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1972-03-21 第68回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十一日(火曜日)    午前十一時四分開議  出席分科員   主査 森田重次郎君       荒木萬壽夫君    大村 襄治君       斉藤 正男君    辻原 弘市君       土井たか子君    安井 吉典君       山中 吾郎君    沖本 泰幸君       和田 春生君    兼務 奥野 誠亮君 兼務 上原 康助君    兼務 大原  亨君 兼務 中川 嘉美君    兼務 栗山 礼行君  出席国務大臣         文 部 大 臣 高見 三郎君  出席政府委員         文部政務次官  渡辺 栄一君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部大臣官房会         計課長     須田 八郎君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         文部省社会教育         局長      今村 武俊君         文部省体育局長 澁谷 敬三君         文部省管理局長 安嶋  彌君         文化庁次長   安達 健二君         厚生省医務局長 松尾 正雄君  分科員外出席者         大蔵省主計局主         計官      青木 英世君         日本国有鉄道建         設局長     内田 隆滋君     ————————————— 分科員の異動 三月二十一日  辞任         補欠選任   安井 吉典君     山中 吾郎君 同日  辞任         補欠選任   山中 吾郎君     斉藤 正男君 同日  辞任         補欠選任   斉藤 正男君     土井たか子君 同日  辞任         補欠選任   土井たか子君     安井 吉典君 同日  第三分科員奥野誠亮君、大原亨君、第四分科員  上原康助君、栗山礼行君及び第五分科員中川嘉  美君は本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計予算文部省所管  昭和四十七年度特別会計予算文部省所管      ————◇—————
  2. 森田重次郎

    森田主査 これより予算委員会第一分科会を開会します。  昭和四十七年度一般会計予算及び昭和四十七年度特別会計予算中、文部省所管を議題とし、政府から説明を求めます。高見文部大臣
  3. 高見三郎

    高見国務大臣 昭和四十七年度文部省所管予算案につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、文部省所管一般会計予算額は一兆一千八百十一億五千五百五万円、国立学校特別会計予算額は三千九百七十七億六千四百五十二万二千円でありまして、その純計は一兆二千四百九十七億三千八百十四万五千円となっております。  この純計額を昭和四十六年度の当初予算額と比較いたしますと、二千八十七億三百五十七万八千円の増額となり、その増加率は二〇%となっております。  以下、この文部省関係予算の主要な事項につきましては、分科会各位のお許しを得まして説明を省略させていただきたいと存じます。  どうぞよろしく御審議くださいますよう、お願い申し上げます。
  4. 森田重次郎

    森田主査 この際、おはかりいたします。  ただいま高見文部大臣から申し出がありました文部省所管関係予算の主要な事項につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 森田重次郎

    森田主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  6. 森田重次郎

    森田主査 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥野誠亮君。
  7. 奥野誠亮

    奥野分科員 人質を擁して浅間山荘に立てこもりました連合赤軍事件、その後に発覚した多数のリンチ殺害事件などを通じまして、学生の今日のあり方につきましては、多くの人から非常な不安の気持ちも寄せられていると思います。過激派学生集団は、程度の差こそあれ、なお多くの分派が現に活動しているわけでございます。これらの学生集団は、特にキューバや中国に多くの関心を寄せていると思います。  去る二月の二十一日から二十八日にかけてのニクソン大統領中国訪問に際し行なわれました米中共同声明におきまして、米国側はこう述べた、中国側はこう述べた。双方はこう合意したなどとしるされながら、率直な意見の交換が行なわれたことが明確になっているわけでございます。たとえば米国側は次のように述べたとして、「イデオロギーを異にする国と国との間の意思疎通を改善することは、緊張緩和への努力に資するものと信ずる。」と言っているわけでございます。さらに、「いかなる国も自国の絶対的正しさを主張すべきではなく、各国は、共通の利益のために、自国態度を再検討する用意がなければならない。」とも述べております。反面、中国側はこのようなことを述べております。「圧迫のあるところには反抗がある。国家は独立を求め、民族解放を求め、人民は革命を求める。このことは、はばむことのできない歴史の流れとなっている。」ということでございます。さらにまた、「中国は、すべての被圧迫人民と被圧迫民族が自由と解放をかちとる闘争を断固支持する。」とも述べておるわけでございます。また、日本につきましては、「米国は、日本との友好関係最大の価値を置いて」いると述べております。反面、「中国側は、日本軍国主義の復活と対外拡張断固として反対し、独立、民主、平和、中立の日本をうちたてんとする日本人民願望断固として支持する。」とも述べておるわけでございます。日本についての中国側考えにはたいへんきびしいものを感じさせられるわけでございます。  私は、この共同声明を読みながら、かつて毛沢東語録に書かれておった幾つかのことばがふしぎと思い出されてもきたものでございました。銃口から政権が生まれ出てくるとか、全世界はただ武器によってのみ改造することができるといったようなことなどでございました。右にゆれたり左にゆれたりしているところから見ますと、中国の一貫したものの考え方には私は敬意をさえ表したい感じがいたします。  さきおとといでありましたが、十八日の新聞に、「成田空港反対同盟訪中団が出発」として若干の記述が行なわれておりました。三里塚・芝山連合空港反対同盟の十三人が中日友好協会の招きにより、戸村一作氏を団長とし、婦人行動隊の二名を含め、両国人民団結万歳の赤だすきをかけて、十七日に中国に向けて羽田を出発したと報じられているわけでございます。米中共同声明中国側が述べております、日本人民願望断固として支持するという具体的なあらわれが、この成田空港反対同盟訪中になっているんだろう、こう考えるわけでございます。  文部大臣は、中国のこれらの考え方をどう受けとめておられるのか、お教えをいただけるものならお教えをいただきたいものと存じます。  世界には、社会体制の異なる多くの国が並存しております。人それぞれについて、第一次的には個人責任を持ち、第二次的に社会責任を持つ体制があります。したがって、そこでは個人の自由が最大限に尊重されるのでございます。こういうところもありますが、また、人それぞれについて最初から社会責任を持つ体制もあります。したがって、そこでは個人の自由が大幅に制限されるわけでございます。社会体制を異にすることによって、それを動かす仕組みがそれぞれに異なっておりますが、各社会体制の中では、それらの仕組みが相互にからみ合って一体となって機能しているのでございます。ある社会体制の中の一つ仕組みだけを切り離して批判する場合は、ときとしては全く的をはずれた議論になってしまうことがあるのでございます。情報化時代でありますだけに、国際社会影響は一年一年強まってまいります。反面、また外国との往来もひんぱんになりながらそれぞれの国の事情が伝えられる場合、片面的にしか伝えられない場合も多いと思います。しかし、それぞれの国の姿は一部だけを切り離し、これを独立させて議論したり、その姿を片面的に見たりするようなことはしないで、常に総合的に、客観的に把握する努力が払われなければならないと思います。いまだ社会体験も十分でない学生たちには、特にそのような理解のしかたの大切なことを強調していかなければならないと思います。また、そのような理解のしかたのされやすいような特段のくふう、配慮が必要だと思うのでございます。  文部大臣としてもいろいろお考えにもなっておろうと思うのでございますが、御配慮なり御意見なりをこの際伺っておきたいと思います。
  8. 高見三郎

    高見国務大臣 お答え申し上げます。  お話しのような国際情勢については、私も、国それぞれの立場がありますから、その国の国益を維持するための発言というものはいろんな形になってあらわれてくるであろうと思うのであります。ただ、それに対応します教育というものがどういう形でなければならないかということになりますと、客観的な妥当性というものを教育をすることが何より大切なことだと思うのであります。今日、高等教育の一番大きな欠陥は何かというと、これは明治以来からの習慣になっておりまするけれども学部学科制度、ある教師法律学教えればいい、ある教師経済学教えればいいということだけのことであって、客観的な社会情勢に対する評価というものに対する教育が十分に行なわれておらないというところに、今後の教育改革の指向しなければならない大きな問題があると思うのであります。  そういう観点から申しますると、私どもは、今度の戦争をもっと深刻に反省をしなければならないと思うのであります。と申しますのは、十六世紀から二十世紀の半ばにかけて世界体制はどういう体制であったかと申しますと、私は帝国主義体制であったと思うのであります。最初は、日本の場合で申しますると、オランダであり、アメリカであり、イギリスであり、続いてロシアであったわけであります。フランスもその例に漏れなかったのであります。しかし、わが国の教育目標はどこにあったかというと、明治以来、日本教育目標は富国強兵ということにあったことは御承知のとおりであります。国を富まし兵を強めるということが教育最終目標であった。その結果が何を招いたかと申しますと、今日の日本を敗戦という悲惨な状態に持ち込んだということを、私どもはやはり教育制度あり方として考え直さなければならない、かように考えておるのであります。  その間の最大犠性者はだれであったかと申しますと、アフリカであり、東南アジアであり、その最たるものはいまの中国であったと私は思うのであります。ソ連から、当時の帝政ロシアからねらわれ、イギリスからねらわれ、フランスからねらわれ、おそまきであったのでありまするが膠州湾をドイツから租借をされるという状態で、実は東亜における一番大きな犠性者中国であった。しかも、最終的に一番大きな加害者はやはり日本であったということを、私ども反省しなければならないと思うものであります。しかし、それはその当時の時勢の流れであった。われわれはいまこの問題について深刻な反省をしなければならないと思っております。謙虚な気持ち中国に対して、あやまるべきものはあやまってしかるべきであると思っておるのであります。  教育の面で、たとえば一つの国がこういう発言をした、その発言が正当であるか正当でないかという評価は一体だれがするか、だれが教えるかということになりますると、今日の高等教育制度の中には教養課程教える以外にない。私は、そこに学部制度欠陥があるという感じがいたしております。全人的な教育を総合的に行なう教育制度というものを確立することが、今日何よりも大切な問題ではなかろうかということを私は切実に感じておる一人であるということを、所感として申し上げておきます。
  9. 奥野誠亮

    奥野分科員 国際社会のいろいろな影響を非常に強く受ける日本の現代におきまして、その影響を受け得るような学生状態になっていない。たいへん学生自身が片面的な知識で、それだけではね上がっている。いろいろなことに原因があろうと思うのでございますけれども、私は、そういうような点などにつきましても文部大臣としての御配慮を期待しているものでございますけれども分科会の席でもございますので、これ以上突っ込んでお尋ねすることはこの際は取りやめておきたいと思います。  先ごろある大学学部長が、学校で事あるごとにストライキが行なわれる、そういうことに関連をいたしまして、このごろの学生は自分のことは大いに主張するが、学校全体のこと、社会全体のことは少しも考えていないと嘆いておりました。そして同時に、新入生留年学生に扇動されて簡単にはね上がってしまう。そうした留年学生には職業的活動家が多い。こういうような職業的活動家は、大学留年はしているけれども、その大学卒業しようなどということは一つ考えていない。話がじょうずなものだから新入生は簡単に引きずり込まれていくんだというようなことを語っておりました。また、ある大学理事者は、退学とか停学などの学生処分は、従前は学部長教授会に提案をして決定しておった。学生騒動があってから後、学生処分については学生自治会に協議しなければならないという取りきめになってしまった、結果的には事実上学生処分ということは不可能になっているんだ、学校自体はすでに自治能力を失っているのです、こう訴えもしておったわけでございました。連合赤軍事件リンチ殺人ども繰り返し、そしてまた警察当局から指名手配されておった者が、無傷のれっきとした国立大学学生であったということで、世間の人たちは非常な驚きを覚えたものでございました。  私は、五年前でございますが、地方行政委員会文部当局出席を求めまして、秩序を破った学生にはそれなりに、それに対応する退学とか停学とかいった処分をしなければ秩序そのものは守れなくなってしまいますよと、注意を大いに喚起したものでございました。しかしながら、文部当局、もちろん御努力もされてきたんだろうと思うのでございますけれども、結果は、学生処分は多くの大学でなされないままに経過してまいったものでございます。学生処分がなされない結果は、学生の暴力的な活動はエスカレートしてまいりました。そして今日では、学校秩序を破った学生処分する能力さえも失うに至っているわけでございます。かりに学校構内で内ゲバが起きて、学生学生が傷つけ合ったり、また教授かん詰めにして脅迫したり、あるいは学校施設を破壊して重大な損害を生じさせたりいたしましても、学校当局機動隊を導入することさえも困難なところが多いのでございます。もちろん、施設を破壊されても損害賠償の請求はできない。秩序を破り、刑事事犯を起こしている学生についてすら学校当局処分もできない。こういう学校が多いのでございます。学生も、大学当局がだらしないから、大学当局に批判的だ、反大学だという意味ストに賛成しやすいという傾向もあるとさえ聞いておるのでございます。  少なくとも今日の大学について、留年学生あり方をそのままにしていいものだろうかどうだろうか、学生留年制度にも何らかの歯どめを加える必要が起こってているんじゃないかと思います。また、秩序を乱した学生ですら処分する能力を失っている学校当局ではありますが、これに何らかの突っかい棒をかってあげて、学校当局処分する能力を回復することができるようにしてあげるべき時期に来ているんではないかと思うのでございます。私は、あえて大学管理法などというような抽象的なことは申し上げません。そんなことはどうでもいいのであります。失った学校当局に、失ったその能力を回復することができるように突っかい棒をかってあげるべきじゃないか、そのようなくふう、努力支部当局に求めたいわけでございまして、また、そうしなければ、失われた学校秩序を回復することはまさに前途遼遠と、こう申し上げざるを得ない、かように考えるわけでございます。これらについてのお考えを伺っておきたいと思います。
  10. 高見三郎

    高見国務大臣 御指摘のとおりであります。しかし、最近の大学は、昭和四十三年ごろに比べますと非常にその点の努力はいたしております。努力はいたしておりまするけれども、ただいまの制度は、教授会でなければ処分はできないというような制度で、対応のしかたが非常におくれておる。たとえば横浜大学の例をとりましても、横浜大学が、学長自身浅間山荘まで出かけていこうという決意までしたようでありますが、それはむしろ危険だ、どうせ大学学長の言うことを聞くのじゃないのだから、むしろ有名人を殺傷することのほうに望みを持っているあの暴徒が、学長の説得に応ずるわけはない。ただ、その処分が非常におくれましたことはまことに申しわけないことなんでありますが、しかし、処分断固たる処分をいたしております。ただ問題は、休学している学生をそのまますぐに退学処分に付しますと、たとえば本人の都合によって一年休学をしておる、そうして再びそこの大学に学びたいという意思を持ってきた場合に、いかにも気の毒な結果になるというのが大学当局配慮であります。この辺は、私は大学が思ってやってくれておることはけっこうなことだと思うのでありまするけれども、いずれにいたしましても、事が起こりましてからの処置がまことに緩慢である、対応のしかたがまことに緩慢であるということにつきましては、厳重に注意もいたしておりまするし、私自身学長にお目にかかって、その意思を伝えておきました。今後はこういう問題の起こらないように、ひとつ御指摘の点を十分留意して努力をするつもりでおります。
  11. 奥野誠亮

    奥野分科員 私は、特定の大学について申し上げているわけではなしに、大学一般について申し上げているつもりでございます。また、失われた能力を回復するための手だてにつきましても、従来の考え方にとらわれないでいろいろな発想があると考えておるわけでございますけれども文部当局に再考を希望いたしまして、次の問題に移っていきたいと思います。  卒業試験とか入学試験などのたけなわであります三月十三日現在におきましても、四十八という数多くの大学バリケード封鎖をやったりあるいは授業放棄どもしておるわけでございます。中には全学無期限ストを行なっておるところもございます。長く続いているものだから、そろそろ学校側から呼びかければ、学生も弱ってきているんでやめさせられそうになっていると思えるのだそうでございます。ところが、その呼びかけをしようと思っても呼びかけができないのだ、こう言っている学校当局もございます。そして、学生一人一人はよくわかっているんだ、しかし、集団になるとむやみに強くなってしまうんだ。反対にまた先生方は、一人一人はしっかりしているんだが全体になると弱くなってしまってまとまらないのだ、こんな反省もいたしておりました。  このような状況のもとで、ある大学では教室がバリケード封鎖されている。卒業を控えた四年生、教場試験を受けられない。そんなことからレポート卒業を認めることにしてしまったところもございました。四年生の中には、二年生、三年生に単位を配当している学科について、その単位を取っていない者が多数いるそうでございます。卒業させようとします以上は、これらについてもレポートによる試験を認めざるを得ないことになってしまいます。レポート試験では、学生はその与えられた課題部分だけを何かから写してくる、あるいはその部分だけの勉強しかしない。また、そういうレポートでは、不合格もないかわりに、優もつけられなければ不可もつけられないというようなことも言っておりました。これでは教育効果は反映しないし、学力低下のおそれも大きいわけでございます。平常、学校に出てこないなまくら学生を喜ばせるだけだともいわれております。教場試験にかえてレポート提出卒業させていくやり方は、教育上ゆゆしい問題ではないかと私は思います。容易なことを容認していますと、既成事実が積み重ねられて、学生処分が行なわれなくなりましたと同様に、紛争が続いていても学生はどんどん卒業していくということになってしまいます。  学校紛争は、その責任学生全体に求めて、教場試験が行なえなければ卒業もさせることができない——レポート提出卒業させるのでは、一そう紛争解決は長びいていくのじゃないかと思うのです。アメリカ大学は、入学はやさしいが卒業するのはむずかしいともいわれてまいっております。したがって、学生時代は勢い能率的に勉強せざるを得ない。日本大学は、入学はむずかしいけれども卒業するのはやさしいといわれています。それだけ学生勉強は十分でないという欠点を持っているわけでございますけれどもレポート試験などを認めていきますと、ますますこの弊害を助長していくのではないだろうかとおそれるものでございます。文部当局の善処を強く求めておきたいと思います。
  12. 木田宏

    木田政府委員 御指摘のように、学校施設その他が一部の暴力学生に占拠されまして、正常な試験が行なわれないということ自体は、まことに嘆かわしいことでございますし、残念なことでございます。そのために、予定しておった試験レポートに切りかえるということは、学校当局態度をそうした一部学生のために変更せざるを得なかったという意味におきまして、これまた遺憾なことと思います。  しかし、結局そういう試験をどのように行なっていくかというのは、教師の側の教育指導者としての誠実さの問題にかかわってくると思います。自然科学の系列につきましては、日ごろの実験、実習等のことをかなり評価をしなければなりませんので、多少事情も違うかと思いますが、人文社会系にありましては、一般的に、レポートでいくか、あるいは試験による答案でいくかということについては、その学科とテストをしようといたします個々の案件によりまして、事情がかなりやはり違ってくるのではないかと思っております。  私も詳細は聞きませんが、試験といたしましても、六十分なり九十分の時間を限って論述式レポートを出させるということになるわけでございまして、時間を限って答案を書かせますと、その学生のある一定時間の中における集中した度合いというものは判断できますし、一番試験による答案式がやりやすいと思いますことは、限られた所定の時間内に大量の処理をするという意味におきまして、むしろレポートよりも試験のほうが処理がしやすいという一面がございます。そんな関係から、大量の学生をある限られた期末の時期に試験をするということになりますと、むしろ試験による答案を書かしたほうが教師のほうの処理が簡便であるという一面がございまして、レポートというものをほんとうに誠意をもって処理しようといたしますと、教師負担というものはかえって非常に大きなものになります。しかし、レポートには御案内のようにいろんなごまかし方ができやすいという非常に残念な一面もございますので、レポートを判読することによって教師がどれだけその中から誠実にその評価をし、エバリュエートしていくかという点を良心をもって考え教師は、レポートのほうが負担がはるかに重くてむずかしいという問題もあるわけでございますために、レポートに切りかえることによって、かえって教師としては非常な努力をしながら評価をしておるという一面も聞かされておるところでございます。  その意味では、必ずしもレポートが悪いというふうには思いませんけれども、しかしこうした管理上あるいは指導上の処理が十分にとれないということのために、そうした予定の計画を変更せざるを得ないとい事態は、いかにも残念なことと考えております。
  13. 奥野誠亮

    奥野分科員 私は、そんな部分的なレポート試験のことを問題にしているわけじゃございません。私が文部当局に希望したいことは、大学紛争のまっただ中に飛び込んでいってください。そしてはだで紛争の実態を感じ取ってください。その真剣な努力がなければ、私は大学紛争の解決はできないという心配を、お話を伺いながら一そう感じました。  時間がありませんので、次の問題に移りたいと思います。  私の奈良県で起きたトラブルから感じた問題でございます。ある洋裁学校の生徒が、同時に県立の通信制高校に入ってその生徒となり、県立高校から毎週一回先生がその洋裁学校へ出かけてきて、生徒指導に当たっている。就学の便宜を供与するとともに、脱落を防ぐ方法としているわけでございます。各種学校側では、洋裁を学びながら洋裁指導員の資格もとれるんだ。また同時に、高等学校卒業の資格もとれるんだということで、生徒募集の宣伝材料にしていたのかもしれないと思います。これでは洋裁学校側に生徒をとられるという心配もあってのことと思うのですけれども、近くにある私立高校の経営者から県の教育委員会に対し、県立高校の巡回指導は過剰サービスだからやめさせろと申し入れをするトラブルがございました。洋裁学校側の話では、二年生ぐらいになると、百貨店などから受ける縫製加工の材料を実習材料とすることができるので、生徒には相当の収入があり、学校に授業料などを支払ってもおつりがくるといっております。  そんなこともございまして、全日制高校に通うだけの経済的余裕のない家庭の子弟が入ってくる。あるいは洋裁に特別深い興味を持っている生徒が入ってくる。こういう人たちが全日制高校の入学を選ばないで、洋裁学校に通ってきているんだということでございました。そのとおりだとしますと、洋裁学校で四年間生徒に専門的に洋裁の奥義をきわめさせながら、その間あわせて巡回指導の便宜も与えて高等学校卒業させてあげれば、少しでも世の中が明るくなることではないか。また、それぞれの特技を生かす多彩な人間教育にも役立って好ましいことではないか、こう思ったのでございます。その上、工場などで働きながら高等学校卒業しようとする場合に、二交代制の勤務のもとでは日により勤務の時刻が変わってまいりますので、夜間などの定時制高校を利用することができないそうであります。勢い通信制高校によらざるを得ないのであります。  そんなことから気づいた点ではございますが、高校教育について四つの点について、お尋ねみたいなこと、希望みたいなことを申し上げさしていただきたいのでございます。  第一は次のことでございます。  国立、公立、私立の高校相互間及びそれぞれの内部において生徒の奪い合いをするというような事態を避けるための地方団体の指導について、文部当局の適切な助言を期待したいということでございます。奈良県の教育長から聞いたのでございますが、この県では、生徒の六〇%を県立高校で収容することを目途に県立高校を整備しているそうでございます。公立と私立が現に分担収容している人数を基礎にして、この割合を決定したのかもしれません。一つ考え方だと思うのです。国立、公立、私立が相互に分野を侵さないで発展を競い合っていけるような文部省の指導方針を確立してほしいということでございます。  第二の点は次のことでございます。  各種学校施設などを文部大臣が通信制高校の技能教育施設と指定し、他面、通信制高校の校長がこの技能教育施設と技能教科について連携措置をとることを明らかにいたしますと、生徒は各種学校施設で学びながら、あわせてそのまま高校の技能教科も修得できて、高等学校卒業しやすくなるようであります。文部省がせっかくつくっておられるこの仕組みを広く採用させて、働きながら学ぶ人たちの高校教科の修得をしやすいように一そうの配慮を払ってほしいと思います。  第三は次のことでございます。  通信制高校の卒業はなかなか苦しいもののようでございます……
  14. 森田重次郎

    森田主査 奥野君に申し上げます。  約束の時間が迫っておりますから、なるべく簡潔に結論を出してください。
  15. 奥野誠亮

    奥野分科員 在籍生徒二万人というある通信制課程の高校では、入学した生徒のうち、卒業できるのは四九%だといっていました。脱落者を防ぐためにどうしても実地での指導が大切であります。富山県では、県立の通信制高校が工場などでの生徒の集団学習に積極的な巡回指導を行ない、その経費一切を支出していると聞いております。国でも通信制高校について、集団学習に対する巡回指導などの経費援助を予算化し、働きながらの高校卒業を助ける努力を強めてほしいということでございます。  最後に第四の点でございます。  都道府県からの私立の高校に対する経費助成の一環として、私立の通信制高校に対する経費助成の額も都道府県の基準財政需要額に算入されることになっています。これを受けて、大阪府ではすでに私立通信制高校への助成費を予算化していますが、美濃部知事のもとにある東京都では、いまだに予算の計上が行なわれておりません。文部省は、国費に計上される分だけでなく、地方団体の予算に計上される教育助成費についてもきめこまかい配慮をしてほしいと思いますし、いま指摘した分についても善処を期待しておきたいと思います。
  16. 森田重次郎

