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1972-05-10 第68回国会 衆議院 法務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十日(水曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 松澤 雄藏君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 羽田野忠文君 理事 中谷 鉄也君    理事 沖本 泰幸君 理事 麻生 良方君       阿部 文男君    石井  桂君       大坪 保雄君    奥田 敬和君       鍛冶 良作君    中山 正暉君       福永 健司君    松本 十郎君       青柳 盛雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 前尾繁三郎君  出席政府委員         警察庁刑事局長 高松 敬治君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         法務省保護局長 笛吹 亨三君  委員外出席者         最高裁判所事務         総局総務局長  長井  澄君         最高裁判所事務         総局刑事局長  牧  圭次君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 委員の異動 五月十日  辞任         補欠選任   中村 梅吉君     奥田 敬和君   中村庸一郎君     中山 正暉君   山手 滿男君     阿部 文男君 同日  辞任         補欠選任   阿部 文男君     山手 滿男君   奥田 敬和君     中村 梅吉君   中山 正暉君     中村庸一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  裁判所司法行政に関する件  検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 松澤雄藏

    松澤委員長 これより会議を開きます。  おはかりいたします。  本日、最高裁判所長井総務局長牧刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松澤雄藏

    松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 松澤雄藏

    松澤委員長 裁判所司法行政に関する件、法務行政に関する件及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷鉄也君。
  5. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣の御出席を求めまして、沖繩恩赦の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  前回からの質疑の中で明らかになった点を確認さしていただきたいと思いますが、沖繩恩赦については基準日が五月十五日であるということ、この点については、四月二十一日、二十五日の答弁でそれは間違いのないことだということを御答弁になっておられますが、間違いがないということを確認をさしていただきたいと思います。  要するに、明治百年恩赦の場合、明治百年の記念日が十月二十三日であった。ところが、明治百年恩赦基準日が十一月一日であったことが、世論の中から批判を受けた一つ問題点であったというふうにいわれております。それで恩赦態様がどのようなものであるにせよ、基準日が五月十五日を動かないということ、これは前回の御答弁のとおりであるかどうか、確認的にお尋ねしておきたいと思います。
  6. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 まだ恩赦は決定しておるわけではありませんが、やるとすれば五月十五日である、かように考えております。
  7. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、従来から同僚委員が非常に熱心に質問をいたしている点、それから世論も強く主張いたしている点、すなわち選挙違反恩赦に関連をしてお尋ねをいたしたいと思いますが、法務省のかつての恩赦における恩赦一般についての有力な意見として、法務省当局の中に次のような意見がありますが、これは間違いのないことだと思いますが、あらためてお尋ねいたしたいと思います。  恩赦制度乱用司法権に対する侵害である、それが一点。そうして恩赦制度乱用法的安全性を害する、これが第二点。第三点は、特にこれを政治的に乱用することは、みずから民主政治墓穴を掘るものである。こういう点は、法務省の中においても一般的な有力な恩赦についての配慮すべき点として述べられていると思うのでありますが、大臣の御見解はいかがですか。
  8. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 恩赦乱用ということになれば、いまおっしゃったように当然そうだろうと思います。私は、もとより乱用する考えは毛頭持っておりません。  しかし、恩赦制度という制度自体が、やはり突発的な国家的慶事を喜び、その喜びを分かちながら、将来二度と罪を犯さないようにしようというところに誘導する一つチャンスでありますので、したがって、そういう本質があり、単なる刑事政策といいますか、それだけから考えるべき問題ではなしに、大きな見地から考えますとまた恩赦の妙味というものがあるわけで、このことは常に考えていかなければならぬ問題だと思っております。
  9. 中谷鉄也

    中谷委員 確認といいますか、念のために保護局長の御見解と申しますか、御答弁をいただきたいと思いますけれども、「恩赦制度濫用司法権に対する侵害であり、法的安全性を害し、特にこれを政治的に濫用することは自ら民主政治墓穴を掘るものである」という、この法務省の有力な反対意見というのは、いわゆる非常に政治的恩赦といわれた国連加盟恩赦について、法務省の中で省議が開かれた、このときに法務省の中で述べられた有力な意見であるということは、間違いございませんか。
  10. 笛吹亨三

    笛吹政府委員 ただいまのような内容のことが、当時の省議で論議されたかどうかについては、私は存じません。
  11. 中谷鉄也

    中谷委員 「国連加盟恩赦記録」という法務省保護局編さんの資料がございますが、そこの二ぺ−ジにそのことが明確に記載されていることについてはお認めになりますね。
  12. 笛吹亨三

    笛吹政府委員 当時のことは私、存じませんが、ただいま御指摘を受けました記録拝見いたしますと、その年の十二月八日、九日に省議が開かれたように記載してありまして、その中で、一部そういう点も述べられたということは記載してありますから、そのとおりだろうと思います。
  13. 中谷鉄也

    中谷委員 特にきょう、大臣にこの問題の文書を御検討いただく機会を得ませんでしたけれども、この文書に記載されたことは非常に興味と関心が持てるものであります。と申しますのは、国連恩赦に関して省議が開かれたときに、「恩赦制度濫用司法権に対する侵害であり、法的安全性を害し、特にこれを政治的に濫用することは自ら民主政治墓穴を掘る」という反対意見が述べられて、それに対して恩赦を支持する意見も述べられた。結局、その後十二月十一日の閣議において大赦がなされた、こういう記載になっておるわけで、一部の意見ではなしに、文章感じから申しますと、法務省省議の中においては、かなり有力な多数意見である感じがするわけです。  いずれにいたしましても、国連恩赦のときに、保護局長答弁になったように、恩赦一般ではなしに、国連恩赦そのもの恩赦権乱用であり、そうして、その恩赦権乱用というのは、そうした先ほど引用いたしましたような三つ問題点を含んでいる。国連恩赦というのは選挙違反を主としてなされた恩赦であることは、もうすでに大臣前回答弁いただいたとおりでありますが、そういうことであることは間違いないと思いますが、いかがでございましょうか。
  14. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 この文章を読みますと、反対意見も述べられたということで、一部にそういう意見があったことは事実だと思いますが、当時のことでありまするから、私も詳しいことは存じませんけれども、そのときにはそのときとしての考え方があったんだろうと思います。  ただ、現在われわれが見ると、かなり選挙違反に集中したような感じがする。現在からわれわれが批判すると、非常に異常なやり方ではなかったかという感じを持っておることは、前回述べたとおりであります。
  15. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで大臣は、今回の沖繩恩赦検討されるにあたって、あらゆる角度から御検討になっておられることが御答弁の端々にうかがわれるわけでありますが、特に重ねてお尋ねをいたしたいと思うのですけれども、大臣恩赦を行なうにあたって御検討になっておられる、御苦心になっておられる点はどういう点なのか、この点をお述べいただきたいと思うのであります。特に、恩赦制度乱用というものが司法権に対する侵害になると述べておられる点については、どういうふうな御検討をなされておられるかどうか。法的安全性を害するんだと述べている点については、どういうふうに検討しておられるのだろうか。さらに、政治的に乱用するということは、民主政治墓穴を掘るのだというふうな手きびしい批判、あるいはこれは法務省の中におけるかつての有力意見と私は思いますが、そういうような点を含めて、特に大臣が御検討になっておられる点、御苦心になっておられる点を、あらためてお述べいただきたいと思います。
  16. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 恩赦制度本質というものを考えますと、要するに国家慶事に対して、それに相当するものでなければなりませんし、また、だんだん合理性を持ってこなければならぬ意味合いからしますと、刑事政策ともマッチしていかなければならない。  と申しまして、恩赦制度自体これは憲法にある制度であり、われわれはこれを活用して、そして恩赦の本旨に沿いながらできるだけみんなの気分を一新するなり、将来にわたっていい結果を生むように努力しなければならぬ。言いかえれば、あらゆる点を総合しながら一番バランスのとれた、あらゆる批判にたえていけるような運用をしていかなければならぬ、こういうことで、実はない知恵をしぼって苦心をいたしておるところであります。
  17. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、ちょっと質問内容を別の問題に変えたいと思います。  昭和四十四年の第六十一国会において、当法務委員会においては、死刑確定判決を受けた者に対する再審臨時特例に関する法律案という議員立法について審議をした経過がございます。そのとき当時の法務大臣は、「この法案対象となるもののような死刑確定者に対しましては、この際、さらに右の観点から」というのは恩赦制度観点からですが、「十分の検討を遂げ、恩赦積極的運用について努力いたしたいと考えておる」という趣旨答弁があり、その後その国会終了後の閉会中審査において、大臣答弁趣旨というのは必ずしも明確ではありませんけれども、個別恩赦についての基準を設けての恩赦というふうな趣旨の御答弁があるように私は拝見をするわけなんです。大事な点でありますから、この点について質疑応答の部分を読み上げてみたいと思います。九月九日の委員会でありますが、「七人でも、一人一人一ぺんにというわけにはいかないですから、この個別恩赦ということばが私どもちょっと納得できないのは、この一人一人をやるということが個別恩赦なんですか。それとも、個別恩赦大臣声明というものはちっとも関係ないということになるのですか。」という神近委員質問に対して、法務大臣は、「恩赦には、個別恩赦政令恩赦の二通りがあることは御承知のとおりでございますが、政令恩赦の場合には一律にずっといたしますけれども、個別恩赦の場合には、審査会におきまして上申のありました者について個別に審査をして決定をしていく次第でございます。」こういうふうな趣旨答弁があります。  さらに次に、猪俣委員質問の中に、「大村議員から大臣に対する質問があって、われわれが再審法案再審するべきものと予定しておりました着たちに対しては恩赦考えがないかということに対しまして、大臣は、それは恩赦になるように非常に努力するという答弁があられたのでありますが、それは間違いないわけですね。」こういう質問に対して、法務大臣は間違いがないと、こういうふうなお答えがあるわけであります。  そこで、昨日も参議院法務委員会で問題が提起されたようでありまするけれども、問題は、いわゆる常時恩赦情状恩赦申し立てについて審理促進をするというふうな趣旨答弁があったというふうに新聞で私は拝見をしたわけでありまするけれども、四十四年の大臣答弁等を通じて考えられることは、いわゆる死刑確定判決を受けた者に対する再審臨時特例に関する法律案というのが、要するに講和前におけるところの死刑事件確定はもちろんその後になる者も含みまするけれども、そういう者については、少なくとも戦後の混乱時代におけるところの事案であるので、特別に恩赦について考えようではないか、こういう趣旨のこととわれわれは理解をしているわけでありますが、これらの死刑囚のうち、特定の条件を備えた者を沖繩恩赦対象にするのかどうか、要するに情状恩赦、常時恩赦ではなしに、沖繩恩赦対象にすることの可否については、当然従来からの経過の中で私は御検討対象になっていると思うのですが、この点はいかがでございましょうか。
  18. 笛吹亨三

