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1972-03-22 第68回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十二日(水曜日)     午前十時六分開議  出席分科員    主査 森田重次郎君       大村 襄治君    瀬戸山三男君       大出  俊君    中谷 鉄也君       安井 吉典君    横路 孝弘君       沖本 泰幸君    栗山 礼行君       和田 春生君    兼務 大原  亨君 兼務 島本 虎三君    兼務 楢崎弥之助君 兼務 芳賀  貢君    兼務 細谷 治嘉君 兼務 鬼木 勝利君    兼務 鶴岡  洋君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)     渡海元三郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君  出席政府委員         内閣参事官   國塚 武平君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         任用局長    岡田 勝二君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         人事院事務総局         職員局長    島 四男雄君         内閣総理大臣官         房審議室長   小田村四郎君         内閣総理大臣官         房管理室長   吉岡 邦夫君         総理府人事局長 宮崎 清文君         警察庁刑事局保         安部長     本庄  務君         行政管理政務次         官       岩動 道行君         行政管理庁長官         官房審議官   大田 宗利君         行政管理庁行政         管理局長    平井 廸郎君         北海道開発庁総         務監理官    山田 嘉治君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         科学技術庁長官         官房長     井上  保君         科学技術庁長官         官房会計課長  野崎 博之君         科学技術庁計画         局長      楢林 愛朗君         科学技術庁研究         調整局長    千葉  博君         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君         沖繩北方対策庁         長官      岡部 秀一君         沖繩北方対策庁         総務部長    岡田 純夫君         法務省人権擁護         局長      影山  勇君         外務政務次官  大西 正男君         大蔵省主計局次         長       長岡  實君         文部省社会教育         局長      今村 武俊君         厚生省公衆衛生         局長      滝沢  正君         労働省職業安定         局失業対策部長 桑原 敬一君  分科員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    今泉 昭雄君         防衛施設庁総務         部施設調査官  来栖大児郎君         経済企画庁総合         計画局計画課長 道正 信彦君         経済企画庁総合         開発局参事官  山東 良文君         外務省アメリカ         局外務参事官  橘  正忠君         大蔵省主計局主         計官      海原 公輝君         文部省大学学術         局学生課長   齋藤寛治郎君         水産庁漁政部長 田中 慶二君         海上保安庁警備         救難部長    貞廣  豊君         労働省職業安定         局業務指導課長 加藤  孝君         建設省住宅局市         街地建築課長  高瀬 三郎君     ————————————— 分科員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   辻原 弘市君     中谷 鉄也君   安井 吉典君     上原 康助君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     大出  俊君 同日  辞任         補欠選任   大出  俊君     内藤 良平君 同日  辞任         補欠選任   内藤 良平君     横路 孝弘君   沖本 泰幸君     山田 太郎君   和田 春生君     栗山 礼行君 同日  辞任         補欠選任   山田 太郎君     斎藤  実君 同日  辞任         補欠選任   中谷 鉄也君     辻原 弘市君   横路 孝弘君     安井 吉典君   斎藤  実君     沖本 泰幸君   栗山 礼行君     和田 春生君 同日  第二分科員楢崎弥之助君、第三分科員細谷治嘉  君、鬼木勝利君、第四分科員芳賀貢君、鶴岡洋  君、第五分科員大原亨君及び島本虎三君は本分  科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計予算内閣及び総理府  (防衛庁及び経済企画庁を除く)所管      ————◇—————
  2. 森田重次郎

    森田主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和四十七年度一般会計予算中、内閣総理府、ただし、防衛庁及び経済企画庁を除く所管を議題とし、政府から説明を求めます。山中総理府総務長官
  3. 山中貞則

    山中国務大臣 昭和四十七年度における内閣及び総理府所管歳出予算要求額について、その概要を御説明いたします。  内閣所管昭和四十七年度における歳出予算要求額は四十二億一千五百五十四万八千円でありまして、これを前年度歳出予算額三十六億四千四百六十四万三千円に比較いたしますと、五億七千九十万五千円の増額となっております。  次に、総理府所管昭和四十七年度における歳出予算要求額は一兆七千八十億五千五百八十四万二千円でありまして、これを前年度歳出予算額一兆四千六百五十三億八千百九十七万円に比較いたしますと、二千四百二十六億七千三百八十七万二千円の増額となっております。  このうち、防衛庁及び経済企画庁に関する歳出予算要求額については、他の分科会において御審議願っておりますので、それ以外の経費について、予定経費要求書の順に従って主要なものを申し上げますと、総理本府に必要な経費三千五百二十四億九千九百六十一万円、警察庁に必要な経費五百六十八億三千六百二十五万五千円、行政管理庁に必要な経費六十九億一千九百三万八千円、北海道開発庁に必要な経費二千四百八十四億百二十三万六千円、科学技術庁に必要な経費八百八十九億四千八百九十一万円、環境庁に必要な経費八十億一千五百五十五万八千円、沖繩開発庁に必要な経費七百六十一億九千八百六十五万八千円等であります。  次に、これらの経費についてその概要を御説明いたします。  総理本府に必要な経費は、総理本一般行政に必要な経費及び恩給の支給に必要な経費等でありまして、前年度に比較して三百五十九億七千八百三十三万八千円の増額となっております。  警察庁に必要な経費は、警察庁及びその付属機関並びに地方機関経費及び都道府県警察補助のための経費でありまして、前年度に比較して五十九億九千八十八万七千円の増額となっております。  行政管理庁に必要な経費は、都道府県に配置されている統計専任職員費国連アジア統計研修実施に対する協力及び行政情報処理調査研究等のための経費でありまして、前年度に比較して四億八千七百四十八万一千円の増額となっております。  北海道開発庁に必要な経費は、北海道における土地改良農用地開発漁港住宅林道造林等事業経費と、治山治水道路整備港湾整備等事業に充てるための財源の各特別会計への繰り入れ金等経費でありまして、前年度に比較して二百六十六億一千百十四万七千円の増額となっております。  科学技術庁に必要な経費は、原子力の開発利用宇宙開発海洋開発国民生活に密接に関連する科学技術等推進及び研究開発一般推進等のための経費でありまして、前年度に比較して百八十七億二千六百五十六万二千円の増額となっております。  環境庁に必要な経費は、大気、水質、土壌等に関する公害規制基準の強化、公害監視設備整備公害健康被害の救済、公害防止事業団助成等公害対策に必要な経費及び交付公債による特定民有地買い上げ、自然公園等施設整備鳥獣保護等自然環境保護整備対策に必要な経費でありまして、前年度に比較して四十一億三千九百九十六万九千円の増額となっております。  沖繩開発庁に必要な経費は、昭和四十七年五月十五日の沖繩本土復帰を迎えるにあたって、従来の復帰対策費のほか、復帰後の沖繩振興開発を強力に推進するための土地改良林道造林等事業公園下水道等都市計画事業住宅建設事業廃棄物処理施設水道用水供給施設等整備海岸事業漁港施設整備等経費治山治水道路整備港湾整備空港整備等事業に充てるための財源の各特別会計への繰り入れ金等沖繩開発事業に要する経費文教施設整備等教育振興事業保健所施設整備等保健衛生対策沿岸漁業振興特別資金の造成、糖業振興等農水産業振興離島航路等交通事業助成等に要する経費、及び沖繩振興開発金融公庫に対する出資に要する経費、並びに沖繩開発庁設置等に要する経費でありまして、前年度に比較して三百三十六億八千二百二十万円の増額となっております。  また、以上のほかに、国庫債務負担行為として、総理本府において十億五千四百六十二万二千円、警察庁において二億一千二百五十一万七千円、北海道開発庁において七億八千四百七十六万六千円、科学技術庁において二百七十六億九千百万二千円、沖繩開発庁において一千八百万円を計上いたしております。  以上をもって、昭和四十七年度内閣及び総理府所管歳出予算要求額概要説明を終わります。  よろしく御審議くださるようお願いします。
  4. 森田重次郎

    森田主査 これにて説明は終わりました。     —————————————
  5. 森田重次郎

    森田主査 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。楢崎弥之助君。
  6. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 私は、同和対策問題について質問をいたしたいと思いますが、時間が限られておりますので、きょうはお答えに対して討論をする機会はないと思うのです。お考えをお聞きするだけになると思いますが、まず、昨年八月三十一日、九月一日の二日間にわたりまして東京で開かれました部落解放国民運動中央行動、これは非常に盛会でありました。六千名からの人たち全国から参加をいたしました。単にいわゆる部落の人だけでなくて、むしろ自治体民主団体方々が数多く参加されたわけであります。特に、十数県の府県知事がみずから出てまいりました。さらに、六百三十三名に及ぶ知事あるいは町長、この人たちが出てきたわけであります。これは一体何を物語るかという問題であります。結局、答申あるいは特別措置法に忠実に事業を行なうという地方自治体と、中央政府政策との間に大きなやはり隔絶がある、それを示す一つの姿ではなかったろうか、このように思うわけであります。  この大会山中長官は御出席をいただきまして、政府考えを述べられたわけであります。その中で長官は、四十七年度同和対策予算各省要求は、四十六年度の二六三%増である、これを大蔵省に認めさせるよう努力していることを明らかにされました。さらに、特別措置法による十カ年計画前期五カ年において計画全般の三分の二を消化する、そういうお話内容でありました。その大会に参加した人たちは、一様のいわゆる感激をもって長官熱意を歓迎したと、私はあの大会の空気を感じました。それだけに、私は、長官に対するこの問題への期待が非常に全国的に大きなものがある、したがって、それだけに責任も重大であろう、このように思うわけであります。四十六年度の二六三%増というと、大体百六十五億七千三百八十六万七千円という数字を一応出しておるわけであります。ところが、実際に確定された予算は、御案内のとおりであります。こういう状態に対して、まず山中長官から総括をしていただきたい、このように思うわけであります。
  7. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいまお話しになりました部落解放同盟の総会の、盛大かつまた真摯であったことについては、私も同感であります。これはやはり、お話のありましたように、その背景として、特別措置法あるいは十カ年計画、こういうものに対する、地方自治体がみずからもやはりその中に入り込んでその推進者に当たりたいという熱意のあらわれも確かに反映しておると私も思いました。したがって、私どもとしては、その期待を各地方自治体も含めての縦の一本の線で推進できるような、少なくとも予算面における努力をしなければならぬと考えましたし、また、それらの指導者方々との意思の交流というものもたいへん必要であることを痛感をいたしました。  そこで、その際において、私が各省要求のその時点における取りまとめました総額並びに伸び率等についてお話をいたしましたし、また、前期五カ年において七カ年ぐらいの消化に持っていきたい、三分の二くらいを消化したいということの決意を表明いたしました。結果としては、プロパー予算においては、公共事業費その他の計上分を除きまして、一五五・二%の伸びにとどまりましたことは、私自身の努力の足らなかったせいもあるわけでございまして、この点は申しわけないと思いますが、一方において、公共事業等も二百億を上回ることは間違いなく想定されるところでありますし、起債等においても百八十億の予定もいたしておりますし、それらのことをあわせ考えますと、一応今後このような伸び——対前年比率だけでなくて、内容等についてもいろいろと新規のものを盛り込んでいったつもりでありますが、そういうことを推進していきますと、大体五カ年間に三分の二の消化は可能ではなかろうかというふうに考えておるわけであります。  伸び率だけで私が申しましたことが、若干、要求額そのものでありましたために、あるいは現時点においては、やはり山中がやっても実態はこの程度かという失望を与えたとすれば、まことに申しわけないことであると考えております。
  8. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 十カ年計画でありますが、十カ年計画予算総額どのように見られておりますか。
  9. 山中貞則

    山中国務大臣 これは予算額を設定して十カ年計画がつくられる性格のものでなくて、十カ年に推進すべき目標というものに対して、個々の事業をそれに対して消化せしめていかなければなりませんし、また、かりに十カ年の予算の額を想定しておくといたしましても、これはやはり単価のアップやその他、いろいろと態様が時代によって要求も違ってまいりますから、それに対応できないということ等もありまして、やはり個別の事業を積み重ねていきましたもの、それを想定して消化をしていくということのほうが現実的ではなかろうかと考えております。
  10. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 そうすると、十カ年のおおよその財政計画というのはないわけでありますか。
  11. 山中貞則

    山中国務大臣 これはすでにもう四年目に入ったわけでありますから、それを延ばしていって、あるべき十カ年後の姿というものを想定していって総額をまとめれば、グロスの数字計算ができないわけではありません。しかしながら、その計算が十カ年計画の全体の金額であるというふうに解釈をすることは、実態としてむずかしい問題を起こすのではないかと考えておるわけであります。
  12. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 私は議論はしたくないわけであります。しかし、あまりに政治の不均衡というものを痛感せざるを得ません。長官も御案内のとおり、今度の予算審議の中で、四次防の先取り予算の問題が政治問題となりました。まだきまってもいない防衛計画なのに、すごい熱意でそれを先取りするという問題であります。ところが、この特別措置法は、もう十カ年という時限立法であります。しかも四年目であります。そして対象も明確である。未解放部落、明確であります。いつ来るかわかりもしない脅威というものを設定して、役に立つかどうかわからないような装備を整えて、五年間に、四次防の原案と称するものは、五兆八千億であります。一年にすれば一兆二千億。大体いまの目算でいけば、この同和対策特別措置法の十カ年の概算は六百億ぐらいでありましょう。そうすると一年間に六十億。二百分の一ですよ。こういう実態を見て、私はほんとうに憤慨にたえないんです。わけもわからない仮想敵国のためには一年間に一兆二千億、現実に差別状態に置かれておる未解放部落に対するこの費用はわずかに六十億、だれしもこれを見て政治の不均衡を感じない者はいないと私は思うのです。  それで、なかなかむずかしい点もあることはよく承知しておりますが、いまのような長官のお考えでありますと、やはりその場限りと申しますか、財政計画も立てられないというこのような状態、一体どこに原因があるのか。われわれがかねてから言っておった窓口——とにかくこれは一つの庁ぐらいの窓口をつくってもいい問題ではないかとかねてから言っておりましたが、それもできない。佐藤総理は、それに対して、いままでの同和対策閣僚懇談会閣僚会議に切りかえてという答弁を国会でなさいました。  閣僚会議が開かれましたか。
  13. 山中貞則

    山中国務大臣 私も、金額を比較いたしますと、防衛予算等の問題は、これは国務大臣として、その限りにおいては、あなたの指摘されるような感触をむげに否定できない点があることを認めざるを得ません。しかし、やはり予算というものは、それぞれの省庁の中の事業の分野においてウエートがありますし、一挙にこれを防衛費とだけ比較することも、私の立場としてはできかねるわけであります。  佐藤総理の、同和関係閣僚懇談会閣僚会議に切りかえるという話については、私が同席していなかったせいかわかりませんが、ちょっといま私の頭にはその記憶はありませんが、ここ最近は同和関係閣僚懇談会を事実上開いておりません。ことしに入って開く予定を持っていたのでありますが、打ち明けた話、予算委員会の冒頭で質問があるらしいということで、それに対応するために会議を持ったと言われちゃいけないと思いまして、い、ずれ予算等が衆議院を通過いたしましたならば、そういう会合を開いて——このたび全国都道府県、市町村が協力をしていただいて悉皆調査をいたしました。その調査の結果をいま各省庁分析もさせておりますし、ことしの予算編成の過程において私の感じました各省庁ごと感触の違いがありますから、したがって、それらの点を今後統一していくためにどのようなことが必要であるか等の、責任者会合を一ぺん開きたいと思っておるところであります。
  14. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 スケジュールによりますと、二十八日で予算委員会は終わることになっている。おそらく、二十八日最終日総括の時間を若干私はいただくことになっております。いまの閣僚会議の点はどのようになっておるか、総理にしかと長官みずからお確かめの上、そのときに御回答いただきたい。しかも、その閣僚会議招集者は一体だれなのか、おそらく官房長官と思うのですが、そういう点もその際明確にしておっていただきたい。これは主査のほうで、ひとつ保留にいたしておきますから……。  そこで、長期計画を策定するためには、実態を明確に把握する必要があるので、実態調査が行なわれた。四十七年度実態調査予算はどうなっておりますか。
  15. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、本年度実態調査に各地方自治体が非常に協力をしてもらいまして、私ども予想したとおり、新しい特別措置法その他を背景にして、地方自治体も、それならば自分たち協力しようという気が起こってきた、その証拠であると見たわけでありますが、それをいま各省庁のほうで分析をしつつありますので、来年度予算においてもさらにもう一回調査するということは、現在のところ、その必要性考えておりません。ことしの調査が順調に、しかもたいへん結果が良好に出ましたので、これを分析して後年度政策展開に資していきたいと考えておるわけであります。
  16. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 そうすると、予算編成の根拠と申しますか、昨年六月の実態調査を基本にして今後の政策実施が行なわれる、そういうことですか。
  17. 山中貞則

    山中国務大臣 その実態調査は、事業執行の第一線に当たる地方自治体の人が協力をしてもらった実態調査でありますから、これはきわめて正確、かつ一番新しい実態を反映しておるものと見なければなりません。したがって、それを反映して政策推進に当たっていきたいという意味であります。
  18. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 昨年六月実施されました全国調査で、部落があるのにその存在を無視して非協力態度を示した府県があります。把握されておりますか。
  19. 今泉昭雄

    今泉説明員 お答えいたします。  栃木県につきましては、実態調査の結果につきまして、いろいろこちらのほうから勧誘いたしましたが、結果的に出てまいりませんでした。そういう実態がございます。
  20. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 東北六県、宮崎長崎富山石川山梨茨城神奈川県の一部は、非協力態度をとっておるのじゃありませんか。
  21. 今泉昭雄

    今泉説明員 お答えいたします。  東北につきましては、四十二年の調査につきましても、地区の実体がないということで調査はございませんで、これにつきましては今回も提出がございませんでした。なお、ただいまおっしゃいました長崎等につきましても、四十二年と同様でございます。
  22. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 もう一度申し上げます。栃木東北六県、宮崎長崎富山石川山梨茨城神奈川県の一部、出ておらぬでしょう。
  23. 今泉昭雄

    今泉説明員 東北六県につきましては、山形県は地区のみが提出がございました。それから、茨城につきましては提出されております。神奈川につきましても提出されております。  以上でございます。
  24. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 ほかのところはどうなんですか。
  25. 今泉昭雄

    今泉説明員 ほかのところは提出されておりません。
  26. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 いま私が申し上げたうち、東北六県のうちの山形は一部が提出されている。神奈川県も一部は提出されておるというのは、私が言ったとおりですね。私が言ったうちで提出されておるのは、茨城は出ていますか、全部。
  27. 今泉昭雄

    今泉説明員 茨城提出されております。
  28. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 そうすると、栃木、それから山形の一部を除く東北六県、宮崎長崎富山石川山梨及び神奈川県の一部が出ていないわけです。こういうところは、いわゆる未解放部落があるのです。あるのですから、私は、やはり中央のほうから積極的な指導をなすべきである、このように思います。でないと、その部落実態を知らずしてどのような解放行政が行なわれるのですか。これは常識の問題でしょう。こういうことだから、やっぱり明治の解放令と同じような、二の舞いを踏む可能性が非常に強いのです、今度の特別措置法をせっかくつくっていただきましたけれども。これは政府責任でもう一ぺんこの点は明確にしていただきたい。よろしゅうございましょうか。
  29. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいま事務当局のほうから報告がない県としての確認がありましたが、そこには、しかし楢崎君から見れば、地区があるということでありますから、これは私としては予想しなかった事態であります。そのようなことを全く知りませんでしたので、それであるならば、四十七年度財源予定いたしておりませんが、何らかの手段をとって、補充調査というものをその関係府県にさらに実施するよう努力いたします。
  30. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 ぜひお願いをいたしておきます。  時間がありませんから、以下、若干の問題について各省の問題を取り上げてみたいと思うわけです。  そこで、いつもお話し合いの段階で問題になるのは、いわゆる事業費を年々増加はされておりますけれども、その増加の状態というのは、実態は、いわゆる部落解放総合対策として計画的に伸ばされておるのじゃなしに、単純に何%増だというような、一律的なそのようなやはり予算の編成と申しますか、前年度に準じて幾ら増しというような実態があるのですね。これはやはり個々の総合対策に裏打ちされた予算の裏づけ、こうならなくては、私は意味がないと思うのです。しかも、全般的に同和対策予算を見ますと、やはり厚生省中心に、何と申しますか、環境改善対策予算と申しますか、そういう色彩が強い。それで、答申の中の四つの柱とわれわれが見ておるところの、環境改善、それから経済問題、社会福祉、人権尊重、あるいは教育、それから労働対策と申しますか、そういった問題点、答申に出されておる問題点を中心にした予算の編成に、残念ながら、なっておりません。そこで、特に答申の中で重視されております就職の機会均等、これが保障されていないところに、やはり差別の一つの原因があります。労働対策あるいは就職あっせん、こういう点についての予算は非常に微々たるもので、その解決に対する熱意というものが私は見られないのですが、労働省としてはどのように考えられておりますか。
  31. 加藤孝

    ○加藤説明員 お答え申し上げます。  同和対策対象地区住民の皆さん方に就職の機会均等を保障いたしまして、近代産業への就職の促進をはかりまして、その生活の安定と地位の向上をはかっていくということは、これは私どもの担当しております分野での同和問題解決の中心的な課題でございまして、そういう意味におきまして、私どもとしては、この就職の機会均等をはかるための具体的な事業主に対する啓蒙活動、あるいは各種の就職促進のための援護手当、あるいは職業訓練のための費用といったものについて努力をしておるところでございます。  四十七年度予算といたしましては、この就職の差別の解消を中心といたします就職促進のために七千三百万円、それから同様、職業訓練の充実強化というために五千三百万円、合計一億二千六百万円という予算をお願いしておるところでございます。
  32. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 皆さんは残念ながら大臣じゃないのですね。大臣のような答弁を私は期待していないのです、そんな抽象的な。そうして予算が幾らになっておるということは、そんなことは説明を受けないでも、これは私も知っていますよ。抱負を聞きたいのです。あなたはこれで十分だと思っているのだろうか。私は、大臣に気がねをしないで、事務当局として率直な意見が聞きたい。そういう意味で、きょうはほんとうの事務をやっていらっしゃる方でけっこうだからというのは、そこなんです。あなた方が実際に事務当局として、ここに隘路がある、こういう点がむずかしいのだ、ここまでやりたいけれども、ここに問題があってできないのだというような点を私は聞きたいのですよ。それをおっしゃったからといって、それを根拠にして大臣を責めるようなことはいたしませんですよ。そういう熱意のあるところを聞きたいのです。これで十分と思いますか、できると思いますか。
  33. 加藤孝

    ○加藤説明員 私どもといたしましては、予算要求の段階では、たとえば、就職促進をさらにきめこまかくやっていきますために、職業相談員というものについても相当数要求をいたしたのでございますが、そういった点についてまだまだ私どもの努力が足りない、あるいはそういった点についてまだ政府全体としてのさらに一そうの御理解を得ながら進めていかなければならぬといったような面については、私どもとしてもまだまだの感を持っておるということは、率直に言えると思います。
  34. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 あのね、遠慮なしに、これだけ要求したけれども、これだけなくちゃいけない、あるいはこういう仕事をしたかったのだ、しかしそれができなかったというような点をひとつ、いまから二、三聞きますけれども、御報告をいただきたいと思うのです。  法務省ですね、これはいわゆる人権問題と関係のある省でございますから、特に私どもは期待をしておるところであります。ところが、人権を保障する法務省の予算というのは、この予算を見ただけでも、やはり対象部落に対する差別的な予算だと私どもは言わざるを得ないわけですよ。人権侵犯に対するいろいろな事犯があるわけですが、こういうことで、この程度の予算で満足すべき調査ができるのかどうか、確信があるかどうか、お伺いをいたします。
  35. 影山勇

    ○影山政府委員 ただいまお尋ねの件でございますが、私ども人権擁護局といたしましては、この問題は、差別意識の払拭という広い意味で社会教育的な効果を考えておりまして、そのために、私どもだけではなく、文部省その他とも一致してそういう面に努力したいと思っておりまして、人権擁護委員の活動を強化するために、実費弁償金その他の増額を希望しておりまして、現在必ずしも十分と思っておりませんが、人員の面では、定員の削減のきびしい中で、まあわずかではございますけれども毎年増員が認められてきておりまして、何とかこういう予算の中で人権事件の調査あるいは啓蒙に邁進したいということで、人権機関として一体となって努力するというつもりでおるわけでございます。
  36. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 確信がありますか、これだけでやれるという。
  37. 影山勇

    ○影山政府委員 できる限り努力してこの範囲内でやりたい。なお将来に向かっては、この人の点もふやしていただいて、積極的に取り組んでいくという覚悟でございます。
  38. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 要求どおりになったんですか。
  39. 影山勇

    ○影山政府委員 いえ、要求どおりではございません。
  40. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 どれだけ減らされたのですか。
  41. 影山勇

    ○影山政府委員 昨年度との関係その他で、三千五百万要求いたしまして三百五十一万ということに相なったわけでございます。
  42. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 もう少し、何といいますか、情熱はないのですか。あなたのお話を聞いておると、ぬるぶろに入っておるようでしてね、出ればかぜを引く、入っておってもぬくもらぬという感じですよ。も少し熱意を持ってやれないのですかね。  文部省にお伺いをいたしますが、文部省は同和教育に対する確たる方針があるのでしょうか。大体その方針は地方教委におまかせになっていらっしゃるのじゃないですか。そして地方教委は、今度は現場の教師にまかしておる、そういう状態になっておるのじゃないですか。
  43. 齋藤寛治郎

    ○齋藤説明員 お答え申し上げます。  教育に関する基本的な方針を含めた同和教育の手引きについてでございますが、四十四年に「学校における同和教育」という第一次の草案をつくりまして、これを関係方面にお示ししたわけでございます。その結果いろいろな御意見をいただきましたので、これをもとに練り直しをいたしまして、昭和四十五年の七月に「同和問題と教育」という第二次案を同和対策協議会にお示しいたしたわけでございます。同時に、この案を関係方面に送付いたしまして御意見を伺っているところでございます。また、同和対策協議会の第三部会でも、同和教育の基本方針に関する小委員会を設けまして、同和対策協議会としての同和教育基本方針案の策定に着手いたしております。文部省といたしましても、関係方面の御意見や同和対策協議会の基本方針を十分参考にしてできるだけ成案を得たいと考えておる次第でございます。
  44. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 大学生に対する補助金、これは地方自治体では予算化されておるところがあるのですね。これはどうしてゼロになっているのですか。
  45. 齋藤寛治郎

    ○齋藤説明員 お答え申します。  同和地区の指定の上級学校への進学奨励の措置につきましては、文部省としては、現段階においては、高等学校、高等専門学校にかかる都道府県の進学奨励事業に対する補助の制度の拡充のほうがより重要であるというような部内の調整がございまして、一昨年来、私たちといたしましても一生懸命努力したわけではございますけれども、昭和四十七年度におきまする大学進学奨励費の補助の制度の創設ということは、そういう時点で見送ることにいたしたわけでございます。
  46. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 時間がありませんから、もうあとわずかですが、長官、一番問題になっておるのは、やはり補助単価と、実質単価の食い違いなんですね。これがもう地方自治体から非常な悩みとして訴えられておるのです。それで、単価と三分の二の補助費という問題について、特別措置法の確認事項におきましては、単価について実態に即するように決定するという御答弁はいただいておる。ところが、この予算を見られてわかりますとおり、隣保館、集会所等を見てみますと、隣保館は、一平方メートルあたりの単価が、四十六年度補助は、木造で二万五千円になっている、鉄筋では四万六千二百円、集会所は、木造で二万三千二百円、このような割合の補助で、三分の二と規定はされておるのですけれども、しかし、ネットが少ないのですから、実際問題としては、実質単価は二分の一にもなっていないというのが現状です。それで、このような基礎になる単価というものが低過ぎるんですね。これはどなたに聞いても、実際問題としてこれじゃ建たない。ここに私は問題があると思うのです。時間がありませんから、これは長官、単価の算出基準について、まあ一応のきめられた基準があるそうですが、それ自体が実態にそぐわないのではないか、これはひとつ十分検討をしていただきたい、このように思います。  それからもう一つ、法十条の関係であります。  公営住宅等に対する建設省と自治省と大蔵省考えがどうも統一されていないという感じがいたします。で、それがすべて地方自治体にしわ寄せされておる。この確認の場合に、こういうふうになっておるのですね。「法第十条は、地方自治団体が起こした同和対策事業のための地方債で、自治大臣が指定したものの元利償還費を基準財政需要額に算入することとしている。全部を指定すべきものと考えるが、自治大臣は指定についてどのような考えなのか。」これに対して、確認としては、「公営企業、準公営企業などその事業の収入を当該地方債の元利償還金に充てることができる事業に対する地方債を除き、国庫負担金または補助金を得て行なった事業に対する地方債を指定する考えである。」ところが、これは無視されておるのですね。たとえば一例をあげますと、公営住宅を同和地区に建てるでしょう。そうすると、やはり安い家賃にしなくちゃいけませんから、家賃が安い。そうすると、それは収入になっているから、この指定からはずされる、こうなるのです。ところが、その少ない家賃でこの元利償還金に充てることができるかというと、なかなか充てられない。しかもこれは地方債は認められない。だから、やはりこういう実際の情勢に対してあたたかい手を伸べていただくと申しますか、それがほしいわけです。こういう点もひとつ、長官、今後の検討の事項にしておいていただきたい。  それで、最後に締めくくりをいたしますが、結局、昨年の中央における国民運動の集会があんなに盛んであったということも、いずれもが、特別措置法第六条「国の施策」ですね、これを具体的に実施に移すためには、多様な同和対策事業を行なわなければならないわけでありますけれども、その場合に、実際の事業に対して特別措置法第二条に規定する同和対策事業の認定をしてくれ、これがその要求であろうと思うのです。それで、政府は、この法律の運用において、きわめて限られた事業しか、第二条による同和対策事業として認定をしておりません。たとえば、ある都市では、同和対策事業の四十八種類のうちに、同和対策事業として国の認定を受けて補助を受けているのは、わずかに五事業にしかすぎない。これが実態であります。したがって、いろいろ問題があるわけですが、先ほど申し上げたとおり、補助単価と実質単価との間に大きな格差があるために、各都府県、市町村の財政負担が非常に大きくなっておる。それがまた事業推進を圧迫しておる。結局、答申あるいは特別措置法の規定する部落問題解決についての国の責任の意味をどのように理解されておるかということが問題でありましょう。あるいは、部落問題についての無理解と申しますか、結局は、従来からずっと続けられてきております一般的な諸事業の根拠とされておる、その一般的な法規に基づいて事業に当たっておるというのが実態なんです。何のために特別措置法を出されたかというのが非常に薄くなっております。私は、二十八日の総括のときに、時間があるかどうかわかりませんが、これは十年間の時限立法でありますが、今日、それぞれの大臣は、一体、自分のかかえておる省の問題について、もう四年目を迎えるわけであるが、どの程度、何%くらいこなしておるか、それを実はお伺いしたいわけなんです。いままでずいぶん総務長官おかわりになりました。それぞれごりっぱな方でしたが、特に山中長官は、いままでの長官に比べても、非常に熱意がおありだと私どもは見ておるわけです。それで、ひとつ長官の在任中、どのくらいあるかわかりませんが、この辺で総括をしていただいて、あと残された六年間どうすべきかという、総括の意味の中間報告と申しますか、そういうものが出せるように御努力をいただきたい、これが私の要望であります。長官のお考えを聞いて、やめます。
  47. 山中貞則

    山中国務大臣 いろいろ御指摘されました問題点は、私も承知いたしておる点であります。私から見て、やはり熱意という表現がいいかどうかわかりませんが、予算の編成に当たる各省庁の姿勢に差があるようであります。したがって、閣僚会議等の機会をもちまして、私から見て若干熱意に疑問のある省については、その省の大臣を総括したいと思います。
  48. 森田重次郎

  49. 鶴岡洋

    鶴岡分科員 私は、千葉県銚子沖に、終戦後、旧日本軍が、当時の駐留軍の指揮によって投棄したイペリットガス弾についてお伺いします。  この件については、二年前、昭和四十五年ですか、総務長官の前向きな姿勢によって、それまで何回か事故がありましたけれども、そして二十数年間眠っていたそのイペリットガス弾の掃海については、四十五年の三月の緊急掃海と九月の本格掃海と、二回作業が行なわれました。このことについては、地元漁民も私も、総務長官のとった処置については非常に感謝しておるわけでございます。当時このガス弾投棄に加わった人たちの話を聞いてみると、相当な数にのぼっておる。現在でも約千個くらいあるのではないか、このように思われているわけですけれども、それ以降現在までの間にどのくらい揚がっているか、最初に数をお伺いします。
  50. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 お答えいたします。  御承知のとおり、四十五年の三月並びに九月に掃海をいたしまして、その後海上保安庁及び水産庁に入りました報告によりますと、昭和四十六年、昨年の十月からことしの一月まで三十個イペリット弾が引き揚げられた、こういう報告になっております。
  51. 鶴岡洋

    鶴岡分科員 四十六年の十月以降、十月は四個、十一月が八個、十二月が十四個、ことしの一月四個と、三十個揚がっているようであります。その掃海のときには、目標数を立てて掃海をやったわけですが、いろいろな事情でその目標数に達しなかったのは総務長官も御存じだと思いますけれども、それ以降のほうがこのように数が揚がっておるわけです。二回で掃海が終了した、こういうふうにみなしているようにも聞いておりますけれども、当時は、総務長官が国会審議でもお話しになっておるように、総理府がしんになってこの点については鋭意努力する、こういうお話だったのです。それ以降、去年の一月にいろいろ話し合って約束事項がありますけれども、それ以降連絡会議等が開かれていないという話も聞いておりますが、この点についてはどうなのか、これでもうおしまいということなのか、それとも、連絡会議を開かなくてもいいということで開かなかったのか、今後のイペリット対策についてどう考えておられるか、総務長官からちょっとお話を願いたい。
  52. 山中貞則

    山中国務大臣 これは一緒に御相談して掃海をやってみたのです。ところが、そのあとほとんど出なくなった。ところが、一昨年の十月に終わって、そのあと一年間揚がっていない、それが去年の十月からまた急に網にかかり始めたということで、どうも私たちも、どういうわけでそういうふうな現象を呈するのか、よく原因がわからないものですから、したがって、十、十一、十二、一月と揚がっておりますので、いま水産庁がその実務をやっておりますので、その実務を中心に、なぜこういう現象が起こっておるのか、それに対処するにはどうしたらいいのかという点は相談をしております。
  53. 鶴岡洋

    鶴岡分科員 総務長官、なぜそういう現象が起こるのかという話ですけれども、あそこはヤリイカの漁場であるわけです。ヤリイカの漁場は大体九月から始まるわけです。そういうことで、あそこで操業をやっていないから出ないということなんで、四十五年九月にやって、それ以降去年の十月から、いま私の言ったように三十個も揚がっておるわけです。そういう意味で、いずれにしても現在まだあそこに投棄されていることは間違いないわけです。聞く話によると、先ほど言いましたように、連絡協議会が開かれていない、こういうことですから、早急にまたこの協議会を開くかどうか、総務長官の指示でやっていただきたいと思いますが、この点どうでしょうか。
  54. 山中貞則

    山中国務大臣 まる一年揚がらなくて、また去年の十月から揚がり始めたわけですから、やはりこれは事情を解明する必要がありますので、そういう連絡会を開いて検討します。
  55. 鶴岡洋

    鶴岡分科員 これに関連して、先ほども言いましたように、総理府が中心になってやるという総務長官の前のお話がございました。ですけれども、地元からのこの件についてのいろいろ陳情等を私も聞いておりますし、総理府等でも聞いておると思いますけれども、いわゆる所管の官庁がはっきりしていないために、地元からの深刻な悩みがどこで解決されるのか、困っている点があるわけです。総理府へ行けば、補償の問題については水産庁、また、お金の出るところは大蔵省、それから、イペリットが揚がった場合には海上保安庁、こういうふうになっておるのですけれども、最初、四十五年のときに掃海をやる際に連絡会議を設けたときには、総務長官が中心になってやっていただいたわけですけれども、もう一度、水産庁でやるのか、海上保安庁でやるのか、窓口をきちっと確認をしておきたいのですけれども、どこにしたらよろしいか、お答え願います。
  56. 山中貞則

    山中国務大臣 政府としての統一した窓口は、総理府の官房審議室ということでけっこうでありますが、実際上の漁民の方々にとってもやはり水産庁が一番相談がしやすい役所であるように思われます。また事実、水産庁に対して御相談に来られることは多いようでありますが、総理府にはなかなか足を運んでいただけないような現状であります。しかし、実際に引き揚げて、おっしゃるように海上保安庁がまた現場に急行するわけでありますから、それらの問題で今後総理府の官房審議室のほうへお越しいただいてお話を賜わることは一向に差しつかえございませんが、その実際上の相談相手は、やはり水産庁が自分たちの身内として事に処していくのが、実務上は漁民の方たちからもよろしいように思われているわけでありまして、そこらのところは、私のところで適当にあんばいしながら、責任回避はいたしませんので、進めてまいりたいと思います。
  57. 鶴岡洋

    鶴岡分科員 責任回避しないということですから、よろしくお願いします。  それから次に、地元船が操業中にガス弾を引き揚げた場合はどうするか。その処理方法については、去年の一月に地元底びき網漁業協同組合と千葉県と海上保安庁との間に協議決定した五項目がございます。  一つは、底びき漁船が銚子沖のイペリット海域で操業するときは事前に銚子海上保安部に連絡をする。二つ目は、ガス弾が網にかかった場合は漁業無線局を通じ銚子海上保安部に連絡をする。三つ目は、銚子海上保安部では那珂湊海上保安部と協力、巡視船「つくば」「あかぎ」が出動してガス弾の入った網を水深二千メートルの沖に再投棄する。四番目が、同時に数個かかった場合は、無線連絡で処理方法をきめるが、最終的には漁労長の判断にまかせる。最後の五番目ですが、漁船から巡視船がガス弾の引き渡しを受けた場合だけ証明書を発行、これによって漁船は補償料十万円を受け取る。  こういうことになっておりますけれども、その後の処理についてこの五項目に問題はないかどうか、この点いかがでしょう。
  58. 山中貞則

    山中国務大臣 漁民の方々のほうに被害が出ていないということについては、やはり前の教訓もあって、中央の役所とも相談をしながら努力をした結果であろうと思います。しかし、一方において、結果は、漁民の方たちから見れば、一個当たりの単価十万円の金の支給がたいへんおくれておるということを聞いておりますので、これはもう約束したことでありますから、それらの支給については迅速に支給してあげるべきが——底びきといっても沿岸漁民に近い方々でありますので、やはり一個揚げて十万円ということが何カ月も待たされるということは問題があると思いますから、そこらの点は問題点として今後解決をしていきたいと思います。
  59. 鶴岡洋

    鶴岡分科員 一つは、この処理方法から見て、いま補償額の話がございましたけれども、確かにその点については考慮してもらわなければなりませんけれども、その前に、網にかかった場合海上保安部に連絡をとる、保安部から「つくば」なり「あかぎ」なり急行する、こういうことですけれども、私の聞いている範囲では、もちろん、距離的にいえば三十キロほどの海上でございますけれども、連絡をとってから二時間、三時間、ときには連絡をとっても来なかったという場合も私聞いておるわけです。これはもちろんイペリットのために銚子の海上保安部があるわけではございませんけれども、その点も私よく承知しておるわけですが、こういう協議事項になっている以上、来ていただかなければやはり操業に支障を来たす。小さな船で操業しているわけですから、一回の底びきの時間というのは大体二時間から二時間半ぐらい、それが網にかかったために待機していなければならない。それを一回やればまあ五万なり十万なりと魚がとれる。こういうことになるわけですけれども、そういう点について、海上保安部のほうとして、いままで三十個も揚がっているわけですけれども、支障がなかったかどうか、この点どうでしょうか。
  60. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 ただいまの件でございますが、私ども現地からの報告によりますと、三十個の中で一時間以内に着いたものが七つ、それから二時間以内で受け取ったものが十六個、三時間以内が七つと、おおむね三時間以内で受け取っておるような現状でございますが、このことにつきましては、私どものほうでは、銚子の保安部長指揮といたしまして、いま先生が言われました二隻の巡視船、これは那珂湊と銚子におりますが、この二隻を充てまして受け取るというふうにいたしております。この船が、同時に揚がったときは間に合いません場合は、もう少し小型な船が天候が許せば行って確認する等によってやっております。これは漁民の方も、先生の言われるとおり、いろいろ経営上問題がございましょうので、銚子保安部長が中心になって、これが円滑に行なわれるように、漁民の声を聞くような場を持っていままでやらしておったわけでありますが、もしそういうことがございますならば、さらに今後の方策といたしましては、漁業組合から、イカですか、操業状態について十分情報を入れてもらい、緊密に連絡をとって、私どものほうでも、いろいろ船のやりくりもございますが、操業状態をにらみまして、要請があったらできるだけ早く行けるように、今後とも船の運用についてさらに研究をするよう、銚子保安部長指導したいと思います。  連絡を受けて行かなかったというお話もございましたが、ただ、この三十件のほかにただ一件、かかったという連絡がありましたけれども、もうそこで落ちちゃったということで巡視船が行かなかったことはございます。これは三十件の件数には入れてございません。
  61. 鶴岡洋

    鶴岡分科員 二時間から三時間ということですけれども、その点については極力指導していただいて、早急に現場へ行っていただきたい、こういうふうに思います。  それから、先ほど総務長官からお話がありました補償の件ですけれども、待ち時間等考えた場合の漁獲の損料、それから最近物価騰貴を含めていわゆる漁具の価格の高騰、それから消耗品費、そういうのを合わせると——一応去年の一月は十万円ということで、まあこの十万円をきめる経過についてはいろいろ話はありましたけれども、いずれにしても十万円というふうにきまったわけですけれども、現在の状況からいきますと、諸般の事情を考え合わせるとやはり十万円では地元としても非常に苦しい、こういう積算が出ているわけです。まして、最近は漁業に携わる若者というのは非常に少なくなっております。銚子にも水産学校がありますけれども、実際に水産のための教育を受けた高等学校の水産学校の卒業生が漁業に携わるということも少なくなっておるということも聞いております。これにはいろいろ原因があると思いますけれども、やはり日本の水産業を背負って立つ若者の後継者育成ということについては、これはこれとして、そういう事情から非常に船主も人手不足で悩んでおるわけです。いろいろな事情を加味して、物価の値上がり分といいますかそういう点を考慮に入れて、補償金の額について考慮する余地があるかどうか、この辺、総務長官からお答え願います。
  62. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、昨年、関係者合意の上できめた金額でありまして、その後、確かに物価の上昇あるいは魚価そのものの高騰等もあると思います。漁獲は反面少なくなっておりますが、魚価は非常に高騰ぎみであるというのが、日本のいまの水産の現状でありますから、問題点は確かに一年経過すると発生していると思いますけれども、そこらの具体的な問題になりますと、水産庁当局からちょっと説明をさせたいと思います。
  63. 田中慶二

    ○田中説明員 ただいま総務長官からお話がございましたように、現在のこの額では、それぞれそういう引き揚げに従事をいたしました漁業者にとりましては御不満の向きがあろうかと思うわけでございますけれども、まことに事務的なお話でおそれ入りますけれども、やはり一応こういう額を算定いたします場合に、いろいろ平均的なものを基礎にいたしまして算定をいたしております。そういうふうなことでございますので、本年度の分は従来の線で支給をしてまいりたいというふうに考えておりますが、今後は、お話しのような点もございまして、関係当局ともいろいろお話をいたしまして、そういう点、改善につとめていきたいというふうに考えております。
  64. 鶴岡洋

    鶴岡分科員 わかりました。  もう一つ補償金の問題ですけれども、先ほどもちょっと総務長官から話が出ましたが、四十六年の十月からことしの一月にかけて三十個揚がっておるわけですけれども、実際上この支払いがまだなされてないわけです。いままでの揚がったイペリットガス弾のいわゆる支払いは処理料としては船主が一応立てかえという形になっているわけです。船主にしても余裕があるわけではありませんし、この点を早急に支払いをしていただきたい。こまかい話になりますけれども、半年、一年先になれば当然金利もかかってくるわけですし、この点も考慮に入れて早急に支払いをしていただきたい。大体いつごろになるか、この点をお伺いしたいと思います。
  65. 田中慶二

    ○田中説明員 本年度の支払いにつきましては、あす県の支給の申請書が出てまいりまして、私どもといたしましては早急に手続を完了をいたしたいというふうに考えております。
  66. 鶴岡洋

    鶴岡分科員 もう一点ですが、また補償金のことになりますけれども、この補償金の中には危険手当が入っておりません。万が一事故が発生した場合の補償が含まれていないわけですけれども、先ほどの話からすると、漁民がなれてきたといいますか、確かに一昨年の掃海の当時、研究もしましたし、また体験もしたために、ガス弾処理については、幸いといいますか、この三十個については事故が起きておりませんが、そういうことでいいとは言い切れないわけです。そういう点で、先ほどお話のありましたように、この十万円の補償については考慮する余地がある、こういうお話でしたけれども、その中に危険手当を入れるべきではないか、私このように思うのですが、この点いかがでしょう。
  67. 山中貞則

    山中国務大臣 これは一応十万円の単価というのは、補償ということも明確にしてきめておるわけでは実はありません。したがって、そういう自分たちの専用漁場において旧日本軍の製造したイペリットかんというものが投棄された結果、漁業に支障があって迷惑をかけるという意味で、国のほうがそれに対して、十万に達する金額の支給ということをきめておるわけでありますが、一般の保険制度からいって、保険の中にも、漁業中のそういう危険の場合には、これは危険が起こっては困るわけでありますけれども、それに対応する制度は一応あるわけでありまして、私どもとしては、その十万円のうち、幾らが危険手当である、あるいはまた、十万円には含まれていないから、十万円に危険手当を一回につき二万円乗せるとか、そういうふうな考え方を実はとっておりません。しかしながら、漁民の方々にとっては迷惑千万かつ危険千万なことであることに間違いはありませんので、そういう御要望については、今後保険の仕組みでどのように行政の上で反映することができるかについて検討したいと思います。
  68. 鶴岡洋

    鶴岡分科員 銚子沖の海底にはまだ千個くらいあるという、まあ推定ですけれども、この前の本格掃海の終わった時点では、これで一応終了したというような話もございましたけれども、そういう終了したという姿勢ではなくて——その後一年半なり二年全然ガス弾が揚げられなかった、こういう事実もあるわけです。もちろん、そこで操業しなかったから揚がらなかったともいえますが、それが去年の十月からまたひんぱんに揚がるようになった。こういうことで、いままで海水の汚染やそれから漁獲類の影響等はなかったわけですけれども、今後もちろん操業のやり方によって、二百メートルから二百五十メートル、小さな船で底びきをするような技術が進歩してきております。こういう危険性がないとも限らない、そういうことで、海水汚染や漁獲類の影響調査を何回かやるべきではないか、私、このように思うのですけれども、この点どうでしょうか。
  69. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、私、専門家でありませんが、イペリットは海水の中で漏れますと、しばらくすると中和されて影響はないんだという報告は一ぺん受けておりますけれども、現在までもそのような影響があったということは一応聞いてはおりませんが、しかしながら、人体に与える影響というものが、これは引き揚げて気化すると同時に、あるいは付着しても非常な危険を及ぼすいわゆる兵器だったわけですから、これが海中において完全に安全であるという断定はなかなか困難であろうと思います。したがって、政府としては、先ほど来のお話の中でありました連絡協議会等を持って、今後いかに対処すべきかという問題の中で検討してまいります。
  70. 鶴岡洋

