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1972-03-02 第68回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二日(木曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 大坪 保雄君 理事 佐々木義武君    理事 田中 龍夫君 理事 二階堂 進君    理事 細田 吉藏君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 鈴切 康雄君    理事 小平  忠君       足立 篤郎君    相川 勝六君       愛知 揆一君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    植木庚子郎君       小川 半次君    奥野 誠亮君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       草野一郎平君    笹山茂太郎君       正示啓次郎君    進藤 一馬君       田中 正巳君    中野 四郎君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    羽田  孜君       福田  一君    松浦周太郎君       松野 頼三君    森田重次郎君       安宅 常彦君    小林  進君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       原   茂君    安井 吉典君       山口 鶴男君    林  孝矩君       正木 良明君    吉田 之久君       和田 春生君    谷口善太郎君       東中 光雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 塚原 俊郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       渡海元三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制次長  吉國 一郎君         国防会議事務局         長       海原  治君         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         公正取引委員会        事務局経済部長 三代川敏三郎君         防衛政務次官  野呂 恭一君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      江藤 淳雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 黒部  穰君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁施設         部長      薄田  浩君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         計画局長    矢野 智雄君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外労省欧亜局長 有田 圭輔君         外務省経済局長 平原  毅君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵省主計局次         長       吉瀬 維哉君         大蔵省主計局次         長       大倉 眞隆君         大蔵省主計局次         長       長岡  實君         大蔵省理財局長 橋口  收君         厚生大臣官房会         計課長     福田  勉君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省薬務局長 武藤き一郎君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省児童家庭         局長      松下 廉蔵君         厚生省援護局長 中村 一成君         通商産業省重工         業局長     矢島 嗣郎君         運輸省鉄道監督         局長      山口 真弘君         運輸省自動車局         長       野村 一彦君         自治省財政局長 鎌田 要人君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 三月二日  辞任         補欠選任   大村 襄治君     羽田  孜君   灘尾 弘吉君     進藤 一馬君   細谷 治嘉君     山口 鶴男君   竹本 孫一君     吉田 之久君 同日  辞任         補欠選任   進藤 一馬君     灘尾 弘吉君   羽田  孜君     大村 襄治君   山口 鶴男君     細谷 治嘉君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  昭和四十七年度一般会計予算昭和四十七年度特別会計予算昭和四十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。楢崎弥之助君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、予算委員になりまして四年間になります。次の通常国会は、この予算委員はやめなくてはいけぬかもしれません。総理もおそらく総理としては最後かもしれないと思うのですが、きょうはそういう意味で十分問題の、外交、防衛問題について実のある質問をいたしたいと思うわけです。よろしくお願いをいたします。  冒頭にちょっと厚生大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、実は横井さん、戦後長い間御苦労なさって奇跡的に生還をされたわけです。言うならば軍国主義一つ犠牲者であります。私どもとしては、大いにあたたかく迎え、今後の社会生活の面においてできるだけの協力をするという気持ちがあるわけでありますが、実は横井さんと同じように、いろいろな理由のもとに戦線を離れた、そして隠れておった人もあるでしょう。ところが、終戦後になって二、三カ月目に出てきた、そういう人たちは、実は敵前逃亡罪に問われて処刑をされておるわけですね。つまり、早く出てきた者は敵前逃亡罪軍法会議にかけられて、そして刑に服し、昭和二十年十月十七日勅令第五百七十九号並び昭和二十一年十一月三日勅令第五百十一号、大赦令が発せられて、いわゆる大赦を受けて、その刑は免除された。しかし、資料にあるところでは、大体六十五人、そのうち五人が刑務所でなくなっておるわけですね。その人たち一体戦没者遺族年金関係あるいは生きておられる方はその軍人恩給等関係がどうなっておるのか、実はいろいろ問題があるところでありまして、たまたま横井さんの問題が出てきて、横井さんは二十数年間、早く出てきた人は敵前逃亡罪に問われて、そういったいわゆるいろいろな恩恵からはずされておる。これについて厚生省は把握をし報告ができる状態にありますか。
  4. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 たしか以前にも、ただいま楢崎委員のおっしゃいましたことが問題になりまして、厚生省でも検討をいたしております。その結果につきましては、私、いまここに確実に覚えておりませんので、至急に取りそろえまして御返答を申し上げます。私といたしましては、そういう方々もやはり戦争の犠牲者でありますから、敵前逃亡というようなことがあっても、それがなかったと同じような扱いにいたしたい、かように考えております。結果につきましては後刻御答弁申し上げます。
  5. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ただいまの件については、報告をまって質疑をやりたいと思います。一応保留をして先に進みたいと思います。  実は、新聞で御承知のとおり、元米空軍軍曹ハバード氏が、かって六〇年から六三年の間に、横田あるいは三沢核兵器を運んだことがあるということが証言をされたわけです。  そこで、実は岩国の問題について私は詰めをやりたいと思っておりましたが、御承知のとおりの強行打ち切り採決で中断をされました。で、問題はまだ中途はんぱになっておるわけであります。ハバード氏の証言と重大な関係がありますから、この問題について若干の質問をさしていただきたいと思います。  そこで、お手元に「岩国基地の核を徹底的に追跡する」という、まとめを私急いでやったものですからまだ欠けておるところがございますが、それを参考にしていただきながら質問をやってみたいと思うわけであります。  どうもあの打ち切り以降、それぞれの関係者が遠いところから離れて、ああでもない、こうでもないということを言われておる。お互いに同席して詰めをやっていませんから、あの打ち切り後、たとえばアメリカ大使館、たとえば米軍、たとえば防衛庁等のいろいろの意見が出されております。それは一応ここにおさめておりますから、そういう意見に対して反論という形でやってみたいと思うわけであります。  どうも、米軍のほうは部隊のおることは認めたが、訓練部隊だというような言い方をしております。そこで、実は私がきょう明確にしたいのは、岩国のあの核部隊は決して訓練部隊ではなしに実戦部隊であるという点を明らかにしたいわけであります。  そこで、こういう米大使館及び在日米軍司令部のこの岩国の核問題に対する回答が来ておりますが、その中で「米軍核兵器に対する安全確保訓練はたえず行っており、この訓練在日米軍も含め全米軍統一基準によって行われており、」というくだりがあるのですが、これによりますと、岩国基地以外の米軍基地でも安全確保訓練を行なっているということになるわけであります。岩国以外の在日米軍基地でも、岩国基地のような核部隊駐留しているのかどうか、政府は把握されておりますか。
  6. 久保卓也

    久保政府委員 承知いたしておりません。
  7. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この米軍回答によれば、当然ほかの在日米軍基地にもこの核部隊はある、米軍言い方をすればただし訓練のためだ、こういう言い方になっております。これはひとつ明確にしていただきたい。  次に、こういう米軍回答があります。これは防衛庁もそれにコミットしておられるようであります。「たとえ核部隊駐留していても、そのことが核兵器存在意味するものではない」、まあ核部隊存在は認めておられるようですね、米軍防衛庁も。で、私が申し上げたいのは一九ページ、この資料の一九ページに六九年八月版の電話帳、七一年春期のやつ、七一年末期のやつ、三つ一応取り急いで点検をした分をここに出しております。  そこで、その六九年段階をまず問題にしてみます。NBCの、つまり核、生物、化学兵器でございますが、NBC兵器小隊がおるということは、NBC兵器が現にあるということでなくてはその存在の必要はないのではないか。次に、NBC兵器小隊ガード兵がおるということは、ガードすべき対象がなくてはガード兵は必要ないわけでありますから、すなわちガードすべき対象NBC兵器があるのではないか。NBC技術兵がおるということは、技術を要する対象があるから技術者がいるのであって、すなわち技術を要すべき対象NBC兵器があるということにならないか。NBC補給将校がおる。補給将校がおるということは、補給すべき対象があるから補給将校がおる。何を補給するのですか、NBCつまり補給将校がおるということは補給すべき対象があるから、扱うものがあるから補給将校がおるということであります。NBC作戦将校がおるということは、まさに岩国基地核作戦一つ基地になっておる。それからNBCの装着をする将校がおるということは、装着する対象核兵器がなくちゃ必要ないわけであります。それからNBC点検将校、まあこれは私はここの訳のところでちょっと若干自分でも疑問に、ちょっと首をひねっておるのは、一九ページの七一年版の春のほうの三六ページのオフィサー・イン・チャージ、これは装てん将校主任将校とも訳されると思います。それからセキュリティ、これは安全点検将校、あるいは機密保持将校、いろいろな文書等も含めて——そうも訳されると思います。それからデューティNCO責任下士官と私は訳しておりますが、まあ当番下士官とも訳されると思います。それはさておいて、NBC安全点検将校がおるということは、やっぱり点検すべき対象があるということを意味する。すなわち、これは核兵器というものを対象にしなくてはこのような核部隊は必要でない。訓練のためにこのような部隊は必要でない。  さらに重要なことは、一九ページを見ていただきたいのですが、特に六九年八月版の二四ページのところのガードパーソナルNBCウエポンズ、ここで私はカッコを落としておりますが、電話帳のほうでは(H&MS−15)となっている。つまり第十五司令部というのか、中隊というのか、そういう部隊のこれは警備将校なんですね。それから三二ページのNBCウエポンズ・セクション・ワンMAG−15)、つまり岩国部隊の構成を把握しておられると思いますが、岩国にはベースサイド部隊とウィングサイドの部隊、つまり基地を維持する関係部隊実戦部隊がおる。MAG−15というのは実戦部隊なんです。その第十五大隊にこの核部隊が所属しておるということが問題なんであります。単に訓練じゃありません。しかもこのMAG−15はどこから来たか御存じですか。ベトナムから一九六九年に来ているのです。だから、私はお伺いしたいのは、この第十五大隊にこの核部隊が所属しておるが、これは十五大隊ベトナムから岩国に来るときにすでに編制されてやってきたのか。そして一九七一年の電話帳関係では消えております。つまり、この部隊は一体どこに行ったのか。そして七一年版では、わざわざトレーニングということがNBCにつけられておる。その関係をひとつ明らかにされたい。  つまり、私が申し上げたいのは、訓練部隊ではなしに、七一年の電話帳ではトレーニングがついているから訓練部隊ということはいえても、少なくとも六九年の段階では明らかにこれは実戦部隊である。そこで、これは実は同じ部隊横田にも三沢にもおるのです。特に、もう防衛庁には米軍のほうから何らかの話があっておると思いますが、いわゆる那覇のP3Bの関係からこれを動かすという関係で普天間のKC130が岩国に来る。そうすると岩国のP3B九機が今度は三沢に行くという問題が起こってきた。起こっておりましょう。私はいろいろ疑いがあるけれども、少なくとも一番疑いのあるのはP3Bオライオンであります。これは、この一六ページあるいは三ページに書いておりますとおりでありますが、連続十八時間の飛行で九十六万平方キロ、すなわち日本海全域百万平方キロの対潜指揮可能であります。つまり、日本周辺における対ソ潜水艦作戦においてソ連原潜に対応する、これは対潜攻撃哨戒機であります。しかも、これはソ連原潜に対応するものでありますから、当然核を積んでおるはずである。もしくはいつでも核を積める状態にあるはずである。専門家の話を聞きますと、この核爆雷は普通の核爆雷と全く形が一緒だそうであります、装てんする場所は一つでありますから、形が変わったらすぐ困るから。何か防衛庁空将補岩国核倉庫を見に行かれたそうですが、爆雷があったという報告のようでございますが、これは全く形が一緒ですからね。その空将補は形が一緒であるということを知りながら知らぬふりしておったか、あるいは形が一緒であるということを知らなかったか、私はどっちかであろうと思うのです。P3Bというのは核爆雷がともにある可能性が一番強いわけであります。これが今度三沢に行くという。私が岩国関係で明らかにしたとおり、横田にも三沢にも、電話帳を調べてごらんなさい、同じものがありますから。つまり、核部隊があるということです。したがって、あのハバード氏の証言はまさに真実である。私が岩国のときにいろいろな事実関係を申し上げました。あの証言者は全部明らかになっております。ただ公表しなかっただけです、いろいろな関係があるから。ハバード氏の場合は、みずから明らかにして、そしていつでも証言台に立つという決意のもとで証言をされておるようであります。きわめて信憑性の高い情報である、このように私は思わざるを得ません。  これらの点について、やや長くなりましたけれども、御見解を承りたいと思います。
  8. 江崎真澄

    江崎国務大臣 ただいまレポートを追いながらのいろいろこまかい御質問がありましたが、全くこれを拝見するといろいろ疑惑がないわけではありません。しかし、私どもには、あくまで訓練用である、これにも「NBCスクール」と一番初めにあるわけですが、しかし、いろいろこまかく御指摘になりました点は、疑いのある名称も、これはなくはないわけで、そういうことが、かねて楢崎さん御指摘になりまして、前国会等々、また国民的な核に対する不安、こういったものを踏まえて、一月早々のあのサンクレメンテにおける会談におきましても、沖繩返還時におけるいわゆる核の確認問題、そしてまた、ましてや日本国内に核、BC兵器等々を無断で持ち込んでもらっては困るということについて、国民感情を交えて総理大臣外務大臣等々からニクソン大統領はじめ関係者に強く要請されたというふうに私どもも聞いております。こういうことが無断で行なわれていいはずはありません。ましてやBC兵器禁止兵器であります。われわれも一九二五年のジュネーブ協定に参加しておるわけでありますから、かようなものが無断で持ち込まれていいはずはないわけでありまして、今後ともこれらについては十分深い関心を示しながら精査してまいりたい、こんなふうに考えております。
  9. 楢崎弥之助

    楢崎委員 総理にお伺いをいたしますが、私は核持ち込みを許さないという核の中には当然核部隊が入ると思いますが、いかがでしょうか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来お話がありますように、核部隊核兵器、これは全然別のものではないかと、私はかように考えます。
  11. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その問題はあとでまた討論したいと思いますが、じゃいまのお答えは、核は持ち込ませないという核の中には核部隊は入らないという認識ですか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまその核部隊が必要であるかないか、これはまた別のことですが、日本政府としては核兵器持ち込みは許さない、こういうはっきりした態度を示しております。
  13. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、何回も聞きますが、核は持ち込ませないという中には核部隊は入れてないという御見解のようですね、いまの御見解は。——いやちょっと、これは大事なところです。総理にお伺いしておるのです。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はいまのような、観念的には区別される、かように思っておりますが、実際の扱い方防衛庁長官のほうからお答えさせます。
  15. 江崎真澄

    江崎国務大臣 核部隊というこの名称のとらえ方だと思うのです。攻撃的な核部隊、これはもうもちろん問題になりません。ただ、それが防御的な訓練をするという部隊であるならば、これは私は差しつかえないというふうに考えます。
  16. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いつからそのようにお分けになったのですか。
  17. 江崎真澄

    江崎国務大臣 部隊そのもの日本にあるとは思いませんし、また、さようなものは許すべき筋合いのものではありません。当然これはいつからきめるということでなしに、事前協議対象になる。したがって、訓練をする、これはやはり核保有国でありまするから、部隊訓練としてそれが行なわれる。これは特にそういう防御的な意味を含めての訓練、まあそういうふうに理解をする、こういうことを申し上げたわけであります。
  18. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その点についてはあなたはまだおわかりじゃないのでしょう。さっき言ったように、十五大隊の中にこの核部隊が含まれておるということは、実戦部隊ではないかという点については、あなた御存じないでしょう。調べるというのでしょう。だから、わかってないくせにそういうことをおっしゃるのですか。
  19. 江崎真澄

    江崎国務大臣 もちろんこれはよく私知りませんので、今後十分調査したいと思っております。私はいまその一つ部隊としての考え方について申し上げた、こういうわけですから、御理解願いたいと思います。
  20. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だから、いまのは一般的な話であって、岩国の具体的な問題についての御答弁ではないと私は理解をいたしておきます。  そこで、総理はちょっとあいまいなのですね。もう一度お伺いしますが、いわゆる核部隊というものは、核持ち込みのあの核の中に入る、このように、私どもは当然だと思いますが、もう一ぺん聞きます。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま防衛庁長官が答えたとおりでございます。私は、さような部隊はない、かように思っております。
  22. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、そんな部隊があるかないかを聞いておるのじゃないのです。総理がみずから掲げられた非核三原則の中の、核を持ち込ませないという場合の核の中に、核部隊は当然入りますね、核兵器だけじゃないですねと、こう言っておるのです。
  23. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は部隊の編制はどういうようになっておるかわかりませんが、しかし、核兵器、つくらず、持たず、持ち込みも許さない、これは厳然たるわが国の方針でございますから、核部隊という、そのいわゆる核を使うような部隊、その専門的な部隊、さようなものがあろうとは私は思いません。
  24. 楢崎弥之助

    楢崎委員 昭和三十二年五月十五日、第二十六回国会参議院の本会議、当時まだ社会党統一時代でありましたから、いわゆる憲法と核持ち込み関係核兵器関係について、田畑金光さんから緊急質問が行なわれた。社会党所属の時期であります。田畑議員が、原子兵器持ち込み、それから原子支援部隊駐留を拒否するかという緊急質問をなさった。本会議です。岸総理は、「この外国原子力部隊国内への駐留を拒否するという態度並びに今日あるような核兵器でもって日本の自衛隊を裏づけるというような考えは、絶対に私は持っておらない」、つまり、外国原子力部隊国内への駐留は拒否すると、はっきり岸総理お答えになっていらっしゃる。これに対してどういう御見解ですか。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府方針は別に変わっておりません。
  26. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、私が、持ち込ませないというその核の中には核部隊は入りますねと言ったら、そうですとおっしゃればいいじゃないですか。なぜわからないような御答弁をなさるのですか。岸総理の答弁のほうが明確です。では、核を持ち込ませないという中に当然核部跡は入る、これでいいですね。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほど来申し上げて知るように、持ち込まさない、かように申しておりますので、核、それを専門的に使うような核部隊というものはわが国にいない、かような前提でございます。ただいま言われます核部隊核部隊と言われるのは、一体どういうような部隊を言われるのか、私は、さような部隊はいない、かように申しておるのです。
  28. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私がいま言っているのは、日本——岩国に私はおると思いますが、いまお聞きしているのは、そういうことを聞いているのじゃないのですよ。核部隊、当然ありますよ。だから、私はわざわざきのう資料を差し上げたでしょう。ここに列挙しておるようなものが米軍のあれです。総理お持ちでしょう。きのう総理に差し上げるようにわざわざ渡したのですよ。一九ページ見てください。こういうものが核部隊というのです。  それで、さらにお伺いをいたしますが、外務大臣、一〇ページをちょっと……。  昨年の予算委員会で私はサイミントン委員会の問題を取り上げまして、このときに外務省は七〇年一月のサイミントン委員会の議事録を配付されました。その中で付録があるのですね。付録の部分は、どういうわけか知りませんが、外務省は日本語訳を出されなかった。実はその付録の中にいまから指摘する内容があるのです。これは一〇ページにあります。一〇ページの一四八四ページのところです。「ザ・ヘリコプター・スコードロン」のところです。つまり、こういう部隊、このヘリコプター中隊HC7、これは厚木におった部隊であります。これが日本から東南アジアに展開をいたしております。それから岩国駐留の海兵隊第十五——先ほど申し上げたとおり、第十五飛行大隊は、やはり日本から東南アジアに展開しておると書いてありますね。さらに、岩国駐留のVP17——VPというのは御存じですか。VP17、これは厚木の海軍航空基地駐留のVQ1及びVRC50とともに、日本からその作戦行動を行なっておる。日本から直接出撃しておるじゃありませんか。なぜこれが事前協議にかからないのですか。なぜアメリカはかけようとしないのか。私は、これは明白に向こうの証言でありますから、これは問題にしてもらいたい。外務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  29. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも私も英語に弱いものですからよくわかりませんが、「オペレーショナル・アクティビティーズ・フロム・ジャパン」と書いてありますが、これはどういう意味なのかよくわかりませんから、専門家である防衛局長からお答えさしていただきます。
  30. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その前に訳しておるのですが、私の訳じゃだめだとおっしゃるのですか。この上のほうに訳しております。この上のほうに、「岩国基地からの前進展開と日本からの作戦行動」、ここです。訳しておるのですが……。いや、局長、あなたちょっと待ってください。ゆっくりあなたにもお伺いしますから。
  31. 福田赳夫

    福田国務大臣 確かにここに「日本からの作戦行動」云々と書いてありますが、これが正確な訳であるかどうか、それも私もよくわからない。それから、かりに正確であるといたした場合に、その作戦行動ということが意味することがどういうことであるか、これも私もよくわかりませんから、専門家である防衛局長から御説明いたさせます。
  32. 久保卓也

    久保政府委員 オペレーションということばをよく作戦行動というふうに翻訳されまするけれども、オペレーションというのは、その航空機その他部隊の一般的な運用そのものもいうわけでありまして、オペレーションの中に、作戦もありましようし、一般の、何といいますか、任務行動、そういうものも入ります。したがって、このことばだけからいまの事前協議対象ということは当たらないと私は思います。
  33. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたはどうして当たらないという確信があるのですか。どうしてあるのですか、あなたは。作戦行動もあるし普通の運用もある、だから事前協議にはかからないとどうしてなるのですか。作戦行動の場合は入るじゃありませんか。
  34. 久保卓也

    久保政府委員 ですから、オペレーションということばだけからすぐに事前協議対象というふうに即断するのは、早過ぎるのではなかろうかということを申し上げたわけであります。
  35. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この場合は、じゃ、どうなります。
  36. 久保卓也

    久保政府委員 その事実を私承知しておりませんから、その点についての判断は私はできません。
  37. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どなたが判断なさるか、お伺いをします。
  38. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど久保局長が御説明したとおり、オペレーションということはいろいろの意味がございます。直接戦闘行動というときには、コンバットオペレーションと申しております。したがって、このオペレーションは、コンバットオペレーションでないとわれわれは思っております。
  39. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それはあなたの解釈でしょう。現実がどうなっておるかわからないでしょう。われわれは、この文章から見れば、いまベトナム戦争をやっておるんだから、当然ベトナム戦争との関連における作戦と考えざるを得ないじゃありませんか。そちらのほうが常識的でしょう。そちらのほうが常識的じゃないですか。しかもこのMAG−15というのは、明らかにベトナムに行っておるんです。ベトナムの作戦に従事しておるじゃありませんか、ファントムは。何を言っておるんです。
  40. 吉野文六

    ○吉野政府委員 このオペレーションということは、先ほども申し上げましたように、直接戦闘行動であるか、単なる軍隊の活動であるか、この点ははっきりわからないのでございますが、しかしながら、われわれの常識から考えますと、岩国から直接戦闘行動に着手するということは、普通あり得ないことじゃないかと思います。
  41. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だめですよ、そんなことを言っちゃ。岩国から飛んでいるんですよ。事実は、二時間で着くんですよ、ベトナムに。何を言っているんですか。MAG−15が直接行っておるじゃありませんか。沖繩に寄っていませんよ、MAGは。だめですよ、そういう答弁じゃ。それは政府が答えることですよ。——お答えがないようであります。これはおそらく米軍に聞いてみないとわからぬでしょう。しかもこれは事前協議の主題の問題です。しかもいままで事前協議が行なわれたことがない。素通りしてこういう事実がある。私はここでいままで岩国の問題を出した。横田の核の問題を出した。岩国から、あるいは厚木からの直接出撃の問題を出した。全部事前協議の問題ですよ。だから今回は、私がきょう問題を出して答弁できなかった点については、単に、第五空軍に問い合わしてみますとか、あるいはアメリカ大使館に問い合わしてみますでは、もうだめですよ。これは事前協議の主題ですから、当然、いわゆる安保条約第四条の随時協議、第六条の事前協議、これを扱う岸・ハーター往復書簡による安保協議委員会にこの問題をかけてください、そして安保協議委員会でひとつ徹底的な詰め米軍との間に行なって、当委員会に御回答をいただきたい。
  42. 福田赳夫

    福田国務大臣 核の問題につきましては、アメリカとの間ではっきりとこれは事前協議対象にするということになっております。私どもは、このことは再三日米間で確認をされておる、そういうことから見まして、核がわが国に存在をするということはもう想像できません。できませんが、せっかくの御指摘でありますので、調査いたしてみることにいたします。
  43. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ただいまの外務大臣の御答弁は、安保協議委員会に持ち出してみるという御答弁と承ってよろしゅうございますね。
  44. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず事前的に調査をいたしてみます。その結果によります。
  45. 楢崎弥之助

    楢崎委員 もはやそれではだめだと私はいま占っておるのです。もうそういう段階ではない。重大な事前協議上の疑義が出されておる以上、私は安保協議委員会に持ち出してくださいということを言っておるのです。いままで安保協議委員会かこの種の問題で開かれたことないでしょう、事別協議に関係する問題で。そしてその安保協議委員会の開催は、アメリカのほうが開会の申し出の権利があって、こっちからはないとかあるとかいり。それもあいまいです。だから、それらの問題をこの際一括して明らかにするために、日本側から安保協議委員会でひとつこの問題を詰めたい、重大な疑義があるから詰めたい。もはや、問い合わせてみるというような段階ではない。事柄は明白であります。明白である。御答弁できなかったでしょう。明白でありますから、私はぜひこれに対する明確な御答弁をいただかないと先に進めないと思う。
  46. 福田赳夫

    福田国務大臣 核が事前協議対象であるということは、日米間で再三確認をされておるのです。私はこれにアメリカが違背するとは思いません。もし万一違背することがあるということになれば、これは日米間の国交の重大問題であります。そういう重大性を踏んまえまして、私は、あなたのおっしゃることがどういう事実になっておるのか、よく調査してみる、その上において適正な必要なる措置をとります。
  47. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、米軍資料によって、証言によって問題を提起しておるのですよ。何も私がかってにつくりごとを言っているのじゃない。したがって、安保協議委員会でこの問題の確認をしてください。われわれは、事前協議制度は空洞化しておるということを言っておるのです。もし空洞化していないというならば、いまいいチャンスですから、そのあかしのためにおいても、この安保協議委員会でこの問題の確認をしてください。いまあなたが御答弁になったようなことを、安保協議委員会のその決定として確認をしてもらいたいと思います。
  48. 福田赳夫

    福田国務大臣 楢崎さんから問題が指摘されておるのですから、それはよく調査してみます。私どもは、もし楢崎さんのおっしゃることが事実である、核がわが日本の国に存在しておったということになると、これは日米間の重大なる国交問題である、そういう認識のもとに十分調査をいたし、その調査に基づいて適正なる措置をとります。
  49. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だめです。私は昨年の十一月十六日でも同じことを言っておるのです。調査する、もうその段階ではない。ましてや、実際に核を運んだという証言までもあらわれておる段階で、そしてまた、直接出撃しているという証言もある、アメリカのこのサイミントン委員会で。もはや事態は明白であるから、ひとつ安保協議委員会に持ち出してください。そしてそこで御確認をいただきたい。
  50. 福田赳夫

    福田国務大臣 楢崎委員せっかくの申し出でありますので、安保協議委員会の場において検討いたします。
  51. 楢崎弥之助

    楢崎委員 でき得べくんば、この予算委員会で問題にいたしておりますから、この問題があまりずれてはいけませんから、大至急にひとつ安保協議委員会を開いていただいて、そしてその結論を待って、私はこの問題に関する限りは質問を保留したいと思います。委員長のほうで善処方をお願いします。
  52. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 さようにいたします。  鈴切君から発言を求められております。これを許します。
  53. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 きょうは楢崎委員質問の中において関連をさしていただいて、一言二言御質問申し上げたいと思います。  前沖繩国会において、わが党の伊藤委員から、横田基地に核があったのではないかという質問をしたことは、御承知のとおりであります。その点、ハバード証言と幾つかの点が一致をいたしております。その意味においてハバード発言はそれを裏づけることになり、私はまことに重大ではないかと思うのであります。なぜならば、もしこのことが事実であるとするならば、政府のとってきた基本的な非核政策は根本的にくずれると同時に、事前協議はあってなきが同様であります。そういう疑惑に対して、先ほど楢崎委員に対して、安保協議委員会において確認をするということ、これは政府としてお約束をしていただいたわけでありますけれども、さらに私は、こういう問題については査察権を必要とするのではないか、そのように思うのでありますが、まず総理にお伺いいたします。
  54. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカの軍隊は外国軍隊であります。それがわが国に駐留をしておる。そういう際において、これに査察権、権利としての査察を行なうということ、これは国際慣行として認められておりません。わが国においても、この国際慣行に従いまして、強制的な権限を持った査察、こういうことはいたす考えはございませんです。
  55. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それからもう一つ総理に確かめておきたいわけでありますけれども、伊藤委員総理にこのように質問をいたしました。「いま最後の一言がちょっと重大でありますので申し上げますが、かつて総理は、楢崎委員質問に対しても、ないんだ、もし非核三原則と違反し、あるいはまた核を持ち込んでおったような事実が判明したときには、責任をとる、これは進退問題も含めてだ、こういう答弁を私は聞いております。それは撤回いたすのですか。」こういう質問をいたしましたときに、総理は「それは撤回はいたしません。しかし、ただいま言われておることは、その問題ではない。その核の有無を実証しろ、こういうことですから、それについての私の考え方のほどを申し上げたのであります。楢崎君に答えたこと、私撤回はいたしません。」このように明言をされているわけですが、これは沖繩及び北方問題に関する特別委員会の昭和四十六年十一月二十九日の会議録でありますが、それに間違いございませんか、確認をいたしておきます。
  56. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 間違いありません。
  57. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、事前協議の問題と関連をして、安保協議委員会の主題の問題としてこれが取り上げられる、これは初めてであろうと思うのです。そういう意味では、その事前協議制度が空洞化しておるかどうかの一つの大きなあかしになりますから、これは私は意義を認めます。しっかりひとつわれわれの疑問に明白に答える結論を出していただきますようにお願いをいたしておきます。  それでは、時間の関係があって若干順序を変えますが、四次防問題に入りたいと思います。  ここで、論文があります。若干長いのですが、ちょっと読み上げてみます。  これはシビリアンコントロールの問題でありますが、「シビリアン・コントロールとは、」「国民に、自衛隊は絶対暴走させないという安心感を与える政治的態度をいう。自衛隊が暴走するかどうかは、自衛隊の問題よりも政治の問題であり、政治の責任であるところに、シビリアン・コントロールの厳粛さがある。国の防衛問題に関し、これまで政府および自民党は、自衛隊の実態を国民の前にはっきりと曝すことに、誠意と勇気を欠き、説明不足であったことは否めない。国民に、国家防衛の意識を与えようとせず、自衛隊の実態を知らせようとしないで、シビリアン・コントロールは成り立つものでない。」「いまやアジア最強の軍隊といわれるほどに成長した、自衛隊の既成事実を率直に認識し、自衛隊のありかた、防衛予算、国防会議、そうして、シビリアン・コントロールの問題など、もっと立入って再検討することこそ国民に忠実であると思う。」「わたしたち政治家は、このさい、シビリアン・コントロールについて、真剣に反省をしてみる必要がある。シビリアン・コントロールは、政治家や一握りの防衛文官が、制服を統率下におくことだけではない。文民優位は、国民優位であり、国民の意向や利益に反して、自衛隊はいかなる行動も絶対おこすことのできないことを、国民の間に徹底させる必要がある。それには国の防衛や自衛隊の問題を、もっと率直に国民に知らせる努力を払わなければならない。シビリアン・コントロールは、国民的支持を背景にしてこそ完全であり、権威づけられるからである。」  江崎さん、どう思われますか、この論文について。
  58. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは、私、三矢問題が起きましたときに、たしか「中央公論」か何かに依頼をされて執筆をした、シビリアン・コントロールに対する私の見解だったと思います。いまお読みになっておるうちに、だんだい思い出しました。  これは、私、率直に申し上げまして、やはり防衛の問題というのは、国民的な背景がなければ、どんなに装備をしましても、その実をいざというときにあげることはむずかしいと思います。そういう意味で、やはり国民によく知らせる、これは大事なことだというふうにいまでも思っております。そして、それは直ちにことばをたしかあとのほうへ続けて、社会党もひとつ同じ土俵に上がって、防衛委員会などをつくって、何とかしてひとつ合意を求めるようにとたしか結んでおったように記憶をいたしておりますが、今後も、そういう形で、これは国会の問題でありますが、十分議論をされていくことが望ましいというふうに考えております。
  59. 楢崎弥之助