    笛吹政府委員 昭和四十四年の六十一国会で、いわゆる再審特例法案が出された当時の法務大臣声明の問題にからんでくる問題でございますが、先ほどおっしゃいましたように、そういった再審特例法案対象になる七名、当時七名でございましたが、七名の者につきましては、先ほどお読み上げになりましたように、恩赦について積極的運用をはかっていくというような趣旨のことを当時の大臣から言われたのでございますが、これは常時恩赦で、個別恩赦として常時やる恩赦の中で考えていくということでございます。それから、特別に考えるとか、何か基準を設けるとかいったようなことはその当時はございませんで、積極的な運用をはかっていくということでございます。  そのような趣旨で、昨日も参議院法務委員会佐々木委員からの質疑があったのでございますが、中央更生保護審査会におきましては、その当時受理しておった事件、あるいはその後処理した事件もございますが、そういったものを合わせまして、それぞれ審理を早くするということで促進方をはかっておるのでございますけれども、これらの事件につきましては、そのうちの二件は御承知のようにもう減刑になりましたから、あと五名でございますが、これらにつきましては、いずれも再審が出されておったり、あるいはまた民事事件が提起されておったりいたしまして、訴訟のほうを優先しておりますので、そちらのほうに刑事関係記録が行っておりまして、中央更生保護審査会といたしましては、刑事事件記録をそのまま審査対象にしなければなりませんから、その記録がないために、現在のところでは少し審理がおくれておるというような状態でございます。昨日の話でも、ある人につきましては、その民事事件が最近取り下げられましたために、記録がいずれ近く中央更生保護審査会のほうに取り寄せができるのじゃなかろうかと思っておりますので、そういった意味において、いずれも審理をできるだけ促進していくということを、中央更生保護審査会のほうでは考えているわけでございます。
  19. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 昨日参議院でお答えしました私の趣旨は、恩赦、ことに個別恩赦というものは、私は刑事政策の一環として、とにかく刑を科す場合には、何と申しましても一般予防が主になってくると思いますが、しかし、その後は特別予防ということで考えていくべきで、その個々の人をいかにして矯正をし、そして社会に復帰させるか、これが中心になるわけでありまするから、従来のような、これを率直に言いますと、常勤じゃなしに非常勤で片手間なような感じを与えておることは好ましくない。むしろこういう制度を活用していって、そしてその人に適応した処遇をし、できるだけ早く社会に復帰させるという意味で、私は恩赦という制度を活用していきたい。  しかし、政令恩赦につきましては政令恩赦としての意味がある。また、その中間をいくものは基準恩赦であります。あることをチャンスにしてその人の更生をはかっていくというような行き方も、これも適切なことでありまするから、これは三つとも三つながら意味を持っておるのでありますから、それに沿って恩赦制度を活用していきたいということを昨日申したのであります。
  20. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、もう一度私、お尋ねをしておきたいと思いまするけれども、質問趣旨は、私がきょう特にお尋ねをいたしたいのは、最後に私が申し上げた点であります。要するに、政令恩赦にしろ個別恩赦にしろ、あるいは恩赦基準を設けるというにしろ、いずれにいたしましても常時恩赦あるいは情状恩赦といわれている恩赦制度を活用あるいは促進をするということで、当時の再審特例法案対象となった死刑囚の人あるいはまたその他の死刑判決を受けたという者について、常時恩赦制度を活用するということは、逆に言いますと、政令恩赦減刑あるいは個別恩赦におけるところの減刑、あるいはまた恩赦基準というものを設けて特に減刑をするという今度の沖繩恩赦の場合に、それは死刑囚は含まないのだ、排除するのだ、それは検討対象にしていないのだということになりかねないと思うのです。そうではなしに、あの常時恩赦恩赦制度を活用しますということは、逆に言うと、沖繩恩赦対象として死刑について減刑をするというふうな、沖繩恩赦対象としてそういうことを検討することの可否については、検討しておられないということを含むのかどうか。  しかし、私はそうでないと思うのです。問題は、四十四年に常時恩赦制度を活用するということで経過をしておるわけでありますから、すでに昭和四十七年、むしろ沖繩恩赦のときにおける恩赦対象たるべきではないか。その常時恩赦制度を活用するということは、何か聞き方によると、私、昨日の参議院法務委員会における答弁で非常に気にかかった点は、新聞の報道を見た限りでしかありませんけれども、常時恩赦によるのだというふうに限定的におっしゃったとすれば、むしろ沖繩恩赦対象にならないのだということになりかねないので、このあたり私は非常に問題があると思うのです。沖繩恩赦対象とすべきかどうかについては、検討されてしかるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  21. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 そういうことは、われわれ実は考えていませんで、沖繩恩赦といえども、死刑を除外して考えるというような考え方は持っておりません。すべてにわたって個別恩赦というもの、いわゆる基準恩赦でありますが、それに死刑囚は含まないのだという、そういう考え方一つも持っておりません。
  22. 中谷鉄也

    中谷委員 保護局長にもう一度お尋ねしておきますけれども、個別恩赦の中には、特赦減刑、刑の執行免除及び復権がございましたね。そこで、その個別恩赦というものについて基準恩赦、要するに恩赦基準をきめてやるという場合、要するに沖繩恩赦が行なわれたことによって死刑囚が無期になるということ、要するに常時恩赦でない沖繩恩赦という、そういうことによって死刑囚減刑というものが果たされる、あるいはそういうことが考えられるというふうなことを、お考えになっているというふうに承ってよろしいのでしょうか。
  23. 笛吹亨三

    笛吹政府委員 大臣もたびたび御答弁になっておりますように、事、沖繩恩赦ということになりますと、まだ全然御検討中のことでわかりませんので、沖繩恩赦ということではちょっと私は何も申し上げる資格もございません。  ただ、いまの何かの記念恩赦ですね、何かのときの記念恩赦で、政令あるいは特別基準を設けた恩赦というのがあった場合に、そういう者が入るのか入らないのかという一般的な問題としてということでお答え申し上げますと、これはそのときそのときの恩赦考えるべきことでございまして、そのときの恩赦をいかに評価し、どういう範囲、どういう罪の者をその中に入れるかということによってきまってくる問題で、抽象的にこれはどうだ、これはいけない、これは入るということは申し上げられないのじゃないかと思います。
  24. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、もう一度保護局長お尋ねしておきますけれども、常時恩赦というのは、まさにいつでもとにかく申し立てができる。それで沖繩恩赦の場合に、恩赦をするかしないかまだわからないというのが一貫した御答弁ですから、沖繩恩赦の中に死刑囚を含めますとか含めませんとかということを答弁される余地はないと私は思うのですけれども、その常時恩赦を活用しますということを強くおっしゃるということは、逆に言うと、それは沖繩恩赦死刑囚恩赦対象にすることの可否という検討から、除外をするというふうにとられかねない感じが私はしたわけなんです。今回恩赦をするかしないかわからないとおっしゃっているのだけれども、そのことを含めて、いわゆる沖繩恩赦の場合の可否沖繩恩赦をすべきかすべきでないか、するとすればどの程度含めるべきかということの中に、先ほど言ったような死刑囚の問題も含まれているのですね、含まれていると理解してよろしいのですねと、こういうふうに聞いているわけです。
  25. 笛吹亨三

    笛吹政府委員 その点は、先ほども大臣が御答弁になりましたように、今度の沖繩恩赦はまだ御検討中のところでございまするけれども、そういった死刑囚を特に排除をしようというようなことはないという御答弁でございますから、その通りだろうと思います。
  26. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、恩赦内容といいますか、態様、どのような恩赦かということについてお聞きすることが適当かどうかは別としまして、次のような点についてお尋ねをしておきたいと思います。  国連加盟恩赦の際には、先ほど私が引用いたしましたように、省議が開かれていることが記録の上で明らかでありますが、大臣のほうは、今回の恩赦にあたって、法務省事務次官省議をするようにというふうな御指示を与えられた事実はあるでしょうか。そういうような事実はないのか。要するに保護局刑事局矯正局、この三つの局が関係局の主たるものであろうかと私、思いますけれども、その三つの局について、沖繩恩赦態様範囲方法等についての話し合い、検討、そういうようなものはもうすでに命じておられると思うのですが、そのあたりについてお聞きしたいと思います。
  27. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私は、実は省議はもうしょっちゅう開くべきだという意見でありますが、省議というあまりかた苦しいものでなしに、省議メンバー懇談会ということをしょっちゅうやっておるわけであります。もとより事務当局としましては、今回の恩赦についても、先ほど申されましたように、矯正局なり刑事局なり各局いろいろな連絡があるわけでありますから、そういうところで寄り寄りいろいろな協議をし、いろいろと意見が出されておる。  私、こういうようなことで考えておりますので、要するに形式的な省議を開くかどうかということでありまして、実質的な省議的なことはいままでに何回も私やっておりますので、特に恩赦関係というので省議は開いておりませんけれども、大体のみなの意向なりはよくわかっておるつもりであります。
  28. 中谷鉄也

