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1972-03-24 第68回国会 衆議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十四日(金曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 松澤 雄藏君    理事 小島 徹三君 理事 田中伊三次君    理事 高橋 英吉君 理事 羽田野忠文君    理事 畑   和君 理事 沖本 泰幸君       石井  桂君    大竹 太郎君       千葉 三郎君    村上  勇君       石橋 政嗣君    河野  密君       中谷 鉄也君    林  孝矩君       吉田 賢一君    青柳 盛雄君  出席政府委員         警察庁刑事局長 高松 敬治君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君  委員外出席者         参  考  人         (専修大学教         授)      平出  禾君         参  考  人         (東京大学教         授)      藤木 英雄君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   楯 兼次郎君     中谷 鉄也君   正木 良明君     林  孝矩君   麻生 良方君     吉田 賢一君 同日  辞任         補欠選任   中谷 鉄也君     楯 兼次郎君   林  孝矩君     正木 良明君   吉田 賢一君     麻生 良方君 同日  理事沖本泰幸君同月二十二日委員辞任につき、  その補欠として沖本泰幸君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  火炎びん使用等処罰に関する法律案高橋  英吉君外七名提出衆法第一号)      ————◇—————
  2. 松澤雄藏

    松澤委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任に関する件についておはかりいたします。  去る二十二日、理事沖本泰幸君が委員辞任され、理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行ないたいと存じますが、先例により委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松澤雄藏

    松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、理事沖本泰幸君を指名いたします。      ————◇—————
  4. 松澤雄藏

    松澤委員長 高橋英吉君外七名提出火炎びん使用等処罰に関する法律案を議題といたします。  本日は、参考人として専修大学教授平出禾君東京大学教授藤木英雄君が御出席になっております。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  両参考人には御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。当委員会におきましては、本案について慎重な審査を行なっているのでありますが、本日、両参考人の御意見を承りますことは、当委員会審査に多大の参考になることと思っております。何とぞ、参考人には忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いいたします。  それでは、まず参考人から御意見をお述べいただき、その後に委員質疑にお答えいただくことといたします。  なお、お願いを申し上げますが、質疑応答のときには、委員長の許可を得て御発言をお願いいしたいと思います。  では、平出参考人にお願いいたします。平出参考人
  5. 平出禾

    平出参考人 火炎びん使用等処罰に関する法律案を拝見いたしまして、まず全体的な印象を申し上げます。  この法案提出されました時期はまことに適切であろうと思いますし、内容を、一条ないし三条まで拝見いたしまして、おおむねよく考えてつくられておるものと思いまして、全体として私は賛意を表するものであります。  実は、火炎びん罪と申しますか、火炎びんに関する取り締まりの問題というのは、かなり前に一度起きたことがあるのであります。御承知でございましょうが、昭和二十六、七年ごろかと思いますが、そのころに火炎びんがたいへんはなやかに飛ぶ時期がございまして、それを取り締まり側が例の爆発物取締罰則適用ありという考えのもとに起訴し、裁判にかかり、それが最高裁判所に参りまして、昭和二十八年に爆発物取締罰則適用はないという小法廷判決がありまして、それから次いで三十一年に至りまして、大法廷が同じく適用なしという結論を出しておるのでありまして、したがって、火炎びん取り締まり爆発物取締罰則によるということはできないことになったわけであります。  そこで、特に火炎びんに関する法律を特別につくるかという問題が起きたのでありますが、関係資料として配付いただいておりますものの中に、いま申しました二十八年、三十一年の判例があがっておりまして、特に三十一年大法廷判決最後部分資料で申しますと四二ページの最後のところに、こういうことが出ております。「もしそれ、本件火焔瓶の如きものが公共の安全をみだす危険物であり、これが製造及び行使等を特段に取締る必要があるとすれば、須らく特別なる立法に俟つ外はない」こういうことが判決の中に明記されておるのであります。これは一面におきましては、法律がないから処罰はできないということを意味しておるのであろうと思いますが、なおその反面においては、この種の危険物については、何らかの方法によって取り締まりをするほうがいいのではないかというような一種のサゼスチョンを私は感じたのであります。最高裁判所判決にはそういうふうには書いておられませんけれども、私はそういうふうに受け取ったのであります。これは特別立法をするのがいいという考え方が、最高裁判所の全員の中にある、こう私は見てとったわけであります。  ところが、御承知のように、この火炎びん戦術と申しますか、火炎びんを使うということが、そのころから格段に少なくなってまいりまして、ほとんど終息いたしました。これはなぜ終息したのか、私は知っているわけはないのでありますが、おそらく戦術転換があったんだろうと思います。ともかく火炎ぴんというものが飛ぶことがきわめてまれになりましたもので、このような特別立法必要性ということも下火になったというか、さたやみになったというのが実情であろうと私は見ております。  ところが、最近といいますか、近年と申しますか、おそらく昭和四十二、三年ごろからと思いますが、また火炎びん戦術なるものが出てまいりました。これもおそらく戦術転換だろうと私は愚考しております。間違っておるかどうであるか、それは保証の限りではありませんけれども、私の印象としては、やはりこの火炎びん戦術というものを行なうという一種の、やわらかいことばで言えばムードのようなものがあると思います。そこで、今日の時点におきまして、この種の特別立法が制定されるということは時期的に適切であろう、こう思うのであります。  それから、各条につきまして概略申し上げ、また詳しい点で御質問がございますれば、私の意見を聞いていただくことにいたしたいと思います。  まず、第一条に定義規定があるのでありますが、この定義規定で少し変わっておると思われますのは、第一条の三行目ほどで、「発火装置又は点火装置を施した物で、」その次に、「人の生命身体又は財産に害を加えるのに使用されるものをいう。」こういう文句が入っておる点であります。普通、定義と申しますと、「発火装置又は点火装置を施した物をいう。」この辺で打ち切って、そしてこの使用される云々というのは、火炎びん使用するほうの、いわばこの法律案で申しますと第二条のほうに、「人の生命身体又は財産に害を加える目的をもって火炎びん使用した者は、」こういうふうな書き方をする例が多いように思うのでありますが、この法律案では、その点を定義の中に織り込んでおるという点であります。これが目につくのでありますが、私はこれはけっこうな文言だと思います。物の客観的な性質というものを主観的に、使うほうの人の考えで左右するというのでなく、そういう目的を持った物という、物自体客観的性格としてとらえるという点が私はいいと思うのであります。この点は、先ほど申しました最高裁判所判例の中にも、若干そういう点が、物の客観的性質ということと使う者の主観的な意図というものとを、区別するような考え方があるのでありますが、これをまとめて定義の中に織り込む、この考え方が、なかなか考え立案であると思います。  それから第二条でありますが、これは使用処罰しておるわけであります。ただ、その使用といっても、「人の生命身体又は財産に危険を生ぜしめた者」をということで、刑法の学問のことばで申しますと具体的危険罪と申すのであろうと思いますが、具体的な危険を生ぜしめたということをもって要件としておる。ただ使ったといろのではなくて、具体的危険に及んだという点でとらえておる、これがこの法案として一つの行き方であり、私はこの態度はいいと思います。  それから次に第三条は、製造所持中心規定してあるわけでありますが、もちろんこの製造所持をある程度取り締まり対象にするということは、正しい態度であろうと思います。その場合の「火炎びん製造し、」というこの火炎びんの中に、第一条で申しましたように、人の生命身体または財産に害を加えるように使用されるもの、そういうものである火炎びん製造するというふうにして、火炎びんの中にそういう限定が加えられておるということになるわけであります。  その二項は、「火炎びん製造の用に供する目的で、ガラスびんのその他の容器ガソリン燈油その他引火しやすい物質を入れた物を所持した者」この点が実は若干の問題を含んでいるのだろうと思います。私の考え方で言いますと、これは火炎びん製造過程で、しかもそれが相当に進んだ過程ではあるが、未完成のものを取り締まり対象にしようという考え方であろうと思います。しかもそれは火炎びんの本体と申しますか、ガソリンその他燃えやすいものの入っておるびんそのもの所持対象としておるので、それが未完成であっても、それを完成するために別にある若干のもの、これの所持対象にしていない。そういうものの所持、これさえくっつければ完成するというこのくっつけるほうのものは、所持について処罰対象にしていないという限定があるので、これは一つ限定として正しい方向であろうと思います。  ただ、このガソリン灯油等を入れたものと申しますと、たとえば、ドラムかんは大き過ぎるかもしれませんけれども、石油かんなどに持ってきておるという場合などが問題になるのじゃないかと思いますが、これが火炎びん製造の用に供する目的という、この目的がはっきりしていれば、それは取り締まり対象にして当然だと思います。ただ、私の考え方によりますと、そういうような主観的目的をあわせなければ取り締まりができないという点は、取り締まりの実態から申しましてもなかなかむずかしいことでありましょうし、それから、取り締まりを受けるほうの立場になりますと、自分の考え方というものがどうなのか、目的は何かということになるのでありますから、私はできるだけこういう点は厳格に整理して、たとえば、表現がどうなりましょうか、火炎ぴんとして最後に使うような、そういうぴんというものを中心にして考えて、それより若干前にさかのぼるかもしれませんけれども、ただドラムかんを仕入れてきたという、そのドラムかんをという点になると、問題があるのではないかと思います。しかし、それを法文に、簡潔に、あいまいな点を残さずに書き上げてみろと言われると、これはなかなか、専門の経験を豊かに持っておられる立案関係の方もむずかしいのじゃないかと、私の経験からも申し上げることができると思います。  それから、もう一つ考えなければならないのは、こういう取り締まりのための法律ができるかできないかによって、影響がある場合もありましょう、ない場合もありましょうが、おそらく戦術としては、いわゆる完成した火炎びんを持ち歩くということを避けて、未完成品を分割して持っていって、そしてその使用の直前に合わせて使うというような戦術を使うことが当然考えられると思いますので、そういうものをどういうふうにとらえるかという、そこにやはり問題があると思います。それらを含めて、この三条二項にどういうふうにじょうずに盛り込むかというのは、言うべくしてなかなかむずかしいことであろうと思います。ただ、先ほどから申しますように、火炎ぴんというものに限定がたいへん加わっており、そして製造の用に供する目的という、この目的がはっきりするような場合でなければいけないということで、まあ乱用を慎むという線で考えてもいいのではないか。ただ、もう少し何か一くふうあってもいいのじゃないか、これはむずかしい注文のようでありますけれども、そんな感じがいたします。  それから、刑罰が重いか軽いかの点でありますが、第二条のこの十年以下、それからその未遂罪——未遂罪も御承知のように、使用するべく準備して使用しなかった場合と、使用しても具体的な危険が生じなかった場合と、そういうふうな二種類あると思います。完全に——完全にと言うとおかしいのですけれども、はなはだ不完全であって、とうてい爆発しそうもないようなものを投げたとか、設置したとかいうような場合になりますと、これは不能犯というような問題が起きたり、それよりも、そんなものはこの第一条でいう火炎びんに当たらないという解釈が当然にできると思うので、そんな不完全なものが第二条によって重く取り締まられるということはないと思います。  それから、第三条のほうの製造所持でありますが、「三年以下の懲役又は十万円以下の罰金」ということになって、法定刑の幅がかなり広いように思います。製造といっても多量の製造もあろうし、所持といっても悪質な所持もあろうし、そういうものを考えますと、三年以下の懲役ということもそんなに他の罰則とのバランスを失しているとも思いません。また、十万円以下の罰金ということでありますから、情の軽い者は罰金でいいということで、その点でも罰則として合理性があると思います。ただ、いま申しましたように、情の悪い者とか情の軽い者とかいうことがあらかじめわかっておるならば、それを法律にきめたらどうかということです。たとえば多量に製造した者は加重する、もう少し重い刑でいく、そして罰金は科してはいけないということ。これは国会として法律においてきめて、裁判官の裁量にまかせないということであります。そうでなく、こういうふうに幅を広くして、このワクの中で、裁判所で適当に刑を盛りなさいということで国会がお渡しになる、これも一つ考え方であります。加重類型考えるということも一つ考え方であろうと思います。  時間もまいりましたようですから、大体この辺のところで終わらせていただきます。こまかいところはまた質問にお答えいたします。(拍手)
  6. 松澤雄藏