    鶴岡分科員 最後に、これはこういう提案もあるということなんですが、検討するかどうかということです。それは、戦後、イペリットガス弾の投棄については、九州の別府沖にあったということで、あそこは海底たしか五十メートルか六十メートルのところなんですが、その掃海のために一億何千万というお金をかけて掃海をしたと聞いております。銚子沖の場合は三十キロの海上でありますし、大体二百メートルから二百五十メートルの海底に投棄されておる、こういうことで、九州の別府沖と比較にはなりませんけれども、地元のある意見としては、この地域を禁漁区に指定をして、将来のためにそういうふうにしておけば安心ではないか、こういう意見もあるのですけれども、この点についてはどうお考えになるか。
  71. 山中貞則

    山中国務大臣 禁漁区にするのはあるいは最悪の事態で、しなければならないときには、必要性があればやらざるを得ないと思いますが、まあしかし、広大な海域の禁漁区設定は、逆にいいますと、イペリットかんがあっても出漁せざるを得ない漁民の方々の立場からすれば、そこに入って網がおろせないことになりますので、これはやはりよく相談をして、立ち入らないということは最後の手段だということで、やはり立ち入って、かつ安全に操業できるような漁民の方々の御要望に沿うことをまず考えていきたいと思います。
  72. 鶴岡洋

    鶴岡分科員 地元漁民は、いま言いましたように、銚子沖にガス弾がある限り操業に危険が伴うことは、これはもう当然であります。ましてや、あそこはヤリイカが非常にとれるかっこうの漁場であるわけです。こうした漁民の不安を解消して一刻も早く安全操業ができるように、政府はもうちょっと真剣に考えていただきたい。連絡協議会も開かれない、また、そういうふうに取りきめをしたんだからもう知らない、こういうことではなくて、あとに続く問題でありますから、禁漁区にできないならば、やはりそれなりの処置をしなければならないんじゃないかと私は思います。こういう点で、最後に総務長官熱意ある御答弁をお願いして終わりにしたいと思います。お願いします。
  73. 山中貞則

    山中国務大臣 漁民の方々はなかなか役所に来て率直に相談するような人たちばかりではございませんので、したがって、鶴岡君あたりよく面識の人たちも多いでしょうから、また遠慮なしにいろいろな具体的な問題の相談においでいただいて、漁民の方々と一緒に、どうするのが一番いいかという問題について中央の役所においても相談をして、善後策を講じていきたいと考えます。
  74. 森田重次郎

  75. 安井吉典

    安井分科員 きょうは、北の北海道開発庁と南の沖繩開発庁の南北問題ということでひとつ伺いたいと思います。  北海道開発庁の関係のいわゆる北海道開発予算は二千五百億円強にきまり、前年よりも二〇・六%増ということに今度の予算の中で計上されているようであります。全国公共事業伸びは二四・六%の増でありますから、公共事業全体の伸びに比べれば、北海道開発予算伸びが若干おくれている、そういうふうな印象も受けます。それもさることながら、補助率の北海道特例というものが、昨年も下げられ——昨年といいますのは四十六年度ですが、四十七年度にまたさらに二度目の引き下げも行なわれているし、いわゆる十割補助というのはもうほとんど影をひそめてしまった、こういう状態があります。  この点について、負担増はどの程度であり、それへの対策はどう講ぜられたか。それからもう一つ伺いたいのは、毎年こういうようなことが続くのか。つまり、四十八年度以降はもうないということにならないといけないのではないか、つまり、あとの見通しですね。その点をまず開発庁長官から伺います。
  76. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 公共事業伸び率でございますが、国全体の伸び率から比べたら北海道開発庁伸びが少ないことは、いま御指摘になったとおりでございます。しかし、今回の公共事業というものが、主として住宅をはじめといたしますところの生活関連施設に重点を置かれて、国全体の伸びも、そういった部面に多額の伸びを示したことによって二四%という数字が出ておるような姿でございます。北海道の公共事業を見てまいりました場合におきましては、これらの生活関連事業の需要が内地のそれと必ずしも一致していないという姿もございましてそのようになりましたのですが、私たちは常に、北海道はまだまだ公共事業を伸ばさなければならない地区でございますので、具体的河川、港湾あるいは農業関係事項につきましても、できるだけ北海道に重点をしぼって、伸びますように努力をいたす所存でございますが、いま申しましたような事情上、全般的な数字は少し伸び悩んでおるという点がございますので、御了承賜わりたいと存じます。     〔主査退席、大村主査代理着席〕  なお、負担の増でございますが、これはここ数年来国庫財政当局とやかましく議論を重ねてきたところでございまして、全額国庫負担の制度というものが、現在の状況から申しましていいか悪いか、議論を続けてきたところでございます。その結果、昨年話し合いが一応できまして、全額国庫補助はなくするという方向で線が固められ——一挙にこれを解決することは非常に負担の激増を来たすものでございますから、これを本年と来年四十七年度の二カ年間で、実施するという方向で、国庫財政当局と開発庁の間に大体話し合いがついておったのでございます。その結果、昨年度四十六年度におきましては四十億近くの負担増となったと思います。この数字で申しますと、四十七年度の負担増は、事業伸び等も合わせまして大体四十億程度になるものをことし実施しなければならないという姿が、四十六年度予算編成のときにきめられました大体の約束と申しますか、話し合いの中から生まれておったのでございますが、ことしのような地方財政状況でございますので、事前に折衝いたしまして、補助率十分の十の分は全部解消いたしまして、少なくとも九・五を持つという姿で折衝いたしまして、負担増を来たしましたですが、原則は貫いておりますけれども、負担は最小限にとめるという姿で交渉さしていただきまして、落ちついたのが、予算でお願いいたしております四十七年度の負担分になっております。その結果、大体三十億弱の負担増を来たすのでなかろうか、かように考えております。  今回の負担分には港湾関係が主となった部分がございますが、御承知のとおり、港湾は、北海道の場合は、内地の状態と異なりまして市町村が管理体系にありますものでございますから、これに対する補てんと申しますか、これは交付税等で見る場合非常に困難が伴いますが、道とも連絡いたしまして、交付税並びに起債措置等によりまして、これらの負担が過重にならないように適切な措置をとらしていただくように自治省とも連絡をいたしまして、道並びに自治省、関係市町村相寄りまして、負担増を来たさないよう財政措置をとらしていただきたい。  なお、後年度に対する分でございますが、事情の変更等によって今後あり得ないということはございませんけれども、少なくとも当分の間は補助率の改定ということは行なわない。一応数年来続けてまいりました国庫当局との議論はこれをもって終止符を打つ、当分の間は行なわない、特別の事情のない限りにおいては負担増の問題は起こってまいらない、かように理解いたしております。
  77. 安井吉典

    安井分科員 当分の間といいますか、今後の段階において、特別な事情がない限り起きないというふうなことで、一応安心をしたわけでありますが、だんだん開発予算がふえれば地元負担がふえてくる。それに対応する自治体財政への措置という面を今後とも強めていただきたい、そのことをひとつ申し上げておきます。  そこで、北海道の開発予算は、北海道開発法によって、四つの島に局限された日本の唯一のこれからの可能性を持った地域だということで今日まで運用されてきた。多額の国費も投入されてまいりました。道路も、港湾も、相当程度よくなったし、農業の基盤整備も、これも目立つほどに伸びてきていると思います。治山治水も進んできた。そして、首都札幌市はいよいよ百万都市になろうとしています。この間のオリンピックも大成功でした。ですから、これで北海道開発の計画は万々歳だ、こういえばいいのですけれども、しかし一方、炭鉱は続々つぶれていく。家族もろとも悲嘆にくれた炭鉱の人たちは山を去っていく。これは炭鉱だけではなしに、農村でもどんどん過疎化が進み、十年前の農村人口と、いまの農村人口ではちょうど半分になってしまった。どんどん人が減ってしまって、人口零になった部落も続出をしている。近ごろの円切りの問題も手伝って、木材工場がつぶれていく。国鉄の赤字線は撤去されていく。つまり、開発はどんどん進んだということと、あの北海道に住む道民の人間的な生活というものとのかかわり合いというものについていささか疑問なしとしない、私はそういうような気持ちでいます。これはもっとも北海道だけじゃなしに、GNP世界第二位を誇る日本全体の姿であり、それは北海道にその縮図があるのかもしれません。  そういうような意味合いで、いま第三期開発計画という段階の北海道開発計画についても、もう少し何か新しい発想によっての方向というものをつくっていかなければいかぬのではないか。つまり、人間の生活とか福祉を増進するための開発、そういうようなところに焦点を当てた人間のための開発、そういうような方向をもっと積極的に進めていかなければならぬのではないか。この点について、いかがですか。
  78. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 北海道の開発が二期を終わりまして、三期に入りまして第二年目を迎えようといたしております。四十六年度が三期の初年度でございます。明年度第二年目を迎えようといたしております。いま開発は相当進んだというふうにお認め願ったのでございますが、私は、北海道百年かかっての開発でございますが、ほんとうに北海道の開発の基盤ができ上がったという段階が、三期の初年度に入っておる開発の状態であり、三期の開発を計画どおり伸ばしていくことが、いよいよこの開発がいま安井議員の御指摘にありましたほんとうの生活向上、民生安定に資するという効果にまで及んでくるのが第三期計画の目標でないか、かように考えております。そのために、生活と生産の調和のとれた地域社会の発展を目ざすのが第三期計画の基本目的になっておるのは、御承知のとおりでございます。この意味からいいまして、開発は相当効果があがっておるが、あるいは炭鉱の離職者の問題において、あるいは農業の問題において、あるいは過疎の問題において、開発の効果というものがそのまま評価どおりに北海道民の生活にあらわれていないという御指摘、私はごもっともであろうと思っております。  ただ問題は、いままで北海道をささえてまいりました重要産業でありますところの石炭また農業の問題、これは単に北海道だけでなくして、わが国の農業あるいはわが国の石炭鉱業が持っておりますそのものがそのまま北海道にもあらわれたという傾向は、私はなきにしもあらずでないかと考えます。ただ、いままで出てまいりました開発効果によりまして、石炭鉱業なんかの職業転換と申しますかをすると同時に、北海道だけ他の内地の炭鉱と異なっておりますところの優秀なる鉱山は、鉱山として生きる道をぜひとも考えていきたい、このような姿でいま石炭問題には取り組んでおるような状態でございます。  なお、北海道御出身でありますので、安井議員に特にこの点、私見になるかもわかりませんが、農業の問題については、私は先般も北海道へ参りましていろいろ議論したのでございますけれども、私は、農業の問題を過疎の問題とあわせまして、農業が主要産業にならなければならない北海道において、はたして農業で安定が求められるか、これについて悲観的な議論が多く出されたのが四十六年度の農民の方々考えでなかったか、かように考えます。これは生産調整の問題、その上に冷害の問題が重なったという事情にあったかと思います。しかし、私は、もちろん極地に米作をやっておるという姿は変えなくちゃならぬと思いますが、北海道の上川地区から以南の地において、米作は、昨年は特殊な事情でございまして、決して不向きな土地ではない、かように考えておりますし、生産調整というものが重なり、あるいは農産物の輸入自由化の問題等がありまして、相当農民に不安を与えておることは事実でございますが、日本農業の大きな目からながめましたならば、北海道こそ日本の食糧基地とする、高生産の農業を営み得るのは北海道ではなかろうか、かように私は考えますので、上川以南の米作も含めまして、そういった意味での、地区に応じた高生産の農業というものを確立することによりまして、いま申されました農業の問題あるいは過疎の問題も解決していく方向に今後とも進めなければならない。第三期計画におきまして新酪農村なんか四十七年度でいよいよ着手させていただくことになっておりますが、地域別の高度生産の農業というものに邁進することにいたしたい、かように考えております。  いま変更する考えはないかということでございましたが、第三期計画そのものが、いま申しましたように、いままで開発された基盤の上に立って、ほんとうに生産と産業とを直結したところの経済地域社会をつくり上げて日本の先駆的な開発としたいという大きな理想を掲げておりますこの方向は、私は、そのまま現在も、今後進むべき日本の姿としてもそれでよいのじゃないかと思います。ただ、具体的な問題につきましては、御趣旨のような点も考慮しながら、弾力ある運営によりまして民生安定に処していきたい、かように考えております。
  79. 安井吉典

    安井分科員 いまいろいろ御抱負を伺ったわけでありますが、そういうことで、これからあとの、人間をほんとうに大切にする開発、そういう方向に進めていただかなければならぬわけで、ただ開発は進んだといって、大きな視点からものをながめるかもしらぬが、石もて追われるごとく炭鉱を出ていくその人から見れば、北海道開発とは何であったか、そういう問いかけをせざるを得ないわけですね。だから、そういうふうなこまかな配慮のある開発というのがほんとうでないか、そういうことで私は申し上げたわけであります。これは沖繩だって同じことなんで、沖繩復帰十割補助、何でもやってやる、しかし、何年かたったら、それが、沖繩の道路や何か、入れものだけはよくなったが、沖繩の県民の生活は打ちひしがれたもので、本土の資本の隷属のもとに置かれてしまったというふうなことになりかねないと思います。ですから、いわゆる開発というものの考え方の原点というものを私どもはやはり人間に置かなければならない。道路や橋をつくることだけが開発なんじゃないんだという点を、それはあくまでも手段なんだということを明確にした開発の進め方というものが必要ではないか、こう思うわけであります。  そこで、第三期総合開発計画はまだ発足したばかりでありますけれども、今日、国際通貨の大きな変動がございますし、あるいはまた、環境汚染といった問題が、これは日本だけではなしに世界的な状況でありますけれども、非常に深刻になってきた。あるいは過密過疎、これらのいろいろな動きの中で、北海道の第三期総合開発計画も一応発足はしたけれども、新しい見直しというふうなものが必要になってくるのではないかというふうな気もするわけです。  そこで、その前に、新全国総合開発計画、いわゆる新全総も総点検の段階に来ているということがいわれておりますし、経済社会発展計画もつくり直しという重要な段階を迎えているわけであります。そういうものと北海道の開発計画とも関連を持ってくると思うので、いわゆる新全総なりいろいろな国の重要な計画の改定というふうな作業の状況について、この際、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  80. 道正信彦

    ○道正説明員 ただいまお尋ねの新しい長期経済計画あるいは新全総でございますけれども、経済企画庁におきましては、私の担当は長期計画のほうでございますけれども、新しい長期計画を今年じゅうに策定するというようなめどにおきまして、現在その準備作業をやっておる段階でございます。ただいま御指摘がございましたように、現在過密あるいは過疎の問題、あるいは公害の問題、あるいは新しい工場立地の問題というようなものが非常に大きな問題になっておるというのはそのとおりでございますので、今度の経済計画におきましても、そういうような地域政策のあり方という問題がきわめて重要な意味を占めるということになろうというふうに考えております。ただ、長期経済計画におきましては、従来から地域的な総合開発計画ということを特に関連づけていないというようなことがございますし、今度の新しい経済計画におきましても、やはりこの点は変わらないで、北海道あるいは各地の具体的な総合開発計画と新しい長期経済計画ということは直接結びつきがないのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  新しい新全総の見直しでございますが、総点検ということを現在やっておりますけれども、これも経済計画の策定作業等とかなりの程度ダブるわけでございますけれども、そういうようなものを通じまして点検を進めていくということになっておるわけでございます。
  81. 安井吉典

    安井分科員 いわゆる経済の長期計画と、それから新全総、あるいは建設省の国土建設の長期構想、あるいは通産省の昭和六十年の地域別工業分布の作業を中心とする産業再配置の計画、こういったようなものの全体的な結びつけば、機関の側面であるいはプロジェクトの面でどういうふうに結びついていくわけですか。
  82. 山東良文

    ○山東説明員 現在、先生がおっしゃられましたように、各省におきましていろいろの計画を立てているわけでありますが、基本となります思想と申しますのは、昭和四十四年の五月につくられました新全国総合開発計画に一応基づいている、そういうふうに考えてよろしいと思います。と申しますのは、新全総計画の一番のかなめといたしましては、国土利用の抜本的な再編成ということをうたっておるわけでございまして、それでもって、その主たるねらいの一つと申しますのは、巨大化する大都市地域からいかにして地方に対して人口あるいは産業を分散させていくかということであろうと思います。  それで、それの具体的ないろいろのやり方につきましては、いま言われましたような通産省のほうの工業再配置の構想というようなものもございますし、あるいはまた、他方、押し出すほうの側といたしましての首都圏整備委員会、あるいはまた近畿圏整備本部、そういったところにおきます工業に対する規制の問題といったようなこともございますけれども、一応思想といたしましてはいま申しましたようなことで、国土利用の抜本的な唐編成というようなことに向かって進んでいるということでございます。  なお、昭和四十四年の五月にできまして以後、環境問題というものが、先ほど御指摘ございましたように非常に深刻化してきたということでございまして、そういったことを中心にいたしましての総点検といったことをいろいろの角度からこれから進めてまいりたい、そういうことでいま作業をスタートを切った、そういうことでございます。
  83. 安井吉典

    安井分科員 いま経済企画庁のほうからもいろいろ御説明があったわけでありますが、北海道開発計画という側面から、私がさっき提起したその問題についてどういうことになっていますか。
  84. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 今後のわが国の進むべき方向といたしまして、国際通貨を中心とする経済情勢の変化、あるいはこのごろやかましく言われておりますところの公害問題を中心とするところの環境保全の姿、そういったところから今後私たちの開発の目標が変わらなければならないということは当然のことでございまして、私たちは今後の開発にあたりましては、社会資本の充実をおもにした、生活と産業が調和したような開発を目ざさなければならない、こういう姿にあらねばならぬことは、いま安井議員御指摘のとおりでございます。  第三期計画におきましても、先ほども申しましたように、生活と産業が調和する地域社会を築き上げるという基本方針を打ち立てた第三期計画でございますので、この点の根本的な基本方針におきましては、現在私たちが指向せなければならない方向に向いておるのが第三期計画でございますので、根本的には私は第三期計画そのものを変える必要はなかろう、かように考えております。しかし、いま経済企画庁その他が申されましたように、長期経済計画あるいは新全総なんかにつきまして、いま申しましたような社会経済の変化から、総点検と申しますか、検討せなければならないという議論も起きております。そういった意味におきまして、弾力的にそれらと歩調を合わすということは考えられると思いますが、現在のところ、長期経済計画あるいは新全総におきまして総点検される方向に向かって基本方針は進めております第三期計画でございますので、根本方針は私は変える必要がなかろう、かように考えております。個々の方向につきましては、全国の調整と合わせまして弾力的な運営をもって処していきたい、かように考えております。
  85. 安井吉典

    安井分科員 いま一通りお話を伺った中でちょっとおかしく感ずるのは、さっきの道正課長のお話の中で、新全総の総点検等はやっているが、北海道の開発その他の地域開発計画は関係ありませんというふうなおっしゃり方をなさったのです。そしてまた、渡海自治大臣のほうからは、第三期北海道総合開発計画の基本方針は変える必要はありません、こういうことで、その変える必要はないということは、道正課長の、関係ないということとつながってくるし、しかし、ただ基本的に円とドルの関係で、日本の国際貿易あるいは通貨体制の中での位置づけというものがおそろしい変化の中にあるし、国内においても大都市への人口集中、産業も集中して、それをどうやって地方に分散させようかという大きな問題も起きている、そういう大きな変化というものの中で現体制を変えていかなければいけないということで作業はやっているが、北海道の開発計画はあまりいじる必要はない、基本計画は変わらぬと、ずいぶん円の切り上げのことまで三期計画の中でお考えになって計画ができていたのではないかと、北海道開発庁はきわめて先見の明があったということかもしれませんけれども、そうおっしゃることが、その一番最後は、地域開発計画と新全総その他とは関係ないのだということと妙にこうぐるぐる回りでつながってくるわけです。私が提起したそういう問題点について、ちょっとお答え願いたいわけです。
  86. 山東良文

    ○山東説明員 新全総と北海道開発計画の問題について一言申し上げておきたいと思いますけれども、新全総計画自体は、四つの目標を掲げております。そのまず第一には、自然を恒久的に保護すること、それから第二番目には、開発の基礎条件を整備して開発の可能性全国土に拡大し均衡化すること、それから第三番目には、地域の特性に応じまして、それぞれの地域の独自の開発を進めていき、それによって国土の利用を抜本的に再編成するということ、それから四番目には、豊かな環境というようなことでございまして、国民生活を不快と危険から守る、そういった四つの目標を掲げております。そういったことでございまして、新全総計画自体を進めていくということは、環境問題をはじめ、そういったものに対処していくゆえんであるというふうに思っておりますので、先ほど私たち、新全総計画自体の総点検ということも申し上げましたけれども、ただ、四十四年の五月にできまして以後、環境問題が非常に深刻化してきた、そういうような事態がございますので、あらためてそういった角度から見直しをしていこうということでございまして、新全総計画自体を現在つくり上げておりますその考え方自体というものにつきましては、非常に進んだものだというふうに考えておるわけでございます。そういったことでございますので、北海道開発計画につきましても、新全総計画のほうの立場から、特に現在の段階でもって改定を要するというふうには、私たちのほうからはそういうふうには思っていないということでございます。  なお、円切り上げの問題が出たわけでございますけれども、円切り上げ自体のために国土開発政策を特に転換しなければいけないというふうには、そういうふうには考えておりませんで、むしろこれを機会に、従来から考えておりました財政主導による国土開発を進めていく、そういうようなことでもってやっていきたい、そう考えております。
  87. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 いま答弁になった方向で大体御了承願ったんじゃないかと思いますが、ただ一言、経済の成長度合いによりまして、これと開発とを調和さすと申しますか、そういう部面は、今後弾力的な運営によって調整をとっていかなければならないんじゃないかと思っております。この点は、工業地域の工業の導入があるいは一年とか二年とかおくれるとかいう姿も考えられるんじゃないかと考えられますけれども、反面、経済の変化によって日本経済が非常に沈滞しておるという姿からは、むしろ現在第三期計画推進していくことによって、いま安井議員から指摘になりましたような民生の安定を積極的に向上さしていくという方向に向かって、きびしい経済事情の中でこれを解決していく一つの方向でなかろうかとも考えますので、一そう第三期計画をむしろ積極的に推進せなければならない方向で考えなければならない、かようにむしろ考えておるのでございまして、それは個々の事業ごとにつきましては、いま申しました長期経済計画等において弾力的運営をはかる必要がございますが、計画全般といたしましては、むしろドル・ショック等によりますところの経済停滞によって、第三期計画を一そう推進していかなければならない、こういうふうな取り組み方をいたしておりますのが私たちの考え方でございます。
  88. 安井吉典

    安井分科員 ほかの問題もたくさんありますから、この問題の論議は一応打ち切りたいと思いますが、ただ、円ドルの問題はむしろ経済社会発展計画に関係があって、地域開発計画への直接の関連がないことは、これはわかりますけれども、大体におきまして、あまり計画ばかり多過ぎて、どの計画もそれだけで計画倒れに終わっているという実態が、今日までのあり方ではなかったかと思います。たとえば旧全総だって、あれもいろいろ読んでみますと、過密と過疎をなくしていくというのが旧全国総合開発計画の一番のねらいだったんですね。あの文革の中にはっきり書いてありますよ。書いてあるわけでありますけれども、ところが、あの旧全総の実施段階において過密と過疎は猛烈に広がったわけですね。だから、あれなどは全く書いた文章と現実とがあべこべであった、それをまざまざと示す材料はあれ以外にないんじゃないかと私は思うのです。そういうふうな形で幾ら計画を立てても、どうもむなしいような気がするわけでありますが、せめて、政府が数々立てられますそれらの計画に総合的な関連性があって、その関連性に基づいて施策が行なわれる、予算が付与されていく、そういう仕組みをぜひ期待したいものだと思うわけです。私の言いっぱなしだけで、御答弁をいただかないですみませんけれども、私はそう思うわけです。  そこで、北海道開発計画の遂行にあたって、特に四十七年度の執行方針で、北海道開発局とそこで働く人々の労使間のトラブルがあって、この間うちからだいぶ騒いでいたわけでありますが、私どもも、北海道開発庁が積極的に関与して、それらのトラブルに話し合いのルートを開いて解決をするように、というふうにお話も申し上げていたら、だいぶ御努力をいただいたようですね。一応前進の方向で、まだ結論ではないようでありますけれども、そういうところまで一応いっているようでありますが、やはり予算もふえて、それを道民の生活を向上させる方向で効果的に仕事を進めていく、これが非常に大切でありますだけに、そういう方向で、起きている労使間のトラブルに一定の解決を与えるような御努力をさらに期待したいと思いますが、いかがですか。
  89. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 第三期計画も四十七年度でいよいよ二年度になり、具体的計画の大きな事業が着手の段階に入る時期になりまして、事業量も膨大になっていく。限られた人員でこの事業量を執行していくということには多大の困難も伴うかと存じます。特に北海道の場合は、安井議員御承知のとおり、内地の事業形態と異なりまして、あるいは道路の維持管理あるいは除雪作業、また河川事業、港湾事業等におきましても、直営工事というものを多数行なっておったという姿がございます。膨大化する事業で、しかも限られた定員の中でこれを処理していくということは非常に困難を伴いますので、事業執行形態については、直営方式を、できるだけ、何と申しますか、請負方式に切りかえまして、事務効率をあげていかなければならない。事業の大型化あるいは請負方式の組み入れによりましてこれを効率化する、あるいは機械化するという方向で、限られた定員の中で膨大化していく事業をこなしていきたい、かように考え、いま事業執行の改善をやっておる最中でございます。  その際に注意しなければならないのは、いま御指摘になりました、住民に対するサービスを落としてはならないということが、大きな一つの問題でなかろうかと私は思っております。もう一つは、これに従事します職員の勤務条件を落としてはならない。この二つが最も重要な点でなかろうかと思います。  いま職員との関係のことを申されましたが、今後とも、住民に対する行政サービスが低下しないよう、また職員の勤務条件が過酷にならないよう、十分職員組合とも話し合いながらこれらの執務改善を行ない、ほんとうに道民の皆さま方の御期待にこたえ得るところの執務体制をもって、膨大化していく事業執行に当たりたい、このようにつとめてまいりたいと思います。具体的な問題につきましてはいろいろ困難な点もあろうと思いますが、方針といたしましては、あくまでもそのような方針で進めてまいりたいと思います。せっかくここ一、二年来そういった方向で進んでまいりまして順調にまいっておりますので、今後ともその方針で努力してまいるように指導してまいりたい、かように考えております。
  90. 安井吉典

    安井分科員 この問題につきましては、いま大臣のお話もございましたが、さらに、あとあとの労使の話し合いの結果等の状況でまたお尋ねをする、こういうことにして、この程度にしておきたいと思います。  行管長官人事院総裁にもおいでをいただいておりますので、この点だけ一つ伺っておきたいわけでありますが、昭和三十六年の閣議決定で、定員外職員の常勤化防止のための決定事項がございます。これにつきましていままでいろいろ議論が行なわれて、定員外職員といっても、定員内職員とほとんど同じ仕事を、現にデスクであるいは現場でやっている。この定員がないために、学歴から何から全く同じなんですけれども、そのままに据え置かれてずっと来ている。もう十年も二十年もそういうような姿で来ている。こういうような状況をできるだけなくせよ、定数化できるものはせよ、こういうことなんだろうと思いますが、その定数のほうはどんどん減らされている、こういう状況があるわけです。ですから、これの廃止、あるいは少くとも現業の省庁にだけは適用を除外するような仕組みはできないか、こういうようなことがしばしば国会のいろいろな質疑を通して提起されているのは、御承知のとおりだと思います。とりわけ、直接の業務に携わっている者の場合、たとえばダムの工事がある、五年間その工事が継続される、自動車の運転手も必要だし、現場の作業員もたくさん要るわけでありますが、五年間はそこに職場が確定されているということになった場合、それを日々雇いあるいは年間雇いということじゃなしに、少なくとも五年間の期間を限った雇用というふうな特殊な雇用形態を実現することが必要ではなかろうか。昨年、参議院でもこういう提案がなされて、もう少し検討しましょうというふうな御答弁もあったと聞くのですけれども、この点はどうでしょう。これは両方に関係があると思います。閣議決定は行管のほうでお出しになったでしょう。しかし、制度的には人事院の問題にもなると思います。
  91. 平井廸郎

    ○平井政府委員 事実関係がございますので、まず私どもから御説明させていただきます。  あらためて御説明申し上げることはないと思いますが、三十六年二月に、先ほど御指摘の定員外職員の常勤化の防止についての閣議決定が行なわれましたのは、それまで、定員外職員につきまして、ともすれば業務の実態と必ずしも即しないような安易な常勤化が行なわれておりまして、定員内職員との間でまぎらわしいような事態が生じておる、そういう事態の結果として行政経費の不必要な膨張等好ましくない事態が生じておりましたので、このような傾向を防止するために、定員外職員の雇用について明確な規制を行なうことにいたしたものでございます。もちろん、このような事態と即応いたしまして、昭和三十二年から三十七年に至るまでの間におきまして、約十二万人の職員について、定員化すべきものは定員化するという形にいたしたわけでございまして、それ以後は、いわゆる定員内職員とまぎらわしい職員が定員外に発生しないように厳正な管理を行なってまいったわけでございます。  もちろん、その間、国会におきましていろいろ御審議があったことも事実でございまして、総定員法の成立に際しましての附帯決議等を受けまして、政府といたしましても、昭和四十四年七月一日現在であらためて調査をいたしたわけでございます。その実施状況の実態調査の結果を拝見いたしますと、各省庁におきましても、その後閣議決定の趣旨は順守されておりまして、適正に運用されており、現状においてこの閣議決定を変更しなければならないような事態は起こっていないというふうに認められるわけでございます。  とりあえず、その点を御説明申し上げておきます。
  92. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいまおことばにもありましたし、行管からのお答えにもありますように、もともと正せば、これは定員の問題にあるいはなるのじゃないかと思います。  私どもの立場からいいますと、任免権者が非常勤として御採用になったということであれば、非常勤に徹した扱い方をなさっているはずだということに、割り切ってしまえばそういうことになるわけであります。しかしながら、私どもとしては、やはり現場の方々お話などもしょっちゅう承っておりますと、非常勤であるからといって、全然無関心でわれわれとしてこれを放置するわけにはいかないことでありまして、御承知のように、実際の運用から申しますと、非常勤の職員という性格の壁にもうぶつかるすれすれのところぐらいまで、実はわれわれとしてはできるだけの優遇措置をとっておるわけでございます。そうしてまた、非常勤の方であれば、普通の常勤職員には許されない兼職だとか何とかということも許されるという面もございます。非常勤職員、常勤職員の本質というものをわきまえてまいりますと、どうしてもそこに限界があるのじゃないか、一口に申し上げますと、どうもそういうことに考えておる。しかし、実質的にわれわれのできる限りの優遇措置は考えていきたいということでございます。
  93. 安井吉典

    安井分科員 いまの御答弁では少しも解決にはならぬと思います。特に行管のほうからのその御答弁は、ただ現状を言っただけで、その現状だって、いろいろな事情のもとにそういう形が単にあらわれているというだけであって、私はほんとの現実ではないように思うのですよ、いろいろな面から情報を総合してみますと。だから、そういう表面的なものだけで、問題はもうこれで終わりなんだというような態度じゃこれは困るし、人事院のほうも、いろいろ御努力佐藤さんなすっておられるということだけはわかります。わかりますけれども、しかし、まだ昨年の国会での御答弁を、ほんとうにもう少しどうかならぬかというふうなことで御検討された結果だとも思えないのであります。  ちょっと沖繩の問題で総務長官にお待ちをいただいておりますので、きょう論議をする時間がございませんけれども、この問題はさらに別な機会に譲って議論をしたいし、ぜひとも御協力を願いたいと思います。一応行管、人事院けっこうです。  時間がなくなってしまいましたけれども、山中長官にぜひこの際御意見を承っておきたいのは、沖繩の請求権の問題です。  県民のアメリカに対する請求権を、返還協定で日本政府は全部放棄をしてしまった。全部と言うのは語弊があるかもしれませんが、ほとんど放棄をしてしまった。ただ、その救済措置について、この間の国会でも、必要があれば立法措置も講ずるということを含めての前向きな答弁も、佐藤総理からあったわけであります。しかし、あの国会でも、そう明確な御答弁でもありませんでした。しかし、まあ何とかやらなければいかぬなというふうなことには私どもも感じ取っていました。  それに対して、四十七年度予算の中では、講和前の人身補償の未補償分の補償ですか、それを見舞い金という形で若干予算化がされ、この仕事は防衛庁の仕事だというふうなことになっているようでありますけれども、私は、日本政府が放棄した県民の請求権の補償というのは、防衛庁の片手間でやるような仕事じゃないのじゃないかと思います。もっと政府が積極的なかまえで、総理府の中にそういう処理機構を置いて、政府が主体的にこの問題に取り組んでいくというかまえをつくることが大切ではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  94. 山中貞則

    山中国務大臣 これは沖繩国会の参議院における審査の際、総理から、防衛庁実態は防衛施設庁の窓口になりますが、そこの作業だけにまかしておく性格のものとしては確かに問題が存在する、したがって沖繩県民の個々の請求に関する問題は総理府窓口として努力をさせたい、こういうことを答弁されました。私もやはり総理府がもし国会を設置法が通過いたしますれば現地に総合事務局を持ちますので、その事務局の職員の三分の二は、現在の琉球政府の職員を国家公務員として引き取る人たちで占めるわけでありますから、おそらく沖繩県民の人たちは、総合開発事務局が設置されますと、それぞれの人たちの名前、顔等によって非常な親近感を持つだろうと思いますし、また仕事の面も行政サービス、許認可その他のことが多いわけでありますから、したがって、それを窓口として、広く、いろんな個々のいままで埋もれていた被害の実態等も受け付ける、あるいは相談の窓口になる、そういう姿勢をとりたいと思っているわけであります。しかしながら、予算としては防衛施設庁のほうに調査費を計上してもらいまして、そして私どもがこれらの窓口になって、沖繩事務局を中心に受け付けたものを防衛施設庁のほうに引き継いで、そこにおいて施設庁予算として、具体的にその事実関係あるいはまた請求の認定あるいは金額の確定等の作業はしてもらうということで、有無相通じていきますると、そこの精神的な、心理的な、防衛施設庁に相談に行くという気持ちでちょっと足がとまりがけるのが、私どもが中に入らしてもらうことによって相談の窓口としての役目を果たせるのではないかと思っておる次第であります。
  95. 安井吉典

    安井分科員 施設庁からもおいでいただいていますから、ちょっと施設庁の考え方だけ伺っておきますか。
  96. 来栖大児郎

    ○来栖説明員 お答えいたします。  沖繩におきます講和前人身被害の救済事業でございますが、内地におきまして同種の事案に対しましては、従来被害者給付金法という制度がございまして、防衛施設庁がこれを所管して担当してまいりました。したがいまして、同種の事案につきまして施設庁がこの業務に当たるのが能率的であり、適正な措置ができるのではないかというふうに考えまして、施設庁において予算要求をしておるわけでございます。
  97. 安井吉典

    安井分科員 ことし、それ、どういうふうにおやりになるのですか。
  98. 来栖大児郎

    ○来栖説明員 お答えいたします。  現在二億三千三百三十万円を見舞い金としまして要求しておるわけでございますが、これがもし予算としてお認めいただきましたならば、現地にできます那覇防衛施設局を通じまして関係官庁あるいは沖繩県と緊密な連絡をとりまして、本件の事務処理に当たりたいと思っております。
  99. 安井吉典

    安井分科員 対象人員は、さっき私が申し上げましたような講和前の人身事故の未補償分ということに限定するだけであって、それ以外の問題については、防衛庁としてはタッチするお気持ちがないわけでしょう。
  100. 来栖大児郎

    ○来栖説明員 これにつきましては、調査費用等も計上してございますから、調査いたしまして、その後において処理することになろうかと思います。
  101. 安井吉典

    安井分科員 その点はわかりました。  しかし、防衛施設庁がいままで本土においてやってきたからと、こういうわけでありますけれども、本土のケースと沖繩のケースとはまるっきり違うと思うのですね。とにかく二十数年間米軍の支配下にあった沖繩、したがって無数のケースがあって、いわゆる軍事的な側面があらわにあらわれているもの、それからそうでないもの、いろんな形があると思うのですよ。したがって、防衛庁という役所の片手間で処理されるというふうな問題とはまるっきり違う、こう思います。したがって、この間の国会でも、佐藤総理は、これは総理府そのものが当然の仕事として関与する、こうでなければならぬというお気持ちになったのではないかと私は思うわけであります。これは別に、役所と役所の間のセクショナリズムで解決する問題じゃないと思うのですよ。そういう政府としての基本的なかまえ、これが大切だと思います。そういうような意味で、沖繩担当大臣として、この問題、私は、ことしすぐ予算をどうせよというよりも、担当の仕組み、問題を解決しようとする態度、このことだけでもひとつこの際明確にしていただきたいと思うのですが、どうですか。
  102. 山中貞則

    山中国務大臣 これは私もこだわっておりませんが、本土では駐留軍、復帰いたしますと沖繩も駐留軍になるわけですが、これらの駐留する米国軍隊とのトラブルの処理については、全部、法律の根拠によって防衛施設庁がやることをたてまえとして行なわれているわけであります。ただ、沖繩の場合は復帰前の問題がいろいろありますから、直ちにまっすぐ防衛庁に相談に行くというのも、施設庁と防衛庁とは本来は違うようでも、向こうの人はわかりませんから、そういう意味において、総理のおっしゃったのも総理府窓口になってあげたらいいという意味の答弁でありましたので、私もそういう点を沖繩においては感じますので、総理府においてそれらの窓口的な相談相手になってあげたい。そして、実務は、法律に基づいて、やはり防衛庁の施設庁というものが処理するのが正しいのであろうと考えます。
  103. 安井吉典

    安井分科員 だから、私は、法律そのものを変えて、防衛庁、もっと正確に言えば防衛施設庁かもしれませんけれども、その仕事からはずして、総理府の中に処理機構を置くべきだ、こう思うわけであります。ただでさえ防衛庁は、防衛施設庁も含めて、沖繩ではあまり評判がよくないわけですね。いま土地の取り上げの問題もあるし、自衛隊は来ちゃ困る、こう言われておるときでありますから、とてもなかなかそこへ相談に行こうなんという気にはなれないと思います。相談に来ないのだからそれでいいのだ、こういう処理はできないと思います。そこで私、先ほど来申し上げておることを、ひとつ山中長官、閣僚の立場から、政府段階での御検討を願っておきたいと思います。
  104. 大村襄治

    ○大村主査代理 安井君に申し上げます。  約束の時間が経過いたしましたので、結論をお急ぎ願います。
  105. 安井吉典

    安井分科員 では、一つだけ。  新聞には、「土地買収で代理戦争」「沖繩に群がる本土企業」「本土企業に食われる沖繩」「公害、早くも心配」、こういう伝えられ方をしているわけで、この土地問題、土地の食い荒らし、この実態を、私どもは新聞で見るよりしかないわけでありますけれども、新聞を見る限りにおいて、何とかならぬのかと、こう思うのです。しかし、法律的にはこれはなかなかたいへんだろうと思います。建設省も、いまの段階では、力及ぶというところではないと思うのですが、沖繩担当大臣として何かしなければいかぬのではないか。たとえば、具体的なな法律措置はできなくとも、こことここの島にこういうやつが来てやっているぞという、名前を公表して新聞等にばっと出してやるとか、何とかの歌を歌う人、あるいは俳優が買っていたとか、そういうのをばっと出す、そういうことでもチェック機能は発揮できるのじゃないか。もっと具体的な法律的な措置があれば講ずべきだし、そうでなければ、そんなことも一つ考えられるのですが、どうですか。
  106. 山中貞則

    山中国務大臣 これは現在、琉球政府の中は、布令の根拠によって非琉球人の土地取得を禁止し、それを許可する場合には、地上権設定も含めて、行政主席の許可制になっておるわけであります。また、琉球政府立法においても制限措置はされておりますけれども、しかしながら、やはり本土においても見られるような、相対ずくで、売ります、買いますという話が進行しておるらしいことは、これはどうも建設、農林等で調査団を派遣して実情を見てみましたけれども、やはりあるようでありますが、琉球政府のその布令、立法によって許可した件数はきわめて少ない。中には、沖繩の観光立県のために大きな貢献をするであろうというようなものもあります。しかしながら、これをほっておいて——いまのところは琉球政府が行使してくれる以外には手段がないわけですけれども、しかし、たとえば海洋博を昭和五十年にやる予定を立てている。ところが、本部半島に閣議決定をしたら直ちに買い占めが始まったというようなことは、これは国策遂行に支障を来たしますし、それ以外の意味でも、経済開発計画を立てる場合に支障になり得るような——たとえ納得づくであっても、土地を投機の対象として買われることは困るわけです。海洋博の場合には、一応あとで本土政府がめんどうを見ることを前提として、琉球政府に起債をつけて先行取得をしてもらうようにしてありますので、何とかこの点はいけると思いますが、復帰した後は、全面的に本土の地方のきびしい制限がかぶりますから、転用等についても農業委員会の許可制になりますので、それまでの間、琉球政府との間に、沖繩経済発展の障害になるような事態を起こさないように監視あるいはまた禁止をしてもらいたいということは、連絡をとっておるわけであります。
  107. 安井吉典

    安井分科員 一応問題提起だけして、終わります。
  108. 大村襄治

    ○大村主査代理 次に、和田春生君。
  109. 和田春生

    和田(春)分科員 私が本員質問をしたい要点は三つあります。第一は、国民の祝日と関連する休日の問題であり、第二は、公務員の週休二日制の実施に関してであります。第三点としては、最近  マスコミ上においてもたいへん大きく扱われておりますが、行政監理委員会の委員の任命に関連をいたしまして、行政管理に対する政府の基本的な姿勢等をただしたい、このように考えているわけであります。  まず最初に総務長官にお伺いをいたしたいと思いますが、国民の祝日については前の予算委員会でも質問をいたしたわけであります。ところで、労働基準法による休日というのは、私が申し上げるまでもなく、雇い主から解放される休日として、その休みは、ほかのアルバイトに使おうが、自分のレジャーに使おうがどうしようが、労働者個人の自由にまかせてあるわけでありまして、基準法あるいは労働協約等でいう休日というときには、雇用されている雇い主の職場から解放されるという意味で、疑義がないと思うわけです。ところが、この国民の祝日に関する法律を見ますと、国民の祝日を第一条、第二条で定めているわけでありまして、第三条で「「国民の祝日」は、休日とする。」と、こういうふうに法律できめられているわけです。この「休日」という意味はどういう意味か、まずお伺いをいたしたい、こういうふうに思うわけです。
  110. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、私の答弁は常識の答弁になるかもしれませんが、やはり公的な立場、私的な立場のそれぞれの公務員なり民間企業なりの職場がありますが、これは雇用主たると従事者たるとを問わず、その日は、いろいろの理由をもってそれぞれの日が定めてありますから、その意義づけられた日にふさわしい、いわゆる人間としての解放された一日を過ごしなさいという意味で職域から解放される日である、文字どおり休む日であると思っております。
  111. 和田春生

    和田(春)分科員 この、職域からあるいは職場から解放されるという場合には、雇用関係を結んでいる場合には、もちろん法的には基準法があります。また、公務員についてもそれぞれの規則等があるわけですし、労働協約も結んでいる。労働組合がないところでも、就業規則等できめている。そういう点ではっきりするわけですが、これは国民の祝日に関する法律なのでありまして、その中に「「国民の祝日」は、休日とする。」と、こう書いてあるのですけれども、どうも私の調べた範囲では、ほかに休日という概念はないようなのであります。ただ関連がありますのは、政府職員の勤務時間に関する総理府令の中で、その第一項に、「政府職員の勤務時間は、休日を除き次の通りとし、日曜日は勤務を要しない日とする。」こういうふうになっている。この休日の中には、国民の祝日に関する法律の休日も含まれていると思うわけです。  一体、国民全体に適用される国民の祝日、いわゆる国祭日を休日とするという法律的な意味は何か、これは問題であるように思うのです。これから議論する上にちょっと関係がありますので、長官は、その点について、いま常識論的なことをお答えになったのですが、あるいは政府委員、そういうことに詳しい人から答弁してもらってもいいと思うのですが……。
  112. 吉岡邦夫

    ○吉岡(邦)政府委員 先生のおっしゃられるとおり、休日ということばが一般的に国民全体に及ぼすような表現を使った法律は、国民の祝日に関する法律以外にございません。一般的に、休日というのは、仕事をしない日、公の取引をしない日というふうに解釈されております。  それで、一般的に国民全体にかぶせるような休日ということばはございませんが、個々の法令にはございまして、たとえば国家公務員の場合は、一般職の国家公務員の給与に関する法律等では、公務員の勤務時間それから勤務を要する日というような規定がございます。それには、日曜日は勤務を要しない、月曜日から土曜日まで勤務するという形になっております。あるいはまた、民法第百四十二条、期間の満了点、あるいは手形法の第八十七条に休日の定義、あるいは小切手法の第七十五条に休日の定義、その他個々の法令には休日ということばがございまして、それの定義がなされております。しかし、全般的には、休日というもののはっきりした定義はいまのところございません。
  113. 和田春生

    和田(春)分科員 重ねてお伺いしますが、そうしますと、この日は、一般的な概念として、仕事をしない日である、それは雇用関係があるなしにかかわらず、国民全般について仕事をしない日である、そういうふうに解釈をされる。もちろん、公共関係で二十四時間停廃を許さないような仕事がありますから、これは別としまして、一般的には、仕事をしない日、そういうふうに規定づけられていると確認してよろしゅうございますか。
  114. 吉岡邦夫

    ○吉岡(邦)政府委員 一般的にはそういうふうに休日というものを解釈されるのではなかろうかと思います。なお、国民の祝日に関する法律の第一条に、国民こぞって祝い、感謝し、または記念するために国民の祝日を設けるということがございますし、それに応じまして、第三条で「休日とする。」こういうふうにうたっているわけでございます。
  115. 和田春生

    和田(春)分科員 その解釈が正しいとかりにいたしますなら、この国民の祝日に関する法律については、強制規定は含んでおりませんし、別に罰則もございませんから、政府関係とか、そういうところは別といたしまして、そういう意味で、この日に仕事をしても、別段法律的に罰せられるとか、けしからぬということにはならないけれども、たてまえとしては、一般的に休む日である、そしてその前提は、国民が一般的に祝ったり記念をしたり、感謝をしたりする日なんだ、こういうことになると思うのです。  そこを前提にしてお伺いをいたしたいのでありますけれども、いまの国民の祝日というのは幾つかきめられているわけであります。しかし、わが国は、御承知のように、口を開けば、よく四面海の国であるというふうに言われる。あるいは津々浦々というようなことばは、日本全国をさす日常語として使われている。しかも、この国民の祝日の中に、海に関する日が全然ないわけであります。ところが、国民がこぞって祝うか祝わないかは別として、たてまえとして国民の祝日と考えられていい日には、御承知のように、海の記念日というのがあるわけであります。この海の記念日は、昭和十六年に閣議決定をされて定められた日であります。それは七月の二十日。これは根拠としては、明治九年の七月二十日に、明治天皇が初めて、船舶を利用してつつがなく航海を終えた、これを記念してこの日をきめた。いかにも戦前らしい発想でございますけれども、その経緯は別として、自来、戦後においても、占領下においても、この海の記念日というのはずっと続けられてきておるわけであります。しかし、昭和十六年に制定以来すでに三十年をこえておるわけですが、国民の祝日の中に入っていない。これを入れてほしいという非常に広範な運動も起きておりますし、労働者だけではなく、関係業界、地方自治体その他を含めて要請書も出されていることは、長官御存じのとおりであります。これが国民の祝日に正式に入らないという理由はどういうことにあるのでございましょうか。
  116. 山中貞則

