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1972-03-07 第68回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月七日(火曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 大坪 保雄君 理事 佐々木義武君    理事 田中 龍夫君 理事 二階堂 進君    理事 細田 吉藏君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 鈴切 康雄君    理事 小平  忠君       足立 篤郎君    相川 勝六君       愛知 揆一君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    植木庚子郎君       小川 半次君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    笹山茂太郎君       正示啓次郎君    田中 正巳君       中野 四郎君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    橋本龍太郎君       福田  一君    松浦周太郎君       松野 頼三君    森田重次郎君       安宅 常彦君    小林  進君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       原   茂君    細谷 治嘉君       大久保直彦君    多田 時子君       林  孝矩君    正木 良明君       吉田 之久君    和田 春生君       谷口善太郎君    東中 光雄君       不破 哲三君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 塚原 俊郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         (北海道開発庁         長官)     渡海元三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長内閣総         理大臣官房審議         室長      小田村四郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制次長  吉國 一郎君         総理府恩給局長 平川 幸藏君         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         公正取引委員会         事務局取引部長 熊田淳一郎君         防衛政務次官  野呂 恭一君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      江藤 淳雄君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 黒部  穰君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁施設         部長      薄田  浩君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         計画局長    矢野 智雄君         経済企画庁総合         開発局長    岡部  保君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省理財局長 橋口  收君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省薬務局長 武藤き一郎君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         厚生省援護局長 中村 一成君         農林大臣官房長 中野 和仁君         林野庁長官   福田 省一君         通商産業省企業         局長      本田 早苗君         通商産業省重工         業局長     矢島 嗣郎君         通商産業省繊維         雑貨局長    佐々木 敏君         郵政省郵務局長 溝呂木 繁君         建設大臣官房長 大津留 温君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省都市局長 吉兼 三郎君         自治省行政局長 宮澤  弘君         自治省財政局長 鎌田 要人君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 三月七日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     吉田 之久君   谷口善太郎君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     谷口善太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  昭和四十七年度一般会計予算昭和四十七年度特別会計予算昭和四十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。阪上安太郎君。
  3. 阪上安太郎

    阪上委員 きょう私は、公共投資拡大、これは非常に今度は大きくなっておりますが、それと土地住宅あるいは環境政策、こういったものの転換の時期が来ているんじゃないか、このように私自身考えますので、毎予算委員会ごと土地問題等取り上げておりますけれども、これが一向に解決いたしません。そこでまあ、古くて新しい問題、こういうような観点から一ぺん質問をしていきたいと思います。  そこで最初に、わが国土地問題、これについて少しく政府の見解を伺っておきたいと思うのであります。  よく土地問題、土地問題とこういうふうにいいますけれども、土地問題という場合の土地、これは一体どういうふうに政府考えておるか、こういうことであります。わが国は三十七万平方キロの土地資源を持っておりますが、その中で資源配分としてあるいは土地資源利用という立場に立って、その場合の土地とは一体何か、これをはっきり認識しておりませんと、一向土地問題の解決に入っていかない、このように考えます。  そこで、えらい初歩的な質問でおそれ入りますが、これはひとつ建設大臣からお答え願いたいと思います。  土地資源配分あるいは土地利用という観点に立って、その場合の土地とは一体何だ、政府はどういうふうにこれを認識しておられるか、これをまず伺いたいと思います。
  4. 西村英一

    西村国務大臣 非常にむずかしい問題でございますが、結局、土地はわれわれの生活上絶対に必要なものでございます。したがいまして、土地といってもその利用はいろいろな方面にあるわけでございます。たとえば、広くいえば、市街ならば市街地農地ならば農地。したがって、国民生活をする上におきましては、これを有効に使わなければならぬ、かように考えておるのでございまして、これは売買はされていますけれども、ほかの商品とは違います。これはもう阪上君も十分御承知のことでございます。したがって、商品としては特例な商品、定価がありません。したがって、もうわれわれとしては、これを公共的にやはり考えなければならぬ。公的に、国家の財産として、国家資源として、水と同じでございます国家資源として考えなければならぬというふうに私は認識しておりますから、これを有効に国民生活のために使うというふうに考えておる次第でございます。
  5. 阪上安太郎

    阪上委員 私がお伺いしているのは、そういうことはよくわかるのでございます。いままでもやはりそういった点で質問が出、また政府も御答弁なさっているわけでありますが、私はいま言いたいのは、土地土地というけれども、一体その土地は何か、どこでやはり土地問題が起こっているのかということなんであります。  いかがでしょうか、経済企画庁長官。あなたは、いま起こっている土地問題という、その土地とは一体何か、どういうふうに認識されておるか、こういうことを一ぺん企画庁長官からも伺っておきたいと思います。
  6. 木村俊夫

    木村国務大臣 基本的にはいま建設大臣からお答えしたとおりと思いますが、わが国の限られた土地というものの利用面におきまして、これが経済政策の運営に非常に大きい影響がございます。また国民生活福祉政策の上にも、大きな見地から申しまして、どうしても土地利用を今後計画的に、また公共的にこれを考えていかなければならぬというところに土地問題の発生があったものと考えております。
  7. 阪上安太郎

    阪上委員 どうもかゆいところに手が届きません。私は、土地問題の土地とは、現在のところこれは宅地問題じゃないか、こういうふうに実は考えるわけであります。御案内のように、わが国の国土の所有別土地利用形態というものは、大きく分けて国有地あるいは民有地あるいは公有地その他というようなことになっておりまして、その中で、山林とか平野とかいうような区分のしかたもあるだろうと思うのでありますが、いま起こっている土地問題というのは、巷間いわれているように、わが国人口密度、それから土地資源が少ない、通俗的にいうと、日本は領土が狭い、そういうところから宅地が非常に不足しておるんだというような説がございますけれども、私はやはりそれは神話ではないか、こういうように思うわけであります。決してそういうことにはないと思うのであります。  この場合、われわれが土地問題を解決していく場合に、いま問題となっている土地というものはやはり宅地じゃないか。宅地とはこれは住宅地であり、同時に工場用地等も含まれている、そういった宅地、これがわが国土地資源の中でわずかに一・八三%しかない、ここにやはり問題があるのじゃないかと思います。したがって、われわれが考えなければならぬのは、民間が六〇・二%ぐらい持っておりますが、そのうちの宅地、これがやはり土地問題のいま問題とされているところではないかと思うのでありまして、この点の認識をはっきり持っておりませんと、現在のわが国における土地問題というものの解決策というものは出てこない、こういうふうに私は考えるのであります。この辺のところ、総理はどうお考えになっておるか。これをはっきり、徹底した考え方を持っていただかぬとどうにもならぬと思いますので、重ねて総理にお伺いするわけであります。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一口に土地問題といわれますが、ただいま阪上君が御指摘のように、すでに農地改革は行なわれた。林野の問題については、自然保護観点からいろいろの要望は出ているけれども、これはいますぐ触れる問題でもない。工場用地等についてはこれまたそれぞれの企業が確保している。そうすると、あと残っているのは、ただいま御指摘のように住宅土地の問題だ、しかもこの住宅土地の問題がやはり偏在するというか、どこかにかたまる、こういうようなところに非常に問題の解決を要するものがあるんだ、かような御指摘であります。私もやはり、そういう点がこれから考えていかなければならないのではないだろうか。同じような市街地における耕地、いわゆる宅地並み一つの線を引くとか線引きの問題がございますけれども、しかし、それにしてもやはり所有者等が、土地売買業者不動産業者の手に移る、そういうようなところにいろいろ問題を起こしておる、かような御指摘があったと、かように私思いますが、そういうことはこれから先解決すべき問題だろう、かように思います。
  9. 阪上安太郎

    阪上委員 そこで、もう少し具体的に、いま起こっている土地問題、こういうことでお伺いいたしたいと思いますが、その一つは、やはり公共用地取得難、それと公共事業拡大、まあ言わんとするところは、四十七年度予算でもって思い切って公共事業公共投資拡大されておりますが、一方において、四十七年度予算、その中に組まれている公共事業、非常に大きく伸びた公共事業を遂行するために、在来の経過から見てますます公共用地取得という問題が問題となり、非常に困難な状態に入っていくんじゃないか、これはもう私がこまごま申し上げる必要はないと存じます。  そこで、建設省にお伺いいたしますが、社会経済発展計画あるいはそれに伴う各年度あるいは長期計画がございます。この長期計画で、建設省は自分のところの所管としてどれだけの宅地が必要になってくるのか、どれだけの面積が必要であるかというような長期見通しを当然お持ちになっていることと考えますが、どのくらいの土地需要予測をしておられるか、これをひとつ伺いたいと思います。
  10. 西村英一

    西村国務大臣 宅地が最も重要でございます。したがって、大きく言えば、日本は狭い狭いというけれども、その狭いということも、見方にもよりましょうが、まだ宅地として使えるところが十分あるわけです。ただ狭いというのは、人口産業が集中しておるのでございますから、大きい目からいきますと、建設省で新高速道路をつくっておるとか、あるいは新幹線を運輸省でつくるとかいうことも、やはり宅地長期にわたって、そこに工場ができ、その人口が移るというようなところをふやしたいためにやっておるわけでございます。それで、まあ大局的にそうやっておるわけでございますが、いま建設省が第二期の住宅建設の五カ年計画を消化するためにどれだけの土地が要るかということは、それは十分調べております。私、数字は七万九千ヘクタールではなかったかと思いますが、十分調べております。  したがいまして、その長期計画に基づいて、それから公共事業等用地関係ですが、これは、公共事業は始まってすぐ用地取得できるものではございません。やはり一年ないし二年ぐらいな用地の先取りをするように心がけてやっておるわけでございます。四十七年度の予算をこなすにしても、四十七年度で全部用地が買えるものではございませんから、いま若干のストックを持ってそうして進んでおるわけでございます。また、来年の公共事業を消化する用地もことし先行的に取得する、かような方法考えてやっておる次第でございます。
  11. 阪上安太郎

    阪上委員 大臣ですからこまかい数字ははっきりと握っておられないとも思います。これはやむを得ぬことだと思いますが、ここで事務当局に聞くことになると思いますけれども、時間の関係から省略いたします。  大体七千九百ヘクタール——何か少ないように私は思うのであります。それはおそらく四十七年度におけるところの建設省所管土地需要予測に基づくものであろう、このように考えます。大体四十七年度の公共事業のうち建設者所管約三兆二千億円、うち大体七千七百億円が用地費になっております。これに公団公社等を加えますると四兆円をこすだろうと思うのでありますが、この場合における土地需要予測というものをいま言われたのではないかと思います。  私はそこで聞きたいのは、この長期計画をお持ちなんでありますから、この長期計画を遂行するために必要な土地、これはどのくらのものかということを実は伺っておるわけであります。そして、これは大臣では無理でありますので、事務当局からでも答えていただきたい、このように思います。
  12. 西村英一

    西村国務大臣 第二期五カ年計画住宅に必要な土地は、いまちょっと数字が違っておるから申し上げますが、五カ年計画の必要な土地は七万五千ヘクタールでございます。私は七万九千と言いましたが、七万五千ヘクタールになっております。
  13. 阪上安太郎

    阪上委員 私がいま申し上げておるのは、宅地と言ったからそういうふうにおとりになったんだと思いますが、宅地工場用地等も含まれておりまして、非常に広範なものであります。治山治水関係から住宅建設第二次の五カ年計画、あるいは港湾等計画、いろいろな長期計画があるわけであります。一切含めてどのくらいかということを聞いておるのです。
  14. 西村英一

    西村国務大臣 そういう用地は、公共事業建設省ばかりじゃございません。港湾その他を入れますと、私はちょっと記憶をいたしておりませんが、建設者だけでは六十年までに二十万ヘクタール所要する、こういうことになっております。
  15. 阪上安太郎

    阪上委員 同じ問題で自治大臣にお伺いいたしますが、地方公共団体あるいは地方公社公団、これらのいろいろな長期計画等もお持ちでありますけれども、ことに最近では公有地拡大の問題が出てきておりますが、一体、当面これらの地方公共団体あるいは地方公社公団が所要の土地需要予測、どれだけ要るか、どんなものをお持ちでございますか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  16. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 自治省といたしましては、今後の長期ビジョンといたしまして、大体四十五年に試算したのを私詳細に見せていただいておるのでございますが、四十五年から五十五年まで十一年間に大体百十兆円の公共投資建設投資を必要とする。これは経済企画庁なりあるいは各省なりが立てておられる五カ年計画から、今後のいろいろな経済成長の仮定をおきましてのもちろん計画でございますが、大体百十兆円を見込まれるのではなかろうか、かように考えております。その中で従来までの土地に要する費用が大体二割、二〇%と見込んでよいのではないかと考え、二十二兆円は必要である、かように考えております。  いま申されました面積の分でございますが、私さだかではございませんが、四十七年から五十一年までは大体十一兆円余りの金が土地取得に対して必要でないか、その土地の必要とする面積は大体三十万ヘクタール、このような概算をいたしております。
  17. 阪上安太郎

    阪上委員 そこで、建設省所管あるいは地方公共団体及び地方公社公団、それの土地需要予測といいますか、それが合わせて五十万ヘクタール、こう見ていいんですか。そこのところどうでしょうか、どちらからでもいいですが……。まあ、お答え願うほどのこともないでしょう、さっきおっしゃったんですから。  そこで、この五十万ヘクタールの土地取得するために、自治省のほうではいま百十兆円と言われましたが、建設省ではどのくらい要るのでありますか。
  18. 西村英一

    西村国務大臣 ちょっと事務当局にお答えいたさせます。
  19. 大津留温

    大津留政府委員 先ほど大臣がお答えしました二十万ヘクタールの土地、この代金約七兆円と計算しております。
  20. 阪上安太郎

    阪上委員 そこで、この七兆円二十万ヘクタール、それから十一兆円三十万ヘクタール、これが長期計画の期間内に取得されなければならないわけでありますが、たいへん大きな金でありますし、大きな面積だと思いますが、これの取得財源見通し建設省並び自治省ではどういうふうにお考えになっておりますか。どういうふうにしてこの金を調達するか、こういうことなんであります。質問の時間を省くためにも、そして四十七年度の公共投資のこのスピードで、それとうまく合致するかどうかというようなところまで、ひとつお答え願いたいと思います。
  21. 西村英一

    西村国務大臣 その資金をどうするか。その資金としては、これは先行取得するためには、いろいろ取得のための事業をやるのですから、その事業それ自身事業一環として刑地質を見ておるわけです。それを先行取得するにはどうするかというようなことになりますると、たとえばいま私のほうでやっておるのは土地開発基金都市開発資金があります。また地方公共団体がやっておるのは先行取得債もありましょうし、いろいろな方法でやっておるわけですが、資金それ自身事業一環として計上しておるわけでございまするから、大部分の現在やっておるのはその事業用地費を見ておりますから、その資金でもって購入してまいるわけでございまして、六十年に要る用地を全部いま買っておくというわけにはまいらないのでございます。
  22. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 これらの土地取得のための財源でございますが、大体現在におきましても、四十六年度で政府財政投融資あるいは民間資金等を含めまして一兆二千億くらいのものを地方公共団体都市開発のための土地取得のために利用いたしております。私、先ほど申しました百十兆円の平均は三十二兆円になりまして、大体年閥二兆円くらいになるのじゃなかろうかと思います。四十七年度は公共投資がふえております関係で、大体四十七年度の計画でも二兆円近くになるのじゃないかと思っております。財政投融資の額は私、さだかに覚えておりませんが、従来からのペースに合わせまして民間資金の活用をはかることによりまして、これらの資金の充実を期していきたい、このように考えております。
  23. 阪上安太郎

    阪上委員 一応それはちょっとよそへおきまして、その場合、地価値上がり、暴騰、高騰、これを一体どこのベース考えておられるか。大ざっぱにはそういうことは言えますけれども、地価が現在のように抑制もされないでどんどん依然として値上がりを続けておるという中で、いま一応それらの長期計画の中における事業の大体二〇%程度が土地代に食われておるというところから、そういう計算をお出しになっているのでありますけれども、はたしてそういったことでやっていくことができるかどうか。地価を一体どこで押えておられるか、四十年ベースか四十五年ベースか何か知りませんけれども、そういったことにつきましてここで問題になってくるのは、そういった地価高騰というものを抑制しないでもってこの問題は解決しないし、何か空理空論になってしまうのじゃないかと私は思います。そんなことがいままでいろいろと問題になってきておるのじゃないかと思うのであります。これもやはり土地問題の一つでありますが、地価抑制に対して一体どんな手を打つか、こういうことがやはり大きな問題であろうと思います。大きな、それだけの五十万ヘクタールの土地取得していかなければならぬというときに地価がどんどん値上がりしている。これじゃ幾ら計画を立てても焼け石に水だと私は思うのでありまして、地価抑制に対してもっと政府は真剣に取り組んでいかなければいけないのじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。  そこで、地価がこのように依然として高騰しておる。わが国経済をながめてみますると、やはり経済が非常に停とんして、そして最近では不況、こういった不況の中で地価が依然として高騰しておるということにつきまして、総理大臣にお伺いしたほうがいいでしょうが、いままで地価対策というものは進められ、顕著なものとしては地価公示制度というようなものを発足させてきておりますけれども、あまり大きな効果をもたらしておるとは私は思いません。そこで、地価高騰の原因というものをもう一ぺんここで考え直してみなければいかぬと思いますが、この点につきまして総理はどうお考えになっておるか。ついでに、原因がわかったならば、これをどういうふうに抑制していくのかというようなことについて政府考え方をひとつ伺いたいと思います。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 土地の問題はたいへん投機の対象になりやすいものでございます。私は、投機の対象になるというところに地価がどんどん上がる、そういう問題がある。もちろん、そのもとにおきましては限度のあるものだ、そういうところがございますが、同時に、それが投機の対象になる、こういうところに問題があると思います。  もう一つ、他の方面から申しますならば、公共事業というものがどんどん土地を必要とする。道路にしろあるいは飛行場にしろ、これから住宅ばかりではございません、いろいろ各方面で公共的な施設として土地を必要とします。こういう事業についての理解が各方面でもっと積極的にあるならば、そういうものもよしそれが投機の対象になっても、そこらにブレーキをかける筋のものがあるのじゃないだろうか、私はさようなことも思いますが、土地の問題は、簡単に一口には申し上げかねますけれども、非常に複雑なものであり、そこらに人間の利益追求の欲望とこれはからみ合っておる、そういうものじゃないだろうか、かように私は思います。  したがって、これが解決ということは、基本的にはあるいはときに国家の権力をもって、公権をもってする、いわゆる強制買収、公用徴収その他の方法も採用しなければならない、こういうものだろうと思いますが、それにしても、とにかく投機の対象になりやすいために、そういう場合の地価を適正に定めることがまことに困難だ、非常にむずかしい問題だ、かように思います。しかし、これをむずかしいからといってそのままにしておくわけにはいかない、これは御指摘のとおりであります。
  25. 阪上安太郎

    阪上委員 きのうの話ではありませんが、大ワクのところではそういうことだと私は思いますが、したがって、土地が元来投機の対象になるべきものでない、それが投機の対象になっている、そこに大きな原因があると思います。  一体その投機をやっているのはだれでしょうか、これをひとつ考えてみる必要があると思います。私はきょうは、総理はこの間うちからくたびれられておるので、あまり総理の答弁を求めたくない。そこで、私の手元で調べましたところ、地価高騰の原因をなしているのはやはり企業土地の買いあさりだ、こういうことが言えると思うのであります。二月三日の和光証券の調査部が発表した数字によりますと、東京証券取引所に上場している千二百九十三社の所有土地の実態が出ておりますが、上場会社の所有土地は合計して四千六百七十五平方キロ、これは全国の国土面積の一・二六%に相当する。そう考えてまいりますと、これは全国の市街地面積とほぼ同じ土地企業は持っている、こういうことになるわけであります。しかもこの調査には販売用土地とか建設業の投資不動産、さらには株式市場に上場していない企業や子会社の所有土地というものは含まれていない。もしこれらを含めるとすると、企業の所有土地というものはもっともっと大きなものになってしまう。こういった企業土地買いあさりというやつが、ぼくは土地高騰のたいへん大きな原因をなしている。やはりここへメスを入れないといけないのじゃないか。むずかしい問題でありましょうけれども、これにメスを入れないといけない。そうしないと、いままでのように口頭禅で終わってしまう。どうにもこうにも土地高騰を押えることはできない、こういうことになるのじゃないか、このように思いますが、総理、どうお考えになりますか。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 企業にもいろいろありますが、いわゆる不動産業者、これらについてそれぞれ適正な規模に、踏みはずさないように監督、指導しておると思います。  同時にまた、事業会社自身がいろいろ計画を立てて、将来の計画に備えるために先取りしている、こういうこともあるだろうと思います。私はそういうことも考えながら、国の公共事業に対する手当てが非常におくれている、地方もおくれている。そういうところでやはりこれは競合しておる。それかといって、国や地方が公共投資をする、そのために必要なる土地だといってこれを買いあさるようなことがあると、一そうただいまの民間業者の思惑をあおることにもなりますから、これもなかなかむずかしいことだ、そう簡単なものではない、かように私は思っております。しかし、とにかくいままでのところ、常時その姿勢をこわさないように、絶えず一定のワクにとどめるように指導することが最も望ましいことではないか、かように私は思っております。
  27. 阪上安太郎

    阪上委員 この地価高騰は、これはもう私から言うまでもなく、物価と直接影響を持つ問題でもある。したがって、物価の上昇と無関係にこれがあるわけじゃございません。これがどのくらい物価上昇に寄与しているかということについては別の問題といたしまして、私、きょうここで考えたいことは、企業が地主から土地を買う。当然現金は、どういう形で入りますか知りませんけれども、これは土地持ちのところへ入っていく、地主のところへ入っていく。その金が今度は銀行へ預金される。一方企業は、その買い取った土地を担保にして銀行から金を借りている。銀行は別段特別の資金を持たなくても、ぐるぐるぐるぐる何回でも繰り返すことができる。これは今日のわが国のインフレの一つの要素にもなっているのではないか、私はこう考えるわけであります。こういった無制限に土地を買い占めていくことができるというこのオルガニゼーション、これに対して何か手を打たないと、総理、これはいままでのようなやり方ではだめだと私は思うのです。大蔵大臣、あなたの考えで何かいい知恵はありませんか。
  28. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 企業がただ土地を買うための金融というものは、できるだけ金融機関には抑制するような方法で指導はしていますが、御承知のように、いま非常に企業資金に緩慢なときになっておりますので、したがって、銀行から借りないで土地を買うということも、わりあいにいままでよりはやりやすいために、どうしても土地所有というものがふえていくという事実は、どうにも事実上これは避けられない傾向になっておることは事実でございます。
  29. 阪上安太郎

    阪上委員 いま何か手を打っているとおっしゃいましたが、何か規制をしておられるという意味だと思うのですが、どう規制しておられるのですか。
  30. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 行政指導で、そういうことはできるだけ金融はしないようにという指導を銀行にしております。金融機関にしております。
  31. 阪上安太郎

    阪上委員 それが守られておりますか。
  32. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 相当守られているはずでございますが、いま申しましたように、借りなくとも買う余力というものが各企業に出てきているというようなことから、なかなかこれが防げないという−のが実情でございます。
  33. 阪上安太郎

    阪上委員 そこで、大体土地高騰の元凶というのはだんだんとわかってきたわけであります。そればかりではございません。これは私もよく了解しております。しかし、そこに大きな地価抑制対策上のネックがあるということは、やはりもう少し真剣に考えていいのではないか。それに対する規制というものを考えるべきだと私は思います。こういうような状態で進んでまいりますと、先ほど建設大臣がお答えになり、自治大臣がお答えになったけれども、土地の先行取得ばかりでなく、将来、計画を実現する段階において、これは大きな隘路になってくると思うのでありまして、そのためには相当思い切って——困難な問題でありましょうけれども、公共用地取得ということについて、いままでのようなやり方じゃなくして、何かもっと思い切ったやり方をする必要があるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。  そこで、お伺いしたいのは、何か最近建設省自治省の間で、公有土地拡大についての考え方が大体まとまってきたようだということであれますが、きわめて簡単に、これは自治大臣のほうから、その発想の概要をちょっとここで説明してみてください。
  34. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 今回の国会で御審議をお願いするようにいたしております公有地拡大の推進に関する法案は、一つの柱は公共団体の土地の先買い権でございます。市街化区域の中で、条件によりますけれども、一定の規模の土地以上のものを売買するときには、まず都道府県知事に申し出まして、地方公共団体がこの土地を買い取る意思がないかどうかということを確かめた上でないと譲渡することができない、このような先買い権を与えることにいたしております。  なお第二といたしまして、地方公共団体だけではいろいろ制約がございますので、先行取得のために現在、土地開発公社を全国で約八百、地方公共団体がつくっておりますが、これはいずれも現在私法上の団体でございまして、公法上の特別の権利はございませんが、これを公法人化いたしますことによって、より積極的な活動が行なわれるようにしたい。と同時に、税法上その他の法規上の便益をも与えるようにいたしたいと思います。なお、これに対する資金でございますが、従来ございます公益企業金融公庫等の資金の活用、あるいは一番地方公共団体が密接に関係いたします土地取得の対象となる農地、その農地を買うための資金といたしまして、現在は水田債を行なっておりますけれども、積極的に農林関係系統機関の融資も道が開けるようにいたすことによりまして、資金の充実を期してまいりたい。資金の充実、機関の充実、並びに先買い権、この三本を柱といたしまして公有土地拡大をはかりたいと、かように考えております。
  35. 阪上安太郎

    阪上委員 少し先行きの話になりますけれども、私はいまのような行き方はけっこうだと思います。しかし、これにもやはり問題が伴ってくる、このように考えるわけでありまして、大体いまの構想を伺いますと、都市計画のまだ確定してないもの、それに対して先買い権を導入するんだ、資金の面では都市開発金融公庫ですか、これをつくるんだ、こういうことだと思います。そうしていままでの地方開発公社ですか、これらはやはり統合していくんだというような考え方だと思いますが、そこで一つ問題になるのは、やはりこの際、一手買い上げ機関というものをつくる必要があるんじゃないか。これは過般のこの予算委員会の冒頭で総理がやはりそういったことについて、おれは賛成だというようなことを言っておられるのですが、公的な一手買い上げ機関をその構想の中ではつくる考え方を持っておるのかどうか。金融公庫は、これは金融するだけでありますから、そういった機関を設けなければこれはだめじゃないかという考え方が一つあります。この点についてはどうでしょうか。
  36. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 一手買い上げ機関と申しますか、地方公共団体が自分自身予算を置きまして買い上げするというときには限界があろうと思いますので、現在さような私的につくられております土地開発公社なるものを公法人にいたしまして、この機関をして公共団体のための先行土地取得を行なわしたいと、かように考えております。  なお、土地開発公社は現在県並びに市あるいは数カ町村によりましてのやつでやっておりますが、これら県の分は、いわゆる阪上委員指摘の一手買い取り機関という機能を発揮するかもわかりませんが、各市がそれぞれ行ないます公社というものが、それに対してどういうふうな姿になるかという点はございますが、この市町村における開発公社の設立ということにつきましては、県の意向を十分取り入れまして、これの県との連絡認可と申しますか、県と連絡がとれたものだけ設立を認めていくといった形によりまして、その間の調整をとってまいりたい、かように考えておる次第でございます。  なお、いま阪上委員のお話の中にございました土地開発金融公庫でございますが。私、さきの委員会のときに阪上委員の御質問に答えまして、そのような構想を申し述べたのでございますが、残念ながらこの法案の中にまでにはこの実現を見るに至りませんでしたが、それにかわりまして、現在ございます公営企業金融公庫によりまして、新しくできます土地開発公社にも融資の道を開くというふうな姿によって四十七年度は発足してまいりたい、かようにいたしておる次第でございますので、訂正させていただきます。
  37. 阪上安太郎

    阪上委員 渡海さん、それはだれが反対したのですか。この前も、たしか福田大蔵大臣のときでなかったかと思いますが、私もそういう前向きの進言をしたんでありますけれども、いや、地方開発公社等があり、それはそれで十分だと、当時の大蔵大臣はこうおっしゃって、これが一向前へ進まなかった。今度はやはり未確定用地の先買いという点は一歩前進したと思いますけれども、その辺が進んでいないというようなことでは私はだめだと思う。本来ならば、毎年三十万ヘクタール獲得していくためには、少なくとも一兆円くらいの金が必要でありましょう。それを開発公庫もつくらぬでやっていこうなんという、甘い考えでは、これは私はだめだと思う。福田さんもだいぶ疲れておられるから、これも質問いたしませんが、そこはもう少し前向きにおやりにならぬと、それはだめですよ、そんなことをやっておっちゃ。地方公共団体がかってにどんどんどんどん土地を買う。苦労して買っているんでしょう。国鉄も、それからその他の公社、公団も自由気ままにかってに土地を買いあさっていく。そんなことをやっておって、一体地価抑制などというようなことは及びもつかない。それが原因になって、また今度は公共用地取得も困難になっていく。こんな悪循環をずっと繰り返してきている、こういうことであります。この点につきましては、またいずれ機会を得まして、私はそういった点について追及をしていきたいと思うけれども、せっかく建設省自治省が仲よくなったのに、肝心かなめのところでくずれているようなことでは、これは何の役にも立たぬ、こういうふうに思うわけであります。  それから一手買い上げ機関というものは、あくまでも金融機関じゃないのですから、たとえばいまの土地収用等をやっていきますところの委員会であるとかそういったものも含めて頭の中で一ぺん、あるいは公社、公団等も含めてやっていかなければならぬ、そういった一手買い上げ機関をつくっていくぐらいの少し前向きのものでなければ、この土地問題は解決しない、私はこういうふうに思うわけであります。  そこで、いま一つ伺っておきますが、未確定用地に対して先買い権を持たすということについて、これはいわゆる大きな規制だと思いますが、何か問題は起こりませんか。起こらないとすれば、憲法との解釈で、どう解釈しておられるか、この点を明らかにしておいてもらいたいと思う。
  38. 西村英一

    西村国務大臣 事業が確定しなくても、その土地が将来公共の都市計画上どうしても必要だというようなことになれば、それを先買いをさせようというのですから、いろいろな土地について条件がついておるわけでございます。また、あまり小さな土地はだめでございますから、いまは千平米と踏んでおります。しかし、それと憲法の関係はどうかといいますが、それはあくまで相談ずくでいくわけでございます。直ちにそれを商談ができなくても取り上げようというものじゃございません。あくまでもひとつ売ってもらいたい、こういう相談でいくわけでございますから、憲法との関係はございません。
  39. 阪上安太郎

    阪上委員 その辺で憲法との関係がないというようななまぬるい、後退したような考え方じゃいけないと私は思うのです。もっともっと積極的に憲法を解釈して、そして進めていかなければならぬ問題があると思います。それじゃわかりましたが、たとえば私は土地を売りませんと言ったらどうするのですか、協議ができなければどうするのです。
  40. 西村英一

    西村国務大臣 今回提出しましたこの法律は、あるいは強制力はないからなまぬるいじゃないかという批判があるわけでございます。そは十分承知をいたしております。しかし、これを一歩進めて、とにかく三週間の凍結をして売らなくても買うよということになれば、直ちに収用法の関係になりますから、そういうことはちょっとこの段階ではできないと思っております。しかし、とにかく事業がきまらなくても将来有用に、公共に使うということでひとつ相談をしてくれ、それを先買いをするんだ、またこれを収用にして買い上げるということでございますると、強制権を持たせれば、一方、今度はやはりこちらが買わなければならぬ義務もあるわけでございます。したがいまして、それは非常に一時にたくさんの資金を要することでございまするから、一歩前進で、この法律の運用を見て漸次考えていきたいということで、いまあなたがおっしゃいましたように、どうも強制力がないから、なまぬるいじゃないかという批判は十分受けるような気持ちもいたすのでございますが、一歩前進ということで、ぜひこの法律はお願いを申し上げたいのでございます。
  41. 阪上安太郎

    阪上委員 そういう考え方のところにとどまっておる。土地に対して相当強い規制をやるということについては、憲法上もやはり疑義があるだろうというようなところから、そこでとどまっておると私は思うのです。だから、憲法解釈を聞いておるわけなんですよ。したがって、憲法の二十九条ですか、財産権は侵しちゃならぬ。これははっきりそういい切っております。しかし、その内容については法律でこれを定める。そして第三項で、公共の用に供するものについては正当な補償のもとにこれを取得することができるというようになっておりまして、あまりこまかいことを憲法はいってないのですから、もう少し突き進んだ考え方で、公共用地なんですから、公共の用に用いることはきまり切ったことだ。だからそこのところを、もっと拡大解釈せよとは言わぬが、やはり憲法の精神というものをもっと理解して踏み切っていく必要があるんじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。いまのような御答弁だと、結局アブハチとらずになって何にも得られない。そこで、ほかの法律でもってこれを縛っていくんだというようなことで、市街化区域内の農地、ああいったものにつきましても、これは地方税法との関連もありますけれども、実情に沿わないような形も出てきている。そういったものでもって横合いから縛っていこうというような不当な考え方も出てくる、こういうことでないかと私は思うのであります。もっともっとやはりそこのところは踏み切ってもらわなければならぬと思います。内閣総理大臣は、こういう問題についてどうお考えになりますか。
  42. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 多分に法律問題に関連してのお尋ねでございましたので、私、一応お答え申し上げたいと思います。  むろん土地の問題については、憲法の規定からいえば御指摘のとおりに憲法二十九条の一項、三項、三項をおあげになりましたが、まさにそのとおりでございまして、特に憲法の解釈態度としては、昔の財産権、所有権絶対性というような考え方がだいぶ変わってまいったことは確かにそうでありまして、憲法の上にも、財産権の内容は、公共の福祉に適合するように法律に定める。また三項は、御指摘のように公共のために用いることができるということがありますことからもわかりますように、社会から信託されたものであるというような傾向が強くなっていることは事実でございます。ただしかし、そうはいうものの実際の具体的な立法に当たりますと、公共と私有財産権の保障との調和点、これは全くむずかしいものでございまして、私どもは立案の態度としては、仰せのような態度で臨んでいかぬことには土地問題の解決ということはできてないのではないか、そういう認識は十分に持っておりますが、そうかといって、やはり法律で強制的に人の財産を取り上げることになりますと、そこは個々の問題になりますと慎重な考慮が必要でございますが、大体の姿勢としてはお尋ねのとおりであろうと考えております。
  43. 阪上安太郎