    松澤委員長 次に、藤木参考人にお願いいたします。
  7. 藤木英雄

    藤木参考人 ただいま御指名にあずかりました藤木でございます。  火炎びん使用等処罰に関する法律案につきまして、意見を述べるよう仰せつかって参上いたしました次第でございますが、何ぶんわずか三カ条の条文とは申せ、なかなかむずかしい論点を含んでおりまして、特にこの現実の火炎びん使用状況がいかがなものであり、はたしてどのような立法措置が必要であるかということにつきましては、私どもたまたま目撃したことのある限られた事例以外には、もっぱら新聞報道その他に基づいて知るほかはございませんで、そのようなことで資料を十分に持ち合わせていないというようなことから、短時間の間に最終的な賛否の意見をまとめるということは、なかなかむずかしいという事情もございます。  そこで、本日のところは、さしあたり、この法案が成立した場合に一体どのような運用がなされることになるであろうかという点を想像いたしました上で、問題であろうかと思われる点を御指摘申し上げることでお許し願いたいと思う次第でございます。  一応の考え方といたしましては、この種の立法をすること自体は不必要であるとは申せないように思われますが、具体的な内容につきましては、特に三条のところでございますが、刑の重さの点と、三条二項の定め方の点につきましては、いろいろ疑問点もあると感ぜられる次第でございますので、この点について特に慎重に御考慮いただきたいとお願いしたい次第でございます。この点を中心にして若干の意見にわたる部分について申し述べさせていただきます。  まず、法案全体のうち第一条でございますが、火災びん定義規定につきましては、ほぼ明確に定められ、問題は比較的少ないように思われます。  また、第二条でございますが、これもどうも新しい犯罪類型ではございますけれども、現在の法律処罰されていない行為が新たに処罰されるということでは必ずしもないように思われます。まあ罰則が整備されたということでございまして、特に深刻な論点というものはないように拝見いたします。  ただ、未遂規定について、特に物件に対する放火の点は、この現在の刑法では未遂処罰していないということとの均衡上、若干問題点がないわけではございません。しかし、火災びんを人や住宅あるいは車両などに向かって投げて不発に終わったというような場合を考えますと、これは人の生命身体に危害を及ぼす意図で投げられたものでありまして、暴力行為処罰法一条ノ二でございますか、この凶器による傷害の未遂規定などと比較いたしまして、必ずしも出過ぎた規定であるとは考えられないように見受けられるわけでございます。  問題は第三条であります。第三条は、現行法に比べまして処罰される行為範囲が非常に大幅に広がっているわけでございます。  まず、第一項でございますが、火炎びん所持そのもの処罰されることになります。これは、現行法では凶器準備集合罪という規定がございまするので、二人以上の者で火炎びん所持しているという場合には、これは現行法でも処罰されることになっているわけでありますが、一人で持っていたという場合は現行法から漏れる可能性がございます。これは殺人予備とかあるいは放火予備などの規定でまかなわれる可能性もございますが、放火意思ではなく、たとえば人に向かって投げるという意思で、しかも別に殺人意思なしに持っていたという場合には、これは放火予備罪からも殺人予備罪からも漏れますので、この点が、第三条第一項で新しく設けられた規定が、処罰範囲を広げた典型的な場合ということになるかと思います。  それから第二項では、半製品と申しますかあるいは中間製品と申しますか、こういった火炎びんに至らざる、火炎びんとなる途中にある段階物件所持処罰されることになるわけでありまして、これもかなりの範囲において処罰対象が広がることになるわけであります。  全体を拝見いたしまして、特にこの法案重点が第三条、とりわけ第二項にあるように承るわけでございますが、この法律のおもなねらいは、そういった規定の趣旨からいたしまして、火炎びん事前取り締まりということに重点があるように拝見するわけでございます。  そこで、この規定当否、必要か不必要か、あるいは何らかの規定を置くとすればどのように考えるかということを検討いたします場合には、事前抑制を強化するものであるというこの規定性格からいたしまして、主としてその当否を判断すべきであるということになろうかと思われます。確かに事務局からちょうだいいたしました資料を拝見いたしまして、火炎びんによります人身や物件に対する被害というのは、これは相当な件数にのぼっているように見えます。そこで、このような被害を防止するためには、どうしても火炎びんが投げられるより前に所要の措置を講ずる必要があるということは、これは一応納得できることでありましょう。  その点から考えまして、第一項におきまして、でき上がった火炎びん所持していることを禁止する。つまり現行法では、二人以上で所持していれば処罰対象となるというものを、単独で所持していても処罰対象とするという規定を設けておりますことは、これは刑をどのくらいにするのが適切かということは、あとで若干の論点として申し上げますが、その点を別といたしまして、この際積極的にこれに異論を唱える性質のものではないように思われるわけでございます。  しかし、第三条の二項に定められました「火炎びん製造の用に供する目的で、ガラスびんその他の容器ガソリン燈油その他引火しやすい物質を入れた物を所持した者も、」火炎びん所持と同じ刑で罰する。この規定については、この規定が実際上運用された場合の対象とされる範囲というものが、必ずしも明確ではないと思われる点がございまして、この点が特に重要な論点になるのではないかと存ずるわけでございます。  そこで、このような問題を考えます場合の基本的な考え方といたしましては、これは実質的な加害行為が行なわれる前の予備段階行為犯罪として罰するということでありますが、この種の規定のおもな役割りというものは、犯人に対して逮捕した上裁判にかけて刑を言い渡すという面、これはもちろんでございますけれども、それよりもさらに、犯罪事前防止するための警察活動の有力な法律上の根拠になるという点が強いわけでございます。したがって、三条二項を考えていきます場合には、事件裁判所に持ち込まれたならば、裁判所は一体どのような解釈運用をするであろうかという問題を考えることの必要であることはもちろんでございますが、警察段階で、たとえば検問をして凶器の検索を行なうとか、あるいは別の事件の令状に基づいて家宅捜索をしたという場合に、たまたまこの種のものが発見されたという場合にどう扱われるであろうか、こういった場面でこの条項がどのように運用されることになるであろうかという点を、多少考えておく必要もあろうかと思います。  この事前抑制活動を強化することは、確かに犯罪事前予防の上では非常に重要なことであります。非常に有効な手段でもあります。しかし他方、ちょうど非常にきき目の強い薬にかなり強い副作用があるというのと同様に、社会的な副作用というものが起こる可能性は、これは罰則というものには常に存在するわけであります。そこで、犯罪事前防止の方策を考える場合には、特にきき目のある薬を考えます場合には、同時にその際の社会的な副作用最小限度にとどまるような配慮をすることが、どうしても必要になるのではないかと思われるわけであります。  ここで、それじゃどういう社会的な副作用というものが考えられるかということでありますが、やはり一番重要な事柄は、この種の事前防止法律を実際に運用することによって、法律を守る善良な一般国民が巻き添えにされる、そして著しい不愉快あるいは不便な目にあうというようなことができるだけないようにしなければならない、こういうことであろうかと思われます。これは単に国民の権利が害せられるというだけのことではありませんで、本来ならば法と秩序の維持に進んで協力しようと考えております一般国民に対しまして、かえって法の運用のしかたに対する反感を引き起こして、協力的な態度、これを阻害するというような面もあるわけでございます。  こういった点から、三条二項の規定定め方については、こういったマイナス面をできるだけなくすような、そしてその規定が不安なく運用されるというような性格のものになり得ることが、やはり必要ではなかろうかと考えられるわけでございます。  それで、どのような点に三条二項に問題点があるかと申しますと、これはこの法律案提案理由説明書にも述べられてございますが、ガソリンにいたしましても、灯油にいたしましても、またガラスびんにいたしましても、その他の容器といわれるものにいたしましても、いずれも国民日常生活上普通の形で使われているものであります。積極的に業務上必要だという場合もございますし、家庭の日常の生活上必要な物件として使われているということもございます。そこで一歩拡大適用されることになりますと、こういった犯罪と何のかかわりもないようなこの種の物件所持について、相当きびしい当局の一種の取り調べ的な行為が行なわれるという可能性が生じないでもない。そのような可能性をできるだけなくすようなきめ方が必要である、こう思われるわけでございますが、もちろんこの条文におきましても、目的という面から一応のしぼりをかけてございます。その点、御提案になりました諸先生、いろいろ御苦心のおありのことと存じまして、敬意を表するのにやぶさかではございません。  ところが、目的ということによってしぼりがかかるかどうかという点になりますと、やや問題がございます。目的によるしぼりと申しますと、これは最後裁判になって有罪か無罪かを争う段階になりますと、裁判ではこれは多数の証拠が出されまして、慎重な審理の結果そのような結論が出されるわけでございますから、したがって、目的によるしぼりというものは相当有効に働く、こう考えてよろしいかと思います。しかし、たとえば警察活動の検問の場面とかあるいは捜索の場面で、たまたま発見されたものに対する処理ということにつきましては、これは事柄の性質上、どうしても現場にあります警察官がとっさの判断で処置しなければならないという性格のものでございます。したがって、とっさの判断でありますだけに、いかに当該の警察の方が慎重に行動されたとしましても、いろいろあとになってみれば相当の思い違いがあったということは、どうしても避けることができないように思われます。そのため、たまたま、何ら犯罪意図もない、ある意味では法の執行に協力するような心がまえを持っていた一般市民が、犯罪の被疑者として相当長い職務質問にあうとか、あるいは任意同行されるとか、あるいは場合によっては現行犯として逮捕されるというような事態が起こらないようにしなければならないわけであります。  特に、このような問題点が生じ得る余地は、第三条の二項の容器につきまして、限定がはっきりしていないことから起こるのではないかと思われます。三条二項の容器には特別の限定がございませんから、灯油ガソリンを入れた石油かんも、これもここにいう容器の中に入るように解釈されるわけであります。極端に拡張いたしますと、自動車そのものもガソリンタンクの中に相当量のガソリンを入れているわけでございますから、これもやはりガソリンを入れる容器だ、こういう解釈三条二項の条文のままではあり得ないことではございません。  そこで、たとえば、これは多少極端な例で、まさかそういうことはないだろうとは思いますけれども、あるアパートに近所づき合いのわりあい悪い夫婦者がいた、あるいはひとり者が住んでいた。その人は非常に善良な市民でありますけれども、しょっちゅう留守をしている。そこで、たまたま管理人が留守中に届けられた荷物を部屋へ運ぼうということで部屋の中に入ってみたところが、そこにコカコーラのあきびんが何本かと灯油かんが置いてあったという事態を想像してみますと、この場合、三条二項の規定がコカコーラびんに灯油が入っていたという場合を罰するということであるならば、そういう問題は起きませんけれども、コカコーラのびんと灯油かんが見つかったという場合に、灯油かんそのものが容器だという解釈もあり得るわけでございます。その上に、コカコーラびんがそこにころがっているということは、そのコカコーラびんをもとにして火炎びんをつくる目的があったとその場で認定する一つの情況証拠ということにもなります。そうなりますと、いまのような場合に、石油かんとコカコーラびんが何本か見つかったということで、直ちに家宅捜索が行なわれるとか、あるいはたまたま帰ってきた人に対して職務質問とか、あるいは任意同行が求められるというようなことも起こり得るわけでございます。もちろんこういう場面に遭遇した方は、間違っても犯罪者として処罰されることはよもやあるまいかと思いますけれども、しかし、事情が明らかになるまでの間に相当不愉快な目にあうようなことになる可能性もあるわけでございます。  それから自動車の場合も、たとえば自動車の中にあきびんが相当入っている、ほかにガソリンは何ひとつないという場合でありましても、自動車のガソリンタンクのガソリン火炎びんの材料であり、自動車そのものが一つ容器であり、そこに置かれておりますびんが火炎びん製造するという目的の情況証拠というような判断をかりにもされるようなことになりますと、その場でその自動車を運転していた人が、三条二項の現行犯で逮捕されるとか、あるいは任意同行を求められるとかということが、理論的には考えられないわけではございません。もとより当局がこのような解釈をなさることがあるとは、よもや想像されませんけれども、現場の状況次第で、非常に緊迫した状況のもとでは、絶無とは言いがたいことかと思います。  そのほか、たとえば登山、キャンプその他に出かけますグループが、相当大量の油と容器を持って歩くということはしょっちゅうあることでございます。そういった意味で——もちろんこの不法行為をする者が、そのようなグループを仮装して物を運ぶという可能性も当然ございますけれども、しかし、そのような外観を呈する大多数の人々は、法律を守る善良な国民である場合が大半ではなかろうかと思われるわけでございます。  そういうような点を考えますと、この案の三条二項そのままに運用されます場合には、これは取り締まりのほうからは非常に便利でございますけれども、このままでは善良な、法を守る一般国民を巻き添えにして、かえってこの取り締まりに対する反感を増大させるというようなこともあり得ないわけではございません。したがって、火炎びんの半製品取り締まりをすることについては、その必要性の有無をやはり具体的な事情、具体的な事例などをもとにして、どうしても必要かどうか、いろいろ検討する必要があるように思われますし、また、かりにこの種の規定がどうしても必要であるという結論に達するといたしますならば、いま申しましたような、国民一般に不安を及ぼさないような、客観的な歯どめになるような規定を置く必要があるように思われます。つまり、若干の一くふう必要ではなかろうかと思われるわけでございます。  具体的に申しますと、目的というしぼりでは十分ではございませんで、容器のほうに何らかのしぼりをかけたほうがよろしいのではないかと考えるわけでございます。たとえばその容器ガソリンなどを入れた容器自体が、必要な点火装置を施せばすぐに火炎びんとして使える性質のものであるというような場合、たとえば灯油かんというものはその場合の容器ではない、ガラスびんその他直ちに火炎びんとして投げることのできるような容器だけが、この三条二項の容器に当たるということがはっきりわかるような規定にする必要があるのではないか。まあ、この条文の具体的な条文については、これまたなかなか表現がむずかしいように思われますが、たとえば、発火装置または点火装置を施すのみで直ちに火炎びんとして使用することのできる容器というようなしぼり方もあろうかと思われますし、直ちに投てきすることのできるような容器ガソリンを入れて持っていたというような趣旨に改めることも一案かと思いますが、そのような点についてもし御考慮いただけるならば、いま申しましたような不都合はおおむね避けられるのではないかという感想でございます。  なお、そのほか別のこまかな点にもわたるかと思いますが、刑の点でございます。三条一項、二項の刑の点は、刑法殺人予備放火予備あるいは凶器準備集合等、現行法でも何らかの意味で関係のありそうな規定、これは懲役二年が最高限でございます。これを三年に上げているという点は、他の犯罪の刑との均衡、特に予備罪的な性格を持っているということの刑との均衡からいたしまして、いかがなものであろうかという印象でございます。  以上、いろいろ意見を申し述べましたが、何ぶん資料不足のことであり、全体といたしまして最終的にこうすべきであるというほどの断定に至る意見を申し述べることができない状態でございますけれども、この程度でありましても、いささかなりとも御参考になることがございまするならば幸いに存じます。(拍手)
  8. 松澤雄藏