    山中国務大臣 これは入れてはならないとも、入るべきでないとも、そういう判断を持っているわけではありません。しかし、今日までの、追加いたしました経過を二回踏まえての戦後の祝日の制定、こういうものから見ますと、     〔大村主査代理退席、主査着席〕 やはり記念日の設定について、確かに海の記念日というのは大きな意義を持つものでありますし、海洋国家日本でありますから、私は入っておかしくはないと思うのです。しかし、ここでいま、海の記念日を祝日にするということだけ一つ抜き出してきめるについては、山梨県みたいに海なし県もありますし、山の日をという声も一方にすぐ出てきます。また、どうせふやすならば、環境の日とか、そういうものも考えてくれぬかというような意見等もあります。また、勤労青少年の日とか、法の日とか、いろいろな意見が出てまいります。また、国連の日とか、これは国連の決定だからという外務省等の要望もありまして、ずいぶんいろんな意見が寄せられておるわけであります。しかし、全体として見ますと、週休二日をとっているかいないかの問題が根本には横たわっておるわけですけれども、いわゆる休日という意味の祝祭日の数は、日本は、諸外国に比べて、国際的に見て少ないほうではない。そこで、ふやすにあたって、いずれをとるかの取捨選択がきわめてむずかしい。しかも、いま設定されております祭日の、それぞれの設定されました何の日であるかの定義づけを見ますと、大体において、いろいろと要望のあるものは、国連の日は別でありますが、大体包含されるのではないかというようなこと等の意見がありまして、一方、労働省において、公務員週休二日ですか、あるいは民間の週休二日ですか、そういう議論もされておりますし、私のほうとしては、しばらくは諸外国の資料を集めたり、あるいは国民のいろいろと私に対する面接の手紙等も参りますし、けさの新聞の投書あたりにも、零細企業の人たちの立場が訴えられておりましたが、こういうことをやはりよく考えてやりませんと、祝日という問題をそう簡単にきめられるものではないだろう。しかし、もし一日ふやすということがあるとすれば、まず海の日が先であるという感じは持っております。
  117. 和田春生

    和田(春)分科員 長官としてのいろいろな御配慮はわかるわけなんですが、その前提として、先ほどのような国民の祝日に関する休日というのはどういう意味か、こういうことを確かめたわけなんです。  ともすれば、中小企業あるいは経営者サイドから、休日をふやすことは困る、こういう声があるわけなんです。しかし、諸外国の場合には、日曜日というものも、宗教的な慣習として出発して社会的に定着をしている。あるいは東南アジアの国国においても、回教、ヒンズー教等においても、あるいは金曜日であるとか、そういうような宗教的な慣習において、その日は仕事をしてはならない日である、仕事をするということはむしろ戒律に反する、休まなくてはならない、こういう定着した考え方があるわけですけれども、日本の場合には、昔から、正月とかあるいはお盆とか、ごく限られたときしかない。したがって、労働契約に基づいて、雇い主が、みずからの束縛から解いて従業員を休ませるということは別としまして、国民全体の中に定着をしてきた休みという観念は、諸外国に比べて多いことはない、非常に少ないのではないかと私は思うのです。そういう点から、日曜日は休むものだという考え方もどうにかぼちぼち出てきておりますけれども、労働契約でやられている以外の一般国民におきましては、ふやすということは差しつかえないし、特にテンション民族なんということばもありますが、非常に緊張しておる。たいへんのんびりした話をいたしておるようですけれども、いまのようにぎすぎすした社会においては、やはり社会の緊張を緩和するという意味でも、休日は必要なのではないかと思います。  なぜ私が海の日を特に取り上げるかというと、これは閣議できめました。そして、単に民間の行事だけではありません。この日には、全国の港において行事が行なわれておりますし、また、運輸大臣による海事功労者の表彰、あるいは藍綬褒章の授章、そういうようなものにつきましても、海の日にその人を表彰したりあるいは祝ったりするというのを政府が音頭をとっている。各自治体においても、港湾都市においては音頭をとっている。市の主催によって、あるいはミス何々に各船を訪問させるとか、市が船舶関係者を招待するとかいうことをやっておりまして、すでに定着をしているわけであります。しかも、海の日があれば山の日があるという話が出たのですけれども、まさか、海の日があるから山の日もつくれ、川の日もつくれ、あるいは湖の日もつくれ、池の日もつくれなどというのは、これは少し便乗論議でありまして、やはり海というものから離れては生活をしていけないというわが国の場合に、エネルギーの大半も海を渡ってくる、貿易なくしては生活もできないという場合には、海なし県の人も含めて国民全体が海を認識をするという意味で、国民こぞって関心を高め、あるいは海に対する感謝をあらわすというような点におきましてもたいへん意義があるのではないか。  いま長官は、まず入れるとすれば第一に海の日だろうということをおっしゃいました。できるだけ早い機会に改正をして休日をふやすことが望ましいと思うのですが、その際は第一義的に海の日を取り上げる、そういう長官の意思であり、これは同時に政府の意思として承っておくというように考えてよろしゅうございますか。
  118. 山中貞則

    山中国務大臣 そのとおりです。
  119. 和田春生

    和田(春)分科員 それでは、国民の祝日に関します点については以上で質問を終わりまして、公務員の週休二日制のほうに質問を移したいと思います。  まず、公務員の週休二日制につきまして、きょうの新聞の報道によりますと、これは労働省が音頭をとってお役人の週休二日の検討を始める、そしてそのことについては自治省、人事院、総理府などと連絡して、月末には第一回の連絡会議を開くことになったと、これは労働省筋のニュースとして出ております。それに、これは新聞のつけた見出しだと思うのですけれども、「民間より早からずおそからず」こういうタイトルがついておるわけなんです。これは新聞用語で、まさか発表でそう言ったわけではないと思うのですが、総理府、人事院等含めまして今月末に公務員の週休二日制の検討を始めるということは、事実として承知してよろしゅうございましょうか。
  120. 山中貞則

    山中国務大臣 私どもの人事局のほうに、非公式にそういう申し入れがあったそうです。しかし、和田議員もおっしゃたように、これは事務当局の話だと私は思っております。ということは、塚原労働大臣は、人事局を所管する総務長官の私の先輩でありまして、公務員の週休二日という問題であれば、まず総理府の発議でなければ作業が運ばないことを、総務長官経験者としてよく御存じであります。したがって、閣議の前後等においても、この問題は、議論すれば君のところが中心になってくるということを塚原大臣は言っておられますので、事務当局はいろいろと一生懸命努力をいたしますから、その限りにおいて、そのことがけしかる、けしからぬということは私は言いませんが、私どもがかりにこれを議論するとすれば、国家公務員というものがまず先立って二日休むという姿勢をとることについては、私は多分に疑問を持っております。  国家公務員というものはやはり先憂後楽であるべきであって、いまの国家公務員の状態が働き過ぎで、国民から見て何とも痛わしいというようなところまできておるならば、これは考え直さなければならぬかと思いますが、やはり私どもとしては、まず民間で——これはドル・ショック等の関係もあるのかもしれませんが、大企業あたりから逐次実現をしつつある。しかし、先ほどの話もありましたように、民間といっても、零細中小企業は、そういうようにしようにもできない人たちがきわめて多いということを考えますと、お役人だけが先に二日休んでしまうということは、私としては、いまのところ、そういう姿勢でもって取り組むということは考えていないわけであります。  しかし、諸外国等の例を見るときに、日本もそろそろ近代工業国家として世界の中に伍していくというならば、いわゆる働きバチみたいな、あるいはテンション民族と言われましたけれども、そういうような国であっていいかどうかという問題から考えるならば、これは長い時限の検討事項としては、公務員の働く日は実際上五日でとめるべきであるかどうかという問題について議論をしなければならないことも、反面の要素としては存在すると考えます。
  121. 和田春生

    和田(春)分科員 確かに長官のお気持ちとして、公務員が先に休むとは何事であるか、先憂後楽であれ、これはまことにもっともだと思うわけです。しかし、いままでの経緯を見ますと、決してそうはなっておらぬわけでありまして、公務員の働きぶりがよくないというように国民の評判が悪いのは、休日が多いか少ないかじゃないのですよ。民間企業の就業条件と比べて、勤務時間にあまりにもルーズである、そういうところが問題にされている。さらに、非常に忙しくてきりきり舞いをしているパートがあると思えば、ほんとうは八時半から勤務しなければならないのに、九時半くらいに来て、まずお茶をゆっくり飲んで、新聞を広げて、そして十一時半くらいになると昼めしに出て行くという、えらいのんびりしている面もあるではないか、こう国民の側から見ている。つまり、そういう意味で、能率が悪い、仕事の生産性が低いという意味における批判はあるかもわからぬけれども、お役所が日曜日に休むからけしからぬ、土曜日が半ドンだからけしからぬという声は、一部にはありますけれども、それはごく一部の声ではないかと思います。先憂後楽ということをもし徹底するならば、政府職員の勤務時間に関する総理府令などというものもこの際改めたほうがよろしいわけでございまして、土曜日の勤務は昼までときめているわけです。土曜半ドンということを、お役所が率先総理府令でやっているわけなんですから。半ドンということは、民間でも一般の事務職関係についてはありますけれども、現場ではほとんどない。先憂後楽を文字どおりやるならば、これもおかしいという形になる。  私はなぜ公務員のことを問題にしているかといいますと、確かに一部にはそういう声があります。しかし、いま御承知のように、同盟という、これは組織人員を二百万以上かかえておりまして、中小企業もかかえておるわけです。民間産業で最大の組織でございますが、その同盟が、運動方針ではっきりこういうふうにきめているわけです。「週休二日制 その基礎づくりをはかっていく場合の実現化の第一歩は大企業、官公庁とし、これを先行させていく」ということについて、民間産業の労働者で組織している団体がオーケーと、こういうサインを組織の意思として出しているわけなんです。同盟に参加をしていない他の中立系の組合でもいろいろ聞いております。それから全国民労協という、四百九十万——総評系、中立系の組合も含んでいる。そこの組織も、週休二日制をおやりなさいという形で、今月の二十九日には官房長官を通して政府に申し入れたいという意思表示をしておるわけなんですね。  そういう状況ならば、あまりそういうところに口実を見つけなくて、おやりになったらいいんじゃないか。これは役人が先に休んでいいことしろということではなくて、いろいろな日本の制度を見ると、日本の社会構造から見て波及効果というものを考えた場合に、やはり官庁とか銀行とか大企業とかいうところで行なうことが、逐次波及をしていって、そして中小企業や一般の中においても底辺を引き上げていく牽引力の役割りを果たしている。そういう意味において、おやりなさい、こういうことを言っているわけですね。ところが、そういう牽引力になっていって全般にやることは困る人間が、逆に、役所が先にやるとはけしからぬ、こういうふうに言っている面が非常に強いのではないか。そういう点で、長官のそのお考えはひとつこの際考え直していただきまして、全体に対する波及効果という意味において、公務員の休日はふやす、しかし、働くときには大いに生産性向上をやって、能率をあげて、いいサービスで国民の信頼を受ける、そういうふうに発想をひとつ持っていっていただきたいと考えるのですが、いかがですか。
  122. 山中貞則

    山中国務大臣 公務員というのは、ある意味では、よく公僕ということばを使われると思うのですが、やっぱり国の仕事、行政というものは、多分に国民の発展、幸福のための行政サービスその他の部門が大きいと思います。そういう場合に、たとえば銀行が土曜日と日曜休もうかといっただけで、やはり貸し出し業務その他について支障を来たすという、すぐ反撃の声があがりましたけれども、国家公務員の場合には、私の考えとしては、やはり公僕というものは、国民のために、先んじて二日の休みをとるという考え方はどうもやっぱりぴんとこないわけでありまして、まあ改めろということでありますけれども、認識については、いま同盟とか、そういう巨大な、民間の人たちでもって、労働者で構成されておる団体が賛成しておるということは、あらためて認識をいたします。しかし、それでもなおかつ私は、国家公務員を先に二日間休ませる、週休二日制をまず公務員からという姿勢については、現在の時点においてはちょっと考え直す意思はありません。
  123. 和田春生

    和田(春)分科員 そこで、今度は人事院総裁にお伺いをしたいのですけれども、いまの長官のお答えを聞いておりまして、一つの問題があるわけです。それは週休二日になると、公務員が全部二日休んでしまって、国民のサービスがそれだけ低下をするということが前提になっているようにあると思います。現在の土曜半ドン、日曜休日は、そういう形を大かたとっているわけです。しかし、たとえば国鉄あるいは電信電話、こういうような業務、民間においても公共事業、あるいはガス、電気の供給、こういうような事業は、国民の日常生活のために停廃することができない、一年三百六十五日連続して操業しなければいかぬ、仕事をしなくてはいかぬ、こういう面については、仕事は続いているんです。仕事は続いている。そして、差しつかえない人は、やはりきまった日曜日なら日曜日、休日なら休日に休む。しかし、それ以外については交代勤務制をとって、そして仕事を停廃させないという勤務体制をつくっているわけであります。  そういう点を考えると、その公務員のサービスについても——ついこの間も私の選挙区の団地で、土曜日の午後に給水塔が故障を起こして、ポンプが故障を起こした。ところが、お役所が昼から休みだとかいって、たいへん多くの世帯が迷惑をこうむって、二日間も断水でひどい目にあったということがあるんですが、それは休日の責任にしちゃいけないと思う。それはサービスの体制が悪いからなんですね。差しつかえない人が休んでおっても、そういうことに関係のあるところはきちんと、日曜日であろうと土曜日の午後であろうと、夜中であろうと、いつでも即応の体制ということにあればいいわけです。現に電力会社なんかは、大かたは日曜日は休んでおります。土曜半ドンのところもあります。しかし、夜中にでも問題があるといって、故障をすればすぐかけつけてくれる。ガス会社なんというのは、大体パトカーがおって、十分たたぬうちに、これは人命にかかわるから、すぐ飛んでくる。こういう形になっておるけれども、週休一日制あるいは隔週の週休二日制と、こういうことをやはり実行していっているというのは、サービスについて、連続すべきサービス、あるいは国民に不便をかけないサービスについては、時間外もある程度やる、休日もやる。しかし、そこに働いている従業員に対しては、少なくとも毎週一回は確実に休ませる、隔週一回は二日休ませる。やがて週休二日という形になれば、週二日ずつは休ませる、個々人については。仕事は停廃をさせない。  そういう点について、どうも住民に対するあるいは国民に対する公務員のサービスのあり方と、労働条件としてあるいは休日というような制度の運用という面で、たいへん硬直した姿勢があるのではないか。そういう点にメスを入れらるべく検討したことがあるのか、あるいはいまやっておられるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  124. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 先ほどおことばに出ました労働省からの呼びかけは、私のほうにはまだございませんから、それは別として、私どもとしては、やはり数年来この問題が話題になって、ずっと内々の心がまえをつくるという意味で検討はしてまいっております。いままさにおっしゃいましたとおり、問題点は、国民に対するサービスの維持の問題と、それから勤務条件の問題と、それからもう一つ言わしていただけば、先ほど総務長官も触れられましたように、国民感情の問題と、おそらく三つの柱があるのではないか。そうしてまた、その柱の中でどういうふうに実現させる手段があるか、これはお察しのとおりいろいろな方法がございます。バリュエーションがあります。ありますけれども、結局、いまのお話窓口を締めるか締めないか、これはサービスの面においては重大な問題でございます。これは締めるわけにはいかないだろうというおことばのとおりだと思います。そうしますと、やはり交代制勤務ということになる。交代制勤務ということになれば、いまのままで、現状の定員のままでいけば、平日の勤務を今度は強化するかどうか、あるいは定員をふやしていただければそのほうでまかないがつくかというような問題が、またすぐ出てまいります。平常の勤務を強化したのでは公務員の福祉の向上にはなりませんし、そこに一つのネックがあると思いますけれども、国民感情の問題も、山中総務長官非常にはっきり言われましたけれども、実は私どもも一番、実際の気がかりはそれでございます。非常にいま御激励のおことばをいただきましたけれども、たとえば毎年年末になりますと、公務員は年末年始をのんびり休んでおると、必ず新聞の投書欄に出ます。そういう点がありますし、また昨今にも、きょうの投書欄、きのうの投書欄というような投書欄なども、私、十分目を通しておりますけれども、なかなか国民各位が進んでこれに声援を送ってくださるというような機運には、どうもまだないんじゃないかという気がかりも持っておりまして、それらの三つの柱の中でなお慎重に検討は続けていきたい。私は、個人的な感覚としては、直感的にはこれは好ましい方法だ、方向であるということは胸に持っておりますけれども、しかし、その実現について、それを踏み切るについては、いま言ったような、よほど慎重な角度からまだまだ検討すべき点がある、そういうことを申し上げておきたいと思います。
  125. 和田春生

    和田(春)分科員 人事院総裁、いまたいへんおもしろいことをおっしゃって、直感的には好ましい方向だと。そういう好ましい直感は大いに前へ前進さして、どんどんやっていただきたいと思うんですが、年末年始の例が出ましたけれども、実はそういう点では、人事院の総裁御自身もお役人的発想にとらわれているんじゃないかと思う。  実は昨年の年末のことなんですけれども、私のところは、ガスでちょっとぐあいが悪くなったんです。電話をかけました。十分足らずですぐ来てくれました。しかし、ガス関係の事務関係とかなんとかいうのは、もう休みに入っているんですよ。そういう必要なところだけはちゃんと残してあるわけです。ところが、年末の二十八日から正月の三日間、ゴミが山ほどたまって、臭気ふんぷんとしてどうにもならない状態なんですね。年末年始の休みだからというて、暮れの二十八日から正月は四日までゴミを取りにこないというようなことをやるから、けしからぬと言われるわけでしょう。何も全部が出ておる必要はないわけです。そこで私さっき言ったのですね。どうしても住民の日常生活に必要な、そのことをやめたらたいへん困るということについては、どうやって仕事をしていってサービスをやるかということを考える。そして休ませるということなんです。  それからもう一つは、労働時間の問題と休日という問題は関係はあります。関係はありますけれども、直接的な因果関係というものをそこに求めるのも間違いだと思うのですね。たとえばソ連の週休二日制の実施の状況をごらんになればわかりますように、あれは、週の労働時間は動かさずに、土曜、日曜をたてまえとして週休二日を実施しました。御承知だと思います。そして朝八時から出勤するところは、八時から十二時までの四時間、一時間休んで午後の一時から五時までの勤務、九時から出勤するところは、午後一時まで勤務、一時から二時まで休み、二時から六時まで勤務、そして帰る、これは全部が全部そうでなく、たてまえとしてそういう勤務体制というものをとって、週二日休ませるという形にしたわけです。総労働時間は短縮をしない。まずそれをスタートさせておいて、それから今度は合理化と生産性向上に伴って全体の労働時間を短縮するという経過を持っているわけです。それを、週休二日にするから、同時に平日の勤務時間をある程度延ばしてサービスをよくするということが、勤務の強化になるなんということをあなたが考えておったらだめですよ、それは。それは観念が間違っておるんじゃないかと私は思う。結局、週に二日続けて休むということが、労働者の状態ないしはいろんな面で望ましいか望ましくないか、直観的に好ましいんなら、それをやる、やるために、現在の状況で労働時間を全体として短縮してぐあいが悪い場合には、ある程度それを平日勤務に振りかえて、そして作業の合理化をやる、人員配置の適正化をはかっていく、むだを省くことによって今度は時間短縮を進めていく、そういう経過をたどっているわけです。現に日本の多くの企業では、週六日勤務して三十九・五時間とか四十時間という労働時間のところがあるわけです。全くむだなんです。通勤も一日分多いわけです。工場も動かしているわけです。本人もわざわざ会社に行かなくちゃいけない。それならば、週四十時間ならば、一日八時間働いて週休二日にしたほうがいい。民間の労働組合はいまやそういう発想に立って、組合のほうがそれを要求している。そうなんですね。いかがですか、その点。
  126. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 勤務条件の強化になることが——実は強化になってはたいへんだという気持ちで深刻に私が心配することは、人事院総裁としては当然の立場だろうと思いますから、それは御了承願っておきます。それをやはり配慮しながら進まなければならぬことであろうという趣旨でございます。ただ、実施のやり方については、これは先ほどもちょっと触れましたように、いろいろなやりくりのしかたというのは、テクニックとしてはございます。したがって、そのほうはそのほうで研究は続けますけれども、私、直感的にと申しましたけれども、国民の皆さまも直感的なんですね。二日になったというようなことを、直感的に、公務員はいいことをしているというようなふうにお考えになる傾向がいままでございましたです。そういうことはやはりわれわれとしては深く用心しながら進まなければならぬ、そういう心がまえを持っておるわけでございます。
  127. 和田春生

    和田(春)分科員 なかなか慎重な態度をとっているわけですけれども、直感的にいいことはいいことなんですから。なまけることを先へやっちゃいけませんよ。いいことはやはり先にやるということが、政府の姿勢としては正しいと私は思っているわけです。  それから、合理化というのは、何も人を減らすことだけじゃなくて、むだな仕事はやめていく、そして、うんと遊んでいる部門があれば忙しい部門に回してやる、そして余暇を生み出すというのも、合理化の基本的な姿勢ではないか。そういう意味で、いま役所の勤務状態というものに対しては、民間では考えられないことが行なわれているという意味の批判があるわけであって、現在の人員でも、おっしゃるように別に勤務を強化しなくても、週休二日制はおろか、うまくやれば週休三日制もできるぐらいな人はあると私は思いますよ。それを首切れと言うんじゃない。もっと仕事を合理化をしてそういうことをやって、一方では休みを多くして波及効果をふやす、一方においてはサービスをよくして感謝を受ける、これは私はくふうにおいてできると思う。そういう点について、やはり人事院は公務員の勤務条件をきめる大もとですから、ひとつイニシアチブをとっていただきたい。このことをお願いしたいと思うのですが、いかがですか。
  128. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 おことば完全に理解できますし、また直感的な私の気持ちにもこれは合うことなんで、御激励によってなお十分に検討を続けてまいりたいと思います。
  129. 和田春生

    和田(春)分科員 長官も御予定があるのにお残りいただいたわけですが、どうかいまの趣旨を十分含んで、早急に望ましい方向を検討していただきたい、こう思います。  これは御返事は要りませんので、次の質問に移らしていただきたいと思います。  先般来、マスコミで、行政監理委員会の委員の任命についてたいへん大きく扱われておるわけでございます。このことについて報道をされている見出しにいたしましても、また、私たちが町中でいろいろ聞く意見にいたしましても、一体政府は何をやっておるんだ、こういう批判的な意見ばかりでありまして、よくやっているという意見は一つも聞かれません。私はここで、具体的な個人の名前でもってどの人がいいとか、この人がどうとか、それをかえた裏がどうとか、そういうことをのぞき見して、引っぱり出して質問をしようと考えているわけではないのです。むしろ、今回の事件を通じて、行政管理という形に対して政府は何を考えているのか、たいへん疑問に思っているので、そういう基本姿勢をお伺いしたいと思うんですが、まず最初に、報道されているように、一たんは政府が三顧の礼を尽くしてある人をきめた、ところが、特別の理由もないのにその人をやめて別の人にかえたい、そういうことを政府の方針としてきめ直したということは事実ですか、その点をお伺いしたいと思います。
  130. 中村寅太

    ○中村国務大臣 お答えいたしますが、行政監理委員の任期が来ましたのに沿って新しい委員を任命したいと考えまして、管理庁で諸準備をいろいろ整える過程におきまして、管理庁の調査不十分等で、国家の別な機関に籍のある人が候補者に選ばれておったというようなことがありまして、かわっていただくというようなことはいたしたことがございますが、その他はございません。
  131. 和田春生

    和田(春)分科員 ちょっとはっきりしないんですけれども、何でございますか、支障があってかわっていただくということはあったが、それは、立場上その人を行政監理委員会の委員に任命するわけにはいかない人が、事務上の手続違いで入っておったから、その人はかわってもらうということをした、ほかには全然ない、こういうことでありますか。
  132. 中村寅太

    ○中村国務大臣 選考の過程では、ございません。
  133. 和田春生

    和田(春)分科員 そういうふうにおっしゃると、具体的な名前を出さなければいけませんけれども、伝えられるところによると、木村さんを一たん内定をして政府は就任を依頼していた。しかし、その後それを取りやめて栗山さんにかえることにした。報道せられていることは事実ではないわけですか。
  134. 中村寅太

    ○中村国務大臣 私先ほど申しますように、準備過程において候補者を——御承知のようにこれは内閣人事でございますから、内閣に私のほうから人名を出したということでございまして、それから先は内閣のほうで、国会の承認事項でございますので、国会等との見合い、関連がいろいろございますので、そういう過程を通っていま進められておる過程である、かように考えております。
  135. 和田春生

    和田(春)分科員 これはもちろん内閣の人事事項ですけれども、いまも長官おっしゃったように、国会の承認人事です。それが持ち出されてきてから、国会が承認するかしないかをきめることになるわけであります。その点の根回しというものは要ると思いますけれども、もう一回お伺いしますが、では、私がさっき名前をあげてお伺いいたしました、非常にマスコミに広く報道されて、官房長官まで釈明に行ったという記事まで出ているわけですけれども、そういう事実はないのですか。
  136. 中村寅太

    ○中村国務大臣 私は、先ほど申しますように、候補者をきめまして、こういう人がいいのではないかと思うということを、内閣に、上申といいますか、手続をしまして、それからは内閣のほうで国会承認を得られるという手続等をとられるのでございますから、その手続途中の問題については私は承っておりません。
  137. 和田春生

    和田(春)分科員 はっきり答えてくださいよ。事実がないなら、ないと言ってもらったらいいのです。そうすれば、これはマスコミの報道は全部うその報道だというから、取り消しを求めなければということになるわけですね、政府のほうで。あるなら、あると言ってください。そこを出発点にして質問を続けますから。これは非常に大事な問題なのだ。まずそれを確かめてからあとの質問をいたします。それは、政府の根本姿勢と、行政監理委員会設置法並びに行政管理庁設置法の根本に触れる問題が含まれているわけですから、その点、しかと答えてください。
  138. 中村寅太

    ○中村国務大臣 国会承認を内閣から得られるための手続がどういう形に進んでおるのか、私のほうとの打ち合わせをやっておるわけでございませんので、正式にそういう話を、木村さんを断わってだれにするというようなことを聞いたことはございませんが、新聞等で、官房長官が木村さんのところに行った、こういうことは聞いております。
  139. 和田春生

    和田(春)分科員 あなたは国務大臣で、行政管理庁長官でしょう。そして行政監理委員会、こういうものは、行政管理庁所管事項の中のきわめて重要な問題を審議してやるわけでしょう。それを長官のあなたが全然知らないのですか。そんないいかげんな人事が行なわれているのですか。国会で承認を受けるというのは手続ですから、もちろん根回しが必要であって、私はそんなことを否定しているわけじゃないですよ。でき得べくんば、出したものが承認されるのが望ましい。否定されるようなことになれば、それは政府としてもみっともない話ですよ。しかし、国会の承認を受けなくてはいけないほど重要な人事について、あなたは何も知らないのですか、官房長官だけがやっているのですか、はっきりしてくださいよ。
  140. 中村寅太

    ○中村国務大臣 私は、先ほど申しますように、内閣に、こういう人がいいのではないかということを申し上げておる段階でございまして、それから先はやはり内閣で国会等と、いま和田議員も仰せられるように、いろいろ根回し等をやって、スムーズに承認せられるように運ばれるものだと考えますが、大体、国会等との間の根回しとかあるいはいろいろの相談とかいうものにつきましては、これは内閣のほうでやっておりますから、一一行政管理庁長官に相談があるというものではございません。
  141. 和田春生

    和田(春)分科員 しかし、あなたは国務大臣でしょう。閣僚の一員ではありませんか。内閣というのは国務大臣をもって組織をしているわけです。もちろん、総理大臣が最高の責任者ですよ。それを、あなたの所管事項に関することを審議をする行政監理委員の選任について、一応の人選については、望ましい人としてあなたが推薦したけれども、あとどうなっているかは私は知らぬなんて、それで行政管理庁長官がつとまるのですか。
  142. 中村寅太

    ○中村国務大臣 あとどうなっておるか知らぬというようなことでなくて、私が推薦した候補者について、内閣のほうで国会との間に話が進められておるという段階だと考えております。
  143. 和田春生

    和田(春)分科員 それでは具体的に——こういうことを押し問答しておっても、全く無責任な、たよりない、どうなっているかわからない、それで国務大臣であり、行政管理庁長官であるなんということは、驚き入ったことですけれども、ともかくいまあなたが責任者でありますから、具体的な問題を出して質問を進めたいと思います。  ともかくあなたが推薦をされた人が、どうやらあなたは御存じないようだけれども、新聞、テレビその他マスコミの報道するところによると、国会承認人事として好ましくない、こういう形で内閣はかえようとしている、そしてそのあとがまに持ってこようという人についても下馬評は出ている、そういう報道が行なわれている事実については御承知ですね。
  144. 中村寅太

    ○中村国務大臣 そういう報道が行なわれている事実につきましては承知しております。
  145. 和田春生

    和田(春)分科員 それではお伺いいたしますが、そこで報道をされている、あなたはその人を推薦した覚えはないそうでございますけれども、後任は、自治労という労働組合の委員長であります。報道されている事実に基づいてですよ。実際そういうことをやっているかどうか知らぬけれども、いま報道されているのは、自治労の委員長が行政監理委員会の委員に任命されようとしているわけです。  自治労というのは、言うまでもなく、地方公務員の職員団体で組織する組合であります。したがって、地方公務員の職員団体の現職の責任者であります。その人が行政監理委員会の委員になるということは、かりにそういうことがあるとするならば、それは行政管理庁所管事項並びに行政監理委員会の性格からいって、望ましいとお考えですか、望ましくないとお考えですか、お伺いしたいと思います。
  146. 中村寅太

    ○中村国務大臣 私は、行政監理委員の任命に際しましては、いろいろ行政監理委員の使命等にのっとりまして最適の人を選ぶということが原則であると思っております。いま御指摘になりました具体的な問題につきましては、いま新聞等でも私も承知しておるところでございますが、国会と内閣との間でいろいろ折衝を始めておるのか、あるいは話し合いが進められておるのか、はっきりいたしませんけれども、そういう途中でございますので、私は、いまの時点で、それが好ましいとか好ましくないとか言うことは、差し控えさせていただきたいと思います。
  147. 和田春生

    和田(春)分科員 おかしいですね。あなたは、そういう報道が行なわれているというその事実については、先ほど、承知していらっしゃると言った。そして先ほども、好ましい人をあなたは内閣に推薦された、あとはどうなっているか知らぬと言われる。はなはだ無責任だと思いますが、かりに、いま私があげたような——私は、個人を言っておるのではないのですよ。ポストを言っておるのです。地方公務員の職員団体の現職の代表責任者である役人が行政監理委員会の委員に任命されるということは、その人の能力とか人格の問題じゃなくて、行政監理委員会の性格からいって、望ましいとお考えか、望ましくないと考えるかということを聞いておる。あなた、お考えをお持ちでしょう。
  148. 中村寅太

    ○中村国務大臣 現職でそういう立場にある人は、まあ避けたほうがいいのではないかと考えております。
  149. 和田春生

    和田(春)分科員 私はこのことは非常に重要な問題だと思う。もし長官がそういうお答えをするなら、官房長官をついでに呼んでおけばよかったと思って、はなはだ残念に思っておるのです。これは別の機会に官房長官に徹底的に、いまのあなたの答弁を下敷きにしながら質問したいと思うのです。  そこで私は申し上げたいのですけれども、民間の労使の中におきましても、管理運営に関する事項について労使協議会というようなものを設けられておる例はあります。もちろん、最終決定の責任は、企業の管理運営機関である代表権者の取締役会が決定をするにしても、あるいは社長が責任を負うにいたしましても、決定に至るプロセスとして、そういう労使協議会というようなものを、従業員の代表と経営のトップの間でやっているということは行なわれているわけです。私も、国家の行政組織、地方公共団体の行政組織あるいはその他の公共機関の組織の中におきましても、いわゆる最近の参加という問題が強くいわれている、そういう事柄にかんがみまして、労使協議といいますか、あるいは当局側と職員代表との間の協議とか、そういうことが広範に行なわれて、お互いの納得づくでその運営が進められていくということは必要だと考えているものであります。しかし、法律にきめられているように、地方公共団体の職員団体は、公務員法でもはっきりいたしておりまして、大臣も御存じのように、そこで働いている職員の勤労条件の維持改善をはかることを目的とする、さらにまた、地方公共団体の当局と交渉する団体である、こういうふうに規定づけられているわけです。ところが、一方、行政監理委員会というのは、われわれが理解するところによると、そういうような政府機関の内部において、労使とか、当局と職員との調整をはかるという仕事ではなくて、もう一歩高いところというか、もう一つ広いところというか、そういう立場に立って、行政制度一般に関する基本的事項を企画をするとか、定員及び運営の総合調整を行なう、あるいはそういう問題に関する調査、企画、立案、勧告を行なうというような、行政管理庁所管事項について、この行政監理委員会というのは審議をして意見を述べ、あるいは長官の諮問に応ずる、こういう任務を持っているわけでしょう。そればかりでなく、「各行政機関の機構の新設、改正及び廃止並びに定員の設置、増減及び廃止に関する審査を行なう」、こういうことについても、行政監理委員会はこれを審議し、意見を述べ、長官に答申をする、こういうかっこうになっているわけですね。さらにもう一つ、「各行政機関の業務の実施状況を監察し、必要な勧告を行なう」、これが行政管理庁設置法の第二条十一号に述べられているわけですが、これについても、監査の方針及び基本計画の決定に関することを審議するというのが、行政監理委員会の任務という形になっている。その点は長官も、長官ですから、御存じでしょうね。
  150. 中村寅太

    ○中村国務大臣 承知しております。
  151. 和田春生

    和田(春)分科員 そうすると、そういうようなかりに行政監理委員会の意見というものが出てきます。あるいは、諮問に応じていろいろな答申が出てくる。それをそのとおりやるかどうかということについては政府に権限があるけれども、もしおやりになるとすると、先ほど私が読み上げたようなことで、機構の整理縮小とか、配置転換とか、あるいは実際やっている行政の仕事のやり方を監査をする方法とかいうことに関して、職員の側からは、使われる者として当然それに対する反発ないしは反対の意見が出てくる。そうすると、それは地方公務員の職員団体である労働組合が、これは公務員の組合がその自分のメンバーの意向を代表して当局と交渉する、あるいは申し入れをする、そういうことをやらざるを得ない。そういう団体の意思決定に団体の役員は拘束をされる、そういう事実についてもお認めになるでしょうね。
  152. 中村寅太

    ○中村国務大臣 そういう傾向がやはりあるであろうと私も考えます。
  153. 和田春生

    和田(春)分科員 傾向じゃなくて、団体ではそういうことですね。団体で意思決定したことに従って団体の役員というのは行動するわけです。そうすると、そういう全国的な地方自治体の職員団体の一番上の責任ある現職の役員が行政監理委員会に入っているという場合に、それはどうなりますか。行政監理委員会は、労働委員会というような労使間の紛争を調整する機関ではないのです。どういうことになりますか。
  154. 中村寅太

    ○中村国務大臣 私は、やはり行政監理委員になる人は、いま和田議員がいろいろ委員の使命等について申されましたようないろいろの使命があると思いますから、その使命を達成するに適当な人を政府も選びますし、国会もまたそれを承認してもらえるのだと思っております。そういうことでございますから、先ほど言いますように、そういう現職の、たとえて言えば委員長というのが現職のままで委員になるというようなことは、これはできるだけ避けたほうがいいのではないか、かように考えておるのでございます。
  155. 和田春生

    和田(春)分科員 現職のままであるというよりも、現職の人をそういう選考の対象にするという姿勢が私は問題だと思うのです。もちろん、労働組合のリーダーであった人でもいいですよ、政府局長とか、あるいは場合によったら、大臣というポストにおった人でもいいですよ、そういう人が、そういうところから離れて、広い立場にある、あるいは総評であるとか同盟であるとかいうような、非常に多くの、民間もあるいは官公庁も含めまして、全般的に組織をしているような代表者であるとかその役員であるとかいうような、一歩離れた立場にあるそういう人の学識経験なり識見というものを利用していく。けっこうだと思います。そういう意味では、地方公共団体の職員組合の役員をかつてしておった人が、すぐれたる人であるならば、大いにつけられてもいいと思う。しかし、現にそういう人が選ばれるという形になると、東京都知事が行政監理委員会の委員になったっておかしくない。職員団体の代表者がなるならば、使用者側の代表もなりなさい、自治大臣がなったってもいいのだ。行政監理委員会というものはそんなことじゃないと思う。行政管理庁というお役所の任務は、政府の中の一機関かもしらぬけれども、中央地方を通じて全体をチェックするという役割りを持っている。たいへん重い任務だと思う。機構は小さいかもしらぬけれども、そこに国民の期待というものもあるのですよ。その行政管理庁長官が、一応好ましい人を推薦したか知らぬけれども、あとはどうなっているかわからぬ、そしてそのあとについて、あなたがいま言ったように、たてまえとしてそういうのは好ましくないという人が下馬評にのぼっているということについて、私は全然関知いたしておりません、そんな無責任体制で行政管理という仕事ができるのでしょうか。そんな行政管理庁ならやめちゃったらいいですよ。そんな行政監理委員会ならやめたほうがいい。もっと見識を持ってきちんとやるべきだ。そういう点についていかがですか。
  156. 中村寅太

    ○中村国務大臣 私は、いま内閣が国会といろいろ相談をやるという段階において、いまの時点で、いま御指摘になりました現職の自治労の委員長を委員にするということで話し合いを進めておるということは聞いておりません。
  157. 和田春生

    和田(春)分科員 それでは、結果としていずれ国会に出てくると思いますけれども、そういう人事は出てこないということを確認してよろしゅうございますね。出てきたらあなたの食言になりますけれども、よろしゅうございますか。
  158. 中村寅太

    ○中村国務大臣 私はいま、そういう具体的な人事、人の問題を聞いておらぬということでございますから、私はこれは内閣で国会等といろいろ相談をしておる過程であると思いますから、いまそう申し上げておるのであります。
  159. 和田春生

    和田(春)分科員 私がお伺いしているのはそういうことではないのです。これは私は個人の能力とか識見とかいうものを云々言っているわけではないのです。行政管理庁と行政監理委員会というものの性格から見て、いま世上伝えられているようなことは望ましくないのではないか。かりにその人がやめてからかなり時間がたっているとか、ほかの仕事をしていらっしゃるときに、豊富な運動の経験、そこから得られた知識を役立てようということならば、あってもいいけれども、いまそういう立場にある人が下馬評にのぼるということ自体、政府の姿勢がおかしいのではないかということで言っているわけなんです。それについてあなたは知らぬとおっしゃる。しかし、私の質問の中で、現職のそういう人がなることは望ましくないということを言われた。望ましくないとするならば、少なくとも、あなたはいま知らないそうですけれども——知らないとは思わないけれども、まあ知らないと言うのだからそうしておきましょう。出てきたときに、あなたは反対しますか。閣議できめるのはあなた一人の意見できめるのじゃないのですけれども、かりに出てきたら、少なくともあなたは、長官として望ましくないということに対しては反対されると思いますが、その点、確認してよろしゅうございますか。
  160. 中村寅太

    ○中村国務大臣 私は、内閣が国会の承認を求めることによってきまる人事でございますから、内閣が国会との間に取りきめられた人事には反対をいたす気はございません。
  161. 和田春生

    和田(春)分科員 押し問答になって——時間がいま来たわけですけれども、では、かりにあなたが官房長官であるとすれば、そういうことはおやりになりませんか。
  162. 中村寅太

    ○中村国務大臣 たいへんむずかしい質問でございますが、私はいま官房長官じゃございませんので、竹下官房長官のところでいろいろ苦労が続けられておると思いますので、私の意思表示はいたさないことでひとつごかんべん願いたいと思います。
  163. 和田春生

    和田(春)分科員 それじゃ、長官としてはそういうことは望ましくない、先ほどおっしゃいましたね。望ましくないことを自分としてはやることは不本意である、あなたのお気持ちとしてはそういうふうに受け取ってよろしゅうございますね。
  164. 中村寅太

    ○中村国務大臣 私は、先ほども申しましたように、現職の委員長が行政監理委員になるということは好ましくない、かように申し上げておるのでございます。
  165. 和田春生

    和田(春)分科員 そのことを確認いたしまして、時間も参りましたので、私の質問を終わりたいと思いますが、特に最後に一言申し上げておきます。  行政管理庁所管事項、管理委員会の任務から見て、いまのような政府のだらしのない姿勢が国民の不信を買っているのだということについては、強く、反省あってしかるべきだと思います。このことを申し上げて、私の質問を終わります。
  166. 森田重次郎

    森田主査 午後二時に再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時三十二分休憩      ————◇—————     午後二時四分開議
  167. 森田重次郎

    森田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大出俊君。
  168. 大出俊

    大出分科員 この席にも公務員の方々たいへん多いのでありますが、ぼつぼつこのあたりで公務員の皆さんの退職手当につきまして、これは法律的にものを言いますというと、総裁は、わがほうの所管にあらずというようなことを言いかねませんので、それはそれとして、もしそうならば人事局からその辺のことを少し人事院に移していただきたいぐらいの気があるということをまずもって申し上げて、だから法律的にと言わないで、ひとつその辺も踏まえていただきましてお答えをいただきたい、こういう趣旨で前置きをするわけであります。  さて、この国家公務員等退職手当法は、たしか昭和三十五年ごろ手を入れた時期があったと思うのでありますが、以来小さい手直しをしておりますけれども、大綱は今日までたいして変わっていない、こういう気がするのであります。したがって、相当長い日月そのままにされている、こういう感じでありますが、そこらをどういうふうにおとりでございますか、冒頭に承っておきたいのであります。お答えをいただくのはどららでもけっこうでございます。総務長官お答えいただけますか。
  169. 山中貞則

    山中国務大臣 確かに問題点として、退職手当の問題も検討にかかるべき期間を経過していると私も思います。したがって、人事局としては手足がありませんので、人事院にその調査をお願いしておるわけであります。この調査については、法的にどうだこうだということなしに、人事院は快く応じてもらいまして、忙しい作業の中でやってもらっておりますが、若干予定よりもいまおくれておりまして、その調査が終わってない、集計が終わってない段階だと思いますが、それが終わりましたならば、これは人事院の御意向等も当然拝聴しながら、人事局においてしかるべき検討を加えてまいりたいと考えます。
  170. 大出俊

    大出分科員 三十八年ごろ、ちょうどこの席でILO特別委員会が開かれたわけでありますが、そのときに私、長い質問をいたしました中で、総理府に人事局をつくるということなんですが、退職手当法の関係等はどうもそっちに持っていかれたら困るんだということをだいぶ粘ったのですけれども、結果的に現在のようになりまして、いま長官からどうも手足がないのでというお話がございましたが、やはり総理府所管でございますので、人事院の皆さんにも、その点はひとつ最大限御努力をいただくような長官の一そうの御配慮をいただきまして、問題の解決に当たっていただきたいと思うのであります。  そこで、この六法によりますと、この法律ができましたのは昭和二十八年の八月のことでございましょうが、何回か改正をされておりますが、三十五年が中心でございまして、以後今日まで放任をされている、こういうことになっていると思うのであります。  そこで、人事院のほうに、調査その他の直接的な担当をおやりになっておりますので、まず承っておきたいのでありますが、大体いつごろ、どういうふうに調査が済み、集計ができるのかという点——調査の方法等につきましては相当詳しく私知っておりますので、ここにおたくのほうでおやりになりました中身がございますから、その点についてはもうけっこうでございますが、集計その他がどういうふうに——千名以上あるいは千名未満という数も対象としてはっきりしておるようでありますけれども、そこらがどんなふうに進んでいるかという現状報告をとりあえず簡単にいただきたい。
  171. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 いまやっております民間の退職金の調査でございますけれども、これは実地の調査と通信調査と両方やっておりまして、実地の調査は、規模千人以上のものにつきまして千四十社、通信調査のほうは、規模千人以下百人以上のものにつきまして五百七社をやっております。現在までの回収状況でございますけれども、通信調査のほうは五一%、実地調査のほうは九四%ということでございまして、なおこの回収状況が若干高まるというところでございます。現在そういう回収を急ぎまして、同時に並行して集計をいたしているところでございます。集計は急ぎまして、それほど遠くない機会に結果はまとまろうというふうに思っております。
  172. 大出俊

    大出分科員 いまお話を承りましたが、私の手元にありますのからいきますと、千人以上五百七社を調査対象にされておるようでありますが、また千人未満で千四十社が対象になっておるようでありますけれども、トータルで千五百四十七社になりますか、一月末あたりの状況から見ますと、この通信調査の千人未満のところは三三%くらいしか集まってなかったようでありました。片や、千人以上のほうは九一%くらいになっていたはずであります。それがいまのようにやっと五一%になったというのでありますが、通信調査というのは、本来いいかげんだと言っちゃっちゃ人事院に申しわけないのでありますけれども、どうもあんまり、心もとないのではないか。  これは私、実はそちらのほうの組合関係を長く手がけてまいりましたから、退職金の推移というものは比較的よく知っているのでありますけれども、いろんなかっこうで手の内作業をやっておりまして、おまけに、最近は特にそうでございますけれども、退職金が本俸を対象にいたしますから、春闘なら春闘で、本俸幾ら幾ら上げるという団交のそのさなかに、これだけ出すけれども、このうち六割しか退職金引き当てにしないでくれというようなことを言い出す。そこでさらにストライキが、終わるはずのやつが終わらない。何とか助けてくれというので行ってみると、中小零細企業なんというのは、まことにいいかげんでございまして、まさに退職金がない形でいろいろこうやるからというので、四十何種類も方法がある。そういうところにぼうんと手紙出して、この書式はわかりますけれども、税金対策もございますし、金も借りなければなりませんしするので、そんなに出しているのならおまえさん貸せないぞと言われるのですから、そんなもの、まともに送ってくると思うほうが私は間違っていると思う。だから、実際に行ってお確かめになったものはいいけれども、適当に千人未満企業に出して回答をいただいたものを、まともにものを考えられたのでは困る、行って話したって、ほんとうのことを言わない、大企業なんというのは。いいところ、いいところほど言わない。だから、そういう状況なんですから、そういうあぶなっかしいところは、これは私は落としていただきたいと思っている。尾崎さん、確信がございますか、間違いないという。何なら私のほうで少しこれ調べてみたいと思っているのでございますが、人事院と相当違った結果が出てくると思います。自信がございますか。どの程度ございますか。例をあげて申し上げてもいいですが……。
  173. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 先ほど申し上げました調査対象は、仰せのように、私が申しましたのは逆でございまして、千人以上のものが五百七社、千人未満のものが千四十社でございました。  千人以上の五百七社につきましては実地調査でございまして、こちらの人が参りましてインタビューをして調査をしております。これは向こうのほうも、会社が大きく、整備されておりますので、九四%が現在の段階では回収されておるということでございます。これはほとんど全部回収されているといってもよろしいわけでございます。  千人未満の約千社につきましては、こちらから通信で、郵便で調査を依頼いたしまして回収をするということでございまして、その内容を一々チェックをしておるわけでございますけれども、未回収が相当ございまして、先ほど御指摘がございましたように、一ときは約三割という状況であったわけでございますが、やはりその内容を、なぜ回収できないかという関係を再調査をするということで克明に調べているところでございまして、やはり小さい会社、あるいは戦後、最近設立されたというような会社につきましては、いわゆる退職手当の場合には、二十年、三十年在職した者についてどういう規定、どういう金を出すかという点がございますので、やはり二十年、三十年たったような会社が整備されておるということになるわけでございますので、中には、そういうように比較的最近立った、そういう規定の整備されてない会社などもいろいろございます。したがいまして、そういう回収状況と、何ゆえにそういう回答ができないかという点までもすべて詳しく現在も調査しておるということでございます。
  174. 大出俊

