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角屋委員 いずれにしても、最近の
林業問題あるいは今後の
林業政策を打ち立てるにあたって、国土の約七割を占めておる日本の
森林資源、これが残念ながら国内需要を十分にまかない得ない。これから二十年近くにわたって外材依存度は五六、七%というもの、あるいはそれ以上のものが続いていくという状態を想定せざるを得ないということになりますと、それであるだけに、最近いろんな問題がございますけれども、
国有林たると民有林たるとを問わず、
林業政策というものについて
政府は本腰を入れてやらなければならぬ情勢に逆にきておるというふうにもいえようかと私は思うのでありまして、冒頭に、私、
林野庁に起こっておるいろんな問題を取り上げ、また新聞がそういう問題で
林野荒廃庁あるいは
株式会社伐採庁とかいうふうなことをいっておりますけれども、そういう
批判には逆に世論に対して真正面からまじめにこたえるという態度が必要であろうかと思います。
最近、
林野庁国有林野事業の赤字、黒字問題というのが出ておりますけれども、この点で、前に
林野庁長官をやりました
田中重五さんの意見というのを、これは
昭和四十六年三月二日に日刊木材新聞に出た意見の抜粋でありますけれども、見せてもらって、山に生きました元幹部のいわば述懐として非常に傾聴に値する意見を述べておるというふうに考えております。
抜粋の中でも、詳細に触れるわけにはいきませんけれども、たとえば、
国有林が黒字当時に、利益剰余金と称された特別会計の積み立て金を民有林
振興のために一千億近く使ってきたわけでありますけれども、こういう問題に対しても
田中さんは、現職をやめられたという立場にありますけれども、そういうものに使って、みずからの投資
内容充実のための造林、林道、治山その他必要経費については必ずしも必要にして十分な投下を行なってきたとはいえない。この赤字、黒字の問題についても、毎年の収支のどんぶり勘定にも似た赤字、黒字という概念で
国有林の価値測定をしようという意見に矛盾を抱くものである、こういうふうに述べながら——これは頂門の一針として
林野庁長官聞いておかなければならぬ先輩の意見だと思いますけれども、つまり企業性を自己貫徹できないような
国有林にとって、赤字とか黒字とか
議論をすることば
議論の土俵が違うように思われる。
職員数の適正化、組織の簡素化そのほかの合理化対策もけっこうである、しかしその前に
国有林に対する扱い方をあらためて問い直すことが先決である、さもないと
国有林は黒字になったが資産
内容の荒廃を来たし、真に
国民の経済的、文化的発展に寄与し得る財産としての役割りを後世の日本
国民に対して失うことになるかもしれないことをおそれる、というふうなことを書いておられる。
また同時に、毎日新聞の五月十八日の投書欄の中で、水田という大学の教授が、最近の
自然環境の問題とも関連して「独立採算で山を食いつぶす」という見出しで書いておりますが、この中でも、「
林野庁の業務を
現場で担当するのは
営林署である。ところが、この
営林署の業務は、独立採算制でおこなわれていて、赤字をださないためには木をきらなければならない。つまり、
林野庁は山林くいつぶしのうえに、
林業資本と共存している。しかし自然保護=
環境保全は、それ自体で採算ベースにのるものでないこと、教育とおなじであるから、
営林署が
林業営業署であるかぎり、
林野庁は
林野荒廃庁にならざるをえない。いっそ廃庁してしまったらどうだろう。」というふうにも書いております。まさに最近の
国有林野事業の
経営、
運営の問題について警世の言として聞かなければならぬ
内容を私は含んでおると思うのであります。
国有林野事業の
運営にあたって、
数字的な赤字、黒字というふうな
議論だけで今後の
運営を
林野庁長官はやろうとは考えていないと私は思いますけれども、
林業の
振興に関する
決議の中でも、財政
措置の問題について積極的に一般会計からの導入ということも
要請をしておるわけでありますが、これらの問題についてのお考えについても聞いておきたいと思います。