    阪上委員 法制局長官の在来のいろいろな問題に対する見解と違って、この点については非常に前向きであると私は思っております。そこで、どうかひとつ個人の福祉を越えた社会の福祉、公共、こういったものをもっともっと積極的に解釈する態度でこの土地問題と取り組んでいただきたい。これなくちゃ、とてもじゃないが、この問題は解決しないと私は思っております。憲法もそれ自体、単なる在来の私有財産というものから一歩前進しているように私も考えておるのであって、それがやはりこの新憲法の特徴ではないか、かように思いますので、そういった点はひとつ積極的に解釈して進めてもらいたい、このように思います。  次に、国有地が相当大きなものを持っておりますが、これに対する高度利用というような点がやはりいま問題になってきております。たとえばこの東京都内の中で、非常に地価も高い、坪何百万とするようなもの、あるいは何十万とするようなものが、公務員の住宅その他で相当な土地を持っておるわけであります。それが依然として昔どおり——私も現に見ております。現地も二、三見ておりますが、平家建て住宅でもって、ちっとも高度利用していない。せめて八階建てなり十階建てのそういう住宅をつくっていけば私はいいと思いますけれども、どうしたかげんか、これが一向に高度利用されていないという面がございます。家賃の問題等もございますが、それは抜きにいたしましょう。なぜもっと高度利用なさらぬか。こういうことについて、建設大臣、それからこれは各省にわたることでありましょうから、大蔵大臣から一ぺんこの点についての見解を伺っておきたいと思うのであります。はっきりいいまして、青山からあの辺を見ましても、ほんとうに貴重な土地を古くさい平家建て住宅でもって依然として十年、二十年と放置されておる。この問題でございますが、これは一体どう処理されていくのか。私が言いたいことは、やはりこの際、そういった公務員住宅等につきましても、もっとももっと高度利用すべきじゃないか。内容ももっと質的に改善したって私はいいと思うのでありますが、なぜそれをおやりにならぬかということを私は伺っておきたいと思うのであります。
  44. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いままで建てておった宿舎が非常に悪くなってきましたので、これを取りこわすのを機会に、新たにいまの高度利用に沿った線でこの建て直しをする、そしてできるだけあき地を多くつくって都市政策に貢献するというようなことをこれから計画的にやろうという方針で、いまいろいろこの計画を立てておるところでございますので、ぜひこの高度利用はやりたいと思います。  そこで、いままで私どもは民間土地を漫然と払い下げておりましたが、やはり公用、公共用にこれを使うことを優先的に考えて、そうしてできるだけこれを民間に漫然と払い下げるということを抑制する、そうして公園とか緑地を多くつくるということによって都市政策に協力するというような方向で、今後この国有財産の処理をしたいと思いまして、いま中央審議会にいろいろな問題について諮問をしておったところでございますが、この十日前後に一応答申をいただけるということになりました。  その内容によりますと、相当私どもの考えておったいまの高度利用の問題についても意見が出てくるようでございますので、この答申の線に沿った国有財産の活用をしたいと考えております。
  45. 阪上安太郎

    阪上委員 ぜひそういった答申の線に沿って思い切って効果的な利用に入っていただきたいと思います。そういった庁舎用とか住宅というようなものについてはそういった形でやっていただくとして、林野庁あたりで国有林野の払い下げ等について何か——これは独立採算の関係もあるのでありましょうけれども、どうも協力が少し足らないのじゃないか。これほど地方公共団体その他が一生懸命になって、土地取得のために困難を感じておるときに、国有林野等の払い下げを見ますると、独立採算のたてまえもあるかどうか知りませんけれども、そういった都市計画なり何なりを持っている払い下げ要求に対して、大体払い下げしないような方向非常に強いと思うのであります。これはもう少し、払い下げを必要なものにはやはりしていくという考え方は——といって民間にどんどん払い下げるような在来の方式ではよろしくありませんけれども、公有地の公共団体等に対する払い下げについては、もう少し何か親切な態度があっていいと私は思うのであります。  これは一つの例を言いましょう。ある都市で公園墓地というものをつくる、こういうことで払い下げを受けた。ところが、墓地については無償払い下げをやるのだ、それから火葬場とかそういったものについても、これはあまり縁起のいい話じゃないですが、これもやはり無償で払い下げをするというような形をとっておるのでありますが、そこに当然必要であるところの道路、それから斜面等がありまして、できるだけそういうところは公園のような形にもっていきたいというので、墓地そのものに直ちに利用できないところのものについてはやはり公園化していこうという計画を持っておる。ところが、墓地とは一体何かということになると、墓地とはやはり墓地であって、何か石塔をこう建てていく、あれだけの区画が墓地だ、それ以外のものは墓地ではない。まして公園というようなことばを使うと、これは墓地ではないんだというような解釈をしている。こんなことでいいのですか。これは農林大臣から伺うのがいいのか、あるいは大蔵大臣から伺うのがいいのか、その点どうでありましょうか。
  46. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のとおり、私は、根本的に考えれば森林というものは公共用のものだと思います。公共的でなければならない。私の考えからいえば、森林というのは国有であるのが原則であると思います。しかし、民有もありますが……。でありますので、森林は公共用、公用あるいは公益用に活用するということは、経営上の問題もありますが、大いに考えなくてはならぬ問題だと思います。でありますので、いまのような例もございますが、そういう方面に私は活用すべきだと思いますが、墓園等につきましては、これが公園的なものか、あるいは墓地的なものかというようなことで、技術的にいろいろ問題を含んでおるようでありますが、とにかく公共用、公用あるいは公益用、あるいは農業の構造改善、こういうものは、国有林野の活用に関する法律もできましたし、それに沿うて、できるだけ地域開発に沿うようなことに進めていきたいという根本的な考えを持っております。具体的にはいろいろまたあることと思いますが、根本的にはそう考えております。
  47. 阪上安太郎

    阪上委員 農林大臣は非常に進歩した思想を持っておられますから、そういう御答弁をいただいたわけでありまして、私はけっこうだと思っております。  ただ、たとえば国有財産法なんかを見ましても、「墓地」とは書いてあるが、「公園墓地」とは書いてない。都市計画上からは最近では「霊園」というようなことばが法律用語として入ってきておる。そんな関係もございますが、非常にかたくなに国有財産法は墓地は裏地だ、こういうことになっておりまして、一方自然を保護せよとか環境を保全せよとかということを言いながらも、それが使えない。払い下げを受けた土地の中で緑化しようとして、あるいは保全しようとして一生懸命努力しているのに、そっちのほうは無償払い下げができないのだとか、あるいは無償貸与はできないのだとかいうようなことを言っておっては、私はまずいと思います。といって、やたらに国有林を払い下げるべきではないと思う。ないと思うけれども、いま言ったようなものについて、ほんとうに都市計画等において非常に大きな役割りを果たすというような価値のある部門については、やはり大臣がおっしゃったような方向でやってもらいたいと思うのです。そこで、林野庁あたりでは何か内規を持っておりまして、墓地と公園とは違うのだというようなことを言っておりますが、そんな幼稚なことをいつまでも言わしておくようなことであってはいけないので、ひとつその点は思い切って、いま農林大臣がおっしゃったような方向で御指導願いたい、このように思うわけであります。  次に、私、若干、この問題の締めくくりといたしまして、総理大臣に伺いたい。  それは例の土地利用計画であります。これは長い間の懸案でございまして、その間ちょびちょび新都市計画法であるとか都市再開発法であるとかいうようなところで、先買い権との問題が多少取り入れられるというような形が出てきておりますけれども、これは長い間国会でもずいぶん衆参両院で取り上げられた問題でございますし、あるいは政府が持っておりますいろいろな土地関係するところの審議会等でも何回となくこれは取り上げておる問題でございます。この点ひとつ思い切ってここで土地利用計画というようなものを立てていかなければならぬ、このように考えるわけであります。まあ、その内容としてはいろいろなものがありましょうけれども、まず現在のわが国土地資源というものを一ぺん再調査をしてみるような調査機構というものをやはり義務づけていくというようなこと、それから全国的な土地利用区分というものを考えていく。ただ単に都市計画だけの面で考えるのではなくして、全国的なものを考えていく。それから、先ほど言いましたような一手買い上げ制度というものをやはり考える必要がある、こういうことであります。しかも、一手買い上げ制度が、ただ単に公共用地のみの取得ということではなくして、もっと広範な一手買い上げ制度というものを持つ。それからいま一つは、開発許可制もその後の都市計画関係立法の中ではやはり取り上げられておるわけであります。しかし、全国的にやはり開発許可制度というものを採用する必要がある。これは全国的に考える必要がある。したがって、一切の土地の開発というものについては許可制度をやはり導入する、そこまでいかぬと、地価抑制などというようなことについて観念的なことを言っておったってどうにもならぬ。これは一部取り上げられておりますけれども、もうそれは開発について、一切の開発はやはり許可制に持っていく。英国あたりのランド・コミッションが採用しましたような手法でやっていくということが必要であろうと思います。  それから先ほどの公的保有制、保留地といいますか、保留地の先取り確保の問題、こういったものをやはりそういった土地利用計画の中に入れていく、それから在来から問題になっております——それがちょっとこじれたのが今回の市街化区域内における農地課税の問題だと思うのでありますが、やはり本来的なものに戻って、開発賦課金、これをやはりどうしても取り上げていく、あるいは開発税ともいいますか、こういったものをやはり思い切って取り上げる。同時に、土地の再配分をこの際一ぺん考える、そういったようなものを内容とするところの総合的な土地利用計画というものを充実いたしませんと、これはだめだと思います。同時に、それをやはり保障する意味において、そういった土地利用基本法というようなものを制定して、いまのような内容を盛り込んでいく。そうして地価高騰問題も土地取得問題も、総合的に全国的な視野でもって解決していく。先ほども言いましたように、日本ではわずかに土地資源の中で一・八三%くらいのものが、それがやはり土地問題として大きく問題になっております。したがって、いま言ったような利用計画をここではっきりと打ち出す必要があると私は思うのであります。これはもう長い間の懸案でありまして、佐藤総理もこの辺でもうひとつこの問題に踏み切っていただきたい、こういうふうに思うのでありますが、御見解はどうでしょうか。
  48. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの阪上君の御所論はたいへん基本的な問題でございます。お述べになりましたことはたいへん広範多岐にわたり、まん基本的な問題になっておる、かように思いますので、簡単に、承知しました、こう実は言えません。十分検討して、しかる上で述べなければならばい、かように思います。まず第一に、土地の実態調査、この実情等につきましても思い切ってやらないと、現状そのものがどうなっておるか、これもよくわからない、こういうようなもとでは、ただいまのものがなかなか立たない。また部分的にはそれぞれの対策が立てられましても、総体的に見ました場合に、はたしてこれが、私権の制限、こういうことが均衡のとれた方法で行なわれるかどうか、そこらも、これは基本的な問題でございますから、憲法上の問題として十分検討する必要があるだろうと思います。ただいまのお話しになりました点は、そういう意味で非常に示唆に富んだ事柄だと思います。これは表現としては全国的な買い上げ制度、こういう表現をしておられますけれども、これもなかなか簡単な問題ではなくて、実情によっての買い上げ制度、こういうことを阪上君はこなしていらっしゃるのだと思いますが、これは基本的な問題と関係がございますから、そういう意味で十分われわれが取り組む姿勢、先ほど来、部分的には、憲法の問題ではあるけれども、それと正面からぶつかる問題ではあるが、私権の制限やむを得ない、こういうような態度であったと思います。  次に開発許可制、これをもっと徹底して全国的な規模においてやれという、これまたいままでもやられたことではありますけれども、開発許可制、これがいま言われるような一つの、一貫した筋の通った方法でなかなか行なわれておらない。都市計画法そのもの、あるいは住宅団地そのもの等から申しましても、いわゆる開発計画というものはありますけれども、しかしやはり筋道を立てて社会的な開発計画、こういうことでないと、やはり学校や病院やあるいは道路や上下水道なり、それらのものが十分整ったようにはなかなかきまらない、こういうことをかんで含めるように理解さす必要があるだろう、かように思います。私はただいま御指摘になりました点に賛成でありますがゆえに、これはもっと正確な準備をして初めてその問題と取り組み得るんじゃないか、かように思った次第であります。  ことに、こまかな問題ではありますけれども、税制の問題にいたしましても、あるいは市街地農地との関係でいままですでに手はつけてみたもののなかなか混乱を生じて、実際には合わないじゃないか、こういうような問題にもぶつかっておりますので、ただこの点がよさそうだというので直ちに取り上げる、こういうわけにもいかないように思います。しかし御指摘になったとおり、これはこのままでは済ませない問題だ、やはりこの税制のあり方につきましても十分考えていかないと、現在の状態そのものについても不適当だが、さらに土地が処分された場合の税制のあり方等、これはまた非常な影響がございますから、それも筋道を立てて考えていくことが必要だろうと思います。  こういうようなことを考えてくると、最終的にやはり、お話しになりますように、土地の再配分、そういうものと取り組め、こういうことになるだろうと思います。これは土地の再配分と一口でいわれますけれども、やはりなかなかそう簡単なものではないこと、これはもう国、地方公共団体等々の関係においてすらなかなかたいへんな問題でございます。私ども一つ公共事業用地を獲得するにも、いろいろな問題が起こっております。これはもう苦い経験をなめております。それらのことを考えると、ただいま口でおっしゃることは非常に簡単でございますが、なかなか複雑なものであること、これはもう御承知の上でおっしゃることだと思いますし、ことに阪上君、いままでの御経験から、地方団体の長もしておられた、そういう点で当面されたこと、それらがいまのような御意見となって出てきたように思います。そういうところから最終的に土地基本法、そういうものの制定が必要だろう、かような結論になっておるのだと思います。  私は先ほど来のお話を、たいへん建設的な、またそれに示唆に富んだお尋ねであり、たいへんむずかしい問題だ、実はかように思いながら伺っていたのであります。簡単に、ただいま、賛成でございますからその方向でと——ただ単に、方向は私も賛成ではございますが、ただいま、それではいつになって基本法ができる、こうなりますと、まだまだ私は非常にむずかしいのではないだろうか、かように思いますので、それらの点も御理解いただいて、時間もかして、また政府もそういう意味では積極的な姿勢でこれらの問題を取り上げる、こういうことでありたいと思います。  ところで、誤解のないようにお願いしたいのは、取得もたいへんだが、いま持っておる政府の、国有の土地あるいは公有の土地、そういうものは機会あるごとにふやしていくということもこれは一つ方法だと思いますが、これの払い下げのほろについては非常に慎重でなければならない、かように思います。先ほどの墓地公園などはあまりにも私、常識離れの議論であった、そういう実例があるなら、これはもう至急に直さして、そういうつまらない理屈にとらわれないで、もっと積極的に総体としての考え方に徹するようにしたいものだ、かように思います。  どうも話が、なかなか大きな話でありますだけに、大問題でありますだけに、まとまった御返事ができませんけれども、ただいま御指摘になりましたことは、大体私そのつもりでおります。そういう意味で政府もこの問題と取り組む、さようにその姿勢だけを申し上げておきます。
  49. 阪上安太郎

    阪上委員 せっかく答弁いただいたのでありますが、総理が就任された当時からこの問題と私は取り組んでおります。まあ慎重もけっこうでございますが、しかし、その中には、多少なり改善されていった面もございます。私も認めておりますが、しかしそういう部分的なものではもうだめだ、かように思いますので、今後ひとつやはりあきらめず、に取り組んでいただきたい、このように思います。  次に私、住宅政策について若干お伺いいたします。だいぶ土地問題で時間を使いましたので、二、三の点だけお伺いいたしておきたいと思います。  端的に言いまして、第二次住宅建設五カ年計画、これも、過去の第一次の達成率その他から見まして、こういう程度でとどまっておってはいけないのじゃないかと思うのでありまして、思い切ってこの際いろいろくふうなさって、やはり長期計画も練り直していくという考え方が必要であろうと私は思っております。ことに、七割近くも民間住宅に依存しておって、政府施策住宅がわずかなパーセンテージしか占めてないというようなことで、これを住宅建設計画だと言ってみたとしたってどうもたよりないものである、こういうことなのであります。その他、賃貸住宅主義でいくのか、あるいはまた持ち住宅主義でいくのか、あるいはそれを二つともあんばいしたところの賃貸かつ長期の、しかも最後には持ち家になるというような方式でいくのか、いろいろな問題があると思いますけれども、さらにまた、住居基準等につきましても、もう考え方を変えていかなければならぬ、かように考えるわけでありまして、そういう意味において、この辺でひとつ思い切って長期住宅建設計画も練り直す必要があるのじゃないか、私はかように思っておりますが、これは意見として申し上げておきたい、このように思います。  ただ、住居基準につきましては、これはもう少し考える必要があろうと私は思っております。少なくとも、若い夫婦と子供一人、それが今度は子供二人を持つようになった夫婦、それからさらにもう一人子供がふえたようなそういう家族構成、さらに今度は逆に、老人二人だけが生活するような家族、こういったものがリビングサークルとして次々と住居をかえていくことができる。そういうような住居基準に基づいてかえていくような、そういう基準を一ぺん考えてみる、いままでのように、公団住宅なら公団住宅、公営住宅なら公営住宅に入ってしまうと、家族がふえようが何しようがもうどこへもいけない、したがって子供を生むことも制限しなければならぬというような状態ではいけないのであって、ただ間取りをどうしようという問題ばかりでなく、もっと大きなマクロな見地に立って政府施策住宅というものを考えていく、こういうことが私は必要だと思います。要するに、五段階くらいに分けて、そうして次々と、その家族構成の増加によって、あるいは減少によって住居をかえていくんだ、そして、賃貸ではあるけれどもやはりマイホームなんだというような考え方を持つことができるような、そういう住宅の基準というものを設ける必要があろうと私は思うのでありまして、その点、いままでのような千編一律、もう全然かわりばえのないようなそういう時代おくれの住宅政策ではいけないと私は思います。  そこで、この点だけ、住居基準についてもう少しいま考え直していかなければならぬと思いますが、建設大臣はどうお考えになりますか、簡単でけっこうですから、意見として聞きおくくらいの答弁になると思いますけれども、念のため伺っておきたいと思います。
  50. 西村英一

    西村国務大臣 住宅につきましていろいろ御意見がございましたが、私は第一番には、現在きめられておる五カ年計画を確実にそれ以上進める。それ以上というのは、公的にはそういきませんでしょうが、民間住宅等をそれ以上進めていきたいということでございます。やはりまず量をふやさなければならぬということでございます。  その次は、やはりだんだん生活が向上いたしておるから、質の問題でございます。この質の問題につきましても、公的の問題につきましては予算の折衝ごとに少しずつその規模を拡充いたしておるというわけでございます。  その他住宅問題については、持ち家にするか賃貸にするか、賃貸にした場合には家賃はどうなるか、いろんな問題がございまするが、これは国民生活の基盤、活動の基盤でございまするから、これに対してはイデオロギーはございません。せっかく皆さま方のいい案がありますれば私も十分取り入れまして、国民が住宅に困らないようにやっていくということでございまするから、どうかひとつ御協力のほどをお願い申し上げる次第でございます。
  51. 阪上安太郎

    阪上委員 いまの問題でありますけれども、やはり間取りがどうとか畳数がどうだとか一人一室であるとか、いろんなそういう質的改善もやらなければいかぬけれども、やはりもっとマクロにものを考えて、先ほど言ったような五段階くらいに分けた建設をやっていく。これは決して住宅の量を減らすことにはならないのでありまして、そういう形で量もふやしていくということが必要だと思うのです。質と量と一緒に考えておやりになることが必要な段階に来ているのじゃないだろうかということを申し上げている。御意見がありましたらって、そういう意見でございますので、大臣ひとつよくそこを考えて、少し練り直してみたらどうかと私は思うわけであります。  それからいま一つ、家賃制度の問題でありますけれども、公団の家賃がどんどん高くなっていって、四十六年施行それから四十七年施工の分は、3Kくらいでもって四万円くらいする。これにはいろんな配慮があるということを私は知っております。古い住宅に対して管理費が十分出ないので、それを新しい住宅の家賃に重ねていくというようなみみっちい考え方がいま問題になっていると私は思うのでありますけれども、そこでこれらの問題について、ことに公団の組織を変える必要があるのじゃないかという声が、建設省なりその他経企庁あたりからも出ているようでありますけれども、これはどうなんですか、いまの段階ではお答え願えないでしょうか。やはり思い切って公団の機構というものを変えなければ、これらの問題は解決しないと思います。住居環境、生活環境を担当するところのそういう公団土地取得も含めてそれと住宅建設一本で進んでいくというような公団に分けるという考えがある。しかし、これは行政組織上の問題も出てくるしいろんな問題がありますが、この点についてちょっとお聞かせ願いたいと思います、やるのかやらぬのか。
  52. 西村英一

    西村国務大臣 公団家賃の問題でございまするが、これはもう御案内のとおり、とにかくサラリーマンの所得をこえるようなところまで家賃が上がってきております。したがいまして、この点につきましてはやはりわれわれも十分考えなければならぬと思っております。  それから、日本住宅公団の組織の問題です。これは私は、住宅公団は初めのうちはやはり住宅を主眼にして、あまり土地のことを考えぬでスタートしたと思います。したがいまして、今日は住宅民間でもやれるのだから、むしろその用地のほうに重点を置いたほうがいいのじゃないかという意見は私もわかりますが、それとていまこれを二つに分けるとかいろいろなことは、研究はいたしておりまするが、いまのところは考えてはおりません。
  53. 阪上安太郎

    阪上委員 次に、こういう例があるのであります。ある地方公共団体で公営住宅を建てる、そしてその中で流動が起こってくるわけでありますが、これを当該地方公共団体の議会議員等にその分配の割り当てをやっておる、こういう問題があるわけであります。これはもうけしからぬことでありまして、そういうことをやるということであるならば、これはたいへん大きな社会問題になってくると思うのでありますが、そういう例を自治大臣は御存じですかどうか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  54. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 いま阪上委員指摘されたようなことはまことにあってはならぬことでございまして、私、そのような例は聞いておりませんが、万一にもそのようなことがございましたなれば、厳重に監督いたしまして、今後ともそういうようなことのないように十分努力してまいりたい。寡聞にして聞いておりませんので……。
  55. 阪上安太郎

    阪上委員 この問題は、私もあまり多くのそんな例があってはいけないと思います。しかし、私自身は承知しております。そして、そういうあっせんに名をかりて金までもらっておるというような例があるようであります。しかも、それは平気でここ数年来行なわれている、こういうことであります。よくそういうところを頭に置いて御調査願いたい。しかし、こういう問題が起こってくるのも、大体住宅の入居基準もさることながら、分配の方法、決定の方法が、いままでのような抽せん方式その他でやっておりますけれども、そこに問題点が出てきているのじゃないかと思います。私はかつてこの席で内閣総理大臣に、いっそこの際、思い切ってああいう実情に即さないような抽せん方式というようなものをやめて、住宅登録制度、住居登録制度というものをしいたらどうか。総理も、ひとつ検討いたしましょう。これ、もう三年近くたっておるのですが、一向に建設省にしてもあるいは地方公共団体の中でも、東京都の中でも、この問題と取り組もうとはいたしておりません。ああいうような考え方でやっているところに、やはりこういう問題が出てくるのではなかろうか、私はこのように思います。そこで、いかがでしょうか、住宅登録制度あるいは住居登録制度、これは各自治体の住民が市役所へ行きまして、役場へ行って、そして自分はいまはこういうところに住んでおるけれども、将来こういうところの、こういう場所へ移りたいのだ、通勤の関係もあるから、だからということで希望を持っていく。そうすると、それが全国持ち回りまして、そして、あなたの要求される入居は昭和何年の何月に入っていただくことにいたします。もちろんそれには、そういう計画に基づいて住居が建てられていかなければならないのでありますが、そういう方法も必要であるということを前々から申しておるのですが、この点、建設大臣、たいへん御足労ですが、いかがでしょうか。そういうことは、やはりあなたのほうの事務当局でもって検討しておるのですか、もうそんなものは国会の答弁のやりとりにすぎないのだということで、ほったらかしにされておるのでありますか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  56. 西村英一

    西村国務大臣 ほったらかすどころじゃございません。もうほんとうに真剣にやっておるのです。ところが、ほんとうは公的な住宅に入れるのは、住宅の困窮度のひどい人から入れるのがあたりまえなんです。したがって、いまは抽せんでやっておりまするが、これは一歩進めて、やはりそういうふうに困っておる人から入れたいと思います。したがいまして、そういうふうに指導はいたしておりまするが、大都市でございますと住宅難の点数、困難さに点数をつけるということは、移動がたくさんありましてなかなかむずかしいです。しかし、現在小さな市町村で公営住宅の割り当てをする場合は、四百二十六カ町村ぐらい、この住居の登録制でやっております。それです、から、これをいま指導して、なるべく住居の登録制をつくって困っている人の点数をつけて、それから入れようというふうにやっております。それから大都市につきましては、ことしは若干の予算をいただきまして、大都市についてこういう住居の登録制ができないかできるかということを、若干の予算を大蔵省からいただきましたので、十分これは調べてまいって、ほんとうに困っておる人から入れたい。抽せんをやらなければならぬところはしかたがないが、なるべくあなたのおっしゃるような方向に持っていく努力をいたしておる最中でございます。
  57. 阪上安太郎

    阪上委員 ひとつせっかく、全国的にずっとそれが採用されるような方向へさらに検討もされ、指導もしていただきたい、このように思います。  そこで企画庁に伺いますけれども、国民生活基準の問題でありますね。ナショナルミニマムといいますか、国民生活環境基準。きょうの新聞見ましても、やはり国連でもこの問題を取り上げて、六月には会議を開くというような形になってきております。多少もんちゃくもあるようでありますが、それは別といたしまして、非常にけっこうなことだと私は思っでありますけれども、しかし、わが国においても国連のそういうものの結果待ちというようなことではなくして、この際やはり国民生活環境基準というふうなものをみずから編み出していくということが必要だろうと思います。ことに日本のように生活環境というものがいかなる国よりも悪化しているときに、日本がいち早くこの問題を取り上げていって、国連の人間生活環境会議を牛耳っていくような方向へ進まなければならぬと私は思います。そこでちょっと会議の内容等、新聞等で見ますと、やはりGNP第一主義ではいけないのだというようなことで、やはりテーマとなっているようであります。過般の参議院でございましたか、企画庁長官はこれに対しまして、NNWであるとかGNWであるとかいうようなことについて検討を進めておるということでありますが、私、非常にけっこうなことだと思う。またしかし、困難であってもどうしてもこれはやらなければならない問題ではなかろうかと私は思います。そこでどの程度に真剣に取り組んでおられるかという、その片りんをちょっと聞かしてもらいたいと思うのです。
  58. 木村俊夫

    木村国務大臣 生活環境基準と申しますか、そういうものを設定いたしますのは、これは御承知のように福祉第一の政策運用をやる場合に、その資源配分の適正化という一つの方向としてぜひ必要なものでございますので、昨年四月から経済審議会にNNW開発委員会というものを設置いたしまして、そこで真剣に検討しておる最中でございますが、わが国の社会保障また社会資本、非常に立ちおくれております。それを取り返すために、どのような手法でもってどのような資源配分をすればいいか、また、いろいろ政策運営する場合に、最低の生活基準というものをどのように設定していいかということを真剣にやっておりますが、御承知のように、こういうことはやはり経済成長のあり方また住民の生活意識と申しますか、そういうものはどんどん変化しております。どの程度を最低、ミニマムと見るかということについて非常に困難がございます。しかしながら、いずれにいたしましてもこういうものを持つことは、これから福祉国家として進むわが国にとってはぜひ必要なことと思いますので、大体この秋ごろには一応の取りまとめをいたしたい、こういう考えのもとに作業を急いでおる最中でございます。
  59. 阪上安太郎

    阪上委員 私から申し上げるまでもないと思いますが、ひとつこの点につきましては、今度の予算なども、やはり国民福祉の一つの大きな柱を予算編成として立てておられるのであります。ああいった、ただ単に福祉関係予算を若干増加していくというような程度のものではなくして、もう少しはっきりした長期見通しをもって、下水道はどこまで持っていくのだ、水洗便所化はどこまで持っていくのだ、公園はどこまで持っていくのだ、何年にはここまで持っていくのだというような、やはりそういう見通しというものをはっきり立てていただかなければならぬと私は思います。いままでのやみくもな国民福祉というようなものの考え方では私はいけないと思います。ぜひひとつ、NNW方式がいいかGNW方式がいいか、これは私もよくわかりませんけれども、やはり真剣に早くこれまた取り組んでいただいてやっていただきたい。場合によれば、そういうものを頭に置きながら骨子を、やはり国民生活環境基準法というような法の制定まで入っていくというようなところまでいかなければいけないのではないか、私はかように思うわけであります。ぜひひとつ、せっかく御努力を願いたいと思います。  最後に、私、ここで暫定予算の編成についてお伺いいたします。えらい先ばしったような話をしよるな、こういうことでありますけれども、もはや予算審議の状況から見ましても、暫定予算を編成しなければならぬ、必至だと私は思っております。大蔵大臣、いかがでございましょうか。組まれるのでございましょう。すでに大蔵大臣は作業を指示されているように伺っておりますが、いかがでしょうか。
  60. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 暫定予算の編成についてはただいま準備はいたしておりますが、いままでの例によりますと、予算案が衆議院の段階を通過したときにおいてこの暫定予算の幅というようなものも考えられて国会の御審議を願うという順序になっておりますので、衆議院の審議を見た結果において具体的には考えたいということで、いま準備だけはしておるつもりでございます。
  61. 阪上安太郎

    阪上委員 暫定予算提出の時期というものは、あなたのほうでお考えになればいいと私は思うのであります。予算の当初からお出しになっても差しつかえないものだ、私はかように思っております。それは政府の判断されることであります。ただ、新聞などで伺っておりますると、この暫定予算編成の方針が、在来の慣例を破って、骨格予算の程度にとどめないで、いままでの慣例ではそういう形をとっておるのでありますけれども、何か新しい編成方針を出される、こういうことを聞いておるわけでありますが、どんな性質の暫定予算になるのでありましょうか。もうすでに指示された方針があろうと思いますので、お聞かせ願いたいと思います。
  62. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまのととろ特別な新しい編成方針を考えておりません。ただ従来は、いろいろの経費が日割り計算でできておりましたが、しかし御承知のように、こういう不況克服を急いでおるときでございますので、公共事業費というようなものは、週去において例を見ますと、たとえこれが十日とか十五日の暫定予算であっても、一カ月以上とか二カ月分を盛るとかいうようなこともしておりますので、そういう点において技術的に考えたい点は幾つかあろうと思いますが、従来と違った特別の編成方針はいま考えておりません。
  63. 阪上安太郎

    阪上委員 これは新聞の報道でございますので、はたして最終的なものであるかどうか存じません。ただ、いまおっしゃったように、景気浮揚を急ぐので、したがって新しい公共事業をやはり一部これに編成していくんだというようなことも出ております。あるいは大学の定員の増とかいろいろな新規政策に基づくものを、これは先取りではないと思いますけれども、やはり織り込んでいくんだというようなことが伝わっております。大蔵大臣はそういう指示をなさったように伺っておるのですが、いかがでしょうか。
  64. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まだそういう方針は検討中でございまして、きまってはおりません。
  65. 阪上安太郎

    阪上委員 それでは、大蔵大臣、さらにお伺いいたしますが、そういうことを、きまっていないけれども、やりたいという考え方で編成作業を命じられておりますか。  私は端的に、もう時間もありませんが、そういう慣例を破るということはたいへん重大なことだと思うのであります。新しい政策を入れていくとか、骨格予算にとどめないでやるというようなことは重大な問題だ、かように思います。憲法は、暫定予算というものについてこれは沈黙しております。あるいは継続費につきましてもこれは沈黙をいたしておりますが、しかし、古い憲法にはそういうことは明白になっておりまして、したがって旧憲法ではそれはあまり心配も要らぬことだと私は思うのでありますけれども、新憲法はそれはやはり沈黙しておりますから、しかも財政法で受けたというよりも委任立法でも何でもないと私は思うのであります。しかし、そういう空白を置いてはいけないということで財政法がやはり織り込んだものだと思いますけれども、しかし、それならば新しい政策をさらにそこに盛り込んでいくのだ、景気浮揚も大事でありましょうけれども、そうしてしかも、もし暫定予算が通らなかったらというような事態が発生したときは、どうにもこうにも手の打ちようがないのじゃないのでしょうか。これは佐藤総理も参議院で答弁なさっております。そういうことのためにも空白を置いてはいけないということであるならば、あまり問題にならぬような方向で編成されることがやはり正しいのではないかと私は思うのであります。もしそれが手が打ちようがなく、暫定予算がやはりそういう新政策等を織り込んでいくということになって、がたがた、がたがたいたしまして、そうして成立しなかったらこれはたいへんだ、私は内閣総辞職以外に手はないだろう、かように思うのであります。でありますので、私は、ほんとうに老婆心ではありますけれども、そういうような編成をなさることは適当でない。ほんとうにそれは適当じゃない、暫定予算の性格からいっても大きな間違いである、ましてもんちゃくを起こすような内容を含んでくるなんというようなことは、これはもってのほかだ、私はかように考えておるのでありますが、内閣総理大臣、どうでしょうか。あなたのこれに対する見解を承っておきたいと思う。
  66. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういう問題でございますから、私のほうで真剣に考えているところでございます。
  67. 阪上安太郎

