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1972-03-16 第68回国会 衆議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月十六日(木曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 龍夫君    理事 二階堂 進君 理事 細田 吉藏君    理事 阪上安太郎君 理事 辻原 弘市君    理事 鈴切 康雄君 理事 小平  忠君       足立 篤郎君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    植木庚子郎君       小川 半次君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    正示啓次郎君       田中 正巳君    中野 四郎君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       橋本龍太郎君    福田  一君       松浦周太郎君    松野 頼三君       森田重次郎君    渡辺  肇君       安宅 常彦君    木島喜兵衞君       小林  進君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    原   茂君       細谷 治嘉君    新井 彬之君       林  孝矩君    合沢  栄君       和田 春生君    東中 光雄君       米原  昶君  出席国務大臣         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  田中 角榮君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       渡海元三郎君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣官房長官 三原 朝雄君         総理府総務副長         官       砂田 重民君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      須藤 博忠君         警察庁刑事局保         安部長     本庄  務君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         計画局長    矢野 智雄君         経済企画庁総合         開発局長    岡部  保君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         法務省民事局長 川島 一郎君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省理財局次         長       小幡 琢也君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省社会局長 加藤 威二君         農林大臣官房技         術審議官    遠藤 寛二君         食糧庁長官   亀長 友義君         食糧庁次長   中村健次郎君         通商産業省公害         保安局長    久良知章悟君         建設省都市局長 吉兼 三郎君         建設省河川局長 川崎 精一君         自治省財政局長 鎌田 要人君  委員外出席者         会計検査院事務         総長      石川 達郎君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 三月十六日  辞任         補欠選任   安井 吉典君     木島喜兵衞君   鶴岡  洋君     新井 彬之君   川端 文夫君     合沢  栄君   谷口善太郎君     米原  昶君 同日  辞任         補欠選任   木島喜兵衞君     安井 吉典君   米原  昶君     谷口善太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  昭和四十七年度一般会計予算昭和四十七年度特別会計予算昭和四十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行ないます。新井彬之君。
  3. 新井彬之

    新井委員 私はおもに土地の問題、そしてまた住宅の問題あるいはまた水資源の問題、それから交通災害にかかわるその救済の問題等につきまして、質問をしてまいりたいと思います。  いままで予算委員会を通じまして、今回は不況克服予算である、そしてまた福祉重点予算である、このように答弁を受けてまいったわけでございます。そこで、この不況克服ができるかという一つの問題でございますけれども、この問題につきましては、大蔵大臣もあるいはまた経済企画庁長官経済成長見通しを言っておるわけでございますが、それはもうひとえに、今回のこの一兆九千五百億円にわたるところの建設公債を組みまして、その公共投資がいかに効率的に利用されるかというような問題になろうかと思います。それには一つ土地問題である、こういうことになろうかと思うのでございますけれども、総理も、そういう一つ経済構造の転換を目ざしまして、国内消費を刺激する、そしてそれにおいて生活改善をはかる、そして景気回復する、したがって景気回復福祉予算というのはそういうぐあいな組まれ方だ、こういうような答弁であったわけでございますが、初めに大蔵大臣経企庁長官にもう一度お伺いしておきたいのでございますけれども、今年度の景気は非常にいい、立ち直る、こういうぐあいな答弁をいただいておるわけでございますけれども、成長率として大体何%ぐらいになるのか、それをまずお聞かせ願いたいと思います。
  4. 木村俊夫

    木村国務大臣 私ども、経済見通しにおきましては、昭和四十六年度、今年度の経済成長見通し実質大体四・三%、こういう見込みをしております。四十七年度になりましても、おそらく上期には相当景気停滞傾向を続けていくでございましょうが、私どもは、四十七年度の後半で相当景気回復基調があらわれてまいりまして、昭和四十七年度を通じまして実質で七・二%程度経済成長を遂げるであろう、こういう見通しを持っております。
  5. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま企画庁長官が言われたことが政府の統一した見解になっておりますが、私は現状から見て、よほどの努力をしないとこの政府見通しが達成されないんじゃないかということを心配しております。
  6. 新井彬之

    新井委員 よほどの努力をしないとそういう回復ができ得ないというお話でございますが、先ほども触れましたように今回公共投資を組みましたけれども、非常に土地に食われてしまう。したがいまして、もしも景気回復するというには、やはり公共事業をやるにも、そこにはやはりある程度のくふうというものがなされなければならない。たとえて言いますと、非常に土地利用の少ないような施設、たとえて言いますと国有地を有効に使う、また国有地の中でも非常に効率の悪いような建物をどんどん建てる、建てかえる、あるいはまた公営住宅なんかでももう昭和二十年以後非常に長くたって、建てかえなきゃいけないところもたくさんあるわけでございます、数の上からいきますと。そういうものをどんどん建てかえる、そういうような一つ施策というものを考えなきゃならぬ。こういうわけで、ただ土地予算の多額を取られてしまってはならないというよりなことを私は思うんでございますけれども、それはどこへ行きましても、公民館にしましてもあるいはまた病院にいたしましても、ほんとうにこれは建てかえなきゃいけないというようなところがたくさんあるわけでございます。そういうような景気見通しが非常にむずかしいというならば、そういう面の配慮というのはどのようになされたか、お伺いいたしたいと思います。これは大蔵大臣、ひとつお願いします。
  7. 水田三喜男

    水田国務大臣 まず国有地お話がございましたが、国有地活用につきましては、いままで審議会にいろいろ御審議を願っておりましたが、ようやく答申をいただきました。それによって今後この十分の活用をするつもりでございますが、いま御指摘になったような問題、すでに既存建物においてもこれが年数の来たものというようなときは、これを建て直し、統合して、できるだけ多くあき地をつくるというようなこと、それからできるだけ都市立体化の線に沿って今後の土地利用については有効に使うと同時に、あき地を多くつくって都市計画に協力するという方向で国有土地利用するというような一連のことを、審議会答申を得ておりますので、その線に沿って国有地の処置は今後するつもりでございます。  それから公共事業については、地方単独事業を除いた公共事業全体は四兆五千億円くらいに及ぶと思いますが、そのうちの土地に関する需要が大体八千六百億前後ということでございますので、公共事業の遂行というためにはこの土地の有効な確保ということが、これはもう前提条件でございますので、これについてのいろんなやり方、あるいは必要な公有地先行取得の方法とか、そういうようなものについてのあらゆる手段を今年度はくふうをして考えておるつもりでございます。
  8. 新井彬之

    新井委員 その問題はあとで関連して出てまいりますので、もう少しお聞きいたしますが、いま何といいましても土地が非常に足らない。足らないというよりも、建設大臣は、非常に余っておるけれどもそれが非常に高くて手に入れられないというようなことでございますけれども、何といいましても宅地需給計画、これがやはり策定されて、そのもとにおいてやらなきゃならぬということだと思います。  そこで都市政策、特に地価対策ですね。これと関連いたしまして宅地需給計画が非常に問題になっておるわけでございますけれども、宅地開発につきましては、東京圏あるいはまた大阪圏名古屋圏、こういうところで宅地大量供給地価上昇緩和のために必要となって、大規模宅地開発が進められておりますけれども、建設省の発表いたしております資料によりますと、昭和四十六年度から五十年度までに七万五千ヘクタール宅地を供給する目標が立てられておる。そのうち公的な宅地開発というのは二万二千ヘクタール、すなわち全体の三〇%に当たるわけでございます。七〇%というのは民間宅地開発区画整理事業、こういうことになっております。  しかしながら昭和四十一年から四十五年までの前の宅地供給計画におきましては、それは五万三千ヘクタール目標のうち公的宅地開発は四七%、民間は五三%の割合になっております。ところが四十六年からの現在の計画は、宅地供給民間宅地開発依存度というのが非常に大きくなっておるわけでございますが、一体これはどういうような理由によってそのようになったのか、お聞かせ願いたいと思います。これは建設大臣にお願いします。
  9. 西村英一

    西村国務大臣 宅地開発、まあ地価の問題は、これはやはり宅地需給バランスがとれないからでございまして、建設省といたしましては宅地の問題について十分調査をいたしておりますが、いま数字をあげて御説明になりましたけれども、私は数字はちょっと覚えておりませんけれども、やはり土地あまり金をかけちゃいかぬ、それからつとめて国有公有土地を使うということでいままでやっておるわけです。しかし、それはなかなか、国有土地を使うといいましてもこれも非常に進んでいないところがありまするが、今後は、私がいつも言っておるように、土地がないんではない、活用の面についてもう少し力を尽くさなければならぬ、かように考えておるわけでございます。したがいまして、今度の住宅五カ年計画にいたしましても、いま申しました七万五千ヘクタールを予定いたしておりまするが、つとめて国有あるいは公有地、これをひとつ使う、ないし地上権も、ひとつ十分空間も使うように心がけなければならぬ、かように思っておる次第でございまして、数字はいまちょっと過去のやつは覚えておりませんけれども……。
  10. 新井彬之

    新井委員 いま大臣から少し答弁がありましたけれども、そういうことが、数字を覚えている、覚えてないは別といたしまして、やはりいまの宅地状況、いろいろ土地状況にかんがみまして、やはりそういうような全般的な一つ土地政策というものは政府として考えなければならぬ。たとえて言いますと、住宅問題におきまして五カ年間において九百五十万戸の住宅を建てる、こういうことでそのうちの五百七十万戸というものが民間自力建設ということになっております。そこで政府としては、私たちはこの三百八十万戸だけつくったらいいんだ、しかしながら、ほんとう政府として考えなきゃいけないことは、やはり経済問題もいろいろからまる非常に複雑な中にあって、そういうものを総合的に考えなきゃならぬ。したがって土地だって、公共事業としてこれだけ要るんだからそれだけ先にとってしまえ、そしてあとは、上がる上がらないは別としてやるということは、これは一つの問題ではないか、このように思うわけでございます。経済審立地委員会報告中間答申というのが出ておりますけれども、その中に出ておりますことは、現在のように大都市集中の発展が続けば、特に関東地区などでは水不足や緑の減少が急速に進む、地価の一そうの高騰で五十五年には東京都心から三十キロの圏内では、月収が三十三万円なければ二DKの民間アパートにも入れなくなる見込みである、こういうように五十五年を予想して言っておるわけでございます。したがいまして、そういう面についてもっともっときちっとしていただきたい、こういうぐあいに思うわけでございます。  そこで、もう少し今度は具体的にお伺いしたいんでございますが、先日も自治大臣答弁なさいましたが、昭和四十七年から五十一年までの五カ年間で地方公共団体あるいはまた地方公社土地需要というのは、三十三万一千九百五十八ヘクタールあるんだ、そしてそのうち公共用地というのは二十万三千八百二十九ヘクタール、そして工業用地は四万六千四百二十七ヘクタール、したがいまして年に五万五千ヘクタール確保しなければならぬ、こういうようなデータだったと思います。それでその公共用地取得に対して、たとえて言いますと、四十五年にはヘクタール当たり二千四百十八万八千円、そして四十六年度にヘクタール当たり三千二百三十四万五千円、三三%のアップになっておるわけでございます。それから工業用地におきましては、四十五年のヘクタール当たりが八百五十七万二千円、四十六年にはヘクタール当たり千三百十八万八千円、これは六三%の値上がりになっておるのでございますけれども、この五カ年計画でこれだけの土地取得するには一体何%の値上がりを見ておるのか、お答えを願いたいと思います。
  11. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 いままでの、過去のデータ地方団体決算等に基づいて出しましたものでございますから、それだけの値上がり実績に応じてお答えさせていただいたと思います。しかし、需要額は、各地方団体から将来この程度要るだろうということで集めましたデータでございまして、概略の過去の実績に照らしての値上がり等はとっておりますが、これをとるためにどのくらいの値上がりがするだろうというふうな数字は、ただ取得を要する土地の面積を各自治体から集めた集計の報告でございます。ただ、財政計画経済成長に従いまして五十五年までにこの程度伸びていくだろう、それは五十年で大体二十兆円に地方財政規模はなるであろう。それから五十五年におきましては大体三十五兆円近くなるのじゃなかろうかという推定のもとで、その地方財政計画の中で見込み得るところの公共事業に充てられる金額は、昭和四十五年から五十五年までの間で百十兆円、こう見積もりまして、大体現在の傾向といたしまして、公共事業百十兆円の中で要りますところの土地代金というものが二割程度になっておりますので、その二割を土地代と見るという総括的な推計でやっておりますので、具体的に土地がどの程度伸びるかどうかということよりも、公共事業に占めるところの土地代金というものを長期的に百十兆円の投資的経費の中で二割程度土地代、こういうふうに換算いたしておるのでございます。
  12. 新井彬之

    新井委員 私の計算した数字におきましては、五年間の需要予測、それに対していまのような数から計算いたしますと、大体公共事業費、これがヘクタール当たり四千六百五十八万四千円、これは大体四四%の値上がりと見ていいのじゃないか。それから工業用地につきましてはヘクタール二千三百五十八万三千円、八一%というようなことにになるのじゃないかと思うのですが、これもこれからの土地政策というものが非常に順調にいかないとそういうことが——もちろん経済いろいろの複雑な関係がございますので、非常にむずかしい問題ではございますけれども、なかなかいかない、そういうようなことになろうかと思います。  もう一つ、私はちょっと自治大臣にお伺いしておきたいのでございますが、いろいろと地方公共団体から国に対して要望がございます。その要望を受けて、自治大臣はいつも国の一番の地方自治体理解者として、いろいろの予算等の配分を考えていただいておるわけでございますけれども、もしも国の政策というかそういう考え方と、それから地方がいろいろ言ってくることについて違った場合において、これは別に国と地方公共団体がけんかするとかそういうことはあるわけはありませんので、ちょっとあれですけれども、どちらの立場に立って自治大臣はやられるか、こういうことをちょっとお伺いしておきたいと思います。
  13. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 ケース・バイ・ケースでございまして、一がいにどちらの側に立つかということは申し上げかねるのじゃないか。それが全般の問題として地方自治体にまかされた範囲内で、しかもそれが国の政策にも大きな面においては合致するというふうなときには、それが地方自治でございますから、もちろん自治体要望をとるという姿でございますが、それは一がいに抽象的に言われましても私答えかねますので、ひとつ……。
  14. 新井彬之

    新井委員 非常に残念な答弁だと思うのですが、では具体的にいろいろ聞きましょう。  では、今回の四十七年度の国の組んだ予算というのは、地方自治体にとって福祉予算と言えますか。どうですか、自治大臣
  15. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 今回の地方財政計画の中でも、単独事業費は苦しい財政の中でございますけれども、できるだけ昨年度の伸び率を下らないように組ましていただいた。この地方単独事業というものは、おそらく社会福祉政策に多分に使われるものと考えております。また、公共事業費におきましても、公共事業の中でできるだけ福祉事業重点を置き、住宅その他のものが増強される。これを受けて立つ地方団体でございますから、社会資本の形成におきまして福祉関係事業が画期的に地方団体においても推進されていく、私はこのように考えております。
  16. 新井彬之

    新井委員 では、私が調査いたしました件についていまから申し上げますから、それに対してひとつ答えていただきたいと思います。  今回は大型の建設国債というものをやったわけでございますけれども、こういう大きな一つの国の予算というものは、これは公共事業でございますから、いろいろの問題については確かに公共的になる。もう一歩進めれば福祉にもなるだろうと思います。しかしながら、国でやる事業というのは一級河川であるとかあるいはまたハイウェーであるとか、どうしてもそういう大きなものを手がけなければならぬというような形になるのじゃないか。そこで今回、国庫支出金なんかもたくさん出ておりますけれども、国庫支出金というのはやはり一つひもつき財政でございますから、仕事をする場合に地方が負担しなければいけない、あるいはまた国が幾ら出すということになるわけなんでありますけれども、これは何をやるかはっきり明確になっておるわけです。そういうぐあいにやってまいりますと、非常に景気の悪い不況のときにありまして、地方財源というものに非常に食い込んでくる。したがって、地方単独事業というものがなかなかやりにくくなっておるわけです。それはもう大臣も御存じのように、国は国としてやるけれども、市なんかに行きますと、まだここの環境庁長官はほめられておりますからけっこうなものですが、市の環境衛生課なんかに行きますと、あそこのどぶ川どうだとかというので毎日たいへんなことになっておる。したがいまして、下へ行きますと地方道に至るまでいろいろなことについて非常に真剣です。したがって、国よりもいつも一歩施策が進まなければならない。市民の声を受けていくためには当然そうならなければならぬということになっておるわけです。  そこで、私は具体的な例をあげますけれども、たとえて言いますと、千葉県と埼玉県の例をあげましょう。  この四十六年度の公共事業費の金融は三百二十七億円から四十七年度では四百七億円、二四・三%も上がっているわけですね。県単独事業というのは百七十一億円から二百二億円、一七・八%しか伸びていない。埼玉県の場合を例にとりますと、四十六年度は三百三億円から四十七年度では四百四十五億円、四七%ふえております。しかしながら県単独事業というのは逆に二百四十二倍円から二百二十七億円と、十五億円落ち込んでおる、こういうことになるわけです。  そこで、もう一つ具体例をあげますと、たとえて言いますと、公害防止関連費用というのがあるわけですけれども、四十六年度は七億三千万円から四十七年度には六億三千万円、一億円減ってしまっている。社会福祉施設費用というのは、八千九百万円から五千七百万円、これも減っておるわけですね。老人福祉施設費用は二億三千万円から一億一千万、もう半分以下にダウンしているわけです。それから母子福祉費用というのは三千六百万円から三千七百万円、こういうようなことになっておるわけでございますけれども、こういう一つの問題、要するに自治大臣よくおわかりだと思いますけれども、もうほんとう地方へ行きますと、いろいろな問題というのが現実生活としてある。したがって今回、福祉福祉だとこう言いますけれども、まあそれはいろいろの福祉やり方はありますけれども、現実にそういう予算というのが本来伸びなければいけないものが、県単独ではどんどん減ってしまう。これでは私は一向に福祉予算でない、このように思うわけでございますけれども、その考えに対してお伺いしたいと思います。
  17. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 各県が組んでおります当初予算が、そういうふうな例をあげて言われましたが、私たちがいま御審議願っております予算で見積もっておりますところの地方財政計画の中におきましては、御説明さしていただいたとおり、単独事業も二二%の伸びということで組ましていただいておりまして相当額伸びるものと、この点は、昭和四十一年度の地方財政不況のときは、単独事業を相当切り詰めて公共事業を伸ばすというふうな姿でございましたが、それであっては真に住民に関連するところの福祉予算が組めないというところから、苦しい財政でございますが地方財政の中では二二%という数字を組ましていただいております。各地方団体、しかし起債財源等に負うべき財政を組まなければならないものでございますから、公共事業に起債財源として当初予算には組んでおると思いますけれども、一般財源が少ないものでございますから、そういうふうな当初予算計画をされたものじゃないかと思いますが、地方財政計画の決定によりまして、この点は単独事業をふやし得る余裕が出てくるものと私は考えております。その意味におきまして、このたびは単独事業を相当大幅に伸びるように事業計画を組ましていただいておりますので、この予算が通りましたら、次の県会における追加その他で単独事業が落ちないように私たちも指導してまいりたいと思っておりますし、そのような予算編成の姿になり得るんじゃないかと、かように考えております。
  18. 新井彬之

    新井委員 じゃそのようにひとつやっていただきたい、そういうことでお願いをしておきたいと思います。  次に、土地問題ともからむわけでございますが、いままで産業優先あるいはまた経済優先という政策目標におきまして、あと福祉政策というのが非常に抜けておったわけでございます。これはいつも政府も認めておるところでございまして、これからはそういうのを変えなければいけない。そこで一つは環境整備であるとか、あるいはまたあしたへの活力の力として公園つくりをやろうということで、初めちょっとあぶなかったこの公園五カ年計画というのが認められたということは非常に前進だと思います。  そこで建設大臣にお伺いしたいのでございますが、都市公園を今後五カ年間でつくられる、そういうことでございますけれども、とにかく一万七千ヘクタールの用地でもって九千億円ですね。この中で予備費が一千億含まれておるわけでございます。一体どんなようなところにつくるのか。いま必要なのは、ここにもいろいろ書かれてありますけれども、密集地帯、ほんとうにそういうところにそういう公園がほしいという声が一番あるわけでございまして、決してそんな、都市計画からいけば調整区域なんかにつくってもこれは役に立つものではない、こういうように思うわけでございますけれども、これはやっぱり市街地の中にちゃんとおつくりになっていただけるわけですね。
  19. 西村英一

    西村国務大臣 都市公園といっても、いろいろ種類がございます。しかし、一番私の重点を置いておるのは、やはり都市内の子供の遊び場、児童公園、こういうようなものに力点を置きたいと思います。しかし、それはなかなか地価の問題で非常に容易ではないわけでございます。したがいまして、今回せっかく五カ年計画ができたのでございまするから、これを非常に進めたいと思いますが、何で一体今日まで放てきされたか、法律は相当前にできております。昭和三十一年の法律でございまして、いまごろようやく五カ年計画ができるということは、私たちとしてもまことに残念でございますが、結局一言でいえば国が貧乏であった、公園の認識を、官民あまり認識がなかったということでございます。しかし、過去は過去といたしましても、せっかく政府としてもようやくこの五カ年計画ができたのでございまするから、これを中心に強力に進めたい。その中心はやはり町の中の小規模な児童公園とかなんとかいうものに力点を置きたい。もちろん大規模のレクリエーションの公園とかあるいは運動公園とかいうようなことも必要でございまするが、力点はやはり都市の中に進めたい、かように考えておる次第でございます。
  20. 新井彬之

    新井委員 じゃこっちでまとめて申し上げますけれども、いまも大臣からお話がございまして、これはもう昭和三十一年の都市公園法施行令、これによりますと住民一人当たりの都市公園の敷地面積の標準というのは、都市公園にあっては一人が六平方メートル以上、それからまた市街地にあっては三平方メートル以上、こういうような三十一年にきまったものがあるわけですね。ところが今回の提案を見ますと、昭和六十年度までに九平方メートル、こういうことになっております。ところがこの五カ年がたちますとして、五十一年になりますと四・二平方メートルにしかならない。特にこれは大臣もいつも言われておることでございますけれども、日本の都市公園面積というのは非常に少ないわけですね。特に東京においては、人口一人当たりの公園面積というのは一・一五、あるいはまた横浜一・三二、京都に至りましては〇・九九平方メートルですね。そういうわけで非常に少ない。しかしながら外国に参りますと、ニューヨークにおきましては一人当たり十九・二あるいはまたロサンゼルスが二十五・六、ベルリンでは二十四・七、ウイーンにおいては十五・五、ロンドンでは二十二・八、こういうことで、はるかにそういう公園というものが整備されておるわけでございます。初めの予定では、これは一千百億の予算がなければできない、公園はもうこんなにも少ないんだということは、いままでの予算委員会でもあるいはまたそういう担当委員会においても何回も指摘されて、法律の標準すら六平方メートルは必要であるといわれているものが、なおいまになって一それは出発したことは大いにけっこうなんでございますけれども、この九千億円、このうち予備費が一千億でございますし、その中には用地費あるいはまたいろいろ中の付属品等も入ると思いますが、用地費だけと計算いたしましても、平米当たり四千七百五円しかならない。これは一坪三・三平方メートルに直しますと、一坪  一万五千五百二十七円。私は、近所がたんぼみたいなところに住んでおりますけれども、そのたんぼですらいま十万円も十二万円もするのです。そうしてその近所には公園つくったってあんまり——たんぼがあるからいいんじゃないかと思うところがそういう状態です。一体どこに何をつくるのか。こういうような状況を一体、建設大臣ほんとうの実情というのは御存じなんですから、大蔵大臣予算要求のときにどのような説明をされたのか。大蔵大臣は、それはそんな安い土地があるって、どこかでさがしてきていただけるとは思いますけれども、そういうわけで、とにかくこれでは、この五カ年間土地の上昇、それもはっきり幾ら上がっているかわからないとか、いままでの答弁では、毎年度の用地費に入れますからとかというような答弁で、はっきりしませんけれども、いまのこの土地政策からいきますと、地価力抑制策というのはほとんど実効がない。たとえて言いますと、いま地価公示法にいたしましても、確かに公示はされ  て、それで買っているけれども、それ自体は何も地価抑制の歯どめになっているわけではありません。今回の公用地拡大法案にしても、これだって何も、私権の制限とかなんとか、少々のことはありますけれども、決して、話し合いがあって、応じなければそれで済むことであって、何も地価抑制には役に立たない。したがいまして、私はこのおくれている公園を、少なくとも整備五カ年計画をつくる以上は、来年度でもけっこうです、大蔵大臣にその実情をよく建設大臣から話をしていただいて、そうして断固できるようにひとつやっていただきたい、このように思うわけでございます。  それで、もう一つは、お伺いしたいのですが、公園が非常に足らないんでございますけれども、その公園の管理については、建設大臣は都道府県知事並びに市町村長に対していろいろ監督とか助言をするようになっておりますけれども、いま公園用地についてはうまく管理されておりますか。
  21. 西村英一

