運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1972-03-27 第68回国会 衆議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十七日(月曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 大坪 保雄君 理事 佐々木義武君    理事 田中 龍夫君 理事 二階堂 進君    理事 細田 吉藏君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 鈴切 康雄君    理事 小平  忠君       足立 篤郎君    相川 勝六君       荒木萬壽夫君    植木庚子郎君       小川 半次君    奥野 誠亮君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       佐藤 守良君    笹山茂太郎君       正示啓次郎君    田中 正巳君       中野 四郎君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    橋本龍太郎君       福田  一君    松浦周太郎君       松野 頼三君   三ツ林弥太郎君       森下 元晴君    森田重次郎君       渡辺  肇君    安宅 常彦君       上原 康助君    小林  進君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       長谷部七郎君    原   茂君       細谷 治嘉君    安井 吉典君       横路 孝弘君    沖本 泰幸君       中野  明君    林  孝矩君       和田 春生君    田代 文久君       谷口善太郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 塚原 俊郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       渡海元三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         国防会議事務局         長       海原  治君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      江藤 淳雄君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 黒部  穰君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部長      長坂  強君         防衛施設庁施設         部長      薄田  浩君         環境庁自然保護         局長      首尾木 一君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省経済協力         局長      大和田 渉君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省理財局次         長       小幡 琢也君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君         国税庁長官   吉國 二郎君         文部政務次官  渡辺 栄一君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         厚生省児童家庭         局長      松下 廉蔵君         厚生省援護局長 中村 一成君         農林大臣官房長 中野 和仁君         林野庁長官   福田 省一君         水産庁長官   太田 康二君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         通商産業省公害         保安局長    久良知章悟君         運輸大臣官房長 高林 康一君         運輸省船舶局長 田坂 鋭一君         運輸省航空局長 内村 信行君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ――――――――――――― 委員異動 三月十八日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君     斉藤 正男君   楢崎弥之助君     横路 孝弘君   西宮  弘君     岡田 利春君   原   茂君     久保 三郎君   細谷 治嘉君     田邊  誠君   安井 吉典君     山本 政弘君   近江巳記夫君     瀬野栄次郎君   沖本 泰幸君     桑名 義治君   中野  明君     樋上 新一君   林  孝矩君     小川新一郎君   塚本 三郎君     和田 耕作君   谷口善太郎君     津川 武一君 同日  辞任         補欠選任   岡川 利春君     西宮  弘君   久保 三郎君     原   茂君   斉藤 正男君     内藤 良平君   田邊  誠君     上原 康助君   山本 政弘君     広瀬 秀吉君   横路 孝弘君     楢崎弥之助君   小川新一郎君     林  孝矩君   桑名 義治君     松本 忠助君   瀬野栄次郎君     広沢 直樹君   樋上 新一君     岡本 富夫君   和田 耕作君     西田 八郎君   津川 武一君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     細谷 治嘉君   内藤 良平君     安宅 常彦君   広瀬 秀吉君     木原  実君   岡本 富夫君     中野  明君   広沢 直樹君     近江巳記夫君   松本 忠助君     沖本 泰幸君   西田 八郎君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   木原  実君     安井 吉典君 同月二十一日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君     田邊  誠君   小林  進君     上原 康助君   原   茂君     金丸 徳重君   細谷 治嘉君     中谷 鉄也君   安井 吉典君     山中 吾郎君   近江巳記夫君     小川新一郎君   中野  明君     中川 嘉美君   塚本 三郎君     栗山 礼行君   谷口善太郎君     寺前  巖君   東中 光雄君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     小林  進君   金丸 徳重君     原   茂君   田邊  誠君     山口 鶴男君   中谷 鉄也君     大原  亨君   山中 吾郎君     斉藤 正男君   小川新一郎君     宮井 泰良君   中川 嘉美君     古寺  宏君   栗山 礼行君     塚本 三郎君   寺前  巖君     谷口善太郎君   松本 善明君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   大原  亨君     堀  昌雄君   斉藤 正男君     土井たか子君   山口 鶴男君     後藤 俊男君   古寺  宏君     瀬野栄次郎君   宮井 泰良君     渡部 一郎君 同日  辞任         補欠選任   後藤 俊男君     安宅 常彦君   土井たか子君     安井 吉典君   堀  昌雄君     細谷 治嘉君   瀬野栄次郎君     山田 太郎君   渡部 一郎君     大橋 敏雄君 同日  辞任         補欠選任   大橋 敏雄君     近江巳記夫君   山田 太郎君     多田 時子君 同日  辞任         補欠選任   多田 時子君     中野  明君 同月二十二日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君     阿部 昭吾君   小林  進君     芳賀  貢君   阪上安太郎君     大原  亨君   辻原 弘市君     中谷 鉄也君   西宮  弘君     山口 鶴男君   原   茂君     井上 普方君   細谷 治嘉君     斉藤 正男君   安井 吉典君     上原 康助君   近江巳記夫君     鬼木 勝利君   沖本 泰幸君     山田 太郎君   鈴切 康雄君     田中 昭二君   中野  明君     坂井 弘一君   林  孝矩君     鶴岡  洋君   和田 春生君     栗山 礼行君   東中 光雄君     小林 政子君 同日  辞任         補欠選任   阿部 昭吾君     島本 虎三君   井上 普方君     平林  剛君   上原 康助君     大出  俊君   大原  亨君     阪上安太郎君   斉藤 正男君     堀  昌雄君   中谷 鉄也君     辻原 弘市君   芳賀  貢君     小林  進君   山口 鶴男君     中村 重光君   鬼木 勝利君     北側 義一君   坂井 弘一君     広沢 直樹君   田中 昭二君     樋上 新一君   鶴岡  洋君     岡本 富夫君   山田 太郎君     斎藤  実君   栗山 礼行君     和田 春生君   小林 政子君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   大出  俊君     内藤 良平君   島本 虎三君     安宅 常彦君   中村 重光君     西宮  弘君   平林  剛君     阿部喜男君   堀  昌雄君     細谷 治嘉君   岡本 富夫君     林  孝矩君   北側 義一君     近江巳記夫君   斎藤  実君     沖本 泰幸君   樋上 新一君     古寺  宏君   広沢 直樹君     小濱 新次君 同日  辞任         補欠選任   阿部喜男君     原   茂君   内藤 良平君     横路 孝弘君   小濱 新次君     中川 嘉美君   古寺  宏君     鈴切 康雄君 同日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君     安井 吉典君   中川 嘉美君     中野  明君 同月二十三日  辞任         補欠選任   相川 勝六君     山口 敏夫君   安宅 常彦君     石川 次夫君   辻原 弘市君     島本 虎三君   西宮  弘君     大原  亨君   原   茂君     山口 鶴男君   細谷 治嘉君     堀  昌雄君   安井 吉典君     斉藤 正男君   近江巳記夫君     大橋 敏雄君   沖本 泰幸君     貝沼 次郎君   鈴切 康雄君     伊藤惣助丸君   中野  明君     相沢 武彦君   林  孝矩君     古寺  宏君   和田 春生君     渡辺 武三君   谷口善太郎君     津川 武一君   東中 光雄君     浦井  洋君 同日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     相川 勝六君   石川 次夫君     横路 孝弘君   大原  亨君     上原 康助君   斉藤 正男君     内藤 良平君   島本 虎三君     辻原 弘市君   堀  昌雄君     細谷 治嘉君   山口 鶴男君     阿部喜男君   相沢 武彦君     中野  明君   伊藤惣助丸君     松尾 正吉君   大橋 敏雄君     樋上 新一君   貝沼 次郎君     渡部 通子君   古寺  宏君     林  孝矩君   渡辺 武三君     栗山 礼行君   浦井  洋君     米原  昶君   津川 武一君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   阿部喜男君     原   茂君   上原 康助君     久保 三郎君   内藤 良平君     川崎 寛治君   横路 孝弘君     木原  実君   樋上 新一君     近江巳記夫君   松尾 正吉君     和田 一郎君   渡辺 通子君     瀬野栄次郎君   栗山 礼行君     曽祢  益君   米原  昶君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   川崎 寛治君     井上 普方君   木原  実君     小林 信一君   久保 三郎君     西宮  弘君   瀬野栄次郎君     小川新一郎君   和田 一郎君     鶴岡  洋君   曽祢  益君     和田 春生君   山原健二郎君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   井上 普方君     安井 吉典君   小林 信一君     中谷 鉄也君   小川新一郎君     沖本 泰幸君   鶴岡  洋君     岡本 富夫君 同日  辞任         補欠選任   中谷 鉄也君     阿部 昭吾君   岡本 富夫君     鈴切 康雄君 同日  辞任         補欠選任   阿部 昭吾君     安宅 常彦君 同月二十四日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君     大出  俊君   阪上安太郎君     勝澤 芳雄君   辻原 弘市君     米田 東吾君   西宮  弘君     中村 重光君   原   茂君     山口 鶴男君   安井 吉典君     上原 康助君   近江巳記夫君     樋上 新一君   沖本 泰幸君     有島 重武君   鈴切 康雄君     小川新一郎君   中野  明君     渡部 通子君   林  孝矩君     斎藤  実君   塚本 三郎君     栗山 礼行君   谷口善太郎君     田代 文久君   東中 光雄君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     安井 吉典君   大出  俊君     安宅 常彦君   勝澤 芳雄君     井上 普方君   中村 重光君     堀  昌雄君   山口 鶴男君     阿部 昭吾君   米田 東吾君     山谷 鉄也君   有島 重武君     桑名 義治君   小川新一郎君     大橋 敏雄君   斎藤  実君     岡本 富夫君   樋上 新一君     貝沼 次郎君   渡部 通子君     古川 雅司君   栗山 礼行君     塚本 三郎君   田代 文久君     林  百郎君   松本 善明君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   阿部 昭吾君     内藤 良平君   井上 普方君     後藤 俊男君   中谷 鉄也君     阿部喜男君   堀  昌雄君     西宮  弘君   大橋 敏雄君     多田 時子君   岡本 富夫君     林  孝矩君   貝沼 次郎君     二見 伸明君   桑名 義治君     沖本 泰幸君   古川 雅司君     中野  明君   林  百郎君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   阿部喜男君     辻原 弘市君   後藤 俊男君     阪上安太郎君   内藤 良平君     長谷部七郎君   多田 時子君     鈴切 康雄君   二見 伸明君     近江巳記夫君 同日  辞任         補欠選任   長谷部七郎君     横路 孝弘君 同日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君     原   茂君 同月二十五日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君     堀  昌雄君   小林  進君     木原  実君   阪上安太郎君     大出  俊君   楢崎弥之助君     岡田 利春君   原   茂君     中谷 鉄也君   細谷 治嘉君     山口 鶴男君   沖本 泰幸君     古寺  宏君   鈴切 康雄君     小川新一郎君   塚本 三郎君     栗山 礼行君   谷口善太郎君     土橋 一吉君   東中 光雄君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   大出  俊君     井上 普方君   岡田 利春君     楢崎弥之助君   木原  実君     横路 孝弘君   中谷 鉄也君     原   茂君   堀  昌雄君     上原 康助君   山口 鶴男君     細谷 治嘉君   小川新一郎君     鈴切 康雄君   古寺  宏君     田中 昭二君   栗山 礼行君     塚本 三郎君   土橋 一吉君     青柳 盛雄君   松本 善明君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   井上 普方君     島本 虎三君   上原 康助君     安宅 常彦君   横路 孝弘君     小林  進君   田中 昭二君     沖本 泰幸君   青柳 盛雄君     米原  昶君 同日  辞任         補欠選任   島本 虎三君     阪上安太郎君   米原  昶君     谷口善太郎君 同月二十七日  辞任         補欠選任   大村 襄治君     佐藤 守良君   森下 元晴君     愛知 揆一君   安宅 常彦君     上原 康助君   安井 吉典君     長谷部七郎君   東中 光雄君     田代 文久君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 守良君     大村 襄治君   上原 康助君     安宅 常彦君   長谷部七郎君     横路 孝弘君   田代 文久君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君     安井 吉典君 同日  理事阪上安太郎君、辻原弘市君及び鈴切康雄君  同月二十二日委員辞任につき、その補欠とし  て、阪上安太郎君、辻原弘市君及び鈴切康雄君  が理事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算  主査からの報告聴取      ――――◇―――――
  2. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についておはかりいたします。  委員異動により現在理事が三名欠員となっておりますので、これより補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例によりまして、委員長において指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、       阪上安太郎君    辻原 弘市君       鈴切 康雄君 を理事に指名いたします。      ――――◇―――――
  4. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 昭和四十七年度一般会計予算昭和四十七年度特別会計予算昭和四十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  去る十八日から審査を行なってまいりました分科会審査は、一昨二十五日をもちまして全部終了いたしました。  この際、各分科会主査より、それぞれ分科会における審査報告を求めます。まず第一分科会主査森田重次郎君。
  5. 森田重次郎

    森田委員 第一分科会における審査の経過及び結果を御報告いたします。  本分科会審査の対象は、昭和四十七年度総予算皇室費国会、裁判所、内閣総理府のうち防衛庁経済企画庁を除く分、法務省、文部省所管及び他の分科会所管以外の事項でありまして、去る十八日より二十五日まで慎重に審査いたしました。  審査は、各省庁当局より予算の説明を聴取した後に、質疑を行ないました。質疑者の数は延べ六十九名、質疑時間は三十九時間余に及びましたが、各分科員協力を得まして円滑に審査が行なわれました。  質疑の内容はきわめて広範多岐にわたっておりますので、その詳細につきましては会議録に譲ることとし、ここではその数点について報告することにとどめます。  まず皇室費関係では、皇居、御所、離宮等への一般国民の参観、両陛下の海外あるいは沖繩への御旅行などの質疑があり、また国会関係では、議員の国会図書館利用、職長の待遇改善等に関する質疑が行なわれました。  次に、内閣総理府関係では、同和対策事業について、十カ年計画は、財政的裏づけが明確でないので、所期の目的を達成し得ないのではないか。事業補助単価が低いため、自治体の超過負担が多く、事業遂行円滑化を妨げている。また、事業周辺地域との調和をとって行なわれないために、逆に格差が生じて別の新しい差別感を生む場合が多い。さらに、四十六年度の全国の実態調査協力しなかったところもあるようだが、この分はどう処理するのか等の質疑がありました。これに対しては、十カ年計画は全体で幾らという予算額はきめていないが、現在の進捗状況からいって、事業目標は七年ぐらいで達成したいと思う。事業単価が低いという点は、特に建物関係に問題があると思われるが、年々その改善に努力している。さらに、全国的な実態調査は四十六年で終わったはずだが、もし未調査の個所があれば補充調査を行ないたい。また、事業は第一義的には他の諸地域より劣った施設の整備をするもので、逆の差別感など起こらないように配慮していきたいとの答弁がありました。  また、沖繩県民の対米請求権善後処理について質疑があり、これに対しては、詳細な調査は復帰後に行なうことになっているが、四十七年度には調査費千八百万円と講和前の人身被害に対する見舞い金二億三千万円を防衛施設庁関係予算に計上している。この処理事務防衛施設庁が行なうが、総理府を窓口とするというさきの国会答弁もあり、また県民感情もあるので、現地での県民との実際の接触は、沖繩開発庁総合事務局が当たるようにしたいとの答弁がありました。  次に開発環境保全調和に関する質疑があり、これに対しては、開発による自然環境の破壊の事例は多いが、特に最も著しいのがダムの建設である。局部的に水量が枯渇してしまうような従来のやり方は、自然保護の点からも、住民の生活擁護の点からも深く反省する必要がある。全国的に調査をして環境容量というようなものをつくり、開発もこれに従って実施していくようにすべきだが、いずれにしろ、開発に際しては計画立案の段階で環境庁の意見を十分に反映できるようにしたいとの答弁がありました。  以上のほか、沖繩の諸問題、公務員の週休二日制、行政監理委員の任命、公害の無過失賠償責任制度、海洋汚染、水質汚濁、原子力発電の安全性と環境保全その他の問題について質疑がありました。  次に、文部省の関係では、幼稚園教育について、教育の義務化、公立と私立の格差是正、幼稚園の適正配置、就園奨励金等に関する質疑が行なわれました。これに対しては、教育の義務化は、自治体等の幼稚園設置の義務化であり、全員の就園の義務化を意図するものではない。振興十カ年計画の目標は、希望する者はだれでも入れるようにすることである。公立と私立では父兄負担の格差が大きいが、私立に対する国と地方の財政援助を充実し、特に四十七年度からは、学校法人以外の幼稚園に対しても、人件費の一割を補助できるような交付税上の措置を講じている。また、幼稚園の適正配置は今後の振興計画を進める上で最も重要な問題なので、四十七年度に調査を実施し、私立の経常に打撃を与えるようなことは避けたい。また、低所得世帯に対する就園奨励費の支給は、父兄負担の軽減のための新しい措置であり、児童に不必要な劣等感を与えないよう十分配慮するつもりであるとの答弁がありました。  このほか、医学教育と医科大学、公立文教施設に対する補助、学校給食、文化財保護、その他の問題に関する質疑がありました。  次に、法務省及び裁判所の関係では、地方出先機関の統合、中国からの来訪者の身辺警護、過激派集団に対する公安調査庁の調査、裁判官の採用その他の問題に関して質疑がありました。  質疑終了後、分科会の討論、採決は本委員会に譲ることに決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)
  6. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、第二分科会主査野田卯一君。
  7. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 第二分科会審査の経過及び結果を御報告いたします。  第二分科会審査対象は、昭和四十七年度総予算中会計検査院、防衛庁、外務省及び大蔵省所管のものでありまして、去る三月十八日より二十五日まで休日を除き六日間慎重に審査いたしました。  まず、各省庁ごとに予算の説明を聴取した後、質疑を行ないました。質疑者は延べ四十九名、質疑時間は約三十時間余に及び、いずれも貴重な質疑応答で、分科会各位の御協力により円滑に審議を進めることができました。その詳細は会議録でごらんを願うこととし、その概要を報告することにとどめます。  防衛庁関係では、自衛隊の基地建設に対し、分科員から、地元の利用計画や市町村議会の反対要請についてどのように対処するのか、補償措置や代替地の検討を考慮すべきではないかとの質疑があり、政府当局より、国防の必要性と地元民の十分な理解のもとに、住民の利益と共存し得る措置を検討しながら円滑に事を運びたいとの答弁がありました。なお、青森県、防衛庁技術研究本部下北試験場による補償問題、同県西津軽郡車力村射撃場の用地買収、新潟県魚雷艇基地の建設、兵庫県宝塚市の長尾山演習場の返還要求、大阪府能勢町のナイキ基地建設、八尾市の八尾飛行場からの自衛隊の引き揚げ等について、慎重な検討を行なう旨の答弁がありました。  また、基地提供用地の賃貸借契約について、二十年を経過した今日、民法第六百四条による再契約の取り扱いについて提供地生の了解が必要であり、この点をどのように考えるかとの質疑に対し、政府当局は、なるべく円満に再契約をお願いするとともに、その方法等を含め、関係省庁と協議を行なう旨の答弁がありました。  さらに、一例として、所沢基地返還に伴い、防衛医科大学校の設置に関連し、地元の反対特に医師会等の協力等について質疑があり、政府当局より、自衛隊の医官養成とともに病院、研究所等を建設し、病院は一般市民の診療と開業医師のこれが利用を含め、でき得る限り開放的な方途で活用をはかりたい旨の答弁が行なわれました。  その他、米軍基地等の問題としては、キャンプ朝霞の利用状況と返還、グランドハイツの返還と従業員、メイドの処遇問題、横須賀の米軍鑑船修理部のドック返還問題、水戸射爆場の返還、山田弾薬庫の返還とあと地利用、福岡県芦屋射爆場の返還、神奈川県への米陸軍調達事務所の移転、東京湾区の米軍ヘリポートの移転、北富士演習場の返還問題等、いずれも地元側の要望が述べられ、政府当局との間に質疑が行なわれました。  なお、福岡県春日町陸上自衛隊駐とん地において、配送業務に従事する郵政外務職長と自衛隊員の間にトラブルが生じた問題について質疑が行なわれましたが、この件について、分科員の所属する党より、現地に調査団を派遣する旨の発言がありました。  以上のほか、新島本村前浜海岸における漂流弾丸め爆発事故の取り扱い、陸上自衛隊富士学校の遊就館の運営を含む教育のあり方、自衛隊機と民間航空との協力体制、那覇空港の返還問題、沖繩の自衛隊配備計画と国防会議での検討等々、多くの点についても質疑が行なわれました。  次に、外務省関係では、流動する国際情勢に対処するため、外務省の機構充実を含め、国際外交に対処する必要性が述べられ、特に職長の充実、休暇帰国制度の改善、在外公館員の宿舎の確保等について質疑があり、政府当局より、外務省職員の定員は諸外国に比べ数も少なく、休暇帰国は四年に一度の割合であり、今回三年に一度程度に改正を予定しており、少しずつでも他国並みの水準へ近づけたい旨の答弁がありました。  また、経済協力のあり方について、機構の整備とわが国の諸外国に対する経済援助の内容の充実について質疑があり、これに対し、政府当局より、平和外交の推進のためにも今後は経済援助の質的充実をはかり、今回はその一環として、国際交流基金の設置を含め、経済協力の実をあげたい旨の答弁がありました。  日中問題については、最近、中国友好代表団の来日に際し、国内において不愉快な印象を与えるような行動が見られたが、入国の取り扱いや、警備その他の点で十分配慮がなされるよう要望があったのに対し、政府側より、日中国交回復の前提のためにも十分慎重に本問題に対処したい旨の答弁がありました。  日ソ問題については、平和条約締結のための交渉時期、交渉代表はどうなっているか、領土返還と、同地域に対し非武装宣言をする考えがあるか等について質疑が行なわれ、政府側より、秋より年末にかけて平和交渉を開始したい。交渉代表はまだ検討の段階であり、交渉の際には、各党と党首会談の機会を持つつもりである。北方領土に対する非武装宣言については、交渉前の段階では、推察にまかせる旨の答弁がありました。  日米間の事前協議の問題について、核を対象とする日米安保協議委員会の開催見通し、事前協議の具体的取り扱い等について質疑があり、政府当局より、日米安保協議委員会については、予算成立後の早い機会に開催を考慮する旨の答弁がありました。  沖繩関係については、那覇空港の返還は、復帰日における返還が予算成立との関係でできないこと、全軍労ストについては、現在日米間で最高の政治的判断を要する時期に達しているので、これが解決に一そうの努力をしている旨、質疑を通じて答弁がありました。  その他、核兵器の撤去費、日中国交正常化のための考え方、尖閣列島の領有権問題、マラッカ海峡の航行と領海権等について質疑が行なわれました。  大蔵省所管では、多くの分科員から、国有地の払い下げとその対策について質疑があり、特に米軍施設返還に伴うあと地利用、たとえば王子キャンプ、山田弾薬庫、福岡地区の米軍施設や万国博のあと地利用等の諸問題が提起され、地元の計画に沿った公園緑地等、住民福祉の立場に立った措置の要請がなされました。これに対し、政府当局より、都市及びその周辺の国有地については、三月十日の国有財産中央審議会の答申を尊重し、できるだけこれを公共用地に利用し、都市再開発に寄与させるとともに、国有財産の効率化につとめる旨の答弁があり、その他、万博あと地については、独自の評議委員会により利用計画を定めることとし、また米軍施設については、解除の方向で検討中のものも二、三あるとの答弁がありました。  さらに、専売公社の関係についても多くの質問があり、その中で、刻みたばこの生産、販売の現況について、数名の分科員から、できるだけ入手しやすい方途を考慮することが老人対策上からも望ましい旨の発言があり、公社側より、生産計画と販売範囲の検討をする旨の答弁がありました。  その他、暫定予算の規模と方針、那覇空港の返還に伴うP3Bの移転経費、第四次防と四十八年度防衛予算、立川基地への自衛隊移駐と暫定予算関係、財政投融資計画国会承認、国有林野事業特別会計の抜本対策、沖繩の円・ドル交換、在沖繩の米国資産引き継ぎ、郵便貯金の小口金融、国民福祉につながる金利政策、外貨の有効活用と円の再切り上げ、歩積み・画建ての調査、円・元決済、台湾における日本の債権の取り扱い、日韓経済会議と中国に対する姿勢、物品税の改正、徴税執行上の申告税の割り当て徴収、交際費課税のあり方、税収見積もり、租税負担と税制との関係、生命保険会社、証券会社、商品取引所の外務員による取引事故防止策と紛争処理の適正化、地方公共団体による市街地再開発事業問題、物統令の廃止と米価問題、特定業種への融資と地価高騰との関係、林野事業従事者の処遇改善等の質疑がありました。  専売事業関係については、たばこの火災とたばこの形状の検討、葉たばこの病虫害対策と補償措置、沖繩の葉たばこ、製塩事業の助成措置、専売公社倉庫の移転、たばこ配送事業のあり方、専売納付金の目標と実績、たばこのニコチン含有量等の表示、輸入たばこの値下げ、たばこ乾燥室の助成措置、中国葉たばこの輸入等について質疑が行なわれました。  最後に、会計検査院関係では、国有地の貸し付け状況、特に名古屋市における平和公園内のクレー射撃場の貸し付けについて、国有財産法第二十二条にいう無償貸し付けの契約目的に違反していることに対する名古屋市、大蔵省、会計検査院の措置に対し、今後とも十分なる措置を講じ、これが市民の公園としての機能が十分に発揮されるよう要請がなされたのであります。  質疑終了後、分科会の討論、採決は本委員会に譲ることと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)
  8. 瀬戸山三男

  9. 田中正巳

    田中(正)委員 第三分科会における審査の経過並びに結果について、御報告申し上げます。  本分科会審査の対象は、昭和四十七年度総予算経済企画庁、厚生省及び自治所管のものであります。  審査は、厚生省、経済企画庁、自治省の順に、去る三月十八日から二十五日主で日曜日、祝日を除く六日間にわたって慎重に行なわれ、各省庁当局から所管予算の説明を聴取した後、質疑を行ないました。その間、質疑者の数は延べ五十五名、質疑時間は約三十三時間に及びましたが、各分科員協力を得まして円滑に審査が行なわれました。  質疑応答の内容はきわめて広範多岐にわたっておりますので、その詳細につきましては会議録に譲ることといたしまして、ここでは簡単にその概要を申し上げます。  まず、厚生省所管では、第一に、老人問題につきまして、老人対策を進めるにあたって計画を持つべきではないか。老齢福祉年金の額を大幅に引き上げてはどうか。また、老人医療無料化の所得制限を撤廃するとともに、対象者年齢を引き下げる考えはないか。第二に、医療費問題について、医療費にスライド制を取り入れる考えはないかとの趣旨の質問に対しまして、政府から、第一の老人問題につきましては、先般来から厚生省内に老齢者対策のプロジェクトチームを設けて具体的方策の検討を進めており、今後この検討成果を踏まえて計画性のある老齢者対策を立て、これを強力に進めてまいりたい。老齢福祉年金の額は、四十八年度には是非五千円にしたい。また、老人医療無料化の本人の所得制限はやむを得ないが、扶養義務者の所得制限は、できるだけ撤廃の方向で努力したい。年齢については、いま変える考えを持っていないが、寝たきり老人については将来の問題として前向きに考えたい。第二の医療費のスライド制については、医療費が賃金や物価の変化に即応して検討されることは当然であると思うが、完全スライド制はむずかしい。この問題は慎重に検討する必要があるので、中医協でも特別の小委員会をつくって、この問題を検討していくことになっているという趣旨の答弁がありました。  以上のほか、国民年金制度の改革、医療保険対策、保育所の整備など保育対策の強化、心身障害児者対策、腎炎ネフローゼ児対策、児童手当の目的、沖繩の医療体制の整備、救急医療体制の整備、病院内感染防止対策、医師の臨床研修のあり方、にせ医者問題、医師の時間外診療拒否、養護施設の充実、サリドマイド事件、予防接種事故救済、風土病対策、難病対策、ハンセン氏病対策、酒害対策、慢性腎臓失患対策、薬の副作用、薬の広告、大牟田爆発赤痢事件、同和対策の推進、消費生活協同組合事業の推進、戦没者遺骨の収集、水資源開発と水道行政の強化、不当処刑兵士の援護等の諸問題について質疑が行なわれました。  次に、経済企画庁関係では、新全国総合開発計画について、新全総計画の総点検ではどこに重点を置くのか。点検作業はいつ終えるのか。また、新全総計画の中の大規模工業開発と住民との関係はどうかとの趣旨の質疑に対しまして、政府から、新全総計画の基本的な考え方自体はよいと思うが、産業開発環境保全などの計画の実施面に問題がある。中でも、特に環境問題が深刻化しており、この点を重点に総点検を行ないたい。点検作業は本年中にほぼ終えたい。また、大規模工業開発地域住民の福祉向上のために行なうもので、住民の協力がなければ実施できない。したがって、開発を進めるにあたっては、地域住民の理解を得るよう住民との意思疎通をはかって万全を期したいとの趣旨の答弁がありました。  以上のほか、本年度の経済見通しと無気回復策、公共料金、管理価格、電気・ガス料金などの物価問題、水資源開発の推進、むつ小川地域開発等の諸問題について質疑がありました。  最後に、自治省関係では、地方超過負担の問題について、全国知事会の最近の調査によると都道府県分六百三十五億円、市町村分千四百三十四億円の超過負担が生じているが、この超過負担解消のための対策いかんとの趣旨の質疑に対しまして、政府から、地方団体の超過負担の問題は、地方財政にとって重要な事柄であり、四十三年度から計面的に解消措置がとられ、かなり改善されてきた。しかしながら、物価の上昇や事業量の増大などに基因して、新しい意味の超過負担が生じている実情である。四十七年度予算においては、補助単価の是正などを行なうとともに、実態調査を行なうための調査費を計上している。四十八年度の予算編成に間に合うように調査をやり、計画的に解消をはかるべく努力したいとの趣旨の答弁がありました。  以上のほか、東京都特別区の区長公選、都市の選挙区の分割、政治資金規正法案の国会提出、復帰に伴う沖繩県の行政、財政問題、臨時沖繩特別交付金の内容、地方団体の財源充実対策、租税特別措置、住民税の減税、市街化区域内農地の宅地並み課税、公立高等学校授業料の値上げ、人口急増地域対策、保育所に関する国庫負担金、公営企業対策、公営企業金融公庫の運用資金、同和対策の推進、消防団員の処遇、コンビナートの防災対策、都市防災対策等の諸問題について質疑がありました。  なお、保育所に関する国庫負担金の予算措置について、児童福祉法第五十二条の規定との関係が問題となりましたことを特に申し上げておきます。  かくて一昨日、質疑を終了し、分科会の討論、採決は本委員会に譲ることに決定した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)
  10. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、第四分科会主査植木庚子郎君。
  11. 植木庚子郎

    ○植木委員 第四分科会における審査の経過並びに結果について、御報告申し上げます。  本分科会審査の対象は、昭和四十七年度総予算中農林省、通商産業省及び労働省の各所管分でありまして、去る十八日から一昨二十五日までの間において、その審査は、農林、通産、労働の順に、それぞれ所管ごとの説明を聴取した後、質疑応答の形で行なわれました。審議における質疑者の数は延べ正十六名、質疑時間は約三十五時間に及びましたが、各分科員の御協力により、終始円満裏に推移いたしました。  質疑の内容はきわめて広範多岐にわたりますので、その詳細は会議録に譲ることといたしまして、ここでは簡単に要点のみを申し上げます。  まず農林省所管について申し上げますと、今後のわが国の農政はいかにあるべきか、 具体的ビジョンを持っておるか等の質疑があり、政府は、これからの農政のあり方は農業が農業として成り立つようその生産性を向上させ、国内における需給のバランスを考えつつ、国際競争力の確保につとめることが必要である。昭和五十二年度には、米については一〇〇%、畜産については八〇%ないし九〇%の自給をし得るように持っていきたい。かような観点から米については生産調整を考えており、その生産性向上のためには現在十アール当たり百十七時間を要する労働時間を基盤整備や営農の機械化等により五十時間程度に短縮する必要があると思われる。果樹の振興については、遠い将来を考えながら、五年ごとに基本計画を樹立、実施する必要があり、近くその改定を行なう所存である。もっともオレンジの自由化は考えていないが、すでに自由化されているグレープフルーツの問題については、輸入ワクの上に季節関税制度を取り入れて国産品の保護をはかりたい旨の答弁がありました。  また、中国産牛肉の輸入を行なうべきではないかとの質疑に対しましては、従来から中国産牛肉の輸入を認めていないのは決して政治的理由からではなく、もっぱら口蹄疫予防の防疫的観点からであり、国際獣医事務局、OIEの年表にも、中国にはなお口蹄疫が存在していると報告されておるためである。しかしながら中国も国連に復帰したのでいずれはOIEにも加盟するであろうし、その実態も明らかになると思われるので、実情に即して前向きで検討したい旨の答弁がありました。  また、林業に関して、木材需給と国内生産の見通し及び外材の輸入増大について、昭和四十一年の閣議決定にかかわる林業の長期計画の見通しが必要でないかとの質疑がありました。これに対し、政府は、木材需要の増大、国内生産の減少、流通過程の複雑化等の理由から、当初見通しの再検討が必要となってきたので、四十七年度中にその修正を行ないたい旨の答弁がありました。  以上のほか、生産者米価の引き上げ、新米と古古米の交換、農産物の自由化、農地の宅地並み課税、農業の基盤整備と大型機械の効果、土地改良事業及び干拓地の農家負担、ため池工事と補助金、沖繩振興対策と沖繩農業、農林水産における同和対策事業、北方漁業の安全と日ソ漁業交渉、林業基本法と林政、自然保護環境保全法案等の諸問題について質疑が行なわれました。  次に、通商産業省所管について申し上げます。  アメリカ系資本を中心とする多国籍企業が世界のGNPの一五%からの生産活動を行なっている現状であり、場合によっては一国の経済を支配するに至るおそれすらあり、わが国としては多国籍企業の動向、その意図するところ等を的確に把握し、その歯どめ策等を講ずべきではないかとの質疑に対して、政府は、資本の自由化は世界的な動向であり、国際社会の中で産業調整をどのように行なうかが問題である。わが国に入ってくる資本については、現在までのところ出資の五〇%規制等をもってその歯どめとしておる旨の答弁がありました。  また、武器輸出に関連して、わが国が憲法上武器をつくり得るのか。さらに、航空機輸出の実態等から、今日のようないわゆる産軍癒着の状態が続き、防衛産業が一つの戦略産業として位置づけられるようにもなるならば兵器の定義を明確にしておく必要がある。また、幾ら武器の輸出の原則をつくっても兵器の定義が明確でないならば意味がない。したがって、予算の審議中に将来の防衛産業の見通しをつけた上での兵器に対する政府の統一見解を出すべきだとの質疑に対して、政府は、憲法の精神は国際紛争を武力でもって解決することはしないということからの御質問と考えるが、武器輸出は慎重でなければならず、したがって武器についての明確な定義が必要と思われるので、予算の審議中に政府の統一見解を出したい旨の答弁がありました。  以上のほか、国連貿易会議、日中その他の共産圏貿易、シベリア開発、航空機工業のあり方、パイプライン、原子力発電の安全性、地下資源開発、工業再配置及び拠点開発沖繩海洋博、電算機の研究開発、PCB公害等の諸問題についての質疑応答がありました。  最後に、労働省所管について申し上げます。  米国の新経済政策の実施、いわゆるドル・ショックによって、わが国の経済が停滞し、景気の回復がおくれ、その影響として、労働事情は休職、失業、一時帰休等の現象が起こっているが、これに対する対策はどうか。また、日本の経済は従来輸出中心であったが、今後は輸入を伸ばし、国内の低賃金を解消して購買力の増大をはかり、労働者の生活や福祉の確保につとむべきではないか等の質疑に対し、政府側より、雇用や失業に関する情報資料の入手等に対する配意努力、わが国の終身雇用制を活用しての一時帰休の場合における給与の効率的支給の指導、離職者対策法、中高年齢者雇用促進法の適用、適切な職業指導や職業訓練の実施、また下期における景気回復を目ざしての四十七年度大型予算及び暫定予算による財政面からの積極的意図等について答弁がございました。  次に出かせぎ労働者対策については、出かせぎ労働者台帳の作成、労働者手帳の発給等が十分に行なわれていないので完全な把握ができていない。職安と職業訓練所等が連係をとって実効ある方途を講ずべきである。また、出かせぎ労働者の所得課税については、家族と離れて生活しており、中途帰郷の場合の旅費等のこともあり、特殊の控除を行なう等の措置を講ずべきではないか。さらに、就職先での賃金の不払い、労働災害の問題等もあり、労働条件の改善、福利厚生の面、寄宿舎の総点検等を行なうため、監督官を大幅に増員すべきではないかとの質疑があり、これに対し、政府側から、出かせぎ労働者は現在約六十万人いるが、労働者手帳は発給している者が約五十万人、これらは職業安定所を経由したものである。今後は市町村と安定所と一体となり、出かせぎ者の数の把握につとめ、就労経路の正常化、就労条件の向上をはかりたい。職業訓練については、大工、溶接、板金等について短期講習を行ない、補助も増額してまいりたい。出かせぎ者の所得税軽減については、四十七年度税制改正の際、農林省からも要望があり、労働省としても大蔵省と交渉するつもりである旨の答弁がありました。  以上のほか、週休二日制、商年齢者の雇用対策と定年延長、労働災害の防止と労災補償、農業者転職対策と兼業問題、炭鉱離職者対策、中小企業退職金共済制度、雇用促進対策、同和地区労働者対策、沖繩の本土復帰と労働問題、日本航空の不当労働行為等の諸問題について質疑応答がありました。  かくして一昨二十五日、質疑をすべて終了いたしました後、本分科会の討論、採決は、先例により本委員会に譲ることといたした次第でございます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)
  12. 瀬戸山三男

