしてもらわなければならないと考えます。  そのPCBでございますが、いま一番大事なことは、PCBが一体どのような毒性を持っているのか、どのような地域にどれだけ含まれているのかというような基本的なことをまず確かめることが大事だと思いますが、残念ながらまだPCBというものを完全に分析する方法がほとんどないのでございます。ようやく厚生省の努力によりまして、ごく最近の、おそらく数カ月以内と思いますが、大体食品とか、きれいな水の中のPCBは十分に分析し得る手段が見つかったようでございまして、これだけでも一歩前進でございますが、まだきたない水、汚水とか、つまりいろいろなものがまじっているものの分析は必ずしも見通しが立たない状態でございます。これは非常に困ったことで、何としても日本の科学の粋を集めまして、PCBの確実な分析方法と申しますか、こういうものを早く確立することが必要だと思います。それができたならば、できるだけまずPCBに汚染されていると思われる地区を中心といたしまして、やはり十分に総点検をする必要があると思います、どれだけの汚染度があるかどうかということを。これが大事な問題だと思います。また片方では、これは厚生省関係かもしれませんが、PCBが生体に対して一体どれだけの悪い影響があるのか、どれだけの量が人間に対して害があるのかといったような生物学的な研究も早く進めてもらわなければならぬと思います。  こういうことをやりまして、そして初めてPCBに対する対策というものが打ち立てられると思います。いまのところは無我夢中で、母乳からPCBが少し出たからどうするとか、安全であるとか安全でないとか、それならばしばらく母乳をやめてなどということしかない、これでは非常に困ります。しかもPCBというのは日本全国どこにも――ちり紙にも何にもあるというようなことらしいのでございまして、ほんとうに実態がわからないのでございますから、いまのような三つの点を早く――早くといっても一カ月や二カ月ではできますまいけれども、早くそのような方向を進めまして、そのような基本的な見地から対策を立ててまいらなければならぬのではなかろうかと考えておる次第でございます。
  139. 栗山礼行

    栗山分科員 長官みずから三点の問題について、たいへん懇切にお答えをいただきまして、私は細論や具体論を避けてまいりたい、かように考えております。  最後に、ひしひしと未来への不安を感ずる現在的なわれわれの生活について、生命それ自身の大きな不安を感ずるというのが今日のとらえ方のすべてでなかろうか、こういう状況下に置かれておりますときに、いみじくも環境庁というものが生まれてまいった、まさに創成期のいろいろ作業の困難な出発の中に、火中に栗を拾うような一つの状況であろうかということを十分しろうとながら推察をできるのでありますが、問題は、長官の得意であり、最も熱情を注がれる一つ行政分野で大いに、魚が海を得た、こういう考え方をお持ちいただいて、環境行政について十分な御成果を目ざして活躍を、私はむしろつつしんでお願いを申し上げる、こういうことで私の質問を終わりたいと、かように考えます。
  140. 森田重次郎

    森田主査 午後一時三十分から再開し、文部省所管について質疑を行ないます。  この際、暫時休憩いたします。     午後一時二十分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  141. 森田重次郎

    森田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十七年度一般会計予算及び昭和四十七年度特別会計予算文部省所管を議題とし、去る二十一日に引き続き質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石川次夫君。
  142. 石川次夫

    石川分科員 私は、地方の小さな幼稚園の名前だけの園長をやっておりまして、私立幼稚園の現場のなまの声をしょっちゅう聞いておるわけです。したがって、文部省の、あえて机上の空論とは申しませんけれども、理論とはまた違った観点でいろいろ意見があるのでございますが、しかし申し上げたい点が多岐にまたがっておりまして、とうてい三十分でこれを尽くすということは不可能だと思うので、御答弁のほうは簡潔に結論的にしていただければけっこうだし、残った点はまたあらためて文教委員会その他で追及し、あるいは質問をしたい、こう考えておるわけであります。  そこで、幼稚園に限りませんけれども、公金その他の公の財産は、宗教上の組織その他のもので使用するとかあるいはまた公の支配に属しない教育その他には使ってはならぬというのが憲法八十九条で規定をされておりまして、個人の幼稚園に対してはノーサポーティーであるということになっておるわけでありますけれども、しかしながら現実には、幼稚園をつくる場合には、柱の太さからあるいはまたその中の設備から、非常にことこまかに規定をされて、コントロールを受けておるわけなんです。したがってサポートだけがノーだということはどうも合点がいかないという気持ちがしてならない。そういう感じがまずされるわけであります。  それで、外国の幼稚園の実態を見ますというと、一クラス大体二十人ぐらいで、もう積み木もなければあるいはまた運動場にも、日本にはいろいろなすべり台などありますけれども、それもない。それからピアノもオルガンもない。こういうような状態で、それこそ文部省で出しております幼稚園教育要領に、よく伸び伸びということばが書いてありますけれども、全く伸び伸びとやっておるわけなんです。教育指導要領などでこまかく規制をしていくこと自体に相当問題があるのではなかろうかという私の気持ちであります。  それは別といたしまして、私立幼稚園の数が大体六二・七%でありますから、相当私立幼稚園に依存している面が多いし、また私立幼稚園がそれぞれ独自の立場で独自の研究をしながら幼児教育に専念をしておる。まあ私は、幼児教育と思春期の教育はやはり一番重要な教育でありながら、ほとんど幼児教育については論議をされたといういきさつがないような感じがするので、これを今後文教委員会などで私どもいろいろと掘り下げていってみたい、こういう感じを持っておるわけであります。  そこで、まず第一点でありますけれども、中教審で権威者といわれるいろいろな方々が集まって、幼児学校をつくるとか義務化をするとかというふうな答申を出されております。私はこの構成メンバーに相当不満がございまして、現場の声というものがなまに反映をするような状態にはなっておらぬのではないか。そして財界人がかなりの発言権を持っておる。それから文部省のお役人が相当多く入っているというようなことで、中教審の答申については、幼児教育に限らず、私は幾多の反論を持っておるわけであります。  まあ幼児教育の面だけで申し上げますというと、大体大脳生理学者の時實さんたちの意見などが相当大きく反映いたしまして、あるいはまた心理学の発達ということもございまして、三歳から八歳までの間に大体脳の形成は八〇%きまるんだ、こういうことになってまいりましてから、幼児教育というものに対する関心が相当高まってきておるという事実は見のがすことができないと思うのであります。そこで、たとえばソニーの井深さんたちなどは、相当幼児教育というものの重要性というものを強調して――まあ財界の立場に立てば、情報化時代に備えて知育教育というものを幼児のときからやらにゃいかぬ、こういう気持ちになる。あるいはまた労働人口というものを質的一に高いものを早く求めたいという気持ちでいろいろと意見を出されております。これは財界人としては無理からぬことであって、一つの見識としてあえてこれを退ける気持ちは私はないのでありますが、教育の場ではたしてこれでいいかどうかということになると、私は相当問題があろうかと思います。それも議論になりますからきょうは触れません。  そこで、中教審の答申によるところのいわゆる義務化という問題でありますけれども、ところが、最近の幼稚園教育振興計画案全十カ年のうちの前半五カ年計画を見ますと、市町村に設置の義務を与えるとかというふうな義務化の問題については触れておらないわけであります。中教審の答申とはこの点がちょっとずれているんではないか、こういう感じがするわけでありますけれども、この義務化ということ、幼児学校をつくるということ、一体文部省当局としては、この中教審の答申に沿って先導的試行ということをこれから行なうわけでありますけれども、はたしてどこまでこの答申を尊重して義務化に進むというお気持ちがあるのか、それとも、この幼稚園教育振興計画案にはそのことに全然触れておらないということで、まだまだそういうことを考え段階ではないんだということなのか、ちょっと伺いたいと思うのです。  なぜ私がそれにひっかかるかと申しますと、昭和四十六年の六月十一日の中教審の百二十回総会で前文部大臣の坂田さんが、答申の趣旨に基づいて私立幼稚園以外の私立学校に対して云々ということばがあるわけです。そうなると私立幼稚園だけを除いたということは、私立幼稚園は義務化するんだということが前提なんではないかという憶測がここから生まれてくるわけなんで、そういう方針を踏襲されておるのかどうか、ひとつ簡潔にお答え願いたいと思うのです。
  143. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 中教審では、確かに御指摘のように義務化ということばを使っておりますけれども、私どもから見ますと、厳密に法律的な意味における義務化というふうな意味にはとれないわけでございます。それを私ども考え方で受けとめますと、希望をする者は必ず幼稚園教育を受けられるようにしてやれというふうに理解したほうが正しい受けとめ方じゃないか、そういうふうに考えているわけでございます。  なお、義務教育ということになりますと、これはまた非常にたいへんなことでございまして、大臣もしばしば申し上げておりますように、これは相当な検討と国民的な合意の上に立って、義務化するかどうか、義務教育とするかどうかということをきめるべきものであろう、まあそういうふうに考えているわけでございます。
  144. 石川次夫

    石川分科員 これはたいへんな問題でありますから、相当慎重に対処してもらわなければならぬと思うし、まあ私見を言わしてもらえばいろいろあるんでございますけれども、公立化的な意味での義務化ということになりますと、ほんとうに子供の人格形成の一番大事な幼児期に、いろんなカリキュラムでもって画一的な教育におちいるということは、私は絶対反対なんです。そういう点では、この義務化の意味もまだ不確定な要素が相当多いわけでありますけれども、私も公立幼稚園などを見たり私立幼稚園見ても――私立幼稚園の中にも相当投げやりなところもないではありません。しかしながら少なくとも私利私欲に走ってどうこうということではなくて、金もうけをするんだったらもっとほかに幾らでもやることがあるんであって、何らかの形でもって社会的に貢献をしているということは見のがすわけにはいかないし、そしてまた公立幼稚園でのカリキュラム的な、極端な言い方をすれば、動物の条件反射的なものを利用したような礼儀正しいきちっとした教育というものは、私は幼児教育では絶対やるべきではないと思う。そういう点で、この義務化の内容というものは今後どうなるんだ、また、はたして義務化がいいのかどうかということから出発をして、よほど慎重に対処してもらわないとたいへんなことになるんではないか、私はこういう懸念をいたしております。  次に、先へ急ぎますけれども、私立幼稚園は何とかして法人化しなきゃいかぬ、個人立はいかぬということで、私は、コントロールは現実にいろんな意味でされているんだからサポートもすべきである、こういう意見を持っているのでありますが、個人幼稚園に対しては法人幼稚園とはちょっと違った観点で考えておられるのが実情であります。  そこで伺いたいのでありますが、学校教育法の第百二条では「当分の間、学校法人によつて設置されることを要しない。」こう書いてある。「当分の間」とは一体何を意味するのかということを、まず結論的に簡単に御答弁願います。
  145. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 当分の間がいつまでであるかという限定は特にはございませんが、しかし、学校教育法の本則が、私立幼稚園の設置主体が学校法人であるということを要求いたしておりますので、なるべく早い機会にそういう状態にしたいということであろうかと思います。  文部省の指導方針といたしましては、昭和三十九年以来、新設の学校、幼稚園につきましては、原則としてその設置主体を学校法人とするという指導をいたしておりまして、それに従いまして、二十五の府県におきましては、新設幼稚園の設置主体はすべて学校法人でなければならないという方針をとっております。なお、現に学校法人以外の幼稚園の設置主体につきましては、すみやかに学校法人化するようにという指導もいたしておりまして、徐々にではございますが、そういう方向に進展しつつある状況でございます。
  146. 石川次夫

    石川分科員 当分の間というのは、なるべく早くこれを解消するという考え方のようですけれども、法人化を妨げる要因があまりにも多過ぎるということもお考えをいただかなければならぬと思うのです。それは、御承知のように、いま申し上げた中教審の答申で義務化というふうな問題が出ますと、義務化の内容というものがまだ不確定なだけに、義務教育になったらおれたちの幼稚園はどうなるのだ、学校法人なんかにしたってしようがないじゃないかという気持ちがまず一つの要因になります。ところが、あと一つ、この法人化を妨げる要因としては、次官通達で、だいぶ古いのでありますが、昭和二十五年の三月十四日出ていますね、これには基本財産は原則として負担つきまたは借用のものであってはいけないということが明記されてあるわけです。ところが、いま借地でもって幼稚園を始めて、その土地を売ってくれと言ったって、なかなか売ってくれない、どうしても借地になら、ざるを得ない。また土地を買ってやろうとしても、都会なんかでは高くてとてもじゃないが採算が合わない。こういう面も出てくるわけです。そうすると、こういうことで実際には次官通達の阻害要因に該当いたしますから、法人化をできないという現実があるわけです。  それからあと一つ問題になりますのは、適正配置の問題をあとから私取り上げようと思っているのですが、適正配置に沿わないような配置のしかたをすると、どんどん休園、廃園を余儀なくされているという実態があるわけですね。私立幼稚園のわきに公立幼稚園をどんどん隣合わせにしてつくっちゃうということになると、廃園せざるを得ないというような不安定な要素がある。それから、学校法人にせっかくしてみたところで、私立学校法の第五十一条でもって、それを整理するときには何も残らないわけです。全部処分をして、手元には残らないということに規定をされておるわけです。こういうことも不安な要素になって残っておるわけです。そういうふうなことがいろいろございまして、学校法人化を進めるといっても実際問題としてはなかなか進み得ないというのが実態ではなかろうか。したがって、私は学校法人にだけ特定な恩典を与えるということだけでは進まないのであって、この阻害要因である、たとえば次官通達というものをまた書きかえるとか、考え直すとか、こういうようなことからまず出発をしなければ、法人化を進めるといってもかけ声だけに終わってしまうのではないか、こういうことを考えざるを得ないのでございますけれども、結論的に言ってけっこうでございます、どうお考えになっておりますか。
  147. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 学校法人立以外の幼稚園の学校法人化を阻害する要因といたしまして、ただいまおあげになりましたようなことは確かにそういうことであろうかと思います。ただ、順次申し上げますと、第一の、解散をいたしました場合の残余財産の帰属の問題でございますが、確かに厳重な制限はあるわけでございますが、これは幼稚園だけの制限ではございませんで、私立学校を設置する学校法人全体につきまして、そういう扱いをいたしておるわけでありまして、幼稚園だけについて例外措置を講ずるということはやはり問題であろうかと思います。  それから、学校法人は税法上非常な恩典を受けておるわけでございます。したがいまして、その経営の間に蓄積されました資産が、解散時におきましてもとの寄付者に返るというようなことになりますと、現在講じております免税措置との関連というものもまた問題になろうかと思います。  それからこの次官通達の問題でございますが、確かにおっしゃるような点が問題かと思いまして、私ども部内におきましてこの次官通達の一部改正について目下検討中でございます。幼稚園の普及奨励をはかるという観点から、単に実情に合わせるということではございませんけれども、もう少し妥当な内容のものに改める必要があるのではないかというふうに考えておりまして、将来、法人化の隘路につきましては、いろいろな方面から検討してまいりたいというふうに考えております。
  148. 石川次夫

    石川分科員 まあ法人化を進めるという方向を私は必ずしも否定しようと思っているわけではないのですけれども、現実の問題として非常に困難が伴っておるようなことをよく御認識を願わなければならぬと思うのです。法人化については、昭和二十二年にも、三十一年にも、三十二年、三十六年、それから三十九年から四十五年までの幼稚園教育七カ年計画、それから昭和四十五年、昭和四十六年、中教審の答申の個人立の法人化というので、もう何回も何回も通達が、二十五年以来出ているわけです。しかもそれがなぜなし得ないかということの現実をよく御理解を願わなければならぬと思います。  特に中教審でもって義務化という問題が出てから、一体将来はどうなるのだかわからぬのに、無理に法人化してはとんだことになるのではないかという恐怖心に似たような憶測が出ておるわけですね。そういうふうなことと、現実に土地を所有して――これは大学とは、幼稚園の場合はちょっと違うのですね。百人か二百人くらいの子供を預っているというほんとうに区々たる設立が多いわけですから、そういうわけで法人化を阻害する要因というものをまず除外してかからなければ、いきなり、法人化のほうが正しいのであってその方向づけをしなければいかぬのだといっても、そうなり得ないのだ。この阻害原因というものを除去するという努力なしには、いまのままでは、やはりこの百二条のように「当分の間」はいつまでも当分の間で存続してしまわざるを得ないという実態をよく御認識を願いたいと思うのです。  それから、時間がありませんから先にまた進んでしまいますけれども、格差是正の問題であります。これは文部省の調べでもはっきりいたしておりますが、大体において公立の父兄負担は一万円、私立の場合は三万七千円というたいへんな開きがあるわけです。そこで日私幼といいますか、日本私立幼稚園連合会といたしましては、今年度四十一億九千七百万円、公立のほうは税金によって相当優遇されて、安い父兄負担で済んでいる。私立のほうはその恩典に浴してないのだ、その差というものを埋めてもらうために、どうしても幼稚園に対してだけ特別な人件費補助を含んでの補助を出してもらいたい、こういう要求が出ておりましたことは御承知のとおりだと思うのです。それに対する予算案として出てきましたものは、十億円といいますか、幼稚園の就園奨励費というかっこうで出てまいりました。百万から百二十万円までが年間五千円、百万円以下が一万円というようなことになってきたわけです。これは、まあいままでから見れば一歩前進だということにはなりましょうけれども、この日私幼でもって要求をした、公立と私立の格差是正にはほとんど役に立たないだけではなくて、むしろこの格差を広げるという結果になっておる。これは要求の側、幼稚園の側からすれば非常に不本意なわけであります。それと、あと一つ百万から百二十万だとかあるいは百万以下だとかいうようなことでもって補助を出すということは、考え方としてはわかりますが、これはおとなの考え方なんです。子供はこれは微妙に反映をしてどういうふうに受けとめるかということをお考えになってはいないのではないか。大きな、たとえば何といいますか裕福な人たちの多いようなところの中で、そういう子供がぽつぽつと入っているというようなときに、その子供たちだけは就園奨励費を受けるのだというふうなことを言いかねる、あるいはもらったにしても非常にひけ目を感ずるという、子供の非常に微妙な心理というものをお考えになっておらない。したがって、こういう考え方はおとなの考え方で、何とかしてやらなければならぬという熱意はよくわかりますけれども、この格差を是正するという意味では何らの意味をなさないのではないか。また、実際の効果というものは、はなはだ疑わしい面が多いのではなかろうか、私はこういう感じがしてならないわけであります。学校法人のほうに対しては、いままでも交付税の中で年間一人当たり二千円ですか、これは出ております。これはこのままで存続して、もっと拡大してもらいたいという気持ちはありますけれども、一方で、御承知のように神戸方式とかあるいは神奈川方式というのがございますね。一等初め西宮市で始まって、それから尼崎が次いで行なわれ、それから池田市が行ない、相次いで各地で行なっております。私がいま住んでおります日立市でもやっております。私立の幼稚園の子供一人に対して、これは委託費という名前でなければ出せないことになりますね。これは県やそれから国のほうから何ら指導、指示を受けたわけでもないのに、市単独でこの格差の問題を何とかしょうという熱意から、私立幼稚園の子供一人当たり五百円とか七百円とか千円とか――神戸あたりは相当多額に出しておると聞いておりますけれども、こういうような単純な方式なら、これはえこひいきなしに格差是正というものはできるわけなんです。しかし、これは憲法八十九条との関係でできないというふうにおっしゃる必要もないんではなかろうか。こういう単純方式はなぜとれないのだろうか。これこそ格差是正には一番単純明快で、しかもきわめて効果的な方法ではなかったのだろうか、こういう感じがいたしますけれども、その点はどういう経緯でこういうふうな就園奨励費ということになり、また、その所得の格差によって変えるというようなことになったのだろうかという疑問を私は持っておるわけなんです。それで私が提案しましたようなやり方がどうしてできないだろうか、またそれが一番いい方法ではないのだろうか、こう考えるのでありますけれども、その点、お考えを聞きたいと思うのです。
  149. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 ただいま先生が御指摘になりましたようなことを目ざしまして、私ども予算の要求をしたわけでございますけれども、これが実際には二つに分かれたわけでございます。その一つは、父兄負担の軽減という観点から、就園奨励費十億というものが一方では計上されたわけでございまして、これは所得の低い階層のお子さんでも、全部希望する者は幼稚園に行けるようにしてやりたいという観点からでございまして、これが  一つの観点であろうと思います。ただ、ただいま先生が御指摘になりましたように、子供に与える影響というのは確かにございますので、この点につきましては実施上くれぐれも注意してまいりたいというふうに考えているわけでございます。  それから、一番大きな格差の是正ということでございますが、これは御案内のように、大学、高等学校、小中学校につきましても同じような問題があるわけでございますけれども、ただいまのところ格差の是正ということは、人件費を含む経常費の助成という形で格差の是正をはかるという方向にまいっているわけでございます。  そこで、先生御指摘にございましたように、学校法人立の幼稚園につきましては、ただいま地方交付税で財源措置がとられているわけでございますけれども、これを個人立、宗教法人立の幼稚園につきましても拡大をしたいということで、実は来年度からそういうふうな手当てをいたしまして、ただいまこの国会予算審議をお願いしている段階でございます。ただ、これにつきましては、憲法上の問題もございまして法律の改正が必要でございます。そこで、あわせて法律の改正もお願いをするというふうな方向でただいま国会にお願いをしているような段階でございます。
  150. 石川次夫

    石川分科員 私立学校法または日本私学振興財団法、これの改正を今度提案をされているというのも、そういうねらいもあってのことだというふうに了解はいたしております。いままでの学校法人の関係に対しての交付税によるところの補助助成というものは、あくまでも既得権ということだけではなくて、やはり残しておいてあげたいと思うし、それからそれ以外に、やはり私は子供の微妙な心理的な影響などというものを考えると、実際上の運用として一番簡便な方法として、幼児教育を充実するならば、一人当たり幾らというふうな単純な委託費形式というものが一番効果があると思う。これを所得の差によってどうこうというふうなことになると、非常に事務的にも煩瑣であるということもありますが、それは別といたしましても、子供に与える影響というものを十分考えていただかなければならぬ、こういう気持ちがしてならないわけであります。これから幼稚園の不足を補うということに、一万一千園というものを二万七百園まで伸ばすのだということでお考えになっておると、これはどうしても私立幼稚園でなければならぬ。これは全部学校法人という形でできるかどうかということについても、相当多くの問題が都会地などには残されておるわけです。したがって、純然たる個人立の幼稚園といえども、これはやはり社会的に貢献をしよう。大もうけをしようなんというのでやっているのだという実態はほとんどございません。もうけたいのなら、幾らでもほかに方法があるわけなんです。  それで、時間がないんで私は非常に掘り下げが足りなくて、いずれ機会を見ていろいろ、特に中教審の問題などについては伺いたいと思っているわけでありますけれども、いまこの幼稚園の設立者といいますかそういう人たちを集めて、何が一番重大な関心を持っているかというと、いうまでもなく適正配置というものが圧倒的な関心事であります。これは、各地で私立のすぐそばに公立ができたために廃園になってしまう。たとえば新宿区では、十年間に三十二園もふえてしまって、そして八園、厳密に考えれば十三園が廃園になってしまっている。公立三十六園現在あるうちで、区立の小学校に併立しているものが三十四園もあるというようなことになっておって、私立幼稚園が非常な圧迫をされておる。したがって、学校法人にするなんていったって、そんなことになれば元も子もないんだということが、先ほど私が申し上げたとおりの事情で、法人化できない阻害要因にもなっておるということも御理解願いたいと思うのですけれども、三十八年の十月には、文部省の初等中等教育局長とそれから厚生省の児童局長が、幼稚園と保育所との関係についていろいろな指示をいたしております。しかし、これは目的が全然違うのですけれども、受けるほうは、幼稚園でも保育園でもとにかく子供を預けるというふうな混迷がございますから、それでこういう通達が出、ざるを得なかったということはわかります。それから昭和三十九年に初等中等教育局長とそれから管理局長の連記でもって、幼稚園の振興についてという通達の中で、大体の原則として一万人に一園だとか、それから既設幼稚園を配慮して設置をしろとか、それから通園距離を十分考えろとかあるいはまた、都道府県または知事に連絡協議会というものを設けてもらいたい、こういうような要求といいますか、指導要領が出ておるわけであります。しかも日私幼のほうの側からは、公立を設置する場合には、私立の伸びでまかなえないという場合に限ってそれをつくるということにしてもらわなければ困る、まかない切れない場合にやる、無条件にばたばたつくられたのでは、休園、廃園というものがいままでどおり続出をする。地方の権力関係でいろいろなことがあるわけですが、それは申し上げる時間がありませんけれども、そういう要求が一つあります。  それから振興計画策定機関、それから調整機関を都道府県あるいは市町村段階でもって設置する義務を与える。そして併立によることによって、個人立で非常に営々として苦労した幼稚園が廃園になるというようなことがないような努力をすることがぜひ必要なのではないか。この適正配置の問題は非常に深刻な問題でございますので、この対策というものに対しては、相当真剣に取り組んでもらわなければならぬと思うのでありますが、この点はどうお考えになっておりますか。
  151. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お答えいたします。  適正配置の問題は非常に大事な問題でございます。ことに、私は今日まで私立幼稚園が果たしてまいりました役割りというものを考えますと、この私立幼稚園があるいは義務化等の制度によりまして、打撃を受けるというようなことは絶対にあってはならぬ。そこで昭和四十七年度中に厳密な調査をいたしまして、この地区は公立がいい、この地区は私立がいいというような問題まで含めましての配置の調査をいたしたいというつもりで取り進めておりますので、その辺の御心配はないようにお願いをいたしたいと思います。
  152. 石川次夫

    石川分科員 いよいよ時間がなくなりました。最後に強くお願いをしておきたいのは、中教審の答申は一応尊重しなければならぬでしょうけれども、現場の声というものはほとんど反映をいたしておりません。三歳から八歳までの間に大体の頭脳の八〇%が形成されるということは、これは事実のようであります。したがって、それだからこそ財界はあせって、情報化時代に備えて、知育教育に片寄るという傾きがどうしても出てくる。私はそれは逆行だと思うのです。子供の個性化と、生命化と、社会化というものを進めることは、そういうことであってはならぬということで、本質的な問題について、私はまたさらに重ねて機会を得て議論をしたい、意見も申し上げたいと思っておりますが、時間がございませんから、この程度で終わりにしたいと思います。
  153. 森田重次郎

    森田主査 次に、細谷治嘉君。
  154. 細谷治嘉

    細谷分科員 最初に文部省にお尋ねいたしますが、昭和四十七年度において、私立の大学の補助は三百億円程度計上されておるわけでありますけれども、私立の高等学校なり中学校に対しての補助はどうなっておるのか、まずお尋ねいたします。
  155. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私立の高等学校以下に対しまする国の補助でございますが、産業教育の振興でございますとか、理科教育の振興でございますとか、あるいは定時制・通信教育、特殊教育、幼稚園教育といった特別の行政目的を促進をするための補助金といたしまして、各種のものを計上しておるわけでございますが、高等学校の産業教育の設備等の整備費補助金といたしましては三億六百八十六万円、同じく高等学校の産業教育の施設整備費の補助といたしましては三億七千三百二十二万円、それから理科教育等の設備費といたしまして三億四千七十六万円、それから高等学校の定時制・通信教育の設備等の補助といたしまして二億六千六百三十三万円、特殊教育の設備費でございますが、これはちょっと公私立の仕分けができておりませんが、私立、公立を含めまして三億五千九百七十五万円、それから私立の特殊教育諸学校の教育費の補助といたしまして四千三百二十万円、それから私立の夜間定時制高等学校の夜食費の補助といたしまして四百八万円、私立の幼稚園の施設費の補助といたしまして七億六千三百十万円、私立の幼稚園の園具等の整備費の補助といたしまして七千百三十二万円を補助金として四十七年度予算にお願いをいたしておるわけでございますが、ちょっと関連して申し上げますと、日本私学振興財団の融資におきましても、高等学校以下の私立学校に対しまして、施設に関するものといたしましては七十五億円を一応ワクとしては予定をいたしております。
  156. 細谷治嘉

    細谷分科員 いまのお答えによりますと、補助金というのは大体十七、八億くらいになりますか、合計。あとで一覧表をひとついただきますけれども、合計幾らになっていますか。
  157. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ちょっとトータルはございません。計算させます。
  158. 細谷治嘉

    細谷分科員 いま大ざっぱに見ますと、二十億円足らずと思うのですね。幼稚園の七億ばかりというのがありますけれども、自治省いらっしゃいますか。
  159. 潮田康夫

    ○潮田説明員 私、交付税課長が参っております。
  160. 細谷治嘉

    細谷分科員 潮田さんですね。
  161. 潮田康夫

    ○潮田説明員 はい。
  162. 細谷治嘉

    細谷分科員 四十六年度で地方交付税の基準財政需要額に私立の高等学校、中学校等に対してどの程度計入されておりますか。
  163. 潮田康夫

    ○潮田説明員 お答え申し上げます。  百四十億でございます。
  164. 細谷治嘉

    細谷分科員 四十六年度で地方交付税の基準財政需要額に計人されたのは百四十一億二千八百万円、間違いございませんね。
  165. 潮田康夫

    ○潮田説明員 はい。
  166. 細谷治嘉

    細谷分科員 その内訳は、不交付団体分五十八億六千四百万、交付団体分八十二億六千四百万、これも数字間違いありませんね。
  167. 潮田康夫

    ○潮田説明員 いまの交付、不交付分ですけれども、交付団体分が八十三億であったと思います。それから不交付団体が五十八億でございます。
  168. 細谷治嘉

    細谷分科員 そこでお尋ねいたしますが、貸し付け金を除きまして、各都道府県が補助金として支出した額は幾らになっていますか。
  169. 潮田康夫

    ○潮田説明員 私のほうの手元にあります数字は四十五年度の決算額でございますが、それによりますと、総額で人件費を含む経常経費、設備費、施設費、共済、退職金社団その他全体を合わせまして百六十五億でございます。その中で交付分が六十二億、不交付団体が百三億、こういう数字になっております。
  170. 細谷治嘉

