運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1972-03-17 第68回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月十七日(金曜日)委員長の指名 で、次の通り分科員及び主査を選任した。  第一分科会皇室費国会、裁判所、内閣、総  理府(防衛庁及び経済企画庁を除く)法務省及  び文部省所管並びに他の分科会所管以外の事  項)    主査 森田重次郎君       荒木萬壽夫君    大村 襄治君       瀬戸山三男君    二階堂 進君       西村 直己君    辻原 弘市君       安井 吉典君    沖本 泰幸君       和田 春生君  第二分科会(会計検査院、防衛庁外務省及び  大蔵省所管)    主査 野田 卯一君       相川 勝六君    川崎 秀二君       正示啓次郎君    田中 龍夫君       灘尾 弘吉君    森下 元晴君       楢崎弥之助君    鈴切 康雄君       小平  忠君    東中 光雄君  第三分科会経済企画庁厚生省及び自治省所  管)    主査 田中 正巳君       小川 半次君    大坪 保雄君       奥野 誠亮君    中野 四郎君       橋本龍太郎君    西宮  弘君       細谷 治嘉君    近江巳記夫君       谷口善太郎君  第四分科会農林省通商産業省及び労働省所  管)    主査 植木庚子郎君       仮谷 忠男君    佐々木義武君       笹山茂太郎君    松野 頼三君       渡辺  肇君    小林  進君       原   茂君    林  孝矩君       塚本 三郎君  第五分科会運輸省郵政省及び建設省所管)    主査 松浦周太郎君       足立 篤郎君    根本龍太郎君       福田  一君    細田 吉藏君      三ツ林弥太郎君    安宅 常彦君       阪上安太郎君    中野  明君 ————————————————————— 昭和四十七年三月十七日(金曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 龍夫君    理事 二階堂 進君 理事 細田 吉藏君    理事 阪上安太郎君 理事 辻原 弘市君    理事 鈴切 康雄君 理事 小平  忠君       足立 篤郎君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    植木庚子郎君       小川 半次君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    川崎 秀二君       正示啓次郎君    田中 正巳君       中野 四郎君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    橋本龍太郎君       福田  一君    松浦周太郎君       松野 頼三君    森田重次郎君       渡辺  肇君    安宅 常彦君       小林  進君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    原   茂君       細谷 治嘉君    松浦 利尚君       安井 吉典君    林  孝矩君       合沢  栄君    和田 春生君       谷口善太郎君    津川 武一君       東中 光雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       渡海元三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         公正取引委員会        事務局経済部長 三代川敏三郎君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         法務省矯正局長 羽山 忠弘君         法務省保護局長 笛吹 亨三君         外務省情報文化         局長      和田  力君         大蔵省主計局長 相沢 英之君         大蔵省理財局長 橋口  收君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省援護局長 中村 一成君         農林大臣官房参         事官     大河原太一郎君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農地局長 三善 信二君         農林省畜産局長 増田  久君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         食糧庁長官   亀長 友義君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         通商産業省企業         局長      本田 早苗君         運輸省鉄道監督         局長      山口 真弘君         郵政大臣官房長 森田 行正君         郵政大臣官房電         気通信監理官  柏木 輝彦君         郵政大臣官房電         気通信監理官  牧野 康夫君         郵政省郵務局長 溝呂木 繁君         建設大臣官房長 大津留 温君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       磯崎  叡君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 三月十七日  辞任         補欠選任   愛知 揆一君     森下 元晴君   赤澤 正道君    三ツ林弥太郎君   安井 吉典君     松浦 利尚君   新井 彬之君     正木 良明君   大久保直彦君     沖本 泰幸君   矢野 絢也君     中野  明君   合沢  栄君     塚本 三郎君   東中 光雄君     津川 武一君 同日  辞任         補欠選任   松浦 利尚君     安井 吉典君   正木 良明君     近江巳記夫君   津川 武一君     東中 光雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  昭和四十七年度一般会計予算昭和四十七年度特別会計予算昭和四十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括議題とし、一般質疑を行ないます。松浦利尚君。
  3. 松浦利尚

    松浦(利)委員 きょう一般質問の私が社会党では最後になりますから、総まとめとして物価の問題に限定をして、各閣僚の皆さん方に所信と方針をお聞かせいただきたいと存じます。  すでに本委員会で各委員の方々から質問があったかと存じますが、まず最初に経済企画庁長官物価担当大臣としての所見を承っておきたいと思うのでありますが、その第一点は、昭和四十七年度の予算物価に対して三つの特徴があると存じます。その一つは、財政主導型物価値上げ予算であるという批判であります。それからもう一点は、政府で言うところの政府が関与する公共料金が集中的に一定期間値上げをされておる、またされようとしておるというのが二番目の問題点であります。三番目の問題点は、しかもその値上げ幅がきわめて大幅である。この三つが実は昭和四十七年度の予算に対する国民の率直な物価に関する批判であり、また疑問点であります。  そこで経済企画庁長官お尋ねをしておきたいことは、なぜ公共料金を集中的にこの時期に値上げをするのかというのが一つ。それからもう一つは、上げ幅がこれほど大きい、この問題について、経済企画庁長官は、先般の本委員会において出された資料によりますと、これらの公共料金物価上昇に寄与する率は〇・七三%である、こういうふうに言っておられるわけでありますけれども国民受け取り方としては、それどころではないという受け取り方をしておるわけであります。ですから、この際長官から私の質問点、なぜこれほど大幅にしたのか、時期的になぜ集中的にいまのこの段階で上げようとするのか、この点について明確な理由経済企画庁長官としてお聞かせいただきたいというように思うのです。
  4. 木村俊夫

    木村国務大臣 まず第一点の、公共料金がどうしてこの時期に集中したかという理由でございます。  御承知のとおり、公共料金一つ一つを取り上げてみますと、まず二月一日に郵便料金、三月一日に電報料金が改定されましたが、これは御承知のとおり、昨年五月に、第六十五国会国会を通りました法律によって実施期日がすでに定められておりましたので、そういうことに相なったわけでございます。  また二月一日に医療費診察料が改定されましたが、これは中医協がもう半年以上審議を重ねておりましたことでもあるし、また国民の健康問題に非常に重大な関連があるというので、もちろん中医協の中には支払い側の代表も含んで御了解になったことであるので、やむなく私どももこれを認めるという措置に出たわけでございます。  二月五日にタクシー料金をすでに認めましたが、これは実は昨年夏以来申請を受けておったのですが、これはむしろ料金問題以前の問題である。すなわちサービス改善その他の問題がありましたので、そのサービス改善あるいは運輸行政の問題としてのタクシーあり方、そういうものについてきわめて慎重な態度をもってこれに臨みました。またこれを改定するについては、一般世論住民感情等も考慮いたしますために広く公開の原則に立ってこれを審議したためにこれが延び延びになって、ぎりぎりの線が二月五日の認可になったわけでございます。  一つ一つ事情を申し述べますと、私どももこれが集中したことについてはたいへん心苦しい感じがいたします。しかしながら、個々の問題については以上述べたような事情でございます。  また国鉄運賃、これは四月一日からということに予算上はなっておりますが、当然これはこの国会国鉄運賃法案として御審議を願うことでございます。また国立大学授業料にいたしましても、これは予算案件として十分これから御審議を願うということでございますので、まだその問題については私どものほうでかれこれ申し上げる段階ではない、こう考えます。
  5. 松浦利尚

    松浦(利)委員 長官、この新経済社会発展計画の二三ページ、ここに具体的に物価の問題について提起をしておられるわけです。「政府関与価格物価のなかに占める比重が大きく、まだ心理的にも全般物価動向に与える影響が大きい。したがって、運賃その他の公共サービス料金については、できる限りその上昇を抑制し、政府関与価格低位に安定させるものとする。」こういうふうに明確に政府発展計画の中に書いてあるわけであります。そうすると、なるほど数字的には上昇寄与率が〇・七三%であるという数字が出るかもしれませんが、ここに指摘をしておるように、政府関係公共料金値上げをするとこれが心理的に全般物価影響を与える、これが実は今後に起こってくる国民の不安の一つです。公共料金値上げしてはけしからぬというのは国民の声であると同時に、それに便乗して心理的に値上げがすべての物価にはね返ってくる、そのことを非常に国民としてはおそれておるのです。ですから、昭和四十七年度の物価上昇目標を五・三%ということで出しておられますけれども、ある学者などによりますと八%は下らないだろう、どんなに見積っても八%程度にいくのではないか、七%から八%ということをもうすでに学者が言っているような段階なんです。それでは実際に公共料金をこれほど値上げをして、具体的に心理的に影響を与えないための手段公共料金が他の物価にはね返らないようにするための方法、こういったものについて具体的に政府は検討なさったことがあるのかどうか、その点をひとつ明確にお聞かせいただきたいと思います。
  6. 木村俊夫

    木村国務大臣 先ほど御指摘になりました新経済社会発展計画、確かに政府関与価格はこれを低位に押えるという項がございます。しかしながら同時に、この政府関与価格については当該部門効率化を基本として、「その価格体系は、需給関係に適合し長期的視点にたった合理的なものでなければならない。」こういうこともここに書いてございます。そういう意味で確かに公共料金はこれを低位に押えるのがもちろん政府としてのあるべき態度でございますが、しかしながら公共料金といえども価格体系の一部門でございますから、これを長期固定化することは、また資源の適正配分の上からいってもあまり望ましくないということから今回その一部を引き上げることにしたわけでございます。  また、いま御指摘の、昭和四十七年度の物価上昇率政府見通しどおり五・三%に押えることはとても無理だというような御指摘でございますが、幸いにして公共料金以外の一般物価動向というものはいま非常に落ちついております。したがいまして今年度、すなわち昭和四十六年度の物価見通しを私ども昨年十二月に改定いたしまして六・一%にいたしましたけれども、この三月現在の物価動向等を見ますと、幸いにして政府見通しはそういう意味で相当下回るのではないか。私どもいま三月末の状況をいろいろ考えておりますが、まず五・七%ぐらいでおさまるのではないか、こういう見通しを持っております。そういたしますと、松浦さん御承知のとおり昭和四十六年度の最終と申しますか、その上昇動向といいますが、いわゆるゲタと称して昭和四十七年度にこれからたれ込むわけでございますが、それがやや下回って一・四%程度ゲタ昭和四十七年度に進むのではないかと思います。そういたしますと、昭和四十七年度の物価動向をこれからいろいろ予測をしておりますが、まず私どもは、一・四%のゲタをはいて入る昭和四十七年度の消費者物価というものは、かりにこれを五・三%と見込んでもその余裕というものは三・九%ございます。その中で公共料金の改定を見込みましても十分これは達成し得る基準ではないか、こう考えますので、いろいろ公共料金が引き上げられるために八%を上回るのではないかというような意見もございますけれども、私どもは、まだまだ需給ギャップのあります供給過剰の経済情勢の中でありましては、むしろ便乗的値上げというものはいつものような影響はないというようなことからいたしまして、十分五・三%の上昇率を確保できるというような見通しに立っているわけであります。
  7. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いまの見通しを立てられることは私けっこうだと思うのですが、いままで歴年、見通しが狂ってきておるわけです。予算委員会質問したりあるいは各種委員会質問したときには、いま長官がお話しになったように必ず答弁なさる。ところが、結果は必ず大幅に狂うわけですね。狂ったらそれを天気のせいにしてみたりあるいは生鮮食料品異常値上がりにしてみたりして、やむを得なかったという形で逃げてしまう。国民からいわせれば、政府のいう物価上昇目標などというものは期待可能性である。要するにその期待可能性であって、出てきた結果に対してはいろいろ理屈をつけて、また新しい年度にこうだということで言いわけをする。非常にそういう点に不信感を持っているのですね。いま長官が言われたように、そういった見通しがかりに狂った場合、いまは波及効果として心理的に他の物価にはね返るものに対して押える方法はまだ政府として御検討がないようでありますけれども、それでは具体的に狂った場合、それはいま言われたように五・三%に押し込む手だて、方法、そういったものを検討しておられるのですか。毎年のことでありますから、この際五・三が狂うという段階が来たときには、何らかの強力な手段によって五・三の中に押し込むような行政指導なりあるいは政府の施策というものをやるんだという方向が明確になっているかどうか、その点をひとつ長官からお聞かせいただいておきたいと思うのです。
  8. 木村俊夫

    木村国務大臣 これはなかなかむずかしい御質問でございますが、この政策努力というものを私ども消費者物価上昇見通しの中に相当取り入れております。したがいまして、その政策努力がもし達成できなければ当然五・三%の目標は達成できないわけでございますが、ことしの秋から冬にかけまして野菜その他の生鮮食料品が非常に落ちつきを示しております。これは政府政策努力より気象条件だという意見もございますが、しかしながら私どもは、決して楽観できない一つの現象であろうと思う。いままでの野菜価格の変動を見ますと、ことし非常に下落いたしますと来年は必ずこれが騰貴するというような一つのサイクルがございます。そういたしまして来年度はおそらく、このまま放置すれば野菜は来年度は上がるであろうというような予測のもとに、農林大臣もおられますが、農林省でいままでのような野菜対策ではとうていこれに対応できない。御承知のような食品流通局もつくりまして野菜対策予算も従前に倍加いたしまして、真剣なこれに対する取り組み方をやろうというような政策努力をつくることによって来年度の野菜の騰貴を押える。これは一例でございます。そういう政策努力を従来もやっておったのですが、一そうその政策努力を重ねることによって、五・三%にこれを押し込みたいというような意欲のもとに、いま作業をしておるわけでございます。
  9. 松浦利尚

    松浦(利)委員 長官とこの目標の問題だけで議論をしておりますと時間がたってしまいますので、私は具体的な例を引いて長官、それから郵政大臣お尋ねをしたいと思うのですが、御承知のように、公衆電気通信法改正をいたしまして電報料金値上げというのはわかっておった、確かにそのことは御指摘のとおりです。ところが、いままで二十字が八十円で打てておった電報が、実際に今度改正をしますと、いままで託送電報といって電話で申し込みをする、これが二十円、慶弔電報の用紙を使う、これが三十円、期日を指定する、十円、八十円だったものが百五十円、いままで八十円で打てておった電報が何と二百十円払わなければ慶弔電報が打てない。慶弔電報というのは、国民が非常に親しみを持っておる、利用されておる電報なんです。ところがこれが二百十円という、実に三倍近くの値上がりをしておるわけですね。  もう一つの問題は、小包の問題です。これも御承知のように、昨年もうすでに決定をしたといえばそれまででありますが、あの当時、郵便料金値上げ幅は大体八〇%に入るという大臣の御答弁だったはずであります。ところが実際に調べてみますと、第一小包地帯で五百キロメートルまで四キログラム九十円だったものが二百四十円、六キログラム百十円だったものが三百円、実に一・六七倍、一・七三倍と小包料値上げが行なわれておるのです。いままでのあり方ですと、政府が関与するものについてはほとんど法定料金、言うならばこの国会審議を通じて料金というものがきめられておった。ところがこの八〇%をこえるもの、この電報については大臣認可料金なんですね。そうすると、小包料金郵政審議会にかけて大臣省令できめる。国会審議を通さずに、省令なりあるいは認可料金郵政大臣がじきじききめることができるのです。そういうものが現実的に異常に値上がりしている。ですから、われわれがここで数字的に議論をしておる問題より以上に、政府関与価格というのは現実に上がっておるのです。  そこで、経済企画庁長官にこのことについてお尋ねをしておきたいのですが、ここに出ておる数字ですね。これが実際に個人生活に返ってきた場合には、私がいま電報小包料金で申し上げたように、政府国会で答弁した以上に上がっているのですね。そのことが実は重大な物価に対する影響を与えてくる思うのです。こういった問題について長官は御了解になっておられたか、熟知しておられたかどうか、あるいは郵政省側から長官に御連絡があったかどうか、その点について長官から一ぺんお聞きしておきたいと思うのです。
  10. 木村俊夫

    木村国務大臣 当然郵政省といろいろ協議の上でございますが、先ほど申し上げましたとおり、これはすでに昨年国会でも決定したことでございます。ただその影響個人個人によって非常に影響度が違います。したがいまして、私ども郵便料金値上げによって消費者物価上昇に寄与するものは、たとえば〇・〇三、電報は〇・〇一、こういう数字を算出しておりますが、やはりその利用する方のいろいろ個人的条件によって非常にその影響が違うということは、これは否定できないところでございます。
  11. 松浦利尚

    松浦(利)委員 やはり郵便料金等議論されたときにも議論になりましたけれども、いま政府方針としてはなるたけ法定料金からはずしてしまう、こういった方向に進んでおるのですね、公共料金について。私はその方針は改めてもらいたいと思うのです。  そこで、具体的に郵政大臣お尋ねをしておきたいのですが、この電話料金等が、新しい料金体系全部が郵政大臣認可料金ということになるわけでありますが、これを少なくとも利用する国民の声を反映させる。法定料金にしてもらったら一番いいわけですけれども、こういった料金あり方について、消費者等を含めた審議会を設けて当面は議論をしていくのだ、こういった方向を今後御検討いただく考え方があるかどうか。これが一点です。  それからその小包の問題について、先ほど長官国会議論したと言われましたが、国会でこのことは議論されておりません。全然されておらないのです。郵政審議会の議を経て省令できめられた料金なんです。国会では全く私たちは知りませんでした。結果が出てわかったのです。こういったものについては、事前に、審議会の議を通じてこういう答申があったということについて国会逓信委員会なら逓信委員会担当委員会に予告をする、こういった制度について御検討いただくというお気持ちがあるかどうか。この二点について郵政大臣の御見解を承っておきたいと思うのです。
  12. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 ただいま木村長官から御答弁申しましたように、郵便関係にいたしましても電信電話関係にいたしましても、前回の通常国会で、御承知のように郵便につきましては郵便法電気通信につきましては公衆電気通信法改正国会におはかりいたしまして、御承認をいただきましていまの制度になっておるわけでございます。したがって電信電話につきましても、主要な料金については、これはもう公衆電気通信法ができました当初からでございますが、法律によって定めるということになっておりますわけでございます。ただ、それ以外の料金につきましては、郵政大臣認可を得て日本電電公社でありますとか国際電電会社でありますとかというところで定めるということになっておるわけでございます。  それから郵便料金につきましては、これはさっき御指摘のように、この前郵便法改正にあたりまして、三種以下の料金については郵政大臣承認によって定める、政令によって定めるということになったわけでございまして、そういうような方法に改まったことはもう御承知のとおりでございます。  そこで、ただいま御質問電気通信関係料金の問題でございますが、これは最近の例は、この三月一日から電報料金の改定をいたしたわけでございます。これにつきましては私の認可ということになっておりますけれども、今度は私だけの認可でやったわけでございますけれども、当時、どうも私みずからも何だかこれはだれかに相談しておきたい、だれか世論を代表するような方々の御意見を承ってきめておくほうがよさそうだということでいろいろ省内で担当の向きとも相談いたしたのでございけれども、今度は間に合わない。間に合わないでも郵政審議会というのがあるじゃないか。公衆電気通信で、郵政と多少関係が違いますけれども、そういう機関が幸いに法的にもありますわけでございますから、それにはかってはどうかということを相談いたしましたけれども、とうとう今回はそういうことにならなかったわけでございます。しかし、御指摘のことは私みずからもそういう感じを持っておったわけでございますから、それで、私の認可できめることができます電報電話料金にいたしましても、私がきめることについてやはり相談相手と申しますか、世論を聞くような機関に御相談申し上げたがいいということを感じておりますわけでございます。  それで、この認可料金というのは、御承知のように非常に多いのです。多いのですけれども、そのうち特に国民生活に非常に利用の多いというようなものについては、そういうような何かの機関に御相談を今後はいたしたい。たまたまきょうはそういう御要望でございますけれども、私みずから今後はそういうことをぜひ実行いたしたいと思っておるわけでございます。  それから小包料金につきましては、いま御指摘のように、郵政大臣郵政審議会にはかって省令で定めるということになっておりますわけでございまして、これは国会の御審議にはかからなかったわけでございますけれども、事前に非公式に委員会等の御意見を聞くというようなことは——公式に国会にかけるという案件ではない。これはそういうふうに法律できまっておるわけでございますから、しかし、ただいまおっしゃったことについては、十分私参考といたしまして今後考えてまいりたい、こういうように思っております。
  13. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は各省にもぜひお願いをしておきたいのですが、国会法定料金議論したときに出される上昇パーセントですね、何%上げるとか。ところが認可料金のほうは、逆に先ほど言いましたように三倍も四倍も値上がりをする、こういった不都合、ということばが適当かどうか別にいたしまして、国民にとっては非常に抜き打ち的な値上げになってしまうわけです。ですから、各省に認可料金があるとすれば、郵政大臣が言われたような方向で、何らかの形でやはり国会の意思なりあるいは国民意見というものを聞く、こういった方向をぜひとっていただきたいというふうに要望として申し上げておきたいと思うのです。  経済企画庁長官に、これは要望ですから御答弁は要りませんが、いま郵政大臣がお話しになりましたように、やはり認可料金についても、物価担当大臣でありますから、ぜひ事前に察知をしていただく、あるいは連絡を受けて経済企画庁議論をしていただきたい。そうしなければ、抜き打ち的に各省でやられて国民のほうは非常に不安を感ずるということでありますから、ぜひお願いをしたいと思うのです。  それからここで郵政大臣に、これはたいへん言いにくいことでありますが、私たちは、あの郵便法改正して料金値上げするときに、国民へのサービスが上がるということを期待したわけです。またそういう御説明だったはずです。ところが、これは最近特に出てきた苦情でありますが、私が代表して申し上げるのですが、いままでの郵便物でしたら、あて名が不十分でも必ずあて名をさがしてもらいまして、そしてあて所にあれがおらない——それで、そのはがきにこういうふうに書いてある。あて名不完全で配達できません、といってばっと返ってくるんですね。それから、この番地は団地の番地ですから棟番号及び家屋番号を記入してください。ばっと返ってくる。それから、○○団地あて郵便物は同一地番が多いため、何棟何号または分譲何号の記入のないものは配達しませんのでお返しいたします、こういって返ってくるのです。私は、確かにあて名が不十分で配達がしにくいことはわかります。しかし、あのとき国会国民に約束した内容というのは、サービスがよくなるということで了解をしてくれというのが実は国会審議のときの状態だった。ところが、このあて先を見ますと、こういった形で現実にどんどん返ってくるという事態があるわけです。これではやはり国民から、何のために料金値上げをしたかという不満が出てくるのは私は当然だと思うのです。あて名を十分に書いてくれという指導を国民にするのも大切でしょう。しかし同時に、その不十分だったものについてできるだけの努力をしてみて、そしてだめなときにはいま言ったような手続で差し出し人に戻すという手続があってしかるべきだ、いままではそうだったのですから。料金値上げ以前はそういうことをしておったわけですから、その点について郵政大臣、これは国会に対する、国民に対する約束と若干違う問題が出てきておりますので、大臣のほうから明確にお答えをいただいておきたいと思うのです。
  14. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 御指摘のような事実があったかと存じまして、まことに恐縮に存じております。昨年からことしにかけまして郵便料金値上げをしていただきましたことは御承知のとおりでございまして、その際は、ことしの二月一日から第一種郵便、第二種郵便、手紙とはがきの料金が上がったことでございますが、こういうように料金を上げていただきましたので、幸いに郵便事業はどうやら収支が安定してまいったという状況になったことを感謝申し上げておるわけでございます。したがって今後は、郵便サービスの向上にますます努力をしなければならない、こういうように私どもは考えておるわけでございます。  御承知だと思いますけれども昭和三十年ごろから慢性的にずっと続いておりました郵便の遅配の問題は、昨年の夏、秋ごろからだんだんなくなりまして、年末にはほとんど完全に遅配はなくなりまして、ことしの年賀郵便のごときは、戦後かつて例を見なかったくらいに一〇〇%の成績をあげたことを喜んでおりますわけでございますが、これは全く従業員の非常な奮闘のたまものであると感謝いたしております。  そうして昨年の秋にはサービス向上の一端と思いまして、十月でございましたか、郵便物の送達の日数表というのをつくりまして、各郵便局に明示いたしまして、広告しまして、東京で郵便物をお出しになれば福岡には何日ごろに着くというような汽車のダイヤみたいなものをお示ししまして、国民に約束いたしたわけでございます。それは国民サービスするとともに、従業員の覚悟を促すということにもなったわけでございまして、これも非常に効果があったと思っております。  ところがだんだん最近は、大都会並びに周辺の事情というものが、条件が非常に悪くなってまいっておりまして、そこでいまのサービス向上の御要請にもこたえますために、新年度の予算におきましては大都市並びにその周辺の新しい輸送路の開発でありますとか、あるいは外務対策の改善でありますとか、またそういうところにございます郵便局が非常に狭隘になってまいっておりますから、郵便物がにわかにふえておりまして、そういうようなことを改善いたしましてサービスの向上をはからなければならないということで、特にそういう方面には重点的にサービスの向上のために明年度の予算もつくっておりますようなわけでございますが、ただいま御指摘のような問題は、これはどうも団地がだんだんふえてまいりまして、その団地に住んでいらっしゃる方が、またよく住居を移られるといった方が非常に多いわけでございまして、それで受け取り人の住居の名簿の整備というようなことには一そう心がけなくちゃならないと思っております。どんなに移転者がございましても、それを追及、掌握いたしまして、このサービスに遺憾なきを期すということでなくちゃならないと思いますし、また郵便の外務員にはどうもやはり地方から出てこられました青少年の新しい方が多いものですから、そういう方々の定着ということについてはずいぶん苦慮いたしておりますし、対策も講じておりますけれども、また郵便の実際の配達についても十分訓練をしなければならないということで努力を続けておるようなことでございます。しかし、御指摘のような事実がまだあろうかと思いますので、十分注意いたします。ただ、差し出し人の方に対しましても、いまおっしゃってくださいましたように、あて名をはっきり書くとかあるいは番号をお忘れなく記入していただくとか、また団地については棟数が非常に多いものですから、特に棟の番号を書いていただくとかいうようなこともしていただかなければならぬと思うわけでございますが、しかし郵政省郵便局側におきましては、ただいま御指摘のような事実の今後だんだんなくなってまいりますように、十分サービスの向上には、料金も上げてくださったことでもございますから、努力を続けてまいりたいと、こういうように考えておりますわけでございます。
  15. 松浦利尚

    松浦(利)委員 政府関与物資というのが、どんどん公共料金値上がりをして、逆にサービスが低下をしていくということじゃ、国民のほうは何のために上げられたのかということで、たいへん私は問題になると思うのです。そういう意味で、ぜひこの問題についてはこういったことのないように、一ぺんにということがむずかしければ、サービスの向上について努力をしていただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。それでは郵政大臣お忙しそうですから、お引き取りいただいてけっこうです。  次に、建設大臣に、いま一番問題の土地問題で若干お尋ねをしたいと思うのですが、御承知のように、土地の異常な高騰というのが逆に物価上昇に大きな影響を与えておる、そのことは私は否定できないと思うのです。昭和四十七年度の総予算のうち公共事業二兆一千四百八十四億、住宅公団、住宅公庫への融資が一兆一千四百十七億、首都高速道路公団、阪神高速道路公団への投融資が四千三百六十四億、地方自治体等の上下水道や住宅等のための起債が一兆七千百五十五億円、合計五兆四千百五十億円という膨大な資金というものが公共事業に今回投入される予算になっておるわけでありますが、この中で具体的に土地に吸収されると見られる総額予算は幾らくらいになりますか。この中で土地が食ってしまう予算は、推定で総額幾らくらいになると思われますか。
  16. 西村英一

    西村国務大臣 いま松浦さん数字をあげましたが、何か入っていないものがありますから私のほうでちょっと申し上げますが、昭和四十七年度の公共投資でございますが、治水予算が四千百五十四億円、それから道路予算が一兆二千三百十二億円、都市計画事業が六千六百三十二億円、住宅予算が八千三百七十三億、それから災害関連が一千三百六十一億円で、私の持っておる表は、公共事業費として三兆二千八百三十二億円でございます。これで、用地はそのうちでもって七千七百四十七億円でございますから、全体に対して二三・六%でございます。しかし、この七千七百四十七億の二三・六%というのは純用地費、土地代とそれからその土地を利用するための補償費とが入っておるのでございます。純土地代はこのうちで一八・二%、あとの五・四%は補償費でございます。家の立ちのきとかいろいろな補償費でございまして、純土地代としては一八・二%、あとは五・四%が補償費になっておるわけでございます。
  17. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は、大臣そういう数字は出てこないと思うのです。もうすでに、大蔵大臣も見えておられますが、現実問題として四十七年度の公共事業に関する予定地ですね、そういったものに金融機関がどんどんと融資をしまして土地の買い占めが始まっておる。日銀の総裁が、そういった土地騰貴をねらった融資、金融等についてはある程度規制をしたらというような談話も、きのうの新聞でしたか拝見をさしていただいた。非常に地価の高騰というのが異常に上がっておるのですね。ある人によりますと、政府が行なう公共事業のうち約一兆五千億近くは土地が吸収してしまうだろう、こう言っておるのですね。そうしますと、いま大臣は建設予算に占める中で七千七百億程度が土地だと、こういうふうに言われたわけですけれども、その予想を上回った場合、それ以上に土地やら補償に上回って支出が出た場合には、明らかに私は公共事業の質の低下、極端に言うと予定しておったものがそれだけ予定できないという結果を呼んでくると思うのです。実質的に公共事業の質の低下というような問題が起こってくると同時に、消費者物価の抑制ということでなく、逆に値上げというものを促進する起爆剤になってきておる。そうなってきますと、どうしてもここで政府が打たなければならないのは、私は地価対策だと思うのです。ところが具体的にこの四十七年度の公共事業を行なうのにあたって、興すにあたって、具体的な土地対策というのが一体どういうのが政府にあるのか。現在国会に出されようとしておる公有地拡大法案にいたしましても、これは地価の問題を解決する法案にはなっておりません。そういった問題で具体的に土地問題についてどう対処しようとしておられるのか、この問題について大臣から御答弁を承っておきたいと思うのです。
  18. 西村英一