    森田主査 岩間局長、時間の関係がありますから、簡潔に要点をひとつ御答弁願います。
  17. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 通信教育につきまして格別の御理解をいただきまして、ありがとうございます。  まず第一の国・公・私立の相互の関係でございますが、これにつきましては、御趣旨の線に沿いまして、私どもさらに努力をしたいと思います。  第二点の各種学校に対する技能連携の認可でございますけれども、これにつきましても、現在八十校ほど認可をしているようでございますが、やはり御趣旨の線に沿いまして、さらに拡充するようにつとめてまいりたいというふうに考えております。  三番目は巡回指導の強化でございますが、この点につきましても、現在予算で積算はございますけれども、御指摘のようにまだまだ不十分の点がございます。これにつきましては、私ども、通信教育を、何とか高校教育から脱落する者を防ぐという意味で振興してまいりたいと考えておりますので、さらに来年度予算におきまして、私どももその拡充につとめたいというふうに考えております。  最後に、私学に対する助成でございますが、これは奥野先生の格別な御配慮によりまして基準財政需要額に積算がされましたということにつきましては、私ども非常に喜んでいるわけでございますけれども、実は府県によりまして、教育委員会のほうは非常に熱心にやっておりますが、知事部局のほうの理解が十分得られないということで、また予算が計上されてないところがございます。こういうことは通信教育の発展上きわめて遺憾なことでございますので、私ども強力に指導いたしまして、何とか実現をいたしたいというふうに考えておりますので、先生からもひとつ御協力をお願いしたいと思います。
  18. 森田重次郎

  19. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 私、小中校の教育環境整備で、全国的にできる限り緑化をすることを前々から提唱してきたのでありますが、前の沖繩国会では、沖繩の諸学校を緑化する方針を確かめるために質問いたしましたが、そのとき文部大臣も大蔵大臣も、私の質問に対して公約をされてあります。さらに、この間の赤軍派の緊急質問に対しても文部大臣が賛意を表しておるのでありまして、ぜひこれは全国的に日本の小中学校が緑の学校であってほしいという念願から、念に念を押したいために御質問をいたします。  それで、沖繩の学校復帰にあたって、いままでの経過、あるいは各学校の緑化の計画について具体的な案があるはずでありますから、お聞きいたしたいと思うのです。
  20. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 沖繩復帰に伴います学校の緑化の予算につきまして先生から特にお話がございましたので、来年度予算につきましては、二千万円の金額をただいま国会で御審議を願っているところでございます。  その具体的な実施の方法でございますけれども、私ども、初めは本土から必要なものを送りまして、向こうで植樹をしてもらうというふうなことも考えていましたけれども、なかなか問題点がございまして、ただいま関係者が寄りましていろいろ相談をいたしているところで、ございます。こちらからも必要な苗を送りますと同時に、現地でもまた調達をするというふうな方向で進めておるわけでございますが、ただ、学校のあき地に樹木を植えるというだけでいいのかどうか、これに伴いまして、できましたら必要な環境整備もやっていただいたらどうだろうか、その環境整備をやる場合にはどういうふうな設計のもとにやったらよろしいか、これはもちろん強制するわけではございませんけれども、私のほうで望ましい計画の案などをいま検討中でございまして、まだ最終的な結論が出ておりませんので、この点につきましてはここで御報告するわけにまいらないのでございます。  ただ、その時期につきましても、聞くところによりますと、十一月に植樹祭が行なわれるというふうなことも伺っているわけでございます。そこで、それとあわせてやるか、あるいは別個にやるか、そういう点につきましてもあわせて検討してまいりたいというふうに考えております。
  21. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 具体的な計画ができたら報告してもらいたいと思います。  私、この問題を取り上げる動機について明確に申し上げておきたいと思うのですが、第一は、公害問題が発生したときに、この問題は法律の取り締まりだけでは解決はしないのだ、日本列島が公害列島になる、民族の生存の条件にかかわるこの問題は、人間形成の原点に戻って、生命を尊重する人生観を形成するという国民教育の問題にまでさかのぼらなければ解決はないということを考えて、教育あり方を、いまのように人間不在の物理化学主義でなくて、生物化学主義といいますか、動物、植物の生命を育てる喜びを人生観の中に持ち込むような教育でないと、これは解決はないのだということを考えて、小中学校施設設備が充実しておるということが、単に物理の実験室、化学の実験室が充実していることをさしてきた伝統的な考え方を変えて、その環境の中に生命が育っていくのだ、その姿の中で教育をされる、教育革命を起こさなければだめだということからこの問題を提案をしたのでありますから、文部大臣もその基本精神を十分に知っていただいてこの問題を取り上げていただきたい。  自然保護というのは、ただ保護するのでなく、生命を、植物を育てることでなければ保護にならないのだという考えに実は私は立っておるわけであります。したがって、この間の赤軍派の事件の解釈のしかたも、思想がどうであろうが、生命に対する敬意の念というものがあればああいう事件にはならないのだ。しかし、日本の伝統的な人生哲学というのは死の哲学である。いかに死するか、戦争があったからそういう教育をされてきたのだ。しかし、生の哲学に転換すべきである。生きることにとうとさを考える。死することを鴻毛のやすきに置くという死の哲学から、二十八年生きたあの横井庄一さんの生きることに対する尊敬の念という、そういうところに国民の人生哲学、価値観を切りかえるべきではないか、そういうことを平和憲法における国民教育の原点とすべきだということを思うのでこの問題を出しておるのであって、思いつきではないということを、ぜひ文部大臣も共感をしていただかなければならない。そういうことを考えながら、できれば日本の小中学校にすくすくと植物が育っておる姿の中で学校がありたいものだ、その中で育ってほしいものだと思うからであります。  さらに、私のおい立ちの中の経験で、私は第二回卒業生であるが、私の卒業した中学校に生徒が全部木を持ち込んで植えて、そこにだれだれの木だという名前を書いて、二十年後に行ったときに、二十年前に植えた自分の育てた植物がこれだけ育っておるということの喜びですね、生命を育てる体験というものは、非常にその者の人生観に影響を与え、二十年後の人生計画というものがどうなるかということも教え、非常に大きく私の精神的影響にも及ぼしておるので、できれば子供たちに植えさすのだ、そしてそれが、何年か後に帰ってきて、母校の庭にこういう木があるのだ。そしてそれは持ち帰ってもいいし、どうしてもいいが、とにかく生命を一度育てる体験を義務教育の終了するまでにできないか。それに関連をして、学校全体の教育環境を改造するということを、こういう政策の中に深い意味づけをしてはどうかというふうに思うわけであります。荒々しい中国の文化革命に対して、日本の価値観を死の哲学から生の哲学に転換をする、静かなる文化革命を起こしたらどうだ。そういうことを含んで、ロマンチシズムをもって申し上げておるのでありますから、ぜひ来年度の予算においても、日本の小中学校の環境についてどうしたらよいかという、いろいろのくふうをして予算要求をされて、そういう方向を持った学校環境整備をひとつぜひ取り上げてもらいたい、これが質問の動機でありますから、文部大臣の確固たる御答弁をひとつお聞きしておきたい。
  22. 高見三郎

    高見国務大臣 山中先生の多年の念願であること、私、承知いたしております。私も全く同感であります。  私も、ついこの間、五十年前に私ども卒業生が卒業記念に植えました木が大きな大木になって残っておるのを見まして、感慨無量であったのであります。私は、植物といわず、動物といわず、生きとし生けるものに対する愛情というものを持たせるのは、やはり木を植えることであり、花を育てることであり、小鳥を飼うことであるというように考えております。沖繩にそういう計画を立てましたのも、ただ設備をよくすればいいというだけの問題ではない。人間らしい自然環境というものをつくる必要があるのじゃないかという考え方で、そういう構想を立てました。内地の学校におきましても、できるだけこの方向を進めていきたいと存じまして、植林コンクールなんかをやって文部大臣賞を出しておるというようなことをやっておりますけれども、これでもまだ十分だとは思いません。先生が御指摘のように、私もこの問題については真剣に取り組みたい。先ごろも公明党の有島君が、鉄筋コンクリートのへいなんかやめてしまって、竹がきにして花でも植えたらどうだという御質問がありました。非常に示唆に富んだお話だと思って伺ったのでありますが、ただ、学校の安全管理というような面ともあわせて考えなければなりません。だから、コンクリートのへいの内側に竹がきをつくってアサガオを植えるというようなことを考える、それに必要な経費くらいなことは国で出してもたかの知れたものだと考えておりますし、来年はぜひひとつ先生御指摘のような形で実現をいたしたい、かように考えております。
  23. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 ぜひ実現を期待をいたします。そういうことで日本教育あり方がいい方向に転換をすると思うからであります。大蔵省の主計官も聞いておるようでありますから、特に質問はしませんが、このやりとりをよく理解をしておいてもらいたい。やたらに査定をすることで終わらないように希望申し上げておきます。これだけであります。  次に、全国的に地方自治体、地方教育委員会で非常に苦しんでおる問題として、教員の臨時採用についてお聞きしたい。  これは文教委員会で私が一つの問題として取り上げた、過密過疎現象からしわ寄せをされた地方の教育委員会の問題なので、何年か後にだんだん児童生徒が減るために、現在定員内の教員でも臨時採用して、そうしていつでも首を切れるようにしておる。そうでないと一、二年後に定員がはみ出ると、義務教育国庫負担法からはずれて地方財政に影響を及ぼすという苦肉の策から出てきておるのだ。しかし、現在の学校教育法の現実の上からいえば、有資格であり、国立大学教育学部を出、成績はレベル以上で採用試験も合格しておる者を、身分を保障しないで臨時採用するということは、教育行政として少なくともまことに不適当だ。そして身分不安定な教師教育をしいるということ、非常に二重三重に矛盾があり、そういう結果を生んだのは経済成長政策の結果で、教育行政の結果ではないのである、過疎過密からきたのだ。そういうことに対して善処方を要望いたしたはずであります。岩間局長は、全国調査をして善処すると答えられてあるので、その続きとしてこれも始末をしなければならぬので御質問をいたします。その後の経過を報告してください。
  24. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 この前、文教委員会で先生から御指摘ございまして、私どももこの問題は非常に重要な問題だというふうな認識のもとに調査を進めてまいっておりますが、もう少し待っていただきたいと思うわけでございます。現在数字的には全国から数字が集まっておりまして、その集計が間もなくできるわけでございます。しかし、先般、文教委員会でもお答えいたしましたように、私どもは、この問題を調査いたします際には、どういうふうな対策を今後立てなければいかぬかというふうなこともあわせて考えながら調査をしたいということを申し上げたはずでございますけれども、そのために、私ども各県から係員の上京を求めまして、個々具体的にその原因並びに今後の対策等につきまして意見を聴取しておる段階でございます。各県によりまして事情が違っているところもあるようでございますので、私ども個々の場合を分析いたしまして、また、それに対する対策も考えてまいりたいということでございます。それがただいままでの経過でございますが、間もなく私ども、それが調査が終わる予定でございますから、そのときにまた御報告を申し上げたいと思います。  この臨時教員の問題で、たとえば先生の御出身の岩手県なんかの場合には、今後五十年までに六百五十人ほどの定員の減少がある、それに対して退職者が二百人しかいないというふうな事情もあるようでございますが、こういうことになりますと、新規採用がなかなかできにくいという問題がございまして、やはり年齢構成という点から考えますと、断層ができるということは、これは人事上非常に大きな問題であろうと思います。それはぜひ防がなければいかぬというふうな問題もあるわけでございます。単に、定員が減少するからそれを見越して臨時教員を採用するというのをやめようと思えば、たとえば、停年を延ばすというふうな方法でもやれないことはない。これは財政的には多少問題があると思いますけれども、そういうふうなことでございまして、単に機械的に臨時職員をやめるということばかりではなくて、今後の教育行政、特に人事行政全般を考えながらそれに対する対策は立ててほしいというふうな気がするわけでございます。そういう点も含めまして、県といろいろ相談をいたしました結果をいずれ御報告申し上げたいというふうに考えておりますので、御了承いただきたいと思います。
  25. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 まだ調査が完了していないということでありますから、完了したときにこれも報告してもらいたいと思います。  ただ、そういうことを前提として、こういう問題のときに、教育行政の基本的態度として文部省が非常に消極的ではないかという点において、私は不満なんですね。だんだんと人口が減る、児童生徒が減るという見通しというものが短期的にあっても、一方に、盛岡まで新幹線が五十二年につくし、あるいは縦貫自動車道路もつくし、そういう新しい経済条件が加わることによって、またそこが人口が盛り返すというふうな見通しも分析しているわけですね、開発計画として。いまだんだんと過疎になって五、六百人減るという単純な分析というものを真に受けて、そして対策を立てるというのは無責任だと思います。これから政治の方向でも、均衡のとれた日本の国土計画ということを与党が出していることであり、その点は、この教育人事に不安定な仮説を前提として立てることは、私は異議がある。  それと、人口が減るという機会をなぜ教育条件の改革の機会に活用しないのか。その態度が非常に少ないじゃないか。たとえば、いま女教師の休暇法を出そうとしておる。有給か無給かということは別にして、一年間女教師が休暇をとるとすれば、それは必ずそこに補充をしなければならぬという定員が考えられるじゃないか。あるいはまた、学校教育法において養護教諭は必置になっておるけれども、「当分の間」で、不当に長く「当分の間」を引き伸ばして、「当分の間」という美名のもとに永久化をはかっておる。この機会に、せめて養護教諭の「当分の間」をとる努力をして、その定員の矛盾を解決しようじゃないか、そういう考えになぜならないのか。文部省はほんとうの意味において、教育に対して不熱心だ。この災いを幸いに転ずるという積極的教育行政に対する態度一つもない。もっと実態を調べられたらわかるのですが、養護教諭は、そのために御主人と別れて、うちへ帰れないところへ定員の関係で飛ばされたり、実に非人道的な現象も出ておるのである。  また、小中学校においてほんとうの教育をするためには、音楽とか体操とかあるいは理科の先生は、専任教諭がどうしても要る。せっかく理科振興法で購入した教材が戸だなの中に入っておる。使う能力のない先生が新しく入り、使える先生がいなくなったら、何の役にも立たない。せめて理科の専任教師というものをこの機会に補充することによって、この定員減を何とか前向きに解決しようじゃないか。  あるいは、内地留学制度があるじゃないか。この機会に先生の再教育ということも考えて、各県から二、三十名ずつあるいは四、五十名ずつ、国が費用を持って新しい教育の再教育をする機会にして、教員が負担法からはみ出ないくふうをしたらどうか。  あるいは、発展途上国への経済援助が侵略政策だという疑いを受けているときに、なぜ文化援助を考えて、内地におる先生の中から希望者を募って、東南アジアの教育援助にそれを充てるような努力をしないのか。  こういうことを考えてみたときに、実に消極的で、経済政策のしわ寄せで過疎地帯の教育がこういう矛盾に立ち至っておるときに、あらゆる角度からこの矛盾を前向きで解決するという態度一つも見られない。まことに不満なんです。  あるいは、市町村の教育委員会に社会教育の主事がないときに退職校長を持っていくなんという時代錯誤的なことを言わないで、現在堂々と採用した先生、若い感覚のある人を市町村の社会教育の担当に一時行ってもらうということもできるじゃないか。あるいは、今度は過密地帯で先生の足らないところに、希望者があれば、過疎地帯の定員の中の教員を転任させるという機会もその機会に考える。そういうことを一つ考えないというところに、私は異議があるわけなんです。  そういう考えは、私はこの機会に災いを幸いに転ずる方向で検討すべきであると思うがいかがか、文部大臣にお聞きいたしたい。
  26. 高見三郎

    高見国務大臣 御意見まことにごもっともであります。人事の広域交流というものをひとつ真剣に取り上げなければなるまいと私も考えております。ただ、これは教育委員会にまかされておる仕事でありますので、私のほうではそういう指導をいたしたい。  それから養護教諭の問題、これは、私は、大体昭和四十九年ごろには義務制に移行できると考えておりますが、さて、その養護教諭なるものがなかなか得がたい。非常にむずかしい問題でありますけれども、実は前向きに、私は、この問題は、先生御指摘のとおりに取り上げてみたい。  ことに、たとえば東北地方に例をとりますと、新幹線が開通いたしますと、現在東京にあります私立大学が一校移動いたしますと、私の伺ったところでは、人口が五万移動するというのですね。それは学生、教官だけじゃございません、それに伴う商人が行くわけなんですから。それで、東京へ東京へと学校、ことに大学を集めることが望ましいことじゃなくて、むしろ、いま人口過疎地帯に私立大学なんかの移動をお願いをしたい。お願いをすると申しましても、交通が現在のような状態では、これは言うべくしてできることではないのであります。これは山中先生御承知のとおり、私立大学教授大学でもらう給料だけではとても食っていけませんから、どうしてもやはり二校なり三校なりかけ持ちをしなければならない。ということになりますと、過疎地帯に学園都市というようなものを考えるという考え方も将来とっていかなければならないのじゃないかという考え方を実は持っておるわけでありまして、臨時採用の教員の身分保障の問題につきましては、これは何とか考えてやらなければならぬ問題でありますけれども、御承知のように卒業生はどんどんふえていく、その就職は困難だというのが実情であります。ことに、ことしなんか、体育科の先生なんというのは相当余るのですね。そこで、美術教育については、今年から新しい予算で美術教育指導をするという予算をつけたわけでありますが、そういう形において先生方の資質の向上をはかると同時に、いい先生がどんないなかにでも行ってくれるだけの社会環境もつくってやらなければならぬ、こういう考え方でやっておるわけでありまして、御趣意はよくわかります。その御趣意に沿うように努力をいたします。
  27. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 私の質問に合っている点と関係ない点もごっちゃに答弁されたようでありますけれども、とにかくこういう矛盾を前向きにうまく活用するようにくふうをしてください。  そこで、その間に、私、一定の時間が要ると思うのですね。一定の、一年二年、そういう間に、一応法的には定員から若干はみ出て、形式的法律適用をやれば、義務教育国庫負担法からはずれて、もう国は二分の一の補助は要らないんだとか、高等学校の先生の場合は交付金は削るとか、そういう例の大蔵省的な一つの問題が出てくる。だから、大蔵省とも話をして、少なくとも児童生徒が減っていくにつれてはみ出た先生は暫定定員として、そういう対策が立つまで少なくとも二年とか三年間は暫定定員として認めて、児童生徒が減ることによってその地域の教育条件が急に下がる、子供が犠牲になる、教員も犠牲になるということを地ならしをしてなくしていくために、三カ年の暫定定員を認めて、そして処理するというくらいは、私は、過密過疎地帯政策からきた教育行政のしわ寄せに対しては善処すべきであると思うのですよ。その間は、暫定定員として国庫負担法の対象として認めて、文部省はあらゆる知恵をしぼってこれの対策を立て、あるいはやめてもらうにしても二、三年の猶予を置いて、その後の生活設計を考える時間を与えるとか、これは当然じゃないか。こういう努力を大蔵省にするのが、私は最低の文部大臣責任ではないかと思う。最初から臨時採用にしておいて、そして教育は与えられただけやれ、あとは知らないぞ、あとは生きるか死ぬかかってにしろという行政が一体どこにあるのか。  そこで、大蔵省の主計官聞いておると思うのですが、あなたにお聞きしますが、そういうときに暫定的な暫定定員として国庫負担法を適用するとかいうことを、具体的に教育行政のいろいろの前向きの積極的な政策が出てきたときに、そういうことを検討するぐらいの配慮というものもあってしかるべきで、形式的にこういう経済事情の激変に基づいてきたしわ寄せを地ならしでどう解決するかということについての配慮はあってしかるべきだと思う。局長と主計官の両方の御意見を聞いておきたい。
  28. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 まさに先生がいま御指摘になりましたようなことをやっております。たとえば、過疎県で非常に先生が減るという場合には、最低保障というものを設けまして、九八・二五%までは保障をするということでございますから、それでその過疎県におきましては、普通で計算いたしましたよりもよけいな人員が確保できる。それだけ教育の内容もよくなるわけでございますけれども、最低保障を設けまして暫定定数を認めるというふうなことをやっているわけでございます。  また、定員の充足の年限につきましても、やはり二年ぐらいの暫定期間を設けまして、余裕を持って定数の充足ができる、あるいは定数の減が防げるというふうな方法もとっているわけでござ  います。
  29. 青木英世

    ○青木説明員 ただいま岩間初中局長から答えられたとおり、昭和四十四年度から教職員の定数改善、これは五年間で約二万八千五百人ということを予定しておりまして、四十七年度におきましても、四千六百三十六人でございますか、この定数改善に伴います定数の増を見込んで予算を計上して御審議をいただいておるわけでございます。過疎県につきましては、いま岩間初中局長からお話しありましたような、前年度に対して一定の最低保障の率を考えるとか、あるいは通常の定数改善が四十八年度まででございますが、五十年度まで暫定的な期間を設けるとかいうような配慮をいたしておるわけでございます。  なお、これによっても救われないような過疎県の状況も先生御指摘のようにあろうかと思いますが、先ほど高見文部大臣から答えもありましたように、広域的な人事交流その他の面でひとつこういう面を救っていっていただきたいというふうに、財政当局としては期待しておる次第でございます。
  30. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 大体わかりました。
  31. 森田重次郎

    森田主査 山中君に申し上げますが、約束の時間が経過いたしました。結論をお急ぎください。  ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  32. 森田重次郎

    森田主査 速記を始めて。
  33. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 私は、いまお聞きした考え方を、同時に文部省のほうにおいて、内地留学とかあるいは海外視察とかあるいは休暇法に対する定員の充実とか、あるいはその他のいろいろの積極的な政策というものを立てて、そして大蔵省がそれを是として、いまの暫定的な定員がさらに前向きの方向に拡大されて、できるだけ犠牲を少なくするように最大のくふうをされることを要望いたしまして、委員長の御注意もありましたので、これで終わります。善処方を要望いたします。
  34. 森田重次郎

    森田主査 中川嘉美君。
  35. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 きょうはそれほどたくさんの質問を準備するというわけにもいかない非常に限られた時間でありますので、ごく数点だけ文部大臣にお伺いをしたいと思います。  まず第一点は、青少年の健全な育成という問題でありますが、このことについては、もうとやかく議論の余地はないと思います。私たちの党といたしましても真剣にこの問題と取り組んでまいったわけでありますが、都内における青少年のスポーツ施設が非常に少ないというのが現状であります。比較的大きい施設はありましても、小さい施設で学童とかいわゆる子供さんたちが気軽に使えるところのスポーツ施設が足りないわけであります。  それで、都内に流れておるところの隅田川がありますが、この隅田川の両岸には隅田公園がございます。長年にわたってこの公園についての改革がなされてきておらないのが現状でありますが、ここには名ばかりのスポーツ施設はあっても、至ってお粗末なものばかり。下町とかあるいは江東方面の青少年が喜んで使えるようなすばらしい  スポーツセンターをつくるべきではないか、このように考えるわけであります。東京都では、やっとこの隅田公園に総合スポーツセンターをつくる計画を本年度から考える運びになっておりますけれども、国は、このことに対して大幅なる助成措置を講ずべきではないか、このように私は思うのですけれども、この点について文部大臣の御答弁を賜わりたいと思います。
  36. 木田宏