    中谷委員 この点はお答えいただけるでしょうか。要するに恩赦に関して、すでに保護局長あるいはまた事務次官名をもって、保護観察所あるいは各検察庁に対して通達通牒等はお出しになっておられるでしょうか。
  29. 笛吹亨三

    笛吹政府委員 今回の沖繩恩赦に関しまして、そういったような通達とか照会とか、そういったものは出したことはありません。
  30. 中谷鉄也

    中谷委員 では、大臣に一点だけお尋ねして御退席していただきます。  国連加盟恩赦の際に、保護局通達九六三号ないし九六五号、要するに「保護観察中の者に対する大赦事務の取扱について」ということで、恩赦大赦令案及び特赦等基準案事務次官から内示された。それでその事務取り扱いについて通牒された。二つ目は、保護第九六五号、法務事務次官発で、「恩赦実施について」として、本月十八日ごろと予想される日本国国際連合加盟に際し、大赦令を公布するほか、特別の基準による特赦特別減刑、刑の執行免除及び特別復権を行なう予定であって、目下のところ、別添大赦令特赦基準等案のとおり決定される見込であるから、実施の場合に支障を生じないよう、あらかじめ調査し、準備されるとともに、次の点に留意されたいので内示をする。もし基準案と違った場合には電信で知らせる。こういう趣旨基準案を内示したものが、大赦の一週間ほど前に出されておりますね。今回の場合は、そういうふうなものは出しておられないということでございますか。
  31. 笛吹亨三

    笛吹政府委員 先ほども申しましたように、今回の沖繩復帰に関する恩赦について、通牒その他のものを出したことはありません。
  32. 中谷鉄也

    中谷委員 私は、大臣に最後にお尋ねしたいのですが、内閣の専権事項にかかわることであるが、それがすでに委員会においても、それから世論も、選挙違反は除くべきであるということについてきびしい批判があって、この点について、もう時間もないようですから、とやかく申し上げるつもりはないのですけれども、通常の大赦といわれておるものは、刑の執行の者については直ちに釈放するというので、講和恩赦のときの恩赦の心得によりますと、その恩赦発布の日の前日十二時には釈放手続をとるようにというふうなことも書かれていたようであります。  そういたしますと、それはもう質問者のほうで想像しなさいというようなことになるのかもしれませんけれども、いま保護局長がおっしゃった点、いわゆるそういう基準案が今日の段階において示されていないということは、別に想像をたくましくすることの必要性というのはあまり認めないのですけれども、そうすると、国連恩赦のときのような大赦のようなものはしない、むしろ時間的にはもうできないというふうに理解するのが普通だと思うのですけれども、要するに、最近選挙違反を含めて大赦を行なうのだということが新聞等にも報道されておって、この点が一そう世論批判を受けておるようでありますが、そうすると、少なくともそういう選挙違反を含んだところの大赦というふうなものは行なわれるようには思えないわけなんですね。保護局長の御答弁が正確であり、あるいは電信等が発達をして、もう基準案等については、もっと近接した時間に、基準案あるいは大赦令等の案を前日に知らしておけば、それで間に合うのだということであれば別ですけれども、国連恩赦等のような大赦は行なわれないというふうに理解してもよろしいのでしょうか。
  33. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私は、別に前回の国連の場合がどうであったかということではなしに、今回やろう思えばあらゆることができる、また十分やれると思っておりますが、まだどういうことに決定するか未定でありますので、ただいま、ことに恩赦本質から考えまして、事前にわかるということは、これはもう厳に慎むべきことだ、あくまで内閣の責任をもってやるべきだ、かように考えておりますので、これ以上の御答弁はかんべんしていただきたいと思います。
  34. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣は御退席をいただいてけっこうです。  そこで、もう一度保護局長お尋ねしますけれども、国連恩赦のときには、十二月十三日付で大赦令の案と特赦等基準案が内示されておりますね。そういうことがないということは、正確な御答弁なんでございますね。そうすると、要するにそれが正確な御答弁だということは、国連恩赦並みの時間設定をすれば、内示なんかないということは、国連恩赦的なとにかく大赦は行なわれないだろうということになるわけなんですけれども、もう一度お尋ねをしておきます。これは沖繩国会のときの問題になりかねませんので、お聞きいたしておきますけれども、要するに、基準案大赦令案は各関係方面に通牒をお出しになった事実はないということは、はっきり言えるのですね。
  35. 笛吹亨三

    笛吹政府委員 その点は、先ほど答弁申し上げましたとおり、いままでは何も出しておりません。
  36. 中谷鉄也

    中谷委員 わかりました。要するに、いままではしておられないということは、十二月十三日発が出て、十二月十八日に国連恩赦が行なわれているわけですから、もし国連恩赦的な大赦が行なわれるとするならば、結局この時点においては、大赦令案あるいは特赦等基準案等は内示されておらなければならないだろうと私は思ったのです。  ところが、ないということを明確におっしゃったということは、どうもやはり国連恩赦のときとは様子が違う、やはり世論についての遠慮があるのだなという感じですが、今後、電信電話等が発達したので、十二日に閣議があって、そのあとでも間に合うのだ、あるいは係属件数も少ないとるいは刑の執行を受けておる者も非常に少ないということなのかもしれませんけれども、今後じゃ出すのかということになると、それは答えられないということになるのですか。今日の段階では出していないということだけは明確にお答えになったようですので、それだけ承っておきます。
  37. 笛吹亨三

    笛吹政府委員 今日までのところで出していないということは、先ほど申し上げたとおり、これは間違いございません。しかし、時間的にはまだありますから、これが国連当時と違うのだということには、それで直ちにならないという点を、ちょっと御了承願います。
  38. 中谷鉄也

    中谷委員 だから、そういう答弁の端々がむしろ問題なんで、私の誘導尋問にひっかかったのではないかと思うのですけれども、国連恩赦同様とならないかどうかということは、質問者の想像にまかせますということであるのであって、保護局長のほうから、国連恩赦同様になるのとは違うのだとは別に言っておらない。あえてそういう答弁をあなたは終始しておられないのだけれども、最初に言った、じゃ時間があるので、国連恩赦のような大赦をするのかなと、するほうに心証が来ますね。——もうよろしいですよ。だから、あなたは私の誘導尋問にひっかかったのだと思うのですけれども、国連恩赦のような大赦はしないとは言っておらないということは、するというふうに、むしろ常識的に弁護士だからとるのは当然だと思うので、これで私は、心証は若干私なりにとったのです。その点はそれでけっこうです。何もそういうことは、どういうことをされるかということを、ないものねだりに聞くことが問題じゃなしに、そういうことの可否の問題であって、そういうことは、もうすでに十分同僚委員のほうから質疑をしているわけですから、そこで、問題点をあらためてお尋ねをいたしたいと思います。  最初に法務省刑事局長にお尋ねいたしたいと思いますが、恩赦制度乱用司法権に対する侵害である、こういうふうに法務省の有力な意見は述べているのですが、刑事局のお立場から、恩赦制度乱用司法権に対する侵害であるという点は、どういうふうに理解をすべきことなんでしょうか。
  39. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 恩赦権乱用という問題につきましては、先ほど来御指摘なさいましたように、これは法的安全性を害するとかあるいは司法権侵害するとかいうことになろうかと思いますが、恩赦権の適切な運用につきましては、これは問題は別であるというふうに考えております。
  40. 中谷鉄也

    中谷委員 恩赦制度乱用ということが司法権に対する侵害法的安全性を害する、政治的に乱用することはみずから民主政治墓穴を掘る、これ以外に、第一線の検察官とは特に関係の深い刑事局としては、恩赦制度乱用というのは、どういう悪い影響を検察官に与えるでしょうか。
  41. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 これはもう申し上げるまでもなく、検察官は犯罪を摘発して、それに対して適正な刑罰権を実現していくという任務を持っておるわけでございます。その場合にも、あくまでこれはわが国の刑事司法のワク内でそれをやっているわけでございまして、わが国の刑事司法のワク内に恩赦制度というものもあるのは事実でございますから、検察官が一方で適切な犯罪の検挙をし、刑罰権の実現をはかっていくという反面、また別の恩赦制度の適切な運用によって、犯人の改善、更生がはかられていくということは、検察官全員がよく理解をしておることと存ずるのでございます。  ただ、恩赦権がたいへん乱用された場合には、せっかく犯罪を摘発し、厳正な適正な刑罰権の実現をはかっていこうという検察官の仕事というものにつきまして、士気を阻喪するというようなことも考えられるわけでございますが、これはあくまで恩赦権乱用された場合のことでございまして、適切な運用の場合においては、何ら士気を阻喪することはないと確信をいたしておるわけでございます。
  42. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、私は戦後の検察の歴史の中には非常に重大な、検察の独立のために非常に記憶すべき、避けて通ることのできないできごとが幾つかあったと思うのですけれども、それをお尋ねするのは別の機会にするといたしまして、国連恩赦のときに、恩赦制度乱用司法権に対する侵害だ、法的安全性を害する、特にこれを政治的に乱用することは、みずから民主政治墓穴を掘るものだ、こういうのがむしろ法務省の有力な意見であったと思うのです。  そこで、国連恩赦の結果、検察にはどういうふうな影響があったのでしょうか。こういう有力な意見は間違いであったのでしょうか。それともそういうふうな有力な意見は、その後、単なる杞憂でしかなかったのでしょうか。このあたりについて、この検察の独立、検察のあり方というものについて、検察官である刑事局長としては特に関心の深かったことだと思うのです。この点について、刑事局長の一般的な御所見を承っておきたいと思います。
  43. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 国連恩赦の当時どういうような議論がされたか、私、直接は存じないわけでございまして、ただいま御指摘のような記録が当省保護局の書きものに残っておるということのようでございますから、それはそれとして事実であろうと思うのでございます。  そこで、現在の立場におきまして国連恩赦のような恩赦が行なわれました場合には、これは私の記憶によれば、国連恩赦は公職選挙法違反について大赦が行なわれたということでございます。その場合には、検察官としては、なぜ公職選挙法だけについて大赦が行なわれたかということについて、いろいろな意見というか、あるいは見解を持ったことも想像できるところでございますけれども、現在の検察官は、先ほど来申し上げておりますように、やはりわが国の刑事司法のワク内で検察官の職分を全ういたしておるわけでございます。その刑事司法のワクで別に恩赦制度というものもあるわけでございますから、それの適切な運用ということにつきましては、何ら危惧を持たないであろうというふうに考えておるわけでございます。
  44. 中谷鉄也