    楢崎委員 防衛委員会をつくりなさいとは書いてないですね。社会党に対する注文はあります。(「そこを読め」と呼ぶ者あり)時間を与えていただいたら全部読んでけっこうですが……。そこで、これはまさに「中央公論」の四十年四月の「シビリアン・コントロールの危惧」という表題における現江崎長官の論文であります。私は、その限りにおいては、この考え方は国民的な共感を得ると思います。  で、このときはあなたは長官ではなかったが、現在は長官であります。ここに書かれておるように、今日の自衛隊は「いまやアジア最強の軍隊といわれるほどに成長した、」そういう認識ですか。
  60. 江崎真澄

    江崎国務大臣 また防衛庁に戻ってまいりまして、いろいろよく研究をいたしてみますと、これはアジアには中国もありますし、もう広い意味では決して最強でないというふうに認識しております。
  61. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、あなたは政治家として責任感じませんか。長官でないときには、アジア最強の軍隊に自衛隊は成長している、これが既成事実だ、これを認めなさい、社会党も認めなさいと言ったんですよ、あなた。そうして今度は長官になったら、いや、実は最強の軍隊ではなかった、それでは政治家としての責任は果たせないじゃないですか。だめですよ。そういう二枚舌だから、いわゆる政治不信が起こるのですよ。そこにやはりシビリアン・コントロールの問題があるのですよ、あなた自身のことばの中に。
  62. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私はいま中国のことを申しましたので、だんだんその装備においては確かにアジアの自由圏においては相当なものであることは、これは私自身現在でも認めております。決して二枚舌を使っておるとは思いません。しかし、その根本が違うわけです。要するに、われわれは海外派兵はしない、専守防衛である、こういう前提に立つわけですから、これはやはりどういう装備でありましょうとも、その立場、それから今後のこの展開のしかた、これはやはり私は根本的に違う大事な点だと思います。
  63. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そんなことを聞いているんじゃない。それはまたあとでゆっくりやりますから、いまお答えにならぬでも。つまり、あなたは、くしくも言っているのです。アジア最強の軍隊に自衛隊はなっているのです。これは正直なんです。  そこで、この四十七年度防衛予算編成と、まさにこのシビリアン・コントロールの関係について、政府の認識が全部統一されているかどうか、私は、外にあらわれるいろいろな意見を聞いてみますと、そう思われないのです。ばらばらのような感じがする。ある閣僚は全然違法性はないんだ、ある閣僚は手続上のミスがあっただけだ、ある閣僚はまあ答弁の技術がまずかったと言う。総理大臣にひとつ、今度の政府修正をなぜされたかという政府の認識について、明快にお答えをいただきたいと思うのです。
  64. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、四次防の問題をめぐってたいへんな論議がかわされた。そのために国会は空転した。その手続がどうだこうだと、この際に議論することばもうむだだと、かように私は思いますが、この前進する事態において議長のあっせん案が出た、その段階において、やはりわれわれがこれを修正する、そういう立場で皆さんの意向も取り入れられた、かように私は考えております。私は、そういう意味で、この点はよほど前進ではないかと、かように思っております。
  65. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、いまの総理の御見解の中の、もう議論の段階じゃないというようなことは、そういう認識であったらたいへん困ると思うのです。これだけの問題に発展した今度の四十七年度、四次防先取り予算の問題について、どうも政府の、なぜ政府修正されたかというその認識が明確に出てこないと、何のためにあれだけ国会が空転したか意味がないと思うんですよ。むしろ議論を尽くしておかなくては何にもならない。むしろ議論の段階なんですよ、これは。議論の段階なんです。で、いまのお答えの中に、野党の意向も取り入れたというおことばがありました。われわれとしては、まさにシビリアン・コントロールの空洞化、そしてこれは憲法の空洞化につながる、そういう観点からこの問題を取り上げたわけであります。政府のほうとしては、この予算編成上それに欠けるところがあったという御認識というふうに私は承りますわけです。そこで、そうすると、政府修正が出された、二月七日のあの政府統一見解は、あれは三つばかりありますね、あれの少なくとも第一項目のあの政府統一見解は、これは政府修正が出された以上、なくなったもの、このように理解してよろしゅうございますか。
  66. 江崎真澄

    江崎国務大臣 第一項というのは、「継続事業、従来装備の維持・更新に係るもの、人件費等について必要な経費を計上するとの原則によって予算編成を行なった。」これですね。これは楢崎さん、こういうことじゃないでしょうか。われわれは国防会議に、いわゆる練習機とか偵察機とか、それから輸送機なんですから、従来、練習機というものは国防会議にかけたことがない、したがって、われわれとしては手落ちはないということで国防会議にかけなかった。ところが野党側から、あなたをはじめ、やはりそれは疑義がある、それはかけるべきだ、こういうことになって見解が分かれたわけですね。そこで、あの問題が起こったわけです。そこで、政府側としては、疑義があるものをそのままにすることは、国会の空白をもたらしたり、混乱を起こしたり、これはよくないということでその疑義を解消したというふうに御理解いただけると思っておるのですが、いかがでしょう。
  67. 楢崎弥之助

    楢崎委員 残念ながら時間が制限があるのですよ、衆議院の場合は。参議院の場合は、政府がどんなに長い答弁をされようと時間に入らないからいいですけれども、ひとつその辺も考えてくださいよ。  私が聞いておるのは、この(1)は生きておるか死んでおるかと聞いておるのです。
  68. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは予算編成上の原則を言ったものですから、私は生きておると思います。
  69. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ところが、これをめぐって国会は空転したんです。その結果が政府修正になった。これが生きておるなら何で政府修正したんです。これがおかしいから、まさに政府修正したんじゃないですか。そうするとこれはあなた、もう少なくも一項はなくなっておるという認識に立たなくては、政府修正した意味がないじゃありませんか。
  70. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それじゃ私の認識を申し上げます。  政府見解は、要するに、これだけは御了解を願いたいと思います。終始一貫、事実を事実としてありのままに説明したということでございまして、これに価値判断を加えたことがいろいろ問題を起こしていることは事実でございますので、そこで、そういう形で疑義を起こしたことはまことに申しわけないということで、議長のあっせん案に従って修正すると同時に、今後の予算の編成のしかたについて政府一つのお約束をしたということでございまして、事実は事実として認めていただきたいと思いますが、そうではなくて、これに対する解釈において問題が起こり、その結果、やはり疑義を起こしたことは一つの手落ちであって申しわけなかったということでこういう解決になったんでございますから、昔に戻って、このやり方がよかった、悪かったということをいま私どもからまた主張するということは、これは妥当ではないと思いますので、あの問題は、ただ事実をありのままに述べたことばであるというふうにひとつ御了解を願いたいと思います。
  71. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは別の観点からお伺いしましょう。  四十七年度予算編成には違法性は全然なかった、こういう御認識ですか。
  72. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それがいま言った問題にもつながると思いますが、四次防の計画ができておるんでございましたら、これに基づかない予算編成をやるというようなことは、これは違法でございましょう。また、本来なら四次防が策定されておって、その上で予算を編成するんなら問題は一切ございませんでしたが、これができなくて、四次防計画というものがなかったというために私ども一つ方針を立ててこの予算編成を行なった。その方針は何かといいましたら、いわゆる四次防案と称して前に防衛庁から発表された、これが天下に非常に広く行き渡っておりますが、あの中に盛られたいろいろな増強部分というものは、この際全部見合わせるという一つ方針で、現状勢力の維持を中心として最小限度の予算を盛るという方針で査定したのが今度の予算であるということを、事実のまま申し上げたわけでございます。
  73. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どうもすっきりわからないんですよね。  それで、たしか私は、この政府修正の理由というか、政府修正に対する政府の認識いかんが、実は政治的な責任の問題と大きな関係があると思うんです。公明党の矢野書記長が、政府の今回の問題に対する政治責任についての統一的な見解を保留をされておりました。それが出されるときに、私はこの政府修正に対する政府認識、これが責任と関係があるから、その際に一緒に、その政治責任に対する統一見解を出されるときに一緒政府修正に対する政府の御認識についての見解をお示し願いたい、これを私は要望しておきます。よろしゅうございますか。
  74. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この予算編成にあたりまして、四次防は政府としてはまだ国防会議で決定してはおらない、しかしながら皆さん方から、これは四次防の先取りだ、こういうことで問題がいろいろ紛糾したこと、この経過はいまさら申し上げる必要はないように思っております。私は、それはそれなりにそれぞれに主張はあると思います。私は、そういうことで疑義を生じている、そうして混乱におとしいれたことはまことに残念だ、かように思っておりますので、疑義の生じた点についてはこれを明確にするというので修正をした、こういう経過になっておりますから、ただいま言われるように防衛庁長官あるいは大蔵大臣の説明は説明としてそのままでよろしいのですが、ただいま問題になっておる点はただいまのような点だ、かように私は理解しております。
  75. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いま私が要望した、政治責任についての見解を出される際に、政府修正についての理由も一緒に出していただきますように、委員長の御見解を承っておきます。
  76. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 この問題は適当な時期に政府見解を出すことになっておりますから、さように取り計らいたいと思います。
  77. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ではそのまま残しておきます。  そこで、国庫債務負担行為の関係の部分をわれわれは削除すべきである、ところがそうならなかった。で、私はお伺いしたいのですが、国庫債務負担行為を削除した場合と、いまのように凍結しておる場合の予算執行上の実際的効果はどう違うのですか。
  78. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは、政府の今年度の予算編成のあり方と、またこれに対する疑義が出た問題と、この両方をいろいろ勘案した結果、政府の手落ちもあることでございますので、そこでああいうあっせん案ができて、これに政府は従ったということでございますので、したがいまして、私どもはこのあっせん案を受諾したという立場でございますので、それによって頭金のほうは修正する、そうして債務負担行為の権限は残していただいた、こういうことでございますので……。
  79. 楢崎弥之助

    楢崎委員 お聞きのとおり私の質問に答えていないのですよ。いいですか。国庫債務負担行為はあなた方は凍結なさいましたね。われわれは削除せよという要求をやった。ところが凍結された。で、われわれが主張したようにもし削除した際と、いまのような状態、凍結された場合と、実際の予算の執行上どう違いがあるのですか、それをお伺いしておるのです。経過は知ってますから。
  80. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは、御承知のように債務負担行為の権限が与えられておりませば契約ができるということでございます。ただ、かってに契約ができないことになっておりますが、契約はできる、契約権限が残されておるということと、契約権限も削除されているという問題は根本的に違うと思います。
  81. 楢崎弥之助

    楢崎委員 しかし四次防ができなければ契約できないのでしょう。
  82. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この夏以後には四次防はつくるということになっておりますので、それまではもちろん契約はできないということになります。
  83. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは同じではありませんか。国庫債務負担行為を削除した、四次防ができたときに、いわゆる補正予算の中でもし復活させれば同じことになるわけでしょう。なぜこれほど固執されたのですか、凍結に。同じでしょう。凍結して何の効果があるのですか。
  84. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 四次防ができて契約権限が与えられた場合には、これは今度は予算の補正なくして契約ができるかどうか、なかなかむずかしい問題でございますが、これは政府がいろいろ努力する問題も残ると思います。これができない場合には実質上は契約ができないということになる。同じになると思いますが、またそうでなくて補正予算を待たずしてできる方法がいろいろ考えられるということなら、これは実質的に違ってきますが、これはそのときにならなければなかなかわからないと思います。契約の普通の慣例からいいまして、長期契約が頭金なしでできるということは、なかなかむずかしい問題だと私は思っております。
  85. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、やり方によったらこのままで契約できるという考えですか。またこれは長期にわたるからそうさせたい、そういう考えのように承りましたが、そうですか、そこに凍結の意味があるというわけですか。おかしいじゃありませんか。
  86. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 四次防ができれば契約はできるという一応立場になっておりますので、今度はどういう形で契約ができるかということは、やはり政府が努力すべき問題だと思いますが、私は実際にはなかなか困難だ、困難な場合には、いまおっしゃられるような補正予算がなければやれないというのと事実上同じになるかもしれません。
  87. 楢崎弥之助

    楢崎委員 かもしれないじゃ困りますよ。じゃ、まだ何とかすれば契約できるという余地が残っておるように聞こえますが、そうですか、どうなんですか。
  88. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは四次防ができて議長に確認された場合に、御承知のように長期の契約でございますので、契約は必要ときまったものは早く契約しなければなりませんので、政府としては当然契約を急ぐことをすべきであろうと思いますが、それがもしできるという状態でございましたら、これは契約することに努力するのがほんとうだと私は思います。
  89. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまのあれは、四次防が策定されない前でも契約がくふう次第によってはできる、国庫債務負担行為が凍結されて——消えておるんじゃなしに凍結されておるから、四次防が策定されないでもくふう次第によっては契約だけはできる、そういうふうに聞こえましたよ。
  90. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは間違いでございます。契約というのは四次防ができたあとで議長の確認を得た後においてしか契約はできませんが、その場合に頭金の補正予算がなくてもやれる場合があるかどうかということは政府が努力してみないとわからないということでございます。
  91. 楢崎弥之助

    楢崎委員 わかりました。初めからそう言われれば非常にわかるのですが。では四次防策定まではいずれにしても契約もできないし、もうないにひとしい、じゃ四次防が策定できるまでは、削除したと同じ効果ですね、効果としては。
  92. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 全くそのとおりでございます。
  93. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それを最初から聞いておるのでありまして、私の質問のしかたも悪かったかもしれません、反省をします。  そこで田中通産大臣、あなたは二月七日の国防会議に出られておりますね。どういう資格で出られたのですか。
  94. 田中角榮

    田中国務大臣 国防会議に出たのではなく、国防会議議員懇談会に出たのでございます。
  95. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、国防会議に出られておりましょう。
  96. 田中角榮

    田中国務大臣 国防会議のオブザーバーでございまして、採決には加われないのでございます。
  97. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ではオブザーバーとして出られた、そういうことですか。
  98. 田中角榮

    田中国務大臣 懇談会に出席をしたのでございまして、国防会議は国防会議の議員だけでございます。
  99. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私がこれをお伺いするのは、江崎さん、防衛庁当局は、私は名前は言いません、通産大臣も、官房長官も国防会議の構成員だ、その国防会議構成法の何とか何とかによってと言っていました、それないんですよ、ない。しかし防衛庁のほうは相当の幹部でそういう認識ですよ。ひとつこれは明確にしておいてください。
  100. 江崎真澄

    江崎国務大臣 議長である首相が必要があると認めれば、これは通産大臣、あの場合には科学技術庁長官も出ておりました、特に事兵器等の問題についてはやはり通産大臣とか科学技術庁長官等の意見を徴するということは妥当である。正規のメンバーではありません。
  101. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その点を——懇談会にはもちろん出られておると思いますが、しかし国防会議議員ではない、議員はもうちゃんと明確にきめられておりますから。これだけは防衛庁は徹底さしておいてくださいね。私は二、三回念を押して、返ってきたことばは同じなんです。議員だというのですよ。だからこれは明確にしておいていただきたい。  そこで、防衛計画の原案をつくるセクションはどこですか。
  102. 江崎真澄

    江崎国務大臣 原案を策定いたしまするのは私ども防衛庁でございます。
  103. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その根拠はどこにありますか。
  104. 久保卓也

    久保政府委員 その場合に防衛計画ということばも問題でありますが、防衛力整備計画でありますれば一応その所管庁が防衛庁でありますから、それを関係省庁と連絡をして事務局に上げる、事務局でそれぞれ関係省庁と連絡した議案としまして事務局が国防会議に提出する。したがいまして、原案ということばの定義いかんでもありますが、一番のもとの案は防衛庁がつくらざるを得ないということであります。
  105. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いわゆる国防会議にかける原案をつくるセクションはどこですか。
  106. 江崎真澄

    江崎国務大臣 国防会議にかける原案といいますか、防衛庁試案といってもよろしゅうございます。そういうものをつくるのは防衛庁でありまして、従来の習慣はこれを大蔵省、経企庁、外務省等々と協議をして、一応国防会議にかける、そこで原案、こういう形にしておったのが習慣であります。
  107. 楢崎弥之助

    楢崎委員 慣習はわかりました。国防会議に上げる原案をつくるところはどこか、法的な根拠は明確になっておりますか。
  108. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お尋ねの点でありますが、国防会議に諮問をする原案をどこでつくれという法律の明確なる規定はございません。同時にまた、いままでのような仕組みでやっていることが法律違反であるという根拠もございません。
  109. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたは要らぬことは言わぬでいいですよ。何言っておるのですか。だからあなたは何とか何とか言われるんですよ。あなたは政治家じゃないのですからね。聞かぬことは言わぬでいいです。だれが法律違反て言っていますか。つまりあいまいなんです、総理大臣。いいですか。国防会議にかける国防計画の原案をつくるセクションが法的に明確でない。ここにまず第一番の問題があるのですよ、紛糾の問題が。だから大蔵省がつくってもよければ、防衛庁がつくってもいいんです。日本社会党がつくって持ち込んでもいいんですよ。いや、ほんとうですよ、これは。ただ慣習がないだけで断わる権限もないのです。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)ないのですよ。ないと言っておるじゃないですか、いま法的に。だから私はここからまず明確にする必要がある。その点は総理大臣どうですか。
  110. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままでの慣習で私は一応型ができていると思いますけれども、ただいまのような御議論がございますから、それは明確にすべきだと思います。
  111. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまの点は、今度の問題のそもそもの原因はそこであったのですよ。いままで防衛庁が、長官が決裁をした防衛庁案なんてつくったものはないのです。それを防衛庁で四次防の案として決裁をして、それで自分でかってに七〇年の九月にアメリカに行って、レアード国防長官に会ってかってに発表して、あんなところから今度の問題は発展しているのですよ。だれかもう言いません、わかっているでしょう。そこに問題がある。ここにこの混乱の問題があるから、これは明確にする必要がある。ここからシビリアン・コントロールの根がくずれるのですよ。いいですか。今度の大綱は、七日の日にかけられました四次防大綱、これは国防会議にかけられたわけです。どの条項によってかけられましたか。
  112. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは国防会議懇談会でやりました。
  113. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そんな法律はないんですよ、総理大臣総理大臣は国防会議の議長なんですよ。その辺を明確にされておらぬからすべての問題が発生してくる、混乱が。国防会議の議長としてそういう答弁では、私は質問は続けられませんよ。
  114. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは国防会議に正式にかけたわけです。国の国防の大綱という条項によったわけです。(「何でかけた、もう一ぺん」と呼び、その他発言する者あり)
  115. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ちょっと待ってください。もう一ぺんいまのところを言ってください。
  116. 江崎真澄

    江崎国務大臣 当然防衛計画の大綱、重要事項ということでかけたわけであります。
  117. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、いいですか、いまのお答え防衛庁設置法の六十二条、これの五でかけられたわけですね。それを明確にしておいてください。
  118. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私ちょっと聞き違えておったわけです。それはもちろんいま御指摘のとおりであります。
  119. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると五で大綱をかけられた。六十二条の二には「防衛計画の大綱」という項があります。その大綱とは違うという御認識で五でかけられた。それはそれでいいのですよ、それなら。いいですね。−そうするといわゆる大綱なるものは四次防とは全然関係ない、そうなりますね。
  120. 海原治

    ○海原政府委員 事務的なことでございますので、私から御説明申し上げます。  かけました根拠でございますが、大綱ということばが、実は第三次防衛力整備計画のときにまず大綱がきめられまして、その次に主要項目がきめられまして、さらに所要経費と、この三本立ての決定でいわゆる三次防がきまっております。通称三次防三次防といわれましても、実はこの三つの決定を合わせまして三次防といっておりまして、今回の四次防の大綱も三次防のときと同じような考え方でございます。したがいまして、統一見解にもございましたように、引き続き主要項目その他についての御決定をいただく、こういうことになりますと、これから先の扱いでございますが、もしも三次防のときと同じようなことになりますと、大綱と主要項目と経費とその三本立てになるわけであります。したがいまして、第二号の「防衛計画の大綱」、この防衛計画の中の防衛力整備計画のまた大綱、こういうことでございまして、私どもの解釈としましては六十二条第二号の「防衛計画の大綱」ということでございます。
  121. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうするとここで総理大臣の御答弁も違うし、防衛庁長官の御答弁も違うし、一体どうなっておるのですか、佐藤内閣の解釈は。
  122. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは、私、重要事項というふうにあえて言いましたのは、いま事務局長が答えましたように、この防衛計画の大綱というものは御承知のとおり主要項目がきまり、それに所定の経費がきまって、そうしてそれが二項に適用されるという解釈に立ったものですから、私は重要事項とこういうふうに申し上げておるわけであります。したがって防衛力整備計画というものが十全なものになったときにこれが二項ということになる。
  123. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それはいまの海原事務局長の答弁とも違いますね。佐藤総理大臣総理がおっしゃったあなたの懇談会の決定においてかけたという答弁と、いまの江崎長官の答弁と海原事務局長の御答弁と全部違うのですが、総理大臣、どれが正しいのですか。まず総理から御見解を承りたい。
  124. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも経過を説明したのがたいへん混乱を来たしておるようです。私は、懇談会にかけて、そしてその後に正式の国防会議を開いて決定した、かような状態でございます。先ほどの説明が不十分でございました。
  125. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、総理としては、いま江崎長官の御解釈をとられるのですか、国防会議事務局長の御解釈をとられますか。
  126. 江崎真澄

    江崎国務大臣 どうも私の説明が不十分でございましたから、これは取り消しまして、防衛計画の大綱は、二項の大綱の一部である、こういうことに訂正をいたしたいと思います。
  127. 楢崎弥之助

    楢崎委員 委員長、お聞きのとおり、この程度のことすらこんなに混乱しているのです。これで一体、シビリアン・コントロールの云々と言えますか。ほんとうにこれでは、こういう答弁が続くようでしたら、私は質問を続けられませんよ、ほんとうに。一々こんなに違ったんじゃ……。  では、総理大臣、最終的に、議長ですから、どの解釈でいかれますか。
  128. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 海原事務局長の説明のとおりでございます。ただいまここにはシビリアンばかりでございまして、ただいまのような制服はおりませんから、御安心の上御質問してください。
  129. 楢崎弥之助

    楢崎委員 つまり、防衛庁設置法六十二条第二項による防衛計画の大綱の解釈は、たったいま確定したのですね。それは、大綱及び項目及び諸経費、これを全般を合わせてあの二項による大綱という、そういうことになりますね。
  130. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  131. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そういう解釈でいままでは、三次防まではやられたと私は思います。したがって、先般出された四次防大綱なるものは、あの六十二条の二項にいう大綱とは違う。だから防衛計画は、もちろんないわけであります。  そこで、いろいろ問題点がございますが、四十七年度の自衛隊の業務計画というのがありますね。大蔵大臣、四十六年八月、つまり概算要求を大蔵省に防衛庁がした際の基礎になったその四十六年八月作成の業務計画、きのういただきました四十七年二月の業務計画、項目は全然同じですね。ちょっと違うだけです。つまり正面兵力については全然同じ。いいですか、中身は同じなんです。そして四十六年八月の業務計画、大蔵省に出された、これで大蔵省は査定したのです。このときにこの項目はどういう位置づけがなされておるかというと、第四次防衛力整備計画の初年度として着実にその実施を始める必要があって、その第四次防衛力整備計画の構想に基づいてこの八月のやつは作成された。ところが、昨日いただいたこの業務計画——項目はもう九九%同じなんです。ということは、あなたが何と言おうと、資料から見ても、すでに四次防の先取りが完全に行なわれておるということです、四十七年度編成で。いいですか。  もう一つ伺いしましょう。  T2の価格十四億一千万、これは二十機分の価格ですか。四次防に予定されておる八十機分の価格ですか。つまり、二十分の一の価格なのか、八十分の一の価格なのか、十四億というのは。どうなんですか。
  132. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまの、二月に出れれたこの防衛庁の説明は、まだ大蔵省で、現在のところ聞いておらないそうでございます。これから聞く問題だそうでございます。  それから、いまの単価の問題は事務当局から説明します。この査定の問題は事務当局から説明します。
  133. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 お答え申し上げます。  本年度、四十七年度予算に採用いたしておりますT2の購入単価は、二十機分の平均単価でございます。
  134. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、八十機になったら当然、常識ですと安くなりますね。
  135. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 八十機にかりに決定されました場合には、今後発注いたします分の単価は下がってまいると思います。
  136. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまの点はしかと承っておきます。下がりますね、八十機のときには。
  137. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ただいまの二十機分の単価が直ちに変わるという意味で申し上げたとすれば、若干説明が不足でございまして、二十機のあとに追加して発注いたします分は、当然下がる要素が出てまいると思います。ほかに材料費その他のいろんな問題がございます。
  138. 楢崎弥之助

    楢崎委員 十四億一千万の積算基礎をひとつ明確にしてください。
  139. 黒部穰

    ○黒部政府委員 十四億一千四百万円の中には、裸の価格といたしまして十二億七千八百万円、これに初度部品を加えまして十四億一千四百万円になるわけでございます。  積算根拠は、もちろん私どもとしては精密に積み上げて、さらに査定を受けたわけでございますが、この積算根拠の内容をいま直ちに公開の場で申し上げますと、実はこれが、機体が幾ら、エンジンが幾ら、搭載の機器が幾ら幾らというふうになっておりまして、それぞれ発注業者が違うわけでございます。そこで、この中で契約いたします場合に、公の数字をあらかじめ与えますと、もし許されまして契約に入る場合には、業者との間の商議、ネゴシエーションに非常に困難を来たしますので、内容については詳細を申し上げることができません。
  140. 楢崎弥之助

    楢崎委員 一機十四億一千万が妥当かどうか、どうしてわれわれは判断を下したらいいでしょうか、総理——いや、総理に聞いている。
  141. 江崎真澄

    江崎国務大臣 ちょっと私先にやって、あとから総理……。  御指摘の点は、いま防衛庁の装備局長が申したとおりだと思うのです。商社の利益にプラスするようなことになったのでは、やはり政府側としてまことに困るわけでございまして、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━これはやはり政府としてマイナスになる、相手方商社のプラス戸なるということが歴然といたしまするので、ごしんぼうをいただきたいと思います。
  142. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしたら、われわれは全然、この十四億円が妥当かどうか、当予算委員会としては判断の下しようがありませんね。われわれ予算委員は、どういう審議をすればいいんです。  それでは、もうちょっと進めますが、十四億の中で機体が幾らとか、エンジンが幾らとかいうのは、それは業者は全然タッチしていませんか。
  143. 黒部穰

    ○黒部政府委員 こちらのほうで積算をいたす前に、もちろんいろいろの資料はとっております。それからまた、実用試験機二機をすでに発注いたしておりまして、これの製作にかかっておりますから、材料がどのくらいかかるか、工数がどのくらいかかるかということは、いつも原価監査いたしております。その実績をもとにいたしまして、積み上げ計算をいたすわけでございます。
  144. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、今度は観点を変えてみましょう。  四十一年に国産化か輸入かが争われた。そしていろいろな怪文書まで飛んだ。われわれ持っています。それほどこれは政治問題化した。そのときに、国産派は一機四億ないし五億でできるということで、国産化がきまった。一機四億の場合の積算基礎というのは、いまはもうすでにない価格ですから明らかになりますね。
  145. 黒部穰

