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石川分科員 私は、地方の小さな幼稚園の名前だけの園長をやっておりまして、私立幼稚園の現場のなまの声をしょっちゅう聞いておるわけです。したがって、文部省の、あえて机上の空論とは申しませんけれ
ども、理論とはまた違った観点でいろいろ
意見があるのでございますが、しかし申し上げたい点が多岐にまたがっておりまして、とうてい三十分でこれを尽くすということは不可能だと思うので、御答弁のほうは簡潔に結論的にしていただければけっこうだし、残った点はまたあらためて文教委員会その他で追及し、あるいは質問をしたい、こう
考えておるわけであります。
そこで、幼稚園に限りませんけれ
ども、公金その他の公の財産は、宗教上の組織その他のもので使用するとかあるいはまた公の支配に属しない教育その他には使ってはならぬというのが憲法八十九条で
規定をされておりまして、個人の幼稚園に対してはノーサポーティーであるということになっておるわけでありますけれ
ども、しかしながら現実には、幼稚園をつくる場合には、柱の太さからあるいはまたその中の設備から、非常にことこまかに
規定をされて、コントロールを受けておるわけなんです。したがってサポートだけがノーだということはどうも合点がいかないという気持ちがしてならない。そういう感じがまずされるわけであります。
それで、外国の幼稚園の実態を見ますというと、一クラス大体二十人ぐらいで、もう積み木もなければあるいはまた運動場にも、
日本にはいろいろなすべり台などありますけれ
ども、それもない。それからピアノもオルガンもない。こういうような状態で、それこそ文部省で出しております幼稚園教育要領に、よく伸び伸びということばが書いてありますけれ
ども、全く伸び伸びとやっておるわけなんです。教育指導要領などでこまかく規制をしていくこと自体に相当問題があるのではなかろうかという私の気持ちであります。
それは別といたしまして、私立幼稚園の数が大体六二・七%でありますから、相当私立幼稚園に依存している面が多いし、また私立幼稚園がそれぞれ独自の
立場で独自の研究をしながら幼児教育に専念をしておる。まあ私は、幼児教育と思春期の教育はやはり一番重要な教育でありながら、ほとんど幼児教育については論議をされたといういきさつがないような感じがするので、これを今後文教委員会などで私
どもいろいろと掘り下げていってみたい、こういう感じを持っておるわけであります。
そこで、まず第一点でありますけれ
ども、中教審で権威者といわれるいろいろな方々が集まって、幼児学校をつくるとか義務化をするとかというふうな答申を出されております。私はこの構成メンバーに相当不満がございまして、現場の声というものがなまに反映をするような状態にはなっておらぬのではないか。そして財界人がかなりの
発言権を持っておる。それから文部省のお役人が相当多く入っているというようなことで、中教審の答申については、幼児教育に限らず、私は幾多の反論を持っておるわけであります。
まあ幼児教育の面だけで申し上げますというと、大体大脳生理学者の時實さんたちの
意見などが相当大きく反映いたしまして、あるいはまた心理学の発達ということもございまして、三歳から八歳までの間に大体脳の形成は八〇%きまるんだ、こういうことになってまいりましてから、幼児教育というものに対する関心が相当高まってきておるという事実は見のがすことができないと思うのであります。そこで、たとえばソニーの井深さんたちなどは、相当幼児教育というものの重要性というものを強調して――まあ財界の
立場に立てば、情報化時代に備えて知育教育というものを幼児のときからやらにゃいかぬ、こういう気持ちになる。あるいはまた労働人口というものを質的一に高いものを早く求めたいという気持ちでいろいろと
意見を出されております。これは財界人としては無理からぬことであって、
一つの見識としてあえてこれを退ける気持ちは私はないのでありますが、教育の場ではたしてこれでいいかどうかということになると、私は相当問題があろうかと思います。それも議論になりますからきょうは触れません。
そこで、中教審の答申によるところのいわゆる義務化という問題でありますけれ
ども、ところが、最近の幼稚園教育振興計画案全十カ年のうちの前半五カ年計画を見ますと、市町村に
設置の義務を与えるとかというふうな義務化の問題については触れておらないわけであります。中教審の答申とはこの点がちょっとずれているんではないか、こういう感じがするわけでありますけれ
ども、この義務化ということ、幼児学校をつくるということ、一体文部省当局としては、この中教審の答申に沿って先導的試行ということをこれから行なうわけでありますけれ
ども、はたしてどこまでこの答申を尊重して義務化に進むというお気持ちがあるのか、それとも、この幼稚園教育振興計画案にはそのことに全然触れておらないということで、まだまだそういうことを
考える
段階ではないんだということなのか、ちょっと伺いたいと思うのです。
なぜ私がそれにひっかかるかと申しますと、
昭和四十六年の六月十一日の中教審の百二十回総会で前文部
大臣の坂田さんが、答申の趣旨に基づいて私立幼稚園以外の私立学校に対して云々ということばがあるわけです。そうなると私立幼稚園だけを除いたということは、私立幼稚園は義務化するんだということが前提なんではないかという憶測がここから生まれてくるわけなんで、そういう
方針を踏襲されておるのかどうか、ひとつ簡潔にお答え願いたいと思うのです。