    中谷委員 恩赦制度があって、それは内閣の専権に属するのだから、検察官はそれに従うということですけれども、検察官のそういう気持ち、そういうふうな検察官の感じ、あるいはそういうような検察官の一つ恩赦乱用国連恩赦に対する非常な失望、そういうふうなものは除去することはできない、人間はそういう制度には従っても、その人間の良心までは縛ることができない、こういう趣旨にお伺いしてよろしいのですね。要するに、検察の士気に影響したのだということがあったのかなかったのか。ぼくはあったと思うのです。そうじゃなかったら、この有力な反対意見というのは、単なる意見のための意見でしがなかったのだ。根拠あっての意見ですから、そういう影響はあったと私は思うのです。その点はいかがでしょう。
  45. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 その点は、私は現在、明確にお答えする立場におりませんけれども、想像するに、やはり大赦というものについて、一部の検察官は、御指摘のような一つの失望を抱いたということも、おそらくあったかもしれないと思うのでございます。  ただ私、この際、やや私見にわたるかもしれませんけれども、特に申し上げておきたいのは、検察官が検察を運営いたします場合に、刑事政策的な検察の運営ということについて、過去約十年間、検察の運営というものがそういうほうに非常に力点を置かれてきておるということは一つの事実であろうと思います。その場合に、検察の刑事政策的運営ということを考えました場合に、先ほど来御議論になっております恩赦、特に個別恩赦というようなものにつきまして、検察官の刑事政策観点からは、考え方というものが、国連恩赦当時とはまたたいへん変わってきておる面もあろうかと思います。そういうような検察の実情というものも、御理解を賜わりたいと存ずるのでございます。
  46. 中谷鉄也

    中谷委員 だから、今度の沖繩恩赦国連恩赦的な大赦が行なわれたとなれば、私は、やはり検察官の相当部分が、国連恩赦当時に受けたと同じような印象、気持ち、感じ、士気に影響するというふうな問題を生ずると思いますが、そういうふうに承っておいてよろしいんですね。
  47. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 これは、検察官が刑事政策的運営ということについて、昔よりはたいへん進歩してきておるのじゃなかろうかという一つの前提は御理解を賜わりたいと思います。  ただ、単純素朴に、一個の人間として、せっかく一生懸命に刑罰権の実現に努力してきたものが、結果的に大赦で吹っ飛ぶというような場合には、それは一つの自然人として、自分のやってまた仕事が結実をしなかったということについて、あるいは失望とか若干の感情を抱くことは、自然人として当然かもしれませんけれども、検察運営そのものの観点から見ますと、検察官の刑事政策的運営というものは、昔に比べてたいへん重視されてきておるということが言えると思うのでございます。
  48. 中谷鉄也

    中谷委員 刑事局長のおっしゃっているのは、何をおっしゃっているのかよく理解できないのです。私が申し上げたいのは、要するに、国連恩赦のときにこういうふうな有力な反対意見があった。その反対意見ということについて、そういう印象を受けるに違いない。今度の場合はそれと違うのだとおっしゃる、その意味がよくわからないわけなんです。  そこで、それはそれとして、次に警察庁の刑事局長さんに私、お尋ねしたいと思うのですが、大体の見込みでけっこうですが、参議院選挙と統一地方選挙で検挙された選挙違反の件数をお聞きしたいと思うのです。  それといま一つは、同じ質問なんです。警察庁の刑事局長さんにも、私、同じような御答弁をいただきたいと思うのですけれども、恩赦制度乱用というもの、要するに、国連恩赦のようなものが乱用だという意見が有力だったと思うのですけれども、恩赦制度乱用というものが警察、ことに刑事警察——刑事警察ということばは俗語だと思いますけれども、第一線の警察官、公職選挙法違反等を追及している警察官に与える影響というのは、一体どんな影響が考えられるでしょうか、この一点だけをお尋ねしたいと思います。
  49. 高松敬治

    ○高松政府委員 四十六年の参議院議員選挙の違反検挙件数は四千二百六十九件、六千二百二十二名。それから、四十六年の統一地方選挙については、検挙件数が二万一千七百三十三件、検挙人員が三万三名でございます。  それで、いまほどのそういう恩赦が行なわれることが、選挙取り締まりをやる警察官にどのような心理的な影響を与えるかという御質問でございますが、この点につきましては、私どもは取り締まりをやるにあたりまして、恩赦がこの次あるというふうなことを予想して別に取り締まりをやっているつもりはございません。いかなる場合でも、われわれは厳正な立場で取り締まりをやっているというのが根本的な立場でございまして、それによって、個々の警察官には、確かにいろいろな感情を持つ者も私はあると思いますけれども、全般的には、そう大きな影響があるというふうには考えられません。  これは、たとえば四十三年の前の選挙、たとえば四十二年の衆議院選挙、それから四十二年の統一地方選挙、こういうふうなものの数字を見ましても、若干数は減っておりますけれども、これは一般的に、数はだんだん減ってまいっているというのが戦後の一つの形でございます。特にそういう恩赦によって、たとえば国連恩赦の前の選挙と国連恩赦のあとの選挙で、たいへん件数ががた落ちした、取り締まりが、士気がゆるんだ、こういう事実はないように私は考えております。
  50. 中谷鉄也

    中谷委員 どうもきょうの法務省刑事局長、それから警察庁刑事局長の御答弁、私、非常に気にかかるんですよ。士気ががた落ちしたことはないということは、少しは落ちたということになるのでしょう。がた落ちしたことはないということは、士気は少しは落ちたということになる。これは気にかかりますよね。ですから、がた落ちしたことはないということは、がた落ちしてしまえば、もう警察としての値打ちはかたなしですわね。だから、がた落ちしたことはないということは、少しは落ちたんだということをいみじくもおっしゃったということで、私は、やはり恩赦の影響というのははなはだ大きいんだなという感じはいたします。
  51. 高松敬治

    ○高松政府委員 ことばがちょっと不適当であったと思います。私が申し上げるのは、恩赦が行なわれた、たとえば四十三年の恩赦が行なわれたことによって、その後の選挙違反取り締まりにそれが非常に大きく響いたというふうなことはなかったというふうに私どもは考えますと、こういうことでございます。
  52. 中谷鉄也

    中谷委員 だから気にかかるのですよ。非常に大きく響いたことはないということは、やはり影響があったということなんですからね。これは論理的にはそうなるでしょう。ですから、どう言われたっておかしいんです。やはりそういうふうな影響があるということをお認めになったと思うのですよ。私はそれは非常に貴重な意見だと思います。  そこで、次に私、最高裁の刑事局長さんにお尋ねをしたいと思うのですが、その前に、最高裁の総務局長さんにお尋ねしておきたいと思います。  先ほどから何べんも同じように私が引用さしていただいているのは、恩赦制度乱用というのは司法権に対する侵害だ、こういう法務省の中での有力な意見があるわけですね。ところが、前回西宮委員質問に対して、最高裁としては恩赦制度について発言すべきではないと思う、こういうふうにおっしゃって、それが最高裁の政治的中立なんだ、こういうふうにおっしゃったと思うのです。  そこで、それは一つの御見識だと思うのですけれども、考え方によりますと、われわれが当面しております、最高裁にも御関係のある法律の改正をめぐって、最高裁がとにかく非常な熱意をもって改正についての反対の立場のPRと、それから見解を述べておられる。私はこれは最高裁のあり方として正しいし、大いにおやりになっていいことだと思うのです。しかし、立法事項についてそういうことをおやりになるということは——司法、立法、行政の中において、司法権侵害が行なわれるというふうなことについて、最高裁判所が反撃をされるということは当然なことだ。それこそ私は、三権分立のたてまえからいってあたりまえのことだろうと思うのです。たとえば、国会と司法との関係においては、有名な浦和充子事件があった。これは国会の国政調査権に対して最高裁がチェックをされた適例であったと私は思うのです。  というふうなことを考えてみますと、恩赦制度について前回最高裁が、それについては全く見解を述べる立場にはないし、述べるべきではないんだと言われたことは、私はどっかに自己矛盾があると思うのです。恩赦制度について意見を述べないということなら、立法について、法改正についても意見が述べられないのだろうかというふうな感じを持つのですね。現在の当面している法改正について、最高裁が非常な反対意見を持って、それを各方面にとにかくPRしておられることについては、もうここ数年来おやりになっているのですから、最高裁はもう五、六年になるでしょうか、おやりになっているのですから、少年法改正について。そういうことについては、私は最高裁の立場はむしろ正しいと思う。そのことと、恩赦について意見を述べられないと言われる最高裁の考え方と、非常に私は問題があると思う。  これの関係で私は聞いておきたいのですけれども、憲法については順守すべきだ、しかし擁護すべきではない、とにかく憲法については順守すべきであって、擁護すべきではないのだという最高裁長官の見解というのは、少年法については、順守すべきであって改正に反対すべきでないんだということにもなりかねないんじゃないかと私、思うのですが、そんなものではないと思うのです。それを含めて私は総務局長にお尋ねしたいのですけれども、最高裁の前回答弁を維持されるのかどうか、このあたり、ひとつ簡単に御答弁ください。
  53. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 恩赦の問題については、本日、所管の局長が見えておりますので答えていただくことにいたしまして、この立法論につきまして、最高裁判所意見を述べるべきであるかどうかという問題について、前回にも申し上げましたので、まずお答え申し上げたいと思います。  申し上げるまでもないことでございますけれども、裁判所は、具体的な事件について具体的な事実の認定と、憲法、法律の解釈、適用を任務とする制度であることは、申し上げるまでもないことと存じます。  ただ、御承知のように、憲法の七十七条で司法事務処理その他に関する事項につきましては、規則制定権が裁判所に与えられまして、三権分立のたてまえの例外と申しますか、その限度では立法的な権能が与えられ、また国会法の七十二条で、国会出席いたしまして御説明申し上げることも許されておるわけでありまして、規則制定権、つまり最高裁判所の権能とされました事項、権限の行使につきましては、立法に関しても意見を述べるということは、これは許されることである、このように考えます。またそのために司法行政上の権能も、行政府を離れて裁判所に与えられている、こういう関係に立つと思います。  しかしながら、その限度を越えては、やはり職掌的に他の所管とされている事項について意見を申し上げることは差し控えるべきであるというのが、前回申し上げた趣旨でございまして、立法的勧告意見という熟しないことばで申し上げましたけれども、趣旨はそういうことでございます。たとえば、最高裁判所の機構改革の問題であるとか裁判所法の改正、ただいま御指摘の少年法の問題等は、司法制度の組織、権限そのものについての問題でございますので、御説明も申し上げ、意見も申し上げているわけでございますが、それに属しない事項として前回私は、意見を申し上げるべきではない、このように申し上げたつもりでござ  います。
  54. 中谷鉄也

