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松浦利尚君 私は、ただいま
趣旨説明のありました新
都市基盤整備法案に対し、
日本社会党を代表して、若干の質問をいたしたいと存じます。
まず、基本問題として
総理にそのお考えをお尋ねいたしたいと存じます。
その一つは、本
法案が、
人口の
集中の著しい
大都市の
周辺地域における新
都市の
建設を助け、
大都市圏の秩序ある
発展を期すると、こうありますが、本質的には、
都市のいま以上の
巨大化を助ける
措置としての性格を避けることができないと存じます。新
全国総合開発計画の指摘をまつまでもなく、
市街地は全
国土の一・二%、そこに
人口の四八%が
集中し、このうち五八%が東京、大阪、名古屋とその
周辺五十キロ間内に
集中し、最近五カ年間に、
市街地人口の
増加分の七四%がこれらの圏内に
集中していますが、その
傾向は今後ますます深まってまいります。
大都市問題は、こらした
国土利用の
硬直化の過程で起こってきた問題であります。
総理は、こうした
経過を踏まえて、ますます進行する
都市集中を今後も認められるのかどうかということについて、的確にお答えをいただきたいと存じます。
いま現実に起こっている
国民生活のひずみを中心とした
都市問題が、
大都市集中、過密にその原因があるとき、本
法案が、ますます
大都市圏をつくり出し、ひずみを助長する結果になることを、私たちはおそれます。
人口の
都市集中を規制する方策の上に初めて本
法案の効果が生まれると思いますが、その
具体策があるのかをあわせて御
説明いただきたいと存じます。
第二点は、
土地問題についてであります。
総理は、
大都市桑中と
過密化が
土地問題の
解決を困難にし、
地価の上昇を促しているということは、百も御
承知のはずであります。先般、農地の
宅地並み課税の議論が本
国会でもありましたが、本来
土地問題は、農民から、
生活の手段である
土地を放出させることではありません。問題は、
土地はまだもうかるとする思想に対してどう対処するかということであります。
総理は、
地価抑制を望むどころかその値上がりを期待する人々に対して、もはや
土地は
投機の
対象にはなりませんと主張することができますか。
また、第三点は、今日までの
政府の
施策によって、個人の零細な
土地投機はある程度
抑制することができましたが、
企業の旺盛な
土地需要を締め出すことはできませんでした。昨年九月期を
東証全
上場一千三百三社で
最終期とする
もより確定決算の「
有価証券報告」記載による
所有土地合計は、実に四千六百七十五平方キロと、全
国土の一ないし二%に当たっています。また、
地域別六
大都市市街地価格推移指数表によると、
昭和三十年三月を一〇〇として、四十六年九月期には、
商業地で一二一一、
住宅地で二三三八、
工業地で二七一七、
用途地域別平均二〇八八という、驚異的な数字を示しています。しかも、
日本不動産銀行が、新
都市計画法に基づく
市街地調整区域内の
民間デベロッパー所有面積を調査いたしていますが、それによると、
首都圏、
近畿閥、
中部圏で
合計一千百九十四ヘクタールの
土地を所有しております。その上さらに、
未来産業である
住宅産業に向かって、各
企業は競って
土地の
買い占めを進めておる現状であります。そこには、多分に
投機的な
傾向が表面化していますが、こうした
傾向に対して
具体策を樹立するお気持ちがあるかどうかをお尋ねいたします。あれば、いかなる
方法をとられるか、お示しいただきたいと存じます。
次いで、
大蔵大臣にお尋ねいたしますが、一本の
一流企業は、
法人の
土地売買譲渡益に対して
課税せずという税法の
特別措置に守られて成長してきた反面を否定することはできないと思います。しかも、
投機的取引が
地価に悪影響を及ぼしていることも否定できないと存じます。
政府は、
昭和四十三年の
税制調査会の答申にある、
法人所有の
土地に対して
適正評価額をこえる
土地売却益については高率な
課税を含む必要な
課税措置を講ずることが、絶対に必要だと思います。あなたは必要だとは思われませんか。この
解決なくしては、
地価の
高騰を抑え、
一般国民が
土地を入手する道は困難となってしまいます。これらについて具体的に検討されていますか、お伺いをいたしたいと存じます。
また、大
企業、
東証一、二部
上場千三百三社の
土地帳簿価格が異常に安いと思います。
簿価合計二兆六千五百六十二億円で、一平方メートル
当たり簿価は、何と五百六十八円にすぎません。これでは、
国民は
承知をしないでしょう。これを特価に
評価すれば、現在一七%台にある