    西村国務大臣 この法律にありますように、一人当たりの六平米というような、あるいは都市中心については……
  22. 新井彬之

    新井委員 管理されているかどうか。
  23. 西村英一

    西村国務大臣 管理は、公園というのは元来地方公共団体の固有の仕事でございます。したがって国有というのはあまりありません。その管理につきましても、地方公共団体固有の仕事でございまするから、地方公共団体におまかせをしておるわけでございます。ただし、特別な理由があって、不都合なことがあるとかなんとかいうようなことでございますれば、建設省としては十分指導しなければならぬと、かように考えておる次第でございまして、まあそれ以上、時間をとりますから申しませんが、とにかく今度九千億円の五カ年計画でございまするが……
  24. 新井彬之

    新井委員 管理されておるかどうか。
  25. 西村英一

    西村国務大臣 まあそれじゃ、それだけにいたします。
  26. 新井彬之

    新井委員 そうしますと、いま公園についてはきちっと管理がされておる、建設大臣のほうには別に問題はないということになっておりますね。そこでお伺いしたいのですが、この都市公園施行令の中に、公園施設について、第三条第四項、ここには「法第二条第二項第五号の政令で定める運動施設は、野球場、陸上競技場、」そういうようなことがずっと書いてありまして、「その他これらに類するもの」ということになっております。そういうものが公園につくってよろしいということですね。これは当然クレー射撃場も入ると思いますけれども、それは入りますね。一言でけっこうです。
  27. 西村英一

    西村国務大臣 それは入ります。
  28. 新井彬之

    新井委員 それはどういう状況で入るのですか。ただ、普通どの公園でも、そういうものがついているほうが望ましいのか、あるいはついてないほうが望ましいのか、それには何らかの条件がございますか。
  29. 西村英一

    西村国務大臣 それは公園の種類によることでございまして、必ずしもすべての公園に適するとは思いません。
  30. 新井彬之

    新井委員 公園管理というのは、これはもちろん小さな児童公園はだれかが寄付して、その人が管理する場合もあるでしょうけれども、ほとんどの普通の都市公園というのは市町村が管理しますね。そしてその管理した中で、当然そういうものをつくる場合に、不特定多数の人が使えなければいけない。公園というのは国民の財産でございますから、別にクレー射撃場をつくった場合に、クラブ制とかそういうものをつくっちゃいけないわけですね。それからもう一つは騒音であるとか危険があっちゃならぬと、私はこのように思うのですけれども、大臣いかがですか。
  31. 西村英一

    西村国務大臣 あなたのおっしゃるとおりです。危険なものは、それはつくってはなりません。またつくるにいたしましても、それに対する防護装置を十分しなければならぬと思います。
  32. 新井彬之

    新井委員 そこで大蔵大臣にお伺いしたいのでございますけれども、名古屋市に平和公園というのがございます。この平和公園というのは、四十七万二千二百六十二平方メートル、大体十四万三千坪ぐらいあるのじゃないか。その中でクレー射撃場があるわけでございます。そしてその敷地面積というのは九千七百三平方メートル、坪に直しますと約二千九百四十坪、こういうことになろうかと思いますが、この平和公園というのは一体どこの土地でありますか。
  33. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは国有地でありまして、いま名古屋に、昭和二十六年度から名古屋市に貸与してあります。
  34. 新井彬之

    新井委員 そうしますと、当然名古屋にその国有地を貸したわけですね。これは法律的には第何条の規定によってお貸しになったのですか。法律的には第何条を適用されたか。
  35. 水田三喜男

    水田国務大臣 法律の条文は、いま理財局長から申し上げます。
  36. 橋口收

    ○橋口政府委員 お答え申し上げます。  国有財産法第二十二条の規定によって貸与をいたしております。
  37. 新井彬之

    新井委員 そうしますと、たぶん二十二条の第一項にありますところの公園、緑地ということで無償貸し付けをなさったわけだと思うのでございますが、これはいま名古屋市が管理しておりますね。しかし、この中にクレー射撃場があるわけなんです。そのことは大蔵大臣は御存じですか。
  38. 水田三喜男

    水田国務大臣 存じています。
  39. 新井彬之

    新井委員 それはだれが管理しているのですか。
  40. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはただいま名古屋市が管理しております。
  41. 新井彬之

    新井委員 そうすると、名古屋市が管理をしておって、要するにそのクレーの射撃場というのは、さっきも言ったように、建設大臣から答弁がありましたけれども、何か非常に危険性があるのじゃないですか。道路がありまして、そして散弾が飛んでくる。これは一つの、銃砲を撃つ場合に、これも警察の関係になると思いますけれども、百メートル以内はそういう射撃場をつくっちゃならぬ、そういうところでは撃てないということですね。そういうことになろうかと思いますけれども、一体名古屋市が管理しておるということになれば、それに対して大蔵大臣はどのような指導をされているのですか。
  42. 水田三喜男

    水田国務大臣 私が聞いたところによりますと、昭和二十五年に国体のクレー射撃練習場を名古屋市がそこに設置してあったということを、これは当時財務局が使用許可を与えたかどうかが記録にわからないのでございますが、とにかくそういうものができておったということを知らなくて、そこの土地を一括二十六年の四月に名古屋市に対して公園として無償貸し付けをした。ところが、それを四十三年になって会計検査院がこの問題を発見して、指摘を受けましたので、これを直ちに有料貸し付けに直す措置をとる。同時に、ただいまではこの撤去方を大蔵省から申し出て、昭和四十六年度中に——四十六年度中というともうわずかでございますが、四十六年度中にはこの射撃場を撤去するということを文書をもって名古屋市からいま通知が来ておるという状態となっております。
  43. 新井彬之

    新井委員 名古屋市にいま貸しているというのですが、要するに、四十三年度から指摘したのに対して、名古屋市は全然そういうことを聞かなかったのですか。自治大臣、そういうことに対しては自治大臣としてはどのようにお考えですか。名古屋市は大蔵省から何回も、そういうことはあってはならぬと注意されて、そうして名古屋市が持っているものをまだ、なおかつ四十三年まで引き延ばすということについて、一体自治大臣はどのようにお考えですか。
  44. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 具体的な案件を私存じておりませんので、ちょっと……。
  45. 新井彬之

    新井委員 いま話をしているところなんですから。いま私が話をしているところでですね、要するに、具体的に案件をいま言っておるわけなんですから、それを聞いていて一体どのように考えるかと私は聞いているわけです。そうすると、先ほどの話を繰り返しますと、要するにこの平和公園というのは、四十六年の十月一日に名古屋市の要請によって財産法二十二条で無償貸し付けをしたということですね。その後、四十三年になって指摘があって——とにかく初め貸したときに、そういうことがわからない。要するに何が入っていたのかさっぱりわからないような、いいかげんな、その管理のずさんさ。これは今後もよっぽど注意してもらわないといけないと思うのですね。国有地活用活用だと言っているのに、それを、何があったかわかりません、あとになってわかりまして——それも二年や三年後のことじゃないのですね。こんな長い間わからなかった。したがって、そういうこともよく注意してもらわなければなりませんが、そのときわからなかったらしようがないんでしょうけれども、四十三年にわかって、それから名古屋市に対して早く返せといったわけでしょう。それとも、何かほかのことをやったのですか、どうなんですか。
  46. 橋口收

    ○橋口政府委員 大蔵大臣からお答えがございましたように、昭和四十三年に検査院の指摘を受けまして、無償貸与をいたしております公園用地の中にクレー射撃場がございますので、本来これは適当な時期に撤去すべき性格のものだ。ただ、現在占有をいたしておりますから、その占有部分につきましては有償の取り扱いの措置をとったわけでございます。したがいまして、契約といたしましては、全体としては無償契約でございますが、その中の占有部分については一応有償の取り扱いをして今日まで来ておるわけでございます。
  47. 新井彬之

    新井委員 おかしいじゃないですか。建設大臣はさっき、公園法ではクレー射撃場を認めるというのですよ。それが何がクレー射撃場があって、名古屋市が管理していることについて有償にするのですか。はっきりしてくださいよ。
  48. 橋口收

    ○橋口政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、国有財産法第二十二条によりますと、公園用地は良好な状態で管理をする。先ほど先生の御指摘にもございましたように、公園用地でございますから、一般の人間が広く利用できる形態による管理が必要でございます。そういう点から申しまして、クレー射撃場の部分につきましては、これは御承知のように、当初、昭和二十六年に貸与をいたしますときに、全体は公園用地でございますが、その中に約二十名ほどの耕作者がおります。田畑につきましてはやはり有料の取り扱いをいたしております。田畑、公園の中のクレー射撃場につきましては将来撤去されるということを予定して、その分につきましては、それまでの間有料の取り扱いをしておるわけでございます。
  49. 新井彬之

    新井委員 ちょっとまだその点はっきりしないんですけれども、要するに、財産法二十二条によって貸したわけですね。ところがそういうものがあった。しかしながら名古屋市が管理をしているわけでしょう。名古屋市は公園の設備の中においてもしも都市公園法に違反した場合は、当然すぐ撤去をしなければいけないんじゃないですか、そういう施設については。どうなんですか、建設大臣
  50. 西村英一

    西村国務大臣 一般的には、その射撃場は公園施設と認められますけれども、この場合は公園内でなしに、都市公園の予定地としておるようでございます。しかし、この場合はやはりそういう点からいきまして適当なところではないようでございます。
  51. 新井彬之

    新井委員 適当でないときはすぐに立ちのくべきなんでしょう、市が管理しておる場合は。どうなんですかそれは、公園法からいって。
  52. 西村英一

    西村国務大臣 いろいろ、いままでのいきさつはあるようでございますけれども、すみやかにこれは撤去するように、立ちのくように、私のほうも、建設省としても地方公共団体を指導したいと思います。
  53. 新井彬之

    新井委員 その、いままで立ちのかなかった理由については——市のほうが要するに四十三年から、いま、四十七年のもう三月ですね、それまで立ちのかなかった理由というのは、どういう理由で立ちのかないんですか。それでまた大蔵省は、それに対して何をいっておるわけなんですか。
  54. 水田三喜男

    水田国務大臣 大蔵省は、昭和四十五年の九月十八日に東海財務局長から名古屋市に対して、公文書でクレー射撃場を撤去するか、そうでなければ貸し付け目的どおりの使用方について措置するように申し入れて、是正されないときには契約解除措置をとるということを通知いたしましたところ、名古屋から四十五年の十月九日に公文書をもって回答が参りまして、この射撃場を四十六年度中には撤去するという回答でございました。  そこで、その後のいきさつでございますが、愛知県がこのクレー射撃場を移転するための補助金を交付するという予定をしておりましたが、県の体育協会を脱退するということになりましたので、この補助金の交付がやめになったというようないきさつがあっておくれておりましたところ、県の記者クラブから市に対してこの問題のいきさつについての説明が求められた際、市は国から撤去を要請されておるので、いま移転先を物色中であるという説明を記者団にしたといういきさつがございますが、市は移転先をさがしておるからもう少し待ってもらいたいというようなのがこれまでの態度であったと、こう思います。これに対しては県警からも市に対して、危険であるからすぐに措置をとるようにというような警告を受けておりますので、市はただいまこの射撃の中止はいたしておりますが、まだこの射撃場の廃止という措置は現在とられておらない。四十六年度中にはとるということになっておりますので、何らかの処置をとらせるつもりでおります。
  55. 新井彬之

    新井委員 じゃお伺いしますけれども、よく大蔵大臣が言われております「国有地の有効利用について」、こういう中間答申がいろいろ出ておりますけれども、その中にありまして、「公園として国有地の無償貸付を受けていながら、そのうちの一部を公園施設と認められないような施設の敷地として第三者に転貸している例が見受けられるが、これらについては、何らかの措置が必要であろう。」こういうことがございますが、こういう事例というのはどこにありますか。
  56. 水田三喜男

    水田国務大臣 ただいまのようなものは一つの事例であろうと思います。
  57. 新井彬之

    新井委員 そうすると、さっき言ってきた話とだいぶ違いますよ。要するにいまの局長答弁は、また大臣答弁は、市に貸したんだ、市がクレー射撃場を管理しているんだ、こう言っているのですね。ところが、指摘されていることについては、これは第三者に又貸ししていると言っているんですね。ということは、これから考えるに、要するに大蔵省は名古屋市に貸した、名古屋市は第三者のクレー協会か何かに貸した、そのために立ちのきがなかなかできない、こういうことだろうと思うのですけれども、そういうことでよろしいですか。
  58. 橋口收

    ○橋口政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、大蔵省は名古屋市に貸与をいたしております。貸与後の資産の管理の態様が、御指摘のような問題があるわけでございます。
  59. 新井彬之

    新井委員 そうしますと、国有財産を二十二条の規定によって無償貸与をする、これは各地方公共団体ですね。その場合に、そういう第三者に又貸ししていいということはないわけでしょう。どうです、大蔵大臣
  60. 水田三喜男

    水田国務大臣 いいことはないのですが、さっき申しましたように、二十五年にすでにこの射撃場をつくってあったという事実を確認しなかったことは、こちらの手落ちであったと思います。
  61. 新井彬之

    新井委員 これはまあ、いま大臣が、その契約の時点で全然わかりませんでした、申しわけありませんといえばそれまでのことでございますけれども、私が質問しているのは一つの公園の問題というんじゃないのです。国有地というのは、もうほんとうに大事な国民の財産だ、それを預っている人がそういうような、何があったかわかりません、またこれはどうかわかりませんというようなことでは、国民の皆さんはそういうことに対して納得できないんじゃないかと思うのですね。それからもう一つは、少なくとも公園施設で、みんなが集まっていこいの一ときを楽しむ、そういうような公園施設の中で、クレー射撃場があるために遊歩道もストップをされてしまっておる。ここにも写真を持ってきておりますけれども、せっかく遊歩道ができても、この射撃場がある、こういうような危険があるから入っちゃいけないと、名古屋市が出しているわけですね。そういうような状態においてやるということは、これはとんでもないこと、このように私は思うわけです。したがって、これは一つの公園の事例じゃなくて、もうこれは大きな問題だ。  そこで、名古屋市が第三者に貸しておったということを認めたわけでございますけれども、じゃ名古屋市がクレー協会にどういう契約書でお貸しになったか御存じですか。ちょっと内容を教えていただきたいのです。
  62. 橋口收

    ○橋口政府委員 私どもの調査によりますと、愛知県クレー射撃協会、これは任意団体でございます。会長は名古屋市東区東新道町三丁目九番地熊谷賢一さんという方でございます。昭和二十五年十月一日に体育協会登録になっておりますが、昭和四十六年三月十八日脱退をいたしております。お尋ねがございました市と協会との間の契約につきましては、われわれの調査によりますと正式の契約はないように承知をいたしております。
  63. 新井彬之

    新井委員 それじゃ何も契約がなければなぜ立ちのかないんですか。名古屋市が何もないというのなら、なぜ立ちのかないんですか。
  64. 橋口收

    ○橋口政府委員 先ほども大蔵大臣からお答えがございましたように、昭和四十五年の九月に、東海財務局長から正式の文書として名古屋市長に対して「平和公園敷地として貸付中の土地について」ということで、いわば解除の予告をいたしております。撤去の予定時期、その具体的計画等を四十五年の十月十日までに報告されたい、なおこのままの状態が継続すれば、当局としては契約解除の処置をとらざるを得ないので念のため申し添えますということで、正式に解除の予告の通告をいたしております。それに対しまして、四十五年の十月に名古屋市長から、「平和公園敷地内のクレー射撃場を撤去し、貸付け目的どおり使用するよう催告がありましたが、このことにつきましては、すでに沿うべく鋭意努力をいたしておりましたが、昭和四十六年度中には撤去いたしますので、事情を御賢察のうえ、寛大なる御処置をお願いいたします。」こういう回答が参っております。その回答の結果に基づきまして昭和四十六年度中に撤去の処置をとるというふうに承知しております。
  65. 新井彬之

    新井委員 あなたは知っていながらそんなことを言うのか、知らないでそんなことを言っているのかわかりませんけれども、ここにちゃんとそういう文書がありますね。要するに名古屋市がクレー協会に一応許可を与えるということですね。さっきの公園法からいっても違反になるでしょう。あるいはまた国有財産法二十二条からいったっておかしいでしょう。その中にどういうことが書かれておるかというと、これは要するに、「本市において必要と認めるときは管理許可条件を変更し、又は管理許可を取り消すことがある。この場合において申請者が損害を受けることがあっても本市は賠償の責を負わない。」こういうぐあいになっておわけですね。またそれから十一項には「申請者は施設の管理期間が終了し、施設の管理を廃止し、又は管理許可を取り消されたときはすみやかに立退かれること。」こういうことになっておるわけですよ。そういうように一応第三者に貸し与えておった。  そこで問題なのは、要するにいま大蔵大臣は四十三年にそのことがわかったと言いましたね。その事実がわかったときに、なぜもっと、国有地というのは大事な問題なんだ、そうしてまた公園というのは必要なんだという立場に立ってそれをすぐに立ちのき命令を出す、これがほんとう国有財産法二十二条にのっとった精神じゃないかと思うのですね。それを有償に切りかえる、有償に切りかえたらこれは向こうに権利が生じますよ。どうなんですか、大蔵大臣、この点は。
  66. 水田三喜男

    水田国務大臣 そのときの事情をよく存じませんので、事務当局から説明させます。
  67. 橋口收

    ○橋口政府委員 たびたびお答えを申し上げておりますが、普通財産の管理の態様としましては、公園用地の中に特定のグループのクレー射撃場が存在するということは、大蔵省としては適当と考えておりません。ただ、昭和二十五年から実際に占有をいたしておりますから、そういう占有状態のものを排除するにつきましての多少の経過期間も必要でございます。さりとてその間無償貸与で経過するということも適当でございませんので、やはり一定の猶予期間という意味におきまして有償の取り扱いをいたしたわけでございます。ただ、有償契約をいたしましても、本来そういう利用の形態は適当でないというように考えておりますので、先ほど来申し上げておりますように、四十五年から正式の文書も出し、今日まで経過をして、処置の目途が立ったわけでございます。
  68. 新井彬之

    新井委員 いまみたいな答弁をやっておれば、そういうことがあってはなりませんけれども、地方公共団体に払い下げる、そのときに第三者に貸してあげる、一応そういうことはわからないようにして、そうしてそれが大蔵省にわかった時点においては、まあそういう施設もできているんだからなんて、そういうようなことであっては、それで有償にして金を取ってみたりあるいはまたやめて、そして立ちのき勧告をやってみたり、そういうような国有財産の管理のしかたじゃならぬと私は思うのです。したがって、いまたまたまこういう問題が指摘されましたけれども、国有財産というのは非常にたくさんあるわけです。これは何も大蔵省だけじゃございませんけれども、国有地というのは全国土の二四・四%、まあほとんどが森林地帯ということだろうと思いますけれども、それにしてもまだ活用できる国有地が二四・四%、とにかく全国土の二四・四%あるわけですね。あるいは公有地も五・三%、合計いたしますと、そういう公共団体が持っている土地とか、そういうものからいくと、大体三〇%はいま持っているわけですね。したがってやはりこれらの管理の運営については厳正を期さなければいかぬ。大蔵大臣は今後そういう問題について、一切そういうことのないように措置をどのように講ずるか、その決意を私はひとつお伺いしたいと思います。
  69. 水田三喜男

    水田国務大臣 今後の国有財産の管理においては、もうそういう問題はないと私は思います。本件のようなのは、これは旧陸軍から引き継いだ土地でありますし、当時まだ日本が独立していなかった時代のできごとでございまして、財務局長が認可したかしないかというようなこともまだはっきりしていないというようなことで、管理体制は十分でなかったことは確かでございますが、今後はもう国有財産の管理は、こんなずさんなことは絶対にいたしませんし、またあり得ないことと思います。
  70. 新井彬之

    新井委員 そこで、今後の問題としてひとつお聞きしておきたいのですが、要するにいま射撃場がある。ところがそこには幅五メートル、二百五十メートルにわたっての遊歩道というものがあるわけですね。それがあぶないということでこれは通行どめになっているわけです。ここにもありますように、こういう公園の一切の問題、こういう問題について、今後公園が公園法の精神にのっとってみんなから愛され、安心してやれるようなほんとうの公園にしていかなければならぬと思うのですね。建設大臣はそういういろんな問題があったときには指導し、監督する立場ですね。助言が与えられますね。そういう立場で一体どのようにしていくのか、お伺いしたいと思います。
  71. 西村英一

    西村国務大臣 もちろん公園は、たくさんの国民の方々が使っていただかなければならぬところでございます。したがいまして、利用者に対して不便だとか危険だとかいうようなことがわかれば、それを改善していかなければならぬことはもちろんでございます。そのような精神で公共団体を指導したい、かように思っております。
  72. 新井彬之

    新井委員 このクレーの射撃場につきましては市営の射撃場もあるわけですね、自治大臣。市営のクレー射撃場が倉敷にございまして、そしてもうすでに十名が流れだまに命中しているのです。これは非常にあぶないと思うのですね。これはもともと市がつくったというよりもだれかが寄付をしてくださって、そして初めはどうということなかったんでしょうけれども、とにかくそういう問題で非常に命中しておる。一日に七百発も千発も撃っておりますから、近所から非常に問題が起こっておりますけれども、そういう危険な場所に市営のクレー射撃場があるということについては私は問題だと思いますけれども、自治大臣いかにお考えですか。
  73. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 どういうふうな姿でクレー射撃場を市営で行なうかということについては私、具体的に知らぬものでございますから、もしほんとうに健全なるスポーツとして運営されるのであれば市営であり得ることもけっこうでございますが、いま申されましたような危険が伴うような場台は、公営施設である以上はそのような危険が絶無というだけの完ぺきなる施設にせなければ適切な施設でないと考えますので、具体的にはよく事情を調査いたしまして適当な御配慮を願うようにお願いしたい、かように考えております。
  74. 新井彬之