  13. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 第五分科会について御報告申し上げます。  本分科会審査は、建設省、運輸省及び郵政省の所管でありまして、去る三月十八日より三月二十五日まで慎重に審査を行ないました。  各省当局より所管予算の説明を聴取いたしました後、質疑に入り、その問質疑者は延べ六十二名、質疑時間は約三十四時間に及びましたが、各分科員協力を得まして円滑に審査が行なわれました。  質疑の内容はきわめて広範多岐にわたっておりますので、その詳細につきましては会議録に譲ることとし、ここでは簡単にその概要のみを申し上げます。  まず建設省関係について申し上げます。  琵琶湖の総合開発に対する質疑に対して、法案の提出は基本的事項について地元の合意が得られず、今回は困難と思うが、今後も何どきでも提出できるように努力する。汚染対策は、周辺の流域下水道の整備を推進いたしたい旨の答弁がありました。  住宅対策については、同和対策としての住宅の超過負担は、公営住宅は四十五年に解消し、また地区整備費は今後三年くらいに解消したい。家賃の上昇と値上げについては、上限を抑えていきたいが、新旧の家賃の不均衡は是正すべきではないかと思う旨の答弁がありました。  地価対策としての企業の土地所有の規制、地価上昇の歯どめについては、実態を調査すべきだが、企業の機密に触れるので困難と思う。また歯どめとしては、長期的対策も必要だが、端的には税制上の手段も方法と思う旨の答弁がありました。八ツ場ダムの建設促進の協力依頼に対しては、限度を越えた働きかけは行き過ぎと思う。十分調査して善処したい旨の答弁がありました。また、長野原町内の護岸工事と八ツ場ダム建設の関係については、両者を交換条件とする考えはない旨の答弁がありました。  その他、霞ケ浦の開発、日照権の確保、法定外公共物の管理、河川敷の有効利用、老人の住宅対策、地方住宅公社の総点検、出かせぎ労働者の賃金の不払い、復帰後の沖繩開発などの諸問題について質疑応答がありました。  次に、運輸省関係について申し上げます。  まず航路補償の質疑に対して、補償は法律的に異議が多いので困難と思うが、しかし何らかの救済措置が必要かと思う旨の答弁がありました。  日中の航空路の開設については、国交正常化の一環として基本的にはできるだけ早く政府間協定を結び、定期便を就航させたい。しかし場合によっては不定期便、臨時便をあわせて就航できるよう努力していきたい旨の答弁がありました。  成田空港の附帯施設等に対しては、従業員の住宅は、県、公社、公団の住宅を優先的に入居させていただく等の協力を得て一千戸を確保している。また、運用時については騒音問題もあるので、羽田並みの規制をしたいと考えている旨の答弁がありました。  航空局の定員削減と業務委託の質疑に対しては、委託内容は通信施設の保守業務である。航空保安協会の整備内容はいまはまだそれほど整備されていない。また、協会の資金は政府からの委託費、船舶振興会からの補助金等である旨の答弁がありました。なお、質疑者より保安協会の内容についての資料の提出が要求されたのであります。  国鉄関係質疑に対しては、中距離以上のトラックの貨物輸送は禁止し、鉄道輸送にすべきではないかとの問いに対して、その方向で検討している。また、当主流通米の割引については、食料用は提携輸送をするものについて、本年九月までという約束で営業割引を行なっている旨の答弁がありました。  その他、個人タクシーの免許基準の緩和と地域の拡大、本四架橋の見通し、自賠責の保険金額の引き上げと基金の設定、過疎地域の中小私鉄の助成、過疎バス対策の基本姿勢、マラッカ海峡の安全航行の確保、ジャンボの国内就航、内航海運対策と係船、新幹線の騒音対策、海水油濁防止対策、新幹線の建設と国内航空の役割り、第二新幹線の構想、赤字線の廃止と新線の建設、新幹線の建設計画の変更と地下鉄方式の採用、宇高のホーバークラフトの就航見通しなどの諸問題について質疑応答がありました。  続いて郵政省関係について申し上げます。  まず、郵政省の預金者への小口貸し付けの質疑に対しまして、考え方としては金融とかいうものではなく、預金者が金利の面で不利にならないように、一時的に立てかえようということでありました。また、消費者金融については、貸し出し率がもともといままで不満であったことは同感に思う。また、法案はおくれているが政府提案として出したいと思う旨の答弁がありました。  電報料金の値上げに対しては、認可について今後は審議会を利用するか、新たな諮問機関を設けてはかったほうがよいのではないかと思う旨の答弁がありました。  その他、不当労働行為、職員の不正行為、復帰後の沖繩の郵政関係職長の受け入れ、大都市の電話帳の回収対策、住宅用事業用電話の一本化、電電公社の回線事故と航空管制の支障などの諸問題について質疑応答がありました。  かくて一昨日、質疑は終了いたしましたが、本分科会の討論、採決は、先例により本委員会に譲ることと決定いたしました次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)
  14. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 以上をもちまして分科会主査報告は終了いたしました。      ――――◇―――――
  15. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより締めくくり総括質疑に入ります。辻原弘市君。
  16. 辻原弘市

    辻原委員 きょうは、承りますと総理のお誕生日だそうであります。いよいよ大詰めになりました予算審議にあたりまして、私は社会党を代表して、締めくくりの佐藤内閣に対する総括を行なわなければならぬことになりました。誕生日にいささかふさわしくはないと存じますが、まず私は、総理に対しまして冒頭佐藤内閣全体として残されておる、また佐藤総理御自身の政治責任というこの問題について、総理のはっきりした御所見を承らなければならぬと考えております。  今国会の冒頭に起きました四次防問題を振り返ってみますると、これこそ政府が口にしておった文民統制を無視するものであり、国防会議を軽視するもはなはだしい、こういう指摘をわれわれがいたしました。それについて、世論はあげて政府のこの失態を強く非難をいたしました。そういう経過をたどってついに議長あっせんとなり、議長あっせんの結果、政府は異例ともいうべき政府みずからの手になる予算案の修正を行ないました。あわせて総理が当委員会において遺憾の意を表明され、陳謝をされるという一幕で、この問題は一応事態の収拾をはかったのであります。われわれも予算審議の緒についたばかりでありまするし、予算に対する国民の期待ということをおもんばかりまして、一応の収拾はいたしましたが、その際に、私もあえてこの席上から申し上げておきました。しかし、事は終わったのではありません。政府の責任、総理御自身の責任というものはきわめて重大であり、今後もこれを追及いたしますということを申し上げたはずであります。国民もやはり、総理陳謝、予算案の修正、それで一体内閣全体の政治責任というものは終わったんだろうか、こういう疑問を今日もなお残しております。これはおそらく国民すべてがそう思っているに違いありません。当時、ここにおられる大蔵大臣も、また防衛庁長官も、この事態の責任をとりたいと申されたそうでありますが、総理があえてこれを押えられた。いま大蔵大臣は首を振っておられますが、私は新聞で承知したところであります。また、そのことの事実について、わが党の西宮委員がこの席上から質問をいたしました。その際総理は、個々の大臣の責任ではなくて、事はすべて私にあります、私の責任で処理をした、すべて、私の責任でございます、ということを強調されたのであります。そこで私は、この機会に、私の責任でございます、私があえてそれをやりましたという点についての責任、これを明らかにしていただきたいと思うのであります。このことは、当時から公明党の矢野さんをはじめ、われわれ野党がこの内閣全体、総理御自身の責任というものについて、内閣を代表して総理の明確な見解を示されたいということを要求してまいりました。いよいよ大詰めにまいりましたこの総括質問の段階に、総理は当予算委員会を通じて、国民に明らかにする責任があろかうと思います。いわゆる政治責任に対する統一見解を、この際お示しを願いたいと思います。
  17. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 辻原君にお答えをいたします。  ただいまお話しになりましたような経過をたどって本日の最終日と申しますか、予算の審議の総括締めくくり質問、こういう段階になりました。あらためてただいまのことを重ねて申しませんが、ただ私が申し上げたいのは、四十七年度予算の防衛予算と四次防問題と、これがからんでたいへんな審議上問題を残して、そしてこれが空白になり、同時にただいまのような政治問題化した。このことについて私自身がもちろん責任をとるべきだ、かように私は思っております。  責任のとり方は一体どうするのか。いろいろあると思います。私はやめることも一つの方法だと思います。同時に、問題は防衛関係予算、四次防というもの、その問題を真に文民統制の実をあげるような、そういう方向の解決をすることも一つの方法だと思います。私は、そういう意味で、この問題があとに不安や誤解を残さないような処置はつけたい、かように私考えております。ただいまお話しのありましたとおり、本来は四次防、その問題はこれから審議するという問題でございますけれども、予算に出ておる防衛関係費との関連においてこれを明確に説明をしなかった、こういう点が非常な疑問を残した。そこで、ただいまも御指摘になりましたように議長まで出てこられて、そして議長あっせん案をのんだ。予算の修正も、いまだかつてないような形のものを、政府自身の責任においてこれを行なった、こういうこと。このことを考えると、文民統制、政治優先のこの形がどうしても大事なことでございますから、そのことを基礎つけること、これが私の責任ではないだろうか、かように思います。私は、所信の一端を御披露いたしまして、私の考え方を申し上げたわけであります。
  18. 辻原弘市

    辻原委員 確かに、文民統制の責任は、これは個々の防衛庁長官であるとかあるいは大蔵大臣のみの責任に帰すべき問題ではないと私は思う。それは法制上のたてまえからいたしましても、国防会議議長である総理みずからの責任であります。だからそれをただすためになおどうおっしゃるのでありますか。なお今後もずっとやりたい、こうおっしゃるのでありますか。その辺のところをもうちょっとはっきり……。
  19. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 進退問題は触れておりませんが、私はただいま申し上げますように、ただいまの防衛問題の取り扱い方についてもっとはっきりしたことをきめることも一つの方法ではないか、このことが最も大事なことではないか。問題を起こしたその原因がそこにあるのでございますから、それを明確にする、これがまず何よりも必要なことだ、かように申し上げておる。
  20. 辻原弘市

    辻原委員 私は、あなたもおっしゃられましたが、責任のとり方に二つある。やめることも一つの道であろう。また過怠があった文民統制の実をほんとうにあげるという行き方もあるだろう。あなたは後者の道を選ばれる、こういうことでございますか。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの、今日の心境はただいま御指摘のとおりでございます。私は前者については皆さんからの御批判を、そのまま私自身が御批判は御批判としてまたこれは謙虚に受けとめるつもりでございます。
  22. 辻原弘市

    辻原委員 私は、いま申し上げました今国会冒頭のあの四次防問題に関する文民統制という問題だけで政府の責任を、また総理御自身の責任を云云するものではありません。その後の事態についても私は総理に重大な責任があると思います。  あらためてくどく繰り返す必要はないと思いますが、台湾帰属問題についてのあなたと外務大臣との食い違い、これは明らかであります。行きつ戻りつ、これではたして一体重要な日中問題に取り組めるのかどうなのか、国民は大きく不安を持っていると思います。  また、引き続いて起きました沖繩への物資のやみ輸送の問題についても、いまあなたがこの席上で、四次防でああいう結果になった、そういうことをなからしめるために、文民統制というものをほんとに国民に納得されるまでがんばって努力をしてみたいとおっしゃる口の音のかわかないうちに、またまたこういうことが起きた。一体総理の言っておられることは口だけではないか、こういう国民に与えた印象というものは免れまいと私は思うのであります。  それだけではございません。この席上でわが党の安宅委員が追及をいたしました外務省の和田情文局長の山形県下における言動のごときは、これは私は、何と抗弁をいたしましても、この事実自体というものは明らかである。政府の政策をないがしろにして、みずから事務当局の分を越えた発言というものは、これは綱紀の弛緩、綱紀の紊乱、下克上と私はいわざるを得ないと思うのであります。こういうことが今日、和田さんには気の毒だけれども、一例として私はあげざるを得ない。その他にも、今国会にも幾つかそういう事例が見られた。この綱紀の弛緩ということは一体何によって起きてきているのか。私は総理に深く御反省を願いたいと思う。  また最近、いわゆるポスト佐藤をめぐって国会の重要な審議をよそに右往左往しておるという与党内部の体制が、遺憾ながら黒い霧という形で新聞紙上の話題になるというがごときは、まさに私は論外であると思う。  こういうことは総理、一体どういうことから起きているかということについて、あなたはどうお考えになっておられますか。私は、まことに酷なようでありまするけれども、いま私があげつらいましたような問題の責任の所在というものは、はなはだ酷な言い方ではあるけれども、総理、あなたの御自身に帰する問題であります。  わが国の憲法下、現在の内閣制度のもとにおける総理というものは、強大な権限をその手におさめられている。非常に大きな権力を集中して持っておられる。同時に、その反面、私は、その責任というものはきわめてきびしいものがあると思うのであります。きわめて重大なものがあると思うのであります。そういう意味から、今日の事態についてあなたに責任があるということを、私はあえて申し上げなければならぬと思う。これに対する御所見を承りたい。
  23. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御指摘になりますように、ただいまの総理大臣、これはもう最高の地位でございます。したがいまして、そのもとにおいてできる内政、外交全部の基本的な、基礎的な責任は総理にあることは御指摘のとおりでございます。しかし、ただいまのお話しになりましたような事柄、たとえば沖繩に対する物資の輸送、あるいはまた情文局長の問題、あるいはまたただいまのポスト佐藤をめぐる問題等々のおあげになりました事柄、これは新聞では報道しておりますが、新聞必ずしも全部が正鵠を得ているものとは私は思っておりません。ことにポスト佐藤をめぐる問題については、これは新聞記事のほうにおいても、私は十分新聞社のほうも反省しておる、かように考えております。だから、そういう事柄で公党をしいられること、これは私はたいへん迷惑だと思います。いま新聞記事にこういう記事が出ている、黒い霧がある、そういうことで公党を誹謗されることは、これはやめていただきたいと思います。私はそのことだけは申し上げておきます。しかし情文局長やその他の問題について、私自身がこれはもう御批判のありました点について謙虚に承っておく、かように、私は先ほど来の姿勢のとおりでございますから、それはそのとおりお受け取りをいただきたいと思います。私の問題といたしましては、ただいまのところお答えし得るものは以上の点でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  24. 辻原弘市

    辻原委員 私がいま申し上げたような新聞紙上に出ていることについて、いま総理から陳弁がございました。私はそのことを重大問題として述べているのではありません。そういうことがうわさされ、そういう混乱が起き、また現に国会審議の中でもそういう傾向が見られる、こういう状態は一体どこから生まれているのか、綱紀の弛緩、これがどこから生まれているのか。事務当局にやる気がなくなっているということも事実である。そういうことが総理、どこから出ているかということについて、あなたに私は御所見を承ったつもりであるがおっしゃらなかった。  いま世間はこう言っているのです。相撲でいいますと佐藤内閣というのは死に体だというのです。おわかりですか。死に体というのは、からだの半分は外に出ている。勝負あった。足が土俵についておったって、足はそこにつけておられたって、からだはどこかにいってしまっているというのが、相撲でいう死に体です。マラソンでいうと、ゴール寸前でぶっ倒れた。見ている観客はもうじゃまだからどいてくれ、君はもう終わったんだ、だからどきなさいという状態だといっているのです。私はこれは一つの比喩を申し上げて失礼でありますが、おおよその国民、佐藤総理はりっぱな方だ、見識のある方だといってほめて支持されてきた方も、そうでない人も、与党も野党も、もう死に体だという見解についてだけは合意ができている。佐藤内閣というのはもはやこれはすでに任務を終わった、能事終われりということは、それは公式の席上でこういうことを申し上げると、そうだとおっしゃる方はありますまいが、少なくとも人間の勘からみますと、そういう感触なんです。だからそういう事態の中から今日のいろいろの混乱というものが巻き起こされている。だからそこに私は総理としてりっぱな御決断がこの際必要であろうというわけです。それが八年の長い間総理の座にあられ、そしていままさに政治家として新しい立場を踏まえられようとする総理が、やはりそういう世論の動向を見て、少なくとも今日の混迷、混乱をした状態に終止符を打たれるということが、総理としてのあるべきりっぱな政治家としてのお姿ではないだろうか、私ならそう思います。私ならそういたします。いかがでありますか。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 死に体、これはやはり記事が新聞に出て、私も見ました。これは同時に非常な皮肉な言い方あるいはかいぎゃくをも含めて死に体、こういうことでもあろうかと思っております。けれども、相撲の用語としてはただいま御説明になったとおりであります。したがって私は、ただいまのような御批判もあろうかと思いますから、そういう点は、先ほど来申し上げますように、謙虚に承っておきます、かように申し上げる。私がどういうようにするかということはこれは私のことですから、幾ら公人といいましても私にまかしていただきたい。ずいぶんお世話になりましたが、辻原君の言いなりになるわけでもございません。だから私が申し上げますように、謙虚に承っておきます、これで御納得がいくようにひとつお願いいたします。
  26. 辻原弘市

    辻原委員 最後に、もう一つ申し上げておきたいと思います。それは、これも新聞のことで、総理はあるいは否定をされるかもしれませんが、しかし、私は非常に重要な意味を持っていると思いまするので、あえてこの席上で申し上げるのであります。  それは、たとえばいま日ソ問題が時の問題になりつつある。この秋には、日ソ国交回復の話し合いが具体的に平和条約の取りつけという問題で進められるということもわれわれは承知をいたしております。それについて首脳会談の話が出ております。総理は何かそれに出席をしたいとかいうことをおっしゃった。はたしてそういうことをおっしゃったのか、また現にそういう御希望を持っていらっしゃるのか、こういうことについてもこの際私はお尋ねをしていく必要があると思いまするし、また、これは冗談かもしれません、ここにおられる瀬戸山委員長が、先ほどのそのいわゆる新聞記事をとらまえて、何か首相に進言をされたということが載っておりました。そのときに総理は非常に憤慨をされて、わしはいまだかつてやめるということは言ったことはないんだ、五選でも六選でもやる、こういうことを言われたということが載っておりましたが、しかしそういうちょっとしたことがいまデリケートに反映をする時期なんです。そこで私は先ほどからいささか耳ざわり、いささか失礼なことを申し上げておるわけでありますが、しかしそれらのことについて、まあ世論じゃなくて、世間をいろいろ迷わしたりいろいろな揣摩憶測が生まれたりすることは、私は、総理という一国の責任ある立場としては、たとえそれが冗談であってもふさわしくないと思うのです。そういうことについて最後に総理から、これまた御所見でありますが、承っておきたいと思います。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろの御意見があるだろうと思います。辻原君は辻原君なりに御意見がある、こういうことですから、その御意見は御意見として承っておきます。あえてとやかくは申しません。
  28. 辻原弘市

    辻原委員 私はきわめて建設的な意味でやはり申し上げているのでありますが、何か最後にそういう木で鼻をくくったようなお話では私も引き下がられませんね。これはしかし総理はやはりそういうことについてほんとうに世間を納得させるということがなければ、名宰相であったということにはなりませんぞ、これは。りっぱな人というのは、その出処進退を明らかにすること、責任をとること、これが私は政治家として一番大切なことではないかと思うのです。私もささやかながら政治家の一人として、そういう自分の考え、認識を持っておりまするがゆえに、あえて総理に申し上げておるのでありますから、私はそういう総理の態度はまことに合点がいきません。いま一度真剣なお答えを願いたいと思います。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも私の答弁が気に食わなかったらしくて、おこられましたが、しかしこれは辻原君の考えが違うのじゃないでしょうか。私のところにはいろいろな方の御意見がございます。私を叱咤勉励する方もあります。また非常に同情した気持ちの方もあります。同時にまた私のやり方が悪いといって、さっさとやめろという、そういう投書も参ります。(「そのほうが多いでしょう」と呼ぶ者あり)ところがこれがなかなか出てこないんです、私のところへ来るのはやはり私に同情しておる諸君でございますから。私の知らないような方から、ただいまのように、なぜやめなければならないのか、どういうわけだ、こういうような批判も出ております。私はそういうことをも含めて、先ほど来申し上げるように、それぞれの方がそれぞれの御意見を述べられる、それぞれの御意見は御意見として私は謙虚に承ります、かように申したのでございます。だから、先ほど来辻原君が辻原君の御意見を述べられて、これに対して私何ら理解を示さない、こういうことでたいへん御不満のようですが、私はそうじゃございません。なかなか言いにくいことをはっきり言われる、たいへん勇気のある発言だ、私かように思います。これはしかし、ただその問題は与党の方であれば私はなおその勇気に心から感謝いたしますが、野党の方ですから、本来の筋からいえばどうも気に食わないんだ、早くやめてくれればいい、かようにとれるほうが主でございますから、どうも、私は先ほど来のような返事、これがもう最高な返事じゃないか。私は謙虚に皆さん方の御意見を承る、これより以上に申し上げようのないこと、これだけは御了承いただきたいと思います。
  30. 辻原弘市

    辻原委員 昔から中国の有名なことばに、信なくんば立たずということばがあります。どうかきょうお帰りになりましたらもう一度――総理も御年配でございますから、そういうことについてはかつて十分御研さんあったと思いますので、その意味をもう一度かみしめていただきたいことを最後に私は希望申して、次の問題に移りたいと思います。  経済の問題について伺いたいと思います。  これは企画庁長官か大蔵大臣、どちらでもけっこうでありますが、最近いろいろ今後の景気見通しについての観測が行なわれているようでありますが、この委員会でもこれらの問題をめぐっての若干の議論がありましたけれども、いまの時点に立って、一体政府は景気回復の時点というものをどういうふうに見ておられるか。これは国民の聞きたいところでありまするから、ひとつそれについて――これは明確にするということはむずかしいでありましょうけれども、政府はいま新経済社会発展計画等の立案中でもあると聞いておりますから、それとの関連においてどう見ておられるか、景気回復の時点をどう見ておられるか、この点についてひとつお答え願います。
  31. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 昭和四十七年の、大体夏過ぎには景気が回復過程に入る、こういうような見通しをしております。
  32. 辻原弘市

    辻原委員 きわめて明確にお答えになったわけで、ちょっと私も驚いたのでありますが、四十七年の夏に回復に向かうであろう、こういうことでございますね。  そこで、私はひるがえって昨年の夏を実は思い出すのであります。私も大体そういう時点からやや回復に向かうであろうとまあ一般的に予測をいたしておりますが、ちょうど昨年の夏、八月十五日、やはりいまと同じような状態であったわけですね。大体そのときも、ちょうど昨年のいま時分やはり議論をしている。これは参議院の議論でありましたけれども、大体夏くらいになると回復するであろう、こういう見通しに立って、やや明るい前途に対する見通しの上にそれぞれ経済運営あるいは企業運営が行なわれておりました。ところが八月のニクソン・ショックで、自来回復期にあったのがふっ飛んでしまう。そして通貨問題が今日長引いておりますために景気が停とんしておる、こういう状態だろうと思うのです。  そこで問題になるのは、そういうことを繰り返しはすまいかというのが、今日企業運営をやっておられる方、特に中小企業なんかのいま非常に困っている方々の頭にある点はここだと思うのです。ずばり言いますれば、円の再切り上げが再び景気回復期にやられるんではないか。ここに投資に向かう意欲も依然として減退し、停滞をしておる。新しい仕事を手がけようとする人も手控えざるを得ない、私はいまこういう状態にあるんじゃなかろうかと思うのです。そこで、政府としてもそのために轍を再びおかしちゃいかぬ。昨年のようなもたもたした状態でもって水をぶっかけるということを繰り返しちゃいかぬ。私はそういう考えから、ひとつ大蔵大臣なり総理から、いまうわさされておる円切り上げ、再度の円の切り上げということに対して政府は明確な態度を持っておられるかどうか、ここで私はあらためて伺っておきたいと思うのであります。  たまたまきょうからですか、OECDの第三部会がいよいよ始まるらしい。それに対する政府の臨む態度も何か検討されているようでありますが、あわせてその点についても明確にしていただきたい。いま伝えられるアメリカの考えというものは、どう考えてもわれわれは納得できません。したがって、日本政府は再度の円切り上げについてはこの機会に明らかにしておく必要がある、こう思います。
  33. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 非常にごもっともな御質問であると思います。先行きの不安を持つということが不況の克服に一番大きい影響を与えるものでございますので、昨年来非常に心配しておりましたが、昨年の暮れの通貨調整が一応できたということによって非常に事態が変わってまいりまして、新しい通貨調整が波乱なく経済の中に浸透していくという事態が見えてきましたので、この調子でいくのなら、昨年の補正予算の効果とあわせて新年度の予算措置によって、いま企画庁長官が答えられましたような夏以後の景気回復ということは間違いないというふうに私どもはいまでも確信いたしております。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕  ところが、ただ御質問のように、またここで円問題の不安が出てくるということがこの路線をくずす一番大きい障害になると考えますので、私どもはこの問題については決して軽視はしておりませんが、いま私どもが考えておりますことを申し上げますと、円の再切り上げというものはもう当分あり得ないということははっきり申し上げられると思います。と申しますのは、各国ともこの通貨調整の効果が国際収支にあらわれるためには相当の時間を要するということは共通の認識でございますし、したがって、通貨調整後わずか三カ月たった今日、まだアメリカの赤字基調が続き、日本の国際収支の黒字基調が続いておるということについてはもう国際間の理解がありますし、したがって、これについての円の再切り上げの要望というようなものは現在OECDの中にも全くございません。したがって、この問題についての国際摩擦と申しますか対外圧力というようなものは現在ございませんし、また、そう簡単にできることではございませんので、円の再切り上げということはないということを言明できると思います。  ただ、問題はアメリカでございますが、アメリカにおきましてはいろいろの国内事情があり、国内の景気回復を急がなければいかぬ事情のために、アメリカの国際収支対策というものがうまくいっていないということは事実でございます。そのためにドルの弱さというものが各国の市場においていろいろな問題を起こしているということはございますが、しかしこれについては各国とも、この通貨調整の成果を守ろうということで、いま金利を引き下げるとかあるいは為替管理を強化するとかいうようなことで、このきまった調整の成果を守ろうという方向に共同で努力をしておりますので、この点も国際通貨の安定に相当役立つことであろうと思います。  同時にアメリカ自身といたしましては、そういう事情がございますので、アメリカが国際収支で赤字を出さないようなメカニズムを国際通貨制度の上で保障させようというような考えがあるというようなことは、いろいろなアメリカ当局の動きによって私どもにも察知されるところでございます。あるいは明日のOECDの会議にそういうような考えが出てくるかどうか、これはまだわかりませんが、こういう考えは、今度は基軸通貨国でもない黒字国に対して国際通貨制度の運用の責任を全面的に負わせようとすることでございまして、それは簡単に各国の合意を得られる方向ではございませんし、こういう点につきましては、私ども国内の政策を十分にやって、つまり不況の克服を急いで対外不均衡を是正するという方向へ努力するほか、一連のいろいろな努力をいたしまして、外貨のいまのような形の異常な蓄積ということを防ぐという措置をとると同時に、もう蓄積された外貨の活用方法を考える。ただいま、これを預託することによって備蓄輸入を促進するというようなことについての考慮も払っておるところでございますが、あらゆることをしてこの活用を輸入増とも結びつけるというようなことで、国際不均衡の調整ということが、やはりこれは国際摩擦を避ける一つのことになることは間違いございませんので、こういう努力も行ないながら、今後の国際通貨制度の改善に日本が積極的に参加するというようなことによって、私はいま心配されているような事態は避けられると思いますので、この点を国民が安心してくださるのなら、私は、いままで考えておった不況の回復路線というものは、いまでも変更せずにそのまま所期することができるというふうに考えております。
  34. 辻原弘市

    辻原委員 政府の若干の方針と大蔵大臣がお述べになりましたことは、多分に希望的観測が入っているように私は承りました。なぜ私は、せっかくそういう心配は要りませんと言われた大蔵大臣の御答弁に反論するかといいますと、お隣にすわっておられる福田外相が大蔵大臣の当時に、たびたびこの問題を、実は昨年の事態の前にこの国会でも議論したわけです。そうすると、頭の片すみにもそういうことはありませんと言切いってきたのがあなたなんですね。ところが、やったあとはしゃあしゃあしているわけです。だから国民は、その程度のいまのお答えでは、わかりました、安心しましてひとつ企業運営をやります、夏からは景気がよくなるから、ひとつやりましょうということにはならぬのです。ほんとうに国民に安心をしてもらい、不安な状態のない形でこれからの経済運営をやってもらうためには、もうちょっと大蔵大臣、単なる希望的観測ではなくて、少なくとも私の政治生命をかけてもというようなことぐらいはおっしゃらぬと、これはなかなか国民は安心いたしません。いかがでありましょうか。
  35. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私のほうは頭の片すみじゃなくて、この問題を心配することがちょうど頭のまん中にありますので、したがって、それを中心にして、何としてもそういう事態にはならないようにということについて、あらゆる対策を考えたいというふうに考えております。
  36. 辻原弘市

    辻原委員 私は非常に心配しておるのです。それは、いまもちょっと触れられましたけれども、アメリカのまことにえてかってな通貨問題に対する態度、それからECの動向、それを踏まえて今後を考えたときに、はたしていま大蔵大臣の言われたようなことになるのか。基本的な問題解決の前に、もう一度何がし、暫定的な措置という問題が要求せられてくるのではなかろうか。そのときにほんとうに日本は、アメリカはドルの交換性回復を承知せざれば、いかなる要求にも応じないぐらいの強い立場を堅持できるのかどうか、私としては不安であります。したがって、これは最高責任者であられる総理からもその御所信を明確にしていただかなくてはならぬと思います。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 企画庁長官、さらに大蔵大臣からお答えをいたしました。企画庁長官の答えは非常に簡単過ぎた、大蔵大臣は少し該博なる知識を持っているから長過ぎた、かように思います。私は中間をとって申し上げたいと思います。  まず第一は、昨年の暮れにようやく多国間国際通貨調整ができたばかりであります。そうして、できたとたんに直ちに効果があらわれるというものではなく、やはり経済の推移は見なければならない。しかも、ずいぶん大騒ぎをしてせっかく通貨調整をやったのでございますから、これは何としても成功さしたいというのが各国の願いであります。その点ではただいま御指摘のように各国とも希望的意見だと、かように言われますが、そういうような実情にあることはこれは前提として御了承願いたいと思います。そういうことでありますから、私はただいまの段階でさらに次の段階を考えておる国はどこにもないと思う。ただアメリカが経済状態でどうもよろしくない。最近日本の、日米間の経済人会議、その報告を聞いても、どうも思わしくない。経済人の中にも先ばしった意見をする方もあります。しかし私は、日本のオーダリーマーケティングといういわゆる正常な状態、これが望ましいという、そういうことでただいまの財界人が努力をする、そういうことになれば日本の行き方についても誤解はないと、かように私は思いますので、必ずこれは成功すると思います。  ただ、いま不安に思っておられるものは、ことしがアメリカ大統領の選挙の年であります。これは多分に、アメリカの経済にどういう影響を与えるか、またアメリカ大統領の選挙、そのために他国に迷惑がかかってもいいというような考え方で推し進めるのではないか、かような見方もございます。これを多数国間でさような状態を押えるという、そういう形に動くように思います。せんだって私のところへ参りましたアメリカの有力者、これがやっぱり話しておりますのに、日米間できめる問題もあるけれど、本来経済の問題は多数国間で初めてきまる問題だ。だからそういうような取り組み方をしないとこれは正しい結論が出てこないように思う。だから日本の場合もやはり多数国間の考え方で調整をはかるように努力してほしい、こういうことを申しておりました。私どものまさしく考えるところと一致するのであります。これは先ほど来大蔵大臣がるる説明したその要点だと、かように思いますので、私から簡単に要領よく申し上げたつもりでございます。どうぞ御了承いただきたい。
  38. 辻原弘市

    辻原委員 そうすると、要領がいいか悪いかはこちらは皆さんが聞いておられるからあれだと思いますが、結論としてこう受け取ってよろしいか。これは大事な点ですからひとつ大蔵大臣も……。  昨年やったようないわゆる多国間調整、基本的な問題は今後に残して、そうしてただ若干のドルの引き下げと円の切り上げ、その他関係国の通貨を切り上げたという、こういう暫定的な措置というものは再びやらない。あくまでも多国間調整ということを前提にして国際基軸通貨のあり方を検討するそういう基本的問題の解決をはかるのだ。それははかれるのだ。だからその過程に、日本は黒字国だから、西ドイツは黒字国だから、アメリカの国際収支の赤字をしりぬぐいするためにこれはそれぞれの通貨を切り上げてもらわなければ困るのだというようなアメリカの言い分に絶対に賛同はしないし屈服はしない、そういう態度を堅持される、基本的な基軸通貨の解決としてこの問題をあくまでも扱う、こういう態度であると私は理解をしたのでありますが、その態度を堅持する自信がありやいなやということなんですがね。もう一度、要領よくひとつそれじゃ総理からお答え願いたい。
  39. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 黒字国の責任があると同時に、赤字国の責任もある。この責任は平等に公平に分担すべきものであるというのが通貨調整のときの各国の一つの基本理念になって、これによって調整ができたといういきさつから顧みまして、赤字国の責任がなくて黒字国に責任を負わせるというような考えというものは、いまの国際間ではとうてい合意が得られないということははっきりしておりますし、また私どももそれに賛成するわけにはまいりませんので、したがって特定黒字国にだけ徴罰といいますか、何かそういう意味を持った措置を加えようというようなことがきまる可能性というものはございませんし、私はまたそういう事態が簡単に来るというふうには全然考えておりません。
  40. 辻原弘市

    辻原委員 そういたしますと、蛇足ではあるかもしれませんが、変動為替制に移行するなんということは断じてありませんですね。
  41. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ございません。
  42. 辻原弘市

    辻原委員 これは重要な問題でありますから、明確にお答えをいただきましたのでそういうふうに理解をいたして、明日から始まるであろう通貨問題に私たちも注目をいたしてまいりたいと思います。  次は、私は外交の問題に触れたいと思います。  当委員会で中国の問題についてあらゆる方面から議論をいたしてまいりました。また本会議におきましても、衆参を通じて時の重要問題として議論を進めました。そういう議論を通じて私が理解把握をいたしましたこれからやろうとする政府の中国問題への取り組みの方針というものを、こういうふうに私は受け取っておるのでありますが、そういう理解でよろしいかどうかをまず伺いたいと思います。  一つは、政府間接触をはかりたい。そしてその政府間接触の結果、本格的な日中国交回復へのこれを足がかりにしたい。これが一つであろうと思います。第二番目には、過ぐる米中会談の結果の声明にも明らかになっておる平和五原則というものを、これはわが国としてもまことにけっこうである、これを尊重していきたい、こういうふうに述べられております。三番目は問題の台湾でありますが、台湾問題の扱いについては、これは交渉の過程で解決をしたい、解決をする。他にもいろいろ問題があろうかと思いまするが、重要な点についての大筋を私はこの三つと理解をしたのでありますが、おおむねよろしいかどうか。これをひとつお答えを願いたい。
  43. 福田赳夫

    福田国務大臣 おおむねそのとおりに考えております。
  44. 辻原弘市

    辻原委員 そこで私は少し具体的に承ってまいりたいと思いますが、いわゆる政府間接触という問題なんですが、いろいろこれも衆参を通じまして分科会などでもこまかく議論をせられておりますが、私は詳細その議論を読んでみました。どうも読んでみるとわかったようでわからないようで、一体何が政府間接触なのか、一体いまそういうことが行なわれているのか行なわれてないのか、どうもさだかではありません。そこで、これまた能弁な外相がべらべらやられますると焦点がはずれますので、私がひとつ設定をしてお尋ねをいたしましょう。  アヒル問答というのが何か出ておりましたですな、アヒルの水かきですか。いま政府が何がしの接触をやっておられることは事実である。これは政府がと言うのは間違いかもしれませんけれども、政府が意図して、非公式というのですか、そういうことの接触というものはあるわけですね。それはどうなんでしょう。
  45. 福田赳夫