    大出分科員 そこで、きょうは最初でございますので、四十五年に私、この問題を取り上げて、人事局の皆さんにたいへん御無理を申し上げまして、来年と言わずに本年度予算の差し繰りをやって調査に入ってもらいたい——だいぶ粘った記憶があります。このときに、衆議院の私の所管内閣委員会におきまして、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議ということで、附帯決議がついております。この中で「国家公務員の退職手当の改善についても速やかに検討することとし、その際右の事情をも十分考慮するよう」ということで、要望までついて附帯決議ができているわけでありますが、そこで、先ほど申し上げたように、長い年月放任されてきた形になっておる。この間に、一体公務員の退職手当というのは、これはモデル賃金を中心にして算定をした数字がございますが、国家公務員のモデル賃金を、四十五年の四月現在で、高校卒、勤続三十年というところを例にとりますと、この場合に賃金は八万五百円。ところで、同じ身分は公務員でございましても、三公社五現業のような場合に、郵政職員なんかは七万四千九百円、こういう賃金であります。いずれにしても、三十年勤続、この退職手当を算定をするとなりますと、モデル賃金で七万五千円から八万円、こういう数字になる。ここで計算をいたしますと、八万円をとりましても、掛ける四一・二五、こういう数字になります。これは退職手当法にございます普通退職の退職比率、これを乗じたわけでございますが、そうなりますと三百三十万、こういう金額になる。三十年勤続で、高校卒、八万円というモデル賃金を例にとりました。ということになりますと、いま申し上げましたのは四十五年四月でありますから、この前の四十四年の四月に民間賃金の中における民間の退職手当、これは中労委等がモデル賃金の形で出しておりますモデル退職金、ここあたりの数字を見てみますと、民間の場合にはおおむね四百五十万円くらいになる、三十年勤続で高校卒という計算をいたしてまいりますと。計算の方式は、時間がありませんから省略をいたします。そうなると、いいほうをとって三百三十万という三十年勤続、高校卒の公務員と同じ条件にある民間の従業員との間に、百二十万から百五十万くらい金額にして差が出てくる。つまり、民間のほうが高い、こういう数字が現にある。これとても、私に言わせれば、正確な民間の退職金が計数上出ているかどうかに大きな疑問を持っている。にもかかわらず、こういう差が出てきている現実であります。いま使用者側の趨勢としては、さっき申し上げましたように、できるだけ大幅賃上げという形の中で条件をつけて、退職手当算入の比率を低めるような傾向に今日ある。しかし、それでもなおかつ公務員の賃金との間にこういう差が出てきておるということになるとすると、やはり調査結果というものは尊重しなければなりませんけれども、上げなければならない趨勢にあるという点についてまず私はお認めを願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  175. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 ただいまお示しのケースでございますけれども、高卒、三十年の場合で四十一月分、給与は大体八万円という場合に三百三十万というお話でございましたのですが、これは想定をされているところが、三十年勤続しまして退職する場合の等級が大体五等級ぐらいというふうに想定されているように考えられます。しかしながら、一方におきまして四等級で退職するケースも相当ございまして、そうなりますと約百万円ぐらいさらに上回るというような形になるわけでございまして、そういう関係で、先ほどお示しの、かりに民間の四百五十万円というものがありました場合に、それがこちらのほうの退職者の何等級で退職している人に対応すべきものかという点が問題だろうというふうに思います。  そういう意味合いで、やはり退職金の調査の場合には、民間のほうで退職する場合にどういうふうな金額が出ているかというのとあわせまして、公務員のほうでも退職者は一体何等級ぐらいで何円ぐらいで退職しているかというほうの、相互の関係が官民比較のしかたが重要でございます。そういう意味合いで、現在民間のほうの調査をやっておりますのとあわせて並行しまして、公務員のほうにおける退職者が何等級で最終俸給が何円ぐらい、どのくらいの金額をもらって退職しているかという関係も同時に調査をいたしておりまして、その関係を両者を突き合わして判断をいたしたいというふうに考えております。
  176. 大出俊

    大出分科員 調査をしている人事院からすれば、いまここでどういうことにしなきゃならぬというようなことをまだ言いにくいだろうとは思います。だから、質問にお答えになっていないのですが、私のほうもここに数字がありまして、全く数字なしで言っているんじゃないんで、御指摘のとおり五等級ぐらいのところであります。ありますが、つまり、その辺のところを中労委の側の状況から見て——その辺のところを中労委とも話しているのですから、大体この辺だろうという向こうさまの言い方も聞きながらあわせてものを言っているわけでございますから、そう的はずれにものを見ているわけじゃない。だがしかし、全体を計算してみますと、人事院のようにあらためて調査したんじゃないが、四十四年以来、推計がまん中二年ぐらい入っていますが、今日までのものを洗ってみて大体当てはめていってみるということになりますと、いま申し上げた百二十万あるいは百五十万、これだけの差が出ないにしても、おおむね八十万見当の差には、相当内輪に見て、なる。こういう数字もある。いまここでこまかく数字をあげて申し上げている時間がないから申し上げてないのでありますけれども、したがって、概略のところを見て、やはりさっき申し上げたようなところにくる、こういうふうに私どもは見ている。だから、人事院の調査がもしそうでない結果が出るとすれば、これはまたその結果に基づいて——もっとも、人事院が門外不出でいまやっておられるものを、それはこうなっておるんだろうなんて言って、そうですなんてうっかり答弁されると、おまえさん、その数字どこから持ってきたと言われますから、そこまで言わないように実は気をつけながらものを言っている。だから、皆さんの手の内を知らないで言っているわけじゃない。だから、私はこの辺で、口あけだから、まあ上げざるを得ぬという感じですというぐらいのことは、尾崎さん、あなたのことですから、言うていただいても——他にかえがたい給与局長なんですから、これは言っていただいて悪くないと私は思うのですが、いかがですかね、くどいようですが。
  177. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 ただいま申し上げましたように、民間のほうの集計を急いでおりまして、それに対応するこちらのほうの、公務員のほうの退職者の集計も、また人事局と御相談をして集計いたしております。その両方を突き合わせまして、その結果がいかがな感じになろうかという点を急いで両方の結果を出して突き合わせてみたいというふうに思っているところでございます。
  178. 大出俊

    大出分科員 まあここまでまいりますと、山中長官、いささか政治的なことになってくるのですが、少し例をあげますが、実は悪い癖が大蔵省にありまして、主計局あたりにおいでになるというと、事、金のことになると、さいふの口をしぼっているわけですから、なかなかものを言いたがらない。貝が口をつぐんだように何にも言わない。そこで、陰のほうでもって、いやそれはいけないとか、ちょうちんとか、文句ばかり言っているのですね。ところが、そこにいた人が、私もよく知っている人がいるんだけれども、ほかに行っちゃうと、いや、退職手当は上げなくちゃいけないよ−−そういうふざけたことを、大蔵省主計局あたり言うちゃいかぬですよ。だもんだから、人事院にすると、うっかりものを言うと、うしろのほうに妙な方々が、しゅうと、小じゅうとみたいにいて、うるさいものだから、なかなか言おうとしない。そういう牽制機構になっちゃいかぬと私は思う。大蔵省といったってお広うございまして、主計局でないほかのほうの知ってる人に聞いてみると、いや、まあ十何年おっぽりっぱなしにされていたのではたまったものじゃない、ちったあ上げてくれなくちゃ困ると言う。ところが、主計局と名がつくと、これはじいっとして、タニシが口をつぐんだようなことを言っている。そういうことじゃ困るので、やはりそれは、人事院というところは——もっとも、法律上、退職手当は人事院の所管じゃないから私は困るんだが、そういうところをあまり牽制をしてもらいたくないのです。その点は、これは政治的な意味では総務長官所管でございますから、私も個々にいろいろ当たっておりますので、ひとつそこらは気を配っていただいて、人事院がそういうことを気にしないで作業もできる、集計もできる、こういうふうに私は長官には特段の御配慮をいただきたいのですが、いかがでございますか。
  179. 山中貞則

    山中国務大臣 これは本来総理府人事局において調査すべきところを、その調査事務について人事院に御迷惑をかけておるわけでありますから、その集計作業、それから私どもに御報告をいただく過程において、どこからも圧力のかからないように私どもがしなければおかしい話であって、集計というものは物理的にさるべきものだと思います。私どもの手元に参りましてから、あらためて人事院はそれを踏まえて人事院なりの意思表示をされることも自由であります。また、私どもはそれを受け取って、国家公務員の全体をつかさどる人事局のあり方として、これはやめるときの手当でありますから、それをどのように国として国家公務員に報いる道を講ずべきが至当か、その額はさしあたり幾らにすべきかという点については、冷静に客観的に検討して国政の上に反映させるつもりであります。したがって、私の段階においても、別段、大蔵省の雑音等によって、機械的になされた統計の結果を曲げるというようなことはあり得ないことであります。
  180. 大出俊

    大出分科員 これは念のために申し上げたのですが、そこで、これは大蔵省の方にもこの席へ本来ならば来てもらって、数字的に詰めたいところなんでありますけれども、時間もありません。この国会でまた引き続き方々でやっていきたいと思うのであります。  公務員になって、高校卒をいま例にしておりますけれども、五十六、七ぐらいになりますと、年間の給与にしてどう安く見たって大体二百万ぐらいはかかるのですね、年間の給与を個人単価でいきまして。そうなりますと、いま方々の職場の中で、退職手当法が何とか改善をされるのではないか、そうしたらやめたい、第二の人生をと、こう待っておる人もたくさんおる。大蔵省は、いろいろ考えてみても、退職手当を上げたからといって、一ぺんにやめてしまうわけではない。まして、年間二百万ぐらいの給料を取っておる方々がやめていくわけでありますから、そうなると、ふところ勘定をしてけしからぬという筋合いのものではない、国家財政という面から見ても。だから、現に数字の上で民間と官業の退職手当に差がある限りは、やはりすなおに上げることに賛成すべきである。方々の官庁の皆さんが、上げるべきだ、大蔵省の主計局を除いては、大蔵省だって、上げるべきだと言っておる人が大多数で、人事関係をやっておられる方はみなそうです。いまそういう趨勢にある。  それはなぜかというと、これだけ物価がどんどん上がる、こういう状態の中で、民間と比べて、民間は動きが非常に早い、たいへん上がっていったり下がっていったり、いろいろする、波がありますけれども、それらをやはりながめていて、何となくこうなってくると、われわれの退職手当を上げてもらいたいという気になる、あたりまえだと私は思う。そういう趨勢に今日ある。給与というものに対して、いろいろな角度から論議をされてまいりましたが、ここ数年来、退職手当にしぼられてきておる。だとすると、公務員の退職手当に手を入れろというたくさんの意見あるいはそういう雰囲気が出てきてもふしぎではない、こう思うのでありますが、ここのところは、尾崎さん、どういうふうに分析でございますか。
  181. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 確かに、現在の公務員の人員構成から申しますと、非常に高年齢化してまいりまして、平均年齢も四十歳近くなってまいっております。そういう関係で四十歳ぐらいの人が相当多いという関係だろうと思うのでございますけれども、最近退職手当をいろいろ問題視するという関係がふえてきたように観察をしておりまして、たとえば人事課長会議あるいは職員団体からもいろいろ要望がございます。そういう意味合いで、人事局はもちろんでございますけれども、私どもとしても、この関係についてよく調査をいたしまして、現状の認識を正しくしておくということがやはり必要かというふうに考えているところでございます。
  182. 大出俊

    大出分科員 時間があと四、五分しかありませんから、もう二、三点申し上げてあとに引き継ぎたいのでございますが、私は大蔵省を目のかたきにしているわけじゃなくて、大蔵省の主計局だけを目のかたきにしているのですがね。ほかのほうはみんな上げてくれと言っているのですから……。  そこで、もしそういうことをおっしゃるなら、ここに一つ例がある。あとから場所を改めてこまかくものを言いますが、これは大蔵省をおやめになって、日本住宅公団だとか、やれ首都高速道路公団だとか、こういう公団、公社にたくさん人が行っているわけですね。ここのところの方で、元建設省の事務次官とか、こう名前が書いてありまして、これは日本道路公団でございますが、前田さん、尾之内さんなんというのは、みんな事務次官でございます。実はこういう方々の退職金と職員の退職金の比較がここにある。職員の退職金は、これは公社、公団でございますからほとんど公務員に準じております。ところが、役員の退職金はそうじゃないのですね。あまりといえばべらぼうな退職金だらけなんですね。私もいささかあきれているのですが、ここに一つ人事院に関して——人事院というのはやぼな役所で、あんまり天下れない役所なんですが、それでも、ここに吉岡さん、これは元人事院の事務総長さんですね、この方の退職金二千百二十一万六千円というのがここにある。まだおやめになっていないのでしょうな。だから、試算をすればということなんでしょうが、これは日本消防検定協会の理事長さん、吉岡恵一さん、この方が九十六カ月在職でございまして、そして報酬は月額三十四万円なんですね、九十六カ月在職をして、この規定に基づきますと、退職金二千百二十一万六千円なんというたいへん高い方もあります。そうかと思いますと、これは一々あげてもしかたがありませんが、大蔵省の造幣局長さんがここにおいでになりますが、これは国際観光振興会、どうもあんまり聞いたことのない名前でございますが、ここの理事さんでございまして、千五荷四十万五千円なんという数字がここに出ておる。これはたくさんございますが、どっちを向いてもみんなたいへんな金額の方ばっかりで、大蔵省、農林省の方が一番多い。それから通産省。みんな千何百万円という退職金が並んでいますがね。こういうふうなところからも、公務員の退職金が上がりますと、一般職員の退職金は当然これに準ずるのですから上がる。というふうなことで、公務員のみならず、公社、公団の関係の職員の方々からも、たいへん強い退職金の引き上げという要求が出てきている。自分のとこへ天下ってくる方々の退職金のべらぼうなものをながめている。渡り鳥なんていって、一つのところから二千万ももらって、またほかへいってまたもらうなんていうところで働いておりますからね。だから、ここまでまいりますと、公務員のみならず、政府機関に準ずるところ、いずれもそういう空気に今日なってきている。  そこで、人事院のほうとしては、もうちょっと詳しく御説明いただきたいのですが、これからどういう手順で進めていこうとなさっているか。私は、できればこの国会で一つのけじめをつけていただきたい、こういう気がする。そのためにこれは奮闘努力をしなければならぬと思っているのでございますが、その辺のところを人事院の総裁から——いま調べておられまして、いつごろまでにどうして、そこから先どういうふうにする、そしてまた総理府のほうで人事院に作業をお願いを申し上げたとおっしゃっておられますが、その結果をどういうふうにしようとなさっているか、いつごろまでにどうされるつもりかという点について、もうちょっと詳しく御説明願いたいのです。
  183. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいま局長からお答えしましたような段取りで、もうだいぶん集計も進んでおります。いずれ結果が出ると思います。結果が出ましたならば、これは人事局から頼まれた形になっておりますから、当然、人事局にこういう結果が出たぞということを申し入れて、それでおそらく人事局あるいは総務長官のほうで適切なる案を御立案になるだろう、簡単に段取りを言えば、そういうことになるわけであります。
  184. 大出俊

    大出分科員 総務長官数字が出た、人事局にいった、総務長官の手元にいったという場合に、これはまあ中身としてはいろいろあると思いますが、私は、やはり早急に何らかの手を打っていただきたいと思っているのです。やめようと思って待っている人もいるのですから。ここ数年来、公務員の職員団体の方々もいろいろ動いてきておられますから、特に職場では、ある一定の年齢へいっている方からは、そういう気持ちもたくさん聞く。手紙が参りましたり電話で聞かれたりいたしております。そういうことですから、せっかく調査をされたんだから、できれば早い時期にそのめどを与えてあげたい、こう思っている。したがいまして、そこらのところの早急な措置が必要だと思うのでありますが、総務長官のほうとしてはどういうふうにお考えになりますか。
  185. 山中貞則

    山中国務大臣 これは目的がなければわざわざわずらわしい調査なんかをお願いするわけはないんですから、最近の民間の退職手当、退職金等の実情にかんがみて、公務員の退職手当がこのままではどうも問題があるのではなかろうかということでお願いをしておるわけです。その結果が出ましたならば、問題があるならば、直ちにその問題を直す措置をとるためにやっているわけでありますから、その行動は当然起こします
  186. 大出俊

    大出分科員 人間長生きするようになりましてね。最近の公務員の皆さんなどをこうながめてみましても、ここに一つ数字がございますが、つまり老後の必要経費という趣旨なんです。平均余命数が、男の人は五十七歳、女の人は五十四歳の夫婦の場合を例にとると、男が十八年、女が二十四年、ここから先生きるというわけですね。つまり、男が五十七歳、女が五十四歳の御夫婦、こういう時点で平均余命数その他で計算をしますと、普通で男が十八年、女が二十四年、これから先まだ余命があることになる。そうなると、それだけ生きていかなきゃいかぬことになる。となりますと、まあ六万円というのが必要経費だとした場合に、これに、一年ですから十二カ月をかけて、二十年生きられるとすれば二十年かけますと、千四百四十万円がやめる年から必要だということになる。この中で実際には預貯金をする、あるいはいまの公務員の場合にかりに共済年金が月に三万円程度つくとする。年に五分五厘で計算をしてそこいらを全部差し引いてみる。それでもどうしても四百六十万円ぐらいの退職金をもらわなければやっていけない、こういう計算が出ている。そこらのところを考えてみると、そういう面から見ても、いまの公務員の退職金というのは、民間を離れて考えてみても、いささかもって低過ぎる。四百六十万円ぐらいのことにはならなければ生きていけない。だから、そういう生活の実感からくる公務員諸君の普通退職手当をこの際上げてもらいたい。もちろん、そうなれば、勧奨によるものその他についてももう五割ぐらい増してくれという意見になりますけれども、もうそういう時期にきている、世の中の今日的生活の実感が。そこらのところもこれはとらえていただきたいというふうに思いますので、念のために、最後に、そういう時期なんだから、民間民間ということも必要だけれども、皆さんが所管をされる公務員の生活の実態から見て、この際改善しなければならぬ筋合いだという点について、私はそう思っているんでございますが、もう一言ずつひとつ御回答を賜わりまして終わりにしたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  187. 山中貞則

    山中国務大臣 大体そういう感触でおります。
  188. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 全く同じ気持ちで、まあ調査にあたっては、いい数字が出ればいいがなあという気持ちを持ちながら、厳正なる調査をいたしております。
  189. 大出俊

    大出分科員 それじゃひとつ、公務員の皆さんのたいへんな熱願でございますので、国会の衛視さんにお目にかかりましても、職員の方にお目にかかりましても、そういう話がいまたくさん出ている。現実がそうでございますから、ひとつぜひいい数字を出していただきますようにお願いをいたしまして、終わります。
  190. 森田重次郎

  191. 沖本泰幸

    沖本分科員 私は、この時間は主として同和問題に関しまして総務長官に御質問をしていきたいと思います。  まず総務長官にお伺いいたしますが、去年までは、実態調査をやる、こういうことで、措置法に従って実態調査を進めていくことなんです。きょうまでできるだけ各省のお考えをいろいろ伺ってきました。そういう上からは、昨年は、各省とも、総理府実態調査を待って、それに従って具体的な方策、政策を立てていく、こういうふうなお答えが非常に多かったわけです。特に自治大臣は、そういう点についてそういうお答えが昨年はあったわけなんですが、見てみますと、各省ともまちまちである。まだ見ていないという方もいらっしゃるわけです。こういうところなんですが、実態調査をおやりになった結論としては、どういう点がおもに出てきたか、そういう点についてお伺いしたいと思います。
  192. 山中貞則

    山中国務大臣 実態調査は、これはことしの予算調査をしたわけでありますから、大体それの集計が終わって、各省庁でいま集計分析をしておるところです。したがって、四十七年度予算要求は昨年の八月末いたしておりますから、四十六年度予算調査費がついたといっても、その結果を踏まえての予算要求はできなかったわけです。したがって、この調査の結果というものは、長い目で見ると、十カ年計画の遂行にあたって反映させなければならない問題点、そして四十八年度予算において、その姿勢として初年度にどのような姿勢をとらなければならないか、そういう問題に直接反映してくる調査結果になると考えております。
  193. 沖本泰幸

    沖本分科員 そこで、この法律が四十四年の七月にできましたときに、十二項目に分かれた附帯決議もあったわけですし、その附帯決議に従って各大臣が御答弁になっていらっしゃる。そういうものを踏まえて完全実施をはかっていくということが当時からの内容であったわけです。しかし、ふたをあけていきますと、年々予算の裏づけが少ない。そういうことで、だんだんと地方自治体にしわ寄せが来ておる、そのため混乱がだんだんひどくなってきている、こういうふうな地方の現状にあるわけです。こういう点を比べて考えていきますと、これは十年の時限立法ですから、総務長官がおっしゃるとおりに、四十八年度要求で、実態調査に従った具体的なものを打ち出していって要求をしていくということになりますと、はたして完全実施ができるのかできないのか、さらに延長しなければならないのじゃないだろうか。延長するにあたっては、たいへんな困難がまた出てくるのじゃないか。はたして法律どおりの、企図したところの結果が得られるのか得られないのかということで、結局、お祭り騒ぎをやってみて何にも得るものが、全然ないということはないですけれども、期待したほどのことは全然なかった、こういうことになるのじゃないかということを私たちは憂えるわけですが、そういう点について総務長官のお考えを伺いたいと思います。
  194. 山中貞則

    山中国務大臣 この十カ年計画は、完全にその期限内に、目標を設定したものを完成しなければなりません。しかも、私どもとしては、努力目標ではありますが、現在順調に進捗しておると見ております。前期五カ年間に、おおむね予定いたしております事業の三分の二は消化するような努力をしたいということに向かっていま進んでおりますので、十カ年計画の完遂ということは問題なくできると考えております。
  195. 沖本泰幸

    沖本分科員 これは予算面でできるとお考えなんですか。現在のところ、国庫補助の対象も五分の四に改めてほしいというような要求がだんだん地方自治体のほうから出てきているわけです。そのためにいま地方自治体が非常な混乱を起こしておる、これも事実なんです。この点は総務長官よく御存じのはずなんですが、こういう点も解消して、だんだんとあとになるほどよくなったというふうな結果が得られるのか得られないのか、その点はいかがなんですか。
  196. 山中貞則

    山中国務大臣 これは補助率も、四十五、四十六、来年度と、それぞれやはり補助率のなかったものを設定し、あるいは補助率の一般的なものを引き上げ、あらゆる措置をとっております。住宅などは、沖繩振興開発の補助率では一番、本土にあるあらゆる例をとったのですけれども、同和についてはまだ及ばない点があるという点が残っておるぐらい重点を置いて補助率等も配慮をしておるわけであります。また、融資等の問題もこれは無視できませんので、ことしから新しく農林漁業金融公庫に八億の同和ワクを設定する、あるいは中小企業のために中小企業保険公庫のほうに五億の予算を準備してその運営に資するというようなことで、直接の補助率ばかりでなくて、起債等についても百八十億ぐらいを予定しておこうとか、いろいろなことで、総合的に地方自治体がこれをだんだん熱心にやってくれておりますので、この期待に沿い得るような内容予算に進んでいっておると考えますが、なお、地方において熱心な自治体等において超過負担等の問題がある、あるいはまた、単価等において地方実態にそぐわない単価設定の補助率等がなされておる、こういう問題点があることは気がついておりますので、今後さらにこまかく具体的な問題点をえぐり出していって、少しでも前進できるように努力したいと思います
  197. 沖本泰幸

    沖本分科員 こういう席でお話しするのもどうかと思うのですが、総務長官お話ししていると、立て板に水で、どうも長官お話のペースに巻き込まれてしまって、そうかなあというような考えを持ちそうな気になるのですが、お話の中で、総合的にこの問題を解決していく、こういうお話でもありますし、熱心な地方自治体ががんばっておる、こういうふうなお話もいまあったのですが、これは熱心ではなくて、要求に応じ切れなくて四苦八苦しているのが現状なんです。それをやはりスムーズに進めていくには相当大がかりな予算措置を講じていただかなければこれは消化できない、こういうことはもうよく御存じじゃないかと思います。そういうことのために、いますでに話題になってきているのが窓口問題、窓口を一本化して要求してくれとかなんとかいうことで、紛争がだんだん広がっていっている。だんだん要求に応じ切れなくて首長が逃げ出しているというふうな事態が地方自治体であっちこっちに起きてきている。  それと同時に、これもまたおわかりだとは思うのですが、いわゆる対象地域というものは、非常に社会環境が悪化している地域であり、生活は非常に悪い、こういう地域であることには違いないわけです。そうしましたところへ、特別措置法に従った仕事をしていきますと、ある一番状態の悪いところへ局限されたものでいいものがぼっとできてくるということになると、その周辺も社会環境というものはあまりよくはない、こういうことになりますと、対象地域外のところから、こういう措置に対して反対意見がだんだんできてくる。どうしてあの人たちだけがよくなるのだろう、こういうふうな別な差別が起きてきておる。むしろ地方自治体のほうではそういうものを利用して、むしろそういう考え方をあおって、あの人たち要求がきついからこういうことになるのだ、国のほうがちっともめんどう見てくれない、こういうふうなことで、すでに全国的にこの問題が起きてきているということになると、特別措置法で企図したものとは逆のものがだんだんいま進行していっている、こういうことになるわけです。こういう点について、たとえて言うなら、きのうも文部省にはお話ししましたけれども、一つの体育館なら体育館ができた、あるいは学校の体育館ができた、非常に完備しておる、そうすると、その周辺を取り巻くところの学校の体育館が設備が非常にまずい、よくないということになると、同和の地域だけがなぜそう恵まれるんだ、こういう形に変わってくるわけですね。そうしますと、差別をなくするために法律をつくって仕事をしていったのに、むしろまた差別がだんだん起きてくる。これはもうもっと強い感情になってそういう問題があらわれてきておる、こういうことも事実であるということになるわけです。それをそのままにしておくと、結局、差別感を応援して、より差別を起こさせるようなことになっていく事態を招いてくる、こういうことになってまいります。したがいまして、同和対策を考える以上は、対象地域あるいはその周辺も含めて対策を考えていただかなければ、差別感はなくならない。また、解放同盟の方々が言っておる問題も、われわれの要求を通してもらってよくしてもらうかわりに、周囲もよくしてあげなければ何にもならないんだということなんです。そういうことによって、結局、社会環境なり社会福祉に恵まれない地域をうんとレベルアップしていくことになるんじゃない、だろうか。それであれば、われわれは皆さんの生活をよくするために一生懸命戦っているということになるじゃないか、こういう意見もあるわけです。そういう点を各省含めて総合的に総務長官のほうでお考えになるわけですから、そういう問題に対する対策はどういうふうにお考えなんでしょうか。
  198. 山中貞則

    山中国務大臣 まず一義的には、やはり地区内の劣った設備あるいはおくれた条件等を、すみやかにその地域でない地帯と遜色のないようにしてあげるということが第一の目的だと思うのです。しかし、ただいま言われましたように、それが場合によっては、その周辺が区別のつかないような地域であって、やはり同じようにおくれていたんだという場合に、同和地区内だけが特別の補助率とか助成によってきれいになる、そうすると、そこにおいて初めて周囲の人たちが、あらためて差別的な問題意識を、逆に取り残されたために持つということも、これはやはり重大問題を提起することになります。  土地改良等については、いままで混益率等についてきびしい条件をつけておりましたけれども、やはり周辺の農民の方々と、その地区内の一定の混益率以上のところだけを補助率を高くした土地改良等をやりますと、やはり受益者負担というものがみんなあるわけですから、そういう問題点があるということで、周辺部まで広げて混益率の比率を低くしたというようなことを昨年いたしました。  その他の地域についても、やはり道路とか、いまおっしゃったような体育館というような問題がありましょうから、これは個々の地方自治体の狭い分野の政治問題としてはやはり大きな問題になっているんだろうと思います。ここらの点は、今後、ただ地域内だけのことじゃなくして、その地区内のいろいろな施設が整うことにつれて外部に及ぼす影響が、心理的な問題で逆に作用をもたらしていくようなことのないように、その周辺地区につきましても研究していきたいと思います。
  199. 沖本泰幸

    沖本分科員 それから、せっかくの御調査なんですけれども、解放同盟のほうでは、この調査そのものは、結局、同和地域の方々要求を十分に盛り込まれた調査ではない、ただ申しわけ程度の調査ではなかったのか、また、そうであった、こう断定している意見もいろいろあるわけです。そういうものを比べて考えていきますと、いわゆる同対審のときの調査と今回の総理府調査との比較というものが、どの程度変わっておったか、あるいはそれがどういう状態でいま実態が出てきたのか、数字的なものでなくて、ひとつ具体的な形のものでどうあったかという点を、長官でなくてもけっこうです、御担当の方でもけっこうですが、その内容を少し御披露していただきたいと思うのです。
  200. 山中貞則

    山中国務大臣 一応私が答弁いたしますが、四十二年に一応調査はいたしておったわけでありますけれども、そのときは、これは地方自治体の財政的な立場からも当然だと思いますが、何も特別なこともしてくれないのに、報告だけ、調査だけ求められた、物入りだという気持ちも若干あったようで、私は完全な調査じゃないと見たものですから、そこで、答申を踏んまえた特別措置法なり十カ年計画なりというものが具体化されて、地方自治体も、はっきりと、そういうものをやった場合に、自治体の財政負担を中心とする行政への影響はこういうことになるということがわかった後、もう一ぺん悉皆調査をする必要があるということを考えて、ことしの予算調査に踏み切ったわけであります。その結果は、いまだ最終的に集計、分析が終わっておりませんので、まだお答えするまでにはきておりませんが、一応事務当局から答弁はいたさせますけれども、午前中、社会党の楢崎委員から、この調査についてもなお協力をしなかった県の名前が幾つかあげられました。これは私にとっては実に窓外なことでありましたので、午前中の答弁として、そのような同和地区が存在しているのになおかつ調査に応じてない、調査書を出していない府県については、予算がなくとも、何とかくめんをしてでも、四十七年度にもう一ぺんそれらの県については調査するという答弁もいたしておりますので、そのような手落ちがあったことは、私としてはまことに申しわけない調査結果に終わったと思っております。しかし、大体今回の調査は、条件その他が明確になっておりますために、地方自治体としても、きわめて全体としては調査に好意的であり、協力的であり、その結果も非常にいいものが得られたと私としては見ておるわけであります。
  201. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 昨年総理府で行ないました調査のうちで、現在まで判明しておりますのは、一般的な基礎資料の調査でございます。基礎資料と申しますと、たとえば同和の地区数、世帯数、人口数あるいは就業状況、こういうようなものの調査が現在まで判明いたしております。  数字をちょっと申し上げますと、地区数は、昨年の調査では三千九百七十二地区、これは、ただいま総務長官から御答弁のございました報告のあった分でございます。四十二年の調査では、これが三千五百四十五地区でございましたので、地区数といたしましては、前回に比べて一二%増加いたしております。世帯数につきましては、二十七万九千百三十七世帯、四十二年調査時点では二十六万二千三百四十三世帯でございましたので、これに比べまして六%の増、こういうことになっております。ただ、この点につきましては、四十二年のときは、調査報告の中に、五世帯未満の地区を除く、こういうことがございましたので、この地区数、世帯数とも、絶対値だけで必ずしも対比できない。今回は五世帯未満につきましても報告をとりましたので、その意味でも若干増加することがあったかと思います。人口でございますが、百四万八千五百六十六人、前回の調査では百六万八千三百二人でございましたので、これは約二%の減少、こういう状況に相なっております。  なお、そのほか、ただいま総務長官が申し上げました事業量の調査、これが今回の調査の眼目でございますけれども、これにつきましては、各市町村の報告につきまして、現在、厚生省、文部省、建設省等実施官庁におきまして内容を整理検討いたしておりますので、もうしばらく余裕をいただきまして、その結果につきまして検討を加えたい、かように考えておる次第でございます。
  202. 沖本泰幸

    沖本分科員 これは結局総理府が独自に一番基本的な問題として調査をお進めになったわけですが、これとは別に、部落解放同盟なら部落解放同盟から、現状のいろいろな実態というものを私たちいろいろ伺っておるわけです。そういうものにつきまして、総理府がつかんでいらっしゃる部落解放同盟なら部落解放同盟からのいろいろな要求とか実態と比較をしてみて、この調査がどの程度の確実性、あるいはそういうものの要求を満たすための内容的なものが出てきたか、そういう点について、むずかしいお話ですから、ちょっと表現のしにくい点もあると思いますけれども、たとえて言うなら、そういう比較したもので今後どういうふうな消化ができるか、こういう点についてお伺いしてみたいと思うのです。
  203. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 お答えいたします。  私どもが昨年調査いたしました調査内容につきましては、ただいま総務長官からも御答弁ございましたように、同和対策事業につきましての各地方団体の熱意が非常に高まってきております。また、その内容につきましても、各県、市町村に非常によく周知されてまいりました。したがいまして、今回の調査は、私どもの分担でございます基礎資料に関する限りは、最も正確に近いもの、かように考えております。ただ、午前中楢崎先生からも御質問がございましたように、同和地区がありながら報告していないという県が若干ある、こういう御発言がございました。したがいまして、その点につきましては、あらためて再調査と申しますか、補完調査をする必要があるかと思いますけれども、報告のありました限りにおきましては、最も正確に近いもの、かように考えておる次第でございます。
  204. 沖本泰幸

    沖本分科員 この同和対策事業特別措置法は、結局、差別問題解決のためにあるわけですから、その対象となる地域なり人口なりというようなものは対象分があるわけですね。そういう観点からいきますと、たとえて言うと、部落解放同盟が出しております、全国水平社創立五十周年記念の「解放理論を部落大衆の手で」、こういう集会が七一年五月にあったわけです。その中で、「要求綱領」確立のたたかいをとおして、部落解放運動が今日到達した、1差別の本質、2部落差別の存在意義、3社会意識としての差別観念、という三つの命題について、部落実態、差別の現実を分析する中で明らかにすることである。」「この部落大衆自らの力でつくった「要求綱領」が、総合計画の基本となるとき、はじめて要求実現のたたかいは前進する。とくに、四二年度政府調査がずさんであるため、その長期総合計画なるものが、全く問題にならない現実のなかで、とくに「要求綱領」のしめる位置は大きいといわねばならない。」こういう要求によって、いま政府が現実に実態調査をしていらっしゃるということになるわけですから、その要求というものが総理府の手元にあるわけなんですね。それと比較をして、今度実態調査をなさった面が実際に生かされてこなければならないということになってくると思うのです。そういう面を考えていまずっと御質問をしているわけなんですけれども、その調査をおやりになっている実態そのものは、「この調査項目をみるとわれわれの要求は全くもりこまれておらず」こういうようなことで、申しわけ的な調査で、これは要求どおりにはなかなかいかぬのじゃないかということがここには示されているわけです。  そういう点をいろいろお考えになっていただいて、長い間の差別問題を解決するための特別措置法なんですから、当然その中から要求が出てくるはずなんです。その要求を踏まえて、要求が解決の方向に満たされる、こういう形で進めなければならないと私は考えるわけです。こういう点について総務長官のお考えを伺いたいと思います。
  205. 山中貞則

    山中国務大臣 私たちは、単一の国家、単一の民族、単一の言語、単一の人種といいますか、そういうことによって民族のバイタリティーというものを持っていると思うのです。その中で、やはり同和問題というのは、いわゆる自分たちは差別されていると思っておられる方々が、もう差別はないと思われる日が来なければ、私たち日本というものは真の前進をしているとは言えない、諸外国に向かって大きな顔はできないという問題だと思うのです。ですから、やはりこれは自分たちが差別されているのだと感ずることがなくなってきたということが最後の目標でなければなりません。そこに初めて私たち日本民族というものの結合性というものが私は生まれてくるのだろうと思います。したがって一斉調査をあらためてやりましたのも、そういう御要請が現実に沿っていないぞと言われてやったわけでありますから、その調査の結果を踏まえて得たものは、それらの究極の目標に向かって希望し、要請し、訴えておられる方々の意向に沿うような発展をしなければ何の役にも立たぬということを考えておりますので、御趣旨と同感であります。
  206. 沖本泰幸

    沖本分科員 そこで、私の申し上げることは蛇足的な意見になるかもわかりませんが、先ほど沖繩の例をお引きになったわけですけれども、部落解放同盟でも「沖繩県の完全復帰と解放運動」、こういうものをあわせて連動をやっておるわけです。その中で言っていることは、「沖繩県の現実を差別としてとらえることができるかどうかである。薩摩藩の支配、明治の琉球処分はいうまでもなく、明治以来の歴代政府による、差別と搾取と分裂支配のその結果が、アメリカのアジア侵略のための核基地とさせ、平和をおびやかされるどころか、人権をふみにじられ、自由を全く侵害されていることは、不十分ではあるが報道されているところである。」     〔主査退席、大村主査代理着席〕  これが同じ立場に立って差別問題としてとらえてこの連動に結びついているということになるわけです。その最も典型的なあらわれ方が、沖繩県から他府県に来ている人たちの現実ではないだろうかという点、大阪、兵庫で多くの沖繩県民が差別され、生活を破壊されている事実を見るとき、また、労働力の不足とともにその出かせぎは年々ふえている、こういうことが新聞で伝えられるところである。こういう点を見ると、やはり同じ立場に立たされているということが言えるわけです。五月十五日に沖繩復帰を見るわけであり、総務長官もテレビあたりでは相当前向きの御発言なんかいろいろ私伺っておりましたけれども、沖繩は異国に支配されて二十数年、こういうふうな表現で、明るく迎えてあげよう、こういうことで、いま国民的な大きな課題であり、いま政府が取り組んでいる一番大きな問題なんですけれども、その沖繩は百万なんです。それで、解放同盟が、われわれの兄弟よ、こういっている中身は、三百万ということが示されております。ということになると、日本の国土の中でその約三倍に近い実態があるということになり、同じ問題が存在するわけです、同じ民族の中で。そうして江戸時代からずっとであり、明治四年の解放令から見れば百年であり、水平社が創立されてから考えますと五十年、こういう長きにわたっている問題を、あと十年、その中の数年を経ております、そういう中で解決しようということになるわけですから、そういう比較から考えていきますと、いま現実に政府沖繩に行なおうとしているいろいろな施策、こういうものの、実態的に見ても三倍の規模のものが現実に行なわれなければならない、こういうことになるわけです。農漁村にいらっしゃる方もあれば、都会に住んでいらっしゃる方もある、そういうことになりますから、そういう比較論から考えていきますと、非常に微々たるものであるということであり、たとえて言うなら、この政府予算というものは、大阪府や市が見ている予算よりもうんと低いということで、お話にならないという実例もいろいろ議論に出てくるわけです。そういう点から考えましても、こういう比較の上からとらえていくときに、もっとやっていかなければならない問題であると私は考えるわけですけれども、こういう点につきまして、この比較の上から、総務長官はどういうお考えをお持ちなんでしょうか。
  207. 山中貞則

    山中国務大臣 私は、沖繩と同和問題と同じレベルにおいて議論をしたくはないわけであります。ということは、沖繩は、慶長からの、ただいまお述べになりました徳川時代からの目に見えた差別、そして明治維新以降近代国家になって百年間の、第二次大戦後の異民族支配として、これは地域ぐるみ、県民ぐるみが、はっきりとした、いわば差別ということばであるならば、不満な状態に置かれたということがあるわけです。しかし、一方、この同和の問題は、これは地区があちこちにあるといっても、全体の総数が一カ所にかたまって、県とか地方自治体の形をなしておりませんだけに、同和問題というものは、その場所によって違いますけれども、やはり問題意識が明確でなくて、陰湿に潜行しておるという感じがしてなりません。したがって、やはりこれは精神的に心理的な要素が大きなウエートを占めている点も多分に否定できない性格のものがついてまわっておると私は思いますので、これらの問題は、人間の心の問題としてなかなかむずかしい点があるかもしれませんが、少なくとも同和地区人たちが、自分たちはもう差別はないという気持ちを自分自身で持たれる日まで、その日を一日も早くもたらすための努力というものが目標でありましょうし、沖繩の場合は、長いこと申しわけなかった、それに対して一億同胞が全部心を合わせ、力を合わせて、おくれている点があるならば、あるいは本土が償う点があるならば償い、援助の手を差し伸べなければならないという性格のものとして、これはやはり同一に論ずべき問題ではなかろうというふうに考えます。
  208. 沖本泰幸

    沖本分科員 もちろん私も同一に論じておるわけではないのですが、いわゆる物の面で行なう施策として考えていくときには、十年の時限立法の中でやらなければならないという一つのめどがあるわけです。そういう点から考えていくと、同じようにしいたげられた人たち、恵まれない人、あるいは長い宿命を背負わされる、そういう中からとらえていくときに、やはり同じような問題解決という問題点が出てくるわけです。そうしますと、そういう中で予算的な問題、施策の問題ということになってくると、沖繩に力を入れておることがいけないということではないのですけれども、沖繩に力を入れるのと同じように同和問題に力を入れなければならないという点が出てくるのじゃないか、そういう点についてはもっと微々たる問題に昇華されつつあるのじゃないだろうか、こういうことが非常に強いわけですね。そういう面からは、もっと踏み込んだものがこれから先出ていかなければならないと私は考えるわけです。  そういう点から見ますと、一、二の分科会を通し、各省のいろいろな対策を伺って回っておりますけれども、そういう中からとらえる点では、非常に感度が弱いわけですね。結局、受けとめるアンテナ、あるいはそのアンテナから受けとめる感度というようなものがきちっと合っていないといううらみがたくさんある、こう考えられるわけです。それで、先ほど言ったような特別措置法をやれば、どうしてその者だけによくするのだという逆の差別問題も今度出てきている。これも現実なんですね。ですから、やはり総合的なものが完全に実施されていかなければ、この問題はやはり未消化で終わってしまう、こういうことになると私は考えるわけです。  幸いにも、総務長官は、心の問題と、心理的な問題が伴ってきているということですけれども、各大臣に伺ってみましても、あるいは各省の担当の方々に伺ってみても、おことばの中から出てくるニュアンスというものは、同和対策事業特別措置法というものの中で差別をどうとらえていくかという点に大きな問題があると思うのです。結局、その差別とは何ぞや、どこから差別が起きているのだ、それで、差別の歴史とか差別の現状とか、そういうものが深刻に受けとめられていない。そのために、やはり精神的な問題を解決していく、あるいは物質的な問題を解決していくという上に大きな影響を起こしているのじゃないか。大臣はそのつどかわられますから、もちろん、たくさんのものの中からこのことだけ意識的にという点を強く要求することが無理かもわかりませんけれども、といって、法律は時限立法できちっとあるわけですから、そういう立場に立って予算要求なり施策の拡充なりというものが出てこなければならないと思うわけです。  ところが、各省の現状を見てみますと、具体的なものが全然ないということが言えるわけなんです。十年の時限立法ですから、いま各省がおっしゃっているのは、一番最初に申し上げたとおり、総理府の総合的な調査を待って具体的なものをつくる、こういう御意見もあるわけなんですけれども、この二、三の各省の答弁から考えられるところは、はたしてそういうものが総理府から示されてもできるのだろうかどうだろうかという点が非常に疑わしくなってくるわけです。ですから、やはりこの差別問題をとらえて、その差別に対する政府の基本的な姿勢、こういうことをやっていくという基本的な具体的な内容というものがすみやかに示されないと、予算に出てくるはずがないということになりますから、やはりその差別とは何ぞやというものの基本的なとらえ方、基本姿勢あるいは基本施策、こういうものが具体的に出てくるようにしていかなければならないと考えるわけです。  そういう点につきまして、総理府のほうで今度調査をまとめられたわけですから、当然その総理府窓口であり、総理府が各省に対していろいろな問題を持っていってやっていただくことになるわけですから、そういう観点から見ますと、各省に対して、この御調査になった内容を基本にして、さっそく早い時期に具体的な問題を、十年の時限立法に合わして、こうしなければならないという計画を出してもらわなければならない、こう思うわけです。それをとらえて批判しようにも批判の材料がないということになるわけです。わずかの予算しか見てないじゃないかということになるわけですね。この十年間で消化するためには大体これだけの金が要ります、それにはこうこういういうことを十年間でやっていく、それでことしはこういうことをします、いままでこれこれができなかった、そうしてこういうPRが足りなかった、これをPRもしていきますということになっていくと思うのです。ただ、法律があるから年間に大蔵省要求して予算を獲得しているにすぎないということになるのじゃないかと考えるわけですけれども、そういう点について、総務長官どういうお考えをお持ちですか。
  209. 山中貞則

    山中国務大臣 私が就任いたしましてから、各省庁大蔵省に対する予算要求の際に、全部、たっぷり二日かかりますが、各省庁責任者を呼んで、どうしてこのような要求の姿勢になったのか、このような内容になったのかを詳しく詰めて、足らざるところは、私のほうから、国会の質疑等で気がついた点がありますから、たとえば、先ほど話をしました農林漁業金融公庫に同和ワクを持ちなさいというのは、農林省の最初の予算要求に入っていなかったのですけれども、これは総理府の私の大臣室においてその指示をした結果、予算的に実現をしたものである。これは一例でありますけれども、そういう姿勢をとってはいるわけです。予算折衝の最中においても、復活折衝なり査定が出てまいりますたびに、私の手元に各省庁集計いたしましたものを集めて、そうして最終的に大体バランスのとれた年度予算として一応それでよかろうということを大蔵省に言うわけでありますが、しかし、ことしを振り返ってみても、やはりあとで精査してみますと、役所ごとに濃淡があります。やはりここはどうも落ち込みがひどい、あるいはここは要求のしかたが——やはりもう少し詰めて聞いておけば、予算内容としてもっと充実した要求ができたはずだという反省もまたあります。したがって、この悉皆調査の結果出ました新しい同和政策に対する問題点を全部踏まえて、来年度からの予算の展開にあたっては、総理府が中心となって、それがほんとうに生かされて、そして同和の人たち自分たちが差別されているという叫びをやめるというところまでが目標ですけれども、その叫びに対して、その他の大部分の国民が恥ずかしいと思う、われわれ、自分たちの恥だと思う、そういう意識を底流に持ちながら、申しわけないというそういう姿勢を持ちながら努力をしていくべき事柄であろうと思っております。
  210. 沖本泰幸