    西村国務大臣 地価対策は、もう毎度申し上げるように公共事業をやる場合の用地の増大を来たさないように、つとめて政府は、また建設省もそれに力を入れておるところでございます。しかし、御案内のように、この地価の安定を期することはなかなかできませんが、さしあたり来年度の工事につきましては、これはもう相当な手持ちがあるわけでございます。いままで先行取得をやってまいっておるわけでございます。したがいまして、相当に用地の一年分くらいな土地は持っております。しかし、公共投資はずっと続きますから、やはりことしの事業予算で来年さらに再来年の用地を買うというふうにいたしておりまするが、いずれにいたしましてもやはりこの地価の安定を期するためにいろいろな政策をやっておるわけでございます。先行取得、今回もこの建設省、自治省の共管でもって先行取得の法案を、公共用地の拡大に関する法律を出しましたが、ああいうようないろいろな手を尽くしてこの地価の安定を期したい。また最近はちょっと景気が悪いものですから、少し地価の伸び方、伸び率は少し下がっておるようでございます。まだ三月の不動産の統計が出ませんが、おそらく三月の不動産の統計を見ますと、少しまたやはり下がっておるのじゃないかということで——あなた、首を振りましたが、九月は少し下がっておりますからおそらく下がっておるんじゃないか、こう思っておるわけですが、いずれにいたしましてもいろいろな手を使って、長期的にはやはり産業、人口の都市集中をつとめてやらないように、そのために通産省でも今度工場の再配置法案を出す、建設省のみならず政府をあげて地価の安定に取り組んでおるところでございます。
  19. 松浦利尚

    松浦(利)委員 そうですね、もう時間があまりありませんから簡単に御質問いたしますが、これは私の意見ではありません、建設省所管で出されました建設白書の中に書いてある土地対策、しかもいま土地投機を行なっておるのは法人が持っておる土地です。法人が持っておる土地が重大な問題なんです。農民が個々に持っておる土地よりも投機に使われる法人の投機というものを押えない限り、土地の抑制というものは私はむずかしいと思うのです。現実に銀行の金利よりも土地価格の率の上昇のほうが高いですから、どんどん上がるんですから、何も銀行に預金するよりも土地買っておったほうがましだというのが法人の考え方です。建設白書にはこう書いてあるのです。「法人による投機的土地取引を抑制するため、土地売却益の課税の強化措置を講ずる。」こう書いてあるのです。その次に何と書いてあるかというと、「適正評価額をこえる土地売却益については、とくに高率の課税を行なう税制として、土地高価譲渡所得税の創設を検討する。」四十七年度にと、こう書いてある。現在の法人がたくさん持っておるこういった遊び地、未利用地、こういった土地に対する建設白書でいうところの税制措置、こういうものを早急にやるというお気持ちがありますか。
  20. 西村英一

    西村国務大臣 いまの問題ですが、これは地価対策閣僚協議会の決定事項でございます。したがって、法人がたくさん土地を持っておるから、その遊休の土地を早く出させよう、そのための税制のあり方をひとつ考えようじゃないか。また土地の騰貴のために高額もうけた利益も、それもひとつ適正な税制で措置しようじゃないか。これは地価対策閣僚協議会の決定事項でございまして、私のほうはいまこの二つの懸案で調べておる。実際むずかしいのは、法人がどれだけ土地を持っておるかということを調べるのがむずかしいのです。しかし持っておる、たくさんな土地を持っておるということは、これは大かた想像もつくし、ややわかっていますけれども、的確につかむことができません。そこで私のほうは、これはやはりどうしても税で対処しなければならぬということで、大蔵大臣のほうに打ち合わせをして、建設省としてもいろいろ調査をいたしておるのですが、税制調査会にかけて——これは大蔵大臣も、法人に対する譲渡所得の問題については答弁がございましたが、せっかく税制調査会でも調査をするということでございます。したがってこの問題は、私たちとしてはやはり個人の譲渡所得の課税の問題との対比からいきましても、私は当然法人の所得に対してもバランスをとる必要があろうと思っておりまするが、これは建設省だけではできませんので、税制調査会等の答申を待ってひとつ対処したい、かように考えておる次第でございます。
  21. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大蔵大臣政府としては、これを具体的に税制調査会に対してやらす、やるという政府方針がありますか。
  22. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 法人が所有しておる土地の評価益に特別の課税をするということはなかなかむずかしいことでございますが、しかし、土地価格の公示制度の整備と相まって、それをこえる土地の売却利益に対しては特別の課税をするということは可能でございますので、その点はただいま検討中でございます。
  23. 松浦利尚

    松浦(利)委員 転換が可能な資産として保有しておるこういった土地は、私は早急にきびしく税制措置を講ずべきだ。ですから、これは建設白書によると、四十七年度中には実施をする——建設白書を持ってこなかったですが、こういうふうに土地対策閣僚会議の決定として記載されておるわけであります。しかも四十七年度の公共事業のうち全体の投資額の一千五百億近くが土地に吸収されてしまうということじゃ、何のために景気浮揚策としての公共事業をやるのかという疑問すら起こってくるわけでありますから、私は、この際早急に閣僚がこの問題について積極的に取り組まるように希望して、約束をしていただいて、土地問題の質問を終わらせていただきたいと存じます。  それじゃ、各大臣お忙しいようですから、通産大臣と運輸大臣はちょっとあとのほうに質問を保留させていただきまして、農林大臣お尋ねをしたいのですが、その一つは、生産者米価の問題であります。  御承知のように、農林大臣は、先般、生産者米価の値上げを検討せざるを得ない状況だという御報告がありましたが、それはそれで私はけっこうだと思うのです。それに対比して、消費者米価の問題が私は当然疑問として起こってくると思うのです。御承知のように、物統令を四月一日からはずしてもらってはわれわれ国民は困るわけでありますけれども、この物統令を延期するという意思があるのかないのかということを第一点簡単にお聞かせをいただいて、もしこれがない、延期する意思がないとするならば、新米が出回る次の消費者米価、これは政府売り渡し価格という形できまるそうでありますけれども、当然その生産者米価が上がった分だけ消費者米価のほう、売り渡し価格のほうにイコールでプラスされてくる、このように私は判断するのですが、その政府売り渡し価格そのものは一体どういうことになるのか、その点をひとつ、はっきりお聞かせいただきたいと思うのです。
  24. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 第一は、物統令の米の適用廃止を延ばすのか、方針どおり四月にやるのかということでございますが、これはずっといろいろ検討した結果四月ということにいたしたので、延ばすつもりはございませんから、四月に物統令の消費者米価の関係をはずす、こういう方針でございます。  第二に生産者米価の問題でございますが、先ほどから話も聞いていますし、いままでの話も聞いていますが、物価の問題というと、大体国民のふところから取り上げるほうの物価の問題です。生産者米価は国民のふところから取り上げるものじゃなくて、国民のほうへ出すものでございます。でございますから、生産者米価の問題につきましては、大体食管の赤字の問題と、それから米の生産調整をしていますからそのほうに影響するかどうかで、政策問題もあります。で、いままでは生産者米価は抑制するのだ抑制するのだということを言ってきましたけれども、私は生産者米価も、やはり生産費とかあるいは経済事情とか、こういうものを考えましたならば、抑制するという方針じゃなくて弾力的にこれはきめていかなくちゃならぬ問題だと思います。ですからこれは、まあ弾力的というのはその事情からいえば上がるようなことだと思いますが。そうすると、その上がった分をそっくり今度は消費者米価に積み上げて消費者米価は上げるんじゃないか、こういういまのお話でございましたが、私は、これは消費者米価はやはり物価の問題で、これは国民のふところから取り上げる方向でいくべきじゃない。しかし、物統令を廃止したからこれは上がるんじゃないかということでございますが、政府が管理しておる米を払い下げるわけです。払い下げるときに、いまの消費者米価の価格のきめ方が、食管法にもありますように家計をそこなわないように消費者米価はきめていくんだ、こういうふうな経済事情や何かを考えてやるべきだということになっています。でありますので、払い下げる価格にいたしましても、そういう趣旨を体するといいますか、とくと考えて、消費者米価が上がるような影響のないような形で政府米を払い下げる、こういう方針でございます。しかし、これは具体的には米価審議会等においてよく検討して、その価格はきめたいと思いますけれども、消費者米価に影響しないように、上がるというような方向でない払い下げの方法をとる、こういう気持ちでおります。
  25. 松浦利尚

    松浦(利)委員 農林大臣、ひとつ簡潔にお答えいただきたいのですが、いま消費者米価はキロ当たり一千五百十円ですね。自主流通米はそれよりも約二割高いです。ところが今度の新米が出回った場合に、政府売り渡し価格は現在のキロ当たり千五百十円ではなくて、自主流通米が政府売り渡し価格の基準になる。ある程度の標準米としては、現在流通しておる自主流通米の価格が消費者米価の中心になるのではないかという疑いを持っておるのです。なるほど古々米等は安く売るでしょう。古米等は安いでしょう。しかし実質的に、全体的の標準としては、今日の自主流通米が標準になるかならないか。それはならないというふうに理解してよろしいですか。
  26. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 現在の消費者米価というものが標準になります。ですから新しく、自主流通米が高くなるものを標準として標準米の価格をつくるというような考えではございません。
  27. 松浦利尚

    松浦(利)委員 具体的に、今度新米が出回った段階で十キロ千五百十円のお米を買っても、その中にはちゃんと新米が入っていますね。その点、間違いありませんですね。
  28. 亀長友義

    亀長政府委員 標準価格米は政府払い下げの一−四等を原料といたします。政府払い下げの一−四等の中には、当然新米も含まれているわけでございまして、自主流通米との関係のお話がございましたが、現在、消費量の中で約八割は政府が買う、二割が自主流通米でございますから、政府の買った中にはもちろん相当の新米があるということでございます。本年度につきましてもその点は同様でございますし、新年度につきましても同様でございます。  価格につきましては、私どもは、全体としての米価水準ということになれば、自主流通米と、それから政府のいわゆる標準価格米、あるいは徳用上米、そういうものの全体としての平均が米価水準ということに相なろうかと思います。ただ、政府払い下げ米の観点から申しますなれば、それは標準価格米を基準に考えてまいりたいと思っております。
  29. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それは長官、金額は千五百十円ですね。標準米の異動はありませんね。
  30. 亀長友義

    亀長政府委員 今米穀年度につきましては、千五百十円という標準価格でまいりたいと思います。
  31. 松浦利尚

    松浦(利)委員 来米穀年度はどうなりますか。
  32. 亀長友義

    亀長政府委員 来米穀年度に関しましては、いまだ決定をいたしておりません。
  33. 松浦利尚

    松浦(利)委員 あなたの方針はどういう方針ですか。
  34. 亀長友義

    亀長政府委員 先ほど大臣がお答えになったとおりでございます。
  35. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私はいまここでいろいろやりとりを簡単にしましたが、かりに物統令を廃止して標準米千五百十円が新米穀年度においてまた上がった——今度とれる新米は新米穀年度ですから、この新米穀年度の段階で実質的に標準米が上がったというときには物統令に戻してもらいたいと思うのです。延期をすることを私は期待するけれども、そうじゃなくて、はずした、しかも実際に新米穀年度になってみたら、標準米価というものは一千五百十円から上がっておった、こういう段階にはまた物統令に戻してもらいたいと思うのです。その点どうですか、大臣
  36. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 上がるか上がらないかはまだ——どの程度にするかは、先ほど申し上げますように、米価審議会の諮問を経てきめますが、どういうふうになったかならないかによって物統令を延ばすということ、これを変更しようと、またもとへ戻すと——物統令は、御承知のように価格の統制でございまして、価格違反に対して罰則を設けている、こういうことでございます。でございまして、まあ間接的には物統令によって押えてはおりましたが、事実上これはあまり発動していなかった、こういう実情でございます。ですから、物統令をもとへ戻したから価格の点でどうこうということにはならぬと思います。間接的にはそれは非常に影響はありますけれども。でありますので、いまのお話のように、物統令をまたもとへ戻して発動する、そういう必要がほんとうにあるなら、別な法律でこれはきめるべきだと私は思うのです。占領中のポツダム政令のような遺物でもってやっていくということは、あまり好ましいことじゃないと思います。でございますので、非常に事態がそういうものを必要とする場合には、別の法律をつくってやるならやる。しかし、いまお話しのように、物統令をもとへ戻す、一たんやめたものをまたもとへ戻すというような考えは持っておりません。
  37. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もし物統令をはずして消費者米価にはね返って上昇するときには、抑制のための別の法律をつくる、こういうふうに言われましたから、その結果が出るまでこの議論は保留させていただきたいと思うのです。そういう段階まで、新四十七米穀年度になるまでこの議論は私は保留をさせておいていただきたいと思います。大臣のいまの御答弁をそのまますなおに受け取っておきたいと思います。
  38. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 誤解があるといけませんから……。上がったときには別の法律をつくるということじゃございませんで、物統令とほかの体制から考えるならば、そういうふうにたいへんに上がって、どうしてもそれを押えなくちゃならぬというような事態が来れば別な法律をつくるかもしらぬけれども、いま物統令と引きかえにほかの法律をつくるということじゃございませんから、その点は御了承願います。
  39. 松浦利尚

    松浦(利)委員 引きかえるようなことを言っておるのじゃなくて、実際に上がった段階にいま言われたことを別の法律でと、こう言っておられるわけでありますから、そのときにまた議論をさしていただきます、こういうふうに申し上げておるのです。  それからもう一つあるのです。御承知のように、農林大臣は、今度、佐藤総理のお声がかりもあって、生鮮食料品、特に野菜対策というのには非常に重点を置いておられるわけでありますが、今度の蔬菜、園芸等の予算を見ますと、蚕糸園芸振興費が七十五億六千五百万、農業構造改善事業が二百九十億五千二百万、野菜流通対策費が六十三億九千八百万と非常に多額に計上されておることは事実です。  ところが、最近若干問題になるのは、低生産部門に対してのこういった野菜対策にどんどんと政府が出資しておるにかかわらず、地方自治体で農業構築物としてビニールハウスそのものに課税をする、償却資産として税金を取る、捕捉をする、こういう事態が生まれてきておるのです。国民の税金で流通対策その他の振興策に金を回しておいて、片一方では農民からそういったものを取り上げる。これは物価に関する特別委員会でも野菜対策の矛盾として議論したことがあるのですが、この際、農林大臣のほうでこの問題についてはどういうふうに考えておられるのか。もう一つは、自治省としてこの問題について農林省と十分打ち合わせが進んでおられるのかどうか。それから大蔵大臣には、これは税制を改正して、こういったものについてはもう法律から除外してしまう、こういったことについてお考えがあるかないか。皆さん方の御答弁をそれぞれ簡潔にお願いしたいと思うのです。
  40. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 野菜対策は、何も佐藤総理からのお声がかりでなくても、これはやらなくちゃならないから、大いにやって予算も上げたわけでございます。佐藤総理もそれは考えております。  そこで、ビニールハウスに対する課税でございますが、野菜対策から言いましても、ビニールハウス等による——私は団地構想を出しておりますが、あれも団地化して、指定産地なんかもだんだん団地化するという傾向でありますから、これに課税されることは、私としてはあまり好ましくなく考えております。しかし、一部の町村でこれはやっておりますが、固定資産税の税制との関係もありましょうし、自治省とも十分協議しておるところでございます。協議決定しておるわけではございません。協議中でございます。
  41. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 ビニールハウスは、所得税法上、減価償却資産としてあがっております関係上、償却資産として地方税の固定資産税の課税対象になっており、決して財源不足のために特にこれを課税の対象にするという姿ではございません。御承知のとおりビニールハウスは態様がさまざまでございまして、特に大型で固定的なもの、他の償却資産との均衡上課税のやむを得ざるものを除きまして、小規模のもの、あるいは簡単なもの等につきましては、すべて課税の対象外とするように従来から行政指導をいたしておりますし、今後もこの方針でまいりたいと考えております。
  42. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 固定資産税の問題のようでございますので、これは自治大臣に合理的に考えていただきたいと思っております。
  43. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いま農業構築物として組長が判断をして捕捉しておるのです。いま言われるように、ガラス張りのりっぱな温室とかなんとか、そういうことを私は言おうとは思いません。しかし、実際にビニールを毎年毎年張りかえて、露地栽培をやめて、天気に左右されないビニールにしていく、こういったものまでどんどん農業構築物として課税の対象として捕捉していくのですよ。これからどんどん野菜対策として農林省が指導して進んでいくのですから、そういったものはやはり、農林大臣が言ったように、野菜対策というのは国の方針なんだから——法律上は確かに言われるとおり区分はないのですからね。こういうものは取ってよろしい、こういうものは取っていかぬという区分はないのですよ、法律上は。感じで取っていくのです。だからそういう点については野菜対策上からも好ましくないという判断に立って下部を指導してもらいたい。自治省、どうですか、その点。
  44. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 おそらく地方においていま御指摘のような点があるかもわかりませんが、私たちは、ただいま申しましたように、他の償却資産との均衡上やむを得ないものは除きますけれども、その他のものにつきましては課税対象としないという行政方針を徹底させまして、いまの御注意の点がないように、今後とも十分注意してまいりたいと思います。
  45. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それではいまの自治省の方針了解いたします。農林大臣、自治大臣ありがとうございました。どうぞお引き取りいただきたいと思います。  それでは次に厚生大臣に、簡単なことですから一つお尋ねをしておきたいのですが、第四回消費者保護会議で、昭和四十七年度には明確に、消費者の物価対策の一つとして消費生活協同組合の育成という問題があげられておる。その中には、地域の緩和、制度改善を行なうため消費生活協同組合法の改正を今度の国会に提案をする、こういうふうになっている。ところが実際に調べてみますと、昭和四十五年に消費生活協同組合が販売をした供給高というのは一千七百三十二億円にすぎないのです。全体の一%足らずです。ところが、そういうものに対して、どうも政府内部で、こういう消費者保護会議で決定をしたにかかわらず意見の統一ができない、こういうふうに聞いておるわけでありますが、この際、この決定を見た消費者保護会議方針に従って、地域緩和という生協法の改正について今国会に提案をしていただきたいと思うのです。それが政府方針だ、私はこういうふうに理解をしておるのですが、どうです。
  46. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 御指摘のように、次期通常国会に提出することを目途に検討することになってございますが、厚生省といたしましては、できるだけ提案をいたしたいというので、いま関係方面と精力的に折衝中でございます。ただ、中小小売り商に与える影響等はどうであろうかという点についてまだ若干意見の合わないところがございますが、できるだけ早急に調整をいたしまして、調整ができたらこの国会に提案をいたしたい、かように思っております。
  47. 松浦利尚

    松浦(利)委員 通産大臣大臣のところでどうもちょい待てという意見が強いというふうに聞いておるのですが、そんなことはありませんでしょう。
  48. 田中角榮

    田中国務大臣 そういうことはないと思います。
  49. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、いま厚生大臣が言われたように、今国会にぜひ提案をしていただきたいと思うのです。そのときに若干の員外利用についてもぜひ御検討いただきたい、この点について希望として申し上げておきたいと存じます。——厚生大臣、おそれ入りますが、先ほど私は、今国会に調整をして出しますというふうに理解をしたのですが、そうではないという不規則発言もありましたので、もう一ぺん、間違いありませんね。念を押します。
  50. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 出したいと思ってただいま精力的に調整いたしております、調整がついたら出します、かように申し上げております。
  51. 松浦利尚

    松浦(利)委員 調整がついたらじゃなくて、もうすでに調整はついておるはずなんです。消費者保護会議ですでにもう決定しておるわけですからね。手続は終わっておるわけですから。その点、今国会に提出をしていただきたいということを申し上げておきます。どうぞ厚生大臣お引き取りいただきたいと存じます。  そこで最後になりましたが、もう時間があまりありませんから、運輸大臣と通産大臣、そして公取の委員長もおいでですが、簡潔に質問させていただきたいと思うのですが、その一つは、実は私の手元に国鉄財政再建対策要綱というのがあるのです。これは四十七年一月の十一日に大蔵省に大臣としての予算折衝復活段階で行なわれた文書なんです。これには、大蔵大臣、運輸大臣、それから自民党政調会長、そして私の横におられます自民党国鉄再建懇談会の座長さんであります二階堂さん、以上の方々が署名をしておられるのですが、これは一体、どういう拘束力を持ち、どういう内容として理解をしたらいいのですか。
  52. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいま御指摘のございましたような、十一日に予算折衝の際におきまして、政府と与党の関係者が、国鉄の新しい再建対策につきまして、大体の方向につきまして申し合わせをした次第でございます。
  53. 松浦利尚

    松浦(利)委員 運輸大臣、これによりますと、四十七年度から四回運賃値上げをすることになりますね。そのことをもう閣議も了解した、だからこれから四回値上げしますぞというふうに理解してよろしいですか。
  54. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 四回値上げするということを了解したわけじゃございません。これは私どもといたしまして、今日の国鉄の良質サービスを提供するためどうしても健全財政に建て直さなければいかぬというような点で、私どもといたしまして、自民党と相談をいたしまして、今回、財政再建促進法の改正案を提出しておりますが、まず、来年度、四十七年度から大体一五%に見合う利用者の御協力を願いたいということはきめてありますが、あとやはり五十年、五十三年に大体それだけの御協力を願って、そして国のほうへも、大体におきまして、出資金あるいはまた利子補給その他につきまして約二兆円の国の財政負担を求める。それからまた、国鉄自身の企業努力をするというようなことによりまして、五十六年には償却後におきましても黒字になるという大体の積算をつくった次第でございます。
  55. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いま二兆円を出資すると言われましたが、その二兆円の見返りとして四回値上げをするということの検討を行なうことになっておるのですが、それじゃ国民が四回で負担する総額は幾らになりますか。
  56. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 大体これは積算であれでございまして、きめたわけじゃございませんが、六兆七千億ぐらいになる、こういうことでございます。
  57. 松浦利尚

    松浦(利)委員 よく三方一両損ということをいわれますけれども政府が二兆出して国民が六兆七千億も出すといったら、三方一両損にならぬじゃないですか。国民のほうが三倍よけいに出すわけですよ。実際にそういうことまでこのことは約束しておるのですね。それじゃこれをきめる段階で、あるいは閣議が了解した段階で、国鉄の十カ年計画というのは明確にあるのですか。その点どうです。
  58. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 御承知のとおり、国鉄の十カ年計画、再建計画につきましては、これから再建法の御審議を願う次第でございます。国会の御審議によりまして成立をいたしました場合におきましては、政府におきまして、その大綱につきまして閣議決定を見まして、それからこの十カ年計画の作成に当たる、こういうたてまえでございます。
  59. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は主客が転倒しておると思うのです。十カ年計画をつくるなら、まず十カ年計画をつくって、新線建設はこれだけ、これだけ設備投資をしてこれだけの収入があってこうだ、在来線についてはこうだ、そして総額これだけの収入がある、そういう計画が出た上で国鉄料金というのはこれだけ値上げをしますぞ、こういって国民に働きかけるのが、私は政府のほんとうの姿だと思うのです。ところがこれは逆ですからね。初めから頭のほうでこれだけ金を使うということをきめておいて、そしてそのあと計画の中に数字合わせをしていく、ごろ合わせをしていく、こういうことをやるから国民のほうは、三年前に国鉄の運賃値上げをさせられて、もうこれで絶対だいじょうぶですといって十カ年計画をつくりました。一年たってみたらもうだめでしょう。こういうあり方では、私は国民国鉄運賃値上げなどというものに納得しないと思う。かりに十カ年計画をここでつくったとしても、またぞろすぐ改正ということになるでしょう。私はそういった意味で、この国鉄の十カ年計画は裏づけがない計画ですから、ちゃんとした裏づけをつくった上で少なくとも運賃値上げ等の措置はなさるべきだ、こう私は思うのです。私は、今国会にこの国鉄運賃値上げの法案を提案するのには、あまりにも政府自体は準備がなさ過ぎると思うのです。ですから、今度のこの国会に出すことはやめてもらいたいと思うのですが、どうです。
  60. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 おしかりをいただいた次第でございますが、もうすでに国鉄の再建促進の改正法案並びに運賃改定法案は国会に提出してございます。いろいろございますが、やはりその法案が成立をいたしませんと、なかなか確定をいたしません次第でございますので申し上げた次第でございますが、もうすでに私から申し上げるまでもなく、御承知のとおり、国鉄が国民の陸上の大動脈としての使命は、非常にやはり国民も期待をしておるところでございまして、あるいは大都市間の交通、あるいは都市間の輸送の増強、あるいはまた地方幹線の電化、あるいはまた無煙化、また複線化、いろいろございます。新幹線につきましても、たとえばすでにもう建設がきまりましたものが、東北線、上越線等ございます。それから青函トンネルにつきましても着工しておりまして、大体におきまして、その規模もきまっている次第でございます。これは確定と申しますとはなはだ恐縮でございますが、しかし、これは吟味をいたしまして、大体の計画はきまっている次第でございます。  ただいま三方一両損で少し政府のほうのあれが少ないじゃないか、国民の協力が多過ぎるじゃないか、こういうようなお話。はなはだ恐縮でございますが、いままで国鉄が公社といたしまして、公共企業体といたしまして発足いたしまして以来、政府が、現物出資は別といたしまして、資金の出資は八十九億でございます。昨年三十五億があらためて追加されただけでございます。ところが今回は一挙に六百十六億という財政の投資を見ました。また工事費補助、またいままでの債権のたな上げの範囲の拡大、それに対する利子補給、またその他の関係を合わせますると、何と千百三十四億に及ぶ政府助成を見ている次第でございます。さらに、それだけでは、私どもこの再建計画といたしまして国民の御協力を得るというのにあれでございますので、十カ年のうちにどのくらい出してくれるかという政府の腹づもりをどうしても聞きたいということで、せっかくこれをつくった次第でございます。  そのほかに、財投といたしましても、たとえば利子補給につきまして七千数百億の出資を見込んでいる次第でございます。その他といたしまして、今回は、どういたしましても国鉄が健全な財政再建をはかりまして、国民の利用する大動脈としてやっていきたいという熱意で今日やった次第でございますので、いろいろ御審議中に御意見を承りまして、そうしてりっぱなものをつくってまいりたい。  実はこれにつきましては、すでに運輸委員会におきまして、国鉄はこのままではいかぬ。確かに四十四年度におきましてその再建案ができた次第でございますが、これが二年にしてつぶれた。その機会におきまして、運輸委員会におきましても、各党、このままでは国鉄はだめだぞという点につきましては御一致になりまして、小委員会までつくっていただきまして検討していただいた次第でございます。これが運賃値上げでやれという意見ではございませんが、ともかくもこのままではいかぬということでおやりになっていただいた次第でございますが、私どもは、今度は政府もいよいよ腹をきめて、ほんとうに国鉄再建のために、日本のわれわれの国民の足の動脈である国鉄をどうかしなければいかぬ、そして良質サービスをしなければいかぬというような観点から、相当思い切って私は出したものと思っている次第でございまして、このことを御了解を願いたい、こう思う次第でございます。
  61. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もう時間がありませんから、私のほうで調べた範囲内で意見だけ申し上げておきたいと思うのです。  国鉄再建について与野党一致した、こう言われたんですが、私たちは何も旅客のほうの国民の負担でということじゃなかったですよ。その点、私ははっきりしておいてもらいたいと思う。  そしてあの三方一両損というのは、ここで落語の話じゃありませんけれども、大岡さばきで、八さんと熊さんの、三両落ちておった、おれはもらわぬという意見で、大岡がこれを、おれが預かりおく、そして八さんと熊さんに二両ずつ渡した。三両捨てたやつは一両損、ほんとうに拾った人は、三両もうけるはずだったけれども一両損、大岡のほうは、これはおれが預かりおくで三両預かりおいたけれども、一両出したから実質的には三方一両損なんだ。これは落語の話ですがね。今度のこの計画案は落語の落ちにもならない。そうでしょう。政府の利子その他の援助、そういったものを一切含めて十年間で二兆一千億。それと運賃値上げが、先ほど言われたように六兆七千億。国鉄の合理化によるあれが二兆四千億近く。そうすると、実際に三方一両損どころか、値上げ分、国民全体が負担をする額のほうが異常に大きい。しかも大臣が言われたように、国鉄は公共企業だ、公益事業だ、国民の足だ、こういうふうに言っておられるけれども国民の足であり、それほど大切なのに、国民が大半を負担をする、これでは私はやっぱり問題は解決しないと思うのです。  だからこの際、私は意見だけを申し上げると言って申し上げたのです、もう時間がないから。私は大臣に、この問題については再度慎重に御討議いただきたい。しかも、かりに今後このことが議論されるとすれば、国民は一回だけ値上げ議論するのじゃないですからね。四回の値上げをするということの前提に立つわけですから、この点、私は非常に重大な問題だと思うのです。そういう点は、ぜひ私は国鉄の運賃改定について、この十カ年計画について再検討をいただきたいということで、要望だけ申し上げて、意見を申し上げておきたいと思うのです。
  62. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 貴重な御意見を承った次第でございます。私もちょっと言い落としがございましたので……。  実はこれは出資金だけでございますが、政府の財政投融資の点で相当大幅な投融資、しかも金利につきましては四分五厘という低額でするということで、ことしもすでに五千八十八億を見込んでいるところでございます。これが大体におきまして、十カ年で七兆に及ぶという工事費でございますので、それだけの良質のサービスをしたい。  それからこれは国鉄の財政ではございませんが、やはり国鉄の良質サービスの一環といたしまして、鉄建公団をいたしまして、これは、あるいは上越新幹線、あるいは青函トンネル、その他、武蔵野線とか都市線、あるいはまた地方線等に相当の政府出資を見ておる次第でございまして、これらを合わせてまいりますると、非常に高額にのぼってくると思う次第でございます。  また一方その点につきましては、私ども先般の四十四年の計画がもろくも破れまして申しわけなかった次第でございますが、人件費の伸びの見込みが非常に違った次第でございまして、その点をわずか九%に見た次第でございますが、あるいは一四%、あるいは一三・五%、こういうふうなことでございまして、それから破綻をした次第でございますので、今度は新経済社会発展計画に伴います基準人件費の伸びを見ておる次第でございまして、そういう点からも、今回のは、いろいろの御審議の過程で私からも申し上げる次第でございますが、ひとつ御了解を願いたい、こう思う次第でございます。
  63. 松浦利尚

