○竹入義勝君 私は、公明党を代表し、一昨日行なわれた
政府四
演説に関し、きわめて重点的に質問をいたします。
質問に先だち、私
ごとではなはだ恐縮でありますが、この場をおかりいたしまして一言御礼のごあいさつを申し上げます。
昨年九月、私が暴漢に襲われ負傷いたしましたことにつきまして、多数の皆さんにたいへん御心配をおかけいたしましたけれども、おかげをもちまして元気になることができました。まことにありがとうございました。(
拍手)
言うまでもなく、暴力や、目的のために手段を選ばないやり方は、民主
主義の敵であります。今後、私は、先輩各位の御指導を賜わりつつ、暴力を絶滅し、
わが国の平和と民主
主義を守るため全力を尽くしてまいりたいと念願をいたしております。(
拍手)皆さまの御厚情に重ねて深く御礼を申し上げる次第であります。(
拍手)
さて、
佐藤総理に質問を申し上げます。
現在
わが国が遭遇している国際的、国内的困難は、戦後未曽有のものであろうと思うのであります。国際的には、自主性を失った
外交のきわ立った行き詰まりは、あたかも羅針盤を失い、暴風雨に見舞われた船の
ごときものであろうかと思われるのであります。国内的には、政治不信をますます助長する相次ぐ
国民侮辱の放言、歴代内閣でこれほど締まりのない内閣はなかろうかと私は思うのであります。(
拍手)あるいは
国民生活の不安と危機の高まりなど、政治に携わる者として真に反省と新しい決意が最も必要なときであるにもかかわらず、そのきざしが見えないのはまことに遺憾であり、許されないことであろうかと思います。私は、特に
政府が重大な反省の上に立って、
わが国の実りある将来を切り開いていくため、確固たる目標と
方針を決定すべきことを、強く
要求するものであります。
一九四五年、有史以来の敗戦の荒廃の中に置かれた
わが国は、以来四半世紀、
国民の営々たる復興への汗によって、不死鳥のように再び国際社会によみがえることができました。
しかしながら、歴代
政府は、
経済成長の前にはあえて
国民福祉を
犠牲にし、産業第一、輸出至上、大
企業擁護の
政策を一貫してとり続け、現在に至ったのであります。したがって、設備投資の拡大と反比例して、
国民福祉のための
社会保障施策や
社会資本は著しいおくれを見せ、環境破壊、
公害による命と健康への
脅威、さらに、都市過密化による交通地獄、住宅難の中に
国民を置き、加えて、天井知らずの
物価高は、
国民生活に絶え間ない不安を与えております。これら奇形的な
経済発展は、国内産業の二重構造をますます深刻なものにし、
農業、漁業、中小零細
企業は常に倒産と壊滅の危機にさらされているのであります。
これらの人間性無視の
政策は、国内問題にとどまらず、国際
経済の場においても、
日本経済はきわめて窮地に立たされているのであります。これは、通貨調整における定見と見通しのない
交渉、押しつけに屈服した過大な円の
切り上げ、繊維の
政府間協定に見られる過酷な貿易協定などに象徴的にあらわれているのであります。
また、戦後
わが国の
外交は、一貫して対米一辺倒の
外交方針をとり続けてまいりました。第二次大戦の敗戦という苦い教訓から、
日本は、
日本にとっての
アジアという独善的発想を改め、
アジアにとって存在価値のある
日本、すなわち、
アジアの一員として、
アジアの平和と繁栄に最も大きな
役割りを果たすことこそ国家目標であらねばならないと思うのであります。(
拍手)
しかるに、
わが国がこのように
アメリカの
軍事方針、
外交方針に安易に追随し続けてきたことは、多くの平和のための重要な
外交的課題を無為無策にたな上げにしてしまいました。特に、対
中華人民共和国、対
朝鮮民主主義人民共和国との関係はいまだに閉ざされたままであり、
アジアの
緊張緩和のために絶対必要である国交回復問題を放棄し続けてきたのであります。このように、
外交、内政ともにあらゆる点にわたって破綻し、これを一方的に
国民がしわ寄せを受けてその
犠牲に供され続けることは、
国民はもはや耐えがたい点にまできておると思われるのであります。(
拍手)
さらに将来を考えるならば、七〇年度
わが国の
国民総
生産はほぼ二千億
ドル、輸入総額は約一〇%のほぼ二百億
ドル、その大半は資源の輸入であり、約一%の二十億
ドルが
海外援助、さらに
防衛費は〇・八%の十六億
ドルという構造になっていることは、すでに周知のとおりであります。七〇年代後半には
国民総
生産は五千億