    沖本分科員 大体同じようなことをまた申し上げるわけですけれども、解放新聞なんかに出ていて内容から申し上げますと、「部落差別はない、ねてる子を起こすようなことをするな、というひとびとは、今日かなりすくなくなったようだが、まだまだ根強く残っている。部落問題についてあるていどの認識と同情をもっている場合でも、そんなに深刻な問題であるとは考えていないひとびとが沢山いる。しかし、ここに特集した数々の差別の事実は、部落差別の深刻さと悲惨さをひとびとに問いかけその再認識を要求している。むかしむかし、こんな差別がありました、というのではない、人間衛星が飛び国の経済が世界第二位、外貨保有百五〇億ドル突破という現在のわれわれのまわりにおこっている。」ということになるわけです。  そこで、これは頭のいい総務長官としてはこういうことはよく御存じなんですけれども、そこへ投げかけているわけですが、結局こういう「差別糾弾闘争は、事件中心主義でなく、完全解放の立場でたたかわねばならない、それには差別をどうとらえるかにかかっている。部落大衆のおかれている社会的立場が、差別を生みだしていること、そこで当然差別糾弾闘争を、市民的権利の完全な獲得という日常の要求闘争に発展させることである。」こういうことを述べているわけですね。ということは、結局、初めに言ったように、そんな深刻な問題に発展しない、こう考えているのが現在の社会事情であるということになるから、特別措置法をつくると、特別にやってあげている、こういう感覚のとらえ方になっていくわけですね。  そこで、結局は、基本的な人権を侵されているその人権に対して、当然同じ人間としての権利を持たす、当然のことが行なわれなければならない、当然からはずれていることなんだということが、いまこの特別措置法では、特別にやられているんだ、こういう感覚でとらえられやすい面が非常に多いわけです。こういう点の、やはりこの問題を扱う方々にこういう問題をよく熟知していただいて問題を扱っていただかなければ、これはいつまでたっても同じことが繰り返されるんじゃないだろうか。特別にやってあげているから、少しでも——予算がふえたからそれでいいじゃありませんか、こういうことではないということになってくるわけですね。胸を張ってわれわれは部落の人間だということで要求をどんどん通していくんだ、同情はされたくないんだというのが皆さん方の考えであり、それが当然であると私は考えるわけです。そういう問題をはっきり根本からとらえてないと、この問題は解決の方向には向かない。  総務長官はよく御理解した御答弁があるわけですけれども、総理府の中であっても、総務長官だけがよくとらえており、特に総務長官の中で山中総務長官だけがとらえていたんだ、その次に総務長官が見えると全然内容が変わるということであっても困るわけですし、また、御担当の方々がいま申し上げたような中身であっては、これは問題解決には至らないと思います。きのういみじくも高見文部大臣が、私は水平社創立の大正十二年に金を出してこの運動を応援したことがある、いうような、非常によく御存じの大臣もきのうわかったわけなんですけれども、だから、いろいろな提案があったら言ってくれ、こういうふうなお話もございました。  そういう点で、こういう問題をどうするか。また、この解放新聞の中には、ずいぶん差別されている問題が一ぱい出てきております。こういうことで、差別はしてないというけれども、目に見えないところ、あるいはそれが具体的に差別問題で出てくるということになってくるわけですね。ただ不理解なことばの展開、不理解な活字の展開、認識不足からみんな起きてくるわけですけれども、そんなにとられるとは思ってなかったというようなことが多いわけですね。ですから、差別をなくする運動というのは、一切差別感というものをなくしていく社会にしていきたいというような目標があってみなやっていることだということなんですが、そういう点について、総務長官、どういうふうにこれから対処していかれるか、お伺いしたいと思います。
  211. 山中貞則

    山中国務大臣 おっしゃること、私は大体同感です。これは日本人全体の問題であり、これは与野党とか党派を超えた民族の問題でありますから、先ほど私が言いましたように、そういうふうに一部にでも差別されているという声が残っているうちは、私たち自身が自分に対して恥ずかしいと思わなければならない事柄だと思うのです。ですから、そういうことを考えたら、それは大臣がかわれば、若干のものの言い方とか、あるいは実行力とか違いもありましょうけれども、その根底だけは私は違ってはならぬ。これは政治家の大臣であろうと、役人としての行政官であろうと、この点は変わってはならない共通の基礎認識でなければならない、その心がまえで事に処さなければならないという点において、ただいまお話しの点、全く私も同感であります。
  212. 沖本泰幸

    沖本分科員 そういうところで、結局、山中総務長官はもう原稿なしでどんどんどんどん話に応対してくださるわけです。これが、先ほど申し上げましたとおり、だれそれ総務長官に今後かわりますと、全然その中身が変わってくるようなことになって、つくっていただいた答弁要旨に従ってお答えになるというようなことになると困るわけなんですね。ですから、そういうことのないように、山中総務長官のときに、こういう問題を考える基本的な認識のあり方、対策のあり方、こういうふうな基本的なものを一応各省に通じるように、文書なり何なりで、これを基礎にして考えてもらわなければ、発想してもらわなければ困る、差別というものはこういうものであるという点で、もうわかっているという方もいらっしゃるかもわかりませんが、そういうものを基礎にして何かを打ち出していただき、それを土台にして今後進められる。ちょうど幸いに実態調査をおやりになったところですから、その実態調査の中の精神面の一つのつかみ方として、こういう問題が政府なりあるいは各地方団体で同じ内容で扱われていくようでなければ、先ほど申し上げましたような逆の差別も出てくる、こういうことになってくると思うわけです。そういう点に対する御所見を承りたいと思います。
  213. 山中貞則

    山中国務大臣 予算が成立いたしましたときあたりに大体目標を置きまして同和対策閣僚協議会を招集し、そこで、やはり私は三回予算をやりましたから感ずるところがずいぶんあります、それらの点と、今度の実態調査等ではっきりとした点等について、関係大臣との間に十分に協議をして推進の歩調をそろえていきたい。  さらに私は、第一線の都道府県や市町村の地方自治体の担当職員の方々との間に意見交換を一ぺんしてみましたら非常に有意義でありましたので、これはやはり第一線で苦労しておられる方々の意見が国政のほうにまず反映していかないと行政のルートに乗りませんから、来年度予算では、これらの地方の実務職員の研修の費用もとりまして、中央で、意識の問題もそうですが、行政の問題も十分な理解と同一歩調で各市町村、都道府県が足並みがそろえられるように、こういう配慮も新しくいたしておるわけでございます。御注意は十分承りまして、私に対する過分のおことばには感謝いたします。
  214. 沖本泰幸

    沖本分科員 ついでに建設省もお呼びしておりまして、たいへんお待たせして恐縮なんですが、建設省の御担当の方にお伺いいたします。  特に申し上げたいことは、改良住宅に関しての問題なんですが、最近になって先ほどから申し上げておりますように改良住宅ができます。ところが、家賃が非常に安い。公営住宅との家賃の差がずいぶんあるわけです。一方では公営住宅が当たらないわけです。改良住宅にはどんどん入れるというような事態が目の前に見えてくるわけです。それで、先ほど言いましたとおり、同和地域と隣接している周辺の住民の方々の問題が浮き上がってくるわけです。ですから、そういうところで、住宅問題で一番多く問題が起きるのは、あの人たちは入れて、おれたちは入れないのかということが一番問題になってきて、同じような住宅規模で建てられる住宅の中で、片っ方では抽せんを受けるのに、あの人たちだけはどんどん入るじゃないか、家賃がべらぼうに安いじゃないかということで、大きな不平不満をまき散らす、そういうことになるわけです。そういうものに対して、地方自治体のほうでは、十分その考え方を、こういうことでこうなっているのだというような説明もなければ、むしろそれを放任してそういう考え方をあおっている、こういうきらいもないことはないわけです。そういう点について建設省のほうはどういうふうにお考えになっているか、それを承りたいと思います。
  215. 高瀬三郎

    ○高瀬説明員 同和対策といたしましての住宅の対策でございますが、同和地区の中での住宅対策としまして、住宅地区改良事業のほかに同和向けの公営住宅、それから住宅改修資金貸し付けというような事業をやりまして進めておりますが、その中で、特に不良住宅が密集する地区につきましては改良事業をやる、あるいは小集落地区改良事業と申しまして、同和のために特にその条件を緩和した事業をやっておりますが、そのほかの問題としまして、同和地区内の狭小過密居住であるとかあるいは世帯分離の対策というようなことで、同和向けの公営住宅という特定目的公営住宅の建設をやっております。そのほか、持ち家対策という考え方もございまして、住宅改修資金、御自分で家を直せる方には改修資金をお貸しする、長期低利資金をお貸しする、こういうような対策をやっておりまして、私どもとしましては、これは地方の御要望によりまして、改良でやるか、それともその同和向け公営住宅を何戸つくるか、こういったことをきめまして施策をやっております。  したがいまして、いま先生のおっしゃいますように、ある特定の者は改良住宅に入れる、しかし、そうでない者は入れないというようなことのないようにつとめておるつもりでございますが、まだ十分な事業がそれによって行なわれているというふうに私どもも理解しておりません。
  216. 沖本泰幸

    沖本分科員 ついでに申し上げますけれども、結局、公園整備とか下水道の整備とか、あるいは道路の整備とか、こういう問題にしましても、先ほど申し上げましたとおりに、いろいろな点で不備な点がたくさんあるわけです。これは当然改善していただかなければならないわけですけれども、一番申し上げたいことは、道路をするにしても下水を直すにしましても、その対象地域だけに予算の関係でしぼってしまって、一定の地域だけがぼっと浮かび上がってよくなる、こういうことではならないわけです。その周辺の生活環境というものは非常に悪いわけですから、その生活環境を結びつけた対策がなければならないわけです。ここだけは同和対策特別措置法による事業費でこれだけのことをいたしますということで、まるっきり一センチ一ミリのところからぴしゃっと切られてしまって、あとはがたがたになっているのに、その地域だけが道路がすっぽり通っていたり、下水がよくなっていたり、水道がよくなっていたり、あるいは青々とした公園ができたり、そういう特別なことが起きてくると、特別になっていくわけです。当然していただかなければならないわけですけれども、同時にやはりその社会の中で沈んでいる生活環境の悪い地域を一緒に解決していくための施策というものが講じられなければ、こういう問題は解決になっていかないのです。ますます差別感というものを多くしていくわけですから、そういう点を、予算組みの中にいろいろ地域を指定しながら組んでいただかなければならないと思います。  そういう点について、今後、先ほど総務長官お話もありましたけれども、ひとつ長期計画を立てていただきたいわけです。同和対策に対する長期計画ですね。それでこういうふうにしていく、ああいうふうにしていくということにしていただかなければならないと思います。こまかいことはいろいろ要求が出ておるはずです。一番低い要求の面でも、いわゆるこの問題をかかえる地方自治体の市町村から出てきておるわけですから、こういう面で一番苦しんでいるのは地方自治体ということになるわけです。そういうふうなギャップが起きるために、こういう問題を審議する地方議員の方々が、一体どっちを考えていいかわからないということで右往左往していることも事実なんですね。そういうことも考え合わせて、早急に具体策をおつくりいただきたいと思います。そういう点についてお考えを承りたいと思います。
  217. 高瀬三郎

    ○高瀬説明員 同和地区につきまして、内部の同和地区として指定されております中の事業は、先ほど申しましたような諸事業をやっておりますが、そこを貫通する道路であるとか、あるいは関係する河川であるとか、あるいは下水道であるとか公園であるとか、こういった事業につきまして、公園地区内になりますけれども、最優先で取り上げるということで、建設省といたしましては、そういう御要請がございます場合にはこれをどしどし取り上げてやるというのをいままでのたてまえとしておりました。しかし、今度の総理府の御調査によります、一体どういう事業をどれだけやるべきであろうかということにつきまして、公共団体を通じまして調べました結果が近くまとめられますので、これによりまして私どもとしては事業量をきちんとはじいてみたいというふうに考えております。それに従いまして、できる限り総合的に、これは厚生省その他の各省事業にも関係がございますので、そういうことも含めながら計画を進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  218. 沖本泰幸

    沖本分科員 もう時間が参りましたので終わりたいと思いますが、まあこまかいことを抜きにしまして、おおまかな点から私は基本的なことをいろいろ伺ったつもりでおります。何度も言うようでございますが、ぜひともその御調査をしていただいたときの山中総務長官の手で今後の同和対策の見通しを明らかにしていく道筋がずっとできるような一つの方法を生み出していただいて、それに従って各省がどんどんどんどん具体的に仕事が進められるようにしていただきたいわけでございます。  あといろんな委員会で御質問する場合も出てくると思いますけれども、おそらく、また来年のこういうときには総務長官が出てくださればいいわけですが、ほかの総務長官になっているとまた困るわけですから、そういう点を含めてひとつぜひとも基本的なことを今度はっきりとお示しいただきたいことをお願いしたいわけです。その点についてどうでしょう。
  219. 山中貞則

    山中国務大臣 最大の努力を払って御要望に応ずるような姿勢で進みたいと思います。
  220. 沖本泰幸

    沖本分科員 終わります。ありがとうございました。
  221. 大村襄治

    ○大村主査代理 次に、芳賀貢君。
  222. 芳賀貢

    芳賀分科員 この際、国有林野事業に従事する基幹労働力といわれる国有林の作業員の制度上並びに処遇の改善についてお尋ねしたいと思います。関係大臣は、山中総務長官並びに中村行管長官、並びに人事院総裁に、同一の問題でありますけれども、それぞれ所管責任に立って明快なお答えを願いたいと思います。  問題の中心は、「国有林野事業の作業員の取扱いについて」の政府の統一見解、これは昨年、四月の十三日に政府から衆議院農林水産委員会において政府の統一見解として正式に表明されたものでありますけれども、これにつきましては相当長い経過があるわけであります。審議の都合上、経過的な点を申しますと、まず昭和三十九年に御承知の林業基本法が制定されまして、その中で林業労働者の雇用の安定等の問題については、林業基本法の第三条の国の施策あるいは第十九条の林業労働に関する施策が明らかにされておるわけですね。これを受けて、四十一年の国会におきまして、時の坂田農林大臣が、いわゆる二確認事項というものを明らかにされたわけです。これは四十一年の三月二十五日と六月三十日の両度にわたりまして、国有林経営の基本姿勢と臨時雇用制度の抜本的改善ということで、内容は、国有林事業を進める場合においては、原則としては直営直用の方式で行なう、特に臨時的な基幹作業員の処遇については、通知雇用制度を基本にして根本的な改善を行なうというのが、いわゆる坂田農林大臣の二確認事項ということになっておるわけであります。これを踏まえまして、特に林野庁長官と全林野労働組合の間においては、この問題の具体的な実現について、いわゆる労使間において話し合い、交渉を進めまして、結果的に、四十三年の十二月に、労使間の三確認事項というものが、交渉の結果として双方において確認されておるわけです。この内容は、第一には、国有林野事業の基幹要員については通年雇用に改める。第二点は、基幹要員については常勤性を付与する。第三点は、処遇関係については常勤職員にふさわしいものに改善する。これが三確認といわれる内容であります。  こういう確認が行なわれたわけでありますけれども、その後具体的に根本的な改善が進まなかったわけであります。たまたま昨年、四十六年の三月二十五日には、衆議院農林委員会において、林業振興に関する特別決議を、これは各党一致の決議といたしまして、内容は、六項目にわたり、今後の日本の林業の向こうべき方向、また、これに必要な重要施策について示してあるわけでありますが、その中の第五項で、特に国有林基幹労働者の常勤化と処遇の改善をすみやかに行なうべきである、こういう決議が行なわれたことは、各大臣においても御承知のとおりであります。  こういうような経過を踏まえまして、四十六年四月十三日に関係各省庁の統一見解といたしまして、「国有林野事業の作業員の取扱いについて」という問題として、「国有林野事業の基幹的な作業員の勤務形態の取扱いについて関係省庁と協議いたしましたところ、次のような見解を得ましたので御報告いたします。国有林野事業の基幹的な作業員は、その雇用および勤務の態様からすれば、長期の継続勤務となっていること等、常勤の職員に類似している面があるものと思料される。しかしながら、これらの基幹的な作業員を制度的に常勤の職員とすることについては、国家公務員の体系にかかわる仲々困難な問題でもあるので慎重に検討して参りたい。」これがいわゆる政府の統一見解であります。  その後約一年を経過しておるわけでありますけれども、特に四十七年度の国有林特別会計予算等を通じましても、この統一見解を通じての、政府としての具体的な前向きの方向というものが見受けられないわけです。ですから、この際、林野庁を主管する農林大臣だけに期待しておったのではなかなか前進がないわけでありますから、ちょうど適当な機会であるので、きょうは有力な関係大臣並びに人事院総裁から、この問題に関して各省においてどのような熱意を持って具体的に取り組んでおられるかという点を、まず明らかにしてもらいたいと思います。
  223. 山中貞則

    山中国務大臣 私のほうは、人事局の所管として、国家公務員の諸問題について所管をしておるわけでありますが、ただいまお話しになりましたような経過を踏まえた林野庁の非常勤職員の問題については、かねがね私も林野庁長官を呼んだりなどいたしまして、その実態あるいは話し合いの過程等について報告を受けております。  問題点は二つあるようであります。一つは、純法律的な問題として退職手当の問題、この問題が、ことに勧奨退職等において、いまのような身分で置かれて、実際上は常勤と同様の業務をずっと引き続き行なっていて、それが身分が同じように扱ってもらえないために退職の際に非常に大きな不利益を受ける、この問題は、確かに私も問題点の存するところとして検討を続けておるところであります。いま一つの問題点は、永年勤続として総理大臣の表彰を受けているような方がいるわけです。その人が、依然として公務員法上からいうならば正式の公務員ではないというようなことなどは、きわめて異様な事態である、私は率直にそう思います。  しかし、これを進めてまいりますと、昭和三十六年の閣議決定の行管の基本方針というものが、これが大きな阻害要因となって、なかなかその点の突破はできかねる状態にある。しかしながら、各省関係のあるところがありますが、一番大きなウエートを占めるのは林野庁でありますから、まず林野庁が解決をすれば、よその役所もならうことができるわけであります。その点で、私も林野の問題を一番大きな問題として取り組んでおりますけれども、まだこの時点で、ただいま申しましたような二つの問題点をこういうふうに決定できそうであるというところまでの見通しを得ていないという点はまことに残念でありますが、やはり行政管理庁あるいは農林省が直接の当事者でありますから、そこらのところのお話し合いを経て、私どもの総理府人事局において、国家公務員のあるべき姿の一つに非常勤職員をとらえて、そして体系づけた方針を定めなければならぬだろうと考えております。
  224. 中村寅太

    ○中村国務大臣 お答えいたします。  芳賀君のいわゆる林野庁の臨時的な職員を国家公務員に引き直すという方向についての御質問でございますが、芳賀君の御質問の中にもありましたように、統一見解におきましても中でうたっておりますように、基幹的な作業員を制度的に常勤の職員にすることについてはいろいろに問題があるという点を取り上げておるのでありますが、この林野庁でやっておりますいわゆる国有林野事業全体の経営の改善を思い切ってやりながら、その中で常勤職員と臨時職員との調和といいますか、そういうものも考えていく必要がありはせぬか、そういうことで、ことしは林野庁に次長を一人ふやしまして、国有林野事業の根本的な改善に取り組んでいくという農林省の方針に私は賛意を表しておるわけでございます。  御指摘のように、この臨時職員の処遇の改善の問題は、早急にやる必要がある課題であると思っております。いま山中総務長官も答えられましたように、私らもでき得る限り実態を見詰めて、そうして常勤職員とほとんど変わらないような仕事をしながら、いろいろの条件がそろわないために常勤国家公務員に籍が移せないというような人に対しては、処遇の面でそれをカバーするようなあたたかい処置をとることが必要である。人間を使う以上は、できるだけ公平な処遇ができるように処置すべきであるということは、これは基本でございますので、そういう点で積極的に善処していくという態度で臨みたいと思っております。
  225. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 芳賀委員おそらく御承知であろうと思いますけれども、たびたび関係の皆さんの代表者にお会いしまして、率直にいって、情が移っているというようなことで表現すべきだろうと思いますけれども、問題の重要性というものは十分理解しておるつもりでおります。  ただ、これもお会いしたときに申し上げておったと思いますけれども、先ほど、有力だというようなおことばがございましたけれども、人事院の権限の問題から正式な権限発動というような面から申しますと、実は非常にひよわい関係になりますので、御承知のように、林野の方々は団交権をお持ちになっておって、勤務条件なり待遇改善の面はわれわれとして手が出せない、むしろ団交権の行使にお待ちするというような形になっておりますし、あと、手前の問題としては、定員管理の問題あるいは組織管理の問題、これもここにおられる両大臣の関係のことになりますので、表立ったことはわれわれとしてはできないということは御了解願えると思います。  しかし、先ほど前置きで申しましたような気持ちで、たとえば、もっと根本の問題として取り上げるべきことはないかというような研究は、われわれの一つの課題として、これは両大臣ともお打ち合わせ、元の林野庁長官にもお会いしたこともございますし、それだけの私なりの努力はしておるわけであります。関係の局長なんかも関係各省庁との打ち合わせ会にも出ておりますし、表立ってどうという立場にはおりませんけれども、しかし、そういう気持ちで問題の解決に臨みたいというつもりでおるわけでございます。
  226. 芳賀貢

    芳賀分科員 山中長官説明はかなり明快ですが、一番肝心な行管長官の中村さんの統一見解に対するいまの説明は、肝心の前段を飛ばして——基幹的な作業員は、その雇用及び勤務の態様からすれば長期の継続勤務になっているので、これは常勤の職員と同様の任務を持って作業に当たっていると思うということを統一見解で述べておるのですよ。これが大事なんです。あなたはこれを飛ばして、そうであるけれども制度的になかなかむずかしいということだけを強調しておられるから、これじゃ進まないと思うのです。  ただ、公共企業体である国有林の定員というのは、いわゆる定員法に基づく定員令という政令に基づいて定員がきめられておる。法律決定事項じゃなくて、公共企業体関係はそれぞれの企業体ごとに政令で定員をきめるということになっておるのです。この数が非常に少ないから、同一の勤務をやっておるんだけれども、その定員の外にはみ出しておる大事な基幹要員について、どう認識して、これをどうするかというのが、この統一見解の根本になるわけです。そうすると、どうしてもこれは行管においてこの実態を十分調査、認識した上に立って、これを制度的にどうするかという問題が一つある。定員制の上に立ってこれをどう取り扱うかという問題が一つあるわけですね。  もう一つは、それが解決されるまでの間は放任しておくわけにはいかぬわけですから、山中長官人事院総裁も言われたとおり、同一の責任を持った仕事をしておりながら、月給制、日給制の相違によって、退職金においてもあるいは共済組合の年金の取り扱いについても非常な格差がある。総理大臣や農林大臣からうやうやしく表彰状までもらっても、これは何の経済的な価値のない紙に終わっているわけです。  むずかしいということはわれわれもわかるが、制度的な問題として、それでは行管長官はこれをどのように前向きに処理していくかという、この基本的な問題ですね。この点をできるだけ明らかにしてもらいたいと思います。
  227. 中村寅太

    ○中村国務大臣 芳賀君に私が答えたのが舌足らずで、芳賀君がいまのような疑問を持たれたと思いますが、私は、後段の、こういうむずかしさがあるということもあって非常に困難であるが、人間を使うのは公平でなければならぬ、常勤職員とほとんど同じような仕事をしながら差別されておるということは、これはこのまま見過ごすことではない。     〔大村主査代理退席、主査着席〕 そういう点で、林野事業全体の根本的な改善、改革を通じながら、できるだけ調和を保っていくということを申し上げたのは、前段に対する私の積極的な答えを具体的に言わなかっただけでございますが、気持ちにおいては山中長官人事院総裁考え方とひとつも変わっておらぬということを理解していただきたいと思います。
  228. 芳賀貢

    芳賀分科員 いま統一見解で取り上げた国有林事業の基幹要員、これを二つに分けると、常用作業員というのが一万六千人おる。これはいわゆる定員の数からははみ出して、定員の中に入れることができない。定員に拘束されて、いわゆる常勤職員にできない大事な基幹要員が一万六千人ですね。それから定期作業員といって、通年的でなくて、定期に——定期といっても、国有林の事業がやれる期間中、十年も二十年も反復して継続的に勤務しておる、いわゆる定期作業員というのが約二万一千人おるわけですね。  順序としては、常勤と全く同様な作業をしておる常用作業員を常勤化するということになれば、あるいは常勤性を付与する、これは林野庁長官と全林野労働組合との間においての四十二年十二月のいわゆる三確認ですね。この場合の常勤性というのは、御承知のとおり、りっしんべんの性になっているのですよ。「常勤性を付与する、」ですね。そこまで来ておるわけですから、あとはやはり役所としては、行管の最も適正な御判断によって、まず順序として、この一万六千名の常勤的作業員を、不当な差別を受けておるこの基幹労働者を国としてどうするかということについて、すみやかに方針を出してもらいたいと思うんですよ。それが出るまでの間は、非常な差別を受けておる処遇上の問題等については、山中長官人事院総裁が言われたような、その実態を、やはり国の公務員でありますからして、公平を確保するという原則に立って、こういう差別というものは根本的に処遇改善の形で進めていくということで、二段がまえでこれはいくべきじゃないかと思うんですけれども、もう少し実のある答弁をしてもらいたい。
  229. 中村寅太

    ○中村国務大臣 芳賀君の御指摘のように、やはり私が最初答えた中にも、含みとしてあったと思います。理解していただいたと思いますが、同じような仕事を同じようにしてやっている人が、片っ方は国家公務員になっておる、片っ方は非常勤のような形で差別的な処遇を受けておるということは、これはよくないことは申すまでもない。ただ、いろいろむずかしい問題等も含んでおると思いますので、あらゆる面を検討して、できるだけ公平な方向に持っていくように努力することは、これは十分考えなきゃならぬことと思ってやっておりますが、ただ、いろいろむずかしさのほうもやはりありますので、そういう点は、さしあたりは、いま言う処遇の改善等ですぐできるものからやっていく、こういう態度で、いわゆる非常勤の人たちに対して、できるだけ常勤公務員との間の差別感をなくするような処置をとりながら、前段のものを進めてまいりたい、基本的にはこういう考え方でございます。具体的に、事務的には局長から答えさせます。
  230. 芳賀貢

    芳賀分科員 大体行管長官の御意思はわかりました。  そこで、これに関連してお尋ねしますが、いまの四十四年五月公布された定員法によると、定員の総定数が五十万六千五百七十一名ということになっておるのですね。この中には、いわゆる三公社五現業の定員は入っていないわけですね。それで、三公社五現業については、これは政令で企業ごとに定めるということになって、いわゆる定員令に基づいて各企業体の定員数が明らかにされておるわけですが、これはもうわかりますけれども、この定員令による各公共企業体の、政令が四十四年五月に定めた定員数と、四十七年の政府から提案されたいわゆる予算定員との関係について、これは事務当局でもいいですから、説明してもらいたいと思うのです。
  231. 平井廸郎

    ○平井政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、行政機関の職員の定員に関する法律によりますと、五現業職員につきましては、第一条の定員には含まれておりませんで、御指摘のように、別途、国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法に基づきまして政令で決定いたしているわけでございます。ただし、国の行政機関の定員に関する考え方といたしまして、できるだけ簡素にして能率的な行政機構を維持するという考え方につきましては、基本的に同様の考え方を持っているわけでございまして、その結果、第一次、第二次の定員削減問題につきましても、関係省庁と御協議申し上げまして、それぞれ定員削減計画実施いたしているところでございます。そういう意味におきまして、第一次におきまして約五%、第二次におきましても、四十七年度から三年度にわたりまして五%の定員削減を行なうことにいたしておりまして、その結果といたしまして、政令定員というものと予算定員というものが実態的に差が出てくるというような事態が生じているわけでございます。
  232. 芳賀貢

    芳賀分科員 いや、いま聞いておるのは、大蔵省が出した四十七年度予算説明書の中に、政府職員の予算定員数が、これは明らかに区分して出ておるわけですよ。この四十七年の三公社五現業の予算定員、これは政府が出しておるわけですから、予算に関連して。それと、いわゆる定員令に基づく三公社五現業の定員との間に、縮減で少ないのもあるでしょう。しかし、多くなっているものもあるわけですからね。だから、そういう関係は一体どうなっておるかということを聞いておるんです。
  233. 平井廸郎

    ○平井政府委員 お答え申し上げます。  先ほど御説明申し上げましたように、基本的には、簡素にして合理的な行政機構を維持するというたてまえから、基本的に五%の削減を一般的にかけておりますが、同時に、必要な業務量の増大等に伴う増員というのは一方でやっているわけでございまして、その結果として、各省、結果的に見ますと、出てきた削減の割合その他は変わっている場合もあるわけでございます。
  234. 芳賀貢

    芳賀分科員 行管長官、そういう説明があったわけですからね、企業体によっては、定員令によるところの定数よりもことしの予算定員というのはふえているところもあるわけです。そうなれば、そういう実例があるわけですから、林野庁のこの不合理な作業員の実態から見て、たとえそれが予算定員としての取り扱いであっても、やはり実行可能な限度、定数を増加するということはできると思うのですけれども、これは大事な点だから、長官からはっきりしてもらいたいと思います。
  235. 平井廸郎

    ○平井政府委員 大臣のお答えになります前に、ちょっと事実関係を御説明申し上げておきたいと思いますが、問題の昭和三十六年の閣議決定を行ないました際に、もちろん林野庁につきましても同様の検討をいたしたわけでございまして、その結果——当時林野庁としてお考えになって定員化すべきものとして考えられましたものにつきましては、昭和三十二年度から三十七年度の間に二万一千二百七十七名という方々の定員化が行なわれているわけでございます。その段階におきましても、現在問題になっておりますところのいわゆる常用作業員というものはあったわけでございますが、これらについては、実態的に見まして、業務量の変動等の関係とか、あるいは給与の立て方が出来高払いを採用しているとか、いろいろな事情がございまして、定員化に適しないものということで林野庁自体がお考えになりまして、議論はされなかった問題でございます。したがいまして、その後における検討の結果といたしましても、先ほど統一見解の中でも申しておりますように、確かに、勤務の態様からすれば、長期の継続勤務が結果的に出ておりまして、常勤の職員に類似している面があるとはいいながら、しかし、それは同時に、定員になじむようなものではないという基本的な考え方が貫かれているわけでございます。  ただし、そうは申しましても、これらの基幹的な作業員の処遇についてできるだけの配慮をしなければならないという点は、私ども同感でございまして、その場合に、制度的に、定員でもないが、しかし常勤の職員というようなものを考えるのかどうか、そういうような問題について、先ほど来申し上げておりますように、国家公務員の体系にかかわる問題として非常にむずかしい問題もございますけれども、人事院なりあるいは総理府なり、もちろん、基本になります林野庁とも御相談申し上げながら、検討を進めているということでございまして、直ちにこれを定員に繰り入れることを考えるということは、私どもとしては考えておらなかった次第でございます。
  236. 芳賀貢

    芳賀分科員 いま聞いているのは、定員令の定員に対して予算定員がオーバーしている企業体もあるではないか、それは一体どういうわけだということを聞いているのですよ。昭和三十六年に林野庁が常勤職員とすべきものがこの程度と言ったから、それをいいことにして、いつまでも制度の体系上だめなんだという考えは、この統一見解には出ていないのですよ。あなたはこの統一見解というのは知らないわけでしょう。行管長官は統一見解をわきまえた答弁をしているのに、役人であるあなたは、全然——いまから十年くらい昔のことしか知らぬじゃないですか。そうなれば、行管がこれを押えておる、阻害しておるということに当然これはなるわけですよ。だから、統一見解に基づいて実態を十分調査把握して、そして……
  237. 森田重次郎

    森田主査 芳賀君に申し上げますが、時間が経過しましたから……。
  238. 芳賀貢

    芳賀分科員 正常な状態にこれを戻すべきではないか、是正すべきではないかということがきょうの私の質問でもあるし、また、昨年の四月十三日に政府から統一見解として出されたその基本をなす方向なんですよ。統一見解に参加した省庁といっても、行管だけじゃないわけですよ。農林省、総理府総務長官、それから行政管理庁大蔵省、人事院、こういうことになっておるわけですからね。せっかく国会に対してこのように統一見解を取りまとめて、一つは、実態は常勤職員と同様の勤務をやっておるということは認めておるわけです。そうであるけれども、これを制度的に改善するということになると、いままでの経過もあってなかなか困難性があるので、十分検討してこの解決をはかりたいというのと、解決されるまでの間、国の公務員としての月給制、日給制の賃金とか、あるいは退職金の問題にしても労働災害の問題にしても、同じ仕事をやっておりながらあまりに大きな差別が続いておるわけですから、こういう点は処遇改善の中で根本的に解決しますというのが、この統一見解の趣旨ですからね。間違わないでもらいたいと思います。  そういうことでありまして、主査からたびたび時間制限のお話がありますから、この程度でとどめておきますが、いまの質疑を通じて、各大臣並びに人事院総裁から、もう一度締めくくりの前向きの答弁をしてもらいたいと思うのです。
  239. 中村寅太

    ○中村国務大臣 お答えいたします。  私は、芳賀君の指摘しておられるような点は、重要な検討課題であるということは間違いないと思います。そこで、林野事業全体の経営改善等も含めて、指摘されておるような点の改善に当たっていきたいという、きわめて積極的に前向きでいくつもりでございますが、関係各省庁とよく相談をして、御指摘の点に沿うように努力していきたいと思っております。
  240. 山中貞則

    山中国務大臣 林野庁は、昨年ある時期において、だいぶ前進した、労使と言うのもおかしいのですが、話し合いらしいものを詰めかかったのです。その線で私のほうで側面から応援ができるならばと思っていたのですが、やはり閣議決定の線でぶつかってしまったということがありまして、これはやはり人事局として、それら行管の既往の方針と、林野庁が新しく打ち出そうとして考えておる内容とをもう少し調整する必要があると思っております。  しかし、いずれにしても、長期の雇用形態の中で身分だけがそういうふうになっている人が、やはりそろそろ勧奨退職なり何なりをする時期に来ておるわけでありますから、そういつまでもほっておけないことだという認識は昨年から持っておりますので、なお今後も具体的に検討を続けていきたいと思っております。
  241. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 いまのおことばで思い出しまして、先ほど申し落としましたのですが、公務災害の関係はまさにわがほうの所管でございまして、これは御承知のように、普通の公務員の各位と完全に同じ扱いをしております。  その他の点につきましては、所管外ではございますけれども、先ほど来申し述べましたような気持ちをもって問題に臨んでいきたいと考えております。
  242. 森田重次郎

    森田主査 次に、鬼木勝利君。
  243. 鬼木勝利

    鬼木分科員 山中長官は、沖繩問題につきましては非常に御努力願っておりますので、その点につきましては私かねがね敬意を表しております。そこで、私は、沖繩における各種請求権の処理問題について、長官にちょっとお尋ねをしたいと思います。  長官も御承知と思いますが、総理は、参議院の沖繩・北方問題特別委員会におきまして、昨年の十二月二十六日でしたか、この請求権補償問題を取り扱う窓口機関設置の必要を総理府自身で取り上げて、総理府自身がそういう問題の全責任を持つべきであるというようなことを発言されたと承知しております。それは会議録にも載っております。最後に、「総理府がとにかくそういう問題の全責任を持つ。そして具体的な処理については、それぞれの担当省があるだろう、かように私考えます。」このように総理が発言されております。  そこで、全責任を持つところの総理府が、今日までどういう対策を進められてきたか、その点を長官にちょっとお尋ねしたい。これから次々に話を進めていきますので、まず最初にその点をお伺いしたい。
  244. 山中貞則

    山中国務大臣 これは返還協定によって請求権を放棄したもの、それについては本土政府が何らかの措置をとる旨が政府の基本的な姿勢であります。しかし、沖繩県民にとってみれば、これは占領下においてこうむった被害について、権利を本土政府に放棄させられるいわれはないという気持ちが私は当然だろうと思うのです。その意味においては、法的な立場は別として、法的な根拠が必要であるものは立法もしてその処理をしたいという答弁をしておるわけであります。  そこで、総理府窓口として、今後この処理の受付その他に当たってまいりたいと思っておりますが、先ほど安井分科員にも答弁をいたしましたけれども、今国会で沖繩開発庁設置法がもし可決されまするならば、沖繩現地に総合事務局を設けます。それの三分の二は、現在の琉球政府の職員の諸君を公務員として引き継いで仕事をやってもらうことになっておりますので、いわばなじみの人たち沖繩事務局の大多数の構成員になるわけでありますので、それらのところには比較的相談に行きやすいし、訴えごとをしやすいだろう、したがって、沖繩総合事務局を中心にして、現地のさまざまな、人によっても違いますし、ケースによっても違う、あらゆる苦情、請求権の範疇に属するものの苦情について、よき相談相手になってあげる。そして、やはり法的には、現在の本土においても、駐留米軍との間のトラブルの処理については、防衛庁の防衛施設庁がこれを処理することになっておりますし、法律も全部そのようになっておりますので、処理については、総理の話にもありますように、私どもが相談に乗ってあげた結果、それの処理については防衛施設庁ということにしてもらいたいと思っております。来年度予算編成にあたって、私のほうから、さしあたり調査をしないと、数多くのケースがあって、これを一々調査費を持たないで立法措置をとるとかなんとかいっても、その前提のデータが集まらないということを江崎さんに進言しまして、予算の編成半ばで調査費が急速計上されて、復帰直後から本土政府の手によるそういう被害の実態調査というものが実行できるような予算構成もしていただいたわけでありますので、総理の答弁どおり、私どものほうがまず一番の身近な相談相手となって窓口の役をつかさどるつもりでおります。
  245. 鬼木勝利

    鬼木分科員 長官の御説明どおりでなければならぬと私は思いますが、大体請求権の問題は、いまおっしゃるとおり、主として米軍の基地に関連する問題が多いと私は思う。今度、いま長官がおっしゃっておるように、沖繩開発庁ができる。ところが、その開発庁も、請求権問題については私のところの所掌ではない、担当ではない、これは全く防衛施設庁がやることである、こういった防衛施設庁まかせのきらいがあると私は思うのですよ。先ほど長官が冒頭におっしゃったように、これでは沖繩全県民の権利が保障されないと私は思うのです。なるほど、それは基地周辺の問題もありましょうし、基地周辺整備法もあります。そういうことにもむろん関係はすると思いますけれども、もっと広範囲な産業経済すべてにわたった請求権の補償問題があると私は思うのです。  今度提案中の開発庁設置法案では、その附則の第三条に「所掌事務に関する暫定措置」として載っておるようですね。「沖繩開発庁は、第四条各号に掲げる事務のほか、当分の間、沖繩復帰に伴い政府において特別の措置を要する事項で政令で定めるものに関する施策の推進に関する事務をつかさどる。」ですから、これは読み方によっては、請求権の補償については各省の事務を総合調整するのだ——先ほど申しましたように、総理が言われたことの発言の内容をもっとここに明記すべきではないか、また、そう読むべきではないか。ただ防衛施設庁にまかせっぱなしだということでなくして、総理府が当然やるべき仕事があるはずだ。この開発庁法の附則第三条も、これはもっと明確に記載すべきだと私は思うのです。その点、長官どうお考えになります。
  246. 山中貞則

    山中国務大臣 これは請求権の実際の具体的な処理のケースは、鬼木先生もお話しになりましたように、米軍との間に起こったことのあと始末というのが全部であります。したがって、この問題の処理を本土でも防衛施設庁がそれぞれ固有の法律に基づいて行なっているわけでありますから、本来ならば、沖繩にも防衛施設庁の出先が、法律が国会を通過すれば、できることになるでありましょうし、そちらのほうがやるべき本来の筋合いなのであります。しかしながら、沖繩において、防衛施設庁はいわゆる自衛隊とは違うのであるという、そういう仕分けなどは、まだ感情の面においても、実際上に行政機構を知る上においても、ほとんどの人が存じていないと思うのです。そうすると、沖繩において先般の物資の送り戻し事件等もありましたように、まだ自衛隊というものに対する、あるいは防衛庁全体に対する理解というものはきわめて不足しておると見なければなりません。ほとんどゼロに近い。むしろ、率直にいって、警戒心のほうが強いということは、肯定せざるを得ないと思うのですが、そこのプロパーの仕事であって、防衛施設庁はいわゆる自衛隊とは違いますよと説明しても、なかなか沖繩県民の方々は、自分はこういう被害を受けたと、中にはそうみんなの前で言いふらしたくないような被害もあると思うのです。そういう親身な相談に行くのには、防衛施設庁の沖繩事務局に機構があっても、二の足を踏む人があってはいけない、敷居が高いと思う人があってはいけない、そこで私どものほうの出先がそれに対して窓口としての相談相手になりましょうということを申し上げているわけでありまして、やはり法律の根拠を、総理府沖繩だけを移して、そして本土において防衛庁のやっておりまする仕事を、沖繩においては開発庁が行なうということは、やはり少し問題があろうかと考えます。
  247. 鬼木勝利

    鬼木分科員 それは窓口総理府でやれ、これは総理がはっきり明言されておるのですから、責任を持ってやってもらわなければならないが、いまおっしゃるように、なるほどそれは米軍の基地によって生ずる問題でございますから、それは施設庁もむろんこれは処理をしなければならぬことは当然です。でございますが、開発庁の中に——全部これを開発庁にやらせろと私は言っておるのではなくして、少なくともこの「当分の間、沖繩復帰に伴い政府において特別の措置を要する事項で政令で定めるものに関する施策の推進に関する事務をつかさどる。」こうありますにもかかわらず、この解釈を狭めて、請求権の処理問題は、この附則第三条にいう所掌事務にも含まれないというような解釈を政府はとっておる。それが私は不満だ。あるいはまた、請求権問題は重要な問題であるが、審議室などでこれを審議してもらったらどうかというような声まで私は聞いておる。これでは開発庁の法案に対して私どもは非常に異論があるのです。総理は国会においてははっきり答弁しておる。その総理の答弁が伝わっていない。総理府が全責任を持つというように総理は明言しておるにもかかわらず、総理府は一体どういう態勢をとっておるのか、そこを私ははっきり長官にお尋ねしている。その点を、長官、私は尋ねておるのですよ。私の焦点を、頭脳明晰な長官だもの、はっきりひとつお答え願います。
  248. 山中貞則

    山中国務大臣 これは私が逃げ回っているわけではなくて、これは本土で請求関係の関係法令というものはどのようになっているかといいますと、講和前の人身傷害補償あるいは軍用地復元補償、土地接収による通損補償、軍用地賃借増額補償、講和後の人身傷害補償、講和後の財産損害補償、演習による漁業補償、基地公害補償、これらはいずれも防衛施設庁の所管ということになっておるわけであります。したがって、防衛庁所管の本来の業務でありますから、先ほど申しましたように、さりながら沖繩においてはなかなかそれがまともに受け入れてもらえないだろう。そこで、総理府が幸い開発庁というものができれば現地に総合事務局を持ちますから、しかも三分の二は、現在の琉球の人で、琉球政府につとめていた人たちが国家公務員にかわってくるわけでありますから、相談にも来やすい、なじみの人ばかりというところで、そこで私どもが相談を受けて、そうして施設庁のほうに伝えていくという仕事をしたい、それが窓口の仕事をさせていただくという意味でありまして、処理まで全部やるということは、これはちょっと、いまの法体系の上、行政機構の組織の上からいって、総理府でその実務まで行なう役所ではないと考えておる次第であります。
  249. 鬼木勝利

    鬼木分科員 逃げ回ってはいないとおっしゃるけれども、私は経緯を見ると、その点どうもはっきりしない。この請求権問題は、御承知のとおり、沖繩国会でも相当論争の中心になったのでございますが、琉球政府の建議書にも、先ほども長官おっしゃっておったようですが、その三の第一項に、沖繩復帰に伴う沖繩県民の対米請求権処理の特別措置等に関する法律、仮称でしょうが、この制定を非常に要望しておられた。国会におきましても、この請求権処理の立法措置を講ずべきだという相当多くの意見が大勢を占めておったと思いますが、どうしても政府はそれを踏み切ろうとなさらなかった。復帰後とにかく大々的な調査を行なって、しかる後に立法措置を要するものは立法もやりましょうし、もし立法措置を要しないものは予算措置を適正に行なって補償措置を講ずる、こういうようなことで、またそういうことを言うとおかしいかもしれぬけれども、こういう発言で逃げ切ったと私は解釈する。逃げた、このように私は解釈する。  ですから、これは外務大臣の福田さんがはっきり言っているのです。丁寧に言っているのですよ。「法的な性格を持たないというようなことで、予算措置で片づく、そういう性格のものもありましょう。」これはずいぶん長いこと赤でしるしていますけれども、時間がないから全部読みませんけれども、結局立法措置をしなければならないものはやりましょうし、立法措置でできないものは予算措置をはっきりいたしましょう、こういうことを外務大臣は言っている。あのころは福田さんも少しうろたえておったから、責任を持ったことを言ったのか言わぬのか知らぬけれども、結局国会ではっきり答弁しているのだから、だったら、どういう予算措置をなさって、どういう措置をなさっておるのか。単なるそのときの一つの逃げ切りであったのか。むろん、あなたがおっしゃるかもしれぬ。それは防衛庁のほうは調査費を五百万円ばかり組んでおるようです。それ以外にどういうことを総理府はなさっておるのか、それをひとつ長官にお尋ねします。
  250. 山中貞則

    山中国務大臣 これは鬼木先生らしからぬ不穏当なる発言があったのですが、沖繩の人身被害その他の請求権の問題を、逃げ切るなどという、そういうことは、いやしくも考えちゃならないことだと思うのです。そういうことはできません、沖繩人たちに対して。でありますから、先ほど来私が申し上げておりますように、総理府のほうが窓口になって、そして沖繩人たちの訴えを親身に聞こうということを申し上げておるわけであります。これは福田大臣がうろたえたわけではなくて、福田大臣は請求権を放棄した当の当事者でありますから、当然、放棄した以上、沖繩県民の人たちの受けた被害について、法律の必要なものは立法措置をやってでも処理します、予算措置で片づけられるものは予算措置をいたしますということを答弁しているわけで、これは私は、うろたえたわけではなくて、当然の、放棄した外務大臣としての責任ある答弁だと見ております。  たとえば、琉球政府から各要求がたくさん出ておりますけれども、しかし、要求に入っていないものもまだあるわけです。たとえば、ニミッツ布告が出て沖繩においては実際上戦闘が終結をした。しかし、本土政府はまだ戦っておる。しかし、講和前人身被害は、本土政府が降伏した八月十五日以降の被害についての件数並びに金額要求があるにすぎません。しかし、おそらく、日本が降伏した日以後においてそのような損害があるならば、戦闘が終結してから実際上の戦場の戦勝軍のもとに占領された状態に置かれた敗戦国家としての沖繩県民の人たちは、日本が正式に降伏するまでの間に、講和前人身被害、それと同じような被害を一ぱい受けておられると思うのです。しかし、こういうものは琉球政府もつかんでおりませんし、講和前人身損害補償漏れの連盟の人たちもつかんでおられないわけです。しかし、これはやはり当然あり得たことであるし、あると考えるのが常識でありますから、こういう問題等については、このような問題についての被害を受けた方があられるならば、総理府なりあるいは防衛庁沖繩施設事務局なりに申し出てくださいというような広報手段をとって知らせるとか、いろいろな努力を私どもは展開する余地があると思いますので、沖繩のそういう各種請求権について、本土政府が決して一点たりとも逃げるようなことがあっては相すまない、申しわけないことでありますので、これは誠心誠意当たるべき事柄であると思います。
  251. 鬼木勝利