    中谷委員 では、刑事局長に最後にお尋ねいたします。  要するに、恩赦制度乱用というのは司法権に対する侵害であるということは、先ほど法務省の政府委員の方、それから法務大臣、全部認められたわけです。司法権侵害というようなものがあっては裁判所の存在の意義というものは失われると思うのです。そういう点で司法権侵害があれば、侵害というものを黙認するということの中で裁判所の存在の意義は失われる。そういうことの中で最高裁判所刑事局長としては、法務省の中の有力な意見である恩赦制度乱用というもの、これは国連恩赦に関して特にそういう意見が出たわけですけれども、司法権侵害につながるのだという点については御見解はいかがでしょうか。  ことにそのことに関連して、これで質問を終わりますので、私まとめてお聞きしておきたいと思うのですけれども、例の水戸地裁の裁判官が分離して言い渡しをされた。これは言い渡しのやり方としては異例に属すると思うのですが、きょう私が申し上げたいのは、第一線裁判官というのはやはり恩赦というものについて、非常に率直に言って好感は持っていないという感じが私するのですが、むしろそれの一つのあらわれとして分離判決をされたのじゃないかと私はそんたくするわけなんです。そういうふうな第一線刑事裁判官の気持ちというものに、恩赦権乱用がどういう影響を及ぼすのか、このあたりを含めて二点お尋ねいたしますが、御答弁をいただきたいと思います。
  55. 牧圭次

    ○牧最高裁判所長官代理者 先ほどお話がございました司法権に対する侵害ということの意味が、私ども必ずしもよく理解ができておりませんので、その辺がよく答弁できるかどうかわかりませんが、たとえば恩赦制度も、先ほど辻刑事局長からもお話のございましたように、一つの刑事司法制度内の制度でございますので、制度がバランスをとってでき上がっておる限りにおいては、それがそれぞれ運用される以上は、司法権侵害ということに必ずしもならないかと思います。ことに恩赦制度は、一たん発生しました刑罰権を内閣の力で消滅させるという制度でございますが、それは立法によって刑罰があるいは廃止されたというような場合と同じように、裁判に影響を与えることはあろうかと存じます。結果的には反射的に影響を与えることにはなろうかと存じますが、それはそれなりの一つの合理的な目的を持った制度でございますので、それが適切に行なわれている限り、それを司法権に対する侵害というふうに言うわけにはまいらないのではないかというふうに思っております。  それから、恩赦に関して一般的にどういう意見を裁判官なりが持ったであろうかという点でございますけれども、そういう点について直接に調べたりしたこともございませんのでわかりませんけれども、個々的には、いろいろ先ほど辻刑事局長が申しましたように、自然人としていろいろな感想をお持ちになったことはあるのかもしれません。私どもはそれを特に調べたりしたことはございませんからわかりませんけれども、そういう感想はあり得たかもわかりません。しかし、そのことによって裁判の運営というものが影響を受ける、あるいはゆがめられるというようなことは、なかったというふうに私のほうは考えております。裁判所といたしましては、与えられた事件をそのまま適切に判断するということに全力を傾けていっておるわけでございますし、今後もそうするつもりでございまして、それによって影響を受けるということはなかろうというふうに考えておるわけでございます。
  56. 中谷鉄也

    中谷委員 質問を終わりますが、要するに最高裁判所の御見解は、私が恩赦権乱用司法権侵害になるという意見がありますがと聞いたことについて、恩赦が適切に行なわれれば、司法権侵害にならないという別のことをお答えになったような感じがいたします。それは私は非常に、何か問題を意識してすりかえられた感じがするわけなんです。どうも私、印象としてそういう感じを受ける。  それから、率直に言って、自然人としての裁判官と、憲法と良心に従って裁判をする裁判官を分けるということは、刑事局長御自身非常に練達の裁判官であられるわけですから、ほんとうにそういうことは可能かどうか。それは、ことに好きだとかきらいだという嫌悪の情でなしに、恩赦という制度に対しての、恩赦実施したということに対しての見解を裁判官がお持ちになるということと、裁判にどういう影響があるだろうか、あるいはまた裁判官がどういうことをお感じになるのだろうかということをお聞きしておるときに、自然人論をお持ち出しになったということは、私は必ずしも納得しないわけです。  しかし、三刑事局長とも、恩赦の行き過ぎが問題を含んでおるということを、言外あるいはまたことば少なに述べられたという点は、恩赦のあり方について、ことに選挙違反を含めてということについての問題点の一端は出てきたのではないか、私はこういうように思うわけです。  以上で、私の質問を終わりたいと思います。
  57. 松澤雄藏

    松澤委員長 沖本泰幸君。
  58. 沖本泰幸

    ○沖本委員 私は、現在係争中であるところの、いわゆる狭山事件につきまして御質問したいと思います。  事件昭和三十八年に起きたことであり、現在法廷で第二審に入っておる事柄なので、しばしばわれわれの領域を逸脱するような発言になるかもわかりませんが、その点は御了承願いたいと思います。  現在係争中でありますけれども、これは部落解放同盟がことしに入り、また昨年もずっとこの問題に関して、石川青年の無実を主張しながら、特に全国的にこの問題を取り上げて、国民に石川青年の無実を訴えております。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕 こういう事柄でありまして、ただ、現在訴訟が続行しておるということでこの問題に触れないというわけにはいかない問題であります。そういう観点からの御質問趣旨とお受け取りいただきたい、こういうふうに考えます。この無実を訴える中で、現在では捜査の段階はすべて終わっておるわけでありますけれども、以前に振り返りながらこの問題を明らかにしていくことができればというふうに考えて、御質問させていただきたいわけです。  まず、部落解放同盟中央本部が出しております「狭山差別裁判」という本があります。この結語という中に述べておる点を引用いたしますが、「われわれは、狭山差別裁判の経過と特徴について、その主要な点をくわしく検討してきた。これによって、警察・検察および裁判所が、一般的、普遍的に存在する社会意識としての部落民にたいする差別観念にもとづく差別的偏見と予断によって石川一雄を犯人にでっち上げ、極刑である死刑の判決をくだしたことが明らかになった。そればかりでなく、マスコミをはじめ世論も同じように別件逮捕と同時に石川を犯人であると信じこみ警察・検察・裁判所の差別捜査、でっち上げ、差別判決に手をかした。さらに弁護団もこれらに影響されてけっして意識的ではなかったにせよこの部落民にたいする差別的偏見と予断によって、“自白”と“自白”にもとづいて発見されたといわれる物証が客観的事実と一致しないことを積極的に明らかにする努力をつづけながら、一時期にせよ、ついには警察・検察によるでっち上げを認め、一審の差別判決を是認し、二審のはじめにおいてさえもなお控訴趣意書では石川犯人説を前提として重刑不当をもとめるという、決定的な誤りをおかすこととなった。」こういうふうに述べておるわけであります。こういう観点に立って一応御質問していくわけであります。  事件の概要は、重複するわけでございますが、ともかく一応当時に戻ったという立場から事件の概要を見ますと、狭山事件昭和三十八年五月一日、埼玉県狭山市川越高校入間川分校に入学したばかりの中田善枝さんが行くえ不明になった。同じ五月四日の午前十時三十分、山狩りの消防団によって死体となって発見された。それと、死体が発見される一日前、三日の午前零時十分ごろ、脅迫状の犯人と善枝さんの姉である登美恵さんが、犯人の指定する佐野屋という食料品店の前で会っているのである。そのとき、登美恵さんと犯人との問答は十分ほども続けられている。そのときに、佐野屋周辺に四十人もの刑事を張り込ませておった。だけれども、ついに逮捕することができなかった。このときに犯人を逮捕しておけば問題はなかったということになるわけであります。  当時の県警の刑事部長は、犯人を信用し過ぎた、まさか裏をかいて茶畑からやってくるとは思わなかったと、これは朝日の五月五日の記事ですが、こういうふうに述べているわけです。こういうところから見ると、大体犯人を信用すること自体がおかしいわけであります。四十人もの刑事を張り込ませておって、このいなかのところで犯人を逮捕できなかったということ自体が、われわれはなかなか信じられない。こういう問題点もあるわけです。まだ当時、いわゆる吉展ちゃん事件の直後のことであって、この事件のことで社会も騒然としておったわけでありますし、国会でも問題として取り上げておったときであります。  六日には、中田家の元作男であった奥富玄二が自殺した。現場近くに住む犯人らしい男が自殺したというような情報に対して、篠田国家公安委員長は、こんな悪質な犯人は何としても生きたままふんづかまえてやらなければと歯ぎしりをしたと、これは埼玉新聞の五月七日の記事でありますけれども、こういうふうに言っている事実があります。こういうことで、結局、奥富玄二の自殺の背景や要因を十二分に捜査せずに、生きたまま逮捕するというところに全力を尽くしたという辺に問題があるのじゃないかというような点が一点あるわけです。  このとき、この辺の部落民に対する差別的偏見と感じられるような見込み捜査が、すでに予定されていたのではないかという疑いが持たれてくるということになってまいります。たとえば、奥富さんの場合には、家族の証言だけでアリバイを認めた。ところが、現在も裁判を行なっておる石川青年の場合は認められなかった。それ自体が、部落民に対しては差別的偏見であると考えられるわけです。  こういう観点から、今後もいろいろ問題も出てまいりますけれども、現在も社会的に差別問題がいろいろ云々されるわけでありますけれども、いわゆる警察当局として、こういうふうな差別問題に対してどういうふうなお考えをお持ちなのかという点について、お答えを願いたいと思います。
  59. 高松敬治