    細谷分科員 私は、自治省からいただいた資料でございますけれども、これは全審連の調査資料ということですね。それによりますと、四十六年度二百七億円程度の補助金が出ているのじゃないですか。
  171. 潮田康夫

    ○潮田説明員 お答え申し上げます。  いま私が申し上げましたのは、決算額で申し上げておるわけでございまして、現在の四十五年度の決算額でございます。おそらく先生のは四十六年度でございますので、申しわけございませんが、手元に四十五年度の決算しか持っておりませんので、その数字が正確かどうかは御返事申し上げかねる次第でございます。
  172. 細谷治嘉

    細谷分科員 この資料によりますと、四十五年度は百六十三億の補助金が出まして、その際四十五年度でありますから、基準財政需要額に計入した数字は、対応する数字は八十三億ですね。そういたしますと、四十五年度では補助金と交付税との差額がおおよそ八十一億円、こういうことになるわけでありますが、間違いありませんか。
  173. 潮田康夫

    ○潮田説明員 お答え申し上げます。  はなはだ恐縮ですが、四十五年度の需要にほうり込みました金額をちょっと手元に持っておりませんので、四十六年度と四十七年度しか持っておりませんので、ちょっと御返事いたしかねます。
  174. 細谷治嘉

    細谷分科員 数字はお持ちにならないそうでありますけれども、私が持っておる数字によりますと、数字を申し上げますと、四十六年度はこれは決算額じゃないですけれども、二百七億円の補助金が出されておって、交付税で計入されたものは百四十一億円、差し引き七十六億円程度の基準財政需要額の計入額が少ない。四十五年度においては、八十一億円程度交付税のほうが基準財政需要額に計入された数字よりも上回っておる、こういうことになっております。四十七年度はどの程度需要額として計入するおつもりか。  さらに文部省にお尋ねしておきますが、四十七年度に私学の高等学校なり中学校等からどの程度の助成をしていただきたいという要望があっておるのか、あわせてひとつ関係両省からお答えいただきます。
  175. 潮田康夫

    ○潮田説明員 四十七年度で私どもで一応単位費用の改正をいま国会でお願いいたしておりますが、それの結果出てくる、算入されるであろう金額、これは現実に私立学校、私学の高等学校以下の生徒さんの数がどの程度になるかということで、若干数字は最終的には変わってくるということを御了解いただきたいのですが、大体いまのところ百四十五、六億程度の算入額になるというように見込んでおります。
  176. 細谷治嘉

    細谷分科員 そういたしますと、四十六年度の需要額とほぼ変わらないということですか。
  177. 潮田康夫

    ○潮田説明員 失礼しました。大体二百四十五、六億です。申しわけございません。四十七年度は二百四十五、六億程度の需要額になる、こういうように考えております。四十六年度は先ほど申し上げましたように百四十一億です。
  178. 細谷治嘉

    細谷分科員 私が承知している数字二百四十億か四十五億ぐらい、こういうものとほぼ一致するわけです。そういたしますと、お尋ねいたしますが、高等学校の人数は私、あまり変わらないと思うのですが、四十六年度は百二十八万八千人ぐらい、一人当たり八千三百六十円、こういう計算でありますが、どこが今度違うのですか。
  179. 潮田康夫

    ○潮田説明員 お答えいたします。  変わる点でございますが、単価を従来人件費につきまして、もちろん学部の種類によって違いますけれども、国立大学が大体二割程度のめどにしてやっておられたのを、来年度の予算でそれを引き上げて三割見当ということがスタンダードになる、こういうように国の予算がなっておりますので、私どもも地方公共団体が私立大学に対する国の助成というものを一応横に置いて、大体その程度やるというような場合にその財源を措置してあげよう、やる必要があるのではないか。こういうことで、従来私立高等学校以下の先生の給与費の二〇%程度をめどにして、一般的な助成の経費を組んでおりましたけれども、それを三〇%にいたします、こういうことでございますから、単価が上がってまいっております。  それからいま申されました生徒の数ですけれども、明年は私どものほうといたしましては、高等学校、中学校、小学校、幼稚園、こういうものは従来入れておったわけでありますが、幼稚園につきましては若干――もちろんこれは制度改正を前提とするわけでありますけれども、学校法人立以外のものについても取り入れるということを地方団体がやる場合には、やり得るような財源措置もしてみる必要があるのではないか、こういうことで、若干そこの範囲が広がってまいります。そういうことで、両方の要素で、いま申し上げました額の増加になっております。
  180. 細谷治嘉

    細谷分科員 時間がありませんから端的にずっと聞いていっているわけで、この八千三百六十円、これがどういうふうに変わるのか。これは去年の需要額の百四十一億という計算では高等学校、中学校、小学校、幼稚園、盲聾学校、通信教育いずれも同じ単価でかけておるわけですね。そうすると、今度は中教審答申の線で幼稚園に重点を置いておるようでありますが、これが数が変わるけれども他はあまり変わらぬとしますと、単価はかなり上げられると思うのですね。それは一体幾らか。
  181. 潮田康夫

    ○潮田説明員 単価はいまのところは一応一万三千六百円程度見ております。これはいま申し上げました補助のやり方というものを、従来人件費の二〇%を一応のめどに置いておりましたけれども、一応それを三〇%にするということと、もう一つは、退職金社団給付の財源とかあるいはそれの事務費に対する地方公共団体の補助のやり方というものを、従来、率を千分の三・九ということにいたしておりましたけれども、地方の実際の実情を見ますとかなりそれよりも上げておりますので、千分の三・九を千分の四・四ということに引き上げています。こういう二つの要素でいま申し上げましたようになっております。
  182. 細谷治嘉

    細谷分科員 そこで、私は日本私立中学高等学校連合会の四十六年度の、いま御質問しておるそういう問題についての資料で、これを全部各都道府県についてサムアップしてみればよかったのですけれども、そうじゃなくて、私はちょっと福岡県がどうなっているかということを調べてみました。福岡県が私立の学校から要望されておる補助金、交付金というのは十七億程度であります。これに対して交付された額は五億五千万円、こうなっております。したがって要望額に対して四五%程度交付がされておる、補助がなされておる、こういうことであります。一方、四十六年度に計入されました基準財政需要額というのは、福岡県の場合は六億二千六百万円であります。この基準財政需要額に計入されました六億二千六百万円に対して、事実上交付されたものは八八%に当たります。五億五千万円というのは八八%に当たります。でありますから、あなたのほうで基準財政需要額に計入された数字の八割八分、八八%というのは、県の予算を通じて私立の高等学校、中学校に交付されておる、補助されておる、こういうことですね。そうしますと、四十七年度には全体として三百十五億円程度の補助、交付金がほしい、こういうことが私立高等学校中学校連名の要望でありますから、それに対して二百四十億か四十五億円ぐらいの需要額を計入したい、こういうことでありますから、おそらく四十六年と同じような結果になると思うのですよ。  そこで、私は一つお尋ねしたいのでありますけれども、文部省のほうと自治省のほうが打ち合わしてこれこれ計入する、こういう打ち合わせをなさっているんでしょう。文部省御存じなんでしょう。ことしは私立の高等学校、中学校に二百四十か二百四十五億程度交付税の中に需要額として計入するということは御存じなんでしょう。
  183. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 存じております。
  184. 細谷治嘉

    細谷分科員 その計入されたものは、連盟のほうは交付税で見てもらったんだから全額くれと言っておりますよ。自治省、どうしますか。八八%、全額とは言いませんけれども、ほぼいっているわけですね。まだ一二%ばかり連盟のほうは県がネコババきめてると思っているかもしれない。一〇〇%いただきたいと言っているわけですよ、三百十五億ばかり要望しているのですから。どうですか、要望を満たしてないでしょう、打ち合わせた結果そうなってるわけですから、どうなんですか。計入が足らないじゃないですか。
  185. 潮田康夫

    ○潮田説明員 お答え申し上げます。  私どものほうとしましては、需要で去年百四十一億計上いたしました算定が、結果が出てきたわけであります。福岡県に例をとられましたけれども、福岡県には六億五千万程度の需要が入っておりまして、現実にはその八八%程度予算に組まれたわけでありますけれども、これは先生よく御承知だと思いますが、私どもの交付税の需要に入れます考え方というものは、法律でも明示されておりますように、その使途について条件をつけたりあるいは制限をしたり、それに使えというように強制をするとかいうことはできないことになってございます。私どもといたしましても、交付税で基準財政需要額に入れたのが、いわゆる国の補助金とか助成金というものと同じだということも毛頭ございません。  そこで、そういう一般的な、地方団体の行政需要として一般化されておるというようなものを前提として経費には計上いたしておりますけれども、個々の団体における具体の執行につきましては、それぞれの団体の事情がございましょうから、その団体の事情に応じて、適切に助成措置が行なわれておる、また行なわれるべきものである、こういうふうに考えておりますので、そこの食い違いは、交付税は、基準財政需要額の立場からは、国庫補助金のような考え方はあまりできないのではないか、私こういうような考え方をいたしております。
  186. 細谷治嘉

    細谷分科員 大臣、問題点はここにあるのですよ。四十六年度二百六億ばかり交付税として計入されましたけれども、これはいま潮田課長が言っているように、交付税というのは基準財政収入額と需要額との差額でくるわけですから、もらってるかもらってないかわからぬわけですね。二百六億というのは、文部省の要請で自治省が計入したと思うのでありますけれども、実は二百六億のうち百三十六億円というのは交付税のいってない団体の需要額なんですよ。たとえば東京都には交付税はいっておりません。これは六十八億六千万円入ってるわけですよ。神奈川県は二十七億円入ってるわけですよ。愛知県は幾らかといいますと十五億五千万円は入ってるわけですよ。大阪府は幾らかといいますと二十五億二千万円入ってるわけですよ。合計して交付税のいかない団体に百三十六億入ってるわけです。こういうところもちゃんと、たとえば東京都が幾ら出しているかといいますと、交付税として二十七億円の補助金を出しているわけです。交付税はもらっておりません。ただ需要額には計入しましたよということだけであって、東京都は二十七億円出しているわけです。しかも、事実上ひもつきじゃないといいますけれども、こういう計入をしたのでありますから、これはもう一般財源といっても、福岡県の場合に八八%、これだけ配ってるわけですね。そういうことになりますと、交付税そのものが事実上ひもがついているじゃないか、補助金的な性格を帯びておるじゃないか、こういうふうに申さなければならぬ。しかも、四十七年度には、千六百億円の借金をして交付税を配るというんですよ。国のほうで特別に千五十億円の臨時特例交付金を出すというんですよ。それでもどうにもならなくなって、公共事業重点だというけれども、公共事業重点によるところの需要額というのは、ばっさりゼロにしちゃった、そういうことで交付税を舵ろうとしておる。端的にいいますと、従来の交付税制度というのは四十七年度破綻しようとしている。そういう中において、ひもつきのこの種の経費を二百四十億も五十億も計入するということは、私はいかがかと思うんですよ。自治省どうお考えになっているのですか。
  187. 潮田康夫

    ○潮田説明員 いま先生が言われましたように、明年度の地方交付税の総額ということにつきましては、かなり窮屈でございますので、各種の特例措置をお願いをいたしまして、その交付税の伸びというものをやっと例年並みにまで持っていかしていただくということで、いま国会で御審議をお願いいたしておるわけであります。しかし、それはそれといたしまして、私どもの基準財政需要額の算定につきましては、その中でもやはり必要な各種の行政需要は取り上げていくという形でやっております。そういうことでございますので、この私学助成につきましても、わが国の文教政策の全般から見てやはり助成をする必要がある、したがって、従来からもやっておるわけでございますので、基準財政需要額の算定の中には、そういう従来の文教政策の中における私学教育に対する地方公共団体の助成の姿勢というものは、以前よりさらに充実をさしていくという基本路線に従って需要を算定いたしております。  ただ、しかしながら、これがひもつきであるというような、そういう考えは毛頭持っておりません。そういう形でこれにひもをつけたり条件をつけたりすることは、法律上のたてまえからも当然できない、私どもは、財政のあるべき姿というものを前提として、一応それで標準的な経費をはじいているだけでございますので、その点は御了承をお願いいたしたい、かように思います。
  188. 細谷治嘉

    細谷分科員 大臣、昨年計入いたしました基準財政需要額二百六億円のうち、授業料の軽減ということで五十三億見ているわけです。ところが授業料は軽減されちゃおらぬですよ。私学の高等学校へ行きますと、いま五千円か六千円持っていかなければ授業料は払えない、そういうような状態です。自治省は、ずいぶん苦しい中から私学の振興、こういう意味において交付税に計入するということについては、現在の交付税制度のひもをつけちゃいかぬ、補助金的な性格ではいかぬという原則が、非常に苦しい私学の関係において事実上ひもがついてきておる、こういう事態になっておる。県に行ってごらんなさい。各私学の代表の方は、交付税でこれだけ計入されたんですから、四十七年度は二百四十億ぜひ出しなさい、こういうふうに各県知事つるし上げますよ。  そこで、私は時間がありませんから――交付税で見ることはけっこうでありますけれども、たとえば授業料とか人件費に三十三億見ているわけです。大学のほうでは三百一億円今度補助金を計入したんでしょう、これをもっとふやしていくというわけですね。にもかかわらず、どうして高等学校だけは県にまかせきり、交付税で全部逃げておるのか、どうして大学と同じように独自の、私立に対して私学連盟なら私学連盟を通じての国からのダイレクトの補助金をやらぬのか、そして補助金にかからないようなもの、授業料の軽減とか人件費あるいは施設等以外のいろいろな問題は、包括的に交付税で計入して交付税でまた助成してやる、こういう姿ならわかりますけれども、本尊がなしに、しかも私立大学はやっているわけですから、大学といっても高等学校がなければ大学の意味はないわけですから、私学高等学校等について何ら助成をはからぬということは片手落ちであり、教育の根本に触れておる欠陥ではないかと私は思うのですよ。でありますから、交付税はやっちゃいかぬと私は言っているんじゃない。交付税一本に逃げ込んでいる文部省の姿勢が悪い、これでは大学教育に補助金を出す意味もないんだ、こういうことになると思うのですよ。三百一億円出したのは、どうも大学が紛争があったから、金をやることによってコントロールしようという文部省の意図じゃないか、こういうふうに勘ぐられてもしようがないと思うんですよ。教育をほんとうに振興するならば、やはり文部省自体が、国の予算を通じて私学の振興、私学の高等学校、中学校、幼稚園等の振興をはかるための補助金を、大学に対する計算の基準もあるわけですから、そういうものにのっとってやるべきである。それには、各県の事情に応じて、私学の振興に各県が交付税を通じてまた協力してやる、こういう体制にしなければ、私はおかしいと思うのですよ。文部大臣、どうですか。
  189. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お話はよくわかります。わかりますが、私立の高等学校は府県知事の所轄に属しておりまするので、一般行政費としての産業教育だとか、理科教育振興法に基づく補助金というようなものは、これは国が見るべきである。自治省との間の連絡に欠けるところがあれば、これは十分注意をいたしますけれども、自治省もその点は非常によくやってくれておると私は思っております。したがって、国が直接補助すべきであるという御意見は、むしろ地方自治体のあり方そのものに対する問題でもあろうと思いますし、私は、現行のままでいくべきではないか、かように考えております。
  190. 細谷治嘉

    細谷分科員 もう時間がありませんから、文部大臣の答弁、これはきわめて不満ですよ。私立の学校については県の管轄だから――交付税というのはワクはきまっておるんですよ。そういう中において、四十七年度には公共事業の需要額なんて見ないで、ぶった切って、そして一定のコップの中の分け合いというものをやろうとしている。それに全部たよるというのはおかしいんですよ。何といっても直接にいまの二十億足らずの補助金であります。もっとこれを拡大強化して、国がやるべき補助金というのをやる。具体的に把握できるわけですから。そしてそれを交付税で補う。こういうことにしていただかなきゃならぬ。  時間がきましたが、いまのようなうしろ向きどころか、きわめて退嬰的なやり方については、私は、どうしても了解できない。ずばり言うならば、交付税で協力もしてやりなさい、同時に、国は、直接に私学振興という形で、たいへんな授業料なんですから、とてもじゃないが、サラリーなどでやれないような事態でありますから、私学の振興助成というものはダイレクトにいまやっているわけですから、そういうものを大幅に拡大強化するという方途を講ずべきである、こう思うのですよ。前向きの答弁をしてください。そうでないと質問をやめられない。
  191. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 先ほど先生からお尋ねのありました点を一つだけ補足さしていただきますと、公私立の区分がございません特殊教育の設備の整備費補助金を除きまして、国が直接高等学校以下に支出しております金額は、二十一億六千八百八十八万円でございます。  それから、ただいまのお話でございますが、大臣先ほど申し上げたとおりでございますが、高等学校以下の教育というのは、これは私立学校が都道府県知事の所轄下にあるということだけではなくて、公立の高等学校以下のそれは、都道府県なり市町村なりが責任を負って、この教育の事業を遂行しておるということでございまして、やはり公立学校と私立学校の教育というものは一体的に考えていかなければいけないのではないかというふうに考えます。したがいまして、助成の問題も、たとえば、公立高等学校をどう整備するかということと、私立高等学校への助成をどうするかということは、やはり府県の行政としては一体的な問題であろうかと思います。  そういう意味におきまして、先ほど申し上げましたような理科教育とか、産業教育とか、特定の行政目的を持った助成は、これは国が直接いたしますけれども一般的な私学助成という課題は、これはやはり現行制度を前提といたしました交付税制度を背景にして、都道府県、市町村等が独自におやりになるという体制が適当ではなかろうかというふうに考えております。
  192. 森田重次郎

    森田主査 細谷君、時間が迫りましたから、結論を急いでください。
  193. 細谷治嘉

    細谷分科員 結論を保留しておきます。時間がきましたから、やめておきます。
  194. 森田重次郎

    森田主査 次に、小林進君。
  195. 小林進

    ○小林(進)分科員 大臣、私は昭和二十四年からたしか二十八年ごろまでしばしば文教委員をやりまして、教育二法案等の問題もみずから手がけたこともございますが、それ以後、文教委員には久しくなったことはございませんけれども、その当時からいままで一貫いたしまして、どうも文部省というのは要らないんじゃないか、日本の平和教育や憲法を守り、国民をしあわせにし、真実を教えるという面からいくと、文部省という行政庁は、むしろわが国のために私はないほうがいいんじゃないかという気持ちがいまでもしてならないのであります。国民のためにはあまりしあわせにならない、反動的な面ばかりあらわれてくる、うそを教える、真実を隠す、そういう傾向が多いのであります。  その問題は、いずれまた場所をあらためてひとつ御質問を申し上げることにいたしまして、これは一般質問のときも申し上げた論理を進める上において申し上げますが、ことしの一月三日の朝日新聞の記事の世論調査の中に、日本の軍国主義が復活をしたかという問題について世論調査をやっている。その中で、軍国主義が復活しているという回答が二四%、将来復活するおそれがあるという回答が一七%、合わせて四〇%以上で、合わせると軍国主義の復活のおそれがないを上回っているということが明らかになっているわけでございます。この問題は、私は実に看過できない重大問題だ。なぜ一体こういう軍国主義がもはや復活しつつあるかというようなことを、私は私なりに青少年にただしてみると、そこにやはり教育がぶつかる。どうも日本の終戦後の教育の中に、日本が戦争で犯した罪を明らかにする、戦争に対する反省を持つ、平和教育に徹する、そういうのが少しも見当たらないのでございます。まあ、分科会で時間もありませんから、私はその観点に立って具体的にひとつ聞いていきたいと思うのでございます。  この四月の新学期から、小中学校で使用する新しい社会科教科書の中で、中国問題を扱った内容がかなりでたらめであるということが巷間伝えられているのでございます。どういう点が一体でたらめなのかと言いますると、まず第一に、中教出版社発行の「日本の歩みと世界」、それから「現代の社会」という、これは社会科の教科書。まず「日本の歩みと世界」という社会科の教科書の中で、日本と中国の軍隊が北京郊外で衝突した、こういうふうに書いてあるのですな。これは一体歴史上正しいと文部大臣はお考えになるかどうか。私をして言わしむれば、日本の軍隊が数年にわたってねらっていた中国全土の支配のきっかけをつくるために中国の軍隊に戦争をしかけた。そして日華事変を起こした。これが正しい歴史上の解釈でなければならぬのに、何ですか一体、日本と中国の軍隊が北京郊外で衝突したという、こういう教え方がはたして歴史の事実に立脚した正しい表現のしかたであるかどうか。  私は時間がないから次に申し上げますけれども、次には、「中華人民共和国や朝鮮民主主義人民共和国とは、正式の国交が開かれていない」こういう説明をしている。これが一体事実に立脚した教え方ですか。まとめて言いますけれども日本国のほうが、中華人民共和国や朝鮮民主主義人民共和国とは正式に国交を開こうとしないのだ。日本のほうが能動的なんだ。そして両国に対して、今日なお敵視政策を続けている。それが正しい解釈じゃないですか。私の言うことが事実に即しているか、いまの文部省の教科書のほうが事実に即しているかどうか。  また「現代の社会」というその一冊の教科書の中で、「中華人民共和国に紅衛兵運動がひろがり」、「社会主義の強化をめざす文化大革命運動がひろがり」つつある。これなんかも、文化大革命という、二、三年前に終わったばかりの中国の実情に対しては、実に陳腐なものの言い方です。紅衛兵運動が広がって社会主義強化をやったのではないのです。これなんか、いまの中国の実情に対する解釈のしかたなんか、たいへんお粗末だ。これが一体青少年教育の中心の教材とは、あまりにも貧し過ぎるではないかということを私は考えざるを得ないのであります。対中国問題に対しては、日本が中国に対して加害者であったという事実はどこにもないじゃないですか。その事実を入れなければならぬのだ。一つもない。事実が全部隠されている。  私は、末端の教師にはよくおつき合いがあって聞くのでありまするけれども、こういう教科書の進み方では、私どもは、子供たちに真実を教えることに非常に苦労する。教師というものは真実を教える義務がある。何よりも大切なことは真実を教えるということなんだ。それが真実を教えられないような教科書の内容であって非常に困る。そこで、いま一部の教師の中でも、教科書を書き直してでも真実を教えていくような方向へ教師みずからが立ち上がらなければならないのではないかという運動があるのでありまするけれども、こういう点に対して、まず文部大臣の御所見を承っておきたいと思うのであります。
  196. 高見三郎

    ○高見国務大臣 教科書は、あくまで客観的な教育の基準を示しておるものであります。認識は人によっていろいろ違うのだろうと思いますけれども、あくまで客観的な事実に立たなければならないものであります。そのために指導要領というものを示しておるわけであります。  御承知のように、小林先生よくお調べになっておりますけれども日本の小学校、中学校、高等学校の教科書の中に、日本軍国主義の発生の過程を明らかに示しておる教科書もあるのであります。非常時と称して、議会政治を無力化したというような記述がされておる教科書もあるのであります。私どもは、それはそれでよろしいと思っておるのであります。ただ、教科書はうそを教えておるとは私は考えておりません。
  197. 小林進

    ○小林(進)分科員 私は、いま申し上げたのが、何も主観でものを言っているというわけじゃないのでありまして、客観的な事実に合っているかどうかをあなたにお尋ねしたのだ。客観的に表現していないじゃないかということを私はあなたにお尋ねをした。あなたが、いま私が例をあげて申し上げたことが、客観的に第三者的な立場で正しく事実を報道しておるとおっしゃるならば、私は、あなたの教科書に対する認識をたいへん疑わざるを得ないのであります。私の言ったことを、いま少しまじめに聞いていただかなければならぬ。  それじゃまた一つ例をあげましょう。今度は小学校ですよ。学校図書株式会社という本屋が出しておる。これは社会六の上、その中に「八月十五日、天皇は、ラジオを通じて、戦争をやめることを全国民につげました。数しれない多くのとうとい命を失い、はかりしれない損害を世界の人類にあたえた第二次世界大戦は終わりました。」戦争をやめることを天皇が全国民に一体告げたのでありまするか。むずかしいことばでいえば、ポツダム宣言を受諾する、無条件で降伏するということを国民に訴えたのじゃありませんか。これは、客観的事実じゃないですか。「戦争をやめる」などということは、いかにもこの戦争を行なったことに対する間違いが一つもない、正しいことをやめるというふうにもとれる、こういう説明のしかたをしておる。これがいいと思いますか。そこからひとつ聞いていきましょう。
  198. 高見三郎

    ○高見国務大臣 おっしゃるとおりであります。これは小学校程度の子供にいくさをやめることになった経緯を書いておるのでありまして、学校図書株式会社、「八月十五日、天皇は、ラジオを通じて、戦争をやめることを全国民につげました。数しれない多くのとうとい命を失い、はかりしれない損害を世界の人類にあたえた第二次世界大戦は終わりました。」という反省、その前に、ポツダム宣言を受諾するということも言っておるわけでありまして……。
  199. 小林進

    ○小林(進)分科員 私は、あなたのそういう説明に対し納得するわけにはいきません。小学校の子供だから、戦争に負けること、無条件にあやまることを国民に告げましたとなぜ言えないのですか。やめるということと、全面降伏をする、負けましたということと、どうして一体表現が同じだということが言えるのでありまするか。あなたは、あとのほうをお読みになりましたけれども、それは人類に損害を与えた第二次世界大戦は終わりました。何も日本が損害を与えたとも、悪いことをしたとも、一つも書いてない。これが客観的事実だなどという、そういう文部官僚が、こういう陰にこもってうしろから綱を引いておるから、教科書の問題やら家永裁判やらという問題が起きてくるのですよ。それだから私は言っておるのだ。彼らの本質の反動性を、こういったところでひとつ文部大臣見なければだめですよと私はあなたに言っておるのです。  その次、言いましょうか。これも学校図書株式会社の小学校の社会六の上です。「日華事変」「日本の陸軍は、その力を満州から、さらに南にのばそうとして、一九三七年、ペキン(北京)の近くで、中国軍としょうとつしました。」一体、その力を満州から南のほうに伸ばす、「その力」とは何です。侵略じゃありませんか。戦争をしかけたことじゃありませんか。しかも「ペキンの近くで、中国軍としょうとつしました。」「しょうとつ」なんというのは、五対五の場合ですよ。対等の場合でぶつかることが衝突なんだ。みずから侵略したんじゃないですか。求めずしてこっちが戦争をしかけていったのじゃありませんか。北京の郊外で戦争をしかけました、侵略をいたしましたというのと、衝突をいたしましたでは、客観的な事実の述べ方としても、これはずいぶんの違いがある。  その次に、何と書いてありますか。「日本軍は、中国の首都ナンキン(南京)をはじめ、大きな都市をつぎつぎに占領しましたが、中国軍はあくまで戦いぬこうとし、戦場は中国全体に広がり、いつ終わるともしれない長い戦争になりました。」これはまさに客観的事実の表現かもしれませんけれども、みずから侵略していることに対する事実の詳述は一つもないじゃないですか、あなた。だから、私がこの前の一般質問のときにも言ったように、いま東南アジアの国々に行ったって、中国へ行ったって、どこへ行ったって、ちゃんと日本の侵略戦争に対する事実は明らかに痕跡は残しているし、すべての国の教科書の中に、戦争に対する反省というものがちゃんと残っている。そして、東南アジアのどんな小国でも、この第二次世界大戦の反省というものはきびしく教科書に載せている。だから、われわれは平和を愛し、再び戦争をしちゃいけないという教育は徹底している。その教育を受けて、そしてその人たちが青年になって日本にきてみると、日本の教科書のどこにもそういう戦争に対する反省が盛られていない。これが、東南アジアや中国において、日本はまた軍国主義の復活をやっておる、再びアジアを侵略しようという潜在的な教育を行なっているとよその国が言っている理由なんです。私は、言われてみると、実にさもありなんと思うところがありますよ。どこに一体、戦争の反省がありますか。どこに犯した罪に対する事実を事実として客観的に述べられた項目がありますか。  その次も言いましょうか。いまの項目の次ですよ。「また、中国は、日本と戦うために、アメリカ合衆国やイギリスなどの力を借りていたので、これらの国と日本との関係が悪くなりました。日本は、このいきづまりを打開するため、アメリカ合衆国と交渉を進めましたが、思うように成功しませんでした。」これをすなおにとったらどうなりますか。アメリカ合衆国やイギリスと日本がうまくいかないのは、中国がイギリスやアメリカの力をかりて日本に戦争をやったから、これがうまくいかなかったのだ、イギリスやアメリカとうまくいかないのは、中国が悪いのだと言わんばかりの文章です、これは。客観的にそうとれる書き方じゃありませんか。この行き詰まりを打開するために、日本はアメリカ合衆国と交渉を進めたけれども、思うように成功しませんでした。なぜ成功しなかったのか、うしろで中国が頼んでいたからと言わんばかりです。イギリスとアメリカがうまくいかぬのも、戦争が長くなったのも、みんな中国が悪いのだと言わんばかりじゃないですか。そういうふうにとれる。私のとり方が間違っていますか。これが客観的事実を正しく述べた教科書であると言えますか、文部大臣。時間がありませんから、明確に答えてください。
  200. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お答えいたします。  私は、たとえば日清戦争の記録をいま私どもが見ましても、その記録が私どもに直接ぴんとくるわけではありません。私どもは、こういう記述の中から戦争というものの残虐さを反省し、ほんとうに平和を愛し、軍事力を強めてはならぬということを教えていくという材料として、こういう記述というものは一応当を得たものではないか、かように考えております。
  201. 小林進