    新井委員 建設大臣、さっきあなたは公園は非常にちゃんと管理をされておるということだったですね。ところがちょっと問題があるのですが、丘庫県に尼崎というところがございますけれども、その尼崎に下園公園というのがあるわけでございます。これは三千五百平方メートルぐらいの公園でございますから、そんな広い公園じゃございません。しかしながら、御存じのように尼崎というところは、もう公害でもってほんとうに緑地が少ない、過密の密集地のところである。そこの公園が、不法占拠とは言い度せんけれども、とにかく立ちのいてくれというみんなの要望があるのになかなか立ちのいてくれないのです。どこが立ちのいてくれないかというと、建設省が立ちのかないのですよ。建設省の猪名川工事事務所というのがそこを陣どっておりまして、これは要するに猪名川の河川工事をやっておりました関係でそこに事務所がある。そうしてその工事は二年ほど前に終わったわけです。終わりましたから、どいてくれどいてくれというんで半分ぐらいはあけたのですけれども、まだ少し残っておるわけですね。それもずうっと二十年来そこへ立ちのかないでおった。それまで地元の人は工事があるからといってがまんをしておった。したがって建設大臣、あなたは公園のことについては市町村長にまかしておると言いますけれども、少なくとも建設省の出先機関でそういう事務所があるならば、しかも公園整備五カ年計画をつくって、これから大いに公園をしてみんなで楽しんでいただこうというなら、そういうところからどける気持ちはありませんか。どうですか。
  75. 西村英一

    西村国務大臣 それは私も初耳ですが、猪名川の工事は私は大部分完了をしたと思いますが、まだ少し残っておるかもしれません。したがって、そこに事務所があるということは初めて聞きますが、それがもしその公園の非常に障害になる、また工事事務所の役目もほとんど済んだということになればこれは善処したい、かように考えております。
  76. 新井彬之

    新井委員 まあ、ひとつかっちりやってください。建設省がそんなことじゃほかはみんな見習いますよ、それは。公園つくる大臣がそんなことをやっているわけですから、それはやはりきちんとやっていただきたい、このように思うわけでございます。  それから、きょうはせっかく総理府総務副長官に来ていただいておりますので、ひとつ交通災害の問題についてお伺いをしておきたい、このように思うわけでございます。  この交通安全対策につきましては五カ年計画なんかがあるわけですね。まあそういうわけで、横断歩道あるいはまた陸橋あるいは信号あるいはまた歩道をつくろうというようなことで鋭意努力されておる。そしてこれから五カ年には、交通事故というものは半分に減らそうということをいま立てておるわけですね。しかしながら、昭和四十六年にいたしますと死者というのは一万六千二百七十八人、負傷者が約九十四万人をこしておるわけですね。そういうわけですから、これが半分に減ったといっても、まだまだ交通事故で困られる方がたくさんいるんじゃないかと思うわけです。その交通事故もまあいろいろの面で困るわけですね。一つ交通災害にあわないほうがいい。これは交通安全対策です。今度は交通事故にあってしまった。それについては今度は病院にも行かなければいけない、あるいはまた加害者としては会社を休んでいろいろなことをやらなければいけない、あるいはまたあと生活の保障の問題、そういうようなこと全部がからまってくる。要するに自分の一身の全部のものがからまってくるということになろうかと思うわけでございます。  そこで昭和四十六年度現在においては、交通事故相談員というものを全国で約三百名、いろいろ配置をいたしまして、総理府といたしましてはそういう方々の相談に応じようということで現在やっておるわけでございますけれども、その受け付け件数というのは二十二万一千五百七十三件、相談員は一人大体年間七百三十九名のそういう方に対しての、まあいろいろな要望を聞いているわけですね。しかしながら、実際問題いろいろ聞いてみますと、これは私の調査によりますと、交通事故が起こった場合に一体どのようにやったらいいんだろう、被害者は被害者、加害者は加害者で非常に困っておる。たとえて言いますと、一つの損害賠償保険をおろすにいたしましても、なかなかこれは手続がございます。そういうわけで、専門家以外なかなかわかりにくい、こういうようなことがあるのじゃなかろうかと思うわけでございます。そこで、これは兵庫県の例でございますけれども、交通事故者に対する追跡調資をいたしたわけでございます。その中で、対象人員というのは二千七百四十四名、そして回答が非常に少なくて七百二名しか来なかったのですけれども、一応示談によって解決した者が三百三十九名、それから調停によってが三十名、訴訟が十一名、それから自賠責、そういうのだけで解決しちゃった者が七十二名、ただ解決したと答えた者が三十二名おるわけでございます。そういうようないろいろな中で問題があるわけでございますけれども、ただ交通相談員だけで済むような問題ではなくなってきておる。先日も、九州の車にはねられた人がいるのですね。その方が相談に参ったのですが、電話だけで破産するというのです。会社にも行かなければいけないのです。そして病院にも入って、奥さんは法律はわからない、そのときに一体だれに聞きに行ったらいいのだろう。これは市にはそれだけのやはり火曜日とか水曜日に区切って法律相談というのをやっていますね、そういうことだって何もわからないわけです。したがって、これから私は、これはいま潜在的に困っている方がたくさんおる、こういうように思うわけでございますけれども、とにかくそういうものが一括してわかる交通災害総合センターというようなものを、各府県、いまのところは全部とは言いませんが、一部でつくっていただきたいというような希望がだいぶあるようでございます。その内容といたしましては、事故直後の総合処理体制ですね、それから被害者等の救済体制、それからまた被害者等の生活援助体制、こういうような柱に分かれるのでございますけれども、この場合にやはり国としてただ地方公共団体にまかすのじゃなくて、これはもう警察もあるいはまた厚生省も、あるいはまたほかの自治省も、いろいろあると思いますけれども、そういうときに総理府としては——起債を認める場合は自治省になると思います、また交通事故相談員等の人件費の問題もありますけれども、そういうことについては起債であるとかあるいはまたそういう人件費補助というものを出してあげていかなきゃならぬじゃないか、このように思うわけですけれども、簡単でけっこうですから、それだけちょっと答弁いただきたいと思います。
  77. 砂田重民

    ○砂田政府委員 ただいまの御心配の点、私どもも同じような感じを持って交通対策と取り組んでいるわけでございますが、具体的に兵庫県の問題をおあげになりました。兵庫県が検討をいたしております交通事故総合センターというものは全く新しい、きわめて好ましい、ユニークな構想であると私は考えております。ことし建物を建てまして、四十八年から実務にスタートをしようとしておりますので、被害を受けられました方々の利便にも資するところあり、かつまた、これは救急体制、交通巡ら隊もその建物に配置しようともしでおりますし、一切の相談事務、さらには進んで、残念な犠牲者となられた方の葬儀の施設まで考えておられるようでございます。おっしゃいましたような各省にまたがることでございますけれども、交通安全対策の総合調整をやらなければなりません私どもといたしましては、それぞれの各省にお願いをいたしまして、この兵庫県構想がきちんと進んでまいるように各省にお願いしていきたい、かように考えておりますが、直接私どもの所管をいたしております相談員の補助金のことにつきましては、現在兵庫県も相談員を持っておりますけれども、そういう施設をつくれば新たに相談員の数はふえるわけでありますから、四十八年度この実務がスタートいたします年次で前向きに積極的に御協力していきたい、こういうふうに考えております。
  78. 新井彬之

    新井委員 ひとつよろしくお願いします。  これは何も、いま兵庫、兵庫と言いましたけれども兵庫の問題ではなくて、全国で起こっている問題でございます。そういう意味で私はたくさんの、よしんば東京におりましてもそういう相談を受ける、あるいはまたよそへ行ってもそういう相談を受ける。そんなことは、わかっている者の立場からすれば、あそこへ行ってこうすればいいんだということで終わるのですけれども、なかなかそういうことにいかないわけですね。だから消防署だとか警察は一一〇番だとか一一九番でぽんとわかるわけです。なぜかというと、それはもうみんなに徹底しているし、あそこにすればいいんだということになっているわけです。ところがこの交通の問題というのはあまりにも生活がかかるわけでございますから、なかなかそんな電話一本で終わるようなことはない。それであの書類を持ってこい、この書類を持ってこい、それが示談の解決の場合、あるいは裁判の場合もあろうかと思いますが、非常に長くかかる。特にほんとうに家までなくした人がおるのですね。もうほんとうに長距離の人にやられて、正義の執念であるというようなことで、もうそこまで通って、仕事ができなくてどうしようもないというような方もおるわけです。そういうような方を、たった簡単な一つ施設によってちゃんと教えてやることができる。これは当然じゃないか、こういう意味におきまして、副長官の非常に前向きな答弁がございましたので、ひとつよろしくお願いしたい、このように思うわけでございます。  最後に、それじゃ住宅問題、これ非常に大事でございますので、少し聞いておきたいと思います。  この住宅問題についてはもう予算委員会におきましても、あるいはまた担当委員会におきましていろいろと話題が出ております。先日建設大臣は非常にごりっぱなことを申しまして非常に感激をいたしておるわけでございますが、わが党の北側委員の質問に対しましていろいろと答弁をいただきました。その内容は、北側議員が、民間自力建設というのが、第一次五カ年計画、このときよりも第二次五カ年計画のほうが三八%も余分に見ておる。だけれども、その三八%見ておる五百七十万戸の民間自力建設が非常にまあ落ち込んでいるわけですね。これはもう建設省データ、そういうものではっきりしておりまして、幾らですか、二万一千戸ですか、落ち込んでおる。それについては非常に心配をしておるわけです。もう一つの心配点というのは、前に、当時西村建設大臣でなかったと思いますけれども、住宅建設五カ年計画の場合に、とにかくこれだけの世帯数が足らないということで、この五カ年計画さえ達成すれば一世帯一住宅になるのだということで来たわけです。ところが実際は、理由はいろいろ聞いております。まあこれは家族の分散、核家族化であるとかいろいろな事情はあろうかと思いますが、現実の問題として三百万世帯以上の方が住宅難にあえいでしまった。ところが今度は、九百五十万戸の住宅を建てれば一世帯一住宅でなくて一人一室になるのだ、こういう計算が成り立っているわけですね。この前もその件については、間違いなく一人一室です、今度は計算の誤りはございません、そういうぐあいに答弁をされている。そこでもしも九百五十万戸が達成すれば、一世帯一住宅、一人一室になるのだ、希望に燃えた、ほんとうにうれしいことでございますが、とにかく民間自力建設が落ちておるので、その件についてどうするのだ、こういうことに対しての大臣答弁なんですが、公的住宅民間住宅の比率ですけれども、何%が何%になる、どちらを何%にしてどちらを何%にしようというような考え方でなしに、とにかく九百五十万戸の数字を出すということだ。だから要するに民間自力が落ちればこれは公的のほうをふやすのだ、その九百五十万戸の分け方は、所得の点から割り出して自力で家が建てられない人はどれだけあるかということでやっているわけですから、それで公的住宅がきまっているわけですから、自力で建てられない人がはっきりした場合においては、まあ公的な住宅をたくさん建ててあげましょう、こういうような答弁だったと思います。それから景気は落ち込まないだろうけれども、かりにことしも予期より相当に落ち込んだ、来年も相当落ち込みそうだというならば、九百五十万戸は絶対に守らなければならない数字でございますから、公的資金をそれにかえなければならぬということは当然でございます、こういうことでお話がございました。私はほんとうにりっぱなことだと思いますけれども、まあ調整戸数としては三十八万戸ございます。私は今回、今後どのようになるかという一つ見通しはむずかしい問題があろうかと思いますけれども、民間自力建設が落ち込んだ場合においては、この公的住宅を決して調整戸数のみならずやっていくだけの決意だ、こういうことに私は解釈して喜んでおるのですが、それでよろしいですか、大臣
  79. 西村英一

    西村国務大臣 いまちょっと、最後のどうしたらばというところがわかりませんでしたが、大体の考え方は質の向上のために一人一室、これは新井さんも御存じのとおり、四十三年に全世帯一人一室はどうなっておるかというのを調べましたら、五七%が、四十三年の統計で出ているわけですから、今度は五カ年計画をやりますと、やはり今度の五カ年計画でもってそれが相当に上がります。それで、六十年を目標にして一〇〇%全部したいという計画でございます。非常に不景気ですから最近ちょっと落ち込みました。したがいまして、これは公的な住宅でカバーしたいと思っております。いずれにいたしましても、そんなに不景気も続きませんから、九百五十万戸の確保は絶対にできる、またでかさなければならぬ、かように考えております。最後の御質問の趣旨がちょっとことばがわかりませんでしたが、これだけお答えしておきたいと思います。
  80. 新井彬之

    新井委員 私の言ったのはこういうことです。要するに大臣は、民間自力建設あるいは公的住宅が、比率がありますね、その比率については、どうして考えたかというと、それだけの人が困っているから公営住宅にしたんだ、こういうわけですね。そこで、計算をし直して、ほんとうは困っている人がもっとたくさんいたんだということがわかった場合、あるいはまた民間自力建設が、それにもかかりますけれども、どんどん下がっちゃった。すなわち五百七十万戸の民間自力建設が、よしんば四百万戸に落ちたとしますね。そうすると、百七十万戸というのはどこかで何とか都合しなければいけない。これは建てられなかったのですから——調整額というのは三十八万戸しかないですね。したがって、少なくともその落ちたものについては、やはり困ったんだということでやるかどうかということなんですよ。一言でやると言ってくれればそれで済むことです。簡単なことなんです。
  81. 西村英一

    西村国務大臣 もう十分おわかりでございますが、簡単に申し上げますと、結局住宅難といいましても、その住宅難の内容がいろいろあるわけでございますから、いまやっておる公的の三百八十万戸も簡単に出したものではありません。統計に基づいて、そしてこの期間はなるべくその計画のとおりやっていこう。もし民間等が落ち込んだ場合には、それは公的でもってそれを増していくより方法がないのじゃないかということを申し上げたいのでございます。
  82. 新井彬之

    新井委員 それではもう一つ聞いておきますけれども、住宅という問題は、いろいろな考え方が出ておりますけれども、一つ経済政策という考え方、もう一つ福祉政策という考え方があろうかと思います。そうじゃなくて、それは両方がミツクスしているものなんだ、こういうような考え方があろうかと思いますけれども、一体それは大臣としてどのようにお考えになっておりますか。
  83. 西村英一

    西村国務大臣 住宅のみならず社会資本のおくれておることは、景気回復させるために社会資本を増そうというものではございません。やはりそれは社会資本がおくれておるから、その結果によって、それをも兼ねてそれによって景気回復する。ことに住宅のごときは、私が申し上げるまでもなく、景気が浮揚すればもうそれでいいんだというようなものではございません。住宅は最もおくれておりますからそれを進める、その結果によって景気も非常に浮揚する。ことに住宅は、景気浮揚の点についてはいろいろなファクターから考えますと一番重要だということでございますから、あわせてということはそこから出ておるのでございまして、景気にかかわらずあくまでも住宅は国民に提供しなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  84. 新井彬之

    新井委員 私は何が言いたいかというと、それは混合だ、けっこうでしょう。そこで要するに少なくとも住宅という問題については、公的住宅、これは一つ福祉政策的なものが非常に入っておりますね。たとえて言いますと、日本住宅公団がどうして設立されたのか。これは明らかにその第一条の目的にも書いてありますけれども、「住宅に困窮する勤労者のために」こういうことになっておるわけですね。したがいまして、住宅に困窮する勤労者のためということははっきりしておるわけです。それからもう一つは、「国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする。」とうたっていますね。だから当然住宅の中でも、その入ってもらう人についてはそういう精神でなくちゃならぬ、こう私は思うのですけれども、いまの公団住宅の家賃なんかから計算しますと、これは構造上そうなっておるわけなんですけれども、とにかく欠陥はある、非常に不便なところに建っておる、そうして家賃だけはどんどんどんどん上がってしまう、こういうようなことでは第一条の目的に違反するのではないか。これは要するに、さっきも私が話しましたように、経済審議会から出ておるのでは、五十五年では三十キロ圏においては三十三万円の収入がなければ二DKしか入れないというのですよ。したがってそういう傾向というものが公団住宅にも明らかなんです。したがいまして、今回も家賃の値上げを、大蔵大臣もよくわかりまして、それはすべきじゃないということでやめていただいた。大いにけっこうなことだと思う。来年もたぶんやらない、そういう決意だろうとは思います。思いますけれども、とにかく新しくつくる公団住宅はどんどん上がってくる。これではこういうことにかなっていないわけですね。したがいまして、私はそういうような一つの問題について、ほんとうに今後がっちりと前向きにそういう法律の精神を生かす、そうしてみんなが楽しんで暮らせるような住宅行政をやっていただきたい、そういう意味で質問をしたわけでございますので、これは大蔵大臣予算建設大臣にまたたくさんいただかなければなりません。今回も聞くところによると、これはうわさでございますからはっきりわかりませんけれども、とにかく公団の利子補給五%のものを四%にする、一%下げるということがあったのだけれども、それが家賃は上げなかったし、なかなかそういうわけにはいかぬということになったということを聞いたのです。そんなことはないと思いますけれども、そういう福祉住宅について今後九百五十万戸建てて、公園建設とともにほんとうに楽しくやっていくんだ、そういうことについて最後に決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  85. 西村英一

    西村国務大臣 大蔵大臣と十分打ち合わして、しっかりやります。おまかせください。
  86. 水田三喜男

    水田国務大臣 そのとおりでございます。
  87. 新井彬之

    新井委員 どうもありがとうございました。
  88. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて新井君の質疑は終了いたしました。  次に、木島喜兵衞君。
  89. 木島喜兵衞

    ○木島委員 最初に、国会でいままでいろいろと高級官僚の特殊法人に対する天下りの問題が議論されております。このことはずいぶん政府においても御努力をいただいておると思いますけれども、量においては減少しつつありますが、むしろ、この議論がされておる趣旨からするならば、質の問題が大切ではないか。そういう意味で、いままで国会の中でもって、特殊法人に対する天下りについてはずいぶんと議論をされておりますが、具体的な個人名をあげるという例は、これはあるいはあまり好ましくないかもしれないからいままでになかったのでありますけれども、私はきょうはあえてある個人名をあげながら、特殊法人に対する高級官僚の天下りについての御見解を承りたいと思うのであります。  最初に、会計検査院の事務総長にお願い申し上げますけれども、前の会計検査院事務総局次長の小熊孝次さんの件であります。この方はいつおやめになり、そしてやめた理由は一体何であったかをまずお聞きいたします。
  90. 石川達郎

    ○石川会計検査院説明員 会計検査院としましては、年々の予算規模の増大であるとか、あるいは財政会計制度の複雑多岐等の傾向に対処いたしまして、より適切な検査を行なうために、常に研究を必要とされているわけでございます。その一環といたしまして、財政当局の行政官として、経験、知識の豊富な小熊氏を、特に懇請して来ていただいたのが三十九年の四月でございます。その後、会計検査院といたしましては、着々と所期の目的を達成しつつあったわけでございますが、この間におきまして、小熊氏の寄与した程度というものも非常に大きかったわけでございます。そこで、昨年でございますか、前院長の時代でございますが、小熊氏の招聘の目的はほぼ達したと見まして、引退の機会を与えるようにお考えになっていたと思いますが、たまたま昨年五月二十一日の参議院の決算委員会におきまして、本人の記憶違い等から御審議に御迷惑をおかけしたというようなこともございまして、昨年の六月一日、退職の勧奨を  いたしたように聞いております。
  91. 木島喜兵衞

    ○木島委員 昨年の五月二十一日の参議院の決算委員会において、国会の審議に御迷惑をおかけした、この内容が、その次にこれから質問することについてきわめて重要だと私は思うのであります。御案内のとおり、昨年の五月二十一日の決算委員会で明らかになったことは、昭和四十二年七月に会計検査院の二局長の井上鼎という方が雇用促進事業団に監事として天下りました。その四十二年七月は、ちょうど四十一年度の検査が行なわれるころであります。したがって、四十年までは実は検査結果の上ではいろいろと事業団に対する指摘があったにかかわらず、それ以後全く事業団に対する検査院の指摘がないのであります。しかし、それでは問題がなかったかというと、決算委員会で明らかになったごとく、たとえば関東物産という会社に、職業訓練用の機械が随意契約で、昭和四十二年には五五%、昭和四十三年には五七%、四十四年には六六%もあったのでありますけれども、それの指摘が全くなされていないことが決算委員会で明らかになっておる。そして昭和四十五年八月三十一日と九月四日に事業団本部を検査しているのでありますけれども、その直前の八月六日、築地の吉兆というところで事業団と会計検査院が会食をしていらっしゃる。そして事業団は天下った井上監事ほか十名が出席し、検査院は三名が出ておった。その中に小熊さんも入っておったにかかわらず、国会ではそのことを言わなかった。そのことが後に発覚をした。そして参議院の決算委員会の議事録を抹消しようとするような動きすらあった。そういうようなことがあったことが、いまおっしゃるようにやめた理由であったわけであります。したがって、その方がおやめになるときには、退職の形は何でありますか。懲戒免職かあるいは依願免職か、依願免職にしても普通退職かあるいは勧奨退職か、そのいずれでありますか。同時に、勧奨退職だとすれば、その退職金は幾らですか。普通退職よりおよそ何割増しぐらいですか。
  92. 石川達郎

    ○石川会計検査院説明員 雇用促進事業団に対する検査でございますが、これは一時私も担当いたしておりましたが、別に井上監事から提出されたからといって、特に検査に手心を加えているようなことは一切ございません。それから小熊次長が相手方と会食をいたしましたのは、たまたま双方に、雇用促進事業団におきましても会計検査院におきましても幹部の交代がございまして、その打ち合わせというような——顔合わせというような意味で会食したように聞いているわけでございます。むろん会計検査院としましては、その職務の上からいいましてもはなはだ遺憾なことであったわけでございますが、それが直接検査に関係するという意味でなく、儀礼的なものであったという点はひとつ御理解いただきたいと存じます。さようなこともございまして、それから人を取り違えたという点でございますが、これは小熊氏の平生の人柄からしまして、その場を糊塗して済ますというような人柄ではございません。全くの記憶違いであったというように承知をいたしているわけでございます。以上のような次第もございまして、任命権者である院長におきましても、特にこれを懲戒処分に該当しないというようなことで、厳重注意という処分をしたわけでございます。  それから、退職金の件でございますが、これは国家公務員等退職手当法の五条を適用いたしまして、およそ五割増し、千七百十七万という退職金を支給したわけでございます。
  93. 木島喜兵衞

    ○木島委員 それは、特に事業団に手心を加えたことがないとか、あるいは会食は顔合わせだとか儀礼的とかおっしゃるようなこと、私は、会計検査院というものこそそういうものについては厳重でなければならない。そういうものに対して弁解的なことをおっしゃることこそ私はおかしいと思う。もし何でもないならば何も厳重注意することはない。したがって私は、なぜ勧奨退職の金額まで聞いたかというならば、少なくとも厳重注意であるから、私は懲戒免職をせよということではない、しかし、少なくとも五割増しの勧奨退職金を出すということ、このことは会計検査院としてはいかがなものかという立場から、実は個人の金額まで聞いてたいへん恐縮だったけれども、聞いたのです。その辺をもう一回明確にしてください。会計検査院だけに私は明確にしていただきたいと思う。
  94. 石川達郎

    ○石川会計検査院説明員 御指摘のように、会計検査院としては、行政官ではございますけれども、その職務の性質上特に進退につい厳でなければならないことは、これは全く御指摘のとおりでございます。そのために、出張先等におきます応対等につきましても、絶えず上司から注意を与えているような次第でございます。  そこで、小熊氏に対する退職給与の問題でございますが、先ほど申し上げましたように、国家公務員等退職手当法の第五条、さらにその施行令四条を適用したわけでございますが、二十五年以上勤務いたしまして特別非違がなくて勧奨により退職する場合には、これはおよそ五割増しというようなことに通例なっておりますので、さような処置をしたように聞いております。
  95. 木島喜兵衞