    福田国務大臣 それはそのとおりございます。
  46. 辻原弘市

    辻原委員 それを政府間接触というのでありますか。
  47. 福田赳夫

    福田国務大臣 私どもが政府間接触と申し上げておりますのは、あるいは両国の首脳が会談をするとか、あるいは両国の外相が会談するとか、あるいは両国が正式に指定した者が接触をするとか、そういうことを言っておるわけでありまして、ただいまいろいろやっておるということは、それ前の段階の仕事である、かように御理解願います。
  48. 辻原弘市

    辻原委員 そうすると何か分科会で答えられた――いまあなたは首脳会談、外相会談――田中さんが今度チリへ行かれるですね。チリで向こうの代表と接触をしたい、こういうのもその政府間接触に入りますか。どうなんですか。
  49. 福田赳夫

    福田国務大臣 私どもが言っておる政府間接触というのは、ただいま申し上げたような政府の首脳の会談でありますとか、あるいは外相の会談でありますとか、あるいは会談の任務を帯びて正式に両国が指名した者の会談であるとか、さようなものを言っておるわけです。その他の会談は政府間接触ではない、かように御理解願います。
  50. 辻原弘市

    辻原委員 そうすると政府間接触と言われているのは首脳会談である、外相を含めた首脳会談である、こういうことなんですね。そういたしますと、前段行なわれているいわゆるアヒルの水かきというやつですな、これはどういう資格で行なわれているんでしょう。スリラー的にいうと密使とかいろいろなことがいわれますけれども、これを平たく国民が理解するためにどう受け取ったらいいんでしょうか。やはり政府の意を受けてやっておる首脳会談の前段の交渉である、こういうふうに受け取ってよろしいのでしょうか。予備折衝……。
  51. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府の意を帯びた予備的会談だ、こういうところまではまだいかないのです。これはわが国の日中接触についての熱意、国交打開についてのわれわれの誠意のあるところ、これをよく理解していただく、そして政府間接触の糸口を開くというための事前の話し合いである、こういうふうな御理解を願います。
  52. 辻原弘市

    辻原委員 少し立ち入るようでありますが、その接触が行なわれている場所というのはどこなんでしょう。
  53. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、私どもがそういうふうな機会があれば、そのいずれの機会もとらえる、あるいはそういう場所がありますれば、その場所はいかなる場所もこれをとらえる。特定の場所じゃございません。また特定の機会じゃございませんです。
  54. 辻原弘市

    辻原委員 おおむね、まあそれ以上はなかなか押し問答になると思いますから私もやりませんが、いわゆる政府の言っておられた政府間接触とは首脳会談である、で、事前のいろいろな接触というものもいわゆる単なる私的なあれではなく、その予備的な会談接触というふうに私は理解をいたしておきます。  次の問題に入りたいと思いますが、平和五原則を尊重せられる、また米中声明でそれを尊重せられていることはもとよりわれわれも大いに歓迎するところであり、政府がこれを支持されるとおっしゃったことも私どもは非常にけっこうだと思います。ただここで、平和五原則というものは一体どういう場合に行なわれるかということについての認識を明らかにしておかなくちゃならぬと思います。私の考えは、この平和五原則というものは、普遍的に中国が各国との国交正常化にあたって、あるいは各国との二国間の平和友好の立場を堅持する国と国との関係を保っていく上にぜひこうなければならぬということの一つの原則であると私は理解している。だからそれは、かつての敵国であろうがなかろうが、むしろ敵国でない通常の相手国に対してそれを要求してきているものである。だからアメリカの場合はそれでよろしいかと思います。しかし日本の場合は、それでは平和五原則というものを日本が了承し尊重するから日中の国交回復に向かうであろうかといえば、それは私は必ずしもそうではないと思います。その前に、日本だけに要求してきておる原則というものがある。これがいわゆる政治三原則、一つには中国に対する敵視政策をとらない、二つには二つの中国に対する陰謀にくみしないということ、三つには国交回復を妨げるそういう行為をしないということ、これだと思うのであります。この三原則というものは、もう由来淵源についてはあらためて申しません。申しませんが、これはかつて岸内閣当時にこのことが提起され、次第にこの原則というものを強く日本に迫っているという経緯があります。したがって、わが国が中国との国交の回復に向かうときには私はまずこの問題が一つの焦点になろうと思うのでありまするが、そういう認識を総理も外相もお持ちになっておられるかどうか、この点をお答え願いたいと思います。
  55. 福田赳夫

    福田国務大臣 平和五原則に対する御理解は、辻原さんの御指摘のとおりでございます。また対日政治三原則、これも全く辻原さんの御理解のとおりと私どもは心得ております。
  56. 辻原弘市

    辻原委員 私の理解のとおりだとおっしゃるから、だから平和五原則の前にこの問題をまず日本が明確にしなければならぬ、こういうことが必要であろうと思います。これは明確にされますか。
  57. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は前にも申し上げたかと思いますが、この対日政治三原則、これには賛成であると、はっきり申し上げます。
  58. 辻原弘市

    辻原委員 明快に賛成であるとおっしゃったのでありますが、問題はやはりそれの実行行為であります。実行行為の段階になりますると事があいまいになるというところに、私は今日の佐藤内閣と中国との国交回復問題が進展しない理由があると思います。たとえば、かつて岸内閣のときにこれが提起され、何が原因になったかといいますれば長崎の国旗事件その他であったでありましょう。今日また同じようなことが起きておる。それは先般来から当委員会でも問題になり、外務委員会等でも議論になっておりますいわゆる備忘録事務所に対する右翼団体の妨害でありまするとか、中国代表団に対するいやがらせの行為でありますとか、こういうことが強く中国を刺激しておると伝えられております。場合によりますると備忘録事務所の閉鎖とか引き揚げとかいうことまでが検討されておるやにもわれわれは仄聞するのであります。もしそういうことになったならば、これは国交回復どころか、覚え書き貿易すらあぶなくなる、こういう事態であります。だから原則を尊重され、原則を守っていくという限りにおきましては、これら具体的な実行行為を私は明確にしなければならぬと思います。すでにこの委員会におきましても、中国に対して、そういう問題についてどうするのか、またそういった問題が再び起きてこないような措置をどうするのか、これについて強く要求せられていると思うのでありまするが、ひとつこの機会に、尊重されるという外相からお答えを願いたいと思いまするし、総理からもあわせて、これは今後の重要な問題でありまするから、明確にしておいていただきたいと思います。
  59. 福田赳夫

    福田国務大臣 今日、中国から来訪しております化合繊工業視察団、これに対しまして一部の方がいやがらせの行動があった、こういうことを承りまして、これは実は非常に遺憾に思っておるのです。警察当局にも頼みまして、そういうことがないようにできる限りの配慮をしてもらいたいと、こういうふうに申しておるわけでありまして、警察当局も頭を砕いておるということが実相でございます。ただ、わが国では警職法というものがありまして、警察官の行動がずいぶん局限をされておる。ですから右翼に限りません、左翼におきましても、たとえばアメリカ大使館に行っていろいろ行動するというような際におきましても、直接の行動であるか間接の行動であるか、その辺の見きわめが非常にむずかしいようです。そういうようなことで、今回も私ども非常に遺憾な事態があったわけでありますが、なお念には念を入れてということで、警察当局で千々に頭を砕いておるというのが現状でございます。
  60. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま外務大臣からお答えをいたしましたので、政府の考え方は一応おわかりかと思いますが、申し上げるまでもなく政府に関することではございません。それにいたしましても、かような事態が頻発すれば、これは両国間親善友好、そういうものに反するのでございますから、この種の行為は厳重に取り締まること、これは当然でございます。いまの警職法の困難さがありましても、ただいまの貿易事務所だとか、あるいは参りました視察団、それらの警衛について不安、疑惑、さようなものを生じないように、私ども政府といたしましても最善を尽くしたいと、かように思っております。いまたいへん大事なときでありますし、ただいま幸いにして親善友好の方向に向かいつつある際、そういう際にかような事態が起こらないように、一そうの努力をする決意でございます。
  61. 辻原弘市

    辻原委員 政治三原則々尊重されるということは明確でありますが、なぜ一体中国がわが国のみこの三原則を要求してきているかということを考えたならば、これはアメリカともイギリスとも、またその他諸国とも違うんだ、日本はかつての旧敵国である。このことが前提にあると私は認識するのであります。したがって政治三原則を尊重される限り、私はその立場をきちんと踏まえなければ話はすれ違いになっていく危険性がある。この点について、過般当委員会で小林進議員も論議をされておりますが、あらためて私は総理のお考えをこの際、これもまたきちんとしておいていただきたいと思うのでありますが、日本と中国とは、これはいまだ法的にいいまするならば戦争の状態が終結をしていない、こういう前提を踏まえられる必要があると思いますが、そういう前提にお立ちになりますかどうか、これはひとつ総理からお答えを願っておきたいと思います。
  62. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 戦争は終結していると、かように私は考えております。
  63. 辻原弘市

    辻原委員 これは外務大臣の御答弁と、総理、違うのです。外務大臣はこうおっしゃっておられる。多少ニュアンスで逃げたところはありますけれども、違うのです。これは二月二十九日の速記録であります。いま私がお尋ねしたことについて外務大臣が答えられておる。その外務大臣の御答弁は、日中間には二十六年間にわたる国交の空白がある。そのおわびが前提である。そのおわびの形をどういうふうに具現するか、いろいろの形があるであろう。平和条約というが、平和回復宣言というようなこともその一つと考えられる。あなたはこうおっしゃっておられます。間違いございませか。外務大臣。
  64. 福田赳夫

    福田国務大臣 さような趣旨のことを言っておるのですが、もう少し先のほうも読んでもらいたいのです。私はこの問題につきましては、法的には日中間に戦争は終わっておる、それから事実上も私どもも、もう戦争しておるなんというような考え方は一切しておりません。そういうことを考えまして、日華平和条約を引用しますが、もうとにかく戦争は終了しておるという立場です。ただ、ずっと読んでいただきたいのですが、私が申し上げておることは、私どもがそう考えましても、中国側におきましては、戦争は終結しておらないんだという考え方があるという情報がある。そこで平和条約を結ばなければならぬというようなことも聞いておるというが、それらは、わが国の主張はわが国の主張、中国側の主張は中国側の主張、ありましょう。それは政府間接触の過程において解決せらるべき問題である、こういうふうな趣旨でございます。
  65. 辻原弘市

    辻原委員 私はことばじりはとらえませんけれども、その先はありませんよ、速記録には。あなたは先を読んでくれというのがありましたけれどもね。しかし問題は、そのくだりにおける限りにおいては、これはかなり明瞭に言われているわけなんです。   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕 そうするとあなたの言われた、いま総理がきわめて簡単なことばで、戦争状態は終わっておるという、そうすると、あなたの言われたこの平和回復宣言というのは何を意味するのですか。これははっきりしていますよ。ここにある。
  66. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま私が申し上げましたような前提があるのです。わが国は平和状態は回復したとかたく信じておる。しかし相手がいろんなことを言っておるということを聞いておる。政府間接触の間においてそれらが論議されるかもしれない。そういう際にいろんな決着というものが考えられるでありましょう。そういう形としてどういうものが出てくるか、いろんなものが出てくるであろう。いろんなものが考えられるということを申し上げておるわけであります。
  67. 辻原弘市

    辻原委員 そうしますと、日本は総理のおっしゃったように考えておる。しかし中国はそういう考え方には立っていない。そうだとするならば、それぞれ接触、交渉等の過程あるいは結論においては、やはり中国の主張している立場、すなわち戦争状態の終結は行なわれていないということについて何らかの措置をとる用意があるという意味でこれをおっしゃった、こういうふうに理解してよろしいですか。
  68. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国の立場はわが国の立場である。しかしながら中国側にも中国側の主張がありましょう。それをどういうふうに結末をつけるか、これは政府間接触の結果の問題である、こういうふうな理解でございます。
  69. 辻原弘市

    辻原委員 私は、中国の態度はきわめて明瞭であると思います。台湾政権はあくまでもこれは認めておらない。しかも、あとで少し議論をいたしますけれども、日中国交回復の前提というものは、これは台湾帰属を鮮明にすると同時に、日華平和条約の廃棄ということなんです。そうなりますとおのずから、認めていない、また日本も廃棄したということならば、そこに空白状態すなわち法的戦争状態というものは未処理、これが残るわけなんです。当然そこに平和条約の締結ということが、他の国はいざ知らず、日本は中国との問題の中では大きな問題である。そのことを日本側も明瞭にせざれば、私は、中国との二十六年間にわたる空白も埋められないであろうし、日中国交回復の実現もない、こういうふうに考えます。総理、あらためてもう一ぺん御答弁願いたいと思います。
  70. 福田赳夫

    福田国務大臣 中国側でいろいろなことをおっしゃっておると聞いております。それが全部聞かれなければ日中間の政府間接触は始められない、また始めるべきではない、私はそうは考えないのです。わが国には、ただいま申し上げました平和条約という問題につきましてもわが国の立場がある、中国側には中国側の立場がある、それを十分政府間接触の過程で話し合って結論を出す、私はこれがわが国としては精一ぱいの態度じゃあるまいか、そういうふうに考えております。
  71. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま外務大臣からお答えしたから、つけ加えることはないように思いますが、しかし両国間のそれぞれの主張のあることはお認めだろうと思います。私はそういうものを、両国の間にずいぶん開きがあるんだから、今日の状況のもとにおいて十分話し合えば――友好親善関係をつくろうというその前提は両国とも同じだと思います。もういまさら敵視しているような、そんなことはございませんし、これはまた日本の場合においては二つの中国、一つの大陸、一つの台湾とか、さような考え方にもくみするものではございませんから、そういう意味で、私は必ず話はできるものだ、国交の正常化ははかれるものだ、かように考えております。しかし、何よりもとにかく話し合わないことには、その相違がまだ埋められない、かように私は思います。野党の諸君、社会党やその他の党の方がお出かけになりましたが、これはやはり戦争状態が続いているというような考え方でお出かけにはならなかったろうと思います。私は、とにかく平和の状態だ、しかしながら中国を代表するものはやはり北京政府だ、かようにお考えでお出かけになったんだ、かように思っております。私は、いまの戦争論はいまさらどうだろうかと思います。しかし、とにかく両国の間に主張の相違のあることはもう確かでございますから、それらのことは両国が双方でひざを突き合わせて話し合う、そういうことが望ましいのではないか、かように思っております。
  72. 辻原弘市

    辻原委員 総理は、実際の問題と私が申し上げている法的な措置という問題と混同しておられるようでありますが、われわれは決して具体的にそういう状態があるということを申し上げているのではなくて、経過から法的にはそういうふうに言わざるを得ないのであります。言わざるを得ない、そこに国交回復の措置というものには、通常、たとえばアメリカが国交の回復をやられる場合に、ただ相手国を承認するという行為だけで十分かもしれません。しかし、日本の場合には、少なくとも法的にそういうふうに言わざるを得ない。そのことを踏まえて考えなくては、これはすれ違いになると私は申し上げているわけであります。私たちの見解は、やはりこれは日中国交回復のこれからの具体的な展開の中にきっと大きな問題として提起される、そうして日本政府に平和条約かあるいは他の方法によるか、その選択を迫られる時期がある、こう判断しているからそれを申し上げ、政府の認識を承っておるのであります。それ以上は議論になりますから、私どもの見解を申し上げておきましょう。  三つ目の問題であります。これはしばしば申し上げましたように、台湾帰属についてこの国会で総理が二月二十八日にお述べになりました見解は、私どもも非常に評価をしておるのです。これは一国の総理として、今日の事態を踏まえて考えたときに、わが国をめぐる周囲の緊張緩和、その中に中国問題というもののウエートが高い、そういう意味で私は決断をせられたものだ、こう理解をしておった。ところが、行きつ戻りつということで統一見解が出ました。しかしまことにこの統一見解は、せんだっての私の質問に、二十八日答弁とこの統一見解の趣旨は大筋においては変わらぬのだとおっしゃっておりますけれども、そうおっしゃったから私は一応了承したのでありますが、いろいろ読み返し、いろいろまたその文字の意味するところを、英文、和文等々、私も知識が足りませんからいろいろな専門家にも聞いて研究してみましたが、やはりきわめて不十分であります。そう言わざるを得ません。特に、米中会議もさることでありますが、その後行なわれました英中会談、これは日本として注目すべきであろうと思います。私が指摘するのは、その際も申し上げたかと思いますが、あの統一見解に、まず冒頭、日本は台湾帰属について放棄した立場で、云々することはできないという前提がついておったと思います。その理由として、サンフランシスコ講和条約に参加したいわゆる調印国四十五カ国の中で二十二カ国ですか、二十二カ国が中国を承認しておる、それらの国はいずれも台湾についてははっきり言っていない、ノータッチあるいはテークノート等々である、それなのに日本が先がけて云々することは、これは国際的な立場からとうていできないことなんだという意味の理由をおっしゃっておったと思うのであります。ところが今度は、対日戦におけるアメリカに続いての主役であったイギリスがいわゆる明確にしたわけですね。いわば追認をした。台湾は中国の、中華人民共和国の領土であるという立場をきちんとされた。だから、大使交換の問題が解決をした。あわせて台湾から領事館を撤退をさせた。外相はその後どこかの委員会で、いや、イギリスの状況を聞いてみると必ずしもそうではなかったとか、云々されておりますけれども、私どもはそう考えません。これを明確にしたから台湾の領事館の閉鎖があったんだ、これは常識だろうと思うのです。そうなりますと、ここでイギリスが言ったということは、日本も言っていいではないか、こういう立場になろうと私は思うのでありますが、その点についての外務大臣の認識をひとつ承っておきたいと思います。
  73. 福田赳夫

    福田国務大臣 英国の場合とわが日本の場合は非常に立場が違う。英国はすでにもうずっと前に中華人民共和国を承認をしておるのです。その承認をしておる国が台湾帰属についての議論をいたした、こういうケースです。わが国はまだ中華人民共和国との間に私が先ほど申し上げました政府間の接触も始まらない、そういう段階の問題であります。それをよくひとつ御了知おき願いたい。  それからまた第二に、英国の態度はどうだといいますると、私は従来中華人民共和国を承認するに至った国々がとった態度よりは一歩前進をしておると思います。しかし、一歩前進したからといって、この領土問題について見解を明らかにしたかというと、そうじゃない。イギリスの国会におきまして、野党のシャドーキャビネットの外相といわれる方が代表質問をしておる。今度のこの共同声明においてイギリス政府は台湾領土に対する領土問題について従来の見解を変えたのか、こういう質問、それに対してまともに外相は答弁をしておらぬ。そういう状況でありまして、事実、共同声明を読みましても、台湾は中華人民共和国の一省であるとの中華人民共和国のポジション、立場をアクノレッジするというふうに、きわめてデリケートな書き方をしておる、私は、この書き方自体からいうと一歩前進だと思う。しかし、非常に明快に台湾帰属問題について結論を出しておる、こういうふうには理解しておりませんです。
  74. 辻原弘市

    辻原委員 前段言われたことは、むしろ反対じゃないでしょうか。前段あなたが、このことは、と言うて力こぶを入れてお話しになったことは、私はむしろ逆に考えなきゃならぬ。イギリスと日本は、確かに違う。イギリスは承認した国である。承認した国でありながらなおかつ代理大使を昇格するという問題について、中国は、台湾の問題を明確にしなければその行為自体を承認しなかったんじゃないですか。ましてや日本は未承認国、ましてや日本は国交回復ができていない国である。なおさら台湾問題については明確にしなければならぬ、こう言われるのが筋でしょう。外務大臣、あなたの言われたのはまるきり反対ですよ、その点については。私はそう思うのです。日本ならなおさら中国はきびしく要求する。イギリスはすでに承認している国なんだから多少そこらはやわらかくてもいいじゃないかというのが常識です。あなたは逆に言われましたね。私はそう思うんです。それから、いまのイギリス議会のあれ、私も読んでみました。しかし、そんなことばのニュアンスのやりとりよりは、実際イギリスが台湾の領事館を閉鎖したからこそ問題が解決したんです。いわば台湾の問題についての黙示の承認でしょう。この、言う、言わぬは別問題だ。しかし日本は、いまそういう事実行為をするということができないんでしょう。できないんだから、せめて交渉に対する態度を明確にしなさいと、こう言っておるわけです。そうじゃありませんか、外務大臣。
  75. 福田赳夫

    福田国務大臣 たとえば、イギリスじゃなくて、カナダを例にとってみると、カナダの中共政府の承認ということが行なわれた。しかし、この中華人民共和国政府の承認交渉はずいぶん手間をとったわけです。その手間をとったほとんど大部分の問題は、台湾の帰属問題です。そこで決着がつかない。最後に、中華人民共和国の主張をカナダ政府はテークノートするという形で承認が行なわれるということになったんです。そのカナダの例にとっていいますると、わが国の立場は、そのカナダの承認行為の二年前の段階に該当する、こういうような状態なんです。いま、イギリスのとった措置に対する見解が逆だと言いますが、私は逆じゃないです。イギリスのほうは、承認を了した、その国が、何年になりますか、ずいぶんだって台湾帰属について見解を示した、こういう問題。わが国は、まだ承認の交渉にも入らない、そういう段階である。私は、それは非常に大きな違いがある、こういうふうな見解でございます。
  76. 辻原弘市

    辻原委員 どうも私の見解とは合いませんが、まあ皆さん聞いておられますから、どちらが常識的であろうかはよくおわかりだと思います。それから、カナダの例を出されましたが、それもまた的はずれだと思います。私は、ずっと中国承認国の歴史をたどってみたときに、いま一番の問題になっておる台湾問題というのは、相手側の中国の態度はその時代時代を追って非常にきびしさの度を増してきておると思うのです。だから、かつてイギリスが一番最初承認をしたそういう当時はあまり台湾問題については、まあ中国の国内事情等等もございましたでしょう、当時の記録をいろいろ見ましても、そう明確ではありません、いまほど。ところが、いまおっしゃったカナダ等の事態、また、今回行なわれたアメリカに対する中国の要求、こういうものの経過を見てみると、これはもう単にテークノートという時代は過ぎた、テークノートではなかなか中国はおさまらない、そういうことを最近における承認国は理解をして当たっておるように私は把握するんです。そこで私は、ましてや日本は、ということを申し上げる。ましてや日本はテークノート、アクノレッジいずれにおいても解決する見通しはありませんぞと。その証拠を今度の英中会談が如実に示しておる。この歴史的事実を踏まえて今後の日中国交回復に当たらなければならぬということを申し上げておる。総理は盛んにうなずいておられますが、一ぺん何かお答え願いたいと思います、その辺で。
  77. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 辻原君の言われることが理解できるということで私はこっくりをしたのですが、これほど同じ日本人でありながら意見が対立する、これがあるのです。同じ事柄についてもですよ、見方が。だから、ましてやこれが中国、日本と、考え方の相違が如実に出ているのは、これはもう御指摘のとおりだと思います。そこで、私どもが国府を承認しているその立場で中国政府と接触を持とうといいましてもそんなものはなかなか簡単じゃないだろうと、そのむずかしさをまざまざただいまの福田外務大臣とのやりとりで私は理解できるんです。われわれもよほど考え方を飛躍しないと、なかなかこういう事柄については話が一致しないんだろう、かように思います。しかし、とにかくわれわれは、いままでのところでは、いままでの国府承認、その立場における日華平和条約、その問題や、平和条約の取り扱い方の問題や台湾の地位の問題、これは北京政府との話の経過において処理すべき問題だと、かように私はいま考えておるのでございまして、非常にもののスタートから考え方が相違しておる、こういうことはよく私どもにも理解ができます。
  78. 辻原弘市

    辻原委員 時間がだいぶ経過いたしましたので、私は、ただいまの問題に関連して、最もネックと考えられる、台湾に対する政府・民間の借款の問題について少しお尋ねをしておきたいと思います。  これはこの間分科会でいろいろ議論をされておる記録を私は拝見をした。その際に大蔵大臣がこういう答弁をなさっておられる。間違っておりましたならば御訂正願ってけっこうでありますが、従来、いわゆる二回にわたる台湾との借款契約、五百四十億ドルですか、それと六十億か、この二つの借款契約が現在履行されているものといまだ実行段階に至らないものがある。その契約があるが、未実行になっている分について、三百数十億と心得ますが、それについては契約だから今後も引き続いてやりたいと大蔵大臣はおっしゃった。その意味は、これは何ら軍事的な援助でもない、単なる民生安定のための純粋な経済援助であるから日中国交回復の障害にはなりませんとおっしゃっている。続いて私は意見を申し上げましょう。私は、それはいささか認識が甘過ぎる、こう思うのです。これは単に中国と台湾の問題に限らず、過去においても幾つかの例があります。要するに、敵対した二国間において、片やは――この場合は革命によって旧政権が現在の中国に変わっておるわけなんです。これは中国を――要するに旧政権を認めておらない、もうすでになくなったものと考えておる、そういうかつて敵対をした旧政権に対して、認めていない旧政権に対して依然として援助を続けるということは、これはどうかと、相手方には、軍事援助であろうが経済援助であろうが、これは一種の敵視政策である、一種の敵対行動であるという、そういう考え方を持つのも自然な成り行きではないか、私はそう思うのです。それを簡単に、これは日中国交回復の障害にはならぬと言うのは、私は、いささか事態の認識が甘過ぎる、こう思うのでありますが、時間がございませんからひとつ簡単にお答え願いたいと思います。
  79. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 新規の契約については、これは国際問題がございますので、慎重に考慮したい、ただし、いままで交換公文を締結した案件については、これは約束どおり実行したいということを申したわけでございます。また、現にいろいろ問題がありましても、台湾政府が存在して法的関係がいま変わっていないという現在におきましては、政府が約束したものはそのとおり実行していく。新規の問題は別にして、過去において約束したものは実行していくということは、私はこれはむしろ当然なことではないかというふうに考えております。
  80. 辻原弘市

    辻原委員 いまのはただ方針の繰り返しであって、私がお尋ねした理由には触れられていない。しかし、これはもう議論をいたしません。明らかに私の認識が一般的であろうと思う。  それからもう一つあなたはおっしゃっておられる。それは、日中国交回復をした際に、いままで政府が台湾に供与した借款というものは一体どうなるのだ。あなたはそれに対して、国交回復後外交折衝で解決をいたしますとおっしゃっておる。これは、その外交折衝というのは中国との外交折衝ですか、あなたのおっしゃったのは。
  81. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは仮定の問題についての御質問でございまして、いまそういう台湾への借款というようなものが、もしこれが中国領になったというようなときにはどうかというようなことでございましたが、私はそれを見越してどうこうという答弁ではございませんで、いずれのことがございましても、こういうものの債権の確保というようなものは外交交渉によって今後解決されるべき問題であろうと思う、こう言ったわけでございまして、そのとおりだと思います。
  82. 辻原弘市

    辻原委員 これは総理にも伺っておきましょう。場合によりますと外務大臣の見解も尋ねておきたいと思うのですが、いま大蔵大臣が言われたようなことでよろしゅうございますか。私は、これはこまかい議論はできません。こまかい議論はできませんけれども、大筋として中国は日華平和条約を認めておらぬのです。これはもう明瞭なんですから。そのときに、認めておらぬ条約に基づいて日本と台湾との借款が生まれておる。それが日中国交回復になったときに、中国ははいそうでございましたか、旧台湾との債権については話し合いをいたしましょうというようなことになるか。私はそういうことにはならぬと思う。承継の責任というものは、今日の国際法においては私は残念ながらないと思うのです。外務大臣の見解はいかがですか。
  83. 福田赳夫

    福田国務大臣 これこそがまた、日中国交正常化の交渉の過程で話し合われる問題の一つになろう、こういうふうに思います。その交渉の態様いかんによりまして、その問題がどうなるか、そういう結論になるだろうと思います。しかし、いずれにいたしましてもこれは仮定の問題でありまして、その仮定に基づいて、わが日本の台湾投資が、台湾債権がどうなるか、これをいま予言をする、これは非常に困難な問題であろう、こういうふうに思います。  ただ、私どもが考えておりますのは、日華平和条約というものがある。その前提に立っていま国民政府との間に善隣友好の関係を結んでおる、そういうわが日本であります。その日本の企業が金を貸す、あるいは投資をする、そういう問題がある。それが、日中国交正常化の過程でこれが非常な損失をこうむる、こういうような事態があっては相ならぬ、こういうふうに考えておるのでございまして、その事態がどういうふうになるか、これは予断はできませんけれども、とにかくあらゆる事態においてわが日本政府といたしましては、民間の企業の損失、そういうものがないように最善の努力を尽くさなければならぬ立場にある、こういうふうに考えます。
  84. 辻原弘市

    辻原委員 私は民間の投資についてはこれから質問をするところでありまするが、先ばしっておっしゃられたのですが、これもはしょってお伺いをいたします。  民間投資について、現在まで民間が投資しておりまする分とそれから今後投資をする分とを私は分けて考えなければならぬ。まず、従来日中国交回復の時点、国交回復が行なわれた以後において、民間の投資については私は政府借款とはあるいはいささか事情が違うかと思う。これは場合によりますと、日中の間における外交交渉の問題になるかと思う。また、しかしながら、それは必ずしもそういうきちんとした前提を持つことはただいまでは困難だ。いずれにいたしましても、政府の方針によって民間が投資をしたという限りにおいて、これは私は民間に対する責任の問題も出てこようと思う。だから、従来の投資に対して政府は一体責任を持つのか持たぬのか。  それからもう一つは、いま日中国交回復へ踏み切ろうとしておるわけです。そうなりますると、自後における民間投資というものに対する態度をあいまいにするということは政府としては怠慢だといわなければならぬ。だから私はこの際、今後における民間投資に対する政府の指導方針というものを明らかにすべきだと思うのです。その内容は、いままでは少なくても――いい悪いは別として、少なくても台湾との間において政府が取りきめたそういう関係を前提にして民間がやっておられた。だから、それはやはり国としての責任があるでしょう。しかし、今後はやはり日中国交回復に踏み切ろうとするやさきでありますから、それに伴うた政府の行政指導の方針というものがなければならぬ。すなわち、これから民間投資については政府は責任を持ちませんよ、もしおやりになるのならば、これはそれぞれの企業家負担、もし危険が生じた場合は企業の責任においてやりなさいというくらいの施政方針を示しておくことが親切な措置であると私は思うのでありますが、これについて明瞭にしておいていただきたい。
  85. 田中角榮

    田中国務大臣 台湾に対する民間投資八千百万ドル、証券七千百万ドル、債権が八百万ドル、支店が二百万ドル程度のものでございますが、海外に対する直接投資はもう自由化をしておるのでございまして、政府がどうこう言うことはないわけでございます。これは民間がみずからの責任で、みずから回収ということを前提にして投資をするわけでございまして、これに対して政府がどうこう言うという立場にはないわけでございます。政府は、これらの投資に対しては、これは台湾だけではなくほかの地域にもやっておりますし、未承認国にもやっておるわけでございまして、自由化になっておるということで民間の責任であると、こういうことを明確にしております。
  86. 辻原弘市

    辻原委員 次の問題に移りたいと思います。  防衛庁長官にお伺いをいたしますが、かねていろいろ新聞紙上等にも報道されて非常に重大な事態になっておりまする日本で初めてミサイルの射撃場をつくるという問題について、その地点を青森県の車力村に設定をせられているやに聞いておりますが、私ははしょってそれの問題のポイントをお尋ねしたいと思います。  まず、いつごろそういうことをきめられたか、きめた時期を明瞭にしていただきたい。それから、どういう内容のものであるか。それから当該車力村に正式に話を持っていったのはいつであるか。青森県の責任者である県知事に話したのはいつであるか。まずその四点について簡潔にひとつ明らかにしていただきたい。
  87. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 お答え申し上げます。  わが国がナイキ、ホークを採用いたしましてから、その試射場をどこに求めるか、これは防衛庁としては非常に重要な問題であります。従来はアメリカ軍の試射場を借りまして、そしてこの試射実施訓練を行なっておったわけであります。しかし、前途の見通しも暗うございますし、もともとわが国がナイキ、ホーク等を採用いたしました以上はやはり試射場を国内に求める、これが妥当であるという見解に立って、ちょうど昭和三十八年ごろから調査が始まったわけであります。候補地につきましては、内陸地帯とかあるいは離島、三十数カ所にわたって詳細な調査をいたしました。その結果、最終的には昭和四十五年試射場の候補地を青森県西津軽郡の車力村にしぼったと……(辻原委員「四十五年のいつですか、それが大事だ」と呼ぶ)四十五年の――あとから調べて申し上げます。そうして、土地を買収する段取りになったわけでありまするが、もとより青森県知事に対しては、極力、試射場について協力を願うよう要請もし、またいよいよ車力村に決定をして車力村で土地を買うという段階におきましては、村長をはじめ関係者に了解を求めた。詳細は、時間もありませんので、事務当局から説明をいたさせます。
  88. 辻原弘市

    辻原委員 簡潔にたのみます、私も簡潔に聞いているんだから。
  89. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 時間がありませんから簡潔に要点だけ。
  90. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 概略につきましては、いま防衛庁長官からお答えがありましたとおりでございます。四十五年に候補地を一応車力村にしぼりまして、防衛庁として正式に決定いたしたのが昨年の九月ごろでございます。知事との話し合いにつきましては、これは車力村に候補地をしぼります過程におきましていろいろお話し合いをいたしております。
  91. 辻原弘市

    辻原委員 いまの問題でも、この問題は非常にあいまいであります。それは、四十五年にきめた。ところが当該車力村村当局にこの話を初めてしたのが四十六年、翌年の十二月一日である。一体なぜ四十五年にきめて四十六年まで村に対して正式な話がなかったのか、これも私は非常に疑問にいたしております。県知事に対してもいつかと私はお尋ねしたのでありまするが、それも明瞭ではない。そして、県知事は県議会で問題になってから公式な質問書を発しておる。ここにありますが、その知事がわからないから防衛施設庁長官あてに公式に照会をしたのが昭和四十六年の十一月二十四日、回答されたのが十二月の七日、その地域における主管する責任者の方々に話をされたのが、かくのごとく防衛庁がきめてから一年後であります。ここらにも私は防衛庁としての問題の扱いに非常に深い疑問があるのでありますが、その次にお伺いをいたしましょう。  土地の買収にかかったのはいつでありますか。続いて伺いましょう。取得をした時期、買収の相手、価格、これを私の尋ねた順に簡潔に答えていただきたい。
  92. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 取得の時期は昨年の十二月八日でございます。相手は相馬和三氏ほか二人、価格は約一億二千万でございます。
  93. 辻原弘市

    辻原委員 私が特に問題にいたしておりまするのは、この土地の買収のやり方であります。四十五年にきわめて、そして四十五年、いまお話しのように、十二月八日にすでに取得をした。ところが、実際この村に話をしたのは翌年の十二月、こういうことに経過としてはなっておる。しかも、この買収相手は相馬和三氏だとおっしゃるが、実はこの相馬和三氏は粟生産業、粟生潤治郎氏の代理人にすぎない。したがって、実際のこの土地の所有者は、われわれは、粟生潤治郎氏ではないか、こう判断せざるを得ない、そういう事実があります。この点については一体どうですか。
  94. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 取得の方法につきましては、これは昨年の八月ごろから相馬和三氏ほか二人と折衝を開始いたしまして、取得いたしましたのが昨年の十二月八日でございます。現地の村長あるいは村議会の議員といろいろ正式な話し合いを進めましたのが十月でございまして、実際の文書を出しましたのは十一月十日でございますが、十月ごろからいろいろな非公式の話し合いはもう何回となく繰り返してやってまいったわけでございます。  そこでお尋ねの粟生産業というものでございますけれども、この粟生産業の存在につきましては、私どもは新聞紙上等で承知いたしておりますけれども、正規の所有者は相馬和三ほか二人ございまして、これは登記簿上からも明確でございます。したがいまして、粟生産業なるものはこの土地の取得については全然関与しておりません。
  95. 辻原弘市

