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1972-03-06 第68回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月六日(月曜日)     午後一時五分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 大坪 保雄君 理事 佐々木義武君    理事 田中 龍夫君 理事 二階堂 進君    理事 細田 吉藏君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 鈴切 康雄君       足立 篤郎君    相川 勝六君       愛知 揆一君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    植木庚子郎君       小川 半次君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    正示啓次郎君       田中 正巳君    中野 四郎君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       橋本龍太郎君    福田  一君       松浦周太郎君    松野 頼三君       森田重次郎君    安宅 常彦君       小林  進君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    原   茂君       細谷 治嘉君    大久保直彦君       多田 時子君    正木 良明君       塚本 三郎君    和田 春生君       谷口善太郎君    東中 光雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 塚原 俊郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         (北海道開発庁         長官)     渡海元三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国安公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制次長  吉國 一郎君         法務省入国管理         局長      吉岡  章君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省経済局長 平原  毅君         外務省経済協力         局長      大和田 渉君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         文部省体育局長 澁谷 敬三君         文化庁次長   安達 健二君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         通商産業省貿易         振興局長    外山  弘君         通商産業省重工         業局長     矢島 嗣郎君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   松本 忠助君     多田 時子君 同月六日  辞任         補欠選任   吉田 之久君     塚本 三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  昭和四十七年度一般会計予算昭和四十七年度特別会計予算昭和四十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。  この際、政府より発言を求められております。これを許します。福田外務大臣
  3. 福田赳夫

    福田国務大臣 台湾帰属問題に関しまして、過日当委員会においてお約束をいたしました政府統一見解を申し上げます。  わが国は、サンフランシスコ平和条約により、台湾に対する一切の権利権原を放棄しているのでありますから、台湾帰属については発言する立場にはありません。  しかしながら、「台湾中華人民共和国領土である」との中華人民共和国政府主張は、従来の経緯国連において中華人民共和国政府中国を代表することとなったこと等から、十分理解し得るところであります。  したがいまして、政府は、右の認識に立って積極的に日中国交正常化に努力する所存でございます。  以上のとおりでございます。
  4. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 委員長から一言申し上げます。  ただいま外務大臣から発言のありました政府統一見解を参考のため印刷に付しまして、委員長において配付いたさせます。  大久保君の保留分質疑を許します。大久保直彦君。
  5. 大久保直彦

    大久保(直)委員 私は、二十九日に留保いたしました質問を続行いたしたいと思います。  去る二十八日の矢野質問に対します総理の御答弁並びに外務大臣答弁に食い違いがございまして、その統一見解を要求しましたところ、ただいま外務大臣より統一見解発表がございました。  私は、米中接近という戦後の冷戦構造が大きくその形態を変貌していく重大な時期にかんがみまして、またわが国にとりましても、沖繩返還という戦後の最大の課題の一つといわれている解決を目前にしまして、二十八日の総理の御答弁は、日本中国政策に対するたいへん前向きな発言であったと高く評価をいたしておるものでございます。しかし、ただいま政府から発表がございました統一見解、過日の中国一つである、また台湾中国のものである、そして台湾中華人民共和国にその領土権があるという総理のきわめて明快な御答弁から、この統一見解を拝見いたしますと、きわめて後退したものと認識せざるを得ません。まずこの点についての総理の御所見から伺いたいと存じます。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ御迷惑をおかけして、皆さんからいろいろ私の真意についてもお尋ねがございました。問題を紛糾さしたことについては、政府としてもたいへん残念に思っております。  あの私が矢野君にお答えしたところのもの、これはただいま統一見解を出したばかりでございます。どうかその統一見解で十分御了承願いたいと思います。大体、私の言ったこと、これはこの精神においては変わりはございません。どうかそういう意味で御理解をいただきたいと思います。
  7. 大久保直彦

    大久保(直)委員 私、今回のこの一連の総理発言をめぐって、個人的には、たいへん総理お気の毒だな、こう思っているわけです。せっかく示唆に富む発言をなさったにもかかわらず、閣内、党内いろいろな事情があるそうでございますが、それによってこういう統一見解をとらざるを得なかった、まことに残念なことだと思いますが、私は、この統一見解そのものは、過日の総理の御答弁から比べて全く異質ともいうべき後退したものである、このような考えを持ちます。  初めにお伺いいたしたいと思いますが、この八行目、うしろから二行目の「右の認識に立って」とございますけれども、この「認識」というのは、中華人民共和国が、台湾を自国の領土である、そう主張していることを認識しているのか、それとも、そういう認識政府は、まことに正当なものであると認めた上で認識をしておるのか、この辺が両面に理解をされる文案になっております。この点についてはいかがでございましょう。
  8. 福田赳夫

    福田国務大臣 「右の認識」というのは、わが国サンフランシスコ平和条約でもう台湾帰属については発言する立場にない、こういうことと、しかしながら、従来のいきさつから考えまして、中国側台湾中華人民共和国領土であるという主張をされておる、この主張に深い理解を示す、この二つのことをさしまして「右の認識」と、こういうふうに申し上げている次第でございます。
  9. 大久保直彦

    大久保(直)委員 そうすれば、中華人民共和国がそういう主張をしておるということを理解しておる、そういう認識に立って今後努力をしていきたい、こういう意味でございますか。
  10. 福田赳夫

    福田国務大臣 冒頭に申し上げましたように、わが国発言権はないのだ。ないのだけれども中華人民共和国のほうで、台湾中華人民共和国領土であるという主張をされておる。この主張は諸般の経緯からよく理解できます。この二つを踏んまえまして今後対中政策を進めていきたい。非常に積極的なかまえを示しておるというふうに御理解を願います。
  11. 大久保直彦

    大久保(直)委員 よく御発言の趣旨がくみ取れないわけでございますけれども、この理解ということばは、中国がこういう主張をしておる、中華人民共和国がこういう主張をしておる、その主張に全く賛成で異議がないという理解一つございます。しかし、中国がこういう主張をしておる、その主張理解できるが政策的には受け入れられない。いわゆる否定的な理解もございます。理解の後に否定的な態度をとることも考えられます。すなわち、この理解は肯定的な理解であるのか、むしろ理解した後に、理解はするけれどもその事態には異議がある、こういう立場での理解であるか、この文案ではきわめてあいまいになっておる。私はこの際、総理の二十八口の御答弁もあったことでもございますので、この理解というのは、どのように理解をしておるのか、総理からお答えを願いたいと思う。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 決して中華人民共和国主張を否定しておるということではございません。むしろ、先ほども読み上げましたとおり、十分理解しておる。十分理解しておりますというふうにお答えいたしたとおり、よくその理解の上に立ちまして対中政策を進めよう、こういうことを申し上げているわけであります。
  13. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま外務大臣お答えしたとおり私も考えております。
  14. 大久保直彦

    大久保(直)委員 この辺のところに来てお二人の御意見が二致するということは、よく私も理解できないことなんですけれども関連して外務大臣に伺いますが、外務大臣がいまおっしゃったような、十分の理解をしておるという、中華人民共和国発言ですね。こういう発言をしておる中華人民共和国はいつ成立したと認識をなさっておられるわけですか。
  15. 福田赳夫

    福田国務大臣 国としての実体、これは日華平和条約を締結する前の前の年ですかにできておるわけであります。しかし、わが国立場として、法的にこれを国と認めるかどうか、これは正常化交渉のいかんにかかわる、こういう事態であろう、さように理解しております。
  16. 大久保直彦

    大久保(直)委員 前の前の年の一九四九年の十月一日、中華人民共和国は成立いたしておるわけでございますが、その成立以降のいかなる条約も、またいかなる取りきめも、これは全く中華人民共和国が関知するところではありませんし、また何ら拘束されるものではない。このことについては外務大臣も御理解されておると思いますが、この中華人民共和国が、台湾中国領土である、中華人民共和国領土であると主張すると同時に、日台条約不法であり破棄されねばならないとも主張しております。この主張は、この統一見解文案どおりにまいりますと、十分理解し得るところであり、また「政府は、右の認識に立って積極的に日中国交正常化に努力する所存であります。」こういうことになるかと思いますが、その点についての外務大臣のお考えを聞かせていただきたい。
  17. 福田赳夫

    福田国務大臣 日華平和条約は、ただいま有効に、平穏に現存をいたしておるわけであります。われわれはこれをいま云々する立場にはございません。しかし、一体これが日中国交正常化とどういうつながりになってくるのかというお尋ねであろうと思いますが、これは、日中国交正常化交渉、これを始めたいというふうに申し上げておる、この正常化過程において結論が出る問題である、そういう認識でございます。
  18. 大久保直彦

    大久保(直)委員 台湾中華人民共和国領土であるという主張と同時に、中華人民共和国政府は、日台条約不法なものである、こういう主張をしているのです。そうすると、この台湾領土については、この理解もきわめて前向きな理解である、中国が言うことが正しいという認識に立っての理解である、こういう御答弁のように先ほど伺いましたが、そうすると日台条約も、中国不法であり破棄せねばならないという主張をしておるわけでございますから、政府としては、それは十分理解し得るということにならなければ、全くつじつまが合わなくなってくる。首尾一貫しないわけです。それについてはいかがですか。
  19. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま国民政府現存をしております。その間に有効に、かつ平穏に結ばれておる条約、これが日華平和条約であります。この平和条約について、これは日華の問題でありまするから、わが日本国がどういうふうにするかという結論を出さなければなりませんけれども、これはうらはらとして、中華人民共和国とどういう関係になるか、こういう関連を持つわけであります。そういう意味において、これは日中国交正常化過程において結論が出る問題である、こういうふうに申し上げておるわけでありますが、まあ非常に理詰めでいろいろお尋ねになられる。お答えもいたしたいというような気もしますけれども、それをお答えすることが、私は、わが国立場を踏んまえたときに、さてどういうことになろうかということも私は頭のすみにあるわけなんでありまして、まあ、私が先ほどからお答え申し上げております、これは日中国交正常化過程において解決されるべき問題である、これでひとつお答えとさせていただきたい、かように思います。
  20. 大久保直彦

    大久保(直)委員 ただいまの外務大臣の御答弁で、大体私は政府姿勢というものはもうほぼ明確である。そういう認識に立っておりながら——いままでそういう認識でずっと日本政府はやってきたわけです。そういう認識経緯に立って二十八日の総理答弁が出てきたので、私どもはたいへんそれを高く評価し、日本中国政策の大前進である、こういう見方をしたわけであります。ところが、いまいろいろ違う角度から伺ってまいりますと、総理の御答弁自体は一体どういうことになるのか。いやしくも党を代表して質問に立ったわが党の矢野書記長に対して、総理は、一国の総理大臣としてのきわめて明快な御答弁が記録に残っております。私はこの重大問題——国会において政治家生命は、ことばこそはその生命であって、いやしくとも一国の総理が、国際的にもいろいろ反響をもたらしたということも伺っておりますが、そういう重大発言が、本質においてはその二十八日御答弁の以前の姿勢と何ら変わってないということになると、矢野質問に対する総理答弁の扱いは一体どういうことになるのか。私は個人的には、今回の総理立場に対してたいへん理解を深く持っているつもりなんですけれども、しかし、これはゆるがせにできない問題だと思いますので、総理から、二十八日の総理の御自身の御答弁について——ただいまの外務大臣から承るところによりますと、日本中国政策というものは何ら変わっていない、そういうことについてのどういう御認識を持っておられるのか。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外務大臣から詳しく申し上げましたが、私ども考え方、これはサンフランシスコ条約、そのところへさかのぼって、そして日本台湾、澎湖諸島、これを放棄した。権利権原全部を放棄した、その帰属についてはとやかく言うような立場にはない、これはもうただいま申し上げたとおりでございます。これはもう非常にはっきりしている。また、ことに連合国にいたしましても、まだまだ連合国自身の中でそれらの帰属をはっきりさせない、そういうような状態でございますから、日本の場合において、これについてとやかく言う資格のないこと、これはもうおわかりだろうと思います。そのことをただいま外務大臣が率直に申し上げたと、かように思います。  また、サンフランシスコ条約、その後に続いて中華平和条約を結びましたが、その後やはり変わったのは、何といっても昨年の国連における中華人民共和国中国の代表として国連が迎えた、こういう事態だと思います。私どもは、こういう新しい事態に臨んで、われわれがやっぱり今後は北京と国交正常化をはからなければならない、こういう立場でいろいろだだいまくふうしているその最中でございますが、しかし、台湾問題そのものについてどういうように考えるかと言われると、現状においては先ほど外務大臣が答えたとおりであります。  そこで、私がいままでも、二十八口に矢野君といろいろ話をした、その中の答弁の全体を読んでいただくと、今日差し上げました統一見解大筋においては一致しておる、こういうことがおわかりいただけると思いますけれども、どうもその点についていろいろの御疑問があるようでございますが、私は、大筋については一致しておる、かように理解しております。
  22. 大久保直彦

    大久保(直)委員 大筋において一致しているどころか、たいへんな後退であり、むしろこの冒頭に掲げた台湾帰属について発言する立場にはないということをこの統一見解で明言されたということは、日本が叫び台湾帰属未定論態度をとるということを、これは天下に向かって公表しているようなものです。そしてこの統一見解の中は、台湾中国のものであるという、そういう認識もうたわれていない。全く中華人民共和国領土であるという主張ということで片づけられておる。総理はこの国会においても、台湾中国領土であるということについては全く異存を示されなかった。そのことすらこの統一見解には入ってないのです。  私は、サンフランシスコ平和条約日本は一切の権利権原を放棄したのだから発言権はないというただいまの御答弁には、たいへん不満を持っておる。確かに条約締結までは日本は負い目がございましたから、権利権原を放棄、した立場で、帰属については云々できない立場にあったのかもしれません。しかし、サンフランシスコ平和条約の効力が発効した時点においては、これは主権平等の原則にのっとって日本台湾帰属問題について発言することはきわめて可能であり、その発言権日本にはあるはずなんです。それは、カイロ、ポツダム宣言経緯からしても、日本こそ当然この台湾帰属問題について発言しなければならない立場にもあると思います。  元来、サンフランシスコ平和条約そのものは非常に不備な条約である。このことは総理もお認めになると思いますが、しかし、ここで問題なのは、参議院におきまして、黒柳明議員質問に対して総理はこういう答弁をされておるのですよ。いま日本の、現在は台湾帰属についての発言権はないが、日中国交正常化の暁には中華人民共和国領土と認めることになろうという基本認識に立っておる、こういう発言をされておる。正式に読みますと、「将来政府間交渉を通じて日中関係正常化が実現した暁においては、わが国としても台湾中華人民共和国領土と認めることになろうというのが私の基本的認識であります。」そうするとこの答弁は、いいですか、領土権の問題と国交問題をごちゃまぜにした考え方です。現在発言権がなくて、国交正常化した暁には領土権について発言権が発生するというのは、これはおかしいじゃないですか。これは総理答弁を私いま読み上げたのです。この点の矛盾についてはどういうお考えがあるのでしょうか。
  23. 福田赳夫

    福田国務大臣 過日の参議院答弁、いま大久保さんのお読みになったとおりです。とおりでありますが、これは総理も非常に注意深くお答えしておると思うのですが、「私の基本的認識であります。」と、こういうことでありますつまり認識を述べておる。まあ今日は中華人民共和国台湾わが国領土であると言うことには深い理解を示す、そういうこれも認識であります。しかしながら、日中関係正常化が実現した暁には一体どうなるか、こういう問題につきましては、それが台湾中華人民共和国領土と認めることになろうという私の基本的な認識である。これも認識を申し上げておるわけであります。まだ法律的な関係を申し上げておるというふうには私は理解しておりませんです。
  24. 大久保直彦

    大久保(直)委員 台湾中華人民共和国領土と認めることになろうというのは、これは領土問題に対する発言です。発言ですよ、これは。いいですか。現在日本発言権がないないといって態度を回避しておる。にもかかわらず、日中国交正常化した暁には台湾を認めることになろうというのは、領土問題に対するこれは発言なんです。いかがですか。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうもただいま言われておること、私はそのとおり答えた。しかし、いま外務大臣も補足説明してくれていますが、これは外務大臣ではなくて私の発言ですから、私が申せばいいことなんです。しかし、やはり私が法的に説明しているわけじゃございません。ただいまのようなことがあればという前提がございます。そういうときのその認識を私が話している、こういうことで御理解をいただきたいと思います。
  26. 大久保直彦

    大久保(直)委員 まあこれは見解の相違だといえば、それ以上私は詰める気はありませんけれども、ただ、この発言権の問題については政府自身態度も、こういうふうに国交正常化のときと現在とでは態度は変わってきてもいいんだという判断をされているように私は思うのです。きわめてその辺は政府内部においても不鮮明だと思うのです。台湾領土権の問題については。そういう認識の中で、私はまたここで矢野質問を読み上げる気はございませんが、矢野質問は、そういう認識しておるかとか、理解しておるかとか、観念的な質問をしたのではない、きわめて断定的な質問に対して総理は断定的にお答えになっております。また、きわめて実体的な質問に対して実体的にお答えになっている。でありますから、私どもはその総理答弁を評価したのであって、この統一見解に拝見する限りにおいては、全く政府態度は大幅に後退したと思わざるを得ない。むしろ後退どころか、それに輪をかけて、台湾帰属未定論というものを表に出そうとしている、そういうことまでこの統一見解で感じられます。従来の中国領土であるという項目までこの統一見解から引っ込めてしまった。こうしたことについて、私は総理答弁、二十八日の総理発言の処置については、これはたいへん重大な問題である。単なるあのときの質問のプロセスによってああいう答弁が突発的に出てきたものでないという認識がございましたけれども、いまの御答弁を一貫して伺っていますと、たまたまあのときは、俗なことばで言えば矢野質問にひっかかったがごときことを言う、そういう御答弁であったのでは、私はこの国会における信義の問題がたいへん大きく問われてくるのではないかと思うのです。いずれにしましても、総理の二十八日の答弁においては、中国一つであって、台湾中国領土であって、台湾中華人民共和国にその領土権があると、これだけ明確になっている。しかし本日の統一見解においては、その総理の御答弁は全く影をひそめてしまった、そのように私はこの統一見解を受け取ります。  この問題について、私はあとの中国問題は質問を留保いたしますが、関連質問がございますので、そちらに順番を渡したいと思います。
  27. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この際、関連質疑の申し出があります。順次これを許します。正木良明君。
  28. 正木良明

    ○正木委員 私たちがこの問題をなぜこんなにやかましく質問をして、そうして政府考え方を引き出そうとしているかということは、もうすでに私が本会議で緊急質問申し上げたときにも述べましたけれども日中国交回復というのはどうしてもやらなければならないと総理もおそらく思っていらっしゃるに違いないと思うのです。ところが従来の政府日中国交回復に対する考え方をただしてまいりますと、きわめてあいまいもことしたものであります。外交交渉というのは手のうちを見せないで交渉するのが一番の得策であるということを稲田外務大臣がおっしゃったと聞いておりますが、これも一つの見識であろうと思います。しかし現に日中国交回復に関しては、中華人民共和国は、日中国交回復のための原則というものを明らかに示しておるわけであります。そういう意味から申しますと、むしろカードは全部広げて向こうは日本の国に見せておるわけでありまして、日本政府はその原則に対して、わが日本政府はどのような原則によってこの日中国交回復をやろうとするのかということを明らかにしなければならないと思います。それを一向に明らかにされなかったわけであります。従来そのように非常にあいまいであった政府態度というものが、今回矢野質問に対する総理の御答弁によって、ある一部分ではありますけれども、きわめて問題をスムーズに解いていく糸口になるべき前向きの答弁をなさった。これは私どもにとりましては、日中国交回復を願う国民にとりましては、政府姿勢の大きな転換であるというので、高く評価したわけであります。ところがそれを福田外務大臣並びに党内のある人たちがこれに反対をして、いま出てまいりましたようなきわめて後退した、いわゆる日中国交回復に臨む日本政府の原則としてはきわめてあいまいとした、しかも後退した、従来と変わらないような原則を示すような統一見解になってしまったということは、非常に残念であると思うのです。これは単に国会の中であげ足をとったり、とられたりというような問題ではなくて、事喫緊の問題である日中国交回復のために、どうしても日本政府が明らかに示さなければならない原則の一つをここで解明しようとしているわけであります。そういう意味において、総理も、外務大臣も前向きの答弁をしていただきたい。したがって私は、この統一見解に含まれる数々の問題についてこれから質問をしていきたいと思うのです。  そこで、大久保君からもいろいろ質問がございましたが、この前段にございます一切の権利権原を放棄したのであるから、発言権はない。私は条約のあり方としてはこんなけったいな——大阪弁で言うとけったいなですね、こんなふしぎな条約はないと思う。こういう平和条約というようなものについては、戦争終結宣言並びに領土問題、賠償問題等々の主要な項目というのがあります。その中の領土問題について、日本政府がいわゆる領土権を放棄したというならば、通常の平和条約であるならば必ず、どこに向かって放棄したという帰属先が明記されるべきはずのものであります。にもかかわらず、このサンフランシスコ平和条約においてはこれが明記されなかった。これは現にサンフランシスコ平和会議の最中にすでにもう二つ政府というような考え方があったということが、ここに問題点があると思いますけれども、しからば日本政府は、中国に放棄したのではなかったら、どこへ放棄したと考えているのですか。
  29. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは当時の平和条約の相手国である連合国であります。これは四十五カ国あったかと記憶しておりますが、その連合国に対しまして放棄した、こういう解釈をしております。
  30. 正木良明

    ○正木委員 さすれば外務大臣は、台湾並びに澎湖諸島等の帰属をきめるためには、再びいわゆるサンフランシスコ平和条約加盟国の会議を開かなければこの帰属はきまらぬと考えているのですか。
  31. 福田赳夫

    福田国務大臣 通常の形でいいますと、この連合国が合同してきめようと、こういうようなことになるかもしらぬし、またしかしその連合国の中でも、いわゆる大国があります。アメリカでありますとかイギリスでありますとかソビエトロシアでありますとか、そういう国々があります。——ソビエトロシアは取り消します、参加しておりませんから。それらのいわゆる指導的立場にある国々が、私はこの問題につきましてぽつぽつ意思表示をしていくというような段階が積み重なってこの領有問題というものが定着をしていくという過程もあるのじゃあるまいか、そんなような気もいたすわけであります。しかしいずれにいたしましても、わが国領土権を放棄した、その放棄した国がどういうふうにせいという立場にもないわけでありますから、これはどういうふうにしてきめられたいという要請もいたしかねます。しかしポツダム宣言あり、またその前提としてカイロ宣言がある。これを考えまするときに、これを受諾したわが国、これは平和条約にはそのままなっておりませんけれども、そういうことを考えまするときに、どうも台湾島は中国の一部である、そういうふうに理解をする、こういうことが私はわが国として理解し得るところじゃあるまいか、そういうふうに申し上げているわけであります。
  32. 正木良明

    ○正木委員 外務大臣、そんなあいまいなことじゃ困るのです。もしこの議論をするならば、その点が明確にならない限りこれは議論にはなりませんよ。台湾に関する権利権原を放棄した、しかしどこへ放棄したかわからない、おそらくサンフランシスコ平和条約加盟国四十八カ国か四十五カ国——私は四十八カ国と思っておりましたが、四十八カ国に対して放棄をしたというならば、台湾帰属をきめるための会議が行なわれなければ法的には成立しないじゃないですか。にもかかわらず、その点についてはきわめてあいまいな態度であなたはおっしゃっているではありませんか。そういうことではないのではないですか。現に一九五〇年一月には、トルーマン大統領は、台湾中国領土である、蒋介石元帥に引き渡されたというカイロ宣言並びにポツダム覚書並びにそれを受けた日本の降伏文書等を引いてそのことを明言いたしております。現に一九四五年、日本が敗戦をしたときに直ちに当時の国民政府台湾省の設置条例をつくって、台湾省としての統治を行なっている。これに対してどこの国からも文句が出なかったからこれは中国のものだ。したがって、一九五〇年時点においては大陸と台湾の間についてはアメリカは絶対に不干渉の立場をとるという、有名なトルーマン声明があります。これもおかしいということになるではありませんか。さらに、再三にわたって総理をはじめ皆さん方は、台湾中国すなわちチャイナの領土であるということはこの国会において明言されているではありませんか。それではそのことも食言になりますね、あなたのお考えからいうと。そういう性質のものではないでしょう。少なくとも日本は主権国家として、しかも旧台湾を統治しておった、領有しておった国として、台湾はどこに放棄したのであるかということを明言する資格はあると私は断定できると思うのですが、いかがですか。
  33. 福田赳夫

    福田国務大臣 台湾中国の一部である、つまり中国台湾を含めまして一つである、これは北京政府におきましても台湾政府におきましてもそう言っておるところでございますが、それは私は理解できると思うのです。つまりチャイナです、問題は。チャイナということはどういうことかというと、これは大陸も含むし、台湾島も含みます。これは私はそのとおりだと思う。しかし、いま問題になっておりますのはそうじゃないのでありまして……。
  34. 正木良明

    ○正木委員 ちょっと待ってください。そこまででけっこうです。  そうすると、日本が、チャイナのものである、中国のものであるということについては発言権はあるわけですね。四十八カ国は文句はないわけですね。どうですか。
  35. 福田赳夫

    福田国務大臣 一般的、普遍的概念として、チャイナといった場合には大陸も含めば台湾も含む、そういうことにつきましては異存はございませんです。
  36. 正木良明

    ○正木委員 そこで、一つ提案があります。総理、ここで統一見解が出ましたが——私はいろいろまだほかにも質問がありますが、この問題だけ先に片づけましょう。これを統一見解の中に明らかに入れてください。したがって、おそらくこの「従来の経緯、」というふうに皆さん方がきわめて抽象的に表現なさっている部分は、台湾中国、すなわちチャイナの領土の一部であるというそのことが「従来の経緯、」という意味の中に含まれておりますか。あるならば、「従来の経緯、」の下にそのことを明言していただきたいと思います、統一見解において。
  37. 福田赳夫

    福田国務大臣 「従来の経緯、」と申しますのは、ポツダム宣言のことをいっているのです。その前提としてカイロ宣言があります。それをいっておる。それから「等」というのが最後にあります。これはまさに正木さんの御指摘の点です。チャイナといった場合、それは大陸も含めば台湾島も含むという概念があること、こういうことでございます。
  38. 正木良明