    ○黒部政府委員 四十一年当時、輸入か国産かという問題を研究いたしましたときに、輸入の候補でありましたT38、あるいはそれを改造いたしましたFsBというのがございますが、これが四億とか五億とかいわれておりましたので、およそこれに匹敵する値段でという話はございましたが、私どもは試算いたしておりません。  四十二年になりまして、これも基本的な要目をきめないうちでございますが、およそ目の子といたしまして、ほぼ六億ぐらいかというような数字はございます。
  146. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それば違いますよ。あなた方の資料があります。六億じゃないんです。あなた方は、そのときの輸入機の対象になっておった米国製のノースロップ社丁38、これが戦闘機になってF5、これのそのときの裸価格が四億ないし五億でしょう。それと見合うということで、国産しても四億だということを出して、そして争ったじゃありませんか。そうして、その四億が四十五年、つまり中曽根原案をつくる際の四次防の予算の基礎になったときには、見積もりが一機十億。そして今度出された予算を見たら十四億。何ですか、これは。そして、十四億になった積算基礎は言えないと言う。これはあなた方のふところ金じゃないんです。きざな言い方かもしらないけれども、国民の税金なんですよ。そんなずさんな見積もりで国産化を決定して、国産化が決定した以上は、もうどんどんあとは業者の言いままの値になっている。私はそれを実証していいですよ。  いま防衛庁長官のおことばでは、公開の席ではできないと言う。この中に含まれておるエンジンの価格は、いま大蔵省は二十機分の価格だと言うけれども、少なくともエンジン価格は、エンジン三百基のときの価格を出しておるんですよ。エンジン三百基とは、T2が何機分ですか。二・四、つまり一機に二基づけます。そして予備が〇・四、大体二機について一基の予備エンジン、それでいくと百二十機分のエンジン単価が出ておるんですよ。あなた方は八十機分ないし百二十機分、ないし支援戦闘機——このT2を改造してFSにする。そこまで入れると二百六分の一の価格なんだ。つまり四次防を先取りしているのですよ。私は証拠を出しますよ、公開の席上でよければ。私は委員長のその御判断をいただきたい。
  147. 江崎真澄

    江崎国務大臣 御指摘の点でありますが、これは先取りというわけではないのでありまして、いろいろ原価計算をしていく上に、将来考えられるもの、そういったものを想定しながらいくということは、これはやはり習慣上お認めがいただけると思うのです。  また、いま、この積算基礎について、機体であるとかエンジンであるとか、それぞれ分けて言えということでありますが、これはさっき申し上げたような見地から、言うことはできません。どうしても言えとおっしゃるならば——このことについては、私も赴任以来、日は浅うございまするが、十分調査しておるつもりであります。また部下においても、根拠をもって相当シビアに計算しておるというふうに私は認めておりまするので、ほんとうに秘密が保たれる、国会の権威において秘密会が行なわれるというのであれば、これはやはり、これだけの話題を提供した問題でありまするから、政府側の正しい根拠というものを説明する上から、応じてもいいと思います。
  148. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この決定については非常に政治的な要素があった。私はそれを明らかにすることができる。  さらに、今度のこの先取り問題で、四次防の初年度をどうしても四十七年度、本年度としなければならないと固執されたその理由の一つに、政産軍癒着の問題があるのですよ。どうしても四十七年度から始めなくては企業が困る、企業に奉仕しなければならない、その問題があるのです。特にこのエンジンの変動についてはひど過ぎる。  さらに、防衛庁長官——あなたの時代じゃありませんけれども、装備の制式に関する訓令というものがある。これは実用試験を終えなくては、これを採用するかどうか装備審議会にかけられない。今度の予算編成では、装備審議会にかけもせずに、もう二十機というものが量産体制に入っている。いいですか、いま実用段階にある。昨年十月ですか、この試作機の一号機は、左側のエンジンがとまって、片肺であぶなく着陸したじゃありませんか。そのときに、どうしてそうなったか、原因不明なんですよ。公開しておらぬでしょう。さらに、この同じエンジン、アドーアを使った仏軍のジャガー、これは四十五年にエンジントラブルで落ちておりますね。だから、これはまだ右のものとも左のものともわからない。ところがあなた方は、研究開発して金を六十億かけた。それだけかければ、当然これはもう量産に持っていく。本来、研究開発と量産は違うはずですよ。非常に問題のあるところです。だから、もう一ぺん、国産化か輸入かの問題が起こるかもしれない。また、ポスト佐藤のいろいろな問題もこれあり、これはいろいろな政治的の要素があるんですよ。  だから、私は、この価格の問題だけは明確に詰めたい。この際詰めなくては——いままでこういうことはなかったし、シビリアンコントロールの問題もありますからね。シビリアンコントロールで一番力があるのは予算なんですよ。金がなくちゃできないのですから、当予算委員会のシビリアンコントロールに果たす役割りたるや重大なんです。したがって、このほかの新装備もありますけれども、特にT2に関して、これを例の一つにして徹底的に詰めてみたいと思います。長官の御発言もこれあり、どうしたらいいか、ひとつ委員長の御判断をお示し願いたい。
  149. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 楢崎君に申し上げます。  この問題、きわめて重要だと判断をいたしますから、理事会においてその取り扱いを協議することにいたしたいと思います。
  150. 江崎真澄

    江崎国務大臣 ただいま楢崎さんの御要望でありますが、これは当然委員会の問題でありまするので、委員長及び理事会の御決定に従ってまいりたいと思います。  一言申し上げますが、四十七年度にわれわれが発足させようといたしましたのは、すでに年末の段階で、年度内に四次防を策定するという見解に立っておりました。これが経済の問題、諸般の事情等によって延びたわけで、くどい話はいたしませんが、そこで、防衛の問題には、整備段階でもあるし、空白があることは望ましくないということで、四十七年度を初年度にすることのほうが自然である、またそれが必要である、こういう見解に立ったわけであります。  それから、さっきの、何となく産軍癒着の憂いありというようなお話でありましたが、私は、この実験飛行それから技術飛行——実用試験とも技術試験ともいいますが、従来世界的に見まして技術試験、これはきわめてデリケートなところを生産段階を踏まえながらやっていく。それから実用試験については、完全実用をする場面でこのことを位置づけていく、精査していく。そうして、もし悪い点があれば、やはり量産体制の中にこれを反映していく、こういう習慣になっておることは御了解を願っておきたいと思います。
  151. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまから実用訓練、あと二年間かかりますが、いまマッハ一・三くらいしか出てないでしょう、目標の一・六までまだいっていないでしょう。これからどんどんやるのです。必ず欠陥が出てくる、残念ながら。だから欠陥機になるかもしれない。問題は、とにかくあなた方のやっておることは、防衛力整備計画ではなしに、全く防衛産業整備計画なんですよ。  そこで、これは重要な問題だから、理事会の決定が出るまで、私はこれ以上の質問はやめます。保留をさせてください。  委員長の御見解をいただきたい。
  152. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 重ねて申し上げますが、ただいまの問題については、その取り扱い理事会で協議いたしまして決定いたします。
  153. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは理事会を開いてください。
  154. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 理事会を昼の時間にやりますから、そのあとの質疑は保留されてもけっこうですから、質疑を続けてください。
  155. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、これに関連があるものをいまからやるのです。冗談じゃないですよ。
  156. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 それでは、理事会を開会するため暫時休憩いたします。    午前十一時五十六分休憩      ————◇—————    午後一時十六分開議
  157. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 休憩前に引き継ぎ会議を開きます。  午前の楢崎君の質疑中問題になりました点については、明日秘密理事会を開いて協議することといたします。  楢崎君の残余の質疑は、適当な時期に許すことといたします。  総括質疑を続行いたします。安井吉典君。
  158. 安井吉典

    ○安井委員 私は、この与えられた二時間で、外交、防衛、沖繩問題、物価、地方財政の問題等を順次取り上げてまいりたいと思いますが、御協力を願いたいと思います。  その前に、中村国家公安委員長に、要望やらお尋ねやらしたいことがあります。  一つは、この間の浅間山荘の連合赤軍の事件でありますが、あの警備のやり方等につきましては、私も意見がないわけではございませんが、きょうは触れません。とにかく警察はたいへんだったと思います。特に、殉職警官の遺族に対する処遇、また、たくさん負傷をされた警官がいるようでありますが、その治療や生活保障には万全の措置を講じていただきたい、そのことをひとまず要望を申し上げておきます。  次に、今度は逆なケースになるわけですが、昨日、東京駅丸の内北口におきまして、春闘共闘委員会のデモに対して、右翼の暴力団が、殺人の疑いさえあるような、自動車でデモ隊に突入をして重傷を負わせたという事件がございますが、警備側でこれについて持たれている情報、これに対する措置、それをまずお聞かせをいただきたいと思います。
  159. 中村寅太

    中村国務大臣 第一点の、浅間山荘における殉職者に対する処遇、措置でございますが、これは事案の内容からかんがみまして、現行の各種規定の最高の処遇をしたい、こういうことでいま進めておる段階でございます。  けが人等に対しまして、病院に入っておる人たちに対しましても、できるだけ手厚い処置をしたい、こういうふうに考えております。  それから第二点の、昨日東京駅頭で起こりました事案でございますが、これは私は、浅間山荘の事件が起こりまして、あれを一応終結しました時点で、今後いろいろ国民の中に、左右両派の争いというようなものが不測の事態を起こすことのないように、特別に警察当局としては全国に指令を出して、用心をするようにという指導をしておったのでございますが、昨日はああいう事件が起こりまして、非常に遺憾に存じておる次第でございます。警察といたしましては実態をよく調査させまして、厳重に不正な点は捜査の上処分をしたい、こう考えております。警察が何か一緒になって、ぐるになっておるようなことを言う面もありますが、そういう点は毛頭ございませんし、これは私はかねてから注意をいたしておりまして、警察は厳正、公正な立場ですべての問題に対処しなければならぬと注意しておりますので、そういう点はないと思いますが、さらにいろいろ調査をいたしまして、問題の実情をよく把握して、そうしてできるだけ早い機会に適当な処置をしたい、かように考えております。
  160. 安井吉典

    ○安井委員 私のところに調査報告書が届いているわけでありますが、大臣からはあまり詳しいお話がございませんでしたから、この報告書によって当時の模様を申し上げます。  まず、その春闘デモ隊約二千人ぐらい、それが国鉄東京駅前で解散をするというふうなことでそちらに集結中、つまりデモ行進のおしまいの段階であります。その隊列に対して黒塗りジープ風の車が、殺してやるなどとスピーカーでがなりたてながらジグザグに突入してきた。この車の正面には、「学生青年純正同盟」「学純同宣撫隊」とあり、横のほうには、「青年皆兵制の実施」「屈辱亡国憲法廃棄」総責任者大場俊賢としるされていた。その後その車は、東京駅の北口と国鉄本社前の交差点を、あそこはUターンが禁止されているわけですが、それを交差点を通ったところでUターンをして、赤信号のため北口寄りに一たん停車をした。つまりそこでUターンをしたのも、その交通整理に当たっていた制服警察官は何ら規制をしていない。ところが、信号が青に変わるやいなや車はいきなり発進をして、約四十キロのスピードで隊列に突入をしてきた。組合員は左右に逃げようとしたが、大阪の田辺文久氏、四十二歳、この人は全金属大阪城北地協の帝国金網支部執行委員であります。で、この人は車の前面で顔、からだのまつ正面を激しくぶつけられ、首を前に足を棒のようにして宙に浮き上がり、そのまま路面にくずれ落ち、右肩を下に首を曲げ足を少し縮めたかっこうで倒された。ところが、車はそこで一たんとまってから再び発進を始めて、倒れている田辺氏の上にのしかかり、車の前輪と後輪と両方でからだ全体をひいた。車は踊るようなかっこうでごとっごとっというような音を立てたようで、走り去った直後田辺氏はころっころっと回転をし、からだの位置が、最初ぶつけられて倒れたときと反対の方向に横たわっていた。車はそのままジグザグに走り抜けていったので、組合員は大ぜいでこれを追いかけ、ようやく赤信号で停車しているところを包囲して警察官に渡した、こういうことになっているようであります。  ですから、単なる傷害事故ではなしに、警察官がいる前でのこういう暴行事故であるだけに、警察のほうは傷害暴行行為、道交法違反で現行犯逮捕したというふうに言ってはおられるが、右翼と警察のなれ合い暴行ではないかと興奮して言う人もいたというふうに報告が参っております。ですから、合法的に行なわれる民主団体のデモ、これには過剰なほどの警備をしながら、どうも右翼に対しては甘過ぎるのではないか、こういうふうな批判があるわけでありますが、どうでしょうか。
  161. 中村寅太

    中村国務大臣 きのうの傷害事件の実態でございますが、これはいま警察のほうで厳重に捜査をしておりますので、私から具体的に申し上げるということもどうかと思いますが、いま安井さんのおっしゃった点は、おそらく現場におった人たち意見等を総合なさった点であろうと思いますが、これも一方、やはり被害者のほうの立場の御意見であると思いますから、それが私は違っておると言うわけじゃございませんが、警察は厳正な立場でいま現場の、あるいは現場に立ち会っておった人たち意見等も徴して、正しい線をつかむことに努力をいたしております。  それから、右翼とのなれ合いというようなことは毛頭ございません。こういう非合法な暴力行為というようなものは、左であれ右であれ何人といえども許されないことであるという観点に立って、警察は厳正な立場で厳重にそういうことの起こらないように努力をしておるわけでございますから、御理解願いたいと思います。
  162. 安井吉典

    ○安井委員 大体そういうお話を承ってわからないではありませんけれども、私は特に申し上げたいのは、この間の連合赤軍の行動は、これはまさに民主主義の敵だし、特にその非人道的な行為は全く許しがたいと思います。しかし、いまのこの右翼の行動やスローガン等から見ても、これはまさに暴力思想が中心の行動隊であって、これこそまさに民主主義の敵であるということには変わりありません。そしてまた赤軍の事件が、おそらく右翼を非常に刺激をしているのではないかと思います。だからあの事件のあと右翼が何をするかしれない。私は、当然警察はそういう行動に対する警戒というものをし、そういう態度で処置していなければならぬと思うのでありますが、いまの報告を見ますと全く野放しにしている、こういうことであります。特に、現場において警察の側に落ち度があったのかないのか、これはやはりはっきりと調べておいていただきたいと私は思います。そして二度とこのような事件が起きないように、国家公安委員会では警察庁を十分指導をしていただきたい。どうでしょうか。
  163. 中村寅太

    中村国務大臣 浅間山荘の事件が終わりまして直ちに私は、いま安井さんがおっしゃるように右翼その他の、この事件に対する挑発から、不測の事態が起こることのないように、すみやかに警察としては手配をして用心をするようにということで、これは全国に指図をさせておったのでございます。  それから、きのうの事件でございますが、あれは全く予測しないことで申しわけもないと思いますが、やはり右翼に対しましても、こういう時期でございますから、警察といたしましては事前にそういうことの起こらないように、目を配って十分注意をしておる段階でございますけれども、昨日は突然ああいうことが起こりました。そこで現場をよく調査させまして、警察に落ち度があれば落ち度をよく見定めまして、今後落ち度のないように十分配慮することはもちろんでありますが、さらにきのう安井さんその他皆さんの代表者等から私にいろいろ要請がございましたので、けさほど警察庁に、全国に手配をして十二分の注意をするようにという指図をいたして、こういう不測な事態が起こらないようにという配慮をいたしておるところでございます。
  164. 安井吉典

    ○安井委員 それでは、次に物価の問題から入りたいと思います。  特にことしの物価問題は、いわゆる公共料金の軒並み値上げというところに一つの大きな特徴があると思います。経済企画庁で調べていただいた資料でも、すでに値上げをしたものは、郵便料、医療費、六大都市のタクシー運賃、電報料金。値上げを予定しているものでは、国鉄運賃、国立大学の授業料、国立幼稚園授業料、高等学校教科書、電話料金。それから地方自治体の決定によるものでは、公立高等学校授業料。また、値上げ申請が提出されているものには、国内航空運賃、営団地下鉄運賃、東京都区内乗り入れ民営バスの九社運賃。そのほか、この表にはまだ申請が出ていないということで載っておりませんけれども、公営バス料金、公営地下鉄料金、公営路面電車の料金、ガス料金についてもすでに値上げの作業が始まっているのは御承知のとおり。そのほか一部には電力料金の値上げも予想されるのではないか、あるいはまた水道料金の値上げも相次いでいます。このほか、きのうも取り上げられました消費者米価、これは上がるのか上がらないのかわかりませんが、上がらないと政府は言っているけれども、私どもは上がるのではないかと思う。数え立てますとこんなにたくさんあるわけです。  ですから私は、物価のお目付役である経済企画庁長官に伺いたいわけでありますが、ことし値上がりをしない公共料金はどんなのがあるのか、これが一つ。  それから、この値上がりによって消費者物価指数は昨年よりどれぐらい全体で上がるのか。  それから第三点、これらの値上がりによって国民の支払うお金、言いかえると事業体の増収額でありますが、これはどれぐらい増加すると推計されているのか、これをひとつまずお答えいただきたいわけです。
  165. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 まず第一点のお尋ねでございますが、経済企画庁といたしましては、もうすでに値上げが決定しておりますもの、これは予算的に決定しておるものを含めまして、次に値上げを大体予定されておるもの、これについては御説明ができますが、値上げが全然まだ予定されていないもの、報道その他でいろいろ取りざたはされておりますけれども、そういうものについては、私どもはまだ値上げがないものと見ざるを得ません。そういう意味において、いま御指摘になりました、すでに値上げが予算的にも決定しておるもの、すなわち郵便料、これは御承知のとおり、もう昨年六月に国会を通していただいております。医療費、これは今回の国会で予算措置その他もありましょうが、それと別に、すでに二月一日に診察料がきまったわけでございます。六大都市のタクシー料金、これは公共料金といいながら私企業でございますから、これは法律、予算と関係ございませんが、これはすでに二月五日に値上げが決定しております。実施されております。電報料金は、御承知のとおり昨年六月にすでに国会でおきめ願ったとおりでございます。  次に値上げを予定しておるものは、国鉄運賃、これは予算的には決定いたしましたが、この値上げについては、この国会で御審議を願う国鉄運賃法の改正によって御決定になることでございます。国立大学授業料、これは予算的にもすでに決定して、この予算に計上されておるものでございます。  そうこういたしまして、これらのすでに値上げが決、定あるいは予定されておりますものは、いま申し上げたとおり、国鉄運賃あるいは国立大学授業料、これは法律的にあるいは予算的にこれからきめられることでございますが、それを含めまして、消費者物価に及ぼす上昇寄与度といたしましては、数字的に申しますと、国鉄が〇・三四、タクシーが〇・〇七、医療費が〇・二四、国立大学授業料が〇・〇三、郵便料が〇・〇四、電報料が〇・〇一、全部総体合わせまして〇・七三。  これがその各企業体の増収にどれぐらいなるかということは、裏返せば国民に対する一つの負担の実態になるわけでございます。なかなかこの計算は、非常に困難でございますが、非常に大胆にこれを試算してみますと、大体年間六千八百四十一億、こういう数字を試算しております。
  166. 安井吉典

    ○安井委員 ことし値上がりしない公共料金は何ですかという御質問お答えはありませんでしたが、どうですか。
  167. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 これは最初にお答えしたつもりでございますが、私どもでは、申請ないしすでに決定したもの——予定されておるもの等の申請のないものについては、いまだ値上げしないというたてまえでおります。
  168. 安井吉典

    ○安井委員 そのたてまえが私は問題があると思います。つまり、申請がある前にいろいろな作業が実はあるのですよ。ですから、その段階でチェックするものはチェックするということにしなければ、抑制というものは非常にむずかしいのではないかと思います。しかし、いずれにいたしましても、私は、いま長官がおあげになった以外にも、さっき私自身こういうのがあるじゃないかと申し上げましたように、公共料金という名のつくもので、おそらく値上げの対象にならぬのはことしはないのではないでしょうか。そういう異常な状態というのが、ことしの物価問題、公共料金の値上げ問題の特徴ではないかと思います。佐藤さんはことしもうおやめになるかもしらぬというので、公共料金の値上げ、これはなかなか、それを処理される立場からすれば評判が悪くなる問題ですから、あまり自分の責任でポスト佐膝の皆さんも、佐藤内閣は国民の支持率はあまりよくないわけですから、できるだけ佐藤さんの時代にみんな上げてしまえ、こういうようなわけで、公共料金の値上げは全部一ぺんにことしに持ってきたのではないかとさえ考えられるわけです。佐藤さんが退陣をされる置きみやげと言ったりなんですけれども、あまりいいたとえじゃありませんが、イタチの最後っべといわれますね。最夜の退陣の際に、国民の全く耐えがたいような異臭をここで残して、何もかも佐藤さんに預けてしまおう、こういうふうな政府・自民党の態度ではないかと私、勘ぐらざるを得ません。その悪臭を発するために担当されました閣僚が、そこにずらっと並んでおられるわけです。運輸大臣、厚生大臣、文部大臣もそうですし、自治大臣もかんでいるし、あるいは農林大臣も消費者米価の問題で、ことによればその悪臭に関係をお持ちになるかもしれない。何よりも大蔵大臣、それから企画庁長官、こういうふうな責任者がおられるわけであります。  私は、先ほどから申し上げておりますように、こういう事態は、いままで値上げを抑制してきたのだから、それを抑制しきれなくなって手綱を放した、それで一斉にことし偶然なってしまったのだ、おそらくそういう弁解が戻ってくるのではないかと思います。しかし、公共料金の値上げは、諸物価のつり上げの先導役になるということはいままでよくいわれているとおりで、全くそのとおりであります。ですから私は、ことしのように何もかも公共料金を一ぺんに上げるというそういう姿勢の中では、この内閣は物価問題に対して、ほんとうにそれを解決しようという熱意がないのだということを白状したようなものではないか、そう思うわけであります。景気回復はもちろん大切でありますけれども、その陰に物価対策を放置した、これは私は困ると思うわけであります。こういう事態について総理はどういうふうにお考えでしょうか。
  169. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 安井君からたいへん率直な御批判をいただきながら、ただいまの物価問題に政府の取り組む姿勢、これをただされました。私は、申し上げるまでもなく物価問題につきましては、いままでも申しておりますように、公共料金、これはもう政府がきめ得ることでございますから、そういうものが先導的な役割りを果たすようではいけない、できるだけ抑制する、こういう立場でこれらの問題を取り扱っておるつもりであります。しかし実情は、ただ抑制というばかりでも問題は片づかない。ただいまもお話がありましたが、景気回復も大事だ、こう言われますが、やはり景気が回復し経済を正常化する、そういうための必要なる処置は、政府は非難を受けながらもやはりやらざるを得ないのではないか、かように私は思います。  私は、ただいま公共料金、それらのものが軒並みに上がると、国民といたしましてはたいへんな問題だと思います。よしそれが物価の寄与率として〇・七三というような率でありましても、私は、とにかくその他間接的な影響等を考えると、これは並みたいていのものではないと思います。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕 しかし、こういう事柄によりまして経済が正常化される、こういうことに役立つなら、案外国民も理解していただけるのではないだろうかと思います。  そこで、この公共料金を、一口に公共料金の引き上げ、かように言われますが、これを上げるについては、それぞれの手続、手順を踏みまして、国民の理解を得ることに最善の努力を払わなければならない。国民が理解し、そうしてこれが納得のいく上で公共料金が改正されるなら、その非難はよほど軽減されるだろうと思います。一方的に、ただいま言われるように、佐藤が退陣するだろうから、そういう際に全部を行きがけのだちんというか、そういう意味でみんな片づけていくのか、こういうような原則のない考え方でこういうことをやれば、国民は必ず強い批判として、政府といわず政党に対しての批判が出てくる、かように私は思いますし、民主政治のもとにおきましては、何といっても国民の意向を十分踏んでしかるべくこれらのことがなされなければならない、そういう意味の安井君の御叱責でもあり、また同時に政府に対する御鞭撻でもあるのではないだろうか、かようにただいまの質問を受け取ったのであります。まあ問題は、いろいろ上げざるを得ないような状況になっておる、たいへん残念に思っておりますが、それらの点について国民の理解を得る、こういうことについてさらにさらにわれわれは最善を尽くしていきたい、かように思っておる次第でございます。
  170. 安井吉典

    ○安井委員 いま総理からお答えがございましたけれども、何もかもというのではなしに、このうちの幾つかだけでもその悪臭を消す方法をお考えになってもいいのではないか。少なくともそういうふうな措置があってもいいのではないかと思うわけでありますが、そこで私は、公共料金の値上げ抑制、これを上げなくても済むという方法をもう少し政府は真剣に探求をしてもらわなければいけない。そしてまたそのためにはお金が要るんですよ。そのお金の支出も当然やってもらわなければいかぬのではないか。そういうことを次に交通料金を例にとって申し上げてみたいと思います。  特に国鉄と都市交通の問題でありますが、国鉄の運賃値上げの問題、これは大きな累積赤字をかかえていて再建に迫られている。おととしも去年もいろいろやったがみんな失敗。そこで、運賃値上げ、地方閑散線の撤去、人員合理化等を条件として、政府がとにかく金を出して再建をしよう、こういうふうな案になっているようであります。私はこれも、政府のお金をもっと多額に出すことができれば、閑散線の問題にいたしましても、とりわけこの運賃の値上げにいたしましても、こういうふうな形にはならなかったのではないかと思います。いままでよりも相当多額な出資や融資等が行なわれているということは、私もいろいろ資料をもらってわかります。わかりますけれども、そのかわり、ことしの値上げだけではないわけですね。ことし上げて、五十年度に上げて、五十三年度に上げて、五十六年度に上げて、それから五十九年度と、とにかく三年おきに上げていく。そうなると、十年後にはいまよりも国鉄の料金は倍くらいになるのですね。だから、そういうふうな国民負担を大幅にふやすことで、あるいはまた十一万名ものなま首を飛ばすのかどうかわかりませんけれども、合理化を進めるというふうなことをてこにしてやろうという、これはもう非常に大きな無理が私はあるのではないかと思います。  これも、諸外国の例も調べてみても、たとえば西ドイツにいたしましても、一九七〇年には、戦災復旧負債の百五億マルクを全額政府が元利の引き受けをする、政府は経営外負担について全面的な補償をする、通勤通学輸送の欠損は政府が補てんをしてやる、その他きめこまかな対策があって、いわゆる国有鉄道ですから、国が責任を負うのだ、こういう姿勢がはっきり出ています。英国の鉄道公社にしても、六三年の創業資本負債一兆三千四百九十六億円、これは相当な額だと思うのですけれども、その停止負債の六千億円は切り捨てて、利子つきの負債七千億円余りはただの二千六百億円くらいに削減をする。だから、一兆三千億円もあった負債をただの二千六百億円まで政府が全部責任を持って減らしてやる、赤字補てんのためには毎年一千億円以上のお金を出していく。これで初めて国民の国鉄という立場が貫かれているのではないか。国が全部施設をして、独立採算制でやりなさい、しかし出た赤字も国が見てあげます、これはまさに日本と比べると月とスッポンです。だから、ここまで私は一ぺんにやれとは言わなくたって、もう少しやりようがあるのじゃなかったろうか、こういうことであります。運輸大臣、だいぶ苦労をされているようでありますが、ひとりお考えを伺っておきます。
  171. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいま御質問がございました。大体そのとおりでございまして、御承知のとおり、国鉄といたしましては、四十四年に国会の御審議をいただきまして、そうして国鉄の財政再建整備の促進法を成立さしていただきました。国からも幾ぶんの補助をする、それから料金も引き上げていただいた次第でございます。もうすでに御承知でございますからあれでございますが、予想以外のベースアップ、あるいは経済社会構造の変革によりまして、貨物輸送の伸び悩み、こういうようなことで相当ひどい赤字になりまして、このままほっておきますると、本年度におきまして、四十四年の方式をとりますると、償却前に千七百億からの赤字になる、こういうことでございまして、また一面におきまして、国民の陸上交通の大動脈としての期待も相当強い次第でございまして、国民に対しまして良質の輸送サービスを提供するためには、思い切ってやはり投資もしなくちゃいかぬ、こういうような問題がございまして、いろいろの方面を勘案いたしまして、この際思い切った政府の出資、そうしてきびしい企業努力、そうしてまた国民の御協力という問題点を三本の柱といたしまして、今回そういったような運賃法の改正、あるいは再建促進法の改正案を御審議願うことにした次第でございます。  ただいま先生御指摘の諸外国の例でございますが、諸外国の例にいたしますると、やはり走行キロは、ドイツにいたしますると日本が二万一千キロに対しまして三万キロの輸送をしておるとか、いろいろの問題がございまして、アメリカのごときは日本の十倍の輸送キロを持っている、こういうようなことでございますので一がいにまいりませんが、大体におきまして、いまの、イギリスであるとか、西ドイツであるとか、フランスであるとかいうものは、いままではやはり財政が非常に悪化してまいりまして、それのたな上げであるというような方面に力を入れてやっている次第でございます。  私どもも、この半年におきまして、各党から委員が出ていただきまして、運輸委員会の国鉄小委員会におきましていろいろ論議をいたしました。いかにすれば国鉄再建ができて大動脈としての使命を果たせるかという問題につきまして、もう各党でもっていろいろ御審議をいただきました。もちろん、運賃を値上げをするというようなことにつきましては御反対の点もございますが、いろいろ御審議を願いましたが、大体におきまして、三兆にのぼるところの赤字をいかにするかということが論議の一番大きな焦点になった次第でございまして、そういったような点も見まして、赤字に対しまして利子補給を全額するとか、あるいは孫利子方式でいくとか、いろいろの議論がございますが、今回は、その赤字補てんだけでなく、やはり積極的に都市交通間の線増をする、大都市への通勤輸送の線増、あるいはいろいろのサービスの改善をするとか、あるいは新幹線を、今日の要望でございますからもっとふやすとかいうような方面に思い切った力を入れて、それとともに、利子のつかない政府出資を思い切ってやろう。御承知のとおり、いままで国鉄が公社になりましてすでに二十年以上になりますが、その間に八十九億円しか政府の出資はなかった次第でございます。昨年三十五億円の新幹線についての出資があっただけでございますが、今回は何と全体におきまして六百十六億円の出資をいたす。それからまた、三兆のうちの二兆円は完全に十年間たな上げをする。その孫利子は全部国で見る。それから子利子につきましても、これは全部政府管掌債務で見ていただく。こういうふうなことにいたしまして、十年間はこれはもう完全に凍結をする。それで、線増その他、要するに良質サービス、また貨物につきましてはいろいろの輸送方法の改善をする。  こういうようなことをいたしまして、この際はひとつ思い切った方法で御審議を願いまして、そうして国鉄の再建をやっていきたい、こういうふうに思っている次第でございまして、私どもも、諸外国の例もとりましてやりましたが、今回の方法でやってまいりまして、これからの御審議でございますから、どういうふうになるかわかりませんが、具体的になりますると、十年間で国の出資だけでもって約一兆、それから利子補給であるとか、そういったようなものの費用、あるいは地方閑散線に対するところの国並びに地方団体の費用負担というようなものを勘案いたしまして一兆、約二兆の国の出資を見ました。財投の方面におきましても、建設線につきまして、大体におきまして、この工事費につきましても七兆に及ぶような良質サービスをして、それでこの際やってまいりたいということでやってまいりまして、そのかわり、やはり利用者のほうにも御負担を願いまして、この際十年間で、皆さまの格別な御指導をもちまして、国鉄がりっぱな陸上輸送の動脈としてやっていけるような措置をぜひとりたい、こういうことでお願いをしている次第でございます。
  172. 安井吉典