    阪上委員 まだ多少時間がありますけれども、理事会の申し合わせもありまして、時間は厳守することになっております。この程度で私は質問を終わりたいと思います。
  68. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて阪上君の質疑は終了いたしました。  午後は二時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時五十八分休憩      ————◇—————    午後二時三十八分開議
  69. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  総括質疑を続行いたします。多田時子君。
  70. 多田時子

    ○多田委員 総理も連日お疲れのことだと思いますが、本日は、私、国民の生活に密着した具体的な問題を幾つか取り上げまして、総理並びに関係大臣にお尋ねをしたいと思うわけでございます。  御承知のとおり、ことしに入りましてから、もう公共料金は矢つぎばやに値上げをされております。本日は、この物価の問題を基本にいたしまして、幾つかの質問を行ないたいと思うわけでございます。  先ほど本会議でもお話が出ておりましたけれども、去る四日、厚生省がまとめました四十六年国民生活実態調査、これが一昨日各紙に一斉に報道されたわけでございます。それによりますと、その日暮らしで食べていけないという人たちが三・五%、あるいは食べるのに精一ぱいが十八・五%で、合計二〇%の人がその日暮らし、こういうことで生活に不安を感じているわけでございます。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕 その他いろいろな項目にわたって調査がなされておりますけれども、その結果といたしましては、国民の生活は向上するどころかむしろダウンをしている、こういう調査結果の報告でございました。これは昨年の調べでございますが、ことしに入りましてからこういうふうに値上げが続いております。これからのことしの生活はどうなるだろうかというような国民の生活に対する不安というものは当然であろうかと思われます。特に、私も主婦でございますけれども、家計を預かる主婦の苦しみというものは深刻でございますし、一体ことしのわが家の暮らしはどうなるだろうか、こういうふうに考えているわけでございます。そういうところから、総理がよくおっしゃいますように、高福祉、高負担、こういうことばなどは全く耳に入りませんで、むしろ低福祉、高負担ではないか、こういうふうにいわれております。そこで御承知のように、医療費ですとか、郵便料金あるいはタクシー料金、四月からは大学の授業料も値上げされるであろう、あるいは国鉄運賃も上がるであろう、あるいはまた物統令の適用が廃止になりますとお米も上がるのではないか、こういうわけでことしは全くお先まっ暗でございます。  こういうふうに先陣を切って公共料金の値上げがされておりますけれども、そこで総理に率直にお尋ねをしたいわけなんですが、この公共料金というものの御認識、これは一体どういうふうに御認識をなさっていらっしゃるのか、この一点についてまずお尋ねをしたいと思います。
  71. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どういうように認識しているか、こう言われても、いろいろの見方があるように思いますから、お尋ねにぴったり合うかどうかわかりませんが、とにかく公共料金は、事業の性質上、国民生活に切っても切り離せないもの、そういうものの料金であり、しかも政府自身がそれには多分に関与できるものだ、ものによりましては政府自身がきめるものだ、かようにまで考える。そういうものが公共料金、こういうものではないかと思っております。
  72. 多田時子

    ○多田委員 公共料金の簡単な御認識のようでございましたけれども、まず、公共料金の値上げというのは、当然消費者物価の上昇にはね返ってまいりますし、ですから今回の値上げはいわゆる政府主導型の物価高である、このようにいわれているわけでございます。  いままでも、比較的物価の安定した時代という時期もございましたし、また故意に凍結をしたという時代もあるようでございます。こういう凍結した時期とか、あるいは比較的安定した時期というその時期に、こうしたいわゆる公共料金に対する何らかの施策というもの、公共料金対策というものがなされなければならないのじゃないか、このように考えます。以前の例を申し上げますと、昭和三十九年、これは凍結をした。あくる年の四十年、そのときの消費者物価抑制目標を見ますと、これは四・五%で、しかしそういうふうな凍結をしたあくる年でございましたから、四・五%は大きくオーバーしまして、実際は六・四%と、こういうふうに上がったわけでございます。ですから、ちょうど同じように、三十九年、四十年と、また昨年の四十六年とことしの四十七年と、全く同じようなパターンで考えられるわけなんでございますけれども、そこで当然起こる疑問といたしまして、ことしの五・三%の消費者物価指数抑制目標というものがはたして守られるのかどうか、総理はどのようにお考えになっていらっしゃるかをお伺いをしたいわけなんですけれども、さらに、もし押えるとすれば、どこで一体押えることができるだろうか。総理も御承知と思いますけれども、野菜がたいへん昨年の暮れあたりから暴落いたしまして、いま一本三円なんというふうにいわれております。そうしますと、運賃も出なければ出荷するほど赤字になる、いわゆる豊作貧乏というような現在の状態でございますから、そうしますと、暴落したあとというのは必ずまた暴騰するというジンクスがあるわけなんです。そういうことから考え合わせますと、こうした消費者物価がぐんぐん上がってまいります時点において、五・三%がどこまで抑えられるか、そういう点について一言お尋ねをしたい。
  73. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えいたしましたか、むしろ多田君は、公共料金の定義よりも、公共料金が格価形成にどういうような影響を持つか、こういうほうに重点を置いてのお尋ねだったようです。もちろん私もそういう点について、この公共料金が間接的に物価を刺激する、あるいはまた心理的な影響のあること、これは見のがすことはできないと思います。そういう意味で、この公共料金そのものが、やはり何といっても政府自身がこれをきめるという立場から、公共料金の引き上げ、これが直接のどの割合だ、こういうことよりも、むしろ公共料金が先導に立って上がる、そういう意味の波及的効果、あるいはまた心理的効果、そういうものを十分考えろ、こういう御注意であったろうと思います。もちろん私も、その点については同じような認識をしております。  そこで、公共料金について政府は大体ストップするということ、これは、ただいまも例がありましたように、ストップすると必ず一定の期間を経過した後にそれがはね上がるということ、そのときのことを考えると、ストップは必ずしも最上の策ではないようだ。だからこれはやはり抑制するという強い主導的姿勢が必要なんだ。安易な公共料金の取り扱い方、これはよろしくない。これはもう絶えず抑制するという立場で、その料金そのものの値上がりよりも、やはり波及的効果あるいは心理的効果、そこに重点を置いて公共料金を取り扱うべきだ、かように私は思います。  そこで、いままでの経過を見ますと、比較的に一般の物価が上がったにかかわらず公共料金を抑制していった、こういう立場で、公共料金の値上がり分は一般物価よりも低い、こういうような効果は過去においてあったようです。私の材料から申しますと、過去五年間、四十二年から四十六年まで、この間の公共料金の平均上昇率は二・九%です。しかし、その間の消費者物価の平均上昇率は五・七%、かようになっておりますから、これは私、二・九で満足しろというわけではありませんが、とにかく抑制の効果はある程度あがっているのだ、こういうことが言えるのではないかと思っております。しかし公共料金は、公共的なサービス、質、量ともに低下しないようにこれを維持する、あるいは増進して、そして公共的なその効果を生活で享受できるようにあって、しかも、ただいま申し上げるような上昇率よりももっとこれを抑制することができれば、これはたいへんけっこうなことだ、かように思いますので、そういう意味で政府はさらに努力していかなければならぬ、かような結論になろうかと思います。
  74. 多田時子

    ○多田委員 いまるる御説明いただきましたけれども、いわゆる五・三%がはたしてことしの抑制目標としてそこにとどまるという可能性があるかどうか。あるいはまた、過去の実績が示すように、またそれを大きくオーバーするのではないか、こういう不安に対しての御答弁は何か得られなかったようなんですが、もう一度その辺いかがでございましょうか。もしあれでしたら経企庁長官いかがでございますか。
  75. 木村俊夫

    木村国務大臣 来年度の大体見通し、お話しのとおり五・三%にしております。この算出根拠とと申しますと、まず今年度、昭和四十六年三月末までの物価の上昇、それを私どもは昨年の十二月に大体六・一%程度であろうということを見込んで訂正をいたしました。しかるに、幸いにして暖冬その他気象条件も物価環境としてはきわめて良好でございますし、またこれは不幸なことでございますが、不景気の影響がじりじりと物価面にも反映してまいりました。昨年の十月以降十一、十二、一、二月とこの物価趨勢を見ますと、私どもの大体見込みました今年度の物価上昇率六・一%を割るのではないか。私どももいまの試算では、五・八%か五・七%で今年度の物価上昇率が落ちつくのではないか、こういう見通しを最近固めておるわけでございます。そういたしますと、昭和四十七年度への御承知のようないわゆるげたというものがございます。昭和四十七年度の物価上昇が全然なくても、もうすでに四十六年度から上がってきた物価の実勢が四十七年度の物価上昇率へたれ込む、いわゆるげたをはいて入り込んでいく、そのげたが大体一・四%ぐらいでとどまるのではないかと思います。そういたしますと、昭和四十七年度の消費者物価指数のわれわれの見通しは非常にアローアンスが大きくなりまして、五・三%と見込んでおります中で、そのげたが一・四%といたしますと、来年度の中で上がり得るいわゆるアローアンスと申しますか、物価上昇の幅が三・九%、こういうことになるわけでございます。  そういたしまして、私どもは、来年度における物価環境がどうであろうかということをいろいろ考えてみますと、当然いま多田さんが御指摘されましたとおり、ことしの野菜、生鮮食料品の落ちつきは、必ずしも来年度の野菜その他生鮮食料品の落ちつきを予定するものではございません。むしろある意味では、例年ならばこれがまた反騰に転ずるという危険もございますが、また一面、農林省等で流通あるいは野菜対策にたいへんな力を入れまして、気象条件に支配されないような野菜、生鮮食料品対策を来年度から十分力を入れて努力するということにしておりますし、また昨年十二月の円切り上げの効果、また輸入対策その他を強力に実施いたしまして、そのアローアンスの中に来年度における物価上昇率の度合いを押し込めるように最善の努力をいたそう、こういう考えから、五・三%は、私どもといたしましては、決して過大な目標ではないという考えで算出したわけでございます。
  76. 多田時子

    ○多田委員 この問題にあまり深く入りたくはないのですけれども、いまの御答弁伺っておりますと、結局、昭和四十六年度の抑制目標を昭和四十、七年度にたれ込むことも計算に入れまして、五・三は六・一になるであろうという、こういうことでございましょうか。こまかく数字をいろいろおっしゃいましたけれども、結論的には、この抑制目標というものが五・三から六・一に変更をされた、こういうことでございますか。
  77. 木村俊夫

    木村国務大臣 私の御説明が足りませんでしたと思いますが、六・一%は、昭和四十六年度、今年度の見直しの消費者物価上昇率でございますが、それが最近の物価情勢を見ますと、それよりも下回る見通しが濃くなった、強くなった、そういう関係で、私どもは、あるいは五・七%あるいは五・八%程度におさまるのではないか。これは昭和四十六年度の消費者物価の見通しでございます。そういたしますと、そのような状況で三月末が過ぎまして、いよいよ昭和四十七年度、四月を迎えて来年度の物価上昇率を私どもはいま算定しておるのでございます。そういうような物価環境で、昭和四十七年度は、いま御指摘のような五・三%に上昇率を押えるという努力をしておるわけでございます。その努力の中に、先ほど申し上げましたように、野菜その他生鮮食料品の対策、あるいは円切り上げに伴う輸入対策、そういう努力を傾注いたしまして、たまたまこの公共料金が相当改定になりますけれども、それを織り込みましても、十分五・三%の範囲に来年度の物価上昇率をとどめることができる、こういうような見通しに立っておるわけでございます。
  78. 多田時子

    ○多田委員 あらためて、五・三%は必ずそこまで押えることができる目標である、このように理解してよろしゅうございますか。——そこで、この問題はこのくらいにいたしまして、つまり、公共料金の一つであります、三Kの一つでもあります健保の問題についてお尋ねをしたいわけなんです。続いて健保から薬価問題に入りたいと思っておりますが、すでに二月一日から医療費が値上げをされておりまして、いままででも医療費に対しましては、高うございますので、国民の皆さん、もうほんとうにうっかり病気もできない、長いこと入院でもしようものなら家計の破綻が生ずる、このように、お医者さんに対してはかからなければならないし、さりとてお金は高い、こういうことでたいへん悩んでいるわけでございます。加えてことしの二月一日から上がったわけなんですが、この問題の多い医療制度というものに対しましては、今回医療基本法ができますとか、あるいは抜本改定をいたしますとか、あるいは政管健保の赤字対策の法案を出しますとか、いろいろこのように関係者の方々の御努力が見られるわけなんでございますけれども、この政管健保の赤字対策の内容を見ますと、これまた、ますます被保険者の負担増、こういうふうになるような内容でございます。それで、これにつきましては、厚生大臣、御尽力のようでございますけれども、社会保険審議会とかあるいは社会保障制度審議会、こういう二つの審議会に諮問をされました。その諮問をされた答申が、いろいろと内容を修正をするようにというふうに指摘もありして出てきたわけでございます。ところが政府は、その答申に関係なく原案を国会に提出をなさった、こういうようでありますけれども、この点は一体どういうふうになっておりましょうか。
  79. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 先般、御指摘の両審議会に諮問をいたしまして、国会に提案をいたしました政管健保の財政対策に関する法案のことだと思いますが、これは御承知のように、政管健保が累年赤字を積み重ねておりますので、したがって、その累積赤字が二千数百億にもなってきておる。そして単年度の保険からその利払いもしていかなければならぬということも困ります。そこで、過去の累積赤字はたな上げをし、これは一般会計から払ってもらって、そのかわり単年度赤字の出ないようにしようというのがねらいでございます。  そこで、その内容につきまして、法律案の要綱として両審議会に諮問をいたしたわけでございます。その答申は両審議会からいただきましたが、両審議会必ずしも一致した答申ではございませんし、また一つの審議会におきましても、支払い側、あるいは診療側、また公益委員の意見の一致しないものもあったりいたした点もございまするし、すでにこれは予算関係法案でございます。したがって、これを訂正をいたすことは、予算政府決定をいたした後にはきわめて困難でありまするし、政府といたしましては、これが最善であるということで諮問をいたしたわけでございます。答申の内容につきましても、いろいろ貴重な御意見もございましたが、この際は政府考えておりましたとおり提案をいたすということに決定をいたしたような次第でございます。
  80. 多田時子

    ○多田委員 そういたしますと、審議会の意見の不一致ということもありますし、いろいろあったというふうなお話でございましたけれども、審議会の存在というものは、そうなりますと——こういうことは毎度繰り返されているようであります。昨年の予算委員会でも健保問題に私ちょっと触れましたのですけれども、こういうことが毎度繰り返されておる。では一体審議会の存在価値というものはどういうことなんだろうか。これはほんとうに素朴な質問だろうと思いますけれども、審議会に諮問をする以上は、やはりその答申を尊重した上で法案を作成するなり予算要求するなり、こういうふうでなければならないと思うわけですけれども、理由のいかんにかかわらず、そうした審議会を無視した、こう思われるような行動についてはどうかと思いますし、そうなりますと、審議会の存在意義というものをどういうふうにお考えなのか、こういうふうにも疑問に思うわけでございます。その点についてはいかがでございますか。
  81. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 このたびの財政対策に関する法案につきましては、ほとんど予算関係する部分ばかりでございます。したがいまして、そういった予算関係に非常に重きを置く法案につきましては、今後は予算編成前に政府考え方を諮問をいたしまして、その答申によって、それを尊重して予算を組むというようなやり方に変えたほうがいいのじゃないだろうか、かように考えておりまして、関係審議会とも寄り寄りそういう御相談をいたし、社会保険審議会の会長も、そういうような諮問のしかたにしたほうがいいのじゃないか、ひとつ検討しようじゃないかということで、今後はそういう方向で検討いたしたい、かように考えております。
  82. 多田時子

    ○多田委員 いまいろいろお話がありましたけれども、そうしますと、結局、今日まではそうした審議会の無視を繰り返してきて、ここで初めて、これからは審議会の意見を尊重しよう、こういうふうに態度を変更された。これは当然のことだと思いますね。審議会の存在ということを考えますと、いまあらためてそういうふうに、そういうふうにしたほうがいいのじゃないか、こういう言い方をされておりますけれども、それはもともと当然の話でございまして、法案は、審議会に諮問して答申を得て、そうしてそれに基づいて対策を立てて予算要求をする、そうして法案を作成する、こういうふうなのが当然の順序かと思われるわけなんですが、そういうふうに当然のルールを守ってそしてその法案をつくる、そうでなければ、国民本位といいますか、国民をその主眼に置いた一つの法案なり対策なりは立たないのではないか、こういうふうに思うわけでございますけれども、この点につきまして、総理、いかがでございましょうか。
  83. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん審議会を設けておる以上、その審議会の機能を十分尊重する、これはもう政府の基本的態度でなければならぬと思います。政府がその基本的な審議会の意向を無視するとか、こういうようなことなら、最初からさような制度は不要なんだ、かように実は思います。  ただ、今回の問題についていろいろ考えてみますと、どうも必ずしも審議会で、これがまとまった意見だ、こういうものが出てこない、こういう場合に一体どうなるのか。ただ皆さんの御意見を聞いただけだ、こういうだけではものごとが、どうも意見がまとまらないんだから一切手を染めるわけにいかない、こういうようにも思えないのです。やはり政府は政治を担当し、国民のためにそのことを担当して処理をつけていかなければならない。これはやはりいつまでやっても国民の負担ということになるのでございますから、そういたしますと、やはり一致した審議会の意見なら尊重するにやぶさかではございませんけれども、まとまらないというような場合に一体どういうように処置したらいいか。どうもこれは多数決というわけにもいかない。構成から見まして、これはいわゆる多数決、こういうものできめるべきものでもないようでございます。そこらに政府がたいへん苦心し苦労しておる点があるのでございますから、多田君にもこれらの点をひとつ御同情賜わりたい、かように思う次第でございます。
  84. 多田時子

    ○多田委員 意見の統一を見たか見なかったかということは、私も審議会の委員ではありませんからわかりませんけれども、この答申の冒頭に、「本法案については、全く内容同一な議員立法がすでに国会に提出されていると聞く。これは、違法ではないにしても、いまだかつて例をみないところであり、木審議会に対する諮問を形骸化しようとするものと認められ、きわめて遺憾である。」と、審議会の答申自体の冒頭でこのように述べているわけですから、この答申が意見が合ったか合わないかということはわかりませんにしても、出てきた答申の冒頭に相当怒りを込めて、審議会無視ではないか、形骸化しているではないか、こういうふうに言っているわけです。  以上の点はその程度にいたしまして、審議会の答申の中の一つ一つを、時間もありませんのでお答えをひとつ簡単にしていただきたいと思いますが、政管健保の赤字対策は抜本改正と切り離しては将来にわたっての財政対策として意味がない、こういったような意味のことを第二番目に述べておりますね。つまり「政府管掌健康保険の財政について、将来にわたる安定を目的とするものであり、医療保険の抜本的な改正の前提条件といわれている。もし長期的展望を含んだものであるならば、医療保険の抜本的改正とあわせて総合的に検討さるべき」ものであって、これだけ切り離して答申を求めようとするということはどうかというふうな意味のことがありますね。この問題に対していかがですか。
  85. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 医療保険の抜本改正はもう数年前からの問題でございまして、この際に何とかして、とにかく当分役に立ついい医療保険制度を実現したいというのがわれわれの念願でございます。その中には、国民皆保険になりました今日、いわゆる国民がどれかの保険に入っていたらいいというのではなくて、やはり国民全体が共同連帯の考えに立って、そうして病気をした場合にお互いに助け合うということが各保険を通じてなければならない。また、保険料の負担にしても給付にしても、保険の種類によって非常に違うということは皆保険の趣旨に反するから、それはひとつ公平な見地に立とう。また、いまの保険は軽い病気には役立つけれども、重い病気のときにはその一部負担さえも払うのに非常に困るということでありますから、高額な医療については全額保険で見るようにするというのが今日の保険に対する要望であろう、かように思うわけです。  そういうことが保険全体の抜本改正の考え方でございますが、同時にいまの政管健保は、先ほど申しますように多年累積赤字がたまってきております。したがって、保険の抜本改正をいたします場合には、そういった政管健保の財政対策ということも十分考えて、政管健保においても単年度赤字が出ないというような保証を取りつけておく必要がある。この二つがぜひ必要なわけであります。  そこで、政管健保の単年度赤字を将来生じさせないという保証をするということと、それから先ほど申しました抜本改正とは、不可分ではありませんが、しかし内容は二つに分かれているわけであります。そこで、政管健保の単年度赤字を出させない、四十七年度においても出させないということがまず急務である。これは予算関係法案として早く提出しなければなりませんし、また先ほど申しまするそのほかの抜本改正につきましては、国会で審議をしていただいて成立をいたしましても、内容が相当多岐にわたっておりますので、実施するのには四十八年度からでないと実施準備が十分整わない、こういうわけで二つに切り離したわけでございます。  そういうわけでございまして、決して他意あって二つに分けたわけではございません。そうして、二つに分けたためにどれだけの不都合がくるかというと、その不都合は何もない。財政対策を除いた抜本改正は、これは財政対策としてやるのではない、国民皆保険の本来の精神に従って改正をするということでありまして、この抜本改正が政管健保の赤字対策のためにやるというものでないという点をはっきりいたしまして、そうしてこの二本立てに割り切ったという次第でございます。
  86. 多田時子

    ○多田委員 いまの厚生大臣の御答弁ですけれども、その抜本改正と切り離したところに他意はない。またそれに対するデメリットというようなものもないというようなお話でございましたけれども、私はそうは思いませんで、たとえば賞与から千分の十の特別保険料を取るとか、あるいはまた上限を一千分の八十にきめるとか、こういうことは結局は被保険者にはね返ってくるわけで、やはり負担増になるわけでございますから、そうしますと、抜本改正によるいわゆるメリットもあることはわかりますけれども、それと、それからいまのこの健保の赤字財政対策というものと同時にスタートをして当然ではないか、こういう意味のことをこの答申の最後でもうたっておりますね。つまり政管健保の赤字財政を収入の増加面だけ求めて、支出面の改正が何ら考慮されていないというような意味のことがこの最後にあるわけですけれども、もし他意がないとするならば、そうした被保険者が被保険者の負担増となる賞与からの特別保険料とか、あるいは上限を一千分の八十にするというような不安定なものは、とりもなおさず抜本改正と同時に考え合わせて総合的にこれは実施する。また答申の意思もくんでいないところですから、そういうふうにされてまた当然ではないか、このように思うわけですけれどもいかがでございますか。
  87. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいまのお話は、抜本改正をやらなくても財政対策としてどうし七もやらなければならないという点をいわゆる政管健保の財政対策として提案をいたしたわけでございまして、抜本改正を行なって、そうして財政調整もやるということになりますれば、これは保険料も政管健保のほうは下がってくるという、自然にそういう効果をあらわすであろうと思います。しかし、抜本改正ということを抜きにいたしまして考えてみますると、政管健保はとにかくただいま提案をいたしました財政対策を講じてまいりませんと、単年度赤字もなくならないということでございますので、したがって私は政管健保の財政対策は対策として割り切り、そうしてさらに二段がまえのこの抜本改正をやればこういうようになるというほうがまあわかりやすいし、いいのではないだろうかと、かように政府としては考えております。
  88. 多田時子

    ○多田委員 ではちょっとこまかいところを一つ一つ伺いますけれども、この賞与から取ります特別保険料につきましてはどうなっておりますか。
  89. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 賞与からの特別保険料と申しますのは、とにかく保険料はその所得に、まあ能力に応じて千分の幾らというものを保険料として支払うことに健康保険はなっておりますが、そこで所得の中には、今日考えられている標準所得だけでよろしいかというと、実質的にいえばやはり賞与もその所得の一部ではないだろうかという点が一点あるわけでありまして、同時に保険料が高まってくるということになりますると、むしろ高額な賞与をもらっている方からも一部特別保険料として取ったほうが公平ではなかろうかと、かように考えまして、御承知のようにこの標準保険料を考えます場合に、総報酬によるかあるいはそうでないかという問題もあるわけでありまして、これは答申の中にもありますが、総報酬によってやるべきだという議論もあるが、これは相当さらに検討しなければならぬから、さしあたっては所得の中の賞与から特別保険料として取るのもやむを得なかろうというのが、制度審議会からの答申でございますが、そういう意味で能力に応じた保険料という場合には、毎月もらう月給のほかに賞与も幾ぶん加味したほうが公平ではないか、かような考え方に立ったものでございます。
  90. 多田時子

    ○多田委員 いずれにいたしましても、この法案はとにかく国民も相当注目をいたしております。それで特別保険料とかあるいは上限一千分の八十にするとかということは、そのまま私どもにはね返ってくるわけでございますから、答申によりましてもさまざまな修正答申が出ているわけですから、また先ほど厚生大臣予算要求後は諮問してもどうにもならないということを認めてもいらっしゃいます。そこでひとつ審議会を尊重されまして、あらためてその尊重するという姿勢を根本にいたしまして、もう一度この修正答申を考慮しながら法案作成に出直す、こういったようなお考えはありませんか。
  91. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 政府といたしましては、ただいま御提案申し上げました法案が、保険財政対策といたしましては最善であると、かように考えて提案をいたしておりますので、これをさらに取り下げて、そうして修正をするという考え方はございません。
  92. 多田時子

    ○多田委員 それでは、先ほど予算要求後は諮問してもどうにもならないというような意味のことをおっしゃいましたので、また総理にそのことについてお尋ねしたいわけですけれども、予算要求する前に諮問するということを、先ほどもちょっと総理がそれを認識していらっしゃいましたけれども、そのことについて、もう一度確認をしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  93. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはもう社会保障制度審議会だけではございません。あらゆる審議会があり、その審議会の答申は尊重しなければならない。それはもう政府の当然のたてまえでございます。そうしてそれがやはり時期を失して答申をされてもこれは困る。やっぱり時期がございますから、そういう際に、その時期を失せず答申する、またその答申も、それぞれの、ただいまいろいろな三者構成というようなことがございますから、それがそれぞれの団体の代表ということでなしに、やはり審議会は審議会として公正な結論を出した、各団体の調整もはかって出した、こういうものであれば、政府としてもたいへん尊重しやすいというか、それに従うことは当然ですから、そういうような方向であってほしいと思います。ことにこれは予算要求前にそういうものが出てくる、これまたそういうことでなければいかぬ、かように私は思います。
  94. 多田時子

    ○多田委員 総理のおっしゃることよくわかります。それがたてまえだというふうにおっしゃいますけれども、なかなかそのたてまえと実際とがイコールしないようでございまして、それはいまの御答弁にありましたように、あらゆる問題に対してそういう諮問機関があるわけですから、それをしかと尊重した上で、その答申を得た上で、国民の納得する法案というものを出していただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  続きまして、その問題とも関連するわけなんですけれども、政府当局といたしましても、また医療関係者もひとしく認めておりますように、医療問題の病根が一体どこにあるんだろうか、こういうことはもう以前から再三いろいろな角度で取り上げられてきているわけでございます。それは何かといえばおそろしいほどの勢いで伸びてまいります医療費、この医療費が医療経済をいよいよ窮地におとしいれている、こういうふうに言えると思いますし、そういうことですから、今回のような問題も起きてきますし、またそれは当然国民の生命または健康、こういうものも脅かしている、こういうように脅えると思うのです。この膨張する医療費のおもな原因というものは一体何か、こういいますと、これもよくいわれておりますところですけれども、総医療費の四二%を占めているといわれますいわゆる薬剤費、この薬剤費の実態というのは一体どういうふうになっているんだろうか。総医療費の四二%といいますと、約半数が薬剤費である。この問題について厚生大臣どうお考えになっていらっしゃいますか。
  95. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 総医療費が伸びてまいりますのは、薬剤の使用が多くなってきたからふえてきたというのではなくて、むしろやはり日本の何といいますか、御承知のように人口の構成が変わってまいって、そしてお年寄りが多くなってきた。また公害もふえてきた。いろんなそういうような点でいわゆる病気にかかり、また病気をなおすについても新しい治療その他が進んでまいりまして、そして医療費がかさむというのが主たる原因だと思います。医療費の中に占めている薬剤の割合が高いということは、これは私も認めるわけでございますが、しかしながら薬剤の乱用ということがあるとするならば、これはいろいろな方法でためてまいらなければなるまい、かように考えておるわけであります。したがいまして、毎年薬価基準をきめます際にも、現状の薬価の実勢に対応するように薬価基準を毎回引き下げてまいっておるわけです。ことしも薬価基準だけから申しますると、総体の三・九%を引き下げましたし、四十五年には約三%引き下げ、またその前には約五%引き下げたというように、薬価の実勢に対応して薬価基準も引き下げてきておりまするし、また薬の多用、乱用というものもできるだけ自制をするようにというので、診療報酬体系の中にも、先般改正をいたしました中にもそういう点も盛り込んで若干改正をいたしたという次第でございますが、今後もこれを続けてまいりたい、かように思います。
  96. 多田時子

    ○多田委員 いま薬価基準のことまで論及をされたわけですけれども、厚生大臣はよく納得をした上でおっしゃらないのかあるいは故意におっしゃらないのか、実際はなかなかその薬価基準の問題についてもまだまだ問題は山積しているわけです。  それで、その薬価基準についてなんですけれども、先ごろ中医協から出されました建議書の第二の薬価調査の項に次のような一節があるわけですね。「現在の薬価基準においては、薬価と実勢価格との乖離がみられ、このことが診療報酬体系の適正化を阻害している。」こういうふうにいっております。そのあとずっと続くわけですけれども、つまり薬価とその実勢価格、そしてまたその薬価基準をきめる薬価調査、その辺に問題がある、こういうふうに中医協では指摘しているわけです。これはいまに始まったことではなくて、再三再四取り上げられてきた問題ではありますけれども、そこで、きょうはひとつ、まあ薬価基準ではございません、それ以前に、製造の基準が全く同じと見られる薬がいわゆる製造企業によって大きく値段の開きがある、こういう事実があるわけなんですね。これはちょっと現物を持ってまいりましたけれども、まあ薬局から借りてきたわけなんですけれども、これは薬方とか成分とかあるいは薬効、それぞれ全く同じとこう思われるわけです。それですのに、片方は千三百五十円なんですね。片方は四百二十円なんです、同じ五ミリ、百錠で。しかも日本薬局方にちゃんと定められてある、いわゆる厚生省のお墨つきの薬局方に基づいてつくられたこの品物が、まあ名前も同じなんですけれども、これで三倍違うわけなんです。こういうことはちょっと私たちには納得できないわけなんですね。これは当然私たちがお店に行って、くださいと縛って買える品物ではありません。お医者さんから指示を受けて、そしてこれはリューマチの薬なんですけれども、たいへんよくきくんだそうです。きくんだそうですが、こういうふうに値開きがありますと、一体どっちがきいてどっちがどうなのかということは当然消費者の立場としては疑問が起こるわけです。で、私の知っているお医者さんにちょっと聞いてみましたととろが、これはきき目においても全然変わりはないと言うわけなんですね。そのきき円において全然変わりがない、しかもすべて同じと思われる、それで三倍の価格の差ということはどういうことなんだろうか。まずこの一点、お伺いしたいと思うのです。とともに薬効についてもおわかりでしたらどうか御答弁いただきたいと思います。
  97. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいまお持ちのお薬、ちょっとお見せを——この薬は薬価基準では、先般の改正によりましてたしか七百円に引き下げました。そこで、これは両方同じ時期にお買いになったのかどうか存じませんが、私のほうで調べましたところが、両方ともただいま卸には七百円でおろしているということでございます。小売り店でどうしてそう開いておりますか、いつお買いになられましたか存じませんが、二月一日からは薬価基準としては引き下がっております。どちらも同じ値段になっておるわけでございます。
  98. 多田時子

    ○多田委員 そうしますと、現在これは七百円で買えるということでございましょうか。この二つとも七百円——これは薬価基準のことでしょうか、小売りの値段のことでございましょうか。
  99. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 保険でお買いになれば七百円、そのうち、家族の分はもし健保であれば半額が自己負担、国保であれば三割が自己負担、そういうことになります。それで、保険を使わないで薬局で医者の指示薬として買われる場合には、これは薬局が自由に売れるということでございます。
  100. 多田時子

    ○多田委員 そうしますと、そういう値段の相違というものに対しては、薬局で自由に売ればよろしい、薬価基準としては七百円ときめたんだから、あとは薬屋さんがどういうふうな値段で売ろうとそれは御自由と、こういうことでしょうか。
  101. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 大体そういうことでございます。こちらできめますのは、保険で支払う薬の値段をきめております。したがって保険以外の分はこれは薬屋が自由にきめられる、自由価格でございます。
  102. 多田時子

    ○多田委員 この点は自由価格、もちろんそうではありますけれども、そういう値段の開きがあることについて——じゃ公正取引委員会委員長さんいらしていますか、その点についていかがでございますか。
  103. 谷村裕

    ○谷村政府委員 一般に価格は自由でありまして、どういう値段で売り、またどういう値段で客が選択するかということは、特別に統制をしていない限りまあ自由であるわけでございます。しかしもしその高い値段をつけていること自体が、たとえばそれが非常にいいものであるかのごとく人を誘引する原因になっているというようなことがあれば、それは不当表示の問題が出てくるかとも思いますが、しかし一般的に考えれば、同じような品物で同じ効能、成分のものであれば客は安いものを選択して買うというのが普通のことだと思いますので、お尋ねの件は具体的にどういうことであるかよく存じませんが、いま一般論だけお答え申し上げました。
  104. 多田時子