    ○小林(進)分科員 私は、いまの文部大臣の御答弁を聞いて、実に驚きました。いま、これからアジアの国々と、あるいは中国と平和条約を結んで、平和の日本として生きようというそのさなかに、いまアジアの国々が一つずつ例をあげて、日本の教科書の中には侵略戦争に対する反省が一つもない、まことにおそろしい教科書だと、そう言って非難をしているそのさなかに、あなただけが、これは実にりっぱないい教科書だ、これでいわゆる戦争の責任の教えも徹底しているのだ、平和の思想も徹底しているのだなどという考え方は、これはおそるべき認識です。とてもこの時間内では解決しませんけれども、あなたがそういうお考えでいらっしゃるならば、私は黙って聞いているわけにはいきません。これはまたひとつ腰を据えて、あらゆる立証をあげても、私は、この問題は論争をしていかなければならぬと思う。わずかな学校を設立するとかしないとかいう問題じゃない。予算が多いとか少ないとかいう問題じゃない。日本の将来を卜するたいへんな教育の根底に関する問題ですから、私はあなたの答弁を了承することはできません。  ただしかし、時間が詰まったので、いま一つ、いままでのは小学校の教科書ですが、今度は中学校のほうを私はまた申し上げまするけれども、これは中教出版株式会社の中学校社会、つまり歴史です。この中にも、「満州事変」と書いて、その「満州事変」の項目の中に、「軍部や政治家の一部は、経済のゆきづまりを打開するため、大陸への進出を強力に推し進めようとした。」いいですか、こういうふうな解説をしている。日本が満州を侵略いたしました。にせの満州国をつくり上げて、そしてたいへんな悪業、悪徳を重ねた。その原因は、日本の侵略国家にあるのではなくて、経済が行き詰まった、満州侵略は経済の行き詰まりに原因があるのだ、こういう言い方で問題を流しておる。実にこれは事実を裏切ることもはなはだしい説明のしかただと私は思っております。  なお、その項目の少し離れたところには、「軍部は、非常時と称して、軍備を強化し、議会はしだいに力を失った。」議会みずからが、自動的にみずからの力でどうも議会を弱くしたような表現のしかただ。「議会はしだいに力を失った。」こういう、言いかえれば、真実とはまことにかけ離れた、そういう内容しか教科書の中に盛っていない。だから、いまの青少年なんかは、ああやって戦争映画なんか見るとかっこがいい、軍服なんか見るとかっこがいい、昔はよかった、われわれの時代には兵隊に行けないのが残念だ、そういう子供が出てくるんですよ。そういう教育をあなた方はしているのだ、この教科書の中で。  これはあげればもう切りがありません。たくさん例証があるのでございまするけれども、私は、時間がございませんから、文部大臣に申し上げますけれども、あなたのいまのそういう考え方で、この教科書が、日本のいわゆる戦争の現実を、中学校や小学校の子供に正しく事実を伝えている、そしてそれによって戦争に対する反省が正しく生まれておる、そして中国をはじめとする東南アジアの被侵略国家に対する教材としてこれで十分だとおっしゃるならば、私は、先ほどから申し上げておるように、あなたのその常識というもの、文部大臣としての良識というものに深い疑いを持たざるを得ないのでありまするし、また、あなたがそんな気持ちでいられる限りは、われわれはアジアの国民と手をつないで、そしてひとつ平和なアジアをつくり上げよう、戦争のないアジアをつくり上げよう、日本にはこういうふうに平和憲法があって、再び戦争をしないということを世界に宣言しているんだから、われわれを信用してくれといったところで、相手は信用いたしてくれません。それはくれない。  いま申し上げました例題だけでは、私は、現在行なわれている日本の文教教育に対しては全面的に不信任を表明する以外にはありませんから、もし、あなた方のほうでそれを否定をする確証があるならば、これくらい、日本の侵した侵略戦争に対して反省の項目が具体的にある、このようにその教科書の中に平和思想、反戦思想というものをちゃんと入れている、そして、東南アジアや中国や、侵した国々に対して、これほど謝罪する気持ちが明確にあらわれている、こういうような具体的な例をひとつ教科書の中から拾い上げて、私のところへ資料として提出をしていただきたい。それがない限りは、私が集めたこの資料に基づいて、日本の文教教育は軍国主義教育だ、再び青少年に戦争に興味を持たせ、関心を持たせ、戦争はかっこうがいい、そういうことを思わせる教育であると私は断定せざるを得ないのであります。時間がまいりましたから、文部大臣、ひとつあなたの御心境を承っておきたいと思います。
  202. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お答えいたします。  日本国憲法第九条は、世界に類例のない戦争放棄の憲法であります。日本の教育基本法もまた、おそらく世界に類のないほど平和を愛好する民族の悲願を込めた宣言であります。そういう意味におきまして、教科書も一般的客観的な事実を並べておるということで、個々の被害は数限りなく与えておることは申すまでもないことでありまして、これに対する国民の反省は十分しなければなりませんし、ざんげは十分しなければなりませんが、私は、日本国憲法あるいは教育基本法の前文の示しておりまする主義が、日本の教育の平和主義に徹しておる教育である、これが軍国主義につながる教育であるとは夢にも思っておりません。
  203. 小林進

    ○小林(進)分科員 私は、憲法第九条の戦争放棄は、日本が世界に誇るべき実にすぐれた条項だと思っている。であるがゆえに、ほんとうに平和を愛する教育なら、この第九条の精神を世界にあまねく普及せしめる、徹底せしめるというふうな教育が、義務教育の全面にあらわれていなくてはならない。ないじゃないですか。あなたは、教育基本法の前文とおっしゃった。私は、その前文は実にりっぱだと思っていますが、その前文が教科書の中のどこにも生きてないじゃないですか。むしろ私をして言わせれば、憲法の第九条、教育基本法の前文をかさに着て、反動的な文部官僚が進歩的な教授を弾圧し、いたいけな白紙のような子供たちの頭脳の中においおいと反動教育をつぎ込みつつある。軍国主義に通ずるようなおそるべき教育をつくりつつある。そのために、遠くは大学教育、家永裁判等の問題も起こしながら、なおかつ文部官僚というものは反動教育に狂奔している。このガンをとらなければ、わが日本の平和などというものはあり得ないということを私は心から感じました。いまあなたと論争をしたって、これはとても口はかわきません。しかし、あなたにかわる――私は、前の文部大臣の坂田君ならもっと相通ずる面があったろうと思う。残念ながら、高見文部大臣とは相通ずるものがありませんけれども、しかし、ほこをおさめるわけにはいきません。私は、また場所を変えて、これは留保をいたしておきまして、次回に場所を変えてひとつあなたと徹底的に論争するから、先ほど申し上げました資料だけはひとつ間違いなしにお届けくださることをお願いいたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  204. 森田重次郎

    森田主査 次に、近江巳記夫君。
  205. 近江巳記夫

    ○近江分科員 私は、まず初めに、文化財の問題についてお伺いいたしたいと思います。  文化財というものは、ひとり地方住民の財産ではなく、数千年のわが国の歴史の中ではぐくまれ、伝えられてきた民族的な遺産であります。これを保護し、後世に伝えるということは、私は国家的な課題であると思うのであります。まず、この文化財保護の問題について大臣の基本的な考えをお伺いしたいと思います。
  206. 高見三郎

    ○高見国務大臣 文化財につきましては、私ども民族の歴史的遺産として、しかも、この歴史的遺産を後世の文化の進展に資するために大切に保存しなければならないし、保存することによって、新しい文化を創造するというのが文化財に対する私の基本的な姿勢でございます。     〔主査退席、大村主査代理着席〕
  207. 近江巳記夫

    ○近江分科員 全国にこうした文化財、そうした遺産というものは数多くあるわけでございますが、結局開発の中でそうした保護というものが非常に手薄になって、しかも荒廃をしてきておる。国民としてお互いにまことに悲しむべきことではないかと思うのであります。  そこで、一つの具体例といたしまして、わが国でも最も古いといわれる難波宮跡でございますが、過去にもずっと発掘調査というものが行なわれておるわけでございますが、ここの保護については、具体的にどういう措置をとられておりますか。
  208. 安達健二

    ○安達政府委員 難波宮跡でございますが、御案内のとおり、大阪市の東区法円坂町にございますが、これは山根徳太郎先生の調査等によりまして、天武、持統天皇の宮殿の経営が行なわれた場所であることが明らかになっておるわけでございます。これらの地域は元軍用地でございまして、現在は国有地、大阪市の市有地、電電公社の用地、それから昭和三十年に国有地の払い下げを受けました日本赤十字社所有地等になっておりまして、国の出先機関とか市の機関等が使用しているわけでございます。現在この地域のうち、難波宮の大極殿と、内裏の中心部の約一万七千五百平方メートル、約五千三百坪を史跡に指定いたしておるところでございます。
  209. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そのように史跡に指定をして、国としては、いまどういう保護をしているんですか。
  210. 安達健二

    ○安達政府委員 現在なおこの近辺一帯の発掘調査が行なわれておるわけでございまして、三十九、年から四十六年度にかけまして、四十五年まで三千三百四十万円の発掘費用がかかりまして、その半額の千六百七十万円ほどやっておりまして、四十六年、四十七年におきましては、それぞれ八百万円の発掘に対しまして四百万円の補助をいたしまして、山根先生を中心として発掘調査をしていただいておることが第一点でございます。  第二の点といたしましては、環境整備ということで四十六年度、まあ来年度を含めまして三千万円ほどで、中心部につきまして、史跡としてふさわしいような環境にするということで環境整備の仕事を始めておりまして、四十六年度は三百万円の補助をいたしておりますし、四十七年度は、もし予算が御承認いただければ千二百万円ぐらいの補助をいたしたい、かように考えておるところでございます。
  211. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そのように若干の手当てはしておるようでございますけれども、こうした微々たるそういう予算であっては、なかなかこうした環境整備にしろ、あるいは発掘にしても、他の環境破壊のほうがスピードが早いわけでありますし、やはりそういうゆっくりしたペースということは時代の波に合わないわけです。そういう点で、わが国でも最も古い、これだけの残された遺産でもありますし、やはり重点的に力を入れていくべきじゃないか、このように思うわけです。ですから、予算ではこれだけこうなっておりますけれども、もっと基本的にここの保存につきまして、何らかの対策を特別にとるべきではないか、このように思うのですが、その辺の具体的な構想についてお聞かせ願いたいと思うのです。
  212. 安達健二

    ○安達政府委員 先ほど申しましたように、現在指定されておる地域は約五千三百坪でございますが、実はこの難波宮につきましてはもう少し追加指定をしなければならない、こういう問題がございます。そこで、日赤が現在所有いたしておりますところの一万二千坪を含めました二万六千坪というものの追加指定をして、難波宮としてもう少し旧跡らしい指定をするということが問題でございまして、昭和四十二年から文化庁、大阪府、市、日赤の間で協議をいたしておるわけでございます。日赤のほうでも原則的には史跡の指定に同意をされておるわけでございますけれども、ただ、日赤としては、ほかの都市に移って、いまの施設にかわるものをつくりたいということがございまして、その代替地の買収の問題がございます。  これは先ほど申し上げましたように、昭和三十年に国有地を払い下げを受けたものでございまして、これを市が買い上げをして、それについての補助という問題が出ておるわけでございますが、いま申し上げましたように、国有地を払い下げた土地であるということ等いろいろなことで、この買収価格その他につきまして、なお結論が出てない。しかし、文化庁、府、市、日赤では、これを前向きにひとつやろうということでさらに協議を続行しておるというところでございまして、これについての結論が出れば、史跡の追加指定をいたしたい、かように考えておるところでございます。
  213. 近江巳記夫

    ○近江分科員 この史跡の追加指定、何といってもこれが一番大事だと思います。やはりこれにつきましては、何といっても文部省、文化庁のそういう強い姿勢といいますか、指導性が一番大事じゃないか。やはりどこかが中心になって引っぱっていかなければ、みんなそれぞれいろいろな問題があるわけです。それにどうしても引っぱられてしまう。こういう点で、文化庁としては強力にこの指定を拡大していく、そういう姿勢についてもう一度お聞きしたいと思うのです。
  214. 安達健二

    ○安達政府委員 文化庁といたしましては、先ほど来申し上げておりますこの難波宮跡の重要性にかんがみまして、追加指定については、積極的な方針で府、市、あるいは日赤と協議をいたしていきたい、こういうことでございます。
  215. 近江巳記夫

    ○近江分科員 この指定がそのようにされる、これは一日も早くしていただきたいと思うのですが、指定だけして、あとまたその保護なりいろいろな作業、そうしたことについて、やはりこれは手厚い対策をしていただかなければ、さらにまた荒らされていく、こういう悪循環が起きるわけです。この辺について、さらに強力な対策をとっていただきたいと思うわけです。この辺について、ひとつ文部大臣にお聞きしたいと思います。
  216. 高見三郎

    ○高見国務大臣 これは近江さんよく御承知のように、あそこは非常にたくさんの官庁街になっておりますしいたしまして、しかも永久建造物がたくさんある。私どもから申しますと、文化財の保護の上で一番やっかいな場所であります。これは御承知のとおりでありますが、何とかしてこれを保存することを考えるということが文化庁の当然の仕事でございますので、いま次長が申しましたような姿でこの仕事を進めていきたいという考え方に立っておるわけであります。
  217. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それでは、その点を特に要望いたしておきます。  それから、人口急増の市町村におきます小中学校等の公共施設の整備の問題でございますが、特に人口急増地につきましては、もう学校建築とか、そういう施設の整備に追われてたいへんな財源が要るわけです。ほんとうに学校建築だけで、市の行政としてはほとんど手がつかないというような状態でございます。それに対して政府のそういう対策というものは非常に乏しいわけでありまして、これはもう皆さんすでに御承知のとおりでありますが、ここで画期的なそういうような対策をとらなければ、これは子供たちもプレハブ校舎で、夏になれば鼻血を出しておる子があるし、落ちつかない環境のもとで勉強も進まない、冬は寒い、ほんとうにこれはかわいそうな状態でございます。こういう点について、いかなる対策を今後とっていかれようとなさっておるのか、その辺についてひとつお伺いしたいと思うわけでございます。
  218. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 人口急増地域における学校施設につきまして、御指摘のような問題があるわけでございますが文部省といたしましては、まず第一に、校舎につきましては、小学校校舎につきまして百十二万平米、中学校校舎につきましては三十二万平米の整備のための補助金を計上いたしております。かつまた、小学校校舎につきましては、御承知のとおり国庫負担率が従来三分の一でございましたが、これを二分の一に引き上げるというような措置も講じたわけでございます。  小学校校舎の事業量でございますが、実は大部分が人口急増地域で実施されるわけでございまして、したがいまして、この補助率の引き上げというものも、実質的には人口急増地域が均てんする部分が多かろうというふうに考えております。  それから、抜本的な対策というお話でございましたが、その一つといたしまして、別途、義務教育諸学校施設費国庫負担法の一部改正法案というものを今国会に御提案を申し上げております。この内容は、従来は、集団的な住宅の建設の場合におきましては、いわゆる前向き整備という方式がございまして、この期限が一年半ということでございましたけれども、今回の改正法案におきましては、これを三年にさらに延長いたしたい。それから、従来はこの前向き整備は、校舎だけに限られておったわけでございますが、新たに屋内運動場もその対象に含めて、前向き整備を促進してまいりたいというふうに考えております。  以上が校舎、屋内運動場についてでありますが次に、校地につきましては、御承知のとおり、昭和四十六年度から新しくこの用地の購入費の補助金を計上したわけでございますが、明年度におきましては九十六億九千万円の国庫債務負担行為をお願いをいたしまして、その三分の一の三十二億三千万円の予算を今年度予算としてお願いをいたしておるわけであります。ほかに、昨年度国庫債務負担行為で六十億計上されておりますものの現金化分二十億を含めまして、合計五十二億三千万円を本年度校地の購入費に対する補助として予算をお願いしておるわけでございます。こうした一連の施策をもちまして、人口急増地域における学校施設の整備を促進してまいりたいというふうに考えております。
  219. 近江巳記夫

    ○近江分科員 対策はとっておられるか知りませんけれども、現実に大臣はじめ政府の最高首脳の皆さん方がほんとうに急増地へ行かれて、そしてじっくりと調査をなさったらおわかりになると思うのですが、先ほどおっしゃった学校用地取得に対する国庫補助二十億、プラス九十六億の三分の一で四十七年度は五十二億三千万円ですよ。これを学校建設地に配分したときに、一体どれだけの金が行き渡るかということは、簡単な計算でわかるわけです。どれだけのものがいきますか。いま一つの学校をつくるといっても、大都市周辺の急増地帯へいきますと、坪八万円以下という土地はないわけです。それから計算しても、五千坪としても四億という金が土地だけで要るわけです。その一校に対して、いまあなたのおっしゃった、四十七年度に予定されている五十二億三千万円を要望のある学校数で割ったときに、一校当たり幾らになるのですか。これはどのくらいの金がくるのですか。
  220. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 四十七年度の予算の執行につきましては、現在、地方の実情を聴取しておる段階でございまして、具体的に一校当たり幾らになるかということは、まだ見当がつかないわけでございますが、しかし、いずれにいたしましても、決して大きな金額でないということは申し上げ得るかと思います。ただしかし、用地に対する財源措置というものはこれは国庫補助金だけで、御承知のことかと思いますが、措置をするということではないわけでございまして、ほかに地方交付税で措置されている分もあるわけでございますし、かつまた、大部分は地方債で措置されておるわけでございますから、補助金の額は、これは金額的に大きくはないということはお話のとおりかもしれませんが、国全体の財源措置といたしましては、一応所要額が計上されておるというふうに考えております。昭和四十七年度におきましては、用地の関係といたしまして七百八十一億円という措置をいたしておる次第でございます。
  221. 近江巳記夫

    ○近江分科員 ですから、地方債とかなんとかおっしゃっていますけれども、それは全部市民の税金で、結局あとはみんな借金になるわけですよ。大体義務教育なんというものは、政府責任をもって子供たちの教育に当たらなければならぬわけでしょう。本来なら、これは文部省が全額金を出して建ててやるのがあたりまえなんですよ。そういう急増地帯においては、下水道から道路から社会福祉施設から、やらなければならないことは山ほどあるわけです。だけれども、そういうことはほとんど手がつかずに、義務教育になっているがゆえに、学校建築だけに追われて、あとは、道路はがたがた道路、ほかのことは、そういう生活環境というものは全くできてない状態に放置されておるわけです。そういう行き方というものについて、もっと現状をよく知ってもらいたいと思うのです。  いま、社会増校の不足教室応急措置の状況を見ても、不足教室数が四十六年度で小中学校合わせて八千九百八十六ですよ。不足教室がこれだけある特別教室を転用しておるのが千六百十八、プレハブ教室が四千百四十三、その他が三千二百二十五になっておる。その他の内訳は、体育館を間仕切っておるのが百一、管理室を転用しておるのが七百七十二、公民館とか、そういう借用をしておる建物が千五十三、その他千二百九十九、こうなっているのです。  私たちも、終戦当時、教室がなくて、講堂を四つか五つ六つに仕切って、そこで勉強した経験がありますけれども、前で話をしている先生の声が聞こえないで、うしろで話している人の声が耳に入ってくるのです。勉強なんか全然できなかった体験もありますけれども、いまそういうような状態に置かれておるわけです。こういうプレハブ校舎について、フライパン教室だとか、いろいろなことを子供が言っています。そしてあまりにも不公平じゃないかというので、一週間交代で鉄筋の校舎と交代しているようなところもあるわけです。  そういう子供たちのことをほんとうにお考えになったときに、政府がいまとっていらっしゃるこういう対策などというものは、それはないよりはましでありますけれども、ほんとうに焼け石に水というような状態なんです。なぜもっと文部省は、これだけの急増地域に対して力を入れないのですか。文部省の子供たちに対する愛情を疑いますよ。このまま三年、三年で、いまおっしゃったたようにおやりになって、五十二億三千万円で来年も続く、これだけ大都市圏に集中しておる中で、こういうような対策でいいと思っていらっしゃるのですか。法律の一部改正などとおっしゃっていますけれども、人口急増地に対するそういう特別措置法でも当然考えるべきじゃないですか。その点どうお考えでございますか。
  222. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 人口急増地に対する特別措置法を考えてはどうかというお話でございますが、私ども、それは十分検討すべき課題であると考えておりますが、ただ、問題は、むしろその中にどういう実態を盛り込むかということであろうかと思います。私どもといたしましては、ただいま申し上げましたように、負担率を引き上げるとか、あるいは事業量を増加するとか、あるいは土地に対する補助を新たに実施するとかいったような施策を講じておるわけでございますが、土地の補助につきましては、これは四十六年度に始まったばかりでもございますし、五十年度までという暫定措置でもございますので、直ちに現段階でこれを立法化するというようなことは考えておりませんが、将来の課題としては十分検討させていただきたいと思います。
  223. 近江巳記夫

    ○近江分科員 学校用地にしましても、大体八千坪から一万坪というのが子供たちがまあまあ成長していける条件であるわけです。たとえば、人口一万で一小学校つくるとした場合、千数百名の児童と考えた場合ですね。ところが、このごろはそういうことはとうてい考えられない。五千坪の用地があれば最高だといわれるくらいにまでなってきている。市町村だって広い土地と思っているけれども、財源がないということで、小さくなってくるわけです。五千坪といってもいま坪八万ぐらいではありませんよ。大阪周辺だと全部十万ですよ。五千坪といったって五億かかるのです。それに対して五十二億三千万円。全国何百校の要請が来ているわけでしょう。これで幾らの金がくるのですか。一応形だけ手当てをしておるということで、これでいっておるという、そこが問題なんです。もっと実情をほんとうに知ってもらいたいと思うのだ。補正予算組んだって何したってかまわないわけですよ。真剣にこれをやってもらわなければ困りますよ。  大体この学校施設なんかでも、普通は教室、特別教室、体育館、プール、これができてあたりまえですよ。ところが、初めはただ校舎だけ。プールや体育館などというものは何年もたってから、しかも父兄負担も募ってやっとできるような状態です。だから、一年生で入って六年で卒業するまで、年がら年じゅう工事をやっているわけです。そのうちに膨張してきて学校分割、こうなる。今度はプールに入れると喜んでいた子供が、次のまた校舎だけの学校に行かなければならなぬ、しかもプレハブ校舎である、こういうようなことで、あなた方は、ほんとうに義務教育というものをどれだけ重視しているのですか。ほんとうに子供というものが最高の宝であると思うなら、子供たちをもっと宝扱いしてもらいたいと思うのですよ。大臣も一日ぐらい体験入学してもらいたいですよ。そういう急増地のたいへんな小学校に行って、真夏の暑いときに一日そこで一緒に勉強されたらどうですか。ほんとうに子供たちの身になって考えていただきたいと思うのです。  そういう点からいっても、この立法措置などしていただくのは当然だと思うのですよ、文部省は。  いま小中学校のことを言っているわけですけれども、たとえば、幼稚園等にしたってそうでしょう。私もここにデータを持っていますけれども、この財源の内訳を見ても、たとえばこれは大阪の豊中というところの一つの例ですけれども、幼稚園なんかでも一カ所当たり一億一千七百五十四万一千円かかっているのですね。ところが、そのうち国庫補助が幾らあるかというと、四百七十二万八千円、起債が七千四百三十万、それで市が三千八百五十一万三千円、こうなっておる。こういうふうな状況で、小中学校、幼稚園等も実際上はもうたいへんな金がかかるわけです。そういう点で、いま四次防でいろいろ問題になっておりますけれども、幾らでも回そうと思えば回す金もあるわけです。  そういう点で、もう時間もありませんので、どうしてもこれをほんとうに軌道に乗せた形にやっていただくためには、人口急増地に対する学校施設等の問題、ほかにもいろいろな公共施設等ございますけれども、とにかくそれらを含めて、その特別立法を時限立法でも、どうなるかわかりませんけれども、当然これはやってもらわなければ困ると私は思うのです。離島振興にしろ、過疎地にしろみなあるわけでしょう。いま一番大都市圏が問題になっておる。私は、大臣の子供たちのことを思うその熱意から、それをほんとうに推進していただけるかどうか、お聞きしたいと思うのです。
  224. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お話しの問題は、私が、三年前でありましたか、横浜市の急増地帯を自分の目で見てまいりまして、これではいけないというので、実は一昨年から急増地帯に対する対策費がつくようになったわけであります。目下進行中の状態で、三年目にしてここまで来たということは、進歩といえば進歩といえる。しかし、私も先生御指摘のとおり、この急増地帯に対する対策というものはよほど真剣に取り組まなければ解決のできる問題ではないと思います。御指摘のような問題は、特別立法をつくる、つくらないという問題を含めまして、前向きに検討をさしていただきます。
  225. 近江巳記夫

    ○近江分科員 では、もう時間がありませんからこれで終わりますが、とにかく特別立法をつくることについてはよほど真剣にというような大臣のお話がございましたが、これはもういまの文教問題における最大の大事な問題だと私は思うのです。そういう点で、今後立法措置を考える――これは考えられるわけですね。いまおっしゃったその点は、単なるそういうことではなくして、ほんとうに一日も早くそういう立法措置もしていただき、そして対策をひとつ十分にやっていただきたい、これは強く強く要望したいと思うわけです。  最後にもう一ぺん、くどいようですけれども、特別立法を含めて、さらにやっていただけるかどうか、重ねて御決意を聞かしていただいて終わりたいと思います。
  226. 高見三郎

    ○高見国務大臣 特別立法の問題は、御承知のように義務教育の施設は市町村長の責任になっております。けれども、いまの市町村の実情で、この急増する地帯をそのままにしておくわけにはまいりません。何らかの措置をとらなければならないという決意を持っておるわけでありまして、そのあらわれが、一昨年からこういう形になってきておるというようにひとつ御理解をいただきたいと思いますし、私がこの問題を身をもって体験いたしました関係で、特にこの問題には真剣に考えておるということだけは御理解をいただきたいと思います。
  227. 大村襄治

    ○大村主査代理 次は内藤良平君。
  228. 内藤良平

    内藤分科員 大臣、通告しておきました質問の前に、あなたのお顔を拝見して、二十一日の本会議の例の運賃問題で、あなたの御答弁があまり簡単なものですからちょっと真意をはかりかねておりましたが、いい機会だものですから、運賃問題で、例の通学の割引問題、これを若干御質問したいと思います。  あのとき私は、いま通学の場合は、一カ月から三カ月程度であれば十分の五、それから六カ月は十分の四を限度とした、割引を運賃法でやっているわけです。これは文部省の文教政策として、現在においてもこの運賃割引というものが確立されておるものかどうか、文部省の文教政策の一つであるのかどうか、これをまず第一点聞きたかったわけなんですよ。それはいかがですか。割引は古い運賃法、だいぶ前からやってますし、現状でも文教政策の中でこの通学の割引というものは重要な文教政策の一つである、こういう御認識であるのかいなか、こういうことをひとつお聞きしたい。
  229. 高見三郎

    ○高見国務大臣 この間の本会議の答弁は、私はあなたの御質問の趣旨を実は取り違えた御返事を申し上げたような感じがするのでありますが、この制度は、私の記憶では、たしか大正五、六年に二割というところで出発をいたしました。ところが戦争になりまして、学生と勤労者の運賃だけは上げないが、一般の運賃は上げるということになりまして、比率の上から申しますと、ただいまおっしゃるような四割、場合によれば五割、六割というような割引の割合になっておるのであります。  この国鉄の割引制度というものは、文教政策上も非常に大事な問題であることは申し上げるまでもないことであります。ただ、私が取り違えましたのは、あなたは、あれを国費で見たらどうだ、教育費で見たらどうだという御質問であろうと思いましたものですから、まことに簡単な御答弁で、これは国鉄再建の一環として考えるよりほかに方法はないだろうと申し上げたのであります。今度の運賃値上げにおきましても、この割引率だけは維持できるということで、国鉄全体の再建の問題を考える場合にはやむを得ないじゃないかという理解の上に立っておるわけであります。
  230. 内藤良平