    松澤委員長 これにて参考人意見の開陳は終わりました。
  9. 松澤雄藏

    松澤委員長 引き続き質疑に入ります。  申し出がありますので、順次これを許します。畑和君。
  10. 畑和

    ○畑委員 平出先生並びに藤木先生、両参考人の御意見を先ほど来拝聴いたしました。おおむねお二人の御意見、実は私、同感でございまして、私、提案者じゃございません、提案者は別に自民党の委員の方が提案者でありまするが、両先生が若干問題にされておる点は、たまたまこの前の委員会におきまして私が指摘したこととほとんどそっくり同じであります。したがって、質問する事項とてはそんなにないのでありますけれども、私も一番問題なのは三条の二項だと思います。  その三条の二項で、先ほど両先生が御指摘になったように、俗に言う最終容器、これならばどうやらだけれども、それ以前のガソリンタンク、あるいはポリ容器、それからガソリンかん、こういったものまでもこの条文によっては取り締まられる。そういうことで、善良な人たちまでが取り締まられるおそれがある。しかもこれは裁判になって、終局的にはまさかそんな者まで有罪にされるはずはないので、その前の段階でチェックはされると思いますけれども、最初まず確かに不審尋問、任意同行、あるいはさらにまた二、三日くらいの警察へのとめ置き、こういうことくらいは往々にしてあり得る。したがって、そういう人たちに対しての配慮がこの法案三条の二項では足りない、こういうふうに思ったわけでありまして、大体新しく火炎びん使用等処罰に関する法律ができますると、いままでに比べてぐっと、とにかく新しい処罰の法規ができるわけですから、取り締まりのほうもずいぶん便利にもなるし、相当目的を達することだと思う。大体この処罰法は、本来はあくまで処罰中心であるべきだというふうに考え、また同時に、しかし警察方面におきましてはその事前の抑制ということも非常に大きな目標だろうということは考えられるわけでありますが、それにあまり重点を置くと、先ほど両先生も言われたような危険が発生し得る、こういうことで、その辺の調和をはからなければならぬというふうに私も考えたのであります。  そういう意味で、むしろ私たちとしては、この第三条の二項は削ったほうがいいのじゃないか、もうすでにその前の段階でも、火炎びん製造所持もこれによって取り締まられるのだから、危険な第二項は削ってもいいのじゃないか、それでもう相当目的を達しているのじゃないかとも思いますが、しかし、やはりそうした事前抑制の点も考慮に入れるとすれば、先生方のお考えのように、俗に言う最終容器に限るべきです。それを法律的にいかが表現するかということが、先ほど藤木先生も述べられましたが、この点をくふうしてそちらだけを取り締まる、そしてその前の容器等についてはこれはこの法文の上から削る、それを処罰しないというようなことにしたほうがいい。それでも免れることがあるわけでありましょうけれども、その前で目的は相当達しておりますから、私はその危険な、おそれのあるようなものは、最後の点などは規定しないほうがいい、そしてくふうをしてこの第二項を、俗に言う最終容器に限るような形の表現をすべきだと私は思っています。  同時にまた、私も問題にしたのは、それは刑期の問題であります。第三条の一項、二項がいずれも「三年以下の懲役又は十万円以下の罰金」になっております。これは藤木先生が仰せになりましたけれども、私も同感でありまして、ほかのいろいろな予備罪に比べて均衡を失するのではないか。取り締まりのためにはいいかもしらぬ、警戒のためにはいいかもしらぬけれども、やはり刑法全体の体系上、ほかの同じようなものと均衡を失してはならぬというふうに思います。しかも私、実はこの三年以下の懲役というのは、緊急逮捕ができるということが警察側としてのねらいではなかろうかと思うのです。それこそ緊急逮捕でどんどんやられたら、所持のほう、特に第二項あたりは、それでいろいろな弊害、無事の人たちまでが被害を受けるという結果になるということで、三年以下は不適当で、やはり二年以下にすべきではないかという意見は私も同感なんですが、先生もそれほど強い御意向ではなさそうでありますけれども、そういうようにすべきだ。もしこれをどうしても三年以下として維持するならば、二項のほうは、これはその前のやつなんだから、これを二年以下にするとか、また同じとなっておりますけれども、これを一項と二項で差をつけるということにすべきだと思いますが、要すれば、私はやはり二年以下の懲役ということにすべきだろうと思います。銃砲刀剣類の所持の関係が五年であったり三年であったりするようであります。また内乱罪等の予備が五年だったかと思いますが、しかし、殺人放火等あるいは強盗などもそうだったろうと思いますが、二年以下となっております。凶器準備集合罪との関係もあるというようなことで、大体目的を達しておるのだから、これは二年以下にすべきであるという意見でございます。  その点二つが、実はわれわれが大いに疑問を持っておる点なのでありまして、ほぼ両先生もそれに近いと思います。特に藤木先生のほうは科刑の点について触れられたわけでありますが、この点についてさらに両先生の御意見、大体私の意見とたいして違いないので、御意見をと申しましてもちょっと的をはずれているかもしれませんけれども、さらに両先生の御意見を聞かしていただきたいと思います。
  11. 松澤雄藏

    松澤委員長 まず、平出参考人からお願いします。
  12. 平出禾

    平出参考人 主として三条二項の問題で、この容器の点を何らかの意味で限定したほうがいいのではないかという御意見は、私も賛成でございます。  使用するに便利な形の容器という方面からの考え方藤木先生がおっしゃったのでありますが、私は、実はうまくできないので遠慮しておったわけですけれども、そのものの外観からしてすでにほかのものには使用できないようなもの、火炎びんになるべくつくられておる、その過程にあるということがそのもの自体でわかるようなもの、そういう方面から何か限定できないかということを考えてみたのですけれども、諸先生方がいろいろお考えになって、なかなかそこは御苦心のあるところだと思います。なかなか簡潔に、あいまいでなく述べるのは困難かと思いますので、その辺申し述べておきます。  それから、三条二項を削除するというお考えもあろうかと伺ったのでありますが、私は、やはり何らかの意味でこういうものがあるべきだと思います。それは先ほど申しましたように、完成品所持するとは限らないので、未完成品を持ち寄ってその場で完成させて使用するという形態が当然考えられると思いますので、そういう点の含みもあることをお考えになって、こういう条項ができたのではないかと思います。私は、賢明な方法によってある程度の限度をされて、そういうようにされたらいいと思います。  それから、予備罪等の関係の刑の問題でありますが、現行法ではみな二年ということになっておりますが、たとえばいま改正の作業が進んでおります仮案になりますと、予備罪について五年というような案も出ております。必ずしも二年というのが固定しているとも思えませんので、必要に応じて多少の増減、高低があってもいいのではないかと思います。  それから、三年と緊急逮捕の関係ですが、本件は緊急逮捕の問題よりも現行犯逮捕の問題になるので、そのものを持っていたその場の勝負ということになるので、その緊急逮捕の点は私も一応考えてみましたけれども、それはど意味があるとも思いませんので、御参考までに……。
  13. 藤木英雄

    藤木参考人 ただいま畑先生の御意見、ほぼ賛成でございますけれども、こまかな点になりますと、第三条の二項が要るか要らないかというのが非常に重要な問題だろうと思います。  現在の法律でも、この三条二項のねらいとされております、いわゆる半製品を持ち寄って現場でつくるという状況は、多数人が関与する態様でありますから、いまの法律で完全に野放しというわけではないように思います。単独犯の場合に非常に困難があるということではなかろうかと思いますが、その辺のところは、この種のドッキングなるものの実態をいろいろつぶさに検討いたした上で、最終的にどちらが正しい方向であるべきかということを判断しなければならないように考えるわけでございますが、かりに、どうしても現行法ではまかない切れないということであるならば、未完成品を持ち寄って現場で完成品をつくる、その事前段階として押えるべきものとしては、一応それ自体火炎ぴんとして使えるものというしぼりが必要であろう、こういうことを申したわけでございます。  それから刑の点は、刑の均衡ということを考えます場合に、一体何罪との均衡、バランスを考えるべきかというのは、非常にいろいろ違った角度から問題になることかと思いますが、やはりこの種の犯罪は、放火であるとか公務執行妨害であるとか、あるいは凶器準備集合であるとか、いままでの刑法犯として処理されてきたものを、刑法犯の特徴でありますところの具体的危険犯という形で、新たな犯罪類型を設けたということでございますから、行政上の特別立法というよりは、刑法の特別法のような性格が強いのではないかと思われますので、その意味で予備罪の刑を考えます場合には、殺人予備放火予備、それと凶器準備集合との均衡ということを重視すべきでありまして、二年という考え方のほうが正しいのではなかろうか、こう考える次第でございます。
  14. 高橋英吉