    ○正木委員 ポツダム宣言、カイロ宣言とあなたがおっしゃったそれそのものが、いわゆる台湾は中華民国に引き渡されるという、いわゆる日本が戦争で略取した旧領土は、特に台湾に関しては中華民国、その当時は正統政府は中華民国なんですから、一九四三年のカイロ宣言、一九四五年のポツダム宣言は、明らかにその当時は中華民国なんですから、中華民国、その当時の中国に引き渡されるという表現がなされている。だから、この「等」よりも、この「従来の経緯、」の中に台湾中国領土であるという——私の言っているのは、どちらとも言っていないわけですよ、中華民国とも中華人民共和国とも言っていない、その中国、チャイナの領土であるということを皆さん方はすでに国会で明らかに明言されておるし、外交上もこれには支障がなかったはずでありますから、少なくともこれはここに私は明言をしていただきたい。これは当然の要求であろうと思いますが、いかがですか。
  39. 福田赳夫

    福田国務大臣 カイロ宣言やポツダム宣言は、ポツダム宣言を受諾する、そしてそれに基づいてわが国連合国との間に休戦協定を結んだわけであります、この休戦の基礎にはなっておるのです。しかし、ほんとうに国と国との権利関係は何できまるかというと、これは平和条約においてきまっていく、こういうことであります。そこを私は分けて言っておるわけなんです。つまり、カイロ宣言だ、ポツダム宣言だ、それをそのいきさつから見ますると、中華人民共和国台湾は大陸の一部である、こういう主張をされる、これはよく理解できます。しかし、現にきまっておる条約、ほんとうの国際間の権利義務の規律、これはどうなっておるかというと、平和条約であります。この平和条約では、わが国台湾、澎湖島に対する領土権を放棄しておる、これはもう放棄したということであって、その先の処理は連合国側にある、こういう理解であります。
  40. 正木良明

    ○正木委員 そういうごまかしに終始をしないでやっていただきたいと思うのですよ。それならば、ここではサンフランシスコ平和条約しか出ておりません。サンフランシスコ平和条約で放棄したのは、樺太も千島も入っているのです、台湾のほかに。しかし、そのあと一九五二年四月二十八日に締結した日華平和条約の中では、台湾、澎湖島だけしか権原放棄が出ていないじゃないですか。中華民国を相手にして結ばれた平和条約の中で、台湾、澎湖島の権原を放棄するということはことばの上には出ていないけれども、要するに中国に対してそれを放棄したということに即つながるんじゃありませんか。そう考えてきたときに、ここに皆さん方がすでに国会答弁をなさった、いわゆる台湾中国の、チャイナの領土の一部であるということをこの統一見解の中に明言するということがどれほどの支障があるのですか。
  41. 福田赳夫

    福田国務大臣 日華条約でこの台湾島の帰属がきまったというお話でございますが……(正木委員「いやいや、きまったと言っていません」と呼ぶ)ああ、そうですか。そこで、この日華条約におきましてはわが国台湾、澎湖島を放棄した、こういうことを申し上げておるわけであります。
  42. 正木良明

    ○正木委員 総理どうですか。台湾中国領土の一部であるということをここへ書き込むということはそんなに支障ないでしょう。いままで国会で言ったことじゃありませんか。そうすると、それが違うということになると、これも、はやまた政府の食言問題に発展しますよ。
  43. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この第二項は台湾中国領土だとかなんとかでなしに、台湾中華人民共和国領土である、そういう中華人民共和国政府主張は従来の経緯国連において中華人民共和国中国を代表することとなったこと等から十分理解し得ることだ、こういうことで、その点は、このほうがいま正木君が御指摘になるよりもっと前進しているんじゃないですか。
  44. 正木良明

    ○正木委員 私申し上げているのは——総理文案として申し上げましょう。「しかしながら、「台湾中華人民共和国領土である」との中華人民共和国政府主張は、従来の経緯、」その次に入れてください。「従来の経緯から台湾中国領土であり、」——この中国はチャイナを示します。「中国領土であり、」そして「国連において」と続きます。いいですか。これだといささかは前進するんです。わかりますね。これで外交上何も問題ないでしょう。よそが全部言ったことですから、日本が言ったことじゃありません。どうですか。私は、これで十分けっこうだと言っているわけじゃありませんよ。十分けっこうであるとは言ってませんが、少なくとも、いままで政府国会に対して宣言してきたこと、発言してきたことを具体的にことばとして入れるんですから、何も問題ないはずです。どうですか。そうなると、台湾中国領土である、チャイナの領土である。そうして、そこの政府というのは、要するに代表はどこの国かということになれば、それは国連においてすでに中華人民共和国中国の代表となっておるということになる。そうすると矢野質問に少し近づいてきます。どうですか、この点、お願いします。
  45. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほどから私が御説明申し上げておりますとおり、私どもは、地理的、また普遍的、社会的概念として、中国一つである、こういうふうに考えておるんです。世界じゅうでおそらく、中国といった場合には台湾等も含めての意味だろうと思います。そういうこともありまするものですから、ここに「等」と書いてある。わざわざ「等」と……。これがいま正木さんのおっしゃっているところに当たるんじゃないか、そういうふうに思いますが、いかがなものでしょうか。
  46. 正木良明

    ○正木委員 承服できません。要するに、答弁で補足をしておるという御説明だと私は受け取るわけですが、答弁で一声えるようなこと、しかも、いま新しく答弁したことではなくて、かつて答弁をしながらそのことが諸外国においても何ら外交的に問題の起こらなかった発言を具体的にここへ入れるということ、何の支障があるんですか。これを入れないということになると、この第一の、いわゆる帰属未定論というのはきわめて大きなウエートを持って、再び政府見解というものがあと戻りをするという強い印象を私は受けるわけです。
  47. 福田赳夫

    福田国務大臣 この統一見解に「中国を代表することとなったこと等」という「等」は、これは社会的、通俗的、普遍的にいわれておる、中国一つである、こういうことをさしておるもの、こういうふうに御理解を……。
  48. 正木良明

    ○正木委員 台湾領土問題はどうなんですか。台湾中国領土であるということはこの「等」の中に含まれるんですか。
  49. 福田赳夫

    福田国務大臣 つまり、私が申し上げたとおりです。チャイナという場合には、これは一つの概念であって、そしてその中には、大陸も含めば、台湾、澎湖島も含みますと、こういうことでございます。そういう世界的な、普遍的な、また地理的な概念もここに入っておる、そういうことを表現いたしまして「等」といっておる、さように御理解願います。
  50. 正木良明

    ○正木委員 非常にわかりにくい御説明でございます。頭が悪いのかもしれませんけれども……。そこで、それじゃ、台湾中国領土であるといままで再三にわたって政府答弁してきたことは、この「等」の中に全く含まれるというふうに解釈してよろしいのでしょうか。
  51. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういうふうに御理解願っていいんじゃないかと思います。
  52. 正木良明

    ○正木委員 そういうふうに理解せよというならば、明らかに書いたって、どこに支障がありますか。支障のある点をおっしゃってみてください。(「外交上大いに問題がある」と呼ぶ者あり)それならば、あの問題が出たときにちゃんと外国から抗議が来ているはずじゃないですか。
  53. 福田赳夫

    福田国務大臣 あなたはとにかく、私どもの言わんとしておるところを言っておられるのです。「等」とわざわざ入れたのは何だというと、世界的、普遍的な概念として、チャイナといった場合には、大陸も含めば、台湾、澎湖島も含むということがある、こういうことでございますから、そういうふうにこの統一見解を御理解願いたい、こう申し上げておるわけであります。
  54. 正木良明

    ○正木委員 そこで、先ほど大久保君の質問の繰り返しになるかもわかりませんが、もう一度確認の意味で申し上げておきます。ここにコップがあります。このコップは中華人民共和国のものであると中華人民共和国は言っているのです。いいですか。この間の総理答弁は、そのとおり、このコップは中華人民共和国のものでありますと答弁をなさったのです。ここで、認識ということばがあります。深い理解を示しながら、認識ということばがあります。これは中華人民共和国のコップであるという中華人民共和国主張、この主張そのものを認識したのか。コップであるということを、同じくイエスという立場認識したのか。どちらですか。
  55. 福田赳夫

    福田国務大臣 正木さんがそれはおれのコップであるという主張に対しまして深い理解を示した、こういうことでございます。
  56. 正木良明

    ○正木委員 それじゃもうてんでお話にならない。もう事はここまで来ているんです。問題は、すでに総理発言されたことを確認をしておるわけですよ。いいですか、全然なかったところに新しい答弁を引き出そうとして私が質問を申し上げているのではないのです。その点は御理解くださいよ。ならば、全くもとのとおりの総理答弁というものを一〇〇%認められるのが政府としての政治責任の問題なんです。しかしそれではまずいというのであなた方はこの統一見解をお出しになってきた。しかもきわめて抽象的、あいまいな統一見解になっておるわけですから、それを、あなた方の真意はどこにあるかということを私はいまただしているわけなんですから、それに応じてお答えいただかないと、ただこれだけです、これだけですということになると、これはだれが読んだってだれが考えたって、これはあの総理答弁とは全く違うということに帰着してくるわけなんです。そこに大問題があるわけなんです。ですから、これは中華人民共和国のものだと中華人民共和国が言った。そうです、これは確かに中華人民共和国のものであるということを認識しますというなら話はまだわかるんですよ。聞きおく程度という形の認識なのかどうかということです。
  57. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただ単に聞きおくというわけじゃないんです。これはもう、注意深く書いてありますが、「十分理解しうるところであります。」と、こういうふうにいっておりますが、そのとおりに御理解願いたいと存じます。
  58. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 正木君に申し上げますが、お約束の時間……
  59. 正木良明

    ○正木委員 これで終わります。  それは、中華人民共和国主張を肯定の意味理解され、認識されたわけですか。
  60. 福田赳夫

    福田国務大臣 否定はしておりません。そこで「十分理解しうるところ」であると、そういう認識を持っておる、かように御理解願う、これが正確であろうと思います。
  61. 正木良明

    ○正木委員 これで終わります。  私は冒頭に申し上げたように、この国会の中でどうのこうの、ああのこうのというように、いわゆることばの魔術でやりとりをするという問題ではないんです。いいですか。中国が、日本が示す原則を、それを認めて、日中国交回復というテーブルに両方が着けなければどうしようもないことでしょう。問題の無点というのはそこにあるわけです。いかにあなた方がことばの上で巧みに、かりに、ことばは悪いですが、ごまかしたとしても、中国の示す原則に対してそれが気に入らなければ、ここの原則はこうあったならば日本はこの交渉に臨むであろうという原則を示していくことが必要なんです。それを、とりあえず会議に臨みたい、とりあえず会議に臨んで、その上で話をしましょうなんというようないい方では、いまや日中国交回復の政府間交渉というものは成り立たないわけです。成り立たせようという政府熱意があるならば、少なくともその条件に関しては明確にこの国会答弁をなさることが最も上策であると私は思うから、そのことをあなたに申し上げているんです。ですからこの問題も、先ほど申し上げたように、少なくとも私が提案した形で統一見解がまとめられるならば一歩前進という形をとるでしょう。私はそのように確信します。それは現に新しいものをつけ加えるというのではなくて、かつて国会政府が責任をもって答弁した内容を具体的にここに入れるということです。これは、この国会以前の国会にすでに、台湾はチャイナの領土であるということを明言しているんですから、この予算委員会矢野質問から始まった問題ではなくその以前の問題なんですから、それすらも具体的に入れられないようなことで、あなた方はどのように努力をなさっても、日中国交回復の政府間交渉は望み得べくもないということを私は心配して申し上げているということを心にとめておいていただきたいと思います。  それともう一つは、これである限り総理答弁は明らかに食い違っておりますし、これに対する責任はわれわれは徹底的に追及をしなければなりませんし、これに対して総理がどのような態度をおとりになるか、これはまたあとの大久保君の質問にゆだねるということにいたしたいと思います。  ありがとうございました。
  62. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、辻原弘市君。
  63. 辻原弘市

    ○辻原委員 総理に申し上げますが、統一見解が示されて、いままで統一見解に基づく質疑応答を私もじっと聞いておりました。まことにお答えの点が不明瞭であります。したがって、私は中国問題全般について、関連ですからお尋ねをする時間がございませんが、少なくとも去る二十八口に矢野さんに対して総理お答えになりましたあのくだりと、いまお出しになった、政府のいわゆる統一見解として外務大臣から御説明あったこの中身との関係だけは、ぜひとも明らかにいたしておきたいと思うのであります。  最初に私は申し上げておきますが、政府統一見解を文章で見る限り、また外務大臣の御説明を聞く限りにおいては、きわめてわれわれとしては不満であります。その不満であるという理由は、第一に、これは少なくとも二十八日に総理お答えになった御答弁とは明らかに違う。もう一つは、いまこれだけ中国問題に対する国際情勢が動いているおり、しかも総理がしばしば答弁をなすっておられるように、わが国としても中国問題を積極的に前向きに進めなければならぬという段階に、最も中国問題の基本的問題を踏まえて、わずかこれだけの統一見解しか出せないのか、こういう統一見解ではたして中国問題がこれから前進、前向きの形で動いていくのか、私は心もとない次第であると思います。そういう立場できわめて不満であります。  少し中身に立ち至って議論をいたしてみたいと思うのであります。外務大臣に私は最初に要求をいたしておきたいのでありますが、ただいまお答えになられましたのは日本語であります。配付されましたのは、参考にということで文書でわれわれはいただいたようでありますが、しかし、これが政府統一見解である以上、単に日本国内だけの問題ではありますまい。とするならば、この統一見解というものは、ある場合には公文書の形で諸外国にも出ていくであろうと思われる。国内問題と違いまして、外交上の問題は、そういうことを考えれば日本語だけでは事は明瞭になりません。したがいまして、ぜひともひとつこれを外交的な文書とされる場合の英文でお出しをいただきたい。これはわずかこれだけの文章ですからすぐさまできると思いますから、明朝の委員会が始まるまでにこれはひとつ英文でお出しをいただきたい。要望いたしておきますが、いかがですか。
  64. 福田赳夫

    福田国務大臣 英訳して明朝までには配付いたします。
  65. 辻原弘市

    ○辻原委員 それではお尋ねをいたしてまいりたいと思います。  最初に、いま正木さんとのやりとりの中でありました中国一つであり、台湾中国の一部である、したがって、少なくとも従来の政府答弁でもいわゆるチャイナ、チャイナの領土であるということは明らかだ。総理、これはそのとおりでございますね。台湾はチャイナの領土である、チャイナの領土の一部である、これは明らかですね。
  66. 福田赳夫

    福田国務大臣 社会的、普遍的常識といたしまして、そう理解しております。
  67. 辻原弘市

    ○辻原委員 要するに、いろいろまくらことばはつきましたけれども、常識的にいえばチャイナの領土であるということは、これはきわめて明瞭です。それならば、なぜ、そのことを明らかにするという文書を入れるということを、外務大臣、そんなにこだわられるのですか。あたりまえのことじゃありませんか。ただまあ一応こう出したから、いまここで、あなたは、それを入れるということになるとおかしな形になるという意味で申されるのならばわかります。その辺はどうなんですか。たとえばその取り扱いは——これは正木さんがあたりまえのことを入れろとおっしゃっているわけです。こと新しいことを入れろと言っているわけじゃないんだから。だから、そのくだりは、経過の中でそういうことが明らかになってきている。この台湾帰属問題というのは、カイロ宣言以来、ポツダム宣言、サンフランシスコ講和条約あるいは日華平和条約等、幾つかの歴史的な変遷を経ておるけれども、要するにそれらの変遷、経過の中で明らかになっておることは、チャイナの領土であるということは明白である、こういうことなんですから、そのことを入れる入れぬということの議論はおかしいじゃありませんか。それは、外務大臣、どう認識される。
  68. 福田赳夫

    福田国務大臣 この統一見解ですね、これに「等」と入っているのです。「等」と。「しかしながら、「台湾中華人民共和国領土である」との中華人民共和国政府主張は、従来の経緯、」——「従来の経緯、」というのは、ここでいっておりますのは、カイロ宣言、ポツダム宣言、そのことです。それから「国連において中華人民共和国政府中国を代表することとなったこと」これはもう何らつけ加える必要もないことであります。そこの下に「等」と書いてある。この「等」はどういう意味で入れましたかというと、通俗的にチャイナという場合におきましては台湾は大陸と一体である、そういうふうに理解をされておる、こういうことであります。
  69. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは、私、委員長にもお願いするのでありますが、いまの大臣のお答えでありますと——また正木さんの主張が、見解上違ったことを入れろということならば、これは政策上の問題です。ですから、それは外務大臣が水腹を突き出されることも御自由かと思いますけれども、聞いておると、同じことなんですよ。ただあなたはそれを「等」と表現した。「等」の中身は何かというと、チャイナの領土であるという意味なんだ。正木さんが、そのことをはっきりさせるために、統一見解というのはぼけているよりもはっきりしたほうがいい、これはだれだってそのとおりなんだから、そういう意味で御主張なさったものだと、私はこう理解する。とするならば、委員長、これは、そう政策上の議論として争うことなく、ひとつ当委員会が要求してできた統一見解ですから、委員長の御判断も加えて——そういうことは文章上の問題でしょう。文章上どうだかということについて、これは一度理事会等でも協議してみたらどうですか。委員長、その点はいかがなものでしょう。
  70. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 辻原君に申し上げますが、政府政府立場統一見解というものを出しておるのですから、委員会でああせいこうせいと言うわけにはいかないと思います。しかし、いまの質疑応答、この文章とつながりますと同じことじゃないかと思うのですが……。
  71. 辻原弘市

    ○辻原委員 同じことですよ。それじゃ、私は、変わったこと、違ったことを入れろという場合は委員長のお話に服したいと思いますけれども、何も違ったことを言うているのじゃなし、より明瞭にして差し上げましょうというまことに建設的な御意見なんだから、そういう意味でひとつ委員長も受け取られて、どうですか、委員長、御判断でできなければできない、できないことをわれわれはしろと言っているわけじゃないので、ひとつ委員長も検討をしてみたいぐらいのことをおっしゃっていかがですか。委員長、どうですか。
  72. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 検討することにはやぶさかでありません。
  73. 辻原弘市

    ○辻原委員 わかりました。それじゃひとつ委員長においてそのことはお取り扱いを願いましょう。  そこで、私は肝心の本論についてひとつ承っていきたいと思います。  それはこの文章を拝見いたしますと——もうくどくは申しません、私も関連で時間がありませんから。いわゆる人間の話し方からいいますると、持って回った言い方をしておるわけです。要するに間接話法である。したがって、そのまん中にありまする「「台湾中華人民共和国領土である」との中華人民共和国政府主張は、」云々と、こうある。主張はよく理解できる。「したがって、政府は、」ここまできますと、日本語の文法常識というのはこういう言い方にはならぬのです、外務大臣中華人民共和国はかくかくかくかくのことをおっしゃっております、そのことはよく理解できます、したがって、わが政府はどうしようというのでありますかということなんです。そうでしょう。文法はそうなるはずです。それを読んでみますと、「政府は、右の認識に立って」云々と、要するに、中国がおっしゃっていることを理解するその認識に立ってと、こうおっしゃる。まことにこれは持って回った言い方なんですね。だからわれわれは、もし政府のあれを中心にして最も常識的な文章たらしめるとするならば、こういうことになるであろう。すなわち政府のモメント、政府はそういう理解に立って何をなさろうとしているか。これは私は、実は総理答弁を承ったときにも、われわれがいまここで中国問題を積極的に進めようという段階におけるお尋ねとしては今日政府は何をなすべきか、いかなる方針、原則、認識に立って日中問題を進めようとなさっておるのか、これを聞きたいのであります。国民もまたそれを聴きたく思っているし、関連する諸外国もそう思っておられるであろう。だから私たちはこれを通俗的に、いま日中問題をやろうという入り口に立って政府見解をただしておるのだ。しかし、この間参議院で黒柳さんにお答えになった、先ほども触れられましたけれども、日中正常化の暁にはかくかくなるであろうというのは出口の話である。交渉というものはやってみなければわかりません。しかし、そのやってみなければならぬ交渉の中身についていまわれわれがその経過を尋ねたって、そんなものはありゃしない。問題は、交渉をやるについての態度を聞いているのでありますから、そこで統一見解というものは態度が出てなけりゃならぬというのです。その態度というのは、政府は何をやるか。すなわち台湾帰属の問題については、先ほども外相はそう触れられましたが、理解をしているだけにとどまらない、いわゆる肯定的理解でありますということをおっしゃった。そうでしょう、そのとおりですな。中華人民共和国台湾中華人民共和国の一部であるというその主張は肯定的理解に立つ、そうでしょう。
  74. 福田赳夫

    福田国務大臣 ことばで言いますと非常にあいまいですから、またこの統一見解を読み上げますが、「しかしながら、「台湾中華人民共和国領土である」との中華人民共和国政府主張は、」「十分理解しうるところであります。」と、こう書いてある。そのとおりでございます。
  75. 辻原弘市

    ○辻原委員 そのとおりじゃないですよ。だから先ほど正木さんにあなたが、それは理解をしておると言っていることは私はわかる。これは要するに物理的な話ですな、言っていることは聞こえる。その聞こえることについてどうなのかというのが人間の理解なんですよ。イエスかノーか。そうでしょう。盛んに法制局長官うなずいておられるが、そうでしょう。その理解というのは否定的理解であるのか肯定的理解であるのか、これは大きく違うわけです。だから、あなたのおっしゃるのは否定の意味での理解ではありませんでしょう。先ほど正木さんにも肯定的な意味でのとおっしゃったから肯定的理解でしょう、そうでしょう。
  76. 福田赳夫

    福田国務大臣 否定をいたしておるわけではございません。十分理解をいたしておるところでございます。さように御理解願います。
  77. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこまで肯定的理解を進められておるのならば、ここへ政府態度を出したってどうですか。そうなれば、したがって政府は、台湾中華人民共和国領土であるとの認識ですな、これからやるのですから。「認識に立って積極的に日中国交正常化に努力する所存であります。」文章としてもまことにりっぱではありませんか、態度としてもまことにりっぱではありませんか。総理、いかがでございますか。——外務大臣の御意見はわかっております。総理にお伺いいたしたい。
  78. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 「右の認識に立って」ということは、一項と二項と両方の認識に立って、こういうことでございますから、ここは誤解のないようにお願いします。
  79. 辻原弘市

    ○辻原委員 どうもはっきりいたしません。  それでは総理に少し先に進んでお尋ねをしてみたいと思うのですが、先ほど、たしか大久保さんのお尋ねの際に総理はこうおっしゃった。私もそれを聞きたいのです、冒頭に申し上げたとおり。ほかの議論をいましているのではありませんから。  要するに、この間の二十八日の総理の御答弁は、これはしばしばいわれまするように、私の理解をもってするならば、はなはば僣越な言い分でありますけれども総理の御見識としてはりっぱであったと思うのです。りっぱだったですよ、りっぱな御見識だったと思う。私は決しておだてるのではないのです。それはいまの国際情勢を踏まえてみれば、総理がおっしゃることが私は常識だと思う。そういう意味でこれは、われわれはきわめて評価をしておるのだ。しかもこの総理の御発言が、不用意に出たとは私は考えない。そうでしょう。しかもことばの言い違え、人間ですからことばというものは、日本語というのはえてして真意が伝わらぬ場合もあります。ことばの言い違え、行き過ぎ、舌足らず、いろいろありますが、そういうことでもないと私は思う。なぜならば、これはそのときの質問の論法がきわめて明瞭な三段論法になっているからです。  もう一ぺん申し上げましょう。中国一つである。中華人民共和国中国を代表する政権である。台湾中国領土の一部である。このなにから帰納されるものは、したがって台湾中華人民共和国領土であるという認識を持つ。これは明瞭な三段論法なんです。ところが福田外務大臣、あなたのは二段しかないのですよ。総理のが三段ロケットだとすると、あなたのは二段しかない、一つ足りないのだ。どこが足らないかというと、その帰納した結論がないわけです。先ほどから申し上げるように、中国一つだ。中国を代表する政権は中華人民共和国である。これは国連の決定以降あなたは明瞭にされた。だからどうなのかというと、もう一ぺん今度もとへ戻るわけで、Uターンするのです。どこへ戻るかというと中国一つであり、台湾はその中国の一部であると、こうあなたはUターンするわけです。首相のは、前向いて言ってぴしっと三段論法の結論、結語をそこで結ばれておるわけです。この違いがあるのです、大違いなんです。だから、同じですなんというのは日本人にはわからぬのです。だから、英文を出してくれと私は言うておるのです。いかがですか。福田さん。
  80. 福田赳夫

    福田国務大臣 二段とおっしゃいますが、私のほうは四段なんです。つまり、中国一つである。中華人民共和国中国を代表する政府である。しかしながら、わが国台湾領土問題については発言権がありません。したがって、中華人民共和国主張には理解を持ちつつ日中国交正常化交渉に臨む、こういうことでございます。
  81. 辻原弘市