    ○安井委員 私が申し上げているのは、あの大国鉄に対して出資金というのがたった八十九億円、こんなばかげたことがついこの間まであったわけです。そういうものが国鉄の財政をこれまで持ってきた。その責任は何ら省みず、いま三年ずつ料金を上げるんだ、そういうふうな対策だから国民はおこるのであります。もっといままでの早い段階政府が措置を十分にやってくれればこんなことにならなかったということを私は申し上げているわけであります。  都市交通にしても、これは自治大臣にお答えをいただければいいと思うのですけれども、東京をはじめ大都市の公営交通がたいへん行き詰まった段階に来て、国鉄にまさるとも劣らない累積赤字をかかえている現状、だからそれが料金の値上げにいかざるを得ない、上げたくはないがもうやむを得ない、そういうふうな事態が起きているのではないかと思います。  これにいたしましても、私もおととしヨーロッパあるいはソ連等も回ってまいりましたけれども、特に交通の問題を中心にして見てまいりましたが、どこの国でも、地下鉄に対する国庫負担というのは、それは想像できないぐらい多量な額を国が投入をしています。国が出すのにつれて自治体も出しています。ところが、いまの日本の地下鉄に対する国庫助成はまるでスズメの涙ぐらい。あるいはバスについても、専用レーン、優先レーンを設定することによってバスのスピードアップができれば、これで収入がふえるんだというような提案もある。けさの新聞でも美濃部さんと警視総監との間のやりとりがちょっと出ていましたけれども、こういうような問題もある。あるいはそろばんが合わなくても、公営交通だというがゆえに運行しなければいけない行政路線については公共負担を増してやるとか、あるいは累積赤字に対しては、いままでの財政再建措置はもう終わるわけですから、新しい抜本的な財政再建措置をやるとか、こういうふうな対策を十分に講ずることができれば、今度の料金の値上げも私はやらなくても済むのじゃないかと思う。それを徹底的にやらないものですから値上げの問題に導いてしまう。どうでしょうか。
  173. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 公営交通の問題が経営的にも非常に行き詰まっていること、いま御指摘になられたとおりでございます。従来までも、これらの経営の合理化によってそういうふうなことをせずに行ないたいというので努力したのでございますが、経営の合理化だけでは物価の諸上昇、経費の増高を吸収しきれないという状態になっております現在では、むしろ利用者のサービスの低下になる、ひいてはまた企業そのものの存廃にもかかわるという状態でございますので、やむなく値上げをせなくてはいけない、こういうふうな状態で各都市において御審議を賜わっておるのが現在の状態ではないかと思っております。  私たちも、今日の状態において、原則である原価主義と申しますか、利用者負担として一部をお願いすることはやむを得ない、かように考えておりますが、引き続きまして、いま御指摘のような財政援助の問題、あるいは企業債に対するところの資金の改善その他について改善の検討を講じてまいりたい、このように考えております。経営合理化に対しましても十分やっていただきますようお願い申し上げたいと思います。その中で、いま申されましたような、専用道路の問題、あるいは行政路線の問題等、十分検討してまいりたいと思っております。  なお、御指摘のありました四十八年度で第一次の再建計画が、横浜を除き五大市の再建が終わる時期に来ておりますので、四十八年度を期して抜本的にこれらの問題と取り組みたいと思いまして、せっかく検討中でございますので、御了承を賜わりたいと存じます。
  174. 安井吉典

    ○安井委員 ちょっと運輸大臣に伺っておきます。  小中学生の修学旅行運賃の値上げぐらいはやめたらどうかと言ったら、検討いたしましょうと、閣議でそう発言はされたというふうに伺っておりますが、それはどういうふうになりましたか。
  175. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 いまの御質問でございますが、ただいませっかく検討さしております。これは前向きでぜひやりたい、こういうふうに思って、ただいま国鉄当局とうちの事務当局と検討さしておるところでございます。
  176. 安井吉典

    ○安井委員 ずいぶん長い間の検討のようでありますが、それはぜひ一つぐらいいいことをしていただきたいと思うのです。ただ私はそれはいいと思うのですよ。あるいは通勤、通学の定期もいいと思います。しかし、それはぜひやらなければいかぬが、それをすべて国鉄の公社という独立採算の負担の中に押し込むということは問題があるので、ほかの国もみんなやっておるように、いわゆる公共負担——文教政策として通学やあるいは修学旅行の問題を処理するのでしょう。あるいは勤労者の対策として処理する。だから、それに見合う分は国が国鉄の会計の中に入れてやる、そういう仕組みをきちっとしていかなければいかぬと思います。それは地方の都市交通の場合でも同じだと思います。  そこで私は、この物価の問題で結論的に総理に伺っておきたいのでありますが、先ほど企画庁長官から、公共料金の値上げによって、いまわかっているだけで六千八百四十一億円の国民負担がふえるのだ、こういうお話がございました。しかし私は、これはまだ米価は、消費者米価がどうなるかわからないから入っていないでしょうし、おそらくこの数字は、国鉄運賃と医療費の値上がりが大部分を占めている数字ではないかと思うのですけれども、それだけでも六千八百四十一億円国民の負担がことしの値上げによってふえるわけであります。ことしは特に減税が少ないのですけれども、ほんのわずかぐらいの減税はこれでみなすっ飛んでしまいますよ。それがことしの実態だと思います。  そこで、私がいま国鉄と都市交通の二つの例で申し上げてまいりましたのは、国が適切な財政支出をすることができれば値上げはしなくて済む、あるいは少ない値上げで済むということは明らかではないかと思います。だから結局、物価問題、その中心課題である公共料金の問題を解決することも——これは先ほど楢崎君が四次防の予算の問題で追及をしておりました。予算委員会は予算の審議ですから、まさにこの委員会にふさわしい審議であろうと思うのですが、そういう国の全体の予算の中において、四次防か、それとも物価抑制か、その選択というのがこの公共料金の場合にも言えるのではないかと私は思います。総理においてぜひ誤りない選択を願いたいものでありますが、いかがですか。
  177. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 物価問題はたいへんな問題でございますし、また公共料金、この扱い方につきましては、国民の納得いくような取り扱いでなければならないこと、これは先ほど申したとおりでございます。  私は、先ほど来、安井君とあるいは運輸大臣、あるいは自治大臣等とのやりとりを聞いておりまして、やはり何といっても大事なことは、経営主体自身が、労使双方で努力することがまず第一の必要ではないかと思う。そうして、今日までの鉄道運賃あるいはバスその他地方交通の料金の問題について、これはいままでのところ、管理者はもちろんのこと、労働者、組合側も、労使双方であらゆる努力をしておる、私はかように認識しております。よく戦っておる、そうして積極的に合理化と取り組んでおる。合理化と取り組んでもどうしても解決しないものがある、そういうものを一体どうしてくれるか。今回、わずかではない——私は、一般会計から国鉄に対しての支援などは、これは思い切ったものだと思いますが、そういうようなことをいたしましてもなおかつ赤字が残る。そうしてそういうものは、ただいま言われるような利用者負担、そういう形で解決せざるを得ない、これが現状でございます。  私はその前に、あるいは地方閑散線、いわゆる赤字ローカル線、これを廃止しろ、こういうような御議論がございますけれども、これは実は私は簡単にそれに賛成はできないように思っております。いわゆる過疎地帯、地方閑散線といえばそれは過疎地帯にきまっております。そういうところは、いわゆるほんとうに完全に足までも奪われるという、それはもう地方の人たちといたしましては心情的にどうも耐えられないものがあるのじゃないだろうか。私は、せめて国家経営の機関、それは何としても、赤字を縮小することには努力はするが、やはり最後のとりでとしてそのくらいのものは残してほしい、かように実は思っております。だからこそ国鉄自身も、鉄道自身はあるいはどうかと思うが、しかしバス経営にするような方法はないかとか、また無人駅をどの程度開設することができるか等々の、経費軽減の方法についてはいろいろ考えておる、かように思っております。  先ほどは、四次防かあるいは公共料金か、二者択一の御議論をされますが、私は、事柄はさようしかほど実は簡単なものでないのだ、やはり公共事業として国民に与えておる便益、これは何としても確保したいという、それがわれわれの姿勢でなければならない。国民として受ける国家からの利便、それはどんなところにおりましても同じように受けたい、かように私は思います。そうしてそれが、しかしながらどうしてもやっていけない、そういうときに初めてあきらめがつくことではないだろうか、かように思いますので、それらの点をもぜひ御理解をいただき、いまやっておる労使双方で非常な努力をしておること、これを高く評価していただいて、最後のとりでがただいまの料金改定であるのだ、かように御理解をいただきたいと思います。
  178. 安井吉典

    ○安井委員 総理、いまちょっと過疎地の問題をお話しになりましたけれども、私も実は過疎交通の問題をだいぶ調べてきておるのです。時間が十分ありませんからそれは省きましたけれども、たとえばこういう例もあるのです。これは広島県のバスの例でありますが、ずっと山の奥へバスが入っているが、バス会社はそれをやめる。五人以上のところには国庫補助があるのですけれども、ここはもうごく少ないものですから国庫補助がない。そこで部落民が月に三百円ずつ拠出をして、そこは六十世帯ある、一年間に二十万円集まるわけですよ。その部落の人が一戸当たり三百円ずつ出して、年二十万円にしてこれを中国バスに納める。それでバス会社はやっと通してくれるわけですよ。しかし、バスに乗るときはまた料金を払うのです。バスを残すということだけでそういう負担がある、こういう実態があるのですね。これは過疎バスの問題でありますけれども、過疎交通の問題もこれは重要なんですが、これは別の機会に譲りたいと思います。  そうしてまた公共料金の問題、公共料金という物価サイドだけから国鉄やその他の問題は議論はほんとうはできないんです。これはそのとおりで、もっと時間をかけた論議が必要でありますけれども、私は少なくも物価という問題のサイドから問題を取り上げた場合にはもっと国が思い切って出してあげる、そういうことが一つの解決の方法であり、有力な解決の方法だ、そういうことを申し上げたかったわけであります。  そこで、国際政治の激動の中で特に今度のニクソン訪中共同声明、これが一つの焦点になってきているわけであります。ただ私は、佐藤首相がどうもこういうふうな激動の中で国会の御答弁は自由を守り平和に徹する、その一言だけで問題を解決しようという姿勢、何かそういうおことばが空虚な響きを持って私どもに聞こえてくるわけであります。それが今日の段階一つの大きな問題ではないかと思うのでありますが、中国問題やあるいはまた対米の問題、対ソ問題、そういうようなものを少し見てまいりたいと思います。  中国の問題につきましては、いまいわゆる政府の統一見解というものがまとめられつつある段階でありますから、きょうはあまり触れません。しかし、どうも、佐藤首相が少し前のほうへ行ったかなと思うと福田外務大臣がうしろから引っぱる、また何かそろそろと前へ行ったかなと思うとまたあと戻り、そういうふうなところで、昨日も参議院の本会議での総理答弁は、どうもあと戻りしたところで固定するのが統一見解になるのではないかなというふうな心配をするわけであります。いずれにいたしましても、この問題はもう少しそういうものが出てからのことにいたしたいと思います。  ただ、中国と接触をこれから非常な熱意をもってやっていくんだということはしばしば御答弁されているわけであります。それでは、その接触の糸口はどういうふうにしてつかむのか。何か構想をお持ちなのでしょうか。そいつをひとつ伺います。
  179. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 中国いわゆる中華人民共和国とのいろいろ交渉を持とうという、こういうことは、日本の場合におきましては最高機関であるこの国会の場を通じて政府の所信を表明しております。したがってこれが一つの呼びかけだ、かように理解されても私はいいことではないかと思っております。もちろんそれだけではなく、私は、詳細には申し上げかねますけれども、やはりそれぞれの筋からもいろいろ接触を計画している、このことだけは申し上げ得ると思います。
  180. 安井吉典

    ○安井委員 何か和製キッシンジャーというふうなものを、今度は美濃部さんではないと思いますけれども、何かそういうふうな対策もお考えなんですか。
  181. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろんこの国会の場におきましてわれわれの所信を表明する、それについての受け答えは当然あるだろう、かように私は思っておりますが、それよりもやはり何といっても直接にわれわれの意向を伝えるものがなければならないだろう、ここで申し上げるものはあまりにも形式ばった話でございますから、やはりもっと打ち解けた話が伝わらないとどうもかたくななかたい感じで、かたくなというよりか、かたい感じの理論になるだろう、かように思いますから、親交を深める、こういうためにはそういうかたい感じでないものがあってしかるべきだろう、かように思います。
  182. 安井吉典

    ○安井委員 やわらかい何かをお考えになっておられるようでありますが、よくわからないんですがね。何かここではまだお話しできるようなことではないという意味ですか。
  183. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりです。
  184. 安井吉典

    ○安井委員 日中の問題につきましては、さらに統一見解を拝見いたしましてから別な機会にと、かように考えますが、対米外交の問題につきましてもいま一つの大きな再検討の段階に来たのではないかと思います。沖繩の返還によりまして日米安保条約は大幅に実質的な内容を拡大強化したわけです。安保の中の体制というものは非常に強大なものになりました。それはお認めになりますね。
  185. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま言われることは私にはちょっと理解いたしかねております。日米間の問題につきましては、施政方針演説でも申しましたように、何よりもこれは大事な事柄だ、かように思いますから、両国の間の緊密なる連携親交はさらに深めていき、またいままで約束をしておる安全保障条約、これはそのまま続けていく、これが当方の基本的態度でございますし、またアメリカ側も、ただいま申し上げるように日米間の問題はどこの国よりも大事なことだ、かように申して十分注意し、これに留意してくれておる、かように私は思っております。
  186. 安井吉典

    ○安井委員 私伺っているのは、日米安保条約の実質的な運用、これが沖繩の返還によって内容が非常に大きくなったということ、この認識だけをまず伺っているわけです。これは外務大臣でもいいです。
  187. 福田赳夫

    福田国務大臣 私にもお尋ねの趣旨がよくわかりませんが、沖繩における米軍の機能、これについてのお話でありますれば、強化でなくて非常に後退をいたしておる、こういうふうに考えております。
  188. 安井吉典

    ○安井委員 私が申し上げているのは、説明が不足だったと思いますけれども沖繩米軍はいままでは日米安保条約のものではなかったでしょう。しかし五月十五日以降においては、沖繩米軍は日米安保条約の米軍になるわけであります。沖繩返還後は、現在米軍基地は本土には二百平方キロぐらいしかないが、いわゆるA表、B表合わせて二百九十四平方キロになるわけですから、だから米軍基地は二百平方キロだったのが今度は一躍五百平方キロになるわけです。二倍半になるわけです。アメリカの兵隊の数にいたしましても、現在は本土には二万八千人ぐらいしかいない。それが今度は沖繩で五万人いますから七万八千人になる。あるいはSR71みたいな特殊部隊は、いままでは安保体制の中にはなかった。これが安保体制の中に入ってくるわけです。だから私は、日米安保条約の運用という側面から、沖繩返還後はいままでと違った対応のしかたを政府としてはっきり胸の中にたたき込んでおかなければ、これはたいへんなことになる。その認識をまずしていただきたいという意味でいま質問したわけです。先ほど楢崎君から、米軍基地に対して核兵器を持ち込んだじゃないかというふうな問題が指摘されましたけれども、これは二百平方キロの基地の中の問題であんなのがあるわけですから、今度は五百平方キロの基地ということになりますれば、問題というものはたくさん出てくるわけです。それは日米安保条約の中で解決していかなければいけない。その認識をまずしておいていただかなければならぬと思うわけです。  そこで、いままでの日米安保条約、これはもともとアメリカの中国封じ込め政策あるいは中ソ友好同盟条約に対抗するというふうなことで位置づけられてきた、これはアメリカ側でしょう、アメリカ側はそういうふうな気持ちを持ってつくられたのではないかという経過があります。もちろん日本のサイドからは、これは日本の防衛のとりわけ核のかさという位置づけなのでありましょう。しかし、そういうようなものが今度の共同声明によりまして、その共同声明がいま合意をされ、どういうふうに進んでいくかというそういう経過も、問題もございますけれども、ここで一つの大きな転換点に差しかかったということだけは私は明らかではないかと思います。特に中国の平和五原則をはっきり認めたということは、これは私は大きなターニングポイントということではないかと思います。そういう中でありますだけに、いわゆる日米安保条約、日米安保体制、先ほど総理はそれを堅持するのだと言われましたけれども、もう少しこれに対して柔軟な頭で対応するということが必要ではないでしょうか。
  189. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩返還後の米軍、これは安保条約の体制下に入る数はたいへんな数になります。これは御指摘になったとおりであります。しかし直ちにそれをもって駐留米軍の性格が変わった、質的な変化があった、かようには私は考えません。  また、米中会談、これは私も緊張緩和、こういう意味において高く評価しておる、いままでは封鎖政策をとっていたが、対話の時代になったという、これはただことばで言えば対話の状態になったということでございますけれども、たいへんな変化だ、かように思っております。このことは高く評価してしかるべきではないかと思っております。しかし、そのことが直ちに日米安保条約に影響する、かように考えることはやはりこれはいかがかと私は思います。だからたいへんけっこうな状態で、われわれは歓迎はいたしますが、いままでの日米安保条約のその体制はやはりそのままある、かように御理解をいただきたいと思います。
  190. 安井吉典

    ○安井委員 政府はいままでのいろいろな発言の中でも、米台政策は変わらない、あるいはアメリカは同盟国を裏切らない、こういうアメリカの言明を後生大事にして安保堅持という言い方をなすっておられるのではないかと思います。しかし、日米安保条約が今日までの段階は、米中関係はきわめて不正常で断絶をしていました、米中関係断絶をしている段階の安保条約、今度は一応のところ米中共存体制というものができたときの安保条約、私はこれは変わってこなければいかぬのではないかと思います。つまり、米中の間の対話が全くない段階の安保条約は、もうアメリカは日米安保条約だけでものを考えればよかったでしょう。しかし、今度はコミュニケがあるわけです。共同コミュニケのことも考えるし、日米安保条約のことも、アメリカは同盟国を裏切らないというのですから、それも考えるでしょう。考えることが二つになったわけですよ、アメリカは。いままではたった一つだったが、今度は二つのことを考えるわけです。だからアメリカは自分の国益に立って選択をする、そういう可能性が出てきたのではないか、だからそういう段階にあっても、昔の安保体制はそっくりそのままでいいのだということでは私はないと思うのであります。  参議院において総理は御答弁の中で、日中正常化、台湾の地位の明確化で、将来安保を調整する必要があると思う、こういうふうな答弁をされたと新聞にけさ報ぜられております。安保を調整する必要がある、私どもは非武装中立、日米安保条約破棄ですから、ただそれをぶっつけたって答えはわかっております。ですから、私は、参議院の中で、将来安保を調整する必要があるという、その言う意味をさらにきょうは前進をさせていただいて、日米安保条約は新しい段階で検討するのだというところくらいまでは、総理の御答弁をいただけるのではないかと思うのですが、どうですか。
  191. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま読まれました参議院における問題、これはただいま私どもが練っておるいわゆる政府の統一見解に関する部分でございます。したがって、それはそれなりに、先ほども統一見解が出るからそのときにというお話でございましたので、それに譲っていただきたいと思います。  私が申し上げたいのは、アメリカはなるほどアメリカの国益を守る、こういう立場でいろいろの約束を運用するでしょう、私どももやはりその約束がコミットメントに反しない限りにおいてわれわれが日本の国益を守る、そういう観点でこの条約の義務を履行する、これは当然のことであります。だからその点は日米双方ともそれぞれがそれぞれの国益を守る、そういう観点に立って条約上の義務を履行する、また権利を主張する、かように御理解になってしかるべきかと思います。
  192. 安井吉典

    ○安井委員 それはたてまえをおっしゃったので、それは契約があるのだから、どちらもそんなことおっしゃらなくたって、条約は両方拘束するのですから、そういうことではないかと思います。  問題は、いまのような、アメリカが日米安保条約だけを考えておればよかった、あるいは米台条約のこともあったでしょう、それだけを考えていればよかったという段階ではなくなったということですよ。新しいもう一つの要素を、アメリカがそのどちらを選択するかというその選択権が一つふえたわけですからね。アメリカサイドからいってそうなんですから、それだけに日本のほうはいままでと同じような態度じゃこれは困ると思いますね。もっと柔軟さがなければいけない。とりわけ安保を堅持して、四次防でさらに自主防衛力を強めていく、そういう方針があの共同声明をしさいに検討した結果出てきた政府方針だとすれば、国民は失望するのではないかと私は思います。激動する世界情勢に対応していく、リードすることなんかとてもできっこないだろうし、せめてそういう情勢に対応することさえやってくれれば、そう思うのですけれども、それさえもどうも心配になるわけであります。しかしこれは統一見解という、きょうは一つの最後の抜け道ができてしまっておりますので、ひとつその中にぜひ前進的な答えを出していただきたい、そのことで対米問題は締めておきたいと思います。  次に、日ソ関係の改善につきましては、最近ソ連の対日接近が進んでいて、最近のチュメニ石油等についての日ソ経済交渉も相当前向きに進んだようであります。あるいはいま行なわれつつある漁業交渉等についても私も関心を持っておりますけれども、時間の関係できょうはいわゆる領土問題にしぼって政府の御見解をただしてまいりたいと思います。  まず、北方領土ということばを政府はお使いになる。その北方領土というのは一体どこをさすのでしょう。
  193. 福田赳夫

    福田国務大臣 歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の、この四つでございます。
  194. 安井吉典

    ○安井委員 北千島はどうですか。
  195. 福田赳夫

    福田国務大臣 私どもは北千島は問題にしておりません。
  196. 安井吉典

    ○安井委員 社会党の私どもは、この間の成田質問でも明らかなように、北千島にいたしましても別にこれは日本が戦争でとったところでもないわけですね。樺太との交換条約で入ったところであって、別に戦争で、本来の日本の国でないところをとったというものでは絶対にありません。   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕 ですから千島というとどうも問題があるので、北方領土というあいまいなことばでどうも政府は問題を表現しておこうとしているのではないかと思います。  この点はこの間も原委員質問をいたしましたが、その点をひとつ明確にしておきたいと思うのでありますが、特に私は、政府はいままでその歯舞、色丹に何か、北方問題は国後、択捉もありながら、歯舞、色丹だけに限定をされているような印象を与えてしまった、そういう二つの事件があったと思います。その一つは、サンフランシスコ平和条約でも、千島ということばで明確な表現を残していなかった。ただ、吉田全権のあいさつの中に歯舞、色丹がありますからそれはあれだが、国後、択捉については全く言明がなかった。あるいは二回目は、日ソ共同宣言におきましても、二つの島だけであの宣言をまとめてこられているわけであります。だからそういう意味でこの二回の機会に、現在でも一体北方領土とはどこなんだ、歯舞、色丹と国後、択捉とはどういう関係にあるんだ、北千島はどうなんだ、そういうようなことについて非常な混乱が起きているわけです。その混乱は政府が過去において二回にわたってそういうものをつくってしまってきた。佐藤内閣ではありません。そういうことでないかと思います。その点はどうですか。
  197. 福田赳夫

    福田国務大臣 北方問題を検討しておる方々、また関心を持っておる方々には、そう私は混乱はないと思うのです。平和条約におきましては、千島ということばを使っております。これはまあ非常に明快である、こういうふうに言えません。しかし共同宣言の段階になりますると、わが国はもうはっきりと千島といえば北千島のことだ、四つの島々、これはわが国の固有領土である、こういう主張をしたのですが、話が合わない。そこで国後、択捉、これには双方とも触れないで歯舞、色丹だけが平和条約が締結された後には引き渡される、そういう取りきめになっておる。しかしその後におきまして機会あるごとに、わが国といたしましては歯舞、色丹、国後、択捉、これらの島々はわが国の固有領土である、わが国は平和条約において放棄したのはこれらの固有の領土を除いておるものであるということを主張し続けてきておるわけなんです。最近の教科書等におきましても、そういう見解に立ちまして色分けをしておるというのですから、かなりこの考え方は国民の間には徹底してきておる、かように考えております。
  198. 安井吉典

    ○安井委員 この間のグロムイコ外相の来日によりまして、いわゆる北方領土問題の解決への前進の手がかりができたとお考えですか、政府は。
  199. 福田赳夫

    福田国務大臣 北方領土問題の解決は前途遼遠だというような感じは私は持っております。しかし、ことし一月の日ソ定期協議におけるグロムイコ外務大臣と私との会談、この会談ではかなり強く私はソビエトに対しまして四つの島々の返さるべきことを要請したわけです。いままでの、何回にわたりましたか、もう無数の機会においてわが国は同様の主張をしておるのですが、その機会ごとにソビエトロシアは、この問題はもう日ソの間で解決済みだ、こういう考え方に立ちまして、領土の話し合いに入ることを拒否してきた。今度はそこが違ってきておるのです。平和条約は何だといえば、これは実態は領土確定ということであります。その平和条約の交渉をことしじゅうに始めましょう、こう言ってきておる。その辺が微妙な変化が出てきておる。私はそう見ておるのですが、しかし微妙な変化は出てきておる、これを手がかりと言えるか言えないか、その辺もまた非常に微妙な事態である、こういうふうな認識を持っておるのですが、ともかくそういう微妙な変化がありましたので、この変化を大事に育て上げまして、そしてわが国の主張をどうしても実現をさせたいというのが私の考えであります。
  200. 安井吉典

    ○安井委員 先日の衆議院本会議で、成田委員長佐藤首相とのやりとりの中で、成田委員長の主張に対して、北方領土と安保条約との取引はいたしません、こういうふうに総理は言われました。その問題について私ちょっとお尋ねをしておきたいわけでありますが、ソ連が歯舞、色丹をはじめ、いま占拠している島を日本に返してくれる、そういう場合を想定いたします。どこまで返してくれるかわからぬが、私ぐもは北千島までというのですが、ともかく返してくれる。しかし返ってくれば、その島々は日米安保条約の中の島になるわけです。したがって、安保条約によってアメリカがその南北の千島の島々に対して、これを基地として提供してくれと言ったら、日本は拒むわけにはいかぬのじゃないですか、いまの日米安保条約がある限り。そうなれば、その領土の返還で、アメリカの基地にそれがなるというふうな、なるかならぬかわかりませんよ、それは日本政府態度です。そうなると思いますけれども、しかし、そういう可能性ができてくるという体制がソ連を足踏みさせているのではないか。現にソ連の主張の中にそういうものがあったこともあるわけです、御承知のように。その点はどうお考えですか。これは総理ですか外務大臣ですか。
  201. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはなかなかむずかしい交渉でありますので、かりに四つの島々が返ってくるということになりましても、いろいろなことをまたソビエトから言ってくると思うのです。いまおっしゃられるような、この島々に安保条約は適用いたしません、こういうようなことでこれが解決するというようなことでありますれば、これはずいぶん私は楽な交渉経過だ、こういうふうに思いますが、しかし何を言ってくるかわからぬ。わからぬそれらのいろいろな問題につきまして、いまここでこういう要求があればこう受けて立つ、ああいう要求があればこういうふうに受けて立つ、これをお話し申し上げること、これはこれからの交渉に重大な影響があるのじゃないか、そういうふうに思うのです。ですからせっかくのお尋ねでございまするけれども、そういうようないろいろな条件を出してきた、そういう際にわが国がどういうふうに正式に対応するかということはまことにお答えしにくい問題だ、こういうふうに考えます。お許しを願います。
  202. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの外務大臣の答弁で御了承願ったようですが、もともと、サンフランシスコ条約そのものを受け入れた私どもと、これを否定しておられる社会党の方との主張は基本的に違うだろう、かように思います。でありますから、いまの北方領土として私どもがどうしても確保したいものは、サンフランシスコ条約で放棄しない地域、いわゆる千島でない地域、これは日本の領土だ、かように言っているわけであります。その点がよほど違っているんじゃないか。だから皆さん方は、北方の領土は日本の侵略によって得たものじゃないから、北千島もまた南樺太も全部が日本の領土だ、かような主張をしておられますけれども、私どもは放棄したというその前提にございますから、そこらのところは違うように思っております。これをひとつ、違いのあるところを認識して議論を進めていただきたい。
  203. 安井吉典

