○河村勝君 私は、
民社党を代表して、ただいま
趣旨説明のありました
国有鉄道運賃法及び
日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を
改正する
法律案について、総理並びに関係閣僚に対し、数点について質問をいたします。
まず初めに、物価問題に対する
政府の
基本的な考え方についてお尋ねをします。
自民党
政府に物価
政策がないのは、今日に始まったことではありません。すでに十年余にわたって年率五%をこえる消費者物価の上昇が続いて
国民生活に大きな圧迫を加え、また、年率一〇%を上回る地価の上昇は庶民の住宅の夢を奪っております。その間、毎国会の総理の施政方針演説には、必ずと言ってもよいくらい、物価対策の
緊急性が強調されております。いわく、流通機構の
合理化、
公共料金の抑制、輸入
政策の活用、地価抑制のための強力な施策等々、毎年ほとんど変わらない。そして、何一つ有効な対策が実行されたためしがない。ことしは、不況下の物価高という異常な時期であります。
国民大衆は、もはや
政府の物価対策を全く信用してはおりませんが、円平価の大幅な切り上げがあったことだから、せめて輸入によって食料品などが幾らかでも値下がりしはしないかと、一るの期待を持ったのであります。ところが、それすらも、国内生産者の保護のためか、それでなければ、流通過程のどこかに消えてしまって、値下がりどころか、ものによっては価上がりさえするというありさまであります。
そこへ持ってきて、
各種公共料金の一斉
引き上げが行なわれる。一体、
政府には物価上昇を抑えようという意思がほんとうにあるのかないのか。ないのであれば、この際、いっそのこと、物価については、卸売り物価さえ安定しておれば、消費者物価のこの程度の上昇は取るに足らないのだ、これが
政府・自民党のほんとうの考え方なんだということを
国民の前に率直に明らかにすべきだと考えるが、所信をお伺いしたい。
物価問題に対する
国民の非難が高まると、きまって
政府は、
公共料金の一年
値上げストップという公約を掲げる。およそこのくらい無意味な
政策はありません。
公共料金凍結を有効に活用するためには、凍結
期間中に他の諸物価抑制のための強力な施策が行なわれるという前提がなければならない。ところが、何もしないことの言いわけのための一年間ストップだから、翌年は反動的に一斉大幅
値上げになります。したがって、その波及効果が大きくなって、一般物価の上昇を加速する結果となるわけである。ことしが、まさにそのとおりであります。これほど政治の貧困を示すものはないと、あなた方はお考えにならないであろうか。
私に一つの提案があります。ことしという最悪の時期に、
公共料金の中でも一番影響の大きい
国鉄運賃の
値上げをするという愚を避けて、しかも
国鉄再建を軌道に乗せるのに役立ち、しかも
財政的にも大きな
負担にならないという方策であります。
それは、
国鉄の累積
債務を全部たな上げするということであります。
政府案によると、
国鉄の
長期債務のうち、
政府管掌債務のほかに、来
年度から
政府保証債についても利子補給を行なうようになっております。私はこれは大きな進歩だと思います。しかし、
国鉄には、先ほどの
大蔵大臣の答弁のように、なおそのほかに特別債その他で一兆円の
債務があります。これを同様の方法で処理することができれば、
運賃値上げを避けることができるだけでなくて、
国鉄は積年の累積
債務から解放されて。みずからの
経営努力次第で
赤字を解消する道が開かれます。そのために必要な原資は、
財政融資こそ七百億円ほど要るけれども、一般会計からはわずかに五十億円程度の支出で済むものであります。
政府は長く
国鉄財政危機を放置して、せっかく
昭和四十四
年度から
再建整備に取り組みながら、びほう的な対策で糊塗しようとしたがために、ますます
経営悪化を招いてまいりました。いまここで打つべき手を惜しめば、再び同じことの繰り返しに終わって、結局は国の
財政負担を増大させるだけに終わります。
政府は、私の提案をいれて、
国鉄の累積
債務をこの際全部たな上げをして、同時に、
国鉄運賃値上げ案を撤回する意思はないか、答弁を求めます。
第三に、いわゆる地方交通線の