    ○高松政府委員 一般的に申し上げまして、差別問題につきましては、私どもはそれによって特別に捜査を左右するというふうなことは絶対ございません。社会的に非常にむずかしい問題でございまして、これに対する警察の対処のしかたというものも、私自身も地方で勤務しておりましたときもいろいろなことがございました。そういう点で相当こまかい配慮を払ってやってまいってきておるつもりでございます。  本件の狭山事件につきましては、そういう差別問題というふうなことの先入観から事件の捜査をやったということは、これはもう全くございません。このことは明確に申し上げられると私は思います。
  60. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そういうお答えになるだろうとは予想されるわけでありますけれども、またそういう偏見があってはならないわけですけれども、捜査のあり方、いろいろな現場のやりようによっては、逆に差別している、こうとられる場合が非常に多いわけですね。この点は、今後も十分な考えをもっていろいろな、これからの捜査なり事件の処理に当たっていただきたいことをお願いしたいわけであります。一般の人たちにおいても、頭の中で差別する考えはほとんどないわけなんですが、態度とか短い発言の中に無意識的に差別したことばを発言してみたり、そういうことのために、問題を全部すりかえられてしまうような内容にまで問題が発展していく、こういうこともあるわけでありますし、この差別という問題は、ただ部落民だという差別ではなくて、あらゆる問題に対する差別概念、こういう問題を私たちは現在の社会の中で十分とらえなければいけない、こういうふうに考えるわけであります。  事件に戻りますけれども、警察は、現地の石田豚屋に常日ごろから出入りする部落民二十数名の者を集中的に見込み捜査をやった。この検査は、筆跡、血液型の採取、アリバイなど、五月八日から五月二十二日ごろまで、約十四日行なわれた。  また、犯人は知能程度が低く、土地の事情に詳しい者、犯人は二十万円を大金だと考える程度の生活をしている者だと言っている。何にも証拠もつかんでいないときに、何を基準としてこういうふうなことが言えるのか。これも単なる発言なんですけれども、だけれども、逆のほうから考えるとこういうふうになってくるわけです。そういう点もよくお考えいただきたいわけですけれども、まだ何にも証拠がないときに、こういう御発言を現地の警察当局でやっているという点にこういう疑問が出てくる。こういうところから、すでに部落民に対しての差別概念を持っておったのだろう、こういうことになってくるわけであります。この点も十分お考えになってお答えもいただきたいと思いますが、時間もございませんので先に進めます。  今度は石川青年の別件逮捕という問題になるわけでありますが、五月二十三日早朝自宅で逮捕された。当時の中特捜本部長は、記者会見で、善枝さん殺しの容疑者は詐欺、横領など、殺人とは別の容疑で逮捕するようなことはない、あらゆる物的証拠をそろえて、そのものずばりの殺人容疑で逮捕令状を請求するつもりだ、こういうふうに記者会見で発表されておるわけです。しかし、物的証拠やアリバイなどが思うようにとれなかったために、捜査本部のほうでは短期に解決するために、違法な法律技術である別件逮捕を強行した、こう考えられるわけです。  このような別件逮捕が許されていいかどうか。これは、最近の判決の中にも非常にいろいろ出てまいりますけれども、こういう類似事件というものを十分お考えいただきたいわけであります。ですから、こういうふうな別件逮捕の扱い方というものは、この前も当委員会でいろいろ問題になったわけでありますけれども、こういうふうにあとになって、それですりかえられたんじゃないかという点を指摘されるというような点も、十分内容的に明らかにして、そういう疑いを持たさないような捜査のあり方なりというものをお考えいただきたい、こう考えられます。ですから、別件逮捕によって——いままではしっかりした証拠を突きつけて逮捕すると明言をしておったものが、別件によって持ってきたというふうに、現在も裁判続行中ですから、そう言われるということにもなるわけであります。この点についてもお答えいただきたいわけです。  それから、石川青年の逮捕理由が次の三つにあるわけなんですけれども、第一番目は、接触事故を起こし、相手の青年をなぐった暴行容疑。それから二番目が、友人の作業衣をトラックの運転台から盗んだという窃盗容疑。三番目は、中田栄作方に脅迫状を出し、現金二十万円を奪おうとした恐喝未遂容疑ということになっているわけであります。  一番目の暴行容疑につきましては、事件を起こしたのは相手方のほうから事件を起こしたのであり、現場には警察官も立ち会って、示談で話はついておるということが明らかになっているわけです。二番目の窃盗容疑は、仲のよかった友人の作業衣を寒かったので着て帰った、こういうふうに言っておるわけです。友人もそれを認めておって、洗って返せと本人にも友人のほうから述べておる。三番目の脅迫状については、石川青年が書いた自筆の書類何枚か集めて鑑定したけれども、何も確証がなかった。で、鑑定を求めたのは五月二十二日であったけれども、捜査本部が発表した中では、何の確証も得られなかったという点を発表されておるという事実。それから五月二十四日に出ている朝日の記事によりますと、捜査本部が石川青年の逮捕請求に踏み切ったのは二十二日昼過ぎ、こう言われている。これは新聞に載っているわけです。警察は全く証拠に基づかない見込み捜査、部落民に対する差別、偏見と予断に基づいて、石川青年逮捕に踏み切ったのであると報道された。  こういう内容をずっと捜していきますと、それが当時逮捕したときの真実であろうと私たちは考えられるわけです。この点について、いままで数点お伺いした点、かためてお答えいただきたいと思います。
  61. 高松敬治