ドルに達すると予想されております。これは六〇年代の
アメリカの
国民総出産に匹敵するものであります。もしこの
国民総出産五千億
ドルを仮定した場合、現在の割合を当てはめてみますと、海外よりの資源輸入は一〇%のほぼ五百億
ドルに近い額となり、
海外援助費は五十億
ドル、また
防衛費も、約一%とすると約五十億
ドルの巨額に達するものと考えなければなりません。
しかも、現在の産業構造で推移するならば、
アメリカの国土の約二十五分の一しかない
わが国土において、しかも、そのうち可住地面積は約二〇%、農地面積を差し引けば全体の四%
程度の面積にこのような高度工業国家の出現は、超過密と
公害、環境破壊によって、まさに人間の住むべき国ではなくなるということを意味するものといわなければならないのであります。(
拍手)さらに、その
生産された商品は洪水の
ごとく
世界の市場を席巻し、諸外国との摩擦を強烈に招くことは必至であります。ただでさえ
世界のひんしゅくを買いつつある
経済進出に対して
わが国を非難する声の高いとき、この貿易量の驚異的増大はいやが上にも反日感情をあおり立て、
わが国の孤立化と挫折はあまりにも確実であるといわざるを得ません。
また、
世界の開発途上国よりの資源の買い付けは、第一次産品としての輸入でとどまり、その加工によって生ずる付加価値を
わが国が独占し、何らその発展途上国の産業発展や生活
水準の
向上につながらないとするならば、おそらく、援助を与えて反抗を買った
アメリカの二の舞いをそのまま
わが国が踏む結果を招くでありましょう。
さらに、
わが国は
経済大国となっても決して
軍事大国にはなることはないと
佐藤総理がいかに説得しようとも、事実をもって証明しない限り、それを全
世界に納得させ得ることは不可能ではないかと思われるのであります。(
拍手)そのために、節度ある
経済発展とともに、その持てる
経済力を発展途上国の平和と繁栄のために使っていくことも不可欠の
条件の
一つでありましょう。しかも、その
経済援助ないし協力は、その国を結果的に搾取するものではなく、その国の民生の安定と
向上に大きく資するものでなければならないと思うのであります。
さらに、現在行なわれている援助ないし協力は、
朝鮮半島においては南にのみ、ベトナムもまた南だけ、
中国についても台湾にのみ行なわれているという、
冷戦外交の上に立ったものであり、これは
アジアの対立を激化させても、決して平和への大きな寄与とはならないことを、深く考えねばならないときが来たと思うのであります。
すでに産業調整が必然的に
要求される国際
経済社会にあって、国際的にも、国内にあっても、
わが国の産業構造と需要構造の転換が迫られるでありましょう。のみならず、文化、教育を含め、
国民福祉充実を優先する施策が実現されなければならないと思います。当然、そのための軌道修正は一挙に実現することは容易ではありません。長期
計画のプロセスを描き、その中における中期ないしは暫定年次
計画が考えられるのでありますけれども、現在
政府はどのような
考え方に立っておられるのか、その所信を
国民の前に明らかにされたいのであります。
したがって、まず第一点として、
総理は、
わが国の未来像の構想ないし国家目標をどのように決定し、この転換期の第一歩を踏み出そうとされておるのか、御明示をいただきたいのであります。
第二点は、
社会保障についてお尋ねをいたします。
四十七年度
予算案を見た場合、老人医療の無料化、老人
福祉年金等において一部の
前進はあるものの、一般会計
予算総額に占める
社会保障関係費の比率は、依然として前年当初と同じであり、しかも、池田内閣当時よりもむしろ低くなっております。一人当たりの
国民所得がヨーロッパ
水準に達したはずの
わが国が、
社会保障水準においてヨーロッパの二分の一ないし三分の一で低迷し、また、社会
福祉の国際的な最低
水準としてILOが定めた百二号
条約も、老齢年令などの全九項目にわたって基準に達しないためまだ批准ができない
わが国の現状を、
総理はどのように理解し、どう解決しようとされているのでありましょうか。
また、社会
福祉施設整備についても、厚生省が四十六年度より
計画した社会
福祉施設緊急整備五カ年
計画がありますけれども、これが全く絵にかいたもちになっているのであります。少なくとも
福祉優先への発想転換をする場合、この
計画を優先的に実行し、
根本的には
社会保障充実のための長期
計画を立て、欧米主要国の
水準に追いつき追い越すプランを