    内藤分科員 文部省でも、歴史的に見ても文教政策として大切なもの、こういう御答弁です。そこで、私たち、これは私は運輸関係だからじゃないのですが、国鉄の財政再建ばかりじゃなく、交通関係というものの運賃関係、原価関係が非常にきびしくなってきている。将来この割引というものが、交通事業の関係からだんだんなくしなければならぬという状態になった場合、やはり文教政策として、最近の学校と居住地の距離の関係、交通機関の関係、こういう問題からどうしてもこれはなければならぬとなりますと、いま大臣もちょっと触れましたが、やはり文部省で割引を確保するための予算措置のようなものを将来にわたっても考えなくちゃならぬじゃないか。いままで十分の四であったものが、かりに十分の十出してもらうというようになった場合、そうすると十分の六というものは学生の負担になる、あるいは父兄の負担になる。それでそれがやむを得ないというぐあいにお考えになるのか、いやこれは重要な文教政策だから、やはり文部省で大蔵当局等と話し合って、これを文部省の立場で措置しなければならぬ、こういうぐあいにお考えになるのか、ここら辺をお聞きしたいわけなんです。
  231. 高見三郎

    ○高見国務大臣 将来の問題でありますが、実は、私が心配しておりますのは私鉄関係、この割引率の高いことが赤字の要因であるというような指摘をしておる私鉄もあるわけであります。これは将来私ども考えます場合に、父兄負担の軽減という立場から考えてみましても、そういう事態が起これば、何とか予算措置をしなければならぬということは申すまでもないことであろう、さように考えております。実はそういう御答弁を申し上げれば御理解がいただけたんでありますけれども、私はいきなり国庫補助を出したらどうかという御質問かと思ったものですから、そうはまいりませんということを申し上げたわけなんであります。
  232. 内藤良平

    内藤分科員 これは、今度の国鉄財政再建問題でやはり重要な議論のテーマになるものですから、趣旨説明の際に文部大臣の御所見を伺ったわけですが、いまのお話で大体御意向がわかりました。私はこの問題について、希望でありますけれども、やはりだんだんそういう状態になるんじゃないかしら、これは国鉄だけじゃありません、交通問題全般に関して。その際、文部当局として、こういう運賃の割引がなければ子弟が十分に教育施設あるいは教育の機会均等を得られない、こういうお考えを堅持なさる場合には、やはり勇敢に父兄の負担を軽減する立場予算の措置等も考えてもらわなければならぬ。これは要望でありますけれども、そういうことをお願いといいますか、そういう意味でもう一ぺん大臣から御答弁願いたいと思っております。これは四十七年度はどうなるかわかりません。わかりませんけれども、やはりそういう文部省の考え方。  それからもう一つ、これは具体的に、今度も幾らか父兄の負担が上がるでしょう、ふえるんじゃないですか。日教組等ではこれを一つの問題にしているんじゃないか。父兄負担の増加を文部省で考えなければならぬ、こういう話は聞いてませんか、運賃問題にからんで。それがなければいいです。いまのことだけ、私の要望に対して、重ねてひとつ……。
  233. 高見三郎

    ○高見国務大臣 父兄負担の軽減の問題につきましては、逐年予算は増加いたしております。が、いま御提案になっております問題は、これはもう国鉄の再建だけの問題じゃございません。郵便料金の問題もございます。公共料金全般が教育に及ぼす影響を考えてみなければならないという点から、父兄負担の軽減というものを具体的に取り上げていかなければならない。そのうちで一番大きな問題は、おそらくは内藤さんがこの間御指摘になった、私は将来割引率の引き下げという問題が国鉄再建のために必至の問題として出てくるだろうということを実は憂えておるものであります。そのときには、やはりあなたのおっしゃるような形をとらざるを得ないだろうということは考えております。
  234. 内藤良平

    内藤分科員 それじゃ、これはそういうことでひとまず終わります。  次には社会教育関係ですが、これはぼくが秋田ということじゃなく、これよりないのです、秋田大学よりない問題ですから、そういう意味でとっていただきたいのです。  社会教育関係で、秋田大学の鉱山学部で通信教育をやっておるわけです。これは戦後二十年以上の歴史を持っておりまして、働く皆さんが全国的に鉱山学部の通信教育を受けているわけです。この課程を修了した方も数千名でしょうか、たいへん全国に散らばっておるのです。しかも国立の大学では唯一の通信教育講座、こういう歴史的な、またたいへん要望の多い講座です。私、地元の大学の関係というわけじゃありませんが、働く皆さん、社会人として知識欲に燃えている皆さん、しかも鉱山学部、歴史的な問題、こういう面で非常に重要視しておるわけです。ところが、どうもここ二、三年あるいは四、五年になるかもしれませんが、だんだん予算が減っていくような傾向がある、こういうぐあいに私ちょいちょい聞くわけです。全般としてもこれはたいした予算じゃないのです。考えてみても、教材をつくる費用、これは結局秋大の鉱山学部の教授の方々が教材をつくるわけです。教材をつくるための費用、それから印刷の費用ですね。あとは、いまちょっと話題になりましたが、通信関係といいますか、通信教育ですから全国に散らばる皆さんと通信によって交流する。あとは職員の人件費。こんなようなことで非常に喜ばれるわりあいに金はかからないのですね、教室も要らぬのでありますし。まあ夏に一ぺん集まるとか、そういうのはあるんです。それで私は、年々この予算が減るというような傾向にあると聞いております、間違っておればいいんですけれども。  そこで、四十五年、四十六年あるいは四十七年、この程度の予算の移りかわり、あるいは要求の状態、これをひとつ第一に、局長からでもあるいは課長からでもお聞きしたいと思うのです。
  235. 今村武俊

    ○今村政府委員 社会通信教育の関係の文部省の予算では、秋田大学で実施しているその運営のための経費は、社会教育局の関係ではないわけでございまして、その関係は直接には大学学術局の関係の予算でございます。私どものほうの予算といたしましては、たとえば社会教育局だけに限定いたしますと、昭和四十六年度、本年度が一千四百万円でございますが、来年度は四千五十七万円という程度でございまして、二倍以上の予算を組んでおるというようなことでございます。特に社会教育審議会の答申が出まして、今後の多様化する社会において個人学習を奨励する必要があるということで、社会通信教育に非常なウエートを置いておりますので、文部大臣認定の社会通信教育がもっともっと国民の皆さんに知られて活用されるように啓蒙普及といいますか、指導資料等の作成に非常な力を入れているのでございます。したがって、そういう関係の経費だけでございますと、前年度あるいは前々年度は約五百万であったのが三千万円というようなことで、四十七年度は、その一般国民の学習意欲のある方々によく知っていただくための経費を思い切って増額しておるという現状でございまして、社会通信教育を軽視したりあるいは下目にしたりするという気持ちは全くないわけでございます。
  236. 内藤良平

    内藤分科員 いや局長、それは社会教育局の所管じゃない――しかし、いまあなたのお話しありました数字は、これはいまの秋大の鉱山学部の通信教育関係ですか、それは全部含んでいるのですか。
  237. 今村武俊

    ○今村政府委員 秋田大学は国立大学でございますので、その大学の運営に要する経費は国立大学の特別会計の経費でございます。私どものほうは、社会通信教育の法人とか大学から申請がございますが、そういうものを審査する経費だとか、それから社会通信教育をPRする経費だとか、それから教育委員会主催で社会通信教育を受ける人が一緒に勉強会をやる、そういう場合の経費の補助だとか、あるいは財団法人社会通信教育協会に対する助成金の支出だとか、そういう関係でございまして、社会教育のほうは社会通信教育を振興させるための経費であり、秋田大学の関係は大学の運営費そのものでございますので、国立大学の特別会計の中に入っておる、こういう関係になっております。
  238. 木田宏

    ○木田政府委員 いま御指摘のございました秋田大学の通信教育は、いま御示唆がございましたように、国立大学では唯一の大学として社会通信教育を社会人に対して行なっておる事業でございます。四十五年度は百四十二万八千円の金額が計上してございます。四十六年度は百四十三万六千円、四十七年度は五百二十九万六千円を計上してございます。
  239. 内藤良平

    内藤分科員 これは間違いないでしょうね。四十七年度、ばかに多くなりましたね。四十五年度が百四十二万八千円、四十六年度が百四十三万六千円、四十七年度が五百二十九万ですか。
  240. 木田宏

    ○木田政府委員 はい、間違いありません。
  241. 内藤良平

    内藤分科員 これは三倍ぐらいになりましたね。喜ばしいことですけれども、これは何か特別な理由があるのですか、ちょっと聞かしてください。
  242. 木田宏

    ○木田政府委員 教科書の改訂に必要な経費として特に三百八十万ほど組み込みました。
  243. 内藤良平

    内藤分科員 すると、三百八十万の教科書の改訂を引きますと百四十九万ですか。するとたいしたことないですな、これは。     〔大村主査代理退席、主査着席〕 それで、こうなると大臣にまたお尋ねしますけれども、これは大臣どういう認識があるかわかりませんけれども、いままで私、事務当局にちょいちょい聞いたことがあるのです。だけれども、これは大臣にやはり聞いてもらわなくちゃならぬと思って、たいしたことでないようなものだけれども分科会に来たわけです。これはわずかな金だけれども、なかなか喜ばれている教育のことなんですよ。この関係者はたいへん苦労してやっているのですね。四十五年度が百四十三万足らず、四十六年度が百四十三万六千円でしょう、今度は百四十九万くらい、たいした金額じゃないし、伸び率もたいしたことはない。ところが、これはお話を聞きますと、教材をつくる場合にも教授自体がアルバイトのように非常に苦労してつくっておられる。それに対する補償も非常に少ない。印刷がなかなかかかるわけです。印刷費がやはりいまのあれに三百何十万もかかるわけです。それから職員なんかも数少ない職員が、大学の中じゃ何か肩身の狭いような状態の中でがんばっているらしいのです。わずか二百万足らずの金で――これはできてから二十年ぐらいになるのですね。それから全国ほとんど各県から、国立大学という権威といいますか、私立の通信教育と違って、国立の通信教育はここよりないものだからやはり希望者がおるのですね。だから、これはもう少し充実しますと、まだまだ働きながら勉強したい、国立大学の通信教育を修了というかどういうのですか、そういうぐあいにしたいという方が非常に多いわけだ。  だから、これは大臣、私はいままで事務当局といろいろお話ししてきたけれども、どうもらちがあかない。あなたに言っているわけじゃないけれども大臣に知っていただいて、もうちょっと金を出していただければ――倍額にしても三百万ぐらいなものですよ。そのことによって教材なんかも非常に充実するんじゃないか。教授が余暇に書いているような状態ですから。どうでしょうかね、大臣。こういうのがあるというのは初めてお聞きでしょう。国立の中でたったこれだけしかないのです。二十年、関係者が熱心にやってきているのです。だから、これは大臣、激励の意味も兼ねて――初めての御認識だと思う。しかもこれはなかなか金がかからないけれども効果がある、喜ばれる、こういう三拍子そろったあれだと思うので、あなたから、このがんばっておる皆さんの激励を兼ねて、意欲的な御発言をぜひいただきたいと思って、私はこの分科会に出てきたわけなんですよ。感想を含めてひとつ御発言願いたいと思います。
  244. 木田宏

    ○木田政府委員 いま御指摘のように、大学が正規の大学教育のほかに、こういう社会人を対象にした教育活動をやっておるという意味では、非常に特異な活動事例でございます。しかし、このほか、大学が一般的にそういう方向になりますことは願わしいことでございまして、先般の中央教育審議会の答申でも、大学を開けた大学にするという方針が示されておりますが、こういうこともその大事な一例になろうかと考えております。すでに社会局を中心に、通信教育だけではございませんで、大学開放講座のためのいろいろな委嘱事業費も計上してございまして、この秋田大学のほかに数多くの大学で開放講座等をやってくれております。これらは、将来の大学改革の一つの進むべき課題として私どもも今後真剣に取り組むべき課題だと考えて、いま検討しておるところでございます。
  245. 内藤良平

    内藤分科員 大臣、これは生涯教育だから、話してください。
  246. 高見三郎

    ○高見国務大臣 御意見は、実は私は初めて聞いたと申し上げたほうが正直な言い方なんでありますが、秋田鉱山専門学校当時に、私も秋田県庁につとめておりましたので、行き来はあったわけでございますが、そういう開放講座を開いておる。これからの教育はやはり生涯教育の観点に立ちまして、テレビも利用しなければならぬ、ラジオも利用しなければならぬ、それから通信教育もうんと力を入れなければならぬ。学校教育だけが教育であると私は考えておりません。御指摘の点、積極的に前向きに努力をいたしますことをはっきり申し上げておきます。
  247. 内藤良平

    内藤分科員 大臣、ちょっと足りない。この関係は、さっきちょっと言ったけれども、秋大の中でもこの関係の方々はちょっと肩身の狭いようなかっこうでやっているらしいんだ。それは文部省当局の何か影響があるらしいんだね。この通信教育というものは何か法的の根拠がないような、これは占領時代の何かというような、そこら辺は私もよく覚えていないのだけれども、何かいきさつがあるらしいのです。法律上根拠がないとかあるいは文部省の通達がないとかあったとか、さがしたら倉庫のすみから出たとか、何かそんなようなことで非常に根拠が薄弱だ、だけれども二十何年になっちゃったんだね。関係者はがんばっているわけだ。それはなぜかといえば、何千人の卒業生というか修了生がおるわけだ。希望者も多いでしょう。だから関係者は、年間百五十万程度の予算の中で、教授の皆さんのアルバイト的な応援をいただいてがんばっておるわけだ。前向きにがんばっていただく、これはありがとうございます、と同時に、たしか二十何年にもなったこの歴史を持ったあれですから、この肩身の狭いといいますか、妙な表現だけれども、文部省からもあまり認識されないでがんばってきたこの関係者に対して、激励のことばを一言だけ出してください。これはやはり当然――ほんとうは関係局長責任追及なんて、そんなやぼなことは言いませんから、大臣、初めて知ったら知ったでいいから、これはいいことだ、おまえ方がんばってくれた、私もこのあと予算でも、省内の位置づけをがっちりやってみせるという意味の答弁を再度求めます。
  248. 高見三郎

    ○高見国務大臣 申すまでもないことでありまして、まことにいいことであるし、私はよくやっていただいておると存じます。予算の面におきましても、できるだけの努力を前向きに検討いたしますことをお約束申し上げます。
  249. 内藤良平

    内藤分科員 よい答弁が出たから、四分ぐらいおまけして、ここでやめます。
  250. 森田重次郎

    森田主査 次に川崎寛治君。
  251. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 私は、幼児教育の問題にしぼって、限られた時間ですから、お尋ねをしてみたい、こういうふうに思います。  幼児教育についての要望というのはたいへん高いものになっております。私は、先般、中国や北朝鮮の保育所なり幼稚園なりもずっと見てまいりました。文部省のこの「わが国の教育水準」その他にも、資本主義国だけでなくて、ソ連の問題などについても触れております。しかし、どうも社会主義国のそういう幼児教育の問題については十分な検討はないんじゃないか、こういうふうに思います。中国や朝鮮――中国はそうでもない面もありますけれども、朝鮮などの場合、完全に保育所に収容されますし、そしてさらに幼稚園ということは一〇〇%行なわれておるわけですね。そうすると、わが国はよくGNPがどうだとかいうふなことを国の経済の力としていうわけですけれども、しかし、ほんとうに子供が大事にされているかいないかという点からまいりますと、GNPは決してそれをあらわしていない。それはいまGNPに対する反省でもあるわけだし、いまいろいろとそういう点も議論がなされているところであります。  そこで、大臣にまずお尋ねをしたいのは、わが国が、GNPはたいへん伸びた、経済大国になったといいながら――そうした戦後二十数年の朝鮮民主主義人民共和国の経済の力というふうなものなどから比較をしたら、比較にならないと思うのですけれども、しかし、それでもなおかつわが国では、全体の教育の問題の中では幼児教育が一番おくれている面ではないか。なぜこんなに開きがあるのかという点について、大臣はどうお考えになるか、ひとつ高い次元からまず御意見を伺いたいと思います。
  252. 高見三郎

    ○高見国務大臣 わが国の幼稚園に就園しております園児の数は、必ずしも少ないわけじゃございません。しかし、幼稚園に入園させたいという親の数から申しますと、幼稚園教育というものはまことに立ちおくれておる部面であります。  そこで、私は、当面の問題として、幼稚園教育と社会教育というもの、人間生涯の教育、ことに子供の心身の発達段階におきます最初の集団教育として、日本における幼稚園教育というものを重視させなければならぬという考え方に立っておるものでありまして、日本の幼稚園教育はまことに立ちおくれておるという認識の上に立って、今回の予算もお願いを申し上げておるわけであります。
  253. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 わが国の幼児教育というのは、つまり金持ちの子供を入れるという形のものと、低所得層の、共働きをしなければならないというために子供を預かってもらうという、二つの形で出発してきているのですね。ところが、それがその後の社会の構造の変化の中でそういうものを十分に見きわめていない。いまの大臣の御答弁も、私がお尋ねしたこととは全く違う答弁をしておるわけです。  では、そういう国々が一〇〇%幼児の保育所なり幼稚園なりをやり得ておるのに、なぜわが国ではおくれておるのか、そのおくれておる理由を私は明らかにしてほしいのです。中教審の答申なんかに書いておるようなそういうことを聞いておるんじゃないです。なぜおくれておるのか。
  254. 高見三郎

    ○高見国務大臣 わが国では、御承知のように義務教育は六歳からということになっております。その義務教育前の幼児教育というものがなぜおくれたかということになりますと、私は、いま非常に希望が盛んになりましたけれども、幼稚園教育というものは就学前教育だという認識から出発しておったために、わが国の幼稚園教育というものはおくれておる。これは社会主義諸国と自由主義諸国との違いであろうと思います。朝鮮民主主義人民共和国の幼児教育は非常に進んでおるとおっしゃるのは私には理解ができますけれども、義務教育としての制度と幼児教育とは、おのずから別なものであるというところに問題の違いがあるんじゃないかという感じがいたします。
  255. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 じゃなぜいま、義務教育でないけれども、幼児教育をより振興しようということになったんですか。いまの義務教育でないから進んでいないんだというのは、答弁になってないんですよ。
  256. 高見三郎

    ○高見国務大臣 そこで私は、人間は生まれてから死ぬまでの間を教育の期間と考えなければならない、生涯教育の観点から幼児教育というものを考えなければならないし、家庭教育を考えなければならぬという観点に立って、今回の予算を要求したわけであります。
  257. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 どうもこの議論はなかなかかみ合わないわけで、しかし、こんなことしておったらすぐ三十分たちますから、これはまたあらためてそういう本質論はもっと詰めます。いま幼児教育を生涯教育だ何だという形ですぐワクにはめよう、幼児学校だ何だということについては私は反対なんです。だから、それの議論はあらためてやりますけれども、いまの実情というものをよく踏まえながら、これをどう改めていくかという具体的な問題についてお尋ねしたい、こう思います。  現在の幼稚園の普及率というものも、最高の県は八四・三%、最低の県は一四・二%ですか、たいへんな格差がありますね。だから都道府県によってたいへん違うわけです。しかも公立の割合というのは非常に少なくて、私立の幼稚園にほとんどおんぶしてきているわけですね。こういう状況を見ますと、結局、これは国が幼児教育に熱心でなくて、民間の熱心な人というか篤志家というか、そういう人たちにまかせてきたということは否定できないと思いますね。その点どうですか。
  258. 高見三郎

    ○高見国務大臣 これはお話しのとおりであります。ただ、幼児教育の中で八八%もありますところが、ふしぎなことには香川県であるというような例は、これはこういうことが影響しておると私は思うのです。  幼稚園の普及率の非常に低い県を見てみますと、保育所が非常に多い。保育所が少ないところは幼稚園が多くて、幼稚園の少ないところは保育所が多いということは、やはり母親としてはどこかで教育をしたいという気持ちがある、そのあらわれだという感じがいたしておるのであります。あなたの鹿児島県にいたしましても、そういう傾向が確かにあると思います。
  259. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 だから、民間におっかぶせてきたわけでしょう。そうしますと、これからこれを改善をしていこうということになりますと、私立のものに対する、あるいは宗教法人――これは宗教法人が多いということもいろいろ問題があるわけですよ。なぜ宗教法人が多いかということも、今日まで置かれた環境の問題だろう、こういうふうに思いましたね。子供を預けたい、しかし場所がない、結局お寺さんだ、神社だ、こういうことになって、そういうところが引き受けざるを得ない。営利ではなくて引き受けざるを得ないということで、宗教法人がたいへん多いわけでしょう。そうしますと、公立が非常に少ない。個人立や宗教法人が非常に多い、こういうことになりますと、個人立や宗教法人立のその幼稚園に対してどう助成をし、振興していくかということが当面の問題だと思うのです。  そうしますと、今度の予算の中で問題になっております就園児の奨励費なども、そういう精神からしますと適当でない、こういうことだと思います。結局、個人立と宗教法人立の幼稚園児には補助がないわけですね。公立だけですね。
  260. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 全部に対しまして補助をしたいというふうに考えております。
  261. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そうすると、それは個人立も宗教法人立も全部関係なしにですね。――ではそれはひとつあれしておきます。  次に問題は、所得で差をつけておりますね。これは川崎市ですでに実績があるわけです。所得による差というのは、実際川崎市の場合には、親としてもあまり好ましくないのですよ。だから所得による差というのはかえってまずい結果になるんじゃないか、こういうふうに思うのです。その点いかがですか。
  262. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 来年度から始めるわけでございますから、そういうふうなことがないように特に気をつけてまいりたいということでございます。また、義務教育の段階におきまして、御承知のとおり要保護、準要保護児童生徒に対しましては格別の手当てをしておりますけれども、これに対しましてもいままで実績がございまして、そういうふうなトラブルが非常に少なくなっておるという経験から申しまして、私どもそういうことのないように格別に気をつけたいというふうに考えておるわけでございます。
  263. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そういうことのないようにというのはどういうことですか。
  264. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 一部の子供たちが所得が低いゆえに特別の補助を受けるということに対して心理的な影響、悪い影響を受ける、そういうことのないようにしたいということでございます。
  265. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 次に問題は、人件費の問題ですね。現在、公立と私立の給与費の格差というのは大体どのぐらいだと見ておられますか。
  266. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 これはごく大ざっぱに、平均でございますけれども、一万円ほど格差があるというふうに考えております。
  267. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 一万円というと、大体七割程度という見方ですか、それとも六割程度になりますか。
  268. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 公立の場合には、一人当たり年額、いま八十万から九十万ぐらいを見ておりますものですから、一万円と申しましたのは月額でございますので、ボーナス等入れますと、約十五万円程度というふうに計算されるわけでございます。
  269. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 その格差はどのようにして是正していこうとされますか。
  270. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 いま高等学校以下の学校につきましては、地方交付税を通じまして、人件費を含む経常費の助成ができるような財源措置をしているわけでございます。幼稚園につきましても、現在学校法人立につきましてはそういうような手当てをしているわけでございますけれども、個人立、宗教法人立につきましては、これは来年度から、ただいま御審議をいただいております予算及びこれから御審議を願おうといたしております立法措置によりまして、人件費の助成ができるように具体的にしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  271. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 個人立、宗教法人立の幼稚園に対しても、そのいま言った格差をどの程度縮めようということになるわけですか。これは全幼稚園ですね。
  272. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 御指摘のとおり、全部の幼稚園でございます。そこで、これはまあ段階を追ってやってまいろうということで、来年度からは人件費の一割が補助できるような措置を講じてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  273. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そうすると、この長期計画の中では最終的に格差をなくすという方向にいくつもりですか。問題は、幼稚園の数をふやす。就園率を上げる。そのためには、先ほど指摘をしましたように、県によっては一四・二%などという非常に低いところがありますね。そこの就園率をどう上げていくかという問題と、それから格差のある給与を一割程度補助しよう、こう言っておるが、しかし、民間の場合には、民間自体でたいへん差がありますね。しかも幼稚園の規模によって給与にもずっと差があるわけですから、そうしますと、そういうものを一律にただ補助をするという形でいったって、全体のものを上げるというところまではいかないわけです。具体的にそれをその十カ年計画の中でどう具体化していこうということになるのですか。
  274. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 これは具体的には、個々の場合に個々の幼稚園のあれをどうするかということになりますと、なかなかむずかしい問題でございますが、私どもは全体的な方向づけというものをやりたいということで、ただいま川崎先生おっしゃいました一つは就園率の増加でございます。もう一つは、所得の低い階層のお子さん方も幼稚園に行けるように就園の奨励をするといういき方、それからもう一つは、公私の格差を是正するというふうな観点から、地方交付税で人件費を含みます経常費の助成をしていこう、その三本の方向をここで明らかにした。まだこれからやるわけでございますから、具体的にどういうふうに発展してまいりますか、よくわからないわけでございますけれども、おいおいその欠点を是正していくというふうな方向でまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  275. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 現在幼稚園の教員の勤務年数は大体平均何年と見ていますか。
  276. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 六・八年でございます。
  277. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 実際にはそんなにないと思うのです。私たちも地元で見ておりますけれども、短大を出た、そして幼稚園の教員をやる。しかし二、三年ですよね。それはどうしてもやはり一般の職場と比べますと、たいへん給与の開きがあるわけです。だからどうしてもせっかく働いていきたいと希望を持ってやるけれども、今日の社会の高度化の中で滅私奉公というものはできぬわけですから、実際には三年程度だ、動いているところを見れば。そうしますと、その人たちは結局やりたいけれどもやれないということで、どんどんどんどんやめていく。やめていくから、今度の幼児教育の中でも、教員の資格をどんどんつくろうという形の粗製乱造が次にどうしても出てくる。こういう問題になりますね。その問題の一つは、やはり退職金の制度だ、こう思います。全国的に見て退職金の制度を持っている県と持っていない県、どういうふうに文部省としては調査をしておられますか。
  278. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私立幼稚園教職員の退職金の制度でございますが、御承知のとおり、これは法的には特に制度というものはないわけでございますが、現在各府県におきまして、社団法人あるいは財団法人という形で退職金の基金といったようなものが設けられている県があるわけでございます。幼稚園だけを対象にいたしておりますものが十一、それから幼稚園を含む私立学校を対象といたしておりますものが二十八、計三十九でございます。
  279. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 国は、先ほど制度としてない、こう言われたから、これに全然補助しておりませんね。
  280. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 国といたしまして補助金を交付しておるということはございませんけれども、基準財政需要額の中に織り込んでおりまして、四十七年度の積算で申し上げますと、標準団体におきまして二億四千六百五十万円の標準経費が計上されておるわけでございますが、この中に私立学校の教職員の退職金社団補助といたしまして、三千六百万円が交付税に積算されておるということでございます。
  281. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そうしていながら、あるところとないところとどうしてあるのですか。
  282. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 これは、川崎先生よく御承知のとおり、交付税というのは、これは地方団体の自主財源でございますから、団体の判断によって、あるところとないところがあるわけでございますが、もちろんそういう事態は私どもは好ましいことだとは考えておりません。すみやかにすべての都道府県におきましてこうした組織がつくられますように指導してまいりたいというふうに考えます。
  283. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 具体的にいつからどういうふうにしていくのですか。
  284. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま具体的にどうするかということをお答えいたしかねるわけでございますが、なるべく早い機会に、都道府県の私学の主管課長会議等の機会をつかまえまして、そうした指導、助言をいたしたいというふうに考えております。
  285. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 だから、幼児学校が何だ、何がという前に、いまある幼稚園それ自体、もうたいへんおくれているんだ、こう大臣言われたでしょう。しかし、実際には、あそこで一生懸命御苦労いただいておる教員の皆さん方の生活の安定化ということも、月々の給与の面もそうだし、退職金の面もそうですね。そうしますと、そういうものをきちんとしないでおいて、就園率を引き上げるための幼稚園をふやすだとか、あるいは園児の就園率をふやすとか、こう言ってみても、それは絵にかいたもちになるのじゃないですか。だから、ほんとうにやろうというのであれば、そういうことをまずきちんとやられることが実際には進めていくことになるのではないか、なぜそれをやらぬのですか。
  286. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 御指摘のとおりだと思います。したがいまして、来年度から就園奨励費というふうな新しい予算の項目を立てたわけでございます。それからまた、地方交付税による財源措置をすべての幼稚園に広げるということもやったわけでございます。まだ不十分な点はございますが、御指摘のような方向で努力をしたいというふうに考えております。
  287. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 御指摘のような方向でということは、退職金制度というそういうものを制度としてきちんと確立する。つまり基準財政需要額に入れてみてもそれは実際にはいかぬわけですからね。そういたしますと、制度としてやるかやらないかということが問題なんですから、制度としてやられるというふうに理解をしてよろしいですか。
  288. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 制度という話でございますが、私ども法的制度として立法措置を講ずるというところまでは現在考えておりませんが、何らかの基準を示して、その方向で、全国が同じ水準の退職金を支給できるような方向に持っていきたいというふうに考えます。
  289. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そうしますと、給与の問題、それからそういう退職金の制度の問題、さらに父兄負担の軽減のための就園奨励金ですか、そういうものも実際含めますと、どうしても、いま安嶋局長も言われましたように制度がないわけなんですから、それをきちんと制度化するということのためには、やはり幼児教育振興法というふうな形のものが私は必要だろうと思う。非常におくれたというか、非常に苦しい状況の中にありながらも、中身は十分でありませんけれども、沖繩においては幼児教育振興法という法律もあるわけですよね。そこで、そういう幼児教育振興法というものを当然考えるべきだと思いますが、大臣、いかがですか。
  290. 高見三郎

