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高屋公述人 高屋定國でございます。
予算委員会のほうから
意見を述べてくれという機会を得られましたので、ふだん私が考えておりますことの一端を述べさせていただき、先生方の
審議の御
参考に供せれば幸いだと思っております。それで参った次第でございます。
私は、いろいろだくさんございますけれども、二点にしぼって申し上げたいと思います。一点は日本の安全保障の問題、もう一点は私学の助成問題、私学問題ということにしぼらせていただきたいと思います。
わが国の安全保障につきましては、各党あるいはいろいろな力からいろいろな急見が出ておりますけれども、どの国でもそうでございますが、一番考えなければならないことは、その国の置かれております地理的条件ということをまず考えなければいけないと思う。それから次は社会的条件でございます。この地理的条件というものを考えますと、日本は中国、ソビエト、アメリカという大国にはさまれました島国であるということ、これはやはりまず考えなければいけないと思う。社会的条件といいますと、まあ軍事的な問題、
経済的な問題といろいろございますが、昨年来、ニクソン訪中声明あるいは中国の国連加盟、中ソの対立の問題、最近では対決の問題にまで発展しておるわけでありますが、あるいは印パ問題というようないろいろな問題が出てきております。まあ人は、冷戦
構造から三極点世界
構造への
転換だという説もございますが、まだまだ変わるかもしれません。このように世界の情勢は非常に変わっております。これは戦後二十数年間におけるそれぞれの国の発展の度合いが違ってくるところから来るわけなんで、当然なことでございます。しかしこのことは、だれも数年前は予測しなかった。今後いまから五年ないし十年を予測できるかどうか非常に疑問だと思う。このニクソンの訪中をはじめといたします——まあこれはだれも考えなかったことが起こったわけでございますが、これはやはりアジアの緊張緩和に非常に役立ったと思って私は恵んでおるわけですが、今後何が起こるかわからないということ。これをチャンスといたしまして、わが国の安全保障につきまして根本的に考えるべきじゃないかというふうに考えます。
それで、安全保障と申しますと、すぐ軍事問題というふうに結びつけるわけでございますが、安全保障というものはそういうわけ、じゃございません。まず第一に、安全保障というのは、わが国の
国民がこの国土の中で安心して
生活できるということであります。そういたしますと、まず世界の諸外国との友好的な
関係である。それにはいろいろとございますが、
一つは
経済的な友好
関係、交流問題。二番目は文化的な問題でございます。三番目は外交的な問題。最後に軍事的な問題というふうに考えるのがそれぞれの国の安全保障の問題だと思うわけです。
そう考えますと、昨日も公述の方で軍事専門家もいらっしゃいましたので、わが国をめぐります問題については私は省きます。
政策的な問題だけ私は申し上げたいと思いますが、その場合に、消極的な観点と積極的な観点の二点から申しますと、ではどういうことであるか。まず、わが国が隣国に対して脅威を与えないということが問題であります。国力に応じた防衛力という説もございますが、これはちょっとおかしいのでございまして、国力に応じた防衛力といいますと、これは国力と申せば
経済力になるわけですが、
経済が優先して、
経済の領域によって軍事をやるということになってしまうので、これはよくいわれる産軍融合ということでございまして、あまりいい考えじゃないと思う。
一番問題は日本を取り巻いている諸国に対して脅威を与えないということ。そういたしますと、最近中国にいらっしゃる方、先生方もたくさんいらっしゃると思いますが、あるいは向こうから出ておりますのを見ますと、日本軍国主義の復活ということを言っている。私はすぐ軍国主義復活というふうに思いませんけれども、しかしモスクワにおいても、軍国主義への脅威がある、なる可能性というようなとらえ方をしている。中国とソビエトだけじゃございませんで、昨年でございましたか、アメリカにおいても高官が、日本の軍国主義的な危険性ということをニクソン訪中の背景説明の中でやったというふうにいわれておる。たぶんこれはキッシンジャーじゃないかという説も外電では流れております。まあいろいろ国内でも
議論はございますけれども、とにかく日本を取り巻いている諸国に対して脅威を与えていることは事実なんです。東南アジアにおいては
経済進出でいろいろな問題を起こしております。まずそういうことを取り除かなければいけない。これは自分の国だけのことを考えているというのじゃなくて、国と国との
