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1972-05-09 第68回国会 衆議院 本会議 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月九日(火曜日)     —————————————  議事日程 第二十二号   昭和四十七年五月九日     午後二時開議  第一 電信電話設備拡充のための暫定措置に   関する法律等の一部を改正する法律案内閣   提出)  第二 道路運送車両法の一部を改正する法律案   (内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  議員請暇の件  日程第一 電信電話設備拡充のための暫定措   置に関する法律等の一部を改正する法律案(   内閣提出)  日程第二 道路運送車両法の一部を改正する法   律案内閣提出)  河川法の一部を改正する法律案内閣提出)  特定多目的ダム法の一部を改正する法律案(内   閣提出)  田中通商産業大臣中小企業基本法に基づく昭   和四十六年度年次報告及び昭和四十七年度中   小企業施策についての発言及び質疑     午後二時四分開議
  2. 船田中

    議長船田中君) これより会議を開きます。      ————◇—————  議員請暇の件
  3. 船田中

    議長船田中君) 議員請暇の件につきおはかりいたします。  池田清志君及び丹羽久章君から、海外旅行のため、五月十七から二十六日まで十日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。      ————◇—————  日程第一 電信電話設備拡充のための暫定   措置に関する法律等の一部を改正する法律   案(内閣提出
  5. 船田中

    議長船田中君) 日程第一、電信電話設備拡充のための暫定措置に関する法律等の一部を改正する法律案議題といたします。     —————————————
  6. 船田中

  7. 高橋清一郎

    高橋清一郎君 ただいま議題となりました電信電話設備拡充のための暫定措置に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、逓信委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  この法律案は、去る二月十六日内閣から提出されたものでありまして、その提案理由とするところは、電信電話等に対する国民の依然として旺盛な需要を充足するため、電信電話債券引き受け制度等公衆電気通信設備拡充に必要な諸制度存続をはかるとともに、所要整備を行なおうとするものであります。  本案のおもな内容といたしましては、  第一に、制度存続について、電信電話設備拡充のための暫定措置に関する法律露語設備拡充に係る電話交換方式自動化実施に伴い退職する者に対する特別措置に関する法律、及び電話加入権質に関する臨時特例法に定める制度の期限を十年間延長するものであります。  第二に、電信電話債権引き受けについて、公衆通信回線使用契約等の申し込みをした者は、電信電話債券引き受けを要することとするとともに、債券払い込み額を定めるための級局区分電話使用料級局区分と同一とする等、所要整備を行なうとともに、必要な経過措置規定を設けております。  なお、この法律施行期日は、制度存続に関する規定公布の日から、電信電話債券引き受け制度整備に関する規定のうち、公衆通信回線使用契約等に係る債券引き受けに関する規定公衆電気通信法の一部を改正する法律電話料金に関する広域時分制に関する規定施行の日から、その他のものについては昭和四十八年四月一日から施行することとなっております。  逓信委員会におきましては、四月十一日本案の付託を受けまして、慎重に審議を重ねたのでありますが、五月八日質疑を終了し、討論に入りましたところ、自由民主党を代表して森喜朗君より賛成意見が、日本社会党を代表して古川喜一君より、また、公明党を代表して樋上新一君より反対意見が、また、民社党を代表して栗山礼行君より賛成意見が、共産党を代表して津川武一君より反対意見がそれぞれ述べられ、次いで採決を行なった結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  8. 船田中

    議長船田中君) 採決いたします。  本案委員長報告可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  9. 船田中

    議長船田中君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第二 道路運送車両法の一部を改正する   法律案内閣提出
  10. 船田中

    議長船田中君) 日程第二、道路運送車両法の一部を改正する法律案議題といたします。
  11. 船田中

  12. 小峯柳多

    小峯柳多君 ただいま議題となりました道路運送車両法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審査経過並びに結果について御報告申し上げます。  本案は、最近における軽自動車普及の実情にかんがみ、その安全性確保及び公害防止をはかるため、軽自動車に対して検査実施するとともに、これを行なうことを目的とする軽自動車検査協会を設立しようとするものであります。  そのおもな内容は、  第一に、軽自動車に対しても、一定の軽自動車を除き、車両検査を義務づけ、軽自動車は、有効な自動車検査証を備えつけ、検査標章及び車両番号標を表示しなければ運行の用に供してはならないことといたします。  第二に、軽自動車検査事務は、運輸大臣の認可を受けて設立される軽自動車検査協会に行なわせることといたします。  第三に、軽自動車検査協会全額政府出資の法人とし、その設立、役員、業務、財務等に関する所要規定を設けました。  第四に、軽自動車に対する車両検査実施に伴い、軽自動車についても型式指定制度及び指定整備事業制度を採用する等、所要規定整備することといたします。  このほか、軽自動車検査昭和四十八年十月一日から実施することとし、その検査に関する経過措置規定し、あわせて関係法令改正を行なうこととするものであります。  本案は、二月十九日本委員会に付託され、四月四日丹羽運輸大臣から提案理由説明を聴取し、四月七日質疑に入り、五日間にわたって質疑を行ない、四月十八日質疑を終了いたしたのでありますが、その詳細は会議録によって御承知を願いたいと存じます。  五月八日採決いたしました結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対しましては、自由民主党提案によりまして、本法による軽自動車検査制度実施にあたり、政府において積極的に措置すべき六項目の附帯決議を付することにいたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  13. 船田中

    議長船田中君) 採決いたします。  本案委員長報告可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  14. 船田中

    議長船田中君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  河川法の一部を改正する法律案内閣提出)  特定多目的ダム法の一部を改正する法律案   (内閣提出
  15. 藤波孝生

    藤波孝生君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  すなわち、この際、内閣提出河川法の一部を改正する法律案特定多目的ダム法の一部を改正する法律案、右両案を一括議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  16. 船田中

    議長船田中君) 藤波孝生君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  河川法の一部を改正する法律案特定多目的ダム法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
  18. 船田中

  19. 亀山孝一

    亀山孝一君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、建設委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、河川法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、都市地域における水需要増大治水環境悪化に対処するため、河川流況調整によって受益する特別水利使用者負担金制度創設するとともに、普通河川についてその管理の適正化をはかるため、準用河川制度拡大し、また、一級河川指定手続を簡素化しようとするものであります。  本案は、去る三月八日提案理由説明を聴取し、自来、慎重に審査を進めてまいり、本日質疑を終了しましたが、施行期日を「公布の日」に改める旨の修正案提出され、採決の結果、全会一致をもって修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。  次に、特定多目的ダム法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、近時における水需要増大に対処するため、多目的ダム建設すべき緊急の必要がある場合においては、都市用水にかかるダム使用権設定予定者が特定していない段階であっても、相当の期間内にこれを特定する見込みが十分あるときは、基本計画を定め、その建設に着手できるものとするものであります。  本案は、去る三月八日提案理由説明を聴取し、自来、慎重に審査を進めてまいり、本日質疑を終了しましたが、「相当の期間」とあるのを「政令で定める期間」に改める旨の修正案提出され、採決の結果、多数をもって修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。  なお、両法律案に対してそれぞれ附帯決議が付せられました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  20. 船田中

    議長船田中君) これより採決に入ります。  まず、河川法の一部を改正する法律案につき採決いたします。  本案委員長報告修正であります。本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり決しました。  次に、特定多目的ダム法の一部を改正する法律案につき採決いたします。  本案委員長報告修正であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  22. 船田中

    議長船田中君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり決しました。      ————◇—————  田中通商産業大臣中小企業基本法に基づく昭和四十六年度年次報告及び昭和四十七年度中小企業施策についての発言
  23. 船田中