    ○安井委員 南樺太までは言っていませんから……。  そこで、総理は領土と安保条約との取引はいたしませんとこの間言われたが、いまの福田外務大臣の御答弁によれば、四つの島を返すことについて、その島に安保条約を適用しないというふうなことでまとまるならおやすいことだというふうなお話がございました。深く入ったことを聞いてくれるな、こういうわけですから、私はそうとことんまでは言いませんけれども、ただそのことばだけはもう一度確認しておきたいと思います。
  204. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおりに、考えております。
  205. 安井吉典

    ○安井委員 その点は、ひとつきょうのところはそこまで伺っておきます。  次に、時間の関係沖繩の問題に移りますが、沖繩国会におきまして野党の私たちは、沖繩基地撤去、核抜きを強く主張いたしました。そういう国会の論戦を踏まえて、サンクレメンテで政府もアメリカ側と交渉を進めてきたと思うのでありますが、いかがですか。
  206. 福田赳夫

    福田国務大臣 サンクレメンテにおける両首脳の会談で両国間の問題と、それから世界の諸問題と、こういうことですが、両国間の問題の中では沖繩問題が一番大きな問題であります。一つは返還期日の問題、一つ基地の問題、一つは核の問題、これでございますが、お尋ねのまず第一の基地の問題、これは非常に私は苦労をした。つまり、アメリカといたしますと、基地を縮小整理せい、こういうわがほうの要求に対して、なかなか理解が届かない。つまり、わが米軍日本の安全を守るために沖繩駐留するんだ、その基地を整理縮小せい、これが理解が届かない点のようです。しかし、私どもはこれに対しまして日米安全保障条約はこれを堅持する、ですから米軍駐留というものをあえて否定する考えはありません、しかしその米軍駐留のしかたに問題がある、つまり米軍駐留する、その米軍がわが国の地域社会と円満な関係になければならぬ、そういうことに配意をしないと米軍駐留自体にこれは問題が起きてくる、この点を心配するんだという立場をとったわけなんです。それは、特にその関係におきまして問題になりますのは沖繩である。沖繩では基地の密度が非常に高い。それから、とにかく二十六年間、戦勝者と戦敗者、そういうような立場があった。その立場というものはそのまま残るというようなことがあっては、またこれもたいへんなことになる。そういうような点に、特に沖繩のこれからの基地存続問題につきましては気をつけなければならぬ。そういうことからいいますと、やはり基地の整理縮小、これを沖繩の百万県民は望んでおる。これはぜひやってもらいたいんだ。そして地図まで出しまして大統領あるいは国務長官にるる説明をし、そして理解を求めたわけでありまするが、終局的にはアメリカ側も理解が届いた、こういうふうに私は思います。そこで御承知のような共同声明が発出されるということになったわけですが、しかし、いずれにいたしましてもこの問題の実際上の処理は返還後の問題であります。返還前におきましては、これは返還協定の変更ということでありまするから、アメリカがその実現を承諾するはずはない。返還後においてこの基地の整理縮小、これを実現したい、しかし返還前といえどもその準備作業、これはいたしておきたい、こういうふうに考えまして、日米間でいま話し合っているというのが現状でございます。
  207. 安井吉典

    ○安井委員 ニクソンと周恩来の共同コミュニケ、そういう事態が起きた段階におきまして、沖繩基地もだいぶ様子が変わってくるのではないか。沖繩基地の置かれている役割り、それからそこへさらに補強するのか肩がわりかどうかわかりませんが、日本の自衛隊が行く。少なくも沖繩人たちにとってみたら、あの毛沢東とニクソンと握手をしている写真と、少なくも米軍をきちっと置いて、自衛隊をまたさらに派遣するのだということはどうしてもそぐわないのです。理解できないのですよ。そういう事態がいまあると思います。ですから、この基地の問題についても政府はいま一生懸命に努力をしているというふうな外務大臣の御答弁ですけれども、この新しい段階においてアメリカの基地を縮小せよということ、そういうことについて主張をする根拠が強まったのではないか。そういうものを根拠にしてもっともっと強力な折衝が続けられなくてはならぬと私は思います。とりわけ沖繩基地の中でもSR71戦略偵察機、これは本来中国の領土の奥深く上空を侵して偵察行動をやってきた飛行機です。政府はそこまで知らないと言うのかどうかわかりませんけれども、こんなのはあたりまえですよ。あの足の長い飛行機なんですから、どこまでも飛んでいけるのですから。それも役割りというものがずいぶん変わってきたのではないか。あるいはVOA放送、これも中国語だけではありません。朝鮮語やあるいはロシア語もありますけれども、しかし、中国向けの謀略放送としての最大の力点が置かれてきたのがVOA放送であるということは周知の事実であります。この点は、この間の沖繩国会でもしばしば取り上げられたところです。ですから、共同コミュニケというものが形になってあらわれた以上、沖繩基地全体は、あるいは自衛隊の派遣は、とりわけいまのような、私は具体的に二つあげましたけれども、こういうようなものの存在理由というものは全く変わってきたのだということではないかと思いますが、どうお答えですか。
  208. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、今回の米中会談、共同声明を含めてのその成果、そういうものを見てみますると、非常に緊張の緩和というムードをかもし出しておる、こういうふうに思うのです。しかし、まだこのムードというものは定着するまでには時間がかかるであろう。アメリカはニクソン・ドクトリンというものをアジア外交の主柱にしております。これはどういう考え方か。これを言いますれば、ずいぶんアジア諸国に軍事費がかかる、この軍事費を整理節減したい、そういうようなことで緊張緩和政策を打ち出す。その緊張緩和が現実化するに伴いまして兵を引く、こういう考え方と私は理解をいたしておりますが、何もアメリカは好きこのんでアジアに今日兵隊を置くわけじゃない。金がかかる。ずいぶんいま財政が窮乏しておる、そういう際でありまするから、緊張緩和が打ち出され、これが固定化され、現実化されるという際には、アメリカはアジアから、おってくれと言って頼んでも丘を引く、こういうような事態になっていく、こういうふうに見ますが、まだそこまでいかないんです。共同声明が出された。この共同声明の大体の内容等は、われわれもかねてから大綱につきましてはこの程度のものであろうというぐらいなことば考えておった。そういう状態でございますので、そのムードは出てきておるけれども、アメリカから見まして、これが固定化したという認定ばまだないようであります。また私どももそう思う。そういう段階でありますので、この北京訪問だあるいは共同序開だ、それをとらえまして、これが直ちにわが国の防御体制に大きく影響をしてきておる、こういうふうに考えるのは私は早計ではあるまいか、そういうふうに考えております。
  209. 安井吉典

    ○安井委員 私が申し上げたいのは、沖繩基地の縮小について政府は一生懸命にやるんですと、こう言われているわけですよ。いるんだとすれば、どんどんそれはアメリカに主張しなければいけない。その主張をするには、いま一番いい条件が整いつつあるんだということ。やはりそれを踏まえて積極的にやらなければ——黙ってても台湾問題が片づきゃ自然になくなるだろうという観測だけではだめですよ。やはり自衛隊の配備も私はやめてもらいたいと思うのです。それからまた、少なくもこのアメリカの基地の問題については、いまが、そういう問題をとらえて交渉を積極的にやってもらいたい、こういう意味で申し上げているわけであります。  それから核の問題についてでありますが、まあサンクレメンテでのいろいろな核抜きの折衝の模様も新聞等で報道され、国会の中でも若干議論をされておりますが、核抜きの保証について、サンクレメンテの会談、さらにまたその後の折衝があろうと思うのでありますが、現段階においてどういうふうな保証措置が講ぜられることになっているか、それをひとつお伺いしたい。
  210. 福田赳夫

    福田国務大臣 サンクレメンテの会談におきまして、核抜きの問題につきましては、これは総理が陣頭に立ちまして、それで大統領との間に非常に詰めた話をされておるのです。私は傍聴しておりまして、総理が、岩国の問題で国会で御指摘があった点、あるいは横田、立川につきまして御指摘のあった問題、あるいは化学兵器にまで及んで事こまかに国会の論議を御紹介をし、わが日本国民というものはほかの国でわからぬところがある、それはつまり核の洗礼を受けた最初にして最後の国なんだと、ただ一つの国なんだと、この点をよく理解してもらいたいという主張をいたしたわけなんです。  そこで、結論といたしましては、これも共同声明にありますが、アメリカ大統領は、沖繩返還時におきまして沖繩に核がないということを明らかにするということになっておるわけでありまするが、その後大統領がそう言ったその趣旨をどういうふうに具現するかということにつきまして、日米両国の間でいま話し合いをしております。まだここで御紹介申し上げるまでに詰まっておりませんけれども、なるべくしっかりした言明を得たい、かように考えておる次第でございます。
  211. 安井吉典

    ○安井委員 私どもは、沖繩国会において、核抜きの保証には核撤去に立ち会いをさせてもらいなさい、確認措置がぜひとも必要だということを主張をいたしました。それはサンクレメンテで政府は主張されたのかどうか。  それからまた、核抜きの確認などというのはなかなかできないと言うが、毒ガスのときは屋良主席や高瀬大使も立ち会って、アメリカからも話があって点検もしているわけであります。メースBを撤去したあとも、これはこちらから報道人まで入れてきちっと見せているわけであります。そういう例はあるのです。だから私は、福田外務大臣が書簡か何かを公式にもらうことで、これで安心だというふうな意味でさっきおっしゃったんだろうと思うのですけれども、もっと一歩進んで、前例があるのですから、こういうふうな措置をサンクレメンテで主張されたのか、あるいはこれからも主張をするようなお気持ちはあるのかないのか、それをひとつ伺います。
  212. 福田赳夫

    福田国務大臣 この点検、確認の問題につきましては、これはしばしば話題には供しております。おりますが、なかなかまだ結論には到達いたしません。しかし、いま安井さん御指摘のように、前にこういうことがあるじゃないかというようなことも私どもよく心得ております。そういうことを心得ながら今後なお話し合ってみたい、こういうふうに考えております。
  213. 安井吉典

    ○安井委員 沖繩返還は五月十五日ということになっているとすれば、いま核撤去作業はどんどん進んでいるのか、あるいは批准書交換のときから始まるのか、どんなことになっているのか。つまり、核抜きの現状ですね。核抜きという作業の現状、それを政府はつかんでおられるのかどうか。それを伺います。
  214. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはもう非常に、アメリカとして高度の機密ということに考えておりまして、私どもといたしましても知るよしがないのです。  私はしばしば、前から核というものはアメリカでは大統領の専管事項になっているということを聞いたわけでございますが、ところが、サンクレメンテの会談、またその後のいろんな折衝等を通じまして私が得た印象は、全くこの大統領の専管事項ということでありまして、この問題の扱いは非常に慎重であります。私どもも、まあ皆さんからの御要請もありますので、できる限りのことはしてみたい、こういうふうには考えておったわけでありまするが、五月十五日返還のその時点においては核はありません、決して御心配はかけませんと、こういうふうに言っておるにとどまり、今日におきましては、これがどういうふうに撤去されていくか、その手順等につきましてはアメリカを信頼するほかはない、そういうことであります。
  215. 安井吉典

    ○安井委員 念のために伺っておきますが、いわゆる核撤去というのは核弾頭だけではなしに、核兵器使用の体制、システム、その全体をいうのだという答弁が沖繩国会でなされておりますが、それはそのとおりでしょうね。
  216. 福田赳夫

    福田国務大臣 核弾頭、またこの弾頭を発射する装置、そういうものはもとよりでありますが、この核のみに使用される施設、そういうものは撤去するだろうと思います。撤去されなければならぬ、こういうふうに考えております。ただ、通信施設などにおきまして、その核のためにも使う、あるいは他の用途にも使う、そういうようなものがありました場合におきまして、それを他の用途の分だけを残しておくという場合ですね、これは私はあり得る、あっても、またやむを得ない、こういうふうに考えております。
  217. 安井吉典

    ○安井委員 私は、あとでこれ問題になるとき因ると思うのですが、つまり、これが核のシステムの中のものだという、限度といいますか、基準というものをアメリカ側と日本側とで意思統一しておかないと、そこまで除け、いやこれはいいんだと、こうなると思うのですよ。そこはやはりはっきりしておかなければいかぬと思います。どうですか。
  218. 福田赳夫

    福田国務大臣 私がただいま申し上げましたとおり、核弾頭及びこれが発射装置、並びにこれに関連するもっぱら核のみに使われるところの通信施設等、こういうものはそういういわゆる核施設に含まれる、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  219. 安井吉典

    ○安井委員 そのあとに等というのがつくわけですから、それに私も注目しておきたいと思いますが、もう少しやはりはっきりしておかぬと問題が起きる可能性があると思います。  それから、さっきの本土における核の問題で楢崎委員とのやりとりがあって、安保協議委員会の中で核の問題は詰めるんだという趣旨のお話がございました。やはり私は沖繩の核も、本土も沖繩も同じなんですから、安保体制のもとになるわけですから、扱いが同じようなものだと考えてよろしいと思いますが、いかがですか。
  220. 福田赳夫

    福田国務大臣 私が先ほど申し上げましたのは、問題になった、どこの問題でしたかね、あれは。横田三沢岩国、このことにつきまして申し上げたわけなんでありまして、その他のことについて申し上げたわけじゃないのです。一般的なことを申し上げておるわけじゃございませんです。
  221. 安井吉典

    ○安井委員 しかし、沖繩に核の有無が、将来の段階でトラブルが起きた場合には、やはり同じようなことじゃないですか。
  222. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど私が申し上げましたのは、その三カ所についての問題でございますけれども、もし同様の問題が沖繩において起こるという際には同様の措置をいたす、こういうふうにお答えを申し上げて差しつかえございませんです。
  223. 安井吉典

    ○安井委員 最後に、核の問題についてひとつ確認しておきたいわけでありますが、アメリカの核抜き保証ということについて手紙が来ただけじゃ私はだめだ、もう少しきちっとした対策をとってくださいということを一つ申し上げました。それと同時に、やはりこれは日本政府の心がまえといいますか、かまえというものも核抜きの保証に私はなるのではないかと思います、沖繩の県民にとって。私はこの際、もしも万一沖繩に核が五月十五日以降残っていたら、あるいは将来の段階において沖繩に再持ち込みというふうなことがあったならば、そんなことは絶対あり得るわけはありません、そういう場合には政府は責任をとって総辞職いたします、私はそれくらいのことまでやはり言い切っていただきたい。そうすれば、沖繩の人も相当程度満足すると思います。これは当然のことだと思いますが、いかがですか。
  224. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来核撤去についての外務大臣から種々政府の所信を説明されました。おわかりになった点もおありだろうと思いますが、もし万一さような事態が五月十五日以後も続いているとすれば、それはもちろん重大なる責任を政府はとらざるを得ない、かように私は思います。
  225. 安井吉典

    ○安井委員 念のために福田外務大臣からもひとつ承っておきたいと思います。
  226. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは総理がいまおっしゃったわけですが、これは一政府が責任だどうだというところの問題じゃない、これは日米国交の重大問題である、そういうふうに私は考えております。これは徹底的な断固たる処置をとらなければならぬ事態である、そういう認識でございます。
  227. 安井吉典

    ○安井委員 しかし、佐藤さんは、もちろん断固たる措置もとるが、政府そのものも断固たる措置をとる、責任をとるとこうおっしゃったのですが、それはそのとおりでしょう。
  228. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは佐藤総理から最高の責任者としてのお答えがあったのですから、それ以上のことは私は申し上げませんけれども、つけ加えて申し上げますが、一内閣というような問題じゃないです。それ以上の問題だ、こういうことを申し上げておるわけです。
  229. 安井吉典

    ○安井委員 念のため田中通産大臣にもこの際、私はこれは閣僚としてこういうふうな問題が起きた場合には、いつの場合におきましても政府は重大な責任をもって問題に立ち向かうということでなければならぬと思うのですが、……(「そんな先のことを言ってもしようがないよ」と呼ぶ者あり)別に将来という意味じゃなしに、いまの段階でもいいと思います。それはあまり先のことまで大きくやったら、いま不規則発言がありましたから、それはそうですけれども、いまの段階においてどういうふうなお考えをお持ちですか。
  230. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この問題は、総理お答えするのが当然だと思います。私はただいまその所信を表明いたしました。いまの点では各大臣の所信を一々お聞きになる、そういうようなものではないだろう、かように私思いますから、私自身が政府を代表してその所信を表明した、それで御了承願いたいと思います。
  231. 安井吉典

    ○安井委員 しかし、それは佐藤内閣だけではなしに、将来いかなる内閣ができてもやはりこれははっきりしておくべき問題だということだけ申し上げておきます。  それから沖繩の通貨問題について伺いたいのでありますが、復帰を前にしての沖繩のいまの最大の関、心事は通貨問題であります。とにかく沖繩は、輸入の八〇%は本土から行っているわけで、したがって経済構造は全く日本経済の中に組み込まれていながら、通貨のほうは布令第十四号でドル使用、こうなっているわけであります。これはもしも独立国なら円切り上げによっていろいろな対策があるわけです。しかし、そうではありません、中央銀行もないのですから。だからもろに被告だけを受けている、犠牲だけを受けているという現状でないかと思います。もっとも政府も、これに対して十月の九日の現金預金の確認によって補償の約束もいたしました。それからついこの間も、賃金三百六十円引き上げの労働者の要求にも関連して約十七億円ほどの融資その他の措置、税金の措置もあったようでありますけれども、これらを講ぜられたということを私ども承知をいたしております。しかし、これで問題は解決したわけではありません。この沖繩の大企業のほうは一心そういうことになっても、中小零細企業やそこで働く人々の問題はなかなか解決がつかないし、この前の補償漏れの問題もありますね。そういうふうなたくさんの問題もあります。さらに、全軍労は米軍の首切りの問題に端を発して三月七日かり長期ストに入る、そういったようなこととも開運をいたしまして、このドルの問題は沖繩において非常に大きな混乱の原因を今日なおつくっている、こういうことでないかと思います。  そこで、琉球商工会議所等は本土並みの賃金差額の一年分を一括補償金として払えだとか、すべての給与、賃金、年金、共済金、これはすべて損失救済の対象にしてほしいとか、あるいは琉球政府の通貨問題対策協議会も、それぞれ三百六十円切りかえあるいはそれの補償、こういう決定をいたしております。ですから、いまの段階においてやはり補償措置といいますか、そういうようなものについてもっと明確な抜本的な対策を講ずべきではないか、こう思うのですが、これは長官ですか大蔵大臣ですか。
  232. 山中貞則

    ○山中国務大臣 安井さんは社会党沖繩問題の特別委員長だと思います。したがってこの際、本土の私どもがお酔いの質疑応答の問題点をいたします前に、全国民にも知ってもらいたいと私がかねがね思っておりますことをちょっと言わしていただきます。  通貨問題に対して、沖繩の人々は自分たちが希望し選択してドルを使用し、ドル圏に入ったものではない。そして沖繩人たちが希望をして、本土の物資を八割選択をして生活のために買い入れているものではない。やむを得ずそういう境地に置かれておる日本国民なんだ。そうして本土の円が変動相場に移行し、そうして切り上げられていく過程における国際通貨の調整の段階においても、ドルの価値が下がってもドル圏の中においてドルを生活物資の中で使用しておる人々については、若干のニュアンスの差はあっても深刻な問題ではない。円を使い、そして円圏の中におる人々にとっても、また若干のニュアンスの差はあっても変化はない。しかし、沖繩の人々はドル圏の中に生活を余儀なくされて、そして円物資をほとんどが購入を余儀なくされておる。この問題から、沖繩県民の気持ちというものが、私はまだ本土の各界各層にわかっていないような気がしてなりません。このようなことは、少なくとも安井さんと私との間には、もう当然認識は、前提は一致しておるわけでありますけれども、このようなことを、復帰を目前にして大混乱を来たしておる沖繩の現状について、日本国民全部が知っておいてもらいたいということから、公式の場において一ぺん述べさしていただきたいと考えておりました。  そこで具体的な問題としては、ただいま安井さんのほうからは、すでにとった措置等についてもお話がございました。琉球政府との間においても十分に連絡をとってその措置を進めておるわけであります。しかしながら、お話のありましたように、たとえば銀行あるいは保険業界等については、日銀の貸し付けをしてくれというような話もありました。日銀の預託をしてくれという話もありました。しかしながら、要はその低金利で預託されたものを運用することによる運用の利子のメリットを賃金の三百六十円、現地でいう読みかえということの財源にしたいということに目的はあるわけであります。日銀の問題は大蔵省の所管でもありませんが、関係のある省としては大蔵省でありまして、その筋から日銀の独自の、中央銀行の自主性の立場から、総裁まで含めて判断をしてもらいましたが困難でありました。  したがって、とった措置は、現在本土法において、本年三月の事業年度から始まる銀行並びに保険業界に対して、貸し倒れ準備金の非課税繰り入れ率を千分の十五から千分の十二に下げるという措置、沖繩においては現在千分の十でございますので、これを一年間延期することによって、さらにまた一億円以下の資本のものについては、租税特別措置法による二割増しがきいてまいりますから、千分の十八の非課税留保ができるわけであります。それは可能かということで調べてみましたところ、現在琉球政府税法のもとにおいて千分の十の非課税繰り入れのほかに、それぞれ琉球銀行、沖繩銀行ともに千分の十八・八とか、そういうような、明らかに千分の十五をこえる積み立てを、課税積み立て分まで含めていたしておりますので、これは明らかに、要望である百億の預託をしたときに予測される金利によるメリットは三億円余りにしかすぎませんが、この税法をそのまま適用いたしますと四億に相当いたしますので、この問題については話が片づいたわけでありますけれども、他方において産発資金の十億、大衆金融公庫の一種、二種をかきねを取り払って七億六千万円で、すでに措置いたしてありました十五億にプラスして大体二十二億というものを措置することによって、おおむね解決をするということで琉球政府との間に合意をいたしました。  しかしながらその反面、まず合意をいたしましたが、しかしながら読みかえによって実質上補償される公務員、公社あるいは電力会社、株式会社等の職員、あるいは軍労等もほぼ同じ線で解決に近づいておりますが、いわゆる沖繩の方々の一般の気持ちからいえば、親方日の丸はうまく解決をする、また民間の大企業も許認可料金等の、三百六十円とは言っておりませんが、新しい料金設定ということで解決をしていく。そうすると、零細な従業員をかかえて生活をしておる人々に対して、自分たちはどうすればいいんだという問題に、はたして決定的にこたえているのかどうかは、私自身もまだ最終的な疑問を持っておりますので、さらに沖繩の現状をよく調査の上、まだ不足する面がありますならば、賃金の支払いに融資をもって充てるということは理論上は成り立たないことでありますけれども、補償ということがきわめて困難でありますので、それらの問題を念頭に置きながら、さらに検討、善処をいたしたいと存じます。
  233. 安井吉典

    ○安井委員 さらに、これは大事な問題ですから進めていただきたいわけでありますが、もう一つドルの問題は、円への切りかえの時期を早めるということが非常に重大ではないかと思います。これは大蔵大臣だと思いますが、サンクレメンテでも話をされ、その後もいろいろ交渉をされているんだというふうに伺っておりますけれども、なかなからちがあかない。私はこの際、アメリカがあまり自分の施政権をたてにとってオーケーを出さなくても、琉球政府が特別な法律をこさえて、それを日本政府がバックアップをして、いまドルの通貨と一緒に円を併用通貨にさせるという方法を思い切ってやればどうか。アメリカのほうもなかなか日本政府を出し抜いていろいろやることもあるのですから、私は、むしろ思い切ってそれくらいのことばできないのだろうか。それは沖繩の人に対するもう最後の善政にもなると思います。思い切ってそういうことはできませんか。
  234. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 お話しのように、サンクレメンテで私のほうは財務長官に要請しまして、沖繩復帰前にいわゆる円・ドルの交換を実施したい、この検討をしてもらいたいという申し出をしましたら、承諾いたしてくれましたので、この二月の中旬に担当官をワシントンに派遣して、日米でいろいろ技術的な問題の詰めに入っております。で、最近帰ってまいりまして報告を受けましたが、これを実施する上においてはなお依然としていろいろ検討すべき問題が残っておるので、引き続きこの検討を継続しようという話し合いで帰ってまいりましたので、これから残っている問題について検討を継続するつもりでございます。  一つの例をあげますというと、たとえば復帰前に円を流通させることでございますから、やはり為替管理制度を持たないで流通させるわけにはいかない。その場合に、どの程度まで米国が為替管理について引き受けてもらえるか。すなわち、いまおっしゃいました民政府布令がどの程度まで改正が可能であるかというような問題の詰めを、了承を全部すれば、私はある程度いくのではないかと思うのですが、まだそういう技術的な問題が、たくさん実施する上に残っておりますので、さらに両国で検討を続けて、できるだけ早い機会に結論を得るようにしたいと思います。
  235. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 安井君に申し上げますが、時間が経過しておりますから簡単に願います。
  236. 安井吉典

    ○安井委員 いまのドルの問題については、私は、検討、検討と言っているうちにもう三月十五日が来て、あと二カ月で五月十五日と、こうなると思います。だから、やはり思い切ってひとつここで何かやってみよう、こういうようなお気持ちをこの際やはり出していただきたいと思うわけであります。そのことを強く要求しておきます。  もう一つだけ、請求権の問題について、この間の臨時国会では総理もいろいろ約束もされているわけでありますが、対策はどうなっているのでしょうか。法律はどうなんですか。予算はどうなんですか。
  237. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは私から先にお答えいたしますが、御承知のとおり、もう立法の必要のあるものは調査の上立法をしたいという態度で準備に入っておるわけでございます。  そこで、いまの御指摘の点でありまするが、請求権関係の調査経費、これは一千八百万円、この予算で計上をいたしております。  それから第二番目に、講和前の人身被害補償漏れ事案の見舞い金、これはまだ法律は審議未了でありまするが、これについては二億三千三百万円、これを要求して計上をいたしておるわけであります。
  238. 安井吉典

    ○安井委員 その請求権の問題は、もう時間がありませんから、次のほかの質問者も準備がありますからそれに譲りたいと思うし、政府がそんないいかげんな態度なら、私どもは法案を出します。私ども、やはり沖繩にも出先の請求権処理の委員会なるものをこさえる、中央の総理府の中に——防衛庁ではだめですよ、これは。防衛庁だけの問題ではありませんから、政府総理府の中に特別な委員会、審議会のようなものをこさえて、それで処理する、そういうようなところまでいかなければならぬのではないか。そういう方向でひとつ検討をしていただきたいわけであります。  もう時間が来たそうでありますから、もう一言だけ総理に申し上げて終わります。  近く統一見解が出るということでの作業でありますが、先ほど来私も指摘しておりますように、先に行ったと思ったらすぐあと戻り、また行ったらまたあと戻り、そういうことで衆議院のこの予算委員会の中の政府の、特に台湾問題を中心とする答弁は、行ったり来たりしているわけであります。私は、どうも総理は進んでいるが、ずっとあと戻りするところがおかしいので、総理はもうこれが最後の機会だから、思い切った対策を出してというふうなお気持ちがあるが、どうも日本の官僚機構の中で引き戻しをするような、あるいは自民党の中でそういうふうな、そんなものがあって行ったり来たりという姿があらわれているのではないか、こう私は思うわけであります。ですから私は、総理もいつおやめになるなんということは言われなかったが、心に期するところがあろうと思うのです。だからこういう段階で、新しい総理大臣が何か方針を出してくれるだろうというようなことでなしに、やはりいまの段階で、ほんとうの日中の打開はこうなんだということを総理の責任においてお出しになる、そういう前向きな姿勢をやはりもう、理事会の中でいろいろこれからも相談がされるが、うしろ向きの答えが出そうになったら指揮権を発動して、きちっとこれでやれ、こういうところまで総理の御努力を願いたいわけであります。私は、さっきイタチにたとえてしまって失礼をいたしましたけれども、もしもそういう最後のりっぱな統一見解ができたら、これはまさに総理のうしろ姿から後光がさすというふうなところに私はいくのではないかと思います。そういう御努力をひとつ最後にお願いをして終わります。
  239. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて安井君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田之久君。
  240. 吉田之久

    吉田(之)委員長 まず初めに総理にお伺いをいたします。  実は、政府はあす台湾の帰属に関する統一見解を表明せられるわけでございますので、私はこの問題については深く聞こうとは思いません。しかし、先ほど安井委員からも御質問がありましたように、きのうきょうの総理の御答弁などをめぐって国民はたいへん不安定な思いを抱いております。一国の領土が、そして一つ政府のまたその領土の帰属が、毎日毎日ぐらぐらと変わるというふうなことがあっていいのだろうかという感じ方であります。  特に私が一番気にいたしますのは、きのう参議院で総理は、日中国交正常化が実現すれば、台湾は中華人民共和国の領土となるというふうに申しておられます。いやしくも一国の領土が、他国の国交のあるなしによって、二つになったりあるいは一つになったりし得るものなのかどうかという疑問でございます。しかもこういう表明は、聞き方によってはきわめて尊大、不遜のさたであると、諸外国から誤解されたりあるいは非難されたりしはしないかという問題であります。私が申し上げたいのは、厳粛な領土問題というものは、ロジックのつじつま合わせで論じられるべき問題ではないと思うのでございますけれども、いかがでございますか。
  241. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 吉田君からただいまのような御所見を述べられました。私は、ただいまの段階では、統一見解を出そうと、かように政府はいろいろ苦心している最中でございます。その際に、ただいまのような所見を述べられたことはたいへん私、参考になったと、かように思いますので、ありがたくお礼を申し上げておきます。
  242. 吉田之久