関係は、軍事問題も
経済問題もそうでございますが、相対的な問題でございます。こちらがそうだと言って弁解しても、それに対して向こうがそれに応じるかどうかという形になる。どこまでも相対的な問題で、こちらがそれに応じればエスカレートしていく。どこまでエスカレートしていっても切りのない問題でございます。この辺で考えなければいけないんじゃないか。やはりそういう
意味においては、日本の軍事的強化というものをとどめ、むしろ減少していく
方向に向かっていかなければいけないんじゃないか。これは安保体制自体、根本的にこの世界
構造が変わってきている段階で考え直さなければならない時期に来ているんじゃないかというふうに私は思います。
次に二番目、
経済的な問題でございますが、この
経済的な問題は主として東南アジアではこれから起こると思いますが、一方的な
経済進出だけでは脅威を与えるわけです。それぞれの国の民族産業を押えることになる。日本が
経済的に発展するということは非常にいいことでございますが、それがそういうふうに受け取られたらわれわれとしても不本意なことである。で、これをどうするか。これはまず一番大切なことは、発展途上国のことでは
経済援助、この
予算にもずいぶんと
予算が計上されまして、これはけっこうだと思います。この
経済援助あるいはいろいろな
資金も今度できましたけれども、これもけっこうですが、もっと考えなければならないことば、発展途上国は援助よりも輸入してほしい、物を買ってほしいということだと思う。で、それぞれの国から物を輸入する場合は、これを輸入しやすいように持ってこなければいけない。これをいたしますと、あとで申し上げたいと思うのですが、日本の農業問題あるいはその他軽工業、ことに繊維問題とかいうような問題が起こってくる。これに対しての措置をまず考えなければいけないんじゃないか。
三番目、文化的な問題でございますが、私たちは簡単に考えておりますことでも、それぞれの戦前に御迷惑かけた国に対してはこれが悪い夢としてあるわけなんです。軍歌なんかはそうだと思う。こういうことはなるべくやめるような
方向を政府としてもとっていただきたい。私も戦争中に育った者ですけれども、私たちつい同窓会になると軍歌を歌ったりする者が多いわけですけれども、しかし、私たちはそうかもしれないけれども、その歌のもとに家族なりを殺されていった人々はどうだろうか。このことを考えなければいけない。やはりそのことが脅威を与えている
一つにもなっているんじゃないか。映画でもそうです。まあ、そういうことをなくしていくという
方向。
それから外交的には、あらゆる国、日本を取り巻いている国だけでなくてあらゆる世界の国と国交を正常化するということ、これは一日も早いほうがけっこうでございます。
こういうことから、では積極的な面から申しますと、いままで申しましたのは消極的な面でございますが、日本はこれほどの
経済力もあるし国力もあるわけです。いわゆる平和外交をもっと積極的に進める必要があるんじゃないか。ことに隣国に対しての平和的な働きかけ、世界各国に対しても積極的な働きかけをやるだけの日本は国力がある。ことに外貨がずいぶんあるわけなんです。これを積極的にその方面に使っていただきたい、そのような
予算を、組んでいただきたい。
で
一つは
経済的には先ほど申し上げましたこと、
経済交流あるいは
経済援助ですが、一番大切なことは輸入の増加、それに基づく日本の産業
構造をどう持っていくかということを考えていただきたい。日本の産業
構造は、これは社会体制は別にいたしましても、日本は世界においてどういうような位置に置くべきか、産業
構造として置くべきか。これはどうしても垂直分業にならざるを得ないと思う。これについていろいろ
意見ありますけれども、ならざるを得ないと思います。発展途上国の輸入をやれば、国内のその
関係の産業との衝突がくる。これをどうするか。どうしても日本の農業問題に根本的に手をつけなければいけない。これは、戦後の農地改革にそれぞれの農地法の意義はありましたけれども、いまの段階ではこれも変えなければいけない。土地問題も根本的に考えなければいけないというところに来ていると思う。むしろ
政策がおくれているんじゃないか。そのためには
計画的に相当の費用が要ります。五年ないし十年
計画を持たなければいけない。すなわち、産業
構造の
転換といえば、そこに働いている方の転業ということを考えなければいけない。転業には相当の
予算的措置をもって
計画的に持っていくということ。これは、場当たりでなくて
計画を出して、そして年々どうしていくかというような形を持っていただく。いわゆる転業
資金あるいは産業
構造近代化、いろいろな