    高橋(英)委員 ちょっと関連で。極端な例の、自動車のタンクがガソリンが一ぱいになっておったというふうなこと、その目的は結局火炎びんをつくるためだったというふうな証拠がはっきりした場合、たとえば共犯者が先に逮捕でもされて、そしていまどこそこ街道を急行してきているどういう自動車にはガソリンはこうこうだ、製造目的を持ってくるのだというふうなことがはっきりわかったり、それからまた的確な情報で、はっきりそれが製造のために持ち運んでおるのだという、そういうふうな三条二項というものの場合を考えて、三条二項そのものは、あのままおいておいたほうがいいということにはならないでしょうか。  それからまた刑罰の問題ですが、予備罪との権衡の問題がございますが、たとえば刀剣なんかは、御承知のように、戦前は全然取り締まり対象にならなかったけれども、戦後進駐軍がやってきて、GHQの関係で政令が出て、現在の法律体系になったわけですが、この刀剣そのほかの問題なんかでも、これは情勢が違ったからそういうふうなことになったのだけれども、これは持つこと自身は、許可を得なかったということによって処罰されるわけでございますね。火炎びんというものは、これはもう最初から不法の目的でもって所持しておるものですから、予備の段階とまた違うのではないか。殺人の予備罪だというふうなものはごく軽微の段階であって、火炎びん所持しているということ、火炎びんの問題になると、予備の程度は少しく前進しているというふうなことになるのではないかと思いますが、いかがでしょう。
  15. 藤木英雄

    藤木参考人 ただいまの御意見にございました最初の、自動車のガソリンタンクにつきまして、これはやはり、まあそういう極端な例もあろうかと思いますけれども、この種の場合は、現場で、現行法でも、少なくともそのびんを除去するという程度の行為は、特に緊迫した場面でありますと、警察官職務執行法などの規定に基づいて適切な処置が打てるのではないか、こう考える次第でございます。ですから、現行法でも野放しになるわけでは必ずしもないように思います。もちろんその場合、そのような条文がある場合とない場合とで、現場の処置に相当違いが出てくることは考えられますけれども、その程度の段階は、ほかの一般の善良な市民が巻き添えになることによって失うものとのバランスからいたしますと、見のがすといいますか、警察限りの適切な処置以上のことはしないということでまあがまんすべきものではなかろうか、そう考える次第でございます。  それから、刑の権衡の点は、確かに銃砲刀剣に比べまして火炎びんというものは、いかなる意味においても合法的用途に用いる可能性のないものであることは確かでございますけれども、先ほど申しましたように、特に三条二項のほうにつきましては、やはり日常正常な用途に使い得る物件を利用してそのようなものが置かれているという状態もございますので、一項の完成品火炎びんになりますと、あるいは御意見のようなことも十分に根拠があるかと思いますが、二項のほうになりますと、日常生活上通常使用し得る物件という点がございますので、必ずしも銃砲刀剣と同じに解釈しなければならないということもないのではないかと考える次第でございます。
  16. 松澤雄藏

  17. 中谷鉄也

    中谷委員 では、私のほうからも一点だけお尋ねをさしていただきたいと思います。  平出先生が、三条の二項については一くふうあっていいのじゃないかというふうに御指摘になりました。藤木先生のほうからは、容器の点についてのしぼりが必要でないかという点についてのお話があったわけでありまするけれども、この点についての一くふうというのがなかなか、ない知恵をしぼっているわけですけれども、出てこないわけなんです。   〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕  たとえば、どういうことになるのでしょうか。配付を受けました資料によりますと、火炎びんというのは、牛乳びん、コーラびん、ジュースびん、サイダーびん、ビールびん、一升びんまたビニール袋を利用したものもある、こういうふうに説明をしているわけですけれども、第一条の、「「火炎びん」とは、ガラスびんその他の容器」というのが必ずしも明確でない。火炎ぴんというのは主として投てきして使用されているようでありますけれども、どうもそれに限らないような感じもするわけであります。そうすると、ドラムかん発火装置点火装置をつけたというもの、たとえばそういう火炎ドラムかんなんというのは、これは火炎びんじゃないのだ、これも明らかだというふうにはっきり言えるのかどうかという問題です。私も前回提案者にお尋ねしたのですが、非常に珍奇な例だと思うけれどもと自動車の例を引いて、理論的には三条二項のその容器の中には自動車のガソリンタンクも入るのだ、こういうことで、先ほど藤木先生がお話しになったと同じようなことで、やはり乱用の危険を感ずるのだというようなことを申したわけです。  要するに、私が申し上げたいのは、一条の火炎びんの「ガラスびんその他の容器」というのは、必ずしも確定的なものとしてではなく、火炎びん内容は私は動いてくると思うのです。火炎びんといったって、現在、一升びんですよ、ビールびんですよ、サイダーびんですよと言っても、何かわかっているようでなかなかわからなく、火炎ぴんというものの内容が私は動くだろうと思うのです。そうしますと、三条二項で一くふうをしてみろとおっしゃった、あるいは最終容器に限るのだ、こういうふうに御指摘いただきましても、何を最終容器だというふうにするのかということになってまいりますと、これまた非常にむずかしい。  そこで、お尋ねをしたいのですが、とにかくそういう一くふうがどうしてもなかなかできないという場合、この三条二項というのはやはり立法さすべきなのか。藤木先生のお話では、容器の点でしぼりをかけなさいということですが、このしぼりのかけ方は非常にまたむずかしいと思うが、いずれにいたしましても、しぼりをかけてみたけれども、さらにまだ一般市民が不当逮捕だとか職務質問だとかいうふうな、とにかくかえって反感を持つような事態を生ずる危険性があるというふうなことで、くふうしてみたけれどもどうもしぼりがかけられないという場合、必要性とのバランスの問題に相なるわけですけれども、そういう場合に、この三条二項というのは、くふうをしてみたけれどもどうもうまくいかないという場合、これは削除すべきじゃないだろうかというような感じもするわけです。  したがいまして、これはないものねだりのことに相なりますけれども、先ほど畑委員質問に対して、両先生のほうからこういうかっこうでしぼりをかけたらというふうなお話があったのですけれども、いま一度、その一くふうについての示唆をいただきたい。お話があったことについて重ねてしつこく聞くようなことで恐縮ですけれども、せっかくわれわれのほうもこの点については努力をいたしておるわけですので、御高見を承りたいというのが一点であります。  第二点といたしましては、法律考え方として、必ずしも通説にはなり得ないと思いますけれども、先ほど平出先生のお話の中に、火炎びんの戦後の歴史のようなお話がございました。昭和二十七、八年ごろ火炎びんが流行して、そしてその後それが鎮静をしてというふうなお話があった。そういうことでありますと、私は、これは学生運動あるいはまたいわゆる過激派三派の問題とも関連してくるのですけれども、政治、社会のあり方の中でいつまでもこういうふうな火炎びんが投げられる、ほうられるというふうな時代があっていいはずはない、こういうふうなことは、とにかくわれわれの努力の中でなくさなければいかぬ、これはもう当然のことだと思うのです。そのために、法律の必要であることの可否の問題以上に、こんなことの状態がなくならなければいかぬというふうに思っているわけなんです。そういうことでなければ、政治をやっているかいもないし、国民の努力目標というのも、こんなものが投げられるような世の中をなくするという点にあると思う。  そういう点から言いますと、この立法はむしろ時限立法として考えてみたらどうだろう。要するに、この世の中から火炎びんというものはとにかくなくなすのだということになれば、まさに一時的な問題、非常な異常な社会現象なんだということであるとするならば、三年程度の時限立法という考え方もあるのじゃないか。しかし、この取り締まり法について、処罰法について時限立法というのははたしていかがなものかというところの反論、指摘も当然私はあろうかと思いますけれども、この点についての御高見も承りたい。  私のお尋ねしたい点は、以上の二点でございます。
  18. 平出禾

    平出参考人 三条二項の問題につきまして、高橋委員からも御指摘がありましたように、この目的ということでかなりの限定ができる、私はそう思います。この目的があるということがはっきりしておるような場合に、容器限定せずにやはり取り締まり対象にするということも、当然考えられることだと思います。しかし、これが藤木参考人の御心配の点でもありますが、明確な目的というようなことを申しておる間に、いろいろその明確ならざる状態において、いわば弊害といいますか、病的な現象が起きる、その点をがまんするかしないかという問題になると思います。  私は、目的があるということにおいてかなりの限定はできる、これが正しく運用されるならばそれも一つ考え方だと思いますが、そういう病的な現象に及ぶことを避けるというのが、やはり立法としては考えるべきことだと思いますので、それはどうするかと言えば、やはりこの容器そのもののことを考えるべきだと思いますが、それも藤木先生は、使用するという側から、投てきなら投てきというふうに考えておられますが、私はいわば未完成品であるという、この製造過程にあるというその流れの中で、いわば最終工程だけが残っておる、そこから先はどこへもいきようのない、火炎びん一筋に乗っておる、そういうプロセスを経たものというような考え方でいったらいいのではないかと思います。  そこで、その文言をどうするかちょっと申しかねるのですが、外見上火災びん以外の目的には使われないものというようなことを、その容器の下にくっつけるというふうなことですね。  それから、火炎びんそのものが、びんというこのびんそのものが変わってくるのではないか、こういうことはあると思います。びんにしても、ガラスびん考えるのか、あるいはプラスチックのようなものならどうなのか、もっと陶器のびんならどうなのか、いろいろなことが考えられると思いますが、そういう点は、やはり火炎びんという常識的な観念の中で考えていくほかしかたがないと思います。たとえば箱になったらどうなのか、木の箱ならどうなんだというようなことまで考えていっても、ちょっと考え切れませんので、やはり常識的な線で、現在われわれがイメージに持っておる火炎ぴんということでいいのだと思います。   〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕  それから、時限立法あるいは限時法の問題でございますが、これも一つ考え方かと思いますけれども、実のところ私どもも、どの程度にこういうような状態が持続するのだろうかということは、専門の警察その他の方々もお考えになっているのだと思いますが、ちょっと見当がつかないのだろうと思います。現に、この日本の沿革的な観点から申しましても、二十年というような周期を持っておる。十五年とかいうふうになりましょうか、そういう周期でまいりますので、三年がいいか五年でいいのかといってみても、三年の中で事態がどう変わるかという、そういうことでもなかろうと思います。経済立法のように、たとえば国際通貨のレートがどうというような問題でありますと、限時的な立法も適当かと思いますけれども、本件のような場合にはどうか。むしろあまり賛成いたしかねるほうの意見でございます。
  19. 藤木英雄