    辻原委員 全然関与しておらないというのは事実に反すると思います。それは確かに、ここに登記の一切の書類もございますけれども、登記面においては確かにこれは相馬和三さんほか二名の登記になっております。ところが、これには経過がありまして、もともとこれは村有地である。しかも、その前は国有地として村が払い下げられたものである。それが防衛庁が買収する一年以前に実はこの土地の買収の話が起きておる。その発端を私は時間がありませんから私のほうから述べますると、当初相馬和三氏がこの買収にかかったのではない。いま申し上げました粟生産業の粟生潤治郎氏が車力村を訪れて、そして旧青森第五連隊の戦友である蝦名富八氏あるいは松橋晴一氏を訪ねたところからこの買収の問題の発端が生まれておるのである。そうして粟生潤治郎氏が牧場にしたいという趣旨で買収の依頼をした。当初、潤治郎氏は、約三百万の手付けを払ってまず富萢部落の土地を総額三千万強で手に入れられた。引き続いて豊富部落の土地を昭和四十五年十二年二十二日に売買契約をして、三千百六十五万何がしの金を払って、合計六千二百万でこの該地を取得した。で、この間いろいろなことがいわれております。相馬氏の言い分によりますると、私は粟生さんの代理人として扱いました。ところが粟生さんのほうでは、いやあれは買収直後に相馬さんに、六千万で買ったものを五千万で譲ったんだ。まあいろいろおっしゃっております。しかしこれは常識でおわかりになると思う。実際の買収者と名義人は異なる場合があります。なぜ一体そんなことをやったのか、これはおおよそ想像のつく点なんです。したがって、この間防衛庁が、全然粟生さんは知りません、粟生さんとは何ら関係ありませんと言われることは、これは事実に相違をすると私は思う。いま一度お考えをお聞きしたい。
  96. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 私どもが土地を取得いたします場合に、まずその真正の所有者が登記簿上だれであるかということを明確にいたしまして、交渉に当たるわけでございます。そこで、登記簿上は相馬和三氏ほか二人が村有地を、村長との契約によりましてこの土地を取得しておるということは明らかでございます。そこで、私どもは相馬和三氏を相手にして土地の取得の交渉に入ったというのが真相でございます。いまいろいろお話しに出ました問題につきましては、私どもは実は関知をいたしておりません。
  97. 辻原弘市

    辻原委員 関知をしないと言い切られますけれども、それじゃ、もともと村有地である土地をなぜ一体粟生さんが買収をされ、これを相馬さんに売ったのかあるいは事実上その行為だけを相馬さんに委任されたかは、これは私はここで論じません。論じませんが、しかし何がゆえに、すでに防衛庁が三十八年から調査をし、四十五年にきめたその時点で粟生さんなり相馬さんがこれを買い取っておるのか。粟生さんといえば大阪の会社。おそらくは、青森には戦友をたずねた以外にはあるいはなかったと思いますけれども、しかし牧場にするとおっしゃって一年後、これがミサイルに化けておる、射場に化けておるという事態、この関係を考えていきますると、私は防衛庁の土地取得というものに非常な疑惑を持つのです。なぜそれならば四十五年時点に相馬さんの手に渡ったか、粟生さんが買ったかは別にしても、村が所有しておる土地をそのまま防衛庁が買わなかったのか。そういうクッションがあるために、たった一年で一億二千万、倍額にはね上がっておるじゃありませんか。私は、まさに国費の乱費、こう申し上げておる。いまここでつべこべ形式的な議論をしても始まりません。この経過をわれわれは詳細に持っているのであります。しかし私は裁判官でも何でもありませんから、そういうことの逐一について立証する時間もございませんし、いまは申し上げません。しかし非常に大きな疑惑があります。しかも村はいま、だまされたと言っているのです。牧場がいつの間にかミサイルにすりかわって、初めてミサイルだったということを知って村長も県知事も、これはたいへんだ。村議会も県議会もすでに反対の決議をしているのでありましょう。この事態を一体防衛庁長官また総理は、どうお考えになりますか。
  98. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 この土地については、私ども十分部内で精査をいたした次第でありまするが、ただいま施設庁長官が申しましたように、粟生産業のことは知らないと言っておるわけです。県知事それから村長は全然知らない。で、いまでは村議会は反対、県議会も反対、こういうことになっておることも承知いたしておりますが、実は、当初は条件によっては誘致もしてよろしいかというような雰囲気があったことは事実です。いろいろ基地周辺整備対策等とからめて、一体どんな条件になるのであろうかということを地元側としてはやはり誘致の一つの条件として模索したり、いろいろ検討された時期もあるわけでありまするから、全然地元の意向を無視してこのことが行なわれたというふうには思っておりません。私が赴任しましてからも、実は村長等の陳情も受けたわけでありまするが、日本で初めてできるこの種の試射場でありまするから、地元としては相当多く周辺整備のために特別措置がとられるであろうという大きな期待があったことは、これは私も見聞きして事実であります。しかしその期待に必ずしもわれわれのほうとして十分こたえる返事ができなかったというようなことから、現在では反対ということになっておるわけであります。
  99. 辻原弘市

    辻原委員 いま一つ重大な問題は、これは昭和三十四年に村に払い下げられております。いわゆる国有林地を村に払い下げておる。そのときに国と県と村の間で契約書がたしかかわされた。これは総理もひとつ聞いておいていただきたいと思うのです。その払い下げました契約書がここにございますが、その目的は、あの付近、屏風山一帯、非常な広範囲な地域らしいのでありますが、当時この地方の開発のために屏風山開発計画というものを進めた。その必要のために村に払い下げをするが、しかしその目的以外に第三者に転売してはならぬというきちっとした覚え書きが契約書として取りかわされておるのです。それが相馬さんだか粟生さんだかは別にしても、ともかく第三者の全然無関係の人々に、しかもこれは牧場として売り渡された。そしてそれが二転三転、今度はミサイル、こうなっておる。こういうことが国有地の払い下げで行なわれるということになると、国有地の払い下げで条件をつけて契約書までつくっても、何ら意味をなさぬということになる。この点については農林省、林野庁長官も見えておると思いますが、一体そういうことはどうなんでしょう。明らかに契約違反です。契約違反をやっておるのです。また国も契約違反の片棒をかついでいるんだ。一体どうなんですか。
  100. 福田省一

    福田(省)政府委員 ただいま御指摘のように、この覚え書きにつきましては、確かに三十四年に払い下げましたときに契約書の覚え書きとしてつけております。この第四項に「町村は、買受けた林野を官地民木および貸付を受けている権利者以外に転売してはならない。」かようにございますけれども、その当時の考えといたしましては、地元の部落の人たちへの払い下げの目的は、やはり農耕地でございましたから、その関係のめんどうを見てやる、そうしてそれが地元民のためになるということを考慮しまして、契約以外に念のために指導するという意味でつけたものでございます。
  101. 辻原弘市

    辻原委員 そんなことを聞いているんじゃありませんよ。私も法的にいろいろ調べてみたんです。契約書に付随する覚え書きというものは、これは当然契約言と同然である、付属するものである。これは常識ですよ。しかし明瞭に第三者に譲渡してはならぬと書いてあるものが、いま言ったような形になっている。こういうことは私はけしからぬと思うのです。ここだけじゃないんです。もう幾つもあるんですよ。これは今度はレーダー基地なんです。山形県の温海町、これもさる業者が来て、そうして実は五十万坪ばかり海抜六百メートルの地点で――これはゴルフ場だ、ゴルフ場をつくりたいからひとつ世話してくれないかと町役場へ来て、そこから話が始まった。ところが一回、二回やっている間に、どうも五十万坪というのはおかしい、少し広過ぎる。そうして一体これは何だとしつこく聞いたところが、実はこれは防衛庁のレーダー基地なんです。そこで町議会がてんやわんやし出した。私は時間がないからこの問題についてあれしませんけれども、大阪府下の能勢だって同じ経路でしょう。なぜきまったならば堂々と防衛庁は町なり県なりと話をして、困難であっても必要なものであるならばその理解を求めぬか。常にそういうふうに業者が介在をして、そうして土地を取得しておる。いまの車力村の場合には、問題になったときには県議会で問題になった。そうして知事に対しては正式に四十六年度中に土地を買収する予定であるというときに、もうすでに前年十二月にちゃんと防衛庁は登記をしてしまっておる。これで県議会も知事もかんかんになったのじゃありませんか。なぜそういう不明朗なことをやるか。しかもたった一年間で倍になったような土地をなぜ買わなければならぬのか。大いに私は疑問であります。のみならず、特にこの車力村に関する限り、もう周辺地域ことごとく反対です。秋田県も反対。しかもあの海の向こうは有数な漁場でしょう。しかもたいへんな射程と幅を持っておるのですから、漁場全体は全滅だ、こういう。たいへんな問題をいま提起している。おそらくこの間の漁業の問題について補償するならば、ちょっと数えられぬぐらいの金額になるでありましょう。そういうことをあえてほおかむりして強引にあくまで押し通されようとするならば、私はこれは日本の防衛も何もあったものじゃない。ほんとうに住民怨嗟の中で事が行なわれるというような事態、これは私は百歩下がって政府の立場に立っても好ましいことではないと思う。総理からひとつ明確な御答弁を願いたいと思います。
  102. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 防衛に関する問題はいろいろ基本的な問題がございます。しかしいずれも重大なる問題でありまして、国の独立、安全、これはどうしても確保しなければならない重要な問題であります。しかし地域住民の反対そのままで、幾ら大事な問題だといっても無理押しをするというわけにはいきません。私は地域住民が十分理解して、協力を得てこそはじめて防衛の実があがる、かように考えますので、その点については御指摘がありましたから、さらにその方向で努力したい、かように考えます。
  103. 辻原弘市

    辻原委員 たいへん時間が経過して恐縮でありますが、実はこの問題について、漁業の関係が非常に大きな問題であります。特にその問題について同僚議員が関連質問をしたいということでありますから、若干時間をいただきたいと思います。
  104. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 長谷部七郎君より関連質疑の申し出がありますが、予定の時間が経過しておりますから、特に五分間だけ許します。
  105. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 ただいま辻原議員からも指摘がありました車力村に設置されるナイキ、ホーク試射場の問題でありますが、この問題をめぐりましていま関係漁民はたいへん大きな反対運動を展開しておる。特にミサイル射場の海域は昔からイカやマグロあるいはマス、タイ、ブリ、サンマなどの天然の好漁場でございます。現に青森県側には十六の漁協、関係組合員は約三千七百人、年間にいたしまして約一万二、三千トン、金額にして約二十数億円の水揚げをしておる、こういう漁場でございます。また秋田県側も約五つの漁協が関係をいたしておりまして、年間三千トンから四千トンの水揚げを行なっております。したがって関係漁民は約五千人でありまするけれども、家族を含めますと二万数千人の漁民の死活問題だ、こういうことでいま騒いでおるという状態でございます。政府はこの射場をつくることによりまして、沖合い約九十キロメートル、幅四十五キロメートル、面積にいたしまして三十五万七千余ヘクタールにのぼる海域が制限を受けることになるわけであります。これに対しまして政府は関係漁協に対しては何らの了解工作を行なっておらない。しかも青森県、秋田県両県に対しても何ら説得あるいは対策を講じておらない。たまたま秋田県では去る三月二十五日の段階で、これは自民党も含めまして満場一致でミサイル射場設置を中止してもらいたい、こういう決議が採択になっております。また青森県におきましては、三月二十二日、開催中の県議会におきまして、これも自民党を含めて全会一致をもってミサイル射場設置を白紙に撤回してもらいたい、こういう決議が採択されておる、こういう形でざいまして、さらにまた関係市町村あるいは関係漁協、漁民はあげてこの政府の措置に対して反対の態度を表明しておるわけでありますが、この際このような関係住民に重大な影響を及ぼすミサイル射場につきましては中止すべきではないかというぐあいに私は考えておりまするけれども、ひとつこの際、総理の責任ある御見解を示していただきたい、こう思うわけであります。
  106. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私から先に答弁をさせていただきます。  いろいろいきさつがあることは私もよく承知をいたしております。しかしもともとこの射場の発足といいまするか、実際に実施をいたしますのは昭和五十年を目途としておるわけであります。したがいましていま御指摘のような問題等につきましては、総理からも答弁がありましたように、十分地元の意向というものを尊重しながら、今後よく折衝をしてまいりたいと思いますので、いまにわかに中止という点については言明できません。まだ土地を取得したばかりでありまするので、そういう地元のいろいろな事情、そういったことを勘案しながら、十分ひとつ話し合いを進めてみたい、こう思います。
  107. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 辻原君に申し上げますが、時間が経過しておりますから簡単に願います。
  108. 辻原弘市

    辻原委員 いまの問題については私が指摘した問題、また同僚長谷部君が申し上げた重大な漁業関係の問題、しかもまことに高姿勢で臨んできておる。そういうことについてあらためていま総理は十分精査の上で検討したいとおっしゃられたから、私はひとまずこれで了承いたしますが、われわれの指摘した問題について、ひとつ明日さらに審議の機会もございますから、それらを調査してお答えを願いたい。こいねがわくは、私は住民の意向に従ってこれは再検討をされることがわが国のためである、私はそう判断をいたしております。  最後に、たいへん時間が経過して恐縮でありますが、一つだけ分科会で大きな疑問の残っている問題がございます。それは児童福祉法の関係で毎年幾百カ所かそれぞれ保育所がつくられております。総理は施政方針の中でも従来の産業優先から福祉優先に切りかえることが政治方針の基本であるとおっしゃってきたのでありますが、残念ながら私はその事実を見て、まさに有名無実ではないか、というのは法律にはそれぞれ児童福祉施設についての費用区分が明確にされております。たとえば保育所を設置するという申請が当該市町村から出た場合、国はその二分の一を負担しなければならないとなっておる。ところが実際私が厚生省からいただいた数字を見ますると、全然そういうことにはなっておらない。昭和四十五年の例をとりましても、設置した保育所は四百二十一カ所ございます。そのうち国庫補助を受けたのが約半分強の二百六十四、残る百五十七カ所、これは公立だけでありますが、この分は全然補助金が受けられていない。この問題について、分科会でわが党の堀君が、明らかに法律違反ではないかと追及いたしましたについて、政府としては、若干の疑いもありますから、統一した見解をお示しいたしますということになっているのであります。私も検討いたしましたところ、法律には明らかに二分の一を負担しなければならないと明記されておる。なぜそれを負担をしていないのか、口で幾ら福祉優先を言ったってだめなんです。こういうことをきちんとやらなければ、国民は納得いたしません。私はあらためて政府のこれに対する明確な見解を示していただきたい。また、今後の扱いを要求いたしたいと思います。
  109. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 確かに辻原委員のおっしゃいますように、公立の保育所の設置要求を全部満たすだけの補助金がついておりません。ただいまお読み上げになりましたとおりでございます。しかし、これは国が二分の一を負担するということになっておりますが、保育所は都道府県知事の認可を得て設置をすることができるということになっておりまして、設置を法律で義務づけておらぬのでございます。そこで、法律解釈といたしましては、必ずしも法律違反ではない。すなわち、国、府県、そして市町村、この意思が合致して、そしてつくるという場合には、二分の一の補助をするというように理解をいたしております。しかしながら、厚生省といたしましては、少なくとも市町村がつくりたい、そして知事もつくらせるのが適当だという考えのある場合には、できるだけ全部補助をつけるようにいたしたい、かように考えて、一昨年、昨年、それから来年度予算も約五〇%余り増しました。しかし、これだけでは十分でございません。四十六年度を初年度とする五カ年計画で、国が必要と考える保育所を全部つくって、そして補助金を負担するようにいたしたい、そういう措置を考えておりますので、御了承いただきたいと存じます。
  110. 辻原弘市