資金がございますけれども、日本としての産業
構造は一体今後どうあるべきかということを根本的にお考えいただきたいと思うわけです。
2番目は、文化的でございますが、私も外国
生活も三年ほどあるわけなんですが、ヨーロッパにおりましたけれども、日本は外国、ことにヨーロッパにおいては非常に誤解されております。よく先生方も御
承知のように、日本と朝鮮と中国を一緒にしているヨーロッパ人が非常に多いのです。それは教科書なんかでよく
関係の方が出されて、いまだにちょんまげを結っているようなさし絵をかいているということもあるわけなんです。これはどういうことかと申しますと、これは当然なんです。日本は在外公館の中に文化アタッシェというのがございません。これはぜひ在外公館に文化アタッシェを置いていただきたい。それだけじゃございません。できましたら、各大きな都市には文化センターを置いて、日本の雑誌、新聞、図書、それからフィルムライブラリーをつくりまして、
関係者を送り込んで、日本のことをよく事実を見ていただく。ことに日本語というのは非常に特殊なことばで、非常にわかりにくい。外国人が日本語を勉強するということは非常に困難なことなんで、なかなかことばの障害というのがございますので、これはあとでまた申しますが、留学生のことにもあると思いますが、やはりそちらの文化センターで日本語をずいぶん教えるようなことをやっていただければ非常に便利じゃないか。そうすれば、ある
程度日本証ができてからこっちへ来れば、留学する方も助かると思う。
もう
一つは、世界で外国で働いております
国民は、アメリカに次いでは日本人でございます。ことに商社の方なんかそうですが、外交官の方あるいは特派員の方がたくさん出ておられますが、その方の一番心配の種は子弟の教育でございます。各地で日本語学校がございません。ところが日本語というのは特殊でございますから、数年間外国にあって帰ってくれば日本語ができない。それからもう
一つ、日本の数学レベルというのが非常に高いわけです。外国のアメリカスクールでは追っつかないといういろいろな問題があるわけです。そういうことも、外務省とか文部省で一緒になって、外地にこの文化センターの中で日本語の教育なり学校をつくってくれれば、助かるじゃないか。今後もずいぶんたくさんの方がいらっしゃると思う。したがって、その人のための特別の学校を日本でつくっていますが、全寮制とかありますけれども、やはり子供の教育は親と一緒に
生活することが一番いいと思う。そういうことで安心して行けるようにする。これは、アメリカはアメリカ文化センター、あるいはイギリスはブリティッシュカウンシル、あるいはフランスは日仏会館、ソビエトもやっております。そういうようなことはそれぞれの大きな国はやってかなり成功しております。わが国もこの段階ではこういうことをやって、積極的に日本のことを正しく知ってもらうチャンスをつくるべきじゃないか。そのための
予算を計上していただきたい。
それから留学生の場合も、今回はずいぶんと単価も上げ、それから数もふやしておられます。非常にけっこうでございます。しかしまだ足りないと思う。そういうことは、長い間の外国との友好
関係として、ほんとうに知ってもらうということは文化的には非常にいいわけなんですが、これには相当長い努力が必要でございますので、この辺をもっと上げていただきたいし、また日本の文献を当面は英語あるいは外国語で出版していく援助をもっとふやしていただきたい。現在においては、日本語というのは、そういうことばの障害があるので非常に誤解されておりますし、また知られていない。文献を英語を通じてしかやられてないのが多いわけなんで、そういうことに対しては努力をしていただきたいと思うわけです。あるいはまた、発展途上国に対しては、図書館を害付するとか、あるいは大学の日本語学部の経費を全部持つとか、その他やっておられますけれども、もっと積極的に進めていただきたいと思います。
それから、外国的にはそういうことでございますが、したがって、軍事的な脅威を取り除く、あるいは国交を正常化するということだけではなくして、世界の場で軍縮問題については積極的な働きかけをしていただきたい。そして私は、最終的には日本は軍事同盟に非同盟で、そして積極的な中立の形に持っていっていただきたい。そうしてその軍事
予算というものをどんどんと文化的な方面に使っていただくというふうに、この四十七年以降の
予算を組みかえていただきたいというふうに思います。それがほんとうの安全保障じゃなかろうかというふうに考えます。
次には、私学助成のことについて申し上げます。
政府は、昨年から、実際的にはことしからでございますが、私学に対して経常費の助成もなさるようになったし、今度の