    吉田(之)委員 お礼を言われてはいささか変な感じなんですが、私どもが申し上げたいのは、政府は過去に向かっては、台湾に対してはその経過を正当化しなければならない、同時に将来に向かっては、中華人民共和国との新しい展望を切り開いていかなければならない、こういういわばジレンマの中でたいへん苦慮しておられるだろう。少なくとも今日の佐藤内閣の経過をながめますときに、その点はわかる次第であります。しかし、いつまでもただぶつぶつと国内でつぶやいているだけで、こういう問題が解決するのであろうか。また、あなたが日本で表明しておられるそういうことばの端々が、今後中華人民共和国との国交回復の面で、かえって大きな支障を来たしはしないであろうかという心配なのでございます。  今日、世界はきわめて激動を続けております。私はこういう激変する世界情勢の中で、確かにことしに入ってからの日本の外交、佐藤内閣の外交というものは、非常に目ざましい多元外交の時代に入ってこられたと思います。サンクレメンテ以後、いわば静から動に転じられたのではないかというふうにも見ております。あなたはサンクレメンテでは、中国をめぐる日米政策の違いを明確に説明されました。そしてアメリカに先がけてバングラデシュを承認されました。さらにハノイに外務省の役人を派遣してつながりを持とうとなさっております。さらにモンゴルの承認に踏み切られました。日ならずしてグロムイコ外相の初日を受けたという事態であります。いまや外交課題として、こういう思い切った動きを示し始めた日本の前に、厳然として横たわっている問題ははたして何であるか。それは日中、日ソという二つの平和条約の締結をどうこれから解決していかなければならないかという問題なのでございます。  そこで、先ほど安井委員からもお述べになりましたけれども一つソ連との問題、北方領土の問題、この解決なくしてソ連との友好関係に入り得るめどはないと思います。あなたは過日参議院の本会議におきまして、わが党の向井氏から出されました質問に対して、北方領土の返還という国民の願いを解決するためには、私自身みずから訪ソする気持ちさえ持つということを申し述べられたのでございます。しかしながら、その後新聞記者発表などでは、現職のときに行くとも言っていないではないかというふうな、少し気の抜けた表現をなさっているようにわれわれは考えます。一体、沖繩の返還を実現して最後に残る北方領土、この領土問題解決なくしては、ほんとうの意味で一本の戦後は終わらないと考えられるでありましょう佐藤総理は、最後の仕事として、北方領土問題の解決のために一つのめどでもつける、その英断を示そうとはなさらないかという問題をお伺い申し上げる次第でございます。
  243. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一億国民の願い、これを遠吠することが政治の眼目であります。私は、領土に関する限り、一億国民は、南におきましては沖繩の祖国復帰を実現すること、北においては北方の日本固有の領土をはっきりと祖国のものにする、こういうことが一億国民の願望だ、かように思います。私ども、こういう時期に政治家としてそういうお役に立つことのできることはたいへんしあわせなことだ、かように思っておりますので、全力を注いでこの事態の解決に努力したい、これが私の念願であります。
  244. 吉田之久

    吉田(之)委員 次に、中国との問題でございますが、先ほどもいろいろと御答弁の中に、それぞれしかるべき人を介してというような総理の御答弁がございました。しかし私は、すでにこの段階においては、そのような消極的な予備折衝で問題が解決するとは思いません。あまりにも多くの誤解もあろうと思います。またあまりにも長い歴史的経過がございます。  私は、その点でまず一つ伺い申し上げたいことは、この間表明されました米中共同コミュニケは、全部その内容においてわが国は承認でき得るものであろうと考えますけれども総理はどのようにお考えでございますか。
  245. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、事柄は米中間できめた事柄でございます。日本が関与したことではございません。しかしながら、その中には私どもも賛成できるものも多分にある。ただいま私が考えたのでも、この点は、日本としては受け入れられないというものが実はないように思っております。
  246. 吉田之久

    吉田(之)委員 しかし、先方でははたして日本がそういう態度を持っているかどうかという点では、なかなかに確認し得ない事情にございます。あるいはむしろ逆に、先方はそうは見ていないかもしれない。したがって、その辺の問題を解決することなくしては、日本と中国の友好関係の樹立はあり得ないと思うのでございます。この際、政府みずからが腰をあげて、中国との折衝打開に向かわれるべき時期にすでに来ているのではないかというふうに考えます。その点、先ほどの答弁ではたいへん私たちは了承しにくいわけでございまして、重ねてお答えをお願い申し上げたいと思います。
  247. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまや政府間交渉の段階に来ている、かように私も思います。
  248. 吉田之久

    吉田(之)委員 それでは次に、けさほど来問題になっておりました核兵器持ち込みの疑惑の点でございます。この点では楢崎委員もいろいろと質問され、なお問題があとに残されているわけでございますけれども、私どもは、先ほども総理並びに外務大臣から御答弁がありましたように、日本に核が無断で持ち込まれるかどうかという問題は、まさに日本の根幹に触れる問題であると思います。きのうの事件にいたしましても、政府の問い合わせに対しましてアメリカの大使館のほうからは、具体的な事実についてはコメントできない、しかし、わが国は事前協議の約束を忠実に守っていることに断じて間違いはあり得ない、こういう答弁をいたしております。しかし、こういう質問やこういう回答の繰り返しだけでは、ほんとうに国民が、日本は日米安保条約を持っている、日本は核のかさの下にある、しかし日本は非核三原則の国である、核の持ち込みに対してはいろいろな取りきめはあるけれども、しかしほんとうのところはわからないのではないだろうかという疑問を、ますます深めているのが昨今の現状であろうと思います。  先ほど、国際慣習に従えば査察をするというようなことはできないことだというふうにお述べになりました。しかし私は、きょうあとで申し上げたいと思いますが、日本は他の国と違ったいろいろな国情、特殊な要素を持ちながら日本の防衛を考えていかなければならない、そういう国柄でございます。だとするならば、単に国際慣行にないからといって、それだけでただ黙って引き下がって相手を信じているだけではなしに、何かさらに一歩踏み出して、査察ないしは査察に近い形の約束を取りつけることができてこそ、初めて日本の非核武装国家としての特殊性が維持され、その権威が保たれるのではないかというふうな感じがするわけでございます。この機会に総理の所信をお伺い申し上げる次第でございます。
  249. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ立場はございましょうが、しかし、私は考えますのに、重要なる条約を結ぶそういう際におきましては、お互いに疑惑を持つとかあるいは不信、そういうことがあってはそういう条約は結べるものではないと思っております。私は、安保条約を結んでいる日米間において何らの疑惑や何らの不信、さようなことはない、かように確信しておりますし、それが安保条約を締結しているゆえんだ、かように思っております。
  250. 吉田之久

    吉田(之)委員 確かに一国と一国の間の信義といものは、それほどきびしくなければならないと思います。しかし、たとえばきのうのアル・ハバード氏の証言のあとわが国の防衛庁が、横田あるいは三沢、千歳、ジョンソン、嘉手納基地に運ぶ、そうした可能性もあり得ないわけではないというふうな、決してそのことを認めてはおられませんけれども、通過の可能性はないわけではないというふうな、非常に微妙な発表をなさっております。われわれはそれが単に通過であろうとも、あるいはきわめて一時的な貯蔵であろうとも、断じて核を持ち込まないというわが国の国是から申しまして容認できない、してはならない問題でございます。こういう点では、今後もさらに一歩踏み切った何らかの保証というものがなされなければならないのではないか。まず今日のところは、安保協議委員会において、その場で十分こうした問題をさらに調査、審議されることを、強くお願いいたしておきます。  次いで、本来の防衛問題の質問に入らしていただきたいと思います。  まず、総理にお伺いいたしますことは、総理はしばしば私ども質問お答えになりまして、わが国の防衛の基本方針は国を守る気概と、国力、国情に応じた防備であるということを述べておられます。しかし、はたして国を守る気概の統一というものが、今日の日本の国家において、社会においてはかられているであろうかどうかということが、きわめて心配な事実でございます。私たちは国防を論ずるときに、装備の問題や兵員の数を論ずるよりも、むしろその前に何よりも大切なことは、防衛意識の合意が国民の中に行なわれているかいないかということでなければならないと思うのでございますが、総理は、今日の状態の中で、国を守る気概がはたして国民の中に統一的傾向として醸成されつつあるかどうか、むしろ逆な傾向にありはしないか、この辺についてどのように分析をなさっておりますか。
  251. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この問題については、これは基本的な問題ですから、いろいろな議論がされておると思います。しかし国民大多数、これはやはり国を守る気概はまことに盛んなものだ、かように私は確信しております。
  252. 吉田之久

    吉田(之)委員 まず気概の問題は、いろいろとなかなか捕捉しにくい問題ではありましょうけれども、しかし私は、同時に国を守る方法論において決定的に世論が二分、三分している状態で、はたして国が守れるであろうかという問題について懸念を感ずる次第でございます。  申し上げるまでもなく、今日の日本の国家におきましては、重武装論、あるいは非武装中立論、あるいは安保堅持論、安保破棄論、あるいは自衛隊そのものが違憲であるか合憲であるかというような論争が、渦を巻いていると言っても決して言い過ぎではないと思うのでございます。私どもは、こういう国論をどう統一していくかということにさらに積極的な努力を払わなければならない。われわれ民社党はこうした面で、今日の日本の社会の中で国防を論ずるときに、その国論が分裂している最大の原因は何であるか、それは外国の軍隊の駐留基地存在であると考えております。このことがなければ、もっと問題は国民の中にすなおに受け入れられ、納得され、合意されていくのではないか。先ほど、北方領土の問題につきましても、まさしくこのこととのからみ合いの問題が論ぜられました。今日、日米安保条約の実態、そして諸情勢の動きというものは、逐次、駐留なき、基地なき安保の形に次第に変質しつつあるのではないかというふうに感ずるわけでございますが、こうした問題とからんで、総理は国論の統一という問題をどうお考えでございますか。
  253. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま、国防についていろいろな意見のあるということ、それを御紹介になりました。これも、コンセンサスができないゆえんが、安全保障と申しますか、外国軍隊の駐留にあるのだと、こういうところヘコンセンサスのできないゆえんを求められましたが、私はやはり何といっても、現状の国際情勢のもとにおいて安全と独立を確保するために、一国だけでこの安全と独立を確保するということはまことに困難な状態だ、かように考えております。私は、そういう意味からも、ただいまの集団安全保障体制、その一翼、それを日本がになうんだ、そういうことが望ましいというか、それによって初めて安全並びに独立の確保ができるんじゃないか、かように思っております。それかと申しましても、多数国とこの安全保障についての約束を取りつけることは、ちょっと日本のたてまえから見ましても、これはできない部分もございます。したがって私どもは、ただいまのような、日本自身は自衛力を持つ、その足らざるところをアメリカと安全保障条約を結んで補っていく、これがやむを得ない体制だ、私はかように思っております。
  254. 吉田之久

    吉田(之)委員 それはお答えにならないと思うのです。われわれは、安全保障そのものを否定はいたしておりません。さらに将来は、国連を中心とする多角的な集団安保体制が各独立国の安全のために最良の方式であることは、われわれも同意いたしております。そういう安全保障を結んでいる国々が必ずしも外国の軍隊を駐留させているかどうか、外国基地を提供しているかどうか、まさしく珍しい例外として日本があるだけでありまして、諸外国の例にはほとんどそういうものは見当たらないのであります。私どもはそれを問題にしているわけでありまして、総理の御答弁はまことに不十分であり、この点ではきわめて不満きわまるものでありますが、いまここでそれ以上の答弁を求めるのも無理だろうと思います。しかし、われわれの目ざすべきは国論の統一でありまして、そのことのためにこうした諸問題を真剣に考え直されるべき時期であることだけはよく御確認をいただきたいと思います。
  255. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 別に求められたことではないように思いますけれども、事柄が国防、たいへん重大な問題でございますので、この委員会を通じてやはり国民にも理解していただきたいと思います。  私どもは、さきの戦争に負けて、いわゆる平和憲法、これをつくりました。したがって、外国に派兵するというようなことは一切しない、日本国内だけにとどまるのであります。しかも、外国に脅威を与えるというような、そういうものも持たないと、かように実は申しております。したがって、ただいま国連の安全保障体制の一翼をになう、こういうことも一つの行き方じゃないかと言われますが、おそらくそれは同時に海外派兵をも意味するのではないかと思います。私どもはそれには反対であります。したがって、私はやはり、海外に派兵もしない、日本だけにとどまる、そうしてそれが仮想敵国も持たない、また同時に他国に脅威を与えないものである、こういう自衛力は持つ。それだけでは足らないから、ただいま日米安全保障条約を結んでおる。いわゆる駐留なき安保条約というものについても、私は理解しないわけではございません。そういうこともできるかと思いますけれども、ただ、あまりにもそれでは身がってな言い分ではないだろうか、かように私も思いますので、それらの点を、いわゆる国民的コンセンサスを得るようにもっと理解してもらわないと、どうも日本は、現在の状態でもいわゆるただ乗り論というものがございます。日本は何らの犠牲を払わないで安全保障だけアメリカの犠牲においてただ乗りをしている、こういう行き方は許せない、かようなこともいわれておる際でございますから、そこらに、われわれは十分思いをいたさなければならないものがある、こういうことは申し添えさせていただきたいと思います。
  256. 吉田之久

    吉田(之)委員 何を総理、お取り違えなさいましたのか。われわれは、国連による集団安保、それに日本が海外派兵をしなければならない、だれもそういう発想を申してはおりません。日本日本の特別な国情、これはまたあとでこれから総理と一問一答をいたしたいと思います。ただ、非常に身がってな、みんなで守ってくれ、おれは何もしないのだというようなことは、今日の国際社会では通用しない。たとえば国連平和維持隊という発想もございます。その内容はさらにいろいろと精査検討しなければなりませんけれども、全く外国に対して誤解や脅威を与えない、そういう平和な工作隊や維持隊、看護隊の派遣などまで日本の国家の方針が禁じているとも考えられないのでございまして、この辺はひとつ大いにお考えをいただきたい。まあ、駐留基地を全くなくすることは身がってだ、そういうお考えであればこそ、今日までこういう問題ある安保を結んでおられるのだろうと思います。しかし、それならば、アメリカの軍隊はさらにたくさん駐留してくれておることが一番いいという、単純な論理の発想から言えばそういうことになります。われわれは、この外国の軍隊がいることが、基地があることがむしろ国論そのものを分裂させるのだ、国論の分裂の中に国防というものはあり得ない、その辺の価値判断というものを十分論じながら日本の国家の安全をはからなければならないということでございまして、ある程度は平行線の面もあるかとも思いますけれども、しかし、重要な根幹においては、われわれ国民は全く合意でき得るはずでございまして、さらに別の機会に申し上げたいと思います。  さて、続きまして、国力、国情に応じてとよく総理はお述べになります。まさにそのとおりだろうと思います。この国力に応じてという問題は、ほぼ何となく国民はじかに判断ができているようでございます。しかし、その国力のどの辺までをどうするのかという具体的な方法は別として、何となくまだ理解ができる条件であります。要素であります。しかし、国情に応じてという総理の表現が一体何を意味しておられるのかという点では、一向にさだかではございません。総理がわれわれに絶えず説明しておられるこの国力と国情、その中の国情とは具体的に何と何と何であるかということをお述べいただきたいのでございます。
  257. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国情から申しますと、私どもは戦争の惨禍というものをほんとうに身をもって感じた。勝った場合も負けた場合も、これが人類に及ぼしておるその影響、おそるべきものは戦争だ、こういうことをほんとうに身をもって体験しておる国でございます。さらにそれが原爆にまで発展した。そういうことを考えると、もうわれわれ戦争は絶対にしない、これがいまの国情でございますし、これは少なくともすべての国民にいま共通しておる考え方ではないだろうか、かように思います。
  258. 吉田之久

    吉田(之)委員 たいへん抽象的なお答えですが、もちろんそのことも大きな国情ではあります。しかし、戦争の惨禍を受けたのは日本だけではありません。諸外国にもそういう国情はあります。その戦争の惨禍の中で、いまお述べになりましたように、初めての原爆被爆国であったということが重要な国情の一つだろうと思います。さらに、そういう歴史的教訓の中から新しい国家が誕生いたしまして、それが平和憲法というものを床持している、これも重要な国情の一つだろうと思います。私はそういう点で、この平和憲法と自衛隊の問題は、先ほども申し上げましたけれども、合憲、違憲論が依然として渦を巻いております。自由なる国家の国民でございますから、違憲の説を唱えることも大いにあり得ていいと思います。しかし、この重要な二十五万の武装集団が違憲であるのかどうかという最終的な判断を行なう機関は最高裁だろうと思いますけれども、それでいいわけですね。
  259. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  260. 吉田之久

    吉田(之)委員 次に、私は、この自衛隊の問題で、いま申されましたように、最終的な判断はいずれまたなければならないと思います。しかし、一般国民の常識といたしましては、国がある以上国民の生命と財産は守られなければならない、したがって、自衛に徹した自衛隊ならば、それは国家そのものの責任であり使命であろうというふうにほぼ解釈をしているはずでございます。しかし、この間、福田外相が、極東条項に含まれる台湾、したがって台湾の安全の責任は日本が持たなければならない、韓国もまた同様である。その後、台湾問題についてはいろいろと微妙になってきておりますけれども、明らかに日本の領土以外に日米安保が及ぶという問題、こうなってまいりますと、そういう安保の中の一環に組み込まれた自衛隊というものは違憲ではないかという国民のそしりは、ますます大きくなってまいります。  この辺で、あらためて私がなぜこういうことを申し上げたいかということは、この間の五人の学生ゲリラの問題であります。未成年を含むわずか五人、しかし武装しているこのゲリラたちが、いかに国民に危害を与え、てこずらせたかという事実であります。私は、自衛隊というものがほんとうに日陰者扱いにされないように、そしてほんとうに国民合意の中で敬意を払いながらささえられる集団でなければ、わが国の将来に予想しない重大な事態が起こらないとはだれしも断言できないと思うのです。私はそのことをおそれるがゆえに、今日合憲、違憲論、そして自衛隊の問題、こうした問題をとらえて、さらに政府は何かもっと国民に正しく納得を求める道を提起されなければならないのではないかというふうに考えますが、いかがでございますか。
  261. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は自衛隊を否定する方も国民のうちにはあると思います。しかし、ただいま吉田君が言われるように、最小限度の安全並びに独立を守るために必要な自衛隊、自衛力は認めるほうが多数ではないかと思っております。そういう意味で、私どもは少なくともその点についてはコンセンサスを得るようにさらに努力をする必要がある、かように思っております。
  262. 吉田之久

    吉田(之)委員 次に、総理は、わが国の国情の一つの要素として、わが国が海洋国家であるということを考慮なされたことがあるかどうか。そういう四面海に囲まれたま完全な海洋国家である日本、それがわが国の防衛を今後確立していくための一つの重要な要素であるということは私は否定できないと思うのです。そこで、四次防の問題がいろいろと問題になっているおりからでございますが、ヨーロッパのある軍事専門家は、日本が四面海に囲まれているということだけで、その条件は優に陸上百万人に匹敵すると述べている説があるようでございます。こういう日本の置かれている特殊事情、海洋国家の持つメリットとデメリットについて、いままで総理は、日本の防衛をコントロールされる最高の責任者の一人として、どうお考えになってまいりましたか。
  263. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま吉田君の言われるように、陸続きの欧州諸国の場合と違って日本は島国である、こういう意味で海洋国家である。こういうことは、ただいまのようにメリットもあるがデメリットもある。同時にまた日本は資源に恵まれてない国だ。そういう意味からも、これは海洋国家であるがゆえにそのデメリット、メリットもある。こういうことは、ちょうど、海洋国家ということを言われるが、同じように空というもの、大気圏というようなものも、これもやはり同じような意味で陸続きでないという、そういうところに問題があるだろう、かように思います。しかし、これは私、何といってもいままでのところでは、比較研究をする人もございますけれども、おそらく海洋国家である、島国である、こういうことはメリットの高い国だ、かように見ていいのではないか、かように思っております。
  264. 吉田之久

    吉田(之)委員 それから、これはまあ日本だけの国情ではないと思いますけれども、やはり国情の中には国際情勢というものが当然入らなければならないと思います。そういう意味で、今日、国際情勢というものがきわめて劇的に動いている、しかも非常に早いテンポで動いている。江崎防衛庁長官は、かつて防衛長官になられる前のことでございますけれども、中国の軍隊を見て、これは外に出て戦う軍隊ではないと感じたということを新聞に述べられたことがございます。今日、防衛長官になられた現在の心境として、ひとり中国だけではなしに、日本を取り巻く近隣諸国の国情に対してどう分析をなさっておりますか。
  265. 江崎真澄

    江崎国務大臣 当時、私そういう見解を表明した記憶がありまするが、現在でも、中国の軍隊というのは、引き入れてたたくといういいますか、そういう作戦に出る軍隊であろうというような感じがいたします。余事ですが、ちょうど私どもが見ました——ちょっと師団名を忘れましたが——師団と、この間ニクソンさんがごらんになった師団というものは、同じものであったようであります。おそらくそういう感じをアメリカ側でも深められたんではないかというようなふうに思います。
  266. 吉田之久

    吉田(之)委員 中国以外の諸情勢についてはどのように分析しておられますか。
  267. 江崎真澄

    江崎国務大臣 極東の平和というものが、だんだん緊張が緩和されつつあるという感じがいたしております。ただ、この情勢というものは、緊張をしたり緩和をしたり、また緊張をしたりというような感じが続きます。たとえばあの韓国と北朝鮮の感じを見ましても、そういうことが言えると思います。しかし、いまにわかに日本にそれが一つの侵略的な力というような形になって感ぜられるものはないというふうに判断いたしております。
  268. 吉田之久

    吉田(之)委員 いま一つの大きな変化として今後とらえられなければならないのは、アメリカの世界各地からの撤退であろうと思います。こういうことは一言いにくいことでありますけれども、率直に言うならば、今月アメリカは、世界に対して、特にまた中国に対しても、スマイル外交のほうは自分で受け持って、そしていまお述べになりましたように、緊張と緩和のいろいろと微妙な変化の中で、いわゆるきびしい対立の側面は日本に担当させようとしているのではないかというふうなうがった感じさえする今日でございますが、そういう中で、アメリカの世界各地からの撤退の傾向、とりわけ日本周辺、アジア、そして極東からの撤退の傾向を防衛庁長官はどのように推測しておられますか。
  269. 江崎真澄

    江崎国務大臣 ニクソン・ドクトリンによりましても、相当急速にこれは進むのではないかという想像に立っております。しかし、欧州方面においては、たとえばドイツなどは、アメリカが撤退すると言いましても、ぜひ駐留してもらいたいというような要請もあるという例外的な動きもあるようでありますが、アジアにおいては比較的早い機会に撤退されるものという観測です。
  270. 吉田之久

    吉田(之)委員 ただそれだけですか。現にどのように推移し、今後どのように変わっていくであろうか。いま入手している情報がなければ、四次防というものは成り立たないんじゃないですか。
  271. 江崎真澄

    江崎国務大臣 早く撤退するであろうという予測はいたしておりますが、これは完全撤退という意味とは区別をしていただきたいと思います。しかも、ニクソン大統領がグリーン国務次官補を派遣して、従来ある条約、協定等については忠実でありたいということをわざわざ外務大臣に申しておるような経緯からいいましても、相当数は残るであろう、これは考えられるわけであります。
  272. 吉田之久

    吉田(之)委員 一国の防衛庁長官として、その程度の認識とそのような楽観的な態度で今後わが国の防衛を担当していかれようとするのかと思いますと、まことに私どもははだ寒い思いがいたします。  今日われわれでさえ知っている情報として、ジョンソン政権の末期に、アジアにおいて、ベトナムを含んでアメリカの軍隊というものは七十八万人存在いたしておりました。しかし、四十七年の一月末までにすでにそこから四十万人が撤退をいたしております。またベトナム以外の極東の地域から、二十三万人おった米軍がすでに六万一千人撤退をいたしております。これはきわめて持続的な、かつまたアメリカ自身の事情から出た問題でありまして、いま防衛庁長官がおっしゃるように、ただ出たり入ったり、いつまたやってくるかもしれない、そういう一時的な部隊の移動だととらえるべき問題ではないと思うのです。われわれは現在約二十万人余りの米軍ベトナムにいるだろうと思いますけれども、しかし、このベトナムからも、そしてまた返還される沖繩からも、どんどん今後アメリカの撤退というものは続いていく傾向にございます。今年じゅうにひょっとしたら米軍ベトナムからほとんど引き揚げるかもしれない。沖繩からも撤兵は進行するであろう。したがって、ことしの末にはアジアの米軍は二十万人を割るのではないか。ベトナム戦争が終われば、来年七月以降、すなわちアメリカの会計年度で一九七四年度に入って、アメリカは全面的な志願兵制度に切りかえます。ここに質的な転換があると思うのです。かくしてアメリカの兵力水準は、ジョンソン末期では三百五十万でございましたけれども、ことしの六月、ニクソンの発表によれば二百五十万になります。あるいは場合によれば、それは二百二十五万に減るかもしれない。先ほど申しましたように、志願兵制度になることによって明らかにコストアップになります。そのコストアップは四〇%程度ではないかというふうに推測されます。そういういろんな諸条件を考えますと、さらにアメリカは来年以降兵員を削減していく傾向にある。これはほぼ確かな見方ではないかと思わざるを得ません。そして一体その数はどの辺でセットするであろうか。一説にはベトナム以前、プレベトナムと申しますか、一九六四年の二百万人ぐらいまで下がるのではないだろうか。あるいは、もっと少なかった時点、いわゆる朝鮮戦争以前の百四十万人まで減るかもしれない。まずまず想定されるところは、その中間の百八十万人ぐらいではないかというふうにいわれているのであります。一言うならば、ジョンソン末期の最盛期と比べれば、まさに二分の一に兵力が削減されるわけであります。これを大きな変化と言わずして何と申しますか。これを一町的な兵員の移動だと考えておっておなたの防衛はつとまるのですか。
  273. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私はそういうことを申し上げたわけじゃないので、撤退は急速に進むと思います。しかし、それは全面撤退ではないということを申し上げたわけです。  それから、志願制に切りかえていこうということは、これはかつて戦前、イギリスが植民地に派遣しておるイギリス兵というものは全部志願制であった。そのほうが効率的であるということを今度強く参酌して、そういうふうに切りかえていく方向にあるということは、私も承知をいたしております。しかし、先ほども申し上げまするように、全面撤退という形までにはまだ距離はある。しかし、日本にとってだんだん撤退されていく傾向というものは、私は好ましいことだというふうに考えております。
  274. 吉田之久

    吉田(之)委員 全面撤退というのは、全くなくなるのでしょうから、もちろんそうではありません。しかし、きわめて大規模な、かつ持続的な撤退である。好ましいとか好ましくないとかいう論議を私はいたしておりません。そういう事実の分析をして、その中で日本の防衛というものはどう対応しようか、ほんとうに真剣に考え直すべき時期に来ているのではないかということを論じたいからでございます。私はそういう点で、何となく長官の答弁というものが、問題、事実から目をそらしておられるような感じがしてならないのでございます。  さて、そういう情勢の中で私どもは考えております。総理、あなたはサンクレメンテでニクソンにお会いになりましたけれども、ニクソンはそういうことで総理とお会いになり、さらに北京に飛び、また近くはソ連をたずねて、いまアメリカの国内事情から兵員を削減していかなければならない時期であるだけに、交渉に次ぐ交渉を続けて、何とかして世界の平和を維持せしむる方向に積極的な努力を働きかけているのではないかというふうに私たちは分析いたしております。そういう分析から、これからの日本の防衛問題というものを、もう一度原点に立って考え直さなければならないときだと思うのでございますけれども総理はこの間の事情についていろいろとお考えになったことがございますでしょうか。
  275. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆるニクソン・ドクトリン、これが最近出たものであり、最近の北京訪問、そうして米中コミュニケ、これなどは緊張緩和だと、こういうことがいわれております。そこでニクソン・ドクトリンとは一体何か。過去のコミットメントは忠実にやるが新しいものはやらないという、これは私やっぱり、いままでのような武力介入はしない、こういうことだと思っております。したがって私は、そういう意味ではよほど変化があると思っております。また、これはひとりアジアばかりではございません。欧州におきましても、アメリカ自身が背負っておる責任、そういう体制に対しましても同じことが言えるのではないかと思います。同時に、これまた一つの考え方ですが、科学技術の考え方からもってすれば、いままでのような戦争体系じゃなくて新しい分野になるのではないか。これが一つの大きな変化ではないだろうかと思っております。しかも、米ソ二大国、二大核保有国、その間でSALT、そういうような交渉もしておる。やはり新しい世界の平和を求める、それもただいま先進、強大なる軍事国家として当然のことだ、こういうことでいまやっておるのではないかと思います。したがって私どもも、自衛力と申しましても、これはいままでのような、同じような考え方ではいかない、かように思います。  私は、これは別に第四次防に関連して云々ではございませんけれども、レアード国防長官が昨年参りまして、日本の自衛隊を見てたいへん感心したことがある。それば一体何だ。よく武器に対する手入れをしている、これはまことに感心だ、しかしながら、われわれが見るとその武器はいずれも非常に時代おくれだ、こういうことを指摘されるということ、私は非常に恥ずかしい思いがいたしたのであります。私は、おそらく自衛隊自身といたしましても、いわゆる新しいものにかえるという、それが効率的なものにかわるということでいろいろな批判は受けるでありましょうが、やはり同じ金を使う、国費を使う、そうして国家の安全を確保する、こういう意味から申せば、旧式なものを後生大事にみがき上げるということよりも、それは、ごくきわめて数は少なくてけっこうだが、最新式のものを持つのが当然ではないだろうか、かように私は思いますが、これらの点についても十分の理解を得るようにしないと、今回の予算の当初において問題を起こしたようにたいへんな問題になると思います。レアード国防長官が日本に参りまして、そうして直接話をすると、ただいまのようなことを申します。私は、最近の世の中が進んだことを考えると、こういうような指摘のできるものは幾つもあると思います。いま私どもシベリアの上空を飛んでいる。これは世界一周の最も短い距離の航空路だといわれております。このシベリア上空の航空路を日本にも与えろといってずいぶん交渉いたしました。最初に、ソ連は、一体何を言っているのだ、シベリア上空は、この前の戦争中も同盟国にも使用させなかったんだよ、それを敵国であった日本がシベリアの上空を使うなどとんでもないことだ、かように実は申しておりましたが、しかし最近の状態を考えると、人工衛星の発達している状況から見て、シベリア上空、これを飛行機を飛ばしたって別に何にも支障はない。こういうことをソ連自身も感ずるようになったからわれわれに航空路を許してくれた、かようにただいま思っております。とにかく世の中はどんどん変化しているのですから、いままでのような考え方だけでおってはならない。私は、いま持っておる兵器についてもただいまのような新しいものを考えますが、同時にまた、われわれの国防的考え方もいままでのような固定的、固まった考え方でなしに、もっと柔軟的な、もっと新しく平和を求める方向でこれらの問題と取り組むべきではないか、ここらにも発想の転換が必要とされるゆえんだ、かように私は思います。
  276. 吉田之久