    ○高松政府委員 茶畑での張り込みの問題でございますが、これは、私ども警察の完全なる失敗であったというふうに考えております。私ども、あとになってからでございますけれども、その現場を実際に見て、いろいろ検討会もやったわけでありますが、非常に広い茶畑で背が低いものですから、張り込み員が非常に分散し過ぎて連絡がとれなかった。で、話しているという事実さえなかなかそれがとれないし、連絡もできなくてついに逃げられた。通信器材も十分の用意がなかったということで、この張り込みについては、私どもも非常にこの点は警察としては大きな失敗であった。これを先訓にして、こういうことのないように、通信器材の整備その他をもっとやろうということで、昭和三十八年の第二次の刑事警察の刷新の強化対策の糸口になった問題でございます。  それから、奥富という人が自殺をした。これについて何も調べないでやったというふうなお話でございますけれども、これにつきましては、当時の記録を見てみますとかなり調べております。それでこの事件に奥富は関係がないということの結論を出しているわけでございます。これは全然ほったらかして、単なる見込み捜査で石川に行ったということでは絶対にございません。  第三番目の、知能程度が低いとか、あるいは二十万円を大金と思う生活程度とかいうお話でございますが、これは二十万円を要求した脅迫状の中身が、たいへん誤字も多ければ脱字も多い。それから文章も非常にまずい。だから、これは学校でたいへんよく勉強してきた人間ではおそらくはなかろうという推定が、これは脅迫文自身から出てまいります。たとえば、警察には言うなということが書いてありますが、警察というのは刑事の「刑」にお札の「札」という字が書いてあるというふうな状態でございまして、そういう点からの推定はある程度この事件についてはできる。  それから、土地勘が非常に強い。あの現場と、それから中田栄作方というふうなあて名をよく知っている者、そういうふうなものでずっと考えていきますと、これは土地勘は非常に強いというふうな推定も十分にできます。大体あの周辺の人間であろうということで、その辺の足どり捜査から、土地勘のある者から捜査が展開されていったのは、これはもう自然の形であろうかというふうに私は考えております。  それから、二十万円が高いか安いかというのは、これはいろいろ考え方があろうかと思いますけれども、そういうことでまんざら見込みだけでものを考えてきたというわけではない。いろいろな事由に基づいてこれを考えていっているということは申し上げたいと思います。  それから、別件逮捕の問題ですが、これにつきましては、いまあげられました暴行、窃盗容疑というものは、私は今日考えてみても、こんなものはくっつける必要はなかったと思います。ただ、恐喝未遂で逮捕した。この恐喝未遂というのが、被害者のうちに身のしろ金二十万円を要求した脅迫状を投げ込んで、そうして被害者の姉に二日の晩に持参さして喝取しようとしたものでございます。これはいわば殺人犯人と別にやったのか、あるいは殺人犯人自身がそれをやったのかということで、一つ事件自身と密接な関連を持っておるもの、そういう意味で、いわゆる別件逮捕というものについて、これはいろいろ考え方があり、裁判例も幾つかいろいろなものが出ておるわけでございますけれども、本件の事件については、いわば軽い罪、軽微な犯罪で本人を逮捕して重大な犯罪を取り調べるという形の別件逮捕ではないということでございます。  ただ、これもこのあとで、第一次の判決が出ましたあとでの判例、評論の中でもそういう趣旨のものがありますが、私どももとにかくそういう恐喝の手紙と、それから中田善枝さんの身分証明書、二つそろえて投げ込んでいるこの事実からいえば、むしろ本件ずばりでやったほうがよかったんじゃないか。それを非常にそこで大事をとって、恐喝の犯人が必ずしも殺人犯人ではないかもしれない、こういう頭で途中で切り離して逮捕している。この点がむしろ、私はずばりのほうがよかったというふうに思いますけれども、当時としてはそういう考え方であった。したがいまして、いわゆる最近特に批判のきびしい別件逮捕、一番典型的なのは、非常に軽い罪で、起訴にもならないような単純な罪で引っぱって重大な犯罪の自白を求める、こういうやり方の別件逮捕とは、形が非常に違った事件である、そういうふうに私どもは考えております。
  62. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ただいまお答えの別件逮捕に関してでありますけれども、取り調べの内容につきましては、連れていかれていきなり、善枝さんを殺しただろうというところから、弁護士や狭山市長と名のる人物、または取り調べ官が、被告の手を引っぱったり、あるいは肩をこづいたり、被害者の絵をかいた紙を示して、はさみで手や足を切ってみせたり、おまえが善枝さんを殺していなくても、他の者がおまえがやったと言っているから、こういうふうな言い方をやっている。いろいろなそういう点があるわけです。こういう点を本人が述べているわけです。  こういう観点から見てくると、結局別件で逮捕して、それでこういうところへスライドしていったんじゃないか、こういう疑いを反対側からは持たれる、こういう立場になってくるわけです。こういうことでは、内容をすりかえているのではないかというふうに考えざるを得ないということになってくるわけであります。  また、本件につきまして、当時の当法務委員会でも、捜査当局が部落民に対する本件の取り調べあるいはその別件逮捕の不当性については、相当きびしい質問があったわけです。それで当時の中垣法務大臣は、石川青年を、真犯人であるかどうかわからないのに、真犯人であるような印象を与えたということは遺憾であると、これは当時の六月十五日の毎日新聞に出ているわけですけれども、法務大臣があやまっている、こういうふうになっているわけです。ですから、そう考えられる内容が十分あったということにもなるわけであります。  いま私が論議していることは、いま論議したところでどうしようもない問題で、もしそういう違法性があるということで、警察当局のほうで、この事件は違法性に基づいて捜査がなされましたということで、事件の再捜査とかいうことにならない限りには、このまま裁判所のほうで審理は続けられていくという内容なので、むしろ警察当局としてもその時点に立っては、それは間違いなかったのであろうという断定をお下しになった御答弁をなすっていくだろう、こういうことは予想されますけれども、こういうことを、ひとつ先ほどおっしゃったように先訓として、今後あってはならないということ、あるいはお答えは得られないとは思いますけれども、いや、そういう事実はあったんだ、こういうようなお答えが得られるかどうかという点に、わずかの希望を託しながら御質問しているというふうにおとりいただきたいわけです。  こういう点からも、確かにそういう点で違法性なり取り調べに対して無理があったというような点について、そういう質問があって、それが間違いのないようなことであったために法務大臣が陳謝なさった、こういうことになるのじゃないかというふうに、いまから振り返るとなります。そういう点も考えてみると、やはり疑義が残るということになってまいります。ただここで論議しているのではなくて、これは一人の人が死刑になるかならないかというような、無実であったかなかったかというような重要なことにかかってきておりますので、この点私も真剣にお伺いするわけですが、ただ当時はこうであった、ああであったという軽いお気持ちではなくて、現実に当時に立ち戻っていただいて、無実であったならば何とかして救ってやらなければならないという御観点に立って、御答弁なりお考えをいただきたいと思うわけであります。ですから、本人にしてみれば簡単に済む問題ではないわけであって、ただ法務大臣があやまっただけで、では死刑になっていいというわけではないわけであります。こういう点もお考えいただきたいわけであります。  ここで一番の問題になる争点は、刑事局長いきなりお答えになった、別件逮捕であるか再逮捕であるかという点にかかってくるわけであります。当時裁判所のほうでは、三人の弁護士に石川一雄を保釈する、こういうふうに告げられて、石川青年は保釈されたけれども、今度は、いまおっしゃったようなはっきりした殺しの容疑で、十七日三時ごろ再び逮捕されて川越警察署の分室に送られたということになるわけであります。警察はその前日、もよりの浦和地裁の川越支部ではなくて、小川簡易裁判所に手を回して逮捕状を受け取ったという事実がある。こういう点なんでございますが、こういうようなことはしばしばあるのでしょうか、ないのでしょうか。
  63. 高松敬治

    ○高松政府委員 最初に脅迫状についての恐喝未遂ということで逮捕いたしましたが、このときには、たしかいまお話しの正式な筆跡鑑定の結論は出ていなかったかと思いますけれども、あの字は非常に特徴のある字でございまして、本人のものと非常に類似しておるということから、少なくとも脅迫状についての犯人であることは間違いがないという印象を警察当局としては強く持ったというふうに私、記憶いたしております。  取り調べの不法という問題でございますが、これについては当時もいろいろ議論がございました。しかし、私ども埼玉県警について調べたところでは、そういう事実はないということでございます。当時は狭山町に刑事一人について報道陣が二人くらい尾行する、どこへ行っても刑事の数より報道陣が多いといわれたくらい、非常に大規模な報道陣があの地帯で取材活動を行なっていた。狭山警察署もいまの警察署と違いまして、たしかあれは警部補派出所のあとかどこかで、取り調べをやっていると外まで声が聞こえる。ある新聞社はその横でそれを聞いておったというような事実もございまして、それで川越分室へ移すことになったような経過であったと思うのです。  それから、もよりの裁判所にやらないで遠くの裁判所へ請求したというお話でございますが、この理由については私ちょっとつまびらかにいたしておりません。一般的には、御指摘のようにもよりの裁判所に逮捕状を請求するのが普通でございます。ただ、たとえば報道陣の目をくらますと申しますか、そういうことの必要がある場合には、時として遠くの裁判所に令状を請求する場合も現実にはなしといたしません。これはしかし、別にそういう遠くの裁判所へやったから裁判所の令状が甘く出るとか、近くの裁判所にやったから辛く出るとか、簡裁だから地裁だからどうということはなく、令状の審査には正式の裁判官が審査をなさるわけですから、そういう点で警察が手を回して遠くへやったとおっしゃられると、それは事実とは違うのではなかろうか。ただ、具体的にどういう必要があってどういうことから小川簡裁に請求したかということは、私、実は承知していないところでございます。  先ほども申し上げましたが、この事件は吉展ちゃん事件と並びまして、刑事警察が非常に無力だと、その犯人がつかまらないということについて世間から非常な非難を受けて、警察の内部としても刑事警察の刷新強化をやるべしということで、当時真剣に私どもこれに取り組んだわけでございます。そういう点で事件自身としては、捜査技術的に見ればいろいろな失敗もございました。やり方のまずさもいまになって目につく点もございます。しかし、捜査のやり方の改善をはかっていくということに重点を置いておりまして、私はこの事件の直後に捜査一課長に就任いたしまして、この事件をあとからフォローしたわけでございますけれども、私のフォローした感じでは、この事件の真犯人は石川青年であるというふうに私は確信いたしております。
  64. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、報道陣の目をくらますためとか、そういうふうな必要に迫られて地裁で令状をとらずに簡裁あたりへ持っていくようなこともしばしばあるということになるわけでありますね。現在もそういうケースはいろいろ行なわれるわけでありますか。
  65. 高松敬治

    ○高松政府委員 この点、当時の人間がやめた人が多いものですから、この事件についてどういうことでそうやったのか、ちょっと私ども明らかでない。しかし、一般論といたしましてはそういうことはございます。たとえば私が静岡で勤務しておりましたときに、清水の事件について、逮捕状の請求を浜松の裁判所に請求したということがございました。いろいろなことから、ある場合には少し離れたところに持っていくという場合も、秘密の保持ということからいってあり得るわけでございます。
  66. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そこで、分室なるものが、写真で見ましたけれどもたいへんな建物なんですね。そういう必要性に迫られて使用したということをおっしゃっておるわけですけれども、そのままでは使えない建物を、夜おそくまでかかって、有刺鉄線を張ったり杉板の門をつくったり、わざわざそこを整えた。こういう点が、結局一般人より差別してそういうところで取り調べを行なった、精神的にもそこにいろいろなものを加えておる、こういうふうにとられるということになってくるわけなんです。結局、刑事局長がいまおっしゃっている点が、いままでもずっとそうなんですが、とった処置そのものが、結局は差別問題、差別状態というものをかもし出してきている。そして差別であるというふうにとられるような内容になってしまっているという点については、これは今後も十分お考えいただきたいし、御注意もしていただかなければならないんじゃないか、こう考えられます。  先ほど御答弁もありましたけれども、報道陣がずいぶんおったということであれば、むしろ相手の人権を十分考えて、もっと充実したところで調べを行なうなり何なり、そういう点の配慮が必要ではないか。こういうことをすれば差別しているととられてしまう。われわれは差別感はないんだというのであれば、差別のないような内容のところに持ち込んでいって問題をやっていくということのほうが、十分配慮があったと言えるんじゃないかということになりますし、その逆であった場合は、差別しておった、こういうふうに言われてもしかたがない、またそうであったということが言えるのではないか、こう考えられるわけであります。いかに予算がないにいたしましても、こういうふうな昔ながらのこういう方法が、現在も行なわれているのかどうか。有刺鉄線を張ったり杉板で門をつくったり、こういうふうな代用の留置場というもので、現在もこういう形で留置されたり調べられたりするようなことがあるのかどうかという点について、お答え願いたいと思います。
  67. 高松敬治