    ○多田委員 公取の委員長さんらしい御答弁でございましたけれども、もう一つここに持ってまいりました薬も同じようなことなんですが、いわゆる上限下限に千円の違いがある。こういうことで私たちは、その点は薬の値段に三倍、四倍という開きがあること自体が疑問でございます。  また、さらに薬価基準についてお尋ねをするわけなんですけれども、この間ちょっと新聞にも出ていたようでございますが、昭和三十八年に全国自治体病院協議会というのが発足をいたしました。これは公立病院八百三十七の病院が加入してできた協議会でございます。この協議会が全国自治体病院に薬をあっせんしております。このあっせん価格がまたたいへんお安いわけなんで、薬価基準と相対いたしますと、たいそう開きがございます。そこで、ちょっと表を読み上げてみたいと思いますけれども、私たちが比較的身近な大衆薬といわれるようなもの、それから専門的なお薬に至るまで、ちょっと代表的なものを七つばかりあげてみたいと思うのですけれども、これは活性ビタミン剤——ビタミン剤などは私たちもよく服用いたします。これが全自病の実勢価格というふうにいわれますが、この価格が四円。それで薬価基準が十円二十銭ですから、その差が、差だけで六一%になります。それからこれを一個で買うわけございませんので、千錠入りとか五千錠入りとか、こういうふうになりまして、五千錠入りになりますと、四円の場合ですと二万円、それから薬価基準でいきますと十円二十銭ですから五万一千円、こういうふうに大きな開きがあるなんですね。また、やはり活性ビタミン剤では、もう一つの分は四円四十銭と十円五十銭という五八%の開きがありますし、また、消炎酵素剤、これが十円のものが二十一円、その差五二%。あるいは精神安定剤、これは五円八十銭が十二円三十銭で五三%ですね。これはもう軒並みこういうふうにずっと約五〇%、六〇%の値開きがあるわけなんです。これはほんの一部なんですけれども、それこそ何百、何千というお薬が全部この価格で、こういうごく低い価格で売買をされている。そして薬価基準はいわゆる薬価調査によって九〇%バルクですか、こういうきめ方になってこの値段が出ている、こういうことなんですけれども、こういう点がやはり私どもは政管健保の赤字ということに何かつながっていく、その大きな因になる、こんなふうに考えるわけでございますけれども、その点についていかがですか。
  105. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいまおっしゃいましたような、何といいますか薬の販売の会社ができたことも承知をいたしておりますが、そういうような価格で取引されることがだんだんと多くなってまいれば、毎年やります薬価の実勢調査が下がるわけでありますから、薬価基準も下げてくるわけでございます。いまおっしゃいましたような価格でどの程度数量が動いたかということが、これから毎年調査をいたしまする薬価の実勢調査の中に入ってくるわけでございますので、したがいまして、先ほと申します毎年三%、五%と薬価を引き下げておりますのは、そういうものだけとは申しませんが、薬の問屋あるいはメーカーがお互いに競争して、そして値段を下げるということでありますると、むしろ診療報酬として払う薬代が下がってくるということになるので、好ましい傾向だ、かように思っております。
  106. 多田時子

    ○多田委員 両方下がればたいへん好ましい傾向ではあるわけです。ところがこの薬価基準については、いまも厚生大臣何回もおっしゃっていらっしゃいましたけれども、だいぶ改正をされておりますね。昭和二十五年の九月一日、物価庁時代、そのころに大改正が行なわれてから、改正回数が実に五十二回に及んでいる。しかし、何回改正されても、そのときの実勢価格と薬価基準との開きというものはばく大に開いているわけなんです。そこで、そういう点に対しては国民も一同不信を抱いていたわけなんですけれども、一般常識でも大体二〇%の開きがある。私がこのことで四十品目ばかり調べてみたのですけれども、その差を見ますと最低でも一六%、最高がいま言いましたように六一%、平均しますと約三〇%ぐらい開きがあるわけです。一般常識でも二〇%、私がこうして調べた中でも約三〇%。いま、そのつど改正をして薬価調査をして下げている、こういうふうにおっしゃいますけれども、三〇%、五〇%という、こう大きな開きに対して、その引き下げの値が三・九%あるいは三%、こういう数では全くお話にならない、こういうふうに考えるわけなんですね。ごくわずかずつしか下がらない。そのときの実勢価格から見ればうんと開いている、この点についてはいかがでございますか。
  107. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は、すべての薬について、ただいまおっしゃったような平均で実際売買されていると思いません。特別の薬につきましては、それは薬価基準の半額で売っているというものも中にはあるであろう、かように考えますが、すべての薬が平均して薬価基準の二〇%、三〇%よりも低いというようには考えておりません。ただ、薬価調査をいたします際に、できるだけいまおっしゃいますような薬価の実勢というものを把握して、そうして技術的になりますが、九〇バルクラインというところで薬価の基準をきめておるわけでございます。これも中医協でいつも問題になり、審議を進めているわけでございますが、できるだけわれわれも薬価の実勢というものを把握して、そしてそれに応じた基準をきめるように努力はいたしておるわけでありましたが、今後もその努力を続けてまいりたい、かように思います。
  108. 多田時子

    ○多田委員 引き下げるべく努力をしている、こういうことでございますけれども、やはり薬価調査と薬価基準のきめ方というのは、いまもいみじくもおっしゃったわけですけれども、やはりその辺に問題があるのではないか、こういうことで薬価調査の方法ですね。これがいままで毎度やってきていることなんですけれども、それですらなおかっこうして国民の納得する線には出てこない、こういうわけなんですから、その薬価調査の方法、そうしたものに対してこういうふうに変えていくとか、今後こういうふうに考えるとかいうようなことがありましたら、ひとつお願いしたい。
  109. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 一番の問題は、薬の売り手のほうの値段を正確に把握をするということ、同時に、買い手のほうの値段を正確に把握をするということ、そして、それは一年に一回というのではなくて、ときどき、場合によったら不意打ちにでもやって、そして実勢を把握をするということであろう、かように考えます。いままでは、どちらかといいますと、年に一回定時調査というようなやり方をやっておりましたが、今度の中医協の建議もありますように、定時調査だけでなしに随時調査をやるようにということでございますので、その線を踏まえてやってまいりたい、かように思います。
  110. 多田時子

    ○多田委員 いまお話しになりました随時調査、それが今後なされるということですから、それに期待をするわけでございますけれども、薬価調査あるいは薬価基準についてもう少し真剣に考えていただきまして、そうして薬価基準を引き下げることによって、その点からもし余剰があるならば、いわゆる医療技術の報酬ですとかあるいは薬剤師の報酬ですとか、あるいはいま膨大な赤字の若干でも穴埋めをするとか、そういったように、薬価基準を引き下げた余剰をその方向に向けるということのほうがより健全であろうかと思うのですけれども、この点について厚生大臣、もう一歩強力な前向きの姿勢がここで必要なんじゃないか、このように思います。
  111. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいまの点は中医協の建議の中にもございまして、薬価基準を引き下げたならば、その引き下げたものに見合うだけのものは、医者の技術料あるいは科学技術の進歩に適応した診療報酬に積みかえるようにという建議もいただいておりますので、したがって、薬価を下げたならば、それだけは、いまおっしゃいました医療従事者の給料になったり、また技術料に見合うように積みかえてまいりたい、これははっきり申し上げておきたいと思います。
  112. 多田時子

    ○多田委員 この問題はそのくらいにいたしまして、まだだいぶございますので、次へ進みたいと思います。  最初に通産省にお尋ねをしたいわけですけれども、最近ノー包装運動というのが行なわれております。御承知かと思いますけれども、過剰包装とか過大包装などに対してストップをかける、こういう運動が活発化してきているわけなんですけれども、これは必要以上のむだな包装はやめよう、こういう運動です。この前の国会でもこれが論議されていたようでありますけれども、確かに最近の包装というのは、商品の保護とか商品のサービスとかあるいは運搬上の支障のないようにとか、そういうような域を、範囲を大きく出まして、何かもうたいへん過剰になってきている。生鮮食料品までパッケージされている。お魚やお肉がパッケージされるなどということは私どもは考えられなかったことなんですけれども、そういうものまでいまはスーパーマーケットなどでは全部包装されて売られております。この辺に過剰包装という問題が出てきた因があると思いますけれども、この過剰包装という問題について、前宮澤通産大臣もこのことについてはお述べになっていらっしゃいますが、どのようにお考えをお持ちか、ちょっと通産大臣にお願いしたい。
  113. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘のとおり、商品の包装が持ち歩きに都合がいいとかということではなく、過剰包装になっておるという面がありますことはそのとおりでございます。そのためには運搬賃もかかるし手数料もかかるわけでありますし、運び込まれた場合のごみの処理に非常に困るわけであります。いま、中身と包装が同じぐらいじゃないかというような皮肉さえいわれるほどりっぱな包装がございます。いま必要がないのにビニールでもって包装をするために、ごみが高熱を出して燃えますので、焼却炉がこわれるというような問題もございます。ですから、これはなるべくやめてもらう。包装紙をりっぱにできるならば、それだけ安くしてもらえばいいわけでありますから、そういうふうにしてもらいたいということで通産省でも検討いたしておりますが、きめ手がないということであります。これはとにかく包装紙を簡単にしなさいと言っても、これは一つの過剰サービスということにもつながると思うので、御婦人にいま化粧品の箱などが非常にきれいだとか、そういうところから過剰包装が出てきたというのでございますが、とにかく中身と一体どのぐらいの比率でもって金額的にはいいのかというようなところまで通産省でもいろいろな検討をしてみたのですが、やはりあなたに質問していただくように、包装というものは中身じゃないのですから、そういうことはばかなことなんだというような議論を、国民的にそうなるということでないと、どうにもならないと思うのです。通産省も、デパートなどに対しましても、ごみ処理が困るから包装に対してはなるべく軽い包装ということにしてもらいたいというようなことは、通産省が、いろいろ寄っていただいて、いろいろな問題を討議をするときにはそういう話を出しておりますが、このごろは中小企業でも相当な包装をするというような状態になっていることは、これは遺憾だと思います。思うだけではということになると思いますから、これはひとつ何かいい知恵を教えていただければ、相談をいたします。
  114. 多田時子

    ○多田委員 この包装に関しては、包装新聞というのが出ているわけなんですけれども、包装新聞によりますと、通産省は消費者モニターをつくりまして、アンケートをとりまして、そして適正包装の基準づくりをされる、こう、たいへん通産省がその点については前向きである、このように伺っていたのですが、いまの通産大臣のお話ですと、どうやら話だけで終わっているような感じがするわけなんですが、そうしますと、この点はなかったこと、こういうことでございましょうか。
  115. 田中角榮

    田中国務大臣 ごみ処理の問題で包装問題を取り上げられております。取り上げられておれば、通産省何とかしなさい、こういうことになります。これは通産省の所管でもありますから。そういう意味で、通産省の中でもいろいろ議論をいたしておるわけでございます。しかし、その過大包装というものに対して、なかなか言うことを聞かないのです。ですから、包装とその中身を区別できないかというようなところまで、われわれもいろいろなことを検討いたしました。中には、商品券をキリの箱にちゃんと入れる。紙の箱でいいじゃないか。キリの箱も実際あとから困るのです。ですから、そういうことでもって包装のサービスというものを越しておることであって、中小企業などはそれをまねることによって中小企業の収益にも関するということでございまして、検討しておりますし、しかもデパート等に対しては包装の簡易化、ここでごみで困るのだからということでいろいろやっておりますが、どうもきめ手がない。だから、これ冗談のようにして、ひとつ印紙税のようなもので、包装をして送るときにはシールを張るように何か張れ、まあそういう珍案である、こういうことで出してみると、それは新税であって、とん税と同じようなもので、税金をすぐ取るということではいかぬという議論になってしまうのです。しかし、そういうところまでやらないと、この包装というのはサービス競争のようなものであるということで、包装がなかなか簡便にならない。特に高熱を出すビニール包装ということが非常に行なわれておるわけです。これは薬などはもちろんそういうことはいいことですが、何でもビニールの袋に入れて渡すということで、うちへ帰るとこれがごみになり、ごみは焼却炉を全部こわしてしまう。こういうことになるのでして、過剰包装もさることながら、そういう有毒ガスを出すようなごみ、ごみになる包装。まあ通産省でもひとつ一生懸命やりますから……。これ、きめ手がないということでございまして……。まあ私がいま答弁したようなことも、これは過剰包装しておるような人たちは、これはやはりやらなければいかぬなということになると思うのです。ですから、われわれも、会合のあるたびにひとつ——私自身が、いただきものなどをしたものを見まして、中身は非常に小さくて包装のほうは大きいということがありますから、こういうものはやはりほんとうに資源保護のためにも、資源節約のためにも、私そう思うのです。そういう意味で、ひとつ一生懸命やります。
  116. 多田時子

    ○多田委員 いま、ごみの観点からだいぶおっしゃっていらっしゃったようでございますけれども、私は物価の観点で問題にしたいわけなんです。物価高の原因になっているというふうに言えると思うのです。  もう一つは、やはりごみ公害なんです。ごみが公害に発展をしたわけなんですけれども、東京都もいまにごみで埋まってしまうのではないかというわけで、ごみの問題は昨年からたいへん世の中を騒がせております。あのたくさんのごみの三分の一は、こういう紙とか包装に使ったポリ容器とかそういうごみだ、こういうことなんですね、調べてみたんですが。それで通産省では、いまなかなか定義をつくるのはむずかしい、こういうことなんですけれども、私はそのむずかしいのを乗り越えていただいて、物価の安定のためにも、ごみの縮小のためにも、やはり一つの定義づくり、こうしたことをどうか積極的にやっていただきたいと思うのです。いま一生懸命やりますと、こういうふうにおっしゃいましたけれども、やはり何を一生懸命やるのか、こういうことでございまして、基準をつくるということをまずいろいろの角度から考えていただきたい。通産省の方にもいろいろ伺いました。確かに基準がむずかしいということでございましたけれども、やはりむずかしいから何もやらないのでは、これではお役目は果たせないということでございまして、そのむずかしさを乗り越えて一つの基準をつくるために、一つの方向をきちっと打ち出していただきたい、こういうふうに思うわけなんですが、この点もう一つお願いをいたします。
  117. 田中角榮

    田中国務大臣 これはごみ処理の問題がたいへんになっているという事実から考えても、こういうところからほんとうに、御指摘のようなことをやらなければならぬと思っておるのです。私のところなどでもごみの処理で困っておって、焼却炉というのをつくっておりますが、書類でも要らない書類を焼くということよりも、中身よりも包装のほうが大きいというような状態でございます。こういうものをひとつ経済企画庁とも相談をしてみますが、役所がいろいろな基準をつける、どうするといっても、なかなかきめ手がないのです。まあひとつ、新生活運動というようなものの一つでもございますし、これはやはり買う人が自覚をしてもらわないと、かっこうよく持ち帰るためにいい包装紙のほうがいいとか、りっぱな包装紙がいいとかいうことじゃ困るので、まあ通産省には、物価問題等でいろいろ婦人団体がおいでになりますから、あなた方、いい包装はひとつ包装紙代だけ引きなさいというような運動でもしていただくように、われわれのほうからもお願いをしなければだめだと思うし、各家庭でもやはりお互い買うほうが、包装紙の包装代というものはただではないのですから、そういう意味でそれだけ高いのだ、そのくらいのことをできるなら値引きをなさいというようなことを、やはり官民が一体になってやっていただかないと、私はこれからますますそうなるのじゃないかと思うのです。実際において本などを送ってきますと、確かに本よりも——本は雨にぬれたりしないできれいに手に入りますからいいことですが、しかし、木の紙と包装の紙の量は大体同じくないかなというくらいなものもあるのです。ですから、そういうところを——これは通産省の所管でございますからといっても、私のほうはほんとうに研究いたします。研究いたしますが、ごみは厚生省でもございますし、厚生省とも経済企画庁とも全部ひとつ相談をして、ごみ処理という面から検討いたしますが、あなたも御婦人でございますから、これはほんとうに婦人が過重な包装というものに対してきびしいひとつ批判をしていただくということをお願いしておきたいと思います。
  118. 多田時子

    ○多田委員 いま官民一体となってというお話がございましたけれども、私は、消費者に賢くなってもらうためにも、消費者保護基本法にもありますけれども、やはり選ぶんだったら選ぶ基準を与える、わからないのだったら知らせる、こういう態度が、姿勢が必要じゃないかと思うのです。厚生省は、そのことについてもすでに通達を出しているのですけれども——厚生大臣いらっしゃいますか、厚生省はこのことについて通達を出していらっしゃいますね。その後この問題についていかがですか。
  119. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいま通産大臣からるるお答えをいたしましたとおり、私のほうといたしましても、まあ過剰包装ということはできるだけやめてもらいたい、これはごみ処理の観点から申しましても、公害の観点から申しましても。そこで、百貨店協会等に対しましてもこの趣旨を申し上げまして、そして御協力を願っているというのが今日の段階でございまして、通産大臣の申し上げますように、やはり婦人に消費の面からもこの面をひとつ推進していただければありがたい、かように思っております。
  120. 多田時子

    ○多田委員 いま通産省と厚生省にお伺いをしたわけですけれども、大体消費者の問題というのは、やはり男性はたいへんうといんじゃないか、こういうふうに思うわけなんです。御婦人だからとこういうふうにおっしゃいましたけれども、このことについてはこの間も新聞にございました。あるデパートで野菜のせり売りをやっていた。ところが御婦人は黙ってそのせりを見ている。なぜかといいますと、うちの近所の八百屋さんよりは安いなとか高いなとか、いろいろ頭の中で考えているわけですね。すると、そばに男性がいますと、もう男性はぼんぼんと値をつり上げて、百円で買えるものを百五十円にも二百円にもしてしまう。そこである主婦が、やはりこれは男性にはまかせておけないという意味の、まあ、日ごろのうっぷんをそこに書いていたのだと思いますけれども、そんなふうなこともあるのですが、私は、やはり大臣の方々にもそういう点はよく御認識をいただきたいと思うわけなんです。  それで、総理もなかなかお買いものなどは行ける時間がないと思いまして、どういうのが過剰包装というのかというので、一つ持ってきましたから見ていただきたいと思うのですけれども、やはりこの問題は、物価とかあるいはごみ、そういう問題でたいへんなんですけれども、しかし、やはりいまの御答弁にもありましたように、あまり、じゃあこうしようという積極的な姿勢がないわけなんで、そこで住民運動というのが当然起こるわけです。住民運動といえば皆さんけっこうなことですとおっしゃいますけれども、その住民運動とあわせて、やはりそれに対する一つの方策というものがなければならないのじゃないか。そこで消費者の意見を言いますと、先ほど通産大臣もおっしゃっていらっしゃいましたけれども、贈答品というのは、中身より箱のほうが必要以上に大きのがたくさんあるわけなんです。その問題とか、また包装経費を節約して商品を安くすべきだと先ほど大臣はおっしゃっていました。それからもう一つ、包装分の価格をはっきり明示してほしい、こういうわけなんですね。これは不要な人には価格を差し引いて中身だけ売る、こういうことも必要。また公害防止の意味からも、もう少し商店の方々も自粛すべきだ、こういうことも言っています。またコマーシャルとごみの中から利益をあげている商売人は許せないなんて、こういうきびしいことも言っているわけなんですね。その他たいへんあるのですけれども、要するにいわゆるかっこよく見せて高く売ろう、こういうことでもありましょうし、または最近、消費は美徳であるというような、何となくたくさん使ってたくさん捨てて、そういうことが美徳のように思われております現段階、これはたいへん憂うることなんですけれども、そういう社会情勢に対してきびしく批判しているわけなんです。だから賢い消費者、こう言いますけれども、まともにそういうふうに、一つの物価の観点からも、ごみの観点からも、やはり過剰包装というのはこうでなければならないというふうに言っている方もたくさんいるわけですから、ひとつそういう人たちにこたえて、しかと対策が練られてしかるべきではないか、こういうふうに思うわけなんです。  いま、佐藤さんでお砂糖で申しわけないのですけれども、お砂糖をちょっと見ていただきたいと思うのです。中身が二百二十五円なんですね。これで幾らで売っていますかというと、五百円で売っているわけなんです。そうすると、必ずしもこの箱が三百円はしないわけなんですね。買えばせいぜい百五十円から二百円なんです。それがこう入りますと五百円になるわけなんですね。そうすると、こうして売ると、たいへんちょっと見た目もきれいですね。きれいだなと思うから、消費者が好む面もあるかもしれません。好むのは好むのでいいんですけれども。ただ中身と表側と、中身がこんなに安いのに五百円だというふうには思わないわけなんですね。こういうのは、やはり中身の明示が知らされていませんから、全体で五百円だとすればお砂糖はどのくらいだろうか、こう思いますね。お砂糖は正確には二百二十五円。そうすると、じゃ残りの二百七十五円がこれかというと、これは二百七十五円もしないわけです。せいぜい高くて二百円だと思います。そうしますと、商店に並びますと五百円にこうなるわけなんですね。ごみという観点もそうですけれども、やはりこれは、こうすることによって物価高になる、こういうことを言いたいわけなんです。この物価高の今日ですから、物価を下げるためにこうした過剰な包装は慎んでもらいたい、こういうふうに思うわけなんですね。  もう一つ大きいのを持ってきているのですけれども、ちょっと持ち上がらないかもしれない。これ、ちょっと見ていただきたいのですけれどもね。これ、半分しか入っていないのです。これは洗剤です。そうしますと、穴があいていますから、洗剤が入っているのは漏れますから、当然こういうように入れられないのですけれども、とにかく半分しか入っていない。これ、もらいますね。たとえば自分で買いますね。あと始末に困るのです、こういう入れものは。いま団地サイズの小さい家に住んでおりまして、皆さんのように大邸宅に住んでいる方はいいんですけれども、私どもなどは団地サイズの小さいところにおりますので、いただくにしても、こういうのが二つも三つもふえたら困ります。たまに金魚を入れている人なんか見ます、この入れものにでですね。これは、中身が九百七十二円、外側が約六百円なんですね。外側が六百円はしないと思います。こういうのは比較的いま安いんですから。これは、神戸の消費者協会と神戸市市民生活局、こういうところで調査をしたわけなんですが、こういうふうに商品全体としていつも値がつけられておりますから、一体中身が幾らなんだか全然わからないわけなんですね。  そこで、こういったような例のものをちょっと幾つか申し上げてみますと、ポリバッグに入っているもの、これがこれです。五百円の品物で、中身が二百二十五円。それから化粧かんというのがあるんですけれども、これも五百円で中身が二百七十円。そうしますと、この包装代といいますか、中身以外のものに対する値段が四六%。それからカラーかんというのがありますけれども、これも三千円に対して中身が千六百三十五円、その外側と思われる金額の部類が四五・五%。それからこの洗剤のほうで申しますと、リビングボックスというのがあるんですけれども、これはあまりたくさんになっているんで持ってきませんでしたが、これは二千五百円の品物なんですが、中身は千八十円です。これは五六・八%。ショッピングカードというのは、三千円の品物で千三百五十円が中身。ファミリーボックスというのが千五百円で中身八百十円。こういうふうに、ちょっとしたきれいな入れものに入りますと、ぐんとこうお値段が上がるわけなんで、私たちは物価高という観点から考えますと、かっこいい感じだし、見た目もきれいだしというふうに思いますけれども、私も全部これ不利益だとは申しませんけれども、やはりそれならそれなりに一つ方法があるんじゃないか、こういうわけなんです。確かに消費者には、商品全体としては幾らと、こう値がついていますけれども、中身幾らというふうにはありませんので、私はその点考えなければならない、こういうふうに思うわけなんです。  そこで一つとして、総理大臣は消費者保護会議の議長さんをつとめていらっしゃるということで、お伺いをしたいわけなんですけれども、こういう全体の価格と、それに対する包装と、そして中身、こういうことを、いまちょっと、まだまだ説明不足かもしれませんけれども、一応説明をいたしました。こういうことに対して総理としていかがにお考えかをちょっとお尋ねをしたいと思うのです。
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はあまり買いものをいたしませんが、それは中身だけは売らないのですか。(笑声)それを聞きたいのです。
  122. 多田時子

    ○多田委員 中身だけは売りません。
  123. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それは不都合ですね。それは不都合です。中身だけでけっこうだ。それをほしいんじゃないですか。私どもは砂糖がほしい。(笑声)そのかっこいい入れものはほしくない、そのとおりです。
  124. 多田時子

    ○多田委員 これについてまたあとでいろいろ質問をしたいわけなんですが、前国会で宮澤前通産大臣が、こういうことに対して、砂田委員ですか、質問されております。その質問に対して、消費者というものはこういう過大なものを——先ほどもちょっとおっしゃいましたね。好んで買うというのです。包装という部分を買っていく、こういうようにおっしゃっているのですね。私はそういうふうには思わないのです。なぜかといいますと、いま佐藤総理もおっしゃいましたけれども、中身が幾らというふうにわからないのですから、包装という部分だけを買っていくというふうな言い方をされると、私はちょっと疑問が起こるわけなんです。  というのは、こういうふうにして千五百円で売っておりますけれども、中身が幾らで、包装が幾ら、その他幾らと、こういうことが全然知らされておりません、消費者には買うときは。ですからわからないわけですね、全体としての値段はわかっても。そこで、そういうことから考えますと、通産大臣は包装の部分も買っていくだろうというあいまいな御返事なんですが、私はそういうふうな考え方にはちょっと疑問がありますし、消費者をちょっとばかにしている。愚弄している。もっと綿密にいわゆる担当当局としての指導をする必要があるし、また業者としても、もう少し消費者に対しては親切な売り方をすべきではないか、このように思いますけれども、その辺いかがでしょうか。
  125. 田中角榮

    田中国務大臣 宮澤君がどのようにお答えしたかもわかりませんが、一面の真実は述べておると思います。確かにテレビを見てもわかりますが、大道で売っておるものの包装は簡単でございます。中小企業はそれよりも少し安全性を持った包装をやっております。デパートなどはもう全く過剰というものでございます。中身の倍もするような包装をしておる。これはある意味では、先進国になってくると、だんだん包装は完備してくるということでございますから、その限りにおいては日本も先進国になったのだなあということは言えるわけでございます。  これは、買う方から考えますと、特に私は率直な意見を申し上げますが、これは、きれいな話だけしておったのではなかなか解決しませんから申し上げると、二百円の砂糖をなぜ四百円出して買うのか、こういうと、御自分のまわりの中小企業から目方買いをすれば、そんな高い砂糖にはならぬはずであります。しかもおつとめの帰りにちょっとデパートへ寄って買っていくということになるので、デパートやショッピングセンターの利用が大きくなる。そうすると、内容もさることながら見ばのいいものということで、中小企業などは格差をつけるような、まあ商売のうまさだと思います。  しかし、やっぱりそれは、私も生活運動としては一番考えなければならぬのは、確かにそういうものも実際において廃品の処理に困るのです。私たちも、押し入れをあけてみると、女という——あなたは知りませんが、物をとっておきますから、包装紙やそういうものでもってもう押し入れが一ぱいになっておる。これはどこで廃品利用するのかなというようなことさえもございます。ですから、こういう必要以上な包装というものをしておるものに対しては、それだけ高く売りつけておるのだというきびしい態度で、そういう必要以上の包装をやっておるところからは買いませんよという運動をしなければならないし、これは政府がやるとすれば、新生活運動の補助費を計上しておるわけでありますから、そういう重要なテーマとしてこれを取り上げるということは、私は効果あることだと思いますし、必要なことだと思います。どこの家庭でも廃品に困っておるということであります。困っておるものをなぜというのは、やはりかっこうのいいものを買う。中身を買うのではなくて、確かに見ばのいいものを買うという心理を業者が逆用しておるのだと思います。ですから、そういう事実を、私たちもこれからデパートやそういうような会議に対しては——会議よりも、私はこういう正式な場で答弁をしておるのでございますから、通産省としても所管の事項として、過剰包装に対しては自粛するように通達もいたしますし、いろいろな要請もいたします。いたしますが、消費者が、これだけ物価問題をうるさく言っておりながら、二百円の砂糖を六百円で買うというようなことをやっておるんじゃ、やっぱり商売人につけ込まれてしまって、ますます高いものを買うと私は思うのです。そういう意味で、行政的な問題とか制度上の問題で過剰包装というものに対してなかなかきめ手がないとしたならば、われわれが生活の知恵という中でそういうものをボイコットしていくというような運動を起こしたり、そういうことで実効をあげるように努力をしていくべきだと、ただいまの段階においてはそう考えます。
  126. 多田時子

    ○多田委員 いまの通産大臣の御答弁、伺っておりますと、ごみの山ができるのも先進国の一つのあらわれだ、こんなふうにも言えるかと思います。  そこでひとつ、ユニットプライスというのがあるのですが、御存じと思いますけれども、アメリカあたりでも盛んにこれが提唱されて進んでいるようでございます。それは単位価格ということなんですね。消費者へのサービスという、これはサービス精神でやっていることなんです。いま通産大臣のお話ですと、もちろん消費者もですけれども、半分以上は消費者に責任がある、こういうことですが、私は、消費者がそういうものを好んで買っていくという一つの風潮に対して、業者側に対する指導も必要じゃないか、こういうふうに言いたいわけなんです。それで消費者サービスとして、品物を安く売るということだけではなくて、単位価格の表示をしようということなんです。それは先ほども申し上げましたように、商品全体の価格ではなくて中身の単位価格を明示するわけなんです。  単位価格といいますと、たとえばちょっとこまかい話になりますけれども、牛乳は私ども毎日飲んでいるわけなんですけれども、紙容器に入りました牛乳が、百八十cc入りが二十二円——ちょっとこまかいですが、聞いていていただきたいのです。百八十cc入りが二十二円、二百五十cc入りが三十一円、それから五百cc入りが五十九円、千cc入りが百十円、こういうふうになっているわけなんですね。これを比べてみますと、私たちは、たくさん入っていれば中身は安くなるだろう、こういうふうに考えますけれども、さにはあらずで、これを百cc当たりにしますと、百八十cc入り二十二円ですから百cc当たり十二円二十二銭で、二百五十ccの少し大きいのになりますと三十一円なんですね。百cc当たりにしますと、十二円四十銭で、十何銭か高いわけなんです。たくさん入っているほうが安くなると思っていたら、そうではなくて、たくさん入っているほうが高くなっているのですね。同じ紙容器で。そうしますと、じゃ、いままでの通念として、たくさん買えば安くなるという考え方は違っていた、こういうことになるわけなんです。ですから、百cc当たり幾ら、こう値段が出ていれば問題ないわけなんです。それが全体で値段が出ていますから、消費者は全然わからない。高いものをついつい買わされる、こういうふうに業者の不当な誘因といいますか、そういうことにもなるだろうと思うのです。  もう一つ例をあげますと、皆さん方もよくコーヒーをお飲みになると思うのですが、コーヒーに入れますあのクリープなんです。クリープというのはたくさん種類がありまして、クリープがあって、ブライトがあって、ニドがあって、クリーマがあって、ソネットがあってカーネーションがあるというふうに、テレビなんかでもだいぶ宣伝をしておりますけれども、それがあんまり変わらないのですね。変わらないんですが、そこの微妙なところで違うわけなんです。消費者うまくごまかされるわけなんです、たとえば、クリーマは百九十グラムが二百五円、ブライトというのは百八十五グラムで二百十円。それから、ニドというのは八十グラムで百五円、同じくニドの百八十五グラム入りが二百十円。クリープの九十グラム入りが百二十円、二百グラム入りが二百十円、三百二十グラムが三百四十円。ソネットは三百八十五グラムが三百二十円、二百六十グラムが二百十五円。カーネーションが八十五グラムで百八十円。こういうふうに値段が少しのところでまちまちなんですね。中身がどうかということが問題だとは思いますけれども、クリープといったら一様に、ニドもカーネーションもソネットもこれはクリープだ、こう思って買います。買うときに、並んでいたら、やっぱりどれが安いかなと、こう見て買うと思うのですけれども、どれが安いかなという見分けがこれじゃあ全然つかないわけなんですね。百九十グラムとか百八十五グラムとか、ほんのちょっとした差で値段がちょっと上がったり下がったりしているわけなんです。消費者はうまくごまかされているなというふうな感じがするわけなんで、結局は消費者を惑わす何ものでもない。結局は、悪意はないにしても、業者のいわゆる作為的なやり方だ、こんなふうにも言えるのではないか、こういうふうに思うわけなんです。  そこで、その単位価格というものを表示すべきである、こういうふうに思うわけなんですが、もう一つ、これも神戸の生活科学センターが調べたのですけれども、一回お洗たくをするのにどのくらい洗剤が要るか計算をしてみたところが、普通のボール箱に入っているのですと、一回八円か十円だというのです、洗たく機にぽんと入れる一回の量が。それがちょっときれいなポリバッグの中に入っている洗剤を使いますと二十五円かかる、こういうわけなんです。それだけやっぱり華美な入れものには値段がついている、こういうふうに思うわけなんです。そこで消費者にいわゆる選ぶ自由、選択の自由を与えるために、ぜひともこの単位価格を明示してほしい、こういうものをひとつ義務づけていただきたい。こうすればこういう問題はさらさらなくなる、こういうことなんですが、この点についていかがでしょうか。
  127. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘でございますが、単位価格の明示は非常に技術的にむずかしいということを明確に申し上げておきます。同時に、商売の品物には全部単位価格と包装紙の料金をつけろと言ったら、それは事実できません。これはコストアップになって、それだから一割上げましょうということになるので、そういうことは全然できませんし、それを法律とかいろいろな行政指導とかといっても、これはいま人手の非常にかかることでございますし、大体商売というのは商人の術というのでございますか、物を売るためにはいろいろな知恵を出すわけです。昔は油を売るときに糸を通じて売ったという物語りがございますが、これをます売りにするか、かん売りにするか、たる売りにするか、酒でも同じことであります。そういう意味で、内容だけを明示するということはなかなかむずかしいのです。  だからこれは、やっぱり国民自体が、このくらいに物価問題がうるさくなっているときですから、御自分のさいふが減るのですから、デパートなどで、包装紙は要りません、包装は要りません、私が持って帰りますという方がほんとうにあったなら、この問題すぐ片づくのです。何でもかんでも政府が法律をつくって行政指導をやれといっても、これはとてもできません。中小企業などでは全然正札もついておらない。ついておらなくても、消費者の良識でもってちゃんと選択はできるわけであります。あの店は高い、あの店は安いということでお得意がつくわけでございますので、デパートだけを対象にしたように、すべてのものに正札をつけろ、それから単位価格まで区別をして表示せよということは、いまのところで、これは物価を引き上げることに籍口する一つのあれになるのであって、これは自然の流れの中で、十年、十五年のうちには、そういうようなまじめな商態度をとる人はあるかもしれません。しかし、これを一律に単位価格を明示せよということは、これは言っても実効はなかなかあがらない、こういうことでひとつ御理解いただきたい。
  128. 多田時子