    辻原委員 いま、保育所をふやしてもらいたいという国民の希望は、総理、これは熾烈なものがございます。それで、町村としても、苦しい財政の中から、せめて国庫補助二分の一があるのだから、何とかやりましょう、こういうことで努力をして申請をした。ところが、法律に書いておるだけで、補助はもらえなかった。これでは、政府は福祉優先をやっているとは口が裂けても言えますまいと私は言うのです。しかも、いま厚生大臣がおっしゃった法律解釈は、ああいう解釈を三百代言的解釈というのです。設置義務と費用負担とは別個なものなんです。設置はよしんば義務づけてなくても、費用負担については義務づけられているわけなんです。もしあなたのいまの解釈をもってすれば、二分の一を負担しなければならないと書いてあることも、また法律によっては、予算の範囲内で負担をしなければならないと書いてあることも、あるいは負担することとすると書いてあることも、同一だということになるのです。そんなばかな話はありません。負担しなければならないと書いてあることは、負担しなければならない。だから、私はそういうでたらめな政府解釈は承認をいたしません。要は、少なくとも自分においては、法律に明記されておるとおり実行しなさいということを私は要求をいたしまして、たいへん時間も経過いたしましたので、私の質問を終わりたいと思います。
  111. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて辻原君の質疑は終了いたしました。  午後は二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十五分休憩      ――――◇―――――    午後二時八分開議
  112. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  締めくくり総括質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  113. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理は、聞くところによりますと、本日はお誕生日であると私聞いております。そのお祝いをする日に締めくくり総括、総括といえば何か戦慄を覚えるような感じがいたしますけれども、その締めくくり総括ということは、あまりにも皮肉のようなめぐり合わせではないかと私思うのであります。しかし、政治家である以上、また国政の最高責任者である以上、総理としては、国民のきびしい批判を受けるのは私は当然であろうかと思うのであります。そういう意味におきまして、政治責任についてまず私はお伺いをしておきたいのであります。  過日の予算委員会におきまして、わが党の矢野書記長の質問のときに、総理に政治責任をお伺いをいたしました。その次には、たしか大蔵大臣に政治責任をお伺いいたしました。続いて防衛庁長官にやはり政治責任をお伺いいたしました。そのとき総理は、大蔵大臣、防衛庁長官をかばうかのように立ち上がりまして、そしてみずから、これは私の責任であるというような意味のお話がございました。そこで、私どもさらに政府としての、また総理としての政治責任の統一見解を求めるということに現在までなっておるのであります。矢野書記長は、きょうは当然総理が統一見解をお示しになれば質問に立つ、そういう立場にあるのでありますけれども、私が締めくくり総括をさせていただいた関係上、私が矢野書記長にかわってこの問題を質問したいと思うのであります。  何ゆえ今日まで統一見解を留保してきたかといいますと、一つには、総理に時間を与えることによりまして、政治責任の重大さと、しかも冷静にそれを反省させるという意味の内容を持っておったと私は思うのであります。二番目には、やはり四次防先取り予算に端を発し、その後相次いで起こりましたところの政府の不手ぎわ、そしてまた文民統制の責任の総括を求める意味でもございました。しかるに、先ほど辻原委員に言われた総理の政治責任に対するところの考え方というものは、非常にあいまいもこという状態でございました。私は、そういう観点から具体的にお伺いをしたいと思うのであります。  総理も御承知のとおりに、われわれはかつて大東亜戦争において敗戦という現実の中から、とうとい犠牲を払って立ち上がり、二度と戦争してはならないと、そのように誓い合いました。このとうとい教訓を無にしてはならない、私はそのように思うのであります。しかるに、平和憲法のもと、戦争放棄を宣言しているわが国が、アジアの諸国によって、日本の軍国主義が復活しているのではないか、そういうような疑いの目を向けられるような状態になったということは、私はまことに残念なことだと思うのであります。その根本原因は何から来るのかといえば、言うならば、やはり文民統制の形骸化が大きく指摘されようかと思うのであります。その具体的な例として、昭和四十七年度の予算編成の中で、シビリアンコントロールを無視した軍事予算の先取り問題を引き起こしましたことは、結果からいえば、政府修正による二十七億円の減額をしたものの、国庫債務負担行為はついに削ろうとなさいませんでした。これら一連の文民統制じゅうりんによって起きた二十日間の国会空白は、予算編成上のミスを反省しておられるのか、あるいは国会対策上の手段としてやむなく従わざるを得なかったのか、矢野質問に対するところの総理の統一見解をまずお伺いしたいのであります。
  114. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えをいたします。  先ほど辻原君にお答えしたとおり、またただいまは相当の時間をかしたはずだと、かように言われます。私もその間冷静に、しかも反省をしながら、先ほどの辻原君に対するお答えをしたのでございまして、これをもちまして私の統一見解でございますから、さように御理解いただきます。
  115. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほど辻原さんに答弁をしたからそれでいいというのではありません。実はこの問題の統一見解は、矢野書記長が見解を求めているのであります。言うならば、総理は、当然矢野書記長がこの場所に出てこられるならば、その統一見解を示さなければならないのであります。冷静に、しかもその反省というものをもう一度この場所で明らかにしていただきたいと思うのであります。
  116. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も先ほどずいぶん詳しく申しましたので、これからそれが一宇一句違うとまた統一見解が必要だ、こういうことにもなりますので、また鈴切君もそばでお聞きでございましたから、あれで御了承いただきます。
  117. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理は、そういうふうにすぐに国民の前に開き直ってしまうのであります。私は、その反省がないところに大きな問題があろうかと思うのであります。たとえて言うならば、反省をしない証拠に、その後相次いで起こったところの文民統制無視の問題があげられるのではないでしょうか。もし総理が、ほんとうにこの文民統制に対して命がけでそういうことをやるという決意を示されたならば、そういう問題は起こっていない。議長あっせんであるとか、あるいはそういうふうなただ国会対策上だけにあなた自体が目を奪われて、大事な文民統制に対する決意の欠けているところに相次ぐ問題が起こったと私は思うのであります。たとえて言うならば、立川の移駐問題もしかり、また沖繩に多額の物資を移送した問題もしかり、また統幕議長が無神経にもサイゴンに行くというようなことを許すというそういう問題、次から次へと起こってくる文民統制の形骸化の問題は、明らかに総理自体が反省をしていない証拠ではないかと私は思うのであります。  そういう意味において、あなたは四次防におけるところの先取り予算において統一見解を求められました。それからさらに、罪が幾つも大きくなっていることをあなたは知らなくてはならないのであります。そういう意味を含めて、あらためてもう一度ここでそういう問題についての反省を伺いたいのであります。
  118. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま御指摘になりましたように、いわゆる文民統制、これは他のことばで言えば政治優先ということだと思います。私は過去の大東亜戦争の苦い経験から、また平和憲法ができた今日、われわれの自衛力整備はいたしますけれども、その範囲、その限度、それはどういうことか。これはやはりルールとして守らなければならないのは、何といってもまず第一には政治優先、文民統制であります。また自衛力自身も、自衛力という限りにおいてそのらち外に出てはならない。だからこそ、徴兵制やあるいは外国に派兵もしないし、また同時に核兵器は持たないという、しかもこれは国会の決議までされております。私はそういう意味において、私どもの今後のあり方、これは二度とあやまちを繰り返さない、こういうことであろうと思っております。そういう意味で最善を尽くしておる。  また、鈴切君から御注意のありましたそれらの点についても、立川移駐問題あるいは沖繩の物資の問題、これなどは、あるいは時期的に前後するかわかりませんが、たとえばさような問題が一々、いわゆる文民統制のワクを起した、かようには必ずしも言えないのじゃないか、かようにいままでの審議の経過から感じております。この点では、もうすでに一応審議も済んだ事柄でもありますので、とにかく国民から不安や疑惑を持たれないようにすることが、私ども政治家の当然のつとめであると思っております。問題は、外国からとやかく言われるが、外国から言われることはともかくとして、われわれの手の及ばないことでありますけれども、国内において日本人自身から軍国主義化したとかかようなことが言われないように、また自衛の必要性、これについては十分認識もしていただきたい、かように思っておりますので、私は、そういう意味においては最善を尽くしてあやまちなきを期したい、かように考えております。
  119. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま沖繩の物資の移送の問題が出ました。しかし、これはもう済んだことであるというふうに言われますけれども、それは全部政治責任につながってくる問題であります。言うならば、沖繩はまだ施政権返還前にあります。言うならば、アメリカの施政権下にあるところの沖繩に軽率にも自衛隊が行って、そして多量の物資を移送をしたということになれば、これは当然問題が出るのはあたりまえであります。また、沖繩県民の感情を無視したというところに大きな問題があろうかと思うのであります。総理はたしか空白国会が収拾されたときに、あなたは非常に謙虚な姿勢をもって私どもに言われたことばがあります。もう一度思い浮かべていただきたいと思うのであります。「昭和四十七年度の防衛関係予算と四次防との関係をめぐって疑義を生じ、そのため委員会の議事を混乱させ、長日時にわたって審議が中断するに至ったことはまことに申しわけなく、深く反省いたしております。国防問題は、国の将来にとって重要な問題でありますので、それだけに厳重な文民統制のもと、いやしくも国の内外に疑義、疑惑や不安感を生じさせることがあってはなりません。政府は、このたびの議長あっせんの趣旨を体し、予算の修正を行ない、今後とも文民統制の実をあげるため、適切な措置を講じてまいる決意であります。」と、あなたはこのように言われました。私はしかとこの耳で伺いました。それだけにやはり私は、政治責任というもの、あるいは文民統制という問題の形骸化に対する政治責任というものは重要であるといわざるを得ないのであります。先ほど辻原委員が総理に、政治責任をとっていつおやめになるかということについて深く総理の気持ちをお聞きになりました。総理はあえてこれにお触れになりません。私はそんなことをいまここで聞こうとは思いません。それよりも政治責任に対して、ほんとうにあなたが心から今度の問題、国会空白の問題について心を痛めておられるかどうか、そして政治責任を強く感じておられるかどうか、それはおのずと総理の具体的な行為にすべてが出てくると私は思うのでありますが、もう一度その点をお伺いする次第であります。
  120. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお読み上げになりましたことについて、いまも変わりはございません。私は、まことに残念なできごとであり、遺憾なできごとであった、かように思っております。しかし議長のあっせんもあり、また文民統制の実をあげる、そういうことに最善を尽くすことによってこの償いはできるのではないか、皆さん方の御指摘になったのも、文民統制の実をあげろとおしかりを受けたのもこの点に重点があった、かように私は理解しております。そういう意味で今後も最善を尽くしてまいる決意でございます。
  121. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、総理が引退する時期をいつだということを言うつもりはありません。しかし総理は、少なくともやはり国権の最高責任者として文民統制の実をあげていかなければならない、それは私も当然だと思うのであります。  そこで、総理が文民統制の実をあげていきたいと言っておられました。また今度の国会の中で、私はやはり一番大きな問題として浮び上がったのは文民統制形骸化の問題ではなかったかと思うのでありますので、私はそこで総理に具体的にお伺いしたいわけでございます。  シビリアンコントロールの機能を果たすために、総理も再三こういうふうにおっしゃっております。当然自衛隊の制服と背広、そしてまた背広と内閣内閣国会、この三つチェックするところがある、そのチェックする機関が実際に機能を果たしておることは文民統制の実をあげることであると言われておりました。ところが御存じのように、今度の国会においては国会の機能が働いただけであって、実際には、防衛庁並びに政府の機能は働いていなかったところに私は大きな問題があろうかと思うのであります。  そこで、具体的に防衛庁長官にお伺いをいたしますけれども、制服と背広に対するシビリアンコントロールをどのようにお考えになっておるか、防衛庁内部の機構を今後どのようにお考えになっているか、まず防衛庁長官の背広と要するに制服の関係でお伺いをいたします。
  122. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 今日の防衛庁において、シビリアンコントロールの乱れがあるというふうには私考えておりません。国防会議をめぐりましては、意見が二つに分かれまして非常な疑義を生じたことは事実であります。しかし、あくまで軍事に政治が優先する、こういうたてまえがとられておりまして、私自身が文民でありますし、私のほかに政務次官も参っております。そして内部部局による幹部によって制服というものはコントロールされる、こういう形にあるわけでありまして、現在内部部局と制服との間に意思疎通を欠くというようなものは全然ございません。どうぞひとつその点は御安心願いたいと思います。
  123. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁長官はそういうお気持ちでいるとするならば、せっかく文民統制の問題がいま盛んに言われているにもかかわらず、あなたは何の反省もない状態における考え方であるならば、自衛隊内部の文民統制はできない、必ず国会において幾つかの問題が起こってくることはもう明らかであります。私は、そんなことではほんとうにいけないと思う。そこでまず、防衛庁内部部局とそれから三自衛隊の関係を私はもう正直に、謙虚に総点検をしてみる必要があろうじゃないかと思うのであります。それから、内部部局による文民統制を確立するために、はたしてこの機能でいいかどうかという、そういう点まで心をいたさなければ、いま制服と、それからまた言うならば背広とがどうのこうのということでなくして、少なくとも自衛隊の内局、外局における状態を総点検をすべきじゃないかと私は思うのですが、総理その点はいかがでしょうか。
  124. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま御指摘になりました点、内局と外局、いわゆる制服と背広、その辺を点検しろと言われますが、実はこれはもうはっきりいたしております。私が申し上げるまでもなく、御承知のように、過去におきましては制服が大臣であることがございました。しかし、新しい憲法のもとにおきましては、防衛庁長官、これは必ず背広であります。また内局の各局長、幹部はすべて文官で、これはやはり練達の士ばかりが各省から集まってきております。ただいま言われるように、仕事の面においてははっきりいたしております。ただ問題は、私どもがこの防衛庁の仕組みをさらに内閣の仕組みにまであげる、そのときに国防会議というのが問題になります。私は最高責任者でございますから、もっと国防会議も年に何回開けばいいとか、開かなければならない、こういうものではございませんので、必要があればもっと気やすく国防会議も開いて、そうして実際に文民統制の実があがるようにこの上とも努力すベきだと思います。ただいま御指摘になりました点も、必要があれば私ども点検するのにやぶさかじゃございません。ただいまのところ、いまははっきりその所掌の範囲がきまっておるからそういうことはございません、こういう意味でその必要はないように申しましたけれども、必要があればいつでもやる、さように御了承いただきます。
  125. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま国防会議のお話が出ましたので、やはり内閣としてのシビリアンコントロールをきちっと守るのは国防会議ではないかと思いますが、現在防衛庁設置法第六十二条で規定をされておりまして、文民統制の実をあげるためということになっておりますが、これは実は設置法の中に入っているわけでありますが、私は、少なくとも権威を持たせる意味においても、十分なシビリアンコントロールの実をあげる上においても、やはり単独法にすべきではないかと思うのでありますが、その点についてお伺いいたします。
  126. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはもちろん研究課題だと思いますが、現状において不足しているとかあるいは不十分だと、かようには私は考えません。
  127. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国防会議のメンバーでございますけれども、現在閣僚だけに実はなっておるわけでありますが、少なくともシビリアンコントロールの実をあげる上においては、学識者をこれに入れるというふうな御構想はおありであるかどうか、その点についてお伺いいたします。
  128. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま御指摘になりますように、もっと範囲を広げたらどうか、これは確かに一つの考え方だと思います。しかし、問題はやはり責任のとれる形において運営すべきが国防会議の本質だと、かように思いますので、ただいま責任がとれるかどうか、それらの点も考えないと、ただ広げただけで、第三者を入れただけで事が足りると、こういうものではないように私は思います。
  129. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この防衛庁設置法の「国防会議」の中にいろいろきめられておりますが、その中で、国防会議にはからなければならない事項が規定をされております。その中で、「国防に関する重要事項」というのは、非常にこれがものの考え方ではあいまいになってくるわけであります。そこで、多くの問題点が出てきて、これは国防会議にはからなければならないか、あるいははからなくてもいいとかいうふうな議論の分かれ目が出てこようかと思うのであります。そういう点から考えてきますと、政府として具体的にどういうふうなものを考えておられるか。「重要事項」というものは、こういうものをやはり入れていかなければならないという御見解がございましたなら、お伺いをいたしたいのであります。
  130. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの六十二条の第二項に列記されておるこの問題は、これはもちろん議論の余地のないもの――「基本方針」、「防衛計画の大綱」、「前号の計画に関連する産業等の調整計画の大綱」、「防衛出動の可否」、これまでは問題がないと思います。「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」、この範囲が一体どこまでなのかと、ただいまのお尋ねだろうと思います。  私はこの点で、いままであまり議論されておらなかったように思いますが、予算編成の際のいわゆる重要事項、そういうようなものはこの中に入るのじゃないだろうか、国防に関する問題、新しいような問題でも、これはやはりこれにかけるのが、ただいまの事項の範囲だということのほうが望ましいのじゃないか、かように思っております。したがいまして、今回の審議を通じていろいろ議論された事柄で、ただいまのことをも明確に――少なくとも予算編成の重要事項はやはり国防会議へかけて、そうして決定を見る、こういうことが望ましいと、かように考えておりますので、運用上の問題でもう少し明確にする、範囲を拡大すると、こういうような考え方でございます。
  131. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するに、国防会議の最高責任者は総理であります。その総理がどういうものを「重要事項」でかけなければならないかという認識がはっきりしていなければ、これは「重要事項」としてかけようがないのであります。そういう認識がないところに、そのつど、そのつど問題になって、驚いて国防会議にかけるというような結果が生まれてくるのでありまして、そういう点について、もう少し総理が文民統制の実をあげて真剣にやると言うならば、あれから私は時間をおかししたわけであります。それであるのにかかわらず、いまだにその結論が出てこないというのはどういうわけか。私は、総理はまだほんとうに文民統制について、具体的にこういう問題とこういう問題とこういう問題はかけなくてはならないということについての御認識がないのではないかと思うのであります。で、私は私なりにやはり事の重大性というものを考えまして、いろいろ研究をしてみました。たとえて言うならば、兵器の新規開発の問題があります。機種選定、これも含みます。それから二番目には、新規装備あるいは新規の部隊編成及び重要な配置の転換、あるいは兵器国産化に関する基本方針及び整備大綱、新基地をもしつくる場合の設置の問題、その他の重要事項と、これくらい具体的に、総理が私はこういう問題を考えておるのだというふうにならないと、ちょっと最高責任者の総理にこれをおまかせするわけには実はいかないわけでございますが、その点についてもう一度お伺いします。
  132. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど私は予算編成上の重要事項と、こういう表現をいたしました。その表現の問題といま鈴切君があげられた各項目、これは大体一致しているのじゃないだろうかと、かように私は理解しております。したがいまして、ただいまのような点でもっと国防会議というものを活用するというか、これは開いてはならないというようなものではないのですから、いつでも開けるような筋のものですから、それをもっと活用するということで万全を期したい、かように思います。ただいまおあげになったような点が問題だと、かように思っております。
  133. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これはまあ総理というお立場でなくて、自民党の総裁というお立場で、私はちょっとお聞きしたいのでありますが、わが党は、自衛隊の実情や安全保障のあり方をやはり国民にわかってもらうために、安全保障特別委員会というものを国会に設置することを提唱いたしております。これについては何だかんだといろいろ議論はございますが、私は、その点についてどのようにお考えになっているか、ちょっと総裁としてのお立場をお聞かせ願いたい。
  134. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、今回の問題ではっきりいたしましたことは、やはり政治優先、文民統制、その実から申しまして、国会が重要なる職分としてこの問題と取り組む、そのことが望ましいと思っております。ただいま言われた名前、これはどういうことか、その名前がいいか悪いかは、これはまた別でございますが、とにかく国防に関する専門的な委員会がないという状態は望ましい姿ではないように私は思っております。少なくとも今回の問題を通じて議論されて、政府自身もその姿勢を正してまいりますが、やはり国会も国防に関する、また自衛力整備に関する専門の機関、これが安全保障に関する問題だろうが、それはどういうようなことばを使われようがけっこうだと思いますが、とにかく私は、専門的な委員会があってほしい、それが望ましい姿ではないかと、かように考えております。
  135. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 広く自衛隊の実情を国民にわからせ、安全保障の問題を外交、経済、文化、防衛の専門分野でいろいろ英知をすぐって研究をし、討論をし、国民のコンセンサスをつくるということは、私は大賛成であります。しかし、これをつくったことによって、いわゆる法案をかけたり、あるいは国会対策上のいろいろの取引に使われるようなことについては、私賛成できかねるのでございますが、総理はその点についてどのようにお思いになりますか。
  136. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも鈴切君、いろいろいままでの国会のあり方について、その悪いほうの点を非常に警戒していらっしゃるようですが、これはやはり功罪が――いい点と悪い点があるのでございますから、悪いほうは一切これは触れないで、いいほうをひとつ進めるようにお互いに努力したいものだ、かように私は思います。どうぞよく御検討願います。
  137. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国防会議の充実強化、国会に専門委員会の設置、文民統制の実をあげる、いろいろ論議をされておりますけれども、私は、やはり一番問題になるのは、はたして政府は今日まで、国会にどのような、いろいろの安全保障に対するところの資料を提供してきたかという問題であります。おそらく私が申せば、総理はすぐにそれを、予算でちゃんと審議をしていただいております、あるいは人事の問題等がございます、こういうふうにおっしゃると思うのでありますが、私は、そういうことよりも、もう少し改めなければならない問題があろうかと思うのであります。やはり国会で広く審議をしていただく上において、私は秘密主義であってはいけないと思うのであります。そういう意味において、総理は、政府が国会に対する姿勢というものを改められる点がございましたならば、お聞きしたいのであります。
  138. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府は国会に対して、必要なる資料提出をする義務があると思います。ただいま国防に関する資料、事柄の性質上これは秘密を要するものもございます。ただ秘密だ、秘密だというそのことばで逃げてはいけない。だから、そういう意味の秘密を守るという事柄についても、やはりくふうをして、そうして国会の皆さま方に実情を知っていただく。また国会の審議を通じて国民に実情を知っていただく、これが何よりも大事なことではないかと思っております。ただいまの民主主義、民主政治、同時に議会中心の政治、その形態から申しまして、ただいまのように考えます。  重ねて、誤解のないように申しますが、秘密事項というものは国益、その意味から守らなければならないものがある。それだけは申し上げておきます。
  139. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実際には国民は、予算の審議を通して初めて断片的に防衛の問題等に触れるような場合がございますが、実際には国防に対する政府の考え方がよくわかりません。私どもは、政府の考えておるいまの現在の防衛計画というものは、すでに専守防衛のワクを踏み出したものではないかというような批判的な立場にもございますが、しかし、広く国民に防衛のあり方、現状等についての批判を仰ぐということは、一番私は、大きなシビリアンコントロールの実をあげるものであろうと思うのであります。  先般、昭和四十七年度を初年度とする長期防衛計画の大綱を決定され、今後その大綱に基づく主要項目を決定する考えのようであります。大綱または主要項目、所要経費等については、やはり国防会議の議を経て、閣議決定をした際に、私は、当然これは承認事項というふうにしたらどうかと思うのですけれども、そういうことができないというならば、私は、国会報告または説明をされることが非常に大切ではないか、そういうことが広く国民にわかり、またそこに防衛論議あるいは安全保障のあり方というものが論議されるのではないかと思いますけれども、そういう点についてお伺いをいたします。
  140. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国会の審議権、これは制限はないように私は思っております。また、その自主的な審議をなさる、そういうことに便宜を与えるというか、政府自身が協力する、これまた政府の責任、責務だと、かように思っております。ところで、ただいま御指摘になりますように、あるいは国防会議できまったら、そういうものを報告する義務あるいは連絡をする、そういう事柄を必ずやれとこう義務づけることがはたして可能かどうか。そこらに、もっと実際の問題として検討を要するものがあるように思います。でありますから、私、御趣旨は別に誤解しておるつもりはございませんけれども、ただいまのことがはたして可能かどうかなと思いながら、まだ結論を出しかねております。突然のことでございますから、ただいまお答えし得るのは以上のような程度でございます。
  141. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、国防会議にかけたものを、一々全部報告をするということも、これまたたいへんな問題ではないかと思いますけれども、少なくとも政府は、第四次防衛力整備計画という五カ年計画の考え方に立っておられる。そういうものができ上がったら、やはり私は、国会にそういうものは報告したほうがいいのではないか、あるいは説明されたほうがより以上わかるのではないか、こういう御提案を申し上げておる次第でございますが、いかがでしょうか。
  142. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん具体的な御提案でございます。そういうときには、当然予算化される筋のもののように思いますから、その予算を通じて御審議を願う。あるいはまた、予算を通じて御審議を願う前にでも、予算化する段階でお話をする、こういう機会はあろうかと思います。これはしかし、もう少しよく検討さしていただいて、そうしてお約束する以上、十分効果があがるようにしなければなりませんから、ただいま、ただ思いつき程度でお話をするわけにもまいらないと思っております。
  143. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 まあ私は御提案を申し上げるわけであります。これは非常に真剣に、文民統制の実をあげたいという総理の気持ちも、私よくわかります。そういう意味において、いままでは、どちらかというと、防衛のものはみんな日陰扱いにされてきた。私は、そういうものではなくて、もう少し前向きにこれを取り扱わなければならない。そうしてどんどんとやはり審議をしなくてはならない。こういうふうに思うわけでありますが、たとえば予算国会に提出する際、各年度の防衛方針及び防衛政策を、総理あるいは防衛庁長官国会で説明をするということも、国民の国防に対する批判を仰ぐということにおいては、非常に大切な問題ではないかと思うのですが、その点についてお伺いいたします。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの点は、これは考えものだと思っております。国会において特別な委員会を設けられる、その委員会を通じてということは望ましいのではないか。本会議の席上で、たとえば施政演説あるいは経済の演説がある、そういうような意味から防衛演説をする、こういうことになるとやや行き過ぎの感じがあって、その自衛隊というものを、どうも軍国主義化というような心配もある際でございますから、やや私は、行き過ぎやしないだろうか、そのほうをむしろ心配するのであります。ただいまの国民に実情を知っていただきたい、このことは望ましいことでありますけれども、その方法にはやはりもっと別な方法もあるだろう。広報活動をもう少し自衛隊がすべきだろう。どうもただいままでのところは、広報活動はやや行き過ぎたとか、あるいはどうも実情に合わない、こういうような批判がございますが、そういうことでなしに、皆さま方の国会の御審議を得つつ広報活動をする、こういうことになると、そこらで正しい広報活動もできやしないか、かように思っております。
  145. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、やはり政府が、今日までこういう問題をあまり論議をすることをきらい、そしてその資料を国民の前にあまり提供していないところに、いろいろの疑惑等が出てこようかと思うのであります。私は、政府は、ほんとうに安全保障に対して、決して軍国主義化をしないんだという、そういう考えのもとにこういうふうな文民統制が行なわれているということを、私は明らかにしたほうがむしろいいのではないか。断片的にいろいろの問題が出てきますと、この奥にはさらにどういうものが含まれているかという疑惑が起こるのであります。やはり私は、率直に国民の前にそういう問題を提供をすべきではないかと思うのであります。  実は四十五年の十月、防衛庁から「日本の防衛」すなわち防衛白書なるものが国民の前に提示されました。内容についてはいろいろ議論のあるところでありますけれども、日本の防衛のあり方について広く国民的判断を求めるという意味においては、いままで防衛をタブー視していたことから見れば、それなりの評価がなされるのではないかと私は思います。  そこで、防衛庁が出された防衛白書については、責任ある立場から当然今後閣議にかけられると思うけれども、その点どのような扱いをされたか、どういう意図で出されたかお伺いをいたします。
  146. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは鈴切さんから御指摘がありますように、国民に少しでもやはり防衛の問題を理解してもらう、それには防衛白書を出すことがよろしかろう、こういうことで当時の長官が総理の指揮を仰いで出したわけであります。当然これを発表するにあたりましては閣議の議を経ております。
  147. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 とすると、当然総理大臣、もちろん江崎防衛庁長官も防衛白書を十分に御承知になっておる、そのように判断をしてよろしゅうございますね。――「日本の防衛」すなわち防衛白書は、一つは現代社会における防衛の意義というものが述べられております。それから二番目には日本の防衛のあり方、三番目には自衛隊のあり方と諸問題等、いろいろの内容、高度な政治判断を含むものであります。したがって、防衛庁の案を単に閣議報告、それに了解を与えるというような軽々しい問題ではないと私は思います。これは先ほど申し上げましたように、防衛庁設置法第六十二条第五号の「国防に関する重要事項」の取り扱いとして、やはり正しく国民に知らせるという意味においても国防会議にかけなくてはならない事項ではないかと思うのですが、総理、その点についてお伺いをいたします。
  148. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 必ずしも私、それをかけなければならない事項とは思いません。新しい計画なら、これはこれからやるのですから。ただ、いまあるのを取りまとめたという、それだけのことのように思います。だから必ずしもかけなければならぬとは思いませんが、しかし防衛白書あるいは国防白書、そういうような形で出すという、そういうことになるとやはり新しい企画でありますから、いま御注意がありましたように国防会議に出すこともより適当かな、かように思います。
  149. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛白書は、これは防衛庁サイドでつくられた問題でありますので、国民を特定の方向にやはり誘導するためのかなり宣伝的な内容も感じられないわけではございません。やはり国民の自衛隊として国民の合意を得るという政府の立場であれば、現状等については政府はありのままの姿を率直に述べ、国民に判断の材料を提供すべきであると私は思うのであります。そのためにやはり政府は、こういうふうなことを今後年次報告的におやりになるお考えはないかどうかということをお伺いします。
  150. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはひとつやる方向で検討いたしましょう、防衛庁長官も聞いておりますから。
  151. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 この防衛白書は防衛庁だけでつくったわけではないのです。やはり関係各省庁と横の連絡を密にして発表に至る原案作成というものをしております。で、余談ですが、序文は当時の中曽根防衛庁長官が書いておりますが、これは中曽根君の多少私見も入っておるというわけでありますが、本論そのものは閣議の了解を経たものであります。
  152. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国防白書については、あれはたしか昭和四十五年の十月でございますから、だいぶ内容的にも変わってきております。また国際情勢の分析も変わってきております。中国の国連加盟という内容もやはり入ってまいります。そうしますと、あの内容は当然もう検討して書き直さないと、私は、あれだけがいま現在国民の目の前に出ているわけでありまして、当然あれは改定しなくてはならないと思いますが、総理、いかがでございましょうか。
  153. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 極東の緊張も緩和の方向に向かっておることは御指摘のとおりであります。総理もなるべく国民に国防の実態を知ってもらうべく、国防白書――名称が適当であるかどうかは別問題としまして、国防事情について率直に訴える政府見解を述べることは必要である、こういうふうに先ほどもお答えになっておりますので、それを踏まえまして十分検討してまいりたいと思います。
  154. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この間の四次防の要するに大綱というのはできました。四次防の大綱というものの中に、主要項目と主要経費というものはまだできていないわけでありますけれども、これは長期経済見通しのおくれが報ぜられておるわけでありますけれども、いつごろその見通しが立てられましょうか。たとえて言うならば、実際に長期経済見通しがだいぶおくれてしまうようなことになりますと、来年度予算のやはり概算要求等の問題もからんでくるわけでありますが、大体何月ごろ、言うならばそういうものは決定されるか、お伺いをいたします。
  155. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 全体計画といたしましては本年中に策定する予定でございますが、およそのアウトラインと申しますか見通しは夏ごろ、八月過ぎに作成したいと思っております。
  156. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 夏ごろ経済見通しができてから決定をされるのか、あるいはその夏ごろの前に、この予算が上がりますともう早速、そういう問題に一応経済見通しの予測というものを立てた上においてきめられるのか、その点についてお伺いいたします。
  157. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 防衛庁において、五カ年計画という長期にわたる計画でありますので、いろいろな角度から作業を始めることは今日の段階でもやっておるわけですが、少なくとも国防会議に持って出る権威のある原案というものは、やはり経済見通しができないということで年度内策定が困難になって延ばしたというあの経緯にかんがみましても、やはり経済の見通し、いま経企長官から言われたそのあたりをめどにしなければ、それを待たなければ本格的な仕上げには入れないと思います。しかし、もともと冒頭申し上げましたように国防のことは一日もなおざりにできないという立場を私どもはとっておりますので、詳密の検討を続けることは、これはもう連日内部部局においていたしておるところであります。
  158. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理、この間第四次防衛力整備計画の大綱はおつくりになりましたが、その中でこのように言われております。「わが国の国防は、「国防の基本方針」にのっとり、近隣諸国との友好協力関係を確立し、」云々というふうに載っておりますが、この第四次防衛力整備五カ年計画の大綱のときに、国防会議において国防の基本方針が検討されて決定されたかどうか、お伺いをいたします。
  159. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 国防の基本方針は三十二年五月二十日にきめられたものであります。これはいま読んでみましても、なかなか実際はよくできていると私は思うわけですが、これは正式の閣議決定事項、こういうことで、閣議が認めたものでございます。
  160. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 閣議が決定したとしても、私は当然、第四次防衛力整備計画の大綱がきまる前に、今度の国防の基本方針というものは、それでいくとか、あるいは変更をしなければならないとかという問題は、当然その前に検討をされるべき問題ではないか。そういう意味について私はいま質問を申し上げているわけでございますが、いかがでしょうか。
  161. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 よくわかりました。国防の基本方針については、この閣議決定を見ました基本方針を踏襲していこう、こういうことで、国防会議においてそのことは総理から重ねて認めておられます。その基本方針を踏襲した、こういうふうに御理解を願いとうございます。
  162. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理がそういうふうに言われたというのですが、あらためて国防の基本方針というものは、防衛庁設置法第六十二条にありますように、これははからなければならない事項になっているわけであります。そんな簡単に、これでいきましょうよなんという、そういうものでは私はないと思うのでありますが、その点についてもう一度お伺いいたします。
  163. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは基本方針ですから、基本方針が絶えず変わるというものではないと思うのです。したがって、四次防大綱をきめるときには、三次防の延長としての五カ年を目途にして防衛力を整備充実していく、また補備更新する、こういうたてまえであります。基本方針についても、これはもう当然従来の基本方針にのっとる、こういうことであります。それが基本方針というゆえんでもあると思います。
  164. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、国防の基本方針は変わってはならないというあなたの御認識であります。  そこで、私はちょっとお伺いしたいわけでありますけれども、さきに中曽根元防衛庁長官が、自主防衛五原則という考え方を示されたこともよく御存じだと思います。このとき、国防の基本方針を改定すべきである旨の考え方を明らかにいたしております。一つは、「憲法を守り、国土防衛に徹する。」二番目には、「外交と一体、諸国策と調和をたもつ。」三番目には、「シビリアン・コントロールを全うする。」四番目は、「非核三原則を維持する。」五番目に、「日米安保体制をもって補完をする。」という内容のものであったかと私は思います。それに対して、当初は総理も、これをお認めになるがごとき発言をされております。その後、四次防決定の前後に、国防の基本方針については、改定の必要があればそれを補足修正する旨の発言もされております。とすると、大綱を決定する前に当然私は、国防の基本方針をどうするかについての確認事項として、国防会議にはかるべきではないかと私は思うのですが、その点いかがですか。
  165. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 中曽根長官当時申しましたいわゆる国防五原則、私は方向としては間違いないと思います。しかし、あらためてこれを総理としてお取り上げにならなかった。したがって、国防の基本方針も従来どおりでよろしい、こういう見解に立たれたわけであります。もちろん、国防の基本方針をどうしていくかということは、これはやはり日々国際情勢も変わることですから、絶えざる検討はしなければならぬと思いますが、この段階においては、先ほども申し上げたように、変える必要なし、こういう見解に総理も私も立っておるわけでございます。
  166. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 おかしいお話でございますけれども、国防の基本方針は、国防の憲法ともいうべきものだと私は認識をいたします。そういう意味から言うならば、防衛庁長官がかわるたびごとに国防の考え方が変わるというのでは、国民はよくわからないわけであります。  そういうことで、端的にそれじゃお伺いいたしましょう。国防の基本政策というものを、どのようにあなたお考えになっているか。いま中曽根防衛庁長官の考え方といまの考え方とまるっきり同じだというようにおっしゃっておりますから、私はそれではこれから申し上げますから、その中のどれがいま現在の国防の基本政策であるかお伺いいたします。  まず第一に、自主防衛基調の安保補完か、あるいは専守防衛基調の安保補完なのであるか、あるいは安保基調の自主防衛なのか、あるいは安保基調の専守防衛であるのか、あるいは安保と自主防衛を均衡を保ってやられようとしておるのか、自主防衛と安保との関係はどのように理解をされたらよいか、その点の見解を明らかにしていただきたい。
  167. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 こまかく分析してのお話でありまするが、国の独立と平和をみずからの手で守る、これはもう独立国として当然なことであります。一方において、私どもは日米安全保障体制というものを堅持しながら、憲法の許す自衛の範囲内においては極力みずからの防衛力によって事に当たる、そういう体制を確立しよう、こういう方針で現在当たっておるわけであります。  それじゃ具体的にはどうするのか。それは閣議決定を見ました国防の基本方針による、これは先ほどから申し上げておるとおりであります。
  168. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ここに「日本の防御」がございます。いわゆる防衛白書であります。この中のアイウエのエでございますけれども、「米国との安全保障体制を基調として」とあります。「基調としてこれに対処する。」とこう書いてあります。そうすると、いま私が申し上げました中のどれにいま現在当てはまっているか。要するに「基調」という問題がこれは入っておりますから、憲法を適当に解釈するわけにはいかないのでありますから、それに対しての御見解をお伺いします。
  169. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 この国防の基本方針にですか。
  170. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうです。国防の基本方針の……。
  171. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 「安全保障体制を基調としてこれに対処する。」この最後のところですね。わかりました。  これは現在もそういう考え方に変わりはありません。
  172. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それであるならば、要するに、安保基調の自主防衛であるか、あるいは安保基調の専守防衛であるか、その点をお伺いします。
  173. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 自分の国は自分で守る、先ほど申し上げました。そうして安全保障条約を堅持していく安保を基調とする、この考え方に、今日ただいまの段階ではどうも変わりはございません。
  174. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、おかしいですね。中曽根構想の自主防衛五原則というものは、これは完全に自主防衛基調の安保補完になるわけですよ。それとどう違うのですか。
  175. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは中曽根防衛庁長官が当時、十年を視点とする新防衛力整備計画、こういうものを防衛庁のいわゆる試案という形でまとめたときのものの考え方です。したがって、当時の長官の一つのことばの上のアイデアと申しまするか、主張が入っておることは否定できないように思いまするが、それは内閣として取り上げられるところにはならなかった。しかも内閣としては、三十二年閣議決定の国防の基本方針にのっとって自衛隊を整備していくことのほうが望ましい、こういうことで総理が裁断されたというふうに承知をいたしております。
  176. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 中曽根防衛庁長官が、これは自分の私見である云々と言われましても、実際には防衛庁長官ですからね。防衛庁長官が、要するに、自主防衛五原則というものを明らかにした以上は、それは責任を持っていただかなくちゃならない。あなたはどんなことを言われようとも、それは責任を持っていただかなくちゃならない。  それから有田防衛庁長官も、「普通兵器による局地的な侵略には、日本の力によって主にやり、その足らざるものは安保によって補完をする、」と言っている。それから、「少なくとも通常兵器による分に対しては、わが方が主たることをやって、アメリカが補完的だ、」こういうふうに言っておるのですよ。同じことじゃないですか。
  177. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 現実の運用においてはそういうことになると思います。それはそういうことになるのです。自分の国はやはり自分で守る、自衛隊が事に処する、これは当然なことです。しかし、安保を基調とするということ自体はちっともおかしくないので、基調とするが、やはり独立国として自衛隊が国の安危に、みずからの国はみずからで守るべく努力していく、またその努力のための武装の充実をする、これは当然なことであります。  それで、安全保障条約を補完的な役割りに考えていく、これはだんだん将来に向けてはそういうことも考えられましょう。しかし、今度四次防大綱をきめるときには、国防の基本方針にのっとっていくことが正しいのだという見地に立って、あの大綱がきめられたわけですから、向こう五カ年間というものは、やはり安保というものが補備というような形よりも、むしろ安保体制を堅持していくという形、三次防の延長というようなふうにおとりいただくことのほうが正しいと思います。
  178. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 おとりいただくというのではなくして、三次防からずっと今日まで続いてきている中に、そういうふうに防衛庁長官の考え方が常に変わっていることに問題があると私は言うのです。あなたがおとりになるほうがとかなんとかという問題じゃなくて、いままで国会答弁等にいろいろ言われてきている問題の中に、いろいろそういうふうな発言があるということを、文書をもって私はお知らせをしているわけです。  さらに申し上げましょう。たとえば、これは昭和四十七年一月二十九日の佐藤内閣総理大臣の施政方針に関する演説でございます。この中にこういうことが書いてあります。わが国の防衛については、国民の国を守る気概のもと、国力国情に応じて自衛力を整備し、日米安全保障体制と相まって、こう書いてあります。今度は相まって、両方同等の考え方で、「国の安全を確保するという基本方針を堅持してまいります。」と言っておられます。これは委員会で総理が発言をしたというならば、たまには間違うこともあろうかと思いますけれども、これは完全に佐藤内閣総理大臣の施政方針に関する演説の内容であります。  それから、さらに私が申し上げますと、これは昭和四十六年十月の二十日、国務大臣の演説に対する社会党の赤松勇君の質疑に対して、「私は、国民の国を守る気概のもと、その足らざるところを日米安保条約によって補完するという、国防の基本方針を堅持するものであります。この考え方は国民大多数の理解と支持を得ていることを確信しております。」私がいまここに申し上げましたように、自主防衛基調の安保補完か、あるいは専守防衛基調の安保補完か、安保基調の自主防衛か、安保基調の専守防衛か、安保と自主防衛を均衡を保ってやろうとされているかという内容を、この三次防の中に、言うならば全部答弁をされているわけです。これでは国防の基本政策、これがどういうふうな状態であるか、国民はよくわからないじゃないですか。ぐるぐる目の回るようでは、こんなことでは審議できるか。
  179. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは、鈴切さん御指摘ですが、要するに基本方針というものはそうえらいぐらぐら変えるものじゃなくて、これはエというところ、「外部からの侵略に対しては、将来、国際連合が有効にこれを阻止する機能を果たし得るに至るまでは、米国との安全保障体制を基調としてこれに対処する。」いわゆる共同防衛という基本方針は、このエ、いわゆる安全保障体制を基調として当たるのだ、運用の面においては、これは相まってとか、補完してとか、自分の国は自分で守るという前提は、これはもとより当然独立国としてやらなければならぬことでありまするから、いわゆる運用のことばの上においては、相まってとか、安保で補完するとか、こういうことを言っておりまするが、基本の方針は、国連というものがほんとうに力を発揮するまでは、日米安保体制を基調として事に当たる、これは私は基本の方針として間違っておらないと思いますが、いかがでございましょう。
  180. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いや、それは安保基調と補完とは違うのであります。基調と補完とを一緒にされては、これはたいへんな違いであります。混乱をしているところに、いろいろ中曽根構想みたいなのが飛び出してくるわけです。要するに国防の基本方針、基本政策というものが次から次へと変わってしまう、そこに今日の混乱を来たしているわけであります。  そういう意味において、総理、私は正直なことを申し上げますけれども、例の「第四次防衛力整備五カ年計画の大綱」を示される前に、やはり私は慎重に国防の基本方針においては、当然これをこのままでいくとかあるいは改定をするとか、そういうことについて、もう一度慎重にはからなければならなかった事項ではないか、そのように私は申し上げるのですが、その点についてお伺いします。
  181. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ国防のあり方について、そのときどきで表現のしかたが違う、これでは国民が迷う、こういうお話でございます。しごくごもっともな話です。  ただ、私は実際の問題から申しまして、一国で幾ら国を守る気概を持ったからといって、やはり独立、同時にその安全を確保する、こういうことはできない。そうすると、やはり補完というか、あるいはいまの状態なら基調というか、日米安全保障条約、これと相まってわが国の安全と独立を守る、こういうことにならざるを得ないように思います。それが、一体どのことばだ、どれに該当するのだ、こう言って分析されるとなかなかむずかしい表現になりますが、私は、鈴切君もただいま言われるように、非常に狭い意味で云々はされないだろうと思います。私は広い意味で、ただいまのことがわかってくればそれでよろしいのじゃないだろうか。  ただ、そこで問題になりますのは、幾ら専守防衛あるいは日米安保条約、これに依存するといたしましても、やはり文民統制ということは、そういう場合にも最も大事なことでございますし、また日本の自衛隊の防衛の範囲あるいは活動、始動の範囲というか、それはどういうときから始まるのか、こういうような事柄がやはり実際の問題としては議論になるのではないか。ことに、それが日米安全保障条約というようなもの、外国の、わが国が完全にコントロールできないものと一緒に国を守るのだ、こういうときには、なおさらそれが問題になるだろうと思います。でありますから、そういう場合にいわゆる国防会議、そういうものの役割り、これがたいへん重大になってくるのではないか。ただいまいろいろ問題があるが、そういう際に国防会議の運用はいかにあるべきか、こういうことを鈴切君がお尋ねになりますが、私はそういうところに不明確さがある、これでやはり問題を提起された、かように私は思います。  私はそれに対して、いままでは日本の国益に反しない、国益に沿ってわが国のとる行動、これをやはり決定します、こういうことを申し上げました。いわゆる直接日本が侵害を受ければ、これを排除するのはもちろんであります。また自衛力を持つことによって、わが国が侵害を受けるというような危険がないように、このことを考えますが、同時に、日米安全保障条約によって米軍が駐留する、こういうところのいわゆる事前協議の問題が、しばしばわが国を戦争に巻き込む危険があるのだ、専守防御だと申しましても、ただいまの日米安全保障条約がある限りにおいては、やはりただいまのような点が問題になるだろう、かように思います。でありますから、そういう場合にわが国のとるべき態度は、国益に反しない、その立場に立ってわれわれは決定を下す、こういうことをしばしば申し上げたのでございます。  ただいまの御疑問にあるいは答えておらないかわかりませんが、大体私はいまのようなつもりで運営をしていくつもりでございます。
  182. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、分析をしたことがこまかいというふうに言われては困るのであります。たとえて言うならば、総理が施政演説をやられる、それを国民が聞いた場合には、それは断片的にしか聞かないのであります。私は連動的にいろいろ分析をしてみましたところが、国防の基本方針というものが、安保が基調であったり自主防衛が基調であったり、いろいろの考え方が出ているということを実は発見をしたわけでありますから、そういう意味において、国民はそれを聞くたびごとに、どうも政府の考え方はわからない。そうしたら今度第四次防衛力整備計画の大綱の中に、言うならば三十二年の国防の基本方針というものにのっとりと、こういうふうにきたわけです。その前に、総理だってあるいは中曽根防衛庁長官だって、私はそういう意味の改定が行なわれることが望ましいというふうに言っている。しかも、それは必ず新防衛力整備計画が正式に決定する前後にはやりたいというふうに言っているのですよ。これでは実際私は国民がわからないのではないかと思う。  私は、こういうふうな考え方からいいますと、少なくともこの第四次防衛力整備計画の大綱をおつくりになる前に、国防会議においてこれを正式にかけて、そして今度のあれはそのままでいくとか、あるいは中曽根さんがああいうふうに言ったから、改定をしなければならないかということは、論議をされて決定をされるべき問題ではないかと私は申し上げるわけでありますから、そういう点について、あの第四次防衛力整備計画の大綱は、御存じのように国会空白のどたんばで、まことに苦しい政府の立場からおつくりになったものだと私は思います。内容的にも第三次防衛力整備計画の青写真の写しのような状態であります。そういうことから考えると、国会対策上、追及されてはならないということで早急におつくりになったように私も思います。思いますけれども、いま私がこういうふうに申し上げた以上は、今度国防会議が持たれるときに、やはり私は国防会議に国防の基本方針をもう一度確認をするとか、正式にあるいはこういうふうにするとかということをおきめになったらどうでしょうかということを質問を申し上げるのですが、その点についてお伺いします。
  183. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国防に関する基本方針、これが四次防計画を樹立する際に議論になるかならないか、私はそれは問題があると思っております。ただいまのところ、国防に関する基本方針を私は論議をするつもりはございません。これは基本方針としてそのままでいい、またその線に沿っての四次防計画、かように考えておりますので、私は別に問題を紛糾さすつもりはございませんけれども、ただ、四次防計画そのものが出た場合、さらに議論がいろいろ出てきて、そうして基本方針とこれが矛盾するじゃないかとか、あるいはぶつかるじゃないかというような問題があれば、その際にそこを整理すべきだ、かように私は思っております。
  184. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私が先ほど申し上げたように、総理が言っておる施政演説の中、またあるいは有田防衛庁長官が言っている中、あるいは中曽根防衛庁長官が言っていること、もう全部それぞれに考え方が違うわけですから、ゆえに、少なくとも今度第四次防衛力整備計画をおつくりになるときには、これはもう一度国防の基本方針を、それでやるとかなんとかということを正式議題におかけになったらどうなんですかと私は親切に申し上げているのですよ。それについてもう一度御返事ください。
  185. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 別に、私も親切にお答えしたつもりなんですが、もちろんそういう議論が出ればそれは問題ございませんし、また、ただいま言うように新しい議論があれば、もちろんこの基本方針に照らしてそうしてその方針を決定する、かように申すわけでございまして、全然耳をかさない、これはもう触れない、しかし新しいことをやるんだ、こういうような、そんな平仄の合わないことはいたさないつもりでございます。
  186. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま私はそのようにいろいろな例をあげまして、国防の基本方針にのっとる基本政策というものについての論議をいたしました。ところが、内容的には実際にはいろいろの考え方が出て明らかでないわけであります。これについて私は統一見解を委員長に求めたいと思いますけれども、その点についてお伺いします。要望します。
  187. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 鈴切君に申し上げます。  見解がここで混乱しておるとは私は認めません。いろいろの表現が使われておるが、第三次防衛計画までの防衛力基本構想に基づいていくという総理並びに防衛庁長官の言明でありますから、ここで混乱しておるとは思わないのです。
  188. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 委員長は政治的にそういうように言われたと思いますが、これは実に問題があるのです。いろいろ中曽根防衛庁長官がとっぴもなく言ったことについて、総理はそれを応援するかのような発言をしております。この内容について、私は読めばまだ出てきます。出てきますけれども、私はそれをいまここでさらに言うつもりはございません。ございませんけれども、しかし私は、少なくとも国防の基本方針を踏襲をするとかあるいは改定をしなければならないというふうに言っておられる方もいるのですから、そういうふうなことを論議していることはやはりたいへんな問題でございます。ですから国防会議において、言うならばこれをもう一度確認をされたらどうでしょうかと、こう申し上げておるわけでありますから……。
  189. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、かたくなに私が一切耳をかさない、こういうわけではございません。ただ、御指摘がありますように、もう一度確認されたらどうか、こういうお話でございますが、私はその必要はないということを申しただけでございます。  なお、たいへん御親切な御注意でございますから、私がむげにそれをそでにする、こういうことではない、これだけは誤解のないようにお願いしておきます。
  190. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、いわゆる久保・カーチス協定といわれている取りきめに対して、責任の所在を明らかにした上において内府を御質問申し上げたい、こう思います。  「日本国による沖繩局地防衛責務の引受けに関する取極」いわゆる久保・カーチス協定といわれている問題でございますけれども、これは防衛庁の一局長が、これは政府を代表してと書いてありますよ。政府を代表するような形で判断できる問題ではないと私は思います。とすると、庁内において大臣かそれにかわる責任者の承認をとっているはずであります。いつ、どういう形式で決裁されたか明らかにされたいと思います。
  191. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは昭和四十四年十一月、日米共同声明にも明らかになっておりますように、本土に復帰すれば当然沖繩地域の防衛責務というものはわが国が負う、これは共同声明で明らかであります。そして昭和四十五年六月、それを受けまして当時の防衛庁長官以下関係閣僚によりまして会議が持たれております。そして陸、海、空合計約三千三百人を配備するという基本方針がそのとき政府として意思統一の形で具体的になりました。久保・カーチス取りきめというものは、この基本方針に基づいてわが国が沖繩の局地防衛をどう引き受けるか、現にこれを担当しておるアメリカのところに新しく自衛隊が入っていくわけでありますから、これがスムーズに行なわれるように、きわめて技術的に打ち合わせをしたわけであります。そこで、日米両防衛当局の間で調整した結果を文書にしたものがいわゆる久保・カーチス取りきめである、こういうふうに私、承知をいたしております。  そこで、このような配備の具体的計画を取りきめることは一体どこがやるのか。これは従来防衛庁設置法に基づきまして、防衛庁の当然の職務権限であるということでこれを取りきめ、締結をしてきた、こういうわけであります。したがって、従来の慣習から申しましても、このこと自体を直ちに国防会議にはかる議題であるというふうには了解をいたしておりません。しかしながら、沖繩への自衛隊の配備ということにつきましては、沖繩県民県民感情その他を配慮されまして、総理がこれは新たな見地に立って、あらためて具体的に陸、海、空それぞれをいつ、どの時点でどの程度配備するか、これは沖繩県民に十分理解してもらうというたてまえからいって重要事項と認めて、いわゆる国防会議の議に付することが望ましい、これはたしか昨年の十二月十八日でございましたか、参議院において総理が答弁せられたところであります。したがって、その線に沿って慎重の上にも慎重を期する、また沖繩県民の感情というものを十分配慮しながら配備をしよう、こういうことで、近く国防会議の議に具体的な人員配備、その時期等についてかけたい、こんなふうに考えております。
  192. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この種の承認については、おそらく久保局長より承認を求める事項としての文書が出されているはずであります。だれが判を押されましたか、その点についてお伺いします。
  193. 久保卓也

    久保政府委員 取りきめの署名は私がしておりますけれども、原案につきましては長官の決裁を得ております。
  194. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 長官の決裁を得ている文書を国会に提出してください。委員長、それのお取り計らいをお願いします。
  195. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 昭和四十五年六月に関係閣僚会議も開いておることでありますから、至急調査いたしまして提出をいたします。
  196. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、このいわゆる沖繩の防衛責務の引き受けという問題は、実はたいへんな問題だろうと思うのです。沖繩県民だけの感情ということも、それは私もたいへんな問題だと思います。しかし、防御の責務というものは重要な問題でありますから、当然国防会議にかけなければならないと思うのですけれども、総理はどのようにお考えになりますか。
  197. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国防会議で決定するつもりでございます。
  198. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それではどうして先に、久保・カーチス協定を取りきめる前に国防会議におかけにならなかったのですか。おかしいじゃないですか。
  199. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申しましたように、私が出、同時にまた関係閣僚が出席をして、そして三千三百名、これを決定しております。これは大体国防会議のメンバーと同じような顔ぶれであります。いわゆるただいまのような手続が経ていないこと、これは私まことに残念に思いますが、しかし、関係閣僚は一応そろって、そうしてこれを決定した、その点で御了承いただきたいと思います。
  200. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理のおっしゃっていることは、ちょっと私、理解ができないわけでありますけれども、国防会議にかけなければならない重要事項として総理が認めたならば、当然これは国防会議をまず開いて決定しなければならないでしょう。たとえどういうメンバーが出ていようとも、少なくとも国防会議という一つの議決を経なければならない。それをしないということは、これはどういうことなんですか。完全にこういう点においても、言うならば文民統制の形骸化というものが言われてもしかたがないと思うのですが、その点についてもう一度総理に伺いたい。
  201. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 ちょっと先にお答えをいたしますが、従来は、防衛庁長官がこの種の配備というものについてはきめることが、防衛庁設置法においてもちゃんと認められておるわけですね。しかし、それはそういうことであるが、念には念を入れるという意味で国防会議にかけよう、こういうふうに総理としてあとから念を入れられたわけですから、これはひとつ御了解を願いたいものだと思います。
  202. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理が国防会議にはからなければならないというふうに判断をされたことは、それは重要事項なんです。そうすれば当然、久保・カーチス協定の前に国防会議を開くというのはあたりまえの話です。それにもかかわらず、言うなれば――それでは今度国防会議にはかったとき、内容についてもしも違う結論が出た場合どうなのですか。
  203. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは、違う結論が出れば、当然国防会議の決定に従わなければなりません。しかし、いま申し上げましたように、権限としては防衛庁長官の権限できめていいことであるわけですが、総理が念には念を入れ、大事の上に大事をとるという意味でかけられて、そこで改められたということならば、これは変更やむなし、アメリカ側の了解を取りつけることは当然必要になってまいりましょう。
  204. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 米国ではこの取りきめについては、沖繩返還協定の正式な付属文書で議会にかけられております。一方的な修正は明らかにアメリカに対するところの背信行為になる、私はそのように思うのですが、その点いかがでしょう。
  205. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私は、四十五年の関係閣僚会議で認められたものが、おそらく国防会議にかかって、そう簡単にたいへん大きな食い違いがあるということは考えられないと思います。考えられないと思いますが、いま意見が違ったらどうするかという御質問でしたから、そのときは国防会議を重視する、このことをお答えしたので、そんなに変わった結論になるとは思いません。しかし、これは沖繩国会でもしばしば審議の過程において申し上げておりますように、あくまでアレンジメントしたものでありまして、アグリーメントとは違う、したがって、将来変動のこともあり得ますというふうに、総理も私も答えてまいっておるわけであります。したがって、いま申し上げたことが正しいと思います。
  206. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理はさきに国会で、久保・カーチス協定というものは変更できるような御発言をされておりますけれども、二国間の取りきめであるから、私はそう変更はできるものではない、そのように思うのですけれども、その点について伺いたい。
  207. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま防衛庁長官が申しましたように、これはいわゆる条約ではない、アレンジメントだ、こういうように理解しておりますので、ただいた変更できないものだ、かようには私は思っておりません。
  208. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 じゃ、過去において取りきめを変更した例があるかどうか、例がありましたならば御提示を願いたいのであります。
  209. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 沖繩から施政権が戻ってくるという、これは異例の場面で、他国の軍隊のおるところに自衛隊が入っていくということでこの取りきめがなされたわけで、従来そういうことはなかったように事務当局は申しております。もしあれば資料としてお出しいたします。
  210. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私の調査においても、取りきめがかような状態で変更されたという例は聞いておりません。とすると、これは、取りきめに対して変更しなければならないような状態になったということは、これは責任は重大ですよ。しかも日本の立場で言うならば、取りきめが変更されなければならない状態になった。アメリカのほうでは、付属文書としてもう議会に提出をされているわけであります。それによってもう決定をしているわけであります。そういうことであるならば、一応どういうふうにこの問題をあなたは提示し、そうしてきめられるか、その点についてお伺いします。
  211. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは鈴切さん、先ほどから申し上げておるとおりでありますから、変えることはできるのです。何もしっかりと協約したわけではない。ただ、そんなに無理に変えることはないので、変える必要がなければこのとおりのものになるでしょう、こういう推測はできますが、国防会議の議員からいろいろ議論があって変えるということになれば、変えることは当然可能であります。これはどうぞ御心配なく。そのときは外交ルートを通じてアメリカ側に了解を求めれば、事情あって変更することは私は当然可能だというふうに確信いたします。
  212. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そういうふうに次から次へ変えられるような状態のものであるならば、何も防衛責務の引き受けに関する取りきめをする必要はないじゃないでしょうか。あえてこういうものをやる必要はありません。次から次へと、言うならばどうにでも変えていただけるというならば、こんな取りきめをする必要はないんじゃないですか。両国間信頼のもとにいわゆる取りきめがなされているわけですから、そういう意味においては相当の権威があるものと私は思っております。
  213. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 もちろん国際的な取りきめでありまするから、権威のあるものであることは言うまでもありませんが、確固不動のものではない、このことを申し上げておるわけであります。しかもアメリカの軍隊と日本の自衛隊とではおのずから性格が違います。したがって、任務分担もこれは違うわけですから、いろいろ日本の事情によって変動するということはあり得るものというふうに考えます。
  214. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは佐藤総理が久保・カーチス協定前に――沖繩防衛取りきめの久保・カーチス協定は、少なくともサンクレメンテにおけるニクソンとの会談で返還が五月十五日と決定した以前の、一九七一年の六月二十九日の会合で承認して取りきめられている問題であります。そこで返還というものは実際にいつになるであろうかということは、まだその当時はきめられていなかったわけでありますので、四月かおそくても七月ということで一応めどをつけられたというふうに、防衛庁のほうから私、聞いておるわけでありますが、それに間違いありませんか。
  215. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 失礼しました。いまちょっと聞き漏らしました。
  216. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 サンクレメンテで、要するに総理がきめられる前に、いわゆるこれがきめられているわけです。とすると、やはりはっきり何月何日だということを設定するわけにいかないので、四月から七月というふうにめどをつけて取りきめたということを、防衛庁のほうで私、聞いておるわけですが、その点間違いないかどうか。
  217. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 そのとおりであります。
  218. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それであるならば、この取りきめというものは、当然四月に返還をされても十分に間に合うであろうということで設定をされたというふうに私は思うのでありますが、その点いかがでしょうか。
  219. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 四月から七月ごろまでという期間の設定は、そのとおりだというふうに受け取っておりますが、七月一日、これがアメリカ側の当時の主張でありましたから、そちらのほうにウエートがかかっておるようにも聞いております。
  220. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それはおかしい話です。たとえばそれであるならば、この取りきめに対して当然七月一日なら七月一日というそういう設定をした上において、事情によってもし変わったとするならば、幾らでもその点についてアジャストができるというふうにきめなくちゃいけないじゃないですか。少なくとも四月か七月という以上は、四月の時点においても十分にこういう防衛責務ができるという判断に立って、防衛庁としてはお引き受けになったんじゃないですか。
  221. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 なるべく早いことが望ましいというのが日本政府の態度、向こうは大体七月一日ごろではなかろうか、こういう態度、両方にひっかかるわけですが、四月一日はなかなかむずかしい、そういう判断は当時からあったというふうに政府委員も私に申しております。したがって、七月一日になるという場面に間に合うようにできておる、しかしそれが早められる場合にもまた十分任務分担がちゃんとできるように努力、準備はしておった、こう言っております。
  222. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 F104Jは沖繩空港に着陸ができません。日本の規格でいきますと二千七百メートルの滑走路が必要でありまして、そのためにアメリカと打ち合わせをいたしまして百五十メートルの延長をすることになっているといわれておりますが、事実上使用に耐え得る滑走路というものは、いつ工事を始めて、いつごろ工事を完了するおつもりであったか、お伺いをいたします。
  223. 久保卓也