    ○木島委員 少なくとも国会に対する偽証的行為であります。あなたはさっき思い違いとおっしゃったけれども、自分が会食に出ておって、自分が答弁をして、自分が思い違いで出ておりませんなんというのは思い違いとは言えない。あなたのそういうことばこそ私は問題と思うのでありますけれども、そういう意味では国会に対する偽証的な行為である。同時に、会計検査院の名誉を著しく傷つけたと思うのです。同時に、高級官僚の保身にきゅうきゅうとする醜い姿もまた露呈をしておるのでありますけれども、そういう状態が、厳重注意を与えているものが、何で普通退職でなしに五割増しの勧奨退職金を出さなければならないのですか。少なくとも会計検査院というものはどういう仕事をするのですか。公金が公正に使われているかいないかということを検査することを任務とする会計検査院が、みずからそのようなことを行なっておる、あるいはあなたがそのような弁解をなさる。このことが、招待を受けてもそれは儀礼的だ、顔合わせだと先ほどおっしゃった、そのような感覚に似ておりませんか。その点をもう一回御答弁いただきたいと思うのです。
  96. 石川達郎

    ○石川会計検査院説明員 御指摘の点はまことにごもっともでございまして、会食の件、これはたとえ儀礼的なものであるといえども、これは慎まなければならないことは先ほど申し上げたとおりでございます。  それから、国会に対します——われわれは記憶違いと考えているわけでございますが、事実と相違する説明をしたということも、これまた本人といたしましては責任を感じていることであろうかと存じます。  ただ、退職手当法を適用いたします場合にどういった裁量でするかということは、これは任命権者であります院長がおきめになることでございまして、院長といたしましても、小熊氏のふだんの業績であるとか、あるいはその人柄等をしんしゃくした上で、さような処置をとったように承知をいたしておるわけでございます。
  97. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いま御答弁のようなみずから反省のなき状態でありますから、したがって、その厳重注意をし、そのことが原因でもっておやめになっているにかかわらず勧奨手当を出したが、しかし、その方が六月一日にやめて、十月十日に、五カ月余後に住宅金融公庫の理事に就任していらっしゃいます。月収三十万五千円、これについての御感想をお聞きいたします。
  98. 石川達郎

    ○石川会計検査院説明員 六月一日退職いたしましてから、本人はしばらく静養していたわけでございますが、たまたま、十月でございますか、住宅金融公庫の前理事の任期が参りまして、財政当局あるいはその他のお力添えも得まして、そこに就任したわけでございます。
  99. 木島喜兵衞

    ○木島委員 大蔵大臣財政当局——住宅金融公庫ですから、これは財政当局といまの答弁があった。すると、あなたがごあっせんなさったのですか、あなたの部下が。
  100. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは主管が建設大臣でございますが……。
  101. 石川達郎

    ○石川会計検査院説明員 財政当局と申しましたのは、小熊氏が財政当局から特に懇望して来てもらったというようなこともございますので、そういった意味での財政当局ということを申し上げたわけでございます。
  102. 木島喜兵衞

    ○木島委員 小熊さんは大蔵省から会計検査院へ行かれたのでしょう。だから大蔵省が——あなたが答弁したことじゃないか。また大蔵省が、財政当局が、大蔵省から来たのだから、その本家の大蔵省があっせんしたとあなたおっしゃったのでしょう。だから私は大蔵大臣に聞いているのです。
  103. 水田三喜男

    水田国務大臣 建設大臣大蔵大臣が相談して、理事の任命をしたということになろうと思います。
  104. 木島喜兵衞

    ○木島委員 すると、大蔵大臣建設大臣が相談をした。すると、先ほどから申しておりますような経緯について、このことをあなたはどうお考えになりますか。
  105. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはたぶん私が就任してからの人事であると思いますが、これは(「めくら判か」と呼ぶ者あり)めくら判というわけではございませんが、この人事の推薦は、主管官庁はこれは建設大臣にございますが、当然相談がございまして、私のほうもこの理事の任命には関係しておるということは事実でございます。
  106. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから、いままで私が述べたことについて、それを住宅金融公庫にあっせんなさった責任者の一人としてどうお考えになりますかと聞いておるのです。
  107. 水田三喜男

    水田国務大臣 任命は、総裁の任命で、建設大臣大蔵大臣の認可を受けるということになっておるそうで、私のほうは総裁からの稟議に対して認可をしたということになっております。(「知らないのだ」と呼ぶ者あり)いや、知っておるわけです。認可したということでございますが、本人のさっきお話がございましたようないきさつについて、当時私は十分には承知しておりません。
  108. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だからめくら判になるのです。  三原さんいらっしゃいますか。——「昭和四十二年二月七日閣議口頭了解要旨」では、「公社、公団等役員の人事について」、「広く人材を登用するめ、公社、公団等特殊法人の役員の任命については、事前に内閣官房長官と協議する」と閣議の口頭了解になっておる。これは少なくとも今日までの国会の論議や、かつ、このようなことがないようにするためにこのような了解があったと私は考えるのでありますけれども、その点はただめくら判を押したのですか。それではいままで国会でこの問題を、特殊法人への天下りに対するいろいろと議論されたことがただ口先だけで終わっておる。ちっともチェックしなかったのですか、あるいはチェックしてもこういうものはそれでいいんだというお考えだったのでありましょうか。その辺は大蔵大臣でもあるいは官房副長官でもけっこうです。
  109. 水田三喜男

    水田国務大臣 認可の前には、内閣には必ず協議することになっておりますし、現に内閣には協議いたしております。
  110. 木島喜兵衞

    ○木島委員 協議しておるならば、先ほど事務総長が言うとおり、厳重注意を与えた、そういう瑕疵のある方です。しかも会計検査院の事務局の次長でしょう。その方が被検査体と一緒に酒を飲んでおる。国会に偽証的な行為を行なっておる。そういうことが協議をするときには入らないのですか。めくら判なんですか。だったらこんな閣議了解事項なんて要らないでしょう。何で協議するのですか。どうなんですか、はっきりしてください。
  111. 水田三喜男

    水田国務大臣 それなら、もう少しこの協議したときのいきさつや何かを詳しく調査してからお答えいたします。
  112. 木島喜兵衞

    ○木島委員 調査してからでなしに、調査をして理事にするかしないかということが協議になるわけでしょう。いまここで問題になってから、これから調べて協議しますなんということになりますか。協議するという閣議の了解事項、そういう前提でしょう。それをあなた、何も了解することないでしょう。これはどうなんですか。
  113. 水田三喜男

    水田国務大臣 当然協議しておりますし、そのときの詳しいいきさつを私自身が知っておりませんので、これはいきさつを調べてお答えいたします。
  114. 三原朝雄

    ○三原政府委員 御指摘のとおり、特殊法人の任務が国の施策の一端をになります。したがって、経験者である公務員を役員に採用するというようなこともやむを得ない事情もございますが、しかし、やはり国民の信頼を受けることが最も大事なことでございますので、御指摘なさいましたような人事については特に大事をとらねばならぬ、これが閣議口頭了解となって、いまお読み上げになりましたような内容になっております。そこでこの人事につきましては、当然問題になる人事でございました。そこで建設、大蔵両省から御推薦があり、内閣に協議がなされました際に、そのいきさつ等を十分聴取をし、やったのでございますが、本人のその後におきます業績、特に学識経験、年齢の若さ等も考えたり、それからその後二カ月間の行動状況等も勘案をいたしまして、問題はございましたが、ここで理事として御推薦が両省からまいりましたのをお認めするという経過の人事であったことを承知をいたしておりますので、御報告申し上げます。
  115. 木島喜兵衞

    ○木島委員 そうすると、協議の際には官房が御存じであった。もちろんそれは国の施策線上にあるわけでありますから、私は天下りはゼロということをいま主張しているわけじゃない。しかし、国民の批判がきわめて強いことだけは明確でしょう。その中で聴取をしたのだからあなたは御存じである。しかし、年齢が若いとおっしゃったけれども、それは五十一歳でおやめになったその年齢は若い。なぜ年齢が若くておやめになったかとするならば、それは先ほど言ったように厳重注意という、その厳重注意をせねばならないような事態があったから五十一歳でやめたのであって、若いからということは理由にならない。その後五カ月間の後に就職しておりますけれども、五カ月間の後に、その後の動向を見たといったところで、それはもはや退職された方、役所におる方でない。とするならば、それが協議の結果、これを認めることができますか。私は少なくとも、今回のことをまとめて言うならば、検査院から井上という人が法人に、雇用促進事業団に天下っておる。その天下った方も含めて検査院と、会計検査の直前に被検査体から招待を受けた。その結果、そういうようなこともある関係であるから、それまで指摘があったのが指摘がなくなった、あるいはある業者に六六%随意契約でもって仕事がいっておる。その招待された人がまた法人に天下る。そういうことが繰り返されて一体会計検査院というのはいいんだろうか。少なくとも会計検査院という立場からいうならば、李下に冠を正さずという立場をとらなければならぬのに、これではまさにどろぼうに追い銭ということばは悪いけれども、そういう感じすら国民に与えるのじゃありませんか。そういうことが高級官僚の特殊法人に対する天下りに対する批判ではなかったのですか。ほかの省よりも、会計検査院であるだけに私は事は重要だと思う。これを今日もなおそれが正しいと、大蔵大臣あるいは副長官、お考えになりますか。
  116. 水田三喜男

    水田国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、私の場合は自分自身がこれを調べたわけではございませんで、内閣に協議すべきものは協議してきめますので、その結果全部がこれでよろしい、問題がないというときに初めて私のところへ来ますので、それを聞いて私が認可の判を押すということになっておりますので、私自身詳しい調査を自分自身ではしておらなかったのでございますが、しかし、そういう問題があったということでございましたら、今後ともそういう点についてはもう少し、これは私も十分人事の任命については詳しく自分自身でも納得のいく質問をしてきめたい、こういうふうに考えます。
  117. 木島喜兵衞

    ○木島委員 あなた、大蔵大臣御存じなくていい。それはしかたないかもしれません。この話。しかし、三原さんも私の言っていることを大体お認めになっていらっしゃるわけです。だから調べなくたって、さっき厳重注意したという事実もあるわけでしょう。総長も言っていらっしゃるでしょう。三原さんもそのことを知って、協議したとおっしゃっているでしょう。そこでこれはやはりミスである、正しくなかった、よくなかったというお感じになりませんか、大臣
  118. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま申しましょうに、こういう問題なら、もう少し私自身詳しく聞いて調べるのがほんとうであったというふうに私はいま思っておるということを申したのでございますが、私はそういうところまで調べないで、問題はないと聞いておって認可したのです。これがはたしてどういう事実であったか、もう少し私自身納得のいくまで調べたいと思っております。
  119. 三原朝雄

    ○三原政府委員 この人事につきましては、退職いたしました経緯等もつぶさに意見を聞いてまいりました。建設それから大蔵がぜひこの人が必要である、住宅金融公庫に必要であるという事情も承りまして総合判断をしてまいりましたところ、これはお認め願ってもよくはなかろうかという協議の回答を申し上げたということでございます。そのおやめになるときの経緯等も、会計検査院等から承ってみたのでございます。そういう点において総合判断をし、その後、おやめになった後の行動等をつぶさに検討いたしまして、理事採用を認むべきではなかろうかという判断をいたしたのでございます。
  120. 木島喜兵衞

    ○木島委員 三原さんそうおっしゃいますけれども、いままでずいぶん国会では長い間このような特殊法人に対する天下りについては議論されており、政府もいろいろと答弁されておりますね。大体言うならば、公団、公社、事業団または一般の営利会社に対する天下り全部を含めまして、これはいま最も国民世論の批判を受けている問題だろうと思うので、政府としてはあらゆる面からこれを検討いたしまして、国民批判に十分こたえ得るような措置をとるということをいままで一貫して政府答弁してこられた。そういう意味で、少なくともこの事実はいままで答弁されてきたところのそういう趣旨に合っておりますか、国民の批判にこたえ得るところの道だとお考えですか、三原さん。
  121. 三原朝雄

    ○三原政府委員 御指摘になるような点、ごもっともだと思います。先ほども申し上げましたように、有為の人材でありましても、やはり国民の信頼にこたえ国の施策を遂行するだけの人物かどうかというようなことは、非常に重要な問題であると思うのでございます。そういう点から、この会計検査院なり建設、大蔵両省の関係者の意向を聞いてみまして、総合判断をして、理事を認めてよかろうという判断を当時いたしたので、ございます。いま御指摘されるような点についてはいろいろ検討を加えてまいりましたが、最終結論としてそういうような判断をいたしたのでございます。
  122. 木島喜兵衞

    ○木島委員 総合的判断なんて、私は具体的に質問しているのですからね。私が納得するように答弁しなければ何にもならぬじゃないですか。そういう態度が、いかに国会で口先だけで言っても、長い問国会で議論されておりながら、そういう答弁でもって、口先だけでもって、具体的なときには総合的な判断だと言って、それで事を済ましておるからこういう問題が常に問題になるのですよ。私のいま言ったことに対して、じゃどうしてそれがいいんだ、どうしてこれは適切なんだ、誤りがないんだということを、総合的判断でなくて具体的に言ってください。会計検査院は厳重注意しているのですよ。そのことが原因でもってやめている人なんですよ。そのことは何かというと、会計検査院というものが被検査体と会食をしておる。その中に入っておる人、それが国会で偽証的な行為を行なっておる。そういう人がなぜいいんですか、はっきりしてください、総合的判断でなくて。
  123. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、非常に意義のある御指摘であったと受け取っております。
  124. 木島喜兵衞

    ○木島委員 意義あったということは、これはミスであったというようにお感じだと理解してよろしいのですか。
  125. 水田三喜男

    水田国務大臣 いまの事例については、さっき申しましたように、私も一ぺんそのときのいきさつを私自身納得のいくまで調べたいと思いますが、今後人事についてはよほど慎重を期さなければならないというふうに考えて、今後はそうするつもりでございます。
  126. 木島喜兵衞

    ○木島委員 大蔵大臣は調査をして判断をすると言っていらっしゃいますし、こういうことは率直に言って、大臣個々にあるいはあまり御存じないかもしれませんから、御調査くだすってけっこうです。しかし、御調査いただいて何らかの判断、あなたのその調査された判断というものは、どのような場合にどのような場所でいつごろお示しいただけますか。それをお聞きすれば、この問題を私はやめます。
  127. 水田三喜男

    水田国務大臣 適当なときに御報告いたします。できるだけ早くいたします。
  128. 木島喜兵衞

    ○木島委員 これは三原さん、今度、人事院関係民間に行く関係では、ある省の事務次官の方が、法律にきめられておる二年と二日後にある会社の副社長に入っていらっしゃいますね。これはしかし法律的には、たとえば二年と二日がいいか、五日がいいか、一週間がいいか、いろいろ議論がありますからあえて言いませんし、名前もあげませんけれども、しかし、そういう二日というぎりぎりなことをなさるというところに、国家公務員法の百三条の精神やあるいは国会で議論されている精神というものが、高級官僚の中に十分に理解されていないという印象を受けるのです。そういう意味で、今後こういうものに対する基本的な方針を承って、この問題終わります。
  129. 三原朝雄

    ○三原政府委員 木島委員の御指摘のように、やめまして二年後には就職をしていいというような一応のワクをきめております。それが二年二日後に就職をしたという点でございますが、これは人事運用上の基本的な姿勢なり考え方の御提示と思いまするので、将来、そういう点については特に注意をしてまいりたいと思います。
  130. 木島喜兵衞

    ○木島委員 委員長、先ほど大臣が調査をしてしかるべきときということでありますから、一応この問題は保留という形にいたしておきます。  次に授業料の値上げについて、まず高校授業料について承るのでありますけれども、最初に自治大臣にお聞きします。  この高校授業料については、自治省が各都道府県に五割アップを御指導なさいましたね。その指導をされた理由は一体何であるかを、まず最初に承ります。
  131. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 高校授業料は四十年度来据え置きにされておりまして、その間における物価の上昇等をながめますと、相当低くなっておるという姿であって、実際は高校教育費の六%ないし七%ぐらいの費用になっておるという姿でございます。他方、高校の経費は人件費の増高その他の物件費の増高等によりまして相当額伸びております。  そのような状況にありますことで、また地方財政は非常に苦しいような状態でございますので、この際高校に要します経費の一部を、直接の受益者である父兄の方々に教育経費の一部を負担願うことは、やむを得ないという気持ちでお願いを申し上げたような次第でございます。なお、これによりまして増加いたしました経費というものは、すべて教育費に向けさせていただくように指導しておるような次第でございます。
  132. 木島喜兵衞

    ○木島委員 新聞によると、自治省の鎌田財政局長は一月二十五日に都道府県の総務部長を集めて、義務教育でない高校の授業料は、値上げするのは当然であると言っていらっしゃる。そのことは、いま大臣がおっしゃった意味では、財政上の理由が最大の理由のようにお見受けいたしますが、高校の授業料というものを財政上の理由だけでもって考えていいのかどうか、これはあとでまたもう少し議論いたします。  あなたが一月十一日の記者会見で、公立学校の授業料を上げるか上げないかは地方自治体がきめることだが、自治省は五割アップの線で地方財政計画をつくる、また地方交付税算定にあたっても、このアップ分を含めて計算をする、したがって、自治体によって授業料を上げないところは、自己財源でまかなわなければならぬと言っていらっしゃいますが、その方針はいまも変わりありませんか。
  133. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 先般提出さしていただきました地方財政計画では、五割アップの姿で計画を組ましていただいております。
  134. 木島喜兵衞

    ○木島委員 同じ記者会見で、値上げを新入生からするか、あるいは在校生全員を対象にするかについても自治体の自由だが、自治省は在学生全部の授業料を値上げすることを見込んでおるとおっしゃいましたけれども、その考え方も変わりありませんか。
  135. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 その後検討いたしました結果、学年進行別にやらさしていただくことに財政計画ではなっております。
  136. 木島喜兵衞

    ○木島委員 なぜ変わったのですか。
  137. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 できるだけ、値上げするのには円滑に、御理解も願えるようにやるべきであり、財政の許す限りにおきましては値上げをせずにやりたいというのが実態でございますから、そういった方向で、どうにか財政計画を組めるのでございましたらそこまで持っていかしていただいたと、このような検討を加えた結果、そのようにさしていただいたというのが実情でございます。
  138. 木島喜兵衞

    ○木島委員 あなたの発想は財政的な発想であるけれども、そこには教育的な配慮、発想が欠けておるんじゃないか。たとえば、上げるということを前提にすれば新入生からが当然なのであって、少なくとも授業料というものを公示して、それを前提にして入学したところのものは、いわば一つの都道府県と父兄との契約であります。その契約をして二年になった、三年になった、それを途中から上げることは契約違反でしょう。そう思いませんか。そういうあなたの発想というものがまず間違いである。それは変更したことはあれだけれども、あなたが発想したところの出発がまず誤りであります。自治体財政的な圧力をかける。少なくとも自治大臣が最も地方自治というものを守らなければならない。自治というものを守らなければならない大臣が、今日苦しい財政の中で一番苦しい都道府県の傷に手を突っ込むがごとき脅迫は、これはかつて都営ギャンブルを廃止するときに、国の財政的圧力をかけたと同じような政府の自治干渉であります。公立学校という学校教育に対して——学校教育というのは、教育基本法第十条に示すように、不当な支配に服することのない学校なんです。公立学校というのは都道府県立なんです。都道府県立の学校に対して、自治法を守らなければならない自治大臣財政的な圧力をかけて、これをもし上げなかったならば国庫から出す金を手かげんするぞという、いわば脅迫めいたことをやる。少なくとも苦しいところではそういう感情を持ちます。こういうことがはたしていいのかどうか。  時間がありませんから先に進みますが、あなた、いま高等学校の進学率、現在の進学率及び昭和五十五年ごろの高校の進学率、どのくらいにお考えですか。   〔委員長退席、細田委員長代理着席〕
  139. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 ただいま高校の授業料の値上げは、父兄との契約を違反するものであるから、学年進行別に上げるのが当然であると、このような御意見でございましたが、私たちは高校の授業料、従前は全学に通じて上げさしていただいたこともございますし、必ずしも父兄との契約であるというふうには理解しておりません。むしろ受益者としての地方公共団体が行なっておるところの経費に対する使用料、手数料の姿であるというふうな理解のもとにやっておりますので、御了承賜わりたいと思います。  なお、圧力をかけておるのは地方自治の侵害ではないか、こういうことでございますが、私たちも必ず上げろというふうなことはいたしておりません。地方交付税というものはこれは一般財源でございます。その一般財源をいかに分けるかのものさしをきめるのが地方財政計画であり、交付税でございます。ものさしで、この中で財政需要額に入れております高校に対するものは、収入の面で五割を上げていただいた授業料で計算さしていただきますと、こういう姿が地方財政計画でございまして、その一般財源として与えられた交付税を何に使うか、これが地方自治体の姿でございますから、私は決してそれが地方自治の侵害であり、それが圧迫であると、こういうふうには解しておらないのでございまして、この点は、地方交付税の性格というものをよく御理解願えれば御了承賜わることではないかと考えております。  なお、いま申されました高校の進学率でございますが、現在のところでは私は八三、四%でないかと、かように承知いたしております。
  140. 木島喜兵衞

    ○木島委員 昭和五十五年にどのくらいになりますか。
  141. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 私、その点ははっきり申し上げることをなにしますが、九〇%くらいになるのじゃないか、こう思っておりますが……。
  142. 木島喜兵衞

    ○木島委員 昭和五十五年には、文部省の計算では九七、八%ということになっておる。  そこで承りますけれども、自治大臣、憲法二十六条に規定するところの、「義務教育は、これを無償とする。」というこの規定はいかなる思想から出ておりますか。それをどのように御理解になっていらっしゃいますか。
  143. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 教育は最も重大なることでございますので、無償の原則と申しますか、全員に対して教育は機会均等に与えなければならぬ国としての義務であるというふうな意味で、そういった原則がつくられておる、こう解しております。
  144. 木島喜兵衞