国民の前に明示すべきであります。この点について
総理の所信を伺いたいのであります。(
拍手)
第三点は、公共投資について、
政府の発想が
景気浮揚、
不況克服を先行させ、申しわけ
程度にちょっぴり
福祉に色を添えたといわれるゆえんは、生活関連投資よりも産業関連投資に重点を置いた公共投資の拡大において指摘されます。
しかも、この
政府のねらいが実現されるかどうかは、従来の発想を変えない限り、すでに事業費の三〇%を占める用地費、地価の高騰あるいは地方公共団体の財政負担能力等によって、きわめて疑問視されております。加えて、事業コストの
上昇が、受益者負担の名において住民負担に転嫁されない保証はないというべきであります。この点についてどのような具体策をお持ちか、伺いたいのであります。
来年度
大型予算の特徴ともいえる公共投資の拡大が、
政府の考えるように、
景気浮揚と
国民福祉の増大とを両立させ得るか、私たちは、そのような見通しはきわめて甘いと思っております。
物価の
値上げ、
インフレの助長などを招き、高
福祉高負担の論理に逃避する可能性が強いわけでありますけれども、
政府はこれらの問題についてどのように考えておられるのか、伺いたいのであります。
第四点は、国債についてであります。
公共投資拡大のための
国債発行は、一般会計歳入における公債依存度を一七%とし、
政府保証債、地方債を含めると約三兆円の公共債が金融市場に持ち込まれることになります。一方、国債残高は、四十七年度予想のGNPの七・五%となります。
政府の
経済政策の失敗が原因である現在の
不況を
克服するため、次の世代の負担となる国債をかくも大幅に発行することが安易に許されるとはとうてい考えられません。また、公債多量発行が、
インフレ促進の効果を強めていくことは明らかでありますが、しかも、国債の累積状況から見て、これ以上
国債発行を次年度も続けることは困難であろうと思われます。
政府は、巨大化した
予算の収入面を補うため、今後も引き続き国債に依存した
財源調達を行なう考えなのかどうか、その目標をどうするかを明らかにしていただきたいのであります。(
拍手)
国債発行余力を残さない四十八年度以降の
予算は、一般消費税としての付加価値税の導入すら危惧させるものがあります。これは明らかに大衆に高負担をさらに押しつけようとするものにほかならないと思いますが、これもあわせて御
答弁を願いたいのであります。
第五点は、税制についてであります。
所得減税は、
物価津波といわれる一連の
公共料金値上げの中で、大衆を守るために必要な
物価調整減税すら行なわないで、かつ、大
企業に対する個別的な特別減税措置、
法人税減収を大衆負担によってカバーする
立場に立たされております。
この際、何ゆえに、
租税特別措置の合理化、輸出優遇税制の徹底的改正、
交際費課税の適正化等、従来の産業優先、資産所得者優先の税制を洗い直さないのか、また、少なくとも
物価調整減税を行なわないのか、その
理由を明らかにしていただきたいのであります。(
拍手)
次に、第六点として、
物価安定に対する問題であります。
円切り上げの唯一のメリットとしての
政府が宣伝した輸入品の値下がり期待は、すでにむざんに砕かれました。一方、二月一日より実施される診療料金
値上げをはじめ、一斉にせきを切った
公共料金の
値上げは、それだけで庶民生活をかつてない窮地に追い込むだけではなく、
政府主導型
物価値上げとなり、
消費者物価の騰勢を加速し、所得減税ゼロ、
値上げ抑制の圧力の中で、
国民生活、なかんずく低所得者層に生活の危機をもたらすことは必然であります。
福祉優先の
経済運営を公約する
政府が、緊急の重要課題とすべき
物価安定への努力を全くなさず、逆に一連の
公共料金の
値上げによって
政府主導の
物価上昇を強行しようとする態度は、
国民を欺瞞するもはなはだしいと言うべきであります。(
拍手)国債の大増発とともに、
政府は、
物価安定
対策をすでに放棄して、
インフレ政策をあえてしているとさえ言うべきでありましょう。
物価の安定なくして
国民の
福祉はあり得ません。
国民福祉優先の
立場から、この一連の
公共料金値上げについて、
国民の納得のいく
説明を求めるものであります。(
拍手)
同時に、
物価安定と
消費者保護の
立場から、いかなる対処をされるのか。長期、短期の具体的な
物価安定
対策、四十七年度の面する
対策を明確にお示しをいただきたいのであります。
第七点は、土地