    議長船田中君) 通商産業大臣から、中小企業基本法に基づく昭和四十六年度年次報告及び昭和四十七年度中小企業施策について、発言を求められております。これを許します。通商産業大臣田中角榮君。   〔国務大臣田中角榮登壇
  24. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中小企業基本法第八条に基づいて、先般政府国会提出をしました昭和四十六年度中小企業動向に関する年次報告及び昭和四十七年度において講じようとする中小企業施策概要を御説明申し上げます。  まず、昭和四十六年度の中小企業動向について見ますと、長期化した不況の中で、国際通貨調整問題も加わり、中小企業事業活動は総じて沈滞し、収益は悪化傾向をたどったのでございます。金融緩和の浸透や政府輸出関連中小企業中心実施した緊急融資為替予約制度など一連緊急中小企業対策の効果などもあって、倒産は低水準に推移しているものの、今後の動向には十分注意する必要があるものと思われます。また、今後は、公共投資中心とする景気浮揚政策実施により不況が打開され、新たな景気の局面が展開することが期待されるところであります。  続いて、この年次報告で取り上げております中小企業構造問題について御説明を申し上げます。  従来、中小企業は、低賃金、低生産性を特徴とし、わが国経済の二重構造の底辺をなす存在であるといわれてまいったのであります。しかし、昭和三十年代以降の高度成長過程を通じて、大企業中小企業との間の生産性及び賃金格差は総じて縮小に向かうなど、いわゆる二軍構造は次第に解消しつつあるようにも思われるのであります。  しかしながら、現存、中小企業をめぐる経済環境は急激に変化し、時代中小企業にきびしい課題を問うていることもまた事実であります。  課題の第一は、円切り上げに象徴されるように、わが国経済の本格的な国際化が進展し、中小企業もこれに対応していくことが期待されていることであります。輸出関連産地中心として今回の国際経済上の調整措置影響を強く受けている中小企業が、この苦境を打開するためには、製品高級化や市場の多角化、さらには事業転換海外投資などによる積極的な対応が必要とされておるといえます。  課題の第二は、公審問題の深刻化都市過密化の進展等環境問題への対処であります。この課題に対しては、基本的には国土利用の再編成の立場から、産業の再配置を推し進める必要があり、中小企業にもその方向に沿った形での適応が求められておるのであります。ただ、この政策推進に際しては、中小企業が、大企業にないさまざまの問題をかかえていることを十分認識し、その障害を解消するための施策を講ずることも必要と思われるのであります。  課題の第三は、効率的な流通システム確立等によって、国民の物価安定への要請にこたえ、国民生活向上に資するほか、所得水準の上昇に伴う勤労者意識変化に積極的に対応していくなど、人間尊重を基調とする高福祉社会に、中小企業が積極的に貢献していくことであります。  以上の諸課題に対処するための産業構造上の新たな方向として、中小企業についてもその知識集約化推進が必要とされておるのであります。すなわち、知識集約的な付加価値の高い製品をつくることは、国際的な摩擦を回避し、公害の発光を少なくし、勤労者には働きがいを与えるという要請にこたえる最も望ましい方策であるといえましょう。  中小企業わが国産業構造知識集約化に大きな役割りを果たしていくためには、基本的には、物的出産性向上に加えて、製品高級化、多様化することにより、付加価値地産性を高めるとともに、技術水準向上マーケティング能力開発、情報の収集分析力強化につとめるなど、総合的に企業力を充実させていくことが必要であります。  さらにまた、需要構造変化等適応しきれない業種にありましては、有望業種へ前向きに転換していくことも有効な対応策と考えられるのであります。  わが国経済社会は、いままでにも増して変化の激しい、多様性に富んだ社会へと変貌しつつあるように思われます。  こうした時代変化は、中小企業にとってこれまで以上にきびしい適応を求めるものであります。しかし、一方では需要多様化等の結果、中小企業活動分野が広がりつつあることもまた事実であります。今後中小企業は、このような時代認識に立って、資金不足、人手・人材不足などの短所を克服しつつ、多くの人々がそのメリットと認めている小回り、バイタリティー、創意くふうといったみずからの持てる長所を伸ばし、企業個性を創造していくことが期待されるのであります。  政府といたしましては、中小企業が新しい事態に勇気をもって対応し、その総合的企業力を養うことによって日本経済全体の効率化促進し、わが国経済社会の均衡のとれた発展に重要な役割りを果たしていくことを期待して、昭和四十六年度において次のような施策実施いたしたのであります。  まず、中小企業構造高度化をはかるため、工場等集団化事業拡充業種別振興策推進下請中小企業近代化促進中小商業振興設備近代化資金及び設備貸与事業拡充経営合理化のための診断指導事業推進技術対策拡充等を行ないました。また、米国の輸入課徴金制度実施わが国変動相場制への移行等いわゆる国際経済上の調整措置に対処して、輸出関連中小企業に対し、特別の緊急中小企業対策実施いたしました。また、環境変化に対する適応力に乏しい小規模企業に対する対策として、経営改善普及事業拡充小規模企業共済制度運用強化金融税制面における措置等を行ない、小規模企業経常の安定に資することとした次第であります。また、こうした諸施策推進と同時に、増大する中小企業者資金需要にこたえ、金融円滑化をはかるため、政府関係金融機関貸し出し規模拡大信用補完制度充実等を行ないました。また、税制面においても、中小企業者税負担軽減等をはかるべく所要税制改正実施した次第であります。  次に、昭和四十七年度において講じようとする中小企業施策について御説明を申し上げます。  昭和四十七年度におきましても、中小企業を取り巻く経済社会環境のきびしさは依然として続くものと思われ、中小企業は、より一そうの近代化合理化のための努力を要請されるものと予想せられるのであります。こうした事態に対処するため、まず第一に、円切り上げ等一連国際経済上の調整措置実施が、輸出関連中小企業中心景気沈滞下中小企業に大きな影響を及ぼしていることにかんがみ、昨年度に引き続き、国際経済調整対策の総合的な実施をはかることとしております。まず、昨年臨時国会成立をした国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律積極的運用をはかるとともに、過剰設備の廃棄を共同で行なう中小企業者に対し、高度化資金融資を行なうことといたしております。  第二に、中小企業公害防止対策積極的推進をはかるため、中小企業金融公庫国民金融公庫における公害防止貸し付け創設または拡充するほか、公害にかかる事業転換貸し付けを新たに設けることとしておるのであります。また、組合ぐるみ公害防止事業促進するため、公害共同処理施設に対する高度化資金助成強化するほか、公害防止設備組合リース制度について、助成の道を開くことといたしました。このほか、公害防止技術面においても制度新設をはかる等、総合的に対策を講じていくことといたしております。  第三に、環境変化への適応力の乏しい小規模企業については、きめのこまかい配慮を行ない、特段の施策拡充をはかることとしております。すなわち、設備貸与制度拡充国民金融公庫融資拡充等につとめるほか、経営指導員待遇改善指導施設充実等を通じ、経常改善普及事業の大幅な拡充を期することとしております。また、小規模企業共済制度についても、小規模企業共済法改正法案成立を待って制度拡充強化をはかることとしております。  第四に、高度化事業については、中小企業振興事業団高度化融資事業規模拡充を行ない、特に国際経済調整対策公害防止対策などの観点から制度新設を行なうこととしておるのであります。  第五に、業種別振興策については、中小企業近代化促進法等に基づく構造改善を一そう推進するとともに、下請中小企業振興法積極的運用をはかり、下請中小企業体質改善を強力に推進することといたしております。  第六に、流通近代化対策については、商業近代化地域計画の策定につとめるとともに、政府関係金融機関流通近代化貸し付け拡大をはかり、卸商業団地、ボランタリーチェーン、商店街近代化等商業における中小企業構造高度化推進をはかることとしております。  第七に、中小企業における労働力確保と資質の向上をはかるとともに、中小企業の職場を安全で快適なものとするため、職業紹介職業訓練等施策拡充をはかるほか、労働災害防止等につとめ、労働者福祉向上をはかることといたしております。  第八に、中小企業金融対策として、政府関係中小企業金融機関に対し、財政投融資を大幅に増加し、その貸し出し規模拡大をはかるとともに、種々の特別貸し付け制度創設拡充を行なうこととしております。  第九に、中小企業税制については、中小企業税負担軽減をはかるため、所要税制改正を行なうこととし、特に小規模事業者については、所得税における青色申告控除制度創設個人事業税における事業主控除引き上げ等を行なうこととしております。最後に、五月十五日に本土復帰する沖繩中小企業について申し上げますと、沖繩経済に占める中小企業の比重はきわめて高く、早急に本土並みにその体質強化をはかる必要があるため、昭和四十七年度においては、小規模企業対策指導事業組織化対策及び技術対策に重点を置いた施策の展開をはかるとともに、金融面については、現在国会審議中の沖繩振興開発金融公庫法案により設立される予定沖繩振興開発金融公庫貸し付けについて、所要中小企業ワク確保することとしておる次第であります。また、業種別近代化推進のため、沖繩振興開発特別措置法沖繩に限った中小企業近代化促進制度を設けるなどの措置を講じ、かつ、助成の条件についても本土より一段と手厚いものとしておるのであります。  以上が昭和四十六年度中小企業動向に関する年次報告及び昭和四十七年度において講じようとする中小企業施策概要であります。(拍手)      ————◇—————  中小企業基本法に基づく昭和四十六年度年次報告及び昭和四十七年度中小企業施策についての発言に対する質疑
  25. 船田中

    議長船田中君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。左藤恵君。   〔左藤恵登壇
  26. 左藤恵

