○青柳
委員 法務大臣に最初にお尋ねを申し上げたいと思います。
去る四十七年四月二十六日の法務
委員会で、私は以下述べるような問題について質問をいたしまして、影山政府
委員からお答えをいただいたわけでありますが、その際、
委員会には大臣も御出席であられましたが、私の質問のころにはもう退席をされておられましたので、御返事をいただくことができませんでした。
そこで、どういうことを尋ねたかという点に簡単に触れますと、関西電力の職制の方々、労務担当の方々が、数名職員の中に共産党員がいるらしいということで特別な
調査をやった。いろいろのことをおやりになったようでございますが、そのことが、そういう労務担当の方々の会合でそれぞれこまかい
報告が行なわれまして、それは文書になって提出され、それがマル秘の文書として関西電力では保存しておったらしいのでありますが、たまたまどういう経路をたどりましたか、その差別的な扱いを受けていた、人権じゅうりんを受けていたと信ぜられる人々の知るところになりまして、事の重大さに驚いて、その問題を神戸地方法務局の
人権擁護関係の機関に申告をしたわけでございます。
そこで、いま申しました機関では慎重に
調査、審理をされたようでございますが、ある程度の
調査、審理が終わったので、
法務省のほうに対して
自分の意見を具して指示を仰いだ、こういう経過があるようでございます。
ところが、たまたまこの人権被害を受けたといわれている方々が、この
人権擁護局への申告と並行いたしまして
裁判所のほうに被害救済の訴訟を提起したようでございます。そこで、指示を仰がれた
法務省としましては、裁判も行なっていることだから、
法務省の人権
関係の機関としては、申告に基づく
調査結論は一時中止すべきであるという決定をいたしまして、その旨指示したということでございます。
ところで、
法務省の
人権擁護関係の機関が、人権侵犯
事件というものを処理するについて、どういう基準あるいは手続規定があるかと申しますと、昭和三十六年三月十日
法務省訓令第一号、人権侵犯
事件処理規程というのがございます。これによりますと、いろいろ詳しいことがきめられておりますけれ
ども、中止というのはどういうときにやるかということについて、十一条の規定がございます。少し長くなりますが読み上げます。第一項は、「法務
局長又は地方法務
局長は、
事件について、
関係者の所在不明その他
調査を行なうについての著しい障害があって、
調査を続行することが相当でないと認めるときは、中止の決定をするものとする。」第二項、「前項の障害がなくなったときは、すみやかに
事件の
調査を開始するものとする。」こうあります。
私
どもの理解するところでは、これはそう拡張解釈をして、裁判があるから、裁判の結果待ちということで中止してもよろしい、そういう規定ではない。あくまでも
関係者が所在不明、その他
調査を行なうことについて著しい妨げが発生したために、続行することが相当でないと認める、その「続行することが相当でないと認める」というのにはちゃんと条件がありまして、「
関係者の所在不明その他
調査を行なうについての著しい障害」ということですが、
裁判所に提起されたということが著しい障害だ、続行することが相当でないと認める根拠にはなり得ないと思うのですね。
したがって、先ほど申しましたようなこのような
法務省の措置は、神戸地方法務局に対する指示は正しくないから、これを撤回して、そしてさらに神戸地方法務局が不十分な点があるならば、
調査を続行すべきであるし、もう十分に
調査したというのであるならば、その段階における一定の結論を出すべきではないか。その結論というのは、先ほど申しました処理規程第九条によりますといろいろございまして、告発、勧告、通告、説示、援助、排除措置等でございます。
〔
委員長退席、大竹
委員長代理着席〕
ちなみに、昭和四十七年四月二十日付読売
新聞十四版によりますと、ことしの二月ごろに、神戸地方法務局は、説示など何らかの措置が必要との意見書を、大阪法務局を通じて
法務省人権擁護局に出して指示を仰いだ、こういう報道がございます。ですから、先ほど申しました幾種類かの
処置の
うち、説示などとありますから、少なくともそういったようなものをする結論的な段階に達していたのではなかろうかと思う。そういうこと、それがいいか悪いか、正しいか正しくないかは、またこれは判断しなければならない問題でありますけれ
ども、少なくとも裁判があるからという理由によって、せっかく
調査をしたのにもかかわらず、結論をもよう出さずにやめてしまう、中止してしまうということは、どう
考えても、
人権擁護の任務を十分に尽くしているものとは
考えられないと思うわけであります。だから、読売
新聞な
どもこの見出しに、「宙に浮く人権侵害の訴え
法務省が「結論待った」 クロの
報告無視」こういうふうに評価しているといいますか、見ておるわけであります。私
どもも
新聞のしり馬に乗って云々するというわけじゃありませんが、まさに宙に浮かされた形になっておるのではなかろうか。
民事裁判などというものは、本人の
処分権限のあるものでございますから、
情勢いかんによっては取り下げるということもあり得るわけであります。だから、取り下げたらそれで
人権擁護のほうは、もうおしまいなんだということではないと私は
考えておりますので、この点について、前回お答えになりました影山政府
委員の回答、説明はとうてい私
どもの納得することのできない点でございますので、大臣からお
考えを伺いたいと思います。