    久保政府委員 現在その点について検討を行なっておりますが、当初の計画では九月末に滑走路ができ上がる予定でありましたが、一カ月ぐらいはおくれるのではなかろうかと思っております。
  224. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛局長は、あれは私は防衛庁からお伺いをした問題でありますけれども、当初の予定は十月だというふうにお聞きいたしておりますが、その点についてお伺いします。
  225. 久保卓也

    久保政府委員 当初の予定は九月末でありますから、九月三十日もしくは十月一日、いずれも同じであります。
  226. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 準備要員も沖繩返還の後に派遣をされると、私、実際にはおくれが出ているのではないかと思いますけれども、大体何日ぐらいのおくれにいま現在なっておりましょうか。
  227. 久保卓也

    久保政府委員 工事の着工期間について現在検討しておりますので、まだ明確な結論は出ておりませんけれども、たとえば陸上自衛隊の主たる部隊が現地に参りますのは、おそらく二カ月、場合によっては三カ月ぐらいおくれるのではなかろうかというふうに思っております。
  228. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するに、滑走路ができるというのは、当初の考え方からいいますと、二カ月ぐらいおくれるのでしょうか。もう一度……。
  229. 久保卓也

    久保政府委員 一カ月または二カ月、まずい場合は二カ月おくれると思います。
  230. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 航空自衛隊は、復帰日の五月十五日から六カ月以内にF104航空機による防空警戒体制を引き受けるとあるけれども、それは事実上もう不可能になってくるわけであります。なぜ不可能であるかといいますと、たとえば十月に当初滑走路ができるというお話でありました。ところがどんなに急いでも二カ月かかる。そうなれば当然もう十二月近く、あるいは十一月から十二月になるわけであります。とすると、それにスクランブルをかけるということは、高度の技術あるいは土地勘がなくてはできないのです。これは私は航空専門家と煮詰めてみましたからよくわかるわけでありますけれども、少なくとも三カ月はかかるわけであります。そうなりますと、もう来年の、大幅におくれるという見通しじゃないのですか。その点についてお伺いします。
  231. 久保卓也

    久保政府委員 現在の計画では、104を二十五機、パイロットが三十数名派遣される予定にしておりますけれども、これの全員について警戒待機、アラート体制の現地での技能を習得させるとしますと、まる三カ月かかります。そこでこの一部分といいますか、全員でなくて特定の者を選んでやれば、期間的には二カ月で可能である。したがいまして、おくれまするけれども、一月の当初かおくれても下旬であるというふうに見込んでおります。
  232. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私の考え方から言いますと、来年の少なくとも二月には落ち込むのではないかというふうに私には思えます。当初もう十月に滑走路ができるという時点において、この防空責任の引き受けという問題については、警戒体制の問題については、もう事実上できなかったということが明らかじゃないでしょうか。その点についてお伺いします。
  233. 久保卓也

    久保政府委員 着工の時期につきまして、やはり現地の情勢を踏まえまして慎重な手続をとっていくということの関係で、施設工事の始める時期がおくれたということの関係上、いまのように、少しあとのほうが窮屈になっているというのが現状であります。
  234. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するに、沖繩が返還されてから自衛隊が行って工事をするというプロセスと、当初防衛庁が考えておられたその中においても、もうすでに防衛庁サイドにおいては、これは無理だという結論は出ていたんじゃないですか。私はちゃんと話を聞いております。そういうような取りきめはまことにあいまいもこたるものです。  次に、それではお伺いいたしますけれども、海上哨戒及び捜索救難は、6の取りきめにおいて、「自衛隊は、沖繩において、」七二年五月十五日から七二年十一月十五日までの「六箇月以内にその部隊の運用が可能となるに従い、陸上防衛、海上哨戒及び防衛庁がその任に当たる捜索・救難を引き受けると。」あるが、これは事案上可能でしょうか。
  235. 久保卓也

    久保政府委員 海上自衛隊の航空部隊の配置の予定は、現在の検討し直しているところでは、おそらく十二月くらいになるのではなかろうか。ただし、この取りきめ自体が非常にかたいというほどのものではございませんで、返還日がかりに七月一日であっても、それから六カ月以内ということですと、十二月いっぱいだいじょうぶですというような理解でこの取りきめを解釈しております。これは米側ともそういう理解に立っておりますが、そういうことでいきますと、格別これを変更する必要はないというふうに考えております。
  236. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 返還当初P2Jを派遣をするについては、本年の十二月六機をやる、それで来年P2Jがさらに七月に派遣をされるというふうに私は防衛庁の説明で聞いているわけですが、その点いかがでしょうか。
  237. 久保卓也

    久保政府委員 そのとおりであります。
  238. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それであるならば、やはりこれにおいても完全な捜索、救難を引き受けるということは、これは事実上困難になってくるのじゃないですか。そしてしかも、取りきめは七二年の十一月十五日となっております。それであるならば、十二月にP2Jを持っていき、そして来年P2Jの残りを持っていくということになれば、これは完全に救難、捜索という問題についてもやはり少し無理になってきたという私は考えに立つわけですが、その点について……。
  239. 久保卓也

    久保政府委員 もともと半年以内には約六機ということに予定をしてありました。したがいまして、六機の範囲内で常時における救難、捜索といったことはできるものというふうに考えております。ただ、後にそれを手厚くするために漸次機数をふやしてまいりたいという考え方であります。
  240. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 沖繩における米軍のナイキ、ホークの部隊の現有勢力はどうなっておりましょうか。
  241. 久保卓也

    久保政府委員 ナイキは三個高射隊、三十六ランチャーであります。それから、ホークは四個隊で二十四ランチャーであります。
  242. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 取りきめには、ナイキ・ホークの地対空ミサイルの組織については、別個に定める条件に従い、防衛庁はこれを購入する意図を有し、とあるが、日本が購入するナイキ、ホークの内容はどうなっておりましょうか。
  243. 久保卓也

    久保政府委員 ただい三隊、四隊と申しましたが、大きくくくりますとそれぞれ一隊ずつになりますが、その一隊ずつについてランチャーとそれから指揮統制装置及びミサイルを購入する。ただし、その場合のミサイルについては、本土へ持ち帰って非核に改修をいたす、そういう計画であります。
  244. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 弾頭は何発で、そして予算上にはどのように出ておりましょうか。
  245. 久保卓也

    久保政府委員 だんだんと私の所管からはずれてまいりますが、弾頭はミサイルの数と同じであります。  それから、予算につきましては、これはこの前分科会で御議論になりましたように、別途御連絡申し上げるように私は聞いております。
  246. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 別途御連絡申し上げるということは、要するに、買い取りに対していろいろ交渉の関係があるから、別途御連絡を申し上げるという意味でしょうか。
  247. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはアメリカ側から買い取りをするわけでして、したがって、先般内閣委員会で幾らで買い取るのかと、それは折衝中でありますと、その折御中の腰だめでも言えないかと、それはアメリカから相当安く入手したいと思っておるたてまえからいって、この機会に申し上げることは差し控えたいと思いますと、しかし委員会の権威において秘密を保っていただけまするならば、およその交渉経過については申し上げますと、こういうことになっておるわけであります。
  248. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはり予算の審議でございますので、委員長のほうでお取り計らい願いたいことは、ナイキあるいはホーク等については、別途委員会に御報告するという話でありますので、秘密理当会においてこの問題を報告していただきたい、このように思いますが、お取り計らい願います。
  249. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 内閣委員会でそういうお話を申し上げておりまして、まだ内閣委員会からは正式の申し出に接しておりませんが、理事会でさようにきまれば、またその御要求に応じたいと思います。
  250. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その点をひとつお取り計らい願いたいと思います。
  251. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この問題については、内閣委員会の問題になっておるそうでありますから、いずれにしても理事会で相談することにいたします。
  252. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 こまかいことはあれなんですが、米側の買い取りに対しの値段の差額、日本との差額があろうかと思います。米側のやはり主張というのは、新品に対してナイキ、ホーク、大体何割くらいなんでしょうかね。
  253. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 先般も公明党の伊藤惣助丸議員ですかからその点についての御指摘があったわけですが、どうも交渉中ですので言えませんと、こういうわけですから、できればこれは公表を差し控えたいと思います。御了解願います。
  254. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 沖繩のナイキは御存じのように核・非核両用であります。むしろアメリカは、いままで核戦略での沖繩防衛として装備を施していたのでありますから、核装備と言っても私は過言ではないと思います。日本が買い入れをするナイキは非核専用の構造にしなければならないということは、いま防衛庁長官の言われたとおりであります。とすると、実は一九七三年の七月一日まではアメリカの防空責任であります。とすると、アメリカのほうは要するにそのナイキ、ホークをそのままお使いになっていると思いますけれども、その点についてお伺いします。
  255. 久保卓也

    久保政府委員 御承知のように、ナイキは核・非核両用でありますから、そこで、再々問題になっておりますように、返還になれば核弾頭は存在しないということでありますので、通常装備で弾頭を装備することになると思います。
  256. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 しかし、一九七三年の七月一日まではアメリカは防衛責任を持っているわけであります。そうすると、いま現在のナイキで使用されると思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  257. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 政治問題ですから、私からお答えいたしますが、返還時には核はない、それはちゃんとあかしを立てる、これがサンクレメンテでの話し合いでありまするから、それを逸脱して、まさかナイキに核弾頭をつけるということは絶対ない、こう確信をいたします。
  258. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、沖繩のナイキはいわゆる核・非核両用になっております。そこに核発射点検装置というのは実はついているわけであります。これはどうなんでしょうか。核発射点検装置というのが現在ついているわけであります。これが沖繩返還になりますと、いわゆるわが国の施政権下になってまいりますと非核にならなくてはならないわけです。それにもかかわらず核発射点検装置はそのままになるのか、あるいはそれが取り除かれるのか、取り除かれるとするならば、どのような状態の場所でこれを提案をされるのか、その点をはっきりしていただきたい。
  259. 久保卓也

    久保政府委員 別の局長が装備の関係をやっておりますが、私の承知しておりまするところでは、返還前に少なくとも核弾頭はなくなる。そこで指揮装置、ランチャーなどに核関係の器材がついております。これは返還日以前に撤去されるというふうに折衝を続けているはずであります。これはあとで確認をしてみます。
  260. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これはやはりナイキハーキュリーズは核・非核両用でありますし、核発射点検装置というものがついておったのでは、これは核システムの中から全部取り除かれたとは言えないわけでありますから、そういう点について総理みずから、こういうふうな核の非核三原則をきちっと守るという立場である総理は、どのようにこの問題をされるか、お伺いいたします。
  261. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまちょっと私語いたしておりましたので、あるいは的はずれかわかりませんが、この核撤去については、サンクレメンテでもニクソン大統領と特に話をいたしました。その以前からアメリカは約束して、撤去の際、返還時においてはそれは心配はない、こういうことを申しておりましたが、それだけではどうも納得がいかないというので、さらにサンクレメンテでも話をいたしました。その結果、大統領自身が、期待を裏切るようなことはない、かように申して、ただいまのところは、それを了承して、私どもは、核はない、かように確信をしておるような次第でございます。
  262. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 核はないということは当然のことであります。しかし、私が先ほど申し上げているのは、ナイキハーキュリーズの中に核発射点検装置というのがついているわけです。やはり返還時においては、まだアメリカの防空の運用になっているわけですから、それをそのままにしておくということは、これは核システムの中において、日本の国に核の点検装置を置くということになって非常にまずいということでございますから、そういう点について取り除かなければならないと思います。それについて総理もう一度お伺いいたします。
  263. 福田赳夫

    福田国務大臣 核は全部ないということが確認されるわけであります。したがいまして、もっぱら核に必要な施設、そういうものも撤去される、かように御理解願います。
  264. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほど、返還時における核抜き返還、撤去のための確認方法ということを言われたわけでありますけれども、これは大統領あるいは国務長官の声明等によるのか。もうすでに五月十五日は目の前でございます。当然、外交交渉においていろいろ交渉されておると思いますけれども、書簡及び親書が向こうのほうから来るのか、あるいは返還時における声明発表にするのか、あるいは了解事項として通達があるのか、その点についてこまかい打ち合わせができておろうと思いますけれども、その点についてお伺いいたします。
  265. 福田赳夫

    福田国務大臣 五月十五日におきます核なしの確認につきましては、サンクレメンテ会談以降、両政府の間でいま相談をしております。まだ最終的には煮詰まっておりませんけれども、大体アメリカ政府から日本政府への書簡発出、さような形になると思います。
  266. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 航空自衛隊のナイキ部隊及び陸上自衛隊のホークは、一九七三年の七月一日までに地対空ミサイルの防空任務を引き受けるよう沖繩に展開するようになっておりますが、実際には一九七三年七月以前に防空任務の引き受けができるでしょうか。
  267. 久保卓也

    久保政府委員 私どもの事務的な検討によりますると、大体七三年七月一日まで一ぱいかかりそうであります。
  268. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 レーダーサイトとナイキ、ホーク部隊との連動というのは、きわめて技術的にむずかしい問題であります。よほど訓練期間がないとわがほうではできないのではないかというふうにいわれており、したがって実際には、技術的にはまだ日本人ではできない。最終的には、ナイキ、ホークをわが国が取得した上で、相当期間の訓練がないと運用はできないのではないかというふうにいわれておりますけれども、その点についてお伺いします。
  269. 久保卓也

    久保政府委員 ナイキ、ホークの要員も、レーダーサイトの要員も、本土で一応の訓練をし、さらに現地に配置をいたして、現地でも当然訓練を行ないます。したがって、航空自衛隊関係でありますと、計画ができますれず、ことしの秋ぐらいから逐次レーダーサイト要員などが配置されて、現場で米軍と一緒にいわゆる現場訓練というものを行なってまいります。そして七月一日までには防空任務はわれわれのほうで引き受けられるといりように考えております。ただし、どのような部隊であっても、最高度の技能を持った人が全部を占めておるということでは、これは本土でもございません。したがって、常に百点であるかというと、そうであるとは申し切れない、そういう状態は残ると思いますけれども、しかしながら、防空任務そのものの引き受けは十分に可能であるというふうに思っております。
  270. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 久保・カーチス協定については逐条的に論議を重ねてまいりましたけれども、実際に取りきめ自体も、内容的には、論議を重ねればまだまだ甘いところはあろうかと私は思います。そういう意味において、国防会議を開いて、もう少しそういう点も煮詰めた上において、今後どういうふうな考え方でやるかということを論議をしなくてはいけないと私は思います。私は、むしろこの際県民の感情を踏まえて、久保・カーチス協定の修正を大幅にやるべきである、そうして沖繩防衛に対しては、従前きめたような配備計画でなくして修正を練り直すべきであるというふうに思うのですが、その点について総理大臣にお伺いいたします。
  271. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 久保・カーチス協定の修正というわけではございませんが、とにかく沖繩が祖国に復帰した後に、沖繩の防衛は本土のわれわれがこれを担当するということになりますので、もちろんその防衛に欠くるところがあっては相ならない、かように思います。しかしそれにしても、県民の自衛隊に対する十分の理解がないと、これは効果をあげるわけにはまいりませんから、それらの点について万遺漏なきを期したい、かように考えておるのが私の実際の現状でございます。したがいまして、ただいまの国防会議を開くにいたしましても、それは具体的な方向でございます。一応三千三百名というものはきまってはおりますけれども、いついかなる方法で具体的にどういう配置をするか、こういうような問題になりますと、まだはっきりきまっておるとは言えない。その具体的な問題を国防会議で決定する、そういうことでありますが、同時にその際に、沖繩県民県民感情を十分考えて、そうして理解のある処置をとりたい、かように私は思っております。
  272. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 P3の問題でございますけれども、政府は二十四日の閣議で、P3の那覇残留を閣議決定をいたしました。暫定予算の性格上、新規政策費は組み込まないものとして政府の責任において予算案を提出するということであるが、返還日にP3が残留することは間違いない事実になりました。政府は那覇空港については完全返還を約束しておったはずであります。とすると、いままでの沖繩県民に対する公約違反ではないかと私は思うのでありますが、その責任について防衛庁長官にお伺いいたします。
  273. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは分科会でもお答えをいたしましたように、沖繩県民感情を踏まえて慎重にする、こういうことが一つの原因になっておくれるわけでありまするから、多少のおくれについては、ひとつぜひ御了解を願いたいと思うわけであります。沖繩県民に対する一つの不信感、御指摘の点はあるかもしれませんが、それも全体的に沖繩配備というものに慎重の上にも慎重を期した、復帰の時点で仕事を始めることが望ましい、こういうような見解に立ってのおくれであるということをよく県民に説明すれば、また理解を得る方途もあるのではないか、こんなふうに考えております。
  274. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 かりに暫定予算の中に移転費を計上しても、移転先の普天間基地の工事が完了し、那覇空港の完全返還ができると判断されておったかどうか。
  275. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 重要な点だと思います。暫定予算に入れるか入れざるべきかということで、見解のまとまるのがだいぶんおくれておりました。したがって、工事を引き受ける施設庁においては、非常にあせっておったことは事実であります。ところが、御承知の普天間は、二千七百メートルの滑走路の工事が要請されておるわけです。しかし、私、施設庁の技術者を呼んで、もし暫定予算に入った場合には、これは五月十五日返還時にP3が移るという前提がもたらされなければならぬが、一体どうであるかという話をしましたときに、これは外交問題で軽々に口にすることはできないがと言いながら申しましたのは、これは過去形になりましたから申し上げますが、二千七百メートルは全部できなくても、第一期工事として二千メートルはできます、そうなれば、アメリカ側の理解があればそこに移すことは可能であると思う。万全でなくても、第一期工率の二千メートルで大体離着陸ができるのではないか、こういうことで外務省等を通じて了解を得てもらうことによって、五月十五日完成ということにしたいものだという内輪話をしておりましたことを率直に申し上げておきます。
  276. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 二十四日の予算分科会において、P3の撤去については返還時から最低二カ月はかかる、そのようにあなたは答弁をされております。明らかに那覇空港の完全返還は事実上できなかったのが既成の事実ではなかったかと私は思うのです。暫定予算に移転費を組んでも、これを執行できるのは四月一日以降のために、復帰前には実際にこの工事を完了することは初めから不可能であった、そういうことになろうかと思いますけれども……。
  277. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは先ほど申し上げたのが全く正直な話でありまして、私が先般、あれは鈴切さんでしたか、二カ月と申し上げたのは、二カ月ぐらいかかるだろうとおっしゃるから、そうですと申し上げたわけで、工事は、完全なものにするためにはやはり五十日ぐらい、二カ月近くという表現をその当時も私した記憶がありますが、かかると思います。しかし、先ほど申しましたように、もし二千メートルでアメリカ軍が離着陸が現実にできるということで理解してもらえるというならば、これは外交交渉において、一月もすみやかに普天間のほうへ移ってもらう交渉を外務大臣にしてもらいたい。仕事を引き受ける施設庁側ではそんなふうに考えておるわけでございます。
  278. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昨年の暮れ、那覇のP3を普天間に移すかわりに、普天間のKC130給油機を移転するので、この費用も負担してほしいと米側から要求されたと聞いているけれども、いわゆる玉つき移駐に対して、政府はアメリカから正式に申し出を受けたかどうか。これに対して政府は、今後どのように考えておられるか。その点を明らかにしていただきたい。
  279. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまお話しのようなうわさ話をちらほら聞くのです。そういうことになると非常に頭が痛いなといって苦慮しておるわけでありますが、私どもがこの問題で苦慮しておるという事情は、また先方におきましても見抜いておる、こういうふうに思います。そういう状態でありまするが、まだ正式に米側よりわが国に対しましての申し入れという形にはなっておらない問題でございます。
  280. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理にお伺いいたします。  日中問題でございますが、だいぶ時間が経過してきましたので、要点だけを申し上げたいと思いますが、去る二月二十八日の予算委員会における矢野質問に対する総理の答弁は、実に明快でありました。しかし、その後だいぶ後退をしたような答弁に変わってきました。それは、竹下官房長官の説明により、ますと、国際的な影響もあるので、その点を考慮して政府の統一見解になった。総理の矢野質問に対する答弁と政府の統一見解については、大筋において同じである、精神は何ら変わらないと答弁をしておられますけれども、あらためてお聞きをしたいと思うのでありますが、矢野質問に対する答弁は取り消しているわけではないと思いますけれども、その点についての答弁と、そしてまた総理の本音はどうなんですか。
  281. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん申しわけございませんが、矢野君に対する私の発言は、これは一応取り消しております。そうして統一見解を出したと、さように御了承をいただきます。
  282. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは総理は、矢野発言に対しては食言であったということをここで明快に言われるおつもりですか。
  283. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 食言といわれてもしかたのないような、私は、矢野君にお答えしたことをただいまのような統一見解で訂正した、かように御了承いただきます。
  284. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それで実は認識という問題が非常に大切な問題になってくるわけであります。私、そういうことになれば、やはり触れなくてはならない問題がたくさんございます。たとえば政府が述べられておりますその統一見解に対して、「政府は、右の認識に立って積極的に日中国交正常化に努力する所存であります。」とあります「右の認識」が、これがどうも問題になってこようかと思いますので、私、自分の考えをまぜながら、一応お聞きをしたいと思うのであります。  台湾の帰属を決定できる権限のあるものはだれかということを、私は明らかにする必要があろうかと思います。サンフランシスコ平和条約はその権限を規定していないし、また、いかなるものにもその権限を与えていません。またそれを推定する規定もありません。したがって、平和条約の署名国に帰属決定権があるという解釈は成立しないし、関係会議で決定するという解釈も成立いたしません。要するにだれにも帰属を決定する権限はないのである、私はこのように解釈をいたしておりますけれども、その点についてお伺いをいたします。
  285. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまのお話でございますが、権利をわが国は放棄した、そしてその放棄された台湾、澎湖島の帰属をだれがきめるのか、だれもきめる権利がないのか、その辺までを含めましてわが国は何ら発言する立場にない、こういうことでございます。
  286. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私が言っているのはそういうことでなくして、サンフランシスコ平和条約がその権限を規定していないし、また、いかなるものにもその権限を与えてはいない。また、それを推定する規定も実はないわけであります。したがって、平和条約の署名国に帰属決定権があるという解釈は成り立たない。関係会議で決定をするという解釈も成り立たない。要するにだれにも帰属を決定する権限はないのであるという私の解釈に間違いがあるかどうかということです。その点についてお伺いいたします。
  287. 福田赳夫

    福田国務大臣 事この問題ばかりは、わが国は放棄した国でありますから、鈴切さんがいまおっしゃるようなお考え、これは私もそんなような気もしますけれども、法的に言いますと、わが国は鈴切さんの御意見が正しいとも正しくないとも言うべき立場にない、こういうことを申し上げているわけであります。
  288. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 サンフランシスコ平和条約が成立してやがて二十年にもなろうとするのに、台湾帰属について著名国会議とか関係会議を開催しようとする気配さえ実はないわけであります。世界のどの国もそんなことを考えていないと私は思います。その点どう判断をされているか、あるいはそういうものを開くという機運があるのかどうか、その点についてお伺いいたします。
  289. 福田赳夫

    福田国務大臣 私どもの法的な立場は、何らこの帰属について発言権がないのです。ですから、これがどういうふうにきめらるべきかというような意見も述べられない。また、鈴切さんは、いまどういう動きがあるかというようなことでございまするが、われわれとしては全然関知していませんであります。
  290. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 サンフランシスコ平和条約によって、要するに平和条約を結んだわけであります。戦勝国と戦敗国との立場は、その前にはあったはずでありますが、平和条約を結んだと同時に、私は、少なくとも平等ではないか、そのように思うわけでありますが、現在も日本の国としては、戦敗国であって差別があるのかどうか、その点についてお伺いいたします。
  291. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま戦敗国として国際社会で差別を受けておるとは考えておりませんです。
  292. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 したがって、台湾の帰属というものは、いわゆる決定する権限でなくして、各国がそれぞれ独自の判断で、カイロ宣言、ポツダム宣言、降伏文書等の内容を勘案して、そしてそれによって決定するものだと私は思います。ゆえに、いまもあなたがおっしゃったように、戦勝国、戦敗国においての差別はない。それであるならば、イギリスはみずからの国が決定をして英中国交正常化をやったわけであります。とすると、当然、みずからがそういう帰属に対しては判断し決定をすることはできる、私はそのように思うわけでありますが、総理は、わが国がそれすらできないと思っておられるかどうか、それについてお伺いいたします。
  293. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は法的な立場を申しておるわけです。しかし、そうじゃなくて、日本はどういう考え方を、こういうことを聞かれれば、これこそまさしく、統一見解第二節に書いてある、私どもは中華人民共和国の主張が十分理解できる、こういう立場であります。
  294. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するにこの問題は、だれが台湾の帰属について決定する権限とかいうものではなくして、みずからが決定をしなくてはならない問題であります。私はそういう認識にあるわけですけれども、総理はどのようにお考えになりますか。
  295. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま外務大臣が答えたように、統一見解としてすでにその点に触れて出しておりますから、あれで御了承いただきたいと思います。
  296. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実は御了承できないわけであります。それは過日総理が、黒柳質問に対して言われていることは、「従来の経緯かから見まして、中華人民共和国政府の主張は十分理解し得るところであります。将来政府間交渉を通じて日中関係の正常化が実現した暁においては、わが国としても台湾が中華人民共和国の領土と認めることになろうというのが私の基本的認識であります。」このように言われているわけであります。すでに総理は、日中国交正常化が行なわれたときには台湾が中華人民共和国の領土になる、そういうふうに認めるであろうということが私の基本的な考え方であるというふうに言われているわけでありますけれども、領土の問題について、全然その帰属について言うことができないとするならば、こういう発言はされないわけでしょう。言われているということは、少なくとも私の考え方と同じだと私は思うのでありますが、この点についてお伺いします。
  297. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、さっき外務大臣が申しましたのが、いわゆる中華人民共和国の主張、これは理解できる。さらにその点を発展さすと、交渉の問題ではありますけれども、その上でおそらくそういう結論になるだろうという――それはよけいな見通しを立てたことにもなるかもしれませんが、そういう議論である、かように御了承いただきます。
  298. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理、そうなりますと、よけいな見通しを立てたということは、これまた食言ということになりましょうか。
  299. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はさようには思いません。
  300. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、日中国交正常化が実現された暁においては台湾は中華人民共和国の領土となるであろうなんていうことは、これはあなたの考え方から言うならば、ずいぶん私は――これは総理は、完全にこういう問題について否定をされますか。それともこういうことについて肯定をされますか。
  301. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、その点もおそらくその統一見解前の問題じゃないか、かように思います。その際に、本会議においての質問に対して私が答えたのだと思っておりますが、だから、いまの統一見解が出ておりますから、その辺で御了承いただきたい、かように思います。
  302. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実は御了解願うというわけにはいかないのであります。なぜかというならば、それは認識の違いというのが日中国交正常化を妨げる大きな要因になっているからであります。  総理、私がお伺いしたいことは、直接認識と間接認識はどのように違うと御判断なさっておりましょうか。――それでは私、具体的にお伺いいたしましょう。総理はただいま、このコップ、これはガラスのコップだと総理みずからが認めるときを直接認識と言うのです。直接認識と言います。ところが、ここにガラスのコップがあります。これを他人がガラスのコップである、そういうことを言ったのを認めるという、これは間接認識であります。ところが、それにはもう一つあるということであります。そのコップはプラスチックのコップである、こう言う人が出てくる場合があります。これをあなたが打ち消しをしないことには、これは大筋において同じだとは言えないわけであります。その点について総理は、認識の問題として、このプラスチックのコップというもの、これを打ち消す考えはございませんか。
  303. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも、いまのガラスのコップ、プラスチックのコップ、その論争ではちょっとわかりかねますが、いまの黒柳君の発言、これをガラスのコップという話をされたのかとも思いますが、そのままを私は了承したわけでもございません。後にとにかく統一見解が出ておりますから、統一見解でひとつ御了承いただきたい、このことを重ねて申し上げておきます。
  304. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私はいま統一見解のことで言っているわけであります。その統一見解の中に、「「台湾が中華人民共和国の領土である」との中華人民共和国政府の主張は、従来の経緯、国連において中華人民共和国政府が中国を代表することとなったこと等から、十分理解し得るところであります。」こういうことでございますが、これは間接認識になるわけであります。相手がそう言っていることを認めるという立場であります。総理はかつては、これを自分で認めるのだとおっしゃったわけであります。ところが、その間接認識の中には、片一方、コップはプラスチックであるという、そういう主張をするのもあるわけであります。それが打ち消されないと、これとは大筋において同じだとは言えないわけでありますけれども、そのプラスチックのコップと言うものに対して、総理はどのように思われているかということです。
  305. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま統一見解では、別にプラスチックだとかガラスだとか、そういうことを議論しておらないと思います。そこで統一見解では、私どもは中華人民共和国の主張は認識できる、こういうことでございます。それが間接認識であってもちっとも差しつかえないので、われわれは面接認識を発表する権限がない、そういう立場にありますけれども、しかし、間接認識ならば、これはわれわれが発表することができる、かように理解して差しつかえないことじゃないか、かように思っております。
  306. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、要するに中国の問題を、いまわかりやすく例をとって直接認識と間接認識の違いを申し上げたわけであって、総理はそれについて、ことばを左右にして明確にされないところに私は大きな問題があろうかと思います。それであっては日中国交正常化という問題はとうてい及びもつかない問題であります。先ほど外務大臣が、政府の首脳、外相会議というのが政府間交渉である、そして予備的な会談、これまでまだ行ってはいない、実は感触だけあるというようにおっしゃいました。その感触でございますけれども、どのように感触から問題が進展をすると判断をされておりましょうか。
  307. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国の政府は、日中国交正常化は歴史の流れである、こういうふうな理解をしている、これとまっ正面から取り組む、中華人民共和国は中国を代表する政府であるとの立場に立って、日中間に横たわる諸問題を解決するために政府間会談を始めたい、こう言っておるわけですね。これは、よく話せば中華人民共和国政府においても理解をする、そういう確信を持っております。そういう確信を持って政府間接触の呼びかけをしておる、こういうのが現段階で、次の段階は政府間接触、そういうことになる。その際の政府間接触というのは、あるいは首脳会談になるかもしれぬ、外相会談になるかもしれぬ、あるいは両政府の指名する代表者の会談になるかもしれぬ、いろいろな形が考えられまするけれども、ただいま今日の段階は、中国のわが国に対するそういう姿勢についての理解を求めておるという段階であり、私は、この理解は逐次浸透し、最終的には届く、かように確信しております。
  308. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 中国の問題は、論議を重ねれば重ねるほど、佐藤総理のもとにおいては後退という状態と、私ははっきり申し上げざるを得ないのであります。これではとうてい日中国交正常化は、努力をしておりますとか、あるいはいろいろやっておりますとか、あるいはアヒルの水かきでございますとか言っておっても、原則が明確でない限りは、もはや私は、佐藤政権のもとにおいては日中国交正常化はできない、このようにはっきりと申し上げたい、そのように思うわけであります。  さきの矢野質問についても、総理は、統一見解が出た以上は取り消しをするというふうに言われました。これまた私は大きな食言であろうと思うのであります。さらにそれに対して総理は、あとの問題においては、大筋において同じであるとか精神においては全く同じであるというようなことを言われた。これまた私は、今後の国会の問題について重要な総理の発言であろうかと思いますので、これはまた各委員会において私どもはさらに追及をしてまいりたいと思うのであります。  時間が相当経過してまいりましたから、大蔵大臣にひとつまとめてお伺いをいたしますので、御答弁を願いたいと思います。  本年度予算は、政府は、一つは景気浮揚、二つは福祉対策を重点とした予算編成であると言っておられますが、実際には景気の刺激のみが先行して、福祉は取り残されやしないかというふうに私は心配をいたしております。そればかりでなく、このところ諸物価等の値上がりに伴うインフレ傾向にあるように思われます。このようなインフレ予算では、わが国の基本的な諸問題を解決することはできない、そのように私は思うわけでありますが、本日はあと残すところ時間が幾らもございませんので、ポイントだけを申し上げますから御答弁を願いたいと思います。  第一番目には、四十七年度の予算は、多額の国債、すなわち一兆九千五百億円を計上しておられます。しかし、景気が回復して税の自然増収が思ったより見込まれる状態にもしなった場合には、国債の減額をされるとお考えであるかどうか、その点についてお伺いをいたします。
  309. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これも仮定の問題でございますが、景気が回復して税の自然増も非常に多くなるというような事態になった場合には、国債政策は、これは弾力的に運営するということは方針でございますので、依存度はできるだけ下げるというような方向への運営は考えたいと思います。
  310. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 来年度予算において、おそらく補正を組むようなことが出てくるのではないかと私は思います。補正予算を組まなければならないというような事態については、どのような場合であると認識をされておられましょうか。
  311. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 昨年の補正予算が非常にいま有効に働いておる、そうして特に在庫調整の問題において非常に改善を見ておるというようなことが、いまいろいろ日銀その他の機関によって観測されておるときでございますので、私は、今度のこの不況対策予算というものがほんとうに動き出してきますなら、私どもが最初考えたような所期の目的を果たし得るだろう。そうなりますと、今年度の後半から必ず経済の上向きというものが始まるというふうにいまのところ私どもは予想しておりますので、したがって、不況のためにさらにもう一段の補正予算に追い込まれるというような事態は、本年度おそらく避けられるだろう、私はいまこういうふうに考えて、補正予算の構想については、現在のところ何も持っていない段階でございます。
  312. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四十八年度になりますけれども、四十八年度予算で国債の発行をやることをお考えになっておるかどうか。そうなった場合は完全な赤字国債になるのではないかと思われますが、四十八年度の国債発行に対する考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  313. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 もしいま考えておるように不況の克服できるというようなことでございまいしたら、四十八年度の国債の発行は、本年度のような非常に大きい依存率の国債発行ということは、当然にこれはやめるという方向で運営さるべきものだと行えます。
  314. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四十七年度予算は、公共投資をふやして景気を刺激する政策をとっておりますけれども、インフレを助長させるばかりか、公共事業も実際には消化できずに、実行困難な場面ができてきて、計画を中止をしなければならないような事態も考えられます。ほんとうの景気を回復するためには、私はやはり所得減税が国民のふところに一番恩恵を与えるということにおいて肝心ではないかと思います。ところが政府は、ドル・ショックのときの臨時国会において年内減税をしたからといって、四十七年度は所得減税を行なわないということをいっておられますけれども、実際には所得減税をすることが一番手っとり早い景気の回復につながろうと思うのであります。それは国内におけるところの需要をふやし、輸出にドライブをかけるものでもあります。とすると、外貨の流入を防ぎ、根本的な外貨問題を解決することになるのではないかと思うわけでありますけれども、そういう点について所得減税をされるというお考え方はないでしょうか。
  315. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 税制調査会の答申を見てもわかりますように、所得税はいま程度の減税は毎年度継続すべきものというようなことも答申されておりますし、私どもも所得税についてはその減税方針をずっととっていきたいと思います。ただ、本年度は御承知のようなことでございまして、少し早く四十七年度分の減税を実施したということでございますが、四十三年から今年度までの五カ年間の統計で見ますと、自然増と所得税の減税幅の比率を見ますと二八%ぐらいの平均になっておりますが、その点から見ましても、本年度は年内減税をしなければ八千億以上の自然増があるところでございますので、明年度予定分の今年度の年内減税の幅が約三制になるということを考えますというと、四十七年度の減税幅というものは、私、決してそう少ないものではないと思います。地方税の減税を考えたら、決して例年に比べて低いものではないと考えよすので、したがって、今年度の減税ということではなくて、四十八年度の減税案を私どもは準備するつもりでいまのところはおります。
  316. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最後でございますけれども、四十六印度の補正予算で所得減税を行なった、そのように言っておりますけれども、四十七年度もやはり、物価調整減税という意味も含めて補正予算を私は組むべきである、そのように思うのですけれども、その点について最後にお伺いいたしておきます。
  317. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 問題は経済の動き方ということにございますが、まだ明年度の本予算が通過しないときにおいて、私どもは、将来を予測した補正予算の構想までは、現在のところ持っておらぬのが実情でございます。私は、補正予算なしでことしはいけるんじゃないかというくらい、このいま御審議を願っておる明年度の予算は、相当不況に対する考慮を払った予算でございますので、これが成立して動き出したら、私は、大きい補正、昨年のような補正予算をする必要のない事態になるんではないかというふうに考えています。
  318. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 以上をもって終わります。(拍手)
  319. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて鈴切君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  320. 上原康助