    ○高見国務大臣 これは貴重な御意見として拝聴いたしておきます。いますぐどうするというお約束を申し上げる段階ではございません。昭和四十七年度は、いままで局長が申し上げましたような考え方で、全国の幼稚園につきまして実態調査をいたしまして、その上に立ってやりたい、こう考えております。実は、川崎先生、保母さんの就職の期間は二年くらいじゃないかあるいは三年くらいじゃないか、これは私は当たっておると思うのです。ただ、幼児教育に四十年も五十年もつとめておる保母さんがあるものですから、平均すると六・八年ということになるのですけれども、実は幼稚園保母というものは非常に異動が激しいものだ。それはどこに原因があるかと申しますと、やはり待遇の問題もこれは見のがすことのできない大きな問題だと思います。退職金の問題も将来何とか考えなければならぬ問題であるということだけは間違いない問題であろう、こういうふうにいまお話を伺いながら、川崎先生のおっしゃるほうがほんとうだなと思って私聞いておったのですが、そういう意味で、今年度、昭和四十七年度に実態の調査をやりまして、そして今年を十カ年計画の初年度といたしますけれども、来年度から大幅に拡充をしていきたい、かように考えております。
  291. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そこで、貴重な意見としてという程度ではだめなんで、せっかくそこまで言うならば、そういう人件費なり退職金なり奨励費なりそういうものも含めて、幼児教育振興法というものを制度化するということについて、ひとつここで明確な御答弁をいただきたい、こういうふうに思います。
  292. 高見三郎

    ○高見国務大臣 これは明確にお答えを申し上げたいところなんですけれども、御承知のように保育所との問題がございまして、文部省だけが先走ってどうと言うわけにまいりません。しかし、方向としては、先生おっしゃるとおりその方向へ持っていく努力をするということだけはお約束申し上げられます。
  293. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 最後に、税金の問題をちょっとお尋ねしておきたいのです。これは文部省直接の担当ではありませんけれども。  個人立の場合に剰余金が出ると、結局園長さんは課税されますね。だから、これはやはり課税すべきでない、つまり公共事業なんですから。十分に給与なんかも上げようとしておる、施設なんかもよくしようとしておるけれども、そういうことでなかなか思うようにいかぬ面があるので、その面の課税をすべきでないというのが一つ、幼稚園経営についてですね。  もう一つは、幼稚園の施設そのものの固定資産税の問題です。これは神奈川県は公共事業だということで取っておりません。ところが、岐阜県は取っておるのです。県によって違うわけですね。これは取るべきでない。  文部省はひとつそういう点で、この所得税の関係と固定資産税の関係で、大蔵省なり自治省なりとよく話し合って解決をしていくということについて伺っておきたい、こういうふうに思います。
  294. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 学校法人立の幼稚園につきましては、免税の問題はほとんど片がついておるわけでございますが、個人立幼稚園につきましては、その設置主体が個人であるがゆえに、そうした特別な扱いがされていないということでございます。しかし、これはよく御承知のとおり、個人の家計というものと幼稚園自体の経理というものの区分がこの場合必ずしも明確ではない、明確にしがたいというような事情がございまして、課税が行なわれているということが実態であろうかと思いますが、御指摘でもございますので、国税庁、大蔵省等とも十分打ち合わせをいたしまして、これは全く免税ということは私はなかなか困難ではないかと思いますが、経費等につきましてそれを十分見ていくというようなことは、実際上の扱いとしてあるいは可能かとも思いますので、そういうふうに折衝もいたしてみたいというふうに考えます。  それから固定資産税の問題でございますが、これは私どもの理解では、教育用の財産でございますれば、地方税法の規定によりまして非課税になっているというふうに理解をいたしておりますが、もしそういう実態がございましたら、ぜひ調べて善処いたしたいというふうに考えます。
  295. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 終ります。
  296. 森田重次郎

    森田主査 次に相沢武彦君。
  297. 相沢武彦

    ○相沢分科員 私は文化庁に対しまして、文化財保護の点につきまして御質問をいたしたいと思います。  最初に、わが国と英国の場合を考えますと、狭い島国でありながら工業の面で非常に発達をしておりますし、また、人口密度の点からもよく似ているということで比較されているのです。しかしながら、自然保護政策の面では、英国では歴史的にも古くから取り組んでおりますし、自然保護委員会という政府機関がありまして、国で保護についての責任と権威ある管理運営が行なわれております。これに比較しますと日本の場合は、いわゆる自然公園法あるいは文化財保護法というものがありますが、管理の実態は非常に立ちおくれていると思われます。  そこで、私はきょうは、具体例といたしまして、特別天然記念物に指定されております北海道支笏洞爺国立公園内にある世界一新しいベロニーテ火山といわれる昭和新山についてお尋ねしたいのですが、昭和新山はもうすでに御承知のように、国際的にも学術資料として非常に高く評価されておりますし、昭和三十二年に特別天然記念物として指定されてきましたけれども、問題は、国際的に評価されている文化財にふさわしい保護政策、対策がはたしてとられてきたかどうか、この点に大きな疑問を持つものです。  日本の場合は、法律であらゆる面について規制は強化はされておりますが、それが第一義になっていて、諸外国において見られるような、いわゆる文化財の効用を発揮させるような保護政策というものがとられていないように感ずるわけなんです。特に、火山における特別天然記念物としてわが国で指定されておりますのは昭和新山のみである、こう聞いておりますが、この保護のための行政措置、特に予算措置などはこれまでどうなっていたのか、この点について御答弁いただきたい。
  298. 高見三郎

    ○高見国務大臣 昭和新山は、御承知のように洞爺湖の東南にある有珠岳のふもとにあり、私も見たのでありますが、これは世界でも珍しい寄生火山であるわけでございまして、このような火山は世界的にも例がないという、そのでき上がります様式において、希少価値の非常に高いものだというところから、文部省が昭和三十二年に天然記念物に指定をいたしました。昭和三十五年にはその名称を昭和新山と改めて、その保護につとめてまいったのであります。  特別天然記念物として指定いたしておりまする地域は、個人が所有しておりまする溶岩円頂部約二万六千坪でございますが、付近一帯は支笏洞爺国立公園の特別地域に指定せられております。最近この昭和新山の所有者が、所有地の買い取り方を申し出ております。北海道庁におきまして予算措置を講じましたが、結局買い取りに至らなかったということを伺っておるのであります。  文部省といたしましては、これが国立公園の特別地域にも含まれておりますことから、今後環境庁と十分連絡をとりまして、この世界的に価値の高い昭和新山の保護につとめる考えであります。  なお、昭和新山の所有者がまとめましたところの火山の活動に対する観測、調査あるいは記録等の関係資料につきましては、学術資料として何とか保存ができるようにいたしたい。これは個人がお持ちになっておるのでありますけれども、何とかして学術的に保存したいと考えておりまして、活用の措置につきましてこれから十分検討をしてまいりたいと思います。
  299. 相沢武彦

    ○相沢分科員 いま大臣の御答弁になった、環境庁とよく打ち合わせして管理運営をはかりたい、また、学術資料として保存をしたいという点につきまして、もうちょっと詳しく御質問をしていきたいと思うのです。  まず、管理面でお尋ねしますが、大臣もごらんになったとおっしゃいますから行かれたこともあるのでしょう。支笏洞爺国立公園の場合は非常に広範囲でございます。現在、そこには公認のレンジャーが一名だけ配置されておりまして、管理並びに指導、事務処理等一切引き受けてやっているわけで、昭和新山の保護、管理までは手が回らないというのが現状でございます。たとえば昭和新山の場合、道の教育委員会では、これは危険防止もあって登山を禁止している。ですけれども、実際監視人がいて監視しているわけではないので、レンジャー一人だけでは手が回らないということで、特にだれからもとがめられないわけでありますから、たとえば学生なんか見学に行きますと、引率の教師も興味を持って一緒に登ってしまう。また、生徒は珍しさに火山石を持ち出す。それを大事に保管して何かの学術資料にするというならいいのですけれども、結局は捨てられてしまうということで、所有者にしてみれば、生徒のことで一々神経をとがらしたくないわけですけれども、もっともっと記念物の正しい見学のしかたを普及させたいという点、また保護を徹底するという意味から、管理人を配置するとか、またそれが無理なら、この天然記念物について観察をしてきて一番詳しい当事者である所有者の方に監視を委託するという制度、こういったこともぜひ考えるべきではないかと思いますが、この点いかがですか。
  300. 安達健二

    ○安達政府委員 ただいま御指摘のございました登山禁止の関係の問題でございますが、文化財として指定しておりますところはドームの部分でございまして、これは非常な無理をすれば登れないことはないけれども、物理的には困難である。子供たちが登っているとすれば、おそらく指定地外の国立公園の特別地域部分ではないかというように私ども考えておるわけでございます。文化財の管理の問題で御意見ございまして、所有者管理ということも考えられるわけでございますが、この種のものでございますると、私どもでは大体公共団体に管理をお願いする、管理団体に指定してお願いするという例でございますので、現在は壮瞥町に管理をお願いをいたしておる、こういうことでございます。御指摘のございましたので、なお検討はしてみたいと思いますけれども、現在の段階では町にお願いしたほうがいいのではないかというように考えておるわけでございます。
  301. 相沢武彦

    ○相沢分科員 いまのお話ですけれども、どうも日本の場合は保護のために法律で規制を強めればいいという点だけが強調されるようでありまして、たとえばこの山の所有者の三松氏のように、火山について深い知識を持っておられる人の場合は、昭和新山の溶岩塔のように、近接して観賞して初めていわゆる見学の価値がある、こういう観点から、何とかそれをそういうふうにしたいと思っておるわけですね。ところが、正面の断崖面サンゴ岩といいますか、こちらのほうは危険だからということで、観客の近接は許されてない。そこで三松さんは、危険のない迂回道路をつくって、背面の安全な球状面から塔に近接させて観客に見てもらおう、こういうふうに考えて、自費で迂回道路をつくっていこうという意思はあるのですが、これも規制されてできない、許されない。結局ただ望見するだけで、せっかく日本にでき上がった、ほんとの、世界で一番新しいベロニーテの火山の生成、育成の場面が見られない。これじゃ特別天然記念物に指定はされても、ほんとうに理解してもらうことは無理だという点で非常に嘆かれているわけですが、規制と実際の観察のあり方、これはどのように判断されておられるのか、この点について。
  302. 安達健二

    ○安達政府委員 昭和新山は、御案内のとおり、まさに、日本のみならず、世界的にもきわめて類例の少ない大事なものでございまして、私どもとしては、これを安全に保存するということがまず第一でございます。それで、同時に、それが一般あるいは関心を持つ学生生徒にも理解してもらうということは大事でございますけれども、いま現在、文化財として指定しておりますところのドームの部分でございますが、この地域は傾斜も非常に強いし、火山活動もまだ盛んでございますので、これはまあ危険であるというように考えておるわけでございます。いまおっしゃいました所有者の三松さんのおっしゃっておるところの遊歩道は、言うならば、文化財の指定地外の国立公園のほうの部分でございますので、これは国立公園の特別地域の問題としてお考えいただいて、私どもとしては、危険のないように大事に保存していくことにまず第一義を置いたらどうだろうかというように考えておるわけでございます。
  303. 相沢武彦

    ○相沢分科員 その点、また一そう環境庁、また道ともよく打ち合わせをして、何とかこの学術的な価値のある火山を正面から見学できるような方向へ検討してみていただきたいと思うわけです。  それで、この昭和新山については、爆発当時、災害地の壮瞥町の郵便局に、現在所有者の三松さんがつとめていたわけでありまして、その職務の余暇を利用して観察につとめてきたのですが、非常にその労苦というものはたいへんなものだっただろうと思うわけです。これについては、元気象庁長官和達さんが、「昭和新山生成日記」序文の中にも書かれておりますが、この観察記録は、昭和二十三年六月、オスロ万国火山会議にも提出されて、三松ダイヤグラムと命名されて、世界随一と称せられているものでありますが、この資料にしても、世間に紹介されるにふさわしい機関はこれまで何も設けられていないわけです。先ほど御答弁のありましたように、そういったものは、公共団体、特に壮瞥町にお願いしてやっているのだと言いますが、地元の壮瞥町といったって、行けばわかるように、ほんとにちっぽけな寒村ですよ。そこで、一体町にだけ委託しておいてどれだけのものができるか。壮瞥町でも資料館を設けたのですけれども、資料館なんて名がつくしろものではございません。町にとって悪い言い方になりますけれども、それだけの財力がないといえばそれまでだと思います。結局、御本人も、資料を供出はしたけれども、保管がやはり悪いということで、非常に慨嘆しているわけで、また、火山のふもとにある売店の二階を一部間借りしまして一部の資料を観光客に見せている程度だというのですね。三松さんにすれば、この世界に珍しい活火山を持つ所有者としての心境を、自分はただただ火山診断と観察記録をするために命がけで数十年過ごしてきた。もうすでに八十数歳の高齢になってもいまだに観察を続けていらっしゃるわけですね。自分がやらなければだれもやってくれない、自分の生涯の使命と心得て、これまで一人で御苦労されてきたわけです。御承知のように、この昭和新山も、もともと三松さん自身の所有地ではなくて、これは昭和二十一年三月ですか、岩倉広治さんという方から、その所有地を三松さんが観察記録を続けるために、わざわざ私費を投じて買い取ってこられたといういきさつがございます。御本人も申しているのですが、それはどうしてかというと、溶岩塔にある硫黄採掘出願者があらわれて、もしそれが許可されてしまったならば、せっかくの火山資料が台なしになってしまうということで、それを保護しなければならないという、その一念で自分は買い取られた。で、個人で天然記念物の保護の申請をされたわけでありまして、結局、その土地買収は自分の個人の利益を目ざすものではない。いわゆる火山に興味を持った自分の初心を貫こうということで、この二十七年間一銭の利益も求めず、また、得ずしてやっていらっしゃるわけですね。しかも、いま言いましたように、寒村の壮瞥町に保管の維持をまかせておきっぱなし、せっかくの貴重な資料が顧みられていない。規制はあるけれども、ほんとうの具体的な保護政策がないという、文化財に対する国の冷たいそういう姿勢、これに現在のところすっかり絶望している。また、こういった観光の対象になる土地でありますから、それをめぐっていろいろな業者の暗躍もあったようであります。先ほど大臣答弁がありましたように、一時、買い取りという話があったけれども、そういった人たちの醜い右往左往の姿を見て、御本人はもうすっかり不信を持っていや気がさして、みずからお断わりになったということであります。そういうことで、結局ほとんどの資料が自宅に保管されたままであります。いま言いましたように、すでにもう八十数歳の高齢でありますし、一体その資料がどうなるのかということが、私、心配なわけです。世界的にも非常に値打ちのあるそういった学術資料を、一体国は、ただ、公共団体、地方の地元の町にまかせっぱなしでやっておりますということで済むんだろうか。もっともっと広く、また、後世に、学術的に値打ちのある資料を国として保存し活用するという前向きな取り組み方をしなければならないのじゃないか。また、町に委託するにしても、もっと町が大事に保管できるような指導もしなければならないし、助言もしなければならないし、また財政的な援助もすべきではないか、こう思うのですが、この点いかがですか。
  304. 安達健二

    ○安達政府委員 ただいまお話ございまして、私も感謝の気持ちで一ぱいで伺っておったわけでございますが、三松さんが多年にわたって非常に御熱心に研究を続けられておったということは伺っておりましたけれども、いまの先生のお話を聞きまして、さらにその感を深くしたようなわけでございます。そういう御努力に対しましては、何らかの形での、まずは精神的な謝意を表する必要があるんじゃないかということを、いま一つ痛感した次第でございます。  それからもう一つ、御本人が長年にわたって記録されました貴重な記録でございますが、こういうようなものにつきましては、実は文部省の大学学術局で学術資料の刊行補助というようなこともやっておりますので、私のほうも大学学術局に連絡をいたしまして、御本人の御希望等も伺った上で、そういうものを複製刊行されるということであれば、助成の道もひとつ検討していきたいと思っております。  それから、具体的な物理的な資料につきましては、いま御指摘のように町のほうで保管されているようでございますけれども、御指摘のように、なお不十分でございますれば、さらにそういうものの保存、活用というような問題につきましては積極的に検討し努力してまいりたい、かように考えるところでございます。
  305. 相沢武彦

    ○相沢分科員 いまの御答弁で、本人とも今度役人の方がいろいろ御相談、また希望を聞きに交渉に参られると思うのですが、ほんとうに誠意を尽くしてお話し合いに行っていただきたいと思うのです。これまでいろいろなことで、もうすっかり行政というもの、政治というものに不信感を持っていらっしゃいます。また、こういったことを一筋にやってきたんですから、相当がんこ一徹なところもあるでしょう。  私は、最後に警告を申し上げるのだけれども、ここでほんとうに国が誠意をもって、しかも貴重な学術資料を永久保存しようという取り組み方をしないと――御本人がわが子のように大事にこの資料を保管している。国がそんなことならば、また、だれも顧みてくれないならば、まあなくなられるときに、それこそ自分と一緒にあの世へ持っていってしまうなんということにもなりかねない。そういうときに、将来こういった貴重な資料を世界的に要求され、一体日本の国はこの資料をどうしたのだ、どういう扱いをしてきたのだというようなときになって、あとからあわてふためいて、そのときに日本の文化庁のあり方が諸国から批判をされるようなことになったならば、非常に私は恥じゃないかと思います。そういう点で、いま御答弁ありましたことに誠意をもって当たっていただきたいということをお願いしたいと思うのです。  それから最後に、苫小牧市の東部開発に伴う文化財の保護についてお尋ねをしたいと思いますが、開発予定の丘陵部一帯は、北海道の埋蔵文化ともいうべき先史時代の各種の遺跡が眠っております。現在の開発計画でいきますと、こうした貴重な埋蔵文化財の包蔵地帯が、丘陵地の造成によって破壊消滅することは時間の問題だ、こう思われるわけです。開発によって経済社会の発展を期することももちろん必要でございますが、そのために、人類学また民俗学、考古学上きわめて貴重な遺跡と、また、動植物に恵まれた自然環境を  一方的に破壊消滅してしまうということは、これは非常にもったいない、許されない行為だと思うわけであります。  そこで、この問題に関しまして、北海道文化財保護協会からも文化庁に対して強い要望が出されたと思うのですが、次の諸点について、どのように当局として対処されるのか、お尋ねしておきたいと思うのです。  一つには、開発計画地域内の埋蔵文化財包蔵地及び動植物等の天然記念物の所在を調査する、そして自然環境地域、緑地、史跡公園等としての保存を講ずるようにして、工事計画から除外してほしいという項目があります。それから二つ目には、文化財の破壊消滅がどうしても避けがたいときには、事前に学術的な調査を実施して、記録保存に万全を期すべきだ。また、工事途中において文化財を発見した場合も、工事を中止して、上記のように措置をしていただきたい、こういうことでございます。  この地域一帯は国家的な開発をするわけでありますから、この貴重な文化財保護についても国家的な配慮をするのは当然だ、こう思うわけであります。特に勇払原野一帯、ウトナイ湖などは海のあとでございまして、湿原植物もあり、また、現在白鳥の住みかになっております。そういった貴重な自然環境場所でございますので、特に配慮すべきであろうと思います。本州のほうは、いわゆる地上に残った表面に見える文化財がいろいろ多うございますけれども北海道の場合は、いわゆる庶民文化というか、地下に眠った文化財がほとんどといってもいいくらいですね、古いものは。そういったものは、どうか貴重な資料を大事に取り扱うという観点で、前向きな取り組み方をしていただきたいと思いますが、御答弁いただきたいと思います。
  306. 安達健二

    ○安達政府委員 苫小牧の東部開発される予定地におきましては、縄文時代の前期から続縄文時代に至りまして、約二十カ所の遺跡がいまのところ確認されているわけでございますが、現在までは、国あるいは北海道の指定された史跡までには至っていないわけでございます。  問題は、やはり開発計画の策定の前に十分その所在を把握しておくことが必要でございまして、そのためには、埋蔵文化財の分布調査をひとつ十分やっていくべきであると思っておるわけでございます。そこで、分布調査の過程におきまして重要な遺跡があるということが確認されたならば、その部分は工事計画から除外してもらうというようにいたしたいと思っておるわけでございます。また、重要でないものでも、学術上必要なものについては、十分記録の保存に遺憾なきを期するということ、それからまた、そうでなくても、なおまた工事の途中に文化財が出てくる場合もございますので、その場合には適切な措置をとるようにいたしたいと思っておるわけでございますが、一番大事なことは、開発計画の前に十分実態を把握して、それに応ずる、そういうものと両立するような開発計画を立てていただくように十分な連絡をとってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  307. 相沢武彦

    ○相沢分科員 以上で終わります。ありがとうございました。
  308. 森田重次郎

    森田主査 次に、井上普方君。
  309. 井上普方

    井上分科員 大臣にお伺いいたしたいのでございますが、二月二十四日に各新聞社が報道いたしましたECFMG、アメリカのインターンあるいはまたレジデントになるための試験を全アメリカでやっております。この試験を受けた日本の医学生が、これが三二・何%の合格率で、世界の四十九番目であったという新聞記事が出たわけであります。各紙とも大きく出したわけであります。このことにつきましては、私も医者の端くれで、かねてあなたが文教の理事の当時に、日本の医学水準というのは世界の水準にまでいまはいっていない、はるかに低いようだということは、私は個人的にはお話しした記憶があるのであります。しかし、このたびの中川米造君が発表いたしました論文をお読みになって――お読みになっただろうと思うのです。昨日は厚生大臣にこのことを聞きますと、読んでおらぬというような、まことに無責任なことを申しておりましたが、文部大臣はお読みになっただろうと私は思う。したがって、これに対する御感想なり、あるいはその対応策をどういうようにお考えになっておられるか、この点についてお伺いいたしたいと思います。――この問題は、私は政治家としてあなたに聞いておるのですよ。官僚答弁じゃだめなんだ。
  310. 高見三郎

    ○高見国務大臣 かねがね井上先生から、日本の医学水準が低過ぎるぞという御警告は聞いておりました。今回の発表を見まして、なるほどと思いました。ただ、今度試験を受けました連中は、日本人が七百何十人か受けておるのでありまして、それが三四%ですか、ああいう低位である。これにはいろいろな事情があるだろうと思います。一がいに医療水準が低過ぎるという結論を出すわけにもいかぬかもしれませんが、何にしても、医学教育というものについての考え方に対して、私どもに対する非常な大きな警告だと受け取っておるわけであります。語学力の問題もあったかもしれません。それから受験者の数が多い関係で、たとえば三人しか受けないところで二人通れば六六%の合格率なら、七百人も受けてあれしたから率が下がったのだというような言い方もあるようであります。あるようでありますけれども、いずれにしても、三〇何%というのは低過ぎる、これは井上先生前から御指摘になっているとおりで、私どももこれから医学の水準を上げるために一そうの努力をしなければならないと考えておるわけであります。
  311. 井上普方

    井上分科員 私は、医学の水準というよりも、日本の医育水準が低いということなのです。七百何人受けたから率が悪かったのだと、こうあなたはおっしゃいますけれども、事実、韓国におきましては千六十六人受けて五五・七%、台湾におきましては五百六十一人受けて六三・一%の合格率、これから比べますと、日本の成績がいかに悪いかということが証明できると思う。語学の問題じゃないと思うのです。同じく台湾にいたしましても、あるいは朝鮮にいたしましても、いずれもやはり第一外国語に英語を使っておると思う。日本と同じ条件だと思う。そこでやはり数字だけじゃございません。あなたはだれかにお聞きになって、たくさん受け過ぎたからというようなことをおっしゃるかもしれぬが、台湾、朝鮮においても日本よりも多く受けて、合格率は六〇何%、五五%なのですから。ここで私は真剣にこれは為政者として考えなければならない事柄だと思うのでございます。これは私は大学紛争によって日本の医学教育の水準が落ちたというのじゃございません。これは、数年来、大学紛争以前から同じようなレベルにあったということを知るべきなのであります。  そこで、一体それでは、これだけ合格率が悪かったについては、いろいろと医育教育者の間において反省も生まれております。そこで、何が一番原因であるか、ここいらをひとつ突明する必要があると思うのであります。そしてそれに対する対応策を考えなければならないと思うのです。それを大臣にお伺いしておるのでありますが、大臣、何かお考えになっておられる事柄がございますか、ありましたら、ひとつお伺いしたい。
  312. 木田宏

    ○木田政府委員 医学教育につきましていろいろと改善をしなければならない案件幾つか私ども感じております。いま御指摘になりました資料につきましてのこの順位のあり方については、これはいろいろな見方もあろうかと思いますし、そのことについて私はとやかくお答えしょうとは思いません。しかし、現実に、御指摘になりましたように、いま私どもの医学教育の世界で考えなければならぬ課題といたしましては、やはり一番基本的には、医学教育の内容をどういうふうに改善充実するかという基本問題がございます。この点につきましては、文部省で、いま医学視学委員会をわずらわして、鋭意、いままでとってまいりました進学課程、専門課程の取り扱いをどうするかとか、あるいは臨床教育の改善策をどうするかといった議論を進めております。そういう内容問題が一つございます。また、臨床教育との関連では、付属病院並びに関連病院との関係というものをどう改善していくかということがございます。それにあわせまして、いま医学教育につきましては、その質の改善とともに、量の拡大という問題が求められておりまして、新しい医育機関をどういうふうに整備充実するかという課題等ございまして、これら焦眉の課題としていろいろと検討を急いでおります。
  313. 井上普方

    井上分科員 内容改善について、臨床病院、関連病院の問題について、あるいは量の拡大の問題について御答弁になったのでありますが、私はあげ足を取るのではなくて、全くこれはいままで大学当局、あるいはまた医育関係者あるいは文部当局の怠慢ではなかったかと私は思うのです。といいますのは、ここ十四、五年来、医育教育をいかにして改善するかという論文も発表されておりますし、審議会からの答申も出ておるのであります。それが全然やられておらない。たとえて言いますならば、学術会議の答申も一昨々年出ました。それからまた、全国病院長会議の答申も三十九年から出ております。全然それには手をつけない。これは、一つには学界それ自体の封建性に由来することは私も知っております。しかし、それ以上に、やはり文部当局がいかに大学の医育教育の内容を変えるかということに精力を用いなかった結果であろうと思うのであります。  一例を言いますならば、中川米造君も新聞記事で指摘しておりますが、一部の学生の中には、非常にすぐれた、狭いところを知っておる、専門分野では知っておる、しかし、一般者としての教養が足らないというような点を指摘せられておるのであります。まさにそのとおりだろうと思うのであります。これが試験を受けた場合、たちまち、実地に必要なことが実はできておらない、日本の教育においては。ここに問題がある。  それからもう一つの問題といたしましては、あの医学部の紛争が大学紛争の発端になりましたが、医学部の最も封建的といわれる講座制がそのまま残っておる。多少変わったかもしれませんけれども、明治以来ずらっと続いてきているあの講座制は、依然として封建性の一単位として現存しておる。これにメスを加えなければだめじゃなかろうかと私は思うのでございます。  しかし、それはともかくといたしまして、それは医学界あるいは学界の諸君、あるいは大学人に期待するといたしましても、文部省がつくっております医学教育の指針なんかを見てみますと、一応医学教育においてはこの時間やれというカリキュラムはつくっておる、しかし、そのカリキュラム自体も、ああいう教育をやるのは、大体明治以来ずっと同じ基礎でやっておられるのであります。戦後、医学の教育の改革というのは、どの国におきましても大きくやっております。やっていないのは日本だけです。明治以来残っておる。アメリカなんかでございましたら、一例を申しますと、医学部の一年生のときにもうすでに内科を始めるのです。そして解剖と生理と薬理、あらゆる専門を、胃なら胃に、消化器なら消化器だけに集中して講義する。内科も外科も全部入るわけです。こういうように非常にユニークな教育方法をやる試行をも行なっております。こういう試みが日本においてはやられておらない。それは、一つには、やはり文部省がつくった学習指導要綱と申しますか、カリキュラムもあるんじゃないかと私は思う。ここらあたりをひとつお考え願いたいと思うのです。それと同時に、やはり教員不足は、何と申しましても否定できない事柄であります。臨床でございますと、これは治療もやらなければいかぬ、研究もしなければいかぬ、教育もしなければいかぬ、三つを受け持っておるのであります。したがいまして、どういたしましても、治療なり研究のほうに興味を医者としては当然持つものでありますから、教育のほうがおろそかになる。したがって、これらの問題については、教員数を多くするとか、あるいはまた、研究と教育というものとを画然とするとか、いろいろとそういうような提案がいままでなされてきております。ところが、これに対しては全然いままで文部省当局としても手をつけておらないところに私は原因があるんじゃなかろうかと思うのであります。もちろん、むずかしい面はたくさんあります。しかし、積極的にやはり対応策を立てなければならないと存ずるのであります。大臣、いかがでございます。
  314. 高見三郎