    木田政府委員 ちょっと担当の政府委員が参っておりませんので、私かわりまして、スポーツ施設につきましての姿勢を一応お答えを申し上げたいと思います。  いま御指摘のとおり、都心部におきましては、スポーツ施設その他非常に窮屈でございます。体育局におきましては、特に学校の体育施設というものを市民に開放するということから、学校体育施設の開放に必要な施設の整備費を計上してございます。と同時に、一方、その施設をただ校庭を中心に使わせるということではございませんで、体育施設を、公園でもどこでもいいんでございますが、使えるような施設をしておいてやりませんと使いにくいということがございます。特に文部省では、学校の体育施設を市民に開放するという方向で数年来力を入れておりまして、その意味では、使い方、体育施設責任を持って利用して市民に開放させるような団体の育成、スポーツ教室というふうに称しておりますが、そういうもののスポーツ教室の育成につきまして、地元の市区町村に対する事業費の補助を組んでおります。  また一方、そういう活動を体育団体を通じてやってもらうということから、体育団体——文部省の場合には日本体育協会を通じて補助しておるわけでございますが、体育協会が、府県の体育団体そしてまた末端の体育団体をしてスポーツ活動をするような体制をつくっていく、そういう指導の措置を一方で講じております。  もう一つは、これは青少年の端的な遊びの場としてでございますけれども社会教育の面で、主としてこれも学校が中心になるわけでございますが、都心部の学校の校庭開放をするための事業費を数年来組んでまいりました。四十七年度の予算につきましては、二億三千九百万円の校庭開放事業費を計上いたしまして、市町村に体する補助金として三千五百校分の事業費を社会教育局のほうで組んでございます。  そのようにいたしまして、特に都心部の子供たちの遊び場の確保あるいは体育施設の整備、そういうことに力を入れておるわけでございます。
  37. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 私の質問に全然お答えいただかないのでもう一度伺いますが、文部大臣どうですか、いま私がお伺いした要点は、このような総合スポーツセンターに対する国の大幅な助成という問題、私が聞いたのはこの点であって、ただいま御答弁いただいたのは全く関係ない。いまいただいたのは確かにけっこうな企画ではありますけれども、なかなか実現の運びになっていないがゆえにこのような具体的な例をあげて、それに対する国の補助はどうなんだ、このことを伺っているわけです。この点を文部大臣、ひとつ答えてください。
  38. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 ちょっとおくれて参りまして恐縮いたしました。  隅田公園は、都市公園法に基づく公園になっております。先ほど大学局長が前任者のあれでお答えいたしたと思いますが、一般に運動広場とか体育館、それからプールあるいは柔剣道場、そういったものをつくる場合に文部省の助成金がございまして、来年度予算には三十五億円の予算をいま国会に提出いたしておるところでございます。都市公園法に基づきます場合には、これは建設省所管になっておりますが、都市公園にもいろいろ種類がございまして、児童公園とか、それから普通の小さい公園とか、あるいはいろいろな総合的な公園あるいは運動公園あるいは風致公園といいますか、この墨田区の隅田公園内には、現在台東区のほうでいろいろなスポーツセンターをつくったらどうかということで、学識経験者にお願いあるいは集めまして、いろいろ検討しておる段階であるというふうに聞いておりますが、隅田公園は、都市公園法に基づく風致公園に現在指定されておるようでございまして、そこに総合スポーツセンターをつくるにつきましては、いわば性格が変わってくるといいますか、運動公園的な性格に変わってくるという問題があるようでございます。それから土地が十六・四ヘクタールのうち十四ヘクタールが国有地になっておりまして、これは国有財産法の規定で、おそらく都市公園の施設に供するということで無償で貸し付けているかと思いますが、そういう関係がございまして、現在風致公園である隅田川とあの周辺との一体的風致公園ということになっておりますので、そこへいろいろな総合的スポーツセンターをつくるにつきましては、公園の性格を変えるという問題があるようでございまして、その辺は、私どものほうでは詳しいことはわかりませんが、来る前に調べた範囲では、そういう問題がちょっとあるようでございますが、これは具体的には建設省のほうでないとちょっとお答えしかねる点がございます。
  39. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 いろいろ事務的なお話をいただいたわけですけれども、建設省云々、当然これは建設省の関係も出てまいりますけれども文部大臣どうですか、青少年の健全育成という問題と、この隅田公園の総合スポーツセンターに対する助成問題との関連、当然健全育成ということを考えれば、そのような国としての助成というものは要求されてくるのではなかろうか、このように思いますが、文部大臣の立場から、この点をひとつ御答弁いただきたいと思います。
  40. 高見三郎

    高見国務大臣 御意見のとおりであります。  私は、できるだけ校庭を開放する、ことに夜間照明をつけた校庭開放というものを考えなきゃならぬ。ところが、なかなか学校先生方がこれをお喜びにならない。というのは、かりに事故が起こりますというと、管理責任はだれにあるんだ  これは国がしょっていいと私は思っております。そういう方向で思い切って校庭開放をやろうじゃないかということを言っておるわけでありますが、学校安全会法の規制もありますしいたしますので、御趣意のほどは私も全く同感でありますので、積極的に取り進めてまいる所存でございますから、御了承をいただきたいと思います。
  41. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 あまり一つの問題にとらわれておりますと時間もございませんし、文部大臣から、意見のとおりであるという御答弁もありましたので、強力にこの国による助成ということをここで要望いたしまして、次のテーマに移ってまいりたいと思います。  小中学校におけるいわゆる私立と公立との格差の問題、これは私、専門委員でないので、文教委員会でも多々取り上げられた問題であろうと思いますが、東京都は、乏しい財源の中からこの私学に若干の助成をしておるわけでありますが、父兄の負担というものは依然として大きいものがある。国は、この私立と公立との格差を是正するために、私学に対するこれまた大幅なる助成をすべきではないか、このように考えますが、質問も、ただいま申し上げたとおりたいへん簡単な質問でありますが、この点に対する御答弁をいただきたいと思います。
  42. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私立高等学校以下の私立学校に対する財政援助の問題でございますが、これは都道府県が所轄庁ということでございますので、主として都道府県の援助に期待をしておるわけでございます。  昭和四十六年度の都道府県の私立学校関係の補助予算の総額は二百三十四億円でございまして、その財源の裏づけは、地方交付税制度によりましてこれを行なっておるという状況でございます。四十七年度におきましても、地方財政計画の内容をさらに拡充、充実していただきまして、さらに本年度以上の助成が行なわれることを期待しておるわけでございます。  この私学に対する、私立高等学校以下の学校に対する一般的な補助は、ただいま申し上げましたように、交付税の裏づけをもって所轄庁である都道府県が行なうということでございますが、このほかに、たとえば産業教育の振興でございますとか、理科教育の振興でございますとか、あるいは特殊教育の振興でございますとか、さらに最近は、特にこの私立幼稚園の振興というような事柄につきましては国が直接補助金を支出するという方向でございまして、国の補助、地方公共団体の補助あわせまして、さらに高等学校以下の私学に対する助成を拡充してまいりたいというふうに考えております。
  43. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 都道府県が所轄であるというようなお話もありましたけれども、やはりいま最後のところで御答弁をいただいたように、ひとつ国としての補助——このままですと非常に父兄の負担というものが大きい。すなわち、この父兄負担の軽減のためにも真剣にひとつ考えていただきたい、このように思います。  次の質問でありますが、現在、公立、私立をまじえて幼稚園制度というものがありますけれども、われわれは、この幼児教育、これを確立するという意味から、その幼稚園の義務化という問題、これもまた文教委員会等ではおそらく議論に多々のぼったこととは思いますが、しかも、いろいろな問題点があろうかと思いますけれども、この義務化の問題は、長い間われわれが取り上げてきたことでありますし、そこで、この幼稚園の義務化ということに対して、大臣はどのような御見解を現在持っておられるか、お答えいただきたいと思います。
  44. 高見三郎

    高見国務大臣 幼稚園の振興につきましては、昭和四十七年度を初年度といたしまして十カ年計画で、前期、後期と分けます。前期五カ年では、希望する五歳児の全員が就園できるように、後期五カ年では、希望する四歳児まで全員就園ができるように……。しかし、四十七年度は——御承知のように、幼稚園の発展の歴史というものを見てみますと、私立幼稚園というものが非常に大きな役割りを演じてくれておるのでありまして、私立幼稚園がつぶれるようなことになってはたいへんなことであります。私立幼稚園の立場も立てていかなけりやなりません。そこで、幼稚園のもうからない地区は公立でやる、幼稚園を経営していけるところは私立でやってもいい、私立のほうがむしろいい場合があるというような観点から、幼稚園の配置計画というものをまず、実際上どこにどれだけの幼稚園が必要であり、またどこにどれだけの子供がおって、ここならば私立のほうがいい、ここならば公立のほうがいい——しかし、この義務化と申しますのは、私は、必ず就園しなければならないという義務化ではなくて、設置を義務化しろ、市町村長に対して設置を義務化するというたてまえで出発をいたしたい、かように考えておるわけであります。
  45. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 こういったこともぜひ第一段階の、ただいま御答弁いただいたような設置の義務化という段階から始められるかと思いますけれども、働くおかあさん方のためにも、ぜひともこの義務化ということはさらに力を入れて推進していただきたい。いろいろな計画が多々あるようでありますけれども、やはり実現を見て初めて私たちがその要望にこたえることができるわけでありますから、ひとつその点もよろしくお願いしたいと思います。  次は、現在、わが党が以前にも主張してまいった教科書の無償配付の問題、これは小学校一年から中学三年までに対する教科書の無償配付ということが実現したわけでありますが、ここでさらにお願いしたいことは、副読本と教材費等がまだ父兄の悩みの種である、そういった点からしましても、現在の物価高、物価上昇のおりから、これらの支出が家計簿に響く、響いておるということもまた事実でありまして、文部省当局としても、義務教育まで無償とするのだという憲法の精神からいたしましても、これらの副読本あるいは教材費はやはりここで無償にすべきではないか、このように思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  46. 高見三郎

    高見国務大臣 お答えいたします。  副読本あるいは副教材と申しますと非常に範囲が広いのであります。何が必要な副教材であるかということになりますと、なかなか範囲が広くて一がいにきめかねます。しかし、いま御審議を願っておる予算では、要保護児童、準要保護児童に対しましては、それぞれ辞書を買う金ぐらいはひとつめんどうを見てあげよう、それから学校で共通に使います大きな辞書だとか大きな機器だとかいうようなものは、これは国が補助をするということに、予算の上ではいま御審議を願っておるわけであります。ぜひさよう御理解をいただきたいと思いますし、御提案の趣意は私もよくわかっておりますけれども、さて、それではどれとどれとを無償で供与するかということになりますと、よほど慎重な検討を要するということをもう一つ理解の中に入れておいていただきたい、かように考えるわけであります。
  47. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 この副読本の範囲ということで、範囲で逃げられてしまったような感じですけれども、これは私の非常に個人的なことでなんですけれども、私は数年前にロサンゼルスにおりまして、そのときに私の長男が小学校一年生、朝出るときには何にも持って出ない。手ぶらです。くつをはいて出るぐらいなものです。そして学校へ行って、もう教材から何から一切のものが当然めんどうが見られておる。給食も何も全部、父兄が負担するものは何にもない。帰ってくるときは、そういったものは一切小学校の机におさめて、手ぶらで帰ってくる。日本で実際に行なわれているような、あの茶色い封筒を持ってきて、きょうは何の費用だというようなことは、ロスにおりました数年間、何にもなかった。したがって、海外の諸外国の例、これをいますぐにこちらに当てはめるというのも私はどうかと思いますけれども、こういった教育行政の面、教育制度の面において、非常に立ちおくれておるのじゃなかろうか、このように思うわけですね。私は、きょうはこういった機会を得て、文部大臣を前に、そういったこともぜひともお伝えしておきたかったし、いまの大臣の御答弁に沿って、一日も早くこういったことの無償の配付が実現することを強力にひとつ御要望しておきたい、このように思います。  それから、だいぶ時間が迫っておりますけれども、三多摩を含みまして、都内に鉄筋とかあるいは木造の小中学校がたくさんございます。これらが老朽化しているのが非常に多いということです。河角博士の六十九年周期説からいたしましても、いわゆる震災対策、これを真剣に考えていかなければならないのではないか、このように思います。これらの調査をすみやかに行なって、改修すべきものはどんどん改修する。また、関係の地方公共団体にそのための大幅の助成を望みたいわけでありますけれども、この点に関してどのような見解を持っておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  48. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 いわゆる老朽危険校舎の全体の坪数は、四十六年の五月一日現在で八百八十五万平米ということになっておりまして、このうち国庫負担の対象になる資格面積が五百八十万平米ということに相なっておりまして、これに対しまして、老朽危険校舎の改築の補助金を、小中学校につきましては百三十八億円、高等学校につきましては三十億円ということで、四十七年度予算にお願いをいたしておるわけでございます。  ただいま申し上げましたこの危険校舎の危険度でございますが、私どものほうに老朽危険度の判定の基準がございまして、御承知かと思いますが、四千五百点以下の点数のものを補助の対象にいたしておるような実情でございます。ただいまお話のございました震災対策という観点からは、この学校の周囲の状況等を勘案いたしまして、そうした危険の多い地域につきましては、四千五百点という点数にこだわらないで、五千点まで補助対象にするような方向で検討いたしておるわけでございます。  なお、鉄筋建築につきましても、従来は危険前築の対象としていなかったわけでございますが、最近は、鉄筋建築等でございましても、危険度が高いあるいは不適格なものも中にあるようでございますので、そうしたものも震災対策という観点から、四千五百点以上のものでございましても、実情に応じて補助の対象にしてまいりたいというふうに考えております。
  49. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 いずれにいたしましても、日本の将来をになう学童を震災から守るとともに、震災時におけるいわばミニ拠点ともなるこれらの鉄筋化した校舎を一日も早く実現していただきたいことを、ここで重ねて要望しておきたいと思います。  それから、先ほどもちょっと校庭開放の問題が出ておりましたが、都内における都立、区立等の小中学校ですね。これは地元住民の要望によりまして校庭開放が現になされておりますが、これは実際に働いておられる婦人のためにも、あるいはかぎっ子対策といいますか、そういった対策のためにも、たいへんに好評を博しておるというわけであります。そこで、地元の要望の一つに、国立の付属の小中高等学校、この校庭開放の考えはないか、こういった要望が出ておるわけですが、この校庭開放に関してどのような見解を持っておられるか、まずお答えをいただきたいと思います。
  50. 木田宏

    木田政府委員 学校教育法に示してありますように、学校教育上支障のない限り、学校施設社会教育その他公共のために使うようにという方針が示されております。いま御指摘のありました国立の学校につきましても、学校教育に支障のない限り、そうした御要望に応ずべきもの、御協力すべきものというふうに考えております。  ただ、先ほど少し御質問をとり違えて触れたことでもございましたけれども、地域の子供たちに対して土曜、日曜日に学校を使わせるということは、やはりその地域の社会教育活動、地域の人たち活動と結び合ってでなければできません。そういう観点から、先ほど御説明申し上げましたような校庭開放事業を社会教育の事業として補助するとか、体育の活動を体育団体を通じて進めていくというふうに、施策を一面では講じておるわけでございまして、そういう地域の活動が国立学校の場を使って盛んになっていくということにつきましては、私どもも、十分国立学校当局に協力すべきことをもの申してきておるところでございます。しかし、遺憾ながら、地域の社会教育活動を実施いたしますところと、それから現実に学校管理しております国立の学校管理当局との間の連絡、協力という点については、現在までのところ、全般的に申しまして必ずしも十分な体制になっておるとは申し上げかねます。今後の課題かと思っております。
  51. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 支障のない限りということで御答弁もいただいておるわけですけれども、具体的に文京区にあります教育大学の付属中学校あるいは高等学校、それからまた学芸大学の付属小学校というようなものがありますけれども、住民の方方の、ぜひひとつ開放してほしいのだというような御意見も聞いております。こういった具体的な学校名をあげたわけですが、この点について、先ほど御答弁いただいた内容と関連してはたしてどうなのか、この点をひとつ御答弁いただきたいと思います。
  52. 木田宏

    木田政府委員 いま御指摘のございました竹早のことにつきましては、かねて地元の御要望のあることも伺っておりまして、竹早の小学校長にも、私どもの担当課のほうから、そうした地元の要望に対して学校管理上いろいろとくふうをして協力するようにという指導はいたしております。しかし、先ほど申し上げましたように、このことにつきましては、やはり地元の区の社会教育活動なり、しかるべき団体との関連で、そういう御協力の体制ができるということが望ましいこと、そうすれば学校側も安心して開放させ得るということになるのではないかと思っております。
  53. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 いずれにしましても、そこにだいぶ制限があるように聞こえてならないわけですけれども、おっしゃっておることはわからないことではありません。しかし、地元の皆さんには、自由にこういった校庭を開放してもらいたいのだという率直な声があるわけなんで、ひとつ文部省としましても、その要望に極力沿うような配慮を今後とも講じていただきたい、こう思いますが、その方向に努力をしていただけるかどうか、この点一言でけっこうですが……。
  54. 木田宏

    木田政府委員 努力をさせていただきます。
  55. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 では、時間もございませんので、最後に一点だけ伺います。  わが党の有島委員からも、またさらに先ほどの山中委員からも御質問がありました、緑化の問題ですね。だいぶ問題も出尽くしたような感じでありましたけれども、私としても、一言だけ文部大臣から御答弁をいただいておきたいと思いますが、要するに、学校のへいの問題、非常に高いものがある。私たちの身長よりも高いような——何も刑務所とは言いませんけれども、ずいぶん学校の校庭とそれから町が遮断されてしまっておる。そういったへいについて、何も全面的にとはいえないでしょうが、一部取りこわし得るものについては、それをはずして緑化につとめていくべきではないか、このように思うわけであります。公害から人間の生命あるいは生活を守る、あるいはまた環境整備をすべきことが世界で非常に重要な課題となっておるおりから、こういった問題が非常に要求されておる時期にきております。この緑化対策について、そういった樹木を植えて緑化すべきではないかという意見、これに対する御答弁も先ほど大臣からいただいておりますが、いま一度、こういった公園の少ない東京において、ささやかな緑化でも住民と子供の潤いになっていくんだという観点、これをさらに大きく取り上げていただいて、一言でけっこうでございます、大臣から結論の答弁をいただきたいと思います。
  56. 高見三郎

    高見国務大臣 お話しのとおりであります。有島先生、山中先生、いずれもこの問題を取り上げられました。中川先生もこの話をなさった。私も、生命尊重という意味から、人間の心をつちかうという意味からも緑化が必要だという考えのもとに、この問題は積極的に取り進めてまいります。  いま、へいの話が出ましたが、学校によりまして、調べてみますと、だんだんへいを取りこわしてやってくれている学校があるのです。ただ、これは学校管理体制の問題もございますので、一ぺんに、鉄筋コンクリートのへいはいけないと言い切るわけにもまいりませんが、学校によりましては、私調べてみまして、だんだん取りこわして、むしろ板べいにするとか、あるいは板べいにアサガオを植えるとかいうような形で緑化の方向に進んでおることは、ありがたいことだと思っております。今後もこの問題についてはひとつ十分心がけてまいりたい、かように考えておりますので、御了承をいただきたいと思います。
  57. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 最後一つ御要望でありますが、いろいろ質問を展開してまいりまして、企画面においても、たいへんすぐれたものを企画されているようにも私感じますし、非常にけっこうなことだと思いますけれども、あくまでもこれを、一日も早くすべての施策を実現に移していただきたいということを最後に御要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  58. 森田重次郎

  59. 栗山礼行

    栗山分科員 分科会はそれぞれの慣例による背景がございまして、与野党とも共通のいろいろ、それぞれの問題点を短い時間でお尋ね申し上げる、こういう点でございます。若干行政当局からお伺いをいたしますことと、特に重要な一、二の問題については、たいへん恐縮でございますけれども、大臣御みずからひとつ御答弁をちょうだいいたしたい、こういう一つの点を御了承いただきたい、かように考えております。  第一番に、教育施設の補助制度の問題についてお伺いをいたしたいのですが、勉強が足りませんから、間違いましたらひとつお教えをいただかなくちゃならぬ、かように考えております。  教育施設の補助決定の年度の日時の問題でございますが、大体当年の五月一日という基準に基づいての生徒数で決定されておる、こういうふうに私、しばしば教育委員会等の関係者にお伺いをいたしておるわけであります。そこで問題が起きますのは、学校の完成をいたしますのにつきまして実情が一年おくれてまいります。したがって、プレハブというような取り組みを余儀なくいたしてまいらなくちゃならぬ、こういうような二重経費の負担、こういう内容に発展いたしております一面もあるわけでございまして、やはり五月一日じゃなくて、前年度の一つの基準を立てて、そしてその当年にそういう二重経費の方向に走らないような原則的基準によってお運びいただくということが、補助制度の運用上の問題としてきわめて望ましい姿ではないか、私もそう確信をいたすのでありますが、そういう意見がございまして、率直にお答えをいただきたい。
  60. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 お話しのとおり、国庫補助の対象になりまする坪数は五月一日現在で算定をいたしておるでございますが、新学期は御承知のとおり四月一日に入りまして、五月一日になりますと児童生徒数の増減というようなものが明確になりますし、かつまた安定をするわけでございます。したがいまして、その時点における計数を基礎にして資格面積等を算定するということは、これは原則的には必要なことであろうかと思いますが、ただしかし、人口が急増いたしておるというような地域につきましては、必ずしも適切なことではございませんので、現行制度におきましても一年半前向きと申しますか、翌年度の九月末現在の見込みの児童生徒数を基本にいたしまして坪数を計算するというふうな特例措置を講じてあるわけでございます。ただ、これは集団的な住宅を建設する場合という限定があるわけでございますが、それ以外の人口の急増地域につきましては、資格坪数を実情に応じて二割増加をして計算するというような方式もとっておるのでございます。ただ、一年半前向きということでは、人口が急増する地域における、お話のございましたプレハブ解消というような課題には十分対応し得ないような面もございますので、今国会に義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案というものを提案をいたしまして、一年半前向きを三年前向きということに改めるよう御提案を申し上げておる次第でございます。
  61. 栗山礼行

    栗山分科員 たいへん明快な御答弁をいただきましてけっこうでございます。ぜひわれわれもその実現をひとつ強く切望する、こういう受けとめ方でございます。  義務教育学校施設の国庫負担の問題でございますが、公立の小学校の校舎というものにつきまして、御承知のとおり国庫負担の割合というものが、四十六年度からでございますか、三分の一から二分の一に引き上げをお運びをいただいておる、こういうことになったわけですね。——四十七年からですか、これも一年、私、早い計算をいたしておりました。四十七年から、三分一から二分の一に引き上げられた。これは人口急増地区の教育施設への国庫補助、こういうようなとらえ方ではなくて、全般的な立場においてそれだけの補助をする、こういう見解でございますか。
  62. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 お話しのとおりでございます。
  63. 栗山礼行

    栗山分科員 四十七年度からの早々の問題でございますが、これは三分の一から二分の一という  一つの方向に発展いたしてまいったのですが、自治体といたしましては、御案内のとおり、せめて三分の二はという強い要求が、局長のほうにもいろいろ陳情を進めており、大臣のお耳にもいやというほどいろいろ頭を下げてまいっている、こういう状況下であろうかと思うのでありまして、そういう一つの方向づけも、将来の可及的すみやかな形でお運びをいただく、こういうふうに御検討願ったらいかがなものか、私はこう考えておりますが、あえて御答弁を求めるというのもいかがなものかと考えますが、前向きに御検討をいただいて、ひとつ御答弁いただけるなら御答弁をちょうだいするということに……。
  64. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 お話しの点は十分検討さしていただきたいと思います。  なお、小学校の国庫負担率を三分の一から二分の一に引き上げたわけでございます。中学校は前から二分の一でございます。ただ、小学校の校舎の新増築というのは、御承知のとおり人口急増地域が大部分でございまして、結果的には、つまり制度といたしましては一般的な国庫負担率の引き上げでございますが、実質的には人口が急増する地域における小中学校の校舎の増改築、これが増改築の大部分でございますから、補助金が均てんいたしますのはそうした地域が大部分であろうということは申し得るかと思います。
  65. 栗山礼行

    栗山分科員 先ほどに関連いたしまして、たいへん小さい問題でありますけれども、四十六年度からの予算補助というものは、四十七年度は何校に御指定をいただいておる運びでございますか。
  66. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 予算の積算は、何校という積算ではございませんで、全体の平米で積算をいたしております。  御参考までに小学校校舎について申し上げますと、これは前年度百十二万平米でございました。来年度もほぼそれに近いわけでございますが、百十二万四千平米でございます。それから中学校校舎につきましては、前年度二十三万平米でございましたが、これを三十二万平米というふうに、約四〇%増加をいたしております。これは人口急増地域が中心でございますが、児童生徒数の増加の波が中学校に及んできておるというような実態を踏まえて、小学校につきましてはほぼ前年どおりでございますが、中学校につきましては、いま申し上げましたように四〇%の増加を行なっておるということでございます。
  67. 栗山礼行