    ○辻原委員 あなたは全然文法を知らぬ。これは皆さんお聞きになったらわかるでしょう。そんなことを私は言っているんじゃないのですよ。要するに、中国帰属に至る経緯を論理的に説明すると、総理のおっしゃった三段論法、すなわち矢野さんが指摘されたそういう三段論法に帰納されるのが常識と言っているのです。あなたのは三段——横ロケットだ。横向いて走っている。むちゃくちゃだ。(「横じゃない、下だ」と呼ぶ者あり)そうだ、落ちたな。むちゃくちゃだ。  ですから総理、そこで私は少し念を押しておきたいと思いますが、先ほどこういう問題についてきわめて私たちも重要だと思いましたから、政府においても慎重に取り扱われたい。われわれが慎重に扱わなければならぬという意味は、もし軽々、軽率に総理答弁と違ったようなことが新たに出るということになれば、それはこれから交渉をやろうという中国にどんな影響を与えるかということを懸念するからであります。何だと、まあ、あまり日ごろは信頼されておらぬ佐藤内閣だけれども、これはいいことを言ったとだれしも受け取っているのですから。ところが、またそれが打ち消された。何だ、もうこんなたよりない、こういうだらしない内閣は、幾ら政府間交渉だといったってまっぴらごめんこうむります、こういう結論が出てくることは明らかだから、慎重に取り扱いなさいと書って、政府にわれわれは時間をかしておるわけなんです。したがって、一たんおっしゃったことに対しては、総理も責任を持っていただかなければならぬ。その限りにおいて、先ほど大久保さんに真意は変わらないとおっしゃった。精神は変わらないとおっしゃった。しからば私はくどいようだが、もう一ぺんお尋ねをいたしたい。その精神とは何ぞや。精神とは何をさすのか、何をおっしゃるのか。こちらは矢野さんに対する二十八日の御答弁、これがきょうの統一見解、この二つの間に、異質のものであるか要するに血の通った、精神のつながったものであるか、これをわれわれはいま究明しているのです。総理は、それを血の通ったものでありますと、こうおっしゃった。  そこで私はお尋ねをする。ずっと矢野さんの質問がありますが、一番大事なくだりはここなんです。時間をとって恐縮でありますが、読み上げてみます。一番肝心なところはここなんです。矢野さんに対するところの御答弁、「ただいま国連において中華人民共和国中国を代表する政権といわれております。さような立場に立って台湾帰属考える場合に、これまた文句の余地はない。中華人民共和国そのものだと、かように考えてしかるべきではないか、かように思っております。」このとおりなんですよ。だから、精神が違っていないということならば、そういう理解だとしてよろしいかどうか、承っておきたいと思います。
  82. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も当時の速記をただいま目を通しております。私、どうもこれを読んでみまして、先ほど政府統一見解大筋において変わりないのじゃないか、かように私思いますから、先ほど来申し上げたとおりでございます。
  83. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうおっしゃられると非常に議論がしにくいのですよ。なぜかというと、おっしゃった人が変わっていないと言うのですね。おっしゃった人が変わっていないと言う。しかし、ただサギをカラスというのは、常識でこれはわかるのです。ここにこのコップを、これは私はコップだと認識する、いやそれはきみ、湯のみ茶わんだという強弁されたって、それは私は、はあそうですかと言うわけにはいかない。そうはいかない。そこで私は、この問題でも、少なくともこれがコップであるという認識を持てるような御説明を賜わらなければいかぬ。しかし、まあ総理大筋としてちっとも変わっていないとおっしゃる。二十八日に発言された人がそうおっしゃるのだから、私もそのくだりにおいて、いやそれは違うじゃないかということを責め立てることは非常に困難だ。困難だが、問題はしかし、大筋として精神は変わっておらないということならば、そういう立場を踏まえて総理、これからおやりになるのですか、それは積極的に。そのことをもう一ぺん念を押しておきましょう。
  84. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま統一見解を出したばかりでございまして、この統一見解のもとに、かような認識のもとに積極的に日中国交正常化をはかろう、かように申しておるわけでございます。
  85. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこでそのくだりは、時間がないようですから、その辺で私はとどめておきますが、この際、私は外務大臣に申し上げておきたい。また総理にもお聞きを願っておきたい。  それは、大筋において違っておらないとこうおっしゃった。総理はそうでしょう。ところが、稲田さんは盛んにそれを、この問題の発端から今日まで非常にブレーキをかけていらっしゃる。それは明らかだ。先ほど私が説明したように、総理が言った三段、福田さんが言った二段とは、これは明らかに違うわけだ。総理外務大臣のおっしゃったことをたしなめたり規制されることは、これは内閣としてもあたりまえでしょう。しかし、総理のもとにある外務大臣が、総理発言にそでを引っぱったり、足を引っぱったりすることは何事であるか。そういうことは本末転倒ですよ。私は、そういうことは総理もまことに不見識きわまると思うのです。あなたは、そんなことはないと言ったら笑われますよ、これは明らかに違うのですから。そういう下克上は許されません、総理のために申し上げておきますよ。それはけしからぬ。  さらにもう一つ外務省に私は申し上げますが、いろいろこの間の経緯の中で、われわれに対して非公式ながらこういうことを言っておる。それはいろいろその反響がございます。反響これあって、それに対して説得をするのがなかなかむずかしい。しかも、いまの事態は、よく外務省等で調べてみると——こういうことを言うのですよ。サンフランシスコ講和条約に調印した国は四十五カ国ある。その四十五カ国の中で中国国連において承認した国が二十二カ国、その二十二カ国の中で台湾帰属について明確にしているところは一つもないとこう言う。そしてある国は——イギリスしかり、フランスしかり、最近の調印国のカナダ、イタリア等においてはテークノート方式である。したがって、日本はそういう諸外国の状況を踏まえたときに、いまこの決断をしてやることには、これは非常に重要問題なんだとこうおっしゃる。私は、そういう外務省の言い方の中に、日本の外交の自主性のなさ、それからもう一つは国際情勢の進展するについての認識、これが非常に甘い、敏感でない、こういうことの姿勢がきわめて明瞭に象徴されていると思う。私はそう思うのです。だからこそわれわれは、諸外国の中国に対する関係わが国中国との関係の違いは、いまさら説明をするまでもないところであります。歴史的あるいは最近における日中の民間交流、貿易の実態等々を考えたときに、どうしてもわが国が世界に先がけて中国のあらゆる問題を解決しなければならぬ立場を踏まえていなければならぬ。そういう意味で何も私は、諸外国の顔色を見てのみわが国の外交方針というものを立てなければならぬという論理にはならぬと思うのです。  しかも、もう一言私が申し上げておくならば、確かにイギリスがノータッチといわれておる。またフランスもノータッチでしょう。しかし、イギリスには香港という問題を踏まえている、そういう特殊事情もある。しかも、イギリス、フランスが中国を承認なさったその時期と今日とでは、月とスッポンぐらいの違いがあるでしょう。また一昨年ですけれども、カナダが承認したあの時期と今日とを比較してごらんなさい。いま日本が行こうとする道は、これは国連において中国が世界のひのき舞台に堂々と安保常任理事国という地位を占めたという、その現実に立ってわれわれは中国に向かおうとしているんです。だから、そこに私ども政治家の感覚としては、従来の感覚、認識ではいけない、こういうことを申し上げておる。だから私は、冒頭言いましたように、そういう国際情勢を踏まえたときに、この程度の統一見解でもし日中国交正常化へのとびらが開かれると考えるならば、それは総理、きわめて甘いですよ、それは外務大臣、きわめて甘いですよということを申し上げざるを得ない。  最後に一つ総理大臣から、私の申し上げた認識、誤りがあるかどうか、総理の御判断をいただいて、私も関連でありますからこの程度にとどめておき、残余のそれらの問題については、また同僚議員にゆだねたいと思います。総理お答え願いたいと思います。
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、外交ですから外交の独自性、これを持たなきゃならない、これは当然のことであります。しかし、その場合に、やっぱり前提になるものは、わが国をめぐる諸情勢、ことに国際間の関係の情勢、それを十分把握することは必要でございます。そういうものを把握して、しかる上でわれわれの外交路線をきめていく、こういうことでなければならない、かように私は思っております。  ところで、ただいまの中国問題でございますが、私は、非常に問題がここまでこんがらかってきたのは、中国国交正常化をはかろう、かようには申しておりますが、日本はまだ何にもやっておらないという、これはしばしば指摘されるところであります。私どもの幹事長がようやく手紙を出した程度、その程度でございます。そうして、これをやっぱり、何といいましても政府間の交渉に持っていかなければ両国間の真の親善友好は樹立できない、かように思いますから、私どももいろいろ努力しておる最中であります。  ところが、ここで議論されるものが、もうすでに交渉が始まり、数段高い段階にまで議論が発展しておる、かように私、思います。私どもいろいろの話はいたしておりますけれども、やはりまだ会議は始まっておらない。交渉過程においてきまるような問題がただいま次々に議論になっておる、そういうところにやはり問題があるのではないかと思っております。私は、ただいま辻原君の御指摘になりました点、これはそういう意味で私ども非常に、私どもに対する御注意だ、かように思っております。  でありますから、私はもう一度重ねて申しますが、十分わが国の置かれておる国際情勢、それを把握して、そうして独自の考え方で進めるべきだ。そういう場合に、もちろん見通しも大事でございます。見通しも大事でございますが、率直にお互いの考え方を披瀝することによって、相手方には相手方の主張があるだろうし、当方には当方の主張がございますし、ことに過去において苦いその経験がある。とにかく戦争をした私どもですから、そういう問題について最初から理解をはかる、そういうことをしなければならない状態に置かれておる。そういう問題を解きほぐしていって初めていまの国交正常化交渉ができる、かように思っております。どうも次に発展した段階でただいま議論されておるように思いますが、私どももう一度原点に帰って十分そこらの点をくふうしたい、かように思います。  先ほど来出したもの、ただいまようやくできたその統一見解、これがただいまの状況でございます。そこらの点も御理解いただきたいと思います。
  87. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、和田春生君。
  88. 和田春生

    ○和田(春)委員 先ほど来の同僚委員とのやりとりをお伺いをいたしておりまして、どうもふに落ちない点もいろいろありますので、問題点を整理しながら端的にお伺いをしてみたいと思うのです。と申しますのは、この種の外交にかかわる重要な問題について、レトリックで適当にごまかすということであってはいけない、そういう基本認識に立っているからでございます。  そこで、終わりに総理大臣にまとめてお伺いをいたしたいと思いますが、まず、その前に外務大臣に三、四確かめたいことがございます。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕  第一点は、わが国が受諾をいたしましたポツダム宣言の中に、「中華民国政府主席」ということばが使われております。この場合の中華民国政府というのは、当時は中華民国が中国そのものであり、北京の国民党政府が全中国を有効に支配をしている。したがって中国を代表する政府、こういう意味で中華民国政府、このようなことばが使われておったとわれわれは理解をしておるわけですが、それでよろしゅうございますか。福田外務大臣
  89. 福田赳夫

    福田国務大臣 当時はそれでよかったんだろうと思います。
  90. 和田春生

    ○和田(春)委員 それでは次に、やはり外務大臣にお伺いいたしますが、サンフランシスコ講和条約連合国の重要な一員であった中国は招かれておりません。これは、当時すでに北京に成立をしておった中華人民共和国政府を招請をするのか、台湾に逼塞をいたしまして、台湾及び澎湖島並びにごく周辺の小島嶼を支配するにすぎない状態になっておった中華民国政府を、かつて連合国として戦争に参加しておったということをもって招くのか、その点が連合国の中で意見が食い違っておった。したがって、有力な連合国の参加国であった中国が招請されていない。そういうような事情を私どもは知っておるわけでございますが、同じような御認識でございますか。
  91. 福田赳夫

    福田国務大臣 中国二つ政府がある、そのいずれを招聘すべきかということについて意見が分かれた、その結果そうなったのだろう、こういうふうに存じます。
  92. 和田春生

    ○和田(春)委員 ところで、もう何度も言われておりますように、昨年の国連の総会におきましては、北京の中華人民共和国政府中国を代表するものとして、総会議席はもとより、安保常任理事国としての地位も与えられました。国府政権の追放がきまったわけでございます。この結果、中国を代表する唯一正統政府中華人民共和国政府であるということが国連の場において確認をされた。この点についても、外務大臣と私との間に認識の相違はないと思いますが、よろしゅうございますか。
  93. 福田赳夫

    福田国務大臣 違いはございませんです。   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕
  94. 和田春生

    ○和田(春)委員 その後、米中会談がことしになってございまして、米中の和解から、アメリカも事実上中華人民共和国政府中国を代表する政府と認める形におきまして、ニクソン大統領が中国に渡っていろいろ懇談をしたわけでございます。  そこで私は、以上幾つかの点を押えまして総理にお伺いをいたしたいと思うのですけれども、二十八日の総理大臣のあの御発言というものは、いま確認をしてまいりましたような経緯を踏まえた上でああいうお答えになった、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。−総理に伺います。
  95. 福田赳夫

    福田国務大臣 ちょっと、前提が一つあります。  米中会談の評価につきましては、和田さん、一方的な見解を述べられて、それについての確認を私に求められなかった。そこで私の見解を申し上げますが、中華人民共和国を承認をするという立場で米中会談が行なわれたというふうなお話でございますが、私どもはそうはとっておりませんでございます。とにかく米中関係の改善をしたい、こういうことで北京会談が持たれた、こういうことでございまして、それによってまだ法的な承認の関係とかなんとかにつきましては、何らの影響するところはないということを私、申し上げます。
  96. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま和田君から言われますように、一、二、三と分けてお尋ねがございました。一、二、三、そのとおりだと思いますが、ただ、第三の問題について、これが必ずしも一致した意見ではない。たとえば、アメリカ、イギリス等におきまして、国連中華人民共和国を迎えること、それに議席を与えること、安保の常任理事国にした、このことはそれなりに認めておりますが、中華民国そのものを、それでは国連が追放したように同時に国交も追放するかというと、そうはしておらない。ここに問題があるのであります。また、私がサンクレメンテでアメリカのニクソン大統領と特に話をしたのも、一体、国連でこういう決定を見れば、その国連の決定に従うのは当然じゃないか、こういうことを指摘したのに対し、国連国連一つの行き方だ、しかし、やはり両国間の問題を決定するのには他の問題もある、こういう言い方をしております。だから、ただいま第三の問題が非常にはっきりしておるかのようですが、そこらに、やや認識が相違しておりますと結論がまた違ってくるように思いますので、一応申し上げておきます。
  97. 和田春生

    ○和田(春)委員 日本政府は、いままでしばしば国連中心外交、国連尊重外交ということを言い続けてまいりました。そして、もちろん国連に加盟している国においても見解の相違はあるかもわかりませんが、日本政府立場に立って、よしあしの判断は別といたしまして、昨年の国連総会でアルバニア決議案が圧倒的多数で決定されたという事実、したがって、国連の場においては、中国を代表する唯一正統政府中華人民共和国である、こういう形になって、安保常任理事国の地位も与えられた、この事実は否定すべくもないと私ども考えるわけであります。それで、今回の予算委員会におきまする総理の御発言の中におきましても、そういう事実の経過に関する認識があったから、二十八日の御答弁のような経過になったのではないか、こういう念を押しているわけでありますから、その点は率直にお答えを願いたい、こう考えるわけであります。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういう点がただいまの統一見解になって、その統一見解の第三項、これが御理解いただけるだろう、かように思います。
  99. 和田春生

    ○和田(春)委員 私は、どうも統一見解を読んでみましても、これはどなたの作文か知りませんが、だいぶ間違っているところがあるのじゃないかと思うのです。たとえば第一項に、「台湾帰属については発言する立場にありません。」と、こういっていますけれども先ほど来辻原委員その他再三の質問にもありますように、大いに日本政府発言してきたじゃありませんか、中国のものであるとか、あるいは中華人民共和国に属するということを認めるわけにいくとかいかぬとか。これは正確に言うと、サンフランシスコ平和条約によって権利権原を放棄しているのであるから、台湾帰属決定について、わが国は介入する立場にはないというのが政府の書いたいところだろうと思うのです。発言は幾らでもしてきているわけです。  そういう点で、いまも私はお伺いしているのですけれども、二十八日の本委員会の席上において、総理ははっきり発言をされているわけです。発言された内容については、先ほど辻原さんが内容を読まれましたから、私は繰り返しません。発言をしていらっしゃるわけです。そこでこの統一見解が出てきたわけでありますけれども、二十八日のあの総理の公明党矢野書記長の御質問に対するお答えは、取り消されるのですか取り消されないのですか、その点を確認したいと思います。
  100. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 統一見解を出しましたが、その統一見解は、二十八日の私の発言大筋において一致している、かように申しておるのです。
  101. 和田春生

    ○和田(春)委員 それでは、議事録に総理の御発言は記録をされているわけでございますが、それは取り消されずにそのまま生きている、こういうことになりますか。
  102. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この統一見解は、よく読んでいただくと、大筋においてただいまのこれと同じだと思いますが、私は、いろんな議論が出ておりますから、今回はいままでの私の発言を整理して、そうしてこの三項目でただいま政府統一見解を出した、かように御理解をいただきたいと思います。
  103. 和田春生

    ○和田(春)委員 重ねてお伺いいたします。そうすると、二十八日の総理の御答弁台湾領土帰属に関する御発言の内容というものは、本院の議事録に残っているわけでございますが、これは生きているわけでありますね。はっきり確かめたいと思います。
  104. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げたとおりでございますが、私は、この二十八日の速記録にあるもの、これはそれぞれが条件があり、そのもとにおいてかような議論が成り立っておりますので、これはそのまま御理解いただきたい、かように思います。
  105. 和田春生

    ○和田(春)委員 もう一度お伺いいたします。そうすると、二十八日の発言はそのまま生きている、この統一見解なるものは、それに対する言うなれば補足的説明である、こういう理解でよろしゅうございますか。
  106. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 きょう御披露いたしましたのは、これは統一見解でございます。したがいまして、いままでの発言を整理して、そうして統一見解として出したものでございます。またその統一見解は、精神的にも、また大筋としても、これが矛盾する、かようには私、考えておりませんから、その前の発言発言としてそのままきょうの統一見解で御処理願いたいと思います。
  107. 和田春生

    ○和田(春)委員 どうもおかしいのですね。きょうの統一見解でそのまま御処理願いたいと言いましても、これは私が処理するわけじゃないのですよ。私、事実について確かめているわけです。総理台湾帰属問題について御発言になった。そうすると、この統一見解で、「帰属については発言する立場にありません。」こういうふうに言い切っているわけです。それならば、あの発言は取り消しになられるのかということについて、総理は取り消さない。それならば、あの発言はそのまま生きているのですねと、こうお伺いしているのです。はっきりお答えください。事実について確認をしているわけです。
  108. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、速記を私も見ましたが、二十八日もやはり、台湾の問題について日本はとやかく言う立場にはない、こういうことを前提としてちゃんと申しておりますから、それは別に変わってはおらないということでございます。  ただいま処理してくださいというのは、その考え方の処理でございまして、別にいままで言ったものを処理してくれ、こういうのではございませんから、その辺は私のことばが不適当なので、ただいま申し上げるように御理解願いたいと、こういうことでございます。
  109. 和田春生

    ○和田(春)委員 そうすると、あの二十八日の首相の御発言はそのまま残っておる、それに対して、この統一見解という説明が出てきた、そういうふうに私ども理解をしてよろしいわけで、二十八日の発言が否定されたわけではない。これを確認してよろしゅうございますか。
  110. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 統一見解、これをひとつはっきり確認していただきたい、政府考え方はこれでございますと。だから、二十八日のものを別に取り消しはいたしません。しかし、それらのものがいろいろ議論になったから、政府考え方は最終的にこれでございますということで、はっきり整理してお願いしたい、こういうことでございます。
  111. 和田春生

    ○和田(春)委員 まことに苦しい御説明のようですけれども、二十八日の発言は取り消さないで、そのまま残っているのだ、そうして統一見解を出さなくてはいけないというふうになったのはなぜでしょうか。結局これは、総理があの発言をされたときには、大方の人たちは、新しい時代の変転というものを押え、そうしてわが国の向かうべき方向について総理なりの判断と見解をお示しになった、われわれはそう理解をしたわけであります。ところが、そのあとから、全く総理発言と違うような意味合い持った外務大臣発言が飛び出してまいりました。さらにまた外務省当局から、いろいろそれをまぜっ返すような雑音も聞こえてきた。そこで、政府部内の意思統一をしなくてはならぬということから、こういう統一見解が必要になってきたわけではないんでしょうか。もし総理発言をあのまま残しておく、こういう形で、それをさらにふえんをして説明をするという形になるのならば、別にこの統一見解というものは、わざわざこういう形で出す必要がなかった。結局、閣内において首相の発言に対して水をさしたり、これをまぜっ返したりする——どちらがいいか悪いかの判断を言っているわけじゃありません。そういう状態が起きたということが、統一見解を必要とした理由ではないんでしょうか。総理はどうお考えになりますか。
  112. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 二十八日、いろいろお尋ねがございました。そうして、段階的なお尋ねであり、それをよく整理して私がお答えすれば、あるいは全然誤解はなかったろうと思いますけれども、しかし私は、それらのことを考えながらも、大体大筋としては、当時のことはそのまま考えておる。したがって、先ほど来申しますように、二十八日の私の答弁したその精神は、今回の統一見解にも貫かれております。したがって、この統一見解が簡単になっておりますから、そのほうで御理解をいただきたい、かように申し上げておるわけであります。
  113. 和田春生

    ○和田(春)委員 そういう点について、よく世間には、物価の問題とか公害の問題とか国民生活に重大な問題がたくさんあるにかかわらず、国会がこういうことでもたもたしているのはおかしいではないか、こういうような意見もあるわけですけれども、これはわれわれ野党にとってははなはだ迷惑な話で、こちらがストップしたわけでも何でもないのでありまして、政府がみずから混乱をして、自分で統一見解を出すと言って、与党とのいろいろ調整をしながら今日まで過ぎてきたわけであります。  関連質問で時間がございませんから、私は特に重要な問題について要望を申し上げて、総理の所見を承りたいと思うのです。  今日、国際的な情勢を見ますと、御承知のように、ニクソン大統領が中国に乗り込む、あるいは周恩来首相がほかの国々に行く、ブレジネフが乗り出す、あるいはイギリスにおきましても西ドイツにおきましても、それぞれ首相であるとかあるいは各国大統領であるとか、政治の最高責任者が先頭に立って国際的な外交問題を処理する、そういう積極的な姿勢がとられているところであります。ところが、わが国の実情というものを見てみますと、さきの四次防の先取り、四十七年度予算におきましても、明らかにこれは行政の政治に対する過剰介入である。そういうところから先取り問題等が起き、シビリアンコントロールに対する疑惑が持たれたわけであります。  今回の問題についても、総理日本国総理であります。われわれは批判を持っている。マスコミによれば末期的症状だといわれている。しかし、日本には政府一つしかないのです。なぜ総理は自信を持ってそういう点に取り組まれないのですか。外務大臣が言ったことを総理が御訂正になるというのならわかる。外務省の雑音を総理が押えたというのならこれも理解できる。しかし総理が、二十八日の発言も今日も自分の言っていることについては大筋において狂いがないと言いながら、総理以外の閣僚の発言や行政府発言によって問題が混乱をする。末期症状というのは私はまさにそのことを指摘しているのだと思います。佐藤総理の残り幾ばくの任期があるかわかりません。しかし、この重大な転機にあたって総理——いい悪いの批判は別であります。ともかく日本政府の最高の責任者として、自信を持ってやっていただきたい。また、外務大臣以下の閣僚も、そういうものに変なブレーキをかけて混乱をするようなことなしに、やはり日本政府の意思というものをはっきりさしてもらいたい。そうでなければ、われわれは満足な批判もできないし、外国にもいろいろ批判的なことや誤解を生むばかりであります。そういう点について、私どもは党派を越えて、日本の外交の将来についてのあるべき姿として、総理のしかとした御見解を承りたい。それが一つ。  それから、二十八日の見解について、大筋において狂いがないと言うのならば、そのとおりの態度でもって日中国交回復に邁進されることを切望し、総理の御所見を伺って、私の質問を終わることにいたしたいと思います。
  114. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま和田君から御鞭撻をいただまして、これはもうお礼を申し上げる以外にございません。  ただ、私はこの機会に申し上げたいのですが、ニクソン大統領をはじめといたしまして、首脳者がそれぞれその立場において国際外交の面で活躍している。わが国ではただいま国会中でございます。そのために私自身思うようには動けない、こういうこともありますから、できるだけ早く——大事な国会ではございますが、できるだけ審議を促進して、そうして、私にもひまができるようにひとつ考えていただきたいと思います。  また同時に、私と閣僚との関係でありますが、もちろん、私の考えの足らない点、そういう点で各閣僚が総理をひとつ補佐しよう、補っていこう、こういう意味で各閣僚がいろいろ進言することはたいへんけっこうなことでございます。ただ、皆さんの前でそういう事態を起こしたために、いかにも閣内が不統一であるかのような状態に見られたことは、まことに残念でございます。しかし、やはり各閣僚から適当に鞭撻を受ける、またそれぞれが合議体でやはり相談していく、そういうことが望ましいのでございます。ただ、総理だから閣僚は黙っておれとか、こういうような態度では、なかなか国政は担当はできない、かように思います。  ただ、事務官僚からとやかく言われるようでは困りますから、私ども政治家だ、政治家の分野というものとまた事務官僚の分野、これはおのずから違いがございます、範囲がございますから、そういう意味においては、そこらのけじめははっきりさせたい、かように思っております。  どうもいろいろ御心配を受け、また野党の方から御鞭撻を受けた、そのことについてはまことに感激そのもので、厚くお礼を申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
  115. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、東中光雄君。
  116. 東中光雄

    ○東中委員 政府が示されました統一見解について、共産党の考え方を申し述べたい、こう思います。  統一見解は三点からなっておりますが、第一点は、サンフランシスコ条約により台湾に対する一切の権利権原を放棄しているから、台湾帰属について発言する立場にない、こうしておられますが、これは明らかに間違っておる、こう考えております。政府の対中国政策の矛盾と破綻をむしろ示しておるものではないか、こう思うのであります。それは、わが国台湾を放棄したのは、ポツダム宣言、カイロ宣言を無条件に受諾した結果であります。カイロ宣言によりますと、満州、台湾、澎湖島は無条件で中国に戻すことを約しておるのであります。台湾中国に戻す。なるほど条約の当時は中華民国でありましたが、その後は中華人民共和国になっている。その中国に戻すということを受諾したのでありますから、わが国台湾中国に戻すべき義務と責任を負っていることは明白であります。政府見解はこのことを否定する見解であります。  次に、政府は、サンフランシスコ条約によって権利権原を放棄したから、発言する立場にないと言ってておられますが、日華条約によって台湾帰属を国府とする立場をとったのでありますし、台湾帰属について発言をし条約を結んでいるのであります。政府統一見解はこの立場と明らかに矛盾しておるものであります。また統一見解によりますと、サンフランシスコ条約がある限り、かりに中国国交回復の交渉をしたとしても、政府台湾帰属については一切言えないという立場だということを言っておられることになります。これは、台湾問題は中華人民共和国との国交回復の交渉過程で解決するという、政府のこれまで示されておった主張とも矛盾するものであります。サンフランシスコ条約がある限り国交回復はできないということに結局はなってしまうものであります。  さらに、統一見解の第二、第三点はいわゆるテークノート方式であり、結局本日の討議でも明らかでありますが、中華人民共和国主張している事実を認識しているということ、それ以上には一歩も出ていないことになります。二十八日の総理答弁をなしくずしに撤回していくようなものであります。こうした見解で、積極的に日中国交正常化に努力する、こう言われても、それは国民をごまかすものにしかすぎないことになります。政府がほんとに国交回復について積極的に努力するというのであれば、当然のこととして、中華人民共和国中国を代表する唯一の政府であること、台湾中華人民共和国領土であることを明らかに認めて、日華条約を廃棄し平和五原則に基づく日中国交回復を目ざすべきだ、私たちはこう考えるものであります。  この統一見解についての質問は、あすに予定されております不破書記局長質問の時間に続けてやらしていただきたい、こう考えておるものであります。
  117. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 引き続いて大久保直彦君の残余の質疑を許します。大久保君。
  118. 大久保直彦