    ○高見国務大臣 全くお説のとおりであります。日本の医学は、ドイツ式の教育体系をずっと明治以来とってきておる。これにはメスを入れなければならぬ時代が来たと思います。ことに、教養二カ年の間に、私は、いま先生が御指摘になりましたような形の医育の基礎的なものは済ましておく、それから総合的にすべての科目にわたって一通りは学ばしておくというのでないと、初めから専門のこれをやるということではどうもいかぬのではないかという感じがいたします。これには一つ大事な問題が私はあると思うのでありますけれども、これはよその分野でありますから、何とも申し上げられませんけれども、国家試験の問題、そう簡単にお医者さんを免許してもらっちゃ困るという感じがしておるのであります。日本の医科大学出身者は、九〇何%は国家試験を通っております。ところが、獣医のほうは五〇%そこそこしか通っておりません。ここらにちょっと私はどうも解しかねる問題がありまして、私自身がいまどうすればいいかということを悩み続けておるところでございます。どうぞ名案があったらお教えをいただきたいと思います。
  315. 井上普方

    井上分科員 私も、昨日厚生大臣に、医師国家試験につきましては厳重にやれという提案をいたしたところであります。しかし、それだけでは私は済まないと思うのです。と申しますのは、このECFMGを受けた学生は、日本の場合、大体、大学を卒業して医師国家試験を通ってすぐに受けておるのであります。そこに私は問題があると思うのです。国家試験ももちろん厳重にしなければいかぬ。しかし、教育内容それ自体において実地と離れておる、実際と離れておる傾向があるんじゃなかろうかと私は考えられるのでございます。そこで、これは二月の二十四日に発表になったのでありますが、大臣といたしましては、当然これに対する処置というものを、いかにして日本の医育教育というものを向上させるかということで、何らかの処置はおとりになりましたか。この点、あるいは通達なり、あるいはこの本年度の予算を見まして、そして当然予算措置というわけにはまいりませんでしょうけれども、何か予備費でも出されてでもやられるおつもりがあるかどうか、この点どうでございます。
  316. 木田宏

    ○木田政府委員 多少おことばを返すようになって恐縮な点もございますけれども、ああいう新聞記事に、たいへん私どもも関心を持たざるを得ないような成績の発表がございまして、自来、私どももその原本も入手いたしまして、多少そうした点の勉強もいたしておりますが、教育水準が右から左へすぐどうこうなるというふうには私ちょっと考えておりません。むしろ、この教育内容の改善向上につきましては、いまさっきも申し上げましたように、医学関係者こぞって大きな問題意識を持っておるわけでございますから、大学改革の一環として、医学教育につきましての特殊問題を、医学視学委員会の方々でいま鋭意まとめていただいております。これから新しい医科大学を考えるにつきましても、そういう従来の経緯にかんがみ、教育内容の持ち方をどうするかというような点をやはりじみちに積み上げていただかなければならないと思います。大学で行なわれます医学教育のことでございますから、文部省から何がしか指図をしたらすぐそれで動くというふうには考えません。医学関係者がほんとうに真剣に取り組んでくだすって、そこに私どもが必要とする施策を御援助していく、こういう姿勢でまいりたいと思っております。
  317. 井上普方

    井上分科員 これはあなたおっしゃいますけれども、いままでに私が――この一冊の本です。一冊の参考書類です。これだけ出ておりまして、読み上げましてもこれはたくさんの提案がなされておるわけです。医師会からも、医育教育のあり方について提案がなされております。全国国立大学病院長会議におきましても、あり方についての答申が出されております。あるいはまた、国立大学協会からも要望事項として出されております。あるいはまた、日本医師会からは「医学教育制度改革への意見」と称して出されるし、緊急課題にはどうすべきがいいかということも出されております。それから、先ほども申しました学術会議におきましても出されております。これは十数年来出されておるのです。これをほっておいたならば、やはりこれを一つの契機といたしまして、刺激をひとつ文部省が与えて、大学人に対する自覚を促す必要があるのじゃございませんか。大臣、何かお考えになっておられますか。
  318. 高見三郎

    ○高見国務大臣 ただいまお話しの問題は、いろいろなところからいろいろな提言がなされております。場合によりますると相反する提案もございますし、実は私も若干は知っておるつもりでありますが、ただ問題は、日本の医育教育というものが、御承知のように、国立の医科大学がここ数年全然新設校もできないという状態の中にあって、私立学校ばかりがやたらにできるというような、だれが考えても私立でやっていけるはずはないじゃないかというような学校も、設置基準に合っておれば認可せざるを得ないというところに、私は非常に大きな問題があると思うので、今後は医学教育に対する審査というものを思い切り厳重なものにいたしたいと考えておりますし、それから医育のあり方というものにつきましても、御提案のような問題について考えなければならぬということを真剣に考えておるわけであります。
  319. 井上普方

    井上分科員 いまの大臣の御答弁はお答えになっておりません。しかし、非常に重大な問題を提起せられましたので、私お伺いするのです。  いま、設置基準に適してさえおればこれは大学に認可せざるを得ない、こういうことをおっしゃられましたが、それはほんとうでございますか。どうなんでございます。
  320. 木田宏

    ○木田政府委員 新しい大学の設置の審査につきましては、一応の基準が設けられておりまして、審査いたしますその基準に合致しておりますならば、認可を可とするという審議会の答申をちょうだいいたしまして、大臣から認可をするというずっと長い慣行になってございます。
  321. 井上普方

    井上分科員 しなければならないとおっしゃられました。私はここに問題があると思うのだ。たとえて言いますならば、このたびも私立の大学を六つか七つか医科大学を新設認可されております。しかし、その母体になっておる病院を持っておって、それを基礎にして大学を申請しておる大学があります。ところが、その大学が――研修医制度というのをつくりましたね。研修病院にも指定になっていない病院を母体にしていますそういう大学がある。御存じですか。
  322. 木田宏

    ○木田政府委員 最近認可をいたしました大学につきまして関係しております病院その他の調べも一応は私ども承知をしておりますし、多くのものは大学として新しい付属病院をつくるというかまえでございまして、従来ありました病院を多少整備をして付属病院にかえたものは、三件かと承知をいたしております。
  323. 井上普方

    井上分科員 そうすると、その病院は研修指定病院になっていますか。
  324. 木田宏

    ○木田政府委員 付属病院として従来ありました病院を整備して切りかえますものは、三件とも研修指定病院にはなってございません。
  325. 井上普方

    井上分科員 大臣、どうでございます。研修という制度は、卒業後二年間、これは医者として勉強しなければならない、研修しなければならないという医師法の規定なんであります。その規定にのっとってつくられたのが研修指定病院で、全国で百七つある。その百七つの研修指定病院にも指定になっておらぬようなものを母体にして大学をつくろうというのであります。それは研修病院と大学設置基準とは関係ありません。ないけれども、指定されていないこと自体をもってして――全国の大学の付属病院というのは、全部研修指定病院になっています。そのほかに、百七つの国公私立の病院を指定しておるわけです。ところが、それにも入らないようなものを基礎にして大学をつくろうというのでございますから、どうも私、常識的に申して、合点がいきかねるのであります。だから、あなたのおっしゃる、基準に合いさえすれば大学を認めなければならないという規定は、ほんとうであるならば、私は大いにこれは考えなければならないところなんです。――いや、これは官僚答弁じゃない。大臣の答弁が必要です。
  326. 高見三郎

    ○高見国務大臣 これは認可するかしないかということは、私の権限であります。ただ、従来の慣例は、審議会の答申が可という場合には、文部大臣は許可をいたしております。その慣例に従って許可をいたしておるというだけのことで、しなければならないという性質のものではございません。
  327. 井上普方

    井上分科員 大臣、どうです。今度の三つの大学が、病院を持っておる、その病院が研修指定病院にもならない、なっておらない病院を基礎にしてやっておるのです。これでいい臨床医ができるとお考えになりましょうか、どうでございますか。大臣、いかがでございます。これは、局長の答弁、官僚答弁は要らない。
  328. 木田宏

    ○木田政府委員 研修指定病院は、まことに申しわけありませんが、私もその指定の経緯詳細はまだ承知しておりませんけれども、申請によって指定を受けることになろうかと思います。その意味では、いま三つの病院は指定を受けてなかったということはあろうと思いますが、大学としての設置を認可いたしますにつきましては、その付属病院としての整備が確実に行なわれておるかどうか、その将来の整備の計画がどうであるかということをチェックいたしまして、そして実地審査等の上で可否の判定が審議会から上がってくるわけでございますから、不整備なままで設置の可否を判定しておるというわけではございません。従来指定されていなかった病院でございましても、それを大学の付属病院として位置づけるにつきまして適切な病院であるかどうかという点につきましては、審議会が審査を厳重に実施しておるところでございます。
  329. 井上普方

    井上分科員 官僚答弁というのはそういうのをいうのだろうと思うのです。これはどの病院でも研修指定病院になりたくて、たくさんの病院が指定を申請するのです。一つは病院の名誉にかかわるわけなんです。ところが、それにすら入らない病院を基礎にしておるのです。ここらあたりが、私は文部省の設置基準が、審議会のあり方自体につきましても問題があると思う。いずれあらためて私は、大臣と、審議会の委員を参考人にお呼びしまして、この問題を解明したいと思います。  この問題はさておきましても、ただいまの量の拡大の問題で非常に私立大学がたくさんできる、この問題については、文部大臣はあまり快からざる表情で御答弁になりました。そこで、国民は一体どういうように考えておるだろうかということにつきましては、これは昨年の十一月に、国政モニターで、内閣広報室が四百幾らの人たちを抽出いたしまして、医学部は一体どうあるべきか、医師養成についての国政モニターを出しております。御存じですね――御存じないですか。これを見ますと、医科大学を設ける場合には設立の主体は国立がよいといって答えた者が実に六九%、公立がよいというのが二九%、私立がいいというのはわずか一%なんであります。あるいはまた、その設置場所は中小都市がよいと答えた者が六六%、郡部がよいというのが二二%なんです。こういうような数字が出てきている。これは内閣広報室が出しておるモニターですよ。ところが、それと違った方向でともかくいま文部省は私学の医学部を設置しておる。これらにつきましても私は非常に問題は多いと思います。しかし、きょうの問題は、時間もございませんので、とりあえずは、たちまちの問題として、ECFMGであれだけの成績しか日本の医学部卒業生がとれなかった、この事態につきまして、大臣として真剣にお考えになり、対策を講じていただかなければならないと思うのです。それについての大臣の御決意のほどを承りたい。
  330. 高見三郎

    ○高見国務大臣 私、繰り返して申し上げておるとおり、よほどの事情がない限り、なるべくならば国公立の大学を各県につくりたいというのが私の念願でありますが、一番理想的なものは、公立大学をつくる場合に国が思い切って助成をすることを考えたほうがあるいはよいかもしれない。と申しますのは、一例を申しますと、ある県の医科大学を国立に移管いたしました。ところが、入学試験をやってみますと、入ったのはたった八人、あとは他府県の子弟なんです。ところが、公立学校の医学部を見てみますと、大体四〇%その県の出身者が入っております。医師の不足の問題が、量的に不足しておる面は、これは絶対の問題でありますけれども、実は地域に偏在しておるという面を真剣に考えてみなければなりません。  それから先生御指摘のいまの成績につきまして、医育関係に携わっている者に反省がないわけは私はないだろうと思う。この反省は私どももしなければならぬことだと思っておりますが、その反省に立って、日本の医育はいかにあるべきかという課題と真剣に取り組んでまいりたい、かように考えておるわけであります。
  331. 井上普方

    井上分科員 約束の時間が参りましたので、私はもうとやかく申しませんが、最後に一つ申し上げておきたい。  それは、大学卒業者が、いままで大学紛争で大学病院に残らなくなっておったのでありますけれども、近ごろは落ちついてまいりまして大学にたくさん帰ってくるようになった。官公私立の病院につきましては、研修生は実は六百九十名ぐらいしか行っておりません。ところが、大学につきましては、五千四、五百人行っております。これは去年の四月一日現在です。ところが、それに対して、文部省は大学の診療報酬金という形でお出しになっておる。あれは月三万三千円くらいでしたでしょう。これにつきまして、大学には、おまえのところは研修生は何人しかとってはいかぬという定員を設けておるのです。だから、その定員以外はともかくそこにはおれない。無給医局員は置かぬ制度になっておりますから、自然違うところに行かざるを得ないという現状が出てまいっておるのであります。あの医師法改正当時、私も参画いたしましたけれども、当時は、研修をしたい人がたくさんおれば、それには全部診療報酬金は出します、こういうお約束であったのであります。ところが、このごろ、その研修生の定員すら、各大学によってあるいは各科目によってつくろうという動きがありますが、大臣、これは撤廃してはどうでございますか。
  332. 木田宏

    ○木田政府委員 いま御指摘になりました研修医の数の問題でございますが、やはり卒後研修を大学としてあるいは大学病院を中心にして責任をもって実施いたしますにつきましては、指導の教官とか病院のキャパシティーとの関係から、おのずからある数があってしかるべきだと思っております。学生側の希望によってあまりたくさんの研修生が入ってくるということになりますと、かえって指導上もいろいろな問題もあるわけでございますから、むしろ、いまの医学関係者の意見を聞いておりますと、学部の卒業学生よりも、研修医の卒後研修の数のほうをもう少ししぼって、卒後研修の関連病院等の協力ということについて、積極的に検討を進めるべきではないかという意見も強く出ております。私どもは、卒後研修を責任のあるいいものにいたしますためには、それぞれの大学が引き受けるべき研修生の数にある限度があって、いい研修が行なわれるようにすべきものではないかと思っております。
  333. 森田重次郎

    森田主査 井上さん、時間が過ぎましたから、結論を急いでください。
  334. 井上普方

    井上分科員 これで私はやめようと思ったが、約束が違う。医師法を審議いたしましたときと現在の態度とは、文部省当局の姿勢が違う。話が違う。これは一体どういうことなんです。その当時であれば、いかにも、予定人員はきめますけれども、それにオーバーしましても診療報酬金は出します、こうおっしゃっておる。いまの話では違うじゃありませんか。それは当時、あなたはそれを御存じないかもしれぬが、そういう約束になっているはずです。これは社労の委員会におきまして私が質問したのだから。
  335. 木田宏

    ○木田政府委員 現在研修医として大学で受け入れております数に対しまして、また、希望があるものにつきましては、研修医の非常勤職員としての謝礼を支払っておりますが、現在の支払い人員よりも予算人員のほうがはるかにまだ余裕がございまして、私どもその希望に対しては十分満たし得るだけのキャパシティーを持っておりますから、いま御指摘のように、謝金、非常勤職員としての予算を打ち切るという考え方を持っておるわけでございません。
  336. 井上普方

    井上分科員 もう時間でございますので、また場所を改めてやりますが、ともかく、それであれば、大学が、うちのほうにはこれだけ研修医が来たのだ、受け入れたいのだが、予算を出してくれるかといえば、文部省は喜んで出してくれるもの、こう考えて私の質問は打ち切ります。
  337. 森田重次郎

    森田主査 次に、山原健二郎君。
  338. 山原健二郎

    ○山原分科員 大臣に最初にお伺いしたいのですが、本日の新聞によりますと、国立大学の授業料の問題ですね、これは、入学金については四十八年から、授業料については四十七年の後半から値上げ分を取るという決定をされたそうでありますが、これは事実ですか。
  339. 高見三郎

    ○高見国務大臣 決定をしたという事実はございません。しかし、どういう徴収の方法をとるかということについては、文部大臣に一任するという約束は、党との間に取りつけました。     〔主査退席、大村主査代理着席〕
  340. 山原健二郎

    ○山原分科員 もしきょうの新聞の発表のようでありますと、私は異例のことが二つ出てきたと思うのです。というのは、昭和三十六年の、授業料等に関する文部省令第九号ですね、それ以来、学年の半ばにおいて授業料の値上げをしたということがあったのかという疑問ですね。それからもう一つは、二十七道県におきまして高等学校の授業料値上げがすでに行なわれるという情報が入っております。高等学校は一カ月千二百円だというふうに新聞にも書かれているのです。そうすると、高等学校の授業料が大学よりも高いという状態が出てくるわけですね。少なくとも、先ほどの決定であれば、半年間そういう事態が起こるわけです。これはまさに異例なことではないかと思うのですが、この点はどうですか。
  341. 高見三郎

    ○高見国務大臣 授業料の金額は年額できめます。したがって、昭和四十七年度の授業料は三万六千円というのは、年額で決定をいたします。ただ、徴収する時期がいつになるかということは、文部大臣として私がきめます。
  342. 山原健二郎

    ○山原分科員 そうしますと、かりに後半期から取るというときには、一年分のやつをさかのぼって取るというかっこうになるわけですか。
  343. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お答えしますが、これは国民と国との間の債権債務の関係でありますので、債権債務発生の時期においてまだ予算も成立しておらないという時期でありますならば、遡及して取るというわけにはまいりません。
  344. 山原健二郎

    ○山原分科員 ちょっとわかりにくいのですけれども、年間の分が三万六千円であるということになりますと、それは後半期において、文部大臣のいまお考えになっているとおりとするならば、後半期分を取るというのじゃなくして、一年分を後半期において取るということになるのですか。
  345. 木田宏

    ○木田政府委員 いま大臣がお答え申し上げましたような方向というのは、いま最終的な方向として相談されておるというふうに伺っておりますが、これは暫定予算の提出ともからみまして、技術的にどう処理するかというのはもう少し詰めて、最終的な決定の際に、いまお尋ねになっておりますようなことにつきましても、私ども態度をきちっときめたいと思っております。
  346. 山原健二郎

    ○山原分科員 現在すでに非常に自治体においては混乱が起こっているわけですね。  自治省出ておいでになっておりますから、お伺いしたいと思うのですが、国立の大学あるいは国立高等学校等が授業料値上げをするということ、並びに、自治省からの何らかの指導がありまして、各県においては一斉に授業料値上げをするというかっこうが出てきておるのです。いままでにこれはないことです。その中で授業料値上げをしないところもありますけれども、しかし、ともかく、ことし二十七道県において授業料値上げをするというようなことは、まさに異例のことです。しかも大学よりも高いという事態が出てくるということは、現在高等学校がすでに義務教育化しておる時期におきまして、全くこれは話にならないことでありますが、そういう指導を自治省はしてきたのか。してきたとすれば、これは自治体に対する不当な干渉であると私は思うのですが、その点について見解を出しておいていただきたいのです。
  347. 近藤隆之

    ○近藤説明員 現在、地方団体の公立高校の授業料は六百円から千円ぐらいまでの間で、各団体によって違っております。ただ、地方財政計画では、昭和四十年度から八百円ということにいたしております。その八百円というのが、現在種々の事情を勘案いたしまして五割程度引き上げることが妥当であろうということで、財政計画上千二百円と四十七年度から学年進行によっていたしたいということで計上したという次第でございます。
  348. 山原健二郎

    ○山原分科員 これは明らかに自治省の教育の問題についての出過ぎた干渉ですよ。現在各県においては県議会を開催中のところもあります。それから、すでに県議会が昨日あたり終わったところもあるのです。私はこの各県に連絡をしてみましたら、もし本日の新聞が昨日出ておったら、これは授業料の問題については値上げを見合わすということすらできたんだということを言っておるところもあるのです。また、現に県議会が進行しておるところでは、国立がそういうふうな状態になった場合には、国立大学よりも高等学校の授業料が高いなどということは、これは県民に対しても申しわけない、しかも各県の県知事の公約にも反するということで、非常な混乱が起こっている。こういう混乱をつくり出した自治省のいままでの指導というものは、私はまさに教育行政に対する全く不当な介入だと思いますが、この点について、自治省の見解と大臣の見解も伺っておきたいのです。
  349. 近藤隆之

    ○近藤説明員 われわれのほうで地方財政計画を組みます場合に、どの程度の授業料が妥当であろうかということでいろいろ勘案いたしました結果、千二百円程度、五割程度引き上げることが妥当であろうということになりまして、四十七年度の地方財政計画にそのように組んだ次第でございますが、それを勘案いたしまして、地方団体はそれぞれの実情に応じましていろいろな上げ方をやっております。ただいま先生おっしゃいましたように、二十八県が、上げるべく条例を議会に出しておるようでございますが、一年から三年まで一斉に上げておるところもございますし、学年進行によってやっておるところもございますし、また、種々の事情を勘案して、今回は提案を見合わせておるところもございます。そこまで自治省は介入しようと思いませんけれども、やはり財政計画を組みます場合に、適正な歳入、税収入、その他もろもろの歳入すべてを組みますので、その中の一環といたしまして、高校授業料はこの程度であることが望ましいということで組んだわけでございます。
  350. 高見三郎

    ○高見国務大臣 高校の授業料の問題は、地方自治体の住民判断による問題であります。文部省がこれに関与する筋合いのものではございません。
  351. 山原健二郎

    ○山原分科員 正式の答弁はそういうふうになるかもしれませんけれども、しかし、先ほど申しましたように、進学率は上昇しまして、非常にたくさんの生徒が高等学校に進学する、まさに義務制のごとくなろうとしておるときに、その負担の問題については、これは文部省と関係がないとはいっても、やはり考慮すべき問題だと私は思うのです。特に、そういう自治省のやり方については、まさに地方自治体を今度はペテンにかけたようなかっこうに、結果的にはなるわけですね。国立の場合は今度は後半期まで上げないということになりますと、半年間は全く異常な事態が発生をするわけですから、そういう点については、これはまさに許しがたいこと、だと私は警告をしておきたいと思うのです。  次に、この間文教委員会で質問も申し上げまして、最近北海道あるいは福岡あるいは長野県、また、最近では石川県におきましても、教員に対する思想調査、あるいは不当労働行為といいますか、特に、組合を構成しておる組合員に対する不当な抑圧が行なわれておるという例をあげたわけですけれども、長野県で今回発覚しましたところの長野県の小学校中学校長会が出しましたマル秘文書というものについて、すでに入手をされまして検討されておると思いますが、お読みになりましてこれに対する見解がどう出ておるか、伺っておきたいのです。
  352. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 私もその文書の写しを拝見いたしましたけれども、率直に申しまして、なかなか読みづらい文章でございまして、私も中身がよくわからなかったわけでございますけれども、聞くところによりますと、県の教組で配付されました文書は、校長会の未定稿文書の一部と、これと関係のない研修センターにおける研修生のレポートなどが含まれておるということでございます。しかしながら、中身を見まして、不当労働行為等の事実があるということは断定はできませんけれども、まあそういうことを疑われてもいたし方ないんじゃないかと思われるような個所があるごとは確かにございます。しかし、事実につきましては私どもは確認をいたしておりません。
  353. 山原健二郎

    ○山原分科員 これはもうすでに一部新聞にも発表されておりますし、すでに文部省としては入手をされておる。文章が困難であるとかいうことは、これは問題にはならないわけでして、これは当然調査をされているだろうと思いますし、調査してないということになれば、文部省としてもこれはたいへんな怠慢だと私は思うのです。  この内容につきましてちょっと申し上げてみますと、この文書が発覚をしまして、私も実は二月八日にこの文書についての調査をするために長野県に参りまして、校長先生方ともお会いをしたのですけれども、実際不当労働行為とおぼしき組合の役員選挙その他に介入した事件が、一つの郡でもう二十件、私はお聞きしたのです。そうしてこの文書を見ますと、文書は、御承知のように、前文と、その一、その二と、あと文となっていますね。これは校長会のほうからいただいたわけでございまして、マル秘文書でありますけれども、すでに公開をされておるものなんです。その中で、たとえば、これは組合意識とか、あるいは組合活動家とか、選挙とか、非常な項目に分かれておりまして、それに対する考察、あるいは分析、あるいはその反応というように分かれているのですね。  その中で一、二例をあげてみますと、たとえば選挙の問題については、これは組合の役員選挙でありますが、「職場推せんでないものを落選させたことは、職場をより一層正常なものにするのに効果があった。」というふうに書いておるところもあります。しかもこれは頻度が出ておりまして、一つの郡におきましてか、これはちょっとよくわかりませんけれども、その地域において頻度二、あるいは「自校内部を固めると共に他校の職場へ働きかけ当選をくいとめた。」これは頻度が三となっていますね。さらに選挙の方策のところでは、「イデオロギーに固まっていて容易に人の言を聞こうとしないので職場内で孤立を計る。」、組合の活動家の孤立をはかるということですね。さらに、活動家という項目を見ますと、その方策の中には、「某党の諸活動、方針を研究しているようす。教育の中立という立場から他の職員の動向に注意をはらっている。」、これはまさに行動に対する監視でありますが、そういうところがあります。さらに活動家については、「情報を集め、対象の職員の行動について記録をとっておいて指導」する、こういう項目も出ております。それから、活動家の反応のところでは、「特定の政党に入党としか考えられない」という文言も出てまいります。さらに活動家については、「議題によっては欠席させるようにする」、これは職員会議に欠席をさせるようにする。これは「管理職の介入」といわれるけれども、そうするのだということが出ております。これは私どもの赤旗という共産党の機関紙でありますが、「赤旗をすすめられある期間とった職員もいた」、あるいは職場会の問題では、「高教組のようになっては教育の破壊であるということで説得する」。さらにその他の項目へ入りますと、「組合活動についての指導も当然職員指導として校長のなすべきこと、しかも、これが不当労働行為ということを配慮するあまり、適確厳正を欠いてはいないだろうか」、「教組対策委員会と共に対策している」、教組対策委員会というのが校長の中にできておるのですね。さらに組合活動については「核づくりをする」、「核づくりをして強固な体制をつくる」、「全郡全県的立場に立って横の連絡を断ち切るような対策をたてる」、これは組合活動家の分断策謀であります。さらに活動家の問題について、「今まで活動家孤立化作戦で活動家の活動計画を打破する様対策を立てその活動を防御し一応奏効した」、さらに組合役員の選挙につきましては、「選挙運動には選挙運動をもって対処すべきであり、それは単なる主流の争いであるから少しもなじることなく同志を獲得するように考えて最後の票読みまでやるくらいの努力をする」。  まあ幾つかのことばを引用したわけでありますけれども、全体として組合対策、組合に対する介入、組合活動に対するところの調査、記録そして選挙に対する介入、こういうことになっているわけです。  しかも、これが長期にわたって調査をされているのですね。調査研究の経過を見ますと、昨年の五月二十二日に第一回の委員会が開かれましてから、実に五月二十二日から六月十四日、七月二日、九月二十日、十月四日、十月十八日というふうにしばしば会合が開かれまして、そして全県悉皆調査が行なわれるという状態ですね。これはまさに非常に系統的な、長期間をかけて校長さん方がたいへんな熱意をもってやられた調査の結果が、この秘密文書としてまとめられているのですね。  私はいままでずいぶん、教員組合というものに対する介入とかいうようなことは個々には聞きましたけれども、これほど組織的に、校長会全力をあげて、しかも全県悉皆調査までやるという、こういう不当労働行為といいますか、思想調査といいますか、これは初めてではないかと思うのです。だから、これはたいへん重大な問題だと思いますのでお伺いをしておるのでありますが、こういうことについて、ただいま岩間局長は非常にあいまいな答弁をされましたけれども、はたして正しいことであるのかどうか、そのことについて大臣の見解を伺っておきたいのです。こんなことは正しいやり方ですか。
  354. 高見三郎

    ○高見国務大臣 いまお話しのようなことが事実とすれば、これはまことに残念ながら、私は不当労働行為といわざるを得ないと考えております。
  355. 山原健二郎

    ○山原分科員 私も、憲法あるいは教育基本法、また労働組合法第七条を見ましても、また地公法の五十六条を見ましても、こういうことは許されないことだと思うのです。してはならないことがどうしてこんなふうに出てきたのか。校長先生方、最初の出発点は必ずしも全く悪意な立場でやったのではないかもしれません。しかし、結果的に見ますと、これはほんとうに労働組合運動の原則にもとる、まさに前近代的な立場まで進んでいるという感じがするわけですね。だから、私は、こういう問題についてどういう指導を文部省としてされるか、あるいは長野県教育委員会がどういうふうな対策を立てられ、各校長先生方に対する指導をなされたかということについて、調査をされておると思いますので、伺っておきます。
  356. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 御指摘のように、これはやや前近代的と申しますか、そういうふうな点があろうかと思います。これは私ども客観的に見てまいりますと、長野県というのは昔から非常に教育に熱心な県でございまして、そういう意味からの信濃教育会というふうな伝統もございます。そういう点から見ますと、校長先生方も、一般の先生方と同じような意識が多少あって、校長会というよりは校長組合的な感じで従来おられたのじゃないか、そういう意味で、一般の教職員の組合とまあ非常に意識的には近いようなおつもりでいろいろやられていたという点が、今度のような問題になったのじゃないかというふうな気がするわけでございます。まあ、長野県という非常に特殊な教育県の特殊な事情であったように考えられるわけでございます。まあ、県の教育委員会が別にこれを指導したわけではございませんし、また校長会もその点を自覚いたしまして、組合との間でいろいろ確認書のようなものもかわして反省をいたしておるようでございますから、これ以上私どもが指導をする必要もないのじゃないかというふうな気がしているわけでございます。
  357. 山原健二郎