    栗山分科員 四十六年度からということの中小の校地取得の問題でございますが、これも予算補助という形で進められておると思うのですね。私は、端的に申し上げまして、これを法律補助の方向に制度として前向きに検討願う、こういうことを希望するのですが、御所見はどうでしょうか。
  68. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 御指摘のとおり、確かに検討すべき重要な課題かと思いますが、この制度は御承知のとおり今年度、四十六年度始まったばかりでございまして、その実績等もまださだかではございませんし、それに一応昭和五十年度までの暫定措置ということでもございますので、もうしばらく実施の状況等を見て結論を出すことが適当ではないかというふうに考えております。
  69. 栗山礼行

    栗山分科員 私も資料をちょうだいいたしまして、そのような年度別予算の補助の内容等も実はちょうだいいたしたのでありますが、今日的な一つの都市化の急増の状況にかんがみまして、こういう一つの内容が適応性があるかどうかということについて若干危惧の念を持つものでありますから、これをもう少し予算補助から抜本的な方向づけを願おう、こういう意図でお尋ねを申し上げた、こういう内容でございまして、十分ひとつ御検討をわずらわしたい、かように考えております。  これは、担当局長と大臣に一言だけ承りたい問題があるのですが、中学校から高校の進学率というものが漸次非常に高まっておりますことは、当局も御承知のとおりでございます。     〔主査退席、大村主査代理着席〕 私どもは私どもなりに、その資料を持っておるわけであります。将来ともそういう方向に高まってまいる、こういうことであろうかと思います。  いろいろ議論されておるのでありますが、端的に、高等学校を義務教育制まで発展せしめるという意見が一部にございます。あるいはまたそういう要望もございますが、当局としてどういう御見解をお持ちになっておるか。また、政治的判断と方策を御推進いただく大臣の、この問題の簡単な所見をちょうだいしたいと思います。
  70. 高見三郎

    高見国務大臣 私からお答えしたほうがいいだろうと思いますので……。  進学率がすでに八五%になった、昭和五十五年になりますと九五%になるという状態なら義務教育にしたらいいじゃないかという御意見、ごもっともだと思います。ただ問題は、たとえ五%でありましても、これを義務教育にいたしますというと就学の義務というものが伴ってくるのです。ところが、実は大学教育を受けます、高等教育を受けます場合には、いつも学生経費が問題になりますが、下宿代が高いとか授業料が高いとか申しますけれども、高等学校卒業して四年間大学に行っているという間の放棄投資とでも申しますか、当然所得があるべき者が所得なしにおる、その放棄投資の面を考えますと、高等学校を直ちに義務化することが適当であるかどうか。あるいは場合によれば、設置は義務化するが就学は自由だということで、おそらく十年先には一〇〇%入る状態になるかもしれません。そういう形のものにしたいと思っておりますけれども、ただいまのところ、世界各国の情勢が、後期中等教育を義務化しておる国が一国もございません。これは私が先ほども申し上げたような事情で、そのまま就職しなければならぬ家庭的事情のある子供があるだろう。これを通信教育なり定時制なりでカバーしていくという考え方で進むべきじゃなかろうか。前向きに私も検討をいたしますけれども、どうぞその辺を御了解願いたいと思います。
  71. 栗山礼行

    栗山分科員 次に、教護教育教授の問題についてお尋ねを申し上げてまいりたい。私のほうにも陳情なり請願が参っておりまして、当局にもこれは参っておる問題であろうかと思います。  教護教授の必要性の問題というものは、ここで論ずるという内容でないと思います。切実な当面する一つの問題でございます。ところが、この問題は、制度上の問題におきましては、現行の国立養護教諭養成所設置法によって、三年間の教育というようなことで運ばれておる。これを四年制にして、国立学校設置法の中でこれを位置づけて、養護教授の品位というものと内容を確立してもらいたい、こういうところに問題の焦点があるのでないか。特に三年制だということになりますと、現行で身分の保障、それから置かれた位置づけというものについても非常に不的確な内容だ、こういうことでいろいろ要望なり陳情が参っておる、こういう状態であろうかと思うのでありますが、この問題についての陳情及び要望についてどのような御見解をお持ちになるか。
  72. 木田宏

    木田政府委員 現在、養護教諭の免許資格をとりまして就職しております者が、数の上で申しまして一番多いのが短期大学卒業生であります。二ケ年間に養護教諭養成についての資格のある大学として課程の認定を受けております短期大学を出て、二級の養護教諭免許状を取得して就職をしております者が、たとえば四十六年六月一日現在でとってみますと、一番数が多いわけであります。その次に、指定教員養成機関と申しまして、保健婦学校等でございますけれども、特殊の養成機関に養護教諭養成の資格の道も与えまして、そしてこれは一級の免許資格をとれる者もかなりあるわけでございますが、そういう免許状を持ちまして就職している者がかなりたくさんございます。現在の段階では、養護教諭で、四年間の大学教育を終えて、養護教諭の養成大学としての認定をもらったところの卒業生で就職をいたしております者もないわけじゃございませんけれども、非常に数が少なうございます。  したがいまして、国立の養護教諭養成所は、現在九カ所持っておるわけでございますが、これは三年間で二級の養護教諭の免許状を与えて就職をさしておりますし、その就職の率も非常に高うございます。これをせっかく充実しておることでございますから、四年間の学部教育にしたらどうかという御要望はかねてから伺っておりまして、私どもも慎重に検討しておるわけでございますが、足りないといわれております養護教諭充足のあり方から見まして、学部教育にしていくのがどうだろうかという点に一まつの危惧を実は持っておりまして、現在のいろいろな養成機関からの養護教諭に対する就職状況等ともにらみ合わせまして考えておるところでございます。
  73. 栗山礼行

    栗山分科員 もう短かい、十二分しかございませんので、また大臣に、最後の問題で、放送大学の問題についてお伺いをいたしたいのであります。  私は逓信委に席を置いておりますが、四十四年の選挙で自民党は、放送大学を設置するということを重要なスローガンに掲げられましたことは、御承知のとおりであります。しかもそれは四十七年度から実施、こういう方向で作業を進めるということになりました。私は、これを全面的に支持をいたしました。  これは、現在の大学制度それ自身に大きな問題点がございます。公立あるいは国立及び私学、さらにまた全般にわたります日本教育制度の抜本的な一つの路線について、いろいろ悩みと問題点を持っておることは事実でございますが、私は、大学及び学校の補完教育じゃなくて、やはり生涯教育で、そういう正規な教育を学べなかったというような人たちまで——いわゆるわれわれはお迎えが来るまで、それ自身教育である、こういう生涯教育が、今日以降におきます教育の大きな課題だ。そういうためには、電波を通じまして、そして各分野にわたります多面的な、国民的、大学的な要素で、ひとつ放送大学の実現を求めるということがきわめて望ましい。  問題は、放送法や電波法、あるいはNHKが市民大学というような一つの進め方をいたしておる問題についてのいろいろ位置づけとか、その認可をどこにするかというようないろいろな問題は、これはございますが、そういうことじゃなくて、基本的にやはり文部省がその熱意を持ってこれの実現を特に推進あるいはまた支持をいたしてまいったのでありますが、最近御案内のとおり、一つNHKとそれからまた音声放送によってこれが試験放送を展開されておる、これも一つの前進であろうかと思うのでありますけれども、四十七年が、四十八年に発足するという、準備の段階からやや後退をいたしました。そして、ある極端な一つの見方をいたしますなれば、この問題は、前進するということよりも消散する一つの方向に進むのではないか、こういうような悲観を申し述べる論者もございます。私も若干危惧する一人でございまして、端的に申し上げまして、郵政省のほうとしては、波の確保を明確にいたしておる。また放送大学が設置されるということになりますと、現行の法制上の問題をどのように展開するか、こういうふうないろいろ用意等もされておるというように、私の質問を通じてはお伺いをいたしておる。ただ、問題は文部省側の姿勢なのでありますが、一つはいまの大学制度のセクトがございましたり、あるいは取得の点数の問題がございましたり、いろいろそれぞれの問題との関連でさらに検討をし直さざるを得ないというようなことが新聞の一部に伝えられて、それが放送大学が後退及び消散への道をたどるのでないか、こういうような議論に発展をいたしておるやに、私は要点を申し上げますと、受けとめておるわけでありますが、私は高見大臣は、断じてこれはもう後退していただいたら困る、日本の生涯教育とそしてあまねく国民の、自分の課題として、電波を通じてそれぞれの思考と問題点の教育に取り組む、こういうような方向づけをやっていただかなくちゃならぬ、これが私の念願でございますが、大臣の的確な所見をお伺い申し上げたい。
  74. 高見三郎

    高見国務大臣 栗山先生は逓信委員をやっておられる、非常に御理解のある御発言でありますし、これははっきり申し上げておきますが、後退をしておるのではありません、前進をいたしております。ただ、前進をいたしておりますが、実は放送大学、放送大学と口では簡単に言いますけれども、やってみようとすると、実際は非常にむずかしいのです。これは正直なところむずかしい問題であります。たとえば教官の組織をどうするか、あるいは教科課程をどういうようにするかというような問題になりますと、なかなかむずかしい問題がございます。  そこで、試験放送を始めてみましたが、この結果がまだ満足すべき状態であると私は思っておりません。つい最近、放送大学について学識経験者からなりますところの調査研究会を発足いたさせました。  そこで、この機会に誤解のないように申し上げておきたいと思います。簡単に放送大学といっておりましたけれども、私は、日本大学の新しいあり方としての放送大学というものを理想といたしております関係上、放送大学は——テレビのほうは今年実験放送に入ります。ラジオのほうはすでにやっておりますが、引き続きやります。そういたしますと、昭和四十八年開校ということは、事実上私は無理であるという判断をいたしております。しかし、昭和四十九年には間違いなく、りっぱな大学教育機関としての、高等教育機関としての放送大学を開校ができるようにいたしたい。それが後退しておるんだといわれるならば、まさに一年後退したということでございますけれども、私は、前進のための後退だという意味におきまして、慎重の上にも慎重にこれは取り組むべきであって、ただ、大学が騒動が多くてしょうがないから、いっそテレビで教育したほうがいいではないかというような安易な教育であってはならない。これがほんとうに日本高等教育機関としてりっぱな、どこの大学にも負けないだけのりっぱな教員組織であり教科組織であるという大学をつくりたい、そのためには開校は昭和四十九年度に開校するというかたい決意のもとにこの問題と取り組んでおるということを御理解の上、御支援のほどをお願いを申し上げます。
  75. 栗山礼行

    栗山分科員 たいへん、御決意なり作業の御苦心のほどを拝聴いたしまして、意を強くするわけであります。また逆に見ますと、私は、文部省の予算を拝見いたしまして、あるいは郵政省の、放送大学に対しまする研究費の予算を提示をされまして、ヒヤリングでいろいろ検討いたしました中身から考えますと、必ずしも大臣の御説のような進行過程に前進するものだということが言いがたい諸点があるということを、これは言外のことばで私は受けとめておるということを御了承をいただきたい。私は、四十九年になりましても、よきものの生みの悩みとしての作業の前進ならそれはよかるべし、こういう意見を持っておるわけでありますが、ただ願う点は、やはり閉鎖学校から、国民に開放された、しかも大きな影響力を持ちます電波によりましてあまねく生涯教育の有効な教育方策を前進する、こういう一つの基本路線で御画策と実現をぜひ切望申し上げまして、私の質問を終わりたい、かように考えます。
  76. 大村襄治

    ○大村主査代理 大原亨君。
  77. 大原亨

    大原分科員 私は、医学教育のことをちょっと質問いたします。その前に、医者はそれぞれのとり方があるわけですが、医師、歯科医師の需給状況というか、不足が幾らくらいだというふうに厚生省は考えておりますか。
  78. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 わが国の医師、歯科医師につきましては、先生も御承知のように、人口対比でいきますと、医師の数が現在百二十六程度の数字になります。そういう点で、欧米諸国の数字と比べますと、必ずしも著しく低いというものではないと思います。  しかし、私どもは、そういう対人口比の形でなくて、わが国におきまして非常に特有と申しますような現象が、皆保険の問題もあろうかと存じますが、著しく患者の数が多いということでございまして、やはりそういったものに対応して医師の養成というものは考えなければならないんじゃないか、こういう観点に立ちましていろいろ検討いたしてまいりまして、少なくとも皆保険出発の昭和三十五年当時の医師と患者との関係というものを今日の段階で対比させてみる、そういうふうなことを試算いたしました結果、医師としては、大体人口十万に直しますと約百五十人ということを目標にしていきたい。歯科医師の場合は、大体国際的に見ましても医師の数の三分の一ということが常識でございますので、それに合わせたような需給計画が望ましい、かように考えておるわけであります。
  79. 大原亨

    大原分科員 人数はどのくらい足りない……
  80. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 ただいま、届け漏れを推計いたしましても、約十三万人台の医者でございます。いま申しました百五十人台に到達をするという昭和六十年段階におきましては、約十八万人の医者ということになりますので約五万近くが足らない、こういう状況でございます。
  81. 大原亨

    大原分科員 文部省が、医学部については国公立、私立についての定員を決定するわけですが、文部省は、医者の需給状況を勘案して国公立の医大、私立の認可等をやっているのですか。
  82. 木田宏

    木田政府委員 医師の養成数につきましては、ただいま厚生省のほうから御説明がありましたように非常な不足がいわれております。したがいまして、これからの医学部あるいは医科大学の設置をどういうふうに進めていくかという調査会にも、厚生省の医務局長にも参加をしてもらいまして、将来規模についての相談もし、一応人口十万に対して百五十人という線をできるだけ早い機会に到達できるような養成計画を、相談の上で立てておるところでございます。
  83. 大原亨

    大原分科員 いま厚生省の医務局長の御答弁の中には非常に問題が多いわけですが、いまの答弁  では、私はこれは了承しているわけではないのです。というのは、昭和三十五年から皆保険をやりましてから、患者のあらわれ方が、保険制度との関係で非常に違ってきたということが一つあるわけです。つまり、いまの保険の制度は出来高払いですから、何といったってやはりたくさんかせげばいい。言うなれば、病人をたくさんつくって、そして医療費を、自分の診療報酬をふくらましていく、多くしていく、こういう傾向があることはいなめない。  もう一つ度外視できないのは、日本の高度成長政策を通じて人口の都市集中あるいは過密過疎というような現象の中で、疾病構造が変わってきた。ある意味では、この一億人が総患者である、こういうふうにいわれておる。外部環境の破壊あるいは残留農薬や食品添加物や医薬品の多用、こういうことで、最近でもたくさん社会問題になっておるわけですから、直接間接の汚染、環境破壊、こういうもの、あるいは交通その他の問題で精神的な問題、住宅問題でそういう問題、神経系統の病気、こういうふうに、言うなれば、病気だといえば全部病気だ、一億の国民が全部病気だ、こういうふうなことになっておって旧態依然たる保険制度がある。  そこで問題は、時間も何ですから、これは引き続いてまた、暫定予算等でも質問いたしたいと思っておりますが、そういう状況の中で医療保険の制度だけをいじくっても、日本の医療の問題は解決しない。結局は医療の供給面をどうするかという問題。医療の供給面は、こういう事態に対応する医学教育、医者の供給の面も、これは無視できない。これは自治医大とかあるいは防衛医科大学というふうな——防衛医科大学などはまさは便乗でありますが、そういう問題等が出てきておるわけであります。自治医科大学等は、切実な僻地の医療の問題であります。  そこで、医師の供給をどうするかという問題については、単なる大学審議会や私学審議会等の、そういういままでの、戦後のいきがかりにとらわれた方法をもって医大の認可等をやることは間違いではないか、これは間違いだ、私はこう思うわけであります。そういう点で、医療面を担当しておる厚生省と、それから文部省は、どういうふうな連携をとって医師の供給についてやっておるのか、この点についてひとつ実情をお答えをいただきたいと思います。
  84. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 御指摘のとおり、両省の密接な関係というものを保つべきだと存じます。  私どもも、大学設置審議会に加えていただきましたし、また、先ほどお話がございましたような医学部問題の調査会というものにも加えていただきまして、積極的にいろいろな意見なり数値なり、私どもの研究しているところも提出をいたしまして、それに基づいて大綱がきまるというように進めるように私ども努力したつもりでございます。
  85. 大原亨

    大原分科員 厚生省が医師の需給計画についてかなり長期の計画を立てる、こういう医師がこういう年次に従って要るので、不足数を克服するためにはどうすべきだ、こういうふうに立てまして、そして文部省もこのことを十分尊重しながら、一般的な大学の設置基準等だけではなしに、この問題を勘案してやるということは、私は絶対に必要であると思う。  医療保険の問題、医療保障の問題は、今日の日本最大の政治課題です。ですから、今回の国会におきましても、健康保険法の改正あるいは健康保険の抜本改正あるいは医療基本法というのがそれぞれ出ることになっておるのです。しかし、私どもは、たとえば医学教育一つをとってみても、政府としてやるべきことをやっていないのではないか、そういう観点に立つならば、健康保険の改正案を通すことはできない。今回の改正案を通すことはできない。いまの政策のすべてのしわ寄せを保険料の値上げと患者負担にしただけで、日本の医療の構造的なピンチを切り抜けることはできない、こういう観点を私は持っておる。これは医学教育、医師の供給だけの問題で、厚生省には、医師の供給についてはそういう総合的な計画がないのではないかということでありますが、その点は、どちらからでもいいけれども、あるのかないのか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  86. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 長期的には、先ほど申しましたような全体としての数量というものを踏まえて進んでいただきたい、こういう計画をわれわれも正式に申し出ておるわけでございます。また同時に、医学教育内部の問題といたしましてはいろいろ問題があろうかと思いますが、少なくとも厚生省といたしましても、医師の教育というものはいわば医学部教育だけで終わるわけではございませんので、医学部教育からさらに卒業後の教育あるいは一生涯にかけましての生涯教育体制というものを、どうしても確保しなければならない。そういったことをできましたならば基本法の中にも盛りまして、そして各医療機関の持つべき役割りというものもそういう点から十分に整備をされるという観点に立つ必要があるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。また、そういう意味におきまして、大学自体の医学教育につきましても、他の医療機関が十分御協力しなければいかぬという分野が、特に臨床教育の面においては実際に相当あると存じます。そういう意味におきまして、来年度におきましても、そういういわば教育病院群の構想というものを具体的にどうするかということにつきましても一応の予算を計上していただいておるわけでございまして、そういう形で総合的に文部省とも十分連絡をとりながら、いわば一貫した医学教育というものの完成に努力をしたい、かように考えております。
  87. 大原亨

    大原分科員 これは文部省にお聞きするのですが、これはきょうの私の質問の焦点ですが、昭和四十六年度にどのような私立医大の認可をしたか。それから、四十七年度に新しく私立医大をどのように認可をしたか。あるいは審議中、保留中のものはどういう学校であるか、そういう点について、学校名をあげて簡単に御答弁いただきたいと思います。
  88. 木田宏

    木田政府委員 お答え申し上げます。  昭和四十六年度に、四十七年度開校予定の私立の医科大学として審査をいたしましたものは、審査の段階では九校ございました。そのうち三校は、昭和四十五年度から継続審査をいたしてまいりましたものでございまして、兵庫医科大学、名古屋保健衛生大学、愛知医科大学は、昭和四十六年度に審査を終了いたしまして、設置の認可をいたしました。それから、昭和四十六年度に認可の申請がございまして審査をいたしました残り六校のうち四校につきましては、昭和四十七年の一月と昭和四十七年の二月、さらに三月の三段階に分かれましたけれども、それぞれ設置の認可を可とする答申が行なわれまして、福岡大学の医学部につきましては一月に、自治医科大学と埼玉医科大学につきましては二月に、認可の手続が一応終わりました。金沢医科大学につきましては、先日、審議会のほうから設置を可とするという答申が出まして、それを受けて、いま認可の最終処理を急いでおるところでございます。残り二つにつきましては、一つは独協医科大学でございますが、これは引き続き継続して審査するという扱いにいまなっておりますし、他の一つにつきましては浪速医科大学でございますが……
  89. 大原亨

    大原分科員 福岡じゃないですか。
  90. 木田宏

    木田政府委員 福岡ではございません。浪速医科大学でございますが、これは本年のところ申請書の取り下げを慫慂すべきものということで、実質的には認可の手続を停止いたしております。  いまのは医でございまして、歯科大学につきましては、四十六年度中に審査をいたしましたものが五校ございまして、そのうち三校、松本歯科大学日本歯科大学の新潟歯学部につきましてはこの一月に、東北歯科大学につきましても、両審議会で設置を可とする答申がございまして、いま認可の手続を了したところでございますが、福岡歯科大学ともう一件につきまして、福岡歯科大学のほうは引き続き継続して審査をすべきものという御答申を得ておりますし、もう一件は、審査の申請を撤回されましたものでございますから、途中で取りやめておるわけでございます。
  91. 大原亨

    大原分科員 いま国公立と私立との区別はなかったわけでありますが、大臣、私は時間の関係もあるから、私の意見を申し上げます。厚生省からも私の意見についての見解を聞きたいと思いますが、つまり、いまの医者の養成、医学教育においては、私立医科大学の現状を考えてみると、たとえば一千万円以上、二千万、三千万円というふうに、あらゆる名目で入学金を取っている。福岡歯科大学のように公然と取っておるのもある。これは三百万円ほど特定の、入学とは関係づけていないけれども、将来の手付金みたいなものであります。そういうかっこうでどんどん私立の医科大学ができるということは、いまの非常に荒廃した医療というものをさらに荒廃させる。そういうことは、いままでの私学の認可の基準に合致しているからといって、これを認可することは絶対に相ならぬと私は思っております。いままでの私立の医科大学、医学部等に対しても、これはやはり他の私立の大学よりも特別の援助をする。いままで認可をしている私立の医大に対しては援助をする。そして医学教育の公共性を確立するということをしなければ、今日の医療保険の医師の供給面における改革を進めることはできない。これはなぜかといえば、社会主義とか資本主義とかということではなしに、皆保険化、あるいは医療保障、今日の疾病の特殊な状況、そういう状況に対応する医師を供給する問題としてはこれはいけないことである、こういうふうに思うわけです。そういう考え方というものを——大臣はおうなずきになっていますが、考え方というものは、いまの大学設置審議会や私学の審議会等においては取り上げられていないのではないか、私はこういうことを思いますが、実情はいかがなんですか。
  92. 木田宏

    木田政府委員 医学並びに歯学の大学の申請につきましては、いま御指摘のようないろいろな問題点がございます。養成数の増大ということも考えなければなりませんけれども、しかし、ほんとうに質のいいものをつくらなければなりませんから、医科大学設置調査会におきましては、できるだけ国公立のものあるいは既存の大学の定数の拡大というようなことにも優先的に力を入れまして措置をすべきものというふうな御意見をちょうだいしておりまして、そういう前提のもとに大学設置審議会及び私立大学審議会におきましても審査をお願いしておる次第でございます。
  93. 大原亨

    大原分科員 しかし、いま御答弁になりましたように、昨年以来ばたばたばたばた私立の医大ができておる。全くでたらめにできておる。その一つ一つをあげてもよろしいですよ。これはあげるまでもなく、国立でも阪大の不正入学のように、一千万円、二千万円出して試験用紙を横流しをして、そして入学させる、不正入学させるという問題があったわけです。そういう一つの道があるということになると、それを商売にするブローカーがあって、そしてあらゆるところへ手を伸ばしておいて、当たるも八卦、当たらぬも八卦じゃないけれども、通ったならば取る、通らなかったら一部を返すというふうなことで、ブローカーが暗躍している問題があった。私は現地を調査いたしましたが、そういうときに、私立の新しい医大を、百億円近くもかかるような、そういう設備が要るような基準の大学というものを、入学する学生入学金その他を目当てにしてそういう設立を認可するというようなことは、これは全く時代の情熱に合わないものである。文部大臣いかがですか、その点に対する見解。
  94. 高見三郎