    松浦(利)委員 やっぱりいま言われたことでも納得できません。国民は納得できないと思うのですね。しかしそのことは、もう時間がありませんから、さらに詰めた議論は控えさしていただきたいと思います。  最後に、たいへんこれは通産大臣に申しわけなかったのですが、公取の委員長、それから経企庁長官に管理価格の問題について明確にしておきたいと思うのです。  一緒に質問いたしますからお答えをいただきたいと思うのですが、第六十五通常国会で、わが党の成田委員長が本会議で独占価格監視委員会の設置について質問いたしましたところが、総理は、特別な機構を設置せず、公正取引委員会による独禁法の厳重な運用によって規制することが可能である、こういうふうに言われたのですが、公取の委員長として、管理価格、こういったものについて現在の独禁法というもののワクで取り締まることが可能なのかどうか、そのことを公取委員長から答弁をしていただきたいというふうに思います。  それから通産大臣には、この際御意見を承っておきたいのです。たくさん質問があったのですが、もう時間がありませんから一つだけ質問しておくのですが、日本の場合、管理価格というのは私は野放しだと思うのです。御承知のように、管理価格という問題についての定義すら非常に不明確なんです。管理利潤とかあるいはその他いろいろな表現を使われておりますけれども、いずれにしても国民が非常に不安に思うのは、だんだんだんだん企業が寡占化していきまして、当然価格競争が起こるべきところに起こってこない。下方硬直性が出てきておる。あるいはビール等に見られるように、プライスリーダーが働いて、明らかにやみカルテルが作用したというふうに思うけれども、実際には捕捉できない、こういった状態が非常に疑問として国民の中にあるのです。ですから通産大臣お尋ねをしたいのは、管理価格というものについて、あるいは管理価格というものについて通産省のほうにまだ定義がないとすれば、管理価格的なもの、協調的寡占価格とでもいいますか、こういったものについて何らかの規制をするというお考え方があるかどうか。これが通産大臣に対する質問であります。  それから経企庁長官お尋ねをするのは、実は御承知のように、公取のほうで、いままでかつてなかった不況カルテル、中間製品に不況カルテルを認めて、そして実質的にはいま認めて進行しておるわけでありますが、その不況カルテルを結んでおる鉄自体が、最近トン当たりの最終製品を二千円から五千円上げるという動きが出てきておる。こういうあり方については、経済行為として正しい経済流通であるというふうに物価担当大臣としてお考えになるかどうか。その点を経済企画庁長官お尋ねをし、それぞれの大臣の皆さま方にたいへんおそくまでお待たせしましたが、最後に御答弁いただきたいと思うわけであります。
  64. 田中角榮

    田中国務大臣 管理価格の定義そのものがまだ不確かであるということでございますけれども、そのとおりでございます。しかし、俗に管理価格といわれておるものがあるわけでございますから、これらが消費者の利益を守られるように、十分通産省としては配慮しなければならないことは言うを待ちません。そういう意味で、独禁法官庁であるところの公取とも十分連絡をとりながら、可能な限り最大の努力をいたしておるわけでございます。公取も昨年までは任意で調査をすると言っておりましたが、昨年の九月から独禁法第四十条の規定に基づきまして調査をするということで、この体制もできましたので、書類や調査資料の提出を求めて調査をいたしておるわけでございます。いま公取としては、合成洗剤、アルミニウム地金、それから写真フィルム、ビール、化学調味料、ピアノの六業種について一応の調査が終わりました。またさらに四業種を追加をいたしまして調査をいたしておるわけでございます。通産省としても、申し上げましたとおり、公取と十分連絡をとりながら、いやしくも寡占業種で消費者の不利益になるような行為が行なわれないように、十分な調査をし配慮をしてまいるつもりでございます。
  65. 木村俊夫

    木村国務大臣 当然、不況カルテルというものは、平均生産費を下回ってたいへん均衡を害したような需給状況のもとにおいて緊急避難的に認められるものですから、したがって、これがある程度回復したときには、当然これは解除さるべきものだと思います。したがいまして、これがある程度以上に下落した際にある程度の値段が回復することは、これはやむを得ない場合がありますが、それが物価影響を及ぼす程度値上げをすることについては、これは不当である、こういう考えを持っております。
  66. 谷村裕

    ○谷村政府委員 公正取引委員会といたしましては、独禁法に違反するような、そういう行為によって何らかの寡占価格というようなものが形成されておるような場合には、それに対する処置を、証拠をもって明らかにしていたしますけれども、さっきおっしゃいましたような意味での、市場メカニズムそのものが十分に働かなくなって自然にそうなってしまったようなものについて、私どもがなし得ることは限界があるというふうに申し上げなければならないと思います。  それからあと、私には直接不況カルテル価格の問題の御質問はございませんでしたので、この話はまた別にいたしたいと思います。
  67. 松浦利尚

    松浦(利)委員 最後に通産大臣一つだけ、野党三党が先般の国会で出した寡占価格規制法案が継続審議になっておるわけであります。これは現在の独禁法を補完する意味で野党三党として国会で御審議いただいておる内容のものでありますが、こういった独禁法を補完する意味で出しておる野党三党の継続審議になっておる法案について御検討なさったことがあるかどうか。あったとすれば、こういったものについて措置するというお気持ちがあるかどうか、調査が終わった段階で。その点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  68. 田中角榮

    田中国務大臣 通産省は生産を担当する省ではございますが、必然的な責務として、生産をされる商品が国民に低廉良質に供給されるようにあらゆる配慮を払わなければならぬことは当然でございます。しかし私は、やはり法制のたてまえから言うと、通産省が行なうというよりも、それぞれの主要任務を持つものは公正取引委員会であり、独禁法でございますので、私はやはり、法律をつくるとすれば、独禁法の改正法案とか独禁法の付随法案というようなもので考えられるべきものではないかというふうに、基本的には考えております。  しかし、この問題、物価問題、非常に重要な問題でありますから、どうすれば一番実効があがるのか。法律だけ一ぱいつくっても官吏がふえるだけでございまして、さっぱり物価が下がらないようでは困るのです。日本は少し法律が多過ぎるので、少し自由裁量権を持って行政権を発動するほうがよりメリットがあるんじゃないかという議論もあります。われわれ自身でも、所管法律全条は読んでおりませんし、法律をつくることがいいのか、いまの法律を拡大していくのがいいのか、もっと他に行政的な機構が必要なのか、そういう問題に対しては、もうすでに議員立法として提案をされておるのでございますから、引き続いて検討してまいりたいと思います。
  69. 松浦利尚

    松浦(利)委員 不況カルテルの問題等については、またほかの委員会議論をさせていただくということで、私の質問はこれで終わります。
  70. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて松浦君の質疑は終了いたしました。  次に、合沢栄君。
  71. 合沢栄

    合沢委員 米は過剰だということで、四十六年度から本格的な生産調整に入ったわけでございますが、そのやさき、異常気象が主たる原因ではございましょうが、単年度においても八十万トンも需給が不足するというような現象が起こっております。さらに四十七年度は二百十五万トンの生産調整をするということでございますが、昨年のこの需給の不足というか、このことは単に気象条件だけではないと思う。その中にはやはり、米価の四十三年以来の連続の据え置きだとか、あるいはまた食管のなしくずしだというようなことに対する生産者の生産意欲の減退、さらにまた生産調整もそうですが、良質米に転化するということによるところの反当たり収量の不足だとか、あるいはまた大きいのは農薬の使用規制といったようなこともあろうかと思う。   〔委員長退席、細田委員長代理着席〕  そこで私は、特に最近の生産者意欲の減退等から見て、ことしの米はまた単年度不足するようなことになるのじゃないかというような心配をするわけでございます。ひとり米だけではなくして、日本の食糧は、小麦だとか、あるいはまた大豆、あるいはえさ等といったようなものは、九〇%内外も輸入している。さらに最近では輸入圧力が非常に強い。そこでどんどん食糧が海外から輸入されているというような状態にございまして、日本の国民の食糧をどうするのかということは、これは非常に重要な問題になってきているというように考えるわけでございます。  去る十一日には、佐藤総理は物価問題の連合審査会で、海に囲まれておるわが国の食糧自給はきわめて重要である、農業は国本であるというようなことを強調されておりますが、佐藤総理の八年に及ぶ長い在任中に、農業の衰微の傾向は顕著になっている。そして国民食糧の自給率は、年々低下しているというのが現状じゃないかというように考えるのです。特に三十年の後には地球上の人類は倍増されるということがいわれておりますし、またわが国でも、三十年先には一億四千万人近い人口になるであろうということも予想されておる。そこで、国民食糧を確保することは非常に重要な問題ではないかというように思うわけでございます。  近年、しかし農産物の輸入というのは非常にふえておりまして、四十年度には十九億四千万ドルというような農産物が輸入されております。四十五年には三十二億四千八百万ドル、そして昨年はおそらく四十億ドル近い輸入ではなかろうかというように考えられるわけでございます。この四十年の十九億四千万ドルが四十六年には四十億ドル、約二倍というような増加になっておる。そして今後もなお増加を続けるというような現状にあろうかと思うわけでございます。  そういったような中で、自然条件に恵まれていないところのわが国の農業というものは、アメリカ等の先進農業国との貿易の自由化がされるならば一たまりもないというように考えるわけでございまして、農家は現在、なしくずしの貿易の自由化ということについて非常に不安を持っている、動揺している、希望を失って農業の生産意欲も非常に減退してきているというような優うべき状態にあるというように考えるわけでございます。何といっても、しかし、国民の嗜好に応じたような良質の食糧を国際価格に近く国内で自給する、この政策を明確にすることが今日最も大事じゃないかというように私考えるわけでございまして、そういったことからして、本日は、主として食糧の輸入問題、これをはじめとするところの農政の基本問題について質問をしたいというように考えるわけでございます。  まず第一に、通産大臣忙しいようですから先に御質問したいと思うわけでございますが、従来、財界等においては、食糧等は、これはもう日本は条件が悪いんだから海外から買ったらいいんだという、国際分業的な意見が財界にも非常に強かったと思うのでございます。また最近では、通産省は、これは財界の意向を受けたのか、あるいはまた国際的ないろんな情勢もございましょうが、残された農産物の貿易制限、これを何とかして自由化していこうというような方針農林省に強く働きかけているというように考えるわけでございます。またそういうことが新聞でも論じられ、報じられているということでございますが、通産大臣はこの問題についてどのようにお考えになっておるか。国際分業論を肯定するのか、あるいは残された二十四品目の農産物、これを撤廃すべきだというようにお考えになっておるのか、この点をお聞きしたい。
  72. 田中角榮

    田中国務大臣 国際的に見ますと、ケネディラウンドの推進によって一次産品の自由化が強く求められておるわけでございます。また日本は、申すまでもなく、ほとんどの原材料を海外から輸入しなければならない国でございますので、原材料の輸入に外貨を使わなければならない日本は、ケネディラウンドの推進によって一次産品の輸入の自由化をはからなければならないという基本的な立場にはございますけれども国民生活で消費をしてしまうような食糧というものに外貨をさくというやり方よりも、自給自足が原則であることはもう申すまでもないことでございます。  そういう意味で、一方においては国際的な圧力として一次産品の輸入の自由化、すなわち東西問題の焦点はこれ一つでございますから、そういう大きな圧力を受けながらも、日本としては、農をもって立国の大本となした日本でございますし、また外貨の乏しいというのが明治からの長い歴史でございまして、百六十五億ドル弱の外貨を持ったというのは初めてのことでございますから、このような臨時の状態で、農産物をすべて輸入するほうがいいんだというように基本的な政策を変更する理由はないと思います。  ただ一つございますのは、国際分業ということで、特に非常に大きな飼料等の輸入がございます。こういうものに転化できるかどうかという問題もございますが、しかし、国際的に貨物を流動せしめ得るものについては、できるだけ分業を進めていこうという考え方もあることは事実でございます。  それで、なお申し上げなければならぬのは、もう一つは、国際価格と国産価格との間には相当な開きがございます。米などは、これは入れるわけにまいりませんが、米にすればちょうど倍の価格でございます。また酪農製品も大体そんな価格でございます。そういう意味で、良質低廉なものを消費したいという国民的要請もありますので、そういうものを調整をしながらいかなければならぬというのが通産省の考えでございます。しかし、あくまでも国民生活で消費をする一次産品は、できる限り自国でまかなうという明治から百年の考え方に対しては、これを是認し、その上で調整可能なものについては調整していくという考えでございます。
  73. 合沢栄

    合沢委員 この二月二十一日の日経には、「通産省は今後の通商政策を進めるうえで、食料品など一次産品の輸入拡大が重要との判断から、農林省をはじめ関係各省に働きかけ政府部内の意思統一を図る一方、通産省独自の一次産品輸入促進策を練る意向を固めた。」といったようなことが書いてございます。そして「その方向は、関税の引き下げ、輸入ワクの拡大、残存輸入制限品目の自由化」といったようなことで、従来の原材料中心、消費者不在の輸入政策を転換するというようなことが書いてあるわけなんですが、そういった報じられていることではないということですか。
  74. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから申し述べておりますとおり、外国からの外圧は非常に多いわけでございます。自由国家群の第二の国民総生産をあげるようになり、しかも年率平均五%から一〇%の成長を続け、完全雇用であり、しかも百六十億ドル余の外貨を持ちながらなぜ自由化をしないのだという声が国際会議においては非常に強いのでございます。強いから、少なくとも日本の国民生活上困っておるようなものは、やはり輸入のワクも広げたり関税の引き下げを行なったりしなければならないということでございまして、牛肉、オレンジ、果汁、カズノコ、パイナップルかん詰め、それから肉の調製品、コンニャク、皮革、はきもの、バターその他というような割り当て数量の増加が必要だといって要求されているものがあります。ありますが、これをそのまま認めておるわけではありません。外国からの圧力にも耐えながら、しかも相当国際的な一員として前向きの姿勢も出しながら、しかし実情は日本の業者が困るような状態では困るのです。そういう意味で、牛の五千頭を入れたりオレンジを入れるときでも、サンクレメンテ会談で私はこう言ったのです。アメリカの一次産業比率は四・四%だ、日本は一七・四%もあるんだから、四%が一七・四%の数の多い日本になぜ一次産品を売り込むのだ、そういう話はやはり両国で調整をしなければならない、こういうことを述べたら、できるだけ早く日本も、四%のアメリカが一次産品が余ってしようがない、それでも日本の半分だというように構造改善をしてください、こういう話し合いをしたわけでありまして、外圧に対してはやはりそれにこたえるような姿勢が必要でございます。しかも、あくまでも日本の国内情勢を十分把握して、これに対応しながら輸入政策を進める。これはもうやむを得ないことだと思います。
  75. 合沢栄

    合沢委員 外圧に耐えながら徐々に自由化をやっていくということですが、そういったなしくずしでやっていくということが一番問題じゃなかろうか。そこで、徐々に国民食糧は海外に依存するというようなことになるということは、国民にとってもたいへんな問題であろうし、あるいはまた農家も、やはり常に、やらない、やらないと言いながら、いつの間にか急に果実を自由化する。特にグレープフルーツの例もございますし、非常に不安を持っている。そういった中では、私はこれはほんとうに農家も意欲を持って取り組めないだろうと思うのです。もっとはっきりした、こういった品物はやむを縄ない、こういったものは絶対しない。さっき米だけはしないとか言っておりますが、その他の品目についても、もっとはっきりした態度を示すべきじゃないか。特に、よその国の残存輸入制限品目を見てみますと、北欧のデンマークなんて六十二品目、オーストリア三十五、ノルウェー五十四というような制限品目が残っておりますし、フランスも三十九残っている。西ドイツとか英国は十九残っている、イタリアは十二だといったようなことで、わが国もこの四月からは二十四品目になるということで、そう大きなこういった国との差もないように思うのです。そういった面で、私はもっとはっきりした姿勢を示すべきじゃないか。どうも新聞等で報じられているのは、全品目自由化の方向でやる、あるいは関税を下げていくというようなことが感ぜられるわけなんです。国民は、特に農業をやる連中は、そういう新聞を見て、これはもうだめだ、どうにもならないというようなことで意欲を喪失してしまうという結果になるし、このことがますます国民食糧は不足していくという結果になるわけなんです。そういう点で私は、やはり外国も、アメリカこそ一品目しか輸入制限品目はございませんが、他の国はたくさんあるわけなんです。特にまたECの最近の状態等を見ても御承知のとおりでございますし、私はやはり、島国である日本が国民の食糧を自給する、そういった体制は非常に大事だろうと思うのです。いまではそれがどうもこわれていっている感じがしてならない。ほんとうにしっかりした態度を持ってこの問題の善処方を願いたいと思うわけでございます。  なお続けて御質問しますが、通産省は、ここ数年というか、四十年ぐらいから大体日本の貿易収支というものが黒字になりかけたというように考えるわけでございますが、ここで五、六年の間に日本の貿易収支が非常に改善された。そこで近年また通貨等の関係もあって、百六十五億というような外貨も保有するに至った。こういった状態がいつまで続くのか。このわが国の貿易収支というのが今後どんどんふえていくということは考えられない。特に貿易をどんどん伸ばしていくということは、やはりわが国が国際的にも批判を受けるという結果になろうし、孤立する原因にもなろうかと思う。やはり節度あるところの輸出貿易というものが非常に大事だと思う。それからすると、今日わが国は貿易収支は黒字になっておるが、これは不況の中で特に輸入が少ないということがこういった原因になっておると思うわけです。そこで、正常化された場合には、そのような大幅な黒字というのは考えられないのじゃなかろうかというように私は考えるわけでございます。通産大臣はここ四、五年先の貿易収支というか、そういったようなものをどのように判断されておるか、また、今後貿易収支はいかにあるべきだというように考えておるか、お考えをひとつお聞かせ願いたいと思う。
  76. 田中角榮

    田中国務大臣 貿易収支はだんだんと改善をしてまいったわけでございまして、戦後二十五年、ちょうど七〇年ごろから急激に改善してまいったわけであります。数字上から言いますと、四十年には二十億ドルであった手持ち外貨、これは最も低いときには十七億ドルぐらいに減ったと思いますが、それが四十六年、去年の一月には四十五億ドルでございます。それがもう八月には百二十億ドルをこしたわけでございます。そしてこの二月には百六十四億八千何百万ドルでございますが、百六十五億ドル、これは世界のドルの通貨の一〇%以上ということでございます。そういう事態はこれは全く特殊なものだ。しかもニクソン新政策があり、円平価の調整があり、そういう状態の中で手持ち外貨が西ドイツの百八十五億ドルに次いで百六十五億ドル、こういうことでございますから、アメリカは百三億ドルといって、もうアメリカの金保有高は百億ドルを割っておると報道されておるわけでございますので、こんなことが続くと、第一次大戦から第二次大戦の間のアメリカが世界の金保有高の七〇%も確保したということになるわけでございまして、そんなことにはもう絶対ならない、こう思います。  去年は異常な状態がございました。それは率直に申し上げると、公定歩合の引き下げとか、金利を考えますと、国際金利を上げるときは相当スピーディーに上げましたが、下げるときにはなかなか下がらない。いまは西ドイツは三%でございますし、こちらは下げたといっても四・七五%でございますから、一・七五%もまだ差がある。そういう意味で短資の流入はする。そういう意味で、どう考えてみても外貨がふえるような状態にあります。特に一〇・一%も見たところの経済成長率は実質四%台であるということになれば、輸出がふえ輸入が減るというのは、もう間違いないことでございます。  ですから、そういう意味で去年は全く異常な状態でこのような状態が起こったわけでありますが、国際的にはこれを言ってもなかなか理解しません。完全雇用、年率五%の成長がコンスタントに行なわれる、貿易収支は五十億ドルに近い黒字である、もうそれでなぜ自由化せぬのだ、こう常に言われるのでありますが、まあ国会でも申し上げておりますように、ことしは七・二%になりますので、ことしは輸出は減ります、輸入はふえます、貿易バランスはとれますと、こう国際的にも強調し、また、われわれもそうしなければ、円の再切り上げがあるかもしらぬなどという議論がもう世の中に横行しているのでございますから、そんな不安定な状態で日本の経済を順調に伸ばすわけにはまいりません。そういう意味で、これから五年間、十年間というのを見通すことは非常にむずかしいと思いますが、過去五年間、昭和四十二年から四十六年までで輸入実績を見ても一四%ぐらいであります。農産物とか食料品を入れると、五年間の平均は一二・五%というような状態でございます。そういう意味で一〇%ないし一五%ずつ伸びてきたのが、今度はやはり五年間平均にすると一〇%の維持というものは、円平価の切り上げをやっておりますから、ドル・ベースで考えると一〇%以上になると思いますが、円ベースにやったときにはなかなかそんなに伸びるものではない。貿易収支のバランスと総合収支のバランスを考えると、やはり昭和四十四、五年ぐらいの状態ということができればもう最高であって、それには相当まだ低開発国に対する援助とかいろいろなことをやっていかないと、そういうコンスタントな貿易収支の拡大ということは考えられないのじゃないか、こう思います。ただ一つだけ考えるのは、国内の民間の設備投資が促進されませんけれども、社会資本の拡充ということと、もう一つは社会保障の拡充等、そういう新しい部面に対して積極的な投資が計画的に今度進められなければならない、そういう意味で、貿易にどう寄与するかということがこれからのポイントだと思います。
  77. 合沢栄

    合沢委員 通産大臣、時間の制限があって質問しておりますので、要点だけひとつ御答弁願いたいと思うのですが、いまの御答弁によりますと、今後四十五年度ベースというような話がございました。どうでしょうか、そうした場合に、四十五年度の輸入農産物というのは、最終的な大蔵省の統計をとりませんが、大体四十億ドル程度と推定されるわけでございますが、ここ四、五年先の農産物等の輸入はどの程度になるとお考えになりますか。
  78. 田中角榮

    田中国務大臣 総輸入を申し上げますと、四十二年から四十六年までに一四%平均伸びておりますが、そのうち食料品に占めるものは一二・八%でございます。四十億ドルという数字がどこから出たかちょっとわかりませんが、食料品、四十五年度は百八十八億八千百万ドルの中で二十五億七千四百万ドルでございます。四十六年度は二十九億一千六百万ドル、これが食料品輸入でございます。これは総輸入額が一〇%ずつふえていけば、そのふえた分に対する一二・八%、一三%程度のものはふえていくわけでありますから、金額的には二十九億一千六百万ドルが三十三億ドルになるかもしれません。しかし、それは総輸入額もふえていきます、総輸出額もふえていくというバランスの中でとられる数字である、こういうふうに考えなければならないと思います。
  79. 合沢栄

    合沢委員 農林省の統計で出している農産物輸入額というのは、四十五年度は三十二億四千七百万ドルという数字が出ておるわけなんです。飼料ももちろん入っています。私はそういった数字を申し上げておるわけでございます。それらを含めた場合には、四十六年度は四十億ドル近くなるということも申し上げたわけでございます。そこで、そういうふうに四十五年度年率、貿易がふえる中で、やはり同じような率でいくということになると、国の食糧の自給率というのはぐっと下がってくるということが考えられるわけでございますが、そうした場合に食糧の自給率というのはどうなるか、そういう点も検討されておりますか。
  80. 田中角榮

    田中国務大臣 これは食糧の自給率がどうなるかということ、いままで牛乳飲まなかった者、肉を食わなかった者、そういう肉の消費量とか酪農製品の消費量は非常に年々ふえておりますから、質が変わっていくということによって自給率——それも米などに見ますと、米が減って小麦がふえておるという問題がございます。ございますが、自給率の計算は農林省がきっとお答えをすると思いますが、私が考えるのはただ単なる自給率というのではなく、先進工業国、ソ連を除きまして十カ国、IMFのテンの国家といわれる十カ国を見ますと、拡大ECの一次産業比率が総人口に対して六%でございます。アメリカは四・四%であります。そうすると現在一七・四%の高い一次産業比率というものがそのまま維持できるとは考えません。明治初年には九〇%あったものが、百年間で一七・四%になったわけでありますから、これはやはり何年かということはさだかには申し上げられませんし、それに対応する施策というものが前提としていかなければなりませんし、また残る一次産業の構造改善等が十分進まなければできないことでございますが、やはり昭和六十年を展望しますと、どうしても拡大ECくらいの六%台、少なくともいまの一七・四%の一次産業比率の中で一〇%くらいは二次産業、三次産業に移動するのではないだろうか。総合農政をやっておれば当然そうなるわけでございますし、そういう意味で人は一〇%減っても、生産されるものは必ずしも減るとは思いません。数十万人あった炭労が三万人になっても三千万トンの同じ炭量を掘っておるのでありますから、私はそういう意味でコンベアー化、オートメーション化、いろいろな構造改善、全部やっていくために、量そのものが減るとは思いませんが、しかし、人口比率は非常に減っていくということであることは、これはもう認めざるを得ない趨勢ではないかと思います。ですから、国民食糧がだんだんと質が変わってくるというところで、農政の転換とか農政の質的転換とかということで、今度の農林省の中の機構もいままであったものをやめて、新しくやらなければならない機構をつくるというふうに変わっていくのであって、必ずしも自給率そのものという過去の統計上の数字が当てはまるものではないような気がいたします。しかし、農林省の問題に対しては、これは農林省がうんといわなければ自由化なんかはできませんし、私たちもやりませんから、これは食糧とか一次産品に対する計算は農林省がやっておりますので、農林大臣から答えていただきます。
  81. 合沢栄

    合沢委員 その問題は後ほど農林大臣にお聞きしますが、次に大蔵大臣にお聞きしたいのです。食糧の輸入が恒常的にふえていくということは、食糧が最終消費財であることから、これは将来国の経済にとって非常に大きな問題だというように私は考えるのですが、特に外貨という問題で非常に大きな問題が起こってくるのではないかというように考えます。貿易が正常化された場合には、そんなに多くの年々ふえていくところの食糧輸入というものを持ち得るかどうか。特に国際経済が急変する、そして輸出が順調にいかないというふうなこともあり得るわけでありますが、そういうときには直ちに国民経済の発展に大きな支障になるというようにも考える。そういった面で大蔵省としては食糧の輸入という問題を、外貨の面から、あるいはまた国民経済の健全なる長期的な発展というような面から、どのようにお考えになっているか、お聞きしたいと思う。
  82. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国民経済の効率化ということと国民生活の安定という見地から、やはり農産物を含んだ経済の自由化、一般の自由化というものは、これはしなければならぬという趨勢にあることは認めますが、しかし、御承知のように、もう農産物というものは自由化には最も慎重を要するものでございまして、したがって、いままで自由化はずいぶん日本としても進めてまいりましたが、農産物の自由化ということは、国内で別個のいろんな助成策をとることによってある程度踏み切れるものというものは踏み切りますし、自由化ができないが、しかし、国民の需要に応じて輸入ワクはある程度ふやしてもやむを得ないというものはふやす。しかし、もう絶対に国内産業の擁護という方向から見て自由化ができないというものはできない。けっこう日本の農業の自由化は、私はぎりぎりの線に来ているような気がいたします。さっき御指摘になりましたように、欧州各国の残存品目を見ましても、日本は決して多いほうじゃないというところまで来ておりますので、今後の自由化の問題となりますと、もう国民経済の効率化という点からしか考えられない。もし一定の農産物をどこまでも擁護するというためにいろいろな助成策を講ずるという、その国民の経済の犠牲、それだけの犠牲を払うのなら、こちらの農産物の種類を徹底的に応援することのほうがなお国民の需要には合致するというようなものは、これはやはり国際的な趨勢に従って転換することは必要であるというふうに考えますが、しかし、国民経済の効率という点からいいますと、国民の需要が変わって、国民の需要がふえて必要なだけの輸入というものは、当然これは国民生活の安定上確保しなければなりませんが、外貨があるからといって無理な自由化の促進というようなことは、農産物に関しては私はもうけっこう限界に来ているというような気がいたしております。
  83. 合沢栄

    合沢委員 最近経済企画庁が発表した中に、二十八品目を全部自由化した場合には物価は二%下がるんだというようなことを発表していると思うのです。経済企画庁はどういう目的でもってそのようなことを発表したのか、その真意をお聞きしたい。
  84. 木村俊夫

    木村国務大臣 いまの資料は発表したものではございません。経済企画庁におきましては、いろいろ仮定条件のもとに計量作業を行なっております。その中の一つの資料がお耳に達したと思います。したがって、公式に試算したものでもございませんし、また、二十八品目を全部自由化するというような前提条件は何ら持ち合わせておりません。
  85. 合沢栄

    合沢委員 二十八品を自由化した場合には二%下がるというような試算がどういう目的でされたのか、その真意をお聞きしたわけなんです。と同時に、二十八品目を全部自由化した場合に二%下がるという試算の中では、一体輸入量を、二十八品目の輸入金額、それをどの辺に見ているか、その辺もお聞きしたいと思います。
  86. 木村俊夫

    木村国務大臣 その計算の基礎は事務当局からお答えいたしますが、要するに、一つの仮定の作業としまして、割り高な国産品が割り安な外国品と同じ価格水準に下がった場合にはどの程度物価に対して影響があるかというので、二%というものを仮定的に出したのであろうと思います。その算定の作業は内部的な計算でございますので、事務当局から御説明いたします。
  87. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 ただいま大臣からお話がございましたように、この資料は部内で単なる検討資料としての計算が行なわれただけのものでございますが、要するに、現在残存制限輸入品目として残っておりますものにつきまして、かりにこれが自由化され、そうして輸入価格と同じように国内価格もかりに下がった場合、そういった場合にどの程度消費者物価影響するだろうかということを連関表を使って計算した単なる計算の資料でございます。したがいまして、まずその輸入品と同じだけ国内価格が下がるかどうか、これはもう御承知のように、農産物等については全部価格支持制度があるわけでございますから、そういった形のことには実際問題としてなるわけではございません。そういうことで、単なる計算の数字でございますが、一応輸入品に関連したものの国内消費におけるウェートはどのぐらいか、それがかりに動いた場合に物価ではどのくらいの影響があるだろうか、こういった目安をつけるための試算である、こういうふうにひとつ御理解願いたいと思います。
  88. 合沢栄