    藤木参考人 第一の容器についてのしぼり方でございますけれども、私は先ほど申しました、投てきに適する容器というようなしぼり方もあるのではないかという点でございますが、これは確かに実際の使い方としては、ドラムかんそのものが火炎かんといいますか、そういう使い方もあろうかと思いますし、石油かん火炎びん同様の目的で使うということもあろうかと思われますが、しかし、投てきに適するといいますと、そういうものが除外されることになりますが、これが非常に予備罪的な性質のものであるということからいたしますと、その程度は除外されてもやむを得ないのではないかという趣旨で申したわけでございます。  これはどういうことかと申しますと、ドラムかん火炎びん類似の方法で使うということになりますと、これは普通の形では一人だけでそれを使うというととはなかなかむずかしいように思われますし、また、その場でつけた人がすぐ投げるという形は、投げたほうにも危険でありましょうから、おそらく時限発火装置のようなものをつけて使うというようなことになるかと思いますけれども、そういうことであれば、これはそのようなものをこの三条二項からかりにはずしたとしても、事前防止のチャンスは、その物件そのものに対する措置を講ずるチャンスはあるのではないかと思います。それから、石油かん程度のものでありますと、これは確かに高いところからならば火炎ぴんとして投げることはできるかと思いますけれども、平地ではちょっと投げられないのではないかと思われますので、そういった意味で、投てきに適するものというのは、やはりそれを持っている人が手で投げて発火させることができるようなものという形でしぼってはどうかという趣旨で、いまのようなドラムかん石油かんを時限発火装置的に使う場合や、高いところから落とすというような場合は、これは実行行為そのもののほうで考えていけばよろしいのではないか、こう考えて申し上げた次第でございます。  それから、第二点の時限立法の点、これも確かに一つ考え方でございまして、根本的にはこの種の立法を必要としないような事態を早く回復することが重要であることは申すまでもないことでございますし、その意味では、何らかのめどがございましたならば、ある程度はっきりした期限というものを設けることも、非常によい考えではないかと思われますが、しかし、具体的に一体それが何年であるかということになりますと、これは将来のことで予測のつきかねることでございまして、そちらのほうは、むしろいま御審議くださっております先生方の御判断におまかせするよりしかたがないのではないかと思います。
  20. 松澤雄藏

    松澤委員長 林孝矩君。
  21. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま、同僚委員から問題点についての質問がありました。私もこの三条二項、それから容器の問題、目的の問題、それから刑量の問題、問題点として感じているところは同じであります。  そこで一つ、刑量の問題でありますけれども、先ほど藤木先生のお話の中に、見る角度によってそれぞれ異なる、それによって三年がいいとか、あるいは二年が適当であるとかという判断が生まれてくるということがありました。また、一例として銃砲刀剣の所持に関する罰則規定の例が出されましたけれども、ほかにどういう角度からの見方があるか、その点についてお伺いしたいと思います。  それから、いま容器のしぼりについての話がありました。ところが、はたしていま持っている容器火炎びん製造の用に供するものであるかどうかという目的に対する判断、これが運用の面で非常に問題になってくると思うのでありますけれども、その辺のくふうを必要とするという意見、この点についてのお考え、私はこの二点についてお伺いしたいと思います。
  22. 平出禾

    平出参考人 刑期の点の、ことに三条所持に関して申しますと、先ほども高橋先生のおことばにあったと思いますが、この火炎びんなるものの本来の反社会性と申しますか、違法性と申しますか、そういうものそれ自体からくるので、たとえば麻薬のような考え方、麻薬にいたしましても医薬として使えるのですが、火炎びんはそういうことも考えられない、法律上存在を許さないような法禁物とでも言うような、そんなような種類のものだと思いますので、そういうものの製造であるとか所持であるとかいうものが、相当、普通の予備罪的な考え方に加えてその見方があると私は考えます。  それで、三条の一項と二項で違うかという点は、お考えの分かれるところだと思います。三条一項のほうはそういうことでいい。二項のほうは、何しろまだ完成していないものじゃないか、日常のどこの家庭にもあり得るようなものがたまたま並んでおるというようなことでもいいのか、そういう点でまず心配があるし、それから、そういう見方からすれば、特別に重く、現在の予備罪の刑量を上回ることはないじゃないかという考え方は出ると思います。しかし私は、火炎ぴんというものの存在自体の不法性と申しますか、価値のない、社会的にあってはならないものだ、そういう見方からして三年でもいい、そういう考え方であります。  それから、容器限定の問題は、ここに出ておりますのは、「火炎びん製造の用に供する目的で、」と書いてあるが、その供する目的以上に何かその目的を加えるくふうはないかというお話かと思いますけれども、さあ、これは私ちょっと考えつきませんが、あるいは法務省あたり、だいぶこういうことで経験のある人たちもおられるだろうと思いますので、何か案をお持ちかどうか存じませんけれども、目的といえば、製造の用に供する目的というほかにしかたがないと思います。ただ、その目的がどこまで形にあらわれてきたか、そのプロセスが、たとえば十工程あるところを、まだ一工程とか二工程とかいうことではだめだ、ただ持ってきて集めたというだけじゃだめだ、何か形になるその形は、もう火炎びんの方向にしかいかないような形になったときあたりを未完成品として取り上げる、私はそのくらいしか考えられませんので、御容赦願いたいと思います。
  23. 藤木英雄

    藤木参考人 第一の刑の分量をきめる標準といたしまして、他とのバランスということを申しましたけれども、それは先ほど中谷委員から御指摘のございました、たとえば限時法にしてはどうかというような考え方とも関連いたしまして、やはりこの種の法律は、現在の時点において必要ではあろうけれども、なるべく必要最小限度のものにすべきであるというような考え方、それも一つの重要な資料になるわけでございます。それとこの規定の体裁、法律性格刑法の特別法的な性格が強いか、あるいは取り締まり立法という面が非常に強く出るかというような性格にも関連するわけでございますが、刑法特別立法というワクで考え、なるべくこのような法律がなくても済むような状態を願うというような考え方から、法律を設けるとしても、刑罰については急に重いものをというよりは、ある程度のものでとめおくという考え方があり得るかと思います。  それから第二点でございますが、目的に対するしぼりの規定が可能かという点でございますけれども、これはこの規定自体で、ガラスびんその他容器の中に原料があるということで、ある程度一つの情況証拠になっているわけでございますから、これ以外の方法でしぼるしぼり方があるかという点になりますと、急には思いつかない次第でございます。公然と持っていたとか、あるいは隠し持っていたとか、そういう点は、公然と持っていればそのような目的がなかったものと考えられる。隠し持っているような場合、本来あるべき場所でないところに隠して持っているような場合には、目的が推測されるというようなことはこれはあろうかと思いますが、これもどうも一律には書きにくいというような面があろうかと思います。その意味で、多少びんそのものの形態、それからびんの使われる可能性といったようなものでしぼる必要があるのではないかという趣旨で御意見を申し上げたわけでございます。
  24. 松澤雄藏

    松澤委員長 関連して小島徹三君。
  25. 小島徹三

    ○小島委員 私、実にばかげた質問だけれども、先生にちょっとお聞きしたいのです。  たとえば、一方にガラスびんだとかいろんな準備をして、発火装置も持っておって、そこにガソリンを運ぶということで、普通ならば最終容器でないような形の容器で運ぶ者がおる、運びつつあるという者がおるという場合に、これはガソリンをそこに持っていけば直ちに火災びんになることは想像できるのですけれども、客観的にはそうかどうかわからぬ、そういう疑いがあるというような場合に、それを防ぐのにはどういう規定をつくったらいいかということが一つ。  それからもう一つは、火炎びんというものの危険性ですね。普通に刀で人を殺すというようなものとは違って、火炎びん被害というのは相当大きいのみならず、鉄砲などと同じような威力を持っている、しかも相当の距離からこれを投てきすることもできる、しかもその被害は非常に大きいものが出てくるというような場合に、確かに先生方もおっしゃったように、緊急逮捕されて迷惑を受ける人が普通の人の中にあるかもしれません。しかし、そういう人の不便をしのぐということと、実際に投てきされた場合において何人かの生命が失われる、大きな財産が焼かれるというようなことを考えたときに、一体どうしたらいいのか、その辺をひとつ、先生方の御意見があればお聞きしたいと思います。
  26. 藤木英雄

    藤木参考人 ただいま御指摘の点は非常にむずかしい問題でございまして、結局、一方においては善良な市民が迷惑を受けることもあり、他方において実際に火炎びんが投げられれば、それで迷惑を受けるのも善良な市民であるということで、取り締まりを厳重にすれば無関係の人が巻き添えになる可能性もあると同時に、無関係の人の巻き添えをおそれますと、今度はやはり無関係の人が火炎びん被害を受けるというような面も出てまいります。  そういうような点につきまして、一つ論点といたしましては、諸外国でもいろいろ立法などもございますけれども、この種の犯罪によって害をこうむった民間人に対して、国家補償を完備していくというようなことも、やはり一方で考えられてしかるべきではなかろうか。これはすべての解決にはならないかと思いますけれども、ある程度取り締まりを弱めたためにこうむりました現実の被害に対して、もちろんこの原因を提供した者が損害賠償の責任を負うことになりますけれども、実際には支払い能力がない、被害者は結局泣き寝入りになるというようなことを念頭に置きまして、被害者に対する補償措置を講ずるというような方向も、一つの解決策ではなかろうかというように考えるわけでございます。そういった点を考慮しながらとこまで——具体的なケースでそれぞれでこぼこが生ずるのではないかと存じますが、できるだけ不都合をなくすように努力すべきものではなかろうかというように考えておる次第でございます。  もう一つ容器の点につきましては、これはその容器を、たとえば火炎ぴんと発火装置を持っている者のところヘガソリンをかんで運んでいる者というように、これがはっきりした場合には、これは三条二項そのままでございますと処罰できるようでございますけれども、この程度の段階では、たとえば凶器準備集合罪適用その他も別に考えられないでもございませんし、また適切な警察段階措置で防止できないこともございませんので、その意味では、罰則としてあとで裁判で有罪まで持っていくという面で漏れるのは若干出てくるかと思いますけれども、実際の措置としては、それが漏れてもそれほど大きな不都合にはならないのではないかと想像するのでございますけれども、その辺は、具体的に実務を担当しておられる方の御意見を伺わなければ、何とも申し上げられません。  はなはだ恐縮でございますが、この程度で……。
  27. 松澤雄藏

  28. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それじゃ一、二点伺ってみたいと思うのです。  本法案現行法爆発物取締罰則、これとの関係でございます。爆発物取締罰則適用につきましては、御承知のとおり最高裁におきまして三十一年六月、大法廷における判決がございまして、「爆発物とは、」として定義的にこれは認定をいたしております。「理化学上の爆発現象を惹起するような不安定な平衡状態において、薬品その他の資材が結合せる物体であって、その爆発作用そのものによって公共の安全をみだし又は人の身体財産を害するに足る破壊力を有するものを指称する」こういう認定を大法廷がしました。自来裁判の実例は原則的にこの認定によって行なわれているらしいのでございます。  そこで、本案における火炎びんと、それから爆発物取締罰則による爆発物とどう違うのであろうか。本案における火炎びんも、発火状態は爆発でないのであろうか。さきに引用いたしました判例定義的認定によりましても、爆発の概念というものが、本案における火炎びんの発火状態とどうも区別しにくいような面も考えられるんですが、この点はどうしたものだろうか。そこで、はたして両者異なるのであるかどうか。異なるといい、あるいは内容、爆発力、破壊力のいかんが両者区別の境界になるんだというようなこと等々によりまして、これは法の運用の上で混乱を生ずるおそれはないであろうか。  一方、爆発物取締罰則は、御承知のとおり死刑以下であります。本案は十年以下の懲役でございます。というように、処罰内容も非常に格段の違いがございますが、もし混乱を生じますならば、これはたいへんな課題になってくる。その点はいかがでございましょうか、どちらからでもどうぞ……。
  29. 平出禾