    ○木島委員 たとえば、家が貧しいから義務教育も出られなかったら、その方はまともな就職ができない、まともな就職ができなければまともな生存ができない、そういう意味で生存権的基本権として規定されておる。これは大臣もいまうなずいていらっしゃる。とするならば、昭和五十五年に九七、八%いったならば、高等学校を出るのがあたりまえになってくる。ほとんど全部が高等学校に行く。高等学校に行かなければまともな就職ができない。まともな就職ができなかったらまともな生存権が保障されない。それならば、この憲法二十六条の「義務教育は、これを無償とする。」という精神は、そういう国民の生存権的基本権を持っておるならば、高等学校の教育はまさに準義務教育化されておるといわれるごとく、したがって準義務教育化であるならば、授業料もまた全部、先ほど大臣がおっしゃったように教育の機会均等のためにむしろ下げていく、無償化の方向に持っていくことこそ正しいのであって、これを上げるということは、少なくともこの憲法の精神に反すると考えるが、どうですか。
  145. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 教育ができるだけ義務化されて、これを全国民に及ぶように実施されなければならない、これは当然のことでございまして、私たちもそう考えます。  しかし、現在の高校の中では七割が公立高校でございまして、三割がまだ私学のような実情でございます。その私学の授業料と比べました場合、現在公立の分は五分の一くらいになっております。私学振興のために、またいま言われます準義務化というような意味で、ことしの需要額でも、各地方団体が私学高校に対するところの助成ができますようにこの分もかさ上げさしていただいたのでございますが、いま申しましたように、おそらく戦前では授業料が五割くらいで高校教育が行なわれておったと思っております。その意味からは、今度値上げをさしていただいても、約教育費の一割を受益者としての父兄にまかなっていただくという数字でございまして、義務教育化された五十五年なら五十五年における状態ということについて、はたしてそれでよいかどうかということは、またその当時のなにであると思いますが、私も今日の段階においては、その程度のものは直接の父兄が受益者として出していただく、その分だけは必ず学校教育の内容を充実する、こういう方向で進めさしていただきたいと思います。  財政計画におきましても、一方においてそのようなことをお願いしておりますが、他方におきまして、備品購入費とかあるいは需用費等にそれ以上の増額をして基準財政需要額にあげさしていただき、また高校の建築費の単価にいたしましても、生徒一人当たり、四十七年度におきましては千円ほど単価アップさしていただいてやらしていただいておるような状態でございまして、学校教育の内容充実のためにも地方財政計画で尽くさしていただいておる、こういう点もあわせてひとつ御了承賜わりたいと存じております。
  146. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いまちっとも私の質問にお答えになっていらっしゃらない。戦前の授業料の比率をおっしゃいましたけれども、戦前の高等学校の進学率は何%だったですか。一三%ぐらいでしょう。それと、やがて九七、八%にいくところの準義務教育化されているものとを一緒にしてはいけない。まして憲法においての基本的人権、その基本的人権の中における生存権的基本権というものが規定された新しい憲法と旧憲法とを比較してものを考えるところのあなたの判断の古さというもの、その発想が誤りであります。私学との差については、私学に援助することこそ今日必要なのであって、バランスを言うならば、これは私学を下げることが準義務教育化への道と考えねばならぬでしょう、多少の増加になったかもしれませんけれども。私は、後に高見文部大臣に私学との関係については事こまかに聞くつもりでありますから、あえて触れませんけれども、そういうことでは理由にならない。  予算を授業料以上に上げたとおっしゃる。しかし教育基本法第十条は、教育行政は、教育の目的遂行のために諸条件の整備確立につとめなければならぬというのであるから、それは授業料を上げる上げないの関係はない。やらなければならないところの法律に基づく政府の任務、都道府県の任務であります。それが授業料の値上げとからむところに、私は、あなたがむしろ財政的な立場でもって、教育的な立場を理解しておらないと思うのです。少なくとも私がさっきお聞きしたのは、やがて九七、八%までいくというその準義務教育化されておる、生存権的基本権の立場から、授業料は無償ないしはその方向にいくことが正しいという教育的見地を、あなたはどう理解なさいますかということを聞いておるのであります。それをもう一回御答弁願いたいと思うのです。
  147. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 義務教育化され、また準義務教育化されていくであろうということは、私も現在の高校の進学率の増加等についてはそう考えますが、そういった観点からながめまして、いま戦前と比較したのがけしからぬというおしかりでございましたが、そういった意味もあって今日授業料が高校費用の一割程度というものになっておるのじゃないか、こういうことを申し上げただけでございまして、御趣旨、お考えは私、全く同様でございます。  ただ、現在の姿におきましては、上げさしていただきましても全負担の一割程度でございます。一方、内容充実すべき点も多々ありますので、それらを勘案いたしました場合——現在の状態では、準義務教育化するものだから絶対上げたらいけないんだ、教育はそれが理想なんだ、こういう御議論かもわかりませんが、私たち、先生のおっしゃいました準義務化ということも考えながら、その程度は許していただきたい、このような考えで、やむなくお願いしておるのが今日の状態でございます。
  148. 木島喜兵衞

    ○木島委員 あなたはいま私を理想主義者というふうにおっしゃいますけれども、教育は元来理想的なものであります。そのときそのときの政治情勢によって変化されてはならないのです。「教育は、不当な支配に服することなく、」という教育基本法第十条の規定がそれなんです。  あなたはいま、このぐらい上げてもしかたないだろうとおっしゃいますけれども、授業料は、一つは公共料金の範囲でもとらえますね。とするならば、一体授業料というものはどのようなウェートを持っているか。もう時間がありませんから私のほうでしゃべってしまいます。今日、公立高校の教育費は、公費と父母負担を分けるならば、公費が六二・九%、父母負担が三七%、家庭収入の何%くらいかと申しますと約五%になります。これは高校に一人入れば平均的には家庭収入の五%でありますけれども、二人、三人持つとたいへんなんです。いまこまかいこと言いませんけれども、たとえば小学校と高等学校と二人子供を持っておりますと、家庭収入の二〇%になる。これは文部省の調査をもとにして言っているのです。中学校と高等学校の二人の子供を持つと、家庭収入の二七、八%になる。高等学校と大学の子供を持つと四〇%近い。したがって、教育費というものは公共料金としての家庭の生活に対する圧迫がきわめて大きい。しかも、そういうことだけに、高等学校進学の姿を見ますと、平均家庭収入が百四十万前後が一番多いのでありますけれども、家庭収入の七十万、八十万の家庭の子供は、平均の百四十万収入の家庭の子供の半分しか進学しておらないのです。それほど教育費というものは家庭の中において重要なウエートを占めておる。  しかも、父母負担を分類いたしますと、父母が負担をしておりますところの教育費、高等学校でいいますと直接教育費、すなわち教科書とか学用品とか通学費、これが四五%で、元来公費が持つほうが正しいと思われるPTAだとか授業料とか、そういうようなものが五四・二%、かえって直接教育費よりよけいなんです。間接教育費の中に占める授業料が三三%で一番多いのです。父母負担の教育費の負担の中では、授業料だけが一八%なんです。  そのように大きな影響を持っておるんですから、したがって、授業料というものを上げるか上げないかということは、先ほどから繰り返しておりますけれども、教育的な配慮、あるいは憲法の機会均等なり、義務教育はこれを無償とするという教育的立場でもってあなたが考えないで、ただ財政的な立場、あるいは物価との関係だとか私学との関係とか、本来なさねばならないところの施設設備の充実というような問題は、それとからませる問題と考えるのかどうか。公共料金という立場でもってあなたはこの点を——私がいまあげた数字と、そして五割アップを指導されたところのあなたの立場とのお考えをお聞かせ願いたい。
  149. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 高等学校の子弟を有する家庭の方々の大体の年齢層からいいまして、子供に対する教育費が相当高く響くということは私もよく承知をいたしておりますし、かねがねそのためにも、いわゆる授業料以外の父兄負担と申しますか、各学校がやっております、だいぶん修正されてまいりましたが、いまでもなお父兄負担というものが授業料以外に、公費以外に徴収しているのが実情でございますので、そういったものはできるだけなくするように指導もいたしておるところでございます。今回の五割アップによりまして、いま言われましたような家庭負担が生ずることは重々承知いたしておりますが、長い間据え置かれ、相当他と比較いたしまして低くなっておりますので、この際五割アップをお願いしたような次第でございますので、ひとつ御了承をお願い申し上げたいと思っております。
  150. 木島喜兵衞

    ○木島委員 父母負担を軽くするように指導しながら、なぜ授業料を上げたんですか。
  151. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 必要なものは公費でもってこれをまかなうということを充実することによりまして、当然公費でもってまかなわねばならぬところのものを公費以外のもので取るという姿をなくするためには、できるだけの努力をお願いする。そのかわりにいただくべきものははっきりとしていただく。公費で出さなければならないものをまた授業料という形でお願いせずに、かってにほかのものでいただくというふうなことはできるだけやめさせるほうがよかろう、こういう観点でございます。
  152. 木島喜兵衞

    ○木島委員 時間がありませんから急ぎます。  あなた、さっきは財政的な理由ということと、出すべきものは出すし取るものは取るとおっしゃいましたが、しからば今日、私新潟県の産でございますが、新潟県の調査でいいますと、高等学校の授業料の今回の値上げ分は一億二千万であります。出すべきものは出すとおっしゃったが、政府が出すべきものを出さないための超過負担が七億七千万です。出すべきものをお出しになってなら——地方財政が苦しいというから授業料を上げるというなら、出すべきものを出して、その上で御判断になったらいかがですか。
  153. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 超過負担の解消につきましては、大蔵省との大臣折衝の際に私は大蔵大臣に確約していました。ぜひとも調査をして、その調査の計画に基づいて計画的にこれを解消するという方向でやっております。  いま出すべきものは出せということでございましたが、大きな地方財政の中で国の単位費用、標準的な補助金の率というふうな姿でそういった関係が起きていることは従来もそのとおりでございますが、この標準的な補助単価というものと実情とをできるだけ合わせていくという方向は、必ずこれを実施していかなければならないというので、確実なる調査を約束していただいたような状態でございますので、出すべきものを出す、これも解消する方向で努力いたしておりますので、御了承賜わりたいと存じます。
  154. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私が言っているのはこういうことなんですよ。憲法は、皆さんは守らなければいけませんね。憲法の規定によって。だから二十六条の機会均等なり義務教育はこれを無償とするというその精神は、準義務教育化の高校に及ばなければならぬ。それはさっきあなたの認めたとおりですね。だから上げることはなるたけ避けなければならない。しかるにあなたは財政上因るからというのが本音でしょう。ところが財政上困るならば、それで取るべきものは取って出すべきものを出すとおっしゃるならば、まず財政上一番苦しんでいるのは超過負担なら超過負担でしょう、地方財政で。それは約束したって意味ない。超過負担についてはいままでだって何回かありますよ。   〔細田委員長代理退席、委員長着席〕 何回か三年か何とかでやっておる。私は新潟で調べたら、四十五年だけで四十四年から超過負担はさらにふえておる。いままでだって計画されているのです。出すものを出さないで、いま大蔵大臣予算折衝のときにやった、そういうことでもって——いままでの実績が示しておるのです。もしそういうものが確実に入るなら、授業料を上げなくていいでしょう、憲法の精神からいって。さっきから言っているのはそれを聞いているのです。どうなんですか。
  155. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 超過負担の解消と授業料による収入、これをひっつけて御解釈願うことはなかなかむずかしのじゃないかと思いますが、超過負担の解消は超過負担の解消として私たち努力せなければならぬと思いますし、四十三年から四十六年までは、四十三年、四十二年の調査によりまして出ました分を計画的に年度別にやりまして実施をしてきたところでございます。それでもコストの上昇あるいは授業料の増加等によりましてさらに超過負担ができておると考えますので、大蔵省と協議いたしまして予算にも計上いたしまして、確実な調査を各省と協力して求めまして解消をはかろうとしておる、これが実情でございます。
  156. 木島喜兵衞

    ○木島委員 もう一つ聞きますが、上げる理由に受益者負担とさっきおっしゃった。教育という、ことに高等学校の教育は先ほど言うとおり国民の大部分が受けるようになってきておる。これは受益者負担というものだろうか。教育という行政サービスは——確かにたとえば大学、大学院という場合、これはあとでまたそれに対する議論もあるのですけれども、この行政サービスは個人に帰属するものなのか、あるいは社会に蓄積されるものなのか、社会、国家に帰属するものなのか。ことにほとんど全部が高等学校に行くという場合には、特定個人への行政サービスはないでしょう。たとえば道路でいうなら、生活道路は国がつくっても県がつくっても、みんな通るから、社会全体の人が使うから受益者負担なんか取りませんね。高速自動車道路、これはまだ特定個人だから、だから取る。それと同じような理論じゃないですか。受益者負担というものは、高校の場合に今日ほとんど準義務教育化されている中でもって受益者負担という理論というものは通りますか。あなた、最初になぜ上げたかと言ったら受益者負担とおっしゃったが、その点はどうでしょう。
  157. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 私、受益者負担と言いますのは、直接利益を受けておられる父兄のお方に経費の一部を御負担願いたい、こういうふうな意味で申し上げたと……。
  158. 木島喜兵衞

    ○木島委員 もう私は幾つかの観点からお聞きしたけれども、ちょっとも納得する御答弁をいただけません。ちょっとも根拠がありません。もっと言うなら、五〇%という根拠は一体何だと聞きたいくらいです。いまあなた、いろいろとあなたの主張をなさいましたけれども、私学との関係なら二倍あるいは五倍くらいしなければいかぬでしょう。それを財源にして整備するというなら、高いほどいいということになるでしょう。何で五〇%引き上げたか、科学的根拠があったら聞きたいというくらいに思います。しかし、もう聞いたって始まらぬからね。もうちょっとも根拠ありません。あなたに希望するが、少なくとも財政的な見地やその他の条件でなくて、教育的配慮、教育的見地、そのことはまた憲法に焦点を合わせてものごとを考える、そのことがあなたの任務だと思うのです。そういう意味で、あなたのおっしゃることは全く少しも了解できません。  その次ちょっと聞きたいのですけれども、これはどなたからでもいいのですが、官報というのはこれは国の公告のための機関紙と考えていいですわね。ところがこの官報の中に、二月十六日の官報、資料版七一六によりますとこう書いてあるのですよ。「高等学校については、公立高等学校の現在の標準的な授業料と同額になることが予定されている。」カッコして八百円ですね。国立のほうは確かに四百円を——公立の高等学校は四百円を八百円にいたしましたね。これは官報では現在八百円ですね、値上げする前……。この官報すなわち国の公告をする機関紙でもって国の四百円を八百円にすることが、これが現行の高等学校の授業料(八〇〇円)と同額になる、官報という機関紙の性格からいってこれはどういう関係になるのですか。国民はこれを見て、高校が八百円だから国立の四百円が八百円になってもしかたがないなという認識を持ったとするなら、一体これはどうなるのですか。国の官報という機関紙は一体国民に対していかなる作用をしたのでしょうか。これはだれに聞いたらいいかわからぬけれども、どう考えますか。
  159. 高見三郎

    ○高見国務大臣 これは私からお答えを申し上げますが、国立学校の授業料の値上げについての公報をいたしました場合に、国立学校の高等学校についてはということで述べたのでありまして、これは自治省の関係ではございません。文部省が出しました公報資料でございます。その当時、都道府県立の高等学校が幾ら値上げをするかということを私どもは承知をいたしておりませんでした。さよう御了承いただきたいと思います。
  160. 木島喜兵衞

    ○木島委員 官報というのは文部省の官報ですか。政府の官報でしょう。ばらばらでいいのですか。これでもってもしも国民の認識というものができていたとするならば、これは一体どういうことになるのですか。
  161. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お答えいたします。  これは見出しにもございますように「国立学校の授業料改訂」という形で出しておるのであります。したがいまして、私どもは国立学校の授業料の値上げについて御理解を願いたいと思って出したわけなんでありまして、ばらばらでいいという性質のものではないことは申すまでもございませんけれども、その当時の事情から申しますと、国立学校の授業料はこういうように改訂をいたしますということを説明をつけたわけでございます。
  162. 木島喜兵衞

    ○木島委員 くどいからやめますけれども、政府の官報なんです。政府の機関紙なんです。ばらばらであってはいかぬでしょう。いま文部大臣もおっしゃるように、それは、文部省とすれば、国立学校を上げる、それはいいですよ。それだけはそれでいいのだけれども、そこで、公立の高等学校の授業料(八〇〇円)と同じくなるというならば、これは政府としての統一見解じゃないでしょう。なぜなら、自治大臣は五割アップという指導をしているのだから。指導していないで、各都道府県がかってに、自然に上がるならいいですよ。これは一体どういう関係なんです。
  163. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お答えいたします。  私も実は詳しいことを承知をいたしておらなかったのでありますが、一〇ページに「改訂後は大学学部と同額となることになり、」その次に「高等学校については、公立高等学校の現在の標準的な授業料(月額八〇〇円)と同額になることが予定されている。」こういうように表示をいたしております。
  164. 木島喜兵衞

    ○木島委員 大蔵大臣、あなた少し早めにお帰りにならなきゃならぬそうですね。ですから、国立大学の授業料に入る前に一言だけちょっと聞きます。  暫定予算に——暫定予算というのは必要最小限度の事務的経費にとどめて、新規の政策予算というものは入れないということが元来の性格であるし、同時に、昭和三十四年でしたか、あなたが大蔵大臣のときに、国鉄の運賃値上げのときに、暫定予算に入ったために、参議院で木村禧八郎さんなんかの追及で、あなたは、これは異例である、これは前例としない、こうおっしゃいましたね。そのお考えはいまも変わりありませんか。
  165. 水田三喜男

    水田国務大臣 変わりございません。
  166. 木島喜兵衞

    ○木島委員 変わりないということは、授業料の値上げなどは暫定予算に入れないというように理解してよろしゅうございますね。
  167. 水田三喜男

    水田国務大臣 まあ国鉄の運賃というようなものは国会の議決事項でございますので、国会を通らない間、暫定予算であらかじめこれを予定した歳入の組み方ということをするということは問題が確かにございますので、そういう意味で、今度はそういうことを前例としないと言いました。しかし、新規の政策費は一切盛らないかといいますと、従来すでに慣例になっておるものもございますし、生活保護費のごときあるいは失業対策費のような問題、これは一応政府が値上げをしようと考えておりますものを、やはりこれは暫定予算にも盛るということがいいというのが一つの慣例になっておりまして、そういう問題は、従来の慣例によりまた事柄の性質によって新規の政策費は盛られることもあり得よう、またあっていいのではないかと思います。問題の授業料のようなものは、これはもう文部省の省令できめられることでございますので、そこに問題はございますが、しかし、やはり暫定予算の性質上、この点についての取り扱いは慎重を期したいと思って、まだ予算の編成方針としてはこの問題をどう処理するということはいまのところきめておりません。検討中でございます。
  168. 木島喜兵衞

    ○木島委員 その点は、暫定予算という性格、あるいはいままでのあなたの、先ほど変わらないという方針を堅持されることを希望して、もう時間がありませんから、次に移ります。  文部大臣にお聞きしますけれども、大臣は昨年の十一月の記者会見でもって、国立大学の授業料の値上げを押えるのは教育の理想から当然であり、すでに値上げを発表している私立大学についても大幅な国庫補助や融資で極力押えるとおっしゃいました。自治大臣が言ったように、授業料の値上げには財政事情だとかあるいは私大との比較だとか、あるいは党や大蔵省への政治的な配慮だとか、物価というようなもの、そういう社会通念等いろいろと配慮しなければならぬことでしょう。けれども、必要なことは、あなたがおっしゃるように、教育の理想というそういう教育的な配慮、教育的見地こそ一番必要なことなんだと私先ほど申しましたが、そういう意味で、あなたが十一月に記者会見でもって、教育の理想から値上げを押えるのは当然だ、私立大学はむしろ大幅な補助や融資でもって押える。あなたのおっしゃるその理想から押えるとおっしゃったそういう考え方、これがなぜ変わったのですか。あなたの教育の理想というもの、これがなぜ貫かれなかったのですか。私は、むしろ、あなたのおっしゃった教育の理想という理想論をお聞きしたいのだけれども、時間がありませんからそこははしょって、なぜ上げなければならなかったか、その考え方を変えなければならなかったのですか。上げたことが教育の理想になるのですか。
  169. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お答えいたします。  私はそのときにつけ加えて申したつもりであります。私はそう思っておるのだが、党の方針がきまれば党の方針に従いますということをあなたは抜いていまお話しになっておるようであります。教育の理想から申しますと、授業料はなるべく安いにこしたことはございません。安いにこしたことはございませんけれども、御承知のように昭和三十八年以来もう九年間据え置きになっております。そこで、この際、諸般の情勢を考慮して、まあ三千円ぐらいに値上げをするのは適当ではないか。別に三千円というものに根拠があっての話ではございません。一応の目安としてこの辺が適当ではないかという判断をいたしました。この判断の根拠に立ちましたものが何であるかと申しますと、私は単に値上げをするというだけで賛成をしたのではございません。私どもは、一連の関連として私学の振興と育英助成の大幅な増額というものの見通しがつかなければ賛成をする意思は毛頭ございませんでしたが、その間にあって、私学振興も大幅に見よう、育英資金も大幅に見ようという大蔵省の態度が確認できましたので値上げに踏み切ったわけであります。別に私は私の方針を突如として変えたわけではございません。
  170. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私は、さっき、党や大蔵省への政治的配慮があろうけれども、一番必要なものは教育的配慮である。だから、あなたはそうおっしゃったと言ったのであって、それはわかりますよ。そういうことは必要であろう。同情はします。同情はするけれども、しかし、さっきも言ったように、教育というものは多分に理想的なものです。他に左右されてはならないものです。不当な支配に屈してはならないものです。だからこそ、あなたの教育の理想とおっしゃったことをなぜ貫かれなかったのか。いまあなたは九年間据え置きとおっしゃっておりますけれども、九年間据え置きということもなぜ——物価やなんかとおっしゃる。物価は上がっておるのだから、上げなければ非常識だ、常識論というのが通っていますね。では逆に、いままで上げなかったのは文部省が非常識だということになるのですね。そんなことは聞きませんよ。おっしゃることは、安いほうがいいからでしょう。やはり教育の機会均等というものを文部省は考えていらっしゃったからでしょう。  そういうことになれば、あなたはいま私学振興や育英助成というものとの関係だとおっしゃいますけれども、しからば、育英資金と授業料というものは元来関係があるものとお考えになりますか。極端なことを言うならば、授業料がただであっても——ただというと理屈を言いたいだろうけれども、それはまあいいですよ。たとえばただであっても、育英資金というものは増額されなければならない現状でしょう。授業料を上げるということと育英資金というものは、上げるからこちらも伸ばすというものじゃないですね。さっき言ったとおり、授業料がただであっても育英資金は増額されなければならない現状なんです。機会均等が守られないのです。その点はどうですか。
  171. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お答えいたします。  それは木島先生のおっしゃるとおりであります。私も、いまの育英資金制度というものについては、抜本的に考え直さなければならない問題があると考えておりますし、民間資金を導入をしての育英資金というようなものも真剣に考えなければならないと思いますけれども、とりあえずこの際、育英資金を大幅に上げてくれるというチャンスをうまくつかまなければならぬという意味でつかんだわけでありまして、この点につきましては、木島先生がこれと切り離して考えるのが当然だとおっしゃるその理論には、私は一言の反論もいたしません。そのとおりであります。そのとおりでありますけれども、機会は失してはならぬということも私どもは考えたわけでありまして、その辺は御理解をいただきたいと思います。
  172. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いまたいへん本質的なことに入りましたから、大臣ちょっとあれですが、私は基本的に、日本育英会法の全面的改定が必要だと思うのです。  時間がないから一条だけ言いますが、これは昭和十九年につくっただけに、「日本育英会ハ優秀ナル学徒ニシテ経済的理由二因リ修学困難ナルモノニ対シ学資ノ貸与其ノ他之ガ育英上必要ナル業務ヲ行ヒ以テ国家有用ノ人材ヲ育成スルコトヲ目的トス」「国家有用ノ人材」このことは、大学でいうならば、国立には三〇%以上の受給者があり私立には五%というようなことで、官学優先の考え方もある。同時にまた「国家有用ノ人材」という考え方の中には、高等学校の進学率が低かった、二〇%程度しか行かなかったその当時のものの考え方があって、今日で二三%、昭和五十五年には四七、八%が大学に行くであろうといわれるときに、国民の半分近くが大学に行くときに、これは「国家有用ノ人材」というような表現には当てはまらない。そういうものの考え方が実はこの法律の中にずいぶんある。  だから私は、いまあなたが、基本的に授業料はただであっても育英資金は別だとおっしゃるならば、それはあなたのおっしゃるとおり、憲法に沿った教育の機会均等という理念から、あなたの考えは正しいと思う。正しいならば、育英会法の根本的な改定がいま必要だと思うのですが、いかがでございましょう。
  173. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お答えいたします。  私は、育英ということばが実は大きらいであります。これは奨学資金とすべき性質のものであります。この法律ができました当時は、むしろ育英ということに重点を置いたでありましょうけれども、今日の段階における高等教育の段階においては、むしろ教育の機会を均等に得させるために、奨学資金という形に変えなければならぬ。奨学法というような法律に変えなければならぬ。もちろん大学に学びます者が、受益者負担金ということばが先ほども出ましたけれども、御本人の受益者負担の面もあると同時に、国家社会が受ける利益というものもあるのでありますので、したがって、その一部を授業料によって負担していただくという考え方に立っておるのであります。その御趣旨においては私も全く同感であるということを申し上げておきます。
  174. 木島喜兵衞