    合沢委員 その際幾ら輸入金額を見込んでいるか、それがわかりましたら……。
  89. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 ちょっとその計算のやり方を申し上げておきますと、先ほど申しましたように、輸入品の価格の下落の数字が出ておりまして、それに合わすように国内品の価格も下がる、こう見まして、国内、輸入を合わせて当該物資のCPIにおけるウエートを出して、そして合成をしている、こういうやり方をしておりますので、この関係の輸入品の金額が幾らになるかという数字は、この計算上ちょっと出しておらないわけでございます。
  90. 合沢栄

    合沢委員 経済企画庁は、特に一番問題な物価がなかなか上がるということでいろいろ物価対策をすることが必要ですが、しかし、この食糧の問題について安易に物価対策として輸入するということは、これは日本の食糧を駆逐するというか、全滅させる結果になってくるわけなんで、かえって私は危険だというように常に考えているものでございます。そういう点で、このように軽々しく二%下がるのだというような試算をして、そして何でも、一般の国民に発表してないというものの、物価が高いのはやはり輸入が、特にこの国民食糧に関する輸入が少ないからだというような印象を与えることは危険ではないかと思う。やはり大事なことは国内で自給するということ、しかもその自給するものが良質でしかも国際価格に近くなっていくという政策こそ、そういった政策を急速に行なうことこそ最も大事ではないか、これが消費者のためだというように考える。そういう点で、特に私はこういう試算をするような場合には慎重であってほしいということを要望したいと思うわけでございます。  それから次に、私は農林大臣にお聞きしたいのでございますが、中国との貿易でございます。近年中国との国交正常化、これはもう歴史の必然でしょうし、ごく近い将来には国交正常化が行なわれなければならぬというように考えます。しかし、その際一番問題になるのは、やはり中国の農産物との貿易の問題ではないかというように考えられます。特に中国のここ数年の輸出の内容を見てみますと、ほとんどというか、五〇%近いものは農産物になっているということでございますし、さらに最近の数字によりますと、一九七〇年の中国の食糧生産は二億四千万トンを超過した。それから同年における中国の食糧備蓄量は四千万トンとなった。中国は毎年数百万トンの食糧を北ベトナム及びその他の国に援助するということになるであろう。さらに、一九七〇年の中国の化学肥料の生産量は千四百万トンである。あるいは一九七〇年の中国の綿布の生産量は八十五億メートルであるといったようなことを、一九七一年の二月、周総理がこういったことを言われているようでございます。そこで、中国の農業が安定的な生産というか、非常に飛躍的に伸びてきているということも考えられるわけでございますし、日本は従来はアメリカを中心にしての農産物の輸入圧力ということでございますが、さらに近い将来には、中国の国交正常化に伴うところの中国からの農産物の貿易の圧力というようなことが懸念されると思うのです。  そういうことでございますが、一体中国との今後の貿易というか、そういった問題について農林大臣はどのようにお考えになっておられるか、お聞きしたいと思います。
  91. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 中国との関係は、いまお話しのとおりでございます。中国からの輸入の過半数は農産物でございます。それから中国の国内情勢を見ましても、どういうところでもそうですが、革命のあととかなんとかでは重工業を進める前に農業のほうの生産を進める、こういうのは世界的な現象だと思います。そういう関係で、中国において農産物の生産も相当ふえている。日本としてこの中国との農産物の貿易は、見通しはますますふえていくと思います。  それで、中国に対してどういうような考え方を持っているかというと、いまのお話のように、農産物ばかりじゃありませんが、日本の輸入先というものを一国だけとか一方だけにきめておくのはいけないので、やはり私は多元化することが必要だと思います。そういう意味におきまして、中国から多元化して輸入すべきものも相当あると思います、ほかと変えて。それからまた輸入が相当ふえると思いますから、国交正常化の過程あるいは正常化によりまして、よく中国とこの調整をして、よく協議して、日本の国内の農業に支障のないような調整をよくしながら中国との農産物の貿易は進めていく、こういうことにしたいと思ってます。
  92. 合沢栄

    合沢委員 現在えさの、濃厚飼料等の輸入はおそらく千五、六百万トンにものぼったんじゃないかと思うのでございますが、そのうちの七〇%以上のものはアメリカから入っているというように考えられるのでございます。しかも中国等からのそういった飼料輸入はきわめて少ない。この畜産についての大きな問題は、濃厚飼料等が一元的な輸入になっているところに問題がある。特に遠いアメリカからの輸入によって、港湾ストだとか船舶事情だとか、あるいはまた一元的になりますと向こうの豊凶によってえさが上がったり下がったりするというようなことになって、日本の安定的な畜産の振興を妨げる。いわゆる多元的な飼料の輸入ということは非常に大事じゃないか。そこで中国との貿易の問題についてまず考えるべきものは、飼料あたりを、アメリカからの一元的な輸入になっている飼料を、中国との国交回復を待たずして早くそういった方向に切りかえるべきじゃないかというように考えますが、この点どうですか。
  93. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お話しのとおりの方向に行きたいと思うのですが、全面的にいま変える、こういうのはなかなかやはり実際上できませんから、飼料などは逐次そういうふうに持っていったらいいじゃないか。  それから、話がありませんでしたが、大豆なんかもそういう方向にだんだん持っていって多元化して、中国との関係をそういう貿易なんかで広げていく、こういうことが必要じゃないかと私は考えます。
  94. 合沢栄

    合沢委員 過般の牛場・エバリー会談で、貿易戦争は四十七年度は休戦、そして四十八年度からいよいよ本格的な自由化の問題が論議されるというように思うのでございますが、この四月十日前後にガットのロング事務局長が来られる、そして関税の一括引き下げを目的に新国際ラウンドの推進について話し合いが行なわれるということのようでございますが、特にこの農産物がその際一番問題になるということは必至でございますが、これらに対して農林大臣はどのようにお考えになっておられるか、お聞きしたいと思うのです。
  95. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ガットのロング事務局長は、御承知のように少し前に日本に来たことがございます。新聞等に、今度日本を訪問するということで、農産物あるいはその他の自由化の問題等に協議があるのじゃないかというような報道がございますけれども、ロング事務局長の来日は新聞社の主催する国際シンポジウムの講師として訪日する、こういう予定だと聞いております。しかし、来られた場合にはやはり私のほうへ訪問をされると思います。そういうときにいろいろ話が出るかと思いますが、この前もロング事務局長と話したんですが、その後もガットにおいて国際貿易交渉等もあるようなことでございますが、農産物貿易は各国とも各種の保護措置が固められておりまして、工業品の貿易とは異なった要素が少なくないので、個々のかかえている事情等をよく話し合うということが必要であると思います。そういう意味におきまして、この前に来たときにもガット事務局長とよくそういうことを話したのでございます。ことにヨーロッパと共通している面も日本はございます、アメリカとはちょっと違いますが。そういう面なども考慮に入れて、よく日本の事情の理解を深めてもらおう、こう考えております。しかし、いま直接私のほうでそのことで話し合うというような連絡ではございません。
  96. 合沢栄

    合沢委員 三月二日の日経ですが、これに「赤城農相は二月に来日したECのマルファッチ委員長との会談で、「新国際ラウンドでは日本とECが協力して農産物の輸入自由化や関税引き下げに前向きの姿勢でのぞむ」ことを表明している」というような記事が載っているんです。この記事はいまの御発言とだいぶ内容が違うんですが、この記事は間違いでしょうか。
  97. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 その前向きや輸入の拡大というようなことで協調していこうということじゃございませんで、いろいろヨーロッパその他小さい国といいますか、大国と違って農業の生産については非常に共通している面がある。たとえばフランスですね、フランスなどはどっちかといえば小農的でございます。そういうようなところもありますので、そういうようなことで日本と共通している面、利害の面等をよく話し合おうということで、全面的に自由化や貿易拡大の点において同調した、話し合った、こういうわけではございません。記事が少しオーバーというか、ちょっと違っておるような感じがします。
  98. 合沢栄

    合沢委員 さらに私は、従来農林大臣は、農産物の自由化というのには、農林省としては大臣も先頭になって非常に反対しているというように思っているんですが、ただ、最近新聞等であらわれるのは、どうもそれがゆるんできたのじゃないか。特に最近の国際圧力といったようなことあるいは日本が外貨をうんと持ち過ぎているというような事情もございまして、どうも最近その態度が軟化してきたというように新聞紙上でうかがえるんです。特に同日の新聞にはこういうことを書いてあるんです。「農林省では(1)農産物の残存輸入制限品目を、原則として米(こめ)の生産調整実施期間の終わる昭和五十一年度末までに完全自由化する(2)当面、政府による不足払い制度、課徴金制度の採用など自由化対策を推進することとし、果汁(ジュース)、落花生、雑豆など比較的自由化実施の容易な品目は来年中にも自由化する(3)牛肉など、国内の農業政策上の理由から輸入自由化が困難な品目については、毎年輸入ワクを拡大しながら実質的な自由化を進める」、こういった記事が載っているんですが、この記事はほんとうですか。
  99. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 その記事は全く関知しておりませんし、私のほうの考えと全く違っております。五十二年までに自由化する品目だとかそういうものを省内でも検討していることはございません。むしろ二十八品目を、ことし四月に四品目自由化して、あとの二十四品目に対しては、基幹的な作物でございますから、これは自由化しないという方針はきめていて、そういう五十二年までに自由化のスケジュールをつくっているという研究も省内ではいたしておりません。でございますので、その記事は私ども関知しておることではございませんし、そういう検討というか研究もしておりません。逆の研究はしております。
  100. 合沢栄

    合沢委員 この記事は全く関知しない、そういうことはないということでございますので、従来どおり農林省の農産物輸入については反対であるというように確認しておきたいと思います。  それから、次に御質問申し上げたいのは食糧自給率の問題でございますが、四十四年度は七六%という総合自給率が出ております。しかし、四十五年には二千億、四十六年には約二千五百億、合わせて四千五百億の農産物の輸入があっているようでございます。その上、米の消費も減っているというような事情もあって、おそらく私は、四十六年には七六の自給率は七〇%を割るんじゃないかというように推定するわけでございます。  なお、この総合自給率は価格で出しておりますので、ほんとう言うとあまり大きな意味はないと思うのですが、カロリーで計算すると、ほんとうの自給率、特に飼料等の輸入が非常にふえてきているというような事情もあって、カロリーで計算すると国民食糧の国内自給率は四〇%を割るんだというようなことを言う学者あるいは評論家等もおるわけでございます。農林省は、そういった四十六年度の総合自給率の見通しあるいはカロリーで計算した場合には一体どうなるのか、そういった計算なり——これは非常にむずかしいと思うのですが、推定されておりますかどうか、お聞きしたいと思います。
  101. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 自給率の計算につきましては、見通しでございますが、御承知のようにこれは発表もしましたが、五十二年度の試算では大体七七・五%、こういう見通しを持っています。それを今度はカロリーで計算したらというようなことで、その計算の方法につきましてもいろいろ研究はしていますが、カロリーによる自給率につきましては、その算出することがはたして適当かどうか、これは専門家の間でもいろいろ意見が一致してない点もあります。算出方法等につきましてもいろいろ今後の技術的検討が必要であると承知しておりますので、農林省としてはカロリー計算で自給率を考える、いまのところそういう基礎をカロリーに置こうという気持ちではおりません。食糧の吸収率を、食べるときのカロリーで計算しても、自給率をカロリーで計算するということは非常に疑問があると思います。
  102. 合沢栄

    合沢委員 五十二年に七七・五%の総合自給率を目標にしているということですが、年々低下してきている。しかもさっき申し上げましたように年々輸入がふえているという中で、はたして——私、四十六年度もおそらく七〇%を割るんじゃなかろうかというように考えておるのでございますが、そういった中で五十二年の七七・五%の自給が保てるかどうか、その確信のほどを伺いたいと思う。
  103. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 自給率が減ってくる傾向にあるのは、御指摘のとおりでございます。  そこで五十二年に七七・五%の自給率が保てるかどうかということでございますが、御承知のように自給率が上がっているのもございます。でございますので、一つ見通しでございまするから、確実に必ずそこまでいくということを断言することはできませんが、それにいくように私どもは努力していく、こういうように考えております。   〔細田委員長代理退席、委員長着席〕
  104. 合沢栄

    合沢委員 まあ国民の人口が十五年か二十年先には一億二千万人にもなるというようにいわれている。三十年先には一億四千万人になるのじゃないかというようなこともいわれている。同時に、国民食糧はカロリーで計算すると現在二千四百カロリーぐらいだ、欧米等先進国では三千カロリーということで、順次日本の国民の所得の増大によってカロリーはどんどん上がっていく、人口もふえていくといったような中では、よほど農業施策を急速に近代化を進めていかないと、自給率の維持は困難だというように考えるのです。  そこでお聞きしたいのでございますが、この自給率を維持するためには一体どのようなことをされているのか。特に考えられるのは、今回農林省は農業団地というか、団地構想を非常に押し出してまいっておるわけでございますが、しかし、ただ団地構想だけでいいんだろうか。大事なことは作目ごとの自給目標、年次ごとの自給目標というものをはっきりきめて、そしてそれを地域分担をまたはっきりする。従来そういうものはガイドポストというような形でも出ておりますが、ガイドポストといったようなあいまいなものではだめだ、年次ごとの、品目別の自給目標と同時に、地域分担をはっきりきめる。そしてそういったものでもってこの自給の目標を計画的にやっていく、そういうことが明示されるべきじゃないかと思う。そういったことでなくては、ただ漫然と農業団地構想を打ち出してもぐあい悪いのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  105. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 団地構想は二つの面があると思います。先ほどからお話がありましたが、やはり日本は自由化自由化と迫られておりますが、国際的に日本の農産物も相当生産性が上がってコスト低下できるような形になるということが、これは消費者に対しても必要なことでございます。そういう意味で国際競争力をつけるという方向に行くのに、個人個人のいまの農家でなかなかやっていけないじゃないか。そこで団地的な経営のことで、一面においては一種、二種の兼業農家も入れていますから、こういうものも、専業農家ばかりではなく兼業農家も含めて、生産性を全体として上げて国際競争力を保てるようにしようということが一つのねらい。それからもう一つは、やはり国内の農産物の生産も、需要と供給とのバランスがとれなくちゃならぬ。米のようにバランスで供給がふえているものは、これはある程度減らしていくということもございますが、大体そのほかは、卵や何かでバランスがとれているものもございますが、そこでバランスをとる上において、やはり団地的な、共同的な、少し広い面積において団地的経営をしていると、バランスをとるところの需給の調整がとれる、そうして生産も上げられる、こういうねらいでございますのは御承知のとおりだと思います。そこで、自給率を増していくかというねらいは間接的になっていると思います。でございますが、御指摘の点もありまして、自給率というのは維持していくのが大事でございますから、前に、いまお話しの地域別の生産のガイドポストも四十五年ですか、つくりまして、それを下へだんだん各県から下げていっておりますが、これが団地構想と非常に関連が深いものでございまするから、これをだんだん固めていく。そしてガイドポストが、もっと強力なガイドポストといいますか、もっと力強いものに固めていって、それで自給率を維持していくという方向にも役立てるように進めていきたいと、こう思っています。
  106. 合沢栄

    合沢委員 私は、まず品目別の自給率をきめて、農政の基本というのは品目別の自給率、年次別自給目標というものをきめて、そうしてはっきりと地域分担をしていく、そういった中で、具体的にはおっしゃるように団地構想でもって進めていくということが最も大事じゃないか。まだ品目別のほんとうの年次別自給目標もない。あるいはまた、そういったものは地域分担もきまってないというようなことでは、さっきおっしゃった五十二年に七七・五%の自給を目標にするなんといっても、全くこれは画餅だというようにしか考えられないので、やはりこの際、団地構想と関連づけた品目別の年次自給目標と、さらに地域分担というものをかちっとしていくということが大事じゃないかというように考えるわけです。同時に、一つ問題があるのは、私は、団地の農業というものが国際化に対応するということが一つの大きなねらいだと思うのです。まことにけっこうだと思うのでございますが、そういったことで、団地構想並びにそれに伴う基盤整備等に、今年度は三千億を上回るような予算をつけられているということで、けっこうだと思うのでございますが、問題はこの補助比率、さらに補助金が残った個人負担、融資の問題、これが非常に問題だろうと思うのです。今後の農業は、やはり何といっても良質のものを国際的に安い価格で売れるというような農業を急速に進めねばならぬ。そのためには補助率のアップと同時に、残った個人負担について融資の問題が再検討さるべきでないか。もっと長い、長期のそして低利の資金というものを考えられなくてはだめじゃないか。特に農産物価格というものが、御承知のようにここ数年ほとんど上がっていない。平均して二、三%ぐらいしか農産物価格が上がっていないというような情勢にもあるわけでございますし、今後また農業の国際化という中においては、価格が上がるということは非常にむずかしい。その点やはり金融の問題、基盤整備等に対する金融の問題が再検討さるべきである。それでなくては、せっかくのこの団地構想も、国際化も停滞するというように考えられる。そういう点、この落ちている農林金融の問題を再検討する意思はないかどうか、お聞きしたいと思う。
  107. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は農業につきましても深く考えていることは、やはり自立更生といいますか、そういうものを基礎としなくちゃなかなかやっていけないと思います。しかし、農業そのものが他産業と比較して不利な立場にありますから、そこで国がこれを保護政策的なことをやっていまして、補助を出したりなんかしています。しかし本来は、これは金融で自立更生というか、立っていくような方向へだんだん向けていったほうがいいと思います。でございますが、農業そのものが不利でございますから、補助率、そういう点も相当変えて、よくするようにしなくちゃならぬと思いますが、いまお話しのように、金融面で、財政面で農業がほんとうに立っていくような力づけをしていくことは必要だと思います。そういう意味におきまして、農業金融政策につきましても、いま相当審議会等におきましても検討しておりますが、内部におきましてもいろいろ検討して御趣旨のお考えのような線に向けていきたいと、こう考えております。
  108. 合沢栄

    合沢委員 団地農業についてもう一つ大事なことは、私は価格の問題だと思うのです。せっかく団地をつくってやろうという以上は、やはりそれにほんとうに真剣に取り組む農家を育成しなければならぬと思うのですが、そのためにはやはり農産物価格の問題、団地農業については価格政策の面で守ってやるんだという施策が必要と思うのです。団地農業については価格政策の面で守ってやる、真剣にやれ、そういったことが必要と思いますが、この点どうですか。
  109. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そのとおりに考えます。団地も、これはたとえば野菜なんかも、野菜団地と指定団地がありますが、もっと団地化して強くしていこう、こういう考えでございまするから、その野菜などについても、価格政策を伴って団地構想を進めていくという考えを持っています。あるいは畜産などにおける団地につきましても、畜産物の価格問題というのは重要であります。でございますから、全体的に農業の生産物は価格支持政策をしていますが、価格政策というものは非常に大事だと思います。  それともう一つは、やはり何といっても生産性を上げていくというようなこと、二つの面から進めていかなくちゃいかぬと、こう思っています。
  110. 合沢栄

    合沢委員 もう一つ団地と関連をしますが、今度農林省では総合農業調査費に三千万円の予算が計上されておりますが、これは一体どういうことをなさるのか。特に私は考えるのですが、三十六年に農業基本法ができて、ところがこの十年間、農業基本法とは逆の方向に農業が進んでいるというように考えられる。特に自立農家なんというのが、これはもう農業基本法の大きな柱だと思うのですが、自立農家は八・五%ですか、というぐらいにほんとうに急激に減ってきているというような情勢もございますし、今後の農業の目玉というか中心になる団地農業についても、やはり一体だれがやるのかというようなことも不明確のようでございますが、そういうことで、農業調査費というのは、農業基本法の洗い直しというか、そういったようなことも考えられるのでございますが、それらと関連しての農業基本法を一体どう考えておるのかという問題、あわせてこの農業調査費三千万円についてお聞きしたいと思うのです。
  111. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 もう私から申し上げるまでもなく、合沢さん御承知のように、農業に対しましても、非常に変わりつつあります。変貌しておる。その変貌にやはり対処していかなくちゃならぬと思います、国際的にも国内的にも。非常に経済成長下における工業化の日本における国内農業、あるいは国際の自由化の方向へ行っているものに対処する日本の農業、こういう面につきましても相当真剣にこれらの農業の問題を考えていかなくちゃならぬ。それについて、農業基本法がそのとおりにいっているかどうかといえば、必ずしもそのとおりにはいってません。たとえば自立経営農家を育成しようと、こういうことでやっている面は、農地の価格が上がっているとか、その他の点におきまして工業化しているとかという面ではかばかしくない。御承知のように八五%程度は兼業農家、しかし農業基本法に別に協業というものをすすめていないわけではございません。でございますので、私はそういう面におきましては協業の方面、いろいろな形態はありますが、そういう方面もよほど考えて進めていかなくてはならぬと考えております。ですから、農業基本法を全面的に改正するとかなんとかということはいま考えておりませんけれども、農業基本法で、重点的といいますか、力を入れる面などはいろいろあると思います。そういう面は十分検討して、現在の状況に対応して農業が持っていけるような形のほうへ進めていくように努力しなければならぬ、こう思っておる次第でございます。
  112. 合沢栄

    合沢委員 三千万円の調査費の目的を……。
  113. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いまのような農業事情でございますから、洗い直しということもありませんが、これから農業の進むべき道を真剣に検討させる。ことに農業団地などを進めていくということになれば、農協の協力も得なければなりませんし、また農民もそういうふうな方向へ協力してもらわなければなりませんから、そういう検討の上、新しい方向といいますか、あるいはいままでのことで力を入れなくてはならぬ方向へ協力してもらう検討をし、これは国民運動的な面もありますが、そういう面においても協力してもらおう、進めていくようにしてもらおう、こういう広範な予算でございます。
  114. 合沢栄

    合沢委員 それから、二、三個別の問題でお聞きしたいのです。  一つは、最近五百万トンアメリカからの輸入がきまった濃縮果汁ですが、十五日の農林水産委員会でも大臣は御答弁されていて、善処するというようなことのようですが、これは大臣よく御承知のように、果汁については農業団体がほとんど九〇%まで生産しておるわけなんで、これを商人のほうの一般の輸入商社にかってに処分されるというようなことでは、全然意味をなさないのじゃないか。やはり日本の国産の果汁を増加するためには、輸入された濃縮果汁を国産の果汁に混入する、そして品質を高めていく、そのことによって国産果汁というものの国内消費をふやしていくことが非常に大事ではないかと思う。そういった意味で使うならば、私は今度の果汁のワクの拡大というのはより意味がある、またそのことは国民にも還元されるわけでございますし、非常に意味があると思うのですが、まだそのように踏み切れないのですか。
  115. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のように、子牛五千頭の輸入拡大等につきましては、農協を通じてこれを輸入していくという方針でおります。  果汁につきましても、お話しのような方向にしたいと思っていますが、いままでの実績といいますか、それ等もあるものですから、その方向へ持っていくには持っていきますが、いま急に全部いままでの割り当てというものをなくするというわけにも——今度ふえる分ではございません。いままでの分もなくするということにもいかぬと私は考えておりますが、ちょっと技術的で、私も割当等に直接タッチはしていませんから、詳しくは事務当局から方針等につきまして申し上げたいと思います。
  116. 合沢栄

    合沢委員 これは従来の実績とかなんとかいっておったのでは商人をもうけさせるだけなんで、ほんとうに意味がないと思う。国益を考えた場合には、当然こういったものは、大臣がおっしゃるように、農業団体のほうに回してやるべきだというように私は考えるのです。国益なり国民を中心にひとつ考えて、一部の既得権を持った輸入商社に利益を得させるというようなことは間違っておるんだから、この点はぜひ正してほしいということをお願いするわけでございます。  なお引き続いて、牛肉の問題について少しお聞きしたいのです。  牛肉はもう世界的にも不足してきているというような情勢の中で、日本が年々二〇%も需要がふえている。こうなってきて、国産牛肉の対策というものが非常におくれている。そういう中では、年々国内の需給が逼迫し牛肉の価格が上がるのもやむを得ないと思う。そこで、この輸入のワクの拡大というような方向につながっていくということで、悪循環というか、縮小再生産の方向をたどっていっていると思う。そしてそれらをカバーするために、本年度はとりあえずホルスタインの雄牛を使おうというようなことでございますが、これではほんとうの解決にならぬと思う。そういった意味で私が非常に感心しておったのは、四十四年から広域農業総合開発地域というのを北海道ほか六県を指定して、そして広域の開発をやろうということで調査も進められておる。四十七年度から北海道の根室地区がまず事業実施に入る、来年からは熊本久住飯田地区が実施に入るというようなことでございます。これは非常にりっぱなことだと思って、こういうことでほんとうに和牛の生産をうんとやって肉の需要をまかなうべきだ、そうしなくては、これは国際的にも不足してきておるのだから非常に大事なことだと思っておるのです。しかし話を聞いてみますと、これは少なくとも五千億あるいはそれ以上の相当大きな投資を必要するというと大事業のようでございます。そうなるとこれは簡単にできない。農林省も広域未利用地の開発公団法といったようなものを考えておられたようでございますが、今度の国会にはこういったものを提案されないということなんです。これでは間に合わないと思う。たとえこういったものを開発されても、すぐそこに子牛ができるといったようなものじゃないわけなんです。これは非常に急ぐ必要があると思う。調査ができ、もうすでにことしから北海道根室地区は実施に入るということでございますし、来年からまた新しくそういう実施地区がふえていくということになりますと、どうしてもそういった何らかの法律化を急ぐ必要があるというように考えるのですが、どのようにこれをお考えになっておるのですか。
  117. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 申し上げるまでもなく、畜産において一番力を入れなくちゃならないのは肉用牛の増殖というか増産だと思います。これはやはり広域団地でなければやっていけないので、ことしも幾つかそういうものを指定して、相当融資やあるいは援助もして育成していきたい。根室地区はもう調査ができましたから、ことしからかかれるか来年からかかれるかちょっと覚えておりませんが、そういうことになっておる。久住地区などは、私は前からあそこに関係しておりまして、ああいう方向でいくべきだということでやったのがだんだん芽が出てきたようで、私も喜んでおります。  これを全体的に法律化したらどうか、こういう各県の知事などからの強い意見も来ております。よくこういうところの人々とも話し合って検討しておりますが、法律化しなければほんとうにうまくいかぬような場合には、法律化する事態も生ずると思います。いまのところ、大いに検討して、いまのままで進めようと思っておりますけれども、そういう事態もあるかどうか、法律化するかどうかはまだ結論に達してはおりませんが、よく考えていきたいと思います。
  118. 合沢栄

    合沢委員 次に生産者米価ですが、生産者米価については従来農林大臣は非常に弾力的に善処する、値上げ方向で検討するということのようでございますが、企画庁長官にお聞きしたいのですけれども、従来、生産者米価というのは物価値上がりの元凶だというようにきめつけられておったのですが、企画庁長官としてはそれを訂正されますか、お聞きしたいのです。
  119. 木村俊夫

    木村国務大臣 生産者米価が直接物価水準に影響するということは、まず普通の場合ないわけですが、それが消費者米価の値上げを伴って初めていろいろ影響が出るわけです。したがいまして、生産者米価の値上げによって消費者米価引き上げの誘因にならぬように心がける、そういう政策配慮が必要だ、こういう考えでございます。
  120. 合沢栄

    合沢委員 大蔵大臣にお聞きしたいのですが、今日不況の中の物価高が予想されるわけですね、非常に不況だ。しかも公共料金等は一斉に値上がりになるということで、四十七年度は不況の中の物価高が心配になる。そこで政府では不況対策というのを真剣に考えておられる。そういった中で生産者米価の値上がりということは非常に購買力を刺激するわけでもございますし、私は景気対策としても生産者米価は引き上げるべきだというように考えるのですが、大蔵大臣はどのように考えておりますか。
  121. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 生産者米価の決定は、やはり法律で決定のしかたもきめられておりますので、そういう不況対策とかいうことからではなくて、生産者の生産費の補償ができるように、そうして他の物価事情、需給の事情、そういうものを勘案して政府審議会に諮問してきめるということになっておりますので、したがって、この問題はそういう意味から合理的にきめられるべきものであって、不況対策とかなんとかじゃなくて、現実に諸物価が高騰してくる、生産費が上がってくるというようなときには、その事実に基づいた合理的な値上げがされていいという立場で生産者米価は扱うべきものだろうというように考えております。
  122. 合沢栄

    合沢委員 そうおっしゃると問題があるのですが、四十三年以下米価が四十四年、四十五年と据え置かれて、そして四十六年度は米価としては三%上がりましたが、これは奨励金を変えただけなんで、ほとんど米価の水準は変わっていない。しかしおっしゃるように、じゃその間物価は上がらなかったかということなのか。あるいは需給事情といえば、やはり政府としては米の過剰の基調は変わっていないという判断のもとに二百十五万トンの生産調整をやろうということなんです。少しも私は変わっていないと思うのです。そういった中でこの四十三年以下四十六年までは据え置かれたわけなんで、今年度はやはりそういった基調は変わっていない。米の過剰の基調も変わっていないという認識を政府はされているし、物価等は依然として上がっているわけです。そういう中でも上げようというのは、四年も五年もこのままじゃいかぬ、特にあらゆる公共料金等も上げる中で、どうも米だけを据え置くということはできないという判断に立って上げられると思うのですが、しかし、この問題はそれだけじゃなくて、やはり国全体として大事なことは、景気の刺激対策というか不況対策だ。そういった面で、当然この米価の問題も考えてしかるべき問題じゃないかと思うのです。全然そういったことは考慮をする必要がないとおっしゃるのですか。また、どういう考えですか。
  123. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いままで米価が上がらなかったことは、御承知のように異常な需給のアンバランスがあったということのために生産者米価が押えられたという事情がございますが、ようやくこの需給均衡対策というものが進みますので、もし米の需給が調整されるということでございましたら、初めてここで物価その他の事情が参酌されて、上がるべきものは上がってもいいという条件が出てくると思いますので、その実際に従ってこの米価を私はきめられればいいというふうに思っています。ただ、不況対策から上がったほうがいいということでしたら、ひとり米価の問題ではございませんで、いろいろなもので現実に物価が上がったほうが不況対策になるというものは天下にたくさんあると思いますので、米だけに言える問題じゃないと思います。
  124. 合沢栄