予算についても大幅な助成をやっておられます。非常にけっこうでございます。しかし
現状においてはまだまだ不十分だということを申し上げたい。これは日本の高等教育というものの根本から考えていただきたい。国公立の大学の補助的機関としての私学でないということ。町方を一緒にした、インクルードした高等教育の
政策を考えていただきたい。
なぜかと申しますと、現在大学生においては七五・九%は私学に学んでおります。しかし、ではどのような条件かと申しますと、文部省の昨年の五月の統計では、専任教員一人当たり学生数は、国立は七・九名、私学は二十七・三名でございます。約三・、五倍であります。教育ということが一番大切なことは、教える者と教えられる者との
関係。学園紛争がいろいろございます。
意見はありますけれども、根本的なことはマスプロ教育がいけないと思います。マスプロ教育をなくしていかなければならない。そのためには専任教員当たり学生数をどんどんと減らすような形をしなければならない。私学は、このような、国立に対して平均三・五倍。多いところでは、有名な私学においては専任教月二人当たり百名をこえている学校もございます。こういうマスプロ教育をしておっては、ほんとうの教育にならないし、非常な誤解から来る学園紛争ということも起こると思う。
もう
一つ施設の
立場からいいますと、学生一人当たり校舎面積は、私学においては七・二平米でございます。それに対して国立は二十一・六平米、これはちょうど三倍であります。設備においても、教員の数においても、七六%の大学生がこのような格差の中で私学に学んでいるということでございます。
では次に、校納金である授業料問題であります。これは現在国立大学の授業料問題であちこち問題があるし、それから私学においても授業料問題でもめておる。封鎖されておる大半がたくさんございます。私の出芽校であります同志社大学は現在封鎖中であります。卒業式もできません。竜谷大学もそうであります。京都大学もそうであります。そういう問題を起こしております。全部授業料問題でございます。
四十六年度国立の授業料は一万二千円でございました。それに対して私学は、授業料以外にもたくさんありますが、いわゆる校納金、合わせますと二十三万四千四十七円です。十九倍でございます。私は国立の授業料問題について上がることは賛成ではございませんけれども、上がったといたしまして四十七年度の比率を申しますと、三万六千円に対して、私立大学は二十五万四千六百十円であります。これが平均であります。これは私学振興財団の統計でございますから間違いございません。七倍でございます。そういたしますと、教育の比較ということを、専任教員と学生の校納金との
関係を見ます。私学で学んでいる学生の父兄も同じように税金を納めているわけですから、これはどういうことになるかというと、十九倍の校納金に対して先生の数が三・五倍ですから、掛けますと——こういう掛け方はいいか悪いかは別として、一応掛けますと、四十六年度は六十六・五倍であります。それから四十七年度は校納金は七倍でございますか、それに対して三・五倍の教員数ですから二十四・五倍、これほどの劣悪な条件にいるということ。それから次に設備費が約三倍ほど違いますが、三倍を掛けますと、四十七年度国立の授業料が上がったといたしましても七十三・五倍であります。設備費と校納金と、それから先生の数の問題を掛けていきますと、いわゆる教育の厚さといいますか、設備と教員の数、校納金というものを計算いたしますと、これほどの格差があるわけです。
私学振興財団というものが一昨年の七月からできまして、かなり政府も積極的に取り組んでいただいております。けっこうでございますが、しかし行政においては相当おくれているということを申し上げたいと思います。現在私学の経営の四十五年度の
借り入れ金が五百五十六億円であります。経常
予算の一六%が
借り入れ金でまかなわれている。学生一人当たり、これは四十四年度でございますが、私学は二十五万一千二百九十七円費用を使っておる。ということは、校納金プラス、
借り入れ金でやっておりますから。それに対して国立は六十七万五千百七十円使っております。これは四十四年であります。おそらくことしになればもう八十万以上でしょう。これほどの劣悪な条件の中で、しかもこれほどしか使われていないという問題、したがって、それほど授業料が高くても、では経営主体である学校法人はどういう状態かと申しますと、大学の法人だけでも私学振興財団から二千七百六十七億円
借り入れております。全学校法人を申しますと、四十四年三月三十一日現在ですが、四千百七十九億円
借り入れをしております。非常にたくさんの