    高見国務大臣 お答えいたします。  これは全く大原さんのおっしゃるとおりで、知は、医科大学というものが地域医療の質の向上というものに役立つ医科大学があってほしい。たとえば広島県に広島大学の医学部があるということは、広島県のお医者さん全体が医療水準が上がっていくために利用する機関でもあってほしいと思います。そういう意味から申しますと、実は各県に一つ国立医科大学をつくるぐらいな考え方を持たなければならぬと思うのです。  今年、私は特にやかましく申しましたのは、設置基準に合っておれはいいという——これは一応断わるわけにはまいりませんが、いいということではいかぬので、たとえば、何十億かの金がかかるのですから寄付金をしておるというなら、大口の寄付者は一人一人を呼んで、どういう事情で寄付をしたのだ、その金はどこから出ておるのだ。——いままでは銀行の残高証明だけで認可をしておりましたけれども、寄付者を呼んで、大口の寄付者一人一人について寄付の動機、寄付の理由、その資産の出所というようなものを明らかにいたしまして認可をするというような、厳重ないき方をとりました。しかし、どうもそれでもまだ十分でないのです。まだ十分でないのでありますから、将来は二段審査、つまり再来年つくりたいという大学の申請を今年度さしておく。そして、綿密な調査をした上でなければ、認可は私立については簡単にはしないという心組みが必要じゃないか。それをやらなければ——誓約書を入れておりますよ、寄付金をとりませんという。が、処罰する方法はないのですね。  そんな状態では医療の質を上げるということもできないし、ろくな医者はできないということでありますから、御指摘のとおり、これはほんとうに日本の医療の危機だと思っておるくらいなんです。いままでのように基準に合っておれば許可するのじゃなくて、ことしは非常に厳重な審査をやりましたが、厳重な審査をやりましてもなおかつ適当じゃない場合があるということを考えます場合に、御指摘のような問題を私も真剣に取り上げたいと思っております。できることならば、国立をふやすことによって私立を抑制するという形へ持っていかなければならぬ。そして、できましたからには、私立医科大学に対してはできるだけの助成をしてやって、教育の内容を充実するということを考えざるを得ないだろう、かような考え方に立って、実は設置認可の基準を非常にやかましくいたしておるわけであります。これが実情でございますので、一応御了承をいただきたいと思います。
  95. 大原亨

    大原分科員 大臣のお話はわかるのでありますが、ひとつ政策上の問題ですから、将来の方針を含めて進めていきたいと思いますが、いま都道府県の中で一校も医科大学がないのがたしか十六県あると思います。で、十六県については、よほど狭い県は別にいたしまして、一校ずつは建てる、何年間に一校だけは建てる。将来、私はやはり——私も国会で言っているわけですが、公的医療機関を基幹病院にするというふうな問題等を含めて、地域に密着した医学教育をやる、こういうことから、そういう何年かのうちに医科大学を国立でつくっていく、あるいは公立でつくっていくという方針をきめる。それから新たに、いままでの私立の医科大学に対しましては、お話のように十分な特別な助成をしていく。それからもう一つは、新しく認可をする場合には、その資金が五十億円ないし百億円要るわけですから、これはいまの大学設置基準について、医大については付属病院の問題もありますが、付属病院の構想は変えなければなりませんけれども、たとえば藤原銀次郎さんが慶応の外郭に藤原工業大学か何かつくったことがありますが、自分の私財を投げて五十億円か百億円ここへ出して、そうしてつくるというふうな、そういう設立について財政的な基礎がはっきりしているもの以外は、これはすべてもぐりですよ。私が材料をあげますけれども、父兄や生徒その他各方面の調査の材料をいずれ別の機会にあげますが、とにかく七百万円から、一千万円から二千万円を入学と条件に入れておるから、入学した者はそれをペイするために、また卒業したならばその道を走るということになるわけですから、ますますいまの医療の矛盾を激化するだけでなしに、先般アメリカがやったという——これは実態もあらためて聞きたいと思いますが、外国医学卒業者の教育評議会で日本の受験生の成績が四十九位であった。これは英語でやったから不利だった、語学が何とかいうようなことをいろいろ言っておりますが、これは普通の社会問題に対する論文とは違うのですから、術語なんですから、英語だったら大体できるわけなんですよ、試験をやります際に、普通の医者でございましたら。これは四十九位だった。医師の国家試験あり方にも関係いたしますが、私は、そういう点においてはますます医学教育の質を低下をして、今日の医療を混迷におとしいれるものである。そういう問題について、私は三点を認可についてあげましたけれども、三点に少なくともはっきりした根拠がない限りは、認可すべきではない。三兆円も医療費を負担しているのですから、われわれが少々、一つ学校に五十億円、百億円の医大の設置費をかけるということなぞは、国民の立場から見れば、政治の上から当然解決すべき問題です。  私は三点を申し上げました。都道府県に最低一校は医学部を設ける。それから、現在までの私立の医大に対する助成は十分にしていく。それから、これからは財政的な基礎が明確でないもの、積極的に明確であるもの以外は認可しない、こういう三つの方針でこれからの医大の認可について当たるべきであると思うけれども、これについてどういう考えを持たれるか、大臣。
  96. 高見三郎

    高見国務大臣 私からお答え申し上げます。  御指摘の三点はことごとく同感でございます。  そこで、私も、医科大学のない府県、これはどんなに小さい県でもやはり国立の医科大学を持つ必要がある。今年三校、創設準備費をつけてもらいましたのは、私の考えでは、昭和六十年に人口十万に百五十人——これはアメリカの基準でありますが、アメリカではそんなことじゃ足りないというので、非常に医師養成を熱心にやっておるようでありますから、十万に百五十人という時代は昭和六十年にはおそらくなくなるだろうと思いますけれども日本では、昭和六十年までにはせめてその基準までいきたいものだと考えております。したがって、私立大学よりもむしろ国公立大学に重点を置いて考えるべきだ。これは、大原さんよく御承知のとおりの医療制度全般に関する問題と非常に深い関係があります。だから、病院のごときも、教育病院を必ずしも大きな病院をつくる必要は将来はないのじゃないか。むしろ公立病院を関連病院として使うことが必要ではないだろうかということをいま考えておるところでありまして、そうすれば公立病院も生きてくるし、それから国立病院のほうも、定員の面から申しましても楽になってまいります。一番困るのは、いま基礎医学の教官がそう簡単に得られないのですね。足りない。それと看護婦が間に合いません。だから、公的病院というものを関連病院として使うことになりますというと、その病院の医療の資質も向上いたしましょうし、双方非常にいいのじゃないかという考え方を持っておるのでございます。目標は、昭和六十年というものを目標に全国置きたいものだという考え方で進めておるというように御了承を願いたいと思います。
  97. 大原亨

    大原分科員 もう時間が来ましたから終わりますが、医師の供給については、私がいま三つの原則を申し上げたのですが、文部大臣もこれには原則的に同感だ、こういうお話ですが、文部省と厚生省は十分協議をして、そして医師の供給について、いまのように昭和六十年に十万の人口に対して百五十人医師を確保する。もちろん、医師が偏在したりあるいは大学病院に癒着をしておるというようなこと、講座制の問題等たくさんありますけれども、とにかくそういう問題を含めて、医師の供給については長期計画を立てる。この問題について大臣は十分一つの決断を持って、国務大臣としても関係各省と連絡をとりながらこれを進めてもらいたい。このことを要望いたしておきますが、最後に、簡単に大臣の御決意をお答えいただきたいと思います。
  98. 高見三郎

    高見国務大臣 大原さんのおっしゃるとおり、これは厚生省との関係もございますし、十分連絡をとりまして、ただいま御意見のありました点も十分私理解をいたしておりますから、御希望に沿うように努力をいたします。
  99. 大原亨

    大原分科員 それから、いま懸案になっているああいう便乗の医大とか歯科医大というのはやらない。それから、まだ最近認可されたばかりの中には問題なのがたくさんある。こんなので医者を養成したらたいへんだということがわかっておる。そういうものに対しても是正ができるような——一たん認可したものはむずかしいですけれども、それぞれ代議士がくっついていますから。代議士がくっついて強引に運動しておるから。それを一々あげてもよろしい。これは内閣の中におるのがおるですよ、むちゃくちゃやっておるのが。それに圧力かけてやっておるのがおりますから。だから、いまの高見文部大臣の決意というも  のは、あなたはいまいつまでおられるかわからぬけれども、なかなか何だけれども、しかし、ここで審議をしたということは残っておるわけですから、これはぜひとも——あなたは、大臣やめられても代議士であることには間違いない。サルが木から落ちてサルでないというようなことではないわけですから、だからこれは責任をもってやってもらいたい。しかし、これからの認可については絶対しない。たとえば福岡歯科医大なんというのはだめだというふうにぴしゃっとしてもらいたい。そうしなければ、昭和四十六年、四十七年、あなたのところがやっているのはでたらめなんですよ。私は材料を全部あげますよ。私が、一千万円以上寄付金を取っているところはありませんかといってきちっと言ったら、ないと思う、もしあったらどうするかといって詰めていって困るようなことがありますよ。ありますよ、そういうことは、私がもしやったら。入学と関連してやっておるのは、若干のものについては、資材費とかそういうものについては、現状においてはしかたがないにしても、一千万円とか二千万円というのはでたらめです。全く営利営利で、営利医療の根拠の営利医大の経営です。だから、私はその点はきびしく申し上げておきまして、私の質問を終わります。
  100. 大村襄治

    ○大村主査代理 この際、暫時休憩いたします。  本会議散会後、直ちに再開いたします。     午後一時五十五分休憩      ————◇—————     午後四時十三分開議
  101. 森田重次郎

    森田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上原康助君。
  102. 上原康助

    上原分科員 いよいよ五月十五日の沖繩の施政権返還も間近に迫ったわけですが、私は、施政権返還と関連する沖繩の教育行政諸問題について、四十七年度の予算とも関連させながらお尋ねをしたいと思います。  まず、大臣にお伺いいたしますが、昨年の沖繩国会で、大臣は、沖繩の教育施設、その内容を本土並みに持っていくには、格差が大きいので相応の予算をつぎ込んでいかなければいけない、向こう五カ年間で本土水準に引き上げるための御努力をなさるということを、たびたび言明をしてこられました。申すまでもなく、教育施設設備あるいは教育行政の内容等を含めて本土と大きな格差があるということは、すでに指摘をされているとおりであります。したがって、現在の格差をなくして本土並みに引き上げるということは、本土の伸びというものに見合う形での予算措置というものをなさらなければいけないと思うのです。そういう意味で、四十七年度の予算というものを見ました場合に、当初沖繩現地あるいは文部省がお考えになっておられたような中身になっていない、そういう印象を強く持たざるを得ません。  そこで、あらためて沖繩の教育全般にわたって早急に本土並み水準に近づけていく、上げていくために、四十七年度の予算を含めて、文部省としてどうとらえておられるのか、また、私がいま指摘をいたしました点が合っているとするならば、どうこれから対処していかれるおつもりなのか、基本的な方向づけといいますか、政府のお考えというものをまず承っておきたいと思うのです。
  103. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 沖繩の公立学校施設整備につきましては、ただいま上原先生からお話がありましたような趣旨の答弁を去る沖繩国会におきまして大臣から申し上げているわけでございます。若干繰り返しになるかと思いますが、申し上げてみたいと思います。  沖繩における施設の整備状況でございますが、校舎につきましては、基準面積に対しまして六二・三%という状況でございまして、これに対応する本土の数字は九一・四%でございます。屋内運動場が特におくれておりまして、沖繩におきましては一二・五%の充足でございますが、本土におきましてはこれが七〇・三%ということでございます。これにつきまして、四十七年度を初年度といたしまする五カ年計画で、五十一年度までの間に本土水準に達するよう沖繩の学校施設を整備するという考え方が基本でございまして、そういう前提で全体計画を策定し、それに必要な本年度予算を計上しておるというわけでございます。  当初話のあったところと若干違うではないかというお話がただいまございましたが、全体計画といたしましては所要面積約六十一万平米ということでございまして、この六十一万平米の全体計画量は、私どもが当初考えたところと変わっていないわけでございますが、当初の要求におきましては、これを均等五カ年計画ということで予算を要求したのでございますが、予算の毎年度の伸びを考えまして、毎年度一〇%ずつ事業量を増加するという前提のもとに不均等計画にその後改めております。本年度は、したがいまして九万九千平米という事業量を予定しておるわけでございますが、毎年度これが一〇%ずつ増加するという私どもの計画でございますので、これを累計いたしますと、当初計画どおり約六十一万平米の整備が可能になるということでございます。なお、五十一年度におきまして本土水準を達成するという場合のこの本土水準は、今日の本土水準ではございませんで、五十一年度に本土が達成するであろうその水準を想定をいたしまして、そこに到達をするという五カ年計画を定めております。
  104. 上原康助

    上原分科員 当初、均等計画で予算措置をしようとしたのが不均等計画になって若干のズレが出たという御答弁ですが、文部省として、沖繩の教育施設設備あるいは内容全般を含めて本土水準に持っていく、もちろん本土の伸び率も含めて向こう五カ年間でやっていく、その格差をなくしていくための予算総額というのはどの程度見積もっておられるのですか。
  105. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 公立学校施設につきましては、総事業費といたしまして約二百四十五億円を想定いたしております。これはもちろん今日の単価を前提とした経費でございますが、そのうち、建物が二百三十九億円、土地が六億円ということでございまして、これに対応する国庫補助の所要額は、これも今日の補助率を前提にして計算をいたしますと約百九十六億円ということになる見込みでございます。
  106. 上原康助

    上原分科員 ここで数字的なやりとりは控えたいわけですが、そうしますと二百四十五億程度必要だ。今年度の二十七億九千五百万円が文教施設費として組まれております。少なくとも公立学校施設設備を本土水準に引き上げるには、年間五十億程度の予算化というものが伴わなければいかないという見方も成り立つかと思うのです。そういう面で、まだまだ予算措置において本土水準に引き上げていくという積極性が欠けるという面が指摘できるかと思いますので、その点、不均等計画あるいは一〇%の伸びということを一応考慮しての予算措置だということでございますが、教育水準全般を本土並みに引き上げていくためになお一そうの御努力を賜わりたいと思うわけです。生ほど御指摘ありましたように、特に校舎の不足率を見ましても、本土との格差というのはひどいし、水泳プールあるいは屋内運動場、特殊教室等を含めてたいへんおくれをとっているということは、これはもう数字が先ほどの御説明もありましたように示しているとおりでありますので、その点、鋭意努力をしていただきたいと思うのです。  これとの関連においていま一つ指摘しておきたいことは、校舎建設に伴って、私たち現地でいろいろ学校現場等を視察して感ずることですが、いわゆる便所施設というものが伴っていないということ、校舎はつくったけれども、そういったトイレというものが全然校舎に付属していない、あるいは絶対量が、たしか私の記憶では二七、八%、三〇%以下じゃなかろうかと思うのです。そういった片手落ちの校舎建築というものをいまやっている。そこいらについても、復帰後すみやかにこの問題を解決をすべきだと思います。いろんな学校環境の面から考えても、当然校舎と一体となって解決すべき問題だと思います。この点については、お気づきなのか、あるいはまた現地側だけの裁量でそういう校舎建築というものを進めているとお考えなのか、もし、御意見なりお考えがあれば賜わっておきたいと思うのです。
  107. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 沖繩の学校における便所の整備がおくれているという話は、実はただいま初めて伺う話でありますが、私どもが補助対象にいたしております基準坪数は、これは全く本土並みの規準でございまして、その中には、便所の必要な面積もきちんと算入されているわけでございますから、沖繩における学校の便所の整備も、予算的には十分可能な措置が講じてあると申し上げていいかと思います。ただ、実態につきましては、さらに現地に対しまして照会をしてみたいと思います。
  108. 上原康助

    上原分科員 これは早急に実態調査をやっていだきたいと思います。私のわかる限りにおいては、決して十分な補助対象になっていない。むしろPTA負担とか、各区の教育負担でやっている現状なんです。その点、早急な解決が必要だと思いますので、あらためて念を押しておきたいと思います。  次に、教職員の給与問題についてお尋ねしたいわけですが、復帰の時点で本土の給与制度に移行され、いろいろ調整がなされておると考えますが、ただ、その中で一点だけ、いわゆる一九五四年に沖繩の教職員の給与制度が確立をされたわけですが、それ以前から勤務しておられた方々、おもに中堅幹部以上の方々、すなわち、勤務年数の長い方々が該当者だと思うのですが、それ以前の勤務年数や学歴に対応する適正な位置づけがなされなかったがために、給与の格づけあるいは実際給与の面において低く押えられている、そういう不合理な面があるということを聞いております。これは今日までいろいろ琉政側とも、教組なりあるいは高教組なりが交渉もしたようですが、なかなか予算上の問題等もありまして、解決を見ないまま現在に至っているわけです。  そこで、本土の給与制度に移行するにあたって、こういった給与のでこぼこ、不合理な点を是正すべきだと思うのですが、この点について、御検討なりあるいはまた何かお考えがありましたらお聞かせをいただきたいし、ぜひこのでこぼこを本土の給与制度に移行するにあたって是正してもらいたいということを含めて、お尋ねしておきたいと思うのです。
  109. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 ただいま先生が御指摘になりましたようなことは、私どもも一般的には伺っておりますけれども、個々の問題といたしましてどういう問題があるのか、こういう点につきましては、これから具体的に検討してまいりたいというふうに考えているわけでございます。  なお給与制度の問題は、これは公務員全般に通ずるところがございまして、教員だけ取り出しましてやるということはなかなかむずかしい問題がございます。これは先生も御案内のとおり、一ドルをどういうふうに換算するとか、いろいろなむずかしい問題もございまして、そういう点から考えまして、私どもは、公務員全般の問題としてまずとらえる必要があると思いますので、政府全体としましてその点は十分今後具体的に検討してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  110. 上原康助

    上原分科員 いまの御答弁は、一応前提としてのことですが、特に教職員に関係のあることですから、また、公務員全般の給与をきめていく手順等もわかってはおりますが、沖繩の現地の教職にあられる方々の強い要求でもありますので、文部省としてぜひ前向きの配慮をやっていただきたいと思います。  それと勧奨退職者の処遇の件なんですが、六十歳以上の方々が二百二十人余り現在おられる。これは予算問題で今日まで片づかずに、最近琉球政府の行政主席が総理府なりあるいは文部省とも御折衝なさったかとも思うのですが、九十五人しか予算化できなかったというようなこと等があって、たいへん大きな問題になっておるわけです。ぜひ早急に、これらの勧奨退職者の処遇についても復帰時点でやはり解決すべき問題じゃなかろうかと思うのです。なぜ該当者全員の予算化ができないのか、またこれについてどうお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  111. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 これは、私どもは、琉球政府から要求のございましたものは全部予算化したつもりでございます。実は、いま先生からそういう御指摘がございまして、たいへん驚いているのでございますが、過去二年間にわたりまして、この問題につきましては、私どもおっしゃるとおりの金額を予算化したつもりでございまして、具体的にそういう問題がもしございますとすれば、それは、私どもは、希望によって、勧奨退職ではなくて年限を延ばして普通退職にするというふうなことしか考えられないわけでございますが、この点、ただいま先生からお話しございましてちょっとびっくりしているわけでございまして、なお調べてみたいというふうに考えております。
  112. 上原康助

    上原分科員 ぜひこれは調査していただきたいと思うのです。予算化は十分されていないということで、希望退職者の四月の人事異動にも支障を来たしているという、こういう強い要望があって、私もこの問題を提起をしていますので、いま一度確かめていただきたいと思うのです。  あとたくさんあるのですが、第四分科会とも関連していますので、簡潔にお伺いしますが、もう  一点は、私立学校教職員共済組合の点なんですが、これは中身にいろいろ問題があるということは理解いたします。しかし、今回の特別措置法でとられた措置等を見ました場合に、公立学校との差があまりにも出るということ、そしてまた、本土の私立共済組合法に基づいて沖繩の私立関係の教職員がその恩恵に浴せなかったということは、ただ制度の違いというより、あるいは法律の適用云々というよりも、施政権が分離されておったがゆえにいろいろ問題が出たということも主張できるかと思うのです。  そこで、私立学校の教職員に対しての共済制度について、もっと何らか特別な御配慮によって恩恵が受けられるように、その制度の恩典というものが受けられるような方途というものを講じていただきたいと思うのです。公立学校にたとえば二十年つとめたら、退職後、本俸の約四〇%恩給を受けられるものが、私立の場合、今回の特別措置においては、同じ二十年つとめても二六・五%にしかならない。このことは、あまりにも私立と公立というだけで、それぞれの教職にある方々の老後の問題とかいろんな面で支障を来たしますので、これに対してぜひ再検討をやっていただきたいということを要望したいわけですが、文部省としてはどうお考えなのか、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  113. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 沖繩の私学共済の過去期間の取り扱いでございますが、御承知のとおり、沖繩におきまして私立学校の教職員が年金制度の適用を受けましたのが、四十五年の一月一日の沖繩における厚生年金制度が実施されてから後のことでございまして、その前の期間におきましては、全くこの種の制度がなかったわけであります。通常の場合でございますと、この共済組合というのは、掛け金を負担した者に対して給付を行なうということが大原則のわけでございますが、ただいま先生からもお話がございましたような沖繩の特殊事情にかんがみまして、四十五年一月一日以前、二十九年一月一日以後——二十九年の一月一日は、本土におきまして私立学校教職員共済組合法が施行された日でございますが、その日以後四十五年一月一日までの間は、沖繩の私立学校の教職員の方々は、学校法人も含めまして一切掛け金を負担をいたしていないわけでございます。先ほど申し上げました原則からするならば、この期間は完全に除外されるのが通例でございますが、沖繩の先ほどお話がございましたような特殊事情を考慮いたしまして、この期間は控除期間とするというふうな考え方をとっておりまして、近くそうした方向で政令が定められることになる予定でございます。  なぜ一〇〇%認めないで、こうした控除期間ということで、通常の給付率、この間は二十年未満が六十分の一、二十年をこえる期間が九十分の一というのが通常の率でございますが、これを二十年未満につきましては百二十分の一・一、二十年をこえる期間につきましては百八十分の一・一といたしましたかと申しますと、これは本人の掛け金分だけを控除いたしまして、学校法人の負担分につきましては、掛け金が納付されていなかったにもかかわらず、これを控除期間として組合員期間に算入し、かつまた給付もそういった率で計算をするという扱いにすることにしておるわけでございまして、通常ならばいわば全くゼロになるべきところを、特殊事情にかんがみましてこの種の取り扱いを講じておるわけでございます。これは本土の場合におきますと、掛け金を納付していなかった期間は全くゼロでございますが、沖繩につきましては特別にこうした措置が行なわれたということは、沖繩の特殊事情考えての上のことでございまして、これ以上の特例措置というものは、現在のところ考えられておりません。  なお、公立学校との格差の問題がございますが、これは確かに御指摘のような実態があるかと思いますが、これはいわば制度の基本が違うわけでございまして、にわかに比較することもいかがかと思います。同じような事情は、本土の私立学校職員と国公立学校職員との間にもある問題でございまして、沖繩だけの問題ではないというふうに私ども理解をいたしております。
  114. 上原康助

    上原分科員 時間がございませんので、最後に大臣にお尋ねしたいわけですが、沖繩の教育委員制度の問題についてこれまでたびたびお尋ねをしましたが、私たちは、あくまで公選制を持続すべきだという見解で、いろいろな要求なり主張をしてきましたが、なかなか意見がかみ合わない。特別措置法その他の諸準備においても、本土法を適用するという前提でいま進めておられます。しかし、異民族の支配下にあって、日本国民としての教育を守り、教育基本法にのっとった教育行政あるいは組織というものを今日まで堅持してきた。この問題は、ただ本土並みということで片づけられる問題ではないということ、この点、私はあらためてこの場でも指摘をしておきたいし、ぜひ再検討をすることを強く要求をしておきたいと思うのです。これについてどうお考えなのか。  それといま一つは、基地の被害からの教育環境の整備の問題ですが、あるいは爆音被害の問題、あるいは米軍人、軍属の不正行為による青少年へのいろいろな悪影響、そういった問題を含めて、文部省としても、もっと積極的に復帰後の対策というものを立てるべきだと私は思うのです。たとえば、きょうは時間がありませんからさっと触れておきますが、基地周辺の教育環境の整備にあたっては、防衛施設庁が、やれ公民館をつくるとか、やれ体育館をつくってあげるんだというような宣撫工作でやっている。これはまさしく文部省のやるべき仕事だと私は思うのです。こういう政府の姿勢に対して、一体文部大臣としてはどうお考えなのか。また、今後、最初に申し上げた、伸びていく本土のテンポに見合うような教育格差是正というものをやっていくために、大臣としてどのように取っ組んでいかれるのか、最後にお尋ねをして、私の質問を終えたいと思うのです。
  115. 高見三郎