    合沢委員 米だけでないことはわかるのですが、米価の持つ意義、生産者米価の持つ意義というのは私は非常に大きいと思うのです。特に農家の数、あるいは対象農家の数等が非常に大きいし、米そのものの量から見ても、これが持つ景気に与える影響というものは非常に大きいというように判断されてしかるべきだと思う。そういった意味で、私はやはり米価の問題は本年度の不況対策として、当然その一環としても考えてしかるべき問題であるというようなことから言っておるわけなんです。  それでこの問題はそれでおいておきまして、次に野菜の問題にちょっと触れたいのですが、大臣野菜の生産については安定的な生産ということで、本年度はだいぶ力が入ってきているというように感じられるのですが、ところが生産は上がってくるが、どうも流通の面がまずい。一番の問題はどこにあるかというと、小売り価格が高い。流通の市場からこの小売りのマージン等が非常に大きい、一番大きな問題じゃないか。生産地では余ってというか、もう売れないというような状態の中でも、やはり最終小売り価格が高いという問題はあるわけなんです。そこでもっとこの面に力を入れるべきでないか。そこで私は考えるのですが、従来そういう点で何をやってきたか。まあ卸売り市場の改正等もしましたが、また公設小売り市場等にも相当補助金等もやっていますが、しかし公設小売り市場等の数はきわめてわずかなもので、ものの数じゃないと思う。東京だけでも青果の小売り店は八千何がしある。非常に多い。そういった中で、ほんのわずかな十や二十の公設小売り施設をつくっても、ものの数じゃない。今回も二十店舗ほど指定店をつくろう、それには四十万程度のストッカーに対する補助金を出してやろう。二千八百万円程度の補助金が計上されている。これでは私はほんとうの焼け石に水、問題にならぬと思う。どうでしょうか、ことしの春も非常に野菜が安いのはきまっているのですが、こういった安いときに、根菜類といったような野菜、まあバレイショとかそれからタマネギとかあるいはサトイモだとか、大根、ニンジンといったようなそういった根菜類は、相当長期に、低温調整すれば保管もできるわけなんですが、今回の予算では五億ほどの予算で公益法人をつくって、そしてタマネギの不足、生産が少ないという場合には海外から輸入しようというようなことですが、わずかにこれも三千五百トン程度の倉庫を二つつくるという程度では、これは焼け石に水だと思う。やはりこういうように多いときに、生産者対策としても消費者対策としても、うんと貯蔵するというような施設、そういった施設を大消費地につくっていく。そのために五十億や百億くらいの金を出してもいいのじゃないでしょうか。輸入品だけ考えずに、国も、国内で余ったものをそういった根菜類を長期の貯蔵ができるものは当然貯蔵するというような施設を考えるべきじゃないか。  さらにまた、大きな住宅団地、そういうところにはもっと積極的な小売り店舗を指定していくというようなことで、その指定店にさらにもっと大きな恩典を与える。できれば生協なりあるいは生産者団体等を通じてやらせるとか、そういうことで、もっともっと流通対策に力を入れるべきじゃないかと思う。そうでなくては、私はいつまでたっても、この安くなった、余ったみたいな野菜もやはり消費者には高いというそしりを受けると思う。積極的なそういった考えはございませんか。
  125. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 貯蔵倉庫やら特別指定店やら、そういう点もいまやってはおりますが、確かに御指摘のように、何というか、不十分というか、まあ意あって何とか足らずと私は考えております。でありますので、いま積極的な御進言等はほんとうに適切な御進言だと思います。そういう方向に流通対策でも十分努力していきたい、こう思っております。
  126. 合沢栄

    合沢委員 最後に、農林水産物の輸送の問題、国鉄料金の問題についてお伺いしたいのでございますが、農林水産物の国鉄運賃については御承知のように公共割引があった。これは昨年の十月一日廃止された、ことしもまた十月一日残ったものが全部なくなるということでございます。これはこういった農林水産物は、持つ意義というか、物価の問題、国民生活の問題等に非常に大きいということから、公共料金が従来設けられておったわけだと思うのですが、国鉄の再建の名のもとになくするということは、非常に大きな問題じゃないかというように考えます。農林大臣のほうもこれには反対の意向を表明されておったのですが、あえて押し切って昨年の十月一日から二分の一、さらにことしの十月一日からは全廃というような方向をとられる。その上また今度は国鉄料金値上げということで、これはこのままされると非常に大きな影響を持つと思うのです。そういう点について十分、数字の上でも運輸大臣は御承知と思うのでございますが、私も、持っておる資料によりますと、とんでもない運賃値上がりになる。そこで一定の期間のものでございますが、一定の期間のもので全部ではございませんが、米等については、公共料金の割引がなくなるのと国鉄運賃によって、米は四八・六%とか、あるいはバレイショは五六・三%とか、タマネギは六〇・二%とかいったような非常に大きな値上がりになっておるわけですね、これは。これらが及ぼす影響は非常に大きいと思う。特に値上がりになった理由は、一つには従来の輸送の従価率というのですか、こういったものがなくなる、等級が圧縮される。そこで非常に高価なものも安いものも同じようになるというなことが、こういった値上がりの原因になっていると思う。こういうことで、はたして私はいいのかどうか。もう一度公共料金の据え置きとか、あるいはまた等級の問題、あるいは値上がりの問題等、こういった農林水産物等については考え返すべきではないかというように考えますが、運輸大臣はどのようにお考えですか。
  127. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいまお尋ねがございましたように、農林水産物等の公共割引対象になっております貨物につきまして、公共負担の是正のたてまえから、昨年是正をいたしました。それに続きまして今回の貨物の運賃値上げをお願いをするという案を出しておる次第でございます。確かに他の物価と比較いたしまして負担が大きい、御指摘のとおりと思う次第でございます。ことに生鮮食料品一般物価に及ぼす影響も非常に大きい次第でございますので、その点は重々承知している次第でございますが、御承知のとおり、貨物運賃につきましては、四十四年の際に旅客運賃の是正をお願いをいたしましたときも据え置きになっております。また、国鉄財政の点からいたしましても、公共割引の是正ということが非常にいわれておりました。そういうことでございますので、私どもといたしましては、何とかしてその点の打開策といたしましては、たとえば定期急行列車を新設するとか、直結列車を増設してまいるとか、あるいはまた適合列車をふやしていく、冷蔵また通風車を増していくとかいうようなことでもって、輸送のサービス改善、良質サービスを提供するという面でひとつ全体の生鮮物資の点につきまして御便宜をはかりたいということと、駅頭食品ターミナルの増設というようなことも私ども考えておる次第でございまして、また定期の生鮮野菜の出荷に対しましては、御承知の営業割引制度を弾力的に活用いたしまして、そうして御便宜をはかりまして、そうして幾ぶんでも物価抑制に役立てたい、こういうようにただいま考えておる次第でございますので、御了解を願いたい、こう思う次第でございます。
  128. 合沢栄

    合沢委員 最後に農林大臣にお聞きしたいのですが、大臣、この農産物、今度の運賃の問題は、これは農家にとっては買うもの、肥料とかあるいは農機具だとか、そういった買うものはそのままストレートに購入資材にそれだけプラスされてくることは間違いないと思う。一方売るもの、農林水産物、売るものはどうかというと、これは公定価格はない、こっちがかってに値段をきめるわけじゃないので、それだけがプラスして売られるというものじゃない。やはりそれだけは農家が負担するということになると思うのです。それで買うものは運賃だけ高くなる。それから今度売るものはそれだけ安くなるということは私は間違いないと思う。まさにダブルパンチで、しかも一挙にそれが公共料金の撤廃、同時に、ほかのものと違って今度は運賃値上げが、従来の高いものと同じような料金になるわけですから、したがってその上げ率も高い。二十・何%じゃなくして、三〇%にもなるというような事情でございますので、これはたいへんなことだと思うのです。こういった問題については農林大臣も反対されたと思うのですが、何とか閣内でひとつ相談をして、善処をしてほしいというように考えますが、どうですか。
  129. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は基本的には運賃といいますかな、ものを運ぶ賃金ですな、これは物価だと思うのですよ。みな物価にこれが上がっていくと、こう言いますけれども、基本的にはこれは物価だ。ですから、物価問題を検討するのには、運賃というものは公共料金というようなことじゃなくて、物価問題としても掲げるべきだ、こう思います。でございますので、私は運賃値上げというものは非常に農産物物価などには重大だと思います、流通関係からいいましても。  だから、話は飛びますが、道路なんというのができるのは私はいいと思うのです。道路がよくなっていくことは、やはり運賃物価のほうにこれはほんとうに貢献していかなくちゃならないのですが、なかなかそれがあらわれてきません。そういう面で閣内等におきましても、私は十分物価関係の担当大臣やあるいは運輸関係の大臣などとも協議して、私のほうの主張はよく言っておるのでございますが、なかなか十分の了解は得ていなかった結果にはおちいっているようでございますが、いまのお話のようなことは、なお十分注意してこれからも対処していきたいと思います。
  130. 合沢栄

    合沢委員 以上で終わります。
  131. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて合沢君の質疑は終了いたしました。  午後は本会議散会後直ちに再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十八分休憩      ————◇—————    午後四時二十九分開議
  132. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  一般質疑を続行いたします。谷口善太郎君。
  133. 谷口善太郎

    ○谷口委員 私は、日本共産党を代表して、国鉄の問題について若干お伺いしたいと思うのであります。  四十七年度予算は二兆円に近い事実上の赤字公債を発行した上に、ばく大な産業基盤整備型の公共投資をやる、インフレ必至だろうといわれております。不況下でも物価が相当の値上がりをするだろう、こういうふうにいわれております。そういう中で、政府公共料金の軒並み値上げを計画している。国鉄の運賃値上げはその中で典型的なものだと思うのであります。  今度の国鉄財政再建十カ年計画案というものを見ますと、これから十年間に四回の運賃値上げをやって、それで約六兆三千億、それから国鉄の労働者を十一万人ばかり削減する、これで節約した費用が二兆四千億、政府の出資や補助その他いろいろな財政投融資における融資なんかを加えまして、やはり十年間に二兆七千八百億円、合計、単純計算できるかどうかわかりませんが、十一兆四千億以上の資金を集中して、いわゆる財政再建なるものをやろうというのがその案のようであります。  物価の問題から言いますと、このうち六兆三千億に及ぶ運賃値上げ、特にこの中で計算してみますと、旅客の運賃が七七%に相当しますので、これが決定的に国民生活影響を与えるということだと思います。しかも今度の、たとえばことしだけの値上げ、計画されている分が法律案が通りますと実行されるわけですが、それでもかなり大きな被害を与えると思いますが、これが十年間に、大体計算してみますと、運賃が倍ぐらいになる、こういうふうに思うので、たいへんなことだというふうに私は思うのであります。  国鉄の運賃値上げということになりますと、すぐに私鉄その他の交通機関に響きます。それからまた一般物価値上げにも作用するということでありますが、大体公共料金というものは、政府がこれを抑制しようと思えばできるものだ。これは政府に決定権があるということも重大でありますが、私どもの考えによりますと、国鉄にしましても、健康保険の問題にしましても、大学の授業料の問題にしましても、郵便電信電話等の問題にしましても、これを公共機関として、その原則の上に立っての財政の建て直しを改革的にやれば赤字はないもの、あるいは現状でも赤字は完全に解消できる、そういうふうに私どもは思っておるのです。そういう点から私、若干質問をしてみたい、こういうことであります。  最初に、これは国鉄総裁に伺ったらいいと思いますが、国鉄の監査報告によりますと、昭和四十五年度の鉄道部門の営業収益は一千四百六十一億円の赤字で、これを線区別に見ますと、幹線区で二十九億円、地方ローカル線で千四百三十二億円の赤字になっておりますが、これをもし運輸種類別に分けてみたら、旅客と貨物というように分けてみたらどういうふうになりますか、これをちょっと伺いたい。
  134. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 昭和四十五年度の客貨別の赤字でございますが、東海道新幹線におきましては千百億の黒字でございます。それから旅客輸送につきましては六百六十三億の赤字でございます。貨物輸送につきましては千八百三十二億の赤字でございます。以上でございます。それで差し引きいたしまして千三百二十五億、そのほかに若干営業外の損失がございますので、おっしゃっている数字になるわけでございます。
  135. 谷口善太郎

    ○谷口委員 すなおに御答弁いただきましたが、なかなかこの客貨を分けての収支の問題は国鉄は発表しない。昭和四十年までは公式でやっておりましたが、四十一年からは国会で、私どものことばで言えば、追及されて初めて言ったということでありますが、きょうは総裁、すなおに言われた。確かに貨物のほうが圧倒的な赤字で、旅客は、ここずっと見ていますと、近年旅客は黒字かあるいは収支とんとん、若干の赤字が出たときもあるというようなことでありますが、大体貨物が決定的な赤字だということになっておるのだと思うのであります。  そこで私どもは、つまり国鉄の赤字というもの、まあ赤字ということにつきましていろいろ内容がございまして、あとではっきりさせますが、何といっても貨物運賃に赤字が生じているという事実はおおうことはできないと思うのでありますが、いわば貨物については出血サービスをやっているのではないか、こういうように私は思うのです。  そこで、一体国鉄の貨物の主要な荷主といいますか、荷主の階層といいますか、どういうところがたくさん出しているかを知りたいのでありますが、そういう点で私のほうからこういうふうに分けてということを申し上げますから、資料がございましたら出していただきたいと思うのです。たとえば、月百トン以上貨物を出す、そういう荷主、それからまた百トン以上四百九十九トン、それから五百トン以上九百九十九トン、千トン以上四千九百九十九トン、五千トン以上、こういうふうな分け方で、どれくらいの荷主があり、どれくらいの貨物が出ているか、また全体に対してどれくらいの割合か、そういう資料がありましたらお出しいただきたいと思うのです。
  136. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 先ほど申し上げました黒と赤の数字でございますが、お答えをいたしておきますけれども、これは先生も御承知のとおり、国鉄の経費全体で一兆一千億ほどでございますが、その中で旅客、貨物で共通で使っている部門が約六千億ございます。この六千億を実際にどう分けるかということは、非常にこれは世界各国どこでも鉄道で苦労しているところでございますが、結局、同じ線路を旅客と貨物で使っておりますために、分け方にいろいろあるわけでございます。私の先ほど申し上げました数字は、一応いままで使っておった分け方でございますけれども、具体的に例を申しますと、たとえば事故があった。事故があった際に、それを復旧する際には貨物列車を全部押えて、そして旅客列車を通すというふうなやり方をいたしております。そういうようなとき、あるいはダイヤをつくる際にも、旅客列車優先でつくるというふうなことで、貨物と旅客とが単に数量的にその六千億の経費を分割することは非常にむずかしいのでございますが、一応いろいろなデータによって分析したのが先ほどの数字でございます。したがって、これは一つの計算のしかたであるということだけを申し上げておきます。  それから、いまのお尋ねのトン数別の荷主の数でございますが、ちょっと持ってまいりませんでしたが、私のほうは、荷主の数と申しますよりも運賃の問題でございますので、あらゆる貨物を四つの等級に分けておることは御承知のとおりでございます。一、二級合計いたしますと、これが二千六百万トンでございます。一、二級と申しますのはいわゆる高級品でございます。それから三級と申しますのが、石炭とかセメントとか木材とか、これが九千九百万トンでございます。残りの約四千五百万トン、これが四級と申しまして、米、麦、あるいは野菜、そういったものでございまして、三級の九千九百万トンの中には、一番大きいのは石炭でございます。石炭はこの中に約三千万トンぐらい入っております。石炭あるいはセメント、これがやはり三千万トンぐらいございます。そういうものを、荷主のトン数ではなくて、石炭なら石炭・品目別に分けておりますので、いま手元に発送トン数別の荷主、と申しますと、たとえば同じリンゴでも、一つの農協なら農協が出す場合には一つの荷主になります。あるいは個人が出す場合には一人の荷主になりまして、トン数でまいりますと輸送の実態と非常に乖離いたしますので、私のほうは等級別の品目というふうな分類のしかたをしているわけでございます。
  137. 谷口善太郎

    ○谷口委員 それも一つの分け方でありますし、その面からでは、国鉄はかなり資料を出しているわけなんです。しかし、私どもが知りたいのは、もちろん貨物の品目によりましていろいろ異同もありますし、いろいろ相違もございましょうが、それより、どこが国鉄さんにとって一番大きなお得意かということを実は知りたかった。国民の側からいえば、どういう大企業が国鉄を、貨物輸送の上で大きく利用しているかということを知りたいわけです。そういうことで伺ったのでありますが、この辺はなかなか言いません。実は私、質問準備作業中にも国鉄及び運輸省の方に来てもらって、いろいろ聞いたのですけれども、この点は資料がないということでなかなか言わない。  ただ、これは非常に古い資料であまり当てにならないかもしれませんが、貨物協会というところが発行しました「貨物」という雑誌がありまして、それによりますと、昭和三十八年十二月の実績ですから十年前の資料でございますが、大体見当はつくのではないか。つまり月千トン以上の荷主は、その数が千五百八十二カ所、その貨物発送トン数は月約九百三十万トン、貨物総扱いトン数に対しまして実に五四・一%。また、月五千トン以上の巨大荷主の数はわずか三百八十五事業所で、国鉄総扱い貨物トン数の約四〇%に近い、こういう数字が出ております。つまり、私どもの考えで言いますと、約半数近い人たち——月千トン以上になりますと半数じゃなくてもっとになりますが、五四・一%になりますが、これがいわば赤字の出ている貨物、国鉄の経理が赤字になっているその貨物の大荷主だ、そういうふうに考えられるので、言ってみれば一億国民の中にわずかですから、一握りの大企業が、国鉄の非常に御丁寧な出血サービスの恩恵を受けている、こういうふうに言わざるを得ないように思うのです。だから、この資料をなかなか発表しませんのは、偶然ではなかろうと私どもは見ているわけであります。  さらにこの点を詰めたいと思いますのでもう一つ聞きます。物資別適合輸送ということは一体どういうことですか。
  138. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 物資別適合輸送と申しますのは、最近におきまして荷主の流通過程の経費が非常に問題になりまして、やはり極力安くしたいというふうな御要望がたくさんございます。これの最も典型的なものは鮮魚でございます。国民が食べる魚、これは御承知のとおり、北は北海道から、南は長崎、博多から東京へ送ってまいります。これは物資別、そして発地の市場から東京市場、大阪市場へまるまる列車ごと入るわけでございます。これが古くからやっておりました鉄道の物資別輸送の典型的なものでございます。  それから、最近始めましたのは自動車、石油、セメント等がございますが、そのほかに非常に大きな生活必需品としてミカン、これは、年末年始に東京に入りますミカンはほとんど和歌山、愛媛、九州の三県、大分、熊本、長崎から参ります。これはやはり全部発地の選果場から直接段ボールに詰めましてそれを東京市場に入れる。これも典型的な物資別の適合輸送でございます。またさらに野菜、これは主として宮崎県と高知県の早生野菜でございますが、これもやはり発地から東京市場、大阪市場までまっすぐ入れるというふうな輸送をいたしまして、そういった食料品、それから工業品等を極力スピードを上げて鮮度を落とさないように、そうして流通経費を下げるというふうな角度から物資別の輸送をやっておりまして、これは今後とも、荷主の要望が強くなればなるに従って、たとえば北海道の種バレイショ、これは全部南のほうで種にするわけでございますが、これなども船からこちらへ移ってまいりまして、これを北海道の発地から九州まで輸送する。  それから最近、これはまだやっと始まったばかりでございますが、田端に非常に大きな農業倉庫を、北海道の農協と道庁と私のほうでつくりまして、これも北海道の帯広、北見等から全部、主としてジャガイモとタマネギでございますが、これを物資別に集めまして、そして東京市場へ、東京の倉庫へ直行させる、こういうふうな物資別の輸送をやっておるわけでございます。
  139. 谷口善太郎

    ○谷口委員 御答弁を聞いていますと、国鉄の物資別輸送の中心が、野菜だの種バレイショだのミカンだのに聞こえます。これは減っているでしょう。石炭なども、これは石炭のああいう整理がありまして、この数年間ぐっと減っています。物資別適合輸送としてふえているのは、いまあなたもおっしゃいましたが、石油だとかあるいは鉄鋼類ですね。それから紙パルプ、それから化学製品、そういうものであって、これらの大企業がつくっている製品ですね。これに対する特別な専用車をつくって、それでもってやっておるのでしょう。それはもちろん農作物も送るし、魚類も送ります。牛も送ります。だけれども、国鉄の貨物の量からいいましたら、石油だとか自動車だとか鉄鋼だとか、こういう日本の最も産業の中心になっている大メーカー、こういうような製品を輸送することが最も大きくなっているのでしょう。だから石油のためにはタンク車ですね。これは、国鉄はなかなかりこうだからあまりタンク車なんか持ってないようだ。それより石油輸送させるような石油会社が私有車として持っておる。これを国鉄は引っぱってやる、こういうふうになっておる。それから自動車のためには車運車とかいっていますね。鉄鋼のためには長物車というのですか、あるいは鉄鋼運搬車、紙パルプ用のチップなんかのためにはちゃんとホッパー車というのがある。それぞれ大企業の商品、製品を送ってやるために国鉄は専用車をつくってやって、それでもっておっしゃるとおりにノンストップで目的地から目的地へ持っていく。資料によりますと、この専用車で送っておる国鉄の大企業の輸送物資、これが専用車の数でいいますと、十年間に三万三千九百六十三台ですか、そういうものをつくっているようであります。これは必ずしもいま私が申しました大企業用のものばかりでなくて、その他のものもあると思います。それから、先ほど申しました石油独占が持っておるタンク車、これは一万八千五百八十三台です。これを国鉄は引っぱってやっている。  こういうふうに、大企業のための専用車をつくってやり、それを引っぱってやるということが、国鉄の貨物輸送の量の上からいいましても、収入の上からいいましても最も主要な貨物になっている、こういうふうに資料が出ております。国鉄の所有貨物総台数は十四万九千四百八十五台、ところが専用車は、私有車も含めて計算してみますと五万二千五百四十六台、実に三五・八%が主として大企業のための専用車になっておる、そういう実情でありますが、国鉄がつくられた大企業のための専用車、この専用車をつくるにあたって、一体どれくらい金をお出しになったかを伺いたいと思う。
  140. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 鉄道の貨車を全部一般用と申しますか、汎用貨車にすべきか特殊車をつくるべきか、これはずいぶん戦前から議論のあったところでございまして、先ほど申しましたとおり、国鉄輸送はどんどん貨物輸送が衰退していく、それをとどめるためには、やはりそのものに適合した貨車をつくらなければ荷主がついてこないということでございます。それの発端は、昔、通風車あるいは冷蔵車等、主として生鮮食料品を輸送するための特殊車をつくった。それが現在、先生のおっしゃった中に、たとえば冷蔵車で申しますれば六千両か七千両あるわけでございます。それが、最近いろいろ荷主の要望が変わってきまして、そして特殊なたとえばチップを輸送するためには最も荷役のしやすい貨車、しかし帰りは極力一般貨物に使えるものは使うというふうなたてまえでやっております。いまおっしゃった車運車、これは自動車輸送の車でございます、こういうものも、やはり自動車に最も適合して、そして荷いたみの少ない貨車をつくらなければ鉄道を使ってくれないということでございます。したがって、私どもといたしましては、やはり商売として貨車輸送をやっている以上、それが成り立つようにあらゆる努力をしなければいかぬというふうに考えております。  同時に、運賃から申しますと、ただいま先生のお述べになったような、いわゆる先生のおことばで大資本というおことばがございましたが、その荷物はほとんど一級、二級という高い運賃でございます。それから石炭が基準運賃でございますが、生鮮食料品は全部それ以下の四級という一番安い運賃になっております。したがって、トンキロ当り、すなわち貨物を一トン・一キロ送るのにどれだけ損をするか得をするかというふうな計算をいたしますと、これはまさに一、二級の貨物の赤が少なくて、そして三、四級の貨物の赤が多い、こういうふうな結果になってくるわけでございまして、その意味で、私どもといたしましては、極力三、四級の等級の低い貨物の赤を上のものでカバーする、貨物内部における内部補助をしなければいかぬ。そういう意味で、いい荷物をとらない限り、運賃の安い貨物は結局ひどい赤になってしまう、こういうことでございます。ある程度荷主の要望に応ずるような貨車をつくりまして、そのかわりそれから高い運賃をもらう、こういうたてまえになっておるわけでございます。
  141. 谷口善太郎

    ○谷口委員 委員長にちょっとお願いしますが、総裁、私の聞いたことに答弁してないのです。私は、専用車をつくったのに幾ら投資したかと聞いたのであって、専用車をつくったらこういう利益が国鉄の側あるいは荷主の側にあるということを聞いたのではないのです。幾ら金がかかっておるのですか。
  142. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 車種別の数字、専用車の中のどこまで専用車というふうにするかの問題でございますけれども、現在、たとえば石油は、先生おっしゃったように、国鉄はつくっておりません。わずかに八十両ぐらいしかございません。これは古いタンク車でございます。これはつくっておりません。あとはホッパー車、石灰石専用のものあるいは自動車専用のもの、自動車のほうは大体千両ございます。これは一両約五百万円かかりますから五十億ぐらい、利子が年間約三億ぐらいというふうなかっこうになっております。あとホッパー車の価格は、いまちょっとここに数字を持っておりませんが、両数がそれほど多くございませんので、やはり毎年の貨車の新造計画の中の一部をさいてやっておる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  143. 谷口善太郎

    ○谷口委員 私は質問の作業をしておるときに、国鉄にそれを幾ら聞いても、やはりあなたの言うようなことしか言わぬ。せっかく持ってきた資料といったら、たとえば車運車だったら五百二十万円かかるとか、ホッパー車だったら四百十万円ぐらいかかるというような資料しか持ってこない。何台あって、全体でこの何年間に専用車の上でどれだけ投資したかということを聞いても出さぬ。われわれはしろうとですから、国鉄に幾ら専用車があるかは、これはあなた方の資料で出ておる。だが、その台数にたとえば五百万円かけたら幾らになるというようなことしか国民としてはわからぬ。そうしますと、これは相当な金になっている。簡単なさっき言いましたような計算のしかたをすると、現在だけでも約千六百五十億円ぐらい出しているだろうという。これは国鉄のくれた一台幾らだということを台数にかけてみたのですから、正確であるかどうかわかりませんが、とにかく相当の資金を出している。そしてこういうことをやっているわけでありますが、私どもは実はこれはたいへんなことだと思うのです。なるほど、大荷主だから、大いにその荷主の御都合のいいように専用車をつくってやってやれば、それは喜ぶでしょう。そんなことやってはならぬと私ども言いませんけれども、そのほかにもつとやらなければならぬことがあるにもかかわらず、こういう大資本のために専用車をつくってやるということで、そしてそれをなかなか発表しないということであります。これは非常にまずいと思う。大臣どうお考えになりますか。
  144. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいまいろいろお話を承っておりますが、国鉄はもちろん国民のものでございますし、国民のために経営をしていると確信をしている次第でございまして、したがいまして、ことに御審議を願っているところでございますので、資料を隠すなんということは私は絶対にない、またそういうことはあっては相ならぬ、こう思っておる次第でございます。したがいまして、御必要がございましたら、委員長からお命じいただきますれば、私のほうからも命じまして、さっそく出させることにいたす次第でございますが、しかし、ただいま御質問がございました分類の方法その他の点につきまして、早急にそれが出せるかどうかということが、私は問題じゃないかと思っておる次第でございますが、御審議に間に合うように出させたい、こう思っておる次第でございます。
  145. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そこで、専用車は大体大企業の貨物輸送の手段ですから、当然大企業の引き込み線、専用線と結びつくと思うのです。国鉄の資料によりますと、専用線の数は昭和四十五年度で三千七十四本、延長キロ約二千五百キロメートル、ただし営林署関係とか石炭等では減っている。営林署という意味は、これは意味があります。林業に対する専用線ですね、これは減っておる。石炭は先ほど申しましたような状況だから減ったと思います。ところが、石油、セメント、ビール、こういうものが個所もキロ数もふえている。それから、専用線貨物の発着トン数、これは四十五年度で約二億トンです。発着ですから、発と着ですから、半分と見て一億トンということになりますが、これも発着トン数二億トンというのは、国鉄貨物の年間の総輸送トン数に相当するわけです。つまり半分のものが出ているということになります。二億トンの半分、発着ですから。だから国鉄貨物総輸送量の約五八%、国鉄の貨物輸送がいかに大企業中心だかということ。専用線を持っている、引き込み線を持っている、そういうところのメーカーのものを運んでいるのが、これが貨物の上においても五八%ということになっている。この面からも非常に大企業中心の貨物輸送に転換しつつあるということがいえるわけでありますが、この引き込み線、専用線の建設の経費負担はどういうことになっていますか。
  146. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 専用線はいまおっしゃったように全国で約三千本ぐらいあると思います。これの建設はもちろん全部業者の負担であります。しかしながら、それが一般貨物輸送に影響のある場合には、その限度において操車場の一部を直したりすることは私どもでやることがございますが、それから先のほうはもちろん全部その荷主がやるわけでございまして、したがって、その点でき上がりますと国鉄の財政に編入いたします。そして使用料を取りましてそれでもって保守をするという形になっておるわけでございます。
  147. 谷口善太郎

    ○谷口委員 ほんとうに国鉄負担ですか。そう言っていいですか。
  148. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 先ほど申しましたとおり、その専用線の先の部分は全部荷主負担です。ただ、それによってその基本の分岐するところの中の駅の配線を変えなければいかぬというふうなことがございます。そういう場合には、その線を通る一般貨物輸送の問題と関連いたしまして、うちの費用でブランチの駅の構内は直すことがございますけれども、それから先は、そのおのおのの工場へ引き込む会社が専用線の費用を負担するわけでございます。
  149. 谷口善太郎