借り入れで、いま経営が非常に困っている。しかし、授業料を上げるわけにも、これもまた限度が来ている。これほどの格差ということを御認識いただいて、これに対してどう打っていくか。戦前は私学と国立との授業料、校納金の格差というのは、
昭和十二年では大体一対二でございました。いまじゃ一に対して七あるいは十になっております。こういう問題はやはり社会的な問題だと思います。私学というものは国立の補助機関でもありませんし、先ほど申し上げましたように学生数のほとんど七六%が私立大学に学んでいるという
現状から、放置できない問題ではないかというふうに私は思います。
政策といたしまして、いろいろございますが、やはり校納金がせめて戦前の格差になるまで助成を強化していただきたい。ことしの
予算を見ましたら、
一般会計からの出
資金は昨年と同額の十億円であります。同じであります。
伸びておりません。
財投から少し
伸びているだけ。これじゃやはりその問題は解決できないと思う。いわゆるこの校納金が戦前並みになるようにまで、私学助成をやっていただきたい。
次は、助成だけではなかなかやはり問題はあるし、できないと思いますので、
税制上からも考えていただきたい。これは国立も含めましてでございますけれども、授業料というもの、校納金というものはやはりこれは所得控除をしていただきたい。これでだいぶ助かると思う。
次は
税制上でございますが、寄付金でございますが、これは私学振興財団を通じますと少しは控除されますけれども、まだまだ不十分であります、限度、リミットがございますので。これは寄付金に対する所得控除を法人も個人もずいぶん見ていただきたい。ことに相続税においてはこれをずいぶんやっていただきたい。アメリカの例でございますが、アメリカの私学は非常に発展した。これは校納金でまかなっておりません。ずっと低い率で運営されておる基礎は、各私学が
財源がある、資産がある。これは何かといえば、
税制上にそういう寄付金を受け入れやすいようなことをやったから、そういうことができたわけです。それは根本的に変えていただきたい、考えていただきたいというふうに患います。
それから次は、助成の組織上の問題がある。理想として申しますと、イギリスにUGCというのがございます。イギリスの私学の八〇%以上の経常運営費は国の費用でまかなっております。それを分配し運営する組織は、UGCというのがございまして、そこの
委員会が全部配分し、長期
計画も立てて、そして毎年
国家予算に組んでおります。こういう組織があるわけですね。これはやはり一番理想的だと思います。そういう権限もある組織を考えていただきたい。そしてそこにまかす。まあしかしそれはなかなかできませんが、当面はやはり私学振興財団にすべてをまかすというふうに持っていく。
やはりこまかい問題で矛盾がございます。たとえばほんとうに困っている学校法人には補助金が出ないようになっております。なぜかと申しますと、一年以上私学振興財団からの
借り入れ金を返済ができてないものは補助金の対象からはずしております。こういうふうに、政府あるいは文部省だと思いますが、この指示がございますから。そうしますと、現在私学振興財団へ百五十億が滞納しております。千五百億の
借り入れ金の中で一割が帰納しておる。その滞納しておる学校法人が一番困っておる。そこには補助金がいき得ないという制度になっている。それでマスプロで大きな学校ほど補助金がいきやすい形になる。これはやはり矛盾であると思う。そういう運営のしかたも、当面は私学振興財団が一番私学のことをわかっておりますから、その方面へおまかせいただいてやっていただきたい。
もう
一つは、高等学校以下につきましては、補助はいわゆる府県にまかせてあります。府県によって非常なアンバランスがございます。たとえば福井県のように私学の経常費の三分の一は県が見るというところもあります。あるいは火京都あるいは神奈川というように非常に補助の多いところと——京都はよくないほうですが、いろいろ府県によって学生一人当たりの補助率が非常に違います。ところが
借り入れ金になりますと、高校以下を持っております学校法人でも私学振興財団を通じておりますから、やはり私学振興財団に一本化して、補助とか
経済上の問題をやっていただきたいということが当面の問題ではなかろうか。その方面に、私は現在この日本が一体どうあるべきか。ことに安全保障問題、先ほど申し上げましたような問題で脅威を与えるのでなくして、その方面が、外国に対する文化的な方面のお金と、国内の教育、文化、ことに私学への補助のほうにこの
予算を計上していただきたいというふうに私は考えますので述べさせていただいた次第でございます。(拍手)
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