対策についてであります。
公共投資の増大と地価の
上昇が比例していることは、三十九年以来すでに二・五倍の地価
上昇を見ていることからも明らかであります。
政府は、
国民福祉を産業基盤整備重視の公共投資の拡大にすりかえ、また、宅地用地取得のために、新都市基盤整備事業法の制定をはかろうとしておりますが、これが地価抑制につながり得ないことは、すでに指摘されているところであります。土地利用問題の未解決、地価抑制の無策が、
国民福祉の充実をはばむ
根本であり、社会開発の立ちおくれの原因になっていることは言うまでもありません。さらに、土地問題の解決のためには、人口、産業、資本、文化、政治の過度集中を防止し、土地利用規制、地価
対策の解決なくしてはあり得ないと考えるものであります。
こうした総合的な観点から、
政府は、土地利用
対策、地価安定策を強力に実行に移すべきでありますけれども、いかなる
対策を実施されようとしておられるのか、明確なるお答えをいただきたいのであります。(
拍手)
あわせて、この際、国会に土地問題
対策特別委員会(仮称)を設置し、国会の総力をあげて、
国民福祉と社会開発のための土地利用と地価安定策を強力に推進することを提案するものであります。これに対する
総理の御所見を伺いたいのであります。
第八点として、
国民福祉と平和国家への
前進の上で最も
内外に
政府の真意を疑わしめるものは、
防衛費の増大、特に四次防がいまだ
計画決定を見ていない今日、
予算の上でこれを先行きせていることであります。
このような巨大な
軍事予算は、ニクソン・ドクトリンによる
アメリカの
軍事力を
わが国が肩がわりをなそうとするものではなかろうか。ますます
アジアの
緊張と
わが国への警戒心を増大させることは、火を見るよりも明らかであります。
防衛産業に対する積極的てこ入れを、
企業優先の
景気浮揚と結びつけて行なおうとするものでありまして、同時に、
軍事力
増強への傾斜を強めていることは明らかではなかろうかと思うのであります。
国民福祉の充実、
向上のためにも、平和国家としての姿勢を明らかにするためにも、歳入
財源の硬直化する中で四次防を取りやめ、
軍事予算の大幅な
縮小を断行すべきと思いますけれども、
総理の決意を承りたいのであります。(
拍手)
たとえば、
国民の生命尊重のために必要な難病
対策費の
予算が軍用機一機の
予算を下回る事実、あるいは
政府が鳴りもの入りで善政を宣伝する老人の
医療費完全無料化の費用が九十六億円、小児ガン
対策費がたった二億円にすぎないことを考えるとき、
防衛費八千億円は、あまりにも
国民福祉がひど過ぎるといわざるを得ないと思うのであります。(
拍手)このような政治の姿勢から、政治のあたたかさを何らくみ取ることができないではありませんか。
人間性にあふれた政治の確立に関連してお伺いいたしますけれども、水俣病認定患者の対チッソ
交渉は険悪な状態に立ち至り、ようやく環境庁長官があっせんに入ったとはいえ、ここまで放置した
政府の責任をどう考えられるか。
さらに、この水俣病をはじめ
公害四大裁判を代表とする
公害被害者の実情は、実に政治不在を雄弁に物語るものであろうかと思います。このような悲惨な
公害被害者に対する援護、
公害絶滅に対する努力こそ、政治の責任と自覚すべきであると思いますが、
総理の
見解をお聞かせいただきたいのであります。(
拍手)
次に、
外交問題についてお伺いをいたします。
今日の
国際情勢の趨勢は、戦後体制の再検討を求めて大きく変貌しようとしておるのであります。すなわち、二重構造から多極化へ、さらに、力による
冷戦構造から話し合いによる
緊張緩和への道へと動こうといたしております。こうした中にあって、
アジアの平和共存を考えるとき、いまや、社会体制を越えて同じ
アジア民族の真の話し合いと理解によってのみ解決されるべきであると思うのであります。いまや、
わが国将来の重大な岐路に差しかかっていると見るべきでありましょう。
佐藤総理は、依然として、力の対決ないしは力の均衡をもってする従来の対米追随
政策をお続けになろうとするのか。あるいは、
アジアにおける東西問題、南北問題を積極的に解決する
基本姿勢のもとに、
アジアの
緊張緩和と平和への道を歩もうとしておられるのでありましょうか。もし
総理が真に平和への道を選択しようとするならば、
アジアの中の
日本としての明確なビジョンと、これに基づく具体的な
方針を示してしかるべきであろうかと思いますが、
総理の所信を承りたいのであります。(