    大久保(直)委員 本日政府から提出されました統一見解につきましては、同僚委員関連質問をただいま終わりまして、私その質疑をずっと伺っておりまして、最後に総括してこの統一見解に対する意見を申し述べ、また総理の御見解を伺いたいと思っております。  二十八日の総理答弁、また外務大臣答弁の食い違いからこの統一見解が提示されるようなプロセスをたどっております。最後に総理は、速記録を調べて統一見解を出すという御発言がございましたので、私もこの速記録をずっともう一度読んでみましたところ、総理のおっしゃった部分よりも、外務大臣発言がこの統一見解に盛られております。そして総理の御答弁の中に、中華人民共和国がそのような主張をしたとか、またそれを理解しておるとか、また認識をしたというような発言は一言もございません。しかし、この混乱した外務大臣答弁の中に、総理発言はこういうことではないか、その主張理解認識、こういう答弁があったわけでございます。ただいま同僚議員の質疑にもございましたので、あまり重複を好みませんが、総理は二十八日の御答弁の中で、「国連におい工中華人民共和国中国を代表する政権といわれております。さような立場に立って台湾帰属考える場合に、これまた文句の余地はない。中華人民共和国そのものだと、かように考えてしかるべきではないか、かように思っております。」こういう明確な答弁をなさっておるわけでございますけれども、念を押して伺いますが、この答弁は有効であって訂正をする必要はない、こういう御答弁でございましたが、変わりはございませんか。
  119. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ことばそのものを一つずつ抜いて議論すると、いろいろ問題が——統一見解だというようなものを出さなければならなくなる。全体としてやはり読んでいただくと、私の話した事柄、これはやはり精神的には今回の統一見解と一緒です、こういうことになるわけでございます。だからそういう点で、やはり全体をひとつ読んでいただいて、その全体からくみ上げてきたその理論でひとつ御理解をいただきたい。いわゆる全体を圧縮して、そうして今回の統一見解ができた、かように御理解をいただきたいのであります。
  120. 大久保直彦

    大久保(直)委員 そうしますと、全体を読まなくては、このことばの真意は生きてこない、こういうふうに解釈をせざるを得ない。私がいま伺っているのは、このことばは有効なんですかと伺っているのです。
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうもあまり、全部をお読みにならないとと言うと、いかにも考え方が出てこないように申しますが、そうじゃなくて、一字読めば全体がわかる方もありますし、あなたの場合はまさしくそのほうに解釈してよろしいのだろうと思いますが、ただ私が申し上げるのは、どうもそのことば自身について、あるいは一行、あるいは一句だけに重点を置かれると、やはり精神あるいは大筋が変わってくる、かように思うので、先ほど統一見解を出した、そういう議論があるからこそ統一見解が出た、かように御理解いただければなおけっこうでございますが、いろいろ二十八日の発言から問題が起きた。そうしてだんだん、これは皆さんのほうの問題ではないが、政府側におきまして、二十八日の問題についていろいろの解釈をしておられるようだから、ここでひとつ統一見解を出そう、こうなったわけであります。だからきょうのところは、ただいまの統一見解で、これが統一見解、そのことばどおりにひとつおくみ取りをいただきたい、かようにお願いする以外にはございません。
  122. 大久保直彦

    大久保(直)委員 私の質疑並びに同僚委員質疑を通じまして、二十八日の総理答弁と今回の統一見解の内容は明らかに異質なものである、このように私は判断をいたします。いま総理からいろいろと御所見がございましたけれども、しかし、この二十八日の答弁が有効であるならば、この統一見解がこういう形で出てくることは、私たちは承服はできない。むしろこの統一見解の線で、これがまさしく政府統一見解であるというならば、二十八日の総理答弁の存在が問題になってくる。この辺のことをはっきりいたしませんと、いままで幾らこれで論議をしましても、それは見解の相違だということで逃げてしまえば、私たちはこれ以上の質疑は続けられませんけれども、この点の最終的な私ども考え方は、明らかに異質なものであって、私たちはこの統一見解は承服できない。同僚正木議員からも質問がありましたように、台湾中国領土であるということすらこの統一見解からは大幅に後退しているような感があります。この点について委員長においてお計らいをお願いしたいと思います。
  123. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 委員長に計らうべき問題じゃないと思いますが、いかがでしょうか。政府は、二十八日のいろいろの質疑応答のくだりの精神ときょう出されました統一見解とは、その大筋、精神においては異ならない、こういう趣旨を述べておられるわけでありますから、委員長がこれを整理するとかしないとかいう問題ではないと思いますが、いかがでしょうか。
  124. 大久保直彦

    大久保(直)委員 足を一歩前へ出して進んでいく場合と、その足を引っ込めて上半身だけ前へ傾斜させていることでは、これは明らかに事態が違うわけです。私はこういう重大発言が、日本国内のみならず海外にもいろいろな影響を与えるような発言が本院においてなされた、この当委員会においてなされた。そしてこの問題をめぐって、この予算委員会が二日間の空白を続けておりました。そうしたことについて総理は重大な責任を感じて、今後、外交問題についての国民を混乱させるような、そういう発言を慎みながら慎重に対処していただくことを、この際強く申し上げておきたいと思います。  また総括的にこの問題についての総理の所見を伺って、この中国問題に対する質問は終わりたいと思います。
  125. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまおしかりを受けましたが、確かに私の発言から問題がいろいろ紛糾した、これはもう私の責任でございます。また、それがただ国内ばかりではなく国際的にもいろいろの波紋を描いている、これはまことに重大な問題だと思っております。  そういう意味で、私の発言は、先ほども和田君に答えたように、やはり何と申しましても、わが国をめぐる国際情勢、これを正しく把握して、そうしてやはり自主的な判断のもとに勇気をもって前進するということ、これが私ども態度でなければならない、かように思いますので、ただいまお話しになりますように、政府はもちろん責任を負うのでございますから、その立場に立って、また国民の利益を絶えず考えながら前進していかなければなりませんし、問題を解明していかなければならない、かように思いますので、ただいまのおしかりはおしかりとして承っておきますが、さらに皆さん方の御意見も聞かせていただいて御鞭撻を賜わり、その上で私どもも、国策遂行、それに万遺憾なきを期してまいりたい、かように思います。ありがとうございました。
  126. 大久保直彦

    大久保(直)委員 それでは、この統一見解をめぐります質疑はこれで打ち切りますが、総理は過日の当委員会の御答弁におきまして、平和五原則を支持なさる、こういう御発言がございました。この中には明らかに内政不干渉という大項目が含まれているわけでございますが、この二十八日の御答弁が有効であるのか、本日の統一見解が有効であるのか、きわめて判断に苦しむところでございますけれども中国一つである、そして台湾中国領土である、そしてこの統一見解によれば、中華人民共和国台湾は自国の領土であるという主張を十分理解して、その認識に立っておるということになるわけでございますが、そうなりますと、いわゆる台湾というものは中国の内政問題である。台湾海峡の問題についてもしかりでございます。そうなりますと、従来いわれておりました一九六九年の総理とニクソン大統領との共同声明、その中の台湾条項というものは当然ここで再検討されなければならない、そういう事態に入ってくるのではないか、このように思いますが、この点についての御所見を伺いたいと思います。
  127. 福田赳夫

    福田国務大臣 一九六九年のいわゆる共同声明の台湾条項、これは、台湾海峡はわが国の安全に非常に重大な関係があるということをうたっておる、その条項でございます。  極東の情勢は、米中会談、これが非常に大きな要因をなしておると思うのですが、緩和に向かっておる、こういうふうに考えます。しかしながら、緩和に向かっておりまするけれども、法的にこれが安保条約の適用の除外区域になるとまで断定し得るような状態にまで発展しておらぬ、そういうふうに考えておるわけでありまして、台湾に非常な事態が起こるということがありますれば、これは依然として——そういうことは私はあまり想像したくもありませんし、おそらく見通しとして、非常の事態が起こるとは考えませんけれども、そういう事態があった際のことも考えなければならぬ。これは理論的な問題です。台湾海峡がわが国の安全に重大な関係があるのだという認識、これは訂正する必要はない、かように考えております。
  128. 大久保直彦

    大久保(直)委員 そうすると、中華人民共和国主張を十分理解しておらぬことになるのじゃないですか。台湾は自国の領土であるという主張を十分理解してないというふうに私たちは判断しなければならない。そのような理解、そしてそういう「右の認識」に立っておられるのですから、台湾は当然中国の内政問題である、こういう認識に立たないと外務大臣答弁は矛盾を生じてまいりますけれども……。
  129. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、現在のことを言っておるのです。現在はまだ日中間に国交正常化の話し合いも始まらぬ。もし始まる場合におけるところのわが国の基本的な認識はどうだ、こういうことを申し上げておるわけでありまして、この基本的の認識に立って話し合いが始まり国交正常化する、そういう事態になりますれば、この安保条約の適用、こういうものにつきましてもいろいろな調整の問題が出てくるだろうと思う。しかし、今日はまだその政府間交渉も始まっておらぬ、そういうような状態でございます。その状態におきまして、安保条約の適用の考え方、つまり台湾海峡はわが国の安全にとって重大な問題であるという理解、これは変更、修正する必要はありませんとはっきり申し上げます。
  130. 大久保直彦

    大久保(直)委員 私はできれば総理に御答弁願いたいのですけれども、私は、現在日本が置かれている立場も配慮しながら将来検討する必要があるのじゃないか、こういうふうに伺っているのです。いま、この「十分理解」というのは、否定の意味ではない、肯定的な意味を多分に含んでの理解であるという外務大臣の御答弁がありましたけれども、これは台湾に緊張が起きるとか起きないとかという問題ではなくて、日本がどういう基本的な立場をとるかということに問題はかかっている。でありますから、この台湾の問題につきましては、日本はいかなる状態においても介入すべき筋合いのものではない、中国の内政問題としてわれわれはその台湾条項に検討を加える必要があるのではないか、こういう御質問をしているわけであります、総理
  131. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうでしょうこの問題は、ただいまはアメリカのニクソン大統領も訪中したばかりでございます。いわゆる米中間の関係も極東の状態も緊張緩和の方向に向かっております。そういう際にただいまの問題を議論すること、これは意味なしとは申しません。そういうことをやはり平素から考えておかなければならぬ、かように思っておりますが、しかし私は、緊張緩和している、またそういう方向に向いている、このことをやはり助けていくのがわれわれのつとめじゃないだろうか、かように考えますので、理論も理論ですが、そういう方向でこの問題をしばらく預かりにしておいたらいかがでしょう。私は、そのほうが望ましいことではないだろうか、かように思います。
  132. 大久保直彦

    大久保(直)委員 将来において検討を加えるという質問に対しても、これ以上答弁はむずかしい、こういうことでございますか。
  133. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 将来、あるいは日中国交正常化、こういうような場合になっていろいろの御議論が出るだろう。そういう場合にはやはり十分話し合う、こういうことが必要だろうと思います。ことに、冒頭お尋ねがありました平和五原則、これは一体どうだ、かように言うと、私どももこの五原則は承認する、そういうことを申しておりますから、やはりそういう立場で問題は考えていかなければならぬ、かように思っております。
  134. 大久保直彦

    大久保(直)委員 そうしますと、ここに示された統一見解も、政府間交渉に入りそれが成立するまでは全く意味をなさない見解のようになってしまう。私どもは、この台湾問題というものは、出口論、入り口論、途中論いろいろございますけれども、やはりそこに緊張が起きるとか起きないとかということよりも、日本台湾一つ中国の中の内政問題として認識をするかどうかという点に、これからの日中の話し合いの場につけるかっけないかという大きなかぎがあると思えばこそ伺っているわけなんです。  私は、台湾条項に訂正をここですぐ加えろとかいうことは言っておりませんが、しかし政府が、台湾中華人民共和国領土であるという中国主張を、いま百歩譲って、この統一見解のとおりに十分理解をしておられるならば、ましていわんや平和五原則を支持されるということであるならば、当然この台湾条項ということについては私は再検討あってしかるべきと、くどいようでございますけれども、もう一度お伺いしておきます。
  135. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、ニクソン大統領が参りまして、そうして毛沢東主席あるいは周恩来首相といろいろ話し合いをしている。そうして、いわゆる米中間の問題はこれで解決するかというと、あれだけの話し合いをいたしましても、なかなか解決しておらない。そうしてその問題になっておるものは、ただいまこの席で議論しておるその点がやはりかかっておるのではないかと思います。いわゆるアメリカと中華民国との関係、これがやはり一つの問題であったろうと思います。しかしこのことは、やっぱりわれわれが議論しなくって、緊張緩和の方向に向かっておるんだから、そこでそういう方向で努力すべきではないか、こういうことを私は申し上げたいのであります。  ただいま、何と申しましても中国一つだ、そういう原則ははっきりある。しかし二つの政権、政府のあること、これも無視はできない状態だ、かように思っております。この点が解決しなくて、一つ中国一つ政府、これが理想の形だ——まあ理想じゃなくてこれが当然あるべき形だ、かように私は理解いたしますが、しかし、それまでには、現状はそうなっておらない。そのことをやっぱり理解しないと、ただいまのような事柄にぶつかってくるんです。それをやはり飛び越えた議論では現実に即しない議論になる、かように私思いますので、その辺は御理解をいただきたいと思います。
  136. 大久保直彦

    大久保(直)委員 二十八日の総理答弁も有効でありこの統一見解も有効であるということでございますので、質問するほうも非常にむずかしいわけなんですけれども、そうすると、二十八口に総理が、台湾中華人民共和国領土権がある、まして平和五原則を支持するとおっしゃった発言はどういうことになるわけですか。
  137. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 平和五原則は、これは私ども理解する。そうしてまた二十八日にやりとりをいたしましたその中には、やっぱりただいま申し上げるような精神論的な、あるいは大筋論的なものがちゃんと載っておる、かように私は理解しております。だから、そういう意味からも別に矛盾はしていないんじゃないか、かように思っております。
  138. 大久保直彦

    大久保(直)委員 私は、総理のいわゆる言質をとらまえて総理に云々することが目的ではないわけです。いまどういう統一見解を出そうとも中国とは前向きに交渉する姿勢にあるのだという先ほど総理答弁からしますと、との台湾条項というものについて、永久的にこれが存在するわけではないし、当然将来において検討を加える必要があるという考えを持って何が差しつかえるか、私はかえってふしぎでしょうがないんですけれども、いま日米間でそれが話題になっていて、日本が軽々にこれを取り扱うことはむずかしいということであるならば、二十八日の答弁も、それはああいう御答弁が出てくる必然性といいますか、全くああいう答弁は一言もしてはならない。ましてこういう統一見解で、台湾中華人民共和国領土であるなんという、そういう主張理解するなんということは、全くこれはこういう論議を聞いている国民は何と思うか。非常に理解に苦しんで、その場その場でおざなりの答弁をされているようにしか受け取ることができない、そういうように考えるわけなんですけれども、日台問題の一つの中心である台湾条項につきましては、私はもう一度申し上げますが、将来においてこれは再検討する必要はないんですかと、別に将来という——私はテンスを区切っていつだという、一年先とか二年先とか具体的に申し上げているわけではないのです。しかし、これはいまの総理立場を私推測しますに、答えてもいいことではないですか、将来検討するというんですから。それにこだわられると、私も、なぜそれに固執されるのか、もう一度お考えをお伺いしておきたいと思います。
  139. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは参院でもお答えしたと思いますが、将来のことは、将来そういうこともあるだろう、かように私は思います。だけれども、いま直ちにこの場でそういう議論をすることは、実は実情に合わないだろう、こういうことを申し上げるのでございます。だから長期な見通しからいろいろの御議論は立つでしょう。そういろ問題ではなしに、やはりもっと現実的な、いま非常な神経質になっている際にそういう問題に触れることはいかがか、こういうような意味でございます。
  140. 大久保直彦

    大久保(直)委員 私は二十八日以来の総理答弁を伺っておりまして、何度も申しますように、たいへん高く評価して、きょうはそれが大幅に後退したという認識を持っておるわけでございますけれども、いまの台湾条項に対する総理の御見解を伺っておりますと、それがまた一歩さらに後退をした、そのように、具体論でかなめの問題を詰めてまいりますと、どこまで後退するかわからない。となると二十八日の答弁は一体何なのか。日中国交正常化に努力すると政府統一見解で述べておられますけれども、それは単なることばだけであって、具体的な問題にからむと一歩も前進はできない、こういうことになると思うのです。総理は、それでもなおかつ日中国交正常化に努力するというふうにおっしゃりたいと思うのですけれども、国民はそうは受け取らないと思うんですよ。そういうことば自体、姿勢自体が、やはりとどのつまりは、まことにこれは僭越な言い方でございますけれども佐藤総理の間では日中国交は進まないのだ、こういうふうにしか受け取れない。むしろ私は、そういう点もいろいろ配慮して、将来の問題として台湾条項に再検討という御質問をしたわけなんですけれども、それさえもいまここで論ずることは問題であるということであれば、もう日中問題についてこれ以上御質問申し上げても何も出てこないと思いますので、私は時間の浪費はいたしたくありませんので、これで中国問題については質問を終わりますが、どうか国民を惑わすことなく、日本の国益にのっとって日中問題を真剣に考えて努力されることを要望いたしておきます。この統一見解全く無意味です、それでは。幾らことばのやりとりをしても、また二十八日の答弁関連があるかないかと言ってみたところで、しょせん総理の腹は、最も基本的な問題についてさえ明確な御所見が伺われないとなれば、これ以上論議を進めるわけにはまいりません。  時間もございませんので、簡単に朝鮮問題について、基本的な問題だけお伺いいたしておきたいと思います。  ただいま台湾条項の問題出てまいりましたが、あわせて朝鮮半島の緊張ということはたいへん深刻な議論になっておりますが、私は朝鮮の平和的統一並びに緊張緩和ということについては、当然平和に徹し、平和を守るという総理のお立場からすれば、それは前向きにお考えになっておられると思うのですけれども、朝鮮の南北平和的統一並びに緊張緩和についての総理の御所見を伺っておきたいと思います。
  141. 福田赳夫

    福田国務大臣 朝鮮の南北が平和的に統一されて一つの民族一つ政府、そういうことになりますことは、私はたいへんこれを期待いたしております。しかし現実はどういう状態に動きつつあるかといいますと、三十八度線というものがある。そして南のほうにおきましては非常事態宣言というようなものまで発出いたしまして国民の士気高揚につとめておる、こういう現状でございます。まあ遺憾ながらそういう現状です。ただ一るの望みというものがここに出てきておる。これは南北赤十字社を通ずるところの会談でございます。これなんかがどういうふうな推移をたどりますか。一進一退というような状態でありますが、一進一退の中にも何かこう進みつつあるような感じもするのでありまして、そういうことが実りますると、ここに南北対話の道、つまり大きな緊張緩和というような情勢もあるいは出てくるかもしらぬ、こういうふうに存じておる次第でございますが、私どもは、まあニクソン訪中、これはひとり米中間の問題だけじゃない、アジア全体に緊張緩和をもたらそう、こういう意味合いにおいて大きな意義があった、こういうふうに思いますので、そういう雰囲気を殺さないように、これをはぐくむようにという姿勢で朝鮮半島の事態にも対処していきたい、かように考えております。
  142. 大久保直彦

    大久保(直)委員 目下のところ朝鮮は南北の分裂が固定化された形で事態が進行いたしておりますけれども、この固定状態が永久に長続きはしないであろうと私は思っております。いま外務大臣答弁ありましたように、南北の赤十字の対話が積み重ねられていく、そしてこの固定化された事態がこのまま続くとは考えないという意見を持つわけでございますけれども、この点についての総理大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  143. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま外務大臣お答えしたように、私は、緊張緩和の方向に向かうだろう、またそうあってほしい、これが私の願いでもあります。でありますから、ただいま三十八度線でいろいろ両政府の赤十字で話し合いを続ける、そのことが成功するようにと心から望んでおるような状態でございます。
  144. 大久保直彦

    大久保(直)委員 緊張緩和のためにも、いわゆる南側だけでなくて南北平等の政策をとることがわが国にとっては緊張緩和に進む具体的な方向ではないか、このように思っておりますけれども、この点について何かお考えがあるのなら伺わしていただきたいと思います。
  145. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国は、申し上げるまでもございませんけれども、世界が新しい事態に当面しつつある、こういう認識を持っておるのです。これはひとり朝鮮半島ばかりじゃない。まあ、緊張緩和の勢いというものが出てきておる。そしてその結果脱イデオロギーという考え方の外交姿勢というものが必要に相なってくるのじゃあるまいか、そういうとらえ方をいたしておるわけであります。でありまするから、バングラデシュ承認問題もあるあるいは北ベトナムに対する問題もあります。あるいは日ソ間に友好的な関係を進めようという動きもする、そういうわけです。  そういう中の一環として朝鮮半島の問題もとらえていくわけでございまするけれども、そのとらえ方の態様になりますると、そのそれぞれの相手国、それによって差異が出てくる。これもまた現実的な処理としてやむを得ないところじゃあるまいか、そういうふうに考えておるのです。  北朝鮮といま国交を持ておりません。しかし、これと接着いたしまして三十八度線を境に韓国が存在しておる。韓国と北鮮とはいままあ緊張の現実、これが存在しているということを無視するわけにはまたいかぬ。そういうことをとらえながら、踏まえながらも、北朝鮮との間におきましても何とか友好の関係はこれは進めていきたい、こういう基本的な考え方なんです。  適用となりますると、これはそういう特殊な事態がありまするから、朝鮮半島に臨むわが国姿勢、非常にデリケートでそしてむずかしい問題も多々あります。それを一つ一つそういうような気持で処理していきたいというのが政府姿勢でございます。
  146. 大久保直彦

    大久保(直)委員 具体的な問題について伺いますけれども、南北の緊張緩和は望ましい、そのためには北にも友好的な政策をとれればとりたい、こういったことだろうと思うのですけれども、いま話題になっておりますいわゆる金日成首相の誕生日の祝賀会に朝鮮総連の十三名の方が出発をして祝辞を述べたい、またその再入国の問題がいま世論を呼んでおるわけでございます。こういったことは進めてもいいんではないかと私は思うのですけれども、十三名の代表の方が行かれて、またこっちへ帰ってくる。それを認めてやることが日本の北側に対する、朝鮮民主主義人民共和国に対する一つの前向きの政策となっていくんではないか、そのように思いますが、この点について、法務大臣ですか、お答えをいただきたい。
  147. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 金日成氏の誕生日に行きたいという申請書は出ておりますが、率直に申しまして現段階で、まあ対韓外交から考えまして、それを直ちにわれわれが認めるという段階ではまだない。私もよく気持ちはわかります。しかし、将来はだんだん雪解けムードでありまするからそういう見通しは持っておりますが、これはまだ機が熟しない、こういうふうに考えておるわけであります。
  148. 大久保直彦

    大久保(直)委員 それはまだ検討の段階であって結論が出ておらぬという意味でございますか。
  149. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 正面から誕生日を認めるという現段階ではない、もうすでに私はそういう結論を持っておるわけであります。ただ、韓国と北鮮の関係はだんだん雪解けムードになってくるものだと私思っておりますが、したがってそう遠い将来でなしにそういうことを認めるようなときが来るんじゃないかということを期待いたしております。しかし現在はまだその段階でない、かように考えておるわけです。
  150. 大久保直彦

    大久保(直)委員 一日も早い近い将来にそういう雪解けの状態が来ることを願いまして、その点についてはさらに前向きに善処をされることを要望いたしておきたいと思います。  最後に、時間がありませんので簡単に伺いますが、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国に対する国連でのいろいろな決議がたくさんございます。一九四八年から始まって三十三件、その中には中国非難決議等も含まれておるわけでございますが、総理はことしの年頭の記者会見において、今秋の国連総会においては議題にはならないんではないか、こういう意味の御発言をなさったように私伺っておりますが、ことしの国連総会においては当然この朝鮮諸決議案が国連の議題になる、こういう説も一方ではあるわけでございますけれども、この点についての見通しだけ伺わしておいていただきたい。
  151. 福田赳夫

    福田国務大臣 朝鮮についての国連での決議、これはまあいろいろありますが、一番大きな問題は朝鮮を国連に招請する決議、これをどうするか、こういう問題じゃあるまいか、そういうふうに見ておるのです。それでいままでの動きを見ておりますと、そういう問題は、あるいは議題になるのかというような動きもありまするけれども、ことしでなくて来年の問題かもしらぬという見方もまだありまして、ちょっと帰一した、いま今日この時点での見方というものは出てきておりませんです。しかしいずれにいたしましても、これから国連社会におきまして北朝鮮の問題、朝鮮半島の問題、これは非常に大きな問題になってくる、中国問題に次いでの問題であるというふうに存じまして、わが国といたしましては、国連におけるこの朝鮮半島の問題の扱いをどうするか、これは頭の痛い問題でございまするけれども、十分よく検討いたしまして、誤りなきを期していきたい、こういうふうに考えておるのです。非常に早くてことしの秋の問題ですから、まだ固まった考えは持っておりませんけれども、ぼつぼつ検討を始めなければならぬかな、こういうふうな理解でございます。
  152. 大久保直彦

    大久保(直)委員 私の意見を申し上げますと、当然中国がこの朝鮮諸決議の撤回を国連に提唱するのではないか、このように私は見通しを持っておりますが、ことしの秋になって再び日本が敵視政策といわれるようなこの決議案の提案国になって、そして多数派工作をやるかのごとき態度を続けていれば、先ほど外務大臣の御答弁にも緊張緩和が望ましい、平和統一が望ましいといった政府姿勢、外交姿勢とは、これは相反することになる。決してそういうことにならないように、綿密なる検討と、また態度の決定をしていただきたい、そのことを私は要望いたしておきます。  それから最後に一点だけ。いわゆる一九五〇年ですか、中国非難決議というのがございましたけれども、これは外務大臣参議院やまた沖特で、この非難決議、実際に中華人民共和国国連に復帰をしたわけですから、もう死滅しておるのだ、こういう意味のことは御発言になっておりますけれども、確認と同時に、今後の処理について伺っておきたいと思いますが、これは死滅したということは、当然その決議というのは無効になった、このように理解をしてよろしゅうございますか。
  153. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も法的にどういう立場になるかということにつきましては、どうも法律論に弱いものですから、はっきりしたお答えはできませんけれども、要するに認識といたしましてはあれは死滅したものだ、もうかかわり合う必要はない、そういうふうに考えております。
  154. 大久保直彦