    平出参考人 爆発物取締罰則との関係は、冒頭にもちょっと申し上げたのでありますが、火炎びん騒ぎがありました昭和二十七、八年ごろに、火炎びんもまたこの罰則における爆発物にほかならないではないかという意見がありまして、それで最高裁判所まで事件がいったわけであります。そして結局最高裁判所は、火炎びんはこの罰則にいう爆発物にあらずという決定を最終的にされて、結局この両者は画然たる区別があるんだということになったわけであります。  ところで、じゃどこの点が画然たる区別の基準になるのかという点でございますが、実は私は昭和二十八年の小法廷判例が出ましたときに「判例評釈」なるものを書きまして、それがこういう「評釈集」というものになって出ておるわけでございますが、そのときは火炎びんもまたこの取締罰則の爆発物になるという意見が成り立たないか、そういう含まれるという立場で、最高裁判所判例に対してはやや批判的な立場で考えてみたわけであります。  吉田先生もいろいろ御研究になっておいでのようで、私はそれ以上に実は理化学の知識を持っているわけではございませんので、どうも恐縮なんでありますが、結局のところは、爆発作用、爆発の現象そのものの作用によってというところに重点がまいりまして、それがいわゆる破壊力を持たなければいけない。ところが、火炎びんは爆発が一部で行なわれる、しかもその爆発は、いわゆるマッチのような火つけ役のような小爆発であって、それ自体は破壊力があるようなものではない。それが今度ガソリンその他可燃物に点火されて、可燃物が燃焼する、その燃焼を促すために小爆発があるだけだ、そこで小爆発のほうには破壊力はない、燃焼のほうに破壊力があるんだ、こういうふうに爆発と燃焼とを二つに分けて、そしてその作用、爆発そのものの作用で破壊力がなければだめだ、そういう立場をとったのであります。  その立場自体には、私も批判的な点がありまして、そういうふうに燃焼で破壊力があるんだろうが、しかし、それは小爆発と燃焼とが一緒にいわばセットになった装置なんだから、爆発から燃焼にいって被害を加えたというので、燃焼が破壊をしたのかもしらぬけれども、その前にある爆発と合わせてもいいじゃないかという考え方をとったことがあったのでありますが、そういうことが最高裁判所では認められなかったわけであります。  というのも、先ほど御指摘のように、この取締罰則の刑がたいへん重いこと、それからいろいろの形の行為処罰していること、これは御指摘の大法廷判決にも明記してあるところでありまして、そういうところから考えて、爆発物というのは非常に限定して考えるべきだ、爆発現象そのものの作用で破壊をするものに限る、そういう考え方になったと思います。  ところで、その燃焼と爆発とどう違うのかという点になりますと、実は秒速何メートルとかいうような話もありまして、結局は、量的な問題で、著しく急速とか何かそういうような、数字の上で進行速度が速いかおそいかで違ってくるように思いますので、私は何かこれは程度の差のようなものがどこかで量的にふえていくことが、今度は質的に爆発という名称で考えられるような現象になるというのじゃないかと思います。  たとえば、黒色火薬が問題になったことがありまして、これが時限装置か何かでしたか、たいへん不完全なもので爆発しなかったので、これは取締罰則の爆発物じゃないという判決が、たしか昭和三十四年に出たと思いますが、それなどの話を聞いてみますと、たとえば黒色火薬というものを普通に地面なら地面の上に糸のようにしておいて、片一方に火をつけるとぶすぶす、ぶすぶす燃えていく、これは爆発じゃなくて燃焼なんだ。ところが、それをびんかパイプか何かに入れて片一方から点火すると、そのスピードがたいへん増してきて今度は爆発現象になるんだ、こういうような鑑定を東大の山本先生でしたかなさったように記憶しておるのですが、そういうようなわけで、黒色火薬が爆発かどうかというんじゃなくて、やっぱりそのしかけというものがあって、そういう装置になったら爆発物ということになるんじゃないかと思うのであります。しかし、最高裁判所の見解は、爆発現象そのものの作用で破壊力があるものということです。  そこで、ラムネ弾のようなものがたいへん火炎びんと似ているようでありますけれども、ラムネ弾は爆発によってその容器そのものが飛び散って、それが身体に悪い影響を及ぼすようなものである、だからこれは爆発物取締罰則にいう爆発物である、こういうことであります。
  30. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで過日、私ども委員一行は都内の警察学校に参りまして、火炎びんの幾つかの実物につきまして実験をしてこれを見たのでございまするが、ところで、爆発といい燃焼といい、あるいは中に入れた物質が流出をするといい、発火するといい、見た瞬間のわれわれの実感と常識は、七十秒の間にばあんと割れて厚いびんがこわれて、ばあんとたいへんな音がしてがっと発火して、高いのは数メートル火炎が上がるのであります。そして建造物まで燃やしていく、そういうような実情なんでございます。  としますると、いま御指摘になりましたとおりに、その後の最高裁の判例で、三十四年の第三小法廷における判例には、ラムネびんが爆発物ということになっております。ラムネびんというのは何ぞやということを判例を読んでみますると、「カーバイト約四十瓦を入れ、これに適量の水を注入しさえすれば数秒数に爆発するいわゆるラムネ弾は、いまだそれに水の注入がなく、またその一部に水を保持、流出させる装置がなされていなくても、爆発物取締罰則にいう「爆発物」にあたる。」第三小法廷は三十四年に、最高裁の大法廷判例以後に出している。この判例の理由の説明も、さっきの大法廷における「理化学上の爆発現象」云々というものは、ちゃんと引用いたしております。そこは、理路整然としておるように実は思うのであります。  としますると、この両者が、火炎ぴんと爆発物と異なるならば、いま少し両者の関係を定義的に明確にする手はないのであろうか。あるいは、しょせんこれは理化学学会の世界のものであるというならば、最高裁の判例というものは、まだその方面において、十分に自然科学的な検討が行なわれない前提のもとになされた判例であるのかどうかということにも疑問が生じてくると思うのです。  やっぱりこうなってきますると、両者こんなような処罰内容が非常に異なるのでありまするから、法廷の論争は相当激しくなってくるんじゃろうと思います。法廷の場でなくして、むしろ科学研究所か科学技術庁あたりへ持っていかなければ解決しない。大学あたりの鑑定に求めるということになってくるのではないだろうか。定義それ自体国民に周知徹底するような、そういうふうにないといかぬのじゃないだろうかと実は思うのです。といいますのは、これが単なる個人、一個人との間のような関係ではなしに、多少の社会公共の安寧等に影響することでもありまするので、かなりその辺は、議論が出てくると、議論が沸騰してくるのじゃないだろうかということを実は考えるのであります。  そこで私も、全体といたしましては取り締まりの必要があろう。ただ、その辺は間然するところなく、後日混乱を生ずることなく、後日やはり論争がそこらで巻き起こることがないようなことにしてもらわぬと困るのじゃないか。  でありまするので、この両者の関係を明確にするということによって、何かもっと手がないかということを実は考えるのであります。そういうふうに思った次第でございます。これでもうきちんと定義ができておるならそれでもいいのでございますけれども、ちょっとそのような心配があるわけですが、どうでしょう、これはごく単簡で、一言でけっこうでございます。
  31. 藤木英雄

    藤木参考人 ただいま御指摘のような問題点は、爆発物と火炎びんの限界と申しますと、確かに不明確な部分もございますけれども、この法律ができますと、不明確な部分火炎びん、つまり刑の軽いほうの火炎ぴんと解釈される可能性が強いということで、特にさしあたっての不都合は生じないのではないかと、こう考えております。
  32. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これは例の問題になります三条二項の問題でありますが、どうもやっぱりこれは、現実のいろんな場合を想定いたしますと、ちょっと問題になるのではないか。三条二項は、構成要素といたしまして、「火炎びん製造の用に供する目的で、」目的があがっております。「ガラスびんその他の容器ガソリン燈油その他引火しやすい物質を入れた物を」容器に引火しやすい物質を入れてそれを所持する。つまり目的があって、そしてその具体的な構成は、すでに火炎びん所持した者、こういうことになるわけですね。つまり、ガラスびんなどの容器ガソリンなどの引火性物質を入れてそれを持ち歩く、こういうことになりまするので、としますると、この間もちょっとこの点疑問になったのですが、私は、そういうのは別々に分担しまして、びんはおれが持つ、それからガソリンはおまえ持て、それからその他のものは丙が持て、三人に分けたらこの法律は当てはまらぬのか。所持する物件は、中身もあり、みなそろったもの、ところが、中身を甲が持つ、一つは乙が持つ、さらにいま一つのものは丙が持つ、こういうふうにしていきましたらこれに当てはまらぬのか。だから百人、二百人行動するときは、そのくらいのことは考えやすいことですわ。だから何も知らぬ女性にも、何も知らぬ甲にも乙にも、おまえこれだけは持っていろ、きみはこれを持っていろというような調子でずっといくというふうになるとこれに当てはまらぬ。すると、これは底が抜けてしまうじゃないだろうか、こういうふうに思うのですが、その辺がどうか。  それからもう一点は、しいて私が繰り返しする必要がないのですけれども、相当議論になってくると思いますので申しますが、目的という認識につきまして立証困難になるのじゃないだろうか。そういうことになりますと、かねて皆さん問題にしておられます、乱用いたしましたら、憎いからやれ、こういうことになりましたら、また、憎いから反体制の思想に基づいて警察官殺してしまえ、こういうことになりましたら、これまたたいへんだ。だからそれと同じように、私はやはり別の主観的な感情その他の要素が入りましたら、これはたいへんだと思いますので、その辺についての乱用をおそれます。この二点について、三条二項の適用の場合の一つの混乱が予想されますのですが、時間もなくなってきましたので、もう一点だけついでに聞いておきます。  すでにお聞きになった点と私は理解しますが、やはりこの問題は特殊な社会現象として見る犯罪でありますが、一般国民の、良民の被害の問題、これはやはり重要だと思うのです。だから、これについて法的救済措置というものはかなり用意されなければいかぬじゃないだろうか。損害賠償を民事訴訟でやれ、そんなことを言いましても、多くのあちらこちらの被害を受けました者がそのままになったら、これはたいへんであります。この点については、法的な救済の措置をあわせ講じる必要はないであろうか、これにつきまして伺っておきます。  これで終わります。
  33. 平出禾

    平出参考人 三条二項の問題でございますが、問題はやはり両面ありまして、取り締まりが漏れるという不足の点と、それから行き過ぎるという点と両面ありまして、その両面を過不足なく文字の上にあらわして、だれが読んでもまぎれがないというものにすれば一番いいわけなので、そこを皆さんが御苦心になっておるところであり、私もなけなしの知恵をしぼろうとしているわけでございますが、なかなかそう過不足なく必要なものは十分、不必要なものは一切なし、そういうことができればそれにこしたことはありませんし、それのために努力するわけでございますが、ある程度までいくとどうも漏れることができる。先ほどお話しのように、容器の中にガソリンを入れない、火炎びんの母体ですか、実体には入ってないが、しかし、持っていくからにはガソリンを入れる容器がある。今度はそっちの容器を持ったという、そっちのほうが処罰対象になる。つまり、投げるほうの容器じゃなくて、持っていくほうの容器が、運搬用がこれでいくと処罰対象になるわけなんですね。そういう形がいいか悪いかという問題なんですが、まあいろいろお考えになった末のことでもあろうと思います。まずこういうところで、あるいは漏れるところがあるかもしれないが、まあ漏れたところは目をつぶる、行き過ぎるという点は、これは行き過ぎのないように運用面で考える、その辺のところで一種の線を示すということ以外に、なかなかうまくいかないように思います。それを前から申し上げているので、目的の立証がむずかしいということでございますが、目的というのも、やはりその容器の中に可燃物が入っているという、そういうことの状況が目的の反映になるわけで、その程度をもう少し進めることによって目的の立証ということが具体化する。  そこで、目的があるということの具体化はどういうふうになるだろうか。そうすると、できつつある製造過程がある程度まで進めば、それは火炎びん製造目的だということがおのずからわかる。そういう程度にまで持っていったほうが乱用のおそれはないだろう。しかし、それをあまり言いますと、今度は底抜けといいますか、漏れるものができてくる。そこのところがむずかしいところで、ざこも何もみなすくってしまう。そのかわり大きな魚をとるのには不便な網ができてくる。いろいろ利害がありますので、御苦心のことだと思います。先ほど来申し上げたところで、ちょっとつけ加えさしていただきましたことは、目的の立証というためにも、製造過程の進捗状況ということがあわせて考えられるだろうということであります。  それから、被害の補償の問題でありますが、これも二面あると思います。この火炎びん使用されたことによって受ける一般人の被害の補償をどうするかということ、それからもう一つは、先ほどから問題になっております、この法律適用を乱用したことによって受けた被害者の弁償をどうするかということで、これはこの問題に限らず、犯罪被害者の救済ということがたいへん問題にされなければならないのが、とかくなおざりになっておる点は御承知のとおりだと思います。自動車の交通事故の被害などにつきまして、だんだんとそういう政策が行なわれ、ある意味では保険制度的なものが行なわれる。よけいなことですけれども、公害問題なんかでも、複合公害なんかになりますと、やはり何か保険的なものが発達してくるのじゃないかと思いますが、こういう火炎びんなどになりますと、その点が非常に著しく目につくものですから、何らかの意味で、そういう一般被害者の保護ということについて、国会方面でも特段のお考えをいただきたいと思います。それが一般犯罪被害者保護のためになる、一つの口火になると思います。  それから、乱用による被害の弁償、これは国家賠償とか刑事補償とかいろいろありますが、まだ不足な分があるかと思いますので、その辺も、これと直接関係されますとまたいろいろ多岐多端にわたると思いますが、国会方面でもぜひ十分お考えをいただきたいと、むしろお願いを申し上げたいわけであります。
  34. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 よろしゅうございます。
  35. 松澤雄藏