    ○谷口委員 先ほど私、ほんとうに国鉄の負担かと言いましたが、これはあべこべでありまして、荷主の、会社の負担ということになっている。これは訂正しますが、しかし、これを見ますと、ちゃんと一部負担することになっている。これも資料をもらっているんですが、資料をいただく段階で、発表してくれるなと言うのです。どうです、これはもう少しはっきりしてください。
  150. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 専用線の規則、私も存じておりますが、それはそこに書いてございますとおり、それがその専用貨物だけでなしに、その線区を通るほかの一般の貨物輸送に影響がある場合には、その限度において主としてその分岐駅の配線の変更その他は国鉄でやることがあるというふうに書いてあるわけでございまして、ごらんのとおり、国鉄が全部負担するとは書いてないわけでございます。例外的に、ほかの輸送に影響のある場合には国鉄が負担する。したがって、その次の条文だったかと思いますが、それを明確に書いてあるというふうに思います。
  151. 谷口善太郎

    ○谷口委員 もちろんこれは全く大まかなことを書いた、この点での原則的なことをきめているにすぎません。これに基づいて実際にやっていることがわれわれ知りたいのですね。その話を伺いますと、なかなかたいへんなことらしいですな。それをいろいろ聞きましたが、これはあまり発表してもらうと、ちょうどこの間の四次防先取りの機種の問題について、ある飛行機の原価は幾らだということが国会で問題になって、なかなか防衛庁長官は発表できないといって秘密会を開いた、あれと同じように、ここで発表すると、それにつけ込んで各荷主がいろいろなことを言って国鉄の負担を要求するだろうから、言わぬでおいてくれ、こう言うのです。こういうやり方を実際やっているのですな。これは私はたいへんな問題だと思うのであります。当然引き込み線の問題につきましても事業計画をもって、予算をもって、そして路線をきめる場合には審議会がありますが、そこで審議してやるというふうにしませんと、言ったところで、相手の大資本家との交渉の中できめていくというようなやり方はいかぬですよ。大臣、どうです。
  152. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 いろいろ御質問のことを伺っている次第でございますが、私はそういうふうに考えてない次第でございます。日本最大の四十六万の組織、この中で秘密が行なわれるはずはないと私は思っておる次第でございます。しかも、国会におきまして、あらゆる点におきましていろいろ御審議を願って、しょっちゅう国鉄財政は、国民の、ことに代表の皆さまの御審議を得まして、国会の議決を経ましてあらゆる点を行なっている経営でございます。他の公共企業体よりもきびしい監査を受けている——これは当然でございますが、受けている企業体でございますので、私はそういうようなことは全然ない、こう確信をしている次第でございます。
  153. 谷口善太郎

    ○谷口委員 全然ないと大臣おっしゃいますけれども、国鉄の諸君がそう言っているのです。いろいろあるけれども発表してくれるな、だから私は発表しないって約束したんだから言いませんが、まずいのですよ。大臣は監督の責任者でしょう。私的資本のために国鉄が引き込み線をつくってやる、その経費の一部を持つ。これには一応の原則は書いてあるのだけれども、実際に内容に入ると千差万別で、いろいろなことがあるから言ってくれるなという。これはまずいですよ。やっぱりきちんと、大臣はないなんて言わないで——きれいごとじゃないですよ。発表していいとおっしゃるなら私は言いますけれども、それは言わぬです。だから、やっぱりきちんとやってもらいたいと思う。
  154. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 いま重ねてのお話でございますが、私はそういうことはないと思っておる次第でございます。大体先ほどから大資本の製品ばかりを送っているじゃないかというお話でございますが、国鉄の貨物輸送は、第一次製品から第二次製品に移行してきておる次第でございます。しかも、御承知のとおり、国内船舶輸送と国鉄の輸送との差がだんだん開いてまいりまして、ただいまでは船舶輸送が四割二分、国鉄の貨車輸送は一割八分、しかも同じようなそういったような二次製品を多く船舶にとられている、こういうことでございまして、国鉄の貨車輸送の弱点はそこにあるのじゃないかということにつきまして、国鉄当局が、それがために専用列車であるとか、あるいはそういったような適合した貨車であるとかいうようなものをつくっている。これからの貨物車の増強、そうしてまた貨物収入の増強をはかるということのためにも、どうしてもやはりそういった方面が必要であるのじゃないか。要するに、輸送の需要に応じましてその形態を変えることは、私は当然ではないかと思っておる次第でございます。また、先般の四十四年のときに国鉄の旅客運賃改正はいたしましたが、貨物運賃改正はいたしませんでございましたので、今回は、申しわけない次第でございますが、実質的には一五%のアップをお願いをする所存でございますが、そのうちにおきましても旅客輸送より貨物輸送の名目引き上げは高くしているというようなことでございます。そういう点におきましては、大資本に奉仕をするというような形跡は全然ない、こういうように私は思っておる次第でございます。
  155. 谷口善太郎

    ○谷口委員 私の言っておりますのは、物資別の輸送に適した貨車をつくる、それはいいと思うのです。専用線、引き込み線をつくることもいいと思うのです。ただそれを国鉄が負担する必要はないですよ、ということを言いたいのであります。  次に移りますが、いま盛んに全国の小さな貨物駅を廃止しておるわけです。四十四年ごろからこのようなことをやっておるようでありますが、今日まで一体幾つ貨物駅を廃止しましたか。
  156. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 正確にはちょっと申し上げかねますが、四千あったものが現在三千ぐらいで、大体千、四分の一は減っているというふうに思います。ちょっと正確な端数は、調べればすぐわかりますけれども、大体四分の一以上は減ったというふうに私は思っております。
  157. 谷口善太郎

    ○谷口委員 まあ貨物駅を廃止したところと新しくつくったところなんかがありますから何ですが、私の調べた資料によりますと、今日まで千七百五十八、それだけの駅を廃止している。これはもちろん四十六年、四十七年の二年間は、予定しているというものも入っておりますから、そういう点でちょっと違うかもしれませんが、大体六〇%近いものを、この二年間を含めますと減らすという計画のようでありますが、これは小企業や国民の日常生活の中で出てくる貨物、こういうものの輸送にあたりましては非常な不便を感ずる。いままでもよりの駅に行って気軽に送れたものが、遠くまで行かなければならない。小企業なんかだったらトラックを雇って行かなければならない。非常にコストが高くなる。そういう不便なところにおとしいれられておるのであります。つまり、赤字、赤字といっておりますけれども、大企業のためには相当のいろいろな、至れり尽くせりのようなサービスをやりますけれども、小企業、こういうものに対しましては、駅を廃止するというような残酷なやり方をやっているわけであります。  そこでこれは聞きますが、青森県の五能線ですね、ここで陸奥森田駅、陸奥鶴田駅、藤崎駅、この三駅の貨物取り扱いを廃止するということになって、廃止反対の住民闘争が起こっているようでありますが、これの事情をお聞きしたいと思います。
  158. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 五能線は青森県の西北にある線でございまして、非常に過疎地域でございまして、現在沿線人口もどんどん減っているところでございます。そして、根元の弘前から分岐いたしますが、弘前に近いところはリンゴが出るわけでございまして、そのあとはほとんど何日に一車という程度のことでございまして、五能線自体の合理化をしようということで、いろいろ地元とお話しいたしまして、貨物駅を減らす、そしてそのかわり設備のいい貨物駅をつくって、そこでもって少なくとも東京へ持ってくる時間を早くするというふうな考え方から貨物駅を整理し、また旅客駅を無人化したという次第でございまして、一駅一駅の名前はちょっと私正確に存じませんが、五能線自体の合理化はそういう方向でよその線区と同じような合理化で進んでいるわけでございます。
  159. 谷口善太郎

    ○谷口委員 私のほうへも陳情がありまして、これは共産党の農民代表が来ているのでありますが、この貨物取り扱い廃止の結果、リンゴ出荷、年間の出送量が約八万トンといっております。関係三町村二万五千人ほどの農民が関係しているようでありますが、死活問題になっている。いま総裁がおっしゃったとおりに、三つの駅をなくしてしまってどこかに集めてしまう。これが容易ならぬことになる。リンゴを生産しているのは青森ですから、農民にとりましては相当の、農産物の上では重要なウエートを持っている。これを出荷するにあたりましては従来と違った経費がかさばる、死活問題だと言っております。これは非常に残酷なことだと私ども思いますが、それは合理化で一つの駅へまとめてしまえば国鉄はいいかもしれません。そのかわりそこへリンゴを持っていく農民は自分でトラックを雇うなりトラックを買うなりしてわざわざその駅まで持っていかなければならない。セルフサービスだ。自分でやれるのはまだいいが、金を払って雇ってやらなければならぬ、そういうことになる。だから国鉄はそれで大いにもうかるかもしれぬけれども、そこにおける住民に対する被害というのは甚大ですよ。そういうことはこれはやはり私はまずいと思うのです。  それじゃ赤字でうまくないしというような話でありますからもう一つ聞きますが、岡崎から多治見へのいわゆる岡多線、これは谷口が言うだろうと皆さん手ぐすね引いていらっしゃると思うから聞きますが、これはどうします。四十五年十月に北野、桝塚駅ですか、合併して開業している。ところが開通しておりましても、人は乗せぬのです。貨物だけなんです。まあ多治見まで通じたら人を乗せるというのだろうと思いますが、いま開通しているのは、これはいま申しました北野、桝塚、ここにはトヨタという自動車の工場がある。その途中にはユニチカがある。そのトヨタの自動車やユニチカの貨物を載せている、人は乗せぬ。  これもはっきりしておきますが、四十五年の経営収支を見ますと、収入が二千三百五十五万円、経費が三億六百六十六万円。二千三百五十万円の収入を得るために三億円の経費を出している。これは一体どういうことですか。どうするのですか。
  160. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 岡多線の開業につきましては、これは先生御承知かと思いますが、あそこはすでに複線で工事をやって終わっております。ただ、まだ桝塚まででございますので、単線しか引いてございませんが、これは将来多治見まで、いわゆる岡多、岡崎−多治見までできましたときには、これは当然旅客輸送するわけでございます。現在あそこには非常にりっぱな並行道路がございまして、名古屋鉄道が一日百数十回のバスを運行いたしております。したがいまして私どもはいまあの工事、どんどん先をやっておりますので、あの先が一駅か二駅できた場合には旅客輸送するというつもりでおりますが、あの短距離を旅客輸送しても、あのバスの回数から申しましては乗る人がないということでありまして、私どもはいまのところは旅客輸送はやっておりませんが、いずれこれは旅客輸送をやるためにすでに複線で工事をしているということでございます。  またいまの経費、確かにそうでございますが、そのうちの、約三億のうちの二億八千万円ほどは、これは例のD線という線でございます。したがって、国鉄は建設公団に使用料を払わなければいけません。したがってその使用料、あるいは市町村納付金等が二億何千万円。三億の経費のうちの大部分は実は営業経費でないという状況でございます。したがって岡多線が将来延びた場合には、これは当然旅客輸送する。それまでできたものを使うということでございまして、一方それはすでに東海道本線の笠寺という駅に出ておったわけでございます。笠寺という駅が熱田の一つ手前にございます。その笠寺の出ておった自動車を全部桝塚へ移しまして、そうしてそのかわりその笠寺のあと地を別な貨物に使うというふうなことをやったわけでございまして、片っ方に移った以上は片っ方のあき地を十分利用しているということで、新規にトヨタのものを桝塚でやったわけではございません。笠寺から移したものでございます。
  161. 谷口善太郎

    ○谷口委員 それは将来つけていくということになってつけた場合には旅客も乗せるというのですけれども、これをごらんなさい。これはあなた方の宣伝誌でしょう。これはその駅の状況だ。もう自動車が一ぱい。これはトヨタの工場の前だと思うのです。こういう宣伝をやっておる。それは建設公団から借りているという形になっているらしいが、二十何年かたてば使用料を払っているこっちのものになるのでしょう。そういうものまで含めて経費で落としているというのは、そういう会計報告を出しているわけですが、そういうところにも問題があります。しかしいずれにしましても、将来ここにいろいろな開発がなされて、そこへ複線の、人も乗るあれをつけるというようなことをいっておるのです。  もう一つ私は聞きたいのですけれども、京都の奈良線、あれを一体どうするか、そういう意味からいったら。あれは京都−木津間に十の駅があるのです。その十の駅の中から三つの駅を無人化する。二つの駅を準無人化する。十の駅のうち五つですよ。この路線は、いま京都、奈良、大阪を控えましたあの全体、公害のない工場団地をつくるとかあるいは住宅地をつくるとかで、もううんと人口はふえている。だからあなた、総裁のところにも出たでしょう。ここは電化、複線化してくれという住民の要求が出ている。そのときに、逆に岡多線ではおそろしい赤字を持ちながら、ここでは無人化をやって廃線同様にしてしまうというやり方は、われわれは納得できぬです。一体どういう基準でやめ、どういうことで残していくということがわからないのです。どうです、こういうばかなことはやりませんか。
  162. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 奈良線は、私のほうでも京都−奈良間を結ぶルートであり、将来これは片町線とつないで、できれば京都−大阪間の第二東海道線にしたいというふうな気持ちまで持っている線でございます。ただし、それは京都の入り口のほうでございます。むしろ先生もよく御承知のあの線は、京都からしばらく参りますと非常に閑散な線になります。そういうところで駅員を配置しておったものを駅員をやめた、そのかわりもちろん停留所にしてバスと同じようにそれをとめる、そして車掌が扱うということでございまして、これは何も奈良線だけをやったわけではございませんで、全国的にこういう旅客駅の合理化をやっているわけでございます。ただ、その場合に、いろいろ安全の問題あるいは予報の問題等もございますので、場合によりましては人を置いてやっている場合もあり、また地元にお願いしてやっている場合もあるわけでございます。
  163. 谷口善太郎

    ○谷口委員 もうはっきりしていますよ。トヨタみたいな大企業のあるところだったらどんなに赤字でもやっていくし、京都はあなた閑散線だとおっしゃるけれども、あそこへ住民が一ぱいになるんで複線、電化にしてくれという陳情が出て、住民運動になっている。それでもやめる、やめるにひとしいことをやるということでありますから、つまり企業のためには損をしてもこういう岡多線のようなところでも大いに開発する。非常に大事な、日本のふるさとといわれる京都、奈良を結ぶ線路でも、もうからなかったら人も引き上げる、廃駅のようにしてしまうというやり方のようであります。  そこで、次に聞きますが、この専用車で貨物を運ぶ大企業、そういうような大企業ですね、に対しましては、営利割り引きとかあるいは包括割り引きとかいって、特別の割り引き制度があるようですが、これは実態はどうですか。
  164. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 営業割り引きと申しますのは、これも昔からあった制度でございまして、いわゆる何トン出せば何割引くという顧客誘致のための措置でございまして、これは何も大企業でなくとも、たとえば農協の場合にもございますし、あるいは出荷組合の場合にもございます。現にミカンだとかバレイショとかいうものはやはり割り引きしておりますし、これはある一定の数量がまとまり、そして自動車あるいは船から国鉄へ持ってきてくれるというふうな約束のもとに、いわゆる出荷責任を、何トン出すということをきめまして、そしてそれでもって割引をするということでございます。これは別に大荷主でなくても、先ほど申しましたとおり、農業関係の割引もたくさんいたしております。
  165. 谷口善太郎

    ○谷口委員 一々あなたの言うことは、ふに落ちないことばかりです。大企業はたくさんの荷物を出すでしょうが、農協がたくさんの荷物を出したって、これは一時的であったり、割引の対象になりますかな。これは、私はこういうやり方は、運賃は「原価を償うものであること。」という規定になっておりますね、運賃決定の原則として。この規定違反だと思うのです。たくさん出してくれるお客さまだからまけてやる、国鉄の人はそういうような言い方をしますよ。上得意だからおまけする。ひどいところになりますと、あなたは上得意だというので感謝状を出しておりますな。商売をやっておる。やがて何かおまけでも出すのじゃないかと思う。そういうやり方は私はまずいと思うのですよ。国鉄をそういうふうに考えるのはまずいと思う。ですからこの割引の制度の問題も、実際は、あなた方中心におって、きちんと原則的なあれを持っておってやるのじゃなくて、地方の連中に委任して自由にやらしているのでしょう。だから荷主さんの座談会なんか見ますと、もっとうまくたたけばまけてくれるのだと言っている。雑誌に書いている。そういうやり方で割引をやっているのですが、これは国鉄の運賃法第一条第二項の違反じゃないかと思うのですが、大臣どうでしょう。
  166. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいまの御質問でございますが、運賃法は総合的原価計算主義をとっておりまして、全体を見て運賃をきめている次第でございます。いまお話がございましたが、各方面にまかしている——何ぶんにも日本全国に鉄道網を持ってやっている次第でございまして、各管区、管区にそれぞれの人を配置いたしまして、それで適正な運賃あるいは割引をきめさしておる。先ほどから、包括輸送についての割引についていろいろの御質問でございましたが、私ども考えましても、包括輸送いたしますれば輸送量というものが確定をいたしてまいります。したがいまして、そうしてまいりますると、計画配車その他の点におきましても非常な便利が得られる。そういうことで、毎年の大体の輸送の需要、またそれに対する収入というものが確定をしてくるわけでございますので、そういう点につきまして、いわゆるスポットと申しますか、そのとき、そのときだけの輸送から比べますると、あらゆる点におきまして手数も省けまして、あるいは経費の節約の点にも非常に違ってくるのじゃないか。そういう点で幾ぶんの割引をいたしますれば、その貨物を輸送する者、また国鉄両方の利益ということを配分をいたしましてやっていることと思っている次第でございまして、特に資本家であるからということでやっているとは私は考えていない次第でございます。
  167. 谷口善太郎

    ○谷口委員 時間が切迫しましたのではしょらなければなりませんが、いずれにしましても、大企業の貨物輸送に対しましてはばく大な投資でもって、専用車をつくってやる、専用線をつくる、あるいはノンストップで特急、急行というような形でやりますけれども、特急、急行の料金も取らぬ。そういうように営業割引までやってやるというようなやり方をやっている。これは非常に露骨なやり方であります。実は国民はこういうことは知らなかった。私も今度調べるまで知らなかった。こんなことをやっているとは思わなかった。貨物の大半が大きな企業のものであって、これには特別に専用車をつくってやる、専用線をつくってやる、割引をしてやる、ノンストップで走ってやる、そういう輸送システムをとるという、至れり尽くせりやっている。初めて知ってびっくりしたのです。  そこで私、大臣、ここに一つ提案したい。今度の運賃値上げの案が近く出るわけでありますが、料金値上げは私どもは絶対反対です。当然やめるべきだと思いますが、しかし、大企業に対するこういうやり方でやっている貨物運賃だけは、この際少なくとも原価に見合うようにする。原価を償っていないんだから……。私、言いませんでしたけれども、ここに原価計算が出ている。国鉄の資料がある。原価に見合うような、そういう運賃に改定すべきじゃないか。これはいわゆる値上げのことじゃありません。つまり運賃を適正にするというやり方、これは断固としてやるべきだと思うが、大臣の御所見を伺いたい。
  168. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 先ほども私からお答えいたしましたように、国鉄の運賃、これは旅貨を通じましてもちろん適正が原則でございますが、個別的の原価計算主義をとっておりません。総合的の原価計算主義をとっている次第でございます。もしこれが個別的の原価計算主義をとりますると、たとえばローカル線のごときは、その原価計算主義によりまして、現在の料金よりはるか何倍というようなことになってまいりまして、そうなってまいりますると、地域格差の是正その他の点におきましても非常な障害が起こってくるというような点もございまして、そうして総合的原価計算主義をとっておりますので、そういう点につきましては御了承を願いたいと思う次第でございます。
  169. 谷口善太郎

    ○谷口委員 総合的原価主義の問題もいろいろ考え方がありまして、それはいまの国鉄のやり方ではそういうことになっている。旅客でも地方線はほんとうは赤字だろうと思う。そのかわり、都会の通勤着の圧倒的に出ている、たとえば東京の山手線あたり、これはもうたいへんなことだ。三百倍ぐらいの混雑の中で同じ運賃を出している。これは定期の規定がありますから、運賃を出している。ここでどっさりもうかるというから、そういう意味で総合原価主義というものはいい面もあると思う。この場合はやはり大荷主に対しては特別な対策をやっているのだから、これは是正すべきだと私どもは思うわけであります。  私はこのことだけ言っておりませんが、この国鉄の赤字の問題、これはいまその一つの重大な要因として貨物にあることを一応明らかにしてきたわけでありますが、まだ私どもはもう少し立ち入ってこの問題を検討したいと思うのです。それはまず減価償却の問題、これをひとつ考えてみたいと思うのです。資産再評価を実施しました昭和三十年度以後三十五年度、これまでは減価償却は大体年間四%以下だ。ところが三十六年にこれが五・九%にふえている。さらに四十年には一躍七・一%にふえている。それからずっと七%台ですね。高率で続いているのですが、どうしてこうなったか、これをまず聞きたい。時間がありませんから簡単に答えてください。
  170. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 減価償却制度は、御承知のとおり財産価格を維持するわけでございまして、そして現在国鉄の減価償却比率は、四十五年度におきまして六・六%でございまして、あと同じ政府企業で電電は一二・三%、あるいは民間の民鉄が九・二%、電力がやはり九・一%、ガスが一五%というふうに各公益事業は相当大きな償却をいたしております。しかし、国鉄は一番低い六・六%でございまして、ただ根拠は税法その他によりまして計算をしているわけでございます。
  171. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そこが間違いだと私ども思うのです。国鉄は、国鉄法第二条によって民法上及び商法上の営利法人じゃないのです。公益的な企業でありましても、たとえば私鉄なんかは営利法人です。国鉄は営利法人じゃないのです。だから減価償却で税法上の優遇措置が許される。だからもともと国鉄は定額法でずっとやってきている。ところがこれを定率法にしたのでしょう、一部分、特に車両なんか。それから四十年から耐用年数も帳簿上うんと短縮したのでしょう。だからどっさり取ることになった。あなたは、資産の消耗をここで回復するんだとおっしゃったけれども、それ以上に取っちゃって新しい社内保留をやって蓄積しているんじゃないですか。それを減価償却と称して経費に落としている。ここにやはり問題がありますよ。これは直ちに直すべきだと私どもは思います。  それからもう一つございます。これも私どもになかなかわからなかったのですが、修繕費の問題です。これも非常に高いのですが、どうしてこんなに高くなったかということですね。
  172. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいまのお話の減価償却費でございますが、これは同じ公共企業体の電電公社とほぼ軌を同じゅうしてやっているわけでございます。そしていま先生のお話の中で、減価償却費が社内留保されているというふうなお話がございましたが、これは貸借対照表をごらんくださいますれば、減価償却費は全部物にかわっているわけでございます。車両、施設等にかわっております。  それから定率法と定額法の問題、これももう御承知のとおり、ことに最近の新しい車両などは非常に減耗がはなはだしい、陳腐化がひどいということで、これは国鉄、私鉄を問わず車両の定率法は普通の常識になってしまったわけでございます。また機械類もさようでございます。したがいまして、現在の国鉄の減価償却費は、電電公社とお比べくださればすぐわかるわけでございますけれども、私どもとしては、決して過大なものではないというふうに思っているわけでございます。社内保留はされてないということ、その点だけは私のほうからはっきり申し上げさせていただきます。  また修繕費は多いとおっしゃる。実はそこの中に人件費が入っております。私のほうでは、たとえば、車両修繕費あるいは保線費、あるいは保電費というふうな修繕費の中には、その保線なら保線に従事する職員の給与は全部修繕費で計上いたしております。これは会計上、中間勘定といたしまして修繕費で決算するようになっておりますので、毎年のベースアップで修繕費がふえてくるわけでございます。したがって修繕費が毎年ふえるという形でございまして、修繕費の中の、端的に申し上げますれば人件費と物件費をごらんくだされば、すぐ御了解いくことというふうに存じます。
  173. 谷口善太郎

    ○谷口委員 減価償却の問題ですね。社内保留しているという意味は、資産の減価償却をしていく以上に取っちゃって、それでもって工事費その他に使っているということを私は指摘している。これは私が指摘しているんじゃないのですよ。前の石田総裁がそう言っている。これは石田総裁は、国鉄の減価償却についてこう言っています。私やなんかのコモンセンスからいうと過剰だと思う、こう言っている。よけい取っておる。だから国鉄は——まあこのことだけじゃなくて、三兆円ぐらいの借り入れ金もありますが、政府の出資金、資本金がわずか七十九億ぐらいでしょう。前石田総裁に言わせますと、国鉄の資産は実に二十数兆円あると言っているじゃないですか。これはどこから来たのですか。三兆円はなるほど借金しておるが、みんな料金から蓄積したんじゃないですか。そういうやり方で減価償却をやっているのは、これはいかぬ。そして赤字ができた、こうあなた方は説明して値上げをやろうとしているんだ。  それから修繕費の問題ですが、これもこの間、用意している間に聞きました。人件費が入っている。これは三十七年ぐらいあたりから人件費がこの中に入った。人件費の高騰がひどいので修繕費が非常に高くなっている——なるほど三十七年度に、この修繕費の問題については、工事費と修繕費とをきちんと分けろという依命通達を出していますね。そのときから四、五年はまことに平穏な率でやっておる。それがいつの間にかくずれちゃって、いまはそのときから見ますと倍ぐらいになっておる。それにつきまして、どうしてふえたかということを聞いたら、おっしゃったとおりに、人件費が中に入っているからだ。大体国鉄というところは、工事費やら人件費やらごちゃごちゃにしておって、もう魔のようなところだというふうに言うのが一般の批評です。これも時間がありませんから、みんな私は持ってきているが……。石川何とかという局長さん来ていらっしゃると思うが、修繕費なんかは実はわからぬのだと書いている。非常に高い。四十五年度八・三二%、金額にして二千九百二億の金を修繕費として出しておる。私ども、これ納得できないです。  私ほんとうに時間がないのが残念ですが、人件費のことで計算してみたのです。一体人件費が幾ら入っているかといったら、七〇%から八〇%だという話だ。それで、毎年の修繕費の中で七〇%人件費だと思って計算してみた。確かに人件費はこの十年の間に二・三倍になっておる。ところが、そうして人件費を取ってみますと、残るのはいわば資材費でしょう。この資材費を見ると、大臣、聞きなさいよ、この資材費のほうは、十年間ちっとも値上がりしてない。率がですよ。だから国鉄は物価の絶対に上がらぬところに住んでいるんだろうというふうに私は思っているわけなんですがな。大臣、私どもはどう考えてもよけいだと思う。八・何%、二千億なんです。この中には、現場の労働者はこう言っている。改良費だとか工事費に類するものをみんな修繕費で落としている。これは科学的な発言じゃありませんからわれわれはわかりませんが、やはりここでも若干の厳重な態度でもって考えるべきだ。  で、時間がないし、ここでぐずぐず言い出しますから、私、急ぎますが、修繕費の問題、三分の一でもそれを実際に工事費に回したら——これは資本費ですからね、これを見ると。それから減価償却でも、先ほど申し上げましたように、定率法にして耐用年数を減らしたりしてよけい出している。石田前総裁そう言っているんだから。これを半分ぐらいにすれば、それでもって千四百や五百は出るのです。赤字はなくなるのです。そういう状況だと私は思うが、大臣どうお考えになるかをお聞きしたい。
  174. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 減価償却の問題でございますが、これはただいま総裁からも御答弁申し上げましたとおり、ほかの各公社との比較もございまして、それよりも低い減価償却率で償却をしているということでございます。しかもこれは、年々会計検査院の検査を受けておりまして、妥当であるという判定を受けておる次第でございます。  また、ただいまお話しいただきました赤字の問題でございますが、すでに減価償却前に赤字が出てきている、こういうふうな実情でございまして、これをいかにして健全に持っていくかということでただいま私ども非常に苦慮をしている次第でございまして、いろいろまた御鞭撻をいただきましてその赤字解消につとめてまいりたい、こういうふうに思っている次第でございます。
  175. 谷口善太郎