    左藤恵君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま御説明のありました昭和四十六年度中小企業動向に関する年次報告並びに昭和四十七年度において講じようとする中小企業施策を通して、政府中小企業政策について、総理並びに関係大臣にその所信を伺いたいと思います。  今回のいわゆる中小企業白書は、昨年八月十五日のニクソン声明以来の一連国際通貨調整、すなわち、ドル・ショックと円の切り上げという国際経済の中におけるわが国の置かれているきわめてきびしい現実の中にあって、中小企業がどのような実態を示しているかを、まず第一部で「苦闘する中小企業」としてとらえており、次に「変化多様性のなかの中小企業」という第二部において、中小企業の直面している課題を指摘して、解決の糸口を探ろうとしているのであります。このような特色を示している昭和四十六年度の白書は、豊富な資料と鋭い分析によって従来にない迫力を持ったとらえ方をしている点は、深い敬意を表するものであります。  このように苦悩にあえぐわが国中小企業実態が明らかにされてきている中で、政府として、中小企業に対する基本的な姿勢についてどのように考えておられるかを総理にお伺いいたしたいのであります。  すなわち、白書の指摘するように、不況円切り上げ相乗作業によって長期化した不況の中で、中小企業の四十六年度の生産は、前年比わずか一・五%の増にすぎず、六・一%の増加を示しました大企業に比べて大きな落ち込みを示しているのであります。全企業の九九%以上が中小企業であって、そこに働く人も二千七百万人をこえるといわれる今日、こうした格差を、わが国特有構造のせいばかりにすることは許されないと思うのであります。ここで思い切った中小企業に対する方策が、特に効果的な政府による施策の側面的な援助がその重要性を増すものと考えるのであります。新しい時代に生きる中小企業は、今後いかなる方向に進むべきか、御意見をお伺いいたしたいのであります。  次に、中小企業基本法が制定されてことしはちょうど十年目に当たるのでありますが、たとえば資本金五千万円以上で一億円未満のものは法の谷間に落ち込んでいると申しますが、実質的には中小企業の分野に属していても法的には大企業であるという、時代の推移によるさまざまな矛盾も見られるのでありますが、総理は、この際基本法を改正して、中小企業実態を正しく反映した定義に改められるお考えはないかどうか、お伺いいたしたいのであります。  さらに、零細企業となりますと、家内工業的なものが数の面では非常に多いという、そういう実情からも、中小企業とは切り離して、一そうきめのこまかい指導と助成を行なう必要があると考えるのでありますが、この点についても、基本的な問題でありますので、総理からお答えをいただきたいと思います。  次に、白書の第二部で指摘されているように、円切り上げを契機として新しい時代の潮流がはっきりしてきた今日を、変化多様性に富んだ社会規定し、国際化福祉指向、知識集約化時代への適応を求め、この社会が、中小企業にとってきびしいが、可能性は大きいことを示唆しようとしているのであります。当面の対策としては、ただいま御説明がありましたように、昭和四十七年度における施策として幾つか述べられておるのでありますが、私は、このような中小企業の新しい時代への模索の中で、特に早急な対策が望まれる数点について、関係閣僚に質問をいたしたいと思います。  まず、昨年来の通貨調整問題は、中小企業に多大の影響を与えましたが、特に輸出関連産業と中小の貿易業者に大きな圧力となっていることは事実であります。これに対して、政府は、繊維産業における紡織機の賢い上げや緊急融資などの対策を講じてまいりましたが、中小企業、特に下請企業実態を十分把握して対策を講じておられるかどうか、との点をお伺いいたしたいと思います。  不況下にかかわらず中小企業の倒産はかなり低水準にある、これはいま御説明があったように、金融が緩和しているためであります。中小企業の収益性は事実低下しているために、倒産は先に持ち越されているように思うのでありますが、政府の御意見をお伺いいたしたいと思います。  なお、金融緩和の浸透によって、市中金利は下落の傾向をたどっていますが、はたして中小企業向け貸し出し金利は下落しているでしょうか。拘束性預金の比率ははたして下がっているでありましょうか。この点は実情を明らかにしていただきたい。そして関係金融機関に対して強い指導をされることを、強く希望するものであります。  次に、公害問題はますます深刻化してきており、その解決は急を要することはもちろんであります。その中で中小企業の果たすべき役割りはきわめて大きく、また、その業種から見ても、規模から見ましても、中小企業独自のものがあると考えられます。政府中小企業公害問題をどのようにとらえておられるか、その基本的な考えをお尋ねいたしたいのであります。  たとえば公害防止機器の開発についても、みずから行なう能力が乏しく、資金面でも大きな制約を持つ中小企業は、どのようにしてこのような障害を克服すべきであるかは、むずかしい問題であっても、避けて通ることのできない道であります。特に資金面は、政府が積極的に援助する以外に方策がないと考えますが、この点についても御意見を承りたいと思います。  さらに、われわれ都市住民が最も関心を持つ問題として、公害の効果的解決方法として地方への移転が取り上げられますが、私は、安易な机上のプランではどうにもならない、現実問題として大ないし中企業の、工程のほんの一部である、たとえばメッキの部分だけを下請しているような工場は、親企業と切り離して移転することができない等々、困難な要素を多くかかえておると思うのであります。政府はこれら中小企業の移転についてどのように考えられておられるかを、この際明らかにしていただきたいのであります。そして、親企業に下請の公害対策を義務づけることができるかどらか、その可能性についても御意見をお伺いいたしたいと思います。  第三に、環境の急速な変化中小企業適応していく手段として、事業転換重要性がく今後ますます増大していくものと思われます。しかし、不況下における中小企業事業転換は、言うべくしてなかなか行なわれがたいものであります。特に、不況対策にばかり目が向けられて、長期的な構造課題に対する対応がおろそかにされるようなことがあれば、たとえば円の再切り上げ等一そうきびしい事態を招来して、そのしわ寄せが中小企業に集まるおそれなしとしないと考えるのであります。この中小企業事業転換を、思い切った発想の転換ともいえるような積極的な推進をはかっていこうとするお考えであるかどうか、政府の御意見を承りたいと思います。  また、低生産部門においては、廃業を余儀なくされる中小企業も出てくると思われますが、これを円滑に行なうための施策も講ずべきでないか、この点もあわせてお答えいただきたい。  最後に、国際化の積極的な適応策として海外投資が考えられますが、中小企業海外投資については政府はどうお考えになっているか、何らかの助成策を講ずべきではないかについてお伺いいたしたいと思います。  過般の米国のいわゆるドル・ショックは、御承知のとおり、ドルの国際的価値の下落に対処するためにとられた措置でありますが、その起因についていろいろにあげられている中で、私は、米国のいわゆるワールドエンタープライズ、世界的企業が海外に進出して、資本を投じ生産活動を行ない、米国へ逆送するためドルの二重、三重の喪失を引き起こし、さらに米国内での失業者も増大するという結果になっている点に注目するものであります。現段階でのわが国は、外貨蓄積は二百億ドルに近づこうとし、国内の失業者もほとんど皆無の状況でありますけれども、いま、たとえば国内における労働事情の逼迫のために、海外に工場を無計画に進出させるようなことがあれば、私は、わが国もまた米国の轍を踏むおそれなしとはしないと心配するものであります。  エコノミックアニマル等々、非難を受けがちなわが国の激しい海外への進出を思いますとき、これからの特に中小企業海外投資については、ジェトロの調査網を駆使するほかに、さらにしっかりと打ち立てられた方針のもとで、通産省はじめ関係省において具体的な指導を行なう必要があると考えるのであります。その意味で、海外経済技術協力政策推進する一環として、政府中小企業をどのように位置づけしようとしておられるのか、これについてお答えをいただきたいと思います。  さらに、発展途上国に対する特恵関税供与や円切り上げに端的に示されるわが国経済国際化の進展の中で、中小企業のうち特に産地型輸出企業の受けた影響が大きかったことを反省して、今後は、中小企業の特性たる小回りやバイタリティー、創意くふうを生かして、製品の質的高級化多様化等をはかる必要があると考えるのでありますが、この面で政府は、強力な指導助成を今後行なっていく用意があるかどうか、これもあわせてお答え願いたいと思います。  以上、幾つかの点に触れたのでありますが、私は、中小企業に働く人々のため、愛情深い政府の御答弁を期待するものであります。そして、この中小企業白書に示された中小企業実態を十分把握することによって、政府がここで大胆な発想転換とでもいうべき画期的な中小企業についての長期的ビジョンを打ち立て、その中で、当面する問題の解決に積極的な態度で臨まれることを強く要望いたしまして、私の質問を終わるものであります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  27. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) 左藤君にお答えをいたします。  左藤君も御承知のように、中小企業は、これまで、わが国経済発展の中で市民の生活を潤し、また輸出伸長の原動力として、常に欠くことのできない重要な役割りを果たしてまいりました。今日もなお、その役割り重要性は、決して減ずるものではありません。しかしながら、このことは、中小企業が従来と同じ経営の方式により今後の事態変化に対処していけることを意味するものではないのであります。国民所得水準の上昇に伴う需要構造変化は、発展途上国製品の追い上げとも相まって、より多様化、高級化した製品分野への移行を必要とし、また勤労者意識変化など、福祉社会への指向と公害等の環境問題への関心の高まりは、中小企業経常態度についての変革を迫っております。  このような中小企業の今後の進むべき道は、基本的には知識集約化への脱皮であり、また設備の近代化構造改善を通ずる生産合理化であります。しかも、いずれの場合におきましても、市場へのつながりを意識した柔軟な経営組織への指向が重要であります。政府といたしましては、このような積極的な対応策中小企業対策中心に据え、今後とも機動的、弾力的に施策を講じていく考えであります。  次に、中小企業者の定義の改定につきまして、従来から各界の御意見、御要望のあることは十分承知しております。政府といたしましては、中小企業をめぐる環境の変化とそれに対処する政策のあり方につき、現在、中小企業政策審議会において審議をお願いしているところでありますので、中小企業の定義の改定につきましても、その結論を待ちたいと考えております。  最後に、小規模零細企業に対しましては、従来から中小企業政策の中でも特段の配慮を行ない、金融、税制等あらゆる面において一段と手厚く、かつ、きめこまかい施策実施してきたところ下ありますが、今度とも一そうの努力を続けたいと考えております。  以上、お答えをいたします。(拍手)   〔国務大臣田中角榮登壇
  28. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まず第一に、国際経済調整対策を行なったわけでございますが、非常に影響の大きかった中小企業、特に下請に対してどう配慮したかということでございます。  御承知のとおり、昨年夏の輸入課徴金の問題、年末の円切り上げ等におきましては、中小零細企業に一番しわの寄ることをおそれたわけでございまして、通商産業省は、特に下請企業にこのしわが寄らないように十分な配慮をいたしたわけでございます。輸出、輸入業者につきましては、中小企業との間に国際経済調整問題が直接及ばないように通達を出したり、追跡調査を行なったり、また、金融機関の貸付等においても十分な配慮をいたしてまいりました。  第二は、その後中小企業の倒産等が低水準にあるが、これは倒産が先に延びておるだけではないかということでございます。  数字から申し上げますと、四十六年度は、負債一千万円以上の倒産件教は八千六百件でございます。前年度比較一五・四%の減であります。今年度の四月一ぱいの数字を前年同月に比べますと、五百九十九件でございまして、二〇・八%減でございますから、数字の上では考えたよりも倒産が少ないということは事実でございます。しかしこれは、内容がよくて倒産がないのではなく、超金融緩和しておるので、どうも自転車操業が続いておるのじゃないかという御指摘、こういう問題については、通産省も、出先通産局を督励しまして、企業別に実態調査を行なっておりますし、そういうことのないように各般の施策を適切に行なってまいろうということでございます。これは、金融緩和の状態であるために、整理段階に入らなければならないものの一部が営業を続けておるということが皆無ではないということは事実だろうと思います。しかし、あくまでもこれらの実態把握をいたしまして、倒産等できるだけ防いでまいりたい、こう考えます。  次は、中小企業公害問題でございますが、中小企業公害問題で一番問題になるのは資金の調達でございます。資金調達につきましては、前の国会法律をお願いいたしましたり、制度上資金拡充の方途を講じたり、また、制度新設したりいたしたわけでございまして、中小企業、零細企業といえども、公害防止施設の建設に対しては問題のないようにいたしたわけでございます。しかし、中小企業は、いずれにしましても、その体質上非常にむずかしい経営状態にありますので、将来とも、中小企業の公審防除対策については、積極的に助成、指導してまいる必要があると思います。  それから、中小企業事業転換。率直に申し上げますと、一部廃業等について、非常にこれはむずかしいことだという御指摘でございますが、それはそのとおりでございます。いままでは、中小零細企業といえども、ある時期においては転廃業が可能だったわけでございますが、今度の、去年のドル・ショック以後の中小企業というものは、戦後四分の一世紀以上相当高成長を続けてまいりました時点における転廃業というものと比較いたしますとき、これはいままでの考えよりも、もっと転廃業がむずかしいという状態でございます。これは将来の日本の産業のあり方、知識集約産業と一口で言いますけれども、知識集約産業の中でどのような方向が一体いいのかということになると、なかなか的確な答えが出ないわけでございます。将来的展望に立ちながら、政府助成をし、指導をし、政府みずからが、将来の日本のあるべき姿の中に中小零細企業をどら位置せしむるか、新しく転廃業がどう可能なのかというようなことを十分考えながら、中小企業と一体になって転廃業等を進める。そのための税制、金融上の処置等、十分な配慮が必要でございます。  それから、最後は、中小企業製品高級化及び多様化でございますが、これはもう日本の経済が拡大をし、貿易そのものが多様化しておるわけでありますので、高級化、多様化しなければ、過去のように高い水準で貿易を拡大していくことはできないわけでございます。  なお、アメリカに片寄っておる輸出等が、だんだんと世界各国に多様化をしなければならないという立場から考えても、輸出品の多様化、高級化というものに対しては、施策の上で助成、指導等を続け、制度上も、これらの目的が達成できるような制度拡充をはかってまいるべきだと考えます。(拍手)     —————————————
  29. 船田中