    ○山原分科員 私どもが参りまして、二月八日に校長先生方に会いまして、確かにこれは悪かった、不当労働行為とかあるいは思想調査にわたるような誤解を招くことはもうしないという御発言があり、この文書も破棄したいというような話があったわけですね。これは当然のことだと思いますが、しかし、それだけで問題は解消していないと私は思うのです。その後におきまして、二月二十六日になりまして私のところへ送られてきました手紙があるのですけれども、この手紙の内容は、ある校長さんが、今年度の組合役員選挙に立候補する職員に対して、もう徹底的な立候補妨害ですね。そして最後には、その役員を希望しておる方の父親に対して手紙を出しています。これは絶対に立候補させないようにしてもらいたいということですね。ここまであらゆる手を使って、しかもあの事件が起こりましてから後、二月二十六日ですから、そのときにおいてなおかつこういう工作が行なわれるということになりますと、これは全く、破棄するとか言われましても、その思想性は残っているのではないかというふうに考えるわけです。  この間も、石川県の金沢における思想調査の問題につきましては、文部省は岩間さんの名前で通知を出していますね。これをいただいたのですけれども、これはたいへんよいことだと私は思うのです。けれども、通知一つで今日の教育におけるそういう態勢がなくなるかというと、私はそうではないと思うのです。たとえば、昨年問題になりました拓殖大学における、死人まで出ましたあのしごき事件ですね。あのときだって、文部省は暴力批判の通知を出したわけです。けれども、暴力は依然として現在でも残っておるということを考えますと、これは日本の教育全体にこういう問題がまだ残っているのじゃないか、しかもそれが非常に陰湿な形で進んでおる可能性だってあるわけです。だから、北海道の問題が起こりましたときに私どもは強く言いましたけれども、これは北海道のことであってあまり調査してないとかいう形で、文部省は回答を回避されるわけですね。そういう文部省の態度そのものがこういう状態をかもし出す雰囲気をつくっておるのではないかというふうに考えるわけです。  こういうことを考えましたときに、文部省の対応のしかたも、こういう憲法、教育基本法に触れるような不当労働行為あるいは思想調査というものに対しては、き然たる態度で、粘り強くこれを排除していくという姿勢を私はとってもらいたいと思うのです。これは当然のことですね。  同時に、地方の教育委員会に対しましても、たとえば石川県の教育委員会に対して、今度の金沢問題でどういう態度をとられたのかわかりません。また長野県の教育委員会が、これだけの問題が出てどういう態度をとられて、また文部省としてどういう指導をされたのか、よく私はわからぬのですけれども、どういう指導をされるわけですか。  また、地方の教育委員会がはたして現在、ほんとうにその地方における住民の要求にこたえるような体制になっておるかどうか、私は検討してみる必要があると思うのです。たとえば、教育委員会が現在、ほんとうに公開立場で民主的な運営をやられているであろうか。教育長の言うままになっておるのではなかろうか。教育委員会が正式に会議を開くときにはあらかじめ告示をして、そして傍聴者も来ていただくという態勢の中で教育論議が行なわれるという民主的な運営が、完全にいまなくなっているのではないか、こういうところに今日の日本の教育の荒廃というものがあるのではないかと思うのです。そういう意味で、長野県に対してどういう指導をされ、また石川県教育委員会に対してどういう指導をされ、また、こういう教育委員会のあり方について、文部省が責任をもってその民主的な発展のために指導と助言をされておるか、これをお聞きしたいのです。現在のところ、いま申しましたように、地方の教育委員会というのは全く国民から遊離しておると私は思うのです。その点について見解を伺っておきたいのです。
  358. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 ただいま先生御指摘になりましたように、憲法、教育基本法の精神にのっとりまして、また個人の良心に従って教育行政というのは進められなければならないというふうに考えているわけでございます。具体的には、石川県に対しましては、これは公務員の関係でございますので、公務員と申しますか、直接教育の行政に当たるものの問題でございますので、特に通達も出したわけでございますけれども、長野県の場合には、これはある意味では任意団体の校長会の問題でございます。県の教育委員会といたしましても十分指導しているところでございますので、私どもはまた機会を見まして、課長会議その他でそういう趣旨は徹底をしてまいりたいというふうに考えております。
  359. 山原健二郎

    ○山原分科員 校長さんたちももともと教育者ですね。教育者ですから、教育者としての性格を持ち、力量、手腕を持っておりますし、たいへん習熟した技術も持っているわけですね。その校長先生方が、一たび管理職になり、校長になると、全く現在のところ組合に対する対策、法規演習といえば教員の権利要求に対して、これに対してはどうするかどうするかというそういう技術ばかりやらされる。本来校長の持っておる、教育を振興させていきたい、あるいは職場をほんとうに明るい結束をした職場にしていきたいという、そういう校長の持っておる性格というものが完全に侵されてしまって、ただ管理者意識というものだけが植えつけられて、そしてそこから教育の荒廃、校長としての不毛な人生というものが生まれてくる今日の日本の教育というものは、反省をしなければならぬところだと思うのです。ほんとうに学校の中には、子供たちの教育環境の整備の問題であるとか、あるいは先生方のいろいろな要求、父母の要求というものが充満しているわけですね。そういうことに対して、ほんとうに校長が手腕を発揮できるようなそういう状態ではなくして、もう組合対策、こういう非常にいじましいところに管理職を追い込もうとしておる今日の文部行政というもの、これはもう断固として排除していただきたいと私は思うのです。  文部大臣、まだ一年にはなっておりませんけれども、就任されてまさに一年が近づこうとしておる状態で、これは、いままでこういうような形で指導がなされてきたと私は思っておりますが、これはやめまして、ほんとうに学校の民主的な運営といいますか、子供たちが伸び伸び勉強することができ、かつ、先生方がほんとうに伸び伸びと授業に携わることができるという状態をつくることが一番大事なことではないかと思うのです。その点について最後に大臣の見解を伺っておきたいのです。
  360. 高見三郎

    ○高見国務大臣 教育の中におきます教師と校長というものは、同じかまのめしを食っている仲間であります。対立すべき性格のものではございません。また、文部省と教員との間に対立があってもならぬと私は考えております。     〔大村主査代理退席、主査着席〕 そういう仲間意識でお互いに教育の大事な仕事を片づけていくという気持ちが何よりも大切である、これが教育を進めていく唯一の道である、私はかような信念のもとに教育行政をあずかっておるわけであります。
  361. 山原健二郎

    ○山原分科員 終わります。
  362. 森田重次郎

    森田主査 次に、原茂君。
  363. 原茂

    ○原(茂)分科員 きょうは少しミクロ的な問題を先にお伺いいたします。  いま学校に、栄養を担当する職員とか事務担当の職員ですとか養護職員、事務職員という職員がいるわけですが、この職員の国からの助成あるいは講師先生に対する国のめんどうの見方が、小さな自治体の小さな学校には及ばない制度があるようですね。何か限界があるようです。たとえば学校栄養職員設置補助金の制度によると、本俸の二分の一が国から補助される。しかもこれは有資格者だけなんですね。資格のない者はだめだ。この二分の一の補助も、給料に限度額がある。その給料はどのくらいかといいますと、医療職四の一号ですか、現在四万五百円の給料という限度なんですね。その二分の一の補助だ、こういう規定があるようですが、これはいま実施されている規定ですか。
  364. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 学校栄養士につきましては、義務教育費国庫負担法の対象にいまのところなっておらないわけでございますが、その学校給食におきます学校栄養士の重要性にかんがみまして、現在第一次七年計画で栄養士をふやしていくといいますか、それを大蔵省との間であれいたしまして、現在七年計画でこの栄養士の補助をいたしております。それで、補助金でございますので、一応補助金上の要綱といいますか、そういうものをつくって実施いたしておるところでございます。
  365. 原茂

    ○原(茂)分科員 第一次七カ年計画によってすでに栄養士に対する補助金というものはきまったのですか。私の聞いているのは、二分の一の国庫補助があるといいながら、給料に限度が設けられている、それが現在四万五百円だ。それ以上出しているときは二分の一にならないわけですね。そういうことが現に実行されているのかどうかです。
  366. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 実は、いま先生から初めて御質問を受けましたので、さっそく調べてお答えいたしたいと思います。
  367. 原茂

    ○原(茂)分科員 前に秘書が通告したと思ったのですが、してなかったのですね。  そのほかに事務職員それから養護職員、これも国からの補助がどうなっているのかを知りたいわけです。いま一応の規定があるらしくて、事務職員、養護職員の補助についても現行基準というのがきまっていまして、事務職員は、小学校一校、児童数が三百五十人について一人だけだ。中学校は一校、児童数が二百五十人について一人だけめんどう見てやる。養護職員に関しては、小学校一校については八百五十名まで、中学校においては千五十名まで、しかもこれは資格のある者、この規定の人員内の人については国が二分の一、県が二分の一負担をする。これも現行そうなっているのかどうかをあわせて調べてください。
  368. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 ただいま先生が御指摘になりましたのは大体そのとおりでございますが、そのほかに僻地学校につきまして、養護教諭の場合は学校数に対しまして七分の一、それから無医村には一人。それから事務職員につきましては、僻地学校六校について一人というふうな基準をつくりまして、それを目標にしてただいま充足をいたしているところでございます。これは年次計画で、今度は第三回目になるわけでございますけれども、できます限り早い機会に全部の学校に配置をしたいということを目標にいたしまして、その計画ごとに法律を改正して、そういう基準を設けるという  ことにいたしているわけでございます。
  369. 原茂

    ○原(茂)分科員 そうしますと、いま三回目だというのですが、この一校の児童数が僻地で三百五十人に満たないとき、そういうときは町村支弁で負担することになる。国が全然めんどうを見ない。たとえば二百名、二百五十名のときにどうなるのですか。
  370. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 それは先ほど御指摘のございました基準以外に、僻地につきまして七校に一人とかあるいは六校に一人とかいう基準で見まして、あとの具体的な配置につきましては、これは県の教育委員会におまかせをする、定数上はそういうふうな財源措置をする。具体的な配置につきましては、県のほうで僻地から先にやっていこうということであれば、それも一つの方法でございましょうし、これは県の自主性にある程度まかされているということでございます。
  371. 原茂

    ○原(茂)分科員 そこで私のお伺いしたいのは、七校にあるいは六校にというようなことを僻地に関して特別に考えるといっても、児童数が少ないからといって、学校がある限り事務職員を置かないわけにはいかないですよ、実際には。養護職員も、子供がいるのですから置かないわけにはいかない。だから、この基準に満たない学校でも、やはり町村が無理をして負担をして、現実に置いているのですね。ですから、この現実に合わせて、義務教育国庫負担のたてまえからいっても、現にいるのですから、この人たちに対するものを――第一次七カ年計画で順次やっていく、中途はんぱなところは教育委員会にまかせる。まかせられても結局は置かざるを得ない、いないわけにいかない。したがって町村が負担をするというのが現実なんですから、こういう問題をやはりもう少し具体的に、ただ何校に一人とかいうようなことでなくて、現にいる人に対しては、極端に言いますと三百五十人に一人の割合なら、二百五十人分の三百五十で掛け合わせまして、やはり国庫補助の金額を出してでもやれば、ずいぶん自治体の負担が軽くなるわけですよ。そういったようなことを考えられませんか。それが一つ。時間がありませんからもう一つ。  もう一つは、いまの栄養職員設置補助の問題も資格のある者に限っているのですが、無資格――父兄の奥さんの時間のあいている人に手伝ってもらう。それでもけっこう間に合うわけですから。こういう人も、資格はないのですけれども、実際には家庭で家事を十分にやっている人なんですね。これがいま雇われて臨時に来ているわけですが、これに対しては全然適用にならない。これも無資格といわないで、家庭の主婦、家庭の奥さんとしての経験が何年かあるということになれば、ある程度指導があればそのとおりできますから、全額でなくてもいい、資格のある者と同額でなくてもいいですが、便法としては、有資格者の何割かをめんどう見てやるというようなことを考えてやるべきではないか、こう思うのですが、どうでしょう。二つですね。
  372. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 栄養職員につきましては、体育局長のほうからあとから、補足がございましたらお答えするといたしまして、ただいま御指摘になりましたような事務職員、そのほかにもたとえば小使さんでございますとかあるいは給食の用務員でございますとか、いろいろな職員がおるわけでございますけれども、そのうちの基幹的な職員は県のほうで人件費を負担いたしまして、国が二分の一をさらに負担するという形をとっておりますが、その他まだもろもろの職員が必要なわけでございまして、これは現実問題として、ただいま先生御指摘のとおりでございます。それにつきましては、たとえば事務補助員でございますと、これは全部の学校に一応置けるように地方交付税で財源措置をしておるということでございます。数字で申しますと、ただいまそういうふうな職員が約一万二千名くらい全国でおりまして、地方交付税で財源措置をいたしておりますのは一万三千名分くらいでございます。したがいまして、ほぼ完全に――これは市町村によってもちろんでこぼこがございますが、財源措置だけはいたしておるというのが実情でございます。そのうちで、特に基幹職員は県が負担して国が負担する、その他の職員は交付税で財源措置をする、そういう二つの方法をとっておるわけでございます。
  373. 原茂

    ○原(茂)分科員 おっしゃることもわかるのですが、実際には交付税で参りましても、いま学校に雇っている資格のない栄養士ですとかあるいは事務職員、養護職員の手当てが十分にできない。いまの交付税でも、国の補助があっても……。それが現実ですから、ただ機械的に、そうなっているからいいはずだ、完全なんだ、一万三千名分やってあるからだいじょうぶだというが、現実に、たとえば長野県下伊那郡豊丘村の学校などを調べていただきますと、全然それは実情に合っていない。いまおっしゃったことも書かれてきていますけれども、現実にはそうなっておりませんから、よく調査をして、私が言ったのは思いつきですけれども、もう少し具体的に、かゆいところに手が届くように、現実に合わせながら、これを全部やってもたいした金額ではありませんから、何とか国の指導で県がめんどう見るなりあるいは国が半分を出すなりというようなことを考えていただくようにひとつ検討をお願いしたい。それで実行していただく。この予算措置がまた必要になるでしょうが、あとになるかもしれませんが、そのことを十分現実に合わせて検討をしながら立案をしていただく。次回の予算の中にはそういうものが出てくるように、また私、来年もお伺いしますけれども、ひとつ検討を約束していただきたい。
  374. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 ただいまちょっと数字のけたを間違いまして、たいへん失礼いたしましたが、現在、先生御指摘のような職員あるいはそれ以外の職員が十二万名全国でおりまして、財源措置は十三万名分いたしておる、こういうことでございます。  ただいま御指摘になりましたように、個々の具体的な点を考えますと、まだちぐはぐな面があると思います。私どもは、一応全国的な基準で地方交付税上の財源措置をしているわけでございますが、御意見もございますので、その改善につきましてはさらに努力をしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  375. 原茂

    ○原(茂)分科員 では、それは検討していただきます。  それから、次の問題も簡単にお答えをいただきたいのですが、ヨーロッパなんかに行きますと、日本というものを正当に理解していないのですよ。朝鮮と日本を一緒にして考えた者もいますしね。歩いてみると、なるほど日本というものはまだたいへん知られていないなという感じがするところが多い。そういうことを考えると、やはり欧米などに、日本の国の立場で文化センターみたいなもの、ああいうようなものを、もう少し日本というものを知ってもらうためのいわゆるセンターといったようなものを、主要な各国にひとつつくる必要があるのじゃないか。宣伝じゃありませんが、日本を正当に理解してもらうという努力が、日本の場合ちょっと少ないように思います、先進国に比べまして。ですから、それもこの際やる必要があろう。  同時に、だんだん海外に要務を帯びて日本人が出ていきます。子供が学校へ行こうとするときに日本の教育をする学校がないんですね。こういう点もこれからの非常に大きな問題になると思いますから、文化センターみたいなものを置きながら、そこに日本人の子弟の教育の施設も置くということを同時に考えるようなことを、文部省がここらで考えてしかるべきだろう、こう思うのですが、どうでしょう。
  376. 高見三郎

    ○高見国務大臣 御意見まことにごもっともであります。私ども、これから日本の文化というものを諸外国に宣伝するということも非常に大切なこと――これは何も宣伝のために宣伝するのじゃありませんが、理解をしてもらうために必要なことであると思いますし、ことしは在外邦人の子弟の教育の経費もお願いをいたしておるわけであります。御指摘になりましたとおり、私もこの点については特に力を入れてみたいと考えております。
  377. 原茂

    ○原(茂)分科員 その次に、また去年と同じ卓球のことを少し――ピンポンですね、あれは去年も強く要望をしておいたのですがね。少し前進したのかどうか、それをお伺いしたいのです。  私は、やはり卓球は必修科目にすべきだ。なぜそう言うかといいますと、やはり国民の体育・保健というものを考えたときに、卓球が一番、社会人になっても家庭を持っても年をとっても簡単にできるスポーツなんですね。ですから、スポーツ人口としては、見るのじゃなくて、するスポーツ人口としては、アクチブなものとしては、私は卓球人口が一番多いのじゃないかと思うのです。したがって、ただ国際競争に技量を上げて云々ということも当然考えていいのですが、そればかりではなくて、保健という立場からいっても、長い間、年をとってまでできる運動というためには、卓球というものは必要だ、かっこうな運動だ、こう考えています。そこで、卓球というのはやはり、できれば小学校から必修科目にするというふうに強く要望したわけなんですが、その後どうなっていますかね。
  378. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 最初に、先ほど学校栄養士のことで調べましたので申し上げます。  先ほど原さんのおっしゃったとおりでございます。といいますのは、学校栄養士は、先ほども申し上げましたように、現在のところ義務教育費国庫負担法の対象となる教職員になっておらないわけでございます。ただ、学校給食における栄養士の重要性にかんがみまして、現在第一次七年計画をもって学校栄養士を配置するということで、来年度の予算で三千四百三十八人分の補助金が計上されておりますが、そういうことで、市町村が学校給食をやる場合にできるだけ栄養士を置いてもらいたいということで、毎年この人数をふやしてまいりまして、そういう一つの奨励補助金的な性格なものでございますので、現在、一応最高限度額を設けております。いまのところそういう状況になっております。現実には、学校栄養士の方はかなり若い方もおりまして、それよりかなり低い俸給の人もおりますが、これより高い俸給の人ももちろんいるわけでございますが、そういう性格上、現在のところそうなっております。  それから、卓球でございますが、前にも先生から御質問があったところでございますが、一応私ども考えを申し上げたいと思います。  現在小学校の体育の授業におきましては、そこでやる運動の領域といたしまして、体操、器械運動、陸上運動、水泳、それからボール運動、ダンス、この各運動を取り扱うことにいたしておるわけでございます。  このボール運動でございますが、小学校では集団的に行なう運動を中心に取り扱うことにいたしまして、バスケットボール型、サッカー型、それから野球型の三つの類型を取り上げまして、児童の発達段階に即応いたしまして、そのうちの二つか三種目を必ず指導をするということになっております。  卓球につきましては、御指摘のとおり必須として示されておりませんが、ただ、小学校におきまして特に卓球を体育の授業にやろうというときは取り上げてやることができるという考え方になっております。それから、中学校におきましても大体似ておるわけでございますが、ボール運動のかわりに少し高度の球技というものをやることになっております。  球技につきましても、必須といたしましては、やはり集団的に行なう運動を重点的に取り扱うということで、バスケットボールなりハンドボールあるいはバレーボール、男の子のサッカー、これを重点的に取り扱うことにいたしておりますが、三年生になりますと、いま御指摘がございましたような日常生活で親しみやすい卓球とかテニス、バトミントン、ソフトボールなどを、先ほどの運動種目にかえまして取り上げることができるというようになっております。しかし、中学校も同じく、学校によりまして一年生から卓球を取り上げたいというときは取り上げることができる、そういうたてまえになっております。  それから、体育の授業以外にクラブ活動の状況は、卓球クラブを置いております状況は、小学校では約二三%、中学校では七四%の学校が卓球クラブを置いておるわけでございます。  私ども考え方といたしましては、小中学校の体育の授業で必須としてやりますものは、児童生徒の年齢段階に応じましてやはり考える必要がある。しかしながら、小学校なり中学校で卓球を取り上げたいというときは取り上げることができるようになっておりますし、それから、クラブ活動で生徒が卓球をやりたいということもあるわけでございますので、学校で取り上げたい、あるいは生徒がクラブ活動でやりたいという場合にできるように、やはり卓球用具がないとできませんから、それで学校なり生徒がやりたいという場合に卓球が広くできますように、これは初中局のほうで所管しております義務教育費国庫負担法によりまして、その教材費を負担しておるわけでございますが、その負担する教材基準の品目の中に卓球用具一式を掲げまして、たとえば小学校ですと、五学級以下の小学校は一式、二十五学級以上の小学校は四式というぐあいに、中学校ですと二十二学級以上の学校は四式というぐあいに卓球用具を国庫負担をいたすことに、昭和四十二年度から十年計画で各小中学校に整備するようにいたしております。
  379. 原茂

    ○原(茂)分科員 栄養士の問題は、先ほど私が申し上げたように検討していただく。それから、いまの卓球の問題も四十七年度、たしか九十三億でしたね、予算が。教材基準に基づいて出せるやつが。私はもうちょっと出して、もっと積極的に誘導するように、もうちょっと姿勢を前向きにしていただきたい。それもひとつ検討してください。来年の楽しみにします。去年よりちょっと進みましたよね。もうちょっとやっていただきたいというのがお願いです。  それから最後に、これは教科書の問題をお伺いするのですが、いま教科書に使われている地図ですがね、あの地図に、国後、択捉が日本の領土の中に含まれた境界線がつけられている。小学校が去年からはっきりして、ことしから一段と明快な赤い線を入れて日本の領土だと、こうやるおつもりのようですが、一体、なぜ最近になって、国後、択捉か日本の領土であるということを学校の教科書に鮮明に明示しようとなさるのか。  私のお伺いする趣旨は、一九五六年の日ソ共同宣言によって、平和条約締結と同時に歯舞、色丹は返そうということが両国の間で約束されていますよね。竹島その他の領土と違いまして、はっきりと戦後処理の問題として歯舞、色丹というのは――自民党の皆さんの立場では、歯舞、色丹が返ればいいと言っていますが、われわれの立場では、千島全体を返してもらえ、こう言っているのですが、なぜあのけちな、歯舞、色丹なんと言うのか、ちょっと理解に苦しむのですがね。千島全島が他国の領土になったことはないのですから、これこそ固有の領土なんですから、南千島の歯舞、国後、択捉だけ返してもらえば平和条約を締結する、こう総理がおっしゃっているのも、私どもは逆に納得できないのですが、そういうような問題がいま、これから論議されようとしている、論議されつつある、領土問題の規定、領土問題の話し合いが、ようやくこれから話し合おうじゃないかというようなことに十六年ぶりになったところへ、ことさらに――いままでは少しぼやけていた、教科書の地図の境界が。それが今度はっきり、鮮明に国後、択捉は日本の領土だ、こうだんだんはっきりさせようとする意図ですよね。これは大臣、どういう意図なんでしょう。
  380. 高見三郎

    ○高見国務大臣 これはせんだっての予算委員会で、外務大臣とあなたのやりとりを私も伺っておりました。あなた方が、千島列島を返すべきだと御主張なさるお気持ちはよくわかります。ただ、御承知のようにサンフランシスコ平和条約で、日本は千島列島を放棄するという声明を吉田全権がいたしました。一八七五年でございますか、千島樺太交換条約で、千島列島というものは日本の領土になりました。しかし、そのときには、あれは得撫島から占守島までの間を千島列島といっており、その前に、その樺太千島交換条約の際には、国後、択捉はすでに日本固有の領土であった。この点は、吉田全権が千島を放棄すると申しましたときに、はっきり国後、択捉は日本の固有の領土であるという宣言をいたしておるのであります。  千島の所属につきましては、御承知のようにサンフランシスコ平和条約会議には、ソ連代表は出ておりません。したがって、日本が放棄すると申しましても、その領土の帰属がソ連のものであるかどこのものであるかということはさまっておるわけじゃないのでありまして、ヤルタ会談におきまして、明治二年以後でありますか、日本が武力によって占領した土地は返還するということになっておったのでありますが、武力で取ったわけじゃございません。ただ、千島列島と南樺太は放棄するという宣言をしただけで、その宣言でソ連が自分の領土だと主張するという理由は私はないと思うのであります。しかし、国後、択捉については、これは樺太千島交換条約の中にも入っていなかったのだ、そのときから日本の固有の領土ということをソ連自身が認めておったというところから、国後、択捉の返還を歯舞、色丹とあわせて要求をいたしておる。教科書の中にはっきり最初からうたっておくべきであったと私は思うのでありますが、私は、そういう認識に立って国後、択捉というものを処理していかなければならぬ、かように考えております。
  381. 原茂

    ○原(茂)分科員 また、時間がないからこれで終わることになってしまうのですが、平和条約で日本が放棄をしましても――別のときにまた、これはどこかで論議しなければいけないのですが、われわれは、私ども立場では千島の放棄につながらないという論理を展開しておるわけなんです。これは別の問題としまして、いま私のお伺いしたのは、理由のいかんを問わず、なぜ一体最近になって、はっきりと国後、択捉を日本の領土であるという明示をしようとするのか、いつ、どういう理由で変わってきたのか、いま大臣がおっしゃったように本来固有の領土だったものを、いままで忘れていたのだ、見のがしていたのだ、だから最近になってはっきりさせるというだけなんでしょうかしら。それをひとつ。
  382. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 これは、最近沖繩北方対策特別委員会でございますか、そこの御議論で、そうすべきだというふうな私どもの結論に達しました。そうしてそういうふうに改めたわけでございます。
  383. 原茂

    ○原(茂)分科員 また別の機会に論議します。ありがとうございました。
  384. 森田重次郎

  385. 樋上新一

    樋上分科員 私は文化財保護につきまして、文部大臣また文化庁、大蔵省に質問をいたしたいと思います。  わが国におけるところのこの数十年の経済成長は目ざましいものがあり、また反面、公害、過疎過密等に大きな弊害をもたらしております。特に、国土開発によりわが国国土は荒廃し、これに伴いまして、歴史的文化財の破壊は目をおおうばかりであります。しかし、本来、開発と保存とは矛盾するものではないのであって、開発と保存との両者が一体となって進められてこそ、真の国土開発の意義があると思います。     〔主査退席、大村主査代理着席〕 しかし、残念なことには、従来においては経済成長のみに力を入れてきたがゆえに、かなり貴重な文化財の喪失をしてきたように思うのですが、この点どうでしょうか。
  386. 高見三郎

    ○高見国務大臣 樋上先生のおっしゃるとおり、開発が急激に進みまして、そのために貴重な埋蔵文化財を散逸したことは遺憾ながら事実でございます。私どもも、将来はこのことのないように、今年は前年度に比べまして三十何%か予算を増しまして、この保存につとめるつもりでおります。
  387. 樋上新一

    樋上分科員 文化財保存にあたっては、開発と保存との調和、また文化財保護と国土開発の計画の位置づけが重要になってまいりましたが、たとえば道路、橋などの建設の場合、文化財保存側と開発側との緊密な調整連絡が当然必要となってくると思うのですが、現在はどのように行なわれておりますか、お伺いいたしたいと思います。
  388. 安達健二

    ○安達政府委員 たいへん重要な御指摘でございます。私どもといたしましては国鉄、公社、公団等との間で覚え書きを交換いたしまして、埋蔵文化財あるいは史跡等の関連ある場合におきましては、事前に協議をして、その文化財がきわめて大事であるというような場合にはそれを除外する、それから、それほどでなく、相当他に類例もあるという場合におきましては記録を確実にとって保存していく、こういう申し合わせをしておるわけでございまして、同時に地方の都道府県等におきましても、こういうような状況で相互の間で事前の連絡をとるようにという指導をいたしておりまして、相当数の府県でそういう体制がとられつつあるというのが実情でございます。
  389. 樋上新一

    樋上分科員 覚え書きにおける内容等についてお伺いしたいのですが……。
  390. 安達健二

    ○安達政府委員 日本道路公団あるいは日本国有鉄道あるいは近畿圏等の間の覚え書きがございますが、その日本道路公団との覚え書きについて申し上げますると、第一番は「事業施行に際しての意見聴取及び協議」、それから二が「工事施行中に埋蔵文化財包蔵地を発見した場合」、三、「事前の分布調査」、四、「発掘調査」、五、「費用負担の範囲」、こういうようなことについて覚え書きがかわされておるわけでございまして、たとえば「事業施行に際しての意見聴取及び協議」ということにおきますると、「公団は公団事業施行に伴なう埋蔵文化財包蔵地の取扱いについては、文化財保護法の趣旨を尊重し、事業施行前に都道府県教育委員会の意見を聴取し、委員会と協議のうえ、次の各号に区分して必要な措置をとるものとする。(1)事業地区に含めないもの。(2)事業地区に含めるが保存をはかるもの。(3)発掘調査を行なって記録を残すもの。」と、こういうような点で始まっておりまして、先ほど申し上げましたような項目にわたって詳細に覚え書きを交換しておるわけでございます。
  391. 樋上新一

    樋上分科員 いま覚え書きの(3)が私、問題があると思うのでございますね。いまの(3)は「発掘調査を行なって記録を残すもの。」、これは問題でないでしょうか。開発に追われて発掘調査が急がれ、事前協議が形式化されているのではないか。本来ならば学術調査をすべきものが、この(3)の緊急による記録保存に変更される懸念が十分に推測される、こう思うのですが、この点はどうでしょうか。
  392. 安達健二

    ○安達政府委員 私どもといたしまして、発掘調査を行なって記録を残すものといいますのは、他に類例もあるということ、あるいは遺跡の重要度が比較的薄いというようなものにつきまして(3)の措置をとるわけでございまして、この(1)、(2)、(3)の区別につきましては、私どもといたしましては十分ひとつ学術的な根拠に立った判断をすると、こういうことにつとめているわけでございます。
  393. 樋上新一