    ○谷口委員 公共企業でありますから、当然世間的に普通の減価償却をやるべきだ。さっき総裁は、電電公社はもうやっているとおっしゃるけれども、人がやっているからやらなければならぬということはないのであって、間違ったことは電電公社もやっちゃいかぬ。そこに問題がありますよ。よそがやっているからやりますというのは、それはうまくないですな。そうじゃなくて、公営企業としては、実際に三十年使えるものを帳簿上二十年に減らすとか、それから正当に減価を償却しているだけ差し引いていけばいいのに、それ以上に、たとえば十年の耐用年数で定率法でやりましたら、三年ぐらいで半分以上償却するのでしょう。その金は遊んでいるわけじゃないんであって、それでもって工事をやったりいろいろなことをやっているということは、正当な原価償却以上にたくさんのものを保留するということになる。資本費になっているということ。これは大蔵大臣いらっしゃるからおわかりだろうと思う。大臣は答弁しないと言ったから私は答弁を聞きませんけれども、そういうやり方でやって、そうして赤字ができた、赤字ができたと宣伝して、いまにも国鉄はつぶれるような言い方をして、そして料金値上げをやるてこにする、国民を追い詰める、そういうことにこういう粉飾上の赤字をつくってやっているということは、私はやっぱり承知できぬですよ。  これは国民の足であり、国民の日常生活の実際の動脈なんだ。山のすみずみまで国鉄のあることによって、どんなに国民は力強く思っているかわからぬ。国鉄はそういうものでしょう。大石油メーカーのためにあるんじゃなくて、一億国民のためにあるのでしょう。ところが、その一億国民に対して、料金を取るためにつくった赤字でもっておどかしている。これは石田さんがそう言っているのですよ、たくさん取っていると。それはまずいというのです。それを私どもは言いたいのです。そうではなくて、ほんとうの国鉄の姿を国民の前にさらけ出して、どこにほんとうの財政上の困難があるかを国民全体で考える。そうやらないで、料金をまけてやるのも秘密、大資本のために引き込み線をつくってやるのもわからぬようにする。そして、前の総裁は長くやっていらっしゃった。その人すらやはり、たくさん取っていると言うような減価償却のやり方をやっているということ、これはまずいので、そこらを正していけば現在が——それは国鉄は非常に裕福で困難がないとわれわれも言いません。あとで申しますが、やはり三兆円に近い借り入れ金を持っている。その利子は毎年二千億こえるのでしょう。これは国鉄の経営の上で大きなガンになっていることは明らかです。そういう問題もある。だからその全体の問題でどうするかということをきめるためには、やはり国民にほんとうのことを言わなければならぬし、やることは正当にやらなければいかぬということを私どもは強調するわけなんです。いま見てきただけでも、それは貨物輸送の全体の割合から見れば、まだ半分こえた程度だ、六〇%ぐらいだと思いますが、そういう大資本のウエートがある。これに対しては至れり尽くせりのことをやっておって、そして赤字だといって国民から金を取るというやり方はまずいので、これに対しては正当な料金を取ってやるということを、まず隗から始めよでありまして、正しいことは国鉄からやはり正していかなければならぬ。そうしなければほんとうのことにならぬというのが私どもの主張なんです。だから大臣は、それは国鉄は正しいことで遺憾なくやっておるんだということをおっしゃっても、いま申しましたとおりです。大臣もほんとうに入って見てくださいよ。私、ほんとうに今度少しだけ国鉄のことを勉強した。それはひどいですよ、知れば知るほど。全く伏魔殿といってもいいんじゃないか。  まあこれはやめましょう。それは今度の十カ年計画でも、たとえば地方線を廃止するという計画がありまして、そのために今度は政府予算を組んだ。五年間とにかく置いておいて、そのためにこれの補助をする、自治体も負担せい、政府もこれだけ出すという予算を組んだ。これがパーになりつつあるでしょう。私ども地方線はあくまで残すべきだという立場に立ちますから、これはけっこうだと思うけれども、これはまゆつばものだと思っている。こう言っちゃ済みませんが、ある新聞は、自民党さんは今度の選挙で勝利したいので、地方線廃止するなということで、そういう手を打っているんだろうというようなことも言っている。私はそんな失礼なことは考えませんが、そう言っている。そういうことでありますから、選挙が済んだら何をやるかわからぬことははっきりしているでしょう。それはまずいということを私は言いたいわけだ。だから大臣、やはりこの点は相当突っ込んで私は調べてみてもらいたいと思います。  最後に、借り入れ金の話が出ましたからその問題に入りますが、三兆円の借り入れ金、二千億の利子、これはやはり国鉄のガンだと思うのです。特にこの半分は大銀行でしょう。政府保証債もたくさんありますけれども、大銀行で利子も高い。これが国鉄の財政を非常に困難におとしいれていると思うのですが、私どもは、国鉄が公営企業として国民の足であり、先ほど申しました国民生活の動脈としてある以上、本来その建設費はすべて公共投資でやるべきだという意見を持っています。公共投資で道路をつける、そこを自動車が通る、何も建設費の負担はありません。通るときは料金を出している。それは料金はあります。国鉄だって、鉄道をつけるのに公共投資でやる、そこを通るためには旅客から料金をもらう。当然です、運営費が必要になりますから。公共企業としてはそういうやり方をやるべきだという主張は、前から共産党は持っております。しかし、いますぐそうせいと言っても、なかなかできるわけじゃないので、当面私どもは、借り入れ金償還期限をやはり相当延長する。それから、国による利子の補給といいますか、補助ですね。これをやはり大幅にもっと引き上げる必要がある。それから独立採算制を国鉄はとっているわけでありますが、これはやめて、必要な設備投資は今後やはり国家資金として国家の財政から出していくべきだ、そういう意見を持っておるのでありますが、これで初めて国鉄が健全な発達をすることになるのじゃないかと思う。これについての大庭の御所見を伺いたいと思います。
  176. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 まず先にお断わり申し上げたいと思う次第でございますが、国鉄はあくまでも国民全体の足でございまして、一部資本家の足でない、私どもその確信をもちましてこれからも指導してまいるつもりでございます。ただし、御承知のとおり、いま国鉄は再建の点につきまして非常な大きな問題をかかえておりますので、増収努力はあくまでもさしていく。これはもちろん、そういったような点におきまして不合理がございましたらば、どんどんとその点は是正してまいるつもりでございます。それからそういうことでまた国会の御審議を願っている次第でございますから、必要な資料はどんどんと出させるつもりでございまして、いやしくもそういう暗い陰というようなもののないように、それを払拭するように進めるつもりでございます。  それから具体的のお話の、国鉄のいままでの長期債務でございますが、大体において三兆、そのうちの二兆は政府管掌あるいは政府保証債でございます。この二兆につきましては、全部政府が十年間はたな上げをいたしまして、その利子並びに孫利子の補給までするということでいま臨んでいる次第でございます。また、これからの資金調達につきましては、四十六年度からは四分五厘まで引き上げまして、そうして四分五厘以上の利子につきましては国庫が全額負担をするという態度で臨んでおりまして、これらの点につきましては、いままでにない思い切った政府の財政出資を見て、今日せっかく邁進しようとしている次第でございますので、御了解を願いたい、こう思う次第でございます。
  177. 谷口善太郎

    ○谷口委員 確かに今度は、政府は国鉄に対していままで以上にいろいろな点を配慮されたようであります。これは私ども認めます。たとえば政府出資金は六百十一億、予算で見ますと出すことになっている。利子補給といいますかそういう形でも、いまおっしゃったように政府保証債の問題ではかなりのことをなさる。しかし大臣、三兆円のこのガンをどうするかということにつきましては、何もやっていないのですね。その政府関係の債権に対してはこれは利子補給する、これも限度がありますね。またある部分につきましては、利子を払うために債券を出して、その利子をやる、孫利子ですね。質に入れておって、困ってきたからもう一ぺん質に入れて利子を払うというようなこと、これはだれでもみんな笑うのです、こんな話をすると。そんなことをおやりになっている。しかも先ほど申しましたとおり、運賃料金を大幅に引き上げるというのでしょう。そのことと別じゃないでしょう。また、そうして引き上げて十年間に六兆三千億、これは国民が負担するのです。そのうちの大部分が旅客でありますから、これは普通の国民生活の中で負担する。しかも国鉄労働者十一万の削減、これは冒頭に申しましたとおりです。これも首切りしろということで政府は金を出している。援助金を出している。だから、政府はかなりいろいろな点で来年度の予算では配慮したとおっしゃっても、これは逆に作用しているのじゃなかろうか。むしろ出資金なんかは、大資本のための貨物輸送力を増強する——今度のダイヤ改正なんかごらんになったでしょう。貨物輸送のために特急なんかどっさりふやしておる。そのかわり鈍行を減らした。これは旅客でもそうやっておる。もうけ仕事、大資本のため、こういうことにはやる。しかし、一般の国民のためにはやらない。つまりそういう大資本のための輸送力増強をやる、あるいは不況対策としての新幹線等の建設——大臣は首を振りましたけれども、経団連の人たちは集まってそう言っています。ここへ私雑誌を持ってきている。不況対策で公共投資をやってくれるなら、国鉄の新幹線だとかハイウエーだとか、こういうところへ集中的に投資することが望ましいということを言っています。つまり、確かにいろいろな建設のために政府はいままでよりはお金をお出しになるけれども、それはむしろ大資本のために不況対策の公共事業としてなされるという性格に、好むと好まざるとにかかわらずなっているということです。だから、この点では私はやはり非常に問題があると思う。政府はお出しになったからけっこうだというわけにはいかぬ、ここへちょっと書いてきましたが、今度のダイヤ改正は旅客、貨物ともに特別列車を大幅にふやして、他方通勤、通学の普通列車を一千本以上も減らしている。もうかることだけやる。そういうことでありますから、政府の財政援助は、まさに国鉄のこのような大資本本位のもうけ中心の政策の推進力になったといわざるを得ないわけなんです。これはもう大臣、三方一両損ではないですね。もうけるのは大企業で、国民と国鉄労働者は大損をする。国鉄はそのまん中にあって、道具として使われているにすぎぬということになる。私は非常に真剣にこのことを言っているのです。冗談に言っているわけじゃないのです。ただけんかするために言っているのじゃないのです。国鉄は国民の全体のための公共企業であるなら、すべての建設は公共投資でやるべきだというのは、先ほど述べましたとおりに私どもの主張です。しかし、当面少なくとも三兆円の借り入れ金、この重圧を取り除くということのためにやるべきである。政府は責任をもってこれに取っかかっていくということが、ほんとうの国鉄の健全な再建方向になるというように私どもは思うのです。それは基本課題の一つだと思うのです。だから、重ねて大臣のお答えをいただきたいのですが、やはり国鉄の問題は重大問題で、いま三Kの一つといわれている。それほど国民生活影響があるのです。これを料金値上げすることで解決するというやり方はいかぬですよ。そこをひとつ考えてもらって、私どものこの提案について、もう一ぺん大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  178. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 るる、いろいろ貴重な御意見を承りましたが、国鉄の料金、御承知のように公共料金は財あるいはまたサービスの提供によりまして受益を受ける、その対価としてきめられている次第でございまして、したがいまして、特定の人がその提供を受けた場合におきましては、合理的な経営のもとにおける適正原価を支払うということが原則でございます。しかしながら、国鉄の場合はその公共性、また国民の陸上の足の動脈としての重要性を考えまして、特に政府におきましても、先ほど資本が八十九億円は少ないじゃないかということでございますが、現物はすっかり国家が出資をしている次第でございます。また、今回よそに例を見ないようなそれだけの出資をしている次第でございますが、やはりそれを利用する利用者が負担をするか、一般納税者に負担をさせるか、この国家の金もわれわれ納税者の金でございます。これのどっちに負担をさせるかという割合の問題だろうと思う次第でございます。特定の利用者に負担をさせないでもって、納税者に非常に多くの負担をさせた場合に、どういうことになるかという問題でございます。国家の財政上、これは私が言うべきことじゃございません。大蔵大臣のあれでございましょうが、あるいは福祉の問題あるいは道路の問題、いろいろの問題でやはり財政支出が多いというときに、国鉄に対しましてこれだけの一般の納税者が負担するということは、私は容易ならぬことだと思う次第でございます。したがいまして、国鉄はますますもってそれを体しまして合理化をしなければならぬ。国鉄の体質を十分近代化さしていかなくちゃならぬ。それがために、やはりあるときにおきましては駅の集約もしなければならぬ、そしてまた人員の合理化をはからなくちゃいかぬ、自動化をはからなくちゃいかぬというような点があると思う次第でございます。  また、実際問題といたしまして、いろいろ需要に応じますところのあるいは直通列車であるとか、あるいはコンテナ化であるとか、あるいはフレートライナー化であるとか、いろいろの問題につきましてやはり創意くふうをこらしまして、国民の皆さまの利便をはかるようにしなければならぬと思っておる次第でございます。そういう点で、私ども今回財政再建促進法の改正案を出した次第でございますし、また一部利用者の皆さまの御協力を願った次第でございますので、その審議の過程におきまして十分御指摘をいただきまして、御了解を願いたい、こう思う次第でございます。
  179. 谷口善太郎

    ○谷口委員 あともう二分ほどですから非常に残念でありますが、大臣、そのお考えがやはり私どもは納得できないのです。あなたいま、税金で払うか利用者が料金で払うかということをおっしゃったのですけれども、私どもは、公営企業ですから税金で建設はせい、だから過去の建設やった場合、この費用は政府はちゃんとこれに手当てしてやれ。運営の上では金かかりますよ。(発言する者あり)これは当然利用者はその料金として出すべきだろう。だから、こういう根本の問題が解決すれば、たとえば道路なら、先ほど申したとおり、公営企業としてやるわけでしょう。そこを通るときには若干料金を取るということですね。なぜ国鉄はこれができぬかというのがわれわれの考え方です。線路をつけるかセメントでやるかの違いなんです。そういう原則に立てば、今日までの建設の上で銀行からたくさん金を借りておる。これがガンになっておる。これを何とか手当てして、国鉄のかせをはずしてやれ、今後は政府としてやっていけ、そのあと運営する上でこれだけ料金が必要だということになれば国民は納得しますよ。ところが、大銀行へ高い利子を払うために料金出せといっても国民は納得できぬ、こういうところが問題の本質なんです。ですから、私はこれ以上申しませんけれども、そういう点で今度の運賃値上げの問題は非常に重大な意味を持つ。いままでのように押し切って運賃値上げをやるというようなことをやったら、これはたいへんな政治問題になりかねないのです。ぜひとも、できるならこの際、今度新しく提案されようとしている法案なんかは、ひとつ取り下げるというふうに御配慮願いたい。  税金でやるのと同じことだという不規則発言がありますから一言言っておきますけれども、税金は、日本の税制は大蔵大臣、あまり完全なものじゃありません。しかし、一応所得税など、これは高率累進になっておる。つまりたくさん負担能力のあるところから取ってくるという形になっておる。しかし、料金はどんなにえらい人も、どんなに大金持ちも、普通のサラリーマンも、国鉄の料金をサラリーマンだからまけてくれるということはない。もっとも貨物のほうは、大企業にはまけてやっておるという例はありますけれども、しかし、一般国民にはまけてくれぬ。そういう意味ですから、やはり料金でやるのは、いま申しましたように運営費はそうやるべきであって、建設費、したがってまたそのためにできた借金は、やはり国として、国民が税金を通じて負担するという立場をとって、国民の国鉄としてきちんとやっていくというやり方が基本だろうと私は思うのです。これはあなたと話してもおそらく並行線だから、これでやめます、ぜひひとつこれは最後にお願いしておきますが、今度の運賃改定案、これはどうも国民は納得できませんので、やはりずっと押えてもらって、あらためて国鉄の問題についてはほんとうに国民が納得できるようなそういう案を持って国会に出てもらいたい、こういうように思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  180. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて谷口君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  181. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 この際御報告申し上げます。  去る十四日、分科員の配置及び主査の選任につきましては、委員長に御一任を願っておりましたが、分科員の配置につきましては公報をもって御通知いたします。  なお、各分科会主査を次のとおり指名いたしました。        第一分科会主査 森田重次郎君        第二分科会主査 野田 卯一君        第三分科会主査 田中 正巳君        第四分科会主査 植木庚子郎君        第五分科会主査 松浦周太郎君 以上御報告いたします。  次におばかりいたします。  分科会審査の際、最高裁判所当局から出席発言の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは委員長に御一任願いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  182. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  183. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これより、去る二日の楢崎君の質疑に関し、厚生大臣より発言を求められております。これを許します。斎藤厚生大臣
  184. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 先般楢崎委員から御質問がございまして、あと事情をよく調べてから御答弁申し上げると申し上げました点について、御答弁申し上げます。  終戦後ブーゲンビル島に残留していました第十七軍は、昭和二十年の十月十七日の大赦令の施行を知らないまま、昭和二十年十一月以降も軍法会議を開きまして、逃亡罪によって六十五名が有罪の判決を受け、刑に服しましたが、そのうち五名が収監中死亡をいたしております。これらの者の処遇につきましては、当該裁判が大赦令施行の日以後に開かれたものであるということを考慮いたしまして、恩給法及び戦傷病者戦没者遺族等援護法上は、これら受刑者は受刑の事実がなかったものとして取り扱うことといたし、生存者につきましては普通恩給を、死亡者につきましては遺族年金を請求するように、この六十五名の名簿を各都道府県に通知をいたしまして指導してまいっておる次第でございます。  その結果、現在までのところ、普通恩給権がある者、これは在職期間十二年以上の者でありますが、につきましては三十名が、そして遺族年金につきましては三名が裁定になって受給をいたしているというのが現状でございます。
  185. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 楢崎君に申し上げますが、楢崎君の持ち時間は終了いたしております。その点を御考慮の上御発言を願います。楢崎弥之助君。
  186. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 特に質疑の時間を与えていただきまして、ありがとうございました。常識の時間で終わりたいと思います。  この際、たいへん御苦労なさいました横井庄一さんに対する国の援護について、お考えがあればお伺いをしておきたいと思います。
  187. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 国の一般の援護につきましては、普通の法律に基づいていたしたいと思っております。そのほかに、いま一般からいろいろ見舞い金というようなものが厚生省にも送り届けられておるわけでありますが、それらは十分管理をいたしまして、横井さんが退院をせられましたら、これらをもとにせられて十分社会に復帰せられるように、できるだけの御指導を申し上げたいと存じております。  なお、病院から退院せられましても、やはりときどきは健康診断その他をしなければならないと思いますので、居住せられるところの国立病院でそういう配慮をさせたい、かように考えております。
  188. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまさら申すまでもなく、法律というものは社会の秩序を守るために、人間の条理、道理、そういうものを規範として定着させたものであろうと思うのです。もし法律のほうが人間の常識なり条理あるいは社会通念に反するような場合には、その法律のほうを社会通念なり人間の常識に合わせる必要がある、これはわれわれ立法府にある者の責任であると思うわけであります。また法は公平でなくてはいけない。ところが横井さんと同じようなケースの人が、実は非常な汚名のもとに今日まで苦しんでこられたというケースがあるわけであります。私はきょう、当委員会が再開される前に、瀬戸山委員長に対して、いわゆるブーゲンビル島関係の該当者の一部の方のお訴えがなされたのを、そばで立ち会ったわけであります。私はそのお訴えを聞きながら、いまさらのように軍国主義の残したつめあとの傷の深さあるいは戦争の悲惨さというものを痛感させられたわけであります。戦後二十七年たった今日、どうして軍刑法の亡霊が生き続けておるのであろうか。総理は、かつて沖繩の返還なくして戦後は終わらないという名言を吐かれました。しかし、このような軍刑法の亡霊が今日も生き続けておる、そういうことをなくすることなしに戦後は絶対に終わらないということを考えさせられたわけであります。  そこで、いまも大臣から御報告があったわけでありますが、もう一ぺん整理してみますと、二十年八月十五日に戦争は終わった。そして二十年十月十七日に勅令第五百七十九号による大赦令が出され、その翌年に、つまり二十一年の一月二十八日に実はこのブーゲンビル島の敵前逃亡関係は臨時軍法会議なるものが開かれて、そして二十一年二月二十七日佐世保に航空母艦の鳳翔で送ってこられた。翌二十八日から長崎刑務所に服役をさせられ、約六カ月、大体二十一年の八月七日に全部出られた。その間、その六十五人の消息を区分けしてみますと、これは資料によるわけでありますが、獄死された方が五名、非常に栄養失調でこられましたから、刑執行停止で出獄された方が二十五人、そのうち大赦の適用を受けられた方は二人です。そしてまた大赦出獄の方が二十八人、仮出獄、これは大赦該当でありますが、一人、出獄の日が未詳の人が一人一これは大赦が適用されておりません。なお、この未詳の人で大赦該当の人が三人、全然わからない人が二人、こういう内訳になっておるわけであります。  そして今日、この方々はどういう取り扱いになっておるかというと、この六十五名のうち五名は獄死され、その五名の獄死されたうちの三名しか遺族年金を受けられていない。それからまた、あとの六十名のうち三十名がいま御報告のとおり恩赦を受けられた。四名の方が該当しない、年限数が足らなかったのでしょう。結局二十六名の方がいまだ消息不明であります。  なお、この恩赦の恩典に浴されるようになったのは、自民党の中野四則先生やあるいは田中正巳先生等の御尽力もこれあり、四十五年の法改正によってそういうお金の点は解決をした。ただ、敵前逃亡罪というその汚名は今日まで生き続けておるわけですね。その証拠には、いわゆる逃亡の期間は恩給年数に加算されていない、それを見てもわかるわけです。私は、そういう点で、まず恩赦が二十年十月十七日に行なわれた、それはどういう方法で戦地、いわゆる戦場の現地に伝えられたのか、その方法がおわかりだったら明らかにしていただきたいと思います。
  189. 中村一成

    ○中村(一)政府委員 お答えいたします。  大本営は、直ちに南方総軍に対しましてそのことを連絡をいたしておるようでございますが、ブーゲンビル島の十七軍につきましては、遺憾ながら、それが伝わったかどうか、どういう方法でいったかということが分明でございません。
  190. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これが伝わっていないといのは、終戦直後の混乱はあったとしても、何としても私は国の責任がそこにあろうと思うのですね。現実に伝わっていなかったのだから、そのためにこのような問題が出てきたのです。  では次に、長崎刑務所に服役させられたのですが、長崎刑務所長は知っておられたであろうと思うのですね。それがどうして三カ月も、あるいは長い人は六カ月も服役させられたのか、その辺がよくわからないわけです。
  191. 中村一成

    ○中村(一)政府委員 私どものほうで調べましたところによりますと、その三カ月間は、長崎刑務所におきましていろいろと事実関係を調べておられたというふうに承っております。
  192. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは必要であったかもしれませんが、しかし私どもの調べたところでは、一応刑執行書など見れば罪名が書かれておったのですから、私は、即座にそこで判断がなされるべきであったろう、このように思うわけです。  そこで、これはちょっとブーゲンビルとは別のケースですけれども、やはり同じようなケースで、投降を拒否して、むしろ戦陣訓を全うずるために、投降はいやだということで武器を持ったまま、抵抗するためにその投降する部隊を離れた。そしてあとで本隊に帰ったら、これが敵前逃亡だというのですね。まるで常識に合わない。しかも、そういうケースですから当然武器を持っておられたと思うのですね。その武器を持っておることが今度は横領罪ということで、たとえ敵前逃亡のほうの罪は大赦令で消えたとしても、横領罪というものが残って恩赦の対象にならない。こういうことも私は全く常識外であると思うのですね。  そこで、ブーゲンビル関係ですが、二十六名の残りの方について、これは調査中でございますか。また、いつから調査されておりますか。
  193. 中村一成

    ○中村(一)政府委員 この方々につきましては、ただいま都道府県援護課を通じまして調査いたしておりますが、この調査を開始いたしましたのは、最近におきましてこの問題につきまして問題が起こっておりますので、そこで調査を始めたわけでございます。
  194. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 結局、私がせんだっての予算委員会で取り上げたからやっと調査に踏み切られた、こういうことでございますか。
  195. 中村一成

    ○中村(一)政府委員 具体的に調査を始めたのは、先生のお話がございましてからでございます。
  196. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がございませんから、そろそろ結論に入りたいと思うのですが、経過を私調べてみますと、厚生省は一貫してこのようなケースに対して、大体裁判自体が行なわれたことが間違いである、だから裁判自体がなかったものとして考えるべきであるという考えでずっと、法務省との関係がございますから来られたというふうに、資料では私承っておりますが、そのようでございますか。
  197. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私もそのように聞いております。  それから調査は、四十二年にこの方針を決定いたしまして、そのときに六十五名の方々の当時の住所地と思われる各都道府県知事に調査を言いつけまして、そして先ほど申しましたような結果を得たわけでありますが、その後何とも言うてこないのはまだわからないんだなというのでほうっておいたというのは、これはあるいは怠慢だと言われればそうだと思いますが、先生の御質問がありましたので、またもう一度催促といいますか再調査をいましているという現状でございます。
  198. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 法務大臣にお伺いをいたしますが、経過は明白であるわけですね。それで、このような裁判があったこと自体も大体おかしい、これは私は常識であろうと思います。また国民もそういう常識であろうと私は思うのです。  これに対して法務省は、このような厚生省の考え方に対して、判決言い渡し前において赦免を得たものであることを証明するというような立場で、裁判の取り消しという表現は困る、それで受刑の事実がただなかったものとして取り扱うということで来られておるわけですね。それにいくとやはり敵前逃亡罪というものは残るわけなんでございますが、もうこういう矛盾が明白な段階でございますし、まだ、例の吉池事件に対する東京地裁への不服申し立て、つまり請求取り消しに対する取り消しの裁判もいま係争中でございますが、こういうことも含めて法務大臣のお考えをお伺いしておきたいと思います。
  199. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ただいままでそういうような話を当局は聞いていないようでありますが、もちろん、法律の効果、判決の効果というものを消すという筋合いのものではないかもわかりません。ただ、新しい事態、その事態、事態に応じて考え方をどういうふうに持っていくか、これは犯罪という関係ではなしに、それに対応して考えていくということは、私は考えていいことだと思っております。
  200. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私の手続上のミスで防衛庁長官がおいでにならないのですが、官房長官にひとつお願いしておきたいと思うのですが、けさの朝日新聞朝刊によりますと、陸幕の見解が載っております。私は、この陸幕の見解はまことに当を得た見解である、このように思います。すなわち、昭和二十年八月十四日のポツダム宣言受諾と同時に日本陸軍は解消した。このため、陸軍軍人を陸軍が処罰する陸軍刑法、軍法会議法は無効となったという解釈で、終戦後開いた軍法会議の判決は無効という見解である。そして、もし現地の人たちがそういう大赦のこととかそういう法律を知らなかったら、むしろそういうさばきをした人が不法監禁、そういう形になるんだという見解ですね。私は、この見解は当を得たものであろうと思います。それでこういう点は、官房長官のお手元で、この陸幕の見解というものを、これはいわゆる正規の見解であるかどうか、ひとつ明確にしておいていただきたいと思います。  そこで結論に入りたいと思うわけですが、いずれにしても、いま法務大臣も現実に即してということであります。そこで、これはもうもともと裁判がなかった、そういうことで処理をしてもらいたい。処理の方法についてはいろいろ困難な点もありますが、しかし、これは官房長官にひとつお願いをしておきますが、閣議ででもこの処理の方法を早急に考えていただいて、それでこのような罪名がもう消えるように、この汚名がそそがれるように、ひとつ早急な御処理をお願いをしたい。  そこで、もしそのようになりますと、これはやはり国の責任です。今日までそのような方々はいわれなき汚名のもとに、日常生活においていろんな苦難を受けて生活されてきた。あるいはからだが弱って、しかも刑務所に入れられた、そのためにさらにからだが弱って、そして刑執行停止というような形で出られた方もあるし、今日その方々がどのような状態であるかわからない。あるいはそのために死期を早めた方があるかもしれない。これは私は、当然国家の責任問題が出てこようと思う。その際には、ただ恩給をやればいいんだ、あるいは遺族年金をやればいいんだということとは別個の問題として、私は国家の責任による補償と申しますか、賠償の形が考えられなくてはこの問題は解決しない、このように思いますが、最後に官房長官のお考えを承りたいと思います。
  201. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは私もおととし、中野四郎先生から話を聞いて、それから議員立法されるときにサインをしたことを記憶いたしております。  したがいまして、きょうの陸幕の見解も私は読みましたが、私のしろうとなりの法律的な知識の中では、ごもっとものような感じがいたしております。しかし、法体系の中でこれを定着させるだけの私、今日まだ検討の時間がございませんので、ただいまおっしゃいました御趣旨を体して、十分検討をさしていただきたいと思います。
  202. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいま前向きの御発言を承ったわけですが、実は、これはやはり佐藤内閣としてこの問題はもう片づけてもらいたい。それで、当予算委員会は、いまのスケジュールでいくと二十八日までありますし、最後の総括は二十七日、二十八日が予定されておりますので、その二十八日までの間にひとつ機会を得まして、佐藤総理からこの問題に対する確たる御見解を承れますように、委員長におかれましても御協力いただきますようお願いを申し上げて、質問を終わりたいと思います。委員長のお考えを承れたら……。
  203. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 適当な取り扱いをいたします。     —————————————
  204. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 長続いて、外務大臣から発言を求められておりますから、これを許します。福田外務大臣
  205. 福田赳夫

    福田国務大臣 先般の当委員会に提出された政府の統一見解に関しまして、その内容の解釈について論議が行なわれましたが、政府の解釈を明らかにいたします。  台湾は中国、すなわちチャイナの一部であるとの認識は、従来政府が述べているとおりであり、この統一見解の「等」の部分にそれを含ませていると御理解願いたいと存じます。     —————————————
  206. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 次に、安宅常彦君から、先般の外務省情文局長の発言について質疑が行なわれました件について質疑を許しますが、先ほど申し上げましたが、安宅君の質疑の持ち時間は済んでおりますから、それを御勘案の上お願いいたします。安宅君。
  207. 安宅常彦

    安宅委員 この間の件について、委員長の意を体しまして、なるべく早い時間に解決をしたい、私はそう思っております。したがって答弁をされるほうも、そういう立場でひとつ御協力を賜わりたいと思います。  和田情文局長から、「昭和四十六年九月二十五日山形県勢懇話会における講演について」という文書が私どもの手元に来ております。この文書を見ますと、私がこの間外務大臣質問をした際、本人から、一言もしゃべっていない、速記もなければテープもない、こういうことを本人が言っておるので、そのことばを信用するという立場をとる、こういう外務大臣からのお話がありましたが、これとはたいへんに違う。もう一つは、せんだってこの問題をいろいろと検討するために理事会を開きまして、和田さんを呼んでいろいろ尋ねました。委員長もその質問をされたわけでありますが、そのときの回答ともこの文書はよほど違っている、こういうふうに私は理解をせざるを得ないのであります。したがって、外務大臣の責任についてはあとで私は問いただしますが、御本人から、なぜこういう違いが出たかということについて一つ一つ伺っていきたいと思います。  まず第一番目に、理事会において、山形新聞は大ざっぱないわゆる梗概だけを書くというので私はオーケーを出したわけで、その前提で講演をしたんだ、こういうふうに和田君は発言をしています。やはりこの部分については大体同じ趣旨のことを言っておりますが、この文書では、「その際はデリケートな国際問題については配慮が払われるという理解で講演したものであります。」こういうふうに書いてあるのですね。これはたいへん違うんじゃないでしょうか。つまり私、言いたいことは、みずからそういう理解をして話をした、こういうふうになるわけですね、この文書は。今度の新しい和田君が出したこの文書によれば。つまり、いろいろなことを言うけれども、デリケートな国際問題についてはそういうことは載せない、とってくれるという配慮が払われるという理解で講演したのであるから、という意味なんですね、この日本語の文書は。そうではないですか。和田さん、どうです。
  208. 和田力

    和田政府委員 ただいまの部分は、私がお話ししました内容が、引用のしかたによってはデリケートな影響を持つ、そういうことには十分注意をしていただく、そういう理解を私はいたしておったのでございます。
  209. 安宅常彦

