○西田八郎君 私は、ただいま
議題となっております
健康保険法及び
厚生保険特別会計法の一部を
改正する
法律案が
採決されるに先立ち、
民社党を代表して、
反対の
討論を行ないます。
そもそも
国民皆
保険制度が確立されたゆえんは、憲法第二十五条に明らかにされている、健康にして文化的な生活を営む
国民の
権利を
保障するため、国がその福祉を守り、社会
保障及び福利の向上をはかるとともに、これを増進するための施策としてとられた
制度であります。しかし、今日の
医療保険制度は、その
制度の発足の歴史的相違があるとはいえ、多種多様な形をとり、本来平等であるべきはずのものが、不公平な
負担、不平等な
給付となっております。これは法のもとで平等であるべき
国民の
権利を不当に抑圧するもので、まさしく弱い者いじめとなっております。そして、
政府みずからが管掌しているいわゆる
政管健保こそ、その典型的ともいうべきものであります。
でありますから、これらの矛盾を解消するために、本院は過去数次にわたって本問題と取り組み、激しい論戦を展開してきたのであります。そして、第五十六回
国会において、
政府が
抜本改正を二年以内に
提出することを条件として、当面の
措置として
修正されたことは、御
承知のところであります。そして、それを約束されたのは、総理、あなた自身であったはずであります。しかるにかかわらず、いまだに
抜本改正の提案をせざるのみか、いままた、
社会保障制度審議会及び
社会保険審議会から、その
制度を形骸化するがごとき本
諮問はきわめて遺憾であるという、痛烈な批判というより、むしろ憤激を込めた
答申を受けてまで、
政管健保の
赤字解消のみを目的とした本
法案を
提出されたのであります。(
拍手)
そもそも
医療の
基本は、さきにも述べましたとおり、憲法の精神からいっても、これは国の
責任において行なうべきものであって、
保険はそれを補完するものにすぎません。特に、今日のように、社会の高度化に伴い、疾病の種類の変化、公害病の発生、交通事故の多発などと、原因不明のいわゆる難病といわれるものが激増しているとき、
国民はその健康と命に多大の不安と恐怖を抱いておるのであります。この不安と恐怖から
国民を解放するための
医療体制の確立は、きわめて早期に解決すべき問題であります。しかるに、これに対する
政府の姿勢には、
政管健保の
赤字解消をはじめ、
医療対策を根本的に改革しようとする姿は見られないのであります。すなわち、
医療供給面だけを見ても、不足している
医療機関や医師をはじめ
医療関係従事者の養成にどれほどの熱意と努力を示されたのか、ほとんどその見るべき施策がありません。
巨大な産業社会をささえ、経済大国といわれる今日の日本を築き上げてきた
国民に対し、いま報いられているものは、過度の疲労と病気による恐怖以外の何ものでもありません。(
拍手)これを立て直し、その体制を確立することこそ、
政府の
責任であり、総理、あなた自身の
責任ではありませんか。本
法案が本院に提案されてから今日まで、その
審査の過程で、総理はじめ
厚生大臣の
説明並びにその答弁
内容には、いささかも前向きに取り組もうとする姿勢は見られませんでした。一体、本
法案の成立によって過重な
負担を課せられるのはだれでありましょう。それは、ドルショックや円切り上げと打ち続く
政府の失政の犠牲となって大きな打撃を受け、あすに希望を持てない、恐怖と不安におののいている
中小零細企業であり、また、そのもとに低い
労働条件に悩まされながら営々として働いている
労働者たちではありませんか。(
拍手)特に、本
法案に新しく設けられようとしている
特別保険料のごときは、まさにその最悪のもので、法のもとに平等であるべき
国民を、受益者
負担の名のもとで差別するものではありませんか。このことは断じて許されるべきことではありません。
さらに言及するならば、これによって一応の
赤字を解消し得たとしても、現行の
診療報酬制度や薬価
制度が改革されない限り、またしても
赤字を生ずるであろうことは、火を見るよりも明らかであります。そのことはすでに昨年の例に徴しても明らかでありまして、ここ一、二年来の不良医師の摘発件数の増加傾向などから見ても、疑うべき余地もありません。
私は、この際、明らかにしておきたいことがあります。それは、当初
政府原案に見られた
赤字たな上げ案が、
与党の
修正によって消滅されてしまいました。しかし、この
政管健保の
赤字は、一にかかって
政府の
責任であり、その解消については、これを被
保険者など他に転嫁することなく、
政府の
責任において解決すべきであることを特に明らかにしておきたいと思うのであります。(
拍手)
人間中心の政治、高
負担高福祉は、総理、あなたの長年にわたる政治方針ではなかったのでしょうか。いまや
国民は、
政府の貧困にして劣悪、血も涙もない施策によってその大きな犠牲をこうむらんとしており、高
負担低福祉に多くの
国民が憤りをさえ覚えておるのでございます。そして、健保改悪
反対の声とともに、
佐藤内閣退陣の声を大にしているのでございます。これはしかし当然のことでございましょう。かかる悪法に、良識ある
国民の代弁者として断じて
賛成するわけにはまいりません。
私は、
国民皆
保険の
制度を十分に生かし、公平な
負担、平等な
給付の原則に立ち、
国民の命と健康を守るために、総理以下関係閣僚が、
医療に対する
基本的な改革案を
国民の前に早急に明示するとともに、みずからの非を認め、深く反省されんことを強く要求いたしまして、私の
討論を終わります。(
拍手)