    松澤委員長 青柳盛雄君。
  36. 青柳盛雄

    ○青柳委員 質問者のこの法案に対する態度を、一応明確にした上で参考人にお尋ねしたほうがよろしいかと思いますから、私あえて申しますけれども、私は日本共産党の所属の議員でございまして、この法案に対しましては党で慎重に検討いたしました結果、結論的には第二条の第二項、いわゆる使用未遂罪を罰するというのは削除すべきではないか、それから、先ほどからずいぶん問題になっておりました第三条の二項、これはやはり同様削除すべきものである、特にその点を強調したいという態度でございます。  そこで、もちろんこの法案にはいろいろ問題点がありますので、私どもの態度はそうであったといたしましても、参考人の御高見を承ってさらに検討をしたいという気持ちはあるわけでございますからお尋ねをいたしたいと思いますけれども、実は現行刑法では、ガス、電気、蒸気などの漏出罪について規定がございます。これは御案内のとおり、懲役三年が最高刑でございまして、未遂罪などはございません。ですから、このガス、電気または蒸気による爆発あるいはその他いろいろの方法によって人の生命身体または財産に危険を生ぜしめたる場合と、火炎びんによってこれを起こした場合、一体危険性などにおいてどれほどの違いがあるのだろうか。いままでガス、電気または蒸気が、一定の思想的背景なるものをバックにし、あるいは政治的な信条をバックにして行なわれたということがない。しかるにこの火炎びんというのは、もっぱらいま申し上げたようなものが背景にあって行なわれている。だから、こういうのはガス、電気、蒸気とは比較にならないから重く罰したほうがいいのだという思想が、この取り締まり法、あえて取り締まり法と言いますけれども、火炎びん使用等処罰に関する法律、この法案に流れているのかどうかという、この点の御見解をまず承りたいと思います。お二人に簡単にひとつお願いいたします。
  37. 藤木英雄

    藤木参考人 私も、いま御質問のような点については十分に考えをめぐらしてはおりませんが、おそらく現在の刑法の百十八条の規定ができました当時には、ガス、電気、蒸気などの使用が、これは何ぶん明治四十年の法律でございますので、比較的そこから生まれる不法な事犯というものが少なかったのではないか。これに対して、放火についてはかなりきびしく見ていたということもございます。  そこで、やはり火炎ぴんというのは何と言いましても火を使うものでございますし、しかも物件放火すると同時に、人の身体にかなりの危険を及ぼすものでございますから、放火罪に寄せたというような方向からバランスを見ていったほうがよろしいのではないか、こういう印象を持っております。
  38. 平出禾

    平出参考人 藤木参考人が言われたとおりだと思いますが、さらにそれに加えまして、先ほども申しましたように、火炎びんなるものがいわゆる法禁物で、その存在自体が社会的に無価値といいますか、反価値的なものという点にやはり重点があるのだと思います。  それから、使用の形態と申しますか、多数が用いるというような運動的なことが加味されるかどうかという点でありますが、実は、集団で行動する場合の手当て、と言うとおかしいですけれども、法律の面では整備されているほうに近いので、むしろ分散的にやっていると漏れるということがあるので、この法律は、分散的な行動がいままで野放しにされておったのが取り締まり対象になる、そういう面があるのじゃないか。運用の面ではむしろそんなような形をとるんじゃなかろうかというふうに想像されますので、全体の運動方針、多数が動くというところでどういうふうに働きますか、むしろ単独の場合にこそこれでなければ、この法律でなければ取り締まれないという面が出てくるんじゃないか、そんな感じがいたします。
  39. 青柳盛雄

    ○青柳委員 さらにそれに関連してお尋ねをいたしますが、両先生御存じのとおり、昭和三十六年に刑法の改正の準備草案ができまして、百八十六条の第二項に爆発物類似のものを使用した者に対しては、十年以下の懲役に処するという案がございます。そのあとにまた未遂罪もございますが、これは聞くところによりますと、昭和四十二年ごろの討議の中で削除されたというようなことでございます。私、不敏にいたしまして、なぜ削除されたのか、その理由がよくわからないのでございますが、あの爆発物類似の爆発物というのは、本来ダイナマイトとかその他とは違う、この火炎びんのようなものを予想しておったのであるのかないのか、その辺もしおわかりになりましたら、簡単にどちらの先生からでもよろしゅうございますが、お話をいただきたいと思います。
  40. 平出禾

    平出参考人 その点、実は私は刑法改正の事業に直接関係しておりませんので、実態はわかりませんですが、何しろ爆発物取締罰則というのが、例の太政官布告というようなものですから、刑法正のおりには、何らかの意味で刑法典の中に取り入たらいいじゃないかという、そういう議論は大正年間からあると思います。そしてこういうところに入ったんだと思います。また、「爆発物に類する破壊力を有する」というような、破壊力のほうから考えておるようですが、最高裁判所考え方は、その破壊力というよりも、理化学現象のほうからおもに見ているようで、その辺はどうなるのか、やはり疑義があるのじゃないかと思います。これは最終的な草案の中でどういう形で残っているのか、削除されたのかも明確に申し上げる知識を持ちませんけれども、あるいはそういうような点が問題になって、ここへ入れるのが便利という考え方もあるのかとも思いますが、何しろ直接経験しておりませんので、この程度で……。
  41. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私が冒頭に申しましたように、二条の二項の未遂罪もこれは削除すべきではないかと申し上げたのは、あえて罰しなくてもいいんだという意味ではなくて、三条の一項には賛成でございますから、あれで補足できるという実利的な面も考えて、そういう考え方を持っているということもありますけれども、先ほど藤木先生もおっしゃいましたが、ガス、電気、蒸気のほうは四十年の法律なんで、現状からいえば、放火のほうに近づけたほうがということもあるだろうというお話でございまして、なるほど刑法百十条、建造物以外の放火につきましても、「公共ノ危険ヲ生セシメタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス」ということになっておりますから、これはそれとの均衡を失しない刑であろうとは思います。しかし、この百十条の刑には未遂罪の規定がないのであります。百十八条にはもちろんございません。だから、本法案の二条の二項というものを設けておかなければまずいんだという、何か積極的な理由があるのかないのか。均衡からいいましても、要らないような感じがするわけなんでございます。  先ほど、別にあげ足をとるわけではございませんけれども、平出先生のほうからは、投げたけれども、あるいは使用してみたけれども発火しない、爆発といいますか、発火しないような、いわゆる点火しないような品物は、一条にいう火炎びんには当たらないんだから、未遂罪という問題も起こらないんじゃないかというようにお話があったような感じもするわけでございますけれども、まさに未遂罪というのは、この前警察学校で実験をしたときに、二つ三つ発火しないのがありました。もっとあれを一本一本投げてみたらば、相当発火しないのもあるんじゃなかろうかというふうに私は疑ったわけです。と申しますのは、前のでもうばっと燃えているところへ投げますから、はたして火のあるところへ火勢をそそるだけの効果になっているのか、それとも同時に自分もそこで発火をしているのか、その辺のところが、連続投下という実験では発見できなかったんです。だから、おそらく相当発火しない、まあ平出先生のお話で言えば、一条に該当しないような品物があったんじゃないか。そうすると、これは結局は三条二項へ持っていくよりしようがないかというようなことにもなるのでございます。  そういうわけで、未遂というものをわれわれが連想する場合には、投げたけれども発火しないというか、点火しないというのを大半考えている。投げたけれども危険も発生しなかったという、これはもちろん原野の中で投げれば危険なんかほとんど起こりませんから、問題はないと思いますけれども、そういう場合には、大体火炎びん使用方法そのものの訓練ではあっても、使用そのものではないという気もしますので、結局発火しない、点火しない場合のことをいっているんではなかろうかと思うわけです。しかし、それは事実上火も出ないし、それから危険もしたがってありませんし、だから、未遂を二条の一項並みにしておくということになれば、減刑もできますけれども、減刑して情状酌量しても二年半、一回減刑しただけでは五年でございますから、たいへんなことになるんじゃないかというふうな感じもいたします。もっとも以下という、上が高いだけで低いのもできるかもしれませんけれども、いずれにしても、未遂罪の必要性がある積極的な御意見がありましたら承りたいと思います。
  42. 藤木英雄

    藤木参考人 未遂罪につきましては、最初のところで申し上げましたように、ただいま青柳委員御指摘のとおり、いわゆる不発弾のようなものが典型かと思いますが、これは火によっては人の生命身体に害を及ぼすことはないわけでございますけれども、物件自体が人に向かって投げられるというような場合がかなりあるのだろうと思います。その点を考えますと、私も積極的に未遂をどうしても置かなければならぬというほど強い趣旨で言っているわけではございませんが、少なくとも人に向かってびんを投げるあるいは建物に向かってびんを投げるという、直接それが加害目的に使われているような場合には、未遂があってもそれほど不都合ではないのではなかろうか。  ただ、広場その他で威力を誇示する目的火炎びんを投げたというような場合には、やはり大量に発火してそれが危険を生じなければ処罰しないということになるのではないかと思いますが、いまのように、人あるいは建物などに直接向かって投げたものの不発弾などは、未遂という規定はあっても、それほど不都合はないというように考える次第でございます。  なお、建造物以外のものに対する放火につきましても、これはもし、物をこわす点がございますれば、焼けておりませんでも器物損壊罪ということは考えられますので、全く未遂が問題にならないというわけでもないように存じます。
  43. 平出禾