    鬼木分科員 だから、私は先ほど前もってあなたに申し上げた。これは、あなたもいまおっしゃったように、逃げ切ったと私は言っているのではない。逃げ切ったようなことをしたのじゃないかと言っている。だから、総理もあれだけ明言しておられるし、福田外務大臣もいまあなたのおっしゃるように、はっきり誠意をもって答弁したならば、この問題に対しての取り組み方ですね、行政の取り組み方に私はあまり誠意がなさ過ぎると思うのです。何も予算措置もやらない、どこが担当するかということもはっきりしない。開発庁法の附則第三条の、先ほど私が読み上げましたあの点にもはっきり明記していない。もう少しはっきり態度を表明すべきだと思うのです。沖繩県民の皆さんが非常な不安と動揺を感じておるときに、もう少し、安心してだいじょうぶだ、こうやりますぞということをはっきりすべきだと私は思うのです。何らわかっていないのです。それを私は長官に申し上げておるのです。長官はおっしゃるように誠意をもってやる、鬼木は不穏当なことを言うな。不穏当じゃないので、私は、逃げ切ったとは言っていない、そういうことをしているのではないかと言っておる。ようございますか、よくお聞きなさいよ。  ですから、先ほど私が申し上げましたように、沖繩問題については日夜格別の努力をしていらっしゃるところの長官に対して敬意を表すると私は言っているのだ。ですから、そのあなたの真摯なお気持ちで、もう少し何らか沖繩の百万の県民に対して、心配するな、こうやるんだと、民生が安定するようになぜ明確に示さないのか。これは米軍基地の問題だから施設庁がやるのだ、そのくらいのことは、不肖鬼木といえども万々承知いたしております。先ほど申し上げたとおり。  施設庁も来ていると思いますので、ちょっと尋ねたいのですが、ここではっきり県民の皆さんに対して、先ほどこの建議書も申し上げましたように、時間がありませんので、詳しくはあなたとゆっくりひざつき合わせてお話ができないのが遺憾でございますけれども、あなたは誠意があるとおっしゃっている、私も信じておるから、もう少し安心するようにはっきり明確にしていただきたい、こういうことを私は申し上げておるのであって、決して長官がいいかげんのことをやっているというような、そんな御無礼なことはいささかも申し上げませんよ。よろしいですか。  請求権問題でも、私もいろいろ調べたのですが、十項目のその中で、講和前の人身傷害補償の未支給者に対する見舞金支給、それがようやく立法措置が講じられておるようでございますが、あとはただ防衛施設庁施設庁とおっしゃるけれども、決してそうじゃない、広範囲なものがありますので、総理府も当然予算を組み込むべきだと思うのです。漁業権の喪失にかかる漁業振興対策とかなんとかいうのはできておるようですね。あるいはサトウキビとか、ああいうのには多少のあれがあるようでした。それかう対馬丸の遭難者に対する給付金、こういうのはあるようでしたが、わずかに五百万、防衛施設庁の予算の中に調査費として組んである。それ以外は何も私には見当たらぬようですが、どうなっておるのか。施設庁長官来ておるかな。——これはむろん調査費かもしらぬが、五百万でどの程度調査ができておりますか。また、だいじょうぶですか、五百万ぐらいの調査費で。施設庁施設庁で、長官は全部あなたのところに押しかぶせてしまっている。
  252. 山中貞則

    山中国務大臣 これはたいへん誤解を生んでいるようですが、私どものほうは、鬼木先生の質問を通じてこう申し上げます。沖繩県民のこの各種請求権に関係のある皆さんは御安心をいただきたい、どうぞ総理府沖繩開発庁に対して遠慮なく御相談をください、そして責任をもって立法もしくは予算措置等を防衛施設庁をして処理させます、ということを申し上げたいと思うのです。
  253. 銅崎富司

    銅崎政府委員 四十七年度予算におきましては、調査費は一千八百万計上してございます。この調査をどういうふうにしていくかということは、山中総務長官、対策庁のほうと十分連絡をとり、協議をさせていただきたいと思いますが、現在現地の事務当局同士で、二月十六日だと思いますが、話し合いをやっております。これからもたびたび話し合いをいたしまして、何と言いましても、こういういろいろな調査をやりますには、琉球政府並びに市町村の協力が要ること、絶対的でございます。十分話し合った上で、その調査費をもちまして効果的な調査をやりたい、こういうふうに考えております。
  254. 鬼木勝利

    鬼木分科員 時間もありませんので、またこの問題については山中長官内閣委員会でゆっくりいたしましょう。あなたとやることは私はなかなか愉快だから。  施設庁に一言言っておきますが、どうも沖繩のみならず、沖繩はいまからのことだけれども、国内においても施設庁関係の問題は非常に多い。各地に問題がある。いま一件私も取り扱っておるのがある。それも私が摘発していってこそはじめてわかった。二年も三年もほったらかしてある。まことに言語道断だ。何を施設庁はやっているのか。国民に愛せられる自衛隊でなければ、国民を無視したところに自衛隊の存在はない。その点は施設庁はもっと気を引き締めてやらないと、最もよろしくない。その点を最後に一言あなたに言っておきます。  それから、時間が参りましたのでこれでやめますが、一言長官に、新聞に載っておりましたので……。  「生活不安も復帰が近づくにつれ、いらだちに似た高まりをみせている。たとえば、一ドル=三百八円という新レートでの換算による賃下げ、それにともなう物価高や基地の人員整理による失業と就職難など、暗い材料が山積している。」沖繩ですよ。「なかでも深刻なのは通貨問題で、いまなおドルを通貨としている沖繩県民の最大の要求は「即時一ドル=三百六十円レートによる通貨切り替え」で、これは立法院決議となって何度か本土政府へ送られたが返ってくるものは「きわめて困難」という回答だけで、聞き入れられない。」こういうことが載っておるのです。  昨年十月十幾日かに、個人所有のドルに証明用の捺印があれば、このドルに対しては一ドル三百六十円で交換する、そういう予算措置がとられたと承っておりますが、しかし、法人あるいは会社、当時これに漏れたような人などに対して、またこれからの人たちに対してもどのように考えておられるか。また、昨年の十月十三日でしたか、とられたこのドル措置に対するそういう予算措置をとられるのか。県民の方が非常に不安におののいておるという新聞記事がここへ出ておりますので、最後にその点をひとつお尋ねして、私の質問を終わりたいと思いますが、長官いかがですか。
  255. 山中貞則

    山中国務大臣 昨年の十月九日にドルを抜き打ちでチェックいたしました。それに対する予算措置としては、一応三百八円のレートで換算をいたしまして、来年度予算に二百六十億の財源が用意してございます。しかし、現在のように三百一円を割るような状態になってまいりますと、これは当然義務的な支払い経費でありますから、これが三百億になっても、予備費を使用してでも沖繩県民に払わなければならない義務経費でございます。他方、企業等を中心にする法人等の問題は、個人の通貨並びに通貨性資産のチェックの対象外といたしました。これは明らかに沖繩の企業の自己資本比率は平均で二〇%でございますから、借り入れのほうが多い。したがって、それを相当長期間にわたって返済すべき事業計画のもとに債権債務が成り立っておるわけでありますが、これはやはり個人も債権債務は相殺をした残りについて預貯金等は見ることにいたしておりますから、企業について相当長期にわたる今後の返済すべきものを一挙に三百六十円とみなして圧縮をして、その残った分だけ見るということに機械的になりますから、そうなりますとほとんどが見てもらえないということになりますし、またそう圧縮することは、三百六十円で今後銀行その他に返済を続けていかなければならないという義務を負いますので、この点は琉球政府と事前に、むしろはずすことが沖繩経済のためになるということで、これははずしたわけでございます。しかし、その後の引き続き円高の傾向、ドル安の傾向が、本土円物資に依存するドル圏の沖繩人たちにとって、本土で想像もつかない不安と深刻な危機感を投げ与えておるということは、まさに御指摘のとおりであります。  しかしながら、復帰前にもう一ぺん三百六十円で今度は円そのもの、紙幣そのものと交換をするということになりますと、前のように隠密で抜き打ちに銀行を閉鎖し、空港でドルを取り上げてやるようなことは不可能でありまして、やはり相当な量のものになりますから、白昼公然という形でないといけませんし、そのためには、施政権者たる米側の了承を事前にとって、布令第十四号を変えてもらわなければなりません。そうすると、アメリカ人の持っているドルも当然かえろということに、要求はまず優先してその条件が出てまいりますし、先般のドル・チェックについても抗議を申し込まれたぐらいでありますので、はたして復帰前にやるかやらないか、やるとすれば、アメリカのものまでかえさせられるか。とすれば、理屈の上からいって、十月九日に沖繩県内に流通していたドルというものの九七、八%は、なお今回チェックするドルと、持ち主は変わっておりましても、ダブるはずであります。そうすると、二回、三百六十円との差額をかえるということになりますから、理論上も実態上も、昨年の十月九日のチェックはなかったことにしなければなりません。これは沖繩人たちにとっては、十月九日のチェックを受けたこと、これによって、円高に幾らなっても、逆に自分たちのもらう円はふえるのだからという気持ちも反面はあるわけでありますから、それが換物、土地にかわったりあるいは金にかわったりなどしておるかもしれませんし、したがって、手持ちのかねというものは第三者、第四者を転々と流通していると思います。したがって、これをチェックしたことを御破算にするということは、また政治的に大問題を起こします。こういうことがありまして、いまとつおいつ思案をいたしておるところでございます。目下のところ、この問題はきわめて困難であるということしか言えないのを残念に思います。
  256. 鬼木勝利

    鬼木分科員 その問題についても、私は意見もあるし要望もございますけれども、時間が参りましたので、これはたいへん困難な問題だと思いますが、何らかの措置をとっていただきたい、慎重にひとつ対処していただきたいということを御要望いたしておきます。  どうもありがとうございました。
  257. 森田重次郎

    森田主査 次に、栗山礼行君。
  258. 栗山礼行

    栗山分科員 私は三十分で問題三つをひとつ端的にお伺いを申し上げてまいりたい。きわめて素朴に端的にお尋ねを申し上げますから、その範囲内で御答弁をちょうだいするということでけっこうでございます。  第一番には、Nロケットの問題でございます。宇宙開発事業団でNロケットの開発研究、実施をされていらっしゃるものでございますが、これについて私の承知する範囲内につきましては、打ち上げ完了を五十年から五十二年、こういうことに示されておるのでございますが、現状でその変更があるかどうか、この点をお伺いを申し上げたい。
  259. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いま、なるべく簡単にというようなお話ですから、前置きやその他を略しまして、Nロケットによる宇宙開発事業団の打ち上げ計画は、五十一年までに実験衛星を一号打ち上げていく、それから五十二年までには、実験用静止衛星を打ち上げる計画、これはそれまでに確実に上がっていくもの、かように私は確信いたしております。
  260. 栗山礼行

    栗山分科員 そういたしますと、計画予定の進行がきわめて順風だ、こういう内意を承るように理解をいたすのであります。  次の問題は、Nロケットで打ち上げます衛星の重量をちょっとお知らせをいただきたいのです。     〔主査退席、大村主査代理着席〕
  261. 千葉博

    ○千葉政府委員 ただいま計画しておりますのは、約百キログラムでございます。
  262. 栗山礼行

    栗山分科員 私も、ささやかな資料でさように承知をいたしておるのでありますが、そこでちょっと専門的なことをお尋ね申し上げなくちゃならないのであります。  放送とか気象とか通信なんかに利用いたします上において、これは百キロで利用できるとお考えになっておるのかどうか、この点をお尋ね申し上げたい。
  263. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いま御心配願ってたいへんありがたいのですけれども、わが国は、御案内のように、非常にこの開発がおくれておりまして、今日まで、東大のほうで打ち上げました「おおすみ」とか、あるいは「しんせい一号」というようなものがありますが、それは六号まで打ち上げるつもりです。これはもちろん小さいものですが、宇宙開発事業団のほうでは、いまよく御案内のように、Nロケットによって五十年と五十二年にひとつ打ち上げていこう。これは、いま私どもの局長から御説明しましたように、百キロでありますから、もちろん諸般のいろいろな要求には十分に応じ得るものとは思っておりません。これからだんだんこれを拡充して、いいものにしていかなければならぬ、かように思っておるわけです。
  264. 栗山礼行

    栗山分科員 そういたしますと、こういう事柄についてはどういう理解をされましょうか。現在百キロでございますから、とてもすべての用途に適応するという内容のものではない、こういう長官の御説明をいただいた、こう理解をいたしておるわけなんでありますが、ロケット開発は日本はやはり相当おくれておりますこと、これは事実の問題でございます。同時に、衛星を打ち上げますと、NHKあるいは気象庁、郵政省、電電公社あるいは国際電電、運輸省等々がこれの利用をいたす関係方面だ、こういうふうに理解をいたすのでありますが、このほうとの連絡、たとえば計画の日限の問題とか、それから重量の問題とか利用度の問題、こういうことについて関係方面との連絡を十分おとりを願っていただいておるかどうか、この点をひとつ……。
  265. 木内四郎

    ○木内国務大臣 関係各省とは、いまお話しのように十分連絡をとっております。  ただ、私はこの機会に申し上げておきたいのは、さっきも抽象的には申し上げましたが、わが国が非常におくれておるのは追いつけ追い越せで——追い越せまでいきませんけれども、何とかして追いつきたいという努力をしておるのですが、御案内のように、四十四年に計画を立てました。もちろん、その当時はアメリカの開発が非常に進んでおる。そこで、刻々といいものが出てくるような状態のもとにおいて、固定的に四十四年の計画だけでいくというふうには考えておりませんので、年々これを見直して、それで客観情勢に応じたようなものにして、改むべきところは改めていく。日本では、一度きめたものを改めるのはあまり好まれないようでありまするけれども、こういう内外の情勢のもとにおいては、どうしてもそういう態度でいかなければおくれてしまうというので、そういうふうにしたいと思っておったんですが、ちょうどこの前私が長官をやっておりました当時、御案内のように、四十四年の七月末日に、アメリカから技術を導入するという協定ができました。それで、アメリカはソー・デルタ・システムまでは日本に技術を供給しよう、ただし、機密に属さないものはよこそうというので計画を立てておりましたが、それに基づいていろいろやっておりましたところ、最近においては、またたいへん変わった状態もここに一つ出てきているわけです。アメリカにすればいろいろな国内の事情もあるでしょうが、ひとつパーチェスベースで打ち上げてやろう、こういう傾向も出てきておる、こんなようなわけであります。  そこで、私がさっき申しましたように、日本でやっているものも、いま説明申し上げておるように百キロ程度のものだ。しかし、それに対して要求のほうは、あるいは気象庁あるいはNHKその他からもますます方々要求が出てきて、より大きなたまでなければそれに応じられないような要求が出てきている。それにどうして応じるかというのが、いま私どもが非常に頭を悩ませておるところなんです。場合によって、国際的な約束その他で、日本が早く、たとえば気象衛星など打ち上げなくちゃならぬものがあれば、そういう場合には、あるいはアメリカの申し出のようなことに応ぜざるを得ないような場面も出てくるのじゃないか。しかし、われわれとしては、できるだけわれわれで開発をして、ひとつ間に合うようにしていきたいというのが、いまの私どもの考えであることを申し上げておきたいと思うのです。
  266. 栗山礼行

    栗山分科員 大体長官の御説明の範囲について十分了承をさせていただいたのであります。必ずしも、利用いたします関係方面との十分なる連絡が進んでおるというような事柄ではない。ロケット開発をお進めになりましても、肝心の衛星を打ち上げるものとの関連におきましての有機性がなければ意味をなさない、私はこういうふうにとらえておる一人でございまして、さような諸点がございますなれば、十分にひとつ関係方面との友好方向にお運びをいただく、こういう点を長官に特に切望申し上げてまいりたい、かように考えておる次第であります。  いろいろお話を伺ったのでありまするが、ただいまお話がございましたように、ポストNロケットの開発の検討をされておるやに若干耳に入るのでありますが、その点についてお尋ねを申し上げたい。
  267. 木内四郎

    ○木内国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、Nロケットで百キロのもの、これではとうてい諸般の要請に十分応じ得ない。そこで、それに対して今後どうやるべきかというと、いま宇宙開発の委員会のほうでも十分検討しておる際でありまして、まだどうということは申し上げるわけにはいきませんが、いずれこれ以上のものを打ち上げるということになると、それはやはり当然考えていかなければならぬと思っております。
  268. 栗山礼行

    栗山分科員 そういたしますと、まだ検討の段階であって、立案の方向まで進んでおらない、こういうふうに理解をさせていただくということでよろしゅうございますか。——はい。  昨年、マイヤーと木内長官との会談をなさいまして、NASAのほうは、商業ベースによっておれのほうが打ち上げてもいいぞ、こういうふうな申し出、引き受けというんですか、あるいはそういう会談がなされたやに伝えられておるわけでございますが、この点について、長官は結論的に、先ほどのお話のように自主開発をされるか、もしくはそういう多面的な関係方面との開発を通じて打ち上げを進めていく、こういう考え方で基本的にお考えになっていらっしゃるのか、その点のひとつ基本方向ということについて明瞭にお答えいただきたい。
  269. 木内四郎

    ○木内国務大臣 私どもは、アポロのような、お月さんに行くようなものを打ち上げるというようなことは考えておりませんけれども、Nロケットで打ち上げるものでも、百キロよりももう少し大きいものまではわれわれとしても打ち上げるようなふうにしたい、かように思っておるんですが、一面において、どうしてもという必要のある場合には、いまアメリカ大使からの申し出のお話がありましたが、そういうことも頭に置きながらものごとを処理していかなければならないものと考えております。
  270. 栗山礼行

    栗山分科員 それでたいへんけっこうでございます。非常に柔軟性を持って対処をいただく。ただ、ただいまのNロケットの問題は、打ち上げが百キロということは明確にお示しをいただきまして、また、そういう科学者が理解をいたしておるようなことでございますので、そこにポストNロケット、こういう問題に発展する問題に立ち至ったのでないか、こういうふうに考えるのでありますが、願わくは、ひとつ各方面の要望にそれがこたえられるような開発の方向に積極的にお運びをいただく、こういうお運びをいただければ非常にけっこうだ、こういうふうに念願するのでありますが、何か御意見ございましたら一言……。
  271. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いまお話しのとおりでありまして、私どもとしてはもう少し大きなものを打ち上げるような努力をしたいと思って、せっかく宇宙開発委員会のほうでも検討してもらっておるような次第でございます。
  272. 栗山礼行

    栗山分科員 次に、濃縮ウランの問題について、ちょっと新聞を拝見いたしました。新聞の伝えるところによりますと、わが国とオーストラリア並びにフランスとの原子力平和協定が結ばれて、ウラン確保の方向が進んでまいった。たいへん喜ばしいことでございまして、国内にないウランの確保について一歩の前進をいたしてまいったということが新聞で伝えられておるのでございますが、政府のこの種の基本的な考え方といいますか、こういうオーストラリア及びフランスとの原子力協定、ウランの確保の協定ができましたことについての考え方をひとつお聞かせを願いたい。
  273. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いまウランの供給の問題についても御心配していただいておる、まことに感謝にたえないのですが、御案内のように、いま私どものほうで発電の計画を立てております、それに要するウランは、日米原子力協定によって大体供給してもらっておるのですけれども、アメリカの供給力にもおのずから限度がある、また一方において、発電は各国ともに非常に進んでくる、そうなってくると、それから先のことをわれわれとしても考えておかなければならぬ。今日は、御案内のように、日米、日英、日加の協定というものによって、ウランの供給をしてもらう道が開けておるのですが、さらにその供給源を多元化しておく必要がある。そこで、フランス、また豪州、この両方と原子力協定を結んでその道を開くことにしたというのが今日の状態であります。
  274. 栗山礼行

    栗山分科員 そういたしますと、これも新聞で伝える点でありますが、米国の国際濃縮工場建設の提案、それからフランスの国際濃縮事業計画への参加の呼びかけ、国際共同工場の提案等があったということを、長官からも御説明いただきました。これらの提案についてどのように受けとめ、具体的に対応を進めておいでになるお考えなのか、この点をひとつ。基本問題でございます。
  275. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いまお話しのことはまだ具体化してはおらないのですけれども、いま私どものほうは、日仏、日豪、こういう方面にウランの供給源の道を開いた、こういうわけであります。一面におきまして、この濃縮ウランは、いまお話しのように、アメリカのほうでもそろそろ次の工場を建てなければならぬじゃないかということで、国際的な共同の開発計画というのをアメリカは持っております。また、フランスにおきましても、そういうのを国際的に共同開発するという考えも持っておりますので、その両方につきまして、いま原子力委員会のほうで、一方のほうは特別の懇談会みたいなものを設けて研究しておりますし、一方、フランスのほうは、研究のグループをこしらえましてやって、そして両方について研究しているという段階です。
  276. 栗山礼行

    栗山分科員 最後に、この問題の締めくくりといたしまして、長官の基本的なお考えを……。  いろいろそういうふうな呼びかけ等もございますことは事実なんでございまして、自主開発の路線でこれはお運びになるか、あるいは共同開発の路線でお運びになるか、あるいはまた、自主開発を通じて共同開発への発展的な方向といいますか、混合的な多面的な一つの開発の方向で進んでいくか、どちらを将来の方向としてお考えになっておるか、ひとつ承りたいと思います。
  277. 木内四郎

    ○木内国務大臣 ただいまのところは、わが国におきましてもこの研究はしておりますけれども、まだその技術を完成しておりません。そこで、アメリカとの共同開発の計画あるいはフランスとの問題、そういう問題もいま考究しておる最中でありますが、それと並んで、わが国の独自の技術の開発につきましても目下研究中でありまして、遠からずそれももうちょっと目鼻がついてくるのじゃないか、かように思っておるような次第であります。
  278. 栗山礼行

    栗山分科員 時間がございませんので、御所見をお伺い申し上げておきまして、私も御答弁いただいた内容について十分ひとつ勉強をさしていただきたい、かように考えておりますが、事は、やはり重大なわが国の問題でございますから、十分ひとつ遺憾のない方向づけをお願いを申し上げたい、かように考えます。  もう一点お尋ね申し上げますことは、原子力発電についての問題でございます。  三月七日の新聞を見ますと、原子力発電についてのアメリカ側の意見といたしまして、安全性について若干危惧の一面が載っておるわけであります。そこでお尋ね申し上げるわけでありますが、米国では、PWR型の発電炉について、緊急冷却装置がECCSの実験で疑問が出たと、新聞で示されておるわけでございます。今回、百万キロワットと承知をいたします関西電力の福井県における大飯、美浜でございますか、これの原子力発電所の建設について、原子炉の安全専門審査会が、安全は確保されるとして、建設の方向に一歩前進をされたように承っておるのでありますが、はたして安全性の確保というものがされるのかどうか、こういう大きな疑問を感ずるわけであります。これはアメリカとの関連において感ずるのでございますが、明確にひとつお答えをいただきたいと思います。
  279. 木内四郎

    ○木内国務大臣 私はいつも、原子力の平和利用につきましては、何としても安全性ということを第一にしてやっていかなければならぬ、こういうふうに考えておりまして、非常に杞憂をしておるのですが、いま栗山委員もその点について深く憂慮をしておられること、これまた感謝にたえないのですけれども、私はもともと技術者ではありません。そこで、私は、何としても、わが国の英知を集めた権威者の方々にこの問題を研究してもらう以外に道がない、かように思いまして、先ほどお話しの安全専門審査会の諸先生方に詳細にわたって研究していただきました。その代表者の方方があるいはアメリカへ行って、いまお話しになった問題などもいろいろ研究されてきた、その結果、美浜の発電の計画、また大飯の発電の計画、これは安全を確保することができるという、こういう答申を三月の六日に得ましたので、私は、その先生方の御調査に対して全幅の信頼をおいておるような次第でございまして、必ずやこれは安全を確保し得るものと、かたく信じておるような次第でございます。
  280. 栗山礼行

    栗山分科員 たいへん重要な問題でございまして、「米では許可停止 安全装置に疑義 海水温度上昇も不安」、こういうふうな見出しでこれが載っております。いま長官からお答えいただきましたように、原子力委員会の原子炉安全専門審会は、建設は安全という結論で諮問にお答えになった。ところが、片や一つ進んでおりますアメリカがこういう疑問を投げかけておる。こういうところに、はたして日本の、答申をされました審議会の安全性というものが、どのように安全の信をおくことが出てまいるか、こういう感を一そう深めるわけであります。よく存じませんが、氷の安全弁で、アイスコンデンサーで安全性を推進する、こういうふうな計画らしいのでありますが、これは米国はきわめて実験段階であって、それの安全性の確保というものはあり得ない、一口に言いますと、そういう説明を、新聞が解説でいたしておるわけでございますから、この問題をお尋ね申し上げたのであります。  長官長官なりに、そういう一つの審査会の御意見に基づいての御答弁をいただいておるのでありますが、アメリカのそういう事実と、それから原子炉安全専門審査会のそういう結論との関連性において、どうおとりになることが、科学技術庁長官としての一つの方向であるか、きわめて高度な先見性といいますか、あるいは勇断といいますか、これを必要とする、こういうふうに考えるのでありますが、これはいかがでしょうか。
  281. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いま御心配願っておること、まことにごもっともであると思うのですが、私は、この安全性は、やはり科学的に安全だということを確かめること、これが第一ですけれども、それだけじゃいかぬ、それに対してみなが疑いを持つようじゃいかぬ、こういう点を常々考えておるのですが、いまお話しの、アメリカに関する新聞の記事などをごらんになってそうお思いになるのも、私はごもっともな点もあると思うのです。そこで私も、そういう点につきまして、この審査をされた先生方に伺いましたら、その点については、自分たちも特にアメリカのほうに行って、その関係者あるいはその他について詳細調査をし、また聞き合わせてきたけれども、自分たちの研究したり集めてきた資料によると、それは心配はない、今回の施設によっては安全を確保することができる、こういうことでありましたので、その点をつけ加えて申し上げて、なお、もし必要がありますれば、私のほうの専門の者も来ておりまするから、それからも御説明をさせてもいい、このように思っております。
  282. 栗山礼行

    ○票山分科員 私は、限られた範囲内で、与えられた時間で終結いたしたいということを念頭に置いておるのであります。  おそらく、大きく報道されております新聞等につきましては、関係者がひとしくこれはごらんになりまして、そしてこの事柄についての御研さんを進めていらっしゃる、こういうふうに私は理解をいたすのでありますけれども、全く一方では、これはまだ非常に危険度が強いので、その範囲の結論を出すべき状態ではないんだ——一つの不安の状態だという表現だと思います。アメリカにおきましては実験中という段階でございますから。わが国におきましては、これが原子力委員会に安全性の答申をされておる、こういうたいへんな平行線を描いておる問題でございます。長官の立場におきましても、また私どもの立場におきましても、やはりより高度な、完ぺきな安全性というものを求めるに非常に重要な意義を持つものだ、こういうふうに考えておるのでありまして、やはり日本の科学者も国民もひとしく、この原子力の発電、原子力それ自身について一つの恐怖の念を持っておる、こういうことはいなめない事実でございます。特にこのように相対的な一つの新聞記事が出てまいりますと、この反響というものは非常に不安と疑惑を大きく拡大いたしてまいるという、大体新聞の内容のように理解をいたすのであります。  私、専門のことは伺うまでに、悔いをひとつ後世に残さない、こういう一つの立場においてどのように検討していただくかというようなことにつきましては、私どもから申し上げる段階でございませんけれども、とにかく完ぺきを期して、こういう事実は事実として対処をする、こういう心がまえでお運びをいただけるかどうかという長官の真摯な御信念のほどを承りたい、かように考えます。
  283. 木内四郎

    ○木内国務大臣 ただいまの御意見、まことにごもっともでありまして、私も、さっき申し上げましたように、科学者の科学的検討、それが安全であるといっただけではやはりいけないので、国民に不安を与えるようじゃいかぬ。ことに、栗山先生のような、非常に原子力平和利用に力を入れておられるあなた方もこれに対して疑いを持たれるようじゃいかぬから、どうしてもこれは国民の疑いを晴らすようにして、安心してまかしていただくことができるように、理解と協力を求めなくちゃならぬ、そのためには私は最善の努力をいたしてまいりたい、かようにいま思っております。
  284. 栗山礼行

    栗山分科員 どうもいろいろありがとうございました。
  285. 大村襄治

    ○大村主査代理 次に、横路孝弘君。
  286. 横路孝弘

    横路分科員 警察庁所管ということで、日活に対する例のロマンポルノの捜査の問題について、手入れをしたその警察の基本的な態度と今後の取り締まりの方針についてお尋ねをしたいと思うのです。  従来から、刑法百七十五条の猥褻罪の関係というのは、憲法二十一条の表現の自由との関係でいろいろ議論されてきたところでありまして、事件にも、文学の関係では「チャタレー夫人の恋人」、それから映画では昭和四十年の「黒い雪」など、いろいろ議論されてきたわけですが、今回の問題は、そういった事件で考えてみますと、芸術性、思想性というような問題では、いわば娯楽に属する部類なわけですけれども、内容を別にして、ただ、民間の自主規制機関の映倫という組織がありながら、それを全く無視して強権を発動したという点で、憲法二十一条の観点からやはり非常に問題があるのじゃないかと思うのです。日活のロマンポルノというのは、いわば映画芸術という点からいうと、悪しき商業主義の見本みたいなものだろうと思うのですけれども、ただ、それ以上に、やはり法律や権力によってこれを制限することを許すということは、非常に危険な側面を持っているわけです。この結果として、憲法で禁止されている検閲の事実上の復活というものを意図しているねらいというのが感じられてならないわけなんで、その点を中心にしながら、時間もありませんから若干お尋ねしたいと思いますが、議論していく前提として、現在までの捜査の段階というのはどういう状況になっているのか、この点をまず、事務局のほうからでけっこうですから、お答えをいただきたいと思うのです。
  287. 本庄務

    ○本庄政府委員 捜査の概況について申し上げます。  問題の映画は、一月の十九日から十日間、東京都内並びにその他の地区において上映されたのでございますが、警視庁におきまして、問題の三本が刑法百七十五条に該当すると判断をいたしまして捜査に着手をいたしまして、目下捜査中でございます。捜索あるいは被疑者の取り調べ等、現在やっておる段階でございまして、まだ捜査は終了いたしておりません。近く捜査を終了する予定でございます。捜索につきましては一応終了いたしておりますが、関係者の取り調べがまだ完了いたしておりません。当面そういう状況でございます。
  288. 横路孝弘

    横路分科員 これはいままで何人取り調べをしていますか。
  289. 本庄務

    ○本庄政府委員 いままでのところ、取り調べをいたしました人員でございますが、三本ございまして、「牝猫の匂い」、「恋の狩人」、この二本を製作いたしました日活関係者につきましては六十七名、「女高生芸者」を製作いたしましたプリマ企画につきましては二十五名、その他映倫関係十一名、合計百三名につきまして、事情聴取または取り調べを行なっております。
  290. 横路孝弘

    横路分科員 その取り調べを聞いてみると、スタッフをほぼ全員取り調べをしておるわけですね、小道具係から照明係まで。これは全部被疑者として、共犯者ということで取り調べをされておるんですか。
  291. 本庄務

    ○本庄政府委員 被疑者として取り調べた者、それから参考人として取り調べた者、両方を含んだ数字でございます。
  292. 横路孝弘

    横路分科員 それの内訳をちょっと教えてください。
  293. 本庄務

    ○本庄政府委員 被疑者として七十一名、参考人として三十二名でございます。
  294. 横路孝弘

    横路分科員 映倫の関係者が十一名調べを受けているということなんですが、この映倫の関係の方は、全員被疑者ですか。それとも、中には参考人もいるんでしょうか。
  295. 本庄務

    ○本庄政府委員 映倫の審査員三人、これは一応被疑、容疑ということで調べております。
  296. 横路孝弘

    横路分科員 この映倫という組織は、管理委員会というのが責任を持って運営をする。実際の審査は、審査員を管理委員長が委託をして当たっているわけなんですけれども、この管理委員長は、現在は高橋誠一郎さんです。管理委員は有光次郎さん、それから憲法の宮沢俊義さん、大浜英子さんと池田義信さんということになっているわけなんですが、これらの管理委員の人たちは、捜査の対象の面からいうとどういう扱いになっているんですか。
  297. 本庄務

    ○本庄政府委員 いまお名前の出ました管理委員につきましては、現在のところ、捜査の対象にはいたしておりません。
  298. 横路孝弘

    横路分科員 そうすると、これは将来は捜査の対象になり得るわけですか。
  299. 本庄務

    ○本庄政府委員 その点につきましては、目下全体が捜査継続中でございますので、本日は、その点についての御答弁は御容赦願いたいと思います。
  300. 横路孝弘

    横路分科員 映倫の実質的な担当者が一応被疑者ということで最初から取り調べを受けているわけですね。  この民間の自主機関である映倫と、前の「黒い雪」のときからおたくとの関係もいろいろあるようでございますけれども、一応この責任の組織的な母体というのは管理委員会ということになっているわけでしょう。そうすると、いまの御発言ですと、捜査中だからということなんですけれども、しかし、視点としては、映倫の関係者を被疑者とした以上、やはりこの辺まで入ってくる可能性というのは非常にあるように思われるわけですけれども、おたくのほうで、映倫の関係者を被疑者として扱った理由というのは、どういうことになりますか。
  301. 本庄務

    ○本庄政府委員 映倫の審査の際には、現実には管理委員ではなくして、その下の審査員の方が審査をしておられるようでございます。そういう意味におきまして、一応現実の審査に当たられた審査員の方々につきまして捜査を行なっておるわけでございます。
  302. 横路孝弘

    横路分科員 しかし、やはりあの管理委員会のほうできめた規定に基づいて、実際の審査に当たる人たちは審査をしているわけなんで、ちょっといまの点でお話ししておきますが、そうすると、その管理委員会のメンバーも、まだこれからの状況によっては捜査の対象となり得るのだというように警察のほうでは考えているというように理解してよろしいですか。
  303. 本庄務

    ○本庄政府委員 捜査の対象ということを、被疑者としてという意味に解しますならば、その点につきましては、先ほど申しましたように、捜査中でございますので、いまのところはっきりしたお答えはいたしかねます。将来参考人として事情をお聞きするということはあるいはあるかもしれませんが、それ以上の点につきましては、先ほど申し上げましたような事情で、答弁はひとつごかんべん願いたいと思います。
  304. 横路孝弘

    横路分科員 これは日活が、だんだん映画の需要というのが減ってくる中で、昨年の秋に三つを柱にして、一つは大作主義、一つは児童映画、一つはロマンポルノと称するものですね、それについて製作に入って、押収された、今度の捜査の対象になったのは、たしか八本目と十一本目ですね、日活の関係では。それを製作してからというように聞いているわけですけれども、警察のほうでこれの捜査を開始した端緒というのは、一体どんなところにあるのですか。
  305. 本庄務

    ○本庄政府委員 捜査の端緒は、担当係官の認知、それと市民からの申告、そのように聞いております。
  306. 横路孝弘

    横路分科員 そうすると、全く警察の独自の判断でおやりになったのですか、それとも、検察庁あたりとの連絡をとって、そこの指示を受けながら捜査を行なったのですか、その辺はどうですか。
  307. 本庄務

    ○本庄政府委員 御承知のように、現在の警察は都道府県警察制度になってございます。それぞれの管轄都道府県警察が捜査の端緒を得て捜査に着手をいたしております。その過程におきまして、警察庁といたしましても必要な報告を受け、相談に乗っておるという状況でございます。
  308. 横路孝弘

    横路分科員 そうすると、これはまだ送検にはなっていないわけですけれども、検察庁のほうとも連絡をとりながらいま捜査を進めているというように了解してよろしいですね。
  309. 本庄務

    ○本庄政府委員 ちょっと私の聞き違いだったかと思いますが、警察庁とおっしゃいましたか、検察庁、検事さんのほうですか。
  310. 横路孝弘

    横路分科員 検察庁。
  311. 本庄務

    ○本庄政府委員 それでは私の聞き違いでございますから、先ほどの答弁は訂正いたします。  警視庁で端緒を得まして、管轄の東京地方検察庁と相談をして着手をいたしております。
  312. 横路孝弘

    横路分科員 そこで、いま市民からの申告と、担当係官が認知をしたというお話なんですが、話に聞くと、日活の最初のころは、いまのものよりもかなり、捜査の対象になったものよりもさらに問題にすれば問題になる場面があるというように聞いておるわけなんですが、摘発の基準というのは、一体、いわばリトマス試験紙ですね、これはどの辺のところに置いてやっておられるわけですか。
  313. 本庄務

    ○本庄政府委員 基準と申しますと、おそらくこれはわいせつ性の判断の基準ということになろうかと思いますが、御案内のように、このわいせつ性の判断の基準につきましては、いわゆるメジャー的な、計数的な基準というものはございませんし、また、そういうものをつくることはまず不可能に近いと思います。したがいまして、従来の最高裁判所における判例、そういったものを中心にしながら判断をいたしておるわけであります。
  314. 横路孝弘

    横路分科員 つまり、そこがやはり大きな問題なわけですよ。たまたま見に行った担当係官が認知をして、その最高裁の判例の趣旨に従ってこれはわいせつ性がある、つまり、行った担当官の、見た人間の判断によって権力が動くということになるわけですね。それ以前のやつ、日活の一本目から七本目のやつというのは全然問題にされていないわけでしょう。だから、もうちょっと具体的に——もちろん、計数で出せなんというばかなことを私のほうで要求しているわけじゃないので、どういうところを問題にしたのか、前の一本目から七本目のやつを問題にしないで今度のやつをぽっと問題にしたのは、たまたまほかのやつは見ないでこれを担当係官が見たからなのか。皆さんのほうで考えた、捜査に入った、手入れに踏み切った動機というものを、もうちょっと明確にしていただきたいと思います。
  315. 本庄務

    ○本庄政府委員 たまたま一係官がそれを見たから、その係官の判断によって捜査に着手したということではございませんので、警視庁部内の各段階の幹部あるいは検察庁——検察庁のほうでも十分検討されたように承っております。  本映画につきましては、男女間の性交、性戯等を直接かつ露骨に描写、表現している場面が多い。特殊の部分を直接写さなかったということを除けば、きわめて公衆の面前で公開し得るようなものではなかった、そういった性格のものでございます。
  316. 横路孝弘

    横路分科員 そうすると、たまたま見たからではなくて、いろいろ検察庁とも打ち合わせをして、そして手入れに踏み切ったという話なんですが、では、その前のやつは全然問題ないわけですな。
  317. 本庄務

    ○本庄政府委員 今度捜査の対象といたしました三編については、少なくとも刑法百七十五条に該当するという認定をいたして捜査を開始した次第でございます。
  318. 横路孝弘

    横路分科員 手入れに踏み切った動機ですが、今度の手入れによって、警察のほうは、検察庁と一緒になって、一体国民のどんな法益を守ろうとしたわけですか。皆さんのほうで踏み切った理由ですね、一体、何から何を守ろうとして警察権力というものを発動したわけですか。
  319. 本庄務

    ○本庄政府委員 これは先生もよく御案内のように、「チャタレー」あるいは「黒い雪」等につきまして裁判所の判決があるわけでございますが、憲法で保障されております表現の自由というものは、公共の福祉のためには制限を受けるものである、これは先生ももう御案内のとおりでございまして、何と申しますか、性的秩序を守り、最小限度の性道徳を維持する、こういった公共の福祉——これは最高裁判所の判決の表現をかりて私が申すわけでございますが、そういったものが保護法益であろうかと、かように判断いたしております。
  320. 横路孝弘

    横路分科員 そうすると、道徳ですな、いわば性道徳というのも。では、その道徳に警察のほうで基準をつくって国民の前に示そうというわけなのが、今度の手入れの最大の理由だということになりますね。皆さん方の、あるべき秩序というのは、どんな秩序なんですか。
  321. 本庄務

    ○本庄政府委員 警察が直接道徳に介入するという意味ではございません。先ほど申しました最高裁判所の判決で述べられておりますような保護法益というものが、やはり刑法百七十五条という一つの法律になっておる、その法律に従って警察はその職務を執行した、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  322. 横路孝弘

    横路分科員 しかし、一つの秩序なり道徳というものは、社会の変遷によって変わってくるわけでしょう。だから、よくいわれる、明治時代、警察のほうでは治安警察法を発動して、治安警察法を使っていろいろ、たとえば裸体の写真はだめだとかいって全面的に禁止をしたわけですね。そういう秩序とか道徳とかいうようなものを、いま最高裁の判決ということでお話しになりましたけれども、そういう一般論じゃなくて、もうちょっと具体的に——いまの社会の状況の中で、警察のほうはそれを憂えて手を入れたわけでしょう。皆さんのほうで一応警察権力を発動して捜査されたのだから、これはいかぬ、あるべき姿はこうだというものをもし国民の前に示すことができるならば、それを示しておやりになったほうがいいんじゃないですか。
  323. 本庄務

    ○本庄政府委員 時代とともに考え方が変わるということにつきましては、私もさように存じております。したがいまして、この種の問題の取り扱いにつきましては、基本的には慎重を期する必要があると思いますが、しかしながら、たとえば性行為非公開の原則ということがいわれておるようでございますが、同じ一つの行為でありましても、公衆の面前で避けるべきものというものは、やはり社会通念上、健全な国民の社会常識上、あると思います。そういうものと、そうでないものとの限界、これはやはりおのずからあろうかと思いますが、そういった点が、あえて基準といえば基準。ものごとの性質が性質でございますだけに、それ以上具体的に御説明申し上げることはちょっと控えさせていただきたいと思いますが、抽象的な表現になるかもしれませんが、あえて補足をすれば、そういった点ではなかろうかと考えております。
  324. 横路孝弘

    横路分科員 これは俗に風俗犯といわれておるやつですね。個人のたとえば性犯罪ですね、そういうものについては大いにどんどん取り締まりをしたほうがいいと思うのですよ。普通こういう映画についていわれるのは、青少年に対する影響なんということをいわれますけれども、実際に調べてみると、この種映画ですね、あるいは日活の映画にしても、これを見ておる年代というのはどういう年代かということを調べてみると、一番多いのは四十代ですね。その次が五十代です。それから三十代、二十代。職種はどういう職種が多いかというのを調べてみると、一番多いのは公務員ですよ。つまり、ホワイトカラーが圧倒的に多いのですな、見ておるのは。つまり、私たちの世代なんというのはそんなに見てないのですよ、こういう映画を。大体ブルーフィルムなんか摘発されるとき、皆さん方よく知っておるだろうけれども、大体四十代、五十代の人でしょう、ああいうのを隠れて見ておるのは。つまり、そういう抽象的なことをおっしゃったって——もうちょっと具体的に、つまり、これを取り締まることによって逆に言うと、これを野放しにすることによってどういう具体的な影響が出てくるのか。青少年の性犯罪が拡大をされたなんという話はないわけですね。映画を見て興奮をして犯罪を起こすなんという、そんなばかなことはないわけですよ。その程度の映画でしょう、いまやっておるのは。この映画自身は、私は確かに低俗な娯楽だと思いますよ。しかし、そういう、一番多いのは四十代だということを聞いてみると、同情すべき余地もないわけじゃないのでありまして、下から突き上げられ、上のほうから押えられて、中間管理層なんというのがやっぱり、ときどきはけ口を求めてこういう映画を見に行くのかなということを、四十代が多いというのを聞いて感じたわけなんですけれども、そんな意味では、はたして国家が介入すべき領域なのかどうなのか。  ジュリストの去年の三月十五日号の、宮沢さんという人の論文によりますと、西ドイツの第四次刑法改正法律というのが、作業が当時進められていて、その提案理由として、司法省の次官がこんなことを言っているのですね。国家がこの種類の道徳に刑事政策や刑法で世話をやくということはもはや現代に適合しない。そういう観念にはもう別れを告げるほかない。このようなことをするのは国家の使命じゃない。ドイツ基本法——憲法ですね——が前提とする民主主義における成年の市民というのは、その最も私的な領域において自分がいかなる道徳、いかなる原則に従って生きようとするかは自分の責任において決定することはできるはずだし、決定しなければならぬということで、刑法の改正に踏み切っているわけですね。  つまり、問題は、セックスというのは人間の根源に触れる問題だと思うのですが、そこの議論をする気はないのですけれども、要するに、国家が介入すべき領域なのかどうなのかということですね。その辺のところをやはり皆さんのほうで考えてもらわなければ、さっき言ったような古めかしい性道徳とか性秩序というような、単なるそういう視点、観念だけで取り締まりの権力というものを発動するというのは問題があるんじゃないか。その辺のところを皆さん方お考えになっているのかどうか。どうですか、それは。何か来年度予算から、何という名目でしたかな、違反物件翻訳謝金とかなんとかいう名目で、初めて、外国の状況がどうかということを予算を計上して皆さん方のほうで調べるようになったと思うのですが、これは大いにけっこうなんで、外国の状況はどうなのかということもよく調べられて、ともかく状況に応じて非常に変わっていく分野ですので、その辺のところをぜひ考えてもらいたいと思うのです。いかがですか。
  325. 本庄務

    ○本庄政府委員 最初の、国家が関与すべき問題であるかどうかということにつきましては、いろいろ立場立場あるいはお考えがあろうかと思います。したがいまして、立法論といたしまして、現在刑法で規定しております規定、これはまさに国が関与しておるわけでございますが、それがいいかどうかということはいろいろ御議論があろうかと思いますが、しかし、現にそういった法律が厳然としてある、しかも現在、御案内のように、刑法全面改正について法制審議会で審議中のように聞いておりますが、その席におきましても、それを削除するというふうな話になったということも承っておりません。したがいまして、私たちといたしましては、その法律の適用にあたりまして、先ほど申しましたように、諸般の事情を考慮して、いま先生のおっしゃいましたような外国等の事情も一応参考にしながら、また、日本の国民感情あるいはものの考え方、その他諸般の要素を総合勘案いたしまして、慎重に、かつ取り締まるべきものはきちっと取り締まる、そういう考え方で臨んでおるわけでございます。
  326. 横路孝弘

    横路分科員 どうも先ほどから、手入れに踏み切った動機というのがよくわからないわけですが、警察のほうで世直しをしてやろうという感じがどうも非常に強くするわけなんです。  そこで、この問題については、映倫という機関があるわけですね。どうも皆さん方と映倫というのは感情的に対立をしているんじゃないかということを、いろいろ話を聞かされるわけなんですが、今回の手入れについて、事前に映倫に全然連絡をしないでやった。いまの映倫のやり方について、昭和四十年に基準が映倫のほうでありまして、その映倫の基準というのは、昭和四十五年に、時代にだんだん即応しないという形で、中間報告ということで基準が若干変わってきていますね。その辺のところについて、おたくのほうはどうしてそういう連絡なしにいきなりばっさりやったのか。これはやはり、民間がいろいろ考えておられる自主機関というものを完全に無視をして、権力で押えつけるという、そういう姿勢に受けとめられてしかたがないわけなんですが、いかがですか。
  327. 本庄務