    大久保(直)委員 そうしますと、今秋の国連でもし朝鮮決議案が問題になりましたときに、いままで一括で扱っておりますが、日本政府考え方としては、これは訓令を出されたのかどうかわかりませんけれども、この朝鮮諸決議案の中の中国非難決議というものは、日本が扱う朝鮮問題諸決議案の中にはもう含まれていないのだ、こういうふうに解釈してよろしいでしょうか。
  155. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は参議院で非常に事分けをいたしまして、非難決議の中の中国非難はこれは消えた、死滅した、こういうふうに申し上げた。なぜかならば、中国国連に加入した、国連に加入するという前提は、平和愛好国家であるという判定を国連がしたからこそそういうことになったのだ。したがってもうこの中国非難決議、これはその部分につきましては死滅した、そういうふうに申し上げておるわけであります。
  156. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 大久保君に申し上げます。時間が経過しておりますから簡単に願います。
  157. 大久保直彦

    大久保(直)委員 この朝鮮問題につきましては、これは全く中国問題と非常に密接な関係がある。やはり日本の外交のきわめて重要課題の一つである、私はこのような認識を持っております。そして先ほど外務大臣、いみじくも頭が痛いということをおっしゃいましたが、確かに日本にとりましてはいろいろ複雑な問題をかかえておる。この朝鮮問題というのがことしの秋の国連ではもちろんのこと、これから大きな外交上の国際問題としてのクローズアップがされることであろう、こういうふうに思っておりますが、いままでの日本政府のとってきた態度は、必ずしも緊張緩和どころか、むしろ北側を硬直させるような、そういう方向にあったと思います。また国連招請の問題にしましても、この朝鮮民主主義人民共和国と国連との間のいきさつを知りながら、国連の権威と機能を認めなければ国連には参加をさせない、招請しないというような意見は、この際再検討を必要とする段階に来ておるのではないか。どうか朝鮮問題についての政府姿勢を慎重に、そして朝鮮半島の緊張緩和の方向に、また民族自決の原則からまいりまして、南北の平和的統一が可能のような状態に日本の外交政策は展開されることを要望し、またそれに対する外務大臣並びに総理の御答弁を伺って、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  158. 福田赳夫

    福田国務大臣 朝鮮半島はわが国のほんとうの隣国であります。したがいまして、ここに平和がほんとうに確立されることを念願してやみませんです。そういう立場に基本的には立つ。しかし一方においては南北二つの国に分かれて相争っておるような現実もある。そういうこともまた考えておかなければならぬ。しかし彼此総合いたしまして、何とか朝鮮半島に平和到来ということを念願しつつ、これから朝鮮問題には対処していきたい、かように考えます。
  159. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大久保君のただいま自分の意見を交えてのお尋ねだと思います。私どもも南北朝鮮、これはもう十分話し合いをつけていただいて、そして問題は起こらないように、平和であるように、これを心から願っておる問題でございます。それらの点については、私はそれぞれの方が十分理解されておるだろうと思いますし、ことに日本との関係におきましては南北朝鮮の方々が日本国内に住んでおりますから、それだけに問題は非常に複雑であり、微妙でございます。そういう意味からもこの問題を十分留意しながら、両者の間を刺激しないように、また円満な解決ができるようにしたいものだと思います。先ほどお尋ねになりました北朝鮮人民共和国、この金日成の誕生日、これに出かけて祝辞を述べる、祝意を表する、同時にまた日本に帰りたい。こういうような非常な複雑な状態でございますから、それらの点も勘案しながら両者の間に問題が起こらないように心から願っておる、これが私の考え方であります。これは大久保君と同じようだと思っております。
  160. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて大久保君の質疑は終了いたしました。  次に、安宅常彦君。
  161. 安宅常彦

    ○安宅委員 私はおもに朝鮮問題について政府の所見を聞きたいと思っておったわけですが、先ほどからいわゆる政府統一見解なるものについて黙って聞いておったわけですが、この統一見解について、その質疑を通じて、世界の情勢からいって大きな誤りをおかしそうな、そういう矛盾というものを私なりに考えるわけです。したがって一つだけお聞きしておきたいのでありますが、この間の米中の共同声明で、この内容をしさいに検討してみますというと、アメリカは台湾帰属についてもはや明確な方向を、ないし結論を出している、こういうふうに私は考えるのです。政府はそう思っていないのか、そうでないとするならば、どんな根拠でいかように見ておるのか、こういうことについてちょっとお伺いしてみたい、こう思ったわけです。
  162. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカにおきましてはサンクレメンテ会談におきましても、非常にはっきりと対中国政策を述べております。その一つは、大統領が北京は訪問をいたします、いたしますが、対国民政府の政策はこれを変更いたしません、こういうことです。それから第二は、国民政府に対する軍事上の約束ごと、これは守り抜きます、こういうことを言っておる。私どもは、そういうことで一体米中国交の改善というものができるのだろうかという疑問まで持ったわけでありますが、今度の共同声明を見てみると、やはりその辺は割り切っておりません。つまり、この台湾の問題につきましては、台湾海峡をはさむ両国民の間には、中国一つであるとの主張があることを承知しておる、アメリカとしてはこの主張にあえてチャレンジはいたしません、この問題は中国の国民の間において平和的に解決されることを期待する、こういうことを言っておるわけでありまして、一つ中国論というものをアメリカの主張として展開しておるという理解はいたしておりませんでございます。
  163. 安宅常彦

    ○安宅委員 ただいま外務大臣の話は、若干共同声明に触れている部分もありますけれども、ほとんどアメリカからの説明を受けた内容を主体とした答弁、こういうふうに私受け取ります。その内容の説明についてアメリカ側を信用しておる、こういう趣旨で答弁をされた、こういうふうに理解してようございますか。
  164. 福田赳夫

    福田国務大臣 共同声明を読みましたそのとおりの理解もただいま申し上げたとおりでありますが、なお説明も受けました。説明も、私が共同声明を最初に読んだとおりの理解の説明をいたしておる、こういうことでございます。
  165. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 楢崎君から関連質疑の申し出がありますが、安宅君の持ち時間の範囲内においてこれを許します。楢崎弥之助君。
  166. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外務大臣は、せんだっての本会議におけるわが党勝間田前委員長の同問題に対する質問に対しても、同じような答弁をされました。これは私は外務大臣はうその答弁をしておられると思うのです。なぜならば外務省は、中米共同声明の邦訳で、故意かどうかは知りませんが、誤った訳し方をなされております。それは私は、単なる誤訳では済まされない重要な、これは台湾の地位に関するアメリカ側の認識についての重大な読み違いである、このように思わざるを得ないからであります。もし台湾問題に関する、いわれておるところの米中間の密約みたいなものがもしあるとすれば、そのうちの一つはまさにここにかかっておる。だから私は非常に重要な訳文である、このように思うわけです。私は、アメリカは台湾帰属について、台湾中国の一部であると認めておる。単に中国側が言っているのを認めたのじゃなしに、すなわちアメリカは、台湾帰属未定論から一歩踏み出しておるといわざるを得ません。いまからその個所を申し上げたいと思います。  アメリカ語の本文のほうであります。日本語の邦訳のほうでは外務省はこう訳しておられます。そしてこれを受けて、全新聞もこのような訳を載せておる。そしてあなたはこの訳に基づいて答弁をしておる。いいですか。「米国側は次のように表明した。米国は、台湾海峡の両側のすべての中国人が、中国はただ一つであり、台湾中国の一部分であると主張していることを認める。米国政府は、この立場異議を有しない。」こう訳しておられますが、原文のほうはそうではないですね。いいですか、原文を忠実に訳すれば——これはどなたに聞かれてもいいです。専門家に聞かれてもいい。アメリカはこのように宣言した、これはよろしゅうございます。そして、アメリカが認めたのは、こうです。台湾海峡をはさむ両中国人民が中国一つであると主張しておることを認めた。いいですか。そしてその次は「エンド・ザット」となっている。これから下は一番最初の「アクノレッジ」にかかっておるのですよ。そして、アメリカは台湾中国の一部であることを認めた、こう文脈は明らかになっているのです。いいですか。なぜならば、もしここにある「メンテイン」という中国主張中国人民の主張、これが単に外務省がいうように中国一つである。そして台湾中国の一部であると中国人民が主張しておると外務省のように訳するならば、「エンド・ザット」の「ザット」は要らないはずである。  そこで私は、ここで、関連質問ですから、明確にしておきたい。人民日報に報じられておる中国語の、いわゆる当事者である中国語の、中米共同声明の原文ですね、これはまさに私が指摘しておるようになっております。これは重大な個所ですよ。しかも、「ア・パート・オブ・チャイナ」、チャイナの一部となっておる。ところが国連ではチャイナを代表する政府中華人民共和国政府になっておりますね。中華人民共和国の呼び名は国連ではチャイナになっておる。したがって中華人民共和国領土であるということは明白であります。外務大臣の御見解を伺いたい。
  167. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは私ども見解に間違いはない、こういうことを繰り返して申し上げます。私も多少は英語の理解もできますが、「ザ・ユナイテッド・ステーツ・アクノレッジズ・ザット」、すべての中国人、台湾海峡両側のすべての中国人が、中国一つであると、こう言っていること、それをアクノレッジします、こういうことなんですよ。それ以外のところはありません。何か裏にでもあるようなことをおっしゃいますが、これに書いてあるところにおきましては全然疑義がありませんということをはきっり申し上げます。
  168. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 問題はその次の個所なんですよ。いいですか。「ザ・ユナイテッド・ステーツ・アクノレッジズ・ザット」以下以下、「エンド・ザット」以下以下ですよ。アクノレッジは両方にかかっているのですよ。そうして前段のほうは中国人がそう言っておることを認めた、後段のほうは中国の一部であるということをアメリカ自身が認めた、こうなっておるのです。だれに聞かれてもいいですよ、この訳は。私は相当確かめました、専門家に、これは重大な誤訳ですよ。それが証拠には、さっきも申し上げたとおり、当事者である中国側は、その中国側中国語の正文に基づいて、私が申し上げたとおりになっておるのです。福田外務大臣のこれは重大な責任だと私は思うのです。
  169. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも私もそう英語の大家じゃございませんものですから、言っていることはわかりませんが、なおよくこれは検討してみます。
  170. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は関連質問ですから……。これはもう実に重要な個所です。国際的にも重要な個所である。もしこれが誤訳であれば、私は、外務省はほんとうに重大な責任を持たなくてはならないし、その邦訳に基づいて本会議並びに当委員会答弁をなさった福田外務大臣の責任もまたほんとうに重大だと思いますから、先ほど辻原委員政府統一見解に対する注文について委員長はよく検討するということを約されましたが、あわせてこの問題も委員長において明確にされることを要求いたします。
  171. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この問題については、外務大臣から検討するという話がありましたから、それを待つことにいたします。
  172. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、いまの点は保留をいたしておきます。
  173. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は先ほどから、そういうことについてももちろんでありますけれども中国に対する問題、この統一見解を中心としていろいろ政府の言われておることは、どうも詭弁の連続で、ことばでうまく切り抜けること、こればかりを考える、これは国民の不信というものをますます増大させるだけであります。私どもはこの問題について重大な決意を持っているわけですが、特にそういう意味で私は外務大臣にぜひ確かめておきたいことがある。  この間、小林委員質問に関してあなたは、台湾独立運動の問題については政府部内においてこれに関与したりして、関係したりしている者は一人もいない、たいへん張り切った答弁をいたしましたですね。しかもこれに付随して、外務省の省内に対しても指令を出して、独立運動歓迎をするようなそういう行動や疑わしい行動をやってはならない、こういうふうに言っておるのだ、たいへん明確な答弁をされたのですが、そのとおり絶対おりませんかな、一人も。
  174. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま安宅さんのおっしゃるとおり私は申し上げておるわけでありまして、今日も御質問でありますればそのとおりのおことばを反復いたします。
  175. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は、いろいろ台湾独立運動問題について調査を実はしておったのです。これは政府の要人であるとかないとかいろいろ見解があると思いますし、あるいは外務省の外郭団体になっている分野に対する外務省の金の出し方の問題もいろいろ持っているのですね、おかしいことが行なわれていることについて。しかし、だれかの首をとったり、だれかを非難したり、あるいは一人の高級官僚をどうするとか、こういう結果になりはしないか。これは予算委員会でやる筋合いの問題とはちょっと違うじゃないか。言うなれば、おもしろくないけれども武士の情けだ、黙っていようと思っておったのですよ。しかし、あなたが、外務大臣があまりはっきり張り切っちゃって答えたものですから、これはただおけないと思っているのです。政府部内に一人もいないということになりますと、総理大臣、ほんとうにそうだというならば、外務大臣も、もちろんあなたにも、おった場合、相当責任を負わなければならないと思いますが、どうですか。
  176. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、政府部内に台湾独立運動をやっておるという人があるとは信じておりません。おりませんが、こういうことはありますよ。最近外務省の情報文化局長が、山形県でありましたか、どこかへ講演に行った。その講演の要旨を地方紙に載っけて、その講演の要旨の中に、台湾独立を歓迎するかのごとき言動があったということを、かなり大きく扱っておる。その記事を私は見せてもらいました。そこで情文局長を呼びまして、実際どうなんだ、私は、もしほんとうにそういうことを発言したということであればこの責任を追及するという考えであったのでありますが、情文局長答弁は、私はこういうことを一切申しておりません、どういうことでしょうか、こういうことで、非常に慨嘆をしておった。そういうような状況でありますので、私はその責任は追及いたしませんでございましたけれども、それ、非常に私はこの問題につきましては神経を使っているということだけを申し上げさせていただきます。
  177. 安宅常彦

    ○安宅委員 あなたから先回りしてそういう答弁をした。これは外務省、質問要旨を聞きたいなんてスパイみたいにして来たけれども、おれは言わなかったのだよ。どこから聞いたか知らないけれども。ここに山形新聞という新聞があります。地方紙というふうにあなたは言いましたけれども、地方紙といえども中央紙といえども同じ新聞です。第七十七回山形県勢懇話会というのが開かれたのが昭和四十六年九月の二十五日であります。そのときに、和田さんという外務省情報文化局長が、「米中接近日本の進路」という題目で講演をなさっています。基調は、北京政府——当時こういうことばをあなた方は使いました。私は北京政府なんて使いたくないけれども、あなた方が言うからそう言うのだけれども。巧みな計算をしているのだとか、それから何か非常に悪い印象を与える講演に終始しています。全文が、これは速記録が出ているのです。一面になって出ていますね。ちょこっとした記事じゃないのですよ。その中に、国交回復は慎重にやらなければならない、急いでは国益を害するとまで言ってているのですよ、あなたの部下が。そういう基調の講演の中で一問一答があった。一問一答に入る前に、じゃあ国交回復は慎重にやって、急いでは国益を害するなんということを政府考えておるのかどうか、そこから聞きましょうかね。外務大臣、どうです。急ぐと国益を害しますか。
  178. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ急ぎつつもあせらずという総理の名文句がありますが、私はこれはやはり急がなければならぬ、こういうふうに考えています。しかし、急ぐのあまりミスがあってはならぬとも考えております。
  179. 安宅常彦

    ○安宅委員 それでは、これは質問をした人は佐藤という山形テレビの監査役ですね。この人が、「台湾の今後の帰属は、大陸復帰か独立か。また日本としてはどちらを望むか。」という質問をしておるのです。これに対して和田という人は、「日本としては台湾中国本土と一つでない方が、いろんな意味でいい。」こう言っているのですよ。「現に貿易も九億ドル以上と中国本土より大きいし、」これはつまり台湾は、という意味でしょうね。「投資も数千万ドルに及ぶ。親日感情もある」云々、いろいろ言っております。ただこの人も、おもしろいことに蒋介石をこういうふうに言っていますね。「中国大陸から逃げてきた蒋介石グループの二百万人が」いると言う。「後者によって支配されているが、台湾問題はこれを区別しないでは考えられない。台湾人の自由意思によって中共から独立したいと望むならば、それが一番いい。」こう言っているのです。いいですか。どうなんです、これは。一番いいと言うのですよ、台湾が独立したほうが。
  180. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はその新聞を見まして、まさに私の神経にさわった点はそこなんです。私の神経にさわった点は、そのあなたのいま読み上げた点なんです。そこで和田情文局長を呼びまして、こういう内容の話をしたのかと言ったら、これはとんでもない話だ、私はさような話は一切しておりません、非常に真実味のあふれる答えでありまして、私の心証といたしましてはさような話をしたとは思えない。そこで、私もえらい意気込みを持ちましてわが文化局長を尋問したのですが、まあその答えが真実であろうという理解を持った次第でございます。
  181. 安宅常彦

    ○安宅委員 しかも最後にこういうことを言っているのですね。蒋介石が圧迫した、台湾人を圧迫してきたと言うのですね。との人たちと一緒になって、台湾の全部の、つまり逃げてきた自分のグループとそれから台湾に本来住んでいる人との一緒になった台湾のボスになろうなどということは、蒋介石としては口が裂けても言ったことがないし、言えない立場にあるからだ。「独立をしなければ国共合作しかない。」そんなことは考えてないのだ。だから台湾独立の時期はわからないけれども、「ほかに道はないと思う。」こう言っておるのですよ。とんでもない発言をしておるのですよ、これは私は、あなたが部下をかばうのはいいと思います、その気持ちだけは。しかし、山形新聞というのは、あなた地方紙なんて言ったけれども、あまり山形新聞と私は仲いいほうじゃないけれども、とにかく十万部以上も発行しておる山形県で一番大きい新聞ですよ。これは大新聞の部類に入るのですよ。これは堂々とこういうふうに見出しまでちゃんとつけてある。「望ましい台湾独立」、こういうことばで見出しをつけた以上、責任があると思いますね。これはやはり両方とも呼んできて、言ったか言わないかはっきりしてもらわなければ、あなたは、本人から聞いたら言わないと言いましたので言わないと思いますなんと言って私をごまかそうたって、それはできない相談じゃないですかね。どうなんです。
  182. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は安宅さんをだまかそうなんて、そんなけちな考えは持っておりません。私がだまされたら、これはたいへんな問題なんです。私は日中問題というものを非常に慎重に扱っておるのです。さればこそ、私は外務省の省員に対しましても、この独立運動、これに加担するというような動きがもしありとするならば、これを阻止せよ、こういうふうにまで言っておるのであります。その私がその記事を見まして非常に驚きまして、本人を呼んでみたところ、さようなことはやっておらぬ、そういうことで、その切々たる説明を伺いまして、私はその説明が真実であろう、こういうふうに存じた次第でございますから、さようひとつ御了承願います。
  183. 安宅常彦

    ○安宅委員 これはこの問題ばかりやっていた日には朝鮮問題がやれなくなるから、あまりわあわあ書いたくないけれども、だけれどもどうなんですか。これはその新聞では、当日の「速記抄録である。」、全訳ではないと書いてあります、抄録だと。つまり抄ですな。それを明確にした上で記事に載せているのですよ。言わないなんていうのはおかしいです。それと似たようなことを言ったかもしれないけれども、誤解を与えたかもしれませんなんというのだったら、また少しはかわいいところもあるけれども、言わないとは何だ。そんなばかなことがありますか。本人に言ったか言わないかはっきりしてもらわなければ……。
  184. 福田赳夫

    福田国務大臣 そこで私はなお、それは速記はあるのか、またテープでもとっておりますかということを聞かしたのですが、速記もありません。またテープもありませんということで、和田局長の言うことを信ずるほかはなかった、こういうことです。
  185. 安宅常彦

    ○安宅委員 速記があるかテープがあるか、それは本人に聞いたってわかるものかね。本人がとっておるのではなくて、山形新聞がとっておるのでしょう。山形新聞はあなたに対して、速記もテープもとっておりませんと、それは山形新聞からの回等ですか。
  186. 福田赳夫

    福田国務大臣 本人がそう説明しておるのです。本人は情報文化局長なんです。そこで山形新聞に聞きますれば、そういうものがあれば見せていただけるような立場にある人なんでありますが、その本人がそうおっしゃっておる、それを私は信用しておる、こういうことでございます。
  187. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは下克上もいいところだね。総理答弁外務大臣がけちをつける。外務大臣はまた官僚にだまされている。これは佐藤政府なんというのではなくて、室町幕府の最末期みたいなものです。こんなばかなことがありますかね。  委員長、私はこの問題で時間をとってはいやだから、これはどうですか、本人からしか聞いてないそうですから、山形新聞にも連絡をとって一そうして速記がどうなっておるか、その記事は責任あるかものかどうか、はっきりさしてもらおうではないか。あなたのほうでひとつこのことについて措置をしてもらう、そしてその回答というものを明らかにしてもらう、こういうことにしていただきたいと思うのです。
  188. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 その問題については、理事会で相談することにいたします。
  189. 安宅常彦

    ○安宅委員 わかりました。  それでは、どうもこういうペテンばかり多いような私、印象を深くしておるものですから非常に質問しにくいのですけれども、社会主義諸国に対する今日の政府の外交、特に私は当面貿易外交といいますか、貿易の方針についてどうもうろうろしておるような印象を最近受けているわけです。貿易の問題については、近隣諸国とも全部平和に徹して、互恵平等のそういう貿易をやるのだということを総理は盛んに言っておられるわけでありますが、政府の方針について、総理から一言だけ伺っておきたいと思います。貿易に限ってけっこうです。
  190. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本は、貿易をやらなければ日本の国の経済は立っていかない。ことに資源に恵まれない国でございますから、どうしても貿易をやらなければならない。そのときに、世界各国のイデオロギーやまた主張等を勘案して一、二にする、区別をつけるというようなことがあると、それは日本の貿易を伸展さすわけにはまいりませんから、そういう意味でイデオロギーやまた政治形態が違っておりましても、あらゆる国と件よくして、そうして貿易を拡大していく、こういう考え方でただいまやっております。もちろんその間におきましても、ある程度の差異というか制限がある、これはもう御承知のとおりであります。そういうものはございますが、全般的に申せば区別をしない、こういうのがたてまえでございます。
  191. 安宅常彦

    ○安宅委員 ある程度の差異があるそうですが、特に朝鮮民主主義人民共和国——先ほど総理は何か北朝鮮人民共和国とか言いましたけれども、これはやはり承認していない国といえども国名くらいは間違わないでやってください。朝鮮民主主義人民共和国に対する貿易の方針というのは、他の社会主義国との間にある程度どころか、ほとんどそっぽを向いたまま、こういうふうに私どもは印象を受けておるのであります。特に私どもは、この間朝鮮民主主義人民共和国に行ってまいりました。いろいろ政府といいますか政府筋といいますか、あるいは自民党のほうからですか、自由民主党所属の衆議院議員が行くことについて、私から言わせるならばたいへんいろいろな妨害工作がありましたが、せっかく善隣友好のために行こう、こう思っていることを、あなた方はあらゆる術策を用いて妨害しようなどということを考えておることは、いまの基本方針からいって大きくはずれているのではないかと思うのです。人間というものはお互い、相見互いということがありまして、たとえば「よど号事件」のときなどは、たいへん人道的で国際慣例にかなったそういう措置を朝鮮側はやりました。総理も本会議でありましたか、感謝をしているということをことばでは言いました。ところがあのときでさえも、私個人の話になって申しわけないのですけれども、運輸大臣以下内閣官房長官あるいは防衛庁長官あたりまで、もし「よど号」そのもの、あるいは繰縦士、スチュワーデス、こういう皆さんが帰ってこないなどというような、抑留されるというふうなことになった場合には、ぜひあなたがひとつこの際行ってもらうような事態になるかもしれぬけれども、よろしく頼むなどと言ってあのときはたいへんあわてておったのですよ。そうしたら、さっと帰してよこしたら、あとあいさつ一つもないのですな。何にもないのですよ。そういうようなやり方、これは私個人でなくて朝鮮に対してもそうじゃないのですか。国会で感謝していますといったってだめですよ。これはやはりいろいろな道を通じ、政府としてやれないとするならば、何らかの手段を講じても朝鮮の措置に対して感謝の意を表するくらいは当然だろうし、朝鮮側は、おかしな国じゃないか、こう思うのじゃないでしょうか。  あるいはまた、その後保利さんの書簡を持って美濃部さんが中国に行きました。あれは、中国に行く方途等については、まさかその書簡などああいうものを持っているとは思わないから、これは朝鮮の当局がいろいろ橋渡しをしてくれたということは皆さん先刻御承知のとおり。これこそ御承知のとおり。それが、安宅君差異あるのは御承知だと思いますがなんと言って、あれは私は承知していないけれども、これは御承知のとおりなんです。ところが美濃部さんに対しては、本来朝鮮側からの招待なんです。それを中国まで保利さんの手紙を持っていけるようなことになったのは、言うなれば朝鮮の橋渡しじゃないですか。  「よど号」もしかり、そういうものもしかり、とにかくみんな仲よくなれるようなそういう交流をしたほうがいいという一貫した方針があればこそ、皆さんの手紙はとにかく北京までは届いたことは届いたのですね。こういうことについてみんな仲よくしようとしているときに、あなたのほうは、けしからぬ、けしからぬ、こういうことだけで、北朝鮮はけしからぬ、だから技術者の入国は認めないとか、あるいはお墓参りもやらないとかいろいろなことを言って、そうしてぐずぐず言っているのが日本側じゃないでしょうか。こういうのは善隣友好、そうしてほかの国とも仲よくしていかなければならない、平和に徹する、そうして貿易立国だから貿易はしなければならない方針などという方針とは、たいへん違う方針じゃないでしょうか。どうですか、外務大臣。どうです、いまのことについて。あなたは手紙をやったほうでしょう。
  192. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は先ほどからも申し上げておりますとおり、朝鮮半島はわが国の隣でありますから、この朝鮮半島の平和ということにつきましては、深くこれを希望し、期待をしておるわけなんです。しかし、現実は必ずしもそう動いていないものですから、そこに隣国日本とするとむずかしいいろいろな問題があるわけです。そこで、ニクソン訪中というようなことがあり、極東の情勢の緩和というようなこともありますから、そういうことも踏んまえて、北との関係につきましても対処していかなければならぬという考え方は持っております。  ただ、現実の問題として、三十八度線で境にしておる韓国との間にわが国国交正常化をしておるという問題があり、そこで非常事態宣言が行なわれておるということもありますものですから、そこで北との接触、これが非常にむずかしくなる、こういうのでありますが、ただいま申し上げましたようないろいろな情勢を踏んまえながら、弾力的なかまえで一歩一歩改善をいたしていきたいというのがただいまの私の考えでございます。
  193. 安宅常彦

