○
河村勝君 今回の
海上封鎖を主体とする
アメリカの
ベトナム作戦強化は、いかなる意味においても弁護の余地のない身がってな
行動であって、
戦争の
拡大、長期化の危険をはらむ許しがたい
暴挙というほかはありません。私は民社党を代表して、
アメリカはすみやかに
海上封鎖と
北爆を停止し、和平会談を
再開すべしとの
立場から、この憂慮すべき
事態に対し
わが国としてとるべき方策について、
総理並びに
外務大臣に対し、所信をたださんとするものであります。
去る四月十六日、ハノイ、ハイフォン爆撃を
再開して以来、エスカレーションを続けてきた
アメリカの
ベトナム作戦は、必然の帰結として今日の深刻な局面に到達いたしました。
政府はこの間、暗に
アメリカの
立場を支持する
態度をとりつつ、ついに何らの自主的
意思表示をすら行なわず、漫然と傍観を続けたことは、きわめて遺憾であります。
わが国はアジアの主要国家の一つである。のみならず、
アメリカ・
ベトナム作戦の後方
基地を国内にかかえていることによって、
ベトナム戦争と深いかかわり合いを持つ国であります。このような地位にある国の
政府として、かかるあいまいな
態度をとり続けることによって、国際社会における
責任を果たすことができるとお考えであるのか。この際、
政府は自主性を喪失した従来の
態度を一てきして、アジアの緊張緩和を目ざす
わが国の積極的な
外交路線を明確に打ち出すべきであると考えるが、まず
総理の所信をお尋ねをしたい。
一体、今回
アメリカのとった
強硬手段に多少でも正当性を認めることができるであろうか。ありとすれば、
アメリカの威信か、ことによれば
ニクソン大統領の威信くらいしかないのではありませんか。
外務省は、今回の機雷
封鎖を、
国連憲章の集団
自衛権に基づく合法的な
行為であるという公式
見解を発表したようであるが、それはほんとうでありますか。おそらく機雷を敷設しただけで
海上封鎖ではないという法匪的な
解釈によるのでありましょうが、冗談ではない。どこに機雷があるかわからない海域を、外国の船が航行できるわけがない。
現実には
海上封鎖そのものではありませんか。
国際法上の
交戦国でもない国を
封鎖して、第三国の船舶を締め出すことは、明らかな違法
行為ではありませんか。
第二に、
アメリカは、
ジュネーブ協定の休戦ラインを
北ベトナム軍が越えたことを
侵略だときめつけて、今回の
行動を正当化しようとしております。大体
ジュネーブ協定に基づく
統一選挙を妨げたものは
アメリカ自身ではないか。その上、軍隊を送り込んで、
北爆で大量殺戮を続けている
アメリカに、少なくとも
北ベトナムを
侵略者などという資格は全くないというべきではありませんか。
アメリカは、また理由づけの一つとして、ソ連の武器
援助を非難しております。ソ連の
援助に
アメリカが悩まされているということはよくわかるが、これも最大級の弁護をしてみても、五分五分というところがせいぜいのところではないか。
要するに、
アメリカは、どのようにていさいを取りつくろっても、
アメリカの
行動を正当づける論拠は何一つないというべきだと思うが、
安保理事会の
見解を待つというような不見識なことではなしに、
外務大臣の明確な
お答えをいただきたい。
しからば、今回の
強硬手段が、はたして
アメリカの言うがごとく、
ベトナム和平促進のために多少でも役に立つのであろうか。その答えは、すでに過去の
経緯に明らかである。一九六八年十月、ジョンソン前大統領によって決定された無条件
北爆停止がいかなる状況のもとに行なわれたかは、
総理もよく御承知のはずであります。五十万の地上軍と
北爆をもってしても、ついに
北ベトナムを屈服させることができなかった。現在、その条件が少しでも変わっているとでもいうのであろうか。
北爆再開をはじめとする力の
政策は、しょせん、何の効果も生み出し得ず、あやまちにあやまちを重ねて今日の
事態までエスカレートしたことは、ほとんど必然な成り行きだというほかはないのであります。
北爆と
海上封鎖という
軍事力の威圧によって
北ベトナムに譲歩を迫るというならば、それは過去の失敗を再び繰り返すのみであります。
それならば、
アメリカは、この強硬策によって何を期待しているのか。
海上封鎖によってソ連を挑発して、ハノイに対するソ連の説得を期待しているのか。もしそうであるならば、あまりにも成算のないせとぎわ
政策ではありませんか。単に成算がないというだけではない。まかり間違えば、これに端を発して、
戦争の激化、
拡大を招来する重大な危険をはらんでいるのであります。そのような危険きわまるかけを
アメリカが行なうことが、緊張緩和に進みつつある今日の国際社会で許されてよいのでありますか。
わが国は、いつまでも対米追随の姿勢を続け、ずるずると
アメリカの
行動を事後