    ○多田委員 通産大臣は、この問題あまりやる気がない、こういうふうに了解をいたしますわけなんですが、公取の委員長さんいかがですか、そういう点につきまして。
  129. 谷村裕

    ○谷村政府委員 こういう点についてとおっしゃったのが二点あったと思いますが、一つは、包装部分あるいは内容部分についての価格を分けて示すべきだという点、それからもう一つは、いわゆるユニットプライスを表示せよという点であったと思いますが、あとのほうだけでございましょうか。前も含めてでございましょうか。  前のほうの問題になりますと、私は過剰包装の問題というのは二つあると思うのでございます。一つは、いわゆる私どもが自分たちの生活のために買うもの、当用買いのものについては、まさにそこで何も容器を買うのじゃない、入れものを買うのではなくて中身を買うのだ、こういう観点でやるわけでありますから、通例は、私どもは洗剤を買うときには、ボール箱に入ったものを買いまして、そのようなものは買わないはずであります。たとえば砂糖でもそうでございます。しかし、贈答用品というようなものに、えてしておっしゃるような過剰包装、過剰容器のものがあるように思います。贈答用品が私はこういう問題を起こしておる一つの状態であるというふうに思います。私どもの立場からいたしますと、われわれが買いますものについての内容量、そしてその品質、そしてまたその値段、それが明確に表示されておるのが望ましいのでございますが、よくみやげものなどにはそういうものがあって、私どもはだまされることがございます。  そこで、お尋ねの内容量と包装費とを区別して表示するのがいいようなものが、これはすべてにわたってそういうことをやれというわけにはなかなかまいりませんけれども、ものによりましては、そういうことをやって、そうしてその選択を容易にするということが、過大な包装によって顧客を誘引しているという不当表示のような例に当てはまるものがあれば、私どもは、それを特別に、公正競争規約なり、あるいはまた私どもが商品を指定してそれを義務づけるということは個別にあり得ることだというふうに私は考えております。  それから第二のいわゆるユニットプライスの問題でございますけれども、おっしゃるとおり、どのくらいの内容量が入っておるかということとその値段というものを直ちに換算して買うということは、たいへん困難なことであります。これも、いま通産大臣の言われましたように、すべてのものについてそういうことをやれというわけには私はまいらないと思いますけれども、ものによっては、それがやはり消費者の選択を惑わせる、そうして不当な顧客誘引の手段になるというものに該当いたしますれば、私どもの立場としては、それをやはり公正競争規約なりあるいは不当景品類及び不当表示防止法の四条の三号というものによりまして、それを商品ごとに指定するということも検討すべき問題であるというふうに考えております。   〔中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕
  130. 多田時子

    ○多田委員 若干前向きの御答弁でございましたけれども、私は贈答品であろうと何であろうとそれはいいわけなんです。とにかく、ごみの因になる、そしてそれがそのまま物価高につながる、こういうことから、いまいろいろと申し上げたわけなんです。そしてまた、品物もすべてとは申しませんで、中身が同じようなものはそうすべきである、こういうふうに考えるわけなんです。  そこで、時間もありませんので先へ進みたいと思います。  もう一つ包装で、総理大臣、奥さまがいろいろ買いものをなさると思いますが、いまのスーパーでは肉や野菜でもみんなぴしっとパッケージされております。プレパッケージと申しますけれども、見た目にはたいへんきれいですし、衛生的な感じがいたしますし、特にさっきもお話がありましたけれども、共働きの奥さんが帰りにお買いものをするのにはたいへん便利にできております。お魚が水が出てくるようなのではなくて、きちっとパッケージされておりますから、持ち歩きもたいへん便利です。ところが、これもメリット、デメリットいろいろございまして、一つは中身の選択ができない、こういう苦情もあります。それから一つでは少ないし二つ買っては多過ぎて困るしというようなこともあります。中身が腐っておるか生きがいいかということが見分けがつかないというようなこともありますし、いろいろとあるわけなんです。  ところが、最近何人かの奥さん方に聞いてみましたところが、たいへんやはり問題が多い。これはちゃんと規制がされているわけなんですけれども、煮豆を買ったら腐っておりましたとか、キュウリを買ったらぶよぶよだったとか、あるいはワラビを買ったらぬるぬるだったとか、鳥肉を買ってパッケージをとったとたんにぷうんとにおったとか、これはたくさんそういう苦情があるわけなんです。その腐ったのをどうしましたかと聞きましたら、みんながその場で捨ててしまったというわけです。捨ててしまうものを買うほど高いことはないわけなんです。これまた物価高の一つの要因にいまなっているわけなんですけれども、そういうわけで、そういうふうに中身が腐っていれば、最高の高いものを買ったということになるわけなんです。特にお肉の場合は、これは厚生省ですかの表示の義務というものが食品衛生法施行規則の第五条にあるわけなんですね。ところが全然それは守られていない。いわゆる会社の名前は入っていますけれども、製造年月日は全然入っていないわけなんです。これは消費者保護基本法の第十条にもうたってありますし、食品衛生法にもうたってありますし、この点に対して、そういう事実、実行されていないという点について、厚生大臣いかがでございますか。
  131. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 たしか肉の場合には、牛肉であるか、あるいはウサギの肉であるか、いろいろな問題がありましたので、それは明示をするようにというようにいたしたはずでございます。そのとおり行なわれていないといたしますると、取り締まりが不徹底である、かように考えますので、これを徹底させるようにいたしたい、かように思います。
  132. 多田時子

    ○多田委員 それからもう一つ、製造年月日でお尋ねをしたいわけなんですが、製造といいますか加工年月日なんですね。加工年月日というものは、どこの時点でこれは入れるのでしょうか。お肉屋さんが肉をおろした時点で入れるのでしょうか。それともそのもとで入れるのでしょうか。どの時点で製造年月日、加工年月日という日付を入れるか。日付は、いまここにも持ってきておりますけれども、全然入っておりません。どの肉屋さんへ行っても入っていません。ですから鳥肉の腐ったものを買うことになるわけなんですが、どの時点でそれをぴちっと入れてくださいますか。
  133. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 これは製造工場において製造した年月日を入れることになっていると思います。
  134. 多田時子

    ○多田委員 製造工場で入れるということになりますね。それでよろしゅうございますか。——そうすると、製造工場でさようならきょうの日付が入って売られて、それからあすなりあさってなり日にちがたって売られるわけなんですけれども、加工年月日という日付と同時に、私は加工年月日だけでは片手落ちだと思うのです。なぜ有効期間というものが入らないかなんですね。だから、製造年月日は入ったとしても——いま入っていませんけれども、入っていても、いつまでならばだいじょうぶという一つのものがなければ、片手落ちになりませんか。この点どうでしょう。
  135. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 確かにおっしゃる点があると思います。薬のほうにいたしましても、いつまで使用してよろしいというように耐用年月といいますか、それのほうがいいものも品物によってあると考えますので、ただいまの点はよく検討をいたしたいと思います。
  136. 多田時子

    ○多田委員 いまは有効期限というものの必要性をお認めになった、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。そしてそれは検討されて実施の方向でいく、こういうふうでよろしゅうございますか。  それでもう一つは、これから魚もパッケージされるということなんですね。これは時代の成り行きで、人手不足とかいろいろな理由でみんなそうなってきます。そうすると、私たちは買いものをする立場でたいへん困るわけなんですけれども、時代の趨勢としてしかたがないと思いますが、魚にいたしましても、野菜にいたしましても、いわゆるJAS規格でも、あるいは食品衛生法でも、ここには漏れておりますね。実はきょう厚生省が食品衛生の問題でたいへん前向きな措置をとられた、こういうことをけさの新聞で拝見いたしまして、おそまきながら一歩前進、こういうふうに評価をするわけなんですけれども、この今後ますます盛んになる魚と野菜についても、食品衛生法なりJAS規格なりではっきりと規格をきめるべきではないか。ひとつ表示の義務づけをするべきではないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  137. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 本日、食品衛生法の改正を提案をいたすべく閣議決定をいたした次第でございます。この改正は非常に幅広うございますが、その中におきましても、政令その他でただいまおっしゃるような事柄が規制できるようになると考えております。ものによりまして実行の非常にむずかしいものもあると考えますが、できるだけ実行可能な限り、おっしゃる御趣旨に沿うようにいたしてまいりたい、かように思います。
  138. 多田時子

    ○多田委員 いまの加工年月日はよく入れるように指導をするということでは私はちょっと不安なんです。しかし、厚生大臣のその話を伺いまして、また今後見守っていきたいと思っております。  最後に総理大臣に、いま野菜とか何かのプレパッケージと過剰包装との二点について伺ったわけなんですけれども、これは結局何だかんだいって全部消費者にかかってくるわけなんです。だから、消費者が賢明になれというようなお話でございましたけれども、消費者保護基本法という法律もあることでございますし、ごみ公害とか物価高ということはゆるがせにならない事実でございますので、いまいろいろ御答弁いただきましたけれども、最後に総理から一言、これについて御答弁いただきたいと思います。
  139. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過剰包装についての御議論、種々私も伺っておりまして、とにかく消費者もどうも包装そのものがほしいのじゃないから、これは適当な処置をとりたいものだ、かように思います。先ほどは砂糖の例で申しました。さっきおっしゃったものですが、中身がよくわからなかったのですが、まるいものの中は何ですか。
  140. 多田時子

    ○多田委員 洗剤でございます。
  141. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 洗剤ですか。これあたりも洗剤が皆さんほしいのだろうし、ずいぶん大きな容器、これをまたあとで焼却する、それもなかなかできないようなものではないかと思っているわけです。そういうことを考えると、あとのごみの処理にも困る、しかもそういうものに高い金を払う、そういうことを考えると、二重、三重にこの問題が残るようでございます。だが、これはひとつお互いに、販売者もまたこれを買う人も十分こういう事柄については関心を示してもらいたいと思います。おそらくそういうものが贈答品として使用される、こういうことだろうと思いますけれども、それをいただきましてもたいへんで、やはりすぐ使えない。また先ほど田中通産大臣が正直に申しておりますように、こういうものが最初一つはおもしろそうに見えても、次々に出てくると処置に困る、こういうことじゃないかと思います。  そうしてただいま最後にお話しになりました魚あるいは肉類等、これは十分私どももそのものを認めて、そうして鮮度を見るとかあるいはまたにおいをかぐとか、そういうことが必要だろうと思いますが、そういうことの選択の余地もないような包装、これはたいへん危険なものでもある、かように私は思います。ことに先ほど来いろいろ日付はどういうふうにつけるかというようなお話がありました。ただいま私ども普通に考えましても、冷凍の倉庫は整備されている。そういうところへ入っておる間はだいじょうぶですけれども、そういうところから出されて、そうして数時間の後には変質する、こういうこともあるだろうと思いますので、そうなってくると、これは値段だけの問題ではなく、また衛生上もしばしばそれが腐敗したとかいうことで問題になる、かように私思いますので、よほど安心のできるような処置がとられないと、どうも消費者としては、完全な消費者保護というか、完全に保護されておらない、かように思いますので、ずいぶんいろいろな問題を含んでおる。先ほどのお尋ねは、要約してそれぞれについての特質上非常に簡単なお話でございましたが、しかし、なかなか簡単なものでなくて複雑なものであり、その影響するところもたいへん多岐にわたっておる。したがってこれに対する処置は、もっと専門の者がいてもしかるべきではないだろうか、かように思っております。いままでのような扱い方だけではどうも済ませない。新しい時代の要請にこたえる、こういうことでないと、御指摘になったような点を十分満足のいくようなこたえができないのじゃないか、私はそういうことで非常に心配したような次第でございます。  簡単に私の感想を申し上げておきます。
  142. 多田時子

    ○多田委員 あとわずかでございますが、文部大臣に最後に一つだけお伺いをしたいわけなんです。  副教材の無償という問題についてなんですが、四十五年来、毎回この副教材の調査費をつけるということで今日までこられました。今回調査費がついたということでございますけれども、義務教育の教科書が無償になりましたが、その教科書の無償の費用に数倍して副教材の費用がかかっているわけなんですが、これはこまかい説明がもう時間がなくてできませんけれども、文部大臣、副教材を無償にするという意思がおありかどうかということを、ひとつお伺いをしたいと思います。
  143. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お答えいたします。  義務教育の無償という理念はなるべくこれを広く取り入れたいと思います。今回実は、予算の面から申しますと、父兄が支出した教育費調査という予算項目がございますが、これが四十六年度の百八十五万九千円、これに対しまして今年は五百三十一万一千五百円というように、三百四十五万ふえておるのであります。これで調査を進めますが、御承知のように副教材は学校へ義務として使わしておるものではございませんし、また非常に多極多様でございます。これを一挙に国費でもってまかなうということは容易なことではございません。  そこで、教材費の十カ年計画というものは、昭和四十一年に策定いたしまして、昭和五十一年までに八百億つけるという計画でやっておりまして、今年も九十三億円計上されておるのであります。しかし、そうは申しましても、たとえば家庭が貧困なために、ほかの子供は辞書を持っておるけれども、持てないという要保護児童あるいは準要保護児童、こういう子供たちのためには、国や地方団体が力を合わせまして、これには相当する費用を実は計上いたしておるのであります。  御参考までに数字を申し上げますと、副教材の購入費といたしまして、準要保護者にかかわるものを一億七千二百万円、これを出しております。教材費の中では学校で共通に使います教材費に充当するというようにいたしまして、先生が長い間主張しておられます、私もお約束を申し上げましたので、この予算はそういう形でとったというように御了承をいただきたいと思います。
  144. 多田時子

    ○多田委員 もう一つだけお願いをしたいと思います。副教材は無償の方向に向かって調査費をつけた、こういうことで理解をいたします。  最後に、国立大学の授業料が値上げがされるということになっておりますが、現段階どういう結果になっておりましょうか。四月一日から上がるのでしょうか、どうでしょうか、その点について。
  145. 高見三郎

    ○高見国務大臣 国立大学の授業料は、御承知のように昭和三十八年に値上げいたしまして以来、九年間据え置きになっております。今回これを月千円を三千円ということに値上げをいたすことに決意いたしました。しかし、これは値上げすることによりまして、現在おります学生が負担するのじゃございません。新入生からいただく。同時にまたこれにあわせまして育英奨学資金を大幅にふやすことにいたし、それから何と申しましても私学の問題が一番大きな問題になるのであります。私は私学と国立の大学との格差の問題を論議するのじゃございませんけれども、私学を助成するのでなければいつまでたっても解決しない問題だと思いまして、私学に関しましては、令年度は前年度に比べまして五二%増の補助金を出すことにいたしました。その意味において育英奨学の金は、大学院については、今年入ります者のみならず、現在在学している者にもこの奨学資金を出すことにいたしました。ただ、三倍、三倍と申しますけれども、学部について三倍でありまして、大学院については二倍であります。高等学校についても二倍であります。それから特殊学校については据え置きでございます。必ずしも全部が三倍であるというように御理解願わないようにひとつお願いをいたしたいと思います。
  146. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 多田君に申し上げますが、時間が経過しておりますから、簡単にお願いいたします。
  147. 多田時子

    ○多田委員 もう一ついま私が伺ったことには御答弁になっていらっしゃらないのですが、四月一日から上がるのかどうかといま伺ったわけなんです。
  148. 高見三郎

    ○高見国務大臣 たいへん失礼しました。四月一日から上げる予定でおります。
  149. 多田時子

    ○多田委員 予算が通過いたします前に上がるということになりましょうか。
  150. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お答えいたします。  予算が成立するということを前提に考えております。
  151. 多田時子

    ○多田委員 それはそういうことは不可能だと思いますけれども、またそこには技術的ないろいろな問題もあろうかと思いますが、副教材無償と、それからその問題について総理に一言最後にお願いをいたしたいと思います。
  152. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの大学の授業料、高等学校その他のものは、文部大臣から答えたとおりでありますし、また副教材、このほうはなかなか複雑な問題があると思いますが、しかし、何らか金額がきめるような方法ができるかどうか、ただいま一応暫定的な措置がとられておりますので、それで御了承をいただきたい、かように思います。
  153. 多田時子

    ○多田委員 以上で質問を終わります。
  154. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて多田君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎君の保留分の質疑を許します。  この際、楢崎君に申し上げます。楢崎君の先般の質疑のうち、T2練習機購入費の積算基礎については、秘密理事会において楢崎君出席の上二時間余にわたり検討いたしましたが、随意契約の場合といえども事前に公表されないことが適当との結論でありましたので、御留意の上御質疑を願います。楢崎君。
  155. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この予算委員会は予算をきわめると申しますか予算の妥当性についてわれわれは判断を下す、そういう立場であろうと思うのです。それで私はいろいろある中で、特にT2高等練習機の一機当たりの積算基礎についてただしたわけでありますが、これは公表できないということで秘密理事会にわたったわけであります。しかし、私は本来こういう国防問題で秘密があってはならない、シビリアンコントロールとは国民がコントロールすることであるということであれば、やはり国民に実相を知らせるということが必要であろうと思うのです。しかし事柄の性質上どうしても言えないというものもあるかもしれません。ただ、今度の場合は、ここに問題があるのですが、いまの防衛庁が新装備をする際に、防衛産業に対して発注あるいは調達する場合にはほとんどが随意契約になっているのですね。特に今度のT2の場合はもう相手がきまっております。機体は三菱重工がメインになっておる。それからエンジンは石川島播磨だ、きまっておるのですから。これは競争入札ならデリケートなところがあるかもしれませんけれども、随意契約ですから、これをマル秘にするという理由はほとんどないと私は思います。いま秘密理事会でいろいろ説明を聞きましたその結果の私の判断であります。しかし理事会で一つの方向を示されました。したがって、私はできるだけそれを尊重しながら、可能な限り中身が国民の前にわかるように質問したいと思うのです。時間が非常に限られておりますので、ある点は一つのきめつけになるかもしれませんが。  そこで、国民がいまこの問題について一番疑問に思っておるのは、四十一年当時一機四億円であったものが四十五年の秋の段階では十億円になる、そして今度いよいよ四十七年度出てきた予算を見てみると十四億円になっておる。なぜこんなに高くなったのだという素朴な疑問が私はあろうと思う。われわれはそれに答える必要があろうと思います。  そこで、まず四十一年度四億ないし五億という見積もりのもとにいわゆる国産化がきまった。当時、輸入か国産かで争われた。そのときの、国産にすればこれだけの価格でできるというその四、五億という価格は、実は国産か輸入かの争いに占める重要性は非常に大きかったと思うのですね。それで、四十一年度その国産化決定の基礎になった四億ないし五億という一機分の積算の基礎をお持ちですか、お持ちでないか、まずこれを伺います。
  156. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 楢崎委員が秘密会で示されましたこの問題についての異常な熱意、こういったものにはわれわれもたいへん感銘をいたしました。それで、これは秘密会を通じまして、積算の根拠については、政府委員から詳細にわたって申し上げさしたわけであります。まあ見解の開きがあったかもしれませんが、なお、時間を節約する意味で、政府委員から率直にそのあたりを答えられる範囲で答えさせたいと思います。
  157. 黒部穰

    ○黒部政府委員 四十一年当時、輸入の候補にあがっておりましたT38というアメリカ製の練習機が、大体四、五億円で輸入されるかという話はありますけれども、防衛庁では国産の場合に、四億円という数字は出しておらないわけでございます。四十二年に、前回の答弁でも申し上げましたように、六億円何がし程度の、非常に粗雑ではございますが試算したものがございます。
  158. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまのお答えを聞いてみますと、四十一年度に国産化をきめるときの一機当たりの見積もり四億あるいは五億、これの積算基礎がないというのは、私は実にずさんきわまると思うのです。これできまったのです、国産化が。私はあると思うのです。それをないと言う。まずここに非常に不明朗な問題がある。このとき私の調査したところによると、大体この種の戦闘機等の場合に、一機当たりの機体に占めるエンジンの比率は大体三分の一というのが常識でありますから、この四十一年度一機約四億ないし五億と見積もったときのエンジンの一台の価格は、石川島からたしか七千五百万円ぐらいの見積もりが出ているはずであります。では四十二年度は、いま約六億とおっしゃいました。このときのエンジンの占める価格、これは常識からいうと三分の一ですから約二億ぐらいだという見積もりであったはずです。間違いありませんか。
  159. 黒部穰

    ○黒部政府委員 当時四十二年度の試算のときは、二台で二億一千三百万というふうに試算いたしております。
  160. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは四次防の原案、つまり中曽根原案でございますが、五兆二千億のあの中曽根原案のときのこのT2の一機当たりの見積もりは、十億程度ということがすでに明らかにされておる。このときのエンジンの価格は、結局三分の一ということであれば約三億円、このように見ていいわけですね。
  161. 黒部穰

    ○黒部政府委員 二台で三億一千六百万と計算いたしております。
  162. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ところが、四十六年いざ四次防の防衛庁原案決定をする段階で、例のロールス・ロイスが倒産した。そこでエンジンの急騰が伝えられた。このときロールス・ロイスから大体、新聞にも当時報道されておりましたが、このくらいになるというふうに英国から伝わっていった価格は四次防原案作成前、つまり一機十億のときのエンジン三億一千六百万円の約二倍ぐらいの、つまり六億ぐらいの値段に上昇するとい引ことが英国から伝えられたということが各新聞にも載っておりましたが、大体その程度でございますか。
  163. 黒部穰

    ○黒部政府委員 大体そのとおりでございますが、ロールス・ロイス社が倒産いたしまして、国策会社のロールス・ロイス一九七一という会社ができまして、この新会社からの提案によりますと、従来考えていた線のほぼ倍、二台で六億近いエンジン価格になるという提案がありました。これは従来ロールス・ロイスが原価の把握に非常にぬかりがあって、新会社において十分吟味したところ、やはりこういう値段でなければいけないということで提案があったわけでございます。
  164. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 さて、二倍にエンジン価格がなるということになるとたいへんである、ここでまた国産か輸入かという論争が起こった。で、昨年四月に防衛庁は佐藤空将補を調査団長としてロールス・ロイスに派遣なされた。その結果いろいろ交渉をされて、結局石川島播磨もいろいろそれにタッチしたのかどうか知りませんが、この四十七年度予算一機十四億の中でエンジンの最終的な見積もりが出ておると思います。それは言えるのですか、言えないのですか。
  165. 黒部穰

    ○黒部政府委員 前回にも申し上げましたとおり、内訳についてはこの際公表できないわけでございます。  なお、前回橘崎先生に対する私の答弁の中で、T2のフライアウェイコスト、つまり初度部品を除いた裸価格が十一億七千八百万円と申し上ぐべきところを十二億七千八百万円と申し上げました。訂正さしていただきたいと思います。
  166. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それではこういう伺い方をします。  四十五年秋の当時の十億円が今度十四億円になった、つまり一機について見積もりが四億円上がったわけですね。そのアップした四億円の中に占めるエンジンのアップ分は何%ぐらいですか。
  167. 黒部穰

    ○黒部政府委員 非常に大ざっぱな言い方で半分ぐらいというふうに御理解いただきたいと思います。
  168. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま一連のやりとりの中で明らかになりましたとおり、エンジンの急騰ぶりが結局全体的なT2の価格上昇に大きな影響を持っているということがわかったと思います。  そこで、四十四年度に契約をした試作機、それから四十五年度に契約した実用試験機、この場合のエンジンはいわゆる輸入したわけですから、このときのエンジンは、四十四年度の場合は二台で一億八千七百万、四十五年度は二台で二億二千九百万、これはすでに買われた分ですから、間違いありませんね。
  169. 黒部穰

    ○黒部政府委員 間違いございません。
  170. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この間のアップ率はたった一年でどのくらいになりますか。
  171. 黒部穰

    ○黒部政府委員 二二%であります。
  172. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大体二二・六%ですね。四捨五入すれば二三%です。この値上がりは実にひどいと思うのですね。これは全くあなた方はロールス・ロイスの言いなりになっておる。またならざるを得ないのですね。そうでしょう。それは間違いありませんね。
  173. 黒部穰

    ○黒部政府委員 確かにロールス・ロイスの値段が過去においても二二、三%上がるというようなこともございましたし、また新会社になりましてから、実は原価はこうなんですということでたいへん大きな金額で要求されたわけでございます。わがほうは、これでは計画を改定せねばならぬということで、中でもいろいろ他のエンジンを使うべきかも研究いたしましたし、またロールス・ロイスに対してはもっと値段を下げなければ買い得ないということできわめて強烈な交渉をいたしたわけでございまして、必ずしも言いなりになっているわけではございません。
  174. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 しかし結果的に見れば、やはり四捨五入すれば二三%も一年間で上がっているのです。ところがロールス・ロイスが倒産したからということを非常に強調されますが、去年四月外信の報ずるところによると、ロールス・ロイス本社は、そのコスト高について自分の会社は非常に高くなるということが宣伝されたものだから、せっかく取っておる仕事がなくなる、よそにいくといけないものだから、ロールス・ロイス社はそれに対して抗議したんですね。わが社は七%くらいしかアップ率はないのだ、こう言っておるのです。だから、この辺も実に私に言わせるとおかしいのですね。それから先ほど言われましたとおり、四次防作成段階のエンジン二台分が三億から、倒産ということで約二倍の六億になっておる、これもおかしいですね。ロールス・ロイス本社の言っておることからいうとおかしい。二倍になるわけない。値上げ率は七%と言っておるのだから、この辺も非常におかしいわけです。そして今度は、これで予算が通ってみますと、通ってもこの予算から、すぐもうこの予算どおりにはいけない。すぐもう値上げが待っておるのですね。それは間違いありませんね。
  175. 黒部穰

    ○黒部政府委員 すぐ上がるのかどうかということでございますが、この点につきましては、ロールス・ロイスとの話では、四十九年度に入荷する、つまり出荷する分については何%アップ、五十年度に出荷する分については何%アップということで上限をきめておりますので、これから値ぎめをしなければいかぬということはないわけでございます。したがいまして、現在予算に計上している単価で契約し得るものと私どもは考えております。  なお、先生が先ほど申されましたロールス・ロイスのほうが抗議のために、そんな倍上げるわけじゃない、七%云々しか上げないというふうに公言したという説については、私どもは承知いたしておりません。
  176. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは外信が報道して、日本の新聞でもほとんど載っておる事実ですからね。それでは結局四十四年度、それから四十五年度は試作機二機、実用試験機二機、計四機のエンジンは輸入であった。そして二三%も上がっておるが、それでもなおその二三%というアップ率で計算しても、輸入した場合は安くなるんですよ。ずいぶん安くなります、エンジンだけでも。これは中身は言えないとおっしゃるから、言ってはいけないと言うから言いませんけれども、安くなる。それをしも、なぜそれほどまでして練習機というものを国産化するのかという問題です。ここに私は問題があると思うんですよ。あなた方は高等練習機をつくるのだ、つくるのだとおっしゃっているけれども、実はそうじゃないのだ。高等練習機というのは入り口の言いわけであって、実はあなた方はFS対地支援爆撃機をつくるのが目的なんですよ。それを練習機に使う。つまり、練習機を対地支援機にするのじゃなしに、対地支援機をねらっておって、それを練習機に使う、逆の関係になっておるのです。いいですか、あなた方の「四十七年度予算要求の大要」「防衛庁」、これはいまそこにありますか。これの二四ページ見てください。いいですか。「支援戦闘機(FS−T2改)のシステム設計及び火器管制装置の試作」、ここにあなた方は四十六年度予算、すでに使った分として二十五億九千八百万、それから四十五年度までに使った分として三十四億三千六百万、これをなぜFSのところに入れているのです。こんなことをしてはいけませんよ、ごまかしじゃありませんか、そうでしょう。これはT2の分じゃありませんか。これを合計してごらんなさい、六十億三千四百万。つまり、T2の開発研究費じゃありませんか、六十億というのは。それを何でFSのところに入れているのです。
  177. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは私からお答えしたほうがいいかと思いますが、T2をそもそも開発をいたしてまいりますそのゆえんは、御承知のとおり、F86F、これはアメリカ軍からMAPで供与を受けた古い飛行機でございます。したがって、これが現在は練習機、それからいまおっしゃるいわゆる支援戦闘機、この三個部隊ずつに分けて86Fを使っておるわけであります。したがいまして、練習機を開発すると同時に、将来できればこの86FにかかわるFS、すなわち支援戦闘機を開発していきたい、これは防衛庁側に以前からあった考え方であります。せっかく国産がなされるならば、その技術をだんだん推し進めまして、そして支援戦闘機が欠落した場合に、この86Fの三個隊の支援戦闘機とかえていこう、こういうことのためにこの予算計上、いわゆる技術開発のためにこれだけの経費が計上されておる、そういうわけです。
  178. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 長官、私の言っておるのは——時間がございませんから、いいですか、二四ページに、どうして支援戦闘機のところにT2の研究開発費を入れているのですかと私は言っておるのです。
  179. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは将来ぜひひとつそういうものをつくっていきたい、そういう意味です。
  180. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だからまさにFSというのは四次防の目玉ですよ、これは四次防から五次防にかけての。まさにいま長官みずからおっしゃったじゃありませんか。もうこれこそは完全に四次防の先取り、五次防の先取りですよ。きちんとここに出ている。そんなごまかしをこの予算書でやってはいけません。これは書きかえなさいよ。
  181. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは開発をしていく経費でありまして、まだこれが事実上採用になるかならないかということは、もうこれは将来の問題であります。
  182. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 長官、あなたは理解していないのですよ。T2の開発費をどうしてFSの開発のところに入れているのですかと私は言っておるのです。
  183. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはT2そのものを、今後当然86Fの支援戦闘機部隊というものが欠落しますから、五十年には、そうでしょう。そこでできればその技術を進めて、そういうものも代替を考えていきたい。これはやはり一つの技術開発という方向で、関連経費ということで御了解を願いたいと思います。
  184. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だめですよ、そんな答弁をしたのでは。あなた方、それでは四次防、五次防の先取りを認めておることになるじゃありませんか。FSの開発の中に——FSはまだいまから開発するのですよ。もしあなた方の言うとおり、四十七年度予算が四次防、五次防と関係がないとおっしゃるならば、いまからFSは開発するのですよ。それをFSの研究開発分として、まさに項目もそうでしょう、研究開発の推進というところに入れているじゃありませんか。つまりT2の開発で六十億使った。それは実はFSの開発だということを、みずから予算書の前で明らかにしておるじゃありませんか。私は時間がありませんから、もういいです。これは間違いないですよ。これは書きかえればいいですけれども……。
  185. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはこの項目を見ていただくとわかりますが、研究開発の項目でありまして、その関連としてこうなっておりまするが、これから開発をしていこう。開発というものは、少なくとも相当先を目していろいろ開発していくわけですから……。
  186. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 違うのですよ。あなた理解してないのですよ、私の言っていることを。これから開発していく分は、ここに書いてある四十七年度と後年度負担分だけであって、いままで使った分はFSの中に入れてはいけないということを言っているのですよ。いままで使った分はT2の分でしょうがと言っているのです。それを何でいかにもいままでFSの研究をやっておるみたいにこういう形にしているか、もしそうならばまさに四次防、五次防の先取りではないかと私は言っているのです。もう時間がないから、これで議論はしませんよ。
  187. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 念のために政府委員から答弁させます。
  188. 田代一正