    ○本庄政府委員 映倫につきましては、映倫がいままで映画の自主規制機関として果たしてまいりました役割り、これは当然評価しなければならないと思います。しかし、映倫自体の機構や運営の仕組みから、自主規制に限界があるということは、昭和四十年に日活の「黒い雪」を取り締まった場合における東京高裁の判決でも指摘をされております。警察のほうにおきましても、いままで何回かにわたり、国家公安委員長から映倫に対して警告をいたしております。あるいは現場の警視庁におきましても、具体的な問題映画を示して、審査の厳重を期することを警告いたしておりますし、そのほか、個々の委員の方々にも機会あるごとにそういう要望を申し上げておるわけでございまして、こういった、いわゆる、むずかしいことばで言えば、事前警告というものを、いままでたびたび繰り返してきておるわけでございます。したがいまして、今回の取り締まりを実施する前に、この映画そのものについて取り締まりをやるぞという警告はいたしておりませんが、過去数回にわたりましてそういった警告は十分やってきたという経過になっております。
  328. 横路孝弘

    横路分科員 警告したというのは、その四十五年に一回あるきりじゃないですか。四十五年以降というのはないでしょう、一年以上。おたくのほうでは、映倫というこの機関を評価をするとはおっしゃったけれども、現実にはそこを頭越しに手入れをしたわけですね。しかも、映倫の関係者を被疑者としてまで引っぱってきているわけでしょう。この自主機関というものを一体どういうふうに皆さん方のほうでお考えになっているわけですか。これはもう要らぬ、やめちまえ、つぶしちまえということが、やはりこの頭越し捜査と被疑者として引っぱってきている背景にあるのじゃないか。映画の関係者の一般的な受けとめ方というのは、そういう受けとめ方が非常に強いと思うのですよ。映倫というのは、もう十六年間以上の歴史を持っているところですね。その辺のところはどうですか。
  329. 大村襄治

    ○大村主査代理 横路君に申し上げます。  約束の時間が経過いたしましたので、結論をお急ぎ願います。
  330. 本庄務

    ○本庄政府委員 映倫につきましては、先ほども申しましたように、いままで果たしてきた使命というものは私は評価すべきであると思います。また、今後やはり映倫という自主規制機関によってその目的が達せられることが望ましい、できればいわゆる取り締まりということをやらないで済むようなことが私はやはり望ましいと思います。しかしながら、映倫によって目的が達せられない場合には、ものによりましては取り締まりを行なうのもやむを得ないのではないかと、かように考えております。
  331. 横路孝弘

    横路分科員 時間がなくなったということなんで、最後に、この映倫の管理委員会のほうで、管理委員長高橋誠一郎さんのほうから、今回の措置というのは、自主規制を無視したこのような事態が続くと、こういう機構、自主管理の機構というものの存立は不可能になってしまうというので、抗議の表明がされていますね。そのほか、日本映画監督協会、それから日本映画ペンクラブとか、いろいろなところ、映画関係から相当抗議が来ていますね。映倫の方からいろいろ話を聞いてみると、頭越しに横っつらを張られた、われわれが努力してきたのに、警察のほうでは世直しをするのだぐらいの意気込みでいきなりやっちまったということに対する不満というものは非常に強くあるわけです。やはりこういう機関というものは、それなりの歴史というものを持っているわけです。つくられてきた歴史というものを持ってきているわけですから、いま「黒い雪」の二審判決を引用されましたけれども、一審判決は全面的無罪ということになっていますね。そんな意味では、大臣、これは非常にむずかしい問題です。むずかしい問題だけれども、やはり軽々しく——憲法で保障されている問題でもありますし、映画のほうでは、現場のほうで、映倫のほうで非常に苦労されている問題であるだけに、しかも、そこにいる管理委員のスタッフというのは、憲法の権威である宮沢先生を含めて、学士院会員の高橋誠一郎先生とか、スタッフとしてはきちんとしたメンバーが管理委員としておって、作業というものを現実に進めておられるわけですから、やはりそういう点で、私は、こういう今回の措置というのは、映倫を無視したという意味で非常に遺憾だったと思いますし、微妙な問題ではありますけれども、やはり国が、権力が介入すべき問題なのかということについても非常に大きな疑問があちこちから出ている問題であるだけに、今後非常に注意をされて取り扱いをしていただきたいということを申し上げ、最後に大臣の見解をお伺いをして、時間が来ましたので、これでやめたいと思います。
  332. 中村寅太

    ○中村国務大臣 お答えいたします。  横路委員も御指摘のように、こういう問題は非常にむずかしい問題でございまして、寛に過ぎず、きびしさに過ぎないように、どこに線を引くかというようなことは非常にむずかしいと思いますが、しかし、取り締まり当局といたしましては、できるだけ慎重を期して最善の処置をしてまいる決心でございます。
  333. 大村襄治

    ○大村主査代理 次に、中谷鉄也君。
  334. 中谷鉄也

    中谷分科員 私は、総務長官に、同和問題の質問に先立って一つだけお聞きしておきたいと思うのです。     〔大村主査代理退席、主査着席〕  沖繩の軍労のストでありますけれども、無期限ストに突入をしたわけでございますね。そういう中で、米軍の考え方は、要するに、ストを解かなければ団交には応じない、こういうことだと思うのですけれども、私は、布令百十六号を引用するまでもなしに、ストを実施しているということと団交権とは全く別個の観念に属すると思うわけなんです。そこで、こういうようなかっこうで団交が行なわれないということが一そうストを深刻化する、こういうことについては、本土政府としても黙視するわけにはいかない。長官にはこの問題については非常な御努力をいただいていることは、私よくわかっておりますけれども、この問題について本土政府としておとりになる態度、団交を一日も早く再開をする、要するに、労使紛争の解決のルールに乗せるという点についての御所見を、冒頭にお伺いいたしたいと思うのです。
  335. 山中貞則

    山中国務大臣 これは復帰直前の五月十四日に解雇される人を含めて、ともあれ本土に復帰する喜びを全く打ち消してしまう首切りというものが行なわれるわけでありまして、私たちは非常に心痛しております。しかし、その姿勢も、どこからきたかといえば、どうもアメリカとしては、復帰前に済ますことは済ましてしまっておこうという、そういう姿勢があるような気がしてならないのです。ただ、私はその問題についてアメリカ側と接触する外交ルートを持っておりません。そこで、防衛施設庁、外務省に頼んでやってもらっておるわけでありますが、米軍の現地における姿勢が非常にかたい、いわゆる団体交渉にも応じないというお話態度がやはりネックになっておるようでありますから、私のほうは、本土政府が措置し得る内容のものをすみやかに大蔵といろいろ話をして、いま詰めようとしておるわけですけれども、それにも増して、やはり対米折衝、ことに現地軍の姿勢というものが問題であるということで、きょうは私もずっとここにおりまして、つまびらかには知りませんが、防衛施設庁長官が在日米軍司令官と会っているというようなことも一応の連絡を受けているわけでありますけれども、そのルートで、現地の軍のほうにもう少し姿勢を改めてもらいたいということを連絡をとる手段をとったように聞いております。しかし、私の見るところ、どうもこの点は期待薄なような気がしてなりません。したがって、このままどろ沼ストをいつまでも、復帰直前になってやらせることは、これは本土政府にとっても責任を問われる問題になりますので、単なる一単産のストというような形としてとらえないで、重大な沖繩の問題として私どもとしては処理したいと考えておりまして、いま現地側と、先ほども副主席と連絡をとっておるわけですけれども、大体向こう側の要望というものがわかっておりますので、私どもの段階でとり得る措置、そして防衛施設庁の対外折衝をもってとらなければならない措置について、私のほうでも対外折衝についても側面的に努力してみるという返事を先ほどしたばかりでありまして、すみやかな終結のための努力を惜しまないものであります。
  336. 中谷鉄也

    中谷分科員 冒頭の質問ですので、一問だけで終わりたいと思いましたが、布令百十六号の解釈などということではなしに、労使の基本的なあり方、ありようの問題として、ストをやめれば団交に応ずる、ストであれば団交に応じないというふうな姿勢は、私は、労使の基本的な考え方における根本的な誤解あるいは間違いがあると思うのです。もちろん、一部には、とにかく解決が大事なんだから、ストをやめてでも団交に応ずべきだという意見もあることは私は知っておりますが、いずれにいたしましても、団交に応じないということが、近代的な労働法の立場から見て、いずれに非があるのかということだけは、これはやはりこの機会に、本土政府としてこの場を通じて率直に、もう復帰も間近なんですから、そういうことは御答弁いただいてしかるべきじゃないでしょうか、この点いかがでしょうか。
  337. 山中貞則

    山中国務大臣 沖繩における軍労と米軍との関係は、法的にはスト権を与えていないと私は思っているのです。しかし、これは実力でもって実質上スト権を確立してしまったのですね。したがって、もともと本来の労使関係としておかしいのです。そうして、やはり占領軍意識でもって、使ってやるという姿勢があったわけでありますから、これが本土の間接雇用形態、国家が責任を持って労務を提供する形態に移る直前であることもあって、やや米軍のほうに——従来がどうであれ、問題が突発してトラブルになったら、打開の道は話し合いしかないわけです。事実、いままで向こうのほうも責任者が出て話し合いをしてきているわけですから、私としては、今回の措置ははなはだ不可解に存じますけれども、しかし、どうも米軍の一貫した姿勢から見ると、そこらのところが復帰直前に釈然としない要素があるようであります。したがって、本来の、問題があったら話し合いで解決するというのがあたりまえだという慣行に引き戻すべく努力はいたしますが、これは私としては直接の外交折衝はできませんという点を非常に遺憾に思います。
  338. 中谷鉄也

    中谷分科員 長官からそういう御所見を伺っただけで、この質問は終わりたいと思います。  そこで、一昨年も私、この問題についてはお尋ねをしたわけですけれども、あらためて興信所の問題について、同和問題との関係を含めてお尋ねをしたいと思うのであります。  私は、やはり近代社会においては、個人の生活の平穏、そうして個人がみずから秘匿しなければならない秘密というようなものは、できるだけ察知されない、そういうようなことがあってしかるべきだと思うのです。言うてみれば、プライバシーというものが最大限に尊重される社会というのが、私は民主主義的な社会だと思うわけです。そういう中において、興信所の仕事というのは、本来、いろんな商業関係の興信所等もありまするけれども、要するに、結婚問題その他、個人の秘密、個人のプライバシーを調査することによって成り立っている商売ということに相なろうと思うのです。  そこで、一昨年も長官にこの問題をお尋ねしましたけれども、興信所は一体どこの所管なのか、これははっきりしない、まさにそのとおりでありまして、通産省の所管じゃないかという説をなす人もおります。なるほど、サービス業ということになれば、通産省関係の融資を受ける対象になるのでしょうか、そういうことですが、保安部長さんにたいへん恐縮でしたが突然残っていただいたのですけれども、警察のほうでは、興信所の実態、実数についての把握はしておられるでしょうか。法務省のほうは、一番プライバシーの侵害に連なっていく興信所、この実数については把握しておられるでしょうか。まずこのあたりからきょうは質問をさしていただきたいと思います。
  339. 本庄務

    ○本庄政府委員 興信所につきましては、御案内のように、現在国としてそれに関する法規制がございませんので、私からお答えするのがはたして妥当かどうか疑問な点がございますが、せっかくのお尋ねでございますから……。  現在のところ、興信所の実態につきまして、正確な数、内容については把握いたしておりません。
  340. 影山勇

    ○影山政府委員 法務省といたしましても、興信所の数その他は全然わかっておりません。
  341. 中谷鉄也

    中谷分科員 そこで、相当数の興信所が存在をする。電話帳をくってみましても、これは机と経営者一人だけという興信所も含めて、電話帳の興信所の欄というのは、東京都の電話帳を見ても相当な数あるわけでございますね。こういうふうなものが野放しになっていてはたしていいのだろうか。何らの法的規制を受けずに、結局、最も個人の人権をとにかく侵害する。侵害してしまえば、とにかく方法手段において完全に侵害すれば、刑法その他の法律に触れる場合があり得ると思うのです。しかし、そうではなしに、現行の法規制のもとにおいてはそれは触れないけれども、なされておるところの調査方法その他調査内容等が野放しになっておるということが、はたして適当なのかどうか、こういう問題が私はあろうかと思います。これらの問題について興信所の良識にまかせるといったって、本来、興信所というものの経営の論理というものは、個人のプライバシーを侵害するところにおいて、個人のプライバシーを調査するところにおいて成り立っている商売であるということは、これはおのずから明らかなんです。そういう点について、法務省、そうして警察庁、法的規制について御検討になったという事実はございませんか。何らかの形において法的規制は私は必要だと思うのですけれども、この点については、もしそういうふうな法的な規制をするとすれば、どの点を規制すべきであろうかどうか、こういうような点についてひとつ御所見を承りたいと思うのであります。たとえば、ガードマンの問題については、すでにああいうふうな法律もできておる。だから、私は、興信所の数等についてどこの省にお尋ねしていいのか、実態についてどの省が責任をお持ちになっているのか。現実にとにかく近代社会における市民の人権が侵害される可能性を含んだところの御商売をしている人たちが大ぜいいる。何も取り締まりをするということを——私は取り締まり主義者じゃありませんから、申し上げるのじゃありませんが、やはり何らか規制措置があってしかるべきではないか、このような感じがしてならないのです。  蒸し返した質問で、三年ぶりに同じことをお尋ねするわけでありますけれども、警察庁と人権擁護局長、両方からの御答弁をいただきたいと思います。
  342. 本庄務

    ○本庄政府委員 先ほどお断わりいたしましたような事情で、なかなか答弁がしにくい御質問でございますが、若干私見が入って恐縮になるかもしれませんが、その点をひとつ御了解いただきたいと思います。  興信所につきましては、御案内のように、かなり数も多く、またいろいろな調査方法をやっておるというふうに聞いております。いま先生がおっしゃいましたように、その調査方法が現行の法規に触れる場合には、その法規によって取り締まるということになろうかと思いますが、それ以外に興信所そのものを直接取り締まる法律が必要であるかどうか、まずその必要性の有無について判断をしなければならないと思います。また、その場合の所管がどこになるか、これは内閣としておきめになることだろうと思いますが、かりに警察庁所管ということになりますれば、やはり警察庁の職務の性質上、警察的な見地から、いわゆる警察上の障害を除去する、そういう観点から適正な興信所業務が行なわれるように所要の規制を行なうということになろうかと思います。  先ほどガードマンのほうの話が出ました。今国会に、いわゆるガードマン業法、正確には警備業法案の御審議をお願いすることになっておりますので、その次の段階と申しますか、そういうことを検討する必要はあろうか、私自身はかように考えております。
  343. 影山勇

    ○影山政府委員 法務省人権擁護局といたしましては、御承知のように、人権問題についての啓発、それから侵犯事件の調査という観点からこの同和問題をやっておるわけでございまして、これに関連いたしましても、やはり侵犯の事実があれば摘発し、そして説示、勧告を行なうというような方向でやってまいっておりまして、いままで法規制ということを調査検討したことはございません。
  344. 中谷鉄也

    中谷分科員 大蔵省、それから文部省においでいただいておるので、興信所の問題をあまりしつこく聞くことはおかしいのですけれども、証券取引法などには、いわゆる外務員の勧誘行為についての禁止規定がずっと出ておりますね。商品取引法も同じくあります。それからまた、さらに生命保険の募集人取り締まりに関する法律もしかりでございますね。ですから、これは、同和問題との関係においてすでに法務省は通達をお出しになっておるわけですけれども、ひとつ人権擁護という観点から、興信所の協会その他に対して、まずとりあえず、立法の前提として——法規制が必要かどうかについては、保安部長から、ガードマン法律のあとで一応検討することになろう、検討してみてもいい、こういうお話があったわけですけれども、とにかく興信所集団の中において、たとえば証券協会その他が自主的にトラブル防止についてのいろいろな規制をいたしておるというようなことで、調査の方法、対象、内容、やり方、こういうものについてひとつ自主的なものをもきめてみる、そういうふうなものを勧告をするというようなことは、私、適切——自分の質問について適切というのはおかしいのですけれども、そういうことは必要じゃないか、こう思うのですが、人権擁護局長、そういう点について御検討になるお気持ちはございませんか。
  345. 影山勇

    ○影山政府委員 人権擁護局といたしましては、やはり特に同和問題に関係しまして、いわば人の心にひそむ差別という基本的なものを何とか取り除こう、そういうのが私どもの仕事になっておりますので、興信所のそういう調査というようなことは、ただいまのところ考えていないというわけでございます。
  346. 中谷鉄也

    中谷分科員 そこで、同和問題との関係についてお尋ねをいたしたいと思うのです。  けさからも大ぜいの委員が同和問題についてお尋ねをしたと思いますが、要するに、差別というのは世の中にあるべからざること、存在してはならないことが、とにかく現実に潜在的、顕在的に行なわれておる。こういうことはほんとうに残念なことであるし、ある意味では、こういう問題を取り上げざるを得ないということについては残念な気持ちがするわけであります。  そこで、差別事象として、興信所自身が差別事象を惹起したという例が多々ありました。そういうようなことで法務省は通達をお出しになったわけでありまするけれども、興信所の行なう身元調査等が差別事象を助長していることに対する具体的措置は一体どういうことがあるか、どういうような具体的な措置をおとりになったかという点について、あらためて人権擁護局長にお尋ねをいたしたいと思うのであります。
  347. 影山勇

    ○影山政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、これは地方法務局が取り上げまして、そして興信所に対して厳重に説諭する。で、説示いたしました。それも、同和問題についての理解を深めて、十分、自己の営業活動として不当であるということを悟らせるという方向で、説示ということに処理をいたしております。
  348. 中谷鉄也

    中谷分科員 そこで、あと二問だけお尋ねをいたしたいと思うのであります。  一つは、国の同和対策事業に対する補助単価の問題でありますが、その前に、同和教育の問題についてお尋ねをしておきたいと思うのであります。要するに、差別というふうなものは許すことのできないこと、しかし、あり得べからざる差別が現実に存在をしている、こういう前提でお尋ねをいたしたいのでありまするけれども、文部省の社会教育局長さんにお尋ねをいたしたいと思います。  文部省は、昭和四十五年の七月に、「同和問題と教育」という案をおつくりになりました。その後、同対協の中において、小委員会——和歌山の藤範さんが小委員長であるというふうに私、聞き及んでおりますけれども、現に審議中である、こういうふうな状況でありまするけれども、文部省といたしまして、同和教育のあり方、将来どういうふうな——同和教育については、同対審の中にも、同和教育についての明確な指針がないということが指摘をされておりまするけれども、この点について、私は局長からの御答弁をいただきたいと思うのです。
  349. 今村武俊

    ○今村政府委員 同和教育は、総合的な同和対策の重要な一環でございます。その中心的な課題は、同和対策審議会の答申に述べられておりますように、法のもとの平等の原則に基づきまして、社会の中に根強く残っておる不合理な部落差別をなくし、人権尊重の精神を貫くことであると考えております。文部省といたしましては、今後とも同対、審答申の趣旨に沿いまして、同和対策事業特別措置法及び同和対策長期計画に基づいて、同和教育の一そうの充実に努力するつもりでございますが、ただいま触れられました同対協における審議は、第三部会におきまして同和教育の基本方針を審議いたしまして、その最終の段階になっております。文部省といたしましては、その最終段階を受けて文部省の方針を明らかにするつもりでございます。
  350. 中谷鉄也

    中谷分科員 同対協の小委員会、小委員長が藤範さんのこの答申は、他の小委員会との関係もあろうかと思いまするけれども、いつごろ成案を見ることになるのでしょうか、お答えをいただきたいと思います。
  351. 今村武俊

    ○今村政府委員 一両日のうちでございます。
  352. 中谷鉄也

    中谷分科員 文部省においては、その答申を受けて指針を明確なものにされる、こういうふうに伺ってよろしいわけですね。
  353. 今村武俊

    ○今村政府委員 そのとおりでございます。
  354. 中谷鉄也

    中谷分科員 次に、同僚委員から同じような質問が出たようでありまするけれども、国の同和対策事業に対する補助単価が実際の単価より相当に低い、そのために地方公共団体が超過負担をしいられておるというふうな問題についてお尋ねをし、実情についての政府の新しい措置をひとつ求めたいと思うのであります。たとえば和歌山県の那賀町において、各省にまたがるところの同和対策推進事業計画がなされて、これについての昭和四十七年からの事業が行なわれることになりました。この点については、非常に県、町、いわゆる同和対策の飛躍的な推進だということで期待をしている。しかし、何としても補助単価が実際の単価より相当低いという点についての危惧と不安を持っているわけであります。だから、現在同和地区の改善整備にいろいろな——同和地区においては、それぞれ全力を上げて取り組もうとしておる。しかし、かなりの超過負担を生ずることが、これは事業計画を見ても当然想定されるわけです。それでその対策に苦慮しておる。こういうふうなことについて、同対審の精神、特別措置法の規定、こういうふうなものとの関係においてこのような状態はぜひとも打開されてしかるべきだと私は思うのであります。たとえば和歌山県においても、那賀町の次には、かつらぎ町等においても、同和対策推進事業についての非常な熱意を持ったところの政府に対する陳情をなされておる。このような状態の中において、重ねて申し上げまするけれども、国の同和対策事業に対する補助単価の問題、これらの問題について、ひとつ大蔵省のほうから私は御答弁をいただきたいと思います。
  355. 長岡實

    ○長岡政府委員 お答え申し上げます。  国の同和対策事業に対する補助単価を大きく分けまして、街路、下水道、児童公園あるいは農業基盤整備漁港といったような公共土木的な工事と、それから地区内の集会場、隣保館、保育所、住宅といったような建築事業の補助単価に分けて御説明申し上げたいと思います。  まず、前者の公共土木的工事につきましては、原則として、各事業実施個所ごとの所要経費を補助対象として行なっております。先生の御指摘の問題は、主として建築単価の補助単価であろうかと思いますが、これにつきまして、建築につきましては、一応その資材、労務費等によって基本的な単価をはじくことができますので、一般の建築系統の単価につきましては、事業主体が最も能率的に事業を執行した場合に必要とされる基本的な経費を基準にして考えておるわけでございますけれども、資材、労務等の経費の上昇率を毎年勘案いたしまして、毎年度その引き上げを行なってきております。特に同和地区の保育所につきましては、昭和四十六年度から従前の定額補助を改めまして、非常に大幅な単価の改定を行なっております。  同和事業の遂行につきましては、同和対策事業の基本法の制定の際の委員会における質疑の経緯もございますので、今後とも補助単価について実態に即して決定するようにつとめてまいりたいと考えております。
  356. 中谷鉄也

    中谷分科員 最後の一問です。  特別措置法の規定その他は十分承知した上でなお超過負担分についての非常な不安があるということだけを、重ねて申し上げておきたいと思うのです。  そこで、最後に長官に、私はやはり話をもとに戻しまして、興信所の問題についてお尋ねをして、といいますか、御所見を承っておきたいと思うのです。  これは一昨年もお聞きしましたけれども、一体どこの省に所管があるのか、とにかくこれは全然はっきりしない問題。しかし、私は、これはやはり社会の一つの大きな盲点ではないかと思うわけです。興信所の数が非常に多い。しかも、それが単なる特別なサービス業というふうな分類をすれば、第三次産業のこの中に入るというようなことになるのかもしれませんけれども、興信所そのものの業務というのが、事、個人の身辺の調査というふうなものが、どこの省の所管かもわからないし、それは営業の自由の名において許されるんだというふうなことだけで、それが良識にまかされていいんだ、興信所の経営者、職員のモラルの問題としてゆだねておいてだいじょうぶだというわけにはいかないだろうと私は思うのであります。特に法務省、さっき私がお尋ねしたあと、興信所に対して、同和問題に関する結婚問題等についての通達をお出しになって、改善の努力をしておられることは私十分にわかるわけですけれども、だからといって、同和を含むところの多くの市民がただ野放しに興信所の調査の対象になるということが、はたして放置されておっていいのだろうかどうか。この点は、先ほど警察庁安部長のほうから、ガードマン法律のあとでひとつ検討をしてみたいという趣旨の答弁があったと私は思いまするけれども、どこの所管かもわからない、この問題についてだれが一体責任を持つんだろうということが不明確だ、一昨年も質問して今日なおそういう状態であるということは、私必ずしも納得しないし、満足しないわけです。この点について、立法化を含めて、内閣において御検討をいただくということを、私はひとつ御答弁をいただきたいと思うのです。この点いかがでございましょうか。
  357. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、一昨年のこの場所における質疑のあと、いろいろと検討してみたんですが、これは融資を頼んでくるわけじゃなし、許認可の対象にもならないし、通産省所管でもなかろう、しかし、いま法務省の人権擁護局長の話では、たとえば同和問題に関して、興信所の——まあ依頼を受けたわけでしょうけれども、何ら他意を持たない調査の結果であっても、一人の青年、一人の女性の一生を棒に振ったような結果になるといった場合に、それが説示をしておるという、まあ警察でしたから説示ということでそれで済んでしまう、しかし、その失われた一生というものは一体だれが償うんだろうという気が私はいたします。したがって、むやみに、あらゆる営業取り締まり法規でもってがんじがらめにするということもどうかと思いますけれども、たとえば警備会社については、警察としては、まぎらわしい服装、あるいはまぎらわしいパトカーみたいなものまでやられたのでは、これはとてもかなわぬということで、今回は立法に踏み切ったと思うのです。そうすると、そういう被害者意識ならば立法ができるけれども、被害は政府としては負っていない、しかし、取り返しのつかぬ——あなたの言われたとおり、このような差別が存在することを自分たちが恥としなければならない、元来あってならないものである、そういう原点に触れるようなことが、その調査なり依頼された行動の結果起こるということは、人権の擁護の立場からも私は無視できないことだと思うのです。でありますので、これを直ちにどこで立法するかの問題、立法の可否の問題は別として、いまのように野放しであって、そしてそのために一人であっても犠牲が出てはならない事柄でありますから、そういうことを、国のほうは、わかったときに説示ぐらいで済ましていいものであるかどうか、これは国民に対する基本的な政治のあり方としてのモラルの問題として、もう一ぺん考えさしてもらいます。
  358. 森田重次郎

    森田主査 次に、島本虎三君。
  359. 島本虎三

    島本分科員 総務長官にお伺いします。それと同時に、あとから、沖繩関係の失業者、失対問題の質問に入りますから、労働省の両方にお願いしたいと思います。  まず総務長官に伺います。  復帰時には一ドル・三百六十円換算で表示する、これは伺いました。なお、円の切り上げ幅が一六・八八%である。総理は、これに対して、県民には被害を及ぼさない、こういうように言っておられますが、おそらくはこの問題で、現在の労働争議あたりも、春闘を控えながらなかなか解決を見ない一つの焦点、接点になっていると思います。これに対する具体策がありましたら、伺いたいと思います。
  360. 山中貞則

    山中国務大臣 まず一番基本の問題は、生活の物資をほとんど本土、いわゆる円圏物資に依存しておる、そして使用しておる金はドルである、そしてドル安の円高傾向がじりじり続いていく、この中における生活面の脅威としてまず第一点はとらえなければなりません。したがって、十月九日に、個人の通貨並びに通貨性資産のチェックは一応いたしまして、予算措置もしておりますが、さらに、本土の四百四十品目の依存物資についての実勢レートとの差額分についての補給をすることによって何とか物価の値上げを回避したいということで、すでに予算措置として昨年の十二月までの分が二十億計上されて支出されましたし、一方においては学生の措置もとりました。さらに一−三月の分について、先般予備費を二十億と学生の不足分について九千万計上いたしました。そして復帰がおくれたことに伴って、四−五月分についてさらに十三億計上いたしておりますが、これはいまのように円高が天井近くになってまいりますと、この金額で処置できるかどうかも疑問でありますが、これは義務的な経費としていずれ清算処理もしなければならぬと考えております。  そのような措置をとりますものの、一方においては、今度は、復帰の瞬間において、自分たちがいまもらっておるドルの月給というものあるいは賃金というものが、一体手取り幾らの円が自分たちの所得として入るのであろうかという非常な不安動揺が起こったわけであります。まあこれについては、先般、琉球政府の要請に基づいて、税制、あるいはまた産発資金、あるいは大衆金融公庫資金等において手当てをすることによって、一応ストライキ態勢というものは収拾ができたわけでありますけれども、しかし、これは融資でありますから、金融機関の貸し倒れ準備金の繰り入れ率千分の十五の沖繩に対する適用による千分の五のメリットというような具体的なものは、融資ではストレートにはまいりません。したがって、政策金融で低利、長期の借り入れ金を借りて、市中からの借り入れの高利、短期なものと置きかえるメリットによって、従業者の賃金を実質上三百六十円相当の円に換算した支払いをするという約束をしておるわけであります。  ところで、そのようなことが行なわれてもなおかつ完全であるかどうかについては、これは一人雇ってもやはり雇用主は雇用主でありますから、零細企業、商店街、こういうところの人たちに対して完全であったかどうか。これについては、琉球政府の要請については完全にこたえましたけれども、なお私のほうとしては現状を追跡しておるところでありまして、一方また、現在なお収拾の見通しのつかない軍労務者のどろ沼ストについても、何とか本土政府のとり得る手段を精一ぱい講じ、さらに対米折衝によって、本土復帰のときの基本給あるいは諸手当等についての問題を解決して、すみやかに収拾をしたい。復帰ももうあとごくわずかに迫っておるわけでありますので、このような混乱を復帰まで続けさせることは、本土政府責任において、沖繩の人に何の責任もなく切り上げた円の結果起こった混乱でありますから、最大限の収拾への努力を傾ける義務が本土にあると覚悟いたしておりますので、精一ぱいの努力をしたいと思います。
  361. 島本虎三

    島本分科員 その精一ぱいの努力、それはまさに期待するところでありますが、それで、いろいろな方面でいろいろなことを試算してございます。円の切り上げ幅が一六・八八%であるとすると、結局は物価においては一六・八八%だけ高くなっているということになる。同時に、賃金の面では一六・八八%だけ切り下げられたということになる。それを三百六十円の換算で復帰時には表示するというならば、具体的な方法としては、沖繩県民にこの分の差額だけドルの上乗せをしてやればいいのじゃないか、くれてやればいいのじゃないか。たとえば、日本の保有ドルは百四十億ドルあるとする。沖繩の商工会議所の試算によると、沖繩の為替の差損は八百億から一千億円だという。そうすると、それをドルにして三億ドル。三億ドルを千四百億ドルの中からやっても、どうってことはないじゃなかろうか、これはしろうとなりに考えられますが、いわゆる換算時に表示するという、また総理の、円の切り上げによって沖繩県民に被害を及ぼさないという、それであるならば、結局、損を受けただけのものを沖繩県民に渡せばそれでいいという簡単な考えができるわけなんですが、当然、日本の保有ドルもそれだけあるとするならば、その中からでもこれをやったならば、いろいろなことをやって考えられておるようですが、まず一つの解決とならないかどうか、この辺まで十分考えておられるかどうか、その辺についての御意見を承りたいのです。
  362. 山中貞則

    山中国務大臣 これはそういうふうに、きわめて簡単なる理屈であるとおっしゃるように事が運ぶものならば、とうに蛮勇をふるっておると私は思います。しかし、日本の保有外貨を三億ドルなら三億ドル、沖繩県民の損害分だとして向こうに渡すという、それだけでは、渡しようも問題がありましょうし、また、十月九日にチェックした、現在では二百六十億計上してありますが、これもドルが落ち込めば落ち込むほど、実勢レートで支払わなければなりませんから、それは三百億にもなっていくでありましょうが、それでも一億ドル近いものは給付することになるわけであります。これはしかし本土の責任においてやるわけでありますが、物価においてそれだけ、一六・八八%損をしたということでありますけれども、これは先ほど答弁いたしました中に、復帰までの間に、現在の予算でも五十数億のものを計上しておるわけでありますから、現実に値上がりがなかったとは言いませんが、沖繩の島産品、沖繩の県内において産出する品物、あるいはまたアメリカその他の本土以外から輸入する品物の値上がりに比べると、一応この金額は効果を示しておるわけでありまして、値上がりは低く出ております。もっとも、これが全然効果がないとすれば、五十何億もの国民の税金をつぎ込んで、そして中間のどこか商社でふところに入れて消えてしまったという申しわけのないことになりますし、またそのような事実はない。したがって、それなりの効果はあると考えているわけであります。したがって、十月九日以降の、純粋に沖繩においてドルの分で経済成長があった分についてどうするかの問題は、確かにその後の問題として残っておると思いますが、これを復帰前にもう一ぺん三百六十円ということになりますと、十月九日のチェックした分については御破算にしなければなりません。これは政治的に大問題を起こすことは御想像にかたくないと思いますので、いまとつおいつ思案をいたしておりますが、復帰を直前にして、この円の問題さえなかったならば、もっと沖繩人たち本土復帰の喜びを自分たち一人一人のものとして味わっていただくことができたに違いない。私にとっても、まことに、昨年の八月中旬以降、痛恨きわまる一連のできごとでありました。しかし、これに対して私たちはできるだけの努力をしてまいりますので、いまの案も一応一つのアイデアとして私のほうも検討はさしていただきますが、それだけが政策ではありませんので、何らかの具体的な手段をさらに検討していきたいと思います。
  363. 島本虎三

    島本分科員 やはりある程度に、ある場合には蛮勇も必要でしょう。ただ一連の政策としてその流れの中にだけものを見詰めていく場合には、現実とそぐわない場合も出てくる。蛮勇をふるってもらいたいのは、現在われわれ、報道機関によると、ちょっとこれは驚いた次第なんですけれども、三・三平方メートルの土地がたばこ一個分で売買されているという、この報道がもし事実だとしたら、驚いたことじゃございませんか。まさにこれは先島である。ことに観光資本が入り込んでそれを買い占めている。そういうことになると、現在やはり貧困ですからこういう実態になるでしょう。それに対して手を打たないということになれば、復帰されたあとはどういうふうになってしまいますか。せっかく喜ぶ沖繩県民が、復帰前に貧困のためにたばこ一個分で一坪、全部これで売ってしまうというような事態になると、それもやはり復帰前だからしようがないと見ておることは残酷に過ぎるような気もするのです。こういうようなことは私は見過ごしてはならないことだと思っていますが、私は、この点こそ長官の蛮勇を期待し、長官期待するところ県民も多いのじゃないかと思うのです。これに対して意見を聞かしていただきたいのです。
  364. 山中貞則

    山中国務大臣 これは琉球の現在の施政権下において本土政府が直接取り締まることができないことは、御承知いただけると思うのですが、現在の琉球政府で措置できるものとしては、布令並びに政府立法がございます。そして、土地取得、地上権設定、その他土地に対する恒久的な権利の取得については、これが琉球政府行政主席の許可事項になっておるわけであります。したがって、もちろん土地の取り上げではありませんで、いまおっしゃったように、納得ずくで、一応は売買でありましょう。しかし、そこに、昨年の干ばつから打ち続く台風、収入減、出かせぎというようなときに、荒蕪地とかあるいは比較的生産性の低いようなところについて、つけ込まれて安値で買われているという実態は、先般建設、農林から調査団を派遣しまして調べてもらった結果でも、やはり存在しておるようであります。したがって、復帰までにおいて、琉球政府のほうで、現在の取り締まり法があるわけですから、それはぜひきびしい取り締まりをしてもらいたい。ことに沖繩の新しい経済開発の青写真を描く場合、それが障害になって、いたずらに投機の対象として買われているような場合はほんとに困るわけですし、海洋博の開催等についても、いち早く本部半島あたりが閣議決定したということを聞いて、ブローカーが暗躍しているという話も聞きます。これはおそらく政府に多額で売りつけようというつもりでしょう。したがって、そういうことを、先行取得を琉球政府に一応やっておいてもらう。財源はあとで考えますからということで、一応起債で先行取得してもらうように予算措置もしておりますが、まあこういうようなこと等を織り込みながら、復帰いたしましたならば本土農地法が厳正に執行されますので、農地の取得あるいはまた転用等については農地法がきびしくかぶってまいります。したがって、復帰前に現在の琉球法の網をくぐってかけ込みでいくようなことのないように、琉球政府とは十分の連絡をとっておる次第であります。
  365. 島本虎三

    島本分科員 問題は、そういうような貧困な状態で、復帰後に一体どういうような情勢がもたらされるか、これが心配なんです。まず企業誘致そのものを見、労働政策そのものを見ましても、はっきり沖繩の労働人口に見合うだけの雇用の拡大ということが当然なければならない、しかし、企業の誘致というのは、利潤追求のための条件獲得のためにだけ進出していく、こういうようなことであるならば、やはり現代企業としては、人は要らないような、これは高度化された、技術革新が進んでいますから、企業は行ってもこれは雇用の拡大にはならない。そういうようになってくると、沖繩の雇用は、生活不安に対処する方法として考えられるものではないということになってしまうわけです。これは、沖繩で希望するものは現地で働かせる、そして政府責任でこの対策をはっきり講ずる、こういうようなことをもう考えておいてそれを実施させるのでなければ、企業は入った、入っても、たれ流すのは公害だけであって、雇用の拡大のためには何にもならないのだ、こういうようなことであったならば、あたら、五月十五日にみんな待望して帰ったといいながら、あとからもたらされるのは貧困だけじゃないか、こういうようなことであったら、とんでもないことだと思いますので、この辺も、企業誘致の点等においても十分考えておいてやらなければならないし、また、雇用拡大のためには、もっと本土においても考えておくべきではなかろうか、これはもう政府責任で対策を講じておくべきだ、私はこう思うのですが、この点等については、やはりこれは長官だと思いますから、長官に……。
  366. 山中貞則

    山中国務大臣 現在琉球政府のほうで企業の許可をしておるわけでありますが、私の心配しておりますのは、金武湾、中城湾に集中して石油が、ガルフ、エッソ、東洋石油、そして宮城島と平安座の間に三菱、そして宮城にアラビアというふうに出ていってもらいますと、もうすでに平安座から勝連半島までは海中道路でつないじゃったです。そうすると、いままでは浅瀬であっても海流が通っておりましたから、一応橋等は通してもらっておりますけれども、おそらく、金武湾の水産動植物については、かりに油が出なくとも、海流その他の問題で影響が徐々に起こってくるに違いない。したがって、今後沖繩については、石油は、CTSも含めて、精製はもちろんのこと、そういう石油関係の企業は復帰後はもう満ぱいである、これ以上沖繩に出ていってもらったら、沖繩は取り返しのつかない島になるおそれがあります。しかも、雇用貢献度も低いですから、私としては、来年度沖繩振興開発金融公庫の対象として、一番大きな目玉に造船というものを考えておったわけです。雇用貢献度も高いし、あるいはまた関連企業も当然興ってまいりますから。しかしながら、ドル・ショックによって、予定しておりました川崎重工が断念をしたという残念な事態でありました。松下も、土地を糸満に取得しておって、なおかつ、ドル・ショックで、あるいはアメリカのテレビその他の弱電製品の制限によって、進出をいまちゅうちょしておる、あるいは一時見合わしておるというようなものも、これまた内陸型で非常に雇用事情に貢献をいたしますから、積極的に応援をしたいと思っておりますけれども、客観的な情勢で一とんざを来たしておりますが、こういうものをやはり国策で積極的にめんどうを見ることによって沖繩の現地において雇用事情が新しく喚起されて、そしていまのような失業者が、復帰に伴って軍労その他から出るような人たちも、本土に流出しないで現地で新しい生活の場が求められるということをどうしても達成しなければいかぬということをいま考えておる次第です。
  367. 島本虎三

    島本分科員 それを私も心から期待しているわけです。  それで、沖繩で人々がはっきりした就職の場を見出して、労働者の就職の場にしてやるためには、やはり現在職業訓練も必要になってくる。まして、もう復帰後においては、これは速成的なものではなくて、労働者が訓練を受けて就職するまでの間、生活の保障も十分考えてやってしかるべきだと思っております。失業から再就職、そして生活設計、こういうようなものに対してはもう考えておいてやらなければならないし、これは労働省にあるんじゃないかと思うのですが、この点についてはどうですか。
  368. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 沖繩にいらっしゃいます失業者に対しまして、できるだけ早く安定した就職の場を提供することは、労働省としても一番関心事でございますし、また、一生懸命やらなければならない問題だと思っております。特に、先生も御承知のように、沖繩振興開発法によりまして、三年間求職手帳を失業者の方に出して、その間に職業訓練とか職業指導とか職業紹介、こういうようなものを綿密にやりまして、できるだけ早く雇用の場についていただくというような手当てもいたしております。それからまた、昨年の国会で成立いたしました中高年の法律によりましてもまたいろいろな手当てをいたしております。そういうことで、できるだけ安定した雇用の場に職業訓練等を中心にしてやってまいりたいと思います。それからまた、どうしても就職の場がない場合には、公共事業の吸収とか、あるいは特定地域開発就労事業というような、そういった臨時的な就労の場も提供しながら手当てをいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  369. 島本虎三

    島本分科員 やはり、復帰時に失対事業に就労している者、これに対しては、全員引き継いで就労を認める、そしてあわせて、この失対賃金の点でも、これは現在のところでは安うございますから、本土を上回るくらいのこういうような条件を策定して保障してやることが少なくとも必要じゃないか、こういうふうに思われるのですが、この点は労働省ではどういうふうに考えておられますか。
  370. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 復帰時におきまして沖繩の失対事業に働いていらっしゃいます失業者につきましては、本土の失対事業にこれを引き継ぐというようなことで、法的措置も前回の沖繩国会でとっていただきましたし、また、そういう予算的な措置を講じております。  それから賃金につきましては、先生も御承知のように、緊急失対法によりまして賃金の原則がございますが、それによって当然基本は進めてまいります。そのために現在職員を派遣して調査いたしておりますし、近く失対事業賃金審議会の先生方も現地を実地に見ていただきまして、慎重にきめたいと思っております。その場合に、やはり先生いまおっしゃいましたように、実態を十分見ることが大事でございますけれども、できるだけ本土の類似の地域等の賃金情勢とも見比べながらこれをきめてまいりたい、こういうふうに思っております。
  371. 島本虎三

    島本分科員 現在、賃金表によると、ABCDE、この五クラスに分かれておって、Aは二ドル九九、それからBは二ドル八六、Cは二ドル七三、Dは二ドル六〇、それからEは二ドル四七。これは本土の賃金に換算してみても安過ぎるのです。したがって、こういうような場合には、これに当てはめてやるのじゃなくて、本土の実態に当てはめて、これは上回ってはいけないという考えを捨てて、上回ってもかまわない、こういうような気持ちでこの級地の設定をするのでなければならないと思う。あなたは、これから賃金審議会のほうにまかすといったような口ぶりですが、おそらく向こうのほうはあなたの原案に従うのが常例ですから、あなたもそこは考えておかないとだめだと思うのです。そこを聞いても、はっきり歯切れのいい答弁になっておらない。しかし、そのくらい考えてやってください。  それと、就労日数は現在十五日分程度のものですが、本土では二十二日、なお地方によって上乗せを認めているところは二十三、四日、これほどありますけれども、そうなりますと、沖繩の場合には、復帰時において本土並みというようなことになりますと、これはやはり二十二日という線は当然考えられる。それから、都道府県の上積み、市町村の上積みも、もしいままでの言明どおりにやられるとするなら、二十四、五日も考えられるということになります。これはきわめて公共就労の機会が乏しい実態であることは、いままでの質疑によってはっきりおわかりのとおりですから、これは十分配慮して、無理のない吸収計画を立ててやらないとだめだと私は思うのです。この計画はできておらないでしょう。今後の問題でしょうか。この点の対処は完全でしょうか、まずそれを伺いたいと思います。
  372. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 第一の問題の賃金につきましては、先生の御意向を十分心に置きながら進めてまいりたいと思います。  第二の就労日数の問題でございますけれども、確かに、いま十五日程度だというふうに聞いております。私どもは、本土に復帰されました場合には、少なくとも本土並みにしたい、したがって、二十二日は確保いたしたいということで予算その他の措置も現在検討いたしております。
  373. 島本虎三

    島本分科員 しかし、二十二日程度は確保したいというのは、これはやはり労働省としての考えだろうと思うのです。やはりそれに上乗せをして考え、これを実施している面が山形その他にあるわけですから、その点を考えたならば、二十二日に限定をしないで、上乗せを認めて二十三、四日程度まで認めてやる、これは親心というものです。あなたの場合はその点少し遠慮し過ぎている。新任だから遠慮されているのではないかと思いますが、それはあなたのほうで十分配慮して差しつかえないのです。ことに、沖繩のほうでは作業用具や休憩施設なんか何もないでしょう。本土の場合だったら、ほとんどりっぱに、まあ家くらいは建てておって、休養施設だってできておるでしょう。それに対して特別財政的な措置も考えてやらぬといけないと思うのです。ことに、作業服なんかも全然支給もされてないけれども、あれは貴重なものだと思われているそうですが、この点あたりも十分考えてやらなければいけませんよ。本土に帰ってきて、本土よりおくれている、こういうような点は十分考慮してしかるべきだと思っておるのです。やりますか。
  374. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 ただいま職員をしていろいろと現地を調査させております。先生のおっしゃいますように、非常に作業施設の整備その他福祉施設の整備がおくれているやに聞いておりますから、その辺、逐一私ども点検をいたしまして、予算的な措置等も十分講じながらそういった整備をはかりたいと思っております。
  375. 島本虎三

    島本分科員 あわせて、中高年齢者雇用促進法、これの適用を当然受けるわけです。そういうふうになりますと、失業吸収率をきめ、それによっていろいろ事業を行なわせるということになると、これはもう仕事のない場所にはあらためて仕事をつくって与えなければならないということ、そうなりますと、産炭地開発就労事業に準じた何か事業を起こさせないとだめなんです。これあたりも十分いまから考えてもう準備されておられることだと思うのですが、この辺についてはよろしゅうございますか。それとまた、本土と沖繩間の賃金の格差は二〇%ぐらいあるでしょう。これに対してやはり十分考えておいてやらないとだめなんですよ。この二つをはっきり確認して、やめたいと思うのです。
  376. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 復帰いたされますと、沖繩の地域は、中高法の例の特別地域にいたしたいと思っております。そういたしますと、そこで中高年に対するいろいろな措置を講じましてなお就職できない場合には、先生御承知のように、特別地域開発就労事業を起こすことになります。これにつきましては、私どもも、当然、沖繩を含めまして事業計画を策定いたしたい、こういうふうに考えております。
  377. 島本虎三