    議長船田中君) 石川次夫君。   〔石川次夫君登壇
  30. 石川次夫

    ○石川次夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、今回提出されました中小企業白書について質問をいたします。  由書によれば、昨年の中小企業経常は、あらゆる指標に不況円切り上げによる苦悩のほどがなまなましくあらわれております。昨年は、前年に比し、生産は一・五%しかふえません。前年の伸びの一二・七%から大きく後退をいたしております。昨年においても、六・一%の生産増をいたしました大企業に比べましても著しく低く、一方、在庫は一七・六%もふえておるわけであります。  輸出に占める割合におきましても、全体の五〇%といわれておりましたのは遠い昔でございまして、年々五%程度下がっており、現在は三五%を占めておるにすぎません。軽工業の分野におきましては、明らかに絶対額においても減少の傾向を示しております。  さらに、設備投資は、中小企業におきましては本年度実に一八・八%も減少することが予想をされておるわけであります。  この中にあってわずかな救いは、倒産が比較的少なかったことでありますけれども、これは政府施策によるというよりは、超金融緩和によるものでありまして、情勢が変化をすれば大量の倒産をもたらす要因をますます強く内包しておるといっても過言ではありません。しかし、今日までよくこの困難な条件下に耐え抜いてきた中小企業者の努力、バイタリティーというものには驚嘆に位するものがございます。  しかし、目下、日本経済の当面する最大の課題であり、特に中小企業の最大の関心事は、円の再切り上げがあるかどうかということであります。重ねて円の切り上げがあれば、いかなる施策をもっていたしましても、大企業はともかくといたしまして、輸出地場産業、また、下請企業は壊滅的な打撃をこうむることは火を見るよりも明らかであります。しかるに、すでに商社の間におきましては、二百六十円あるいは二百八十円というようなことで成約を始めておるところがあるということを伝え聞きますと、まことに慨嘆にたえないのであります。  円再切り上げ対策といたしましては、オーダリーマーケティングが確立をざれなければなりません。それより、基本的には、福祉行政に転換をはかりまして、民生向上、低賃金打破を実現をさせなければならないことはすでに定説でございます。しかし、同時に、外貨活用策を積極的に推進をしなければならないことも当然であります。  これらの対策につきましては、目下のところ、政府において全く支離滅裂でございまして、あたかも統制力を失った佐藤内閣の末期的症状を如実に示しておるものといわなければなりません。(拍手)  通産大臣は、さきに私の質問に答えまして、商工委員会において、第二外為会計を創設をして外貨活用を積極的に行なう、そしてそのための法案を早急に提出をすると言明をいたしました。  外貨活用のあり方は、金融政策との調整、手続問題などで、特に海外資源の備蓄、開発との関連で行なうということにいたしますと、非常な困難が伴う事情はよく理解できます。しかし、通産大臣が、円の再切り上げは絶対阻止をするという意思表示とあわせて積極的な方針を示そうといたしましたことは評価をいたしたいと思うのでありますけれども、その後一向大蔵省との話し合いは進捗を見ませんで、現在では、輸銀預託というような形に後退したかに見えておるわけであります。また、公定歩合引き下げも、国内的に影響するところが大きいことではございますけれども、この点についても、佐藤内閣施策がはなはだ不明確であります。さきの円切り上げ影響が徐々に出始めて、先行きの成約は減少しつつあるという事実はあるにいたしましても、種々の点で、まだまだ円切り上げについての楽観はできないのが現実であります。どうあっても円の両切り上げを阻止することが、佐藤内閣に課せられた内政上の最後の課題といってもよいのではないかと思います。佐藤総理、大蔵大臣、通産大臣に、それぞれこの具体策についての所信を伺いたいと思うのであります。  また、スミソニアン会議が終わって、日米経済戦争は一年間休戦だということが伝えられたにもかかわらず、突如としてアメリカ側はダンピング防止法の名目で輸入制限、関税引き上げの挙に出ようといたしておりますことは、ガットの精神をじゅうりんするものとして許すわけにはまいりません。そもそもアメリカにおきましては、国際綱領よりも国内法が優先をし、ダンピングの判定資料も秘密にするなどということは、全くの不信行為といわなければなりません。これによって陶器など、中小企業に関連があるものも大きく影響を受けることになるわけであります。  外務大臣は、世界の世論に反してベトナム北爆を支持するかのごとき卑屈な態度を捨てて、アメリカとのイコールパートナーをもって自任するものであるならば、犬の遠ぼえの形ではなくて、堂々とその根拠を明確にさせ、その態度の是正を求めなければならぬと思うのであります。また、アメリカは、大統領選挙に備えてなりふりかまわず景気浮揚、失業対策に狂奔し、異常な金利引き下げなど、ドルの強化策を怠って世界の通貨体制を動揺させている点、基軸通貨の上にあぐらをかいて、ドルは黒字国の責任で補えとするその態度につきましても、堂々と、強くその反省を求むるべきであります。この点、総理、外務両大臣に所信を伺いたいと存じます。(拍手)  次に、中小企業白書では、中小企業の二重構造を認めながら、そこに視点をとどめることなしに、人間尊重知識集約化の、将来のあるべき姿を示すことに重点が置かれております。確かにこれは一つの見識でございましょう。しかし、ここには明らかに飛躍があります。中小企業の事業数は九九・三%、従業員数は実に七七・二%で、二千七百万人を占めておる。納税額も、法人税中三六・六%にも及んでいるにもかかわらず、予算の面で見るとわずかに六百九十七億円、全一般会計予算の〇・六%にすぎません。たとえば、就業者数七百万人足らずの農林予算が、食管会計を含むとはいいながら、実に一兆三千億円にもなるのに比べてみましてもあまりにも少なくて、その冷遇ぶりには、全国の中小企業ともども、大きな怒りを禁ずることができないのであります。(拍手)  今年度のこの予算は、全予算の二一・八%伸びておりますけれども、中小企業は二〇・四%とこれを下回っておる。財投も、全体として三二・六%伸びておりますけれども、わずかに二二・二%増にすぎないのであります。このような施策のもとでは、どのように将来のビジョンが示されても、しょせんバラ色の幻想にすぎないと思わざるを得ないのであります。  よく政府は、二重構造が解消された一つの証左として、給与の格差の縮小をあげてきておりましたけれども、中小企業白書の統計は、ここ十年近く六二ないし六三%に停滞をいたしております。さらに、付加価値生産性も大企業に比して五〇%足らずとされておりまして、これまた数年来改善のあとは見えておりません。そして、付加価値生産性が低くても、給与だけは上げなければならないという中小企業の苦境が数字の上にもにじみ出ておるわけであります。このことに重点を置いて具体的な解消をはかる態度が見られないことは、まことに残念であります。  大企業中心の政治、経済の支配下における底辺としての中小企業として見ることよりも、中小企業の持つバイタリティー、適応能力というものを高く評価する見方から将来の展望を示そうとすることは、本質的、本来的な問題から目をそらすことになるわけであります。われわれは、この白書の示す華麗とも言える変身に幻惑をされるわけにはまいりません。  基本的な問題としては、やはり中小企業問題は、大企業に密着するうらみのある通産省とは別個に、各省にまたがる問題でもあるし、三千万人近くもの就業者数を擁しておるということでもあるし、いかに政府が二重行政になるから必要がないと強調しようとも、われわれといたしましては、中小企業省を設けなければ中小企業の抜本策は成り立ち得ないことを繰り返し主張しないわけにはまいりません。  また、豊富な人材、技術力にものをいわせて、あらゆるこまかい製品にまで進出をしようとする大企業から中小企業を守るためには、どうしても生産分野の画定をすべきであるというのがわが党の年来の主張であります。このことは、経済活動の自由の原則にもとるとの見解もありますけれども、中小企業生産物の六割は、日常生活に関係の深い消費財であることを考えなければなりませんし、また、大企業による管理価格、寡占価格による物価上昇から国民生活を守るためにも断行すべきであると考えておりますけれども、通産大臣の所信を伺いたいと思うのであります。  また、円切り上げ不況の中で大企業のしわ寄せを受けて苦吟をしておる下請企業は製造業の半数をこえておりますけれども、その実態は、一カ月以下の受注残しか持っていない企業がその五割以上を占めておる。また、単価の低下の幅が一〇%以上というのが企業の四割以上も占めておるわけであります。これでは賃上げどころではないのです。昨年下請企業振興法は制定されましたものの、その予算はまことに少なくて、予期されたように運用もきわめて不活発な現状であります。これらに対し、きめこまかく下請企業の多い地方ごとに中小企業対策のための機関を設けて、大企業に対しては、単価や支払い方法についてその是正を求める一方、中小企業に対して、複雑多岐にわたっていて実に理解の困難な中小企業機関や、あるいはまた金融の利用について周知徹底をはかるなどのことをきめこまかく行なうべきであります。このことなくしては、中小企業はいつまでも不均衡、不平等な底辺にあえがなければならないと思いますけれども、この点をどう認識をされ、また将来これらをどう考えていくかについて、通産大臣の所信を伺いたいと思うのであります。  この苦しい下請や中小企業に働く労働者も、ひとしく人間らしい生活を求めております。この要望にこたえることなくして、将来の企業の発展は望めません。  週休二日制を実施しておる中小企業はわずか五%にすぎないことを白書は示しておりますけれども、世界から日本に求められておりますところのオーダリーマーケティングの重要な一環として、また白書のいう人間尊重の具体策として、当然週休二日制は実施をされなければならぬと思うのであります。しかし、現実には生産が下がり、売り上げが低下をするということで、実施はきわめて困難でありましょう。この実現を目ざして、何らかの展望があるのかどうか、白書では触れておりませんけれども、いかなる対案を用意されているか、その条件をいかにしてつくるか等について、通産大臣並びに労働大臣の所信を伺いたいと思うのであります。  今後の白書の結語ともいうべき点は、端的にいって事業転換をはかれという点に重点が置かれており、その方向知識集約化であります。そして住宅産業、情報産業公害防止機器、省力産業などへの転身を求めておるのであります。しかし、これらはいずれも高度の技術を必要とするものであります。高等教育を受けた技術者のほとんどが大企業に集中をし、その転換をはかるための技術を持ち合わせておらないというのが実態であります。  たとえば、知識集約産業の代表としてのコンピュータリゼーションについていいますと、大企業では、一企業でもってオンラインシステム実現のためには実に教十億円も費やしておるということもまれではないのであります。しかるに、この近代化の波におくれをとらない体制を中小企業に指導する予算としては、実にわずか三千三百万円しか計上されておりません。これでは知識集約化どころか、時代の進歩についてはいけないのではありませんか。一体これで知識集約化がはかれるとお考えになっておるのかどうか、通産大臣にお伺いをしたいと思うのであります。  最後に、一つの提案をしたいと思うのです。  それは、今度の白書が示しておりますテーマの中で、人間尊重知識集約化のすべてにわたって具体案を示すということはきわめて困難でありましょうけれども、人間尊重の中で、たとえば具体的にいま申し上げた週休二日制の実現、たとえば知識集約化の中でコンピュータリゼーションを中小企業に対してどの程度実現をさせるかというような具体的な目標を立てて、そのための中期計画を立ててみてはどうでしょうか。それなら白書は単なるスローガンではないということの裏打ちを示すことになるのではないでしょうか。それすらできないということになれば、やはり白書は単なる作文であるということにならないでしょうか、通産大臣の所見を伺いたいと思うのであります。  その他、中小企業白書について言うべき点は多々ありますけれども、時間の制約で触れられないことがまことに残念であります。  総じていえば、不況対策構造対策の調整をどうはかるかの具体性に欠けております。また、転換をはかるにしても、どこへどうしてというような疑問に対して答えていない点は致命的な欠陥といえるでありましょう。そして、中小企業の持つバイタリティーと適応性をたたえることで将来の方向づけを示すということだけでは、地に足のつかない幻想になり終わる危険性が多分にあるわけでございます。  問題点の整理が行き届き、方向性を示したという点については評価をするのにやぶさかではありませんけれども、冷厳な中小企業実態をもっと鋭く、もっとあたたかく見詰めて、具体的な立案を急がれるように特に要望をいたしまして私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  31. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) 石川君にお答えをいたします。  まず、石川君から円の再切り上げについてのお尋ねがありましたが、石川君も御承知のように、レート調整の効果は相当の期間を経て国際収支面に初めてあらわれるものであります。また、最近の世界の為替市場は、わが国をはじめ平静に推移しつつあり、円の再切り上げというようなことは考えられません。あり得ないことだと思います。  また、景気の回復が国際収支の均衡回復を早める原因となる点も重要であります。  この観点から、政府は、これまで積極的な景気浮揚策を実施してきたのでありますが、これが次第に功を奏し、景気は君実に回復過程をたどり、国際収支も次第に均衡に向かうことが期待されます。  なお、政府といたしましては、今後とも財政金融面から適時適切な景気施策を講じてまいりたいと考えております。  次に、米国のダンピング規則の改正につきましては、わが国はすでに昨年秋、文書をもって、国際ダンーピング防止コードに合致する方向改正されることが望ましい旨申し送っており、今後とも必要に応じ、言うべきことは逐次米国に申し述べていく所存であります。  また、ドル防衛の問題につきましては、かねてから申し上げているとおり、わが国は世界経済の安定的発展のため、他の主要国とも協調して、応分の協力を行なうとの方針のもとに、昨年十二月の多角的通貨調整にも参画した次第であります。しかし、ドル防衛の問題は、御指摘のとおり、第一義的には米国の国内措置を十分に活用することによって達成がはかられることが望ましく、このことは、わが国として種々の機会に米側に申し伝えているところであります。  次に、中小企業者設置、その他の問題等についてのお尋ねがありましたが、これは通産大臣からお答えいたします。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇
  32. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜君) 外貨の活用について御質問でございましたが、為替銀行への預託とかあるいは中長期債への運用とか、すでに外貨対策実施中でございます。  さらに、経済協力とかあるいは原料の備蓄輸入というようなものに関する活用策につきましては、輸銀法その他の法令改正あるいは予算措置の必要性というようなものを中心に、ただいま関係省で検討中でございます。(拍手)   〔国務大臣田中角榮登壇
  33. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 長期的に世界貿易を拡大均衡の方向で維持をしていくためには、各国ともオーダリーマーケティングの確立、すなわち輸出秩序の確立が必要であることは御指摘のとおりでございます。わが国でも種々方策を講じておりますことを御承知いただきたいと思います。  第二は、円の再切り上げを阻止するということでございますが、通商産業大臣の立場から見ますと、昨年のドル・ショック、円平価の調整等々、国際経済上の変動にようやく耐えてきた日本の経済であり、特に中小企業、零細企業の面から見ますと、円の再切り上げに耐えられるような体質にないということでございまして、こんなことが起こらないように万全な対策をとっておるわけでございます。  第三には、大蔵省との間にいま検討いたしております第二外為会計等の問題でございますが、これは新たに新会計をつくることを目的とするものではなく、外貨が十分に活用せられること、外貨の流動性が確保されるということが望ましいのでございまして、具体的な政策につきましては、この国会法律案審議をいただくことを目的にしまして両者でいま調整をいたしております。近く結論が出ると考えておるのでございます。  第四点、アメリカにおけるアンチダンピングの問題とか関税引き上げの問題等でございますが、御指摘のとおり保護貿易主義が台頭しておることは、はなはだ遺憾でございます。そういう意味で、日米間では専門家会議を設置いたしまして、これらの問題については具体的に調整を行なっておるわけでございますが、最終的には、日本の立場を主張するためにガットの場等で論議をしなければならないこともあるかと考えておるわけでございます。   第五点、中小企業省の設置でございますが、本件につきましては、もう長いこと懸案になっております。しかし、結論的に見ますと、戦後四分の一世紀以上にわたって議論されてきた中小企業が、結論的には、一般産業行政と分離をして中小企業省をつくっても、必ずしも所期の目的を達することはできないという結論になっておるわけでございます。私は、一般産業行政と同一のワクの中で通商産業省が所管をするいまの制度を十分運用することによって足れるものだと考えておるのでございます。  それから第六、中小企業と大企業との生産分野の確立についての御意見でございますが、これも研究をしなければならない重要なテーマでございます。現に国際機関において国際分業の必要性が論じられておるわけでございますし、国際機関においては、国際分業の推進ということが南北問題解決の唯一の道でさえあると極言をされておる状態から考えてみても、大企業と中小零細企業との間に、できるならば生産分野の調整が行なわれることが望ましいことは、言までもないのでありますが、議論と実際の間には必ずしも一致をしない面がございます。しかし、これらの問題については、困難な問題であっても、十分検討を進めていくべきだと思います。  第七は、知識集約化の過程における大企業中小企業との技術格差の問題でございますが、これは御指摘のとおり、技術格差を解消するために諸般の施策を行なうべきでございます。  第八は、中期経済計画の中に中小企業の位置づけ、長期的プログラムがないということでございますが、御指摘のとおりでございます。新社会経済発展計画をつくるときには、少なくとも六十年展望の日本の経済の中で、中小企業、零細企業がどのように位置すべきであるかという望ましい姿か計算をされ、国民の前に明らかにされることが望ましいことである。なかなかめんどうな問題ではございますが、しかし、通商産業省は、所管省として、これらの理想的な青写真をかくため全力を傾けてまいるつもりでございます。最後に、週休二日制等の問題でございますが、これはもう生産から生活へと移行しなければならないといわれておる現在でございますので、週休一日制、できれば三日制という理想的な姿に向かって進むべきであることは、言うまでもないのでございます。しかし、現実的には、中小零細企業には、週休二日制をなさなければならないと同時に、その前段に行なわなければならない幾多の問題があるわけでございます。そういう意味で、理想は高々と掲げながら、あくまでも現実を一歩一歩前進をし、その過程において解決をすべき週休二日制だと思います。以上。(拍手)   〔国務大臣福田赳夫君登壇
  34. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私に対する質問は、アメリカの輸入制限の動きに対しての問題であります。確かに石川さん御指摘のように、アメリカの一部には、輸入制限、保護貿易主義の働きがあります。これは特にアメリカの国際収支が非常に悪化しておる、昨年のごときは三百億ドルにも及ぶ国際収支の赤を出しておる、こういう際でありますので、私どもといたしましては、非常にこの動きに対しまして警戒をいたしておるところであります。わが国といたしましては、アメリカのこうした動きが、わが国中小企業をはじめ、わが国産業に非常な影響がある、これはもとよりでございまするけれども、もっと大きな立場、つまり、アメリカのような巨大な経済が保護貿易主義に移るというようなことになれば、これは必然的に世界かブロック経済化、あるいは保護・孤立経済化体制に移行する。そういうことになりますれば、これは世界の経済のみじゃありません、政治上の悲劇に通ずる。そういうようなことを考えまするときに、この巨大なアメリカ経済というものが、保護貿易主義に移行するというようなことは、断じてこれはなさしめてならないところである、かように考えて、機会あるごとに、アメリカに対しましてはわが国のそうした意見を申し述べておるのであります。  また、具体的な反ダンピング法制、こういう問題につきましても、先ほど総理大臣から申し上げましたとおり、具体的にわが国といたしましては適切な行動をとっておる、こういうことでございます。  なお、石川さんから、わが国の経済政策が対米追随じゃないか、そういうような御批判もありました。特に通貨調整の問題をあげられましたが、この通貨調整、これは世界経済を何とかひとつ安定させようという努力の一つのあらわれである。わが国の立場、これはやはりアメリカ経済というものが世界経済におけるところの非常に重要な地位、そういうことを考えまするときに、このアメリカ経済を崩壊させるということになったら、これはまた、わが国ばかりではない、世界全体の問題になってきます。そういうようなことから通貨調整に協力をいたした。私は、これは妥当な措置であったと、こういうふうに思います。  しかし、御指摘のように、幾ら通貨調整、つまり、ドルから見ますれば対外措置をとってみましても、アメリカの国内措置が適正に動かなければ、これは功を奏しません。そういうことを考えまするときに、何といっても世界経済で非常に大事なことは、アメリカがその国内措置において適正な方向を着実に打ち出す、こういうことじゃなかろうか、そういうふうに思うのであります。  そういうことで、もうこれは石川さんから御意見を述べられるまでもございません、われわれといたしましては、アメリカに対しましては、さようなアメリカの自主的な体制の推進ということについて、機会あるごとに意見を申し述べておる、こういうのが実情でございます。   〔国務大臣塚原俊郎君登壇
  35. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 御質問の週休二日制は、社会問題であり、政治問題になりつつあります。しかし、日本の現実は、大企業ではかなり進んでおりまするが、中小企業では、石川議員御指摘のように、きわめてりょうりょうたるものである。  試みに、千人以上の企業、これが、昨年の秋、いわゆるドル・ショック以来不況に入ったときの数字でありまするけれども、それまで二六・一%であったものが、昨年秋は三七・八%、これがいわゆる千人以上の企業であります。労働者の数にいたしますると、三四・六%が四四・六%と上昇いたしております。一方、三十人から九十九人までの企業をとってみますると、企業の数で二・四%が三・三%、それから労働者の数で二・四%が四・二%、こういう非常な格差がある。これは実際の数字にあらわれておるわけであります。  しかし、週休二日、通産大臣は三日ということも申しましたが、アメリカではそれ以上のことも考えておるようでありまするが、これがきわめて望ましい姿であり、好ましい姿であり、先進諸国もほとんどこれをやっておりまするから、わが国としてもそういう方向にいかなければならないと、私は常に強く考えておる一人であります。  この問題を御審議願っておる労働基準法研究会は、一九七〇年代の後半において完全なものができるであろうという考え方を示しておりまするけれども、それではおそい。完全な週休二日、いま私が申し上げた数字は、毎週二日、土曜日、日曜日というものや、それから二週間に一ぺんあるいは一月に一ぺんというような数まで含まれているのが現状でございまして、また、こういう現状に対して、一方、中小企業側からは、月四日の日曜のらち一日だけでも休める日がほしいという声があることも、これはほんとうの姿であります。そういう中にあってこれを進めていかなければならないのですから、一方、一九七〇年代の後半においては、これはおそい、少なくとも半ばにおいてはこの問題の解決をはかるためには、さてどうしたらよいかという問題になってくるわけであります。そこで、御承知のように、これは法律をもって規制すべき問題ではございません。そこでまず、金融機関と一番関連のある企業金融先行型と申しまするか、この一月、銀行協会を通しまして御調査を願った中間報告が参っておりまするが、これはきわめて前向きの報告であります。と同時に、経済審議会というものがありまするが、このマンパワー委員会、人的資源開発委員会とでも申しまするか、これがついこの間やはり中間報告を私たちによこしてくださいました。これを見ますると、やはり前向きの姿勢でありまするが、受け入れ側のレジャー、第三次産業のあり方について、かなり鋭いメスも加えております。今度のゴールデンウイーク等を見ましても、われわれは考えさせられる面がたくさんあるわけであります。しかし、いずれにいたしましても、中小企業は非常におくれている、また苦しい事情にある、こういうことでありまするので、今後、中小企業につきましては、経営の近代化企業体質強化をはかる中で、実情に即したやり方でこれは推進していくような努力をしていかなければならないと思う。  では、労働省は一体何をやっているか。これは実態の調査、把握、それから労使に対する資料の提供、コンセンサスの醸成。先ほども申しましたように、法律でこれを縛るものではありません。もちろん、金融機関の場合、銀行法の改正は必要でありまするが、この問題は性格上どうしても立法措置でやるべきではないということになりますれば、そういうようなことによって行政指導を徹底的にやっていくというのが私の考え方であります。(拍手)     —————————————
  36. 船田中