    高見国務大臣 教育委員の制度につきましては、沖繩国会中にたびたびお答えを申し上げたとおりであります。沖繩の教職員会の皆さんが、日本人としての教育を守るという立場に立って、あの激しい弾圧の中で教育基本法をおつくりになった、しかも、日本教育基本法にはありませんけれども日本人としての教育をやるんだということをはっきりおうたいになった、この勇気には私は敬服をいたしております。よくこそ守っていただいたと思っておるのであります。ただ、教育行政の制度というものは、一国の制度というものは、できる限り同じ形のものであることが望ましいと思うのであります。沖繩が本土へ復帰いたしまするこの機会に、教育委員の制度も本土並みになるということが望ましい姿ではないかというのが政府の基本的な考え方であります。これはひとつ御理解をいただきたいと思います。  それからもう一つ、公害の問題でありますが、なぜ施設庁にまかせておくのか——私どもは、教育施設につきましては、これは文部省の責任であります。ただ、加害者がはっきりしている、自衛隊の飛行機の騒音だという場合には、加害者が賠償するのが当然だ、また、そうさせることが加害者側に自粛させる意味でもある、かように考えておりますので、施設庁のほうへこの点を強く要求をいたしております。  それから、公民館をつくってやるとかいうようなことは、これは私ども文部省が当然やるべきことであります。見返りにこうしてやるとか、ああしてやるとかいう問題には、皆さんお乗りにならないほうがよろしい。必要があるならば、文部省が、体育館でありましょうとも、公民館でありましょうとも、文部省の予算でつくるのがあたりまえだ、かように考えております。この点は御了承をいただきたいと思います。
  116. 森田重次郎

    森田主査 次に、沖本泰幸君。
  117. 沖本泰幸

    ○沖本分科員 私は、時間をちょうだいいたしまして、同和問題につきまして、大臣並びに関係の方々にお伺いしたいと思います。  同和対策特別措置法が四十四年七月にできましてから、もう数年になります。しかし、全然進んでいないということではないわけですが、それぞれ毎年予算は組み立てられておるわけですけれども、そういう中にありまして、この同和問題をとらえていく立場から、文部省の果たす役割りというものは、非常に高い役割りを持っていらっしゃる、こういうことになると私は考えるわけでございます。しかし、この特別措置法ができましてから、問題がまたいろいろな方向に分かれていっているということでございます。この法律のできた趣旨と精神というものは、十年間で差別というものを一切なくしていこう、こういうことが発想の根本だったわけで、佐藤総理も、長年かかってこの問題を解決しようとして、全党一致でこの法律ができたことは望ましいことで、今後この法律の完全実施に力を入れるというようなことであり、十二項目に分かれた附帯決議もついてきておるわけですし、それぞれの大臣が十二項目の附帯決議に対してお答えになっていらっしゃるわけです。  しかしながら、現状から見ますと、はたしてこの問題が十年で解決できるのであろうか、こういうことを考えますと、非常に憂いを持ってくる。また、この法律ができたあとで拾い上げられる諸問題を見ますときに、はたしてこれでいいのだろうかというふうな考えに行き当たるわけです。そういうところから、現状としましては、大臣が十分御承知のとおりに、法律はできた、しかし裏づけがないために、各地方自治体では、この問題の消化のために非常なしわ寄せがきて、たいへんな問題が起きてきておる、これが事実なんです。特に、教育面におきましては、担当の教師学校あるいは教育委員会あるいはそこの自治体、こういうところで、いろいろな問題をかもし出してきている。  こういうことをお考えになっていくと、私は、同和対策に対して文部省の果たす役割りが非常に重大であると考えます。と同時に、長い間言い続けられてきました、総理府が同和問題の実態調査をやる、その実態調査を待って各省が具体的な案をつくる、その具体案も、この同和対策特別措置法と並べながら具体的な計画なり方針なりを策定していく、こういうこともいわれておったわけなんです。現状としていまどういうところにあるのか。  それから、大臣にお伺いしたいのは、十年ではたしてこの問題が解決できるのだろうか、こういう点につきまして、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  118. 高見三郎

    高見国務大臣 これは沖本さん、私よりはあなたのほうがよっぽどお詳しいだろうと思いますが、同和基本法をつくりましたときに、この問題は一朝一夕に解決するものではないけれども、しかし十年間でこうしたいということをうたってございます。  私どもは、私ども日本民族の一番の恥辱は、ゆえなくして差別の待遇を受けておる人たちがおるというこの現実の事態を、これは謙虚に、真剣に考えなければならぬ問題だと、しっかり受けとめておるつもりでおります。  教育の面におきましても、この問題はもとより最も大事な問題の一つとして取り上げなければならないと思うわけでありまして、総理府所管になっておりますけれども、文部省は、教育の面におきましてこの問題と真剣に取り組んでおる、また取り組もうとしておるということだけは御理解をいただきたいと思います。
  119. 沖本泰幸

    ○沖本分科員 そこで、大臣の御在席の間によくお聞きになっておいていただきたいと思うことがありますので、その点だけを先に拾って申し上げたいわけです。  これは先ほど厚生省のときにも申し上げたのですが、解放同盟から「解放新聞」というのが出ております。その中に書いてある記事なんですが、「部落差別はない、ねてる子を起すようなことをするな、というひとびとは、今日かなりすくなくなったようだが、まだまだ根強く残っている。部落問題についてあるていどの認識と同情をもっている場合でも、そんなに深刻な問題であるとは考えていないひとびとが沢山いる。しかし、ここに特集した数々の差別の事実は、部落差別の深刻さと悲惨さをひとびとに問いかけその再認識を要求している。むかしむかし、こんな差別がありました、というのではない。人間衛星が飛び国の経済が世界第二位、外貨保有百五〇億ドル突破という現在のわれわれのまわりにおこって、……部落解放を国民的課題として、全国民に正しくうけとめていただくために、なまなましい事実を特集した。」こういうことなんですが、この解放同盟の運動、「われわれの運動は、まさに部落差別からの完全解放を目的としているのであって、いくら部落の環境がよくなり、きれいな浴場や住宅ができても、それだけでは差別意識は自動的になくなるわけではない。生活、経済めんでのたたかいは、同時に差別意識とのたたかいとがむすびあわされなければならない。このためには、部落差別の本質をしっかりつかむこと、そして、部落民がおかれている社会的立場を正しく自覚することがたいせつである。差別とはなにか、どんな差別が現実にあるのか、それはどうしてうまれてくるのか、こうしたことをしんけんに考えることがひつようである。具体的な差別の事実を、みんなで考えほりさげて、おたがいの理論的意識水準をひきあげること、そして差別にたいする理性的な怒りをもやすこと、このために努力しよう。」こういうふうな記事があるわけです。  したがいまして、各省ともの問題になるわけですけれども、まず、部落の本質というものを、担当なさる方々が握っていただかなければならない。ただ単に同和対策特別措置法という法律があって、その法律のために予算を執行しなければならない、あるいは予算面に盛られたものをいろいろと具体的に消化していかなければならないということだけにとどまらないわけですね。予算を組む方々あるいはこの問題についていろいろ関係していらっしゃる方々が、いま言ったような問題の本質というものを握ってからでないと問題は解決していかないということになるわけです。  そういうことで、たとえて言いますと、部落のある地域で一つの講堂ができた、あるいは体育館ができた、これは同和対策特別措置法に従ってその地域にできた。ところが、それと隣接するところの他の地域では体育館がうまくいっていない、講堂もできていないというようなことになると、直ちにその隣のほうから、あそこだけどうしてよくなるんだ、こういうふうな逆の面からの差別が起きてき出す。なぜあいつらだけ恵まれるんだ、おれたちは恵まれない、私たちの子供はよくならないじゃないか、こういう問題もいま盛んに起きてきておるわけです。そして、そのよくなったほうをとらえてまた下へ引きずり落とすようないろんな言動があるわけですね。その辺にも、いろいろ問題が出てきておるわけです。  ですから、解放同盟の方々も言っておりますし、私たちも当然ではないかと考えられるわけですけれども、たとえば、りっぱな体育館なり講堂ができた、その周辺がそれよりうんと劣っておるということであれば、その周辺のレベルを上げていくということによって、全国的な教育面なら教育面の低下していを問題あるいは非常に生活水準の低い社会、こういうところに対していろいろな施策が講じられていかなければ、まず物の面からの同和問題が解決してこない、こういうことになるわけです。しかし、その地方自治体としては、部落解放同盟からのいろんな要求が激しいからというようなことから、そこだけをよくしていく、その地域だけはぽっこり浮き上がってよくなっていく。また、そういうことをしてみて、はたからいろいろな批判を起こさせるというような問題も出てくるわけです。そして、ことさらに担当の地方自治体のお役人方は、結局あれはしようがないんですからとか、あれはもう要求がきついからああいうふうにしたんですとか、おっしゃるとおりですとか、こういうふうに言って、結局また差別をかき立てるような内容が非常に多くなってきておる、こういうことになるわけです。  ですから、一面は、その同和教育という問題を一つのラインにしていただいて、そこにいろんなライン以下の人たちを浮き上がらせていく。たとえば、教育問題なら教育問題にしても、結局非常に学力の低い、水準の低い子供をレベルアップしていかなければならない。ところが、実際にやっているところは、上を押えて下のラインにみんな持ってきてレベルを低くしていっている。そういうことによって、かえってまた担当する教師の方に変な考え方が出てきたり、あるいは周囲の子供を持つ父兄の方々の中から、あそこの学校へ入れるのは困るんだとかなんとかというような問題もいろいろ出てきておるわけです。  そういう問題は、やはりこの差別問題を解決するという観点に立って、それで同和地域の方々あるいは隣接する周辺の方々、そういう問題をとらえていろいろな考えを持つ方々が、むしろそういうところから差別感をなくしていくような方向に変わっていってもらわなければ、これはとうてい解決する問題ではない、こういうふうに考えるわけです。非常にむずかしいような問題を大臣に提起しておるわけですけれども、やはりそういうところに立っていただかなければならないわけなんです。  そこで、こういう問題を今後大臣として、解決するにはどういう点に力を入れてお取り組みになっていかれるか。特別措置法もありますし、それとからみながら、この差別に対する教育方針というものについて、今後大臣はどういうお考えでいらっしゃるか、それをお伺いしたいと思います。
  120. 高見三郎

    高見国務大臣 これは私は、日本民族のほんとうの恥部だと思っております。ゆえなき差別、これぐらい不条理なことはございません。したがって、特別措置法で物の面だけめんどうを見ればそれで片づくという問題じゃないと私は思う。問題は、これは日本民族の非常な恥だという認識に立たなければ、この問題は解決はしない。問題は、精神面の問題が非常に大切であろうと思う。たとえば、一つ解放部落の施設が非常によくなりますと、お説のように必ず横やりが入ります。横やりが入るということは、すでに差別しておるということなんですね。これをまず私ども日本人全体が認識し反省するのでなければ、法律、制度で解決できる問題ではないと私は思う。私ども教育の仕事に携わっている者にとって一番大事な問題は、同じ日本民族がゆえなき差別を受けておる人がおるという事実をまず率直に認めて、これは日本の恥だという認識に立たなければ、この問題は解決しない。だから、物資面でめんどうを見てあげることはもちろん大切でありまするけれども、一番大事な問題は精神面の問題だろうという感じがいたしておるのであります。
  121. 沖本泰幸

    ○沖本分科員 大臣としてはごりっぱな御意見をおっしゃっていただいたわけでございますが、先ほど上原議員が、特に沖繩の問題を基本にしていろいろ御質問をしていらっしゃったわけですけれども、沖繩が悪いということではないわけであって、沖繩は百万県民、それが異国の支配下の中で苦しんできた。戦後二十数年間われわれの手元から離れて、他の民族の支配下の中でいろいろな苦しい生活をしてきたということで、明るく沖繩を迎えてあげよう、それが五月十五日だ、こういうことになっているわけです。  ところが、同和の対象の人口は、三百万とも四百万ともいわれているわけです。そして、大臣がおっしゃったとおり、同じ民族の中で、同じ民族でありながら、ゆえなく差別を受けて、明治四年に解放令が出て百年なんです。そういう歴史を持っているわけですね。ですから、解放同盟の方々が朝鮮問題をとらえて、そして朝鮮問題の中から朝鮮民族の統一を一生懸命考えるとか、あるいは沖繩を同じ差別問題の基本的な考えの中に置いて、沖繩の解放をいろいろ考えていくとか、そういうところに発想の根本もあるわけです。それがただ措置法ができたから、さっき大臣がおっしゃっているとおりに、そこの地域だけスポットを当ててみて、そのところの変な人を何とかよくしていく、やはり心の中に変なものがある、こういうことになるわけです。  そういうところですから、この解放新聞の中にもとらえておりますように、活字の中で特殊部落あるいは部落、こうとらえてみたり、あるいはお互いの階級の中で差別があってみたり、こういう問題もやはり差別の対象である、こういうふうにして部落解放同盟の人たちが立ち上がって、日本のお互いの民族の中の差別観というものを一切なくしていくために、われわれは部落民だということを胸を張って、そして国民の中で運動を展開していこう、同情なんかしてもらいたくないんだ、こういうところに根本のものがあるわけです。  ところが、こういう問題をとらえる方の大ぜいの中には、むしろ同情的な面から、もういまはそんなことを考えていませんよと、こういうふうな考え方なんですけれども、同情的なまなざしでこの問題をとらえていって、いまある現実を少しでも塗りつぶして変えてみよう、こういう程度のことに多く問題がある。  そこで一番基本になっていくのは教育であり、教育に携わる方々の姿勢である、こういうことにもなっていくわけですから、その点を十分お考えになって、大臣がおっしゃるとおり、この問題を根本的につかんでやっていただかなければならない。ですから、大学生の中に、あるいは教授の中に、あるいは大学の中に、すでに差別問題があるということは、この中にも出ております。一般社会の中にも同じ眼で問題をとらえられている問題がたくさんあるということがあるわけです。そういう点も十分とらえていただかなければならないわけですから、やはりそういうものが目に見えて実行にあらわれてくるというのは、やはり政府の行なう施策の中から出てくるわけですから、政府の基本的な施策が行なわれない限り、地方自治体としては、なかなかついて動けない、こういう事態もあるわけですし、あるいは地方自治体が担当する教育面が多分にあるわけですから、その点もからんで、今後具体的な方針をこれからまたおつくりになるのか、あるいは現在お持ちなのか、あるいは今後に向かってどういうふうな方針で教育問題の改革をおはかりになるか、こういう点についてお答えいただきたいと思います。
  122. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 教育に関する基本的な方針につきましては、すでに四十四年から私どもいろいろ着手をいたしておりますけれども、最近、同和対策協議会の第三部会でも、同和教育の基本方針に関する小委員会を設けまして、ただいま同和対策協議会としての同和教育基本方針案の作成に着手をいたしておりまして、もう間もなくでございますが、年度末までにはその方針もできるように伺っております。  私どもといたしましては、この方針に基づきまして関係各方面の御意見を聞きながら、文部省としての成案を得たいというふうに考えているわけでございます。  これは教育の基本方針に関するものでございまして、その他予算等の具体的な作成につきましては、これは御案内のとおり、長期計画に基づきまして私どもは予算を編成しているつもりでございます。まだ至らない点はあると思いますけれども、今後ともこの点につきましては努力をしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  123. 沖本泰幸

    ○沖本分科員 大臣、御用事ありましたら、あと具体的なことにひっかかっていきますから、大臣としてはやはり同じことの御発言しかないと思いますので、あとお願いしておきたいことは、積極的にお取り組みいただきたい、そういう御所見をお伺いして、御退席していただいてけっこうでございます。
  124. 高見三郎

    高見国務大臣 私は、実は水平社運動が起こりました当時に、金まで出して応援をした一人であります。したがって、この問題は、実は大正の十二、三年ごろから私個人としては真剣に取っ組んでまいりました。いま先生がおっしゃるように、これは同情をするのじゃなくて、日本民族としての怒りを感じなければならぬ問題だと私は思っております。したがって、教育政策の面におきましても、私のとるべき態度は、そういう差別観に対しては敢然と怒りをもって対処するという覚悟で臨んでおるということを御理解をいただきたいと思います。
  125. 沖本泰幸

    ○沖本分科員 それではどうぞ大臣、けっこうでございますから、よろしくお願いいたします。  それで、こまかい問題はあとでいろいろお伺いいたしますが、ただいまの御答弁のいろいろ研究に取っ組んでいるという内容として、こういう面もやはり心がけていただかなければならない、こういう問題があるわけです。「各地域では広狭深浅の差異こそあれ、あるいは差別事件の発生とそれに伴う部落からの要請を契機としてなど、発展の動機はともあれ、細々とあるいは強力に、時には継続的に、断続的に行なわれてきた。」問題だというわけですね。しかし、それに対して、「すばらしい実践の成果もあり、遅々として発展のあと見るべきものなく、十年一日のように原理原則を論じる初歩的段階に低迷している向きもある。今なお、この教育の不要をとなえる人々もあり、有害無益の言説をなす者もある。また特定の政党的イデオロギー実現のために利用しようとする者があるかと思えば、自己の立身出世の手段として利用しようとする野心家も見られる。」いろいろあると、こういうふうにおっしゃっているわけなんです。  そこで、やっぱり教育に対する基本的な問題というものを確立していただいて、そして全国の自治体なりあるいは同和問題と取っ組む教育者の方々が、その基本原則に従って明るい教育が行なわれていくような方向に基礎づくりをしていただかないと、精神面では、いま高見文部大臣がおっしゃったように、水平社運動から怒りを込めてと、中身をよくお握りになっていらっしゃるわけですけれども、そういう問題が生かされてこないということになるわけです。ですから、最初から、この問題をとらえる以上は、これにお携わりになる文部省の御担当の方が、いわゆる差別とは何ぞや、あるいは差別をなくする教育とはどういうことなんだというものをまずとらえて、そこを発想にして、それで取っ組んでいただかなければ、いろんな問題は解決しないということになってくるわけです。そしてその点を、現在も研究しているし、これから進めていこうというお考えでございますから、早くそのほうの結論を見ていただいて、それぞれの関係のほうに具体的な方針をお示しいただきたいわけです。そのために、地域によっては紛争を起こしてみたり、あるいは非常に高い水準で問題がとらえられてみたりということになるわけです。  たとえば、地方自治体がやっているところの小中学校の問題にいたしましても、先生方が盛んに研究の会合ばっかり開いてしまって具体的なものも進んでいかない。あるいはむしろ、同和教育を行なう、こういうふうに言って、レベルがどんどんどんどん低下していっているというところがあるわけです。そのために、上のほうの学校を受ける段階になって、平均点が非常に低下してしまうというところもあれば、今度は、一番低い水準の生徒のレベルアップをはかっていってそれで高い水準の人たちのレベルまで持っていく、こういう内容に取っ組んだために受験率、合格率がうんと上がってきた、こういうところもあるわけですね。それが小さな範囲内の一つの府県の中でも、千差万別に問題が出てきている。こういう点をお調べになっていらっしゃると思いますけれども、そういうところにいろいろ問題があるわけです。その点をよくとらえていただかなければ解決しない、こういうふうにも考えるわけですね。これは教育面です。  あとは予算面で考えていただかなければならないわけですけれども、今年度と昨年度との予算面で、文部省としてはどのような進展を見ていらっしゃるか、その辺をお答え願いたいと思います。
  126. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 本年度と来年度の予算案の比較をいたしますと、全体といたしまして二億六千三百万ばかりの増加を見ているわけでございます。四十六年度の予算額は五億五百五十五万三千円、それに対しまして四十七年度の予算案は七億六千八百八十二万八千円ということでございまして、そのうちの増加のおもなものは、高等学校の進学奨励費の補助、これが一億七千九百万ばかりふえております。内容としましては、高等学校、高専への進学奨励の対象人員が、二万人から二万八百人にふえた。それから、月額二千円が三千円にふえたというふうなところが大きな問題でございますが、そのほかに、社会教育関係としましては、集会所の指導事業の経費が三千二百七十万ばかりふえております。それから同和対策集会所の整備費、これが四千六百六十四万ばかりふえております。社会教育全般としましては八千四百万程度ふえておる。初等中等教育関係につきましては、就学奨励費の補助が一億八千万程度ふえておるというのがおもな内容でございます。
  127. 沖本泰幸

    ○沖本分科員 予算面では二億六千万ほどふえたということなんですが、先ほど申し上げましたとおり、ここの地域だけと限ってやると、そこのところだけぽこっとスポットが当たったようになってしまうわけですね。それに伴う周辺の、逆にそれを考えないようにするためのいろいろな施策が必要になってくるわけです。そうなってくると、予算は膨大になってくるわけですけれども、といって、その予算というものは特別にそういうことで要るということでなくて、当然行なわなければならない予算でもあるわけなんですね。ですから、その辺の考え方をひとつまとめていただかなければならないということになります。ですから、同和地域に対しての対策はこういうふうになるけれども、その周辺をやはりある程度片づけていかなければ、逆にそこの施設がよくなった、学校がよくなったということによって問題がいろいろ起きてくる、こういうことになるわけですから、その辺も、ひとつ今後、予算のつくり方についてお考えを変えていただかなければならない、こういうふうに考えます。  それからさらに、やはり実態調査をしていただいた上で、同和に対する、十年間なら十年間でこの問題を解決するにはこれこれしかじかの予算が要るだろう、それに対して年次別にこれくらい予算が要る、しかし実際はこのくらいしか予算は獲得できなかった、だから積算的にあとにだんだんだんだん予算の実施できなかった面が残っていく、こういう面がやはりきれいにわかっていかないと、いたずらに紛争をかき立てるばかりであり、また目標もつかない、こういうことになるんじゃないかというふうに考えます。  たとえて言いますと、アジア人の非常にまずい面ですけれども、家を建てるにしましても、家を建ててから道路をつくり、下水をつくっていく。こういうことのために、道路幅がなかったり、あるいはあとから道を掘り返して下水をつくっていくから、まだ下水がないから、どこかで下水は一ぺんにたまってしまったり、そういうふうなのが特に日本の特徴でもあるわけです。ヨーロッパの先進国になりますと、先に道路をつくり、下水をつくり、区画をきちっと立てて、その上で家を建てていくから、きちっとした区画整理されたものができてくるわけですね。そういうふうに、やはりこういう問題に対しても整理された計画というものが必要ではないか、こういうふうに考えるわけです。いろいろ要求されるから、こっちに手をつけあっちに手をつけ、つけてみたところが、まるでメリケン粉を練って手にくっつけてみたようなかっこうになってどうしようもないということで十年終わったのでは、これは結局もとのもくあみというようなことになってしまいますから、その点を十分御配慮いただきたいと思うのですが、今後に対してそういうふうな御計画をお考えかどうか、それを伺いたいと思います。
  128. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 ただいま御指摘いただきましたことは、まことにごもっともなことだと思います。先ほど御指摘になりました総理府の調査でございますが、これは聞くところによりますと、ただいま集計中だということでございまして、もし来年度予算にこれが利用できるような場合には、ただいま仰せのような観点に立ちまして予算の要求をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、その同和地区ばかりでなくて周辺地区にも目を配れというふうな、たいへん適切なお話がございました。私ども、そういう点につきましても十分心がけまして、まわりの地区が均衡が破れるというふうなことのないように、今後気をつけてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  129. 沖本泰幸

    ○沖本分科員 ぜひともそういうふうにしていただきたいと思うのですが、農林省のほうで御質問したときは、もう総理府のほうの実態調査に従っていま準備を進めておる、こういうことなんですが、その辺いかがですか。
  130. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 私、まだ総理府の調査の結果を見ておりませんから、おそらく整理検討中であろうと思います。それが正しい見方じゃないかというふうに考えます。
  131. 沖本泰幸