    ○安宅委員 私が言うのは、そんなことを聞いていないのですよ。「よど号」事件で世話になっているし、保利書簡は美濃部さんとあなたが協議して持っていった手紙でしょう。そういうことまでしてくれているのに、武士は相見互いというのですか、人間というのは持ちつ持たれつじゃないか、そういうことは人間としてどうなんですかと聞いておるのです。それをそっぽを向いているようなことばっかりやっている、これは間違いではないかと、簡単な義理人情論みたいなことを聞いたのに、あなたは米中会談までよけいなことを言うから時間食うのですよ。そういうことは当然じゃないかと、ただそう言っている、人間として。どうですか。そういうものじゃないですか。
  194. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま中国との間では、私は日中国交正常化のための政府会談を始めたい、こういうふうに念願をしているのです。そのために保利自民党幹事長が美濃部さんに一つのお役目をお願いした。私は、保利幹事長のそういう考え方、これは日中関係打開の非常な熱意のあらわれである、こういうふうに存じまして、高くこれを評価しております。
  195. 安宅常彦

    ○安宅委員 そうすると、保利さんの話ばかりですが、あなたはあの問題で全然関知していないのですか。相談を受けていなかったのですか。
  196. 福田赳夫

    福田国務大臣 相談を受けたというほどのことはありませんけれども、事前に、こういう考え方をしておるということは聞いております。
  197. 安宅常彦

    ○安宅委員 そんなこと言ったってだめですよ。あなたにたいへん近い人がいろいろ画策していますから、これはみんな知っていますね。それはそれとして、いいでしょう。  それでは一つ一つ、貿易を中心とした問題でもいいのですが、外交発展のための基礎になるような人事の交流その他の問題について聞いていきたいと思います。  法務大臣にお伺いいたしますが、在日朝鮮人がもともと日本にいるということは、戦前の日本の植民地政策というか、植民地支配のもとで、戦争のためにあるいは労働力として拉致同然に引っぱられてきた。これは中国の問題もこの前出ましたが、大体似たような立場の人が多いのですね。そして日本に居住せざるを得なくなった、こういう人が多いのですね。これはあなたのほうでも知っているはずなんです。この立場というものを理解することがたいへん重要だ、こう思うのですが、そういう立場に立ちますと、かねて政府も在日朝鮮人の要求もあって、数年前、これはごまするわけじゃないのですけれども、いまの官房長官の竹下さんが副長官のときでありましたが、相当私どもも折衝いたしました。二名の人を祖国に往来させることから始まって、去年は逐次増加して十八名にふやしました。しかし本来、居住地選択の自由、海外渡航の自由、こういうことは世界人権宣言で明らかになっているとおりであって、当然の朝鮮人の権利なんですよ。政府のお恵みで少しずつ許可してもらうなんという筋合いのもので本来はないのです。ですから、希望者というのは数千名にのぼっておるということは、法務省の当局はもう先刻承知のとおりなんですね。これを考えた場合、法務大臣、どうですか。この祖国への自由往来という問題について、この人数を飛躍的に増加させる、回数も増そう、こういうことについて考えておられるかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  198. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 在留外国人については、いわゆる渡航の自由というような問題ではなしに、再入国の問題ということがあるわけで、そういう点におきましては、あくまで自由裁量の権利を持っておるというのが国際法の実態であります。そういう点から考えますと、ただいまのわれわれのやっておりますことについての筋は、道理をはずれておるわけではないと思います。ただ、あなたのおっしゃるように、従来のいきさつから考えて、先ほどお話しのような北朝鮮の出身の方についても、できるだけ人道上の問題については考えていかなければならぬというようなことで、先ほど福田君からもお話がありましたように、一歩一歩進んでいくというような考え方のもとに昨年もやったようなことで、将来につきましても、そういうような人道上の問題につきましてはできるだけ考えていきたい。ただ、われわれが期待しておりましたような韓国なり朝鮮との関係が進行していない。そういうような関係からいたしまして、現在の段階においては原則をすっかり変えるというようなところまで至たっていない、こういう判断をいたしておるのであります。そういう点につきましては今後とも考えていきたい、かように思っております。
  199. 安宅常彦

    ○安宅委員 一歩一歩はやるけれども、飛躍的にはちょっと困るというふうな意味で、原則は曲げられない。その原則は何か韓国の影響だみたいな答弁ですが、大体そういうふうに受け取っていいのですか。
  200. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 朝鮮との関係でわれわれ得るところがありましても、従来から友好を保っておるところと失うところが多いということになりますと、国全体としては考えていかなければなりませんから、そういう点も考慮しながら、国全体としてどれが一番正しいか、そのときの事情に一番即応しておるか、こういう考え方を持っておるわけです。
  201. 安宅常彦

    ○安宅委員 ただ考えてもらいたいのは、中国国連における地位の回復をする前であっても、あなたのほうは華僑の皆さんに対しては、自分の国に行って帰るだけではなくて、たとえばアメリカとかフランスとか、みずからの祖国以外のところにも出してやって再入国を認めておるのですよ。たとえば、これは文部大臣知っておるでしょうか、華僑の人でフランスに留学をしておる人もおるはずですが、これは法務省が出国のことを扱っていますから、あなたのほうに聞きましょう。そういうことは法務大臣知っているわけですね。それから国慶節に代表を送りたい。国慶節というのは、日本でいえば建国記念日みたいなものですね。相当政治的な部分も私は入っていると思うのですが、あなたのほうでは、これは政治的な問題ではない、人道問題だというので、国慶節にも参加させて、また再入国させている。最近は子供の修学旅行も許可している。こういう状態ですね。それからベトナム民主共和国からは、この間労働者代表が入国しましたね。それから、さきには、何年か前に芸術団も入っています。アメリカと爆撃だ何だといって徹底的に戦っているのがベトナム民主共和国ですね。そういうところをあなたのほうはどんどん入れるけれども、なぜ、いわゆる韓国から何か言われそうだからというだけで、国益の問題を考えてというのだけれども、朝鮮民主主義人民共和国の公民に対してだけこういう差をつけなければならないのか。これはどうしても私は理解に苦しむのですが、どうなんですか。
  202. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 第三国に留学するというようなことは、これはやはり旅券が要るわけであります。そういう旅券が、本国の旅券が得られるということであれば、私のほうは出すことについてやぶさかではありません。また、先ほど来申しておりますように、一方に非常なマイナスがあるということがなければ、できるだけ交流をするということが国益に合しておる、私はかように考えておるわけです。
  203. 安宅常彦

    ○安宅委員 それでは、たとえば今度は、やはり法務大臣にお願いしたいのですが、スポーツ関係者であるとか芸術団であるとか日本に来たい、こういう問題で具体的な話があちこちに出ております。これは当然あなたのほうでも、たとえば祖国への自由往来は、飛躍的とは言えないけれども、一歩一歩増加していきたいという気持ちが基礎になっておるようでありますから、これは当然具体的な話があればいいのではないか、そういうふうに考えるのですがどうですか。  特に、ちょっと法務大臣の前に、失礼ですが、文部大臣、具体的なスポーツの問題について、あなたのほうで知っていることがあると思いますが、こういう具体的な話があった場合には文部省としては、スポーツ関係はあなたのほうの管轄ですが、異議ないわけですね。
  204. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お答えいたします。  スポーツだとか芸術だとかというものに、私は国境はないと思っております。ただ問題は、私のところへも二、三そういうあれがあります。ただ、国交正常化しておりませんので、国として芸術の交歓をするとか体育の交歓をするとかいうことは、現実の問題としてはできないわけでありますが、団体が主催して、しかもスポーツにつきましては、それぞれの単位団体がございまして、その単位団体が承認するということであるならば、法務省さえ差しつかえなければ、私のほうにはもちろん異議はございません。
  205. 安宅常彦

    ○安宅委員 法務大臣、いかがでしょうか。
  206. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 先ほど申しましたように、人道上の問題以外にも、学術、スポーツ、そういうことの交流についても、われわれはできることならやりたいと思っております。  ただ、現在は御承知のように、国際的なスポーツあるいは国際的な学術会議、そういうものだけを許可しておるのであります。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕 卒直に言いますと、どこにうまい線が引けるかというようなことでいろいろわれわれも苦慮いたしておるわけでありますが、できることならそういう交流はやっていきたいという気持ちは持っておるわけです。
  207. 安宅常彦

    ○安宅委員 法務大臣、ちょっと認識について違ってはいないかと思うのですよ。国際的なスポーツ、たとえばオリンピックみたいなことを言っていると思うのですが、あれは日本で主催するのじゃないのですよ。国際団体が主催するので、日本はただ会場になっただけの話で、それを法務大臣がどうのこうのと言うのじゃなくて、それを呼ぶのはあたりまえの話で、そんなことを言っているのじゃないです。それは日本の中で日本が主体的にやるようなものを言っているわけですよ。それをオリンピックで呼んだのまで、あれは人数に数えられたら困りますからね。
  208. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 おっしゃるように、オリンピックとかあるいは学術会議でも多数国間のあれでやっておるわけであります。今度は二国間だけのということになりますと、またいろいろ差しさわりがある。あるいはまたどういうところに線を引いていくか、そういうような点でいろいろと苦慮いたしておるわけであります。
  209. 安宅常彦

    ○安宅委員 そんな苦慮することはないですよ。韓国あたりからわあわあ言われて一々腰を抜かしていたのでは、そんな内政干渉を受けて、日本は何か大国だなんていばっているけれども、一々おろおろしているんじゃ、かっこうつかないのじゃないですか。かっこう悪いですよ。かっこうよくないです、少なくとも。こういうことははっきりしてやっていただきたいと思います。考慮はしていると言うのですから、あなたの答弁はたいへんいい方向の答弁だと思って、私は先に進ましていただきたいと思います。  それから、外務大臣にお伺いいたしますが、私ども朝鮮に行っておる間、あなたのほうの外務省筋から出ている記者会見の新聞記事というのは、まことに行った私どもに対して敵視的な発表が多いですね。ただ政府全般として、ずっとたんねんに見てみましたら、一月二十四日の各新聞に出ておりますが、この中で、朝鮮に行くことは、あの人は政府代表で行ったのでないからそんなことはいい、ただし新聞記者の関係では、朝鮮側も何回も新聞記者を受け入れているのだから、当然新聞記者の交換は断われないと思う、このことは順調に発展をしていくのではないだろうかという新聞記事、たった一つ、たいへんいい、ほのぼのとした政府発表一つあるのです。こういうことは、当然政府から出た見解でありますから間違いないことだと思いますが、美濃部さんにも少し前向きの約束をあなたは前にしたそうですし、外務大臣どうです、そういう理解でいいですか。
  210. 福田赳夫

    福田国務大臣 北との間の接触、これにつきましては、いま法務大臣からお答えがありましたが、私も前向きにしていきたいと思っております。何といってもやはり文化、スポーツ、そういうものの交流、これから手をつけるというか、考えていく姿勢かと思っております。そういう問題については、前向きでケース・バイ・ケースというふうに考えております。  さて、いま問題の新聞社の交流の問題、これにつきましては、私は一つ前提をおきたいのです。それは言論、報道の自由ということです。これを相互に確認し合うということが大事じゃないか、そういうふうに思います。現に、日本中国との間の記者交流はかなり活発になっておりますけれども、そういうルールがある。まだ朝鮮人民共和国との間におきましては、そういうルールもできておらないので、何とかその辺からほぐしておく必要があるのではあるまいか、こういうふうに考えておりますが、とにかく、美濃部さんがこの前ピョンヤンに行かれた、あのときも美濃部さんとも話をしましたが、そうかたくなな考えは持っておりません。
  211. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは外務省筋の発表ではないのですよ。私はきょう何も言いませんけれども総理大臣、何か前提があるとか何か言われておりますが、政府発表は、この新聞記事が山形新聞と同じように、あなた方発表したものの責任を持つというならば——持たないというなら別ですよ。新聞記者交換については、朝鮮側が受け入れているのだから、当然それは私らは断われない、発展するだろうというあの新聞記事はそのとおりだ、原則としてそのとおりだ、こういうふうに総理はお考えですか。
  212. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この新聞社の交換、これはケース・バイ・ケースで考えるよりほかに方法はないのじゃないですか。ただいまおそらく「赤旗」の記者は常駐しているだろうと思いますけれども、しかし、やっぱりそれで直ちにというわけにかもいないです。だから、やっぱりケース・バイ・ケースで、実態に合うように考えるべきじゃないかと思います。
  213. 安宅常彦

    ○安宅委員 そうすると、「赤旗」はいいけれども、ほかのものはケース・バイ・ケースというのは、あべこべじゃないですかね。どうなんですか。普通のここにおられる新聞社の記者の諸君、いっぱいおりますよ。そうするとこの人たち、何といいますか、政党の機関紙とは違った、いわゆる全般的なそういう報道をしておるマスコミ人なわけですね。それがケース・バイ・ケースだというのはおかしいのじゃないですか。どうですか。
  214. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 「赤旗」の記者は朝鮮に行っておる、かように私思うのですよ。だからこちらへ朝鮮の記者を入れろ、こう言われても、これはすぐはできない、こういうことなんです。
  215. 安宅常彦

    ○安宅委員 これもおかしな論理だけれども、実際はそうだということの答弁だと思っておきますが、いままでは朝日の編集局長さん、それから読売の幹部の人、あるいは共同通信のえらい記者の人、それから私どもと同行していった記者の人、全部向こうでは受け入れているわけですね。こっちのほうはだめだというのは、これも少し片手落ちじゃないか。二十四日の政府発表というのはたいへんいい発表だと思っておったのですが、新聞記事を読みますか。!それは読む時間ないから、私は率直にあなたの原則の発言だけは聞いておきたい、ただこれだけなんです。当然そうなるのがあたりまえじゃないか、原則としては常識じゃないか、こういうだけなんです。
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまお話ししたように、ケース・バイ・ケースです。
  217. 安宅常彦

    ○安宅委員 ケース・バイ・ケースの内容については、私はあとで一括して聞きますよ。  それでは次に入りますが、私ども日朝友好促進議員連盟というものをつくっております。康長短という対外文化連絡協会の委員長さん、これは朝鮮における任務は皆さん御存じだと思いますが、私どもはこの人を招待している。美濃部さんもその前に招待をなさったのですね。これはやはりいろいろあると思うのですよ。招待をして具体的にいつごろおいでになるかということも言わなければならない。こういうときに、政府が許可しなければ公開論争しましょうなんて、私は美濃部さんの言うようなことは言いません。なぜかならば、政府とけんかしなければならないときには別のところで幾らでもしますが、人を呼んでおいて公開論争しましょうなんというのは、私の感覚ではちょっとおかしいじゃないかという若干の気持ちもあるものですから、そういうことをいたしませんけれども、たとえばいまの新聞記者の問題についても、「赤旗」をやっておるからこっちにもよこせというのでは理屈が通らないと総理が言いましたが、私どもが超党派で結成している国会議員の連盟で——あなたのほうは二百九十九名今日おられるそうですけれども、われわれの日朝友好促進議員連盟も大体そんなところですよ。やはり三百名になるのはたいへんだなと私も思います。そういう人々が与野党全部で身元の引き受けをする、こういうような立場に立ったときは——これは政府が迎えるわけじゃないのです。そういう立場なら、入国は認めるということは当然やってもいいんじゃないか。国会議員が二百数十名、三百人近くも身元引き受け人を引き受けたということになれば、当然それは招待をすることはいいじゃないかということになるのじゃないかと思うのですけれども、どうですか。
  218. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのは、常駐するということじゃなくて、日本に招待する、こういうことですね。これは私、ケース・バイ・ケースでも積極的に考うべきことだ、かように思います。
  219. 安宅常彦

    ○安宅委員 それでは法務大臣に今度また聞きますけれども、数年前朝鮮民主主義人民共和国の創建二十周年記念というのがありました。そのときに、記念をするための在日朝鮮人の祝賀団を送りたい、そうしてまた再入国を許可してもらいたいという要請があったのに対して、政府がそれを許可しなかったために、これは裁判ざたになりました。政府が被告になって、一審、二審とも政府側が敗訴しています。ただ、最高裁に行ったところが、二年も過ぎたのだからもう実効がないだろう、最高裁のおじいさん方がぱっと逃げたというのでしょうか、非常に悪い言い方かもしれませんが、そういうことになって終わりになっているのです。こういう問題は、国慶節の問題もさっき例にとりましたし、いろいろありますが、裁判だゴバンだといってけんかをして、裁判ざたにまでして争う筋合いのものなんでしょうか。私は原則としてそういうものではないと思いますが、法務大臣、どういうものでしょう。
  220. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 裁判ざたは望ましいことはありませんが、あの裁判を見ますと、第一点は、とにかく現在の在留朝鮮人の方を日本人と同様海外旅行だと、こういうふうに考えておるところに、構成上の問題として難点があると思います。やはり再入国の許可と申しておりますが、要するに再入国の問題は単なる海外旅行ではなしに、やはり再入国、すなわち入国というものであって、それは国の自由裁量によるべきものだ、こういう筋論が一つあります。  それからまた、中に公共の福祉の問題が争われております。しかし、対韓外交あるいは国内のいろいろ管理上の問題は、公共の福祉に重大なる影響がある、こういうことで争ってきておるのでありまして、その根本の問題については、私は、現在法務省としてはとらなければならぬ態度だ、かように思っております。
  221. 安宅常彦

    ○安宅委員 断わっておきますが、あの判決は、これは一審、二審とも自由裁量の範囲ではないという判決が出ているのですよ。それをあなた、最高裁は期限が来たからもう実効がないといってほんとうは逃げたのですよ。三審のうち一審、二審とも政府が負けたというのを、そうがんばらなくてもいいじゃないですか。内容をきょう言えば、時間がどんどんたちますから私は言いませんけれども、原則としては、こういうものは裁判で争う筋合いのものではないということだけおっしゃったから、それでいいとしておきます。  ただ、期限がないのがあるのですよ。たとえば私が朝鮮人だとしますね。私のおじいさんがあっちにいる。とても病気が悪くなって、ぜひむすこを一ぺん見たいというので行きたい。それから奥さんだけが先に帰っていった人も私の友だちにおる。こういう人はぜひだんなの顔を見たい、そのうち来るだろうと思っておったがなかなか来れないようだというので、行きたいと要請をした。あるいはいろいろ個人的な理由があると思うのですね。そういう、さっき祖国へ行ってみて再入国をしたいという人々が数千人の希望者があると私、言いましたが、そういう人々が、一つ一つ事例をとらえて、創建の記念日であるとかそういう期限を切らないで、裁判にばんと訴えられたら・あなた方は全部負けますよ、法務大臣。これは自由裁量権でケース・バイ・ケースかもしれぬけれども、そういうときには許すことにならざるを符ないじゃないですか。どうですか、理論的にはそうでしょう。
  222. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ただいまおっしゃるとおりの点がありまするから、われわれは人道上の問題については考えていき、また人道上の問題である限りにおいて、ケース・バーイ・ケースで個人的にも、認めておるというのが現状であります。
  223. 安宅常彦

    ○安宅委員 これはどうも法務省のどなたかが、法務大臣こう答えなさいとおっしゃったような答弁ですな。副総理格のあなたは、もっと良識のある、風格の高い答弁があるものと思って私、期待しておったのでありますが、ある一定の好意ある答弁がありましたから、私はあとでまたまとめてお伺いいたしますけれども、次に進ましていただきます。  次に、貿易の問題でありますけれども先ほど総理から朝鮮に対する貿易の方針ということを言われましたから、この問題についてひとつ通産大臣に伺いたいのですが、朝鮮との貿易に関して輸出入の許可申請ですね、件数にして幾ら、金額にしてどれくらい通産省には来ていますか。
  224. 田中角榮

    ○田中国務大臣 昨年度の北鮮との交流は、貿易量におきまして五千九百万ドルでございます。現在はだんだん伸びております。いま出ておりますのは、二百六十四万ドル、二百八十六万ドル、百二十四万ドルというような三つばかりが出ております。
  225. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は件数と総額を聞いておるのですが……。
  226. 田中角榮

    ○田中国務大臣 延べ払いでございますか。
  227. 安宅常彦

    ○安宅委員 延べ払いではなくて、これは三カ月以内に支払いが確定するものは、許可申請が要らないと思うのですが、普通延べ払いでなくとも——いま延べ払いだけだったらわかりました。全部の輸出入許可申請がどれくらい出ているかということです。三カ月以上のものは、全部あなたのほうで許可申請を出さしているはずですよ。
  228. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いま出ておるのをこまかくはわかりませんが、いままでの、先ほどお答えいたしましたように、六八年、六九年、七〇年、七一年、こう申し上げますと、金額では、六八年が、輸出が二千百万ドル、輸入が三千四百万ドル、それから六九年は、輸出が二千四百万ドル、輸入が三千二百万ドル、七〇年は、輸出が二千三百万ドル、輸入が三千四百万ドル、先ほど申し上げたとおり、昨年は五千九百万ドルでございます。  いま出ておるこまかい問題は、件数が多いのでわかりませんが、延べ払いとして出ておりますものが、先ほど申し上げた三件である。年間を通じて五千九百万ドルということでございましたから、ことしは多くなる、一億ドルくらいになるのではないかという感じでおります。
  229. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは私の質問をはき違えておるのですね。そうじゃなくて、ことしの現在の段階でどれくらい輸出入の申請が出ておるか、ただそれだけなんですよ。そんなのは実績だ。
  230. 田中角榮

    ○田中国務大臣 現在出ております数字は、まだわかっておりませんということを先ほど明確に申し上げておるわけであります。  それから……
  231. 安宅常彦

    ○安宅委員 わかりました。それだったらいいです。これはわかっていないというのは通産省の統計おかしいですね。まあいいですよ。そういう態度だから、あんたらの通産省のほうもまた。大臣がわかっていないならしようがないが、そういうことはちゃんと前に言っているのだ、ぼくは。  それじゃ聞きますけれども、少なくともただいま大臣が言ったように、ことしは異常な増加の申請書が来ているはずですよ。いままでと比較してたいへん増加しているはずです。各商社、メーカーともたいへんな異常な熱意を示している。通産省のあるお役人さん、これはだれかと名前は言いませんけれども、聞いたのですけれども、もう何とかしなければならない、これはいままでの方針を大きく転換して、貿易増進の方向に行かなければならないと、こう言っておるのですが、どうなんですかね、通産省の方針は。
  232. 田中角榮

    ○田中国務大臣 件数はいま調べてからお答えをいたしますが、昨年度の一年間を通じて、往復五千九百万ドルというのに、いま三月の初めでございますが、金額において三千万ドル程度の要求がございます。
  233. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは、だから数倍の輸出の希望といいますか、許可申請が出ている。これはことしの年度末になったらたいへんなものになるだろう、こういうことははきっり言えると思いますね、七二年を通じて言うならば。  それで外務大臣にお聞きしますが、先ほどちょっと私、皮肉を言いましたが、私どもが朝鮮に行っておる間の新聞、たんねんに読みましたが、ほとんど経済界が韓国から乗りかえることはあるはずがない、したがって、その貿易の問題についてもあるいは輸銀の使用などについても、これは私どもはそう重く考える必要はない、こういう発表を何回もやっておるのですね。あなた御自身が一月三十一日の記者会見で、外務省筋ということで発表しておりますが、御本人だそうです。私はある人から聞いたんですが、外務大臣の希望で、外務大臣の記者会見でなくて外務省筋としてくださいと、あなたの希望で新聞社は筋と書いたそうでありますが、これは二月一日ないし二日の新聞にみな出ておりますが、これには、たとえば技術者入国なんかだめだ、こういうふうに言っておるのです。いままでは、政治的な交流はだめ、商売人のほうはケース・バイ・ケース、それから芸術やスポーツ、そういうものはできるだけ前向きで、こういうふうになっていたのですよ。ところが、私ども朝鮮に行ってきたとたんに、もう政治家は、先ほど総理が言ったように前向きになっちゃったのですよ。そうしてスポーツも芸術も、これもある程度いいだろうという原則が話し合われておるのです。今度は輸出入のときにどうしても必要な技術者、物を買うときに技術者が来て見たい。その技術者の入国だけはだめだなどというふうに急に変わったのは、どういうわけですかね、外務大臣
  234. 福田赳夫

    福田国務大臣 急に変わったと言われますと……。いままでは朝鮮民主主義人民共和国との間の交流についてはかなり窮屈な考え方をとっておったのです。しかしそうばかりもしておられない。そこで先ほども申し上げましたが、文化またスポーツ、そういうような問題につきましてはやや弾力的なかまえをひとつ出そう、その辺は変わったところです。しかし経済問題につきましては、これは先ほど総理からも答弁がありましたが、これは脱イデオロギーというか、そういう考え方で進めるという基本的な考えでありますが、しかし政府が関与した貿易ですね、これにつきましては慎重たらざるを得ない。  そこで、それに関連をいたしすまところの技術者の入国問題、これもその問題の一環として考えなければならぬということを申し上げておるわけでありまして、急激に私ども考え方が変わって、それで技術者の入国問題までも阻止するというふうになったということはありませんでございます。だんだんと弾力的なかまえになってきておる、こういうことでございます。
  235. 安宅常彦

    ○安宅委員 それではどうですかね、韓国から経済界が乗りかえるはずはないなどという発表をあなたのほうでしておったのですが、二、三日前に日韓経済協力委員会がありましたですね。そうしたら、各社みな病気だとか腹痛とか、それからあんなものはだめだということで、欠席が多くて何人も出ていません。十七社ぐらいしか出ていない。相当の一流の銀行筋もみんな出ていない、こういう状態になっているのですよ。これは外務省の目算というか見通しがまるきりくずれてしまって、国民は仲よくしたいと思う、経済界までそういう状態になっている、取り残されているのは政府だけではないかと思われるほど情勢が変わっているのですね。そういうことはお認めになりますか。経済協力委員会の内容をあなた方しさいに検討していると思いますが、どうなんですか。経済界はそういう方向に向いているなあとお思いになっておられるのではないですか、どうですか。
  236. 福田赳夫