    議長船田中君) 坂井弘一君。   〔坂井弘一君登壇
  37. 坂井弘一

    ○坂井弘一君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま御説明のありました昭和四十六年度中小企業動向に関する年次報告並びに昭和四十七年度において政府が講じようとする中小企業施策について、総理並びに関係大臣の所信をお伺いしたいと思います。最初にまず、中小企業の方々の苦境を訴える声の二、三を紹介して、以下順次質問に入ります。  その一つは、従業員が三十人に満たない機械関係の下請企業の例であります。これまで企業高度化近代化を目ざして設備等も充実させてきたところに、昨年八月のドル・ショックに見舞われ、それ以来親企業の出産手控えによる受注量の大幅減少となり、その上単価も大幅に切り下げられてしまったが、従業員をそのまま置いておくために、出血を覚悟で操業せざるを得ないというものであります。しかし、この状態では長く続かないので、勢い他に仕事を求めたが、どこも同じことでございまして、受注を得ることができない。この辺で見切りをつけて、将来性のある他の業種事業転換したいのだが、すでに転換するだけの余カを使い果たしてしまっております。かりに資金の調達ができたとしても、先行きが不安で容易に踏み切れないというものであります。次は、密集した住宅地の中にある金属関係の小さな町工場の例であります。この場合は、工場が騒音を出すことと、メッキ関係も扱っているところから、公害発生ということで操業を続けるわけにはいかない状態に追いやられているというのであります。やむなく郊外に適地を待て移転したいか、取引先から遠く離れてしまうこと、現在いる仕業員にやめられてしまうこと、移転先で新たに労働力を確保することは容易でないことなどから、適地が見つからず因っているというものであります。さらに、これはある織布業者でありますが、この場合、織機が十台ばかりの零細な企業であります。昨年の対米繊維製品輸出自主規制のあおりで仕事は激減し、さらに、ドル・ショック、繊維の政府間協定締結などの影響で、操業を続けることは不可能な状態となってしまいました。政府の救済措置として遊休織機の買い上げが行なわれることになりましたが、この工場の場合は、そのほとんどが無登録織機であるために買い上げの対象とはならず、全くとほうにくれているということであります。  以上申し述べました事例は、多くの困っている中小企業のほんの一例にしかすぎません。昨年の景気停滞時における国際通貨調整円切り上げ等の打ち続く経済変動によって、多くの中小企業はその存立基盤を根底からゆすぶられているのであります。加えて、中小企業を取り巻く経済社会の激しい変化と多様化は、問題をさらに複雑化し、中小企業自身の変化多様性を促すこととなって、中小企業を従来には見られなかった困惑と先行きの不安におとしいれているのであります。  白書では、現在中小企業が直面した新しい課題を、国際化、環境尊重、人間尊重及び知識集約化の四つの問題に要約して、事業転換をその新しい適応策として志向しておりますが、中小企業がこうしたきびしい環境を乗り越えて、今後のわが国経済社会、さらには国際社会の進展に役立っていくためにはどうあらねばならないか、従来の中小企業施策も大きく変えていかなければならないと思うのでありますが、政府中小企業の位置づけと今後の施策方向について、総理並びに通産大臣の所信をお伺いしたいのであります。  わが党は、かねて中小企業政策のあり方を基本的に改める必要があること、従来の施策の見面しの必要性を指摘し、そのつど総理から前向きの答弁を得てまいりました。しかし、残念なことに、それは実現されないままに今日の事態を招くに至ったのであります。冒頭にあげた事例でもおわかりと思いますが、白書分析した長期的な環境変化と現実の中小企業適応力との間には、大きなギャップが存在しております。ここで中小企業施策の総点検をする必要があると、再度主張するものでありますが、総理、通産大臣の所信をあわせてお伺いしたいのであります。  第二の質問は、事業転換についてであります。  中小企業産業構造変化適応していくことは、きわめて困難であります。資金力、信用力、労働力、人材、生産性等の点で不利を背負った中小企業が、小回りと持ち前のバイタリティーのみによって創意くふうを発揮し、環境への適応事業転換をなし得るかどうか、はなはだ疑問に思わざるを得ません。したがって、このような中小企業者の不利を補正し、力をつけていくことこそ、中小企業施策の本質であろうと思考するものであります。現在、政府の転換施策としては、特恵、ドル・ショック対策としての施策があるのみで、時代の要求を吸収し得る転換施策は何一つありません。中小企業者の中には事業転換を希望するものは少なくない現状であります。しかし、それらの多くは転換する方向をみずから把握することもできません。したがって、やむを得ず現状に甘んじていなければならないのが実情であります。中小企業基本法第十五条には「国は、中小企業者が需給構造等の変化に即応して行なう事業の転換を円滑にするため必要な施策を講ずるものとする。」また、「中小企業の従事者の就職を容易にすることができるように必要な考慮を払うものとする。」とあります。いまこそ、この法の精神を施策として具体化し、政府の指導、育成を強化すべきときであると思いますが、事業転換に対する政府の基本的な方針と具体的な対策を明確にしていただきたいのであります。  第三の問題は、転換先についてであります。  白書は、知識集約度の商い分野は必ずしも大企業に適したものばかりではなく、すでに先端産業の分野にも新型中小企業の胎動が見られるとして、一九七〇年代の中小企業の有望分野として十一業種をあげております。これらの中には、ベンチャービジネスと呼ばれる新しい業種が多くあります。しかしながら、これら新型産業の問題点は、資金調達力にあるとされております。ブレーンカンパニーという特殊性ゆえ、物的担保を欠くからであります。したがって、ベンチャービジネスは、必要資金の融資を受けることが困難視されております。そこで、これらベンチャービジネスの育成発展を促す立場から、信用補完制度拡充をはかる必要があります。現在、信用補完制度においては、たとえばコンピューターによる情報処理産業、プログラム開発を専業とするソフトウェア会社等の新型産業は、保証の対象とされておりません。したがって、ベンチャービジネス関連業極について、保証の対象を再検討し、その拡充を要求するものであります。大蔵大臣、通産大臣の所信を承りたいと思います。  第四の質問は、多様化時代適応策としての中小企業者の海外進出についてであります。  中小企業者の海外進出は最近急速に伸びており、海外投資件数の三〇%を占めるにまでなっております。海外投資を含む多角的な海外事業活動の展開は、経済の国際化の立場から、また発展途上国の期待にこたえる意味からも好ましいことであります。しかし、海外進出の中小企業者を見てみますと、業界の大手あるいは中堅企業であり、小規模零細企業はほとんどありません。わが国の資本力と技術力を輸出し、発展途上国の安い労働力で生産された製品の逆輸入は、新たな国内問題を引き起こすばかりでなく、無秩序な進出が拡大すれば、またまた新たなエコノミックアニマルの批判を受けるであろうことを憂慮するものであります。したがって、中小企業の海外進出は、あくまでも発展途上国の発展のための開発協力として、平和共存、平等互恵の立場を貫くべきでありますが、今後、複雑な問題を内包した中小企業の海外進出に対する基本的考えを、総理、通産大臣にお伺いいたします。  第五の質問は、不況、倒産対策であります。  長期にわたる不況は、中小企業者に法大な影響を与え、受注の減少、収益の悪化、借り入れ金の増加という中小企業の窮状は、ますます経常を硬質化し、時代適応能力を失わせていくだけであります。現在、倒産件数は、横ばい状態にありますが、今後それらのひずみが必ず表面化し、倒産件数の増加となってあらわれてくることをおそれるものであります。政府は、どのような見通しに立ち、どのような措置を講じていくつもりか、明確にしていただきたい。  特に、下請中小企業にあっては、初めに申し述べたとおり、不況影響は悲劇的な様相さえ呈しております。このような事態に対処するために、一昨年下請中小企業振興法が制定されたわけでありますが、その運用が遅々として進んでおらない現状を政府はどのように認識しているのか。下請企業には、どのように対処していかれるのか、あらためてその見解と対策をただしておきたいのであります。  第六の質問は、中小企業公害問題であります。  環境保全の思想は、全国的に徹底し、その機運は大いに高まってまいりました。わが国公害問題の解決に際して、中小企業の果たす役割りもまた大なりと考えねばなりません。その解決策の一つとして、現在公害のため移転せざるを得ないほど緊迫している中小企業は、都心部で二六%もあります。しかし、過去五年以内にこの移転の経験のある企業実態調査によりますと、排水路とか道路交通等の社会施設が不備であったとする企業が五〇%以上を占めております。したがって、中小企業公害問題を解決するための新しい工場配置、基盤整備は、緊要な課題としてその解決が迫られております。これに対し、政府の積極的かつ具体的な援助が必要であると考えますが、総理並びに通産大臣の所信をお伺いしたい。  最後に、週休二日制についてであります。  白書では、人間尊重国民福祉向上の立場から、週休二日制をかなり評価しているようでありますが、当然週休二日制はできるだけ早期に実現されるべきだと考えます。しかしながら、白書で見る現状では、中小企業者の六〇%が、その実施の見通しについて、見通しが立たないと答えております。つまるところ、中小企業体質強化がすべての面から要求されますが、政府は、週休二日制を志向する上から、どのような対策を講じられるのか。  以上七点にわたって質問いたしましたが、一般的抽象論ではなく、岐路に立った深刻な中小企業のこの現実に対処する政府の責任ある、かつ具体的な答弁を要求いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  38. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) 坂井君にお答えいたします。  まず、坂井君も御指摘のとおり、わが国中小企業をめぐる内外環境の変化はきわめて急激であります。昨年のいわゆるエクソン・ショックから多国間平価調整に至る一連国際経済上の変動は、これを端的に示したものであります。  中小企業は、今後ともその小回りあるいはバイタリティーといった特質を生かして、過去にも増した力強い歩みを続けることが期待されるのであります。ただそのためには、このような内外環境の激変に対し、適切に、かつ弾力的に対処していくことがぜひとも必要であります。また、このため、政府中小企業政策の果たすべき役割りも一そう重要となっております。今後、国民需要高級化、多様化、そしてその生産のシステム的展開などの中で、中小企業の進むべき道は大きく開けておりますが、政府といたしましても、事業の転換や海外進出の円滑化など、従来の施策と発想の異なる弾力的政策体系をも用意して、この変動期に対処してまいりたいと考えております。  次に、事業の転換は、従来から企業経済環境変化に機敏に適応するため、それぞれ積極的に行なってきたところであります。特に中小企業にとっては、その特質である機動性の活用をはかる上で、むしろ積極的にその経営政策の中に取り入れられていくべきものと考えます。政府といたしましては、このような考えのもとに、中小企業の事業の転換の円滑化について、かねて特段の配慮をしてきたところでありますが、今後ともその施策の充実につとめる考えでございます。  最後に、中小企業の海外進出についてのお尋ねがありました。わが国経済国際化に伴い、わが国中小企業も、世界経済、特に発展途上国との経済交流を中心として、新たな国際的展開を必要としております。たとえば、発展途上国にとっては、経済規模や産業の発展段階などから見て、わが国中小企業の持つノーハウ、マネージメント等についての優位性は、きわめて魅力的なものとなっております。ただ、中小企業の海外進出につきましては、資金金、情報面、人材面などの困難等、慎重に検討すべき問題が多いので、政府といたしましては、中小企業政策審議会等の場を通じ、関係者の意見も十分に聞いて、円滑な企業進出のための施策を講じてまいりたいと考えております。  なお、公害問題について私の意見をただされましたが、この点については、通産大臣からお答えをいたします。(拍手)   〔国務大臣田中角榮登壇
  39. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 将来の中小企業の位置づけをなさなければならないという御発言でございましたが、現に新しい社会経済発展計画を再検討いたしておるわけでございます。こういう時期にあたりまして、新しい長期的経済計画の中で、中小企業、零細企業をどう位置づけなければならないということの青写真をかいて国民の前に提供することが望ましいことであるということは、先ほどの御質問に対しても、そのとおりでありますということをお答えしたわけでございますが、しかし、中小企業というのは、世界に例のない特殊なものでございます。小回りがきき、しかも日本的なメリットの多いものでございます。それだけに、一つ一つの企業は小さいものでございますが、しかも、日本の経済の中に占める中小零細小業のウエートというものがいかに大きいかということは、私が申し上げるまでもないのでありまして、全く日本の経済全体が転換をするというぐらいな考え方で中小零細企業の将来というものと取り組まなければならない、こういうことでございますので、新しい長期計画というものを策定中である現在、中小企業、零細企業というものを新しい視野と立場と角度から見詰め直す好機であるいうことだけは、そのとおりだと思います。  それから、中小企業事業転換ということでありますが、事業転換は、これはいままでは比較的に簡単に行なわれたわけでございますが、いまの段階における日本の中小零細企業事業転換というのは、これは初めて困難な状態にぶつかった言っていいと思います。これは、縫製工場などを産炭地に持ってまいりまして、新しい工場ができました。そして人も雇用され稼働し始めたのであります。しかし同時に、今度のニクソン・ショックその他によって、新しく転換をし、新しく立地をした工場そのものが全部操業をやめなければたらないというような問題さえ起こっておるのでございまして、これからの中小企業事業転換というものは、ただその角度から見て、自然的に転換を求めるということだけでは効果をあげることはできません。政府が相当明確な方向を示し、政策的誘導を行なうということをあわせて行なわなければ、この企業の転換等はスムーズに合理的に行なうことはできない、新しい問題として取り組まなければならない問題だと思います。  第三は、新型産業、すなわちベンチャービジネスというような問題、これは情報産業とか教育関連産業というような新しい分野でございますが、こういうものに対して資金の確保、信用保険の対象にできないかということでございます。これは、いまの制度では製造とか物品販売業等が対象になっておりまして、いま述べられたような新しい産業は対象になっておりません。おりませんが、これは時代の動きに沿うように制度改正しなければならないという面から考えますと、当然これらの新しい産業も信用保険の対象にすべきであろう、こう思って、その方向で検討を進めてまいります。  中小企業の海外進出につきましては、総理大臣からお答えがございましたので、省略をいたします。  第五は、下請産業振興でございますが、長いこと下請産業というものに対して検討が進められてまいりましたが、結局下請に対しては、支払遅延防止法という法律ができましてからもうすでに二十年の歳月を経るわけでございますが、どうもこのほか具体的な問題としては取り上げられておらなかったわけでございます。しかし、今度下請企業振興協会というものを都道府県が設立をいたします。そして、国はこれに対して二分の一補助を行なうわけであります。そして、事業契約のあっぜんとかいろいろな苦情の処理を行なうということで、下請企業振興に対しては一つの制度が発足をしたわけでございます。  一番問題なのは、国際経済の波動が非常に大きい、こういうときに、この国際経済の波動というものをすべて中小企業や下請企業にしわ寄せをしてはならない。非常にめんどうな問題ではありますが、制度上確立をするということよりも、実際的な行政の運用におきまして、行政指導においてこれらの問題は処理をしてまいらなければならないわけであります。これはめんどうではありますが、中小企業、下請企業振興にはそういう解決方法しかないわけでありますので、精力的に取り組んでまいりたいと思います。  中小企業公害防止の問題については、資金、技術、税制上の問題等があるわけでございますが、先ほどお答えを申し上げたことで御了承いただきたいと存じます。(拍子)   〔国務大臣水田三喜男君登壇
  40. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 御指摘のように、わが国産業構造は今後知識集約的な方向に進んでいくことが必要であり、政府としてこれを助長していくことは望ましいことと考えます。したがいまして、ただいま通産大臣が言われましたように、現在行なわれている信用保険制度の保険対象業種、この中にいわゆるベンチャービジネスというようなものをこれから加えていくということも、十分これは考慮すべき問題であると私も考えます。その点は十分研究したいと思います。(拍手)     —————————————
  41. 船田中