拍手)
いま
わが国に必要なことは、
政府が従来とり続けてきた
冷戦的
外交をすみやかに改め、自主的な
平和外交路線を確立することであります。すなわち、
平和憲法を擁護して、いかなる
軍事同盟にも加盟、加担しないという等距離完全
中立政策を基調として、民族自決、内政不干渉、平等互恵、武力不行使、相互不可侵などの
原則のもとに、
アジアの平和や
アジアの繁栄を目ざす
日本の果たすべき
役割りなど、
基本的な
政策を樹立しなければならないときだと思うのであります。
アジアの
緊張を強調し、これに対処するという考えではなくて、
アジアの
緊張緩和、平和実現のために
わが国はいかなる
根本的方策をとるべきかという、
わが国独自の
アジア平和構想を策定すべきであります。これこそが、
経済大国がさらに
軍事大国へと必然的にたどった
歴史的事実への初めての否定ではないかと私は思うのであります。(
拍手)
軍国主義復活への非難を払拭するまた唯一の道でもあろうかと思うのであります。
したがって、一九六九年の佐藤・ニクソン
共同声明における、韓国や台湾の安全が
わが国の安全に密接不可分であるという、力による対決姿勢を露骨に示したいわゆる韓国、
台湾条項や、米軍の
アジアにおける存在が
アジアの安定の大きなささえになっているなどの認識は、むしろ
アジアの
緊張を高めていることを率直に認めなければならないと思うのであります。
今年初頭に行なわれたサンクレメンテの日米首脳
会談で、これらの認識が全面的に修正されるべきであったのでありますけれども、発表された
共同声明からは、これをうかがうことはできなかったのであります。
わが国が
アジアの
冷戦構造を積極的にくずして、
アジアの
緊張緩和、平和共存への努力を尽くそうとするならば、この韓国、
台湾条項の修正こそ最も必要であったのであります。
総理は、
アジアの情勢に対し、いかなる判断を持っておられるのか、ぜひともお聞かせを願いたいのであります。(
拍手)
さて、
日中国交回復問題は、すでに論議の段階は過ぎ、実行の段階であることは言うまでもないと思うのであります。
総理が、年頭に述べられた「ことしは日中復交の年」が真実のものであるとするならば、今年は、佐藤内閣の対中
政策の
根本的転換の年でなければならないはずでありますけれども、所信表明においては、残念ながら何ら従来と変わってはおりません。特に台湾に対する考えが何ら示されていないのは、いかなる
理由によるものでありましょうか。
また、さらに重要なことは、
自民党党紀委員会が、超党派の
日中国交回復議員連盟代表団長
藤山愛一郎氏が、
中国を訪問して
中国側と発表した
共同声明について、同氏を党規違反として処分し、
佐藤総理も、総裁としてこれを認めたということであります。これを対中
政策の
基本姿勢とするならば、
総理の言う
日中国交回復は、単なるゼスチュアにすぎないと言うべきであります。(
拍手)
もし
総理が真に
日中国交回復を行なう意思があるとするならば、それだけの
政府の具体的な
方針をここに示すべきであります。少なくとも、日中復交
交渉に当たるための
政府の
基本的
方針は何でありましょうか。すなわち、
中国側がすでに復交に関する
原則を明示しているのでありますから、
政府の
日中国交回復の
基本的
条件を明らかにすることが必要であろうかと思いますが、ここに
政府の明確な
見解を承りたいのであります。(
拍手)
また、この際、明確な
答弁を求めたいのでありますが、
中国を代表する唯一の正統
政府は
中華人民共和国であり、台湾は
中国領土の一部であるということをお認めになるかどうか、日台
条約廃棄という前提に立っての
政府間
交渉は全く考えておられないのかどうか、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。(
拍手)
総理は、所信表明におきまして、沖繩返還の実現を高らかにうたっておられます。しかし、さきの国会でわれわれが指摘した重要な問題が、何ら解明されてはおらないのであります。特に、国会の決議に基づいて、
核兵器の撤去、
基地の細小整理に対し、さきの日米首悩
会談で明確な取りきめを行なうべきであったにもかからわらず、これを実現することができなかったのは、きわめて遺憾であります。
政府は米
政府と、国会決議に基づく取りきめをするため引き続き
交渉すべきであろうと思いますが、その決意のほどを承りたいのであります。
また、