    福田国務大臣 日韓の経済協力審議会というのですか、その会合があったことは新聞で承知はしておりますが、内容につきましては、しさいに承知しておりませんでございます。
  237. 安宅常彦

    ○安宅委員 大体外務省の態度はそんなものでしょう。  実はこれは通産大臣というよりも、きょう通商局長さん来ていますか。——これは伺いたいのですが、大臣ではあまり失礼なことになりそうなんですが、日本輸出入銀行法の第一条というものはどうなっているのですか。これは貿易を拡大するために政府が援助して、そして輸出入銀行の資金というものを使わせるのだ、貿易を拡大するために、こういうものだというふうに第一条はなっているのではないでしょうかね。どうなんですか。
  238. 山下英明

    ○山下政府委員 簡単でございますので……。
  239. 安宅常彦

    ○安宅委員 そうだと言えばいいのですよ。読まなくてもいい、そんなものは。そうじゃないのですか。
  240. 山下英明

    ○山下政府委員 そうでございます。
  241. 安宅常彦

    ○安宅委員 大体、輸出入銀行法の第一条というのはそう書いてあって、輸出入銀行の資金というものを、資本主義の国であるとか、社会主義の国であるとか、政治の状態によって、そうしてその貿易発展を阻害するための防波堤に曲げて法律の解釈をするなんという解釈のしかたは、輸出入銀行法の中にどこにもないはずなんですが、通商局長どうですか。
  242. 山下英明

    ○山下政府委員 現在、社会主義国にも適用しております。
  243. 安宅常彦

    ○安宅委員 いや、そういう解釈が正しいか正しくないかと言っているのだ。
  244. 山下英明

    ○山下政府委員 正しいと思います。
  245. 安宅常彦

    ○安宅委員 そうしますと、これは、輸銀というのは吉田書簡以来有名になったので、何か社会主義の国に貿易をするときに阻害するための防波堤にこれが使えるものだ、国民はそう思っているのです。通産大臣、みんなそう思っていますよ。だからこれは問題は、ケース・バイ・ケースだと言われるけれども、いま申請の中には、自動車のプラントだとか、あるいは発電の設備、食品関係のプラント、あるいはビニロン関係のプラントなど大型のプラント、あるいはコンピューター方式による病院の建物の中の設備一式と、いろいろなものがあなたのほうに来ていると思います。こういうものについて輸銀を使用することについては、通産大臣どうですか、いろいろな障害があってうまくいかないものでしょうか。ただいまの解釈からいえば、すらっといくはずなんですがね。
  246. 田中角榮

    ○田中国務大臣 輸銀は長期的延べ払いを対象にいたしております。また、共産圏その他を区別をいたしておるわけではありませんが、相手国との間に日本が長い通商の歴史がございます。それにも一つのウエートが置かれておることも、これは商行為でございますから当然でございます。もう一つは、回収が確実であるということも重要な条件の一つでございます。それから貸し出し金利、延べ払いの条件等を相手がのまない場合は輸銀の使用ができないということもあるわけでございます。ですから、いまあなたが御指摘になりましたように、画一、一律的に共産圏に対しては渋っておるというのではございません。共産圏の一番大きなソ連に対しては延べ払いをちゃんと実行しておるわけでございますから、また中華人民共和国に対しましても、申請があれば輸銀資金を認める予定でございますと、こう言っているのでございまして、やはりケース・バイ・ケース、出てくるケースによって内容を精査して条件をきめ、折り合ったものに対して輸銀を実行する、こういうことでございます。
  247. 安宅常彦

    ○安宅委員 そういうこと、ケース・バイ・ケースということはある。たとえば小型のプラントあたりでは何も輸銀を使うことないじゃないかということもあると思うのです。いろいろなそういうことについて通産省は非常に検討しておられる、実現の方向にがんばっておられるということを私はほのかに聞いておるのですが、大体そういうことについては、通産大臣、相当進んだ考え方をここで披瀝し得る立場に今日あるんじゃないですか、どうですか。
  248. 田中角榮

    ○田中国務大臣 輸銀資金には御承知のとおり限りがございます。予算措置をいたしておりますし、限りがございますが、いま民間資金は非常に金利も安く、貸し出すには条件がよくなっておるわけでございまして、二年とか三年とか四年とかいう短いものであって回収が確実であるということになれば、民間が民間プロジェクトとして出しておりますから、いまの金融情勢から言うと、民間でシンジケートをつくって出すとかいろいろなことが考えられておりまして、望ましいことだと考えております。
  249. 安宅常彦

    ○安宅委員 ただ私は朝鮮に対してのことを限定して聞いているのです。ソビエトは輸銀のやつを、何か五十億ドルだかのあれをやるそうですね。朝鮮のほうはつめのあかも出さない。そういう差というのは、ある程度の差じゃないのです。総理の、あなたのさっき言ったある程度じゃない。これは天地雲泥の差だ。こういうことは改める方針に転換してはどうか、私はそう思うのです。  特に私は技術者の入国について法務大臣に聞きたいのですけれども、技術者の入国については六八年の閣議で一ぺん決定しておるのです、朝鮮からの技術者の入国は三名入れろと。ところが、決定したものの、いわゆる南朝鮮のほうから抗議が来たものですから、あわててその取引をする商社に圧力をかけて、そうしてパアにしてしまった。閣議の決定というものはいまでも生きておるのですね。総理大臣どうですか。あの閣議の決定は生きておるはずですが、どうですか。技術者入国に関する閣議の決定は……。
  250. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 閣議決定はそのときどききめるものもありますし、またずっと続くものもあります。だから問題がどういう筋のものをきめたか、こういうことでございます。いまの技術者入国の場合は、これは個々の場合でございまして、そういうケースがずっと続いている、かように考えるのは少し思い過ぎではないかと思います。
  251. 安宅常彦

    ○安宅委員 それなら、あとでそれは整理して政府といろいろやり合いましょう。  それで法務大臣、技術者の入国というのは——入国というのは本来あなたの権限ですよ。たとえばあなたの奥さんが何か皮のぞうりを買いたい。ちょっとかかとのほうの上がりぐあいだとか、デザインだとか、鼻緒の模様だとか、やはり見て買いたいわけです。だれだってそうでしょう。だれだってそうですよ。こういうときにあなたの立場はどうか。よく見てこいよということを奥さんに言うかもしれませんね。これが私は常識だと思うのです。ところが、朝鮮で日本から品物を買いたい。こういう物を買いたいときには、機構はどうなっているのか、もっと進んだものがないのか、いろいろなことを見たいということがなければ、実際上、ぞうりを一つ買いたいのだけれどもどんなものが来るかわからないでは、これは商売にはならないと思うのです。売買の基礎にはならないと思うのです。これはほんとうに俗論でありますけれども、それが世の中の常識だと思うのですよ。そういうときに、輸銀が使われるか使われないかという問題とは別に、技術者が来てよく日本の品物を見てください。貿易をふやしたいと総理も言っているのですから、そういうことは当然だと思いますが、どうですか、前尾さん。
  252. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 輸銀を使う使わぬは別でありますが、その商談がはたして成立するか、また商談にぜひ必要であるかどうか、そういうことをケース・バイ・ケースで考えていくということでありまして、ただ野方図に買いたいからというので来られたのでは、現在までの実際からいえば、そういう必要性があるかどうか、こういうことが問題だと思うのです。
  253. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは間違いですよ。ただ買いたいからといって、めくらめっぽうだれだってやらないです。いろいろ折衝があって、そうして買いたいということになるのですよ。商談がまとまるかまとまらないかを検討してなんて、物を見ないでまとまるかまとまらないかがわかるかね。そういう問題じゃないでしょう。物を見てから、それからまとまるかまとまらないかは、そのあとの話でしょう。あなた、これはあべこべじゃないですか、前尾さん。前尾さんじゃなくて後尾さんみたいになってしまうじゃないか。おかしいじゃないですかね。
  254. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 国交の実際——まあ未承認国については入国の承認をしないというのが原則なんです。そういう点から言いますと、あなたのおっしゃるようなことだと、原則がすっかりひっくり返るわけですから、そこまではいかないですから、どうぞその点は……。
  255. 安宅常彦

    ○安宅委員 だから私はさっき言っているんです。アメリカといま正面で戦っているベトナム民主共和国のほうからは、労働者代表——あなた方はあまり労働者というのは好きじゃないんじゃないですか。そういう代表も来る。それから芸術団も来る。そういうふうにしておいて、なぜ朝鮮のほうだけは、政治とも労働問題とも関係のない、そして商売の立場で品物を見たいという人さえも入れないのか。これはあまりにおかしい論理ではないか、こう聞いておるのです。どうなんですか。
  256. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 先ほど申しましたように、一面においてまたマイナスの面があるという場合には、両方よく考えて総合して考えていかなければならぬ、こういうことだと思います。
  257. 安宅常彦

    ○安宅委員 それでは、たいへんうまく商談がまとまりそうだという場合には、原則としてそれは入国を許可する方針だ、こういうふうに受け取っていいですか。
  258. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 それ以外にも、外交全体の問題としていろいろと考えていかなければならないという面があるわけです。
  259. 安宅常彦

    ○安宅委員 それから通産大臣にお伺いいたしますが、ココムの制限の問題で、この間パリ会議もあって、日本はほとんど全廃に近い方針を提案しているとおっしゃいましたね。あれはサンクレメンテかどこかでも言った、あなたはそういう答弁をしていますが、いまニクソンが中国にああいう機械を持って行ったりして平気でやっているのですから、提案したといいますか、どうかそういうふうにしてくださらぬかと言ったアメリカが、そのアメリカの一番の親分がココムを守っていないのでしょう。そういうときにパリ会議もへったくれもないじゃないですね。田中角榮ここにあり、ココムなんか眼中にはない、アメリカがやったんだからくそくらえという態度をとって、ココムなんというものは日本はもう守らないというくらいの、そういう立場でやるのが通商外交だと思います。どうですか。
  260. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先般申し述べましたように、四十一年、四十二年、四十四年とだんだんと縮小してまいっておりまして、二月からパリにおいて交渉をやっておるわけでございます。また、サンクレメンテ会談の過程におきまして全廃論を私から提案をして、全廃に近い実効を期したい、こういうことでございまして、準戦略物資も含まれておりますので、日本の提案の基本的姿勢に対しては賛意を表そう、個々の問題に対してはパリ会談でまとめましょうということでございますから、いま日本が提案をいたしております大幅なものに対しては、相当な理解が得られ、実現ができると思います。  アメリカが中国に対してとっておりますものは、ココムプラスアルファということでございまして、今度ニクソン大統領訪中の前にアメリカ政府が大幅に緩和をしたというのは、ココムプラスアルファの分だけを全部取ったわけでございますので、ココムそのものについては会議をしておりませんでした。   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、ニクソン大統領が帰りましてから各国に要請してまいりましたものは、ココムの中で、しかも戦略物資として指定をされておる非常に高い位置にあるもの、それは電子工業製品でございまして、上海における中継に使った高度なものでございます。これはココムの、われわれに対していままで戦略物資として廃止はできないと言っておった範疇のものでございますから、こういうものを米中会談の結果として何とか残そうという話し合いが来ておりますから、それならこちらが提案したものも全部のんでほしい、こういうことでございまして、これはココムが全廃に近い状態の一つのはしりとして、上海の中継基地が出ておるということでございますので、われわれも、いまあなたが発言をされておるような方向で、前向き、積極的という姿勢でココム全廃に対して努力をしておるということでございます。
  261. 安宅常彦

    ○安宅委員 中国との関係は、あと回しにされておくれているのだといわれておるけれども、おくれてない、貿易なんかどうだなどと外務大臣この間言っていますが、頭越しの一番いい例じゃないんですか。田中さん、これはどうなんですか。これは戦略物資もいいところじゃないですか。宇宙衛星を使って、これくらい戦略的な衛星はないでしょう。そういうものを使ってやるものをニクソンが平気で持って行ってやっておるのですからね。日本としては、何だこいつというのがあなた方の意見じゃないでしょうか。韓国から言われると腰をふらふらさせてしまう、アメリカがやったらだまって、親分がやったことだからしようがないななどという態度だから、日本はなめられてしまうのだ。私はそう思うのですよ。どうですか。そういう態度ではなく、それではアメリカのニクソンがやったことは約束が違うじゃないか、おかしいではないか、これは間違いだということを、アメリカに外交的な抗議をしたり何か、そういうことは全然しなかったのですか。
  262. 田中角榮

    ○田中国務大臣 抗議などいたしません。私は先ほどから述べておりますとおり、アメリカ側には、日本はココムの全廃を行ないたい、こういう提案をしておるのでございますから。しかしアメリカは、戦略物資はだめですよということが前提でございましたが、その戦略物資の中で重要な地位を占める電子工業製品を中国に持ち込んで、これをそのまま置いてきたい、こういうことでございますから、置いてくるということは、ココムリストからはずすということにつながっておるわけでございますので、パリにおける会談は成果がある、こういう見方でございまして、アメリカが言ったから無条件に認めておるというのではなく、言うならば、日本からサンクレメンテ会談でココムリストは全廃しようという提案があったので、ニクソン大統領はこれを上海に置いてくるというふうになったのだと思いますよ。
  263. 安宅常彦

    ○安宅委員 ものには言いようがあるものですね。そういうことをやられないように、アメリカがココムだ、ココムだ、戦略物資だ、敵性国家だなどと言っているばかみたいなことを、それよりも先がけてやるのが日本政府態度じゃありませんかと私は言っているんですよ。そこさえわかってもらえばいいのです。あなたはうなずいておられるけれども。  それでは、さっきからケース・バイ・ケース、ケース・バイ・ケースと盛んに出ましたけれども、このケース・バイ・ケースというのは一体どういうことばなんですか。いろいろ種類があるのですか。外務大臣どうですか。ケース・バイ・ケースというのはどういうことですか。
  264. 福田赳夫

    福田国務大臣 輸銀にせよ基金にせよ、これは国家資金でございますから、これが運用につきましては慎重でなければならぬわけであります。でありますから、どこの国に対しましても、輸銀を使いたいという申し出があったらそれを全部受け入れるということはいたしておりません。全部ケース・バイ・ケースというか、その事案の性格を審査いたしまして、先ほど通産大臣から、これは商売としての適性いかん、また回収は一体どうなのか、またそれが与える影響は一体政治的にどうなのか、いろいろなことを考えて国家資金の有効な活用をはかりたい、こういうことです。それを総称いたしましてケース・バイ・ケース、こう申し上げているのであります。
  265. 安宅常彦

    ○安宅委員 朝鮮に対しては前からケース・バイ・ケースと言ったけれども、どっちがいいほうのケースか、どっちがだめなほうのケースかわからぬけれども、どっちのケースもないじゃないですか。そうでしょう。これは輸銀のことばかり聞いているんじゃないですよ。政治家の往来にしても、芸術団もそうだし、スポーツもそうだし、貿易の問題もそうです。朝鮮の問題については全部、あなた方はケース・バイ・ケースと言うけれども、何もないのですよ。両方とも全部ゼロなんだ、あっちのほうは。だから私は、ケース・バイ・ケースというのはどういうことかと聞いているのです。過去十年間、これはケース・バイ・ケースのうちの許可するほうのケースだから何か一つ二つやったというのだったら、ケース・バイ・ケースということばは通じると思うけれども、ゼロなんですからどういうことかと聞いておるのです。  じゃあなたに重ねてたたみかけて質問するけれども、ケース・バイ・ケースというものに種類があるのかということはどういうことを聞いているかといいますと、去年の十二月八日の参議院の沖繩協定特別委員会で、あなたは羽生さんの質問に対してこう言ってますよ。中国に対してはいままでケース・バイ・ケースで来たんだけれども、しかし今度はそうではないんだ。このケース・バイ・ケースというのは、どっちかというと、うしろ向きの背景のもとにおいてのケース・バイ・ケースだったというのです。これは否定できないことだ、こう言っているのです。今度はどうするかというと、前向きの形のケース・バイ・ケースでやるのであって、これは大転換である、こういうふうに考えるのであります。ケース・バイ・ケースにうしろ向きのものと前向きのものがあるとあなたは言っているのですよ。どうなんですか。
  266. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおりでございます。つまり、そのケースを考えて判断をする、判断の材料として国交という問題を考えなければならぬ。その場合、日中間につきましては、とにかく日中国交正常化をはかろうという今日でありまするから、この国交という立場から言いますると、これは前向きになりますよ、いままでのような考え方とは違った考え方をとることになりますよということを申し上げたのです。
  267. 安宅常彦

    ○安宅委員 そうすると外務大臣は、全般的にみなケース・バイ・ケースだと、差別はないみたいな話をしておりながら、参議院の議事録を読まれると、その背景によっては、ケース・バイ・ケースにはうしろ向きと前向きとあるというんですね。アヒルの論理じゃないけれども。そういうことはどうですか。中国とはまだ国交回復してないでしょう。朝鮮とも同じですよ。そういうものを区別する基準というのは明確にしておかないと、いろいろな誤解を生むことが多いんじゃないでしょうか。  これは通産大臣どうですか。原則的にいって、ケース・バイ・ケースにはそういう種類があってはならないと私は思うのですが、どうですか。いままでケース・ハイ・ケースによって前向き——何か許可しそうなしないような、だけれども前向きみたいに私ら解釈してきたケース・バイ・ケースにも、うしろ向きのと前向きのとあるということがはっきりしたのですから、こういうことは、ことばでごまかす国会答弁の一番悪い癖じゃないかと私は思いますがね。こういうケース・バイ・ケースということばを使うことは本来あってはならないものだと思いますが、どうですか。
  268. 田中角榮

    ○田中国務大臣 金融とか借款とかというものは、同じ国のものであっても全部内容は違うし、全部条件も違うわけでございますから、これはバイ・ケースというのも金融の原則だということで御理解いただきたいと思います。ただ、前向きのものとうしろ向きがあるということは、これはそういうふうにおとりにならないで、すなおにバイ・ケースということでいいと思います。そして、政府借款という海外経済協力基金との抱き合わせもございますし、また輸銀は法律に基づく機関でもございます。一般の民間ではないわけでございます。ですから、国交があるものとないもの、また国交がなくとも近く国交が開かれそうなもの、国交はなかなか開かれないものというような状態においては、これはやはりある程度の差があることはやむを得ない。ここらはひとつ御理解いただけるものではないかと思います。何でもかんでも地球上全部画一的、一律的というわけにはまいらないわけでございます。ですから、これはやはり親密の度合いもございますし、それはやはり私は、ほんとうに、国が行為を行なう場合には当然そういう問題があるわけでございますから、これも率直に言って、悪ければ取り消してもけっこうでございますが、これはあなたが、北鮮とはとにかく拡大しなさいということと同時に、今度韓国や台湾に対しては、やはり多少考え方立場——ものの運用に対しては、私は、やはりバイ・ケースでいろいろな結論というものが出されるのだ。これは国でございますから、そういうふうにひとつ何とか御理解いただきたいと思います。  それから先ほど、北鮮の、どのくらい話があるのかということでございましたから、いま調べさせまして——先ほど正確な数字を申し上げないで恐縮でございました。いま調べましたら、書類が出ているもの出ていないもの全部ひっくるめて十七件ほどございます。金額は一億三千四百万ドル程度でございますが、まだ、受けてもらえるならばという話もあるし、条件がまとまれば、輸銀が使えるならばというような、ペンディングな問題全部ひっくるめて申し上げたわけでございますので、その意味で御理解をいただきたい。
  269. 安宅常彦

    ○安宅委員 これはだから私が聞いたのですが、あなたのは御理解願いたいと言ったって理解できないですよ。だから私はさきに聞いたのは、どれぐらいあるか。一億三千四百万ドルでしょう。それは、いままでの輸出入両方合わせて往復六千万ドルぐらいの貿易とは、もう最近になってけた違いにふえているということだけは認めていただけると思うのですよ。許可申請がそういうふうに来ている。これは日本の国民の、あるいは貿易商社の、そういう貿易をしたい、日韓経済協力委員会なんかもう欠席してもそちらと貿易したほうがいいんだという考え方というのが、国民の世論として出てきておると思うのですね。  このケース・バイ・ケースについての、あるいは技術者の入国については前向きの姿勢で何とかしましょうなんという答弁をしたのは、あなたのほうでは、六六年の七月十八日、あるいは六八年の三月二十九日、六九年の七月九日、七一年の十月三十日、こういうように、何とか前向きで技術者の入国は検討したいという政府答弁は、私が調べただけでも六回くらいあるんですね。もっとあるんですよ。ところがさっぱり進まないのですね。アヒルの水かきみたいなことを福田さんいつか言った。同じ、動かないのです、前向き前向きと言ったって。そうして今度は、日朝友好促進議員連盟が帰ってきたとたんに、外務省の森次官という人は何と言ったかというと、今度は時期尚早だと書ってきたんですよ。ケース・バイ・ケースということは時期尚早ということですか。時期早尚というのはいつまでなんですか。国交回復するまでなんですか、どうなんですか。政治資金規正法みたいなものですか、総理。そんなばかなことを言っておくというのは間違いじゃないですか。どうですか。
  270. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は森次官の話を聞いておりませんけれども、おそらく貿易事務所の設置についてじゃないでしょうか。これは時期尚早であるということを次官も言っておりましたが、そのことかと存じます。
  271. 安宅常彦

    ○安宅委員 まあケース・バイ・ケースの論議を言ったってしようがないから、ただ、はっきりしておきましょう。法務大臣、これは出入国管理令というのがいまありますね。あなたのほうでこれを法律にするとかなんかいっておりますが、出入国管理令の五条第一項十四号以外に、入国させたり、出国させたりするためにそれを阻害する法律というのは日本にないはずであります。仲がいいとか悪いとかというのは別ですよ。外国人の出入国に関するそういう取り締まりの法令でいうならば、五条第一項十四号しかないはず。あとは何もないはずですよ。あれ以上の基準を設けてはならないことに日本の法律はなっておるのですよ。それを守らないで、仲のいいのと仲の悪いのと少しは違うのは了解してくれと言ったって、田中さん了解できない。日本の法律はそうなっておるのですよ。そのとおりじゃないでしょうか。前尾さん、どうですか。
  272. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 法律の条文はよく記憶いたしておりませんけれども、とにかく国益を守るということは十分考えていかなければならぬと思うのです。
  273. 安宅常彦

    ○安宅委員 ちょっと待ってください。局長、じゃそのとおりかどうか。法律上はそれ以外に律する基準はないというふうに私は考えますが、そのとおりかどうか答弁してください。
  274. 吉岡章

    ○吉岡(章)政府委員 御質問のとおりだと思います。
  275. 安宅常彦

    ○安宅委員 そういうふうに法律がなっている。法治国家なんです、日本は。それが、仲がいいとか、好きだとか好かないとか、そういうことで法律を政府自身が曲げてはなりません。こんなばかなことは、田中さん、ぜひ理解してくれなんとあなた言ったって、私はなかなか理解できない。私は感情ではなくて法律に基づいて言っておるのです。これだけはあなたのほうで確認してもらいたい。いいですね。法律を守るなということを、政府が仲がいい人と仲が悪い人と差別をつけて、法律を守らないのは政府だということを確認したと同じことなんですよ。こんなばかなことはありません。これだけはっきりしておきましょう。  それで総理大臣、どうですか。私はあなたに非常に敬意を表しておる一つがある。これは何かといいますと、あなたがちょうど国務大臣の当時、東京の晴海で中国の見本市が開かれました。そのとき、現職の大臣としてそれを見学され、そして当時参りました南漢宸さんと会って、そうして、中国の問題については本気になって取り組もう。当然、施政方針演説のときもそうおっしゃいましたし、そういう気持ちで、あなたは内閣を組織されたころ、あるいはまたその前の国務大臣のころは、そういうことを考えておったんじゃないかと私は思うのですけれども、あのとき、晴海の見本市や何かを、国務大臣という資格があっても行ったということは、そういう心があったから行ったんじゃなかったのですか。どうなんです。私はそう思いたいのですが、佐藤さん、どうですか。
  276. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 積極的姿勢で出かけたわけです。
  277. 安宅常彦

    ○安宅委員 ところが、竜頭蛇尾というのでしょうか、最近どうもときどき、この前台湾中華人民共和国領土であるとはっきり言っても、あなたの意思どおりならない。白河法皇でしたか後白河法皇だったか忘れたけれども、ままにならないのは鴨川の流れと何か僧兵だなんということを言った人がおりますが、ままにならないのがどこかいるのじゃないですかね。そういうことを本気になって総理大臣という立場で言うならば、はっきりそういう方針をお持ちになっているあなたは、その気持ちというものを行動に移してもらう、そういう決意が総理大臣の識見じゃないか、私はそう思いますが、どうですか。
  278. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 安宅君の考え方はけっこうだと思います。
  279. 安宅常彦

    ○安宅委員 ところが、全然そうなっていないのだから困るわけですが、これは私はそういうことで聞きたいのですが、どうも外務省当局の態度というものが非常に強く、田中通産大臣の答弁にも前尾さんの答弁にも、総理答弁にまで影響を与えておるような気がしてなりません。ですから、私が先ほど情報文化局長発言をとらえているのも、そういうところに私のいわゆる目的があるわけであります。こういうことについて外務省はもう少し——もう少しじゃない、百八十度ひとつ創造的にものの発想のしかたというものを変えなければ、日本というものはアジアの孤児になり、そしててんで問題にならない、こういうふうに他国から恨まれたりしかられたりあるいはてんで相手にされない、こういう事態がくるのではないかということを非常に私は心配しているのですよ。そういうことなんですね。こういうことについて外務大臣はよほど気をつけてもらいたい、そう思うのです。  それで、私は日朝の問題について、基本的な問題について、時間がありませんから移りたいのですが、どうですか、いままでやってきた国連中心主義の外交という問題、あなた方口を開けばそう言いますが、国連中心主義の外交は今後も続ける、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  280. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおり考えております。
  281. 安宅常彦

