○高見国務大臣 御
指摘のように、基礎医学の教官を確保するということが非常に困難になったことは事実であります。実は、
医科大学をつくります場合に、いま一番大きな悩みは、基礎医学の教官を確保するということ、もう
一つは解剖死体を確保するということが容易でありません。これらの問題を考えますと、実は国民生活が豊かになりました
関係上、行路死亡人というものが非常に減ってまいりました。その
関係で解剖死体というものを、
学生二人当たり一体ということで要求しますとこれは非常に困難な問題になります。
同時に、昔は自分の
あと継ぎにするために将来お
医者さんにしようと思っておった
学生が、自分は基礎医学をやるのだというので、親の
意思に反して基礎医学のほうに走ったというような学問に熱心な
学生がおったのでありますが、いまはその点が非常に欠けておる。というのは、臨床のほうがもうかり過ぎるということじゃないかと私は思います。
それから、たとえば過疎地帯のお
医者さんの問題にいたしましても、北海道に現に
国立の
医科大学と道立の
医科大学とがございます。人口十万人について北海道は八十何人という割合になっておりますけれ
ども、それでは北海道全体がそうであるかと申しますと、札幌市の
医師を見ますと、札幌市の
医師の分布率は日本最高なんです。そこで、僻地のお
医者さんというものを、自治
医科大学でかりに金を貸してやって二人や三人つくりましても、六百万や八百万の借金なら二年もやれば返してしまって、そしてまた町に出てくるということになれば、これは
意味をなさぬということになる。だからこの問題は、医育の問題と申しますよりは、私は
医療制度全体の問題として御一緒に考えなければならぬ問題だと思うのであります。
医療制度全体の問題として考え、その考えの上に立って公的
医療機関というものも僻地へ置くということを真剣に考えなければ、お
医者さんの数を
幾らふやしてみても、これは都市へ集中するだけです。これで医育が完成したから僻地のお
医者さんの問題が一ぺんに解決するという性質のものじゃないということを、私は統計上そういうような
判断をいたしておるのでありまして、医育全体の問題としてひとつお考えをいただきたいし、私もこの問題を厚生大臣とも十分話し合って
相談をいたしたい、かように考えておるわけであります。