    平出参考人 未遂処罰ということは、やはり一つの政策だと思いますので、どうでなければならないというふうなものとも思いませんが、御承知のように、未遂にもいろいろな形態がありますが、使用という実行行為が外見的にあらわれているというところに一つの反社会性を認める、この立場で未遂罪があってもふしぎはない規定だと思います。放火罪などの関連から申しますと、この行為の形態と申しますか、こういう方法でやるのだということが法律上明らかになっておりますので、こういうものを使ってこうするのだということになっておりますから、それを使ったけれどもこういう結果にとどまったというような関係で、放火とか失火とかいうもの——失火の未遂というのはありませんでしょうけれども、放火未遂、自分の家の放火未遂ですか、そういうようなものを取り締まれないから、こちらの場合も未遂を取り締まるのはおかしいということはないと思います。つまり、行為の形態というものがきまっておりますから、その行為を始めてそして結果があらわれなかったという場合が、未遂ということになろうと思います。
  44. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私ども、未遂罪が設けられておれば人権じゅうりんが行なわれる危険性があるというほど単純にものを考えているわけでもございませんけれども、ただ、これがいわゆる治安立法でございますので、行動を起こすその思想的な背景が非常に反社会的である、反体制的であるということばが使われるのですが、こういうのはもうびしびし取り締まってやれ、だから、危険は実際には、客観的には発生しておらぬけれども、その量見が悪い、根性が悪い、だから既遂と未遂も一緒に厳罰に処せというような考え方が出てくるものですから、そこでは、やはり幾ら反社会的な、反体制的な考え方を持っており、それは現体制を維持する方々にとっては非常によからぬ者であっても、ただ思想、信条だけで差別的な区別をするということは、これは民主主義のもとでは正しくないわけでございますから、それにかりそめにも使われるようなものは避けておいたほうがよかろう、そういうことも私どもは考えるわけです。しかし、この問題はもう時間もありませんから、この程度にいたしておきます。  三条二項は、いろいろいわゆる歯どめなりしぼりなりをかければ相当効果のある規定であって、あえて削除してしまうということの必要はないのじゃないかという御高見を承ったわけでございますけれども、実は私、この法案が当委員会で審議される段階で、こういう見解を持ち、またそれを漏らしたわけでございますけれども、昨年十二月十日のサンケイ新聞などが、「火炎びん取り締まり 特別立法に九割が賛成」というような、「コンピューター一〇〇〇人調査」というのを報道されておりまして、九割までが賛成はしているのだから、おそらく参考人の方々をお呼びしても大半は賛成、ただしかし、乱用になるおそれのところは御意見があるだろうということを予想しておったわけですが、しかし、一割の反対か何か知らないけれども、少なくともこういう取り締まり法には賛成はしかねるという、良識ある人々といわれる者の中にもあるような感じがするのでございますね。  大体、火炎びんを投げている人たちを、心情的に支持するようなムードがございます。あれも政治の革新を目ざす純真な意図から出ているので、やり方が悪いのだというようなことで、だからむげに火炎びんだからといって——それは火炎びんはよくないにきまっているけれども、こういう人たちを、ただいわゆるカッコつきに弾圧、その人たちはカッコつきでなしに弾圧ということでしょうけれども、要するに弾圧するような立法をつくるというのはよくないのじゃないか。しかも、与野党が一致してつくるなどというのは、全くもう政治の革新などというものとはいわゆる既成政党は無緑であるといって、私ども共産党までが同罪にされてしまうというような風潮も、マスコミを含めてないわけではございませんので、そういう意見の方の参考人としての陳述も得られたらと期待したわけですけれども、不幸にして、そういう先生方はお見えにならないので、大体賛成でございますから、あとお尋ねすることは、乱用にならないようにするのにはこれをとっておいたほうがいいのじゃなかろうか。  どうも、先ほど藤木先生がもう詳しくおっしゃいましたから繰り返しませんけれども、現場の警察官はどうしても行き過ぎになりがちだ。最終的に裁判にかけられること自体があり得るかどうか。検察官もそれほど、現場から持ってきたものを取り上げて起訴し、公訴を維持するということにも限りませんから、まあ検事釈放ということになる可能性も相当多いでしょうし、まして裁判になれば、目的がはたして存在するかどうかということになると、非常にデリケートでございますから、おそらく無罪になる場合が多いと思いますけれども、それに至る過程において、まあ私、現場と申しましたが、投げられる、使用される現場に接着した部分ならまだよろしいのでございますけれども、これはなるべく早目に先取りをする、先手をとらなければいけない。  だから、過般、二カ月間にわたって警察庁が全国的にローラー作戦というのを行ないまして、正確な数字はいまちょっと記憶がありませんけれども、五百三十万軒ですか、戸別調査みたいなことをやったようでございます。アパートから何から全部、洗いざらい、シラミつぶしにやって、相当何か成果があがったようにもいっておりますけれども、ああいうことに三条二項が励みになるといいますか、合法的な根拠ということになりますか、要するに警察官職務執行法を行使する上で非常によりどころになる立法になりはせぬかということをおそれるわけなんです。  ですから、客観的に、ほんとにこの火炎びんをつくる目的で、そしてその予備的段階にあるということであるならば、これをのがすというのはどうもちょっと不公平ではないかというお話も、もちろんわからないわけではないし、それが無罪であるというのでは、ちょっと完成品と未完成品とは紙一重なんで、また危険性においてもそう違いはないということになりますと、不均衡ではないかという議論もありますけれども、やはり人権を尊重するという立法考える場合には、その辺のところはほかの法律でまかなえないなら格別、まかなえますから、私は削除したほうがいいと思うのですが、その点について、これは見解の相違になるかもしれませんけれども、両先生から御意見を承りたいと思います。
  45. 藤木英雄

    藤木参考人 私の先ほど申し上げました点は、ある範囲までは、ただいま青柳委員のおっしゃったような考え方も考慮した上で、容器などに限定をつけたらどうか、こういう趣旨であったわけでございます。  なお先ほど、それではだいぶ漏れるものが出てくるではないかという御意見もございましたが、これは警察官職務執行法などで相当カバーできることになるのではないかという趣旨のことも申し上げたわけでございますが、あとは、やや見解の相違ということに落ちつくのではないかと思いますが……。
  46. 平出禾

    平出参考人 三条の二項の点につきましては、先ほど来各委員の先生方の御質問に、私の意見も若干ずつ申したのでございますが、私は、この目的ということでかなりしぼられるだろう。しかし、この目的というのは、実は行為者の主観的な要素、主観的な問題でありますから、そういうものをただ主観的な形で置いておくというよりも、その主観が一般の人に見てわかるような、客観化されるような、そういう状態を見きわめた上で、そこで目的を認めるというような立法が望ましいということを申し述べたので、それには、未完成であっても、その未完成の度がある程度進んでおって、外見的にも製造に使うものに間違いないというようなものに限ったらばいかがか、そういう意見を申し上げたのです、うまく申せませんでしたが。  しかし、そういうふうにいくというと、今度は反対に漏れるものが出てくるじゃないかということも御意見として当然出ると思います。そこのところは、過不足なくやれれば一番いいのですけれども、過ぎてはいけないんだというのがまた一つ基本的な考え方のうちにはあると思います。そういう場合には、過ぎたほうは削る、がまんする——がまんすると言うとおかしいですけれども、そういうことはすべきじゃない、なるべく控え目に、罰則を伴うような法律というのは控え目であるべきだという基本的な理念ももちろんございますが、そういう点をお考えいただく。そして国会におかれては、国民の代表として、これだけのことははっきりきめておく。裁判官には、それから先のワクの中で裁量をすることを認める。しかし、これだけは国民意思においてきめておくから、それは裁判所は守ってもらわなければ困る、そういう線を打ち出されるということであろうと、私なんかは平素から考えておるものでございますから、そういう点もお考えのどこかにお入れいただいて、この立法をよりよきものにするようにお願いしたいと思います。
  47. 青柳盛雄

    ○青柳委員 ちょっと一点だけお尋ねしたいのですが、先ほど私が引用しました昭和四十六年十二月付のサンケイの「コンピューター一〇〇〇人調査」では、こういう法律をつくっても、はたしていわゆる過激派学生の火炎びん闘争にブレーキをかけることが、そういう効果があがるだろうかどうだろうかということに対して、この調査の結果では、どうもあがらないという人の数のほうがパーセンテージでは上のようでございます。大体そういうようでございまして、しかもそれが、老人のほうはあがるというけれども、若い人たちは、もう二割近くが全く押えられないといっている。支持政党別ではどうかといったら、自民党を支持している人と共産党を支持している人は、押えられるというのは半数を占めたけれども、社会、公明、民社は逆に、押えられないというほうが半数以上であった。こういう、まあこれもどれだけ信憑力のあるものか知りませんが、良識ある参考人の両先生は、一般国民という立場で、こういう法律をつくったら、幾らかいわゆる過激派学生の火炎びん闘争なるものが、押えることができるとお考えでございましょうかいかがでございましょうか、それを一言ずつお伺いしたいと思います。
  48. 松澤雄藏

    松澤委員長 簡単にお願いいたします。
  49. 平出禾

    平出参考人 やはり効果はあると思います。
  50. 藤木英雄

    藤木参考人 ある程度の効果はあると思いますが、また別の、これから漏れる形のものが相当ふえるという可能性も相当あるのではないかと思います。
  51. 青柳盛雄

    ○青柳委員 ありがとうございました。
  52. 松澤雄藏

    松澤委員長 羽田野君。
  53. 羽田野忠文

    ○羽田野委員 両先生に非常に参考になる御意見を承りまして、ほんとうにありがとうございます。  提案者でございますが、この火炎びん使用等を何とか取り締まらなければいかないという問題と、もう一つは、やはりそれがもろ刃のように、不当に国民の人権を侵害するようなことがあってはいかぬということで、十分留意したつもりでございます。  この第一条をきめます際に、先ほど平出先生から非常に御共鳴をいただきましたように、客観的に物体がどうだということをきめただけでなくして、その先に、そういうものであってなおかつ人の生命身体または財産に害を加えるのに使用するものだというところまでぴしっとワクをきめてしまいました。いわゆる普通の人が持っておって全く有益性のないもの、害を加えることそれ自体に使われるだけのものだということまで限定をいたしましたために、あとのいろんな刑の量定だとかなんとかいう面で、そういう考え方が出てきております。  そこで、先ほど藤木先生から、この三条の二項について、特に三条についてでございますが、刑の点、これはやはり放火予備あるいは殺人予備、こういうような予備的なものだから、二年というのが最高というような御意見をいただいたのでございますが、私、この提案をするときの考え方は、むしろ予備というよりも、そういう見方もございますが、重点を置きましたのは、やはり爆発物を持つとかあるいは凶器を持つとかという、いわゆるそれ自体が害を加えるために使用されるものを持つというところのほうにウエートを置きまして、銃砲刀剣類所持取締法では、重いので五年以下、軽いので三年以下というようなことに相なっておりますし、それから爆発物取締罰則では、爆発物そのものを持った場合のみならず、その使用に供すべき器具を持った場合でも、三年以上十年以下というふうに相当重く考えておりますので、そういうところで実は三年というものを持っていたわけでございますが、この法体系の全体から見て、そういうことでもよろしいのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  54. 藤木英雄

    藤木参考人 確かにそういう考え方も十分に成り立ち得るだろうと思います。私としては、ただ刑法放火予備殺人予備とそろえたほうがいいのではないか、こういう考え方を申し述べさせていただいたわけでございます。
  55. 平出禾

    平出参考人 所持についての刑の問題ですが、実は先ほどちょっと申し上げたかと思いますけれども、所持の形態にもいろいろあるので、非常な悪い所持と非常な軽い所持がある。たとえば、多量に製造して多量に頒布するために持っておる、まさか売り出すということはないと思いますけれども、頒布するために所持しているというようなことが、一つの悪いほうの類型である。刑も加重すべきだ。加重類型というものが考えられることもあろうかと思います。その場合には罰金にはしないというようなことも考えてもいいのかと思います。あるいは、これはよけいなことかもしれませんけれども、製造所持だけでなく、運搬であるとか頒布であるとかいう行為自体も、ある意味においては行為の中に取り入れてもいいのではないかということも考えますが、せっかく立法のほうが遠慮されるのにそう広げることもございますまいが、情状の問題としては、頒布をするとか、そういう多量の所持だとか、あるいは製造だとかいうことが考えられると思います。
  56. 松澤雄藏

    松澤委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  一言ごあいさつを申し上げます。  平出藤木参考人には、昼食抜きのたいへん長い時間にわたり、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、来たる二十八日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時十二分散会