    上原委員 沖繩の施政権返還もいよいよ五月十五日と、あとわずかな期間を残すばかりとなったわけですが、これまで、沖繩問題にある意味では政治生命をかけて取り組んできて、あるいは、平和で豊かな新しい沖繩県づくりをやるんだということを、総理をはじめ各関係大臣も強調してこられました。   〔委員長退席、細田委員長代理着席〕 しかし、昨年の沖繩国会、あるいはいま持たれているこの国会においても、沖繩問題が国の重要な防衛、外交政策の課題としていろいろ議論されてまいりましたが、残念ながら私たちが求めてきた復帰の内容にはなっておりません。現地は、通貨問題、基地労働者に対する相次ぐ大量解雇、復帰不安というものが県民の生活にひしひしと押しつけられて、一体何のための復帰なんだという声さえ出ております。  そこできょうは、四十七年度予算の問題や基地労働者の問題、その他基地問題を含めて、時間の範囲内であらためて総理はじめ関係大臣の御所見を伺いたいと考えるわけですが、沖繩問題は、批准書も交換をされて、現段階の総理の御心境というものは一体何なのか、ほんとうに沖繩県民が喜べる復帰というものが実現したとお考えになっておられるのか、簡単に総理の御心境をまず賜わっておきたいと思うのです。
  321. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、沖繩県民も、また日本国民も、沖繩が祖国に復帰できるというそのことは喜んでおると思いますが、ただいま上原君から御指摘になりますように、今日まで過ごしてきた沖繩県民のドル経済から円経済への移行というもの、本土とのつながりが深いだけに、このことはたいへんな大きな問題だろうと思います。  実は、私がかつて大蔵大臣時分に、B円、いわゆる軍票ドルを普通ドルにかえた、そういういきさつもございます。そのときは、とにかくドルというものが非常な価値を持っていた。ところが、今回祖国に復帰する場合に、ドルの価値が非常に下がっておる。そういう際でありますから、このことが何よりも県民にとっては一番大きな心配だろうと、かように私は思います。  そこで、今回の予算措置におきましても、もちろん中央政府だけでかってに予算を組むわけにはまいりませんで、これは琉球政府の意向も十分伺いまして、できるだけ早い機会に本土並みにしたい、そういうことで努力をしておるわけであります。しかし、なかなか一朝一夕にまだまだ、かゆいところへ手の届くというような、そんなことじゃない、大筋すら実際なかなかまかなえないのじゃないかと思って、非常に心配しておるような状態であります。  私は、いま復帰を前にして県民の一番の不安はただいまのような点ではなかろうか。また、ことに軍経済、それに依存していた沖繩が、いまの軍労のストライキをはじめとし、ずいぶん混乱を来たしておる。ここらにも非常な動揺があるのじゃないだろうか。これに対して本上はどういうように対処すべきか、これはまあ関係大臣でそれぞれ知恵を持ち寄りながら対策を立てておるというのが実情でございます。  なお、いろいろお尋ねがあるだろうと思いますので、これらの事柄については、できるだけお尋ねに私からも答えたいし、また、それぞれの専門大臣からもお答えするようにいたしたいと思います。
  322. 上原康助

    上原委員 逐次お尋ねをしてまいりますが、要するに、沖繩の復帰というものが、今日のように県民に不安を与える、あるいは不満を与える。その根底は、やはり六九年の共同声明に基づいた復帰路線であるという点、そのことを私はあらためて指摘をしておきたいと思うのです。  後ほどこの問題について触れていきますが、まず、四十七年度沖繩関係予算の件でお尋ねをいたしますが、先ほども申し上げましたように、豊かで平和な沖繩をつくるんだということをたいへん強調しておられます。ことばそのものは、耳ざわりもいいし、あるいは国民の多くは、ほんとうにそういうバラ色の沖繩県がつくられていく、復帰そのものにもろ手をあげて賛成をしている、問題はないという受け取り方も、場合によってはなきにしもないと思うのです。  そこで、二千二百三億円余の沖繩関係予算が組まれているわけですが、復帰第一年次の予算という立場で、どういう面に重点を置いてこの予算編成をなさったのか。本土との格差の是正ということが絶えず強調されてまいりました。本土との格差を埋めて、なお伸び行く本土の水準に追いつくためには、それ相応の財政支出、国の支出というものがなされなければ、ことばの上だけの格差是正、復帰予算になると思います。私は、山中総務長官をはじめ関係大臣が御努力をいただいたということを評価をすることにはやぶさかではありません。だが、二千二百億も組まれたというその中身に問題がある。政府の政治姿勢というものを追及をせざるを得ないわけなんです。したがって、どういう点に重点を置いて予算編成をなさったのか。格差是正に相応する分は一体幾らなのか明らかにしていただきたいと思います。
  323. 山中貞則

    山中国務大臣 格差是正に相応する分が幾らかという質問でありますと、きわめてむずかしいのですが、予算全体としては、琉球政府と十分に概算要求の段階から最終的なセットいたしますまで連絡を密にして、同者大体合意をして詰めたものであります。  そこで、現在計上してあります二千二百三億をまるめて二千二百億と言っておりますけれども、その中には、対米支払いの三億二千万ドルの初年度分の一億ドル、円切り上げによって三百八億というものがありますから、これは当然沖繩県民には何の関係もありませんから、これは除外すべきものでありましょう。また、一方においては、暫定予算で見送りとなりましたP3の移転に伴う必要支出経費等も、これもまたカットしてしかるべきものと考えます。  こういうような計算でまいりますと、大体、沖繩開発庁に計上した分が四百三十九億九千四百万円、各省に純粋に沖繩のために計上した分が六百二十六億六千五百万円、この合計が一千六十六億五千九百万円になります。そのほか、通貨切りかえの差損を復帰の時点で補てんいたしますものが、ちょうど一六・八八%で計算しておりますからもっとふえると思いますが、二百六十億とか、その他、食管の特別繰り入れ、あるいはまた軍用地借料等の防衛庁関係の費用等がございますが、これらはいずれも沖繩県民に渡るものでありますから、これを計算いたしますと一千五百九十六億五千万円になります。一方においては、また来年の財政投融資計画で百四十三億円の沖繩の地方債を見ておりますから、私の考えております点では、大体沖繩の十カ年計画の初年度に置きかえらるべきである数字としてだいじょうぶである。そしてまた、本土の財政的な類似県等に対比してみても、そのほか高率補助等の特例措置がございますから、沖繩県、あるいは沖繩県市町村も含めた復帰後の沖繩の財政に対する国の措置として、私としては十分であるとは申しませんが、少なくとも何とか初年度にたえ得る内容の予算であると考えております。
  324. 上原康助

    上原委員 いまいろいろ御答弁があったわけですが、確かに先ほど申し上げましたように、今年度が四百二十七億の財政支出、それからしますと二千二百億というふうに、ただ数字だけを見ると、五倍にも、あるいは三倍、四倍にもなったんだという印象を与えている。しかし、長官も確かにいま指摘なされましたように、対米支払いとしてアメリカに払うお金まで予算化しているわけですよね。あるいは軍用地借料の問題にいたしましても、確かに地代は地主に払うでしょうが、国が当然支払いをすべきもの、そういう面を含めてすべて込みでやってある。そこに私は政府の政治姿勢というものを指摘をせざるを得ないわけなんです。対米支払いの一億ドル分、三百八億円等は、当然、防衛庁予算に組むか、国の予算として計上すべき数字でないのか。あるいはP3の問題はあとで触れますが、このP3の移転費の問題、さらには開発庁が支出をする予算についても全部沖繩関係予算として計上している。そういった点が、ほんとうに沖繩の格差是正というものをやっていくという積極姿勢を出すのでなくして、数字の魔術によってごまかそうとしている、悪いことばで言いますと。その点、総理どうお考えですか。
  325. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ごまかすというようなつもりは毛頭ないと思います。ただ、いま言われるように、直ちに格差是正ができる、かようには私も思いません。先ほど申しましたように、まだ数年もかかるだろう。これはとにかくもっと民生の向上をはかっていく、そういう積極性を持つためにはさらにさらにくふうしなければならぬ。山中君も申しましたように、これで十分だとは言わない。しかし、だいぶん直ってきたのだ、かように評価してしかるべきじゃないか。ことに私、これはさっきも触れたのですが、最初から最後まで琉球政府とも相談の上これはでき上がっている、こういうことでありますから、それらの点でやはり本土へ返ってよかったというような感じでも受けられるとたいへんけっこうだと思います。しかし、本上へ返ってちっともいいことないじゃないか、どういうことで返ったんだ、こう言われると、私は、ずいぶん努力された方々も、その感じには失望されるのじゃないか、かように思います。
  326. 上原康助

    上原委員 どうも問題点を指摘をしていきますと、琉政側とも十分調整の上できめたのだから十分意見は聞いたのだということで、大方が最近すりかえられつつあるのを私は非常に遺憾であり、またそういうことはないと私は思うのですが、問題は、対米支払いとかあるいは軍事目的に使うものまで予算として計上してあるということ。ですから本来ならば、ほんとうに格差是正をやっていく、あるいは本土並みの予算措置なり本土並み水準に持っていくという積極的な姿勢があるならば、こういうことに重点を置くのでなくして、ほんとうに民生向上という、県民生活を具体的にどう向上させていくのか、安定させていくのか、その点に私はもっと重点を置くべきだと思うのです。それを指摘している。琉球政府だって、三百八億円がこの予算の中に組み入れられていることに賛成はしておりませんよ。ですから、本予算を含めて四十七年度予算は、結局、再編成、組みかえをしなければいかない。対外的にも、二千二百三億円も組んだということで、あたかも沖繩予算面でも十全の措置をとられたという印象を与えているということ、その中にはいろいろな県民生活とはかかわりのない問題が入っているということ、そういう面、是正をする御意見があるのかどうか、大蔵大臣の見解を聞いておきたいと思います。
  327. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 別にごまかした予算であるわけではございませんし、沖繩で必要な予算というものを、関係各省から要求されたものを総合勘案して最後にきめられたものでございまして、必要な予算は、いま山中長官から言われたように、初年度予算としてはまずまずの予算ではないかと私どもも考えております。と申しますのは、終戦後内地におきましても、各府県は格差是正に二十数年間かかってまだこの格差の解消ができないというときでございますので、沖繩県も、復帰されて一年、二年でこの格差が解消されるとは思いません。したがって、これから立てられる十年計画、こういうようなものによって初めてこの格差が本格的な解消を見るということになろうと思いますので、私はそういう計画に基づいた必要予算を今後例年盛っていくということで解決すべき問題である。今年度だけで全部沖繩の要求を満たしておる予算とはこれは私どもも考えてはおりません。
  328. 上原康助

    上原委員 先ほど山中総務長官は、少なくとも、その米資産買い取り、買い上げ、三百八億円、あるいはP3の対潜哨戒機移転費の件、まあそのほかに指摘いたしますとVOAの三千七百万円、いろいろなそういった、国が当然支出をすべきものがあるわけですね、軍用地の問題を含めて。そういうものは予算上計上するのは好ましくないと思うということを、はっきりいまさっき答弁なさっていますよ。それについてはやはり沖繩関係予算として組むべきだというお考えですか。
  329. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは沖繩復帰というためにそういう問題はたくさん起こっております。たとえば防衛庁に言わせますというと、防衛庁予算に組まなくてもいいものが沖繩関係防衛庁予算として組まれておるために、いろいろ予算比率の問題や何かで議論の対象になるというようなことがございますが、これは要するに予算の科目のこの仕分けの問題であろうと思いますので、今回は復帰第一年でございますから、いろいろ沖繩関係予算というような形でこの予算の編成ができておりても、来年度からはこれがいろいろ区分けされて、別に沖繩関係予算という項目の中にこれがまとめられなくても済む問題でございますので、この点はどうにでも私どもは考えられると思います。
  330. 上原康助

    上原委員 予算の、沖繩関係予算の性格上あるいは編成上、別ワクという形でいま組まれておりますので、いま大臣が御指摘なさる点も理解できない面もありません。しかし私が指摘をした問題というのは、当然これは是正されてしかるべきなんですよ。その議論をこれ以上ここで続けようとは思いませんが、二千二百億も組んだんだ、復帰第一年次だから何とかかんべんしてもらいたい、今後も考えますからというような総理や大蔵大臣の御答弁ですが、復帰第一年次だから問題をもっと厳格にわれわれはすべきだと思うのです。最初がよくないで将来よくはなるはずがないです。もうおそらく五月の十五日あとになると、みんな本土並みなんだということで忘れられかねない、私たちは心配をする。現にそういう言動が政府の首脳部なり、いろいろな面で出ているということも事実なんですよ。だから私たちは、復帰初年次であるがゆえに、一体本土との格差を埋めていくにはどうすればいいのか、ほんとうに沖繩の基地経済あるいは県民生活を、総理みずからおっしゃっているように、平和で豊かにしていくためにはどうすればいいかということを真剣に考えればこそ、こういう問題も指摘をするのです。その点、ぜひ御理解をいただきたいし、組むべきでない予算はやはり組むべきでないのですよ。いろいろなものをごっちゃに組むから問題が起きる。その点、強く指摘をしておきたいと思います。  それで、総理にこの件と関係をしてお尋ねをしておきますが、これからの沖繩のいわゆる経済開発、格差是正、いろいろな面を含めて、少なくとも私たちは国民総生産の一%ないし〇・五%以上の国家支出をやるべきだという考え方を持っているわけなのです。また現に沖繩開発の問題に熱心な識者の中にも、そういう御意見を述べておる方々もおります。現年度、初年度だからいろいろ十分ではないんだが、まあまあということは組んだんだという御指摘ですが、今後ほんとうに五年ないし十年に沖繩県民の所得というもの、県民生活というものを引き上げていく、本土との格差というものを埋めていくという一つの目途として、国民総生産の〇・五%でも四千五百億円、一%となると倍、九千億円、もちろんそれはいろいろ本土の過疎県の問題と関係があるのでしょうが、そういう積極的な姿勢で開発計画なり沖繩の経済復興というものを考えていくべきだと私は考えるのです。そういう方向で今後の沖繩開発というものを進めていくお考えがあるのか。またいま私が申し上げた点についてどういう御見解をお持ちなのか、確かめておきたいと思います。
  331. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 二千二百億、これはいかにも大きいような金だが、それは、その中には、上原君御指摘のように直接沖繩県の開発そのものに関係のない金も入っております。これは先ほど来、山中君も指摘している。そのとおりでございます。しかし、とにかく関係予算として計上するときには二千二百億というような言い方をします。ただいまの将来の開発計画、これは一番身近な問題でいま力を入れて取り組もうとしているものが、これは沖繩本島に関する問題ですが、先島に関係のないことですけれども、ただいまの海洋博、これが北部地区でやられる。そのための公共投資、これはずいぶん思い切ってやらなければならないように思っております。これは同時に本島、さらにまた本島がよくなることによって、先島地域もこれはよくなる、かように私は考えますので、ただいまのような新しい事業、それと取り組む姿勢が何よりも大事なことではないだろうか、かように思います。
  332. 上原康助

    上原委員 どうも明確な御答弁を得られないようですが、要するに予算問題で指摘をしておきたいことは、沖繩関係予算ということと、沖繩の経済開発なり格差是正のための開発をしていくための予算とはおのずから別の問題なんですね。沖繩関係予算というふうに、いろいろなのを一緒にして――数字ほどごまかしがきくものはないんですよ。そういうことではいかないし、やはり格差是正するにはこういうふうにやっていくんだという方向づけというものをぜひ明らかにしていただきたいし、一つの方向として、やはり国民総生産の少なくとも〇・五%、一%範囲の国家投資をやっていくという、その中でプロジェクトを立てていくということが大事じゃなかろうかと思うのです。その点、あらためて念を押しておきたいと思います。  次に、対米請求権の件についてお尋ねをしたいわけですが、この問題はいろいろ法的な面、あるいはまた実態調査の面等ありまして、私はここでむずかしい理屈を議論しようとは思いません。何回か沖繩国会、そうしてまた分科会、この予算委員会でも取り上げられましたが、依然として、県民が戦時中あるいはアメリカの軍事占領支配のもとでこうむったもろもろの被害に対してどう補償していくかということが明確に出されていない。これまで国会答弁等いろいろ議事録等調べてみますと、調査をして必要なものについては何とかしようというような答弁がなされております。対米請求権というものは、御承知のように平和条約十九条、そうして返還協定の第四条において一応放棄をされたかっこうになっておる。放棄をした以上は放棄をしたほうが被害者に対してやはり責任を負う必要があると思うんです。この点についてこれまでいろいろ議論してまいりましたが、どうお考えなのか、まずお伺いをしたいと思います。
  333. 山中貞則

    山中国務大臣 これは私も基本的には認識を同じくいたします。沖繩県民の人たちが、平和条約で放棄をされたことになったからといって、県民の人たちが受けたもろもろの被害についてそれが消えたものではありませんから、したがって本土の責任としては、放棄したことに伴ってその責任を沖繩の人たちに償わなければならぬ、そのとおり考えております。琉球政府が本土政府のほうに持ってまいりました中でも、たとえば入り会い権の問題等は、まだ実態を琉球政府としてもつかんでいない点もありますし、また要請に入っていない。すなわち二ミッツ布告が出た。そしてアメリカとの間の戦闘が沖繩においては終結をした。しかしながら日本本土はまだ戦っている。そして八月の十五日を迎えて降服をした。したがっていま琉球政府からあがっているのは、講和前人身被害の補償漏れでありますけれども、やはり日本が降服する前、八月十六日以前、沖繩が降服した六月二十三日というその間において、やはりそれ以上の被害がおそらくあったであろうと思います。これらの問題等もやはり沖繩の人たちに復帰後名のり出てもらったり、そして実情を詳しく知らしてもらったりしてやはり調査しなければいけません。  そういうことで実施主体は、本土においても法律の根拠によって防衛施設庁が行なっておりますから、実施は防衛施設庁のほうでやってもらうにしても、それの窓口は沖繩に、もし法律が通りますと開発庁の総合事務局ができますので、そこには現在の琉球政府につとめておられます人々の国家公務員にかわられる方が三分の二移られます。そうすると、顔なじみあるいは親しみやすい人たちの窓口となる事務所にもなりますので、積極的に総理の参議院における言明どおり、総理府が窓口としての役目をお果たしすることによって、今後のその調査が順調に進み、そうして防衛施設庁が処理をいたします予算措置、場合によっては法律措置その他について、十分の窓口としての役目を果たし得るものと考えている次第であります。
  334. 上原康助

    上原委員 山中さんが答弁なさると、そういう前向きの答弁もある程度あるんですが、この点なかなか実が結ばないのですよ。そこでどうしてもこれは立法化して処理をしていただかないと、ずっと山中さんが総務長官であるとも限らないと思うし、それまでにどうしてもやりたいわけなんです。  それでいま大体その考え方わかったわけですが、一体、調査をして必要なものについては立法措置をなさるということは、これは総理も御答弁なさっている。山中大臣もなさっている。外務大臣もおそらくなさっている。必要に応じて立法措置をするという場合、やはり行政ベースで片づけられる懸念が十分あるんですね。この調査をする窓口はどこになるのですか。防衛施設庁ですか、総理府ですか。私たちはやはり沖繩のこういった軍事基地と関係の深いのは多いわけですが、ほかにもいろいろ人身事故などあるわけですよね。窓口はやはり対策庁――まだいろいろ問題ありますが、そういった窓口は総理府にして、そこで十分な調査をして総合的な立法化をすべきだというのが私たちの主張であり、またいまわが党を中心に、各野党もそういう面を御検討なさっているわけなんですよ。軍事基地の問題と関連さして、やれ少し涙金やるから、見舞い金やるから軍用地と契約をしなさいとか、公民館つくってあげるからもう賠償要求はやるなというような、そういうアメリカ弁務官がやったような政治の方針でなくして、もっと血の通った、二十六年の被害に対しては国が責任をもって賠償していく、そういうあたたかみのある政治というものを私たちはやはり求めているわけですから、その窓口はどこにするかということ、総合立法の形でこの問題を処理していくという方向をどうしてもこの際明らかにしていただきたいし、私は総理にもお願いしたいわけですが、ほんとうに総理が涙ぐんで沖繩の問題というものを語る場合に、こういうことくらいもほんとうに解決できないでは、これは浮かばれないですよ。その点に対して防衛庁長官なりあるいは総理府総務長官の、そして総理の、立法化してこの問題はあくまで処理していくという明確な考え方を、ぜひ明らかにしていただきたいと思うんです。
  335. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは山中総務長官がお答えをしたとおりであります。従来はこれは、本土においては施設庁がこういった問題の処理に当たっております。しかし、沖繩関係法案の審議の過程におきまして、総理がある人の質問に答えて、なるほどどうも防衛庁――施設庁ではあるが、防衛庁管轄下において、この人身被害の賠償等々漁業補償の問題、広くそういったことを扱うということはどうであろうかという疑念に立たれて、やはり総理府総務長官と防衛庁側とが十分相談をして事を処するようにと。したがっていま総務長官が答えましたように、やはり窓口は開発庁でやることが穏当であろう。そして実際の処理については、これは本土で手なれておりまする防衛施設庁の職員が当たることが妥当であろう、こう考えております。したがって沖繩県民のはだ合いからいっても、やはり先ほど山中長官が答弁しました姿のほうがいい、こういうことで二人の間では合意をいたしておるわけであります。もちろん首相の指令に基づいてそういう話し合いをしておるわけでありまするから、首相において異存があるわけのものではございません。
  336. 上原康助

    上原委員 立法化の問題……。
  337. 山中貞則

    山中国務大臣 これは総理から、あらためて君も答弁しておけということでございますから答弁いたします。  ただいま防衛庁長官が申しましたとおりであります。ことに国会議員である上原委員でさえも、やはり軍みたいな性格のものが、一方においてそういうアメリカ軍の被害を受けたものについてめんどう見るといっても、沖繩ではなかなかのみ込めないぞという感触の話をされたくらいの立場にあることは私もよくわかっておりますから、先ほど申しましたように異例のことでありますが、幸いにして法律が国会を通過いたしますならば沖繩開発庁というものができます。その際においてはその開発庁において、総理府の外局でありますから総理の直属の機関でありますので、そこで十分に総理の意を体して、沖繩県民の人々の意向をすなおに窓口事務としてつとめて、そして実務が防衛庁において支障なく行なわれるように、そしてまた法律がなければ国の会計法上支出できないというようなものがありますならば、これは単に予算上の措置のみならず、法律をもって国の責任を明確にして支出をいたしてまいる、そういう作業を進めてまいりたいと思います。
  338. 上原康助

    上原委員 ここで総理の明確な御答弁を求めたいわけですが、確かに未処理の問題がいろいろあるわけです。単に見舞い金を出すとか――もちろんそれは、事の性質上はそういう形で処理せざるを得ない問題もあるでしょう、長い間の吹きだまりですから。しかしやはり被害を受けた側の権利というもの、要求というものを認めて、もちろん要求があったからそれがすぐ即通るとは私も言っておりません。正当な権利ということと正当な補償というのは、これはいかなる国でも通用する常識ですから、そういう意味でいまお二人の大臣の御答弁もございましたが、あらためて、ほんとうに沖繩県民佐藤総理が一つだけはりっぱなことをしたということ残るかもしれない、これで。対米請求権を立法化して処理をするということを明確にしていただきたいし、その点積極的な前向きの答弁を得ておきたいと思うのです。   〔細田委員長代理退席、委員長着席〕
  339. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの総務長官の山中君からの答えで御理解がいただけたかと、かように思いましたが、しかしなお重ねてお尋ねでございますから、私からも別に変わったことを申し上げるわけじゃありません。  恩恵的な処置だ、こういうような感じを持たれてはそれは県民もそれでは納得されない、これは当然の権利である、だからこそ金額の多寡によらずそれはやはり処理してもらいたい、これが県民の方のほんとうのお気持ちだろうと思います。私は、しかしこれは法律をつくらなくてもそういう処置もやれるのだ、かようにも思いますし、やはり法律は必要だ、こういう場合もありますよ、だからそういう事柄でとにかく県民の権利を守る、こういう立場に立ってこの問題を処理していく、この姿勢はくずすつもりはございません。そこで、ただ問題は、そういう事柄で立法するにいたしましても、どういう事項を立法するか、そこらになかなかむずかしい立法技術士の問題があるのじゃないか、かように思いますので、それらの点を山中君がただいま検討している、かように申しておりますから、かように御了承いただきたいと思います。
  340. 上原康助

    上原委員 ちょっと立ち入るようで恐縮ですが、立法化することには総理としても異存はないというふうに受け取ってよろしいですか。
  341. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げましたとおり立法化すべきものは立法化する、かように御理解をいただきます。
  342. 上原康助

    上原委員 ぜひ早急に調査をしていただいて、また立法技術面もいろいろあると思いますので、関係省庁、大臣の方々でこの対米請求権、いわゆる請求権問題が早急に解決されるように、いま総理の決意の表明もございましたので、片づけていただきたいと思います。  そこで次の問題に進めていきたいわけですが、福田外務大臣にお尋ねをいたしますが、一言で沖繩返還の目玉は何ですか。
  343. 福田赳夫

    福田国務大臣 本土並み、早期返還、一言で言えばそういうことだと思います。
  344. 上原康助

    上原委員 これまで基地問題についてもいろいろお尋ねをしてまいりましたが、なかなか議論が平行線をたどって、見解の相違だということで片つけられてきた問題もたくさんあります。私は冒頭、今日の沖繩県民の復帰に対してのいろいろの不満というもの、あるいはドル・ショックやら基地労働者の大量解雇の問題、民間関係の労働者も含めて、失業不安を持っておる、そういうことはやはり共同声明の出た段階から、私たちは、その方向での沖繩返還というものは県民のほんとうの生活の向上、安定にはつながらないということを指摘をしてまいりました。その根っこはやはり基地問題だったと思うのです。ここでまた議論をしても、いま目玉は核抜き本土並み、早期返還だというようなことを外務大臣御答弁なさいましたが、私の記憶ではそのほかにもあったような気がいたします。それは後ほどお尋ねをいたしますが、基地の本土並みという場合、核抜きの問題を含めて、私はここであらためてお尋ねをしたいことは、では、アメリカの施政権下にあった場合の沖繩の米軍基地というものは、日本政府はどういう御認識をなさっておられたのか、その点をまず外務大臣なり総理の見解を賜わりたいと思います。
  345. 福田赳夫

    福田国務大臣 返還前の米軍は米軍の自主性によって運用される部隊である、それが返還後におきましては安全保障条約の制約下に入るという画期的な変化を見るわけであります。
  346. 上原康助

    上原委員 アメリカの施政権下にある沖繩の軍事基地に対する認識ですが、では、安保と沖繩の軍事基地の関係はどういうものだと考えますか。
  347. 福田赳夫

    福田国務大臣 在沖繩米軍は安保体制の一部として沖繩に駐留する、そういう性格のものである、かように理解します。
  348. 上原康助

    上原委員 安保体制の一環として沖繩に駐留をする、そうであるならば、返還後沖繩に安保条約が適用される、あるいは本土並みになる。従来は安保体制をささえた沖繩の基地であった、だからアメリカは核兵器も毒ガスも、あれだけの密度の高い、機能の高い基地というものをつくれたわけなんですね。そうしますと、本土並みの基地になるという場合は、従来アメリカがそういう形で支配をし、つくってきた軍事基地というものの機能というものが減退をしない限り、実質的には本土並みにならないという理論になるわけでしょう。その点はどうお考えですか。安保条約の体制下にあったのだ、しかし安保のワク外にあった、で、沖繩基地はアメリカが自由に使える基地だった、いま答弁もそういうようになさった。そうであるならば、本土並みという場合は、アメリカの施政権下において構築された軍事基地の性格、機能というものが変わらない限り、ただ安保をかぶせるからといって本土並みにはならないというのが、これまでの私たちの主張なんですよ。その点どうお考えなんですか。
  349. 福田赳夫

    福田国務大臣 返還後におきましては、在沖繩米軍は本質的に変わってきます。つまり自由な行動はできない、安保条約という網をかぶせられる、そういう非常に大きな変化を来たすわけであります。つまり、米軍の機能はそういう意味において非常に大きく変わってくる、かように理解しています。
  350. 上原康助

    上原委員 どうも外務大臣の御答弁はもうことばだけで、いつもただ事前協議の対象になる、あるいは安保の適用下に入るから大きく変わってくるんだというすりかえ答弁で今日まで押し通そうとしてきた。  ではお尋ねをいたしますが、現在のアメリカの軍事基地、沖繩にある基地の機構なり軍事基地の性格というものを政府は十分御調査なさったのですか。どういう軍が駐留しておってあるいはその機構はどういうものなんだ、その点についてはどうなんですか。
  351. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは防衛庁で大体捕捉しております。
  352. 久保卓也

    久保政府委員 十分と申せますかどうですか、われわれのほうでも相当程度調べてはあります。  御承知のように航空関係では第三一三航空師団、それから三七六戦略航空団がございます。それから第三海兵両用部隊、そのもとに第三海兵師団がございます。それから琉球の米陸軍司令部、その下に第三〇防空砲兵旅団、それから陸軍司令部の中で第二兵たんコマンド、こういったものが主たる部隊でございまして、さらに詳細な部隊名、内容は若干持っております。
  353. 上原康助

    上原委員 防衛局長、あなたはいつもそういうわかったような答弁だけして困るのですよ。  じゃ、その程度の調査で、復帰後は安保のワク内になるから沖繩は本土並みになるということになるのですか。実際に沖繩にある軍事基地の持つ機能というものあるいはどういう軍事戦略行為をやってきたのかということまで含めてこの問題は調査をし、その上で機構、機能、性格が変わったということでないと、ことばで安保条約をかぶせるからというだけではならないんじゃないですか。私が調査をしただけでもいろんな面が実際にある。だから核抜きの問題にしても本土並みの問題にしても私たちは疑問を持っている。  じゃ、お尋ねいたしますが、これまで問題になった特殊部隊の撤退というのは復帰の時点でどうなるのですか。
  354. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは政治問題ですから私からお答えいたします。  サンクレメンテで核抜きを約束し、しかも日米安全保障条約を本土並みに適用する、これははっきり言明してここに至っておる以上、当然本土並みでなければならぬわけです。したがっていまの時点で一体どうなるのであろうかということをとかく推測することはたやすいわけですが、それについて政府側として批判をすることは避けたいと思います。したがって今後、国際信義で結ばれたこの日米安全保障条約でありますから、その運用においては当然本土並みということを遂行すべく、外務大臣にはいろいろ話し合いを進めていただきたいと思います。われわれもその行くえを見守りたいと思います。
  355. 上原康助

    上原委員 そうしますと、核についてはサンクレメンテ会談での、いわゆる復帰時点においての米首脳の公式見解をとるんだ――核があるということは総理はお認めになるのですか――じゃ、いつまでに核は撤去をするのですか。いま撤去されつつあるのですか、もう撤去されたのですか。そんな子供だましの、わかりもしない、あるかないかもわからない、七千万ドルはプレゼントで上げた、それも核の撤去費なのか何かわからないとこの間答弁なさっている。こう、もやもやさした中で、五月十五日に核はなくなりましたとロジャーズ国務長官が言って、それを信ずるような県民はいないと思うのです、国民も。核問題について、具体的に撤去を確認する方向というもの、あるいは基地の機能が本土並みになったという、その調査というものはやらないわけですか。
  356. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは一九六九年において首相、大統領でおごそかに合意ができているわけです。さらにそれを引用いたしまして沖繩返還協定でもそのことに触れておる。しかも、さらにその上、五月十五日になりますと、アメリカ政府がおそらくわが日本政府に対して書簡の形式をもちまして、核は不存在であるということの通告をしてくるだろうと思う。それだけのことをやっている。これは日米間の非常に大きな信義の問題です。これ以上の確認の方法はない、かように考えております。
  357. 上原康助

    上原委員 おそらく同じ議論になると思ったのですが、いま日米間の信義の上に立って取りかわされるのでそれを信用する以外にないんだという御答弁ですが、外務大臣はほんとうに日米間の信頼関係というものあるいは信義というものは守られてきたと思うのですか。また、いまの日米関係、アジア情勢、国際情勢の中における日米関係というものが、ほんとうに総理や外務大臣がおっしやっているほどアメリカは日本を信用していますか。私たちは非常にいろいろな面で疑問を持つのですよ。なぜ私がこの問題をたびたび指摘をするかといいますと、安保体制のワク外にあった沖繩の軍事基地というもの、しかも外務大臣みずからおっしゃるように、そこは自由に使用できたのです、いままで。核もある、毒ガスもある、特殊部隊もまだ残っている、こういうものがただ文書を交換するというだけで機能が変わったんだということにすりかえられる、そこに日米共同声明の本質的なものを私たちは見抜かざるを得ないのですよ。  きょう、いろいろ議論をする時間的ゆとりはありませんが、あらためて、この段階にきて沖繩の軍事基地の問題、米中接近やあるいは日ソの関係、そして日中国交回復という重要な外交課題をかかえた場合に、沖繩の軍事基地というものの果たしてきた役割りというものを根本的に変えるべきだと私は思うのですよ。  いまの政府の方針というものは、指摘をしておきたいわけですが、いわゆるアメリカが沖繩の軍事基地というものを共産主義、社会主義封じ込め政策の中で太平洋のかなめ石としてつくってきた。しかしこのことは情勢としてはすでに変わりつつあるわけですよ。日本のいまの外交あるいは防衛というものは、従来アメリカが果たしてきた基地の役割りというものを、第四次防衛力整備計画の中で沖繩に自衛隊を派遣をする、四次防では沖繩を軍事化する、そして五次防においてはいろいろ疑問が出されて指摘されているように、北はカムチャッカから南はマラッカ海峡に至るまでわが国の防衛を拡大をしていくてこにいま沖繩基地というものをやろうとしている。四次防とも関係あるわけですよ。  私たちは、そういう方向での問題ではなくして、沖繩をむしろ非軍事化をすべきだ――非武装化というとすぐ総理はおこる、御異論を持たれますから非軍事化、これ以上沖繩が日本にもアメリカにも軍事的に利用されない方向での沖繩というものを私たちは位置づけていきたい。なぜ国の外交、政治の方向というものをそこに向けないのか、その点についてはどうお考えなんですか。現在の国際情勢、特に日中関係あるいは米中の接近、こういう平和の方向に好転をしつつある段階で、なぜ沖繩に無理じいして、ほかの問題は据え置いても自衛隊を配備をすることを一番先行させる、あるいはアメリカの軍事基地を守る、そういう方向で沖繩返還というものを政府は進めていかれるのか、これこそ社会の趨勢に逆行する政治姿勢、外交姿勢、防衛のあり方じゃないかと思うのです。だからそのネックになっているのはやはり共同声明、特に共同声明の第四条における台湾、韓国条項、こういう問題を含めて私は共同声明路線というものに基づいた復帰というものを、わが国が主体的に、いまアジアの平和そして国際情勢における日本の果たすべき平和外交というものと関連をさせてこの問題は再検討をすべきだ、こういうふうに思うのですが、総理並びに外務大臣の御所見を伺っておきたいと思うのです。
  358. 福田赳夫