    吉田(之)委員 レアードさんが武器をよくみがいているのをほめてくれたとか、あるいはさらにもっと時代おくれでない武器がほしかったとか、それを私は総理の口から聞くよりも、もっとその前に、レアードが二月十五日の日に出した国防報告の中身を私たちはむしろ問題にしなければならない。総理はたいへん日本の大事な政治的指導者でいらっしゃるのですから、武器一つも大事でございますけれども、一体レアードが、ニクソンが今日の世界と日本をどう考えようとしているのかという問題の根幹に触れていただかないと、論議というのは帯なるおしゃべりになると思うのです。レアードの出した国防報告の中で、サンクレメンテの日米首脳会談で、アジア地域の広範な安全保障問題の検討が長時間行なわれたと述べられております。このことはきわめて重要な事実の一つである。  それからいま一つは、それの前に先立って、ニクソンが訪中前に出しました外交教書の中で、日本の防衛についてこのように語っております。「日本は、戦後、憲法上、心理上、政治上の諸要因によって、アメリカの核の保護に依存し、自分の安全保障上の責任を極度に制限せざるを得なかった。しかし、いまようやく日本国民は経済力に自信を持ち、今後数年間にわたって防衛力を増強し、あわせてより大きな責任を持とうとしている。この歓迎すべき傾向は」というふうに述べているわけでございます。総理がそう思っておられる思っておられないは別といたしまして、日本の一番友好国である、そして日本との日米安保を通じて、核でそのかさの下に日本を保護しているはずのアメリカが、このように日本の今日の現状と今後の国防の展望を論じているわけなんです。私は、おそらく国民はみんな思っておりますけれども総理はサンクレメンテなどで、いろいろとこの種の重要なお話をなさってこられたはずである。問題は問題として悩みは悩みとして、なぜもっと大胆にその来たるべき問題を、もたらされようとしている問題を国民の前に提示なさらないのであろうか。そしてそのきびしさの中から、日本は一体どの道を歩めばいいのであろうかという点で、あらためてなぜ国防の問題について国論を巻き起こそうとなさらないのであろうかというさびしさでございます。ただそういうことを全部カムフラージュして、ただ、いままでどおり装備をふやしていきさえすればいいんだ、それが三次防であり四次防であるというふうな考え方である限り、国民はどうしても、この国の自衛力のあり方については納得できないと思うのです。そうではございませんでしょうか。
  277. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも私は、ちょっと、いまの話、いまのお尋ねに意見を異にするものです。サンクレメンテで、いろいろ国際情勢その他一般についてはお話はいたしました。しかしながら、日本の国防、自衛力をいかに整備するか、こういうような問題をアメリカと話をする筋のものではないことは御承知のとおりであります。これは、私は別にそういうことでニクソン大統領とは話はいたしませんでした。これはもうはっきり言えることであります。  また、先ほどは米中の共同声明についてどう考えるか、こういうことでしたが、これは別に両者の一致した意見ではございませんから、あえて私反対したということは申さなかったのですが、日本軍国主義化、これについて中国が指摘した、こういうことが併記されている。そしてアメリカは、日米の関係はどうしても大事だから、いままでより以上に、またいままでの関係はぜひとも維持していく、こういう表現をしておるという。しかし中国自身は、日本軍国主義化することを心配している、かような書き方がされております。私は、それにつけましても、ただいまのような点を考えるのであります。これが一体何を意味しているのか、あなたは別におっしゃいませんが、二、三日前でしたか、心情的軍国主義というような話まで出ておりますけれども、私、そういうことがどうもわからない。いまのような点で、日本のいま歩もうとするもの、これは最小限度の自衛力の整備だ、こういうことであります。これはただいま段階的にこれを整備する段階でございます。その例として、先ほども申したように、ずいぶん古いものを大事にしている、こんなものがお役に立つだろうかといわれるような、専門家からさような批判を受けるようなものすらあるのだ、こういうことを実は指摘したのであります。それなど考えると、日本の歩んでいる道、これは別に間違ってはいない。ただしかし、同じ金を使うならば、もっと効率的な効果的な使い方をしないと、これは大事な国民の税金でございますから、そういう意味からは意味をなさないものだ、かように私は思います。
  278. 吉田之久

    吉田(之)委員 私は、何もあなたがアメリカから指示を受けて日本の防衛計画を立てなければならない、立てているんだろうというようなことを言っておりません。しかし、われわれは基地駐留のない安保をつくろうと言っておりますけれども総理は、そうはいかないんだ、やはり基地駐留が必要なんだ、そして今日、日本の防衛の常識として——ちょっと総理、よく聞いていただきたいのですが、日米安保プラス自主防衛であるのか、あるいは自主防衛プラス日米安保であるのかは別として、相互に補完し合ってわが国の安全が保障されているということは事実なんでしょう。その一方の側である米軍が、日本基地駐留をしている米軍が、そして日本以外の近隣諸国においてもだんだんと半数に近く撤兵していこうとするのでしょう。この問題と日本の防衛とは無関係ではあり得ないのではないか、あなた方のいままでの発想から言うならば。われわれの発想は別でございますよ。そのことを聞いているのですよ。ところが先ほどの防衛長官といい、いまの総理の御答弁といい、何か事アメリカの話に触れてくると、知らぬ存ぜぬ、関係ない、そう言ったほうが国会対策上すんなりいくんだ、外国からも問題にされないんだ、軍国主義と呼ばれないんだというふうな意識を少し過剰にお持ち過ぎになって、一番大事な日本の国防というものを忘れておられはしないかという懸念でございます。  私は、そういう点、時間がございませんのでだんだん先に進んでいきますけれども、どうしてもいま国民があなたに期待いたしております問題は、そして防衛長官に期待いたしております問題は、ただ整備計画をだんだん進めていけばいいじゃないかという問題ではなしに、一体日本はほんとうにどうして守られるのであろうか、また独立国家としてどういう体面を保ち得るのであろうか、そしてまた、平和指向国家としてどうあらねばならないのか、この辺をほんとうに大胆に問題を提起してもらわなければならない、こういう感じがしてならないのです。
  279. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはもう一言で答えれば、最近の状態は、さっきも申したように、科学技術の進歩によりまして変化している、そういうもとにおいてわが国の安全、平和を確保する、こういうたてまえでございます。
  280. 吉田之久

    吉田(之)委員 それでは、ちょっと具体的に四次防の問題についてお伺いをいたします。  まず、総理は、当初の四十七年度の予算には四次防は含まれていないとおっしゃいました。しかし、その後T2、C1、RF4Eなど、四次防の機種らしきものが出てまいりました。いろいろ論議になりました。そして、国会が二十日間にわたって空転をいたしました。その結果、四次防の疑いが深い部分については、予算は削除されました。言うならば、今度修正された予算というものは、四次防の影も形もなくなった予算である、こう考えていいわけですか。
  281. 江崎真澄

    江崎国務大臣 時間をとらないように申し上げますが、私どもとしては、予算査定の見解は、これは統一見解で申し上げておるとおりなんです。そこで見解が分かれたわけですね。これはやはり民主政治、国会尊重というたてまえからいえば疑義が出てきた。そこでその疑義を払拭するために削ったということだと思います。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕 したがいまして、もともとは、この査定というものは、四次防というものが現になかった段階の査定ですから、先ほど申し上げたとおりでありまするが、私とも防衛庁側からいいまするならば——これは政府と言ってもよろしゅうございます。年度内に四次防なるものを策定しよう、こういうことで考えておったわけです。年度内というのは、当然、年度内とはいうが、予算の締めくくりに入る二月末ごろまでにはせめて策定したいということを考えておったわけでありまするから、四次防の策定が経済の見通し、諸般の情勢でできなくなった。そうであるなら、策定された時点においては、四十七年度を初年度としていくことのほうが望ましい。のみならず、三次防の継続的なものというのは、俗なことばで言うならば、三次防時代に整備いたしました兵器などのっけが本年度の予算にも二千億近く回ってきておるわけです。したがって、押せ押せでこうくるわけですから、継続的にいくことのほうがきわめて望ましいのだ、こういう見解に立って進めてきたわけですが、これについて新機種等々見解が分かれたわけですね。そして、ああいう結末を見たというわけでありまするから、ここでもう大綱も決定されたのでありまするし、いずれ経済の見通しができれば、あと主要項目、経費等々も、これつけまして、四十七年度を初年度ということにしていきたいというふうに考えております。
  282. 吉田之久

    吉田(之)委員 それでは、ものごとをはっきりしておかなければいけませんが、一応、そういう国会の審議の過程の中で、世論に従って疑義があるので削減した。しかし、この前、二月七日に開かれた国防会議というのは、そのまま生きているわけですね。そして、国防会議できめられた四次防の大綱というものは、すでにきまっておる。したがって、残るべきは四次防の整備計画の主要項目と四次防の整備計画の所要経費だけだというふうに判断していいわけですか。
  283. 江崎真澄

    江崎国務大臣 御指摘のとおりであります。したがって、それを手順を経て国防会議で正式に決定をする。これはもちろん、きめてまいりますまでに、経済的な事情というものが大きく作用して、年度内にきめることができなかったわけでありまするから、これ等を十分勘案し、また国際情勢その他も踏まえてきめていく、こういうふうに御理解願いとうございます。
  284. 吉田之久

    吉田(之)委員 そうすると、出発はおくれたけれども、四十七年の中途から四次防というものは発足するわけですね。そのおくれというものは、それではおくれたままで発足するわけなんですか、急速に取り返すつもりですか、どちらですか。
  285. 江崎真澄

    江崎国務大臣 やはり疑義がありましておくれたものは、これは国会の場でああいうことになり、しかも政府として議長裁定に従って処置をしたわけでありまするから、このおくれというものは当然現実のおくれという形になります。ところが、予算査定の説明等でしばしば繰り返してまいりましたように、三次防からの継続の武器の更新、こういう見解に立って、訓練上ほんとうに差しつかえるものだということで補備充実をしたものでありますから、四次防が策定されれば、後年度においてやはり穴を埋めるべく急ぐということは、これはもう当然であろうと思います。
  286. 吉田之久

    吉田(之)委員 そうすると、防衛庁長官、こういうことですか。ともかく、四次防でいろいろクレームがついたけれども、それは国会対策上クレームがついたからそれに従ったまでであって、実際はすでに大綱がきまっておるし、あと主要項目あるいは経費等が算定されればそのまますべり出すという意味理解していいわけですか。ということは、今度の二十日間にわたる空転は単なる三十日間の空転、そして、おそらく四次防決定が八月ごろにされるとするならば、期間的なおくれだけであった。そのおくれもやがては取り返されるであろう。そうすると、国会はただ空転しただけであって、その空転の意味はなかったということですか。
  287. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これはちょっと誤解があると思うのですね。私はそういうことを申し上げてないのです。疑義があったから、その疑義を取り除くべく議長裁定というものがおりてああなったわけですが、要するに、いまの査定というものは、四次防がなかっためですから、四次防がなくて欠落分を補てんしたというわけですね。ですから、その補てんを進めるということも、私どもはいいと思っておったわけです。しかし、それに関連して疑義ありということになったから、そこで四次防というものを正式に策定いたしまして、補備更新の分であるか——これはあくまで大蔵省の立場はそういうことで査定されたわけです。しかし疑義ありということになったから、四次防をしっかり策定して五カ年計画の全容をお示しし、議長の承諾を得た暁において、その認められた機数、これはあくまで欠落分でありまするが、それは全体の中の欠落分ということではあるが、位置づけをしてこの発注をしてまいりたい、こういうことでありまするから、ちょっとさっきの御質問には誤解があるように思います。
  288. 吉田之久

    吉田(之)委員 それじゃ端的にお伺いいたしますが、四次防を三次防並みにダウンさせることについて、新聞の報道によりますと、去る二十九日の防衛庁の幹部会において、四次防の規模は三次防並みにダウンさせる、そして四次防原案は白紙に戻すとの決定がなされたというふうに書かれております。これはどういうことになるのですか。
  289. 江崎真澄

    江崎国務大臣 それもちょっと話が違うと思うのですが、四次防というものはなかったわけですね。防衛庁試案なるものはあったわけです。しかし、四次防大綱というものがきまった段階において、もう防衛庁試案というものも白紙に戻った。これは防衛庁の幹部がとやこうきめる話ではないので、やはり国防会議の成規の手続できまりましたあの段階でもう防衛庁試案なるものも消えた、こういうふうに御理解を願いとうございます。
  290. 吉田之久

    吉田(之)委員 それじゃ長官、率直にお聞きしますが、もしも国会が空転しておらずにそのまますんなり走っておれば、あなたのいま命じておられる三次防並みにダウンさせろというこの考え方とは別なものが出ているでしょうか。
  291. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは、そういうことはございません。それはすでに、私の前任者でありまする西村直己防衛庁長官当時に、防衛庁試案という形で世の中に発表されましたものに、正面兵力において相当程度の削減をしようという試みを試みておられます。したがいまして、それを私も、就任いたしまして踏襲をしていこうということで、年度内策定ということを大蔵大臣等々と協議をしておったわけでありますが、経企庁長官等々から、いや、なかなか簡単じゃない、経済の見通しその他さだかでない、いろいろな変動要素が多いから、とても年度内策定ということはできないということになったわけであります。したがって、もっと時間を節約する意味で端的にと思いましたが、率直にとおっしゃるから、私、率直に申し上げますが、四次防原案なるものは、あれは防衛庁試案であって、原案ではなかったということですね。あの案なるものは十年を視点として、日本がもし外敵の侵略を受ければ、第一義的にこれに対応する。特に空、海、これに重点を置いたものであるというので、十年の五カ年間、それを新防衛力整備計画、四次防ということばをきらって、これも新しい名称をたしかしておったようであります。ところが私どもは、それは白紙に戻ったのでありまするから、第三次防で構想をいたしてまいりましたような構想に立って、今後五カ年間の視点に立って自衛力を段階的に整備していこう、こういう方針に変えた、これが私ども態度でございます。
  292. 吉田之久

    吉田(之)委員 どう説明されても、総理、これはほんとうにわかりにくい問題です。したがって、問題が起こりかかったときに、あわててと言っちゃいけませんけれども、あわてて国防会議を開かれた。それで大綱をおきめになっているのですね。そのまま乗り切ろうと思われたら、国会が言うこと聞かずにとまっちゃった。そして凍結された、あるいは一部削除された。ところが大綱は生きておる。そしてわれわれの新聞から伝うるところによれば、四次防の計画は確かにダウンしてきたように思うのです。少なくともそういう傾向を示しておられる。しかも作業としては八月ごろまでに四次防原案をつくろう。というのは経済審議会での新しい経済計画の裏づけとなる五カ年後の経済見通しを見てからにしようではないか、こうなっているのです。物理的には確かにおくれたことの一つの意義があらわれているのです。しかも形式的にはあらわれてない、あらわれるべきでないというふうにおっしゃっている。この辺、少し総理わかりやすく御説明いただけませんか。
  293. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど防衛庁長官から話をしておりますように、一体どの辺から問題が狂っているか、その原点に返って考えてみたいと思います。  私らの国会における説明もまずかったが、大体今回の予算は四次防計画とは関係なしに組みました、かような説明をしたのが一そう問題を紛糾さしたのです。このことは、いわゆる四次防といわれるものは一つあって、そうしてそのものを政府はやろうとしておるのか。そうして考えてみると、そのうちの一部がどうしても予算に組まれているのじゃないか、こういうようになっておるのです。ところが、実際は、いわゆる四次防計画というものは日の目を見ておらないのです。いわゆる日の目を見ないでいろいろ計画されたものはあったかもわかりません。しかしながら、日の目を見ていない、いわば私自身もその計画の説明は聞いてない。したがって、国防会議ももちろん取り上げておらない。言いかえるならば、四次防計画というものは政府として発表できるような状態になかったのだ。ところがそれが発表されておる、しかも翻訳までして各方面に出ている、かような状態ですから、皆さん方がお考えになりましても、四次防計画はあったのじゃないか、それを政府はない、ないといって隠しているのじゃないのか、こういうところに問題の食い違いとか基本的な問題があったように思います。  そこで、四次防計画というものはこの予算編成の際にもちろんない。したがって四次防には一いわゆる四次防というものはないのですが、しかし、予算はつかなきゃなりませんから、その必要なる予算を計上したということが実際でございます。そこで追っかけていわゆる三次防の期限、期間が経過いたしまして、今度は新しい期間に入りますから、四次防計画というものを立てなきゃならない。ところがそれはすぐ右から左にできないのです。これは経済情勢も違いまするし、またいろいろ事情が変わっておる、こういうことで、これは後にやりましょう、こういうことになって今日まで経過したのです。私は、いい、悪いは別といたしまして、こういう四次防計画なるものをめぐって十分の説明をしないために混乱して、そうしてこれが国会で空転した、そこに空白ができた、だから審議もおくれた、これが今日の状況であります。したがって、その疑惑を招いたような、また招くような点は、これはひとつ政府もあっさり修正しよう、その場合に議長のあっせん案まで出ている。それならば、もちろん政府はメンツにこだわるわけではないからあっせん案をのむ。それでいわゆる予算の二十七億ばかりを削除した。しかし同町に、予算外国庫債務負担行為、これはもう同時に修正すべきだという御議論がございましたが、しかし、これは一応凍結することによっていわゆる四次防計画ができてそれを確認されたときに動かす、こういうことで一応の話はついたわけであります。  そこで私考えてみますに、それではただ空転しただけか、審議がおくれただけか、私はそうじゃないと思います。これはいろいろ災いをもって福となすならば、いわゆる防衛問題についての各方面の関心を深めることができた。そうしてこれは、やはりいままでとかく忘れがちで事務当局にまかせがちの問題がそういうわけにはいかぬということでこの問題が取り上げられ、また文民統制という最も大事な問題、新しい問題としての文民統制、その方向に大きく動いた、かように私思いますので、これは別にむだではなかったと思っております。したがって、今回四次防の計画をこれから立ててまいりますが、それがいかようになりますか、ただいまの状況ではとやかく申すわけにはいきません。いろいろ新聞では報道しております。新聞記者諸君は、内密にしておりますけれども、なかなか敏感な諸君でございますから、同時にりっぱに記事にはなっております。そのために問題は紛糾しますけれども政府そのものといたしましてはまだそんなところまで動いておらない、これをひとつ御了承いただきたいと思います。
  294. 吉田之久

    吉田(之)委員 総理の答弁は答弁なりになかなか一つの筋が通っておると思います。要するにあなたのおっしゃろうとするのは、去年の四月二十六日に中曽根さんが原案としてつくられたこの四次防原案というものはとっくに死んでおったのだ。言うなれば、これはまぼろしの四次防であった。あなた方がお考えになった今度の四次防というものはこれとは全く違った性格のものなんだ。にもかかわらず国会に出してみたところ、これは前の四次防だろう、おかしいじゃないか、国防会議は開いてないじゃないか、成規の手続が終わってないじゃないかということで問題にされた。ほんとうは問題らしいものはないのだけれども、そういわれるならば国会対策上お説に従いましょうということで議長の説に従った。しかし、災い転じて福となって、いろいろシビコンの論議ができてよかった、こうおっしゃったわけですね。しかし、だれが見たって、去年の中曽根さんがつくられた四次防の原案には、あなた方が並べられた、いまそして問題になっている機種と同じ機種の名前が全部書いてあるわけなんですね。総理大臣はうまくおっしゃっておるけれども、これはだれが見たってほんとうかなというふうに思わざるを得ません。この辺の詳しい論議はやがてまた別の機会にやらせていただくとして、総理総理なりの一つの説を抱いて御答弁なさったことにつきましては理解いたします。しかし、そうは申しましても、経済の見通し、あるいは諸情勢の変化というものが非常に重要であります。先ほどおっしゃっているように、力を入れて四次防を三次防並みにダウンさせなさいと指示なさっているあたり、何かやはりわれわれは割り切れないものを感じます。  こまかい論議は後日の機会に譲るといたしまして、沖繩への自衛隊の配備について、六千八百人を派遣することを目標にされております。実はきのうのテレビでも、熊本ですでに派遣される自衛隊の結成がなされたようです。しかし同時に、反対運動も激しく、デモとしてあらわれております。私はこの前の国会でも、沖繩人たち日本の自衛隊に対して持っている感情を総理に御説明いたしました。総理は事情をよくうなずいて、サンクレメンテでもそういう問題をニクソンによく説明してみようということを正式に国会で御答弁なさいました。この辺どのような説明をされたのか、またあの答弁どおり、この沖繩の受け入れに対してはあくまでも無理押しではなしに、スムーズにいく最大の努力を払おうとなさっているのか、お答えいただきたいと思います。
  295. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その沖繩の配備の前に、先ほどの四次防、もう一つつけ加えさしていただきます。  いま資料として、その中にりっぱにいわゆる四次防計画としての新しい機種が入っているじゃないか、こういう御指摘でありました。確かにこの機種は長い間かかって開発している機種でございますから、これは今回も直ちに落ちるようなものではございません。したがって、四次防計画で新しくこういうものを開発する、こういうことならこれは非難に当たるだろうと思いますが、すでに開発にかかり、そうして一部はもうすでにでき上がっている、こういうものでございますから、それだけは御了承いただいて、いわゆる新しいものではないことだけ、これだけつけ加えさしていただきます。  それからその次に、いまの沖繩の問題これはなかなか県民、同胞から見まして、米軍がいるんだ、その上また自衛隊が来る、どうも過去の陸海軍、軍部のイメージがたいへん悪い、またそういうような危険な状態に県ぐるみさらされるのではないか、こういうことでたいへん心配しておられると私、思います。したがって、沖繩県民の十分の理解がつくように話をすることが何よりも大事でございます。したがって、ただいまいろいろの方法を講じております。もちろん、わが国に返ってくるのですから、わが国がこれを防衛することは当然でございます。ただいままでのいきさつから米兵が駐留しておりますけれども、できるなら米軍は全部撤退してもらいたいぐらいな気持ちがある。そうして守らなければならない必要な点は自衛隊で守る、こういうことを県民の方々もお考えだろうと思う。したがって、私はいま一応の計画は立てております。そういう意味で、県民の御理解を得るべくあらゆる努力をしておる、これがただいまの状態であります。これができてから予算を計上する、そのほうが順序でございますけれども、一応全部を計上し、そうして御批判を受けながらも、一方で現地の県民の御理解を得たい、かような意味で努力しておる最中でございます。
  296. 吉田之久

    吉田(之)委員 江崎長官にお伺いいたします。  先ほども総理がお触れになりました機種の問題ですが、この機種C1、T2、RF4Eなどの新しい三機種ですね。したがって、これはすでに、いまの御説明から聞けば、正式決定されたと見るべきですね。そこで、では正式決定するにあたっては、どういう手続を経られたのかということをお尋ねいたしたいと思います。私どもの知っている知識では、新機種の決定については二年程度のテスト期間を置いて、装備審議会できめる手続になっているはずだと思います。そういう点が手続が経られていないとするならば、一体いかなる理由でございますか。
  297. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これはもうすでに実験機が現在飛んでおるわけです。そこで、そのテストの結果もきわめて優秀であるというわけで、これは直ちに人命にかかわることでありますから、パイロット等専門家が十分精査するわけです。そうして部内の一致した見解を次官を経て私に進達してまいります。  そこで、暮れの十二月十五日、まだ赴任間もない時期でありましたが、私はよかろうということで、その実験の結果を見て部内決定をいたしたわけであります。そして、それは最高指揮権者である首相に御報告を申し上げておきました。  そこで、けさもちょっと問題になっておりましたいわゆる技術研究とか実験研究ですね、そういうものが済んでないではないか、こういう御質問がありましたね。これは従来、アメリカにおきましても西欧諸国におきましても同様の横掛がとられておる。それは御承知のとおり、飛行機に搭載しております電子機器というものは非常に精密なわけで、それが五〇%ぐらいと見てもいいかと思います。そうすると、いろいろ技術試験、非常にデリケートなところをポイント、ポイントを試験していく段階に確かにいろいろな問題点がこれは出てくるそうです。そうすると、それを中心にもう生産系列に入ったものにどんどん改定を加えて、それはきょう仕事にかかってあすすぐでき上がるものじゃありませんから、やはり技術試験をしながらいく。  それから実験航空隊というのは、御存じのとおり防衛庁側がやるわけであります。したがって、この実験機については、詳密にパイロットが実験航空隊のいろいろな角度からのテストを経ながら、もし欠陥があればそれを一々製造業者に指摘をしていく。これはもうすでに実験機が飛んでおるという段階で、根本的にまた設計変更にまで戻らなければならないような誤りがあるということは、これはもうない。しかし、念には念を入れるという形で技術試験、実験飛行というようなものが行なわれるのだというふうに聞いております。  もし時間さえ許せば、係から説明をさせたいと思います。
  298. 吉田之久

    吉田(之)委員 では最後に、これは総理にお聞きしたいと思うのです。  日本の自衛隊の今後のあり方について、一度抜本的に大胆な再検討をしてみてはどうか。私どもが考えておりますのは、いままでの日本の軍隊の伝統にならって陸、海、空——何か自衛の組織や軍隊というものは三つ持たなければかっこうがつかないように一般常識ではなっております。しかし、守るに徹した日本の自衛隊というものは、そういう形を踏むことがかえってぎこちなくて、しかも効率が悪いのではないか。何せ狭い日本であります。しかも、自衛力のより有効な配備、配置が必要でありまして、いつまでも縦割りの体制にこだわらないで、むしろ場合によってはもっと一元的にして、ただし守る部門をはっきりして、北海道方面の自衛隊、東日本自衛隊、西日本自衛隊、沖繩方面自衛隊というふうに分けてやるほうが国民にも非常にわかりやすいし、そして確かに、日本の自衛隊というものは諸外国の軍隊とは違うものであるということが、はだで感じられるのではないかというふうに思います。そんなことをお考えにはなりませんか。
  299. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは大体いままでの経過から見まして、いま言われるような点でもう一度よく考えてみる必要があるだろうと思います。これはしばらく時間をかしていただくようにお願いします。
  300. 吉田之久

    吉田(之)委員 外務大臣にお聞きします。  わが国の防衛上一番心配なことは、天然資源、地下資源をほとんど持たない日本として、エネルギー資源国との関係がどういつも安定的に確保され、友好関係が持続されるかという問題であります。このことなしにはわが国の存立はあり得ません。しかし、いわゆる物理的な防衛力をもってこれを達成しようとする道はほとんど不可能であります。で、あなたは、この日本の存続の根幹に触れる問題についてどのような責任を果たそうとなさっておりますか。
  301. 福田赳夫

    福田国務大臣 吉田さん御指摘のように、わが日本の国は非常に特異体質であります。つまり重要資源をほとんど海外に依存をする、こういう国柄になっておる。最も大事な石油につきましては、九割九分までこれを海外に仰ぐ、しかもその大部分が中近東である、こういうような国柄でございます。したがいまして、これは安全保障という狭い軍事力の問題というとらえ方以上に、私どもは、世界じゅうが平和な状態であるということが必要である、こういうふうに考えておるわけであります。世界を平和にというために、わが日本は最大の努力をしなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。特に資源供給国に対しましては、友好の関係について特別の配慮を用いるという考え方、これを推し進めなければならぬ、かように考えております。
  302. 吉田之久

    吉田(之)委員 防衛の問題についてこの辺で一応の質問を終わりまして、あとシビリアン・コントロールの問題だけに限って御質問いたしたいと思いますが、一つの区切りといたしまして総理に申し上げておきます。  いろいろ先ほどから説明を聞きました。しかし、われわれは、この二十日間の国会の空転をむだにしてはならない。そこで、シビリアン・コントロールについても本格的な検討を行なおう。同時にあなたは、今度の予算は、政府は福祉路線に従った予算だというふうにおっしゃっております。したがって、たまたま四次防の実施というものがおくれているわけでございますが、そして八月ごろには経済見通しというものが出てくるはずでございますから、まず早くその経済見通しをお立てになりなさい。そしてまず福祉五カ年計画というものをお立てになりなさい。それと見合う四次防の五カ年計画というものをお立ていただきたい。こういうすべて協調された、調和された中で初めて国民というものは、わが国の防衛に対していろいろとさらに関心と意欲を払うであろうというふうに考えますので、どうかその辺に一そうの御留意をいただきたい。  蛇足ではございますけれども、一般には、佐藤総理の政治というものは福祉面ではかけ声ばかりで予算が少ない、防衛面では黙って予算が多い、こういうふうに評しております。決してそういうことではないように、どちらもが完全に国民に納得され、そしてまた充実されるものであっていただきたいと思うのです。  次に、国防会議を国家安全保障会議に改組してはどうかという意見をわが党はさきにこの席でも申し述べました。そのとき総理は、そういう大げさな名前よりも、むしろ国防会議というすんなりした名称のほうがいいのではないか、いろいろな意味でいいのではないかというふうな感じの答弁をされたと聞いております。私は、そういうところに実はこのシビリアン・コントロールから逃げようとする今日までの慣習があるのではないかというふうな気がしてならないのでございます。国防と申しすまるのは、単に物理的な防衛だけではありません。外交防衛から、経済的な防衛から、心理的な防衛から、そういう総合的な国家の安全保障をはかるためには、この際心機一転して国家安全保障会議というものに改組されてはどうか。しかも今日の国防会議というものは防衛庁設置法の六十二条に書かれているだけでございまして、やはり一国のシビリアン・コントロールの、行政機関としては最高の諮問をなさるべき機関でございます。これは一つの独立した法律として再出発すべきではないかというふうに考えますが、いかがですか。
  303. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国家安全保障会議、これがしかも野党のほうからそういう御意見の出たこと、これは私は高く評価してしかるべきじゃないか。いままで私どもがわりに憶病であったのは、与党のほうでさような議論をするととかく誤解を招きやすい、こういうことであるから遠慮していたのでございます。ただいまの御意見は御意見として十分検討に値する、かように考えますので、ありがとうございます。お礼を申し上げます。
  304. 吉田之久