核兵器の撤去作業につきまして、
沖繩県民の納得できる方法で行なうことをこの国会でお約束をいただきたいのでありますが、いかがでありましょうか。
さらに、毒ガス、核の本土
基地存在に対する
国民の疑惑にどうおこたえしようとしておられるのか、この際あわせて明確にしていただきたいのであります。
米側は、最近、
米軍基地の再編成を行なおうといたしております。たとえば、P3偵察機の那覇空港から本土への移転などがそれであります。
国民は、沖繩
基地の
縮小撤去はもちろん、本土の
米軍基地の
縮小撤去をも願っているのであります。本土の沖繩化による解決を願っているのでは決してございません。この
米軍基地の再編成について
政府はどのように考えておられるのか、承りたいのであります。
さらに、
沖繩県民の
要求である、返還前に
ドルの円への切りかえ、差損の補償あるいは軍労務者の間接雇用制への移行、こういうものを実現する用意はおありなのかどうか、あわせて伺いたいのであります。
かつて、沖繩決戦以前に軍隊が一人もいなかった沖繩にとって、
自衛隊派遣は、
県民のきわめて強い反対があります。この際、
自衛隊の沖繩派遣を中止すべきであると思いますけれども、
総理の所信を伺いたいのであります。
次に、
朝鮮問題について若干お伺いをいたします。
ことしの
国連総会において、
朝鮮問題が大きな課題といわれております。
政府・
自民党は、
朝鮮民主主義人民共和国敵視
政策をとり続け、日朝交流を目ざす日朝議連の訪朝に対し不当な干渉を行なったことは、きわめて不満であります。今日の
日中間の交流、貿易の拡大を考えてみましても、これは決して
政府の手によって行なわれてきたものではありません。むしろ、
政府・
自民党の干渉の中でひたむきな努力が積み重ねられてきての今日の成果であることを、十分認識しなければなりません。この誤りを
政府は再び繰り返そうとしていることは、断じて許されないことだと思うのであります。(
拍手)
総理は、日朝議連の成果をどのように考えておられるのか、貿易をはじめ今回の日朝議連の取りきめを支援する考えはおありなのかどうか、この際お聞かせを願いたいと思うのであります。
これまで
朝鮮問題について、
国連におきましては、第三回総会の百九十五号決議をはじめ、
朝鮮民主主義人民共和国に対する不当な決議が行なわれてまいりました。私は、これらは当然に撤回されるべき時期が来たと思うのでありますが、本年の
国連総会におきましても、
最大の問題となることは必至であります。これに対する
わが国の明確な態度をお示しになるべきであろうかと思いますが、特に、この撤回決議が提出された場合の
わが国の態度はどうなのか、この際、これもあわせてお聞かせを願いたいと思うのであります。(
拍手)
したがって、これに伴って、吉田・アチソン交換公文に関する交換公文、
国連軍の地位に関する取りきめなど、こういうものを消滅せしめるべきであると思いますが、
総理の所信を承りたいのであります。
次に、日ソ関係についてお伺いをいたします。
第二回日ソ定期協議会が先日開かれ、
共同声明が発表せられましたが、日ソ間の懸案は、言うまでもなく北方領土問題であります。今年中に
平和条約締結の
交渉を開始するということになっておりますが、領土問題をたな上げにしての
平和条約はあり得ないとわれわれは思いますけれども、この点、
総理のお考えを確認をしておきたいのであります。(
拍手)
また、返還を求める北方領土の範囲はいかなるお考えに立っておられるか、中・北千島、いわゆるクーリール・アイランズに対してはいかなる考えを持っておられるのか、それぞれ明らかにしていただきたいのであります。(
拍手)
さらに、北洋漁業の安全操業は、
政府の責任において解決をすべきであります。
また、日ソ
共同声明におきましては、貿易や
経済協力をうたっておりますけれども、
政府はいかなる
基本的な
考え方に基づいて、シベリア開発をはじめ日ソ協力を行なうつもりであるか、この
基本的な
考え方を明らかにしていただきたいと思うのであります。
以上、きわめて重点的に内政、
外交にわたって質問をいたしましたけれども、
総理は、
わが国の重大な転換期にあたって、信念に根ざす
答弁をもって、その所信を
国民の前に明らかにしていただきたいことを心からお願いをいたしまして、私の質問を終わる次第であります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣佐藤榮作君登壇〕