    ○田代政府委員 では正確にお答えいたします。(「何だ、長官のは正確でないというのか」と呼ぶ者あり)補充して御説明いたします。  ただいま申し上げましたように、この欄は「研究開発の推進」という欄でございますが、備考欄にございますように、これはT2の開発というものを一巡やりまして、それでその結果といたしまして今回二十機をお願いしているわけでございますが、実はT2をさらに、さっき長官申しましたように母機といたしまして、改造を加えてみたらどうなるかという研究をしようというために、今回二億四千四百万、後年度負担で九億七千六百万という金額をお願いしているわけでございまして、あくまで研究開発というラインで申し上げますならば、従来のT2の開発の、さらにその継続という意味でこういう整理をいたしたわけでございます。
  189. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そう言えばそう言うほど、四次防、五次防をあなた方は予算上も先取りしている。これは予算上一番迷惑ですよ。もうこの論争は済みましたから、総理、もう済んだというような顔をして——もうこの先取り問題は済んだというふうにあなたは思われておるかもしれませんが、済んでないのですよ。これなんか最も先取りが明白なんです。説明すればするほどそうなんです。  それで委員長、私は時間がありませんから、結論を言うならば、いいですか、このT2の問題は装備自身も先取りしている。と同時に、これは実はFSという対地支援戦闘機をつくるためのものですから、四次防構想とも関係があるのです。全くこれはもう名実ともに先取りしたものになる。  そこで、なぜこれほど価格がどんどん上がってきたか。これはもう防衛庁と防衛産業と全く随意契約で、もう向こうの言いなりにならざるを得ないという関係になっておる。しかも国産か輸入かをきめるときの四十一年度の、まさに政治決定だといわれた、いろいろ怪文書まで出たあの当時の、国産化をきめたときの積算基礎も明白でないんだというのです。そして国産だけきめておって、一たん国産がきまったらどんどん上がっていく。これはまさに産軍癒着の最たるものであると思うのです。とにかくいま問題の天下り関係だけでも明らかにしておきますと、四十年から四十五年まで、いいですか、これは御三家だけ申しておきましょう。三菱重工は将が四、将補が三、一佐が六、計十三。川崎重工、将が六、将補が六、一佐が三、計十五。石川島播磨、これは将が四、将補が一、一佐が五、計十。全部こういう人たちが天下りして、そして石川島播磨のごときは空幕長が行っておるのです。それでそういうところからつき上げがある。見芳しいものですよ。そうして、私はこの名前も全部控えておりますけれども、そういう産軍癒着の状態というのはますます激しくなるのです。いいですか、四次防の発注総額は、原案では一兆五千六百億、これは三次防の三倍です。特に航空機や艦船などは三千億円以上。年間の発注高は三千億、いま千億ですから、四次防になると三倍になるのです。たいへんな魔軍癒着の状態がますます出てくる。大体問題の根本は、FSという対地支援戦闘機などというものが、専守防衛のわが国に要る兵器かどうかということを私は問題にしたいのです。本土で戦うのでしょう。本土で戦うのにこういうファントムに次ぐような爆撃機が要るのかどうか、ここに根本があるのです。私は、専守防衛とおっしゃるならば、そのワク内にある兵器かどうかということを、ひとつ国防会議の議長である佐藤総理にじっくり考えてもらう必要があろうと思うのです。  それで、文民統制、シビリアンコントロールがいわれておる。私はときどき、あまり明らかになっていない資料を持ってやる。爆弾質問と言う人もある。シビリアンコントロールがきいておれば、爆弾質問なんてあるはずはないのです。爆弾質問などというものがあるというならば、そこにシビリアンコントロールがないということなんです。自衛隊の実態が明らかにされていない。それで、そのときに国防会議議長として文民統制される総理は、どういう基準によってなさるのか、これがなくてはコントロールしょうがないと私は思うのです。たとえばこの兵器は専守防衛を逸脱しているとか、そういう基準が私は必要であろうと思うのです。それで私は前もって、われわれはこういう工業化社会においては、つまり資本主義社会において、一たん力で防衛する武力に踏み切ったらば、つまり防衛力といいますか、自衛力といいますか、それの限界はもうない、われわれはそう思います。しかし、皆さん方はあると言うのだから、提出しておりますけれども、以下私はずっと読みますから、御返事だけいただきたいと思います。  国防の基本方針、これは三十二年につくったやつですね。これが今日の時代に合っておるかどうか、それがまず第一番。  二番目に、憲法上の限界として、少なくともこれだけはあなた方でも明確にできるではないか。一、非CBRの三原則の確立。二、徴兵制をとらない。三、海外派兵を行なわない。  それから三番目に、行動上の限界として、一、自衛権発動の条件を厳格に規制し、武力攻撃が現実に起こった場合に限定し、先制的自衛権の発動は行なわない。二、自衛権行使の地理的範囲を局限し、日本の施政権下にある領域内に局限する。三、安保条約の極東条項を運用上凍結すべきである。四、問題の日米共同声明の少なくとも韓国、台湾条項は実際上は消滅したものとして扱うべきである。  それから四番目に、予算上の限界というものがありましょう。一応どのくらいのところを限界と考えておられるか。  五番目に、装備上の限界がありましょう。そういったものについて、皆さん方のお考えを明らかにされぬことには、いかに文民統制と言われてもその統制のしょうがないではないか、そのように私は思うわけです。  それで、その点について御答弁をいただいて、私は質問を終わりたいと思います。
  190. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いま御指摘になりました海外派兵をしない、これは憲法上厳然たる一つの規定でありまして、歴代内閣がとってきたところであります。  それからまた、徴兵制はしかない、これも歴代内閣の鉄則として表明をしてまいったところであります。この徴兵制をとらないということは、私は人員に限界がある。たとえば制海、制空を第一義に考えると言ったあの十年を視点とする中曽根防衛庁長官当時の原案なるものに見ましても、いまなくなったわけですが、それに見ましてもやはり人の問題ということには限界があるということで、人をふやしておりません。このマンパワーにしっかりとした限界があるということは、私は、やはり専守防衛の大きな歯どめである、徴兵制をとらないということは、今後とも続けていくことだというふうに信念的に考えております。  それから非核三原則、これはあらためて申し上げるまでもなく、国会の決議にもあるとおり、佐藤首相もしばしば繰り返して言明をしておられるところであります。  GNPについては、三次防当時から一つの不文律として、大体GNPの一%以下、一%程度ということでこれを国の安全保障費、これに振り向けよう、こういうことで来ておりまするが、だんだんこのGNPが、いまの段階ではむしろスローダウンが予定されるわけでありまするが、GNPが大きくなればなるほど、その一%というものは総金額においては大きくなる。はたしてこれが歯どめであろうかという議論があることは、私もよく承知をいたしております。  それらをあわせ考えてみまするときに、やはり一番大事な点は徴兵制をとらないということ、そして同時に専守防衛、攻めもするが守りもするといういわゆる世界の軍隊と自衛隊が違うところはここだと思うのですね。相手が不正の侵略をしない限りは断じて外に出るということはない。これ以上私は防衛力としての大きな限界といいまするか、一つの国としてのけじめをはっきりうたったものは、よその国にあまり見られない日本の特徴であるというふうに考えるものであります。こういったことをしっかり押えながらいく。そして攻撃的な兵器は今後といえども持たない。これは歴代内閣のとってきたこれまた方針であります。  時間がありませんので、なるべく簡略にお答えを申し上げます。
  191. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長、一問だけお許しください。  四次防大綱をおきめになりました。見てみますると三次防大綱と一緒である。そしてあなたは中曽根原案に見られた構想、つまり八合目論、あるいは航空優勢、制海権構想はとらないとあなたはおっしゃった。しかし現実は、あなた方は作文のところだけ変えて、いわゆる装備の項目は変えないのです。変えようがないのですよ。もうファントムも進んでいるし、T2もそうだしFSもそうでしょう。全部予算に載っておるじゃありませんか。項目は変わらない。あなた方は作文だけ変えるつもりだとわれわれは見ておるのです。もし違うならば、いわゆる中曽根原案五兆二千億は消えて、昨年十二月一日の西村修正案になった、五千億削減の、それも消えたとおっしゃる。そうすると、江崎四次防構想なるものはどういうものなのか、その骨子だけでもひとつこの際明らかにしていただきたい、このように思います。
  192. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 たいへん大切な点だと思います。西村防衛庁長官経済の先行きを見通されて、正面兵力において五千億を減額しよう、こう考えられた一つの行き方というものは、私は卓見だったと思っております。したがって、就任以来、金額的には一応その線を重要な参考として、防衛庁の原案というとことばがときどき間違いますから、防衛庁試案といいますか、そういうものを積み上げてまいりたい、こういうふうに考えております。  それから、いま十年を視点にするということは、特に経済の先行が変動が多くさだかでないということ、それから国際情勢が、ここでもしばしば指摘されまするように、緊張緩和のきざしを見せております。平和という形で定着するまでには時間もかかりましょう。しかし、十年ということは、この目まぐるしい国際情勢のあり方から考えてみましても、これは適当でないと考えます。  そこで三次防による国防の基本方針にのっとって、そして通常兵器による局地戦、これに耐え得る自衛力を改更してまいりたい、こういう考え方で今後防衛庁試案なるものを積み上げてまいりたいと思っております。これは年度内に策定したいと思っておりましたが、御承知のとおり、諸般の情勢で見送らざるを得なかったわけでありまして、いまここで、こういうふうにいたしとうございますという点を申し上げるまでにまだ至っておりませんが、今後すみやかに積み上げをいたしてまいりたい。考え方の基本としては、いま申し上げたような視点に立って構想を練りたいと考えております。
  193. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に、不破哲三君。
  194. 不破哲三

    不破委員 私は、まず最初に、昨日発表されました政府の日中問題に関する統一見解に関して、総理の御見解を伺いたいと思います。  二月の二十八日に、総理が、台湾は中華人民共和国の領土であるという趣旨の発言をこの予算委員会で行ないました。私はこの発言を聞いていて、これはほんとうに責任ある立場で真剣に行なわれたものであるならばきわめて重大な発言である、当然これは事柄の性質からいって、これまでの政府の対中国政策の変更を前提にしているか、それともそれを予想させる性質のものであるというように考えました。しかし、これがどうもあまり責任ある真剣なものでなかったらしいことは、この発言が問題になって以後、政府のあわてぶりゃ、あるいは国際的な反響を見てのいろいろなうろたえぶりや、それからまた、昨日発表された統一見解において、この基本点がきわめてあいまいにされているということにも見られるのであると思います。それで私は、この機会に、この統一見解を発表された政府の対中国政策の真意をただすために、幾つかの点について質問をしてみたいと思うものであります。  第一は、政府はこの統一見解の中で、問題の、台湾は中華人民共和国の領土であるという中華人民共和国政府の主張に関して、十分理解するとか、あるいはこれを認識するとかいうことを言われております。昨日の討論でも、この理解とは肯定的理解であるのかとか、ただ事実認識にとどまるものであるのかとか、いろいろな議論がされました。しかし、その性格は必ずしもまだ明確になっておりません。この理解あるいは認識ということばの意味をはっきりさせるために、私は次の点について政府に伺いたいと思います。  御承知のように、台湾の国民政府は、同じように台湾は中華民国の領土であると主張をしております。政府は、この台湾の、国民政府の、台湾は中華民国の領土であるという主張に対して理解されるのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  195. 福田赳夫

    福田国務大臣 昨日の統一見解のように、台湾が中華人民共和国の領土であるとの中華人民共和国政府の主張は、これは十分理解し得るところであります。そのとおりでございます。
  196. 不破哲三

    不破委員 私の質問したのは、台湾の蒋介石の政権のほうが、台湾は中華民国の領土であると主張しているその主張について、佐藤総理は理解をされるのかどうか、こういう点であります。
  197. 福田赳夫

    福田国務大臣 さような主張を国民政府がしていることは、よく承知しております。
  198. 不破哲三

    不破委員 承知はしているが理解はされない、あるいは認識はされない、こう伺ってよろしいでしょうか。
  199. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう主張をしていることを、主張があるということは理解しております。
  200. 不破哲三

    不破委員 そうしますと、政府が統一見解で言われた、中華人民共和国が台湾が中華人民共和国の領土であると主張していることを理解している、その理解と、いま福田外相が言われた、中華民国政府が台湾は中華民国の領土であるということを主張していることを理解している、この理解の間には基本的な違いがあるでしょうか。
  201. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、両方が一つの中国であると言っているのです。そのことはよく承知しております。
  202. 不破哲三

    不破委員 つまり、いまの福田外相の答弁を伺いますと、昨日肯定的、否定的、いろいろ議論がありましたが、台湾の主張は主張として、北京政府の主張は主張として、双方そういう主張として理解しているというのが佐藤内閣の統一見解の真意である、総理は、そういうふうに伺ってよろしいでしょうか。
  203. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  204. 不破哲三

    不破委員 この答弁に明らかなように、政府がきのう説明された統一見解は、佐藤総理が先日の二月二十八日のこの席で、佐藤総理自身の認識の問題として、台湾は中華人民共和国の領土であると言われたこととは全く違うものであることがこれで明らかになったと思います。この点で、総理は昨日も、精神は二月二十八日の発言とこの統一見解と同じであると言われましたが、これでは、そういう精神に立って、台湾が中華人民共和国の領土であるという主張もとれば、あるいは台湾が中華民国の領土であるという主張もとる、それ以上には一歩も出ていないというふうに考えますが、重ねて伺いますが、この点はそれでよろしいでしょうか。
  205. 福田赳夫

    福田国務大臣 第三項が非常に違ってくるのです。つまり政府はこれから日中国交正常化の交渉を始めたい、そのために政府間接触をしたい、こういうことを言っておるのです。政府のその際におけるところの認識は何であるかというと、中華人民共和国が台湾は中華人民共和国の領土であるという主張をしておる、それをよく認識しておる、理解をしておる、そういう認識に立っての交渉である、こういうことでございます。
  206. 不破哲三

    不破委員 確かにその点は非常に違う点であります。台湾の中華民国政府とは、政府はこれから国交正常化の交渉をするまでもなく、現在国交を結んでいるわけでありますから、その点は第三項に書かれていないのは当然であります。  それならば伺いますが、中華人民共和国と国交正常化の交渉をする際には、台湾は中華人民共和国の領土であるという主張を認識して交渉をする、それから中華民国、台湾の蒋介石政権と日華条約に基づく国交を続けていく際には、台湾は中華民国の領土であるという蒋介石政権の主張を認識して国交を続ける、こういうような使い分けであると考えてよろしいでしょうか。
  207. 福田赳夫

    福田国務大臣 そこまで言うと身も何もなくなっちゃうわけなんでありますが、とにかく私どもが言わんとするのは、非常な熱意を持って日中国交正常化をやりたいのだ、その際の認識はどうだ、こういうことを申し上げているのです。その際の認識とは何だと言いますれば、ただいま申し上げましたように、中華人民共和国が台湾は中華人民共和国の領土であると主張しておることをよく認識して、その理解の上に立っていたしましょうと、こういうことなんです。
  208. 不破哲三

    不破委員 私の質問について身もふたもないということで、否定はされませんでしたから、この点は事実認められたものだと考えます。それでは次の質問に移ります。  この政府の統一見解においては、「従来の経緯、国連において中華人民共和国政府が中国を代表することとなったこと等から、」というようにうたわれております。ところがこれまでは政府は、台湾の中華民国政府、蒋介石政権が中国を代表するという見解をとられておりました。このほうの見解は一体どうなったのか、その点について伺いたいと思います。
  209. 福田赳夫

    福田国務大臣 ここでは国民政府側の主張については何も言っておりません。これは、中華人民共和国側の主張についてこれを理解すると、こういうことを申し上げ、その主張を理解する、認識をするという上に立って国交の正常化交渉を始めるということだけを申し上げているのです。
  210. 不破哲三

    不破委員 それはちょっと統一見解の読み違いだと思いますが、「従来の経緯、国連において」云々のことばは、中国側の主張を述べたものではなくて、政府の地の文章であります。政府が従来の経過、これはポツダム、カイロその他であることは、きのう福田さんから詳しく答弁がありましたが、政府が従来の経過、経緯も考え、「国連において中華人民共和国政府が中国を代表することとなった」、このことも考えて中国側の主張を理解するという文脈でありますから、このこと自体は中国側の主張ではありません。政府の認識を伺っているわけであります。したがって、一方で「国連において中華人民共和国政府が中国を代表することとなった」ということを政府は認められると述べられておりますが、中華民国政府はそれでは中国を代表する資格を持たなくなったのか、そう考えておられるのか、この点について伺いたいと思います。
  211. 福田赳夫

    福田国務大臣 法理的に言いますと、世界には国連社会もあるし国連外の社会もある。わが国は国連に参加して、そうして国連を尊重する、こういうたてまえをとっておる、そういうことを言っておるわけです。中華人民共和国が国連に参加した、これは法的にはすぐ二国間の関係に影響するものじゃありませんけれども、これは国連社会を尊重するというわが国から見ますると、重要な変化が出てきておる、こういう認識でございます。
  212. 不破哲三

    不破委員 そうしますと、これはわが国は、国連中心主義の外交を基本とし、国連の決議を尊重する、こういう立場からいって、国連で中華人民共和国が中国を代表する立場に立った現状では、もういままでのように中華民国政府は中国を代表する政府とは見れない、こういうように考えられておられる、こう理解してよろしいでしょうか。
  213. 福田赳夫

    福田国務大臣 国連の決議、国連社会の動き、それがそのまま法的にわが国の国連外における他の国との関係に直結的に影響するというふうには考えておりません。しかしこれは、国連というものが重要な世界機構である、わが国はその重要な世界機構を重要視しておる、そういうところから見まして、わが国の外交姿勢には重大なる影響のある問題である、こういう認識でございます。
  214. 不破哲三

    不破委員 この統一見解には、ただ、重大な影響があるということを認識している。そういう程度のことを書いているわけではないわけであります。「中華人民共和国政府が中国を代表することとなった」ということを、政府自身の認識として地の文章の中で書かれているわけであります。そうしますと、それは、ただこのことが将来影響があるだろうとかいうような予測で済むことではなしに、いままで台湾の政府を中国を代表すると見ていた政府の立場に直ちに影響を及ぼす文章であります。その点を伺っているわけでありますから、総理に伺いたい。台湾の蒋介石政府が中国を代表すると言ってきた、みなしてきたその立場は変更されたのかどうか。総理に伺っているわけであります。
  215. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは外務大臣が答えているものです。最初からやっていますからね。しばらく、また違うことを言うと私が立ち上がりますけれども、大体私の考えどおりであれば、私、黙っていますから、ひとつ外務大臣の説明をお聞き取り願いたい。
  216. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国の認識は、中華人民共和国が国際連合に加盟した、これであります。しかし、その認識からどういうことが出てくるかというと、法的に直ちにこれがわが国の他の国との関係、中華人民共和国との関係に直接的に影響してくるものじゃないのです。しかし、わが国は国際社会において国連を尊重するという立場をとうておる。そういう立場から言いますると、そこに微妙な変化が出てきておる、こういうふうに御理解願います。
  217. 不破哲三

    不破委員 どうも直接台湾の政府のことを言いますと、答えがされにくいようでありますから、少し形を変えて伺いたいと思います。  ここで政府が言われている「中華人民共和国政府が中国を代表する」と、その中国の中には台湾は入っているでしょうか。
  218. 福田赳夫

    福田国務大臣 どこですか。
  219. 不破哲三

    不破委員 うしろから四行目です。
  220. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはいわゆるチャイナ、こういう意味でありまして、これは大陸並びに台湾、膨湖島全部を含む、こういうことでございます。
  221. 不破哲三

    不破委員 そうしますと、現在台湾に住んでいる千三百万人の中国の国民を含めて、その住民を代表しているのは少なくとも国連においては中華人民共和国政府だ、こういう立場を政府はとっておられるわけですね。
  222. 福田赳夫

    福田国務大臣 国連の意思表示はそのように理解しております。
  223. 不破哲三

    不破委員 そうしますと、その立場を主張するならば、中国を代表する唯一の政府が中華人民共和国政府だという立場とこれは全く同じだと思いますが、その点はどうでしょうか。
  224. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国は、中国を代表する政府である、それが中華人民共和国である、こういう立場をとっているのです。それに対していろいろの修辞というか、付き添えことばをつける議論があります。唯一であるとか、正統であるとか、そういうようなことを言いますが、私どもはどこまでも、中華人民共和国は中国を代表する政府である、こういう立場であります。
  225. 不破哲三

    不破委員 そうしますと、そこまで言われるのならあと言ってもいいと思うのですけれども、中華民国、台湾の蒋介石政府は、もう福田さんの認識の中でも中国を代表する政府ではない、自分の施政権下にある台湾の住民すら中華人民共和国政府が代表しているということを福田さん言われたわけですから、中華民国政府、台湾の蒋介石政府が中国を代表する、この従来の立場は捨てられたというように考えてよろしいですね。
  226. 福田赳夫

    福田国務大臣 その辺は非常に微妙な問題でありますので、私はひとつあなたの御意見を拝聴させていただくのにとどめたい、かように存じます。
  227. 不破哲三

    不破委員 そうすると、福田さんのきのうの流儀で言いますと、否定はしないが理解するにとどめるということでしょうか。
  228. 福田赳夫

    福田国務大臣 御所見を承るにとどめたい、かように考えます。
  229. 不破哲三

    不破委員 それでは次の問題に移りたいと思います。  政府は、台湾が中華人民共和国の領土であるという主張を認識してこれから日中国交正常化の交渉に当たるという意思を、きのうこの統一見解の中で表明されました。これがその他のいろいろな問題に関してどういう影響を及ぼすかという問題、これは究明すべき重大な問題であります。政府が以前から何度も言われているように、交渉のこまかい問題について一々議論するのは政府にとって不得策だということになるかもしれません。しかし、この主張を掲げて、この主張を理解し認識する、この認識が日中国交正常化の交渉の前提だと言われる以上、われわれも、そういう主張を認識することが諸般のいろいろな問題に対して公理上あるいは論理上どういう結論が出てくるか、このことについては深く究明しなければ、この統一見解を受け取った意味がないと思います。  その点でまず伺いたいのでありますが、台湾が中華人民共和国の領土であるという立場に立つならば、政府が日華条約を結んでおられる相手の国民政府、蒋介石の政権は、自分の領土でないところに政府をつくっているということになると思いますが、これはどうでしょうか。
  230. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府はそういうことを言っているわけじゃないのです。中葉人民共和国が台湾は中準人民共和国の領土であるという主張をしておることは理解できる、その理解の上に立って交渉を始めますということでありまして、台湾は中華人民共和国の領土である、そういう認識に立ってやるわけではない。十分厳格に区別をしてやっておるのです。
  231. 不破哲三

    不破委員 私も厳格に区別して質問しているわけであります。中国の主張を理解しようとされる以上、ここに書かれているように、理解し認識して交渉に当たろうとされる以上、この主張が政府がいままでとってきたいろいろな問題にどのような影響を与えるか、このことを理解しなければ、理解したことにならぬだろうと言っているわけであります。中華人民共和国の領土が台湾である、台湾がその領土であるという立場にもし立つならば、台湾の国民党政権は自分の領土ではないところに政府を設けている、いわば自分の領土でないものを不法に占拠しているということになると思いますが、その点を伺っているわけであります。
  232. 福田赳夫

    福田国務大臣 私のほうは、台湾は中華人民共和国の領土であるという前提に立っておるんじゃないのです。そういう主張を中華人民共和国がしております、それは理解できるところであります、そういう認識に立っておる、こういうことでありまして、どうも御質問と私の答えるところとすれ違っておるようでありますが、私は厳格に区別しながらお答えをいたしておる、こういうふうに御理解願います。
  233. 不破哲三

    不破委員 いままでの外相及び総理の答弁を伺っていまして、私は、二十八日に総理の見解を伺ったときに、これがもし真剣に責任ある立場で言われたのであるならば、当然これは中国政策の変更を伴うものだというふうに考えましたが、きょうの答弁を伺っていますと、その点では何らの変更がない。しかもこれは、その主張そのものを理解するのではなくて、そういうことを主張しているという事実、これは理解しようがしまいが、事実としてだれでも、その意見に賛成であろうが反対であろうが、認識できることであります。その認識以上には出ていないということがたいへん明らかになったと思います。  私はここで次の問題に移らせていただきますけれども、このような理解と認識で佐藤内閣が日中国交正常化の交渉に当たろうとする、あるいは積極的な努力をことばの上で云々されようとする、これでは、ほんとうの日本の国民の立場に立った日中国交回復の道、ほんとうに筋の通った国交回復の道は生まれ得ない、この点の根本的な反省と転換こそがいま求められているということを申し上げて、次の質問に移らせていただきます。  私が次に取り上げたいのは、日米軍事同盟、安保条約の問題であります。昨日、佐藤総理は、安保の問題に関する答弁の中で、いろいろ安保をめぐる危険な条項、韓国条項、台湾条項、そういう問題が指摘された際に、現在はアジアが緊張緩和の方向に向かっているから、そのような条項があったとしてもあまり心配はないのだ、発動する危険はあまりないのだということで、問題をそらせようとされました。しかし私は、この議論にはたいへん危険な問題が含まれていると思います。  一つは、現在のアジアの情勢が緊張緩和にはたして向かっているのかどうか。アジアの情勢の一番の緊張の根源であるベトナムでの戦争は、終わるどころか、緩和されるどころか、米中会談の最中でも激しく続けられ、爆撃、侵略が続けられております。  それからまた、緊張のもう一つの根源であるアメリカを中心にしたいろいろな軍事同盟、これはいざというときに発動するきわめて危険なものでありますが、それが今度のアメリカの国防報告や外交教書を見ても、この軍事同盟を再編するという方向は、何ら変えられておりません。  私は、そういう見地からするならば、緊張緩和という実際の現実に反した評価の中で、いまの日米軍事同盟のいろいろな側面をそらせることは、きわめて危険であると考えるものであります。際にわが国がほんとうにアジアの平和に貢献し、アジアの緊張を緩和する方向に役に立とうとするものであるならば、一体日本がアメリカとの軍事同盟の中でどのような危険な立場に置かれ、どのような問題を含んでいるのか、これを事実に基づいて明確に直視する必要がある。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕 そういう点から、日米軍事同盟の幾つかの側面に関して、総理に御見解を伺いたいと思うものであります。  第一に私が伺いたいのは、安保条約のもとでの在日米軍の性格の問題であります。総理は去年の沖繩国会の中で、いまの日本政府の防衛の基本構想を説明されて、通常戦力は自衛隊が当たる、核抑止力はアメリカに依存する、これがわが国の防衛の基本的な方向だということをたしか発言をされました。このことは四次切の、江崎さんがいまでは消えていると言われた原案の中にもうたわれていたことであると思います。その立場に立つならば、日本にあるアメリカ軍は、これは一体何戦力なのか、このことをまず総理に伺いたいと思うのであります。
  234. 福田赳夫

    福田国務大臣 申し上げるまでもございませんけれども、わが国はとにかく有史以来初めていくさに負けております。もう再びいくさをしまいというのが、これが国民的コンセンサスだとさえ思うのです。それに憲法第九条もある。わが国におきましては、自衛力を持つことは許されてはおりまするけれども、国全体の抑止力といたしましては不足するのです。どうしても、幾ら四次防をやりましても、五次防をやりましても、それは不足する。その不足したところを補う、これが安全保障条約に基づく米軍の任務である、こういう理解であります。
  235. 不破哲三

    不破委員 その何が不足して何を補っているのかが問題であります。通常戦力の足りない分を補っているのか。それとも、核抑止力がそもそも足りないから、それを補っているのか。どちらが在日米軍の性格であり役割りであるのか、この点であります。
  236. 福田赳夫

    福田国務大臣 双方の不足を補うわけであります。
  237. 不破哲三

    不破委員 そうしますと、在日米軍は核抑止力の任務もになっているというのが御見解ですか。
  238. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは逆でありまして、核抑止力にもなっておるし、通常装備の抑止力にもなっておる、こういうことでございます。
  239. 不破哲三

    不破委員 在日米軍が核抑止力になっているということは、きわめて重大な発言だと思うのであります。総理はたしか非核三原則というものを何べんも繰り返されたことがあります。一体、核を持たないはずの在日米軍がこの性格を問われて、外相が核抑止力であると言われるとすると、これは非核三原則についてのいままでの総理の答弁や政府の見解がまやかしでないかということになると思いますが、総理、その点いかがでしょうか。(「委員長総理に聞いている」と呼ぶ者あり)
  240. 福田赳夫

    福田国務大臣 ちょっと私、ことばの使い力まずかったのですが、日米安全保障条約による米軍はわが国の核抑止力になっておる、こういうことです。(不破委員「在日米軍について伺っている」と呼ぶ)在日米軍につきましては、ただいま御指摘のように、わが国には核はありませんから、そういう問題は起こりません。しかし、グアムにあるとか、方々に抑止力たる核があるわけでありますから、それは日米安全保障条約に従いまして、わが国の抑止力になっておる、こういう理解であります。
  241. 不破哲三

    不破委員 重ねて伺いますが、総理に伺いたいと思うのですが、それならば、在日米軍は通常戦力である、通常戦力としてわが国の防衛を補完しているというのが政府の御見解ですか。
  242. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの戦術、戦略と申しますか、これは国内の兵隊だけの問題ではございません。これはいま指摘されたように、核抑止力にもある。これは、グアムのものも、あるいはもっと海洋のものも、あるいは空中からも、そういうものもやはりあるでしょう。しかし一木の国内では、そういう核兵器は持ち込みも許さない。持たず、つくらず、持ち込みも許さない、これははっきりしておりますから、日本の国内ではさようなことはございませんけれども、これは米軍である限りにおいて、米軍自身はいろいろの機能を随時発揮できますから、そういう意味で先ほど来のような話があります。しかし国内の、日本に在住するその範囲においては、ただい左のような問題はございません。
  243. 不破哲三

    不破委員 つまり私が聞いたのは、アメリカの本国やグアムにいる米軍部隊の問題ではなくて、安保条約に基づいて日本に配備されている米軍の性格であります。これは通常戦力だ、核は持っていない、そういう意味では核抑止力でないというのが政府の御見解だと思います。ところが、一昨年の一月にアメリカの国会で行なわれましたサイミントン委員会、ここで在日米軍の性格が論じられております。これは外務省で翻訳して私どものほうに回したいただいたものを読み上げるわけでありますから、おそらく正確であるとは思いますけれども、ここにはこう書いてあります。「日本の防衛、通常兵力による日本の直接の防衛に対する主要な責任は、今や全く日本にある。われわれは、通常兵力による日本の直接の防衛に直接に関係する兵力は、陸軍にしろ空軍にしろ、日本に持っていない。」つまり日本には日本の防衛のための通常戦力は置いていないというのがアメリカのジョンソン国務次官の責任ある議会での答弁であります。この点は政府はいかが考えられるでしょうか。
  244. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは何かの間違いがあるように存じます。詳しくは防衛庁当局から申し上げますが、日本にいま在日米軍というものがおります。これは通常兵器を持った部隊でございます。またその兵たん部隊である。こういうことでございますから、いま読み上げられました文章とは全然違っております。
  245. 不破哲三

    不破委員 サイミントン委員会というところは、これは非常に日本の問題が四日間にわたって詳細に論じられたところでありまして、外務大臣が、この文書を外務省でみずから翻訳して発行していながら、読んだことがないというのはたいへん驚きました。  これには明瞭に書いてあります。この文章が意味していることは、そのあとで何べんも出てくるわけでありますが、アメリカが日本に置いてある兵力は日本の防衛のためではないということを、繰り返し繰り返し強調しているわけであります。第一に、朝鮮、韓国のためである、日本のまわりの国の安全のために、日本のまわりの国との防衛条約を守るためにわれわれは日本に軍隊を置いてあるのであって、日本の防衛に直接関連する兵力は日本には置いてないのだというのが、サイミントン委員会で、在日米軍の司令官やあるいは国務次官や、そういう者が繰り返し述べている見解であります。  この問題については、私は後ほどもう一ぺん立ち返るつもりでありますが、政府はいままで、在日米軍は日本の防衛の補完であるというように言われていたことが、実は、アメリカの国会で、アメリカの軍政当局者によって、繰り返し繰り返し否定されているということを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  政府は、いま安保条約のもとで日本にあるアメリカの軍隊は通常戦力だ、その範囲だということを言われました。これは、五月十五日の施政権返還後の沖繩にいる米軍も、その点では同じ性格だということになると思いますが、それでよろしいでしょうか。
  246. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおりでございます。
  247. 不破哲三

    不破委員 ところが、この通常戦力であるべき部隊が、今日なお沖繩で核の投下訓練を続けているという事実があります。この問題については、私は昨年の沖繩国会で、沖繩の伊江島において沖繩にある第十八戦術戦闘航空団のF105やF4Cが模擬爆弾BDU8を使って核の投下訓練をやっているという問題を提起して、政府に所信をただしたことがあります。そのとき総理は、この問題については調査をするという答弁をされましたが、このことについて、その後の調査の結果がどうなったかということをまず伺いたいと思います。
  248. 吉野文六

    ○吉野政府委員 沖繩において現在模擬核爆弾の投下演習が行なわれているかどうかということにつきましては、この問題が提起されましたときに直ちに米側に照会いたしました。米側からは、この点につきましては、肯定も否定もできないというとりあえずの回答がございました。そこで政府としてはさらに照会を続けております。
  249. 不破哲三

    不破委員 十一月に質問しまして、いままで五カ月たっているわけであります。五カ月の間に肯定の回答も否定の回答もない。やっていなければ、これは否定の回答がすぐ来るはずであります。これは事実行なわれていることを米側自身が行動によって認めているということになると思うのですが、重大なことは、私がこの前沖繩国会で質問した後も、この投下訓練が続けられていることであります。  私が具体的に調査をして日を確認したのは、ことしの一月十二日、サンクレメンテ会談の終わったあとであります。そのときに、やはり沖繩の伊江島にF4Cが相当数の編隊を組んでやってきました。BDU8による核爆弾の投下訓練を繰り返しました。その核爆弾の残骸はかなりの期間伊江島に残されておりまして、その写真もわれわれは十分とって事実を持っておりますが、沖繩協定が両方の国会、議会で通って、それでもうことしは沖繩の施政権が返還される、そういう時点になってもなおアメリカがあの沖繩で核爆弾投下訓練をやっている。このことは政府は問い合わせると言いますが、伊江島というのはだれでも渡れるところでありますから、政府がほんとうにまじめに調査する気ならば、だれか一人派遣して伊江島の実情を見れば、これはだれだってすぐわかることであります。それがいまなお続けられている。このことについて総理はどうお考えでしょうか。総理にお伺いしているわけであります。
  250. 福田赳夫

    福田国務大臣 その問題は、昨年十一月の沖繩国会で御指摘がありまして、米側にも照会をする。その返事がいまアメリカ局長からお答えしたとおりです。それから防衛庁の係官にも調べてもらったのです。ところが、どうもその真相は把握できない、こういう状態。つまりこの問題は、とにかく今日なおこれはアメリカに施政権があるのです。わが国がこの基地へ立ち入りまして調査する、強制調査を行なうということはこれはできない。そういうことで非常に事態があいまいにならざるを得ない性格のものです。そこで不破さんから重ねてのお尋ねでございますが、はっきりしたお答えができない。これは非常に残念でございますが、いずれにいたしましても、五月十五日になればこの基地の性格というものはまるっきり変わってくるのです。非核三原則は沖繩の島々に全部行き渡るわけでございますから、その際におきましては、まあ模擬爆弾というのですから、いわゆる非核三原則というのとはぴったりは当たりませんけれども、しかし沖繩県民の心情を考慮いたしますると、模擬爆弾の演習もこれは差し控えてもらったほうがいいじゃないか、こういうふうに存じておりますので、五月十五日以降におきましてかかる演習が行なわれることにつきましては、厳重にわがほうとしては警告をいたしたい、かように考えております。
  251. 不破哲三