    ○木島委員 御趣旨全く同感ということは、全面的に改定をお考えになるということですね。そして、すぐにその改定に着手なさいますか。
  175. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お答えいたします。  中教審の答申にも、この問題に早急に取っ組め、昭和四十八年に取っ組めという提案がされております。私どもは、ことしからこの問題に取り組みます。(「制度だけではない、金額もそうだよ」と呼ぶ者あり)これは、政府資金だけでまかなうということは容易な問題じゃございません。私はむしろ、民間資金を導入してやる銀行ローン方式も、実はいま検討をさしておるところであります。問題は、六千円や七千円の奨学資金を出したからといって、それが学生経費の、たとえば一カ月に要します下宿代だとかというようなものから考えてみますと、きわめてわずかなものであります。私が今回、大学院の学生に対しては少なくとも三万円という額にいたしましたのは、将来を目ざしての一つの考え方であるというように御理解をいただきたいと思います。
  176. 木島喜兵衞

    ○木島委員 あなたはさっき、授業料の値上げは育英資金との関係とおっしゃいましたけれども、これは無関係だとおっしゃるのでありますね。  その次、私立大学の関係でありますけれども、これだってそうだと思うのです。教育の理想、機会均等ということからいうならば、授業料の均衡ということでは、いままさに国立と私立の間においての授業料はたいへんなアンバランスである。しかしこのバランスをとるのに、国立を引き上げることによってバランスをとるということは、基本的に主客転倒でしょう。私学をどう下げるかという措置がなされなければならない。これはもう聞かぬだっていいですね。ことに先進諸国においては、私学も含めて大学の授業料は無償の方向に向かっておることは確かでしょう。そういう方向に進まなければならぬと思うのでありますけれども、私学がなぜ授業料が高いのか、この分析をもう少し構造的に行なわなければならぬと思うのです。ただ、あなたはさっき、ことし百一億でしたかよけいになった——しかしこれは計画的なものなんですよ。人件費の五割を目標にして計画的に行なわれているわけですね。だから私は、そういうことでもって今日の授業料のバランスがとれるとは思わない。この構造的なことは、一つには国の怠慢があった。国の怠慢というのは、たとえば昭和三十五年から四十五年までの十年間に大学生の数は二・五倍になっておる。その実数は九十四万でありますけれども、それが国立で十一万、公立で二万、私立で八十一万もかかえている。この間におけるところの国の怠慢というものが一つ前提にあると思うのです。そういう意味では私学というものをもう少し実態的に、私学というものがなぜこうなっておるかということを考えなければならぬと思うのです。  もう時間がありませんから、ひとつ早稲田大学の場合でいいますと、これはことしの私学の授業料値上げのトップバッターであって、累積赤字が八億といわれておりますけれども、この四十六年度の予算約六十八億八千万のうち人件費が七〇・三%、これが大体私学のなにですね。ところが、人件費は毎年一〇%くらいずつ上がっております。しかも早稲田大学は、その収入は授業料で七〇%、あるいは寄付金なり入学金でもって約八〇%持っておる。ですから、この人件費なら人件費というものを考えてみると、人件費が毎年一〇%ずつ上がる。ところが、さっき言いましたように新入生から取りますから、四年間に四〇%上がるわけでしょう。その七割が人件費だから、四、七、二八%最初から上げて取らなければならぬ。人件費だけでいっても二八%上げなければならない。しかも上がったのが上がるわけですから、毎年約四四、五%授業料を上げなければならぬ。人件費だけで考えたってそうなってくるのです。毎年一〇%として、新入生を四年まで上げなければ最後は四〇%になってしまうわけでしょう。その七割は人件費なんだから、それが上がったのが一〇%ずつ上がっていくんだから、四〇%ずつ毎年上がっていく勘定になるのです。こういうことを計算しなければならない。あるいはさっき申しますように、国がやらないうちに、国が怠っておったから、私学がピーク時に学生を集めた。学生を集めて授業料を取ることによって、経営難を切り抜けようとした。ところが、学生をよけいにすれば、それだけまた人件費がよけいになってくる。人件費がよけいになるから、また経営が困難になり、だからまた、授業料を上げなければならぬという、そういう問題があすこにからんでくる。  同時に、私は、学校というものは一体、企業的に行なわれていいんだろうか。学生が負担する金でもって独立採算なり営利でやっていいんだろうか。基本的に言うならば、私学をつくるときに、相当な基本金を持つことが必要なんじゃないか。その基本金から収入が毎年入ることによって授業料というものを上げなくても済むという、そういうことが新しい大学をつくるときの認可基準の中に必要なんじゃないか。あるいはそのことが非常に困難かもしれない。困難であればまた、国立をつくらせなければならぬという一つの圧力になるでしょう、国民の教育要求が高まってくるのですから。いま私、時間がありませんから、たとえばそういうようなことを——少なくとも私立大学をつくるときに認可をする。その認可をするときに、あなた方の法律によれば、経営方針なり経営計画財政というものは、それをきちっと認めて、私学というものを、私立大学を認可するのです。同時に、その経営方針なり財政を変更するときには、文部省に届けをさせなければならぬことになっておる。だのに、文部省はそれをどれだけやっておるかというと、実はほとんどやっておらない。どのくらいやみの入学金が取られているか、どれほどやみ定員がふやされているか。私はきょうあまりこまかいことを申しませんが、そういうことを基本的に考えなければ、私学というものの基本的な解決がない。今回、百一億がよけいになったというが、百一億がよけいになったって、今回、私学の平均は八・八%上がるんでしょう。だから、金額の上ではさらにまた差がつく。決して三倍にしたからといって、金額上のバランスはますます開くばっかりです。したがって、今回の授業料の値上げというものは、そういう意味では、授業料値上げと私学との関係については何ら関係がない。授業料を値上げするのでなしに、私学のほうに基本的な、私学の構造的なこの欠陥というものを解明しながら、どうしていくかという計画目標がなければ、私は意味なき授業料値上げだと思うのです。その点についての総括的なお考えを承ります。
  177. 高見三郎

    ○高見国務大臣 きわめて重要な問題にお触れになりましたので、私の考えておるところを申し上げます。  日本の高等教育は、私学が中心であると申し上げていいのであります。大体八割は私学でやっておる。しかも私学の設立の基準に、戦前は、基本金百万円を供託しなければならなかったのであります。戦前の基準で申しますと、百万円という金は、今日のおそらく十数億になるんじゃないかと思います。この利子収入を一応見ておった。ところが、戦後ベビーブームの場合に私学が乱立いたしました。これはむしろ国立をふやすべきであったと、私はいまにして思うのであります。どう考えてももうかるはずのない医科大学の申請がやたらに出てまいります、私立の。これには必ず何かがあるということだけは考えられることであります。しかし、ここで私がはっきり申し上げておきたいことは、今度の国立大学の授業料値上げというものは、私学とのバランスをとろうというような気持ちを持っておるのではありません。(「何とのバランスだ」と呼ぶ者あり)まあ、ええじゃないですか。少なくとも私は、私学に対する助成というものは現在のままではいけない。累積赤字が私学全体で大体六千億ございます。これを解消することは容易なことではないのであります。国が積極的に私学の現状に手を差し伸べなければならないのであります。ただ、問題は、私学、私学と申しましても、確かに助成をしてあげたい私学もあるし、場合によればそうでない私学もないとは言えないのは、木島先生御承知のとおりであります。私は、そういう観点から、私学に対する補助助成の基準についても、将来はやはり一応考え直さなければならぬ時期が来ておるという感じさえいたしておるのでありますけれども、私学助成が今年、五三%ふえたということで鬼の首を取ったような気持ちでおったら大間違いだと私は思っておるのでありまして、少なくとも私学が……   〔発言する者あり〕
  178. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 発言中は静かに願います。
  179. 高見三郎

    ○高見国務大臣 少なくとも私学の助成金というものは、国立に対しまする経費とほぼ匹敵するところまでいかなければならぬと思うのであります。考え方によりますというと、私学の経費が国立の経費の大体三分の一である。しかも私学の学生は国立の学生の四倍である。教育の質はどうかと申しますると、三分の一ぐらいな開きがあるだろう、これはたいへん私学に対して失礼でありますけれども、私はさように考えております。そうすると、たいへん高い授業料を出して私学にやっておられる方も、私学に高い月謝を払って入れておきながら、国立大学の学生の経費まで税金でもって払っておるという姿は、適当な姿ではない。そこで、この際、九年間据え置かれておりました授業料を引き上げる。何も文部省が怠慢で、四年ごとに上げておりましたものを九年間据え置いたわけではございません。けれども、この辺が踏み切る時期ではないかと、私はさような判断に立って、今回の授業料値上げを決定したわけでございます。
  180. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 木島君に申し上げますが、時間がだいぶ経過しておりますから簡単にお願いします。
  181. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いま私学のことについても、あなたの基本的な考え方を承りました。したがって、あとのほうはちょっと矛盾する。そういう意味で私は、いずれにしても、この授業料値上げということの根拠、ことに、三倍という根拠が全くわかりません。ことに、今日、国民が求めておるものは、実は物価であります。ところが、今日、政府の物価政策はゼロ。せめてできるものが、政府がきめ得るもの、その授業料は、これは元来、国鉄や何かと違う。もっと教育的見地に立たなければならない。そういう立場に立って、このごろ政府の考え方の中には、多分に行政の企業化がある。財政的見地だけ、財政的見地から教育的見地が配慮されないできめられるという傾向について、私は、少なくとも教育というものを十分に、先ほどあなたがおっしゃった育英資金についても、私学についても、基本的な考え方を持っていかれるならば、根拠がないと思うのです。そういう意味で思いとどめられること、ことに、暫定の中に入れないことを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  182. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。  本会議散会後直ちに再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十九分休憩      ————◇—————    午後四時五十四分開議
  183. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  一般質疑を続行いたします。林孝矩君。
  184. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私は公害問題、それから医療制度の問題について質問をいたします。  最初に、去る三月九日報道されましたものによりますと、「公害に追われ六十年……いま帰郷」「旧谷中村の二十人、北海道から」帰るという報道がございました。私はこの報道に接しまして、現代の公害問題の悲劇というものをこのような形で私たちが知ることができたということを、非常に深刻な問題であるという認識のもとにきょうの質問を始めたいと思うわけです。  その報道の内容は、足尾鉱毒事件で土地を奪われ、北海道網走に入植していった栃木県の谷中村、現在は藤岡町ということでありますけれども、この人たちが六十年ぶりに郷里に帰ってきた。この人たちが郷里を追われたのはどういう理由かといいますと、足尾銅山から流れ出た鉱毒が渡良瀬川流域に広がらないようにと、洪水予防の遊水池をつくるために村を追われた、そのようになっております。そして、その中の一人の発言は、「年寄りはこれでほっとしています。これまで苦労してきた人が多かったもんで、最後は故郷の栃木県に住むことが念願でした。」それが偽らざるこの人たちの気持ちだということであります。この人たちが現在六十年ぶりに自分の生れ故郷に帰ってきた。しかし、現在ですらこの人たちを受け入れる条件が整っているかといいますと、あとで質問してまいりますけれども、そうではない。この人たちがもともと農民であったわけでありますけれども、現在ですら、六十年後の現在ですら、まだ現地はこの人たちを農業に従事させるような状態ではなく、非常に公害によるところの被害が土壌、あるいは農作物にあらわれている。この人たちがせめて故郷に帰ってという願いも、はたして今後どうなっていくだろうかということを考えますと、非常に心配するわけです。  そこで環境庁長官にお伺いしますけれども、この事実、これを環境庁長官はどのような姿勢で把握されているか、まずこの点についてお伺いしたいと思います。
  185. 大石武一

    ○大石国務大臣 わが国が今日までの百年の間に、いろいろと経済の発展を行ないまして今日に至っているわけでございますが、その陰にはおっしゃるような幾多の犠牲的なものが数知れなくあると思います。幸いにいま日本の国の政治は、御承知のように経済開発優先の方針から方向が変わりまして、人間尊重の方向へ歩みを進めております。われわれはこの政治の姿勢を変えることなく、さらにこの強固な基礎を築きまして、この人間尊重の精神の政治をあくまで進めなければならないと思います。そういう点で、そのような観点から環境庁が、御承知のような人間環境整備のために、環境保全のために強力な総合的な行政を行なわなければならないというような、やはり同じような思想のもとに昨年の七月に発足したものでございます。私どもは、そのような精神を基調として、あくまでも国民の側に立ってヒューマニズムを土台とした行政に徹してまいりたい。これがわれわれの根本的な考え方でございます。
  186. 林孝矩

    ○林(孝)委員 同じくこれは足尾銅山という鉱山の問題でありまして、通産大臣にお伺いしたいと思うのですが、通産大臣はこのような事実をどのように把握されますか。
  187. 田中角榮

    田中国務大臣 足尾銅山は慶長十五年、一六一〇年から始めたわけでございますから、いままでに約三百五十年くらい仕事を続けておるわけでございます。明治年間にも鉱害の問題がございまして、明治三十年三月に内閣に足尾鉱山鉱毒調査会というものがつくられたわけでございます。それからずっと鉱津の処理その他いろいろな施設をやっておるわけでございます。  また、現在までに生産をいたしておりますものは、四十五年上期で粗鉱としては二十一万四千トンほど生産をしておるわけでございます。この新しい問題に対しては、いま古河鉱業はみずからの責任であるというふうにははっきりと言っておりません。おりませんけれども、その裏にはこれだけの長い歴史を持つものでありますし、また地元との話し合いによりまして何度か寄付金という名義で補償措置を続けてきておるわけであります。そういう意味で、今度百二十億というような大きな補償要求というものに対しまして、それだけの責任を会社側は承諾をしておりません。おりませんけれども、長い歴史が続いてまいったわけでありますし、いま公害問題と表面から取り組んでおる問題でありますので、この問題に対してはひとつ通産省も積極的に調査をし、また公害が起こらないように努力をしなければならないということを考えておるわけでございます。四十六年にも施設を行なっておるわけでございます。補償状況昭和三年からずっと寄付金名義でやっておりますし、また四十六年七月、四十六年の十二月というような状態におきましてもカドミウムの発見その他ございましたので、廃水処理の施設を完成せしむるとか、できるだけの公害処理の問題はやらしておるわけでございますが、補償の問題についてはいま見定めがつかないような状態でございます。
  188. 林孝矩

    ○林(孝)委員 通産大臣がお認めになったように、いまだ解決していない、これが結論であります。ところが、あまりにも古い歴史のある公害、この公害が百年公害だとかあるいは公害の原点であるとかという呼び方をされておりますけれども、こうした歴史を持つ公害が解決されない限り、公害というものは日本から完全に除去されたということは私は言えないと思う。やはりこれだけの百年公害といわれているものがまず解決されなければならない、私はそう思うわけです。したがいまして、この問題についてはこれからあとずっと質問してまいりますけれども、積極的に取り組んでいくという裏づけをこれから答弁願いたいと思うわけですけれども、まずその前に現在の時点でこの渡良瀬川流域の汚染状況はどうなっているか、この点をお伺いするわけです。  まず水質の面、それから土壌汚染、それから米の生産に与える被害、麦はどうか、その三点について御報告願いたいと思います。
  189. 大石武一

    ○大石国務大臣 いまいろいろ具体的な御質問がございましたので、具体的ないろいろなこまかい面につきましては政府委員から答弁させたいと思いますけれども、とりあえず私からお答えいたしておきます。  この渡良瀬川の水質の問題でございますが、これは以前はよごれておったことは確かでございます。その後いろいろと監督官庁の努力によりまして、水質は少なくとも以前とは違った、変わったよいほうに向かっております。大体において通常の水は大体排水基準を守っている程度にいま保たれております。ただ、長い間の山のズリその他の蓄積がございますので、大雨のあとにこういうものからある程度の汚水が流れまして、多少その基準を上回ることはあるようでございますけれども、これも逐次そのような努力をしてまいりますれば、この水質も排水基準を守り得るものと考えておる次第でございます。  ただ、長い間の排出によります土壌の汚染は、これは簡単にまだ直っておりません。この中で銅とカドミウムが問題になっております。カドミウムは土壌汚染防止法による特定の有害物質としてこれは指定いたしまして、これについていろいろな調査はいたしておりますが、大体カドミウムに汚染され得ると思われます一千町歩の土地について調査いたしました米につきまして検査いたした結果、やはり何点かがいわゆる一PPM以上上回る玄米が算出されております。こういうものを十分に考慮いたしまして、早急に土壌汚染防止法によりましてこの土地改良を行なわなければならぬと考えておる次第でございます。  なお、銅につきましても、やはりこれは大体の調査を終わりまして、いまそのこまかい分析をやっている最中でございますので、その内容につきましては政府委員からお答えさせたいと思いますが、銅もやはり当然稲の生育には重大な影響を与えますので、これも十分に考慮いたしまして、いわゆる土壌汚染防止法の中の特定有害物質に加える、そのような基準をきめるいま努力をいたしておりまして、おそらく明年度早々にはこれを特定物質に加え得るものといま考えて努力いたしておる最中でございます。  そうなりますと、その考え方を基準としてやはり土地改良を行ないまして、できるだけ農産物にもいい結果を与えたいと考えておる次第でございます。
  190. 岡安誠

    ○岡安政府委員 現状につきましてお答え申し上げますと、まず水質でございますけれども、現状におきましては非常に改善されておりまして、水質の目標でございます高津戸地点におきます銅〇・〇六PPMというものは守られております。ただ、大臣からお話ございましたとおり、蓄積の面におきまして土壌が汚染されておるという面がございます。  調べました結果を申し上げますと、まず銅でございますけれども、従来から被害が非常にひどいといわれております一千ヘクタールにつきましていろいろ調査いたしましたところ、可溶性の銅、要するに植物に吸収される可能性のあります銅の最高値が五七一PPM、最低値が九九PPMというような現状でございます。  なお、カドミウムにつきましても一千ヘクタールにつきまして調査をいたしましたところ、玄米中に一PPM以上のカドミウムが含まれているという地点が十一地点ございました。その最高は一・五一PPMというような現状でございます。
  191. 林孝矩

    ○林(孝)委員 水質の件について一点お伺いいたします。  水質基準から判断すると水質基準は守られておる、こういうお話で、現在は基準以下の水が流れておる、私も知っておりますけれども、ところが現在渡良瀬川で採石が行なわれておるわけです。そのために水質が著しく汚染していることを御存じでしょうか。
  192. 岡安誠

    ○岡安政府委員 採石は相当行なわれておると思いますけれども、採石によりまして特に広範囲にわたって水質が汚染しているということは承知しておりません。
  193. 林孝矩

    ○林(孝)委員 では私のほうから申し上げます。  これは桐化市の水道局の発表でありますけれども、昭和四十六年、昨年十二月二十一日採石場よりの排水を採水して水質試験した結果であります。それによりますと、銅が二四・一四PPM、カドミウムが〇・一二四PPM、砒素が一六・八PPM、環境基準をいずれも上回っているのであります。こういう状態に現在渡良瀬川があるということなのです。ですから、長い歴史の間に水質がだんだん基準が設けられてそれを守ることによってきれいになっておった。ところが水底に堆積しているわけです。そこへ採石工場ができて採石をどんどんやるものですから、その堆積した中にあるこうした金属物質が再びあらわれて、そして流れていく、こういうことになりますと、再びまたそれが、たんぼだとか畑だとかあるいは下流にずっと流れて、新たな被害を、災害を及ぼしていくということも考えられるわけです。これは通産大臣の所管になると思うのですけれども、こういう工場はこのまま放置されていいものでしょうか。
  194. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げましたように、非常に長い歴史を持つものでございますし、日本でも有数な……(林(孝)委員「いやいや、採石工場のことです」と呼ぶ)ちょっとおそれ入りますけれども、いま……。
  195. 林孝矩

    ○林(孝)委員 大臣は足尾銅山と勘違いされているようですが、いま渡良瀬川流域に採石工場ができまして、堆積している土壌があらわれるもので、いまデータを申し上げましたけれども、再び水質が汚濁されてきている、こういう桐生市の水道局の発表があるわけです。ですから、こういう工場がそのまま放置されていいものかどうかという点。
  196. 田中角榮

    田中国務大臣 渡良瀬川のカドミウム問題その他は、砂利を採取をする、採石を行なうということで、相当部分を掘り起こしたときにそういう現象が確認をされたわけでございます。まあ長い間沈でんをしておるものもあると思いますので、掘り起こせば、そういうものに付着しておるものや堆積したものが水に混入されるわけでありますから、確かに水質は汚濁されると思います。こういう採石工場や砂利採取というものは、これは府県で認可をしております。あそこは直轄河川でございますから、建設省の関東地建が認可しておるものと思いますが、私もこの問題を聞きましてから、あそこには有名な遊水池がございます。遊水池の砂利採取はどうなっておるんだろうというようなことをいま調査を命じておるわけでございますが、こういう問題に対しては、建設省とも連絡をとりながら、その実態を調査をしなければならない、こう思っております。
  197. 林孝矩

    ○林(孝)委員 先ほど環境庁長官答弁の中に、土壌の中の汚染について銅の基準を設ける、それは明年のたしか初頭というふうに伺いましたけれども、(大石国務大臣「明年度初期です」と呼ぶ)明年度初期ということですね。これは非常に重大なことだと思うのです。いままで土壌の中にはカドミウムの基準しかなかった。ところが、銅の基準を設ける、そのことによって、いま向こうでも一番問題になっているのは、その土壌の中の銅の被害、それが直接農作物の被害にあらわれているということも言われているわけですから、これは非常に重大な決定であると思います。ただ時期的に、明年の早くということでありますけれども、いまいわゆる稲作に携わっている人たちは苗しろをつくる段階にあるわけです。現在のままでいきますと、なかなか踏み切ることができないというお百姓さんもいるわけですね。なるべく早く、明年の初頭よりも早くそういう基準を決定して、そして安心して自分は農業で行くか、それても転業するかという問題、それから基準が設けられますと、対策地域に指定されるということがありますけれども、それはそれでいいわけですね。
  198. 大石武一

    ○大石国務大臣 先ほどお答えしましたように、明年度でございますから、ことしの、まあ早くいえば五月あたりまでにはできるかと思います。明年度でございますから、ですから、ことしのあと数カ月のうちにこの基準をつくりまして、これを特定有害物質に指定いたしますと、いずれその地域が指定されます。そうなりますと、そこではいろいろな今度は汚染防止の土地改良その他が行なわれますから、ですから、ことしとか来年の稲作には必ずしもすぐ役立つとは限りませんけれども、長い目で見ていけば、必ず数年中には土地改良が行なわれますから、必ず農民のために役に立つと考えておる次第でございます。
  199. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、麦の点はどうだったでしょうか。
  200. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いまの御質問はおそらく麦につきましてのカドミウムの問題だろうと思っておりますが、これは実は厚生者の所管ではございますが、現在、米につきましては一PPM以上玄米に含まれている場合には、食品衛生法によりましてその販売その他が禁止されております。麦につきましては、厚生省、現在検討中でございまして、なるべく早く結論を出したいというふうに私どもは伺っている次第でございます。
  201. 林孝矩

    ○林(孝)委員 これは厚生大臣あとで来られますので、そのときにお伺いすることにして、農林大臣あるいは局長の方でもけっこうですが、現在までこうした被害によって米作に非常に大きな打撃を与えた、これはもう周知の事実ですけれども、農林省で掌握されている米作被害、これはどの程度になっておりますか。
  202. 亀長友義