    福田国務大臣 上原さんの御所見が多岐にわたっておりますが、もし非武装化だ、わが国は非武装姿勢でいくべきであるという御所見であれば、私はそれは賛成できない。わが国は抑止力を持たなければならぬ、抑止力としての自衛力は不足である、そこで日米安保体制というものを必要とする、これは私はほとんど全国民の大多数というものが支持しておる考え方である、こういうふうに思うのです。ただ、これが適用です、安保体制の適用は国際環境に応じて弾力的にやっていく、こういうかまえでいいと思う。いいと思うが、その本質に触れて、安保体制は必要はないんだ、日本の防衛体制、日本に抑止力は必要はないんだという考え方までいけば、これは私は反対、相いれない意見である、こうお答えせざるを得ないのであります。しかし、客観情勢がだんだん変化する、それの変化に応じた妥当な対応、これはしなければならない、するのが当然であろうと、そういう所見であります。
  359. 上原康助

    上原委員 大体時間が来ましたのであれなんですが、いまのお考えでは納得いかないわけですよ。やはり安保体制そのものを私たちはもう根本的に検討すべき、もちろん廃棄すべきという立場でやっているわけですが、平和外交、そして沖繩が軍事的に利用されない、そういう意味での位置づけというものをやらなければいかないということ、この点についてはまたいつか議論をいたしたいわけですが、そういう意味で四次防の配備はどうしても私たちはとりやめるべきだ。県民生活を優先にさしてやるべきであって、軍事目的のための自衛隊の配備、そのことはぜひとも再検討すべきという点を強く要求をしておきたいと思います。  時間が来ましたので、最後に一点、全軍労問題についてお尋ねをしておきたいのですが、先ほど総理の答弁もございましたが、やはり六九年の共同声明が発表されて今日まで、どんどんどんどん解雇をされてきているわけなんです。その意味ではやはり共同声明を出した総理の責任でもあると思うのです。すでに十日、七日というストライキを継続しながら無期限に入っておるわけです。せんだっても外務大臣にもいろいろ要望も申し上げたし、また強く要求もしましたが、この問題は単に労使間の問題というよりも沖繩のかかえる苦悩の縮図なんですよ。したがって、私は、総理がほんとうに県民の復帰要求にこたえるという意味で、一両日中にも解決をすべき問題だと思うのです。これまでいろいろ御努力いただいているとは思うのですが、ぜひ日本政府としてできる面、そうしてアメリカとの交渉においてできる面をはっきりさせて、高度の政治的な判断ですみやかに解決をするという総理の御答弁を得ておきたいと思うのです。
  360. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま全軍労の無期限ストについてのお尋ねがございました。先ほどいろいろお話を承っておると、祖国に復帰する、その一言で言ったら何かと、こういうお尋ねが冒頭にございました。その際に外務大臣は外務大臣らしく答えましたが、何といってもアメリカの施政権が日本の統治権下に返るということですね。いままでは異民族の支配下で県民の方々が苦労された、これがなくなるということです。その立場でわれわれは考えていかなければならないんです。先ほど来私は、いま申しましたような立場で一番お気の毒に思うのは、いまのドル経済から円経済に移ることだ、これはさぞいろいろな問題があるだろうということを申しました。確かにありますから、それはそれなりに各方面でくふうし、それぞれの対策が立てられております。  ただいまの軍労のストライキの問題にいたしましても、日本の施政権下にあればかような問題は起こらないはずでございます。しかしこれが残念なことには、ただいまアメリカの施政権下にある、ここに問題があるのです。そこでわれわれはやはり外交交渉によって日本人である沖繩県民の利益を守らなければならない、そういう立場にあります。私は外務当局がそういう立場でいろいろ折衝しておることも聞いております。しかしながらまた組合側から申せばいろいろの主張があるだろうと思いますけれども、組合の指導者も、内閣委員会でも上原君もおられたときに発言がありましたように、やはりどろ沼におちいるようなことがあってはならない。そういう意味において私どもやはりこれに対しての援助、協力、これはしなければならない、かように実は思っております。ただいままで十分の努力が実を結ばない状況にあることは、私残念に思っております。しかし、さらに外務当局をして一そうこの点では軍労務者の立場を十分理解してもらうように、とにかくいずれは本土に復帰すれば今度は、いまのような直接雇用から間接雇用に変わるのでございますし、その状態はすっかり変わりますけれども、その前にとにかく片づけておかなければならないことだ、かように思います。ただいまのところ実を結んでおらないことはたいへん残念でございますが、しかしなお政府自身もそういう立場で一そうこの問題と取り組むつもりでおりますから、そのことをはっきり申し上げて答弁といたします。
  361. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 外務大臣から答弁をします。
  362. 福田赳夫

    福田国務大臣 一言補足いたします。  全軍労のストライキの問題につきましては、あなたからも話があり、また全軍労当局からも話があり、それらを総合いたしまして私どもも非常に心配をいたしておるわけです。これがひとり全軍労とまた米軍との間の問題にとどまらず、これが長期化すると沖繩県民の間にも好ましからざる空気を出してくるということ、そういうようなことになったらばこれはたいへんなことだ、こういうことを考えながら米軍当局とも高度の折衝をいたしておるわけであります。私自身大使ともお目にかかるというようなこともいたしております。さような経過を経て、今日に至ってなお争議がやまない、非常にいまこれも残念なことでございますが、しかし大体アメリカ当局も事態の重大さを認識しだしておる、また最高の判断をしようとしておる、そういう段階に来ておるんです。まあこの一両日が山になってくるんじゃないか、そういうふうに存じ、ただいま私どもといたしましても最高の努力をいたしたい、かように考えております。
  363. 上原康助

    上原委員 関連で横路委員に質問を譲りたいと思います。
  364. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 横路君より関連質疑の申し出がありますが、上原君の持ち時間の範囲内においてこれを許します。横路孝弘君。
  365. 横路孝弘

    横路委員 いまの上原さんの沖繩の問題に関連をして基地の問題と、それからこれはこの間の沖繩国会で問題にいたしました請求権の問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  米軍の基地の機能というのは、沖繩協定が締結される以前には、たとえば四十四年六月三日のレアード国防長官の発言、あるいは四十五年三月三日のリーサー陸軍長官の構想、あるいはチャップマン海兵隊司令官の発言で明らかなように、沖繩の米軍というのは東南アジア、西太平洋全体について緊急事態が起きた場合にすみやかに対処できる緊急部隊だ、またこれらの地域に対する補給や通信の基地であったわけです。これはこういう発言から明確であります。政府の従来の答弁は、それは沖繩返還の暁にはこれが変わってくるのだ、いまの答弁の中にもそういう趣旨があったわけであります。西太平洋やアジア全域に対する出動作戦、補給、通信の基地には沖繩の基地はなり得ないというのが従来の政府の答弁であった。このことを確認したいと思うのですが、外務大臣いかがですか。
  366. 福田赳夫

    福田国務大臣 五月十五日以降は米軍の性格は違ってきます。つまり安保条約の制約化に入るという問題であります。行動につきましては、安保条約の事前協議、そういうような制約が特に大きいわけでありますが、そういう問題、それから実態の問題といたしましては、核が五月十五日の時点におきましてもあるいはそれ以降の時点におきましても全然あり得ないということになる。非常に大きな違いだと思います。
  367. 横路孝弘

    横路委員 要するに従来の沖繩の基地の機能というものは変わってくる、こういうことですね。  そこで一つお尋ねしたいのは、たとえばいま戦略空軍の配下のKC135部隊というのが嘉手納の飛行場にいるわけですね。この戦略空軍の給油部隊の任務というのは何かといいますと、特に嘉手納飛行場のこの部隊の任務は西部太平洋と東南アジアにおける戦略空軍並びに太平洋空軍に対する給油活動全般を行なっているのですね、このKC135部隊というのは。そうすると、いまも御答弁がありましたけれども、これは前から政府の見解で、こういう太平洋全域に補給の責任を持つような基地にはなり得ない、それは安保の目的を逸脱するんだ、こういう答弁というのは従来政府からあったわけであります。事前協議の問題は別にして、基地の機能の問題として安保でこれはやはり目的から制約されるんだ、こういう答弁があったんだろうと思いますが、そうするとこのKC135部隊というのが沖繩にいるということは、大体皆さん方のいままでの答弁と矛盾をするというように思いますけれども、いかがですか。
  368. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  KC135は給油機でございまして、したがって給油を受ける飛行機が極東の安全及びわが国の安全に寄与する限り、われわれとしては基地を提供する、こういうことになるわけでございます。
  369. 横路孝弘

    横路委員 あまりこまかいやりとりをしている時間はないのですが、それは考え方としておかしいでしょう。つまり日本に駐留している米軍というのは、六条にいう駐留目的というのがあるわけですね。ですからその部隊が極東の平和と安全というのも、結局これは日本の平和と安全に密接な関係で極東の平和と安全という地域が限定されているわけです。それ以上越えて、太平洋全域について補給責任を持つ部隊なんというのは、これは安保条約における目的を明らかに逸脱をしている。従来からそういう答弁だったですね。つまりそういう全域に対して補給の責任を持つような部隊というのは置けないんだ、沖繩返還の暁にはそれは変わってきますよ、こういう答弁だったと思うのですが、いまの答弁は従来の答弁と全く違うと思うのです。
  370. 吉野文六

    ○吉野政府委員 沖繩におる給油機の補給の範囲は極東及び極東の周辺、すなわち安保条約の目的にかなう地域の補給に必要な任務を行なう、こういうことでございます。
  371. 横路孝弘

    横路委員 そうじゃなくて、これは戦略空軍全部に対する給油活動をやっているんですから、極東の範囲だけじゃないのですよ。――ちょっと先ほどよく調べておるという、上原委員の質問に対する答えだったのですが、KC135の位置づけというのは、これはグアム島に根拠を持っているアメリカの本国から直接指揮を受けている第八空軍傘下でもって、アメリカのほうの資料を見ると、その位置づけは、戦略空軍並びにアジアにおける戦術空軍に対する一切の給油活動をやっている。このKC135部隊があって、はじめてB52等の戦闘爆撃機の活動というのも非常に効果を発生したんだ、こういうことにアメリカのほうの資料には位置づけがなっているわけですね。ですからKC135を置いているということは、KC135が戦略空軍の傘下を離れるということであれば別ですけれども、戦略空軍の指揮下にある限りは、これは極東の平和と安全じゃなくて、まだ広いアジア全域に対する補給活動、給油活動全般についての責任を持っている。しかも直接グアム島からベトナムに対して爆撃戦闘作戦行動に従事する飛行機に対する給油活動をやっているのが現実ですね、返還後はそういうことはなくなると言うんでしょうけれども。ですから日本に復帰をして、安保がそのまま適用されるから問題がないというのじゃなくて、そういう任務自身が、部隊自身の構成そのほかが変わらなければ、これは明らかに安保の範囲に入るということにはならないわけです。だからその辺のところをよく調べがつかないのだったら、調査をして回答をいただきたいと思います。
  372. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほどから申し上げましたとおり、極東及びその周辺の安全のために沖繩の基地も使われる。すなわち安保条約第六条の規定に従って基地が使われる、そういうことでございます。
  373. 横路孝弘

    横路委員 六条に極東の周辺なんというのはどこにありますか。
  374. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 明瞭に答えておいてください。
  375. 吉野文六

    ○吉野政府委員 極東の範囲の平和及び安全の維持に寄与するということは、当然に極東及び極東の周辺における基地に対しても対処しなければいかぬ、こういうことでございます。
  376. 横路孝弘

    横路委員 それは従来の答弁と違うのですがね、私は詰めていく時間がきょうちょっとありませんので、最後に一つ提起したい問題があるものですから先に進みたいと思いますが、いまの答弁は全く――安保条約の極東の平和と安全ということで、極東の範囲というのはいろいろ従来から議論されてきたわけでありますけれども、そういう解釈はともかく私は初めて聞いたように記憶をしております。その点はこれはまた別の機会にちょっと議論をしなければならない問題だと思います。  そこで総理大臣に、ちょっと問題が別な問題になるのですが、お伺いしたいのは、昨年の八月四日自衛隊機による事故に関して、昭和三十四年六月四日の日米合同委員会での航空交通管制に関する合意の第三付属書について、これは軍事優先になっているから、十分検討して訂正をしていきたい、アメリカ側と話をしていきたいという御答弁がありましたが、その後どのようになっておりますか。これは総理大臣、総理大臣がお約束になったのですから。
  377. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 それには私から便宜かわりまして御答弁申し上げます。  ただいまの三十四年六月の日米の航空交通管制に対する合意書、これも相当時日がたっておりますし、それに従いまして私どもいまの時代に合うようにしなければならぬということで、外務省を通じましてこれを改正するように申し入れをいましているところでございまして、事務的にはときどき向こうの米軍の管制官と私のほうの事務当局と会って、いま協議をさしているところでございます。
  378. 横路孝弘

    横路委員 八月四日からいままで、これは運輸省じゃないでしょう、話し合いは外務省でしょう責任は。総理大臣の明確な答弁があったのに、しかも現実にあの第三付属書のままで沖繩に適用されるわけですね。しかも実際の運用というのは米軍機優先という運用になっているわけですよ、日本の空というのは。これは実際話し合いしているのですか。私の聞いているところでは、ほとんど総理の答弁を受けたような具体的な活動というのは行なわれたようには聞いていないのです。外務大臣どうですか。これは運輸省じゃなくて外務省でしょう。そういう交渉の窓口は外務省になっているでしょう。
  379. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 この点につきましては、私のほうから外務省に申し入れをいたしまして、そうして外務省、米軍それから私のほうの専門家というので協議をしているように聞いた次第でございます。これは実はほんとうはもう少し詳しく申し上げたい次第でございますが、申しわけない次第でございますが、実は私のほうの一番の権威者といわれる安全監察官がつい先日……。
  380. 横路孝弘

    横路委員 ちょっと時間がないから簡単に。
  381. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 心臓麻痺で急に死去してしまいました。それがほんとうに非常な私どもとしては損害でございます。これが民間航空の管制の育ての親でございますが、泉さんという人が死去いたしまして、それが一番詳しく承知している次第でございますが、まことに残念でございますが、いまそれを申し上げるあれでございません。
  382. 横路孝弘

    横路委員 行政というのは、個人がただやっている問題ではないでしょう、それは。ほんとうに泉さんというのは熱心にいろいろやっておられた方で、私も十分承知をしておりますが、そんなことでは困るわけですね。  そこで、たとえば一つ問題を提起したいのは、沖繩のKC135ですね。これが毎日毎日、日本の空に飛んできているわけです。一番忙しい昼ごろやってきて、そして二月だけでも相当な件数があるんですが、多いときだと四、五件ですね。やってきてどういうことになるかというと、KC135がともかく沖繩から飛んできて、日本の幹線航空路、民間航空の一番の幹線の航空路を通って、北海道の道東沖にやってくるわけです。これは給油する飛行機ですね。給油を受ける飛行機というのは、いろいろな飛び方があるのですが、どこか知らぬがアンカレッジのほうからやってきて、北海道の道東沖でKC135の給油を受ける。給油をしたほうの飛行機は、また幹線路を通って、これはたぶん沖繩のほうに行くんでしょうが、沖繩に戻ってしまう。給油を受けた飛行機は、これは日本海のほうに消えてしまうわけですね。北海道の上空に突然あらわれてきたり、あるいは日本海に消えて偵察行動をやったりして、そして大体石川県の上空あたりにまたあらわれて、またいずこともなく去っていくわけですね。  これには、実は問題が二つあるんでありまして、一つは先ほどお話をした合意書ですね。航空交通管制に関する合意書の中に、明確に、米軍の戦術行動に対しては、管制は最優先権を与えなければならないという規定があるわけです。したがって、この飛んでくるKC135というのは、連絡はどこに来るかというと、フィリピンのクラーク基地から東京の管制センターにやってまいりまして、そして、東京管制センターは連絡があると、ここの高度――しかも、大体米軍が要求してくる高度というのは、民間航空機が一番飛びやすいといわれている二万四千フィート前後の高度、これをブロックしてくれ、これを確保してくれという要求があるわけです。民間航空機はたくさん飛んでいるわけてしょう。たくさん飛んでいるのを――二日か三日前には連絡が大体来るようですが、中には前の日に来るというのもある。そうすると管制官は、ここを無理して確保するために、たいへんな作業をしているわけです。したがって、ともかくいま日本の空というのが非常に混雑をしているときに、米軍の石油を満載したタンカー、これをこういう幹線路に毎日二件も三件もどんどん飛ばすのを認めるというのは、やはり非常に問題があるということが第一点ですね。管制官というのは仕事が多くて困っているところに、米軍の通報を受けててんやわんやしておるわけですね、現場へ行ってみますと。  それから、もう一つは、給油を受けた飛行機ですね。これはどこから飛んできて、何の機種か全然わからない。ともかく北海道の上空にあらわれては消え、あらわれては消え――あらわれるというのはどういうことかというと、管制のほうに航空路をきちんと確保してほしいという連絡をするから、あらわれたところだけはわかるんですね。あらわれたところはわかるけれども、あとは消えてしまう、こういうようなことを行なっているわけです。一体、米軍機の任務は何なのか。B52が水爆を積んでパトロールをしている飛行機なのか、あるいは偵察をしている飛行機なのか、空飛ぶ空中司令といわれているような飛行機なのか、さっぱりわけがわからない。  問題は二つあるわけですね。したがって、一つは、ともかく合意議事録の第三付属書の、米軍最優先というここのところを訂正をする、これを早く行なうということが一つですね。それから、こういうようなKC135の、石油を満載した飛行機を民間航空路に飛ばすのを認めるのは、私は非常に大きな問題だと思うのです。この点についても、アメリカ側と話をしてもらいたい。運輸大臣、これはどうですか。
  383. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 いまの御質問は、アルチチュードブロックの問題と思う次第でございます。これは承りますと、大体一月に四十ないし六十の件数がございます。一日にいたしますると二件ぐらいでございます。御承知のとおり、通過時間はごくわずかでございますが、確かに管制官の負担になることもございます。しかし、いまの程度でございましたらば、それほどの負担にもならぬということを聞いておる次第でございますが、これは全般の問題といたしまして、具体的の事実を聞きますると、民間航空に支障のある場合は時間の変更を命ずるというようなこともやっておるようでございますが、さらにこれを徹底いたしまして、いま御指摘がございましたような方法で検討してまいりたい、そうして協議をしてまいりたい。先ほども申しましたが、外務省にはすでに申し入れをしているそうでございます。
  384. 横路孝弘

    横路委員 総理大臣、具体的にたくさんあるのですが、たとえばことしの二月十二日ですね。大体、フィリピンのクラーク空軍基地から運輸省のほうの東京管制センターに連絡が来るというのも全く不可解なんですけれども、こういうコースですね。大体、これは、九州の南のほうから入ってきて、二機で来るわけです。二機で入ってきて、ここの地点で、九州の西のところで給油を受けるわけですね。給油をした飛行機は戻っちゃうわけです。給油を受けた飛行機はこう出てきて、ここから戦術行動を行なう。そしてここのところから出てきて、また戦術行動を行ないまして、北海道の稚内のところに出てくるわけです。そして実に、稚内のところから網走のところにあらわれる間、大体二時間三十分オホーツク海に消えてしまうわけです。そしてこの飛行機は、北海道を横切って下北半島までやってきて、それから北海道の道東沖に出るわけです。その時間に合わせてもう一機、沖繩のほうからKC135がやってきて、ここでまた給油をするわけです。そして給油を受けた飛行機は、これまたどこか、アラスカのほうに消えてしまう。これが二月十二日の一つの例ですね。  そうすると、総理大臣にお尋ねしたいんだが、いま運輸大臣のほうは改めるとおっしゃった。総理大臣、去年の八月四日にそういう御答弁をされて、まだ作業というのは全然進んでいない。そしてその合意付属文書がそのまま沖繩にまた適用されようとしているわけですね。日本の空はいまのような現状です。だから、このことを早急に改めてもらいたいということと、それから、こういう、どんな行動をとっているかわからないような、いわば一種のなぞの米軍機に日本の領空を使用させる。これは在日米軍じゃないですよ。沖繩の空軍あるいはアラスカのほうの空軍でしょう。フィリピンのほうから連絡があって、こういうような行動が行なわれているわけですから、非常に広い範囲でつながりを持っているということだけは、こうした事実から明白だろうと思うのです。こり合意付属文書の訂正の問題と、それから、こういう米軍機について、その任務とか行動について、これはぜひ明らかにして国民の疑惑を解いてもらいたい、私はこう思いますが、いかがですか。
  385. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はそういう実情をよく知りませんから、よく実情を調査して、その上で対策を立てる、かようにいたします。
  386. 横路孝弘

    横路委員 では、その問題についても、この米軍機の行動についても、任務そのほか、ぜひこれは明らかにしていただくということで、私は留保をしたいというように思います。  やはりこれに関連して、次の問題になるわけですけれども、この航空交通管制に関する合意文書の根拠というのは、地位協定のどこに根拠があるわけですか。
  387. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 地位協定の六条に根拠を置くということを承知しております。
  388. 横路孝弘

    横路委員 この六条は、「すべての非軍用及び軍用の航空交通管理及び通信の体系は、緊密に協調して発達を図るものとし、かつ、集団安全保障の利益を達成するため必要な程度に整合するものとする。」こういうようにあるわけですね。この「集団安全保障の利益」というのは一体何なのか。日本側にとってみると日米安保条約でも、アメリカ側にとってみると、アジアには米韓、米台、米比などがあるわけですが、これを全部含めているのではないだろうか、私はそのように考えるわけですが、これは外務省になりますかな。どうですか、外務大臣。
  389. 高島益郎

    ○高島政府委員 地位協定は、日米安保条約の実施を取りきめた規定でございますので、われわれ、従来から、この六条の「集団安全保障条約の利益」のためにという意味につきましては、日米安保条約の目的のためにというふうに解釈しておりまして、そのとおり、従来しばしば国会でも答弁いたしております。
  390. 横路孝弘

    横路委員 四十四年二月十九日の答弁、この岡田春夫さんに対する答弁では、これは事実上、アメリカ側にとってみると、アジアにおけるそういう集団条約というのが入るんじゃないか、こういう答弁をなさっているわけですが、先ほどの連絡に関して一つお尋ねをしたいのは、ことしの二月十三日、やはりフィリピンのクラーク基地から東京のACC、管制センターに対してこういう連絡が来ているのですね。韓国の大邱に対して次の連絡をしてほしい。それは何かというと、沖繩の嘉手納飛行場から飛行機が飛び立って、朝鮮半島の三十七度線に飛んでいく。三十七度線に飛んでいってそこで給油を受けるのは四編隊ですね。各編隊は四機、二機、四機、三機とこういうふうになっているわけですが、それだけの飛行機に対して給油をするので、これだけの高度をとってほしい、三十七度線付近の高度をとってほしい、こういう連絡をフィリピンのクラーク基地から東京管制センターが受けて、この連絡を韓国の大邱にしてやっているわけです。これは日本のいわゆるFIRの中には全然通らない飛行機、つまり在沖繩の米軍と在韓米軍あるいは韓国軍、これとの戦術行動に対して東京の、日本の運輸省がこれに関与をして、フィリピンのクラーク基地から受けた連絡を韓国に対して連絡をしてやっているという事実がありますが、これは御承知でしょうか。
  391. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいまの事実は私、承知しておりません。急に調査させて御返事いたします。
  392. 横路孝弘

    横路委員 つまり私が指摘したいのは、この地位協定の六条に基づいて航空管制と通信については、日本、韓国、アメリカ、これは在沖繩、フィリピン、台湾、あるいはアラスカのほうを含めて、アジア全域においてもう一本化したシステムになっている。だから運輸省のほうが、運輸省で特にやっているのではなくて、要するに地位協定に基づいてフィリピンのクラーク基地から連絡があったら、日本に全く関係のないアメリカ軍の行動について、韓国の大邱の管制に対して連絡をしてやっている。わざわざその返事はどこに返事をしてほしいかという番号まで書いてあるわけです、クラーク基地のオートボン何番というように。こういうことは韓国条項が出てきましたから、日本と韓国とアメリカ、日、韓、米の体制というのは非常に強化されている。特に通信と航空管制あるいはADIZの関係では空というものは全くもう一体のものになっていると思いますけれども、しかし、少なくとも従来の政府の答弁から言うと、日本の行政の中でこういう韓国とアメリカとの間の結びを、つなぎを日本政府がしてやるというのは、明らかに日本としてはとらない集団安全保障の考え方を取り入れている。集団安全、つまりアメリカ、韓国そのほか含めた、こういう体制になっているということを指摘したいのです。総理大臣いかがでしょうか。
  393. 福田赳夫

    福田国務大臣 実態を私もよく承知しておりませんが、よくそれを調べた上、それがどういうふうな法的関係になるのか、そういう点を結論を出してみたい、かように考えます。
  394. 横路孝弘

    横路委員 ではこの問題も留保して、あしたで予算の審議というものは終わりなので、できるだけぜひそれまでに明確にしていただきたいと思うのです。  そこで、沖繩が五月の十五日にいよいよ返還になるわけなんですが、もう一度沖繩返還というものを考えてみると、アメリカ側の態度というのは、沖繩における米軍の基地の機能というのをそこなわないようにするというのが原則の一つ。それからもう一つの原則は、沖繩の問題を解決するにあたって、アメリカ側は金を出さないというのが原則だったわけです。そこでその問題について昨年の十二月七日の沖繩・北方問題に関する特別委員会、内閣委員会との連合審査で、並びに沖繩及び北方問題に関する特別委員会の四十六年の十二月十三日に、私は、アメリカが支払うことになっている四条三項について日米間に秘密の協定がある、外務省の記録に残っているはずだという指摘をしたわけであります。その後いろいろ調査した結果、私たちの主張が正しい。あのとき総理大臣はじめ外務大臣――総理大臣は秘密のきめごとはない、外務大臣はそういうメモはない、アメリカ局長も条約局長もそういう答弁をなさった。しかし、私はきょうは、ここに外務省の文書に基づいてその事実を明らかにして、あのとき皆さん方は偽りを言われたその責任というものを追及をしたいと思うのです。  というのは、この四十七年度予算の中に三億二千万ドル――第七条ですね、この支払いの一部が予算として計上されているからでもあります。昨年の五月二十八日です。私たちが指摘をした愛知・マイヤー会談について、外務省の電信案、極秘になっています。総第二八一八一号、五月二十八、二一五〇、いろいろチェックされておりまして、アメリカ牛場大使あて愛知外務大臣発、この中に請求権について本大臣より――本大臣というのは愛知外務大臣。本大臣より日本案を受諾されたしと述べたところ、大使より、アメリカ側としては日本側の立場はよくわかり、かつ財源の心配までしてもらったことは多としているが、議会に対し、見舞い金については予算要求をしないという言質をとられているので、非常な困難に直面していると述べ、ス公使――スナイダーですね、公使より、第四条三項日本案の文書では、必ず議会に対し財源に関する公開の説明を要求され、かえって日本側が困るのではないか。問題は実質ではなくアピアランス(外観)――英語で書いてあります――と補足した。本大臣より何とか重ねて政治的に解決する方向を探求されたし。なおせっかくの三二〇がうまくいかず三一六という端数となっては対外説明が困難になるという話をしておいた。三二〇というのは三億二千万ドル、三一六というのは三億一千六百万ドルという意味だと思います。  そのあと第四項は防衛に関する取りきめということで、久保・カーチス協定についての、これはまたいずれ別の機会にやりますが、いろいろ交渉の経過が記載をされております。これが一つの文書。  もう一つは六月九日、井川・スナイダー会談、件名、沖繩返還交渉、総第〇九〇六六、ジューン九の一五五〇というように時間と日付が入っている文書であります。やはり外務省の電信案、これは全部読んでいる時間がなかなかないのですが、さわりの部分だけお話をして、皆さん方のこの間の沖繩のあの特別委員会における説明というのは全く偽りであった、国民に対して説明すべきことを説明もしていないという責任を私はぜひ明らかにしていただきたいと思うのです。  六月九日、井川・スナイダー会談によって米側より提示のあった請求権に関する提案次のとおり。冒頭アメリカ側より鋭意検討の結果、一八九六年の二月制定されたデイスポジション・オブ・トラストファンド・レシーブド・フロム・フォーリンガバメンツ・フォー・シティズンズ・オブ・ユナイテッド・ステーツという法律に基づき、請求権に関する日本側の提案を受諾することが可能となったと述べた。しかし、アメリカは日本側に対し四条三項案に次のとおり追加することを要求している。ここで英語が入っているわけでありますが、要するに四百万ドル以上こえないという規定ですね。そしてこのトラストファンド、信託基金とでもいいましょうか、設立のために愛知大臣よりマイヤー大使あてに、日本政府はアメリカ政府による見舞い金支出のための信託基金設立のため四百万ドルをアメリカ側に支払うものである旨の不公表書簡の発出を必要とするというような向こう側からの主張、提案があったわけですね。この提案に対していろいろとやりとりがあって、それに対する反論があって、最後に、このことは本国政府の訓令をこえるものであるということで日本側の提案を本国政府へ取り次ぐ旨述べた。わがほうより、日本側としても政府部内で検討してみないと何とも言えないので、愛知大臣と協議することにしたい旨述べ、会談を終わったというようになっているわけであります。この二つの文書ですね。それからさらにここに、皆さん方の発した、これは電信の写しであります。ここに斜めに極秘が入っている、外務省の。この中でも請求権の問題に関して、要するにアメリカが支払う四百万ドルを三億二千万ドルの中に含めて、そのことについてここの説明によると、愛知外務大臣発の文書を、これは出したように、そのことを読み取れる電信の写しになっているわけです。こういう文書、皆さん方はこの間のときには、全然ないというようにおっしゃった。ないというようにおっしゃったのに、ちゃんとこれはあるわけであります。極秘の判を押した外務省の電信案という。外務大臣、この間の沖繩国会で私と楢崎議員と大出議員と三人で質問をした。皆さんのほうでは、そんなものは一切何もない、そんな話は聞いたこともない、こういう答弁で逃げられた。しかし事実は、これらのこの文書を見ると、明白にアメリカ側との間にこの問題についてやりとりがあったことは明確じゃありませんか。責任をどうとられますか。文書がないと言ったのに、こういう文書があるじゃありませんか。
  395. 福田赳夫

    福田国務大臣 私のただいまの御質問に対する答弁は、さきの沖繩国会答弁と同じになります。つまりこまかいいきさつは私はまだ聞いておりませんけれども、結論において裏取引というものは一切ないと、これだけははっきり申し上げます。
  396. 横路孝弘

    横路委員 そうしたら、いま私が指摘をした外務省電信案、番号と日にちを話をしたわけですが、この文書はあるのですか、ないのですか。
  397. 吉野文六

    ○吉野政府委員 いまの電信案その他の文書はわれわれも調べてみないと、いまここですぐ回答できませんから、ひとつ調べさせていただきます。
  398. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 楢崎君より関連質疑の申し出がありますが、上原君の持ち時間の範囲内においてこれを許します。楢崎君。
  399. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 実は、ただいまの問題は、昨年十二月十三日の最終的には問題になった点であります。しかも本予算委員会と関係のある点は、この四十七年度の予算の中に、この四条に基づく三億二千万ドル中一億ドル、三百八億円が計上されております。もしこの書類が事実ならば、当然四条三項によってアメリカから自発的にいただくべき軍川地補償費等の関係を、冗談じゃありません、日本側がアメリカのほうに払うことになりますよ、これは。重大なところです。そして最後は、私はこの問題について、ここに二階党理事がおられますが、当時も二階党委員は沖特の理事でありました。そして秘密理事会を行ないまして、外務大臣御列席のもとにこの検討をしました。われわれの主張は、あるということでやりました。大臣以下、外務省当局はないということで、それで最後どういう結びになっておるか。これは念のために申し上げます。これは理事会が終わって、また再開されて、結びのところです。まず私から、そのときその文書をここへ出せないことをたいへん残念に思います。「しかし、これはいずれ来年度の予算の中に当然出てまいる。その段階ではすべてが明らかになる。もし、この事実が明らかになったらたいへんな責任を――まあそのとき外務大臣がどなたか、総理大臣がどなたか知りませんけれども、たいへんな責任問題が出てくる。それだけをここで明確に申し上げておきたい。」ということをきちっと私は予告をいたしております。さらに横路委員はそれを引き継いで、「いずれにしても皆さん方はないということをおっしゃった。その責任というのは、これはアメリカ局長にしても、条約局長にしても、外務大臣も、どこまでもつきまとっていくということだけを明確に指摘をしておきたい」、ちゃんと私も横路委員もこの問題について態度を明白にいたしております。もしこれが事実ならば重要な責任問題になる。しかも四十七年度の予算案の中にそれが一部入っておる。当然アメリカが自発的に支払うものが、もしこれが事実ならば、日本側が一ぺんアメリカ側にやって、そしてまたいかにもアメリカ側が自発的に支払うごとくなると、こういう関係になるではありませんか。これは重要な個所ですから、ひとつどのような取り扱いをなさるか。ここで委員長のお考えなりを承っておきたいと思います。
  400. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほどお答えいたしたとおりです。沖繩国会における私の答弁と、きょうの答弁とは変わりはありませんです。いろいろいきさつはあるにいたしましても三億二千万ドル、これを支払う、一括して支払う、こういうことになった。またそれに何か裏取引があるというようなお話でありますが、裏取引は全然ありませんでございます。
  401. 横路孝弘

    横路委員 この文書を見ると、お互いにアメリカはアメリカの議会対策上、ともかく議会において、沖繩返還に関してアメリカが金を出さないというきちっとした約束を議会との間にしているから、四条三項困る。これは入れてもらいたいというのが皆さん方の要求、そこででき上がった経過が、私たちがこの間の沖繩特別委員会の中で指摘したとおりだということがこの書類によって明らかなんです。あのときは、私たちは、こういう内容を書いたメモがある、電報が入っているじゃないかということを指摘をした。わざわざ斜め斜線の極秘という文書は何か、それは電信ですという答弁もあった。ともかく一切そんなことはない、知らぬ存ぜぬ、総理大臣も秘密の約束は何もない、こうおっしゃっておったのが文書として少なくともあるわけですから、これがうそなのかほんとうなのか。いま外務大臣がおっしゃったとおりなのか。外務省のほうは調べてみるということですから、これは委員長、重要な問題で、予算の審議もいよいよあしたで終わりという段階ではございますけれども、ぜひこれは簡単に取り扱うことのできない問題だ。回答がなかったら質問を進めるわけにはいかぬと思うのです。
  402. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほども申し上げましたとおり、それらのいまの読み上げられた文書につきまして、われわれとしては真偽のほどをひとつ調査さしていただきまして、そして回答させていただきます。
  403. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまのがアメリカ局長でありますが、外務大臣としてはアメリカ局長のいまの御答弁、どのようにコミットされますか。
  404. 福田赳夫

    福田国務大臣 古野局長がこの折衝の衝に当たっておりますから、アメリカ局長が調べるのが一番その結果が正確であろう、こういうふうに思います。ですから、調べていただきます。
  405. 横路孝弘

    横路委員 調査を待って、その上で理事会で検討されるということでございますので、私は保留した問題点三つございますけれども、それを含めて保留をいたしたいというように思います。
  406. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 委員長から外務省にお尋ねをいたします。  私は初耳ですが、前の沖繩国会のときに問題になったのがいままで調査できないというのはどういうことか、あした当委員会に調査の結果が出るかどうか、お答えを願います。
  407. 吉野文六

    ○吉野政府委員 あとでもう一回、横路先生にその文書を一応見せていただきまして、調べましてあしたお答えいたします。
  408. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 それでは、調査の結果を待つために本日のところはこれで終わりまして、保留をしておきます。  次回は、明二十八日午前十時より委員会を開会し、締めくくり総括質疑を続行いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十二分散会