    不破委員 そうしますと、外相は、五月十五日以後は模擬爆弾によるものにせよ、核の投下訓練は沖繩で行なわれないということを約束されるわけですか。
  252. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまアメリカとの関係は非核三原則、つまりこの日本の核政策にはアメリカは協力をします、こういうことをはっきり言っておるのです。その非核三原則は核自体の問題なんです。いまあなたが問題にしているのは模擬爆弾の問題です。まつ正面からいいますと、どうもつなりがは多少薄い問題ではありますけれども、しかしながら模擬爆弾といえどもこれは核だ、核の模擬爆弾だというようなことにつきましては、これはもう日本人はアレルギーを持っておる。そういうようなことから厳重にアメリカに申し入れをいたしたい、さように考えておるのであります。
  253. 不破哲三

    不破委員 五月十五日の前に申し入れをする、それでアメリカに必ずやめるということを約束させる、そういうことをやるということですか。
  254. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまそういうことを警告を出そう、要請を出そう、こういうことを考えておるということでございます。
  255. 不破哲三

    不破委員 この点はきわめて重大な問題なんです。つまりいま福田外相が模擬爆弾と非核三原則はどうもつながりが少し切れているということを言われました。それからまた安保の事前協議条項にも模擬爆弾ならば、これは核そのものがその中に入っていないわけでありますから、これは安保の事前協議条項を解釈しても事前協議の対象にならないという理屈が成り立つ性質のものであります。ところが核の模擬爆弾を使って訓練をしている部隊がそこにあるということは、これは実はいざというときに核戦争に飛び出していく部隊を沖繩に残すということになるわけで、実質的な意味でいう日本に核部隊を置かないということのためにはきわめて重大な問題なんです。この点についてただ警告をするとか、アメリカに努力を望むとかいうような問題では私はこれは片づかない。今日においても、一月においてもなおアメリカが沖繩で核の投下訓練をやっているということになりますと、これはその核の模擬爆弾による投下訓練というものが、いま福田さん自身が言われた核直接ではないという抜け道を使って、ここに核部隊を残そうとしているという意図があるものとしか考えられないのであります。これは決して単なる警告によって済むものではなくて、五月十五日までに明確に政府によって解決をしてもらいたい、安保条約下の日本においては絶対に模擬爆弾による投下訓練、核の砲撃演習、こういうものをやらないということを米国との間にあらためて確約をとってもらいたい、そういう性質の問題であります。その点についての総理の見解を今度は伺いたいと思います。
  256. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま不破さんのおっしゃるとおりのことを考えているのです。つまりこれからそういう問題につきましてアメリカに申し入れをする、警告を発する、そういうことなんです。日米間でありまするから、法的に言いまするといろいろむずかしい問題があるのでありますが、実際問題としては私はこれは解決し得るのじゃあるまいか、こういうふうに考えております。
  257. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま福田君の言ったとおり、私も同じ考えでございます。十分鞭撻をするつもりでございます。
  258. 不破哲三

    不破委員 なお重ねて念のために申し上げたいのでありますが、この核の模擬爆弾による演習については、佐藤内閣がいまから三年前に国会で答弁しているわけであります。それがどこで問題になったかというと、これは本土の幸沢の射爆場に関連をして、核の模擬爆弾による演習が許されるかどうか、こういう点について、当時山上防衛施設庁長官が答弁をしております。その答弁によりますと、模擬爆弾であるならば核の投下訓練であっても本土においてもこれは許される。質問した委員から——社会党の淡谷委員でありますが、模擬爆弾の中には、普通爆弾、核爆弾、これを含むと理解してよろしいかと重ねて聞かれても、政府側からは、「特段と模擬爆弾の種類については特定いたしておりません。」その際に、二千ポンドまでの模擬爆弾なら認めるということになっているという答弁がされているわけであります。米軍の模擬爆弾の演習に関してわざわざ二千ポンドまでという国会答弁が出てくる以上、この点に関しては政府と米軍の間に何らかの取りきめや了解があるものと考えざるを得ないのでありますが、その点について伺いたいと思います。
  259. 久保卓也

    ○久保政府委員 正直の話私の所掌ではございませんけれども、他の射爆場の関連から見ますると、爆弾の投下種類については、地元の人たち、住民たちと協定を結んでおります。したがいまして、その協定の範囲内で米軍あるいは自衛隊が投下訓練をやっている。したがいまして、その系統の問題であろうと私は思います。
  260. 不破哲三

    不破委員 二千ポンドというのはどういう根拠から出た数字ですか。
  261. 久保卓也

    ○久保政府委員 おっしゃる意味はわからないではありませんけれども、格別折衝に当たっておりませんので、私は存じておりません。
  262. 不破哲三

    不破委員 私どもの調査によって明らかになったことですと、いまアメリカが戦術核空軍つまり戦術核戦力として持っている主要なものが戦闘爆撃機による核爆撃でありますが、沖繩におるF4CとかあるいはF10とかこれが積める爆弾が四種類あります、核爆弾が。B43、B57、B61、B28と、この四種類があります。伊江島で私どもが投下訓練をしていると問題にしたBDU8というのは、これはB43の模擬爆弾であります。それから多少小型のBDU12というのは、これはB57の投下用の模擬爆弾であります。それで戦闘爆撃機が積める四種類の爆弾の中で一番小さいのがB57で、重量はただの五百ポンド、それからその次がB61で重量は七百十ポンド、大型がB43とB28で、B43は二千六十ポンド、B28は二千ポンドになっております。つまり戦闘爆撃機が落とせる爆弾、これの最大のものが核爆弾で二千ポンドである。その二千ポンドの核爆弾の投下訓練までは政府の三年前の見解によりますと、沖繩だけではない、三沢を含めて本土の演習場で米国が核爆弾の投下訓練をやるのを認めていたというのがこの答弁によって事実として明らかになっている、このことは私はたいへん重大な問題であると思います。核の模擬爆弾による投下訓練というのは、これはいま始まったものではなくて、国会でも三年前に問題になった問題である。それを政府は、木上では合法である、認めるということを三年前に明らかにしている。したがって私は、この二千ポンドまで核爆弾の投下訓練を認めてきた事情、この点について政府はさらに調高して明らかにしていただくことを要請するとともに、このような投下訓練を、今後も福田さんが言うような警告にもかかわらず、アメリカが一切安保条約下の沖繩では認めない、やらないという確約を政府に与えない限り、少なくとも核撤去を国民の前に公約してきた佐藤内閣としては、そのような核投下訓練を行なう部隊については施政権の返還後存続を認めないという立場をとるのが当然であると思いますが、そういう交渉をする決意があるかどうか、この点について重ねて総理自身に回答を伺いたいと思います。
  263. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカは日本の非核三原則を認め、またこれに協力する、こういう立場でございますから、十分の理解を示しておりますから、ただいま外務大臣からお答え——これは私じゃありません、福田君のほうですが、福田君からお答えしたように、厳重にこの問題についてアメリカ軍に申し入れをする、こういうことであります。また、この五月十五日に沖繩が祖国に復帰すれば、その際にまた一そう厳重にあらためて沖繩には核がない、こういうことが確認されますから、そういう際でもありますし、ただいまのような訓練——訓練にしろ、ただいまのようなもうすでに核の持ち込みを許さない、それが事前協議でも許さない、そういう立場でございますから、それらの点については十分アメリカに申し入れをするつもりでございます。そして疑惑を払拭したい、かように考えております。
  264. 不破哲三

    不破委員 念のために重ねて伺いますが、第一に、三年前の政府答弁で明らかになったような、二千ポンドまでは核の模擬爆弾の訓練でも認めるという態度はこの際きっぱり取り消すということがまず第一の点であります。その点いかがでしょうか。
  265. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 それは前後の速記録をよく読まないとわかりませんが、少なくとも爆弾投下訓練というのは、これはやはり当然あることだと思うのです。したがって、その核爆弾、その模擬演習、それが二千ポンドだというふうに言った前後のことについては十分調査してみたい。いま防衛局長等々とも打ち合わせましたが、さてと言っております。それはどうももうちょっとその前後をよく理解したいと思います。
  266. 不破哲三

    不破委員 それでは、総理に伺っているのでありますが、少なくともきょうからは核の模擬爆弾による投下訓練は日本においては認めない、これが政府の政策であるということに理解してよろしいでしょうか。
  267. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま核の模擬爆弾でもこれは投下訓練はしない、そういう方向でアメリカに問い、十分話し合う、こういうことでございます。
  268. 不破哲三

    不破委員 第二点ですが、その警告や申し入れの結果、アメリカがそれを受け入れなかった場合、そのような核の投下訓練をやるような核部隊の存続は非核三原則の精神に立った立場から認めないというところまで決意を持って交渉する用意があるかどうか、その点が第二点であります。警告と申し入れで、相手がどう出ようがそれは申し入れのしっぱなしというのでは、これは全く意味がないわけであります。問題は、そのような危険な部隊の存続をどうやって認めないかという点でありますから、警告や申し入れの結果、政府が期待したような答えが得られなかった場合どうされるつもりなのか、伺いたいと思います。
  269. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもは皆さんとちょっと違っておりまして、アメリカと十分話し合える、お互いに信頼し合うと、こういうことでございますから、日本の率直なこの要望は必ずこたえてくれる、かように思いますので、ただいまもしそれを聞かなかったらどうするか、こういうところまで考える必要はないように思っております。これは仮定のことですし、私どもは信頼しておりますから、お互いが信頼関係にある、それを前提にして考えるとただいまのようなことは杞憂だろう、かように思います。
  270. 不破哲三

    不破委員 それではこの投下訓練の問題については、政府が信頼に基づいて交渉した結果がここで報告されるのを待って、再び問題について検討、討論したいと思いますが、核の問題の第二の点について伺いたいと思います。  それは先ほども総理が言われた沖繩からの核の撤去の問題であります。この点は昨年の沖繩国会においてもたいへん議論になりました。核撤去の事実をいかにして確認をするのか、この点について結局いまのところ政府側から明らかにされているのは、米国から五月十五日の施政権の返還時にあたって核撤去をするという約束をあらためてしてもらう、これ以上に出ておりません。しかし、去年の沖繩国会以後も私どもは沖繩における核基地の実態について調査をしてまいりましたが、その中で、沖繩に少なくとも現存する核の一部でありますが、その中に、核がどのような態様で、どのような部隊のどのような部門によって管理されているかという実態の一部を、われわれは資料によって明らかにすることができたと思います。それは、資料は政府側にたしか差し上げてあるはずでありますが、嘉手納の北側の知花というところに弾薬庫を持っている第四〇〇弾薬整備部隊であります。この部隊については、たしか前国会でも政府側から部隊の性格その他について見解が述べられたことがあると思いますが、この部隊がどのような部門からなっているのか、特にこの部隊で弾薬を扱っているような部門はどのような部門であるのか、その点について政府は御承知でしょうか。
  271. 久保卓也

    ○久保政府委員 この部隊の任務については、先般来国会で申し上げておりますので詳しくは申しませんが、この部門について二つの部門があるという御指摘もありますけれども、私どもは現在のところではそれを承知いたしておりません。
  272. 不破哲三

    不破委員 この点は質問しても政府側は承知しておらないそうでありますから、時間の点もありまして、結論だけ申し上げます。  この部隊は八つの部門からなっておりまして、その中で直接爆弾を管理している部門が二つからなっている、これがたいへん重要なんです。一つはコンベンショナル・ミューニションズ・ブランチといって、名前からして通常弾薬部と呼んでおります。それと同時に、この通常弾薬部で普通の爆弾やミサイルその他全部扱っているわけでありますが、それと同時に、ウエポンズブランチという部門が並んであります。この二つの部門が四〇〇MMSの爆弾を管理している。そして、このそれぞれの部門の略号がついておりますが、通常弾薬部は、コンベンショナルのCをとってCという略号、ウエポンズブランチ、兵器部はWをとるんじゃなくてふしぎにもNという符号がついております。これはだれが考えてもニュークリアあるいはノンコンベンショナル、どちらかの略号、かしら文字をとったものとしか考えられないのであります。しかも私どもがこの四〇〇MMSの作業計画書のかなり長期間のものを手に入れまして調べてみますと、通常弾薬部で扱っている弾薬は、これは爆弾であれ、ミサイルであれ、全部その名称が明記されて作業が行なわれております。ところが、兵器部で扱っている爆弾は、これは一切名称が書かれないで、全部七けたあるいは八けたのセリアルナンバーというナンバーで一つ一つの爆弾が表示されていて、同じそこにはプラントA、ブラントBという二つの施設があるわけでありますが、この施設の中の弾薬貯蔵庫から爆弾を整備場へ持っていくわずかの移動についても、これは厳重な管理をされて一々記帳されている。それだけ見ても——それからしかもその整備作業の間に、この部門においては核兵器の安全訓練を繰り返し行なっている、こういうことがアメリカ側の計画書から明らかになりました。  それからまた、これも政府側に差し上げた資料の中に書いておりますが、ちょうどわれわれが沖繩国会で沖繩の核の問題を議論していた昨年の十月から十一月にかけて、この沖繩の弾薬整備部隊ではちょうど作業の点検作業、アメリカでは百八十日点検と呼んでおりますが、年に二回やる作業の点検作業を行なっております。この作業点検書を読んでみますと、この中ではいわばその部隊全部の作業内容を詳しく点検して、あそこではびょうの打ち方が悪いとか、ここでは書類の取り扱いが悪いとか、いわばそういう欠陥を具体的にきわめてリアリズムをもって指摘をするものでありますから、これを見ますと、少なくともそこで行なわれている作業の内容が明瞭になるわけであります。そこで私どもが注意をしておりました、核部門ではないかと疑念を持っておりました兵器部の作業を見てみますと、たとえば作業計画書には八けた番号でこの爆弾のパラシュート交換作業が行なわれたというように書いてありましたが、この点検書を見ると、核爆弾のB43についてのパラシュートの取りかえその他修理作業について具体的に取り上げて、この作業のやり方が悪い、びょうの打ち方が悪いとか、ネジの締め方が悪いとか、そういうようなことが核爆弾B43というものの名前を具体的にあげて述べている。それからこの中には、先ほど私が指摘しました戦闘爆撃機に積めるという四つの核爆弾が全部この中に具体的な名前をあげて登場するわけであります。B57の取り扱い要領とか、それからB28のチェックリストとか、そういうものの取り扱いについてこの点検文書の中には全部出ている。これはこの弾薬庫が、弾薬部隊が明らかに核爆弾を毎日毎日取り扱っているということを証明するということのまぎれもない証拠だとわれわれ考えました。  しかもこの文献を調べてわれわれが驚いたことは、ただ貯蔵庫に核をしまってあるだけじゃない。分析をしてみますと、貯蔵庫から定期に引き出して、嘉手納の飛行場の戦術空軍がいる、そこへ運んで、そこへ一週間なり二週間なり置いて、そこでいつでもこの爆撃機が飛び出すときには利用できるようにし、二週間たつとそれを引き上げて格納庫にしまう。そういう作業までやられているということが克明に記録されているわけであります。  もしこのような核管理部隊が沖繩に施政権返還後も存続するということになるならば、これは核撤去という口約束があっても全くのことばだけのことになる。私が特に言いたいのは、第四〇〇整備部隊の全体についてもちろん問題でありますが、その中のこの兵器部門、ウエポンズブランチ、これは私どもが政府にその一端を提供した資料によっても核爆弾を取り扱っている部門であることはきわめて明瞭であります。このような部門がかりにもし五月十五日以後残るのかどうか。こういう事実が明らかになった以上、ほんとうに核撤去について政府が責任を負うというのであるならば、それは一々ここのビルの中にあった核弾頭がなくなったかどうかということを点検することは困難だということを政府は言われましたが、電話帳にも載っているようなこのような明瞭な部隊、部門がなくなるかどうかということを交渉するのは可能であると考えるものであります。私は、いまアメリカの嘉手約基地で、先ほどから核投下訓練で問題にしている第一八戦術戦闘航空団に対して弾薬供給の任務を持っておるこの弾薬整備部隊について述べたわけでありますが、このような特別に核を扱っている部門が沖繩に施政権返還後も残されるかどうか、この点については事実が明らかになった以上、その部隊の——総理は昨年、五月十五日によって在沖繩米軍は変質すると言われましたが、このような部隊がなくなるかどうかというのがほんとうに変質をするかどうかの分かれ目の一つであります。この点についても政府は五月十五日の施政権返還を前にしてアメリカ側と交渉する用意があるかどうか、その点を伺いたいと思います。
  273. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ことしサンクレメンテで、私参りましていろいろ話をしたその中の重要な点がただいまの沖繩の祖国復帰、同時にまたその後における米軍のあり方でございまして、核兵器についての厳重なる申し入れをした。したがって、祖国復帰の際には核のないこと、これを何らかの方法ではっきりさせよう、こういうところまでニクソン大統領は言っておるわけでございます。したがいまして、ただいままたさらに詳しい部隊の編制等についても御注意がございましたから、そういう点はそれぞれの筋のほうからやはり米軍に十分連絡をとってみたい、かように私考えております。
  274. 不破哲三

    不破委員 総理は、先ほども、われわれはアメリカを信頼しているというように言われましたが、たとえば昨年の核投下訓練について日本政府自身が信頼しているアメリカに質問した問題についても、五カ月たっても何らの返事がないという程度の信頼関係であります。それでは国民は困るわけであります。核投下の訓練をする部隊があるかどうか、あるいは核を管理している部隊が残るかどうか。これはほんとうに沖繩が政府が言っているように核撤去になっているかどうかを具体的な形で見分けるきわめて重大な問題であります。かりに政府の言うとおりの言い分を百歩譲って核弾頭だけは撤去されるということを考えても、いざというときに核戦争をする核投下部隊がいる、あるいは核の管理に当たる核管理部隊がいるということでは、これはいざというときに最後の核さえ接合すれば沖繩はりっぱに核戦力の基地としての役割りを果たすわけでありますから、ただ信頼関係に立ってアメリカに申し入れるというだけではなしに、ほんとうに核撤去の確認を国民の前で政府が国民の信頼を得られるような形で証明できるだけの交渉をあらためてやる必要があると考えるものでありますが、その点についての総理の御見解はいかがでしょうか。
  275. 福田赳夫

    福田国務大臣 核の問題につきまして返還前にあらためての交渉はしないつもりです。つまりもう十分交渉はしてある。五月十五日には核はありません、こういうことをはっきりアメリカ政府として言明をしておるのであります。その後におきまして、一体、核があるのかないのか、こういう問題につきましてはいろいろ外形だとか標準だとかいうこと等もありましょうから、わがほうにおいても調査をします。またアメリカの協力を必要とするということがありますればアメリカの協力を求めます。しかし、もう五月十五日前におきましてアメリカと核はどうするんだというような交渉はいま考えておりませんです。
  276. 不破哲三

    不破委員 総理は先ほどこの問題について調査をした上でアメリカ側と折衝したいとたしか言われたと思いますが、外相は、五月十五日までは何にもやるつもりはない。またここで総理と外相の見解がいつも食い違うわけでありますが、一体総理はどう考えておられるのか、ひとつ総理の見解で内閣を統制していただきたいと思います。
  277. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、先ほど来申しているのは、模擬爆弾の話をしていますね。また同時に、そういう部隊があるかどうか、こういうことでございます。その部隊がなくなる、こういうことについては外務大臣は別に触れておりません。とにかくサンクレメンテで、核がなくなる、核は撤去します、こういう話をしているから、それについて重ねて核の撤去についての申し入れはしない、これが外務大臣のただいまの答弁でございます。これは別に変わってはおりません。だから、これはむしろ聞き方のほうが悪いようですから、その辺を整理していただきたい。
  278. 不破哲三

    不破委員 そうすると、この核の管理をしている部隊があることが明らかになれば、その部隊の撤退あるいは撤去については交渉する、核そのものについては交渉しない、それで首相、外相の答弁は統一されるというのがいまの御見解ですか。
  279. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 統一されるもされないもない、そのとおりでございます。これは別に、私どももう核の撤去についてはサンクレメンテで話したばかりでございますから、もうしょっちゅうやっているこういうようなことではなくて、そのときにはっきりした話を聞いているから、外務大臣は、さっき言うように、重ねてそれはやりません、こういうことを言っているのです。私は、もうそれでそれに関するものは一切いない、かように思いましたが、不破君はまだたいへん危険な状態にある、こういうことの御指摘でありますから、そういう点については先ほど吉野アメリカ局長を呼んで、その点をさらに確かめることだ、そうしてさようなものがあるかないか、もしあればそれは撤去してほしい、こういう申し入れをしてくれ、こういうことを話をしたばかりですから、お気づきだったろうと思います。そのとおりにいたします。
  280. 不破哲三

    不破委員 核の問題のもう一つの問題は、政府がいう非核三原則の問題であります。核撤去されるということは何回も政府がことばでは言われましたが、これは、現実のアメリカの部隊の配置の中できわめて疑わしいというのが、私がきょう指摘した問題であります。核の投下訓練をする部隊、これは、そのほかにも、アメリカの海兵隊が核の砲撃をする訓練をしているということについて、私は国会でも問題にしましたが、この海兵隊は本土にも出てきて、やっている。こういう部隊の存在、それから管理の部隊の問題、この存在、これがなくなることが明確にならなければ、少なくとも、政府が言っている核撤去の問題はほんとうの証明にならないということを申し上げたわけであります。  その次に私が申し上げたいのは、核の持ち込みの問題であります。私は、アメリカのいろいろな文書を読んでおりますと、どうも非常にふに落ちないことが何べんも出てまいります。何がふに落ちないかというと、たとえば、先ほども紹介しましたサイミントン委員会、この委員会で核の持ち込みの問題が議論をされたときに、アメリカのジョンソン国務次官は、将来沖繩に核兵器を持ち込むような緊急事態が起きた場合の問題について聞かれて、「仮に、この問題を考えざるをえないような緊急事態が起つたとして米側が当該情勢を重大と認めた場合、日本側が同じく重大であると認めないとは必ずしも思わないし、本項にいう協議は、あらゆる場合に日本側の回答が「ノー」であるとの前提には必ずしも立脚していない。」つまり、アメリカは、アメリカが沖繩に核兵器の持ち込みを必要とするような場合には、日本も当然そういうことには同意する見通しがある、こういうことを日米共同声明で出した。会談をやった直後に、ジョンソン国務次官がアメリカの国会で述べているわけであります。私どもは、国会でも、国会の外でも、総理や外相から、われわれはアメリカ側に非核三原則をしょっちゅう説明しているということを何べんも聞いております。   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕 非核三原則を説明しているということは、常識的にいえば、そのような事態が起きた場合でも、日本はアメリカの核兵器の持ち込みには応じない、事前協議をやってもノーである、ということをアメリカ側に説明しているのだと思うのであります。ところが、その説明を何べんも受けているはずのアメリカ側の政府は、いざというときにはちゃんと日本の同意が得られる見通しがある。あの日米共同声明でも、「事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく、」と、事前協議の立場というものを、これがアメリカの核持ち込みを可能にする重大な条件としてわざわざ指摘をしております。政府が言うように、ほんとうにどんな場合にも事前協議には応じないのだ、核持ち込みはないのだということを何べんも説明してあるのだったら、このような期待をアメリカ側が持つのはなぜなんだろうかと、これは、私は、はなはだふに落ちないわけであります。  それで、総理に伺いたいのですけれども、総理なり日本政府の首脳部がアメリカ側に会う場合、将来の核持ち込みに関して、どんな場合でも事前協議にかけたとしても、日本側については核持ち込みはノーなんだ、認めないのだということを一体きっぱりと説明しているのかどうか、国内向けには説明するが、アメリカには説明していないのではないか、こういう疑問を持たざるを得ないのでありますが、その点について総理の答弁を求めたいと思います。
  281. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あらゆる場合に、きっぱりと言っております。
  282. 不破哲三

    不破委員 日本政府の閣僚で、アメリカ側に——総理はいつもノーと言われているとしても、将来、そういうことがあった場合、イエスの可能性がある、あるいは、これはまだイエスかノーかわからないというようなことをアメリカ側に言っているようなことは絶対ないでしょうか。私は、こういうものを読むと、日本政府のそういう意図が、一体アメリカ側に的確にほんとうに伝えられているのかどうか、きわめて疑問に思うのですが、総理自身だけでなく、佐藤内閣の責任ある代表から、絶対にそのようなことを替われていないということについて、もう一度重ねて御見解を伺いたいと思います。
  283. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういう御心配は絶対にありません。
  284. 不破哲三

    不破委員 それでは、私は伺いたいのでありますが、一昨年、安保条約の自動延長が決定されたときに、その直後に、佐藤内閣の、当時の防衛庁長官であった中曽根長官が、アメリカを訪問して、ロジャーズ国務長官やレアード国防長官と会談をしたことがあります。そのときに、中曽根長官から政府側に場告が出ていると思うのでありますが、その報告について伺いたいと思います。  その報告が、たしかあると思いますが、ここに提出をしていただけないでしょうか。委員長、二年前の中曽根訪米のときの報告書について伺いたいと思いますが、提出を求めたいと思いますが、よろしくお取り計らい願います。
  285. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 そういう正規の報告書というものはないというふうに私は承知をいたしております。
  286. 不破哲三

    不破委員 ないと否定されるならいたし方ありませんが、私は、ここに、昭和四十五年九月、防衛庁長官中曽根康弘と署名の入った報告書を持っておりますけれども、この中で、そのときの会談の概要が記録をされております。  レアード国防長官とも、ロジャーズ国務長官とも、日本の国防政策、それから核の問題を含めて、いろいろな討論や問答が行なわれている。その中で、四次防の概要の説明も行なわれている。そのときの、私がここで重大な問題として指摘をしたいのは、核の問題について行なわれている討論であります。日本の国防の立場からいって、アメリカの核抑止力がアジア・太平洋地域にとどまることについての要請や、そういう問題であります。これについても、もちろん大きな問題でありますが、私は、きょうここではその点は問題にいたしません。問題はこの点です。将来のアメリカの核持ち込みについて、中曽根長官からレアード長官に対して語られている問題であります。  当時、国防の基本方針の改定が問題になっておりました。それに触れて、当時の中曽根長官は、核問題について、次のようにレアード長官に述べております。これは九月九日の第一回の会談のときであります。「これは個人的見解だが、世界各国の誤解を避け、かつ国民のコンセンサスを大切にするためにも、核武装をしないことを明示すべきだと思う。ただし、米国の核兵器の(再)導入については留保しておく方がよいと考えている。これは事前協議の対象となるものであり選択の可能性を残して留保しておくのが賢明と考える。」ノーではないわけです。イエスもノーもあり得るという、将来の選択の可能性を残して留保するのが賢明だということが、当時の、日本の内閣の防衛の担当者である中曽根長官から、アメリカのレアード国防長官に対して発言がされている。  しかも、その最後の部分に「総合成果と所見」というものが述べられておりまして、そこの中には、当時の中曽根長官自身の意見として、「日本の非核政策については、国務・国防両者とも深い理解を示し、」これはいいわけでありますが、再導入について、「reentryについて事前協議事項として留保したいという私の考え方を歓迎した。」と、事前協議でノーだと言うのではなしに、将来選択の可能性を残す、イエスもノーもあり得るという考え方を歓迎したということが、わざわざ、総合成果の短い文書の中に、重要点として書かれております。  これが、日本の防衛の内閣の担当者が、アメリカの国防の首脳部に対して述べた会談の内容であるとするならば、いま総理は、私だけでなしに、どの閣僚も、核の再持ち込みについては絶対断わるということ以外にアメリカに言っていないはずだと申されましたが、ここには、明らかにそうではない。一番そういうことを言ってはいけないはずの防衛庁の長官が、将来の選択の可能性を残すということをアメリカ側に言明しているわけであります。その報告を、帰られたときに、総理は耳にされていないとは思われないのでありますが、このような重大な問題について、しかも活字になっている問題でありますが、この点について、総理の責任ある見解を伺いたいと思います。
  287. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 耳にしておるはずだとか、あるいは話を聞いておるはずだとか、こう言われても、聞いておりませんから、それはひとつお許しを得たいと思います。また、いまお読みになったように、「これは個人的見解だが、」と、こういうことを言っておる。個人的見解は、まあ、その立場において慎んでほしい場合もありますが、そうでもない場合の人は、ずいぶん自由な話をしておりますね。それは、国内には、ずいぶん核の保有論者もいますから、こういう点も考えている。私は、防衛庁長官は、それはそういう点には触れられないほうがよかったんだ、かように思いますけれども、しかし、それは個人的見解だということで、別にこれは閣議決定事項だとか、あるいは総理の了解を得ているとか、こういうものじゃございませんから、そういう点は、個人的見解を述べられることを、私ども一々監視はできない。御了承いただきたいと思います。
  288. 不破哲三

    不破委員 総理は、個人的見解は自由だと言われましたが、これは、一個人がおふろ屋で自由な見解を述べたとか、あるいは一議員がアメリカへ行って、普通の市民を相手に自由な見解を述べたとか、そういう問題じゃないのであります。  第一に、当時、中曽根長官は防衛庁の長官であります。佐藤内閣の防衛の担当者であります。それが、私用ではなしに、防衛庁長官として、公式にアメリカを訪問して、公式にアメリカの国防長官と会談をしたわけであります。しかも、個人的見解と断わってあるとはいえ、その会談の、みずから署名した記録の中に残されているような公式の発言であります。日本防衛庁長官とアメリカの国防長官との外交的な折衝の中で、内閣の基本方針だと言われた。繰り返し言われた非核三原則。これは閣議決定されたことがあると思いますけれども、それに反することばを、外国の責任者との会談の中で、個人的見解ならば幾ら言ってもかまわない、これが総理の御見解ですか。
  289. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さようには申しません。言わないほうがいいんだがと、こういうことまで言っていますから。これは、いまの個人的見解、これについても、その立場にある人においては、これは言わないほうがいいんだと、こういうことも考えますから、そう無制限に、たいへんけっこうなことを言ったとか、あるいは言論の自由だからそこまで言うでしょうとか、かように私は申しません。だから、その立場にある人では、やはり発言も慎まなければならない、かように私は思います。
  290. 不破哲三

    不破委員 総理は、核の問題に対して、非常に重視していると言われましたが、きょうの答弁を聞いておりますと、これは、核政策に関して、非核三原則の貫徹に関して重視している総理の答弁とは思われないのであります。核の持ち込みというのは、だれがやるんでもない、アメリカがやるのであります。アメリカの核持ち込みに関して、私が先ほど質問したのは、アメリカは日本には、将来必ず、いざという場合には核持ち込みをする可能性があるということを、アメリカは公式に繰り返し見解を述べている。なぜそういうことが述べられるのか。われわれは、いままでも、非核三原則と口では言うけれども、将来の核持ち込みに関して、佐藤内閣とアメリカの間にはいろいろな隠された話し合いがあるのではないかとか、いろいろな問題について提起をいたしました。絶対にそんなことはないというのが総理の繰り返しの答弁でありました。ところが、問題は、七〇年代の安保条約の自動延長をきめた最初のアメリカの国防当局者とわが国の防衛の当局者との話し合いにおいて、核の再持ち込みについては可能性があるということが述べられたということは、決して、なかったほうがよりましであったとかいうことで済む性質の問題ではないと思うのであります。この点について、総理は、事の重大性を、これは重大な問題ではない、こういう会談を通じて、アメリカの政府や軍の首脳部が、将来の日本への核持ち込みの可能性について判断をしたとしても、これは決して重大ではないというように考えられるのかどうか。その点を重ねて伺いたいと思います。
  291. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままでは、政府の非核三原則でございました。しかし、国会でまで決議をした、そういうことでございますから、これから後、佐藤でなくとも、だれが総理になられても、最高責任者として、事前協議の場合に、そのときにノーと言うこと、これは非常にはっきりしている。私は、かように考えております。
  292. 不破哲三

    不破委員 私は、この点について政府に要求したいと思います。  まず、第一に、このレアード国防長官と中曽根防衛庁長官の当時の会談において、このように問題が話し合われたのかどうか。この点について、事実を明確にすることがまず第一であります。この点について、政府がしかるべく事情の調査をして、まあ、そういうことが話し合われて、総理が耳にされていなかったとすれば、これはまた、総理の内閣に対する統制が、一昨年の九月という時点で一体どうであったのか、はなはだ疑問に思わざるを一得ないのでありますが、こういう事実があったかどうか。これは、決して、一個人の見解の自由ということで済まされる問題ではないと思います。私は、総理に、この間の事情を調査して——日本の防衛庁の長官が、アメリカ側に対して、こういうような、事前協議について、イエスもありノーもあるというようなことを発言した事実があったのかどうか、政府自身によって明確な調査をして、この委員会に報告されることを求めたいと思いますが、委員長、よろしくお取り計らいをお願いしたと思います。
  293. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 内閣総理大臣。   〔「委員長に言ったんじゃないか、委員長だよ」と呼ぶ者あり〕
  294. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 調査するかしないか、内閣のことですから等えさせるんですよ。
  295. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは先ほど来、私は、もうはっきりした、わが国のゆるぎのない方針を説明をいたしましたから、そういう話があったとかなかったとか、いろいろ疑問にされる、そういう事柄によって日本の行き方が左右されるとは思いません。その点をはっきり不破君に申し上げておきますから……。これは、国会の最高機関が決議した。ちょうど共産党はあの決議にはいらっしゃらなかったですね。しかし、立ち会われなかったけれども、これは、国会の決議は有効に成立しておりますから、したがって、われわれはそれに縛られる。したがって、だれが総理になりましても、その決議は守らなければならない。かように思いますから、御心配御無用と、こういうことを申し上げておきます。
  296. 不破哲三