    亀長政府委員 現在、政府買い入れ米で一PPM以上のものとして政府が販売をしないで保有をしておるものが、約一万二千トンございます。農家保有の段階での数字に関しましては、私、ちょっと資料の持ち合わせがございませんので、追って報告をいたします。
  203. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは、あと、これは厚生大臣が来られてからにします。  次に足尾銅山の例は、古くからの、救済が叫ばれてきた典型的な公害の悲惨な例でありますけれども、このような悲惨な公害の被害を救済するために、政府が無過失損害賠償責任を認める法律案を今国会に提出すると約束してきたわけです。目下作成中であると聞きますけれども、そこで私の知り得た範囲で質問を続けたいと思います。  その前に、きょうの毎日新聞によりますと、「公害無過失法案大幅な後退「因果関係推定」削る」、「環境庁」「自民、通産が圧力」、こういう記事が出ております。この無過失責任という法律の設定によって、被害者が故意過失の立証責任から解放されると同時に、因果関係の推定、これによってやはり被害者がその立証責任から解放される。これは現在の公害訴訟の中で最も重大な、また重要な部分を占めている問題だと思うわけです。その重要な部分である因果関係の推定規定が削られるということであります。この因果関係の権定規定が削られるということになりますと、俗に仏つくって魂入れずということばがありますけれども、無過失責任の法律はできても、現在の公害被害でほんとうに苦しんでいる人たちの賠償というものが、はたして満足に解決できるのかどうかという点を、この新聞を読んで私は非常に残念に思うわけです。  まず法務大臣、現狂の公害訴訟の中で、いま私が申し上げましたように、この二点が訴訟の非常に重大な位置を占めている、そのように理解しているわけですけれども、法務大臣はいかがでしょうか。
  204. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 因果関係の推定については、公害犯罪の場合には推定規定を設けております。ところが、民事の損害賠償なりそういう問題に関しましては、それほど証拠が厳格ではないわけであります。そういう意味からいたしますと、推定規定がなくても、結局においていままでも、それは一応認定したりいろいろやっておりますから、刑事の場合と違って非常に正確な証拠というものは必要でありませんから、あの規定を削られても、そんなに差しつかえがあるとは私ども考えておりません。
  205. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私もそういう答弁があると思っておったのですけれども、法律案の中から推定規定が削られた、それがなくても現在裁判の上において推定している、簡単に言えば大臣答弁はそうです。ところがそれは裁判所のほうが、裁判官その人たちが一生懸命努力して、そうして因果関係をそのように推定して判決を下しているわけです。ですから、もし法務大臣が、裁判でそうしているから法律案から削っても同じだとおっしゃるなら、今度は逆に言えば、法律に定めても同じじゃないですか。問題はないということじゃないですか。
  206. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 結局において、あるいはおっしゃるようなことかもわかりません。したがって、あるとかないとかいうことはそれほど大きな支障でないということだけは事実だと思います。
  207. 林孝矩

    ○林(孝)委員 支障があるなしの問題は別にして、法律がないがゆえに裁判所が努力して理論構成した結果が、あの因果関係の推定という判決になったと私は思うわけです。したがいまして、別の面から言えばこれは法に不備がある。さらに一歩進めて言えば、こういう因果関係の推定規定ができることによって裁判がスムーズにいく。いま公害訴訟が第一審で三年だとか、そして控訴審になると十年もかかる。そのような長期にわたる裁判の中で、被害者が疲れあるいは苦しみ、またいろんな意味で悩んで、そしてもう裁判をあきらめていく人だとか、あるいはその中で命をなくしていく、そういう人たちもいるわけなんです。これが現実の問題です。  私は法務大臣に申し上げたいことは、同じではなくしてそれは法の不備であって、これを制定することによってこうした裁判上の問題が大きく前進するのである。その理解の上に立たなければ、現在の公害裁判における問題、またその長期にわたる裁判によって苦しんでいる被害者の救済というものはできない。どうでしょうか。
  208. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 率直に言いますと、いままでの裁判は長くかかり過ぎております。それは最初のケースでありましたから、いろんなことであれですが、だんだん判例もでき、それが累積されてそれで促進される、こういうふうに考えております。それはあったほうがというお考えかもわかりませんが、私は、なかったからといって、非常にお困りになるというふうには考えてないわけです。
  209. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは環境庁長官、この因果関係の推定についてどのような見解をお持ちでしょうか。
  210. 大石武一

    ○大石国務大臣 私どもがこの無過失の責任制度をつくります場合には、いろいろ考えまして、これは新しい法律でございますし、ことに民法の大前提の例外でございますから、やはり慎重に考えなければならない、そういう方針で始まってまいりまし先。まず、決して法的に内容の手落ちのないものにいたしたいということを一番先に考えました。それから、その内容につきましては範囲をとりあえずしぼりまして、これは例外でございますから、無制限に範囲を広げるわけにまいりませんので、できるだけ必要な最小限度の範囲にしぼったわけでございます。  その結果は、御承知のような人間の健康被害を中心として制度を運用することにいたしております。なおその場合に、健康に被害を及ぼすような物質、この物質はできるだけ実態をとらえまして、ほんとうにそのような物質が人間の健康を害する、そういうものにつきましては、これをのがさずとらえてまいりたいと考えまして、御承知のような硫黄酸化物、あるいは窒素酸化物あるいは粉じんのようなものまでとらえまして、一応の複合汚染の方針をきめたわけでございます。二番目は、できるだけ中小企業がこの負担にたえ得るような、ある程度その実態をしんしゃくできるような内容にいたしてございます。もう一つは、最後に、いまお話のございます因果関係の推定、この三つを中心としてこの法律案を組み立てるようにわれわれは初め考えてまいりました。しかし、その後は、いろいろな諸般の事情によりまして、私どもは今回最終的にはこの因果関係の推定を削ることにいたしたのでございます。  この因果関係の推定は、私はいろいろと検討いたしました。法務省あるいは私どもは、この法律をつくる場合、法律に間違いないように、間違いないようにという考えから、我妻栄先生を中心とした法律家の方々にも十分御相談いたしました結果、この推定の規定がなくとも、無過失賠償の制度は十分に実績をあげることができる、被害患者の救済に十分役立ち得るという御見識でございました。  ただし、そういうことでございますが、私は政治の姿勢としては、やはりこれを入れたほうが一番正しいと考えまして、そのような方針でこれを推進してまいったようなわけでございますが、今回いろいろな事情によってこれをとることにいたしました。私はあったほうがいいと考えておりますけれども、しかし、これがないからといって、この制度が実効をあげないで、必ずしも患者の救済に役立たぬものとは考えません。十分にその機能を果たし得るものと考えておりますので、あえて私は、そのいままでの考え方を多少変えてでも、この法律案を成立させたいと願っておるわけでございます。
  211. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私は、いま環境庁長官お話を伺っておりまして、まず問題なことは、この規定がなくても十分機能を果たすという根拠はどこにあるかということです。我妻先生なんかと相談されたときは入っておったわけですね。ところが、諸般の事情で削られたというわけです。じゃ法律の大家といわれる人たちが相談して入れたということは、われわれしろうとから考えても、これはこの規定を盛らなければ解決されない部分があるという裏づけなんです。推定規定を入れなくても働くということではないわけです。そこで環境庁長官も言われているように、この推定規定を入れるということで現在まで貫かれてきた。ところが諸般の事情で削った。その諸般の事情というのは一体何かということですよ。何ですか。
  212. 大石武一

    ○大石国務大臣 我妻栄先生の御見解は、このような規定がなくとも十分に、いままでの判例その他から考えまして実績をあげ得るという御見識でございます。ただ政治の姿勢としては、どちらでもいいが、あってけっこうだろうという程度の御見識でございます。私はその最後の御見解をとりまして、これを入れたほうがやはり一つの方向をはっきりと示す、公害に対するわれわれ環境庁あるいは政府の強い方針、意思をはっきり示すに一番都合がいいという考え方から、私はこれを取り上げたほうがいいと考えたわけでございます。  諸般の事情とは、現在の一般の国民のものの考え方、判断のしかた、いろいろなものを考えまして、ある程度、これをとったほうが、私はこの法律案の推進にやりやすいと判断して、このような方針に出たわけでございます。
  213. 林孝矩

    ○林(孝)委員 まず第一点、とったほうが国民一般のものの考え方に合っているというこの認識です。私は逆に、この因果関係の推定規定が入っているということによって、ああ、これで無過失責任法案の立法する意味もあるし、この法律が有効に働くという希望が生まれてくる、大きく一歩前進すると考えておったわけです。ですから全然逆なんですね。一般の国民はそういう声です。大石長官の言われる一般国民というのはどういう人をさすのか知りませんが、私はそのように理解しておるのです。  それから、話がもとに戻りますけれども、この推定規定が入っているのと入っていないのと同じだという先ほどの法務大臣答弁、私はそれに対して違うということを理由を話しました。これは現実の問題です。ですから、これは環境庁長官、認識を改めてもらわぬと困るんです。一般国民はこうした因果関係を立証するために、たとえば私が公害の被害にあって病床で寝ている、その立証を私ができますか。できません。推定規定をとることによって救われないという可能性が生まれてくるんです。これは可能性ですけれどもね。だから、推定規定が入っていると入っていないのと同じということは絶対ないことなんです、これは。
  214. 大石武一

    ○大石国務大臣 いままでのいろいろな公害についての訴訟事件がたくさんございます。それを見ましても、いずれもその判決の内容はこの推定の考え方を取り入れております。でございますから、私はあらためてこのような念を押さなくとも——私はやはり入れたほうがいいと思うのですよ、あったほうが。姿勢を示す上においていいと思いますけれども、入れなくとも、この無過失賠償責任制度が効力を持たないとは考えておりません。私はりっぱにこれを果たし得ると考えますので、そういう方針で、いろいろな事情から、現段階においてはとることもやむを得ないと判断したわけでございます。  ただ、一般国民はとったほうがいいと考えておるとかと私が言ったんではございません。それはちょっとお聞き違いでございまして、この推定の規定をとった理由は、諸般の事情と申しましたが、それは国民の一部の方々の理解、そういういろいろな問題を考慮いたしまして、私どもはこれを今回はとったということでございます。
  215. 林孝矩

    ○林(孝)委員 またもとに戻りますが、諸般の事情という説明で一般の国民という答弁が出てきたわけです。だから私は言った、一般の国民とはだれか、一般の国民はそうではないということを言ったわけです。私が勘違いしておるのじゃないですよ。ところが、いまは国民一般ではないということを大石長官が言われた。ですからはっきりしてもらいたいわけですよ、その諸般の事情というのは。法律的には、これは因果関係の推定というものを削除するのとしないのとは違うわけです。ですから法律的な意味ではなしに、諸般の事情によって削るんだということになった。その諸般の事情とは何かということを国民の前にはっきりしてもらいたいですね。
  216. 大石武一

    ○大石国務大臣 先ほど申しましたように、国民の一部の方々のこれに対する理解度とか、いろいろな問題を政治的に考慮いたしまして、私はこの推定の規定をとりましても、とることが一番この法律の成立にやりやすい、はかりやすいと判断したからでございます。したがいまして、この推定の規定がなくなった場合に、この法律が死ぬのならば、効力を発揮しないと判断しましたならば、私はこれは絶対にそのような、皆さまの言われるような、いわゆる後退はいたしませんが、これをとりましても、先ほど申しましたように、いろいろその内容を見ますと、やはりこれはとりあえずこれをつくりまして、まず今後いろいろな、大きな体系に発展する橋頭堡をつくることが正しいと信じまして、これを提案することに決意いたしましたわけでございます。
  217. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それならばわかりやすく言います。たとえば、この因果関係の推定というものが入っておった場合の裁判に要する時間、それからこれを削ったためにどれだけの時間がかかるか、まずこの比較があると思うんですね。これはほんとうに常識的な問題ですけれども、普通この因果関係の推定というものが法律にきめられてない場合の裁判は、先ほど申しましたように三年も四年も五年もかかっておるわけなんですね。控訴審の場合は十年もかかっておる。これは現実の問題です。それを何とか早く解決しなきゃならない、そういう意味で因果関係の推定というものが要綱案に入っているということで、ああ、これで裁判が一歩促進される、そういう期待を持ったのが一般国民の受け入れ方なんです。そういう意味において違うということを先ほどから申し上げておるわけです。御理解していただけましたでしょうか。
  218. 大石武一

    ○大石国務大臣 私は、やはりこの規定があってもなくても、それほど裁判の結果は左右されない、変わらないと考えます。
  219. 林孝矩

    ○林(孝)委員 もう一度大石長官に言いたいところでありますけれども、あってもなくてもいいというものであるならば、最初からこの要綱案に入ってなくてもいいということでしょう。要綱案に入ったということは、先ほど大石長官も認められたように、政治的にもすっきりする、強い姿勢である。強いという中身は何かというと、私が先ほどから言っているように、この推定規定が入ることによって裁判が促進されるということです。なくなったから、この無過失の法律ができるということは意味がないと言っているんではないですよ。無過失法案ができるということは、故意、過失から被害者の立証責任を解放するということですから、一歩大きな前進です。これは意味がないと言っているんではないわけです。しかし、その中に因果関係の推定規定が盛られておった、要綱案の中に。そこで裁判が一歩大きく促進されるという期待を国民は持っておったわけです。ところが諸般の事情で削られた。ですから意味は同じじゃないわけです。意味が同じだということは、先ほど言いましたように、裁判所が努力して、法律がないけれども、裁判所がかわって裁判でもって立法と同じような形をもって判決を下しているということであって、この条項が法案に盛られることによって裁判がすっきりして進むにきまっているじゃないですか。そうでしょう。
  220. 大石武一

    ○大石国務大臣 私の言い方が少しまずかったかもしれませんが、二つに分けて考えたいと思います。  私は、この因果関係の推定の規定がなくとも、裁判のあり方についてはそうたいした変わりはないと考えます。ただ私は、一般国民に対して、ことにポリューターに対しましてこのような規定のあることが、環境庁としての公害防止のための強い姿勢であることになり得ると考えました。そういう意味で、私はこれを入れたほうがいいと考えたわけでございますが、それもいずれは、その強い姿勢も、この形をとらなくとも、いろいろの場合において、そのような環境庁の姿勢というものは、それはいつでも国民全体に十分に表明することができると信じましたので、あえてこれはとっただけのものでございます。
  221. 林孝矩

    ○林(孝)委員 強い姿勢をとるポーズが諸般の事情によってくずされたということです。  新聞の報道によりますと、通産が圧力をかけたと書いていますけれども、どうでしょうか、通産大臣
  222. 田中角榮

    田中国務大臣 法律条文を作成する過程におきましては、政府部内は意見の調整を行ない、与党の審議を経て、政府と与党との意見が完全に一致した場合、法案として提出をするわけでございますが、その過程においていろいろ各省の意見を持ち寄ったことはございますが、圧力を加えたなどということはございません。通産省の圧力に屈するような環境庁ではない、こう見ております。
  223. 林孝矩

    ○林(孝)委員 通産省の圧力に屈するような環境庁じゃないそうです。大石長官、諸般の事情はそういうことですので、元気出してやってくださいよ、初志を貫いて。いろいろな諸般の事情があるか知りませんが、この委員会でも通産大臣は協力下るという答弁をすでにされておりますし、圧力をかけても屈する大石長官ではないということでありますし、そうすると、環境庁長官が初志を貫いていけば、この規定は削らずに済むのじゃないでしょうか。私はこれはほんとうに重大だと思います。したがって、もう一回環境庁長官に、その腹を割って長官自身の気持ちをはっきりさせてもらいたいものです。
  224. 大石武一

    ○大石国務大臣 私は、皆さまにちょっと去年のこととことしとをひとつ比べてお考えいただきたいと思うのでございます。昨年の、一昨年になるかわかりませんが、一昨年の国会におきましては、初めてこの無過失の責任制度を法案化しようということで、山中総務長官がいろいろとあらゆる努力を重ねましたが、やはり政治的な機が熟さないとだめでしょうが、これは国会の提出段階までに至りませんでした。これは時の政府の公約でもあり、あの強力な山中長官があらゆる努力をしたと思いますが、それにしてもこれは提案することができませんでした。これはだれがいいとか悪いとかの問題ではなくて、やはり国民全体の政治に対する当時の民度、見解だったと思います。ところが一年後の今日では、環境庁ができたせいもございましょう、あるいは国民の公害に対する自覚というものがふえたせいもあると思いますが、とにかく提案することができるような段階にまで至っております。しかもその中には、いわゆる硫黄酸化物を中心とする、その他窒素酸化物あるいは粉じん等のものを含めた複合汚染まで、これは十分に入ることになりましたし、また、中小企業に対する配慮もそこで入ることができました。  ですから、こう見ますと、これはやはり一つの進歩だと思います。私はこのような進歩をとらえまして、さらにわれわれが考えましたように、なるほど因果関係の推定の規定も入れば私としては満点でございます。しかし、それがとれない場合には次の八十五点でも、努力して合格点ならば、将来、これっきりおしまいではありませんから、私は今後もこの内容がさらに総合的に拡大することに努力してまいります。そういう意味で、私は、まず次善の策でもやむを得ない、まず橋頭堡をつくることが先であると考える次第でございます。  しかも、私はこの前、いろいろと島本委員の御質問に応じまして、普通言ってはならないことでありますが、政治的生命をかけるかという御質問がありましたから、かけていると申し上げました。私はいまでもそう思っております。しかし、この推定の規定をとったことだけによってこの法案をつぶしてしまうには、私はしのびないと思います。たとえ一歩退きまして推定の規定をとりましても、いわゆる複合汚染その他のものが入ったこの法律ができ上がれば、私はそのほうがよけいプラスであると考えます。あえて私は皆さまのおしかりを受けることは覚悟いたしておりますが、そのような覚悟で、やはりこれは橋頭堡をつくる意味で、この法律案を成立いたしたいと願っておる次第でございます。
  225. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは話を進めます。  この公害の無過失損害賠償責任制度に対する問題について、私はもう少し一歩前進した立場から論じたかったのであります。先ほど一昨年からの事情が話されましたけれども、もうすでにやるかやらないかという議論は国会の中でも論議されました。どういう形でやるかという段階、その次に理想的な形はどうかということに対する理解、認識というものがやはり大事だと思うのです。そしてそういう将来の展望という意味から御答弁も願いたいわけでありますが、現在のこの要綱案によりますと、公害に関する無過失損害賠償法、そのような形、すなわち単独立法ではないということです。大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部改正という一部改正形式をとっております。これは必然的にその無過失損害賠償の対象を大気汚染、水質汚濁というものに限定してしまうことになっておる。このように一部改正形式をとられた理由は何か、この点についてお答え願いたいと思います。
  226. 大石武一

    ○大石国務大臣 この法律案はいままでとまるっきり違った、先ほど申し上げたように、いわゆる民法の大きな例外でございます。したがいまして、われわれはこのような法律を扱います場合に、やはり慎重に考えまして、大きな波紋なり大きなショックを与えないで、自然にこれが行なわれるようなことから手をつけることが一番いいではなかろうかと考えております。  そういう意味におきまして、できるだけ必要な範囲にその対象なり物質をしぼりたいと考えました。この結果、やはり一番大事なものは人間の生命、健康でございます。最初にこれに取り組みまして、まず人間の生命と健康に重大な影響を及ぼす物質は、大体が大気汚染と水質汚濁で、それはこの両法律に実際入っておりますので、その物質を中心とした両法律の改正ということにまず手をつけたわけでございます。
  227. 林孝矩

    ○林(孝)委員 公害という基本的な問題についてお伺いしますが、公害対策基本法第二条一項、この中に、「事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう。」これは公害を定義した文言です。ところが、今回政府が提出しようとする無過失法案は、大気汚染と水質汚濁だけにしぼられているわけですね。そうしますと、公害に関する無過失損害賠償法案をつくる、そのように総理もおっしゃってきたし、また長官もおっしゃってきたわけですけれども、これはそうではないわけですね。どうでしょうか。
  228. 大石武一

    ○大石国務大臣 私どもは、公害に対するそのような法律をつくることを考えております。ただ、おっしゃるとおり騒音とか悪臭とかそういうものはまだ入っておりません。これはいずれば、将来には入るべきものと考えます。ですから、初めはその突破口として、橋頭堡としての健康被害だけを中心に着手したわけでございます。
  229. 林孝矩

    ○林(孝)委員 将来はそういう立法をするという長官の決意、私は非常にけっこうだと思います。次に、損害の範囲の問題についてお伺いしますけれども、この要綱案によりますと、人の生命または身体を害したときは事業者は賠償責任ありとしているわけです。いわゆる人損、物損とよく俗に言いますけれども、人損に限定しているわけですね。これはどういうことでしょうか。
  230. 大石武一

    ○大石国務大臣 いままでも申し上げましたように、やはり最初でございますから、範囲をできるだけ必要な限度にしぼりたいと考えておったわけでございます。その結果、一番先に取り上げましたものは、やはり何と申しましても人間の生命、健康が一番大事でございますので、それを最初に取り上げました。おっしゃるとおり、物損と申しますか、財産の件もございますが、これにつきましては、いずれ近い将来にはこういうものも必ず入れなければならないとわれわれ考えておりますが、いまの段階では、まだ入れかえる段階でございますので、とりあえず人間の健康だけに限ったわけでございます。
  231. 林孝矩

    ○林(孝)委員 健康に関するものは健康被害救済法というのもあります。ですから、損害賠償法を健康というものだけに限ってしまうと、少し次元が違うというように私は理解するわけです。そういう意味でいまこういう質問をしたわけです。これは法律の解釈の問題でありまして、詳しくはまた委員会で行なわれると思いますけれども……。  それで、この無過失損害賠償責任の対象をいわゆる人損に限定したという長官の理由はわかりました。再び公害対策基本法に触れますけれども、この第二条第一項は、公害の定義として先ほど読み上げましたように規定しているわけです。この法律の第二項において、「この法律にいう「生活環境」には、人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含むものとする。」このようにはっきり規定しているわけですね。公害基本法というのは公害憲法とまでいわれているわけですけれども、この公害対策基本法でさえ明確に人損、物損を被害対象として基本方針を定めているわけです。人の生活権、これはやはり環境というものによって大きく左右されるわけでして、無過失賠償責任のこういう中にも、やはり公害基本法に基づいて、こうした生活環境被害というものも入れるべきである、私はその点を申し上げておきます。そうでなければ、逆説的に言えば、人の生命、身体については無過失損害賠償というものを必要とするけれども、生活環境の被害については全く不必要である、そういう考え方であると誤解されるような環境庁になりますからね。私は、いま答弁の中で、将来はそういうものを含む方向だという答弁がありましたので、これは非常に明確になったと理解します。そういうふうに理解していいですね。
  232. 大石武一

    ○大石国務大臣 私は、お説には大体賛成でございます。そのとおり御理解いただいてもけっこうでございます。ただ、そういうことは考えておりますが、やはり時間的な経過を経なければならないと思います。と申しますのは、何といいましてもこの法案をまずとにかく成立させることが一番大事な問題でございます。われわれとしてもこれは三年越しの公約でございます。ところが、これを一つの法律案にまとめまして、いわゆる財産の問題、それを含むとしますと、半年や一年の準備ではとても法律案はつくれません。そういうことで、いろんな諸般のことも考えまして、とりあえずまずこの橋頭堡をつくるという考えでこれだけに限定したわけでございますが、いまおっしゃることは私も同感でございますので、近い将来にはそういうように進めてまいる考えでございます。
  233. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、事業活動による国民の生命、身体及び生活環境破壊の未然防止という観点から質問したいと思います。  ここで考えなければならないのは、はたして公害について無過失損害賠償責任法をつくることで、公害対策についての民事関係の法律体系、これが完成したかどうかという疑問です。無過失損害賠償責任制度が完成すれば公害責任に関する制度は完成する、そういう考え方があったのではないかという疑問なんですけれども、これは法務大臣、どうでしょうか。
  234. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 御趣旨がちょっと私、聞き取れなかったのでありますが、差しとめ請求の問題でございますか。
  235. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それじゃもう一回。簡単に言えば、無過失損害賠償責任制度ができるということによって、はたして公害の賠償責任という法律体系はでき上がったのかどうかという考え方が一部にある。法務大臣はどういうように考えられるか。
  236. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ちょっと御趣旨が非常に抽象的でわかりかねるのでありますが、無過失損害賠償責任というのは、率直に言って、先ほど来から民法の責任制から考えれば原則に対する非常な例外であります。しかし、これはもうすでに公害法であったわけであります。それがこうしてまた発展してきている。また公害の態様はだんだん変わってくると思います。でありまするから、これで完成したというものであるか、将来も、すべて例外がだんだん発展していくのが世の中の進化の法則でありまするから、私はこれでとまったものだとも思ってはおりません。
  237. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで私は、この問題に対して一つの見解を述べますけれども、そもそもこうした損害を賠償しなければならないとか、すべきであるとかといういろいろな議論以前に、こういう問題が起こらないほうがいいのであって、そういう意味でも、先ほど少し法務大臣がおっしゃった差しとめ請求という制度、この問題があると思うのです。これもこの法案の中にはありません、この差しとめ請求という問題は。この差しとめ請求の制度というのは、私は非常に重大な意味を持つと思うのですけれども、大石環境庁長官は、こうした差しとめ請求の制度を導入されるという考えはございませんでしょうか。
  238. 大石武一