経営をいかにして改善するかという問題についてお尋ねをします。
国鉄には、どらにか収支均衡する一万キロの幹線のほかに、一万キロの地方交通線、いわば地方幹線というべき線区があります。この線区から、年に千七百億円、
国鉄の
赤字のほとんど全部が生まれております。この線区の収支を改善する方策なしに
国鉄の
再建策というものはありません。しかるに、今回の
国鉄の
再建案はこの点に何ら触れるところがない。それでは当座の急場はしのげても、数年を出ずしてこの
再建計画は必ず挫折をします。
昨年来
政府は総合交通
政策という旗じるしを掲げて、それが
国鉄再建の特効薬であるかのようにいっておりました。総合交通
政策というものはどうやらでき上がったようであるけれども、それが今度の
再建計画にどう生かされているのか。何にもありはしないじゃありませんか。
これらの線区は、過疎化とモータリゼーションのために衰退をしてきた線区である。しかしながら、環境破壊の深刻化に伴って、道路建設に限界が生じて、一方で
労働力不足が進行することによって、これらの既存の大量輸送機関を再活用することが
国民経済的な要請となることは必至の情勢であります。
このような方向をとらえて、国土開発
計画と相まって、その対応策をいまから進めていくのが総合交通
政策の
使命ではありませんか。
政府には、目先の
赤字対策だけではなくて、このような抜本対策を推進する意思がほんとうにあるのか。また、それによって収支が改善されるまでの間、暫定的にこれらの線区の
赤字を補てんすべきだと考えるが、その点を一体どう考えるか、答弁をお伺いをしたい。
次に、
赤字ローカル線の建設についてお尋ねをします。
昭和四十七
年度鉄道建設公団
予算案には、
赤字ローカル線建設のために二百億円が計上してあります。一方で
赤字ローカル線の撤去を進めながら、他方で、全く同じような
赤字ローカル線建設のために巨額の国費を投下する、こんな矛盾した
政策があってよろしいのであるか。
聞くところによれば、
与党と
政府との間で
赤字線撤去にブレーキをかけるような合意がなされたということである。国の行政行為をチェックするような
与党、
政府間の取りきめが有効であり得るはずがないけれども、そのような
混乱が起こるということも、結局はいま述べたような矛盾が根本にあるからであります。
政府は、この際、
赤字ローカル線の建設を即刻やめて、
赤字線整理について筋の通った方策をとるべきであると考えるが、
所見をお伺いしたい。
第五にお尋ねをいたします。
国鉄の収支バランスがこれほどに
悪化しているにもかかわらず、いまなお
国鉄の行ない得る事業範囲に窮屈きわまる規制を加えて、増収の道をふさいでいるのは一体いかなる
理由であるか。
たとえば大都市の周辺には、私鉄ならすぐにでも手をつけるような線区が単線のままで細々と
経営されて、大
赤字を出しているところがかなりたくさんにのぼっております。その
理由は、開発利益の吸収ができないために採算がとれないからであります。このような線区に対しては、沿線の
一定区域を限って開発事業を
国鉄に認めるべきではないのか。
さらに、一般的に常業活動の範囲をもっと
拡大すべきではないのか。
国鉄に対して私鉄並みの営業の自由を認めるというのは問題でありましょうけれども、少なくとも
国鉄が現在所有する土地を利用するものである限り、原則として自由な常業を認めるべきだ考えるが、お答えをいただきたい。
最後に、
国鉄の
合理化についてお尋ねをします。
国の大きな
財政援助を受け、一方で
国民大衆の
負担を求めるからには、
労使を問わず、
国鉄自体で総力をあげて、まず、みずからの
近代化、
合理化に邁進しなければならない。それは当然のことである。
国鉄は、いかなる
合理化目標を設定して、どのようにしてそれを達成する
計画であるか。
国鉄内部には、いまだに生産性向上に反対する風潮があり、職場の秩序、規律についても、まだ十分に確立されているとは考えられない。このような体制のもとで、はたして所期の
目的を達成することが可能であるか。
政府は、これに対して、どう対処していくのか、所信をお伺いして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