自己資本比率は、一気に四〇%台にはね上がるとまでいわれております。だれが見ても、
企業の
土地は他の物価と不
均衡なことは明白であります。この際、
土地の再
評価に踏み切るべきだと思いますが、あなたにはその勇気がありますか。
さらに、
宅地の
高騰をしり目に、最近大
企業は、ますます
土地を買いあさっています。現に
金融がゆるみ、
巨大金融機関が
担保力のかたい
土地に命を流す
傾向は、最近目に余るものがあります。また、四十七年度の超
大型公共投資予算が、
土地買い占めに拍車をかけていることも事実です。こらした
傾向は一そう
土地の
高騰を生み出すばかりか、
大型予算も
用地費に食われ、
国土の荒廃にもなりかねません。
政府はこれに対してどう対処されるのか、その方針を具体的にお伺いいたしたいと存じます。
次いで、
建設大臣にお尋ねをいたします。
本
法案についての詳細な議論は
委員会でいたしますが、
政府は、いま第二次
住宅五カ年計画で、総
建設戸数九百五十万戸、うち公的
資金による
建設戸数三百八十万戸を目標にスタートしていますが、順調な本年末進捗状況だということができるでしょうか。実際には、
住宅難世帯は一向に
解決していないのが現状ではないでしょうか。
民間の
住宅金融も
条件がかなり改善されて、限界に近づいています。
住宅の遠隔地化も限界にきています。私は、現状のまま推移すれば、
昭和六十年末までに
政府が目標とする、家族人員一人当たり一室、一世帯九十平方メートルは高嶺の花であり、民住水準の向上も停滞すると思います。
地価も含め
住宅建設価格の上昇は、庶民の夢を打ち砕いていると思います。
政府は、この際、
民間デベロッパー依存、
民間主導型の
住宅政策を転換し、
建設目標の中心を公共
住宅の大量
建設に
修正すべきだと思いますが、
修正されるお気持ちがありますか、お尋ねをいたしたいと存じます。同時に、そのことなくしては、
都市内部に居住する膨大な木賃アパート層の
住宅難
解決は不可能だと思いますが、大臣の積極的な発言を承りたいと存じます。
さらに、
民間デベロッパーを中心とするというならば、
民間デベロッパーが低所得者のための
住宅を
建設する意思があるとお考えになるかどうかも、あわせお答えいただきたいと存じます。
また、
民間依存の
宅地開発、
住宅建設の問題点は、適正な買収価格をつけにくい比較的
地価の安い未造成地、山林原野に重点が向けられ、当然ながらスプロール現象を一そうたどっています。しかも、私鉄や大手不動産
企業の行なう大
規模開発には交通網等の
整備が進み、公的
機関の
開発には交通網等の
整備がおくれるという不合理が生まれています。その上、特定大
企業に
用地取得が
集中していくと、分譲価格の操作による
高騰や設計施工者の指定を
条件とする入居の自由に制約を加える問題が、現実に生まれてきます。大臣は、こうした
民間デベロッパーのあり方について、秩序を保つための
具体策を検討しておられるかどうか、承りたいと思います。
次いで、大量
住宅団地を持った
大都市周辺市町村が、団地による小中学校の
建設等、住居に直接関連しない
公共施設のため、財政需要が増加し、財政上著しい困難に直面していることは
承知の事実であります。そのため、自治体から
宅地開発を拒否される政策の貧困、
制度の欠陥はいま直ちに是正されなければならぬと存じますが、その
具体策についてお答えをいただきたいと存じます。
また、
住宅建設と
都市再
開発事業を強力に推進するため、本
法案に関連をして、いまの日本
住宅公団を、
住宅だけを
建設管理する
住宅建設公団と、
用地取得と再
開発など、
都市環境
整備に専念する
都市整備公団の二つに分割する計画が検討されているやに聞いていますが、事実かどうか、お答えをいただきたいと存じます。
また、それが事実ならば、人員の膨張を招くだけで実際の効果はあがらないとする
意見に対して、大臣のお考え方を承りたいと存じます。
いずれにいたしましても、現在の
都市基盤整備にとって最大のものは
土地対策であり、
政府をはじめ地方公共
機関が公共
用地をできるだけ多く所有し、それを適宜、政策、計画、
目的に従って利用する基本姿勢こそ問題
解決の一歩だと存じます。実際に
土地で利益を受けているのは、大
企業や特殊な
企業と少数の人々にすぎません。
政府は、この際、
土地所有権の
社会的制約について抜本的な対策を検討されるとともに、
産業基盤偏重の行政投資パターンを
生活基盤重視へ切りかえ、
国土開発計画や
土地騰貴の
抑制及び
土地利用規制等の
制度を確立するために、勇断をもって抜本的
施策を講ずる公共責任の確立を要望いたしまして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