    ○安宅委員 そうしますと、中国の場合は皆さん触れましたから、私は朝鮮の問題に限って言いますが、サンクレメンテのコミュニケによれば、さきの佐藤・ニクソン会談の台湾、韓国条項というものは全然触れていないようですね。総理は国際情勢を述べて変更がありたという意味発言をちょっとされて、それからあわてて、それは政策の変更がないのだというふうに訂正をされているわけです。そしてまた、一月に入って韓国大使と会って、それで、韓国条項は微動だにもしないということは、これは総理じゃなくて外務大臣だと思いますが、そういうふうに変わっているのです。政府の方針も外務大臣の方針も非常にその辺があやふやなのです。もともと外務大臣は、七一年の九月、日米経済閣僚会議、それに向けて、私は台湾、韓国条項というものを修正を申し入れるのだ。サンクレメンテでもそういう態度をとるのだという意味のことを、ある新聞記者にあなたは言っていましたよ。それが新聞記事に載っていますが、サンクレメンテが終わったとたんに変わっているのですね。これはどうして変わったのですか。
  282. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは何かのお間違いじゃないかと思いますがね。私は安保体制のもとにおける韓国の情勢それから台湾海峡の情勢、これはニクソン大統領が七月の十五日に訪中を発表した、あのころを契機といたしましてかなり緊張緩和の傾向に向かってきた、したがいまして、極東の緊張緩和の傾向というものは出てくるであろうが、しかし、わが国の安全に朝鮮がまた台湾海峡が重大なる関係のあるということにつきましては、これは変わったようがありませんということをずっと考えてきておりますので、昨年九月の日米合同委員会の前後に何か私がそれと違ったような発言をしておるというようなお話でございますが、さようなことはありませんですから、これは御理解の違いじゃあるまいか、そういうふうに考えております。  それから、サンクレメンテの会談におきましては、朝鮮、台湾、そういう地域の問題つまり一九六九年共同声明に関する台湾条項、朝鮮条項、そういう話はございません。私は聞いておりません。ただ、その会談が終わりましたあとの総理大臣の記者会見で、いろいろ記者団の質問に答えられまして総理大臣お答えになっておられる。そういういきさつがあるだけでございます。
  283. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは事実でしょうか。これは二月七日の朝日新聞なんですけれども、「福田外相が国会で外交演説をした先月二十九日、外務省の関係者はオヤッと首をかしげた。朝鮮半島にふれたくだりで外相は「依然緊迫した情勢が続いている」と述べたが、事務当局の原案では「大きな流れとしては緊張緩和に向っている」とあったからだ。アジア局の担当者は「韓国の非常事態宣言だって、」」云々というもので、どうも「筆を入れたな」と推測をしている、こういうふうに書いてありますが、これはどうなんですか。そういうことは事実ですか。
  284. 福田赳夫

    福田国務大臣 これも安宅さん何か理解が違っておるんじゃないでしょうか。私はその演説におきまして、世界情勢を判断いたしまして、朝鮮半島の部分につきましては、「朝鮮半島におきましては、依然緊張した情勢が続いておる反面、南北間の話し合いが開かれるなど、緊張緩和へ向かっての模索もうかがわれ」ます。こういうふうに言っておるのです。この演説は私の演説ですから、何か事務当局が全部書いて私が直したようなことを言われますが、私が大体アイデアを示しまして、事務当局がそれを整理した、さように御了承を願います。
  285. 安宅常彦

    ○安宅委員 これはあなたがページ数を間違えばとにかく、それは違うだろうなんと私が言ったって、水かけ論になりますから私は言いませんよ。それでけっこうです。  ただ、時間がありませんから、私は通産当局に聞きたいのですが、朝鮮の南のほう、つまりいわゆる韓国のほうに、あなたのほうでは、これは外務省が非常に関係がありますよ。が、有償無償の援助なりあるいは民間ベースの借款なり、こういうものについて、たくさんの経済援助なり軍需産業を含めたそういうものに対するいわゆる援助をやっていますが、こういうものの金の行くえというものは一体どうなっているかということについて調べたことがあるのでしょうかね、金の使い方の結果どうなっているかということについて。たとえばどういう意味かといいますと、これは韓国の新聞にも明らかになっておるのです。それから、いろんな資料があるのですけれども、ほとんどアメリカ、日本から——アメリカのことは触れませんが、特に日本から出ているそういう輸銀使用のものあるいは政府の借款によるもの、それをいわゆる韓国の政府が仕事をさせる場合に、ある会社に金を流したりしますね。それがほとんど、いわゆる不実企業という名前がいま韓国ではやっておるのですが、実らない企業ですね。銀行管理になってしまったりつぶれたり、そういうふうになっているものが大体七〇%から八〇%だということが国会でも論議になり、新聞にも出ているのですが、そういう実態は御存じなんでしょうか。
  286. 田中角榮

    ○田中国務大臣 一九六四年以降七一年までの間に、わが国民間企業は韓国企業に対して百件以上の延べ払い輸出をしております。なお百七十件の投資を行なっておりますが、この相手が不実企業というようなものであるかどうか、いまにわかに申し上げられるようなこまかい数字はございません。不実企業というのは一体どういうのかというので調べてみましたら、不実企業とは、銀行からの借り入れ金を返還できず銀行管理となっておるもの、これが一つです。第二は、商業借款を導入して輸出者に対し一年以上償還できないもの、第三、工場稼働後、稼働率が五〇%未満のもの、第四、欠損が資本金を上回っているもの、第五、企業の整理に入っておるもの、こういうことのようでございます。しかしこれは御質問があるというので急遽調べさせてやっとわかったわけでございまして、その実態はわかりませんが、あなたの言われるように、七〇%、六〇%、五〇%、そういうものではない。それはもうそういうものであったならばこれはたいへんなことでございますが、その後、期限内の償還その他が行なわれておるかどうかということを調査をいたしました結果、不実企業の存在というものは韓国国会で問題になっておる事例は存在するようでございますが、わが国からの借款に対しての期限内の返済は、条件どおり返済が行なわれておるということでございます。
  287. 安宅常彦

    ○安宅委員 それは金を貸すほうも、これは政府借款の場合は外務省が監督権を持っているんじゃなかったでしょうかね。それはあとで調べてもらいますが、たとえば昨年の十一月十六日に南朝鮮訪問中のIMFの協議団が今度、七二年度の南の政権の対外債務の元利金の返済は四億二千九百万ドルだ、それで、これは国家予算経常収入の二〇%の危険ラインに達している、こういうように警告しておるんですね。そうして、たとえばわかりやすく言うと、米なんかそうです。日本は大体百万トン以上の米を、三十年の払いで現物で返してもらえる条件だとか、あるいは金で返してもらえる条件だとかいうので出しておりますね。今度韓国の農林部の発表によると、七二年度の米麦の輸入必要量は約三百万トンだといっているんですよ。そのために三億五千八、百万ドルぐらいの外貨が要るとまでいっているのです。これは農林部の発表なんですね。  そういうように見てきますと、さらに、私はここでちょっと資料を持っているのですけれども日本から出たもので不実産業、企業になっている、そうして銀行管理に入っているもので、たとえば韓国肥料、これは四千四百七万ドルですね、これは三井系ですね。それから韓国アルミニウム製錬、これは東洋棉花系、あるいは韓国電気冶金、これは丸紅飯田系、八十七万ドル。韓国アルミは千三百四十八万ドル。あるいは造船公社というのについては、三菱系で三百五万ドル、大韓光学機器、これは東洋棉花系ですが、五十万ドル。これはつまり韓国の産業銀行なり商業銀行、それを経由して日本の借款を受けているわけですが、こういうものは全部銀行管理になっているのです。しかも、田中さんはいま、金はちゃんと返ってきていると言いました。それはそのとおりでしょう。そのとおり返ってきていると思うんですよ。政府借款の分も全部調べてみたら、そのとおり。そうしたら、どういうところに問題があるかといいますと、結局、この韓国の産業銀行なり、あるいは商業銀行というものが立てかえ払いをしておるんですよ。不実産業はもう振っても鼻血が出ないという状態ですから、日本から催促が来る、しかたがないから産業銀行なり、あるいは商業銀行が立てかえて日本に返しておるのです。そういう銀行は、韓国の市中銀行といえども大体株式の三〇ないし五〇%は政府の株になっているんですね。そういう仕組みになっておるのです。ですから、政府が非常に困っているんですよ。つまり、その国の政府の三〇%なり五〇%なり株式が入っている銀行がそういう状態になって、もうどうにもならない状態になっているということは、主要な金融機関がもうあっぷあっぷしているということは、経済が危機的状態に入っているというふうに分析せざるを得ないのじゃないでしょうかね、それが事実だとすれば。これは公式発表なんですから事実なんですよ。これはどうなんですか。どう思いますかね。政府借款などをやるのが外務省だとすれば、外務大臣からでもいいですよ。
  288. 福田赳夫

    福田国務大臣 韓国経済が最近の国際情勢、特にドルの切り下げ、また円の切り上げ、これの影響を受けましてかなり窮屈になっておるということは承知しております。しかし、その一つ一つがどうなっているかという問題になりますと、その企業の一つ一つがどういうふうになっているかということになってまいりますと、これはわが国といたしましては、輸銀が融資をしておるという企業でありますれば輸出入銀行、基金が金を出しておるという企業につきましては、基金そのものが、これはよく貸し出しをいたしましたあとのフォローをしておる、こういうことでございまして、大体のことはわかっておると思います。
  289. 安宅常彦

    ○安宅委員 つまり、政府全体としてそういうことをよく調査して、そうして金を貸さなければならないと思うんです。また佐藤さん、来年の分、第何次でしたか、今度のは三次五カ年計画ですか、それに対して借款の要請を受けて約束をしているそうでありますが、こういうめちゃくちゃになっている国に、どうなっているかも知らないで、金が返ってきているからだいじょうぶだろうと思って金を貸していたら焦げついたなんということになったらえらいことになると思うんですね。そういうことを全然知らないでおって、政府が金を、どんどん援助を出して、軍需産業と思われるものを含めて、そういう国に片一方だけ、じゃかすか金を貸しておくなんということ自体がたいへん間違いじゃないか、私はそう思っておるのですけれども、これはどうですか。特に外務大臣、聞きますが、さっき非常事態宣言というものが士気を高揚するためだと言っておりましたが、そうじゃないんですよ。経済状態はどうにもならない、外交は孤立をしている、どうも台湾と同じ運命になるのではないか、あるいは南と北との赤十字会談で国は平和的に統一すべきだという国民の世論がどんどん出てきている、こういうことから、危機を何とかして抜けようと思って最後のイタチっぺみたいにやったのがあの非常事態宣言じゃないんですか。あなたのほうではそういうふうに理解できないんですか。
  290. 福田赳夫

    福田国務大臣 安宅さんの御理解は御理解として、私ども理解先ほど申し上げたとおりでございます。
  291. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 安宅君に申し上げますが、時間がもうありませんので、簡単に願います。
  292. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は十五、六分損してますから……。  それで、そういうことですが、これは「今週の日本」という新聞です。これは政府のほうで予算をちゃんとつけて、そうしてやっている新聞ですね。この新聞の二月の第三週号というのに、ある学者の論説ですが——だから政府見解ではそうでないとおっしゃるかもしれませんが、これは政府の新聞と同じものです。PR紙みたいなものです。これにはどう書いてあるかというと、「国情すこぶる不安定ななかで孤立の硬直を強めている韓国の説得」を日本政府はすべきだ、そして「ソフトな姿勢をみせている北朝鮮との公的接触開始とを、ニクソン訪中——秋の国連総会という国際政治の流れを先取りする政略によって進めること」だ、あなたのほうの新聞にはこういうふうに書いているんですね。だから、国情すこぶる不安定で、そうして孤立、硬直を進めているんだと、あなたのほうのPR紙がそういうように書いているんですよ。おかしいじゃないですかね。そんなあなたの答弁はいただけないです。ですから私は申し上げますけれども、この非常事態宣言というのは、ただ宣言だけじゃないですよ。これに伴って国家保衛に関する特別措置法という法律を出しています。これが言論、集会の弾圧も全部やってますしね。  特に大蔵大臣なんか聞いてもらいたいのですが、国家予算はその総予算のワク内で、款項目はかまわないというのです。地方自治体があるときは、許可を得て款項目はやってもいいけれども、総ワクの範囲内で軍事上必要だという場合には全部組みかえることができるというんですよ。そういう法律を裏づけにしているんです、この非常事態宣言というのは。よく研究してもらいたいと思うんです。これは完全な軍事ファッショ政権ではないでしょうか。こういう国は平和愛好の国家でしょうか。そういうのを、何でも反共でさえあれば援助したほうがよかろうなんていうアメリカのしりにぶら下がっているから、日本はアメリカと同じように誤りをおかすようなことになるのではないか。私はそれを心配しているのです。どうですか、そういうことについて初めて聞きましたか、そういう特別措置法が出ておるということは。外務大臣、どうです。
  293. 福田赳夫

    福田国務大臣 非常事態宣言の発出されたいきさつは、先ほど申し上げたようなふうに理解しておりますが、そういう認識に立って言論統制をするというような動きもあったやに私も聞いておりますが、それに対しましては、これは一体行き過ぎじゃあるまいかというような感触を持っておったわけですが、現実にどういう措置がとられたかということは、私承知しておりませんです。
  294. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは一国の外務大臣として、そういうことはぜひ御研究をしておいていただきたいと思います。外交の基本になることについて、そういう非常事態宣言に基づく特別措置法というものは一体どういうことかということを知らないで、士気高揚のためにやっておるのだなどという国会答弁で済まそうと思ったり、金を貸しておるほうはどんな苦しい状態になったかを知らないで、つぶれるのも知らないで、どろ沼に金をつぎ込むように幾らでも貸しておってかまわないなどということをほんとうに内情を知らないで、政治家が官僚や何かの茶坊主的な意見や何かだけを信じて、ほんとうのことを知らないでおったならばえらいことになる、こういうことだけはっきりあなた方は知ってもらわなければならない。これは日本の外交の一番大きな失敗の原因になる、そういうことはそこにあると思うのです。  だから私は最後に言いますが、国連総会の見通しですけれども先ほど大久保さんにあなたは答弁されました。ただ、そのいわゆる朝鮮民主主義人民共和国を無条件で国連に招聘するということぐらいは議題になるかもしれないけれども、あとはならないだろうという分析だったと思いますが、ことしの秋の国連総会の見通しはそういうふうな見通しで間違いありませんか。
  295. 福田赳夫

    福田国務大臣 朝鮮問題は、この秋から来年にかけて国連では大きな問題になろうと、そういうふうに申し上げたのです。その中で一番問題になりますのは、招請決議案、これがかなり大きな論議を呼ぶであろう。この招請決議案が出るかどうか、これにつきましては、この秋出るという見方もあるし、出ないという見方もあるし、まあ私としては、ただいま判断ができませんと、こういう趣旨を申し上げたわけです。
  296. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは私は申し上げておきます、時間がありませんから。つまり国連の権威を認めて、そういう条件をつけて、それでよかったら出てこいと、こういう決議案なんですよ、いつでも毎年毎年問題になっておるのは。日本は日韓条約を結んで以来、この共同提案国になっておるのです。それ以前は共同提案国になっていませんでした。これはもともと国連憲章からいってもおかしいですよ。国連というのは、戦後処理の問題について、そうしてきまったことについて国連は口をはさまないということを百七条ですか、それではっきりしておるのです。したがって、朝鮮問題も国連総会のいろいろな決議がございますが、その中で一番早い一九四七年の決議のときは、これはだれにも干渉されないで、そうして民族が平和的に単一国家として発足するのが正しいのだ、国連はそれを確認するのだという意味の、一九四七年十一月十四日の第二回総会でそれを決議しておるのです。ところがその後、ソビエトの占領区とそれからアメリカの占領区と冷戦構造がはっきりするに従って、トルーマン・ドクトリンあたりがいろいろ問題になったのでしょうが、そういうことが——その前だったかもしれませんけれども、空気を反映して、朝鮮の独立の問題について初めて国連が間違った見解を出しておるのです。ほんとうは介入しないと言いながら、いわゆる大韓民国というものができたから、朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分に対して有効な支配及び管轄権を及ぼしている合法的な政府、これが樹立されたので、朝鮮半島における唯一の政権である、政府であるということを宣言する。こういうように反対を押し切って——その当時はアメリカの言うままになる国連だったわけです。私はそこが問題だと思うのですね。日韓条約もあるいは安保条約も全部ここから出てきておるわけですね。ここから出てきておるのですよ。これが問題なんですね。だから喬冠華中国代表が国連総会の初演説でぶったのは、何も中国が非難された決議を撤回してくれなんて一つも言っていないですよ。朝鮮問題の決議というものは撤回されるべきだという発言をしておるのです。ここは日本政府、よく知ってもらいたいと思うのです。いいですか。中国を非難したものは、中国に関する限り、これは平和愛好国家になったのだから、中国は今度その非難決議というものは死滅したのでしょうと福田さん言いましたけれども、あれは共同正犯の意味での決議が出ておるのです、朝鮮と中国は。そうでしょう、義勇軍が出てきたのですから、あとで。そのときの決議によって、これは朝鮮も中国も侵略者だという烙印を押した決議がそのとき出ておるのですから、中国がそのまま侵略者のまま国連に入っておるはずがないから、その決議は無効になるでしょう。正式に死滅なんという認識ではなくて、国連総会でほんとうに実態的にこの決議が撤回されて、死滅しなければ、これは国連中国が踏みとどまるという理論的根拠がないのですよ。当然それは、全国連の加盟国がこれを撤回させなければならないのですよ。そうした場合には、同じ共同戦線で戦争した中国と朝鮮民主主義人民共和国が、中国だけは侵略者でなくなったけれども、朝鮮はそのまま侵略者だなんという論理は国連総会のどこにも出てこないと思いますが、どうですか。
  297. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう朝鮮半島の諸問題、そういうことがこれから秋の国連総会以降において問題になってくると思うのです。そういう問題をどういうふうにわが国として対処していくか、こういうことにつきましては、十分慎重にこれから検討していきたい、かように考えております。
  298. 安宅常彦

    ○安宅委員 つまりこれからではおそいのじゃないですか、稲田さん。ベトナム民主共和国には、あなた外務省の課長さんを派遣したりいろいろやったとたいへん手柄話みたいにやっておられますけれども、これはベトナム以後などということを考えてやったのか、私知りませんけれども、ベトナム以後なんというのはあっさり来るのでしょうか。これはアメリカが徹底的な爆撃をし、そうして解放戦線が徹底的な抵抗をしておるでしょう。パリ会談は何もまとまりそうな気配はどこにもありませんよ。そういう状態の中でいるベトナム民主共和国に対しては課長さんをあなたはやった、ないしょであってもやった。朝鮮のほうは戦争もいま起きていないじゃないですか。南北朝鮮の赤十字会談も行なわれておるんじゃないですか。そういうところに対しては、一人も政府の課長さんも出さないし、向こうからの人も来ることは何とかしてそれをとめたいという欲望を持っておるということは、質疑応答を通じて明らかになりました。これは主客転倒ではないですか。それはだれだって、国民としては理解できないことではないでしょうか。いまからやりますというのはおそいのです。これこそまた頭越しの外交だ、福田外交は。そういうものだというふうに言われますよ。もちろんそのときは、国連総会のときはあなたが外務大臣でいるのか、何大臣でいるのか、さっぱり大臣にならないのか、おれは知らないけれども……。だけれども、そういう基礎をつくったのは、ゆうゆうとしておった——国連総会で問題になるとあなたははっきりしておりながら、中国の部分については侵略者の決議は除外されるだろうなどと言いながら、朝鮮の問題については意識的に触れないでいる。これは何か。これこそ朝鮮側が言う敵視政策そのものなんです。南朝鮮には軍事産業を含む援助をどんどんやっておいて、そうしていまふらふらになってしまっている政権を何とかして日本の力で——アメリカの指図を受けておるかどうかは別として、それをやっておいて、てこ入れをしておいて、何とか固定化した国境ではなくて、平和的に統一したい、こういう朝鮮民族の念願というものをじゃましておるのは、軍事的な経済援助をやっておる日本政府であり、国連においてそういうことが起きるということがはっきりわかっておりながら、この国連の朝鮮問題に関する決議というものに、それを朝鮮の代表が国連に出てこれないように介入をしておる問題について、国連が不当に朝鮮に介入しておる問題について、これを維持するための決議案に日本が共同提案国になり、票集めをしておる、こういうことは、ほんとうにこれは民族の自主的、平和的統一というものについて反対をしておる、こういう証拠にほかならないと言われても、ぐうとも言えない立場になりますよ、福田さん。どうですか、私は最後に聞きますけれども、こういう票集めはしない、少なくともしない。朝鮮の招聘問題に対する決議、これは具体的に言ってもいいですが、そういう決議について票集めはしない、共同提案国にはならない。これは中国とたいへんそれに似ているのです。うっかり票集めした結果恥をかいたなんということと同じ結果になりそうだから、私は言っているのですよ。だからそういうことはしないということぐらいは最後に言ってください。私はあとで、その答弁を聞いて態度を決定したいと思っています。
  299. 福田赳夫

    福田国務大臣 分裂国家に対する対処、これは非常にむずかしいわけなんです。ですから、中国問題、これくらい議論を起こす。また特に朝鮮半島の分裂状態、これは三十八度線という人為的な国境線で国境区画が行なわれておる。その三十八度線をはさんで南北二つの国家が存在をいたしておる、こういう状態であり、そしてその南の韓国と国交を結んでおる。その際に北との接触をどうするか、こういう問題ですから、これは非常にむずかしい問題なんです。しかし、先ほどから申し上げているとおり、私は朝鮮半島、これの南北がいずれの日にかは統一されまして、一つの民族ですから一つ政府である、そういう状態が実現されることを念願しておりまするけれども、その過程というものがあるのだろうと思うのですよ。いま、過程におけるところの現実を無視してわが国が非常に思い切った行動をとるということを考えてみまするときに、それがはたしてまた緊張の緩和というようなところにつながっていくのかいかないのか、その辺は深い検討を要する問題ではあるまいか、そういうふうに私は考えているわけなんでありまして、いま安宅さんは、今度秋の国連でいろいろ決議案が出る、それに対してどういう態度をとるかというお話でございまするけれども、その辺を十分見定めまして慎重に対処していく、そういうことにいたしたい、さように考えております。
  300. 安宅常彦

    ○安宅委員 違った答弁をしておるから、最後に。あとをやりません。  私は、そういうことを言っているのじゃないのですよ。国連がもともと統一した国家をつくるのが正しいという一回の、一番最初の朝鮮問題決議のときはそういうことであったのだと言いましたが、その精神を受けて、つまり朝鮮民主主義人民共和国やあるいはいわゆる韓国のほうでもそういうことをいったことがあるのですけれども、無条件で両方を加盟させるのじゃなくて、招聘するという問題が起きた。ところが無条件じゃだめだ、国連は北を侵略者と規定している、いろいろなことをいっているので、そういう条件を、国連の権威というものを認めたら招聘はしてやってもいいという決議案なんですよ。だから、それはおかしいではないかという国とおかしくないという国とがあって、日本はおかしくない、国連の権威を認めるのが正しいといって、そうしてその招聘問題に条件をつけているだけ。だから、招聘そのもの、これは国連に加盟させるとか三十八度線があるとかいうことは別、両方とも無条件で国連に招聘するという決議があるのです。それを条件をつけるという決議を出して、そうして出させないようにしているのに日本は賛成しているのだということなんです、私が言っているのは。あなたとまるっきり違うのですよ。そういうことはやめなさいと言っているのですよ。どうですか。両方とも招聘するということなんです。
  301. 福田赳夫

    福田国務大臣 いままでのわが国態度は、招聘する場合において、北のほうが国連の原則を順守するという条件、前提を必要とするという、そういう態度をとったのです。この秋にどういうことが問題になってくるかということなんですが、同じことが問題になるのか、条件なしの議題というものが問題になるのか、その辺、まだわからぬと、こう言うのですよ。とにかくこれは非常に重大な問題でありますから、慎重に検討して対処します、こういうことを申し上げているわけです。
  302. 安宅常彦

    ○安宅委員 最後に。私は答弁は要りません、申し上げておきますよ。そういうことについてまだ——秋ですね。もうすぐですよ。そういう問題について日本政府態度がきまってないということは、中国と同じようなことになるおそれがあるということ、日本の外交が孤立していくということ。結局、日本というのは国連中心主義だというけれども、アメリカが牛耳っておったときの国連と、いま中国が入ってきて、アメリカの意のままにならない国連に変質しているのですよ、具体的に言うならば。そういう国連と見さかいつかず、ただ国連中心主義ということを言っていくと、あなた方自体が矛盾撞着におちいりますよと、こういうとことを私は言いたいのです。  そういうことは国連の問題だけではなくて、経済外交の問題についても、先ほど私が言ったように、経団連をはじめ、もう不実産業なんかがじゃかすかおって、どうにも将来採算がとれないのではないか、おかしいぞという疑義を持っている企業が日本の一流の商社の中にもたくさん出ている。したがって、日韓経済協力委員会あたりも出てこない商社さえも出てくる、銀行も出てくる、こういう状態というものを政府は正しく見なければならないのではないか。正しく見ることが日朝友好を促進することになるのだ、こういうことを私は言いたいのです。ほんとうに政府は、こういうことは知らないのじゃないですか。たとえば、経団連が中心になるかどうかは別として、財界をあげての大型使節団が近いうちに朝鮮に渡るという決定をするでしょう。そういうことは、通産省ももちろんそうですが、外務者を中心とした、外交を預かる外務大臣、特に総理なんかは、この大きな時の流れというものを知らないでおったでは済まされない。私がその大型使節団、大資本の使節団が朝鮮を訪問するであろうということを知っておって、あなた方がまだ知らないなんというのは、こういう政治は逆だと思いますよ。野党の私たちが知っておって政府は知らないでおる、こういうばかな姿勢は変えてもらわなければならない。  さっき答弁は要らないと言いましたが、この間の総理答弁でこういうことを言いましたね。ソビエトの、飛行機、上空を飛ぶことについてだめだと思った、いろいろ政府交渉した結果いいことになった、飛行機の例をとって言いましたけれども、大きなそういうところで外交の発想というものを変えてやる、こういうことぐらいの答弁は最後にできないでしょうか。
  303. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ政府態度について御忠告を受けました。ありがとうございました。
  304. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて安宅君の質疑は終了いたしました。  次回は明七日午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時八分散会