    不破委員 国会で決議をしたから、前に、核持ち込みを認めるような閣僚が、防衛庁の責任者にいたとしても、これは、いまさら問題にするに足りないという御見解ですか。
  297. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも何度申し上げても——おわかりになっているんじゃないかと思うんですが、いわゆる核持ち込み、これは政府考え方でもあるが、同時に国会の決議でもあるんだから、それを違反するようなことがあってはならない、これがただいまの民主主義の議院政治のルールではないか、かように私は思います。
  298. 不破哲三

    不破委員 この点に関して、私は、先ほど、サイミントン委員会でのジョンソン次官の発言を読み上げましたが、いざというときは持ち込める可能性がある。その次にこういうことが書いてあるわけであります。核問題についての「協議の意味するところは、日本側は「イエス」または「ノー」のどちらにも決定できるということである。この件については、佐藤総理と愛知外務大臣が何回か説明しているところである。」つまり、日本側の立場というのは、イエスもあればノーもあるのだということ。発進の問題じゃないですよ。核の問題です。日本側の立場は、協議の意味するところは、日本側はイエスまたはノーのどちらにも決定できる。そういうものであるということについて、佐藤総理と愛知外務大臣は何回か説明している。ジョンソン国務次官がそういうように、佐藤さんの名前をあげて言っているわけであります。これは、まさに、中曽根防衛庁長官が、個人的見解としてその年にレアード国防長官に言った、選択の可能性が残っているんだという発言と全く同じであります。その点についていかがお考えでしょうか。
  299. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの、イエスもあり、ノーもあるというのは、事前協議じゃないかと思います。(不破委員「核問題についてのそれでありますから」と呼ぶ)それで事前協議については、そういうことが言える。核問題については、先ほども申しますように、非核三原則を政府は最初からとっておりますし、また、さらに、その上、国会でまで決議された。こういう状態ですから、それは区別して考えられなければ、いわゆる事前協議の場合のような——この事前協議のイエスの場合でも、これはやはり、私は、わが国の国益に照らして、これは国益になるかならないか、それがやはりイエスあるいはノーの一つの基準だ、かように考えておりますが、もちろん、一般の事前協議の場合だってそうだ。ましてや、いまの核の持ち込みあるいは通過、そんな場合に、ただいまのことは区別して考えなければならぬ。事柄の軽重、それから考えても、私が申し上げることはおわかりがいただけておると思います。しかし、事柄の性質上、これは何回も確かめられる。それほど重大な問題だと私も理解しておるから、また、同じことを私がお答えしているのも、事柄が重大であるからでございますから、その辺は、くどいお答えをしてまことに相すみませんが、そのとおり御理解いただきたいと思います。
  300. 不破哲三

    不破委員 くどいお答えに対してくどい質問を私もせざるを得ないわけでありますが、これは、事柄が総理が言われるように重大だからであります。ここには、核問題についての日米間の交渉の真相の一端があらわれているとわれわれ考えるからであります。一九六九年に、総理が日米共同声明を結んで帰られました。あのときに、あの共同声明の中で、アメリカ側は、日本政府の核政策に背馳することなく、というように書かれていて、なぜ、非核三原則と書かれなかったのかということがこの国会でも何べんも問題になりました。なぜ、非核三原則と書かれなかったのか。アメリカが日本政府の核政策として受け取っておるものは何か。これが、このアメリカの国会でのジョンソン証言にあらわれているわけであります。  総理は、いま、いまのは事前協議一般だろうと言われましたが、私は、事の議論の都合上分けて読み上げましたが、実は、これは、一回の、一本の発言であります。日本へ核を持ち込まなければいけないというような重大な事態が起きた場合、日本政府と事前協議しなければいけない、そのときに、日本政府が必ずノーであるとはわれわれは考えていない。こういう重大な問題でアメリカと日本の——ここにはありませんが、信、願関係が非常に深いそうでありますから、このアメリカと日本の間で意見の違いが起こるとわれわれは考えていない。この協議について、日本側の立場は、イエスもあればノーもあるということだ、それが佐藤総理大臣と愛知外務大臣がわれわれに繰り返し語っていることだ、こうジョンソン国務次官はアメリカの国会に説明をして、あの日米共同声明の内容を述べているわけであります。そのあとに防衛庁の長官が行って、やはり同じことをレアード国防長官に言っている。ここには、日本政府が非核三原則を言っているけれども、将来の核持ち込みの可能性があり得るのだということを、日本政府の非核政策のもとになぜアメリカが理解しているか、私は、ここにそれがあらわれていると思います。それからまた、アメリカは、今度の沖繩の施政権返還後、日本政府が非核三原則を盛んに国内で言っていることを知りながら、なぜ核投下部隊をいつまでも沖繩に置こうとしているのか。余談ですけれども、第十八戦闘戦術航空団というのにあるF4CとF105の戦闘爆撃機については、以前アメリカの空軍次官をやっていたフープス氏が、これは大体核爆撃をおもな任務にしてつくったもので、あまり命中率は高くないというように言っている飛行機であります。その飛行機を、なぜ、アメリカが、核を持ち込めないはずの沖繩にあの核部隊を残そうとしているのか。それから四〇〇MMSというような核の管理をやっており、政府も昨年答弁されたように、これはアジア全域に対する弾薬供給部隊でありますが、あのような危険な核管理部隊をなぜ沖繩に残そうとしているのか。私は、これは、アメリカが、沖繩を将来核基地にする計画、核基地として存続をし、いざというときには核戦争の基地として使えるという計画のもとに行動している何よりの証拠だと思うのでありますが、こういう事態がここに生まれてくる重要な背景が、私は、ここにあると考えるものであります。この点について、これ以上総理とただ押し問答しても問題の前進がありませんので、私は、重ねて、この核問題に関する日米交渉の経緯を、先ほどの七〇年九月の防衛庁長官と国防長官の会談を含めて、都合のいいところだけ国会に報告するのじゃなしに、全貌を必ず国会に報告するように、しかるべき措置をとるように、そのことを政府に要求して、次の問題に移りたいと思いますが、その点について、重ねて総理の答弁を、あれば伺いたいと思います。
  301. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも、幾ら説明しても立場が違うし、また、信頼していただけませんから、これはちょっと私……。(不破委員「こういう事実があるから」と呼ぶ)そういう事実の解釈のしかたも違いますから、どうも、これは平行線のようです。ただいま、申し上げることは別にございません。先ほど来で尽きております。
  302. 不破哲三

    不破委員 それでは、私は、次に、安保条約の性格の次の問題に移りたいと思います。  私は冒頭に、総理に対して、安保条約のもとでの在日米軍は日本の防衛の補完部隊かどうかということを伺いました。ところが、そのときに、アメリカ側が、安保条約のもとでアメリカは日本日本の防衛に関連する部隊は置いていないと考えているという見解を述べているということを伺いましたが、その際に、アメリカの首脳部は、この委員会で、こういう性質のことを繰り返し述べているわけであります。  これはジョンソン次官の証言でありますが、駐留米軍の多くは、直接日本の安全と結びついていない、それは、日本周辺の地域の安全に結びついている、韓国や台湾のように、現地の米軍を支援するための米国の能力というものこそ、在日米軍基地の重要な任務である。あるいは、われわれは、第一義的には、日本の直接的防衛のためではなく、その周辺地域のために日本にいるのだ。あるいは、在日米軍の一番第一義的な任務は、韓国のバックアップである。このサイミントン委員会では、日本にアメリカ軍を置いているのは、日本政府が説明しているように、日本の防衛のためではない、そうではなくて、六九年の共同声明で言われたような、台湾や韓国の事態のためにわれわれは日本に軍隊を置いてあるのだ、ということを、それこそ繰り返し繰り返し述べているわけでありますが、こういう記録を、総理、お読みになったことはございませんでしょうか。
  303. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あまり、アメリカの国会の模様は、私が目を通す一たいへん英語に弱いので、どうも、十分目を通しておりません。
  304. 不破哲三

    不破委員 これは、先ほども言いましたが、外務省がわざわざ日本語に翻訳して、英語に弱い総理でも読めるように提供しているはずであります。総理が日米共同声明を結んで、その直後に、この日米共同声明の内容がアメリカの国会でどのように議論されているか、アメリカ側がこの内容をどのように受け取っているか、これを示す最も重要な文献のはずであります。それを読まれないで、ただアメリカを信頼しているというのは、これは盲信というものだと思うものでありますが、いかがでしょうか。
  305. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ、盲信はけっこうですが、ずいぶんひどい批判のようですが、私の答弁もどうも親切でないから、そういうような批判を受けるかと思います。ただ、日米安保条約、これはいろいろの機能を持っておりますから、まあ、条約そのものの条文をお読みになると、いまのように、どこが中心だとかいうようなサイミントン報告そのものどおりになっているとは思いません。私は先ほど、法制局長官に、どういうような条文になっているかと、こういうことを申しておったのですが、これを十分お読み取りいただくと、それはもちろん極東の範囲としていろいろ部外にもアメリカの援助を必要とする、在日米軍がそういうところへ出かける、こういうこともあります。そういう場合に、それが事前協議の対象になる。そうしてそれは、私どもがそういうところに引き込まれないように、戦争に巻き込まれないように注意する、国益上からイエスもあればノーもある、先ほど話をしたばかりであります。したがって、このサイミントン報告そのものをそのままにお考えにならないで、日本には日本的な考え方があるのだ、これを御理解いただく。まるっきり日本でないようなお話をなすっても困るのです、ここは日本の国会ですから。どうかそういう意味で、私の説明が不親切だ、こういうことでおしかりを受けたかと、かように思いますが、ただいま申し上げるように、私は日米安保条約のその条文が示しておるとおり、そのとおりに運用される、したがって、日本から他の地域に出ていく場合には事前協議の対象になる、その場合にイエスもありノーもある、それをきめるのは日本の国益、その立場からきめる、かように御理解をいただきたいと思います。
  306. 不破哲三

    不破委員 総理はだいぶ先まで答弁をされましたが、私は、別に事前協議のイエスもまだ聞いていないのです。アメリカが在日米軍を何のつもりで日本に置いているか、これはアメリカの考えを聞くのが一番早いわけであります。アメリカが自分の国の軍隊を日本に置いている理由をアメリカで説明しているわけでありますから。これを日本総理に聞いても、アメリカの事情で御存じないという答弁がいつもあります。ですから私は、アメリカの政府が在日米軍を何のために置いているか説明している文書を読み上げているわけであります。アメリカの政府は、さっきも言いましたように、日本の直接の防衛に関連ある軍隊は日本には置いていない。在日米軍の第一義的任務は、韓国をバックアップすることであり、台湾をバックアップすることである、こういうことを明瞭に言っているわけであります。  ところが総理は、あるいは佐藤内閣の閣僚は、いままで、国会に対しても国民に対しても、在日米軍はこれは日本の防衛のためにいるんだということを何べんも説明してまいりました。ところが、それは現実にわが国に、あるいは横田に、横須賀に、あるいは佐世保に軍隊を置いているアメリカ軍の、米国側の主張とは全く食い違っている。アメリカがそのつもりで軍隊を置いているんなら、いままで国民に総理が説明していたのは、これは、うそと言うとまたひどい批判だと言われますから、うそということばを避けるならば、全くの偽りであるということになると思うのでありますが、この点について、総理はいかが考えるでしょうか。
  307. 福田赳夫

    福田国務大臣 日米安全保障条約に基づきましてわが国に駐留する米軍の任務は、わが国の防衛なんです。これはもう言わないでもわかっているから、そんな議論はないわけなんです。ですから、初めて佐藤首相がジョンソン大統領と会談した、あのときに、在日米軍の任務は何だということが議論になった。これはいかなる攻撃に対しても日本を防衛するためにあるんだ、こういうことです。これは当然の理なんです。しかし、というところなんです。しかし、日本の防衛を完ぺきにするためには、その周辺の平和がなければならぬ。その点がジョンソン次官によって強調されておる。その強調されている、末節と言っちゃ語弊があるかもしれませんけれども、第二節、第三節の部分だけを取り上げてこの論議をされる、そういう所感を得たわけであります。
  308. 不破哲三

    不破委員 総理ばかりか、外務大臣もこの議事録を読まれていないらしいですね。いま福田さんが説明されたようなことが、この議事録でやはり問題になっているわけです。これは日本政府が、いままで国風を納得させるための国内用の議論であったと、はっきりジョンソン次官は述べているわけであります。しかも、先ほど福田さんは、アメリカは日本の安全のためにいるというのが安保条約だと言いましたが、日本の安全と極東の平和のためにいるというのが安保条約のはずであります。ところが、日本の安全と極東の平和という名目でいる在日米軍が、いまでは日本の防衛のためには通常戦力は全く置いていない、通常戦力による日本の防衛のための軍隊は日本には置いていないということを、アメリカの責任ある政府が述べているわけであります。そこからどういう結論が出るのかというと、在日米軍の通常戦力の部分は、これは日本の防衛のためではなくて、韓国や台湾など日本以外の地域での軍事行動のためだ、そういう結論が出てくる。そのとおりのことが、あるいは司令官によって、あるいはジョンソン次官によってこう述べられている。それからまた、日本の防衛に役立つ軍隊があるとすれば、これは通常戦力以外だということになるわけであります。ここには、何べんも言いますが、通常戦力による防衛に直接関連のある部隊は、われわれは日本に置いていないというのでありますから、この問題について、ただ安保条約の条文だけを問題にしたのでは、これは問題にならないわけであります。ジョンソン次官が、あの膨大な議事録の全体を通じて最も強調しているのはこの問題でありますが、これは安保条約の性格、総理が七〇年の六月に堅持をきめられた安保条約の性格にかかわる重大問題であります。在日米軍の性格に関するアメリカの政府首脳部のこの見解は、事実に反する、間違っているとお考えでしょうか。
  309. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも、強調をしていることがよほど違ってはおりませんか。もしもそれらの地域が非常に心配なら、アメリカはその地域に直接兵隊を置くことができるのです。日本にわざわざ、日本の事前協議にまでかけて、ノーと言われるかもわからないような地域に置く必要はないことなんじゃないでしょうか。私は、それらの地域のことを考えると、それが一番心配だと言われるなら、ちょっとアメリカは迂遠な方法をとっておる、かように私は思います。  ただいま日本におります兵隊も、よほど陸海軍も少なくなっておりますが、これはひとえに日本の自衛力ができた、こういう点からだろうと思いますし、また日本の、あるいは極東の平和、いわゆる緊張も緩和している、そういう方向だ、かように考えるがゆえに、よほど考え方も変わっているんだ、私はそう理解するのが当然のことだと思っております。ことに、私が申し上げるまでもなく、韓国にはアメリカの兵隊がいるわけですよ。だから、そういうところに増強すればいいわけでしょう。また日本から出かける、そういうことまでわざわざ、ノーを言われるかわからないような事前協議の対象にする、こういうようなことまでやる必要はないことじゃないでしょうか。だから、やや不破君、その問題、少し力こぶの入れ方が違っておりはしませんか。どうも力点の置き方が、私やや違っているのじゃないか、かように思いますがね。この程度でとめておきますけれども……。
  310. 不破哲三

    不破委員 それなら質問を変えましょう。  日本の在日米軍の中で、たとえば直接日本の防衛を任務とするものではなくて、第一義的に他国への行動を任務とするような部隊があるとしたら、それは総理は、安保条約に基づいて日本にいる適法な軍隊だとお考えですか。
  311. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 他国へ出かけることを任務とするような……(不破委員「主要な任務です」と呼ぶ)主要な任務とするような軍隊があるならばと、これは仮定の問題ですね。あるならばとおっしゃる。そういうものがありますか。私はどうも、逆にそうじゃなくて、やはり日本にいるのは、日本の安全に審与する、防衛に寄与する、同時にまた極東の平和に寄与する、こういうものじゃないか、かように思っております。私はたいへん単純ですから、あの安保条約第六条そのままをそのまま理解したい、かように思います。
  312. 不破哲三

    不破委員 まことにたよりない話でありますが、そうしますと、総理の安保条約や安保条約に基づく米軍の体制に対する理解は、安保条約第六条の数行しか出ていない。六〇年にあの数行を記憶されて、それ以外のことはほとんど研究をされないように思います。私はこのような——また悪口になるとあれですが、このような形で総理日本の安全保障の問題について最高の責任を負われているということに関して、はなはだ残念に思うわけであります。いま総理が力点が違う、力の置きどころが違うと盛んに言われましたが、これは私が言っているんじゃないんです。ジョンソン国務次官であり、あるいは在日米軍司令官のマッギー空軍中将、こういうような直接在日米軍の機能や運用に当たっている責任者が、国会で在日米軍の機能を問われて、日本に駐留する米国軍隊は、第一義的に日本本土の防衛のためにいるんじゃないとか、主要な任務は韓国の防衛のためであり、第七艦隊の維持のためであるとか、そういうことをそれこそ無数に述べている。そういうことがアメリカで議論をされ、そういう答弁があることが天下に明らかになっていながら、安保条約を結んでいる当の日本総理大臣や外務大臣のほうは全くそんなことは知らないで、十何年前の第六条の数行だけをたよりにして、それで仕事をしているとしたら、これは、総理と幾ら安保の議論をしてもむだということになります。  しかし問題は、日本に軍隊を置いているアメリカ軍が、それの責任者が、実際の在日米軍の任務についてこういうことを言っているわけでありますから、総理も外務大臣もさっそくこの文献をぜひ調べて、一体その見解が日本政府の見解と違っているのかどうか、正確なのかどうか、違っているとすれば、総理は全然勘違いして、アメリカの軍隊を、別の任務を持っている軍隊を日本の本土に置いているわけでありますから、これは早急に撤退の交渉をするのが妥当ではないかと思います。  それから、なお申し上げますと、この委員会では、やはり数年来この国会で問題になりました事前協議問題について、非常に興味のある発言が行なわれております。去年総理が沖繩国会のときに、取り消したのか取り消さないのか軌道修正かわからないようなことになりましたが、韓国や台湾で事態が起こったら、緊急に前向きの対処をするという問題がありました。ナショナル・プレスクラブで述べた演説であります。この解釈がやはりアメリカの国会で問題になっているわけであります。それも、アメリカの国会でアメリカの政府の当局者が説明をするのは、総理がこの予算委員会などで説明をするのよりはよほど明快であります。前向きの対処とは一体何なのかということについてジョンソン国務次官は、今度の日米会談で非常に問題だったのは、韓国や台湾で事態が起きたときに、日本がノー、米国が韓国における抵抗を支援すべきであるとは考えない、あるいは米国が台湾における抵抗を支援すべきであるとは考えない、ノー、こう言わないようにすることが、六九年の日米会談の一番重要な問題だった、そうしてそれが共同声明なされたんだというように述べております。それからまた、あの前向きの対処というのは、日本が事態が起きたときに、できるだけ回答がイエスと蓄えるようにするという方向で、できるだけ検討するという約束である。それに対して重ねて、必ずイエスと言うのかというように聞かれて、必ずというのに相当近い、こういうことまでアメリカ側では受け取っているわけであります。  ですから、去年のアメリカの国会で沖繩協定が採択されたときにも、わざわざこの問題がもう一度引っぱり出されて、これが前提になって証言されている。しかもこの問題は、私が先ほど言いましたように、在日米軍の基本性格にかかわる問題であります。アメリカは、韓国や台湾や東南アジアでの戦争のために日本に軍隊を置いていると明言している。日本の防衛に応援することがあるとすれば、カッコつきの防衛ですが、これは通常戦力以外のものだということをわかるような形で明言している。それで、しかもその韓国や台湾の事態に関しては、今度の共同声明、一昨年の会談で、その必ずイエスと言う約束ができたということを答弁しているわけであります。この点について佐藤総理は、この点も全く読んでいない、御承知ないという答弁がくるのでありましょうが、肝心の日本政府が、沖繩協定を結んだ相手の政府がこういうことを明言しているということに関して、総理はどうお考えでしょうか。
  313. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 六九年の出時、そういうような事態については、いま言われたことはそのまま私も認めます。しかし、もうそのときから現在はよほど変わっておりますし、こういう事態になったときに、緊張の緩和しているときに、そういう事態は起こるとは思いませんので、ただいまのことはさように御了承をいただきたい。
  314. 不破哲三

    不破委員 これは重大な発言であります。六九年の当時にはこういう事態であった。六九年の共同声明でのイスエ、ノー問題についての解釈は、いま私が読み上げたような事態が起きたら、日本政府はにべもなくノーと言わないで、できるだけイエスとなるように努力する、必ずイエスと言うのに近いというのを読み上げたのに対して、六九年の事態ではそういうこともあったと総理は言われました。それは六九年、七〇年の時点で総理が国会に答弁したこととを全く違うのであります。六九年の事態は、アメリカの政府が説明したとおりでありますか。
  315. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりではございません。私はいつも言っているように、日本の国益に照らしてイエス、ノー、それをきめる、こういうことでございます。だから、その立場は堅持しておる私の立場でございます。
  316. 不破哲三

    不破委員 そうすると、さっきの答弁は違うわけですね。六九年にはそういう事態があったと言われたのは違うわけですね。
  317. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、私が申しましたのは、あのときはプエブロ号かああいう事件がございましたね。そういう際でありますから、いろいろ問題を考ると複雑な状況でありました。しかしながら、最近はそういうことはございませんし、幸いにしてただいま緊張が緩和している、こういう際でございますから、そういういわゆる悪い状態を思い起こすことはないんじゃないでしょうか。私はさように考えておりさす。
  318. 不破哲三

    不破委員 つまり、六九年にはそういう約束をしたが、最近は情勢がよくなっているから、あの約束が生きてくることはまずあるまい、だから安心をしてくれ、そういう御答弁ですか。
  319. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 六九年のような事態はない、かように私、考えていますから、いわゆる事前協議の対象になるような事態は起こらないから、そこらで国民は安心してください、こういう意味でございます。
  320. 不破哲三

    不破委員 問題は、起こったときにどういう約束をしているのかという問題であります。その点について、アメリカ政府日本政府の間で一定の約束をされた、それがしかも総理自身のことばによって、そういう事態が起きたときには前向きに対処するということがアメリカで演説をされた、その演説の中身についてアメリカ側では、これは必ずイエスと言うのに相当近いんだ、そういうことを国会で説明をしている、そのことが問題なんであります。まあ間違って約束をしたが、あるいはちょっとああいう約束はそのとおりしたが、しかし、まあ緊張が緩和しているから、それは起こらないだろうというのでは、これは私のいまの質問の答えにならないわけであります。約束の性質について、これは私もこの国会で何べんも伺いましたが、こういうアメリカ側の公文書が出てきている以上、私は五月十五日の返還を前にした時点で、重ねて総理にただす必要があると思います。
  321. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 約束と言われるなら、事前協議の場合にイエスがありノーがある、これが約束でございます。そのとおりであります。
  322. 不破哲三

    不破委員 そうすると、ジョンソン国務次官が日米会談を経て、アメリカの国会に対して、この約束の中身はイエスもあればノーもあるが、必ずイエスに相当近い、全体としての文脈を読めばこれはイエスの方向だ、日本政府はできるだけイエスになるように検討の努力をする、こういうように説明しているのは間違いですか。
  323. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 間違いだろうが間違いでなかろうが、とにかくそれはジョンソン次官がさように解釈しているのです。私どもの約束は、どこまでも事前協議の場合にイエスもあり、ノーもある、これはいつも言っているじゃありませんか。この点を、別に変える考えはございません。
  324. 不破哲三

    不破委員 それではもう一つ、共同声明に関連した問題で伺いたいと思います。  共同声明にはベトナムの問題について述べられておりました。沖繩の返還は、ベトナムでのアメリカの戦争に支障がないように返還させるという趣旨のことがうたわれておりました。このことに関しても、当時の国会でこれはかなり議論をしたところであります。私もこの予算委員会で当時の外務大臣や、総理大臣はいまも同じでありますが、総理大臣に聞いたことでありますけれども、そのときに、いろいろ聞いたことに対して政府の答弁は、沖繩の施政権返還の時点ではベトナムの戦争は終わっているだろうから、そういうことについてさして心配するに当たらないということでありました。私はそのときに、ベトナムの戦争は、アメリカがいまの政策を続ける限りそう簡単に終わるものでない、この約束はたいへん重大な意味を持つということを申し上げましたが、現実の事態は、五月十五日を前にして、ベトナムでの戦争はアメリカが依然として侵略を続けている、そして戦争が現実に終わっていない、こういう状態であります。  それで、私はこの問題について一つの点だけ伺いたいと思うのでありますけれども、沖繩が日本に返還される、施政権が返還される。確かに当時問題になったようなB52は沖繩にはいまおりません。ところが、グアムからベトナムに対するB52の爆撃が大量に行なわれております。このグアム島からB52がベトナムに対する爆撃を行なう場合に、沖繩の給油基地に寄って、沖繩の基地からこれの給油が行なわれているという事実があります。これは、私どもが沖繩の戦略空軍の発行している飛行計画書を調べて明らかにできている事実であります。この点に関して伺いたいのでありますが、いままで、六〇年の安保国会の際にも、その飛行機が直接戦闘地域へ戦闘作戦行動のために行く場合には、それに対する給油は、戦闘作戦行動への援助として事前協議の対象になる、こういうことが当時岸内閣の責任ある閣僚から言われております。それから数年前にも、やはりこの国会で愛知外務大臣から、戦闘作戦行動に出ていく爆撃機に対する給油の場合には、それが日本の基地から行なわれる場合には事前協議の対象になる、こういうことが言われております。五月十五日の施政権の返還以後——いまはアメリカの占領下でありますから、これは沖繩から給油が行なわれようが、政府が口を差しはさむ余地がないかもしれません。しかし、五月十五日から施政権が返還されて、しかもベトナムの戦争が続いているという場合、グアムからB52がベトナムの爆撃に行くそれに対して沖繩から給油が続けられるということになれば、これは当然事前協議の対象として取り扱うべき性質のものになると思うのでありますが、その点の総理の見解はいかがでしょう。
  325. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府委員から説明させます。
  326. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  B52がグアムから飛び立って、そして沖繩で空中で給油を受けて、そしてさらにベトナムへ行って爆撃をする、こういう事例がありましたとしましたら、これにつきましては、沖繩から発出しておるのはあくまで4給油機でございますから、これは直接戦闘行為には携わっておりません。
  327. 不破哲三

    不破委員 そうすると、政府は六〇年の安保国会以来の答弁を取り消されるわけでありますか。六〇年の安保国会では、戦闘作戦行動への補給もこれはその一部である、事前協議の対象になる、そういうように政府は答弁をされました。それから愛知外務大臣が、戦闘作戦行動であるB52の爆撃に対する給油も、これは事前協議の対象になる、こう言われたのはわずか三年前であります。いよいよ沖繩の施政権返還が目の前になってきて、アメリカと事前協議をこの問題でしなければいけなくなる。そういうようになったら、解釈を変えてこれをはずすというのでありますか。その点を明確にしてもらいたいと思います。
  328. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほどの御質問は、グアムから飛び立った飛行機が、ベトナムへ爆撃に行く途中において、沖繩から飛び立った飛行機によって給油される、こういうことでございますが、これはあくまでも給油だけしかやっておりませんですから、したがって、沖繩から直接戦闘行為のために飛び立った、こういうことにはなりません。  なお、御指摘の三年前の点につきましては、これはすでに戦闘作戦任務を付与されて、他国の基地を発進した飛行機がわが国の施設区域を使用し、給油を受ける行為は事前協議の対象となる、すなわち、わが国の基地に一回おりまして、そこで給油行為を受けて、そしてさらにまた飛び立つ、こういう場合には、もちろんわが国の基地が直接戦闘作戦行動に使われたわけでございますから、これは事前協議の対象になる、こういうことでございます。
  329. 不破哲三

    不破委員 それは何月何日の答弁でしょうか。
  330. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは、四十四年三月十三日の愛知前外務大臣の答弁でございます。
  331. 不破哲三

    不破委員 どこの委員会ですか。
  332. 吉野文六

    ○吉野政府委員 参議院予算委員会であります。
  333. 不破哲三

    不破委員 都合のいいところだけ引用されては因るのであります。いま資料を取り寄せておりますが、当時の六月の衆議院の内閣委員会でもこれが問題になっておりますし、大体安保国会で、六〇年に安保条約を日本で認めるのかどうかということが国会で論議になったときに、戦闘作戦行動をしておる部隊に対する補給も事前協議の条項になるのだ、だから、そういうように日本の基地がかってに使われることはないのだということをわざわざ政府が説明しているわけであります。それが、途中で答弁を変えて、それで事前協議の対象にならぬということになるのは、これはきわめてでたらめといいますか、安保問題という重大な問題に関して、政府の責任ある立場を投げ捨てるものといわざるを得ないのであります。特にこの問題が重要なのは、ベトナムの侵略戦争がこの五月十五日の以後も継続されるということがほぼ確実であります。そのべトナム戦争に、日本の基地が石印の爆撃に直接加担をする、B52の爆撃を直接給油という形で応援をする、支援をする、こういうように利用されるということを、日本政府は、先ほどから緊張緩和、緊張緩和と言われておりますが、一番の緊張の根源であるベトナムの戦争に、そのように返還後の沖繩が利用されることを認めるのかどうかという問題にかかわるわけであります。この点について、総理は先ほどからすわっておりますが、総理自身がどうお考えになっておられるか。これは給油であるならば大いに利用されてかまわないという立場であるのかどうか伺いたいと思います。
  334. 吉野文六

    ○吉野政府委員 われわれは、直接戦闘作戦行動に従事する、そのために発進するということは、たとえば補給のための場合をとりますと、空挺部隊が現に戦争をしておる兵隊に対して補給、武器弾薬等を落とす、こういうような場合には、たとえ補給でありましても直接戦闘行動に参加する、こういうように解せられると思います。しかしながら、単に沖繩の上空で給油するということは、これは沖繩が直接戦闘作戦行動の発進地にはなっておりませんですから、したがって、これは事前協議の対象にならない、これがわれわれの見解でござます。
  335. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 不破君に申し上げますが、時間がだいぶ経過しておりますから、簡単に願います。
  336. 不破哲三

    不破委員 最後に一つの問題を伺います。  いまのベトナムの問題に関しては、要するに、ベトナムの戦争に沖繩の基地がそういう形で利用されるということはかまわぬというのが政府の答弁であり、いまの政府委員の答弁が総理の立場であるというように考えてよろしいんですね。そのあとで、最後に一つの問題をやらせていただきます。
  337. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのところ、私、事務当局がどういうような解釈をしているだろうか、かように思いまして、先ほど来事務当局の答弁をさせたのでございます。したがって、私自身がただいまの事務当局と同じ考えだということでございますし、これは事務当局から説明させたとおりと御了承いただきます。
  338. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 不破君、あと一点に限ります。
  339. 不破哲三

    不破委員 では、質問じゃなくて、いま資料が参りましたので一応読み上げますが、当時の岸総理大臣、よく御存じの当時の総理でありますが、何が事前協議の対象になるかということについて、「日本が一般的の補給基地として使われるということは対象にはならないと思う。然し戦闘作戦行動と密接不可分の補給行動は対象になることについては日米間に意見が一致している。」これが明確な当時の答弁であります。   それからまた、先ほどの参議院の予算委員会でも、愛知外務大臣は三年前の三月の参議院予算委員会において、給油の場合にも、明らかに発進する飛行機が作戦のために飛び立つという戦闘命令を受けて、途中で給油をする場合はその範疇に入る、こう答弁をしているわけでございます。どこであっても途中で給油する場合にはその範疇に入る。いまの政府委員の答弁は、そういう答弁の中から、きわめて都合のいいところだけを選んで、一貫した六〇年以来の政府の答弁をそうしているというように解せざるを得ないのでありますが、この点は、政府のほうでもう少し正確に研究をして、こちらへの回答をいただきたいと思います。  最後に、一つの問題について伺いたいのでありますが、四次防に関してであります。  四次防に関連して政府は今度きわめて重大な責任問題を引き起こしましたが、私が伺いたいのは、先ほどのような事態、先取り問題を引き起こした根源についてであります。四次防について、これの原案が発表されてから、アメリカと日本の間でどのような交渉や協議が行なわれたか、政府側がアメリカに対していつ四次防の説明をし、どのような意見の交換が行なわれた、のか、その点について総理から経過を伺いたいと思います。
  340. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは何べんもここでもお答えしておりますように、もともとが防衛庁試案といったようなもので、政府として正式に認めたものじゃありません。したがって、この問題について正式にアメリカ側と話をしたということは承知いたしておりません。
  341. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて不破君の質疑は終了いたしました。  以上をもって総括質疑は全部終了いたしました。      ————◇—————
  342. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 この際、公聴会の公述人の件について御報告いたします。  公述人の人選等については、さきに委員長に一任願っておりましたが、理事会において協議の結果、次のとおり決定いたしました。  すなわち、三月十日午前十時より意見を聴取する公述人の方は、東京大学教養学部教授嘉治元郎君、評論家小山内宏君、午後三時より意見を聴取する公述人の方は、全国銀行協会連合会会長小山五郎君、日本生活協同組合連合会会長中林貞男君、また三月十一日午前十時より意見を聴取する公述人の方は、立教大学経済学部助教授和田八束君、京都橘女子大学文学部助教授高屋定國君、午後一時三十分より意見を聴取する公述人の方は、主婦鈴木俊子君、社会福祉法人岐阜三輪老人ホーム理事長藤田政明君、以上八名の方々を決定いたしました。御報告を申し上げます。  次回は、明八日午後一時より委員会を開会し、一般質疑に入ります。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時三十八分散会