    安宅委員 ですから、私はそういういろいろなことをしゃべった覚えはないというのではなくて、しゃべったことはしゃべったが、しゃべったうち、デリケートな部分は——デリケートというのはどういう意味かわかりませんよ、だれに対してデリケートなのか。そこまで言うと時間がかかるから、きょうは具体的に詰めていきますよ。そういうデリケートなことは、そのしゃべった内容から削ってもらえるという理解で、削ってもらえる分を含めて発言した、こういうふうにしか理解できない文章だが、そのとおりか、こういうことなんです。
  210. 和田力

    和田政府委員 そういう意味ではございませんので、これは何ぶん長い講演なんでございますから、この引用のしかたによってはデリケートな影響を持ち得るから、十分注意して引用していただきたいと、そういうつもりで申したのでございます。
  211. 安宅常彦

    安宅委員 それは山形新聞側にあなたが要望したの。
  212. 和田力

    和田政府委員 さようでございます。
  213. 安宅常彦

    安宅委員 山形新聞側は、どこがデリケートなのかということはわからないですよ。そうでしょう。私がデリケートだと思ったって、山新はデリケートでないと思って書くかもしれません。だから、そういうことは言ったんだ、デリケートな部分も含めてあなたは言ったんだ、こういうふうにしか理解できないでしょう。デリケートな部分は言わないのだったら、もともと書かないのだから。デリケートという意味は、言うとまた時間がかかるけれども。まあそういうことで、しゃべったことはあなたは認めざるを得ない、この文章は。そうですね。デリケートな分というというものもしゃべったんだ、だけれどもそれはとってもらえるというふうに理解した。つまり山新にはそういうふうにお願いした。わかったというので、あなたはそういう微妙な部分はとってもらえるということで、とってもらえる分であろうということを考えて相当デリケートなことまで言った、こういうふうにしか理解できませんね。そうですね。そうでしょう。
  214. 和田力

    和田政府委員 そういう意味ではございません。
  215. 安宅常彦

    安宅委員 意味ではなくて、そういう発言をしたかしないかと聞いている。
  216. 和田力

    和田政府委員 そういう発言はいたしておりません。
  217. 安宅常彦

    安宅委員 いたしておりません、わかった。じゃデリケートな部分はとってもらえるという理解で講演をしたと言いながら、こういう弁明書を出しておりながら、そういうデリケートな分は発言してないと今度は言っておる。これだけは確認しておきますよ。そんなばかな返事がない。これだけは確認しておきます。  次。外務省かあるいは和田君自身かは知りませんけれども、これは理事に伺うのを忘れたのですが、予算委員会に対し、あるいは予算委員長を通じて、九月二十六日付山形新聞、これは私が取り上げた十月五日付の特集記事の山形新聞の前に和田君が講演した翌日、つまり九月二十五日に講演したのですから、翌日の二十六日にニュースとして山形新聞が載せたものなんです。この山形新聞を、委員長を通じて外務省から、こういうものが出ているということを私は知らされました。そしてその言い方は、つまり台湾独立の問題については、この二十六日の新聞には一言も載っていないではないかという意味で資料として出したものと私は受け取ったのでありますが、これはしゃべっていないということを証拠のつもりで出したのか、あるいはどういう意味外務省側が、つまり和田君が出したのだと思うのですが、どういうつもりで出したのか、それを聞きたいのです。他にどういう意図があったのか。
  218. 和田力

    和田政府委員 これは、私どもの理解いたしておりましたものに近いものが九月二十六日のものであると存じておりますが、そういう意味で二種類の新聞が出ておりますということを申し上げたわけでございます。
  219. 安宅常彦

    安宅委員 委員長が出席して理事会を開いたときに、和田君はこのことについて、九月二十六日付の山形新聞は気にする必要はないと思ったので、そのままにしておいたが、十月五日付の新聞を、六日か何日かだと思うが、そのころ山形新聞からお送りいただいたのを見て、これは困ると思い、山形新聞社の東京事務所という表現でしたが、東京事務所を通じて抗議いたした次第でありますということをあなたは理事会で話しています。そのとおりですね。
  220. 和田力

    和田政府委員 国際的な問題の面につきましては……。
  221. 安宅常彦

    安宅委員 いや、そのとおりかどうか聞いているのだ。
  222. 和田力

    和田政府委員 そのように申しました。
  223. 安宅常彦

    安宅委員 そうしますと、気にしていなかったということを含め、ただいまそういう発言をしたということをあなたはおっしゃったのでありますから、この九月二十六日付の山形新聞の内容は、私の発言に近いものだともいま言いましたから、この部分は認めなければならないと思います。ところが、あの日私が理事会においてあなたに質問をいたしました。その前にわが党の辻原理事から、この内容について、国家公務員として、あるいは外務省の情文局長として不適当な発言ではないかということについて、数点にわたってあなたは聞かれたわけです。そのあと私が、それではただいまのように認めるのですかと言ったら、実はというので、今度はあわてて、皆さんから追及されてみると、これもおかしいと思いますということを、急にそこから態度を変えたのであります。これは非常にあなたの人間性を疑う弁解じみたやり方だとあのとき感じました。ところがきょう質問いたしてみましたら、今度はその私の発言と大要間違いのない記事であるということで出したというふうに、またもとに返っておりますね。こういう支離滅裂な御答弁は絶対に許すことができない。これは私ははっきりあなたに申し上げておかなければならないのであります。  それから次に、理事会においてあなたは、山形新聞に抗議をした際の発言の内容について申し述べています。山形新聞に抗議をしたときには、山形新聞からこういう返事が来ている。山形新聞は速記者でない人が記録をとったものであり、また編集の専門家がいなかったこともあって申しわけないことになったとの返事がございました、こういうふうに申し述べておりますね。これは認めていただけますか。
  224. 和田力

    和田政府委員 そのように山形新聞の東京事務所を通じまして承っております。
  225. 安宅常彦

    安宅委員 これは委員長、たくさんの新聞記者の人がおりますけれども、山形新聞が主催するそういう、しかも二十五日の分を、次の二十六日に相当、これだけのスペースをとってそして記事にし、さらに今度は広告欄を除いて、全部の一面を費やして特集記事を載せることができるようなそういう記事は、速記者がいない、テープもない状態ではとれない。しかもこの内容には、おもしろいことを言ったときには、たとえば中国は非常に有利な貿易国だから、昔から中国というのは朝貢してくるのを中華思想でもって、心服してきたのだというふうな態度なんで、何千年の昔からそうなっているんだ。それで、おそらく各国が訪中すれば、「〇〇国朝貢す」と、この中国の歴史に書かれるだろうし、「ニクソンが訪中すれば「ニクソン朝貢す」と記録されることは疑いない(爆笑)」と、こう書いてある。そういうところまでちゃんと書けるようなものは、私は常識的に言って、テープも速記もないようなそういう状態の中では、記録上とれないのではないかと各新聞記者の皆さんに聞いてみたのです。それはそうだ、これは常識だというのですね。そういうことをあなたが詭弁として言ってもだめ。  それから、その場所に編集の専門家がいなかったのにこんなものを出せる、しかも翌日はニュースとして出したならば、専門の編集者がいなくてなぜ山形新聞がニュースとして出せるのか。そして一週間もたって今度は特集記事としてこれに収録することができるのか。しかも速記抄録と書いてある。そういうことは常識上考えられない。これが大方の意見であります。あなたはそういうことについて、山形新聞からほんとうにそのような回答があったとしても、これはあなたは何とかしてのがれたいから、そのとおり言ったからそのとおりだと思った、こう答えるかもしれませんけれども、常識として通ると思いますか。編集者がいないで新聞編集できますか。
  226. 和田力

    和田政府委員 私は、伺ったとおりを申し上げただけなんでございます。  なお、そこの朝貢云々のところでございますが、私はそのときに、「ライフ」七月二十五日に出ておりますエドガー・スノーの発言を引用して申し上げたんでございます。そのところは抜いております。
  227. 安宅常彦

    安宅委員 そんなことを聞いてません。だからそれは、山形新聞がそう言ったとしても、常識として普通ならば考えられないことではないか。専門の編集者がいないで新聞編集できますか、これくらいの大きな記事を出せるのに。ずっと速記抄録と書いてある。それを、速記者がいない、専門の編集者がいない、こういうことで、われわれに対して、山形新聞からそういうふうな返答があったという回答をしても、常識上通ると思っているか思っていないかを聞いているのですよ。
  228. 和田力

    和田政府委員 私は、伺ったとおりを申し上げているだけでございます。
  229. 安宅常彦

    安宅委員 だから、常識として通るか通らないかを回答してください。
  230. 和田力

    和田政府委員 事実を述べただけでございます。
  231. 安宅常彦

    安宅委員 それでは聞きますが、あなたは、このたび出された弁明書にこう言っていますね。「全体的にこの速記内容は正しいか否か」ということに対して、われわれが質問するようなことを予想して書いて、「速記抄録は二時間半にわたる講演を圧縮したもので、私の考えを充分に伝えていない面があると思います。」つまりあなたは、速記抄録ということをちゃんと認めているのですよ、この文章でも、あなたの弁明書でも。だからあなたの回答は求めません。そういう弁明書を出している。これだけは外務大臣覚えていてくださいよ。私は、和田さん個人をここで何かおとしいれるとか、いろんな意味でやるのではない。予算委員会の任務というものは、そういうところに第一義的な問題があるとは思わない。ただ、この前の私が質問したことについて、部内に一人もいないと言った。それで本人から聞いてみたところが、そういうことは一つもしゃべっていない、テープもない、速記もないと本人は言っていると大臣は言ったから、その真相を明らかにしようと思っているだけでありますから、御了承願いますよ。  これはなぜかというと、日中の問題、日中友好の問題、今後の中国とのつき合いの問題、非常に微妙な段階になっておりますから、そういう政府の、あるいは外務省の要職にある者が台湾独立論などを言い、そのほかに九月二十六日の新聞を見たら、沖繩返還の問題やその他の問題について、一人の官僚として、ある一つや二つかの政党に対して非常に、何といいますか、ひやかしたような、別な方向に加担したような、そういう発言が非常に多いから、これらを含めて、私どもはたいへん大きな問題視しておるわけですから、これは日本の国家の今後のあり方に百年の大計を誤るような、そういう外務省の内部というものについてメスを入れなければ、これはたいへんなことになるという考え方で申し上げているのですから、御了解願いたいと思います。  さらに、言いのがれようとするから、一つ一つだんだんうそが大きくなってしまうのでありますが、いま言ったように、速記抄録は云々というふうにみずから弁明書に書いておる。ところが、編集者もいないし速記抄録もないというふうに山形新聞が言ったから、そう思っていますと言いながら、自分みずからの弁明書にそう書いてあるんではありませんか。こういう矛盾はどうしても、だれが聞いたって納得できないところだと思います。これは念を押しておきます。  さらに、和田君はあの理事会のときに、質問は、台湾の独立と台湾の中国復帰という問題とどういう関連があるかという質問があって、それに答えた内容が問題になっているようでございますが、台湾独立はむずかしいと思いますと言ったのでありますと、そうして、民族自決は一番いいが、現実としてはむずかしいでしょうと言ったのですと、こういうふうに二つのことばを言っているのです、あなたは。ところが、台湾独立ということばはどうだというふうに言われたら、台湾独立ということばは一言も発言をしておりません、民族自決という表現を用いたのであります、こういうふうに、これは数回言っています。私は確認とっておりますがね。書いてありますからね。民族自決ということばを台湾の独立ということばのところに置きかえたんだ。それは、民族自決ということばを使ったんだということは間違いありませんか。
  232. 和田力

    和田政府委員 台湾独立ということばを使わなかったと申したつもりはございませんでしたのでございますが、台湾独立を支持するようなことは私は申しておらないと、そういうふうに答えたつもりでございます。
  233. 安宅常彦

    安宅委員 じゃ、どういうことばを使ったかと聞かれて、民族自決ということばを使いましたということを言った記憶はありませんか。
  234. 和田力

    和田政府委員 民族自決ということばは使いましたけれども、それは、民族自決ということがほんとうは望ましいという議論もあるけれども、しかしながら、実際にはむずかしいんだということを申したいということを申したのであります。
  235. 安宅常彦

    安宅委員 台湾独立ということばは私は使いません、民族自決ということばで申し上げたのでありますと確かに答えているんですが、そういう答え方をしませんでしたか。
  236. 和田力

    和田政府委員 私は、そのようには申したと思っておりませんでございます。
  237. 安宅常彦

    安宅委員 わかりました。  それではあなたは——みんな理事の人、聞いていますからね。民族自決ということばを使ったんで、台湾独立ということばは言ったのではありません、こういうふうに言っているんですが、それでは次に聞きますが、民族自決は一番いいが、現実としてはむずかしいでしょうと私は言ったんだ、ということはいま言ったとおり。したがって新聞の見出しはニュアンスが違う、こういうふうに弁明しています。これは、見出しということはどういうことかといいますと、「望ましい台湾独立  カギ握る本島人の意志」という見出しをさしてあなたは言ったわけですね。そうですね、あのときは。
  238. 和田力

    和田政府委員 ただいま申し上げましたのは、民族自決は望ましいという論もあるがということを申し上げたのでございまして、その意味におきまして、この見出しは私の本旨とするところではない、そういうふうに了解しております。
  239. 安宅常彦

    安宅委員 またうそを言っています。あなたは、論なんていうのは一つも言っておりません。  それではさらにただしますが、委員長がこの記事をお読みになりました。そして委員長があなたに質問いたしました。そのときの回答は、民族自決はできないかもしれないと発言したのでございます、しかしそれが一番いいと言ったかもしれません、と委員長に答えていますが、これはお認めになりますか。
  240. 和田力

    和田政府委員 何ぶん半年前のことでございますので……。
  241. 安宅常彦

    安宅委員 半年前じゃない。理事会のことです。
  242. 和田力

    和田政府委員 理事会は、たいへんに私も余裕がございませんでしたから、逐語的に記憶はいたしておらないのでありますけれども、私の申し上げたいのは、台湾独立を支持するようなことは私は一切申しておらないと、そういうことなんでございます。
  243. 安宅常彦

    安宅委員 うそを言っちゃいけないですよ。これはね、委員長、あなたが質問して、それであなたが回答を得たんですから、本人はもう記憶にないと言っているんですけれども、どうなんですか。私は納得できませんね。委員長はどうですか。そのときはどういうふうにお聞きになりましたか、委員長の見解を承っておきたいと思う。
  244. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 私も記録を持っておらないから、ことばとしては明確に覚えておりません。
  245. 安宅常彦

    安宅委員 それはひどいですね。民族自決論などということは、あなたは一つも言っていませんよ。これは断わっておきます。それでそのときは、民族自決はできないかもしれないという発言をしたのでございまして、しかしそれが一番いいと言ったかもしれない、ということを委員長に回答しているんですよ。そうしたら委員長は、うん、と言っていたんです。
  246. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 それでは答えます。私の理解するところを申し上げます。  そのときのそのくだりについては、一般的に民族自決という思想がある、そういう思想は正しいと言ったかどうか知りませんが、そういうことがあるけれども、台湾の場合はなかなかそういうことはむずかしいというような話をしたと、こういうふうに私は理解しております。
  247. 安宅常彦

    安宅委員 それでは委員長は、それが一番いいと言ったかもしれないと本人が言ったことは、もうお忘れになったということでしょうか。
  248. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 一番いいと言ったかどうかは記憶にありませんが、一般論として、現在の世界ではそういう思想があるという趣旨で申し上げた、と言いました。
  249. 安宅常彦

    安宅委員 それでは、時間がありませんから……。  この理事会で、辻原氏の質問に対して、性急な国交回復は国益に反すると言った部分、それから野党の外交姿勢をひやかして批判した部分、国家公務員として出張という立場としての発言であるが、こういうことについてあなたはどういう見解を持っているかなどと聞かれた際に、あなたは、やっぱり正式に出張という立場でお話ししましたということをお認めになった上、野党の外交姿勢を批判した部分は、ひやかしてはおりませんと、こう言いながら、しかも野党とは言っていない、こういうふうに強弁されました。どういう表現を使いましたかと聞いたところが、これは私は沖繩協定は国会を通さなければならないと考えて発言した、しかも、私は危機感を持っておりました、野党とは言っておりません、反対の方々と言ったと、こう言っておりますが、それをお認めになりますか。
  250. 和田力

    和田政府委員 当時は国会はまだ始まっておりませんで、デモンストレーションが盛んなときでございました……
  251. 安宅常彦

    安宅委員 いや、反対の方々のところだ。
  252. 和田力

    和田政府委員 ですから、そういう反対の人たちのことを申したのでございます。
  253. 安宅常彦

    安宅委員 だから、表現として反対の方々という表現を使って、野党ということばは言っておりませんというふうに言ったのは事実かと言っているのです。事実であるかないかさえ言えばいい。
  254. 和田力

    和田政府委員 事実でございます。
  255. 安宅常彦

    安宅委員 それでは、この議事抄録によりますと「野党」という表現が随所に出てくるのですね。たとえば「一日も早く沖繩は帰ってきてほしいというのが国民大多数の願いだと思うが、なぜ野党がこれほどがんばるのか真意がわからない。」これはあなたの発言じゃないが、それに答えて、「帰ってこないようにと本当に思っている人はいないと思う。つまり、政治のあらゆる面に出てくることだが、おれたちがいくら反対しても通るという前提で」野党は「反対しているとしか思えない。」と、こういう発言をしているのですね。反対の方々の中に政党は含むのかと辻原さんから念を押されて聞かれて、あなたは含みますと、そのとき肯定をしていますね。これはどうですか、それでは。
  256. 和田力

    和田政府委員 野党とは申しませんでしたけれども、反対という中には野党も入ってくるかと思います、ということをこの前お答えいたしました。
  257. 安宅常彦

    安宅委員 それでは、その野党というところはほかにもありますね。たとえば「野党が指摘している悪い点が全部残り、さらに悪い面がふえるだろう。どうも野党の論理はどうしようもないくらいおかしい。」こんなことを公式の場所であなたは発言するお立場にあるのでしょうかね。どうですか。そのときも「野党」というふうに書いてある。
  258. 和田力

    和田政府委員 これは私もどういうわけで野党野党とこんなにたくさん書いてあるかわからないのでありますが、野党と申したつもりはございません。
  259. 安宅常彦

    安宅委員 たとえば台湾独立というところは——あとのところは大体認めているのですよ。そして台湾独立ということばのときは、それは言った覚えがない。何と言った、民族自決と言った。野党と言ったか、そこのところはたいへんだと思うと、あなたは、野党とは言わない。何と言ったか、反対の方々と言った。反対の方々と言ったら、山形新聞は反対の方々と書くのですよ。「野党」なんて書きやしないですよ。それも数カ所出てくる。そのことばだけではないよ、情文局長。「野党の論理はどうしようもないくらいおかしい。」などということを、公開の席上で、一国家公務員であるあなたが言う立場にございますかと聞いておるのです。
  260. 和田力

    和田政府委員 私はどうしようもないというようなことばは平生から使っておりませんので、このどうしようもなくおかしいというのは、そういうことは言っておりません。
  261. 安宅常彦

    安宅委員 とんでもないでたらめな詭弁でごまかすようなことをあなたは私に対して言って、何か子供じみたひやかしを受けておるとしか私は思えませんよ。(「そんな大きな声を出すな」と呼ぶ者あり)それでは静かに言いましょう。  それでは、たとえばニクソンの訪中の問題について、「同時に世界中の国がアメリカの外交政策を前提にして動いているのであって、そういう大国がトンボ返りのような転換をやるべきではない。」こう言っていますね。ところが政府はそのとき——あなたはこの弁明書で、政府方針国民の皆さんに示すのが情文局長の任務だなんて、大きなことを書いてありますけれども、これだって疑義がある、時間がないからこれは触れないけれども。その当時政府の外務大臣、そこにいる外務大臣は、ニクソンの訪中は歓迎する、平和の方向に向かうことを歓迎すると声明を出しているのですよ。ところが、あなた、情文局長は、百八十度トンボ返りすることはやるべきでないなんて、ニクソンより偉いみたいなことを言っているのですね。そうして、非常にばかにしたことばがたくさんあるのです。中国と日本の商社が商売をしているのだけれども、これはそういう立場であって、義理で商売をしている人たちだけだとか、いろんなことがありますけれども、私は散漫になるから言いませんが、そういうことを外務省の考えていることとは違った立場であなたはものを言ったり、それから野党のいろいろな政策なり国会における論争点などに触れて、外務省の一官僚が、野党のやることはどうしようもないほどおかしい——どうしようもないほどおかしいと言わなかったら、どういうふうに言ったのですか。おかしいということば言ったのだということを、この間理事会で言っていますな。
  262. 和田力

    和田政府委員 先ほどから申し上げておりますとおり、野党を批判する気持ちはございませんでしたので、野党とは申しておらないつもりなんでございます。
  263. 安宅常彦

    安宅委員 私は、あなたみたいな、何とかして言い抜けよう、言い抜けようという人に、もうこれ以上言ったってしようがないような気がいたします。  ただ、最後に言っておきますけれども、民族自決ということばをあなたは使ったと言っていますね。民族自決ということばは、どういうことなんですか。では、具体的に聞きますよ。
  264. 和田力

    和田政府委員 自由選挙をやれればそれがいい、そういう意味で、民族自決というのは、原則論的にはいいのであるけれども、自由選挙ということは不可能であろうということを申しておるのであります。
  265. 安宅常彦

    安宅委員 民族自決というのは、民族自決論というのはいろいろあるのですよね。ですから、民族自決という意味は、いろいろな論議はありますが、もう時間がありませんから、中国と台湾との関係で言うならば、中国は大まかに分けても五十一の少数民族を持っている、漢民族が主体ですけれども、そういう国家だということはあなた知っている。だから、大陸から逃げ帰った蒋介石などという表現もあなたは講演の中で使っているが、いわゆるあなたが言う台湾にもともとから住んでいる人、こういう人々は、選挙によるのかよらないか、あなたの答弁では自由選挙なんて言っていますけれども、こういう問題については民族として自決して、そうして独立したほうがいいのだということばなんです、それは。台湾独立ということばは使わなかったと強弁しながら、ちゃんとしり抜けに、民族自決と言えば何とかのがれ得るであろうという想定のもとにあなたは言った。ところが、民族自決ということこそ、台湾独立よりももっと具体的に、台湾は漢民族から離れて民族で自決しなさいということが正しいのだという意味の発言をあなたはしている、こういうことなんですよ。そうなんですよ。(大坪委員「牽強付会だ」と呼ぶ)大坪さん、そういうことをあなたは知らないと困ります。やじ飛ばさないでくださいよ。  そこで、いろいろ私は言いたいのですが、ただいま言ったように、私は時間がありませんから、締めくくりましょう。  外務大臣、そういう、速記は一つもとっていないし、テープもとっていない、一言も本人はしゃべった覚えはないと言っているというあなたの答弁と、いまの回答だけでも、一言もしゃべってないのじゃないのです、いろいろなことをしゃべっている、ただ表現は別だということで、一生懸命彼は言いのがれているのですね。その内容の中には、明らかに台湾の独立の問題で、それは民族自決ということばであるけれども言った、こういうふうに言わざるを得ない立場に本人はなっている。それから野党の沖繩返還に関する諸問題やその他の問題について、この間あの新聞を総理と一緒にあなたお読みになっておったようでありますから、そういうことを言っていることが、専門家の編集者がいないでこういう編集はできないはず、速記というものも、一週間もたって速記もなければこういう編集もできないはず、これは私は常識だと思う。こういうことからいって、これ一つでもたいへんな違いがある。そのほかに、いま触れましたように、国家公務員として、外務省の一官僚として、ある政党の、強いことばで言えば悪口を言い、しかも西村さんが国務大臣のいすをなげうったような、国連の構成の問題について、しかもオフレコの立場であのとき西村さんがおっしゃったのでさえもそのいすを失わなければならなかったのに、公衆の面前で堂々と、「アフリカなどのあまり名前も知られていないような国々がそっちを向いたからといって驚くにあたらない。」とか、野党はどうして反対しているのか、どうしようもないくらい論理がおかしいとかそういうことを言い、最後に国民の皆さんが冷静に判断してもらいたいなんて選挙の立ち会い演説みたいなことまで言っている。こういうことは許されるべきではないと私は思いますし、その点について、一つは、そういうことは常識で考えられないことではないか。それから御本人がいま弁明した中で非常に言いのがれがあるのではないか。もう一つは、そういう野党の政策の問題について一官僚がやっていることは、出張で正式に行って公開の席上でやることがいいのか悪いのかということについて、外務大臣の見解を三つぐらいに分けてひとつ——私も時間の関係で質問のしかたが少し混乱しておりますけれども、答弁していただきたいと思います。
  266. 福田赳夫

    福田国務大臣 和田局長の講演における発言が、これが新聞面に出ておるようなものでありますれば、これは私は行き過ぎだ、妥当ではない、こういうふうに思います。しかし、それが新聞に出ておるような状態であったかどうか、これにつきましては、私もまた情文局長からいろいろ聞いてみたのですが、ただいま安宅さんに局長からお答えになられたような趣旨のお答えを承っておるわけであります。いずれにいたしましても、外務省の情文局長が公の立場で出張しておる。その出張先における講演におきましてやったことが行き過ぎであるというようなことでありますれば、これは非常に穏当を欠くことである、こういうふうに考えます。そこで、私は、この問題に関連いたしまして、当委員会にたいへん御迷惑をおかけいたしましたこと、これにつきましては深くこれを遺憾といたしておる次第でございます。そこで、一体今後どうするんだ、こういう問題でありまするが、外交問題というものは非常にデリケートなものです。ですから、外交問題を語る場合には一言一句を気をつけてしなければならぬ、そういうふうに思うのです。私は、そういう趣旨におきまして、外務当局全体、特に政府の外交政策をPRするところの地位にある情文局長、その言動につきましては、今後一そう気をつけまして誤りなきを期していくように、細心の注意と最大の努力をしてみたい、かように考えます。
  267. 安宅常彦

    安宅委員 大体外務大臣が意図するところはわかりましたよ。ただ、あなた、非常に私ども詰めた話をしているものですから、たとえば、そういうことがあったとするならばということをまだおっしゃっておるのですね。あなたの回答は、一言もしゃべってないと本人が言った。ところが、いまの弁明書を見ただけで、しゃべっている。しゃべっているが、その趣旨はこういう意味でございましたという弁明にすぎない弁明をみずからお出しになっているのですよ。しかも、たとえばいま言ったアフリカのことの関係で大臣のいすさえ失ったというような人がいる。オフレコで言ったことさえもそうなっている。私が表現したことについてはどういうふうに言っているかというと、「アフリカにはご出席の皆さん方も恐らく名前をご存知ない国が沢山あるとの事実をのべたもので」というのですね。何のために述べたのですか、そんなことを。「のべたもので決して軽視するつもりはありません。」つもりはないけれども、同じことをしゃべったのだということを言っているのですよ。ということを言ったとするならばというのがおかしいですよ。これは、あなたは、一言も言ってないと本人から聞いてこれを信用するとあのとき私に言いました。ところが、一言もしゃべってないのじゃない。言っている。そうして、その意味は、「日本としては中国と直接関係のある近隣のアジア諸国の動向を重視しなければならないという点を強調した」意味であってということを弁明書として出しておるのですよ。だから、そういうことは言ったけれども、その意味はこういう意味だということをみずから弁明書を出しておるのですよ。それじゃ、あなた、そういうことがあったとするならば遺憾だというのはおかしいじゃありませんか。あったんですよ。なかったら、こんな弁明書出てこないです。一言もしゃべっておりませんとしか出てこないはずだが、そこのところだけはっきりしておきたい。
  268. 福田赳夫

    福田国務大臣 外務省の情文局長というものは、これは政府の外交政策を国民にPRをする、そういう立場にあるわけです。ですから、釈明、弁明を要するようなそういう言動をしては相ならぬと思います。一言一句を非常に慎重に、正しく政府の外交政策が国民に浸透される、そういうような発言でなければならぬ。自今こういうような事態が再び起こらないように厳に戒めてまいりたい、こういうことを申し上げておるわけであります。
  269. 安宅常彦

    安宅委員 最後に念を押しておきます。  たとえば、弁明書の一番最後のところ、「中国国交回復問題を急がなくてもよいと発言しているのではないか。」——安宅がそういうことを質問するであろうという、何か百問百答みたいな意味で、あなた自分で書いてよこしたのですよ、これは。おれが書いたのではないのだ。それが「中国問題の説明に入る際、大前提として中国との国交回復は一日も早い方がよいということには外務省内に一人も反対者はいないということをのべた上、」——さっぱり述べていないのですよ。いいですか。「ただ、情勢を」——これが言いわけだということがこの次でばれるのです。「ただ、情勢を見極めずに飛びこむのは危険であるという見解をのべたものであります。」あなたは情文局長として情勢を見きわめていないのですか。情勢を見きわめないで飛び込むのはおかしいのだと言ったというのです。外務省の情文局長というのは、長い聞こういう情勢というものを見きわめるのがあなたの任務でしょう。そしてみずからが見きわめないで飛び込むのは危険だなどと言うのは、これこそ語るに落ちた、そういうやり方なんです。これは、外務大臣、これだけ念を押しておきますよ。そういう意味で、あなたがどういう措置をおとりになるのか。こういうことはけしからぬということを情文局長の発言についておっしゃったから、誤解を招くようなことさえもおかしいと言った、おかしいと言ったことについて何らかの措置をとるというふうに私は聞こえましたが、そのとおりですか。
  270. 福田赳夫

    福田国務大臣 事外交政策に対する発言は、これは釈明だ、弁明だを必要とするというようなそういう発言であっては相ならぬ、こういうふうに思います。したがって、厳にさようなことが反復されないように、細心、最大の努力をいたします、こう申し上げておるわけであります。
  271. 安宅常彦

    安宅委員 では終わります。
  272. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて一般質疑は全部終了いたしました。  明十八日より、昭和四十七年度予算について分科会の審査に入ることといたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時八分散会