    議長船田中君) 吉田泰造君。   〔吉田泰造君登壇
  42. 吉田泰造

    ○吉田泰造君 私は、民社党を代表し、昭和四十六年度中小企業動向に関する年次報告に対し、若干の質問を行ない、政府の見解をただしたいと思います。  わが国中小企業を取り巻く情勢は、この一年間まことにきびしいものがありました。発展途上国に対する特恵関税制度実施、繊維を中心にしたアメリカの対日輸入制限、戦後初めて経験した円の大幅切り上げ、さらには、昭和四十年不況を上回る国内経済の停滞等がそれであります。この間にあって、中小企業経営者とその従業員は、非常に深刻な打撃をこうむりつつも、みずからの置かれた立場において力一ぱい努力されている現状に対し、まずもって敬意を表したいのであります。  それにつけても憤りを感じますことは、政府のこれら諸問題に対する先見性と指導性の欠如についてであります。政府のかけ声のもと、これまで中小企業者が皆々と努力し築いてきた輸出の増大は、一夜のもとに破綻を来たし、手痛い打撃をこうむったのであります。にもかかわらず、政府は、みずからの経済政策の失敗を反省しその責任を痛感することなく、円の切り上げを、国民の努力によって日本の経済力が充実したがゆえにその実力にふさわしい行動をとったものであると、逆に居直るがごとき態度をとっているのであります。これは円の切り上げ不況に直面し、現在苦しんでいる中小企業者にとって、言語道断の責任転嫁であると断ぜざるを得ません。  そこで、政府にお尋ねしたいのでありますが、円の再切り上げは、より一そう日本の経済力が充実をし、その実力にふさわしい行動をとるものとして、肯定されようとしているのでありましょうか。中小企業者をはじめ、国民はひとしく政府の言動に対し疑惑を持っているのであります。政府は円の再切り上げはないと言明しているのでありますが、その確たる見通しと対策は全くなく、またしても、一夜にして切り上げが行なわれるのではないかということであります。政府は、この際、国民の不安をはっきりと解消し、また、そのための具体的政策を明らかにするのが現下最大の責務であると思うのでありますが、総理はじめ大蔵、通産各大臣の明確なる御答弁をいただきたいのであります。(拍手)  次に、現在、中小企業者が最も関心を持っております景気動向と、それに関連する諸問題について質問を行ないたいと思います。  政府は、最近の経済の現状について、景気は底固めの段階に達したという判断をされているようでありますが、それはあまりにも楽観的な見方であるといわざるを得ません。中小企業の倒産こそ横ばいをたどっておりますが、経常実態は日々ますます苦しくなっているというのが町の声であります。つい先日発表されました経済企画庁の法人企業設備投資予測を見るましても、上期の投資は四・六%とやや上向いておりますが、下期は逆に一二・四%もダウンすると、景気の先行きに悲観的な予測が出されております。にもかかわらず、政府は、依然として景気の先行きに対し楽観的な見方をされ、このまま無為無策のうちに時を過ごそうとされるのでありましょうか。それはまさに政府の怠慢といわざるを得ません。この際、政府は、公共投資拡大所得税減税を中心とした大型補正予算構想を明らかにし、景気振興をはかるべきであると思うのでありますが、政府の見解をただしたいのであります。  また、その際約五兆三千億円にのぼる公共事業の発注について質問したいのであります。  去る昭和四十一年、宜公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律が制定されたのでありますが、その後の推移を見ますと、中小企業向け発注目標比率は三〇%前後で一向に増大せず、逆に、その実績比率は年々悪くなっているのであります。これは、依然として政府の姿勢が大企業中心になっていることのあらわれであると断言せざるを得ないのであります。政府は、公共事業の拡大が直ちに中小企業者への発注の増大となってあらわれるよう、目標比率を現在の三〇%から四〇%に引き上げ、それを完全に達成するため、あらゆる努力を払うべきであると思うのでありますが、通産大臣の決意のほどをお伺いしたいのであります。  さらに、現在の不況が、親企業下請中小企業に対する理不尽な単価の切り下げ、手形の長期化を引き起こしている現状にかんがみ、下請企業育成のより一そうの徹底をはかるとともに、一昨年の暮れに成立しました下請企業振興法を改正し、発注単価の基準をきめるべきであると思うのでありますが、あわせて政府の御見解をただしたいのであります。  次に、私は、白書でも指摘されております中小企業事業転換について質問を行ないたいと思います。  確かに、わが国の重化学工業中心の経済成長はその終わりを告げようとしており、今後ますます消費者の需要は多様化するとともに、個性的な商品、サービスに向かうことは必至であります。この情勢の変化にいち早く適応できるかどうかに中小企業の盛衰がかかっていることは、白書の指摘するとおりであります。この意味において、いまこそ新分野の開拓を目ざす企業家精神の復活と再生の時代が到来しているといっても過言ではありません。しかし、現実には、言うはやすくして行なうはかたしであります。特に中小企業の場合、その条件はきわめてきびしいものがあります。まさに政府の強力な施策要請されているゆえんはここにあります。  ところが、政府事業転換に対する姿勢は、繊維産業の例にも見られますように、あまりにも対症療法的であり、個々ばらばらであり、かつ、うしろ向きであります。今後の産業構造の長期的ビジョンもなければ、総合的政策もありません。わが党は、すでに産業構造高度化・転換促進法の制定を提唱してまいりましたが、この観点に立って、まず第一に、政府はこのような総合的産業調整法を制定する意欲があるのかどうかをお伺いしたいのであります。  第二に、事業転換に伴う最大の障害である研究開発・技術開発援助並びに転換資金の調達について、政府はいかなる施策を講じられようとしているのか、お尋ねをしたいのであります。  第三に、事業転換は、必然的に経営者並びにその従業員に新しい創造的な知識が要請されるのでありますが、この人間能力の再開発をどのように進められようとしているのか。私は、現在の職業訓練制度を抜本的に改革し、質の向上と訓練生に対する給付の大幅引き上げをはかり、できるだけ多くの人が安心して職業訓練を受けられるような体制をつくるべきであると思うのでありますが、通産大臣並びに労働大臣の御所見のほどをお尋ねしたいのであります。  次に、私は、小規模事業対策について質問を行ないたいと思います。  言うまでもなく、わが国中小企業の大部分は、依然として生業的な、また事業転換能力も欠如した小規模事業であります。これら小規模事業の生活安定をはかることは、中小企業政策の一つの大きな柱でなければなりません。にもかかわらず、今回の白書は、いわば中堅企業対策を焦点に置き、これら小規模事業対策を軽視されていることは、全く納得できないところであります。  私は、現在の小規模事業対策の第一の柱として、事業主報酬制度創設を、昨年の本会議の質問に引き続き再度取り上げたいと思います。最近におきましても、わが党の竹本議員がこの制度創設について政府に質問書を提出し、政府の答弁もいただいているのでありますが、その内容は、あまりにも官僚的かつ否定的なものであります。事業主報酬制度創設の妥当性については、もはやくどくど申し上げるまでもありません。あとは政府の決断だけであります。政府は一刻も早く制度創設に踏み切り、小規模事業経営の合理化近代化促進すべきであると思いますが、重ねて政府の御見解をただしたいのであります。  あわせて、小規模事業の経常を強く圧迫する付加価値税については、その導入を絶対に行なうべきではないと思いますが、政府のお考えのほどをお聞きしたいのであります。  最後に、私は、政府に強く要望しておきたいとがあります。  いま中小企業者をはじめ国民の多くは、円の両切り上げ景気回復の行くえ等について深刻な不安を抱いております。この不安を解消することが、現在の政治に課せられた一つの重要な課題であります。そのためには、政治に先見性とビジョンと指導性がなければなりません。また、現在ほどこのことが要請されているときはありません。佐藤政権はまさに消えんとする風前のともしびであり、要望を申し上げながら、現在の政府に大きな期待を持てないことははなはだ残念でありますが、それを知りつつもなお、政府事態の深刻さを十分に認識され、国民の不安解消に全力をあげて取り組まれんことを希望し、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  43. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) 吉田君にお答えいたします。  まず、円の再切り上げについてお尋ねがありましたが、先ほど社会党の石川君にもお答えしたとおり、わが国の国際収支は次第に均衡に向かうことが期待されますし、また最近においては、世界の為替市場は、わが国をも含め平静に推移しておりますので、とのような情勢のもとでは、円の再切り上げのおそれのないことをはっきり申し上げておきたいと思います。  次に、国内経済につきましては、生産が三月まで連続五カ月の上昇を続けているなど、明るい面が見られます。したがって、景気はほぼ底固めの段階にあるものと見られます。  今後の見通しとしては、輸出の伸びの鈍化、設備投資のいましばらくの低迷が予想されますが、財政を中心とする景気拡大策の効果が広範に浸透し、景気は徐々に回復に向かい、おそくとも年度の後半には安定成長の軌道に乗るものと考えます。  なお、今後のビジョンでありますが、政府は、本年末を目途として新しい長期経済計画を策定すべく、現在準備作業中であります。この新計画におきましては、高度福祉社会の実現と国際経済社会への貢献を重要課題として、長期的政策方向を明らかにし、これらの政策実施を強力に進めてまいる考えでございます。  その他の問題につきましては、所管大臣からお答えいたします。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇
  44. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 私にも総理と同様な御質問でございましたが、ちょうど昨夜でございますが、米国の輸出入銀行の総裁とお会いした日本の人のお話でございましたが、世界どこを歩いても円の切り上げを追っているような空気はないのに、日本へ行ったら、日本だけがずいぶん騒々しかったので、日本は何だろうといって反対に聞かれたというお話を、きのう実は承りましたが、昨年の暮れに通貨調整がございましたあとで、予想されたとおりのドルの還流がなかったというために、為替市場に若干の不安がございましたが、ただいまでは、アメリカの金の価格引き上げも終わりましたし、それから欧州諸国の金利の調整があり、為替管理の強化というようなことがありましたために、いまでは世界各国の為替市場が落ちついており、日本もその一つでございまして、きわめて現在は為替市場が落ちついておるときでございます。したがって、別に円の切り上げというようなことが各国によって言われておる時期ではございません。現に、この通貨調整に参加した十カ国においては、昨年の暮れの通貨調整の成果を各国で守ろうという相談をして、いろいろの国内政策をやっているときでございますので、通貨のレートを変更しようと考えている国は、主要国間には現在一つもないということでございます。  問題は、いまのような黒字基調が続いたらこういう懸念があるじゃないかということを先ばしった御心配かもしれませんが、この点につきましては、これはやはり早く国際的な不均衡を回復して、そして国際摩擦をなくすることが必要でございますので、この点の対策は、これは当然すべきものであり、現に、国際収支の回復をはかるというためには、何といっても内需を拡大することが一番必要でございますので、その目的で編成された今年度の大型予算がようやく通過して、いま動き出したところでございますし、また、きょうは経済閣僚の協議会において月例報告も受けましたが、経済のいろんな指標を総合して、大体不況の底固めができて、いままでの金融政策と昨年度の補正予算の効果が出てきてこの底固めができたので、この予算が動き出したら、緩慢ながら経済は上向くであろうということに各方面の意見が一致しているときでございますので、これによって経済が動いてきますというと、私は、さっき総理が答弁されたように、国際収支は徐々に姿を変えていくものというふうに考えております。  したがって、第二の質問でございました、大型補正予算を考えているかとかというようなことでございましたが、いまことしの予算がきまったばかりでございまして、現在の瞬間で、そういうことはまだ全然考えておりません。  その次は、付加価値税が中小企業を圧迫するというお話でございましたが、付加価値税あるいは一般消費税というものは国民が税を納めるのであって、国民が納税者ということで、企業家は一切この税を納めないという立場でございますので、この消費税や付加価位税が中小企業を圧迫するというようなことはございません。ただし、これは国の税体系に大きい影響を与える問題でございますので、政府はただいま、いろいろな角度からの慎重な検討を行なっているところでございまして、現に昨日は、欧州からこの問題の専門家も日本に招聘して、私ども、この問題は十分研究するつもりで勉強を始めておるところでございますが、御質問のような、中小企業の圧迫というようなことはございませんので、右、お答え申し上げておきます。(拍手)   〔国務大臣田中角榮登壇
  45. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 総理大臣及び大蔵大臣からお答えのございました部分は除いてお答えをいたします。  まず第一番目には、予算の中に占める官需公需の中で、中小企業向けの目標と実績が非常に違っておる、これをもっと再検討する必要はないか。四十二年、四十三年、四十四年、四十五年とやってまいったわけでございますが、四十五年は、目標三一・三%に対して二五・五%の実績であったことは遺憾でございます。四十六年度は三〇・一%の目標でございますが、これに近づけるべく、昨年度十分努力をしたわけでございます。まあこれだけの数字、三分の一程度ではよろしくないので、新しく目標を立ててこの部分を大きくしたほうがいいという御説でございますが、私もそのように考えておりますので、政府部内で十分協議をしながら、中小企業の分野が多くなるように努力を続けてまいりたいと存じます。  第二は、中小企業事業転換重要性についてでございますが、今後一そう増加をしていくと思われますので、その事業転換を円滑に、また合理的に行なうためにも、民社党でお考えになっております産業構造高度化・転換促進法というものを参考にいたして、十分勉強をさせていただきたいと考えておるわけでございます。なお、総合的産業調整法のごときものの必要性はないかということでございますが、これら御指摘になりました案を読んでみますと、まことに示唆に富んだものだと思います。そういう意味で、御提案のものを十分勉強してまいりたい、こういうことでひとつ御了承いただきたいと存じます。  第三点は、小規模企業対策についてでございますが、小規模企業に対しましては、従来から特段の配慮をいたしておるところでございます。小規模事業指導事業をはじめ、設備近代化資金及び設備貸与制度、それから信用補完制度国民金融公庫からの融資中小企業振興事業団高度化融資制度小規模事業者税負担軽減小規模企業共済制度等の広範な施策を現に行なっておるわけでございます。  また、去年よりも予算も格段にふえておるわけでございますが、これをもって足れりといたしておるわけではないわけでございます。中小零細企業対策というものがいかに重要であり、緊急を要するものかは、私が申すまでもないことでございますので、御発言の趣旨を十分体しながら、遺憾なきを期してまいりたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣塚原俊郎君登壇
  46. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 今後の産業構造の変革に伴いまして、御指摘のように人的能力を開発向上させることは、これは言うまでもありません。  それに関連して、職業訓練の御質問でありまするが、四十四年に全面改正をいたしました職業訓練法に基づきまして、訓練体制の強化にいまつとめておるところでございます。  なお、その間の手当の問題の御質問でありまするが、職業転換訓練を受ける労働者に対しましては、訓練が終わるまでは、失業保険金に加えて月額約一万円の技術習得手当を支給することとなっておりまして、最高約八万円ぐらいの金がいま支給されておるのが実情であります。しかし、御指摘のような点もございましたので、今後、諸手当等の増額を考えまして、御趣旨に沿うような努力をいたしたい、このように考えております。(拍手)   〔国務大臣木村俊夫君登壇
  47. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) すでに総理、大蔵大臣からお答えいたしましたが、生産、出荷、在庫率指数等の経済指標によって、マクロ的に見る限りは、景気は底入れを終わって、回復過程に入るものと思われます。  ただ、しかしながら、四—六月は、休日やストの影響で、生産や出荷の伸び率は、一−三月より鈍化すると考えられておりますし、また、先行きにつきましても、過去の景気回復期において在庫投資とともに景気回復の牽引力であった輸出と民間設備投資が、今回はいずれもさしたる増加を期待できず、その点では、回復力は全体として強いとは思われません。したがいまして、回復過程に入ったとは申しましても、これは、追加的な景気対策がこれから必要でないということを意味するものではなく、今後とも回復テンポを見守って、適切な景気対策を機動的に打ち出していくことは、国内的にもまた対外的にも必要であると考えます。(拍手
  48. 船田中

    議長船田中君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  49. 船田中

    議長船田中君) 本日は、これにて散会いたします。    午後四時二十四分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 塚原 俊郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         国 務 大 臣 木村 俊夫君  出席政府委員         中小企業庁次長 進   淳君      ————◇—————