    ○大石国務大臣 いまのわれわれは行政官庁として、いろいろな公害の防止、あるいはそういうことにいろいろ努力いたしておりますけれども、この公害の防止で結局は、いろんな環境基準なり排出基準というものをできるだけきびしくして、これを十分に監視を行なえば、このような問題は私は防げると思います。そういう方針から、そのようないろいろと規制がいまきびしくなっておりますし、また、その規制に反するものは、十分にその施設を改善さしたり、あるいはその設備をとめるような指示も方法もできますので、そういう方向でできるだけこれは問題を引き起こすような事態をつくらないように努力できる、そういうことでわれわれは持っていきたいと考えております。  なお、法律的な詳しい解釈につきましては、恐縮でございますが、法務関係のほうにひとつお聞き取りを願いたいと思います。
  239. 林孝矩

    ○林(孝)委員 法務大臣、お願いします。
  240. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 差しとめ請求権の問題につきましては、もう現在の民法理論から言いますと、物権的な請求権、あるいは人格権の災害排除でありますか、そういうような理論から十分認められておるわけであります。ただ、率直に申しまして、これはまだ、いろいろとケースがあって、はたしてどういう制限を設けながらいくかどうか、これが十分範囲なり何なり研究が尽くされて、こうあるべきだというところまでいっておる理論ではないと思います。しかし、おそれあるという場合に、緊急な場合でありましたら、仮処分は当然できるわけでありますし、そういうような実際のケースに当たってやっていかなければならぬので、現在、法律で制定するというのがはたしていいかどうかということについては、私、疑問を持っておるわけであります。
  241. 林孝矩

    ○林(孝)委員 損害賠償を請求するという、そういうものが起こらなければいいのであって、被害が出てからではもとには戻らないわけです。環境庁長官もいつも言われているように、木を切ってしまってからもとの姿にするということはできない。山を削ってからもとのようにすることはできない。同じように、われわれの周辺に公害患者はいます。たとえばサリドマイド患者にしても、またそれ以外のイタイイタイ病患者にしてもです。そういう人たちが、一たんからだの骨が縮まったり、折れたり、脱灰現象を起こしたり、あるいは手が縮かんでしまった、生けるしかばねのようになってしまった、あるいは死んでしまった、それから賠償を受けたとしても、もとのからだには返らないということです。ですから、これはもとのからだに返らないんだから、そういう被害者には賠償金だけやっておけばいいというのではなしに、そういう被害が生じないようにするにはどうしたらいいかということの法律を体系づけていかなければならないという意味で、いま法務大臣に質問したわけであります。  そうしたことから考えますと、いろんなものが必要ですけれども、せっかくこうした無過失賠償責任法というものをつくろうとされておるときですから、その中にこうした差しとめ請求権というものを設定することが、やはり公害被害というものを未然に防ぐという意味で大きな力になる、そのように私は理解するわけです。環境庁長官、どうでしょうか。
  242. 大石武一

    ○大石国務大臣 公害は、これはお話しのように未然に防止いたしまして、ことにそのような健康被害を出さないことが一番大事なことは、私も全く同感でございます。私どもはそのような趣旨でいま努力いたしております。そういう点で、われわれは、この無過失の責任制度ですね、これをつくりましても、これが役立つとか発効しなくてもいいような時代をつくることが一番望ましいと考えておるわけなんです。  そういうことで、御承知のように、先ほど申し上げましたように、これからはますますこの規制というものはきびしくなってまいります。それに対してその規制に、大企業といわず中小企業といわず、企業がそれに伴ってまいるような努力はしなければなりませんけれども、規制はますますきびしくしてまいります。同時に、監視体制も十分強化されてまいります。こういうことをしてまいりますと、私は、近い将来には無過失という問題はなくなりまして、もし不幸にしてそのような健康とかいろいろな被害を負う事態があるとすれば、それは過失によるものではなかろうか。そのような事態にまで近くなるような気がいたします。そのように持ってまいりたいと思う次第でございます。もちろん過失もあってはいけませんけれども、そのような方針で進めてまいりますので、この差しとめ請求権につきましては、私は率直に申しまして、まだどうしていいかわかりませんが、根本的な考え方は、いまのような方針でまいりたいと思う次第でございます。
  243. 林孝矩

    ○林(孝)委員 通産大臣にお伺いします。  イタイイタイ病事件がございました。イタイイタイ病事件は、鉱業法百九条の無過失損害賠償責任の規定を通用して被害者の主張が通って、そして勝訴の判決が第一審であったわけです。いま私たちがここで議論をしておったことはここにも当てはまるのであって、被害者からすれば、そうした勝訴によって問題が解決されたんではなしに、賠償という形でそういう一歩前進はしたけれども、本来はそのような被害が起こらないほうがいいわけですね。  そこで私は通産大臣にお伺いしたいのは、この鉱業法五十三条を少し読みますと、これには、「通商産業局長は、鉱物の掘採が保健衛生上害があり、公共の用に供する施設若しくはこれに準ずる施設を破壊し、文化財、公園若しくは温泉資源の保護に支障を生じ、又は農業、林業若しくはその他の産業の利益を損じ、著しく公共の福祉に反するようになったと認めるときは、鉱区のその部分について減少の処分をし、又は鉱業権を取り消さなければならない。」と、こういう規定があるわけです。この規定は、今日まで発動されたことはありますか。
  244. 田中角榮

    田中国務大臣 その条文を発動し、停止をしたようなことはないそうでございます。
  245. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この発動の規定は、先ほどから議論になっておる民間人の差しとめ請求権以上に強い規定であると私は思うわけです。というのは、鉱物採掘が原因で人体や農林業等に被害があるときは、通産局長は、鉱区の減少の処分、それから鉱業権取り消し処分、そういうものをすることができるというんじゃなしに、しなければならないと、そのように規定されているわけですね。いまイタイイタイ病事件について考えるとき、このような事件を未然に防ぐという趣旨からすれば、当然これは発動されてなければならなかったんじゃないでしょうか。いかがでしょう。
  246. 田中角榮

    田中国務大臣 鉱業法にもございますとおり、住民に害を与えるようなことのないように万全の措置をとらなければならぬことは言うまでもありません。また、その鉱業から出ておるものによって被害が起こっておると推定されるものについては、立証されないものであっても、行政上は、施設の改善命令とか、また公害防除の施設等をまず第一番目には講じていくべきだと思います。しかも、最終的にその事業を継続することによって大きな被害を与えるということが立証されるということになれば、その条文の発動は当然あり得ることだと思います。
  247. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私は、この第一審裁判に勝訴になったイタイイタイ病、これは鉱業法に基づく賠償責任の裁判ですけれども、このイタイイタイ病の公害に対してすでにこの法律が発動されでなければならなかったんではないかという質問なんです。
  248. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど御指摘になったように、鉱業法にはいままで無過失を明確に規定しております。これは刑法三十八条に基づく、意思なき行為はこれを罰せず、これは刑法の大原則でもございます。ですから、有罪の判決をせんとする場合には、その犯意を明確に立証しなければならない。これも法の大精神だと思います。しかし、鉱業というものそのものは、そういう被害を起こすおそれのあるものでありますから、特にほかの法律にはない無過失賠償責任というものを規定しておるわけでございます。ですから、その意味においては、その法律の特性もございますけれども、日本のあらゆる法律よりも非常に先行した規定であるということは事実でございます。しかし、その法律にその条文がございますし、それをもととしてイタイイタイ病その他は、これを賠償するようにという判決をしております。しかし、これは患者側の実態を見て、会社側が最終審まで争う、また最高裁での判例を求めるという挙に出ないで、一審の判決をみずから受けることによって、少しでも被害に対して協力をしたいということでありますので、私は、いま御指摘のその条文の発動をする場合には、もう少しその条文を発動しなければならない条件というものを法律改正によって明確にするか、もしくは、やはり科学的にも技術的にも、無過失であってもその鉱業権者の行為によるものであるというさだかな証明というものがないと、その条文をみだりに発動はできないのだろうと思います。しかし、こういう問題がいろいろ起こってくれば、無過失賠償責任制度というものを立法化さなければならないという状態でありますから、私は、やはり鉱業法のいまの「取り消さなければならない」という、「ならない」ということである限りにおいて、電波法などは、「取り消すことができる」、しかし電波の申請に対しては「与えなければならない」と、こういう珍しい規定になっておりますが、そういうものには、やはり条文を明確にして、鉱業法そのものの改正も必要なのではないかとも考えます。しかしこの問題に対しては、私も法律の専門家でありませんから、必要があれば事務当局をして答弁をさせますし、いまの御質問はひとつ私も十分勉強いたします。
  249. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまこれを改正する必要があるのじゃないかという話ですけれども、変な改正になるとまた大きな後退を意味するわけです。これは理由ははっきりあとで読んでいただけばわかりますけれども、この五十三条だとかあるいは百九条、こうしたところの条文を読んでいただきますと理由ははっきりしております。ですから、現在まで発動されてないということですけれども、今後の問題として、通産大臣はこうした事実関係にあると判断した場合、たとえばイタイイタイ病のような病人が生まれてきたとか、あるいはそれ以外の公害によって、農作物だとかあるいは林業、あるいは生命、身体に関する被害が生じているというような、ここの条文にあらわれているようなことがはっきりすれば、将来の問題として、この五十三条の発動を通産大臣としてさせるという考え方はありますか。
  250. 田中角榮

    田中国務大臣 被害と直接関連性があるということが認められる状態においては、当然、そのような状態を考えてその条文があるわけでございますから、発動せらるべきだと思います。しかし、そういう条文の発動に対しては、すでに鉱業権者が多くの投資をしておったり多数の労働者をかかえておったりといういろいろな問題がありますので、やはりそういうもので法に不備があれば、そういうものも考えなければならないし、その条文の適用に対しては、法制上は法務省等の意見も聞きながら慎重にやらなければならないことは事実でございます。しかし、だれが考えてもというような状態であるにもかかわらず、しかもなお被害者が増大をするような状態において、そのままその条文を死文化するつもりはありません。
  251. 林孝矩

    ○林(孝)委員 公害に関する質問はこれで終わります。次に、あと残された時間で医療制度に関する質問に入りたいと思います。  私が取り上げます問題は、昨年来起こっておりますにせ医師の問題でございます。他の委員会においても論議されたところであります。しかし、それ以後も検挙されているというのが実情です。そこで、公安委員長に、一番最新の医師、歯科医師の検挙数をお伺いしたいと思います。
  252. 中村寅太

    中村国務大臣 にせ医者事犯につきましては、直接生命、健康に危害を及ぼすおそれがありますので、警察としましても重大な関心を持ちまして、厳重に取り締まっておるわけでございますが、本年初めから三月十二日までの間に、医師法違反で三十六件、五十二人、歯科医師法違反で八十二件、百十七人、計百十八件、百六十九人を検挙しておるという実情でございます。
  253. 林孝矩

    ○林(孝)委員 厚生大臣にお伺いしますが、厚生大臣は、このような百十八件、百六十九人というにせ医者がいる。これは検挙された医者の数です。まだ検挙されてない、明らかになってない者もいる可能性もある。また、にせ医者でない医者が悪いことをしている場合もあるわけですから、こういう状態に対してどこまで深刻な認識を持っていらっしゃるか、まずお伺いしたいと思います。
  254. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 このことは、国民医療の面から考えまして、まことに重大な事柄であると考えております。いままで厚生省として、医師の免許証を持っているかいないか、また医師でないのに診療に従事をするというような形態をとっているかいないかということをもう少し十分に監督、監視をすべきであったと、かように考えております。
  255. 林孝矩

    ○林(孝)委員 時間があまりありませんので、結論を急ぎます。  厚生大臣は、こうしたにせ医師が生まれてきた原因、こういう事件が発生した原因をどのように考えられ、どのように解決しようという考えなのか、具体的に答弁願いたいと思います。
  256. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 一つは、僻地等に見られますように、医者が非常に不足をしているということが一つ。いま一つは、条件の悪い病院、診療所の開設者が、十分法規を守らないで、どちらかといえば営利本位に走ったという、この二点であろうと、かように考えます。
  257. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私はほかにまだあると思うのです。申し上げます。たとえば、にせ医者、いわゆる医者でない人が病院に勤務するときに、雇うほうが医者と見分けるのは、どこで見分けるのですか。
  258. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 これは医師の免許証を提出させることだと思います。
  259. 林孝矩

    ○林(孝)委員 厚生大臣にお伺いします。そのとき医師の免許証を提示しなければならないことになっておるのか。その免許証はその本人のものであるというチェックができるものなのかどうかという点はどうでしょう。
  260. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいままでは、その点のチェックが不十分であったと、かように思います。医院の開設者が医者を雇う場合に、免許証を持っているかいないかということを確かめるのは当然だというようなことで、法規上義務づけていない。また、医師を雇うた場合に、免許証をつけて、こういう医者を雇うたという届けをさせていないというような手続上の不備があったと思いますが、これは、医師を少し信頼し過ぎておった、こうも言えるのじゃないか、かように考えます。
  261. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで、それをどういうふうにして解決しようとされているのか、具体的にお答え願いたい。
  262. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 医院や診療所を開設する際には、医師の免許証の写しを添付しなければならないことになっておりますが、医師を雇う場合にはそういうことがございませんので、この点を義務づける必要がある。制度といたしましては欠陥がございまするので、したがって、医師法の施行規則でこれができることになっておりますから、早急にその手続をとりたい、かように考えております。
  263. 林孝矩

    ○林(孝)委員 医師法施行規則を改正して、医師を雇う場合に免許証を確認しなければならない、またその雇われるほうはそれを提示しなければならない、そういう法改正をするということですね。
  264. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 さようでございます。
  265. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで、その免許証の写しでいいことに現在施行規則ではなっております。たとえば開設の届け出、これも施行規則第一条だったと思いますけれども、写しでいい。私もきょうは持ってきておりません、ありますけれども。写しでいいということになりますと、私の疑問としては、何で本物でなければならないとしないのかという疑問が起こってくるわけです。  さらにもう一つの疑問は、その免許証が本人のものである、この確認ができるような方法をとらなければこの問題は解決しないのではないか。たとえば私が医者で、そして死んだとしますね。そうすると免許証は家にあるわけです。その免許証はこれは返さなければならないということになっています。しかし、返さなかった場合に、あるいは私が死んだかどうかということがわからない状況にあって、その免許証はどうなるかということなんです。これはその家に置かれているわけですね。そうしますと、何年たってもその医者が死んでるものか生きてるものかわからない。年に一回の届け出があります。しかしそれも、現在届けられている状況というものは非常に貧弱です。そういう状態を考えますと、その免許証というものが本人のものであるかどうか、あるいはもし免許証を持っている医者が病気だとか、あるいはそういうものでなくなられて、そしてその免許証が返されない場合に、その免許証を返さなければならないという規定だけではなしに、何とかしてその免許証を返させて、医籍から沫消していくという、そういう手続が講じられないものかどうか、その点はいかがでしょうか。
  266. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 非常に技術的な問題でございますから、医務局長からお答えさせます。
  267. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 本人のものであるかどうかということを免許証について確認をする方法というのは実は望ましいと存じますけれども、非常に私はむずかしい問題だというふうに考えております。したがいまして、いまの免許証というものを完全に様式を変えてしまうというようなことでもやりませんと……。しかもそれを更新制にする。おそらく本人であるということを証明するとすれば、写真を添付するということになろうかと思います。しかしこの写真は、ただいまのように、ほかの免許と同じように、一年に一回。大部分の資格はみなそうでございますが、一度与えた免許というものは別に更新をしない。そういうことでございますと、非常に若いときの写真では意味がございませんので、結局更新をするという形の写真添付ということをやらない限りは非常にむずかしいのではないかと思っております。
  268. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私が言いたいことは、そういう写真を添付させること、それから更新させること。にせ医者というものを起こさせないために最善の努力をやるのが行政でしょう。何で遠慮してやらないのですか。そういう姿勢だから起こってくるのじゃないですか。そうじゃないですか。どう違うのですか、運転手が持っている免許証と医者の免許証と同じ資格を与えたことは。片一方は写真を添付して更新している。しかし医者だけ特別だからそういうものをやると失礼だという人がいるわけですか。どうですか、厚生大臣
  269. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいまの点はいろいろと議論もあるところだと思います。おっしゃる意見もごもっともな点もあると思いますので、十分検討をいたしたいと思います。
  270. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私は問題が起こってからもう十分検討する時間があったと思うのです。医者というのは絶対の信頼のもとに患者が通うのです。しかし大阪の事件なんか、四十数人がもうそのにせ医者に見てもらった人の中で死んでおります。その因果関係がわからないということで警察が起訴ができないだけであって、公安委員長報告が来ておると思うのです。免許のない人が見たというカルテによる判断、それしかできないわけですから、はたしてその医者がやったことで死んだことにつながるかということの因果関係の証明ができない。だから起訴できない。しかし、そういうこと自体が疑惑をもたれ、また現実にそれだけの被害が出ておる。これは全然関係ないと言うことはできない。ですから私が言いたいのは、厚生大臣が十分検討するということをもうすでに前の委員会でもおっしゃっておる。そうではなしに、ほんとにこうした問題をなくそうという気持がおありならば、いま起こっている届け出のときの問題だとか、あるいは医者を雇うときのチェックの問題だとか——いま日本に実際何人医者がいるかということすらあいまいじゃないですか。届け出していない医者が医者の約一割いますよ。そういう人たちは一体いまどうしているのですか。  この間は兵庫県の明石署でAという人がにせ医者かどうかという捜査をやった。幸いその人はにせ医者でなかった。その捜査のために厚生省に文書で問い合わしたわけです。文書で来た回答は、その人は医籍が登録されていないという回答だった。あ、これはてっきりにせ医者だということで警察署が動き始めた。ところが、地元の保健所等には登録があって、にせ医者でないということがわかった。十日間の日にちがかかっておるわけです。そしてその理由を聞いたら、医籍が焼失した、そして不明であったという文書の回答が来ております。それはいつかというと、いまから三十年前なんです。三十年前に焼失したままで現在まで来ておるわけです。ですから、一体医療の行政というものはどういうふうになっておるのか。こんなんじゃ第二、第三のこうした事件が起こったときに収拾がつかない。そうなってはならないから、厚生大臣として、検討、検討じゃなしに、先ほどはひとつ法律の改正をするというあれがありましたが、しかしそれだけではなしに、医者の掌握の問題だとか、あるいは本人とのチェックの問題だとか、そういうことについて、具体的にこうするという明確な答弁がなければ、国民はますますそうした不安というものを感じながら生活していかなければならないということです。どうでしょうか。
  271. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいま都道府県知事に命じまして、一斉点検をいたさせております。その結果も見まして、ただいまおっしゃることも考えに入れて検討をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  272. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま一斉点検という話がありました。私もその通達文を持っておりますけれども、そして現在どのような点検がなされておるかということも私知っております。一斉に全部の医者に対して点検はされていませんよ。現場では疑わしいと思われる一部分の医者を対象にしているだけですよ。総点検というものじゃないですよ。大学の教授なんというものは点検されていません。もちろん信頼されているということ、身分が正確だからでしょう。しかし、総点検だとか一斉点検だということばを使う以上は、すべての医者にこの段階で登録をさせ、そして本人と免許証とをチェックしていくという作業がなされるのが一斉点検じゃないですか。ところが、疑わしいと思われている一部分の医者だけ対象としてやられているだけです。うそだと思うなら、厚生大臣みずから医者全部に聞いてごらんなさい。私はまだ点検されていないという医者は何ぼでもおりますよ。それが厚生省のいう一斉点検ですか。
  273. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 各府県におきまして、その状況に応じてやっておることと存じます。したがいまして、その結果を十分見まして、私は、間違いなくやれるもの、かように確信をいたしておるわけでございます。
  274. 林孝矩

    ○林(孝)委員 状況に応じてというのは、一斉点検ではないということを私は言っているわけです。状況に応じる、応じないに関係なしに、この際きちっとしたものにしなければこうした問題が起こってくるということを言っているわけです。状況に応じて自由自在に、そういうものを一斉点検と呼んで、そういうことで厚生大臣は納得しているんですか。
  275. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 どこの府県もやるようにということで医務局長の通牒でやっておりますので、その結果を見たい、かように思います。
  276. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこから出てくる結果というものは、全体の正確な判断ができない結果じゃないですか。厚生大臣、判断が狂うようなことになりますよ、そういうもので見ると。そうして、一斉点検やった結果、もし再びそういうものが起こってきたときに、その一斉点検が問題になってきますよ。実際そういう疑わしいときもありますよ。そういう一斉点検でいいんですか。
  277. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 病院、診療所に従事しております医師の免許証を確認しろ、こういう通知を出したわけでございまして、これはいわゆる一斉点検と称されておると思います。私どもといたしましては、そういうチェックをやれ、こういう指示をいたしたわけでございますが、おそらく先生の御指摘の問題については、県のいろいろな調査の段取りといたしまして、特にこの届け出の問題等も私どもは重視をいたしたものでございますから、そういったような点から先に手をつけているというふうに私どもは判断をいたしております。
  278. 林孝矩

    ○林(孝)委員 時間的にその一斉点検の報告があるのは三月二十日ごろだったでしょう。きょうは十六日じゃないですか。現在の時点でまだ点検されていない人がいるというのですよ。それでも一斉点検ですか。
  279. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 私どもはこの通牒の中では、いつまでということは言っておりませんで、すみやかにということばを使って、なるべく早くということでございます。大体二、三カ月中に完了するということを、それらの会議を通じましては申し上げてございますので、私どもといたしましては、そういう時期に都道府県の点検が終わるということを期待しております。
  280. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私は最後に、時間が相当過ぎましたので、厚生大臣一つだけ答弁をお願いしたいことは、いま議論しておりますように、この医者というものに対する信頼が非常に大きい、また相手は患者です。生命に関係のある問題です。したがって、こうしたにせ医者が一人であっても存在することは私は重大問題だと思うわけです。ところが、これだけの件数が出てきておる。そういうものに対して、現在の厚生省の行なわれておることは、あまりにもざるのように幾らでもにせ医者が出てくる条件がある。先ほどから申し上げました本人と免許証とのチェック、また写しと本物との問題、あるいはなくなった医者の免許証のその後の処置、あるいは一斉点検におけるこのようなずさんな点検のしかた、こういうことがいまここで現実問題として明らかになっておるわけです。厚生大臣は、こうした幾つもの問題に対して、最後に、ほんとうにこういう問題を解決するという決意に立ってやるならば、この一つ一つの問題に対して、厚生大臣みずからが問題を解決するという姿勢で答弁していただきたいと思うのです。
  281. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいまの御意見のように、私の責任としてこの問題を将来に解決を全くいたしたい、かように考えます。
  282. 林孝矩

    ○林(孝)委員 終わります。
  283. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて林君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十七日午前十時より委員会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十五分散会