    ○沖本分科員 これに対しましては、二段がまえになると思うのですね。第一段は、やはり解放同盟が盛んに同対審の完全実施ということをおっしゃっているわけですね。同対審が一応調査をして、審議会で意見をまとめて答申をしている、その中に具体的に諸問題というものをとらえられているわけです。それを基礎にして、それが完全実施されていくような方向に持っていってもらいたいということですし、それを受けて総理府が実態調査を始めているということであり、その実態調査というのは、十年の時限立法の同和対策事業特別措置法に従って実態調査をやっているということなんですから、これもそんなにひまがかかってもらっては困るということになるわけです。そういうものをできるだけ今年じゅうの早い時期に、具体的な同和に関する教育方針なり何なりをお組みいただきたい、具体的な方針を発表していただく段階に持っていっていただきたい、こう考えますけれども、その点いかがですか。
  132. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 たいへんごもっともなことでございまして、やはり基本方針がなければ具体的な教育というものは進められない、そういう観点から、私ども、先ほど申し上げましたように、鋭意その成案を得ることにただいま努力中でございます。だいぶ煮詰まってまいりましたので、間もなく御期待に沿えるのじゃないかというふうに考えております。
  133. 沖本泰幸

    ○沖本分科員 それで、具体的なものを進めていく中に、非常に示唆に富んだことを各地方自治体から要望があるわけですね。その中で、同和地区を有する小中学校の学級編制基準を三十名に引き下げて、必要な教職員の配備をはかってもらいたい。こういう問題は、教育の基本原則に問題がかかってくるということになり、教師の数、あるいは教室の問題、こういうことで非常に問題点は多いけれども、これを契機にして、こういう方向に学級編制なんかをお考えにならないかという点にあるわけです。  それから幼稚園、小中学校の用地取得及び施設整備並びに教材教具の充実に対して特別の財政措置、あるいは同和教育推進手当として特別の手当を認めてほしい、あるいは研究費として月額五千円を支給されたい、こういうふうな、内容は基本的なことになってくるわけです。これをやりますと、全国の同和対策の教育をなさる先生方が差別的な考えをお持ちになったりするということがなくて、より研究に励んでいただき、教育にも力を入れていただく、こういうことになるわけです。  それと同時に、同和教育を推進するために、教職員及び教育行政に携わる職員を対象として、正しい同和教育理解と認識を深めるため、指導者養成対策を強力に推進してもらいたい、これは全くもっともなことになるわけでもありますし、社会教育主事講習会の必須科目の中に同和教育を一単位以上設けていただきたいし、大学に同和教育に関する講座も設けてもらいたい、こういうふうなことを全国の市町村の代表の方々の中で要望していらっしゃるわけです。  まだたくさんありますけれども、以上のような点についてはいかがでございますか。
  134. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 社会教育の面につきましては担当局長が参っておりますので、学級編制の問題についてお答えをいたしますが、学級編制は現在全国的に同一の基準でもってやっておりまして、この基準を変えるということはなかなかむずかしいと思います。しかしながら、同和地区の学校に対しましては、特別に教育困難ということで教員の配当を別にいたしておりますので、具体的にどういう形態で授業をやるかということは、これは個々の学校にまかされているわけでございますから、その学校事情によりまして運営されていかれればそれはいいことじゃないかというふうに考えておるわけでございます。  そのほかに施設設備の点につきましてお話がございました。それからさらに研修の問題につきましても御示唆がございましたけれども、こういう問題は、私どもとしましても別に異議のあることではございませんから、強力にこれを推進するということでまいりたいと思います。  なお、手当の問題につきましては、これは文部省だけの問題ではございませんで、人事院等、給与の問題につきましては他に責任のある官庁もございますので、これは私どもだけでお答えするというわけにはちょっとまいらないわけでございます。
  135. 今村武俊

    ○今村政府委員 社会教育主事の講習会の内容として同和教育を入れるようにという御希望について言及がございましたが、社会教育そのものが学校教育と非常に違います点は、個人の自発性を尊重するとか、地域の特殊性を尊重するとかといったことで、初等中等教育関係の学習指導要領に匹敵するようなものを持たないというのが、社会教育一つの特色でございます。したがいまして、同和教育のことを特に国が社会教育主事の社会教育内容の一つとして限定するという判断をすることは、現在非常にむずかしいのでございますが、具体的な例をとって言いますと、たとえば今年度の例でございますが、十一の大学社会教育主事の資格を付与するための講習会を行なっておりますが、そのうち四つの大学で、特別講義として同和教育の問題を取り上げておるような実情でございます。したがいまして、地域の関連の非常に深いところ、関係の多いところでは、それぞれの地域の実態を考慮しながら、同和教育の問題も社会教育主事の養成資格付与の条件の一つに入っておる、かような現状でございます。
  136. 沖本泰幸

    ○沖本分科員 さらに、進学奨励費給付制度の充実強化をはかってもらいたいという中に、高等学校就学奨励金の給付額を上げて、対象人員をふやしてもらいたい、さらに入学仕度金給付制度を新しく設けて、小学校、中学校、高校生、大学生、それぞれにそれぞれの費目を設けてもらいたい、この要望は四十六年度に対する要望を私、持ってきたわけなんですが、その中でまだこれは実施されてないわけですから、同じことが言えるのじゃないか、こう思いますけれども、小学校で一万円、中学校で一万五千円、高校で二万円、大学で三万円、こういう基準をつくって、これは地方自治体から言っていらっしゃるわけです。     〔主査退席、大村主査代理着席〕  それから大学就学奨励費の給付制度を新設して、給付額を月額八千円、こういうふうにしてもらいたい、それから同和教育指定校のワクを広げて、金額とワクを広げてもらいたい、こういうふうな内容もありますけれども、この問題についてはいかがでございますか。
  137. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 高等学校の進学奨励費につきましては、先ほど申し上げましたように、ただいま御審議をいただいております来年度予算におきまして、人数、金額ともに増加をすることにいたしたわけでございます。  小、中、高等学校入学仕度金という問題は、まだ私ども具体的に取り上げておりません。この点につきましては今後検討をさしていただきたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、大学生に対する進学奨励費というのは、これは私ども、この二、三年予算の要求をしてまいりましたけれども、まだ実現をいたしておりません。この点につきましても、さらに努力してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  138. 沖本泰幸

    ○沖本分科員 これは社会問題として文部省にはあまり関係はないわけですけれども、やっぱり指導要領の一つとしてお考えいただきたいことは、私は実際に当たった面でもあるわけなんですが、中学校を出て就職の問題が出てきました。そこで、一流会社に就職がきまったというところで、同和地域の出身者が一流の工場につとめられるようになったということで、先生も本人も非常に喜んだわけです。ところが、その両親が生活保護を受けておったということのために、寄宿舎に住むことができなくて、結局自宅から通うことになったら、天引きで生活費の中から、本人の収入から引かれるようになってしまった。こういうふうな問題が実際にあるわけです。その辺にやっぱり差別問題を何とも考えていないという一つ社会があるわけですね。これはやっぱり生活保護を受けていく世帯の中に同種の問題、同和地域の人でないような問題もありますけれども、やっぱりこの辺は文部省としても卒業していく人たちの就職あるいは生活の立場というものをとらえながら、同時に、あまり差別がここらで起きてこない、こういう点をよくとらえていただきたい。今後そういう面も横の連絡をとりながら、実際にこういう問題が起きないような、いろいろな指導もはかっていっていただきたい。こういうふうに具体的に一つ一つ解決していくことが大事だと私は考えるわけです。  したがいまして、その三十人の学級にいたしましても、新しい教育制度を始めるという立場にお立ちになっていただいて、この問題をとらえて、たとえばこの同和地域で三十人学級をテストケースとしてやってみるというのも一つ考え方ではないかと思うわけです。それでうまく成功して、よければ全国にこの問題を広げてみる、こういう行き方がいいのではないかということですね。あながち、同和対策問題で要求があるから、ただそれを同和対策問題として頭の中でとらえていくということでない考え方社会一般に通じる問題としてレベルを上げていくという考えの中から発想をしていっていただきたい、こういうふうに考えるわけです。いま申し上げた点についてのお考えを伺いたいと思います。
  139. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 ただいま仰せになりましたことはまことにごもっともだと思いますけれども、学級編制につきましては、ただいまは四十五人が最高でございまして、全国平均で申しますと、小学校の場合は三十三人、中学校の場合は三十七人、三十人あるいはそれ以下のクラスというのはたくさんございます。したがいまして、これは一つの基準でございますから、具体的な問題としましては、やはり特別な修学、学業困難な地域につきましては、特別な教員を加配をいたしまして、その中の授業形態として具体的に処理をしていただくというのが、ただいまの基準のもとでは私は妥当な方法じゃないかというふうに考えておるわけでございます。これは個々の場合でずいぶん問題が違いますものでございますから、その点はひとつ御了解いただきたいと思います。
  140. 沖本泰幸

    ○沖本分科員 それでは、もうあと締めくくりますが、この差別問題につきましては、文部省の置かれている立場が非常に重要なわけなんです。ですから、学校教育あるいは社会教育両方の面に立ってそれを担当される方々からもう一度その問題把握を考えていただいて、そこから発想をし、やっていくということをしていただきたい。早急にその具体策をお立てになって、新しい基本的なものを示していただいて、教育の改革をはかっていただく、こういう方向でお願いしたいことを要求いたしまして、私の質問を終わります。
  141. 大村襄治

    ○大村主査代理 斉藤正男君。
  142. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 最初に文化庁に伺いますが、いわゆる文化財白書なるものを文化庁が出しておられると思いますけれども、「文化財保護の現状と問題点」なる白書に、静岡県浜松市の伊場遺跡について論評されていると思いますが、最も新しい白書の中で静岡県浜松市伊場遺跡についてどういうふうに書いておられるか、ちょっと読んでいただきたいと思います。
  143. 安達健二

    ○安達政府委員 昨年文化財保護法施行二十周年を迎えましたので、その機会に「文化財保護の現状と問題」ということで、現状と問題点をまとめたものを発刊いたしました。その中でいわば付録といたしまして、「開発等により最近問題となった主な史跡および埋蔵文化財包蔵地一覧」というのがございまして、その埋蔵文化財包蔵地の中で伊場遺跡、静岡県浜松市伊場のことにつきまして「問題点」と「処理」というのが書かれてございます。  「問題点」といたしましては、「国鉄浜松貨物駅を移転し、現東海道線を高架化することにより、浜松駅を中心とした都市改造案が出され、昭和四十三年二月電車区、機関区の移転先用地として伊場遺跡を含む一帯の市有地を予定した。このため市教委は予備調査に入った。本遺跡は県の指定物件であるが、本事業は静岡県の発展にかかる大事業であり、そのためには伊場遺跡の破壊もやむを得ないが、その代り、調査には万全を期す、指定地の現状変更を行なうという措置をとった。」「処理」といたしまして、「市教委は『浜松市遺跡調査会』を組織し、昭和四十四年六月から事前調査を開始した。しかし静岡県考古学会、学生らによる伊場遺跡保存運動がおこり調査不能になった。事態を重視した市教委は、遺跡の学問的不明確な点を解明するための調査であり、その調査結果に基づいて保存を考慮するという声明を出し、(文化庁の指導による)、目下、学術調査を継続中である。」こういうわけでございます。
  144. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 その文化庁設置二十周年記念号として出されたいわゆる文化財白書に盛られているいまの文言と、その後二次、三次、四次と調査が進んで、昨年末で第四次の調査が終わっている段階でありますけれども、今日なお文化庁としては、その白書に盛られたと同じような評価を伊場遺跡についてされているのかどうなのか、その点を伺いたい。
  145. 安達健二

    ○安達政府委員 ただいま御指摘のように、四十六年、昨年の六月から四十七年の二月、ことしの二月にかけまして第四次の調査が行なわれまして、その第四次調査の結果、斉藤忠元東大教授が団長となってやられました調査でございますが、現在その現場での残務整理を行なっているわけでございます。  この四次までの調査によりますと、東のほうの弥生時代の住居あと、集落あとは、その範囲等はほぼ明確になったと思われるのでございます。なお、ただ遺構の保存状況があまり良好ではないというのが状況でございます。ただ、現在問題視されておりますのは、西のほうの奈良時代を中心とするところの建物遺構あるいはみぞ等が出てまいりまして、また木簡等が出土いたしたわけでございます。そのところで、これが奈良時代の郡衙、地方の郡衙のあとではないかということにつきまして、そういうのを積極的に肯定する考えもございますが、なおまだ問題があるという考え方、二つございます。  少なくとも共通した意見では、これが民家のあとではなくて役所の建物のあとである、ただし、それが現在のところでは、中心的な役所の建物のあとではなくて、いわば付属施設的な役所の建物のあとではないかということでございました。そうすると、その役所の建物のあとの中心地はむしろもう少し西のほうにあるのではないか。そういうことからいたしまして、やはりもう一度これについて、もう少し西のほうを調査する必要がある。こういうのが、大体第四次調査に基づくところの懇談会での考え方のようでございます。  で、市のほうにおかれましても、こういう懇談会の研究の結果等を考えられまして、第五次の調査を西のほうについてやるというような計画もあるやに聞いておるわけでございます。したがいまして、文化庁といたしましては、この懇談会がこの第五次調査の結果等を考えて、それに基づいた見解が出されると思いますので、その段階において文化庁としての判断をいたすべきものである、かように考えておるわけでございます。
  146. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 私のお尋ねと若干ずれておりまして、この「文化財保護の現状と問題」なる文化財白書によれば、この伊場遺跡を評価をしていろいろにいっておりますけれども、問題は、破壊もやむを得ない、それから区域の変更、場合によっては史跡の取り消しといったようなものについても、指定解除もやむを得ないといわんばかりの文言になっていると思うわけでありますけれども、その後の調査で、いま次長が言われましたように、郡衙のあとではないかと思われる、そのものずばりではないけれども、付属建物のようなものが遺構として出てきている。さらに木簡その他が出土をしたという段階でも、なおその報告書に出されている認識と同じなのかどうなのか。同じですなら同じ、いやその後の調査で問題がありますならありますということでお答えを願いたいわけであります。
  147. 安達健二

    ○安達政府委員 この白書のほうは「問題点」と「処理」と二つに書いてございまして、「問題点」のほうでは、その「現状変更を行なう」云々というようなことが書いてございますが、「処理」といたしましては、「学術調査を継続中である。」こういうふうになっておるわけでございます。現在のところは、この学術調査の結果がなおまだはっきりしないので、その学術調査の結果を待って判断をする、こういうことでございますから、若干表現の上で誤解を生ずるかもしれませんけれども、根本的には学術調査の結果を待ってこの処理についての判断をする、こういうことでございます。
  148. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 やや詭弁に近いものもあると思いますけれども、その点は了承いたしました。  そこで、実は東海道線現線高架化につきましては、浜松市年来の宿願でございまして、大規模な都市改造事業がこれによって進められるわけでございますので、いまの浜松駅の施設の移転につきましては私どもも強く要望をし、その一日も早い実現を期待をいたしておるわけでありますが、問題は、ここに価値のある埋蔵文化財が現に発見をされたし、また、先ほども言われましたような、北もしくは西方への調査の進展いかんによっては郡衙のあととおぼしきものが出るかもしれないというような状態の中で、実は開発と保存の調和を那辺に求めるかという課題があって、私どもも苦しんでいるわけであります。  そこで、つい先日、都市計画地方審議会は成案を得て、県を通じ本省へその承認を求めてまいりました。近く建設省は浜松市の都市改造に伴う都市計画案なるものを承認をし、告示をするはずであります。その際、都市計画法六十一条の二号に、「事業の施行に関して行政機関の免許、許可、認可等の処分を必要とする場合においては、これらの処分があったこと又はこれらの処分がされることが確実であること。」この二つのことが満たされていなければこの承認をすることができないことになっておりますが、建設省が浜松市の都市計画を承認するにあたって、伊場遺跡のことに関して文部省、すなわち文化庁へ何かお話があったかどうか、この点をひとつお答えをいただきたいと思うわけであります。
  149. 安達健二

    ○安達政府委員 現在までのところ、まだそういう連絡を受けておりません。
  150. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 それは、今度の浜松市の都市計画案には伊場遺跡は含まれていない、除外をされている。したがって、建設省としても文部省に話をする必要はない、区域外だというようにお考えになっているからだと思います。しかし、国鉄の旧浜松駅の施設を西浜松駅へ移転をするにあたりまして、先ほど問題点のところでお話がありましたように、機関区だとか電車の施設だとかというものをつくる場所は、実はこの史跡に該当し、また、いま調査区域に該当しているところなのであります。したがいまして、直接都市計画案の地域ではないけれども、都市計画を実施するにあたっていままでの施設を移転をするには、この指定地並びに調査している区域が国鉄の完全に使えるところにならなければ移転ができない、移転ができなければ都市計画は進まないという三段がまえで、やはり直接の区域ではないけれども、当面の問題になっていることも事実なわけであります。  したがいまして、しいて言うならば、いかに大事業とはいいましても、この事業は五十万浜松市民のための事業だといってもいい。あるいは静岡県の仕事だといってもよろしいのですが、伊場遺跡の文化財の発堀調査並びに保存ということになりますと、これは単なる浜松市のことや静岡県のことではない。この史跡の実態が明らかになることによって奈良時代以降の日本の歴史が書きかえられなければならないというぐらいの価値のあるものだと言う人さえあるわけでございまして、積極的に史跡保存の立場から、遺跡保護の立場から、文部省は当然建設省なりあるいは国鉄当局と話し合うべきだ。区域外だから、直接関係ないからいいんですというのではうしろ向きではなかろうか。先方から話がないから知りませんでは済まない問題ではないかというように実は思うわけであります。しかし、地元の要望その他もございまして、お忙しいところをさっそく、過日は田中調査官が調査にお出かけをいただいたようにも聞いておるわけでございまして、積極的な前向きの姿勢を文化庁がとっていただいていることにつきましては一応了解をするものでありますけれども、しかし、それだけでは片づかない問題ではないのかというように思いますけれども、文化庁の決意のほどといいますか、考え方を伺いたい。
  151. 安達健二

    ○安達政府委員 御指摘のとおりと思います。国鉄のほうとは従来からも連絡をとって、これの問題について協議をいたしておるわけでございます。都市計画のほうとの関係につきまして、私ども直接伺っていませんでしたけれども、御指摘でございますので、さっそく建設省にも連絡をとってみたい、かように考えておるわけでございます。  私どもといたしましては、重要な遺跡についてはこれはあくまでも保存していく。そしてその遺跡の性格その他からして、また、他の公益等の関連からして、その全体的見地からして調和できるものは調和していく、こういうのがわれわれの基本方針でございます。
  152. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 率直に申し上げまして、かなり重要な史跡だということがわかっていながら、県費や国費の支出を地元が要求してこないということは、もし県費なり国費を要求することによっての調査が行なわれれば、これは国や県の力が加わってきて、浜松市ではどうにもならなくなるというような考え方も全くないわけではない。したがって、かなり膨大な調査費ですけれども、国の援助を仰がないというような形になっているのではないか。私はこれだけのものであれば、当然第五次調査以後は国が国費を出し、国の指導によって調査をしてもいいというような内容のものだと考えております。言うならば高架化事業都市改造というのは浜松市の仕事だけれども、埋蔵文化財の保護というようなことになれば、これは国の問題として当然考えていただかなければならぬ問題ではないかというように思います。どうも、都市改造を計画どおりすみやかにやりたい、それにはどれだけ金がかかろうと市費で調査をしておくほうが何かにつけぐあいがいいという、遠慮だけでない一つ考え方があるのではないか。  調査官が調査をしてお帰りをいただいて、どういう報告をされ、一体国費まで支出して調査すべきものではないというようにお考えになっているのか、あるいは今後はそういうことも考えなければならぬというようにお考えになっているのか。地元で要らぬというものをつけることはない——これは予算というのはそういうものかもしれませんけれども、前向きに、地元にはまかせておけない、国でやるんだというような考え方もあるのかどうなのか、その点いかがでございますか。
  153. 安達健二

    ○安達政府委員 市長さんは、この遺跡の保存について非常に御熱心だと伺っておるわけでございまして、従来市の費用三千万円ほど、この調査のためにお使いいただいておるわけでございます。ただ、私どもは、市町村の費用で調査をされたから、あるいは国の補助で調査が行なわれたからといって、手かげんを加えるとかそういう考えは毛頭ございません。その遺跡、史跡の性格に応じて、調査の結果守るべきものであるならばこれは守るべきであるし、またかりに国の補助でやったからといっても、その価値から見て保存を記録保存にとどめるべきものであれば記録保存にするということでございます。ただ、いまおっしゃいましたように、補助の要求が出されておらないものですから、私のほうとしてはしいて補助をしたいというほどのものはございませんけれども、これだけの膨大な調査をなさいますからして、私どものほうでは、もし御要求があれば、予算の許す限りやはりその補助もするのが本来であろうとは考えておるところでございます。
  154. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 国鉄の方いらっしゃいますか。——いま文化庁の態度は明らかになったし、また国鉄としては文化庁とも連絡をとっていただいているそうでございますが、私が過日建設省をおたずねをした際、局長にも御同席願ったわけでありますが、その後明らかになったところによりますと、図面をはずす、若干国鉄側の要求の項目ははずすような形で建設省は三月じゅうに認可するんだというようなことを非公式な場で聞いたわけであります。その点、国鉄当局としてはどのように認識をされておるのでありましょうか、明らかにしていただきたいと思います。
  155. 内田隆滋

    ○内田説明員 現在、伊場遺跡は調査中でございまして、その結果どういうふうになるのかということは私たちわかりません。したがって、現在の段階では、いまの計画を変更するというようなことは考えておりません。ただ、どうしても国の重要文化財その他で残せという結論が出ますれば、そのときは考えざるを得ないと思っております。
  156. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 もう少し具体的にお答え願いたいのですが、建設省が都市計画地方審議会の議を経て承認方を求めてきた計画案を告示するにあたって、そのものずばりすべてを認めるわけではない、条件をつける、こういう言い方をされておりますが、その条件というものは当然国鉄へのしわ寄せであります。それを建設省から何か連絡をいただいたのか、まだ知らぬというのか、その点をお尋ねしたい。
  157. 内田隆滋

    ○内田説明員 現在のところそのような連絡を受けておりません。
  158. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 時間がございませんので簡単にお尋ねをいたしたいと思うわけですが、木簡あるいは墨書された土器あるいは朱で書かれた土器、あるいは動物の骨その他、あるいは器具、道具の類、あるいは人骨その他、まさに重要な意味を持っているということを、私も現地をたびたび見、人からも話を聞いて認識をいたしておるわけであります。  そこで、第五次調査も浜松市は続けてやります。一体この種の調査というのはいつまでかかるのか。第五次、第六次、第七次、第八次といって五年も十年もかかって調査をして、その結論が出るまでは国鉄の施設もできない、したがって都市改造が進まないでは、これも困るし、調査をすればするほど、どこまで掘っていっても限界はないというようなことはないと思いますけれども、いまのような調査をたとえ第五次、第六次でやっても、私は簡単に結論が出るとは思えませんけれども、その辺は一体いかがなものでございましょうか。専門的な立場から見て、あと何年くらい調査したら結論が出るとお考えでございましょうか。
  159. 安達健二

    ○安達政府委員 全体が二万平米くらいございまして、そのうちいままで九千平米ほど調査が行なわれたと伺っておるわけでございます。そこで今度はその調査の目的を西のほう、北部のほうの郡衙あとといいますか、官庁あとの中心であろうかと推測されるところを中心にやるということでございまして、やはり一年くらいはかかるだろう、こういうことでございまして、国鉄のほうの目標も五十四年ということでございますので、いまおっしゃいましたように都市計画との関係がございますので、できるだけ急ぎたいと思いますけれども、調査が非常に時間がかかる手仕事でございますので、できるだけ早くやりましても一年くらいはかかるだろう、こういうことでございます。
  160. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 私は、六次調査をやっても解明できない、七次調査でもだめだということで、堀留運河を越してずっと北西のほうへ進めなければ解明できないというような結果になりはしないか、あるいはいま指定史跡の付近も再調査をやる必要があって、あの県指定の史跡になったときの状態と今日の予想ではだいぶまた違ってきて、あの辺の再調査もしなければだめだというようなことになりはしないかというようなことも心配をするわけであります。したがいまして、第六次調査はあと一年ぐらいで済むかもしれませんけれども、それで伊場遺跡の全容がつかめたということにはなりそうもないというように思うわけであります。いずれにいたしましても、昨年も私お尋ねしたところでありますけれども、このままいきますとやはり保存と開発の調和はむずかしく、非常に大きな問題になりはしないかというように思いますので、ぜひひとつ建設省なり国鉄なり、あるいは静岡県なり浜松市なりと十分な連絡の上で、慎重に扱っていただきたいと思うわけであります。  大臣、せっかくでございますので——大臣の地元の登呂遺跡に匹敵するような遺跡が伊場であろうというふうにいわれております。登呂は御配慮いただいてああいうような形になっておりますけれども、伊場遺跡についても、開発と保存の調和の中で史跡公園のようなものをつくりたいというようにいわれております。開発と保存の調和、さらに伊場遺跡が解明された暁にはぜひそういう施策をお願いしたいと思うわけでありますけれども、大臣の所見を一言伺って、質問を終わりたいと思います。
  161. 高見三郎