    樋上分科員 四十三年度の発掘届け出数は八百三十一件ございますね。そこで、学術調査が二百二十件、緊急調査が六百十一件あるのでございます、調査しました結果。そうすると、四十五年度の発掘届け出数の学術調査と緊急調査の割合はどうなっているのですか、お伺いしたいのです。
  394. 安達健二

    ○安達政府委員 四十五年におきまして届け出の総件数が、ただいま四十三年をおっしゃいました八百三十一が、千百二十九になっておるわけでございます。それから学術調査百七十八件、これは本来初めから学術的な調査をするという、そういうようなものでございまして、土木工事等でこれに伴うものとしては九百五十一件ということになっておりますから、千百二十九件のうち大部分が土木工事に伴うところの調査である、こういう結果になるわけでございます。
  395. 樋上新一

    樋上分科員 従来ならば、私は、重要な文化財が破壊されていくというところには、事前にこの学術調査が全部に行なわれて至当だと思うのです。そうしなければならないと思うのです。ところが、いま緊急という緊急調査の場合、そういうものに切りかえられた場合、すでに文化財は破壊されてしまうのですよ、学術調査を行なわずして緊急調査の条項に入れてやるならば。これはもう破壊されてしまっているのですね。文化庁は、公団や国鉄との間に覚え書きを交換していると先ほどおっしゃいましたね。ところが、計画路線に遺跡があるときは、いわゆる開発側は調査費だけを負担する。そうしますと、設計変更についてはきまった取りきめはされていない。そうでしょう。また、農業改善事業によるいわゆる田畑の改良工事ですね、畑地の集落あとについても、農林省との事前取りきめがはかられていないようですが、この点はどうなっているのですか。
  396. 安達健二

    ○安達政府委員 多少行き違いがあろうかと思いますけれども、学術調査というのは、大学等がその学術的見地と申しますか、そういう見地で自主的に行なわれる調査でございます。したがいまして、土木工事等とは基本的に性格が違うわけでございます。それが第一点でございます。  それから土木工事に伴う発掘調査にいたしましても、これはすべて記録にとどめるというものではございませんので、その調査の結果重要なものが出た場合には最初の計画を変更すると、こういう前提でやっておるわけでございまして、したがいまして、それもいわば学術的な調査であり、またその調査の結果記録にとどめるものも相当数ございますけれども、そうではなくて計画を変更するというものもあると、こういうことと御了承願いたいと思います。  それから、農業構造改善の関係につきましては、まだ覚え書きは交換しておりませんけれども、その間の問題は両省の間でいろいろ話をしておるわけでございます。
  397. 樋上新一

    樋上分科員 そこで私は、いま国鉄などと覚え書きはしているけれども、覚え書きをできないところの小さな農業、そういうところに事前協議、また取りきめがはかられていない、ここに私は一つの盲点があるのじゃないか、こういう点を指摘しているのです。
  398. 安達健二

    ○安達政府委員 農業構造改善事業は改良区が行なわれるわけで、個々のものが行なっているわけでございます。それで、農林省は補助金を出されるだけでございますので、農林省との間で覚え書きを交換するというわけにはまいりませんけれども、心持ちといたしましてそういうような指導をしてもらうように申し入れております。
  399. 樋上新一

    樋上分科員 私が重要視しておるのは、こうした大きなところと覚え書き交換と言われるけれども、小さな農業との事前協議の覚え書きも取りかわしておらないところに、何とか考えねばならないかと思うのでございます。  政府は新全総で歴史的環境保存を取り上げていますが、ここに私は提唱するのですが、これはすみやかに国の総合計画のもとに、この保存と開発、都市計画、研究などの機関の代表者による調整機関を発足させるべきではないかと思うんですが、その点いかがお考えになりますか。
  400. 安達健二

    ○安達政府委員 現在、文化財保護法ということで、史跡等に指定されるものにつきましては文化庁で現状変更の許可をする、こういうことでございますので、その段階で守る。それから、指定されていないところの埋蔵されておる文化財で、まだその状況が十分把握できないものにつきましては、まず第一番目は、そういう所在をなるべく確認をして一般に公知せしめる必要がある、こういうのがございまして、それで前に、十四万カ所の遺跡につきましてその大体の所在を地図にあらわして、開発当局等にもこれを配付いたしておるわけでございます。ところが、その地図に載ってない遺跡が相当数あるということになってまいりましたので、さらにこの第二次の埋蔵文化財所在地の調査をいたしまして、これをまた地図にいたしまして地方のほうへ配付いたしまして、開発との間で十分気をつけていただくようにする、こういうようなことをやり、そしてまた、先ほど申し上げました協議のような方式は、中央の段階でできるところはやるし、そうでないところにおきましては、地方の都道府県の教育委員会とそれぞれの担当部局との間で十分な事前連絡の体制ができるようにする、こういう指導をいたしましてやっておるわけでございまして、御説の点については、考え方につきましてはさらに十分ひとつ検討さしていただきたいと思います。
  401. 樋上新一

    樋上分科員 いま私が提案いたしましたのは、地方におけるところの各保存、開発、都市計画、また研究というものがばらばらになって――文化庁のほうではうまくいっているように思っていらっしゃるのですが、地元になりますと、京都市なんかは、京都府、市、またその開発業者、そういうようなものがいろいろと対立いたしまして、そしてごたごたしている間に重要文化財が破壊されてしまうというようなことがよく行なわれているのですよ。特に京都は文化財が多く埋没しているところがあるという点を考えまして、私たちはいま、新しいこういう調整機関というものを発足されて、府、市、文化庁と一致したものができてスムーズにやったらよかろうと、私は提案しているわけでございます。この点十分検討していただきたいと思います、将来のためにも。  そこで、財政問題についてお伺いするのですけれども、文化財保存のためには史跡等の買い上げが一番効果があるように思っておるのですが、文化庁は四十五年から十カ年計画を出しているようですが、内容を簡単に説明してください。
  402. 安達健二

    ○安達政府委員 現在史跡に指定しておりますところが八百件以上ございますが、その総面積を見ますと一万二千百十二ヘクタール、そのうちで私有地、私のものが持っておるものが三二・六%、三千九百四十ヘクタールほどございます。そのうちの約三二%、山とか原野とかいうところを除きまして、買い上げの対象とすべきものを千二百三十ヘクタールと考えまして、さらにそのうち緊急に買い上げなければならないものを八百四十三ヘクタールほどと前提いたしまして、十年計画でひとつこの八百四十三ヘクタールほどを買い上げていきたい。これはもちろん地方公共団体、市町村を主体といたしまして買い上げをする、それに対して国が半額補助をするということで、総額といたしまして、事業費が五百八十一億、補助金が三百二十億というものを四十五年度からの十年計画でやりたい、こういうことで計画なり予定を立てておるわけでございます。
  403. 樋上新一

    樋上分科員 これに対して、史跡等の買い上げを年々五億円ぐらいずつアップしているようですね。最近の土地価格の値上がりを考えますと、今年度の予算のこのくらいの規模で、当初目的の十カ年計画は達成できるとお思いになりますか。この点に対しまして大蔵省、文化庁はどうお考えになりますか。
  404. 安達健二

    ○安達政府委員 買い上げの予算でございますが、これは年々増額をお認めいただいておりまして、四十三年度は三億八千万円でございましたが、ただいま御審議をいただいておりまする四十七年度予算では二十億というように、増加をお認めいただいておるわけでございます。で、われわれ、大蔵省にお願いいたしました要求額としては二十五億をお願いいたしたわけでございますが、それが二十億というように認められたわけでございます。それから、計画といたしましては、地価の値上がりは一応毎年一〇%増をするものと仮定してやっておるわけでございます。したがいまして、若干のわれわれの要求と、お認めいただいておる、いま御審議いただいておるものとの違いはございますけれども、これは十年の、五十四年までの中でひとつ今後努力いたしまして解消するようにいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  405. 青木英世

    ○青木説明員 ただいま文化庁の安達次長からお話ございましたように、史跡等の買い上げの予算といたしましては、昭和四十六年度の予算が十四億八千万円に対しまして昭和四十七年度、いま御審議いただいております予算では二十億ということで、増加率といたしますと三五・一%ということで、かなりの率で伸ばしておるわけでございます。今後五十四年度までどの程度これをふやしていくかにつきましては、その年度年度の財政の状況等にもよろうかと思いますが、私ども、こういうことの意義にかんがみまして、できるだけ積極的に予算を確保していくように今後とも努力していきたいと、このように考えておる次第でございます。
  406. 樋上新一

    樋上分科員 次に、修理及び環境整備費ですが、土地を買い上げたまま、そのままに放置しておくという場所があるんですが、これは整備して公園等にして有効に活用すべきではないでしょうか、と私は思います。今後この問題は非常に重要になってくると思いますが、それにしてもあまりに予算が少な過ぎるのではないだろうか。  次に、埋蔵文化財緊急調査が年々増加しているようですが、その理由はどのように考えておられるのか。それにしてもあまり予算が少ないと思いますが、この点大蔵省はどう考えておられますか。  また、時間がありませんのでまとめて申しますが、次に、人的資源の問題も重大であると思いますが、埋蔵文化財の事前調査員をもっと増大すべきではないか。また、現在ある国立大学においても、考古学講座部門を設けている学校は非常に少ないように思われますが、これに対しましても積極的に援助すべきではないでしょうか。考古学者などにも、科学研究費など特別な優遇措置をとるべきではないだろうか、こういう点についてお伺いするんですが……。
  407. 安達健二

    ○安達政府委員 まず、修理及び環境整備でございますが、これは全く御指摘のとおりでございまして、史跡を買い上げたものを整備して、一般の人々、国民の方々にその史跡の価値を十分認識していただくということが非常に大事なことでございまして、私どもといたしましてもその経費の増額には努力をいたしておるところでございまして、四十六年度が二億二千三百万円ほどでございますが、四十七年度では三億四千万円というように増加をお願いをいたしておるわけでございます。  それから、その修理、環境整備につきましては、その場所をするだけではなくて全体的に整備をいたしまして、資料館等も整備するという意味で「風土記の丘」というのをやっておりますが、現在まででき上がりましたのが全国で七カ所に達しておるわけでございまして、私どもはさらにこの事業も促進してまいりたいと思っておるわけでございます。  それから、埋蔵文化財の緊急調査でございますが、これも年々増額に努力しているところでございますが、四十六年度の緊急調査の費用が九千九百六十二万五千円でございますが、四十七年度は一億二千七百万円というように増額をお願いしておるわけでございますが、先ほど御指摘のとおり、非常に開発の速度が速うございますので、緊急調査には非常に頭を悩ましておる次第でございます。  それから、発掘調査要員の関係でございますが、全国的に見まして百数十人ほどでございまして、非常にこの充実が急務でございます。しかし、これは一朝にして充実できませんので、御指摘のとおり、大学における考古学講座の充実等が必要になるわけでございますが、現在学生数が約三百人程度でございまして、いま御指摘のように、さらに一そうこれらの講座が充実し、そしてまた、より多くの学生が誘致されますように、また研究が十分行われますように、科学研究費等についても十分担当のところにもお願いいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  408. 樋上新一

    樋上分科員 時間の関係上、一つ一つ回答を求めますと時間がありませんので、これからずっと申し上げますから、文部大臣もまとめて最後に御回答願いたいと思います。まだたくさんお伺いしたいのですけれども、非常に時間が足りませんので。  昨年の五月に、京都の久世郡城陽町に府立城陽高等学校がございますが、この新設にあたりまして、旧地買収地の中に古墳が出たとき、業者が開発を急ぐあまり、協議中にもかかわらずそれらを無視して工事を続行したようであります。その収拾にあたりかなり混乱があったように新聞に報道されておりましたが、この点はどういうぐあいに把握されておるかという点と、この問題の協議中であるにもかかわらずこれらを無視した行為に対して、現行法ではどのような規定があるか。  さらに、現行法の第五十七条の一に発掘に際して届け出三十日前とあるが、はたして三十日で一切の調査を終了するには実際問題としては不可能だ、こう私は思うのでございます。  また、一月七日の京都新聞に報じられておりますのは、古墳をかかえ生活まっ暗、売るにも売れないということで、この老人が非常に悩んでおります。これは地主の老夫婦が、子供もなく、寄る年波に老後の生活が心配となり、唯一の財産である古墳を売ろうとしたが、仮指定の実績と周知の遺跡とがあり、現状変更がむずかしく、買い手がなく困っています。  文化財保護法は第四条第二項において、文化財の所有者とその関係者は、文化財が貴重な国民的財産であることを自覚し、これを公共のために大切に保存するとともに、できるだけ公共にこれを公開する等、その文化的活用につとめなければならないと規定されておる。いわゆる保存活用のため、私権の制限もやむを得ないとしています。これらの条文による私権の制限に対して、所有者からの聴聞及び異議申し立ての制度が適用され、つまり第六章補則に、文化財保護法を名目とした不当な私権の制限に対して、事前、事後の道が唱えられていますけれども、しかしこの救済制度は、一切の限られた条項についてのみ指定されたものであって、全面的救済の可能性を与えているものではない、こう思うのでございます。たとえば、第六十九条の文部大臣による史跡の指定及び第七十条の都道府県教育委員会による史跡の仮指定は、明らかに公権力の私権の制限にもかかわらず、救済の道は本現行法に明記されていないが、この点はどうなっているのか。  百十一条の、埋蔵文化財の包蔵が事前に知られていない土地を発掘中に文化財とおぼしき物件を発見した場合、現存を変更せずに文化庁に提出しなければならないとなっていますが、との義務を怠った場合の罰則は五千円以下の過料となっていますが、実際にはほとんど効果を発揮していないと思うのです。四十六年度までにはこの罰則を適用した件数はどのくらいあるかお伺いしたいと思うのですが、これは時間の関係上省略します。  最後に文部大臣にお伺いいたしますが、以上、多数の例をあげてくどくど申し述べましたが、現在の現行法では、急激なる国土の荒廃を考えますと、真の文化財保護を達成することができないのではないだろうか。文化財保護法は昭和二十五年五月であり、それから二十二年も経過しているのですが、いままでに討論いたしましたようにいろんな問題を持っていますが、文部大臣は、早急に現行法の改正に踏み切るべきではないでしょうか。勇気ある御回答をお願いする次第でございます。
  409. 大村襄治

    ○大村主査代理 簡潔に願います。
  410. 安達健二

    ○安達政府委員 それでは、まず最初に、京都の府立高等学校新設に関する城陽町での問題でございます。  これにつきましては、私どもと府の教育委員会と合意したところで、府教委から提出されたものの一部変更の案で合意がなったのでございますが、それが残念なことに、府教委の原案どおりに独断でそういう破壊が行なわれたという事態でございまして、これは私どもは、はなはだ遺憾な状況であったと考えておるところでございます。  それから、それに対しますところの罰則でございますが、これはございません。  それから第三番に、土木工事等のために埋蔵文化財を発掘する場合には、三十日前の届け出を要するということになっておるわけでございますが、これは、三十日の間に届け出をした場合に、三十日以内に調査を完了するという意味ではございませんので、その間に適正なる判断をするという期間でございます。なお今後検討すべき課題と思いますけれども考え方はそういうようになっておるわけでございます。  それから、文化財保護法によって史跡等に指定された場合において、私権の制限ではないか、それに対する救済措置はどうかということでございますが、現在の文化財保護法は昭和二十五年に制定され、二十九年に改正をされておるわけでございますが、これまでの考え方によりますると、文化財の史跡指定等につきましては、これは所有権に内在する制限であるというふうな解釈がとられておるわけでございますけれども、新しい今後の状況から考えまして、その点についてはなお検討すべき点もあるのではないかと思うわけでございます。  それでは実際に救済措置と申しますると、これはやはり、先ほど先生から御指摘ございましたように、買い上げをする。所有者がなかなか現状変更はできない、そういう場合には、やはりこれを買い上げして公有化するということが一番の解決ではないかというように考えておるところでございます。  なお、文化財保護法の改正につきましては、大臣からあとでお答えがあるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、新しい事態に即応しまして、文化財保護法につきまして必要な改善を加えるということにつきましては、各方面からの要望もございますので、この点につきましては文化庁といたしまして、現在せっかく検討中であることを申し上げたいと思います。
  411. 高見三郎

    ○高見国務大臣 安達次長からはっきりお答え申し上げましたから、私、もういいんでありますけれども、せっかくお名ざしでありますので、文化財保護法につきましては、改正の方向に向かって目下検討中であるというように御理解をいただきたいと存じます。
  412. 樋上新一

    樋上分科員 終わります。
  413. 大村襄治

    ○大村主査代理 次に、森田重次郎君。
  414. 森田重次郎

    ○森田分科員 実は私、主査立場にあるので、前もって予定していなかったのですが、突然こういう質問をしようと思った動機は、あなたは前に農林水産委員長をおやりになった、したがって、農業関係についてはずいぶん通暁されておいでになるということ、それからいま文部省の責任者だというこの二つのことから、きわめて簡単な質問をして、ぜひこれを実現してほしい、こう考えて、突然お願い申し上ぐるわけでございますから御了承願いたいと思います。  前に米の生産調整をするというときには、大体日本では七百万トン余剰米があるのだ、こういうので米の生産調整をやらざるを得なくなった。しかし、当時でさえ小麦が四百万トン入っているはずです。米が余って小麦が四百万トンも輸入するというところに、やはりいまの米問題中心日本の農政の苦悶があると私は考える。これをどうすればいいのかといえば、要するに日本人が米を食わなくなったということなんで、そこで私は、日本人にどうして米を食わせるかということを政治家として考える必要がある。その一つの方法――一つですから、これで全部解決するわけではございませんが、学校給食をなぜパンだけにするかということに疑問を持つのです。パンとミルクだけ。これはまあ過去の伝統がありまして、多少われわれもそれを知っているわけでございますから、いまさらどうこうとは言いませんが、この長い間のパンとミルクの給食というものが、日本人にパンを多く食わせる一つの原因になったのではあるまいか、学校給食がやはり一部の責任を負担すべきものだ、私はこう考える。  これでいいのかということなんです。やっぱり私は、日本では米ができるのですから、米を多く食わせなければいかぬ。農業で何が困るかといったら、米が余ったことで、もう農林省は右往左往でございます。われわれ自身、また農村から出た議員も、この問題には非常に困っている。そこで、どうしてもやはり永遠の策としても学校給食、子供らのときから米を食わせる慣習をずっと持続していくべきだということ。もう一つは、私の計算だと、学校給食を全部米に切りかえると、一年に二十六万トン食うような予定になっているはずであります。これは一時的便法といえば一時的便法ですが……。  そこで、どうにかして学校給食を米にしたい、これをわれわれ農林水産部会等で盛んに主張した結果、文部省なかなか言うことを聞いてくれない、こういうのです。私、直接文部省へぶつかったんじゃないから、よくわからないのですが、文部省がどうしても言うことを聞いてくれない。それから、私の町を中心に四カ町村が、小学校、中学校連合して給食センターをつくりました。このときに、米に切りかえたいという。私も話ししたし、町村長も賛成して、米に切りかえたいといって文部省へお願いしたが、現行の制度では、それでは助成金を出せない、こういうのです。それじゃしかたがないなというので、やはり依然としてパンとミルクにしていた、こういうのですよ。ここいらにもう少し分別しなければならないことがあるように私は思うのです。  それから、パンでなければならないという人もいるでしょう。だから、いま全部一ぺんに米といったら、これは無理でございますよ。しかし、米を食いたいという者になぜパンを食わせなきゃならないか、ここに問題がある。青森県西津軽郡筒木坂小学校の父兄が、私の学校の給食が始まりますが、何とか米にしてもらいたい、こう言うのです。新聞に出ましたから、私、その学校に行ってみまして、父兄に会いました。こう言うのです。先生、私のところの子供は、学校からパンをもらうのですが、食わないのです、うちへ持ってきます、こう言うのです。この間ミサイルで有名になった車力の村なんですが、食わない。食わなくちゃいかぬじゃないかとしかりつけると、学校で食わないで途中で捨ててしまうのです、こう言うのですよ。こういうところもあるということを、文部省、やはり考えなければならぬじゃないか、こういうのですよ。それで、その奥さん方、どういうことを言っているかというと、私らは毎日米を食べていますから、うちからお弁当を、米、持たせてあげます、こう言うんだ。だから、学校ではこれにふさわしいおかずをうまくつくって、そして米と調和のある栄養食にしてもらえればまことにありがたいのです、こう言うのです。こうやれば何でもないことじゃないかと私は実は考えるのですよ。  そこで、ひとつ大臣に、私はそういう原則をぜひ立ててもらいたいということを前から考えておりましたから、きょうは大臣の御高見を拝聴しておきたい、こう思うのです。
  415. 高見三郎

    ○高見国務大臣 森田先生御指摘の点、私も同感でございます。子供のときから食いつけておらなければ、おとなになったらますます米を食わなくなります。そこで、今年からは米飯を学校給食に使ってもよろしい、そのための炊飯施設、たく施設費の補助金も出すということにいたしまして、パン食にするか米食にするかということはその学校の選択にまかせるということにいたしました。あるいは米とパンをあわせてかわり番こに食わせるというような方法をとってもよろしいという道を開いたわけでございます。
  416. 森田重次郎

    ○森田分科員 それは省令を改正なさったのでしょうか。
  417. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 ただいま大臣の答えたとおりでございますが、ちょっと補足して申し上げます。  学校給食の食事内容という通達を出しておるわけでございますが、これは、従来パン食だけを認めておったわけでございます。この通達を改正いたしまして、パンでもいいし米でもよろしいということにいたしました。ただ、米の場合は、米が非常においしいものですから、とかく米ばかり食べて、したがって米を使う場合は、副食との、いま先生お話ございましたようなそういう点も示しまして、米も使ってよろしいのであるというふうに通達を改正いたしたわけでございます。御指摘のように、米食の合理的なとり方というものを児童生徒のうちからあれすることは非常に大事なことでございますので、そういうぐあいに通達もすでに改正いたしました。  また、昭和四十五年度、昭和四十六年度、米食の実験校を設けまして実験をいたしました。その結果はいままとめ中でございますが、大体の傾向としては、子供のほうは非常に喜ぶ。これはパンとか米とか、学校給食にいろいろ変化が与えられますので、非常に喜びますが、実施するほうは、人手とかいろんな施設設備とかがかかりますので、少しいやがる傾向がございます。そこで、いま大臣からお話がございましたように、昭和四十七年度予算には、米食給食を行なう場合の指導費あるいは食堂の施設、炊飯施設らの施設設備費、それから特に栄養が大事になりますので、学校栄養職員の設置のため等に約一億二十八万円の予算を国のほうでも計上いたしまして、希望するところは給食に米食を使える。また農林省のほうも、それにつきまして非常に好意的、積極的に協力をいただきまして、さらに米以外に米の加工品とか米粉混入パンとか、そういったものにつきましても、試験研究用として、農林省では格別の便宜をはかっていただくことにいたしております。  大体そういう状況で、前向きにやることにいたしております。
  418. 森田重次郎

    ○森田分科員 大体、私の考えていたのに相応するようでありますからわかりましたが、しかし、これはどうなんですか。私が調べてみた結果だと、主食というものを省令できめている。その中には、パンとミルクと書いてあるのですよ。だから、パンとミルクと書いてある上のほうに、米、パン、ミルクと、米一字入れると、あれで何でもなくできるのです。いま、あなたは通達を出したと言うのだが、あの省令があのまま生きていたんじゃ私はおかしいと思うのだが、その点はどうなるのです。
  419. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 あるいは先生、何をごらんいただきましたか、文部省令にはそういうきめはいたしておりませんで、文部省の告示で栄養基準というのを示しております。これは要するにカルシウムとかたん白とか、そういう栄養基準だけでございます。それで、具体的には、学校給食の食事内容につきましては、文部省の通達によりまして前から基準を示しております。その通達がパンとミルクで、米は使えるようになっていなかった。その通達を改正いたしまして、パンでもよろしいし、米でもよろしい。米の場合、パンの場合の食品構成でございますね、米の場合は特に副食等のあれをいろいろ考えなければいけませんが、その食品構成の基準も明らかにいたしまして、米が有意義に使えるようにいたしたわけでございます。
  420. 森田重次郎

    ○森田分科員 そこで、米を食べさせたいという学校は、いま大臣のお話では選択にまかせるという。選択の学校が非常に多くなって、四十七年度にぐうんとふえたら、それに相応するだけの予算が計上されておりますか。
  421. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 端的に申し上げますと、これにはちょっと時間がかかると思います。といいますのは、二年間実験をやったわけでございますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、子供は非常に喜ぶ傾向が出ているのですけれども、やるほうがやはり、準備とか人手とか設備とかいろいろかかりまして、それから食事代も米のほうが少し高くなる。しかし、まだ当分は、農林省に試験研究用ということで無償で考えていただいておりますから、その値段のほうはよろしいのでございますが、そういう面で実施するほうが少しいやがる傾向がございますので、一ぺんにそこまではいかないかと思います。しかし、いま御指摘のように、米食の合理的なとり方というものを子供の時代からやることは非常に大事でございますし、そういうようなことで、来年度の予算措置をいたしたわけでございますが、必ずしもまだ全国的、至るところに米が使えるような、そういうほどの予算にはなっておりませんが、やはり長年パンでずっとやってきたこともございますので、これは漸進的に考えていくべきものと、そういうふうに考えております。
  422. 森田重次郎

    ○森田分科員 あまり長くなってもどうかと思いますが、しかし、いまあなたのお話だと、何か実験学校中心のお話のようなんだ。そう聞こえるのですが、実験学校はもう局限された、百二十何校かだったろうと思うのです。われわれの考えているのは全国的にという意味なんだから、これは相当大きい予算を必要とするのじゃないかと思うのです。だから、もし告示を出して、学校の選択にまかせて、私のところでもやりたいという場合、それに即応するだけの体制を文部省が予算をとって応じてくれなければ、ただ通牒だけではあまり効果がない、こう思うのだ。その点を心配するのです。
  423. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 先生の御心配もまことにごもっともでございますが、一応私どもも実態調査をいたしまして、実験校は八十二校でございましたが、実験はもうすでに終わりまして、来年からは、希望するところはひとつおやりくださいというふうに変えたわけでございます。実験校で、引き続き八十一校がやりたいと言っております。それから、四十七年度に新しく米食を取り入れたいというのが、全国で七十七校でございます。それから、現在、すでにもう実験校以外でやっておりましたのが、三百六十一校でございます。したがいまして、すでに実験校でやっておりまして、引き続き今後もやりたい、それから今後、四十七年度新しく始めたいという分につきましては、大体それらに応ぜられるだけの予算措置をいたしております。
  424. 森田重次郎

    ○森田分科員 局長さん、これは学校給食法施行規則の第一条の二項なのですね。そこに書いてあるのですよ。だから、これは単なる通牒じゃないんですよ。学校給食法施行規則なんですよ。だから、これを変えなければ困る。しかし、文部省の施行規則なんだから、大臣が変えれば何でもなく変えられる。だから、私は、御理解ある大臣大臣になっておいでのときにこれを変えてもらわなければいけないというのが、きょうの私の質問しようという動機なのです。大臣、そういうふうにひとつ。  ここを読んでみます。大臣、これで補助しているのですから。「完全給食とは、給食内容がパン(これに準ずる小麦粉食品等を含む。)、ミルク及びおかずである給食をいう。」と書いて、米というものが入ってないのですよ。だから、ここへ米を一字入れると、これは何でもないことなんだというのが、私の研究の結果なのです。若干、食い違うようですが……。
  425. 高見三郎

    ○高見国務大臣 これははっきりしておいたほうがいいだろうと思いますから申し上げますが、この条文のあれは「等」という中に実は入っておるというような言い方をしておりますけれども、それでは誤解を招くだけのことでございますから、細則を私のほうで変えます。変えるということをお約束します。
  426. 森田重次郎

    ○森田分科員 わかりました。それで大臣、ぜひそういうふうにしていただきたい。  それと、これは実験学校中心のお話で、局長さん、やはりそこにとらわれがあるんじゃないかと私は思うので聞き返すのですが、学校給食をやりたいという選択権を持たせると、全国で相当の希望者が出てくるということを私は予想しているのですよ。それは簡単な予算ではとても応じ切れるものじゃないだろうと思うので、地方の要求を調査して、それに応ずるだけの予算をぜひ思い切ってとってもらいたい。切りかえて米をやりたいというものには、米の設備等に対する補助もパン中心のときと同じようにやってもらいたいというのが、きょうの私の希望なんです。  大臣、どうかここを御了解願いたいと思う。大臣の結論をお伺いして下がります。
  427. 高見三郎

    ○高見国務大臣 御意見よくわかりました。細則を改正いたしまして、米を入れることにいたします。  そういたしますと、再来年度の予算は相当ふくれることになるだろうと思いますが、来年度予算はすでに御審議中でありますので、再来年度からは大幅になるだろう、私もなることを希望いたしております。
  428. 森田重次郎

    ○森田分科員 これでけっこうです。ありがとうございました。
  429. 大村襄治

    ○大村主査代理 これにて文部省所管の質疑は終了いたしました。  明二十四日金曜日午前十時より開会し、総理府所管中、環境庁に関する事項について審査を行ないます。本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十一分散会