    吉田(之)委員 たいへん礼を言っていただいたのですが、私は、総理、国防の問題というのは、そういう与党とか野党とか、あまり意識していままで考えてこられたところに、今日のシビコンのぎこちなさがあると思うのです。国家の問題なんです。国民すべての問題なんです。正しいことはき然として合意を求めていく、こういう姿勢がなければ話にならないと思うのです。  次に、治安出動について、これは今日の国防会議の付議事項には入っておりません。しかし、この間もあのような赤軍派の事件がありました。まことに小規模なものでありますけれども、今後どのようなことが国内に起こるかもしれない。あるいは天変地変ということもございます。自衛隊が出動しなければならないときに、それを、その可否を決定する機関が国防会議にはないわけです。可否を決定する機関がない、私はきわめて重要な問題だと思います、内乱に対処する場合に。これはわれわれの考えでは、当然国防会議あるいは改組されるべき国家安全保障会議にかけられるべき事項ではないか。同時に、それはできれば事前に国会の承認を得べきことではないか。緊急を要する場合には、事後に国会で承認を求めるべきことではないかというふうに考えます。その点いかがですか。
  305. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの吉田君の御意見のとおりだと思いますが、ただいま治安出動ということはまず、まずまずないことだ、かように私ども考えておりますので、ただいま手続をいろいろ考える、こういうような段階ではございません。そういうものが本来ないほうがけっこうなんです。
  306. 吉田之久

    吉田(之)委員 そうすると、総理は、そういう世情が騒然となってきたときにあらためてつくろうと、こういうお考えですね。国防といい、治安といい、それは治について乱を忘れずということばがあります。そういういま平和だから、平和だったら何もしなくていいんだというなら、こんな四次防全然要らないはずなんです。平和でも備えはしなければならない。治安の問題も、いま差し迫った問題がないからといって避けるべき問題ではない。
  307. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 誤解をされちゃ困ります。それはもちろん治安出動という場合にはいかにするか。これは治安出動する場合の手続などもちろんちゃんときめてございます。しかし私は、そういう問題をいまいろいろ議論する必要のないような状況だ。まず国内において自衛隊を動かす、こういうようなことは、これはもう最悪の場合だ、こういうことでございますから、もちろん手続はしゃんと考えてないと、そのときになってやる、こういうようなことではあわてて実情に合わないことになる、おしかりを受けることになると思います。
  308. 吉田之久

    吉田(之)委員 総理指摘のとおり、そんな最悪な事態になされなければならない行動であるだけに、これはもう当然国防会議の付議事項にいまからしておいたって決してふしぎな問題ではないというふうに私どもは考えます。  さて、長期防衛計画の原案をどこから出すべきかという問題、先ほども議論になりました。法制局長は、どこにも書いてないからどこから出してもよろしいというふうな御答弁でございました。大体その辺が非常にあいまいになっておりますから、一体どこではかったんですかと言ったら、総理は懇談会でと言う。防衛庁長官は五号ではかりました。海原事務局長は二号でございます。いかにも国防会議のコントロール自身さえできてないんじゃないかというふうな気がしてならないのです。私はこの辺で、いわゆる原案の原案というか、もともとの草案は当然防衛庁でつくられてしかるべきだと思います。しかし、いやしくも権威ある議案として出されるその原案は、これは国防会議みずからが出すべきである。すなわち、国防会議の事務局みずからが出すべきである。そのために次官会議とかいろんな参事官会議があるはずでございまして、私はその辺でこのことをはっきりしておくべきではないかというふうに考えます。この点いかがでございますか。
  309. 江崎真澄

    江崎国務大臣 ちょっと先ほどの問題を先にはっきりしておきます。  それは「命令による治安出動」、これは自衛隊法の第七十八条にあるわけで、「内閣総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもっては、治安を維持することができないと認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」これは、こんなことはさっき首相が言われるようにたいへんな、もう例外中の例外ですから、一応法律にはあるわけです。そこで、その二項として、「内閣総理大臣は、前項の規定による出動を命じた場合には、出動を命じた日から二十日以内に国会に付議して、その承認を求めなければならない。」云々、こうありまするので、この際記録にとどめる意味で申し上げておきます。  それから国防会議で防衛予算のいわゆる原案なるものを策定すべきではないか、一つの御意見だとは思いますが、やはりこれは防衛庁が国の防衛の責任に任ずる直接の責任省庁でありまするので、そこで策定したものを、そこには制服もおるわけですから、それを内局が精査し、それを原案として、そして国防会議が十分これに検討を加えるということであれば、私はそれが適当であるというふうにさっきもお答えしたわけであります。
  310. 吉田之久

    吉田(之)委員 実は長官、この論議はなかなか昔から続いていると思うのです。私も二年前の三月七日にこの席で、時の中曽根長官とそれから海原国防会議事務局長、二人から意見をただしました。そのとき中曽根さんがたいへん、非常に不謹慎なことばを吐かれました。私は紳士ですから中曽根さんのようなことばは使いませんけれども、まあまあ文書課長程度ないしはそれ以下なんだというふうなことをおっしゃった。そうすると、その後海原事務局長は、私は文書課長でございますと、防衛庁から出てきた原案を配付するだけですと言わぬばかりの態度でおられます。そういうことですから、今度の問題でもなお紛糾したわけです。要するに国防会議というものはろくろく開かれてない。たまに開いても、いわゆる防衛庁からストレートに回ってきた原案がそのまま閣僚の数名の構成の中で通っていくのだろう、単なる手続機関ではないかという感じを与えてしまったわけであります。私は、それではせっかくつくられた国防会議というものが意味を持っていない現状から考えまして、ひとつこの際、内容、手続、経過はどうあろうとも原案というものは国防会議の事務局長が出す、こういうことによって初めて国防会議の内容の権威が一そう保たれるのではないかというふうな気がいたしますので、ひとつ今後考えにおいていただきたいと思います。   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長首席〕  いま一つは、国防会議にこの際ほんとうに一これはやはり行政委員会ではありません。諮問委員会。たいへん権威のある諮問委員会でありますけれども、諮問委員会の範疇に入ると思います。だとするならば、有識者、民間人を入れたらどうなんだろうかという意見がございます。この辺のところをどうお考えになりますか。
  311. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国防会議の運営につきましては、従前からやっておりますけれども、ただいまも御注意がありましたように、もっと国防会議の運営にきちんとしたことをやる、こういうたてまえでこれからやりたい。これが先ほど来申しますように、今回の事件でわれわれも反省を示す、そういう形だと思います。  ところで、ただいま具体的に、もっと国勢会議の議員をふやしたらどうか、しかもそれを民間人を入れたらどうか、こういうことですが、これは直ちにちょっと賛成いたしかねております。これは十分考えないと、事柄が事柄でありますだけに、十分責任の持てる状態にまだない、かように思いますので、これはいかがか。もっと研究させていただきたいと思います。
  312. 吉田之久

    吉田(之)委員 次に、これは本来議会の内部の問題ではありますけれども、防衛委員会の設置問題でございます。  実は、先ほど楢崎質問に対しましても防衛長官から御答弁がありまして、事機密に属しますので、あくまでも機密保持の中でならば説明をさせていただきますというふうなことになっております。私は、国家の防衛を論ずる以上は、それを真剣に終始論ずる場がなければならない。最高のシビリアンコントロールの機関は国会でございますから、したがって私は、そういう意味国会に防衛委員会が置かれなければならない当然の時期に来ていると思うわけでございます。この点、議会のことばではございますけれども総理並びに防衛長官のお考えをお伺い申し上げます。
  313. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も、シビリアンコントロールの最高のもの、これはやはり国会だと、かように思います。したがって、そこに特別な委員会を設ける、こういうことには、私自身は賛成でございますが、事柄は国会においてきめられることだ、かように思います。
  314. 江崎真澄

    江崎国務大臣 総理から御答弁のありましたとおりでありまして、全く私も同感に思っております。
  315. 吉田之久

    吉田(之)委員 次に、物価問題に入ります。  まず、物価の安定なくして福祉の充実はあり得ない。したがって、経済の成長と物価の安定をどう調和させるかが今日の政治の急務であると思います。総理はその点で、今次予算編成にあたっても、物価への留意を強く指摘なさっておりました。その結果、物価対策関係予算は対前年比二七・一%と伸びて、ついに一兆円台にのぼっております。しかし、国民は、物価の高騰にますます大きな不安をつのらせているばかりでございます。いかに総理が物価抑制に関する表明を力んで申されようとも、国民は今日までの経過を知っております。したがって、ことしもまた消費者物価の上昇は五・三%と政府は言っているけれども、決してそうはおさまらないだろう。初めから信じないという傾向にございます。一体こういう国民の趨勢を総理は何とお考えになりますか。
  316. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 物価の問題で、私どもが安くなるというか、そういうほうで期待のかけられるものは輸入物資だと、かように思っております。また、さらに輸入関税等を軽減するならば、一そうそういうものは大きくなる。いわゆる関税ばかりではございません。輸入上のいろいろの障壁、これを撤去することによってこれはたいへん消費者に幸いするものだと思っております。問題は、やはりそれにいたしましても流通の段階でその利益がみんな吸収されるようでは、消費者まで及ばないのですから、そういう意味の指導、これは大事なことだと、かように思っております。国内の物資につきましても、それぞれにそれぞれの特質がございますから、とにかく物価の問題は最も大事なことだし、福祉国家を幾ら口に唱えたからといって物価が上がっておるようでは、これは問題になりません。そういうところからいわゆる公共料金、これが非常な問題でございまして、先ほどもずいぶんそれで時間をとって議論をいたしました。極力抑制する方向だ、かようには申しておりますけれども、しかし、実際に抑制の効果があがらない限り国民としては満足はされない、かように思いますので、これは非常に問題でございます。せめて、あと残っておりますものは電気、ガスあるいは水道料金、そういうようなものだけでもがんばりたい、かように思っておるような次第でございます。
  317. 吉田之久

    吉田(之)委員 木村長官にお尋ねいたします。  昭和西十年以降四十六年までの佐藤内閣の七年間において、消費者物価はどれだけ上がりましたか。
  318. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 その七年間に約四〇%、正確に申しますと三八%上昇しております。
  319. 吉田之久

    吉田(之)委員 総理お聞きのとおり、ほぼ四〇%だそうでありまして、わが党の佐々木書記長に言わせますと、総理は百万円のたんす預金の中から四十万円を剥奪してしまったと、いつも言うのでございますが、まさに国民はこのとどまるところを知らない物価値上がりに深刻な打撃を受けております。私は、特にこの物価値上がりに一番弱いのはだれか、それはお年寄りだと思います。物価値上がりについていけない、そういう積極的な生活手段を持たない人たち、たまたま年金を千円程度上げてもらったって、もはやどうにもならない状態でございます。私は、こういう国民の積年の政府に対する不信を今日一そうつのらせているものは、先ほど来問題になりました軒並みの公共料金の値上げでございます。そこで、この国鉄運賃、郵便料金、大学授業料、医療費、その他先ほど安井氏が述べられましたもろもろの公共料金、これがなぜこの年に一斉に、軒並みに、せきを切ったように値上げされなければならないのか、この問題について木村長官。
  320. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 公共料金がこの年に集中したことは、たいへん私どもも心苦しく存じておりますが、その中で特に御注意願いたいのは、郵便料金と電報料、これを昨年六月に国会を通していただきまして、すでに実施時期がきまっておりまして、また国鉄運賃は、先ほどの十カ年再建計画では来年度の予定になっておりましたが、それが御承知のような国鉄の非常に経営悪化のため新しい再建計画を組まなければならぬという必要から、ことしにやむなく繰り上がったという事情でございます。またタクシー料金は、実は昨年二月から申請が出ておりましたが、極力これを抑制するという方向におきまして、それをことしの二月まで延ばしたというような事情が総合いたしまして、このような時期に集中したということが実情でございます。
  321. 吉田之久

    吉田(之)委員 私は、公共料金というのは、政府が値上げしなければ絶対に値上がらないものでございます。値上げのできないものでございます。したがって、もちろん物価でございますから、どうしても諸般の事情で価格の訂正をしなければならないときには、これは政府は改定をしなければならない。しかし、一番重要なのはその時期と内容であると思うのです。私は、時期的に申しましてことしが値上げのいわば最悪の時期ではないか。これはいろいろ考え方にもよりますけれども、私ども、物価を安定させてほしいという国民の側から申しますならば、せっかく物価がじっとするのではないかという期待を持ち始めたことしの初めに、このように軒並みに公共料金が一斉に上がるということ、これはまことに国民にとっては深刻だと思います。先ほど総理からお述べになりましたように、円の切り上げによってたいへんな不況にはなりましたけれども、円の値打ちは上がって、いわば外国から物が安く入る。これはやはり国民にとっては非常にうれしいことの一つであります。また不況の結果、景気というものは沈滞しております。うまくいけば、この際物価はじっとするかもしれない。幸い今度は暖冬異変で野菜までが下がってしまいました。にもかかわらず、そういうときに、よりにもよって公共料金が一斉に軒並みに値上げされるということは、まことにタイミングとしては最悪である。言うなれば、ことしこそ、こういうものを上げないで、物価を安定させる絶好のチャンスであった。にもかかわらず、佐藤内閣はその唯一最大のチャンスさえ逸してしまわれたのではないかという感じがするわけでございます。たまたま全部そろった、偶然のようにもおっしゃいましたけれども、私は、言うならば佐藤内閣の長年にわたる物価問題に対する怠慢と無策の必然の結果が、ここに集約されているのではないかというふうな感じがいたします。  さて、いま一つの問題は、この値上げを国民にしいる場合の説得力、そしてその内容の合理性の問題でございます。先ほど来国鉄運賃の問題につきましていろいろと質問がありましたけれども、私どもは断じて承服できません。なぜならば、この前同じく佐藤内閣のもとにおいて国鉄運賃が上げられるときに、あなた方は何とおっしゃったか。赤字路線を解消いたします、そして労使の協調をはかります、生産性向上に一そう邁進いたさせます、したがって国鉄運賃受益者負担分はかくかくのごとくごしんぼういただきたい、こういう形で上がったはずでございます。ならば今日までそのような努力はなされたのであるか、もう一度お答えいただきたいと思います。そのなされた実績があるならば、それを詳しく御説明いただきたい。かくかくの努力をいたしてまいりました、国鉄運賃だけには限りませんが、タクシー運賃にしても、もろもろの一般公共料金がこの前上げられたときに、必ずそういう国民に一つの誓約をしておられるはずでございます。それが果たされるのかどうか、問題はこのことであります。
  322. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 国鉄のほうにいたしましても、また私企業であるタクシー業にいたしましても、それ相当の努力のあとは私ども認めております。ただ、経済社会情勢が非常に急激に変化いたしましたり、また都市化現象が急速に進んだ。これは決して私ども弁解するのでございませんが、事実としてそういう環境の中で、いかに国鉄またはタクシー業が苦しんだかということも、これまた事実でございます。そういう環境の中でいよいよ経営が悪化してまいりまして、やむなくこの値上げに踏み切らざるを得なかったということでございます。  私ども政府側といたしましても、その国鉄の努力またはタクシー業経営のその実態等を十分検討いたしました。検討いたしましたが、率直に申し上げて、まだ非常に不満な点がございます。これは監督官庁である運輸省、また国鉄に対しても相当私どもはきつく、きびしく要望いたしております。そういう意味で、今回の値上げはやむを得ない値上げと私どもは認めたわけでございます。
  323. 吉田之久

    吉田(之)委員 国鉄当局の努力に対して、不満もあるがとおっしゃいましたけれども、それはあります。しかし、国民の不満はむしろ政府にあります。政府は、赤字路線を廃止するから、そして国鉄の再建をやるから、政府もいろいろと努力を払うから、国鉄も努力するから国民もともに苦労してくれと、こうなさったのです。ところが、きょうの先ほどの総理の御答弁によりましても、赤字路線の廃止に対しては何ら積極的な努力をなさっておられません。  運輸大臣にお聞きいたしますけれども、あなたは昨年末、四十六年十一月二十九日、会計検査院報告が行なった運輸大臣あての鉄道新線建設についての意見表示を御承知でございますか。
  324. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 会計検査院の勧告は十分承知しております。赤字線、不合理線のようなものに対する国鉄の合理化の問題、また新線建設に対します重点的な敷設の問題等々来ておりました。十分承知しておる次第でございます。
  325. 吉田之久

    吉田(之)委員 それによると、営業廃止すべきローカル赤字線八十三線、それに接続する工事線二十四線の工事中止を勧告しておられるにもかかわらず、本四十七年度予算では、この方針は尊重されているようにはわれわれは考えられません。工事中止勧告に従って予算を立てられたのかどうか。あるいは、赤字線を廃止する一方の計画を多少とも持ちながら、しかも一方ではさらに新しい赤字線をつくろうとなさっている。きょうの新聞でも載っておりますように、まさにその赤字線廃止のボルテージをむしろ下げようではないかというような動きが政界の中から起こってきておる。そして自民党のほうでは、いわゆる関連市町村が完全に合意しなければ、廃止するといったって廃止できないではないかというふうな歯どめを行なおうとなさっている。先ほどの佐藤総理の御答弁によりますと、あなたは国鉄にはたいへんお詳しいはずでございますけれども、どう情が向いたのか、赤字路線もかわいそうだ、心情を察するに余りある、僻地の人たちのことを思えばとおっしゃいました。それならばそれで、初めから赤字路線を廃止するということを全然おっしゃらなければいいのです。まじめに協力した町村はどうなるのですか。何でも強引にがんばっていれば、総理が赤字路線かわいそうだ、まあ言い方は極端かもしれませんけれども総理のことばですからよほど国民は大きく敏感に反応いたします。国会できょう総理が、やっぱり僻地の人たちがかわいそうだから、赤字路線も無理に廃止できないなあというようなお答え方を先ほどなさいました。これで、今日までの赤字路線を廃止して、そのことによって国鉄を再建しますという国鉄当局の努力も、国民の願いも、全部私は水泡に帰してしまったのではないかというふうな気がするのです。どうですか。
  326. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の発言が、ただいまのように赤字路線解消、そういうことの歯どめになった、あるいは非常に力を得て、また赤字路線廃止というものが下火になったというように言われることは、私は心外です。私が申し上げておりますように、ずいぶん労使双方で協力してあらゆる努力をしておる。合理化についても、経営者ばかりがやっておるわけじゃない。組合側もこれに協力している。ただいま言うような閑散路線、いわゆる赤字線、ローカル線、そういうものが駅員配置でない無人駅として残せるかどうか、そういうことが考えられるかどうか、あるいはまた、鉄道はできないけれどもバスにかえ得るかどうか、そういうような努力が払われておる、こういうことまで申し上げておるのです。そういうような合理化を払っても、なおかつどうしても取り除きのできない、そういうようなものもあるのではないかと、こういうことを申し上げております。  私がとやかく申し上げるまでもなく、ただいま行きどまり線、これがもし全通すれば相当の利用があるが、山の中でちょうど工事がとまっている、こういうようなものが赤字路線の最もティピカルなものだ、かようにいわれておりますが、私は、しかしそういうものも全通さすことによってやはり変わってくるのじゃないか。これは非常に極端な例を申せば、本土のほうを考える前に北海道をひとつ考えてみようじゃないですか。北海道でもしも交通機関が整備されてなかったら、北海道の開発は一体どうなりますか。私はこれなぞは、おそらくここらに——黒字線が北海道に多いとは思いません。これをもういわゆる採算線だけだというなら、おそらく北海道の鉄道などはないことになる。私は、それはやっぱり地方の開発、北海道開発のためにはやむを得ないものじゃないか。そういうこともやっぱり考えて、どういうような線が撤去できるか、そういうことをほんとうに真剣に考えることが必要じゃないかと私は思います。だから私の言っていることが非常な極端な例だ、かように言われるかしりませんが、お互いに悪いところは直してまいりますけれども、一がいに赤字線解消、そういうような意味からこの問題に簡単に取り組むわけにいかないのだ、このことを私は申し上げておる。
  327. 吉田之久

    吉田(之)委員 それじゃ総理、全国で全然間に合わない路線なんてどこにもないはずですよ。何らかの意味があるから歴史的に線路を敷かれてきたのです。また今後も敷いてくれと言っているのですよ。しかし、そこは時代の変化があります。いろいろと運輸体系も変わってきております。国鉄よりも、わざわざ軌道を敷くよりもバスでいいではないか。また僻地でもたくさん自動車を持ち始めた時代であるから、むしろそのことよりも、こういう施設をつくることによって、こういう道路をつくることによって問題は解決しないだろうか、そういうことから論じて不必要な赤字線を解消していかなければ、どうして国鉄の赤字が出なくなるのですか。だから総理も結局は同じことをおっしゃっているだろうと思うのですけれども、ちょっとやはり総理の表現としては、その辺もう少し念を人れてやっていただかないと、国民は、ああそう、それじゃがんばったほうが得じゃないか。何たって汽車が走っているほうがよっぽどいいですよ。
  328. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はそんな極端なことは申しておりません。私が先ほど来申しておることは、やはり国民としては交通の利便にみんな浴したい、そういう意味であらゆるくふうはすべきだと、かように思っております。御承知のように、白河−棚倉間に白棚線という線がある。これはかって鉄道がございました。しかしそれをバスにした。りっぱに地方の交通の利便をまかなっておる。そういうくふうもされておるのです。国鉄の経営者やまた組合の方々もこの問題については真剣に取り組んでおる、こういうことだけはわれわれもやはり評価しなければ気の毒だと思うのですよ。これは十分やはり考えてあげようじゃないですか。そうしてただいまのように、これは赤字線だと簡単に言わないで、何か生かす方法はないか。それにやはり最善のくふうをしてみる、こういう努力がされることが望ましいんじゃないか、かように思います。
  329. 吉田之久

    吉田(之)委員 いやけっこうですよ。総理がそういう考えであるなら、それはりっぱな一つのお考えでございます。その考え方に従って今後の国鉄のいろいろな問題は論じられていかなければならないということでけっこうでございます。われわれ別に線路を廃止しようと言って力んでいるわけではございませんけれども、たまたま政府が今日までそういう姿勢をとってこられたから、私は問題にしているだけでございます。  時間がなくなりましたので、まとめて最後に一つだけ質問いたします。  たとえば国鉄の運賃値上げによって、今後便乗値上げというものが行なわれないだろうか。たとえば具体的に、聞くところによりますと、東京−小田原間は私鉄の三倍の料金になるそうでございます。もしもそうだとするならば、だれも国鉄に乗らなくなります。国鉄に客が乗らなければ、これは再建ができるはずはございません。たまたま私鉄も恒上げの動きをどんどん示してくるでありましょう。便乗値上げとは言えるかどうかわかりませんけれども、それに似た傾向があっても、国鉄とバランスをとる意味でそれを認めようとする動きが出るのではないかという心配が、非常に国民の中に大きくございます。この点が一点。  それからいま一つは、物価の問題と関係はございませんけれども、実は先ほども横井さんが帰られた問題、そして海外にまだ生存者がいるかもしれないからそれを探索しようとする問題さらには海外の遺骨を収集しようとする問題が国論となって出てきております。私は同時に、内地においてまだ沈んでいる遺骨が一ぱいあります。たとえば私の戦友が特潜に乗りまして訓練中、油壷で沈んでまだ出されておりません。その母はすでに八十歳になって、せめて遺骨だけでもと待ちわびております。沖繩周辺でもずいぶんそういう事情があるはずでございます。さらには戦艦「大和」はまだ浮かび上がっておりません。三千名の遺骨がその下にあるはずでございます。こういう問題に対して政府は、そして厚生省はどうなさろうとするのか。  それからいま一つでございますけれども、二十九日地震がありまして、その晩私は新幹線に乗りました。東京駅へ軒並みに新幹線が全部おくれて着いたのが十二時過ぎから一時前であります。そこには一挙に何千人という乗客が東京駅の外にほうり出されました。しかしタクシーはほとんど参りません。地下鉄は全部もうすでに最終を過ぎております。外国人もおります。一体こういうときにはどうすればいいのであろうか。ささいな地震でございましたけれども、もっと大きい地震あるいは火災、天災あるいは思わざる変則的な事態一が起こったときに、たとえばラジオ放送をすれば、タクシーは全部その辺にあいている車は急行できるはずであります。あるいは地下鉄は時間を延ばすことができれば延ばしてやるべきであります。こういう問題をそろそろ国家としてコントロールすべきではないかというふうな考え方を持っておるわけでございます。  最後に一ぺんに質問いたしましてたいへん申しわけございませんが、これで私の質問を終わります。
  330. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 私鉄と国鉄の運賃の差がひど過ぎるじゃないか、それによって私鉄が便乗値上げをしたときどうなる、こういう御質問と思いますが、御承知のとおり国鉄におきましては総合原価計算主義をとっております。それに従いまして、都会地におきましては、大体二十キロ以内のところでございますと、私鉄と大体国鉄の運賃は同じであろうと思うのです。ただいまのお話は八十キロくらいございます。そういうところにだいぶ格差がございます。しかしながら、先ほどからお話がございました地方線につきましては、そのかわり私鉄から比べまして国鉄がぐんと安くなっておる。こういうような方法がございまして、いろいろ御議論がございますが、必ずしも直ちに個別原価主義をとるというわけにまいらないような事情でございます。  しかしながら、私どもの料金の認可の方針といたしましては、御承知のとおり事業別個別採算主義というものを、適正原価主義をとっておりますので、申請が参りました場合に、それがはたして妥当な申請であるかどうかということを十分に勘案いたしまして、物価に対する影響も勘案いたしまして、それであれをする次第でございまして、また、ただいま六大都市の私鉄からはそういうような申請はまだ参っておりません。ですから、具体的の問題とはなっておりませんですから、そういう点で便乗値上げをする心配はただいまのところない、こういうふうに思っておる次第でございます。
  331. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 海外における生存者の捜索、それから遺骨の収集、いまできるだけ完全な方策等をもって案を練りつつございます。  同時に、おっしゃいました内地における遺骨、ことに沈没した戦艦の中におられる遺骨の収集につきましても、この際一段と強力に進めてまいりたいと思っております。御指摘の油壷の「海龍」ですか、特殊潜航艇、これは当時からその引き揚げの能否について検討をしてまいったのでありますが、水深が非常に深いので、八十メートルということで、今日の技術的には非常にむずかしいということで今日までまいっておりますが、引き揚げの技術も進んでまいりましたから、それに即応いたしまして、これも遺憾ないようにしてまいりたい、かように思っております。
  332. 山中貞則

    ○山中国務大臣 昨年の五月、中央防災会議において、大都市震災対策推進要綱というものをつくりまして、ただいまのお話のような交通の問題から、火災その他の避難一切の問題について対策を立てまして各省庁でやっております。一昨日のあの地震の状況を、いま東京都も、その瞬間においてとった個人の行動の調査をしておるようでありますが、防災会議としても一やはり意識的な問題も非常に大きゅうございます。たとえば、野党から見ればどんなピンチにもびくともしないと思われる佐藤総理でも、シャンデリアを指さして危険だと叫んだぐらいでありますから……(「ごまをするな」と呼ぶ者あり)ごまじゃありません。しかし、反面において都民は、今回は火災というものについてはほとんど、関連と思われるものは一件ぼやがあったかどうかという程度で、火の始末にまっ先に走ったようであります。問題は、しかし道路というものが、いま自動車でどのようにして震災のときに輸送が確保されるかという問題は、まさに、新幹線の問題も先ほど御指摘がありましたけれども、大問題であります。というのは、道路の上を走っておる自動車そのものが、いわゆる火薬庫みたいになるわけでありますから、次々と連鎖式に爆発をして火災が起こったならば、各家庭で消火しても、道路から炎が燃え広がっていって大火災になるおそれがある。また信号等もめちゃめちゃになって、自動車の中で逃げる場所もないというような事態が起こるおそれがありますので、これらの点は、先般は一応総理溝において、震災の起こったという想定における関東近県  の模擬演習もやってみました。しかしながら、総理府の建物そのものがマグニチュード6では一階がつぶれるという、鉄骨が入っていないというようなことを知らされたりいたしまして、官庁のそういう建物とか大きな建物等の点検等もいたしておりますが、要するに、地震だけは前ぶれなく一分間で勝負がきまるというおそろしい災厄でございますから、先般の地震を一つの警告として、さらに具体的な詰めを行なってまいりたいと思います。
  333. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて吉田君の質疑は終了いたしました。  なお、午前の楢崎君の質疑に対する江崎防衛庁長官の答弁中、不適当な言辞については、速記録を取り調べの上、委員長において処置いたします。  次回は明三日午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十二分散会