    ○高松政府委員 取り調べの場合に、取り調べの環境が取り調べに非常に影響することは事実でございます。たとえば車の音が非常に激しいところ、それから物音がざわざわしてどうしても落ちつかないところ、それからあまりそばまで人が接近できるような場所、そういうふうなものは一般的にはなるべく避けたほうがいいというふうに私も考えます。  そこで狭山の場合に、川越分室に移しましたのは、先ほど申しましたように署が非常に老朽して、しかも非常に小さくてたいへん不便な建物であったということが一つの大きな原因でございまして、たまたま川越署の分室というもの、これは私は実際見ておりませんが、そこへ移して取り調べるということになったと思います。こういうふうな事例は、たとえば最近では大久保清の事件がございます。あれば前橋警察署に置いておきましたのを松井田の警察署に移して、そこで取り調べを行なった。前橋警察署の中では、留置人の数も非常に多いですし、調べもなかなかうまくいかないというようなことから、ああいう措置がとられたわけでありますけれども、おそらく川越分室を選んだのも、一つは、そういうような取り調べる環境を静かなところにして取り調べをやるということで考えたものであろう、それに必要な措置とか音が漏れないようにというようなことの配慮から、有刺鉄線を張るというふうなこともやったのであろうというふうに私は想像いたしております。ただ、それが一つの部落差別ということからそういうことをやったのではなしに、むしろ取り調べる環境ということを考えて、そういうふうにやったんだというふうに私どもは存じております。
  68. 沖本泰幸

    ○沖本委員 刑事局長のお答えなんですけれども、結局、先ほど申し上げたような無理な取り調べがあった。いろいろ肉体的にも圧力が加えられ、あるいは精神的にも圧力を加えられた。それで結局ここの、いま述べたような特設の取り調べ室ですね、分室におって、一カ月にわたって取り調べを受けた、こういうふうに言っているわけであります。ですから、そのあげく抗し切れなくなって、自分は犯罪を犯したということを認めた。だから、結局抗し切れなかったという点を本人は述べておるわけですけれども、こういうふうな客観情勢、あるいは先ほど述べたような内容からわれわれが想像しても、そうならざるを得ないのじゃないかと考えられるわけでありますけれども、こういう点について、いまになってあったかなかったかという点については論議してもしかたのない問題ではありますけれども、こういう内容考えると、確かに人権を侵されているんじゃないかということも考えられるわけであります。   〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕  ですから、そうなってきますと、本人の自白自体に信憑性が非常に薄いということも考えられるわけであります。ですから、こういう点について私たち非常に遺憾だ、こう考えるわけでありますが、この点についてはいかがでありますか。
  69. 高松敬治

    ○高松政府委員 事件の証拠についての評価なり見方なりというもの、あるいは供述の任意性その他の問題については、いろいろ御意見があろうかと思います。  ただ、たとえば単なる自白だけではなしに、あの場合における万年筆の問題ですね。これもその本によりますと、警察が途中で作為してかもいに置いたというようなことを書いてありますけれども、そういうことは私は絶対ないと思う。そういうふうな物的なものも幾つかそこに裏づけがある。自白の強要によってこの事件死刑の判決を受けているということではないと私は思っております。
  70. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いま刑事局長がおっしゃったように、物的証拠的なものもいろいろとおつくりになったということを述べておるわけですが、いま言ったような取り調べ室自体、あるいは五月、六月というような気候、こういう問題、有刺鉄線、そういうところで特に隔離されて調べられておるというような内容ですね、こういうふうな客観情勢から見ていくと、あるいはということが考えられるような状況が出てくるわけです。こういうような点はいろいろと言われてもやむを得ないような状況ではなかったか、こう私は考えられるわけであります。ですから、そこではっきり裁判をくつがえすほどの反対のものをこちらから出せる出せないということになってきますけれども、この場合は議論の段階で申し上げているだけでありますから、はっきりしたことが言えないわけですけれども、こういう客観情勢からでも、そういうことが言えるという点については私は遺憾である。もう少し状況を考えて、あとあと問題を起こさないような、また逆にそういうふうにとられないような取り調べの内容があってほしかった、こういうふうに私は考えるわけであります。ですから、今後は十分この点をお考えになって、今後の取り調べに応じていただきたいというふうに私は考えるわけであります。  そこで、議論のやりとりだけで終わってはならないわけでありますけれども、それと同時に客観的な状況として、この事件の捜査の段階で異常ななくなり方をしている周囲の人たちがおるという点でありますね。奥富玄二、田中登、中田登美恵、石田登利造、こういう四人も連続して自殺をしている、関連している人たちが。こういうところにも、客観情勢から異常なものを感じてくる、こういうことになってくるし、その方々の死因もあいまいだという点でありますが、この点はいかがでありますか。
  71. 高松敬治

    ○高松政府委員 いまお話しになったように、死因の点につきまして記録を調べてみましたが、かなり捜査をやっております。それから、実際に遺書がある者もありますし、そのほかのいろいろな原因の推定される者もございます。ただ、この人たちについては、捜査の結論としては犯罪には関係がないということでございました。具体的にどういうことが動機か、どういう問題であったのかということについては、やはり御本人の名誉の問題もございますし、私どもとしては答弁は差し控えさしていただきたい、かように思うわけです。  ただ、申し上げられることは、これらについても、かなり突っ込んだ捜査を一応やっておるということは申し上げられると思います。
  72. 沖本泰幸

    ○沖本委員 次は、最後になるわけでありますが、弁護団側の請求した証拠、証人、これは裁判所の決定事項になるわけで、大部分を却下されたということであり、採用された証人も、十三人の中から四人だけだったというような点の状況も出ておるわけです。これは当委員会で取り上げるべきような問題ではないわけでありますけれども、こういうふうにわれわれが周囲のほうから客観的に見ていって、いろいろ述べられておる内容を見ていっても、これはすごくおかしいじゃないかというような内容がしばしば出てくるわけです。  そういうことで、ただ単にここで議論だけで終わるということ、そのこと自体が、一人の青年の死刑という判決を中心とした中の審理がいま行なわれておって、一人のりっぱな青年が、無実の罪で死刑になるのかならないのかという大きな問題、こういうことが、不明のままあるいは疑問を持ったままで判決がおりるのじゃないかということになってくると、われわれとしては非常にやり切れない気持ちが出てくるわけでありまして、そういう問題を中心にして、そこにある内容あるいは捜査の段階のいろいろな問題点の中に、疑義を持たれるものが幾つか出てきておるということになってくるわけであります。そしてその客観情勢も確かに差別していっているのじゃないか、差別があるじゃないか、そういう状況のもとに事件の捜査が行なわれ、犯人が逮捕され、裁判になったという内容考えていきますと、これは相当お考えになっていただきたい問題が多数あるということであり、今後もやはり捜査にあたっては、人権を中心にした捜査を行なっていただかなければならないわけでありますが、私がいまここでどんなことを述べてみましても、これはただ述べるだけに終わるだけであって、問題は裁判にかかっておるという点なので、抽象的なことになって非常に残念ではあるわけなんですけれども、今後のために先訓としていきたいという点も刑事局長お述べになっていらっしゃいますので、この事件を振り返っていただいて、今後のために刑事局長の御所見を伺いたいと思います。
  73. 高松敬治

    ○高松政府委員 沖本先生もおっしゃいますように、いまとにかく二審に公判係属中の事件でございまして、私どももその点は、私どもの立場からいろいろものを言う場合も、私ども自身やっぱり警察の立場というものからどうしても離れられないことになります。その点で、必ずしもこまかくいろいろ事情を御説明するわけにもいままいらないと思うのです。  ただ、はっきりここで申し上げられるのは、いま御指摘になりましたように、捜査自身が、かりに警察として正しいやり方であったと考えてみても、世間から見ていろいろな非難を受けるあるいは批判を受ける捜査はやるべきではない。やはりすべての人が納得し、すべての人がこれはもう当然のことだ、あるいはもっともな捜査だ、こういうふうな捜査の方法にぜひ私どもは持っていきたい。私どものことばで言いますと、被疑者自身がほんとうに納得して刑に服するような捜査、そういうものがこれからの捜査の中心でなければいかぬということで、なかなか理想どおりにはものごとはまいりませんけれども、少なくとも狭山のころといまとは、捜査方法においてかなりの進歩があり、改善がなされてきた。この事件は、そういう意味では、いろいろな意味において警察内部の捜査技術上の問題としても非常に大きな教訓を残しまして、私どもとしてもそういうことを無にしないで、ほんとうにおっしゃるように人権中心のりっぱな捜査のやれる警察に仕立てあげたいと思っておるわけであります。  ただ、私、狭山関係のものを一、二読みましたけれども、私どもの目から見ると、やはり相当誤解されておる、あるいは事実を曲げられておるのじゃないかと思われるものもいろいろございます。そこで主張されていることが全部正しいというふうには私、考えませんけれども、しかし、われわれとしては、先ほど申し上げたようなことで、確かにいま御指摘のありましたように、そういうようないろいろな非難を受ける余地のない捜査をこれから展開する、そういうふうに三十八年以来指導を続けてまいっておるところでございます。
  74. 沖本泰幸

    ○沖本委員 終わります。
  75. 松澤雄藏

    松澤委員長 次回は、来たる十二日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十八分散会