承認していくことは、もはや許されない時期に到達しております。
アメリカは力の
政策の限界を知って、この危険な
行動をすみやかに
中止しなければならない。
アメリカは、ベトナミゼーションの失敗を率直に認めて、南
政権への過剰
介入をやめなければならない。
わが国は、いまこそ、
アメリカに対してそのことを勧告すべきではないか。それが真の友好国としての
わが国の
責任であり、同時に、多極化時代に対応して平和を求める
わが国自身の選択すべき方策であると考えるが、
総理の率直なお考えを伺いたいと思います。
次に、今回の
事態が
わが国に直接かかわる事柄についてお尋ねをいたします。
ベトナム作戦のエスカレーションに伴って、
沖繩を含む
わが国の
基地からの作戦
行動が激増しつつある。一連のこれらの問題に対する
福田外務大臣はじめ外務当局の言動は、すべて
アメリカ政府に気がねをして、
アメリカの
行動は、へ理屈でも何でも、言いわけのつくものはすべて容認しようという
態度に終始して、重大な局面にある
ベトナム戦争と国内
米軍基地との間に存在する問題の本質を避けて通ることにきゅうきゅうとしていることは、きわめて遺憾であります、
いわく、「
封鎖作戦は
事前協議の
対象となる
戦闘作戦行動にはならない。」米陸軍の相模
補給廠において
南ベトナムの戦車が問題になれば、今度は、「
南ベトナムに米側が
援助した戦車であっても、損傷すれば米側に返されて
米軍のものになる。」まるで三百代言の言うことである。
福田外務大臣自身がそうであります。「返還後の
沖繩を含め、
日本の
基地が
ベトナム戦争に直接出撃のために使われることはない。万一そうした
事態が起これば
事前協議の
対象となるが、それにはノーと言う。」そんなことはあたりまえのことであります。問題は、そんなことではなくて、実体なのであります。「
沖繩返還に際し、
事前協議制度を再検討する考えはないけれども、この際、
事前協議の適用上の問題点を米側とともに総ざらいをしたい」というのが、ただいまの
外務大臣の発言であります。それでは、結局、問題の回避なんです。
アメリカの
ベトナム政策そのものについての私の
主張は、すでに述べたとおりであります。
政府がもし少なくとも方向として同様の
立場に立つ意思がおありならば、現に、実質的に
ベトナムへの直接出撃が
わが国の
基地から行なわれつつあるという事実に目をおおってはならないはずであります。条約の法文
解釈上の小細工で済む問題ではもちろんないし、また、
事前協議制度の適用の問題ぐらいで片づけられる問題ではありません。
政府は、この際、いかなる形であれ、実質的な直接作戦
行動は一切容認しないという基本的な
立場に立って、
事前協議制度そのものについて対米
協議を要求すべきだと考えるが、
外務大臣の
見解をお伺いしたい。
しかしながら、この問題を突き詰めていけば、最後には
基地そのものの性格の問題に突き当たります。
沖繩返還によって、東西冷戦構造下の
アメリカ極東戦略の一環としての前進
基地をそのまま国内に持つことになって、本米
自衛に徹すべき
安保条約の
目的を明らかに逸脱する
基地構造となることの矛盾は、かねてからわれわれの懸念するところでありまして、わが党が
沖繩返還協定の審議にあたって、賛否の条件として、核抜きとともに、
基地の整理縮小を最大の要件としたゆえんはここにあるのであります。われわれの懸念は、今回の
アメリカの身がってな
行動によって、不幸にして、早くも
現実の問題となりました。いまこそ
政府は、
沖繩米軍基地についてすみやかな将来の縮小整理の
措置をとるべきであるという
沖繩国会の決議を、直ちに実行に移すべきであると考えるが、
外務大臣の明確な
答弁を求めます。
このような国会の決議が存在するにもかかわらず、本年一月、サンクレメンテにおける
日米共同声明において合意されていることは、単に双方に受諾し得る
施設、
区域の調整のみであります。一体、調整というのは何を意味するのか。
基地の性格を変更するだけのほんとうの意味での
基地の整理縮小をこれによって制約するのではないかとの疑念を持たざるを得ないのであります。この点についてもまた明確な
見解をお伺いいたしたい。
以上、申し述べたように、今回の
アメリカのせとぎわ
政策を安易に是認して、依然たる対米追随
外交を続けることは、いかなる意味においても
日本の国益にかなうものではありません。ようやくにして定着しつつある緊張緩和のアジア
情勢をさらに推し進めるために、冷戦時代以来の惰性を清算して、新たなる
情勢の的確な
判断のもとに、みずからの進むべき道を決定することこそ今日の
わが国の
緊急の課題であって、
政府はその実行に勇敢に取り組むべきことを最後に重ねて強く要求して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