    島本分科員 仕事がなくて失対事業に就労しなければならない、これは悲しむべきことです。しかし、現在、沖繩にその実体を求めても、誘致される企業は、現在の状態では公害企業、また、これはあまり望ましい状態に今後運営されないだろうということも予想されます。そうなってくると、漁業、農業、これに対してははっきりした今後政府指導をするのでなければならない状態になりはせぬかと思います。これは漁業に対しては振興、それから農業に対しては保護、この二つの観点に立って、遠洋漁業とか、いろいろな産物の加工産業だとか、こういうようなものをもっともっと政府のほうで計画的に金を積んで指導してやるべきじゃないだろうか、そしてなるべくその場所でもできるようにして、また、失対事業としてそっちへ行かなければならないような人をなるべく少なくしてやる、また、工場としてそっちへ誘致されていく企業にしても、いままでのところでは、そこに十分雇用して余りあるほどの雇用拡大になっておらないとすると、じみであるけれども、漁業に対しては振興策、農業に対しては保護策、こういうようなものをはっきり立ててやるのでなければならないのじゃないかと思うのですが、この点、最後にひとつ長官のはっきりした所見を聞いて終わりたいと思うのです。
  378. 山中貞則

    山中国務大臣 これは失業者も含めて、沖繩においては、いま復帰記念道路あるいは国体への突貫工事その他もやっておりますし、また、海洋博に向けて、昭和五十年といっても三年しかありませんから、一番安くかかっても、道路だけで海洋博会場に行くのに二百二十億はかかるだろうということもいわれておりますし、このようなものに全部が就労できないにしても、農林漁業の振興をやれという話でありますが、これはもう当然の前提として、農業の基盤整備、あるいはまた漁業の、ことにおくれておりますくり船の近代化、大型化、こういうものは、二分五厘の、本土にない融資制度をとって、すみやかに近代化して、魚は周辺に一ぱいおるわけでありますから、これを本土のほうから来た船のとるにまかせておる沖繩、そしてまた、船をつくってみても漁港がない沖繩整備されてない沖繩という現状から考えますと、漁港については、五年間で本土並みの緊急整備計画推進して、そしてそれと同時に、漁船をくり船を中心に大型化、近代化をしていって、島内需要はもちろんのこと、品質の高い高級魚介類もとれるわけでありますから、こういうものは本土のマーケットに送り出していくような漁業者のあり方にしたいものである、そういうふうにして、予算も一応金融公庫も含めて組んで、手落ちなくやるつもりでおります。
  379. 島本虎三

    島本分科員 それが単なるバラ色の幻想でないような状態を心からお祈り申し上げまして、私の質問はこれで終わります。
  380. 森田重次郎

    森田主査 次に、細谷治嘉君。
  381. 細谷治嘉

    細谷分科員 私は、科学技術の基本的な姿勢について二、三お尋ねしたいと思うのです。  そこで、まず、昨日いただきました「政府の窓」「時の動き」これに「科学技術政策を語る」という、木内長官との対談の記事がございます。これはやはり長官の科学技術に対する基本姿勢が出ておると思うのでありますが、どうも読んでみてわからない点がありますから、解明をしていただきたいと思うのです。  第一点は、この本の一二ページに「そこで日本がこれから伸びるのは精神の面、日本的、東洋的な思想、そういうものがあるんで、これはやっぱり世界第一の国になる要素を備えているといわれているのはそこなんですよ。単に西洋の物質文明だけでなしにね。」と、こういう答えをしておるわけです。この意味がどういう意味なのかわかりませんので、お答えいただきたいと思う。
  382. 木内四郎

    ○木内国務大臣 実は、この間「科学技術政策を語る」ということで、岸本という方が来られまして、いろいろ聞かれたのですね。それに答えておったのが、そのままいまの「時の動き」に掲載されておると思うのですが、私は、手放しで科学技術政策を語れと言われれば、また違った説明のしかたと思うのですが、向こうから説明されて、一体日本は一流の科学技術の進んだ国になれるかどうか、こんなようなお話があって、そのときに、ハーマン・カーンとか、いろいろな人のだれか一人、二人の説を引いて聞かれたのですね。その人たちが言っているのは、日本は、日本固有の文化も持っているし、それにアメリカのものも入れているし西欧のものも入れている、いろいろなものを入れているから、しかもそれを消化して、いいところをとってやっているから、これから大いに伸びていく素質があるだろう、こういうような趣旨のことを言ったのが、多少舌足らずで、十分に御理解を願えないような文章になっていたかもしれないのですが、そんなような意味で、対話のうちにそういうことを話し合ったのがそこに載っている、こういうようなわけでございます。
  383. 細谷治嘉

    細谷分科員 私も、この対話の全文を一応拝見したのでありますけれども、ひょこっとここに科学技術庁長官のことばとして「精神の面、日本的、東洋的な思想」、これが鼓吹されておるわけですね。これと一体近代科学技術というのはどういう関係にあるのか、私には理解できないわけですよ。それを受けて岸本さんも「ぼくは現時点で東洋的な思想を強調する風潮については、いささか反発を覚えるわけです」と書いてあるのですね。岸本さんならずとも、私も、一体、近代科学技術というものと東洋的な思想、日本的な思想というのは何なのか、こういうふうに大きな疑問を感じました。これで一体近代科学技術というのが推進できるのかという疑問を私は率直に持ちました。いまの長官のおことばでは私はどうもやはりわからない。対談でありますから、十分に意を尽くしておらないということはわかりますけれども、ここは一つ問題点があるのではないか、こう思います。  それから第二番目の問題点でありますけれども、「私は大体「公害」ということばを簡単に使うことは好ましくないと思っているのです。」ずっと書いてあります。いわゆる最近いわれますPPP、ポリュータリー・ペイズ・プリンシプル、こういう、公害の発生者が責任を負うべきである、発生源で食いとめるべきである、この長官のことばには賛成であります。賛成でありますけれども、前の思想と一体どういう関係があるのか、私はこれは解明できない、こう思っております。  そこで次にお尋ねしたいのでありますが、これは一五ページにあるのですけれども、「原子力というのは非常に貴重なエネルギーだし、強力なエネルギーだけれども、また一面において、いろいろな形で非常な危険を伴うものだ。しかしそれはやはり理解して、それに対する対策を講じて、それを排除するだけの努力をしなければいけない。私は原子力を開発した人知は、必ずそれの弊害を解決する能力があるという信念を持っている。長い目でですよ。よく議会なんかでやるときに、必ずこれは克服できる、そこでいま科学者は最善の努力をしているんだと言っているが」と、こういうことであります。このことばは、そのとおりであろうと思うのでありますけれども、現実の長官をトップといたしました科学技術行政というものがこういう形で進んでおるかといいますと、ちょっと首をかしげざるを得ないと思うのでありますが、このくだりいかがですか。
  384. 木内四郎

    ○木内国務大臣 私の申し上げたことにいろいろ御疑問があるようでありますけれども、私は、科学技術は、これは人間の英知によってここまで開発されてきた。原子力もその一つですね。それから原子力というものは非常に有用な強力なエネルギーであって、私は大いにこれを開発されたことはいいことだと思うのですが、しかし、それに伴っていろいろなあるいは危険もあり、不安もあり、いろいろなことがありまするけれどもそういうことは、必ずや、これを開発した人間の英知は、これに対する対策を開発する能力があるし、開発してくれる、科学者は必ずこれを解決してくれるものと、かたく私は信じているのです。科学技術行政を担当する者としてはですね。そのことをそこへ言いあらわしたのですが、これもあるいは多少ことばが舌足らずであって、誤解を招いたような点がないでもないかもしれませんが、私の趣旨はそういうところにあるのです。  それから、今日、原子力というものについては、いろいろなあるいは放射能の関係、その廃棄物を出せばいろいろな害がある、いろいろなことがありますけれども、そういうものも、必ず害を除去するだけの科学技術の開発をわれわれの科学者はやってくれるものと、私はかたく信じているのですよ。これは私の一つの信念ですけれども、それを申し上げたのがその対話のうちにあらわれているのだと思うのです。何か誤解がありましたら、ひとつお許しを願いたいと思います。
  385. 細谷治嘉

    細谷分科員 わずか三十分の時間で科学技術論を議論してもしかたがないと思うのですけれども、私が申し上げたい点は、最近いろいろ新聞等をにぎわしておる、たとえば、かなり大きなスケールアップをしておる原子力発電に関連しての科学技術庁態度というもの、発電所の開発についてはいわゆる近代科学を駆使しよう、こういう姿勢でありますけれども、それから出てくる、長官の言う公害でない、いわゆる私害というようなものについての科学的な追及の姿勢、こういうものがどうも不足しているのではないか、こういう点を私は思うので、きょうはそのことについて具体的に入る時間がありませんから、長官の姿勢として、これに出た点を一、二拾ってお尋ねをいたしたわけです。  そこで、私は少し具体的な点についてお尋ねしたいのでありますけれども、ちょうど原子力発電の問題が出ましたから、それについて若干お尋ねをいたしたいと思うのであります。  この原子力発電等の問題について、科学技術庁は、いわゆる現業庁といいますか、事業庁といいますか、あるいはそういう原子力発電についての技術を開発する、そういうものが安全に、いわゆる長官の言われるように、発電も、公害は及ぼさないようにするというところに力点を置く役所なのか、まずお尋ねしたい。言ってみますと、製造するほうなのか、あるいは監視する、こういう点に重点を置いてやっているのか、その辺いかがですか。
  386. 木内四郎

    ○木内国務大臣 私は、実はこの問題はもうたびたび、あるいは予算委員会で、あるいは科学技術特別委員会でも申し上げておるのですが、原子力というものは、さっきも申し上げたように、非常に貴重な強力なエネルギーである、これはどうしてもこれから開発して積極的に利用していかなくちゃならぬ、こう考えておる一人ですが、同時に、私は、原子力平和利用を進めていくためには、何としても安全第一でなくちゃいかぬ、安全第一ということを考えております。それも英知を集めた科学者の研究をまず第一にしますけれども、それだけではいかぬ。それは同時に、ことばはちょっと熟しておらぬかもしれませんけれども、社会的にこの安全性というものが理解をされて、そしてそれに基づいて、関係の人々あるいは地域の人々、この人々の理解と協力を得て初めて平和利用というものが遺憾なく進めていくことができるというのが、私の年来のあれです。今回申し上げておるのではありません。この間どなたかここでの委員会でもお聞きになりました。君は、そのことは、この前、三年前だって同じことを言っているではないか。私は同じことでいいと思っているから、それを申し上げておる。ですから、そういうつもりでおりますので、開発と企業化と、それからそれに対するマイナスの面、あるいは危険の面、そういうものを同じウエートを置いてバランスをとって、そしてそこにおいてこれを進めるべきかどうかということをきめていく、しかも安全ということに非常に力を入れていく、しかも安全も、単なる科学的安全だけでなく、これは社会的にこの安全性というものが理解されて協力されていくのでなければ、ほんとうの原子力平和利用、原子力発電、そういうものが十分に効果をあげていくことができないというのが、私の信念なんですから、そのつもりでやっていっておるつもりなんです。
  387. 細谷治嘉

    細谷分科員 原子力の平和利用ということについて、私も当然なことだと思うのです。その際に、安全ということと、それから現に生産をしていく、こういうことの調和ということは、ずっと前からいわれてきたわけですね。その調和の中から、長官が心配しているような公害といわれない公害というのがたいへん生まれて、日本は世界一のいわゆる公害国、長官のことばでいえば私害国、こういうふうになっているわけですね。ですから、長官、いまの、やはり生産というものと安全というものの調和だということばは、かつて公害国会で議論されたいわゆる産業の発展との調和、こういうところに問題があるのであって、もう少しやはり安全第一、こういう観点から行政を進めていただかなければならぬのじゃないか、こう私は思うのです。いかがですか。
  388. 木内四郎

    ○木内国務大臣 まことにお説のとおりであります。  そこで、これはちょっとよけいなことであって、短い時間に貴重な時間を拝借してよけいなことを申し上げてはなはだ済まぬかもしれませんけれども、公害基本法を制定するときに、なぜ原子力というものをあれから除いてあったか、こういうことをひとつお考え願うと、一つの御参考になると思うのですが、原子力に対しては、ほかのいまの公害と違って、開発の前からそれに対して細心の注意を払ってきておる。たとえば原子力の発電所を設ける場合に、炉の安全の規制法、これによって詳細に検査している。工場をつくる前に、設計ができたらまた検査する。でき上がったらまた検査する。それから今度はいよいよ稼働されるということになってくると、またそれを検査する。しかも、それから出てくる放射能というものに対しては、放射能の規制法によって詳細にやっている。そこで、これはあるいはまたしかられるかもしれませんが、原子力の基本法ができてから十年たっている。そして公害基本法ができて、おまえは優等生だからこれは公害基本法から除こうという、こういう考え方があったのではないか。それだけ、ほかの事業と違って、公害の除去というものに対して細心の注意を払っている。それも日本だけじゃありません。世界的基準を基礎にして、しかもそれよりはるかに安全度を高めて、あるいは百分の一くらいの安全度でやっている。だからこれは公害基本法に入れなくてもいいというので、公害基本法から——あるいは一部の方々は、これは公害の最たるものではないかと言われるけれども、それはもうこれだけ注意をして施設を製作しているならばこれはいいからというので、公害基本法から除かれているという一事も、これは御参考に、ちょっと時間をとって申しわけございませんが、一言申し上げておきたいと思います。
  389. 細谷治嘉

    細谷分科員 はしなくも、私がこれから質問しようという点について長官触れられたわけです。長官は、いまの科学技術庁を中心とした原子力についての開発の問題、安全の問題については、完ぺきだ、こういうように言われているようでありますけれども、しかも公害問題で公害基本法なり、あるいは大気汚染なり水質汚濁という、そういう法律をつくった際に、原子力というものがそれから除かれておるというのは、それ以前からやっておって、体制がぴしゃっとしておったから除かれたのだ、こういう意味のおことばです。  そこでお尋ねしたいのですけれども、原子力の平和利用といいますと、いま一番大きな問題はやはり原子力発電です。原子力発電について、現行法の中で科学技術庁としては責任がとれますか。私が質問したい点は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律、その中で、第七十三条には、電気事業法及び船舶安全法の重要な問題、これは除かれておるわけですね。適用除外ですよ。この法律の二十七条から二十九条までの規定は、電気事業法には適用されないわけですね。二十七条というのは何かといいますと、原子力発電所の設計及び工事の方法の認可、二十八条は使用前の検査、二十九条は定期検査であります。これは適用除外なんですよ。この法律ではなくて、通産省の指揮下にあるわけです。これで一体責任が負えるかどうか。現行の法律体系として、そこまであなたが責任を持っておる、自信を持っておる問題について、この法律体系で責任を持てますか、お答えいただきます。
  390. 木内四郎

    ○木内国務大臣 その点は、それと同じ趣旨の規定がすでに規定されておりますから、それを除外しているのでございまして、それは全然除外されておるという趣旨ではないのであります。その詳細のことは、いま局長が来ていますから、局長から説明させたいと思います。
  391. 成田壽治

    ○成田政府委員 原子炉等規制法第七十三条の適用除外につきましては、電気事業法や船舶安全法によって、それぞれ原子炉規制法と同等の規制が既存の法律によって行なわれておりますので、二重規制を避けるという意味から適用除外したものでありまして、安全の確保上問題はないというふうに考えております。たとえば、規制法二十七条の設計、工事の方法の認可、これは電気事業法四十一条で工事計画の認可という規定があります。それから規制法二十八条の使用前検査、これも電気事業法の第四十三条で使用前検査と、同じような規定があります。それから規制法二十九条の定期検査の規定が適用除外になっておりますが、これは電気事業法四十七条に同じような定期検査の規定があります。それから船舶安全法についても同様の規定がありまして、二重規制を避ける意味で適用除外にしたのであります。決して規制を緩和するという意味ではないと思います。
  392. 細谷治嘉

    細谷分科員 電気事業法に書いてあるということでありますけれども、電気事業法で、設計及び工事の認可なり、使用前検査なり、定期検査についての規定があることは、申すまでもありません。これは同じことで、公害の場合でも、大気汚染防止法の二十七条では、放射性物質による大気汚染及びその防止については、大気汚染防止法は適用除外になっているわけです。電気事業法もガス事業法も適用除外になっているわけですね。さらに水質汚濁防止法では、二十三条で、放射性物質による公共用水域の水質の汚濁及びその防止については、水質汚濁防止法はひっかからぬわけですよ。ですから、科学技術庁責任を持ってやるということでしょう。そうでしょう。ところが、電気事業法は、大気の汚染についても、あるいは水質汚濁についても、一つも変わってないのですよ、これほど公害がやかましくなってきて。内容を読んでみても、原子力発電というのは最近開発されてきている。その一番問題の専門家というのは、あなた方でしょう。電気事業法の条文は一つも変わっておらない。それで、放射能公害という問題が出ている原子力発電について、あなた方が全然タッチせぬで完全を期することができるのですか。長官、できますか。これは通産省まかせであります。電気事業法に書いてある。電気事業法なんて、まだ原子力発電が起こらないときにあった条文そのままですよ。一字一句も改正されておりませんよ。これで責任持てますか。
  393. 成田壽治

    ○成田政府委員 原子力の規制につきましては、原子力基本法によって、原子力委員会が一元的な責任をとることになっております。そして、先ほど御指摘の点につきましては、いろいろな基準につきましては規制法で定めておりまして、これが十分守られているかどうかという実施の面では、二重規制を避けて、一部のものは電気事業法等に譲っているということでありまして、基本的な、放射性物質の排出基準とか、肝心なところは、規制法によって基準が定められております。ただ、それが実際守られておるかどうか、あるいは励行されておるかどうか、その点の実施の面で電気事業法の法律に譲っている次第でございます。
  394. 細谷治嘉

    細谷分科員 私の質問をする点に答えてないのですよ。一元的に原子力問題について科学技術庁が握っていくというならば、原子力発電所の設計及び工事の方法の認可、使用前検査について、その原子炉の部分が十分であるかどうかということは、一元的に握っている科学技術庁がチェックせぬで、通産省にまかしてよろしいのですか。一方、大気汚染とか、あれについては、放射能についてはあなた方の責任になっておるわけですよ。そうでしょう。適用除外、一元的じゃないじゃないですか。原子力発電所というのは、これからの原子力応用の主柱ですよ。それについて触れることができないで、それはそれぞれの事業法にありますということだけで一元的にこれは科学技術庁でコントロールできますか。
  395. 成田壽治

    ○成田政府委員 原子力発電の健全な遂行の責任は、原子力委員会が一元的な責任を原子力基本法において負っておりますが、先ほどの御指摘の点は、電気事業法に、あるいは設計、工事の認可、あるいは使用前検査、定期検査等は電気事業法に譲って、通産省の所管になっておりますが、実際は、非常に原子力局と通産省と十分な連絡をとって、決して原子力基本法なり規制法による基準の励行が守られないということが絶対ないような十分事務的な連絡をとっておりますので、御心配の点はないというふうに考えております。
  396. 細谷治嘉

    細谷分科員 長官、いま原子力局長の答弁で、科学技術庁としては十分事務的な連絡をとっていっているから、法律に書いてなくて、適用除外であっても、一向差しつかえないのだ、十分連絡をとって、責任持てる体制になっているというならば、法律を整理なさったらどうですか。原子力エネルギーの問題について、原子炉の問題等について、やはり科学技術庁は専門なんでありますから、そしていろいろな経験も持っているわけなんでありますから、そういう原子炉の設計なり、工事の方法の認可、あるいは使用前検査等について、その部分については法律的にチェックできるような、単に事務的な連絡ということじゃなくてやるような法律の改正をすることが、真の一元的な法体系であるし、あなた方も責任を持てるということでしょう。いかがですか。これは常識じゃないですか。
  397. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いまの御意見も、一つの御意見だと私は思います。そういうふうにして、法律を全部改正してすべて科学技術庁でやるというのも一つの方法で、しかし、行政官庁において、ものごとによっては、その所管の官庁——電気事業というものを監督している所管の官庁にまかしておる。しかし、それは十分にわれわれのほうと事務の連絡もあり、また原子力委員会というものもありまするから、そういうものも働きまして、そしてその運用が、さっき局長の申しましたように、二重の規定にしないで、そうしてそれでやっていく、これも一つの方法だ。しかし、この法律を改正するというのも、やはりこれは一つ考え方だと思いますが、現状におきましては、そういうことで電気事業関係のことはその点はまかしておく、それで私は、お互いに助け合っていくということによって機能を発揮できるものだ、かように思っておるのですが……。
  398. 細谷治嘉

    細谷分科員 これにあまり時間をとりたくないのですけれども、あなたは、さっき私の質問に対して、いままで生産第一主義、こういうもので安全がややおろそかになったところがやはり反省すべきであって、安全第一でやっていかなければならない、その安全をやるには、安全についての技術を開発し、安全についての技術を持っており、安全についての経験を持っておる科学技術庁がチェックするだけの法律的な裏づけ、権限というのがなければ、事務的にやるとかいっても、今日のような縦割り行政の弊害点が叫ばれている段階において、あるいは公害問題がやかましくなっておる今日において、特に原子力発電所の公害問題、環境汚染問題についてやかましくなっておる今日においては、十全を期さないと、各地で問題が起こっておるじゃないですか。でありますから、私は、そういう原子力、平和利用の中心であります発電所のそういう原子炉等については、電気事業で規制しているからということじゃなくて——電気事業のほうは生産するところなんですよ。それを安全という面から科学技術庁がチェックする、こういうことが必要ではないか、こう思います。どうもそれについては、いや、連絡をとっているからいいのだ、こういうことです。  もう一つ、今度はあなたのほうの領域に、原子力で環境が汚染された、水質が汚濁されたときには、環境庁の力は及ばないのですね。それは環境庁と連絡をとっているからいいだろう、こういうことで心配はありません、私のほうの法律で、これは原子力による放射性環境汚染、水質汚染というのについてはおれのほうが責任を持つといっても、環境庁のほうは、環境のほうは汚染されておって、環境の汚染の一番最たるものは放射能だ、こういう段階になった場合にはどういたしますか。この辺も私は法律上の整理をする必要があるのではないか、こう思うのですよ。私が、冒頭、あなた方は生産を担当する庁ですか、あるいは原子力の安全ということを重点とする庁ですかということを質問したのも、そこから出ているわけですよ。時間がありませんから、ひとつ長官、この辺は、そこまでやっているのならば、権限争いじゃなくて、すっきりと、もちはもち屋、そしてその経験なり、技術なり研究成果というものを生かせるような法律体系をとることがよろしいのではないか。この前、おととしの暮れに公害国会というものが開かれた際に、自然公園等、いろいろな問題が、この公害基本法あるいは大気汚染、あるいは水質汚濁等の中に集約されたのでありますけれども、残念ながら、一番大気をよごす、一番水質を汚濁するこの原子力問題というのが全部、そういう中から、生産担当省である通産省の権限になっているというのはおかしいと思うのですよ。これはやはり現状に即して直していただかなければいかぬ、こう私は思うのです。あなたのほうの領域が広くなるからいいじゃないか、そんなことを言っているのじゃないですよ。環境庁との関係、そういうものもきちんと整理して、国民が安心して環境を守っていくことができるというような法律体系、政治体制というものを一致してつくるということが必要じゃないか、こう私は思うのです。いかがですか。
  399. 木内四郎

    ○木内国務大臣 これは、この法律制定の時間的経過その他から見て、いろいろな点があると思うのです。あなたの御意見、確かに一つの御意見だと思います。そういう点についてもいろいろ研究してみる余地はあると思うのですが、とにかく今日まではそれで安全のほうも、いま原子力局長の言いましたように、お互いに連絡し合って十分にその目的を達しておる、こういうことでありまするけれども、確かに一つのお考えでありまして、十分に検討する値打ちはあると、私はさように思っております。
  400. 細谷治嘉

    細谷分科員 この辺は、これからの公害問題、特に私は長官の基本的姿勢を冒頭お尋ねした点からいっても、やはりポリューター・ペイズ・プリンシプル、汚染させた発生源者がそれを守っていくという、こういう原則が確認されておるわけですから、ひとつ法体系もそういうふうに至急やっていただくように、長官にもお願いすると同時に、主査においても、ひとつこの点はこの分科会の意見としてお取り上げいただくようにお願いをいたしたい、こう思います。
  401. 森田重次郎

    森田主査 了承しました。
  402. 細谷治嘉

    細谷分科員 私は、この放射線公害の、強い放射線の場合と、非常に弱い、現に環境を変えているような問題の検討がどうなっているか。
  403. 森田重次郎

    森田主査 細谷さん、結論をひとつお急ぎください。
  404. 細谷治嘉

    細谷分科員 そういう問題なり、あるいは今日の科学技術の、おたくのほうで出しましたこれからの科学技術の問題等について、幾多問題がありますけれども、これは後ほどの機会に譲りまして、きょうは、もう時間が来て、あとの人からやいやい言われますから、これで終わっておきます。
  405. 森田重次郎

    森田主査 次に、大原亨君。
  406. 大原亨

    大原分科員 木内長官、私は、前任長官の平泉長官のときに、科学技術特別委員会でいろいろ議論いたしたのでありますが、これから質問するのは、原子力の影響研究に関する問題ですが、これは、広島、長崎のABCCの問題であります。この問題について、現在は厚生省が実質的に主管をいたしておるわけでありますが、先般の科学技術特別委員会におきましては、厚生省、外務省、科学技術庁、それから文部省、それぞれ御出席をいただきまして、ABCCの問題につきまして、今後のあり方の問題について議論をいたしました。その際に、平泉前長官は、その議論を踏まえながら、国務大臣としてアメリカとの交渉に当たって、アメリカ側もいろいろな要求をしておるようだから、日米間で話し合いを進める、こういうふうに言っておられたのであります。それから、関係各省もそういうふうに答弁をそれぞれの方向でやっておるわけでありますが、その後——これは木内長官じゃありませんよ。その後関係各省において日米間の話し合いをどのように進めておるか、アメリカ側からは何らかの意思表示があったかどうか、こういう問題を含めて、経過の御答弁を適当な省の担当者からひとついただきたい。
  407. 大西正男

    ○大西政府委員 お答えを申し上げます。  いま先生がおっしゃいましたような経過によりまして、すでに、非公式ではございますが、交渉といいますか、話し合いと申しますか、それを始めておると聞いております。その話し合いの内容につきましては、まだ先方の科学者が十分煮詰めた案を出しておるわけではないということでございまして、先方の担当しておる科学者諸君が一種のたたき台のようなものを出しまして、それに関して、わがほうの内政の関係各省庁が、これまたそれをたたき台としてそれぞれ検討をいたしておる、こういう段階であるというふうに承っております。
  408. 大原亨

    大原分科員 この問題は、終戦直後から始まった問題ですから、外務省が窓口であります。実質的には私は厚生省がやっておると思います。この日米間の交渉の責任は、政府の中においてはどういうふうな考え方の統一をして、だれが責任者でこの交渉に当たっておるのか、この点についてお答えいただきたい。
  409. 大西正男

    ○大西政府委員 お答えいたします。  外務省は、御承知のとおり、対外関係をつかさどる省でございます。ところで、このいまのABCCの問題につきましては、その研究調査の業務の実態と申しますか、その実態は、たとえば、科学技術庁におきましては放射能研究所、あるいは厚生省におきましては予防衛生研究所とか、あるいはまた、広島などにおきまして、広島大学の医学部などもこの研究調査に関与しておるやに承っておりますが、そういう意味から申しますと、これはやはり文部省の関係にもなろうかと思います。そういうことで、その研究調査実態に関与するのはやはり内政に関する各省庁でございまして、その方面で話の内容は詰めていただかなければならないのではないかと思います。そこで、最後に対外的にこれを取りまとめるというふうなことになりますれば、これはやはり外務省の関係、こういうことになろうかと思うのでございます。
  410. 大原亨

    大原分科員 大西次官から、アメリカ側から一月に非公式に学者グループの意見としてたたき台が提案された、こういう御答弁であります。日本側はこれに対してどのような対処のしかたをするのか。私は、きょうは時間の関係もあるから、繰り返しませんけれども、アメリカのトルーマン大統領の特別命令によりまして、GHQを通じまして、広島、長崎にABCCを設置をいたしたのであります。しかし、これは日本においては、またアメリカにおいても、法人格はないのであります。そのABCCが設置されました基礎というのは、御承知のように、口上書があるだけであります。口上書も、アメリカ側の基礎は、アメリカの原子力委員会と、それからアメリカの学士院、これの契約書に基づいて、アメリカの学士院が団体的に学者等を動員いたしましてABCCに現地に派遣いたしまして影響調査をいたしてきたのであります。これは、広島の地元の医学界の元老であり、原対協その他原爆関係に従事しておる松坂義正という方がおられるわけでありますが、元老でありまして、もう八十に近い人でありますが、この人も言っているように、これは占領軍の遺物である、こういうことを言っておられるのであります。つまり、外交上もたくさんの欠陥がある。先般の科学技術特別委員会における私の質問の関連質問で田中委員が質問をいたしまして、そして原子力委員会とアメリカの学士院との間における契約書、これは軍の秘密その他について第一線で守る義務を負わせるとか、その他の問題があるわけでありますが、そういう問題を指摘いたしまして、問題として解決されていない、占領の遺物がそのまま今日居すわっておるというふうな問題点を指摘いたしました。これは質問を保留いたしておりますが、問題は私はたくさんあることは承知をいたしておるのであります。ですから、そういう外交上の問題については洗い直すべきである。少なくともアメリカ側が今後二十五年間は研究を継続したいということを意思表示をしておるわけですから、いままでの二十数年間と今後二十五年間で、当時一歳の人が五十歳になるまで、原爆を受けた地域やその他のいろいろな条件のもとでどういう影響を受けているかということを継続的に研究しようというのでありますから、そういう意思があるわけであります。したがって、そういうことでありますけれども、遺憾ながら、これは占領の継続にすぎないのであります。こういう点において、日本の政府側はこの問題は洗い直して外交交渉を展開すべきであると思う。その問題について、日本の政府側はアメリカの非公式の提案に対しましてどういう対処のしかたをするのか、この点について外務省あるいは厚生省等の見解があれば、承りたいのであります。
  411. 大西正男

    ○大西政府委員 このABCCの講和条約後における現在までの存在、その経過につきましては、いま先生がおっしゃいましたとおりでございます。そこで、先ほど申し上げましたように、非公式な交渉といいますか、話し合いがいま持たれておる段階でございますが、なるべくこれを正式な話し合いの座にのぼるような方向に促進をしていきたいものだ、このように私どもとしては考えておるのでございます。
  412. 大原亨

    大原分科員 先般の科学技術特別委員会におきまして、かなり時間をかけて詳細に議論いたしました。そこで、私はできるだけ繰り返したくないわけですが、日本側はどういう態度で日米間の交渉に臨むのか。たとえば、当時の口上書等は非常に不確実ですから——不確実というか、非常に不備な文章であります。しかも外交上の慣例からいいましても、互恵主義から見まして問題がたくさんあるのであります。それは口上書をやり直す、あるいは協定書にするという問題を含めて、私はABCCの日本に存在する基礎についてやり直すべきであると考えるが、いかがですか。
  413. 大西正男

    ○大西政府委員 先生のおっしゃいます御意見は、まことに傾聴すべき御意見だというふうに私は考えます。そこで、いまの非公式な話し合いの過程におきまして、一体どういうことが問題になるのか、あるいはまた、先ほどおっしゃいましたように、今後二十五年間は少なくともこの機関を尊重して研究調査を続けたいという意向が先方にはあるやに私ども聞いているのでありますが、その今後におけるあり方、そしてまた、わが国のこれに対する協力のしかた、そういうものをこの非公式の話し合いの中で煮詰めてもらいまして、そうして十分検討した上で、先生のいま御心配になっておるような点につきましても万遺漏なきを期して、正式な座にあげていきたい、このように存ずる次第でございます。
  414. 大原亨

    大原分科員 この問題はあとにまた触れるといたしまして、日本側の態度といたしまして、先般も議論したのですが、こういうABCCというふうな原爆傷害調査委員会のような仕事というものは、いまや、日本の高度成長の今日では、一年間約十五、六億円かかるわけですが、これは予算はたいしたことはないわけですから、日本が全面的に引き受けてこの調査を行なうべし、こういう議論が一つあるわけです。あるいはもう一歩視野を広げて、広島、長崎の原爆投下の問題は、国際的な問題、グローバルな問題であるから、国連の専門機構において取り上げてはどうか、こういう議論があるのであります。もう一つは、いまのような厚生省の予防研究所が片手間にやっている。科学技術庁長官、これからあなたのほうにいきますが、厚生省予防研究所というのは、結核とか伝染病の研究機関なんです。ABCCで調査したものを持って帰りましても、これを検討する場所がないわけです。あなたのところの放医研——稲毛の放射線医学総合研究所というのが、対応する機関といたしましては、共同研究にいたしましてはこれはぴったり合うところなんです。もちろん、広大や長崎医大等の文部省関係のこともあるわけでありますが、そういうことなのであります。そういう方向で議論をいたしておるわけであります。私はそういう対応のしかたから考えて、どの省が今後——アメリカのほうは本年の六月で会計年度が終わり、日本政府のほうは新年度予算の編成作業に入るのは八月ですから、少なくとも七月ぐらいをめどにしてそういう実質的な話をすべきである、こういうふうに私は考えるわけです。そういう問題等につきまして日本の政府としてはどういう態度で話し合いに臨むのか、こういう点につきましてひとつお答えいただきたい。
  415. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先般の国会における先生の御意見等を踏まえまして、私のほうとしては、特に私の立場からは、上司の御意見を聞く必要がございますので、この判断につきまして上司の御意見を聞きましたところ、確かに、設置法の関係なり仕事の性格からいって、十分検討する必要のある問題であるというような御意見がございましたので、それを踏まえまして、いろいろ相談する各省の機関として、科学技術庁の御参加も、すでに会合等に来ていただいております。しかし、問題は、長年の歴史的なつながりがある問題でございますし、また、相手のある——と申してはたいへん失礼でございますけれども、いろいろ長いつながりを持っておりますので、そういう点で、比較的筋論だけではいかない面というものもあるというふうに認識し、今後、各省の御意見がどういうふうにこれに対応しておるか、われわれとしては上司の御意見を基本にして検討いたしたい、こういう気持ちでおります。
  416. 大原亨

    大原分科員 厚生省は実質的にいままでやってきたわけですから、ついでにお尋ねするわけですが、交渉のめどは大体いつにしておるのか。向こう側から非公式に提案があったけれども、交渉のめどはいつにしているのか。これは外務省が答弁してもよろしい。  それから、向こう側が非公式にたたき台を提案したというけれども、これはアメリカ側の窓口は大体どこで交渉しているのか。アメリカ側の一部から報道されるところによると、アメリカ側は、日本側において現在以上の財政負担をしてもらいたい、こういうことを希望いたしておるというふうにいわれておるのであります。いずれにしても、日本の政府の部内で、関係各省が多いわけですから、考え方を統一いたしまして、どこが実質的に交渉を推進するのかということをきめなければならぬと思うのであります。この前の科学技術特別委員会等におきましては、平泉前国務大臣等を含めまして、私どもの議論といたしましては、科学技術庁が厚生省と緊密な連絡をとりながら実質的にこの問題の交渉を進めるべきである、こういう見解に対しましては、ほとんどの諸君が肯定的な答弁をいたしたのであります。それで、いま聞いてみますると、厚生省も、おっかなびっくりというか、消極的なようでありますが、この点につきましてもう少し具体的にひとつお答えをいただきたい。アメリカ側が非公式にたたき台といって提案しているのは、一体どういうことを提案しておるのか。
  417. 大西正男

    ○大西政府委員 たたき台の内容につきましては、いま申し上げましたように、きわめて非公式な提案でありまして、同時に、それはアメリカ側においても煮詰めた最終的な案というのでもないように聞いております。でございますから、その内容にわたりましてここで私のほうからお答えを申し上げる段階ではないように思いますので、御了承を願いたいと思います。
  418. 大原亨

    大原分科員 そこで、外務省が窓口でやっているのでしょう。外務省はきわめて不熱心じゃないですか。私も外務委員会その他に出てやりますけれども、あしたは社労でもやりますから、出席を求めます。原爆関係の法律案がありますから……。つまり、問題は、アメリカはABCCが天下ったような形で山の上におって、そうして厚生省の予防研究所という伝染病の機関——当時としてはやむを得なかった。終戦直後は医者という専門家がそこしかいなかったものだから、放医研も原研もなかったから、これはやむを得ないのですよ。それが協力するかっこうであったのだけれども、主体的に共同研究にならなかったのです。というのは、予防研究所という厚生省の機関は、十幾つの専門部があっても、放射線の影響を専門的に研究する機関は一つもないわけです。ですから、日本側はモルモットだ、こういう議論も出たわけです。しかも、先般来楢崎委員が予算委員会等で、この前の沖繩国会等でも指摘をしたように、岩国の原子力の教育訓練機構の一環だ、こういう指摘もあって、電話帳の問題が出たわけであります。形が当時の占領のままなんです。それはおかしいではないか。しかも日本の政府の対応のしかたというものはいびつであって、なっておらぬじゃないか。それを全部洗いざらいにして、そしてこれを徹底的に究明するというのであるならばやさしいことであるけれども、しかし、いろいろな議論を先般もしたときに、この影響の調査研究の機能は存続したいものだ、こういう専門家の意見なんでありますから、であるならば、日本側は財政上も人的にもしっかりした基礎を持って、日米対等の原則で話し合いを始めてはどうだ、私はこういうことを提案いたしておるのであります。ですから、これは、日本には原子力基本法があって、民主、公開、平和、それから自主の原則があるわけでありますから、その原則に従ってやらなければこんなものは無用の長物ではないかという議論があるわけであります。  それともう一つの問題は、調査と研究と医療の問題、これを同じように、政務次官が最初言われたように、関係機関があるわけですから、原爆病院等もあるわけですから、それらが一つのチームをつくって、ABCCの調査の結果というものを検証しながら、そして日本側が主体的に受けとめていきながら、この研究が価値あるものであるならば継続すべし、こういう議論であります。どういう継続のしかたをするかということは、最初に申し上げたように、アメリカからそっくり日本が引く継ぐのか、あるいは国連の専門機構にこういう歴史的な調査をまかせるのか、あるいは日本がほんとうに名実ともに共同研究するのか、そういうかっこうでない限りは、私は別の観点で、この問題は、国会としては、一たん口火を切った以上は、ほうかむりをすることはいけませんよ、こう言って、きょう、あしたの質問をしようということで、おそいのでありますけれども大臣や次官にお残りをいただいたわけでありますが、この問題について、具体的にいま私が指摘したような問題について、政府はどういうふうに意識統一をしてアメリカとの交渉に臨むのか。アメリカは非公式にたたき台を出したというんだから、日本側としても態度をはっきりして、国民が納得できるような形でなければ、あのABCCの調査活動というものは今後二十五年間続きませんよ。市民の協力は得られないですよ。だから、その点について私は二、三の問題を指摘をいたしましたけれども、実際に担当した外務省と厚生省、私が指摘した二、三の問題についてどういう見解を持っているか、お答えをいただきたい。これは橘参事官と公衆衛生局長を私は特に答弁に指名をいたします。
  419. 橘正忠

    ○橘説明員 ABCCにつきましては、先生御指摘のとおり、アメリカ側からも非公式のたたき台が参りました。先国会からの宿題のような形になっておりますので、私ども外務省としても、一つは、先生おっしゃったような口上書というような形の問題と、それからもっと実質的な、これから長きにわたってのABCCのあり方、安定した形をどうしてつくっていくかということについては、特に関係する国内官庁の方々に至急御検討をお願いして、問題を洗って、いまその考え方をまとめていただくように促しているところでございます。  先生おっしゃいましたように、わがほうの会計年度の問題、それから米側の会計年度の問題もありますので、できる限り早い機会に話をまとめて、米側との正式な話し合いにも入りたいと考えております。
  420. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この問題の処理にあたりまして、厚生省は、従来予研の協力しておる姿のものから別の関係にするということもあわせて並行してやれという問題を論じておりますと、あるいはそういう問題とABCCのあり方をどうするかという問題とをからめて考えるということに、率直に申しますと、なかなかむずかしい問題がございます。しかしながら、当面国内の協力機関として予研が協力しておる、問題を踏まえておる厚生省といたしましては、各省関係のこの問題の処理に対する打ち合わせ、それぞれの業務を分担し推進していくということに対する当面の厚生省としての会合なりその他の責任は、私のほうで今日までのところ持って、進めてまいっております。  それから、先生御指摘の、調査あるいは研究、治療というものは、文部省等を含めまして日本国内の機関が非常に統一的に考える必要があるのじゃないかという考え方でございますが、これにつきましては、確かに、それぞれの研究なり、あるいは資料の整理なり、こういう課題が一つ大きくございまして、この点についても、今後、われわれの持ちました会合をさらに拡大するなり、検討いたしまして、この点についてはわれわれもその必要性を感じておりますから、各年度予算要求あるいは研究テーマの設定等についても、十分協力してやる必要があるということを感じておる次第でございます。
  421. 大原亨

    大原分科員 外務省、それから厚生省、ひとつ簡潔に御答弁いただきたいのですが、つまり、アメリカの予算は七月からが会計年度であります。日本も、申し上げたように、八月から新年度予算編成にかかるわけであります。ですから、それらの問題を勘案して、少なくとも七月ごろまでには日本の態度をきめて、そして対米折衝が煮詰まるように——そこまで、ずっと下交渉をしなければできませんが、煮詰まるように、政府部内の意識統一と、それから交渉を具体化するというふうな方向で努力をする意思があるかどうか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。これは次官からでもよろしい。
  422. 大西正男

    ○大西政府委員 先生おっしゃいますような事情があるわけでございますので、私のほうといたしましても極力そういう努力をいたしたいと存じております。
  423. 大原亨

    大原分科員 厚生省はよろしいですか。
  424. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先ほど申しました打ち合わせ会等におきまして、私はやはり新年度に間に合わせる検討をすべきであるという考えで御意見を求めておりますけれども、やはり諸般の問題等がございますので、はたしてその時点で成案が得られるかどうか、率直に申しましてたいへん心配している面はございます。しかしながら、かなり大きな変動を考える問題でございますので、慎重に、なおかつ時間というものについても、かなりの時間を要するのじゃないかというような感じを私は持っておりますので、はたして次年度の問題にこれを間に合わせることができるかどうか、たいへん危惧いたしております。
  425. 大原亨

    大原分科員 外務省側の意見と厚生省の意見が、実質的にはニュアンスが違うわけであります。しかし、大西次官のほうは、そういう交渉を進めていく。口上書とか、日米の外交関係だけをとってみましても、あるいは外交官特権の問題をとってみましても、これは非常に問題があるのであります。これなど、ほっておくというのはおかしいのでありますから、そういう問題を取り上げただけでも、この数カ月間精力的にやるならば、沖繩問題でアメリカ局は忙しかったらしいけれども、対米関係でありますから。しかし、この問題は、私は、次官も大臣と十分御相談になって、そうして政府側の意見をまとめて話を進めてもらいたい。大西次官と、それから、これらの質問を聞きまして、科学技術庁長官、前の平泉長官はかなり前向きな答弁をいたしましたが、聞きまして、大体長官も御理解になったと思いますが、最後に長官のほうからこの見解についてお答えいただきたい。次官のほうから先に……。
  426. 大西正男

    ○大西政府委員 いま先生から、外務省と、それから厚生省との間で多少ニュアンスが違うではないか、こういう御指摘がございましたが、最初に申し上げましたように、これは業務の実態そのものは、内政関係の国内各省庁、このほうで話を煮詰めてもらわなければならない問題でありますことは、これは前提だと思います。そういうことを考えつつ、外務省の気持ちといたしましては、国内各省庁をも激励申し上げまして、そうしてできるだけ、いま先生のおっしゃいましたようなことに推進をいたしたい、こういう気持ちでございますので、そういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  427. 木内四郎

    ○木内国務大臣 この問題は、御案内のように、これは外交の関係がありまして、アメリカのほうと交渉をしなくちゃならない。いまああいう制度を戦後あのまま残しておいたことがいいか悪いかとか、いろいろ議論がありますけれども、現にそれは存在しているのでありまして、それを解決するためには、まず一つは外交関係の問題である。これは外務省のほうで、いま次官からもお話がありましたように、いろいろこれから交渉されるものだと思うのですけれども、さて予算の問題になりますと、かりに話がついて、向こうがやめてこちらへ引き渡すということになった場合におきましても、予算の問題は、あらかじめ取っておいてさあ話をするというのは、どうも慣例ではないようでありまして、まあこちらへ移すというようなことになりましても、それには多少の時間的な余裕を置いて、それじゃ来年からとか再来年からやるとか、その次からやるとかというふうにして、まとまればそのときには予算を取るというような順序を踏まなければならぬ問題じゃないか。内容の問題につきまして、いま厚生省のほうからもお話があったり、外務省のほうからもお話があったとおりで、この問題はちょっと変わった問題ですから、できればなるべく早く解決しなくちゃならぬ問題であると思いますが、やはりそれには多少順序があるということをひとつ御了解願っておきたいと思うのであります。
  428. 大原亨

    大原分科員 大西外務政務次官のほうから、交渉の窓口に当たる外務省側としての一応の目途が示されたわけでありますけれども、実質的には内政面で厚生省や科学技術庁が関係が深いわけですから、十分協議をした上でその目標に向かってひとつ——長くかけたからといって問題がうまく解決できるのじゃありません。したがって、この問題は、きょうは予算委員会でありますから、大蔵省の主計局も参加いたしておるわけですが、しかし、私は引き続いてあしたの関係社会労働委員会等でもこれは議論をいたします。つまり、調査と治療、研究、こういうものが一体的に行なわれていない。ABCCは、関係機関の運営的な連絡機関を持っておるけれども、やはり自分が金を出しているということで、自分のスタッフで独走しているきらいがある。しかし、研究自体についてはだれも認めておることであるから——その研究のあり方の基本姿勢がまた、被爆者の立場その他国民、市民から見れば問題になっておる。ですから、この問題は、外交関係を洗い直すことを中心にいたしまして、日本側の内政面を担当しておる皆さん方がどう対応するかということにひとつ積極的に取り組んでもらいたいと思うわけであります。  木内長官は、管轄であります科学技術庁の放射線医学研究所の問題があるわけです。それから原子力の調査については基本法があって、民主、公開、自主、平和の原則があるわけであります。日本における研究というものは、それを無視しては行なわれないわけであります。治外法権ではないわけでありますから。ですから、そういう面で、洗い直してみなければならぬ外交上、内政上の問題は多いわけです。その問題は先般の特別委員会で議論いたしましたから、政務次官の御答弁を中心にいたしまして、今後積極的に外務省や関係省が集まって——厚生省の公衆衛生局が実質的にはいままでやってきたわけですから、今後も施策その他においてはやはり推進力になる省でありますから、この問題の推進にあたって、そしてこれは提案をいたしましたように、科学技術庁の御意見と非常に関係深い研究調査の機関ですから、そういう点を十分連絡をとってやってもらいたいと思います。最後に国務大臣の見解を求めまして、私の質問を終わります。
  429. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いろいろな事情があるようでありますが、まあ進めるとしますれば、外交関係でこの問題の根本を解決し、あとは、もしこちらのほうでいついつから引き受けるということになれば、その際はどうすべきかということは、これはこちらの問題ですから、厚生省その他関係省がみな相談し、その案を定めるべきだ、かように思っておるわけであります。
  430. 森田重次郎

    森田主査 次回は、明二十三日木曜日午前十時から開会し、総理府所管中、環境庁の事項並びに文部省所管について審査を進めることといたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後八時十七分散会