    高見国務大臣 御質問の御趣旨はよくわかりました。浜松市の発展のためには、あそこは高架にしなければどうにもならない、これは私よりあなたのほうがよく御承知になっているとおりであります。  どうも文化財の保護と地域の発展というものの調和が非常に困難な問題であります。ことに弥生期のものでありますと、埋蔵しておればそのまま埋蔵できますけれども、一ぺん空気にさらしますとたちまち風化してしまうというような問題を考えます場合には、鉄道高架の問題なんかはむしろ進めていただいていいのじゃないか。そうして発掘すべきものは発掘し、保存すべきものは保存する。保存するとするならば大きな水たまりをつくるか、あるいは登呂遺跡のような模型をつくるかという形で保存する以外に方法がないだろうと思います。  いずれにいたしましても、あなたがいまおそらく希望しておられるところは、開発と保存との調和をとってくれというところに、これは相矛盾するあれがありますけれども、切実な願いがこもっていると私は拝聴いたしております。御趣旨に沿うようにこれから御相談をしてやっていこうと思います。どうぞまたお気づきの点がありましたら、いつでもお申しつけをいただきたいと思います。
  162. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 終わります。
  163. 大村襄治

    ○大村主査代理 次に、土井たか子君。
  164. 土井たか子

    ○土井分科員 きょう私がお尋ねしたい問題は、小中学生向けの学習雑誌についての問題であります。  いま小中学生向けの学習雑誌の出版社の中で、最大の規模を誇っております学習研究社という出版社があることを御存じだと思います。この出版社が出しております月刊学習雑誌、これは小学校で言いますと「1年の学習」とか「2年の学習」とかいうふうな雑誌と、もう一つ「1年のかがく」、「2年のかがく」というふうな雑誌と二手を、およそいま月刊学習雑誌として出しているようでございますが、この学習雑誌の取り扱いにつきまして、従来いろいろと問題点が提起されてきております。御承知のとおりだと思いますが、いまその点について詳しく述べるいとまがございませんから、あらまし問題点になることだけを取り上げて、ひとつしっかりした御答弁と、今後のこれに対する取り扱い等についてのお考えをお聞かせいただきたいと思うのです。  大体、いま申しました「1年のかがく」とか「2年のかがく」とか等々のこういう雑誌については、全国の半数以上の小学校で学内販売がされております。その宣伝パンフレットが就学前の一日入学に集まった学齢児に配られたり、また、きょう私ここに持ってまいりましたが、購買者の集金袋を学校教場で先生が配ったりする。こういうものです。そういうふうな事実が全国であるものでございますから、この問題を取り上げて、学研の出版物だけが特別扱いを受けるのはおかしいという声であるとか、また買えない子供も中におりますから、そういう子供が教場にいるのに学校で売るのは、差別感、劣等感というものを持たせることになる、どうもこれは好ましくないなどというふうな批判があちこちで出てきた事実がございます。  これにつきまして、まず岩間初中局長、昨年の七月二十二日、「学校教師が学習書とか学用品で特定のメーカーを優遇することは良くない。」特にそういう問題について、「リベートなどを受け取っていれば問題だ。学研の場合、実際に調べてみなければわからないが、児童に悪影響が出ていれば行き過ぎだと思う。父兄や消費者連盟から訴えがあれば、各都道府県の教育委員会に実態調査を依頼し、リベートの授受や悪影響がはっきりすれば教育委員会を通じ学校側に厳重に注意する。」という御発言があったはずでございますが、その点、覚えていらっしゃいますか、どうでございますか。その辺からお伺いいたします。
  165. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 学研の問題につきまして、文教委員会におきまして私が発言したことは承知をいたしております。
  166. 土井たか子

    ○土井分科員 それでいま私が読み上げましたような意味の事柄をその席でお述べになったということはいかがでございますか、確認させていただきます。
  167. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 ただいま御指摘になりましたことは、ちょっとそのとおりであったかどうか、記憶が確かでございません。
  168. 土井たか子

    ○土井分科員 しかし、少なくともいま私が読み上げましたような趣旨のことをお答えになったということはいかがでございますか。
  169. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 昨年の七月二十三日の文教委員会で公明党の山田先生からの御質問に対しまして、学研を呼びまして聞きましたところをお答え申し上げたという記憶はございますが、その二十二日の分はちょっと私、記憶はございませんですが。
  170. 土井たか子

    ○土井分科員 これは新聞発表で、岩間局長の談話という形で各紙が一斉に載っけている内容なんですが、大体各紙ともいま申し上げたような趣旨のとおりに談話があったような旨を伝えております。しかし、これはやはり全国的に問題視されてきた事実に基づいての、やはり父兄側からの声でもございますし、また、消費者連盟を通じてのいろいろ具体的な苦情をもとにした声でもあったわけでございますから、このことは、しかも教育的見地からすると私はゆるがせにできない問題だと存じます。したがいまして、この昨年の七月二十二日あるいは七月二十三日段階以後、どのようにこの問題についての調査をなすったか。また、具体的にどのようなこれに対する措置をまず講じられたか、その辺をお聞かせくださいませんか。
  171. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 七月の二十二日に、新聞の報道がございましたものですから、直ちに学習研究社の責任者に来てもらいまして、話を聞きました。その話によりますと、ただいま先生が御指摘になりましたような事実はある、その点は認めたわけでございまして、それについては早急にこれを解消するようにしたいということもあわせて回答がございました。したがいまして、私どもは早急にこれを解消してほしいという私どもの強い希望を述べまして、その後一回報告を受けましたが、そういうふうな方向はやめることにした、しかし、僻地その他において学童の便宜等を考えてどうしても学校を借りてやらなければやれないというものについては、解消につきましてはもうしばらく時間がかかるというふうな回答を得ているわけでございます。
  172. 土井たか子

    ○土井分科員 それはおっしゃるとおりに、実は外見上は学研のほうも学校直販方式、これはいわゆる学研商法といわれているような売り方なんでございますが、これについては、昨年の八月の十六日に公式発表で、二学期が始まる九月から月刊学習雑誌の校内販売を徐々に取りやめていく、そしてことしの三月までには完全に校外販売へ切りかえるというふうな発表をなすっております。  ところが、いま、あたりをずっと検討いたしまして、私たちのところにもたらされております情報から察しましても、たとえば埼玉県下では、四月からまた学内販売をやろうとしているという情報が入ってきております。あるいはまた宮崎県のほうでも、学校の先生を通じて相変わらず学内販売の方式を変えないで続けていこうというふうな情報も入ってきております。  私は、これは過去の例から考えまして、いちはやく文部省のほうは、こういう問題について、具体的な名前は出してはいらっしゃいませんが、昭和三十九年の三月七日に、学校における補助教材の取り扱いなどについて、という通達を各都道府県の教育委員会あてに出していらっしゃいます。その中身を見ますと、学内直販方式というのはやはり教育上好ましくないという趣旨のことがずっと個条的に述べてあるわけですね。私はこれは、この通達を見てみると一々もっともだと思うのですが、そういう中身のことが受けられたのでしょう、各都道府県の教育委員会を通じて各学校に対して指示があった例が、ずっと調べてみると、これはございます。ところが、その中に、たとえば名古屋などは昭和四十一年に市の教育委員会が市の小学校に対して、この校内での直販方式を取りやめるようにという指示をしているにもかかわらず、昭和四十六年の七月段階で調べた限りでは、相変わらずこの学研商法がまかり通っているという事実が明るみに出ております。また、同じように大阪府の豊中市あたりでは、昨年のことでございますが、三月に一日入学で子供たちが学校に父兄とともにやってまいりました。そのときに学校側が、入学の手引きと称して学研のPR誌を配ったという例がある。このことが父兄の間でたいへん問題になりまして、これは好ましくないという市教委からの指示もあったにもかかわらず、小学校の中では、相変わらず四月に入ってから、新しく新学年を迎えた児童にこの学研の手引きを、PR誌を配っているという例があったりいたします。  したがいまして、その文部省の通達があり、したがって、それに従っての教育委員会の指示がなされ、しかもなおかつ中身を見てみると、いままでに具体的にそれが守られていないという事実があるわけでございますから、今後やはり同じような繰り返しは、私はもういいかげんにやめなければいかぬのじゃないかと思うのです。これは教育考えてみても好ましくないという点が種々あげられると思います。特に、買えない子供たちに対してこれはどう考えていったらいいかという問題もございますし、第一、学校の教材として一体こういう雑誌類を学内に持ち込んで、学内を販売の場として考えていいかどうかという基本的な問題が一つあろうかと思うのです。したがいまして、こういう問題については、いままでになく、ひとつ文部省側からはっきりした指示あるいは通達、あるいはこれに対する方策を具体的に打ち出されなければならないのじゃないか。特に新学年を目の前にいたしまして、やはりこの問題を父兄の間ではそうそう軽軽しく考えられていい問題ではないはずだと思いますから、ひとつこの点について、今後どのようにこの問題に対処なさろうとされているか、お伺いしたいと思うのです。
  173. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 ただいま御指摘になりましたようなことは、これは望ましいことではございません。  ただいま御指摘になりましたように、学研商法というのは、これは直接小売りを通さないで、直販ということであそこまで伸びてきた会社でございます。したがって、その販売員がおって販売をするということになりますと、どうしても御指摘のような点で行き過ぎがあると思いますが、私どもも四万の学校を一々監視するということはなかなかむずかしゅうございます。あるいは教育委員会におきましても、学校のそういうやり方につきまして、学校の現場を一々見守るということはなかなかむずかしいと思いますので、私どもは、直接会社に対しましてもう少し強力な指導をしてまいりたいというふうな気がいたします。また、御指摘のように地方の教育委員会としましては、地方の教育委員会の現場におきまして、学校の現場におきましてそういうようなことがないように気をつけてもらう。二つの面からこの問題につきましては対処をしたいというふうに考えております。
  174. 土井たか子

    ○土井分科員 ただいまの御答弁伺っておりまして、その会社側に対して、もう少し気をつけてほしいというふうな申し入れをなさる向きをお伺いしたわけですが、もう少し気をつけてほしいとおっしゃる具体的な中身をもう少しお聞かせいただけませんか、具体的に。
  175. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 それはただいま御指摘になりましたように、学校の場を利用して特定の会社が特定の商品を販売するというふうなことは、これはやめてほしいということでございます。
  176. 土井たか子

    ○土井分科員 そうすると、具体的に言うと、学外販売ということにしっかりと、はっきりとさせろということになりますね。学外販売で販売をするというふうにはっきり切りかえなさいということになりますね。
  177. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 学校の場を利用してそういうことをやるのはいけない、こういうことでございますから、どういう形になりましょうか、私も販売の形態はよくわかりませんけれども、たとえば学校の中にいろいろな本を持ち込みまして、そこで売るとか、あるいは教室内で先生がそういうものを買うようにすすめるような形で販売をやるとか、そういうふうなことはいけない、そういうことでございます。
  178. 土井たか子

    ○土井分科員 したがいまして、逆に言いますと、やはり学内での直販方式は好ましくない、したがって、学外で販売するように、ということになると思うのですね。これは学研のほうに必ずやっていただけますね。
  179. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 関係者に来てもらいまして、そういうふうに厳重に申し渡すつもりでございます。
  180. 土井たか子

    ○土井分科員 それはしっかりと承りました。まだまだこの中身についても問題があるのですが、時間のかげんがございますから、もう一つお伺いしたいことがほかにございます。  それは、現に全国の小学校に使われているテストブックについてなんですが、あるいは宿題帳、練習帳なんか、いわゆる副教材といわれる問題なんですね。この副教材を販売をしている日本図書教材協会というのがあります。ここは、その副教材を販売している九割以上を占めているということになるわけですが、中には、いま質問の中で出しました学習研究社や青葉出版、光文書院なんかの、小学校用副教材出版社十社が加盟している協会です。ところが、ここの協会が、御承知だと思いますが、一昨年の六月と九月に、昨年のテストブックの価格について話し合いまして、それまで一冊四十五円だったテストブックを五十五円に引き上げるということを申し合わせました。これら副教材の売り上げというのは年間二億冊、そして金額にすると約八十億円をこえております。このテストブックだけでほとんどのテストをまかなっている先生もあるというふうにいわれております。現にそういうふうに私たちも聞いているわけですが、この協会の副教材は学校ごとの一括販売で、市販は一切いたしておりません。したがいまして、返本の必要がございませんし、現金が入ってくることに対しての保証があるわけでございますから、商法のための過当競争の業界の渦になっているわけでございます。この業界で、先ほど申し上げましたように、一昨年の六月と九月に、昨年のテストブックの価格についての話し合いで、一冊四十五円から五十五円に引き上げられるということになったわけです。これはすでに昭和三十八年にやみ価格協定を行ないまして、公取委から摘発を受けております。摘発を受けた直後は一時値下げを断行したようでございますが、四十四年からまた毎年一斉値上がりということになってまいりました。昨年とうとうこれについて公取委から七月十六日に勧告を受けるということになっております。言うまでもございません、中身は私的独占禁止法の八条第一項第一号違反という理由でございますが、これはやはり勧告を受けたわけでございますね。そのとき、つまり昨年の七月十六日に、公取委は、これで二度目だ、次、三度目のやみ価格協定を繰り返したときは東京高裁に告発しますよ、刑事罰を加えるということも考えますよというふうな、非常に強硬な態度で臨まれたといういきさつがございます。  こういうことについて、これは単に公取委の問題だというわけじゃ済まないと私は思うのですね。やはり学内でこういうテストブックが販売される。特に学校の先生の中では、テストブックだけでほとんどのテストをまかなっている先生があるというふうな事実などが伝えられている。そういう問題について、文部省の側としてはどういうふうにこの問題を受けとめ、当時としてどういうふうに臨まれたか、ひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  181. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 これはただいま御指摘のように、直接は公取の問題でございますけれども、この協会自体が私どもの所管の法人になっていまして、また、御指摘になりましたように、この問題は教育上も非常に大事な問題でございます。したがいまして、私どもとしましても非常に重大な関心を持っておるということを申し上げたいと思いますが、具体的には、公取の勧告を受けてどういうふうに対処をしたかということを見守りますのが、私どもの役目じゃないかというふうに考えるわけでございます。御案内のとおり、公取からの勧告を受けまして、図書教材関係の会社が協定を破棄したということを私どもにも知らせてまいりましたし、また、業界紙にもそういうふうなことをはっきり書いて全国に流しております。そういう意味から申しまして、私どもは再びこういうことがないように厳正にやってくれるものというふうに期待をしているわけでございます。
  182. 土井たか子

    ○土井分科員 しかし、これはいまのように破棄した、だから以後見守っていきたいとおっしゃいますが、前例があるわけなんですね。昭和三十八年、先ほど御説明申し上げたとおりです。公取委から摘発を受けて、その後一時値下がりしたけれども、またぞろ昭和四十四年からこちらに、毎年これについては値上げをしてきたという事実があるわけですから、もうそれについては破棄したからだいじょうぶだとは決して言える状況じゃなかろうと私は思うのです。ひとつそこのところは、価格の上でも問題を監視していただきたいと思うのですが、しかし、本来、義務教育は無償とするという憲法上の保障がございます。一応こういうテストブックなどについては、具体的に価格がきめられて、買うのはだれかというと、父兄なのでございます。父兄負担ということが現にここで出てくるわけです。これが一つ。  それからさらに、これは文部省の初等中等教育局長、当時の福田局長が、昭和三十九年三月七日の通達の中でも、「学習の評価は、学校指導計画に基づいて、教師みずから適切な方法により行なうべきものであって、安易に問題帳等で代用したりすることは、教育上望ましいものとは考えられないこと。まして問題帳等を使用して、その採点を外部の第三者に依頼するようなことは厳にいましめるべきことであること。」と、ちゃんと通達を各都道府県の教育委員会あてに出していらっしゃるのです。したがいまして、いまやはりこういうテストブックが値上げされる、それに対して公取委のほうからの勧告がある、単に価格上の問題として私は済ましてしまうわけにはいかない。つまり、これは教育上の問題としてゆゆしい中身があるのじゃなかろうか。単にテストブックだけにたよって、全国の小学校が外部のこういう企業のテストブックによってテストをまかなっていくということ自身、私はどうもこれが教育上思わしくないということを考えざるを得ません。したがいまして、この価格の上の問題で父兄負担ということが一つと、教育という内容面からの問題が一つと、この二点について文部省側はどういうふうにお考えになっているかというしかとした御答弁をひとつ承っておきたいと思うのです。
  183. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 価格の問題につきましては、これは御案内のとおり、人件費等も上がっておりますので、これはある程度価格が上がっていくということはやむを得ない面もあろうかと思います。  それから、父兄負担の面につきましては、これは私ども、先ほど憲法上の問題というふうな御指摘もございましたけれども、できるだけ父兄に負担をかけないという方針は持って臨んでいるわけでございますが、特に所得の低い父兄につきましては、これはそういうふうな父兄負担がかからないように、私どもは毎年その内容につきまして検討し、それから予算も充実をしてまいっているつもりでございます。ことしの、ただいま御審議をいただいております予算におきましても、そういうふうな副教材というものにつきましても、金額を増額しまして、ある程度の充実をはかっているつもりでございます。そういう意味から申しまして、父兄負担の軽減につきましては、これは所得の低い者に対しましてそういう父兄負担が起こらないように、十分注意をしてまいりたいと考えているわけでございます。  また、内容につきましては、ただいま御指摘ございましたように、これはできましたら直接先生がテストの問題もつくるし、それに対する採点も先生がやっていただくということが望ましいわけでございます。しかし、まだいろいろな仕事の面、仕事の多い面もございまして、そういうことが具体的に行なわれておらぬ、実際には市販のものを使ってやっておるというふうな面があることは事実でございます。これはできるだけそういうことのないようにしてまいるということは、基本的な方針としては、私どもそういう方針でまいりたいと考えておるわけでございますが、これが教員の定数の問題その他いろいろな問題とからまっておりますので、なかなか具体的には実施がおくれておるというふうなことであろうと思います。しかし、私どもも、ただいま先生の御指摘になりましたような、また三十九年の通達の線に沿いまして、ひとつ努力してまいりたいというふうに考えております。
  184. 土井たか子

    ○土井分科員 先ほどの通達の線に沿って御努力をなさるという、それは実は私は具体的な中身というのが一つ一つ問題になってくると思うのですね。この通達の中身というのはだれも異存のないところでありまして、まことにもっともなことをおっしゃっている通達だと思いますが、それならば具体的にこういうふうな例が出てきたときに、これをどういうふうにお取り扱いなさるかということで、やはり通達の意味は生きてくるわけでございますから、やはりこのテストブックなんかに対しての取り扱いというものは、いままでどおりであってほしくないと私は実は思います。できる限りとおっしゃいますけれども、やはりこれはできる限りということでなしに、自信を持って、こういう問題については教育の現場の先生が教育するのだという態勢をつくっていくことが、まずは一番大事じゃないかと思います。教育は、直接国民に対して責任を負うところの教育でなければならない。それは、一体だれがそういう教育責任をまず負うかというと、現場の教師だろうと私は思うのですね。したがいまして、現場の教師教育に対しての責任を負うという体制をはっきりつくり上げていく。それがやはり教育の民主化とか教育について健全なあり方というものを地固めをしていくところの、何といっても基本的な問題だろうと私は思います。産学協同体制といいながら、中身は企学協同体制であって、むしろ企業の申し子みたいなものに教育の中身がなり下がっていくということに対しての憂慮ということも、一部にはだんだんだんだん強まってきているような現状もあるわけでございますから、そういう点から考えますと、私は、小学校段階あるいは中学校段階でこういうふうなテストブックによるところのテスト、それで万事足れりというふうな姿勢というのはまことに嘆かわしい現象だと思うのですね。これはやはり文部省としてはき然とした態度で臨んでいただくべき寄りどころの一つとしてあるんじゃないか。私は、その教科書の検定に対して一生懸命に力を入れていただくよりも、むしろこういう問題についてやっていただかなければ困る気がするのです。ひとつそういう点での文部省の態度文部大臣のほうからお聞かせいただいて、時間がまいっておりますからきょうはこの辺で質問を終わりますが、あと文教委員会のほうで続々、これに続行するところの質問をさせていただきますので、どうぞその節はよろしくお願いいたします。
  185. 高見三郎

    高見国務大臣 さっきからの御質問を伺っておりまして、現場の先生がリベートをもらって学研の教材を売る、あるいはほかのテストブックをあれする、ここまで教育もなり下がれば、もうそこには教育はないと申し上げざるを得ないと私は思います。私も現場の経験がありますけれども、少なくとも子供が一生懸命で書いた作文は、一字残らず目を通してやるのが教師の仕事でありますし、いわんや、テストをやりまして、これを忙しいからというんで第三者にまかして点数をつけるというに至っては、これはもう教育の権威というものが地に落ちたという感じがいたしておるのであります。お話を伺いまして、実は私、はなはだ残念に思いました。この問題については、私も決意を持って、さようなことのないように努力をいたしたいと思っております。きょうはいい話を聞かしていただきましたが、まことに残念なことでありますが、現場教師がそこまでなり下がってはもうおしまいであります。どうかひとつこれからも、お気づきの点は遠慮なくどしどし、ここにはこういう問題があるということを御指示をいただきたいと思います。
  186. 土井たか子

    ○土井分科員 きょう私が指摘したのは、文部大臣のその御見解と少し趣きが違っておりましてね、現場の教師がそこまでなり下がっているということに対しての指摘をしながら御質問を申し上げたわけじゃないのです。実は業界の姿勢あるいはそれに対する文部省の取り扱いの問題、あるいは文部省と教育委員会、教育委員会と校長を通じてのいわばこういう販売に対する取り扱いの問題、そういうことを中心に私はきょうは御質問を申し上げて、そうしてほんとうにこういう取り扱いで教育を守っていると言えるかどうかというふうな質問をさせていただいたわけです。したがいまして、現場の教師がそこまでなり下がっている、嘆かわしいことだという点に問題を持っていって私は質問をしたわけじゃ断じてありませんから、その点どうか誤解のないようにひとつお願いしたいと思うのです。また、私はここで教育論争を文部大臣としようとは思いませんけれども教育というものは権威によって守られるものとは思っておりません。教育の権威が地に落ちたとおっしゃいますが、権威によって教育の民主化とか自主的な人間を育てる教育の現場というものは守れるものとは思っていないのです。やはり一人一人の教育の現場で教育を預かっているところの教育者が自信の持てる、そうして自分たちがこの場所で教育をほんとうに心底から責任を果たしてやるのだというふうな雰囲気が私は問題だと思うのですね。そういう態勢をつくっていくということが非常に大事だと思うのです。したがいまして、きょう文部大臣の最後の御決意のほどを私は伺っていて、ちょっとやっぱり私のきょう御質問申し上げたことと違っているなという気がいたしましたので、一言申し添えさせていただきました。
  187. 高見三郎

    高見国務大臣 私が申し上げましたのは、ひとり現場の教員だけの問題ではありません。学校を預かっておる校長さんにいたしましても——しかし、何にいたしましても、リベートでもって販売をする、そんなことは頭から断わるのはあたりまえの話なんです、企業がどんなうまい話を持ってきましても。私が権威と申しますのは、権力のことを言っているのじゃありません。教育の権威を守るという意味においてはっきりと断わるだけの先生であってほしいと思うわけであります。その点は、権威ということばが直ちに権力ということばに結びついての話で申し上げておるわけではありません。教育者には教育者の権威がある、その意味を申し上げたのでありまして、この点は誤解のないようにお願いをいたしたいと思います。
  188. 土井たか子

    ○土井分科員 自後の論争はまた文教の委員会にひとつ譲って、大臣にまた御質問させていただいて御意見も伺いたいと思います。  きょうは、一応この学研の問題について御質問させていただきました。ありがとうございました。
  189. 大村襄治

    ○大村主査代理 本日は、この程度にとどめ、次回は、明二十二日水曜日午前十時から開会し、内閣、総理府所管について審査を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。     午前六時三十九分散会